中国四川省大地震,

核兵器施設の被害報道とその後:

-実態を公表しない被害情報及びその後の国家の進展を信頼した 行動を続けるのか-

平成24年11月10日

倉田 英世


はじめに

 人類は有史以来続けてきた環境破壊によって,2000年代に入って地球の変質が本格化してきていることを自覚し,対策を立てて実行しようとして来ている。 2008年7月の日本主催の洞爺湖サミットで世界を挙げた主要議題となった「地球温暖化防止」の問題が,その事実を明確に物語っている。
現に,2008年5月2日に
@ ミャンマー(ビルマ)を襲った大ハリケーン,
A 5月12日の中国の四川省を中心とする地域を襲ったマグニチュードM-8クラス(日本の基準と異なる)の大地震,
B 6月14日に日本の岩手・宮城を襲ったM-6.9クラスの地震等が発生し大きな被害を受けた。
これに続いて
C 2010年7月8日には中華人民共和国北西部の甘粛省甘南チベット族自治州で地震が起こった。
これ等地震の災害は,何故か日本を除いて,発展途上国か,国民よりも主義主張を優先する独裁国家で起こったことが特筆される。  これ等の地震は,地球大変動による大災害伝播の一環であり,日本で発生が近いと云われている,東海地震,東南海地震,南南海地震等への備えが焦眉の急と なって来ていることを示していた。しかし事が起きてからで無ければ行動を起こし得ない平和ボケにドッフリと浸かって備えることを忘れた日本を, 2011年3月11日にマグニチュードM-9.0という日本史上最大級の地震と津波がおこり,東京電力福島原子力発電所の1〜4号機を襲い, 徹底攻撃を受けて敗れ去った太平洋戦争時に近い被害をもたらした「東日本大震災」が起こってしまいました。  
 
第1表 四川大地震の被害状況
発生時刻 2008年5月12日午後2時2分  
震源地 四川省汶川県映秀  
地震の規模 マグニチュウド 8.0  
被害地面積 13万km(日本国土の約1/3)  
死者 6万9227人 行方不明 1万7923人 計 8万7150人
負傷者 37万4643人  
仮設住宅数 60万棟以上  
経済的損失 8451億元  
政府の財政出動 約3600億元 4月末現在
註:新華社の報道などから1元は14円
 2008年に中国及びミャンマーで起こった地震災害は,いずれも軍事独裁政権下で起きたこともあって,軍事機密が一般国民の被害よりも重視され, 実態の公表が制限されたのに加え,各国からの避難民救済提案の受け入れが厳しく制限された。特に中国で起こった第1表示す地震は,民族4000年の 歴史的伝統に培われてきた人命軽視のDNAのためか 1), 災害を受けた国民の救済よりも軍事機密が優先されたことで,その対応が国際的に問題になった。
  四川省周辺地震の被害は,中国政府の発表による2008年9月19日現在の数値によれば, 死者6万9227人,負傷者37万人余,行方不明1万7923人といわれている 2)。  これらを総合すると,死者は10万人を超えたのではないかと予想される。しかし中国的やり方で, 最終報告としては第1表のデータが,被災約一年後の2009年5月12日に出されている。 中国にとっては,有史以来大地震国であったであろう。
第1図 四川省地震被害の一例 
-せり上がってきた巨岩と破壊された車-
 この中国四川省周辺に起こった大地震の中で筆者が最も懸念を深めているのは ,「中国のロスアラモス」といわれている核兵器関連施設が集中している一帯で, 核関連軍事施設の被害状況である。日本のマスコミの記者はもとより,世界中の記者の現地立ち入りが制限された。 そのため,この地域一般民衆が受けた 被害報道は断片的だが,核施設関連分野の情報は,さらに制限され断片的にしか入って来なかった。

1 中国四川省大地震被害の概況

 すでに四川大地震発生から2012年9月12日で早くも4年半が経つ。発生3ヶ月後の8月13日の朝日新聞に「心も家も遠い再生」という記事が載っていたこ とが思い出される。5月7日の産経新聞によれば,四川省政府が省都の成都で記者会見を行い,省内における死傷・行方不明の児童生徒が5,335人だったと 発表された。死者・行方不明者はトータルで8万7千人を出したとされていた被害だったが,当局が一応の数字を明示したのは初めてであり,被害の一例は, 特に建てられたであろう,高級マンションでも第2図の通りであった。これ等生徒の遺族は,1人当たり6万元(約85万円)の保証金を受け取ったという。
しかし受け取りを拒否し当局の責任追及を続ける遺族らも少なくなかったと聞く。そのことからも,先にも述べたが,実際の被害者は発表数字を大幅に超える 可能性が高い。いずれにしても,核兵器研究・生産施設を初めとする軍事基地出会ったが故に,総てに優先して復興が続けられているようである。
 「軍事施設及び核施設等の(:筆者注)復興に向けた取り組みが急ピッチで進む一方で,中央政府は住民には「自力再生」を求めてきた。当該時点で中国政府が, 「北京オリンピック開幕」を目前にして進めていた仮設住のの建設戸数が60万戸に達した」 3)と報道されていたことが思い出させられる。現地のある高官は, 四川省で480万人以上が家を失ったと語ったという。
 しかし被災規模があまりに大きいのと,北京オリンピック,上海万博等の国家的行事開催の準備のためもあって ,全避災民の面倒が見きれないのが実態であろう。
第2図 少数民族の暮らす地域に豪勢なマンション・ホテル群
-註:核関連施設で働く学者・技術者用の施設であった。 手前の天幕の下は死体だという。放射能被害者も多数含まれているだろう。米流辞表:2008.05.13
 当局は隠し続けて来ているが,核施設に,ロシアのチェルノブイリ原発,アメリカのスリーマイル島の被害を越える 被害が起きている可能性が高いことから,日本にも「フォールアウト(死の灰)」がかなり降下し,野菜や穀物等食物 の汚染被害が発生しているに違いない。しかし中国からは,原子力災害の実態について日本政府に通報されず,日本も 表面きって放射能調査を実施し,実態を公表する体勢にはなかった。しかし航空自衛隊及び全国の原子力施設が, モニタリングを行なってデータを収集していてくれたようである 4)
 政治的な配慮があるためか,総合的な実態が解明できていないためか2年半以上が経過する今日に至っても 総合的な被害は未発表のままだが,近い将来癌及び放射線傷害が大量に発生する危険性がある。一周年後に発表された 一般的な被害の報道はかなり詳細のように見えたが,核兵器関係を初め軍事に関することは一切報道されえていない。
 そこで筆者が捉え得た情報を基に,中国の核兵器施開発の経緯と現況,地震によって大きな被害が発生している可能性等 について述べる。それによって人命よりも重視している核関連施設の被害の状況の確認,それら施設修復を優先する政権 の態度とその実態を明らかにしたい。

