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5・ 世界各国(周辺国を除く)

5・1 米 国

5・1・1 基本政策

5・1・1・1 国防の方針

5・1・1・1・1 国家安全保障戦略 (NSS)

 米大統領府が10月12日、バイデン政権の外交・安全保障政策の指針となる国家安全保障戦略 (NSS)を公表した。
 NSSでは中国を国際秩序を変える意図と能力を高めている唯一の競争相手と位置づけ、効果的に競争すると表明し、ウクライナ侵攻を続けるロシアについては、国際秩序の基本法を無視し、自由で開かれた国際システムに対する直接的な脅威になっていると指摘して、抑制する方針を示した。 (2211-101301)
5・1・1・1・2 国家防衛戦略 (NDS)

 米国防総省が3月28日、バイデン政権で初となる国家防衛戦略 (NDS) の概要を発表した。
 戦域としてまずインド太平洋における中国への対応を優先し、続いてウクライナに侵攻したロシアの挑戦に対処する姿勢を明確にした。
 国防総省は同日、機密扱いの国家防衛戦略を議会に送達した。 機密扱いではない国家防衛戦略は近く公表する。
 今回初めて「核態勢見直し」 (NPR) と「ミサイル防衛見直し」 (MDR) を組み込む形で戦略見直しを総合的に実施した。
 トランプ前政権の2018 NDSでは中露2大国との紛争に同時に対処する従来の二正面作戦から、各地における脅威を抑止しつつ一大国の侵略に打ち勝つ構想へと修正したが、ヒックス国防副長官は同日の記者会見で、この路線を基本的に継続すると語った。 (2204-032913)

 米国防総省が10月27日、新たな国家防衛戦略 (NDS) を公表した。
 新NDSでは、ロシアと中国による脅威の強まりを理由に、核兵器の使用を限定してきた基準を一部放棄した。
 この基準は軍縮派やバイデン米大統領にもかつて支持されていた。
 NDSでは2030年までに、歴史上初めて核保有2ヵ国が米国の戦略的な競争相手および潜在的な敵対国になるだろうとで予想し、米国は対応として、核兵器を使用するハードルを非常に高く維持するとしつつ、米国本土および諸外国駐留米軍、あるいは同盟国に対する通常兵器による戦略的脅威に対し、報復として核兵器を使用する可能性を排除しなかった。
 バイデン大統領は2020年の選挙戦で、米国の核兵器使用は抑止目的、あるいは核攻撃に対する報復に限定するべきだと宣言し、民主党の進歩派の称賛を集めた一方、国防タカ派からは批判されていたが、軍事的な脅威を巡る状況は当時から様変わりした。 (2211-102802)

5・1・1・2 国防力の現状

Heritage 財団の評価

 米シンクタンクのHeritage財団が10月18日に発表した評価報告書「2023年米軍の軍事力指標」で、米陸海空軍と海兵隊、宇宙軍、核兵器などを総合評価した結果、軍の態勢が「弱い」状態だと評価した。
 同報告書はF-35の購入遅延や飛行訓練不足で米空軍の戦闘機と爆撃機の航空戦力が1980年代の4割水準に落ちたと指摘し、米空軍に対する評価を昨年の「弱い」から「非常に弱い」に引き下げた。 また、空軍史上最低レベルの準備態勢と指摘した。
 さらに、中国が艦隊を2005~2020年に216隻から360隻に増強したのに対し、米海軍の戦闘艦は291隻から296隻に5隻の増加にとどまったとし、態勢レベルを既存の「不十分」から「弱い」に下げた。 米陸軍は「不十分」、宇宙軍は「弱い」と評価された。
 核兵器については、「強い」に分類しながらも、「老朽化し、運搬システムと弾頭の信頼性が危険にさらされている」と警告した。
 同報告書は総合して「米軍は二正面で大規模戦争を同時に遂行するには力不足の状態にあり、確実な装備も備えていない」と強調した。 (2211-102106)

5・1・1・3 戦略の重点

米国防長官「前例のないアジアへのシフトを実行」

 オースティン米国防長官が12月3日にカリフォルニア州の会合で演説し、中国について「この数十年で軍が猛烈な勢いで近代化を進めている」と警戒感を示し、ロシアによるウクライナ侵略が続く中でも、中国への対処を重視する立場を改めて強調した。
 また「国防総省は、根本的で前例のないアジアへのシフトを実行している」とも語り、具体策として、インド太平洋地域における米軍の迅速な展開や、軍事、補給施設の建設などに重点的な投資を行っていると説明した。
 オースティン長官は、安全保障協力の枠組みAUKUSを構成する英豪の国防相とワシントンで近く会談し、極超音速兵器やAIなど先端技術分野の協力について協議するすることも明らかにした。
 協力の柱となる豪州の原子力潜水艦については、「できるだけ早期に実現するため、最善の道筋を描く」と述べた。 (2301-120407)

5・1・1・4 核 戦 略

米国、核政策維持へ

 米政府当局者らが3月24日、バイデン大統領が選挙期間中に掲げていた公約から距離を置き、政府が長年にわたり掲げてきた核兵器使用に関する従来の方針を踏襲すると明らかにした。
 これは、相手国の核使用のみならず通常攻撃や核以外の脅威に対しても、核兵器を使った報復の脅威を抑止力として活用するという方針である。
 バイデン大統領は2020年の大統領選で米国の核兵器保有について、敵対国による核攻撃の抑止を唯一の目的とする政策を目指すと公約していた。 (2204-032512)

5・1・1・5 経済安全保障

5・1・1・5・1 情報の保全

アリババ・クラウドサービスの調査

 ロイタ通信が1月18日、バイデン米政権が中国の電子商取引最大手アリババのクラウド事業に安全保障上の危険がないかどうかを調査していると報じた。
 結果によっては、米国人によるアリババのクラウドサービスの利用を禁止する可能性があるという。 (2202-011905)

5・1・1・5・2 軍事技術の保全

水陸両用小型飛行機メーカーの技術流出を防止

 中国企業による米新興航空機メーカーへの投資を巡り、米当局が調査を開始したことが明らかになった。
 対米外国投資委員会 (CFIUS) は昨年11月下旬に米株主から要請を受けてPDSTIの出資を巡る調査を開始した。
 CFIUSは米大統領に対し国家安全保障上の理由から取引の阻止や破棄を勧告する権限を持っている。
 調査の対象となっているのは、カリフォルニア州に拠点を置く娯楽用の水陸両用小型飛行機メーカーICON Aircraft社に対する中国政府系投資会社の上海浦東科技投資 (PDSTI) の出資で、同社はICON社の株式約47%を保有する筆頭株主となっている。
 ICON社の米国株主らは軍事転用が可能な同社の技術をPDSTIが移転したと主張している。 (2202-011903)

5・1・1・5・3 武器輸出政策

輸出額の大幅減少

 バイデン政権が2021年12月に発表した2021年に於けるFMS及びDCSによる武器等の輸出はそれぞれ$34.81Bと$103.4B、合わせて$138.21Bで、2020年の$50.78B/$124.3B合わせて$175.08Bにも、$55.4B/$114.7B、合わせて$170.1Bの2019年にも届いていない。 (2202-011810)

5・1・2 国防予算

5・1・2・1 FY 23 国防予算総額

 米国の予算協議に詳しい関係筋が、バイデン米大統領がFY23の国防予算として$770Bを超える額を議会に要請する見通しで、トランプ前大統領が求めた過去最大の予算を上回るとみられることを明らかにした。
 オースティン国防長官と大統領府行政管理予算局 (OMB) の協議で$770B超を要求する方向で一致したという。
 ただ、協議は政権内で継続中で、最終的な額は予算教書提出までの今後数ヵ月の間に変更される可能性もある。
 トランプ前大統領が任期最終年に求めた国防予算は$752.9Bで、その後、議会で$25B増額され、最終的にFY22の予算は$778Bになった。 (2203-021709)
5・1・2・2 FY23 NDAA

5・1・2・2・1 FY23 予算教書

 バイデン米大統領が3月28日、$5.79TのFY23予算教書を議会に提出した。
 国防関連予算は$800B超を要求し、うち国防総省向けは$773Bである。
 財政赤字は今年度$1.3T超減らし、FY22から半減させる見通しとし、富裕層や企業が公平なシェアを支払うことを確実にし、経済成長を支援することによって財政赤字をさらに圧縮すると言明した。 (2204-032905)

 米大統領府が3月28日、前年度比4%増の$773BのFY23国防予算要求を公表した。 FY22での増加率は3%以下であった。
 RD&E費は9.5%増の$130.1Bで、ハイパーソニック兵器の開発に$4.7B、マイクロエレクトロニクスと5Gに$3.3B、バイオテクノロジーに$1.3Bが計上されている。
 一方で空軍の航空機が150機除籍されると共にMQ-9 100機が他省庁に移管される。
 更に海軍では24隻が除籍され、そのうちの16隻はまだ耐用期限に至っていない。
 欧州抑止計画 (EDI) には$6.2B、ウクライナの支援には$300Mが計上され、インド太平洋軍のIPDIには$6.1Bが配分されている。 (2204-032901)

 米空軍省が3月28日に空軍で$169.5B、宇宙軍で$24.5BのFY23予算案を公表したが、空軍のFY22予算に比べて8%増ではあるが物価上昇率は2.2%と見積もられている。
 予算案では空軍と宇宙軍のRD&E経費をFY22の$40.1Bより増額した$49.2Bを要求している。
 予算案ではF-15EX調達のため一時的にF-35の調達を減速させるようになっている。 これについてケンドール空軍長官はF-15EX調達のキャンセルを提案したが空軍が押し切った。
 F-35Aの要求はFY22より15機少ない33機$4.5Bで、F-15EXにはFY22の2倍となる24機$1.4Bを有給している。
 一方空軍はFY23に269機を除籍する。 FY22では200機をモスボールとしていた。 (2204-032808)

5・1・2・2・2 議会が予算教書に増額

上下院軍事委員会の増額案

 米下院軍事委員会が6月22日、FY23国防予算の大枠を決めるFY23国防権限法案 (NDAA) の採決を行い、バイデン政権が要求した過去最大の$773Bに$37B増額する案を可決した。
 上院軍事委員会は既に大統領の要求額に対して$45B増額する法案を可決しており、少なくとも$810Bの予算が付く見通しとなった。
(2207-062308)

下院が大枠を$839.3Bと定めた国防権限法案 (FY23 NDAA) を可決

 米議会下院が7月14日、FY23国防予算の大枠を$839.3Bと定めた国防権限法案 (FY23 NDAA) を可決した。
 バイデン大統領は予算教書で$813.3Bを要求したが、物価上昇やウクライナ戦争の長期化などを受けて増額された。
 欧州でのロシアの脅威への対処に$4.6B、ウクライナ軍事支援では政府要求比で$700M増の$1B、インド太平洋での対中抑止構想 (IPDI) に$7B以上を投じるとした。
(2208-071509)

 米議会下院が7月14日、FY23国防予算の大枠を決める国防権限法案 (FY23 NDAA) の採決を行い、バイデン大統領が要求した過去最大の$773Bに$37B増額して$810Bとする案を賛成329票、反対101票で可決した。
 上院ではまだ承認されていないが、上院軍事委員会は大統領の要求額に対して$45B増額する法案を可決している。 (2208-071508)

上院民主党が$792Bの提案、共和党は不満

 米議会下院が1ヶ月前に国防総省の要求を4%上回る前年度比4.6%増のFY23国防費$761Bを公表したが、上院民主党は$792BのFY23国防予算案を提案した。
 ただ共和党はこの額に満足していない。
 上院の提案ではバイデン政権が要求しなかった洋上発射核CM (SLCM-N) に$25Mを割り当てている。
 下院ではNDAAで$45Mを割り当てているものの、歳出法案では歳出を認めない可能性がある。 (2208-072901)

5・1・2・2・3 FY23 NDAA

 米議会が12月6日公表した$858BのFY23国防権限法案 (NDAA) で、ウクライナにFY23に少なくとも$800Mの安全保障支援を行うほか、今後5年で最大$10Bを台湾に援助することで合意したことが判明した。
 全体の国防費はバイデン大統領の要求よりも$45B上積みし、ウクライナ支援は当初の要求より$500M増額している。
 また太平洋地域での抑止力強化に向け$11.5Bを投じることも盛り込んだ。
 NDAAは米国の国防予算の大枠を決めるもので、1961年以降、毎年可決しており、米軍兵士の賃上げ率から、艦船や航空機の購入数、中国やロシアへの対処方法まで、国防に関するあらゆる分野をカバーしている。
 FY23 NDAAは今月中に上院と下院を通過する見通しで、その後ホワイトハウスに送られ、バイデン大統領が署名した上で成立する。
 ただしNDAAは大枠を作決めるだけで、政府が連邦政府の資金を使う法的な権限を得るには、議会が歳出法案を可決する必要がある。
 議会指導部はまだ、FY23の歳出法案について合意していない。 (2301-120713)

 米議会下院が12月8日、国防費を$858BとしたFY23 NDAA案を350対80で可決した。
 これはバイデン大統領の提案を$45B上回った。 (2301-120910)

 バイデン米大統領が12月23日、FY23の国防予算の大枠を決める国防権限法 (NDAA) 案に署名し、同法は成立した。
 ただ、グアンタナモ米海軍基地に収容されている容疑者の訴追を妨げる可能性のある条項などについて懸念を表明し、特定の被拘束者を米国に移送するための資金の使用を禁じた条項について「こうした制限をできるだけ早く撤廃するよう議会に求める」とした。 (2301-122403)

5・1・2・2・4 FY23 歳出法成立

 29日にバイデン大統領の署名によって成立したFY23歳出法は10月から1年間の連邦政府の予算で$1.7T(225兆円)規模になり、$858Bの国防予算や$44.9Bのウクライナ支援に加え、低所得者向けの育児支援や半導体戦略などが盛り込まれている。
 ただ、1月からは議会が新体制となり、下院の主導権を握る共和党の協力が不可欠になることから、バイデン政権肝煎りの気候変動や社会保障政策の実現に向けた調整はさらに難航することが予想される。 (2301-123005)
5・1・3 対中戦略

5・1・3・1 対中姿勢

5・1・3・1・1 インド太平洋戦略

 米大統領府NSCが2月11日に新たなIndo-Pacific Strategyを発表した。
 新戦略では、中国がもたらす地域課題に対処するために、同盟国との軍事協力の強化と最新技術への投資を謳っている。 (2203-021110)

 米政府が2月11日にインド太平洋戦略を公表し、南アジアから太平洋島嶼国に至る同地域の隅々にまで焦点を当て、長期的な立場やコミットメントを確立して中国に対抗する姿勢を鮮明に打ち出した。
 12頁に及ぶ同戦略の概要 (Fact Sheet) によると、バイデン政権は、地域の同盟関係を近代化し、新たなパートナーシップを強化するとともに、地域組織に投資することを宣言し、特に地域ビジョンのパートナーとして「強いインド」の重要性を強調した。
 今後12~24ヵ月間の行動計画では米軍の駐留問題を巡る太平洋島嶼国との交渉にも優先的に取り組むことなどを掲げた。 (2203-021203)

 王毅中国外相が3月7日に行われた年次記者会見で、米国のアジア太平洋戦略の最終目標は、アジア版のNATOを構築することだと警戒感を示した。
 王毅外相は全人代で行った2時間に及ぶ演説でも、米国がアジアで同盟を強化しようとしていることを問題点の一つとして取り上げている。 (2204-030721)

5・1・3・1・2 対中認識

統ミリー合参謀議長の「中国軍は目に見えて攻撃的」発言

 AP通信などによると、インドネシアを訪問中の米統合参謀議長のミリー陸軍大将が7月24日、「インド太平洋地域において中国軍は海上と空中で目に見えて攻撃的になっている」と述べた。
 ミリー大将はこの日、中国の戦闘機や船舶が米国や同盟国の軍隊を妨害する危険な状況が引き続き増加しているとした上でこのように述べた。 (2208-072606)

中国の軍事動向に関する年次報告書

 米国防総省が11月29日に公表した中国の軍事動向に関する年次報告書で、企業が持つ高度な先端技術を中国軍が取り込み軍事力強化を図っていると指摘した。
 報告書は中国が軍と企業の融合を進め「高度なデュアルユース(軍民両用)技術の開発や取得」を行っていると強調し、中国軍が2021年にビッグデータやAIなどを用いて米軍の脆弱性を迅速に特定して、精密攻撃を加える新たな構想の検討を開始したとして牽制している。
 バイデン米政権は中国軍の技術力向上を強く警戒しており、高性能半導体の対中輸出を厳しく制限するなど強硬策に舵を切っている。 (2212-113001)

 米国防総省が11月29日に公表した中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国が保有する核弾頭の数は2035年までに現在の3倍強の1,500発に達する可能性があるとの予想を示した。
 報告書は、国防総省の推計では現在、中国が保有する運用可能な核弾頭は400発を超えており、現在のペースで核戦力の増強を続けた場合、2035年までに1,500発に達する公算が大きいとしている。 (2212-113006)

5・1・3・2 対中同盟

5・1・3・2・1 欧州と対中国包囲網

欧州での対露結束を生かし対中国包囲網も強化

 バイデン米大統領がロシアをめぐる欧州との固い結束を生かし、対中国包囲網も狭めた。 欧州と連携を深めるほど中国の意思決定に影響を及ぼしやすくなるとみる。
 中国は経済力を生かして米欧の分断を図るとみられ、結束の持続力がカギを握る。
 バイデン氏は25日、ポーランド南東部ジェシュフで米兵を前にウクライナをめぐり「民主主義と強権主義のどちらが勝利するかが問われている」と力説した。
 ロシアが勝利すれば強権主義が拡大する。
 中国の習国家主席から「民主主義は21世紀に成功しない」と告げられたと明かし、ロシアの勝利は中国も利すると懸念を強くにじませた。 (2204-032614)

5・1・3・2・2 アジア太平洋での対中国包囲網

 2023年に特筆すべき記事なし
5・1・3・3 経済戦略

5・1・3・3・1 経済競争

議会下院が America Competes Act を可決

 米議会下院が4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上を目指すAmerica Competes Actを賛成多数で可決した。
 America Competes Actは半導体の生産や研究開発に5年間で$52Bの補助金を投じることが柱になっている。
 これを受けてバイデン大統領は「下院は21世紀において中国や世界の国々との競争に打ち勝つための重要な投票を行った」と歓迎する声明を発表した。
 上院は2021年6月に中国に対抗するため半導体などの先端技術を強化する別の法案を可決しているため、法案を一本化したうえで上下両院で再可決し成立を目指す。 (2203-020504)

5・1・3・3・2 経済制裁

中国の12企業を貿易上の取引制限リストに追加

 米商務省が2021年11月24日、中国軍の技術開発やパキスタンの核装備に関連しているとして、中国の12企業を貿易上の取引制限リストであるEntity Listに追加した。
 これらの企業に対する軍民両用技術の輸出、再輸出、国内移送が禁止されることになる。 (2203-120803)

軍事企業への制裁

 米国が中国の軍事産業3社にミサイル技術を輸出したとして制裁を加えたことに対し、中国政府が抗議した。
 制裁の対象となったのはCASTC第1研究所、CASIC第4研究所、Poly社及びこれらの子会社で、これら企業はCM、特に核搭載可能なCMの技術を輸出したとされている。
 CASIC社はDefense Newsが発表した世界の軍事企業Top 100で11位に、CASTC社は18位に入っている。 (2202-012115)

ウイグル強制労働防止法の施行

 新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁止する米国の新法ウイグル強制労働防止法が21日に施行された。 禁輸は8年続く。
 新法は新疆で全部または一部が生産された製品の米国への輸入を原則禁止し、強制労働を利用した中国原産品や、第三国を経由した製品も禁輸対象に含める内容で、企業側は輸入品が強制労働とは無関係であることの立証責任を負うため、日本を含む世界の企業はサプライチェーンの末端まで点検を迫られる。
 人権侵害を理由に世界経済の脱中国依存を進めるのが狙いで中国は猛反発しており、制裁と報復の応酬に発展すれば影響が広がるのは必至だ。 (2207-062109)

5・1・3・3・3 技術保全

在米中国人研究者の排除

 ハーバード大学、プリンストン大学、マサチューセッツ工科大学の学者が共同で作成した報告書によると、米国の研究機関に所属していた1,400名以上の中国人研究者が中国の研究機関に移籍したという。
 この高い数字は、中国系の科学者による研究や学術活動を抑止する米国政府の政策に起因する萎縮効果を示しており、調査結果を発表した団体は米国の研究機関が苦しむ可能性があることを示唆していると述べた。 (2211-102005)

5・1・4 対露戦略

5・1・4・1 ウクライナ支援

5・1・4・1・1 安全保障協議

 ブリンケン米国務長官が1月9日に米TVに出演し、10日に行われる米露による安全保障協議で、ロシアが要求するNATOを拡大させないとの確約や、ロシアに近い地域への米軍配備の縮小は「交渉の議題にはならない」と明言し、安易な譲歩はしないとの姿勢を鮮明にさせた。
 ブリンケン長官はまた、ロシアがウクライナに対してさらなる攻勢に出た場合、経済や金融への制裁によって深刻な結果を招くことになると警告した。 (2202-011001)

 米露による戦略安保対話が1月10日にジュネーブで開催され、ウクライナを中心とする欧州の安全保障に関する協議が行われたが、双方の溝は埋まらず、ロシアは米国側が受け入れられないとする要求を改めて示した。
 ロシアはウクライナとの国境付近に軍隊を集結させる一方、米国が主導するNATOに対し旧ソ連構成国の加盟を承認しないよう求めている。 (2202-011102)

 米露が1月10日にウクライナ情勢をめぐる協議をジュネーブで開いた。
 7時間以上に及ぶ緊迫した協議では、ロシアがウクライナに侵攻する計画はないと明言し、米露両国は事態が全面的な対立に発展するのを防ぐための努力を強化することで合意した。
 ロシアは米国を含むNATO加盟国に幅広い譲歩を要求している。
 米露は互いに対話の継続を提案したが大きな進展はなかった。 (2202-011104)

5・1・4・1・2 対露経済制裁

ロシア向け技術輸出の制限

 米バイデン政権と同盟国が、ロシアのプーチン政権がウクライナを巡り軍事的な圧力を一段と強めた場合、一部技術や電子機器を含むロシアへの輸出制限の可能性について協議を進めていることを、協議に詳しい関係者1人が明らかにした。 (2202-010907)

米議会の対露経済制裁

 米上院民主党が1月12日、ロシア政府によるウクライナへの敵対行為が起きた場合、プーチン大統領を含むロシアの政府や軍の高官と主要な金融機関などに大規模な制裁措置を講じる法案を発表した。
 この法案にはウクライナの安全保障を強化する条項が含まれ、Nordo Streen 2が稼働しないよう米国が利用可能で適切なあらゆる手段を検討することを促している。
 上院外交委員会委員長の報道官によると、この法案には上院民主党トップのシューマー院内総務ら20人を超える民主党員が賛同していて、米大統領府も支持している。
 この法案は、銀行が他の金融機関と重要な情報を交換する際に使用する国際銀行間通信協会 (SWIFT) などの堅牢な通信システムを提供するロシア国内の企業も対象としている。 (2202-011302)

5・1・4・1・3 核兵器投入を警告

 複数の米政府当局者が9月24日までに、米国が過去数ヵ月間ロシアに対し非公式の接触を通じて、ウクライナに核兵器を使った場合、相応の結果を招くと警告してきたことを明らかにした。
 この接触手段の詳細や警告した時期などは明らかにしていないが、米政府当局者は米国務省が関与していることは認めた。
 バイデン米政権は、ウクライナ侵攻に備えた兵力集積や侵攻開始の時期に情報機関を通じて機微に触れるメッセージを伝えてきてもいた。 (2210-092405)
5・1・4・2 外交関係の縮小

外交官ビザの発給制限

 ロシア通信 (RIA) がアントノフ駐米露大使は12月9日、査証(ビザ)発給制限のため更に30人の大使館職員が1月1日に米国を離れなければならないと述べたと報じた。 (2301-121002)

5・1・5 対北朝鮮戦略

5・1・5・1 制裁の強化

ミサイル開発への制裁

 米財務省が1月12日、北朝鮮の大量破壊兵器やBM開発に関わったとして、北朝鮮国籍の個人5人に制裁を科したと発表した。 5人はロシアや中国で貿易や資材調達を担当した。
 米政府は12日、5人とは別に北朝鮮の大量破壊兵器などの拡散に関わったとして北朝鮮国籍の個人1人とロシア国籍の1人、ロシアの1団体も制裁対象に加えた。 (2202-011303)

5・1・5・2 ミサイル発射等への対応

 北朝鮮がICBMを含むBM 3発を発射した5月25日に米空軍のB-52HやRC-135S Cobra Ballが日本の上空を飛行していたことが、航空機の航路を追跡するウェブサイトFlight Radar 24のデータから分かった。
 それによるとB-52Hは25日午後に日本列島東側の海岸線を沿うように飛行した後、同サイトの地図上から消えた。 (2206-052512)
5・1・6 各軍の戦略戦術

5・1・6・1 宇 宙 軍

 2023年に特筆すべき記事なし
5・1・6・2 陸 軍

5・1・6・2・1 研究開発機能

TRADOC から AFC へ

 米陸軍報道官が、TRADOCの研究機能が2021年10月1日にAFCに移管されたことをInside Defenseへのe-mailで1月中旬に明らかにした。
 AFCは既に2020年11月以来、研究機能の統制を行ってきているという。 (a href=AD2022-10.html#2202-011912>2202-011912)

5・1・6・2・2 Field Manual 3.0 Oct. 10

 米陸軍参謀総長のマッコンビル大将が10月11日に米陸軍協会 (AUSA) の年次会議で、今後2030年までを見据えて米地上軍の作戦ドクトリンを改定したと発表した。
 新たなドクトリンはField Manual 3.0 Oct. 10と題されている。 (a href=AD2022-10.html#2211-101128>2211-101128)
5・1・6・2・3 MDTF (Multi-Domain Task Force) の編成

FY23予算に第3 MDTF の編成を要求

 米陸軍がFY23予算に、3番目のMDTF編成に$178Bを要求している。
 第3MDTFは、2017年にワシントン州、2021年9月に欧州に編成された2個MDTFと似た編成になるが配置場所はまだ決まっていないという。 (a href=AD2022-10.html#2204-033118>2204-033118)

第3 MDTF が発足

 米陸軍が9月23日にハワイ州Ft. Shafterでジン大佐を指揮官とする3番目となるMDTFを編成した。
 陸軍初のMDTFは2017年にワシントン州Lewis-McChord基地で発足し、2番目の部隊はドイツで編成された。
 陸軍は更に2個のMDTFの編成を計画していて、4番目のMDTFは北極圏で、5番目は機動予備となる計画である。 (2210-092409)

5・1・6・3 海 軍

5・1・6・3・1 今後30年間の建艦計画

3つのオプション
 米海軍が4月20日、今後30年間の建艦計画の3つの案を公開した。
 FY23では有人艦9隻が要求され、FYDPでは51隻の戦闘有人艦が計画され、FY27までに280有人艦体制としている。
 3つの案のうち低レベルの2案はFY35までに305~307隻、FY45までに318~322隻体制としている。
 高レベルの案では2030年代中頃に326隻、FY45までに363隻とし、これ以外にFY45までにUSV/UUV 89~149隻としている。 (2207-050401)

Navigation Plan 2022

 米海軍が7月26日にNavigation Plan 2022を公表した。
 海軍上層部はこの計画で、増大する中国とロシアからの脅威に挑戦するために、従来型の艦船よりも高度な武器やその他の能力を開発すると主張している。
 海軍はFY23予算案で、今後5年間の新技術開発に必要な$3.6Bを確保するため、FY23にFreedon級LCS 9隻、巡洋艦5隻、Los Angels級潜水艦2隻、ドック型揚陸艦4隻、油送艦2隻、遠征輸送ドック2隻など24隻を除籍するとしている。
 これに対し議会が24隻の削減に同意するかは依然として疑問である。 大艦隊を求めている議会は昨年FY22予算で海軍に、軍が8隻の建造を要求したのに対し13隻を建造するよう命じた。 (2208-072616)

5・1・6・3・2 艦船の大規模除籍

FY23に24隻の除籍を要求

議会の抵抗

 米議会下院軍事委員会海軍小委員会が、海軍からFY23予算で要求されている艦船24隻の除籍の内5隻について除籍を認めない方向である。
 認められそうにないのは巡洋艦Vicksburgとドック型揚陸艦4隻である。 (2207-060716)

5・1・6・4 空 軍

ロシアのウクライナへ侵攻を受け仮想シナリオの見直し

 米空軍は2021年末に仮想シナリオの一番を中国、ロシアを二番とした調達計画を決めたが、ロシアのウクライナへの全面侵攻を受けて、見直しを迫られている。 (2206-032102)

5・1・6・5 海 兵 隊

5・1・6・5・1 Force Design 2030

ウクライナ戦争の戦訓でロードマップを改訂

 米海兵隊が5月9日、ウクライナ戦争の戦訓などを取り入れてForce Design 2030ロードマップを改訂した。
 砲兵は7個中隊を7個HIMARS中隊に改編する。
 当初計画ではMV-22 Osprey 3個飛行隊を除籍するとしていたが、12機編成で14個ある飛行隊を10機編成16個飛行隊に改編する。
 歩兵については大隊を800~835名編成にするとしているが、3個大隊で部隊実験を続けるとした。 (2208-051802)

5・1・6・5・2 EABO 構想

北極圏での検証

 米海兵隊司令官のバーガー米海兵隊大将がノルウェーのバルドゥフォス空軍基地で3月23日、3月にノルウェーで行われたCold Response 2022演習で、海兵隊のEABO構想が北極圏でも適用可能であることが確認できたと述べた。
 Cold Response 2022演習は27ヵ国から30,000名と航空機20機、艦船50隻以上が参加して行われた。 (2207-041302)

 米海兵隊司令官のバーガー大将が5月18日にFY23予算を審議している下院歳出委員会国防小委員会で証言し、海軍と海兵隊はアラスカと欧州の北極圏海域で小規模部隊を2~4週間展開する演習を度々行っていると述べた。
 また米海兵隊はノルウェーで行われたNATOのCold Response 2022演習にも参加したという。  また海軍作戦部長のギルデイ大将は2018年秋には北極圏で30年ぶりとなるCSGの演習も行ったと述べた。
 参加したのはHarry S Truman CSGで、1991年9月にAmericaがNATOのNorth Star演習に参加して以来という。 (2208-060104)

NMESIS

 米海軍のNMESISは既に実証されているシステムの組み合わせで、NSMと海軍がNSM用に使用しているFCSをJLTVに搭載したものである。
 海兵隊はFY22に$208Mを計上したが、FY23には65%増の$345Mを要求している。 (2207-042705)

5・1・7 インド太平洋軍

5・1・7・1 基本戦略

5・1・7・1・1 太平洋抑止計画 (PDI)

兵站能力が弱点

 米国防総省が4月中旬に議会へ提出した太平洋抑止計画 (PDI) について分析した報告の中で、もしアジア地域で紛争が起こった場合、軍は十分な兵站能力を持っていないとしていると日経新聞が報じた。
 国防総省はPDIに、2023年10月から向こう5年間に$27.1B必要としているが、そのうち$10.2Bが兵站の整備費という。 (2206-050413)

5・1・7・1・2 東南アジア戦略

ASEANとの特別首脳会議

 バイデン米政権が5月12日、ワシントンで開催されているASEANとの特別首脳会議にあわせ、東南アジア地域で海洋安全保障やクリーンエネルギー分野などに$150Mを投資する計画を発表した。
 米政府高官によると主な内訳は、米沿岸警備隊の艦船派遣など海洋安全保障分野に$60M、クリーンエネルギー分野に$40M、COVID-19対策などの健康分野に$15Mなどになっている。
 ワシントンでは12日に、国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーを除く9ヵ国のASEAN首脳らが米議会を訪れ、民主党のペロシ下院議長ら米議会幹部との昼食会に臨んだ。
 午後にはホワイトハウスでバイデン米大統領が主催する夕食会に参加した。 (2206-051305)

5・1・7・1・3 米海軍と海兵隊の連携

Task Force 76/3 の編成

 米海軍と海兵隊がインド太平洋での水陸両用作戦に於ける指揮統制の円滑化と危機対応のチームを編成して新たな海洋戦略を確認しようとしている。
 新たに編成されるTask Force 76/3は海軍の第7遠征打撃群 (ESG 7) と海兵隊の第3遠征旅団からなり、1年以上かけて検証が行われる。
 似たような動きは2016年に欧州で、在欧海軍第61水陸両用戦群 (Task Force 61) と第2海兵師団が組んだBlue-Green軍で、水陸両用作戦と偵察/対偵察作戦として行われている。 (2210-092807)

 在沖縄米軍が9月27日、米海兵隊と米海軍がインド太平洋地域の海上作戦での連携に向けて250名の期間限定特別部隊を発足させ、10月1日からNoble Fusion演習を実施すると発表した。 続いて米比訓練にも参加する。
 部隊の記章には碇と竜が描かれており、漢字で「怪獣」と記されている。
 もともと沖縄駐留海兵隊と海軍の部隊で編成しており、県内に駐留する人員数は変わらない。
 ホワイトビーチとキャンプ・コートニーを拠点として2023年夏頃まで特別編成を続け、その結果や課題を踏まえて今後の方向性に生かすと説明している。 (2210-092812)

5・1・7・2 戦力の維持、強化

5・1・7・2・1 陸 軍

海軍輸送艦で大量の装備のハワイ搬入を検証

 米陸軍が2023年にオーストラリアで実施するOperation Pathways演習に参加するため、500品目以上の装備品やコンテナを、空母並の大きさの海軍輸送艦Watsonでハワイ真珠湾に搬入した。
 数百両の車両などこれらの装備は陸軍の前置備蓄APSから搬出されたもので、点検のためのPearl Harbor-Hicjamへの輸送は第8憲兵旅団が担当する。 (2301-120517)

5・1・7・2・2 海 軍

Abraham Lincoln CSG の投入

 米海軍空母Abraham Lincoln CSGが1月3日に定期的な展開任務のため母港のカリフォルニア州サンディエゴを出港した。
 女性司令官のアンダーソン少将に率いられたAbraham Lincolnを旗艦とするCSG-3は、巡洋艦Mobile Bayと第21駆逐隊の駆逐艦FitzgeraldGridleySampsonSpruanceの4隻を伴い、航空機部隊CVW-9と共に第3艦隊の担当エリアである東太平洋地域で活動する。 (2202-010404)

SSBN 733 Nevada のグアム寄港

 米海軍が1月15日、SSBN 733 Nevadaがグアムのアプラ港に入港したと発表した。
 CNNは17日、SSBNがグアムに寄港したのは2016年以降初めてとし、1980年代以降で寄港を公式的に発表したのは2回目と報じた。
 更に、通常は作戦地域が極秘で扱われるSSBNの位置だけでなく写真までが公開されたのは異例とし、インド太平洋地域の緊張が高まるなかで同盟国と敵国にメッセージを送ったと評価した。
 NevadaはOhio級原子力潜水艦で、Trident SLBM 20基と核弾頭を搭載している。 (2202-011804)

グアムに攻撃型原潜5隻体制

 サンディエゴのPoint Lomaを出港したLos Angeles級攻撃型原潜のAnnapolisが3月28日にグアムのApra港に入港しグアムを基地とする第15潜水戦隊の隷下に入った。
 その1週間前にの21日には同型のSpringfieldも入港しており、これで米海軍は2022年内に5隻の攻撃型原潜をグアムに配備する計画を達成した。
 第15潜水戦隊には両艦の他、AshevilleKey WestJefferson CityのLos Angeles級攻撃型原潜3隻が所属している。 (2205-041211)

西太平洋地域に空母1隻を追加投入

 米国が朝鮮半島を含む西太平洋地域に空母1隻を追加投入する。
 7回目の核実験など北朝鮮の高強度の挑発とこれを傍観している中国に対する軍事的な圧迫を強化する動きではないかとみられている。
 米国軍事専門メディアのUSNI Newsによると、第3艦隊所属の空母Nimitzが3日にサンディエゴ基地から第11 CSGを率いて西太平洋に向け出港したた。
 西太平洋には横須賀基地のRonald Reaganと共に空母2隻が同時に配置されることになる。 この他に軽空母級の強襲揚陸艦Americaも佐世保基地に待機している。 (2301-120509)

5・1・7・2・3 空 軍

 グアムに配備されたB-1B 4機全てが米本土に帰還したことがわかった。
 北朝鮮が7回目の核実験の準備を終えた状況のため、米国が今度は核武装が可能なB-52かB-2をグアムに配備するかもしれないという観測が出ている。 (2212-112110)
5・1・7・2・4 海兵隊

ハワイの第3海兵沿岸連隊が2022年中に full operational

 米海兵隊戦闘研究所長のワトソン准将が2月10日に防衛工業会の外征戦会議で、海兵隊がハワイで新たに編成した沿岸海兵連隊が2022年中にfull operationalになると述べた。 (2203-021012)

第3海兵沿岸連隊第3沿岸対空大隊の発足

 米海兵隊がハワイで2月11日、第3沿岸対空大隊の発足式を開いた。
 新編の大隊は1月に解散した第3海兵連隊第2大隊の施設等を使用するが、大隊がfully operaionalになるのは数年先になる。
 第3沿岸対空大隊は3月3日に第3海兵連隊が第3海兵沿岸連隊に改編されるのに合わせてその隷下に入ると見られる。
 沿岸対空大隊の運用はまだ検討中と言うが、大隊は小規模な部隊で構成され、海兵隊が太平洋地域の広範囲で活動するのに合わせると見られる。 (2203-021112)
【註】この記事で沿岸対空大隊の編成装備は述べられていないが、海兵隊はJLTV車を元にした新防空システムMADIS Inc 1の開発をEMD段階を開始している。
 MADIS Inc 1には砲塔発射型のStingerと直射火器を搭載したMk 1と、レーダと直射火器を装備しC3能力を持つC-UAS用のMk 2があり、いずれも多機能EW装置、EO/IR装置を搭載している。

