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5 世界各国(周辺国を除く)

5・1 米 国

5・1・1 基本政策

5・1・1・1 国防の方針

5・1・1・1・1 暫定安全保障戦略指針

 バイデン米大統領が3月3日、安全保障政策をめぐる暫定戦略指針を発表し、中国やロシアに対抗するため日本や韓国、オーストラリアやNATOとの連携を強めていくと表明した。
 一方で指針は北朝鮮の非核化には言及しておらず、日本にとっては一部に不安の残る内容となった。
 ブリンケン国務長官によると、バイデン政権は数ヵ月後をめどに本格的な国家安全保障戦略の策定を目指しており、暫定戦略指針はそれまでの「つなぎ」の役割を果たす。 (2104-030402)
5・1・1・1・2 核 戦 略

バイデン政権、核兵器の先制不使用政策を検討

 英Finacial Times紙が10月29日、バイデン米政権が「核兵器の先制不使用」政策を検討していると懸念を強めた日本や英国、オーストラリアなどの同盟国が、同政策を断念するようバイデン政権に働き掛けていると報じた。
 日本を含む同盟国は、先制不使用政策によって核保有国の中国やロシアに対する抑止力が低下することに危機感がある。
 バイデン政権は新たな核戦略指針「核体制の見直し」の策定中で、先制不使用やそれに準ずる政策採用の是非が焦点となっている。
 大統領は就任前、核保有の目的を核攻撃抑止と報復に限るべきだとの考えを外交専門誌で示している。 (2111-103004)

核兵器の先制不使用政策に国防総省から反発

 米政治サイトPoliticoが11月6日に、国家安全保障会議 (NBC) は11月中に、2022年初めに公表が予定された報核態勢見直し (NPR) に盛り込む米国の核政策を議論する会議を開くと報じた。
 バイデン政権は、核攻撃を受けない限り核を先に使用しないという先行不使用、通常兵器でない核攻撃の時にのみ核兵器で対抗するという唯一の目的の使用方針を採択することを検討している。 しかし、国防総省内部の反対が強く、中国やロシアなど敵国の核の脅威に効果的に対応できないという理由で反対しているという。
 国防総省のある当局者はPoliticoに、「先行不使用や唯一の目的はNSC会議に選択肢として提示されないだろう」とし、国防総省が検討しないことを示唆した。
 また別の当局者も、Washington Post紙に、NSC会議の議題は「唯一の目的」方針を採択するかどうかであって「先行不使用」ではないと述べた。 (2112-110902)

報復だけに使う単一目的に制限する案

 Financial Timesが12月9日、米国が核兵器の使用条件を、米国を攻撃した相手に報復する時だけ使う単一目的 (sole purpose) に制限する案を検討していると報じた。
 バイデン政権は核先制不使用 (no first use) 原則は同盟国の反対の声が高まったため採用しないことにし、単一目的の使用方針は核態勢検討 (NPR) に盛り込むことにした。 (2201-121106)

 2022年1月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議を前に、米国務省で軍備管理と国際安全保障を担当するジェンキンス次官が12月26日までに共同通信の書面インタビューに応じ、バイデン政権が策定中の新核戦略指針NPRで、核兵器の役割縮小に向けた宣言を検討していると明らかにした。
 核の役割を、敵の核攻撃阻止や反撃などに絞る唯一の目的宣言の可能性がある。 (2201-122602)

5・1・1・2 トランプ政権政策の見直し

5・1・1・2・1 在欧米軍削減計画の凍結

トランプ政権の計画を凍結

 NATO軍最高指揮官であるウォルターズ米空軍大将が2月3日に記者からの質問に答えて、バイデン政権が駐独米軍11,900名を撤収してブルガリアとイタリア及び米本土に再配置するとしたトランプ政権の計画を凍結して再検討していると述べた。
 国防総省の報道官も1月28日に計画の再検討について述べている。 (2104-021003)

爆撃機のノルウェー派遣

 駐欧米軍司令部が2月2日、テキサス州Dyess AFBを基地とする第12空軍第7爆撃航空団がB-1Bと200名の隊員をノルウェーのØrland航空基地に初めて派遣すると発表した。
 派遣されるB-1Bの機数については明らかにしなかった。 派遣部隊は現在準備中であるという。 (2104-021004)

5・1・1・2・2 トランプ政権政策の継承

オープンスカイ条約に復帰せず

 米メディアが、米国務省当局者が5月27日に米欧諸国とロシアとの間で偵察機による相互監視を認めたOpen Sky条約にバイデン政権が復帰しないことを決め、ロシア政府に通告したことを明らかにしたと報じた。
 オープンスカイ条約はトランプ前政権が2020年11月に脱退し、ロシアも6月にも脱退する見通しとなっている。 (2106-052806)

5・1・1・3 核 軍 縮

新 START の延長

 関係筋が1月21日、バイデン米大統領がロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長を目指していると明らかにした。
 新STARTは2月5日に期限を迎えるため、迅速な決定が求められている。 (2102-012201)

 Washington Postが1月21日、バイデン大統領が2月に期限が切れる米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START)を5年を上限に延長を望んでいると報じた。
 ロシアも前向きな姿勢を見せており、米ロ間に残る唯一の核軍縮の枠組みは維持される見通しである。 (2102-012202)

 バイデン米大統領が1月26日、就任後初めてプーチン露大統領と電話会談した。 米大統領府のサキ大統領報道官によると、新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長などを巡り協議が行われた。
 ロシア大統領府は、米露が2月5日に期限を迎える新STARTの延長で合意したと発表。 今後数日中に延長に必要な手続きを完了するという。 (2102-012701)

 ロシア大統領府が1月29日、プーチン大統領が米国との新戦略兵器削減条約(新START)を5年間延長するための批准法案に署名したと発表した。
 米政府との間で近く批准書を交換し、正式に新STARTが延長される。 (2102-013001)

 米国とロシアが9月30日、核軍縮などを協議する戦略的安定対話の2回目の協議をスイスのジュネーブで開催し、将来的な軍備管理の原則と目標などを策定する二つの作業部会を設置することで合意した。
 米露は6月の首脳会談で軍縮に向け戦略的安定対話を開始することで合意しているが、2回目となる今回の協議には、米国からシャーマン国務副長官、ロシアからリャプコフ外務次官が出席した。 (2111-100103)

5・1・1・4 対中戦略

5・1・1・4・1 バイデン政権の対中姿勢

バイデン米大統領の施政方針演説

 バイデン米大統領が4月28日夜に議会の上下両院合同会議で施政方針演説を行った。 就任後100日間でCOVID-19などによる危機から脱しつつあるとして、米国は再び動き出したと宣言した。
 バイデン大統領は同盟国と協力し、国際協調を重視して諸課題に対処する方針も改めて表明した一方で、中国に対しては習国家主席を「専制主義者」と呼び、民主主義の優位を示して中国との競争に勝つとの決意を示し、不公正な貿易慣行には立ち向かうと述べたほか人権問題を引き続き提起する考えを示した。 (2105-042903)

 中国国防省報道官が4月29日、米国の艦船や偵察機の中国に向けられた活動がバイデン政権になって以来大幅に増大していると述べた。
 2020年同期に比べて艦船の活動は20%、偵察機は40%増大しているという。 (2106-051008)

シャーマン米国務副長官が中国の王毅外相と会談

 シャーマン米国務副長官が7月26日に天津で中国の王毅外相らと会談を行った。
 米政府当局者によると、会談は4時間にわたったものの米中首脳会談の実現の可能性は議題として取り上げられず、具体的な合意は何も得られなかった。
 米政府当局者によると、副長官は会談で、香港、新疆ウイグル自治区、チベットなどにおける中国の行動のほか、サイバ攻撃などを巡る懸念を表明し、世界保健機関 (WHO) が計画している2回目のCOVID-19起源調査に中国が協力的でないことに懸念を示した。 (2108-072608)

チベット問題担当特別調整官の王毅外相と任命

 米政府が12月20日、チベット問題担当特別調整官にゼヤ国務次官(民主主義・人権担当)を任命した。
 ブリンケン国務長官によると、中国政府による人権侵害に直面するチベット人の宗教、文化、言語の伝統保持に向けた米国の取り組みで、ゼヤ氏は主導的役割を果たすことになる。
 これに対し中国は内政干渉に当たると反発している。 (2201-122103)

5・1・1・4・2 対中経済安全保障

中国軍関連企業への投資禁止

 トランプ米大統領が国家安全保障上の懸念を理由として、中国人民解放軍と関係の深い中国企業に対する証券投資の禁止を命じた大統領令が1月11日に発効した。
 中国共産党と中国軍による米資金や技術の利用を阻止する狙いで、米国の個人や企業は、米政府が指定した中国企業への新規投資ができなくなる。
 ニューヨーク証券取引所は大統領令の発効に合わせて、中国国有通信会社の中国移動、中国電信、中国聯通の上場を廃止する。 米国防総省が指定した「中国共産主義の軍事企業」が禁止対象となる。
 現時点では、通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を含めて35社に上り、指定企業と上場子会社の株式購入や、それらを組み入れた上場投資信託(ETF)などへの投資が順次禁じられる。 (2102-011202)

米国イノベーション・競争法案 (USICA)

 米上院民主党トップのシューマー院内総務が11月15日、上院が今週中に審議を始める国防予算の大枠を決める国防権限法案 (NDAA) に、中国に対抗するため米国の競争力強化を目指す米国イノベーション・競争法案 (USICA) を盛り込むよう修正すると述べた。
 USICA法案は6月に上院を超党派で可決したが、下院は通過しなかった。
 以来、法案推進者は、上下両院で可決しバイデン大統領の署名を経て成立させる方法を模索してきた。 (2112-111606)

中国企業の上場廃止へ

 米証券取引委員会 (SEC) が12月2日、外国企業に米当局の会計監査受け入れを義務付ける新規則について、導入に向けた最終的な計画を発表した。
 会計監査を受け入れない場合、3年以内にニューヨーク証券取引所 (NTSE) またはナスダックから上場廃止となる恐れがある。
 米当局は2002年からこの要求を行っているが、受け入れていないのは中国と香港の企業だけで、導入されれば200社余りが米市場から締め出される可能性がある。
 米国預託証券 (ADR) が取引しているアリババグループや百度もこれまで米当局の監査を受け入れてこなかった。 (2201-120304)

5・1・1・4・3 対中通信保全

中国製通信機器の使用禁じる大統領令延長

 バイデン米大統領が5月11日、2019年5月にトランプ大統領が署名した安全保障上の脅威となる通信機器やサービスを米企業が使うことを禁じる大統領令の期限を1年延長すると発表した。
 大統領令では具体的な企業は名指ししなかったものの、中国当局と深い関係があるとみられているファーウェイやZTEを念頭に、これらの製品を狙い撃ちしたとされ、1年ごとに延長されてきたが、バイデン政権でも同様の対応がとられた。 (2106-051206)

米連邦通信委員会、中国機器の排除強化

 米連邦通信委員会 (FCC) が6月17日、国家安全保障を脅かすと指定した中国企業の製品を認証しない方針を発表した。
 通信機器の華為技術(ファーウェイ)や監視カメラの杭州海康威視数字技術、通信機器の中興通訊、監視カメラの浙江大華技術、無線機大手の海能達通信の5社が対象で、米国で販売できなくなる可能性がある。
 FCCは声明で、中国5社に対する米国市場の扉を閉じると述べ、中国製品への規制強化を進める方針を強調した。 (2107-061804)

安全な機器に関する法律 (Secure Equipment Act of 2021)

 米大統領府が11月11日、バイデン大統領が同日に華為技術(ファーウェイ)など中国通信機器企業の製品の使用を制限する安全な機器に関する法律 (Secure Equipment Act of 2021) に署名したことを明らかにした。
 この法律はは、米連邦通信委員会 (FCC) が禁止リストに挙げた企業の製品に対して認証を与えないようにする内容を含んでおり、上下院の圧倒的賛成で可決されていた。 (2112-111306)

5・1・1・4・4 対中戦略

政権交代に伴う対中戦略の見直し

 バイデン米大統領が2月10日に就任後初めて国防総省を訪れ、国防総省が対中戦略を見直すと発表した。
 機密情報や技術、アジア太平洋地域における米軍のプレゼンスに絡む分野に焦点を当てるという。  一方オースティン国防長官は、中国問題に絡む米軍の戦略を見直す対策本部を国防総省内に新設した。 対策本部は15人のメンバーで構成され、今後4ヵ月で見直しを進め、新たな提言を行う。
 オースティン長官はこれまでに、対中戦略を優先課題とするトランプ前政権の方針を継続する構えを示唆している。 (2103-021101)

ウイグル族迫害をジェノサイドと断定

 ブリンケン米国務長官が1月27日の記者会見で、米中関係について「今後の世界にとって最も重要な関係」と位置付け、競争と協調の両様で取り組む方針を示したが、中国政府によるウイグル族迫害をジェノサイド(集団虐殺)とする見方は変わっていないと強調し、人権問題に厳しい姿勢で臨む意向を鮮明にした。 (2102-012802)

 米国務省が3月30日に各国の人権状況をまとめた2020年版の報告書を発表し、新疆ウイグル自治区についてウイグル族らに対するジェノサイド(集団虐殺)や人道に対する罪があったと断じた。
 民主主義・人権・労働担当のピーターソン国務次官補代行は記者会見で、自治区での人権侵害に対する「深刻な結果」を中国に警告した。
(2104-033101)

南シナ海での中国領有権主張を拒否

 ブリンケン米国務長官が1月27日にロクシン比外相と電話会談し、中国が南シナ海で主張している領有権について米国は拒否すると表明した。
 中国側の主張を完全に違法だと明確に否定した昨年7月のポンペオ前国務長官の声明を踏襲し、バイデン政権として中国の海洋進出に厳しい姿勢で臨む方針を鮮明にした。 (2102-012803)

China Task Force の立ち上げ

 バイデン米大統領が2月10日、国防総省内に15名からなるChina Task Forceを立ち上げたと発表した。 Task Forceは4ヶ月かけて国防長官に対して提言を纏める。
 ラトナー国防長官特別顧問を長とするメンバーは長官官房 (OSD) 、統合参謀会議、各軍、統合軍、情報分野など国防総省内の広範囲から選抜されている。 (2104-022401)

一帯一路経済圏構想に対抗する途上国開発支援構想

 バイデン米大統領が3月26日にジョンソン英首相と同日電話会談して対中政策を協議し、中国の一帯一路経済圏構想に対抗するため、民主主義国家が連携して途上国の開発を支援する構想を提案したと明らかにした。
 バイデン大統領は、途上国を支援するため「同様の構想を民主主義国家が持つべきだと提案した」と話したが、詳細には言及しなかったが、中国による巨額の融資を通じた影響圏拡大を阻止する狙いとみられる。
 中国はインフラ開発を通じて影響力を拡大して過剰な融資で相手国を借金漬けにしているとの批判も根強い。 (2104-032702)

フィリピンと台湾への攻勢強める中国に警告

 米国務省報道官が記者会見で、米国はWhitsun礁近海に中国の海上民兵が集結していると継続して報告されていることへの懸念をフィリピンの同盟諸国と共有しているとして、南シナ海を含む太平洋でフィリピンの軍、公船、航空機に武力攻撃が行われれば、米比相互防衛条約に基づくわが国の義務が発動されると述べた。
 Palawan島の西方320kmに位置するWhitsun礁で3月7日に中国船200隻以上が確認されたが、現在ではその多くはスプラトリー諸島各地に分散している。 (2105-040803)

上院外交委員会が「2021年の戦略的競争法」の審議開始

 米上院の関係筋が4月8日、上院外交委員会が中国が世界的に影響力を拡大していることに対抗するため、超党派による重要法案を14日に審議することを明らかにした。
 「2021年の戦略的競争法」と題した法案は、議会の両党における中国に対する強硬姿勢を反映しており、中国に対抗するための一連の外交的、戦略的対策の権限を付与している。 (2105-040901)

Starategic Competition Act of 2021 法案

 米議会上院外交委員会委員長が中国の目覚ましい軍事技術の発展に対抗するStarategic Competition Act of 2021法案を提案している。
 この法案は同盟国との協調と共同を主軸としているが、同時に第2次大戦後に設立されたCOCOMの復活も目指している。 (2106-042114)

国防長官が複数の対中戦略策定を指示

 オースティン米国防長官が複数の対中戦略を求める指示を出したことが当局者の話で6月9日に分かった。 ただ、詳細は不明である。
 当局者は匿名で「今回の長官からの指示は、最終的には国防総省を立て直し、対中戦略を優先するという従来のスタンスに確実に沿うようにするものだ」と述べた。
 バイデン大統領は2月に中国問題に絡む米軍の戦略を見直す対策本部を国防総省内に新設したが、今回の指示はこの対策本部からの提言を受けて出された。 (2107-061001)

ウイグル強制労働防止法

 米議会下院が12月14日、中国の新疆ウイグル自治区からの輸入を禁じるウイグル強制労働防止法案を全会一致で可決した。 上院は15日にも採決する。
 ウイグル族など少数民族を強制的に働かせていると問題視しており日本企業にも影響が及ぶ。  サキ大統領報道官は14日に、法案を実行するため議会と緊密に連携するとの声明を出し、バイデン大統領は法案に署名すると説明した。 輸入禁止は法案が成立してから180日後に発効する。
 米政府は既に新疆ウイグル自治区から主な製品の輸入を禁じており、法案の成立で輸入禁止対象が全製品に広がる。 (2201-121504)

 米上院が12月16日にウイグル強制労働防止法案を可決した。 バイデン大統領に署名のため送付される。
 強制労働で生産されたものではないと企業が証明できる場合を除き、中国の新疆ウイグル自治区からの産品の輸入を禁止する。 (2201-121701)

 中国の新疆ウイグル自治区で強制労働によって製造された製品の米国への輸入を禁止するウイグル強制労働防止法が、12月23日にバイデン大統領の署名を経て成立した。
 同法は米国政府に対し、強制労働に関わる海外の個人や団体のリストを作成し、制裁対象とすることも求めている。
 新疆ウイグル自治区は、綿花や太陽光パネルなどの主要な生産地となっていて、ウイグルに調達網を持つ日本企業にも影響が及ぶことになる。 (2201-122401)

5・1・1・4・5 世界全体での態勢見直し (GPR)

インド太平洋地域における GPR

 ブリンケン米国務長官が9月23日にASEANの外相らに対して、インド太平洋地域における米国の新たな包括的戦略を近く発表すると明らかにした。
 バイデン政権は国家安全保障政策における軸足を、アフガニスタンから、影響力を強める中国に移している。 (2110-092403)

 米国防総省が最近纏めたGlobal Posture Reviewは秘文書であるが、国防総省高官によると文書ではバイデン大統領に対し、中国に対抗してインド太平洋地域での米軍のプレゼンスを高めるべきとしている。 (2112-112906)

 米国防総省が11月29日、世界全体での態勢見直し (GPR) に基づき、グアムとオーストラリアで軍基地の増強に注力する方針を明らかにした。
 GPRはバイデン大統領が就任直後の今年2月に指示し、オースティン国防長官が3月に着手したもので、最近バイデン大統領がその報告と提言を承認していた。
 内容は機密扱いだが、国防総省のカーリン次官補は29日、GPRに基づきグアムとオーストラリアで軍基地の増強に注力する方針を明らかにした。
 カーリン次官補によると、米国はNATO加盟国やオーストラリア、日本、韓国、さらに中東・アフリカ地域の10ヵ国以上の同盟国や友好国との75回にわたる意見交換などを経てGPRをまとめた。 (2112-113004)

 米国防総省が11月29日、バイデン大統領の指示で進めていた世界規模の米軍態勢の見直し (GPR)の結果を発表した。
 急速に軍事力を拡大する中国の侵略行為を抑止するため、インド太平洋地域に重心をシフトする方針を明示し、米領グアムやオーストラリアの軍事インフラ増強などを盛り込んだが、対中国を念頭に置いた大規模な配置転換は見送られた。
 国防総省高官は、グアムと豪州で滑走路などの軍事インフラを強化するとともに、太平洋の島々で燃料槽や弾薬庫などの兵站施設建設を進めるとした。
 豪州に戦闘機や爆撃機を巡回駐留させることや、韓国への攻撃ヘリ部隊の常駐も構想の一例に挙げ、ほかにも同盟国や友好国とさまざまな取り組みを行っているとして、今後2、3年で具現化できるだろうと述べた。 (2112-113005)

5・1・1・4・6 多者安保協議体クアッド

クアッドをクインタに拡大か

 サリバン米国家安保補佐官が日豪印など4ヵ国が参加する多者安保協議体クアッドについて、インド太平洋政策の土台になるだろうとして、もっと発展させたいとの考えを示した。
 このような中でクアッドへの参加に消極的な韓国の代わりに、英国がこれに参加する可能性が浮上しており、クアッドがクインタに拡大改編した場合、自由民主陣営における韓国の立場が一層弱まるとの見方も出ている。 (2103-020104)

クアッドに防衛技術同盟の創設を検討

 米国は中国との軍事技術戦で優位を保持するためQuadを通じた防衛技術同盟の創設を検討している。
 これはQuadに関する特別報告書で述べられている。 (2201-120707)

5・1・1・4・7 太平洋抑止計画 (PDI)

 米政府と議会がインド太平洋地域で中国に対する抑止力を強化するため、FY22から6年間で$27.3Bの予算を投じる案を検討する。 台湾や南シナ海の有事を想定し、沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って米軍の対中ミサイル網を構築するもので、同盟国との協力も探る。
 アジア太平洋地域などを所管する米インド太平洋軍は3月上旬に、中国対抗に向けた戦力や予算額を明記した要望書を議会に提出した。
 日本経済新聞が入手した要望書は「中国抑止に向けた重要な軍事能力に財政面の資源を集中させる」と明記し、先制攻撃は自国にとってあまりにも打撃が大きく、失敗すると思わせることを目的としていると狙いを説明している。 (2104-030501)

 米インド太平洋軍司令官のデービッドソン海軍大将が3月4日に米シンクタンクAEIで、欧州のEDIの様な計画PDIにより、1月初めに議会に対しFY22~FY27にインド太平洋に$27Bを投入する要求を行ったと述べた。
 この要求ではFY22に$4.6Bを挙げている。  デービッドソン大将は2020年も議会に要求しており、12月に成立したFY21 NDAAではFY21に$2.2Bが認められている。
 デービッドソン大将はPDI最初の要求にグアムへのAegis Ashore配備を挙げており、このために$1.6Bを要求している。 (2104-030512)

5・1・1・4・8 米中オンライン首脳会談

 バイデン米大統領と中国の習国家主席が11月15日にオンライン形式で会談した。
 3時間を超える会談で、バイデン大統領は人権への配慮を要請し、習主席は台湾を巡り挑発には対応すると警告した。
 首脳会談では、チベットや香港、新疆ウイグル自治区での中国の行動など、両国が対立する分野については具体的な成果はなかったものの、冷え込んだ関係の修復する機会となり、双方とも会談は率直で実りあるものだったと評価した。 (2112-111610)

 台湾外交部が11月16日、バイデン米大統領が中国の習国家主席とのオンライン会談で台湾について言及し米国の対台湾政策に変更がないことを習氏に伝えたことに対し、バイデン大統領への謝意を表明した。
 バイデン大統領は会談で、米台関係の基礎となる台湾関係法や米中3つのコミュニケ、台湾への「6つの保証」によって導かれる一つの中国政策を堅持し、両岸の現状を一方的に変更、あるいは台湾海峡の平和と安定を破壊する行為に強く反対する米国の立場を強調した。 (2112-111613)

5・1・1・5 対露戦略

5・1・1・5・1 対露姿勢

対ロシア強硬路線のバイデン政権

 バイデン米大統領が2月4日に国務省で行った初の外交政策演説で、1月下旬に行ったプーチン露大統領との電話会談で「米選挙への介入やサイバ攻撃、市民の毒殺というロシアの攻撃的な行動に対し、米国が抵抗せずにいた時代は終わりを迎えることを明確にした」と述べ、今後はロシアの攻撃的な行動に対抗して行く強硬姿勢を鮮明にした。 (2103-020502)

ロシア当局者らに新たな制裁、駐米露外交官に国外退去命令

 Bloomberg通信などが4月14日、米政府がロシア当局者らに対する新たな制裁を15日にも発表すると報じた。
 Bloombergは関係者の話として、制裁対象はサイバ攻撃や米大統領選への介入に関与したとされるロシア政府や情報機関の当局者ら十数人と20前後の団体で、それとは別に、駐米ロシア外交官ら10人程度に国外退去を命じる見通しという。
 バイデン政権は3月、ロシア反体制派指導者ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件を受け、連邦保安局 (FSB) のボルトニコフ長官らロシア高官7人を制裁対象に指定している。
 その一方でバイデン大統領は今月13日、プーチン大統領との電話会談で数ヵ月以内に第三国で会談することも提案している。 (2105-041505)

 米政府が4月15日、ロシア発とされるサイバ攻撃などを受け、ロシア企業などへの制裁やロシア外交官10人の追放を発表した。 バイデン大統領はこれに合わせて対ロシア制裁に関する大統領令に署名した。
 バイデン政権で大規模な対ロ制裁は初めてで、トランプ前大統領の融和的姿勢からの転換を鮮明にした。
 米大統領府は声明で、ロシアが国際社会をかく乱する行動を続ければ、米国は戦略的、経済的に影響のあるやり方でロシアに代償を払わせると警告した。
 2020年の米大統領選介入に絡み32団体と個人を制裁対象に指定したほか、サイバ攻撃では、ロシア対外情報庁 (SVR) を犯人と断定している。
 またクリミア半島併合に関わったロシア企業など8団体と個人にも制裁を科した。
 さらに米金融機関に対し、ロシア中央銀行などが6月14日以降に発行する債券の取引を制限するとした。 (2105-041508)

 バイデン政権が4月15日にロシアに対する一連の制裁を発表した (2105-041511)

大統領選挙干渉に対する制裁

サイバ攻撃に対する制裁

ウクライナ問題に対する制裁

・全般に対する制裁: ロシア金融機関による米国からの資金調達を規制

・その他: 外交官10名の国外追放

 NATOが4月15日、新たな対ロシア制裁を発表した米国を支持し連帯すると表明した。
 その上で、安全を脅かすロシアの行動に対し、加盟国は個別や共同で集団安全保障を高める行動を取ると強調した。 (2105-041510)

バイデン政権、独露に歩み寄り

 米露政府が5月25日、首脳会談を6月16日にスイスのジュネーブで開くと発表した。
 バイデン米大統領はトランプ前政権が強く反対してきたロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプラインNordstreem 2計画の完了を容認する立場を表明し、欧州の要であるドイツとの関係改善にも手を打った。 (2106-052602)

バイデン大統領、プーチン大統領に人権問題提起

 バイデン米大統領が5月30日に東部デラウェア州で演説し、ジュネーブで6月16日に開くプーチン露大統領との初の首脳会談で、人権問題を提起する意向を示した。
 会談ではロシアによる反体制派ナワリヌイ氏弾圧の問題などを取り上げ、プーチン大統領が人権を侵害するのを米国は看過しないと明白にすると述べた。
 バイデン大統領は、プーチン政権に近いベラルーシのルカシェンコ政権が旅客機を強制着陸させて反政権派を拘束した問題に関しても、会談で懸念を伝える方針で、人権問題を巡りプーチン大統領と厳しいやりとりが予想される。 (2106-053102)

ロシア外交官へのビザ発給の厳格化

 ロシアのアントノフ駐米大使が米政府がロシアに対し、9月3日のビザ有効期限切れに伴い24人の外交官の国外退去を求めたと明らかにした。
 大使によると、米政府がビザ発行の手続きを突然厳格化したため、退去の対象となる外交官の大多数は補充されない。
 アントノフ大使は、米政府が何か特別な問題に基づき今回の要請を行ったかについては明らかにしなかった。
 米政府からもコメントは得られていない。 (2109-080302)

ロシア外交官27人をさらに追放

 ロシアのアントノフ駐米大使が、ロシア外交官27人とその家族が米国からさらに追放され、2022年1月30日に出国すると明らかにした。
 ロシアは、米露関係が悪化した2016年以降、100人超の外交官とその家族が米国から退去を余儀なくされているとしている。 露外務省報道官によると、10月29日の時点で駐米露外交官は国連代表部の職員を含め200人近くとなっている。
 バイデン米政権は10月、在露米大使館員が2017年初めの1,200人から120人にまで減少したため、米大使館に管理者のみしか滞在できない状況になりつつあるとの認識を示した。
 在露米大使館は2021年、外交官以外のビザ発給を停止している。 (2112-112902)

 ロシア外務省報道官が12月1日、3年以上赴任している米国の外交官は2022年1月31日までに国外退去しなければならないと発表した。 報道官は会見で「我々が選択したわけではない」と、あくまで米国の追放への対抗措置であることを強調した。
 InterFax通信によると、米国は55人のロシア外交官を国外追放する方針を決定した。
 アントノフ駐米露大使は先週、27人のロシア外交官が2022年1月30日までに追放され、残りの外交官が6月30日に米国から追放されると公表していた。 (2201-120202)

5・1・1・5・2 Nordstreem 2 問題

バイデン大統領、トランプ政権の規制を見直し

 米大統領府報道官が1月26日、バイデン大統領はロシアとドイツを結ぶNordstreem 2について欧州のためにならないと考えていると述べた。
 一方で、トランプ前政権時代に導入されたNordstreem 2建設計画に関する規制を見直すことも明らかにした。 (2102-012702)

 米国とドイツが7月21日、Nordstreem 2を巡る合意を発表した。
 ロシアがウクライナや中東欧諸国に打撃を与えるためにエネルギーを武器として利用した場合、ドイツは独自の対応を行うほか、EUに対し制裁導入を働き掛ける。
 98%がすでに完成したNordstreem 2はロシア北極圏からバルト海を通してドイツに天然ガスを供給するもので、米国はこの計画に反対していたがバイデン政権は制裁措置で計画を完全に頓挫させない道を選んだ。 (2108-072202)

追加制裁を検討

 Bloombergが3月18日、バイデン米政権がロシアとドイツを結ぶガスパイプラインNordStreem 2の建設を阻止するため追加制裁を検討していると報じた。
 同プロジェクトの親会社NordStreem 2社を対象に加える可能性があるという。
 報道によると、制裁は中間報告の形で発表され、バルト海でパイプライン敷設作業船舶に協力してきた保険会社や、同プロジェクトに支援の船舶や資材を提供してきた企業を名指しする可能性がある。 (2104-031902)

 バイデン米政権が8月20日、Nordostreem 2建設に関与するロシア船籍の船舶と関連企業2社に対する制裁措置を導入した。
 ブリンケン国務長官によると、議会で成立した法律の下で、バイデン政権はこれまでに7団体に制裁を課している。
 プーチン露大統領はこの日、Nordostreem 2はあと15kmを残してほぼ完成していると表明し、米調査会社は9月3日までに完成するとの見方を示しており、制裁措置にかかわらずNordostreem 2は完成する公算が大きいとの見方が濃厚である。 (2109-082101)

5・1・1・6 対北朝鮮戦略

バイデン政権の対北朝鮮政策見直し

 ブリンケン米国務長官が2月1日、バイデン政権の対北朝鮮政策の見直しについて、朝鮮半島の非核化推進へ最も効果的な方法を模索する考えを表明した。
 追加制裁や、同盟国やパートナー国との連携強化などを検討すると述べ、圧力強化で臨む立場を示唆した。外交手段も検討材料になるという。
 バイデン政権は、トランプ前大統領が追求した金正恩総書記との首脳外交に代わる新たな戦略の採用を目指す方針だが、ブリンケン長官は具体策への言及は避け、見直し作業が完了すれば「どのように計画を進めるか明らかにできる」と説明するにとどめた。 (2103-020203)

発射準備段階で無力化する Left of Launch 戦略

 対北朝鮮戦略を再検討中の米国のバイデン政権が北朝鮮の核やミサイル戦力を事前に無力化するLeft of Launch戦略を再検討している。
 これは発射準備→発射→上昇→下降というミサイル飛行4段階のうち「発射」の左側にある「発射準備」段階でミサイル基地やTELを無力化することを意味する。
 ハイテン米統合参謀本部副議長は2月月23日に開かれた米戦略国際問題研究所 (CSIS) 主催のTV会議で、北朝鮮の核やミサイル脅威に対応するには防御戦略では限界があるのは明らかとし、ミサイルが発射される前に遮断するLeft of Launchに焦点を合わせた総合的な防御戦略を推進すべきだと述べた。
 更に翌日にはウィルズバック米太平洋空軍司令官も、太平洋空軍はLeft of Launchを実現できるよう関心を持って推進していると述べた。 (2104-030303)

大統領就任後初の記者会見

 バイデン米大統領が3月25日、ホワイトハウスで記者会見した。 バイデン大統領の正式な記者会見は就任後初めてで、約1時間にわたり質問を受けた。
 大統領は北朝鮮による25日のBM発射は国連安保理決議違反だと断じ、事態をエスカレートさせれば相応の対応を取ると警告した。 (2104-032601)

米議会上院、北朝鮮をならず者国家

 米議会上院軍事委員会が9月22日にFY22国防権限法案 (NDAA) を本会議に提出する際、これに付随する報告書の中で北朝鮮をならず者国家と呼び、米国と同盟国にとって脅威となる最先端兵器を開発していると指摘した。
(2110-092402)

斬首作戦訓練を公表

 在韓米軍が9月22日、北朝鮮首脳部に対する斬首作戦の訓練を13日に平沢基地で実施したことを公表した。
 米軍の特殊作戦司令部から斬首作戦に投入される統合末端攻撃統制官 (JTAC) などが夜間の浸透任務などの訓練を行ったという。 (2110-092402)

5・1・1・7 同盟国、友好国との連携

5・1・1・7・1 英国との同盟強化

駆逐艦The Sullivansと F-35B が英空母 Queen Elizabeth と CSG 2021 を編成

 米国防総省が1月19日に、米海軍駆逐艦The Sullivansと海兵隊のF-35Bが英空母Queen Elizabeth CSGに派遣され、CSG 2021を編成すると発表した。 米海兵隊は昨秋、米英艦隊が2021年に編成されると発表していた。
 ジョンソン英首相はかつて、CSG 2021はオマーン、シンガポール、韓国、日本を拠点に地中海、インド洋、太平洋で活動すると述べている。
 英国防省は1月4日にQueen ElizabethのIOCを宣言した。 FOCは2023年12月に計画されている。 (2102-011909)

5・1・1・7・2 NATO との関係修復

 NATOの国防相会議がオンライン形式で2月17日に始まる。
 バイデン米大統領の就任後初の開催で、NATO軽視が目立ったトランプ前政権時代に冷え込んだ米欧関係の修復に向け、結束が試される。
 NATOのストルテンベルグ事務総長は15日に会議に先立つ記者会見で、トランプ前政権時代の過去数年間の話し合いは難しかったが、今はNATOに強く関与する政権になったと述べ、バイデン大統領はNATOをよく理解していると同盟再強化に期待を示した。 (2103-021704)

 NATOが2月17日に国防相理事会をTV会議形式で開いた。
 トランプ前政権下で揺らいだ米欧同盟を修復してロシアや中国が続けている米欧の分断工作に対抗することを目指すが、多難の道が待ち受けている。 トランプ政権は2020年11月に、加盟国への根回しは乏しいままアフガン駐留米軍の削減を突然発表した。
 トランプ政権が駐独米軍削減を決めたがバイデン政権はこれを一時凍結し、ロシアが実行したとされる大規模なサイバー攻撃でも同国を強く批判している。 (2103-021706)

