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2. 係争地域の情勢

2・1 中東情勢

2・1・1 イラン

2・1・1・1 核 開 発

2・1・1・1・1 ウラン濃縮

濃縮度を20%まに高める

 ロイタ通信によると、イランが新たに可決された法律をもとに1月1日、テヘラン南部にあるフォルド核施設でウランの濃縮度を20%まで高めるとIAEAに通告してきた。
 20%に引き上げれば核合意の崩壊は必至となり、イランと欧米との対立激化は避けられない。
 米国の一方的な核合意の離脱以降、イランは段階的な合意違反を繰り返していて、ウランの濃縮度は当初定められた3.67%から4.5%まで上昇している。
 一般的に濃縮度を20%まで引き上げるには時間がかかる一方で、そこから核兵器への転用が可能な90%まで高めるのは比較的短い時間でできるとされている。 (2102-010301)

 イラン政府報道官が1月4日、中部フォルドゥの地下施設でのウラン濃縮活動について、濃縮度を20%に引き上げる作業を数分前に再開したと述べた。
 2015年のイラン核合意から一段と逸脱するもので、国際原子力機関 (IAEA) はイランが濃縮度を引き上げたことをこの日に加盟各国に報告した。 (2102-010403)

 国際原子力機関 (IAEA) が2月23日、イランが製造した一部のウランの濃縮度が20%に到達したとする報告書をまとめた。 日経新聞が入手した報告書によると、2月16日時点で濃縮度20%のウランが17.6kgあった。
 核合意で定められた濃縮度の上限は3.67%で、最高指導者ハメネイ師は22日に、必要ならば60%まで引き上げると警告していた。
 20%まで高めれば、兵器級とされる90%への到達は容易になるとされる。 (2103-022402)

新型遠心分離機 IR2m が可動

 ロイタが2月2日に入手した国際原子力機関 (IAEA) の報告書によると、イランは遠心分離機IR2mを174基連結したカスケードの設置を完了し、1月30日に六弗化ウラン (UF6) の注入を開始したことをIAEAが確認した。
 核合意では、旧式遠心分離機のIR1のみ使用が認められているが、イランは2020年にIR2mのカスケードの稼働を開始し、12月には新たにカスケード3基を設置すると表明していた。
 IAEAは、残り2基のカスケードのうち1基はすでに設置されており、もう1基の設置も完了間近としている。 (2103-020301)

 国際原子力機関 (IAEA) が3月8日、イランが中部ナタンツの地下核施設で、ウラン濃縮に使う新たな高性能遠心分離機の稼働をさらに進めたと報告した。
 イランは2020年11月、ナタンツのウラン濃縮施設で性能が高いIR2m型の遠心分離機を利用してウラン濃縮を開始し、IAEAによると現在は同型の分離機522基を稼働させている。
 IAEAは報告書でナタンツのIR2m型174基について、3月7日に六フッ化ウラン (UF6) の注入第3段階を開始したことを確認したとしている。 (2104-030901)

新型遠心分離機 IR-6 と IR-5 のカスケードが稼働

 イランのロウハニ大統領が4月10日に国営TVで、ナタンズの核施設で新型遠心分離機IR-6 164基とIR-5 30基を連結したカスケードの稼働を開始したと正式に発表した。
 2015年の核合意で定められた義務を逸脱する行為となる。
 カスケードの映像は流されなかったが、ロウハニ大統領の命令を受けて六弗化ウラン (UF6) ガスの注入を開始した場面が中継された。 (2105-041004)

濃縮度を60%へ

 イランのアラグチ外務次官が訪問先のウィーンで4月13日、ナタンズにある核施設で14日から濃縮度を60%に引き上げてウランの製造を始めることを明らかにした。
 国際原子力機関 (IAEA) もイラン側から濃縮度を60%に引き上げる作業を行うという連絡を受けたとしている。
 イランは1月に核合意を大幅に逸脱する濃縮度20%のウランの製造を始めたほか、ナタンズの核施設で合意で禁止されている高性能の遠心分離機によるウラン濃縮活動も始めている。
 濃縮度60%は核合意を大幅に逸脱したこれまでで最も高い濃縮度で、強硬な姿勢を示すことで米国に対し制裁の解除を迫る思惑もあるものとみられる。 (2105-041401)

 ロイタが8月17日に確認したIAEAの報告書から、イランがウラン濃縮度を兵器級に近い水準に引き上げていたことが分かった。
 イランは4月にウランの濃縮度を20%から60%に引き上げたが、IAEAは5月に加盟国向けの機密文書で、ナタンズの核施設でのウランの最大濃縮度が公表している60%を上回る63%に達していたと指摘し、IAEAのグロッシ事務局長も同月「商業用の濃縮は2~3%でこの水準はほぼ兵器級であり、達しているのは核爆弾を製造している国だけだ」と述べている。 (2109-081801)

濃縮度は60%までと言明

 ロシア通信が、イランのエスラミ原子力庁長官が12月25日にイラン核合意の再建に向けウィーンで27日に再開予定の合意当事国との協議について、仮に不調に終わった場合でも、自国のウラン濃縮度を現在の60%から引き上げる計画はないと断言したと報じた。
 エスラミ長官はウラン濃縮の目的について、産業生産にとっての必要性および国民にとっての必要性と合致していると平和利用目的だと主張し、協議が決裂した場合は濃縮度を高める措置を取るかという質問には「それはない」と否定した。 (2201-122704)

2・1・1・1・2 備蓄量の増大

 国際原子力機関 (IAEA) が2月23日、イランが製造した一部のウランの濃縮度が20%に到達したとする報告書をまとめた。 日経新聞が入手した報告書によると、2月16日時点で濃縮度20%のウランが17.6kgあった。
 濃縮ウランの貯蔵量は2,967.8kgで、こちらも上限である202.8kgの15倍近くに達した。 (2103-022402)

 イラン核合意の履行状況を検証する国際原子力機関 (IAEA) が11月17日、6日時点のイランの濃縮ウラン推定貯蔵量が2,489.7kgで、このうち60%濃縮ウランが17.7kgに達するとの報告書をまとめた。 いずれも9月の報告書から増加している。
 2015年の核合意はイランによる濃縮度の上限を3.67%と定めており、60%は核兵器級の90%に接近する重大な核合意違反である。
 イランはIAEAの査察制限も継続していて、イラン核合意の再建に向けた米イラン間接協議が29日に再開される予定だが、欧米側が一層懸念を強めることになりそうである。 (2112-111806)

2・1・1・1・3 金属ウランの製造

 イランが核爆弾にも使われる金属ウラン製造に向けた研究開発を始めたことについて、英独仏は軍事的な使用を疑われる可能性があるとして強く反対した。
 イランは1月13日、国際原子力機関 (IAEA) に、金属ウラン製造のための研究開発施設の設置などをすでに開始していると通告した。 金属ウランは核兵器に使用できることから、イラン核合意では15年間に製造や取得が禁止されている。 (2102-011702)

 ロイタ通信などによると、国際原子力機関 (IAEA) が2月10日、イランが核兵器の材料として利用可能な金属ウランの生産を開始したことを明らかにした。
 IAEAは、中部イスファハンの施設で8日に、3.6gの金属ウランを確認したと述べている。
 2015年に締結されたイラン核合意は、15年間はイランによる金属ウランの生産や獲得を禁止しており、イランは合意逸脱を一段と強めた。
 イランの核開発制限順守を条件に合意復帰を検討する米国のバイデン政権は難しい対応を迫られる。 (2103-021102)

 国際原子力機関 (IAEA) が7月6日、イランから金属ウランの濃縮に関する計画の通告を受けたと明らかにした。 金属の生産は2015年の核合意に違反する。
 イランは2021年に入り少量の金属ウラン生産を開始しているが、濃縮には至っていなかった。
 今回の計画では、ウラン235を20%まで濃縮した酸化ウランを燃料製造工場に輸送し、そこで四フッ化ウラン、さらに金属ウランに転換した後、燃料の製造に使用するという。 (2108-070702)

2・1・1・1・4 プルトニウム生産開始の可能性

重水炉建設に乗り出す可能性

 米情報機関を統括する国家情報長官室 (ODNI) が4月13日に公表した報告書で、バイデン政権が目指すイラン核合意修復の条件としてイランが主張している制裁緩和が進まない場合、イランはプルトニウムを生産できる重水炉の建設に新たに乗り出す可能性があると指摘した。
 報告書は、現時点でイランが核兵器開発に向けた活動を行っているとは判断していないとしつつ、より高性能な遠心分離機の設置など核合意の内容から逸脱した措置を繰り返していることに警戒感を示している。 (2105-041404)

2・1・1・1・5 IAEA の対応

抜き打ち査察の拒否

 イランが2月23日に、核合意の履行状況を検証してきた国際原子力機関 (IAEA) の抜き打ち査察の受け入れを停止する。
 バイデン米政権に対し、トランプ前政権が科した経済制裁を21日までに解除するよう求めてきたが、応じなかったことへの対抗措置だとしており、査察の制限で核開発活動の完全な検証が困難になる恐れがある。
 ロイタ通信によると、事態を懸念したIAEAのグロッシ事務局長が21日にイランで同国高官らと会談した結果、IAEAは抜き打ち査察の受け入れが停止された後も3ヵ月間は、必要な検証活動を行うことで同国と合意した。 (2103-022201)

非難決議にロシアが反対

 国際原子力機関 (IAEA) が3月1日、オンラインで定例理事会を開いた。 日本を含む35ヵ国で構成する理事会は5日まで開催される。
 ロイタ通信によると、イランが核合意からの逸脱を強めていることを非難する決議採択を英仏独が要請し、米国も支持しているがロシアが反対しており、可決されるかは不透明である。
 報道によると決議案は、イランがIAEAの抜き打ち査察受け入れ停止を決めたことなどについて深刻な懸念を表明している。
 イランは理事会メンバーではないが、原子力庁のサレヒ長官は、決議が採択されれば適切に対応すると警告しており、緊張が高まっている。 (2104-030103)

2・1・1・1・6 米国との協議

4月 6日: EU が仲介して間接協議

 米国とイランが4月6日から、EUが仲介してウィーンで2015年の核合意をめぐる間接協議を始め、妥協点を模索する。
 トランプ前政権は2018年に核合意を離脱して制裁を発動したが、バイデン政権にはイランとの関係改善の動きも出ている。 (2105-040305)

7月14日: 間接協議中断を通告

 イラン外務次官が7月17日、イラン核合意の再建に向けた米国との間接協議の再開について「8月に発足する反米保守強硬派の次期政権を待たなければならない」とツイッターに投稿し、穏健派ロウハニ政権が間接協議を中断して任期中の交渉妥結を断念したことを初めて公に認めた。
 次官は、4月にウィーンで始まった間接協議でのイラン交渉団トップだが、イランは7月14日に協議を仲介するEUに中断の方針を通告していた。
 核合意は、トランプ前米政権の一方的離脱と制裁強化、イランの合意破りによって深刻な機能不全に陥っている。 (2108-071801)

10月13日: 米国務長官、外交以外の選択肢を警告

 ブリンケン米国務長官が10月13日にワシントンでイスラエルのラピド外相、UAEのアブドラ外相と3者会談を行った後の共同記者会見で、イランが方針を転換しなければ、外交以外の別のオプションに取り組む用意があると述べ、イラン核合意維持に向けた交渉に復帰しないイランを牽制した。 (2111-101401)

11月24日: 米特使、黙って見過ごさないと警告

 イラン担当のマリー米国特使が11月24日、2015年のイラン核合意復活に向け29日にウィーンで再開される協議を前に、イランが核兵器の開発にかなり近付く事態となれば、米国が黙って見過ごすことはないと表明した。
 マリー特使は米公共ラジオ局 (NPR) のインタビューで「彼らが近づき過ぎ、安心していられないほどになれば、当然われわれは黙って見過ごす訳にはいかない」と述べたが、「近づき過ぎ」という言葉の意味や、その場合の米国の選択肢には触れられていない。 (2112-112504)

11月29日: 間接協議が5ヵ月ぶりに再開

 イランと米国の核合意の復活へ向けた間接協議が5ヵ月ぶりに再開された。
 11月29日にウィーンで始まった間接協議はイランとアメリカが直接対面することなく、欧州諸国やロシア、中国が仲介する形で進められた。
 8月に誕生した保守強硬派のライシ政権下では初めての協議となる。 (2112-113003)

12月 3日: 進展がないまま中断

 核合意の立て直しに向けた協議はイラン側が強硬姿勢を示すなか、12月3日に具体的な進展のないまま中断された。
 今回の協議で、イランは当初これまでの合意内容を土台としていくことに応じていたが、具体的な話し合いに入った段階で大幅な修正を要求したため、会議に加わっている欧州各国は一旦交渉を中断し、本国でイラン案を検討することにした。
 核合意の立て直しに向けたイランと米国の間接交渉は今回が7回目で、8月にイランで強硬派のライシ政権が誕生してからは初めてになる。 (2201-120402)

12月 9日: バイデン米政権が新たな制裁を警告

 バイデン米政権が12月9日、イランの核開発計画を制限するための交渉が滞る中、イランに対する新たな制裁を準備しており、他国に対しても既存の制裁措置を順守するよう求める方針だと警告した。
 米大統領府のサキ報道官は現在行われているイランとの核合意再建協議が決裂した場合、イランの収入源を制限するために追加措置を講じざるを得なくなると述べた。
 バイデン政権は対イラン制裁への順守について協議するため、財務省と国務省の当局者チームがUAEを訪問すると発表した。 UAEはイラン産原油を購入している。 (2201-121001)

12月15日: イランが監視カメラの再設置に合意

 国際原子力機関 (IAEA) が12月15日、イランの首都テヘランの北西カラジにある核関連施設に監視カメラを年内に再設置することでイランと合意したと発表した。
 カラジの施設はウランを濃縮する遠心分離機の部品を製造しているが、イランは査察の対象外として再設置を拒んでいた。
 IAEAのグロッシ事務局長は声明で「イランでのIAEAの検証・監視活動にとって重要な進展だ」と述べた。
 ただ、イランは録画した映像はIAEAには提供しない可能性が高く、核開発の全容把握が難しい状況は変わらなそうである。 (2201-121603)

2・1・1・1・7 イラン核施設への攻撃

 イラン国営メディアが6月23日、テヘラン北西カラジにある原子力関連施設に対してUAVによる攻撃があったが阻止したと報じた。
 一方、イスラエルの一部メディアは、この攻撃によりウラン濃縮に用いる遠心分離機向けの部品製造施設で被害が出ていると報じた。 (2107-062501)
2・1・1・2 軍備増強

2・1・1・2・1 軍事予算の倍増

 イランのライシ大統領が12月12日、革命防衛軍 (IRGC) の2022年予算にIRR930T ($22B) と前年度のIRR403Tの二倍以上を配分すると発表した。
 一方、正規軍の予算は前年度IRR212.79Tに対し2022年度はIRR339.68T ($7.99B) を要求するという。 (2201-121607)
2・1・1・2・2 弾道ミサイル

強力 SLV エンジンの試験

 イランが2月1日、最も強力なロケットエンジンの実現につながる人工衛星発射試験に成功したと発表した。
 イラン国防省の報道官は、このロケットは移動式の発射機から打ち上げることが可能で、220kgの衛星1基、または小型衛星を最大10基搭載することができるとした。
 固体燃料と液体燃料を組み合わせて使用し、高度500kmまで達するという。
 米国が反発し、イランの核開発問題を巡る緊張が高まる可能性もある。 (2103-020202)
【註】他の報道ではエンジンの試験に成功としている。

人工衛星の打ち上げ試験

 イラン国防省が12月30日、人工衛星を搭載したロケットの打ち上げに成功したと発表した。
 同省報道官は軌道に達したかどうかは明らかにしていないが、ロケットは、高度470kmに達し、3つの研究装置を宇宙に送ったと述べ、これが人工衛星を軌道に乗せるための実験であることを示唆した。
 イランはここ数年、技術的な問題から何度も衛星打ち上げに失敗してきた。 (2201-123103)

Zoljanah SLV験

 イランが強力な固体燃料ロケットを使用したZoljanah SLV初の試験を今までSafir SLVの発射を行ってきたKhomeini宇宙センタで2月1日に実施したと報じた。
 イランTVによると新型SLVは全長25.5m、重量52,000kgで、最初の二段は胴径150cmの固体燃料ロケット、三段目には125cmの液体燃料ロケットが使用されている。
 Zoljanahは500kmの軌道に220kg衛星を打ち上げる能力を有するという。 (2104-021002)

 イスラエルの国連大使が4月7日に安保理に送った書簡で、イランが2月1日に発射し初公開したZoljanah SLVをBMにすれば、1tの弾頭を搭載し射程が5,000kmになると見積もっていると述べた。
 今までイランのBMで射程が最も長いとされてきたのはKhorramshahrで、欧州が2019年3月に安保理に提出した見積もりでは750kgの弾頭を搭載して射程は3,000kmとされていた。 (2106-042811)

舶用コンテナに擬した発射機

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が7月7日に、UAV、ATGMなどの最新兵器を公表した。
 その中に舶用コンテナに擬した発射機にFateh-100シリーズのTBMを2発ずつ搭載したものが少なくとも3基あった。
 似たシステムは2020年にも公表されたがその際にはミサイルではなくロケット弾であった。
 またIRGCが3月に公表した地下基地発射型と同型と思われる大型ミサイル6発を搭載した同様発射機も少なくとも2基映っていた。 (2108-070807)
【註】発射機を汎用船舶コンテナに組み込み隠蔽する手法は、かねてからロシアが各種行っている。

各種最新兵器を取得

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が7月7日、IRGC地上軍がTBM、UAV、ATGMなどほを含む最新兵器を取得したと発表した。
 発表された画像には2発のTBMを搭載した軌条発射機少なくとも3両や、キャニスタ6本を搭載した発射機少なくとも2両などが映っていた。
 このキャニスタ発射機は3月にIRGCが公表したHateh-110の埋設発射機と似ているが、全長胴径ともにそれより小さいことから、2020年8月に発表したFateh-110の縮小型であるFtehと見られる。
 FtehはイスラエルのSpike MR ATGMのコピーであるが、イランのFars通信によるとSpike MRより射程が2.5km長い8kmと言う。 (2109-071411)

2・1・1・2・3 対艦弾道弾

洋上標的に対し ASBM を発射し命中

 イラン国営TVが、革命防衛軍が1月16日にインド洋上の標的に対しASBMを発射し命中させたと報じた。
 国営TVが報じた映像では2発のASBMが1,800km離れた標的船に向け発射された。 (2102-011605)

 イラン革命防衛軍 (IRGC) がGreat Propher 15演習で1月16日に、1,800km遠方の洋上目標に向けBMを発射したと発表した。
 IRGCが公表した画像には6基のMRBMが写っており、そのうち液体燃料のGhadr、Emadの機動RV型、固体燃料のSejilなど少なくとも3基が発射された模様である。 (2103-012705)

ペルシャ湾から170km以上離れた山岳地帯に海軍がミサイル施設を開設

 イラン革命防衛軍が3月15日、海軍が新missile cityを開設したと発表した。
 新施設はペルシャ湾から170km以上離れたShiraz市北方の山岳地帯にあり、現司令官の少将と海軍司令官が隧道基地を視察する様子が公表された。
 ただ、衛星画像ではこの基地が2003年には建設されており、2009年には隧道で接続されていることが判明している。 (2105-032413)

2・1・1・2・4 巡航ミサイル

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・1・1・2・5 艦 船

タンカーを改造した多用途艦

 イラン国営TVが、海軍が2日間の日程で1月13日にオマーン湾南東部で、短距離ミサイルの演習を開始したと報じた。 この演習にはミサイル艇Zerehと補給艦Makranの新型艦艇2隻が参加した。<
 補給艦Makranは全長228m、幅42m、121,000tとイラン海軍最大で、ヘリパッドを有する。 (2102-011308)

 ロイタ通信によると、イラン国営放送は1月13日、オマーン湾で自国で開発したイラン海軍のヘリ空母Makranを使った演習を公開した。
 Makranの活動範囲は、オマーン湾からインド洋北部、バベルマンデブ海峡や紅海が含まれるという。 (2102-011402)

 イラン革命防衛軍海軍がタンカーを改造した多用途艦Makranを就役させた。
 全長228m、排水量121,000tのMakranは舶用コンテナを並べた上に大型飛行甲板を持ち、その後方にクレーンで発進させる小型艇4隻以上積載している。
 また対空用に20mm及び双連23mm砲を6箇所に持ち、艦橋の両側には12.7mm重機銃を備えている。 更に飛行甲板下には地上発射型の対艦ミサイルが偽装網に隠されている。 (2103-012016)
大規模小型舟艇群の整備

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が2月8日、IRGC海軍がペルシャ湾で多数攻撃をするための小型艇340隻を受領したと発表した。 引き渡しはIRGC海軍の根拠地であるBandar Abbasで行われ、2月6日に衛星画像では地上に並べられた少なくとも199隻が写っていた。
 これら小型艇は重機関銃とMRLを装備しているほか、操縦席の屋上にはAbabil-2 UAVを搭載し、偵察または突入攻撃を行うと見られる。 (2104-021713)

大型の双胴艦

 Mazar衛星の画像からイランが大型の双胴艦を少なくとも3隻建造していることが明らかになった。
 建造されているのは全長72m、幅18mで、低RCSを狙った形状や、甲板の面積が最小限に抑えられていることから、高速輸送船ではなく戦闘艦として建造されていることが覗える。
 革命防衛軍 (IRGC) 海軍 (IRGCN) が現在保有している最大の高速艇は中国で建造された全長39mのThondar 10隻である。 (2106-040703)

 イラン海軍が3隻建造している双胴型艦の一番艦が進水していることが、7月24日にMaxar衛星が撮影したQeahm島の画像から明らかになった。
 一番艦は全長70mでヘリ甲板が取り付けられている。
 Bandar Abbas西方で建造中の二番艦は7月24日時点ではまだ陸上にあるが、飛行甲板を示す塗装はなされていない。
 三番艦は7月15日のはまだ屋根の下にある。 (2110-080409)

Kilo 級潜水艦

 Maxar衛星が5月25日に撮影した画像によると、2020年12月8~19日にイランのBandar Abbas海軍基地で全てドック入りしていたイランのKilo級潜水艦3隻のうちの1隻が入っていた乾ドックに水が入れられ、復役しそうな状況である。 (2108-061608)

2・1・1・2・6 U A V

航続距離7,000kmの UAV

 イラン革命防衛軍 (IRGC) 司令官が27日に国営TVで放映された演説で、航続距離7,000kmのUAVを複数保有していると明かした。
 司令官はこれ以上の詳細は語らなかったが、新型UAVの行動半径は最大で3,500kmに及ぶとみられる。
 イランが2021年に発表した最も航続距離が長いとされていたUAV Gazaの行動半径は2,000kmであった。 (2107-062803)

Gaza MALE UAV

 イラン革命防衛軍が5月21日、RQ-9A Reaperと似たサイズのUAV Gazaを公開した。
 全長11m、翼端長20mのGazaは実用上昇限度35,000ftで偵察監視では500km、13発の爆装で2,000kmの行動半径と、35時間の滞空能力を持つという。
 2021年内には試験を完了し、2022年には就役するという。 (2108-060212)

空対空 UAV

 イスラエルの安全保障当局者が10月17日、イランが対地/対艦用のUAVを対空用としても使っていると述べた。
 イランは1月に行った防空演習でTarar UAVからAzarakhsh AAMを発射している映像を公開している。
 またShahed-141と呼ばれるステルスUAVは空対空戦用と見られているが、少数がIRGCに引き渡されたというものの、実配備されたかについては定かではない。
 遊弋型SAMとしては米軍が358 SAMと呼んでいるイラン製UAVがイエメンに持ち込まれている。 (2112-102715)