2 中国における核開発の経緯と国民の殺戮

(1)核開発の滑り出し

 中国4千年の歴史には,一度として政権の禅譲はなかった。それぞれの時代の政権は,前政権を滅ぼして政権を掌握する と,その政権が続く限り,国民を省みず政権維持のみに終始して享楽にふけり,いずれの政権も腐敗を続けた。その政権 を倒そうとする有力な豪族と交戦に及んだ。そしてその極において,政権打倒を目指す新たな勢力による「革命戦争」に 発展して妥当され交代する,という歴史的伝統を続けて来た。
そして戦争に徴発された農民を初めとする一般民族の飢饉,自然災害の多発,疫病の蔓延等の結果として発生する数千万 人規模の大量死傷者の発生を意に介さない実態が続いて来た。中国では,この革命による政権交代が24回に及んでいる。 中国は漢民族が主体であるが,例えば元政権はモンゴール民族,清政権は満州族というように,トップに立った民族が 代わって来たのが実態である。
 日本国民は,かかる中国の実態を明確に認識し,中華思想に屈服することなく,国の安全 保障に目覚めて危機意識を高揚させ,今回の四川省大地震による被害の実態をフォローし,影響を真剣に把握し対処する ための参考に供しなければならない
。  1963年に,外交部長であった陳毅が,日本のジャーナリストと会見した際に「中国は,どんなことがあっても核兵器を 作り出すだろう。そのためには,何年もかかるだろうし,大量生産を始めるにはもっと掛かるかも知れない。しかし中国 は例え『(国民が)ズボンをはけなくても』完成された核兵器を製造するだろう」と述べていた。 5)
 中国が核武装を決意したのは,現中国共産党政権の建国から5〜6年後の1955年〜56年という早い時期であった。朝鮮戦争 の後半でマッカーサーが中国に対して核使用を提案し,トルーマン大統領に解任された事態を政権破滅の最大危機ととら えたのが契機であったと考えられる。毛沢東は,アメリカのような大国に対して対等な発言権を持つためには,核兵器が 必要であることを認識していた。
 当時のゲリラ戦主体の人民解放軍は,前近代的な装備だった。これを全面的に近代化するには,当時の国家予算の大半を つぎ込む必要があったが,核兵器を開発すれば一割程度でできる・・・・・。として,核開発に国家予算をつぎ込む思い切った 政策を取った。
 当初の関係資料はソ連が提供した。しかしソ連は,フルシチョフの時代に毛沢東が「原爆によって中国の人口が半分死ん でも,半分は生き残る」と述べた恐るべき発言を受けて,支援を中止した経緯がある。この間毛沢東は,人口を全国に分 散させ,人民公社で自給自足させる政策を取った。核攻撃を受けて人口の半分が死んでも侵略者を消滅できるとして, 鉄鋼,食糧生産などの「大躍進運動」を展開したが,これが失敗して2〜3千万人が餓死するという結果を招いた。
 ここにも中国的な人命を問題にしない実態がある事を忘れてはならない。

(2)中国の46発に及んだ核実験による死傷者

 中国が新彊ウイグル自治区「第3図の地区」で実施した核実験による被害で,同自治区のウイグル人等19万人が急死した ほか,急性放射線障害などの甚大な被害を受けた被害者は,129万人に達するという調査結果が札幌医科大学の高田純教授 (核防護学)によってまとめられている5)。被害はシルクロード周辺を訪れた日本人観光客27万人にも及んでいる 恐れがある。教授は,2002年8月以降この事実を2009年6月号の月刊誌『正論』掲載の「中国共産党が放置するシルクロード 核ハザードの恐怖」と題する論文で明らかにした。
 核実験による爆発では,楼蘭遺跡の近くで実施された3回のメガトン級の核爆発で高エネルギーのガンマ線やベータ線, アルファ線などを放射する「死の灰」が大量に発生した。上空に舞い,風下に流れた「核の砂」は東京都の136倍に 相当する広範囲に降り,その影響で周辺に居住するウイグル人らの急性死亡は19万人にのぼった。甚大な健康被害を 伴う急性原爆症は129万人,そのうち死産や奇形などの胎児への影響が3万5000人以上,白血病が3700人以上, 甲状腺がんは1万3000人以上に達するという。中国の核実験における核防護策がずさんで,被災したウイグル人に 対する十分な医療的なケアも施されておらず,129万人のうち多くが死亡したと見られる。
 この3発によるだけで,広島に投下された原爆被害の10倍を超える規模という。

第3図2009.04.30 19:03



 「高田教授は「他の地域でこれまで起きた核災害の研究結果と現実の被害はほぼ合致している。今回もほぼ実態を反映していると考えており, 人道的にもこれほどひどい例はない。中国政府の情報の隠蔽も加え国家犯罪にほかならない」と批判している。 また,1964年から 1996年までの間に,シルクロードを訪問した日本人27万人の中には核爆発地点のごく近くや「核の砂」の汚染地域に足を踏み入れた恐れがあり, こうした日本人への健康影響調査が必要と指摘している。」

