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8・ 防空システム

8・1 宇宙防衛/戦略 BMD

8・1・1 地球-月間空間 (Cislunar)

8・1・1・1 米 国

8・1・1・1・1 Cislunar の軍事利用

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・1・1・2 宇宙船

DRACO 宇宙船計画

 米DARPAがDRACO宇宙船計画の第一段階にGA、Blue Origin、Lockheed Martinの3社を選定した。
 DRACO計画は熱核推進装置 (NTP) を用いて低高度軌道より上を飛行する計画で、2025年の初打ち上げを目指している。
 高い推力重量比のNTPを用いたDARPAは、米国防総省の目指す地球-月間 (cislunar) 空間の飛行に適している。 (2105-041211)

 米DARPAがDRACO宇宙船計画の第一段階にGA、Blue Origin、Lockheed Martinの3社を選定した。
 DRACO計画は高い推力重量比が特長の熱核推進装置 (NTP) を用いて低高度軌道より上を飛行する計画で、2025年の初打ち上げを目指している。
 計画は2段階で行われ、18ヶ月間の第1段階ではGA社が原子炉及び推進装置の事前設計を担当し、Blue Origin社とLockeed Martin社が宇宙船を担当する。 (2105-041311)

8・1・1・1・3 原子力エンジン

核熱推進 (NTP) 方式と核電子推進 (NEP) 方式

 米NASAが2039年打ち上げを目標とした火星への有人飛行を見据えて原子力エンジンの研究を進めている。
 火星までの往復には従来型のエンジンでは3.5年、ソーラーエンジンではそれ以上かかるが、原子力エンジンでは2年で往復できるという。
 原子力推進ロケットには原子炉の熱で水素ガスなどを加熱して噴射推進する核熱推進 (NTP) 方式と、原子炉で発電しクセノンやクリプトンなどのガスをイオン化させて噴出させる核電子推進 (NEP) 方式があり、当面実現が可能なNTPでは比推力 (ISP) が900秒程度、将来実現が期待されるNEPでは4,000秒と見られている。 (2107-050301)
【註】ISPとは総推力 (kg・sec) を推進剤(燃料と酸化剤)重量 (kg)で割った値で単位はsecになる。
 今日大型のSLVが一般的に使用している水素酸素エンジンのISPは450秒程度である。 因みに固体燃料ロケットのISPは200~300秒程度である。

 米国ではDeterrence Layerと呼ばれる良く分からない計画の元に2025年には核を動力源とする衛星を打ち上げようとしている。 また国防総省は月ほどの遠方まで飛行する宇宙船AMV計画も進めている。
 AMVには従来の化学推進を凌ぐ高い推進装置が求められている。 このためDARPAはDRACO宇宙船計画を進めていて、Lockheed Martin社とBlue Origin社を選定している。 また原子炉の開発にGA-EMSを選定している。
 DARPAはFRACOに低濃縮ウラン (HALER) を使用しようとしている。 通常の軍用には濃縮度80%の高濃縮ウランを使用するがHALEUは5%~20%の濃縮度という。 (2107-050302)
【註】米国は深宇宙における中国への優位を確立するため地球~月間 (cislunar) の開発に力を入れようとしており、そのため原子力推進ロケットの検討を進めている。

8・1・1・2 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・2 宇宙配備 BMD システム

8・1・2・1 早期警戒衛星

8・1・2・1・1 SBIRS

GEO-5/6

 米ミサイル早期警戒衛星SBIRSの静止軌道型GEOの5号機であるGEO-5が3月18日に、5月の打ち上げに備えてフロリダに搬入された。
 米空軍は2014年にSBIRS GEOの最初の2基に代わるGEO-5とGEO-6を$1.86Bで発注していた。
 一方、議会が2018年に次世代衛星NGOPIを承認したため、GEO-5とGEO-6はSBIRS計画最後の衛星となった。 (2104-032911)

 米国防総省がDSP衛星の後継として既に4基打ち上げているSBIRSは、2020年だけで1,000回以上ミサイルやSLVの発射を捕捉している。
 その5号機であるGEO-5は2Q/2021年、6号機にして最終機となるGEO-6は2Q/2022年に打ち上げられる。 (2105-032202)

 米宇宙軍が5月18日01:37にCape CanaveralからAtlas Ⅴ SLVで、静止軌道SBIRSの5号機で最後から2番目となるGEO-5を打ち上げ、発射45分後に静止軌道に投入した。
 SBIRSは2019年だけでも1,000回近いミサイルの発射を探知しており、2020年1月にイランがイラクの米軍と同盟国軍に向けて発射した十数発のBMも捕捉していた。 (2106-051804)

8・1・2・1・2 次世代衛星 NGOPI

Next-Gen OPIR Block 0

 国防総省はSBIRSの後継となる次世代のNext-Gen OPIRは、Block 0では5基が打ち上げられ、Lockheed Martin社が静止軌道の3基、Northrop Grumman社が極軌道の2基を受注している。
 Next-Gen OPIRへの要求を2021年夏に公表される。
(2105-032202)

 米国防総省がFY22予算で、宇宙軍の次世代ミサイル早期警戒衛星OPIRに$2.606Bを要求している。 そのうち$2.451Bが研究開発費で、$154.5Mが購入費である。
 OPIRは静止軌道 (GEO) の3基と長楕円軌道 (HEO) の極軌道衛星2基からなり、GEO衛星には現在のSBIRSを手がけたLockheed Martin社が、極軌道衛星にはNorthrop Grumman社が指名されている。
 OPIR GEOの打ち上げは2025年、2027年、2028年に、HEO衛星は2028年と2030年に打ち上げられる。 (2108-060907)

 バイデン政権は、SBIRSに代わる早期警戒衛星として米宇宙軍が計画している次世代OPIRへのFY22での支出を、トランプ政権が計画していた額より$132M増額した$2.45B要求している。
 次世代OPIRは最初の1基を2025年に打ち上げ、2030年までに5基全てを打ち上げる計画である。 (2108-071604)

FORGE 計画

 米宇宙軍は衛星と共に地上装置も近代化するFORGE計画も進めており、計画はRaytheon社が受注している。
 FORGEはSBIRSやNext-Gen OPISだけでなく、民間や環境監視衛星などが取得した全てのミサイルの早期警報に関する情報を処理する。 (2105-032202)

8・1・2・2 探知追随衛星

8・1・2・2・1 STSS リム観測衛星

 BMDで用いられる早期警戒衛星はIRセンサを搭載し、ミサイルの発射炎を探知して警報を鳴らすもので、現在のDSP衛星は静止軌道上にある。
 このDSP衛星は地表を見下ろす天底観測でミサイル発射時の熱源探知しかできない。
 そこで弾道中期のBMを追跡できるように、低軌道にIR衛星を周回させて、横方向から宇宙を背景に目標を見るリム観測という方法が計画された。 それがSTSSである。 (2102-012401)
8・1・2・2・2 米 MDA の HBTSS

衛星の試作を発注

 米MDAが1月14日、HBTSS衛星群の衛星試作をL3Harris社に$121Mで発注したと発表した。
 HBTSSは超高速兵器の発見追随のため数十基の衛星を低軌道に打ち上げる計画で、2019年に4社がリスク低減活動として搭載品の試作をそれぞれ$20Mで受注し、これら4社の中から2020年10月31日にL3Harris社が選定されていた。
 これとは別のSDAが8基の打ち上げを計画している広視野角 (WFOV) 衛星でも10月に同社は4基を$193Mで受注している。 残りの4基はSpaceX社が受注した。
 WFOV衛星は2022年9月に打ち上げられる計画で、HBTSS計画は2023年7月に完了することになっている。 (2102-011407)

 米MDAがHBTSS計画のPhase ⅢbをNorthrop Grumman-L3Harrisグループに発注した。
 Phase ⅢbではHBTSSの試作衛星を打ち上げ、軍が要求する超高速ミサイル群や中期弾道の弾道弾に対する射撃統制に必要な精度のデータが取得できることを検証する。 (2102-012209)

 米MDAが1月22日、Northrop Grumman社に$155MでHBTSS計画のPhase Ⅲbを発注した。 Raytheon社とLeidos社は敗退した。
 HBTSSは超高速の敵を発射から着弾まで追随するIRシステムである。 (2102-012210)

CubeSat を打ち上げ

 米MDAが6月に小型衛星群計画CNCE Block 1の一環となるCubeSatを打ち上げ、MDAとSDAの小型衛星計画が一歩を踏み出した。
 CNCE計画は小型安価なナノ衛星間をRF通信で繋ぐ技術で、MDAのナノ衛星計画 (NTI) として進められている。
 ナノ衛星とは幅4~8吋、長さ4~13吋、重量2~22-lbの衛星を言う。 (2110-090001)

 L3Harris社はSapceX社と1月にMDAのHBTSSを受注している。
 HBTSSはSDAの超高速兵器捕捉追随衛星より高感度で超高速兵器の捕捉追随に加えて射撃諸元の取得までを狙っている。 (2110-092005)

 超高速ミサイルを宇宙空間から監視できるHBTSSは2023年に2基が打ち上げられるが、受注を競っている各社は11月末には試作を開始するとしている。
 HBTSSは現有の早期警戒衛星より低い高度でかつ地上配備早期警戒レーダより高い高度である高度100km~2,000kmの低軌道に打ち上げられる衛星群で、SBIRS衛星や将来はNGOPI衛星からBMや超高速ミサイルのキューイングを受けて超高速ミサイルを超高速滑空飛翔段階で追随し、その諸元を海軍のAegis BMDシステムと陸軍のTHAADシステムに送る。 (2112-111110)

最終設計審査 (CDR) を完了

 米MDAがHBTSSの最終設計審査 (CDR) を完了した。
 MDAは1月にHBTSSの設計と試作にL3Harris社とNorthrop Grumman社を選定し、それぞれ$122M及び$155Mで契約していた。
 20,000哩以上の高高度軌道に少数の衛星を打ち上げるSDAの計画と異なり、MDAのHBTSSは低高度軌道に数百基の衛星を打ち上げる。 (2201-122107)

8・1・2・2・3 米 SDA の衛星群

 米宇宙開発庁 (SDA) が大規模衛星群の最初の二層を10月に、Tracking Layer Tranche 0をL3Harris社とapceX社指名したのに対して、Raytheon社とAirbus社がGAOに異議を申し立てている。
 一方FY21 NDAAを審議しいる米議会は、今後3年間に200基の小型衛星を低軌道 (LEO) に打ち上げるとしたSDAの要求を疑問視している。
 Tracking LayerとTransport LayerのTranche 0では、縮小型のモデルを使用して超高速滑空飛翔体の (HGV) のデータを迎撃弾に送る検証を行う。 (2102-112303)

 L3Harris社が9月20日、SDAから受注した超高速兵器捕捉追随衛星の事前設計審査 (PDR) を完了し、最終設計審査 (CDR) に向け作業を継続していると発表した。
 SDAは2020年10月に、低高度軌道に数百基打ち上げるNDSAのTracking LayerとしてL3Harris社とSpaceX社にそれぞれ$193M、$149Mで最初の衛星を4基ずつ、計8基発注しているが、この契約に漏れたRaytheon社とAirbus US社はこの決定に対ししてGAOに不服申し立てをしている。
 L3Harris社はまたSapceX社と1月にMDAのHBTSSも受注している。
 HBTSSはより高感度で超高速兵器の捕捉追随に加えて射撃諸元の取得までを狙っている。 (2110-092005)

 米宇宙軍が12月21日、各種の衛星に搭載できるセンサの開発をGEOST社との契約に$32M追加して行い、同社との契約を$39Mとした。
 GEOST社はアリゾナ州を拠点とする企業で小型から中型のIR/EOセンサを手がけている。
 宇宙軍は保有する衛星のほか、世界中の各種衛星にこのセンサを搭載する計画で、日本とも2020年に準天頂衛星に米国のセンサを搭載する協定を結んでおり、ノルウェーの衛星2基への搭載も検討している。 (2201-122304)

8・1・2・3 宇宙配備迎撃システム

8・1・2・3・1 宇宙配備レーザ兵器

 米MDAがBMや超高速CMを飛行段階の全てで破壊する地上、海上、空中、宇宙に設置する新型レーザ兵器の検討を行っている。
 これは2年前に国防長官官房がレーザ等による迎撃を無理としたのに対抗するもので、MDAは企業に対し2月11日、レーザ兵器試作についての情報提供を求めた。 (2103-021202)

 米国防総省が、敵の長距離ミサイルを高出力レーザ (HEL) により破壊する計画を進めようとしている。
 MDA長官のヒル海軍中将は、2030年代と更にその先にセンサやC2システムと連結したBMDSとして纏める経費を$200Bと見積もった。 (2107-062808)