2・1・1・2・7 防空システム

短距離型 3 Khordad SAM

 イラン革命防衛軍が5月21日、3 Khordad SAMの短距離型を公開した。
 3 Khordadは2014年に初公開されたSAMで、2019年6月20日に70km離れたオマーン湾上空でRQ-4A Global Hawkを撃墜している。
 短距離型3 Khordadは9 Deyと呼ばれ、3発搭載した3 KhordadのTELARに4発入りポッドを2個追加搭載した形をしている。
 3 Khordad TELARに搭載されたレーダは新型のQodsで、ステルス機を500kmで補足できるという。
 ただこのレーダは明らかにベラルーシKB Radar社製またはそのコピーのようで、KB社のVostokであれば、妨害のない状態で高度10km以下、距離360km以内で戦闘機を捕捉できる。 (2108-060211)

新型の Moraqeb レーダと Borhan C2 装置

 イランの防空部隊が9月1日、新型の監視レーダとC2装置を公表した。
 これらはMIM-23 HAWKのイラン型であるMersad-16 SAMの新型システムで試験されているという。
 レーダはAlborzと呼ばれる3Dフェーズドアレイレーダで捕捉距離は450km、追随目標数は300である。
 このレーダは2020年4月に公表されたMoraqebレーダと良く似ている。
 一方、Borhan C2システムはレーダやEOシステムから送られてくる近距離低空の目標情報を処理して、目標情報を迅速に上級部隊に送るという。 (2111-091510)

358 SAM 遊弋型 SAM

 イラクの親イラン民兵部隊 (PMF) が10月21日に自身のウェブサイトで、PMFの第52旅団がSalah-al-Din県の東部でミサイルの集中攻撃を排除したと、遊弋型SAMの画像と共に報じた。
 このSAMは2019年11月に米海軍がイラン製の武器をイエメンに運んでいたダウ船から押収したと同型であった。
 Al-Masdar Newsは24日、このミサイルについて米軍は2021年初めにイエメンで発見された時点で358 SAMと呼んでいる報じている。
 同通信がイエメン国防省の話とて、イエメンのフーシ派がイエメンのMarib近くのSirwah上空で米軍のMQ-9を撃墜したと報じた。 消息筋は射程が100km、射高は8kmと見ている。 (2201-110318)

2・1・1・3 大規模演習

1月7日: ペルシャ湾

 韓国タンカーを拿捕したイランがペルシャ湾で数百隻の艦船を動員した大規模演習を実施した。
 Bloomberg通信によると、イラン革命防衛軍が1月7日にAsaluyeh沖で700隻以上の小中型艦艇が参加した演習を行った。
 これより先、イラン革命防衛軍は1月4日、海洋汚染を理由に韓国のケミ号を拿捕しているが、Asaluyeh海域は韓国ケミが抑留されているバンダルアバス港から西に450km離れたところにある。 (2102-010802)

1月13日: オマーン湾

 ロイタ通信によると、イラン国営放送は1月13日、オマーン湾で自国で開発したイラン海軍のヘリ空母Makranを使った演習を公開した。
 イランは核開発を拡大させる法案を可決し、ウランの濃縮度を20%に引き上げる作業を始めるなど欧米との緊張が高まっており、今月始めにも国産UAVを使った大規模演習を行っている。 (2102-011402)

2・1・1・4 ロシア、中国への接近

ロシア海軍との合同演習

 イラン国営TVが、イラン海軍、革命防衛軍海軍とロシア海軍がインド洋の17,000kmに広がる海域で合同演習を開始したと報じた。 ロシアからは駆逐艦1隻と補給艦及びヘリ1機が参加している。  イランとロシア海軍の演習は、2019年に中国を交えた3ヵ国で4日間にわたる演習を行って以来となる。 (2103-021605)

2・1・1・5 米国との対立

4月26日: 高速沿岸戦闘艇3隻が米艦に接近、米艦が警告射撃

 米軍が4月27日に声明で、ペルシャ湾北部の国際水域で26日にイランの革命防衛軍海軍 (IRGCN) 高速沿岸戦闘艇3隻が米艦に接近したため、警告射撃を行ったことを明らかにした。
 米側が無線や拡声器で警告したもののIRGCN艇が60mの近距離距離まで接近したため、米哨戒艇Fireboltが警告射撃を行ったところIRGCN艇は安全な距離に移動したという。
 米当局者によると、詳細は現時点で不明だが、過去の同様の事案ではイラン指導部の指示ではなく、現場の指揮官の判断で行われたケースが多いという。 (2105-042802)
【註】Fireboltは25mm砲2門と12.7mm機銃、40mm擲弾重などを装備する満載排水量334tのCyclone級哨戒艇で、同型艇4隻と共にバーレーンに派遣されている。

 イラン革命防衛軍海軍 (IRGCN) の高速艇 (FIAC) 3隻が4月26日20:00にアラビア海北部で、米海軍哨戒艇Fireboltと沿岸監視隊哨戒艦Bardnoffに60mの距離まで異常接近したためFireboltが警告射撃を行ったところFIACは安全距離まで離れた。
 米第5艦隊によると4月2日にもペルシャ湾南部でIRGCNのFIAC 3隻とHarth 55が米沿岸監視隊の哨戒艦WrangellMonomoyに70ヤードまで異常接近したという。
 Harth 55とはHarth双胴船の全長55m型である。 (2107-050501)

5月10日: 米沿岸警備隊 (USCGC) の警備艦が警告射撃

 米国防総省が5月10日、米沿岸警備隊 (USCGC) の警備艦がホルムズ海峡で、米艦に接近してきたイラン艇群に対し警告射撃を行ったと発表した。
 射撃を行ったのは警備艦Mauiで、革命防衛軍艇13隻が接近してきたため30発の警告射撃を行った。
 ペルシャ湾では4月26日にもイランの高速艇3隻がUSCGCのBaranofに対し68ヤードまで接近したためFireboltが警告射撃を行っている。 (2106-051011)

現場指揮官の独走ではなくイランの政策変更

 イラン革命防衛軍海軍 (IRGCN) による米艦艇への妨害活動は現場指揮官の独走ではなく、イランの政策変更の兆候と見られる。
 米第5艦隊によるとSSGN Georgiaが護衛艦艇を伴ってホルムズ海峡を通過しようとしたところ2隻のIRGCN艇が接近したため警告したが従わず300ヤードに接近したため、米沿岸警備隊のMauiが警告射撃を実施した。
 それでもIRGCN艇は警告に従わずMauiから150ヤードまで接近したため再度警告射撃を実施した。
 第5艦隊によると4月2日にはIRGCNの高速双胴艇が沿岸警備隊の警備艦Fireboltに64mまで接近したためFireboltが警告射撃を実施している。 (2107-051910)

10月 7日: 革命防衛軍の高速艇が米国船を捕捉、米海軍は否定

 イラン国営TVが10月7日、革命防衛軍の高速艇が米国船を捕捉したと報じた。
 TVの映像には米国旗を掲げた船と、それを追跡しているように見える高速艇及び乗組員が映っていた。
 これについて米海軍報道官は、過去にそのような事案があったとは聞いていないと述べた。 (2111-100709)

10月24日: 原油タンカーを拿捕、米海軍は否定

 米国防総省報道官が11月3日、米軍がオマーン湾で原油タンカーを拿捕しようとしたとのイランメディアの報道について、ばかげた主張であり、完全に虚偽だと否定した。
 報道官は、米第5艦隊は10月24日にイランがタンカーを拿捕するのを監視していたと反論し、イランが国際法に反してタンカーに乗り込んで拿捕したと批判してイランの主張は「まったく真実ではない」と一蹴した。 (2112-110404)

 イラン革命防衛隊がオマーン湾で10月24日、米軍艦艇の目の前でベトナム船籍の石油タンカーSothysを拿捕した。
 同革命防衛隊が公表した拿捕当時の映像では複数の小型船艇が周囲を警戒するなか、コマンド部隊がヘリからSothysに乗船する模様が捉えられている。
 AP通信が船舶の位置と動きに関するリアルタイム情報を調べたところ、同船は11月2日現在ホルムズ海峡に面したイラン南部のバンダルアバス港に係留されている。 (2112-110408)

 イランメディアが11月3日、米海軍がイランの石油を輸送中のタンカーをハイジャックして積み荷を他のタンカーに移したため革命防衛軍 (IRGC) が米海軍艦の動きを阻止し、10月25日にこのタンカーをBandar Abbasに連行したと報じた。
 公開した映像では米海軍駆逐艦Michael MurphyThe SullivansとタンカーSothysの間にIRGCの双胴型高速艇Shahid Nazeriが入り、ヘリでIRGCの特殊部隊を降下させていた。 近くには米沿岸監視隊のSentinel級警備艦もいた。
 この報道直後に米国はこれを否定し、イランがオマーン湾の公海上で国際法に反する積み荷の積み替えを行っていたとした。
 船舶自動識別システム (AIS) のデータによるとベトナム船籍のSothysは6月にペルシャ湾を離れ黄海に向かったが、数週間前に戻ってきていた。 (2201-111013)

10月29日: 米、イランの UAV 提供巡り新たに制裁

 米財務省が10月29日、イラン革命防衛隊がレバノンのヒズボラなどイランが支援する組織にUAVを提供し中東地域の安定を脅かしているとして新たな制裁を発動した。
 今回の制裁はイラン革命防衛隊の幹部を含む4人とイランのUAV提供計画を支援したとみられる2社が対象で、米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁止される。 (2111-103002)

2・1・1・6 艦船の大西洋進出

 国営イラン通信が6月12日にイラン軍副司令官の発言を引用し、イラン海軍駆逐艦が大西洋を航行したと報じた。
 イラン軍艦船が外国の港に一切寄港せず大西洋に進出したのは初めてともした。
 駆逐艦Sahandと後方支援艦から成る海軍の第77戦略艦隊は1ヵ月余前にイランのバンダルアッバス港を出港した。
 米国はこの2隻の動向を監視しているとされ、米情報機関は大西洋まで足を伸ばしている意図の背景などを探っているという。 (2107-061205)
【註】全長94.5m、満載時排水量1,540tのSahandは、一般にはフリゲート艦とされている。 ただ速力は40ktと極めて高速である。
 一般的にはイランは駆逐艦を保有していないとされている。

 イラン海軍が6月10日、イランの艦船が初めて大西洋に進出したと発表した。
 米Politicoが5月29日、フリゲート艦とタンカーを改造してヘリ用の大型飛行甲板を持つMakranの2隻がアフリカ東岸を航行しておりベネズエラに向かう可能性があると報じていた。
 米国はイランによるベネズエラへの武器輸出を警戒している。
 イラン海軍司令官のサヤーリ少将が6月10日にPoliticoの報道を認めた上で、フリゲート艦SahandMakranが5月10日にBandar Abbasを出港し、途中無寄港で喜望峰を廻って大西洋に入ったと述べた。 更にCape Verde諸島を廻りAzoresの南に達したとも述べた。 (2108-062308)

 5月にイランを出港しアフリカを回ってヨーロッパまで航行した、国内建造のフリゲート艦Sahandとタンカーを改造したMakranが、45,000kmの航海を終え9月7日に帰港した。
 欧州では7月25日にSt. Petersburgで、ロシアの海軍記念日パレードに参加した。 (2111-091509)

2・1・1・7 アゼルバイジャンとの緊張

国境近くで地上部隊の演習

 イラン陸軍が9月30日にアゼルバイジャンに対し、緊張が続く両国国境近くで地上部隊の演習を行うと通知した。
 演習は装備の点検と即応体制の示威が目的で10月1日に開始され、UAV、攻撃ヘリ、戦車、火砲などが参加するという。
 これについてアゼルバイジャンのアリエフ大統領はトルコのAnadolu通信に、イランが自国の領内で演習を行うのは主権の範囲で許されるが、なぜこの時期に、なぜ国境近くで行うのかとの疑念を露わにした。
 アゼルバイジャンは2020年のナゴルノカラバフを巡る戦いで、イスラエル製のハイテクUAVを導入するなどイスラエルとの軍事的結びつきを強めている。 (2110-093007)

イラン「アゼルバイジャンにイスラエル軍」

 アゼルバイジャンが近年、高性能の小型UAVをイスラエルから調達するなど戦略的な関係を深めているのに対し、イランはイスラエルがアゼルバイジャンを拠点に攻撃を仕掛けてくる可能性があると警戒し、アゼルバイジャンとの国境付近で大規模演習を実施して隣国の動きを牽制している。
 これに対してアゼルバイジャンはイスラエル軍の存在を否定した上で、今なぜ国境で軍事演習をする必要があるのかとイランを非難し、10月5日からトルコとともに国境付近で軍事演習を始め緊張が高まっている。
(2111-100803)

2・1・1・8 周辺国との関係

イラン製 UAV によるヨルダンへの攻撃

 ヨルダンのアブドラ国王がCNNのインタビューで7月25日、同国がイラン製の形状をしたUAVによる攻撃を受けていると述べた。 (2110-080408)

キプロスでイランが支援するグループがイスラエル人にテロ攻撃

 イスラエル政府は10月4日、キプロスでイランが支援するグループがイスラエル人にテロ攻撃を実行しようとしたとイランを非難した。
 イスラエルのメディアによると、キプロス当局は9月27日にロシアのパスポートを所持する男を逮捕したが、男の車からは銃と弾薬が見つかり、ほか数人とテロを起こそうとした疑いがあるという。
 キプロスにはイスラエルの多くの防衛関連企業が拠点をいている。 (2111-100803)

サウジアラビアと安全保障問題に関する専門家協議

 ヨルダン国営通信が12月13日、サウジアラビアとイランが核問題を含む安全保障問題に関して専門家協議を開いたと報じた。
 同通信によると、協議は核不拡散を専門とするヨルダンのシンクタンクが仲介して首都アンマンで開催し、信頼醸成に向けてイランの核やミサイルの脅威を軽減する方策を話し合った。
 双方は地域の安定向上を望んでおり、互いを尊重する雰囲気だったという。
 ロイタ通信は、イランの政府当局者は参加しなかったものの双方の現実をより理解するためには有益だとする外交筋の話を報じた。 (2201-121308)

2・1・1・9 サイバ攻撃

 米国土安全保障省が11月17日、イラン政府と関係のあるハッカー集団が、米国の医療機関や交通関連企業など重要インフラ分野を標的としたサイバ攻撃を仕掛けていると警告を発した。
 ハッカー集団は、Microsoft社などのソフトウエアの弱点を狙ってネットワークに侵入して、身代金を要求するランサムウエアを仕込んだり、情報を抜き取ったりする手口といい、同省は警戒を呼び掛けた。 (2112-111805)
2・1・2 イエメン

2・1・2・1 戦 況

2・1・2・1・1 内戦の戦況

8月29日: 暫定政権軍基地にミサイルと UAV 攻撃

 サウジアラビアのメディアなどが、イエメンの南部ラヒジュで8月29日、暫定政権側のアナド空軍基地にミサイルとUAVによるとみられる攻撃があり、少なくとも兵士ら30名が死亡し、56名が負傷したと報じた。
 基地では兵士たちが朝礼のために集まり、整列していたという。
 ミサイルはフーシが支配するイエメン南部の都市タイズから発射されたという情報がある。
 6年目に入ったイエメン内戦で米国のトランプ前政権はサウジの介入を認めてきたが、バイデン米政権は2月に停戦を要求し、サウジも全土での停戦案を示したが、フーシ側は応じていなかった。 (2109-082907)

10月: 要衝 Marib での戦闘が激化

 イエメン内戦は2014年にイランの支援を受けるフーシ派が首都サヌアを制圧したことによって始まり、翌年にはサウジアラビア軍が政権支援のために介入したことで、これまで数万人が死亡、数百万人が避難民化しており、国連は世界最悪の人道危機としている。
 国際社会に認められた暫定政権の支配下にある西部の要衝Maribでは戦闘が激化しており、サウジアラビアが主導する連合軍が18日に同市近郊で実施した空爆によりフーシ派150人を殺害したと発表した。
 連合軍が発表した死者数は1週間で1,100人を超えたが、フーシ派は自らが被った損失について言及することはほとんどなく、AFPは死者数を検証できていない。 (2111-101903)

11月: 政府軍が要衝 Hodeida から撤退

 国際的に承認されイエメン政府と国連の停戦監視団が11月12日、戦略的に重要な港湾都市Hodeidaから撤退したと発表した。
 フーシ派がHodeidaでは2018年にフーシ派とサウジ連合軍に支援された政府軍との間で激戦があり、同年12月に国連の仲介で停戦と15,000名以上にのぼる捕虜の交換が行われていた。 このため政府軍側はフーシ派の停戦違反だと抗議していた。 (2112-111310)

11月: 西部戦線で親政府派が攻勢

 イエメンの親政府系武装勢力が11月19日、同国西部で反政府系フーシ派の主要補給路に繋がるアルアデン十字路を占領し、フダイダ県の同補給路を俯瞰できる拠点も制圧したことを明らかにした。
 有志連合軍は19日、西部戦線の数ヵ所でフーシ派に対する作戦を展開して、紅海を背にした政府軍を側面から支援した。
 過去24時間の戦闘で、攻守双方に80人を超える死者と100人以上の負傷者を出したが、戦死者の多くはフーシ派戦闘員だったと伝えられている。
 部隊の配置変えが奏功した連合軍は、西部戦線の7ヵ所でフーシ派に重大な損害を与えたと報じられているが、戦況についてフーシ派はコメントを拒否している。 (2112-112203)

 イエメンで11月26日にサウジアラビアが率いる親政府派連合軍が、同国南西部の山岳地帯に足場を築くなど前線が流動化し、地域によってはフーシ派との戦闘が激化している。
 連合軍とフーシ派の戦闘は、紅海沿岸に位置する戦略的に重要な港町、ホダイダを巡り熾烈になるなかで、連合軍がホダイダの南に位置するモカを制圧し、ここを足場にタイズ県の山岳地帯を越えて、内陸部に兵を進めている。 (2112-112903)

12月 9日: UAE が支援する武装グループが Hudaydahを奪還

 UAEが支援する連合武装グループが12月9日、イエメン南西部のTa'izz県Makbanah地区でフーシ派との戦闘の末、山岳地帯を確保した。
 暫定政府軍とイランが支援するフーシ派との内戦が続くイエメンでは11月に紅海沿岸の港湾都市Al Hudaydahを巡る戦闘で、25,000人以上の市民が住む家を追われた。
 2018年に国連が調停した停戦以降、もっとも大規模となったHudaydahの戦闘では、政府軍が撤退した後にフーシ派が進出したが、そこをUAE連合軍が攻撃してHudaydahを奪還するなど、三つ巴の様相を呈している。 (2201-121303)

12月: Marib 争奪戦

 イエメンで、首都サナアの東120kmに位置する戦略的要衝のMaribを巡る親政府派とフーシ派の戦闘が激化しており、ここ数週間で双方に数百人の死者が出ている。
 Maribには石油産出施設があり、イエメンの北半分を支配下に置きたいフーシ派は、このMaribの制圧に兵力を投入しており、ここに来て親政府派に対する攻勢を強める一方で、サウジアラビアにも越境攻撃を仕掛けている。 (2201-121708)

12月20日: 首都サナア空港のフーシ派拠点を精密空爆

 サウジアラビア主導の有志連合が12月20日、イエメンの首都サナアの空港にあるフーシ派拠点に対して精密空爆を敢行したと発表した。
 同連合は国連関係者と市民に空港から退避するよう勧告し、その1時間後に空爆が実施された。
 有志連合は、イランの支援を受け2014年以降首都を占拠しているフーシ派が同空港を軍事拠点化し、サウジアラビアに対してBMを発射したり爆装したUAVを飛ばしていると主張している。
 空港管理事務所によれば、国連の航空機に燃料を供給する設備が破壊され、燃料が供給できなくなったとしているが、国連によればフーシ派は人道支援物資を積んだ、少なくとも2機の国連機の着陸を禁止し、今後予定されている到着便をすべてキャンセルしたという。 (2201-122201)

12月22日: 首都サナア市街を精密空爆

 内戦が続くイエメンの首都サナアで12月22日、サウジアラビア主導の有志連合軍がフーシ派拠点に対してミサイル攻撃し、一部が地下トンネルの天井部分に着弾した。
 連合軍は12月に入り、人口密集地帯に対する攻撃を激化させており、20日にはサナア空港に対して精密爆撃を行った。 (2201-122407)

12月25日: 連合軍が大規模な軍事作戦

 サウジアラビア主導の連合軍が12月25日、イエメンへの大規模な軍事作戦を実施した。
 フーシ派によるとされるサウジへのミサイル攻撃で2人が死亡したことへの報復で、イエメンの医療関係者によると、この報復空爆でフーシ派の支配するサヌア北東の町アジャマで3人が死亡、6人が負傷した。 (2201-122502)

12月30日: 連合軍がイエメン政府軍の兵営を誤爆

 イエメン軍当局者が12月31日、サウジが主導する有志国軍が30日にShabwa県にあるイエメン政府軍の兵営を誤爆し、12名以上が死亡し、8名以上が負傷したと発表した。  これについて有志国軍報道官はコメントしていない。 (2201-123107)

2・1・2・1・2 フーシ派の装備

 イエメンのフーシ派が3月11日にMartye Commander Exhibitionで21種類の新兵器を公開した。 その一部はイランから搬入されたもののようであるが、大部分はイランへの依存度が高くないと見られる。  UAVではSamad-1/-2/-3/-4、Shihab、Rasid-1、Waeid、Marsad、Rjum、Qasaf、Qasaf-1、Khatifなどが公開された。 Samad-3/-4はSamadシリーズの新型で、再使用型のSamad-4は25kg爆弾を両翼に搭載でき、航続距離は2,000kmという。 (2105-032415)
2・1・2・1・3 フーシ派のサウジ攻撃

2月27~28日: リヤドと南部の複数の地域に BM 及び UAV 攻撃

 サウジアラビア国営メディアが、2月27日から28日にかけて首都リヤド上空でBM 1発が迎撃されたほか、南部の複数の地域で爆発物を積んだUAV 6機が破壊されたと報じた。
 リヤドでは迎撃されたミサイルの破片で家屋が損壊したが、人的被害はなかった。
 イエメンの武装組織フーシ派が攻撃を認め、侵略が続く限り作戦を拡大すると主張している。 (2103-022803)

3月 4日: ジッダのサウジアラムコ関連施設を BM 及び UAV 攻撃

 イエメンの親イラン武装組織フーシ派が3月4日、サウジアラビアの西部ジッダにある国営石油会社サウジアラムコの関連施設をミサイルやUAVで攻撃したと発表した。 これについてサウジ側から公式の反応は出ていない。
 フーシ派は、内戦に軍事介入しているサウジや、サウジを支援する米国による侵略や包囲に対抗する「正当な権利を行使した」と主張し、攻撃は正確に命中したとしているが、実際に被害が出たかどうかは不明である。 (2104-030406)

3月 7日: サウジアラムコの輸出施設を UAV やミサイル攻撃

 イエメンのフーシ派が 3月7日、サウジアラビアのRas Tanuraにある国営石油会社サウジアラムコの主要輸出施設など、同国の石油産業の中心地に向けてUAVやミサイルを発射した。
 フーシ派報道官は、サウジ中心部における広範な作戦でUAV 14機とBM 8発を発射したと発表した。
 フーシ派はまた、サウジの都市Dammam、アシル、Jazanにある軍事標的にも攻撃を行ったことを明らかにした。
 これに対してサウジ政府は、世界のエネルギー安全保障に対する失敗した攻撃と非難した。 (2104-030801)

