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2. 戦闘/戦闘切迫地域の情勢

2・1 イラン

2・1・1 核 開 発

2・1・1・1 各関連施設の増強

2・1・1・1・1 ウラン濃縮設備

イスファハンで遠心分離機部品の製造を開始

 国際原子力機関 (IAEA) のグロッシ事務局長が1月31日、イランが中部イスファハンで遠心分離機の部品を製造する意向を19日に通知してきたことなどを理事会に報告した。
 一方で、テヘラン西方カラジの遠心分離機の部品製造工場での製造は停止したという。
 IAEAの査察官は24日にイスファハンの新たな作業場に監視カメラを設置したことを関係筋が明らかにした。 (2203-020102)

遠心分離機カスケードの増強

 10月10日にロイタが確認した国際原子力機関 (IAEA) の機密報告書で、イランはナタンズの地下工場で先進的な遠心分離機によるウラン濃縮能力を急速に拡大しており、現在は従来計画よりもさらに進める方針であることが明らかになった。
 イランは2015年の核合意で利用が禁じられている先進的な遠心分離機をこれまで以上に多く稼働しており、特にナタンズとフォルドウの2ヵ所の地下施設にこれらの装置を増設している。
 IAEAの加盟国に向けた報告書によると、ナタンズの地下燃料濃縮プラント (FEP) に最近設置された、最も先進的なIR-6遠心分離機3組のカスケードのうち3番目が稼働し始めた。
 イランはまた、8月31日に未完成または設置のごく初期段階にあった7組のカスケード、IR-4 1組、IR-2m 6組の設置を迅速に完了したという。
 同国はさらにFEPにIR-2mのカスケード3組を追加する計画をIAEAに通知しすでに発表され、現在設置されている12組に上乗せされる。
 この3組のカスケードのうち、2組はすでに設置が始まっているという。 (2211-101115)

2・1・1・1・2 未申告施設でウランの痕跡

 国際原子力機関 (IAEA) 理事会が6月8日、イランに対する非難決議を賛成多数で採択した。
 決議案は、イランの未申告施設でウランの痕跡が検知された問題を巡り米国、ドイツ、フランス、英国が提出したもので、イランが完全な回答をしていないことに深い懸念を示した。
 35ヵ国で構成する理事会で決議に反対したのはロシアと中国のみだった。
 一方、イランは地下核施設でのウラン濃縮をさらに拡大しており、IAEAの監視カメラ2台を停止すると発表した。
 これより先にイランは、ウラン濃縮度測定装置を撮影するカメラの停止を発表していた。 ただIAEAはこれらのカメラが記録したデータに1年以上アクセスできておらず、イラン側が保管しているデータを将来入手したい考えであった。
 一方、IAEAは加盟国への報告書で、イランがナタンズの地下核施設で複数の高性能遠心分離機IR6型からなるカスケードを設置し始めたと報告した。
 同様のカスケードをさらに2列設置する方針も通知してきたという。
 2015年核合意では、イランがナタンズで使用可能なのはIR1型に限定されている。 (2207-060903)

 国際原子力機関 (IAEA) のグロッシ事務局長が6月9日、IAEA理事会が米欧主導でイランを非難する決議を採択したことへの対抗措置として、イランの核施設にIAEAが設置した監視カメラのうち27台を撤去するとイランが通告してきたと明らかにした。
 これらのカメラは、イラン核合意が定めるウラン濃縮活動の制限が順守されているか確認するため、中部ナタンズの核施設などに設置されたもので、核拡散防止条約 (NPT) の下での査察などを定めた包括的保障措置協定に基づき設置された40台は、引き続き稼働するという。 (2207-060912)

2・1・1・1・3 フォルドゥ地下核施設

遠心分離機カスケードに UF6 の注入を開始

 ロイタ通信によると、国際原子力機関 (IAEA) が7月9日、イランが中部フォルドゥの地下核施設で、最大5%濃縮の遠心分離機カスケードに六フッ化ウランを注入し始めたことを確認した。
 イランは20%まで濃縮する計画をIAEAに通告していた。 (2208-071003)

2・1・1・2 濃縮ウランの備蓄増

濃縮率60%のウランを43kg貯蔵

 Wall Street Journalらが入手した国際原子力機関 (IAEA) の報告書によると、現在イランは濃縮率60%のウランを43kg貯蔵しており、その量は3月から10kg増加したという。
 43kgの濃縮ウランは理論上、爆発物を作るために十分な量と考えられているが、実際に核爆弾を製造するためには90%以上の濃縮度が必要とされる。
 ただ専門家はイランが軍事利用に踏み切れは、核爆弾に必要な高濃縮ウランを容易に製造できると述べている。 (2207-060106)

濃縮率60%のウランを55.6kg貯蔵

 ロイタが入手した国際原子力機関 (IAEA) が報告書によると、イランが兵器級に近い60%まで濃縮されたウランの貯蔵量を増加させ、このまま濃縮活動が続けられば核弾頭製造に十分な量が確保できる可能性がある。  報告書によるとイランが保有する濃縮度60%のウランはUF6の形で55.6kgと推定され、前回の四半期報告から12.5kg増加した。 外交筋は、「イランが兵器級である濃縮度90%のウランを25kg製造する能力を持っている」とし、イランは核兵器製造に必要な核物質を3~4週間で確保できるとの見方を示した。 (2210-090807)

2・1・1・3 核兵器製造能力発言

ハメネイ師上級顧問が核爆弾製造ありと発言

 ロイタ通信が、イランの最高指導者ハメネイ師の上級顧問を務めるハラジ元外相が7月17日にアルジャジーラのインタビューで、「我々は核兵器に必要な濃縮度90%のウランを容易に製造でき、核爆弾製造の技術的手段を有しているが、製造するかはまだ決まっていない」と述べたと報じた。
 製造に着手するかは未定と述べたが、イランの核開発を懸念する国際社会に波紋を広げるとみられる。 (2208-071706)

2・1・1・4 米国の対応

対イラン経済制裁一部免除の復活

 米国務省高官が2月4日、対イラン経済制裁一部免除の復活を決めたことを明らかにした。
 この免除措置はトランプ前政権が2020年に更新を終了させていたもので、これにより欧州や中国、ロシアの企業が、イラン国内の核燃料の搬出事業などに参加することが再び可能となる。
 一方で、核合意再建に向けて相互理解に達しつつあることを意味しないと指摘しイランへの譲歩ではないとも強調した。 (2203-020503)

エルサレム宣言

 中東歴訪の一環としてイスラエルを訪れたバイデン米大統領が7月14日にラピド暫定首相と会談し、両国が共通の脅威と位置付けるイランの核兵器保有阻止のため安全保障分野での協力関係を強化する「エルサレム宣言」に署名した。
 米国は同宣言で、「イランによる核兵器保有を決して許さない」と明言し、そのためには「国力を総動員する用意がある」とした。 (2208-071501)

2・1・1・5 核協議の再開

ロシアによる妨害

 イランの半官半民通信タスニムが3月7日、イラン政府高官が主要国との核合意復活に向けた協議の最終段階におけるロシアの妨害を批判したと報じた。
 協議は、ウクライナ紛争を巡る対露制裁がイランとの貿易に打撃を与えないことを保証するようロシアが米国に要求したため、不透明な状態に陥っているもので、イラン政府高官は、ロシアの要求は他の分野での自国の利益を確保するためのもので「建設的ではない」と述べたという。
 タスニム通信は、ロシアは合意復活を先送りしてイランの石油市場への復帰を遅らせることで原油価格を押し上げ、自国のエネルギー収入を増やそうとしていると指摘している。 (2204-030717)

2・1・2 外交政策

2・1・2・1 海外への軍事進出

 2023年に特筆すべき記事なし
2・1・2・2 友好国との連携

イラン、中国、ロシア3ヶ国艦隊の合同演習

 イラン、中国、ロシア3ヶ国艦隊の合同演習がイランのライースィー大統領がロシアから帰国した1月29日の翌日にインド洋で開始された。
 2019年に始まったこの合同演習は今回が3回目で、イランから11隻、ロシアからは駆逐艦を含む3隻、中国からは2隻が参加した。 (2202-012203)

反制裁でロシアと協調

 ラブロフ露外相が6月23日、テヘランでイランのアブドラヒアン外相と会談し、2国間貿易や経済協力の拡大などで一致した。
 会談では貿易や科学技術分野などで両国の協力を進めることを確認した。
 会談後の記者会見でラブロフ外相は「ロシアとイランに対する米国の制裁は国連憲章に違反する」と批判した。
 ロシアとイランはそれぞれ米国から制裁を受けており、両国は会談で経済的な結びつきを確認して制裁への対抗姿勢を示す狙いがある。 (2207-062320)

2・1・2・3 親イラン勢力支援

2・1・2・3・1 武器の供給

KAS-04 UAV (Shabab/Samad UAV)

 イスラエルの駐米大使が2021年11月17日に国連安保理に書簡を送り、イランの支援でイエメンやイラクで使用されているUAVを、5月18日にイスラエルの空域に侵入した航続距離1,700kmのKAS-04と特定した。
 KAS-04は今までShabab UAVと言う名でパレードで公開されており、フーシ派はSamadと呼んでいる。
 Samad UAVはサウジアラビアへの攻撃で使用されており、国連の専門家パネルは18kgの弾頭またはニコンD810カメラを搭載できSamad-3は航続距離が1,200~1,500kmと見ている。 (2203-120112)

イエメンへミサイル部品等の密輸

 英海軍が7月7日、2022年初めにSAMやCM用エンジンを含むイラン製武器をイラン南部の国際海域で密輸業者から押収したと発表した。
 海軍のヘリが1月28日と2月25日にイラン沿岸を離れる高速艇を発見し武器の入った数十個の荷物を押収したという。
 押収した中には、イラン製の351 LACMのロケットエンジンと358 SAMが含まれており、輸送先は明らかにされていないが、351 CMについてイエメンのフーシ派がサウジアラビアやUAEを攻撃するためによく使われるとした。 (2208-070804)

2・1・2・3・2 Quds 部隊の投入

 2023年に特筆すべき記事なし
2・1・2・4 非友好国との対立

2・1・2・4・1 イスラエル

 2023年に特筆すべき記事なし
2・1・2・4・2 アゼルバイジャン

イスラム革命防衛軍がアゼルバイジャンとの国境近くで演習

 数週間にわたる抗議デモが続く中、イランのイスラム革命防衛軍が10月19日、同国北西部で1週間にわたる演習を開始した。
 演習ではアゼルバイジャンとの国境に沿って流れるアラス川に浮き橋を施設してIFVの渡河訓練を実施した。
 イランにとって、アルメニアとの武力衝突で優勢なアゼルバイジャンが仇敵イスラエルと戦略的な関係を深めていることから、改めて大きな脅威となる可能性がある。 (2211-102112)

2・1・3 軍備増強

2・1・3・1 宇宙開発

2・1・3・1・1 人工衛星の打ち上げ

2021年12月31日 打ち上げに失敗

 イラン国防省の報道官が2021年12月31日、前日にロケットで打ち上げた3つの実験装置を軌道に乗せることができなかったと述べた。
 同報道官は国営TVの番組で、実験装置が軌道に乗るためには、7,600m/s以上の速度が必要だが、ロケットの速度は7,350m/sだったと述べた。 (2202-010102)

3月 8日: 2基目の軍事衛星打ち上げ成功

 イランのタスニム通信が3月8日、革命防衛隊が2基目の軍事衛星「ヌール(光)2号」の軌道投入に成功したと報じた。
 タスニム通信によると、ヌール2は高度500kmの軌道上にある。
 2基目の衛星の軌道投入はイランにとって大きな軍事的前進で、同国の核・ミサイル開発に関する懸念を高めることになる。 (2204-030820)

2・1・3・2 ミサイル

2・1・3・2・1 弾道ミサイル

Khaibar-buster

 イランが2月9日に中東地域の米軍基地やイスラエルを射程に収める新型の固体燃料BM Khaibar-busterを公開した。
 Khaibarはイスラム初期にムハンマド軍がユダヤ人を破ったアラビア半島のオアシスの名である。
 イランとイスラエルの距離は最短で620哩であるのに対しKhaibar-busterの射程は900哩である。
 尚、イランは射程1,250哩のBMを保有している。 (2203-020913)

 イランの国営メディアが2月9日、イラン革命防衛隊がミサイル基地で固体燃料で射程1,450kmの新型BMを発表したと報じた。
 第三世代と称される新型BMはこれまでの同型より重量は3割軽く、発射までにかかる時間は1/6まで短縮され、操縦性に優れBMD網を突破できるという。
 保守系メディアのタスニム通信によると、既に配備が開始されている。 (2203-021001)

 イランのメディアが2月10日、新たに開発したBM Khaibar-busterの発射試験映像を公開した。
 射程は1,450kmあり、敵対するイスラエルを射程圏内に収めるという。
 Khaibar-busterはTELから発射され、正確に標的に命中したとしている。 (2203-021105)

Kheibar Shekan

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が2月9日に地下の基地で、Fateh-110ファミリーの新型BM Kheibar Shekanの映像を公表した。
 地下基地の映像には8両のTELも映っていた。
 Kheibar Shekanの射程は1,450kmで、2019年2月に公表されたDerfulの射程1,000kmから大きく延伸している。
 IRGC空軍司令官によると重量は1/3軽減され、発射までの所要時間は1/6になったという。 (2206-022301)

Rezvan MRBM

 イラン国営TVが9月22日に、テヘランで行なわれたイラン・イラク戦争開戦を記念する閲兵式で、新型MRBM Rezvanを公開したと報じた。
 TVでは軍用車両に搭載されたRezvanの映像を放映し、液体燃料ロケットで射程は1,400kmだと説明した。
 国営イラン通信(IRNA)がイラン革命防衛隊(IRGC)のサラミ司令官の話として報じたところによると、Rezvanは精密誘導型BMだという。 (2210-092306)

