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3. 係争地域の情勢

3・1 朝鮮半島

3・1・1 北朝鮮

3・1・1・1 核開発

3・1・1・1・1 核燃料の生産

プルトニウムの生産、寧辺の原子炉再稼働

 国際原子力機関 (IAEA) がまとめた8月27日付の年次報告書によると、北朝鮮は核開発用のプルトニウムを生産していたと考えられている寧辺の原子炉を再稼働させたもようである。
 報告書は寧辺にある5MWの原子炉について2018年12月上旬から2021年7月初めまで、稼働を示す兆候はなかったが、2021年7月上旬以降、冷却水の排出など原子炉の稼働と一致する兆候が見られているとしている。
 IAEA2009年に北朝鮮が査察官を国外退去させて以来、同国への立ち入りができなくなっており、主に衛星画像を使って北朝鮮の核活動を監視している。 (2109-083001)

3・1・1・1・2 核 実 験

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・1・1・1・3 核兵器の開発

日本や韓国を対象とする戦術核兵器の開発

 北朝鮮の複数の国営メディアが1月9日、金委員長が労働党第8次大会で「核兵器の小型化・軽量化、戦術兵器化をより発展させよ」として戦術核兵器の開発を指示したと報じた。
 金委員長が戦術核の開発を公の場で指示したのはこれが初めてである。
 戦術核の使用対象は韓国か日本程度に限定される。 (2102-011101)

 北朝鮮国営KCNAが1月9日、金委員長が第8回朝鮮労働党総会で、同国が原潜、戦術核兵器、HGV、電子戦装置、偵察衛星の開発で重要な段階に差し掛かっていると述べたと報じた。 (2103-012003)

国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネルの年次報告書

 ロイタが2月8日に閲覧した国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会専門家パネルの年次報告書が、北朝鮮が2020年に核やBM開発を継続し、国連制裁に違反したほか、サイバ攻撃で不正に得た$300Mの資金を核やミサイル開発に活用したとの報告をまとめたことが明らかになった。
 報告書をによると、北朝鮮は核分裂性物質を生産したほか核施設を維持し、BMに関するインフラを刷新したとし、これら開発プログラムに必要な物質や技術を他国に求めていたという。 (2103-020903)

 国連安保理の専門家チームが3月4日に纏めた2020年8月4日~2021年2月5日の間を網羅した北朝鮮の報告書が3月下旬に公表され、2020年10月と2021年1月の閲兵式に登場した1種類のICBM、2種類のSLBM及び数種類のSRBMが戦術核及び戦略核を搭載できることを確認したとしている。 (2106-041401)

専門家パネルの中間報告

 国連安保理筋が、北朝鮮に対する制裁決議の履行状況を監視する安保理の北朝鮮制裁委員会専門家パネルが、北朝鮮が経済難にもかかわらず、核ややBMの開発を継続していると指摘する中間報告書をまとめたことを明らかにした。
 安保理に提出された報告書は、北朝鮮が核やミサイルの開発に必要な物資や技術を海外から入手しようとしていると指摘し、サイバ攻撃のほか核兵器など大量破壊兵器に応用できる研究を巡る北朝鮮と外国の協力についても調査しているという。 (2109-080704)

IAEA が北朝鮮の核開発を本格的進行と判断

 国際原子力機関 (IAEA) のグロッシ事務局長が9月20日の年次総会での講演で、北朝鮮でプルトニウムの分離やウラン濃縮などの活動が行われており、北朝鮮の核開発プログラムが本格的に進行していると述べた。
 IAEAは8月27日の年次報告書で、北朝鮮は核開発用のプルトニウムを生産していたと考えられている寧辺の原子炉を再稼働させたもようとしていた。 (2110-092101)

米国防情報局が15日、北朝鮮の軍事力を分析した報告書

 米国防情報局 (DIA) が10月15日、北朝鮮の軍事力を分析した報告書を発表した。
 北朝鮮が「2022年にかけて長距離ミサイル実験を行う可能性がある」と指摘したほか、「兵器の能力を改良するため、さらなる地下核実験を実施し得る」と記述し、核やミサイル開発の進展に警戒感を示した。
 いずれも兆候などに関する具体的な説明はない。 (2111-101701)

3・1・1・1・4 BM 搭載核弾頭

 国連安保理の専門家委員会が3月下旬に、北朝鮮が2020年10月と2021年1月に閲兵式で公開したMRBMとSRBMは核搭載能力を持つとした3月4日に作成した報告書を公開した。 (2105-040103)
3・1・1・1・5 核弾頭保有数

2027年に242発の核兵器と数十基の ICBM との見積もり

 米ランド研究所と韓国の外交安保シンクタンクである峨山政策研究院が4月13日に共同で発表した報告書「北朝鮮核兵器の脅威への対応」で、北朝鮮が2027年に最大242発の核兵器と数十基のICBMを保有すると分析した。
 この程度になれば北朝鮮は先制核攻撃を含む強力な武力挑発を敢行できる段階に到達する。 (2105-041405)

3・1・1・2 BM 開発の継続

 米シンクタンクCSISが2月18日、平壌近郊にあるユサンニ・ミサイル作戦基地の最新衛星写真を公開した。
 この基地はICBMを格納している可能性も指摘されていて、現在も稼働中で小規模な開発が続いているという。
 この基地は2年前と比べて一部の建物が建て替えられているほか、車両の運転訓練を行うコースが新たに造られているという。 また、2020年10月の写真では地下施設に物資を運ぶ車両やコンテナのようなものも確認でき、基地は稼働中で小規模な開発が続いていると見ている。 (2103-021904)

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信が3月27日、李朝鮮労働党書記が26日に談話で、バイデン米大統領が北朝鮮のBM発射を国連安全保障理事会の決議違反と非難したことについて「自衛権に対する露骨な侵害であり、挑発だ」と批判し、強い憂慮を表明したと報じた。
 李書記は25日のミサイル発射について、党と政府が国家防衛力を強化するため実施したとし、米国はICBMを発射してもいいが、我々が戦術兵器の試験もしてはいけないのは強盗の論理だと批判し、「米国の新政権は間違ったスタートを切った。 後先見ず、みだりに発言を続ける場合、米国は好ましくないことに直面し得る」と強調した。 (2104-032706)

 米DIA長官のベリエ陸軍中将が4月29日に議会上院軍事委員会に文書で、北朝鮮は2021年も核とミサイルの開発及び軍の近代化努力を続けており、既存の液体燃料ミサイルの固体燃料化を急速に進めていると述べた。 (2107-051201)

3・1・1・3 SLBM の発射

発射準備の兆候

 韓国の情報当局が、北朝鮮で新型SLBMの発射準備の兆候があると分析している。 SLBMを搭載できる潜水艦の建造を完了した可能性が高いとの見方もある。
 情報関係者によると、新浦の造船所沖合100mにあった発射試験用バージがさらに100m沖合に移動させており、韓国国家情報院は「新型SLBM発射の兆候がある」と分析しているという。
 北朝鮮は4月15日に金日成主席の生誕記念日「太陽節」を迎えることから、韓国政府の元高官は「米国を圧迫するため、この前後に発射する可能性もある」とみている。
 米国が近く新しい北朝鮮政策の公表を予定するなか、牽制を強める狙いがあるようである。 (2105-041207)

10月19日: 短距離 SLBM の発射

 北朝鮮のKCNAが、10月19日に短距離SLBMの発射試験を実施したと報じた。
 SLBMは590km飛翔し、高度60kmに達した。
 最も最近行われたSLBMの発射は2019年10月に行われた北極星-3で、その際には射距離450km、到達高度900kmであったことから、最長の弾道で発射すれば2,000kmの射程を持つと見られた。 (2112-102701)

3・1・1・4 安保理制裁決議違反

3・1・1・4・1 瀬取りの実施

シンガポールのタンカーを接収

 米司法省が7月30日、北朝鮮への石油製品密輸に関わったとして、シンガポール人の男が所有するタンカーを接収したことを明らかにした。
 タンカーは国連安保理の北朝鮮制裁決議に違反し瀬取りを行っていたという。
 カンボジア当局が2020年3月に米国の差し押さえ状に従ってタンカーを拿捕していた。 米当局はシンガポール人の男を訴追し行方を追っている。
 司法省によると、タンカーは2019年8月~12月にかけ、位置情報の伝達装置を違法に止め、$1.5M相当以上の石油を瀬取りで制裁対象の北朝鮮の船に移した。 (2108-073101)

3・1・1・4・2 瀬取りの監視

フランス海軍フリゲート艦の参加

 防衛省が2月18日、北朝鮮による瀬取りを阻止するため、フランス海軍のフリゲート艦Prairialが2月中旬から3月上旬にかけて東シナ海周辺で警戒監視活動を行うと発表した。
 仏海軍による警戒監視は2019年5月以来で2度目になる。 (2103-021803)

Enforcement Co-ordination Cell (ECC)

 安保理決議違反を監視する多国海軍による活動ECCには、日米英仏加とニュージーランドが参加している。 (2110-092704)

ドイツ海軍艦が監視に参加

 欧州各国が中国の軍事的台頭に警戒を強めるなか、ドイツがフリゲート艦を派遣し南シナ海を航行させる計画をしていることが分かった。 朝鮮半島沖で北朝鮮に対する国連制裁の監視活動にも加わる。
 ドイツ国防省と外務省の高官によると、フリゲート艦1隻が8月初旬にドイツを出港してマラッカ海峡などを通りオーストラリアに寄港する。
 その後、年末にかけて数週間、朝鮮半島沖の監視活動に加わる。
 海外領土を持たないドイツにとって、アジア地域への艦船派遣は異例で、中国を牽制し、日本など地域の国々と安全保障で連携強化を目指す。 (2104-030304)

英海軍フリゲート艦 Richmond

 英国防省が9月26日、東シナ海でフリゲート艦Richmondが北朝鮮による国連安保理決議違反の瀬取りが行われている証拠をつかんだと発表した。
(2110-092704)

ニュージーランド哨戒機

 防衛省が11月4日、北朝鮮船舶の瀬取りを含む違法な海上活動に対し、ニュージーランドが11月上旬から同下旬まで嘉手納基地を使って航空機による警戒監視活動を行うと発表した。
 国連軍地位協定に基づく活動で2018年以降5度目となる。 海上自衛隊も国連安保理決議違反が疑われる船舶の情報収集をしており、関係国と緊密に協力する考えという。 (2112-110502)

カナダ海軍フリゲート艦 Winnipeg

 東シナ海で北朝鮮に対する国連の制裁措置支援に当たっていたカナダ海軍のフリゲート艦Winnipegが物資の補給や乗組員の休養などが目的で11月6日に佐世保に寄港した。
 Winnipegは8月にカナダを出港し、9月には海上自衛隊や英空母Queen Elzabethなどによる多国間の共同訓練に参加した。
 その後北朝鮮船舶による瀬取りを含む違法活動の監視任務のためヘリを使用した情報収集を実施していた。 (2112-110701)

 カナダ軍のフリゲート艦Winnipegが11月15日に沖縄県うるま市の米海軍施設ホワイトビーチに寄港した。 海洋進出を強める中国や核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を念頭に、東アジア地域の安定に寄与する姿勢を示す狙いがある。
 Winnipegは3ヵ月前にカナダを出港し、日本近海だけでなく台湾海峡や南シナ海を航行した他、米英の空母や海上自衛隊艦船と訓練すると共に、北朝鮮船舶が海上で積み荷を移し替える瀬取りの監視活動にも従事した。 (2112-111507)

3・1・1・4・3 その他の制裁違反

韓国がタンカー2隻を北朝鮮に売却

 米CSIS傘下のAMTIが6月3日までに、韓国企業が所有していたタンカー2隻を北朝鮮が中国を通じて購入したとする報告書を公開した。
 報告書は、北朝鮮が2019~2020年に中国からタンカー3隻を購入したが、そのうち2隻は過去に韓国企業が所有していたものであり、中国を経由して北朝鮮に入ったと説明した。
 国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議は北朝鮮に対する直接的・間接的な船舶の供給を禁じており、状況によっては韓国企業が制裁違反に問われる可能性も提起されている。 (2107-060304)

3・1・1・5 挑発行動

元山で大規模な砲射撃訓練

 複数の韓国政府筋によると、北朝鮮が元山で大規模な砲射撃訓練を準備している状況を韓国軍が把握し状況を注視しているという。
 政府筋は、旧正月連休中に実射撃訓練をする可能性があり、状況を綿密に見ているという。
 軍関係者は、今回の砲兵訓練は2020年末から始まった北朝鮮軍の冬季訓練の後半部に実施する総合評価訓練とみられるとし、冬季訓練は3月31日までの計画と把握していると述べた。 (2103-021105)

海上の境界線付近にロケット砲配備

 韓国軍合同参謀本部が3月23日、北朝鮮が北方限界線 (NLL) 北側の昌麟島にロケット砲を配備したとする韓国メディアの報道について、「あらゆる可能性を念頭に、関連状況を注視しながら備えの態勢を維持している」と述べた。
 昌麟島は、軍事境界線付近の緊張緩和をうたった2018年9月の南北軍事合意に基づき海岸砲射撃が禁じられている海上敵対行為禁止区域内にある。
 昌麟島の位置から見て、NLLに近い韓国の白ニョン島や延坪島を狙った122mm MRLなどが配備された可能性が取り沙汰されている。 (2104-032304)

3・1・2 韓 国

 日米韓3ヵ国がロンドンで5日午前(日本時間同日夕)にバイデン米政権発足後初めてとなる日米韓外相会談を開催した。
 米政権による対北朝鮮政策見直し作業の完了を踏まえ、北朝鮮の完全非核化への決意を再確認し、北朝鮮に国連安全保障理事会決議の下での義務に従うよう求める方針で一致した。
 また北朝鮮政策を具体的に進める際には、3ヵ国で緊密に連携すると申し合わせた。 (2106-050506)
3・1・3 米 国

3・1・3・1 米国の対北認識

 次期在韓米軍司令官候補のラカメラ陸軍大将が議会上院軍事委員会で5月18日、北朝鮮は核兵器開発計画を進めるうえに、核保有量と生産能力強化を進めるだろうと述べた。 (2108-060204)
3・1・3・2 米国の対応

北朝鮮問題に向けたバイデン政権の政策見直し

 サキ米大統領報道官が4月30日、北朝鮮の核問題解決に向けたバイデン政権の政策見直しが完了したことを明らかにした。
 日韓などと連携し「調整された実務的アプローチ」による外交解決を目指すという。 (2106-050101)

日本海上で Tomahawk の模擬発射訓練

 米UPI通信が6月16日、第7艦隊の駆逐艦Rafael Peraltaが11~15日に日本海上で射程2,500kmのTomahawkの模擬発射訓練をしたと報じた。
 米海軍の報道資料によるとRafael PeraltaはTomahawkの発射訓練を含め、機関砲実射撃訓練、海上打撃作戦などを実施した。
 米軍関係者によると、日米連合訓練は中国と北朝鮮及びロシアを仮想の敵として訓練するのが通常で、最近開催された主要7ヵ国 (G7) 首脳会議と米露首脳会談が訓練に影響を与えたという意味と解釈される。 (2107-061802)

3・2 東シナ海

3・2・1 中国の動き

3・2・1・1 海警局警備艦の活動

3・2・1・1・1 領海侵犯、接続水域進入の常態化

2020年1年間に海警局艦の接続水域侵入333日、1,161回

 那覇の第11管区海上保安本部が1月2日、1日22:26から22:46にかけ中国艦4隻が尖閣諸島久場島沖の接続水域内に入るのを確認したと発表した。
 同諸島沖の接続水域で中国艦が確認されたのは2021年初で、2日15:00現在4隻は同諸島南小島沖の接続水域内を航行している。
 11管によると、2020年に同諸島沖の接続水域で中国艦が確認されたのは計333日で、それまで過去最多だった2019年の282日を大幅に更新して年間の9割以上となり、同諸島周辺で活動を常態化させていることが顕著になった。 (2102-010202)

 海上保安庁が1月1日、尖閣諸島周辺の接続水域への中国艦の侵入が、2020年1月1日~12月31日の1年間に1,161回と、それまでの記録であった2019年の1,097回を上回ったことを明らかにした。
 また進入日数も2019年の282日を大きく上回る333日であったという。 (2103-011303)

5月24日: 海警局艦の接続水域侵入、100日以上連続

 尖閣諸島周辺の接続水域で5月5日、中国海警局の警備艦4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。
 尖閣周辺で中国艦が確認されるのは82日連続になる。 (2106-050503)

 加藤官房長官が5月24日の記者会見で、尖閣諸島の周辺海域で中国海警局艦が100日以上連続で航行していることについて、「接続水域内で中国海警局に所属する船舶の運航や領海侵入などが相次いでいることは極めて深刻と受け止めている」と述べ懸念を示した。
 24日08:00時点でも中国艦が航行しており、確認日数は101日連続となっている。 (2106-052402)

6月 3日: 海警局艦の接続水域侵入、過去最長を更新し112日連続

 尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で6月3日、中国海警局艦4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。 2月13日以降111日連続となり、過去最長(2020年4~8月)に並んだ。
 船の大型化、武装化や海警局の武器使用規定を明文化した海警法施行など、中国は海洋進出を念頭に動きを活発化させており、日本政府は警戒を強めている。 (2107-060305)

 中国海警局艦4隻が6月3日、尖閣諸島の大正島や南小島周辺の接続水域を航行しているのが確認されたが、4日未明も航行を続け、接続水域での航行は2020年4~8月の過去最長を更新し112日連続となった。
 海上保安庁は巡視船12隻を専従させ、監視や日本漁船の保護などを続けている。
 2012年の尖閣国有化以降、海警船の接続水域での航行は急増し、2019年ごろからほぼ常態化していて、漁船への接近は今年既に12件に及び昨年の8件を超えた。
 最近は接続水域で日本漁船を待ち構えるように航行し、漁船の動きに合わせて領海侵入する例が目立つ。 (2107-060403)

7月12日: 海警局艦が接続水域に150日連続で侵入

 加藤官房長官が7月12日の記者会見で、中国海警局艦が尖閣諸島周辺の接続水域に150日連続で侵入したことを明らかにし、極めて深刻な事態と考えていると懸念を示した。
 その上で「中国側に対しては、現場海域において常に相手勢力を上回る海上保安庁巡視船を配備し、警告を繰り返し行うなど、警備に万全を期している」と強調した。 (2108-071202)

7月14日: 海警4隻が領海に侵入、2021年に24回目

 第11管区海上保安本部によると、尖閣諸島沖で7月14日に中国海警局艦海警 4隻が日本の領海に侵入し航行した。
 4隻は10:20~10:25ごろに大正島南などの領海に侵入した。
 尖閣諸島沖での中国艦の領海侵入は10~12日以来で、今年24回目になる。 (2108-071403)

7月20日: 海警局艦接続水域侵入157日で途切れる

 第11管区海上保安本部への取材で7月21日、20日に尖閣諸島周辺で中国海警局艦の航行が確認されなかったことが分かった。
 最長更新を続けてきた周辺海域での連続航行日数は157日で途切れた。 (2108-072101)

2021年上半期の尖閣諸島接続水域に侵入、2008年以来最多

 中国海警局警備艦が1月1日から6月30日の半年に尖閣諸島接続水域に侵入した回数が642回と、前年同期の604回を6.3$上回り、2008年以来最多となっている。 (2109-072111)

8月30日: 海警局艦を4隻から7隻に増強

 尖閣諸島周辺で8月下旬に中国海警局艦が通常より多い7隻に増え、うち4隻は機関砲のようなものを搭載していたことに対して、日本が中国に強い懸念を伝えて抗議した。
 海警の領海侵入も受け入れられないと強調したことを政府筋が明らかにした。 海警が武器使用に踏み切らないか、日本は警戒を強めている。
 海警は尖閣周辺を通常4隻で哨戒していたが8月30日は7隻に増えそのうちの4隻が領海に侵入した。
 追加派遣とみられる3隻は接続水域で待機していたが、この3隻と領海侵入の1隻が機関砲のようなものを搭載していた。 (2110-091505)

9月19日: 海警艦4隻が領海に侵入

 那覇市の第11管区海上保安本部によると、9月19日10:00~10:17に中国海警艦4隻が尖閣諸島南小島沖の領海に相次いで侵入した。 うち1隻は砲のようなものを搭載していた。
 海上保安庁の巡視船が領海からの退去を求め、いずれも11:44頃までに領海を出た。 (2110-091904)

10月20日: 海警艦4隻が領海侵入、2021年で36日目

 第11管区海上保安本部によると、10月20日10:00過ぎに尖閣諸島周辺の領海に中国海警局艦4隻が相次いで侵入し、約1時間半後の11:37ごろから領海外側の接続水域に出た。
 4隻は海警2301、海警2302、海警6304と、機関砲らしきものを搭載した海警2203で、この日は尖閣周辺で日本漁船は操業していなかった。
 中国艦が尖閣周辺で領海侵入したのは9月19日以来で、2021年で36日目になる。 (2111-102103)

2021年の中国海警艦接続水域進入が332日

 第11管区海上保安本部によると、12月31日09:00頃に尖閣諸島の大正島と久場島の沖合で中国海警艦4隻が航行しているのが確認された。 このうち1隻は砲のようなものを装備しているという。
 これにより中国海警局艦が尖閣諸島の接続水域内で確認されたのは、2021年だけで332日となり過去最多の333日を記録した2020年に次いで、過去2番目の日数となった。
 また領海侵入は2021年に34件、延べ40日確認されている。 (2201-123104)

3・2・1・1・2 日本領海内に停泊

 尖閣諸島南小島の沖合で4月2日11:30過ぎから日本の領海に侵入している中国海警局艦2隻は、24時間以上経った現在も領海内を漂泊している。
 2隻は近くで漁をしている日本漁船に接近するような動きをみせたため、海上保安本部が巡視船を間に入れると共に、領海から直ちに出るよう警告を行っている。 (2105-040304)
3・2・1・1・3 日本漁船追跡

2月 6日:

 尖閣諸島の南小島沖で2月6日04:45頃に中国海警局の警備艦2隻が領海に侵入した。 中国艦による領海侵入は、海警に武器使用を認める海警法が1日に施行されてから初めてである。
 日本漁船に接近したため巡視船が間に入って警告し、海警艦は13:15頃に領海から出た。 (2103-020602)

2月15日:

 加藤官房長官が15日の記者会見で、同日13:20すぎに尖閣諸島沖で中国海警局の警備艦2隻が領海に侵入し、日本漁船に接近したと発表した。
 加藤長官は、誠に遺憾で断じて容認できないとし、このような海警船舶の活動は国際法違反だと述べ、外交ルートで抗議したことを明らかにした。 (2103-021501)

 政府が15日、尖閣諸島南小島沖の領海に中国海警局の警備艦2隻が侵入したと発表した。
 那覇の第11管区海上保安本部によると、2隻は同日13:32頃から13:33頃に相次いで領海に侵入した。
 付近で操業中の日本漁船に接近する動きを見せたため、海上保安庁の巡視船が間に入り漁船の安全を確保した。 海保が海警局の船に対し、領海から退去するよう求めている。 (2103-021503)

 那覇の第11管区海上保安本部によると、中国海警局の海警2隻が2月15日13:30頃、尖閣諸島南小島南南東の領海に侵入し、さらに別の2隻が16日04:15頃に大正島南南東の領海に侵入した。
 4隻は23時間にわたり日本の領海に侵入し操業中の日本漁船2隻への接近を繰り返したり、付近にとどまったりしたため、海上保安庁の巡視船が安全を確保し、領海外へ出るよう警告した。
 4隻はいずれも同日12:20頃までに領海を出た。 (2103-021601)

3月29日:

 中国海警局艦2隻が3月29日04:05から尖閣諸島周辺の領海に侵入し、04:20頃には南小島の南22kmの海上で航行中の日本漁船2隻に接近しようとする動きを見せたため、海上保安庁が漁船の周囲に巡視船を配置して安全確保に当たった。
 第11管区海上保安本部によると、領海侵入した海警局艦のうち1隻は機関砲のようなものを搭載している。
 中国当局の船が尖閣周辺で領海侵入したのは、23日以来で今年11日目になる。 (2104-032902)