3月19日: リヤドにある石油精製施設に UAV 攻撃

 サウジアラビアのエネルギー省が3月19日、首都リヤドにある石油精製施設がUAVの攻撃を受けたと表明した。
 同省の報道官は、19日の攻撃は06:00すぎにあり、火災が起きたが死傷者はなく、石油供給にも影響はないとと説明した。
 イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、UAV 6機で国営石油会社サウジアラムコの施設を攻撃したと発表した。
 フーシはUAVによるサウジへの攻撃を重ねていて、3月7日にはサウジ東部ダンマン近郊のアラムコ施設へのUAV攻撃を主張していた。 (2104-031906)

3月26日: サウジアラムコの複数の施設や軍事施設に UAV 攻撃

 イエメンの武装組織フーシ派が3月26日、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの複数の施設や軍事施設にUAV攻撃を実施したと明らかにした。
 フーシ派の報道官によると、DammamのKing Abudlaziz基地やRas Tanuraのアラムコの施設などを攻撃した。
 サウジ国営通信によると、エネルギー省は石油製品供給基地に飛翔体の1発が命中したが死傷者はでていないとし、国防省は攻撃を受け石油輸出を守る抑止措置を講じたと報じた。 (2104-032612)

4月15日: サウジアラビア南部 Jizan を UAV やミサイルで攻撃

 イエメンのフーシ派が15日、サウジアラビア南部Jizanの複数の目標をUAVやミサイルで攻撃したと発表した。
 このうちサウジ国営石油会社、サウジアラムコの施設では火災が発生したとしている。
 フーシ派はPatriotなども攻撃したと主張しているが、サウジは火災や攻撃について確認していない。
 サウジ国営メディアによると、イエメンでフーシ派と戦うサウジ主導連合軍は先に、Jizanに向けて発射されたフーシ派の武装UAVを破壊したと述べていた。 (2105-041503)

5月31日: サウジ空軍基地をUAVで攻撃

 イエメンのフーシ派が5月31日、サウジアラビア南部のḪamīs Mušayṭのサウジ空軍基地をUAVで攻撃したと発表した。
 今のところサウジ当局の確認は取れていない。 (2106-053105)

6月19日: Khamis Mushaytの空軍基地を UAV で攻撃

 サウジアラビア国営テレビがサウジ連合関係者の話として、空軍が6月19日にイエメンのフーシ派がサウジ南部Khamis Mushaytの空軍基地に向けて飛来させたUAVを撃墜したと報じた。
 フーシ派は繰り返し同基地やサウジの他の都市を標的に爆発物を搭載したUAVやミサイルなどで攻撃しており、4月には国営石油会社サウジアラムコの施設では攻撃により火災が発生したとしている。 (2107-061902)

9月 4日: 重要な石油施設を BM 迎撃

 サウジアラビア国防省が、9月4日に重要な石油施設がある同国東部のジザンとナジュラーンに向かっていたBMを迎撃したと発表した。
 国営サウジ通信 (SPA) が報じた伝えた国防省の声明によると、ミサイルはダンマーム郊外の上空で迎撃され、その破片で子ども2人が負傷、住宅14棟に軽い損傷が生じたという。
 またサウジ主導の連合軍は、サウジに向かう爆発物を載せたUAV 3機を迎撃したとしていた。 (2110-090502)

2・1・2・1・4 サウジアラビア防空部隊の迎撃戦

サウジアラビア防空部隊の活躍

 米国防大学のデローシュ教授が、サウジアラビアは過去数週間にわたりイエメンのフーシ派からBMや爆装したUAVの攻撃を受けているが、空軍の防空部隊がかなりを撃墜し効果を上げていおり、サウジアラビア領内にBMが着弾した証拠はないと述べている。
 サウジ主導の多国籍軍報道官は、フーシ派が発射した350発のBMと550機の爆装UAVを撃墜したと述べている。
 サウジアラビアはPAC-3のほかにも改良HAWK、Shahine、MistralなどのSAMと、中東で唯一のE-3A AWACSやSAAB-2000 Erieye 2機などのAEW&C機を装備している。 (2104-033009)

 サウジアラビア防空部隊は2019年9月14日に施設が攻撃されて以来は成果を上げている。
 最近では3月7日にフーシ派が、ペルシャ湾の世界最大の石油輸出港 Ras Taura と Dammam 近郊の軍事基地に対しZulfiqar BM 1発とSamad-3長距離UAV 10機で攻撃した。
 これについてサウジ緊急事態省はRas TauraがUAV攻撃を受けたが損害はなく、アラムコ社の石油施設がBM攻撃を受け破片が落下したが死傷者は出なかったと発表している。 (2105-031710)

 サウジアラビア国営TVが4月11日、同国主導の連合軍が爆発物を搭載したイエメンのフーシ派のUAV 6機を撃墜したと報じた。
 連合軍はこれより先、フーシ派がサウジの都市ジャザンに向けて発射したBMも破壊したと述べていた。 (2105-041203)

9月 4日: 迎撃に失敗した模様

 サウジアラビアの防空システムが、9月4日のイエメンからの攻撃に対して明らかに迎撃に失敗した模様である。
 この攻撃でDammanでは子供2人が負傷し、14軒の住宅でガラスが壊れるなどの損傷を受けた。 複数のアマチュアが撮影した映像では夜空を侵入してくる飛行物体が地上に落下してから光を放っているのが映っていた。
 イエメンのフーシ派はZulfiqar BM 1発とSammad-3 UAV 8機で湾岸Ras Tanuraにあるアラムコの石油施設を、Badr BM 5発とSammad-3 UAV 2機でJeddah、Jizan、 Najranにあるアラムコの石油施設を攻撃したと発表した。 Zulfiqarはイラン製Quiamの長射程型である。
 またサウジ国防省は3発のBMと3機のUAVが東部の JizanとNajranを攻撃したと発表している。 (2110-090705)

 サウジアラビアの防空部隊が9月4日にイエメンのフーシ派と行った対空戦闘で、SAMが迎撃に失敗していたことが明らかになった。
 この日フーシ派はRas Tanuraにあるアラムコ社の石油施設をZulfiqar BM 1発とSammad-3 UAV 8機で攻撃した。 またJeddah、Jizan及びNajranにあるアラムコの施設をBadr BM 5発と別のSammad-3 2機で攻撃した。
 これについてサウジアラビア国防省は、JizanとNajranでBM 3発とUAV 3機を撃墜したと発表しJaddahについては言及しなかったが、Ras Tanura南側のDammamで迎撃したBMの破片で負傷者等の損害が出たと発表している。
 しかしDammamで複数のアマチュアが撮影した映像では、夜空を光の尾を引いて飛来する飛行体と、その地上落下後に見えた閃光を捉えていた。 (2111-091508)

12月: Patriot弾不足で米に緊急供給を要請

 Wall Street Journalが12月7日、イエメンの武装組織フーシ派による断続的なミサイル攻撃にさらされているサウジアラビアが迎撃ミサイルの不足を訴え、米国に緊急供給を要請していると報じた。
 サウジ政府は米国に迎撃ミサイル数百発を売却するよう要請し、カタールなど湾岸諸国や欧州諸国にも備蓄の一部を譲渡するよう求めているという。
 米当局者らによると、サウジは過去数ヵ月間、毎週十数発のBMやUAVによる攻撃を受けてきたが、大半はPatriotで迎撃に成功した。
 ただ、バイデン米政権が米軍のPatriot部隊など一部戦力を中東から撤収したために防備が手薄になり、迎撃ミサイルの備蓄数が危険水準にまで低下しているという。 (2201-120804)

2・1・2・2 暫定政権支援国

2・1・2・2・1 サウジアラヒア

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・1・2・2・2 U A E

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・1・2・2・3 米 国

 バイデン政権で国家安全保障問題を担当するサリバン大統領補佐官が2月4日に大統領府における記者会見で、米軍はイエメンのフーシ派への攻撃を続けているサウジアラビアが主導する連合軍の支援を今後行わないと述べた。 (2103-020403)

 バイデン米大統領が2月4日の外交方針演説で、サウジアラビア主導のイエメン軍事作戦への支援を停止すると表明し、イエメン内戦の停戦に向けた国連の取り組みを支援していく考えを示した。 (2103-020501)

2・1・2・3 フーシ派支援国

ロシアと中国

 バーレーンに司令部を置く米海軍第5艦隊が9日、アラビア海北部の公海で巡洋艦Montereyが6~7日の任務中に無国籍のダウ船を発見し、ロシアと中国製の違法武器を大量に押収したと発表した。
 その中にはロシア製のATGM、中国製Type 56突撃銃数千丁、PKM機関銃や狙撃銃、RPG数百点が含まれていたという。 (2106-050903)

レバノン

 サウジアラビアが10月29日、サウジ駐在のレバノン大使に48時間以内の国外退去を命じた。
 サウジ国営メディアは、同国の駐レバノン大使にも帰国を命じたと付け加え、更にレバノンからの輸入をすべて停止したと報じた。 ただこれは、サウジで働く何万人ものレバノン市民とその家族に影響を与えないともしている。
 この決定は、レバノンのコルダヒ情報相がイエメンでの戦争をサウジアラビアとUAEによる侵略と表現したビデオがSNS上で流布された数日後に行われた。 (2111-102903)

 UAE外務省が10月30日付で声明を出し、外交団のレバノン撤収を発表した。 (2111-103102)

 深刻な経済危機に陥っている中東のレバノンで、9月に発足した新政権のコルダヒ情報相が自らの発言でサウジアラビアなど湾岸諸国との関係悪化を招いたことから辞任することになった。
 かつてTV司会者だったコルダヒ情報相は閣僚就任前に出演した討論番組でイエメンの内戦をめぐり、イランが支援する反政府勢力を擁護するような発言をしていたのに対し、政権側を支援するサウジアラビアが猛反発し、レバノンの大使を追放したほか両国間の経済活動を事実上停止させ、クウェートやバーレーンなどほかの湾岸諸国も追随したことで危機的状況にあるレバノンの経済がさらに悪化していた。 (2201-120407)

2・1・3 カタール

2・1・3・1 サウジアラビアなどとの緊張

緊張の緩和

 サウジアラビアが1月4日、2017年に断交したカタールに対する空域と陸海国境の封鎖を解除すると決定した。 両国の和解協議を仲介したクウェートのアハマド外相が発表した。
 ロイタ通信によると、5日にサウジ北西部ウラーで開かれる湾岸協力会議(GCC)首脳会議で、関係修復を謳う文書への調印が行われる。 (2102-010501)

2・1・3・2 ヒズボラ支援に制裁

 米財務省が9月29日、レバノンのヒズボラに財政的物質的支援を行ったとして、カタール、サウジアラビア、バーレーン、パレスチナ国籍の複数の個人に制裁を科すと発表した。
 制裁措置はカタールと協調して実施する。
 同省外国資産管理局長は、ヒズボラは財源確保とテロ活動の支援に向け資金提供者のグローバルネットワークを構築することで、国際的な金融システムを悪用しようとしていると述べた。 (2110-093001)
2・1・4 イラク

2・1・4・1 戦 況

2月15日: クルド自治区の米軍拠点にロケット弾攻撃

 2月15日には北部クルド自治区アルビルの米軍駐留拠点の周辺にロケット弾攻撃があり、米軍施設の請負業者1人が死亡、米兵ら少なくとも9人が負傷し、バイデン政権は報復の用意があると表明して。 (2103-022102)

2月20日: バラド空軍基地にロケット弾数発

 イラク中部のバラド空軍基地に20日、ロケット弾数発が撃ち込まれ、駐留米軍の仕事を請け負っているイラク人1人が負傷した。
 ロイタ通信はイラク政府高官の話として、同様の攻撃はイランと連携するシーア派の民兵組織が行ってきたと報じた。
(2103-022102)

2月22日: バクダッドのGreen Zone にロケット弾2発

 2月22日に少なくとも2発のロケット弾がバクダッドのGreen Zoneに撃ち込まれたが負傷者は出ていない。
 治安当局者は米国大使館が目標だったとしている。 (2103-022206)

12月 5日: ISIS がイラク北部のクルド自治で攻撃

 複数のクルド自治政府治安筋が12月5日、ISISがイラク北部のカラ・サレム村付近で攻撃を行い、治安部隊Peshmergaの兵士4名と民間人1人が死亡、6人が負傷したことを明らかにした。
 Peshmergaのある大佐は、ISISの戦闘員が一撃離脱戦法を用いて夜間に攻撃を行っているとしたうえで、さらなる攻撃を防ぐため増援部隊が派遣されたと述べた。
 イラク軍関係者によると、国軍の治安部隊がPeshmergaを支援するため動員されている。 (2201-120604)

2・1・4・2 国内の宗派対立

カディミ首相の自宅を爆発物を積んだ UAV で攻撃

 イラクの首都バグダッド中心部の制限区域にあるカディミ首相の自宅が11月7日に爆発物を積んだUAVの攻撃を受けた。
 首相殺害を狙ったとみられ、地元メディアによれば警備要員数人が負傷したが、カディミ氏は無事だった。
 イラクでは10月の総選挙で親イラン政党連合が低迷したため選挙の不正を訴えるデモ隊の行動が激化し、治安当局との衝突で死傷者が出ており、政府に反発する勢力の犯行である可能性が高い。 (2112-110702)

 ロイタ通信が11月8日治安当局者らの話として、イラクで7日未明に発生したカディミ首相に対する暗殺未遂で、イランが支援するシーア派民兵組織が関与していたと報じた。
 攻撃に使われたUAVや爆発物はイラン製だったという。
 バグダッド中心部にあるカディミ首相の自宅が3機のUAVで攻撃され、うち2機は迎撃されたが残る1機が爆発した。
 カディミ首相は無事だった。 (2112-110806)

国会議員総選挙で親イラン民兵組織勢力の議席大幅減

 イラクで11月30日、10月に行われた国会議員総選挙の最終結果が発表され、イランと連携する反米の民兵組織に直属する勢力の議席大幅減が確定した。
 選管の発表によると、反米・反イランのシーア派の有力指導者サドル師の政治組織が2018年の前回選から19議席増の73議席を獲得し、最大勢力を維持した一方、前回選で48議席と躍進した親イラン民兵組織直系の征服連合は17議席と低迷し、37議席を獲得したスンニ派政党に第2勢力の座を譲った。
 親イラン勢力の国内浸透を嫌う有権者が増えたことが一因とみられる。
 民兵組織は集計が不正操作されたとして結果を認めず反発を強めている。 イラク駐留米軍の戦闘部隊は2021年末までに撤収する予定で、治安の不安定化を懸念する声も出ている。 (2201-120106)

2・1・4・3 反米の動き

トランプ米大統領に逮捕状

 イラクの国営通信が、バグダッドの裁判所が1月7日に2020年1月にイラン革命防衛軍のソレイマニ司令官とイラクの親イラン組織創設者の殺害に関与したとしてトランプ米大統領の逮捕状を出したと報じた。
 対米批判の象徴的な逮捕状で、執行される可能性はほとんどない。 (2102-010702)

2・1・4・4 派遣兵力の増減

NATO の大幅増派

 NATOが2月18日にオンライン形式で国防相会議を開き中東の治安情勢などを協議し、イラクでの治安の不安定化を受けて、現地の治安部隊に訓練を行っている要員を大幅に増やすことを決めた。
 その結果、イラクで現地の治安部隊に訓練を行っているNATOの部隊を、現在の500名から4,000名へと大幅に増員される。 (2103-021903)

有志連合部隊の戦闘任務終了

 イラクのアラジ国家安全保障顧問が12月9日、イラクに駐留する米軍主導の有志連合部隊の戦闘任務が終了したことを明らかにした。
 米軍は今後もイラクに残りイラク軍への助言と訓練のみに注力する。
 バイデン米大統領は7月のカディミ・イラク首相との会談で、年末までに駐留米軍が戦闘任務終了することで合意し、2,500名が駐留している米軍の主要任務は既にイラク軍への支援や訓練に移っていたため、戦闘任務が終わっても大規模な削減にはならないとみられる。 (2201-120908)

2・1・5 その他中東諸国

2・1・5・1 シリア

政権軍が反体制派の最終拠点への攻撃を再開

 シリアのアサド政権軍が反体制派の最終拠点であるイドリブ県への攻撃を再開した。
 7月17日にイドリブ県で政権軍の砲撃があり、シリア人権監視団によると少なくとも11人が死亡した。
 長期化した内戦は戦線が膠着し、イドリブ県では昨年3月から停戦が機能していたが、7月に入り政権軍の砲撃で民間人の死傷者が増加しており、国連は本格的な戦闘が再燃する兆候だと懸念している。 (2108-072003)

ロシアとトルコが首脳会談

 ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が9月29日にロシア南部のソチで会談を開き、シリアでの内戦激化への対応について協議した。
 シリア北西部イドリブ県では、トルコが支援する反体制派とアサド政権やその後ろ盾であるロシアとの間で軍事衝突が起きている。 (2110-093003)

2・1・5・2 U A E

2・1・5・2・1 米国の武器輸出

米国が UAE への武器輸出凍結を解除

 米国務省が4月14日、凍結していたUAEへの武器輸出$23Bの凍結を解除したと発表した。
 トランプ政権が2020年11月10日、UAEにF-35A 50機を$10B、MQ-9B 18機を$3B、空投弾薬を$10Bで売却するとしていたが、バイデン政権は1月20日に再検討を理由に凍結していた。 (2106-042113)

F-35 売却交渉が頓挫

 ロイタ通信が、UAE当局者が12月14日にF-35の購入に向けた交渉を中断する方針を米国側に通告したと明らかにしたと報じた。
 トランプ前米政権が昨年仲介したUAEとイスラエルの国交正常化を受けUAEが売却を求めていた。
 Wall Street Journalによると、米国は中国による最新鋭兵器に対する諜報活動を警戒して、中国と関係を深めるUAEに安全保障上の予防措置を講じるよう求めたが、UAE側が難色を示したという。
 UAE当局者はロイタに、技術的要求や費用対効果を考慮し再検討することになったが、交渉を再開する可能性はあると語った。 (2201-121501)

AN/FPS-132 早期警戒レーダ

 Raytheon UAE社がドバイ航空展でAN/FPS-132早期警戒レーダの受注に意欲を示した。
 FPS-132は冷戦時代にソ連のICBMやSLBMを捕捉追随するために開発されたレーダで、捕捉距離は5,000kmと言われている。
 UAEのEdge社はRaytheon UAE社と各種計画での協力強化に向けMoUを結んでいる。
 米国防安全保障協力局 (DSCA) は2013年7月にカタールへAN/FPS-132を$1.1Bで売却すると発表しており、最近その納入が完了している。 (2201-112404)

2・1・5・2・2 海外軍事産業と提携

ウクライナと防衛産業の協力で合意

 ウクライナとUAEが防衛産業の協力で合意し協定に調印した。
 合意協定の調印はウクライナのゼレンスキー大統領がUAEを訪問したのに合わせ2月14日、ウクライナのUkrOboronProm社、UkrSpecExport社とUAEのEdgeグルーブの間で行われた。 (2103-021604)

Paramountグループがイスラエルに事務所を開設

 UAEのParamountグループがIDEXの場で2月22日、イスラエルに事務所を開設したと発表した。
 これは2020年9月にイスラエルとUAE、バーレーン及び米国が合意した、イスラエルを国家として承認し、外交関係を結ぶとしたアブラハム和平協定によるものである。 (2103-022205)
【註】アブラハム和平協定の名称は、アブラハムがユダヤ民族の始祖であるイサクとアラブ民族の始祖とされるイシュマエルの父であることに因んで付けられた。

Nimr社がシンガポールの ST Engineering社と技術提携

 UAEの車両メーカNimr社が、2月21日~25日に開かれたIDEX展で、シンガポールのST Engineering社とハイブリッド動力装置に関する技術提携のMoUに署名したと発表した。
 Nimr社は同社製のHafeet Mk 2及びAjban Mk 2装甲車のハイブリッド車化を狙っている。 (2104-030104)

Edge社がイスラエルのIAI社と企業間連携

 イスラエルのIAI社とUAEのEdge社が3月11日、2020年8月の両国国交正常化を受け初の防衛企業間連携を開始したと発表した。
 両社はC-UAVの共同開発で合意しMoUを締結した。
 システムはIAI社とEdge社の子会社SIGN4L社の、レーダ、EO装置、COMINT装置などを持ち寄り、ソフトキルやサイバによる鹵獲、更には銃砲、ミサイル、DEWによる撃墜も目指すという。 (2105-031711)

2・1・5・2・3 企業の育成

衛星通信企業の株式を売却

 UAE国営の投資ファンドMulbadala社が6月21日、衛星通信企業のYahsat社の株式の30~40%を売却すると発表した。
 Yahsat社はUAEや湾岸諸国、その他の政府及び軍の衛星通信を請け負っているほか、UAEが2020年12月に軌道投入に成功した光学偵察衛星FalconEyeの管理も行っている。 (2108-063012)

2・1・5・2・4 新兵器の開発

EdgeグループHalcon社製 SkyKnight迎撃弾

 UAEがIDEXで、同国製のSkyKnight迎撃弾がRheinmetall社製Oerlikon防空システムに組み込まれると発表した。
 開発したのはUAE EDGEグループのHALCON社で、SkyKnightはUAV、回転/固定翼機も撃破可能な射程10kmのC-RAM弾である。 (2103-022408)
【註】HALCON社のPR動画によると、SkyKnightはコンテナ車形状の60発入りVLS発射機から発射される。

 UAE EdgeグループのHalcon社が2月21~25日にアブダビで開かれたIDEX 2021で、SkyKnight SHORADを公開した。
 SkyKnightはRheinmetall Oerlikon社製のSkynexシステムにC-RAM用として組み込めるという。
 このSkyKnightは2016年に南アフリカのPretoriaで開かれたAAD 2016でDenel社が公開したCheetahに酷似している。 CheetahはDenel社がRheinmetall社と開発をしようとしていた射程10kmの高運動性SAMで、レーダシーカと近接信管を搭載し、60発を移動式垂直発射機に搭載したものであった。
 このことからSkyKnightはHalcon社がDenel社からCheerah計画を購入したものと見られる。 (2105-030312)

EdgeグループHalcon社が地対艦ミサイル HAS-250 を公表

 UAEのEdgeグループが、アブダビで2月21日~25日に開かれたIDEX 2021にHalcon社が開発中の地対艦ミサイルHAS-250を出品した。 IDEX 2021ではIveco社製Astraトラックに2発のキャニスタを搭載した発射機も展示された。
 HAS-250はUAE海軍向けに開発されておりMach 0.8で250kmを飛翔すると言う。 また高度5m以下をシースキミングする性能も持つという。 (2103-022204)

 UAE EdgeグループのHalcon社がIDEX 2021でHAS-250陸上発射対艦ミサイルを公表した。
 HAS-250はUAEで開発されたミサイルでHS-350ターボジェットで推進し、Mach 0.8で250km以上飛翔する。 また5m以下でのシースキミング飛翔も行う。
 中期誘導はGNSS/INSで行い、終末誘導はアクティブ/パッシブレーダシーカが行う。
 IDEX 2021ではIveco社製Astra車に2発のキャニスタを搭載して展示された。 (2105-030311)


Tawazun社が MBDA社と SmartGlider ASM の共同開発

 UAEのTawazun社がIDEXの会場で、SmartGlider ASMの共同開発でMBDAと合意したと発表した。 両社はSmartGliderの設計と生産をUAEで行うという。 (2103-022303)
【註】MBDA社のSmartGliderは全長1.8m、胴径18cm、重量120kgで80kgの弾頭を搭載する。
 非推進であるが高度30,000ftで投下すれば100km飛翔する。 誘導はGPS/SALで行われる。

12発装填艦載発射機

 UAEがIDEX 2021が開かれている2月22日に新型揚陸艦を就役させた。 この艦には艦橋の両側にM230 30mm砲を載せたEOS R-400遠隔操作砲塔と共に、初めて見る12発装填の発射機が搭載されていた。  この発射機は70mm誘導ロケット弾用と見られ、少なくとも他の艦艇1隻にも搭載していると見られる。 (2105-030313)