第3海兵沿岸連隊の発足

 米海兵隊が3月3日、ハワイで海兵沿岸連隊 (MLR) を創設したと発表した。
 MLRは1,800~2,000名となる見込みで、敵のミサイルの射程圏内で海軍と連携し機動的運用され、部隊を分散して対艦ミサイルなどの拠点を確保する新作戦である遠征前方基地作戦 (EABO) を遂行する。
 中国を念頭に置いた動きの一環で沖縄県に駐留する2個連隊をMLRに改編することも検討されている。 (2204-030415)

 米海兵隊が3月3日にハワイ駐屯の第3海兵連隊を第3海兵沿岸連隊 (3d MLR) に改編した。
 海兵沿岸連隊 (MLR) は海兵隊が進めているForce Design 2030の中核をなすもので、海兵隊のEABO構想に特化されている。
 太平洋地域には3個連隊が計画され、第3連隊がその1番目になる。 (2204-030417)
【註】海兵隊のHPによるとMLRには、EABO、打撃、AMDの実施及び、海上作戦の支援などの任務が与えられている。
 また第3海兵師団のHPによると、3d MLRの隷下には第1大隊と第3大隊がある。

2番目の HIMARS 中隊を沖縄に

 米海兵隊が2021年末に、2番目となるHIMARS部隊を沖縄に配置しアジア地区のHIMARSを2倍に増強した。
 この部隊は第12海兵連隊第3大隊の1個中隊で、海兵隊は2021年に第10海兵連隊第1大隊と2個HIMARS中隊を発足させ、1個中隊は大隊の駐屯するノースカロライナ州のCamp Lejeuneに、もう1個中隊を沖縄に配置している。 (2203-020307)

太平洋水陸両用指揮官シンポジウム (PALS)

 米海兵隊主催でインド太平洋地域などから水陸両用部隊の指揮官を集めて行う太平洋水陸両用指揮官シンポジウム (PALS) の開会式が、6月14日に東京都内で開かれた。 会議は16日まで続く。
 2015年から開かれているPALSの日本での開催は今回が初めてで、開会式には約20ヵ国から70名の指揮官が出席した。
 今回は米側から招待を受け台湾から4名が、軍服ではなくスーツでオブザーバー参加している。
 台湾から出席したのは張海軍少将の他、海軍陸戦隊(海兵隊)の大佐と少佐、海軍の中佐が参加した。 (2207-061406)

台風の影響を考慮した揚陸作戦

 米海軍艦が西太平洋の島嶼で、台風の上陸が海兵隊と揚陸艦艇に及ぼす影響を検証する演習を行った。 (2207-062915)

グアム Blaz基地の建設

 2020年に開設されたグアムの米海兵隊Blaz基地には2020年代中頃に沖縄から第3海兵遠征軍の第一陣1,300名が移駐してくるが、目下基地建設が急ピッチで進められている。
 $8.6Bと見積もられる基地建設費のうち$3Bは日本政府が負担する。 (2301-121008)

5・1・7・2・5 宇宙軍

インド太平洋宇宙軍が発足

 米宇宙軍が11月22日、ハワイPearl Harbor-Hickam基地にインド太平洋宇宙軍を発足させ、初代の司令官にマスタリル准将がついた。 (2212-112407)

5・1・7・3 グアムの防衛

5・1・7・3・1 海 軍

潜水艦基地機能の強化

 米太平洋艦隊潜水艦隊司令官のジャブロン少将が11月2日、現在グアムを基地としている攻撃型原潜5隻について、今後5~10年で訓練及び補給整備の機能を強化強すると述べた。 (2212-110315)

5・1・7・3・2 A M D

グアムの BMD

 「8・2・1・1・5 グアムの BMD」で記述

Patriot中隊以上の部隊を準備

 米陸軍SMDC司令官のカーブラー中将が、米国防総省がグアムのAMD能力強化に力を入れるとしていることで陸軍は、FY25でのPatriot中隊以上の部隊を準備していると述べた。 (2212-110313)

5・1・7・3・3 空 軍

 2023年に特筆すべき記事なし
5・1・7・4 在韓米軍

5・1・7・4・1 THAAD

THAAD の能力向上

 慶尚北道星州の在韓米軍THAAD基地に10月6日、THAAD性能改良関連の装備が搬入された。
 韓国軍などによるとこの日23:00頃にレーダとミサイルとみられる装備品が軍用車両約20両で基地に入った。
 京畿道烏山基地に搬入されたレーダ、電子装備、ミサイル輸送車両などが、星州THAAD基地に移されたという。
 韓国国防部は今回搬入された新しい装備についてTHAADの追加配備ではなく、レーダは性能向上のため換装されたと把握していると述べた。 (2211-100707)

 韓国国防部が10月7日、在韓米軍がBMD能力向上のため装備を更新したと発表した。
 この更新でTHAADはPatriotとの協同運用性が向上するという。
 新装備の搬入で、今まで配備されていたシステムは米国へ戻される。 (2211-100715)
【註】搬入が報じられた画像はミサイルであることから、主たる改良はミサイルにあり、Patriotとのinteroperabilityの改善も行われたのではないか。

5・1・7・5 在豪米軍

巡回駐留陸海空軍部隊の増強

 オースティン米国防長官が米豪外務国防担当閣僚協議 (AUSMIN) 後の共同記者会見で12月6日、オーストラリアに巡回駐留する陸海空軍の部隊を増強する方針を示した。
 爆撃機や戦闘機も増やす計画で、中国に関する両国共通の懸念に対応する。 オースティン長官は部隊増強の時期や規模、追加配置する艦船、軍用機の数については触れなかった。 (2301-120708)

5・1・8 在日米軍

5・1・8・1 部 隊

5・1・8・1・1 在日米海軍、海兵隊

駆逐艦 Zumwalt

 米海軍駆逐艦Zumwaltが9月26日、米海軍横須賀基地に入港した。
 同級駆逐艦の日本寄港は初めてである。 Zumwaltの母港はサンディエゴだが、今月に入り第7艦隊の指揮下でグアムに寄港し、19日に同地を出発していた。
 日本到着により、就役以来最も遠くまで航海したことになる。
 横須賀基地にはまたLCS Oaklandも入港した。 (2210-092615)

MQ-4C Triton

 防衛省が10月5日、MQ-4C Tritonの岩国基地への展開が終了したと岩国市に伝えた。
 岩国市によると、Tritonは5日の07:00頃に岩国基地を離陸し、その後、防衛省から「岩国基地を離れた」と連絡があったという。
 MQ-4C Tritonは通常、グアムを拠点に運用されているが、7月12日から岩国基地に一時的に展開していた。 (2211-100517)

海兵隊の JLTV車を CH-53Eで Miguel Keith と陸とを往復空輸
 米海兵隊がJLTV車の陸艦往復空輸をCH-53E重輸送ヘリで初めて実施した。
 実施したのは沖縄駐留第31海兵遠征隊の兵站部隊と第31戦闘兵站大隊で、増強第262中型チルトロータ飛行隊が実施した。
 CH-53Eは沖縄沖13nmのESB 5 Miguel Keithと陸上の降着場をJLTVを吊り下げて2往復した。 (2211-082405)
【註】JLTVはHumveeの後継となる重量6.4tの4×4軽装甲車両である。

横須賀基地に第5桟橋が完成

 米海軍横須賀基地内南西に位置するトルーマン湾に$128Mかけて建設した第5桟橋が完成した。
 この桟橋は2019年に取り壊された70年前に設置された浮き桟橋の代替えとなる。
 この桟橋にはArleigh Burke級駆逐艦やTiconderoga級巡洋艦用の416V電源のほかに、Zumwalt級駆逐艦用の4,160V電源も備えている。 (2212-111823)

5・1・8・2 活 動

パラオで Patriot の射撃

 沖縄駐留米陸軍1-1 ADA大隊のC中隊が、6月15日にValiant Shield演習の一環としてパラオで、F-35Aの取得した目標諸元でCMを模擬した標的のPAC-2弾での撃墜に成功した。 (2208-062905)

5・1・8・3 装 備

5・1・8・3・1 艦 船

 2023年に特筆すべき記事なし
5・1・8・3・2 航空機/UAV

MQ-9 の鹿屋配備

 日米両政府が米軍のMQ-9 7~8機を鹿屋航空基地に一時展開する方向で検討していることが関係者への取材で1月24日に分かった。
 早ければ春ごろから1年程度、運用や整備を担う米兵100名超の駐留を見込んでおり、今後地元自治体に協力を求めるとみられる。
 南西諸島周辺で活動を活発化させる中国軍の監視強化が目的で、自衛隊基地への米UAVの配備は初めてである。 (2202-012504)

 海上自衛隊鹿屋航空基地に配備される米軍のMQ-9について、県と市は18日に11月21日に運用を開始すると防衛省から通知があったと発表した。
 配備は東シナ海における中国艦艇の監視強化が目的で、8機態勢で1年間の予定としており、米軍関係者最大200人が市内に駐留する。
 鹿屋市の中西茂市長は18日、九州防衛局の遠藤企画部長と市役所で面会した後に記者団の取材に応じ、「1年間を厳守していただきたい」と改めて強調した。 (2212-111818)

MQ-4C Triton の岩国配備

 防衛省が岩国市に対し、米軍が5月からUAVを岩国基地に展開すると伝えた。 中国や北朝鮮などに対する海洋監視の強化が目的である。
 展開するのはグアムを基地に活動する米海軍大型UAVのTritonで洋上でのISR能力にすぐれているという。 (2206-051210)

F-35B 16機の岩国追加配備完了

 沖縄県の在日米海兵隊第1海兵航空団が20日、岩国基地にF-35B 16機を追加配備する計画が完了したと発表した。 当初の16機から32機に倍増した。
 一方で米海軍の強襲揚陸艦Tripoliが同日、岩国基地に初寄港した。
 Tripoliは同基地に入港した艦船で最大規模で、展開拠点になる可能性がある。 (2206-052011)

嘉手納基地 F-15C/D の常駐を見直し

 米国防総省当局者が27日、米空軍が沖縄県の嘉手納基地での老朽化が進んでいるF-15の常駐を見直し、F-22の巡回配備への切り替えを来年に計画していると明らかにした。
 国防総省当局者によると、空軍は嘉手納基地に所属する2個飛行隊の計50機を来年退役させる計画で、代わりにアラスカ州の基地からF-22を半年程度ずつの巡回方式で嘉手納基地に派遣する。
 米軍戦闘機が常駐しなくなれば中国が威圧を強める可能性があり、専門家からは台湾有事や尖閣諸島を巡る不測の事態が危ぶまれる中、中国に対する抑止力の低下への懸念が出ている。 (2211-102807)

 米空軍が10月28日の声明で、嘉手納に駐留している老朽化したF-15C/Dを11月1日から撤退させると発表した。 F-15C/Dは2年以内に除籍される。
 嘉手納には現在第18航空団第44及び第67飛行隊のF-15が48機以上駐留している。
 空軍報道官によると、今後嘉手納にはF-15EXやF-35Aなどの第4世代及び第5世代戦闘機が巡回配備される。 (2211-102901)

 浜田防衛相が11月1日の記者会見で、米軍が嘉手納基地所属のF-15を2年かけて順次退役させ、能力を向上させた戦闘機に置き換える計画を検討していることを明らかにした。
 嘉手納には、11月上旬からF-22が暫定配備される。
 防衛省によると、同基地には現在50機配備されているF-15が機体の老朽化に伴い改良型に更新する計画を進めており、まずは十数機を数週間以内に米国に帰還させる。
 代わりにF-22を約半年間、暫定配備する。 (2212-110110)

F-22 の暫定配備

 米空軍嘉手納基地に常駐するF-15 50機が順次退役する代わりに暫定配備されるF-22 4機が11月4日にに飛来した。
 F-22は5日以降も飛来し12機程度が配備される見通しである。
 一方でF15の米本国帰還は始まっておらず、一時的に機数が増える状態となる。 F-22は15:20頃に次々と飛来し南側滑走路に着陸した。
 沖縄防衛局によると、F-22はアラスカ州のElmendorf AFB所属で、嘉手納基地に順次到着しているという。 (2212-110504)

5・1・8・3・3 ミサイル

2番目の HIMARS 中隊を沖縄に

 「5・1・7・2・4 海兵隊」で記述

5・2 ロシア

5・2・1 国内情勢

5・2・1・1 プーチン大統領

5・2・1・1・1 保身願望

大統領選挙

 2023年に特筆すべき記事なし

5・2・1・1・2 大国意識

 プーチン露大統領が7月31日、全世界に広がる「海洋大国」としての野望を打ち立てる新たな海洋戦略に関する大統領令に署名した。
 この中で、米国をロシアの主要なライバルと位置付けるとともに、北極圏や黒海など重要な領域における軍事的な野心を示した。
 プーチン大統領の演説で、ウクライナへの言及はなかったが、海洋ドクトリンは黒海とアゾフ海において「ロシアの地政学的地位の強化」をうたっているほか、特に重要な海域として北極海を挙げている。 米政府は、ロシアがこの海域における軍備増強を進めていると繰り返し指摘している。 (2209-080103)
5・2・1・1・3 ロシア帝国への懐古

 プーチン露大統領が7月31日、全世界に広がる「海洋大国」としての野望を打ち立てる新たな海洋戦略に関する大統領令に署名した。
 海軍の日を迎えたこの日、サンクトペテルブルクで行われた式典でプーチン大統領は演説で、同市を築いたピョートル大帝がロシアを海洋大国にし、同国の世界的地位を向上させたと称賛した。 (2209-080103)
5・2・1・2 経済情勢

豊かな外貨準備

 ウクライナとの間で新たな戦争になった場合、プーチン露大統領はその直接、間接の経費をどう賄う十分な戦費を準備を続けてきている。
 ロシア中央銀行の外貨準備高はロシアの輸出収入の17ヵ月分に相当する$640Bと過去最大に積み上がっており、原油価格の急騰のおかげでさらに増え続けている。
 ロシアは世界全体の石油取引の約1割にあたる原油を輸出していて、北海ブレント原油先物は1月31日午前に8年ぶり高値となる1バレル88.88ドルに上昇しており、ロシアは1日に$600M超の収入を石油から、天然ガスも同日の欧州市場の相場に基づくと1日あたり$400Mほど稼いでいる計算になる。
 重要なのは、ロシアのこうした化石燃料収入はもはやオイルダラーとは呼べなくなっているという点で、2013年時点ではロシアからの輸出の95%は米ドルで代金が支払われていたが、プーチンがロシア経済の脱ドル化を推し進めてきた結果、米議会調査局によるとドル決済の現在の比率はわずか10%まで下がっている。
 プーチンはさらに、国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わる新たな決済システムMirを、米国による経済制裁を受けて2015年に立ち上げた。 (2203-020205)

5・2・1・3 エネルギーの戦略利用

5・2・1・3・1 ウクライナ経由天然ガス

ウクライナ経由天然ガス輸送量の操作

 ウクライナ国営ガス輸送システム運営会社が7日、1月のウクライナ経由欧州向けロシア産天然ガス輸送量が前年同月比57%減の16億立米だったと明らかにした。
 ウクライナ経由の欧州向けガス輸送は2021年は平均で日量1億2,460立米だったが、ロシア国営ガスプロムは、年初来で日量5,300立米に削減している。 (2203-020814)

5・2・2 核戦略

5・2・2・1 核戦力の強化

5・2・2・1・1 新型核装備

新型 ICBM Sarmat の発射試験
 ロシア国防省が4月20日、新型ICBM Sarmatの発射試験に成功したと発表した。
 Sarmatは北部アルハンゲリスク州のプレセツク宇宙基地から発射され、演習用の弾頭が極東カムチャツカ半島の目標地点に着弾した。
 ロシア通信によると、200tを超えるSarmatの射程は18,000kmで、10~15個の核弾頭の搭載が可能で、今後旧型のICBMを更新していく。 (2205-042101)

Sarmat の調達開始

 モスクワ近くで開催中の国際軍事技術フォーラムArmy 2022でロシア国防省が、RS-28 Sarmat新型ICBMなどを発注したと発表した。
 契約総額はRUB500B(1兆1,000億円)以上で、契約にはこのほかS-500やSu-34も盛り込まれた。 (2209-081812)

5・2・2・1・2 戦略ロケット軍

2022年に4個 ICBM 連隊を戦列化

 ロシア戦略ロケット軍司令官のカラカエフ上級大将が2021年12月17日に軍機関紙の赤い星で、戦略ロケット軍が2022年に4個ICBM連隊を戦列化すると述べた。
 4個連隊とはSarmarを装備するUzhurの連隊、Avangardを装備するYasnenskyの連隊、移動型Tarsを装備するTambov及びKirovの連隊である。 (2204-010510)

5・2・2・2 核装備部隊の動き

ウクライナ情勢緊迫下でのミサイル演習

 InterFax通信が、ロシア国防省が2月18日にプーチン大統領の指揮下で19日にBMとCMの発射演習を行うと発表したと報じた。
 核戦力部隊を含む「戦略的抑止力」の演習としている。
 ロシア軍の国境付近への集結でウクライナ情勢が緊迫する中でのミサイル演習となる。 (2203-021809)

 ウクライナ情勢をめぐり緊張が高まるなか、ロシアが2月19日に極超音速ミサイルやBMなどを発射する演習を各地で実施した。
 国営メディアは、プーチン大統領が直接指揮を執って行われる演習の様子を大々的に報じた。
 演習には航空宇宙軍や戦略ミサイル部隊、海軍の黒海艦隊や北方艦隊などが参加した。
 演習では極超音速ミサイルKinzhalや海上発射型の極超音速ミサイルZirconのほか、Yars ICBM、Islander SRBMなどが次々と発射された。 (2203-022004)

5・2・3 戦力の強化

5・2・3・1 核戦力の強化

「5・2・2・1 核戦力の強化」で記述
5・2・3・2 通常戦力の強化

5・2・3・2・1 艦 船

修理中の空母 Admiral Kuznetsov でまた火災

 ロシア国営TASS通信とRIA Novostiが、ムルマンスクの造船所で修理中のロシア海軍唯一の空母でロシア艦隊の旗艦であるAdmiral Kuznetsovが火災を起こしたと報じた。
 2017年に始まったAdmiral Kuznetsovのオーバーホールは2021年に完了するはずであったが、2019年12月に火災で1名が死亡し12名が負傷したほか、その前年には浮きドックが沈没したため倒れたクレーンで船体が破損していた。 (2301-122214)

5・2・3・2・2 航空機

 2023年に特筆すべき記事なし
5・2・3・3 陸上兵力

兵力の増強

 ロシア通信によると、ロシアによるウクライナ侵攻で兵力不足が指摘されるなか、プーチン大統領が8月25日にロシア軍の総定員をおよそ190万人から204万人に増やすよう命じる大統領令に署名した。
 2023年1月1日に発効するという。 (2209-082508)

5・2・4 対米挑発活動

5・2・4・1 米潜水艦への実力行使

 ロシア国防省が2月12日、米海軍のVirginia級潜水艦がロシア領海に侵入したため、適切な手段を講じ退去させたと発表し、中露米大使館の駐在武官を召喚した。
 これについて米海軍は、事故は起きていないと発表した。
 ロシア国防省によると、ロシア海軍が千島列島ウルップ島の太平洋側で演習を行っていたところ、モスクワ時間10:40に米潜水艦を発見とたため、水中ソナー通信で「貴艦はロシア領海内にいる。 直ちに浮上せよ」とロシア語及び英語で呼びかけたが応答がなかったため、適切な対応を取り領海外へ待避させたという。
 このロシアの主張に対して米海軍は明確に否定した。 (2203-021210)

 Tass通信などによると、ロシア軍が12日に北方領土を含む千島列島近くの海域で米海軍の潜水艦を発見した。
 ロシア軍は退去の要求を米側が一度無視したとして、ロシアの領海から退去するよう適切な手段を行使したという。
 またInterFax通信によると、ロシア軍は米軍の担当者をロシア国防省に召喚した。
 Tass通信によると、米国防総省は「詳細は確認できていない」としている。 (2203-021302)

5・2・4・2 査察の受け入れ停止

新戦略兵器削減条約(新START)査察の受け入れ停止

 ロシア外務省が8月8日、新戦略兵器削減条約(新START)に基づいた戦略核兵器の査察の受け入れを「一時的に」停止すると米国に通告した。
 露外務省は、米国がロシアを出し抜こうとしているとともに、米国内の核査察を行う機会をロシアから奪ったと主張した。
 また対露制裁により米露関係性が変わったと述べ、この停止は条約内の「例外的な状況」に当たるため有効だと述べている。
 新STARTは2011年に発効した米露間で交わされている唯一の軍縮合意で、長距離核弾頭の配備数の上限をそれぞれ1,550発と定めているが、現在の条約は2026年に失効する。 (2209-080903)

5・2・5 対欧州戦略

5・2・5・1 欧州評議会からの脱退

 ロシアがフランスのストラスブールに本部を置く欧州評議会から3月15日に脱退した。
 欧州評議会は欧州人権条約の制定のほか、共産主義圏の崩壊後に東欧諸国の民主化などを支援した国際機関で、脱退により、ロシアと欧州との間の亀裂が一段と深まる恐れがある。
 欧州評議会はこの日にロシアの除名を巡る採決の実施を予定していたが、採決の数時間前にロシアは脱退を表明した。 (2204-031604)
5・2・5・2 武力示威活動

5・2・5・2・1 World Ocean演習

アイルランド南西沖合で艦載砲とミサイルの実射

 アイルランド航空当局が1月21日、ロシア海軍がアイルランド南西240km沖合で艦載砲とミサイルの実射を行うとの通報を行った。
 これは露海軍が地中海、北海、オホーツク海、北東大西洋、太平洋と全世界で、艦船140隻、航空機60機以上、10,000名を動員して行うWorld Ocean演習の一環で、北海艦隊からは大型揚陸艦3隻が参加している。 (2205-020206)

5・2・5・2・2 バルト海での示威

スウゥーデンの領空侵犯

 スウェーデン軍の声明によると、ロシアのSu-24 2機とSu-27 2機の合わせて4機が3月2日にバルト海にあるゴットランド島の東側でスウェーデンの領空を侵犯した。
 これに対しスウェーデン空軍はJas 39 Gripenが緊急発進した。
 スウェーデンは2月28日にロシアの航空機の領空飛行を禁止している。 (2204-030318)

 スウェーデンの民放TV4が3月30日、3月2日に核兵器を搭載したロシアのSu-24 2機がSu-27 2機に護衛されてバルト海のゴットランド島付近のスウェーデン領空を1分間にわたり侵犯したと報じた。
 スウェーデン空軍は2機の戦闘機を出動させロシア機の写真を撮影したが、この際に核兵器の搭載を確認したという。
 スウェーデン軍はTV4の取材に詳細なコメントを控えたが、空軍幹部は「意図的な行為で、非常に深刻だ。 核兵器の使用を検討できるというシグナルだ」と述べた。
 ロシアはウクライナ侵攻に関連して核兵器使用をちらつかせており、核をめぐる緊張が一段と強まる可能性がある。 (2204-033106)

デンマークの領海領空侵犯

 デンマーク軍が、ロシアのコルベット艦が6月17日にバルト海でデンマークの領海を02:30とその数時間後の2度にわたり侵犯したことを明らかにした。
 デンマーク軍によると、同国海軍の部隊が無線で呼び掛けると、ロシア艦は直ちにデンマーク領海から退去した。
 現場はスウェーデンの南にあるChristianso島北方のデンマーク領海てで、同島はカリーニングラードから30kmしか離れていない。
 4月末にも、ロシア軍の偵察機がデンマークの領空を侵犯したばかりである。 (2207-061812)

ロシア軍 MiG-31 2機が 領空 を侵犯

 フィンランド国防省が8月18日、ロシア軍のMiG-31 2機がポルボー沖で同日に領空を侵犯した可能性があると発表した。
 フィンランド安全保障情報庁は同月、ロシアがNATO加盟申請に影響を与えようと「さまざまな試みを仕掛ける可能性がある」と警戒を示していた。 (2209-081813)

カリーニングラードに Kinzhal 極超音速 ALBMを配備

 ロシア国防省が8月18日、Kinzhal極超音速ALBMを搭載したMiG-31 3機をカリーニングラードのチカロフスク航空基地に配備し、今後24時間体制の戦闘任務に就くと発表した。 (2209-081901)

5・2・5・3 ウクライナ侵攻以降の対欧姿勢

NATO拡大に対応してロシア西部に軍事基地を構築

 ショイグ露国防相がTV放送された会合で5月20日、NATOの拡大に対応し、ロシア西部に新たな軍事基地を構築すると明らかにした。
 国防相は、2022年末までに西部軍管区に12の部隊や師団を創設すると述べた。
 軍は2,000品目以上の装備や兵器の供給を受ける見通しだとしている。 (2206-052010)

バレンツ海で Tu-160 2機が MiG-31 と編隊飛行

 露国防省が7月19日にバレンツ海でTu-160 2機が護衛のMiG-31と編隊飛行を行ったと発表した。
 ウクライナ侵攻を受けNATOへの加盟を決めた北欧フィンランドやスウェーデンを威圧する思惑があるとみられる。 (2208-072007)

スパイ活動

 英情報局保安部 (MI5) のマカラム長官が11月16日に国内外の安全保障上の脅威について説明したなかで、2022年にロシアの政府機関職員など合わせて600人以上が欧州から追放され、このうち400人以上がスパイ活動を行っていたと見られると明らかにしたうえで「ロシアの情報機関に対して近年で最大の打撃を与えた」という見方を示した。 (2212-111711)

5・2・6 中東戦略

5・2・6・1 シリアに軍事拠点

5・2・6・1・1 軍用機の活動

MiG-31K、Tu-22M、Kinzhal をシリアに配備

 InterFax通信が2月15日、国防省の情報としてロシアが地中海東部で実施する海軍演習のために、MiG-31KとTu-22Mのほか、極超音速ミサイルKinzhalをシリアに配備したと報じた。
 これについて、ロシア通信 (RIA) はショイグ国防相が15日に東地中海の海軍演習を視察するためにシリアに向かったと報じた。 この演習には艦船15隻と航空機30機が参加するとしている。
 ロシア政府は1月20日に太平洋から大西洋にかけて、艦船140隻と10,000名が参加する一連の海軍演習を実施すると発表していた。
 ロシアのメディアによると、Kinzhalの射程は2,000kmで、プーチン大統領が2018年3月に戦略兵器の一つとして発表していた。 (2203-021602)
【註】Kh-47M2 Kinzhalは外観と寸法から9K720 Iskanderが使用する9K723弾とよく似たALBMと見られ、2021年6月にもMiG-31やTu-22と共にシリアに展開したのが確認されている。

連合軍の設定する制限空域に進入

 シリア東部で2月15日、ロシア機3機が連合軍の設定する制限空域に進入する場面があり、米軍戦闘機や他の連合軍機が3機を誘導する対応を行った。
 進入したのはロシアの貨物機1機とそれに随伴するTu-22 2機で、米国主導の連合軍に十分な事前通知を行わずに、イラク上空を抜けてシリア東部に設定された安全区域に進入した。
 米国がロシア側に事前通知が不十分だと警告したところ、ロシア側はそのまま飛行を継続すると述べたという。
 このため米軍のF-16と連合軍の航空機が対応し、ロシア機が当該空域を出るまで短時間並んで飛行した。 ロシア機はシリアの地中海沿岸部にあるラタキアに着陸した。
 この安全区域は南はシリアのデリゾールから東はイラク国境まで広がっており、航空機は米国に動きを通知する必要がある。
 ロシアは6時間後にも同様の行動を繰り返し、別の貨物機や軍用機が同じ空域を通過した。 (2203-021609)

5・2・6・1・2 防空部隊の展開

S-300が撤収、ウクライナへ移動か

 Maxar衛星が7月9日と26日に撮影したシリアの画像から、ロシアがシリアに展開させていたS-300が撤収したことが分かった。
 これでイスラエル機への脅威が無くなった。
 撤去されたのはTEL 4両、30N6E2射撃レーダ (TER) 及び複数の支援車両で、26日時点では捕捉レーダ (TAR) と防護用のPantsir-S1 SHORADは残されていた。 (2210-081004)

5・2・7 中央アジア戦略

 2023年に特筆すべき記事なし
5・2・8 アフリカでの活動

5・2・8・1 北アフリカ

スーダンに建設する海軍基地計画が頓挫

 米国の外交安全保障専門誌Foreign Policy (FP) が、ロシアがスーダンに建設しようとしていた海軍基地の計画が頓挫したと報じた。
 紅海は世界のコンテナ物流量の30%が通過するため、ここに海軍基地を建設することでアラビア半島とペルシャ湾はもちろん、遠くはインド洋にまで海軍の行動半径を拡大しようというロシアの戦略にブレーキがかかった。
 FP誌によると、ロシアは2017年にスーダンと交渉を始め、2年後の2019年に海軍基地建設協定を結ぶことに成功した。
 スーダン最大の貿易港であるポートスーダンにロシア海軍300名を常駐させ、海軍艦4隻が同時に停泊できる施設を作るというのが骨子だった。
 ロシアはこの過程で、スーダンを30年間統治してきた独裁者のバシール大統領にかなり手こずったが、プーチン大統領がバシール大統領と直接会って説得し、戦闘ヘリのような兵器も安値で渡していた。 (2208-071909)
5・2・8・2 中央、南アフリカ

5・2・8・2・1 マリ

民間軍事企業 Wagner の傭兵

 米アフリカ軍 (AFRICOM) 司令官のタウンゼント陸軍大将がVOAに、ロシアの民間軍事企業Wagnerの傭兵マリにおり、現在は数百人はいると考えていると述べた。
 またWagnerはロシア軍の支援を受けてマリに展開しており、ロシア空軍機が彼らを現地へ移送しているとタウンゼント大将は続け、ロシア政府が関与していると示唆し、「これがわれわれにとって大きな懸念だと語った。
 マリ暫定政権は、西側諸国との関係が緊張を増す中、ロシア人傭兵の存在を否定している。 (2202-012411)

 マリはイスラム過激派の活動が活発で数千人が命を落とし、数百万人が家を追われた。
 マリでは、民主的に選ばれた大統領を追放した2020年のクーデターで誕生した軍事政権が、旧宗主国のフランスに対し次第に敵対的な姿勢を示すようになり、代わりに冷戦の時代に同盟関係だったロシアに接近した。
 マリの軍事政権はフランス主導の欧州特殊部隊のからデンマークの特殊部隊100名を外すよう求めた要求を受け入れ、デンマークがマリから特殊部隊の撤収を始めた。
 フランスの部隊削減を受け、マリの軍事政権はロシア政府とつながりのある民間軍事会社ワグネルを頼った。
 国連はWagner(ワグネル)の傭兵がリビアと中央アフリカ共和国で戦争犯罪に関与した可能性があると批判している。
 欧米の複数のアナリストはWagnerをロシア政府の別動隊だと指摘しているが、マリの軍事政権はWagnerと契約を結んだ事実を否定している。 (2202-012812)

軍事政権がフランスを排斥

 AFP通信が、政情不安が続いているアフリカ西部マリの軍事政権が1月31日に国営TVを通じ、フランス大使を国外追放すると発表したと報じた。 72時間以内の国外退去を求めている。
 マリ軍政は、仏政府からの最近の敵対的発言が追放の理由だと説明し、フランスへの敵対姿勢を強めている。 (2203-020101)

 EU加盟国やカナダなど西側十数ヵ国が2月17日に西アフリカのマリ近隣国と連名の声明で、マリに展開してきた支援部隊を撤収すると発表した。
 仏軍がマリ暫定政権との関係悪化を理由に、対テロ掃討作戦の停止を決めたのが原因となった。
 仏政府は2021年、マリの軍主導による暫定政権が、ロシアの軍事企業Wagnerから兵を雇い入れようとしているとして、強く非難し派遣部隊の縮小を決定した。 (2203-021721)

ドイツ軍も撤退の方針、ロシアが影響力拡大

 ドイツ政府報道官がは22日、西アフリカのマリに国連平和維持活動(PKO)の一員として駐留する独連邦軍部隊について、2024年5月までに撤退させると表明した。 2024年2月に民政移管のための総選挙と大統領選が予定されている日程を考慮し、撤退完了を同年5月とした。
 マリの軍事政権がロシアと接近し、対独関係が悪化しており、2013年から続く駐留を終えることになった。
 マリからは旧宗主国フランスをはじめ、複数の欧州諸国が部隊を撤収させているため、ドイツも撤退を決めたことで、ロシアがマリで一段と影響力を強めそうである。 (2212-112308)

5・2・9 極東地域での活動

5・2・9・1 東部軍管区

5・2・9・1・1 Vostok 戦略軍事演習

 ロシア国防省が極東地区の東部軍管区で8月30日から9月5日まで、Vostok戦略軍事演習を実施すると発表した。
 演習が実施される地域にはシベリアの一部のほか、中国との国境に近いハバロフスクなどが含まれる。
 国防省は一部の外国部隊も参加するとしたが、具体的な国名は明らかにしていない。
 ベラルーシで2021年に実施された演習にはアルメニア、インド、カザフスタン、キルギスタン、モンゴルの軍隊が参加した。
 2018年に実施されたVostokには中国軍を含む30万名が参加したことから、今回も中国が参加するか、参加する場合はどの程度の規模になるのか、中露関係を推し測る上で重要な手がかりになるとみられている。 (2208-072705)
5・2・9・1・2 Vostok 演習に中国が参加

 中国国防省が、ロシアがロシア国内で8月30日から9月5日まで実施するVostok 2022大規模演習に部隊を派遣すると発表した。
 中国は、前回のVostok 2018に参加していたが、ロシアによるウクライナ侵攻への国際的な非難が高まるなか、今回も軍隊を派遣し参加するかが焦点となっていた。 (2209-081715)

 Vostok 2022演習の一環として、日本海で露海軍太平洋艦隊と中国海軍との合同訓練も行う計画で、演習を通じて中露合同の軍事活動が活発になる可能性がある。
 露軍は、国内各地域で順番に大規模演習を行っていて、極東では前回は2018年に行われ、東西冷戦終結後最大となる30万名が参加した。 (2209-082906)

 Vostok 2022演習の一環として、ロシアと中国の海軍は、海上通信と海洋経済活動地域の保護、沿岸地域の地上軍への支援のため、日本海で共同行動を実施する。
 中国も参加するこの演習は、米国との緊張に直面するモスクワと北京の防衛協力の高まりを示すもので、ロシアがウクライナで「特別軍事作戦」を開始して以来、モスクワと北京の防衛関係が強化されていることを示すものである。 (2210-090206)

 海上自衛隊が9月3日15:00頃、神威岬の西190kmの海域でロシア海軍フリゲート艦3隻と中国海軍駆逐艦など3隻が機関銃による射撃を行ったことを確認した。
 防衛省によると、これらの艦艇は4日04:00頃に礼文島の西およそ50kmを北東に向かって航行し、宗谷海峡を東へ向かったが、いずれも領海侵入はなかったという。
 防衛省が艦艇による射撃の様子を公表したのは初めてで、引き続きP-3Cなどでより一層の情報収集や警戒監視活動を続ける。 (2210-090409)

5・2・9・1・3 Vostok 2022演習の規模大幅縮小

 ロシア国防省が29日、極東などで実施するVostok 2022演習の開始日を7月に発表していた8月30日から、9月1日に変更すると発表した。
 同省は日程変更の理由を明らかにしていないが、準備が難航した可能性がある。  演習の実施場所については、当初13ヵ所だったが7ヵ所に減った。 北方領土の国後、択捉両島も含まれており、日本に対し領土問題で譲歩しない姿勢を改めて強調するものとみられる。 (2209-082906)

 ロシア東部軍管区が9月初めに実施するVostok 2022演習の規模が4年前の同演習よりも大幅に縮小されることが分かった。
 ロシア国防省は7月にウクライナに対して実施している「特別作戦」でVostok 2022演習は影響は受けないとの見解を示していたが、ロシア政府は28日に参加する兵員数は4年前の演習に参加した30万名からは大幅な縮小し50,000名になると発表した。
 ポーランドに拠点を置く軍事コンサルタント企業はこれについて、東部軍管区部隊の70~80%がウクライナに派遣されているため、今回の演習に50,00名を投入することも不可能とし、10,000~15,000名が妥当な規模になるとの見方を示した。 (2209-083002)

5・2・9・1・4 Vostok 2022演習を開始

 ロシアが9月1日、同国東部で1週間におよぶ合同軍事演習Vostok 2022を開始した。
 4年に1度行われる合同演習は9月7日まで、ロシア極東と日本海の7ヵ所の演習場で行われ、50,000名以上と航空機140機、艦船60隻を含む5,000以上の兵器や装備などが展開される。
 この訓練には旧ソ連諸国と中国の他に、インド、ラオス、モンゴル、ニカラグア、シリアが参加し、ロシアのゲラシモフ参謀総長が自ら監督する。
(2210-090206)

 防衛省が9月3日、ロシア海軍のフリゲート艦とミサイル観測支援艦の2隻が2日に宗谷海峡を東進し、オホーツク海に入ったと発表した。 (2210-090310)

 ロシア国防省が9月3日、ロシア軍が北方領土の択捉島と国後島で演習を行ったと発表した。 (2210-090311)

 ロシア国防省が9月3日、露軍が極東を中心に1日に開始したVostok 2022演習の一環として、北方領土の国後、択捉両島で上陸を阻止する演習を実施したと発表した。
 露国防省によると、訓練ではUAVや電子戦装備も投入し、急襲作戦への対応などを確認したという。
 露国防省はまた、2日と3日に演習に参加している中国海軍と露海軍が日本海で合同演習を行ったと発表した。
 中露両国が大規模演習に乗じて、日本近海での活動を活発化させている。
 ロシアはソ連時代に「対日戦勝記念日」にしていた3日を第2次世界大戦の終結日としていて、領土問題で譲歩しない姿勢を示した可能性がある。 (2210-090312)

5・2・9・2 太平洋艦隊

5・2・9・2・1 艦 船

太平洋海域で40隻以上の艦艇が参加した演習

 TASS通信が、ロシア国防省が6月3日、露太平洋艦隊が10日までの予定で太平洋海域で演習を開始したと発表したと報じた。
 演習にはミサイル追跡艦Marshal Krylovや駆逐艦Marshal Shaposhnikovなど40隻以上の艦艇が参加するという。  ウクライナを支援する米国や日本を威圧する狙いとみられる。 (2207-060401)