 米議会下院軍事委員会が、MDAがBMやHM迎撃用のレーザ開発予算2件をFY22で復活させようとしている。
 国防総省は2年前にこの種開発を行わないと決めていた。 (2108-072706)

 米統合参謀本部副議長のハイテン空軍大将が、米国で秘密裏に進められている宇宙配備兵器を公開しようとしている。
 この兵器は対衛星を狙った宇宙配備レーザ兵器で、8月下旬に開かれる今年のNational Spaceシンポジウムで公開されるはずであったが、アフガニスタン情勢の急変で保留になりそうである。 (2109-082007)

8・1・2・3・2 宇宙配備

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・2・4 その他の宇宙計画

8・1・2・4・1 Space Prime計画

 米空軍と宇宙軍が進めているSpace Prime計画は宇宙空間で活動し衛星の支援やデブリの回収など、高度に自動化された、スマート、ネットワーク化した官民両用として使える技術を追求する計画である。 (2104-020307)
8・1・2・4・2 衛星間レーザ通信

 米DARPAが6月30日、SpaceX社のTransporter2を用いて2基のMandrake 2衛星、AbleとBakerを打ち上げ軌道に乗せた。
 Mandrake 2はDARPAが計画しているBlack Jackのリスク軽減として衛星間レーザ通信の検証を行う小型、低価格、低電力衛星で、取り纏めをLockheed Martin社、光学衛星間通信 (OISL) 装置をSA Photonics社、打ち上げをSpaceX社のSmallSat Rideshare計画で行い、Marveric Space Systems社が試験評価と運用を担当する。 (2108-070706)

 米DARPAが低高度軌道を周回する相関性のない各種衛星を結ぶ、低価格で高速通信が可能で構成の変更が可能な光学通信システムの設計段階に14企業を指名した。
 計画はTA1 (Technical Area 1) からTA3の3分野について、3ヶ月のPhase 0、14ヶ月のPhase 1、18ヶ月のPhase 2の3段階にわたり行われ、100W、100Gbitの単一波長で複数のoptical waveformを実現することを目指す。 (2201-122305)

8・1・3 早期警戒レーダ

8・1・3・1 米 国

8・1・3・1・1 深宇宙レーダ (DARC)

 米SDAが、深宇宙レーダ (DARC) のRfPを夏にも発簡したいとしている。
 DARC構想は将来脅威に対抗するため静止衛星軌道以内の深宇宙を監視するレーダである。 (2102-012808)
8・1・3・1・2 North Warning System (NWS)

 米国とカナダによる北米の防空組織NORADは長距離監視用のFPS-117レーダ13基と近距離用のFSP-124レーダ36基からなるNWSで任務に就いているが、システムの設計寿命20年は2025年に切れてしまう。
 しかしNORADはNESを2035年まで使用すると言う。
 これに対して、Tu-160がKh-102などを発射することを想定すると、現有システムも捕捉距離が足りないとの指摘も出ている。
 これに対するNORADの回答はソフトウェアである。 (2109-071204)
8・1・3・1・3 Upgraded Early Warning Radar (UEWR)

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・3・1・4 Long Range Discriminating Radar (LRDR)

 米MDAが1月27日にLockheed Martin社に、まだoperationalになっていない地上設置長距離目標分別レーダLRDRに、宇宙空間での目標分別能力を持たせた2型の開発を発注した。
 LRDRのoperationalは2024年に計画されている。 (2102-012807)
【註】LRDRは飛来するICBMなどの弾頭とデコイやその他デブリとを分別する目的でアラスカに建設中のレーダで、そのアンテナモジュールの一部を艦載仕様にしたものが、わが国のaegis Ashore用に発注しいるSPY-7レーダである。

 アラスカ州Clear空軍基地に建設中の長距離判別レーダ (LRDR) の引き渡しは、建設設置作業がCOVID-19の影響で2020年3月に一時停止した影響で遅れているが、2021年中にはIOCとなりそうである。
 LRDRは以下ようなの特性を持つ。 (2103-022409)

・超高速ミサイルなどの将来脅威に改造なしに対処できる適応性

・GaN素子を用いた高性能

・運用しながらの整備が可能で、継続的な追随分別が可能

・220゚の広い視界で、BMDだけでなく衛星監視も可能。 衛星監視では活動中か否かの識別も可能

 米NORAD司令官が国防総省における記者会見で3月16日、MDAからの遠距離分別レーダLRDRの引き渡しは6月の予定が9月に再延期されると発表した。 (2104-031712)

 米国で会計検査院に相当するGAOの報告によると、米空軍がアラスカ州Clear AFSに設置が進められているLRDRは2度の地上試験を経て3Q/FY21に実目標の捕捉試験を行い、4Q/FY22に受領する計画であったが、COVID-19パンデミックの影響から計画が遅れ、実目標試験は4Q/FY22に、operationalは3Q/FY23になる見込みである。 (2105-043006)

 米MDAと空軍省が、アラスカ州のClear空軍施設に設置していた長距離目標判別レーダLRDRがoperationalになったと判定した。 (2107-062406)

 米MDAが12月6日、アラスカに設置していたLRDRの設置が完了したと発表した。
 LRDRはGaN素子を採用した60ft×60ftのS-bandアレイレーダで、完全稼働になれば小型目標を極めて長距離で捕捉と追随を同時に行い、飛来する弾頭をデコイなどから分別することができる。
 LRDRはBMDSの一角としてだけでなく、宇宙分野でも周回する衛星の捕捉追随や稼働不稼働の識別、使用済みのロケットモータやデブリの宇宙状況監視手段としても活用される。 (2201-120607)

 米MDAが12月6日、アラスカ州Clear空軍基地に建設していた長距離識別レーダ (LRDR) の初期配備を完了したとする式典を挙行した。
 今後2022年にLRDRはC2BMCと連接してGMDに組み込まれ、2023年には空軍へ引き渡される。
 MDAの声明によるとLRDRは人工衛星や使用済みのロケットモータ及びデブリなどの宇宙状況監視にもあたるという。 (2201-120705)

8・1・3・1・5 SBX-R

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・3・1・6 Homeland Defense Radar (HDR)

HDR-H

 米MDAが検討してきたハワイ州へのBMDレーダHDR-H設置は、当初オアフ島の3箇所の候補地が候補から外れ、次に候補地となったオアフ島のKahku陸軍演習場とカウアイ島の海軍PMRFも反対運動で外れた。
 しかし1月に決まったFY21 NDAAではHDR-Hへの予算増額が含まれており、MDAは再度候補地選定を行う。 (2104-030309)

 米インド太平洋軍司令官が、FY22要求に反映されなかった$889Mの追加を要求した。
 特にハワイに設置されるHDR-Hレーダに十分な予算配分を求めた。 (2107-061105)

 米議会が今週成立させるFY22 NDAAでハワイにBMDレーダ (HDR-H) を2028年末までに設置し、遅くとも2028年12月31日までにoperationalとするよう求め、$75Mを配分している。
 下院はFY22 NDAAを今週初めに議決しており、上院も来週には評決する。
 MDAは2018年12月にLockheed Martin社に開発を発注し、FY19時点でFY23までの稼働を計画しFY20に247.7Mを要求していたが、FY21にはHDR-HにもHDR-Pにも要求が消えた。
 MDA長官のヒル海軍中将はハワイについてAN/TPY-2でカバーでき、洋上配備のSBXレーダも配置できるうえ、Aegis艦も利用できるとしていた。
 MDAはFY22にグアムのBMDとして$78.3Mを要求している。
 これに対しインド太平洋軍は予算化されなかった要求のリストでHDR-HにFY24でのIOCを目指した開発に$41M、その戦力構築に$19Mを挙げていた。 (2201-120909)

8・1・3・1・7 その他ミサイル警報システム

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・3・2 ロシア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・3・3 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・4 地上配備 BMDS

8・1・4・1 米 国

8・1・4・1・1 米 BMD の全体構想

新 Missile Defense Review (MDR)

 米MDA長官のヒル海軍中将が6月下旬、国防総省が新たなMissile Defense Review (MDR) を準備していると述べた。
 前回のMDRは2017年に作成されたが2019年1月に発表されている。
 ヒル中将は弾道弾及び超高速飛翔体に対抗するには捕捉追随機能が最も重要と強調しており、MDAはFY22にHBTSSの開発費として$256Mを要求している。
 MDAは既に1月に衛星に搭載する中視野角センサ開発をL3Harris社に$121M、Northrop Grumman社に$155Mで発注している。 (2107-062909)

FY22 予算要求

 米大統領府はFY22のMDA予算として$8.917Bを要求した。 近年の要求額は以下のように推移している。

・FY22: $ 8.917B
・FY21: $ 9.187B
・FY20: $ 9.431B
・FY19: $10.491B
 FY22要求で主要な項目は以下の通りである。
・GMD: $1.733B
  ・GBI: $926.1M
  ・LRDR: $133.3M
・Aegis BMD 開発: $732.5M
・Aegis BMD 調達: $755.1M
  ・SM-3 BlockⅠBⅡA 40発: $647.4M
  ・SM-3 BlockⅠBⅡA 8発
・THAAD 開発: $277.9M
・THAAD 18発: $251.5M
・THAAD 能力向上: $64.6M
・超高速ミサイル防衛: $247.9M
・イスラエルの BMD: $500M
  ・DSWS の共同生産
  ・AWS の共同生産
  ・Iron Dome の共同生産
 米本土BMDの多層防衛では、THAADをAegisの下層に位置づけている。 (2108-070001)
8・1・4・1・2 米 BMDS の欧州配備

研究開発用 SM-3 Block ⅡA を実配に用途変更

 ヒックス米国防次官が議会に対し5月28日、元々研究開発用として調達したSM-3 Block ⅡA最初の11発を実配備することに用途変更したと通告した。
 在欧米軍やNATO諸国に対するイランからの脅威が増大しているなかで、EPAA Phase 3の更なる遅れを防止するためという。 (2107-061510)
【註】米オバマ政権が2010年に発表した"Ballistic Missile Defense Review"ではEPAA Phase 3を2018年頃とし、2015年頃としたPhase 2で配備した洋上/陸上のSM-3 Block ⅠBをBlock ⅡAに換装するとしていた。

ポーランドで建設中の Aegis Ashore にシステム取り付け開始

 米国がEPAAとしてポーランドのRedzikowoに建設中のAegis Ashoreでシステムの取り付けが開始されている。
 既に搬入され倉庫に収納されていたシステムは2月に試験のための仮施設Aegis Ashore Removale Equipm4nt Unit Integration Siteに取り付けられ、5月にはSPY-1D(V) 4面とFCSイルミネータ1基がAegis Ashore Deckhouseに取り付けられた。 (2107-062107)

Aegis Ashore よりシンプルで移動可能なシステムの要求

 米MDA長官ののヒル海軍中将が8月中旬に宇宙防衛ミサイル防衛 (SMD) シンポジウムで、ポーランドに建設中のAegis Ashoreは元々2018年8月にoperationalになるはずであったものが未だ95%しか完成しておらず、早くてもFY22にならなければ完成しないと述べた上で、Aegis Ashoreはもっとシンプルで移動が可能なシステムであることが望ましいと述べた。 (2109-082006)

8・1・4・1・3 G M D

次世代迎撃弾 (NGI) の初期設計段階、Boeing社が敗退

 米MDAが3月23日、次世代迎撃弾 (NGI) の初期設計段階にLockheed Martin社とNorthrop Grumann/Raytheonチームを選定した。
 この結果、現在装備しているGBIを生産しているBoeing社は敗退した。 (2104-032309)

 米国防総省が次世代迎撃システムNGI計画の推進を決め、バイデン政権が北朝鮮に対し共和党政権と同じ路線を進むことを示した。
 イランと北朝鮮の長距離ミサイルに対抗して開発されたGBIは2004年に配備が開始され、ブッシュ政権が30基の配備を決めた。
 その後北朝鮮の脅威増大に伴いオバマ政権時代の2017年に20基の増加配備を決め44基とし、更にトランプ政権が20基追加して64基としてきた。
 オバマ政権はGBIを改良して精度を上げて使用弾数の削減を狙ったRKVの開発を行ったが計画は頓挫した。 (2105-040104)