UAE が国産/国内開発しているミサイル等

(2201-112201)

Al Tariq 誘導爆弾

 120~450kg爆弾用誘導キットで既にエジプトへ輸出。
 開発中の1,000-lb及び500-lb爆弾用も2022年に試験を実施。

Saber 220 ALCM

 開発の初期段階 ターボジェット推進で1,200kg
 MTCR取り決めの制約から射程は290km

SkyKnight C-RAM

 Rheinmetall社と共同開発

HAS-250 沿岸防備ミサイル

 Saber 220と同じエンジンを使用

Desert Sting 軽誘導爆弾

 5~25kg爆弾

2・1・5・2・5 武器輸出

ウクライナArmor社へ Agema UGV の技術供与

 UAEのMilanion GroupがAgema UGVの技術供与でウクライナのArmor社と合意しMoUを交換した。
 Armor社によるとウクライナはMilanionにとって良好な市場で、同社は既に活動を開始しているという。
 Milanion社は6月15~18日にキエフで開かれたArms and Security展でAgema UGVを展示しており、2月に開かれたIDEX展でも公開している。
 Agema UGVは軍民両分野で、ISR、消火活動、捜索救難、ルート啓開、対戦車などの用途が見込まれ、各種UAV警戒装置やRF妨害/対妨害装置も搭載できる。 (2109-080904)

2・1・5・3 サウジアラビア

2・1・5・3・1 各国との軍事協力

 サウジアラビアが3月だけでも、10日にフランスとWhite Shark 21、21日にはスーダンとAl-Fulk 4、23日には海軍が紅海でインドネシア海軍と、27日にはパキスタン空軍と、更にギリシャ空軍とFalcon Eye 1、米陸軍とFalcon Claws 3、UAEとDesert Flagなど8回の共同演習を行っている。
 一方サウジは地中海でギリシャのライバルであるトルコとも連携する可能性がある。 2020年に緊張を高めたトルコとギリシャの関係に変化が見られ、トルコの外相は3月17日に、ギリシャの外相が4月14日にトルコを訪問することを明らかにした。 それに先立ち両国の外務高官がアテネで会見している。 (2104-032508)

 米議会下院軍事委員会戦略部隊小委員会がFY22の審議の中でMDAに対し、サウジアラビアへTHAADの一部として輸出されるAN/TPY-2レーダの能力向上を計画して報告するよう求めている。 (2108-073006)

ギリシャ空軍 Patriot 1個中隊

 ギリシャTanagra空軍基地で9月14日、サウジアラビアに派遣されるPatriot 1個中隊の出発式が行われた。
 6月に米陸軍防空部隊がサウジ、クウェート、ヨルダンから撤退したのを受け、フランスと英国はサウジに防空監視レーダを展開させている。 (2111-092211)

2・1・5・3・2 軍備増強

イスラエル製防空システムの導入

 サウジアラビアが長く依存してきた米防空システムが撤退するのに備えて、イスラエル製防空システムの導入の可能性についてイスラエル政府と接触を行っている。
 サウジはRafael社製Iron DomeかIAI社製Barak ERのいずれかの導入を考えている模様である。
 AP通信は米陸軍がリヤド郊外のPrince Sultan航空基地に配備しているTHAADとPatriotの中隊を9/18~19にも撤収させると報じている。 (2110-091404)

中国 CETC社製 3D TDA レーダが展開

 サウジアラビア空軍がジッダの基地で開いたパレードで、Patriot、Hawk、Shahine (Crotale)、Skyguardと共に押し上げアンテナ式の車載レーダを公開した。
 このレーダは4月に南京で開かれた世界レーダ展に中国CETC社が出品していた3D TDAレーダと良く似ていて、パレードに参加していたレーダは同展でCETCが6基展示していたMercedes-Benz Arocs重トラック搭載の3D TDAと同じ砂漠迷彩が施されていた。 (2111-090113)

車載 VL MICA を発注

 サウジアラビア国家警備隊 (SANG) が11月9日、リヤドの砲兵・防空司令部がMBDA社に車載VL MICAを発注したと発表した。
 SANGはまたMPCVにMistral SAMと20mm砲を搭載したシステムも公表した。
 La Tribuneは2013年に、SANGが€150M ($173M) で防空システムを発注したと報じていた。 (2201-111716)

2・1・5・3・3 軍事産業の振興

軍需品国内生産比率引き上げ計画

 サウジアラビアは10年以内に軍需品の国内生産比率を50%に引き上げる計画を進めている。
 政府関係者は首都リヤド工場で爆弾とUAVの部品を生産しているAEC社をサウジの新たな軍需産業の中核と位置づけている。
 AEC社は昨年SAMI社によって買収されたが、SAMI社は防衛装備品の国産化比率向上を目指して同国の政府系ファンドPIFが4年前に創設した国営企業である。 (2112-112405)

中国の支援下で BM の製造を開始

 CNN TVが12月23日、サウジアラビアが中国の支援の下、国内でBMの製造を開始したと報じた。
 関係者によると米国家安全保障会議(NSC)などが、中国とサウジ間でBM関連の技術移転が複数回にわたり行われたと報告を受けた。
 バイデン政権は移転に関与した組織への制裁などを準備しているが、サウジ政府に強い姿勢で臨めるかは不透明という。
 米国はイラン核合意維持に向けた交渉で、イラン側にミサイル開発の制限などを求めているが、イランと対立関係にあるサウジがBMの製造に着手したとすれば、交渉が複雑化する可能性がある。 (2201-122402)

2・1・5・4 ヨルダン

仏空軍の SAMP/T Mamba が展開

 フランス国防省が8月26日、仏空軍のSAMP/T Mamba 1個システムがヨルダンのPrince Hassan航空基地に展開したと発表した。
 Prince Hassan航空基地はシリアとの国境から32kmの位置にある。 (2111-090807)

2・1・6 中東派遣米軍

2・1・6・1 派遣軍の状況

2・1・6・1・1 地上軍への攻撃

2月15日: クルド自治区北部の米軍基地にロケット弾攻撃

 イラククルド自治区北部の米軍基地が2月15日にロケット弾攻撃を受け、米軍との契約で働いていた民間人1名が死亡し、米軍人1名が負傷した。
 これとは別にクルド自治政府によれば、米軍基地外で民間人数名が負傷した。 (2103-021506)

3月 3日: 中西部アンバル州の米軍基地にロケット弾攻撃

 イラクの国営通信などが、イラク中西部アンバル州の米軍が駐留する基地で3月3日、少なくとも10発のロケット弾による攻撃があったと報じた。
 米軍の攻撃に対する民兵組織の報復の可能性があるが、5日から予定されているローマ教皇フランシスコのイラク訪問の直前で、緊張が高まっている。 (2104-030307)

4月 4日: バグダッド北方のバラド空軍基地にロケット弾攻撃

 ロイタ通信が、バグダッド北方のバラド空軍基地の近くに4月4日、ロケット弾2発が撃ち込まれたと報じた。
 基地には駐留米軍の請負業者も勤務しているが、負傷者はいないもようである。
 イラクの治安当局者はロケット弾は基地を狙って発射されたが飛距離が足りなかったとの見方を示した。
 犯行声明は出ていないが、イラクではイランと連携するシーア派の民兵組織によるとみられる駐留米軍施設などへの攻撃が相次いでいる。 (2105-040501)

4月14日: アルビルで駐留米軍を狙った UAV 攻撃

 イラク北部アルビルで4月14日夜、イラク駐留米軍を狙ったUAV攻撃があった。
 イラクでは、イランに近いシーア派民兵が米軍や米関連施設を目標にロケット弾などで攻撃を繰り返しているが、UAVが使われたのは初めてとみられる。
 アルビルを管轄するクルド自治政府などによると、格納庫で火災が発生し、建物の一部が損壊したが、死傷者はいなかったという。 (2105-041507)

5月24日: Ain al-Asad航空基地周辺にロケット弾

 イラク西部で米軍が駐留しているAin al-Asad航空基地周辺に、5月24日13:35にロケット弾1発が着弾した。
 米軍及び同盟国軍に負傷者などの被害はなかった。 (2106-052404)

6月28日: シリア東部の米軍基地にロケット弾

 米主導のシリア駐留部隊の報道官が、6月28日にシリア東部にある米軍基地にロケット弾が着弾し米軍が反撃したことを明らかにした。
 一部のロケットは米軍部隊のすぐそばに着弾したが、初期報告によれば負傷者は出ていない。
 事情に詳しい米国防当局者によると、ロケット弾はシリア東部デリゾール近郊の近接地域で活動するイランの支援を受ける武装勢力が発射した可能性が高いが、発射源は確認できておらず、現時点では何発が発射されたのか不明だという。
 米国は前日にイランの支援を受ける武装勢力に対して空爆を実施していた。 (2107-062901)

7月 5日: バグダッド西方アサド基地にロケット弾3発

 バグダッド西方にあるアサド基地に向けて7月5日、ロケット弾が発射され3発が基地周辺に着弾したが、被害は調査中という。
 基地には過激派掃討を担う米軍主体の有志連合部隊が駐留している。
 バイデン米政権が6月下旬にシリアとイラクの国境地帯にある親イラン派民兵組織の施設3ヵ所を空爆し、報復を宣言していた民兵側の攻撃の可能性が高い。 (2108-070506)

7月 7日: バグダッド西方アサド基地にロケット弾14発

 米軍などが駐留するイラク西部のアサド基地へ7日、ロケット弾14発が発射された。
 基地やその周辺に着弾し、ロイタ通信によると、米兵2人が脳震盪などの軽傷を負った。
 同基地は5日にもロケット弾で攻撃されたばかりで、6日にはクルド自治区にあるアルビルでも駐留米軍がUAVで攻撃を受けた。
 負傷者は出なかったが、いずれも親イラン派民兵組織の犯行とみられる。 (2108-070802)

7月 8日: 米大使館にロケット弾2発

 イラクの治安当局者がロイタに、バグダッドの「グリーンゾーン」内にある米大使館に7月8日未明に2発のロケット弾が発射されたことを明らかにした。
 グリーンゾーン内には政府の建物や外国公館などがあり、米大使館からはサイレンが鳴り響いたという。
 グリーンゾーン内で勤務する治安当局者によると、1発は大使館のロケット防衛システムによって着弾を回避した。 複数の当局筋によれば2発目はグリーンゾーンの境界付近に着弾した。 (2108-070803)

10月20日: シリア南部の米軍駐留拠点にロケット弾攻撃

 AP通信が、内戦が続くシリア南部の米軍駐留拠点に20日にUAVやロケット弾による攻撃があったと報じた。 米兵に負傷者はいないもようである。
 現場周辺はシリア、イラク、ヨルダン3ヵ国が国境を接する戦略上の要衝である。
 6月にはシリア東部デリゾール近郊の米軍駐留拠点に対し、親イランの民兵組織によるとみられるロケット弾攻撃があった。 (2111-102202)

10月下旬: シリア南部の米軍駐留拠点をイラン製 UAV で攻撃

 米国務省報道官が10月25日の記者会見で、米軍とシリアの反政府勢力が所在しているシリア南部al-Tanfの兵営を先週爆装したUAV 5機が攻撃したことについて、背後にイランがいると述べた。
 その上で、UAVはイラン製であるが、イランから飛来したのではないとも述べた。 (2111-102607)

2・1・6・1・2 海 軍

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・1・6・1・3 空 軍

2020年12月30日: B-52 の飛行

 米中央軍が声明で、2020年12月30日にB-52を中東に派遣したことを明らかにした。
 イランや、イラクにいるイランが支援する武装組織との間で緊張が高まっている中東地域では、イランが1年前に起きたイラン革命防衛隊Qads部隊のソレイマニ司令官の殺害に対する米国への報復を模索する可能性も懸念されている。 (2102-010105)

1 月27日: B-52 バイデン大統領就任後初飛行

 米空軍のB-52 1機が1月27日、イランを牽制する目的で、バイデン大統領就任後初めて中東上空を飛行した。
 ルイジアナ州Barksdale AFBを離陸したB-52は、無着陸でペルシャ湾とサウジアラビアの上空を飛行し、途中でサウジ空軍のF-15と編隊飛行を行った。 (2102-012707)

2月25日: シリアのシーア派武装勢力施設を空爆

 米国防総省のカービー報道官が2月25日、米軍がシリア東部にある親イラン系のシーア派武装勢力の施設に対して空爆を実施したと発表した。
 空爆では、カティブ・ヒズボラやカティブ・サイード・シュハダなどの親イラン系勢力が利用する、国境管理地点にある複数の施設が破壊されたとしている。
 2月中旬以降に相次いだイラクの米軍関連施設に対する攻撃への対抗措置だと指摘し、大統領は米国や有志国連合の人員を守るために行動するという明確なメッセージをイランに対して送るものだと強調した。
 報道官によると、今回の作戦はバイデン大統領の指示で実施されたもので、バイデン政権が親イラン勢力を対象に空爆を行ったことが明らかにされたのは初めてである。 (2103-022603)

6月27日: イランが支援する武装組織のシリアとイラクの拠点を空爆

 米国防総省が米軍が6月27日、イランが支援する武装組織のシリアとイラクの拠点を空爆したと発表した。
 発表によると、空爆はシリア国内の2ヵ所、イラクの1ヵカ所で武装組織の作戦拠点や武器庫を目標に実施された。
 武装組織がイラクの米施設と人員に対しUAV攻撃を行ったことを受けたという。 (2107-062801>

2・1・6・2 派遣軍の縮小

バイデン米大統領が米軍部隊の一部撤収を指示

 Wall StreetJornal紙が4月1日、バイデン米大統領がサウジアラビアなど湾岸地域に展開していた米軍部隊の一部を撤収するよう国防総省に指示したと報じた。
 サウジとの関係見直しを進めると同時に、中東における米軍のプレゼンスを縮小し、対中国にシフトする戦略の一環とみられる。
 中東米軍は、昨年後半時点で50,000名が展開していたが、数千名規模の縮小になる見通しで、当局者によるとサウジを含む湾岸地域のPatriot部隊のうち少なくとも3個隊を撤収し、空母や偵察機なども中東から別の地域に移動しているという。 (2105-040204)

 米国とイラクが4月7日にオンライン形式で経済や安全保障に関する戦略対話を開き、共同声明で米軍が戦闘部隊をイラクから撤収すると明らかにした。 時期は今後詰める。
 イラク治安部隊への訓練を担当する部隊は駐留を続ける。
 米軍は2014年、ISISの台頭を受けてイラクに駐留を再び始め壊滅作戦を行ってきており、現在には2,500名の米兵が駐留するが、そのうちの戦闘部隊の規模は明らかにしていない。 (2105-040802)

防空部隊の全面撤退

 米国防総省が6月18日、国防長官が米中央軍 (CENTCOM) 司令官に、CENTCOM戦域から防空システムを撤収するよう命じたと発表した。
 詳細は明らかにしなかったが、クウェート、ヨルダン、サウジアラビアから合わせて8個中隊のPatriotと、サウジアラビアからTHAAD 1個システムを撤収するとしたWall Street Journalの報道を認めた。 (2107-062105)

 米国防総省が6月18日、中央軍 (CENTCOM) 戦域に展開している防空システムを全て撤退させると発表した。
 米国が2015年核合意に復帰しようとしていることからイランの脅威が低下してきたのと、サウジアラビアの防空能力が向上したためで、撤退した防空部隊は中国の脅威に対応するという。
 CENTCOM戦域にはPatriot 8個中隊とTHAAD 1個中隊が展開していたが、2019年にイランからのCMとUAV攻撃を受けたAbqaiq及びKhuraisの石油関連施設に配置されていた複数のPatriot中隊は2020年5月に撤退している。
 衛星画像から見るとUAEの2ヶ所に配置されていたPatriotの5月10日から6月8日の間に撤退している。
 ヨルダンでは3ヶ所の米軍施設に1個中隊ずつのPatriotが配置されている。 (2108-063010)

イラク駐留戦闘部隊の撤退、訓練や助言に専念

 米政府が7月26日、イラク駐留米軍が年内に戦闘任務を終え、イラク軍などの訓練や助言に専念する見通しを明らかにした。
 バイデン大統領とイラクのカディミ首相による26日の会談で合意する。
 米軍はアフガニスタンからの撤退も進めており、バイデン政権は長期化した米軍の国外駐留に終止符を打つことをアピールしたい考えで、10月のイラク議会選をにらんで米軍駐留に反対する世論を踏まえ戦闘任務終了を成果にしたいカディミ氏と思惑が一致した。 (2108-072607)

 米国防総省の監察官 (Inspector General) が11月5日、米主導の有志国連合軍が12月31日に戦闘行為を停止するとの決定を批判する報告を行った。
 報告では特に指揮統制の不備を挙げている。 (2201-111715)

2・1・6・3 米軍のイスラエル所管を変更

在欧米軍の管轄から中央軍への変更

 米軍が管轄区域の見直しで、イスラエルを在欧米軍の管轄から外し中央軍の管轄に移した。
 イスラエル国防省は9月1日に声明で、軍参謀総長が米中央軍司令官とこの問題で協議したことを明らかにした。
 この管轄区域の見直しはアブラハム協定の成立でイスラエルと周辺国の関係が改善したことによるもので、2020年に行われたEnduring Lightning演習ではイスラエルのF-35飛行隊が米F-35機と共にUAEのAl Dhafra航空基地から飛び立っていた。
 また8月にはNovle Waters演習ではイスラエル海軍が米第5艦隊と行動していた。 (2110-090706)
【註】米第5艦隊はバーレーンに司令部を置き、中東及び東アフリカを担当している。
 一方、地中海及び大西洋の東半部を担当範囲としているのは第6艦隊で、ナポリに司令部を置いている。

2・1・7 その他中東情勢

2・1・7・1 ISIS の掃討

2・1・7・1・1 シリアでの掃討戦

 5,000名を超えるクルド軍が3月27日に米軍等の支援を受けて、シリア北東部のal-Holキャンプに対しISIS掃討作戦を行った。
 この作戦でクルド軍は、新たなISIS戦闘員の取り込みを行っていた9人を逮捕した。 Al-HolキャンプではISIS戦闘員とその家族など62,000人が居住していた。 (2104-032804)
2・1・7・1・2 イラクでの掃討戦

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・1・7・2 シリア内戦

3月15日: トルコが支援する反体制派地域にミサイル攻撃

 トルコ国防省と在英のシリア人権監視団が3月15日、トルコが支援する反体制派が支配するシリア北部に対しミサイル攻撃があり、市民数人が負傷したと主張した。
 トルコ当局は、アサド政権の支配地、北部アレッポの基地からBMが発射されたと訴えている。 (2104-031505)

2・1・7・3 イラクの国内情勢

親イランイラン派と反イラン派の対立

 カタールの衛星TV局アルジャジーラによると、イラク中部カルバラで5月9日に著名な反政府活動家のワズニ氏が何者かに銃撃されて死亡したため、同氏の支持者ら数百人が抗議デモを行い、カルバラにあるイランの総領事館が襲撃された。
 イラクでは大規模な反政府デモが起きた2019年秋以降、約30人の反政府活動家が暗殺された。
 イラクではイランと連携するシーア派民兵組織が勢力を拡大、住民らの反発が強まっている模様で、国営イラン通信は10日に同国外務省報道官がイラク政府に在外公館の安全確保を求めたと伝えた。 (2106-051007)
【註】カルバラ市はシーア派の聖地で、ワズニ氏はイランと連携するシーア派民兵組織による抑圧、およびイラクにおけるイランの影響力に対して声を上げる反対者だった。

2・1・7・4 クルド問題

トルコ軍がシリアへの越境軍事作戦を準備

 トルコ政府がシリアへの越境軍事作戦の準備を進めていることを表明しており、シリアに影響力を持つロシアと水面下の交渉を行っているとの情報もある。
 トルコ国営放送によると、エルドアン大統領はローマを訪れていた11月1日、同行記者団に「いつでも必要な時に越境作戦を行う。テロ組織との戦いから退却することはない」と語った。
 テロ組織とみなすクルド系武装勢力を掃討し、低迷する政権支持率回復につなげる思惑がある。
 シリアと国境を接するトルコ南部では10月にシリア側からの越境ミサイル攻撃を受けてトルコ人警察官2人が死亡したが、トルコはクルド系武装勢力によるものだとして、越境軍事作戦で国境の安全を確保する考えを示唆している。 (2112-110704)

2・1・7・5 Bab al-Mandab海峡

Mayyun島に新たに滑走路

 Maxar社の衛星画像から紅海の入り口に位置するBab al-Mandab海峡の戦略的要衝であるMayyun島に新たに滑走路が建設されていることが判明した。
 滑走路の建設は2016年中頃にUAEが同島の対岸をフーシ派から奪取したことでイエメンが3,200mの滑走路と港の建設を進めていたが、2017年中頃に放棄されていた。
 今回建設が判明した滑走路は1,800mで今年初めに建設された模様である。 (2105-033109)

 国際的にも極めて戦略的重要箇所である紅海の入り口Bab el-Mandeb海峡にある火山島のMayun島で不可解な滑走路の建設が行われている。
 差し渡し5.6kmのこの島では、かつてUAEが全長3,000mの滑走路を建設しようとしていたが2016年末に放棄されている。
 AP通信が報じたPlanet Lab社の4月11日と5月18日に撮影した画像では、輸送機、偵察機、攻撃機の離着陸に十分な全長1,850mの滑走路がほぼ完成している。
 国際承認されているイエメン政府はこの滑走路の建設は、2019年にフーシ派との戦いから手を引いたとしているもののUAEが背後にいると見ている。 (2106-052606)

2・1・7・6 パレスチナ内部の勢力争い

 パレスチナ自治区のハマスはイスラエル軍との戦闘で、ロケット弾の集中発射などで戦力向上を誇示し、パレスチナ全土で支持を広げた。
 パレスチナ自治政府のアッバス議長に対抗し、政治力強化を狙ったとの見方も浮上している。
 ハマスは11日間の戦闘で4,300発のロケット弾を発射したが、イスラエルメディアによると、約50日間で約4,600発を発射した2014年の戦闘より1日の最大発射数が195発から480発に増加し、同時集中発射でイスラエルの対空防衛を困難にした。
 またUAV攻撃も実施した。 (2106-052203)
2・2 イスラエル

2・2・1 イスラエルの地位

2・2・1・1 国交樹立

イスラエル外相がバーレーン訪問

 イスラエルのラピド外相が9月30日、昨年9月に国交正常化で合意したバーレーンの首都マナマをイスラエル大使館の開設に立ち会うため訪問した。 バーレーン側はハマド国王が会談に応じ、ラピド外相を厚遇した。
 バーレーンにはイランの影響下にあるシーア派の住民が多く、正常化に踏み切った政府に反発する声も出ていて、AFP通信によるとマナマ郊外ではデモ隊がタイヤを燃やして黒煙を発生させるなどして抗議行動を展開した。 (2110-093004)

イスラエル首相が UAE 訪問

 イスラエル政府が12月12日、ベネット首相がUAEを訪問すると発表した。 アブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド皇太子と13日に会談する。
 イスラエルは2020年8月に当時のトランプ米政権の仲介でUAEと国交正常化で合意し、その後バーレーン、スーダン、モロッコと相次いで国交正常化合意を発表して中東各国の政治対立の構造が大きく変化した。 (2201-121206)

 イスラエルとUAEが12月13日、アブダビでこの日行われたベネット首相とアブダビ首長国のムハンマド皇太子による会談を終えて共同声明を出し、研究開発に関する共同ファンドの創設や、包括的な経済連携協定の締結を目指すなどの両国の経済協力を推進する方針を確認した。
 会談ではイラン情勢についても議論したとみられるが、声明では触れていない。 (2201-121406)