極超音速弾道ミサイル

 イランのタスニム通信が、革命防衛軍の航空宇宙部隊司令官は、極超音速弾道ミサイルを開発したと表明したと報じた。
 ただ、こうしたミサイルの試験がイランで行われたとの報告はなく、西側の軍事専門家はイランが兵器の性能を誇張することがあると指摘している。 (2212-111011)

2・1・3・2・2 巡航ミサイル

 2023年に特筆すべき記事なし
2・1・3・3 艦 艇

攻撃舟艇

 イラン革命防衛軍が2021年12月11日、110隻の攻撃艇が納入され、Bandar Abbasで式典が行われたと発表した。
 12月7日に撮影された衛星画像ではこれらの艇の長さは14mで、このほかに全長16mのミサイル艇も写っていた。
 今回の引き渡しは3回目で、2020年5月にも100隻以上が配備され、2月には340隻と報じていた。 (2203-122211)

全長47mの小型双胴艇

 Maxar衛星が5月14日に撮影した画像に、イランが建造している小型の双胴艇が映っていた。
 撮影された小型双胴艇は全長47mで、イラン革命防衛軍海軍 (IRGCN) の全長65mの双胴型艦を建造しているこの造船所は25mの民間双胴船を建造していた。 (2208-052509)

2・1・3・4 航 空 機

Su-35 の取得希望

 イラン革命防衛軍 (IRGC) 空軍司令官がBNAの取材に対し、空軍がSu-30を買う計画はなく、Su-35の取得を望んでいると述べた。
 購入するSu-35は元々エジプト向けに生産されたが米国の制裁を恐れてまだ引き渡されていない機体で、エジプトは2019年3月に24機以上発注し2020年7月から引き渡されることになっていた。 (2211-091401)

2・1・3・5 U A V

地下 UAV 基地に100機を保管

 イラン国営TVが28日、軍が一部詳細を公表した地下UAV基地を報じた。
 正確な位置は明かしていないが、ザグロス山脈の中心部にある基地にUAV 100機が保管されており、国産のASMを搭載したものもあるという。
 映像では、地下数百㍍にあるとされるトンネル内にミサイルを搭載したUAVが列状に並べられているのが確認できる。 (2206-053003)

2・1・4 軍事活動

2・1・4・1 駐留米軍への挑発

2・1・4・1・1 駐イラク米軍への攻撃

3月13日: アルビルを BM 12発で攻撃

 ロイタ通信が、イラク北部クルド人自治区の主要都市アルビルで13日、BMによる攻撃があったと報じた。 死傷者はいなかったという。
 ロイタなどによると、地元当局者はイラク国外の東方から12発のBMが発射され、着弾したと明らかにした。
 アルビルには駐留米軍の基地があるが、米政府関連施設に被害はなかったという。
 アルビルでは、イランが過去に駐留米軍基地を狙った攻撃を行ったことがある。 (2204-031303)

 イラン革命防衛隊が13日に声明を出し、イラクにあるイスラエルの戦略拠点をミサイルで攻撃したと認めた。 (2204-031304)

2・1・4・1・2 ペルシャ湾での挑発

8月: USV の拿捕未遂

 米海軍がペルシャ湾の国際水域で、米国のUASがイラン革命防衛隊 (IRGC) に拿捕されるのを未然に防いだと明らかにした。
 米海軍第5艦隊の声明によれば、IRGC艇がUSVを曳航しているのを米沿岸警備隊警備艦が発見し、攻撃ヘリの発進で対応した。
 イラン艇は曳航索を切り離し、それ以上の事案に発展することなく水域を離れたという。 (2209-083102)

12月5日: 米艦2隻に進路妨害

 米軍が6日に声明を発表し、12月5日にホルムズ海峡の国際水域でイランのイスラム革命防衛軍 (IRGC) 艇が定期航行中の米艦から140m以内に接近したと明らかにした。
 警告と殺傷力のないレーザを使用し事態は収拾したという。 (2301-120709)

 米中央軍が12月5日夕に、「ペルシャ湾の公海上を通常の航行を行っていた「駆逐艦と洋上基地艦の2隻が、イラン革命防衛軍 (IRGC) 海軍艇に異常接近された。
 IRGC艇は米艦の航路を150ヤードまで接近して横切られたが、この距離は特に夜間に於いては危険な距離だという。
 2隻の米艦は音声とレーザで事態が拡大しないように警告した。 (2301-120712)

2・1・4・1・3 ペルシャ湾岸での演習

 イラン軍が12月30日にオマーン湾に面するマクラン海岸で実施した演習の写真を公開した。 現場はホルムズ海峡に近い。 (2301-123112)
2・1・4・2 海外活動

2・1・4・2・1 紅海での活動

 イスラエルのガンツ国防相が7月5日にアテネで開かれた会議で、紅海に於けるイラン海軍の動きがここ10年間で最大になっていると述べた。
 この際ガンツ国防相はイランが3隻保有しているMowwj級フリゲート艦の1隻、4隻保有しているHergam級揚陸艦の1隻、Bandar Abbas級補給艦、及び識別不能な海軍戦闘艦などの衛星写真を示した。 (2209-072005)
2・1・5 国内情勢

2・1・5・1 スカーフ着用強要事件

スカーフ着用巡り逮捕された女性が死亡した事件

 イランで髪を覆うスカーフの着用が不適切だったとして警察に拘束された女性が死亡したことを受け、各地で抗議活動が続いている。
 22歳のアミニさんは9月13日に、女性に義務付けられている髪を覆うへジャブの着用を巡り道徳警察に逮捕された後、16日に意識がなくなり死亡した。
 アミニさんの死亡は国内で大きく報じられ、怒りが広がった。
 抗議活動はアミニさんの出身地であるクルディスタン州で最も激しくなっており、クルド系人権団体は9月19日にクルディスタン州で治安部隊がデモ参加者に向けて発砲し5人が死亡したと発表した。 首都テヘランでも抗議活動が19日も3日連続で行われた。 (2210-092109)

 22歳だったアミニさんが、頭部を覆うスカーフの着用徹底など女性の服装を取り締まる道徳警察によって9月13日にテヘランで逮捕され16日に死亡したのを発端として、自由をめぐる問題や、制裁による経済的打撃など、幅広い問題に対する国民の憤りが噴出している。
 デモは21日で5日目に入り、治安当局は同日、治安部隊の1人を含む3人が死亡したと発表した。
 一方、人権団体は、これまでに少なくとも7人が死亡し450人が負傷したとしている。 (2210-092210)

 当局に拘束された22歳の女性が不審死したことへの抗議活動が続くイランの司法当局が10月11日、ラフサンジャニ元大統領の娘で人権活動家のファエゼさんが、テヘランで拘束され訴追されたことを明らかにした。 (2211-101217)

2・1・5・2 イスラム支配への反発

 警察の拘束下での女性死亡を発端とする抗議デモがイラン各地で続いている。
 オスロに拠点を置くイランの人権団体IHRは9月22日、この6日間での治安部隊との衝突などによる死者が少なくとも31人になったと発表した。
 ネット上には自動車を燃やしたりして抵抗するデモ隊の動画が数多く投稿され、混乱がやむ気配は見られない。
 死亡した女性は少数派クルド人が暮らす西部コルデスタン州出身で、クルド系の人権団体ヘンガウは、コルデスタン州では女性への連帯の意を示すデモに治安部隊が発砲し、死傷者が出る事例が相次いでいると報告している。 (2210-092219)

 イランでアミニさんが死亡したことへの抗議デモが広まっている問題で、ノルウェーのオスロに拠点を置く人権団体Iran Human Rights (IHR) が9月23日、治安当局のデモ弾圧により少なくとも50人が死亡したことを明らかにした。
 IHRによると、死者のうち6人は、北部ギラン州レズバーンシャフルで22日夜に治安部隊の銃撃を受け死亡した。
 イラン当局の公式発表では、抗議活動が始まってからの死者数は治安部隊5人を含む17人とされている。
 反政府運動の抑え込みに努めるイラン当局は、デモ集会を防ぎ、デモ映像の海外流出を防止するため、インターネットへのアクセスを厳しく制限している。
 一方、イランでは23日にテヘランなど各都市で、政府が支援するカウンターデモが行われ、数千人が街頭でヒジャブや保守的な服装規定への支持を表明した。
 イランのMehr通信は「陰謀者と宗教の冒涜を非難するイラン国民による偉大なデモが行われた」と報じた。 (2210-092401)

 イランで風紀警察に拘束された女性の死をきっかけに広がった抗議デモが続いており、保守強硬派のライシ政権は締め付けを強めるが、抗議活動が始まって1ヵ月近くがたっても収まる気配を見せていない。
 SNSなどでは最高指導者ハメネイ師のポスターに火を付けたり、抗議をする人が「独裁者に死を」などと叫ぶ様子を収めた動画などが広まっている。
 ロイタ通信などによると、10月8日には同国のライシ大統領がテヘランの大学を訪問した際に女子学生が「聖職者はうせろ」「ライシはうせろ」などと叫んだ。
 長引く経済困窮などで市民が政権に不満を募らせていることが背景にあるとみられ、イラン指導部への批判も目立つ。 (2211-101221)

 スカーフの着用が不適切として拘束された女性が死亡した問題に端を発したイランの抗議デモは、弾圧が激化する中で10月12日も続いていることがSNSで明らかになった。
 デモは1979年のイラン革命以来最も激しい反政府運動に発展しているが、イランの最高指導者ハメネイ師は敵が画策した散発的な暴動と一蹴している。
 ある動画では100人を超える抗議者がテヘラン中心部で道路を封鎖し、「イスラム教指導者は砲弾、戦車、爆竹で消え失せろ」などと連呼していて、また別の動画には、テヘランの弁護士協会建物近くで抗議運動が行われ、数十人の抗議者が「女性、命、自由」と連呼し、これに対して催涙ガスが発射される様子が映っている。
 ただ、ロイタはこれらの動画の信憑性を独自に確認できていない。
 ノルウェーに拠点を置く人権団体Iran Human Rights (IHR) は、今回の抗議運動による民間人死者は少なくとも201人に達しており、このうち23人が未成年者とした。
 8日の報告では185人だった。 (2211-101316)

 ここ数十年で最も激しい騒乱に揺れているイランで、警察官が逮捕した女性参加者を連行する際に女性の臀部を触るなど、性的嫌がらせを行っているように見える動画が浮上している。
 この動画についてSNSで多くが正義を求め、警察の本部長に辞任を要求している。 一部の政府寄りのユーザも加害者を非難している。
 イラン国内では一部のソーシャルメディア・ツールが遮断されているものの、多くの人が抗議行動の迫力ある画像を共有している。 (2211-101510)

 イランで女性の頭髪を覆うスカーフの着用強制に伴う死亡事件を発端とした大規模な抗議デモが始まってから16日で1ヵ月、抗議デモは弾圧に抵抗する反イスラム体制運動の性格が次第に強まっている。
 オスロに拠点を置く人権団体IHRによると、これまでの死者数は201人に達し、このうち23人は18歳未満だという。
 イラン当局は「外国の関与」(最高指導者ハメネイ師)を主張して鎮圧を図り、流血に歯止めがかからない。 (2211-101602)

 イランの首都テヘランにある政治犯やジャーナリスト、外国人が収容されていることで知られるエヴィン刑務所で10月15日に大規模な火災が発生した。
 オンライン上で共有された複数の動画では、現場から炎と煙が上がる様子や、銃声と爆発音が確認できる。
 BBCのラヒムプール記者によると、エヴィン刑務所の火災と抗議行動に関連があるかは分かっていない。
 ただ、数百人もの抗議者が同刑務所に送られていることから、関連がある可能性はあり得ると指摘した。
 国営メディアは火災の原因は犯罪的要因だとする当局者の言葉を引用し、抗議行動との関連はないことを示唆した。 (2211-101606)

 イランでの抗議デモは7週目に入り、治安当局が10月30日に各地の大学で抗議活動を繰り広げた学生などに催涙ガスや実弾を発射するなどして弾圧を強め、国内の緊張が一段と高まっている。
 ソーシャルメディアに多数の動画が投稿されたが、動画の真偽は確認できていない。
 イラン革命防衛軍最高司令官は先にデモ隊に対し、29日までの撤退を求める最後通告を出していた。
 イランの人権活動家通信 (HRANA)によると、132の都市や町と122の大学で繰り広げられた抗議行動で253人の学生を含む14,000人以上が逮捕された。 (2211-103103)

反スカーフデモ参加者に死刑判決

 イラン国営通信が、革命裁判所が11月13日に反スカーフデモの参加者1人に死刑判決を言い渡したと報じた。
 イランではアミニさんが急死した事件を契機に抗議デモが9月以降広がっていたが、デモ参加者への死刑判決は初めてで、これに対してEUはイラン政府高官らに制裁を科すなど反発が広がっている。
 米CNNによると、死刑判決を受けた被告は、政府施設への放火罪に問われた。 (2212-111508)

デモ参加者の死刑執行

 イランのTasnim通信によると、イラン当局が8日、抗議デモで「治安要員を刃物で襲撃した」などとして先に死刑判決を受けた男1人に対し刑を執行した。
 執行は初めてとみられ、今後も強硬対応を続ける公算が大きい。
 イラン当局はデモ参加者の多くを「暴徒」と見なして逮捕、訴追している。
 これまでに少なくとも5人が襲撃や放火などの罪で死刑判決を受けている。 (2301-120817)

インターネット接続の遮断

 非政府機関(NGO)のインターネット監視団体Netblocksが、スカーフ着用を巡り警察に拘束されたクルド人女性が死亡した事件に対する抗議デモが続くイランで11月21日、携帯電話からのインターネット接続が広くできない状態となったことを明らかにした。 (2212-112202)