 米MDAが次世代迎撃システムNGIの開発をLockheed Martin社とNorthrop Grumman社に発注した。 Lockheed Martin社との契約額は$3.6Bで契約は2025年8月まで、Northrop Grumman社とは$3.9Bで2026年5月までになっている。
 MDAは2030年まででのoperationalを計画しており、発射試験は2020年代中頃に実施する。
 NGIでLockheed Martin社は$580Mかけて多目標対処とTHAADでの実績を元にした直撃方式を狙っている。
 一方Raytheon社を従契約社にしたNorthrop Grumman社は従来の主従関係ではなく、Northrop Grumman社がブースタを、Raytheon社がペイロードを担当する、それぞれが主契約社的な立場を追求しようとしている。 (2106-040501)

 米国防総省がNGIの競争開発にLockheed MartinチームとNorthrop Grummanチームを選定し、MDAが3月23日に発注した。 コスト加算契約であるがFY22での費用は合わせて$1.6Bと見積もられる。
 Northrop Grumman社は2021年3月~2026年5月までの契約で、基本受注額$2.63Bに$1.3Bのオプションで合わせて$3.93B、Lockheed Martinグループは2021年3月~2025年5月の契約で$2.45Bと$1.24Bで合わせて$3.69Bで受注した。
 OrbitalATK社を買収したNorthrop Grummn社はブースタを担当し、チームを組むRaytheon社がKVを担当する。 一方のLockheed Martin社はAerojet Rocketdyne社とチームを組む。 (2107-050002)

次世代迎撃弾 (NGI) の FY22 要求

 米MDAがFY22予算に$926.1Mを計上した。 FY21の要求は$1.9Bであった。 このうちGMDにはNGIの$664.1Mを含む$745.1Mを要求している。 (2108-070006)

次世代迎撃弾 (NGI) の配備は2028年以前に

 米MDA長官ののヒル海軍中将がハンツビルで開かれた宇宙防衛及びAMDシンポジウムで8月12日、NGIは開発が早く進んでいるため、当初計画していた2028年以前に配備できると述べた。 (2109-081207)

 Lockheed Martin社が、Raythein/Northrop Grumman社と受注競争を繰り広げていてるNGIの納入時期を、今まで予定していた2028年から1年繰り上げて2027年とした。 (2111-101406)

二/三段選択 GBI の発射試験に成功

 米MDAが模擬EKVを搭載したGBIの発射試験に成功した。
 この試験で使用されたのは、三段推進のブースタを二段目だけ点火して早期にEKVを放出する二/三段選択GBIと呼ばれ、迎撃における柔軟性の向上が狙われている。 (2110-091207)

システム要求審査 (SRR) に合格

 米MDAが進めるNGIでLockheed Martin社と共に競争相手に指名されているNorthrop Grumman/Raytheonチームが12月20日、重要な結節となる審査であるシステム要求審査 (SRR) に合格したと発表した。
 一方のLockheed Martin社は10月にSRRを通過している。
 NGIはGMD迎撃弾としてFt. GreelyとVandenberg SFBに配備されているGBIと換装するもので、2020年代中頃に試験を開始し、2027年か2028年の配備を目指している。 (2201-122006)

8・1・4・1・4 多層防衛構想

米北方軍司令官兼 NORAD 司令官の見解

 米北方軍 (NORTHCOM) 司令官兼NORAD司令官のヴァンヘルク空軍大将が4月14日、MDAが進めているGMDの下層を護るシステムの開発に対して、SM-3 Block ⅡAは高価過ぎ能力が限定的だと注文をつけた。 (2105-041605)

GAO が SM-3 Block ⅡA の使用に疑問

 米国で会計検査院に相当するGAOが4月下旬行った報告で、北朝鮮からのICBMに備えた多層防衛にMDAがSM-3 Block ⅡAを使用していることに対し疑問を呈した。
 MDAはGMDの補完としてSM-3 Block ⅡAとTHAADの使用を考えている。
 GAOはSM-3 Block ⅡAについて(註:計画中止になった)RKVの焼き直しでRKV用に使われた構成品を多用しており、RKVの欠陥を引き継いでいる可能性があると指摘している。 (2105-042906)

大規模迎撃試験の中止

 米議会関係筋によると、MDAが2020年にBMDSの3回目となる大規模迎撃試験を計画していたが中止されていたことを明らかにした。
 試験では同時来襲する5目標に対しAegisとTHAADで対抗するものであった。 (2105-043009)

米議会下院、SM-3 Block ⅡAの米本土 BMD への活用検討の継続を要求

 米議会下院軍事委員会戦略兵力小委員会がFY22予算審議で国防総省に対し、SM-3 Block ⅡAの米本土BMDへの活用について検討を続けるよう要求している。 (2108-072907)

8・1・4・1・5 Home Land BMD

Homeland Defense Radar

 「8・1・3・1・5 HDR」で記述

Homeland Defense System

 米国防総省がグアムに対する中国からの脅威に対抗するため、海軍のAWS、陸軍のIAMDをMDAのC2BMCに連接する検討を行っている。
 MDAはFY22にグアムの防衛 (GDD) として$78Mを計上している。 (2107-060412)

 米インド太平洋軍司令官が、FY22要求に反映されなかった$889Mの追加を要求した。
 特にその中で、MDAがグアムのミサイル防衛に$118.3Mを要求しているのに対し、更に$231.7Mの追加を要求した。 (2107-061105)

 米MDAがFY22要求に前年度要求の$9.2Bより少ない$8.9Bを要求しているのに対し、上下両院はFY21に$1.3Bを追加しようとしている。
 議会が特に重視しているのはハワイのHDR-Hレーダ設置とグアムのAegis Ashore配備で、インド太平洋軍も6月議会に対し$231.7Mの追加要求を行っている。
 一方MDAはFY22でグアムに$78.3Mハワイに$40Mを要求している。 (2107-061604)

 米国防総省が議会に対し、グアムで陸軍のIAMDにAegis Ashoreを組み入れることを可能とした最新のグアム防衛構想を呈示した。 (2111-102904)

FY22 審議で議会がグアムの BMD を削除

 米議会はMDAのFY22要求を審査しているが、下院歳出委員会はMDAからグアムのBMDとして出された$78.3Mから$15.9Mを不適切として削除した。
 代わってMDAが要求から削除したハワイ設置ミサイル警戒レーダ (HDR-H) には$75Mを割り当てた。 (2108-071207)

 米議会下院が9月23日にFY22国防権限法 (NDAA) の中心となるFY22国防費総額を国防総省の要求より$25B多い$778Bと決めたが、この中でMDAに対して恐らくKauai島のPMRFに設置されることになると見られるBMDレーダHDR-Hの計画推進を求めている。
 既に$2B近くが投入されていたHDR-Hについて国防総省は計画の遅延から2020年2月に計画の延期を決め、以降のFY21とFY22では予算を要求していない。 (2110-092601)

8・1・4・2 ロシア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・4・3 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・4・4 イスラエル

8・1・4・4・1 イスラエル BMD の全体構成

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・4・4・2 SRBMS/USRBMD の多層構造

Iron Dome と DSWS の連携迎撃試験

 イスラエルIMDOと米MDAが2020年11月~12月上旬に、Iron Dome SRBMDとDavid's Sling Weapon System (DSWS) による、連携した迎撃試験を地中海で実施した。
 Iron DomeのTamir迎撃弾とDSWSのStunner中距離迎撃弾は艦上に設置された発射機から同一または別々の目標に向け発射された。
 DSWSのStunnerは段階的にソフトウェアの更新が行われる計画で、既にBlock ⅠとBlock Ⅱは採用され、近くBlock Ⅲも採用される計画である。 (2103-020002)

8・1・4・5 インド

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・5 空中発射 BMDS

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・6 DEW による BMD

レーザ迎撃システム研究開発の再開

 米議会はFY22 NDAAでMDAに、BM及び超高速ミサイル防衛 (BHMD) でレーザを用いる研究開発を認めると共に、HELのビーム制御に$50M、短パルスレーザの試験に$20Mなど、合わせてHELの研究開発に$100Mを配当した。
 米国では1970年代にブッシュ政権の強い後押しでALTBの開発を進め、2010年にはSRBMの撃墜に成功したが計画は中止になり、2012年にABL搭載機は長期保管が行われるアリゾナ州Davis Monthan AFBに向けEdwards AFBを離陸した。
 その5年後にMDAは再びレーザ兵器に着目して2021年に低出力レーザによる試験を計画していたが予算は認められなかった。 MDAは長期的にはHALE UAVにHELを搭載し、ブースト段階でのICBM撃墜を目指している。 (2201-123005)
【註】かつてABLと呼ばれていたBoeing 747にメガワット級のCOILレーザを搭載したYAL-1A ALTBは、2010年2月11日にScudを模した液体燃料標的の迎撃に成功したが、BMの迎撃には敵地上空からでないと有効ではないため戦闘機の同行掩護が必須であるなどから非現実的であるとして計画中止になった。

8・1・7 ASAT システム

8・1・7・1 中 国

「4・1・7・2・1 宇宙防衛」で記述
8・1・7・2 ロシア

2020年12月15日: 地上発射式 ASAT の発射試験

 米国防総省が声明でロシアが2020年12月15日に地上発射式ASATの発射試験を実施したと発表した。
 ロシアは近年、地上発射型ASATと宇宙配置型対衛星兵器(キラー衛星)の試験を行っており、後者の試験は2017年と2020年に行っている。
 またプーチン大統領は2018年3月に、地上設置対衛星用レーザ兵器の開発について述べている。 (2103-020007)

11月15日: 地上発射式 ASAT の発射試験

 米国務省報道官が11月15日、この日早くにロシアがASATの試験を行ったと発表した。
 この結果追跡可能なデブリだけで1,500個以上できたことから、各国の衛星にとって脅威となるデブリの総数は数十万個にのぼると見ている。
 撃墜高度は地上高500kmと国際宇宙ステーション (ISS) 軌道の80km上であったため、ISSの飛行士は一時防護服を着用したという。 (2112-111511)

 米国務省が11月15日、ロシアが自国の衛星に対しASATの試験を行ったと発表し、これに伴い発生した大量の宇宙ごみが宇宙空間を危険にさらしていると非難した。
 同省報道官は「ロシアによる危険かつ無責任な行動は、宇宙空間の長期的な持続可能性を脅かし、宇宙空間の兵器化に反対するというロシアの主張が不誠実かつ偽善的であることが浮き彫りとなった」と語った。 (2112-111603)

 米国が11月15日、国際宇宙ステーション (ISS) の宇宙飛行士が宇宙ごみ発生事象によって一時避難準備を余儀なくされ、調査を進めていると明らかにした。
 これに先立ち、ロシアがASATの試験を行ったとの報告があったが、確認は取れていない。
 宇宙産業界からは、武力の誇示は地球低軌道上の宇宙飛行士を危険にさらすとの批判が出ている。 (2112-111604)

 英国の衛星追跡企業Seradata社によると、ロシアが11月15日06:30頃にロシア北部のPlesetskから直撃式のASATミサイル (DA-ASAT) を打ち上げ、退役していたELINT衛星Cosmos 1408を軌道上で破壊した。
 この結果飛散したデブリは追跡可能なものだけでも1,500個以上になり、国際宇宙ステーション (ISS) より60km低い軌道に飛散したという。
 ロシアは2020年に3回のASAT試験を行っており、そのうちの2回はDA-ASAT、1回はキラー衛星によるものだった。 (2201-112401)

8・1・7・3 インド

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・1・8 軍用宇宙船

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2 戦域防空/TBMD

8・2・1 超高速ミサイル防衛

8・2・1・1 米 国

8・2・1・1・1 迎撃方式の検討

滑空段階に入った弾頭を迎撃する方針

 米MDAが試作を計画していた対超高速兵器開発を白紙に戻して、Aegisシステムと低軌道衛星群を組み合わせて、滑空段階に入った長距離超高速ミサイル弾頭を迎撃する方針に切り替える。 (2103-020306)

国防総省の構想への疑問提起

 米国防総省はMach 5以上の高速で飛翔し飛翔経路を変化させることのできる超高速兵器は敵の防空システムで対抗できないとしてその開発を最優先とし、FY23装備化を目指して陸海空軍が各種システムの開発を進めているが、一部の専門家はこれに対し疑問を呈している。
 軍事技術専門誌Science and Global Securityが公開した「憂慮する科学者同盟」のCameron Tracya氏とDavid Wrightb氏の論文Modeling the Performance of Hypersonic Boost-Glide Missilesと題するコンピュータモデルによる分析でこの問題を指摘すると共に、このような超高速ミサイルは既に現存し、2000年代中頃に行ったTridentの発射試験ではマヌーバーするRVが正確に目標に命中しているとしている。 (2106-050203)