コソボ

 イスラエルとコソボが2月1日、国交を樹立した。 イスラエルとコソボは2020年9月に米国のトランプ前政権の仲介で国交樹立に合意していた。 (2103-020201)

2・2・1・2 エルサレム

2・2・1・2・1 大使館のエルサレムへの移転

コソボ

 イスラエルとコソボが2月1日、国交を樹立した。 イスラエル外務省によると、コソボ大使館はエルサレムに置かれる。 エルサレムに大使館を置くのは米国とグアテマラに続き3ヵ国目となる。 (2103-020201)

2・2・1・2・2 エルサレムの宗教対立

神殿の丘

 エルサレムにあるイスラム教とユダヤ教双方の聖地神殿の丘で7月18日、パレスチナ人とイスラエル警察が衝突し、複数のパレスチナ人が軽傷を負った。
 1967年の第3次中東戦争で神殿の丘のある東エルサレムはイスラエルに占領されたが、それまで統治していたヨルダン政府との取り決めで、現在も神殿の丘での礼拝はイスラム教徒に限定されているが、この日はユダヤ教の祝日で、極右主義者らが警察に警護され神殿の丘を訪問した。
 イスラエル首相府は「礼拝の自由がある」と発表したが、イスラム諸国に反発が広がっている。 (2108-071901)

2・2・1・3 イスラエルが参加した合同演習

イスラエル主催の空軍演習に8ヶ国

 イスラエルが10月、8ヶ国から数十機の戦闘機を集めたBlue Flag演習を行った。 この演習はUAEの空軍司令官も観戦した。
 演習にはイスラエルのF-35I、F-15D、F-16cと、米、英、独、仏、伊、印、希からF-35、F-16、Rafaele、Typhoon、Mirage 2000などの戦闘機とイタリアからG550 AEW機と1,500名と推計される将兵が参加した。
 特に今回はインド空軍のMirageと仏空軍のRafaelが初参加したほか、英空軍の飛行隊も1948年の建国以来初めて参加した。 (2112-110306)

米中央軍が UAE、バーレーン、イスラエルと海軍合同演習

 米中央軍海軍司令部 (NAVCENT) が11月11日、米国が10日にUAE、バーレーン、イスラエルと紅海で海軍合同演習を開始したと発表した。
 NAVCENTの声明によると、演習は米揚陸艦Portland上での訓練を含み5日間行われ、参加国の海上阻止活動の相互運用性向上をはかるが、背景にはイランに対する共通の懸念と経済的恩恵への期待感がある。 (2112-111205)

2・2・1・4 イスラエルと UAE の共存共栄

イスラエルがドバイ航空展に出展

 ドバイ航空展が11月14日にUAEのドバイで開幕した。 COVID-19パンデミック後としては初めての大規模な国際航空展で、主催者は5日間で85,000人の来場を見込んでいる。
 2020年にUAEなどと国交を正常化したイスラエルの国防省や防衛企業も初めて参加し、IAI社は「UAEなどと新たな商談や提携を進める絶好の機会だ」と期待している。 (2112-111407)

USV の共同開発で合意

 UAEなどと2020年9月にアブラハム合意を行ったイスラエルが初めて参加したドバイ航空展で、IAI社とUAE EdgeグループのEmirati社がUSVの共同開発で合意した。
 開発するのは全長17mのUSVで、先進ソナーや画像システムとこれらを統合するC&C装置を搭載する。
 この合意で両社は既に導入されているIAI社製のEOシステムの整備拠点をUAEに開設することでも合意した。
 IAI社は2月にUAEが主催したIDEC展にも参加しており、IAI社とRafael社は2020年7月にEmirati社との協力でも合意している。 (2112-111813)

2・2・1・5 入植地の拡大

 イスラエル政府が12月26日、ゴラン高原にユダヤ人入植者を5年間で倍増させる計画を承認した。
 ILS1B ($317M) を投資して既存の入植地を拡大するほか、新たに二つの入植地を建設する方針で、占領の既成事実化が一層進みそうである。
 イスラエル軍はシリアからゴラン高原の大半を1967年に奪って占領したのに対し国連安保理決議は撤退を求めているが、イスラエル政府は1981年に併合を宣言した。 (2201-122703)
2・2・2 軍備増強

2・2・2・1 空中給油機の増強

 イスラエルのガンツ国防相が12月9日にワシントンでオースチン米国防長官などの米国防当局者とイランの核合意復帰などについて会談した。
 会談では何らの決定もなかったと言うが、イスラエルは米国に空中給油能力の確保を強く要求した模様である。
 イスラエル空軍は現在707給油機(註:KC-135)を保有しているが老朽化したため米国とKC-46A 2機の売却契約を2022年中頃に行うことになっていたが、イスラエル空軍は2~3週間前にこの要求を変更して、緊急支給としてKC-45Aを4機に変更し現在米空軍向けに生産している機体をイスラエル空軍向けに'tail swapping'することを求めてきたという。 (2201-120911)
【註】イスラエルは遠く離れたイランを空爆するためには攻撃部隊への空中給油が必須として、過去にはイラン情勢が緊迫した際に米空軍に空中給油支援を要請していたことがある。
2・2・2・2 新装備

Sea Breaker 第五世代自律長距離ミサイル

 Rafael社が開発中のSea Breaker第五世代自律長距離ミサイルを公表した。
 洋上/陸上の移動/固定目標攻撃用で射程は300kmと言う。
 全長4m以下、胴径35cm、ターボジェット推進で高亜音速で飛行し、107kgの侵徹/破片効果弾頭によりフリゲート艦サイズの目標を1発で破壊できるという。
 Sea Breakerの諸元等は同社製Spice 100 ASMと似ている模様で、AIを元にした自動目標捕捉 (ATA) 、自動目標認識 (ATR) を行うが、双方向データリンクを搭載しman-in-the-loop制御が可能である。 (2109-070701)

 Rafael社が6月30日、対艦対地両用で射程300kmのCM Sea Breakerを発表した。 開発がどの段階にあるかは明らかにしていないが、開発は複数のクライアントと共同で行っているという。  Sea Breakerには2種類あり、1つは100t以下の小型艇に搭載する水上発射型、もう一つはSPYDER SAMと同じ発射機から発射する沿岸防備型で、誘導は背景照合と自動目標認識装置と組み合わせたIIRシーカで行うため、RFシーカーと異なり錯綜した沿岸環境での使用に適しているという。 (2109-072116)

2・2・2・3 装備の近代化

新電子偵察機 Oron

 イスラエル空軍の新電子偵察機OronになるGulfstream G550が4月4日にNavatim航空基地に到着した。
 今後2年かけてElta社製AESAレーダやSIGINT装置が取り付けられ、現在やはりG550をベースにしたShavit SIGINT機やEitam AEW&C機を配備している第122 Nchshon飛行隊に配備される。 (2106-041409)

 イスラエル空軍の新電子偵察機OronになるGulfstream G550が4月4日にNavatim航空基地に到着した。
 OronはELINT/COMINTを行う電子偵察機で、今後2年かけてElta社製AESAレーダやSIGINT装置が取り付けられ、現在やはりG550をベースにしたShavit SIGINT機やEitam AEW&C機を配備している第122 Nchshon飛行隊に配備される。 (2107-052609)

2・2・2・4 海上戦力

紅海への備え

 AP通信が9月16日にイスラエル海軍の退役中将の話として、イスラエル海軍が紅海への関心を高めていると報じた。
 イスラエル海軍最大の戦闘艦はSa'ar 5コルベット艦(フリゲート艦とは見られていない)で3隻を地中海に面したHaifaに配備しているが、Maxar衛星が9月17日にアカバ湾のエイラート港を撮影した画像にEilatと見られるSa'ar 5 1隻が写っていた。
 イランのNour Newsが今年8月に、2019年8月以来イスラエルによるイラン船舶に対する攻撃は14回を数えるが、そのうち地中海で起きたのは5回で、残りは全て紅海であったと報じている。
 また同通信はイスラエルの潜水艦1隻と戦闘艦2隻が8月4日にスエズ運河を抜けて紅海に入ったと報じている。
 イスラエルが保有する潜水艦6隻は全てHaifaを母港としている。 (2111-092910)

次期コルベット艦に C-Dome 装備

 イスラエル海軍がSa'ar 4.5 Niritコルベット艦の後継として詳細設計を開始しているReshef級がIron Domeの艦載型であるC-Domeを装備する。  一番艦となるReshefの設計には2年かかり、建造には更に2~4年かかると見られる。 (2201-110304)

2・2・3 イランとイスラエルの船舶攻撃

2・2・3・1 イスラエル船舶への攻撃

2月25日: オマーン湾

 イスラエルのネタニヤフ首相が、イスラエル籍の船舶が先週、オマーン湾を航行中に爆発したことについて、イランが関与したことは明らかだと指摘した。
 爆発を起こしたのは車両運搬船MV Helios Rayで、2月25日から26日午前にかけて爆発し、米当局者によると船体の両側に穴が開いた。
 イスラエル当局者は、艦船の破壊工作に使われるリムペットマインと呼ばれる爆弾が使用されたと述べた。
 イラン外務省報道官は関与を強く否定し、ペルシャ湾の安全はイランにとって極めて重要だと述べた。 (2104-030102)

3月25日: アラビア海

 イスラエルのTV Channel 12が3月25日、アラビア海を航行していたイスラエルの貨物船に、イランのミサイル1発が着弾したと報じた。 損傷の程度は軽いという。
 貨物船はタンザニアからインドに向かっていたとされ、着弾後も航行を続けた。
 イスラエル、イラン両当局とも情報を確認していない。
 イスラエルの貨物船については2月26日にオマーン湾で爆発がありイランの関与が指摘された一方、3月10日には地中海上でイランの貨物船の爆発が起き、イランのメディアがイスラエルを非難していた。 (2104-032603)

4月13日: UAE 沖合のペルシャ湾

 レバノンのメディアが4月13日、イスラエル企業が所有する大型船がUAEの沖合で攻撃されたと報じた。 船の損傷は軽微で負傷者は出ていないという。
 ナタンツの核施設が11日に攻撃されたことへのイランの報復とみられる。
 イスラエルメディアはイランによる攻撃として非難するイスラエル当局者の声を報じた。 (2105-041402)

7月 3日: インド洋北部でイスラエルの貨物船に攻撃

 レバノンのTVが7月3日、インド洋北部でイスラエルの貨物船が攻撃を受け火災が発生したと報じた。 UAVやミサイルが使われたとみられる。
 船はリベリア船籍でイスラエル人が所有し、サウジアラビアのジッダからアUAEに向かう途中だった。 イスラエルのメディアによると攻撃されたのは同日で乗組員にけがはなかった。
 イスラエル治安当局はイランが関与した可能性があるとみて調査している。
 アラビア海や紅海などでは、イスラエルとイランの船への攻撃が相次いでいる。 (2108-070402)

7月29日: オマーン沖でイスラエル系企業運航のタンカーへの攻撃

 ブリンケン米国務長官とラーブ英外相が8月1日、オマーン沖で起きたイスラエル系企業運航のタンカーへの攻撃について、イランが攻撃したとして非難する声明を発表した。 米英に先立ちイスラエルのラピド外相も、航行の自由を侵害するイランのテロと批判している。
 この攻撃で英国人ら2人の乗組員が死亡した。
 イラン外務省の報道官は1日の記者会見で「根拠のない非難をやめなければならない」と反発していて、米英との緊張が高まるのは必至で、米イランで中断している核合意再建に向けた間接協議を巡っても、さらなる交渉停滞の要因となりそうだ。 (2109-080105)

 米中央軍が8月6日、オマーン沖でイスラエル系企業運航のタンカーに対する攻撃に使われたUAVについて、調査チームが部品の一部を回収して分析した結果、イランのものとほぼ一致したと発表したことから、日米など先進7ヵ国 (G7) 外相はイランを非難する共同声明を出した。 イランは関与を否定している。
 米軍によると、タンカーは7月29日夜と30日に計3回のUAV攻撃を受け、船長のルーマニア人と、警護に当たっていた英国人の2人は、30日の3回目の攻撃で死亡した。
 爆発により直径1.8mの穴が開き、内部が損傷した。 (2109-080702)

2・2・3・2 イラン勢力によるその他船舶への攻撃

 複数の海上保安関係筋の話で、UAE沖でイランが後ろ盾する勢力により石油タンカーが拿捕された可能性があることが明らかになった。
 関係筋によると、乗っ取られたとみられるのはパナマ船籍のアスファルト・ビチューメン運搬船アスファルト・プリンセスで、ホルムズ海峡に向かうアラビア海で乗っ取られたとしている。
 英国海運貿易オペレーション (UKMTO) はサードパーティーの情報に基づき、乗っ取りが発生した恐れがあるとして、UAEのフジャイラ首長国の東方沖を航行中の船舶に厳重に警戒するよう呼び掛けていた。
 イラン革命防衛隊は、事件はイランに対する「敵対的な行動」の口実だとして、関与を否定している。 (2109-080401)
2・2・3・3 イラン船舶への攻撃

3月10日: 地中海

 イラン国営の船会社が3月12日、欧州に向けて地中海を航行中だったイランのコンテナ船Shahr e Kordが10日に爆発物を使った攻撃を受けたと明らかにした。
 負傷者は出ていないものの、火災が発生し船体が損傷を受けたという。
 Wall Street Journalは、イスラエルが原油収入が中東におけるテロリズム資金になっているとの懸念から、シリアに向けて航行する船舶を標的にしていて、この多くがイラン産原油を積載していると報じている。
 この報道について、イスラエル当局者はコメントを控えた。 (2104-031302)

4月 6日: 紅海入り口のバブエルマンデブ海峡

 イラン保守系のタスニム通信が4月6日、イランの船舶がイエメンとアフリカ北東部エリトリアに挟まれた紅海で攻撃を受けたと報じた。
 日時は不明だが船体に磁力で吸着させるリムペットマインと呼ばれる爆弾が使われたという。 (2105-040701)

 イラン革命防衛軍の軍用船が4月6日に紅海上でイスラエルによると見られる機雷攻撃を受けた。
 両国はこのところ、中東の海域で互いの船舶を攻撃する影の戦争を展開してきたが、一気にエスカレートした格好である。
 この日はウィーンでイラン核合意の再建をめぐり、米国とイランが間接協議しており、攻撃激化は交渉をつぶすためとの指摘も出ている。
 中東のメディアや米New York Timesなどによると、攻撃を受けたイランの貨物船サビズは、実際には革命防衛軍が軍事転用していた船舶で、数年前から紅海の出入り口であるバブエルマンデブ海峡付近の公海上に停泊していた。
 革命防衛隊は停泊の理由について、海賊からイラン船を護衛するためとしていたが、アジアと欧州をつなぐ大動脈である紅海の航行の情報を収集するスパイ船だったと指摘されている。 (2105-040905)

 2016年12月にイランを出港して以来エリトリアとイエメンの間の紅海に4年間にわたり留まっているイランの商船Savizが4月6日06:00に爆発物により若干の損傷を受けたとイラン外務省報道官が発表した。 これについてThe New York Timesは、イスラエルが米国にこの船を07:30に攻撃したと通知してたと報じた。
 イラン外務省報道官はSavizが軍用船であるとの見方を否定し、紅海とアデン湾での補給基地として働く民間船であると強調した。 (2106-041402)

4月24日: シリア沖

 在英のシリア人権監視団が、シリア沖で4月24日にイランの石油タンカーが攻撃を受け、少なくとも3人が死亡したことを明らかにした。 シリア人権監視団代表は、この攻撃で乗組員2人を含む少なくとも3人のシリア人が死亡したと述べた。
 同代表はAFPに、タンカーはイランから来たもので、Baniyas港からそれほど離れていないところにいたと述べた。
 このような攻撃は2011年のシリア内戦勃発以降初めてである。
 シリア人権監視団は、イスラエルによる攻撃かどうかは分からないとしたうえで、攻撃がUAVによるものか、ミサイルによるものかも不明だとしている。 (2105-042502)

2・2・4 ハマスとの戦闘

2・2・4・1 エルサレム・デーの戦闘

2・2・4・1・1 戦闘の発端=エルサレム・デーでの衝突

 エルサレムの旧市街近くで5月8日にパレスチナ人のデモ隊とイスラエルの治安部隊が衝突し、少なくとも80人が負傷したもようである。 前日にも市内で同様の衝突が起きており、負傷者は数百人に上っている。
 この日は1967年の中東戦争でイスラエルが東エルサレムを奪還した「エルサレム・デー」と重なる。 (2106-051001)
2・2・4・1・2 ロケット弾攻撃と空爆の応酬

5月10日: ロケット弾攻撃の開始

 ガザを実効支配するハマスと小規模なジハード武力勢力が5月10日、パレスチナ自治区ガザからエルサレム地区とイスラエル南部に向けロケット弾を発射したと表明している。
 この日はイスラム教にとって3番目に神聖な場所であるアルアクサ・モスク付近で衝突が発生、投石するパレスチナ人に対しイスラエル警察が音響閃光弾を使用した。
 一方この日は1967年の中東戦争でイスラエルが東エルサレムを奪還した「エルサレム・デー」に当たり、特に緊張が高まっていた。 (2106-051005)

 イスラエルメディアによると、パレスチナ自治区ガザからイスラエルに向けて5月10日に発射されたロケット弾は40発に上り、ガザとの境界に近いイスラエル南部でイスラエル人1人が軽傷を負った。
(2106-051102)

 イスラエルのメディアによると、同国軍が5月10日夕にパレスチナ自治区ガザを空爆した。 3人の子どもが死亡したとの情報がある。
 ガザを実効支配するハマスによるロケット弾発射に対する報復と言う。 (2106-051103)

 イスラエル軍が5月10日夜にパレスチナ自治区ガザを空爆し、現地からの報道によると子供を含む少なくとも20人が死亡した。
 イスラム組織ハマスがエルサレムやイスラエル各地に向けてロケット弾を発射したことへの報復攻撃で、エルサレムの旧市街での衝突が交戦に発展した。
 イスラエルのネタニヤフ首相はガザからの攻撃について、一線を越えたもので、重い代償を払うことになると強調し、イスラエル軍は声明で「ロケット発射台や軍事拠点、テロ要員など、ハマス関連の多数の標的を攻撃した」と表明した。 (2106-051105)

5月10日~11日: ロケット弾800発

 イスラエル民放のChannel 12が11日に同国軍関係者の話として、ハマスが10日夕以降に発射したロケット弾は約800発となったと報じた。 (2106-051201)

5月12日未明: テルアビブに向けロケット弾110発発射

 ロイタの目撃者によると、テルアビブで5月12日未明にロケット弾攻撃を警告するサイレンが鳴り響き、複数の爆発音もあった。
 ガザを実効支配するハマスは、イスラエルの空爆に対抗するためテルアビブに向けてロケット弾110発を発射したと発表していた。 (2106-051203)

5月12日: 大規模空爆、ロケット弾850発発射

 イスラエルとハマスの衝突は12日も続き、イスラエル有力紙ハーレツによると、同国軍はガザにあるハマスの拠点など500ヵ所を空爆し、ハマスは衝突発生以降イスラエルにロケット弾850発を発射した。
 ガザでは11日に空爆を受けた高層ビルが倒壊し、ハマスはこれを受けてテルアビブなどに攻撃範囲を拡大した。
 同国軍は9割前後のロケット弾を迎撃したとしているが、家屋などの損害も出ている。 ガザでは子供14人を含むパレスチナ人少なくとも48人が死亡しイスラエルでは6人が死亡した。 (2106-051205)

 2014年のガザ侵攻以降最大規模となりつつあるハマスとイスラエル軍の衝突は5月12日に3日目に突入した。
 ハマスがロケットの装填と発射の模様を収めた映像を公開した。 撮影場所は明らかにされなかったが撮影日は5月11日で、射撃の目標はイスラエル南部のアシュケロンとアシュドドと中部のテルアビブだという。
 イスラエル軍筋によると、ハマスはこれまでの3日間で1,500発のロケット弾を発射しており、これは2014年のガザ侵攻当時に発射されたロケットの1/3に相当する数だという。 (2106-051306)

13階建てビルが空襲で崩壊

 イスラエルとハマスの間の流血事態が悪化している。 ガザ地区で13階建てビルがイスラエル軍の空襲で崩壊するなど事態が拡大すると、国連安全保障理事会は12日に緊急会議を招集した。
 AP通信、BB放送、アルジャジーラ放送などを総合すると、ハマスが掌握するガザ地区ではこの日までに指導部2人とパレスチナのイスラムジハード指揮官3人を含め、少なくとも43人がイスラエルの爆撃で死亡した。 ヨルダン川西岸地区でも5人のパレスチナ人が死亡した。
 ハマスは10日からこの日まで最大都市テルアビブを含め、イスラエルにロケット攻撃を続けた。 イスラエルはIron Domeで大半のロケットを迎撃したが、AP通信が一部が居住地域に落ち、民間人6人が死亡、100人以上が負傷したと報じた。
 その後、イスラエルは予備役5,000名を招集し、戦車を移動するなど戦争拡大の準備に入った。 (2106-051305)

 イスラエル軍が6月8日、ガザ地区を支配するハマスとの戦闘の際に、AP通信などが入居するビルを爆破した理由について、Iron Domeへの妨害電波が発射されていたためだと発表した。
 駐米イスラエル大使は8日にAP通信幹部と会談し、ハマスの情報機関がこのビルから妨害電波を出していたと説明した。
 イスラエルはビル爆破の1時間前に警告を出し、記者の安全を確保したと強調した。
 これに対しAP通信は8日、イスラエル側に対し、主張を裏付ける証拠を公開するよう改めて求めた。 (2107-060902)

5月13日: これまでにロケット弾1,500発以上が発射

 イスラエル軍とハマスとの間では5月13日も空爆とロケット弾攻撃の応酬が続けられ、ガザ地区ではこれまでに子どもを含む103人が死亡したという。
 一方、イスラエルではテルアビブなどに連日ロケット弾が発射され、これまでに7人が死亡し、住民は警報が鳴るたびに防空壕への避難を余儀なくされている。
 またイスラエルの中部や南部の都市では、これまでにロケット弾1,500発以上が発射され、中部の町ペタハ・ティクバでは、ロケット弾による攻撃で5人が負傷した。
(2106-051401)

 5月10日に始まったイスラエルとハマスの戦いは最初の38時間だけで1,050発のロケット弾が発射され、13日早くには1,500発を越えた。
 2014年の7~8月の戦いでは最初の3日間に発射されたのは365発で、2014年の戦いで1日の発射数が200発を超えることはなかった。 これに対し今回ハマスの武装部門であるal-Qassam旅団は5月11日13:00前後の5分間でAshdodとAshkelonに対し137発を発射している。 Al-Qassam旅団は埋設した発射機にロケット弾を配置したり、A120を8名で運搬している画像を公開している。
 Al-Qassam旅団はまた11日20:44テルアビブとBen Gurion空港に射程120kmのA120ロケット130発を、12日03:00に110発の重ロケットを発射したとしている。
 更に13日には射程が250kmのAyyash 250を配備したと発表している。 (2107-051901)

5月14日: ロケット弾累計2,000発、最大規模の空爆

 交戦が始まった5月10日以降、ガザからはロケット弾2,000発がイスラエルに向けて発射され、死者は双方合わせて130人に達した。
 イスラエル北部沿岸付近の海上には、13日夜にレバノンから発射されたロケット弾3発も着弾した。 (2106-051407)
【註】ハマスが弾形の大きなロケット弾を2,000発も発射したと言うことは、イスラエルの監視が厳しいガザで大量のロケット弾を製造または運び込んだことを意味し、ハマスはこの時期を狙って周到かつ大規模に準備を行っていた可能性がある。