サッカー・ワールドカップ大会でイラン代表が抗議

 サッカー・ワールドカップ・カタール大会で同日、イラン代表の選手らはドーハで迎えた初戦のイングランド戦前、国歌を斉唱しなかった。
 国内の抗議デモへの連帯を示す動きとみられるが、イランの国営TVは、選手が試合前に国歌斉唱のために整列する場面を放映しなかった。 (2212-112202)

「風紀警察」が活動停止

 ヒジャブの着用をめぐり拘束された女性が急死して以降、反政府デモが拡大しているイランで、ヒジャブの着用を取り締まる「風紀警察」が停止されたと地元メディアが報じた。
 イランでは9月に拘束されたアミニさんが急死したことに端を発し、抗議活動が全土で活発化し、強権的なイスラム共和国体制の打倒を求めるデモへと発展していたため、イラン当局は国民に譲歩の姿勢を見せることで、反政府デモの沈静化を図る狙いがあるものとみられる。
 一方、BBCは10月に開かれたスポーツクライミングの国際大会にヒジャブを着用せず出場したイランの女性選手の自宅とされる建物が破壊された可能性があると報じた。 (2301-120502)

「風紀警察」の廃止

 イラン検察が、同国の風紀警察が廃止されたと発表した。 だが風紀警察を所管するイラン内務省は、同組織が廃止されたことを現時点で確認していない。
 女性にヒジャブ着用を義務付ける規則に違反したとして逮捕されたアミニさんの死をきっかけに始まった一連のデモは、1979年のイラン革命以来最大規模になった。
 一方国営メディアは、イスラエルの諜報機関モサドに協力したとして有罪判決を受けた4人を処刑したと報じた。
 イラン政府はこのところ、イスラエルと西側がイランで内戦を引き起こそうと画策したとして非難している。 (2301-120508)

「学生の日」に各地でスト

 抗議デモが広がるイランで12月7日、多くの労働者がストを敢行した。 同日はイランの「学生の日」に当たり、学生らも授業をボイコットして街頭で抗議行動を展開した。
 人権活動家がインターネットに投稿した動画によれば、国内各地で多くの店舗が営業をやめ、若者らがスローガンを叫びながら行進した。 テヘランにあるアミルカビル工科大では、学生らが「われわれは団結している」と政府非難を繰り広げた。
 BBCペルシャ語放送は、テヘラン大でライシ大統領に抗議する学生らが警官隊に鎮圧される映像を流した。 (2301-120804)

改革派のハタミ元大統領が抗議デモへの支持表明

 イラン学生通信 (ISNA) によると、改革派のハタミ元大統領は12月6日に学生の日に向けた声明で、デモ隊のスローガン「女性、生活、自由」を素晴らしいと称賛し、「自由と治安を相反するものにしてはならない」として、抗議デモへの支持を表明した。 (2301-120804)

近年では例がない大規模で長期に及ぶデモ

 イランでヘジャブを適切に着用していなかったとして拘束された女性が不審死を遂げたことに抗議する反政府デモが9月に起きて3ヵ月以上が過ぎた。
 これほど大規模で長期に及ぶデモは近年では例がなく、著名人の政府批判も後を絶たない。 政府によるデモの鎮圧は困難だという見方も出ている。
 政府は12月12日に2人目となるデモ参加者の処刑を公開で行った。 デモ隊への警告とみられるが、反政府の機運は衰えていない。
 17日にはテヘランの地下鉄駅で「政治犯を釈放しろ」と叫ぶ群衆の動画がSNSに投稿された。
 19日には南部シスタン・バルチスタン州で革命防衛軍隊員ら4人が襲撃されて死亡した。
 イランの人権弾圧を監視する非政府組織HRANAが、18日までにデモ参加者の502人と治安部隊の62人が死亡したとしている。 (2301-122505)

少なくとも11人に死刑言い渡し

 ノルウェーに拠点を置く人権団体Iran Human Rights (IHR) が12月27日、イランで3ヵ月以上続いている反体制デモで拘束された市民のうち、100人に死刑が言い渡される可能性があると報告書で指摘した。
 すでに少なくとも11人に死刑が言い渡されたという。 (2301-122803)

2・1・5・3 クルド問題への発展

反イランのイラク北部クルド人武装勢力拠点を砲撃

 イランのメディアが、革命防衛軍が9月24日に隣国イラク北部にある反イランのクルド人武装勢力の拠点を砲撃したと報じた。
 イランのライシ政権はデモの背後に反体制派がいると非難しており、革命防衛軍は「暴力的なテロリストを罰するためだ」と主張している。
 イラン人の10%はクルド人で、死亡したアミニさんは西部クルディスタン州出身のクルド人で、同州はデモが激しい地域の一つである。 (2210-092504)

イラン北西部のクルド人居住地域の反政府デモ

 イランの治安部隊が10月10日、北西部のクルド人居住地域で激化している反政府デモの取り締まりを強化した。
 クルド系女性がスカーフのかぶり方を巡って風紀警察に拘束された後、死亡した事件をきっかけに、長らくイラン政府からの自治獲得を求め、政府側から弾圧されてきたこの地域でデモが活発化している。
 クルド系人権団体ヘンゴウによると、これに対応して中心都市サナンダジなどには10日、多数の治安部隊が出動した。
 一連のデモで8日までに少なくともクルド系住民5人が死亡、150人が負傷している。 (2211-101110)

2・1・5・4 ISIS との抗争

 イランの現地メディアがが、南部シラーズで26日、ISISと見られる武装集団がイスラム教シーア派の聖廟を襲撃し、巡礼者ら少なくとも15人が死亡したと報じた。
 武装した3人組が車で聖廟に接近し、少なくとも1人が聖廟の敷地内に入り、巡礼者らに向けて発砲したという。
 警察はこのうち2人を逮捕し、残り1人の行方を追っている。 ライシ大統領は「テロ攻撃」と非難している。
 一方、ロイタ通信によると、クルド系住民が暮らす西部サケズで26日、治安部隊と群衆が衝突した。
 9月中旬に治安当局の拘束下で不審な死を遂げた地元出身の22歳女性への弔意を示すため、住民ら約1万人が集会を開いていたとされる。
 混乱が起きる中、治安部隊が群衆に発砲し、数十人が逮捕されたとの情報もある。 (2211-102702)
2・2 中 東

2・2・1 イエメン

2・2・1・1 内戦の状況

停戦期限切れ フーシ派が攻撃再開を警告

 国連が10月2日、イエメン内戦でサウジアラビア主導の連合軍と、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の一時停戦延長が合意に至らなかったと明らかにした。
 フーシ派は、サウジ領内などの石油施設に対する攻撃を再開すると警告し、緊張が高まっている。
 国連が仲介する停戦は4月に開始し、これまで2度延長されてきたが、イエメン担当のグランドバーグ事務総長特使は声明で、2日の期限までに再延長できず「遺憾だ」と述べる一方、交渉は継続中として、全紛争当事者に挑発行為を控えるよう呼びかけた。 (2211-100304)

2・2・1・2 フーシ派のサウジ主導連合軍への攻撃

2・2・1・2・1 サウジへの攻撃

2020年12月: ジッダの海軍基地で爆装した USV が攻撃

 サウジ海軍の給油艦が2020年12月14日にジッダのKing Faisal海軍基地で爆装したUSVで攻撃された事件について、国連のイエメン問題専門家会議が報告を行った。
 1月28日に出されたこの報告はフーシ派が民間のタンカーRhineを襲撃した報告の中で明らかにされた。 (2206-020902)

 国連のイエメンに関する専門家パネルが1月28日の報告書で、2020年12月14日に爆装した無人艇がサウジ海軍の油送艦に突入したことを明らかにした。
 襲撃は3隻で行われ、最初に埠頭に突入した後、2隻目がサウジ海軍のBoraida、その数分後に民間タンカーのRhineが襲撃された。 イエメンのフーシ派によるものと見られる。 (2205-012602)

3月19日: 紅海沿いにある製油所など UAV で攻撃

 サウジアラビア国営通信が、同国のエネルギー省が3月20日に、西部の紅海沿いにある製油所などが19日深夜から20日未明にかけイエメンのフーシ派によるUAV攻撃を受けたと発表したと報じた。
 ロイタ通信によると、国営石油サウジアラムコの幹部が、生産量が一時的に低下したが供給に影響はないと述べた。 (2204-032004)

3月25日: サウジアラビアのエネルギー施設への攻撃

 イエメンのフーシ派が3月25日、サウジアラビアのエネルギー施設への攻撃を開始したと発表した。
 フーシ派軍の報道官は、25日にジッダにあるアラムコの施設にミサイルを、ラスタンヌーラとラービグの製油所にUAVを発射したと述べた。 首都リヤドの重要施設も目標にしたという。
 一方、サウジ主導の連合軍はジッダにある国営石油会社サウジアラムコの石油関連施設が攻撃を受け、貯蔵タンク2つで火災が発生したが死傷者は出ていないとと発表した。 (2204-032606)

2・2・1・2・2 UAE への攻撃

1月17日: アブダビを UAV 20機と BM 10発で攻撃

 UAEの国営通信が、首都アブダビの工業地帯や国際空港で1月17日に火災や爆発が相次いで発生し、インド人2人とパキスタン人1人の計3人が死亡、6人が負傷したと報じた。
 警察は、火災は両方の現場に落ちていたUAVとみられる小型機によって引き起こされたとしており、何者かの攻撃を受けた可能性が高い。
 イエメンの武装組織フーシ派の報道官は17日、UAEの深部に対する軍事作戦の詳細を間もなく発表すると述べ、攻撃を行ったと主張している。
 UAV 20機とBM 10発による攻撃だったとの情報もある。 同報道官は「UAEは最近、部隊や兵器を送るなどイエメン侵略を激化させている」と批判した。 (2202-011707)

 イエメンのフーシ派が1月17日に長距離CMを用いてアブダビを攻撃したが、改めて低空飛行する脅威への対応の難しさが露呈した。
 フーシ派はMusaffah製油所と国際空港を4発のQuds-2 CMとZalfiqar BM 1発で攻撃したほか、複数のSamad-3 UAVで重要施設を攻撃したという。
 UAEが1月18日に国連安保理に提出した報告によると、2発のCMが空港施設に、1発が南側の工業地帯に着弾したという。
 アブダビは2018年に複数のPantsir-S1を配備し、そのうちの1基をQasr al-Watan首長宮廷の防波堤上に、他の2基を14km南東の人工島に、更に別の2基をAl-Dhafra航空基地に配置していた。
 一方2020年にはAl-Dhafra航空基地にあったSkyquard対空機関砲を別の位置に配置した。
 更に低空脅威に備えてMIM-23 HAWKも配置し、CM対処用にAN/MPQ-64 Sentinelレーダも装備していた。 (2206-020904)

 イエメンのフーシ派報道官、が1月17日に射程を大幅に伸ばしたQuds-2 CMでアブダビのMusaffah製油所を攻撃すると共に、Zulfiqar BMでドバイ空港を、Samad-3 UAVで重要施設を攻撃したと発表した。
 フーシ派は2019年7月にQuds CMを公表し、サウジアラビアに対し2019年9月14日などで度々使用してきた。
 Qudsの射程について米海軍は2019年末に800kmと推定していたが、フーシ派は2020年11月23日にフーシ派支配地域から1,200km離れたアブダビのMussafahの石油精製施設にQuds-2で攻撃を仕掛けた。 (2205-012603)

1月24日: BM 2発

 UAE国防省が1月24日、同国に向けてフーシ派が発射したBM 2発を迎撃破壊したと発表した。 負傷者は出なかったという。
 17日の攻撃ではドバイ空港およびアブダビ空港や石油精製所などにBM 5発と多数のUAVを発射し、アブダビでは燃料トラック3台が爆発し3人が死亡したほか、空港近くで火災が発生した。
 フーシ派によるUAEへの攻撃は17日以来2回目だが、フーシ派は6年以上にわたりUAEなどが加わるサウジアラビア主導の連合軍と戦闘を続けていて、繰り返しサウジを攻撃している。 (2202-012407)

 イエメンのフーシ派が1月24日にUAEをミサイルやUAVで攻撃した。
 アブダビのAl Dhafra航空基地に対してはZulfiqar BMで、ドバイの重要施設に対してはSamad-3 UAVがサウジアラビア南部に対してはSamad 1とQasef-2K UAVとSRBMで攻撃された。
 UAV国防省によるとイエメンから発射されたBM 2発を撃墜した。 (2205-020208)

1月31日: 米軍が2度目の迎撃

 米大統領府と国防総省が1月31日、UAVアブダビに対してイエメンのフーシ派が発射したBMを米軍が撃墜したと発表した。 米軍がBM迎撃を行うのは2度目である。
 バイデン米大統領はサウジ主導の連合軍の行う攻撃の支援を停止すると決めたが、アブダビのAl-Dhafra航空基地には2,000名の米軍が駐留し、武装UAVやF-35の基地になっている。 (2203-020114)

2月08日: THAAD でBMを撃墜

 米中央軍司令官が2月8日、UAEがTHAADでBMを撃墜したと述べた。
 UAEは米国以外で唯一THAADを2個中隊装備しており、1個中隊はAl-Ruwaisに、残りの中隊はアブダビの東北方40kmに配置している。 (2206-021603)

2・2・1・3 サウジ主導連合軍のフーシ派のへの攻撃

フーシ派に向け報復

 UAE外務省が1月17日、3人が死亡した首都アブダビへの攻撃を実施したイエメンの親イラン武装組織フーシ派に向け、テロや凶悪犯罪に立ち向かう権利があると報復を予告した。
 イエメン内戦でUAEはサウジアラビア主導の連合軍に参加してフーシ派と交戦する連合軍に参加している。
 サウジなどは攻撃を非難し、連合軍は17日にフーシ派が拠点を置く首都サヌアに空爆を実施したと発表した。
 米国も17日にフーシ派を非難する声明を発表した。 (2202-011802)