二段階での迎撃構想

 米MDA長官のヒル海軍中将が5月13日に公表した文書で、MDAは対超高速ミサイルの多層防衛として2段階のアプローチを進めていると述べた。
 最初は滑空段階を既存のブースタとKVで迎撃し、その後大気圏内で迎撃する。
 超高速で働く大気圏内迎撃システムは現在は白紙で、今後長期間かけて開発するという。 (2106-051311)

8・2・1・1・2 Glide Phase Interceptor (GPI) 計画

GPI 計画を開始

 米MDAが4月13日、超高速ミサイルを迎撃するGlide Phase Interceptor (GPI) 計画を開始し、各メーカに海軍のAegisシステムと組み合わせて使用する武器の提案を要求した。 回答期限は今夏となっている。
 この計画は2月に計画が中止になったMDAのRGPWSに代わる計画である。 (2105-041312)

計画名称の変更、HDWS → RGPWS → GPI

 米MDAのFY22予算要求は$247.9Mで、その多くを超高速ミサイル攻撃からの要域防護Glide Phase Interceptor (GPI) が占めている。
 RGPWSと呼ばれていたGPIは更に以前にはHDWSと呼ばれていた。
 MDAが4月12日にBAAで公表した資料によると、GPIはAegis Weapon Systemと組み合わされ、発射にはMk 41 VLSが使われ、試作品の発射試験は Kauai島のPMTRで行われる。 (2108-060904)

GPI の機種選定

 米MDA長官ののヒル海軍中将がハンツビルで開かれた宇宙防衛及びAMDシンポジウムで8月12日、超高速ミサイルに対する迎撃ミサイルGPIの機種選定は2021年後半に行われると述べた。
 MDAはFY22にGPIのRTD&EとしてFY21の$127Mを超える$136Mを要求している。
 ヒル中将はSMDコンファレンスで、超高速ミサイルはSM-3が護るBMの中期弾道とSM-6が担当する終末弾道の中間となる高度70km付近を主として飛翔すると述べ、誘導は主として開発中のHTBSS衛星群が担当すると述べた。 (2109-081207)

超高速ミサイル防衛計画の加速

 米MDA長官ののヒル海軍中将が8月12日に宇宙防衛ミサイル防衛 (SMD) シンポジウムで超高速ミサイル防衛について、MDAは1年前に開発を一旦停止していたが、4月にメーカーからGPIについての画期的な提案で再び動き出そうとしていると述べた。
 GPIの誘導はHBTSSによるが、SBXレーダもその役割を果たせると、超高速ミサイルが機動する高度はそれほど高くなく、70kmの高度であればAegis艦が搭載するSPY-6レーダも機能するという。 (2109-081305)

概念設計段階に3社を選定

 米MDAが、Lockheed Martin、Northrop Grumman、Raytheonの各社に滑空段階超高速ミサイルを迎撃する局地システムGPIの開発促進を目指した契約を発注した。
 GPIにはAegis BMDシステムとの整合が求められ、Aegisで採用しているVLSから発射され、AWS Baseline 9の改良型で捕捉追随と交戦ができることが求められている。 (2112-111906)

 米MDAが、Lockheed Martin、Northrop Grumman、Raytheonの各社に滑空段階超高速ミサイルを迎撃する局地システムGPIの概念設計段階を促進する契約を発注した。
 Lockheed Martin社及びRaytheon社は超高速ミサイルの開発も行っており、Northrop Grumman社はエンジン開発の実績を持っている。
 GPIには現有のAegis BMD駆逐艦に搭載されてVLSから発射され、改良型AWS Baseline 9で捕捉追随と交戦ができることが求められている。 (2112-112010)

 米MDAが11月20日、Lockheed Martin、Northrop Grumman、Raytheonの各社に滑空段階超高速ミサイルを非推進段階で迎撃するシステムGPI試作品の概念設計段階を発注した。
 契約額はRayrtheon社が$20.97M、Lockheed Martin社が$20.94M、Northrop Grumman社が$18.95Mで、2022年9月までになっている。
 GPIは海軍の巡洋艦に装備し、Mach 5以上で飛来する超高速ミサイルを大気圏上層となる70kmで撃墜する迎撃弾で、SM-3はGMDのGBI同様に宇宙空間で迎撃するトステムで、SM-6やTHAADは超高速に対処するには射程が短すぎる。 (2112-112011)

8・2・1・1・3 Regional Glide Phase Weapon System (RGPWS) 計画

Glide Breaker 計画

 超高速滑空 (HGV) ミサイルは、HGVが垂直落下すると見られる終末弾道に入る前の高度100,000ft~150,000ft (30km~45km) で迎撃するため、希薄な空気中で動作する空力操縦翼とDACSの組み合わせで操縦することになり、真空中で使用するTHAADやGBIとは異なる。
 一般にミサイルを迎撃するミサイルには目標となるミサイルの3倍の運動性能が求められているため、HGVミサイルの迎撃には従来より高い運動性能 (G) が求められる。
 このためDARPAは2018年から超高運動性DACSを開発するGlide Breaker計画を進めており、2020年にAerojet Rocketdyne社とNorthrop Grumman社が受注して開発を進めている。
 海軍研究本部 (ONR) はDDG 1000駆逐艦からSM-2似の迎撃弾2発を発射する計画なので、固体燃料を用いる新DACSには艦載に足る安全性が求められている。
 もし地が計画しているHGV迎撃システムRGPWSにLockheed Martin社はTHAADを元にしたDartを、Raytheon社はSM-3を元にしたHawkを提案しているが、超高運動性DACSの完成には5年はかかるため、当面は在来のDACSを使用することになる。 (2110-083001)

 米議会下院軍事委員会がFY22予算で、DARPAがMDAと進めようとしている超高速飛翔体を長距離で撃墜しようとする計画Glide Breakerに要求の4倍の予算をつけようとしている。 (2110-091005)

8・2・1・1・4 Defense Against Hypersonic Weapons in the Pacific

 米軍が密かにインド太平洋地域において今まで公表されていなかった超高速兵器を捕捉追随するシステムを開発し配備を進めている。
 システムは既存のセンサやC&Cシステムを用途変更するものでDefense Against Hypersonic Weapons in the Pacificと呼ばれている。 (2106-050403)
8・2・1・2 欧 州

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・2 陸上配備戦域 BMDS

8・2・2・1 米 国

8・2・2・1・1 Aegis Ashore

海軍の任務に馴染まない Aegis Ashore

 米海軍水上戦部長のリュリズ少将が水上戦セミナで1月12日、Aegis Ashoreを他軍種に引き継ぐ交渉を当面延期すると述べた。
 海軍の立場からするとAegis Ashoreに海軍の人員を貼り付けるのは海軍の任務に馴染まないという。
 Aegis Ashoreは2016年5月にoperationalになったルーマニアと2022年にoperationalになるポーランドの欧州の2箇所に設置されており、それぞれ4面レーダ、SM-3 24発を装備している。 (2103-012007)

8・2・2・1・2 THAAD

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・2・2 中 国

「4・1・7・2・3 B M D」で記述
8・2・2・3 ロシア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・2・4 イスラエル

8・2・2・4・1 イスラエル BMD 全般

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・2・4・2 Arrow 2

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・2・4・3 Arrow 3

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・2・4・4 Arrow 4

 イスラエルIMDOと米MDAが、Arrow 2の後継となるArrow 4の共同開発を開始した。
 AWSで2017年にoperationalになったArrow 3は大気圏外での迎撃を目指しているのに対し、2000年にOperationalになったArrow 2は大気圏上層部~大気圏外での迎撃を任務としている (2103-021804)

 バイデン米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と会談した翌日に、イスラエルIMDOと米MDAがArrow 2の後継となるArrow 4の共同開発を開始したと発表した。
 IAI社によるとArrow 4はArrow 2より大幅に改善されている。
 Arrow 4の構想は、Elbit社とBoeing社の間で2017年に始まった。
 1991年の湾岸戦争の影響で開発が始まったArrow は2000年に初めてのArrow 2中隊が空軍に編成され、2009年にはArrow 3の開発が始まり2017年には配備された。
 同年の3月にArrow 3はシリアから発射された中距離SAMを撃墜している。 (2103-021805)

 イスラエルと米国が2月18日、共同で開発するBMD用の新型迎撃ミサイルArrow 4を発表した。
 Arrow 4はendo-exoatmospheric interceptorと呼ばれArrow 2の後継になる。
 Arrow 2とArrow 4の迎撃高度はPAC-3よりも高くTHAADよりはやや低い、大気と宇宙の狭間および大気圏内で迎撃する。
 Arrow 2は大気圏内用とされているが操舵翼の制御だけでなくブースタがTVCと見られることから、噴射が続いている限りは空気がほとんど無くても機動可能だと考えられ、空気が薄い高度でもある程度は機動が可能で、最大迎撃高度50kmとされている。 (2103-021902)

 イスラエル国防省が湾岸戦争から30年経つ2月18日に、大気圏外と圏外で迎撃できるArrowの新型Arrow 4の開発を開始したと発表した。 開発はイスラエルIMDOと米MDAが共同で行うという。
 Arrow 4はArrow 2の後継というが能力が向上しており、Arrow 2が大気圏へ再突入したBMを迎撃するのに対し、Arrow 4は大気圏再突入前後での迎撃が可能という。
 これに対しArrow 3は大気圏外での迎撃を行う。 (2104-022408)

8・2・2・5 インド

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・2・6 イラン

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・3 TBMD /中長距離 SAM

8・2・3・1 米 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・3・2 中 国

「4・1・7・2・3 B M D」で記述
8・2・3・3 ロシア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・3・4 欧 州

8・2・3・4・1 MEADS

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・3・4・2 NASAMS

AMRAAM-ER を用いた NASAMS

 Raytheon社が2Q/2021年にAMRAAM-ERを用いたNASAMS初の発射試験を、ノルウェーのAndøya試験場で行う計画である。
 AMRAAM-ERはAIM-120C-7 AMRAAMの誘導部と弾頭にRIM-162 ESSMのロケットモータを取り付けて、射程を50%、射高を70%向上させようとするもので、原型の発射試験は2016年8月にAndøya試験場で行っている。
 ただ2016年の試験はテレメータも取り付けない構想実証試験で、発射試験と呼べるものではなかった。 (2103-020005)

8・2・3・4・3 SAMP/T

SAMP/T NG

 MBDA社が3月31日、SAMP/T NGの運用開始は2020年代末になるとの見通しを示した。
 次世代型SAMP/TであるSAMP/T NGは、サイバ攻撃やデコイ、ジャミングに耐え、より高速高運動ステルス目標に対抗できるシステムで、FCSが近代化されると共に現有のAster 30 Block 1より射程の長いAster 30 B1 NT Extendes Capability弾を使用し、NATOのBMDとして働けるという。 (2106-041405)

 Thales社とMBDA社の共同企業体であるEuroSAM社が11月14~18日に開かれるドバイ航空展で、イタリア陸軍とフランス航空宇宙軍が装備しているSAMP/Tの長射程型であるSAMP/T NGを公表する。
 SAMP/T NGは350kmの捕捉距離と150kmの射程を持ち、2021年に生産を開始し、2025年には納入ができるという。
 システムのMFRは20呎標準コンテナサイズで空輸が可能で、2名で15分以内に整置できる。 (2112-111617)

Aster 30 B1 NT Extended Capability

 フランスとイタリアが3月24日、SAMP/T中距離SAMの新計画開始で合意した。
 新計画ではAESAレーダに新技術を取り入れるなどFCSの近代化を図ると共に、両国はAster 30 B1ミサイルの能力を向上するAster 30 B1 NT Extended Capabilityミサイルの開発を2016年に開始している。 (2104-032409)

 OCCARが6月9日、MBDA社とThales社の合弁会社であるEuroSAM社に、英海軍、伊陸海軍向けAsterミサイルのMLRを発注した。
 MLRの内容は公表されていないが、OCCARがフランス型について7月9日に公開したところによると、MLRにはエンジンの交換が含まれており、1,000発を13年かけて€1.2B ($1.4B) かけて行われる。 (2109-072108)

8・2・3・4・4 Common Anti-air Modular Missile (CAMM)

Sea Viper

 英国防省が7月6日、Type 45駆逐艦の防空能力を向上させる2件の契約を£500M ($690M) で行った。
 契約はのうちの1件はMBDA社とCAMMの艦載型Sea ViperをType 45に搭載する11年間の契約で、もう1件はAster 30のMLRで契約期間は10年である。
 CAMMは24発のサイロが48発サイロのAster 30の前方につりつけられ、SAMの装備数が72発に増えることになる。 (2109-071406)