(3)四川省地震と核兵器関連情報

 中国政府が意図的に流す情報及び情報衛星が捉えた悲惨な被害の情報が次々と出てくる中で,震源地である 四川省とその周辺の氵文川県(氵文:一字)や綿陽市,廣元市等からの情報が皆無に近いのが大きく懸念された。震源地付近に住む人々は少数民族が主体で, その数は2万人とも6万人ともいわれているが,総合的な住民の消息が長い間不明のままである。被災本拠地のダシバ山中のINPC南西研究所では,プラズマ兵器 ,ニュートロン兵器も研究・開発されているという情報もあることから,この地域は,先に述べたように「中国のロスアラモス」といわれる核兵器及びミサイル等 の軍事中核基地である。悲惨な被害の状況が流れてくるようになっても,震源地及びその西側,特にチベット側及び内モンゴルの軍事施設,特に核関連施設の被害の 実態に関する公式情報提供は皆無に等しい 6)。これは中国にとって,あらゆる努力を傾注して秘匿しておきたい被害情報である。
かかる状況下で中国は,断片的な情報をすべてであるかのようにして,いち早く開示した部分がある 7)。地震発生の翌日に中国環境保護部は, すでに核爆発で発生した破壊及び放射能に対する水質汚染予防応急措置を開始しており,21人からなる環境専門家を組織し地震被災地域に抗災救災指導に 赴かせていると報道した。地震発生の夜に環境保護部は,緊急会議を開いて部署内で地震対策救済工作を研究した,とあたかも全てを開示しているように 報道された。しかしこれ等の事実は,我々日本人にとっては,しごく当然の情報でしかないのだが。
会議では,即座に上記の応急対策を決定したとして,環境保護部副部長の李幹傑氏が,「環監局核安全司の関係人員と,核安全・汚染防止対策関連の 専門家からなる21人の環境専門家らを率いて地震被災地域に入り,環境応急救援工作を指導している」 8)と述べていた。
環境保護部統一部署の発表によると,西南,西北環境督察センターと四川核安全監督所の関係者が直ちに地震で被害の深刻な地域に入っており,協力 して現地の環境応急工作に当っていると述べている。そして,直ちに次に示す緊急通知と称するものが報道された 9)
@ 環境保護部は,13日,四川,寧夏,甘粛,青海,陝西,山西,重慶,江蘇,湖北,雲南,貴州,西藏などに,関係者を派遣し
A 各級環境保護部門は厳密に核施設の環境状況を監督しコントロールし,核と放射能の安全について一つも失敗がないよう確保し,
B 化学製品工場,危険化学品,汚水処理場など環境に敏感な施設と地域の関連情報を即座に把握し,さらに大きな環境汚染事故とならないよう 可能な限り防備し,コントロールせよ 10
しかし初期の段階では,「四川省でM7〜8の地震が発生,死者8,000人超す」といい,同時に2件の化学工場が崩壊したという情報(被害の極く一部に過ぎないと見る) だけが,流された 11)。被災状況の一例は,第4図。  それにしても,今回の地震が発生してからの中国指導部である中南海の動きは,オリンピック開催の直前であったことも手伝って,見かけ上は非常に素早かった。 地震発生から数時間後には温家宝首相が機上の人となり,成都でヘルメットも被らず被災地を視察し被害者を激励。胡錦濤国家主席も12日の夜には対策会議を主宰 していると発表された 12)。春節前後の大雪,北部の旱魃等災害時の対応とは雲泥の差である。これは,被害の大きさと,発生地域が核施設を中心とする軍事関 係施設の中枢であるという微妙な立場と,北京オリンピック及び上海万博を意識した,共産党中枢部を挙げた危機管理対策の現われであったと判断する。 そして,世界各国からの災害支援状況を紹介する際に,日本を先頭に持って来たり,「北京,上海,そして台湾も揺れた」と,地震伝播範囲の広大さをアピールし たりした。震源地が,チベット人やモンゴル人が多く住む西方内陸部であったことから,被災地の状況を紹介する際に,「チベットは漢代から歴史的に 中国の地である」とサラッと付け加えて ) 述べる手の込んだ対応もした。
第4図 崩壊した四川省の核施設周辺の状況米流辞表:2008.05.13
 今回の地震について中国政府は,言葉は悪いが,この地震を利用して加熱し過ぎている愛国機運,排外(仏)機運などモロモロの 過剰な事態発生の機運をうまく散らそうとしていたとも見ることができる。チベットに関しては,中国なしでは復興して行けない という宣伝をし続けていた。
 ミャンマーが,諸外国の援助を断ったという悪例が直前にあったので,外交部はこれを利用して早速世界各国からの援助の申し入れ に感動したといって見せ,他の事前のチベットのラサで起こり周辺に広がった暴動 13),大雪・大雨等の災害での混乱や,オリンピック の聖火リレーでの混乱によるイメージ回復を試みたりして来た。しかし,支援受け入れの現実は報道とは異なっていた。例えば日本の緊急援助隊 の受け入れに時間をかけ,直接微妙な災害現地に入らせなかったため生存者救出のチャンスはなく,早々に帰国させる等の操作を行なった 13)
 これらの情報操作を始めとする迅速な行動は,今年の中国では南部の大雪,北部の大旱魃,そして今回の大地震等が続き,さらに食糧不足を招き, 食糧価格の高騰や疫病流行の可能性といった,避けて通れない問題点を抱え込んでいだため,事態の公表を無視するか,小手先の宣伝だけで済ます ことができない材料が国内に山積していたことによる。

3 中国の核兵器施設と地震発生処理の状況

(1)中国の核開発に対する意気込み

 ここで改めて,中国の核兵器開発についての意気込みをまとめておく。1963年に,当時外交部長であった陳毅が,毛沢東の指導に基づいて 中国の核保有決意について日本のジャーナリストに対して次のように述べていた。「中国は,どんなことがあっても核兵器を作り出すだろう。 そのためには,何年もかかるだろうし,大量生産するにはもっとかかるかもしれない。しかし中国は,たとえズボンをはかなくても, 完成された兵器を製造するであろう」 6)。この言が中国の核開発・保有のる企図を明確に表現している。
 毛沢東は,60年代に核政策で,「人口を全土に分散させ,人民公社で自給自足させることによって,「核攻撃を受けて人口の半分が死んでも, 核兵器を持つことによって侵略して来た敵を各地域での人民戦争で消滅させることができる 7)」と述べ,開発を継続して今日に至っている。
 いずれにしても我々は,中国の人命軽視の思想(細部は後述)は,4千年の歴史に培われて来た伝統的な行動であることと,核兵器開発は中華思想に基づく, アジア次いで世界制覇の意気込みを示すものであることを認識しておく必要がる。
 今回大地震があった四川省周辺は,毛沢東の指導により核兵器関連の研究・開発,製造,貯蔵の等多くの施設を内陸地域の,しかも地下に集中建設させ ている中心地域である。しかし中国の意気込みは別として,核関連施設の建設に先立って大断層の存在を調査したか否かは不明であるが,当該地域 は大活断層地帯であった。十分な調査はなされなかったか,調査した結果大断層が合ったがその影響で大地震が起こって被災しても,十分耐えうる 原子炉心臓部を建設したのかも知れない。そこを直撃されたのが今回の地震であった。この一連の軍事施設の中で国際的に公開されていて有名なのは, 四川省の省都である成都にあって,中国軍最新鋭多目的戦闘機「殱-10号(J-10)」を量産しているとして知られている「成都航空機工業公司」だけである 8) )。
 このように一部が公開されている陰で,四川省を中心とする内陸部には軍事機密である核兵器関連施設が集中建設され稼動していたのである。  リチャード・フィッシャー副所長は次のように語っている ) 9)。「四川省には,中国全土でも最も重要な核弾頭開発や製造の一連の施設がある。 省内の綿陽地区には核兵器の開発,特に構造や機能を設計する研究施設がある。廣元地区には核兵器用プルトニューム製造などの一群の施設がある。
この廣元地区の研究所・工場は中国全土で最大のプルトニューム関連施設であり,大地震が起これば放射能漏れの危険がある」と述べている。  さらにフィッシャー氏は,「中国の核兵器関連施設は,それ自体すべて極秘にされる存在だから,地震被害の有無は重大な機密扱いである。 アメリカ側の行う事実探知事態も機密である。だから,真相は簡単にはわからず, 表面に出た情報だけで事態の真相と即断することは禁物である。」と述べている。従って我々は,中国の核開発に賭ける意気込みと,開発・保有の 実態及び何とかして今回に被害の実態を秘匿しておきたい状況を認識しておく必要がある。