 米バイデン政権が2月17日からバーチャルで開催されたNATO国防相会議にオースチン国防長官を初めて出席させ、NATOとの関係修復を強調した。 (2104-022402)

 ブリンケン米国務長官が3月23日、NATOの再建と再活性化を進めると表明し、米軍がアフガニスタンから撤退する場合NATOと協力すると述べた。
 その上で、中国が軍事力を増強させ、ロシアが西側諸国の不安定化を図る中、NATO加盟国は団結する必要があるとし、トルコに対しNATOとの連携を呼び掛けた。
 米国のトランプ前大統領は、NATOは時代遅れだと発言し、米国とNATOの関係には摩擦が生じていたことから、バイデン新政権の政策転換には欧州のNATO加盟国から歓迎の声が出ている。 (2104-032306)

5・1・1・7・3 東南アジア諸国との連携

アジア太平洋で統合抑止戦略の推進

 ベトナム、フィリピンなどの東南アジアを歴訪中のオースチン米国防長官が7月27日にシンガポールで、米国はアジア太平洋で統合抑止戦略 (Integrated Deterrence Strategy) を推進していると述べた。
 その上で具体例として、シンガポールとの共同サイバー防衛、日本との新たな宇宙センサの共同配備、英国空母Queen Elizabethを旗艦とするCSGの展開などを挙げた。 Queen Elizabeth CSGには米海軍の駆逐艦と海兵隊のF-35飛行隊も参加している。 (2110-080401)

5・1・1・8 中東戦略

5・1・1・8・1 対イラン戦略

 ブリンケン米国務長官が1月27日の記者会見でイラン核合意について、イラン側が合意を順守すると決断すれば、われわれは専門家の強力なチームをつくるとし、イラン側が先に高濃縮ウラン製造など合意の逸脱を停止することを前提に、復帰に向けてイラン側と協議する用意があるとの考えを示した。 (2102-012802)
5・1・1・8・2 イスラエル承認を巡る問題

イスラエル容認の代償となる F-35 の UAE への売却問題

 消息筋が1月20日、UAEがF-35 50機を米国から購入する合意文書に署名したことを明らかにした。
 文書は、UAEによる購入申し出を正式にするとともに、F-35の仕様や納入日程を受け入れる機会をUAE側に与える内容という。
 米国務省と駐米UAE大使館は現時点でコメント要請に応じていない。
 関係筋の1人によると、UAEはバイデン氏の宣誓就任の1時間ほど前に合意文書に署名した。
 UAEと米国は、バイデン米大統領の就任前から合意締結に取り組んできたが、バイデン大統領は合意を見直す考えを示している。 (2102-012101)

バイデン政権、UAE・サウジへの武器売却凍結 見直しへ

 米国務省が1月27日、バイデン政権がUAEへのF-35売却とサウジアラビアへの武器売却について、見直しのための一時的凍結を決めたことを明らかにした。
 同省報道官は、武器売却の見直しは政権移行に伴う通常の措置だと説明している。 (2102-012801)

5・1・1・8・3 サウジとUAEに対する武器輸出

政権移行間の武器輸出を停止

 ブリンケン米国務長官が1月27日、バイデン政権が政権移行間の一時的な措置としてサウジとUAEに対する武器輸出を停止すると述べた。
 ブリンケン長官はUAEとバーレーンがイスラエルとの国交正常化を行ったアブラハム合意は引き続き尊重すると強調した。
 UAEは2020年12月29日に米国から、F-35A 50機、MQ-9B 18機のほか大規模な空中発射武器を$23.4Bで売却する承認を得ている。
 サウジアラビアも2020年12月29日にGBU-39 SDBを3,000発購入する合意を行った模様である。 (2104-020315)

5・1・1・9 国防予算

5・1・1・9・1 FY2021

 米上院が1月1日、トランプ大統領の拒否権行使により審議差し戻しになっていた国防権限法 (NDAA) を賛成80、反対12で再可決した。
 下院も12月28日に拒否権を覆すのに必要な2/3以上の賛成で可決しており、同法は成立した。
 現政権下で拒否権が覆されたのは初めてで、トランプ氏の求心力低下が浮き彫りになった。 (2102-010201)

 米国防総省が4月30日、トランプ前政権が進めていたメキシコ国境の壁建設について、国防予算を転用していた部分の壁の建設を中止すると発表した。 使われなかった建設費は国防予算に戻される。
 正確な金額は不明だが、ロイタ通信によれば、数十億ドル規模に上るとみられる。 (2106-050103)

5・1・1・9・2 FY22 予算教書

バイデン政権の誕生

 1月20日にバイデン政権が誕生し議会両院で民主党が多数となったことから、国防費の削減が現実のものになってきた。
 バイデン大統領は与党の過激派から国防費を10%以上削減することを求められており、下院軍事委員会のアダムスミス議員や国防次官に就任するヒックス氏もFY22で3~4%、額にして$20B~$30B削減することを求めている。 (2103-011103)

FY22国防費の総額

 米大統領府が4月9日、FY22の国防費に国防総省から$715B、エネルギー省など他の官庁から要求を合わせると$753Bを要求すると発表した。
 $715BはFY21に比べて$11.3B、率にして1.6%、$753Bは1.7%増になる。 (2105-040909)

FY22国防費、$715Bを議会に要求

 バイデン米大統領が5月28日にFY22の国防総省予算として$715Bを議会に要求した。 エネルギー省の核兵器の維持管理費なども含む国防関連予算全体はFY21比で1.7%増の$753Bになる。
 オースティン国防長官は27日に下院歳出委員会のオンライン公聴会で証言し、FY22予算は中国の台頭などをにらみ「将来にわたる米国の防衛と敵対勢力の抑止に最も重要な分野に複合的かつ適切に予算を配分した」と強調した。 具体的な分野では極超音速兵器やAI、微細電子工学、5G移動通信、核戦力近代化などを挙げた。
 中国の脅威に対抗するため、インド太平洋地域に地上配備型長距離ミサイルや宇宙配備レーダ網を配備する「太平洋抑止構想」の予算も盛り込まれる。
 ロイタ通信によると、F-35 85機、水上戦闘艦8隻を要求するが、トランプ政権末期に発表された建艦計画では、水上戦闘艦12隻をFY22に要求するとしていた。 (2106-052805)

 $715Bにのぼるバイデン政権初の国防予算案が5月28日に議会へ送付された。 この中にはA-10、F-15、F-16の退役や、LCS 4隻と巡洋艦2隻の退役が含まれている。
 案では在来型兵器の調達費を$8B減額し先端技術兵器の開発促進に$5Bを増額している。 オースチン国防長官は過去最大の研究開発費としている。
 軍種別では陸軍が$1.5B削減して$174B、海軍が$4.6B増額して$207B、空軍が$8.8B増額して$204B、$15.4Bであった宇宙軍が$17.5Bに増額されている。 (2106-052808)

 米バイデン政権が初めてとなる$715BのFY22国防予算要求を示した。 (2108-061402)

・航空機の退役
・核の近代化
・超高速兵器
 空軍はAGM-183A ARRW 12発に$161Mを要求している。
 またAGM-183Aの即入手可能型HACMに$200.1Mを要求した。
・ABMS
・CH-47F Block Ⅱ
・F-35 および F-15EX
 空軍は初めて、要求したが予算化されなかったリストにF-35Aを挙げなかった。

 米議会下院歳出委員会が6月29日、装備調達費を$1.7B増額する一方、新装備の開発費を$1.6B削減した総額をFY21より$10B多い$706BとしたFY22国防予算案を公表した。 バイデン政権は$716Bを要求している。  民主党議員が作成したこの案では装備調達費をFY21より$2.2B少ない$134.3B、新装備開発費をFY21より$3.2B多い$110.4Bとしている。
 艦船ではバイデン政権で1隻に削減された駆逐艦を2隻に復活したが、総建造数の8隻は変わらないものの要求を$915M増額している。
 航空機ではF-35 85機、F-15EX 12機を要求通り認めたほか、要求にはなかったF/A-18E/Fに12機を追加している。
 戦略ミサイルでは次世代ICBMであるGBSDの開発に$2.5B、新型ALCMであるLRSOWに$581Mを認めている。 (2107-062906)

 米議会下院軍事委員会戦略兵力小委員会が7月下旬、国防総省のGBSD、LRSO、HM防衛及びその他の兵器に関するインフラ整備としてFY22に要求している予算について、更に詳細な資料の提出を要求した。 (2108-072707)

海軍の要求

 米海軍省がFY22に、海軍に0.6%増の$163.9B、海兵隊に6.2%増の$47.9B、合わせて1.8%増の$211.7Bを要求した。
 海軍は戦闘艦4隻と支援船4隻、合わせて8隻を3%減の$22.6B、航空機には15.6%減の$16.5Bで107機を購入するが、年間8隻では400隻以上どころか355隻態勢の樹立も困難で、355隻態勢には毎年10隻の建造が必要となる。 (2106-052810)

 米海軍のFY22要求では2隻要求されるはずであったAegis駆逐艦が1隻しか上げられていない。 このため海軍は要求に盛り込まれなかった項目の第1優先に駆逐艦$1.7Bを挙げている。
 ただ、下院軍事委員会海上戦力小委員会の委員長は余り積極的ではない。
 海軍は第2優先にJADC2、第3優先にPNTの改善を挙げている。 (2107-060310)

宇宙軍の要求

 米宇宙軍がFY22にFY21比13%増の$17.4Bを要求した。 内訳は運用及び維持費が$3.4B、研究開発費が$11.3B、調達費が$2.8Bとなっている。
 主要な事業としてはGPS ⅢFollow-On 2基に$686M、National Security SLV 5基に$1.3B、2028年に打ち上げる初のNGOPI極軌道衛星の追加分$1.3Bなどとなっている。 (2106-052811)

空軍の要求

 米空軍はFY22にFY21の$204Bを4.3%上回る$212.8Bを要求した。 一方FY22では主要機の退役で$1.4Bを削減する。
 削減されるのはA-10 42機で$344M、RQ-4 Block 30 20機で$273M、F-15C/D 48機で$249M、F-16C/D 47機で$31M、KC-135 28機で$113M、KC-10 14機$174M、C-130H 8機$83M、E-8C JSTARS $107Mなどとなっている。 (2108-060905)

陸軍の要求

 米陸軍はFY22にFY21より$5B少ない$173Bを要求した。 尤もFY21では$178Bを要求したものの議会で$176.6Bにされていた。
 近代化経費ではFLRAAを含むFVLに$1.12B、LRHWの飛翔体試作と試験評価に$412M、Patriotレーダに代わるLTAMDレーダに$328Mが要求されている。 (2106-052812)

 バイデン政権が5月28日に議会へ提出したFY22国防費要求$715Bのうち、陸軍経費は$173Bで、そのうち新装備の研究開発費は$12.8B、装備等調達費は$21.3Bであった。
 そのうち主なものは以下の通りである。 (2108-060903)

・LrPF: $1.5B
・次世代戦闘車: $1.5B
・FVL: $1.6B
・ネットワーク: $1.7B
・IAMD: $2.6B
MDA の要求

 米MDAはFY22に$8.917Bを要求した。
 主な項目としてはC2BMCに$603.4M、SBXレーダに$147.2M、LRDRレーダに$133.3M、GMDシステムに$745.1M、NGIに$926.1M、Aegisシステムに$732.5M、Aegis Ashoreに$43.2M、グアムBMDに$78.3M、THAADに$277.9M、超高速ミサイル防衛に$247.9Mなどが当てられている。 (2106-052813)

太平洋抑止構想 (PDI) へ二倍以上の要求

 バイデン米政権が5月28日公表したFY22予算教書で、$715Bの国防総省予算のうち、中国をにらんだインド太平洋地域での米軍の抑止力強化のための太平洋抑止構想 (PDI) に$5.1Bを要求した。
 FY21国防権限法 (NDAA) に盛り込んだ$2.2Bから二倍以上に増額されている。 (2106-052902)

5・1・1・9・3 FY22 NDAA に向けた審議

太平洋抑止構想 (PDI)

 FY22の審議で議会は国防総省が要求したPDIに大きく手を加えると見られる。
 米国議会はFY21 NDAAに2つの理由からPDIを創設した。 第1の理由は予算の透明性確保で、もう一つの理由は資源配分の問題であった。 (2107-060211)

艦船建造費

 米議会下院歳出委員会軍事小委員会がFY22国防予算について、洋上発射核弾頭CM計画を削除しLCS 3隻の退役を中止して、駆逐艦建造を2隻に増やそうとしている。
 軍事小委員会が6月29日に公開した素案では国防総省要求に$1.7Bを増額し、艦船建造費については海軍の要求$23.5Bに$915Mを上乗せしている。 (2107-062908)

5・1・1・9・4 FY22 NDAA

要求に$25B上乗せした下院案

 米議会下院が9月23日にFY22国防権限法 (NDAA) の中心となるFY22国防費総額を国防総省の要求より$25B多い$778Bと決めた。 (2110-092601)

 米下院が12月7日遅くにFY22度国防権限法 (NDAA) 修正案を363対70で可決した。
 FY22 NDAAが認める国防予算総額は$770Bで、バイデン大統領が求めていた額を$25B上回り前年度比5%増となった。
 ロシアや中国に対抗するための取り組みが含まれ、ウクライナ軍支援に$300Mを拠出することや、中国に対抗するための取り組みとして、インド太平洋地域の米軍強化のために立ち上げた基金である太平洋抑止構想 (PDI) に$7.1B拠出する。 (2201-120803)

 米議会下院が12月7日、バイデン政権からの要求を$25B上回る$768BにのぼるFY22 NDAAを363:70で可決し上院へ送った。
 反対票を投じたのは共和党の19議員と民主党の51議員であった。
 下院NDAA案では要求がなかったF/A-18 Super Hornetを12機、17機の要求があったF-15EXに5機を追加し、攻撃型原潜2隻、駆逐艦2隻なども要求より5隻多い13隻を計上している。 (2201-120807)

要求に$24B上乗せした上院案

 米議会上院歳出委員会が10月18日、FY22国防予算を大統領要求に5%、$24B上乗せする決定を行った。
 この中で中国と対峙する太平洋地域での経費に$2.5Bを追加したほか、次世代兵器導入に向けたインフラ整備に$1.3B、州兵の装備更新に$1.5Bの追加などがあがっている。 (2111-101804)

FY22 NDAA 案

 米議会上院が12月15日、政権の要求より$25B多い総額$740BのFY21 NDAAを89:10で可決した。
 FY22 NDAAではF/A-18に12機、12機要求されていたF-15EXに5機多く配分したほか、F-35にも85機を振り当てた。 艦船ではSSKと駆逐艦にそれぞれ2隻ずつと、要求より5隻多い13隻を割り当てた。
 一方で陸軍を900名削減して485,000名、海兵隊を2,700名削減して178,500名に、海軍は900名減の346,920名、空軍は4,200名減の329,220名に、宇宙軍は8,400名になる。
 中国に対抗する太平洋抑止計画 (PDI) には要求より$2B多い$7.1B、$3.4Bが要求されていたロシアに対抗する欧州抑止計画 (EDI) には$4Bが当てられ、ウクライナへの軍事援助に要求より$50M多い$300Mが配分されている。 (2201-121507)

FY22 NDAA が成立

 バイデン米大統領が12月27日、FY22国防予算の大枠を$778Bとした国防権限法案 (NDAA) に署名し同法は成立した。
 FY22 NDAAでは2022年の米海軍主催の環太平洋合同演習 (RIMPAC) に台湾を招待するよう政権に促し、中国への対抗姿勢を鮮明にしている。 (2201-122802)

5・1・2 各軍の戦略戦術

5・1・2・1 基本戦略

5・1・2・1・1 政権交代に伴う態勢見直し

 米国防総省報道官が2月5日、バイデン政権による世界規模の米軍態勢の見直しが今年半ばに完了する見通しだと述べた。
 中国やロシアとの大国間競争を見据え、日本や韓国、ドイツなどに前方展開する戦力の最適化を急ぐ方針である。
 報道官は、ドイツ政府と事前協議をほとんど行わず在独米軍削減を発表したトランプ前政権との違いを強調した。 (2103-020601)
5・1・2・1・2 統合戦闘構想の見直し (Expanded manoeuvre)

 米統合参謀本部副議長のハイテン空軍大将が8月11日にSpace amd Missile Defense Symposiumで統合参謀本部副議長が議長を務める統合要求監査評議会 (JROC) がIAMDへ概念を統一するための統合戦闘構想の見直しをExpanded manoeuvreの名の下に進めていると述べた。
 JROCはIAMDのため、統合火力、競争兵站、JADC2、情報優越の4分野を承認している。 (2110-082502)
5・1・2・2 宇宙軍

 米国防総省の宇宙開発庁 (SDA) が、軍に特化した通信及びネットワークの構成を目指しており、軍の戦術電子戦をも支援しようとしている。
 SDAが進めている地上及び宇宙空間の脅威を発見識別するNDSAでは、今までにないTitle 10に位置づけられたセンサを宇宙空間に配置しようとしている。
 NDSAは次の6分野で構成されている。 (2107-060001)
Tracking Layer

Battle Management Layer

Navigation Layer: 代替NPT (A-NPT) の提供

Deterrence Layer: 静止軌道より外側での敵の動きを阻止

Support Layer

Custody Layer

 米宇宙軍作戦部長アルマーニョ中将がMitchell Institute Space Advantage Research Centerの催しで6月末、2021年後半に宇宙軍最初の部隊となる複数の軌道を周回する衛星によるミサイル早期警戒部隊の編成を明らかにすると述べた。 (2108-070605)
5・1・2・3 陸 軍

5・1・2・3・1 将来の陸軍の役割

過去40年来最大の方針転換

 米陸軍参謀総長のマッコンビル大将がCSISで3月30日、陸軍は過去40年来最大の方針転換をして最優先課題を長距離精密打撃におき、西太平洋諸島を移動展開して中国艦の撃沈や不法占拠地上軍の撃破を行うと述べた。
 この点についてFt. Shafterに司令部を置く米太平洋陸軍司令官のラカメラ大将は、陸軍と海兵隊の競合はないとのべた。
 ラカメラ大将によると陸軍の役割は量で、まず海兵隊が急速展開したあとに陸軍が展開すると言う。
 陸軍は太平洋地域に52,000名を配置しており、更に米西海岸から25,000名を増派できる体制にあるという。 (2104-033107)

5・1・2・3・2 編成の見直し

師団改編のパイロット計画

 米陸軍Maneuver Center of Excellence司令官が米陸軍協会 (AUSA) 総会の会場で10月11日、陸軍がパイロット計画として第1騎兵師団隷下旅団を2023年夏までに大隊規模の部隊に再編し評価を行う計画であることを明らかにした。 (2111-101504)

 米陸軍がマルチドメイン作戦 (MDO) への対応のため師団レベルを焦点に改編を検討していて、そのパイロットケースとして第1騎兵師団を2023年中頃から末にFOCとなることを目指して改編する。
 陸軍は100年にわたり師団を野戦部隊の中核に据えてきたが、2004年に任務別旅団が中心になるよう改編し、2005年に作戦基本部隊となる旅団戦闘団を編成したが、それから20年近く経ち中露との対決に入り更なる改編の必要が生じている。
 再編では編制の中核を師団とし、突破師団 (penetration division) 2個と突入師団 (forcoble-entry dicision) 2個を編成する考えで、第1騎兵師団は突破師団になるもので、陸軍は2020年にReARMM部隊としていた。 (2112-102003)

5・1・2・3・3 陸軍宇宙旅団

 米陸軍第1宇宙旅団旅団長のブルック大佐が10月11日にDefense Newsとのインタビューで、マルチドメイン作戦遂行のため旅団が戦闘部隊指揮官を支援できるよう動いていると述べた。
 それによると旅団は、6名で編成される陸軍宇宙支援班 (ARSST) と4名からなる宇宙計画班 (SCPT) を師団、軍団、軍司令部に派遣するという。 (2111-101102)
【註】米陸軍第1宇宙旅団は2005年に創設され、1999年にコロラド州Ft. Carsonで創設された第1宇宙大隊と2017年に創設されコロラド州 Colorado Springsに駐屯する第2宇宙大隊、及び2001年創設のコロラド州兵第117宇宙大隊で構成されている。
 2019年にはAN/TPY-2レーダを装備するミサイル防衛中隊が5個編成され、インド太平洋軍、欧州軍、中央軍に派遣されている。
5・1・2・3・4 長距離火力の将来構想

 米陸軍が新兵器の導入と新部隊の創設により野戦砲兵の改革を行おうとしている。
機甲旅団の砲兵大隊

 従来のM109 Paladin 155mm SPHを装備するがM109A6をM109A7に更新する。
 また射程が25哩に延びた新型RAPであるXM1113弾を発射する。

機甲師団の砲兵大隊

 XM1113 RAP弾を使用れば射程が40哩以上になるM1299 ERCAを装備する。
 M1299はM109の車体に砲身長を39口径から58口径に伸ばした砲身を搭載し、将来はラムジェット推進弾も発射する。

軍団砲兵

 砲とミサイルを装備していた砲兵旅団を、HIMARSとMLRS装備部隊に改編し、射程を90哩以上に伸ばした長射程型のGMLRSと、射程が300哩以上になるPrSMを発射する。

戦域軍砲兵

 既に5個編成されているMDTFが入る。 MDTFは太平洋戦域に2個、欧州に1個、北極圏に1個が配置され、残りの1個は戦略予備になる。
 MDTFは長射程ミサイル部隊を2個中隊持ち、射程1,100哩の中距離を担当する中隊が装備するMRCは海軍が装備している亜音速のTomahawk及び超音速のSM-6を装備する。
 長距離を担当する中隊は海軍と共同開発している射程が数千哩と推定されるLRHWを装備する。

 また戦域軍に配置されるMDTFの編成は以下のようになる。 (2106-051010)
I2CEWS (Intelligence, Information, Cyber, EW and Space)大隊

  情報中隊×2
  通信中隊
  長距離センシング中隊
  情報保全中隊。

戦略火力大隊

  HIMARS中隊
  RMC中隊
  LRHW中隊

防空砲兵大隊

旅団支援大隊

 米陸軍当局者がBreaking Defenseに、陸軍が開発している長距離超高速兵器LRHWの射程は2,775km (1,725哩) 以上になると述べた。 海軍が開発しているCPSの射程も同じ程度と言う。
 射程が2,775km以上であればグアムから発射した場合、台湾を取り囲む中国PLA部隊を射程内に収めることになる。
 更に台湾、日本、韓国から発射すれば中国内陸の千哩以上を射程内に入れることになる。
 米陸軍の長距離火力と射程は以下の通りである。
Paladin SPH:  25哩 (  40km)

ERCA    :  43哩 (  70km)

GMLRS   :  43哩 (  70km)

GMLRS-ER  :  93哩 ( 150km)

ATACMS   :  186哩 ( 300km)

PrSM    :  310哩 ( 500km)

MRC    : 1,118哩 (1,800km)

LRHW    : 1,725哩 (2,775km)

(2106-051210)
【註】米陸軍はMDTFの中心に、HIMARS中隊、MRC中隊、LRHW中隊からなる戦略砲兵大隊を据えているが、HIMARS中隊が発射するGMLR-ERの射程は150kmであることから、GMLRS-ERが中国本土に届くためにはMDTFを台湾に展開する必要がある。
5・1・2・3・5 超高速ミサイル装備中隊の戦列化

 米陸軍がFY20末となる9月までに、最初に超高速ミサイルを装備する中隊に発射機、車両、トレーラなどの装備を支給する。 ただし訓練用キャニスタの配備は2発配備されるものの、実弾の配備はFY23になる。
 中隊は10月に訓練を開始し、海軍が1Q/FY22に計画している発射試験と、その後4Q/FY22と1Q/FY23に行われる発射試験に備える。 3Q/FY21に行われる最初の発射試験には参加しない。
 Lockheed Martin社が受注しているC-HGBの発射試験は2020年3月に行われ、標的点の6吋に着弾した。
 C-HGBは弾頭、誘導装置、ケーブル、耐熱装置で構成され、HGB本体はDynetics社が製造している。 (2103-020906)
5・1・2・4 海 軍

400隻構想から355隻構想へ

 現在300隻以下である米海軍の有人戦闘艦数について、退陣間近の2020年12月にトランプ政権は、2026年までに316隻、2030年代初めに355隻、2040年代初めまでに400隻にするとしていたが、米海軍作戦部長のギルティー大将は4月27日にオンラインで、最終目標は355隻が妥当と思うと述べた。 (2105-042709)

UUV / UAV の多用

 米海軍作戦部長ギルデイ大将がCNO Navigation Planで、大型無人艦艇が将来大きな役割を果たすようになるとしている。
 米海軍はFY22~FY26に$4.3Bをかけて大型USV (LUSV) を12隻、中型USV (MUSV) を1隻、超大型UUV (XLUUV) を8隻建造する計画である。
 LUSVは全長200ft~300ft、排水量1,000t~2,000tで、MUSVは45ft~190ftで500t程度、XLUUVは胴径が84吋以上という。 (2103-022606)

最大規模演習 Large Scale Exercise 2021

 米海軍が世界17のタイムゾーンで5個のナンバー艦隊と25,000名、海兵隊が3個遠征軍の全てを参加させた、第2次大戦開始前以降最大規模の演習Large Scale Exercise 2021を8月3日~16日の間に実施しているが、太平洋地域で海兵隊が8月15日に海軍の廃艦に対してNSMの実射を行う。
 この実射は海軍及び空軍との連携戦闘の確認を目的としている。 (2109-081406)

5・1・2・5 空 軍

5・1・2・5・1 将来の戦闘機体系

 米空軍参謀総長のブラウン大将が5月12日、空軍は現在7機種装備している戦闘機を4+1機種に削減すると述べた。 この中にはA-10 CAS機も含まれるという。
 残る4機種はNGAD、F-35A、F-15EX、F-16でF-22はリストになく、F-16は逐次F-35Aに換装されるという。 (2106-051309)
5・1・2・5・2 爆撃機の大規模展開

6月17日~18日

 ルイジアナ州Barksdale AFBのB-52H複数機が、海外機動訓練として6月17日~18日に27時間かけて北極圏や北太平洋上空を12,000哩にわたり飛行し帰投した。 また17日にはスペインMorón空軍基地のB-52H 4機も演習に加わった。
 この間ノルディック飛行ではノルウェー軍の攻撃目標管制を行い、北太平洋では米インド太平洋軍が飛行管制を行った。
 更に英空軍第100空中給油航空団、ワシントン州Fairchild AFBの第92空中給油航空団、グアムAndersen AFBの第36航空団、Hickam基地のハワイ州兵空軍の第154航空団、カリフォルニア州Travis AFBの第60空輸航空団が空中給油支援を行った。 (2107-062205)

9月26日

 ロシア国営TASS通信が 9月26日、米空軍機が太平洋上で領空に接近したため、戦闘機が緊急発進で対応したと報じた。
 TASS通信が国防当局の話として伝えたところによると、ロシア領空に接近したB-52Hを誘導するためSu-35Sが緊急発進したが、ロシア領空の侵犯や機体同士の危険な接近は起きなかったとしている。 (2110-092701)

10月: B-1B が15年ぶりにディエゴガルシアへ展開

 米空軍のB-1Bと将兵200名が、15年ぶりにインド洋の英領ディエゴガルシアへ展開した。
 派遣されたのはサウスダコタ州Ellsworth AFBを基地とする第28爆撃航空団のB-1Bだが、Ellsworth AFBの報道官は派遣機数と派遣期間については明らかにしていない。 (2111-102006)

11月上旬: 爆撃機を使った核攻撃演習

 ショイグ露国防相が11月23日、米国が爆撃機を使って月初めにロシアを目標とする核攻撃演習を実施したと非難した。
 爆撃機がロシアの国境から20km以内に接近したという。
 ショイグ国防相は、米戦略爆撃機の活動が活発化しており、11月に入りロシアの近くで行われた飛行回数は30回と、202年同時期から2.5倍以上に増加していると語った。 (2112-112403)

5・1・2・5・3 Vanguard 計画

 米空軍研究所 (AFRL) 所長のプリングル准将が空軍協会 (AFA) の年次シンポジウムで2月24日、AFRLが優先的に実施している先進技術開発Vanguardが2022年以降に6件になると述べた。
 Vanguard計画では現在、Skyborg低価格自動戦闘UAV、Golden Horde群飛行UAV、NTS-3 NTSの3件が挙がっている。 (2103-022506)
5・1・2・6 海兵隊

Force Design 2030

 米海兵隊司令官のバーガー海兵大将がCNASのonline行事で12月14日、海兵隊が進めようとしているForce Design 2030の推進がFY23の予算次第で微妙な状態になっていると述べた。
 バーガー大将は今月上旬に行われていたReagan National Defense Forumで海兵隊が要求している軽揚陸艦 (LAW) を例に挙げていた。 (2201-121508)

軽揚陸艦の装備構想

 米海兵隊総司令官バーガー大将が4月29日に議会下院軍事委員会に文書で証言し、海兵隊が計画している軽揚陸艦 (LAW) にミサイルを装備し打撃力を持たせると述べた。
 LAWは海兵隊が計画している新型戦闘艦で、インド太平洋で中国を対象に海兵隊がshore to shoreの揚陸能力を持つことを狙っている。 (2105-043008)

 海兵隊は単価が$100M~150Mの軽揚陸艦LAWも要求しており、30~50隻の装備を考えている。 (2106-051312)

地対艦ミサイルを最優先

 米国防総省がFY22予算要求を示す前の5月13日に、海兵隊司令官のベルガー大将が海兵隊の最優先として地対艦ミサイルを挙げた。
 国防総省は2020年11月にカリフォルニア海岸で、JLTV車にNSM<ミサイルを搭載したNMESISシステムの発射試験を行い、移動中の標的艦に命中させている。 (2106-051312)

 米海兵隊は2030年を目指した改革を、従来型の兵器を破棄して将来予想される将来の戦いに役立つ兵器を装備する着せ替え方式で進めようとしている。
 このためFY22要求では最優先にNSM 35基として$57.8Mを要求している。
 NSMはForce Design 2030に基づき編成される最初の部隊である第3海兵沿岸連隊に編制される2個中距離ミサイル中隊が装備する64発を確保するためFY22で29発を追加調達する。
 この他に海兵隊は長距離対艦用としてTactical Tomakak 44発の他、AN/TPS-80 G/ATORレーダ44基も要求している。 (2107-060210)

最大規模演習 Large Scale Exercise 2021

 米海軍が実施している第2次大戦開始前以降最大規模の演習Large Scale Exercise 2021では、海兵隊が太平洋地域で8月15日に海軍の廃艦に対してNSMの実射を行う。
 この実射は海軍及び空軍との連携戦闘の確認を目的としている。
 海兵隊は射程100nm以上、弾頭重量500-lbのRaytheon社製のNSMをROGUE車と組み合わせてNMESISとして採用している。 (2109-081406)

5・1・3 インド太平洋軍

5・1・3・1 インド太平洋軍の運用構想

5・1・3・1・1 情勢判断

 米インド太平洋軍の情報部長スティードマン海軍少将が3月2日、バイデン政権に代わっても米国の太平洋地域での方針は変わらないと述べた。 (2105-031705)

 米インド太平洋軍司令官のデビッドソン海軍大将が3月9日に議会上院軍事委員会で証言し、従来のこの地域における中国に対する米国の抑止力は崩れつつあると警告した。 (2105-031701)

 米太平洋空軍司令官のウィルスバッハ大将が9月21日に開かれた空軍協会 (AFA) の会合で、2020年に2機の中国軍機と1機のロシア軍機が米軍機に対して危険な接近飛行を行ったが、これらは氷山の一角に過ぎないと述べた。
 一方、インドがロシアからS-400を導入することについては異議がないとも述べた。 (2110-092109)

5・1・3・1・2 戦略重心の東遷

 世界の軍事力の重心が西から東へ移ってきた。 米軍の国外の兵員配置は20年間で欧州や中東に代わり東アジア太平洋が最も多くなった。
 世界全体の兵力もアジア太平洋の比重が高まる。 冷戦期の東西対立から対テロ戦争を経て、中国が安全保障上の脅威になった変化を映す。
 世界全体の兵力は縮小が進み、冷戦期に東西対立の前線だった欧州や旧ソ連諸国は30年間で半分以下に減らしたが、対照的に中国周辺の新興国などが増加した。 インドネシアは30年間で4割、フィリピンは3割、国境紛争を抱えるインドは15%伸び、アジアの比重が顕著に高まった。 (2106-052301)
5・1・3・1・3 太平洋抑止構想 (PDI)

 米国でインド太平洋を担当するキャンベル調整官が8日にシンクタンクCNASF主催のオンラインイベントで、中国との戦略的競争が激化している太平洋地域の島国を支援するため、日本、ニュージーランド、オーストラリアなどの同盟国と協力していく方針を示した。
 太平洋諸島フォーラム (PIF) に加盟する5ヵ国が2月に次期事務局長の選出を巡る対立からRIFの離脱手続きを開始すると表明しているが、キャンベル調整官は、分裂したフォーラムの再招集に向け、他国と協力したいと表明した。 (2107-060903)
5・1・3・1・4 インド太平洋軍の増強

拠点を分散

 米インド太平洋軍司令官デービッドソン海軍大将が3月1日、インド太平洋地域で米軍の部隊を少数の基地に集中させると中国の精密ミサイル攻撃で標的になりやすいことから、拠点を分散させていく方針を示した。
 米軍は冷戦後は効率性を重視して基地を集約してきたが、戦略の転換を迫られている。
 なかでも分散を進めるのが海兵隊で、遠征前線基地作戦と呼ばれる戦略を進めていて、有事には多くの小規模の部隊が中国軍のミサイルの射程内である第一列島線付近にある離島や沿岸部に分散して基地を設営して、対艦ミサイルや対空防衛、海洋の情報・監視・偵察などの拠点とする。
 また海兵隊は小型揚陸艦の開発を進め、作戦の実現を目指している。 (2104-030201)

グアム「要塞化」が最優先

 米インド太平洋軍司令官のデービッドソン海軍大将が3月4日に米シンクタンクで講演し、中国有事の際に重要軍事拠点となる米領グアムに強固なIAMD体制を築くことが最優先だと強調した。
 2020年7月にはグアムへのAegis Ashore配備に言及しており、改めてグアムの要塞化を進める意向を示した。
 デービッドソン大将は、グアム周辺で中国軍の艦艇や潜水艦による活動が活発化しているとも述べた。 (2104-030505)

 米太平洋艦隊司令官のアキリーノ海軍大将が3月23日に上院軍事委員会で、グアムが太平洋抑止戦略 (PDI) で引き続き最重要な位置を占めていると述べた。
 NDAA FY21ではPDIに$2.2Bを割り当てている。 (2105-033105)

Guam Defense System の計画開始、Aegis Ashore の設計開始

 米国防総省がインド太平洋軍司令官の強い要望を受けGuam Defense System計画を開始し、MDAに対し米国内初となるAegis Ashoreの設計開始を命じた。 (2104-030906)

 米国防総省の予算関係筋によると、グアムにAegis Shoreを設置する計画はFY22国防予算に盛り込まれる模様である。
 これはインド太平洋軍司令官デイビッドソン海軍大将が第1優先事項と述べていることによるもので、総額$27Bの5ヵ年計画である太平洋防衛計画 (PDI) に含まれる。
 PDIはFY22に$4.6Bが要求されそのうちの$350Mがグアム防衛システム (GDS) に当てられる。
 GDSには2027年までに$1.3Bが当てられ。 (2104-032308)