CAMM-ER

 MBDA社が6月24日、2020年暮れに実施したCAMM AAM/SAMの長射程型であるCAMM-ERの実射試験について、限定的ながら詳細について公表した。
 基本となったCAMMは英海軍がSea Ceptor、陸軍がSky Sabreとして装備しているが、CAMM-ERはソフトロンチ方式、アクティブレーダ誘導、2周波データリンクなどはCAMMと共通であるが、胴体中部にストレークを持ち、射程を基本型の25kmから40kmに伸ばしている。 (2109-080006)

8・2・3・5 イスラエル

陸上発射型 I-Derby ER AAM

 Rafael社が2月25日、陸上発射型I-Derby ER AAMの開発を完了したと発表した。
 陸上発射型I-Derby ERは同社製のPython短距離AAMと共にSPYDER SAMシステムで使用される。
 2015年に公表されたI-Derbyは前身となったDerbyと同型同寸であるがソフトウェア制御のレーダシーカと2パルスロケットを搭載し、AAMとして使用すれば100kmの射程を持つ。
 SPYDERで使用すると射程が40km、ブースタを取り付けると80kmになり、既にSpyderを装備しているジョージア、インド、シンガポールを初め2019年1月に発注したフィリピン、2020年9月に商談に入っているチェコにとっても魅力となる。 (2105-031003)
【註】1998年に運用が開始された射程50kmのRafael社製Derbyレーダ誘導AAMは、2015年にソフトウェア制御のレーダシーカを搭載したI-Derbyが発表され、同時に2パルスロケットを採用して射程を100kmまで伸ばしたI-Derby ERを公表している。

BARAK ER

 IAI社が15年前の艦載型短距離SAMをマルチドメインのAMDに改良したBarak MXシリーズが3月下旬に行われた射程150kmのBarak ERの試験終了を持って完成した。
 Barak MXは新たなブースタを取り付けているもののBarak 8が使用している8セルの発射機から発射できる。 (2106-041907)
【註】IAI社のHPによるとBarak MXには以下の3種類がある。

・Barak MRAD: 射程35km、シングルパルスロケットモータ
・Barak LRAD: 射程70km、デュアルパルスロケットモータ
・Barak ER: 射程150km、デュアルパルスロケットモータ+ブースタ
 IAI社がBarak ER SAMの開発を完了し3Q/2021年の納入開始を目指して量産に入っている。
 Bakak ERは射程35kmのBarak MRSD、70kmのBarak LRADと共にBarak MXを構成する射程150kmのSAMで、1.3mのブースタを含む全長5.8m、胴径22.7cm、ブースタ径35cm、発射重量400kg、弾頭重量23kgで、垂直発射アクティブレーダ誘導、運動性能50g、最大射高30kmの性能を持つ。
 Barak MXの3弾種共、GaN素子を用いたElta社製ELM-2084 3DマルチピームレーダとBarak BMCで制御され、8発搭載の発射機から発射される。 (2107-060003)

BARAK ER による BM 迎撃成功

 IAI社が4月19日に、Barak-ER SAMの一連の発射試験でBARAK ERによるBM迎撃に成功したと発表した。
 BARAK-ERはBARAK MXシリーズSAMの一種で、BMを含む経空脅威に対し150kmの射程を有する。
 Barak SAMはインド陸海空軍、イスラエル海軍、アゼルバイジャン空軍などが装備しており、ナゴルノ・カラバフ紛争では実戦使用されている。 (2105-041908)

艦載 BARAK SAM

 IAI社が4月19日、イスラエル海軍が4隻建造するSa'ar 6コルベット艦の一番艦MagenにBarak SAMの搭載を行っていることを明らかにした。
 ドイツで建造された一番艦Magenは2020年12月2日にハイファに回航され、ELM-2248レーダなどイスラエル製の装備を搭載している。
 Barak 8には射程35kmのMRAD、70kmのLRAD、150kmのBarak-ERがあり、Sa'ar 6にはLRADが装備されるがBarak-ERへの更新も可能であるという。 (2106-042812)

SPYDER SAM をチェコに輸出

 チェコがイスラエルと10月5日、Rafael社製SPYDER防空システム4個システムを購入する政府間契約に署名した。
 SPTDERは第25対空ミサイル連隊が装備している2K12 Kubと換装され、今後20年間装備することになる。
 チェコ国防相によるとイスラエル製防空システムの装備はNATO加盟国で初めてとなる。 (2112-102006)

8・2・3・6 インド

「5・4・1・2・1 防空/BMD」で記述
8・2・3・7 その他の中距離 SAM

ガスタービンエンジン推進遊弋型 SAM

 米海軍が2019年11月と2020年2月にアデン湾で拿捕したイラン製武器をイエメンへ密輸を行っていると見られる2隻のダウ船に積載されていた米国が358 SAMと名付けたミサイルについて、国連のイエメン問題の専門家会議はオランダAMT社製のガスタービンエンジンを搭載していると見ている。
 ただ専門家会議はこのミサイルがイエメンのフーシ派向けなのかについては証拠がないとしている。
 このSAMは低速で敵機を発見するまで遊弋する方式で、やはりオランダのXsens社製のMTi-100慣性センサモジュールが搭載されていたとしている。 この部品は2015~2016年に中国へ輸出されていた。 (2104-021010)

8・2・4 艦載 BMDS

8・2・4・1 米 国

8・2・4・1・1 SM-2

 Raytheon社が1月11日、日本、デンマーク、韓国、スペイン、台湾にFMSで売却されるSM-2のシーカと誘導部を$8.5Mの長期調達で受注した。
 契約額の半分はRaytheon社で、残りはThales蘭社が生産に当たる。 (2105-030004)
8・2・4・1・2 SM-3

SM-3 Block ⅡAによるICBM迎撃成功

 米MDAが2020年11月17日、SM-3 Block ⅡAによるICBMを模した標的の迎撃に成功した。
 標的はマーシャル諸島共和国Kwajalein環礁にあるRonald Reagan BMD試験場からハワイ北東水域に向けて発射され、これを駆逐艦John Finnから発射されたSM-3 Block ⅡAがengage-on-remoteモードで迎撃した。 (2103-010006)

8・2・4・1・3 SM-6

MRBM 標的の迎撃試験 FTM-31

 米MDA長官のヒル海軍中将が5月12日のMcAleeseコンファレンスで、国防総省が空母打撃群 (CSG) などに対するBM攻撃に対処するため、SM-6 Block ⅠB 2発によるMRBMを模した標的の迎撃試験を計画していると述べた。 (2106-051907)

 米MDAが5月29日に海軍と共同で、SM-6 Dual Ⅱの2発斉射によるMRBM標的迎撃試験Flight Test Aegis Weapon System 31 Event 1を実施したが、迎撃に成功しなかった。 (2106-052905)

FTM-33

 米MDAが7月24日にハワイ北方洋上で海軍と、Aegis Weapon Systemの迎撃試験FTM-33を実施した。
 FTM-33の目標は2発のSRBM標的を4発のSM-6 Dual Ⅱで迎撃するものであった。
 SM-6 Dual ⅡはSRBM及びMRBMを終末段階で迎撃するミサイルで、初期の分析で1発目の標的を撃墜したことが確認されたが、2発目の迎撃は確認できていない。
 試験は駆逐艦DDG 114 Ralph Johnsonで行われた。 Aegis艦が行うSM-6 Dual Ⅱによる迎撃試験は3回目になる。 (2108-072403)
【註】SM-6による複数標的迎撃試験は5月にも実施されているが迎撃に成功していなかった。

SM-6 Dual Ⅱ 2発による SRBM 2発の迎撃試験

 米MDAが7月24日にSM-6 Dual Ⅱ 2発でSRBM標的2発を迎撃する試験FTM-33を行ったが、1発目の標的の撃墜には成功したものの、2発目の標的撃墜は成功したか否かが不明である。
 この試験は5月29日に2発のSM-6 Dual ⅡでMRBMを迎撃しようとした試験 FTM-31 Event 1の失敗に続いて行われた。
 SM-6 Dual ⅡはSea-Based Terminal防衛としてSRBM/MRBMを大気圏内で撃墜するようにSM-6 Block ⅠA弾のソフトを遠距離用に変えた迎撃弾である。 (2110-090005)

8・2・4・2 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・2・4・3 ロシア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・3 短距離 BMD / C-RAM

8・3・1 SRBMD

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・3・2 USRBMD / C-RAM

8・3・2・1 米 国

8・3・2・1・1 IFPC

IFPC 2候補の shoot-off

 米陸軍がCMやUAVに対抗するIFPCの2候補の比較試射shoot-offをWSMRで実施している。
 4月末に試射が行われた第1候補はRafael社とRaytheon社のチームが提案しているIron DomeのTamir弾を元にしたSkyHunterで、5月に試射が行われる第2候補は恐らくDynetics社チームでAIM-9X Sidewinderが使われていると見られる。
 陸軍は2019年にIFPCを、陸軍が開発したMML発射機から発射するシステムとしてRaytheon社のLCAS弾、SkyHunter弾、Lockheed Martin社のMHTK弾の3弾種を候補に進めようとしていたが、発射機の完成度が低いことから計画を中止していた。 (2106-051906)

 米陸軍が5月21日午後、IFPCの機種選定のためのshoot-offが完了したことを明らかにした。
 Shoot-offでは2社が提案したシステムについて4月下旬と5月上旬にそれぞれ3回ずつ実射を実施した。 (2106-052106)

Dynetic社提案の Enduring Shield

 米陸軍が実施したIFPC Shoot-OffにIron Domeを提案したRafael/Raytheonチームに対抗してDynetic社がEnduring Shieldを提案した。
 Enduring Shieldの詳細についてはDynetic社は全く明らかにしていないが、AIM-9X SidewinderをMML発射機から発射するシステムという。
 MMLは陸軍が陸軍内部で開発して発射機であるが、その後計画は中止になっていた。 (2107-060410)

IFPC Inc 2計画のペースダウン

 米陸軍が議会に対し、IFPC Inc 2計画のペースダウンを求めた。
 陸軍は現在IFPC Inc 2中隊をFY23までに2個中隊とIron Dome 2個中隊を編成するとしていた。 (2107-060910)

Dynetic社案の Enduring Shield を選定

 米陸軍がDynetics社とRafel/Raytheonチームが受注を競っていた対UAV/CMシステムのIFPCにDynetics社を選定した。
 Iron Domeの迎撃弾であるTamirの米国仕様であるSkyHunterを提案していたRafel/Raytheonチームにたいし、ハンツビルを拠点としたDynetics社は陸軍が独自に開発を進めたが開発中止になったMML発射機からRaytheon社製のAIM-9X Sidewinderを発射する案を提案していた。 (2109-082405)

 米陸軍が8月20日、IFPCの第2段階IFPC Inc 2にDynetic社が提案したMMLからAIM-9X Sidewinderを発射する案に決め、Dynetc/RaytheonチームとRafael/Raytheonチームに通知した。 (2111-090103)

 米陸軍が9月24日、IFPC Inc 2にDynetics社提案のEnduring Shieldを選択したと発表した。
 同社は初期分として$237Mを受注し、発射機16基とミサイル60発を2024年3月末までに納入するが、最終な受注数は発射機400基にのぼると見られる。 (2112-100606)

8・3・2・1・2 DE-MSHORAD

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・3・2・1・3 Iron Dome

陸軍の Iron Dome

 米陸軍がイスラエルに発注したIron Dome 2個中隊の2個目を2020年末に受領した。 最初の中隊は2020年9月に受領している。
 この2個中隊は議会の要求で陸軍が2019年にRafael社に発注していた。 (2102-010503)

 イスラエルが2個中隊分受注したIron Domeの2個目を米陸軍へ納入した。 最初の1個中隊は2019年9月に納入している。
 Iron Domeは米議会が陸軍に対し4個中隊の中距離SAMの装備を命じたため2019年に2個中隊分を発注し、残りの2個中隊分は別のシステムを検討している。 (2103-011306)

 米陸軍が9月のoperationalを目指してIron Dome中隊の訓練を行っている。 また2番目の中隊は12月にoperationalになる。
 米陸軍は2020年9月に最初の中隊機材をWSMRで受領し、2個目の中隊機材を1月上旬に受領している。 これらの2個中隊は2020年11月にFt. Blissで編成されている。 (2103-012008)

 5月にガザ地区から発射されたロケット弾の迎撃でIron Domeが多大な成果を上げたことから、米国は陸軍が装備するIron Domeを増強しようとイスラエルとの交渉を進めている。
 またバイデン大統領は5月20日、イスラエルの射耗補填に米国が協力すると述べている。
 ガザからイスラエルに向け発射されたロケット弾は3,000発で、そのうち1,500発が人の居住する地域へ落下したが、イスラエル軍は1,428発を迎撃し、撃墜確率は95%であった。 (2106-052107)