(2)目的のためには人命を無視する中国

 命というのは,「天の命が変わる」ことを意味するという。腐敗する政権下で力を蓄えてきた地方の豪族が,当該時点の政権を崩壊させ新たな政権 を誕生させることであり,当然ながら前政権の要人は皆殺しにされた。この風習は,中華民国軍を台湾に追放した現在の「中華人民共和国政権」にも受け 継がれている。その良き例が,林彪の墜落死事件であり,天安門事件であった。過去に遡って杉山徹宋氏の記述の中から実態の一例を要約し,人命軽視の 実態について2つ例を挙げる 10))。
@ 後漢から三国時代の人口減少が例の一つである。「後漢が最も繁栄を誇ったA.D157年における漢民族の人口は,5,649万人であ ったが,次の三国時代の220年から240年頃の人口は,その1割強の763万人に激減している。僅かの間に4,800万人の人口が減少した。
A 明から清に移行する前の,万暦帝時代末期から数十年にわたって戦乱と飢餓が続き,人口は激減した。ザハーロフの統計によれば,万暦帝7 (1578)年6,070万人であった人口が,清国が北京入城した1644年には,1,063万人になり5,000万人近い人命が地上から消え去った。
ということは,「いかに革命時の戦乱による殺戮,政権交代による虐殺,自然災害よる飢饉等が重なって当時の中国を襲ったかが想像できる」 と述べられている。このように,中国人のDNAには,4千年の歴史が与えた人命軽視が染み付いている。
 ここで本題からそれるかもしれないが,中国の各王朝独裁に関する最近の恐るべき一例を紹介しておくこととする。大東亜戦争で日本が敗れ, 植民徒としていた台湾の戦後処理(武装解除と日本人の引き上げ処理)をマッカーサーから依頼された中華民国は,陳儀将軍以下の軍隊を送り込み その任に当たらせた。「中華民国が与えられたのは,台湾開放だけの任務であった」のに,任務終了後当然のごとく引き上げずに居座っていた。 すでに当該時点から国民党政権が中国本土を追われることが予想あれたのだろう。果たせるかな,蒋介石指揮下の中華民国軍が国共内戦に敗れ, 台湾に逃げ込んだ。その台湾に逃げてきた中華民国の末裔である国民党が,半世紀近い圧政(戒厳令下の年月が38年)を行ない続けて来たのが実態である 11) 。 島民は,先ず1949年に中華民国軍が上陸してきた時に,編み笠をかぶり,天秤棒に鍋・釜と食糧を担ぎ,素足に草履履きの軍隊の進駐に仰天した。 国民党軍は,当時台湾人は日本語しか使われていなかったため,日本語のできる有能な官僚,経済人,教育者等を使って,
@ 中国語を公用語とすること,
A 国民党軍の指揮下に
進んで入ることを指導させた。その際に,逃げ込んで来ただ中国人が世界一般の例に倣うならば,島民の宣撫に協力した有能な人々を指導的な地位に つけたであろう。しかしそうではなく,むごたらしい中国伝来の方法で殺害し去った。これが「228事件」であり,2万人以上の要人が言語を絶する むごい方法で殺された 12))。
 台湾島民は,この国民党の圧政から逃れるために独立を目指し続け,蒋介石の伜である蒋経国が死去し,島民である李登輝氏が相当になった時代に続いて, ようやく支持していた民進党の時代を迎え,立法院での多数及び総統を8年間に亘って確保し,自由民主を定着させようとした。しかし,2008年 1月の立法院,3月の総統選挙で,追われたことを忘却の彼方とし,完全に中国に飲み込まれてしまっている国民党に大差で敗れ,馬英九総統の時代 にしてしまった。そのため目下中国の意に従って,例えば一時期切手に台湾名を記したのを捨て,次第に合併の方向に進むであろうことが懸念される。 その際,台湾の要人は皆殺しに会うだろう。ここにも中国の遠大な国家戦略が顔を覗かせている。
 蒋介石に従って中国から来た外省人の子孫は別として,旧来からの台湾の人々は,日本人に帰化したいという人々がいるのに,中華人民共和国が 国連に加盟する際の不手際で中華民国は除外された。その影響で,日本は中華民国(現実は台湾)と国交を断絶したままである。このように日本には, 中国の戦略に立ち撃ちできる戦略が無く,この事態を見過ごし,将来中国が半ば公然と主張している,「日本も中国の1省となる危険性」を秘めながら ,その脅威を見過ごして恥じない。この脳天気の日本では,政治家以下かかる中国の戦略に関する情報を把握し,この危機を乗り越えようと する意識が欠けている。
 繰り返すが中国人は,4千年の歴史の間の国内戦における殺戮や虐殺等,政権交代(革命)の過程で培われてきた人命軽視の思想に基づき, 特に戦時の不衛生下での疫病,戦いに招集された農民の戦死及び病死のため及び自然災害による飢饉等々を繰り返し経験してきた。従って 中国本土に漢民族を主体とする人々は住み、活動してきたが,現在の中国は,中華人民共和国の60年の歴史しかないと考えるのが当然ではないだろうか。 かように中国は,「人道」と言う文字が意味をなさない,唯我独尊で人の命を軽視する思想が染み付いている民族であるといっても過言ではない。
 中国は,この人命を軽視する歴史的伝統を墨守する一方で,世界の中心だという中華思想に基づく長期的な国家戦略を保持し,それに基づいて 国家を運営している。即ち,人命を犠牲にして国益を守らせつつ国家を発展させ,先ずアジア,そして最終的には世界の覇権国家を追求する方向を 変えることは無いであろう。