 サウジアラビア主導の連合軍が1月17日夜にイエメンの首都サヌアにあるフーシ派の拠点などを空爆し、ロイタ通信はフーシ派高官の情報として約20人が死亡したと報じた。
 フーシ派は17日に連合軍の一角を占めるUAEの首都アブダビに向けてUAVやBMを使った攻撃を行ったことから、その報復とみられる。 (2202-011807)

ラマダン休戦

 イエメンのフーシ派と戦うサウジアラビア主導の連合軍が3月29日遅く、国連のラマダン期間中停戦を提案したことを受け30日から作戦を停止すると表明した。
 国営サウジ通信 (SPA) は、連合軍報道官の声明として、連合軍統合司令部はイエメン国内の軍事作戦を30日06:00に停止すると発表すると報じた。
 事情に詳しい関係筋によると、国連はラマダン期間中の停戦の見返りとしてフーシ派が制圧しているホデイダ港に燃料輸送船が入港することを認め、首都サヌアの空港で少数の商用便の発着を可能にすることを提案している。 (2204-033011)

2・2・1・4 イランからの武器流入

50t以上の弾薬を運搬していた漁船を拿捕

 米海軍第5艦隊の洋上基地艦Lewis B Pullerが先週、オマーン湾で12月1日にイランを出港し50t以上の弾薬を運搬していた漁船を拿捕し弾薬を押収した。
 この船が積んでいたのは100万発以上の7.62mm弾、25,000発の12.7mm弾、7,000発近いロケット弾用近接信管、2,100kgのRPG用推進薬であった。 (2301-120608)

2・2・1・5 フーシ派の装備拡充

Aasif ASBM

 イエメンのフーシ派が9月21日、首都サナアを制圧した9周年を祝う閲兵式を挙行した。
 式典ではアデン湾、紅海、バブエブマンデブ海峡を制する各種兵器が登場した。
 Aasifは射程200nm以上のASBMという。 (2210-092618)

Quda-3 CM

 イエメンのフーシ派がサナアで行った閲兵式で新型のCM、CM、遊弋弾などを公開したが、その中のQuda-3 CMはイラン製のSoumar CMの長射程型とみられる。
 フーシ派はイラン製のSoumarであるターボジェット推進のQuads-1/-2 CMを装備しており、その射程をIranwatch.orgはQuads-1が800km、Quads-2が1,350kmとしている。
 Quda-3はQuads-2胴径が太いことから多くの燃料を搭載しているとみられ射程が伸びている模様で、Quads-1の3倍とみられる。
 Soumarは1990年代末にウクライナから入手したソ連製のKh-55を元にしている。 (2210-092709)

イエメン向けミサイル燃料を押収

 米海軍は11月14日、オマーン湾で11月8日に駆逐艦と同沿岸警備隊の警備艦がイランからイエメンに向かうダウ船を臨検したところ、肥料袋の中にミサイル燃料成分の過塩素酸アンモニウム70tが隠されているのを発見、押収したと発表した。
 一週間にわたる捜索で、当初100tの尿素と思われた積み荷の中に、過塩素酸アンモニウムの袋が隠されているのを発見して押収した。
 尿素は肥料であるが、爆発物の製造にも使用される。
 米海軍によると、発見された70tの過塩素酸アンモニウムは、MRBM 10数発分の燃料になり得るという。 (2212-111510)

2・2・2 シリア

2・2・2・1 シリア内戦

反政府運動

 ロイタ通信などが、シリア南部スワイダで12月4日、アサド政権の地方庁舎に数十人のデモ隊が乱入し、政権打倒を訴える抗議活動が起きたと報じた。
 反政府運動がほぼ鎮圧されたシリアで、抗議デモは異例である。 (2301-120410)

2・2・2・2 ロシアへの依存

 関係者4人がロイタに、ウクライナ戦争の長期化に備えたロシアのシリア政策の転換を反映して、トルコの国家情報機構 (MIT) トップのフィダン氏が過去数週間、シリアの首都ダマスカスで同国の情報機関トップのマムルーク氏と複数回協議を行っていることを明らかにした。
 トルコ治安当局者によると、シリアのアサド政権の後ろ盾であるロシアは、ウクライナ戦争に注力するためにシリアから軍を段階的に撤退させており、シリアにおける「政治的解決を加速させる」ため、トルコに対してアサド政権との関係正常化を要請した。 (2210-091606)
2・2・3 イラク

2・2・3・1 ISIS の活動

1月21日: ディヤラ州の軍基地に夜襲

 イラク東部ディヤラ州で、軍の基地がISISの夜襲を受け、兵士11人が死亡したことを、同州に駐留する軍幹部が1月21日に明らかにした。 (2202-012112)

2・2・3・2 イラン系民兵組織の活動

1月13日: 米大使館に向けてロケット弾

 イラク軍が1月13日、バグダッドの米大使館に向けてロケット弾が発射され、1発が学校に落下して女性1人と子供1人が負傷したことを明らかにした。
 イラク軍当局者はロイタに対し、2~3発のカチューシャ・ロケット弾が大使館に向けて発射され、少なくとも2発は大使館のC-RAMシステムによって撃墜されたと述べた。
 イラクでは1月に入り、米国の軍事拠点や公館を目標にした攻撃が相次いでいるが、これまでのところ米側に負傷者は出ていない。
 米国は一連の攻撃について、一部はイラン系民兵組織が関与しているとみている。 (2202-011402)

2・2・3・3 クルド人自治区クルディスタン

イランがアルビル市の石油精製施設を BM 攻撃

 イラク治安部隊によると、北部のクルド人自治区クルディスタン地域のアルビル市で1日に石油精製施設がミサイル攻撃を受けた。 攻撃で主要タンクの一つが火災を起こしたが鎮火したとしている。
 クルディスタン地域のテロ対策当局は5月1日にアルビルのKAR製油所の付近にミサイル6発が着弾したと発表した。 ミサイルは北部ニネベ州から発射されたとしていた。
 治安部隊は、ミサイル攻撃後にニネベ平原で発射機とミサイル4発を発見し、ミサイルを無力化したと述べた。
 アルビルの製油所周辺には4月6日にもミサイル3発が撃ち込まれており、3月にはイランがアルビルにBM攻撃を行った。 (2206-050207)

トルコがイラク北部リゾート地を砲撃

 イラク北部ザホ近郊のリゾート地に7月20日、トルコ軍による砲撃があり、イラクの地元当局によると、観光客ら少なくとも9人が死亡、20人以上が負傷した。
 現場はトルコ国境に近いクルド人自治区にあり、周辺ではトルコがテロ組織とみなすクルディスタン労働者党 (PKK) に対する掃討作戦として、トルコ軍が越境攻撃を繰り返している。 (2208-072103)

イランが反イラン武装勢力の拠点を攻撃

 イラン革命防衛軍が9月28日、イラク北部のクルド人自治区にある反イラン武装勢力の拠点をミサイルやUAVで攻撃した。
 ロイタ通信によると少なくとも9人が死亡し32人が負傷した。 死者はさらに増える可能性がある。
 イランでは22歳のクルド人女性が風紀警察に拘束され、その後、急死したことを受けて抗議デモが全土に拡大しているが、イランメディアによると、革命防衛軍は暴動に役割を果たした拠点を攻撃したと主張している。 (2210-092901)

2・2・3・4 シーア派の内部対立

 バグダッドで8月29日にシーア派の指導者サドル師の支持者と、対立する親イラン勢力が衝突し、少なくとも10人が死亡した。
 サドル師はこの日、政治活動から引退する意思を表明し、ツイッターで「私はここに最終的な撤退を発表する」と発表して改革を求めるサドル師の声に耳を貸さない同じシーア派の政治指導者を批判していた。
 この数時間後、議会前ですでに数週間にわたる座り込みを続けていたサドル師の支持者らがデモを展開し、首相府の建物を襲撃する事態に発展した。 (2209-083003)
2・2・4 クルド問題

2・2・4・1 トルコの対クルド政策

新たな対クルド軍事作戦を予告

 トルコのエルドアン大統領が6月1日、5月23日に言及した南部の国境地帯でのクルド人勢力に対する「新たな軍事作戦」について、シリア北部のタルリファトとマンビジュを目標にする考えを示した。 作戦実施の時期には言及していない。
 エルドアン大統領は演説で、国境からシリア側に幅30kmの安全地帯を設け、その後に「他の地域へ作戦対象を少しずつ拡大する」と述べた。  (2207-060118)

6月14日: シリア北部のクルド地域を空爆

 ロイタ通信によると、トルコ軍が6月14日にイラク北部シンジャール県を拠点とするクルド人民兵組織の情報本部などを空爆した。
 この攻撃で少なくとも2人が死亡し、商店などにも被害が出ているという。
 シンジャール県はトルコ政府がテロ組織と指定したクルド労働者党 (PKK) の拠点が多くあると言われており、攻撃目標になったのもPKKと関わりが深い民兵組織だとみられる。 (2207-061604)

8月16日: シリア北部のクルド地域を空爆

 在英のシリア人権監視団によると、トルコ軍が8月16日にシリアに越境攻撃を行い北部アレッポ近郊などの国境地帯を空爆してクルド人民兵組織SDFの戦闘員ら17名が死亡した。
 シリア国営メディアは同国軍が応戦し、トルコ側に被害が出たと報じたが詳細は不明である。 (2209-081713)

8月16日: アサド政権がトルコが支援するシリア反体制派を砲撃

 シリア北部バーブで8月19日に市場への砲撃があり、在英のシリア人権監視団によると少なくとも14人が死亡した。
 バーブはトルコが支援するシリア反体制派が支配しており、アサド政権の支配地域からのミサイル攻撃が繰り返されている。
 シリア北部の対トルコ国境付近では最近、クルド人勢力を目標としたトルコ側からの越境攻撃があり、シリア兵の死者も出ていたことから、人権監視団は「アサド政権による対抗措置」の可能性があると指摘している。 (2209-081910)

11月19~20日: シリアとイラク北部のクルド地域を空爆

 トルコ国防省が11月20日、クルド人勢力が活動するシリアとイラク北部で新たな空爆作戦を19日から20日にかけて行ったと発表した。
 イスタンブールで13日に起きたテロ事件の報復で、トルコへの越境テロ攻撃を防ぐのが狙いと説明している。
 アカル国防相は声明で、空爆で「テロリストの基地」を標的にしたと述べ、成功裏に行われたと強調した。
 クルド人を主力とするシリア民主軍(SDF)は、シリア北部の複数の地域が空爆を受けたと述べた。 (2212-112006)

11月21日: クルドの反撃

 トルコ南部ガジアンテプ県の住宅街に11月21日、シリア北部からクルド人勢力が発射したとみられるロケット弾が撃ち込まれ、政府高官によると子どもを含む2人が死亡した。
 ソイル内相は反撃する考えを示した。
 トルコ軍が大規模な空爆を実施したばかりだが、トルコメディアによると、訪問先のカタールから帰国する機中でエルドアン大統領は「作戦は空爆だけには限らない」と述べ、地上部隊の投入を検討していると明らかにした。 (2212-112117)

11月23日: トルコがシリアのロシア軍基地内にあるクルド人拠点を空爆

 トルコがシリアとイラクのクルド人居住区に対して空爆を続ける中、クルド人当局者が、23日の空爆でシリアにあるロシア軍基地内のクルド人拠点が被害を受け、戦闘員1人が死亡したことを明らかにした。
 この地域でISISと戦っている米国が支援するクルド軍を主力とするシリア民主軍(SDF)関係者によると、UAVによる今回の攻撃によりSDFの戦闘員3人も負傷したと述べた。
 英国を拠点とするシリア人権監視団によると、この攻撃でロシア兵1人も負傷した。
 前日には、米国主導の連合軍が使用するシリア北東部の別の基地も、同様の攻撃を受けていた。
 23日の攻撃について、ロシア政府からの確認は取れていない。 (2212-112403)

11月23日: エルドアン大統領が地上戦を開始を予告

 トルコのエルドアン大統領が11月23日、シリア北部のクルド系武装勢力を攻撃目標とした空爆は作戦の始まりに過ぎず、「われわれにとって最適なタイミングで」地上戦を開始するとの考えを示した。 (2212-112502)

12月20日:  トルコが選挙視野に対クルド共闘でシリアに接近

 トルコのエルドアン大統領が、対立してきたシリアのアサド政権への接近を試みており、シリア内戦でアサド政権を支えてきたロシアによる仲介を模索している。
 2023年6月までに行われるトルコ大統領選で再選に向け、対クルド人勢力での共闘やシリア難民送還に取り組んでいることを国民にアピールするのが狙いだが、シリア側には警戒感が強い。
 トルコは2011年に始まったシリア内戦で反体制派を支援し、翌2012年にシリアと国交を断絶して400万人を超えるシリア難民を受け入れ、反体制派指導部もトルコに活動拠点を置いている。 シリア北部の反体制派支配地域の一部は、実質的にトルコの統治下にある。
 一方、シリア北部ではトルコがテロ組織と見なすクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) が内戦による権力の空白に乗じ勢力を拡大しており、トルコは越境作戦で排除を試みるものの、十分な成果を得られていない。
 また、難民滞在が長期化するにつれ、仕事を奪われることへの反発などが、トルコ国民の間で強まっている。 (2301-122004)

2・2・4・2 イラククルド人自治区

「2・2・3・3 クルド人自治区クルディスタン」で記述
2・2・5 ISIS との戦い

2・2・5・1 イラクでの ISIS との戦い

 2023年に特筆すべき記事なし
2・2・5・2 シリアでの ISIS との戦い

1月20日: 2019年以来最大の襲撃

 在英のシリア人権監視団が1月21日、シリア北東部ハサカ県にあるISIS戦闘員らの収容所が襲撃されたと発表した。
 20日夜に収容所の入り口で車両2台が爆発し、クルド人治安部隊との銃撃戦は21日まで続いた。
 収容者は混乱に乗じて、収容所の武器庫から銃を奪い周辺に逃走したという。 この収容所では、ISIS戦闘員ら3,500人を拘束している。 この戦闘で治安部隊員と戦闘員ら67人が死亡し、数十人の戦闘員が逃亡したという。
 仲間の解放を狙ったISISの犯行とみられ、人権監視団によると2019年にISISがシリアの根拠地を喪失して以来最大の襲撃である。 (2202-012208)