インド太平洋軍司令官が地上配備型を含む長距離兵器を要求

 3月9日に上院軍事委員会の公聴会に出席した米インド太平洋軍司令官のデービッドソン海軍大将が中国の軍事力拡大に懸念を表明し、米軍は地上配備型を含め、西太平洋で長距離兵器がさらに必要との認識を示した。
 インド太平洋軍が議会に2月提出した予算資料によると、米国は第1列島線に沿って地上配備型の兵器を増やす必要があり、FY22だけで$408M、FY23~FY27には$2.9Bがかかるとした。 (2104-031003)

インド太平洋陸軍が地上配備遠距離打撃兵器を装備した MDTF を配置

 米陸軍がアジアにおける基盤を向上させるため地上配備遠距離打撃兵器を装備したMDTFを配置しようとしている。
 陸軍は今まで尖閣諸島を念頭に最初のMDTFをインド太平洋地域に配置したが、米陸軍参謀総長のマッコンビル大将が3月11日に記者会見で、インド太平洋地域に2番目の部隊の配置を検討していることを明らかにした。 (2105-032401)

海軍 Task Force の常設

 米政治メディアPoliticoが6月15日、急速に拡大する中国の軍事力に対抗するため、米国防総省が太平洋地域に常設の海軍Task Forceを創設することを検討していると報じた。
 太平洋地域での軍事活動に作戦名を付けることも視野に入れている。 いずれも構想段階だが、実現すれば米政権の対中強硬姿勢を行動で裏付けることになる。
 関係筋によると、Task Force構想はNATOが冷戦期に、有事の緊急対応部隊として当時のソ連に対する抑止の一翼を担って設置した海上即応部隊がモデルになる可能性がある。
 ただ、アジア版の海軍Task Forceに米国以外の国が艦艇や航空機を派遣するかどうかは未定という。 (2107-061602)

兵站が問題との指摘

 米海兵隊司令官のバーガー大将が9月1日にCSISのイベントで、米国は戦いの場を中東や中央アジアからインド太平洋に移そうとしているが、そのためには兵站が問題になると述べた。 (2111-091503)

5・1・3・1・5 陸海空軍統合大規模演習

 米陸海空軍が7月に、グアム、北マリアナ、オーストラリアを舞台に2件の大規模演習を繰り広げている。
 Pacific Iron 2021演習にはアラスカ、アイダホ、ハワイ、日本から35機以上がグアムとテニアンに集結して7月12日から行われている。
 この演習にはアイダホ州Mountain Horme AFBかせF-15E 10機、横田基地からC-130J 2機のほか、アラスカ州Elmendorf-Richardson AFBとハワイ州Parl Harbor基地の州兵空軍からF-22合わせて25機も参加している。
 一方Tarisman Sabre演習は7月14日から米豪日韓、及びニュージーランドから17,000名がオーストラリアに集まり、16日にはShoalwater湾演習場で沖縄の1-1ADA大隊が標的機に対するミサイルの射撃を行った。 (2108-071908)
5・1・3・2 沿岸警備隊

ホノルルに5隻の最新警備艦

 米沿岸警備隊はホノルルに、最強力艦2隻を含む5隻の最新警備艦を配して、太平洋での違法操業の取り締まりや中国の影響力拡大に対応しようとしている。
 ホノルルに配置されているのは全長418呎の国家保安警備艦 (NSC) 2隻と、全長154呎の高速対応艦3隻で、2月中旬にフィリピン海を哨戒していたNSCのKimballは2月下旬に巡視船あきつしまと小笠原近海で共同訓練を実施している。
 また3月上旬には海兵隊員2名を乗せて硫黄島で行われた戦没者慰霊祭に参加している。 (2105-040403)

グアムに高速警備艇3隻

 米沿岸監視隊のSentinel級最新型高速警備艇Frederick Hatchが4月21日にキーウェストを出航し、母港となるグアムに向かった。
 全長154呎、満載時排水量353tのFrederick Hatchは今までの110呎級警備艇と替わって、2020年後半に配備された同型艇のMyrtle Hazard及びOliver Henryと3隻で任務に就く。
 Sentinel級高速警備艇は25mm遠隔操縦砲1門と.50機銃4丁を装備し、速力28kt、航続距離2,500nmの性能を持つ。 (2105-042106)

5・1・3・3 海 軍

対馬海峡で航行の自由作戦

 米海軍第7艦隊が2020年末、日本政府による対馬海峡での領海設定の基準を問題視し、周辺で艦艇や航空機を活動させる航行の自由作戦を実施していた。
 第7艦隊は「過剰な海洋主権への異議申し立て」が目的だったと説明し、日本政府は国際条約に基づく適切な領海設定だと反論している。 (2105-040504)

Carl Vinson の日本配備

 インド太平洋地域に配備される米空母Carl Vinsonが、母港であるサンディエゴを8月3日に出港し太平洋を航海している。
 Carl Vinsonは日本配備されている空母Ronald Reaganが現在アラビア海で中東地域に対する航空支援を担っていることから、その空白を埋めるものとみられる。 (2109-080901)

 8月2日にサンディエゴを出港したCarl Vinson CSGの航空団Air Wing Fallonには初めてF-35Cが10機編入されているほか、F/A-18E/Fも最新型になっている。
 更に通常4機で構成されるE-2D AEW&Cは5機に、通常5機のEA-18G Growlerも7機に増強され、補給用にCMV-22B Ospreyも組み込まれている。 (2109-081009)

5・1・3・4 空 軍

5・1・3・4・1 展 開

B-52H 4機が B-1B と交代してグアムに展開

 米空軍B-52H 4機が1月28日、B-1Bと交代してグアム島のAndersen AFBにおける定期的な展開任務を開始した。
 今回Andersen AFBに飛来したのは、ルイジアナ州Barksdale AFBを基地とする第96爆撃飛行隊の4機である。 (2103-020207)

 グアムのAndersen AFBに2月からルイジアナ州Barksdale AFBを基地とする第2爆撃航空団のB-52 4機が派遣されている。
 B-52の駐留はいつまでなのかは分からない。
 グアムには2020年にB-52、B-1、B-2が交代で駐留し、米海軍や航空自衛隊との共同訓練を行っている。 (2105-041907)

F-22 25機が西太平洋に展開

 米空軍が7月12日、7月に実施するPacific Iron 2021演習でハワイ州兵空軍とアラスカからF-22 25機が西太平洋に展開することを明らかにした。
 この演習にはF-22 25機のほかF-15E 10機とC-130J 2機も参加し、グアムの滑走路3本と北マーシャル諸島テニアン島の1本に展開する。 (2108-071409)

グアム Andersen AFB の B-52 がインドネシア空軍と共同訓練

 ルイジアナ州Barksdale AFBの第2爆撃航空団と第307爆撃航空団から8月26日にグアムAndersen AFBに飛来してきたB-52 Task Forceが31日に航空自衛隊のF-15と太平洋空域のどこかで共同訓練を実施した。
 その翼日にはインドネシア空軍のF-16と初めての共同訓練を実施した。
 ノースダコタ州Minot AFBのB-52複数機は7月にTalisman Saber演習参加のためグアムに飛来し、6月には欧州と北極圏を12,000哩にわたり飛行した複数のB-52が太平洋空域を飛行している。 (2110-090303)

5・1・3・4・2 訓練、演習

Cope North多国籍演習、ジャングルに滑走路

 Air Force Magazineが1月26日、米空軍が2月にグアムのAndersen AFBで実施するCope North多国籍演習で同島北西の滑走路にF-35とF-16を展開する計画だと報じた。
 Cope Northには日米豪3ヵ国から毎年100機の戦闘機と2,500名の人員が参加している。
 Andersen AFBの東北滑走路はC-130やヘリコプタが臨時使用できるよう作られたジャングルの中にある全長2.4kmの簡易滑走路で管制塔もなく、舗装状態も良くない。 (2102-012902)

Northern Edge 演習

 米太平洋空軍が主導し隔年に実施されるNorthern Edge演習が5月3~14日に、各軍の50個部隊から200機の航空機と4,000名を集めて実施されJADC2が検証される。
 この演習にはF-15EXも参加し、搭載した電子戦システムEPAWSSも使用される。 (2105-042807)

グアムを拠点に陸軍と空軍の演習

 米陸軍と空軍の演習がグアムを拠点にして同時に行われる。
 空軍はノースダコタ州Minot AFBから複数機のB-52が飛来し、4月から駐留しているルイジアナ州Barksdale AFBからのB-52 4機合流してTalisman Sabre演習に参加する。
(2108-071606)

5・1・3・5 陸 軍

陸軍 MDTF の増強

 米陸軍がアジア地域での優位を確保するため長距離打撃能力を有するMDTF 1個隊を尖閣諸島を焦点にインド太平洋に編成したが、陸軍参謀総長のマッコンヴィル大将は3月11日に2番目の部隊の編成を示唆した。
 MDTFは超高速ミサイルから中距離ミサイル、PrSMまでを装備し、各種長距離精密誘導能力を有する。 (2104-031203)

Patriot や HIMARS の展開演習

 米陸軍が7月14日に開始されたTalisman Sabre演習にPatriot 1個中隊を投入し、16日にオーストラリア・クイーンズランド州Shoalwater湾演習場で標的機2機に対して射撃を実施した。
 6月24日~7月9日に行われたOrient Shield年次演習ではPatriot 1個中隊が奄美大島に展開すると共に、HIMARS 1両が北海道に展開し、駐日米軍基地に対する脅威への備えを確認した。
 オーストラリアに展開したPatriotと65名の将兵は相模補給廠の第38防空砲兵旅団と嘉手納基地の1-1ADA大隊から派遣された。 (2108-071605)

グアムを拠点に陸軍と空軍の演習

 米陸軍と空軍の演習がグアムを拠点にして同時に行われる。
 ワシントン州のLewis-McChord基地の陸軍第1軍団は、8月6日に始まるForager 21演習をグアムで主導する。
 この演習には第82空挺師団と陸上自衛隊部隊が第1特殊作戦群と共に降下する。
 またApache攻撃ヘリ、Stryker、Avenger、HIMARSと4,000名の将兵が参加する。 (2108-071606)

東南アジアへのアクセス拡大に意欲

 ウォーマス米陸軍長官が12月1日、中国を抑止する戦略の一環として、東南アジアへのアクセスと基地配置の拡大に意欲的だと述べた。
 米シンクタンク戦略国際問題研究所 (CSIS) に対し、米国のアジアにおける軍備の位置付けはこれまで北東アジアに重きを置いていたが、東南アジアに拡大するという姿勢の変化は米国およびその同盟国の双方にとって有益だが、何が必要かについて現実的になる必要があるとした。
 米陸軍がどこのアクセス拡大に関心を持っているかについては言及しなかったが、米軍駐留を認めるフィリピンとの協定延長を巡る進展は非常に重要だと述べた。 (2201-120204)

5・1・3・6 海兵隊

3個沿岸連隊を太平洋地域に配置

 米海兵隊の戦闘開発研究所副所長のワトソン准将が2月3日に、海兵隊が2030年までに3個沿岸連隊を太平洋地域に配置する計画であると述べた。
 同准将によると海兵隊は、2023年に最初の沿岸連隊を編成するという。 (2103-020305)

遠征前方基地作戦(EABO)

 米海兵隊関係者が8月14日、海兵隊が海軍と共にハワイ周辺で、過去最大規模となる25,000名以上が参加した演習をしていることを明らかにした。
 中国の長距離ミサイル能力向上に対抗する海兵隊の新作戦遠征前方基地作戦(EABO)の訓練も含まれている。
 演習期間は3~16日で、世界各地の海兵隊員や海軍兵が参加しEABOは島嶼部に部隊を展開して、攻撃拠点を確保するという想定で、訓練は沖縄に司令部がある海兵隊第3海兵遠征軍が実施している。 (2109-081404)

 米海軍の第7駆逐戦隊司令官のオグデン大佐がシンガポールで10月18日、海軍と海兵隊が太平洋地域で遠征基地作戦 (EABO) に力を入れていると述べた。
 その上で特に9月に行われたNoble Jaguar統合演習を例に挙げた。
 写真は米海軍のNSMと組み合わせた海兵隊のESISシステムである。 (2111-102606)

 米海兵隊数千名が自衛隊と実施した日米最大規模のResolute Dragon 2021演習は、米インド太平洋軍が進めるEABO構想の評価試験の場でもあった。
 EABO構想とは、海兵隊が戦場に小規模で簡易に設営できる陣地を複数展開するもので、今回の演習では沖縄から矢臼別までの12ヶ所に前進陣地を構築したという。 (2201-121311)

ハワイ海兵沿岸連隊が発足

 米海兵隊で初のハワイ海兵沿岸連隊が間もなく、カネオヘ湾の第3海兵連隊第1大隊を元に1,800~2,000名で発足する。
 海兵沿岸連隊は今まで保有していた水陸両用戦闘車16両と野砲全てを返納し、代わって新型の軽揚陸艦1隻と揚陸舟艇で行動する。
 第12海兵連隊第1大隊の500~650名は配置転換され、残りの50~80名は車載NSMを装備する中距離ミサイル中隊に改編される。
 戦闘突撃中隊の60名は海兵沿岸連隊の工兵小隊になる。
 一方今まで36機以上のヘリを装備していた飛行隊はKC-130 12~15機を装備する飛行隊になり、RQ-21A BlackjackはMQ-9A Reaper 6機に換装される。 (2112-111309)

5・1・4 在韓米軍

THAAD 能力向上

 米韓連合軍兼在韓米軍司令官のエイブラムス陸軍大将が、2021年中に対北朝鮮BMD網が画期的に強化されると明らかにした。
 エイブラムス大将は3月10日に米下院軍事委員会が主催した画像公聴会で北朝鮮のミサイル能力強化の対応を問われ、MDAが開発中の3つの能力のうち1つはすでに韓国に構築されたとし、他の2つの能力も2021年中に韓国に構築されれば、BMD能力は大いに強化されるだろうと答えた。
 THAAD能力向上の第1段階は2019年末に完了し、第2、3段階は2021年上半期に終わることから、韓国軍当局者は、「エイブラムス大将は、2021年内にTHAAD能力向上が完成することを明確にした」と話している。 (2104-031201)

5・1・5 在日米軍

5・1・5・1 在日米海軍

横須賀を母港とする戦闘艦

 米海軍が2月4日、駆逐艦Rafael Peraltaが横須賀に入港し任務に就いたと発表した。 DDG 115 Rafael Peraltaは2017年7月に就役した最新型駆逐艦(Flight ⅡA)で、Aegis Baseline 9を装備している。
 横須賀に駆逐艦が増強されるのは2018年5月のDDG 69 Milius(Flight Ⅰ)以来となる。
 横須賀には空母Ronald Reaganのほか、3隻の巡洋艦AntietamShilohChancellorsvilleが配備されている。 (2103-020404)

MQ-4C Trion HALE UAV の一時配備

 防衛省が5月7日、米海軍が5月中旬にMQ-4C Trion HALE UAVを国内に一時配備すると発表した。 (2106-051110)

 防衛省が5月7日、米海軍のMQ-4C Tritonが5月中旬、米空軍のRQ-4 Globla Hawkが月末までに日本へ配備されると発表した。 いずれも一時的な配備という。
 Tritonの日本配備は初めてである。 (2107-051909)

Carl Vinson CSG が横須賀配備

 横須賀を母港とする空母Ronald Reagan CSGが夏の初めに、アフガンからの米軍撤退を援護するため横須賀を離れているのを補うため、近くCarl Vinson CSGが横須賀に入る。
 Carl Vinsonの横須賀入港は2003年にOperation Iraqi Freedom参戦でKitty Hawkがペルシャ湾に向かった穴埋めに寄港して以来約20年ぶりになる。  Carl VinsonにはF-35Cが初めて搭載されているほか、C-2A Greyhoundに代えてCMV-22B Ospreyが装備されている。 (2109-082702)

5・1・5・2 在日米海兵隊

2番目の F-35B 装備飛行隊 VMFA-242 が IOC

 米海兵隊第1航空団が9月9日、岩国基地でF-35Bを装備する2番目の飛行隊であるVMFA-242がIOCになったと宣言した。
 VMFA-242は10ヶ月かけてF/A-18Dからの機種転換訓練を行ってきた。
 この結果岩国には2017年初期に配置されているVMFA121と合わせて、F-35Bを装備する飛行隊2個が配置されたことになる。 (2110-090902)

洋上の空母と攻撃目標データを共有する訓練

 米海兵隊への取材で10月5日、沖縄の海兵隊がキャンプ・ハンセンで9月27日から10月1日にかけ、中国を念頭に置いた新作戦の練度向上を狙い、洋上の空母Carl Vinsonと攻撃目標データを共有する訓練をしたことが分かった。
 中国のミサイル能力向上で、米軍による空海域の優位性確保が難しくなると予想されるため、海兵隊は小規模部隊を島嶼部に分散させて攻撃拠点を確保して海軍を支援する遠征前方基地作戦 (EABO) を打ち出している。 (2111-100510)

5・1・5・3 在日米空軍

F-22 6機が岩国基地へ飛来

 3月12日にハワイ州から岩国基地に飛来した米空軍のF-22 6機が、17日12:50ごろ、F-35Bに続いて離陸し、約50分後に基地上空に戻り、4、5回旋回したのち着陸した。 米太平洋空軍は同日、岩国基地海兵隊のF-35Bと共同訓練をすることを明らかにした。
 岩国基地には昨年12月にも米空軍のB-1が飛来するなど同基地の米海兵隊や海軍と、空軍との連携が進んでいるとみられる。 (2104-031706)

 ハワイ州兵空軍第199戦闘飛行隊のF-22 4機以上(恐らく6機)が3月12日に海兵隊岩国基地に飛来し、F-35Bとの共同訓練を行った。
 F-22は対抗部隊としてF-35Bと高度な戦闘訓練を行った。
 州兵空軍にはPearl Harbor-Hickam統合基地に駐留する連邦空軍第19戦闘飛行隊も同行した。 (2104-032004)

F-22 ハワイへ帰還

 米軍岩国基地に飛来していた米空軍のF-22 2機が4月12日に離陸した。 5日に基地を離れた4機を合わせて全6機が米国に帰還したとみられる。
 6機は、米ハワイ州のHickam統合基地の所属で、3月12日に岩国基地に到着し、岩国基地のF-35Bなどと共同訓練をしていた。 (2105-041205)

RQ-4 Global Hawk HALE UAV の一時配備

 米空軍が5月下旬にRQ-4 Global Hawkをわが国に飛来させるという。 (2106-051110)

5・1・5・4 在日米陸軍

 米陸軍が9月1日、ハワイ州Kauai島のPMRFでPAC-2 2発の射撃を実施し、CMを模した標的2機の撃墜に成功した。
 この射撃はハワイ州防空を想定したものではなく、沖縄展開部隊の訓練であった。
 米陸軍第38防空砲兵旅団は7月にオーストラリアで実施されたTalisman Sabre演習でもPatriot 2発で標的機2機を撃墜している。 (2110-092208)
【註】在日米陸軍第38防空砲兵旅団は以下の部隊で構成されている。
・旅団本部及び本部中隊:相模総合補給処

・第1防空砲兵連隊第1大隊 (MIM-104 Patriot):嘉手納

・第3防空砲兵連隊E中隊 (THAAD):グアム

・第10ミサイル防衛中隊 (AN/TPY-2 radar):車力
・第14ミサイル防衛中隊 (AN/TPY-2 radar):経ヶ岬

5・2 ロシア

5・2・1 国内情勢

5・2・1・1 基本政策

5・2・1・1・1 国家安全保障戦略

「国家安全保障戦略」を6年ぶりに改訂

 プーチン露大統領が7月2日、国家安全保障戦略と呼ばれる安全保障政策の指針となる文書を2015年12月以来6年ぶりに改訂した。
 NATOの軍事力増強がロシアの脅威になっていると強調する一方、中国やインドとの関係強化を重視する方針を示した。
 またサイバ空間における戦略も重視していくとしている。 (2108-070404)

5・2・1・1・2 対米戦略

米国とチェコの2ヵ国を非友好国リスト

 欧米との対立が深まっているロシアが5月14日に非友好国のリストを正式に発表した。 リストに記されたのは米国とチェコの2ヵ国だけである。
 非友好国に指定された国はロシア駐在の大使館でロシア人スタッフを雇うことに制限を受けるため、8月1日以降、米国はロシア人を1人も雇うことができなくなる。
 このため駐露米大使館はビザの発給など大半の業務ができなくなる恐れがある。 (2106-051501)

米外交官への国外退去命令

 ロシアのラブロフ外相が4月16日、米国による対ロ制裁を受け、米外交官10人の国外退去を求めると発表した。
 米政府は15日にロシアによる2020年の米大統領選への介入やサイバ攻撃など「悪質」な活動に対する報復として、包括的な制裁措置を発動し、情報当局者を含め外交官10人を国外追放すると発表していた。 (2105-041701)

米大使館員が1,200名から120名にまで減少

 米国務省高官が10月27日、米露の外交関係が大きく悪化する中で、モスクワにある米大使館員は2017年初の1,200名から120名にまで減少し大使館に管理者のみしか滞在できない状況になりつつあると述べた。
 スタッフはビザ発行に苦戦しているほか、エレベーターや入り口扉が修理できず、安全性に懸念が生じているという。
 更に、2022年には大使館の管理者以外の滞在を続けることが困難な状況に直面するだろうとした。 (2111-102801)

5・2・1・1・3 ソ連時代への回帰

ソ連領の回復願望

 プーチン露大統領が11月4日、ロシアが2014年に併合したクリミアのセバストポリを訪問した。
 露大統領府によると、大統領は演説で「クリミアとセバストポリは永遠にロシアと共にある」と述べ、ウクライナに返還する意思がないことを改めて強調した。 (2112-110501)

ウクライナとジョージアの NATO 加盟確約の撤回要求

 ロシアが12月10日、ウクライナとジョージアの将来NATO加盟を巡る2008年の確約を撤回するよう要求し、同時にNATOに対しロシアと国境を共有する国に兵器を配備しないと確約するよう求めた。
 ロシアはNATOがウクライナを加盟させ、ロシアを攻撃するミサイルを同国に配備する方向に動いているとし、欧州安全保障の根本的な利益のために、「ウクライナとジョージアは将来NATOに加盟する」とした2008年の確約は撤回される必要があるとした。
 これに対し、ストルテンベルグNATO事務総長は、NATOの姿勢は変わらないと強調し、あらゆる国が自国の道を選択する権利を有することは基本原則で、NATOとウクライナの関係を決定するのはNATO加盟30ヵ国とウクライナであり、大国が他国の行動を支配するシステムをロシアが再構築しようとしていることは容認できないと述べた。 (2201-121104)

5・2・1・2 経済不振

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・2・1・3 国防予算

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・2・1・4 政権反対派の抑圧

5・2・1・4・1 政敵の毒殺未遂疑惑

ナワリヌイ氏、帰国直後に空港で拘束

 2020年8月の毒殺未遂事件後、ドイツで療養していたロシアの反体制派指導者ナワリヌイ氏が1月17日、帰国した直後に空港で当局に拘束された。
 同氏は、執行猶予の条件に違反したとして3年半の禁固刑に処される可能性がある。 (2102-011801)

米政府が制裁

 ドイツ経済省が1月18日、米政府がロシアが反体制派指導者ナワリヌイ氏を帰国直後に拘束したことを受け、海底パイプラインNord Streen 2の建設に関与しているロシアのパイプライン敷設船を対象とした制裁措置を導入すると通告したことを明らかにした。
 この件に関して現時点で米国の国務省と財務省からコメントは得られていない。 (2102-011901)

欧州議会が NordStreem 2 の工事中止要求

 EUの欧州議会がロシア反体制派のナワリヌイ氏がドイツから帰国後逮捕されたことを受け1月21日、NordStreem 2の工事中止を求める決議を採択した。
 NordStreem 2建設計画を一貫して支持してきたドイツのメルケル首相は21日、ナワリヌイ氏の件があっても自身の計画に対する考えは変わらないと明言した。
 しかし欧州議会は賛成581、反対50、棄権44と圧倒的多数が建設の阻止を含め、EUがロシアとのさまざまな関係を見直すことを要求する決議を承認した。 (2102-012203)

過去にもロシア連邦保安局(FSB)が変死事件に関与

 2020年8月に毒殺されそうになった反体制派指導者ナワリヌイ氏らが殺人犯と指摘している連邦保安局(FSB)の化学兵器専門グループが、過去にも活動家や記者ら3人を尾行し、変死事件に関与した疑いが浮上している。
 2020年12月にナワリヌイ氏を尾行していた8人の氏名と顔写真を公表した英調査報道機関Belling Catなどが1月27日付の報告書で、工作員らの移動記録を調査して明らかにした。
 報告書によると、変死したのはカバルジノ・バルカル共和国の記者(2014年夏)、ダゲスタン共和国の少数民族活動家(2015年3月)、モスクワの活動家(2019年11月)で、南部の2人の死因は表向き心不全と説明されたが、記者は脇に、少数民族活動家は首に注射されたような痕があったという。 (2103-020102)

ロシア各地で抗議デモ

 ロシアに帰国した直後、拘束された野党指導者ナワリヌイ氏の釈放を求める2回目の抗議デモがモスクワなどで行われた。 モスクワで行われたデモには数千人が参加し、ナワリヌイ氏の釈放などを求めた。
 これに対し当局は前回同様にOVID-19対策を理由に開催を認めず、モスクワ中心部を事実上封鎖しているが、主催者側はSNSを通じて市内の複数箇所で同時多発的にデモを呼びかけた。
 デモはサンクトペテルブルクやウラジオストクなど80ヵ所以上で行われ、ナワリヌイ氏の妻も一時拘束された。 人権団体によると、ロシア全土であわせて5,000人以上の参加者が拘束された。 (2103-020103)

 ロシア外務省が、プーチン大統領の政敵とされるロシアの野党指導者の釈放を求めて行われ5,000人を超える参加者が拘束された1月31日のデモについて、ロシアの弱体化を図る米政府が扇動したことは明らかだと主張するコメントを発表した。
 今回のデモの参加者は米政府に操られたSNSを通して動員されたとして、露骨な内政干渉だとも訴えている。 (2103-020204)

欧州3ヵ国がロシア外交官を復追放

 ドイツ、スウェーデン、ポーランドの外務省が2月8日、それぞれ自国に駐在するロシア外交官1人の国外追放を決めたと発表した。
 ロシア外務省が5日にナワリヌイ氏の釈放を求める抗議デモに参加したとして、ドイツなど3ヵ国の外交官追放を決定したのに対する報復措置で、3ヵ国は一斉にロシアを非難した。
 EUもロシアの強権政治への批判を強めており、ロシア側との関係悪化は避けられない情勢となっており、今後ロシアへの追加制裁の是非を協議するとみられる。 (2103-020901)

EU が追加制裁

 ロシアのラブロフ外相が、野党勢力指導者ナワリヌイ氏をめぐる問題で、EUが新たな制裁を科した場合「我々はグローバル社会から孤立したくはないが準備はできている。 平和がほしいなら闘いに備えるんだ」と、EUとの関係を断つ用意があると述べた。
 ロシアはナワリヌイ氏の釈放を求めるデモに参加したとして、ドイツなど3ヵ国の外交官を追放するなどEUとの対立が深刻化していて、追加制裁の発動が焦点となっている。 (2103-021201)

 EUが2月22日にブリュッセルで外相会合を開き、ロシアのナワリヌイ氏の逮捕などを巡りロシアに追加制裁を科す方針で一致した。 制裁は3月上旬にも正式決定される見通しで、ロイタ通信によると、クラスノフ検事総長ら高官4人に資産凍結や渡航制限が科される見込みである。
 EUのボレル外務安全保障政策上級代表は会合終了後の記者会見で、ロシアは権威主義に向かって漂流していると批判し、EU側へのサイバ攻撃などに対抗する姿勢を強調した。 (2103-022301)

 EUが3月2日、ロシア反体制派ナワリヌイ氏の収監を巡り、クラスノフ検事総長らロシア捜査司法機関などの4人に対し、EU域内の渡航禁止や資産凍結などの対露追加制裁の実施を発表した。 (2104-030202)

 ロシアのナワリヌイ氏収監に対するEUの対ロシア制裁への報復として、ロシア外務省が4月末に欧州議会議長や欧州委員会副委員長らEUと加盟国の8人をロシア入国禁止とした問題で、欧州委と欧州対外活動庁が5月3日、ロシアのチジョフ駐EU大使を呼び出し、同国の措置を強く非難した。
 EU高官は露大使に対し、自国に敵対的な「非友好国」のリストをロシア政府が作成しようとしていることに言及し重大な懸念を表明した。 (2106-050401)

米政府が化学兵器使用と断定

 米政府当局者が3月2日、ロシアのナワリヌイ氏の毒殺未遂事件を巡り、ロシアの個人と団体に対する制裁を導入したと明らかにした。
 ロシア政府の高官ら7人を対象に資産凍結などを行うほか、生物化学兵器の製造などに関与したとして14団体に制裁を加える。
 当局者は記者会見で、ナワリヌイ氏の殺害未遂には化学兵器が使用されたと断定し、EUと協調して制裁を導入したと表明した。 (2104-030301)

5・2・1・4・2 反政権幹部を機内で拘束

 タス通信などによると、ロシアの治安当局が3月31日にサンクトペテルブルク空港で、反政権運動団体の元幹部を拘束した。
 元幹部はポーランド行きのLOTポーランド航空旅客機に搭乗しており、治安当局者が離陸前の旅客機に乗り込んできたことをSNSで明らかにした。
 露治安当局が強硬手段で出国を阻止した可能性がある。 (2107-060105)
5・2・1・5 企業再編

UAC社傘下の Sukhoi社と MiG社を統合

 ロシアの国営企業Rostec社が3月18日にグループ企業のUAC社その傘下にあるSukhoi社、MiG社を統合し、ひとつの航空機開発センタにすると発表した。
 すでにSukhoi社およびMiG社はUAC社の子会社であるが、今回の統合ではさらに踏み込んで経営部門の集約再編を行う。 (2104-032504)

5・2・2 核 戦 略

世界最大の核保有国

 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) によると、核兵器を持つ国は核拡散防止条約 (NPT) で保有を認められた米露英仏中のほか、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9ヵ国で、2019年末の核弾頭の総数は13,440発に上り、うち約3,720発が実戦配備されている。
 最大の保有国はロシアで6,375発、2位の米国が5,800発、3位は320発の中国で2015年末の260発から増強されている。 (2106-052603)

5・2・3 戦力の強化

5・2・3・1 部隊の新設、装備の増強

 ショイグ露国防相が5月31日、NATOの演習や米空軍爆撃機の欧州飛行に対抗して、20個隊を新設すると共に2,000品目の兵器を配備するなど、西部国境を管轄する西部軍管区のロシア軍を増強すると述べた。
 ロシアは西部戦線からの部隊撤収を行ったが、ショルグ国防相は9月に行うZapad 21演習に備えて装備を残置するよう命じている。 (2107-060109)

 ロシア軍空挺部隊が9月10~16日にロシア西部で実施したZapad 2021演習で空輸型Sarmat-2などの新装備や新戦術などを公開した。
 12.7mm重機関銃または30mm自動擲弾銃を装備する3名乗りの4×4車は11日にMi-8ヘリで空輸された。
 演習では12日に、第76親衛空中攻撃師団のBMD-2K-AU及びBMD-4M IFV 30両が600名の空挺部隊と20機のIl-76から空投/降下した。
 この降下はIl-22-SURT通信中継機を伴ったA-50U AEW&C機の統制下に、Su-30SM、Mi-8AMTSh、Ka-50が火力支援を行った。 (2111-092205)

5・2・3・2 装備近代化の進捗

 ショイグ露国防相が2020年12月21日、2020年にYars ICBM 3個連隊分を取得するなど、ロシア軍の近代化が70%以上になると述べた。 (2103-010601)

 ロシア国防次官が2020年12月30日、露国防省が2020年に2,700品目の主要装備と52,500品目の支援装備を取得したことを明らかにした。
 主要装備には航空機147機、陸上装備1,500両以上、ミサイルや砲兵装備300両、防空装備150品目などが含まれる。
 更にSu-57 22機を含む固定翼/回転翼機94機を2024年までに取得する。 露国防省は2020年にSu-57の量産1号機を取得するという。 (2103-011307)

 ロシア軍空挺部隊が2021年に250品目の新型及び改良型兵器や10,000品目の空投システムなど、多くの新兵器を受領するという。
 特にBMD-4M空投IFVは2個大隊分を年内に受領し、空挺大隊の数を12個に増強する。 (2105-030305)

 ショイグ露国防相が8月10日、ロシア軍が2021年上半期に、MiG-35S、Mi-8MTPR-1、Ka-52など航空機、レーダ12基、Bastion 1個中隊、Project 885M SSBNやProject 21631コルベット艦を含む艦艇9隻など、約200品目の主要装備を取得したと述べた。
 また国防次官は、これに加えて地上軍向けに68品目の新装備と70品目の再生装備、163両の新車両と156両の再生車両、10万品目の個人装備を受領したと述べた。 また年内にT-14 20両、T-90M 65両、Iskander 1個旅団、UAV 18機も取得するという。
 更に防衛企業のCEOは、年内にT-90M MBT 26両、BMP-3 IFV 60両、2S19M2 152mm SPH 7門を納入すると述べた。
 2021年上半期に露空軍が新型2機と再生型3機の固定翼機、新型8機と再生型14機のヘリ、Forpost-R UAV 2機、32,000発以上の空投武器を受領し、年内にSu-57 4機を受領し、海軍は原潜3隻、ディーゼル潜水艦1隻、水上艦艇6隻を受領するという。 (2109-081105)

 ショイグ露国防相が8月10日、ロシア軍が2021年上半期に200品目以上の装備を受領したと述べた。
 その中にはMiG-35SやKa-52、Iskander-M 1個旅団、Bastion沿岸防衛ミサイル1個中隊、艦船9隻などが含まれている。 (2110-081806)

 プーチン露大統領が11月1日にソチで開かれた軍当局者と軍事産業代表者の会合で、2022年に200機の航空機とS-350及びS-400 26個システムを取得するほか、初めて量産型S-500の取得を行うと述べた。
 この結果防空部隊の新装備の比率は2025~2027年に80%に達するという。
 また新型強襲揚陸艦を含む30隻が建造中で、海軍は49隻の艦艇と沿岸防備ミサイルシステム9個、航空機10機も取得する。  更にUAV 2,000機も装備するという。 (2201-111007)

5・2・3・3 装備の充実

5・2・3・3・1 BMD /防空

S-500

 ロシア国防省が、7月20日に同国南部カストラハン州カプースチン・ヤールの演習場でS-500の発射試験を行い、高速BM標的の撃墜に成功したと発表した。
 同国防省の発表では、射程600kmのS-500は、射程と速度にかかわらず、既存のいかなるBMの撃破も可能という。 (2108-072104)

 ロシア国防省が7月20日にYouTubeでS-500 Prometey (55R6M) 発射試験の映像を初公開した。 発射試験はボルゴグラートの東100kmにあるKapustin Yar射場で行われた。  二段推進と見られるS-500はBAZ-69096 TELから発射6.5秒後に2段目に点火された。  米CNBCによると迎撃距離は481kmであった。 (2109-072802)

5・2・3・3・2 艦 船

航空母艦

(2021年には特記すべき記事見当たらず)

潜水艦

(2021年には特記すべき記事見当たらず)