陸軍隊の Iron Dome をグアム配備

 米陸軍第94 AMD集団が10月7日に声明で、テキサス州Ft. Bliss駐屯の2-43 ADA大隊に所属するIron Domeを装備する1個中隊が、10月中旬から11月までOperation Iron Island作戦としてグアムのAndersen AFBに展開し、2013年から展開しているTHAAD中隊と連携してCMDの任務に就くと発表した。
 この作戦には在日米陸軍第38防空砲兵旅団の人員も参加するという。
 声明によるとこの作戦はあくまでも試験目的の一時的な展開であるという。
 米議会はFY19国防権限法 (NDAA) で、2021年末までに1個Iron Dome中隊を作戦正面に展開させることを命じている。 (2111-100710)

 米陸軍が10月上旬に最初のIron Dome中隊をグアムに配置すると発表したが、計画責任者のギブソン少将によると2番目の中隊の配置もCMDのため12月までに行う。 (2111-101807)

海兵隊の MRIC

 米海兵隊が12月21日、中距離迎撃システムMRICの試験が12月16日にWSMRで行われ、CM標的の迎撃に成功したと発表した。
 MRICは海兵隊のGATORレーダ及びCAC2Sと連接した、Tamirミサイルを用いたIron Domeシステムである。 (2201-122106)

8・3・2・2 イスラエル

改良型 Iron Dome

 イスラエル国防省が2月1日、改良型Iron Domeの一連の試験を成功裏に完了したと発表した。
 改良型Iron Domeは空軍のほか、海軍の新型コルベット艦Sa'ar 6にも装備するという。 (2104-021008)

 イスラエル国防省が3月16日、能力向上型Iron Domeの配備を完了したと発表した。
 能力向上型Iron Domeは一連の試験でロケットやミサイルの斉射及び多数機来襲するUAVの撃墜にも成功しているという。
 イスラエルは10年前にIron Domeを配備して以来、今までに2,500発程のロケット弾を撃墜している。 (2104-031605)

8・3・3 DEW SRBMD

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・4 巡航ミサイル防空

8・4・1 米国の CMD

8・4・1・1 首都圏への CM 攻撃対処

 米MDAが$8.9B要求したFY22予算要求で取り上げられなかった$367Mのリストを議会へ提出した。
 リストの中にはSM-3 Block ⅡA、THAAD、超高速ミサイル防空に加えて、首都圏へのCM攻撃対処も含まれている。 (2107-061008)
8・4・1・2 グアムへの CM 攻撃対処

 米陸軍が11月17日、イスラエルから購入したIron Dome 2個中隊のうちの1個中隊が、10月から2ヶ月の予定でグアムのAndersen AFBに展開していることを明らかにした。
 展開の目的はIron Domeの効果を見るもので、中隊は12月にテキサス州へ帰還する予定という。
 イスラエルはIron DomeをCRAMに使用しているが、米陸軍はこれとは異なりCMDとして使用すると言う。 (2112-111715)
8・4・2 その他諸国の CMD

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・5 近距離防空

8・5・1 近距離 SAM

8・5・1・1 米 国

IM-SHORAD

 Leonardo社が1月21日、米陸軍のIM-SHORADに搭載するミッションパッケージの当初分28基を2020年12月に、GDLS社から$600M以上で受注したと発表した。 GDLS社は米陸軍から$1.2Bで受注している。
 IM-SHORADに搭載されるStrykerにLeonardo社製ミッションパッケージは、Moog社製砲塔に改造したM299発射機にLongbow Hellfire 2発、4発搭載のStinger車載発射機、XM914 Bushmaster 30mm砲1門、M240 7.62mm機銃1丁を搭載している。 (2104-020305)

 米陸軍Army Futures Commandが4月23日、ドイツAnsbach駐留第4防空砲兵連隊第5大隊 (5-4 ADAR) が最初のM-SHORAD装備部隊となったと発表した。
 5-4 ADARは9月に試作品32両を受領する。 (2105-042304)

 米陸軍が4月23日、最初のIM-SHORADがドイツAnsbachに駐留する第4防空砲兵連隊第5大隊に配備されると発表すると共に、2021年から合わせて144両を4個大隊に装備するとの計画を明らかにした。 (2107-050507)

DEM-SHORAD

「8・5・4 対空レーザ兵器 → 8・5・4・1 米 国」で記述

MADIS (Marine Air Defense Integrated System)

 米海兵隊が6月下旬にJLTV車を元にした新防空システムMADIS Inc 1の開発をEMD段階に移行させることを承認すると共に、これまでシステムの取り纏めを担当していたRaytheon社をその任から外した。
 MADIS Inc 1の最終設計審査 (CDR) は4月に完了しており、計画通り行けば2Q/FY22には配備を開始しFY22末にはIOT&Eを行うソフトウェアをロールアウトさせる。
 その後FY23初期にMilestone C通過を見込んでいる。
 MADIS Inc 1には砲塔発射型のStingerと直射火器を搭載したMk 1と、レーダと直射火器を装備しC3能力を持つC-UAS用のMk 2があり、いずれも多機能EW装置、EO/IR装置を搭載している。 (2111-090803)

8・5・1・2 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・5・1・3 ロシア

Tor-M2 の能力向上

 Almaz-Antey社が5月31日、Tor-M2 SHORADの能力向上が進められていることを明らかにした。
 また、指令誘導の現有ミサイルを補完するためシーカーを搭載した射程6~7kmのミサイル数十発に低域対処をさせることも検討しているという。
 現在のTor-M2は射程15km、射高12km運動能力40gのミサイルを16発搭載しているが、システムは4チャネルしか持たないため同時交戦能力は4目標に限られている。 (2108-060909)

8・5・1・4 欧 州

IRIS-T-SLS MkⅢ

 SHORADの需要の高まりを受けDiehl社が機動性を高めたIRIS-T-SLSであるIRIS-T-SLS MkⅢを開発した。
 IRIS-T-SLS MkⅢはIRIS-T IR誘導ミサイル4発をレーダやC2と共にGDLS欧州社製Eagle Ⅴ 6×6装輪装甲車に搭載したシステムで、レーダにはSaab社製Giraffe 1XまたはHensold社製Spexer軽量レーダが搭載できる。
 C2にはAirbus社製Fortion IBMSが採用されている。
 MkⅢの射程は12km、射高は8kmである。 (2103-010005)

 ドイツの軍事企業であるRheinmetall、Hensoldt、Diehl Defenceの3社が3月30日、共同でSHORADシステムを開発すると発表した。 その数日前に国防当局者がTLVS計画を棚上げすると発表していた。
 3社が開発するのはLVS NNbSと呼ばれるシステムで、RIS-T SL-Mミサイルを車載VLSから発射する。
 このミサイルと発射機はTVLSシステムでも採用されることになっていた。
 システムが装備するHensoldt社製追随レーダは、装甲車にAAM型のIRIS-Tを搭載したシステムでも使用する。 (2104-033005)

Sky Sabre (Land Ceptor CAMM)

 英国防省が12月6日、Sky Sabre防空システムが初めて陸軍砲兵部隊に装備されたと発表した。
 Sky Sabreを装備したのはThorney島に駐屯する第7防空群第16砲兵連隊で、50年間にわたり装備してきたRapierと換装する。
 Sky SabreはRafael社製指揮装置 (SAMOC) 1基、捕捉距離120kmのSaab社製Giraffe GAMBレーダ1基、MBDA社製Land Ceptor CAMM 1基からなる。
 このうちGiraffeは第7防空群の第49中隊が既に装備していた。
 このほかにシステムはLink 16も装備し、海軍艦や空軍、更にNATOの同盟国軍とも連接できる。 (2201-120704)

8・5・2 MANPAD

8・5・2・1 米 国

FIM-92 Stinger 後継

 米陸軍が2020年11月10日、FIM-92 Stingerの後継となるMANPADSのRfIを発簡した。
 米陸軍は遅くともFY26までには競争試作契約をむすぴ、8,000発を発注する計画である。 (2103-010008)

8・5・2・2 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・5・2・3 ロシア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・5・2・4 その他

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・5・3 対空砲

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・5・4 対空レーザ兵器

8・5・4・1 米 国

8・5・4・1・1 陸 軍

DEM-SHORAD

 米陸軍副参謀総長マーチン大将が4月29日にKord社を訪問してDEM-SHORADが迫撃砲弾を追随する試験の映像を見て、陸軍がFY22にDEM-SHORAD 4両を配備する方針に変更はないと述べた。 (2106-050608)
【註】DEM-SHORADは在欧米陸軍への装備が開始されたMSHORADの暫定型であるIM-SHORADに続くIFPC次世代型IFPCInc2の1種類で、レーザ兵器が搭載される。

 米陸軍Rapid Capabilities and Critical Technologies Office室長のサーグッド中将が宇宙防衛及びAMDシンポジウムで8月11日、DE-MSHORADがshoot-offを終え、2021年秋に実施されるProject Convergence 21演習に参加すると述べた。 (2109-081106)

 米陸軍のDE-MSHORAD計画からNorthrop Grumman社が脱落した。
 今まで公表されていなかったが、2020年末に行われた50kWレーザモジュールをSHORADに搭載した試験でNorthrop Grumman社のシステムは火災を起こし、修復後1月に試験を再行したものの再び故障を起こしていた。
 DE-MSHORADではNorthrop Grumman社とRaytheon社が競ってきたが、両者ともStryker社はGDLS社が、パワー及び熱管理システムは2020年10月にHoneyWell社に買収されたネバダ州のRocky研究所が担当している。 (2109-081804)

 米陸軍の当局者が8月18日、50kW級レーザをStrykerに搭載してUAV、回転翼/固定翼機、ロケット弾/迫撃砲弾から旅団戦闘団 (BCT) を防護するDE-MSHORAD計画が一歩前進したと述べた。
 陸軍は2021年夏にオクラホマ州Ft. SillでDE-MSHORADの'shoot-off'を実施し、FY22に当初型の4両が配備するという。 (2109-081805)

 Raytheon社が9月7日、同社が一員となったチームが米陸軍から50kWレーザを搭載したStryker 3両を$123Mで受注したと発表した。 既に1両は納入されている。
 米陸軍は2019年にDE-MSHORADをRaytheon社とNorthrop Grumman社をサブ契約社にしたKord社を指名したが、Northrop Grumman社の試作品に技術的問題があったことから、8月に陸軍はRatheon社を指名した。
 DE-MSHORADはRAM、UAV、回転翼/固定翼機の撃墜を目指すシステムで、陸軍は2021年中にProject Convergenceで検証した後、2022年に試作した4両で小隊を編成する。 (2111-092204)

 米陸軍が、現在Raytheon社が受注しているStryker搭載50kWレーザー兵器について、FY23にBoeing、Lockheed Martin、Northrop Grumman社に二度目の機会を与える計画である。 (2112-112207)

Distributed Gain HEL

 Boeing社とGA-EMS社のチームが10月25日、米陸軍から300kW固体レーザを用いた対飛翔体用のDistributed Gain HELシステムの開発を受注したと発表した。
 システムはSHORAD用として使用できるという。
 米陸軍はFY22にHELWSの開発として$578Mを要求しているほか、配備用として$331Mを要求していることから、国防総省は2022年中の配備を計画している模様である。 (2111-102608)

 Boeing社が10月25日、米陸軍がBoeing社とGA-EMS社のチームに300kWソリッドステートレーザDGHELWSの開発を発注したと発表した。
 システムはGA-EMS社のdistributed gain laser技術とBoeing社の精密追随・ビーム指向技術で開発される。
 2020年に構築された両社の協力体制は10月に開かれた米陸軍協会 (AUSA) の会合で公表されていた。
 一方、陸軍のIFPCに使用する300kW HELを開発するHEL-TVD計画ではLockheed Martin社とDynetics社のチームが既契約の変更で受注し、2022年8月の試験を目指している。
 Lockheedチームは2019年に100kWの段階でRaytheon社に勝っている。 (2112-110304)

 米陸軍がGA-EMS/Boeingチームに300kW級ソリッドステートレーザを$69.6Mで発注した。
 国防総省はGA社の第7世代 (Gen 7) 型分散配置型高出力レーザDGHELに注目している。
 DGHELはビームの統合を行うファィバーレーザに比べて構造が簡単なのが特徴である。 (2201-111706)

8・5・4・1・2 海 軍

HELIOS

 米海軍が2021年内にレーザ兵器HELIOSをFlight ⅡA駆逐艦1隻に搭載し、Aegisシステムに組み込む。
 HELIOSは60kWのソリッドステートレーザで、ミサイル等を幻惑させるほか、高出力での鑽孔も期待できる。 (2103-021507)