ロシアが防衛すべき海域として北方領土周辺も

 プーチン露大統領が海軍の日に合わせてサンクトペテルブルクで実施された大規模な観艦式で7月31日、ロシアの国益があり防衛すべき海域として、北極海やウクライナ軍との戦闘が続く黒海などとともにクリール諸島(北方領土と千島列島)の諸海峡と述べ、実効支配する北方領土周辺を挙げた。 (2208-073105)

防衛白書での見積もり

 極東地域に兵力8万人、艦艇260隻、作戦機320機を展開しているロシア軍は、ウクライナ侵攻後、日本への深刻な脅威となっており、防衛白書は極東露軍の戦力について「依然として核戦力を含む相当規模の戦力が存在する」と分析した。
 白書によるとロシア軍は極東地域に最新装備の配備が進めていると指摘した。
 2021年11月にKalibr CMを装備した新型フリゲート艦をウラジオストクに配置した。
 太平洋艦隊は原子力潜水艦13隻ほどを保有し、オホーツク海を中心とする海域にBM搭載原子力潜水艦 (SSBN) 3隻を配備していると紹介した。 (2209-082504)

5・2・9・2・2 対艦/対潜ミサイル

K-300P Bastion-P 移動型沿岸防備システムの配備

 ロシア国防省が2021年12月2日、K-300P Bastion-P移動型沿岸防備システムを千島列島の火山無人島である松輪島に配備したと発表した。 松輪島は周辺海域を全望できる。
 また列島の別の島にBastionと3K60 Bal (SSC-6) も配備するという。 (2203-121504)

 ロシア国防省が12月5日、クリル諸島(北方四島と千島列島)北部の幌筵島に射程500kmの移動式沿岸防衛ミサイルシステムBastionを配備したことを明らかにした。
 ロシアは1年前に千島列島中部の松輪島にBastionを配備している。
 同省は、太平洋艦隊の沿岸警備隊が隣接する水域と海峡地域を管理するため24時間体制で監視するとし、幌筵島に駐屯地を設置し、年間を通じて軍人向けのサービス、宿泊、娯楽、食料を提供するとしていることを明らかにした。 (2301-120610)

日本海で Kalibr ASCM の発射

 ロシア国防省が4月14日、太平洋艦隊の潜水艦2隻が日本海でKalibrの発射演習を実施したと発表した。
 Kalibrはロシア軍のウクライナ侵攻でも使用されている。
 同省によると、Kilo級潜水艦Petropavlovsk-KamchatskyVolkhovが、敵艦を想定した標的に対しミサイルを発射し命中したという。
 この発射には15隻以上の艦船が支援にあたったとしているが、発射場所などの詳細は明らかにされていない。 (2205-041412)

 ロシア国防省が日本海で最新の対潜水艦ミサイル「オトベット」の発射演習を行ったと発表し、映像を公開した。
 ミサイルは水中の目標に命中したとしていて、演習では太平洋艦隊の艦船15隻が周辺海域を一時封鎖したという。
 InterFax通信によると、「オトベット」の最高速度はMach 2.5で、水深800mの攻撃が可能だという。
 演習は対ロシア制裁を科す日米などを牽制する狙いもあるとみられる。 (2206-050609)
【註】「オトベット」(Otovet?) という名の対潜水艦ミサイルミサイルは報告されていないが、公開された映像では水上艦のVLSから発射されていることから、3M-54 Kalibrの対潜型である91RTE2の可能性がある。  3M-54 Kalibrの対潜型には潜水艦発射型の91RE1もある。

5・2・9・3 宇宙航空軍

Tu-95 2機が太平洋などを飛行

 ロシア国防省が10月18日、Tu-95 2機が太平洋などを飛行したと発表した。
 ロシア国防省によると、2機は太平洋~ベーリング海~オホーツク海の上空をMiG-31の護衛で飛行したという。
 途中で空中給油を行い、飛行は12時間以上に及んだとしている。 (2211-101911)

5・2・9・4 北方領土、日本周辺

「6・1・5・4 ロシアへの備え」で記述
5・3 欧 州

5・3・1 NATO

5・3・1・1 基本方針

5・3・1・1・1 国防支出の増額

2021年の年次報告書

 NATOが3月31日、2021年の年次報告書を発表した。
 国防費支出をGDP比の2%以上に増やす目標を21年に達成したのは30加盟国中8ヵ国と、前年から2ヵ国減った。
 加盟国で2%を上回ったのは、米国や英国、ポーランド、クロアチア、ギリシャ、バルト3国でフランスは2%をわずかに下回り、ドイツは1.49%だったが、ロシアがウクライナに侵攻したのを受けて、今年になって防衛費の増額を表明する国が相次いでいる。
 ドイツは2022年に2%以上に引き上げると発表したほか、デンマークやポーランド、ルーマニアなども増額を表明している。 (2204-033119)

COVID-19パンデミックの影響

 NATOが2022年6月27日に公表したデータで、多くの国では国防費支出の対GDP比が2020年に高水準に達したのち、COVID-19パンデミックが続く2021年に低下へと転じたことがわかった。
 2022年には国防費支出が再び増加するとみられる国がある一方で、フランスやドイツ、イタリア、カナダなど、国防費支出の対実質GDP比がさらに低下すると予測される国もある。
 対GDP比の上位5ヵ国は、

・米 国:    3.47%
・ギリシャ:   3.76%
・リトアニア:  2.36%
・エストニア:  2.34%
・英 国:    2.12%
で、下位5ヵ国は以下の通りである。
・チェコ:    1.33%
・トルコ:    1.22%
・スロベニア:  1.22%
・スペイン:   1.01%
・ルクセンブルク:0.58%
(2208-071202)

国防費の目標をGDP比2%以上に引き上げ

 ストルテンベルグNATO事務総長が11月21日、2023年7月に開催される次回のNATO首脳会議で、加盟国の国防費の目標を現在のGDP比2%から引き上げる可能性があると述べた。
 2014年のロシアによるクリミア併合を受け、NATO首脳は国防費の減少傾向を反転させることを確約し、加盟国は2024年からGDPの少なくとも2%を国防費として支出することに同意していた。 (2212-112201)

5・3・1・1・2 新規加入

北マケドニアの空域がNATOの空域に

 北マケドニアの空域が正式にNATOの空域に入ったのに伴い、同国とはギリシャ空軍が参加した演習が2021年12月9日に実施された。
 演習はギリシャ空軍のF-16C Block 52+Adv 2機が、応答しない北マケドニア政府のLearjet 60XLを擬似的に迎撃し、Learjetを北マケドニアのSkopjeに着陸させる想定で行われた。 (2203-122205)

5・3・1・2 対露方針

5・3・1・2・1 東方不拡大要求への対応

 NATOが1月7日に緊急外相会合をオンライン形式で開き、ロシア軍による侵攻の懸念が強まるウクライナ情勢の対応を協議した。
 ストルテンベルグ事務総長は会合終了後の記者会見で、NATOの東方不拡大を求めるロシアの要求に対して基本原則で妥協できないと応じない考えを示しと共に、「外交が失敗する可能性にも備えなければならない」と述べ、ロシアを牽制した。 (2202-010803)

 米政府高官が1月8日、10日にジュネーブで開かれる米露の戦略的安定対話を前に電話会見で、ウクライナ情勢の緊張緩和策として、米国とロシアの双方が東欧での軍事演習やミサイル配備を制限することを提案すると語った。
 高官は「戦略爆撃機の飛行訓練や地上演習を含む軍事演習の規模と範囲について、互いに制限を設けることを話し合う用意がある」と述べた。 (2202-010904)

 ジョアナNATO事務次長が5月29日、NATOは東欧に部隊を配備しないとする従来方針にはもはや拘束されないとの見解を示した。
 ジョアナ次長は、ロシアによるウクライナ侵攻およびNATOとの対話停止を受け、NATOとロシアが1997年に締結した基本文書の条項は一切無効になったとAFPに語った。
 NATO、ロシア双方は基本文書で「中・東欧を含む欧州の合意地域において、潜在的な脅威となり得る通常戦力の増強を抑止する」ことで合意しているが、ジョアナ次長は「ロシア側は近隣諸国を攻撃しない、またNATOと定期的に協議すると決めた義務を守っていない」と指摘し、「基本文書はロシアのせいで基本的に機能しなくなったと思う」と語った。 (2206-053004)

5・3・1・2・2 ルーマニア、ブルガリア撤収要求の拒否

 NATOが1月21日、ロシアが要求しているルーマニアとブルガリアからの撤収は受け入れられないと表明した。
 NATO報道官は声明で「NATOが相互防衛能力を放棄することはない。 これにはNATO東部に配備されている部隊も含まれる」とした。
 ロシアはNATOに対し、拡大停止を文書で確約し、1997年時点の状態に戻すよう要請している。
 ロシア外務省はこの日、ロシアが要請している安全保障にはNATOによるルーマニアとブルガリアからの撤収も含まれるとし、両国からの部隊、兵器、その他の軍備の撤退を求めた。 (2202-012205)
5・3・1・2・3 東欧に新たに部隊を配置

ルーマニアや黒海周辺への配置を想定

 NATOが2月16日にウクライナ問題で国防相会議を開き、対ロシアを念頭にルーマニアなど東欧に新たに部隊を配置する計画を検討することで合意した。
 また、ウクライナ周辺での大規模かつ挑発的で、正当化できないロシア軍の増強に深刻な懸念を表明する声明をまとめ、ロシア側に即時撤収を求めた。
 ストルテンベルグNATO事務総長は16日に記者会見し、加盟国の国防相による会議で「東欧でのNATO戦闘群の新設を検討することを含め、NATOの抑止力をさらに強化する方針を決定した」と語った。
 今後、具体的な計画案を作成するが、ルーマニアや黒海周辺への配置を想定しているという。
 ロシアは東欧からのNATO軍撤退を求めており、部隊新設の動きに反発を強めるとみられる。 (2203-021705)

 ストルテンベルグNATO事務総長が緊急首脳会議後に発表した共同声明で3月24日、NATO首脳がロシアに近い欧州東部の防衛力増強で合意したと明らかにした。 同時に、ロシアがウクライナで化学兵器を使用する恐れがあることに懸念を表明した。
 ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアに4個戦闘部隊を配置することで合意したとした。
 また、中国に対しロシアによる侵攻を支援しないよう呼び掛けた。
 バイデン米大統領も声明で、NATO首脳は6月の首脳会議までに追加部隊に関する計画を策定すると明らかにした。 (2204-032420)

 フランス製MBT 17両などを含む軍用車両を搭載した列車が11月16日、ルーマニア中部のボイラに到着した。
 これらの兵器は同国中部に駐屯しているNATO戦闘群に配備されるもので、10月23日に到着したAPCに続く第二陣となる。
 ルーマニアのNATO戦闘群は、5月にNATO即応部隊内の多国籍部隊を改編して編成した。
 フランスはルーマニアに500人規模の部隊を配置しており、2月24日のロシアのウクライナ侵攻を受けて、NATO東部側面の戦力を強化する上で重要な役割を担っている。
 フランスは5月、ルーマニアに防空システムを配備している。 (2212-111713)

NATO 軍最高司令官が東欧に部隊常駐を提起

 NATO軍最高司令官のウォルターズ空軍大将が3月30日に米議会で、ロシアのウクライナ侵攻を受けNATOはバルト諸国など東欧での常駐について見直しを行うべきとの考えを示した。
 また、東欧だけでなく航空警備活動や常設の海軍部隊における恒久的な軍事構造を再検討する機会だと指摘した。 (2204-033109)

多国籍戦闘団を4個創設し東欧に配置

 NATOが3月24日に臨時首脳会議を開き、新たな多国籍戦闘団を4個創設し東欧に配置することで合意した。 それぞれは、

・ルーマニア配置: フランス主導

・スロバキア配置: チェコ主導

・ブルガリア配置: ブルガリア主導

・ハンガリー配置: ハンガリー主導

 スロバキア議会は2,100名の駐留を認めた。
 チェコ主導の戦闘団には独、蘭、米、ポーランド、スロバキア、スロベニアが参加する。 チェコ議会は3月24日、2023年6月30日までに650名の陸軍をスロバキアに派遣することを承認した。 (2207-040604)

対露臨戦態勢の確認

 英国防省が4月29日、今年の夏までに東欧各地で計画されている合同演習に、冷戦以降最大規模となる8,000名の陸軍部隊を派遣すると発表した。
 演習にはNATOのほか、加盟を検討しているフィンランドやスウェーデンなども参加を予定していて、英陸軍はフィンランドや北マケドニアなどに戦車や装甲戦闘車も配備するという。 (2205-043007)

ハンガリー駐留 NATO High Vigilance戦闘群 (HUN eVA BG) の展開

ハンガリー軍が8月4日、米軍とクロアチア、イタリア、モンテネグロ軍からなるハンガリー駐留NATO High Vigilance戦闘群 (HUN eVA BG) がハンガリー西部のÚjmajor基地に展開したと発表した。
 HUN eVA BGは1個機械科中隊、1個戦車大隊、1個砲兵中隊及びその他部隊からなり、そのほかにトルコで1個大隊がHUN eVA BGへの合流を準備している。
 またイタリアの山岳部隊が装備と共に空軍のC-130 1機でÚjmajor基地に近いPapa航空基地に空輸された。 (2210-081705)

フランス軍の東欧増派

 ルコルニュ仏国防相が10月11日、東欧におけるNATOの防衛体制を強化するため、マクロン大統領が10日夜に東欧に軍を追加派遣することを決めたことを明らかにした。
 追加の派兵は10月終わりか11月初めまでに完了する見通しという。
 フランスはすでにルーマニアに750名の部隊を派遣しているが、ルーマニアに装甲歩兵部隊と戦車部隊を追加で派遣する。
 またリトアニアにはRafale戦闘機を追加配備するほか、エストニアにも軽歩兵部隊を増派する。
 フランスはすでにポーランドにおけるNATOの防空任務にRafale戦闘機2機や支援機を派遣しているほか、エストニアには300名が駐留している。 (2211-101215)

Baltic Tiger演習で除染チームが急速展開

 10月に行われたBaltic Tiger演習でドイツからエストニアへ除染チームが急速展開する確認が行われた。
 演習ではドイツ空軍のTyphoon 2機が展開しているタリンの飛行場にベルリンから飛来したA400M 1機がドイツのチームを乗せて着陸した。 (2212-111015)

スバルキ隘路でポーランド軍と演習

 NATOが11月25日、スバルキ隘路での訓練に参加した。 ポーランド国防省によると、軍事演習には陸軍および空軍から2,000人が参加した。
 スバルキ隘路は、ロシアに占領された場合、バルト諸国が他のNATO加盟国から孤立することになるため、戦略的要衝として位置付けられている。 (2212-112602)

5・3・1・2・4 新行動指針「戦略概念」

ウクライナ軍の近代化に向けた包括的支援策で合意

 NATO国防相会合が6月16日に2日間の討議を終え閉幕した。
 ストルテンベルグ事務総長は閉幕後に記者会見し、6月末のNATO首脳会議でウクライナ軍の近代化に向けた新たな包括的支援策で合意する見通しを示した。
 首脳会議での採択を目指す行動指針「戦略概念」の中で、中国に対するNATOの立場を初めて示すことも明らかにし、更に事務総長は、ロシアや中国に対するNATOの立場を示す新戦略概念の採択を目指す方針を明言した。
 NATOは2010年の首脳会議で現行の戦略概念を採択したが、これ以降、中国の軍事的台頭に対する懸念が強まった。 6月末の首脳会議には日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドも参加する。 (2207-061701)

 NATOのストルテンベルグ事務総長が6月16日の国防相会議後の記者会見で、東欧を中心とした加盟国の防衛力を高めるため、新態勢を築くことを明らかにした。
 NATOは以前からバルト三国とポーランドに多国籍部隊を配置してきたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて現在はバルト海から黒海沿いのブルガリアまで8ヵ国に部隊を配置している。
 ただ、こうした展開をするには、重火器や弾薬の移送に時間がかかるため、今後は必要な装備を事前に集積し、更に危機に晒されたた加盟国の防衛を担当する国を予め指定して現地で訓練を重ねておく仕組みをとり、すばやく部隊を増強できるようにする。 (2207-061702)

ロシアを事実上の敵国と認定

 NATO首脳会議が6月28日夜にマドリードで開幕した。
 29日には今後10年間の行動指針となる新たな「戦略概念」を採択し、ウクライナを侵略したロシアを事実上の敵国と認定し、NATOは冷戦後最大の転換点を迎えている。
 NATOの戦略概念の改訂は冷戦後4回目で、2010年以来となる。 (2207-063012)

中国の脅威を初めて明記

 NATOが6月29~30日にマドリードで開く首脳会議で採択する今後10年程度のNATOの基本的な指針を記した文書戦略概念で、台頭する中国の脅威を初めて明記する。
 2010年に採択された現在の「戦略概念」は、ロシアとの関係を「戦略的パートナーシップ」とする一方、中国には触れていない。
 ストルテンベルグNATO事務総長は27日の記者会見で、新戦略概念で「中国が我々の安全保障、利益、価値観にもたらす課題に言及する」と明かした。
 ストルテンベルグ事務総長は22日に「中国を敵とは見なさないが、中国の台頭には対処する必要がある」と語っており、首脳会議には対中国での連携を視野に日本や韓、豪、ニュージーランドの首脳も招く。 (2207-062706)

 NATO首脳会議が6月28日夜にマドリードで開幕した。
 29日には今後10年間の行動指針となる新たな「戦略概念」を採択し、中国について欧米への組織的な挑戦を突きつけていると初めて明記し、NATOは冷戦後最大の転換点を迎えている。 (2207-063012)

多国籍即応部隊を300,000名以上に増強

 ストルテンベルグNATO事務総長は6月27日、多国籍即応部隊を300,000名以上に増強すると表明し、加盟8ヵ国の部隊を旅団級に格上げすると表明した。 (2207-062708)

 ストルテンベルグNATO事務総長が6月28~30日にマドリードで開かれるNATO首脳会議に先立ち27日に、NATO即応部隊を現行の40,000名から300,000名を遙かに超える水準に増強すると述べた。
 冷戦以降で最大の集団的抑止力および防衛の大改革になるという。
 この週に「ロシアはNATOが長年にわたって築こうとしたロシアとのパートナーシップおよび対話から遠ざかっている」と指摘し、「ロシアは対話ではなく対立を選んだことを遺憾に思うが、もちろんその上でわれわれはその現実に対応しなければならない」と語った。 (2207-062801)

 6月28~30日にマドリードで開かれたNATO首脳会議で緊急対応部隊の増強が合意された。
 会議ではロシアを直接の脅威とすると共に、初めて中国についても安全保障上の関心対象とした。
 ストルテンベルグNATO事務総長は現在大隊戦闘団規模であるNATOの部隊の東翼に位置する部隊を旅団規模に格上げすると共に、NRFの規模を300,000以上に増強すると述べた。 (2209-070607)

5・3・1・2・5 対露作戦準備

軍需品の備蓄増強

 NATOは10月12、13両日に国防相理事会を開催するが、ストルテンベルグ事務総長は11日にNATO本部で記者会見し、ウクライナに対する支援をめぐり、加盟国の装備品の備蓄増強について議論する方針を示した。
 ストルテンベルグ氏は、備蓄について既に軍需産業などと交渉していると述べた。 (2211-101202)

核抑止に関する軍事演習実施

 ストルテンベルグNATO事務総長が10月11日、ロシアの核戦力を注視しているとしてNATOが来週に核抑止演習を実施すると発表した。
 演習は以前から計画されていた通常のものであり、今中止すればロシアに「誤ったシグナル」を送ることになるとした。
 記者会見で「核抑止力が安全かつ効果的であることを確認するための演習」とし、NATOの軍事力はロシアとの緊張激化を防ぐ最善の方法とした。 (2211-101203)

備蓄の拡大、共同購入の調整支援

 ストルテンベルグNATO事務総長が記者会見で、NATOが兵器の増産や在庫補充の方法を巡り業界や加盟国との対話を始めていると表明し、国防相会合では在庫拡充に向けた何らかの決定が出るとの見通しを示した。
 侵攻されたウクライナへの支援で各国が手元の兵器在庫を供与に向ける判断は間違っていなかったが、今や加盟国が自国の軍事能力そのものを確実にし、ウクライナに対しても侵攻の「長期化」に備えて支援を続けるには、兵器増産が必要と訴えた。
 複数の防衛企業幹部からは、欧州で平和が長年続いたため、業界はEU加盟国の防衛費削減にいや応なく対応してきたが、ロシアのウクライナ侵攻で一気に需要が急増したため、今は各社とも増産に奔走しており、EUに対して加盟国の兵器共同購入の調整支援を求める声が改めて上がった。 (2211-101216)
【註】欧米諸国からウクライナに供与された兵器は各国の保管装備が中心であったため、殆どが各国で使われなくなって保管されて伊いた兵器や新型と換装される現役を離れる旧型の兵器で、最新型は限られていた。

5・3・1・3 対中方針

5・3・1・3・1 戦略概念

「5・3・1・2・4 新行動指針「戦略概念」」で記述
5・3・1・3・2 中露協力懸念

 ブリンケン米国務長官が30日にNATO外相会合2日目の討議後の記者会見で、NATO加盟国は中国の強圧的な政策、偽情報の拡散、ロシアとの協力を含む急速で不透明な軍事力増強を引き続き懸念していると述べ、NATO加盟国は中国の急速かつ不透明な軍事力増強と中露の協力を懸念しており、NATO外相会合で中国がもたらす課題への具体的な対処について討議したと述べた。
 ブリンケン長官は、NATO外相会合2日目の討議でこうした課題に対応するために具体的な方法について協議したと述べたが、詳細については明らかにしなかった。 (2301-120101)
5・3・1・3・3 台湾問題

「3・4・6・1 欧州諸国 ・NATO が台湾情勢に特化した協議」で記述
5・3・1・4 NATO 軍の演習等

5・3・1・4・1 BMD 演習

「8・2・1・2・2 BMD 演習」で記述
5・3・1・4・2 大規模統合演習

Cold Response 2022

 外部の脅威に対するノルウェーの防衛能力強化を目指す、NATOの冬季寒冷地大規模演習が、ノルウェー北部で行われている。
 3月14日から始まった演習には、フランスやスペイン、ポーランドなど欧州と北米など27ヵ国の加盟国と友好国からの30,000名と、航空機200機、車両50両が参加して4月1日まで行われる。
 演習はウクライナ危機以前に計画立案されており、NATOはロシア軍の侵攻とは関係ないと否定しているが、ウクライナ危機が演習の背景にあることは疑いようがない。
 演習の一環として3月22日、空中給油訓練がノルウェー上空で実施され、ドイツ西部のケルンから参加したNATOの共同運用給油機(MRTT)であるA330が、ノルウェー空軍のF-35と、スウェーデン空軍のSaab 39 Gripenに給油を行った。
 また、ウクライナ侵攻を受けてNATOは警戒活動を強化しており、侵攻開始から3週間、約200万立の航空燃料がNATO加盟国機に空中給油された。 (2204-032310)

 NATOのCold Response 2022演習が27ヵ国から30,000名と航空機20機、艦艇50隻以上が参加してノルウェーで行われ、3月21日には米海兵隊とオランダ海兵隊がオランダ海軍の輸送揚陸艦から上陸する揚陸演習がノルウェーのSandstrandで行われた。 (2206-033003)

欧州東翼での大規模即応演習 Quick Response

 NATO加盟国が5月12日、欧州東部国境沿いでの即応態勢の向上を目指して、北マケドニアで実施された在欧米陸軍主導の大規模演習Quick Responseに参加した。
 演習には、在欧米陸軍を中心にNATO加盟19ヵ国から10,000名近くが参加して、北極圏からバルカン半島までの5つの地域で、5月20日まで行われる。
 米軍からは、北極圏からノルウェーまでを任務範囲とするアラスカ駐留の空挺部隊と、バルト3国に駐留する第173空挺旅団と第82空挺師団、さらにドイツのシュツットガルトに駐留する特殊部隊が参加し、米軍以外ではアルバニア、フランス、ギリシャ、イタリア、モンテネグロ、英国などが参加している。 (2206-051306)

5・3・1・4・3 陸上演習

定期積雪寒冷地演習

 エストニアのロシア国境からわずか100kmの森林地帯で、英国、エストニア、フランスの部隊1,300名が参加したNATO部隊による積雪寒冷地での定期演習が実施された。
 ロシアは現在、ウクライナ周辺で兵力を増強する一方、ポーランドおよびバルト三国からNATO部隊を撤退させるよう要求している。 (2203-020816)

Swift Response 演習

 在欧米陸軍の空挺部隊と在欧特殊部隊が北極圏からバルカン半島までの地域で大規模演習Swift Responseを5月20までの予定で開始した。
 陸軍からは北極圏からノルウェーまでを任務範囲とするアラスカ駐留の空挺部隊とバルト三国に駐留する第173空挺旅団と第82空挺師団が参加し、シュツットガルトに駐留する特殊部隊はTrojan Footprint演習を実施した。
 米軍は空挺隊員は3,300名以上と前年の同名演習の2倍以上が参加し、NATO加盟国からも9,000名が参加している。 (2206-050418)

Scorpions Legacy 2022 演習

 ルーマニアのスマルダン演習場で6月3日、NATOの演習Scorpions Legacy 2022が行われ、ルーマニア軍1,800名をはじめ、米国、フランス、ベルギー、イタリア、ポルトガル、ブルガリア、ポーランドの部隊が参加した。 (2207-060407)

5・3・1・4・4 海上演習

Neptune Shield 2022 演習

 地中海東部でNATO加盟国による共同演習Neptune Shield 2022が行われている。
 演習は5月17日から31日にかけて、バルト海、アドリア海でも行われ、米国のほかアルバニア、ブルガリア、クロアチア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、リトアニア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、トルコ、英国も参加する。 (2206-052413)

BALTOPS 2022 演習

 2022年で51回目となるNATOの年次演習BALTOPSが6月中旬にバルト海で、NATO加盟14ヵ国とスウェーデン、フィンランドから、45隻の艦艇、75機以上の航空機と7,000名が参加して行われる。
 演習に先立ちMV-22 OspreyやAH-1 Cobraを搭載した米海軍強襲揚陸艦Kearsargeが、初の米大型艦としてストックホルムに入港し、米統合参謀本部議長のミリー陸軍大将がスウェーデンのアンターセン首相とKearsargeを訪問した。 (2207-060501)

5・3・1・4・5 航空演習

Air Shielding

 NATOが12日、ポーランド中部ワスクの空軍基地周辺でAir Shielding演習を実施し、F-16やF-22、Eurofighterが参加した。 (2211-101507)

5・3・1・5 NATO 軍の行動

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・2 在欧米軍

5・3・2・1 在欧米軍の規模

在欧米軍の規模

 米軍は1980年代には欧州に200,000名が駐留していたが2015年には33,000名にまで削減され、100ヶ所の陸軍駐留基地が閉鎖されていた。
 その後2014年のロシアによるクリミア併合を機に米軍は人員や装備を欧州に戻し始めた。
 オバマ政権時代には初めてERIが$3.4Bで開始され$2Bで初めて欧州に機甲旅団が巡回配置され、更にStryker旅団や歩兵旅団も配置され、別の$1.8Bで完全1個機甲旅団分の装備も備蓄された。
 ERIはFY19に$6.5Bのピークとなり、FY21には$4.5Bとなった。 そのうちの$250Mはウクライナへの軍事援助であった。 (2203-021519)

 年頭には駐留や巡回配置で80,000であった在欧米軍が、ロシアのウクライナ侵攻により現在では90,000以上になっている。 国防総省はこれを暫定措置としているが国防総省高官は3月25日にも在留米軍の規模を見直さざるを得なくなってきたことを認めた。
 現時点までに欧州に派遣された米軍は11,600名で、内訳は以下のようになっている。 (2204-032607)

・第82空挺師団 4,700名       :ポーランド
・第3歩兵師団第1機甲旅団戦闘団3,800名:ドイツ
・2,000名前後            :NRF
・第2騎兵連隊 1,000名        :ルーマニア
・第173空挺旅団戦闘団 800名     :ラトビア
・第5軍団 300名           :ドイツとポーランド
・武器修理隊 300名         :ドイツ
・第18航空旅団  300名       :ドイツ
・F-35クルー  100名        :エストニアとラトビア
・AH-64クルー   100名       :バルト/ポーランド
・Aairchild AFB 150名        :ルーマニアとポーランド
在欧米陸軍のローテーション

 米国防総省のカービー報道官が5月13日、欧州に巡回駐留している陸軍部隊と1:1で交代する10,700名が6月に米国から欧州に向かうと発表した。 欧州に向かうのは、

・ドイツに駐留している第3歩兵師団第1 ABCTと交代する第1騎兵師団第3 ABCTの4,200名
・ポーランド駐留第82空挺師団第3 IBCTと交代する第101空挺師団第2 IBCTの4,200名
・東欧に駐留する第82空挺師団と交代する第101空挺師団司令部の500名
などである。
 1月以前の駐欧米軍は80,000名であったが、ウクライナ戦争以降8,900名が欧州に展開している。 (2206-051310)

5月下旬の在欧米軍規模

 ミリー米統合参謀本部議長がウクライナへの軍事支援に関する2回目の国際会合を終えた米国防総省での記者会見で、欧州内での作戦に従事する米軍兵力は現在102,000名でロシアによるウクライナ侵攻前と比べ30%増の水準にあることを明らかにした。
 海上戦力では、2021年秋の時点での戦闘艦は6隻のみだったが、現在は地中海やバルト海に24隻の海上戦闘艦や潜水艦を配備しているとした。
 空軍戦力は現在、12飛行大隊と2個戦闘航空旅団が展開し、地上戦力では2個軍団、2個師団に6個の旅団戦闘団などを投入しているとした。 (2206-052609)

ポーランド駐留米軍の一部延長とバルト諸国での米軍配備の変更

 NBC Newsが6月27日に米当局者の話として、バイデン米大統領がロシアのウクライナ侵攻前に承認したポーランドでの米軍増強の一部延長とバルト諸国での米軍配備の変更を発表する予定だと報じた。
 米軍の配置変更はリトアニア、ラトビア、エストニアなどに影響を与える可能性がある。
 より長期的にこの地域に配備される可能性のある新たな部隊の規模は最小限にとどまるというが、ポーランドでは数百名程度となる可能性だという。 (2207-062805)

 米国防総省が6月29日、在欧米陸軍の支援部隊を増強するが、現在駐留している旅団戦闘団 (BCT) の数は増やさないと発表した。
 一方ポーランドに駐留している第5軍団前方指揮所は恒久駐留に変えるという。 (2207-062910)

 マドリードで開幕したNATO首脳会議に出席したバイデン米大統領が6月29日、ポーランドに恒常的な米軍司令部を新設することなどを柱とする欧州防衛体制の強化策を表明した。
 米軍として東欧では初となる常駐部隊をポーランドに置くほか、ルーマニアやバルト三国に巡回配置部隊を増強する。 (2207-062918)

F-35 2個飛行隊増派と駆逐艦4隻体制から6隻体制へ

 マドリードで開幕したNATO首脳会議に出席したバイデン米大統領が6月29日、F-35 2個飛行隊を英国に追加配置するほか、スペインに配備されている駆逐艦を現行の4隻から6隻体制にすることでも調整中だと発表した。
 更にドイツとイタリアでは防空態勢の強化を進める。 (2207-062918)

5・3・2・2 NATO常設艦隊の米艦

 Norfolkを母港とする米海軍駆逐艦Forrest ShermanがNATOの第2常設艦群の旗艦となるため6月11日にNorfolkを出港し地中海に向かった。
 Forrest Shermanの欧州派遣は2月以来2回目で、4月に米海軍第2艦隊での3ヶ月の任務を終え帰還していた。
 NATO常設艦隊はNATO即応軍 (NRF) 急速対応軍 (VJTF) の一翼を成すもので、その隷下のForrest Shermanが旗艦となる第2常設艦群には英加仏独伊西希とルーマニアが参加している。 (2207-061307)
5・3・2・3 在欧米軍の行動

Neptune Strike 2022演習

 NATOが1月24日~2月4日に地中海で実施したNeptune Strike 2022演習に、米海軍CSGが冷戦後初めて参加した。
 この演習に参加したのはHarry S Truman CSGで、このほかに空母2隻、艦船15隻、航空機90機が参加した。 (2206-021605)

 米海軍空母Harry S. Trumanと4,800名の乗組員が、地中海中部でNATOの共同演習Neptune Shield 2022に参加して、同盟軍との連携強化を目指して訓練を重ねている。 演習は5月31日まで続けられる。
 5月17日から開始された演習は、バルト海と大西洋、さらに地中海で繰り広げられ、参加国は米国の他にアルバニア、ブルガリア、クロアチア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、リトアニア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、トルコと英国の18ヵ国におよぶ。
 米国からはHarry S. Truman CSGの他に、強襲揚陸艦Kearsarge ESGと第22海兵遠征隊が参加している。 (2206-052604)

強襲揚陸艦 Kearsarge を旗艦とする ESG をバルト海に派遣

 米海軍は8月、強襲揚陸艦としては20年ぶりに、Kearsargeを旗艦とするESGを国際演習のためバルト海に派遣した。
 米第6艦隊のKearsargeは、第22海兵遠征軍の旗艦として、バルト海一帯の安全確保の任務に当たっており、米海軍の他の艦船とともに、スウェーデン軍とフィンランド軍と数ヵ月間演習を行ってきた。 (2210-090507)

米英仏伊、4ヵ国 CSG が同時展開

 米国防総省が17日、10月に配備された米海軍最新鋭の空母Gerald R. Fordを含む米欧4ヵ国の5個空母打撃群 (CSG) が欧州周辺で同時展開中であることを明らかにした。
 米国は同盟国との相互運用性を高めて、ロシアを牽制する思惑があるとみられる。
 国防総省によると、Gerald R. Fordと同時運用している空母は、米海軍George H. W. Bush、英海軍Queen Elizabeth、フランス海軍Charle de Gaulle、イタリア海軍Cavourである。 (2212-111807)

5・3・3 E U

5・3・3・1 EU の体制

5・3・3・1・1 加盟国の結束

ショルツ独首相がフランスとの二人三脚へ動き出し

 ロシアの軍事的脅威など欧州の脆弱性が顕在化しているなか、仏独枢軸といわれたかつての時代が再開する予感がある。
 ドイツは欧州統合の深化に後ろ向きだったメルケル時代とは一線を引き、フランスとの二人三脚へ動き出した。
 ドイツのショルツ首相は新政権発足直後の初外遊で12月10日にフランスを公式訪問し、マクロン大統領とEU強化のために欧州統合を深化させることで一致した。 (2202-010201)

ハンガリーへ制裁措置

 EU欧州委員会が9月18日、法の支配の保護を目的とする新たな制裁措置を初適用しハンガリーへの€7.5Bの補助金の交付を汚職を理由に一時停止することを勧告した。
 EUは2年前に、ハンガリーとポーランドで民主主義が損なわれるとして、新たな制裁措置を導入した。
 EUは、長期政権を敷くオルバン首相が裁判所やメディア、学術界に圧力を掛け、移民、同性愛者、女性の権利を制限していると主張している。
 予算と総務を担当する欧州委のハーン委員によると、勧告は2021~2027年のEU共通予算におけるハンガリー向けの結束基金の1/3の交付を停止する内容になっている。 (2210-091907)

ハンガリーの逆襲

 ハンガリーが12月6日、EU行政執行機関の欧州委員会が提案した来年のウクライナ向けの$19Bに上る支援策を拒否したため、EUは代替案を模索することになった。
 EUとハンガリーはこのところ「法の支配」をめぐって論争を繰り広げており、EUはハンガリーへの資金拠出を保留している。
 民主的な自由を制限するハンガリーの「法の支配」違反に対する罰として、EUはCOVID-19感染症からの復興基金$7.9Bの同国に対する支払いを保留している。
 今回のハンガリーによるウクライナ支援策の拒否はこうした対立関係の延長上にある。 (2301-120704)

5・3・3・1・2 加盟と離脱

ウクライナが EU 加盟を正式申請

 ウクライナのゼレンスキー大統領が3月28日、EU加盟を正式に申請する文書に署名したと明らかにした。
 ゼレンスキー大統領は、ウクライナが特別措置で直ちにEUに加盟できるよう要請した。 (2204-030104)

ウクライナが NATO サイバ防衛協力センタに貢献国として参加

 エストニアの首都タリンに設置されているNATOサイバ防衛協力センタ (CCDCOE) が3月4日に声明で、ウクライナはサイバ領域における敵対者に関する貴重な情報をもたらすことができる」とし、ウクライナが貢献国としてCCDCOEに参加すると発表した。
 CCDCOEは、すでにNATO加盟国以外の国もCCDCOEに参加しているとしている。 (2204-030505)

デンマークが EU 安保参加へ

 デンマークで6月1日にEUの共通安全保障政策への参加を問う国民投票が行われ、開票の結果、66.9%:33.1%で賛成支持が過半数に達した。
 デンマークは1992年には国民投票でEU共通安保への不参加を決め、NATOに加盟しながらEU共通安保には適用除外権を行使してきたが、ロシアによるウクライナ侵攻が世論の変化を促した。
 フレデリクセン首相は「プーチン露大統領への重要なシグナルだ」と評価した。 (2207-060211)

ウクライナ、モルドバ、ジョージアをEU加盟候補国に

 EUの行政執行機関である欧州委員会が、ウクライナとモルドバにEU加盟候補国としての地位を与えることを推奨する。
 候補国の地位付与の最終決定にはEU加盟全27ヵ国の承認が必要で、加盟手続きは多数のステップや条件があり、通常は10年以上を要するする。
 事情に詳しい複数の関係者によれば、欧州委は6月17日に意見を公表する見込みで、法の支配や司法、汚職防止に関して両国が将来満たさねばならない条件を設定する。
 特定の条件を満たせば、ジョージアにも候補国の地位を与えることを推奨する見通しだという。 (2207-061705)