(3)中国核兵器開発・保有の経緯と現況

 このような過程を経て核兵器及び関連する最新兵器を保有するに至った中華人民共和国は,現在国連の常任理事国となり, しかも「核5大国(P-5)の一つ」となった。中国の核兵器の保有数は,トップシークレットであり,共産党と軍のトップにしか知らされていない。 中国が公表しないことから信頼し確信がもてる資料は少ない。しかし,信頼できる一例として世界的な機関の公表資料を示すと「第1表」のように予想されている。
 ここで,中国が核兵器を保有するに至った経緯を簡単に振り返っておく。先に第1項で述べたように,毛沢東は核保有に国運を賭けた 13) 。 中国の核に対する基本的態度は,政治・軍事面では,次の3項目の成果を持って,国際的には威信の高揚,国内的には軍に対する 国民の信頼確保を目的としている。
@ 核を外交の切り札として位置づけ,それをバックにして対外関係の向上を図る
A 核報復能力を維持・確保し,アジアの核大国の地位を確保する
B 核を保有する唯一の開発途上国として,他の核大国の核独占を打破する
そして経済面では,次の2項目を達成しつつある。
@ 得られた成果を他の産業へ波及させる。その最たるものが,ミサイル開発と併用した宇宙開発である。この成果として, 平和目的を標榜して陸地の測量,偵察目的等の宇宙衛星を打ち上げはもとよりし,有人衛星を撃ちあげることにも成功している。 A さらにそれらの成果を利用して衛星から発射するミサイルで飛行中の他国の衛星を破壊するレベルに到達して世界に脅威を撒き散らしている。
 核関連の施設は,第1項で述べたように,その主たるものは今回の地震発生地域である四川省を中心とする内陸部の地下におき, さらにその内陸西方にロプノール核実験場をおいている。本年8月14日は,平和の祭典である「北京オリンピック」の7日目であった。 思い起こせば1964年東京オリンピックの7日目の10月16日は,中国が最初の核実験を行い成功したと発表した日であった 14)
 当時何故この日本での平和の祭典であるオリンピック期間に公表したのか。多分,中国の日本に対する心理的攻勢であったと感じたのは 筆者だけではなかったと思う。
第2表 戦術核兵器の数,形式,投射システム等
保有国 形式 初展開 射程/km 弾頭/出力 弾頭数 展開場所
米国 B-61 1979 0.3〜170kt 650 本土,ヨーロッパ150
W80- 1984 2,500 5&150kt 320 本土,貯蔵中
ロシア 地上防空(1,500),航空(3,500),海上(3,400) 8,400 本土,1999.貯蔵中
ABM(100)SAM(1,100),航空機(1,600)海上(航空機,ASW,計1,200) 4,000 展開中(空軍機400,海軍機140,海軍艦艇800
中国 砲弾,短ミサイル(120),航空(,400km)地上ミサイル(36,1,800km)海軍(12,1,700) 198 展開,貯蔵の区分は不明
英国 戦略SLBM(160),爆弾(20) 180 近年180発を退役
仏国 ミラージ弾頭(60),SLBM( 380) 400 公式区分の戦術核無し
印度 弾頭数不明,可能な投射システム数345基存在 345? 1システム1発として
パキスタン 弾頭数不明,可能な投射システム数 92基存在 92? 同上
イスラエル 明確な弾頭数は不明,但し上限355発と推定 355? かなり確度は高い
注;15)
 中国の核戦力は,「三元核戦略」と称し地上,海上及爆撃機で構成されている。最初は有人爆撃機 への搭載から開始されたのであった。かかる中国の国家戦略に基づき,今回大地震が起きた四川省と その周辺地域へは,外国人記者,救援隊等の立ち入りを制限していたのである。
 その上に中国は,核関連器材及び技術を主として開発途上の独裁国家に輸出している。その主なもの を列挙すると次の「第2表」の通りである 16))。中国が核不拡散条約に加盟したのは,'92年3月 である。それまでの間,「核拡散を支持しているのではない。核不拡散条約の規定に反する行動はして いない」と称していた。しかし条約加盟後も裏で何をしているか解らない無法者国家である。
第3表  中国の核戦力発達の経緯の概況
@ 1981年 南アフリカに核兵器開発用の濃縮ウランを輸出
A 1982年から87年にかけてインドにプルツニューム生産用の重水を売却し,インドの核兵器開発(1947年7月第1回核実験(10〜15キロトン) を促進させた
B 1983年〜86年にかけてパキスタンに核兵器の設計図,核兵器用ウラニューム及び水爆楊のトリチュウム などを売却
C 1991年からアルジェリアに対して核兵器開発用と見られる重水炉の建設を資材面 で支援@ 
D 1991年8月シリアに対して射程300Kmの核弾頭搭載可能なM-11ミサイルを輸出 1991年10月にイランに対しても,核関連物質を輸出 等々核拡散に貢献して来た。  
  注:各種資料を総合記述