 シリア北東部ハサカで1月20日、収容者の解放を狙ってISISが刑務所を襲撃した。
 刑務所を管理する反体制派クルド人武装組織であるシリア民主軍 (SDF) との間で戦闘となり多数が死亡し、ISIS戦闘員が続々と投降している。
 SDFは25日に新たに250人が投降したと発表したが刑務所内にはまだ数十人が立てこもっているとみられ、刑務官や子ども数百人が人質として捕らえられているとされる。 SDFの広報担当は25日午後、刑務所の完全奪還は徐々に進めるとした。
 20日に襲撃が発生して以降、ISISと戦闘を続けていたSDFは、24日に刑務所に突入してIS戦闘員少なくとも300人が投降した。 (2202-012606)

 シリア北東部Hasakehで、ISISの襲撃を受けたGhwayran収容所が、1月26日にクルド人勢力によって6日ぶりに奪還された。
 同収容所ではISIS戦闘員が立てこもりを続けていた。 収容所にはISIS構成員3,500人以上が収容されていたとみられている。
 ISISによる被収容者解放の試みと、その後起きた戦闘により、双方合わせて180人以上が死亡し、ISISの「カリフ制国家」が3年前に崩壊して以来、ISISが実行した作戦としては最大規模となった。 (2202-012702)

2・2・6 中東駐留米軍

2・2・6・1 中東駐留米軍の増減

2・2・6・1・1 中東駐留米軍の削減

 元米中央軍司令官のボテル退役大将や多くの専門家が、米軍が中東や中央アジアの部隊を中国やロシア対応に振り向けようとしていると見ている。
 米中央軍は推定40,000~60,000の部隊をエジプトからカザフスタンまでの21ヶ国に展開しているが、一部部隊を移動させたり、基地の統合などを行っている。
 アフガニスタンから米軍は既に撤退しており、2021年夏にはカタールの米陸軍As Sayliyah-Main Campが閉鎖されている。
 2021年7月1日には強襲揚陸艦Iwo Jimaとドック型揚陸艦Carter Hallが並んでスエズ運河を通過した。 (2202-011409)
2・2・6・1・2 UAE への増派

 オースティン米国防長官が2月1日にUAEのムハンマド皇太子と電話協議し、イエメンのフーシ派からミサイル攻撃を受けている同国に第五世代戦闘機を派遣する考えを示した。
 米国防総省の声明によると、長官はまたアブダビに寄港する米駆逐艦ColeをUAE海軍と連携させると明らかにした。
 長官は米国が早期警戒情報の提供と防空に関する協力を継続する方針も示した。 (2203-020206)
2・2・6・1・3 ヨルダンに基地設営

 米国が2021年11月29日、米陸軍工兵隊がヨルダンのShahid Muwaffaq al-Salti航空基地を恒久基地化する工事を行っていると発表した。
 米軍はこの基地における米軍の駐留の事実を認めてきていないが、米空軍が少なくとも2016年からUAVやジェット機を駐機させていると見られている。
 2019年5月に空軍は南西アジアの前方推進基地に第332遠征航空団を配置しているとしていたが、それがShahid Muwaffaq al-Salti基地であるとはしていなかった。
 基地には既存の北滑走路に加えて南滑走路と管制塔が新接され、エプロンが3ヶ所新設された。
 エプロンの1つはC-17やC-5用と見られる大型で、小型のエプロンはC-130やCV-22用と見られる。 (2203-120810)
2・2・6・1・4 ペルシャ湾、アラビア海

中東多国籍艦隊に第153混成戦隊 (CTF-153) を編成

 米第5艦隊司令官兼中央軍海軍司令官のクーパー中将が4月17日、中東の多国籍艦隊 (Combined Maritime Forces) に新たに第153混成戦隊 (CTF-153) が編成されたと述べた。  クーバー中将は多国籍艦隊の指揮官も兼務している。
 中東多国籍艦隊ではCTF-152がペルシャ湾内、CTF-150がオマーン湾とアラビア海北部を含むペルシャ湾外、CTF-151が第5艦隊管轄海域全般での海賊対策にあたっているが、新偏されたCTF-153はスエズ運河から紅海を経てイエメンとオマーンの国境までを任務とする。
 CTF-153は当初、米海軍第5艦隊で水上艦を指揮しているフランシス大佐が15名の幕僚と共に、第6艦隊の指揮艦Mount Whitneyで指揮を執る。 (2205-041309)

2・2・6・2 中東駐留米軍の活動

8月23日: イランの支援を受ける武装勢力に対する空爆

 米中央軍 (CENTCOM) 報道官が、バイデン米大統領が8月23日にシリア東部でイランの支援を受ける武装勢力が使用する施設に対する空爆を命じたと発表した。
 報道官は、石油資源の豊富なデリゾール県でイラン革命防衛隊 (IRGC) に関係するグループが使用するインフラ施設を標的とした空爆を実施したとした。
 8月15日に米国主導のイスラム過激派対策部隊であるクルド人民兵組織SDFの拠点が「イランが支援する組織」によるUAV攻撃を受けたことに言及し、同様の攻撃を防ぐために実施したものだったと説明した。 (2209-082501)

2・2・6・3 中東駐留米軍への攻撃

5月30日: 米軍駐留のイラク軍基地に Grad 攻撃

 イラクの治安当局者2名が、米軍が駐留しているイラク軍基地が5月30日に、少なくとも5発のGradロケット弾攻撃を受けたと述べた。 (2206-053110)

2・2・7 湾岸諸国の AMD

2・2・7・1 米 BMDS の導入

2・2・7・1・1 サウジアラビア

 米国務省はサウジアラビアに$3.05BでPatriotと関連機器の追加売却を行う案を承認し議会に通知した。

 サウジは、GEM-T弾300発の売却を要請していた。
 さらに同省は議会に対し、UAEに推定$2.25BでTHAADと関連機器を追加売却する案を承認したと通知した。 (2209-080313)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が8月2日、サウジアラビアへのPatriotとUAEへのTHAADの輸出を国務省が承認したと発表した。
 サウジアラビアへ輸出されるのはMIM-104E Patriot GEM-T弾300発で$3.05Bと推定される。
 UAEへはTHAAD弾96発とLCS、TOSそれぞれ2基ずつで、合わせて$2.245Bと見られる。 UAEはTHAADが輸出された唯一の国である。 (2210-081704)

 米陸軍工兵隊が8月15日に発簡したRfPから、サウジアラビアが配置する7個THAADのサイトのうち、最初の4個のサイトは2026年末に完成し、7個サイト全ては2028年4月までに完成することが分かった。 (2212-083106)

2・2・7・1・2 その他の湾岸諸国

 2023年に特筆すべき記事なし
2・2・7・2 MEAD (Middle East Air Defense Alliance)

「2・3・1・2・1 MEAD (Middle East Air Defense Alliance)」で記述
2・3 イスラエル

2・3・1 イスラエルの地位

2・3・1・1 イスラエルの承認

2・3・1・1・1 アブラハム合意国

IME 2022/CE 2022 演習へのサウジアラビアの参加

 米海軍と60ヶ国海軍が、艦艇50隻、無人艦艇80隻、人員9,000名が参加したInternational Maritime Eercise 2022 (IME 2022) とCutlass Express 2022 (CE 2022) の合同演習を、1月31日に2月17日までの日程で中東で実施している。
 この演習で注目されるのはイスラエルとサウジアラビアが一緒に参加していることで、周辺国がアブラハム合意の元でイスラエルを承認しているのにサウジは未だに承認していない。 (2203-020208)

アラブ4ヵ国を含む6ヵ国外相会合

 イスラエル政府が3月28日まで2日間にわたり、南部スデボケルでUAEなどアラブ4ヵ国とブリンケン米国務長官を迎え、6ヵ国の外相会合を開いた。
 会合には、米国以外にイスラエルが2020年に国交を正常化したUAE、バーレーン、モロッコと、1979年に平和条約を結んだエジプトが出席した。
 イランに対する結束を確認すると同時に、長年停滞しているパレスチナとの和平交渉を復活させるようイスラエルに圧力をかけた。 (2204-032910)

アラブ諸国向け武器輸出

 イスラエル国防省が4月12日、2021年の武器輸出が$11.3Bと2020年比30%増加したと発表した。
 そのうちの7%がアラブ諸国向けであったことを明らかにした。
 アブラハム合意国への輸出は$791Mであった。 (2207-042703)

UAE と自由貿易協定

 イスラエルが5月31日にUAEとの自由貿易協定に調印した。 数ヵ月にわたる交渉を経て協定はドバイで調印された。
 イスラエルにとって、アラブ国家との初の大規模な貿易協定となり、2国間の通商の促進を目指す。 (2206-053107)

UAE との防衛分野で関係を強化

 イスラエルが2020年に国交を結んだアラブ諸国と防衛分野で関係を強化しておりUAEに対空兵器を輸出したとみられ、サイバ防衛の協力も進む。
 イスラエルがUAE、バーレーンと2020年9月に国交を樹立するアブラハム合意を交わして2年あまりで、前進したのは首脳外交や企業の提携だけではなく、10月にUAEの首都アブダビ近郊にイスラエル製のBarak 8が展開する衛星写真が報じられた。 (2301-122610)

2・3・1・1・2 サウジアラビア

 2023年に特筆すべき記事なし
2・3・1・2 エルサレム

トラス英首相、大使館のエルサレム移転検討

 英メディアが、国連総会に出席しているトラス英首相が9月21日にイスラエルのラピド首相と会談し、在イスラエル英大使館をテルアビブからエルサレムに移転することを検討していると明らかにしたと報じた。
 米国はトランプ政権時代の2018年に大使館をエルサレムに移しており、実現すれば先進7ヵ国 (G7) では2ヵ国目となる。 (2210-092220)

オーストラリアが西エルサレムの首都認定取り消し

 イスラエル外務省が10月18日、オーストラリア政府が西エルサレムをイスラエルの首都と認定した前政権の決定を撤回したことを受けて声明を出し、近視眼的で政治的な判断と批判し深い失望を表明した。
 イスラエルのラピド首相も声明を出し、エルサレムは永遠の統一された首都で、何もそれを変えるものはないと主張した。 (2211-101807)

2・3・1・3 MEAD (Middle East Air Defense Alliance)

 イスラエルのガンツ国防相が6月20日、イランからのロケット、CM、UAVに対抗するMEADと呼ばれる新たな防空同盟に中東の数ヵ国が加盟すると述べた。
 ガンツ国防相はMEADに加盟する国名などを明らかにしなかったが、ヨルダン、サウジアラビア、UAE、エジプトなどが含まれると見られている。
 中でもサウジとUAEはイスラエルの防空システム購入を打診していると報じられていた。
 MEADはイランの武装UAVに対抗する現有の協力調整組織を元にする模様で、この組織は2021年にイランから飛来した複数のUAVをイスラエルのF-35 2機が撃墜したことにも貢献していた。 (2207-062101)

 イスラエルのガンツ国防相が6月20日に国会外交国防委員会への説明で、対イラン防空同盟を米国主導で構築し、既に運用していると明らかにした。
 ガンツ国防相はこの計画を中東防空同盟と呼んだ。
 具体的な枠組みや参加国は明らかにしなかったが、7月のバイデン米大統領のイスラエルとサウジアラビア歴訪時に、さらに一歩前進することを望むと語った。 (2207-062106)

 イスラエルのガンツ国防相が6月20日、イランのミサイルやUAVから防護する湾岸地域の統合防空組織MEADの存在を明らかにした。
 MEADは米中央軍が主導し、イスラエルの他、サウジアラビア、カタール、エジプト、UAE、バーレーン、ヨルダンが参加している。
 Wall Street Journalによると最初の会合はエジプトで開かれた。
 構想は丁度3年前にイスラエル、エジプト、ヨルダン、UAE、バーレーンで合意していたが、サウジアラビアとカタールは参加していなかった。 (2207-062914)

 イスラエルのガンツ国防相が6月20日、米中央軍がイランからの脅威に対抗するため地域防空組織Middle East Air Defenseを構築していると述べた。
 これについてはNew York Times紙が3月に、イスラエルと地域諸国がイランやイエメンから進入するUAVの情報をリアルタイムで交換する通信組織を構築していると報じていた。 (2209-070606)

2・3・1・4 トルコとの関係改善

 トルコのエルドアン大統領が12月27日、イスラエルの新たな駐トルコ大使の信任状を受けとり、4年間におよび緊張した両国関係が正常化する。 (2301-122801)
2・3・1・5 その他イスラム諸国との関係改善

ガンツ国防相のアンカラ訪問

 イスラエルのガンツ国防相は10月27日、トルコの首都アンカラを訪問し、エルドアン大統領やアカル国防相と会談し、ガンツ国防相は声明で、対イランなどでトルコとの防衛協力を深めていくと表明した。
 トルコメディアによると、イスラエル国防相のトルコ訪問は12年ぶりになる。 (2211-102804)

レバノンと東地中海の海洋境界画定

 イスラエルとレバノンが10月27日、天然ガス田を巡り対立していた東地中海の海洋境界を画定する協定に署名した。
 イスラエルが建国以来敵対するレバノンと合意するのは異例で、外交関係がない中、米国などが長期にわたり協議を仲介した。
 これを受け、経済危機に直面するレバノンはガス開発に着手する。
 またウクライナ危機で深刻なエネルギー供給不足に陥っている欧州へのガス輸出拡大を約束するイスラエルにとっては、増産に弾みがつくことになる。 (2211-102813)