海警局艦2隻での挟み撃ちが常態化

 尖閣諸島周辺海域で、日本漁船が中国海警局艦に接近され追尾を受ける事態が常態化している。  複数の漁業者の証言によると、海警局艦は2020年を境に尖閣周辺から日本漁船を完全排除するための行動を展開している模様で、海警局艦2隻で日本漁船1隻を挟み撃ちにしている。 (2105-041403)

5月10日:

 第11管区海上保安本部によると、5月10日11:40頃に尖閣諸島周辺の領海に機関砲のようなものを搭載した中国海警局艦海警2202のほか海警1401が侵入し、周辺を航行していた日本漁船に接近しようとする動きを見せた。 漁船は石垣市議の仲間均氏ら3人が乗り組んだ八重山漁協所属の鶴丸 (9.1t) と見られる。
 15:00現在、南小島の東4kmの領海内で操業しており、周辺では海警2202海警1401が航行、漂泊している。
 中国海警局艦が尖閣周辺で領海侵入したのは4月25日以来で、今年16日目である。
 更に尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域でも、中国海警局艦海警2301海警6302の3隻が航行している。 (2106-051101)

5月24日: 海警局艦4隻が領海侵入し日本漁船に接近

 第11管区海上保安本部によると、5月24日16:30ごろから中国海警局艦4隻が尖閣諸島周辺の領海に相次いで侵入した。
 このうち機関砲のようなものを搭載した海警1305のほか海警2302の2隻が16:36ごろ、大正島の南22kmの海上で操業中の日本漁船に接近しようとする動きを見せたため、海保が周囲に巡視船を配置して安全を確保している。
 4隻のうち海警2502海警6401は18:24ごろに接続水域に出たが、18:40現在、海警1305と海警2302は領海内にとどまっている。
 中国海警艦は、尖閣周辺海域で日本漁船の操業を妨害することで、自国の領有権を主張する意図と見られ、尖閣周辺で領海侵入したのは5月11日以来で、2021年で18日目になる。 (2106-052504)

3・2・1・2 演習の実施

7月: 浙江省温州市から寧波市までの沖合で演習

 中国海事局が7月16日、武器を使用した演習を行うため、同日から21日まで東シナ海の広い海域を航行禁止区域に指定した。
 区域は浙江省温州市から寧波市までの沖合で、最も南の地点は台湾から250kmである。
 訓練の詳細は不明だが、台湾の蔡政権を牽制するため夜間も含め実戦的な演習を行う可能性がある。 (2108-071601)

11月: 駆逐艦など3隻が演習

 中国国営の中央テレビが11月19日、ソブレメイヌイ級駆逐艦寧波、Type 052DL駆逐艦蘇州、Type 054Aフリゲート艦徐州の3隻からなる艦隊が東シナ海で戦闘訓練を行ったと報じた。
 最近のものだとしただけで、正確な日時は伏せている。
 映像では、対岸の陸地に設定した目標に向けて砲撃する様子も映されていたが、対潜訓練も行ったという。 (2112-112009)

3・2・1・3 海軍艦の動き

3・2・1・3・1 沖縄本島への接近

 統合幕僚監部が11月1日、久米島の西北西140kmの海域で中国海軍Type 052B駆逐艦1隻を確認したと発表した。
 統幕によると、中国海軍の艦艇が確認されるのは2021年4月以降14回目という。 (2112-110302)
3・2・1・3・2 沖縄本島~宮古島の通過

4月 3日: 空母 遼寧 など6隻

 海上自衛隊が4月3日08:00頃、長崎県の男女群島の南西470kmの海域で、空母遼寧と駆逐艦など合わせて6隻のPLA艦が航行しているのを確認した。
 これらのPLA艦は、その後、沖縄本島と宮古島との間を南へ通過して太平洋に抜けたという。
 また、4日午後にはY-9哨戒機が沖縄本島と宮古島の間を往復飛行したことも確認され、防衛省は周辺での中国軍の動向を引き続き注視している。 (2105-040402)

 海上自衛隊の航空機と艦船が、空母遼寧を中心とした中国艦隊が宮古海峡を通過して太平洋へ出たことを確認した。
 艦隊には初めてType 055駆逐艦が加わり、その他にType 052D駆逐艦2隻、Type 054Aフリゲート艦1隻、Type 901高速補給艦1隻も加わっていた。
 これについてPLA海軍報道官は「通常の訓練」と述べたが、国営の環球時報は「この演習でPLA海軍は空母と艦載機で台湾を包囲し、外国の干渉を阻止する能力を有することを実証した」と報じている。 (2105-040705)

 防衛省が、中国PLA海軍Type 055駆逐艦の初号艦が4月3日に空母遼寧に随伴して台湾東側の太平洋へ出たと発表した。
 海上自衛隊によると空母にはType 052D駆逐艦2隻、Type 054Aフリゲート艦、Type 901補給艦各1隻も同行して宮古海峡を通過したという。
(2106-041404)

4月26日: 空母艦載機による領空侵犯

 統合幕僚監部が4月27日、26日9:00頃に空母遼寧など中国艦6隻が沖縄本島と宮古島の間を抜け、太平洋から東シナ海へ北上したのを確認したと発表した。
 6隻は今月初め、同じ海域を南下していた。
 遼寧からは27日午前にAEWヘリ1機が発艦し尖閣諸島大正島周辺の領空から北東50~100km付近に接近し飛行したため、航空自衛隊戦闘機が緊急発進した。 (2105-042706)

5月17日: 駆逐艦など計3隻が通過

 統合幕僚監部が5月17日、中国PLA海軍の駆逐艦など計3隻が沖縄本島と宮古島の間を通過し、東シナ海から太平洋に入ったのを確認したと発表した。
 東シナ海では11~17日の日程で、海上自衛隊と米仏豪海軍が中国を念頭に離島防衛を主目的とした共同訓練ARC 21を実施しており、同省は中国の意図を分析するとともに、動向を警戒している。 (2106-05170)

 防衛省が5月17日、日本近海で中国PLA海軍艦3隻とロシア海軍艦6隻を確認したと発表した。
 中国艦はType 052D駆逐1隻、Type 054Aフリゲート艦1隻などで、16日09:00頃に久米島の北西120kmの海域で発見され、17日までに沖縄本島と宮古島間を南下して太平洋に出た。 (2106-051702)

8月24日: 駆逐艦など計3隻が沖縄本島と宮古島の間を通過

 統合幕僚監部が25日、24日以降に中国海軍駆逐艦など3隻が沖縄本島と宮古島の間を通過したことも確認されたと発表した。 (2109-082505)

9月 3日: 駆逐艦2隻が沖縄本島と宮古島の間を通過

 統合幕僚監部が9月8日、中国海軍駆逐艦2隻が3日に沖縄県久米島北西の海域で確認され、その後に沖縄本島~宮古島間を南下して太平洋に向かったと発表した。
 2隻は5日に中国海軍の別の駆逐艦1隻と合流し、台湾と与那国島の間を北上して東シナ海に向けて航行したという。 (2110-090802)

11月22日: フリゲート艦が宮古海峡を北上

 統合幕僚監部が11月22日、中国海軍のフリゲート艦2隻が宮古海峡と対馬海峡をそれぞれ通過したのを確認したと発表した。
 2隻のうち1隻は19日18:00頃に宮古島と沖縄本島の間の宮古海峡を北上し、太平洋から東シナ海に入った。
 18日には対馬海峡で中国艦2隻、ロシア艦1隻が航行するのがそれぞれ確認されたほか、中国海軍の測量艦が鹿児島県沖の領海内を航行したと判断される事案も発生した。 (2112-112206)

12月16日: 遼寧 など4隻が宮古海峡を南下

 統合幕僚監部が、中国海軍空母遼寧などの艦船4隻が12月16日に沖縄本島と宮古島の間を南下し、東シナ海から太平洋に入ったのを確認したと発表した。
 防衛省によると、海上自衛隊が15日午前に長崎県の男女群島の西350kmを南東に移動する4隻を見つけ、護衛艦いずもや哨戒機で監視を続けた。
 空母のほかは、駆逐艦、フリゲート艦、高速戦闘支援艦が1隻ずつであった。
 防衛省が遼寧の沖縄通過を確認したのは4月以来で、同省は中国が外洋での活動能力の強化を図っているとみて警戒を強めている。 (2201-121802)

3・2・1・3・3 大隅海峡抜け太平洋へ

6月01日: 駆逐艦やフリゲート艦3隻

 統合幕僚監部が6月1日、中国PLA海軍の駆逐艦やフリゲート艦計3隻が、佐多岬と種子島間の大隅海峡を通過し、太平洋に向かったと発表した。
 3隻は5月31日08:00頃に屋久島の西240kmの海域で発見され、その後大隅海峡を抜けて太平洋に出た。
 中国軍艦艇による同海峡の通過が確認されたのは約1年半ぶりである。 (2107-060104)

9月11日: Type 055駆逐艦、Type 052D駆逐艦と、補給艦、情報収集艦のあわせて4隻

 防衛省が、中国海軍艦艇が9月11日に大隅海峡を通過し、太平洋から東シナ海に入ったのを確認したと発表した。 領海への侵入はなかったという。
 発表によると、海上自衛隊が11日09:00頃に中国海軍の艦艇4隻が、種子島の東140kmの太平洋上を航行しているのを確認した。 4隻はその後、大隅海峡の接続水域を西に航行し、東シナ海に入ったという。
 航行していたのは、Type 055駆逐艦、Type 052D駆逐艦と、補給艦、情報収集艦のあわせて4隻で、そのうちType 052D駆逐艦は前日10日に奄美大島沖でも確認されていた。 (2110-091503)

3・2・1・3・4 中国海軍艦が領海侵入

11月17日: 測量艦1隻が屋久島南の接続水域を航行

 防衛省が、中国海軍の測量艦1隻が11月17日20:40頃に鹿児島県屋久島の南の接続水域を航行したことを確認し、18日01:20頃には測量艦が鹿児島県口永良部島の西の接続水域を西に向かって航行していることも確認した。
 防衛省は、測量艦のこうした動きから日本の領海を航行したと判断し、哨戒機で情報収集や警戒監視を行ったという。 (2112-111905)

11月17日: 測量艦1隻が日本の領海内に侵入

 防衛省が、鹿児島県沖の接続水域を航行した中国海軍艦が日本の領海内に侵入したと発表した。
 中国海軍による領海侵入は2017年7月以来4年ぶり4回目となる。
 防衛省によると、17日20:40頃に海上自衛隊のP-1が、屋久島の南の接続水域から領海に向かって西に航行する中国海軍の測量艦を確認した。
 また、およそ5時間後の18日01:20頃には、同じ測量艦が口永良部島の西の接続水域を西向きに航行していることを確認したため、防衛省はこの測量艦が航行中に日本の領海内に侵入したと判断しているという。 (2112-112002)

3・2・1・3・5 与那国島~台湾の通過

 統合幕僚監部が5月1日、中国海軍のフリゲート艦1隻が同日に与那国島と台湾の間を北上し東シナ海に入ったと発表した。  このフリゲート艦は沖縄本島と宮古島の間を南下して太平洋に入り、その後、与那国の西方へ進んだ。
 統合幕僚監部は、中国艦による与那国~台湾間の通過を公表するのは初めてで、尖閣諸島周辺を含め東シナ海で中国の活動がさらに活発になっているとみて警戒を強めている。
 一方、統合幕僚監部は4月30日夜以降にロシア艦2隻が対馬海峡を南下し東シナ海に向かったのを確認したことも公表した。 (2106-050106)
【註】中国海軍フリゲート艦が宮古島~与那国の島々を一周したことになる。
3・2・1・3・6 潜水艦が接続水域内を潜航

 防衛省が、中国海軍のものとみられる潜水艦が奄美大島沖の日本の接続水域内を潜航しているの確認したと発表した。 防衛省によると、9月10日に奄美大島の東の太平洋で潜水艦が航行し、近くで中国海軍の駆逐艦1隻が確認された。
 その後潜水艦は日本の接続水域内に入り、12日午前には横当島の西の東シナ海を航行した。
 海上自衛隊が哨戒機や護衛艦で情報収集と警戒監視にあたったが、潜水艦による領海への侵入はなかったという。 (2110-091204)

 防衛省が9月12日、中国PLA海軍の潜水艦が奄美大島沖合の接続水域を潜航して航行したと発表した。
 この潜水艦は行き続き潜航しているが、付近を随伴していると見られるType 052D駆逐艦が航行していることから中国艦と断定したという。 (2111-092207)

3・2・1・3・7 実戦を想定した海峡通過

 複数の政府関係者が3月29日、尖閣諸島周辺海域を航行する中国艦が入れ替わる際、自衛隊や米軍に動きを察知させないためレーダを切って航行していることを明らかにした。
 実戦を想定した動きを強めているといえ、こうした動きは尖閣諸島周辺の領海侵入を繰り返す海警艦と連動していることから、防衛省は警戒監視を強化している。 (2104-032908)
3・2・1・4 航空機の接近行動

3・2・1・4・1 緊急発進回数

2020年4~12月の回数

 防衛省が1月22日、2020年4~12月に航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した回数が、一昨年の同期間と比べて198回少ない544回だったと発表した。
 そのうち中国機に対するものが192回減少したが、国別でみると中国機に対するものが331回と最多で、全体の約6割を占めた。  ただ、2020年12月には中国とロシアの爆撃機計6機が合同飛行を行い、東シナ海から太平洋にまで進出するなど、長時間・長距離にわたる飛行が確認されており、防衛省の担当者は「緊急発進の回数こそ減ったものの、飛行形態が変化しており、中国軍の活動が拡大、活発化している傾向に変化はない」としている。 (2102-012205)

3・2・1・4・2 UAV を含む航空機の接近行動

8月24日: TB-001とみられる UAV 1機が飛行

 統合幕僚監部が8月25日、東シナ海で24日に中国のUAVと推定される航空機1機が飛行したのを確認したと発表した。 中国のUAVが沖縄を通過し太平洋に移動するのを同省が公表するのは初めてである。
 防衛省によると24日に飛行した機種はTB-001とみられ、自衛隊による目視確認は初めてである。 (2109-082505)

8月25日: BZK-005 UAV と Y-9情報収集機

 統合幕僚監部が8月25日、中国のBZK-005 UAVとY-9情報収集機、Y-9哨戒機の計3機が25日に、東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に飛行したと発表した。 (2109-082505)

  ┏━━━━━━━┳━━━━━━━━┳━━━━━━━━┓
  ┃       ┃   BZK-005  ┃    TB001  ┃
  ┣━━━━━━━╋━━━━━━━━╋━━━━━━━━┫
  ┃全     長┃    10m   ┃    10m   ┃
  ┃翼  端  長┃    18m   ┃    20m   ┃
  ┃  MTOW   ┃ 1,250kg/1,500kg┃ 2,800kg/3,200kg┃
  ┃上 昇 限 度┃  32,000ft  ┃   31,167ft  ┃
  ┃最 高 速 度┃   113kt   ┃ 151kt/162kt  ┃
  ┃戦闘行動半径 ┃ 250km (2,000km)┃ 280km (3,000km)┃
  ┃滞 空 能 力┃   40hours  ┃   35hours  ┃
  ┃ハードポイント┃    4point ┃    4point ┃
  ┗━━━━━━━┻━━━━━━━━┻━━━━━━━━┛

(2111-092912)

8月26日: UAV が3日連続で東シナ海や沖縄本島と宮古島間を飛行

 中国軍のUAVなどが8月24日から3日連続で東シナ海や沖縄本島と宮古島間を飛行したことが防衛省への取材で26日に分かった。 同省は中国側の意図を分析している。
 統合幕僚監部によると、24日にTB-001とみられるUAVが東シナ海を飛行し、26日にも同型機がY-9情報収集機などと東シナ海から沖縄本島と宮古島間を通って太平洋に出た後、旋回して東シナ海に戻った。
 25日は別の機種のUAVが、哨戒機などと飛行した。 (2109-082604)

3・2・1・5 示威的な演習

 中国PLA東部戦区が8月28日、東シナ海で27日に艦艇と戦闘機、戦闘爆撃機による海空の統合演習を行ったと発表した。
 具体的な地点は明らかにしていないが、日米英とオランダによる共同訓練や米軍艦が台湾海峡を通過したことなどを牽制する狙いとみられる。 (2109-082906)
3・2・2 わが国の対応

3・2・2・1 国内世論

 外務省が4月15日、外交に関する世論調査結果を公表した。 調査は3月20~23日に電話で行い、18歳以上の男女1,000人から回答を得た。
 中国との外交で特に重視すべき点を複数回答で尋ねたところ、「領海侵入などに強い姿勢で臨む」が69.3%で最も多かった。
 日米で関係強化を期待する分野については、安全保障が67.6%、経済貿易金融が51.4%、COVID-19対策が38.9%の順だった。 (2105-041603)
3・2・2・2 政府の姿勢

 中国海警艦が尖閣諸島周辺の領海侵入を繰り返していることについての立憲民主党議員の質問主意書に対し政府は、国際法上認められた無害通航にあたらないとする答弁書を決定した。 (2107-061808)
3・2・2・3 日中協議

3月29日:

 防衛省が3月29日、自衛隊と中国軍が偶発的に衝突する不測の事態を防止するための相互通報体制「海空連絡メカニズム」に基づき、日中防衛当局による第3回年次会合をTV会議で開催したと発表した。
 両国では緊急時に両防衛当局の幹部間をつなぐホットライン開設が焦点となっており、早期開設へ調整を急ぐことで一致した。
 日本側は、中国海警局の武器使用規定を明文化した海警法に対する強い懸念を伝え、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海での緊張を高めるいかなる行為にも強く反対すると述べた。
 次回会合は2021年末か2022年初頭に開催する。 (2104-032909)

3・2・3 諸外国の対応

3・2・3・1 米 国

3・2・3・1・1 米国の認識

インド太平洋軍司令官デービッドソン大将の認識

 米インド太平洋軍司令官のデービッドソン海軍大将が3月4日に米シンクタンクで講演し、インド太平洋地域で米国と同盟国が直面している最大の危険は中国による従来の抑止力に対する侵食だとの見解を示し、日本などの同盟国と連携して米軍の抑止力を強化する重要性を強調した。
 中国の急速な軍拡で地域での軍事バランスが不均衡になっていると指摘し、高度な装備を持つ統合部隊の配備などが必要だと主張した。
 また、尖閣諸島での中国海警局艦による領海侵入についても深刻に懸念しているとした。 (2104-030503)

インド太平洋軍司令官アキリーノ大将が与那国視察

 統合幕僚監部が11月11日、山崎統合幕僚長が米インド太平洋軍司令官アキリーノ海軍大将とともに南西諸島方面の視察に向かい、沖縄エリアの各基地や駐屯地などを訪問したと発表した。
 今回の日米両指揮官の視察は、日米共同部隊訪問 (JSV) という形で11月8日から9日にかけて実施し、那覇基地や与那国駐屯地、奄美駐屯地などで現状を確認し、認識を共有するとともに日米同盟による抑止力対処力の強化を図ることを再確認したという。 (2112-111503)

3・2・3・1・2 日米安全保障条約適用

オースティン国防長官が日米安全保障条約第5条の適用対象と確認

 岸防衛相が1月24日のオースティン国防長官との電話会談で、尖閣諸島が米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認した。 (2102-012402)

ブリンケ米国務長官が日米安全保障条約第5条の適用対象と確認

 ブリンケ米国務長官が2月10日に茂木外相との電話会談で、日本の領海への中国船の侵入に対する懸念を表明し、日米が連携して対応していくことを確認した。
 米国務省報道官によると、日米外相は中国が新たな海警法制定に続き、尖閣諸島周辺で自己主張を強めていることへの懸念を表明したと述べた。
 ブリンケン長官は、尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用範囲内にあることを再確認したという。 (2103-021104)

3・2・3・1・3 日米共同行動

4月10日: 東シナ海上空で日米共同防空戦闘訓練

 航空自衛隊が4月10日、九州西方の東シナ海上空で8日に日米共同の防空戦闘訓練を実施したと発表した。
 航空自衛隊からは新田原基地のF-15J 4機、築城基地のF-2 4機が参加し、米軍からは海兵隊のF-35B 2機と空軍のF-15 4機、E-3 AWACS 1機とKC-135 2機が参加した。 (2105-041003)

4月10日: 東シナ海と日本海で B-52 と共同訓練

 航空自衛隊が4月30日、空自の戦闘機15機が東シナ海と日本海で27日に米空軍のB-52 2機と共同訓練を実施したと発表した。
 空自によると訓練は編隊を組んでの飛行と、相手の航空機を迎え撃つ内容だった。
 空自からは、千歳、小松、新田原、那覇基地のF-15 13機、百里基地のF-2 2機が参加した。 (2105-043004)

5月30日: 東シナ海で米空母と共同訓練

 海上自衛隊が5月30日、護衛艦いせが26~29日に沖縄東方海域で米空母Ronald Reaganと戦術訓練をしたと発表した。 訓練には巡洋艦Shiloh、補給艦Pecosも加わったという。 Ronald Reaganは11~16日には関東南方沖で、護衛艦艦まやとも共同訓練をしていた。
 5月には東シナ海では日米仏豪による離島防衛を想定した訓練がありいせも参加した。
 海自は各国との訓練を南西諸島周辺で繰り返し、海洋進出を強める中国を牽制する狙いとみられる。 (2106-053001)

11月11日: 尖閣諸島周辺とみなせる空域で米空軍特殊作戦機と捜索救助訓練

 航空自衛隊が11月11日、宮古島と石垣島北方空域で米空軍特殊作戦機2機と9日に捜索救助訓練を実施したと発表した。
 尖閣諸島周辺とみなせる範囲での自衛隊が訓練を公表するのは異例で、尖閣への部隊展開を想定した可能性がある。
 米空軍の特殊作戦機はCV-22 OspreyとMC-130Jで、敵近くまで進入して空挺降下で兵員を投入する任務などに活用される。 空自からは那覇基地を拠点とする航空救難団のU-125A救難捜索機、UH-60J救難ヘリが参加した。
 防衛省は山崎統幕長と米インド太平洋軍司令官のアキリーノ海軍大将が8~9日に陸上自衛隊与那国駐屯地など南西諸島を訪問したことも公表した。 (2112-111106)

3・2・3・1・4 米軍の活動

SSGN Ohioと海兵隊の偵察部隊が沖縄沖で共同訓練

 米海軍のSSGN Ohioと、沖縄駐留米海兵隊の偵察部隊が2021年2月2日、沖縄沖で共同訓練を実施した。
 海兵隊員が偵察用ゴムボートから潜水艦へ安全に移乗できるかなど、より機動的な尖閣諸島などへの上陸作戦行動を可能にする試験が行なわれている。
 SSGN Ohioは、1981年に就役したOhio級SSBNの1番艦で、2006年には搭載兵装をTridentからTomahawkに換装し、SSGNとして再就役している。  セイルの後方には、特殊部隊のダイバーが潜航中に出入りするドライデッキ・シェルター(DDS)が装備されている。 (2103-020702)
【註】24基の Trident発射管のうち22基を、Tomahawk 7発入り発射管に換装しTomahawkを154発搭載すると共に、海軍特殊部隊SEALが特殊装備と共に乗り組んでいる。
 本来その行動が高度の秘であるSSGNが沖縄近海で活動していることを敢えて公表したのにはそれなりの意味があると見られる。
 Ohio級SSGNは4隻しかなく、そのうちの1隻であるGeorgiaは2020年12月下旬にペルシャ湾入りしたと報じられている。

米単独の物資補給訓練

 複数の日本政府関係者が、在日米軍が尖閣諸島での有事を想定し、周辺海域で物資補給に関する訓練を2月に実施する計画をしていたが、悪天候のため見送られたことを明らかにした。 米軍による単独訓練で、事前に日本側に通告していた。
 訓練は、尖閣諸島の有事を巡って、在日米軍が出動するケースを想定したとみられ、輸送機から弾薬などの物資を投下し、海上で回収する一連の作業を確認する予定だったという。
 米軍による尖閣諸島周辺での訓練は異例で、この海域で海警船による領海侵入などの挑発行為を繰り返す中国を強く牽制する狙いもあるとみられる。 (2104-030502)