(4)中国の真の核兵器メッカが四川省周辺

 繰り返し述べるが,四川省とその周辺は,1960年代から国防上の最重要地区に指定されている。 その内容は,第4表に示すように中国のロスアラモスと呼ばれる核関連施設の集中地域だからである 。これは毛沢東が,当時圧倒的優位にあったアメリカ及びソ連から徹底した核攻撃を受けても中国が生 き残るために,軍事上の重要基地や施設を沿岸部から内陸部に移すことを目的とした「三線建設」の 中心が,第4表に示すよおうに,四川省であったことは明白である 17))。
 「三線建設」とは,沿海部と国境地帯を「一線」,沿海と内陸の中間を「二線」とする国防上の地域指定 である。
第4表 中国の核開発のメッカの状況
@ 廣元市北東25キロ中国最大の核兵器用プルトニューム製造用原子炉と821工廠がある
A 綿陽市は,核兵器の開発,特に構造設計最重要研究所と,実験用の小型原子炉がある
B 綿陽市の北にはプルトニュームを核弾頭用の小型の球体にする特殊工場がある
C 綿陽市の西に,核弾頭爆発を補強する素粒子開発用特殊の高速度爆発原子炉がある 
D 綿陽市の北の険しい山岳地帯に核兵器を貯蔵の大規模な秘密トンネル網が存在する
  注:各種資料を総合記述
 従って四川省周辺には,民間の原子力発電(原発)施設もあるが,中国初の核実験に貢献した 中国工程物理研究院や,ミサイルの核弾頭を製造しているとされる821工場(暗号名)等 が集まっている。アメリカの核問題専門家の記述及び各種新聞の資料並びに雑誌 「選択7,8月号」等の情報を総合し,筆者の懸念を表明したい。アメリカは,四川省周辺に 次の5つの施設が存在することを掌握しているという。
 さらに地震直後に,前国家核安全局長で,環境保護部副部長であった李幹傑が,第5表に示す 核施設及び軍事施設を訪問したという情報もある 18) 。第4表と比較考察できる上に,暗号と 思しき施設名が記されていることから,将来役に立つ情報だと考えるので第4表とは別に第5表 として入手できた全ての資料を記述しておくこととする。第4表と第5表を比較すると,かなりの 差がある。
 地下に建設されていた,核兵器生産施設又は原子力施設が爆発したのであれば,関係する要人が それら施設を視察するのは当然であろう。如何に隠そうとしても断片情報として拡散する。 それらを総合すると,最終的には全ての実態に関する情報が明らかになるであろう。 しかし繰り返すが,中国では核兵器に関する実態は国機密なので主体的に公表はしないはずである 。日本の中越沖地震でも,柏崎原発に大きな被害が出た。今回中国四川省中心の地震は, 中越沖地震の震度を大きく上回る地震であることから,当然中国の地下に構築された核関連施設にも 多大な被害が出ていると予想せざるを得ない。
前国家核安全局長で,環境保護部副部長であった李幹傑が訪問したという施設
* 821場:四川省廣元県西北部にある
* 白龍江核基地:核弾頭を生産し,中国最大の核反応炉の製造,プルトニュームの主張生産メーカー,従業員3万人
* 221場:中国最初の核兵器研究基地。1964年最初の核爆弾を開発,青海省から四川省錦陽の西南物理研究院に移動
* 525場:蛾眉機器製造工場
* 814場:中国3番目の原子力生産企業で,重水工場もある。従業員4万人
* 857場:四川省香江油市に位置。中性子爆弾を製造814場:中国3番目の原子力生産企業で,重水工場もある。従業員4万人
* 四川省宇宙開発技術研究院:中国の宇宙開発科学技術集団公司に属し,宇宙開発製粉の生産及び新兵器開発生産基地
総装備部中国空気動力発展研究センター:本部は錦陽市に位置し各研究所は安県の各地に分散(以上,)
  注:各種資料を総合記述
 しかしその一方で,毛沢東の言にもあるように,外から徹底的な核攻撃を受けても生き残らせて反撃 の基地とするために,建築に当たって核関係の施設には本当に十二分な強度を持たせたことによって, 大災害は免れていると考えることもできる。もしそうなら,中国の報道のように被害が極めて少ない のかもしれない。しかし,断片的に報道された写真に,山の大きな部分が崩落しているものがある 20)。被害の有無に関する実態が明らか になるのを全世界の核関係者は見守っている。しかし実態が判明するまでには相当の時間が必要か, 期待に反して公表されないかもしれない。
 しかも中国は,その西方に存在する高山岳地帯のチベットに核廃棄物貯蔵施設を建設しているという 情報がある 21) 。もしそうであれば,中国はひた隠しにしているが,今回の地震で破壊された 核廃棄物施設からの放射能汚染物質が,アジアの下流地域に住む多くの国々の人々の使う水, 特に飲料水を汚染し,癌の発生,放射線障害の増大等の重大な被害が発生させることを懸念しているのは 筆者だけではないはずである。
 戦略に長けた中国は,今回の地震による核関連施設の被害が世界的レベルで懸念が示されているので, 先手を打って周生賢環境保護相がほんの一部の情報を総てであるかのように開示したと見る。 その内容は,「地震で32個,(5月23日の資料では50個)の放射性物質がガレキの下に埋もれていた がそのうち30個を回収し,残りの2個,(5月23日の資料では15個)について回収されていないが 場所は特定できている」 22)と発表した。これは,知識のない中国国民に対する言訳的な報道に 過ぎない。筆者の予想では,この32個又は50個は,放射性物質というだけで何であるかは如何ようにも 解釈できる。ここにいう地下から噴出したという放射性物質は,最悪の場合は核兵器 そのものかもしれない。
第5図 放射能防護衣を着て作業準備する軍人達 
注:四川省山間部で,防護衣を着た軍人達が一般人をチ被けずに防護処理をしていたと考えられる。米流辞表:2008.05.13
 何故かというと,四川省周辺の核施設は,大断層地帯の地下に埋設設置されていた。それらの施設が,今回の 地震で次々と誘爆したとも考えられるからである。山頂に穴が開いて,幅約1km,長さ約2kmの巨大な溝ができ,地下から直径 20cmから50cmのコンクリートの塊が大量に噴出した 23)とも報じられている。
 さらに,現地住民の証言によれば,地震発生直後に氵文川県で起こった軍事施設の爆発が核爆発であることが懸念される。もし核爆発だった とすれば,大きな「きのこ雲」が観測されていないことが不思議である。しかし,震源地から南西方面の山中に通じる主要道路は封鎖され, 半径数百キロ圏内への立ち入り禁止が禁止され,山に入る多数の車両に,第5図に示す白い防護服(放射能防護服:筆者注)を着た人々の姿を目撃したという。
現地で救援に当たった人々は,公表された談話等とは異なって,「震源地付近の救援隊は中国軍部隊だけで,国外と民間の救助隊は, 現地に近づくのを禁止されていた」 24)と述べられている。しかも,現地周辺に大きな穴を掘り,特殊な袋に包んだ大量の 死者を並べその上に布をかけるのではなく,鉄板やトタン板等の金属製のものが架けられていると見られる写真(例第2図)が公表されている。
 これは,現地の核施設で働いていた人々で,さらに不思議なことは,現地周辺の駐屯地の部隊が救助作業に登場せず,遠隔地から来た部隊が救助を担当していたという。 これは周辺地域の部隊は,爆発の被害や放射線障害等のために救助に向うことができず,隔離されていたとも考えられる。しかし,直接ではなくとも 各国の救援隊や記者が入っている状況下,すべての情報を隠し続けていれば,近い将来現況を知ったいずれかの国の救援隊員や記者たちから,中国の核に 関する被害の真の情報が漏れ出す可能性がある。
第6図 防護衣を着て死者を運ぶ隊員達 米流辞表:08.05.13 
注:担がれている遺体は,放射能被害を受けた学者か技術者と思われる。
今回の中国による一部の情報開示は,そうなったら後々世界的な大問題となり非難が集中すると認識したためであろう。いずれにしても以前から中国の 核関連施設については,施設建設が杜撰であっために,中国は極力秘匿したであろうが,施設及び機器の損傷による放射能漏れの疑惑に関する情報が流れ て来ていた。今回内部で働いていた人達が志望した。第6図は,防護衣を着けて放射能の強い地域で死亡した 要人を運び出す状況を示していると判断される。

(4)現況及び将来における中国の核に関する対応

 入手し得た中国の核戦力に関する情報(アメリカの「国策評価研究センター」フィッシャー副所長の情報)及び雑誌「選択」の8月号 25) の資料を主体に, 筆者のコメントを付けつつ列挙し,皆様の中国の核についての判断の参考に供することとする。
@ チベット亡命政府情報・国際関係省環境開発部によれば,中国はチベットに核廃棄物の投棄施設を作っている。これに対してチベットは,世界の峰にある チベットに核廃棄物を投棄し続ければ雪解け水に乗って世界中が放射能に汚染されると危惧している。このことは,ダライ・ラマ14世が1987年9月 にアメリカ議会において チベットの治世について「5項目の平和プラン」を提案し,次いで翌1988年に欧州議会で修正して述べた(ストラスブール提案)の5項目中の第4項目の 「チベットの自然環境の復元と保護」について訴えた中で,「中国がチベットを,核兵器の生産と核廃棄物処理場としての使用禁止」を強く訴えていることからも, 真実あること認められる 26)。 
A 2007年7月29日のワシンポストの記事によれば,オーストラリアに亡命した陳用林氏(37) がアメリカ議会で,「中国の核兵器の数はトップシークレットであり,軍と共産党のトップしか知らさ れていない。中国の核兵器は,「核子能源公司」という表向きは原子力発電所を建設し運営する会社で あるが,ミサイルなどの弾頭に搭載する核兵器も製造している(要旨)」という証言がある。
 陳用林氏は,さらに対米戦略として,ケ小平が「実力を隠し,時間を稼ぐ」方針を堅持し,西側諸国, 特に米国を想定した核兵器部隊を建設せよ」と指示したと述べている )。
B さらにフィッシャー氏は,中国の核関連施設は,すべて極秘にされる存在だから,地震被害の 実態は重大な機密扱いになる。だから表面に出た情報だけで即断するのは禁物であると述べている。
 いずれにしても,一例として掲げた第1表が示すように,中国が198発以上の核兵器を保有するに必要な 核物質の収集・精錬と弾殻を製造するに足る施設及び核弾頭を備蓄し保有していることを無視することは できない。さらに2004年の時点で,402発の核兵器を保有していた 28)と述べている資料もあるので念の ため。
 さて次に,現在世界は地球温暖化防止と,原油の価格高騰,新興国の経済発展のために,炭酸ガスを 発生する化石燃料から他のエネルギーによる発電に移行しようとする方向にある。しかし,水力,風力,太陽熱 等による発電では,不足分及び新たな増大分を賄いきれない。そのため,原子力発電が見直される 「原発ルネッサンス」と呼ばれる方向にある。中国もこの傾向に従い,これも幾つかの資料があり, 数はまちまちでるが,その一つの数として2030年までに100万kw級原子力発電施設約30基の建設を 見込んでいるといわれる。