2・3・2 イスラエル国内

2・3・2・1 ネタニヤフ政権の復活

 イスラエルでは国政選挙で、ネタニヤフ元首相と極右勢力が過半数議席を獲得したことで、パレスチナに対して強硬姿勢に転じるのか、ヨルダン川西岸地区では11月3日に武装勢力の拠点であるジェニン難民キャンプで、少なくとも2人のパレスチナ人がイスラエル兵によって殺害された。
 ガザ地区の過激派グループは同日夜、イスラエル南部に対して報復のロケット攻撃を行ったが、ロケット弾は迎撃され、他に3回発射されたが、いずれも発射に失敗したかロケットがガザ地区内に落下した。
 これに対しイスラエルは、ハマスのロケット製造を阻止する目的で、ガザ地区の製造施設空爆で対抗した。 (2212-110421)
2・3・2・2 西岸及びエルサレム情勢

2・3・2・2・1 エルサレム旧市街

4月15日: アルアクサ・モスク敷地内での衝突

 エルサレム旧市街のイスラム教聖地にあるアルアクサ・モスクの敷地内で4月15日、パレスチナ住民とイスラエル警官隊が衝突し、パレスチナ赤新月社によればパレスチナ人150人以上が負傷した。
 報道によると、モスクで未明の礼拝を終えたパレスチナ人が警官隊に石や爆竹を投げ付けたのに対して警官隊が応戦し、イスラエル当局によれば、パレスチナ人数百人が拘束された。
 警官隊が事態沈静化を名目にモスク内に立ち入ったため、パレスチナ側が挑発行為と見なして反発を強める恐れもある。
 イスラム教のラマダン(断食月)中で信仰心が高まる中、イスラエルはアラブ系住民によるテロ続発を受けて治安対策を強化し緊張が高まっている。 (2205-041513)

5月29日: 反アラブ7万人規模デモ行進

 1967年のイスラエルによる東エルサレム占領の記念日に当たる5月29日に、エルサレム旧市街でユダヤ人極右勢力らがパレスチナ人地区で大規模なデモ行進を行ったため、反発するパレスチナ住民とイスラエル治安部隊などが衝突し、赤新月社によれば、パレスチナ人79人が負傷した。
 この日エルサレム市内での行進には7万人が参加してイスラエル国旗を誇示し、一部は「アラブ人に死を」と叫んだ。
 これに対し、パレスチナ側は屋根の上から物を投げつけるなどして対抗した。
 エルサレムには3,000人以上の警官が動員され、騒乱を引き起こしたとして60人以上が拘束された。  占領地ヨルダン川西岸でもパレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突が発生した。 (2206-053006)

2・3・2・2・2 ユダヤ人入植地

 2023年に特筆すべき記事なし
2・3・3 ガザでの戦闘

2・3・3・1 ハマスからのロケット弾攻撃と反撃

4月18日: ロケット弾1発を迎撃

 イスラエル軍が4月18日、パレスチナ自治区ガザからイスラエル領内に向けて発射されたロケット弾1発を迎撃した。 死傷者はいなかった。
 エルサレム旧市街でイスラエル警官隊とパレスチナ住民の衝突が続いており、犯行声明は出ていないがハマスやイスラム聖戦などのイスラム組織の仕業とみられる。
 イスラエル政府がガザへ報復攻撃を行う可能性もあり、一段と緊張が高まる恐れもある。
 2021年5月には同様の衝突を機にハマスがロケット弾攻撃を強め、イスラエルがガザを空爆し、11日間に及ぶ交戦となり双方で260人以上が死亡した。 (2205-041906)

 イスラエル軍が4月19日にガザ地区を実効支配しているハマスの武器工場を空爆した。
 パレスチナ過激派は18日、今年になって初めてイスラエル南部にロケット弾を1発撃ち込んだが、空爆はロケット攻撃に対する報復だという。 (2205-041913)

7月16日: 2発のロケット弾攻撃を受けた報復空爆

 イスラエルが7月16日早朝、前夜に2発のロケット弾攻撃を受けたことへの報復としてガザにあるハマスの拠点を空爆した。
 この応酬はバイデン米大統領のイスラエルとパレスチナ訪問終了と共に行われた。 (2208-071607)

11月 3日: 2発のロケット弾攻撃を受けた報復空爆

 ガザ地区の過激派グループは11月3日夜、イスラエル南部に対して報復のロケット攻撃を行ったが、ロケット弾は迎撃され、他に3回発射されたが、いずれも発射に失敗したかロケットがガザ地区内に落下した。
 これに対しイスラエルは、ハマスのロケット製造を阻止する目的で、ガザ地区の製造施設空爆で対抗した。
 イスラエルが11月4日未明、前夜のガザ地区からのロケット攻撃に対する報復として、同地区内の数ヵ所を空爆した。
 イスラエルとイスラム聖戦機構グループは8月、停戦合意が成立して戦闘を停止したが、今回のロケット攻撃と報復空爆は、それ以来初の越境攻撃となった。 (2212-110421)

2・3・3・2 イスラム聖戦を空爆

 イスラエル軍が8月5日、パレスチナ自治区ガザで武装組織イスラム聖戦を空爆した。
 現地からの情報によれば、イスラム聖戦は司令官1人が殺害されたことを認め、報復を宣言した。
 イスラエルのラピド首相とガンツ国防相は共同で声明を出し、作戦はガザの複数の場所で実行され、イスラエル軍はこの司令官に加え「イスラム聖戦のテロリスト10人前後が目標になった」と説明している。
 ガザを実効支配するハマスは声明で「イスラエルはパレスチナの人々に対し、新たな犯罪行為を働いた」と強調し、パレスチナ各派が連携して抵抗していくと訴えた。 (2209-080603)

 イスラエル軍が8月6日夜、5日に続いてガザ地区の武装組織イスラム聖戦への空爆を実施した。
 パレスチナ保健省は、5日午後からのイスラエル軍の攻撃で24人が死亡、200人あまりが負傷したと発表した。 これに対してイスラエル軍は、死者のほとんどが戦闘員だったと主張している。
 一方、イスラム聖戦はガザとの境界に近いイスラエル側の町などに対し、ロケット砲による攻撃を繰り返している。
 なかには長距離弾もあり、6日には境界から70km離れた町でも警報音が聞こえた。
 イスラエル軍は6日夜、ガザから発射された450発あまりのロケット弾や迫撃砲弾のうち、3割近くがガザ地区内に着弾したと述べた。
 残りの大半はIron Domeで迎撃したが、南部スデロットでは高層アパートにロケット弾が命中し、ガザ境界のフェンス付近で爆発した迫撃砲弾により、兵士2名が軽傷を負った。 (2209-080704)

2・3・4 ヒズボラとの戦闘

2・3・4・1 カリシュガス田を巡る係争

 イスラエル軍が2日、地中海沖合のカリシュガス田に向かっていたヒズボラのUAV 3機を撃墜したと発表した。 1機は戦闘機が、残り2機は艦船が撃墜したという。
 同軍関係者によると、UAVはいずれも武装しておらず、危険をもたらすものではなかった。
 ヒズボラも声明で、「2日午後、非武装のUAV 3機を偵察目的で係争中のカリシュガス田に向けて飛ばし、任務は完了した」として、撃墜されたことには言及しなかった。
 このガス田を含む水域をめぐり両国間では係争が続いており、緊張が高まっており、レバノンは先月にイスラエルがチャーターしたギリシャのエネルギー企業Energean社の船舶がガス田に到着したとして非難していた。 (2208-070305)
2・3・5 シリアとの戦闘

2・3・5・1 イスラエルのシリア空爆

3月07日: ダマスカスを空爆

 シリア国営メディアが軍関係者の話として報じたところによると、イスラエルが3月7日に首都ダマスカスで空爆を行い、民間人2人が死亡した。
 軍関係者はイスラエルのミサイルのほとんどを撃ち落としたと述べた。
 2月のダマスカス近郊のイスラエルによるロケット攻撃では、兵士3名が死亡していた。 (2204-030710)

7月22日: ダマスカス近郊を空爆

 シリア国防省が7月22日、首都ダマスカス近郊でイスラエル軍による空爆があり、シリア軍の兵士3人が死亡、7人が負傷したと発表した。
 イスラエルが占領するシリア領のゴラン高原方面から攻撃があったという。 (2208-072206)

8月14日: Tartusとダマスカス近郊を空爆

 シリア軍が声明で、イスラエルが8月14日にレバノン方向からシリアをミサイル攻撃し、3名が死亡、3名が負傷したことを明らかにした。
 攻撃は地中海岸のTartusとダマスカス郊外の数ヵ所に対し行われたという。
 英国に本拠を置く反政府組織であるシリア人権監視団は、イスラエルがAbu Afsaにあるシリア陸軍の防空基地を攻撃したと発表した。
 この基地にはイランに支援された武装勢力が常駐しているという。 (2209-081407)

9月17日: ダマスカスの国際空港とその周辺を空爆

 シリア国防省が9月17日、ダマスカスの国際空港とその周辺にイスラエル軍の攻撃があり、シリア軍兵士5名が死亡したと発表した。
 同省によれば、イスラエル軍が北部ガリラヤ湖の北東岸から、ダマスカス南郊の国際空港や検問所を狙って複数のミサイルを撃ち込み、一部はシリアの防空システムで撃墜したという。
 イスラエル軍は、外国メディアの報道についてはコメントしないと述べた。
 イスラエル軍はこれまでも、イランからシリア武装勢力への武器供給を阻止するため、シリアの空港にあるイラン軍施設を狙ったとするミサイル攻撃を繰り返してきていて、6月の爆撃では、ダマスカスの空港が2週間近く使用不能となった。
 また8月にはダマスカス郊外の農村部にミサイルが撃ち込まれ、シリア軍兵士3名が死亡した。 (2210-091802)

11月13日: ホムス州のシャイラト空軍基地を空爆

 シリア軍が、ホムスの航空基地がイスラエル軍機のミサイル攻撃を受け、2人が死亡し3人が負傷したと発表した。
 シリア人権監視団はこの日早く、イスラエル軍機がレバノン上空を飛行しているのが確認された直後に、発射したミサイル4発がホムス州のシャイラト空軍基地でイランが支援する戦闘員を攻撃したと発表した。 (2212-111304)

2・3・5・2 米国の関与

シリア空爆、米国が事前に確認

 米政府当局者や元当局者らが、イスラエル政府がシリアで実施する多くの空爆について米国政府と密かに事前調整していることを明らかにした。
 イスラエルによる空爆は、イランからレバノンの武装組織ヒズボラへの武器供与の阻止や、シリア国内でのイラン軍やその代理組織の勢力を弱めることが狙いだが、米政府当局者らはこれまで、作戦について多くを語ってこなかった。
 両国による調整がこれまで報じられず、その内容が公にならなかったことは、イランとイスラエルによる「影の戦争」に巻き込まれることなくイスラエルを支持しようとする米政府の姿勢を示している。 (2207-061703)

2・3・5・3 シリアからのイスラエル攻撃

イラン製 UAV を F-35 が撃墜

 イスラエルが最初に北上してくるイラン製UAVを捕捉したのは2021年3月13日01:50で、次いで02:12には東から侵入するUAVを捕捉し、その数分後にいずれもF-35が撃墜した。
 このような事象はほぼ1年中繰り広げられたが、イスラエル空軍はこの事実を3月7日に初めて公表した。 (2204-030712)

2・3・6 イランとの直接対決

2・3・6・1 イランのイスラエル攻撃

 2023年に特筆すべき記事なし
2・3・6・2 イスラエルのイラン攻撃

UAV による攻撃の疑惑

 New York Times紙が5月27日、イランの首都テヘラン近郊パルチンにある国防軍需省の研究施設で25日に起きた事故について、イラン国内から飛び立ったUAVによる攻撃だったと報じた。
 UAVが建物に突っ込んで爆発したとみられ、その手法からイスラエルの関与が濃厚という。 (2206-052805)

2・3・7 核 保 有

イスラエル首相が核保有を示唆

 イスラエルのラピド首相が1日の演説で、同国の核兵器保有について遠回しに言及する異例の発言を行った。
 ラピド首相はこの日、原子力委員会のトップ交代の式典で演説し、イスラエルの防衛攻撃能力と並ぶ「他の能力」に言及した。
 これは核保有をほのめかした発言と受け止められている。
 イスラエルは1960年代に核兵器を開発し、数百発を保有しているといわれるが、正式に核保有を宣言したことはなく、イスラエル指導部が遠回しな表現やあいまいな表現で言及するにとどめてきた。 (2209-080307)

2・3・8 軍備増強

 2023年に特筆すべき記事なし
2・3・9 軍事産業立国

各種特殊任務機の輸出

 IAI社が7月21日、子会社のElta社が欧州のNATO加盟国から機数非公開の特殊任務機を$200M以上でを受注したと発表した。
 今回の受注は更に大規模な契約の一部であるという。
 IAI-Elta社はAEW&C、対地監視、洋上監視、SIGIMTの4機種を提案しているという。
 イスラエル空軍が装備したいるEitan AEW&C機、Shavit SIGINT機、Oron情報収集機はいずれもGulfstram G550機を使用しているが、同社はBombardier社やEmbraer社の機体も使用している。 (2210-080301)

2・4 印・パ対立

2・4・1 武力衝突

2・4・1・1 小競り合い

3月 9日: インドが発射した非弾頭の超音速 SSM がパキスタンに着弾

 パキスタン軍が3月10日、インドが発射した非弾頭の超音速SSMが9日にパキスタンの領空に侵入し、東パンジャム州のミアン・チャンヌ市に着弾し、住宅の壁を破壊したが死傷者は出なかったと抗議した。
 着弾地域には軍事施設はないという。 (2204-031017)