 防衛関係者によると、尖閣諸島の近海で2月17日に、米軍が兵士を降下させる訓練を計画したが、実際には兵士は降下させなかったものの訓練の一環として物資を海上に投下したとみられることが明らかになった。
 米軍が尖閣諸島の近海で実際の作戦を想定したとみられる訓練を行うのは極めて異例で、この地域への関与を強めようとする動きだと受け止められている。
 この訓練との関連は分かっていないが、中国の戦闘機がこの日、尖閣諸島の上空に接近したため航空自衛隊の戦闘機が緊急発進していたほか、周辺にいた中国海軍の艦艇も尖閣諸島に接近する動きを見せたという。 (2105-042201)

米単独の遠征前方基地作戦訓練

 在沖縄米軍が3月15日、伊江島の米軍伊江島補助飛行場で、島嶼部に素早く部隊を展開して攻撃拠点を確保する遠征前方基地作戦の訓練の様子を公開した。
 訓練は8~20日の日程で、飛行場には15日正午ごろ、HIMARSを乗せた輸送機が着陸した。
 米軍によると、訓練公開に先立ち陸軍特殊部隊員らがボートや空挺降下で上陸し、F-35の離着陸手順も確認したという。 (2104-031504)

3・2・3・1・5 「日本の領海への侵入」発言

国防総省報道官が「日本の領海への侵入」と発言

 国防総省のカービー報道官が2月23日、尖閣諸島の主権について我々は日本を支持するとしたうえで、中国海警局警備艦に武器使用を認める法律を施行したのち日本の領海への侵入を繰り返している行動について、国際ルールを無視し続けていると非難した。
 そのうえで、危害をもたらす判断ミスにつながりかねない行動を避けるよう強く求めると強調した。 (2103-022403)

「日本の領海」発言の撤回

 米国防総省のカービー報道官が2月26日の記者会見で、尖閣諸島の主権に関する日本の立場を支持するとした23日の記者会見での自身の発言について、尖閣諸島の主権をめぐる米政府の方針に変わりはなく訂正したいと述べた。
 カービー報道官は、日米首脳による電話会談などで確認された通り、日米安全保障条約第5条に基づく、尖閣諸島を含む日本の防衛に対する米国の関与は揺るぎないと強調し、一方的な現状変更を図ろうとする全ての行動に反対するとも述べ、尖閣諸島周辺の日本の領海への侵入を繰り返す中国を牽制した。 (2103-022702)

3・2・3・2 台湾との連携

台湾艦が海自護衛艦と連携して PLA 艦を追跡

 航跡追随のTeitterアカウントAugustが5月1日に、東シナ海を航行するPLA海軍のType 054Aフリゲート艦を海上自衛隊のあぶくま型護衛艦と基隆型駆逐艦と見られる台湾艦が連携して追跡している画像が載せられた。
 現場は基隆市から125km、与那国島から132km、尖閣諸島から62kmの海域で、防衛省は4月30日に宮古島の北東150kmにPLA海軍フリゲート艦がいると発表していた。 (2106-050305)

3・2・3・3 欧州各国の動き

3・2・3・3・1 艦隊の派遣

オランダ海軍がフリゲート艦を英空母Queen Eizabeth CSGに同行

 オランダ海軍が2021年夏、フリゲート艦Evertsenを英空母Queen Eizabeth CSGに同行させインド太平洋に派遣する。
 中国の海洋進出に対抗し、欧州からインド太平洋に艦船を派遣する動きが活発化してきた。
 オランダ国防省によると、Evertsenは5月末に同国を出航してQueen Eizabethh CSGと合流し、太平洋で自衛隊など友好国と合同演習を行う。
 国防省はEvertsenの航路を明らかにしていないが、蘭紙は「航行の自由」を示すため中国が軍事拠点化を進める南シナ海を航行する見込みだと報じた。 (2105-041302)

3・2・3・3・2 日米仏豪艦隊が ARC 21

 海上自衛隊が5月14日、米仏豪と実施中の離島防衛訓練ARC 21で、東シナ海で艦艇が隊形を組んで航行する画像を公開した。
 ARC 21は11~17日の日程で11隻が参加している。 この4ヵ国が東シナ海で揃う訓練は初めてで、結束をアピールして尖閣諸島や台湾の情勢を巡り緊張関係にある中国を強く牽制する狙いとみられる。
 陸上自衛隊も14日から霧島演習場で仏陸軍、米海兵隊との演習をしており、15日には九州西方沖の艦艇から演習場に部隊を送り込む水陸両用作戦を想定した演習をする。 (2106-051406)
3・3 南シナ海

3・3・1 中国の動き

3・3・1・1 一方的な領有権主張

インドネシアに石油天然ガス掘削中止要求

 中国がインドネシア政府に対し、南シナ海南端の海域での石油天然ガス掘削中止を要求する異例の書簡を送っていたことが、複数の関係筋の話で分かった。
 インドネシアのファルハン議員によると、書簡は中国の外交官がインドネシア外務省に送付したもので、インドネシアが掘削を行っている海域は中国の領海であり、掘削を中止すべきだと主張しているという。 同海域は両国が領有権を主張している。
 問題となっているのは、南シナ海南端の海域で、インドネシアは「海洋法に関する国際連合条約」の下でインドネシアの排他的経済水域 (EEZ) に該当するとして、2017年に北ナトゥナ海と命名していた。 (2201-120105)

 インドネシアが南シナ海の排他的経済水域 (EEZ) で進める資源開発について、同海域の主権を主張する中国が中止を求めている。
 インドネシアは南シナ海の南にある自国領ナトゥナ諸島の周辺のEEZにあるトゥナ・ブロックと呼ばれる海域で、7月から海底の石油と天然ガスの状況を調査する掘削作業を進めているが、同国海上保安機構長官は22日に、当面の掘削作業を11月下旬に完了したと明らかにした。
 ただ、中国との間に南シナ海に関する領有権の争いはないとの立場のインドネシア政府は、抗議を公にして反応すれば領有権問題の存在を国際社会に認めることにつながる可能性があるため、中国に対する抗議と中止要求を公表していない。 (2201-122708)

3・3・1・2 軍備の増強

3・3・1・2・1 海南島

海南島に KJ-500 AEW&C機と Y-9 の配備

 海南島の陵水と琼海の航空基地を1月12日に撮影した衛星写真に、それぞれ8機と6機の大型航空機が映っていた。
 2020年12月3日にPlanet Labs社の衛星が撮影した陵水航空基地の写真には、KJ-500 AEW&C機が5機と、型式不明のY-9 1機が映っていた。 (2102-012104)

陵水航空基地に空母飛行甲板を模した施設

 Maxar社の商用衛星が1月27日に撮影した画像から、中国PLA海軍が海南島の陵水航空基地に空母飛行甲板を模した施設を建設したことが判明した。
 模擬飛行甲板は2020年11月から2021年1月の間に建設され、そのサイズ等から空母二番艦山東を模したものと見られる。 (2105-032404)

3・3・1・2・2 パラセル諸島

 米CSISの一部門であるAMTIが衛星画像から、ベトナムが南シナ海で実効支配している島々でインフラを整備するなどの要塞化を進めているという。 (2103-022607)
3・3・1・2・3 スプラトニー諸島

Fiery Cross礁にY-20A 輸送機

 Maxar衛星が2020年12月25日に撮影した南シナ海スプラトリー諸島Fiery Cross礁の画像に、Y-20A輸送機が映っていた。 Fiery Cross礁で同機の存在が確認されたのは初めてである。
 Y-20Aは滑走路の北東端に駐機していたが、他の航空機はいなかった。
 一方、港には海警局のType 718B警備艦が停泊していた。 海警局艦はしばしばこの海域で活動しているのが確認されている。 (2103-011302)

 米CSISの一部門であるAMTIが衛星画像から、スプラトリー諸島にあるWest LeefやSin Cowe島では対空及び沿岸防備システムの配備をすすめているという。 (2103-022607)

海上民兵の大量動員

 フィリピン政府が3月21日までに、南シナ海のスプラトリー諸島の珊瑚礁周辺に3月初旬に約220隻の中国漁船が集結していたことを確認したと発表した。
 20日夜の発表によると、パラワン島バタラザの西約175nmにある珊瑚礁周辺海域で漁船群が隊列を組んで停泊しているのが7日に確認された。
 晴天だったが操業せず夜間は白色光を点灯させていたという。
 フィリピンが同国排他的経済水域(EEZ)内としていることから、領有権の示威行為だった可能性があり、比政府は中国の海上民兵が漁船を配備したとみて動向を注視している。 (2104-032104)

 フィリピン国軍司令官のソベジャナ中将が3月21日、パラワン島西方175nmにあるフィリピンが領有権を主張している南シナ海スプラトリー諸島のWhitsun礁に集結した、民兵が乗っていると見られる中国船220隻の退去を要求した。
 Whitsun礁については中国も領有権を主張している。
 これについて中国は3月7日に舷側を互いに繋いだ船団の写真を公開し自己主張した。 (2104-032106)

 フィリピン当局が3月31日、ここ数週間Whitsun礁に停泊していた多数の中国漁船がここを離れて南シナ海スプラトリー諸島の他の海域へ移動したと発表した。
 3月7日には183隻、22日には199隻いた中国船は29日には44隻になり、海上民兵を乗せたと思われる115隻はKennan礁に停泊しているという。
 Whitsun礁とパラワンのKalayaan自治州に属するKalayaan群島には海上民兵を乗せた船が引き続き停泊しているという。
 更に45隻がThitu島、50隻がMischief、Fiery、Subi礁におり、PLA海軍艦4隻がMischief礁に停泊しているという。 (2106-040704)

海上民兵の顕彰

 習国家主席がは6月29日、南シナ海で領海主権を守るため傑出した貢献をしたとして、党内最高栄誉とされる71勲章を海上民兵として長年活動してきた王氏に授与した。
 71勲章は、党創立100年を記念する7月1日に合わせて新たに設けられ、故人を含む計29人に授与された。 (2107-062904)

Union 環礁で構造物を建設

 フィリピン軍が4月1日、南シナ海の環礁Union堆で違法に建設された構造物を発見したと明らかにした。
 フィリピン軍はこれらの構造物について、3月30日に行われた海上哨戒活動の最中に見つかったと説明したが、構造物の正確な位置や建設主体、その構造についての詳細は明かさず、構造物の存在は国際法違反だと述べるにとどめた。
 フィリピン政府によると、付近の海域にはここ数週間、中国海上民兵の船舶が集結している。 (2105-040202)

3・3・1・3 威嚇行動

3・3・1・3・1 対米威嚇

米空母 CSG に対する模擬飽和攻撃

 台湾国防部関係者が1月29日、中国軍機多数が23日と24日に台湾の防空識別圏 (ADIZ) に進入した目的は、台湾南方沖を航行中の米空母を目標とした威嚇だった可能性が高いことを明らかにした。
 H-6Kが8機も台湾のADIZ南西部に進入した例は過去にない。
 米CSGが通過したのはバシー海峡でなく、さらに南側のバリンタン海峡だったことから、あらかじめ米側も中国を警戒していたことをうかがわせる。
 23日に台湾南西部のADIZに進入したのはH-6K 8機とJ-16 4機などで、CSGに向けて多数の対艦ミサイルを一斉に発射する飽和攻撃を想定した訓練を行った可能性がある。
 米空母は艦載機を発艦させて哨戒に当たったという。 (2102-012903)

3・3・1・3・2 大規模演習

2月24~25日: 大規模爆撃演習

 中国共産党機関紙人民日報系の環球時報が、中国軍が最近、南シナ海で10機以上の爆撃機による演習を実施したと報じた。
 一方、中国軍東部戦区報道官は2月25日、24日に米駆逐艦Curtis Wilburが台湾海峡を通航したことについて断固反対すると反発し、米中の軍事的緊張はバイデン政権発足後も続いている。 (2103-022502)

3月 5日~31日:

 香港のSouth China Morning Postが3月1日、中国海軍が3月1日に南シナ海で31日までの予定で演習を開始したと報じた。
 また国営環球時報は2月28日に、演習は雷州半島の西岸5km以内で行われ、中国海洋安全局が2月26日にこの海域への航行を禁止する通告をウェブ上で行ったと報じた。 (2104-030205)

5月 2日: 空母山東 CSG

 中国PLAが5月2日、空母山東CSGが南シナ海で年次演習を行ったと発表した。
 発表は中国が、米海軍が戦略的重要地域に艦船を侵入させたと抗議した直後に行われた。
 中国国防省は4月下旬に、米国がバイデン政権になって以降、第一線の航空機や船舶を中国近海に配置していると抗議している。 (2106-050202)

3・3・1・3・3 その他軍事的示威行動

4月 8日: フィリピンの民放TV局取材班への威嚇

 フィリピンの民放TV局ABS-CBNの取材班が4月8日、南シナ海スプラトリー諸島Second Thomas Shoal礁に向かっていたところ、中国の海警艦1隻と海軍の高速攻撃艇2隻に追跡された。
 ABS-CBNによれば、取材班が乗っていた船に対し、海警局の艦船が身元を明かすよう要求したため取材班の船が向きを変えて進もうとしたところ、この艦船による追跡を受けたという。
 この報道を受けフィリピン軍は9日、調査を行っていると発表した。 (2105-041001)

7月28日: 英た空母Queen Elizabethを牽制

 中国共産党機関紙傘下の環球時報が7月28日、中国軍が南シナ海の二つの海域で演習を実施していると報じた。
 また、中国広東省の海事当局は23日と26日、同省沖合の南シナ海海域で実弾射撃訓練などを26~28日と27~29日に実施するため、指定海域での航行を禁じる通達を出していた。
 英国が派遣した空母Queen Elizabethを牽制する狙いがあるとみられる。 (2108-072810)

10月: 6ヵ国共同訓練を前に米英空母打撃群追尾のため中国艦が展開

 衛星画像の分析により10月5日、南シナ海で行われた6ヵ国による共同訓練を前に、中国海軍が米英軍の空母打撃群を追尾する目的で軍艦を展開したとみられることが判明した。
 この画像で、英空母Queen Elizabethは台湾とフィリピンの間に広がるルソン海峡の西側に位置し、米空母Cael Vinsonはスカボロー礁の北側を航行している。
 更に衛星画像には、両国のCSGを少し離れた場所から監視している国籍不明の軍艦が映っているが、これらは南シナ海に展開するPLA南海艦隊に属する可能性が高いとみられる。 (2111-100606)

3・3・1・3・4 周辺国漁民への威嚇

一方的にに禁漁期を設定

 中国が南シナ海で5月1日から独自に禁漁期を設定し、漁船の取り締まりを強化しているため領有権を争う沿岸国のフィリピンやベトナムが反発しており中国が海警局に武器使用を認めた海警法を2月に施行したこともあり、緊張の高まりが懸念される。
 新華社電によると中国海警局は4月30日、禁漁期の警備方針を宣言した。 政府は外国漁船を念頭に漁業行為の侵害は容赦なくたたくと牽制している。
 フィリピン外務省は声明で主権侵害をやめるよう求め、ベトナム外務省も「一方的な決定に反対し、断固として拒否する」と反発している。 (2106-052506)

3・3・1・3・5 周辺国公船への威嚇

比軍に物資を運んでいた船に海警局艦が放水銃を使用

 ロクシン比外相が11月18日、南シナ海でフィリピン軍に物資を運んでいた船に中国海警局艦が放水銃を使用したと非難し、中国政府に引き下がるよう強く要請した。
 ロクシン外相によれば今回の一件が起きたのは16日で、スプラトリー諸島のSecond Thomas礁(アユンギン礁)にフィリピン船が向かっていた時だという。
 外相は、中国海警艦艇3隻による進路妨害や放水銃の使用は違法だとして、幸いなことに負傷者はいなかったが、わが国の船は補給任務を中止せざるを得なかったと明らかにした。 (2112-111808)

米国の相互防衛義務を発動させると明言

 米国務省報道官が11月19日、南シナ海でフィリピンの補給船に向けて放水銃を使った中国の行動を危険で挑発的で正当化されないとし、中国政府はフィリピンの排他的経済水域でのフィリピンの合法的な活動を妨害してはならないとコメントした。
 そのうえで、米国は条約上の同盟国フィリピンを支持すると表明し、フィリピン船への武力攻撃を受けて米国の相互防衛義務を発動させる可能性があると警告した。 (2112-112006)

3・3・2 米国の行動

3・3・2・1 航行の自由作戦

2月 5日: 駆逐艦 John S. McCain

 米海軍第7艦隊が2月5日、同日に駆逐艦John S. McCainが航行の自由作戦で南シナ海パラセル諸島付近を航行したと発表した。
 同海域での作戦実施はバイデン政権発足後初めてである。
 駆逐艦John S. McCainは4日に台湾海峡を通過している。 (2103-020504)

2月17日: 駆逐艦 Russell

 米海軍第7艦隊が2月17日、駆逐艦Russellが航行の自由作戦の一環として南シナ海スプラトリー諸島付近を通航したと発表した。 (2103-021702)

7月12日: 駆逐艦 Benfold

 米第7艦隊が7月12日、駆逐艦Benfoldが南シナ海パラセル諸島付近で国際法に基づいて航行の自由作戦を実施したと発表した。
 これに対し、PLA南部戦区は、パラセル諸島は中国固有の領土だと主張したうえで挑発行為を直ちに停止せよと反発し、すべての結果は米側が負わなければならないと牽制した。 (2108-071205)

9月 8日: 駆逐艦 Benfold

 米海軍第7艦隊が8日、駆逐艦Benfoldが航行の自由作戦として南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島周辺を航行したと発表した。
 南シナ海での海洋権益を主張する中国は「安全保障上のリスクの製造者だ」などと米国を非難した。 (2110-090801)

3・3・2・2 艦船の行動

1月23日: Theodore Roosevelt CSG

 米海軍空母Theodore Rooseveltを旗艦とする空母打撃群 (CSG) が1月23日に定期的な哨戒任務のため南シナ海に入った。 南シナ海では年明けから中国が活動を活発化させており、Theodore Roosevelt CSGはこの地域における安全保障と航行の自由を維持する活動に入る。
 Theodore Roosevelt CSGは、Theodore Rooseveltと飛行隊CVW-11、巡洋艦Bunker Hill、駆逐艦RussellJohn Finnの4隻で構成されている。 (2102-012507)

2月 9日: Theodore Roosevelt CSG とNimitz CSG

 米海軍の2個空母打撃群 (CSG) が2月9日に南シナ海で合同演習を実施した。
 米海軍によるとTheodore Roosevelt CSGとNimitz CSGが、相互運用性および指揮統制能力を高めることを目的に多数の演習を実施したという。
 南シナ海で2個CSGが活動するは2020年7月以来である。 (2103-020904)

4月 4日: Theodore Roosevelt CSG

 米海軍が4月6日、空母Theodore Roosevelt CSGが4日に南シナ海に入ったと明らかにした。
 海軍によると、定例的な活動の一環で、同CSGが南シナ海を航行するのは今年2回目になる。 (2105-040602)

 米大統領府のカービー報道官は4月上旬に、Theodore Roosevelt CSGと強襲揚陸艦Makin Islandが南シナ海で行動中と述べている。 (2105-041104)

6月15日: Ronald Reagan CSG

 米海軍が6月15日、空母Ronald Reagan CSGが、定期的な任務の一環として南シナ海に入ったと発表した。
 14日に出された主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)共同声明に対し、中国は内政に甚だしく干渉していると非難している。 (2107-061504)

10月: 日英米蘭加 NZ 6ヵ国艦隊の合同訓練

 日米英など6ヵ国の艦艇が南シナ海で行っていた共同訓練が10月9日に終了した。
 10月2日と3日には沖縄南西の海空域で米英軍の空母3隻が参加する訓練も実施した。 訓練には、米軍2隻と英軍1隻の空母計3隻のほか、海上自衛隊からは護衛艦いせを含む3隻が参加したほか、オランダ、カナダ、ニュージーランドのフリゲート艦が加わった。
 訓練は4日に沖縄沖から南シナ海に移動し、台湾を取り囲むようにして行われた。
 南シナ海での訓練に米空母2隻は参加していないが、6ヵ国が足並みをそろえて中国を牽制した。
 これに対し、中国は1日以降、戦闘機など延べ150機を台湾の防空識別圏 (ADIZ) 内に進入させ、威嚇を繰り返した。
 空母3隻が集結する異例の展開に中国側が激しく反応したとの見方が広がっている。 (2111-100903)

3・3・2・3 航空機の行動

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・3・3 周辺国の対応

3・3・3・1 ASEAN

行動規範作成交渉の促進

 中国とASEANが6月7日に重慶で開いた外相会議の共同議長声明が8日に発表され、南シナ海の行動規範に関し、成文化に向けた交渉を促進する方針を確認した。
 中国とASEANは2021年末までの妥結を目指し、行動規範の策定作業を進めているが、COVID-19感染拡大で対面式の会議が開けず、交渉は遅れている。 (2107-060901)

 中国とASEANが6月7日に重慶で開いた外相会議で、中国が軍事拠点化を進める南シナ海情勢に関して意見が対立し、準備していた共同声明案を採択できず、代わりに議論を総括する共同議長の声明を会議翌日の8日に発表した。
 ASEAN外交筋は南シナ海をめぐり激論が交わされ、共同声明案の文言に柔軟になれない国があったと説明している。
 最も強硬だったのは中国と領有権を争うベトナムで、他の数ヵ国が同調したことを明らかにした。
 共同声明案をめぐっては、会議前日の6日時点で、中国が「脅しや力の行使に頼らない紛争の平和的解決」という文言の削除を求めるなど、直前まで意見の食い違いが目立っていた。 (2107-061002)

国防相会議で中国に自制を促す共同宣言

 ASEANが6月15日に国防相会議をTV会議形式で開き、一部加盟国と中国が領有権を争う南シナ海情勢に関し、名指しは避けながらも中国に自制を促す共同宣言を発表した。
 宣言は「状況が複雑化しかねない行為」を避けるよう呼び掛けた。
 南シナ海をめぐってはマレーシアが5月末に領空に中国軍機が接近したとして戦闘機を緊急発進させるなど緊張が一段と高まっている。 (2107-061509)

ASEAN 一連の外相会議

 ASEANが8月2日にTV会議形式で開く外相会議の共同声明案が29日に明らかになった。
 中国とASEANが策定中の行動規範について、序文は暫定合意に達したと記し、交渉の進展を強調している。
 一方で、地域の平和と安定を損ないかねない土地の埋め立てや深刻な出来事に対し、一部閣僚が懸念を表明と明記して懸念の表現を引き続き盛り込み、名指しは避けながらも海洋進出を強める中国を牽制している。
 行動規範をめぐってはCOVID-19感染拡大で交渉が遅れ、中国が目標として掲げた2021年中の妥結は困難との見方も広がる。 (2108-072905)

 ASEAN議長国ブルネイのエルワン第2外相が記者会見し、8月7日に終了したASEAN地域フォーラム (ARF) をはじめとする一連の外相会合で、中国とASEANが南シナ海で紛争を回避するための行動規範の策定で一定の進展があったとして生産的な会議だったと評価した。
 一方、ARF閣僚会議と4日の東アジアサミット外相会議では、出席した米中外相が南シナ海問題などで互いの対応を批判し合っており、米中の意見の隔たりの大きさが改めてあらわになった。 (2109-080707)

3・3・3・2 ベトナム

中国の海警法施行に反発

 中国が2月1日に、海警局に武器使用などを認める海警法を施行することに対し、南シナ海で中国との間に領有権問題を抱えるフィリピン、ベトナムが反発している。
 ベトナム外務省の報道官も29日に同法について、「関係国がベトナムの主権を尊重し、緊張を高める行動を行わないよう求める」とする声明を出した。 (2102-013004)