 イスラエル軍が5月14日、ハマスが隠れ家として使っていたトンネルを空爆したと発表した。 戦闘が始まった10日以降、最大規模の攻撃を行ったという。
 イスラエル軍は14日にガザ地区北部で発見されたトンネルに対し、戦闘機160機で40分間の空爆を実施し地上からも砲撃した。 この攻撃で十数人のハマス工作員を殺害したと報じられている。
 メトロと呼ばれているトンネルはガザ地区の地下広範囲にわたって広がっていて、武器庫やハマス幹部の隠れ家として利用され、ロケット弾などの運搬を空から察知されないように掘られていたとみられる。
 2014年に起きたイスラエルとハマスの大規模な戦闘では、ハマスはイスラエル側に侵入する攻撃型トンネルを建造したが、今回のトンネルはガザ地区のみに建設された守備型だという。
 イスラエルは既にハマスの軍事拠点を多数破壊し、目的を一定程度達成したことから、地元メディアは外交筋の話として、近く停戦合意する可能性もあると報じている。 (2106-051502)

5月15日: ガザにある12階建てビルを空爆

 イスラエル軍が6月8日、イスラエル空軍が5月15日に爆撃して破壊したガザにある12階建てのAl-Jalaa Towerには、ハマスがIron Domeを攻撃するEWサイトを設置していたためと発表した。
 それによるとハマスはここに、SIGINTやELINTの装置を置いて電子情報活動を行うと共に、イスラエル軍及びイスラエルの民間に対しEW活動を行ってきたという。 (2108-062307)

5月17日: ロケット弾累計3,000発

 ハマスは5月10日から約3,000発のロケット弾を発射したが、その多くはガザから飛び出したものの故障などにより原野に着弾している。
 イスラエル空軍のIron Domeはこのうち脅威と見なした1,000発と交戦し90%の確率でこれを撃墜している。
 Iron Domeはまた17日に初めてUAVを撃墜して以来、F-16がAAMで撃墜できなかったUAVを撃墜している。
 右図はイスラエル南部に飛来したハマスのロケット弾(右側)をIron Dome(左側)が迎撃している様子である。 (2106-051703)

5月20日: ロケット弾累計4,070発

 イスラエル軍が5月20日、5月10日以来の10日間でガザから4,070発のロケット弾が発射され、これをIron Domeが約90%の確率で撃墜したと発表した。
 2014年の49日間戦争では4,500発が発射されたという。
 Iron Domekの撃墜数については公表しなかったが、発射したロケット弾のうち610発が失敗しガザ内地区に落下したという。
 ハマスの武闘部門は、イラン製Ababil-2の粗製型であるShihabを装備していることを明らかにしている。 (2107-052608)

5月21日: 停戦までのロケット弾累計4,340発

 11日間にわたる戦闘を続けてきたイスラエルとガザ地区のハマスなど武装勢力が5月21日02:00に停戦に入ったが、イスラエル軍によると、10日以降にガザ地区からは4,340発のロケット弾が発射された。 (2106-052105)

5月27日: ハマスの軍事部門 Qassam旅団がパレード

 ガザ地区で5月27日にハマスの軍事部門Qassam旅団の戦闘員がパレードを行って軍事力を誇示した。
 ピックアップトラックに乗った武装した戦闘員がMRLや有翼ロケットを搭載した車両に続いて、ガザ地区の目抜き通りをパレードした。
 イスラエルとの戦闘では、ハマスとその他の武装グループが4,000発を超えるロケット弾をイスラエルに向けて発射し、中にはテルアビブやエルサレムまで飛んだものもあった。 (2106-052803)

2・2・4・1・3 イスラエル地上軍の動き

イスラエル軍が予備役招集

 衝突が激しくなる中、イスラエルのメディアは、軍が16,000名の予備役を召集しガザ地区への地上侵攻も視野に入れていると報じている。 (2106-051401)

 イスラエル軍が5月14日、ハマスに対する軍事作戦の一環として、地上部隊がパレスチナ自治区ガザ地区に入ったと発表した。
 軍は短いメッセージで「イスラエルの航空機と地上部隊がガザ地区で攻撃を実施している」と発表し、軍報道官はイスラエルの兵士がガザ地区に入ったことを認めた。 (2106-051402)

 イスラエル軍が5月14日未明に先の発表を訂正し、同軍はパレスチナ自治区ガザ地区に入っていないと明らかにした。 混乱の原因は軍内の情報伝達ミスだという。
 イスラエル軍は14日00:00過ぎに部隊がガザ地区に入ったとメディアに発表したが、その2時間後にガザ地区に部隊は入っていないと訂正した。 (2106-051405)

境界地帯に部隊を増派し砲撃

 イスラエル軍とガザ地区のイスラム武装組織との衝突が激化する中、イスラエルは5月13日にガザ地区の境界地帯に部隊を増派した。
 イスラエル軍はパレスチナ自治区を戦車で砲撃しており、AFP記者らは部隊が分離壁に集結する様子を確認した。 ただイスラエル軍は地上作戦について、今後の「筋書きの一つ」ではあるものの、主要目標ではないと説明している。
 一方、イスラエル国内ではユダヤ人とアラブ系住民との間での暴動で死者が出る事態となっており、治安当局が鎮静化を急いでいる。 (2106-051404)
【註】この記事では「戦車で砲撃」としているが、記事の映像で砲撃しているのは戦車ではなく自走榴弾砲 (SPH) であり、砲弾の種類と大きさ、発射弾数が格段に違う。

 イスラエル軍が5月14日未明にガザへの地上からの攻撃を開始した。 イスラエル軍はガザとの境界のイスラエル側から砲撃を浴びせる一方、空爆も一段と強化した。
 一連の攻撃により、対イスラエル作戦用の地下トンネルや兵器などの破壊を進めたが、ガザでは住民の犠牲も拡大しこれまでに少なくとも122人が死亡した。
(2106-051407)

2・2・4・1・4 停戦とその後

5月20日: 停戦の成立

 イスラエル政府が5月20日に治安閣議を開き、ハマスとの停戦を決めた。 AFP通信によるとハマスも停戦を受け入れた。
 5月10日の交戦開始から10日ぶりの停戦にこぎ着けたが、今後は合意に実効性が伴うかが焦点となる。 (2106-052101)

5月26日: カタールがガザへの復興支援資金を拠出

 ハマスの指導者らを受け入れるなどハマスと緊密な関係を保っているカタールが5月26日、イスラエルとの11日間にわたる交戦で荒廃したガザへの復興支援として$500Mを拠出すると発表した。
 米国やイスラエルなどは、援助資金がハマスに流れ込んで利することがないよう警戒感を強めているが、AFP通信によると、ハマスのガザ地区指導者シンワル氏が26日に復興人道支援向けの資金から「1セントも取ることはない」と強調した。 (2106-052701)

7月 2日~3日: 風船爆弾への報復空爆

 イスラエル軍は7月2日、ガザ地区から発火装置を積んだ風船が放たれたことへの報復措置として、ハマスの武器製造場所を空爆したと発表した。
 イスラエル南部では1日、風船によるとみられる4件の火事が起きた。 いずれもけが人は確認されていない模様だが、イスラエル軍は「ガザ地区のテロ行為に強く反発する」と声明を出した。
 5月にイスラエルとハマスなどガザ地区の武装勢力が停戦して以来、イスラエル軍がガザ地区の空爆を発表するのは3度目である。 (2108-070201)

 イスラエル軍が7月3日夜、ガザ地区のハマス拠点を空爆したと発表した。 2日連続で、6月にイスラエルのべネット新政権が発足して以来、4回目の空爆となった。
 イスラエル軍は、ガザ地区から発火装置を積んだ風船が放たれたことへの報復措置だとしている。
 地元消防によると、イスラエル南部では風船によるとみられる火災が発生したが被害は限定的である。
 6月中旬以降、風船による攻撃と空爆の応酬が断続的に続く背景には、長期的な停戦をめぐる協議が難航している事情がある。 (2108-070405)

7月25日: 風船爆弾への報復空爆

 パレスチナ治安当局筋が、イスラエル軍が7月25日にガザの北部と南部を空爆したことを明らかにした。
 ガザから飛ばされた発火装置付きの風船爆弾への報復とみられる。 双方で死傷者は報告されていない。 (2108-072602)

8月16日: 5月の一時停戦以来初めてロケット弾2発

 ガザ地区から16日に5月の一時停戦以来初めてイスラエルにロケット弾2発が発射された。 イスラエルの対空防衛システムが迎撃し被害は出なかったが、イスラエルは報復攻撃を実施するとみられる。
 一時停戦後、ガザからは発火物付き風船が数回発射されたがロケット弾は初めてである。
 5月21日の一時停戦以降、イスラエルとハマスは停戦継続のための間接交渉を続けているが、ハマスが拘束するイスラエル兵士の解放や、カタールが提供する資金の送金方法などを巡って対立し、イスラエルはガザへの物資流入を制限して圧力をかけていた。
 8月16日朝にはヨルダン川西岸で、ハマス関係者を逮捕しようとしたイスラエル治安部隊とパレスチナ人の銃撃戦が起き、パレスチナ人4人が死亡したのに対し、ガザのイスラム過激派が報復を宣言していた。 (2109-081701)

9月11~13日: 

 イスラエル軍が9月13日未明にハマスの軍事関連施設などを空爆したと発表した。 ガザからイスラエルに向けて12日夜と13日未明にロケット弾が発射されており、その報復としている。
 ロケット弾の発射と報復空爆の応酬は3夜連続となる。 (2110-091303)

2・2・4・2 イスラム諸国の対応

対イスラエルの主導権を狙うトルコ

 トルコのオクタイ副大統領が5月13日にイスラエルとハマスの衝突を巡り、イスラム諸国は団結して明確な姿勢を示すべきだとし、各国が暴力を非難しながら行動を起こしていないことを批判した。
 同副大統領は記者団に対し「国連では何度も決議がなされ非難の声が上がっているが、明確な姿勢は示されておらず、残念ながらその成果は出ていない」と述べた。 (2106-051308)

2・2・5 シリアとの戦闘

2・2・5・1 シリアからの攻撃

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・2・5・2 シリアへの攻撃

2・2・5・2・1 空 爆

1月12日: シリア東部で政府軍や親イラン派部隊を目標

 在英シリア人権監視団が1月13日、シリア東部で12日夜にイスラエルがシリア政府軍や親イラン派部隊を目標とした空爆を実施し、57人が死亡したことを明らかにした。
 シリア内戦開始以降、イスラエルが行った空爆によるものとしては最多の死者数となった。
 同監視団によると、武器庫や軍の陣地を狙った18回の空爆で、シリア政権軍の部隊少なくとも14人とイラクの民兵16人、親イラン部隊「ファーティマ旅団のアフガニスタン人隊員11人が死亡した。 残る16人の国籍は明らかになっていない。 (2102-011401)

 消息筋によると、イスラエルは1月中旬にシリア東部でイランが支援する部隊を空爆し、57名以上が殺害され数十名が負傷したと言う。
 シリア人権監視団によると、2020年にイスラエルはシリア国内の軍事基地、兵舎、車両など135箇所に対し39回の空爆を実施した。 (2102-012208)

1月22日: シリア東部

 シリア国営SANA通信が、1月22日早くにシリア東部に対しイスラエルからのミサイル攻撃があり4人家族が死亡しその他の4人が負傷したと報じた。
 これとは別にイスラエル軍はレバノンからイスラエルに飛来したUAV 1機を撃墜したと発表した。 (2102-012208)

2・2・5・2・2 ロケット弾攻撃

2月28日: ダマスカス近郊

 シリア軍が2月28日、イスラエルがシリアの首都ダマスカス近郊をロケット弾で攻撃したとの声明を出した。
 ロケット弾はゴラン高原から発射されたもので、シリア軍が大半を撃墜したとした。
 イスラエル軍の報道官はシリア軍の声明について問われ、コメントを控えたが、イスラエルのガンツ国防相は26日、イランのシリア侵入を阻止するためにほぼ毎週行動を取っていると述べていた。
 地域の情報当局筋によると、イラン革命防衛隊Qods部隊とイランが支援する民兵組織は、ダマスカスの南近郊にある複数の地下基地に多数の兵士を駐留させているという。 (2104-030101)

4月 8日: ダマスカス近郊

 シリア国営SANA通信が軍関係者の話として4月8日、イスラエルがダマスカス南部に向けて多数のロケット弾を発射したがシリア空軍が迎撃したと報じた。
 攻撃はレバノンとゴラン高原の方角から行われたという。
 SANA通信によると、兵士4名が負傷したほか、人的被害も出ている。
 ダマスカスの住民は爆発音が少なくとも1回聞こえたとしている。 (2105-040902)

4月22日: ダマスカス近郊

 イスラエル軍によると、同国南部で4月22日にシリアから発射されたSAMが着弾した。 現場はディモナ原子炉の近くで警報のサイレンが鳴った。
 軍の報道官はシリアからのミサイルはイスラエル空軍機に対し発射されたが、目標を越えて原子炉から30kmのディモナ地域に着弾したという。
 イスラエル軍が、報復のため今回撃ち込まれたミサイルの発射機を含めシリアのミサイル基地複数を攻撃したことを明らかにした。
 シリアの国営通信社は、イスラエルがダマスカス近郊に向けてロケット弾を発射したが、防空システムが迎撃したと報じた。 ただ、兵士4名が負傷し物理的な被害もあったという。 (2105-042202)

2・2・5・3 ゴラン高原

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・2・6 ヒズボラとの戦闘

7月20日: レバノンからロケット弾2発

 イスラエル軍によると、同国で7月20日未明にレバノンからロケット弾2発が撃ち込まれ、迫撃砲で応戦した。
 ロケット弾1発は迎撃され、もう1発は無人地帯に着弾したため被害はなく、負傷者も出ていないという。
 イスラエルはレバノンの武装組織ヒズボラと2006年に交戦しているが、その後は国境地帯ではおおむね平和が維持されているが、レバノン国内のパレスチナ組織がイスラエルに向け砲撃することが過去に何度も起きている。 (2108-072002)

8月 4日: レバノンからロケット弾3発

 イスラエル軍が8月4日、レバノンからイスラエルに向けロケット弾3発が発射され、そのうち2発がイスラエル領内に達したと発表した。
 イスラエルの救護団体によると、ロケット弾で火災が発生したもののイスラエル側に死傷者は出ていない。
 イスラエル軍は報復としてレバノンを砲撃したという。 レバノン軍によると、イスラエルの砲撃はレバノン南部の複数の村に到達し、火災が発生したという。 (2109-080501)

 イスラエル軍が8月5日未明、4日にレバノンからロケット弾攻撃されたのを受け、発射場所となったレバノン南部の地域に空爆を実施したとの声明を発表した。
 ロケット弾はシーア派武装組織ヒズボラが支配するレバノン南部から発射されたが、犯行声明は出されていない。
 ヒズボラ系のTV局アルマナルは、イスラエルとの国境から12km離れたレバノンの町マフムディヤの近郊で、イスラエル戦闘機が2回の空爆を実施したと報じた。 (2109-080502)

8月 6日: 数十発のロケット弾

 ヒズボラが8月6日、イスラエル軍が5日にレバノン南部に実施した空爆の報復として、イスラエルに向け数十発のロケット弾を発射したと発表した。
 これを受け、イスラエル軍も報復としてレバノンを砲撃し、死傷者は出ていないがイランを巡り緊張が高まる中、国境付近での報復連鎖が続いている。 (2109-080701)

8月11日: UAV 攻撃

 イスラエル軍が8月12日、ヒズボラが11日にレバノンから飛ばしたUAVが国境を越えたため撃墜したと発表した。
 ヒズボラは8月上旬にイスラエルに向けロケット弾を発射している。 イスラエルはヒズボラがイスラエル領内の何処でも攻撃できるミサイルとロケット弾を130,000発保有していると見ている。
 一方レバノン経済は史上最悪の状況にあり、世界銀行は1800年代中頃以降世界最悪の状況と見ている。 (2109-081206)

2・2・7 米国の本格肩入れ

米軍駐留基地の建設

 米海軍第11移動建設大隊がイスラエルのHatzor航空基地に統合作戦指揮所 (CJOC) を建設している。
 施設は700㎡の平屋で、会議室2室と152名用の机が置かれるという。
 イスラエルには2ヶ所の米軍施設が置かれており、1ヶ所は南部Mount Karenに置かれたAN/TPY-2基地、もう1ヶ所はその東方25kmのMashabimある防空学校内の米軍施設である。 (2109-072115)

Iron Dome に$1Bの援助

 米議会下院が9月下旬にも採択するFY22国防予算ではイスラエレのIron Domeに$1Bが計上されるもようである。
 米国は第2次大戦後イスラエルに$146Bの軍事援助を行い、両国はFY19~FY28にミサイル防衛の$5Bを含む$38Bの援助を行うことで合意している。 (2110-092108)

2・3 印・パ対立

2・3・1 武力衝突

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・3・2 和解の動き

大使派遣の再開

 インドとパキスタン両政府関係者が本紙に、印パがカシミール地方を巡る対立で2019年以来不在となっている互いの大使を、早ければ4月にも帰任させる方向で協議を進めていることを明らかにした。
 両政府関係者によると、人数を半減した大使館職員を元の数に増やすことも話し合っており、印政府側は既に職員の任地復帰の準備を始めたという。
 印パ両国は2月にカシミールで双方間のLAC越しに相手側を攻撃しないとする2003年の停戦合意を再確認した。
 印政府高官によると、この再確認を前に両国の国家安全保障担当幹部が2020年以降、第三国で協議を始めていた。 (2104-032801)

2・4 中印対立

2・4・1 中印国境

2・4・1・1 ヒマラヤ西部ラダック

2・4・1・1・1 2020年ラダック事件の余波

2020年6月衝突での中国側死者数

 中国国防省が2月19日、2020年6月にインド軍と国境紛争地帯で衝突した際に中国軍側に4名が死亡し、1名が重傷を負っていたことを初めて明らかにした。
 インドメディアは、この衝突で中国側に数十名の死傷者が出ていると伝えていたが、中国軍はこれまで被害の規模を明らかにしていなかった。 (2103-021905)

 中国国営メディアの環球時報が2月19日に解放軍報の記事を引用して、2020年7月15~16日の夜間にヒマラヤにあるインドとのLoAC付近でのインド軍との衝突による死者数を4名と報じた。
 この衝突によるインド側の死者数は20名であった。 (2105-030308)

中国兵士の拘束

 インド軍が1月8日、中国との事実上の国境に当たる実効支配線 (LAC) のインド側で中国の兵士1名を拘束したと発表した。
 発表によると、中国兵はパンゴン湖の南側でLACを越えてインドのラダック地域に入り、インドの部隊に拘束された。 中国兵がLACを越えた理由については調査中としている。
 パンゴン湖はインドと中国、パキスタンが国境を争うカシミール地方の海抜4,267mの地点にあり、インドのラダックと中国のチベット自治区にまたがっている。 (2102-011104)

インドが偵察船や軍用機を増強

 インドは中国と国境係争地域で対立が長期化することをにらみ、偵察艇や軍用機の増強に乗り出す。 兵器の備蓄も5日分積み増し、不測の事態に備える。
 地元メディアによると、印軍は5月までに12隻の大型偵察艇を国境の係争地域に用意する。
 中印はヒマラヤ山脈などで約3,000kmの国境が画定していない。 2020年6月に印中両軍が衝突し、インド側は20人の死者を出した。 (2102-011902)

中国がインド領内に集落建設

 インドの民放NDTVが2020年11月の衛星写真を基に1月18日、インド政府が事実上の国境と見なす地点から4.5kmインド側で2019年8月の写真では何もなかった場所に、中国の住宅約100戸が建設されたと報じた。
 同州は両国の係争地で、今回の集落建設には中国が実効支配地を作り、領有権の主張を正当化する狙いがあると受け止められている。
 インド外務省は報道を受け、安全保障に関する全ての進展を絶え間なく注視し、主権と領土の一体性を守るため必要な手段を取ると声明を出した。 (2102-012501)
【註】2020年11月にはブータン領内に中国が集落を建設したと報じられている。

中国軍が国境地帯に高性能兵器を配備

 中国軍が、インドとの国境地帯に高性能兵器を配備したと明らかにした。
 中国の国営メディアはインドと隣接する新疆ウイグル自治区の山岳地帯に機動性とステルス性能を高めた戦車が投入されたと報じた。 また、チベット自治区の駐屯地ではインドとの国境地帯に新たに配備される砲を積んだ軍用車両が並んでいる。 夜間の実弾演習も行われている。
 インドへの牽制に加え、中国の国会である全人代が3月に迫るなか、愛国ムードを高めたい思惑もありそうである。 (2103-022103)

2・4・1・1・2 両国軍が撤退開始

中国が撤退開始と発表

 中国国防省が2月10日、インド北部ラダック地方の係争地域で同日に中印双方の軍隊が前線からの撤退を開始したと発表した。
 2020年から中印両軍が同地域で対峙していたため緊張緩和につながるか注目されるが、インド側は発表しておらず撤退が実現するのかは不透明である。 (2103-021003)

 中国国防省が2月10日、中印が合意に基づきカシミール地方ラダックの実効支配線 (LAC) が通るパンゴン湖岸から同時に撤退すると発表し、翌日にはインドも同様の発表を行った。
 インド外交筋によると、17日に両軍の撤退が完了したという。
 これまで撤退協議は複数回決裂していたが急遽進展したもので、中国にはインドが日米豪との連携強化に乗り出したことへの警戒感があったようである。 ただ、全面的な雪解けにつながるかは未知数で、緊張は継続する可能性がある。
 全方位外交を志向するインドは、日米豪との連携が対中包囲網となることに慎重だったが、姿勢を転換して2020年11月には2007年以来となる4ヵ国の海上合同軍事演習が実現し、2月18日には外相会合が行われた。 (2103-022104)

 インド国防相が2月11日に議会で、ヒマラヤの実効支配線 (LoAC) を挟んで2020年5月以来にらみ合いを続けてきた中印軍が撤退に合意したと述べた。
 現場は標高4,350mにあるPangong湖付近で、PLAはPangong湖北岸のFinger 8東側へ、インド軍はFinger 3まで撤退する。 (2104-022404)

係争地から部隊撤収

 インドと中国の現地指揮官同士が8月1日、ヒマラヤの国境沿いの係争地から部隊を撤収させることで合意した。 (2109-080307)

 インド外務省が8月6日、北部ラダック地方の対中国国境沿いのゴグラ地区付近から中印両軍が撤退したと発表した。
 両軍は2021年2月にラダック地方のパンゴン湖周辺から撤退を開始している。
 中印両国は3,000km以上に上る未画定の国境線をめぐり争ってきた。
 今回の一部地区からの撤収は対立をエスカレートさせたくない両国の姿勢の表れとみられる。 (2109-080603)

その後も小競り合い

 インドメディアが10月8日、インド北東部の国境地帯で9月末に中国兵士200名がインド側に入り建物を破壊しようとしたため身柄を拘束したと報じた。
 これに対し中国PLAは、部隊は反撃を行いパトロールの任務を全うして帰還したと主張して、衝突があった事実を認めた。
 また中国側は、10月10日に両軍の司令官級の会談が行われたと明らかにしたうえで、「インド側が非現実的な要求をしている」と批判した。
 一方のインド側も、建設的な提案に中国側が合意しなかったとの声明を出している。 (2111-101204)

2・4・1・2 ヒマラヤ山脈東部

1月25日: ヒマラヤ山脈東部で小競り合い

 インド軍が1月25日、中国と国境を争うヒマラヤ山脈地帯の東部で20日に両軍間に小競り合いが発生したと発表した。
 一方中国は、双方が事態をエスカレートさせるような行動を慎むべきと述べた。 (2102-012504)