駆逐艦

(2021年には特記すべき記事見当たらず)

コルベット艦

 ロシア国防省が2020年12月15日、連合造船社 (USC) 傘下のアムール造船社 (ASZ) にProject 20380コルベット艦4隻とProject 20385コルベット艦2隻を発注したと発表した。
 いずれも2024年~2028年に太平洋艦隊へ納入されるという。 (2103-010606)

揚陸艦、輸送艦

(2021年には特記すべき記事見当たらず)

5・2・3・3・3 航空機

Su-57

 Su-57の量産1号機が、元々の量産1号機 (#01) が納入試験中に墜落してから1年後となる12月25日に宇宙航空軍 (VSK) の第929飛行試験センタに納入された。
 VSKの塗装を施された#01には第929飛行試験センタの部隊章が描かれ、Novodibirskの民間空港に着陸した。
 Su-57についてショイグ国防相は12月21日に、2024年末までに22機、2028年までに76機を受領すると述べている。 (2103-011301)

Su-75 Checkmate

 ロシアのメディアは2020年12月にSukhoi社が軽戦闘機LTAを開発していると報じていたが、Sukhoi社が7月20日にモスクワで開かれたMAKS Air Showで初公開した。
 Sukhoi LTAには韓国のKF-21、トルコのTF-X、中国のJ-35などの競争相手があるが、ロシアはMiG-29を装備しているアフリカ、アジア、東欧、ラテンアメリカなどへの輸出を見込んでおり、同社は向こう15年間の売り上げを3,000機と見ている。 (2109-072601)

 ロシアUACが安価軽戦闘機Su-75 Checkmateを発表したが、競争が激しいこの機種で受注が期待できる保証はない。
 例えば272機のSu-30MKIを装備するインドは今年最後の2機を生産するだけである。
 インド空軍はHAL社の生産ライン維持のため12機を追加発注しようとしているが、フランスからのRafale 36機の導入も決まっている。
 更に114機の多用途戦闘機計画があるが、ここにはTyphoon、Gripen E/F、F-16V、F/A-18E/Fなどが名を挙げている。 更にF-35やRafale追加生産の可能性もある。 (2110-081813)

5・2・3・3・4 U A V

Okhotnic 重 UAV

 記事にある図はSu-57と有無人連携飛行をするOkhotnic重UAVという。

5・2・3・3・5 ミサイル

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・2・3・3・6 その他

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・2・3・4 軍事産業の奨励、輸出の拡大

MAKS 2021航空展で13件の契約を受注

 ロシア国営Rostec社の子会社で武器輸出を担当しているRosoboronexport社が7月22日、モスクワ近郊のZhukovskyで20~25日に開かれているMAKS 2021航空展で、合わせて€1B ($1.18B) にのぼる13件の契約を受注したことを明らかにした。
 受注したのはSu-30SME、Mi-35M、Mi-17V-5やProtivnik-GEレーダ、Verba MANPADSのほか、空投武器や車両、装甲車両などで、20ヶ国からの30にのぼる代表団は主に、MiG-35D、Il-76MD-90A(E)輸送機、Il-78MK-90A空中給油機、Mi-28NE及びKa-52戦闘ヘリ、Mi-171Sh及びKa-226T多用途ヘリ、Pantsir-S1防空システムなどに関心を示した。
 MAKS 2021では更にSukhoi社のCheckmateにも数チームが購入の可能性を示唆したという。 (2110-080404)

5・2・4 対米挑発

5・2・4・1 非友好国指定

 ロシア大統領府安全保障局長が5月31日に、2015年12月に策定した国家安全保障戦略を改定したことを明らかにした。
 改定された安全保障戦略ではロシアに対し非友好的な国々に対して力で対決することを強調している。
 更に改訂版では旧版に比べて情報戦略を強調している。 (2107-060108)
5・2・4・2 武力の行使

ピョートル大帝湾に近い海域で露艦が米艦に接近

 ロシア国防省が10月15日、中露艦隊が演習を行っている海域に接近した米海軍駆逐艦Chafeeがロシア領海を侵犯しようとしたため露海軍駆逐艦Tributsがこれを阻止したと発表した。
 現場はピョートル大帝湾に近い海域で露艦は米艦に60mまで接近したという。 (2111-101505)
【註】ピョートル大帝湾とはウラジオストックの前に広がる奥行き80kmの幅200kmの、湾と言うより入り江形状の海域で、1957年7月にソ連が内海と宣言しているが日本や米国はは、国際法上ソ連の決定に根拠がないとして認めていない。

 ロシア国防省が10月15日、日本海で領海に侵入しようとした米駆逐艦とロシア艦1隻が対峙したとロシア側が動画を公開した。 両艦船は一時、60m以内にまで接近したという。
 太平洋艦隊の対潜艦は米駆逐艦に繰り返し航路を変更するよう警告したと、InterFax通信が国防省の発表文を引用して報じた。 (2111-101601)

黒海上空の国際空域でロシア空軍機が米空軍機を迎撃

 オースチン米国防長官がジョージア、ウクライナ、ルーマニアを歴訪した直後の10月20日に、米空軍のB-1 2機とKC-135 2機が黒海上空の国際空域でロシア空軍のSu-30 2機の迎撃を受けた。 事故はなかった。
 米軍機はNATOの年次演習Steadfast Noonに参加していた。 (2111-102109)

5・2・5 対欧州戦略

5・2・5・1 対欧諜報、破壊活動

5・2・5・1・1 イタリアでの諜報活動

 ANSA通信によると、伊海軍士官がロシア軍士官に対し、現金€5,000を受け取る見返りに、機密扱いの文書を渡した疑いが持たれている。 NATOに関する情報も含まれていたとみられる。
 これについてディマイオ外相は3月31日に議会で、「極めて重大な敵対的行為だ」と怒りを表明し、外交問題に発展している。
 EU主要国では数少ない友好国イタリアとの関係悪化は、ロシアの対EU戦略にも影響を及ぼしかねない。 (2105-040301)
5・2・5・1・2 東欧諸国への挑発

バルト3国がロシア外交官を追放

 バルト三国が4月23日、ロシアと対立を深めているチェコに連帯を示すため、ロシア外交官追放を発表した。
 リトアニアから2人、エストニア、ラトビア両国は各1人の計4人が対象となる。
 ラトビアのリンケービッチ外相は、自国内はもちろん友好国領内であっても破壊活動は許さないとロシアを非難した。 (2105-042404)

旧共産圏東欧4ヵ国がロシアの侵略を非難

 チェコ、スロバキア、ハンガリー、ポーランドの旧共産圏東欧4ヵ国首相が26日にポーランドのモラウィエツキ首相が呼び掛けてオンラインで開いた首脳会議を開いた。
 4ヵ国首脳は会議後の共同声明で、2014年にチェコで起きた弾薬庫爆発について「ロシア情報機関が実行した違法で凶暴な活動を強く非難する」と述べ、ロシアの侵略を非難した。 (2105-042702)

ロシアの反発

 ロシアが4月28日にスロバキアとリトアニア、ラトビア、エストニアからの7人の外交官の追放を命じた。
 チェコが、2014年の弾薬庫爆発事件に絡みロシアの外交官を追放したことに対し、ロシアは4ヵ国がチェコに「偽物の団結」を示したと非難し行った報復措置という。
(2105-042901)

ブルガリアでも破壊活動

 ブルガリアが4月28日に2011~2020年に起きた4回の爆発事件について、6人のロシア人が関与した疑いで検察当局が証拠を集めていると述べた。
 ロシアはチェコの主張をばかげているとし、ブルガリアの捜査を一蹴した。 (2105-042901)

チェコがロシア外交官を追放

 2014年の10月と12月にチェコ南東部で起きた弾薬庫の爆発事件について、チェコはロシアの情報機関によるものと断定し、4月17日に在プラハ大使館のロシア外交官18名の追放を決定したが、報復としてロシアは翌日、在モスクワ大使館のチェコ外交官20名の追放を決定した。
 20名を失っては大使館の機能を維持し得ないチェコは、4月22日にロシア大使館の人員をチェコの大使館と同じ水準まで削減するとして新たに63名の追放を決定した。
 チェコとの結束を示すため小国が集まってロシアに立ち向かおうと、4月22日にスロバキアが3名のロシア外交官の追放を決定し、続いて23日にはバルト三国が同調してロシア外交官の追放を決定した。
 NATOは4月22日にチェコとの結束を確認する声明を発表したが、NATO及びEUと主要国が具体的な行動をする様子は今のところ見えない。 (2106-052103)

エストニア領事を逮捕

 ロシア連邦保安局 (FSB) が7月6日、機密文書を受け取ったとして、エストニアの駐サンクトペテルブルク領事を逮捕したと発表した。
 FSBによると、領事はロシア国民から機密文書を受け取っている現場を押さえられ、外交官の地位と相容れない活動や、ロシアに対して公然と敵対的な活動をしたとして逮捕された。
 FSBは「国際法の規則に則り、この外交官に対して措置が講じられる」と説明したが、これ以上の詳細は明らかにしていない。
 エストニア外務省報道官はAFPに対し、FSBは領事の身柄を1時間半にわたり拘束し、機密資料横領の罪で訴追したとしているが、領事に掛けられた容疑は完全に根拠のないもので、逮捕はロシア当局による挑発だと語った。 (2108-070703)

5・2・5・2 対 NATO 戦略

国境に部隊を増強

 ロシア外務次官が国営ロシア通信に5月31日、6月16日に予定される米露首脳会談を控え、西部国境の部隊を増強すると語った。 米国にとって不快なシグナルを送ることになるとも述べた。
 またInterFax通信によると、ショイグ国防相は米国やNATOが最近ロシアの西方で軍事活動を活発化させていると指摘し、われわれは適切な対抗措置を取らざるを得ないとし、2021年に20の部隊を編成すると語った。
 バイデン米大統領は30日、ジュネーブで行われる首脳会談でプーチン露大統領に人権尊重を求めると述べた。
 両国関係は冷戦後最悪の状態にある。 (2107-060103)

NATO に対抗して中距離核戦力の配備も

 リャブコフ露外務次官が12月13日、NATOが中距離核戦力 (INF) の配備に動いていることを示す間接的な示唆があるとし、そうなればロシアもINFを配備せざるを得なくなると述べた。
 NATOは欧州に新たなミサイルを配備することはないと表明しているが、リャブコフ次官はロシアはNATOを全く信用していないと述べた。 (2201-121401)

NATO に軍事力行使も辞さないと牽制

 ロシア政府が12月20日、同国がウクライナ問題に絡んで提示した安全保障要求について、米国からの速やかな回答を求めており、自国の不安を和らげる政治行動が見られない場合には軍事力行使も辞さないと改めて牽制した。
 ロシアは、西側諸国との交渉に際して安全保障上の要求項目を示し、NATOが東欧とウクライナでの軍事行動を放棄することなどを促した。
 米国はこのロシアの提案の一部は明らかに受け入れられないと反発しつつ、今週中に何らかの協議を通じてより具体的な対案を出す意向も打ち出した。 (2201-122102)

5・2・5・3 大規模演習

4月: 300,000名以上、180隻の艦艇、航空機900機、輸送機40機が参加

 ロシア軍参謀総長のゲラシモフ陸軍大将が4月29日、4月に実施したロシア国防省主催演習の参加規模を明らかにした。
 それによると参加規模は300,000名以上の兵員、35,000点以上の装備、180隻の艦艇、航空機900機、輸送機40機で、ロシア全土の500箇所の演習場で4,000を越える演習を行ったという。
 この間カスピ海小艦隊の15隻が1,300kmを経て黒海に入ると共に空挺部隊は1,500kmを飛行して降下したという。
 ゲラシモフ大将によるとショイグ国防相が4月22日に5月1日と述べた原隊復帰の期限は、Voronezhの第41混成軍は5月8日、クリミアの空挺部隊は12日に延期されたと述べた。
 5月1日までに原隊復帰した部隊は、北方艦隊所属で北極圏対応の第200自動車化旅団、中央軍管区の第41混成軍、南方軍の第58混成軍、カスピ海小艦隊、黒海に派遣された北方艦隊及びバルティック艦隊の艦艇であった。 (2107-051204)

8月23日: 特別兵站演習

 ロシア西部軍管区が8月23日にウェブサイトでレニングラード州でフィンランドに近いVyborg港とエストニアとの国境に近いUst-Lugaで特別兵站演習を実施したと発表した。
 演習では民間貨物船やフェリーが借り上げられ、Vyborgでは憲兵隊の警備の元でBTR-80 APC、Pantsyr-S1防空システム、少なくとも2機のMi-28Nの警戒下で、T-72B3M MBT、BM-21 Grad MRLなどが貨車から卸下された。 (2111-090106)

9月: Zapad 2021演習

 ロシアとベラルーシが9月10日、ポーランドに隣接するベラルーシ西部国境などで大規模なZapad 2021演習を開始した。
 Zapad(西部)2021演習は16日までの予定で両国の演習場で行われ、約20万名の将兵や80機以上の航空機、760の地上兵器が参加する。
 8日にはベラルーシ国防省が、ロシア軍のSu-30SMがベラルーシ西部の空軍基地に到着したと発表した。
 対空戦術研究センターの合同設立に向けた準備の一環だという。 (2110-091004)

5・2・5・4 武器としてのエネルギー政策

5・2・5・4・1 対 EU / NATO 諸国

工事の完了

 ロシアのプーチン大統領が6月4日にNordostreem 2について、2系列のパイプラインのうち1系統目の敷設工事が終了し、2系統目も2ヵ月以内に完了する見通しだと明らかにした。
 プーチン大統領は、2021年のロシア産ガスの欧州向け供給量は2,000億㎥を上回る見込みで、今後10年間では最大500億㎥増える可能性もあると述べた。 (2107-060701)

 ロシア産天然ガスをバルト海経由でドイツに運ぶ油送管Nordostreem 2の運営会社が9月6日、最後のパイプの溶接作業が完了してバルト海の海底を結ぶパイプラインが完成したことを明らかにした。
 運営会社によると、ドイツ海域のパイプラインに最後の部分を溶接し、今後はデンマーク海域の部分に溶接して工事が完了し、2021年中の稼働を目指すという。 (2110-090701)

Nordo Streem 2は EU への脅威にならず、ドイツ主張

 ドイツ経済省が10月26日、Nordo Streem 2を承認してもEUへのガス供給を脅かすことはないと発表した。
 経済省は声明で「分析の結果Nordo Streem 2の承認はドイツおよびEUへのガス供給の安全性を脅かすものではないと結論付けた」とし、EU諸国との協議の上、分析結果を当局に提出したとした。
 Nordo Streem 2は操業開始準備が整っているものの、ドイツ規制当局の承認が必要で、経済省のガス供給に関する分析は当局が承認手続きを続けるための需要な要件となっている。 (2111-102701)

ロシアがドイツへガス輸送を停止して圧力

 ロシア産天然ガスをポーランド経由で欧州に運ぶパイプラインYamalのドイツ方向へのガス輸送が11月3日時点で停止したままである。
 ドイツへの輸送容量の予約が突然取り消されたことを受け10月30日以来供給が止まっており、代わりにドイツからポーランドへの供給に切り替えられている。 この結果、欧州のガス先物価格は週初から18%近く高騰した。
 欧州の天然ガス価格が高騰する中での供給停止について、ロシア政府はNordstreem 2を承認するようドイツ当局やEUに圧力を掛けるために、欧州への供給を増やして価格を抑制する対応を見送っていると欧州の一部の政治家は主張してきた。
 ロシア政府系天然ガス企業ガスプロムはコメントの求めに応じていない。 (2112-110406)

5・2・5・4・2 対ウクライナ

「2・5・1・3 ガスパイプライン問題」で記述
5・2・6 中東戦略

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・2・7 極東地域での活動

5・2・7・1 太平洋艦隊

5・2・7・1・1 太平洋艦隊の増強

千島列島松輪島に Bastion を配備

 InterFaxが、ロシア海軍太平洋艦隊が12月2日に千島列島中部の松輪島に地対艦ミサイルBastionを配備したと発表したと報じた。
 Bastionは北方領土の択捉島に2016年に配備済みで、InterFaxは今回その射程を最大500kmと報じた。 (2201-120207)

5・2・7・1・2 日本周辺海域での活動

5月17日: ロシア海軍艦6隻が宗谷海峡を東に向けて通過

 防衛省が5月17日、日本近海で中国PLA海軍艦3隻とロシア海軍艦6隻を確認したと発表した。
 ロシア艦はTarantul-3級護衛哨戒艇(コルベット艦)2隻やUdaloy-1級駆逐艦1隻などで、15日17:00頃から16日07:00頃の間に宗谷岬の西方海域で発見され、17日までに宗谷海峡を東に向けて通過した。 (2106-051702)

 統合幕僚監部が6月25日、ロシアのSu-25 1機が日本海上空を飛行し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進したと発表した。 緊急発進でSu-25を確認したのは初めてである。
 統幕によると、Su-25は同日午前、オホーツク海から宗谷岬沖を通って日本海へ抜けた。 領空侵犯や危険な行為はなかった。 (2107-062504)

7月7~9日: 大和堆を含む日本海でミサイル射撃

 政府関係者7月5日、ロシア政府が日本の排他的経済水域 (EEZ) にある大和堆を含む日本海で7日から9日にかけて毎日ミサイル射撃を行うと日本政府側に通告したことを明らかにした。
 国際法では他国のEEZ内での軍事演習を明確に禁じていないが、政府は新たな演習についても情報収集を行い、ロシア側の意図について慎重に分析を進める。
 国連海洋法条約ではEEZの海洋資源を保護するための法令に基づく法執行を沿岸国に認める一方で、軍事演習などに明確な規制はないが、同条約は他国のEEZ内での行動については「妥当な考慮」を払うことなどを求めている。 (2108-070505)

 岸防衛相が7月9日の記者会見で、ロシア政府が日本海の大和堆を含む海空域で実施すると通告してきたミサイル演習に関し、7日から9日にかけて発出されていたNOTAMがキャンセルされたことを明らかにした。
 政府はすでに演習が終了した可能性を含め情報収集を続けているが、岸防衛相は「訓練実施の有無など、詳細については日本の情報収集能力を明らかにする恐れがあり控える」と述べた。 (2108-070902)

8月17日: Tu-95MS 2機と Su-35 が日本海上空を飛行

 TASS通信やInterFaxが8月17日、ロシア国防省がこの日にTu-95MS 2機がSu-35の援護を受けて9時間にわたり日本海上空を定例飛行したと発表したと報じた。
 飛行ルートなどについては言及せず、韓国や日本などの対応出撃についても報じられなかった。 (2109-081803)

10月3~9日: 大和堆周辺を含む日本海海域でミサイル演習

 日本政府関係者への取材で10月1日、ロシア政府が日本の排他的経済水域 (EEZ) 内にある好漁場の大和堆周辺を含む日本海海域で今月3~9日にミサイル演習を行うと通告したことが分かった。
 7月にも同様のミサイル演習を通告しており政府は情報収集を急ぐ。
 また、北方領土の国後島でも新たな軍事訓練を行うと通告したことから、日本周辺での軍事活動を常態化する恐れがあるため政府は警戒を強めている。 (2111-100104)

5・2・7・1・3 東シナ海への進出

5月 6日: ロシア艦4隻が対馬海峡を南下して東シナ海へ

 統合幕僚監部が5月6日、ロシア海軍のミサイル巡洋艦など4隻が、対馬海峡を南下して東シナ海へ入ったのを確認したと発表した。
 統合幕僚監部によると、5日16:00頃に対馬の北東220kmで海上自衛隊が巡洋艦1隻と、駆逐艦1隻、フリゲート艦2隻が航行しているのを確認し哨戒機やミサイル艇が監視に当たった。
 ロシア海軍の艦艇は4月30日にも2隻が対馬付近を航行し、その後東シナ海へ入っている。 (2106-050605)

7月 4日: ロシア艦7隻が沖縄本島と宮古島の間を北上し日本海に

 防衛省が6日、ロシア海軍の巡洋艦やミサイル観測支援艦など7隻が4日14:00頃に沖縄本島の南東150kmの海域で北上するのを海上自衛隊が発見したため監視を続けたところ、7隻は対馬海峡を通過して日本海に向かった。
 ロシア軍艦による同海域の通過を防衛省が発表するのは昨年12月以来である。
 同省などによると、ロシア海軍は6月にハワイ近海で大規模な演習を実施し、7月7~9日には日本海の大和堆周辺でミサイル発射演習を予定するなど、軍事活動を活発化させている。 (2108-070701)

5・2・7・2 東部軍管区

5・2・7・2・1 東部軍管区空軍

北海道知床岬沖で領空侵犯

 防衛省が9月12日、北海道知床岬沖でロシアのAn-26が2回、領空侵犯したと発表した。
 航空自衛隊の戦闘機が緊急発進して通告や警告を実施したが、09:37ごろと09:58の2回、領空を侵犯した。
 ロシアの領空侵犯は昨年10月にMi-8ヘリが同じ知床岬沖を飛んで以来で、民間機の可能性もあるため同省が飛行の意図などを分析している。 (2110-091206)

太平洋と往復、多発的に飛行か

 統合幕僚監部が12月15日、ロシアの情報収集機1機とロシアのものとみられる航空機8機の計9機が同日午前から午後にかけて、オホーツク海経由で日本海と太平洋を往復するなど長距離飛行したのを確認したと発表した。
 一部は北方領土の国後島と択捉島の間を通過した。
 情報収集機は14日にオホーツク海から太平洋に飛行したのと機体番号が同じで、同一機とみられる。 (2201-121506)

5・2・7・2・2 東部軍管区地上軍

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・2・7・3 北方領土

5・2・7・3・1 北方領土の不法占拠継続

外国投資誘致目的の関税免除特別区設置

 択捉島を訪問したロシアのミシュスチン首相が7月26日、ロシアが実効支配する北方四島に欧米なども含めた外国投資を誘致するため関税を免除する特別区を設置する構想を示し、現地の経済開発に本腰を入れる姿勢を鮮明にした。
 プーチン大統領は首相の択捉島訪問に先立ち、構想を評価する考えを示していた。
 領土返還を求める日本にとって第三国の投資流入は問題を複雑化させ、解決を困難にする恐れがある。 (2108-072604)

 2019年8月のメドベージェフ前首相の択捉島訪問以来2年ぶりに択捉島を訪問したミシュスチン首相が7月26日、北方領土への投資呼び込みに向け各種税の減免や無関税地区の設置を検討すると明らかにした。
 首相は、今後プーチン大統領と協議し、案の具体化作業に入るとした。
 ロシアは2017年に色丹島に経済特区を設置しており、この案は特区を拡大するものである可能性がある。 (2108-072606)

10年間の特区時限措置を20年間に延長

 ロシアのシルアノフ財務相が11月26日の閣議で、ロシアが北方領土への外資誘致を目的に一方的に準備している特別地区について、進出企業を優遇する期間を20年間に延長する方針を明らかにした。
 プーチン大統領は9月に特区は10年間の時限措置だと説明していたが、露政府によるとミシュスチン首相は26日の閣議で北方領土への企業誘致について、社会基盤が整備されておらず厳しい気候などが企業を尻込みさせていると述べていることから、関税や法人税などを減免する優遇期間の延長が必要だと判断しているとみられる。 (2112-112706)

5・2・7・3・2 北方領土での軍備増強

S-300V4 を配備

 加藤官房長官が2020年12月2日、ロシアがわが国の北方領土にS-300V4を配備したことに抗議した。
 ロシアのメディアはその前日に択捉島に複数のS-300V4を配備したと報じていた。 (2102-121601)

最新電子戦装備を配備

 防衛省が北方領土のロシア軍に最新の電子戦装備が配備されたと分析している。 配備した電子戦装備はウクライナへの軍事介入で世界随一の精密な攻撃能力を実証している。
 日露両政府の北方領土交渉が停滞する中、ロシアによる北方領土での軍備増強が浮き彫りになった。
 国後択捉両島に駐留しているロシア陸軍第18機関銃砲兵師団に配備した最新電子戦装備は、Orlan-10偵察用小型UAVとLeer-3地上配備電子戦システムで、電子戦システムを搭載した指揮車1両と3機の小型UAVで全体を構成されている。 (2103-021906)

T80BV MBT の配備

 ロシア軍幹部が国防省機関紙「赤い星」で、東部軍管区がクリール諸島(北方領土と千島列島)にT80BV MBTを配備することを明らかにした。
 配備場所は明言していないが、拠点がある択捉島や国後島とみられる。
 InterFax通信によると、ロシア軍は寒冷地に適したT80BVをT72Bの後継として2019年から導入しているという。 (2105-042205)

5・2・7・3・3 北方領土での活動

2月: 大規模演習の実施

 ロシア軍東部軍管区が2月26日、北方領土を含むクリール諸島で1,000名超が参加する演習を開始したと発表した。 敵の上陸を想定した演習を行い、無人機による攻撃や電波妨害への対処も実施するという。
 両島に駐留する機関銃砲兵師団が参加し、300両車両やヘリなどが投入される。
 同諸島の主な軍事施設は北方領土の択捉島や国後島にあるため、両島を中心に演習を行うとみられる。 (2103-022605)

6月: 周辺海域で射撃演習

 政府関係者らが6月18日、ロシアが北方領土周辺海域で射撃を実施すると日本側に通告してきたことを明らかにした。
 ロシアは既に16~18日に北方領土で爆撃を行うと通告しており、政府は大規模な軍事演習の可能性もあるとみて情報収集を進め、演習の常態化に警戒を強めている。
 政府は外交ルートでロシア側に抗議した。 ロシアは16~18日にも択捉島とウルップ島の間を通る択捉海峡で爆撃を行うと通告しており、政府は同様に抗議していた。 (2107-061809)

 ロシア東部軍管区が6月23日、北方領土やサハリンなどで5日間の予定で10,000名以上が参加する大規模演習を開始したと発表した。
 東部軍管区によると、演習は国後、択捉両島や日本海などで実施され、約500両の車両や太平洋艦隊の艦艇12隻などが参加し、空挺部隊などによる上陸作戦も想定されている。
 北方領土では2月にも1,000名規模の演習が行われ、6月には太平洋に展開した露海軍の艦艇約20隻による大規模な演習も行われている。 択捉島周辺の海域では16~18日に爆撃訓練が行われるという通告もある。
 ロシアは近年、実効支配を続ける北方領土で駐留部隊の軍備を増強し軍事演習も常態化させており、米露の対立が続く中で、極東でも軍事活動を活発化させているとみられる。 (2107-062303)

 加藤官房長官が、ロシア政府が国後島周辺海域で6月27日から射撃訓練を実施するとした通告があったことを認めたうえで、ロシア側に抗議をしたことを明らかにした。
 日本政府によると、ロシア政府は27日から7月末にかけて断続的に国後島周辺の海域で射撃訓練を実施すると通告してきたという。
 ロシア軍は2021年2月と6月にも北方領土で大規模な軍事演習を行うなど、実効支配に向けた動きを強めている。 (2108-072605)

9月: 国後島周辺で射撃訓練

 日本政府関係者への取材で9月5日、ロシアが北方領土国後島周辺で新たな射撃訓練を通告してきたことが分かった。
 政府関係者によると、ロシアは6日から9月中のほぼ毎日、国後島周辺で射撃を行うと通告してきた。 (2110-090505)

12月: 国後島周辺で射撃訓練

 日本政府関係者が、ロシアが北方領土の国後島周辺で、12月16日から射撃訓練を実施すると通告してきたことを明らかにした。
 ロシアは北方領土各島での局地的な訓練も常態化させおり、日本政府は実効支配を強める動きとして警戒している。 (2201-121604)

5・2・8 アフリカ進出

スーダンにロシアの海軍施設を建設

 スーダン軍高官のインタビューが6月1日夜、東部ポートスーダンにロシアの海軍施設を設ける合意の見直しを求めていると述べた番組が放映された。
 この高官は合意は前政権とのものと指摘し、ロシア代表団と先週、スーダンの国益に資する合意に見直すための協議を行ったと明らかにした。
 ロシアは2020年12月、スーダンに海軍施設を置く合意を結んだと発表したが、2021年に入ってスーダンが合意を停止し、ポートスーダンに運び込まれた資材の撤去を要求したと現地で報じられ、ロシア大使館が4月、事実を報じていないと抗議する騒ぎになっていた。 (2107-060308)

マリ共和国に傭兵派遣

 欧州各国の政府によると、ロシアの傭兵がアフリカのマリ共和国に派遣されているという。
 傭兵派遣は、マリのトンブクトゥにある基地に駐留していたフランス軍部隊が12月になって撤退した後に行われた。
 ロシア政府がウクライナ周辺に軍を集結させる中、西側と対立する新たな前線になっている。 (2201-122706)

5・3 欧州 (NATO/EU)

5・3・1 NATO

5・3・1・1 増大する脅威への対抗

5・3・1・1・1 新たな脅威への対応

野心的な取り組みを開始

 米大統領府が6月13日、NATO首脳会議が14日に開かれるのを前に、NATOが2030年以降の安全保障対策継続に向け首脳らが野心的な取り組みを始めると明らかにした。
 首脳会議では、加盟30ヵ国が「ロシアの攻撃的政策と行動、中国がわれわれの集団安全保障、繁栄、価値観にもたらす課題、テロリズム、サイバー脅威、気候変動などの国境を越えた脅威など、進化する戦略環境へのアプローチ」を取るとするNATOの新たな「戦略概念」で合意する予定であるという。 (2107-061402)

サイバ防衛政策を承認

 NATO首脳会議が6月14日、ロシア発とみられるサイバ攻撃の深刻化を受けて策定された「サイバ防衛政策」を承認した。
 気候変動対策での目標設定でも一致した。 (2107-061501)

第5条の適用範囲にサイバ空間と宇宙分野も

 ストルテンベルグNATO事務総長が6月14日のNATO首脳会議の終了後、1949年北大西洋条約の第5条の適用範囲に、陸海空及びサイバ空間に加えて宇宙分野にも適用されることになったと述べた。 (2108-062301)

今後は防空/ミサイル防衛の強化

 2日間にわたり行われるNATO国防相会議の初日となる10月21日にストロテンベルグ事務総長が、ロシアに対抗する今後の計画として防空/ミサイル防衛の強化を強調した。
 消息筋はこれを、PatriotやSAMP/Tの追加調達を指すものと見ている。 (2111-102107)

Concept for Deterrence and Defence of the Euro-Atlantic Area

 10月21、22両日にブリュッセルで開かれたNATO国防相会議の初日に、ロシアやテロ集団から国土を護る抜本的な改革構想Concept for Deterrence and Defence of the Euro-Atlantic Areaが承認された。
 この構想は局地的な地上作戦を念頭に置くもので、今後数ヶ月かけて立案される。 (2201-110305)

5・3・1・1・2 ロシアへの対抗

中東欧9ヵ国が軍事支援要請

 6月のNATO首脳会議に先立ち、NATOに加盟する中東欧9ヵ国が5月10日にルーマニアのヨハニス大統領とポーランドのドゥダ大統領が共同で主催するオンライン形式の首脳会議を開催し、ロシアの脅威に対抗するため会議に参加したバイデン米大統領に軍事支援を求めた。
 会議にはハンガリー、チェコ、ブルガリア、スロバキア、バルト3国の首脳とNATOのストルテンベルグ事務総長が参加し、黒海やウクライナ国境付近の安全保障、NATOの将来について協議した。 (2106-051106)

ロシア代表部8人を除名

 NATO当局者が10月6日、NATOロシア代表部の8人が未申告のロシア情報機関員だったとして登録を取り消したと明らかにした。
 同代表部に認める人員数の上限も20人から10人まで減らした。
 NATOは2018年にも、英国で起きた元ロシア情報機関員暗殺未遂事件を受け、上限を10人削減している。 (2111-100703)

ロシアが NATO 代表部を閉鎖

 ロシアのラブロフ外相が10月18日、ブリュッセルにあるNATOのロシア代表部の活動を停止すると発表した。
 同時にモスクワにあるNATO軍事代表部の人員の認可を11月1日付で取り消すと共に、モスクワのNATO情報部を閉鎖する。
 NATOが在ブリュッセルNATO代表部に勤務するロシア人8人を「未申告の情報部員」として追放処分にしたことに対する対抗措置で、ラブロフ外相は記者会見で「NATOは公平な対話と共同作業に関心を持っていないようだ」とし、「これが事実なら、予見可能な将来に何らかの変化が可能であるかのようなふりをし続ける必要はない」と述べた。 (2111-101902)

NATO 事務総長が露外務次官の発言に信用ならない

 リャブコフ露外務次官が12月13日に、NATOが中距離核戦力 (INF) の配備を止めると保証しない限りロシアもINFを配備せざるを得なくなると述べたことに対し、ストルテンベルグNATO事務総長が14日、ロシアの約束は信用ならないと述べた。 (2201-121510)

NATO軍最高司令官がルーマニアとブルガリアへ多国籍戦闘群を派遣すべきと訴え

 ドイツの週刊誌Del Spiegelが12月上旬に、NATO軍最高司令官兼在欧米軍司令官のウォルタ空軍大将がNATO各国首脳に対し、バルト三国やポーランドに派遣しているのと同じ多国籍戦闘群を黒海沿岸国のルーマニアとブルガリアへ派遣すべきと訴えたと報じた。
 1,500名で構成されるNATOの多国籍戦闘群は警報索の役割を担いロシアに対する抑止力となるように編成されている。 (2201-123006)

5・3・1・1・3 中国への対抗

 オースチン米国防長官がNATOのバーチャル国防相会議に出席し、増大を続ける中国の脅威に対抗するためにはNATO加盟国の協力が必要であると述べた。 (2103-021910)

 ストルテンベルグNATO事務総長が2月19日に開かれたミュンヘン安全保障会議で、欧州や米国、カナダに対し国際的ルールに基づく秩序の維持を訴え、中国の台頭はNATOにとって問題だという認識を表明した。
 NATOは依然としてロシアを主な敵国と見なしているが、中国の軍事的影響力拡大に対応するため、同盟の主要方針である戦略概念に中国を含めることを検討している。 (2103-022001)

 ストルテンベルグNATO事務総長が2月19日に開かれたミュンヘン安全保障会議で中国の台頭について、われわれの安全や繁栄、生活様式に影響をもたらす可能性がある決定的な課題だと懸念を表明した。
 その上で、NATOはオーストラリアや日本など緊密なパートナーとの関係を深めるべきだと強調した。 (2103-022002)

 ブリンケン米国務長官が訪問先のブリュッセルで開かれたイベントで3月23日にNATOの将来について語り、中国がルールに基づく秩序にもたらす課題への対処に注力する必要があるし、そうすると確信していると述べ、対中国政策で欧州に協調を促した。
 ブリンケン長官は24日にもブリュッセルで米欧同盟について講演する予定で、ここでも中国の脅威対処に欧州に連携を呼びかけるとみられる。
 欧州では中国の人権侵害への懸念が強まっており、対中国で米欧協調の素地が広がっていて、ストルテンベルグNATO事務総長も、攻撃的なロシアに加えて台頭する中国にも対処できると語った。 (2104-032404)

 NATOが3月24日にブリュッセルで開いていた2日間の外相理事会を終えた。 この日はEUのボレル外交安全保障上級代表(外相)や、非加盟国であるスウェーデンとフィンランドも参加して対ロシア戦略を協議した。
 ストルテンベルグ事務総長は終了後、ロシアの行動に共に対応できるようEUやパートナー国との協力を続けると強調した。
 また、理事会では米露間の新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長を歓迎し、事務総長は軍縮の拡大に向け「中国のような国や、より多くの兵器をカバーする合意が必要だ」と訴えた。 (2104-032406)