海上民兵の新編

 ベトナムが6月9日、軍事訓練を受けた海上民兵の新たな部隊を発足させるなど同国南部の沿岸で海上民兵を増強している。
 海上民兵の新たな部隊はタイ湾に面するキエンザン省で発足し、9隻の船舶と小銃などの小火器を装備している。
 海上民兵は準軍事の活動に従事するよう海軍学校などの支援で訓練を受け、周辺海域における石油や天然ガスの探査活動や漁業に携わる人々の保護、パトロールを主な任務としている。
 南シナ海の領有権を争う中国が投入する海上民兵に対抗するものだが、15日のASEAN国防相会合にあわせ、中国や周辺国の反応を探る狙いもある。 (2107-061505)

3・3・3・3 フィリピン

ドゥテルテ比大統領、国際仲裁裁判判断の価値を認めない考え

 ドゥテルテ比大統領が7月26日に議会下院で6年間の任期中最後となる施政方針演説を行い、南シナ海問題で中国の主張を全面的に否定した国際仲裁裁判の判断についてその価値を認めない考えを最後まで強調した。
 この中でドゥテルテ大統領は、南シナ海問題で中国の主張を全面的に否定した国際的な仲裁裁判の判断について、国際法の一部で妥協の余地はないと述べ、中国を牽制したが、その後は一転して「こんな拘束力のない文書で、私にどうしろというのか。 本当の意味での仲裁裁判など存在しない」などとして、判断の価値を認めない考えを任期の最後まで強調した。 (2108-072702)

中国の海警法施行に反発

 中国が2月1日に、海警局に武器使用などを認める海警法を施行することに対し、南シナ海で中国との間に領有権問題を抱えるフィリピン、ベトナムが反発している。
 ロクシン比外相は1月27日、自身のツイッターに「この法律は戦争の脅しだ。 異論がなければ、屈服したとみなされるだろう」と投稿し、すでに外交ルートで抗議していることを明かした。 (2102-013004)

Whitsun礁に海上民兵200隻以上に反発

 ロレンザーノ比国防相が、同国が領有権を主張する南シナ海の海域に中国の海上民兵を乗せたとみられる200隻以上の中国船舶が停泊している問題で、状況を監視するため同船団の上空にFA-50軽戦闘機を毎日派遣していると明らかにした。
 また、中国に対し直ちに船団を撤退させるよう再度求めた。
 中国船舶はフィリピンの排他的経済水域 (EEZ) 内にあるWhitsun礁に停泊している。 (2104-032904)

 フィリピン外相が3月21日、中国が海上民兵を乗せた大量の船をパラワン島から175nmのスプラトリー諸島Whitsun礁に終結させていると抗議した。
 フィリピン沿岸警備隊は3月7日に220隻と推定される中国の漁船が同礁付近にいると報告している。 (2105-033103)

 オースティン米国防長官が初めての海外訪問先であるイスラエルに向かう機内からフィリピンのロレンザーナ国防相と電話会談し、中国の海上民兵船団が南シナ海Whitsun礁に停泊している問題について話し合った。
 中国はこの船団について漁労中としている。 (2105-041104)

 フィリピンのロクシン外相がツイッターで5月3日、禁句の英単語を使って中国よ消えうせろと発信した。
 外相は、「中国、わが友よ。 どうすれば礼儀正しく表現できるだろうか。 さて…」と記した後、アルファベット4文字の禁句を交えて「消えうせろ」と投稿した。
 南シナ海で船の停泊を続ける中国へのいら立ちが、過激な表現で飛び出した格好だが、両国の対立をさらにエスカレートさせる恐れもある。 (2106-050303)

 フィリピン外務省が5月3日、南シナ海を哨戒中のフィリピン沿岸警備隊の警備艇に対する中国海警局艦の嫌がらせ行動に対し強く抗議した。 これまでも比外務省は数十回にわたり抗議を繰り返している。
 ロクシン比外相はドゥテルテ大統領の親中姿勢にかかわらずツイッターに、中国に対し禁句を用いた厳しい表現で「消え失せろ」と投稿した。 (2106-050304)

 フィリピン政府が5月12日、中国の民兵が乗った船287隻が領海を侵犯したと発表した。 南シナ海を担当するフィリピン当局は、外交上の行動が必要と示唆した。
 フィリピン外務省は数週間、中国船が領海内を航行していることに関し、中国に再三、抗議している。
 ドゥテルテ大統領は親中派だが、中国は南シナ海で巡視を強化し存在感をアピールしており、友好的だった両国関係に再び亀裂が生じた恐れがある。 (2106-051304)

南シナ海の警備強化

 ドゥテルテ比大統領が4月19日、南シナ海における石油や鉱物資源保全のために、艦艇を派遣する用意があると述べた。
 大統領は南シナ海海底に眠る石油や鉱物資源の採掘を始めるまでには艦艇を派遣し、領有権を主張すると表明した。
 中国政府との友好関係を維持する意向を改めて示しながらも、「中国が石油掘削を開始したら、われわれとの合意の一部なのかと中国に問うだろう。 それが合意の一部でなければ、こちらも同海域で石油を掘削する」とした。 (2105-042002)

 フィリピン政府の作業部会が4月21日、同国が南シナ海で領海と資源を守るため、警備艇や航空機を配備していると明らかにした。
 作業部会は、ドゥテルテ大統領が領海警備の継続と領海での違法漁業の取り締まり強化を指示したことを受け、領海と排他的経済水域 (EEZ) を守るため、あらゆる手段を行使しているとして、沿岸警備隊と漁業当局の船9隻、沿岸警備隊の航空機、ゴムボートなどがスプラトリー諸島周辺を含む南シナ海に配備されたという。 (2105-042203)

中国の「違法プレゼンス」に継続抗議

 フィリピン外務省が5月29日、南シナ海の自国が保有する島付近で中国が違法なプレゼンスと活動を継続していることに抗議したと表明した。
 フィリピン外務省は声明文で、Thitu(パグアサ)諸島は自国が主権と司法権を持つフィリピンの不可欠な一部だと指摘した。 ドゥテルテ大統領が2016年に就任して以来、中国に対する抗議は少なくとも84回目となる。
 フィリピン政府は28日にThitu島付近における中国の海洋資産および漁船による違法活動に外交ルートを通じて抗議し、船舶の撤収を求めた。
 Thitu島は本土から451km離れており、スプラトリー諸島でフィリピンが実効支配する8箇所の岩礁、砂州、島の中で最大となっている。
 中国は同島から25kmのSubi礁に滑走路、格納庫、SAMを備えたミニ都市を築いている。 (2106-053103)

3・3・3・4 インドネシア

「3・3・1・1 一方的な領有権主張」で記述
3・3・3・5 マレーシア

5月31日: 中国軍用輸送機16機の接近に対し緊急発進

 マレーシア空軍が、5月31日11:53に中国PLA空軍のY-20及びIl-76などの軍用輸送機16機がマレーシアのボルネオ島西サラワク州から60nmにあるマレーシアが実効支配する浅瀬近くまで接近したため、戦闘機が確認のため緊急発進したと発表した。
 PLA空軍機は高度23,000~27,000ftを290ktで南西に向け飛行していたという。 (2107-060107)

 中国軍機16機がボルネオ島沖の南シナ海上空を飛行したことについて、マレーシア外務省は中国軍機の侵犯行為を非難したのに対し、中国は2日に輸送機の飛行は中国空軍の定期訓練であり、いかなる国も標的にしていないと述べ、関連する国際法によれば、中国軍機には当該空域を飛行する自由があると主張した。
 中国とマレーシアの関係は通常は穏やかだが、同海をめぐって緊張が高まっている。 (2107-060207)

 マレーシア空軍が6月1日、5月31日に空軍のHawk 208練習/軽攻撃機が南シナ海上空で中国PLA空軍の16機に対して緊急発進したと発表した。
 両軍機は13:30頃にコタキナバル飛行情報区で遭遇した。
 マレーシアの領海上空を高度23,000ft~27,000ft、速度290ktで飛行するIl-76とY-20からなるPLAAF編隊は、11:53にサラワク防空センタがレーダで捕捉しLabuan航空基地のHawk 208に緊急発進が指令された。 (2108-060901)

9月下旬: 中国の調査船が EEZ に侵入したため中国に抗議

 マレーシア外務省が10月4日に声明で、中国の調査船が南シナ海のマレーシアの排他的経済水域(EEZ)に侵入したため、在マレーシア中国大使を呼び抗議したと発表した。
 声明によると調査船が活動していたのはボルネオ島沖のEEZ内で、外務省は詳細を明らかにしていないが地元メディアによると、中国の調査船は9月下旬にマレーシアのサバ州の海岸から140kmの地点に侵入し、中国海警局艦の護衛を受けながら、マレーシアの国営石油大手ペトロナスの石油探査船に接近したという。
 6月にも中国軍機のボルネオ島沖の領空侵入に対して抗議しており、南シナ海問題を巡って、領有権を争う中国との摩擦が続いている。 (2111-100509)

3・3・4 その他諸国の対応

3・3・4・1 オーストラリア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・3・4・2 イギリス

7月26日: Queen Elizabeth CSGが南シナ海入り

 英空母Queen Elizabeth CSGが南シナ海に入った。
 中国環球網が7月26日、衛星が25日11:57にマラッカ海峡付近でQueen Elizabeth CSGの信号をとらえたことから、南シナ海の方向に航行中である点を勘案するとCSGは既に南シナ海に達したとみられると報じた。 (2108-072601)

 国防省が7月29日、東アジアに向けて航行中の英空母Queen Elizabeth CSGが南シナ海に入ったことを確認した。
 同省報道官は時事通信に、CSGは合法的に南シナ海を航行しており、フィリピン海で同盟諸国やパートナー国と訓練を行うため、公海上の最も直近の航路を通っていると表明した。  (2108-073001)

 英Daily Expressが8月8日、中国の原子力潜水艦がインド太平洋地域を航海中の英空母Queen Elizabethを尾行したと報じた。
 英CSGが南シナ海を離れて太平洋へ向かった際に、フリゲート艦KentRichmondのCICで尾行していた2隻の商級潜水艦 (Type 092A 7,000t) をソナーで確認した。
 中国の尾行は初めてではなく、2015年に米空母Ronald Reaganが中国の潜水艦に尾行された事例がある。 (2109-081003)

3・3・4・3 フランス

2月 8日: 攻撃型原潜Emeraudeが南シナ海を巡回

 フランスのパルリ国防相が2月8日、仏海軍攻撃型原潜Emeraudeと支援艦Seineが南シナ海を巡回したと明らかにした。
 パルリ国防相はツイッタに2隻の写真を投稿し、今回の南シナ海の巡回はわが海軍が、オーストラリア、米国、日本という戦略的パートナと共に、遠く離れた海域に、長期間展開できることを証明しているとコメントしたが、同海域の大半で領有権を主張している中国の反発は必至である。 (2103-020905)

3・3・4・4 ドイツ

フリゲート艦 Bayern の派遣

 ドイツ国防省が7月29日、フリゲート艦Bayernを8月2日にインド太平洋に派遣すると発表した。 発表によるとBayernはビルヘルムスハーヘンを出港し、2月22日まで航海を続ける。
 中国の軍事拠点化が進む南シナ海を航行するほか、日米やオーストラリア、シンガポールとの合同訓練を予定している。
 中国への寄港を検討していると報じられていたが、発表文には記されていない。
 インド太平洋では合同訓練のほか、国連安保理決議に基づき、北朝鮮船の違法な瀬取りに対する監視活動を行う。
 ドイツは2020年にインド太平洋戦略を策定しており、艦船派遣には、地域の安全保障に関与する姿勢を示す狙いがある。 (2108-073002)

3・3・4・5 インド

 インド国防省が8月2日、フリゲート艦やコルベット艦4隻からなる艦隊を8月上旬から2ヵ月の日程で南シナ海に派遣すると明らかにした。
 インドと共に戦略対話の枠組みQuadを構成する日米豪との共同演習マラバールも実施する。
 このほか、シンガポールやベトナム、インドネシア、フィリピンを含む南シナ海沿岸国海軍との2ヵ国演習も実施するという。 (2109-080404)
3・3・5 わが国の対応

3・3・5・1 日米共同演習

10月25日: Carl Vinson CSG と かが が共同訓練

 米海軍のCarl Vinsonを含む第1空母打撃群 (CSG) が10月25日に南シナ海で海上自衛隊のかがと共同訓練を実施した。
 この訓練には巡洋艦Lake ChamplainShiloh、駆逐艦Stockdale、及び第2空母航空団の第9飛行隊が参加した。
 Carl Vinson CSGは初めてF-35CとCMV-22 Ospreyを搭載し、8月にサンディエゴを出港していた。 (2111-102706)

日米が対潜戦訓練と発表

 海上自衛隊が11月16日、フィリピン西方の南シナ海の公海上で、海自の潜水艦が米海軍と初めて対潜戦の訓練を実施したと発表した。
 秘匿性が高い潜水艦の動向が発表されるのは異例で、この海域の軍事拠点化を進める中国を日米両国で牽制する狙いとみられる。
 8月下旬~11月下旬に海自艦と航空機をインド太平洋方面に派遣する訓練の一環で、海自からは護衛艦や哨戒機も参加して米海軍の駆逐艦や哨戒機とともに、海自の潜水艦を敵役に見立てて探知追跡した。
 海自の潜水艦が南シナ海で実施した訓練の公表は2018年9月、2020年10月に続き3回目である。 (2112-111615)

3・3・5・2 自衛隊機の飛行

 複数の日本政府関係者が2月25日、海上自衛隊のP-3C 2機が2018年8月に南シナ海でフィリピンの排他的経済水域 (EEZ) 内にあるミスチーフ礁付近の上空を飛行したのに対し、同地域で主権を主張する中国が無断で通過したと日本に抗議していたことを明らかにした。 日本は「飛行の自由の制約」だと反論した。
 日本は中国による南シナ海での一方的な主権主張を認めず飛行の自由を貫く構えで、P-3Cは過去3年間で複数回ミスチーフ礁の近くを飛行したという。
 日中両国が南シナ海でも牽制し合う実態が判明した。 (2103-022504)
3・4 台湾海峡

3・4・1 中国軍の動き

3・4・1・1 接近行動

3・4・1・1・1 台湾 ADIZ 内での飛行

2020年:

 台湾の国防当局が1月5日、2020年に中国機が380回にわたり防空識別圏 (ADIZ) に入り過去最多だったと発表した。
 ある軍事シンクタンクは、中台間の緊張が1990年代半ば以降で最も高まっていると警告している。 (2102-010601)

1月1日: Y-8対潜哨戒機1機

 11:35に中国のY-8対潜哨戒機1機が、台湾の防空識別圏 (ADIZ) 内に進入した。 (2102-010106)

1月9日: Y-8対潜哨戒機

 中国軍のY-8対潜哨戒機が1月9日、台湾南西の防空識別圏 (ADIZ) 内を飛行した。
 中国軍機のADIZ内飛行は1月になって7日目になる。 (2102-010904)

1月23日: H-6、J-16、Y-8の計13機

 台湾国防部によると、中国軍のH-6 8機、J-16 4機、Y-8対潜哨戒機1機の計13機が、1月23日に台湾南西部の防空識別 (ADIZ) に入った。
 多数機によるADIZ進入は異例で、中国軍が威嚇、挑発を強める場合には米台接近への警告が多いことから、今回もバイデン米政権への警告を意図した可能性がある。 (2102-012302)

 台湾国防部が1月24日、Su-30、J-10、J-16などの戦闘機とY8対潜哨戒機などPLA機15機が同日に台湾南西の防空識別圏 (ADIZ) に進入したと発表した。
 1日に飛来した機数としては、23日の13機を上回り、米国務次官が台湾を訪問した昨年9月19日の19機以降で最多となった。 (2102-012404)

2月20日: 戦闘機、爆撃機など計11機

 台湾国防部によると、中国軍の戦闘機、戦闘爆撃機など計11機が2月20日、台湾南西部の防空識別圏に入った。
 進入したのは、J-10 2機、J-16 2機、JH-7 4機、H-6 2機、Y-8対潜哨戒機1機だった。  19日にもJ-16、JH-7など計9機が防空識別圏に入っていた。
 1月下旬にも2日連続して10機以上が進入しており、台湾に対する中国の軍事的圧力は強まる一方である。 (2103-022101)

3月26日: 戦闘機、爆撃機など20機

 台湾国防部によると、中国軍機計20機が26日に台湾南西部の防空識別圏に入り、爆撃機など一部は台湾南東沖まで飛行した。
 中国軍機の防空識別圏進入が常態化した2020年以降、1日の機数としては最も多い。
 20機のうち戦闘機は12機で、J-16が10機、J-10が2機だった。 爆撃機はH-6が4機、ほかにY-8対潜哨戒機やKJ-500 AEW&Cなども加わった。
 台湾の窓口機関と米国が25日にワシントンで、海上警察活動での相互協力を目的としたワーキンググループを設置する覚書に調印したことに対する反発とみられる。 (2104-032613)

 米国在台湾協会と駐米の台北経済文化代表処が米台沿岸警備隊の業務提携に関するMoUを締結した翌日の3月26日、PLA空軍機20機が台湾のADIZに進入した。
 進入したのはJ-16 10機、J-10 2機、H-6 4機、KQ-200 ASW 2機、KJ-500 AEW&C 1機、Y-8偵察機1機であった。 (2106-040701)

4月 5日: J-16 4機とJ-10 4機など

 防衛省が、4月5日にJ-16 4機とJ-10 4機及びY-8洋上哨戒機とKJ-500 AEW&C機各1機が台湾南方のADIZ内を飛行したと発表した。
 4月4日には米海軍駆逐艦Mustinが東シナ海を航行し、空母Theodore Rooseveltがマラッカ海峡を通過して南シナ海に入っている。 (2106-041404)

4月 7日: 戦闘機12機を含む15機

 台湾国防部が4月7日、戦闘機12機を含む中国軍機15機が台湾の防空識別圏 (ADIZ) に侵入したと発表した。
 中台の緊張の高まりを受け、台湾外交部長はこの日、中国による台湾侵攻の危機が高まっていると米国は見ているが、そうした事態になれば台湾は最後まで戦うと強調した。
(2105-040801)

4月12日: 戦闘機や爆撃機を含め25機

 台湾国防部が4月12日、戦闘機や爆撃機を含め25機の中国軍機が台湾の防空識別圏に進入したと発表した。
 侵入したのはJ-16 14機、J-10 4機、H-6K 4機、Y-8対潜哨戒機2機などで、これまでで最大規模の進入となる。
 米国務省が9日に台湾政府との接触制限を緩和する新たなガイドラインを発表したばかりで、中国の行動は米台の接近を牽制する狙いがあるとみられる。 (2105-041301)

 台湾国防省が4月12日、中国機25機が台湾のADIZに進入したと発表した。 25機は、J-16 14機、J-10 4機、H-6K 4機、KQ-200 ASW機2機、KJ-500 AEW&C機1機である。
 これは台湾国防省が発表を始めた2020年9月中旬以降で最大数になる。
 この3日前に米国務省が米台関係の見直しを発表している。 (2106-042103)

5月20日: H-7 2機が台湾海峡中間線越え

 台湾国防部によると、5月20日に中国PLAのJH-7など4機が台湾南西部のADIZに進入し、このうちJH-7 2機が台湾海峡中間線の南端部を越え台湾側の空域に入った。
 事実上の中台境界線となってきた海峡中間線を中国軍機が越えるのは、2020年9月以来で、米駆逐艦が台湾海峡を通過し南シナ海で「航行の自由作戦」を行ったことへの反発とみられる。 (2106-052102)

4月16日の日米首脳会談を境に大きく減少

 中国軍機による台湾の防空識別圏(ADIZ)内を飛行した数は、4月16日の日米首脳会談を境に大きく減少した。
 日経新聞の調べによると、過去100日間で台湾のADIZに侵入した中国軍機は延べ112機にとどまり、それ以前の3ヵ月間と比べて半分以下に減った。
 日米首脳会談後に出た共同声明では、52年ぶりに「台湾海峡の平和」が明記され、米国による台湾問題への関与の意思が明示されたため中国の反発も予想されたが、これまで抑制的な傾向が続いている。
 2021年1月7日から4月16日までの100日間に中国軍機が台湾のADIZに侵入した日は70日を数え、10日間のうち7日間侵入するハイペースで、侵入した軍機も延べ248機を数えた。
 一方、4月17日から直近の7月25日までの過去100日間でみると、中国軍機が侵入した日数は30%減の49日と大きく減少し、延べ機数も55%減の112機と大幅に減った。 (2108-072701)

9月 5日: 延べ19機が台湾の ADIZ 内を飛行

 台湾国防部によると、9月5日に中国軍機延べ19機が台湾の防空識別圏 (ADIZ) 内を飛行した。
 確認された中国軍機は、J-16 10機、Su-30 4機、H-6 4機、Y-8対潜哨戒機1機の計19機で、いずれも台湾の防空識別圏の南西空域に入ったという。
 2桁台の中国軍機がADIZ 内を飛行するのは8月17日以来である。 (2110-090504)

9月17日: J-16 6機、J-11 2機、Y-8対潜哨戒機1機

 台湾の国防部が9月17日、中国機10機が防空識別圏 (ADIZ) 内に入ったと発表した。
 中国機はJ-16 6機、J-11 2機、Y-8対潜哨戒機1機などで、台湾の南西空域から南東空域まで飛行し、威嚇行為を続けた。
 10機以上の中国軍機が台湾のADIZを飛行するのは、19機が侵入した9月5日以来となる。
 米英豪による新たな安全保障の協力の枠組みAUKUSが中国への対抗を念頭に創設され、米豪が16日の外務防衛の閣僚協議 (2-plus-2) でも連携強化の方針を確認し中国への対抗姿勢を再び鮮明にしたたことに強く反発したものとみられる。 (2110-091705)

9月23日: 中国軍機24機が台湾の ADIZ に進入

 台湾が23日、爆撃機2機を含む中国軍機24機が台湾の防空識別圏 (ADIZ) に進入したと発表した。 進入機数はここ3ヵ月で最多である。
 中国は同日、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、通称TPP11)への台湾加入に反対を表明していた。 (2110-092401)

10月1日~2日: 中国軍機合わせて58機が台湾 ADIZ に進入

 台湾国防部が10月1日、中国の戦闘機など25機が台湾の防空識別圏に進入したと発表した。
 進入したのはJ-16 18機、Su-30 4機、H-6 2機、対潜哨戒機1機で、国防部が公表した地図によると、中国軍機はいずれも台湾が実効支配する東沙諸島近くを飛行し、H-6 2機が東沙諸島に最接近した。 (2111-100201)

 台湾国防部が10月1日夜、中国が台湾の防空識別圏 (ADIZ) に軍用機38機を進入させたと明らかにした。
 台湾が昨年この種の活動を公表するようになって以降、中国軍機による一日の進入としては過去最多となった。
 中国軍機は2回に分けて飛来し、このうち25機は日中にADIZ南西端に進入してそのまま南西端にとどまり、他の13機は夜間にADIZの南西部に進入してそこから北東部に向かった後、引き返して中国本土に戻ったという。
 国防部によると、日中に進入した25機の内訳はJ-16 18機、Su-30 4機、H-6 2機、Y-8対潜戦機1機で、夜間に進入したのはJ-16 10機、H-6 2機、KJ-500 AEW&C 1機だった。 (2111-100203)

 台湾国防部が10月2日、中国軍の戦闘機など39機が台湾の防空識別圏に進入したと発表した。
 国防部が2020年9月に中国軍用機の進入情報を公表して以来、1日に入った機数としては最多で前日には38機が進入しており、2日連続で最多を更新した。  国防部などによると、2021年になって台湾の防空識別圏に進入した中国軍用機は550機以上になる。 (2111-100301)

 台湾国防部によると、10月1日から2日にかけて中国軍機58機が台湾の防空識別圏に進入した。
 1日には38機が進入、国防部が昨年9月に中国軍用機の進入情報を公表し始めて以来、一日に入った機数としては最多となったが、2日も戦闘機など20機が進入した。
 台湾が環太平洋連携協定(TPP)加盟申請をしたことを受け、中国が圧力を強化している可能性がある。 (2111-100204)