 インドのメディアが、中国軍とインド軍の部隊が国境地帯の係争地で衝突したと報じた。 報道によると、衝突はインド北東部シッキム州の北部ナクラで20日に発生した。
 双方とも負傷者が出ているという。 一部報道は、その際に棒や石などが使われたが、銃器の使用はなかったと報じている。
 インド軍は声明で、1月20日にシッキム州北部ナクラ地域で小さな衝突が起こったが、確立されている手順に沿って地方の司令官らによって解決されたと説明し、大ごとではないとした。
 当局によると、今回の衝突では中国のパトロール兵がインド領土に入り込もうとし、押し戻された。 (2102-012601)

インド陸軍が兵力増強と再編

 インドがラダックからの撤退に同意した後、東北部で中国と国境を接する地域の兵力増強と再編を行っている。
 印陸軍は2月18日、3ヶ月以内に1個機甲旅団を中国との実効支配線 (LoAC) に近いシッキム州に増派すると発表した。 派遣される場所は2017年にインド陸軍と中国PLAが73日間にわたり対峙したDoklamの三叉路付近と見られる。
 派遣される機甲旅団はライセンス国産したT-72M1 MBTとT-90S MBTの合わせて140両を装備している。
 また、現在武装戦力との戦闘やミャンマーとの国境警備に当たっている準軍46個大隊のうち20個大隊も転用するという。 (2105-030301)

印パ正面からの兵力転用

 インドが中印国境に少なくとも50,000の兵力を投入した。 これはインドにとって歴史的な転換点と言える。
 インドはインド亜大陸から英国が撤退した後にパキスタンとの抗争を繰り返し、3度の戦争を行ってきたが、2020年の中国との紛争でインドは20,000の兵力を投入した。
 この中にはパキスタンとの対テロ戦に従事していた部隊も含まれていた。 (2107-062806)

2・4・1・3 その後の兵力増強

2・4・1・3・1 中 国

新型 MRL をチベット軍に配備

 中国国営CCTVが7月24日、新型MRLがチベット軍に配備されたと報じた。 映像では数両の4×4 MRLが射撃をしている映像が報じられた。
 チベット高原を背景とした映像にはCSK181装甲車や数両のPCL-161も映っていた。
 新型MRLはPCL-161と同じと見られる車体に20連装の122mmと見られるSR7 6×6 MRLとよく似た発射機が搭載されている。
 SR7 MRLは122mmであれば20発、220mmであれば6発を搭載できる。 (2110-080402)

2・4・1・3・2 インド

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・4・2 ヒマラヤ諸国への波及

2・4・2・1 ネパールへの波及

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・4・2・2 ブータンへの波及

ブータンが国境画定目指し中国と覚書

 ブータンが10月14日に中国と国境画定に向け覚書を交わした。
 中国とブータンの国境は500kmで、中国は全体が未画定と主張しているため、両国は1984年以降24回にわたって国境画定に関する交渉を実施している。
 中国とブータンの間に外交関係がない現状は変わらないものの、インドでは軍事外交面でインドの強い影響下にあるブータンへの中国の接近に神経をとがらせている。
 インドの元駐中国大使は20日にネットを通じ開催された講演会で、中国が交渉を通じて中印ブータンの3ヵ国国境地帯の軍事的要衝をブータンから獲得し、インド領に肉薄しようと意図している可能性があると警鐘を鳴らした。 (2111-102302)

2・4・3 インド洋

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・5 ウクライナ

2・5・1 ロシアの侵攻

2・5・1・1 ロシアの意図

2・5・1・1・1 ウクライナへの侵攻意図

ロシアがウクライナ東部を吸収しようとしているとした文書

 EUが、ロシアはウクライナ東部を徐々に吸収しようとしていると文書で指摘した。
 EUはこの文書の中で、ロシア政府がウクライナ東部で違法な選挙を組織し、地域住民にパスポートを発行していることを挙げ、ウクライナ政府の支配が及んでいない地域を事実上ロシアに統合することが狙いだと分析し、EUの外交政策をつかさどる欧州対外活動庁 (EEAS) がこの問題で報告書の作成を準備するとしている。
 ロシアはウクライナ東部の併合意図を繰り返し否定し、同地域がウクライナ領内で広範な自治を認められることを定めた2015年の和平合意にコミットしていると主張している。 (2106-051301)

ロシアがウクライナ侵攻を検討している可能性

 事情に詳しい複数の関係者が、米国がEUの同盟国に対し、ロシアがウクライナ侵攻を検討している可能性があるとして警告を発していることを明らかにした。
 ウクライナ国境付近でのロシア軍増強の動きを米政府が注視するなか、米当局者らはEU側に軍事行動の可能性を巡る懸念を伝えた。
 この関係者によると、この見解は米国が欧州各国政府とまだ共有していない情報に基づいており、バイデン政権の考えに詳しい複数の当局者は、米国の懸念は公になっている証拠に裏付けられていると語った。
 ホワイトハウス当局者にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。 (2112-111201)

ウクライナの NATO 加盟断念を要求

 ウクライナのゼレンスキー大統領と会談したストルテンベルグNATO事務総長が12月16日、緊張緩和のためだとしてロシアがウクライナのNATO加盟断念を求めていることについて、決めるのは主権国家であるウクライナとNATO加盟国だと改めて強調し、決して妥協しないとも語りロシアの要求を拒んだ。
 ストルテンベルグ事務総長は記者会見で、NATOが共同訓練や装備供与を通じてウクライナを支援しているのは防衛のためであり、決してロシアへの脅威にはならないと説明し、緊張緩和に向けて協議する用意があると語った。 (2201-121702)

 ロシア外務省が12月17日、ロシアが求めるNATO不拡大をめぐり米国に示した提案の内容を公表した。 ウクライナのNATO非加盟の確約などが含まれており、米欧がそのまま受け入れるのは難しそうである。
 提案は「ウクライナやその他の国の加盟を含め、NATOをこれ以上拡大させないと確約する」ことをNATO側に要求したもので、NATOがウクライナや東欧、中央アジアなどで軍事活動を行わないよう求めたほか、互いの領域に到達可能な中短距離ミサイルの配備禁止も盛り込んでいる。 (2201-121710)

2・5・1・1・2 ウクライナの対抗

親露派政党幹部に国家反逆容疑

 ウクライナ検察が5月11日、親露派の議会第2党「野党プラットフォーム―生活党」幹部のメドベチュク氏を国家反逆容疑で本格捜査していると発表した。
 ロシアが併合したクリミア半島でロシアと共謀して天然資源を採掘しようとしたり、ロシアに機密情報を渡したりした疑いが持たれており、裁判所は13日にメドベチュク氏の自宅軟禁を決定した。  メドベチュク氏は2月にテロ資金提供を理由にウクライナ国家安全保障国防会議から制裁を科されていた。
 富豪でもあるメドベチュク氏はロシアのプーチン大統領と親密な関係にあり、近年頻繁に訪露している。
 プーチン大統領はメドベチュク氏の娘の洗礼に立ち会い家族ぐるみの付き合いとされるプーチン大統領は14日の安保会議で、「われわれに対する脅威が生じていることを念頭に、適時かつ適切に対応しなければならない」と警告した。 (2106-051503)

2・5・1・2 ロシア軍侵攻の危機

2・5・1・2・1 ロシア軍の国境集結

国境の緊張

 カービー米大統領府報道官が3月31日、2014年以来係争が続くウクライナ東部を巡りウクライナとロシアの間で緊張が高まっていると警告した。
 報道官によると、米政府は国境付近におけるロシア軍の動きについてウクライナ軍からの報告を受けており、OSCEが仲介した2020年7月の停戦合意に違反する事案が増加しているという。
 米統合参謀本部議長のミリー陸軍大将はロシアとウクライナの軍最高指揮官に電話したという。 (2104-033106)

 米国防総省が、オースティン米国防長官が4月1日にウクライナのタラン国防相と電話で会談し、ウクライナ東部でロシア軍が挑発的行動を拡大させていると非難した。
 プライス国務省報道官も同日の記者会見で、緊迫するウクライナ情勢に強い懸念を示した。
 オースティン長官は会談で、ウクライナの主権と領土保全に対する揺るぎない支持を表明し、ロシアの侵略行為に対抗するため、ウクライナの軍備強化を支援する決意を改めて強調した。 (2105-040203)

3月: ロシアが国境に配置した部隊

 Janesが公開資料を元に分析したところ、ロシアが3月下旬以降にIskander SRBM部隊を初めとする少なくとも14個部隊をウクライナとの国境に集結させている。
 これらは中央軍管区に所属する第74、第35自動車化旅団、第120砲兵旅団、第6戦車連隊の部隊で、MBTやIFVのほか2S19 MSTA-S 152mm SPG、TOS-1Aサーモバリック弾MRL、BM-27 Uragan 220mm MRLなどの長距離砲をVoronezhに貨車で搬入している。
 またクリミアや隣接するクラスノドールでも同様の動きが見られ、BMP-3 IFVや2S4 Tyulpan 240mm SPMなどが、数百㌔離れた南部軍管区の南及び西コーカサスから運び込まれている。 (2105-040805)

 EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)が4月19日、ロシアがウクライナとクリミアの国境付近に15万を超える部隊を集結させていると述べた上で、状況がさらにエスカレートする危険性が明白だと危機感を示した。 (2105-042001)

ロシア地上軍14個部隊を確認

 ロシア地上軍の少なくとも14個部隊が3月下旬からウクライナに展開していることをJaneが確認した。 これら部隊には中央軍管区に所属する以下の部隊が含まれる。

・第74自動車化旅団
・第35自動車化旅団
・第120砲兵旅団
・第6戦車連隊
・第119ミサイル旅団(Sverdlovsk から)
 これら部隊は戦車、IFVのほか以下のような長距離火力を装備している。
・2S19 MSTA-S 152mm SPG
・TOS-1AサーモバリックMRL
・BM-27 Uragan 220mm MRL
・Iskander SRBM
 クリミアとこれに隣接いるKrasnodar地方には数百㌔離れた南部軍管区のコーカサスから以下の装備が動員されている。
・BMP-3 IFV
・2S4 Tyulpan 240mm SPM
 この他にも以下の部隊が確認されている。 (2106-041403)
・第19自動車化師団
・第136自動車化旅団
・第56空中機動旅団
・第20自動車化旅団
・第291砲兵旅団
・第104空挺連隊
・第205自動車化旅団
・第56空中機動旅団(BMD-2 空挺IFV装備)
ロシア地上軍100,000名近く

 ウクライナのゼレンスキー大統領が、同国との国境付近にロシアが100,000名近くの軍を展開しており、政府はロシア軍の活動について西側諸国と情報を共有したと明らかにした。
 ウクライナ国防省は11月3日、同国国境付近に展開している軍の規模は90,000名と発表していた。 (2112-111504)

米国がロシア軍を増強を示す地図などの情報をNATO加盟国に提供

 事情に詳しい複数の関係者が、米国がロシア軍が兵員と砲兵隊を増強していることを示す地図を含む情報をNATO加盟国に提供し共有したことを明らかにした。
 米国はプーチン大統領が決断を下せば、複数の箇所からウクライナに急速に大規模な侵攻を行う準備をするためとみており、2022年の早い時期での侵攻を検討しているとの分析情報を得ているという。 (2112-112202)

ウクライナが対戦車部隊や空挺部隊を投入した国境警備演習

 ウクライナは24日に国境警備を強化する作戦を開始し、対戦車部隊や空挺部隊の演習を行っている。
 ウクライナはロシアが国境付近に軍隊を集結させていると非難しているほか、ベラルーシが国境地帯に難民を送り込む可能性があると主張している。
 ウクライナと米国はロシアがウクライナに攻撃を仕掛ける可能性があるとの懸念を示しているが、ロシア側は事実ではないと否定している。 (2112-112406)

2・5・1・2・2 ロシアが介入予告

 ロシア政府高官が4月8日、ウクライナでロシアが支援する分離独立派とウクライナ軍との間で緊張が高まっている問題について、ウクライナが分離独立派への全面的な攻撃を開始した場合はロシアが介入し、ウクライナ東部のロシア語話者の住民を助ける可能性があると警告した。
 ロシアがウクライナとの国境で軍備を増強しているなかロシア大統領府副長官が、ロシア軍が自国民を「守る」ためにウクライナ問題に介入する可能性があると述べ、事態がエスカレートすればウクライナにとって「終わりの始まり」がやってくる、「足元ではなく顔面を撃たれる」ことになると警告した。
 ウクライナ軍はロシアとの国境に、ロシア軍が3月末時点で20,000名を動員したと主張しており、ソーシャルメディア上の動画には、ロシアの列車が重火器を同地域に向けて移動させている様子が映っている。 (2105-040906)

 ウクライナで政府軍と親ロシア派武装勢力の衝突が増加していることについて、ロシアは広範な軍事衝突に発展する恐れがあると警告した。 (2105-041002)

2・5・1・2・3 ロシアが黒海で艦艇増強

黒海で艦艇を増強

 ウクライナを巡りロシアと西側諸国の緊張が高まる中、ロシア軍が黒海で艦艇を増強している。
 4月17日にはロシア北方艦隊の揚陸艦2隻がボスポラス海峡を通過して黒海に入ったほか、カスピ小艦隊の小型艦艇15隻も黒海に移動した。
 黒海には米国が4月中旬に艦艇2隻を派遣する予定だったが、ロシアの激しい抗議を受けて取りやめた。 (2105-041902)

2・5・1・2・4 ロシア軍の撤収発表

「演習」終了命令

 ロシアのショイグ国防相が4月22日、ウクライナ国境付近で行っていた軍事演習の終了を命じた。
 演習には兵士数万人と艦艇数十隻が参加し、欧米諸国との緊張が高まっていた。
 ショイグ国防相はクリミア半島での大規模な軍事演習を視察した際、部隊はわが国を確実に守る能力を示したとして、南部及び西部軍管区における展開を縮小する決定を下したと表明した。
 部隊の撤収は23日に始まり、5月1日までに完了すると述べた。 (2105-042301)

一部部隊の残留

 ロシア国営TASS通信が、ショルグ国防相が4月22日にクリミアとウクライナ国境で行っていた演習を、所期の目標を達成したため終了し、部隊を4月23日~5月1日に撤収させると発表したと報じた。
 しかしながら衛星画像から、この発表に先だってクリミア南東端のリゾート地であるOpukと南部のAngarsky演習場にSu-27、Mi-8/17、Mi-24/35、Mi-28などとInokhodet UAVなどが増強されているのが確認されている。
 また黒海艦隊には北方及びバルチック艦隊から4隻の大型揚陸艦が4月17日にボスポラス海峡を通過して増強された。
 更にモスクワ北東のIvanovoを基地とする第144 AEW&C連隊のA-50U 1機がRostov地区のTaganrog航空基地に派遣された。 Interfaxウクライナは4月15日、ロシアが船舶と航空機に対し、クリミアの黒海沿岸とケルチ海峡を10月まで演習に伴う危険地域に指定したと報じた。
 TASS通信によると黒海での演習は4月19日に第810海軍歩兵旅団の行った上陸演習で開始されたと報じ、ロシア国防相は第177海軍歩兵連隊が演習に参加したと発表した。
 TASS通信はまた20日に、黒海艦隊の20隻以上とSu-25SM3が演習に参加していると報じた。 (2106-042801)

西側の対露不信

 ブリンケン米国務長官が5月6日、ウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談した。 ブリンケン長官は会談後、ウクライナ国境付近からロシア軍は一部を撤収させたが、かなりの部分は残っているとし、ウクライナへの脅威は低減していないとの認識を示した。
 ゼレンスキー大統領も、クリミア半島から撤収したロシア軍は3,500名に過ぎないとし、8月にウクライナが予定するクリミア奪還に関する国際首脳会合にバイデン米大統領を招待したことも明らかにした。
 ロシアは「緊急点検」名目などで3月中旬以降、ウクライナ国境付近やクリミア半島で軍を増強し、両地域での兵力は15万名規模に上ったと推定された。
 ショイグ露国防相は4月下旬に目的は達したとして5月1日までの部隊撤収を命令したが、今後の演習で使用する装備は現地に残すとしていた。 (2106-050606)

 ストルテンブルグNATO事務総長が5月25日にエストニアのカラス首相と会見し、ロシアが今年初めにウクライナとの国境に展開した数十万の部隊は、一部が撤退したものの大量の武器と数万の部隊が依然として留まっていると危機感を示した。 (2106-052608)

2・5・1・2・5 ウクライナ国境とクリミアでの兵力増強

陸海空軍の投入

 ロシアが引き続きウクライナ国境とクリミアでの兵力増強を続けている。
 クリミアには空投型BMD-2 IFVやStrela-10戦術防空システムを装備した第76空中機動師団や第31工兵連隊が送り込まれている。
 また2S7M Malka 220mm SPMを装備した第291砲兵旅団も確認されている。 また3月30日にはBMP-3 IFVを装備した第136自動車化旅団もクリミアへ入った。
 4月9日の衛星画像ではウクライナとの国境に近いロシアの町Voronezh市の基地でMBT 70両、IFV 100両、火砲70門が確認され、恐らく3,000名の部隊がいると見られる。
 黒海艦隊ではカスピ海艦隊から10隻の小型艦艇が回航しているほか大型揚陸艦4隻も増強されている。
 空軍では第559爆撃連隊のSu-34 7機がクリミアのSaki航空基地に配備された。
 ウクライナ軍情報当局が4月13日に公表した報告によると、極東から250名の部隊がドネツク人民軍と称する第1軍団と、ルハンスク人民共和国軍と称する第2軍団に増強されているという。
 これに対しショイグ露国防相は4月13日、NATOがバルト沿岸と黒海周辺に40,000の部隊と15,000点の装備を展開していると反論している。 (2106-042104)

Zapad 2021終了後もウクライナ国境で兵力増強

 欧米諸国がウクライナ国境でのロシア軍増強を警戒している。
 バージニア州の非営利団体CNAのロシア研究責任者コフマン氏が衛星画像を分析した結果から、ロシア軍は9月中旬にベラルーシ軍と行ったZapad 2021終了後も、シベリアNovosibirsk駐留の第41混成軍の部隊をシベリアに戻しておらず、モスクワ駐留の第1親衛戦車軍の装備と人員をウクライナ国境へ送っているという。
 またウクライナNSCによるとウクライナ・ロシア国境のロシア軍はクリミアの数万名のほかに80,000名~90,000名にのぼると見ている。 (2111-103005)

ロシア軍、更に兵力増強

 米政府当局者が11月11日までに、ロシア軍が対ウクライナ国境線近くで進める兵力増強の問題で、新たに展開した部隊の正確な兵員数は不明としながらも、その規模はここ数週間で2/3倍程度膨らんだとの見方をCNNの取材に明かした。
 関係筋多数はロシア西部でのこれらの軍事的な動きは異常で、ロシアが軍事演習を実施する季節でもないと指摘した。
 米シンクタンク「海軍分析センター」のロシア軍問題の専門家は、集結している地上部隊の一部は3,000哩離れた中央軍管区所属で、冬季になって出動する奇異な点を指摘している。
 諜報に通じる2人の関係者によると、地上部隊にはロシア軍の特殊部隊スペツナズも含まれており、特殊部隊の存在は心理作戦を含めた非正規戦の遂行能力がかなり高まることを意味するという。
 これら関係筋は、ロシア軍は今後数ヵ月内、早ければ来年1月にも軍事作戦に着手出来る態勢を準備しているようにも見られると見ている。 (2112-111105)

 ウクライナ当局者がMiliry Timesに、ロシア軍が国境付近で戦車、SRBMなどを装備した部隊を集結させているとの懸念を示した。
 懸念されるのは、Zapad 2021演習が終了したに基地に戻ったのは人員だけで、戦闘や戦車、戦闘車両、Iskander SRBMのような主要装備はウクライナ国境の近くに残置させていることで、残置されている装備はMaxarが今月公開した衛星画像で明らかである。
 これについてウクライナ国家安全保障防衛担当大統領府のマショヴェッツ副長官は11月10日に、ロシアは命令一つで兵員を配置してウクライナへの攻撃ができると述べた。
 一方マショヴェッツ副長官は、11月10日の時点でロシア軍は32,000名以上がクリミアに、114,000名がウクライナ国境の近くにいると述べた。
 現在、36個大隊の戦術群は国境の近くに待機しており、そのうち31個大隊は恒久的に配置されていて、ウクライナ軍とロシア軍が戦闘を交えているドンバスには35,000名のロシア軍がいると述べている。 (2112-111109)

中央軍管区の部隊を国境に投入

 ロシアがモスクワ地区からウクライナとの国境に近いVoronezh地区のMaslovka停車場にIFVやSPHのほか60両以上のMBTを運び込んだ。
 Maslovkaに運ばれた装備は500km離れた第1親衛戦車軍第4戦車師団のT-80U 1個大隊と第2自動車化師団または第6戦車旅団のT-72B3 1個大隊と見られる。
 また中隊規模のBMP-2 IFV 10両と2S19 SPH 4門、更に停車場には各種戦闘工兵装備も見られる。
 一方10月27日の衛星画像によると中央軍管区 (CMD) の部隊がベラルーシ国境のYelnyaやSmolenskにもCMDの装備が再搬入されている。 (2201-111701)

ロシア軍が黒海で海軍基地への空爆を想定した演習

 InterFaxが11月24日、ロシア軍が黒海で海軍基地への空爆を想定した戦闘機や艦隊の演習を行ったと報じた。
 ウクライナと米国はロシアがウクライナに攻撃を仕掛ける可能性があるとの懸念を示しているが、ロシア側は事実ではないと否定している。 (2112-112406)

ウクライナとの国境近くで演習を開始

 ロシア軍が12月1日、ウクライナとの国境近くで冬季演習を開始した。
 ロシア軍による冬季の軍事演習は、ウクライナ南部のクリミアやウクライナ東部の国境近くで行われていて、約10,000名が参加しているという。
 ウクライナ軍情報部門トップが11月21日に米軍事専門サイトで、「ロシアは国境周辺に92,000名以上隊を集結させ、2022年1月末から2月初めまでに攻撃する準備を進めている」と述べた。
 ロシア外務省の報道官は1日、逆にウクライナが国境周辺に全ての軍隊の半分にあたる125,000名を集結させているとした。 (2201-120201)

ロシアが2022年早々ウクライナに侵攻=米情報機関

 Washington Postが12月3日、米情報機関が作成した報告書の内容などとして、ロシアが2022年早々にも大規模なウクライナ侵攻を計画していると報じた。
 最大100個大隊175,000を動員した多正面作戦になる見通しだという。
 それによると、ロシア軍はウクライナ国境地帯の4ヵ所に集結し、新たに戦車などが配備されており、ロシアは早ければ2022年初めのウクライナへの軍事攻撃を計画していると警告している。
 バイデン米大統領は近くプーチン・ロシア大統領と会談し、ウクライナ情勢の危機回避を図るとみられる。 (2201-120406)

ロシア軍が120,000名に増強

 ウクライナの国防当局者が12月9日までに、ロシアが両国の国境地帯に集結させている軍を120,000名に増強したと明らかにした。
 ウクライナ国防省は戦車や装甲車両、ミサイルなどの装備が依然としてウクライナ国境付近に配備されているとし、これに先駆けて数多くの演習も行われたと述べた。
 そのうえでロシアは定期的に「自軍の部隊を再展開、集結させ、当該地域における緊張状態を維持していると分析し、速やかな戦力補強の下準備を行っているとした。 (2201-120906)