北マケドニアとアルバニアが EU 加盟交渉開始

 EUの2022年後半の議長国チェコのフィアラ首相が7月18日、西バルカン地域の北マケドニア、アルバニアの両国とのEU加盟交渉入りについて、全加盟国が合意したことを明らかにした。
 両国首脳が19日にブリュッセルを訪れ、正式に協議を始めるが、加盟実現にはさらに数年を要するとみられる。
 北マケドニアの議会は16日に、交渉入りに反対する隣国ブルガリアとの対立解消に向けたフランスの仲裁案を承認したため、必要だった全加盟国からの同意を得られた。
 北マケドニアは2004年、アルバニアは2009年にEU加盟を申請し、それぞれ2005年と2014年に加盟候補国として認定され、EUは2020年3月に両国との加盟交渉開始を決めたが、ブルガリアが北マケドニアの言語や同国内の少数派ブルガリア系住民の扱いを理由に交渉入りを拒否したため、アルバニアと共に初会合が先送りされてきた。 (2208-071915)

ボスニア・ヘルツェゴビナを加盟候補国に

 EU欧州委員会が10月12日、EUへの加盟を申請していたボスニア・ヘルツェゴビナを加盟候補国と認めるよう加盟国に勧告した。
 ただ、欧州委は加盟に向け多方面での改革も要求しており、全27加盟国が同意して加盟候補国に認定されるかが今後の焦点となる。 (2211-101306)

ウクライナとモルドバに EU 加盟候補国の地位

 EUの行政執行機関である欧州委員会が、ウクライナとモルドバにEU加盟候補国としての地位を与えることを推奨する。
 候補国の地位付与の最終決定にはEU加盟全27ヵ国の承認が必要で、加盟手続きは多数のステップや条件があり、通常は10年以上を要するする。
 事情に詳しい複数の関係者によれば、欧州委は6月17日に意見を公表する見込みで、法の支配や司法、汚職防止に関して両国が将来満たさねばならない条件を設定する。
 特定の条件を満たせば、ジョージアにも候補国の地位を与えることを推奨する見通しだという。 (2207-061705)

西バルカン地域の6ヵ国加盟問題

 EUと西バルカン諸国が12月6日にアルバニアの首都ティラナで首脳会議を開催した。
 EU首脳は会議後、「西バルカン諸国のEU加盟という観点に対する完全かつ明確なコミットメントと加盟手続きの加速要請」を再確認した。
 今回の会議で西バルカン諸国のEU加盟を巡る具体的な進展はほとんど見られなかったものの前回の会議からムードは改善し、来週にも何らかの進展が得られるとの期待が高まった。 (2301-120702)

 EUが12月6日に西バルカン地域の6ヵ国とアルバニアの首都ティラナで首脳会議を開き、6ヵ国のEU加盟に向けた取り組みの加速や安全保障面での協力拡大などを柱とする「ティラナ宣言」を採択した。
 宣言ではロシアのウクライナ侵攻について「欧州と世界の平和と安全を危険にさらしている」と非難し、EUと西バルカン諸国の「戦略的パートナーシップの重要性」に言及したした一方、汚職対策などEU加盟に向けた内政改革の加速も6ヵ国に促した。
 西バルカン6ヵ国とはアルバニア、セルビア、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、モンテネグロで、EUは中国やロシアがバルカン半島での影響力の拡大を狙っていることを念頭に、EU非加盟の6カ国との関係強化を急いできた。 (2301-120703)

クロアチアのシェンゲン協定参加承認

 欧州各国の出入国審査を撤廃したシェンゲン協定に、2023年からのクロアチアの参加が承認された。 参加は27ヵ国目となる。
 一方、同様に参加を申請していたブルガリアとルーマニアについては、不法移民の増加を懸念するオーストリアなどが反対し見送りとなった。 両国は再申請する方針を示した。 (2301-120904)

5・3・3・1・3 行動指針

Action Plan on Military Mobility 2.0

 EUの執行機関である欧州委員会が11月10日、ロシアのウクライナ侵攻に伴う安全保障情勢の悪化を背景に、サイバー防衛を強化するほか、部隊が国境を越えて迅速に移動できるようにするための2つの行動計画を提案した。
 また市民と軍隊を守るためにさらなる行動が必要であり、NATOとの協力を強化すべきと指摘した。 (2212-111106)

 EUの執行機関である欧州委員会が10日に提起したAction Plan on Military Mobility 2.0の骨子は以下の通りである。 (2212-111107)

・インフラに潜在する問題点を特定して改善に優先順位を付けると共に燃料サプライチェーンを統合し、要件を統合するための将来の行動を通知し、大規模な部隊による短期間での移動を支援する。

・部隊の移動や兵站に関する通関手続きをディジタル化する。

・サイバー攻撃やその他のハイブリッド脅威から輸送インフラを保護する。

・戦略空輸能力へのアクセスを進めるため、民間部門との相乗効果を最大化して、特に空と海による部隊の機動性を強化する。

・輸送システムのエネルギー効率と耐気候性を強化する。

・NATOの基幹である米国、カナダ、ノルウェーなどとの協力を強化する一方で、ウクライナ、モルドバ、西バルカンなどの地域友好国や拡大友好国との対話を持続する。

5・3・3・2 対外姿勢

5・3・3・2・1 対露姿勢

ウクライナ問題への積極関与意思表明

 EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表が訪問中のウクライナで1月5日、国境での紛争は深刻化する寸前で、欧州の安全保障全体に関しても緊張が高まっているとして、ロシアの軍事行動がエスカレートすればロシアに重大な結果をもたらすと述べた。
 また、ウクライナの安全保障は欧州の安全保障に影響するとの認識を示し、欧州の安全保障を議論する際にはEUも交渉に参加すべきとした。 (2202-010601)

Nordo Stream 2 対応

 EUのフォンデアライエン欧州委員長が1月27日にCNNインタビューで、ロシアがウクライナを侵攻した場合にガスパイプラインNordo Streamを停止する可能性を否定しなかった。
 EUはロシアにとって最大の貿易相手でモノの貿易の40%を占め、ロシアへの外国直接投資 (FDI) でも最も大きい75%のシェアを握っている。 (2202-012804)

 EUの執行機関である欧州委員会で通商を担当するドムブロフスキス副委員長が1月31日、ドイツとロシアを結ぶガスパイプラインNordo Stream 2を保留とし、同パイプラインが欧州のエネルギー政策に整合するか調査していると述べた。
 ドムブロフスキス副委員長は、天然ガスがロシアに武器として利用されないよう、欧州はあらゆる手段を尽くすとし、欧州委が2月1日にウクライナに対する€1.2Bの金融支援を承認する予定であることも明らかにした。 (2203-020103)

欧州議会がロシアをテロ支援国家に指定

 ロイタ通信などによるとEU欧州議会が11月23日に、エネルギーインフラや病院や学校などを標的としたロシア軍の攻撃は国際法に違反しているとしてロシアをテロ支援国家に指定した。 (2212-112313)

 AP通信などが、EUの欧州議会が11月23日にウクライナ侵攻を続けるロシアを「テロ支援国家」と認定する決議案を賛成多数で可決した直後、議会のウェブサイトがサイバ攻撃を受けたと報じた。
 メツォラ議長は「親露派グループが犯行を主張している」と明らかにした。
 議会の報道官はDDoS攻撃を受けた可能性があるとの見方を示した。 (2212-112410)

5・3・3・2・2 対中姿勢

リトアニアの擁護

 マクロン仏大統領が1月11日、EU加盟国のリトアニアが台湾との関係を強化したことにより中国から経済、外交で強い圧力を受けている問題について「懸念し続けている」と述べ、EUが結束して対応する考えを示した。
 フランスは今年前半のEU議長国で、外交筋によると13日からフランス西部ブレストで開かれるEUの非公式外相会合は対中関係を議題の一つとし、リトアニアへの連帯を確認する。 (2202-011203)

 EUが1月27日、中国が台湾との関係を深めるリトアニアからの輸入を事実上差し止めているとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。
 2021年12月以降、中国がリトアニア産品の通関や輸入申請などを拒否したり、EU加盟国の企業に対してリトアニアの材料を使った製品を中国へ輸出しないように圧力を掛けたりしていると訴えている。 (2202-012713)

 中国がリトアニアに差別的な貿易措置を取ったとしてEUが世界貿易機関 (WTO) に提訴した問題で、英国が7日にEUを支援するため協議に参加する意向を示した。 米国やオーストラリアも協議への参加意向を既に表明している。 (2203-021006)

5・3・3・3 安全保障政策

5・3・3・3・1 安全保障政策の転換

3月に閉幕したEU首脳会議

 3月11日に閉幕したEU首脳会議はウクライナ危機一色に染まった。 ロシアの脅威を踏まえ防衛力増強に向け投資を拡大することに合意した。
 首脳会議の共同宣言は、ロシアの侵略戦争は欧州の歴史における構造的転換だとし、EUの安全保障に関しより大きな責任を引き受ける決意を示した。
 EUの防衛力増強に向けた国防費や投資の拡大に加え、ロシア産化石燃料への依存からの早期脱却を目指す方針でも一致した。
 第2次世界大戦後に不戦共同体として発展してきたEUが軍事を前面に出す姿は、大きな変化を印象付けた。 (2204-031903)

戦略羅針盤構想

 EUが3月21日開いた外相国防相理事会で、2030年までの安全保障戦略となる戦略羅針盤を採択した。 24~25日に開くEU首脳会議で正式に承認する。
 戦略羅針盤では、陸海での定期的な演習を実施したり、サイバ攻撃への備えを強化したりすることを明記し、宇宙戦略を策定するほか、国防費を増額する方針も明示した。
 またNATOや国連、米国や日本などとの関係を深めることも盛った。 (2204-032205)

ロシアのウクライナ侵攻への対応

 12月15日開幕したEU首脳会議の合意文書案によると、ロシアのウクライナ侵攻を機に自らの安保環境の悪化に危機感から、防衛安全保障分野での統合を徐々に深め、兵器の開発や共同調達に加え、他国への軍事訓練などに着手するとした。
 具体的には加盟国で兵器の共同調達を始めるほか、ウクライナへの兵器供与や加盟国の在庫補充を迅速にできる仕組みを検討する。 (2301-121510)

5・3・3・3・2 エネルギー安全保障

ベルサイユ宣言

 EUが3月11日にパリ近郊ベルサイユ宮殿で開いた2日目の首脳会議でベルサイユ宣言を採択した。
 ウクライナに侵攻したロシアの軍事的脅威に対抗するため、EUの防衛力増強に向けた国防費や投資拡大を協調して進める方針で合意すると共に、早期にロシア産化石燃料への依存を解消することでも一致し、いずれも5月までに具体案を示すよう欧州委員会に指示した。
 フォンデアライエン欧州委員長は会議後の記者会見で、2027年までにロシアへの燃料依存脱却を目指す方針を表明した。 (2204-031201)

5・3・3・3・3 独自軍構想

上半期議長国フランスの思惑

 マクロン仏大統領が1月19日に欧州議会で行ったEU議長国としての演説で、ロシアや中国、米国などと対等に渡り合うにはEU加盟国が一体となる必要があると力説し、EUの安全保障軍事面の統合を推進すると表明した。 緊張が高まるロシアに対抗するには加盟国が結束する必要があると訴えた。
 マクロン大統領は、フランスが半年ごとの輪番制で1月~6月の間にEU議長国に就いた任期中に具体的な道筋で合意したいとの意欲を示した。 (2202-012002)

5,000名規模の即応部隊創設

 EUが3月21日開いた外相国防相理事会で、2030年までの安全保障戦略となる戦略羅針盤は5,000名規模の即応部隊の創設が柱で、ドイツが即応部隊の中核を2025年に提供することも確認した。 (2204-032205)

5・3・3・3・4 EDF (European Defence Fund)

EDF による総額€1.2Bにのぼる一次分の研究開発

 EUが先週、欧州防衛基金EDFによる総額€1.2B ($1.23B) にのぼる一次分の研究開発を、26ヵ国からの140件以上の提案に対し61件の提案に発注した。
 採用されたのは航空兵器に€190M、陸上兵器に€158M、海上兵器に€104Mで、AMDにも€100Mがついた。 この他にも各種技術に€227Mがついたほか衛生やCBRNも採用された。 (2208-072614)

極超音速弾防衛用迎撃弾 EU HYDEF の共同開発

 ドイツとスペインの企業がEDF最初の事業として極超音速弾防衛用迎撃弾の共同開発を行う。
 開発するのはEU HYDEFで、開発期間は36ヶ月、経費は€110M ($110.2M) で2035年以降の脅威に対処する。
 EUは既にPESCO計画でフランスとスペインなどがTWISTER計画を進めていることから、EU HYDEFはTeisterとの連携も図る。
 EDFでは61件の研究開発に€1.2B ($1.23B) が用意されている。 (2210-090508)

5・3・3・3・5 宇宙開発

 EU欧州委員会が2月15日、欧州独自の人工衛星通信網の構築計画案を発表した。
 米中露を中心に宇宙開発競争が激化する中、官民が利用可能な安全で信頼できる高速衛星通信網の確保を目指す。
 総事業費を€6Bと見込み、このうち€2.4Bを2027年までのEU予算から拠出する。 運用を終えた人工衛星やロケットの残骸といったスペースデブリの把握追跡などの安全対策も打ち出した。 (2203-021608)
5・3・3・3・6 移動迅速化枠組み

EUを離脱した英国が枠組みに参加

 EUが11月15日にブリュッセルで開いた防衛に関する外交委員会で、EUを離脱した英国がEU域内での部隊や装備の移動を迅速化する枠組みに参加すると発表した。
 この枠組みは2018年にPESCO軍事機動計画として設立されたもので、10月中旬のEU大使級協議で英国の参加が承認された。 (2212-111606)

5・3・4 その他の欧州連合

5・3・4・1 欧州政治共同体

マクロン仏大統領が提唱

 マクロン仏大統領が5月9日に欧州議会で、ウクライナが望むEU加盟にはプロセスに数年、数十年かかる可能性があると慎重な見方を示し、ウクライナや英国などのEU非加盟国が欧州の中核的な価値を共有できる新たな形での政治的な欧州共同体を支持すると表明した。
 欧州政治共同体については、政治的な協力や安全保障、エネルギー協力、輸送、インフラ投資、人の移動などの分野で中核的な価値観を堅持する民主的な欧州諸国に開かれるとした上で、共同体への参加が将来のEU加盟を約束するものでも、EUを離脱した国を阻害するものでもないと強調した (2206-051003)

リトアニア大統領が創設案を批判

 リトアニアのナウセーダ大統領が5月10日、マクロン仏大統領が提唱しているEUの枠組みを超えた「欧州政治共同体」を新設する構想について、ウクライナをEUに迎え入れようとする政治的意志の欠如を示すものだと批判した。
 ウクライナはロシアによる侵攻開始後にEUに加盟を申請したが、EU内では加盟手続きの迅速化は避けたいとの姿勢が根強く、現加盟国の中にはウクライナを「加盟候補国」と認定することにさえ慎重な国もある。 (2206-051105)

欧州政治共同体が始動

 基本的な価値観を共有するEU加盟国が非加盟国との連携強化を目指す欧州政治共同体が10月6日に始動し、40ヵ国超の首脳が初会合の舞台となったチェコのプラハ城で並び「結束」を印象づけた。
 今回、参加したのはEU 27ヵ国と非加盟の17ヵ国で、EUを離脱した英国のトラス首相やトルコのエルドアン大統領なども姿を見せ、ベルギーのデクロー首相によると欧州大陸で来ていないのはロシアとベラルーシだけという状況をつくりだした。
 ただ、新たな枠組みには不透明な部分も多く、今後どのような成果を上げるかは未知数である。 (2211-100711)

5・3・4・2 北欧連合

統合遠征軍 JEF (Joint Expeditionary Force)

 英国が主導する北欧10ヵ国の連合である統合遠征軍 (JEF) の6ヵ国首脳を含む代表が、3月14日に初めて英国首相別邸で会合した。
 Economistエコノミスト誌が3月19日号が報じたところによれば、ウクライナが要請する武器その他の装備を相互に調整し、供給し、資金を手当てすることに合意した。
 JEFは、その存在がほとんど知られていないが、10年前に即応部隊として設立され、英国、アイスランド、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの10ヵ国から成り、NATOと異なり危機への対応の意思決定がコンセンサスを要しない点が大きな特徴である。
 英国にとって、JEFを通じる活動はNATOの北辺における伝統的な軍事的役割を再構築し、同時に英国にとっての自然な同盟国との間にBrexit後の関係を作るものである。 (2205-040605)

5・3・5 欧州諸国

5・3・5・1 欧州全般

5・3・5・1・1 対中関係

 欧州は1年前には「蜜月」が目立った対中姿勢を「対抗」へと転換させた。
 EUの欧州議会は人権問題を巡って中国との制裁合戦を繰り広げ、2020年末にEUと中国が大筋合意した投資協定の承認手続きを凍結させた。 2月開幕の北京冬季五輪も加盟国に外交ボイコットを呼びかける決議を可決しかつてない存在感をみせた。
 同協定のとりまとめを主導したドイツのメルケル政権は2021年12月に退陣し、ショルツ新政権は対中姿勢を徐々に硬化させている。
 台湾問題で中国を激怒させたリトアニアは小国でも中国の経済圧力に屈服しないことを示し、地域の反中機運を高めた。
 相次ぐ不祥事などでジョンソン首相が率いる保守党の支持率が急落している英国では、支持率でトップに躍り出た労働党が中国の人権侵害や中国資本の英国企業への投資に、かつて「親中」と自称したジョンソン氏以上に厳しい目を向けている。 (2202-010101)
5・3・5・1・2 ウクライナ戦争の影響

息を吹き返す東欧の武器メーカー

 ウクライナの戦争は、欧州のほとんどの産業に大きなダメージを与えたが、クレムリンの統制下で共産圏に供給する武器を製造していた東欧の武器メーカーは、冷戦時代以来のペースで武器や弾薬を大量生産しており、30年ぶりの活況に沸いている。
 ポーランドの国営企業PGZは、UAVから装甲車まであらゆる軍用品を手掛けており、クワレック社長によると今後10年間の投資計画を当初のほぼ2倍に増やしたという。
 こうした動きはチェコでもみられ、ウクライナに$2.1B相当の武器を供給しており、同国のコペクニー副国防相は武器輸出が1989年以来最高額を記録すると語る。 (2212-112506)

ホロドモールの評価

 ソ連のスターリンが1930年代にウクライナで引き起こされた人為的な大飢饉「ホロドモール」について、ドイツの与野党議員がジェノサイドと認定する文書を用意していることがロイタが入手した草案で分かった。
 ドイツのメディアは、この文書は来週に連邦議会下院で審議され、可決される見通しと報じている。
 草案は、スターリン統治下のソ連が飢餓と抑圧を通じて、農民だけでなくウクライナの文化と言語をも支配、抑圧しようとしたと指摘し、現在の視点からすると、歴史的、政治的にジェノサイドの分類に当てはまるとし、独連邦議会はこうした見方に賛同するとしている。
 スターリンは1932年11月、農業の集団化を進める中、穀倉地帯ウクライナの農村から作付けに必要な種子を含む全ての穀物のほか家畜などの徴収を行い、数百万人もの人々が餓死した。
 ホロドモールについては、これまでにルーマニア、アイルランド、モルドバなどがジェノサイドと認定している。 (2212-112603)

 ドイツ連邦議会(下院)が11月30日、ソ連が90年前にウクライナで人為的に起こしたとされる大飢饉ホロドモールについてジェノサイドと認定する決議を賛成多数で可決した。
 決議は、ホロドモールでウクライナ人数百万人が犠牲となったとし、「不作の結果でなく、スターリン以下のソ連指導部に責任がある」と認めた上で、「飢餓による意図的な集団殺害」と糾弾した。 (2301-120105)

5・3・5・2 英 国

5・3・5・2・1 国 防 費

国防費を GDP 比2.3%に増額

 英政府が6月28日、ウクライナへの軍事支援強化により、2022年の国防費は国内総生産 (GDP) 比2.3%に拡大するとの見通しを示した。
 英政府の最新予測は、GDP比2.12%とするNATO推計値や、2.26%であった2021年推計値を上回る。
 ウォレス国防相は、ロシアだけでなく中国などの脅威に対処するため防衛力強化が必要だとし2028年までに国防予算をGDPの2.5%に引き上げるようジョンソン首相に求めている。 (2207-062908)

2020年代末までに GDPの2.5%に

 6月29~30日にマドリッドで開かれたNATO首脳会議でジョンソン英首相が、2020年代末までに国防費をGDPの2.5%に引き上げると述べた。
 冷戦時代の1950年代に英国防費はGDPの7%であったが冷戦終結後最近では2%程度になっていた。 2022年には2.3%である。 (2209-071303)

5・3・5・2・2 対中戦略

オーストラリアとの連携

 ジョンソン英首相とモリソン豪首相が2月17日に電話会談を実施した。
 両首脳は、新疆ウイグル自治区における人権侵害の報告に深刻な懸念を表明し、香港の権利、自由、高度な自治を保護するよう中国に求めたうえで、台湾海峡全体の平和と安定の重要性を強調し、台湾の有意義な国際機関への参加を支持すると表明したという。 (2203-021711)

台湾の支持表明

 トラス英首相が9月25日放送のCNN TVとの対談で、中国が台湾周辺での軍事的圧力を強めている現状を踏まえ「台湾が自らを防衛することができるよう、同盟国と協力していく決意だ」と強調した。
 ロシアによるウクライナ侵攻を許した事実を教訓とし、世界の他の地域で同じ過ちを繰り返してはならないと訴えた。
 トラス首相は首相就任前の外相在任中と同様、中国に強い姿勢で臨む立場を改めて明確にした一方、台湾への軍事的支援に踏み切るかどうかについては、明言を避けた。 (2210-092603)

原発計画から中国排除

 英Financial Times紙が12月1日までに、イングランド東部サイズウェルで進められている原発建設を巡り、英政府が中国企業に保有株式を放棄させるため、£100M超を支払うことが明らかになったと報じた。
 英国のインフラから中国の関与を減らす取り組みの一環という。
 対象はフランス電力(EDF)が主導するSizewell Cと呼ばれる£20B規模の原発計画で、中国原子力大手の中国広核集団が20%を出資している。
 9月に当時のジョンソン首相が発表した政府による最大£700Mの出資が11月29日に最終決定された。
 FTによると、この資金の一部を中国広核への支払いに充てるという。 (2301-120116)

5・3・5・2・3 アジア戦略

 ジョンソン英首相とモリソン豪首相が2月17日に電話会談を実施し、会談後の共同声明で「両首脳は、緊張緩和の必要性で同意し、ロシアのウクライナへのさらなる侵攻は大きな戦略的過ちで、人道上の重大なコストを伴うと強調した」と述べた。
 また英国は、インド太平洋地域における安全保障を強化するため、オーストラリアとの安全保障協定の一環として£25Mの拠出を表明した。
 この資金は、サイバースペースや国家の脅威、海上安全保障などの分野で地域の耐性を強化する。 (2203-021711)
5・3・5・2・4 欧州でのリーダーシップ

北欧2ヵ国と相互安全保障宣言

 英国が北欧2ヵ国と相互安全保障宣言に調印後初めて、7月10日に戦闘機を2ヵ国に派遣して共同訓練を実施した。
 フィンランドにはF-35B 2機を派遣してF/A-18と、スウェーデンにはTyphoon FGR4 4機を派遣してGripenと訓練を行った。 (2209-072003)

エストニアへSHORAD、MLRS、Chinook、Apache、Typhoonなどを派遣

 英国とエストニア政府が11月8日、エストニアへの英陸軍SHORAD部隊とMLRS部隊の派遣を継続することで合意し、両国国防相が合意文書に署名した。
 共同声明によると英国は2023年に攻撃ヘリや輸送ヘリも増派する。
 それによるとChinookは1月に、Apacheは3月、Typhoon戦闘機は4月に、5月には大規模演習Spring Stormに参加する部隊がエストニアに入る。 (2212-110901)

5・3・5・2・5 新たな課題

フォークランドが新たな火種

 中国の習国家主席が2月6日、北京冬季五輪の開会式出席のため訪中したアルゼンチンのフェルナンデス大統領と会談した後に両首脳が署名した共同声明で、アルゼンチンは台湾に関する中国の主張に、中国はフォークランド諸島の領有権をめぐるアルゼンチンの主張にそれぞれ支持を表明した。
 これに対しトラス英外相は猛反発している。 (2203-021009)

5・3・5・3 フランス

5・3・5・3・1 国防費の大幅増額

7.4%増の2023年国防費

 フランスのルコルニュ新国防相が7月7日、2023年の国防費として前年度より€3B ($3B) 多い€44B ($45B) を要求すると発表した。 (2208-070901)

戦時経済の開始

 フランス国防省が9月27日、2023年国防予算を前年より数百億ユーロ増額して€43.9B ($42.8B) とし、戦時経済を開始すると発表した。  これは2017年に比べて36%増で、2022年に比べても7.4%増になる。 (2210-092902)

5・3・5・3・2 対中政策

国民議会が新疆ウイグルでジェノサイドと非難する決議

 フランス国民議会(下院)が1月20日、中国が新疆ウイグル自治区でウイグル人に対するジェノサイド(集団殺害)を行っているとして、これを非難する決議を採択した。
 決議案は野党の社会党が提出したもので、与党の共和国前進も支持し、北京冬季五輪の開幕を目前に控えるなか、ほぼ全会一致で可決された。 (2202-012011)

5・3・5・4 ドイツ

5・3・5・4・1 連立の新政権

Nordo Stream 2 を巡る足並みの乱れ

 Nordo Sream 2の取り扱いがドイツ政府の内部で争いの種になった。
 ドイツの連立政権に参加する各政党は、ロシア産天然ガスへの欧州の依存度を著しく高めるとの批判があるNordo Stream 2について意見が割れており、中道左派の社会民主党 (SPD) がおおむね支持する一方、緑の党は反対している。
 緑の党党首のベーアボック外相は、ロシアが西側の隣国ウクライナを侵略すれば、建設は完了したものの未承認のNordo Stream 2は計画を進められないと表明している一方、伝統的にロシアとの協調を支持してきたショルツ首相が所属するSPDは態度が曖昧で、独産業にとってのロシア産ガスの重要性を強調している。
 ショルツ首相はNordo Stream 2に対する制裁を公式に受け入れることを拒んでいる。 (2202-011806)

5・3・5・4・2 積極的安全保障政策への転換

ショルツ首相「同盟国の安全保障にも責任を負う」

 ショルツ独首相が6月22日に議会で演説し、自国と同盟国を守るために軍備を強化し、EU最大の経済大国にふさわしい責任を果たすと表明した。
 また過去数十年で最大の安全保障上の危機においてドイツには特別な責任があり、自国だけでなく同盟国の安全保障にも責任を負っていると述べた。
 更にプーチン露大統領が「大失敗」を認めるまで、ウクライナに軍事的、人道的、財政的支援を行うことがドイツには不可欠と訴えた。 (2207-062311)

ショルツ首相「欧州の安全保障に主導的責任を担う」

 ショルツ独首相はベルリンで開かれた同国軍関連の会合で9月18日に記者団に、ドイツは欧州の安全保障を確保するための主導的な責任を担う用意があるとし、そのためにはドイツ軍が欧州で「最上の装備」を保持しなければならないとの考えを示した。 (2210-091804)

スロバキア、ポーランドへの防空寄与

 ランブレヒト独国防相がRheinische Post紙との対談で11月20日、EurofighterとPatriotでポーランド領空の安全確保を支援することを申し出たと述べた。
 ドイツは現在12個FUのPatriotを保有し、2個FUをスロバキアに配備している。
 ロシアのウクライナ侵攻以降NATOは東欧地域の防空体制強化に動いていて、10月にはドイツ主導で加盟国10ヵ国以上がPatriotなどで防空体制を強化する取り組みに着手した。 (2212-112104)

5・3・5・4・3 国防予算の大幅増額

国防費を GDP の 2%以上に

 ショルツ独首相が2月27日に連邦議会下院で演説し、国防費をGDPの2%以上にするとも述べた。
 ドイツは米国がNATOに呼びかけてきたGDP 2%の目標にも消極的な姿勢を貫き、2021年度は1.53%であった。 (2203-022803)

 ドイツ財務相が内閣に3月16日、2022年度予算の2次案と2022~2026年財政計画を提出した。
 この中で国防予算は2021年に比べて名目で7.3%増の€50.33B ($56.8B) になっているが2022~2026年財政計画では向こう4年間€50.1Bのままであるため、ショルツ首相が2月27比に国防費をGDPの2%にすると言ったのにかかわらず、対GDP比は2022年の1.32%から2026年には1.15%に下がってしまう。
 首相はまた、2022年の国防費に1年限りで€100Bを上乗せするとも述べていた。 (2206-033007)

 ドイツ政府が7月1日、2023年国防予算と、ロシアのウクライナ侵攻を受けた2022~2026年国防特別歳出計画を承認した。
 2023年予算の骨格は€50.1B ($55.4B) で前年度から0.6%増であるが、2021年6月の見積もりより€2.76B上回っている。
 今後4年間の計画は3月に閣議が決定した計画を踏襲し僅か数百ユーロだけ上回ったものである。 (2209-072004)

€100Bの国防基金設置

 ショルツ独首相が2月27日に連邦議会下院で演説し、2022年度予算で国防予算を€100Bの基金設置を発表した。
(2203-022803)

 ドイツ政府はロシアのウクライナ侵攻を受け、2月に国防費の抑制方針を大転換し€100Bの基金設置を発表していたが、特別基金を暗号化無線機やフリゲート艦、コルベット艦、SHORADの購入に充てる方針であることが、ロイタが確認した草稿と国防関係筋の話で明らかになった。
 草稿によると€20.7B程度が無線機器を含む軍のC&Cシステムに振り向けられる。
 また関係筋によるとK130型コルベット5隻を購入するとともに、F126型フリゲート艦2隻の購入オプションを実行に移す。
 更にP-8A哨戒機や、重武装した軽観測ヘリも買い増す。 (2207-060111)

 ドイツ連邦議会(下院)が6月3日、軍備増強に向け€10Bの特別基金を設ける法案を可決した。 国防費はNATOの目標値であるGDP比2%に達する見通しになった。
 財源確保のため、基本法(憲法)が近く改正される。 (2207-060405)

国防費を年平均€70B~€80Bに

 ショルツ独首相が先進7ヵ国 (G7) 閉幕を受けて6月28日、公共放送ARDとのインタビューで「今後数年間にわたり、年平均で€70B~€80B(10兆~11兆円)を国防費として費やすことを明らかにした。
 ショルツ首相はロシアのウクライナ侵攻開始直後の2月、対露防衛強化のため€100Bを投じると発表し、国防費増額に慎重だった従前の政策を大きく転換した。 (2207-062913)

GDP 2% を維持

 ドイツのランブレヒト国防相が9月12日、NATOが提示しているGDP比2%の国防費目標を、ドイツは€100B ($101B) の特別基金を使い切った後も維持する必要があると表明した。
 また、これまで避けてきた軍事面での指導的役割も受け入れなければならないと訴えた。
 ロシアによるウクライナ侵攻を受けた政策転換の一環で、ドイツのショルツ首相は2月に冷戦の終結後数十年を経て老朽化しているドイツ軍の武器や装備を標準的な水準に置き換える特別基金を活用して国防費をGDP比で2%超へ大幅に引き上げる方針を示していた。 (2210-091301)

5・3・5・4・4 エネルギー政策の見直し

Nordo Stream 2、ドイツ当局の最終承認

 独エネルギー大手ウニパー社のクマウバッハCEOがRheinische Post紙に、Nordo Stream 2は2020年半ばに承認される可能性があることを明らかにした。
 Nordo Stream 2は2021年9月に完成してドイツ当局による最終承認を待っているが、当局はこれまでのところ2022年前半に決定は下さないとの方針を示している。
 同紙によるとマウバッハCEOは「政治的な干渉は見られず当局は予定通り審査しているため、2022年半ばには承認が実現するかもしれないと述べた。
 一方で、ロシアとウクライナの対立が激化すれば、Nordo Stream 2は米国の制裁の対象になるかもしれないとの認識も示した。 (2202-010405)

Nordo Streem 2 の停止を警告

 ショルツ独首相が1月18日、ロシアがウクライナに侵攻すればドイツはロシア産天然ガスをドイツに送る海底パイプラインNordo Streem 2の停止を検討すると述べた。 (2202-011902)

ロシア産ガスへの依存度引き下げ

 ショルツ独首相が2月27日にウクライナ危機に対処するため開かれた臨時国会で、ロシア産ガスへの依存度を引き下げるためにエネルギー政策を大きく転換する方針を示した。
 石炭火力発電所と原子力発電所の運用期限を延長する可能性がある。
 ドイツは他の西側諸国からロシア産ガスへの依存度を引き下げるよう求める圧力を受けているが、石炭火力発電所を2030年までに段階的に廃止し、原子力発電所を今年末までに閉鎖する計画では、ほとんど選択肢がない状態となっていた。 (2203-022821)

LNG 輸入ターミナルの建設

 ドイツ政府が3月5日、国内初となるLNG輸入ターミナルの建設でオランダのガス大手ガスニーなどと基本合意したと発表した。
 LNGターミナルはドイツ北部のブルンスビュッテルに建設し、ドイツの年間消費量の約1割に相当する80億㎥の再ガス化能力を持つ。
 完成時期についてできるだけ早くとし、具体的な時期は示していないが、ドイツ通信は3~5年との地元の政治家の見解を報じた。
 ドイツは天然ガス輸入の過半をロシアからのパイプラインでに頼っているため、LNGを活用して調達源を多様化することでロシア依存度を下げる狙いである。 (2204-030604)

Nordo Streem 2 の一部を改造しバルト海沿い LNG ターミナルと接続

 独シュピーゲル誌が6月24日、ドイツ経済省がNordo Stream 2の一部を改造し、バルト海沿いのLNGターミナルとの接続部にすることを検討していると報じた。
 ドイツ領にある同パイプラインを接収し、残りの部分から切り離すことも検討しているという。
 ロシアのペスコフ大統領報道官は会見で、この報道についてコメントできないとしながらも、ドイツが具体的な措置を講じれば、まず弁護士が対応すると述べた。 (2207-062407)
【註】ドイツがNordo Stream 2から供給される予定であった天然ガスを、LNGターミナルとの接続してロシア以外からのタンカーによる供給に切り替えることを意味する。

原子力発電所閉鎖の延期を検討

 ドイツ経済省が7月18日、2022年に予定されている国内の原子力発電所閉鎖の延期を検討すると明らかにした。
 メルケル前首相は福島原発の事故を受けて脱原発を公約し、国内に残っている3箇所の原子力発電所は2022年末までに閉鎖する予定となっているが、経済省報道官は、再度見直して数週間以内に決定すると説明した。
 この3箇所の原子力発電所は、2022年第1/四半期に国内発電量の6%を占めていた。 (2208-071906)

国内原発3基のうち2基を稼働可能な状態に維持

 ドイツ政府が9月5日、国内の原発3基のうち2基について、2022年末の期限を超えて稼働可能な状態を維持すると発表した。
 天然ガスの供給がひっ迫する冬季に十分な電力を確保するためという。 (2210-090601)

フランスからドイツにガスを直接供給、欧州の連帯供給契約

 欧州でエネルギー問題が続く中、仏独が結んだ「欧州の連帯」供給契約に基づき、フランスからドイツに初めてガスが直接供給されたと発表した。
 当初、フランスのGRT Gasが独仏国境のパイプライン経由で供給する日量31GWhのガスはドイツが必要とするガスの量の2%に満たないが、供給元の多様化を進めているドイツはこれを歓迎している。
 GRT Gasによると、最大供給可能量は100GWhだという。 (2211-101413)

5・3・5・4・5 対露外交

対露姿勢の乱れ

 シュタインマイヤー独大統領が4月12日、他のEU加盟国首脳と共にウクライナ訪問を打診したものの、ウクライナ側から拒否されたことを明らかにした。
 ワルシャワを訪問した同大統領は記者会見で、欧州が団結してウクライナとの連帯を示すため、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの大統領と共に今週中にキーウを訪問する予定があったが、「キーウではこれが望まれなかった」と述べた。
 元外相のシュタインマイヤー大統領は、過去にロシアに友好的な姿勢を取ってきたことで国内外から批判が集中しており、最近になり、プーチン露大統領に対する親善的な姿勢は間違いだったと認めていた。 (2205-041304)

外交官等の相互追放

 ロシア外務省が4月25日、ドイツの外交官ら40人をペルソナ・ノン・グラータに指定し、国外追放すると発表した。
 ドイツが4月初旬に在ベルリンのロシア大使館に勤務する「相当数」の職員を国外退去させる決定を下したことへの報復措置と説明した。
 ベーアボック独外相は、ドイツが追放したロシア外交官らは実際に外交に従事せず、「われわれの自由と社会の結束に反する活動を組織的に行っていた」と述べた。 (2205-042603)

5・3・5・4・6 旧東独で親露デモ多発

 旧東ドイツ地域で、ウクライナに侵攻したロシアとの融和を求めるデモが多発している。
 旧ソ連の衛星国だった歴史からロシアに友好的な層が多いことに加え、ロシアとの対立でエネルギー価格高騰が加速し、西側より所得の低い東側の住民が特に打撃を受けていることへの怒りが背景にある。
 こうした不満を極右政党がすくい上げ、勢力拡大を狙う構図もある。
 10月29日にドレスデン中心部で行われたデモには8,000人が参加し、与党・緑の党を批判する横断幕を掲げていた参加者は、「政府はウクライナへの武器支援を直ちにやめるべきだ。 これはわれわれの戦争ではない」と強調し、「西側は、物価高騰による東側の苦境を分かっていない」と訴えた。
 「対ロシア制裁の即時中止を」と書かれた旗を持っていた参加者は極右政党「ドイツのための選択肢 (AfD) 」の党員で、「大手マスコミでは反ロシア的な言説のみが許される」と嘆いた。
 10月3日の統一記念日には、旧東独からベルリンを除く編入された5州の各地で約10万人がデモに参加した。
 大規模デモにはほぼ必ずAfDが参加し、「ドイツが第一」など、まず国内の東西格差を埋めるべきだと訴えるメッセージを広げている。 (2212-110409)
5・3・5・4・7 アジア進出