10月 4日: 昼間52機、夜間56機

 中国が建国72周年の10月1日から7日間、台湾海峡で軍事力を誇示している。
 PLA機の台湾ADIZ進入機数は、10月1日に38機、2日に39機、3日に16機であったが、4日には台湾が2020年9月中旬にの台湾接近を公表を初めて以来最大機数で、昼間52機、夜間56機であった。
 台湾国防部によるとJ-16 38機、Su-30 2機、KQ-200 ASW機2機、KJ-500 2機、H-6 12機など合わせて56機であつた。 (2112-101307)

10月1日~5日: 中国軍機合わせて150機

 台湾が、10月5日までの5日間に中国軍機150機が防空識別圏に進入したと発表した。
 台湾国防部によると、中国軍機による防空識別圏への進入は4日に56機を数えるなど、10月に入って5日までの5日間であわせて150機であった。
 2021年は既に600機以上が確認されていて、2020年の380機を上回っている。 (2111-100601)

10月26日: ヘリが初めて台湾 ADIZ に進入

 台湾国防部が10月26日、7機の軍用機が台湾の防空識別圏 (ADIZ) 内を飛行したと発表した。
 ADIZ内を飛行したのはY-8 C3 1機、Y-8 EW 1機、Y-8偵察機 (Y-8 RECCE) 1機、J-16 2機の固定翼機5機と、Mi-17 1機、WZ-10攻撃ヘリ1機のヘリで、このうちY-8 C3とMi-17、WZ-10の3機は、台湾ADIZ内を初めて飛行した。 (2111-102605)

 台湾国防部が10月26日、PLAのヘリが初めて台湾のADIZに進入したと発表した。
 進入したのはMi-17輸送ヘリ1機とZ-10 (WZ-10) 攻撃ヘリ1機で、指揮統制型のY-8T 1機、偵察型のY-8H 1機、Y-8GまたはY-8CBと見られる電子戦機1機、及びJ-16 2機が同行した。 (2201-111003)

11月28日: Y-20U 給油機を含む27機

 台湾国防部が11月28日、中国軍機27機が28日19:30頃に台湾の防空識別圏内に入ったと発表した。
 進入したのはJ-16 8機、J-10 6機、J-11 4機、H-6 5機、Y-6電子戦機1機、KJ-500 AEW&C機2機及びY-20U空中給油機1機であった。
 Y-20UはY-20輸送機の空中給油型で、3ヶ所の給油点を持ち60tの燃料を搭載できる。
 Y-20Uが台湾のADIZ内に進入したのは初めてである。 (2112-112803)

11月に台湾 ADIZ に進入した中国軍機は延べ159機

 台湾の防空識別圏 (ADIZ) に進入した中国軍機の数が、11月は延べ159機となり、3ヵ月連続で100機を超えたことが、AFPの集計で明らかになった。
 台湾国防部は2020年9月に中国軍機によるADIZ進入数の公表を開始したが、これに基づくAFPの集計によると、2021年10月には過去最多の196機が進入で、うち149機は中国の建国記念日を含む4日間に集中していた。
 159機だった11月は10月よりは減ったものの、ほぼ毎日進入があった。 台湾軍は11月に進入がなかった日は3日のみだったとしている。 (2201-120107)

3・4・1・1・2 艦船の海峡航行

9月24~25日、フリゲート艦が台湾東岸を航行

 台湾が環太平洋連携協定 (TPP) への加盟を申請した9月22日の翌日に中国の作戦機24機が台湾の防空識別圏 (ADIZ) に侵入したが、更にその翌日24日の03:00に中国のフリゲート艦が花蓮県の東40nmを南に向けて航行しているのが発見された。
 またその翌日の03:00には別のフリゲート艦が台東県緑島の東116nmを航行しているのが確認されたが、同艦は午前中に当該海域を離れた。 (2110-092405)

3・4・1・2 対岸基地の増強

厦門南西にヘリ基地を新設

 民間衛星の撮影した画像から中国PLA陸軍が台湾の対岸にヘリ基地を建設し既にヘリの運用を行っていることが判明している。
 基地が新設されているのは厦門の南西54kmのYuanquian市で、その南西1.6kmには基地の支援用と思われる石油備蓄基地が作られている。
 この基地には600mの滑走路、10ヶ所のヘリパッド、24棟の格納庫が既に作られ、2020年12月31費の衛星画像ではMi-17/171 8機とZ-10攻撃ヘリ12機を見ることが出来る。 (2107-052603)

福建省にある空軍基地3ヵ所を増強

 香港のSouth Cina Morning Post紙が米企業の撮影した衛星写真を分析した結果として10月16日、中国が台湾対岸の福建省にある空軍基地3ヵ所を増強していると報じた。
 同紙によると、3ヵか所の空軍基地は台北から西に200~400kmの台湾海峡沿岸にあり、2020年初めから増強作業が始まったという。
 9月末から10月2日に撮影された衛星写真によると、滑走路の拡張や格納庫の防弾強化やSAMの配備などが確認されており、台湾有事の際に重要となる空軍能力の強化に向け、関連施設の整備も着実に進めているとみられる。 (2111-101604)

閉港した民間空港を航空基地に転用

 中国が台湾海峡に面した汕頭市にある、閉港した民間空港を軍の航空基地に転用していることが、Planet Labの衛星画像から明らかになった。
 汕頭外砂空港は近くに掲陽潮汕空港が開港したことから2011年に閉港していたが、2020年10月にはKQ-200対潜機が2機がエプロンで確認され、2021年5月7日には同型機2機が地上滑走しているのが確認されていた。
 このほかに2020年中頃に撮影した低解像度の民間衛星画像には1~3機の機影が写っていた。
 Planet Labは9月2日にSu-27/30またはJ-11/16 6機が北側のエプロンで確認されたとしているが、台湾国防省は9月5日と6日にそれぞれ2機と4機のSu-30が汕頭市方向から台湾のADIZ内に飛来したと発表している。 (2111-102809)

東部戦区、老朽化した J-7 を J-10C に換装

 中国中央放送 (CCTV) が21日、台湾海峡にJ-10Cを追加配備したと報じた。
 報道によると、PLA東部戦区が老朽化したJ-7 9機を退役させ、その代替えとしてJ-10Cを配備した。  東部戦区がJ-10Cを追加で配備したという報道は、台湾がF-16Vを配備した直後に出てきた。 (2112-112204)
【註】J-10CはJ-10Bのエンジンをロシア製のSaturn AL-31FNターボファンエンジンに代えて国産で推力方向可変 (TV) 方式のWS-10Bにしたもので、既に量産段階にある。

3・4・1・3 台湾周辺海域での行動

4月 5日: 空母遼寧を含む艦隊

 中国海軍報道官が4月5日、空母遼寧を含む艦隊が台湾周辺海域で訓練を行ったと発表した。
 報道官は「年度活動計画に基づく定例的な訓練」としているが、台湾の蔡政権を牽制する狙いもあるとみられる。 (2105-040505)

7月14日: 台湾東海岸沖に Type 815 情報収集艦

 7月14日に台湾東海岸沖でPLA海軍のType 815情報収集艦煙台と米海軍駆逐艦Pinckneyが遊弋している。
 PLAの情報収集艦は13日に花蓮県沖合40nmを北から南へ航行し、14日07:00には台東県沖合43nmに達した。
 Type 815情報収集艦の台湾東海岸沖航行は近年頻繁に行われている。
 一方駆逐艦Pinckneyは14日04:00にバシー海峡を抜けて太平洋に入り、05:00に蘭嶼沖合44nmに達した。 (2108-071402)

8月30日: PLAN の戦闘艦が与那国島と台湾宜蘭県の間に丸1日

 産経新聞が日本政府当局者の話として8月30日、PLA海軍 (PLAN) の戦闘艦が与那国島と台湾宜蘭県の間に丸1日にわたりとどまっていると報じた。
 PLANは浙江省を拠点とする東海艦隊から2隻の戦闘艦を尖閣諸島へ常時派遣している。 (2109-083102)

3・4・1・4 演習の実施

4月14日: 台湾周辺海域で戦闘訓練

 中国が4月14日、台湾周辺での軍の活動を戦闘訓練と表現した。
 国務院台湾事務弁公室報道官は、台湾当局と分離主義者は外部勢力と共謀し、挑発を企て地域の平和と安定を脅かそうとしていると非難し、人民解放軍の台湾海峡での演習は、この地域の現状に対応し国家主権を守るために必要な行動であり、外部勢力の干渉と台湾の独立主義者による挑発への厳粛な対応であると述べた。
 また、人民解放軍の演習と訓練は、台湾独立を阻止し、台湾と米国の共謀は単なる憶測ではないというシグナルを送っていると強調した。
 台湾には14日に米国からドッド前上院議員のほか、元国務副長官のアーミテージ氏とスタインバーグ氏が到着する。 (2105-041407)

 中国軍が4月15日から台湾周辺海域で6日間の実弾射撃演習を実施している。
 台湾の邱国防部長は同日、台北市内で報道陣の取材に応じて国軍は中国軍のいかなる動きも把握していると述べ、中国の言動に影響を受けないよう国民に呼び掛けた。
 米代表団の台湾訪問に対する挑発とみられる。 (2105-041504)

8月17日: プラタス諸島(東沙諸島)付近とバシー海峡周辺

 中国PLA東部戦区が声明で、台湾付近の空域および海域で8月17日に闘艦艇、対潜哨戒機、戦闘機を派遣し演習を実施したと発表した。
 正確な演習場所は明らかにしていないが、大部分は南シナ海で台湾が実効支配するプラタス諸島(東沙諸島)付近とバシー海峡周辺で行われている。
 中国による軍事活動の引き金は不明だが、米国は今月に台湾に対し自走榴弾砲の売却を承認している。 (2109-081702)

9月18日: 台湾南西沖で海軍と空軍による演習

 中国PLA東部戦区が9月18日、台湾の南西沖で海軍と空軍による演習を17日に実施したと発表した。
 具体的な演習の内容や規模は明らかにされていないが、同戦区は海空軍の統合作戦能力の向上が目的としたうえで、台湾海峡の情勢に応じて演習を常態化するとしている。
 中国軍関係者は東部戦区が演習を発表したことについて、米軍の動きに応じたものだと話している。 (2110-091905)

10月11日: 福建省の島で上陸演習と発表

 中国PLAが11日、福建省にある島で上陸演習を行ったことを明らかにした。
 PLAの公式新聞である解放軍報はウェイボで、ここ数日に福建省で演習を実施したと発表し、工兵や特殊部隊などが数派に分かれて上陸したのち、何隻かの小型ボートに乗った兵士が海岸に強襲上陸し、防御側の有刺鉄線を突破して砂地に塹壕を掘る映像を公開した。
 台湾はこの演習について、中国側の脅しだと非難。攻撃を受けても領土を守り抜くと強調した。 (2111-101201)

3・4・1・5 台湾への侵攻能力

米中経済安全保障調査委員会の見解

 米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」が11月17日、中国の軍事経済情勢をめぐる年次報告書を発表し、中国軍が台湾侵攻の初期能力を確保した可能性を示し、米通常戦力による抑止が困難と警告した。
 また、中国が限定的な核兵器先制使用という新戦略を進めていく可能性にも言及した。
 報告書は台湾情勢をめぐり、人民解放軍が台湾に対する空中及び海上の封鎖、サイバ攻撃、ミサイル攻撃に必要な能力をすでに獲得したと分析している。
 特に侵攻の初期段階で25,000名以上の部隊を上陸させる能力、民間船を軍事作戦に動員する能力があるとの見方を示し、軍事侵攻は中国指導層に依然として高リスクの選択肢としつつ、米国の通常戦力だけで台湾への攻撃を思いとどまらせることが不確かになってきたとした。 (2112-111801)

3・4・2 台湾軍の動き

3・4・2・1 中国軍機接近への対応

中国軍機の ADIZ 侵入への緊急発進を中止

 台湾国防部の張副部長が立法院で3月29日、中国軍機が台湾の防空識別圏への侵入を繰り返している問題について、毎回、台湾側の空軍機を緊急発進させる措置を中止したことを明らかにした。
 同副部長は消耗戦の問題を考えていると述べ、時間と資源の無駄を減らし、代わりに陸上のSAM部隊が中国軍機を追跡しているという。 (2104-032907)

3・4・2・2 台湾軍の情勢見積もり

PLA に港や空港を封鎖する能力

 台湾国防部が隔年に発表する報告書で11月9日、PLAは台湾の主要な港や空港を封鎖する能力があると指摘し、中国がもたらす重大な軍事的脅威への警戒を示した。
 国防部はまた、中国がいわゆるグレーゾーン作戦を開始したとし、2020年9月から2021年8月末までに南西部の防空識別圏に中国の戦闘機が554回侵入したと指摘した。
 ロイタは2020年、中国はこの戦略で台湾を疲弊させて抑え込むことを目指しているとの軍事専門家の見方を報じている。 (2112-110905)

中国軍が演習名目で艦隊集結し包囲すると侵攻見積もり

 台湾国防部が、中国軍による侵攻の可能性についての分析結果を立法院に報告した。
 それによると、中国軍はまず演習の名目で台湾の対岸である中国南東の沿海部に部隊を展開し西太平洋にも艦隊を集結させて台湾を包囲する形をとり、そのうえで演習からミサイル攻撃や上陸作戦に転じ、最短の時間と最小の損害で台湾を制圧しようとする可能性があると分析している。
 その一方で、中国軍は現時点で多数の上陸部隊を一度に運ぶ装備や、前線に補給する能力が不十分だとしているほか、米軍や自衛隊に動きを監視され、インドやベトナムなどとも係争を抱える中、台湾に対する作戦に全力を集中しにくい環境にあると指摘している。 (2201-121405)

3・4・3 米軍の動き

3・4・3・1 艦船の海峡通過

2月 4日: 駆逐艦 John S. McCain

 米海軍第7艦隊などによると、駆逐艦John S. McCainが2月4日に台湾海峡を北から南に航行した。
 バイデン政権発足後、米軍艦艇が台湾海峡を通過したのは初めてで、バイデン政権は今回、台湾への軍事的圧力を強める中国に、今後も台湾に関与し続けていく姿勢を示した。
(2103-020402)

2月24日: 駆逐艦 Curtis Wilbur

 米海軍第7艦隊が2月24日、駆逐艦Curtis Wilburが台湾海峡を通航したと発表した。
 第7艦隊は声明で、台湾海峡の通航は、自由で開かれたインド太平洋に対する米国の関与を示すものだとしたうえで、米軍は国際法が認める限りいかなる場所でも飛行、航行するとした。 (2103-022501)

3月10日: 駆逐艦 John Finn

 米海軍第7艦隊が3月10日、駆逐艦John Finnが台湾海峡を通航したと発表した。
 同艦隊は声明で、台湾海峡の通航は、自由で開かれたインド太平洋に対する米国の関与を示すものだと強調した。
 中国軍東部戦区報道官は11日の談話で、米艦の行為は台湾海峡の平和と安定を脅かすもので断固とした反対を表明すると反発した。 (2104-031101)

4月 7日: 駆逐艦 John S. McCain

 米海軍が、駆逐艦John S. McCainが4月7日に恒例の台湾海峡通過を行ったと発表した。
 中国が同艦を追跡していることに対し米国は、台湾海峡の平和と安定を危険にさらしているとして非難した。 (2105-040801)

5月18日: 駆逐艦 Curtis Wilbur

 台湾国防部が5月19日、米駆逐艦1隻が18日に台湾海峡を北から南に通過したと明らかにした。
 米海軍第7艦隊も声明を出し、通過したのは駆逐艦Curtis Wilburで、自由で開かれたインド太平洋への米国の関与を示すものだとした。
 米海軍艦が台湾海峡を通過したのはバイデン政権下で5回目となった。 (2106-051902)

 米海軍第7艦隊が5月18日、駆逐艦Curtis Wilburが同日に台湾海峡を通過したと発表した。
 これに対し、中国軍の東部戦区報道官は同日談話を発表し、米艦の航行過程はすべて監視しており、あらゆる脅威や挑発に対応できるとした。 (2106-051904)

6月23日: 駆逐艦 Curtis Wilbur

 米海軍第7艦隊が、駆逐艦Curtis Wilburが自由で開かれたインド太平洋地域を守る決意を示すため台湾海峡を南から北に向かって通過したと発表した。
 米海軍駆逐艦が台湾海峡を航行したのは、バイデン大統領が就任して以来、これで6回目である。 (2107-062302)

7月23日: 駆逐艦 Benfold

 米海軍第7艦隊が7月28日、駆逐艦Benfoldが同日に国際法に基づいて台湾海峡を通航したと発表した。 (2108-072902)

8月28日: 駆逐艦 Kidd と沿岸警備隊警備艦 MUNRO

 台湾国防部が8月28日、米海軍駆逐艦と沿岸警備隊警備艦各1隻が台湾海峡を航行したと発表した。 駆逐艦は南から北に、警備艦は北から南に向かって進んだという。
 米艦の台湾海峡通過はバイデン政権下で8度目となるが、沿岸警備隊の警備艦と合わせて2隻が同時に通過したのは今回が初めてである。  米第7艦隊が27日発表した声明によれば、台湾海峡を通ったのは駆逐艦Kiddと沿岸警備隊警備艦MUNROであった。 (2109-082802)

9月18日: 駆逐艦 Barry

 台湾国防部が9月18日、米駆逐艦が台湾海峡を北から南に通過したと発表した。 米海軍第7艦隊の声明によると、17日に台湾海峡を通過したのは駆逐艦Barryである。
 米艦の台湾海峡通過は今年9度目になる。 米艦は2021年2月に2度、3~8月にはそれぞれ1度台湾海峡を航行していた。 (2110-091802)

11月22日: 駆逐艦 Milius

 米海軍第7艦隊が11月22日、駆逐艦Miliusが国際法に基づき、台湾海峡を通航したと発表した。
 同艦隊は声明で、自由で開かれたインド太平洋に対する米国の関与を示したと強調した。 (2112-112302)

3・4・3・2 航空機の近傍飛行

1月31日: 偵察機1機

 台湾国防部が1月31日、J-10、J-11などの中国PLA機延べ7機と米軍の偵察機1機が同日に、台湾南西の防空識別圏 (ADIZ) に進入したと発表した。
 米偵察機の飛行経路は公表されていないが、同部が米軍機の活動を報告するのは台湾周辺の軍事動向を公式サイトの専用ページで公表し始めた2020年9月17日以来初めてである。 (2103-020105)

6月 3日: RC-135U が中国 ADIZ 内を飛行

 嘉手納基地を離陸した米空軍のRC-135U偵察機が6月3日、東進した後に東シナ海の中国ADIZ内を福建省沖合まで南下し、反転して同じ経路で帰投した。
 その前日にも米海軍のP-8A 1機が台湾海峡の中間線に沿って飛行している。
 更に同日には米海兵隊のV-22 2機と特殊作戦軍のMC-130 2機がバシー海峡で確認されており、海峡の南西ではRC-130 2機とKC-135 1機、P-8A 1機も確認されている。 (2107-060302)

3・4・3・3 台湾海峡での米中相対戦闘力

ウォーゲームで米国が劣勢

 米NBC放送が元国防当局者を引用して3月27日、台湾海峡で中国が軍事行動に出る場合を想定したウォーゲームで米国が劣勢になることが明らかになったと報じた。
 米国が台湾を防御できるのかについて疑問が提起された。
 それによると、台湾空軍は数分間で全滅し、太平洋地域の米空軍基地が攻撃を受け、米国の戦闘艦と戦闘機は中国の長距離ミサイルに阻止され、更に米国が全力で介入したシミュレーションでも、侵攻を退けることはできなかったという。 (2104-032905)

3・4・3・4 台湾防衛の意思表示

バイデン米大統領が「台湾有事なら防衛にかけつける」発言

 バイデン米大統領がCNN TVの生放送番組で10月21日、台湾が中国に侵攻されたら米国は防衛のためにかけつけるのかと問われ「そうする約束になっている」と発言した。
 歴代の米政権は台湾有事の対応については「あいまい戦略」をとってきたため、今回の発言は踏み込んだものだが、米メディアによると大統領府関係者は「従来の政策からの変更したものではない」と説明した。
 これに対して中国政府は早速反発している。 (2111-102204)

米国務長官、中国が台湾攻撃なら同盟国と共に対応

 ブリンケン米国務長官が11月1日、中国が軍事力を利用して台湾の現状を変えようとした場合、米国は同盟国と共に対応すると述べた。
 ただ具体的にどのように対応するかは明らかにしなかった。
 長官は同時に、現状の変更に向けた一方的な軍事力の行使は平和と安全に対する重大な脅威であると考え、そうした事態が発生すれば行動を起こす多くの国が存在していると述べ、この地域の平和と安定の維持に決意を示しているのは米国だけでないとの考えを示した。 (2112-111103)

米国防長官、台湾の自衛能力向上と維持を支援

 オースティン米国防長官がカリフォルニア州での講演で12月4日、中国軍機による台湾の防空識別圏侵入など活発化する軍事活動について、台湾有事を念頭にリハーサルのように見えると述べ、警戒感を示した。
 質疑応答で中国が台湾に侵攻した場合の対応を問われると、オースティン長官は「台湾が自衛能力を向上、維持するのを支援する」と述べるにとどめた。
 米国が軍事介入するかどうかの言及は避け、歴代米政権が踏襲する一つの中国政策を維持する方針を改めて示した。 (2201-120502)

3・4・4 その他諸国の動き

3・4・4・1 台湾防衛の意思表示

オーストラリア

 ダットン豪国防相が11月14日までにAustralian紙のインタビューに応じ、台湾有事の際に米国を支援する姿勢を明確にした。
 ダットン国防相は台湾を巡る有事の際に「もし米国が行動を起こすことを選択したら、我々が米国を支援しないことは考えられない」と述べた。
 また台湾に対する中国の意図は明確だとし「高い水準で準備を行い軍事力による強い抑止力を持つべきだ」と強調した。
 中国に対する豪州の強硬姿勢を改めて示した形で、外国による台湾問題への介入に警戒を強める中国からの反発は必至だ。 (2112-111406)

3・4・4・2 台湾海峡の通過

3・4・4・2・1 艦 船

9月27日: 英海軍フリゲート艦 Richmond

 英海軍がツイッターで、Queen Elizabeth CSG所属のフリゲート艦Richmondが9月27日に台湾海峡を通過しベトナムに向かったと発表した。
 台湾海峡付近で軍事的緊張が高まっていることを受け、中国軍の動きを牽制する狙いとみられる。
 Queen Elizabethは7月からインド太平洋海域に入り、最近まで朝鮮半島付近に展開しているが、Richmondは数日前に艦隊を離れていた。
 英メディアによると、英海軍は2019年に測量艦を台湾海峡を通過させたが、戦闘艦の通過が明らかになるのは初めてである。 (2110-092703)

10月12日: 仏情報収集艦 Dupuy de Lom

 パルリ仏国防相が、超党派議員団の一員として台湾を訪問したキャディック上院議員の質問に答えて10月12日、フランス海軍が情報収集艦Dupuy de Lom 3,600tを台湾海峡へ派遣したことを認めた。
 同相は同艦の航行時期について明らかにしていないが、Navy Newsは同艦が8月にグアムに寄港し、10月1日に日本を出港したと報じている。 (2111-101303)

10月中旬: カナダ海軍のフリゲート艦

 ロイタ通信が10月17日、米軍の駆逐艦とカナダ軍のフリゲート艦が先週、共同で台湾海峡を通過したと報じた。
 中国が台湾防空識別圏に多数の軍用機を進入させたことで緊張が高まる中、米カナダ両軍による共同作戦となった。
 中国軍東部戦区の報道官は、台湾海峡の平和と安定に深刻な危害を与えると非難する談話を発表して反発し、一切の挑発に断固反撃すると強調した。 (2111-101703)

3・4・4・2・2 航空機

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・5 黄 海

3・5・1 離於島

中国の警備船が4年間で25回出現

 韓国与党共に民主党の魚議員が海洋警察庁の国政監査資料として、2017年から2021年8月までに黄海の岩礁で韓国が領有権を主張している離於島の海上には中国の警備船が25回出現したことを明らかにした。
 中国の海洋調査船は韓国との境界未確定水域に2017年に12回出現したが、2020年には31回現れた。 (2111-101202)