5・3・1・2 国防費の増額

 NATOが3月16日に2020年の年次報告書を発表した。
 加盟国の国防費総額は2.7%増え、国防費支出をGDP比で2%以上に増やす目標について、2020年に達成したのは全30加盟国中11ヵ国となり、前年から2ヵ国増えた。
 米国を除く、欧州各国とカナダの合計分は3.9%増えた。
 前年に引き続きGDP 2%を達成した英国やポーランドなどのほか、2020年に新たにGDP 2%の目標を達成したのはフランスとノルウェーだったが、ドイツは1.56%、イタリアは1.39%だった。 (2104-031701)

 ウェールズで開かれたNATO首脳会議で、加盟30ヵ国で国防費が目標としたGDPの2%を達した国は2014年より3ヵ国増えて10ヵ国になったことが明らかになった。
 10ヵ国とはクロアチア、エストニア、フランス、ギリシャ、ラトビア、リトアニア、ボーランド、ルーマニア、英国、米国で、ノルウェーが1.85%と続いている。
 これに対しベルギーは1.12%、カナダは1.39%、ルクセンブルグは0.57%、スロバキアは1.28%、スペインは1.02%であった。 (2107-061603)

5・3・1・3 組織の強化

5・3・1・3・1 新規加盟

ボスニアの加盟問題

 サラエボ駐在ロシア大使館が3月18日に、ボスニアがNATO加盟へ向けた動きを進めればロシアは対抗策を採ると発表したのを受け、ボスニアは公式にこれを非難した。
 ボスニア大統領評議会のクロアチア人メンバーであるコムシッチ氏は、こうしたロシアの動きはボスニアのみならず米国を含む西側同盟国への挑戦であると述べた。
 バルカン半島西部では現在、ボスニア、コソボ、セルビアの3ヵ国だけがNATOに加盟していない。 (2104-032003)
【註】ボスニア大統領評議会は構成する3民族から選出された代表3名からなり、8ヶ月交代で国家元首である評議会議長につく。
 現在の議長はセルビア人代表のドディク氏で、次の議長は過去に12回議長についたコムシッチ氏が7月に就任する予定である。

ウクライナの加盟問題

 米大統領府のジャンピエール報道官が5月6日、大統領専用機上でウクライナのNATO加盟に対する政権の姿勢を記者団から問われたのに対し、条件を満たした国々にNATOのドアを開き続けることにバイデン政権はコミットしていると述べた。 (2106-050703)

5・3・1・3・2 Space Center の増強

Space Center の増強

 NATOが1月8日、2020年10月にに連合空軍司令部 (AIRCOM) 内に設立したSpace Centerを増強することを明らかにした。
 Space Centerは現在、独英米の専門家で構成されている。 (2103-012009)

5・3・1・4 航空警察活動

BAP

 PfP同盟国であるフィンランドとスウェーデンが4月10日、NATOが4月20~21日に実施するバルト海上空航空警察活動 (BAP) 訓練Ramstein Alloy 21-1に初参加すると発表した。
 この訓練にはバルト三国とドイツ、イタリア、ポーランドが参加している。 (2106-042805)

 NATO空軍司令部が4月26日、バルト海警察飛行 (BAP) に初めてF-35が参加すると発表した。
 このF-35AはイタリアAmendolaを基地とする伊空軍第32航空団第13飛行隊所属の4機で、同行したKC-767と共に30日にエストニアのAmari空軍基地に着陸した。
 伊空軍のF-35AはリトアニアのSiauliai空軍基地に派遣されたスペイン空軍のEurofighter及び、ポーランドのMalnork空軍基地に派遣されたトルコ空軍のF-16と共にBAP任務に就く。 (2107-051205)

eAP

 ドイツとポーランドが5月12日、QRAとして緊急発進する両国の戦闘機がお互いの領空に入ることに同意したと発表した。
 このほかにNATOは増強警察飛行活動 (eAP) や南部警察飛行活動 (SAP) を行っていて、eAPにはアルバニア、アイスランド、スロベニア、バルト三国、ベネルクス三国が、SAPにはブルガリアとルーマニアが参加している。 (2107-052604)

SAP

 NATOの航空警察活動は欧州全域で行われており、最近では南欧航空警察活動 (SAP) が、ブルガリアとルーマニアを中心に、アルバニア、アイスランド、スロベニア、ベネルクス三国で行われている。 (2106-042805)

 NATOは増強警察飛行活動 (eAP) や南部警察飛行活動 (SAP) を行っていて、SAPにはブルガリアとルーマニアが参加している。 (2107-052604)

5・3・1・5 大規模演習

Loyal Leda 演習

 NATOが2020年11月17日、10日~19日に行ったLoyal Leda演習で、連合国緊急対応軍団 (ARRC) の態勢を確認した。
 ARRCは英Glucesterに指揮所を置く冷戦終了後初の戦闘軍団で、5個師団、120,000名を指揮下に入れる。
 Loyal Leda演習はコンピュータ上で行われ、ARRCの1,200名と加盟21ヵ国の部隊で行われ、米陸軍第1騎兵師団のほか、カナダの1個師団、英国の3個師団と、ルーマニアに駐留するNATO南東多国籍師団が演習を支えた。 (2102-120901)

Combined ResolveⅩⅤ 演習

 米陸軍が2月1日、ドイツバイエルン州にある欧州最大の演習場で行われるロシアの侵攻を想定した4,700名規模のCombined ResolveⅩⅤ演習に参加する、同盟国及び友好国9ヵ国軍部隊が集結した。
 参加するのは米陸軍の第1騎兵師団第1機甲旅団戦闘団のほか、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージア、イタリア、コソボ、リトアニア、北マケドニア、ポーランド、ルーマニア、スロベニアの各国である。 (2103-020107)
【註】イタリア、リトアニア、北マケドニア、ポーランド、ルーマニア、スロベニアの6ヵ国はNATO加盟国であるが、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージア、コソボの3ヵ国はNATO加盟国ではない。

Defender Europe 2021 演習

 ここ数十年で最大級の規模となる米/NATO演習Defender Europe 2021が6月までの予定で開始された。
 演習は師団規模で実施され、27ヵ国から28,000名が参加し、十数ヵ国、30以上の演習場で行われる。 米陸軍は欧州に移動した部隊が陸軍前方備蓄兵器を用いて参加する。
 NATOは2020年に25年ぶりの大規模演習を計画したがCOVID-19の影響で中止されていた。 (2104-031508)

 駐欧米陸軍砲兵部隊が5月5日に6週間にわたるFires Shock演習を開始した。 Fires Shock演習は5月5日に開始された米陸軍ヨーロッパ/アフリカ軍が主導して28,000名が参加するDefender Europe-21演習の一環で北極圏からアフリカまでを舞台に行われる。
 5日には、6日にエストニアに降下する第82空挺師団に先駆け、ドイツGrafenwoehrに駐屯している2018年に創設された第41野戦砲兵旅団 (41st FAB) が、IM-SHORADを装備する最初の部隊である第4防空砲兵連隊第5大隊 (5-4 ADAR) と共にエストニアに展開した。
 41st FABは1分以内に射程40哩以上のロケット弾12発を発射するM270 GMLRSを装備している。
 一方駐欧米陸軍の二大部隊である第2騎兵連隊と第173空挺旅団は射程が20哩以下の砲を装備している。 (2106-050509)

 5月から6月中旬に行われているDefender Europe 2021演習の一部であるSwift Response演習で、5月7日夜間に米本土から直行した空挺部隊がエストニアに降下する。
 降下するのは米陸軍第82空挺師団第3空挺旅団戦闘団の800名で、そのうちの半数は駐留しているリトアニアから、残りの半数はノースカロライナ州Ft. Braggから空中給油を受けながら11時間かけて飛来し降下する。
 その直後にイタリアVicenza駐留の米陸軍第173空挺旅団がハンガリーを離陸して9日~10日夜にブルガリアで降下し、10日には米陸軍の40名とポーランド軍第6空挺旅団の350名も第82師団の統制下でルーマニアに降下する。 (2106-050705)

Formidable Shield 2021 演習

 NATO加盟11ヵ国の15隻が参加して今週北大西洋で実施するFormidable Shield 2021演習で、亜音速、超音速の経空脅威に加えてBM脅威に対処するC&C能力の検証を行う。
 Formidable Shield 2021演習は米第6艦隊が主導してスコットランドWestern IslesにあるHebrides射場の沖合で、4つの想定で行われる。 (2106-051705)

Sea Breeze 2021 演習

 ウクライナとNATOが黒海で6月28日、2週間にわたる合同演習Sea Breeze 2021を開始した。 この演習に参加する米海軍駆逐艦RossはウクライナのOdessaに入港している。
 演習にはウクライナとNATO各国から30隻の艦船、40機の航空機が参加する。 (2107-062807)

Strafast Cobalt 2021通信情報演習

 NATOの通信情報 (CIS) 演習であるStrafast Cobalt 2021がCOVID-19パンデミックの影響から仮想環境で実施された。
 Steadfast CobaltはNATO即応部隊 (NRF) のCIS能力を確認するNATO最大のCIS演習で、2021年はNRF 2022部隊の仏伊英米及びポーランドを中心に22の通信組織に1,000名の軍民要員が参加して行われた。
 ただ、今までのStrafast Cobaltは5,000名が参加し、期間も今回5週間であったのに対し従来は2ヶ月以上にわたり行われていた。 (2108-070002)

5・3・1・6 装備品の共同購入

 ドイツとノルウェーが7月8日、ThyssenKrupp社にU212CD共通仕様潜水艦6隻及びKongsberg社にNSM Block 1Aを発注した。
 発注額は€5.5B ($6.5B) で、U212CDはノルウェーが4隻、ドイツが2隻を発注した。 ノルウェー向けの一番艦は2023年に建造を開始し2029年に引き渡され、ドイツ向けは2032年と2034年に引き渡される。
 NSM 1Aはドイツ海軍に建造されるF126フリゲート艦に装備されると共に、F124とF125に装備されているRGM-84 Harpoonの後継として、またノルウェー海軍のFridtjof Nasen級フリゲート艦の旧型NSMの後継として2020年代中頃に装備される。 (2109-072104)
5・3・2 在欧米軍

5・3・2・1 トランプ政権の再配置計画

5・3・2・1・1 米国議会の反応

 米議会が、2021年1月20日に退く政権がアフガンとドイツから米軍を撤退させようとしているのを阻止する項目を、FY21 NDAAに盛り込んだ。
 ドイツについてはエスパー国防長官が2020年7月に11,900名をドイツからベルギー、イタリアに移動させ、残りを米国に戻すと述べ、アフガンについては2020年11月にミラー国防長官代理が、2021年1月中旬に駐留米軍を4,500名削減して2,500名にすると述べていた。 (2102-121602)
5・3・2・1・2 バイデン政権の対応

 バイデン米大統領が2月4日の外交方針演説で、グローバルな米軍態勢の再検討をオースティン国防長官に指示したと明らかにし、再検討中はドイツ駐留米軍削減を凍結する方針を示した。
 トランプ前政権は2020年7月に在独米軍を12,000名削減する計画を発表し波紋を広げていた。 (2103-020501)

 NATO軍最高指揮官であるウォルターズ米空軍大将が2月3日に記者からの質問に答えて、バイデン政権が駐独米軍11,900名を撤収してブルガリアとイタリア及び米本土に再配置するとしたトランプ政権の計画を凍結して再検討していると述べた。
 2019年7月に当時のエスパー国防長官が、駐独米軍36,000名24,000名に削減して6,400名を帰国させ、残りの5,600名を他のNATO加盟国に移駐させると発表していた。
 この計画でドイツに駐留する唯一のF-16部隊である第52戦闘航空団第480戦闘機飛行隊はSpangdahlem基地からイタリアに移駐し、駐独米陸軍唯一の戦闘部隊第2 Stryker騎兵連隊はVilseck基地から米国または東欧に移動することになっていた。 (2104-021705)

5・3・2・2 体制の強化

最先端技術開発で基金創設

 ストルテンベルグNATO事務総長が6月11日、ブリュッセルで14日に開く首脳会議について、防衛分野における最先端技術の開発や活用を促進するためのイノベーション基金創設で合意するとの見通しを示した。
 加盟国が資金を拠出し、新興企業や研究機関を支援するもので、加盟国間の技術格差を解消し連携を強化するための技術センターも設置する。
 AIなどの軍事利用を加速させている中国やロシアに対抗するもので、ストルテンベルグ氏は技術面の優位性を磨くと強調した。 (2107-061204)
【註】EUは既にPESCOの枠組の中で欧州防衛産業開発計画 (EDIDP) を進めている。

5・3・2・3 戦力強化

5・3・2・3・1 BMD 戦力

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・3・2・3・2 陸 軍

火力部隊の増強

 米ヨーロッパ・アフリカ陸軍が4月13日、陸軍が新編のMulti Domain Task Force (MDTF) と戦域火力軍 (TFC) の2個隊を欧州に派遣すると発表した。
 部隊規模は2個隊合わせて500名で、その家族750名と共にドイツのWiesbaden兵舎に入るという。
 MDTFは最初の部隊が既にインド太平洋軍で任務に就いているが、欧州に派遣され部隊は今年の9月16日に編成され、TFCはその1ヶ月後に編成される。 (2105-041310)

 米陸軍が4月13日、在欧陸軍のMDTFと戦域火力軍に合わせて500名を増派すると発表した。
 いずれの部隊もNATOの東部戦線において火力調整とその他長距離戦闘に当たる。 (2105-041313)

 米国防総省が4月13日にウェブサイトで、米国は駐独米軍を削減するとしたトランプ前政権の方針を覆して、3Q/2021年ドイツに500名を増派すると発表した。
 増派されるのはMDTF-Europeと戦域火力司令部の2個部隊で、MDTF-Eは9月16日、戦域火力司令部は10月16日に編制を完結する。
 MDTF-Eは野戦砲兵、混成AMD、情報、サイバ戦、電子戦、宇宙、航空の諸隊と、旅団支援隊で構成される。 (2106-042102)

Multi-Domain Task Force (MDRF) の新編

 米陸軍で2番目となるMDRFがドイツMainz-Kastelで在欧米陸軍に編成された。
 ただ新編されたMDTFの一部となる第41野戦砲兵旅団に所属するMLRSを装備する1-6 FA大隊はその一部が既に、9月にノルウェーで行われたThunder Cloud演習でMLRSの射撃を行っている。
 最初のMDTFは2019年にワシントン州Lewis-McChord基地に編成され、3番目のMDTFも太平洋地域に編成される。 (2110-091706)

 在欧米陸軍初のMDTFが9月16日に発足したが、MDTF司令官によると隷下の一部部隊は9日から20日までノルウェーで実施されたThunder Cloudに参加していた。
 演習では第41野戦砲兵旅団が第2通信旅団と連携して完全なsenror-to-shooter戦闘を演練した。
 Senror-to-shooterには高度60,000ft~70,000ftに係留された3基の気球が活用された。 (2110-091707)

第56野戦砲兵司令部の復活

 米欧州アフリカ軍が11月3日、1986年に設立されたがINF禁止条約署名により1991年に廃止された第56野戦砲兵司令部を、マルチドメイン火力統制のため復活した。
 陸軍が開発中のPrSMは499km、MRCは1,000哩、LRHWは1,725kmの射程を有する。 (2112-110412)

5・3・2・3・3 海 軍

駆逐艦2隻の追加派遣

 米欧州軍司令官のウォルター空軍大将が議会下院軍事委員会で4月15日、ロシア潜水艦の動きを監視するため今後少なくとも5年間、駆逐艦2隻をスペインのロタに追加派遣すると述べた。 (2105-041512)

Central Partnership Station 演習

 米第5艦隊がレバノンでCentral Partnership Station演習を開始する。
 この演習では中東地域を想定して、米南方軍、アフリカ軍、インド太平洋軍及びレバノン軍と共同で、掃海、海軍基地建設、乳児用粉ミルクなどの補給などの災害救援などが演練される。 (2110-092107)

5・3・2・3・4 空 軍

B-1B の英国展開

 米国がB-1Bを爆撃機タスクフォース (BTF) として英国に配備するため、10月6日にテキサス州のDyess AFBの第9遠征爆撃機飛行隊のB-1B 2機と将兵が、グロスターシャーの英空軍Fairford基地に到着した。
 在欧米軍 (USEUCOM) は2018年からBTFを実施しており、B-1B、B-52H、ンB-2Aの巡回配備を実施している。 (2111-100609)

B-1B の北極圏展開

 北極圏の戦略的重要性が増すなか、米空軍が2月2日にノルウェーのOrland空軍基地にB-1Bを派遣したと発表した。 ノルウェー空軍はOrland基地にF-35Aを配置している。
 派遣されたのはテキサス州Dyess AFBの爆撃機飛行隊と200名の要員で、ノルウェーへの派遣は初めてである。  (2103-020209)

5・3・3 E U

5・3・3・1 EU の防衛政策

欧州平和機関 (EPF) の設立

 2年以上にわたる議論の末、2020年12月18日にEU加盟27ヵ国が欧州平和機関 (EPF) の設立で合意した。
 EPFは平和と安定のための基金で、2021年~2027年に€5B ($6.15B) が準備される。 (2103-010603)

安保・防衛の統合議論

 EUが2月25日と26日にオンラインで開く首脳会議で、安全保障・防衛分野の一段の統合に向けた議論に入った。
 牽引役はフランスで、ルドリアン外相は22日のEU外相理事会で「我々の目標は欧州の戦略的自立を強化する野心的な文書を採択することだ」と力説しており、フランスがEU議長国になる2022年前半に結論を得る考えである。
 EUは加盟国の経済面での結びつきが強い一方、安保・軍事面での統合は進んでおらず、2017年には常設軍事協力枠組みPESCOを発足させ、防衛協力を深めているものの、参加国の全会一致が必要で活動範囲も限定的である。
 背景には英国が米国との関係からNATOを重視し、EUの同分野の統合にストップをかけていた事情があった。 (2103-022404)

防衛産業の協力

 フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が2月5日に防衛産業の協力と欧州安全保障防衛政策 (ESDP) について仮想空間で協議を行った。
 防衛産業の協力で協議の対象となっつたのは欧州MALE RPAS、FCAS/SCAF、MGCS であった。 (2104-021709)

EU 軍の自由な国境通過

 米国が5月上旬に、EUが進めている軍隊の国境通過における官僚的な手続きを廃して迅速化しようとの方針に合流することにした。
 ストルテンブルグNATO事務総長も5月6日、EUが非EU国である米、加、ノルウェーの3ヵ国にこの交渉のテーブルにつくことを認めた決定を歓迎すると述べた。
 ある米政府当局者は、これが欧州シェンゲン圏の軍隊版となることを求めた。 (2106-050607)
【註】シェンゲン圏とは1985年に署名されたシェンゲン協定が適用されるヨーロッパの26の国の領域を指すもので、圏内で国境を越えるさいには検査を受けないことになっている。
 この協定にはEUに加盟していないアイスランド、スイス、ノルウェーも加盟している。

欧州防衛基金 (EDF) が正式発足

 EUの欧州防衛基金 (EDF) が6月30日に正式に発足し、2021~2027年の€8Bのうち2/3が開発に配分される。
 最初となる2021年の提案要求 (CFP) に€1.2B ($1.4B) が計上され、センサーから宇宙分野まで23件のGFPのうち以下の6件が65%を占めている。 (2109-071407)

・航空戦:€190M

・地上戦:€160M

・新推進技術:€133M

・海上戦:€103.5M

・AMD:€100M

・情報優越:€70M
European Deterrence Initiative Development Programme

 欧州委員会が6月30日、EUが支出計画2019~2020年EDIDPで2件の主要計画に€300M ($356M) を配分したと発表した。
 2019~2020 EDIDPの総経費は26件に€500Mになっている。
 2大計画では欧州ソフト定義通信ESSORに€37M、欧州MALE RPASに€100Mの合わせて€137Mになっている。 (2109-071408)

PESCO (Permanent Structured Co-Operation) の拡大

 EUでPESCO協力を進めているデンマークとマルタを除く25ヶ国が11月16日にブリュッセルで会合を持ち、現在進めている60件に加えて新たに25件の研究開発を承認した。
 このうち6件は航空関連、陸/海/宇宙/サイバC4ISR関連がそれぞれ2件ずつ、その他が数件となっている。
 この中にはフランスとエストニア、ラトビアが進める250~500tの半自動水上艇、ドイツ、ポルトガル、スペイン、スロベニアが進める150kg級の次世代UAVの開発などが含まれている。 (2201-112406)

2022年を「欧州の防衛の年」と位置付け

 ミシェルEU大統領が2022年を「欧州の防衛の年」と位置付けている。 また2022年前半のEU議長国を担うマクロン仏大統領は12月9日の演説で、自ら運命を切り開き世界的に力を持つ欧州に変わる必要があると強調し、「主権のある欧州」確立を目標に掲げた。
 安保防衛面では、共同演習や防衛産業育成のほか、海事や宇宙、サイバ空間でEUの戦略共有を進めると表明し、2022年3月の首脳会議でEUの新戦略決定を目指す。
 EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)が11月提示した戦略の原案には、危機時に最大5,000名を投入するEU独自の即応部隊創設も盛り込まれた。 (2201-123102)

5・3・3・2 外交戦略

5・3・3・2・1 対米不信

米国家安全保障局 (NSA) の対独スパイ活動

 フランスのマクロン大統領が5月31日、米国家安全保障局 (NSA) がデンマークの外国情報機関との協力関係を利用して、ドイツのメルケル首相ら周辺国の高官に対しスパイ活動をしていたという報道を受け、同盟国に対するスパイ活動について容認できないと表明した。
 マクロン大統領は、メルケル首相との会談後、ドイツと共に全容の解明を求めていくと言明した。
 メルケル首相はマクロン氏の発言に支持を表明し、報道が正確であれば、重大との認識を示した。 (2107-060101)

新たな安全保障の枠組み

 米英豪が9月15日発表した新たな安全保障の枠組みが、フランスを中心にEUに波紋を広げている。
 EUが地域への関与を強めようとする矢先に同盟国から蚊帳の外に置かれた衝撃は大きく、米国への不信感が一段と深まっている。
 新枠組みでは米英が豪州の潜水艦建造に協力することになり仏豪が2016年に合意した潜水艦の共同開発計画が破棄されたことに対し、ルドリアン仏外相は16日に仏ラジオで裏切りだと怒りをあらわにした。 新枠組みはEUにも寝耳に水だった。
 ボレル外交安全保障上級代表(外相)は16日の記者会見で、知らされておらず、協議に加われなかったのは残念だと認めた。 特にボレル上級代表が同日詳細を発表したEU初のインド太平洋戦略に大きな影を落とした。 (2110-091903)

欧米間の緊張は数年前からとの認識

 EU欧州委員会のブルトン委員(域内市場担当)が9月21日にワシントンで記者団に対し、欧米間の緊張は数年前から続いており、オーストラリアがフランスとの潜水艦共同開発計画を破棄したことへの不満だけではないと述べた。
 バイデン政権がアフガニスタンからの駐留米軍撤退を巡り意思疎通を図っていなかったことや、トランプ前政権時代の渡航制限措置を長期にわたり継続していること、米国がメルケル独首相の携帯電話を盗聴したことやトランプ前政権の4年間にわたる欧州叩きなどその根は深いとした。
(2110-092201)

EU、豪潜水艦問題で仏との連帯表明

 豪政府が米英との合意を優先してフランスとの間で結んでいた潜水艦の建造契約を破棄すると発表した問題で、EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)らは国連総会が開かれているニューヨークで9月20日に会合を開き、フランスとの連帯を表明した。
 国連で会見したボレル外相は、各国の指導者間で分断ではなく更なる協力が求められると述べた。 (2110-092203)

5・3・3・2・2 NATO との共存

 マクロン仏大統領がドイツのメルケル首相との会談に先立ち6月18日、欧州が目標としている防衛の自律性はNATOとの共存が可能との見解を示した。
 大統領は、欧州の防衛および防衛の戦略的自律性がNATOに代わるものであると同時に、NATOの非常に堅固な構成要素になり得るとの考えを浸透させることに成功したと述べた。 (2107-061901)

 アフガニスタン問題や潜水艦建造計画の契約破棄など米国との関係が揺らぐなか、スロベニアで10月5~6日に開かれたEU首脳会議ではNATOとの宣言に盛り込む理念や具体策を討議した。
 具体的には、新しい分野での情報交換や人員交流に加え、対中国を念頭に置いた重要インフラ防衛や、加盟国艦のインド太平洋地域寄港といった案を話し合ったという。
 ミシェルEU大統領は6日未明の声明で、我々の安全保障の礎であるNATOとの協力を進めると力説し、NATO内での欧州諸国の存在感を高め、米国に物言える立場を築く方針を示した。
 NATO加盟国の国防費の7割を米国が占め突出しており、加盟30ヵ国のうちトルコを除く27ヵ国が欧州諸国であるにもかかわらず、NATOの意思決定は事実上、米国が握っているのが現状である。 (2111-100605)

 EUのフォンデアライエン欧州委員長とストルテンベルグNATO事務総長が11月28日、リトアニアとラトビアを共同で訪問して両国首脳と会談し、ベラルーシが両国国境に移民を送り込んでいるとされる問題で連帯をアピールした。
 こうした安全保障上の脅威への対応で、EUとNATOの協力をさらに強化する方針を表明した。 (2112-112901)

5・3・3・2・3 対トルコ戦略

経済制裁を科すと警告

 EUが3月23日、今週開催の首脳会議のための報告書を公表し、トルコとの通商関係の強化に向け交渉を始めるべきだとする一方で、トルコがEUの利益に反する行動を取った場合は経済制裁を科すと警告した。
 EUは報告書で、トルコがEUの制裁政策に連携していないと指摘し、トルコのリビアに対する外交政策はEUと異なる場合が多い。
 EUは2020年12月にトルコが東地中海で「許可なく天然ガスの掘削活動を行った」として資産凍結や渡航禁止措置を提案した。 ただ2021年に入りトルコのエルドアン大統領が建設的な姿勢を示したことでEUは制裁に踏み切らなかった。 (2104-032401)

5・3・3・2・4 対露戦略

ウクライナ情勢で制裁を警告

 EUが12月13日にブリュッセルで開いた外相理事会で、緊迫化するウクライナ情勢をめぐるロシアへの対応を協議した。
 ボレル外交安全保障上級代表(外相)は終了後、ウクライナに侵攻すれば高い経済的代償と政治的結果を招くとロシアに制裁を警告する姿勢を全加盟国が明確に示したと述べた。 (2201-121404)

ロシアの軍事企業に制裁

 EUが12月13日にロシアの民間軍事企業Wagner社がロシア政府に代わり秘密裏の活動を行っているとし、同社のほか8人の個人とシリアのエネルギー会社3社に対する制裁を発動させた。
 EUは官報で、ロシアとワグネルとの関連性について、Wagner社はウクライナ、シリア、リビア、中央アフリカ共和国、スーダン、モザンビークにおける深刻な人権侵害の責任を負っているとし、人権侵害の例として拷問や法的手続きを通さない処刑などを初めて詳細に公の場で非難した。 (2201-121403)

ロシアに警告「制裁の準備整えた」

 EUが12月16日に開いた首脳会議で、ウクライナ国境周辺で軍備を増強するロシアへの対処方針を議論し、会議後フォンデアライエン欧州委員長は記者会見で高い代償をともなう制裁の準備を整えたと表明した。
 EU首脳会議はウクライナへの全面的な支援を確認し、ロシアが攻撃した場合、米国などと連携した制裁を含む厳しい代償を科して応じるとも警告した。
 手の内を明かさない戦略だとして具体案は明かしていないが、ロシアの金融機関や国営エネルギー企業を対象にする制裁が取りざたされ、リトアニアのナウセーダ大統領によるとNordostreem 2計画を停止することも強いカードになりうるという。 (2201-121709)

5・3・3・2・5 対中戦略

新疆ウイグルでの人権侵害をに対し制裁

 EUが3月17日、中国が新疆ウイグル自治区で深刻な人権侵害を行っていたとして、制裁に踏み切ることで合意した。
 複数の外交筋によると、中国の4個人と1団体に対しEUへの渡航禁止や資産凍結といった制裁が科せられる
。  対中制裁は1989年の天安門事件を受けた武器禁輸以降で初めてで、22日のEU外相会議で正式に承認される見通しである。 (2104-031801)

初のインド太平洋戦略

 EUが4月19日にEU初の包括的なインド太平洋戦略をまとめた。 9月までに詳細を取りまとめる。
 中国への懸念を念頭に地域の安全保障や経済への関与を強化し同じ考えを持った国々と協力して、人権保護やルールに基づく国際秩序の維持を推進するとしており、加盟国によるインド太平洋海域への海軍派遣の必要性もうたっている。
 ただ、EU加盟国間には対中政策に温度差もあり、戦略では中国の名指しは回避しており、足並みをそろえて戦略を実行できるかは不透明である。 (2105-041906)

南シナ海巡り中国批判

 EU報道官が4月24日に声明で、中国が南シナ海の平和を脅かしていると批判し、同海域での領有権を巡る中国の主張の大部分を否定した2016年の仲裁裁判所の判断に全当事者が従うよう促した。
 フィリピンが23日に抗議した、中国が海上民兵を乗せたとみられる多数の船舶をWhitsun礁周辺に停泊している問題については、Whitsun礁における中国の大型船の存在を含め、南シナ海の緊張は地域の平和と安定を脅かすと非難した。 (2105-042602)

中東欧で中国との経済関係拡大を阻止する動き

 中国とは協力関係を志向してきた中東欧で、ロシアに加え中国との経済関係拡大を阻止する動きが強まっている。
 InterFax通信によるとチェコ下院は6月16日に南モラビア地方のドコバニ原発の増設でロシアと中国企業の入札参加を認めないと決議し、政府もロシアと中国の政治的なふるまいを理由に議会決議を容認した。
 チェコ政府は4月、2014年の弾薬庫爆発にロシアスパイが関わったとする調査結果を発表したのを機にロシアへの警戒論が強まっていたが、中国排除の表明は異例である。
 一方、ウクライナでは3月にゼレンスキー大統領が、中国企業が自国の航空エンジン製造大手を買収することを大統領令で阻止した。 (2107-062702)

独仏が EU 独自の対中外交を追求

 フランス大統領府が7月5日、フランス、ドイツ、中国の3首脳がオンライン会談したと発表した。 仏独両国には、米国とは一線を画したEU独自の対中外交を示す狙いがある。
 独仏首脳は、EUと中国が昨年末に結んだ投資協定を踏まえ、中国が欧州企業の市場参入に道を開くよう期待を示した。
 仏大統領府の声明によると、3首脳は地球温暖化対策、COVID-19ワクチンのアフリカへの分配、さらにイラン、ミャンマー情勢について話し合った。
 中国の人権問題をめぐっては、独仏首脳は懸念を示し、新疆ウイグル自治区の強制労働問題で習主席に改善を要求した。 (2108-070601)

欧州議会が台湾との関係強化議決

 欧州議会が10月21日に台湾との関係強化をEUに求める報告書を圧倒的賛成多数で可決したと発表した。 採決は20日夜に行われ、賛成580、反対26、棄権66だった。
 報告書では、EUの駐台湾出先機関、欧州経済貿易弁事処の名称をEU駐台湾弁事処に変更することや、EUと台湾の2者間投資協定 (BIA) 締結に向けた影響評価など準備作業への早急な着手、台湾が直面する中国の軍事的圧力に対してより多くの措置を講じることなどをEUに対して求めている。 (2111-102105)

Global Gateway 戦略

 EUが11月中旬に€40B超をテクノロジーとインフラ分野に支出するグローバル・ゲートウェイ戦略を公表する。
 この戦略は中国の一帯一路に対するEUの対抗策の中核を成す。
 Bloomberg Newsが確認した草案によると、戦略はデジタルと輸送、エネルギー、貿易分野のプロジェクトに重点を置く計画で、世界におけるEUの競争力と利益の押し上げを目指すほか、持続可能な環境基準や民主主義、人権、法の支配といった価値の浸透を図るとしている。 (2112-111202)

 欧州委員会のライエン委員長が12月1日にも、中国の広域経済圏構想一帯一路に対抗する狙いがあるとみられる世界的な投資計画Global Gatewayを発表する。
 関係者によると計画は、デジタルや運輸、気候・エネルギー対策などについて具体的な構想となっている。
 発表される14頁の文書では、この計画を直接的に中国の投資計画への対抗とはしておらず、欧州委員会は11月30日の会見でも慎重に中国への言及を避けていたが、German Marshall財団のスモール上級研究員は一帯一路がなければGlobal Gatewayは存在しなかっただろうと述べ、Global Gatewayでは欧州側が初めて計画を取りまとめて融資メカニズムを形作り、中国から融資を受けようと考えていた国々に選択肢ができたと述べた。 (2201-120102)

中国のリトアニアに対する圧力に対抗

 EUが12月8日、リトアニアが事実上の大使館設置を台湾に認めたことに中国が反発している問題をめぐり、声明で「リトアニアからの積み荷が中国の税関を通過せず、輸入申請が拒否されていると知らされた」と明らかにした。
 声明はボレル外交安全保障上級代表(外相)と欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)の連名でEU内の連帯を訴え、「EUは加盟国へのあらゆる政治圧力や威圧的措置には対抗する用意がある」と表明し、中国を牽制した。
 EUは「一つの中国」原則を維持する立場を明確にしているが、台湾との関係を深める方針も示しており、問題がEUと中国間の対立に発展する可能性がある。 声明では、輸入停止が事実だと確認されれば、世界貿易機関 (WTO) ルール違反を追及する構えも見せた。 (2201-120902)

5・3・3・2・6 アジア太平洋地域

アジア外交を多様化

 欧州各国がインド太平洋地域に関する外交方針を相次ぎ打ち出し、今まで対中国に軸足を置いてきたアジア外交を多様化し、同地域の経済成長を取り込む。
 2020年12月1日、EUとASEANはオンラインの外相会議を開き、両地域の関係を戦略的パートナーシップに格上げすることで合意した。
 EUはこれまでアジア外交の軸足を中国に置いてきたが、日中韓とASEANなど15ヵ国が東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)で合意に達し、EU抜きで経済統合が進むことへの危機感があったとみられる。 (2102-011903)

インド太平洋地域への関与を強化

 EUのフォンデアライエン欧州委員長が9月15日に欧州議会で今後1年の施政方針演説を行い、インド太平洋地域への関与を強める考えを表明した。
 アジア経済の重要性と同地域における中国の存在感の高まりが背景にある。 (2110-091602)

インド太平洋戦略を発表

 EUが9月16日、インド太平洋地域に関する戦略を正式に発表した。
 中国に対抗して同地域における存在感を高めるとし、台湾と通商交渉を進めるほか、海路の確保に向け艦船の配備を増加させる方針を示した。
 EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、前日に米英豪3ヵ国がインド太平洋地域における安全保障上の協力関係AUKUSと呼ばれる協力枠組みを構築で合意したと発表したことについてEUに事前に相談はなかったとし、EUは独自の防衛安全保障戦略を策定する必要があるとの認識を表明した。
 ミシェルEU大統領も、戦略的な利害がある地域に対するEU共通の対応の必要性が改めて示されたと述べた。 (2110-091612)