インド太平洋への進出

 ドイツ空軍が8月15日から、日本、オーストラリア、韓国、シンガポールなどインド太平洋諸国に、Eurofighter Typhoon 6機のほかA-400M 4機、 A-330 MRTT 3機を初めて派遣して合同演習などを行う。
 豪軍によると、豪州では19日から日本を含め17ヵ国が参加する合同演習Pitch Blackが3週間行われ、独軍も参加する。
 アジアの民主主義国との軍事的関係を深める一方、覇権主義を強める中国を牽制する方針で、ドイツ海軍は2021年にフリゲート艦を日本近海をはじめインド太平洋に派遣し、北朝鮮による瀬取りの監視活動にも参加した。
 ゲアハルツ空軍総監は、第2次大戦後の独空軍にとって「これまでで最大規模の派遣計画」と述べている。
 一方、中国に「威嚇的なシグナル」を送るわけではないと、過度な刺激を控える姿勢も見せた。 (2209-081403)

インド太平洋で軍事プレゼンス拡大

 ドイツ連邦軍総監のツォルン陸軍大将がロイタのインタビューに応じ、ドイツが中国の大幅な軍備増強を注視しながら、軍艦の派遣や同盟国との演習参加によってインド太平洋地域における軍事的プレゼンスを拡大すると述べた。
 ドイツは2021年、20年ぶりに軍艦をインド太平洋地域に派遣し、8月には日米韓など17ヵ国が参加するオーストラリアでの合同演習に向け、軍用機13機を派遣した。
 ツォルン大将は、連邦軍がオーストラリアで2023年に行われる演習に部隊を派遣する予定で、海軍は2024年にさらに軍艦数隻をインド太平洋地域に派遣すると述べ、「このようにして同地域での存在感を高めたい」と述べた。 (2210-090106)

5・3・5・4・8 Arrow 3 の導入

 ショルツ独首相が独公共放送ARDで3月27日、ロシアから攻撃を受ける可能性に備え、ミサイル防衛システムの購入を検討していると明らかにした。
 ドイツとしてIron Domeのような防衛システムを購入する可能性があるか問われ、われわれが検討している一つであることは確かだと応じたが、検討している防衛システムの種類は明かさなかった。
 独紙Bildはこれより先、ショルツ首相が連邦軍のツォルン総監と協議した際、ドイツ全土を網羅するミサイル防衛システムが議題になったと報じた。
 具体的には、イスラエルArrow-3を購入する可能性が話し合われたという。 (2204-032802)

 ドイツ空軍広報官が、カリーニングラードからのIskanderやその他のミサイル攻撃に対抗するため、イスラエルからArrow3導入し、速やかに配備することを検討していることを明らかにした。 (2205-040702)

 訪独中のイスラエルのラピド首相が9月12日、ドイツがArrow-3を購入する協議を進めていることを明らかにした。
 ラピド首相はベルリンでショルツ首相と共同記者会見を行い「主に航空防衛の分野で、イスラエルはドイツの防衛力の構築に参画する」とし、今回の会談は将来、可能性がある取引につながると述べた。
 ショルツ首相は、Arrow-3を高性能と評価した上で、ドイツは将来、防空システムを拡充することで防衛力を強化すると述べた。 (2210-091302)

5・3・5・5 南欧諸国

5・3・5・5・1 イタリア

総選挙の情勢

 イタリア総選挙の投開票が9月25日に行われる。
 投票前最後の世論調査では、極右とされるイタリアの同胞 (FDI) が支持率約25%と首位に立ち、第1党になるとみられている。
 FDIと極右「同盟」、中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」を合わせた中道右派連合の支持率は計約47%で、獲得議席は6割に達すると見込まれる。
 ファシストの流れをくむFDIのメローニ党首は選挙戦で、EUやNATOと連携する姿勢を強調し、ロシアへの経済制裁でも「欧米諸国と歩調を合わせる」と主張し、極右的な党のイメージ軟化に成功した。
 ただ、同盟のサルビーニ書記長(党首)やFIを率いるベルルスコーニ元首相は、プーチン露大統領と親交が深いことで知られることから、中道右派連合が政権を担えば、対露をめぐる欧州の結束に不和が生じる可能性が懸念されている。 (2210-092402)

5・3・5・5・2 スペイン

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・5・5・3 ギリシャ

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・5・6 ポーランド、バルト三国

5・3・5・6・1 ポーランド

ドイツに WW Ⅱの賠償請求

 ポーランドの右派与党「法と正義」のカチンスキ党首がドイツによる1939年のポーランド侵攻開始から83年に当たる9月1日、第2次大戦中に同国がナチス・ドイツから受けた損害がPLN6.2T(180兆円)に上るとする算定結果を公表し、ドイツに対し正式に賠償を請求する方針を表明した。
 ドイツは賠償問題が「政治的、法的に解決済み」との姿勢で、交渉は難航が予想される。
 ドイツの戦後処理は東西に分断していたこともあり、ホロコース被害者など個人への補償が中心で、対国家の賠償は不十分とも指摘されてきた。
 最大被害国の一つポーランドでも不満が根強く、反ドイツ的な「法と正義」の政権は、賠償請求を検討してきた。
 しかしポーランドは、社会主義体制下の1953年に旧東ドイツへの賠償を放棄した。 (2210-090118)

M1A2 Abrams MBT 250両を購入

 オースティン米国防長官が2月18日に訪問先のワルシャワで記者会見し、同国にM1A2 Abrams MBT 250両を売却する方針を表明した。
 関連機器を含む売却総額は$6Bに上る見通しである。
 ポーランドには米軍4,000名以上が巡回駐留しているが、米国防総省はウクライナ情勢の緊迫化を受け、4,700名の増派を決めている。 (2203-021905)

 ポーランドの国防相が4月5日、米国からM1A2 Abrams SEPv3 MBT 250両を$4.75Bで購入すると発表した。 引き渡しは年内に開始され、28両が機甲部隊に装備される。
 M1A2 Abramsはソ連製のT-72やPT-91と換装され、ロシアの最新鋭T-14 Armaataと対抗する。
 ポーランドはドイツからLeopard 2A4とLeopard 2A5も装備している。 (2205-040606)

CAMM SHORAD 2個システムを購入

 ポーランド国防相が4月14日、MBDA社にCAMM SHORAD 2個システムを購入する契約に調印した。
 最初のFUは9月に、2番目のFUは2022~2023年に納入される。 (2205-041501)

Patriot 6個システムを追加購入

 ポーランドのブワシュチャク国防相が、同国の中距離防空計画WislaのPhase 2を進めるため、米国に6個中隊分のPatriotと関連装備の売却を要求したと述べた。
 要求している装備にはRaytheon社製LTAMDSを指すと見られる無指向性センサが含まれている。
 Wisla Phase 1ではConfigration 3+(Config 3とはPAC-3が撃てる地上装置、Config 3+とはMSE弾に適応したシステム)2個中隊分を$4.75Bで発注し、2022年内に受領することになっている。
 ロシアのウクライナ侵攻を見てポーランドは近距離と中距離防空の整備も進めようとしており、MBDA社製CAMMのポーランド仕様であるNarew SHORADの調達を決めている。 (2206-052501)

M142 HIMARSを500両に追加購入

 ロシアのウクライナ侵攻を受けてポーランドが米国に、M142 HIMARSの調達数を500両に増やす売却要求を行った。 これは80個中隊分以上に相当する。
 ポーランドは2018年10月に第一期分としてHIMARS 20両を$414Mで発注し、2023年に納入を完了することになっていた。 (2206-052803)

ベラルーシ国境沿いの壁が完成

 ポーランドが移民の越境を阻止するために建設を進めていたベラルーシ国境沿いの壁が6月30日に完成した。
 国境全長の約半分に相当する186kmにわたる壁の高さは5.5mで、動体検知機能の付いた監視カメラの設置も予定されている。
 ベラルーシからの不法越境者が急増したことを受けた措置だったが、人道支援職員や報道陣の侵入を禁じていた立ち入り禁止区域は7月1日から撤廃するという。 (2208-070106)

戦車、自走砲、戦闘攻撃機を韓国から購入

 ポーランドのブワシュチャク国防相が7月22日、韓国から戦車や自走砲、戦闘攻撃機を購入すると発表し、契約を締結するとTwitterに投稿した。
 ウェブサイトwPolityceがブワシュチャク国防相の話として伝えたところによると、FA-50 48機、K2 MBT 180両、K9 SPHを購入する。
 K9 SPHとK2 MBTの第1陣は年末に、FA-50は来年に引き渡し予定としている。 (2208-072306)

 ポーランドのブワシュチャク国防相が7月27日、韓国からK2 MBT、K9 SPH、FA-50練習/軽攻撃機を購入する契約を行ったと発表した。
 引き渡しは早ければ2022年にも開始される。
 K2 MBTの購入数は1,000両で最初の180両は2022~2025年に納入され、残りのK2PL 820両は2026年以降にポーランドで生産される。
 K9A1 SPHは2022~2023年に48両が輸入され、2024年以降はK9A2を元にしたポーランド製のK9PLになり624両が生産される。 (2210-081005)

FA-50PL 48機を発注
 ポーランド政府が16日にKAI社と、FA-50 48機を$3Bで購入する契約を締結した。
 今回の契約は7月27日に韓国の軍需企業3社とポーランド軍備庁が締結したK2 MBT、K9 SPH、FA-50の「K武器3点セット」総括契約のうち、FA-50の輸出を実際に行うことを定めたもので、K2 MBTとK9 SPHの第一次契約は8月に締結している。 (2210-091707)

 KAI社がポーランドから2023年末納期でFA-50PLを受注した。 ポーランドのブワシュチャク副首相兼国防相は7月27日に、FA-50 48機の購入を承認していた。  ポーランド国防省はFA-50へのAIM-120 AMRAAMのほか、GBU-12 Paveway Ⅱ、Sniper ATPなどの搭載を求めている。 (2211-092106)

英国が Sky Sabre 防空システムを派遣

 英国防省が3月17日、ポーランドの要請に基づきSky Sabre防空システムと100名をポーランドに派遣すると発表した。
 ポーランドとの国境から25kmに位置するウクライナのYavorivは3月13日にロシアのCM攻撃を受けているが、Sky Sabrewは捜索範囲120kmのSaab社製Giraffeレーダを採用している。
 英国とポーランドの国防相は2021年11月18日にポーランドのNarew SHORADで協力することに合意している。 NarewはSky Sabre同様、MBDA社製CAMMの陸上型である。 (2206-033006)

防衛力増強:Krab 155mm SPH 48門の発注

 ポーランド国防省が、PGZ社の子会社であるHuta StalowaWola社にKrab 155mm SPH 48門をPLN3.8B ($800M) で9月5日に発注したと発表した。
 ポーランドは8月に韓国Hanwha社にK9A1 SPH 212両を発注したほか、米国にM142 HIMARS 500両、韓国に数量非公開でK239 Chunmoo MRLを発注している。 (2210-090701)
【註】Krab 155mm SPHは、ポーランドのStalowaWola製鉄所が設計したNATO互換の155mm SPHで、Hanwha社製K9の車体に、Rheinmetall社製155mm 52口径砲を搭載した英国製AS-90M砲塔を組み合わせたものである。
 ポーランド陸軍向けに120両の量産が開始されている。

韓国製 Chunmoo MRL と HIMARS の装備

 ポーランドと韓国がK239 Chunmoo MRL 300両の売却で合意し、来週訪韓するポーランドのブワシュチャク副首相兼国防相が契約に調印する。
 ポーランドは5月に米国にM142 HIMARS 500両の売却要求を行ったが、ポーランドは500両全てを入手できるとは見ておらず、HIMARSとChunmooを混合で装備することになるとみられる。
 ポーランドへの引き渡しは2023年に開始される。
 Hanwhaグループが開発したChunmooは射程70kmの精密誘導弾と射程300kmのTBMを発射する。 (2211-101502)

第16機械化師団の強化

 ポーランドのブワシュチャク副首相兼国防相が8月13日、7月に韓国に発注したK2 MBTの一部が、第16機械化師団第20機械化旅団の戦車大隊に配備されると述べた。
 同国防相によると第16機械化師団の第11砲兵連隊が増強されて4番目の旅団になるという。 (2211-082407)

カリーニングラードとの国境沿いに鉄条網設置

 ポーランドがカリーニングラードとの国境沿いに、不法越境を防止するための鉄条網の設置を開始した。
 ポーランドでは、ロシアがカリーニングラードを通じて不法移民の流入を画策しているのではないかとの懸念が生じていた。
 設置は国境線に沿って210kmに及ぶ高さ2.5mの鉄条網で、電子機器も取り付ける。
 ポーランドのブワシュチャク国防相は2日に国境沿いへのフェンスをの設置について発表した記者会見で、「カリーニングラードの空港は現在、中東や北アフリカからの航空機を受け入れており、ポーランド国境の安全性を高めるために行動を取ることを決断した」と述べた。 (2212-110417)

Airbus社から偵察衛星2基を購入

 ポーランド国防省が12月27日、€575M(&$612M) でフランスAirbus社から偵察衛星2基を購入する契約を行った。
 分解能30cm以上のポーランドの衛星は2027年までに打ち上げられる。
 ポーランド軍は2023年から現存のEarth Observation Satellite Constellationにアクセスできるようになる。 (2301-122815)

5・3・5・6・2 リトアニア

台湾代表機関開設を巡る中国との対立

 首都への台湾の代表機関開設を認めるなど蔡政権との関係を強化しているリトアニアに対し、中国が「報復」を本格化させている。
 リトアニアの外交官は中国を離れるよう強要され、リトアニアからの輸出品は中国の税関を通らなくなっている。
 リトアニアが加盟するEU諸国から中国への輸出にも影響が出始め、EU側が反発して両国の対立はEU全体に飛び火しつつある。 (2202-010406)

 リトアニア首相報道官がBNS通信に、1月5日に国営鉄道会社に対し国家安全保障上の利益を理由に中国系の建設会社と正式契約しないよう命じたことを明らかにした。
 この建設会社はスペインに登記されている中国国営中国路橋工程の子会社で、2021年の国際入札の結果、リトアニア国営鉄道から鉄橋建設契約を受注していた。 (2202-010605)

政府内で親台湾外交をめぐる対立

 1月5日付の台湾各紙がリトアニアメディアを引用して、リトアニアのナウセーダ大統領が台湾の代表処設置は正しかったとする一方、「台湾」の名称を使用したのは過ちだったと表明し、中国が猛反発して圧力を強めていることに遺憾を示したと報じた。
 台湾外交部報道官は、中国が卑劣な手段を使ってリトアニアに圧力を加えていると非難した。 (2202-010501)

 リトアニアの政府内で親台湾外交をめぐる対立が起きている。
 ナウセーダ大統領は1月4日に2021年11月に国内に設置された台湾当局の代表機関に「台湾代表処」の名称を認めたのは「過ちだった。 私は関与しなかった」と主張した。
 ランズベルギス外相は「すべて大統領とともに決めた」と反論し、内政バトルに中国と米国が参戦し、場外戦に発展している。
 大統領と外相の対立は2人がライバル関係にあるのが原因との見方がある。
 ランズベルギス外相は2020年の議会選で勝利した中道右派政党の党首で、かつて大統領選でナウセーダ氏の対立候補だったシモニテ現首相を擁立し新政権を発足させた経緯がある。 (2202-010707)

中国からの経済的圧力

 中国から外交的、経済的圧力を受けているリトアニアのビールメーカーが2021年秋に中国からの注文を全てキャンセルされたが、2021年の台湾市場の販売量は前年比23倍に急成長を遂げた。
 リトアニアは2021年5月に中国と中・東欧17ヵ国間の首脳会議17+1を離脱したのを機に中国との関係が緊迫し始め、その後台湾への代表機関設置を発表した。
 台湾も同7月20日にリトアニアへの代表機関設置を発表し、中国の反発を招いた。
 中国は8月に駐リトアニア大使の召還を決め、11月に台湾の代表機関「駐リトアニア台湾代表処」が首都ビリニュスに設置されると、リトアニアの外交関係を「代理大使級」に格下げした。
 また、リトアニア製の商品が中国の通関で足止めされるなど、経済的圧力も強まっている。 (2202-011906)

 中国税関総署は、リトアニアからの牛肉輸入を2月9日以降停止したと発表した。 理由は明らかにしていない。
 中国は、リトアニアが台湾の代表機関開設を昨年認めたことに反発し、同国からの輸入を制限したり、駐リトアニア大使を召還するなどの措置を講じている。 (2203-021006)

リトアニアの運輸通信副大臣の訪台

 中国外務省副報道局長が8月11日の記者会見で、台湾を訪れたリトアニアの運輸通信副大臣らに対し「強く非難する。 断固として反撃する」と反発した。
 同副大臣らの一行は7日から5日間の予定で訪台した。 (2209-081108)

米軍の常駐を要請

 ナウセーダリトアニア大統領が2月9日、米国に部隊のリトアニア常駐を要請すると述べた。
 米国は2019年以降、リトアニアに500名の部隊と装備を巡回配置方式で派遣しているが、ナウセーダ大統領はルクラの軍事基地で行った記者会見で「米国がリトアニアに部隊を常駐させることについて協議する」と述べた。
 ウクライナを巡るロシアと西側諸国の間の緊張が高まるなか、米国はポーランドとルーマニアに3,000名の部隊を派遣している。 (2203-021002)

ロシア外交官の追放

 TASS通信によると、リトアニアが3月18日に同国駐在のロシア大使館員4人をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)とし国外退去を求めたと発表した。
 またラトビア、エストニア両国もそれぞれのロシア大使館員3人を同様の処分としたと発表した。
 3国で計10人のロシア外交官追放は、ロシアによる侵攻を受けたウクライナへの連帯を示すために行われたという。
 ロシア外務省は同日、「根拠のない追放」と批判、対抗措置を取ると表明した。 (2204-031901)

 ロシア外務省が3月29日に声明を出し、モスクワに駐在するバルト三国の外交官計10人を追放すると発表した。
 内訳はリトアニア4人、ラトビア3人、エストニア3人である。
 バルト三国は3月、ウクライナ侵攻を正当化するプロパガンダ流布などに関与したとして、計10人のロシア外交官を追放していた。 (2204-032924)

駐留ドイツ軍の増強

 ショルツ独首相が6月7日にリトアニアの首都ビリニュスを訪問し、ロシアのウクライナ侵攻に対応しリトアニアに駐留する独軍を増強する方針を表明した。
 ショルツ首相は後記者団に対し、駐留軍を1個旅団規模に増強させる用意があると述べ、NATO加盟国の領土を1cmたりとも渡さないと述べた。
 独政府筋によると、リトアニア防衛の必要が生じた際に即配備が可能な1個旅団3,000名を準備する。
 また、リトアニアに駐留する独軍を現在の1,000名から1,500名に増強する。 (2207-060801)

防衛力増強:火力の強化

 ルコルニュ仏国防相が6月13日、リトアニアに榴弾砲18両を売却すると発表した。
 リトアニアのアヌシャウスカス国防相Caesar SPH 18両をフランスから購入することを明らかにした。
 リトアニアは、安全保障上の脅威の高まりを背景に、2022年の国防費に€300Mの追加拠出を決定した。
 またバルト三国はウクライナに装備品を供与し、人道援助を行っている。 (2207-061409)

防衛力増強:海軍の増強

 英Harland & Wolff造船所が、元英海軍掃海艇をリトアニア海軍向けに改修する工事を£55M ($65M) で受注した。
 掃海艇Quornは8月に入渠し、18~24月かけてエンジンや登載兵器、ソナーを換装する。 (2208-071402)

国防費に追加計上

 リトアニアが今年度の国防費に、HIMARS、JLTV、Switchbladeなどの購入費として€148M ($144.5M) を追加計上した。
 この結果リトアニアの国防費は対GDPで2.52%になる。
 JLTVはリトアニアがウクライナへM113 APC 50両程度を供与した補完に当てる。
 ラトビアは7月にHIMARSの売却要求を米国にしており、9月にはポーランドもHIMARS 500両の売却を要求している。 (2210-093003)

米陸軍戦車大隊の駐留期間延長

 リトアニアのアヌシャウスカス国防相が10月14日、南東部パブラデに2019年から駐留している米陸軍戦車大隊の駐留期間が少なくとも2026年まで延長されたと明らかにした。
 アヌシャウスカス国防相はブリュッセルでオースティン米国防長官との会談後、この措置について文書で説明した。 (2211-101512)

HIMARS 8基を購入

 リトアニアと米国の国防当局が11月10日、米国からHIMARS 8基を$495Mで購入すると発表した。
 リトアニアはこれと合わせてロケット弾と、射程300kmのATACMSも購入する。 (2212-111101)

 オースチン米国防相とリトアニアのアヌシャウスカス国防相が12月16日にワシントンで、HIMARS 8両とGMLRS弾数十発、射程300kmのATACMS弾、及びその他の弾薬を$495Mで売却することに合意した。 (2301-121701)

Switchblade 600を購入

 リトアニアが欧州のNATO加盟国として初めて射程40kmのSwitchblade 600突入攻撃型UAVを€45M ($48M) で購入する。 購入数量は公表されていない。
 またSwitchblade 300も購入することになる見込みである。
 Switchblade 300は既にウクライナで実戦使用されている。 (2301-122406)

5・3・5・6・3 ラトビア

NATO EFP がラトビアに到着

 英国主導でラトビアに派遣されるNATO EFPに参加するデンマーク軍Guard Hussar連隊からの大隊750名の第1陣となる350名が、5月2日にラトビアに到着した。
 この部隊が装備するPiranha 5 APCやCV9035DK IFVなど300両近くの車両は4月28日に2隻の輸送船でリガに到着し、2日がかりで卸下されている。 (2208-051805)

反露風潮の高まり

 ラトビアで5月20日にソ連時代の第2次世界大戦記念碑の撤去を求める大規模デモが行われ、地元メディアによれば、約1万人が参加した。
 デモ参加者は「ウクライナへの支援を」というメッセージや「私たちの領土、私たちの統治」と書かれたプラカードを掲げたり、ラトビアとウクライナの国旗を振ったりした。
 1985年に建てられた高さ79mの記念碑を破壊撤去する費用は、クラウドファンディングで集まっており、市議会も撤去を暫定的に承認している。
 ただ、記念碑は親露派が集会を行う拠点となっている。 (2206-052105)
【註】ラトビアは人口の1/4がロシア人であるが、ラトビアがソ連から独立した際にラトビア語を国籍取得の条件にしたため無国籍のロシア人も多い。
 また独立時にラトビアが、ロシアとの国境をソ連併合以前の国境を主張したが、2007年に要求を取り下げ国境画定条約に調印した経緯がある。
 因みに定員100名のラトビア国会で第一党として23名を占めているのはロシア系政党である「社会民主党『調和』」である。

徴兵制復活

 ラトビアのパブリクス国防相が7月5日、ウクライナに侵攻する隣国ロシアとの緊張の高まりを受け、徴兵制を復活させると発表した。
 ラトビアはNATOに加盟した数年後、徴兵制を廃止しており、現在の軍は職業軍人と週末のみ勤務する志願兵で構成されている。
 ロシアやベラルーシと国境を接するラトビアは人口は200万人未満で、現役兵と志願兵を合わせた総兵力は7,500名だが、NATO軍1,500名が駐留している。 (2208-070607)

HIMARS の売却を要求

 ラトビアがバルト三国共同計画として米国にHIMARSの売却を要求した。 要求数は明らかにされていない。 ポーランドは5月にM142 HIMARS 500両の売却を要求している。 (2208-072615)

国防費を GDP の2.5%まで引き上げ

 ロシアのウクライナ侵攻を受けてラトビアは2025年までに国防費をGDPの2.5%まで引き上げる計画で、2023年予算には€747.7M ($763.9M) を要求するという。 (2208-072615)

ロシアを「テロ支援国家」に指定

 ラトビア議会が8月11日、ロシアを「テロ支援国家」に指定し、紛争終結に向け、西側諸国にロシアに対する一段と包括的な制裁措置の導入を求める決議を採択した。 (2209-081205)

ラトビアとエストニアが中国との協力枠組みから離脱

 バルト三国のラトビアとエストニアが8月11日、中国と中東欧諸国の協力の枠組みから離脱すると発表した。 リトアニアは2021年に離脱している。
 ラトビア外務省は、対中協力の枠組みに引き続き参加するのは「現在の国際環境においてわれわれの戦略的目標にもはや合致しない」と述べた。
 同国とエストニアはいずれも、ルールに基づく国際秩序と人権を尊重しつつ、中国との建設的かつ実際的な関係に向けて引き続き取り組む考えを示した。 (2209-081208)

ラトビア首都のソ連時代記念碑を解体

 ラトビアの首都リガで解体が進むソ連時代に建てられた戦勝記念碑が8月25日、2台の重機によって土台から倒された。
 先端にソビエトの星をあしらったコンクリート製のオベリスクは、ラトビアがまだソビエト連邦に併合されていた1985年に、赤軍がナチス・ドイツに勝利したことを記念して建設されたもので、記念碑の基部には3人の赤軍兵士像と、その反対側で両腕を高く掲げた「祖国」を象徴する女性像があったがこれも撤去された。
 このオベリスクは1991年にラトビアが独立し、NATOやEUに加盟して以降、度々国内で論争を巻き起こしてきた。
 バルト三国ではソ連や共産主義指導者をたたえる多くの記念碑が撤去解体されており、エストニアでも1週間前に同様のランドマークが撤去されたばかりである。 (2209-082603)

議会選で首相の親欧米政党が首位 親露派は大敗

 一院制のラトビアで10月1日に実施された定数100の議会選挙は2日に発表された96%%の開票が終わった時点での暫定集計結果によると、カリンシュ首相率いる親欧米の中道右派「新統一」が19%を得票して第1党となり、新統一を中心とする現在の連立政権は42議席を獲得する見通しとなった。
 人口のおよそ25%を占めるロシア系住民にかつて人気が高かった政党は軒並み得票率を落とし、2018年の選挙で首位だった親ロシア政党「調和」は得票率が5%に低下した。
 同党指導部がロシアのウクライナ侵攻を批判したことから、従来の支持者が離れたとみられる。 (2211-100307)

5・3・5・6・4 エストニア

サイバー防衛で世界リード

 欧米各国はロシアの侵攻を受けるウクライナへの派兵を否定する一方、サイバー空間ではウクライナと肩を並べロシアと凌ぎを削っている。
 ウクライナ支援で重要な役割を担う人口約130万人のエストニアは、15年前にロシアから世界初の「サイバー戦争」を仕掛けられた経験を糧に、サイバー防衛で世界をリードするに至った取り組みを探った。
 2007年4月にエストニアの政府機関や銀行、報道機関のウェブサイトがDDoS攻撃を受け機能停止に陥った。 ロシアによるとされる攻撃は22日間続いた。
 国家に対する大規模サイバー攻撃は世界初だった。
 この事件を重大な転機にエストニアは翌2008年には、首都タリンにNATO認証の研究機関「サイバー防衛協力センター」を設置した。
 エストニアは2005年に世界初の電子投票を実現するなど、国を挙げてデジタル化を推進していたことがサイバー防衛拠点となる下地にもなった。 (2301-120402)

NATO 駐留軍増強について協議

 エストニアのカラス首相が1月12日、バルト三国がロシア抑制に向けNATO駐留軍の増強について協議していると明らかにした。
 これについてNATO外交筋は匿名を条件にロイタに対し、バルト三国の駐留軍増強について、2月半ばに予定されているNATO国防相会議で取り上げられる可能性があると語った。
 ロシアによる2014年のクリミア併合以降NATOは、ポーランドに加えバルト三国に軍を駐留させており、現在は各国に約1,000名が駐留している。 (2202-011301)

国防費の GDP 比2.5%への引き上げ

 ロシアのウクライナ侵攻を受けエストニアが国防費を€476M ($523M) 引き上げGDP比2.5%にする。
 エストニア国防省は3月24日、その中心となるのは中短距離防空システムの導入で、遅くとも2025年には取得したいとしてる。
 ラーネ国防相はDefense Newsに、中短距離防空システムとしてはNASAMSを考えており、取得価格としては€350Mとしていることを明らかにした。
 このほかには対戦車、直接照準、ISRなどの装備を検討しているという。 (2204-032602)

ロシアの領空侵犯に抗議

 エストニア政府が6月21日、ロシアのヘリコプタによる極めて深刻な領空侵犯に抗議するため、駐エストニアロシア大使を呼び出した。
 ここ2週間程で2度目の抗議となる。
 エストニア外務省によると、ヘリコプタは6月18日に南東部のある地点の上空を許可なく飛行していたという。
 エストニアは、完全に容認できない極めて深刻で遺憾な出来事だと考えているとの声明を発表し、ロシア軍はウクライナから撤退すべきだと再度強調した。 (2207-062211)

M142 HIMARS の購入

 米国防総省が7月15日、国務省がエストニアへのHIMARS売却など総額が$1.5Bを超える兵器売却を承認したと発表した。
 エストニア向けに承認された売却には、最大6両のM142 HIMARSのほか、支援機器や技術サポートなどが含まれる。
 このほか、ノルウェーへのAMRAAMなどの$950M、韓国へのMk 54軽量魚雷$130Mの売却も承認された。  更に台湾に対する軍事技術援助提供も承認された。 (2208-071602)

ラトビアとエストニアが中国との協力枠組みから離脱

 バルト三国のラトビアとエストニアが8月11日、中国と中東欧諸国の協力の枠組みから離脱すると発表した。 リトアニアは2021年に離脱している。
 ラトビア外務省は、対中協力の枠組みに引き続き参加するのは「現在の国際環境においてわれわれの戦略的目標にもはや合致しない」と述べた。
 同国とエストニアはいずれも、ルールに基づく国際秩序と人権を尊重しつつ、中国との建設的かつ実際的な関係に向けて引き続き取り組む考えを示した。 (2209-081208)

ロシア人のビザ取り消し

 エストニアはこれまでにビザを取得した5万人以上のロシア人に対し、週内に国境を閉鎖する。
 こうした措置を取るのはEU加盟国としては初めてで、これにより一般のロシア人がエストニアからEU域内に入るのが難しくなる。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は4日前に、EU加盟国に対しロシア人に対するビザ発行を禁止するよう呼びかけていた。
 毎日約2,500人のロシア人がエストニアに入国しており、その約半数が欧州域内をビザやパスポートなしで自由に行き来できるシェンゲン協定に基づくビザを取得しているという。 (2209-081703)

国防費をGDPの3%まで引き上げ

 エストニアのレインサル外相が11月28日にロイタ通信との面談に答え、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、国防費をGDPの3%まで引き上げる意向を示した。
 ロシアの侵攻後、各国は国防費を増やす流れにあるが、レインサル外相は「欧州諸国は国防費を2倍に増やして欲しい」とも述べた。  (2212-112908)

エストニア駐留米軍に1個歩兵中隊を増強

 エストニアの国防当局者が12月8日、エストニア駐留米軍に数週間以内に1個歩兵中隊が増強されることを明らかにした。 (2301-120901)

5・3・5・7 ノルディック諸国

5・3・5・7・1 デンマーク

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・5・7・2 ノルウェー

スバルバル諸島を巡るロシアとの対立

 ロシアが6月29日、ノルウェーが課した規制によって北極圏のスバルバル諸島のロシア人居住区への物資輸送が妨げられているとし、ノルウェー政府が問題を解決しなければ報復措置を取ると警告した。
 ノルウェー北岸と北極の中間に位置するスバルバル諸島はノルウェー領だが、1920年に締結された条約によりロシアは同諸島の天然資源開発権を持ち、現地には主にロシア人が居住する集落もある。 (2207-063003)

 ノルウェーの安全保障当局NSMが6月29日、過去24時間に国内の複数機関がDDoS攻撃を受けたと明らかにし、親露派の犯罪組織の犯行との見方を示した。
 攻撃は前日夜から始まり、重要なサービスを提供する民間企業や公的機関が標的となった。 (2207-063007)

5・3・5・7・3 スウェーデン

対露警戒の強化

 スウェーデン軍トップのクレソン中将がAP通信に対し1月14日、ロシアがバルト海で特異な動きを見せているため、同国軍が対抗する準備を進めていると述べた。
 バルト海に面したロシアの飛び地カリーニングラードから300kmの位置にあるゴッドランド島では13日に、Visbyにある港を1個警備小隊が巡回しているのが目撃され、他の港や空港でも確認されている。 (2202-011408)

 ロシアの脅威にさらされるスウェーデンとフィンランドが、軍事中立路線を転換しNATOに加盟申請するなど、侵攻を機に欧州の安保環境は著しく変化したなか、ロシアとNATOがにらみ合うバルト海の対ロシア最前線であるスウェーデン南部Gotland島では有事に備えた防衛強化の動きが加速している。
 迷彩服姿のスウェーデン軍ゴトランド連隊所属の男女民兵たちが8月22日で島中部にある陸軍演習場で、銃を持って訓練に臨んでいた。
 平時は一般住民だが、有事には正規軍と共に島の防衛に当たるため一定期間の訓練を施される。
 これまで年に数日間だった訓練期間は、ウクライナ危機を受けてさらに30日追加された。 (2209-082403)

国防費の大幅増額

 スウェーデンのアンデション首相が3月10日、現在の計画で国防支出は2014~25年に85%増えるが、ウクライナでの戦争や全般的に悪化している安全保障環境を踏まえ、政府は防衛力をさらに強化する必要があるとみていると説明し、国防支出をGDPの2%相当に引き上げる方針を示した。 (2204-031012)

 スウェーデンで誕生した中道右派の新政権が、NATO加盟を視野に2023年予算の国防費を$800M増額し、2026年までにGDPの2%を達成するとしている。 (2212-112302)

5・3・5・7・4 フィンランド

中立政策の大きな転換

 フィンランドのマリン首相が4月13日に訪問先のストックホルムで記者会見し、NATOへの加盟を申請するかどうかを数週間以内に決めると明らかにした。
 英Times紙は、ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、フィンランドとスウェーデンの北欧2か国が2022年夏にもNATOに加盟する見通しだと報じていた。
 フィンランドの加盟は、欧州の安全保障体制の大きな転換となるため、NATO拡大を警戒するロシアの反発は必至である。 (2205-041319)

国境警備強化、国防費を追加

 ウクライナ侵攻を続けるロシアと国境を接するフィンランドは国防費を増額し、国境警備などを強化する方針を示した。
 現地メディアによると、フィンランド政府は4月5日に補正予算で€200Mを国防費に追加したほか、今後も予算を増額する方針を示した。
 フィンランドではNATOへの加盟申請をめぐる審議が議会で開かれるなど、ロシアに対する警戒感が強まっている。 (2205-042309)

米、英、ラトビア、エストニアとの合同演習

 フィンランド南西部ニイニサロで5月4日、同国軍と英国、米国、ラトビア、エストニアとの合同演習が行われた。 (2206-050513)

 ウクライナに侵攻したロシアの脅威が高まる中、フィンランド南西部の演習場で5月2日~13日の日程で、フィンランド軍とNATOとの合同演習Arrow 22が行われている。
 演習にはMBTやAPCなど150両と3,500名が参加し、相互運用能力の練度向上に向けた訓練を重ねている。 (2206-051302)

ロシア軍機の領空侵犯

 フィンランド国防省が5月4日、ロシア軍のMi-17が同日朝にフィンランドの領空を4~5kmほど侵犯したと明らかにした。  ロシアがフィンランドの領空を侵犯するのは今年2度目で、4月8日にもロシア軍の輸送機が短時間フィンランド領空に入った。  同国はNATOへの加入申請を検討中で、数日以内に結論を出す見込みである。 (2206-050511)

5月にマリン首相が訪日

 フィンランドのマリン首相が訪日し、5月11日に岸田首相と会談する。
 マリン首相は、ウクライナ侵攻をきっかけにNATOへの加盟に意欲を示していて、ロシアに対する連携を確認するとみられる。 (2206-05010)
【註】フィンランドは、戦後一貫して続けてきた中立政策を変更し、この週にもNATO加盟申請を行う決定を行うのではと報じられている大事なこの時期に、わざわざ訪日する目的は何なのかが注目される。

ロシアとの国境に柵

 フィンランド政府が6月9日、ロシアとの国境に柵などの障害物を設置できるよう国境法の改正を計画していると明らかにした。
 2021年末に中東やアフガニスタン、アフリカからの難民をポーランド国境で立ち往生させたベラルーシのように、ロシアが国境地帯に難民を向かわせて圧力をかけてくる可能性も懸念されており、フィンランドは国境警備の強化を急いでいる。
 森に覆われたフィンランドとロシアの国境地帯は全長1,300kmの大部分が標識などで示されているだけだが、ロシアとは戦争の歴史がある。 (2207-061003)

 フィンランド議会が7月7日、ロシアとの国境の柵を強化する法改正案を可決した。
 従来の柵は木製で、家畜が国境を越えないことを主な目的としていたが、より頑丈な柵を設置する。
 ロシアと1,300kmに及ぶ国境を共有するフィンランドでは、ロシアが大量の移民を送り込んで政治的圧力を加えることへの懸念も広がっている。 (2208-070802)

オーランド諸島自治領

 複雑な歴史から非武装中立が定められているフィンランドの自治領でボスニア湾の入り口に位置するオーランド諸島の自治政府は、フィンランドのNATO加盟方針で地域の安全保障論議が盛り上がるなか、自治の確立100周年を祝っている。
 6月9日にはオーランドの自治確立後、議会が初めて招集されてからちょうど100年の祝典に参加したのはフィンランドのニーニスト大統領だけでなく、スウェーデンのカール16世グスタフ国王らも出席した。 (2209-081003)

・歴史的・文化的に近いスウェーデン
・バルト海の要衝
・非武装監視するロシア領事館
米国から$323Mの武器輸入

 米国防総省が11月28日、フィンランドに対し、戦術ミサイルなど総額$323Mの兵器売却が承認されたと発表した。
 売却されるのは、AIM-9X Block Ⅱ Sidewinder AAM 40発とAGM-154 JSOW ASM/CM 48発で、同省は声明で、「売却が実現すれば、米国と北欧諸国の関係に良い影響を与える」と説明し、さらに、「欧州の政治的安定と経済発展を支える重要な存在である、信頼できるパートナー国の安全保障を向上させることにより、米国の外交方針と国家安全保障が強化される」との見方を示した。 (2212-112917)