3・5・2 東経124゚線

中国艦の東経124゚線越え

 中国PLA海軍艦が2020年12月に黄海で活動していたが、東経124゚を越えて東側に10kmほど進入し、白翎島から40kmほど離れた海域まで接近した。
 これに対し韓国海軍は直ちに北方限界線 (NLL) を監視していた戦闘艦1隻を現場に急派し、中国警備艦の監視と牽制した。
 匿名を求めた政府消息筋は1月26日、中国艦は最近、東経124゚に沿って航海し、ほぼ毎日この線を越えてきて、白翎島のほうへ向かっているとし、2020年12月には韓国側に深々と入ってきたと話した。
 東経124゚は中国が自分たちの海上作戦区域境界線だとし、一方的に設定した線である。 (2102-012703)

 黄海には韓国と中国が合意できていない境界線が互いに交錯している。 特に両国は排他的経済水域 (EEZ) をまだ確定できていない。
 黄海では両国がそれぞれEEZとして主張した海域が相当部分重なっているため、境界線に対する条約を結ばなければならないが、2001年重複海域に暫定措置水域を設定した後、まだ合意に達することができていない状態になっている。 (2102-012704)

情報収集艦が韓国側に進入

 中国PLA海軍の情報収集艦が2月9日、黄海の東経124゚を越え韓国側に進入した。
 韓国海軍によると、9日午前、中国PLA北部戦区海軍の東調級情報収集艦が小黒山島付近で東経124゚を越えたため、韓国海軍はP-3Cを派遣して中国艦艇の動向を監視した。 中国情報収集艦は午後、西側に戻ったが、韓国政府筋によると10日にもこの艦艇が東経123゚線を行き来しながら活動しているという。
 東調級は全長130m、満載排水量6,000t、速力20ktの情報収集艦で、37mm砲1門と25mm砲2門で武装し、多様なアンテナを搭載して電波情報を収集して、BMを捕捉し追跡する機能もある。
 この海域は国際法上公海だが、中国は東経124゚線を自国の海上作戦区域境界線として一方的に宣言した状態になっている。
 韓国と中国はここを互いに自国の排他的経済水域 (EEZ) に入れようとしている。 (2103-021103)

3・6 欧 州

3・6・1 モルドバ

親欧のサンドゥ大統領がウクライナを訪問

 親欧政策を重視するモルドバのサンドゥ大統領が1月12日に隣国ウクライナを訪れてゼレンスキー大統領と初めて会談し、EUへの加盟を共に目指すなど、ロシアの影響力を受けない形で協力を深めていくことを確認した。
 2020年12月に就任したサンドゥ大統領は、プーチン露大統領と関係を築いてきた前任者と異なり、欧州寄りの政策を重視していて、ロシア系住民が多い東部の沿ドニエストル地方に駐留するロシア軍部隊の撤退も要求している。 (2102-011303)

親露派多数の議会を解散

 モルドバのサンドゥ大統領が4月28日に議会を解散し、7月11日に議会選を実施するとの大統領令に署名した。
 親欧米派のサンドゥ大統領は親露派が多数派を占める議会の解散により、政治の主導権を握りたい考えである。
 モルドバは2020年11月の大統領選でサンドゥ氏が親露派のドドン前大統領に勝利したが、議会は親露派の社会党が最大会派のままで、首相の選出や議会選の実施時期を巡り大統領との激しい対立が続いていた。 (2105-042904)

総選挙、親 EU の与党が勝利

 東欧モルドバで7月11日に総選挙が行われた。 2020年11月の大統領選で親露派のドドン前大統領を破った親EUのサンドゥ現大統領が4月に親EU派の基盤強化を狙い議会を解散していた。
 同国東部の自称独立国家沿ドニエストル共和国からロシア軍撤収を要求するサンドゥ大統領とロシアの関係は緊迫している。 (2108-071101)

 東欧のモルドバで7月11日行われた総選挙で、中央選管の12日までの集計結果によると、親EUのサンドゥ大統領与党「行動と連帯(PAS)」が得票率52%超で過半数を獲得し勝利した。
 親露派政党連合の得票率は27%にとどまった。
 サンドゥ大統領は昨年11月の大統領選で親露派のドドン大統領を破り当選し、今年4月に権力基盤の強化を狙い議会を解散していた。 (2108-071203)

UNIFIL として初めて陸軍をレバノンに派遣

 モルドバ国防省が11月3日、2022年8月に国連がレバノンに派遣しているUNIFILに初めて同国陸軍を派遣すると発表した。
 モルドバは9月30日に南スーダンへ10名を派遣したほか、今までに中央アフリカやコソボに専門家や指揮所要員を派遣したことはあるが、部隊の派遣は初めてである。 (2201-111708)

3・6・2 旧ユーゴスラビア

3・6・2・1 コソボとセルビア

3・6・2・1・1 コソボ

議会選挙で対セルビア強硬政党が勝利

 コソボで2月14日に議会選挙が行われ、反汚職などを訴えた新興左派野党「自己決定運動」が第1党の座を確実にした。
 自己決定運動はセルビアへの強硬姿勢で知られ、政権を握れば関係改善に向けた交渉が難航する可能性がある。
 セルビアの自治州だったコソボは2008年にセルビアからの独立を宣言したが、セルビアは認めず対立が続いている。 (2103-021504)

米国がコソボ治安維持部隊 (KSF) 装甲車両55両を引渡し

 米国がコソボ治安維持部隊 (KSF) に供与した装甲車両55両が引き渡された。
 米国は3,400名からなるKSFを強力に支援してきたが、KSFは2年以上前にコソボ陸軍に編入されており、今回が最後の装備供与になる。 (2109-083005)

3・6・2・1・2 セルビア

ロシアと演習

 米陸軍とNATO軍が欧州一帯で大規模演習DEFENDER-Europe 2021を繰り広げているのに対抗して、ロシアとセルビアがベオグラードに近い演習場で5月20日に演習を開始した。
 この演習は両国の特殊部隊を含む200名程度が参加し25日まで続けられる。
 一方DEFENDER-Europe 2021はセルビア周辺国の殆ども参加して28,000名規模で実施されている。 (2106-052007)
【註】セルビアのブリン国防相は2019年3月に、欧州最後のNATO非加盟国になっても、セルビアはNATOに加盟はしないという声明を出している。

「セルビア統一の日」を制定

 セルビアが9月15日に新たな祝日「セルビア統一の日」を制定しバルカン半島のセルビア人がセルビア国旗の元に団結するよう呼びかけたことで、バルカン半島には再び緊張が高まっている。
 この日、ポピュリストであるヴチッチ大統領はベオグラードで軍の装備を閲兵した。 (2110-091512)

3・6・2・1・3 コソボとセルビアの国境で緊張

車両登録を巡る緊張

 旧セルビア自治州の一つだったコソボは2008年に一方的に独立を宣言し、EUおよび米英など国際社会はコソボの独立を承認したが、セルビアは独立を認めなかった。
 ただ、両国は2014年にEUの仲介でそれぞれの国で登録したナンバープレートで相手国領内を通行できる通行の自由に合意したが、セルビアは合意以降もコソボから自国領内に入る車両からコソボのナンバープレートを取り外していた。
 これに対してコソボは9月20日、相互主義に基づく措置として、セルビアからの車両のナンバープレートをコソボ発行の仮ナンバーに付け替える法令を発布し、国境検問所に警官隊を派遣して警備を強化した。
 一方のセルビアも、数百人のセルビア人がトラックなどを検問所に乗り付けて道路を封鎖するなど、ナンバープレートを巡って両国間の緊張が高まっている。 (2110-092102)

 車両ナンバープレートを巡るコソボとセルビア両国の関係は9月21日、国境を通過する道路が閉鎖されるに至って緊張の度合いを増している。
 両国は2014年にEUの仲介で相互通行の自由に合意し、それぞれの国で登録したナンバープレートで相手国の領内を通行できるはずだったが、セルビアはコソボから自国領内に入る車両から、コソボ登録のナンバープレートを取り外していた。
 これに対しコソボは9月20日に両国間合意は2021年9月15日に失効したとして、国境検問所に警備隊を派遣してコソボ発行の仮ナンバーに付け替えない限りセルビアからの車両の入国を禁止するという対抗措置を取った。
 20日にはコソボ警備隊が、セルビア人グループに催涙弾を発射するなど一時緊張が高まった。 (2110-092204)

国境地帯に部隊が展開

 車両のナンバープレートを巡ってコソボとの間に緊張が高まっているセルビアが、国境地帯に複数の装甲車と部隊を展開させた。
 両国は互いに自国に入ってくる相手国の車両からナンバープレートを取り外し、有料の仮ナンバーを取り付けることを要求して、1週間にわたって国境の緊張が高まっている。 (2110-092804)

コソボ平和維持軍 (KFOR) が駐留することで収拾

 車両ナンバープレートをめぐる紛争で緊張が高まっているセルビアとコソボの国境に、両国の了解の元、米国、イタリア、ポーランド軍からなるコソボ平和維持軍 (KFOR) が2週間駐留することになり、10月2日にはセルビア人が道路を封鎖していたトラックを撤去するのが見られた。
 KFORはNATOとEUにより28ヶ国、4,000名で構成されている。 (2111-100205)

 車両のナンバープレートを巡って、国境が封鎖されるなど緊張が高まっていたセルビアとコソボが、10月4日に互いに自国に入る相手国車両の自動車登録番号標の一部にシールを貼って、国章を隠すことで決着したようである。
 この結果、セルビア側は2ヵ所の検問所を封鎖していたトラックを移動させ、コソボ側も治安部隊を検問所周辺から撤退させた。
 両国はNATO主導のコソボ治安維持部隊 (KFOR) が向こう2週間、2ヵ所の国境検問所を管理することにも合意した。 (2111-100506)

3・6・2・2 その他の西バルカン諸国

EU 加盟問題

 欧州連合 (EU) がスロベニア北西部クラーニで10月6日に開いたの首脳会議2日目では、セルビアなどEU加盟を希望する西バルカン地域6ヵ国の首脳と協議した。
 ロシアや中国の地域への影響拡大が懸念されるなか首脳宣言をまとめ、加盟の明確な支持を再確認した。 (2111-100607)

3・6・3 東地中海

3・6・3・1 トルコの動き

3・6・3・1・1 キプロス

和平協議が物別れ

 事実上の南北分断状態にあるキプロスの和平に向けた関係者会合が4月29日に物別れに終わった。
 トルコ系住民が占める北側は2国家による併存を主張し、ギリシャ系の南側は受け入れず、半世紀にわたって続く対立解消のめどは立たない。
 2004年に連邦国家として再統合する国連和平案を巡って住民投票が行われたが、南側で否決された。
 北側では2020年に再統合ではなく2つの国家の併存を主張する右派のタタル大統領が当選し、トルコも支持している。 (2105-043001)

エルドアン大統領が2国家共存論

 トルコのエルドアン大統領が7月20日、ギリシャ系住民とトルコ系住民の対立から南北に分断されているキプロス島について2国家共存を唱え、欧米諸国の激しい批判を招いている。 米国は国連安保理での対応を要請する方針を示した。
 キプロス島は、1974年に当時のギリシャ軍事政権がキプロス併合を狙って画策したクーデターを機にトルコ軍が侵攻して以来、ギリシャ系住民の多い南部のEU加盟国であるキプロス共和国と、世界でトルコのみが承認している北キプロス(北キプロス・トルコ共和国)に分断されている。 (2108-072203)

イスラエルとの連携

 キプロスが11月4日にイスラエルと、Elbit社製のUAVを元にしたキプロスを分断するGreen Lineの監視システムの共同開発で合意した。 開発は3年間と$32Mをかけて行われる。
 この契約を受けてトルコでは緊張が高まっている。 近年キプロスとイスラエルの関係は強まっている。 (2112-110809)

3・6・3・1・2 東地中海海底資源

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・6・3・2 反トルコ勢力の動き

軍事協力協定の締結

 キプロスが1月12日にUAEと軍事協力協定を結んだ。 キプロスは今までにエジプト、イスラエル、ヨルダンとも同様の協定を結んで共同訓練を実施しており、レバノン陸軍とも共同訓練を行っている。
 UAEは2020年11月にエジプトと海空演習Medusaを実施しており、この演習にはフランスとギリシャも参加している。 (2102-011203)
【註】キプロス、ギリシャ、フランスは東地中海でトルコと対立している。 またエジプト、UAE、フランスはリビアでトルコと対立している。

3・6・3・3 イスラエルとギリシャの接近

イスラエルがギリシャ空軍固定翼機操縦士の訓練

 イスラエルとギリシャが1月5日、イスラエルがギリシャ空軍固定翼機操縦士の訓練を、向こう20年で$1.68Bで請け負う政府間協定を結んだと発表した。
 訓練はElbit社がイスラエル空軍飛行学校を真似て設立したギリシャ空軍飛行学校でLeonardo社製M-346 Master高等練習機10機を用いて行う。 (2103-011310)

 Elbit社が4月18日、イスラエル国防省とギリシャ国防省がギリシャ空軍の飛行訓練センタ建設で合意したと発表した。
 建設される訓練センターではギリシャ空軍のRafaleとF-35の飛行訓練を実施する。
 契約額はNIS5.5B (£1.375B、$1.65B) で、Elbit社がシミュレータ、訓練機、保守整備等を提供する。 (2105-041802)

 イスラエルとギリシャが4月16日、Elbit社がギリシャKalamataに位置するギリシャ空軍第120飛行教育団に国際飛行訓練センタを建設し今後22年間維持する契約をNIS5.4B ($1.65B) で結んだ。
 ここでギリシャ空軍のM-346 Master高等練習機、T-6ターボプロップ練習機を用いた飛行訓練を行う。 (2106-042806)

イスラエルが主導する演習にギリシャとキプロスが参加

 トルコの地中海における存在感増大に対抗してイスラエルが主導するNoble Dina演習がギリシャとキプロスが参加して3月12日に行われた。
 Noble Dinaにはフランスも参加し、対潜、捜索救難を想定して行われ、参加国の共同防衛強化が示された。 (2104-031206)

3・6・3・4 米国とギリシャの関係強化

米ギリシャ相互防衛協力合意協定を更新

 米国とギリシャが10月14日、両国の防衛協力関係を継続するための協定を更新した。
 今回更新されたのは米ギリシャ相互防衛協力合意 (MDCA) で、これに基づき米軍は1990年以降、ギリシャ国内で訓練や活動を行うことが可能だった。
 両国は協定を5年間更新し、それ以降はどちらか一方が離脱を望まない限り有効期間を無期限にすることで合意した。 (2111-101501)

3・6・3・5 ロシアの進出

5月25日: Tu-22M3 をシリアに派遣

 地中海への足掛かりを強化したいロシアが5月25日、中距離爆撃機Tu-22M3 3機をシリア西部ラタキア県にあるフメイミム空軍基地に派遣した。
 ロシアの中東地域への爆撃機派遣は、冷戦終結後初めてとなる。 Tu-22M3受け入れのために、フメイミム空軍基地は滑走路を延長したばかりで、2本目の滑走路を改装中である。
 一方、ロシア海軍は近年、地中海に艦隊を巡回配置するというソ連時代のやり方を復活させており、シリア西部タルトゥースにある国外唯一の海軍基地の拡張も、プーチン大統領が狙う地中海での長期的軍事プレゼンス構築の一環といえよう。 (2106-052601)

 ロシア国防省が5月25日、Tu-22M3 3機が同日に初めてシリアのHumayim空軍基地に派遣されたと発表した。 同機は地中海における乗員の訓練に使用するという。
 Tu-22M3は戦闘行動半径が2,500~3,000kmと見られ、冷戦時代には主として対艦任務として配備され、Kh-32長距離超音速対艦ミサイルを搭載できることから、地中海へ入った英海軍空母Queen Elizabethを意識しての配備とみられる。 (2108-060201)
【註】Kh-32は1991年代にソ連で生産されたASMで、射程は600~1,000km、上昇限度は40,000mで、最高速度はMach 3.5~Mach 4.6という。
 INSで誘導され終末誘導はアクティブレーダホーミングである。

6月25日: 超高速ミサイルを含む演習

 黒海で英駆逐艦との緊張が高まるなか、ロシア国防省が地中海で超高速ミサイルを含む演習を6月25日に開始したと発表した。
 露国防省によるとMach 10で2,000kmを飛翔するKinzhal超高速ミサイルを搭載できるMiG-31 2機がシリアLatakia県にあるロシア軍基地に到着したほか、東地中海に潜水艦2隻と数隻の艦船が展開し、更にTu-22M3も投入されているという。 (2107-062506)

 ロシアと英国のメディアが6月29日、ロシアが英国のQueen Elizabeth CSGを牽制するためKh-47M2 Kinzhal超音速CMを搭載したMiG-31K 2機をシリアLatakia県ににあるロシア軍基地に配備したと報じた。
 Kinzhalのシリア配備は、東地中海を航海する英空母Queen Elizabeth CSGを牽制するためと報じられた。 (2108-070103)

5・6・4 黒 海

5・6・4・1 米国の動き

1月21日: 駆逐艦 Portr とその他の2隻が黒海入り

 ナポリに司令部を置く米第6艦隊が、駆逐艦Portrがその他の2隻と共に1月21日に黒海に入ったと発表した。
 24日には給油艦Laramieが黒海入りし駆逐艦Donald Cookに給油を行った。
 米海軍は2020年に、2019年より19日少ない82日間黒海に入っていた。 (2102-012805)

 米海軍は1月に駆逐艦PorterDonald Cookを黒海に入れ、2月9日にはP-8A 1機とトロル空軍のF-16を交えて対艦、対潜、対空演習を実施した。
 両艦は近年では最長となる17日間にわたり滞在し、10日に黒海をでた。 (2103-021004)

6月28日~7月10日: 多国間演習 Sea Breeze 21

 米国が6月28日から7月10日まで黒海でウクライナ海軍と主管する多国間演習Sea Breeze 21を実施する。 この演習には32ヵ国から5,000名と、艦艇32隻、航空機40機が参加し、上陸作戦や陸上機動戦、水中浸透作戦、対潜水艦戦、捜索救難作戦などを実施する。
 軍事専門家たちは米6艦隊が1997年から実施してきたこの演習は、黒海で軍事活動を強めるロシアを牽制するための措置と見ている。 (2107-062301)

10月末~11月4日: 駆逐艦 Porterと第6艦隊の旗艦 Mount Whitney が黒海入り

 10月末に米駆逐艦Porterが黒海に入り、11月4日には米海軍第6艦隊の旗艦Mount Whitneyも合流してロシア艦とにらみ合いを続けた。 (2112-112603)

11月25日: 駆逐艦 Arleigh Burke が黒海に入

 タス通信が、ロシア国防省が25日、米第6艦隊の駆逐艦Arleigh Burkeが黒海に入り、ロシア黒海艦隊が監視を開始したことを明らかにしと報じた。
 米第6艦隊は同日、Arleigh Burkeの黒海入りを確認し、NATOや同盟国との共同活動のためと説明している。 (2112-112603)

12月 4日: 米哨戒機がロシア民間機と接近

 ロシア政府が5日、黒海上空で12月4日にロシアの民間機が米国の哨戒機との接近を避けるためにルートを変更するインシデントが発生したとして、米国に正式に抗議する意向を明らかにした。
 ロシア民間航空局によれば、NATOの哨戒機が民間機のルートを横断し、ロシア航空安全当局からの信号を無視したために、民間機2機が進路と高度を変えざるを得なかった。
 1機はテルアビブ発モスクワ行きのエアロフロート機で、もう1機はソチ発北マケドニア行きのマルタ籍の航空機という。 (2201-120601)

5・6・4・2 ロシアの対抗

米艦上空を露軍機が低空飛行

 米海軍第6艦隊が、黒海で米艦3隻が演習中の1月31日に、駆逐艦Donald Cookの上空をロシアのSu-24が低空飛行したと発表した。 (2103-020106)

4月14日: 黒海で演習を開始

 ロシアが4月14日に黒海で軍事演習を実施した。 演習は2週間内に終了するとしている。
 ロシアはウクライナ国境付近とクリミア半島周辺で部隊を大幅に増強しており、軍増強はNATOの威嚇行為に対して戦闘準備態勢を整えるための軍事演習の一環としている。
(2105-041502)

 米国とNATOは警戒を強めており、米軍は4月中旬に、ロシアを牽制するため黒海に艦船2隻を派遣する。 ロシアは米艦船派遣を挑発行為だとし、クリミア半島から遠く離れていることが身のためだと警告し、ロシア海軍が米艦船到着を前に黒海で実弾を用いた演習を実施している。
(2105-041502)

ロシアがクリミアに核兵器を配備する準備

 ウクライナのタラン国防相はブリュッセルで欧州議会の議員らに対し、ロシアがクリミアに核兵器を配備する準備をしている可能性があるとの見方を示した。
 ただ、根拠は示さなかった。 タラン国防相によると、ロシアはウクライナ国境沿いに11万人の部隊を集結させているという。 (2105-041502)

4月27日: 黒海で演習

 InterFax通信によると、ロシア黒海艦隊が4月27日に巡洋艦Moskvaと他の艦船、ヘリが参加する実弾演習を実施すると発表したと報じた。
 この数時間前に、米海軍の欧州本部は米沿岸警備隊がHamilton級警備艦を黒海に再び移動させると発表して発表しており、ロシアと西側諸国との間の緊張が高まっている。 (2105-042801)

7月 3日: 黒海で演習

 ロシアが7月3日、黒海において戦闘機や爆撃機による敵艦船爆撃を想定した演習で行ったと発表した。
 ロシア黒海艦隊によると演習には艦隊航空部隊と南部軍管区の航空機が参加した。
 ロシアは黒海でNATOの演習を巡り西側諸国と対立しており、6月にはクリミア半島沖で「領海侵犯」した英駆逐艦を追いやるため、警告のための砲撃と爆撃を行ったと発表した。 (2108-070502)

7月 7日: 米軍の哨戒機に接近飛行

 ロシアとNATO軍との一触即発の情勢が続く黒海で、ロシア軍戦闘機が米軍の哨戒機に接近飛行する画像が7月7日にロシア国防省から公開された。
 ロシア国防省によると、米海軍のP-8が黒海のロシア領空に接近したため、ロシアのSu-30SMが緊急発進したという。 米軍機はロシア領空を侵犯していなかったという。 (2108-070805)

12月10日: 米軍の哨戒機に Su-30 を緊急発進

 InterFaxが、ロシア国防省が12月10日に黒海上空を飛行していた米偵察機がロシア国境に接近したため、Su-30を緊急発進させたと発表したと報じた。
 米偵察機は方向転換し、国境から離れたという。 (2201-121101)

5・6・4・3 諸国艦との対峙

6月23日: 英駆逐艦 Defender への威嚇

 ITAR-TASS通信が、ロシア国防省が23日にクリミア半島フィオレント岬近くの黒海で、英駆逐艦Defenderに対し、艦船からの警告射撃と爆撃機による警告爆撃を行ったと発表したと報じた。
 露国防省は英艦が領海を侵犯したと主張している。
 英国防省は「駆逐艦はいかなる警告射撃も受けていない」などとロシア側の発表を否定した。 (2107-062401)
【註】Type 45駆逐艦であるDefenderは極東地域に向かいつつあるQueen Elizabeth CSGを構成する主力艦である。

 ユースティス英環境相が6月24日、黒海で英艦とロシア軍が対峙した件で、英国には再び海軍艦でクリミア半島付近の係争水域を通過する用意があると表明した。
 ユースティス環境相は、英国艦は国際法上適法な形でウクライナ経由でジョージアに向かっていたと主張し、我々は一度たりともクリミア併合を認めていないと述べた。
 ロシアは、英駆逐艦Defenderがクリミア半島フィオレント岬沖の領海の3km内側に入ったと主張している。
 ロシアはこの件で、黒海内の領海に進入した英駆逐艦に対して爆弾投下や警告射撃を実施したと主張しているのに対し同相は、これはごく通常の出来事で、実際にはロシアは砲撃演習を行っており、事前通知もあったと述べた。 (2107-062503)