3 日本に望まれる対応

 中国が,原子力発電施設を増加させる計画に異を唱えることは出来ない。しかしもし事故が起これば, 死の灰が必ず偏西風にのって日本に運ばれてくる。ちなみにロシアは,2030年までに40基を計画している。 原子力発電所の災害は,「冷たい原子爆弾の破裂」だといわれている。日本は,自らも原子力発電への移行を計画・実施しつつ, 共産党政権のためには形振り構わない中国であることを念頭に,原子力発電所増設による災害の発生に備え,直ちに徹底した 防護準備に取り掛かることが必要である。
 中国地震局によると,四川大地震の被災地で,8月25日に至ってもM 6.1の地震があり,四川省広元市で 余震があり,それ以前の7月24日にも余震が続き一人死亡,15人負傷と報道されている )。 その余震だけでも一人が死亡し,300人以上が負傷,7万戸以上の家屋が倒壊したと報道された。 大地震の後には,大きな余震が続くのが実態である,その一つについて被害を報じたのだと 見ることができる。余震が発生するたびに被害をさらに大きくするのが大地震後の実態である。
 今回の中国の地震では,余震が数百回に上ったという報道もある。
 町村官房長官は,28日の記者会見で,日本は3機のC-1300自衛隊機に主として無償供与する天幕を 積んで派遣することを検討していると発表した )。しかし30日の朝になって,中国が自衛機の入国に 疑念を表示し,日本国内では天幕が武器に相当するとの見解が出され支援は棚上げになった。 その背後には,衝突する両国の国民感情と,中国の諺にある「近攻遠交」の思想が垣間見える。
 これは日本からの,@ 緊急援助隊の派遣,A 医師団の派遣に次ぐ提案処置であった。 @の部隊については,生存者がおりそうな緊要の場での活動を許されなかったために生存者の救出は できず,早々に引き上げさせられた。A の医療チームも被災現地から遠い病院での活動の任務を与えら れる等疎外されていたことは,皆様も承知のことと思う。それなのに日本は,何故断られることが予想 された自衛隊部隊の派遣まで考えるのか・・・。かかる情勢に帰着するのは全く情勢認識が不十分で 戦略のない国家だからだと考えるのは筆者だけではないだろう。
 四川省大地震及びサミットに先立って胡錦濤国家主席の訪日を受け入れたばかりである。それら会合 の際に出された共同声明には,チベット問題も,拉致問題も,人権問題も,台湾問題も,北方4島の 問題も,日中戦後処 理の問題も含まれていない。前の福田首相は,前々小泉首相と異なって靖国参拝をしないと中国側に 大きく譲歩し,現実に参拝しなかった 31)。中国に全面的に追随する態度を示している。桜井よしこさん は,中国のチベット政策に対して,「文化の虐殺」と非難しているが,全くその通りである。 中台湾関係では,新たな国民党馬英九総統の下で,中国に吸収される方向で推移する可能性が濃厚になり つつある。そうすれば台湾海峡は中国の内海になり,日本の海上交通が大きく阻害されるのを 初めとし,次には沖縄,されに九州が狙われる可能性が高い。国家関係には, 過去にさかのぼればいくらでも勝手な主張が出来る要素を抱えている。 日本が毅然たる態度で対応しなければ,将来の日中関係は日本にとって極めて困難になる。 場合によっては,日本が中国の一部に併合されることも懸念される。

まとめ

 国際社会が挙げて,その一員である中国で起こった四川省大地震に対して全面的な救済支援を提供しよう としたことは,極めて望ましいことであった。しかし中国は素直に受け入れなかった。日本は, 現下のロシア,中国,北朝鮮という核兵器国に囲まれていることを念頭におくならば,国民の 福祉・生存を最終目的とするが,その前に徹底して国の安全保障を考え,国力,特に核兵器を はじめとする大量破壊兵器を含む軍事力のあるべき姿を真剣に検討し,先ずアメリカとの2極, 次いで世界の安定を考えなければならない。現在世界は、物質文明の向上に血道を上げているが, 世界の人口が限界に達しようとする今日,日本本来の精神文明の拡散を目指し,諸国民を納得させ, 人類の繁栄継続を図らなければならないと考える。そのため,世界覇権を目指す中国に諂い屈して行 くべきではない。
 特に中国は,先に述べたように温暖化防止を考慮したクリーンエネルギー確保のために, 数10基〜100基の原発を増設しようとし,それに加えて「トリウム溶融発電システム」の導入を国家プロジェクトと して推進する方向にある。日本も原発ゼロという科学技術の進展を無視する誤った方向に梶を切ることなく,真剣に 開発・設置を追求すべき時代に突入している。日本が原発ゼロを目指す結果として,もし中国で原発事故が起これば 「死の灰」は偏西風に乗って日本に降下してくる。原発の廃炉に加え,中国からの死の灰が大量に押し寄せてきたら、 その対策という巨大なマイナス予算をつぎ込まなければならない。平成30年に原発をゼロ(0)にすることを唱う前に 中国の実情を,厳しく自覚した対応を検討して行くことが不可欠である。
 今回日本でも岩手・宮城。福島県で大地震が起こったが,中国からはお涙的な支援しか受けていない。 それなのに日本は,ODA予算をつぎ込み一方的に中国の支援を行なって来た。有史以来の中華思想が DNAにまで染み付いている中国は,中華思想に基づき朝貢(支援)を受けるのは当然で,他国を支援し ようという発想は起こらない国なのである。今回述べようとして四川省周辺地震に関連ある最新の 核兵器関連情報を披露して来た。日本国民の冷静な判断を仰ぎ,断固として国益を思う国家に変身することを願いたいと考える。
 はじめにで述べたように,今人類は地球上で有史以来の活動の結果として,美しい自然環境を 急激に変質化させてしまっている。日本は,すでに起こった東日本大震災を初めとする地震の被害を 教訓として,発生が近いといわれている東海地震,東南海地震に対して真剣に備えなければならない。 特に,世界唯一の核被曝国であるという事実を単なる一国平和主義といわれるマイナスのお題目として 唱えるのを止め,核保有国のアメリカ,ロシア,イギリス,フランス,中国というP-5  諸国及びインド,パキスタン,北朝鮮及び公表されていないイスラエルの核脅威下にあることを改めて 想起し,国民保護法を活かす抑止力の基本である個人の防護装備であるマスク,集団防護装備である 防護シェルターの建設から徹底した防護準備を開始することが不可欠である。現中国政府にとっての 最大の問題は,現況に対する不満が内陸部だけでなく都市の労働者にも拡散してきており, 早晩ソ連が崩壊したような崩壊に向けて進んでいることを信じ真の世界平和に貢献してゆくことが日本の 人類に対する使命である。
 以上述べてきた用に,中国は四川省の核施設復旧に国力を傾注し,速やかに核兵器の分野ので対米対等 を現出するために実態を隠しつつ旧態に回復し、さらに進展させることに腐心している。実態隠しのため 中国は,対北朝鮮核問題協議システムである6カ国協議の議長国として,会議進展の断続,会議の中断等 を北朝鮮に指示しつつ,関心を北朝鮮の核問題に引きつけ、世界の眼をそちらに誘導している。 中国公安部の統計によれば,「公秩序の混乱(陳情から抗議デモ,ピケ,暴動を含む中国の官僚用語) は,’93年8,700件,’03年58,000件,’05年87,000件と増加してきている。その後中国は,事態の 公表を拒否しているが、着実に増大していると判断する 32)
 表向き,平和への願いを具体化するという宇宙開発に世界の眼を引きつけつつ,大陸間弾道ミサイル (ICBM),潜水艦発射ミサイル(SLBM)の開発を達成しつつ,核弾頭数の革新的増強を図っ ているのが中国の現況であろうと考える。尖閣諸島は日本の領土だと認識しつつ漁船団を偽装した軍艦 を派遣して,日本を初めとする世界の注視をこの事象にも引きつけているのだと筆者は考える。
 以上に加えて,最新の情報として,次のことを明示しておくことが不可欠と考える。法輪功系の 新聞大紀元時報の7月9日紙によれば,中国共産党の指導層の数は,香港・マカオを含めて1 08万人という。そのうち,中国共産党本部中南海の要人(中国語:知情官員)は8名。彼らを含め要人 たちは,「オリンピック終了まで持ち続けよ」と,国民に株と住宅の保持を続けるよう強く アピールし続けてきた。その間に自分たちは,両品目を高値で売り抜き,総ての被害を貧しい国民に 押し付け,その大金を手に国家を放棄(棄船)して,諸外国に逃亡する計画を着々と進めている人達が 多いという 33)
 さらに先の中国オリンピックでは,当初4千万元の予算を組んだが,現実にはその40倍の経費が 掛ったという。 ここにも大きな大誤算があり,大赤字を将来に残す問題点を抱えつつも,指導部の要因は,中華人 民共和国の崩壊に備えて懐に入れた資金を海外の銀行に送っている。オリンピック予算のほとんどは, 日本からのODA予算だったといわれていたのだが・・・・。
 これが,中国大陸に4千年の歴史を刻んできた現在の中協政権が行なっている行動の実態である。 いずれにしても法輪功系の新聞,大紀元時報を信用するか否かが掛っているが, これが中国の現状であり,将来に大きな,そして日本に大きな被害が及ぶ問題点が時々刻々進呈している。 いずれにしても我々は,オリンピック後から一昨年の上海万博後までの中国情勢をベースに現況をつぶさに観察しつつ, それに的確に備える国家戦略体制を確立し,最小限の防護のための対処準備をしなければ日本の将来は危うい。