その3日後に米国から$380Mの武器輸入

 米国がフィンランドへAIM-9X Block Ⅱ Sidewinder 40発とAGM-154 JSOW 48発を$323MのFMS契約で売却すると発表した丁度3日後の12月1日に、米国務省がフィンランドへFIM-92K Stinger MANPADS 350発を$380Mで売却することを承認した。
 米国務省は既に、フィンランドへF-35A 64機を$11Bで売却するほか、搭載するAIM-9X Block Ⅱ+ 150発、JSOW-C1 100発の売却を承認している。 (2301-120204)

5・3・5・7・5 フィンランドとスウェーデンの NATO 加盟問題

NATO への加盟を申請する意向

 フィンランドが1月2日、NATOへの加盟を申請する意向を明らかにした。
 Financial Timesなどによると、フィンランドのニーニスト大統領が1日に新年の辞で、「ウクライナ危機はフィンランドにも影響を及ぼしかねず、傍観できない」とし、「フィンランドの戦略と選択の自由は、NATOへの加盟申請の可能性が含まれる」と述べ、マリン首相も同日の新年の辞を通じて、「安全保障政策を自ら決める権利がある」と延べた。
 1,340kmに及ぶ国境をロシアと接するフィンランドは、1939~1940年にソ連軍の侵攻で起こった「冬戦争」で多くの犠牲を出したが、フィンランドは1995年にEUには加盟したものの、軍事的中立という政策路線を維持するためNATOには加盟しなかった。 (2202-010403)

 フィンランドのマリン首相は1月19日、同国が近い将来にNATOに加盟する計画はないが、ロシアがウクライナを攻撃した場合は欧州の同盟国と米国に歩調を合わせて厳しい制裁を発動すると述べた。
 首相はロイターとのインタビューで、「制裁はかなり実質的な影響をもたらし、極めて厳しいものとなる」と述べた。
 一方、自身の任期中にフィンランドがNATO加盟を申請する公算は非常に小さいと述べた。 (2202-012007)

 フィンランドとスウェーデンの外相が1月25日にブリュッセルでストルテンブルグNATO事務総長と共同防衛について話し合った。
 NATOは両国のNATO加盟を望んでいるが、両国は現時点でNATO加盟を要求しないと決めているが、スウェーデンと異なり1,340kmの国境でロシアと隣接しているフィンランドは、NATO加盟も選択肢としている。 (2203-020407)

NATO 加盟をを巡る世論の動向

 フィンランド国営放送YLEの委託で実施されたNATO加盟を望むかの調査で、回答者の53%がフィンランドはNATOに加盟すべきと回答し、加盟すべきでないとの回答は28%、未決定が19%だった。
 調査はロシアによるウクライナ侵攻前日に当たる2月23日に始めたという。
 最大日刊紙の委託で2年前に実施された調査では、加盟を望む回答は20%にとどまっていたが、2週間前には43%と大幅に上昇していた。 (2204-030120)

 スウェーデンの調査機関デモスコープ研究所が実施し、日刊紙Aftonbladetが3月4日に報じた世論調査によると、ロシアのウクライナ侵攻を受け、この1ヵ月でNATO加盟を支持する割合は9%増え、過去最高の51%となった。
 反対は10%減の27%で、「分からない」と答えた割合は22%とほぼ横ばいだった。 (2204-030518)

両国首相が協議

 ロイタ通信が、フィンランドのマリン首相が3月5日にヘルシンキでスウェーデンのアンデション首相と共同記者会見し、両国の安全保障協力を一段と強化すると述べたが、NATO加盟の是非については両首脳とも明言を避けたと報じた。
 両国は中立路線を維持してきたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて国民の間でNATO加盟を求める声が急速に高まっていて、フィンランドの最新世論調査では、同国で加盟への支持が53%と初めて過半数を記録、スウェーデンでも51%と初の過半数になっている。 (2204-030605)

スウェーデン首相、NATO加盟に否定的な見方

 スウェーデンのアンデション首相が3月8日、NATO加盟に否定的な見方を示した。 首相は、現在の状況でNATOへの加盟申請を行えば、欧州を一段と不安定化させ緊張を高めることになると述べた。
 スウェーデンは軍事同盟には加入しないという外交政策を堅持してきたが、ロシアのウクライナ軍事侵攻を受け、国民や野党の間で加盟を求める声が高まっている。
 4日に公表された世論調査では、NATO加盟に賛成する人は51%で、1月の42%から上昇して初めて過半数を上回った。 否定派は37%から27%に減少した。 (2204-030917)

フィンランド大統領、NATO加盟は「大きな危険」

 フィンランドのニーニスト大統領が、NATOへの加盟申請には欧州の状況を悪化させる大きな危険が伴うと警鐘を鳴らした。
 ニーニスト大統領は、EU加盟国だがNATOには加盟していない現在のフィンランドにとって、NATO加盟は2つの主な選択肢の一つだと述べた。 もう一つは、米国及びスウェーデンとの防衛協力を深めることとした。 (2204-032214)

フィンランド外相、NATO加盟は選択肢

 フィンランドのハービスト外相が3月2日に共同通信と単独会見し、隣接するロシアによるウクライナ侵攻が「安全保障の展望を完全に変えた」と述べ、NATO加盟の是非については国民の過半数が加盟を支持していることから選択肢として排除せず、議会に委ねると語った。
(2205-040209)

NATO外相会合でフィンランドとスウェーデンの加盟を協議

 米国務省高官が匿名を条件に3月7日、今週ブリュッセルで開かれたNATO外相会合で、フィンランドとスウェーデンの加盟の可能性が協議されたと明らかにした。
 ロシアのウクライナ侵攻を契機に、フィンランドとスウェーデンは米国主導のNATOへの加盟を巡り検討を始め、フィンランドのハービスト外相はNATO加盟に関する方針を数週間以内に明確にすると語った。 (2205-040808)

フィンランドとスウェーデン、近く NATO に加盟か

 フィンランドのマリン首相が4月8日に、同国国会は今後の数週間内にNATO加入の問題を話し合う見通しとし、夏の盛り前には道筋をつけると述べた。
 スウェーデンのアンデション首相は3月末に地元TV局との会見でNATO入りの可能性を否定しなかった。
 スウェーデンは現在、安全保障政策の分析を進め、5月末までにはまとめる予定となっており、CNNの取材に対し政府当局者はこの分析結果を受け、政府の立場を明らかにするとした。
 米国務省の複数の高官は、この問題は4月上旬に開かれた芬、瑞両国外相も加わったNATO外相会議でも取り上げられたと述べた。 (2205-041007)

5月にも NATO 加盟表明か

 フィンランドのIltalehti紙とスウェーデンのExpressen紙が関係筋の話として4月25日、フィンランドとスウェーデンが5月にNATO加盟に向けた意思表示すると報じた。
 Iltalehtiによると、フィンランドとスウェーデンの首脳は5月15日の週に会談し、その後NATOへの加盟申請に関する計画を公表するという。 (2205-042604)

英国との安全保障宣言に署名

 英政府が5月11日、NATO加盟を検討しているスウェーデン、フィンランドが他国から攻撃を受けた場合に軍事支援する方針を決めた。
 ジョンソン英首相が11日に両国を訪れてそれぞれの首脳と会談し安全保障宣言に署名した。
 中立政策を採ってきたスウェーデンとフィンランドの両国は、一両日中にNATOへの加盟申請について結論を出す見通しで、加盟申請すれば、承認されてNATOの集団的自衛権の傘下に入るまでの空白期間中に、NATO拡大を嫌うロシアの攻撃を受ける恐れもあるため、英政府の方針はその空白期間中のロシアの動きを牽制する狙いがある。 (2206-051116)

フィンランド大統領と首相が NATO 加盟の共同声明

 フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相が共同声明を発表し、NATO加盟はフィンランドの安全を強化すると強調して、速やかにNATOへの加盟を行うと表明した。
 地元メディアによるとフィンランド政府は5月15日にも大統領、首相、関係閣僚による会議を行い、NATO加盟申請についての政府の方針を正式に決定する。 (2206-051206)

スウェーデン政府が NATOへの加盟を来週申請すると報道

 スウェーデンのExpressen紙が5月12日、政府がNATO 加盟を来週申請する計画と報じた。 報道によると、議会は16日に安全保障状況について討議し、アンデション首相が臨時閣議を開催して加盟申請を正式に決定する。 想定外の事態が発生しなければ、申請書がNATOに直接送られる。
 また13日に予定されている全党による安全保障政策の検討は、ロシアがスウェーデンに侵攻しようとした場合、NATO加盟が抑止力として機能すると結論付ける見込みという。 (2206-051208)

フィンランド大統領と首相がNATO加盟申請を公式発表

 フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相が5月15日にヘルシンキで記者会見を行い、NATOに加盟申請すると公式に発表した。 議会審議を経て申請手続きに入る。
 ハービスト外相は14日にスウェーデンメディアに対し「18日に申請するだろう」と述べている。 (2206-051507)

スウェーデン与党がNATO加盟支持を表明

 スウェーデンの与党である社会民主労働党が5月15日、同国のNATO加盟を支持すると表明した。
 数十年にわたり維持してきた加盟反対の立場を転換したもので、加盟申請への道が開けた。 (2206-051601)

NATO 事務総長が早期承認に自信

 ストルテンベルグNATO事務総長がNATO外相会合後のオンライン記者会見で5月15日、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟にトルコが難色を示していることについて、「加盟手続きが遅れないようにトルコの懸念に対処できると確信している」と述べ、申請後の早期承認に自信を見せた。
 2国の加盟に対抗措置を警告するロシアを牽制するため、周辺地域への増派検討も明言した。 (2206-051602)

 ストルテンベルグNATO事務総長が5月15日、NATO非公式外相理事会閉幕後に北欧2ヵ国の通常は1年程度かかるとされる加盟手続きについて「前例のない速さで進む」との見解を示した。
 加盟申請から正式加盟までの暫定期間をできるだけ早めるよう努めると共に、その期間に2ヵ国周辺にNATO部隊を派遣することも含め、2ヵ国の安全を確保する方法を検討している」と述べた。 (2206-051606)

スウェーデンがNATO加盟申請表明

 スウェーデンのメディアが、同国が5月17日にもNATOに加盟申請すると報じた。
 フィンランドもハービスト外相が18日に申請するとしており、北欧2ヵ国は近日中に相次いで申請手続きに入る見通しとなった。 (2206-051604)

 スウェーデンが5月16日にNATO加盟申請を正式決定した。
 アンデション首相は会見で、加盟申請手続きはフィンランドと同時に行う方針とし、16~18日中に申請する可能性があると語った。
 ロシアのウクライナ侵攻を受け、スウェーデン与党の社会民主労働党は15日に長年にわたる加盟反対の立場を転換した。 議会では多数が加盟に賛成だった。
 アンデション首相はNATO加盟が承認されても、国内に恒久的なNATO軍の基地や核兵器を保有することは望んでいないとも述べた。 (2206-051615)

フィンランドとスウェーデンがNATO事務総長に加盟申請書を同時に提出

 NATO本部に駐在するフィンランドとスウェーデンの大使が5月18日、ストルテンベルグ事務総長にNATOへの加盟申請書を同時に手渡した。
 NATOは、両国の加盟を見据えて6月末の首脳会議で新たな安全保障戦略を議論する。 (2206-051808)

トルコも加盟を承諾

 マドリードで行われるNATO首脳会議を前に6月28日、スウェーデン、フィンランド、トルコの首脳にNATO側を加えた4者会談が行われ、トルコが北欧2ヵ国のNATO加盟を支持することで合意した。
 具体的な手続きは29日から行われるNATO首脳会議で話し合われる。
 フィンランド大統領府は犯罪人の引き渡しなどについて、フィンランドの国内法に従って対応するとしている。 (2207-062902)

NATO首脳会議が加盟議定書への署名で合意

 NATOが6月29日にマドリードで開幕した首脳会議で、スウェーデンとフィンランドの加盟議定書に署名することに合意した。
 長年の軍事的な中立政策からの脱却を決断した北欧2ヵ国が、31、32ヵ国目の加盟国となることがほぼ確実となり、欧州の安全保障は大きな転換点を迎えている。 (2207-063011)

加盟全30ヵ国が北欧2国加盟に署名

 NATO加盟の全30ヵ国が7月5日にブリュッセルの本部で、フィンランドとスウェーデンの加盟議定書に署名し、冷戦中も維持してきた中立政策と決別した北欧2ヵ国の加盟を正式に承認した。
 今後、加盟各国での批准手続きが順調に進めば、2022年中にも31、32ヵ国目として加盟が実現し、欧州の安全保障体制は大きな転換点を迎える。
 ただトルコは、北欧2ヵ国が約束したテロ対策などを履行しなければ批准しないと警告しており、手続きが難航する可能性もある。 (2208-070505)

ハンガリーが加盟承認の批准手続きを2023年初頭に

 ハンガリーのオルバン首相がスロバキアのコシツェで先に開かれた中欧4ヵ国の首脳会議後に、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を承認する国会での批准手続きを2023年の最初の会期で実施するとの見通しを示した。
 権威主義的な国政運営を進めロシア寄りともみなされていたオルバン首相は批准をさらに遅らせるとの観測も出ていたが、スウェーデンとフィンランドの加入を支持すると明言した。
 2ヵ国の新たな合流についてはNATO加盟30ヵ国全てが今年の夏に加盟議定書に署名し、各国国会が批准する手続きに移っていて、この段階で批准手続きに入っていないのはトルコとハンガリーのみとなっていた。 (2301-120113)

フィンランドがトルコに働きかけ

 トルコの首都アンカラを訪問しアカル国防相と会談したフィンランドのカイッコネン国防相が12月8日、同国とスウェーデンのNATO加盟に対するトルコの支持を得るため、トルコへの武器輸出許可も検討すると明らかにした。
 フィンランドもスウェーデンもトルコに対して通常兵器の禁輸措置は取っていないが、フィンランドはトルコが2019年にシリア北東部に侵攻し、トルコがテロ組織と見なすクルド人勢力を攻撃したことを受け、新たな武器輸出許可を凍結した経緯がある。 (2301-120902)

米、トルコに早期承認促す

 ブリンケン米国務長官が12月8日、NATOに加盟を申請しているスウェーデン、フィンランドの両外相とワシントンで会談した。
 会談後の共同記者会見では「2ヵ国がまもなく正式に加盟することを大いに期待している」と述べ、手続きが進んでいないトルコに早期承認を促した。 (2301-120905)

スウェーデン最高裁「容疑者」送還を拒否

 AFP通信が、スウェーデン最高裁が12月19日に同国に亡命中のトルコ人男性のトルコへの送還を認めないとの判断を示したと報じた。
 同通信によると、男性はトルコ紙の元編集幹部ケネシュ氏で、最高裁は判断の中で、男性の名前を明らかにしていない。
 スウェーデンのNATO加盟の行方でカギを握るトルコ政府は、男性が2016年のエルドアン政権に対するクーデター未遂事件に関与したと主張して身柄の引き渡しを求めていた。 (2301-122006)

5・3・5・7・6 NATO加盟へのロシアの反応

ロシアの恫喝

 ロシアはフィンランドとスウェーデンのNATO加盟は「軍事的、政治的に重大な結果を招く」と警告している。 (2205-040209)

対艦ミサイルの配備示唆

 英Daily Mail紙やDaily Mirror紙などが4月12日、11日夜に軍事専門家のツイッターなどで公開された映像では、露軍ミサイル2基などが露国内の道路を移動し、フィンランド国境やフィンランド湾に向かっていると報じた。
 このミサイルシステムは艦艇などを破壊する機能を持つとみられるという。
 フィンランドとスウェーデンは2022年夏にもNATOへの加盟を申請すると報じられているが、映像が事実であればフィンランドを威圧する動きである。
 ペスコフ露大統領報道官は11日に両国の動きは欧州に安定をもたらさないと反発していた。
 米国防総省のカービー報道官は12日、露軍のフィンランド国境に向けた移動情報について「事実を確認するものは何もない」と述べるにとどめた。 (2205-041316)

核による恫喝

 ロイタ通信によると、プーチン露大統領の最側近でロシア安全保障会議副議長のメドベージェフ氏が4月14日、スウェーデンとフィンランドがNATOに加盟すればバルト海に核兵器を配備すると警告した。 (2205-041504)

ロシア大統領府がフィンランドの加盟はロシアの脅威と明言

 ロシア大統領府のペスコフ報道官は記者会見で、フィンランドの加盟は脅威になるのかとの問いに、同氏は「言うまでもない」と明言した。
 ペスコフ報道官は「すべてはこの拡大プロセスが今後どのように行われるのか、NATOの軍事インフラがどれだけわが国の国境に近づいてくるのかにかかっている」と述べた。 (206-051211)

5・3・5・8 黒海と沿岸諸国

5・3・5・8・1 ウクライナ

「2・6 ウクライナ」で記述
5・3・5・8・2 ルーマニア

F-16 の増強

 ルーマニア国防相が2021年12月10日、ノルウェー空軍から中古のF-16 32機を€454M ($513M) で購入することを明らかにした。
 ルーマニアは2016年10月から2021年3月にポルトガルから中古のF-16AM/BM 17機を購入している。 (2203-122206)

5・3・5・8・3 ブルガリア

3月 2日: ロシア外交官2人を国外退去

 ブルガリア外務省が3月2日、ロシア外交官2人に対して48時間以内の国外退去を命じたと発表した。
 外務省報道官は、外交官の立場と相いれないスパイ活動を追放の理由に挙げた。 (2204-030308)

6月28日: ロシア外交官70人を国外追放

 ブルガリアが6月28日、スパイ行為の懸念があるロシアの外交職員70人を国外追放すると発表し、国内に駐在するロシア人外交官の数に制限を設けた。
 ブルガリアがこれほど多くのロシア人外交官を追放したことは近年になく、外務省によると国内に駐在するロシア人外交官の数を48人に制限する。
 かつては強い同盟関係にあった両国だが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて緊張が高まっていて、ロシアは4月にルーブル建ての支払いを拒否したとしてブルガリアへの天然ガス供給を停止している。 (2207-062907)

11月 3日: ウクライナに兵器提供可能に

 ブルガリア国会が11月3日、政府に対し、ウクライナに提供可能な兵器の一覧作成を賛成多数で認めた。
 1ヵ月以内の作成を促しており、これまで自制してきた直接の兵器支援に道が開かれる。 ブルガリア軍はMiG-29を保有しておりウクライナは提供を切望している。
 歴史的経緯からブルガリアの世論にはロシアヘの同情も強く、3日の採決で反対票を投じた社会党の議員は「ブルガリアの安全保障を危険にさらすことはないか、必要な分析が行われていない」と兵器提供を批判した。 (2212-110413)

11月: F-16C/D Block 70 8機の購入を承認

 ブルガリア議会がF-16C/D Block 70 8機の$1.3Bでの購入を承認した。
 ブルガリアは既に最初のF-16 8機を発注しており、2025年に納入されることになっている。
 2番目の8機が2027年に納入される。 F-16は2023年に現在装備しているMiG-29と交代する。 (2212-110501)

11月 4日: ノルウェーが中古の F-16 32機を売却

 ノルウェーの国防省が11月4日、ルーマニアに中古のF-16 32機を€388Mで売却すると発表した。
 ノルウェー国防省はF-16を改修を施した上で2023~2024年に引き渡すとしている。 契約には予備部品の販売、メンテナンス、技術者の訓練も含まれている。
 ルーマニアは老朽化したMiG-21を換装する必要に迫られている一方、ノルウェーは2022年、F-35の導入に伴い1980年代に購入したF-16 64機を退役させていた。 (2212-110506)

5・3・5・8・4 モルドバ

「3・6・1 モルドバ」で記述
5・3・5・9 その他の欧州諸国

5・3・5・9・1 スイス

永世中立政策に最大の試練

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、スイス国防省がNATOとの距離を縮めようとしており、スイスの代名詞となっている永世中立政策が過去数十年間で最大の試練に直面している。
 スイス国防省の安全保障政策責任者プッリ氏はロイタのインタビューで、NATO加盟国との合同軍事演習や武器弾薬の融通などを含め、スイスが今後採択すべき安保政策に関する選択肢を提示する報告書を策定しているところだと語った。
 こうした議論が行われていることは今回のインタビューで初めて明らかになった。 (2206-051710)

NATO、EU と関係強化へ

 ロシアのウクライナ侵攻を受けてスイス連邦参事会(内閣)が9月7日、これまで展開してきた永世中立策を維持しながらも、防衛力を強化するためにNATO及びEUとの緊密な関係構築を模索すると発表した。
 スイスは今後、NATOとの合同演習への参加拡大と、EUの救助避難活動のための緊急派遣チームへの参加を目指す。
 ウクライナでの戦争は偽情報、サイバー攻撃、秘密工作、武力衝突による脅威も増大していることを示したと同参事会は述べ、ウクライナでの戦争から学んだ教訓を取り入れることで同国の軍隊を近代化することを決定したことも明らかにした。 (2210-090805)

ドイツのスイス製35mm弾ウクライナ供与を拒否

 スイスが11月3日、同国製弾薬をウクライナに提供する許可を求めていたドイツの要請を拒否した。
 ドイツはウクライナの要求に応じ、ロシア軍のCMやUAVの撃墜が可能なドイツ製Gepard AAGSPを提供する意向で、合わせて、Gepard用のスイス製弾薬12,400発も供与するとしている。
 だがスイスのパルムラン経済相はランブレヒト独国防相に宛てた書簡で、自国の中立の原則に基づく方針として、ウクライナが武力紛争の当事者である限り、スイス製軍需品の提供は承認できないと説明した。
 スイスは2日、冬を迎えるウクライナでの飲料水供給と損傷したエネルギー施設の復旧に向けた支援として、CHF100M(150億円)を提供する意向を表明していた。 (2212-110401)
PAC-3 5個 FU の導入と MSE 弾の購入

 米国務省がリトアニア、ベルギーの空軍近代化と共に、スイスへのFMSによる武器売却$700Mを承認した。
 スイスへの売却はPAC-3 MSE弾72発で、米国防安全保障協力局 (DSCA) によると契約には補給整備などの技術支援も含まれている。
 一方リトアニアにはHIMARS 8両とミサイル36ポッドで$495M、ベルギーにはAIM-120C-8 AMRAAM 120発とAMRAAM C-8誘導部10基を$380Mが認められた。 (2212-111902)
【註】米国務省は2020年9月に、 Patriot Config 3+ 5個FUを$2.2Bでスイスに売却することを承認している。

5・3・5・9・2 チェコとスロバキア

台湾との協力強化方針

 台湾外交部が1月8日、チェコの新政権が公表した施政方針で、外交政策において台湾を含むインド太平洋地域の民主主義のパートナーと協力を強化させていくとしたことについて、報道資料で歓迎を表明した。
 台湾とチェコは関係を深めており、2020年にはビストルチル上院議長が代表団を率いて訪問し、2021年10月には台湾から閣僚が率いる経済視察団や呉外交部長が相次いでチェコを訪れた。 (2202-010905)

スロバキアの空域警備を担当

 チェコのフィアラ首相が7月3日に国営TVで、スロバキアが保有するMiG-29をウクライナに譲渡するため、9月からGripen Cを装備するチェコ空軍がスロバキアの防空を担うと述べた。
 スロバキアは現在F-16 Fighting Falconを発注している。
 ウクライナ空軍はMiG-29を44機保有していたが多くが破壊されているため、MiG-29を装備している欧州諸国から操縦に習熟しているMiG-29の譲渡を希望している
。 現在ポーランドが単座21機と複座6機、ブルガリアが単座11機と複座3機、スロバキアが単座9機と複座2機を保有している。 (2209-071302)

 チェコのチェルノチョワ国防相、ポーランドのブラシュツァク国防相、スロバキアのナド国防相が8月27日、保有しているMiG-29 11機を退役させるスロバキアの空域警備をチェコとポーランドが肩代わりする合意文書に署名した。
 肩代わりはポーランドかF-16 2機で9月1日に開始され、スロバキアがF-16を受領する2024年まで続けられる。
 スロバキアで退役するMiG-29はウクライナへの提供が検討されている。 (2209-082708)

スロバキアが BVP-1 IFV をウクライナに提供、代替えに Leopard 2 MBT を受領

 ドイツがソ連製のBVP-1装軌IFVをウクライナに提供する見返りに、旧仕様のLeopard 2 MBT 15両をスロバキアへ提供する。 提供されるMBTは現在メーカに保管されており、提供は年内に開始される。  S-300をウクライナへ提供したスロバキアには、独米蘭がPartiotで支援した実績がある。 (2209-082401)

CV90 MkⅣ IFVの共同調達と共同運用

 スロバキアとチェコが8月27日、CV90 MkⅣ IFVの共同調達と共同運用で合意した。
 スロバキアは6月にスウェーデンとの政府間協定でCV90 MkⅣ IFVを152両発注しており、2Q/2025年から3Q/2028年に納入されることになっている。
 チェコも6月に国防省に対しCV90 MkⅣ IFV 210両の調達を承認しており、2023年~2027年に納入される。 (2211-091403)

ウクライナに T-72B 45両供与

 米国防総省が11月4日、修復したソ連製MBT、UAV、SAM、装甲車両など$400M相当をウクライナに供与すると発表した。
 この支援で中心となるのはチェコが保有するT-72B 45両で、米国が費用を負担して改修する。 T-72Bの供与にはチェコとオランダが同意しており、オランダはチェコが同じくウクライナに供与する別のT-72B 45両の改良を行う。
 これには$90Mがかかる。 これら90両のMBTは早ければ2022年12月に引き渡しが開始される。 (2212-110420)

 米蘭政府が11月4日、チェコが保有するT-72 MBT 90両を改修した上でウクライナに提供すると発表した。
 米とオランダはこれに光学や通信機能などを追加する改修を施して供与するという。
 ロシアの侵攻開始以降、米国がウクライナに戦車を提供するのは初めてである。 (2212-110503)

5・3・5・9・3 デンマーク

国防予算を大幅に拡大

 デンマークのフレデリクセン首相が3月6日、国防予算を大幅に拡大すると共に、ロシア産天然ガスの依存から脱却することを目指すと発表した。
 国防予算を段階的に増額し、2033年までにGDP比で2%に引き上げるという。
 デンマークは2019年に国防予算をGDP比1.35%から2023年までに1.5%に引き上げることにしたが、NATOの目標とする2%まで増やすよう米国からの圧力を受けていた。 (2204-030709)

戦闘艦の整備に DKK40B(7,400億円)

 デンマーク政府は8月21日までに、ロシアによるウクライナ侵攻や欧州の新たな安全保障環境を受け自国の戦闘艦の整備にDKK40B(7,400億円)を投じるとの政策を発表した。
 デンマークはウクライナへ兵器や装備品などの供与も進めていて、フレデリクセン首相は最近、さらなる兵器供与などのための€110M相当の新たな財政援助も打ち出した。 (2209-082106)

5・3・5・9・4 北マケドニア

 ロイター通信によると、北マケドニア(旧マケドニア)外務省が4月15日、外交上の規範に違反したとして、ロシアの外交官6人に国外退去を命じた。
 NATO加盟国の北マケドニアは3月28日にも別のロシアの外交官5人を追放している。 (2205-041603)
5・3・5・9・5 ハンガリー

プーチン露大統領と親密なオルバン首相がウクライナへの軍事支援を拒否

 AFP通信が、ハンガリーのオルバン首相が3月25日、ウクライナへの軍事支援について国益に反するとして拒否する方針を明らかにしたと報じた。
 ハンガリーはNATOやEUの加盟国だが、オルバン首相はプーチン露大統領との親密な関係で知られる。 (2204-032609)

ゼレンスキー大統領を敵と明言

 ハンガリーのオルバン首相の報道官が4月8日にCNNの取材に答え、同国はロシアと戦うウクライナに対し武器を供与するつもりはないと明らかにした。
 同報道官は、ハンガリーは今回の戦争に武器や兵士の供給という手段で加わるつもりはないと語った。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は3月の演説でオルバン首相を批判し、ハンガリーに対し「どちらの側につくのか国として決める」よう告げていた。
 一方のオルバン首相は3日の総選挙での大勝を受けてゼレンスキー大統領を攻撃し、陣営にとって戦わなくてはならなかった多くの敵の一人だったと明言した。 (2205-040904)

EU 欧州委員会が EU 予算の配分停止も

 EU欧州委員会が4月27日、「法の支配」の原則に違反した加盟国へのEU予算配分を停止できる新ルールを、ハンガリーに発動する手続きに着手した。
 2021年のルール導入後、発動は初めてである。
 公共調達などをめぐる汚職や、不正対策の不十分さを問題視した。 (2205-042808)

ウクライナ戦争を口実に非常事態宣言

 ハンガリーのオルバン首相が5月24日、ウクライナでの戦争によりハンガリーが非常事態に突入すると発表した。
 オルバン首相によると、非常事態は現地時間25日00:00に発動される。 しかし非常事態での権限の範囲については明らかにせず、詳細は25日に共有すると述べた。
 ハンガリーは最近、ロシア産石油の輸入を禁止するEUの提案に反対し、禁輸措置を支持しないことを表明した。 (2206-052509)

Iron Dome の導入

 ハンガリーがELMA-2084レーダを含めたIron Domeシステムの導入に関心を持ち、できれば2023年早早にも入手したいとしている。
 ハンガリー国防省によるとノヴァーク大統領とブロヴニツキー国防相は11月初めにテルアビブを訪問した際にIron Domeの展示を視察している。 (2301-120102)

5・3・5・9・6 スロベニア

中国が親台湾のスロベニアに対し貿易圧力

 中国がリトアニアに続き、親台湾の動きをみせているスロベニアに対しても貿易圧力を加えている。
 英The Times紙が1月27日、スロベニアの首都リュブリャナにある「スロベニア中国企業協議会」所属の企業は中国側がスロベニア企業との契約を終了したり投資を撤回するなど、リトアニアにしたことと同様な措置をとっていると報じた。
 スロベニアは中国が推進している一帯一路に参加しているEU加盟国で両国はよい関係を維持してきたが、ヤンシャ首相が今月17日にインドメディアとのインタビューで、スロベニアと台湾が代表処設立のために協議していると明らかにした後、先のような報復措置がとられたということだ。
 ヤンシャ首相は、台湾人が自ら自身の未来を決定することを支持するとし、他国と台湾間の経済貿易関係を中国が阻止する根拠はないと語っていた。 (2202-012905)

5・3・5・9・7 旧ユーゴスラビア諸国

「3・6・2 旧ユーゴスラビア」で記述
5・3・6 トルコ

5・3・6・1 エルドアン体制

トルコリラの下落

 トルコリラの2021年の年初来下落率は対ドルで44%となり、IMFの支援で金融危機から脱した2001年以来の大幅な下落を記録した。
 約20年にわたりトルコの政権を握ってきたエルドアン大統領の下で最大の下落率となったほか、ここ数年の新興国市場でも最悪のパフォーマンスを示した。 (2202-010103)

5・3・6・2 対外姿勢

5・3・6・2・1 対 米

米国が武器売却

 米当局者が、バイデン政権がトルコ空軍が保有するF-16向けの高性能兵器やその他の装備の売却について、議会指導部に承認を求めたことを明らかにした。
 同案には、F-16搭載ミサイルとレーダ、電子機器の売却が含まれており、実現すれば保有しているF-16の大幅なアップグレードが可能になる。
 議会指導部に先月送付された武器売却案では、トルコがロシアとウクライナの和平交渉で仲介役を務める一方で、ウクライナ軍を支援することで、米国との摩擦の修復を図るとともに新たな武器を入手したいと考えていることが浮き彫りとなった。
 対米関係の再構築を目指すトルコへのさらなる武器売却を巡り、政権と議会が対立することになりそうである。 (2206-051114)

 米議会下院が7月14日、バイデン大統領が計画しているF-16のトルコへの売却を制限する新たな法案を可決した。 ただ、法案成立には上院の承認などの段階をなお踏む必要がある。
 下院はFY23 NDAAの修正案として賛成244、反対179で可決した。
 修正案によると、トルコへの戦闘機の売却および譲渡について米国の国家安全保障に必要だと政権が証明しない限り禁止される。 (2208-071504)

5・3・6・2・2 対 欧 州

北欧2国の NATO 加盟支持せず

 トルコのエルドアン大統領が5月13日、フィンランドとスウェーデンがNATO加盟に前向きな姿勢を示していることを巡り、トルコとしては支持できないとの見解を示した。
 両国が「多くのテロ組織の本拠地」になっているためとしている。
 トルコはこれまで、スウェーデンなど西ヨーロッパ各国に対し、トルコがテロ組織とみなすクルド人の武装組織「クルド労働者党 (PKK)」や「人民防衛部隊 (YPG)」などへの対応を巡り繰り返し批判してきた。
 エルドアン大統領はイスタンブールで会見し「NATOがギリシャを加盟させたのは間違いだった。 トルコとしては同じ過ちを繰り返したくない」と述べ、北欧2ヵ国の加盟に難色を示した。
 トルコは1952年にNATOに加盟して以降、NATOの拡大を支持してきたが、新規加盟には全会一致の承認が必要なため、トルコの反対はスウェーデンとフィンランドにとって問題となる可能性がある。 (2206-051402)

トルコが北欧2ヵ国の NATO 加盟を承諾

 トルコ大統領府が6月28日に声明を出し、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を支持する姿勢に転じたことについて、両国から「望むものを得た」ためだと、両国にNATOを加えた28日の4者協議で「具体的な成果」があったと強調している。
 声明は、スウェーデンとフィンランドがクルド人勢力を支援しないことや、トルコへの武器禁輸を行わないことなどに同意したという。 (2207-062903)

米国が F-16 売却に同意

 バイデン米政権が6月29日、トルコの戦闘機の近代化を支持するとして、同国が求めているF-16の売却に応じる可能性を示唆した。
 トルコは2021年10月に米国にF-16 40機の売却を要求したが、トルコがロシアからSAMを調達したことで、問題が複雑化していた。
 トルコがフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を一転して支持したことに関連して、米政府高官は「米国はトルコに何も提供せず、トルコから何も求められなかった」とし、米国が見返りを提供したとの見方を否定している。 (2207-063002)

5・3・6・2・3 対 露

シリア行きロシア機の飛行を禁止

 トルコのチャブシオール外相が4月23日、シリア行きのロシアの軍民機のトルコ空域の飛行を禁止すると発表した。
 チャブシオール外相によると、ロシア機の飛行禁止措置は3ヵ月間適用される。
 NATO加盟国だがロシアとも協力関係にあるトルコとしては、ロシアのウクライナ侵攻開始後、最も強い反応となった。
 シリアでは、ロシアがイランと共にアサド大統領を支援する一方、トルコは反体制派を支援している。 (2205-042404)

ロシアが主導する上海協力機構への加盟を目指す

 トルコのメディアNTVなどが9月17日、エルドアン大統領が中国とロシアが主導する上海協力機構 (SCO) への加盟を目指していると述べたと報じた。
 中国、ロシア、インド、パキスタン、イラン、キルギス、タジキスタン、カザフスタン、ウズベキスタンが加盟するSCOで現在トルコは対話パートナーになっている。
 SCOサミットでの二国間協議の中で、エルドアン大統領はプーチン露大統領と会談し、トルコとロシアがトルコ南部のアックユに建設中の原子力発電所を巡る問題を解決する合意に達したと述べた。 (2210-092012)

ロシアが原子力発電所建設、完成後は運営も

 トルコ南部の地中海沿岸部で、ロシア国営Rosatom社が原子力発電所の建設を進めている。
 エネルギーのの7割以上を海外からの輸入に依存しているトルコにとって国外依存脱却を長年の夢と訴えるエルドアン大統領肝煎りのプロジェクトで、2023年後半にもトルコ初の原発として稼働を開始する見通しだが、市民からは、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの協力を懸念する声も聞かれる。
 しかし原発の運営は完成後もロシア側が担い、トルコは少なくとも15年にわたって電力を購入する契約で、地元では情報開示の不十分さや震災対策を疑問視する声があり、11月12日に行われたメルシン県でのデモに参加者からは、「ロシアが将来原発を止めてトルコに圧力をかける事態もあり得るのではないか」との声も上がっていた。 (2212-111905)

ロシアの仲介でシリアとの接触

 トルコ国防省が12月28日、アカル国防相と国家情報機構 (MIT) のフィダン長官がモスクワでシリアの高官と会談したと発表した。
 トルコ国防省の発表によると、会談にはシリアのアッバス国防相およびマムルーク情報局長のほか、ロシアのショイグ国防相も参加し、声明で「シリア危機、難民問題、シリア国内の全てのテロ組織に対する共同戦線の取り組みが建設的な会談で議論された」とした。
 またトルコ、ロシア、シリアは3ヵ国間協議の継続にも合意したという。
 トルコのエルドアン大統領は12月、トルコ・シリア間の外交加速に向けロシアおよびシリアとの3ヵ国間の機構設立をプーチン露大統領に提案したと発表し、シリアのアサド大統領との会談を望んでいるとしていた。 (2301-122903)

5・3・6・2・4 対 中

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・6・2・5 対アルバニア

 トルコとアルメニアの代表団が1月14日にモスクワで、両国が和解合意に署名した2009年以降、停滞していた将来の国交正常化に向けた協議に臨んだ。
 トルコとアルメニアは第1次大戦中のアルメニア人虐殺などをめぐる問題で厳しく対立してきた。
 一方で両国内に経済面での関係強化を模索する動きがあり、2月には試験的に直行チャーター機を往来させることが検討されている。 (2202-011505)
5・3・6・2・6 対チュルク世界

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・6・3 軍備増強

5・3・6・3・1 艦 船

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・6・3・2 航空機

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・6・3・3 陸戦兵器

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・6・3・4 無人兵器

U S V

 トルコ政府の軍事産業当局がトルコ軍事工業会SSBに対しMIR戦闘USV構想を公開した。
 SSB会長によるとMIRには3種類があり、電子戦装置、ソナーのほか、Roketsan社が開発した各種ミサイルが搭載され、遠隔操作または乗組員が搭乗して自動で運用される。 (2212-110402)