 UAV、高速艇、ISRなどへの対抗用としてLockheed Martin社が開発したHELIOSは空母搭載の検討を完了したが、米海軍は現在その計画はないとしている。
 2020年末に海軍へ納入されたHELIOSはバージニア州Wallops島の海軍試験場で試験が行われている。
 Aegisシステムへの組み込みの検証は2020年11月と12月にLockheed Martin社の施設で行われ、3Q/2021年には駆逐艦Prebleに搭載される。 (2107-050012)

8・5・4・2 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・5・4・3 欧 州

8・5・4・3・1 ドイツ

Rheinmetall/ドイツMBDAの艦載レーザ兵器

 Rheinmetall社とドイツMBDA社の共同事業体ARGEが1月28日、2021年にかけて艦載レーザ兵器の開発を行い、2022年に独海軍フリゲート艦Sachsenで艦載試験を行うと発表した。 開発は2021年末に開始される。 (2102-012804)

8・5・4・3・2 英 国

 英国防省が9月14日に、Type 23フリゲート艦、トラック、装甲車などに装備するDEWの開発3件の契約を合わせて£72.5M ($100M) で行ったと発表した。
 開発は2023年に開始し2025年に完成する計画である。
 そのうちの2件はThales UKチーム、1件はRaytheon UK社である。
 BAE Systems社などが参加するThales UK社チームはType 23に装備するレーザ兵器を担当する。
 QintiQ社などの参加するThalesチームは英陸軍向けにMAN社製4×4車SVトラック搭載のHPM兵器を担当する。
 Raytheon UK社は陸軍向けの車載レーザー兵器Swintonを開発する。 (2110-091403)

 英国防省が9月14日、Novel Weapons Programmeの一環として技術検証用のDEWをRaytheon UK社とThales UK社に、合わせて£72.5 ($100.3M) で発注したと発表した。
 システムは既存のプラットフォームに搭載して2023年にユーザによる試験を実施する。
 Raytheon UK社が担当するのは陸軍向けのC-UAV用車載レーザDEW (LDEW) でWolfhound 6輪装甲車に搭載される。
 Thales UK社に発注したのはType 23フリゲート艦に装備するLDEWで同じく2023年に、艦搭載兵器システムの一部としての試験を開始する。 (2111-092203)

8・6 対 UAV システム

8・6・1 対 UAV (C-UAV) 戦

 8月中旬に開かれる米軍の宇宙防衛及びAMDシンポジウムでは、現在の装備で現在の脅威への対処能力が十分であるかがテーマになる。
 例えば最近のナゴルノカラバフでの戦いでの武装UAVの威力などが議論される。 (2109-081010)
8・6・2 C-UAV 体系

C-sUAS 体系

 米軍では陸軍が3軍のC-sUASを主導しており、2020年10月30日に陸軍のRCCTOが米国防総省の統合対小型UAV室 (JCO) と共同でC-sUASに関する企業説明会を開いた。
 それによるとRCCTOとJCOはFY24までに、オクラホマ州Ft. Sillに統合C-sUAS研究所を開設し、国防総省のC-sUAS戦略を支援する。 (2103-020011)

 米陸軍が重量25kg以下、速度250kt、高度1,066m以下のグループ1/2のUAVに対抗するC-sUASの評価試験を4月にYuma試験場で実施する。
 これに先立ち1月中旬にRfIを発簡し、10社以上の回答から5種類を比較する。 (2104-020308)

 米国防総省が、安価な地上発射型で個人携帯型の対小型UAVシステムの検討をしており、8月30日から9月17日の間にアリゾナのYuma射場で提案されている下記5機種の比較試験を行った。 (2110-092407)

XM1211 30mm近接信管弾:Northrop Grumman社

Smart Hopper 5.56mm弾:Smart Shooter社

ASDPSWS 7.62mm弾:Flex Force社

Drone Killer EWシステム:IXI社

Drome Gun EWシステム:Drone Shield社

 米国防総省が小型UAVに対する安価なC-UAVであるC-sUAS装置を模索していて、8月下旬~9月中旬にかけてYuma試験場で5機種の試験を実施した。
 当局は撃墜システムには一交戦$15,000以下、手持ち型には11kg以下、システム単価$37,000以下を求めている。 (2112-101305)
8・6・3 UAV 捕捉システム

AI を活用した捕捉識別ソフト DroneOptID(オーストラリア)

 DroneShield社が同社のDroneSentry C-UASシステムに、AIを活用した捕捉識別ソフトDroneOptIDを採用した。
 DroneOptIDはオーストラリア政府の資金でシドニー工科大学が開発したソフトで、DroneSentryが取得した画像を解析してUAVを抽出して、識別分別し、搭載しているのが爆薬かカメラか、それともそれ以外の搭載物であるかを判別する。 (2103-010011)

高レベルなデータ統合 (HLDF)

 米海軍がC2システムにおけるC-UAV機能を高めるため、高レベルなデータ統合 (HLDF) を推し進めようとしている。 (2107-050008)

DroneOptID 及び RfAI(オーストラリア)

 オーストラリアのDroneShield社が3月下旬に、同社製C-UAS装置に今後AIを基にしたソフトウェアを搭載して発見及び識別能力を高めることを明らかにした。
 DroneOptID及びRfAIと呼ばれる学習効果を持たせた最初のAIソフトは2月に同社製品のユーザーにソフトの3ヶ月更新として既に配付されているという。 (2107-050011)

DroneSentry-C2 C2 C-UAV システムに索拘束式 UAV を組み入れ(オーストラリア)

 オーストラリアのDroneShield社が同社のDroneSentry-C2 C2 C-UAVシステムに索拘束式UAVを組み入れようとしている。
 DroneSentry-C2に組み入れる索拘束式UAVはZenith AeroTech社製で、同社はHexa、Quad 8、Quadroの3種類の5~15kgの索拘束式UAVを販売している。
 索拘束式UAVはクラタや地形障害を回避できるなど、C-UAV用には多くの利点を有するという。 (2108-070010)

 Zenith Aerotech社が3種類の拘束係留式UAVをDroneShield C-UAVに組み込むことを提案している。
 提案している拘束係留式UAVはHexa、Quad 8、Quadroなどで10~30-lbを搭載し、高度400ftに係留できる。
 拘束式UAVにはEchodyne社製のレーダやPersostent社製MPU5通信機などを搭載してDroneShield社製のDroneSentry-C2指揮統制装置に接続するという。 (2109-080013)

RfOne MKⅡ 方探装置(オーストラリア)

 オーストラリアDroneShield社が7月19日、豪陸軍のC-UAV能力を高めるRfOne MKⅡ UAV方探RF装置を受注したと発表した。
 RfOne MKⅡはISM周波数帯を使用した探知性能は8kmの方探装置で、偵察警戒車であるASLAV双輪装甲車に搭載される。 (2108-071907)
【註】ISM周波数帯(産業科学医療用バンド)とは国際電気通信連合(ITU)によって国際的に確保されている周波数帯で、WiFiやコードレスマウスなどで一般に使われている2.4GHz帯や5GHz帯もこれにあたる。

 オーストラリアのC-UAV専門企業であるDroneShield社が7月、豪陸軍に複数のRfOne MKⅡ長距離方探装置を豪陸軍に販売した。
 RfOne MKⅡはRFを用いた方探装置で各種の使用法があるが、豪陸軍はこれをASLAV軽装甲車に搭載する。
 DroneShield社はDroneSentry C2システム、携帯型C-UAV装置DroneGunや着装型UAS防護装置RfPatrol、DroneSentry-X C-UAV探知撃墜システムなどを販売している。 (2110-090010)

8・6・4 ハードキルシステム

8・6・4・1 米 国

能力向上型 HELWS

 米空軍がRaytheon社に、バギー車搭載レーザ兵器HELWSの能力向上型1両を$15.5Mで発注した。
 空軍研究所 (AFRL) は2019年にHELWS 2両を$23.8Mで発注し、その年後半に更に1両を$13.1Mで発注している。
 HELWSはUAVを撃墜するシステムてレーザビームを5秒間連続して照射する能力を持ち、3km以内のUAVを撃墜できる。 (2105-040708)
【註】UAVを3kmで撃墜するためにはレーザビームを5秒連続照射する必要があると言うことか。

MADIS (Marine Air Defense Integrated System)

 米海兵隊が9月30日、Kongsberg社にMADIS C-UAVシステムを$94Mで発注した。 今後発注数は200両になると見られるという。
 JLTV車を元にしたMADISはProtector RS6 30mm砲を主に25.7mm機銃を同軸に配置しStinger発射機も搭載する。 (2112-101304)

8・6・4・2 中 国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・6・4・3 欧 州

Revolver Gun Mk 3 30mm砲によるUAV群に対する射撃

 Rheinmetall社がスイスの射場でRevolver Gun Mk 3 30mm砲によるUAV群に対する射撃試験を実施した。
 Revolver Gun Mk 3 30mm砲はReinmetall MAN社製HX2 6×6車に搭載され、18発のAHEAD弾が回転弾倉に装填され、Ku-bandレーダにより同時に4目標との交戦ができる。
 試験では800~900mの8ロータUAV 8機に対して行われ、7機を撃墜した。 (2109-072107)

8・6・4・4 その他

航空機搭載の小型レーザ装置よるUAV撃墜(イスラエル)

 イスラエルの軍事企業が世界で初めて、航空機搭載の小型レーザ装置よるUAV撃墜に成功した。
 試験を行ったのはElbit社所有のセスナCaravan機で、胴体後部に全長49吋、高さ50吋のビーム制御装置を含むレーザ装置が搭載され、その前方に操作員3名の操作卓が置かれている。
 試験では1km以上離れた小型標的機に対し照射が行われ、公開された映像がスローモーション化されていないとすると照射時間は8秒であった。 (2108-062801)

 イスラエル国防省とElbit社が6月21日、航空機搭載レーザシステムの試験に成功したと発表した。
 試験を行ったのはCessna 208 Caravan機に搭載された100kWのソリッドステートレーザで、高度3,000ftを飛行しながら複数のUAV標的を100%撃墜した。 有効距離は20kmと言う。 (2108-063009)

8・6・5 UAV キラー UAV

Aerial Dragnet

 米DARPAのStrategic Technology Officeでプログラムマネージャーをしているゼブロッキー氏が4月21日に開かれたC4ISRNETの年次コンファレンスで、錯綜した都市環境で爆薬を搭載している恐れのある小型UAVを探知、識別、追随して防護するUAVを用いたシステムAerial Dragnetの開発を行っていることを明らかにした。
 このシステムの特長は低価格で、20㎢を$20,000でカバーできるという。 (2105-042210)

Coyote Block 3NK (non-kinetic)

 Raytheon社が7月下旬に、Coyote Block 3により小型UAV群を爆発や射撃などによらずに (non-kinetic: NK) 無力化するCoyote Block 3NKの試験を、陸軍の暫定的C-sUAS計画の一環として2020年11月にYuma試験場で実施したと発表した。
 Coyote Block 3NKは各種サイズのUAV 10機を無力化することに成功したという。
 Coyote Block 3NKは弾頭で破壊するCoyote Block 2のFS-LIDSからKuRFSレーダの支援の元に発射された。
 FS-LIDSはCoyote Block 2の発射機やAN/TPQ-50対砲迫レーダ、EW装置、EO/IRカメラなどで構成されている。
 Coyote Block 3は重量が11.3kg以下、速力70kt以上で、2時間以上の滞空能力を持つ。 (2110-090007)

 Raytheon社が7月下旬に、Coyote Block 3により小型UAV群を爆発や射撃などによらずに (non-kinetic: NK) 無力化するCoyote Block 3NKの試験を、陸軍の暫定的C-sUAS計画の一環として2020年11月にYuma試験場で実施したと発表した。
 Coyote Block 3NKは各種サイズのUAV 10機を無力化することに成功したという。
 Coyote Block 3NKは弾頭で破壊するCoyote Block 2のFS-LIDSからKuRFSレーダの支援の元に発射された。
 FS-LIDSはCoyote Block 2の発射機やAN/TPQ-50対砲迫レーダ、EW装置、EO/IRカメラなどで構成されている。 (2110-090208)
【註】Coyote Block 3NKはC-UAV用のHPM装置を搭載しているという。