 インド政府が3月11日、9日にパキスタンに落下したミサイルがインドのもので、発射後200km飛翔した後、技術的な問題が発生したことを認めた。
 パキスタン空軍によるとこのミサイルは18:43に発射され、インド領空をMach 2.5、高度40,000ftで80km飛翔したが、18:46にパキスタン領空に侵入して124kmを飛翔した後に18:50にパキスタン空軍のMahajan基地の南方33kmに落下した。
 Janesはこのミサイルを、飛行速度、高度、距離からBrahMosと見ている。 (2206-032302)

4月 4日: カシミールの中心都市 Srinagarで武装勢力の襲撃

 インドが実効支配しているカシミールの中心都市Srinagarで、武装勢力の襲撃で4月4日に、非正規軍兵1名が死亡した。  また同地区での別の襲撃で労働者4名が負傷した。 (2205-040521)

2・4・1・2 本格的な武力衝突

 2023年に特筆すべき記事なし
2・4・2 和解の動き

 2023年に特筆すべき記事なし
2・5 中印対立

2・5・1 中印国境

2・5・1・1 緊張の持続

2・5・1・1・1 中国の挑発

ヒマラヤ地域係争地に中国語名付与

 インドが、中国がヒマラヤ地域にある係争地の15ヵ所に中国語名を付けたことを批判した。
 中国民政省が2021年12月下旬に係争地にある集落や川、山など15ヵ所の名称を「標準化」し、正式な中国語名を付けたと発表した。 中国による同地域での命名は2017年以来である。
 インド外務省は12月30日に、アルナチャルプラデシュ州はインドの不可分の領土だと主張している。
 一方、中国外務省報道官は「蔵南(アルナチャルプラデシュ州の中国名)は中国のチベット自治区内にあり、歴史的に中国の領土だ」と主張した。 (2202-010105)

中印国境地帯でインフラ施設を建設

 インドNew Delhi TVによると、衛星写真に中国がラダック地域東部にあるパンゴン湖上に橋を建設している様子が捉えられた。
 橋はパンゴン湖の中国側の領域で建設されており、専門家によると橋はパンゴン湖の幅が狭い部分を渡す形で建設されほぼ完成しているという。
 Indian Today誌によると、この橋は中印の実効支配線 (LAC) から25~30kmの地点に位置する。 部隊や武器を円滑に紛争地帯へ輸送するためと思われる。
 インドのメディアはこれまでにも中国側が中印国境地帯でインフラ施設を建設してきたと報道していた。 (2202-010402)

高地戦の準備

 中国CCTVが8月15日に、インドと米国が10月にヒマラヤで共同演習を計画しているなか、PLA新疆ウイグル自治区軍司令部が高地用に改良されたSAMの試験を標高4,500m以上の高地で実施したと報じた。
 映像を見た軍事専門家は、試験が行われたのはHQ-17A SHORADと見ている。 (2209-081604)

2・5・1・1・2 インドの兵力増強

山岳戦装備の整備

 「5・5・1・1・3 山岳戦への備え」で記述

中印国境地帯で米国と共同演習

 インドと中国西部チベット自治区との事実上の国境である実効支配線 (LAC) から100km以内で2022年秋にインドが米国と合同演習を行う計画である。
 米印合同演習は10月中旬にインドのウッタラーカンド州アウリの高度3,048mで、高高度での戦闘訓練が行われる。 (2209-081013)

2・5・1・1・3 中印国境で米印共同訓練

 インド軍と米軍が11月29日、中国と国境を接する北部ウッタラカンド州アウリ周辺の、寒冷な山岳地帯で米印合同演習を行った。
 演習は、悪条件の地形や気候の中で、監視、山岳戦技術、死傷者救助、戦闘医療援助に重点が置かれ、インドのアッサム連隊と、アラスカの第11空挺師団から第2旅団の将兵が参加して、インド兵がヘリから降下、民家から武装勢力を一掃する展示や、探知犬や無人爆弾処理車、タカによる敵の小型無人機を破壊する訓練などが行われた。
 米印合同演習は、2000年代初頭に始まって以降、インド北部で実施されたきたが、2022年は1962年の中印国境紛争の後に設定された両国の支配地域を分ける境界線、実効支配線からわずか100kmの地点で行われた。 (2212-113017)
2・5・1・2 国境での武力衝突

12月: 北東部アルナチャルプラデシュ州タワン地区

 インド民放のNDTVが12月12日に政府筋の話として、インドが実効支配し中国も領有権を主張するインド北東部アルナチャルプラデシュ州タワン地区で両国軍が衝突し、双方に負傷者が出たと報じた。 (2301-121301)

2・5・1・3 緊張の緩和

兵力引き離し

 インド国防省が9月8日、北部ラダック地方の中国との係争地の一部から中印両軍が撤退を開始したと発表した。
 インドのメディアは、ウズベキスタンで15、16両日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議で中印首脳が対面会談を行うと観測を報じていることから、会談への「地ならし」を行った可能性もある。
 中印首脳会談は、20名以上の死者を出した2020年6月の衝突以降行われていない。
 未画定の国境をめぐり争っている両国が係争地から撤退する動きは断続的に浮上してはいるものの、両軍それぞれ数万名規模を維持し、にらみ合いが続いてきた。 (2210-090906)

2・5・2 ヒマラヤ諸国

2・5・2・1 ネパール

2・5・2・1・1 国内情勢

共産党毛沢東主義派政権の復活

 ネパールの新首相には、11月の下院選で最多の議席を得たネパール会議派(NCP)を率いるデウバ首相の続投が濃厚とみられていたが、与党連合内で首相の座を巡りデウバ氏と共産党毛沢東主義派(毛派)のダハル氏の交渉が決裂して12月25日に毛派が与党連合を離脱し、野党と組み下院で過半数を得る見込みとなった。
 このためバンダリ大統領は25日、毛派のダハル議長を新首相に任命した。 (2301-122506)

2・5・2・1・2 対中関係

 BBC放送が2月8日、中国の領土侵犯を批判する報告書をネパール政府が作成していたと報じた。
 2021年9月に北西部フムラ郡で中国による領土侵犯があったとの情報を受けて報告書の作成が始まったという。
 BBCによると、中国による領土侵犯をネパールが公的文書で指摘するのは初めてで、2021年7月に親中の共産党政権からインド寄りの政権に交代したネパールだが、中国を批判するのは異例である。 (2203-020820)
2・5・2・2 ブータン

 2023年に特筆すべき記事なし
2・5・3 インド洋

 2023年に特筆すべき記事なし
2・6 ウクライナ

2・6・1 開戦に至る経緯

 「『付録-2 ウクライナ戦争』 1 開戦に至る経緯」で記述
2・6・2 ロシア軍の全面侵攻

 「『付録-2 ウクライナ戦争』 2 ロシア軍の全面侵攻」で記述
2・6・3 ウクライナ以外への侵攻の可能性

 「『付録-2 ウクライナ戦争』 3 ウクライナ以外への侵攻の可能性」で記述
2・6・4 ウクライナ支援国

 「『付録-2 ウクライナ戦争』 4 ウクライナ支援国」で記述
2・6・5 国際世論と国際法判断

 「『付録-2 ウクライナ戦争』 5 国際世論と国際法判断」で記述
2・6・6 旧ソ連諸国の対応

 「『付録-2 ウクライナ戦争』 6 旧ソ連諸国の対応」で記述
2・6・8 防衛力整備

2・6・8・1 防衛体制の強化

2・6・8・2・1 予備役の整備

 9万名ともいわれるロシア軍の国境地帯への集結によって緊張が高まる中、ウクライナでは毎週末、国土防衛軍予備役の訓練が各地で行われている。
 2021年夏にゼレンスキー大統領は国土防衛軍を設立する法律に署名した。 その結果、防衛軍は今や20個旅団を擁し、ロシア軍の侵攻に際してウクライナ軍を側面から支援し、インフラ設備防衛のための訓練を重ねている。 (2202-011206)
2・6・8・2・3 装備の近代化

射程1,000km、弾頭75kgの長距離打撃手段を開発

 ウクライナの防衛企業Ukroboronprom社が、10月17日にロシアがイラン製遊弋弾を使用した数時間後に、ウクライナ政府が長距離打撃手段を開発したことを明らかにした。
 コノシスタムは射程が1,000kmで75kgの弾頭を搭載できるという。 (2301-102003)

2・6・9 防衛産業の振興

2・6・9・1 ウクライナ製兵器に多くの国が関心

 ウクライナの防衛企業Ukroboronprom社によると、実戦で成果を挙げている同国製兵器に多くの国が関心を持っているという。
 それによるとSkif携帯型ATGMは世界10ヵ国へ、Corsarは6ヵ国に輸出しているという。
 Ukroboronprom社傘下のLuch設計局によると、誘導ロケット弾(胴径300mm、弾頭250kg、射程70km/30km/141km)を発射するVilkha MRLには中東の某国から、4月14日に巡洋艦Moskvaを撃沈したNeptune ASCMには極東の国が関心を示しているという。 (2210-090702)
2・6・9・2 宇宙開発構想

 ウクライナが独自の宇宙開発を検討していて、ロンドンで開かれてDefence Space 2022で、1992年に立ち上げられたウクライナState Space Agency長官が、高精度リモートセンシング衛星群を計画していると述べた。 (2208-052504)
2・7 その他旧ソ連諸国

2・7・1 ベラルーシ

2・7・1・1 国内情勢

2・7・1・1・1 民主派の弾圧

 2023年に特筆すべき記事なし
2・7・1・1・2 民主派の反発

反政府派によるサイバ攻撃

 ベラルーシのハッカー集団であるサイバー・パルチザンが1月24日、2月に予定されるロシアとの合同軍事演習に向けて派遣されたロシア軍を撤収させるように求めて同国の鉄道システムに侵入して業務を妨害していると発表した。
 鉄道システムへの妨害を取りやめる条件として、ロシア軍のベラルーシ駐留の停止などを要求している。
 ロイタ通信などによると、サイバー・パルチザンはベラルーシの鉄道会社の運営を妨げるため、データベースやサーバーなどの一部を暗号化したため、オンラインのチケット販売ができなくなるなどの影響が出ており、鉄道会社がシステムの復旧に取り組んでいるという。 (2202-012609)

2・7・1・1・3 デフォルト(債務不履行)状態の経済

 Fitch Ratings社が7月18日、格付けCであったベラルーシの長期外貨建て格付けをデフォルト(債務不履行)状態を示す一部債務不履行RDに引き下げた。
 Moody's Investors Serviceに続きベラルーシが外国人投資家に対する債務の条件に違反したと判断した。
 Fitchは、ベラルーシが$600M規模ドル建ての2027年償還債について、ドルでの利払いを実施しなかったことを格下げの理由として挙げた。
 Moody'sも14日、同事案はデフォルトに相当すると発表していた。
 ベラルーシ政府は6月下旬にドルで行うはずだった外債利払いについて、ベラルーシ・ルーブル建てでベラルーシ銀行の口座に送金されると発表していた。
 S&P Global Ratingsは15日にベラルーシの格付けをCCに据え置き、さらなる格下げ方向の見直しを意味するWatch Negativeに引き続き掲載すると発表していた。 (2208-071911)
2・7・1・1・4 ウクライナ戦争への関与

 「『付録-2 ウクライナ戦争』 6・1 ベラルーシ」で記述
2・7・1・2 ロシアとの連携

2・7・1・2・1 新兵器の導入

 ベラルーシのルカシェンコ大統領がTelegramの大統領府公式チャンネルで5月19日、ロシアからIskanderとS-400を必要な数だけ購入したと発表した。 (2206-052004)
2・7・1・2・2 ロシアの核恫喝に加担

 InterFax通信などが、ベラルーシのルカシェンコ大統領が8月26日に保有するSu-24が改造工事を終えて核兵器の搭載が可能になったと明らかにしたと報じた。
 ルカシェンコ大統領は、欧米がベラルーシへの挑発行為を行えば「核兵器を持つ連合国家との関係を緊張させることになる」と述べ、国家統合を進めているロシアの「核の傘」を強調して牽制した。 (2209-082605)
2・7・1・2・3 周辺国への圧力

 ベラルーシ政府が1月17日、2月に計画されているロシアとの共同軍事訓練に向け、ロシア軍の兵士と装備類がベラルーシに到着し始めたと明らかにした。
 ルカシェンコ大統領によると、共同軍事訓練はポーランドとリトアニアとの国境に近いベラルーシ西部のほか、ウクライナとの国境に近いベラルーシ南部で実施される。 (2202-011801)
2・7・1・2・4 西側諸国の反発

米ニューヨーク大陪審がベラルーシ政府当局者をハイジャックの共謀罪で起訴

 米ニューヨーク大陪審が1月20日、ベラルーシが昨年5月に民間機を強制着陸させて反体制派のジャーナリストを拘束した問題で、ベラルーシ政府の当局者4人をハイジャックの共謀罪で起訴した。
 4人はベラルーシの治安当局の職員と航空当局の高官で、乗客らに米国人4人が含まれていたため訴追に踏み切った。
 この問題は昨年5月23日に発生した。ギリシャ発、リトアニア行きのライアンエア機がベラルーシの領空を飛行中、ベラルーシ当局の指示で進路を変更させられた上で、強制的に着陸させられ、機内にいた同国の反体制派メディアの元編集長とその恋人が身柄を拘束されたもので、「機内に爆弾がある」という虚偽の情報を流し、乗員乗客132人の命を危険にさらしたとされる。 (2202-012110)

2・7・1・3 バルト三国、ポーランドの対抗策

金属製の壁を建設

 2021年の夏に発生した、EU側に中東やアジアからの移民を送り込む、ベラルーシのハイブリッド攻撃で、ポーランド東部とリトアニア南部の森林地帯に、ベラルーシが送り込んだとされる難民の数は数千人規模に膨れ上がり、ポーランドの検問所では一部の難民が国境警備隊と衝突するなど、大きな国際問題に発展した。
 これに危機感を抱いたポーランドが東部国境沿いに、これまでの有刺鉄線に代わって国境沿いの180kmの区間に、高さ5.5mの金属製の壁を建設するの壁の建設に着工した。  壁は6月までに完成する予定で、建設に係る費用は$394Mといわれている。 (2202-012808)