軍艦派遣を盛り込む防衛戦略案

 EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)が11月16日に国防相理事会で、インド太平洋地域への艦艇派遣の方針などを盛り込んだEUの新たな防衛戦略案を加盟国に示した。
 2020年3月までにとりまとめる方向で加盟国と調整を進める。
 関係者によると、戦略案はインド太平洋地域について南シナ海の領有権問題などが念頭に、世界の競争の新たな中心になりつつあるとし、EUとしてこの地域の安定に積極的に貢献する必要があるとし、米国や日本など価値観を共有する国々との共同訓練などを通じ、連携強化を図る方針も示している。
 ボレル上級代表は理事会で、海上監視などの活動に従事するため2020年の早い時期に加盟国共同でインド太平洋地域に艦艇を派遣する意向を示した。 (2112-111708)

アジア欧州会議 (ASEM) 首脳会議

 アジアと欧州の53ヵ国と機関で構成するアジア欧州会議 (ASEM) が11月26日にオンラインで2日目の首脳会議を行い議長声明を採択して閉幕した。
 ASEMは隔年で行われているが、昨年は新型コロナウイルス禍の影響で見送られ、3年ぶりの開催となった。 議長はカンボジアのフン・セン首相が務めた。
 会議では、欧州が強権的な中国の姿勢に警戒感をにじませ、25日の会議ではEUのミシェル大統領は中国を暗に批判した。 これに対し中国の李首相は、多国間主義の堅持が世界の平和と安定のための正しい選択だと訴え、米国が中国包囲網を構築する動きを牽制した。 (2112-112702)

5・3・3・3 EU 独自軍

5・3・3・3・1 構想の推進

対米不信と独自軍

 欧州では、アフガニスタンからの退避をめぐる混乱を受け、各国の懸念を顧みずに部隊撤収を断行した米国への不信感が広がり、EU内では自立を図る動きが出ている。
 EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)が8月30日公開の伊紙とのインタビューで、米国はもう他人の戦争で戦おうとはしないと指摘し、危機時に投入するEUの独自部隊創設を提案する考えを示した。
 欧州各国で米国の自国優先姿勢は変わらないとの厳しい見方は深まっており、マクロン仏大統領が唱えるEUの戦略的自立に向けた議論が加速しそうである。 (2110-090101)

 EUが9月2日に2021年後半の議長国であるスロベニアのクラーニで国防相会議を開き、アフガニスタンからの加盟各国民らの退避をめぐる混乱を踏まえ、危機時に投入可能なEUの独自部隊創設について協議した。
 ボレル外交安全保障上級代表(外相)は終了後の記者会見で、11月半ばまでに構想の具体案をまとめる方針を示した。
 EUでは軍事的な米国依存からの脱却を唱える声が高まっているが、対露防衛で米国との協力を重視する北/東欧諸国には慎重論も根強く、実現するかどうかは依然不透明である。
 EU加盟各国は1999年に5万~6万名の緊急展開部隊を2003年までに運用可能にすることで合意したが合意は履行されず、2007年に導入した1,500名規模の有事即応部隊を投入する仕組みも発動例がない。
 クランプカレンバウアー独国防相は、派兵を容易にするため有志国だけに参加国を絞る案を唱えている。 (2110-090301)

共有ビジョンを作れるか

 ドイツの連邦議会選挙の結果を受けた連立交渉は難航が予想されるが、各党の公約から判断する限り次期政権はEU軍の創設を目指すことになる。
 この点はすべての主要政党が支持しており、特に今回、僅差で勝利した中道左派のドイツ社会民主党(SPD)はEU軍創設の考えには積極的である。
 9月15日に英語圏3ヵ国が新たな安全保障協力の枠組みAUKUSの創設を発表したことを仏政府は「後ろから刺されたようなものだ」と評し、マクロン仏大統領はEUの戦略的影響力を前にも増して高めようと決意を新たにしている。
 欧州ではEUとしての主権やEUの戦略的自立、EU軍創設を求める声が最近高まっているがどれも空想の域を脱していない。
 EUがこれらの理想を実現するのに必要な莫大な予算や仕組み、共通のビジョンを共有できているかといえばほど遠い。 (2111-100101)

スロベニアで首脳会議

 EUが10月5日から2日間の日程で、議長国スロベニアで首脳会議を開く。
 初日はEU独自の防衛力強化や対中国政策を議論し、アフガニスタンからの米軍撤収強行などで米欧同盟への信頼が揺らぐ中、欧州の戦略的自立を模索し検討を本格化させる。 (2111-100508)

5・3・3・3・2 Military Planning and Conduct Capability (MPCC)

 EUの指揮機能MPCC のPhase 1 FOCが、2021年内にも2度に渡る延期で1年遅れで宣言される。 (2108-071408)
【註】MPCCはブリュッセルに本部を置く、EUの共通安全保障防衛政策の一部となる最大2,500名の部隊の作戦本部で、2017年の設立以来アフリカで3件の訓練活動を指揮してきた。
5・3・3・3・3 ボスニアに展開中の欧州連合部隊 (EUFOR)

 ボスニアに展開中の欧州連合部隊 (EUFOR) と欧州各地の予備役部隊、コソボ駐留のNATO軍に加えてボスニア陸軍が10月1日、6日間に及ぶQuick Response 2021演習を終了した。
 ボスニア国内の数ヵ所で同時進行形で実施された演習では、検問所の設置と管理、輸送車両の護衛と警備、EUFOR連絡員と監視チームの撤収、暴動時の群衆制御などが実際に即した想定のもとで実施された。
 1992年から1995年まで続いたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の後、NATO主導の平和維持軍として60,000名以上の将兵がボスニア国内に展開していたが、2004年からはEU指揮下の欧州連合部隊であるAlthea (EUFOR Althea) に任務が移管されていた。 (2111-100401)
5・3・3・3・4 EU 即応部隊

即応部隊創設の検討

 EUが2025年までに最大5,000名の即応部隊を創設し、米国に依存することなくさまざまな危機に対応できる体制を確保することを検討していることが、ロイターが確認した草案で明らかになった。
 戦略的羅針盤の標題が付けられ草案は11月9日付で28ページにわたる。
 EU外相国防相は11月15日と16日に同計画について協議し、2022年3月までに最終文書をまとめたい考えである。
 EU加盟27ヵ国全てが参加する必要はないが、いかなる配置も総意に基づく承認が必要になるとしている。
 EU首脳は20年前に50,000~60,000名強の部隊設置で合意したが、作戦遂行能力を持たせることはできなかった。 (2112-111607)

 EUが、有志国だけで展開可能な独自のEU軍部隊を創設する方向で議論を始めた。
 意思決定の迅速化が目的で2025年までに5,000名規模での設立をめざす。 実現すれば、全会一致を原則とするEUの外交安全保障政策の転換点となる。
 EUは2007年に1,500名規模の戦闘群を設立を決めたことがあったが、全会一致の原則と「政治的な意思の欠如」が足かせとなりこれまで設立されていない。
 EUのボレル外交安全保障上級代表は15日開かれた外相国防相共同会合で戦略指針案を提示して閣僚級で初めて議論し12月の首脳会合で討議して、フランスがEU議長国を務める2022年3月に採択する計画である。
 部隊は陸海空からなり、2023年から訓練を開始して2025年には運用できる体制にする。 (2112-111616)

独、蘭、芬、ポルトガル、スロベニアの5ヶ国が参加表明

 独、蘭、芬、ポルトガル、スロベニアのEU5ヶ国が、現在あるEU戦闘群 (EUBG) を危機に即応する軍に発展させる計画に、10月21日にブリュッセルで開かれた会議で名乗りを上げた。
 これは8月に起きたアフガンからの撤退事件でEUが執った措置である。
 2007年に1,500名で発足したEUBGはその後Phase 1で3,500名に増強され、ブリュッセルから6,000km以内に部隊を30~120日派遣できるようになったが、未だ派遣されたことはない。 (2201-110309)

5・3・3・5 新規加盟と離脱

5・3・3・5・1 新規加盟、加盟希望

ウクライナ、ジョージア、モルドバの3ヵ国

 旧ソ連構成国のウクライナ、ジョージア、モルドバの3ヵ国が15日にブリュッセルで開かれた東方パートナーシップ首脳会議でEU加盟に向けた意思を表明し、加盟交渉の開始を要請した。
 ただ現時点では、ロシアが攻撃姿勢を示した際は支援するとの保証を得られるにと留まると見られている。
 旧ソ連の6ヵ国のうちEU加盟の意思を表明したジョージア、モルドバ、ウクライナはロシアとの領土問題を抱えている。
 アルメニアとアゼルバイジャンの首脳は今回の東方パートナーシップ会議に出席したがEU加盟は求めておらず、ベラルーシのルカシェンコ大統領は出席していない。 (2201-121601)

5・3・3・5・2 離 脱

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・3・4 欧州諸国

5・3・4・1 英 国

5・3・4・1・1 BREXIT

EU からの完全離脱

 英国が2020年12月31日23:00に欧州連合 (EU) から完全離脱し、加盟国として半世紀近く続いた歴史に幕を閉じる。
 今後は自由貿易協定 (FTA) などEUとの合意に基づく新たな関係に踏み出すが、金融サービスや外交などの分野でなお合意できておらず、視界不良の船出となりそうである。 (2102-010103)

スコットランド独立問題が再燃

 英国では欧州連合(EU)離脱で国内の分断、対立が進行している。
 60%超がEU残留を支持したスコットランドでは、英国からの独立を目指す動きが活発化し、運動をけん引するスコットランド民族党 (SNP) が2021年5月のスコットランド議会選でどこまで勢力を拡大するかが焦点になる。 (2102-010104)

フランスとの漁業権をめぐる対立

 英政府は5月5日、英仏海峡最大の島で英王室属領のジャージー島の主要港に、海軍艦艇2隻を派遣すると発表した。 イギリスとフランスは漁業権をめぐって争いを続けている。
 ジョンソン英首相は、フランスの漁船100隻以上が6日にジャージー島に向けて出航する準備をしていることを受け、「いかなる封鎖もまったく正当化されない」と述べた。 (2106-050602)

5・3・4・1・2 対露戦略

新大西洋憲章

 バイデン米大統領とジョンソン英首相が6月10日に先進7ヵ国首脳会議が開かれる英コーンウォールで首脳会談を行い、法の支配や人権、公正な貿易など民主主義に基づく価値を両国が協力して守るとうたった「新大西洋憲章」に署名した。
 名指しを避けながらも、中国やロシアの専制主義に断固として対抗する姿勢を鮮明にした。 (2107-061102)

ウクライナ情勢で警告

 ジョンソン英首相が12月13日、プーチン露大統領と電話会談しウクライナの主権を不安定化させるいかなる行為も重大な結果を招くと警告した。
 ロシア大統領府によれば、プーチン大統領はこれに対し、ウクライナ政府が国内の親露派との停戦を定めたミンスク合意への破壊的政策を、NATOによるウクライナの軍事的同化を背景に行っていると非難し、改めてNATOの東方拡大への警戒感を示した。 (2201-121402)

5・3・4・1・3 対中国外交

新疆ウイグル自治区の人権問題

 英議会が、議員が中国から制裁を科されたことを受け中国大使の議場立ち入りを禁じた。
 新疆ウイグル自治区の人権問題を巡って中国から制裁を科された議員らから反発が上がり、英議会上下両院議長は中国の鄭大使が参加予定だった9月15日の会合の開催を認めなかった。 (2110-091603)

原子力計画から中国を排除

 英Financial Times紙が9月29日、英政府が英南東部の原発建設計画で中国企業に保有株式を放棄させることを検討していると報じた。
 この原発計画はイングランド東部サイズウェルで進められており、フランス電力が株式の80%を、中国広核集団が20%を保有しているが、同紙によると、英政府は中国広核に対して保有株式を投資家に売却するか、株式市場に上場するかを迫る計画だという。
 英中関係は香港や新疆ウイグル自治区の人権問題などをめぐって冷え込んでおり、国家の安全保障にも関わる原子力計画から排除する方針とみられる。 (2110-093002)

5・3・4・1・4 東アジアへの進出

外交安全保障政策の統合レビュー

 英政府が3月16日に2030年までの外交や安全保障などの政策を定めた統合レビューを公表した。
 中国の台頭を踏まえ、インド太平洋地域について「世界の繁栄と安全保障に対する重要性が増大している」とし、同地域への関与を強化する方針を明記した。
 レビューではロシアを欧州大西洋地域における最大の脅威と位置づける一方、中国の軍事的近代化やインド太平洋地域における台頭は英国の利益に対するリスクを増大させているとの認識を示した。
 インド太平洋への関与としては、空母Queen Elizabethの派遣のほかASEANとの関係強化、ジョンソン首相の4月の訪印などを盛り込んでいる。 (2104-031604)

 英国が3月16日、国防外交の主軸をインド太平洋に向きを変えるIntegrated Review of Security, Defence, Development, and Foreign Policyを公表した。
 この見直しではインド太平洋地域を欧州と同程度に見て深く関わるとしている。
 その上でパートナーとしてインド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムを挙げている。 (2104-031708)

 英国が3月16日、国防外交の主軸をインド太平洋に向きを変えるIntegrated Review of Security, Defence, Development, and Foreign Policyを公表した。
 この見直しではインド太平洋地域を欧州と同程度に見て深く関わるとしている。
 この文書では2030年までにインド太平洋での活動を強めるとし、その上でパートナーとしてインド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムを挙げている。
 またこの機にこれら地域への武器輸出も拡大したいとしている。 (2105-032402)

武器輸出にも力

 英国が今後アジア太平洋地域安全保障への参画を強めようとしているのに伴い、武器輸出にも力を入れている。
 2018年にはこの地域への武器輸出は英国武器輸出額全体の2%であったが、2019年には6%になっている。
 2019年の英国武器輸出の総額は£11B ($15.4B) であったことからアジア太平洋向けは£660Mであったことになる。 また、サイバを含む安全保障分野の輸出額は2019年に£7.2Bでアジア太平洋向けは£820Mであった。
 BAE Systems社はオーストラリアへHunter級フリゲート艦の輸出も行っている。 (2105-031013)

 英印ビジネス協会が4月12日に纏めた報告書で、両国はインド海軍が将来装備する潜水艦と空母への要求を共同研究すべきとの提言を行った。 (2105-041307)

インド太平洋に哨戒艦2隻常駐へ

 岸防衛相が7月20日に防衛省でウォレス英国防相と会談した。
 両相は海洋進出を強める中国を念頭に、東・南シナ海における力による一方的な現状変更の試みについて強く反対するとの認識で一致した。
 英国は同地域への関与を強化する方針を打ち出しており、両氏は日英の防衛交流が新たな段階に入ったとの考えで一致した。
 ウォレス国防相は数年後には沿岸即応部隊が展開されるとも述べ、同地域を重視する姿勢を強調した。
 また2021年中にインド太平洋地域に哨戒艦2隻を常駐させる考えを初めて明らかにした。 (2108-072004)

 英国防省が7月21日、8月からアジア太平洋にRiver級外洋哨戒艦2隻を常駐させることを明らかにした。
 派遣されるのはPortsmouthを母港とするSpeyTamarで、派遣間は日豪及びシンガポールから支援を受けるという。
 全長300呎弱、速力24kt、航続距離5,500nmのRiver級はOerlikon社製30mm砲1門、Oerlikon社製KAA200 20mm機関砲1門を装備するほかMerlinへり1機の着艦ができ、乗組員40名のほかに海兵隊員50名を乗艦させることができる。 (2108-073007)

 英国防省が、海軍哨戒艦2隻が7日にインド太平洋地域での5年間の任務に向け英国を出港したことを明らかにした。
 派遣されるのは全長90m、排水量2,000tの哨戒艦SpeyTamarで、太平洋やインド洋で哨戒活動を行いつつ北はベーリング海、南はニュージーランドやオーストラリアのタスマニア州に至る幅広い地域に展開し、ポーツマスの母港に戻るのは2026年以降になるとみられている。 (2110-090901)

 英海軍トップのラダキン海軍大将が日本経済新聞のインタビューに応じ、インド太平洋地域に少なくとも5年間、新たに英海軍の哨戒艦2隻を常駐させると表明した。
 ただインド太平洋地域での英軍の拠点は少なく、哨戒艦の常駐には友好国のサポートが欠かせないため、80%以上の時間は海上で過ごすが、いくつかの港や基地に短い時間で立ち寄り、物資の積み替えや燃料の補給などを行うとし、こうした面で日本やオーストラリアなどとの連携は視野に入っていると説明した。
 今後の英海軍の展望についてラダキン大将は、インド太平洋地域への基地の増設や兵力の増強を意味するのではないとしたうえで、英領で米国に貸し出しているインド洋中部のディエゴガルシア島の基地を起点としてアフリカの東海岸を航行する艦艇を準備したいと考えていると明かした。 (2110-091610)

5・3・4・1・5 Queen Elizabeth CSG の東アジア派遣

Queen Elizabeth CSG の東アジア展開

 英政府が表明している空母Queen Elizabeth CSGの東アジア展開に関し、日英両政府がCSGを日本に寄港させる方針を固めた。
 時期や寄港先などは今後、両政府間で調整を進める。
 Queen Elizabethの日本寄港は初めてで、寄港の機会を捉え、自衛隊との共同訓練も実施する。 (2105-042601)

 英海軍が5月、1982年のフォークランド戦争以来となる大艦隊をインド太平洋地域に派遣する。
 艦隊を率いるのは空母Queen Elizabethで、Type 45駆逐艦のDefendeDiamond、Type 23フリゲート艦のKentRichmond、補給艦のFort VictoriaTidespringが随行する。 英海軍は現在、駆逐艦とフリゲート艦を併せて19隻しか保有していない。
 28週間に及ぶQueen Elizabeth CSGの極東展開には米海軍駆逐艦Sullivansと蘭海軍フリゲート艦Evertseも同行する。 (2105-042604)

 米海兵隊が4月27日、アリゾナ州Yuma航空基地所属第211戦闘攻撃飛行隊のF-35B 10機が英空軍第617飛行隊と共に、5月にポーツマスを出航する英海軍空母>Queen Elizabethに搭載されてインド太平洋に向かうと発表した。
 英海軍は26日に、>Queen Elizabeth CSGが日印韓及びシンガポールを含む40ヵ国を訪問すると発表した。 (2105-042806)
【註】英空軍のF-35Bが充足されるより先に>Queen Elizabethが就役するため、当初>Queen Elizabethに米海兵隊のF-35Bが搭載されるというのは既定の方針であった。

 日本にも派遣されて自衛隊との合同演習を行う英空母Queen Elizabeth CSGが1日、母港のポーツマス港を出航した。
 Queen Elizabethにとっては初めての本格的な航海で日本や韓国、シンガポールなどに寄港し、自衛隊との合同演習を行う。
 駆逐艦2隻、フリゲート艦2隻、潜水艦など合わせて9隻で構成されるQueen Elizabeth CSGは、スコットランド沖で演習に参加して燃料補給をした後、7ヵ月にわたりインド太平洋などへ派遣される。 (2106-050201)

 英空母Queen Elizabethを旗艦とするCSGが22日夜、7ヵ月間26,000nmの航海に向けポーツマスの港を出航した。
 Queen Elizabeth CSGには英国の水上艦や潜水艦のほか、米海軍駆逐艦や蘭海軍フリゲート艦も加わる。 空母にはF-35Bを18機搭載するが10機は米海兵隊機という。
 艦隊は地中海やインド太平洋などの地域を周り、航海を通して同盟国などとの70以上の演習や作戦が予定されているという。
 また地中海を航行中にはF-35Bがイラク国内のISISへの空爆も計画している。 (2106-052302)

 英国防省が4月26日、1990年代末以来最大のCSGを5月下旬から28週にわたりインド太平洋地域に派遣し、40ヵ国以上を訪問すると発表した。
 CSGは空母Queen Elizabethを中心に英海軍から

・Type 45駆逐艦: 2隻 (Defender、Diamond)
・Type 23フリゲート艦: 2隻 (Kent、Richmond)
・補 給 艦: 2隻 (Fort Vicoriz、Tidesrig)
・Astute級攻撃型原潜: 1隻
 CSGには米海軍/海兵隊、蘭海軍も同行する。米海軍からは駆逐艦The Sullivans、蘭海軍からはフリゲート艦Evertsenが参加する。
 更に航空機は英空軍のF-35B 8機、米海兵隊のF-35B 10機のほかに、HM2ヘリ7機、HC4へり3機、Wildcat HMA2攻撃ヘリ4機が同行する。 (2107-050502)

 英海軍広報官が6月1日、英空母Queen Elizabethに搭載されている米海兵隊VMFA-211飛行隊のF-35Bが5月31日にスペインIbizaで緊急着陸したと発表した。
 この緊急着陸はあくまでも危険回避のためで、乗員及び機体に異常はなく空母に戻ることになると言う。 (2107-060208)

地中海東部を航行中の Queen Elizabeth 艦載機がイラク国内の ISIS 残党に対し掃討作戦

 英海軍が6月18日から、地中海東部を航行中の空母Queen Elizabeth艦載機による、イラク国内のISIS残党に対する掃討作戦を実施している。
 アフガニスタンからの撤退で手一杯の米国に代わって、イラク国内での作戦を遂行している英海軍にとって、地上軍部隊の航空支援を行うのはほぼ20年ぶりで、Queen Elizabethにとって初の実戦参加となる。
 Queen Elizabethの存在はまた、F-35Bに対するロシアの関心を呼んだようで、空と海からの監視対象になっているという。
 Queen Elizabethは向こう2~3週間地中海東部で作戦を続行した後に、スエズ運河経由でインド、日本、韓国、シンガポールを訪問する。 (2107-062203)

 英国防省が6月22日、Queen Elizabethと共に極東へ向かっているF-35Bが米海兵隊のF-35BとイラクとシリアのISIS拠点を空爆したと発表した。 (2108-063001)

Queen Elizabeth 乗組員が COVID-19 感染

 BBCが7月14日、空母Queen Elizabethで乗組員約100名がCOVID-19に感染したと報じた。
 報道によると、感染拡大は定期検査の一環で発覚したもので、艦内ではマスク着用や社会的距離の確保などの対策が取られているため今後の作戦に支障はないという。
 Queen Elizabeth CSGには3,700名が乗艦しており、英政府は乗組員全員がワクチンを接種したと発表していた。 (2108-071404)

Queen Elizabeth 帰途へ

 英海軍空母Queen Elizabethを旗艦とするCSGは、空母就役以来初となる極東地区への遠征と、海上自衛隊やインド海軍との合同訓練を終えて帰途についた。
 CSGには英海軍の潜水艦1隻と6隻の水上艦の他、オランダ海軍フリゲート艦Evertsenと米海軍駆逐艦The Sullivansが随伴して5月にポーツマスを出港して以降、これまでに74,000km以上を航海した。
 海洋進出を強める中国を牽制する狙いと、インド太平洋地域でのプレゼンスを高めたい英政府の外交防衛政策の一環で、今回の長期遠征となった。 (2112-110805)

5・3・4・1・6 軍の再編

 英政府が3月22日、防衛政策の見直しに関する報告書を公表した。
 報告書は、先週発表された安全保障外交政策の包括的見直し統合レビューを補足するもので、新型戦車や小型監視用UAV、電子/サイバ戦用新装備などに£23Bを投じ、ロシアや中国を念頭にした将来脅威に対抗するため次世代兵器に大規模投資を行う。
 また陸軍を現在の76,500名から2025年までに4,000名削減する一方、外国軍と合同で作戦遂行する特別部隊を組織する。 (2104-032305)

 英国防相が3月22日、現在76,000名の陸軍を2025年までに72,500名に削減すると発表した。 これに伴い1個歩兵大隊が廃止され、一部の兵站部隊も廃止される。
 また138機計画されているF-35Bも削減され5機計画されているE-7A Wedgetail AEW&C機も3機に削減される。
 更に2040年に退役する計画のTranche 1 Typhoonも退役時期が2025年に繰り上げられる。 (2105-033102)

 英陸軍が2021年秋までに新旅団戦闘団のタイプ、走行車両、砲やその他の装備の数などの構想を固める計画である。 (2107-051903)

 英陸軍の再編計画Future Soldierの第一弾が今年後半に実施される。
 Aldershotに駐屯する特殊戦歩兵群は8月中に特殊作戦旅団に改編され、旅団のレンジャー連隊は12月にIOCとなる。
 またAldershotに駐屯する第11歩兵旅団は10月に第11治安補助旅団に改編される。
 更にBulfordに駐屯する第12、第20装甲歩兵旅団は第12、第20装甲歩兵旅団戦闘団になる。 (2110-081802)

5・3・4・1・7 軍備増強

核兵器の増強

 英Daily Telegraphが3月13日、英国が近く核兵器の増強に乗り出す方針だと報じた。
 ジョンソン政権は外交安全保障などの中期政策を6年ぶりに見直すための統合レビューを16日に発表するが、同紙によると政府はこの中で、現在180発とみられる核弾頭数を引き上げられるようにする方針だという。
 英国は2010年に核弾頭保有数の上限を225発とし、さらに2020年代までに180発まで減らす軍縮計画を明らかにしており、すでにその作業が進んだと考えられていただけに、波紋が広がりそうである。 (2104-031308)

 英政府が3月16日に2030年までの外交や安全保障などの政策を定めた統合レビューを公表した。
 中国の台頭を踏まえ、インド太平洋地域について「世界の繁栄と安全保障に対する重要性が増大している」とし、同地域への関与を強化する方針を明記した。
 レビューではロシアを欧州大西洋地域における最大の脅威と位置づける一方、中国の軍事的近代化やインド太平洋地域における台頭は英国の利益に対するリスクを増大させているとの認識を示した。
 中国による核増強も背景に指摘されているが、レビューでは具体的な国名を避けつつも「一部の国は核兵器を大幅に増やしている」と指摘し、核弾頭保有数の上限を現在の180発から260発に引き上げる方針も示した。 (2104-031604)

5・3・4・2 フランス

中国の攻撃的姿勢懸念

 フランス国防省のドランクール国際関係戦略総局副局長が同国のインド太平洋戦略を巡る記者会見で5月6日、「中国の姿勢が次第に攻撃的になっており、懸念の種だ」と述べ、5月に日本で行われる日米仏3ヵ国の合同訓練は作戦面での関係強化に向け良い機会となるとした。
 南太平洋に海外領土を持つフランスは、この地域での中国台頭を念頭に2018年にインド太平洋戦略を打ち出し、米国に加え日豪印を重要な協力国と位置づけている。 (2106-050701)

インド太平洋への進出

 仏軍は2021年初め、攻撃型原子力潜水艦を南シナ海に派遣し、5月には強襲揚陸艦が佐世保に寄港して日米豪と共同訓練を行うなど、インド太平洋への艦船派遣を活発化している。 (2107-061104)

 マクロン仏大統領が9月28日、オーストラリアがフランスとの潜水艦開発契約を破棄したのを受け、フランスのインド太平洋戦略は不変だと表明した。
 大統領は、われわれはこの地域に8,000名の部隊を駐留させパートナー国と多くの共同作戦を行ってきたとして、南太平洋に海外領土を持つインド太平洋国家として、日米豪などと安全保障で連携してきた実績を強調した。 (2110-092806)

インドと関係強化を確認

 フランス大統領府が9月21日、マクロン大統領がインドのモディ首相と電話協議し、インド太平洋地域で共に行動することで一致したと発表した。
 新たな安全保障枠組みAUKUSを秘密裏に計画、創設したとしてフランスが米英豪3ヵ国に反発を強めるなか、地域の大国インドとの関係強化を確認した。
 フランスは、太平洋とインド洋に海外領土を持ち、インドとは2018年に安全保障分野の協力関係強化で合意しており、今年4月には中国の海洋進出を念頭に、日米豪印にフランスが加わって海上共同訓練を行った。 (2110-092202)

5・3・4・3 ドイツ

5・3・4・3・1 安全保障環境

Nordostreem 2 問題

 ドイツ連邦ネットワーク庁が11月16日、9月に完成したNordostreem 2 (NS2) の認可手続きを一時停止すると発表した。
 独メディアなどによると、独連邦ネットワーク庁は書類審査の結果、ドイツの法律に基づいて組織された事業会社だけが認可手続きの対象になるとの結論を出したという。
 NS2を運営する事業会社のNordostreem 2AGはロシアのガスプロムの子会社でスイスに本拠を置いているため、Nordostreem 2AGはドイツの法律に基づく子会社を設立する方針で、子会社が改めて認可を申請する見通しである。
 ガス価格の高騰が続くなか、当初見込まれていたパイプラインの年内稼働は困難な情勢となった。 (2112-111702)

5・3・4・3・2 国防費の増額

 ドイツ国防省が6月22日、ドイツ議会が2022年の国防費素案と2025年までの財政計画を承認したと発表した。 それによると2022年の国防費は2021年より€3.4B増えた€50.3B ($60B) で、対GDP比は1.38%になる。
 国防費の増額は独仏西計画のFCAS、U212CD潜水艦、NSM Block 1Aなど全ての分野にわたっている。
 3月には米国務省がP-8A Poseidon 5機を$1.77Bで売却することを承認している。  ただ6月22日に議会が承認した財政計画では国防費の毎年の増加額を€1Bとしたため、2020年代後半まで対GDP比は、2023年1.26%、2024年1.22%、2025年1.17%、と逐次低下することになる。 (2109-071413)
5・3・4・3・3 軍備増強

TLVS (MEADS)

 ドイツが計画している地上防空システムTLVSの調達交渉は独政府とMBDA独社との話し合いが纏まらず、2021年内の契約は難しくなった。 (2102-121603)

Eurofighter Typhoon Tranche 5 の装備

 Airbus社が2020年12月9日、ドイツが90機装備しているTornadoの後継としてTranche 5 85機を装備すると発表した。
 ドイツのTranche 5はE-Scan AESAレーダを搭載する。 (2102-121605)
【註】Tornadoは独空軍でB-61核爆弾を搭載できる唯一の機体であるため、その後継機種が問題になっていた。
 このためTranche 5がB-61を搭載できるか否かに注目する必要がある。

5・3・4・3・4 対露姿勢

裁判所が2019年のジョージア人殺害事件を国家テロと断定

 ドイツのベルリン上級地裁が12月15日、2019年にベルリンの公園で起きたジョージア人殺害事件で、被告のロシア人の男性に終身刑を言い渡した。
 上級地裁はロシア当局の依頼による国家テロだと指摘し、ロシア当局が殺害を依頼した理由は「復讐しかない」とした。 判決を受けてベーアボック外相は同日、ロシア外交官2人の追放を発表した。
 上級地裁によると、殺害されたのはチェチェン出身でジョージア国籍の男性で、第2次チェチェン紛争で長年、民兵を率いてロシアと戦った。
 被告のロシア人男性は2019年8月にベルリン市内の公園で白昼、被害者に背後から自転車で近づいて射殺した。 (2201-121602)

 ロシア外務省が12月20日、ドイツの外交官2人をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)に指定し追放すると発表した。
 ドイツが15日に、2019年にチェチェン独立派司令官だった男性が暗殺された事件について、ロシア政府の指示で行われたとしてロシア外交官2人を追放しており、これに対する報復措置と見られる。 (2201-122101)

5・3・4・3・5 アジアへの傾斜

フリゲート艦の日本派遣

 ドイツ政府が独海軍フリゲート艦を日本に派遣する検討に入った。
 ジルバーホルン独国防政務次官は、今夏に出航したいと述べ、まだ詳細は決まっていないが寄港先として日本が視野にあると明らかにした。
 海外領土を持たないドイツが極東に艦船を送るのは極めて異例で、対中警戒論が急速に強まる欧州におけるアジア政策の転換を象徴する出来事になる。 (2102-012505)

8月 2日: フリゲート艦 Bayern が出航

 ドイツ海軍のフリゲート艦Bayernが8月2日、北海沿岸のウィルヘルムスハーフェンからインド太平洋に向けて出航した。
 2022年2月末までの航海で、日本や韓国、オーストラリア、米領グアムといったインド太平洋の各地に寄港して共同訓練などを行う。
 日本には11月ごろに寄港の見込みで、北朝鮮船舶が国連制裁決議に違反して行っている瀬取りの監視活動にも参加する。
 Bayernは南シナ海を航行するが上海への寄港も調整しており、中国に対する過度な刺激や緊張を避ける方針である。 (2109-080202)

中国が Bayern の寄港を拒否

 ドイツ外務省報道官が9月15日、日豪印韓などインド太平洋地域に向け出港したフリゲート艦Bayernについて、中国当局が寄港を望まないとの意向を伝えてきたと明らかにした。
 Bayernは、中国が周辺国と対立する南シナ海を航行する予定で中国への牽制の意味合いがある一方、過度な刺激を避けるため上海への寄港を打診していたが、中国側が拒否した。 (2110-091509)

Bayern が瀬取り監視参加

 ドイツ外務省が11月12日、インド太平洋地域に派遣中のフリゲート艦Bayernが13日から12月14日までの1ヵ月間、朝鮮半島近海で北朝鮮による瀬取りの監視活動に参加すると発表した。
 ドイツ艦による瀬取り監視参加は初めてである。 (2112-111213)

Bayern が南シナ海を航行

 ドイツ国防省が12月16日、日本などインド太平洋地域に派遣したフリゲート艦Bayernが南シナ海を航行中だと発表した。 ドイツ軍艦の同海域通過は約20年ぶりである。
 ドイツ政府は中国が軍事拠点化を進める南シナ海について、国際秩序が圧力にさらされていると訴え、航行の自由確保に尽力すると表明した。 (2201-121703)

ドイツ海軍総監「2022年にインド太平洋へ空軍も派遣」

 ドイツ海軍総監のシェーンバッハ中将が12月21日に訪問先のシンガポールで講演し、2022年にインド太平洋地域に空軍とサイバ防衛部隊を派遣すると述べた。
 シェーンバッハ中将はフリゲート艦Bayernの寄港に合わせてシンガポールを訪問し、講演で「派遣する艦船の補給拠点をつくるため、シンガポールや日本、韓国と交渉したい」と述べた。 また講演に先立つ記者会見で、2023年には2隻の艦船をインド太平洋地域に送るとも述べた。 (2201-122105)

5・3・4・3・6 装備の共同開発

 ドイツと英国が4月22日、MGCSやその他の陸戦兵器で2国間の協力を拡大することで合意した。
 Eurotankと呼ばれているMGCSは独仏で共同開発が進められていることから、もし英国が計画に加わることになれば独仏共同開発の3点セットで進められている他の2件の計画、FCASとEurodronesの取り扱いが注目されることになる。 (2105-042305)
5・3・4・4 イタリア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・3・4・5 スペイン

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・3・4・6 ポーランド、バルト三国

5・3・4・6・1 ポーランド

第18機械化師団が FOC

 ポーランド国防省が6月2日に始まったDragon-21の終了した6月18日に、2018年に編成が開始され2020年6月にIOCになった第18機械化師団がFOCになったと発表した。
 第18機械化師団は9,500名で、8,000点以上の装備を有し、以下の部隊で構成されている。 (2108-063007)

・第1 Warsaw機甲旅団
・第21 Podhale狙撃旅団
・第19機械化旅団
・第18兵站連隊
・第18指揮所大隊
・第18防空連隊
・第18砲兵連隊
・第18偵察大隊
地上軍装備の強化

 ポーランドのブラシュチャク国防相が米国から中古のCougar耐地雷、耐藪 (MRAP) 車300両を購入すると発表した。 Cougarは2022年末までに納入される。
 四輪駆動型のCougarは6人乗りで、製造元のGDLS社の資料によると、海兵隊が2004年から国内外で使用しているという。
 ブラシュチャク国防相は7月に、M1A2 Abrams SROv3 MBT 250両を米国から購入するとも発表している。 (2112-111214)