 ロシア国防省が6月23日、英海軍Type 45駆逐艦Defenderがクリミア沖で領海に侵入したため警告射撃と4発の爆弾投下を行ったと発表した。
 Defenderに乗艦しているBBCの特派員は23日遅くに、Defenderは計画通りにロシアが支配する海域に入ったところ20機以上の露軍機が低空を飛び回ったと報じた。
 露国防省の発表によると、Defenderは11:52に「領海」に侵入し3kmまで入ったため警告を行ったが応じなかったため、ロシア沿岸警備隊の哨戒艇で排水量630tのkhotnikが12:06と12:08に警告射撃を行った。
 更に12:19に露黒海艦隊のSu-24Mが4発のOFAB-250を投下したところDefenderは12:23に「領海」を出たという。 (2108-063003)

3・6・5 ベラルーシ

3・6・5・1 民航機強制着陸事件

 TASS通信などによると、ベラルーシが5月23日に領空を飛行していた旅客機をミンスク空港に強制着陸させ、搭乗していた反政権派メディアの創設者を拘束した。 ベラルーシ国営通信によると強制着陸はルカシェンコ大統領の命令だった。
 強制着陸させられたのは、アイルランドのRyanair機で、乗客170人が搭乗してギリシャからリトアニアに向かっていた。
 ベラルーシ当局は、機内に爆発物が仕掛けられた可能性があるとして強制着陸を指示し、戦闘機が旅客機を空港に誘導したが爆発物は発見されなかった。
 拘束されたプロタセビッチ氏は主にベラルーシ国外で活動しており、ポーランドを拠点にしたインターネットメディアNEXTAを創設して編集長を務めている。
 NEXTAは2020年ベラルーシで大規模化した反政権抗議デモを呼びかけるなどし、ベラルーシ最高裁判所は過激派指定しプロタセビッチ氏を「大規模な暴動を組織した」などとして起訴していた。 (2106-052401)

 ベラルーシが5月24日、Ryanair航空の旅客機を強制着陸させる要因となった爆破予告にはハマスの名前が記されていたと発表した。
 ベラルーシの運輸省高官は爆破予告の文面を公表し、それには「われわれハマスの戦士は、EUがイスラエルのガザでの戦闘でイスラエルへの支持を撤回しなければ、飛行機に仕掛けられた爆弾が5月23日にヴィルニアス上空で爆発するだろうと記されていたという。
 一方、ハマスの報道官は完全に無関係と否定した。 (2106-052502)

3・6・5・2 西側の対応

EU の対応

 ベラルーシが民間航空機を強制着陸させ、反体制派ジャーナリストを拘束したことについて、EUのフォンデアライエン欧州委員長が5月23日に違法行為でハイジャックだと非難し、責任者への制裁の必要性を主張した。
 また、EUのミシェル大統領は、国連の国際民間航空機関 (ICAO) による調査を要求したが、ICAOの事務局長は現在中国出身の柳芳氏がを務めている。
 EUは24日に始まる首脳会議で、対応を討議する方針という。 (2106-052403)

 EUが5月24日にブリュッセルで開いた首脳会議で、ベラルーシに対し経済制裁を含む追加制裁を発動させることで合意した。
 航空各社に対しベラルーシ空域の飛行を回避すると同時に、ベラルーシの航空会社が運航する航空機の欧州空域の飛行と空港発着を禁止する手続きに入った。
 EU首脳は、プロタセビッチ氏らの即時解放を要請するとともに、国際民間航空機関 (ICAO) に対し直ちに調査に着手するよう呼び掛けた。
 首脳レベルでの合意を受け、今後EUは外相を含む閣僚レベルでベラルーシに対する政治的決定を策定する。 (2106-052501)

米国の対応

 バイデン米大統領が5月24日、ベラルーシが民間旅客機を自国に強制着陸させ反体制派ジャーナリストを拘束したことを強く非難し、事件の責任を問うための選択肢を検討するよう指示した。 (2106-052503)

 サキ米大統領報道官が5月28日、ベラルーシのルカシェンコ政権がアイルランドの旅客機を強制着陸させ、搭乗していた反体制派ジャーナリストのプロタセビッチ氏を拘束した問題で、バイデン政権がベラルーシに対して制裁を発動すると発表した。
 制裁の具体的内容については、6月3日からベラルーシの9つの国営企業に対する制裁を全面的に復活させ、米国民との取引を禁止するとした。 (2106-052903)

欧州各国の反発

 民間機を強制着陸させ、乗っていた反体制派を連行したベラルーシに対する反発が5月24日に欧州各国に広がっている。
 英国やリトアニアは自国内の航空会社に対し、ベラルーシ上空の飛行回避を指示し、ウクライナは上空通過だけでなくベラルーシとの直行便停止を表明した。
 民間航空会社でも、Scandinavian航空やラトビアが拠点のairBaltic航空、ドイツのLufthansa航空がベラルーシ上空通過をやめると発表した。
 懸念を伝えるため英独伊など欧州各国政府が、自国駐在のベラルーシ大使を呼び出す動きも相次いでいる。
 これに対しベラルーシ政府は24日にラトビア外交団の追放を発表した。 ラトビアでこの日行われたアイスホッケーの試合でラトビア当局がベラルーシ反体制派の旗を掲げ、23日に連行された反体制派に連帯を示したことに激怒した。 (2106-052505)

NATO 本部へのアクセス制限

 ストルテンベルグNATO事務総長が5月31日、23日にベラルーシが旅客機を強制着陸させて反体制派ジャーナリストを逮捕したことを受け、ベラルーシ外交使節団のNATO本部への出入りを制限すると発表した。
 ベラルーシはNATO加盟国ではないが、ソ連崩壊後の1992年から軍事同盟国と関係を持ち、1998年からNATOに外交使節団を派遣している。 (2107-060102)

追加制裁の可能性を示唆

 EUのボレル外交安全保障上級代表が8月8日、ベラルーシ大統領選から9日で1年を迎えるのを前に声明を出し、反政権派への弾圧を強めるルカシェンコ政権にさらなる措置を検討する用意があると警告、追加制裁の可能性を示唆した。
 ボレル上級代表は、政治危機の唯一の解決策は包括的な国民対話だとして、欧州安保協力機構 (OSCE) の監視下での自由で公正な選挙の実施などを求めた。 (2109-080802)

英政府が経済制裁の強化

 英政府が8月9日、ベラルーシに対する経済制裁の強化を発表した。
 ルカシェンコ大統領による反体制派弾圧や人権侵害を非難し、金融や貿易、航空などの幅広い分野で締め付けを強める。
 制裁には、ベラルーシの航空会社の英離着陸禁止、石油製品や炭酸カリウムなどの主要輸出品の貿易制限などが含まれるほか、国家機関への保険・再保険の提供、国債や国有銀行が発行する証券などの売買も禁止する。 (2109-080903)

我が国の対応

 加藤官房長官が6月10日、ベラルーシが旅客機を強制着陸させ反体制派メディア創設者を拘束したことを受け、日本の航空会社にベラルーシ領空の通過を回避するよう勧告すると発表した。
 また、ベラルーシの航空会社が日本へのチャーター便乗り入れや定期便開設を希望しても認めない方針も明らかにした。 (2107-061003)

駐ベラルーシ仏大使が国外退去

 フランス外務省が10月18日に声明で、駐ベラルーシ仏大使がベラルーシから国外退去を命ぜられ、17日に同国を退去したと発表した。 (2111-101805)

EU、ベラルーシに追加制裁

 EUが11月23日、ベラルーシのルカシェンコ政権が中東などからの移民・難民を入国させてEUに送り込んでいるとされる問題で、米英加と連携して追加制裁を発動する方針を表明した。
 航空会社や船会社の関与を絶つための法案も発表した。
 手を貸した場合は事実上の制裁を科す。 (2112-112407)

EU、ロシアに追加制裁

 メルケル独首相が11月25日にポーランドのモラウィエツキ首相との共同記者会見で、ウクライナ周辺を巡る状況が激化した場合、EUはロシアに対する追加制裁に向け準備する必要があると述べた。
 ベラルーシがポーランドに対し移民を「武器化」している問題や、ロシアがウクライナとの国境付近に軍隊を配備している問題を巡り、EUは団結しなければならないとしたうえで、ウクライナの主権に対するさらなる侵害には高い代償を伴うとし、状況を打開することが常に好ましい選択肢であるべきと強調した。 (2112-112601)

チェコがポーランドに軍150名を派遣

 チェコ政府が12月8日、ポーランドに最大150名の軍を派遣してベラルーシからの移民流入を防ぐ対策を支援することを決めた。 議会の承認を経て派遣する。
 ポーランドの国境警備支援に軍を派遣するのは、エストニアと英国に続き3ヵ国目となる。
 メットナル国防相は記者会見で、ポーランドからは国境沿いの障壁の設置や修復のほか、ベラルーシとの国境の警備について支援要請があったと明らかにした。 (2201-120904)

3・6・5・3 米国との対立

大使館員の削減要求

 ベラルーシ外務省が8月11日に声明を出し、在ベラルーシ米大使館に対し9月1日までに、職員数を5人に減らすよう要求したと発表した。
 声明は「あらゆる分野で協力を縮小し、わが国の経済を窒息させようとしている状況に照らし、現在のような職員数は意味がない」と削減指示を正当化した。
 更に米国が9日に発表したベラルーシ五輪委員会などへの制裁を「厚かましいあからさまな敵対行為」と呼んで非難した。 (2109-081201)

米大使館広報文化外交や米国際開発庁現地事務所の閉鎖

 ベラルーシが米国やその同盟国がベラルーシ当局の反政府活動弾圧に対して両国の緊張が高まっているのを受け、米大使館の広報文化外交 (Public Diplomacy) や米国際開発庁 (USID) 現地事務所を閉鎖させ11月20日以降その活動を停止させる。 (2111-102905)

ベラルーシ追加制裁

 米財務省が12月2日、難民らを意図的にEU側に送り込んでいるとしてベラルーシに対する追加制裁を発表し、20個人、12団体を対象に加えた。 (2201-120301)

3・6・5・4 ロシア依存の増大

ロシアへの経済支援期待

 ベラルーシのルカシェンコ政権が旅客機を強制着陸させ反体制派活動家の身柄を拘束した問題で、EUなどはルカシェンコ政権に打撃を与えるため制裁措置を策定中であるが、格付け会社S&Pグローバル社が6月2日、ベラルーシに西側諸国が同国に対し厳しい制裁措置を導入すれば、ロシアへの依存度が一段と高まるとの見解を示した。
 ロシアは2日、ベラルーシに対し2回目となる$500Mの融資を実施した。
 S&Pは、EUが主導する制裁措置でベラルーシの輸出収入が減少し、中央銀行の純国際準備が一段と減少する恐れがあるとし、新たな厳しい制裁措置ですでに脆弱な状態にあるベラルーシの経済、国際収支、金融安定がマイナスの影響を受けるとし、ベラルーシの孤立が一段と深まればロシアが支援する意思に一段と依存することになるとの見方を示した。 (2107-060402)

ロシアとS-400購入交渉

 ベラルーシのルカシェンコ大統領が8月9日に、ロシアとS-400購入について交渉中であることを明らかにした。
 代金はかつてロシアから原発建設で借り入れた資金の残金でまかなうという。 残金は$300M~$500M残っていると見られる。 (2110-081807)

Iskander の売却要求

 ベラルーシのルカシェンコ大統領がロシア軍事雑誌Natsionalnaya Oboronaのインタビューで、プーチン露大統領にベラルーシが装備しているPolonez MLRの射程が300kmしかないとして、射程500kmのIskander SRBMの売却を要求していると述べた。
 ベラルーシのミンスクからポーランドのワルシャワまでの距離は546kmである。
 Iskanderはアルメニアとアルジェリアに売却されているという。 (2112-111510)

クリミア半島をロシア領と述べ核兵器を再配備を要求

 ベラルーシのルカシェンコ大統領がクリミア訪問を前に11月30日、初めてクリミア半島をロシア領と述べた上で、もしNATOが米国の核兵器をドイツから東ヨーロッパに移動させれば、ベラルーシはロシアに、1991年のソ連崩壊で撤収している核兵器を再配備するよう要求すると述べた。 (2112-113007)

2022年春にロシアと合同演習を企画

 プーチン露大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領が12月29日にサンクトペテルブルクで会談し、2022年春にベラルーシ領内で合同演習を実施する方針を示した。
 会談では、両国の航空機製造での連携強化についても合意した。
 ルカシェンコ大統領は「ベラルーシには民間機と軍用機の工場がある」と述べ、ロシアの航空機調達にベラルーシ企業が参画する意向を示した。 (2201-123001)

3・6・5・5 隣接国との軋轢

ウクライナとの国境の完全封鎖

 ベラルーシのルカシェンコ大統領が7月2日に独立記念の行事で演説し、ウクライナから大量の武器が流入していると主張し、ウクライナとの国境の完全封鎖を指示したと明らかにした。
 大統領は政権転覆を企てていたテロ組織を摘発したとも述べ、米国やドイツ、ウクライナなどが調整役として関与していたと説明したが、武器流入の主張も含めて真偽は不明で、危機をあおり、自らの統治を正当化する思惑もありそうである。 (2108-070302)

3・6・5・6 ルカシェンコ大統領の去就

ルカシェンコ大統領の「近く退任する」発言

 TASS通信などが8月9日、ルカシェンコ大統領がこの日に大統領選挙1周年を記念する対談番組に出演して後継者に関する質問に、「私は年老いた指で権力の座を握っているつもりはなく、後任が来るだろう。 非常に近いうちにそうなるだろう。」と述べたと報じた。
 しかし、「ルカシェンコがいつ去るのかは推測してはならない」と付け加えた。
 ルカシェンコ大統領の後継者については、「私の良い友人であり、兄であるプーチン露大統領がいつか言ったように答えたい」と、原則的な答えを述べた。 (2109-081004)

3・6・5・7 中東アジア移民の越境

3・6・5・7・1 中東アジア移民の送り込み

ベラルーシによる中東アジア移民の送り込み

 反政権派弾圧が続くベラルーシを経由し隣国リトアニアに向かう中東、アジアからの移民難民が止まらない。
 EU加盟国のリトアニアは欧米による制裁への報復でベラルーシが国境を越えさせていると批判し押し返す強硬策に転じたため両国の対立は激化する一方で、人道問題も絡み、EUは難しい対応を迫られている。
 ベラルーシからリトアニアへの移民や難民が急増し始めたのは6月末で、1日100人を超える日が続き、1月からの総数は8月に入って4,100人を超えた。
 2020年1年間で国境審査を受けずリトアニア領に入った越境者はわずか81人だった。 (2109-081002)

リトアニアにハイブリッド戦を仕掛ける懸念

 ロシアが9月にZapad 2021を開始するのに対し、ストルテンブルグNATO事務総長が8月9日、ベラルーシがリトアニアに対してハイブリッド戦を仕掛けることを懸念し、警戒を強化していると述べた。 (2109-081008)

航空便やビザを手配した送り込み

 EUが、ポーランド国境にベラルーシ側から大量の移民が押し寄せている問題を、EUの制裁に対するルカシェンコ政権による対抗措置だとみて危機感を強め、政権への制裁拡大検討を急ぐとともに、移民流入の未然阻止を図る。  フォンデアライエン欧州委員長は11月8日に声明でルカシェンコ政権による移民の政治利用を非難し、EU加盟国に対しこの攻撃の責任を負う政権への制裁拡大を承認するよう求めると訴えた。
 ルカシェンコ政権は、中東などから航空便やビザを手配して移民らを連れてきた上で、EU加盟国のポーランドやラトビア、リトアニアに送り込んでいるとみられている。 欧州委員長は、関与する航空会社への制裁検討も表明した。 (2112-110903)

 ポーランド政府報道官が11月8日、ベラルーシとの国境付近に3,000~4,000人の難民が集まっていると述べ、さらに10,000人以上がベラルーシ経由でポーランドへの入国を目指しているとの見方を示した。
 動画によると、難民数百人がポーランドとの国境に向けて歩いており、一部はフェンスを破ってポーランド側に侵入しようとしている。 (2112-110904)

 ポーランド政府は、軍や警察などを国境付近に増派しており、国境警備隊は国境の道路を一部閉鎖する方針を示した。
 ポーランドは、ベラルーシが意図的に難民を流入させていると非難しており、リトアニアもベラルーシとの国境付近に非常事態宣言を発令する可能性があることを明らかにした。 (2112-110904)

ベラルーシが移民に「亡命パッケージ」を販売

 Washington Postなどが10日、EUの制裁に移民を送り込むことで報復しているベラルーシが、国営旅行会社を動員して移民にEU行きの「亡命パッケージ」を販売していると報じた。
 イラク、シリア、アフガニスタン出身の移民にベラルーシの首都ミンスクへの航空券、ベラルーシのビザ、ポーランドへの越境の方法などのパッケージ商品を販売しているという。
 ドイツのメディアも同日、トルコなどから1日に1,000人を超える移民がEU加盟国に行くために少なくない費用をかけてベラルーシやロシアの飛行機に乗ってミンスクに集まっていると報じた。
 ポーランド当局は、ベラルーシがこのような移民送出商売を通じて数千万㌦を得ていると見ている。 (2112-111204)

3・6・5・7・2 ポーランド/バルト三国側の対応

ポーランド首相が「黒幕はロシア」と非難

 ポーランドのモラウィエツキ首相が11月9日、ベラルーシから移民が国境に押し寄せている問題で、プーチン露大統領が背後にいると非難した。
 モラウィエツキ首相は、ベラルーシのルカシェンコ大統領がこの危機を画策しているが、その黒幕はモスクワにいると述べた。
 ルカシェンコ大統領は、EUによる制裁への報復として移民を押し出しているという主張を否定しているが、凍えるような寒さの中、ベラルーシとポーランドの国境では少なくとも2,000人の移民が足止めされている。 (2112-111002)

ポーランドが軍や警察を国境付近に増派

 ポーランド政府は、軍や警察などを国境付近に増派しており、国境警備隊は国境の道路を一部閉鎖する方針を示した。
 ポーランドは、ベラルーシが意図的に難民を流入させていると非難しており、リトアニアもベラルーシとの国境付近に非常事態宣言を発令する可能性があることを明らかにした。 (2112-110904)

リトアニアが非常事態宣言

 リトアニア議会は11月9日にベラルーシとの国境地帯に向こう1ヵ月間の非常事態を宣言して、幅5kmの立ち入り禁止地帯を設けた。
 移民が集結しているポーランドとベラルーシの国境検問所は、リトアニア国境から50kmしか離れておらず、立ち入り禁止地帯には、地元住民以外すべての立ち入りが禁止され、軍がパトロールを開始した。
 EUはEU内の不安定化を画策しているとして、ベラルーシのルカシェンコ大統領を厳しく非難しており、同国との間に結んだ渡航手続き簡素化の合意を一部停止すると発表した。
 そのような情勢を踏まえて、リトアニアのシモニーテ首相は議会で、わが国はあらゆる事態に備えなければならないと述べた。 (2112-111104)

ポーランドがベラルーシとの国境沿いに壁を建設

 ポーランド内務省が15日、ベラルーシとの国境沿いに壁を建設すると発表した。 12月着工し2022年前半に完成させる予定だという。
 壁の建設については、議会が10月に承認していた。
 壁の建設費は概算で€353M、長さはポーランドとベラルーシの国境の約半分の全長180kmになる。
 同省によると、契約は12月15日までに締結され、工事自体は12月後半に始まる見通しで、交代制で1日24時間の交代制で作業を継続するとしている。 (2112-111605)

ポーランドが放水で対抗

 ポーランドの治安維持部隊が11月16日、ベラルーシとの国境で投石する移民に対し放水を行った。
 ストルテンベルグNATO事務総長はブリュッセルで開かれた国防相会議で、ルカシェンコ政権が弱い立場にある移民を他国に対するハイブリッド戦術として利用していることを強く懸念していると表明し、われわれはポーランドおよび影響を受けている他の同盟国と連帯している」と強調した。
 ロシア国営タス通信によると、ロシア大統領府はプーチン大統領とルカシェンコ大統領が16日にこの問題について協議したことを明らかにした。
(2112-111706)

ポーランドが NATO に北大西洋条約第4条に基づく要請

 ポーランドのモラウィエツキ首相が11月14日、ベラルーシ経由で移民が流入している問題を解決するため、NATOは具体的な措置を取る必要があると述べ、EUに対しても国境の壁の資金を共同で拠出すべきだと語った。
 モラウィエツキ首相は国営のポーランド通信 (RAP) に対して、「わわれれが公に懸念を表明するだけでは不十分で、具体的な措置と同盟国全体の取り組みが必要だ」と強調し、ベラルーシと国境を接するポーランド、リトアニア、およびラトビアが北大西洋条約に基づき協議を求める可能性があることを示唆した。
 北大西洋条約の第4条によれば、加盟国が自国の領土保全や政治的独立、安全保障が脅かされていると判断した場合に協議を要請をすることが可能としている。 (2112-111501)

 ポーランドのモラビエツキ首相が11月14日、ポーランド、リトアニア、ラトビアの3ヵ国が、ベラルーシとの国境に流入する移民問題解決のためNATOに緊急協議の要請を検討していることを明らかにした。。
 北大西洋条約は第4条で、加盟国が領土保全、政治的独立、または安全が脅かされていると判断した場合、協議を要請できるとしているが、NATO設立以来これまでにそのような協議は、数回しか要請されていない。
 ポーランド国境警備隊によれば、2020年は120件だった不法越境は、2021年これまでに3万件を超えているという。。
 ポーランドは国境警備隊と警察に加えて15,000名の軍隊をベラルーシとの国境に配備して非常事態に対処しているが、それでもドイツにはベラルーシから9,000人以上の移民が何らかの形で入国しているという。 (2112-111505)

リトアニアが移民に自主帰国奨励金を増額

 リトアニアがベラルーシから流入した移民数千人に対し12月9日、出身国への帰国を自主的に選択した場合に支給する奨励金を増額すると発表した。
 内務省によると、奨励金を€300から€1,000に引き上げ、出身国行きの航空券も支給される。
 財源はEUから移民危機に対応するために提供された支援金で賄う。 (2201-121005)

3・6・5・7・3 EU / NATO の対応

EU が対ベラルーシ制裁を拡大

 EUが11月10日、ベラルーシが難民をポーランドに流入させていると非難し、11月中旬にもベラルーシに対する制裁措置を拡大する方針を示した。
 EU加盟27ヵ国の大使はベラルーシの行為が追加制裁の法的根拠になるとの見解で一致しており、追加制裁は早ければ来週にも実施され、ベラルーシの外相や国営航空会社を含む約30の個人や団体が対象になるとした。 (2112-111102)

トルコがベラルーシ便へのシリア人搭乗禁止

 トルコが11月12日、シリア、イエメン、イラク国籍の人がトルコからベラルーシに向かう航空機に搭乗することも、航空券を購入することも許可しないと発表した。
 EU加盟国のリトアニアやポーランドの国境沿いにここ数ヵ月間でベラルーシ経由で中東からの移民が押し寄せており、EUはベラルーシによる移民を使った攻撃の意図的な拡大を非難し、ベラルーシに対する制裁措置を拡大する方針を示している。 (2112-111302)

NATO が移民送り込みに非難声明

 NATOが11月12日、ポーランドなどとの国境にベラルーシが大量の移民を送り込んでいるとみられる問題をめぐって声明を出し、ベラルーシによる国境における挑発や状況悪化のリスクへの警戒を続けると強調した。
 無情な行為は弱い人々の命を危険にさらすと移民の政治利用を強く非難し、ベラルーシに対し送り込みをやめるよう迫った。 (2112-111303)

欧州国境沿岸警備機関が見解を表明

 欧州国境沿岸警備機関 (FRONTEX) レッジェリ代表が11月12日、中東からベラルーシを経由してEU域内に入国する移民の増加に備える必要があるとの見解を表明し、この問題が長期化することを覚悟する必要があると述べた。
 FRONTEXはベラルーシと国境を接するポーランドに地上部隊を派遣してはいないが、衛星画像の共有や航空監視の強化を検討しているという。 (2112-111305)