2・7・1・4 中国と軍事技術協力

 ベラルーシ国防省が2021年11月29日、同国が中国との軍事技術協力協定に調印したと発表した。
 ベラルーシは2021年8月に中国と軍事技術協力の範囲を拡大することに同意したと発表していた。 (2203-120809)
2・7・2 ジョージア

2・7・2・1 南オセチア

EU 加盟申請

 レジャバ駐日ジョージア大使が3月3日にツイッターを更新し、「ジョージア政府が本日EU加盟申請することを発表致しました」とジョージアの国旗と欧州旗の絵文字を添えて報告した。
 現在ロシアと領土問題を抱えている旧ソ連構成国のウクライナ、ジョージア、モルドバは2021年にEU加盟の意思を公に表明しており、ウクライナは3月1日にEU加盟を申請している。 (2204-030314)

ロシア編入の是非を問う住民投票

 ジョージアからの独立を宣言している親露派地域の南オセチアの指導者ビビロフ氏が3月30日、同地域が4月10日に実施する「大統領選挙」の直後にロシア編入の是非を問う住民投票を行うとした。
 ロシアは2008年にジョージアとの間で起きた軍事衝突の後、南オセチアとアブハジアの親露派2地域を独立国家として承認し、以降、現地に軍を駐留させている。
 これに対しジョージアのザルカリアニ外相は翌31日、欧州人権裁判所 (ECHR) が南オセチアをロシアの占領地域と認定しており、占領下の領土での住民投票には法的効力がないと指摘し、容認できないと非難した。 (2205-040103)

大統領選挙でロシアへの編入を唱えた現職が敗退

 ジョージアから一方的に分離独立を宣言している親露派支配地域南オセチア共和国で5月8日に「大統領選」の決選投票が行われた。
 TASS通信などによると、ロシアへの編入手続き開始を提案していた現職のビビロフ大統領が敗れ、慎重派の野党党首のガグロエフ氏の勝利が確実となった。
 ビビロフ大統領は、選挙後にロシアへの編入を問う住民投票を実施する意向を示していたが、ロシアによる併合は白紙となる。
 南オセチア共和国中央選管の中間集計(開票率約97%)では、ガグロエフ氏が得票率54%で、ビビロフ氏は43%にとどまった。
 4月実施の第1回投票は、過半数を上回る得票率の候補者がおらず、上位2人で決選投票が行われた。 (2206-051010)

落選した大統領が住民投票実施法令に署名

 ジョージアの分離独立派地域、南オセチアの「大統領」ビビロフ氏が5月13日、ロシア編入の是非を問う住民投票を7月17日に実施すると発表した。
 南オセチア「大統領府」の発表によると、ビビロフ氏は住民投票を実施する法令に署名した。
 ビビロフ氏は、南オセチアで今月実施された「大統領選」で敗北したが、ロシアは当選した対立候補のガグロエフ氏が対露関係の「継続」に期待を表明している。 (2206-051404)

ロシア編入の住民投票中止

 ジョージア親露派支配地域の南オセチアで「大統領」を自称するガグロエフ氏が5月30日、7月17日に予定されていたロシアへの編入の是非を問う住民投票を中止したと発表した。
 その上で南オセチアとロシアの統合に向けロシア側との協議を遅滞なく進めるよう指示を出した。
 5月初めの「大統領選」でカグロエフ氏に敗れた前任ビビロフ氏は13日、ロシアへの編入は南オセチアの長年の願いだとして住民投票の実施を認める文書に署名していた。 (2206-053108)

2・7・2・2 アブハジア

 2023年に特筆すべき記事なし
2・7・3 アルメニアとアゼルバイジャン

2・7・3・1 アルメニア

2・7・3・1・1 トルコとの関係

関係修復の動き

 アナトリア通信が3月15日、アルメニアのミルゾヤン外相が「トルコと外交関係を樹立し、国境を開放する用意がある」と語ったと報じた。
 同通信のインタビューで「目標に向けプロセスを進める政治的意志があるとトルコ側から聞き、うれしく思う」と述べた。 (2204-031616)

2・7・3・1・2 米下院議長の訪問

 アルメニアを訪問したペロシ米下院議長が9月18日に首都エレバンで記者会見し、係争地ナゴルノカラバフをめぐる最近の戦闘について「アゼルバイジャンがアルメニアを違法に攻撃した」と非難した。 (2210-091807)
2・7・3・2 アゼルバイジャン

 2023年に特筆すべき記事なし
2・7・3・3 ナゴルノカラバフ紛争

3月: アゼルバイジャン軍がファルーフ地区に侵入し

 ロシアが3月26日、ナゴルノカラバフ地域での緊張の高まりを深く憂慮していると表明し、アゼルバイジャン軍がロシア平和維持部隊の監視下にある区域に入り2020年の停戦合意を破ったと指摘した。
 ただ27日にはアゼルバイジャン軍が同区域から撤退したと説明した。
 これに対しアゼルバイジャン側はロシアの主張を否定し非難の応酬となった。
 アゼルバイジャン側はロシアが言及した区域はアゼルバイジャンの主権的領土で、部隊撤退の情報は真実に反するとし、アゼルバイジャン軍が現地の状況を完全に掌握しているとした。 (2204-032805)

 アゼルバイジャンが3月24日、アルメニアとの係争地ナゴルノカラバフのファルーフに侵入し、戦略的要所の村を制圧した。
 これを受けてアルメニアは28日、同地に駐留するロシアの平和維持部隊に対し「具体策」を講じるよう要請した。 (2204-032915)

8月: ラチン県での衝突

 アゼルバイジャンが8月3日、ナゴルノカラバフの周辺でアルメニア軍による攻撃を抑え込んだと表明した。
 アゼルバイジャン国防省は、アルメニア側が妨害工作を展開し、アゼル軍の兵士が死亡したと主張し、明確な停戦違反だとした。
 また、ロシアの平和維持部隊が支配する地域でアルメニア側が丘陵の制圧を試みたが、アゼル軍が食い止めたとした。
 これに対しアルメニア外務省は、アゼルバイジャンが平和維持軍の支配地域で攻撃を開始し、停戦に違反したと強調した。
 両国は2020年の衝突後にロシアが平和維持部隊を現地に派遣し停戦合意していたが、アゼルバイジャンとアルメニアは停戦違反について何度も互いを非難しており、ここ数日に緊張が高まっていた。 (2209-080406)

 ナゴルノカラバフでアゼルバイジャン軍が8月3日に複数の要衝を制圧し新たな緊張が高まっている。 戦闘で双方の兵士3人が死亡した。
 アゼルバイジャン国防省は3日、ロシア軍が駐留しているラチン県にある自軍の拠点が、アルメニア系住民が樹立を宣言した「ナゴルノカラバフ共和国」の武装勢力の攻撃を受け、兵士1人が死亡したと発表した。
 アゼルバイジャン軍はそれを受けて報復作戦を実施し、同地域の複数の高地を制圧したと明らかにした。
 これに対しナゴルノカラバフ側は、アゼルバイジャン側が停戦合意を破り戦闘員2人を殺害し14人を負傷させたと主張して、国際社会に対し、ゼルバイジャンの「侵略行為」をやめさせるよう訴えた。 (2209-080407)

9月13~14日: 両国の国境地帯で衝突

 TASS通信が、アルメニア軍とアゼルバイジャン軍が9月13日未明、両国の国境地帯で衝突し、両国は相手側による挑発が発端だと主張していると発表した。
 銃撃や砲撃の応酬で死傷者が出ているという。
 TASS通信によると、アルメニア政府は13日にパシニャン首相が軍事同盟を結ぶロシアのプーチン大統領と電話会談を行い衝突の情報を共有したと発表したが、両国の仲介役を担ってきたロシアはウクライナ侵攻に追われており、戦闘は拡大する恐れがある。 (2210-091308)

 係争地ナゴルノカラバフを巡りアルメニア軍とアゼルバイジャン軍が衝突した。
 アルメニアは同国兵が少なくとも49名死亡したと発表し、アゼルバイジャンとの国境に近い複数の町が9月13日未明に砲撃されたため、対抗措置を取ったと表明した。
 パシニャン首相によると、激しい戦闘は収まったが、現在も攻撃は続いている。
 アルメニア国防省はアゼルバイジャン側の大規模な挑発が発端となり集中攻撃が続いていると指摘していた。
 アゼルバイジャン国防省はアルメニア軍部隊の激しい砲撃によってアゼルバイジャン軍の兵士が死亡し、インフラにも損害が出たと表明した。
 アルメニア政府はロシアとの協力協定を発動、ロシア主導の集団安全保障条約機構 (CSTO) は13日に協議を開いた。 一方のアゼルバイジャンはトルコが支援している。 (2210-091311)

 アルメニアとアゼルバイジャンによる係争地ナゴルノカラバフをめぐる紛争で、2020年秋以来最悪の規模となった9月13日未明の両国軍の交戦は、双方の死者が100名近くに上ったことが明らかになった。
 アゼルバイジャン国防省が「アルメニアの大規模な挑発行為の結果、アゼルバイジャン軍の50名が死亡した」と発表した一方、これに先立ち、アルメニア側も少なくとも49名の軍人の死亡を認めていた。 (2210-091414)

 アゼルバイジャンとアルメニアの間で9月14日に新たな軍事衝突が発生した。
 アルメニアのパシニャン首相は議会で、今回の衝突開始以降アルメニア兵105名人が死亡したと明らかにし、ロシア主導の集団安全保障条約機構 (CSTO) に支援を要請したと述べた。
 ナゴルノカラバフを巡り両軍が衝突した13日には、少なくともアルメニア軍で49名、アゼルバイジャン軍で50名の死者が出ている。 (2210-091416)

 アルメニア高官が9月14日夜、アゼルバイジャンとの間で発生した係争地ナゴルノカラバフを巡る新たな軍事衝突について、停戦合意に至ったと明らかにした。
 アゼルバイジャンからは今のところ声明は出ていない。 (2210-091509)

 アゼルバイジャンとアルメニアの国境地帯での紛争で、9月16日までに明らかになった両軍の死者は計206名になった。
 InterFax通信によると、アルメニア議会で16日、今回の衝突で自軍の死者が135名になったと報告された。 15日時点は105名としていた。
 アゼルバイジャンは15日に自軍の死者を71名と発表した。
 両国は14日に停戦に合意したが、アルメニア国内で譲歩に反対するデモが起きるなど実効性は不透明で、両国に影響力を持つロシアとトルコは16日に首脳会談で対応を協議する。 (2210-091616)

 ロシアの仲介で9月14日に停戦に合意していたアルメニアとアゼルバイジャンの間で22日夜から23日にかけて軍事衝突が起こり、停戦合意が崩壊した。
 双方は互いに、相手が先に停戦合意を破棄し攻撃したと非難している。
 アルメニア国防省は、23日朝に国境付近アゼルバイジャン軍の攻撃があったと発表し、その後まもなくアゼルバイジャン国防省が、先に発砲したのはアルメニアだと表明した。 (2210-092308)

12月下旬: ラチン回廊の封鎖

 アルメニア系住民が多数を占めるアゼルバイジャン内の係争地ナゴルノカラバフとアルメニアを結ぶ唯一の道路がアゼルバイジャン側に封鎖されている。
 ナゴルノカラバフはラチン回廊でアルメニアと結ばれているが、アゼルバイジャンの活動家が今月12日に回廊を封鎖した。
 ナゴルノの鉱山で違法採掘が行われており、環境が汚染されているというのがその理由だった。
 26日、現場に集まっていたアゼルバイジャンの活動家グループは封鎖を否定し、「われわれの要求は天然資源の違法利用をやめさせることだけだ」と強調したが、抗議開始以降、アルメニアとの間の物流が途絶えていることを認めた。
 AFP記者は、ロシア軍車両が回廊を自由に移動しているのを目撃した一方で、ステパナケルトから15kmの地点にあるロシアが設けた検問所付近の道路も封鎖されていた。 (2301-122706)

2・7・3・4 和平協議

 アゼルバイジャンのアリエフ大統領が11月25日、ブリュッセルで12月7日に予定されるアルメニアとの和平協議にマクロン仏大統領が加わるなら出席しないと表明した。
 アルメニアのパシニャン首相はマクロン大統領の参加を求めている。
 アゼルバイジャン政府は、ナゴルノカラバフ問題についてフランスが裏でアルメニアを支援していると非難してきた。 (2212-112614)
2・8 その他地域

2・8・1 アフガニスタン

2・8・1・1 武装勢力民族抵抗戦線 (NRF)

 アフガニスタン北東部パンジシール渓谷の住民が5月14日、タリバンの統治に抵抗する武装勢力民族抵抗戦線(NRF)が攻勢を開始し、多数の民間人が避難していることを明らかにした。
 NRFは5月上旬に週、2021年8月以来初となるタリバンへの攻撃を開始したと発表した。
 NRFとタリバンは共にこの数日で敵の戦闘員数十人を殺害したと主張している。
 パンジシール渓谷は、1980年代の旧ソ連軍による侵攻への抵抗の地として知られ、90年代後半の第一次タリバン政権時代にも抵抗勢力の拠点となった要衝で、当時抵抗勢力を率いた故マスード司令官の息子が指揮するNRFも昨年8月、同地に立てこもってタリバン政権復活に最後まで抵抗した。 (2206-051504)
2・8・2 東地中海

イスラエルとレバノンの天然ガス田を巡る対立

 「2・3・1・5 その他イスラム諸国との関係改善」で記述

キプロスと周辺海域

 2023年に特筆すべき記事なし。



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