5・3・4・6・2 エストニア

ロシアからの領土奪還願望

 エストニアで、秋の大統領選を前にロシアからの領土奪還を新人候補が訴えている。 エストニアは日本と同じく、ロシアとの国境線が画定していない。
 第一次大戦直後の1920年に社会主義国家となっていたソ連がエストニアの独立を承認しタルトゥ平和条約で国境画定したことにより、現在ロシア領となっているペチョールイ区の大部分と湖の北は、エストニア領となった。
 ところが1940年にソ連はエストニアを含むバルト三国をナチス・ドイツとの密約に基づき併合したためタルトゥ条約は無効になったとして、1991年に独立したエストニアに対しペチョールイ区などを返さなかった。
 これに対し、エストニア大統領選に出馬予定のプッルアース元議長は6月、犯罪的な占領と非難して領土奪還を訴えている。 (2108-071903)

高い軍事工業力

 ロンドンで開かれているDESI展にKongsberg社とエストニアのMilrem Robotics社が協同で9月15日に、Milrem社製Type-X RCVとKongsberg社のProtector砲塔を組み合わせたNordic Robotic Wingmanを公開した。
 Nordic Robotic Wingmanは50mm砲とATGMを装備してIFV部隊と共同で、IFVと同等或いはそれ以上の火力発揮を行うRCVで、欧米の市場を目指している。
 Milrem社はスウェーデンとフィンランドに事務所を開設し近くオランダにも進出する予定と広く欧州に展開しており、2年前のDSEIではTHeMIS UGVを公表している。 (2110-091402)

Blue Spear沿岸防備ミサイルシステムを発注

 エストニア軍が、イスラエルIAI社とシンガポールのST Engeneering Land Systems社の合弁であるProteus社が沿岸防備用に改良したBlue Spear沿岸防備ミサイルシステムを発注した。
 Blue Spearは射程290kmの高亜音速ミサイルで、GPS妨害への抗堪性を持つという。 (2111-100805)

5・3・4・6・3 ラトビア

フィンランドと武器の共同購入

 フィンランドとラトビアが8月30日、フィンランドの装甲車メーカーであるPatria社と装甲車両共同購入計画 (CAVS) に合意し契約に署名した。
 ラトビアは200両、フィンランドは160両を購入する。 ラトビアでは年内に10両が納入され2029年に完納される。
 CAVS計画は2019年に開始されその後エストニアが離脱したが、今回はエストニアが再加入すると共にスウェーデンも新規加入しそうである。 (2110-091405)

5・3・4・6・4 リトアニア

国防費を GDP 比2.5%に

 リトアニア国防省が10月12日、2022年の国防費を€1.176B ($1.367B) にすると発表した。
 リトアニアの放送によると国防費の上昇率は2021年の2.03%から2022年には2.05%になるという。 財務相によると国防費のGDP比は2030年に2.5%になるという。
 国防費の増額によりリトアニアは、NASAMSの補充、2023年に陸軍即応部隊へのBoxer IFVの装備、2024年に掃海能力の向上を行う。 (2112-102709)

駐中国大使館を閉鎖

 複数の外交筋が、台湾を巡って中国との関係が悪化しているリトアニアの駐中国外交代表団が12月15日に中国から出国したことを明らかにした。
 リトアニアは声明を発表し、協議のために外交官トップを中国から呼び戻し、大使館は当分の間、遠隔で運営するとした。
 事情に詳しいある外交筋は、リトアニアの外交官について安全上の懸念があるとし、中国から出国したのは威嚇への対応だと説明した。 (2201-121505)

5・3・4・7 ノルディック諸国

5・3・4・7・1 デンマーク

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・3・4・7・2 ノルウェー

米海兵隊の駐留

 北極圏でノルウェー陸軍との合同戦闘訓練を行うため1,000名以上の米海兵隊と米海軍の部隊が、1月8日にノルウェーのSetermoenに到着した。
 米海兵隊は冷戦以来ノルウェーに駐留すると共に、ノルウェーの洞窟に大量の武器を備蓄している。 (2102-010803)

5・3・4・7・3 スウェーデン

国防費の大幅増額

 スウェーデン議会が2020年12月15日に国防費を定めたTotal Defeence 2021-2025を承認した。
 これにより同国の国防費は、2020年のSEK66.1B ($7.9B) が2025年にはSEK88.7Bに増大する。 更に2024年~2030年にはSEK13Bが追加される。 (2103-010602)

 スウェーデン議会が2020年12月に承認したTotal Defence 2021~2025計画により、スウェーデンの国防費は2025年には現在より$3.17B増えて$10.45Bになる。
 また同国の汎ノルディック防衛協力構想に従いデンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドとの防衛協力が推進される。 (2110-092302)

中立政策の維持と独自防衛力の増強

 スウェーデン国防相が4月7日に記者会見で、スウェーデンのNATO加盟は、過去の経験と歴史から作られた同国の中立政策が、ロシアと長い国境で接するフィンランドとの関係もあり難しいと述べた。
 このため同国議会は2020年末に、2021~2025年に国防費を40%増額して$11Bにすると決定した。
 これにより現在60,000名の兵力を2030年までに100,000名近くに増強し、陸軍に3個機械化旅団を編成し、海軍コルベット艦、SAMを増強し、Gripen Eの装備を行うと共に次世代戦闘機の開発なども行うとしている。 (2105-040807)

5・3・4・7・4 フィンランド

砲体系の西側仕様への切り替え

 フィンランド国防省が10月21日、K9 155mm SPH 5門を€30M ($35M) で追加購入すると発表した。
 フィンランドは2017年に韓国陸軍の中古K9 48両を€146Mで購入しており、今回の購入を含めてソ連製の旧式火砲2S5 152mm SPH、2S1 122mm SPH、M-16 130mm及びD-20 122mm牽引砲などと弾薬体系を西側体系に切り替えることになる。 (2201-110310)

F-18 後継に F-35

 フィンランドがF-18後継となるHXにF-35を採用したと発表した。
 HX計画は総額€10B ($11.3B) でF-35A Block 4 64機購入に€4.7B、AMRAAMとSidewinder AAMに€755M、2030年までの維持整備費に€2.9Bが見込まれている。 1号機は2026年に納入される。
 競合していたF-18 Super Hornet、Rafale、Typhoon、Gripenの4機種は脱落した。
 6月にはスイスもF-35の導入を決めている。 (2201-121008)
【註】第二次大戦でドイツの同盟国であったフィンランドは戦後処理のパリ条約で軍備を大きく制限され、冷戦時は東西双方からの武器を装備していた。
 そのため戦闘機としてはMiG-21も装備していた。

NATO 加盟問題

(2021年には特記すべき記事見当たらず)

5・3・4・8 黒海沿岸諸国

5・3・4・8・1 ルーマニア

NSM 沿岸防備システムの購入

 ルーマニア政府がNSM沿岸防備システムの購入を決め議会に通知した。 同国では€100Mを超える装備の購入は議会に通知することになっている。
 購入するのはRaytheon社とKongsberg社が共同開発したシステムで、ルーマニアは2個システムを$286MのFMS契約で購入する。 (2102-011405)

オースチン米国防長官の訪問

 黒海沿岸3国を訪問中のオースチン米国防長官が10月20日にジョージア、ウクライナに続いてルーマニアを訪問し、同国大統領及び国防相と会談した。
 オースチン国防長官はこの後ブリュッセルで開かれるNATO国防相会議に参加する。 (2111-102007)

ブリンケン米国務長官に米軍プレゼンスを高めるよう要望

 ルーマニアのアウレスク外相が大西洋評議会の翌日となる11月9日にブリンケン米国務長官と会談し、ロシアによる緊張に対処するため黒海への米軍プレゼンスを高めるよう要望した。
 これについて米国務省報道官は、NATO東翼である黒海安全保障とウクライナなどに対するロシアの侵略について協力することに合意したと述べた。 (2112-110908)

中古の F-16 32機を購入

 ルーマニア国防省が議会に、ノルウェーから中古のF-16 32機を€454M (#513M) で購入する承認を求めた。
 ルーマニア国防省は、ベルギー、デンマーク、ギリシャ、オランダ、ノルウェー、ポルトガルに中古F-16の買収について協議したが、地元の放送局Digi24が入手した情報によると、合意に達した唯一の国はノルウェーだったという。 (2201-121310)
【註】ルーマニアは2013年にポルトガルからF-16 12機を購入しており、2019年にはF-16A/B 5機を追加購入する交渉をしており、今後何年かかけて更に41機を購入する計画である。

5・3・4・8・2 ブルガリア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・3・4・8・3 その他

ウクライナ

 「2・5 ウクライナ」で記述

モルドバ

 「3・5・1 モルドバ」で記述

アルメニア

 「3・6・1 ナゴルノ・カラバフ」で記述

ジョージア

 「3・6・2 ジョージア」で記述

5・3・4・9 その他欧州諸国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・3・5 トルコ

5・3・5・1 エルドアン政権の方向

5・3・5・1・1 国威発揚政策

オスマントルコへの回帰

月面着陸目指す宇宙プログラム

 トルコのエルドアン大統領が2月9日、国家宇宙プログラムを表明し2023年に初の月面着陸を目指すことを明らかにした。 (2103-021002)

5・3・5・1・2 チュルク世界の盟主

チュルク評議会の主催

 トルコが主催するアゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンで構成されるチュルク評議会の首脳会議がイスタンブールで11月12日に行われ、同評議会を機構に格上げすることを決定した。
 新設のチュルク諸国機構は、政治、経済など多方面での関係強化を謳い、評議会のオブザーバーとなっていたトルクメニスタンとハンガリーのほか、ウクライナなども参画を検討しているという。
 エルドアン大統領は、太陽が再び東から昇り始める時期は近いと訴えた。
 新疆ウイグル自治区出身のウイグル族からはこの動きに歓迎の声が出ており、トルコに亡命したウイグル族の指導者トゥムチュルク氏は、チュルクが結束すれば中国の対抗措置を恐れず、異を唱えることも可能になるのではないか」と期待する。
 ただ、経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国の影響力が浸透し、チュルク系各国では対中関係を重視する意見が経済界を中心に根強いため、機構を主導するトルコとしても、中国と露骨な対立は避けたいのが本音で、掛け声とは裏腹に慎重な対応を求められることになりそうである。 (2112-112007)

中央アジア諸国との軍事協力

 キルギスタンが10月21日、トルコBaykar社製Bayraktar TB2 UAVを購入すると発表した。 Bayraktar TB2は間もなく引き渡されるという。
 またロシアからOrlan-10 UAVも購入したことを明らかにしたが、詳細は明らかにしなかった。 (2201-110311)

5・3・5・1・3 イスタンブール運河の建設

 トルコのエルドアン大統領が4月16日、6月からボスポラス海峡を迂回する全長45kmの「イスタンブール運河」の建設を開始することを明らかにした。
 運河はボスポラス海峡から欧州側に十数㌔離れた場所に建設する。
 総工費750億リラ(約1兆円)とされる運河建設には景気浮揚の起爆剤にする狙いがあるが、支持基盤に大手建設会社を抱えるエルドアン大統領は、空港など大型インフラ建設で経済成長を実現してきた。
 地中海と黒海を結ぶボスポラス海峡とダーダネルス両海峡は、黒海の非武装化を目指した1936年のモントルー条約で、両海峡へのトルコの主権を幅広に認める一方で黒海沿岸国以外の艦船往来をより厳しく制限し、通航の際はトルコへの事前通告などを義務付けているが、運河ができれば条約が無効になるなどと懸念する声が上がっており、黒海を巡る米ロの微妙な軍事バランスに影響を与える可能性もある。 (2105-041905)
5・3・5・1・4 エルドアン大統領の支持に陰り

トルコリラの急落

 トルコリラが11月23日、対ドルで15%下落し最安値を付けた。 その後は下げ幅を縮小したものの11日連続で過去最低を更新し、年初からの下落率は45%に達した。
 リラは対ユーロでも過去最安値を更新し、トルコの10年債利回りは2019年初以来初めて21%を上回った。
 エルドアン大統領が最近の大幅な利下げを擁護し、「経済独立戦争」で成功する決意を示したことが材料で、1日の下落としては過去2番目の大きさとなる。 (2112-112303)

 12月13日の外国為替市場で、トルコ通貨リラの対ドル相場が一時1ドル=14リラ台後半に5%超急落し、過去最安値を更新した。
 高金利を嫌うエルドアン大統領の圧力のでトルコ中銀が9月以降3ヵ月連続で利下げを実施したのを受けてリラ売りが加速し、リラは11月に対ドルで30%下落した。 (2201-121307)

 トルコの通貨リラは12月17日の外国為替市場で対ドルで一時8%超急落し過去最安値を更新した。
 リラは4ヵ月連続の利下げが発表された16日も6%急落し、12月中旬1週間の下落率は20%に達した。 リラ下支えを目指した当局の為替介入も効果がなく下げ止まりが見えない。
 エルドアン大統領は16日、2020年1月から最低賃金を50%引き上げると発表したが、2021年に入ってからのリラの対ドルでの下落率はそれを上回る55%に達していて、物価は輸入品を中心に急上昇しており、賃金引き上げ策も焼け石に水の状況である。 (2201-121711)

株価も急落

 外国為替市場で12月17日、トルコリラが一時、史上最安値を更新した。
 17日は株式市場でもトルコの代表的な株価指数BIST100が前日比8%超下落し、売買が一時停止された。 (2201-121714)

世論調査で不支持が56%

 トルコの世論調査機関メトロポールが10月、エルドアン氏を支持するとの回答が39%にとどまり、不支持が56%に上ったとの調査結果を発表した。
 同大統領への反発がこれほど高まったのはISISの台頭などでテロが頻発した2015年以来で、与党の公正発展党 (AKP) も支持離れに直面している。
 トルコではここ数年、物価高が慢性化し、10月にはインフレ率が前年同月比で20%に上った。 通貨リラの記録的な安値が続くなかで物価が高騰し、市民の批判が高まっていて、欧米との衝突も辞さないエルドアン大統領の強権姿勢は国内の経済政策にも及んでおりその威光に陰りが見えつつある。 (2112-111509)

国際人権条約への復帰を求め女性グループが抗議デモ

 イスタンブールで「女性に対する暴力撤廃の国際デー」に当たる11月25日に、国際人権条約への復帰を求める女性グループが抗議のデモ行進を行ったが、これを規制しようとした警官隊と衝突し、イスタンブールの目抜き通りは騒然とした雰囲気に包まれた。
 女性に対する暴力と家庭内暴力に反対するための欧州評議会の国際人権条約、通称イスタンブール条約は2011年5月11日に同地で署名され、翌年トルコが最初に批准したが、今年3月にエルドアン大統領が同条約からの脱退を突然発表して、女性の人権グループや西欧諸国から一斉に非難を浴びた。 (2112-112605)

57.2%の不支持と38.6%の支持

 トルコで2003年以降、長期にわたって政権を率いるエルドアン大統領が強い逆風にさらされている。
 投資促進を重視してインフレ加速につながる経済政策を取ったことから物価が高騰し市民の支持離れを招いているためで、トルコの年間インフレ率は公式統計上では20%超だが、実際はこれより高く60%近いという見方もある。
 調査会社Métropoleが12月25日に公表した世論調査では、エルドアン大統領を支持しないとの回答57.2%で、支持するの38.6%を大幅に上回った。
 人気低下は経済だけが原因ではないく、エルドアン大統領が自身に批判的な国民の一部を敵に見立てて糾弾し、支持者の結束を固めようとする差別化と二極化の手法を取っていることへの批判がある。 (2201-123004)

5・3・5・2 対外政策

5・3・5・2・1 NATO構成員としてトルコ

2021年の即応部隊 (NRF) 高度即応統合任務部隊 (VJTF) の主力

 NATOが2020年12月30日、2021年の即応部隊 (NRF) 高度即応統合任務部隊 (VJTF) の主力がトルコ軍になると発表した。
 トルコ軍の第66機械化歩兵旅団4,200名がポーランド軍と交代する。 (2103-011309)

5・3・5・2・2 反西欧政策と欧米の反発

アルメニア人虐殺のジェノサイド認定

 複数の米メディアが4月21日、第1次大戦中の1915年からオスマン帝国で数年間にわたって起きたとされるアルメニア人虐殺について、バイデン大統領がジェノサイド(集団虐殺)と認定することを検討していると報じた。
 24日のアルメニア人追悼記念日に合わせて声明を発表する見通しで、帝国の後継国家トルコはジェノサイドを否定しており反発は必至である。
 アルメニアは、帝国による領内のアルメニア人強制移住に伴い、最大150万人が殺害されたと主張しているのに対し、トルコ側は大戦下の混乱で多数が犠牲になったことは認めているが、殺害を命じた事実はないと反論しており、チャブシオール外相は20日のTV番組で、米国が認定すれば両国関係に否定的な影響を及ぼすと述べた。
 米上下両院は2019年、アルメニア人虐殺をジェノサイドと認定する決議を採択している。 (2105-042206)

 バイデン米大統領が4月24日、第1次大戦中の1915年から数年にわたりオスマン帝国で起きたとされるアルメニア人虐殺について、ジェノサイド(集団虐殺)だったと認定した。 バイデン大統領は24日のアルメニア人追悼記念日に合わせた声明で、オスマン帝国時代のアルメニア人ジェノサイドで失われたすべての命を忘れず、そうした残虐行為の再発防止に努めると記した。
 帝国の後継国家トルコはジェノサイドを否定しており、米トルコ関係の緊張は避けられないとみられる。
 トルコのチャブシオール外相は、声明を完全に拒絶すると述べた。 (2105-042501)

S-400 購入の強行

 ヌーランド米国務次官が7月21日に議会で証言し、バイデン米大統領がトルコのS-400購入に対して米国の敵対者に対する制裁措置法 (CAATSA) に基づく対トルコ制裁を維持することにコミットしていることを明らかにした。
 さらに、トルコ政府がロシアから主要な武器システムの一段の購入に動けば、米国はトルコに追加制裁を科すとも表明した。 (2108-072201)

 シャーマン米国務副長官が10月1日、トルコがロシア製からS-400を追加購入した場合に対抗措置を検討すると警告した。
 NATOが脅威とみなすロシアと軍事協力を深めないよう促した。 (2111-100202)

フランスとギリシャの武器取引を非難

 フランスとギリシャが9月下旬に戦闘艦3隻を含む€3B ($3.5B) にのぼる武器売却協定を結んでことに対し、トルコがこれはNATOの団結を乱すものと非難している。
 歴史的に敵対関係にあるギリシャとトルコは近年、東地中海におけるガス田開発などで対立を深めている。 (2111-100107)

西側10カ国の大使追放を命令

 トルコのエルドアン大統領が10月23日、米、独、仏、加、蘭、フィンランド、デンマーク、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンの10ヵ国大使を国外退去処分にするよう命令した。
 10ヶ国の大使は18日に、4年以上にわたり拘束されているトルコの活動家カワラ氏の即時解放を求める声明を発表していた。
 大統領は外相に、ただちに10ヵ国の大使をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)に指定するよう命令したという。 ペルソナ・ノン・グラータ指定とは、外交使節としての信認取り消しや国外追放を意味する外交用語である。 (2111-102401)

トルコリラ (TRY) の急落

 10月25日の外国為替市場でトルコリラ (TRY) が急落し、一時$1=TRY9.8台まで売られ史上最安値を更新した。
 23日にエルドアン大統領が米独仏など10ヵ国の大使をペルソナ・ノン・グラータに指定し追放すると発言し、米欧との関係が一段と悪化するとの見方が強まった。
 TRYは9月以降に下落が加速し昨年末と比べ対ドルで2割超の価値を失った。
 景気を冷やしかねない高金利を嫌うエルドアン大統領が解任したアーバル前中銀総裁の在任時に付けた今年2月の最高値と比べると、TRYの下落幅は3割にも達する。
 輸入物価の高騰でインフレが加速しているにもかかわらず、大統領の強い圧力を受けた中央銀行は9~10月で計3%の利下げを断行したため、インフレの影響を考慮した実質金利はマイナス圏に沈み、TRYは売られやすくなっていた。 (2111-102502)

10大使追放の撤回

 トルコのエルドアン大統領が閣議後のTV演説で10月25日、同国で拘束されている実業家の釈放を求めた米独仏など10ヵ国の駐トルコ大使について、国外追放を当面見送る考えを示した。
 10ヵ国が同日、内政不干渉を順守する声明を出したことを評価したしたもので、懸念された決定的な関係悪化は回避される見通し。 (2111-102601)

不法移民が乗った小型船をギリシャ側に押し込み

 ギリシャが11月9日、トルコに近いエーゲ海のLesbos島近海でトルコの大型警備艦が数十人の不法移民が乗った小型船をギリシャ側に押し込んだことを、海賊的な行為であると抗議した。 (2112-110910)

5・3・5・2・3 親露政策

ロシアとトルコが首脳会談

 ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が9月29日にロシア南部のソチで会談を開き、シリアでの内戦激化への対応やトルコ向けのS-400追加売却の可能性について協議した。 (2110-093003)

ロシアとの軍事技術提携やS-400の第二次導入示唆

 トルコのエルドアン大統領がS-400導入で西側諸国から制裁を受けているのに対抗し、ロシアとの戦闘機及びエンジンの技術提携やS-400の第二次導入をほのめかしている。
 大統領は9月末にCBSとのインタビューで、米国がF-35やPatriotの売却を拒否している以上<、S-400の追加導入以外に道はないと述べた。 (2111-100707)

5・3・5・2・4 リビア内戦への介入

「3・8・1 リビア内戦」で記述
5・3・5・2・5 キプロス、東地中海での対立

「3・6・3 東地中海」で記述
5・3・5・2・6 エジプトへの接近

 エジプトとの関係改善を進めているトルコの外交団が、5月5日には8年ぶりにカイロを訪れ、経済や地域情勢について2日間にわたり協議した。
 両国関係は、中東の民主化運動「アラブの春」で成立したイスラム主義組織ムスリム同胞団の政権が、2013年に当時国軍総司令官だったシシ大統領の軍事クーデターで倒れた政変で、同胞団を支援したトルコはその後のシシ政権を正統性がないと厳しく非難して両国とも大使を追放し、さらにトルコが同胞団メンバーを自国で保護したことで対立は決定的となっていた。
 米国のトランプ前大統領との関係を後ろ盾に強気な外交を展開していたトルコが歩み寄りに転じたのは、バイデン政権下で一変した米トルコ関係が影響している。 (2106-050804)

 トルコのエルドアン大統領が6月1日、エジプトや湾岸諸国との協力関係を双方が勝者となる形で最大限強化したいと述べた。
 トルコは、以前からエジプトや一部の湾岸諸国との関係が悪化しており、関係修復に乗り出した。
 トルコは、イスラム主義、リビアの紛争、東地中海問題、サウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件などを巡って、エジプトやサウジとの関係が悪化している。 (2107-060203)

5・3・5・2・7 サウジへの接近

対立関係雪解けの兆し

 トルコのメディアによると、トルコのチャブシオール外相が5月10日にサウジアラビアの首都リヤドを訪問した。 11日まで滞在してファイサル外相と会談し近年冷え込んでいた関係の改善を目指す。
 両国関係は、2017年にサウジなど4ヵ国がトルコと親密なカタールと断交したことや、2018年にイスタンブールのサウジ総領事館で起きたサウジ人記者殺害事件で悪化していたが、2021年1月にサウジなどがカタールとの国交回復を発表し、対立関係に雪解けの兆しが見えていた。 (2106-051004)

UAV の輸出

 トルコがサウジアラビアにUAV 3機を輸出することか国連軍備登録制度 (UNROCA) への届け出から明らかになった。 エルドアン大統領は3月16日に「サウジアラビアへ武装UAVを輸出する」と述べていた。 トルコはBaykar社製Bayraktat TB2とTUSAS社製Ankaの2種類の武装UAVを生産している。  トルコ製のUAVはシリアやリビアのほか2020年のナゴルノカラバフ紛争でも使用されている。  サウジは中国製のCH-4を複数機保有しているが、そのうち数機は5月20日にイエメンでフーシ派のSAMで撃墜されている。 (2108-061609)

5・3・5・2・8 ソマリアへの進出

 トルコがモガディシオに建設しているNorthern Barracksの一期分が、3月6日にソマリア政府に引き渡された。
 Northern Barracksはトルコがモガディシオに建設した2番目の軍事施設で、最初に建設したAnatolian Barracksではトルコのソマリア派遣軍が、ソマリア陸軍に新設されるGorgor大隊の訓練を行っており、現在は1月から第7大隊の訓練に入っている。
 2019年中頃に建設が開始されたNorthern Barracksは完成にはほど遠いが、0.5㎢のこの施設は将来にはソマリア軍の重要拠点の1つになる。 (2105-031713)
5・3・5・3 軍事力の増強

USV の開発投入

 トルコ海軍が隔年実施のDenizkurdu演習を5月25日~6月6日に過去最大規模で実施したと発表した。
 Denizkurdu-2021には水上艦艇132隻、潜水艦10隻、固定翼機43機、回転翼機28機、UAV 14機が参加し、エーゲ海から地中海の海域で実施したという。
 演習にはTB2 Bayraktar UAVが初めてMAM-L誘導弾を搭載して参加したほか、トルコのAres造成とMeteksan社が開発したUSV ULAQが初めての実射を実施した。 (2107-060706)

5・3・5・4 装備品の開発

MIUS UCAV 構想

 トルコBaykar Makina社がMIUS UCAV構想を公表した。
 機体は一対のカナード翼を持つが垂直尾翼を持たないV字尾翼と胴体一体の主翼を持つ形状でステルス性を強め、武器は機内弾庫に搭載する。
 搭載能力は1,500kgで、AAM、ASMのほかALCMも搭載できる。 (2108-072610)

 トルコのUAVメーカであるBaykar Makina社が開発中のMIUS UCAVを公表した。
 MIUSは離陸重量が3,500~4,500kgで1,500kgを搭載でき、2023年に試作1号機が初飛行する計画である。
 MIUSは将来トルコが就役させる12゚のスキージャンプ台を装備する多用途強襲揚陸艦Anadoluでの離着艦も考えられている。 (2110-090009)

ミサイル搭載用ターボジェットエンジン

 トルコのエンジン開発企業Kale R&D社が9月21日、国産初となるミサイル搭載用KTJ-3200ターボジェットエンジンを開発したことを明らかにした。
 KTJ-3200の量産契約は8月17~20日に開かれた国際防衛企業展で行われている。
 KTJ-3200はフランスのTR40エンジンとよく似ているが、燃料効率の良いTR40よりやや重い。
 スタンドオフCMや対艦ミサイルに使用されるもので、既に1基がTubitak Sage社にスタンドオアCM用として、もう1基がAtmaca対艦ミサイル用としてRocketsan社に納入されている。 (2110-092106)

Siper AMD の発射試験

 トルコの兵器工業会長が11月6日、Siper AMDの発射試験を行ったことを明らかにした。 会長によるとSiperは2023年に配備される。
 トルコはKorkut、Sungur、Hisarで多層防空を構築しているがSiperはその上に位置づけられる。
 Aselsan社とRockersan社が防衛産業研究開発機構 (SAGE) と開発したSiperはHisar-A+やHisar-O+同様に2パルスロケットで推進し、アクティブレーダ及びIIRで尤度され、射程は70~100km、射高は20kmとされる。 (2201-111707)

5・3・5・5 外国技術の導入

韓国との技術提携

 トルコ外相が韓国外相及びDAPAと10月22日、トルコの装甲車両メーカであるBMC社が国産するAltay MBTのエンジン及びパワーパックの生産で韓国Doosan社及びS&T Dynamics社が協力する協定に署名した。
 BMC社は2018年11月にAltayの1次生産として250両を受注している。 同社は2次生産で更に1,000両の受注を見込んでいる。 (2111-102503)
【註】韓国は自国のMBTであるK2で国産パワーパックの採用を目指したが実現できずに結局ドイツ製を採用し、3次生産でも外国製品の採用を決めており、トルコのMBTでパワーパックの技術を提供できるようになったのは大変な進歩である。

5・4 南アジア

5・4・1 インド

5・4・1・1 国防政策

5・4・1・1・1 国防の基本方針

Act East 政策

 インドが8月2日、Act East政策の元に海軍部隊を1ヶ月間、東南アジア、南シナ海、西太平洋へ派遣し、友好国との軍事的協力関係を深めると発表した。
 派遣されるのは東方艦隊に所属する駆逐艦、フリゲート艦各1隻とコルベット艦2隻の合わせて4隻で、ベトナム、フィリピン、シンガポール、インドネシア各国海軍と共同演習を行うほか、海上自衛隊、豪海軍、米海軍が行うMalabar-21演習にも参加する。
 インド太平洋地域にはドイツが7ヶ月の予定でフリゲート艦を派遣するほか、英海軍は空母Queen Elizabethを旗艦とするCSG-21を派遣している。 (2110-081101)

5・4・1・1・2 国 防 費

 インドが2月1日、2021年~2022年の国防費を前年度比3%増の$49.6Bと発表した。 この中で武器等の購入費は16%増の$18.48Bになっている。 (2103-020208)

 インドの2021~2022国防予算はINR4.78T ($65.5B) と前年度比1.45%増になっているが、インフレの結果物価上昇分を差し引いた実質比は7%の減少になる。
 この結果国防費の対GDP比は2020年の2.52%から2021年には2.15%に低下している。 (2104-021012)

 インド国防省が2月23日、三軍合わせて総額INR172.5B ($2.38B) の装備調達計画を公表した。 これらは殆ど国内開発の国産で、この中には以下の品目が含まれる。 (2105-031010)

・Arjun Mk 1A MBT: 118両 (INR83.8B)
・AFV or IFV: 820両 (INR53B)
・Mag 発射機及びMag ATGM: 13両 (INR5B)
・125mm APFSDS弾: T-72M1 & T-90S MBT用 (INR2.7B)
・Arudhra AESAレーダ: 8基 (INR28B)
5・4・1・1・3 対米関係

米国からの武器輸入

 バイデン政権がオーストラリアとインドに$4.36BのFMS契約で武器売却を行う。 国防安全保障協力局 (DSCA) は既に国務省の承認を得て議会に通知している。
 インドへは4月30日にP-8I 6機を$2.42Bで売却する決定をした。
 インドは2009年1月にP-8I 8機を企業間直接取引 (DCS) で購入し、2016年7月に更に4機を購入して、2013年からインド海軍が装備している。 (2105-043007)

S-400 輸入に敵対者に対する制裁措置法発動か

 InterFaxによるとロシアがインドへのS-400の供給を開始した。 初回納入分はインドに2021年中に到着する見通しだという。
 米国は2020年に、ロシアからS-400を調達したトルコに敵対者に対する制裁措置法 (CAATSA) の下で制裁を発動しており、インドに制裁を科す可能性がある。 (2112-111502)

5・4・1・1・4 対露関係

米露との二股外交

 モディ印首相とプーチン露大統領が12月6日にニューデリーで会談し、2031年までの10年間の軍事技術協力協定を結んだ。
 ロシアは日米豪印Quadによる枠組みへの参加で米国に近づくインドを繋ぎ止めようとし、インドには米露双方から実利を得ようという思惑がある。 (2201-120703)

 インドは、日米、オーストラリアと連携枠組みQuadで協調しつつ、多方面外交を継続し、特定の陣営への深入りを慎重に避けて自国利益の最大化を目指しているインドにとって、12月6日のプーチン露大統領とモディ首相の会談は、インド外交の「戦略的自律性」(インド外務省高官)を強調する機会となった。
 ただ、カーネギー財団モスクワ支部のトレーニン所長は今月2日の論考で印露関係について、伝統的に良好だったが、米印関係強化をめぐり疑念が忍び寄っていると指摘し、プーチン大統領も11月中旬の外交演説で「インドは独立した多極的世界の強力な中心だ」と持ち上げつつ、インドの対米傾斜を牽制している。 (2201-120701)

インド海軍基地をロシアが利用する協定

 複数のインド政府高官が12月5日、ロシアの艦艇がインドの港湾施設や海軍基地を燃料補給や補修で利用できるようにする協定を両国が締結する方向で調整していることを明らかにした。
 モディ首相とプーチン露大統領が6日にニューデリーで首脳会談を行う予定で、協定の締結に向けて協議する。
 インド政府高官によると、協定案では、露海軍の艦艇がインド沿岸部の港で燃料補給などができるとし、事故など緊急時にはインド洋上の海軍基地も利用可能となる。
 一方、印海軍は、航行中の露艦艇から補給支援を受けることなどができるようになり、ロシア極東沖での活動も可能になる。
 また、ロシア製小銃50万丁をインド国内でライセンス生産する契約は合意に達した。 (2201-120602)

 モディ印首相とプーチン露大統領が12月6日にニューデリーでの会談後に共同声明を発表し、技術移転と共同事業を通じたロシア製武器のインドでの生産促進や合同軍事演習の継続と発展、貿易規模の拡大などで合意したと明らかにした。
 両国の特別で特権的な戦略パートナーシップのさらなる強化も確認した。 また印露は6日に初の外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) も実施した。
 インドメディアなどによると、双方は首脳会談を含む一連の協議で、ロシア製小銃60万丁のインドでの生産、S-400の導入促進などで一致したが、艦艇の補給や修理の際、海軍基地を相互利用する協定も議題に上ったものの、インド外務省高官は「今回の会談では結論は出なかったと語った。 (2201-120702)

5・4・1・1・5 対中関係

豪印海軍の共同指針

 インド海軍とオーストラリア海軍が8月19日に共同指針文書に署名した。
 Indian Expressは両国海軍は2021年後半に日米を交えた4ヶ国安全保障対話、いわゆるQuadで合同演習を行うと報じている。
 一方インド海軍の2隻が18日に南シナ海でベトナム海軍との実弾射撃を含む合同演習を行った。
 インドはベトナムとの防衛協力は強固なものとし、ベトナムに定期的に寄港するという。 (2109-082002)

5・4・1・2 軍備増強

5・4・1・2・1 防空/BMD

S-400 の購入

 Tass通信によると、駐印露大使が1月19日にS-400購入の契約が近く実行の段階に移ると言及し、印軍が100名をロシアに派遣し訓練を受けると述べた。
 インドは2021年末までにまず1個システムを導入し、数年かけて整備を進めるとみられる。
 インドのモディ首相は2018年10月にプーチン露大統領とS-400 5個システムを$5.4Bで購入することで合意しており、2019年に一部を払い込んでいる。
 米国はかねてインドによるロシア製兵器の購入に反発を示しており、バイデン新政権の不興を買う恐れがある。 (2102-012705)

 ロシアSputnilkニュースが11月14日、インドから受注したS-400 5個システムの最初のシステムの納入を開始し、2021年中に最初のシステムの納入を終わると報じた。
 残りの4個システムも2023年4月までに引き渡されるという。
 インド軍の高官は11月15日に、最初のS-400大隊は2022年初めにoperationalになると述べている。
 各S-400大隊は2個中隊で編成されるという。
 S-400の導入でインドは米国の敵対国制裁法 (CAATSA) により制裁を受ける可能性がある。 (2201-112403)

MRSAM 中距離SAM

 イスラエルIAI社とインド政府DRDOが数年にわたり共同開発してきた中距離SAM MRSAMの試験が2020年12月最後の週に行われ成功した。
 MRSAMはBarak MXを含む射程が35km~150kmのIAI社製BarakシリーズSAMを元にしたSAMでインド型の射程は70kmである。 (2102-010504)