EU がベラルーシに対する制裁措置の拡大を決定

 EU加盟国が11月15日の外相理事会で、ポーランドなどの国境に中東などからの移民を送り込んでいるとして、ベラルーシに対する制裁措置の拡大を決定した。
 EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)は声明で、ベラルーシのルカシェンコ政権は、EUによる既存のベラルーシ制裁への対抗手段として、移民を政治利用しているとして、「この非人間的で違法な行いを押し返す」と述べ、ルカシェンコ政権への圧力を高めていく考えを強調した。
 ボレル氏は外相理事会に先立ち、中東などからベラルーシへの移民の移送に関わる航空会社や旅行会社などを制裁対象として検討する方針を記者団に示していた。
 EUはさらに、移民らの出身国や経由国にベラルーシへの渡航を阻止するよう働き掛けている。 (2112-111508)

3・6・5・7・4 ベラルーシが送り込みを断念

ベラルーシが中東移民の送還

 ベラルーシのルカシェンコ大統領が11月15日に政府内の会合で、ポーランドとの国境付近に大勢の移民が押し寄せ緊張が高まっている問題で、国境でのいかなる衝突も望んでおらず、移民を帰国のため飛行機に乗せる用意があると述べ、事態打開に向け前向きな姿勢を見せたという。
 EUがベラルーシは移民を意図的にEU側に送り込もうとしているなどと主張するため、批判の矛先をかわす狙いがあると見られる。
 ただ、「移民は帰国したがらないだろう」として、移民が自らの意思で国境地帯にとどまっていると強調した。 (2112-111602)

ベラルーシが2,000人を強制送還

 ベラルーシが11月12日、不法移民を阻止する取り組みの一環として必要な入国書類を保持していない2,000人を強制送還したと発表した。 また国境で不法入国者700人を拘束したという。 (2112-111305)

 ベラルーシの国営ベルタ通信は国境警備隊が移民を国境地点から離れたレセプションセンターに移動させ始めたと報じた。 (2112-111706)

ベラルーシが移民キャンプを撤去

 ベラルーシの国境警備隊が11月18日、ポーランドとの国境に設置された検問所にある移民キャンプを撤去し、移民全員を倉庫を改造した仮設の事務センターに移送した。
 この仮設キャンプにはここ数週間、多数の移民が集結していたが、数ヵ月にわたって事態が膠着状態に陥り、地域の緊張を高めていた事態が終結に向かうことになった。
 その一方でイラク政府は18日、ベラルーシからの出国を希望した自国民を帰国させ始めた。 イラク運輸省は声明でベラルーシの国境からミンスクへと移送されたイラク人400人以上がイラク航空機で送還されたと発表。
 またベラルーシ政府によると、中東地域の出身者を主とする移民7,000人が依然として同国に滞在しており、うち2,000人はブルズギ近郊の国境地帯に滞在しているという。 (2112-111901)

ベラルーシが移民越境を画策したことを認めた

 ベラルーシを1994年以来支配するルカシェンコ大統領がBBC記者の単独取材で11月19日、中東などからの移民がベラルーシのポーランド国境に押し寄せている問題について、ベラルーシ当局が移民の越境を手助けした可能性について全くあり得ると認めた。
 ルカシェンコ大統領は、この国の部隊は移民がドイツを目指しているのを知っていると述べた。 (2112-112008)

3・6・5・8 天然ガス供給停止問題

ベラルーシが天然ガス供給停止を示唆

 ベラルーシの国営通信社によると、ルカシェンコ大統領が11月11日に移民を意図的に送り込んでいるとしてEUがベラルーシに新たな制裁を検討していることに対し、ロシアからベラルーシを経由してEUに送られる天然ガス輸送を停止する可能性を示したと報じた。 ルカシェンコ大統領は、天然ガスの供給を停止したらどうなるかポーランドの首脳やリトアニア国民などはまずそのことを考えるべきだと述べEU側をけん制した。
 欧州の天然ガス価格は最近、過去最高値を記録しており、ベラルーシが天然ガスの供給を停止すれば影響は大きい。 (2112-111208)

ロシアが対応に苦慮

 EUとの対立を深めているベラルーシのルカシェンコ大統領がEUへの天然ガス供給を停止する可能性に言及したことについてロシアが対応に苦慮している。
 ロシアのペスコフ大統領報道官は11月12日、ロシアとのいかなる合意もなされていないと述べ、戸惑いをあらわにした。
 ロシアはベラルーシ経由で欧州にガスを輸出して外貨を得てきたことから、ベラルーシが欧州へのガス供給を停止すればロシアの国家財政に影響が及ぶ。 (2112-111304)

3・6・5・9 軍事衝突の可能性

バルト3国が警告

 バルト三国が11月10日、ベラルーシからEUの境界沿いに移民が押し寄せている問題について、軍事衝突に発展する恐れがあると警告し、今回の問題が欧州の安全保障に深刻な影響を与えていると主張している。
 EUに加盟していないウクライナは、今回の問題が新たな紛争の火種になることを警戒しており、国境警備に当たる部隊を8,500名増派したと発表した。 (2112-111206)
【註】バルト三国はNATO加盟国であるが、隣接するポートランドの間にロシア領になったカリーニングラードがあるため、わずか50kmの幅しかないSwalki Gapでしか繋がっておらず、この隘路をロシアとベラルーシにより塞がれれば、NATO軍は陸路でバルト三国への増援ができなくなる。

ロシアが上空から無言の圧力

 膠着状態が続くポーランドとベラルーシの国境検問所周辺で11月11日、キャンプ生活を送る数千人の移民に飲み水や食料、衛生用品が配られたが、われ先に物資を手にしようとする移民の間で混乱が起きた。
 ベラルーシ当局によれば、寒さによる低体温症のため、女性2人が医療援助を求めたという。
 この問題では、西側の経済制裁に対する報復として、欧州連合内の不安定化を画策するベラルーシが、移民をポーランド国境に送り込んだとして、EUから非難を浴びているが、そのベラルーシを支援するロシアが、2日連続で爆撃機を同盟国領空に飛ばして、西側に無言の圧力を掛けている。
 前日に続いて11日にも2機のTu-160が、ポーランド国境から60kmしか離れていないベラルーシのルジャナ試射場上空に飛来した。
 訓練と称したこの飛行には、ベラルーシの戦闘機がTu-160をエスコートした。 (2112-111207)

ベラルーシとロシア空挺部隊がポーランドとの国境近くで合同演習

 ベラルーシ国防省によると、ベラルーシのポーランド国境に移民が殺到しEUとの緊張が高まるなか、ベラルーシの特殊作戦部隊とロシアの空挺部隊が12日にポーランドとの国境に近いベラルーシ西部で合同演習を行った。
 演習は空挺部隊が降下して拠点を確保したうえで目標を破壊するというもので、ロシアメディアはロシアの空挺部隊から250名が参加したと報じている。 (2112-111301)

英国防参謀長、「偶発的な衝突が起きる危険性は東西冷戦時代より高い」

 英国防参謀長カーター陸軍大将がラジオ局とのインタビューで14日、ロシアと欧米の間で偶発的な衝突が起きる危険性は、東西冷戦時代のどの時期よりも高まっているとの認識を示した。
 その上で各国の政治家らに無用の挑発を避けるよう呼び掛け、冷戦時代にあった伝統的な外交手段や仕組みが今はないため、事態がエスカレートした場合に誤算が起きる危険性は高いとも訴えた。
 カーター大将はインタビューで、世界は米ソの二極体制から米国による一極体制を経て、現在は多極化していると指摘し、各国が異なる目的を掲げて競い合う状況では、緊張から衝突に発展するリスクが増大すると警告した。 (2112-111404)

3・7 コーカサス

3・7・1 ナゴルノ・カラバフ

3・7・1・1 2020年戦争の余韻

トルコとロシアが合同で停戦監視

 トルコ国防省が1月30日、ナゴルノカラバフ紛争の停戦をロシアと共同で監視する合同センターの活動を開始した。
 アゼルバイジャンの国営通信によると、センターはアゼルバイジャンがアルメニアから奪還したアグダム地区に設置され、開所式が行われた。
 トルコ国防省によると、トルコ側からはセンターの活動に約40名が参加する。 ロシア主導の停戦監視活動に、アゼルバイジャンを全面支援するトルコが一定の影響力を確保したことになる。 (2102-013101)

アルメニア軍の不満

 アルメニア軍の参謀本部が2月25日、パシニャン首相の退陣と内閣総辞職を要求する声明を発表した。
 首相は直ちに軍事クーデターの試みだと非難し、ガスパリャン参謀総長を解任し、政府は事態を掌握していると強調した。
 首相と軍が対立する背景には、昨年秋のナゴルノカラバフを巡るアゼルバイジャンとの衝突で、アルメニアが事実上敗北したことへの軍の不満がある。 (2103-022505)

越境したアルメニア兵士を拘束

 アゼルバイジャン国防省が5月27日、国境を越え破壊工作を試みたとして、アルメニア兵士6人を拘束したと発表した。
 発表によれば、アゼルバイジャン西部の国境地帯で27日未明にアルメニア軍の偵察破壊工作部隊が越境して地雷を敷設しようとしていた。
 アルメニア国防省は兵士らは越境していないと反論している。 (2106-052704)

前倒し議会選挙で与党が圧勝

 アルメニアで6月20日に前倒し議会選挙が行われ、開票の結果パシニャン首相代行与党の市民契約党が53.92%の票を獲得し、他党を引き離して勝利した。
 前倒し議会選は、2020年秋にナゴルノカラバフ自治州をめぐりアゼルバイジャンとの間で起きた紛争でアルメニアが敗北し、パシニャン氏への批判が高まったことを受けて行われたもので、パシニャン氏を批判したコチャリャン元大統領の政党連合「アルメニア」は21.04%で第2党となった。 (2107-062103)

3・7・1・2 小規模戦闘

7月28日: アルメニア兵3名が死亡

 アルメニア国防省によると、アゼルバイジャンとの国境で7月28日両国軍が交戦し、アルメニア兵3名が死亡した。 アゼルバイジャン側にも負傷者が出た。
 ロシアの平和維持部隊の仲介で戦闘は停止されたという。
 アルメニアとアゼルバイジャンは2020年、係争地ナゴルノカラバフをめぐり軍事衝突してアルメニアが敗北したが、ロシアの仲介で停戦合意したものの、緊張が続いている。 (2108-072809)

11月16日: アルメニア兵15名が死亡

 ロシアメディアが111月6日、アルメニアとアゼルバイジャンの国境で戦闘があり、アルメニア議会関係者の話としてアルメニア軍の兵士15名が死亡したと報じた。
 アルメニア国防省は16日、アゼルバイジャン軍から攻撃を受け死者や負傷者が出たと発表し、アゼルバイジャンはアルメニア側から挑発があったと主張している。
 アルメニアとアゼルバイジャンは202011月にロシアの仲介で停戦合意したが、その後もたびたび戦闘が起きている。 (2112-111701)

3・7・1・3 停戦と国境画定作業の開始

 プーチン露大統領とアゼルバイジャンのアリエフ大統領、アルメニアのパシニャン首相が11月26日にロシア南部ソチで会談し、会談後プーチン大統領はナゴルノカラバフをめぐり昨年に軍事衝突したアゼルバイジャンとアルメニアの国境画定作業を年内に開始することで合意したと発表した。
 2020年9~11月に起きたナゴルノカラバフ紛争はロシアの仲介で停戦に至ったが、11月にも国境付近で衝突が起きて死者が出ており、国境画定作業が順調に進むかは不透明である。 (2112-112708)
3・7・2 ジョージア

3・7・2・1 ロシアとの対立

 ロシアが2008年8月に、ジョージアの南オセチアとアブハジアの2州を分離させ軍を駐留させてから13周年になる8月7日を前に、英仏、エストニア、ノルウェー、アルバニア、アイルランドの欧州6ヵ国と米国が改めてロシアの不法占拠に対する非難を行い、即刻の退去を要求した。 (2109-080505)
3・7・2・2 欧米からの支援

米国防長官の訪問、米国主導の軍事訓練を延長

 トビリシを訪問したオースチン米国防長官が10月18日にブルチュラゼ国防相と会談し、ロシアと最前線で対峙する東方の同盟国を支援するため、米国主導の軍事訓練を延長する合意に署名した。 (2111-101803)

3・7・2・3 軍備増強

国防調達優先事業計画

 ジョージア国防相が7月22日、2030年を目指した国防調達の優先事業計画"Action Plan of the Georgian Defence Force 2020-30"を公表した。
 計画では2021年に米国からJavelin ATGMを導入すると共に、優先度の高い事業としてUAV、新型砲兵システムのほか、軍事インフラの整備を挙げている。
 またポーランドや南アフリカの企業と国防省直営Delta STC社とで合弁企業を2022年に設立し、小型から大型までのUAVを生産してISTAR能力の向上を図るという。 (2108-072611)

3・8 アフリカ

3・8・1 リビア内戦

3・8・1・1 戦 況

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・8・1・2 諸外国の介入

3・8・1・2・1 国民統一政府 (GNA) の支援

トルコが防空兵器を供与

 トルコ国防省が2月5日、トルコがリビアのGNAに防空兵器を供与していることを示唆した。  トルコ国防省が公開した画像と映像にはGDF 35mm双連対空砲、Kalkan Ⅱレーダ、トレーラ搭載Aselsan社製iHTAR C-UAV装置などが写っていた。
 またこれらの訓練のためリビアから20名がコンヤにあるトルコ軍防空学校で訓練を受けているという。 (2104-021009)

M60 MBT などの重装備を供与

 トルコ国防省が、リビアGNAが米国製M60 MBTを少なくとも3両装備した写真を公表した。 元々リビア軍はM60を装備しておらず、トルコはM60A1とM30A3を多数装備している。
 またM60の横にはRocetsan社製T-122 MRLで使われているMAN社製トラックも写っていた。 更に3月30日のツイッターではトルコ製のT-155 SPHの訓練風景も紹介されていた。
(2106-040710)

3・8・1・2・2 リビア国民軍 (LNA) の支援

戦闘機、ヘリなどの取得

 GNAと対立するLNAも装備を強化しており、3月29日の映像ではMiG-21 2機が飛行する状況やMi-17 2機によるヘリボーンが映っていた。
 更にM-30榴弾砲やBM-21 MRLの射撃や少なくとも19両の各種戦車も映っていたが、これには全てリビア軍が数十年にわたり装備していたものである。 (2106-040710)

3・8・2 モロッコとアルジェリア

 アルジェリアのテブン大統領が10月31日、モロッコのパイプラインを使ったスペインへの天然ガスの輸出停止を命じた。 今後は海底パイプラインによる輸出に切り替えるが、専門家らは輸出能力は低下すると指摘、欧州を覆うエネルギー価格高騰の中、スペインでは不安が大きい。
 アルジェリアは8月に「敵対行為」を理由にモロッコと断交している。 (2112-110102)

 アルジェリア大統領府が11月3日、西サハラとモーリタニアの境界付近でモロッコ軍が1日にモーリタニアからアルジェリアに向かうトラックを砲撃しアルジェリア人3人が死亡したと非難した。 モロッコは砲撃についてコメントしていない。
 アルジェリアは8月にモロッコとの断交を発表しており、さらに緊張が高まる恐れがある。 モロッコは西サハラの領有権を主張している。
 一方アルジェリアは西サハラ独立派のポリサリオ戦線を支援し、長くモロッコと険悪な関係にあった。 (2112-110407)

3・9 北極海

3・9・1 北極圏諸国

3・9・1・1 ロシア

3・9・1・1・1 北極圏戦略

北方艦隊を軍管区に格上げ

 プーチン大統領が2020年12月に北極圏防衛を任務とするロシア北方艦隊を1月1日から軍管区に格上げし、北極圏に面するコミ共和国、アルハンゲリスク州、ムルマンスク州、ネネツ自治管区を、北方艦隊の管区に移管する大統領令に署名していた。
 豊富な資源と北極海航路で注目される北極圏の実効支配を確保し、NATOの艦船の進出を牽制するのが狙いである。
 ロシアは、バレンツ海の大半を実効支配してきたが、2020年5月以後、NATOの艦船がバレンツ海や北極海航路を頻繁に航行しており、ロシアは警戒を強めている。 (2102-010903)

3・9・1・1・2 軍備増強

ノバヤゼムリア諸島の Rogachevo 航空基地に MiG-31BM

 ロシア国防省のウェブサイトで北海艦隊報道部が1月16日、海軍航空隊のMiG-31BMがノバヤゼムリア諸島のRogachevo航空基地でアラート任務に就いたことを明らかにした。 (2103-012703)

ノバヤゼムリア諸島の MiG-31BM が MiG-29K と交代

 ロシア国防省が3月12日、海軍がノバヤゼムリアにMiG-29K艦載戦闘機を即応警戒任務 (QRA) として配置したことを明らかにした。
 派遣されたのはコラ半島Severmorsk-3航空基地に所属す北方艦隊の第100海軍航空連隊のMiG-29Kで、Rogachevo航空基地に派遣されていた第98特別混成航空連隊のMiG-31BMと交代した。 (2105-032408)

3・9・1・1・3 大規模演習の実施

 ITAR-TASS通信が、ロシア海軍総司令官が3月26日に北極圏で行っている軍事演習を含む北極探検の成果をプーチン大統領に報告したと報じた。
 ロシア史上初の北極圏での戦闘機への空中給油や原子力潜水艦の同時浮上、氷面下からの魚雷発射などを訓練したとしている。
 大統領は探検の規模についてソ連時代を含め、過去に例がないと満足感を表明し、北極圏の研究を継続するよう指示したという。
 総司令官は、北極圏でMiG-31 2機が空中給油を受けたほか、原潜3隻が半径300mの範囲内で氷面下から同時浮上したのも露海軍史上初めての試みだと説明した。
 TASS通信によると、20日から実施している露海軍による北極圏探検は、ロシア領Franz Josef諸島の周辺などで計43の計画を予定し、将兵や地理の専門家ら600名以上が参加しているという。 (2104-032705)
3・9・1・1・4 爆撃機等の示威行動

 NATOが3月30日に声明で、29日に複数のロシア軍機が北極圏から黒海に至る数ヶ所で6時間近くにわたり同盟国近くに出現したため、大規模な緊急発進を行ったことを明らかにした。
 この緊急発進はノルウェー、英国、ベルギー、トルコ、イタリア、ルーマニア、ブルガリアが行った。
 北極圏ではTu-95 2機が接近したためノルウェーのF-16が発進し、北海では英国とベルギーが発進した。 そのあとTu-160 2機が出現したためノルウェーF-16が発進した。
 黒海ではイタリア軍機が加わるまで、トルコ、ルーマニア、ブルガリア機がIl-38洋上哨戒機1機を追跡した。 (2104-033007)
3・9・1・2 米 国

3・9・1・2・1 沿岸監視隊

シアトルを新型砕氷艦3隻の基地

 米沿岸警備隊が2030年代に新型砕氷艦3隻の基地としてシアトルを整備する方針である。 (2106-051209)

沿岸警備隊司令官、砕氷艦増強要求

 米沿岸警備隊司令官のシュルツ大将がBrookings研究所の催しで6月28日、2隻の建造が予算化され更に1隻の建造準備として$170MがFY22に予算が計上されている極地警備艦 (Polar Security Cutter) 計画の砕氷艦を更に増強するよう要求していると述べた。
 その上で沿岸警備隊の予算を、毎年3%~5%増額するようにも要求した。 (2107-062809)

3・9・1・2・2 海 軍

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・9・1・2・3 空 軍

B-1B がノルウェー北極圏内に展開

 米空軍が初めて北極圏内に展開するB-1B 4機の1号機が3月8日に、テキサス州Dyess AFBからノルウェーのBodo空軍基地に飛来した。
 途中B-1Bはノルウェーとスウェーデン上空を飛行し、スウェーデン空軍のJAS-39 Gripen 4機に護衛された。 (2104-030905)

3・9・1・2・4 陸軍、海兵隊

アラスカ駐屯陸軍の格上げと増強

 米陸軍参謀総長マコンビル大将が米陸軍協会 (AUSA) の会同で1月19日、北極圏に駐屯する部隊を増強するため、現在アラスカ州に置いている少将を指揮官とする部隊を "operational headquarter"に改編すると述べた。
 その上で、陸軍はアラスカでMDTFを編成すると共に、極地での戦闘能力を持つ旅団を配置したいと述べた。 (2102-011908)

 米陸軍協会 (AUSA) が今年バーチャルで開いたRegaining Arctic Dominanceと題する会議で、陸軍が北極圏戦略のうち秘区分のない部分を公表した。
 それによると陸軍は中露に対抗するため少将を長とする指揮所とマルチドメイン戦闘部隊 (MDTF) を北極圏に配置する計画であるという。 (2105-032407)

3・9・1・3 カナダ

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・9・1・4 NATO 諸国

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
3・9・2 北極圏外国

3・9・2・1 中 国

経済発展5ヵ年計画と北極政策白書

 中国が3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)で、2021~2025年の経済発展5ヵ年計画を発表し、北極圏にシルクロードを開設すると共に、北極と南極圏の開発に積極的に関与する方針を示した。
 2018年には一帯一路を北極圏に広げる計画を盛り込んだ北極政策白書を公表し、北極圏を通じてアジアと欧州を結ぶ航路の開設を目指すと表明している。 (2104-030504)

 中国は第14次5ヵ年計画(2021~2025年)で北極圏の開発協力を本格化する方針を明確にした。
 表向きには資源開発や航路の利用をはじめとする経済分野を重視するとしているが、米国やフィンランドなど周辺国は軍事的な意図があるとみて警戒している。
 3月11日に閉幕する全国人民代表大会(全人代)で採択する5ヵ年計画は「北極の実務協力への参加」を明記し、氷上のシルクロード建設も謳って、一帯一路と連動して北極圏の開発に関与していく。
 中国は2013年に北極圏の8ヵ国で構成する北極評議会のオブザーバになっており、2018年には「北極政策白書」を公表して自国を北極近接国と規定している。 (2104-031002)

3・9・2・2 日 本

北極域研究船計画

 海洋研究開発機構が1月26日、北極海で観測活動を進めるため、令和3年度に建造を開始する北極域研究船の計画を明らかにした。
 砕氷機能を持つ日本初の本格的な研究船で、北極点付近を航行できる可能性もあるという。
 令和8年度の就航を予定しており、厚い氷の中を航行しながら気象や環境などを調査すると共に、海上交通路として重要性が増す北極海での安全航行につながるデータの取得も目指す。
 全長128m、幅23m、総トン数13,000t、乗員99名で、建造費335億円という。 (2102-012603)

 北極海の大気や海氷を観測できる砕氷研究船の建造を、海洋研究開発機構が2021年度から始める。
 南極への船では砕氷艦しらせが知られるが、北極の砕氷研究船建造は日本で初めてで、氷で閉ざされた海洋観測の空白域にアクセスし、データを得て他国と共有することによって気候変動予測の高度化を目指す。
 各国が新たな船舶航路や資源を求めて北極政策に注力する中、国際的なルールづくりに関わる土台とする狙いもある。
 建造する砕氷船は全長128m、幅23mで厚さ約1.2mの砕氷能力があり建造費は335億円で2026年の就航が予定される。
 海洋機構は1998年から研究船みらいで北極海の観測を続けてきたが砕氷能力はなく、老朽化も進んでいた。 (2106-051003)

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が日本初の砕氷観測研究船を建造することを発表した。
 建造費は335億円で、引き渡しは2026年度の予定だという。
 新たな砕氷観測研究船は、全長128m、幅23m、13,000総㌧で乗員は99名、厚さ1.2mの平坦な1年氷を連続して砕氷する能力があり、国際的な規則でPolar Class 4になる。
 Polar Classは数字が低いほど砕氷能力が高く砕氷艦しらせは、中程度の厳しさの多年氷が存在する氷水域を通年航行するPolar Class 2だという。 (2110-091103)



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