U A V

 「7・3・5・1 対レーダ UAV」で記述

無人戦闘機

 トルコBaykar社が開発していたBayraktar Kizilelma無人戦闘機が12月14日に初飛行した。
 KizilelmaはMTOW 6t、武器搭載能力1.5tで、ウクライナのIvxhenko-Progress社製Al-322Fターボファンエンジンを搭載し初期型は0.6~0.9mphで飛行する。
 操縦はSATCOMを介して行われる。
 Aselsan社製AESAレーダを装備し、国産のBozdogan及びGokdongan AAM及びRocktsan社製の射程250km以上のSOM-J CMまたはMANファミリーの誘導爆弾を搭載できる。
 Kizilelmaは滑走路だけでなく将来トルコ海軍の旗艦となるLHD Anadolu Selcukでも離艦できる。 (2301-122003)

5・3・6・3・5 ミサイル

Atmaca ASCM

 トルコが350発以上装備している老朽化したHarpoon ASCMに換えて国産初のAtmacaを2~3年かけて装備する。
 Atmacaは高度3m以下をシースキミングでき、射程は220km以上で350kgの破片効果HE弾頭を搭載している。 (2203-021011)

Siper Hisar 0+ 中高度 SAM

 トルコがHisar 0+中高度SAMの装備開始を控えた試験を2021年12月26日に実施し、高速標的機の撃墜に成功した。
 HisarはRocketsan社とAselsan社が開発した短距離、中距離、長距離SAMのファミリーで、Hisar 0+は25km以内で高度10km以下の最大9個目標と同時に交戦できる。 (2204-011206)

 トルコが、Siper高高度長距離AMDミサイル初の発射試験を8月26日に行ったと発表した。
 公表された映像では高度26,247ftを150m/sで飛翔するBanshee Jet 80+標的機を93kmで撃墜していた。
 SiperはRocketsan社が開発している射程100kmの2パルスロケットミサイルで、システムはDBF機能を持つAselsan社のEIRS S-band AESAレーダと射撃統制装置車で構成される。 (2211-091406)

5・3・6・4 軍事産業の振興

5・3・6・4・1 振 興 策

 2023年に特筆すべき記事なし
5・3・6・4・2 武器輸出の拡大

エチオピアへ Bayraktar TB2 UAV

 Maxar衛星が2021年11月11日にアジスアベバ南方のHarar Meda航空基地を撮影した画像に中国製Wing Loong Ⅰ UAVと共に、トルコ製のBayraktar TB2 UAVが写っていた。 (2203-120110)

ナイジェリアへ Bayraktar TB2 UAV と Hürkus 軽飛行機

 トルコ国防省が2021年11月18日、ナイジェリアにHürkus軽飛行機とBayraktar TB2 UAVを輸出すると発表した。 (2203-120111)

カタールへ艦艇

 トルコのAnadolu社とBarzan Holding社が2月8日、カタール海軍向けのLCM 2隻を進水させた。 積載能力130tの2隻は8月に引き渡され、9月にカタールに到着する。
 Anadolu社はかつてカタール海軍に練習艦Al Doha 2,250tを納めており、姉妹艦Al Shamalも間もなく引き渡される。 (2203-021010)

バングラデッシュへ Bayraktar TB2 UCAV

 バングラデッシュがトルコのBaykar社からBayraktar TB2 UCAVを購入する。 購入数については公表していない。
 全長6.5m、翼端長12m、MTOW 700kgのBayraktar TB2は機外搭載の85kgを含めて150kgの搭載能力と、120ktの速力、18,000ftの実用上昇限度の性能を持つ。
 機外には4ヵ所のハードポイントがあり、Rocketsan社製MAM-L/MAM-C小型弾を搭載できる。 (2210-081008)

5・4 中 東

5・4・1 中東全般

5・4・1・1 対外外交姿勢

5・4・1・1・1 対イスラエル

 2023年に特筆すべき記事なし
5・4・1・1・2 対 米

サウジと UAE の首脳、バイデン米大統領との電話会談拒否

 米当局者らによると、サウジアラビアのサルマン皇太子とUAEアブダビ首長国のナハヤン皇太子はこの数週間、バイデン米大統領から会談を求められたが、いずれも拒否した。
 米国はロシアのウクライナ侵攻に対抗するための国際支援の確保や高騰する原油価格の抑制に取り組んでいるが、サウジとUAEの当局者らは当時、米国の中東政策に対する批判を強めていた。 (2204-030915)

5・4・2 サウジアラビア

5・4・2・1 対外関係

5・4・2・1・1 対イラン関係

イランがサウジへの攻撃画策か

 米国とサウジの当局者が、サウジアラビアがイランによる自国への攻撃が迫っているとの機密情報を米国と共有していたことを明らかにした。
 ただ、機密の詳細については提供することを拒んだ。
 サウジ当局者によると、イランはサウジとイラク北部の都市エルビルへの攻撃を計画している。
 9月以降、イラン全土を揺らしている反政府デモから注意をそらすことが狙いだという。
 サウジの情報提供を受けて、中東に展開する米兵や周辺数ヵ国の軍が警戒態勢を引き上げたという。
 米国家安全保障会議 (NSC) の報道官は、サウジによる警告を懸念しており、イランが実際に攻撃に踏み切れば対応する用意があるとの認識を表明し、地域における米国の利益とパートナーを守るため行動を躊躇しないと述べた。 (2212-110202)

5・4・2・1・2 イエメンスーシ派との関係

 「2・2・1 イエメン」で記述
5・4・2・1・3 対湾岸諸国関係関係

 2023年に特筆すべき記事なし
5・4・2・1・4 対 中 国

 中国の習国家主席が12月8日、訪問先のサウジアラビアでサルマン国王と国政を事実上取り仕切っているムハンマド皇太子とそれぞれ会談し、2年ごとの首脳会談や、同国との包括的戦略パートナーシップ協定に合意した。
 伝統的に親米で中東地域の大国でもあるサウジに接近し、同地域への影響力を広げようとしている。
 サウジは中国の石油の主要な調達先で、サウジにとっても2013年以降、中国が最大の貿易相手国となっているが、近年の両国関係の密接さは資源の分野だけにとどまらない。
 今回、両国が調印した協定には、習氏が掲げる一帯一路とサウジの国家改革指針ビジョン2030の連携が盛り込まれた。
 ビジョン2030が目指すのは、石油依存からの脱却と産業の多角化で、人口900万の未来都市ネオム(NEOM)を総工費$500Bで建設するのをはじめ、観光立国、スポーツ振興、教育改革などが含まれ、膨大な資金が必要となる。 (2301-120916)

 サウジアラビア国営サウジ通信が、公式訪問した中国の習主席が12月8日にサルマン国王やサルマン皇太子と会談し、9日に共同声明を発表したと報じた。
 両国は包括的な戦略的パートナーシップ協定に署名して友好関係をアピールしたほか、防衛分野や核の平和利用をめぐる協力も推進するとした。
 また声明によると、中国とサウジは内政不干渉の原則を守ることで合意し、両国の人権弾圧をめぐる欧米の批判に一致して対抗する意思を示した。
 サウジは親米の産油国だが、中国が広範囲にわたる関係強化を進めていることが浮き彫りになった。 (2301-120918)

5・4・2・1・5 対米関係

サウジアラビア、石油価格の高値誘導

 「4・5・6 間接的ロシア支援」で記述

米大統領補佐官、軍事支援の変更も選択肢

 国家安全保障担当のサリバン米大統領補佐官が10月16日にCNN TVで、サウジアラビアとの関係見直しをめぐり、「軍事支援の変更も選択肢に含まれる」と述べ、サウジへの武器売却も検討対象との認識を示した。
 サリバン補佐官は、サウジが主導する石油輸出国機構 (OPEC) とロシアなどの非加盟国で構成するOPECプラスの大幅減産決定に関し、「米国民の利益に反し、ロシアに味方した」とサウジの対応を批判した。 (2211-101610)

5・4・2・2 軍制改革

 サウジアラビアが2028年の完了を目指した軍改革を行っている。
 改革は昇任人事、調達、統合運用などに及ぶ制度改革で、後に国防相になった当時のサルマン皇太子が2015年に提唱し2017年に承認され、2018年に勅命となった。
 軍改革の内容は3月6~9日に開かれたWorld Defense Shoreまで殆ど公表されていなかった。
 軍改革で最も目を引くのは国軍の5個軍種のうち空軍と防空軍の2軍種を宇宙航空軍に統合するというものである。 (2206-032103)
5・4・2・3 軍事産業の振興

各種射程 BM の開発

 イランを後ろ盾とするイエメンのフーシ派がUAEやサウジアラビアへの長距離攻撃を仕掛けているが、サウジアラビアが自前のBMを開発しているのが公然の秘密になっている。
 同国空軍を退役したAlKahtani 少将は、サウジアラビアが各種射程のBMの開発を含む複数の対抗手段を計画していることを明らかにしている。 (2203-020409)

THAAD 構成品の一部国産

 3月6~9日にリヤドで開かれた国際防衛展でサウジアラビアのGAMIが、2017年10月に米国と$15BのFMSで購入契約したTHAAD構成品の一部をサウジアラビア国内で生産することを公表した。
 サウジで生産されるのは発射機とミサイルのキャニスタの2点であるという。 (2204-031015)

 サウジアラビアのGAMI社がLockheed Martin社と、3月6~9日にリヤドで開かれた2022 World Defense ShowでTHAADの現地生産契約を行った。
 サウジで生産されるのは発射機とキャニスタになる。
 サウジが$15BでのTHAADの売却を最初に承認されたのは2017年で、最初の契約は2019年3月にLockheed Martin社と$946Mで行われた。
 その後2020年6月にAN/TPY2レーダの契約が$2.3Bで行われた。 (2206-032306)

 サウジアラビアのGAMI社がLockheed Martin社と、3月6~9日にリヤドで開かれた2022 World Defense ShowでTHAADの現地生産契約を行った。
 サウジで生産されるのは発射機とキャニスタになる。
 サウジが$15BでのTHAADの売却を最初に承認されたのは2017年で、最初の契約は2019年3月にLockheed Martin社と$946Mで行われた。
 その後2020年6月にAN/TPY2レーダの契約が$2.3Bで行われた。 (2206-032306)
World Defense Show に各種UAVを出品

 サウジアラビアの宇宙航空企業が3月6~9日に開かれてWorld Defense Showに各種UAVを出品した。
 サウジは他の中東諸国同様にMQ-1 PredatorやMQ-9 Reaperの装備を希望したが売却を拒否されたため中国からCH-4やWing Loong Ⅱを購入したがEOシステムの信頼性が低く満足しなかった。 そこで国内開発に踏み切った。
 World Defense Showにはサウジの民間企業Intra社がMTOW 3,300kgのSamoom武装ISR HALE UAVの縮尺模型を展示した。
 Samoomの初飛行は2025年に計画されている。 (2206-032104)

5・4・3 U A E

5・4・3・1 海外技術の導入

フランスとの提携

 UAEの防衛企業であるEdge社が11月22日にドバイ航空展で、フランスの防衛航空工業会GIFASとの協力協定に署名した。 (2203-120114)

5・4・3・2 装備品の開発

群飛行能力をもつUAV

 UAEのHALCON社がアブダビで開かれたUMEX展の初日に、精密誘導兵器や各種UAVと共に群飛行能力をもつUAVを発表した。
 このUAVはHunter 2シリーズを元にした翼端長1.44m、全長1.25mで、AI技術を使用してお互いの情報を共有し、隊形を維持して目標に向かうという。 (2203-022106)

5・4・3・3 装備品の導入

L-15 高等練習機

 UAE国営WAM通信が2月23日、国防省が中国からL-15 12機を購入すると報じた。 今後更に36機を追加で購入する可能性があるという。
 これに先立ちUAEは2021年12月にF-35など$23B相当の米国産先端武器を購入する交渉を中断していた。 (2203-022408)
【註】L-15 (JL-10) はロシアのYak-130と良く似た高等練習機で、AJT(高等練習機)型とLIFT(戦闘機前段階練習機)型の2種があり、LIFT型は最高速度Mach 1.4の性能を持つが、F-35と比較できる機種ではない。

5・4・3・4 武器輸出

 2023年に特筆すべき記事なし
5・4・4 カタール

イラン大統領のカタール訪問

 イランとカタールが2月21日、航空、貿易、海運、メディアなどの分野での協力や査証(ビザ)免除で合意した。
 イラン大統領として11年ぶりにカタールを訪問したライシ大統領はドーハでカタールのタミム首長と共同で発言し、アラブ湾岸諸国間の協力関係は潜在的に発展の余地があると湾岸諸国との関係改善にも期待感を示した。
 カタールはイランと良好な関係を保っており、サウジアラビアなどアラブ諸国が2017年半ばにカタールとの国交を断絶した際もイランはカタールを支持した。
 タミム首相は、主要国がウィーンで開催しているイラン核合意再建に向けた協議について、好ましい結論が出るようカタールとしてできる限りの貢献をする用意があると表明した。 (2203-022207)

5・4・5 その他諸国

5・4・5・1 ヨルダン

 2023年に特筆すべき記事なし
5・4・5・2 クウェート

 2023年に特筆すべき記事なし
5・4・5・3 オマーン

5・5 南アジア

5・5・1 インド

5・5・1・1 国防政策

5・5・1・1・1 国 防 費

 インド財務省が2月1日発表した2022年度(22年4月~23年3月)の当初予算案は、歳出総額が前年度比13%増のINR39.4T(60兆円)になった。
 国防費は中国との係争地での対立を背景に11%増えた。 (2203-020110)
5・5・1・1・2 山岳戦への備え

山岳戦装備の整備

 インド陸軍がBEL社にSwathi対砲迫レーダの山岳仕様であるSwathi Mark Ⅱ 6基を発注した。
 インド陸軍が30基装備しているSwathi Mark Ⅰは30tと28tのTatra 8×8車2両から成るが、Mark Ⅱは18tの6×6車2両で構成される。
 インド陸軍はまた7月1日に、中国及びパキスタンとの山岳国境での偵察警戒に当たる4×4多目的軽装甲車両 (LAMV) 800両のRfIを発簡した。
 このLAMVは機械化歩兵軍団及び機甲軍団に装備され、標高5,000m近くで使用される。 (2209-071312)

5・5・1・2 外交政策

5・5・1・2・1 対中姿勢

 2023年に特筆すべき記事なし
5・5・1・2・2 対米関係

S-400の購入と CAATSA法

 米政府はロシアからS-400を購入したインドに対しCAATSA法に基づく制裁を実施するか否かを決めかねている。 (2203-120113)

5・5・1・2・3 Quad の一員

 2023年に特筆すべき記事なし
5・5・1・2・4 対露関係

S-400 の購入

 インドメディアが、インドが4月16日までにロシアからS-400 2番目のシステムを搬入したと報じた。 ミサイル本体の搬入は遅れているという。
 ウクライナに侵攻したロシアに日米欧が厳しい経済制裁を科すなか、インドはロシアから兵器輸入を継続する姿勢を改めて示した。
 インドはS-400 5個システムの供与を受けることで合意しており、1個システムは配備済みである。 (2205-041604)

対露経済制裁で漁夫の利

 対露制裁を受けExxon Mobil社やBP社が撤退を決めたロシア極東の石油天然ガス開発事業Sahalin 1計画について、インド政府が国営エネルギー会社に対し、同事業の運営会社Exxon Mobil社の保有していた権益や、BP社が保有するロシア石油大手Rosneft社の株式取得について検討するよう指示したことが、関係筋の話で分かった。
 BP社は保有するRosneft株19.75%を全て売却すると2月に発表している。 (2205-042908)

Ka-31 AEW ヘリ購入交渉の無期延期

 インド国防省当局者が匿名を条件にDefense Newに、ロシアのウクライナ侵攻による武器供給の不確実性を受けて、Ka-31 AEWヘリ10機を$520Mで取得するためのロシアとの交渉を無期限停止したことを明らかにした。 (2206-051616)

武器調達先の多様化を模索

 ロシア製兵器の最大購入国であるインドが、ロシアがウクライナ侵攻を続け欧米の制裁に直面している状況下で、国内および東欧で代替調達先を探している。
 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) によると、世界屈指の兵器輸入国であるインドの輸入額は2018~2021年に$12.4Bに上り、うちロシアが$5.5Bを占めた。
 専門家は、ロシア製装備はこれまでインドの需要を十分満たしてきたが、ここ数年は米国、フランス、イスラエルなどから購入を増やしているとしており、政府高官は防衛装備品の半分を国内生産にすることを目指していると述べた。
 政府はまた、同様の兵器などを使用している東欧諸国から予備の装備提供を受けられるか調査している。 別の政府高官はロシアからの「供給ラインが寸断した場合は代わりの選択肢がある」と語った。 (2206-051903)

Vostok 2022合同演習への参加

 インド国防省が9月1日、インド軍部隊が1週間のVostok 2022合同演習に参加するためロシア入りしたと発表した。
 ロシアの軍事演習を巡っては、米政府が数日前にインドなどの参加に懸念を表明していたものの、インド政府は同国軍が他国と共にロシアでの演習に定期的に参加しているという認識を示した。
 中国国防省によると、ロシアの演習には、中国、インド、ベラルーシ、モンゴル、タジキスタンなどが参加する。 (2210-090201)

5・5・1・2・5 東方進出

ベトナムとの防衛協力を強化

 インドがベトナムと6月に兵器を含む装備の補修や補給で基地を相互に利用する協定を結び、防衛協力を強化する。
 インド国防省によると、ベトナムが外国とこうした協定を結ぶのは初めてだが、両国は包括的戦略パートナーシップを締結済みで、2030年までに防衛協力を拡大する共同声明にも署名しており、中国とは係争地を巡り対立するインドが対中国で利害が一致するベトナムへの接近が目立つ。 (2208-070703)

5・5・1・3 軍備増強

5・5・1・3・1 兵力増強、改編

 2023年に特筆すべき記事なし
5・5・1・3・2 宇宙兵器

 2023年に特筆すべき記事なし
5・5・1・3・3 極超音速ミサイル

 2023年に特筆すべき記事なし
5・5・1・3・4 長距離 BM

Agni P

 インドDRDOが2021年12月18日にAgni Pの2度目の発射試験を行った。 最初の試験は2021年6月に行われている。
 Agniシリーズには射程700kmから5,000kmまで5種類あるがAgni Pは固体燃料で1,000~2,000kmの射程を持ち、リングレーザジャイロによるINSを搭載している。 (2204-010502)

Agni 5

 インドが12月14日、Agni 5の発射試験を行った。
 インドのジョシー議会担当相兼石炭相兼鉱山相はAgni 5の射程は5,400km余りで、インド東部のオディシャ州沖のアブドゥル・カラム島から打ち上げられた。
 Agni 5の発射は事前に予定されていた試験だが、インド軍は国境の係争地で中国側と衝突したばかりである。
 インドのシン国防相は13日に中国との国境が定まっていない北東部アルナチャルプラデシュ州の係争地帯で中国軍との衝突があったことを議会で正式に確認した。
 両国の軍事衝突は2020年以来である。 (2301-121609)

5・5・1・3・5 長距離 CM

BrahMos-A

 インド国防省が2021年12月11日、DRDOが2種類の国産新型ミサイルの試験を行ったと発表した。
 1種類は射程10kmのヘリ発射長距離対戦車ミサイルSANTで、もう1種類はPinaka MLRの長射程型Pinaka Mk2である。
 Pinaka Mk2はMk1の射程が10~38kmであるのに対し20~90kmである。
 また12月上旬にはBrahMosの空中発射型BrahMos-AのSu-30MKIからの発射に成功し、量産移行が可能になった。 (2203-122209)

BrahMos-ER

 インドが5月12日、BrahMos-A空中発射超音速ミサイルの射程延伸型BrahMos-ERのSu-30MKIからの初めての発射試験を行い、標的に命中させた。
 BrahMos-ERの射程は450~500kmとBrahMos-Aの290kmより長く、200~300kgの弾頭を搭載している。
 BrahMos-ERの空中発射試験より2ヶ月前に、インド海軍は洋上発射のER BrahMosの発射試験に成功している。 (2208-052514)

5・5・1・3・6 艦 船

国産空母 Vikrant

 インド国防省が1月9日、国産初の空母Vikrantが3回目の試験航海に出港したと発表した。
 Vikrant計画は6年遅れになっており、建造を完了した最初の基本試験は2020年12月に行われ、2021年8月に処女航海に出港して10月に2度目の試験を行っている。
 就役は2022年前半に予定されている。
 Vikrantは排水量37,000tで、速力28kt、巡航速力18kt、航続距離7,500nmの性能を持つ。 (2204-011913)

 インド国産空母が7月28日にCSL社から海軍へ引き渡された。
 就役はインドの独立記念日である8月中旬とみられ、就役後はVikrantと命名される。
 2009年2月に建造が開始されたVikrantは全長262m、排水量40,000tで、GE LM2500ガスタービンエンジン4基で推進し、速力は28ktである。
 6銃身のAK-630 CIWS 4基とBarak-8 SAMを装備し、航空機30機の搭載が可能である。 (2210-081003)

 インドで初めての国産空母Vikrantの就役式典が2日に南部コチの造船所で開かれた。
 全長262m、排水量45,000tのVikrantには、1,600名が乗船でき、航空機を最大で30機搭載できるという。 (2210-090211)

原子力潜水艦

 インドが修正した潜水艦建造30年計画の承認待ちにある。 修正計画では攻撃型原潜 (SSN) を6隻国産するとしている。
 インド内閣の安全保障委員会は当初分として6,000t級SSN 3隻分としてINR500B ($6.67B) を承認している。 その一番艦は単価がINR160Bで、2033年に完成する計画である。
 残りの3隻は国産化率を95%以上にするという。 (2203-120804)

 Planet社が2021年11月23日に撮影したの衛星画像から、インドで3隻目となるSLBM搭載原潜 (SSBN) S4が進水したことが分かった。
 S4は射程3,500kmのSLBM K-4を8発と、射程750kmのK-15を24発搭載する。
 S4は7,000tと、先に就役している6,000tのArihant及びArighatより大きいが、同じSLBMが搭載されていることからArihantのストレッチ型と見られる。
 インドは射程が5,000kmとAgni Ⅴ ICBM並のSLBM K-5を開発しているが、S-4がK-5を搭載するにはどの程度の改造が必要なのかは分かっていない。 (2204-011207)

5・5・1・3・7 航空機

AMCA (Advanced Medium Combat Aircraft)

 インドHAL社が第五世代戦闘機AMCAの試作機Test Boxの組み立てを開始する。
 AMCAは2021年に最終設計審査 (CDR) を開始している。 (2206-033010)

5・5・1・3・8 無人兵器

SWiFT 技術実証機、Ghatak UCAV

 インドDRDOの下部組織でバンガロールに所在するAeronautical Development Establishmenが7月1日、開発中のGhatak UCAVの縮小型である技術実証機SWiFTの初飛行に成功した。
 重量1tのSWiFTはロシアNPO Saturn 36MTターボファンエンジンを搭載し、自動技術の検証を行う。 (2208-070201)

 インドが開発しているUCAVの縮小型技術検証機Ghatakが7月1日に初飛行した。
 SWiDFTとも呼ばれるGhatalには、この日に初飛行した無尾翼型と尾翼のある型の2機種あるようで、実大型では機内弾庫を持つとみられる。
 技術検証機の上昇限度は19,500ftで1時間の滞空性能と200km航続の性能を有する。 (2209-071311)

Loyal Wingman UAV

 「7・3・6・4 インド」で記述
ULUAV 潜水艦発射 UAV

 インドDRDOが潜水艦発射UAV ULUAVの開発を計画しているが、インドのNRT社とL&T社の2社が名乗りを上げている。
 DRDOのULUAVはNATO仕様の533mm魚雷発射管から発射され、海面高1,500ft以上を30kt以下で25km以上飛翔する。
 同様のULUAVには高度500ftを43kt~86ktで飛翔する1.8kgのAeroVironment社製Blackwingがある。 (2208-061508)

自動戦闘車 ACV

 インド陸軍が3月中旬、機械化部隊に装備する自動戦闘車ACVの要求を公表した。
 ACVは装軌または装輪で全自動及び半自動モードを持ち、最小地上高300mm、登坂能力25゚、最高速度20km/h、超越能力200mm、超壕能力250mm、渡渉能力500mm、搭載能力1,000kg、ハイブリッドモードでの走行持続能力12時間が求められている。 (2207-040606)

Arjun Mk 1A MBT を元にした戦闘 UGV

 インドDRDOが4月、Arjun Mk 1A MBTを元にした戦闘UGVの開発を計画していると発表した。
 このUGVはArjun MBT同様に120mm砲を装備し、地形情報装置INDIGIGにより操作員が仮想空間で操縦する。 (2207-042005)

5・5・1・3・9 その他の兵器、軍事技術

空中発射短距離対艦ミサイル NASM-SR

 インドDRDOが5月18日、国内開発した空中発射短距離対艦ミサイルNASM-SRをSea King Mk 42Bから発射する試験を行った。
 NASM-SRは全長3.6m、胴径300mm、重量380kgで射程は55kmという。
 飛行制御は空力で行うが、終末ではジェットベーンで操縦し、週末誘導はIIRで行う。 (2208-060109)

QRSAM (Quick Reaction SAM)

 インドDRDOとインド陸軍が、開発中のQRSAMの試験を2020年11月までに6回完了し開発が完了したことを明らかにした。
 QRSAMは陸軍の要求で開発され、ロシア製のKvadrat SAM (2K12 Kub (SA-6))と換装される。 (2211-092107)

MANPADS を元にした VSHORADS

 インド国防省が9月27日、DRDOが開発中のMANPADSを元にしたVSHORADSの発射試験を2度実施したと発表した。 このVSHORADSはデュアルスラストロケットを使用し、低高度の経空脅威を近距離で撃墜する。  インドのVSHORADS調達は1999年にパキスタンとの間で生起したカルギル戦争で始まり、2010年にVSHORADS 800基とミサイル5,175発のRfPを海外企業に発簡した。  この契約は2018年11月にロシアのRosoboronexport社がIgla-S最安価であったことから選定され、2020年にIgla-S MANPADS発射機24基とミサイル216発が発注されその年の4月にIgla-Sを取得したが、VSHORADS 800基とミサイル5,175発は未だに保留状態にある。 (2301-101206)

量子暗号技術

 インド国防省が2月23日、DRDOがインド工科大学 (IIT) と共同で100kkm以上離れた距離での量子鍵配送 (QKD) の試験に成功したと発表した。
 試験では民生用レベルのファイバケーブルが使用されたという。 (2206-030913)
【註】量子鍵配送 (QKD) とは量子暗号技術の一つの手法で、量子力学を用いてランダムな秘密鍵を共有し、情報を暗号したり復号する。

5・5・2 パキスタン

5・5・2・1 国防政策

 2023年に特筆すべき記事なし
5・5・2・2 国内の治安

5・5・2・2・1 パキスタン・タリバン運動

アフガニスタンを越境攻撃

 アフガニスタンの民放TVが4月16日、パキスタン軍がアフガンのパキスタン国境地帯に越境攻撃を行い、女性や子供を含め少なくとも46人が死亡したと報じた。
 アフガンのタリバン暫定政権は16日、パキスタンの駐アフガン大使を呼び抗議した。
 パキスタン外務省は17日の声明で、イスラム武装勢力パキスタン・タリバン運動 (TTP) がここ数日、アフガン側からパキスタン治安部隊を攻撃していたと主張、TTPを標的とした報復攻撃が行われたことを示唆した。 (2205-041704)

5・5・2・2・2 バルチ解放軍

反中国テロ

 パキスタンの反政府武装組織であるバルチ解放軍 (BLA) の女が4月26日に、カラチ大学の孔子学院で自爆し、北京から派遣された教師3人を含む4人が死亡した。
 南西部Balochistan州の分離独立を掲げるバルチ解放軍は27日、自爆攻撃の犯行声明を出し、中国が「搾取」と「占領」をやめなければ、今後も中国人らを標的にした攻撃を行うと警告した。
 中国政府はバルチスタン州で大きな利益を生む鉱業・エネルギー事業に参画しており、中国人と関係者はしばしば分離独立派の攻撃目標となっている。 (2205-042909)

5・5・3 インド洋諸国

5・5・3・1 スリランカ

5・5・3・1・1 経済危機

抗議活動を受け全土に非常事態宣言

 スリランカが4月1日、経済危機に反発する市民の抗議活動が拡大していることを受け全土に非常事態を宣言した。
 同日には最大都市コロンボで不満を抱いた市民が大統領官邸を襲撃し、50人が逮捕された。
 対中債務返済に苦しむスリランカ経済はCOVID-19流行による観光業の打撃や無計画な減税などもあって急速に悪化していて、外貨準備高は1月末時点で$2.3Bと2年間で7割落ち込んだ。
 このため国内では発電用の燃料が足らず、3月31日には13時間の計画停電を実施した。 医療品不足も拡大している。 (2205-040206)

主要 SNS のアクセス停止

 インターネットサービスの障害を監視するNetBlocksが4月3日、スリランカが主要なSNSへのアクセスを規制していると明らかにした。
 NetBlocksによると、スリランカは全土規模でSNSを停止し、Teitter、Facebook、WhatsApp、Youtube、Instagramなどムへのアクセスを制限している。
 コロンボの警察当局者はこの規制を確認した。
 スリランカは未曽有の経済危機に直面しており、政府の対応への不満から抗議デモが暴力化し、2日には政府が全土に非常事態を宣言し外出禁止令を発動した。 (2205-040406)

与党連合からの大量離脱

 経済危機に見舞われているスリランカで4月5日、少なくとも41人の議員が与党連合から離脱し、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領率いる政権は少数与党に転落した。
 弟のバシル・ラジャパクサ財務相に代わって新財務相に指名されたサブリ氏も、国際通貨基金 (IMF) の融資プログラムを巡る重要な交渉を控えわずか1日で辞任した。
 多額の負債を抱える同国では食料、燃料、医薬品が不足。停電も長期化し、抗議デモが激化している。
 ラジャパクサ大統領は4日、閣僚を辞任させて挙国一致内閣の樹立を目指す方針を表明したが、野党はラジャパクサ大統領とマヒンダ首相の辞任を要求し、全政党が参加する挙国一致内閣の樹立にも反対している。 (2205-040516)
【註】スリランカでは、シリセナ大統領は2015年に中国一辺倒の外交政策をとってきたラジャパクサ前大統領に選挙で勝利して政権の座に付いたが、2018年にシリセナ大統領がウィクラマシンハ首相を突然解任し、親中派ラジャパクサ前大統領を新首相に据えていた。
 しかし2019年11月の大統領選でゴタバヤ・ラジャパクサ元国防次官が当選し、親中派として知られる兄のマヒンダ・ラジャパクサ元大統領を首相に起用した。

非常事態宣言を撤回

 スリランカのラジャパクサ大統領が4月1日に発令したばかりの非常事態宣言を撤回した。
 5日遅くの臨時官報によると、非常事態宣言は6日00:00に撤回される。
 非常事態宣言はラジャパクサ大統領に、抗議デモ参加者の拘束や財産の差し押さえなど幅広い権限を付与するものだが、同大統領の辞任を求める声が立法府で広がっている。
 連立政権に参加する11の政党は5日に無所属の立場で役割を果たすと表明し、大統領が所属する政党の一部議員も政権から距離を置くとしていて、定数225の議会で過半数割れとなる恐れもある。
 財務相など閣僚の辞任も相次ぎ、国際通貨基金 (IMF) からの支援獲得の鍵を握る外国の債券保有者との債務再編交渉も進めにくくなっている。
 政治危機の深刻化を受け、外貨不足に伴う経済混乱で不可欠となっているIMFからの融資を巡る合意にも不透明感が増している。 (2205-040611)

デフォルト(債務不履行)宣言

 経済危機に直面しているスリランカが4月12日、$51Bの対外債務について、デフォルト(債務不履行)を宣言した。
 同国財務省は、今回の緊急措置は国際通貨基金 (IMF) から支援を受けられるようになるまでの間、すべての債権者に公平な対応を保証するためだと説明した。
 大手格付け会社は昨年、スリランカの格付けを引き下げた。
 その結果、同国は輸入代金の返済に充当するための外貨調達が事実上、断たれている。 (2205-041207)

 深刻な経済危機に見舞われているスリランカで4月28日、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領や一族の辞任を求める声が強まるなかゼネストが実施された。
 ここ数ヵ月間、食料や燃料、医薬品の極度の不足で抗議デモが広がっているが、全国規模のストは初めてである。
 ストには大統領一族が率いる政党と連携している労働組合を含め100を超える組合が参加し、最大都市コロンボの商業地区では労働者がデモ行進して「ゴタ(大統領)はうせろ」と気勢を上げた。 (2205-042819)

 スリランカは国債の利払い猶予期間が終了する5月18日に格付け会社からデフォルト(債務不履行)を宣告される見込みとなった。
 2023年満期債と2028年満期債について4月18日の期限までに利払いができず、30日の猶予期間に入っていた。
 格付け会社S&Pは既に同国債の格付けを「デフォルト」に引き下げ、猶予期間中に支払いが行われない場合、外貨建て債発行体格付けも「D」になる可能性があるとしている。
 ウィジェセクラ電力エネルギー相は議会で、ガソリンを積んだ船が3月28日にコロンボの港に到着したが、政府はドルがないため支払えないと述べた。 (2206-051810)

マヒンダ・ラジャパクサ首相が辞任

 スリランカのマヒンダ・ラジャパクサ首相が5月9日、史上最悪の経済危機の打開に向けた連立政権に道を開くために辞任した。
 首相の辞任は、コロンボで与党支持者が反政府デモの陣営を襲撃し、警察に催涙ガスと放水銃で撃退された数時間後に発表された。 全国的な夜間外出禁止令も発令された。
 抗議デモの参加者は首相の弟、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領辞任も求めている。
 大統領は5月上旬に、抗議行動が激化する中で非常事態宣言を出していた。 (2206-051002)

ウィクラマシンハ新首相、中国寄り外交見直し

 スリランカのウィクラマシンハ首相が6月7日、基本的な生活水準を維持するために今後6ヵ月で$5Bが必要になると発言、必要不可欠な輸入品の代金を支払うため、人民元建てスワップ$1.5Bの条件について中国と再交渉していると述べた。
 首相は議会で、燃料輸入のために$3.3B、食料品のために$900M、調理用ガスのために$250M、肥料のために$600Mが今年追加で必要になると発言した。 (2207-060706)

 経済危機に陥っているスリランカのウィクラマシンハ新首相が6月7日に議会で、日本との関係改善を図る考えを示した上で、ラジャパクサ大統領らが進めてきた中国寄りの外交政策の見直しが必要だと訴えた。
 ウィクラマシンハ氏は経済立て直しに向け日本や隣国インドの協力を取り付けたい考えである。
 新首相はラジャパクサ政権が日本の支援によるインフラ計画を理由もなく撤回したことで「強固だった関係が壊れている」と述べた。
 日本はスリランカにとって中国と並ぶ最大の債権国の一つだが、近年は中国の存在感が強まっている。
 一方で中国とも支援を巡り、交渉を続けるとも表明した。 (2207-060714)

5・5・3・1・2 国家破産宣言

 経済危機に直面しているスリランカのウィクラマシンハ首相が7月5日に議会で演説し、国の「破産」を宣言した。 (2208-070610)
5・5・3・1・3 スリランカの財政破綻と中国

 スリランカは1983年に多数派シンハラ人の支配に不満を抱く少数派タミル人の武装勢力タミル・イーラム解放のトラ (LTTE) との内戦に突入したが、2005年に大統領に就任したシンハラ人のマヒンダ氏は弟のゴタバヤ氏を国防次官に据え、人権無視の掃討戦で2009年にLTTEを壊滅させた。
 泥沼の内戦を終わらせたスリランカは新時代を切り開くかに見えたが、ラジャパクサ政権は中国との関係を深め、無謀な借金と無駄なインフラ建設に突き進んだ。
 一時は経済成長をもたらしたかに見えたが、親族を要職に登用して独裁色を強め、潤う一族への不満は2015年、大統領選でマヒンダ氏に敗北をもたらした。
 2019年の大統領選にはマヒンダ氏に代わってゴタバヤ氏が出馬し、勝利後は一族への批判をかわすため無理な大減税を行ったため、対外債務の圧迫はもはや隠しようがなくなり、坂道を転げ落ちるようにゴタバヤ政権は崩壊した。 (2208-071405)

 スリランカがCOVID-19のパンデミック初期に多額の債務を抱え外貨準備が減少し始めた際、一部の当局者は国際通貨基金 (IMF) に救済を求めるべき時が来たと主張したが、スリランカの現旧当局者によると、同国にとって最大の債権国である中国は、当面はIMFの苦い薬を使わず、債務返済のために新たな借り入れを増やし続けるという魅力的な選択肢を提示したという。
 スリランカ政府はこれを受け入れ、2020年と2021年に中国の銀行から$3Bの新たな融資を獲得した。 この計画は今や破綻しスリランカを混乱に陥れた。 (2208-071411)

5・5・3・1・4 大統領の国外逃亡

首相、大統領の辞任

 スリランカの最大都市コロンボで7月9日、ラジャパクサ大統領の辞任などを要求する抗議行動が激化し、群衆が大統領公邸になだれ込んで占拠した。
 9日にはコロンボの他の場所でも治安当局とデモ隊の衝突が発生し、公邸と合わせて約40人が負傷し病院に搬送された。
 これを受け、ウィクラマシンハ首相は同日に辞任する意向をツイッターで表明した。
 経済危機で政府への抗議活動が続く中、野党が辞任を要求した。 経済危機に伴い大統領の兄でもある首相が5月に辞任し、ウィクラマシンハ氏が就任したばかりであった。 (2208-070907)

 スリランカのメディアなどが7月9日、ラジャパクサ大統領が13日に辞任する意向を固めたと報じた。
 ラジャパクサ氏の辞任を求め最大都市コロンボの大統領公邸をデモ隊が9日に占拠したが、ラジャパクサ大統領は抗議デモ開始前に公邸から避難していた。 (2208-071001)

ラジャパクサ大統領がモルディブへ逃亡

 スリランカの地元当局者が、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が7月13日未明に軍用機で国外に脱出したことを明らかにした。
 モルディブへ向かったという。 (2208-071305)

デモ隊が首相府に突入

 スリランカのコロンボで7月13日、デモ隊が首相府になだれ込んだ。
 目撃者がAFPに話したところによると、警察や軍が催涙弾や放水砲を使用したが止めることはできず、デモ隊は軍のバリケードを突破して首相府の敷地に入ると国旗を掲げたという。
 数時間前にウィクラマシンハ首相が大統領代行に指名されたばかりだった。 (2208-071313)