 インド空軍がイスラエルが開発した射程70kmのSAMであるBarak-8のインド型であるMRSAMを、ソ連製S-125 Pechora (SA-3) 後継として装備を開始した。
 最初の中隊 (FU) は9月9日にラジャスタン州Jaisalmer空軍基地の第2204大隊に編成された。 印空軍は24個大隊2,000発を装備する。
 MRSAMの中隊は指揮装置1基、8発搭載TEL 3両、長距離MFR 1基と、発電機2両、運搬装填車3両で構成される。  長距離MFRはELM-2248 MF-STARを1面の地上型にしたものである。 (2111-092209)

QRSAM

 インドDRDOが国内開発したQRSAMの全システムによる試験を2020年11月13日と17日に成功裏に完了した。
 QRSAMは9K33 Osa (SA-8) と2K12 Kub (SA-6) に代わるシステムで射程は30kmである。
 システムは全てが車載された自走式で、完全編成の中隊は、四面固定のX-band MFR 1両、C-band捜索レーダ1両、指揮通信車1両、6発搭載発射機1両で構成されている。 (2103-010009)

Akash-NG

 インドDRDOが1月25日にAkash-NG SAM初の発射試験に成功した。
 Akash-NGは射程25~30kmのAkash SAMの推進装置を改良して射程を50~60kmにしたもので、国内開発したRFシーカ、レーザ信管、アクチュエータなど、構成品の96%が国産であるという。 (2104-020312)

Akash SAM を追加発注

 インド空軍が7月8日、国営BDL社にAkash SAMをINR4.99B ($67M) で追加発注した。
 ソ連製SA-6とよく似たAkashは、全長5.8m、発射重量720kg、弾頭重量55kg、速度Mach 2.5、射程30km、SSKP 88%の性能を持つ。
 射撃統制を行うRajendra 3Dレーダは150km以内の64目標を処理できる。 (2109-072112)

Akash Prime

 インドが9月27日にAkash SAMの改良型であるAkash Prime初の発射試験を行い、標的機の撃墜に成功した。
 Akash Primeは精度が向上している国内で開発したRFシーカを搭載している。
 Janeは2019年9月に、インド政府がINR55B ($767.7M) をかけてAkash 6個大隊を増強すと報じている。
 インドは550~600発のAkashを調達していると見られている。 (2112-100609)

5・4・1・2・2 長距離ミサイル

Agni P

 インドDRDOが6月28日にAgniファミリの最新型である射程1,000km~2,000kmのAgni Pの発射試験に成功した。
 重量23~25tの固体燃料二段式推進のAgni Pは、コンポジットロケットモータ、リングレーザジャイロ、マイクロ航法装置など、射程4,000kmのAgni Ⅳや5,000kmのAgli Ⅴの技術を元に2~3年かけて開発された。
 発射機はキャニスタ型で、射程または貨車に搭載され、精度はCEP=10mという。 (2109-070702)

Agni 5

 インド国防省が、射程5,000kmのAgni-5の発射試験を10月27日に行ったと発表した。
 Agni-5は同日夜にインド東岸沖のカラム島から発射され、ベンガル湾に落下した。
 全長17mのAgni-5はこれまでにも数回試射されたことはあったが、いずれも夜間ではなかった。
 現地メディアは、時期的に見て中国政府に向けた警告だったと報じている。 (2111-102808)

5・4・1・2・3 艦 船

初の国内建造空母

 インド海軍が初めて国内建造した40,262t空母Vikrantが初めて係船ドックでの試験を完了した。
 試験ではGE LM2500ガスタービンエンジン、変速機、推進軸、ピッチ制御プロペラなどの確認が行われた。
 このあと2021年前半に洋上試験が開始され、計画より6年以上遅れて2022年に就役する見込みである。 (2102-120904)

 インド政府は8月5日までに、初の国産空母Vikrantが洋上試験を開始したと発表した。 当初は2018年就役予定だったが大幅に遅れており、来年の就役を目指している。
 インドはインド洋に進出する中国を警戒しているが、Vikrant就役まで空母1隻態勢が続く。
 インドは日米豪との4ヵ国の枠組みQuadなどを通じ包囲網づくりを進めるが、武器の多くを輸入に頼っており、モディ政権は防衛産業の国産化と軍事力増強を課題に挙げている。 (2109-080504)

 インド初の国産空母Vikrantが8月8日、5日間の洋上処女航海を終えて帰港した。
 Vikrantの海軍への納入は2022年上半期になる。
 Kiev級のVikramadityaと異なりスキージャンプ台を持たないSTOBAR離着艦方式のVikrantは、全長262.5m、幅62m、排水量40,000tで、速力28kt、18kt巡航での航続距離7,500nmの性能を持つ。 (2110-081810)

潜水艦

 インド国防省が7月20日、MDL社とL&T社の国営造船企業2社に対し、Project 75(I) (P-75I) ディーゼル/電気推進攻撃型潜水艦 (SSK) 6隻のRFPを発簡した。
 計画総額はINR430B ($5.77B) と見積もられ、2023年頃に契約して、その後5~6年で一番艦を取得する計画という。
 OEM先としてはNaval Group社(仏)、ThyssenKrupp社(独)、Rubin設計局(露)、DSME社(韓)などが名乗りを上げている。 (2110-080406)

5・4・1・2・4 航空機

双発艦載戦闘機 TEDBF

 インドHAL社が2月3~5日に開かれたインド航空展で、双発艦載戦闘機TEDBF構想を初公開した。
 TEDBFは印政府が進めているMiG-29Kに代わる艦載戦闘機計画MRCBF要求に応えたもので、全長16.3m、翼端長11.2m(翼をたたむと7.6m)、MTOW 26t、最高速度Mach 1.6、実用上昇限度60,000ft、耐荷重+8g/-3gの性能を持つ。 (2104-021005)

Dhruv Mk Ⅲ ALH

 インドHAL社がDhruv Mk Ⅲ ALHを、海軍に3機、沿岸警備隊に2機納入した。
 Dhruv Mk Ⅲは2017年に海軍と沿岸警備隊にそれぞれ16機、合わせて32機をINR105.52B ($1.41B) で受注した一部である。
 5.5tのMk Ⅲは沿岸監視、武装哨戒、人命救助に使用される。 Mk Ⅲは海軍と沿岸警備隊が1969年から装備しているAerospatiale社製Aloiette Ⅲのライセンス国産型Chtakの後継となる。 (2104-021711)

5・4・1・2・5 その他の軍備

C-UAV システム

 インド国防省が7月28日、DRDOがマイクロ/ミニUAVの捕捉、追随、無力化するシステムを開発したと発表した。
 システムはHELやHPMなどのDEWを使用している。 (2110-081108)

5・4・1・3 装備国産化の推進

 インド国防省が11月2日、INR79.65B $1.07B) にのぼる国産装備品の調達を承認された。 この中にはHAL社製多用途軽ヘリコプタ (LUH) 12機やBharat重電社製SRGM砲などが含まれている。
 この結果BAE Systems社に発注していたMk 45 Mod 4 127mm/62砲11門の契約は取り消された。
 3.15tのLUHは1号機が2022年8月に納入される計画で、陸軍で120機、空軍で55機、合わせて175機が、1960年代から装備しているChetak(Aerospatiae社製Aelouette Ⅲ)及びCheetah(Aerospatiae社製SA 315B)と換装する。
 戦闘行動半径は350km、海面高度での搭載能力500kg、実用上昇限度6,500mで75kgの性能を持つ。 (2201-111002)
5・4・2 パキスタン

5・4・2・1 国内情勢

中国人殺害の自爆攻撃

 パキスタンによると、100kg以上の爆発物を積んだ車が建設現場へ向かっていたバス車列に突っ込み、中国人技術者9人、パキスタン軍兵士2人らが死亡し数十人が負傷した。
 クレシ外相は、自爆攻撃はアフガン内のパキスタン・タリバーン運動の仕業と疑われるとしてアフガンの情報機関「国家保安局」とインドの情報機関も犯行に賛同したとも述べた。
 また、犯行を謀議しアフガンで活動を依然続ける3人の身柄をパキスタンへ引き渡すようアフガン政府に求めた。 (2109-081405)

パキスタン・タリバン運動と停戦合意

 パキスタン情報相が11月8日、テロを繰り返してきた国内のイスラム武装勢力パキスタン・タリバン運動(TTP)と完全な停戦で合意したことを明らかにした。 TTPも9日から1ヵ月間の停戦で合意したと発表した。
 今後の交渉が進展すれば、停戦期間延長もあり得るという。
 しかしTTPは小規模な武装集団の連合体で、政府当局者によると停戦に合意したのは全体の8割程度の集団にとどまるため、一部は今後も戦闘を続ける恐れがある。 (2112-110901)

パキスタン・タリバン運動と停戦終了

 パキスタン紙が12月10日、国内のイスラム武装勢力であるパキスタン・タリバン運動 (TTP) が政府との時限停戦終了を発表したと報じた。
 両者は、ともに関係の深いアフガニスタンのタリバンによる仲介で11月9日から1ヵ月間の停戦に入り、和平継続に向けた協議を実施していたが、最終的に物別れに終わった。 (2201-121006)

5・4・2・2 国防政策

6.2%増の国防予算

 パキスタンがFY2021-22国防予算をFY2020-21を6.2%上回るPKR1.37T ($8.78B) とすると発表した。
 これは国家予算の16%にのぼる。 (2108-062303)

5・4・2・3 軍備増強

5・4・2・3・1 艦 船

Type 054A/P フリゲート艦

 パキスタンが中国から4隻購入するType 054A/Pフリゲート艦の一番艦Tughrilの就役式典が、11月8日に上海の湖東中華造船所で行われた。 (2112-110909)

 パキスタンが中国の滬東中華造船に4隻発注し2020年8月に進水していた全長134mのType 054A/Pフリゲート艦の一番艦が就役した。 三番艦は8月上旬に進水しており、建造中の四番艦も2021年末には進水する。
 2017年に最初の2隻が発注されたType 054A/Pは2022年には4隻全てが完成する。
 Type 054A/Pは1970年代に英海軍向けとして建造されたType 21 Amazon級の4隻と換装される。 (2201-111711)

5・4・2・3・2 航空機

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・4・2・3・3 弾道ミサイル

SRBM Ghaznavi

 パキスタンが2月3日、年次演習のなかでSRBMの発射を行い成功したと発表した。 発射したSRBMは射程が180哩のGhaznaviで、核弾頭の搭載も可能という。 (2103-020304)

5・4・2・3・4 巡航ミサイル

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・4・2・3・5 防空システム

中国製の HQ-9 SAM のパキスタン仕様 HQ-9/P を装備

 パキスタン軍の広報部門であるISPRが10月14日、陸軍が中国製のHQ-9 SAMのパキスタン仕様HQ-9/Pを装備した式典を同日にカラチの陸軍防空センタで実施したと報じた。
 HQ-9/Pは射程が100km以上で高いSSKPを誇るという。
 陸軍は2013年から2015年に射程40kmのHQ-16AE (LY-80) を9個システム装備している。
 またフランス製Crotale SAMの中国版であるHQ-7Bも数基装備している。 HQ-7Bはヘリコプタに対し13km、ASMに対し6kmの射程を有する。
 更にOerlicon 35mm対空砲も装備している。 (2112-102710)

5・4・3 インド洋諸国

5・4・3・1 スリランカ

親中政権の復活、米国の援助撤回

 米国がスリランカへ提案していた$480Mのインフラ支援を撤回した。 現政権下で急速に中国との関係を深めるスリランカへの牽制とみられるが、支援撤回はかえって中国への接近を促すことになりかねない。
 スリランカでは2019年11月の大統領選で当選したゴタバヤ・ラジャパクサ元国防次官が兄のマヒンダ・ラジャパクサ元大統領を首相に起用した。
 マヒンダ氏は親中派として知られ、現政権下で中国の存在感は大きくなっている。 (2102-01040)

港湾建設、中国企業指名

 AFP通信が11月24日、親中派として知られるスリランカのラジャパクサ政権が、コロンボ港のコンテナターミナル建設工事の発注先として中国国有企業を指名する方針だと報じた。
 この計画は日印が出資して完成後も運営に関与する予定だったが、政権が2021年2月に撤回を決めていた。
 スリランカは中東などと日本を結ぶシーレーンの要衝で、計画変更は中国の海洋進出にくさびを打ちたい日印両国にとって痛手となる。 (2112-112502)

5・4・3・2 モルジブ

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・4・3・3 その他島嶼諸国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・4・4 バングラディッシュ

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・4・5 ヒマラヤ諸国

5・4・5・1 ネパール

与党共産党の内紛に中国が仲裁

 ネパールで、与党共産党の内紛による分裂の危機に際し、中国が仲裁に乗り出した。
 中国はインドを牽制するためネパールの共産系諸派をまとめ上げ、2017年の総選挙で勝利につなげた経緯があるが、最近の共産党分裂による影響力低下にいら立っている。
 ネパールのオリ首相は2020年12月20日、党内でのダハル議長との権力争いから下院を解散したため、同27日に中国共産党中央対外連絡部の郭業洲副部長ら代表団がネパールに派遣され、オリ、ダハル両氏と個別に会談した。 (2102-011001)

5・4・5・2 ブータン

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・5 中南米

5・5・1 メキシコ

キューバへの人道支援を本格化

 メキシコで左派政権を率いるオブラドール大統領が7月27日、COVID-19危機で電力や食料、医薬品が不足し困窮するキューバへの人道支援を本格化したと発表し、ロイタ通信によると軽油10万バレルを積んだメキシコ国営石油会社の船が26日にハバナ港に到着した。
 27、28両日もメキシコのカリブ海に面したベラクルス港から食料品や酸素ボンベ、医薬品を積んだ船が出発するという。
 オブラドール大統領は米国によるキューバへの経済制裁を非人道的と批判した。 (2108-072806)

5・5・2 ブラジル

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
5・5・3 ベネズエラ

反米左派の与党が圧倒的多数を占める国会が開会

 ベネズエラの反米左派マドゥロ大統領の与党が圧倒的多数を占める国会が1月5日に開会した。 与党は2021年12月上旬の議会選で約9割の議席を確保した。
 マドゥロ大統領は、唯一掌握できていなかった国会をコントロールすることで、さらに独裁色を強める。
 野党指導者グアイド国会議長が率い、国会の多数派を占めていた野党連合は不正が行われると訴えて選挙をボイコットした。
 野党連合は2020年12月下旬、当時現職だった議員任期を1年間、延長することを国会で決議したが、与党は中国やロシアの支援をもとに議会運営を継続する構えで、二つの国会が並行して存在する異常状態が続くとみられる。 (2102-010604)

米国は引き続きグアイド氏を支持

 米国務省報道官が2月3日、ベネズエラの野党指導者グアイド氏について、引き続き暫定大統領として支持する方針を示した。 またマドゥロ大統領については独裁者と批判し、同氏との交渉には否定的な見方を示した。
 一方、EUは米国同様に12月の選挙の正当性は認めていないものの、グアイド氏について先週、特権を持つ対話相手であるものの暫定大統領とは認めないとの方針を示している。 (2103-020401)

5・5・4 その他中南米諸国

5・5・4・1 エクアドル

親米右派が大統領選で勝利

 4月11日に行われたエクアドルの次期大統領に元銀行頭取で右派のラソ氏が決選投票で52%の票を獲得し当選した。
 ラソ氏は選挙期間中、米国と新たな自由貿易協定 (FTA) と投資協定を結ぶと述べるほか、COVID-19ワクチンの確保でも米国に協力を要請する方針を示すなど親米的な姿勢を鮮明にしていた。
 一方、ラソ氏は対中警戒論者として知られ、中国の債務増加を懸念していて、2020年にはエクアドルの排他的経済水域 (EEZ) 付近で中国漁船が操業を繰り返していると非難し、現政権に対し駐エクアドル中国大使に抗議すべきだと強硬論を展開した。 (2105-041303)

5・5・4・2 ペルー

急進左派が大統領選で勝利

 ペルー大統領選で勝利宣言した急進左派のカスティジョ氏が、7月15日に中国との関係強化に向け大使館を訪問し、COVID-19ワクチンの供給ペースを加速するよう求めた。
 6月6日の決選投票で過半数の票を得たカスティジョ氏は次期大統領として正式に確認されるのを待っている状態で、僅差で敗れた対立候補の中道右派ケイコ・フジモリ氏は結果に異議を唱えているものの、覆る可能性は薄いとみられている。 (2108-071902)

5・5・4・3 ニカラグア

大統領選で左派の現職オルテガ大統領確実

 ニカラグアで11月7日に大統領選が行われる。 左派の現職オルテガ大統領ら6人が立候補するが、独裁色を強める政権は野党の有力候補を事前に拘束するなど露骨に選挙介入しているため、オルテガ大統領の連続4選、通算5期目入りが確実な情勢である。
 左翼ゲリラ組織サンディニスタ民族解放戦線 (FSLN) 出身のオルテガ大統領は1979年に革命を成功させて1984年の大統領選で初当選し1期務めた。
 2006年大統領選で返り咲き、現在は連続3期目で、2014年の憲法改正で無期限の長期政権に道を開いた。
 2018年には反政府デモを武力で封じ市民ら300人以上が死亡している。 (2112-110504)

オルテガ大統領、米州機構 (OAS) からの脱退

 ニカラグアの国会が11月16日、反米左派のオルテガ大統領の連続4選を民主的正統性がないと批判した米州機構 (OAS) から脱退手続きを取るようオルテガ氏に求める声明を圧倒的多数で決議した。
 独裁色を強めるオルテガ大統領は、7日に実施された大統領選で政敵を拘束するなどして徹底排除した結果、75%の得票率で当選していた。
 OASは12日の総会で、選挙について「自由でなければ公正でも透明でもなく、民主的正統性がない」と一蹴し、オルテガ政権に政治犯釈放を求めるとともに、速やかな選挙の検証を行うよう理事会に求める決議を、米国やブラジルなどの賛成多数で採択していた。 (2112-111707)

台湾との外交関係を断ち再び中国と国交

 ニカラグアの外務省が12月9日、台湾との外交関係を断ち再び中国と国交を結んだと発表した。 ニカラグアの断交で、台湾と外交関係を結ぶ国は14ヵ国に減る。
 ニカラグアはオルテガ政権下の1985年に台湾と断交したが、1990年に当時のチャモロ大統領が外交関係を復活していた。
 米国務省は、ニカラグアの断交発表を受け、ニカラグアの政権は自由な選挙で選ばれたわけでなく、決定は民意を反映していないとし、民主主義や法の支配を尊重する全ての国に台湾との関係強化を呼び掛けた。 (2201-121002)

中国が見返りに中国製の COVID-19ワクチンを提供

 AP通信などによると、台湾と断交し中国との国交を回復したニカラグアに12月12日、中国製のCOVID-19ワクチン20万回分が到着した。
 中国はニカラグアにワクチンを提供し、外交政策を変更したことへの見返りを与えた。 (2201-121305)

5・5・4・4 ホンジュラス

 台湾と外交関係を持つホンジュラスの大統領選を前にした世論調査で、中国と外交通商関係を結ぶと訴えた野党候補が首位に立ち波紋を広げている。
 中台を不可分の領土だとする中国との国交樹立は台湾との断交を意味する。
 外交関係を維持する国が15ヵ国にとどまる台湾はホンジュラス引き留めに躍起になっており、蔡総統は11月13日にホンジュラスとの外交関係が80年を迎えたことを祝してエルナンデス大統領を総統府に招き、一層の関係強化を確認した。 (2112-111713)

 中米のホンジュラスで大統領選挙が行われ、元大統領の妻で野党のシオマラ・カストロ候補が勝利宣言を行った。
 カストロ氏は選挙公約で、当選すれば台湾と断交して中国と国交を結ぶと訴えていた。 (2112-112905)

5・5・4・5 グアテマラ

 台湾と外交関係を持つ中米グアテマラのジャマテイ大統領が12月13日にFinacial Timesとのインタビューで、中国からCOVID-19ワクチンの提供を見返りに国交を結ぶよう提案されたがこれを拒絶したと明かした。
 大統領は、グアテマラは中米で唯一中国が勢力拡張に成功していない国だとし、COVID-19の影響下で台湾からは医療物資が送られたことに言及した。 (2201-121503)
5・6 アフリカ

5・6・1 地中海沿岸

アルジェリアとモロッコの対立

 アルジェリアのラマムラ外相が8月24日、隣国モロッコによる敵対行為を受けて国交を断絶すると発表した。
 両国は長年、相手政府が双方の反政府勢力を支援していると非難し合ってきた。
 特にアルジェリアが係争地である西サハラの独立派を支援していることは、モロッコにとってアルジェリアとの不和の種となっている。
 8月にはアルジェリア北部で発生し多数の死者が出た山火事の原因をめぐり、同国は先週モロッコが関与したと断定したことから、両国はここ数ヵ月間新たな緊張関係にあった。 (2109-082506)

モロッコがイスラエルとの防衛協力拡大

 イスラエルのガンツ国防相が11月24日にモロッコの首都ラバトでルディ国防管理担当特命相と会談し、両国間の防衛協力拡大に向けた覚書に署名した。
 イスラエル政府は声明で、覚書が交わされたことで「情報、軍事訓練などの分野で協力を深めることができる」と意義を強調した。
 イスラエルの国防相がモロッコを公式訪問するのは今回が初めてという。 (2112-112408)

 モロッコ軍が11月21日に、イスラエルからSkylock Dome C-UAVシステムを購入したと発表した。 システムは既に引き渡されているという。
 Skylock DomeはAvron社の子会社であるSkylock Systems社が開発したシステムで、EO/IR装置とレーダで疑わしい目標の追随を行い、ジャミングで無力化する。 (2112-112409)

5・6・2 紅海沿岸

バイデン米政権がソマリアで空爆

 米国防総省が7月20日、ソマリアでイスラム過激派アルシャバーブに空爆を加えたと発表した。 空爆はソマリア中部ガルカイヨ近郊で行われた。
 ソマリアでの空爆はバイデン米政権発足後初めてである。 (2108-072103)

5・6・3 中南部アフリカ

チャドと中央アフリカ緊迫

 チャドと中央アフリカが1日に共同声明を出し、5月30日に国境で起きた戦闘について合同調査を行うと発表した。 戦闘ではチャド兵6人が死亡した。
 うち5人は拉致された上、処刑され、チャド政府は「戦争犯罪」と中央アフリカを非難して「逃げ得は許さない」と述べ、両国関係は一気に緊迫していた。 (2107-060204)

フランス軍がサヘル地域の兵力縮小

 マクロン仏大統領が6月10日に記者会見し、サハラ砂漠南部一帯のサヘル地域でのフランス軍縮小の方針を明らかにした。 サハラで続けられてきたイスラム過激派との戦いが大転換を迎えようとしている。
 仏軍は2013年1月にマリに軍事介入したのを皮切りにイスラム過激派掃討のバルカン作戦を続けており、現在もサヘル地域に5,100名を派遣しているが、この作戦を終了させて欧州各国軍がサヘル地域の各国軍と連携するタクバ国際タスクフォースに引き継ぐ。
 仏軍は引き続き柱の役割を担うが、規模は数百名にとどめたい考えである。
 縮小に伴いマリを中心に駐留仏軍基地を閉鎖する一方で、対テロ作戦ごとの特殊部隊投入と各国軍の訓練に力点を移す。 (2107-061206)

南アフリカがモザンビークへ派兵

 南アフリカ国会が7月28日発表した声明によると、ラマポーザ大統領がテロ活動と暴力的な過激派組織との戦いを支援するためモザンビークへ1,500名の部隊派遣を認めた。
 モザンビークでは2017年からイスラム過激派組織による反政府活動が活発化、米NGOによると3,100人超が死亡し、近年は北部で攻撃が激化して近隣各国へ飛び火する恐れが高まっている。 (2108-072901)

5・7 中央アジア

5・7・1 ロシアの影響力発揮

米国とNATO軍がの駐留に強い反対

 ラブロフ露外相が7月12日、米国が8月末にアフガニスタンから撤退した後に、米国とNATO軍が中央アジアに駐留することに強い反対を示した。
 ラブロフ外相は一例にパキスタンを挙げたが、パキスタン首相はその可能性を否定したとし、次に旧ソ連構成諸国による安全保障の条約機構である集団安全保障条約機構の一員でもあるウズベキスタンの可能性を挙げた。 (2109-072803)

アフガン情勢に対応した合同演習

 タス通信が、ロシア軍とウズベキスタン軍が8月2日、アフガニスタン国境の都市テルメズの軍事施設で合同演習を開始したと報じた。 演習は5日間の予定という。
 これとは別に両軍はタジキスタンのアフガン国境沿いでも5~10日、3ヵ国軍の合同演習を行う。 (2109-080301)

上海協力機構加盟8ヵ国がロシアで対テロ演習

 アフガニスタン情勢への懸念が深まるなか、中国国防省は8月27日に上海協力機構加盟8ヵ国が9月11日からロシアで対テロ演習を行うと発表した。
 市街地での銃撃戦やUAVによる襲撃への対応を想定し、中国メディアは現地に向かう中国軍の様子を伝えている。
 演習には中国とロシアのほか、パキスタンやウズベキスタンなどから合わせて4,000名の将兵が参加する。
 習国家主席とプーチン大統領は25日にアフガニスタン情勢による混乱が波及しないよう連携強化を確認している。 (2109-082902)

タジキスタン駐留露軍が演習を開始

 InterFaxが、緊迫するアフガニスタン情勢を受けタジキスタンに駐留するロシア軍500名が演習を開始したとロシア中央軍管区が8月30日に発表したと報じた。
 演習はアフガン国境に近い山岳地帯で行われた。
 中央軍管区はまた、ロシア軍がタジクでS-300の発射訓練を実施したことも発表した。  ロシアは中央アジア諸国を経由し、アフガンからイスラム過激派が自国に流入することを警戒しており、ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)は9月にキルギスで、10月にタジクで合同演習を予定している。 (2109-083003)

旧ソ連の安保機構首脳会議

 ロシアが主導する旧ソ連諸国の集団安全保障条約機構 (CSTO) が9月16日にタジキスタンの首都ドゥシャンベで首脳会議を開き、タリバンが全土を制圧したアフガニスタンとタジクとの国境地域の防衛を強化することで合意した。
 タジキスタンはアフガンと1,340kmの国境があり、同国の混乱で国境を越えてテロ組織などが流入する懸念が高まっている。
 CSTOはロシア、ベラルーシ、アルメニア、キルギス、カザフスタン、タジクが加盟する軍事同盟で、即応部隊の展開力を強めると共に、タジクで大規模な軍事演習を実施する。 (2110-091701)

ロシアでタリバン参加の国際会議

 アフガニスタンで事実上権力を掌握したタリバンが参加する国際会議「モスクワ・フォーマット」がモスクワで開催され、タリバンの代表団のほか中国やパキスタンなどが参加した。 タリバンを承認していない米国は参加を見送った。
 協議では安定的な政権移行やISISへの対応などが議論されたとみられる。
 また、タリバン側によると現在凍結されているアフガニスタン政府が米国など外国に保有する資産を巡り、参加国が凍結の解除を求めることで一致したという。 (2111-102101)

ロシア軍が旧ソ連同盟国とタジキスタンで演習

 ロシア軍とロシア主導の集団安全保障条約機構構成国であるタジキスタン軍が、アフガニスタンからの安全保障上の脅威に備えてタジキスタンとアフガニスタン国境の北方20kmに位置するMomirak射場で合同演習を実施した。
 この演習にはロシア側から5,000名の部隊と700両の装甲車両が武装ヘリと共に参加した。 (2111-102209)

 アフガニスタン北部で国境を接するタジキスタンで10月24日、集団安全保障条約加盟の6ヵ国が参加して、アフガニスタンからの治安上の脅威に対処する軍事演習が行われた。
 ドゥシャンベにある同国最大の軍事基地で実施される1週間にわたる演習には、ホスト国タジキスタンをはじめ、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスから6,500名以上の将兵と700両の車両が参加した。 (2111-102501)

5・7・2 中国の進出

アフガン情勢、タジキスタンとテロ対応で連携

 タジキスタンを訪問している中国の魏国防相が7月27日にラフモン大統領と会談し、アフガン情勢についてテロ対応で連携することを確認した。 中国は王毅外相も7月、タジキスタンなどを訪問するなど、中央アジアの国々への外交攻勢を活発化させている。
 中国は、米軍の撤退完了が来月末に迫るアフガンでの存在感を高めるとともに、国境を接する新疆ウイグル自治区に反政府勢力タリバンの影響力が波及するのを防ぎたい考えがあるとみられる。 (2108-072802)

中国とタリバンが接近

 アフガニスタンから8月末で米軍が完全撤収するのを前に力タリバンと中国が接近している。 7月28日には中国の王毅国務委員兼外相がタリバン幹部と天津で会談し、アフガン情勢の安定などについて意見交換した。
 タリバンがアフガン政府に攻勢をかけて支配地域を拡大するなか、米軍撤収後のアフガンでの影響力拡大を図りたい中国側と、中国からの支援を引き出したいタリバン側の思惑が一致した。
 会談で王外相は、タリバンはアフガンで決定的な力を持つ軍事、政治勢力であり、アフガンの和平、復興の過程で重要な役割を発揮することが見込まれると評価した。 (2108-072904)

アフガン混乱の波及警戒し国境地域で演習

 米軍の撤退でアフガニスタン情勢が不安定化するなか、混乱の波及を警戒した中国が国境地帯で、新疆ウイグル自治区に展開するPLA部隊の実弾演習映像を公開した。
 演習は標高5,000mの高地で行われ、砲兵部隊や防空部隊の作戦遂行能力を検証したという。
 中国PLAは8月にロシア軍との合同演習を行ったほか、9月11日からは中露に加えて中央アジアなどの諸国でつくる上海協力機構の合同演習にも参加する。 (2110-090207)

タリバン、「一帯一路」のアフガン拡大要望

 タリバンのムジャヒド報道官が9月3日にパキスタンの首都イスラマバードで開かれた国際会議にオンラインで参加し、中国とパキスタンが進める大規模インフラ整備事業の中パ経済回廊 (CPEC) を、アフガンまで拡大するよう呼びかけた。
 CPECは中国西部からパキスタン南西部グワダル港までの2,700kmの間に高速道路や発電所、港湾などを整備する計画で、中国の巨大経済圏構想一帯一路の中心事業に位置づけられている。
 米欧がアフガン支援の継続に慎重な姿勢を示すなか、タリバンは中パ両国にインフラ整備で協力を仰ぐ構えである。 (2110-090405)

中国外相がタリバンに支援申し出

 中国の王毅外相が10月25日に訪問先のカタールの首都ドーハで、タリバン暫定政権のバラダル第1副首相代行と会談した。
 中国外務省の発表によると、王外相は「力の及ぶ限り人道支援物資を提供したい」と述べ、支援を申し出た。
 王外相は「米欧に対タリバン制裁を解除するよう促している」と強調する一方、米欧が懸念を示している女性の権利について「適切に保護することを望む」とくぎを刺した。
 また新疆ウイグル自治区の独立派組織である東トルキスタン・イスラム運動 (ETIM)のアフガンでの活動を取り締まることも求めた。 (2111-102603)

中国、タジクの警察施設建設支援

 匿名でAFPの電話取材に応じたタジキスタン議会の報道官が10月28日、同国下院がアフガニスタンとの国境に近い山岳地帯Gorno-Badakhshan自治州のIshkashim地区に中国の支援を受けて警察施設を建設する計画を承認したことを明らかにした。
 報道官は、建設費用$8.5Bは全額中国側が負担し、完成後施設はタジク警察に引き渡されると説明した。
 タジクの南東部には既に中国軍基地が1ヵ所あるとされており、新基地の建設は両国の安全保障関係の深まりを示している。
 中央アジア諸国はタリバン政権と協力関係を築いているが、タジクはタリバンに反発して直接の協議を避けている。
 中国はタリバンと友好関係を築こうとする一方、アフガンに潜伏しているイスラム系少数民族ウイグル人の分離独立派が国境を越えて新疆ウイグル自治区に侵入して来ないよう取り締まりを求めている。
 中国外務省はこの件に関するAFPの取材に対し、中央アジアに中国の基地は一切ないと断言すると回答した。 (2111-102901)

5・7・3 米国の進出

米国がタジク国境防衛支援

 タジキスタンの米大使館が9月1日、アフガニスタンやウズベキスタンとの国境を防衛するためのタジク南西部の施設更新を米国が支援すると発表した。
 タジク国境警備隊が「さらに迅速に国境に展開し脅威に対応する」ことを目的とするという。 (2110-090201)

ウズベキスタンやタジキスタンを軍事拠点にする構想

 バイデン政権が米連邦議会議員に対して行った機密扱いの説明の詳細に通じる3人の関係筋が、米軍が完全撤退したアフガニスタンに対するテロ対策などでの越境作戦で、米国がウズベキスタンやタジキスタンを軍事拠点を構築する有力候補地として見据えていることを明らかにした。
 ただこの軍事拠点づくりについてはロシアのプーチン大統領や両国の政治家らからの反発が予想され、実現しない可能性もあるとした。
 米国務省のシャーマン副長官は10月、ウズベキスタンを訪問しミルジヨエフ同国大統領と会談後の声明によると、今後の対アフガン政策などについて協議した。 (2111-102807)

5・7・4 その他各国の動き

インドが主催したアフガン周辺国会議

 インド政府が11月10日、アフガニスタン周辺国の外交安全保障担当幹部を招き、タリバンが権力を掌握したアフガニスタンの情勢を議論する会議を開いた。
 ロシアやイラン、中央アジア5ヵ国が出席したが、中国とパキスタンは参加を見送った。
 地域への影響力拡大を狙うロシアやイラン、パキスタンなど各国がアフガニスタンについての会議を主催するなか、インドはいずれにも招かれていないことから、自ら会議を開くことで地域大国としてアフガニスタンに関与していく姿勢を国際社会に示す狙いとみられる。 (2112-111003)

5・7・5 域内の情勢

5・7・5・1 域内の紛争

キルギス軍とタジク軍が衝突

 キルギスとタジキスタンの国境地帯で4月29日に軍が衝突し、キルギス側は少女を含む3人が死亡、80人以上が負傷し、タジク側も死傷者が出ているもようである。
 キルギス外務省は双方が29日夜からの停戦で合意したと発表している。
 キルギスのメディアによれば、キルギス南西部バトケン州にある給水施設をめぐり、28日以降、双方の住民の対立が激化した。
 タジク側は給水施設のある地域は自国領と主張し住民同士の投石が始まり、軍の衝突に発展した。 (2105-043003)

 タジキスタンのメディアによれば、キルギスのバトケン州にあるGolovnoy給水施設をめぐり、4月28日に双方の住民の対立が激化し施設が破壊されタジク人7人が負傷した。
 この小競り合いは29日に軍の衝突に発展し、キルギス側は36名が死亡、153名がが負傷し、タジク側も19名が死亡、88名が死亡した。  両国は5月1日に停戦に合意し、5月9日までに112kmに及ぶ国境線を画定することで合意した。 (2107-051202)

5・7・5・2 各国の動き

トルクメニスタンにトルコ製やイスラエル製の武器

 トルクメニスタンで9月27日に行われた独立30周年記念閲兵式にセルビア製のLazar 3 APCや、MAN-M及びMAM-Mマイクロ誘導弾を装備したトルコ製Bayraktar TB2 UAVなどが参加した。
 またElbit社製SkyStriker遊弋索敵弾も公開された。
 そのほかに中国製Dongfeng Mengshi 4×4車3両に続いてロシア製KamAZ-63968 Taifun-K 6×6 MRAP車も見られた。 (2112-101309)



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