8・6・6 ソフトキルシステム

8・6・6・1 米 国

THOR

 米陸軍と空軍が2月19日、空軍研究所 (AFRL) で開発中のTHORを陸軍がIFPC-HPMとしてFY24までに装備すると発表した。
 THOR試作機の試験は2024年まで続けられる。
 THORはUAV群に対抗するHPMによるDEWで、20呎標準舶用コンテナに収納され軍用輸送機で空輸可能で、2名で設置できる。 (2105-030303)

 米陸軍が早ければ2024年にもTHOR DEWの野外試験を開始する。
 THORは米空軍研究所 (AFRL) が開発している同時多目標対処が可能なDEWで、現在アルバカーキのKirtland AFBで試験が行われている。 (2103-022407)

Stryker Leonidas

 GDLS社が10月25日にStrykerにC-UAV用としてHPM DEWを搭載するためC-UANのスタートアップ企業であるEpirus社と協力する協定に署名した。
 Strykerに搭載するのはEpirus社製のLeonidasで、陸軍のSHORADとしての需要を見込んでいる。 (2111-102504)

HPM の小型 UAV 撃退能力の評価

 米陸軍C-sUAS開発室が、HPMに固定基地に飛来するClass 1/2/3などのUAVを撃退できるだけの能力があるかを評価を行っており、各社に机上計算による提案を11月29日期限で求めている。 (2201-112405)

8・6・6・2 その他諸国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・6・7 鹵獲システム

DroneHunter C-UAV 6ロータ UAV

 米陸軍がFortem社製DroneHunter C-UAV 6ロータUAVをFAAD C2に採用した。
 DroneHunterは敵のUAVを破壊するのではなく捕獲網で鹵獲するシステムで同社製SkyDomeシステムの構成品になっている。
 SkyDomeシステムはDroneHunterとAIを用いたDroneHunterのC2システムSkyDome Managerで構成されている。
 米陸軍はFAAD C2でSkyDomeに指令を送る計画である。 (2107-060010)

8・7 防空 C3I

8・7・1 対空レーダ

8・7・1・1 地上対空リーダ

Sentinel A4 レーダ

 Lockheed Martin社が10月11日に米陸軍協会 (AUSA) の年次会合で陸軍のIFPCに組み込むSentinel A4レーダを公表した。
 Santinel A4はRAM、CM、UAVなどの各種目標を、モード切替をすることなく捕捉できるAESAレーダで、陸軍のIFPCやM-SHORADのセンサとして使用できるという。
 陸軍はSentinel A3をA4に換装する計画で、1Q/FY23に配備を開始する計画である。 (2111-101101)

Spexer 600 中距離 X-band AESA レーダ

 Hensoldt UK社が1月21日、長距離射撃などの攻撃用としても使用できる陸上型中距離X-band AESAレーダSpexer 600を公表した。
 600シリーズは周波数が9~9.6GHzで、捜索範囲はAz ±60゚、El 40゚という。
 捕捉距離は小型/マイクロUAVに対し4.7km、車両等の地上目標を17.1km、小型地上目標14.5km、大型UAV 9kmである。 (2105-030001)

GM200 MM/C レーダ(Thales)

 ノルウェーがオランダとの政府間取引で5月25日、Thales社製GM200 MM/Cレーダを、5基の購入と3基のオプション契約で購入することになった。  契約額は€77M ($94M) で納入は2023~2024年になる。  GM200 MM/CはマルチビームのS-band AESAレーダで、対砲迫のほか近距離対空レーダとしてCUAVやCRAMとしても使用される。 (2106-052605)

 ノルウェーがオランダ政府と5月25日、Thales社からGM200 MM/Cレーダ5基を€77M ($94M) で購入することで合意した。 2023~2024年に納入される。
 この契約には3基のオプションも含まれている。
 GM200 MM/CはThales 4D 2軸多ビームAESAレーダファミリーの一角をなすS-bandレーダで、オランダ陸軍はMMRとして9基を発注しており2022~2024年に納入される。 (2108-060207)

Spyglass C-UAV、SHORAD用 3D レーダ

 コロラド州のNumerica社が、C-UAVやSHORAD用の3DレーダSpyglassを発表した。
 Spyglassは至近距離でのUAVなどを捕捉し分別するため、従来のレーダの持つ近距離死界を生じないと言う。 (2105-040808)
【註】ネットによるとSpyglassはKu-bandのCWレーダの模様である。

8・7・1・2 艦載対空リーダ

AN/SPY-7 レーダ搭載用 Aegis Baseline J7.B ソフトウェア

 米MDAと米海軍のAegis技術支援団 (TECHREP) が月27日、日本向けにニュージャージー州Moorestownで行ってきたAegis Baseline J7.Bソフトウェアの試験を完了した。
 Aegis Baseline J7.Bは米海軍のBaseline 9を護衛艦まやに合わせたAegis Baseline J7をSPY-7レーダ搭載用に改修したソフトウェアである。 (2103-022508)

AN/SPY-6(V)1 / (V)2 / (V)3 / (V)4

 Raytheon社がSPY-6シリーズの新型2機種の試験を完了したことを明らかにした。
 試験は2021年初めにバージニア州の海軍Wallops島試験場で実施された。
 試験が行われたのはNimitz級空母や水陸両用戦艦に搭載される一面回転型アンテナのSPY-6(V)2と、Gerald Ford級空母及び計画中のConstellation級フリゲート艦に装備される固定面型のSPY-6(V)3で、Raytheon社は2020年7月に(V)2型4基と(V)3型2基を合わせて$126Mで受注していた。 (2109-080203)

 米海軍のConstellation級フリゲート艦の開発責任者であるスミス海軍大佐がNavy League 2021で8月2日、Constellation級フリゲート艦はリスク低減のため既存技術を活用すると述べた。
 このためレーダにはDDG 51 Flight Ⅲに装備されるAN/SPY-6(V)1を元にしたAN/SPY-6(V)3が装備される。
 (V)1はアンテナ寸法が2×2×2呎の4面固定で、各面は37個の送受信モジュール (RMA) で構成されるが、Ford級空母やConstellation級フリゲート艦が装備するAN/SPY-6(V)3は3面固定で各面のRMAは9個ずつになる。 (2110-081106)

 AN/SPY-6(V)1 AMDRのArleigh Burke級Flight Ⅲ駆逐艦の一番艦への取り付けは完了し、乗員への訓練が開始されているが、Raytheon社は4つのバーションのSPY-6を7種類の戦闘艦に今後5年間に59基搭載する計画を進めている。 (2201-122709)

AN/SPY-6(V)1: Arleigh Burke級Flight Ⅲ駆逐艦

AN/SPY-6(V)2: 回転アンテナ式、強襲揚陸艦、輸送揚陸艦、Nimitz級空母

AN/SPY-6(V)3: 固定アンテナ式、Ford級空母、Constllation級フリゲート

AN/SPY-6(V)4: Arleigh Burke級Flight Ⅱ駆逐艦

ドイツが Sachsen級フリゲート艦に BMD レーダ

 ドイツ国防省が8月24日、F124 Sachsen級フリゲート艦3隻のレーダを2024~2028年にBMD能力のあるレーダに換装すると発表した。
 契約相手はHensoldt社とIAI社で、TRS-4Dレーダに元に4基が€220M ($258M) で発注された。
 1基は陸上での教育訓練用になる。 (2109-082406)

8・7・2 空中センサ

8・7・2・1 固定翼 AEW&C 機

8・7・2・1・1 大型機

E-3 Sentry AWACS の後継機検討

 米空軍が45年経ち老朽化したE-3 Sentry AWACSを31機保有しているが、その後継機を計画していてE-7A Wedgetailを検討している。
 英空軍は最近、E-3D AEW1の退役を決めE-7Aを採用すると決めている。 (2112-102702)

8・7・2・1・2 中型機

Saab GlobalEye

 スウェーデン空軍は2004年から装備しているSaab 340 Erieye AEW&C機について換装を検討しており、長距離型Erieyeレーダを搭載するSaab GlobalEyeが有力視されている。 (2103-012002)

8・7・2・2 回転翼 AEW&C 機

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・7・2・3 AEW UAV

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
8・7・2・4 AEW 気球/飛行船

サウジアラビアに配備する計画

 米空軍が、低空侵入するミサイルや航行機を捕捉するレーダを係留気球に搭載したシステムをサウジアラビアに配備する計画でRfIを発簡した。
 空軍は13箇所に配備する計画である。
 低空目標に対しては100呎高の塔にレーダを設置しても45kmでしか捕捉できないが、5,000呎に上げた気球レーダであれば180kmで捕捉できる。 (2103-012706)

イスラエルの HAAS

 イスラエルIMDOが米MDAと共同でCMなどの接近を警戒するため開発を進めていた、世界最大級の飛行船 (Aerostat) であるHAASに空中センサ (ES) を搭載したシステムの膨張飛行試験をイスラエル北部で開始する。
(2112-110308)
【註】米空軍とDARPAは、かつてこれと似たHAA構想を進めていた。
 NORAD の考えていた飛行船はヘリウムを充填した全長152m、搭載重量2,040kgで65kWの電源を持ち、高度 70,000~80,000ftで1年間の 継続飛行が可能とされ、1機で 400nmを監視、12機で北米全域をカバーすることが出来るものであった。
 しかしながら、MDAは当時あったミサイル防衛諸計画の整理の一環としてHAAの計画中止を決め、FY-08に予算計上を行わなかった。

 イスラエルが11月上旬に係留気球HAASの配備を開始する。 HAASの1号機は2022年初めまでにイラン製CMやUAVを監視するため同国北部に展開する。
 イスラエルは最終的にHAASを全国に展開させる計画であるが、その数は明らかにしていない。 (2112-110413)

 イスラエル国防省が11月3日、長距離目標を捕捉するため米TCOM社製の係留気球にElta社製レーダを搭載したHAAS Sky Dewの試験を行っていると発表した。
 HAASはイスラエル北部に配備される。
 TCOM社製71M係留気球に搭載されているのはElta社製ELM-2083 L-band AESAレーダで、捕捉距離250kmで500目標の追随が可能という。
 イスラエル空軍は2005年にELM-2083を装備していることを認めている。
 TCOM 71Mは1,600kgの搭載能力があり、高度15,000ftに係留される。 (2201-111014)

8・7・3 情報処理、指揮統制

8・7・3・1 IBCS (IAMD Battle Command System)

量産開始

 米国防総省が1月13日、Northrop Grumman社にIBCS 454基を$4.4Bで発注した。 納入には10年かかる。
 IBCSの発注は2009年以来、先送りされてきた。 (2102-011406)

 米国防総省で調達部門を担当していたロード次官が、1月20日に退任する数日前にIBCSの量産(LRIP)開始を承認するMilestone Cの決定を行った。 IOT&Eは2021年中頃に計画されている。
 IBCSの開発は$2.5B以上をかけて2009年に開始され、2016年には限定運用試験 (LUT) が行われた。
 その4年後に陸軍は再度LUTをWSMRで実施したが、その際には70km以内にPatriotレーダ2基、Sentinelレーダ2基、Patriot発射機複数基、中隊戦闘指揮装置2基が7基のIFCNを介して連接された。 (2103-012006)

 米国防総省の調達担当者が4月29日に陸軍のIBCSについて、LRIP移行を決めるMilestone Cに向け数ヶ所の修正を命じたと述べた。 (2106-050510)

 米陸軍IAMDシステムの中核となり、現有及び将来のセンサ及び武器を統合して共通の射撃統制機能を持たせるIBCSのLUTに成功したことから、国防長官がLRIP入りを未知メルMilestone Cを承認した。 (2106-051211)

最終試験を完了

 米陸軍が7月15日にIBCSの6回目にして最終となる試験を完了した。 最終試験は15日にWSMRでCMを模した標的に対して行われた。
 $7.9Bかけて開発したIBCSのIOTは2021年秋行われる。 (2108-071502)

F-35、F-22 との直接通信手段 Freedom Radio

 Northrop Grumman社がF-35、F-22と陸軍のIBCS間の通信ギャップを埋める通信Freedom Radioを開発していて、次の段階の試験を2021年中に実施する。
 Freedom RadioはF-35の捕捉したデータをIBCSに送りミサイル防衛に活用すると共に、長距離射撃を可能にする。 (2109-080002)

IOT&E 開始

 米陸軍SMD司令官のカーブラー中将が宇宙防衛及びAMD年次シンポジウムで8月10日、IBCSのIOT&Eが9月に開始されることを明らかにした。
 カーブラー中将はまた近年の脅威について、一言で言えばhigh-endとlow-end脅威が劇的に拡散していると述べ、一例としてBMの発射数が過去15年間に200%増加し、UAVの使用が過去2年間にあらゆる兵員や部隊の脅威になってきていると述べた。 (2109-081011)



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