 大規模な抗議行動が広がっているスリランカで7月13日、抗議者が首相府に突入した。
 抗議者が厳重な警備が敷かれた建物内に押し入ったのは、この1週間で2度目で、9日には大統領公邸に群衆が乱入し、ラジャパクサ大統領は13日未明に軍用機でモルディブへ脱出した。
 これに対しウィクラマシンハ首相は、秩序回復のため必要なことは何でもするよう軍に命じた。
 スリランカはここ数十年で最悪の経済危機に見舞われていて、多くの国民はラジャパクサ政権に責任があるとみており、5月に首相に就任したウィクラマシンハ氏についてもこの問題の一端を担っていると考えているため、ウィクラマシンハ首相が大統領代行に任命されると、ウィクラマシンハ氏も辞任すべきだと反発がさらに高まった。 (2208-071412)

ラジャパクサ大統領の辞任を正式受理

 スリランカのアベイワデナ議会議長が7月15日、国外逃亡したラジャパクサ大統領の辞任を受理したと正式発表した。
 13日に辞任予定だったが、国外逃亡のため先延ばししていた。

 辞任を経て議会で新大統領の選任に向けた手続きが進むことになるが、20日に実施するとしていた投票はずれ込む可能性もある。  地元メディアは14日にラジャパクサ大統領が逃亡先のシンガポールにあるスリランカ大使館を通じて、辞任に関する文書を議長側に送ったと報じており、議長側が文書に法的な問題点がないか精査していた。 (2208-071505)

5・5・3・1・5 ウィクラマシンハ首相が次期大統領

ウィクラマシンハ首相が大統領代行に就任

 スリランカ議会のアベイワデナ議長が7月15日、国外に逃亡したラジャパクサ大統領の辞表を正式に受理し、ウィクラマシンハ首相が大統領代行に就任した。
 新大統領の選出は20日に行われる予定で、与党は新大統領候補にウィクラマシンハ氏を擁立するとみられるがまだ決定していない。 (2208-071513)

ウィクラマシンハ首相を大統領に選出

 スリランカ議会で7月20日、ラジャパクサ前大統領の後任を選ぶ投票が行われ、ウィクラマシンハ首相が選出された。
 公式結果によると、ウィクラマシンハ氏が134票を獲得し、主要対立候補のアラハペルマ氏は82票だった。 (2208-072011)

ゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領政権の37人を閣外相に任命

 スリランカが9月8日、新たに閣外相37人を任命し、史上最悪の経済危機のさなかにある同国のソーシャルメディアでは公費の「無駄遣い」だと猛反発が起きている。
 新閣外相は全員、ゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領が率いた連立政権の出身で、新閣外相の中にはラジャパクサ氏の甥も含まれており、潅漑を担当する。
 ラジャパクサ氏は7月にデモ隊に公邸を占拠されて国外逃亡したが、先週帰国した。 (2210-091008)

5・5・3・1・6 中国との関係

再び中国への依存

 Bloomberg Newsが7月15日、スリランカのコホナ駐中国大使が$4Bの支援取りつけを目指して中国と協議していることを明らかにし、「ある時点で」合意できるとの見通しを示したと報じた。
 コホナ大使は、2022年に期限を迎える$1Bの対中債務を返済するために、同額の融資を求めていると述べた。
 また中国製品の輸入代金を支払うための$1.5Bの融資枠と、$1.5Bのスワップの発動を求めているという。 (2208-071512)

 スリランカのコホナ駐中国大使がロイタとのインタビューで7月25日、スリランカが持続的な成長を支えるため中国に貿易、投資、観光への支援を要請しており、$400Mの包括的な緊急援助に向けて交渉していると述べた。
 コホナ大使は、スリランカのウィクラマシンハ新大統領が訪中し、通商や投資、観光などの課題について話し合う予定だと述べた。
 また、新政府の対中政策はこれまでと根本的に変わらないとの見通しを示した。 (2208-072603)

中国調査測量船の入港拒否

 スリランカ政府筋が、同国が中国に対して8月6日に調査測量船遠望-5 のスリランカへの入港を無期限で延期するよう要請したことを明らかにした。
 船舶の位置情報などを提供するmarinetraffic.comによると、遠望-5 は中国江蘇省の江陰港から、スリランカ国内で中国が運営するハンバントタ港へ向かっており、11日に到着予定である。
 この船についてインドのCNN News 18は軍民両用の諜報船だと報じ、特にICBM発射の衛星追跡を行うと報じ、インド政府がスリランカに圧力をかけたとしている。 (2209-080705)

一転して入港許可

 スリランカ主要メディアが8月13日、同国政府が中国海軍の観測船遠望-5の入港を許可したと報じた。
 同船をめぐっては、インドが「スパイ船」などと安全保障上の懸念を指摘したためスリランカは中国側に入港延期を求めていたが、多額の対中債務を抱え、中国の圧力に抗しきれなかったようである。 (2209-081310)

 スリランカのメディアが、中国の調査船遠望-5が8月16日、スリランカ南部のハンバントタに入港したと報じた。
 同船は当初11日から17日まで停泊する予定だったが、「スパイ船」と疑うインド側の懸念を背景にスリランカが入港延期を要請した。
 同国は13日になって、16日の入港を認める方針を明らかにしていた。  遠望-5は衛星などの観測任務に従事してきたとされるが、インドのメディアは同船が中国海軍の管理下にあるスパイ船だと報じており、インド外務省は7月下旬に同船の入港を巡り、インドの安全や経済的利益を守るうえで「必要なあらゆる手段を講じる」と警戒を示し、外相会談などを通じて懸念を伝えたとみられる。
 スリランカ外務省は8日に入港を延期するよう中国側に申し入れたと明らかにしたが、13日に「外交チャネルを通じて全ての関係者とハイレベルで広範囲な協議を実施した」と表明したうえで、16日から22日までの停泊を認めると発表していた。
 ハンバントタ港は最近まで政権の要職を占めていたラジャパクサ兄弟の地元にあり、中国からの投資で開発が進んだが、スリランカは債務返済に行き詰まり、2017年に同港の99年間の運営権を中国に引き渡した。
 援助と引き換えに権益を失う「債務のワナ」の典型例と指摘されてきた。 (2209-081602)

5・5・4 バングラディッシュ

 2023年に特筆すべき記事なし
5・5・5 ヒマラヤ諸国

5・5・5・1 ネパール

下院選で与党の親中派勢力が敗北

 ネパールでは、2017年の前回下院選で団結し大勝した与党の親中派勢力が内紛の末に分裂し、2021年にインド寄りのデウバ政権に交代し、経済圏構想「一帯一路」の下に融資を通じ浸透を図ってきた中国の影響力が相対的に低下した。
 2022年2月、協定署名から5年間棚上げされていた米政府機関「ミレニアム挑戦公社」(MCC)からの送電網や道路などの整備支援とされる$500Mの無償資金援助について、ネパールは議会の同意を経て最終決定した。
 ネパールの共産党系支持者は、援助が中国の台頭に対抗する米国の「インド太平洋戦略」の一環だと主張し、非同盟中立を基本としてきた国の主権を損なうとして、抗議活動を繰り広げた。 (2212-112103)

結局共産党毛沢東主義派(毛派)議長が新首相

 ネパールの新首相には、11月の下院選で最多の議席を得たネパール会議派(NCP)を率いるデウバ首相の続投が濃厚とみられていたが、与党連合内で首相の座を巡りデウバ氏と共産党毛沢東主義派(毛派)のダハル氏の交渉が決裂して12月25日に毛派が与党連合を離脱し、野党と組み下院で過半数を得る見込みとなった。
 このためバンダリ大統領は25日、毛派のダハル議長を新首相に任命した。 (2301-122506)

5・5・5・2 ブータン

 2023年に特筆すべき記事なし
5・6 その他の地域

5・6・1 中央アジア

5・6・1・1 アフガニスタン

「2・8・1 アフガニスタン」で記述
5・6・1・2 カザフスタン

5・6・1・2・1 反政府デモの拡大

ロシアの介入

 カザフスタンでは液化石油ガス(LPG)の急激な値上がりを背景に2020年明けから反政府デモが拡大していて、1月2日から国内各地で大規模な反政府デモが続いており、デモ参加者らは他の政治的な問題についても不満の声を上げている。
 デモの拡大を受け、カザフスタン全土に非常事態宣言が出され、トカエフ大統領は4日に内閣の総辞職を命じ、燃料費を元に戻すと表明したもののデモは鎮静化していない。
 そうしたなか、トカエフ大統領は6日未明のTV演説で、ロシアと旧ソビエト連邦の構成国5ヵ国でつくる軍事同盟である集団安全保障条約機構 (CSTO) に支援を要請したため、ロシア主導の軍事同盟が、カザフスタンに部隊を派遣することが明らかになった。 (2202-010607)

 燃料価格引き上げに対する抗議デモの一部が暴徒化したカザフスタンの主要都市アルマトイの治安当局が1月6日、路上や主要広場でデモ隊と衝突し数十人が死亡したと発表した。 国営TVによると少なくとも13人の治安部隊員が死亡、そのうち2人は首が切断されたという。
 こうしたなか、トカエフ大統領はロシアなど旧ソ連諸国でつくる集団安全保障条約機構CSTOに支援を要請した。
 CSTO事務局はロシア空挺部隊の先遣隊がカザフに到着し、すでに与えられた任務を遂行し始めたと発表した。
 派遣されるのはロシア軍のほかベラルーシ、アルメニア、タジキスタン、キルギスの部隊も含まれるというが、全体の規模は不明である。 (2202-010701)

 InterFax通信などが、カザフスタンで発生した抗議デモに対し、ロシアに続きロシア主導の集団安全保障条約機構CSTO加盟国が相次いでカザフスタンに部隊を派遣していると報じた。
 アルメニアやタジキスタンは1月6日から部隊派遣を始めており、各国が派遣する部隊の総勢は2,500名程度となる見通しでデモ鎮圧の動きが激化するとみられる。 (2202-010703)

 カザフスタンのトカエフ大統領が1月7日にデモ参加者を「無法者」や「テロリスト」と呼んだ上で、さらなる騒乱が起きれば射殺するよう命じた。  その上で、対テロリスト作戦の一環として、法執行機関と軍隊に警告なしに射殺するよう命じたと表明した。 (2202-010708)

 デモが暴徒化したカザフスタン情勢で、ロシア主導の集団安全保障条約機構 (CSTO) が1月9日までに予定の部隊を投入し、治安維持のための本格的な展開を開始した。
 ロシアのTV各局は8日にデモ隊に一時占拠され旅客機の発着が停止されている最大都市アルマトイの国際空港に、大型輸送機で運ばれたロシア軍の兵士や戦車などが展開し、空港を支配下に置いたと現地から報じた。
 ロシアのプーチン政権は圧倒的軍事力を誇示してカザフの体制を擁護し、旧ソ連圏での親露政権転覆を容認しない姿勢を鮮明にした。 (2202-010906)

 プーチン露大統領が1月10日、ロシアが主導する旧ソ連諸国の集団安全保障条約機構 (CSTO) の首脳会議で、政府に対する抗議デモが発生したカザフスタンを外国が後ろ盾するテロリストから守ることができたとして勝利を宣言した。
 同時に、他の旧ソ連諸国もCSTOが守ると表明した。 (2202-011101)

 カザフスタンのトカエフ大統領が1月11日、抗議デモ鎮圧のため先週派遣を要請した集団安全保障条約機構 (CSTO) の平和維持軍の主要任務が終了したとして、2日後に撤退を開始すると表明した。 撤退は10日間で完了する見通しという。
 これに先立ち、大統領はスマイロフ前第1副首相を首相に任命し、議会下院は直ちに同氏を首相に選出した。 (2202-011108)

ナザルバエフ前大統領の国外脱出報道

 カザフスタンのニュースサイト「オルダ」が1月7日に関係筋の話として、ナザルバエフ前大統領が家族と共に出国したと報じた。 行き先などは伝えていない。  ナザルバエフ氏は、ソ連時代末期の1990年から政治実権を握り「国父」とされてきており、カザフで続いているデモでは2019年の大統領退任後も院政を敷いたナザルバエフ氏の政界引退を求める声が強まっていた。 (2202-010801)

 政府への抗議デモが拡大したカザフスタン情勢を巡り、地元メディアのオルダが1月7日に情報筋の話として、ナザルバエフ前大統領が出国したと報じるなど、前大統領の動向に注目が集まっている。
 デモでは隠然たる影響力を維持するナザルバエフ氏らへの不満が爆発しているが、同氏は公の場に姿を見せずさまざまな臆測を呼んでおり、出国したとの報道は行き先や理由は明らかにされておらず信憑性は不明である。 (2202-010802)

トカエフ大統領がナザルバエフ前大統領を批判

 カザフスタンのトカエフ大統領が1月11日、異例となるナザルバエフ前大統領批判を展開した。
 トカエフ大統領は生中継された議員とのオンライン会議で、ナザルバエフ政権は「国際基準からみても富裕層」を創り出したと批判するなどナザルバエフ氏批判を次々と展開し、更に「国民に敬意を表し、体系的かつ日常的に国民を支援する時が来た」と訴え、「極めて大きな利益を出している企業」に国家資金を納めるよう求める意向を示した。
 ナザルバエフ氏は2019年に大統領の職を退任した後も、「国家指導者」という憲法上の地位にとどまり影響力を維持していた。 (2202-011205)

ナザルバエフ前大統領、政界からの完全引退表明

 カザフスタンの反政府騒乱で、公の場に姿を見せていなかったナザルバエフ前大統領が1月18日にビデオ声明を発表した。
 2019年の大統領退任後も院政を続けたナザルバエフ氏は政界からの完全引退を表明した。
 ナザルバエフ氏は国家安全保障会議の終身議長の座にあったが、年初からの騒乱の中で5日にトカエフ大統領が議長職を引き継いだと発表され、ナザルバエフ氏の側近や親族の要職からの解任や拘束も続いた。 (2202-011901)

ロシアのパイプライン経由でドイツに原油を供給

 業界筋の2人が27日に、カザフスタンが2023年1月に自国産のKEBCO原油をロシアのドルジバ・パイプライン経由でドイツに供給する計画だということを明らかにした。
 関係者は、カザフ政府はロシア国営パイプライン運営会社Transneft'に対し、原油2万㌧の輸送許可を要請したと話している。
 原油はカラチャガナク油田から供給されるもようである。
 今回の件について、カザフ・エネルギー省はコメントを控え、カラチャガナク油田の運営会社はコメント要請に応じていない。 (2301-122804)

5・6・1・2・2 欧米の反発

 トラス英外相が1月6日の下院答弁で、反政府デモをきっかけに混乱が拡大するカザフスタン情勢をめぐり「暴力行為と財産破壊を非難する」と表明した。
 トラス外相は、「懸念しており、情勢を注意深くフォローしている。 どのような対応を取るべきか、同盟国とさらに調整する」と述べた。 (2202-010612)

 サキ米大統領報道官が1月6日の記者会見で、反政府デモで混乱が広がるカザフスタンにロシア主導の平和維持部隊が派遣されたことについて注視していると述べた。
 サキ報道官は、カザフ政府によるロシア軍部隊の派遣要請が正当なものかどうかについて疑問を持っていると表明した。 (2202-010704)

5・6・1・2・3 ロシアからの離反

憲法改正でナザルバエフ前大統領の影響力排除

 中央アジアのカザフスタンで6月5日、憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、改憲案は承認された。
 現行憲法は2019年に退任したナザルバエフ氏に初代大統領かつ「国父」として特別な地位を認めていたが、改憲案は関連の条文を削除し、長年権力を握り続けたナザルバエフ前大統領の影響力を排除する内容で、中央選管が6日発表した暫定結果によると、賛成が77.18%に上った。 (2207-060602)

首都の名称の再変更

 カザフスタンの大統領報道官が9月13日にfacebookで、トカエフ大統領が首都の名称について、2019年に自身の提唱でナザルバエフ前大統領のファーストネームに変更した「ヌルスルタン」から、元の「アスタナ」に戻す案に賛同したことを明らかにした。 (2210-091406)

大統領選を前倒して実施

 カザフスタンのトカエフ大統領が9月21日、次期大統領選を11月20日に前倒しすると決めた。
 2019年にナザルバエフ前大統領から権力を継承し、本来の任期満了は2024年であるが、2021年1月に反政府デモの混乱に乗じてナザルバエフ氏を失脚させたトカエフ大統領としては、勢いがあるうちに任期を延ばし、政権基盤を強化する狙いがある。 (2210-092204)

トカエフ大統領再選、対露関係を冷却化

 カザフスタンで11月20日に大統領選が投開票され、トカエフ大統領が再選を決めた。
 トカエフ政権は2期目で従来以上に中国や欧米諸国などとの関係拡大を進めるとみられる。
 カザフスタンは旧宗主国のロシアと関係を維持してきたが、ロシアによるウクライナ侵攻を巡り対露関係を冷却化させている。
 ウクライナ侵攻では、ウクライナ戦線への派兵要請を拒んだと報じられ、6月にはプーチン大統領が同席した経済会合で、ウクライナ東部の親露派勢力が独立国を自称する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」について国家承認しないと明言した。
 西側外交筋は、トカエフ大統領だけではなくカザフスタンの政治エリートもロシアと距離を取ろうと試みていると分析している。 (2212-112111)

5・6・1・2・4 ウラン供給問題

 ウラン生産で世界最大手のカザフスタン国営カザトムプロム社が1月6日、国内の混乱による生産や輸出への影響はないと発表した。
 同社によると、カザトムプロム社の一次ウラン生産量は2020年の世界生産量の23%を占めた。
 カザフスタンでは燃料価格の値上げに抗議するデモが発生し、一部が暴徒化するなど混乱が起きているためウラン価格が上昇し、5日のスポット価格は11月30日以来の高値を記録した。 (2202-010705)
5・6・1・3 その他

5・6・1・3・1 キルギスとタジクの武力衝突

1月27日

 中央アジアのキルギスが1月27日、国境に展開した隣国タジキスタンの部隊がキルギス側を攻撃したと非難した。 タジク当局は28日、衝突で2人が死亡したと発表した。 (2202-012809)
【註】キルギスとタジクの武力衝突は2021年5月にも発生し、キルギス側で36名、タジク側で19名が死亡した。

9月14日

 中央アジアのキルギスとタジキスタンの国境警備隊が9月14日に衝突し、双方の当局者によると少なくとも2名が死亡した。
 タジキスタンは、キルギスの国境警備隊が先に前哨基地に発砲砲撃したと主張し、タジキスタン側で国境警備隊員少なくとも2名が死亡し、民間人5人を含む11人が負傷したという。
 キルギスの当局者によると、少なくとも兵士2名と民間人2人が負傷した。
 ウズベキスタン、およびタジキスタンと国境を接する南部のバトケン州の2ヵ所で交戦があったと明らかにした。
 キルギスの国境警備隊は、国境が画定していない地域にタジキスタン側が陣取ったと非難している。
 両国はロシアの同盟国で国内にロシア軍の基地を持つが、国境問題を巡って頻繁に衝突しており、昨年は全面戦争寸前まで緊張が高まった。 (2210-091415)

 中央アジアのキルギスとタジキスタンの国境で今週始まった軍事衝突が激化している。 両国は9月16日、戦車や迫撃砲などの重火器を使用したと互いに非難した。
 一連の衝突で民間人を含む少なくとも3人が死亡、27人が負傷している。
 キルギスの国境警備隊は、数ヵ所の前哨基地が16日早朝にタジキスタン軍の砲撃を受け、国境地帯の至る所で衝突が発生したと発表した。
 タジキスタン軍はMBTやAPC、迫撃砲を使用しているとした。
 これに対しタジキスタンは、キルギス軍が重火器で前哨基地1ヵ所と7ヵ所の村を砲撃したと非難した。 (2210-091613)

 キルギス大統領府が、キルギスのジャパロフ大統領とタジキスタンのラフモン大統領が9月16日に上海協力機構 (SCO) 首脳会議が開催されているウズベキスタンで会談し、国境地帯での軍事衝突を巡り停戦と軍の撤収を命じることで合意したと発表した。
 キルギス国境警備隊によると、停戦は現地時間16:00に発効する。
 タジキスタン当局も停戦で合意したことを確認した。 (2210-091619)

 ロシア通信などが、中央アジアのキルギスとタジキスタンの国境で9月14日に始まった治安当局間の銃撃戦で、キルギス保健省は19日に死者が59人、負傷者が160人を超えたと発表したと報じた。
 タジキスタン外務省は41人が死亡、30人が負傷したとしており、双方の死者は計100人に達した。 (2210-091909)

5・6・2 中南米

5・6・2・1 メキシコ

 2023年に特筆すべき記事なし
5・6・2・2 ブラジル

5・6・2・2・1 ロシアへの接近

 ロシア大統領府が6月27日、プーチン大統領とブラジルのボルソナロ大統領が世界の食料安全保障について電話協議し、戦略的パートナーシップを強化する意向を確認したと発表した。
 プーチン大統領はブラジルへの肥料供給義務を完全に履行すると確約した。
 ボルソナロ大統領も27日のイベントで「プーチン大統領と食料安保やエネルギー安保について電話協議した」と述べ、農相とエネルギー相が同席したと明らかにした。 (2207-062806)
5・6・2・3 ベネズエラ

 2023年に特筆すべき記事なし
5・6・2・4 その他中南米諸国

5・6・2・4・1 ニカラグア

ロシア軍の駐留容認

 AP通信などによると、ニカラグアの反米オルテガ大統領が国内にロシア軍の戦闘機や艦船の駐留を認め、緊急時に人道的観点からロシア軍が国内で任務に当たるとしたことから、2022年の後半から実際に駐留が始まる可能性がある。
 ニカラグアから米国までは4,000kmで、ロシア国営放送は「米国のミサイルがウクライナからモスクワへ到達できるなら、我々はより強力な何かを米国の近くに展開するべきだ」と報じている。 (2207-061201)

CNN のスペイン語放送を遮断

 中米ニカラグアの反米左派オルテガ政権が9月21日夜、有料で視聴できる米CNNのスペイン語放送を遮断した。
 理由は明らかにしていないが、政権に批判的な報道を排除する狙いがあるとみられる。
 CNNは声明を発表し、「我々は今後も真実と透明性のある報道を追求していく」と述べた。 放送は停止したものの、引き続きインターネットのスペイン語サイトとYoutubeで報道は閲覧できるとしている。
 ニカラグアでは2022年に入って、表現の自由に対する締め付けが強まり、国連人権委員会は13日の声明で、政権に批判的な少なくとも20の宗教関連のラジオやTV局が閉鎖されたと報告した。
 8月には、政権に批判的なカトリック教会の神父も拘束された。 CNNのスペイン語放送はこうしたニュースも報じていた。 (2210-092304)

西側外交官の追放

 中米ニカラグアのメディアが9月28日、左派オルテガ政権がEUの駐ニカラグア大使を口頭で「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定し、国外退去を通告したと報じた。
 EUが最近、政権の強権姿勢を批判したことへの報復措置とみられる。
 既に国内の政敵やメディアを抑え込んでいるオルテガ政権は、海外からの批判に神経をとがらせていて、3月にはバチカン大使を追放し、7月には米大使の受け入れを拒否した。 (2210-092904)

5・6・2・4・2 コロンビア

元ゲリラの左派政権が誕生

 南米コロンビアで6月19日に大統領選決選投票が行われ、元ゲリラの左派ペトロ元ボゴタ市長が勝利し、コロンビア史上初の左派政権が誕生する。
 ペトロ氏は反米左派政権のベネズエラと外交関係を再開し、米国との自由貿易協定を見直すとしていて、南米随一の親米国家コロンビアと米国の関係が変化する可能性がある。 (2207-062006)

5・6・2・4・3 ウルグアイ

中国との自由貿易協定 (FTA)

 ウルグアイのブスティジョ外相が7月20日、中国との自由貿易協定 (FTA) を推進する方針を改めて明言した。
 ラカジェポー大統領は先週、原材料や鉱工業製品、技術の輸出拡大に向け中国との公式な貿易交渉に入ると表明していた。
 一部近隣諸国から、単一の国でなく地域として交渉すべきとして、懸念が上がっている。 (2208-072107)

5・6・2・4・4 エクアドル

中国と債務再編で合意

 エクアドル政府が9月19日、中国の銀行と債務再編で合意したと発表した。 2025年まで$1.4Bの返済負担を軽減する。
 中国の国家開発銀行、中国輸出入銀行とそれぞれと$1.4B、$1.8Bの融資契約について返済期限を延長し、返済額を軽減することで合意した。
 返済期限はそれぞれ2027年、2032年まで延長された。
 エクアドルのラッソ大統領は2月に債務再編と中国との長期石油販売契約の条件改善を目指すと表明していた。
 中国は過去10年でエクアドルの主要な金融パートナーとなった。 (2210-092010)

5・6・2・4・5 ペルー

急進左派カスティジョ大統領の罷免

 汚職疑惑を追及されたペルーの急進左派カスティジョ前大統領は、ペルー国会での罷免決議採決に先立ち12月7日に国会解散を命令した直後に罷免され、反逆罪などの疑いで身柄を拘束された。
 これに対しメキシコ、アルゼンチン、コロンビア、ボリビアなど中南米4ヵ国の左派政権は12日に共同声明を発表し、カスティジョ氏を「大統領」と形容したうえで、「カスティジョ氏は野党による非民主的な嫌がらせの被害者であり、関係者に対し民意を優先させるよう求める」と復権を訴えた。 (2301-121405)

 12月7日はペルー史上でもっとも緊迫した日の一つとなった。
 この日はカスティージョ大統領に対する3回目の弾劾決議案の審議及び採決が午後3時から実施される予定であった。
 カスティージョ前大統領は自己クーデターに失敗し、国会により弾劾決議案の採決が行われている最中にメキシコ大使館に逃亡しようとしたところをペルー警察に拘束され、副大統領であるボルアルテ氏が大統領に就任した。
 カスティージョ大統領に対しては、ペルーの検事総長が7つもの汚職疑惑で告発をしていた。
 その上、大統領府の事務局長、最も親しい間柄の大臣、親族である甥、従妹などにも検察庁による汚職での捜査が及んでいた。 (2301-121703)

 ペルーでコレア教育相とペレス文化相が12月16日に、カスティジョ前大統領罷免に抗議するデモが各地で拡大し死者が出たことを理由に辞任した。
 ボルアルテ新政権に対する圧力は一段と強まっている。
 ペルーでは、議会が7日にカスティジョ氏を罷免した後、混乱が続いている。 デモ参加者の一部は、新大統領に就任したボルアルテ氏の辞任や新憲法の制定、議会の解散を要求し、公共施設を放火、警察署を襲撃、高速道路を封鎖するなどの事態に発展している。 (2301-121705)

5・6・3 北 米

国防費増額

 カナダ政府が3月7日、4月からの2022年会計度から2026年度までの5年間に国防費をCAD8B ($6.4B) 以上増額する計画を明らかにした。
 当局者によると、2022年度の国防費は前年度の当初計画より2.7%増で、GDPに対する比率は現在の1.36%から2026年度までに1.5%に引き上げられる見通しだが、それでもなおNATOが掲げる2%以上という目標には届かない。 (2205-040809)

5・6・4 アフリカ

5・6・4・1 西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS)

平和維持部隊の創設

 西アフリカ諸国経済共同体 (ECOWAS) 加盟国が12月4日にナイジェリアの首都アブジャで首脳会議を開催し、治安回復を目的に加盟国に介入できる地域的な平和維持部隊を創設することで合意した。
 ECOWAS管内では過去2年間でブルキナファソなど複数の国でクーデターが発生しており、部隊創設にはテロ対策や憲法にのっとった政府の確立に尽力する狙いがある。 (2301-120506)

5・6・4・2 マリ共和国

「5・2・8・2・1 マリ」で記述
5・6・4・3 中央アフリカ共和国

 中央アフリカ政府が11月28日に声明を出し、国境を越え北部に未明、所属不明機が侵入し基地を空爆したと発表した。
 現場は北部ボサンゴアで、地元首長は電話取材に「飛行機の正体は分からない。
 綿花工場を狙っていた。 ロシア人や軍が基地にして使っている所だ。 大した被害はなかった」と語った。
 旧宗主国フランスや国連は、こうしたロシア人は民間軍事会社Wagnelの傭兵と見なしている。 (2212-112905)
5・6・5 北 極 圏

5・6・5・1 北極圏諸国

5・6・5・1・1 米 国

砕氷艦建造の遅れ

 米沿岸警備隊 (USCG) 司令官のシュルツ大将が1月12日に水上海軍協会で、新型砕氷艦の引き渡しを2025年より早めてほしいと要望した。
 USCGは現在、たった1隻の重砕氷艦Polar Starと元調査船の中砕氷艦Healyしか保有していないため、重砕氷艦Polar Security Cutter (PSC) 3隻と中砕氷艦Arctic Security Cutter 3隻を建造する計画であったが、2021年秋に引き渡し時期が1年延期され2025年5月になっていた。 (2202-011312)
 米沿岸監視隊 (USCG) の重砕氷艦Polar Starが能力向上工事を終え南極でのDeep Freeze作戦任務に就いている。
 Polar Starには更なる能力向上も計画されているが、1976年に就役した老朽艦で、USCGは極地保安警備艦PSC計画も進めている。 (2206-022307)
【註】USCGが保有する砕氷艦はPolar StarHealyの2隻だけで、しかもHealyは火災を起こしたため現在動けるのはPolar Starだけである。
 USCGは2024年までに重砕氷艦1隻を含む砕氷艦6隻の建造を計画しているが、少なくとも2023年までは艦齢を20年以上過ぎているPolar Starを使用しなければならない。

 米沿岸警備隊第17管区司令官のムーア少将が7月14日、沿岸警備隊の北極海に於ける活動の範囲は沿岸警備隊が計画している極地用警備艦 (PSC) により飛躍的に拡大すると述べた。
 また沿岸警備隊副司令官のフェイガン大将も議会下院国土安全保障委員会運輸水上安全保障小委員会の公聴会で、重砕氷艦の必要性について述べた。 (2210-080303)

第11空挺師団の編成

 米陸軍がアラスカ州に配置している陸軍中将を指揮官とする1個歩兵旅団と1個Stryker旅団を第11空挺師団に名称変更する。
 ただ変更されるのは名称だけで、部隊の増強は行われない。 (2206-050512)

 米陸軍が6月6日、アラスカ州に寒冷地作戦に適応した第11空挺師団を発足させた。
 これに伴い第25歩兵師団第1Stryker BCTは第11空挺師団第1 BCTに、第4歩兵BCT(空挺)は第11空挺師団第2 BCTに改編された。
 この改編によりアラスカ州にある数百両のStrykerは数ヶ月かけて南に移動し、代わって寒冷地に適した次期CATVが配備される。
 陸軍は10人乗りのCATVに、BAE Systems社、Oshkosh社とシンガポールのST Engineering社の3社の提案を評価しており、2022年後半に採用機種が決まる。 (2208-062204)
CATV の発注

 BAE Systems社が米陸軍のCATVにOshkosh/ST Engeneeringチームを打ち破り選定された。
 契約額は$278Mで納期は2029年になっている。
 陸軍は163両を装備する計画である。
 BAE Systems社は-50゚F (-58゚C) に耐えられる9人乗りの水陸両用車で、同社は同社製のBeowulfを提案していた。 (2209-082308)

北極圏での衛星通信

 静止軌道の通信衛星は北極圏での通信に適さないことから、米軍は極地通信用として2019年に24/7強化衛星によるEPSを構築したが、耐用期間が10年であることからSPACECOMは2023年初期に、ノルウェーの衛星に通信装置2基を搭載して打ち上げる計画である。 (2209-083114)

23.8m警備艇数隻をアラスカに配備

 高緯度海域での米海軍力を増強するため、沿岸警備隊がMarine Protector級23.8m警備艇数隻をアラスカに配備する。
 これは退役が始まるIsland級33.5m警備艇の後継になる。 (2211-091405)

中型砕氷艦がボーフォート海で活動

 米沿岸監視隊の中型砕氷艦Healyが、ベーリング海峡以東のアラスカ沖であるボーフォート海で行ってきたAMOSを完了した。
 AMOSは北極海に設置したブイと氷の下で双方向通信を行うUUVの回収を行っている。 (2211-092104)

5・6・5・1・2 ロ シ ア

ロシアの主張

 TASS通信が4月17日、ロシアのコルチュノフ北極国際協力特任大使が、北極圏でNATOの軍事活動が活発化していることに懸念を示し、意図しない事態が発生するリスクが高まっていると警告したと報じた。
 コルチュノフ大使は、「最近、ノルウェー北部で大規模な演習が行われたが、地域の安全保障に資するものではないと考える」と指摘し、そうした活動は「意図しない事態」が発生するリスクを高め、安全保障上のリスクとともに北極圏の生態系に深刻な打撃を与えかねないとの見解を示した。
 この演習は以前から計画されていたものだったが、2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻によって軍事演習は激しさを増した。 (2205-041801)

北極圏での継続的な基地整備

 CNNが12月29日までに得たMaxar社の衛星画像で、北極圏にあるロシア軍のレーダ基地群や滑走路が過去1年の間に改修されたことが判明し、ウクライナ戦争で大きな損失も被っているとされるロシアが北極圏で軍事基地の拡張を今なお続けていることが確認された。
 NATOのストルテンベルグ事務総長はCNNとの単独会見で、ロシア軍は北極地域で軍事力の大幅な強化を図っていると指摘し、緊張が最近高まると共にNATOは自らの軍事的な存在感などを倍増させる対抗措置を強いられているとも述べた。
 一方で西側情報機関の高官はCNNの取材に、ロシアは極地に展開させていた地上部隊のうち最大で3/4をウクライナへ転戦させたとも明かした。 (2301-122913)

5・6・5・1・3 カ ナ ダ

極地用哨戒艦の装備
 カナダ海軍が2022年9月2日、極地用哨戒艦Max Bernaysが就役したと発表した。
 Max Bernaysは、北極海域におけるカナダ海軍の能力を強化する目的で建造された新艦種Harry DeWolf級AOPVの三番艦で、通年にわたり北極海域を航行できるよう、優れた耐氷砕氷構造を有している。
 Harry DeWolf級AOPVは全長103.6m、幅19.0m、排水量6,615tでノルウェー沿岸警備隊の砕氷哨戒艦Svalbardを元にしている。
 ディーゼル電気推進で速力は17ktで武装は25mm機関砲1門、12.7mm重機関銃2丁のほか、SHORAD 1基を搭載することができ、艦尾部にはヘリ甲板を備えている。
 カナダ海軍は同級哨戒艦を6隻装備する計画で、4番艦と5番艦は建造中、6番艦も予算承認済みであり、2025年までに毎年1隻ずつ就役させる。 (2210-090905)
5・6・5・1・4 その他諸国

 2023年に特筆すべき記事なし
5・6・5・2 北極圏外国

5・6・5・2・1 中 国

 2023年に特筆すべき記事なし
5・6・5・2・2 日 本

 2023年に特筆すべき記事なし
5・7 軍備管理

5・7・1 核 軍 縮

5・7・1・1 新 START

ウクライナ戦争下での交渉再開

 ロシア国営RIA Novostiが11月11日、露外務次官が米国と10月末か11月上旬にカイロで新STARTの協議を再開することを明らかにしたと報じた。 (2212-111114)

ロシアが突然の交渉再開延期

 ロシア外務省報道官が国営TASS通信に対し、11月29日~12月6日に予定されていた新戦略兵器削減条約(新START)に関する米国との2国間調整委員会の会合を後日に延期すると発表した。
 それ以上の詳細については明らかにしなかった。
 両国は新STARTに基づき相互の軍事施設に対する査察を行ってきたが、ロシア政府は8月に自国による査察を米国が妨害したとして、米査察の受け入れを停止すると表明し、米政府は査察再開の可能性について11月、近くロシアと協議する予定だとしていた。 (2212-112902)

 ロシア外務省情報局長が11月29日に通信アプリへの投稿で、ロシアは米国との新戦略兵器削減条約(新START)を「予見可能性を確保し軍拡競争を防ぐ重要な手段とみなしている」と表明、今後も順守する姿勢を示した。
 条約が定める核兵器関連施設の相互査察再開を29日から話し合う予定だったカイロでの米露会合をロシアが延期した理由について、ウクライナ侵攻を巡る米露の激しい対立を背景にした「米側による極めて有害で敵対的な対応」に原因があると説明し、「2023年には米国が誠実な条件づくりをするよう期待している」とした。 (2212-113004)

ロシア、核戦力向けインフラ構築に注力へ

 ショイグ露国防相が11月30日、ロシアが2023年に核戦力向けのインフラ構築に注力するという認識を示した。
 ミサイル部隊の戦闘能力向上にも取り組む見通しで、新たなミサイルシステム向け施設を建設しているとも明らかにした。
 6,000発と世界最大の核弾頭保有国であるロシアは、29日から米国と核軍縮の枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)を巡る協議の再開を予定していたが、延期された。 (2301-120104)

5・7・1・2 核不戦の5ヶ国共同声明

 米英仏中露の5核保有国が1月3日、軍事衝突や軍拡競争を防止するために2国間、多国間の外交的取り組みを引き続き追求する意向を示す共同声明を発表した。
 共同声明は「防衛、侵略の抑止、戦争予防を目的とすべきだ」とし、「核兵器国間の戦争回避と戦略的リスクの軽減」を最も重要な責務として、核拡散防止条約 (NPT) で課された核軍縮交渉義務を守ることも強調した。 (2202-010304)
5・7・2 武器の国際取引

5・7・2・1 世界の兵器販売量

 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) が12月5日発表した報告書によると、世界の軍需企業上位100社による2021年の兵器などの販売額は前年比1.9%増の計$592Bとなった。
 地域別では最大の米国が0.9%減少したが、中国の急拡大を背景に5.8%増加したアジア・オセアニアなど他地域が押し上げた。
 兵器販売は7年連続で増加する一方、COVID-19パンデミックによる物流の乱れや重要部品である半導体の不足、労働力確保の難しさなどが影響し、流行前より小幅な増加にとどまった。 (2301-120601)
 「6. 国内情勢」 へ