以上


*参考文献等
1) 「侵略と殺戮:真実の中国:真実の中国4000年史」杉山徹宋著 平成 16年9月5日 伝社 P-22
2) 大紀元時報―日本 http://dailinews.yahoo.co.jp/fc/world/si_chuan_earthqake/ 20.05.17
3) 「早く物資を」中国切実 朝日新聞朝刊 08年5月29日
4) 中国大地震と国家安全保障 佐藤守ブログ日記 5月14日 
   http://gsj.jp/jishin/china_085012/index.htm|
5) 涙が中国を変える日 ニューズ・ウイーク日本語版 5月28日号 P-18〜19
6) 今日は何の日」1964年:中国初の核実験:
     http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=1016&f=column_1016_001.shtm|
7) 四川省地震で懸念される各施設の実態:大紀元時報5月28日
8) ワールド・ウオッチング 四川省大地震 Fhuji SankeiBusiness i.  2008.5.19
9) ワシントンの中国軍事動向研究機関 「国際評価戦略センター」 研究員 http://nikkeibp
10) 「侵略と殺戮:真実の中国4000年史」 杉山徹宋著 平成9月5日 伝社 P-119,212
11) 2・28事件起こる 「非情山地」林 彦卿著 2002年4月刊 先鋒電脳排版印刷有限公司 P-159
12) 解説:228事件 李筱峰著 石栄尭訳 奇美文化基金会贈呈(日本語版)P-27〜50
13) 中国の核兵器 自衛隊統幕 ブリーフィング資料 岡田佐 1992年6月11日
14) 1, 大紀元時報―日本 http://jp.epochtimes.com/jp/2008/05/html/d86508.htm|
   2, 中国の初核実験 http://blog.canpan.info/fikiura/archive/3553
15) Tactical Nuclear Weapons, Options for Control. by William C. Potter,  etc. UNIDIR Geneva, Switzerland P-51〜77から作成
16) 中国の核兵器 自衛隊統幕2室 岡田2佐 1992年6月11日 P-6,7
17) 四川大地震の震源地近くに核兵器製造基地が集中:
http://www.nikkeibp 2008.05.21
18) 1, 四川省大地震における各核施設の震度 http:Tibet.liriganne/tibetnuclear2.htm| 5月16日
   2, 大紀元時報―日本 http://jp.epochtimes.com/jp/2008/05/html/d86508.htm|
19) 1, 大紀元―日本 http://mblog.excite.co.jp/user/beiryu2/detail/?id=8048048 5月28日号に記載
   2, 同 27
20) 米流時評:ついに解けた核の謎:四川省の核兵器開発施設 http://beiryu2.exblog.jp/8024225/
21) 1, 放射性物質32個が下敷きに 四川省大地震 2008.5.21http://sannkei.jp
    msn.com/world/china/080520/chn0805201327010-n1.htm
   2, 北京日共同 http://tibet.turigane.com/tibetnucleare12.htm
22) 同13 P-3
23) 四川大地震,断層のズレ250km,破壊力「阪神」の30倍 YOMIURI ONLINE 5月14日
24) そうなのか:四川省大地震:被災地への核施設の影響
      http://huhcanitbetrue.blogspot.com/2008/05/blog-post_368.htm|
25) 中国の「地方」は当地不能の様相.雑誌「選択」8月号 P-34〜35 選択出版
26) 中国が隠し続けるチベットの真実: ペマ・ギャルポ著 扶桑社 2008年6月1日
27) 核の世界地図 浅井信雄監修 2008年8月10日 P-65
28) 中国,米国を想定した核兵器部隊を建設中 大紀元時報―日本
   http://www.epochtimes.jp/jp/2005/08/htm/d89494.htm|
29) 四川省地震特集 YomiuriOnline 読売新聞 7月24日 20:23等
30) 中国での支援物資輸送,中国の要請を受け検討中に始める一連の報道 Yomiuri Online  読売新聞 5月28日,29日,30日
31) 福田首相,靖国参拝見送り http://blog.livedoor.jp/yswebsite/archives/52108022.html
32) ニューズ・ウイーク日本語版8月27日 P-19
33) 知情官員「棄船」逃亡 股市暴跌 大紀元時報 7月9日