2・5・1・2・6 米国の強い懸念表明

ロシア軍の異常な活動

 米国防総省報道官が11月5日の記者会見で、ウクライナ付近でのロシア軍の異常な活動を監視していくと述べ、ロシア軍がウクライナ国境近くで部隊を増強していると懸念を示した。
 同報道官はロシア軍について、あらゆる攻撃的行動を強く懸念すると強調しロシア軍の活動で異常なことは規模だと指摘したが、具体的な数字には触れなかった。
 ロイタ通信によるとウクライナ国防省は2日夜、90,000のロシア軍がウクライナ国境付近で活動しており、大規模な軍事演習を終えた後も部隊が国境付近にとどまっている。
 ロシアは今年春にウクライナ国境近くに部隊を集め、米欧はロシア軍が2014年に続いてウクライナに再び侵攻する恐れがあると懸念を表明した。
 当時は緊張緩和を訴えるバイデン米大統領がプーチン露大統領に米露首脳会談を提案し、ロシアが部隊を撤収させた。 (2112-110601)

米中央情報局 (CIA) 長官をロシアへ派遣

 米国やウクライナの多数の関係筋が11月7日、バイデン米大統領が先週前半にバーンズ米中央情報局 (CIA) 長官をロシアへ派遣し、同国が対ウクライナ国境線近くで進める兵力増強への懸念を伝えると共にその意図を探らせていたことを明らかにした。
 長官はこの軍事的な動きに直接関与しているロシア高官らと接触した。
 米側はロシア側によるウクライナの北部国境線近くでの兵力や装備品の移動は変則的な対応と警戒しており、今回の長官派遣は事態を重大視しているとの立場を突き付けるのが目的との指摘もある。
 ロシアは2021年春にも対ウクライナ国境線付近で兵力増強に踏み切った経緯があるが、不穏な軍事情勢にはつながらなかった。 (2112-110703)

米国務長官が露外相に撤退要求

 ブリンケン米国務長官がラブロフ露外相とストックホルムで12月2日に会談し、ウクライナ国境沿いにロシア軍の大部隊が展開し、緊張が高まっている問題で、動員されているロシア軍の撤退を求めた。
 ブリンケン長官は外交的手段で解決する重要性から、外交的な支援をする用意があることを伝えた一方で、ロシアが軍事的動きをエスカレートさせれば同盟国とともにロシアへの圧力を強める考えを示した。 (2201-120303)

2・5・1・2・7 NATO に対する姿勢

ウクライナ侵攻を公言

 プーチン露大統領が12月23日に年末恒例の記者会見を開き、緊迫するウクライナ情勢について、1990年代にNATOが東へ拡大しないとの約束があったがだまされたと述べ、軍事侵攻するかは欧米の対応次第だとの強気の姿勢を示した。
 一方で、軍事侵攻は望んでいないとして、ウクライナをNATOに加盟させない法的な保証を改めて求めた。 (2201-122403)

部隊10,000名以上を撤収

 InterFax通信がロシアのウクライナ侵攻が懸念される問題で、ロシア軍南部軍管区が12月25日にウクライナ国境周辺を含む地域で訓練を行っていた部隊10,000名以上を撤収させると発表したと報じた。
 プーチン露政権は12月、NATOが現状以上の東方拡大をせず、東欧諸国に展開中の軍備も撤収させる-などとする条約の締結をNATO側に提案したが、NATO側は応じられない内容があるとする一方、交渉には応じる意向を示している。
 今回の露部隊の撤収はこうした動きと関係している可能性がある。 (2201-122503)

2・5・1・2・8 米露首脳電話会談

 バイデン米大統領とプーチン露大統領が12月30日に電話会談を行い、緊迫するウクライナ情勢を協議した。 オンライン形式で行われた米露首脳の会談は12月7日以来で、1ヵ月で2度目となる異例の会談は約50分間にわたり行われた。
 米大統領府などが明らかにした会談内容によるとバイデン大統領は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、同盟・友好国と共に「断固として対応する」と制裁発動を警告したのに対し、プーチン大統領は「前例のない制裁を科せば、関係は完全に決裂する」と応酬した。
 米政府高官によれば、バイデン大統領はウクライナ侵攻には「経済的損失」を与えるほか、NATOの軍備増強やウクライナへのさらなる軍事支援で応じると伝えた。
 米側は2014年のロシアによるクリミア半島併合の際の規模を大幅に上回る制裁の準備を進めている。 (2201-123101)
2・5・1・3 ガスパイプライン問題

Nord Stream 2 への反発

 ロシア国営エネルギー企業ガスプロムが9月10日、パイプラインNord Stream 2の完成を発表した。 同パイプラインの建設は米国の懸念や欧州の分断を生みウクライナの反発を買っていた。
 Nord Stream 2は欧州のロシア産ガスへの依存を高め、ウクライナを迂回するものと批判されている。 Nord Stream 2の敷設によりウクライナを通る既存ルートの利用が減ることで、同国はロシアから得ている重要な経由料を失うことになる。 (2110-091101)

Turkish Stream を巡るハンガリーとの対立

 ロシアとハンガリーがむすんだ天然ガス供給契約を巡り、ハンガリーとウクライナが対立している。 9月28日には両国が互いの大使をそれぞれ呼び出して抗議した。
 発端はロシア国営ガスプロムの子会社とハンガリーの国営エネルギー会社MVMグループが27日に結んだ長期供給契約で、ハンガリーが15年間、年45億㎥のロシア産天然ガスを輸入する。
 問題は従来のウクライナ経由のガスパイプラインではなく2020年に稼働した黒海経由のTurkish Streamを通じてガスが供給されることである。
 ウクライナはロシアから欧州への天然ガス輸出の経由地として通過料収入を得ており、今回の契約ではウクライナに落ちる通過料収入は大幅に減るとみられる。 (2110-092807)

ガスパイプラインを利用したロシアの戦略

 InterFax通信などが10月18日、ロシア国営ガスプロムが同日、ウクライナが実施した2021年11月分の天然ガスパイプラインへの追加輸送の入札への参加を見送った。
 ガスプロムはここ数ヵ月間ウクライナ経由のパイプライン追加入札に参加していなかった。
 入札の参加見送りを受け、欧州の天然ガスの指標価格であるオランダTTFは反発し前日比で一時1割以上上昇した。 欧州では天然ガスの需給逼迫で電力料金の上昇が続く。
 ガス供給の拡大に積極的ではないロシアの姿勢に批判が高まりそうである。 (2111-101802)

ウクライナの危機感

 ウクライナ国営エネルギー会社ナフトガス社の最高経営責任者 (CEO) がFinacial Timesとのインタビューで、ドイツがロシアから天然ガスの追加供給を受ける条件としてNordstreem 2を承認すれば、欧州はロシアに屈することになると警告した。
 Nordstreem 2はウクライナを介さずバルト海経由でドイツに直接ガスを供給することから、プーチン露大統領はガスを「地政学的な武器」にしていると指摘した。 (2112-110203)

プーチン露大統領がルカシェンコ大統領の独走に不満表明

 ベラルーシのルカシェンコ大統領が11月上旬に、ロシアから同国を経由してEU各国に天然ガスを供給するパイプラインの停止を示唆したが、ルカシェンコ大統領にとって後ろ盾であるプーチン露大統領は11月13日に事前の相談がなかったと不満を示した。
 プーチン大統領はTVインタビューで、そのような行動はロシアとベラルーシの関係を危険にさらすことになると述べた。 また発言がある前にルカシェンコ大統領と2度話したが、パイプライン停止を示唆することは全くなかったという。  ロシアにとって欧州は天然ガスの巨大市場で、欧州は天然ガスの1/3をロシアから輸入している。 (2112-111506)

2・5・2 親露派との戦闘

2・5・2・1 東部戦線の戦況

政府軍がトルコ製 UAV を投入

 ウクライナ政府軍が10月下旬、東部の紛争地域で親露派武装勢力への攻撃にトルコ製UAVのBayraktar TB2を初めて使用したとする動画を公開した。
 欧米がウクライナに苦言を呈する中、ゼレンスキー大統領は29日、「領土と主権を守っている」と強気の声明を出した。
 UAVは2014年から続く紛争の形勢を一変させる「ゲーム・チェンジャー」となり得るため、親露派の後ろ盾のロシアは27日に紛争をエスカレートさせる恐れがあると警告していた。 (2111-103101)

 ウクライナ軍参謀本部が国防省のウェブサイドで10月26日、同日早朝にドンバスで行った対砲兵戦で初めてBayraktar TB2武装UAVが使われたと発表した。
 参謀本部が載せた映像にはD-30 122mm牽引砲と兵士3名の近くで爆発が起こる様子が映っていた。 (2201-110302)
【註】Bayraktar TB2はトルコBaykar Makina社製で、同社は2年前に、ウクライナからTB2 6機と搭載する弾薬を受注したと発表していた。
 ウクライナ政府は9月15日に、トルコからBayraktar TB2武装MALE UAV 24機を数ヶ月以内に受領すると発表していた。

親露派軍が大規模な演習

 ウクライナ国防省情報局が11月23日、ウクライナ東部の親露派軍が大規模な演習を実施し、戦闘態勢を強化していると明らかにした。
 ウクライナ国防省は声明で、ロシアは「一時占領下にあるドネツクとルハンスクで戦闘態勢を強化している」とした。 22日に開始された演習には予備兵も参加したとしているという。
 ウクライナ東部のドンバス地域にあるドネツクとルハンスクは2014年以来、親露派が勢力を拡大している。 (2112-112402)

2・5・2・2 停戦合意

停戦合意違反

 ウクライナ軍が4月6日、親ロシア派武装勢力との間で緊張の高まりを見せているウクライナ東部で、過去24時間にウクライナ兵2名が戦闘で死亡したことを明らかにした。
 2014年から続いている紛争は、ここにきて急激に緊張の高まりを見せており、ウクライナ軍当局は「2名は敵弾に倒れた」と発表している。
 ウクライナ東部では2月末以降散発的な戦闘が続いており、ウクライナ側はウクライナ兵4名が3月26日に迫撃砲攻撃で死亡するなど、2021年に入って最も明白な合意違反があったと主張している。 (2105-040703)

 ウクライナ東部では3月ごろからウクライナ軍と親ロシア派の衝突が相次いでいて、ロイタ通信によるとウクライナ大統領府の報道官が12日に、「国境付近とクリミア半島のロシア軍は最近だけで5万人以上増え8万人を超えている」とした。 (2105-041304)

ロシアが新たな停戦案を拒否

 ウクライナ当局者が12月10日、ウクライナ東部地域の停戦を実現するためにウクライナ政府が提案した捕虜の交換や検問所の再開など新たな停戦案をロシア政府が拒否したことを明らかにした。
 ウクライナ東部ドンバス地方で2014年から政府軍と親露武装勢力による紛争が続いているが、ロシアとウクライナが和平交渉を巡り非難の応酬を繰り広げている。
 ウクライナ、ロシア、欧州安全保障協力機構 (OSCE) から成る三者コンタクト・グループ (TCG) のウクライナ代表は、停戦に向けたウクライナの案はロシア政府の不自然な理由に基づき拒否されたという見解を明らかにした。 (2201-121003)

2・5・3 西側諸国の支援

2・5・3・1 米国の支援

2・5・3・1・1 支援の確約

バイデン米大統領がゼレンスキー大統領に支援を約束

 バイデン米大統領が4月2日、ウクライナのゼレンスキー大統領と就任以来初となる電話会談を行い、同国への揺るぎない支援を約束した。
 ゼレンスキー大統領は、ロシアが今週に入りウクライナ国境地帯に部隊を集結させていると非難しているが、バイデン大統領との電話会談後に大統領府が公開した動画の中で、バイデン大統領はロシアの侵略行為に対してウクライナを孤立させないと確約してくれたと述べた。
 一方、ロシア大統領府報道官は2日の記者会見で、米国が軍を派遣すればロシアは何らかの対応せざるを得ないと牽制し、ロシアはウクライナを脅かすような動きはしていないと主張した。 (2105-040303)

バイデン米大統領が米国の関与は揺るぎないと表明

 バイデン米大統領が9月1日、ウクライナのゼレンスキー大統領と米大統領府で会談し、ロシアの侵略に直面しているウクライナの主権と領土保全に対する米国の関与は揺るぎないと表明した。
 バイデン大統領の就任後、ゼレンスキー大統領との会談は初めてで、両国は会談後に共同声明を発表し、米国はウクライナへATGMを含む$60M規模の軍事援助をすることを明らかにした。
 バイデン大統領は、アフガニスタンの駐留米軍が混乱のさなかに撤収を完了することになるなど米国の威信が傷つく中、信頼回復を図りたい考えと見られる。
 また、海底パイプラインNordostreem 2 (NS2) については、米国がウクライナが多様な供給源からガスを確保できるよう支援するとした。 (2110-090202)

バイデン米大統領が露大統領にウクライナへの防衛力提供を表明

 バイデン米大統領が12月7日、プーチン露大統領とTV電話会談を行い、ロシアがウクライナを侵攻すれば西側諸国は強力な経済措置やその他の措置を導入すると警告した。
 これに対しプーチン大統領はNATOが東方に拡大しないことに対する保証を求めた。
 国家安全保障を担当するサリバン米大統領補佐官は会談後に記者団に対し、2014年のロシアによるクリミア併合を引き合いに出し、米国は2014年に実施しなかったことを実施する用意があると述べ、バイデン大統領はプーチン大統領に対し、米国と欧州の同盟国はウクライナに対し一段の防衛力を提供すると同時に、この地域のNATO同盟国を強化する意思があると直接的かつ率直に伝えたと明らかにした。 (2201-120802)

2・5・3・1・2 武器等の供与、売却

Mk Ⅵ 哨戒艇

 米国防総省が1月5日、ウクライナに供与するMk Ⅵ哨戒艇2隻をSAFE Boarsts社に$20M近くで発注したと発表した。 2隻は2022年末までに納入される。
 米国防安全保障協力局 DSCA) は2020年6月17日に、国務省がウクライナへMk Ⅵ哨戒艇16隻を$600MのFMS契約で売却することを承認したと発表している。
 DSCAによるとウクライナは30mm砲32門、EO装置20基、IFF 16基、Mk 44砲40門も要求している。 (2103-012010)

 米国防総省報道官が3月1日、ウクライナにMark Ⅵ哨戒艇2隻を含む総額$125Mの軍事援助が承認されたことを明らかにした。
 ただ、援助の中にはJavelin ATMは含まれていないようである。 (2105-031002)

バイデン政権の武器売却

 米国防総省が3月1日、バイデン政権で初となるウクライナへの武器売却$125Mを発表した。
 売却されるのはSAFE社がウクライナ向けに建造している8隻のMk Ⅵd哨戒艇のうちの2隻でFMSでの売却になる。
 米国はFY21にもウクライナ軍事援助計画として$150Mを予算化している。 (2104-030105)

 米国防総省が6月11日、ウクライナに新たに$150Mの軍事援助を供与すると発表した。
 このパッケージには対砲レーダ、C-UAVシステム、秘匿通信装置、電子戦装置、救急車などが含まれている。
 3月にはMark Ⅳ哨戒艇2隻をはじめとする$125Mを供与しており、米国は2014年以来$2.5B以上の軍事援助を行うことになる。 (2107-061106)

Javelin、Stingerなどの売却

 複数の関係筋が11月25日までに、ロシア軍が国境線近くに兵力を集結させ緊張が高まっているウクライナ情勢で、バイデン米政権がウクライナへ軍事顧問の派遣や兵器を含む装備品の新たな供与を検討していることを明らかにした。
 関係筋によると、米国がウクライナに送る可能性がある兵器はJavelin ATGMや、迫撃砲などで、Stingerなどの対空防衛システムも候補とされる。
 米国防総省は本来ならアフガニスタン向けとされていたMi-17ヘリをウクライナへ差し向けることも求めている。 ロシア製のMi-17はアフガンへ供与するため米国が購入していたが、アフガン駐留米軍が完全撤退した後、同省はこのヘリの活用方法を模索していたという。 (2112-112505)

小火器や弾薬を含む装備品がウクライナに到着

 米国務省当局者が12月12日までに、バイデン大統領が承認した安全保障上の援助計画に基づき小火器や弾薬を含む装備品がウクライナに到着したと報告した。
 軍事援助は$60M相当で、年明けには対迫レーダ4基を含む最後の装備品がウクライナに輸送される。
 米国防総省報道官によると、これら援助にはJavelin ATGMなど致死性の兵器も含まれている。 (2201-121205)

2・5・3・1・3 米軍の行動

米空軍の展開

 ロシアがウクライナに対して10万以上の兵力を集結させているのに対抗して、米空軍が欧州の基地3箇所からポーランドに展開し、ポーランド軍との共同訓練を行う戦闘展開演習を実施した。
 飛来したのは英空軍Lakenheath基地の第492戦闘機飛行隊のF-15E、ドイツSpangdahlem基地所属第480戦闘機飛行隊のF-16、ドイツRamstein航空基地の第37輸送飛行隊のC-130で、4月19日に飛来してウクライナの2基地に所属するウクライナ空軍のF-16と共同訓練を行う。 (2105-042005)

バイデン米大統領が米国が軍事力を行使する考えはないと公言

 バイデン米大統領が12月8日、ウクライナ国境付近でロシア軍が兵力を増強して緊張が高まっている問題で、米軍をウクライナ国内に派遣してロシアの軍事侵攻を阻むことについて、検討していないと否定的な考えを示した。
 米軍派遣の可能性については、ウクライナがNATO加盟国ではないことから、集団防衛の義務はウクライナには適用されないとしつつも、それは他のNATO加盟国の行動次第だと述べ、状況によっては米軍が介入する余地を残した。
 しかし、ロシアのウクライナ侵攻に対抗するため、米国が一方的に軍事力を行使する考えは、現在は検討していないとも語った。 (2201-120903)

 バイデン米大統領が12月11日に東部デラウェア州で記者団の質問に答え、国境近くでのロシア軍増強で緊張が高まるウクライナへの米軍派兵について検討したことがないと否定した。
 ただロシアが侵攻すれば、集団防衛義務を定めたNATOのロシア周辺の加盟国に、米軍などを増強する必要性が出てくると警告した。 (2201-121203)

Harry S. Truman CSG の地中海派遣

 米国防総省が12月28日、ロシアがウクライナ国境へ100,000名の部隊を集結させているのに対抗して、オースチン国防長官が海軍のHarry S. Truman CSGに中東への派遣を変更して地中海に留まるよう命じた。
 12月1日に湾岸地域に向けてNorfolkを出港したHarry S. Truman CSGはHarry S. Trumanのほか巡洋艦San Jacintoと駆逐艦ColeBainbridgeGravelyJason Dunhamの5隻が加わりされ、このほかにノルウェー海軍のフリゲート艦Fridtjof Nansenが随行している。 (2201-122902)

2・5・3・2 NATO と連携した対応

米国がロシアに説明要求

 米国務省報道官が4月5日、ロシア軍のウクライナとの国境付近での動向を巡る情報は信用できるとし、米政府がロシアに対しこうした挑発的な行動の説明を求めたと明らかにした。
 報道官は、ロシアによるウクライナを脅かすような行動は、ロシア領内であったとしても、懸念に値すると表明したが、ロシアがウクライナ侵攻を準備していると米政府が見なしているかについては明らかにしなかった。
 ホワイトハウスのサキ報道官は、米政府はロシアの攻撃姿勢の高まりとウクライナ東部における事態緊迫化を注視していると述べた。 (2105-040601)

NATO との合同軍事演習

 ロイタ通信が、ウクライナが4月3日に声明でNATOとの合同軍事演習が数ヵ月内に始まると明らかにしたと報じた。
 関係者らは「今回の訓練は少なくともNATO加盟国5ヵ国から1,000名以上が参加すると述べた。
 また「これは敵対的な隣国のうちの一つの侵略を受けた国の国境と領土保全のために防御的行動が展開され、続けて攻撃が行われるだろう」と述べ、最近ロシアがウクライナ東部のロシア国境地域に軍兵力を増強させていることに対抗するものと見られる。 (2105-040401)

 ウクライナではクリミアとの境界線近くで軍車両や歩兵による攻撃を撃退する訓練が行われた。
(2105-041502)

西側各国の動き

 ウクライナで政府軍と親ロシア派武装勢力の衝突が増加していることについて、ロシアは広範な軍事衝突に発展する恐れがあると警告した。
 危機が深まる中で、ドイツのメルケル首相はロシアに対し、ウクライナ国境付近に集結させているロシア軍を撤退させるよう呼び掛けた。
 トルコはNATOの同盟国に対し、米国が5月4日まで艦船2隻を黒海に派遣すると通知してきたことを明らかにした。 (2105-041002)

 主要7ヵ国 (G7) の外相が4月12日、ロシアがウクライナとの国境付近や一方的に併合したウクライナのクリミア半島で軍を増強中だとして深い懸念を示す共同声明を出し、ロシアに挑発行為をやめ即時に緊張緩和するよう求めている。 (2105-041304)

米国務長官が「代償を払う結果を伴う」と警告

 ブリンケン米国務長官が4月11日放映の米NBC TVのインタビューで、ロシアが対ウクライナ国境付近で軍部隊を増強し、緊張が高まっていることについて「ロシアが無謀、攻撃的に行動すれば、代償を払う結果を伴う」と強く警告した。
 「バイデン大統領もこのことを非常に明確にしている」と強調した。
 ブリンケン長官は、対ウクライナ国境でのロシアの行動に本当に懸念を抱いていると断言し、欧州の同盟国やパートナー諸国との間で連絡や協調を密にしていると現状を説明した。 (2105-041206)

NATO事務総長がウクライナ支持表明

 ストルテンベルグNATO事務総長が4月13日にウクライナのクレバ外相とブリュッセルのNATO本部で記者会見し、ロシアがウクライナ国境付近に兵力を集結させていることについて「正当化できないもので、深刻に懸念される」と表明し、ロシアに対し「軍の増強を停止し、速やかに挑発をやめなければならない」と訴えた。
 事務総長は「NATOはウクライナを支持する」とも強調した。 (2105-041306)

NATO 軍最高司令官兼米欧州軍司令官が総力で反撃する用意と発言

 NATO軍最高司令官を兼任する米欧州軍司令官のウォルターズ空軍大将が4月13日に米上院軍事委員会の公聴会で、ウクライナ東部国境地帯でのロシア軍部隊集結の動きを念頭に、NATOが欧州の抑止力維持の基盤だと強調した。
 ウォルターズ大将は、ロシア軍が陸海空でかなりの規模の勢力を投入していると懸念を表明し、2014年にロシアがクリミアに侵攻した際の規模に似ていると指摘したうえで、あらゆる選択肢を備えて警戒していると語り、抑止に失敗した場合には同盟の総力を挙げて反撃する準備ができていると述べロシアを牽制した。 (2105-041408)

仏独がロシアに軍増強停止要求

 マクロン仏大統領とメルケル独首相がウクライナのゼレンスキー大統領と4月16日に会談し、緊張が高まる同国東部の情勢について協議した。
 3ヵ国首脳は会談後に発表した声明で、ロシアに対しウクライナ国境地帯での軍増強を停止するよう要求した。 (2105-041702)

NATO がロシアに警告

 ストルテンベルグNATO事務総長が11月15日にウクライナのクレバ外相との共同記者会見で、ロシアがウクライナとの国境付近に軍を展開していることを受け、NATOはウクライナを支持していると警告した。
 現在重要なことは制御不能な状態に陥ることを防ぐことだと強調し、ロシアに対して緊張を緩和し、事態の深刻化を回避するために軍事活動について透明性を保つよう求めた。 (2112-111601)

NATO外相理事会がロシア軍への対応協議

 NATOが11月30日にラトビアの首都リガで外相理事会を2日間の日程で開いた。
 特にパートナー国のウクライナ国境付近にロシアが部隊を集結させている問題への対応を協議する。
 偶発的衝突やロシア軍侵攻への懸念が高まる中、防衛体制を固めると共に緊張緩和を模索する。 (2112-113006)

2・5・3・3 EU の支援

EU の経済制裁

 EU欧州委員会のフォンデアライエン委員長が12月7日にツイッターで、ウクライナにEUの全面的な支援を提供するとともに、EUはロシアに対する追加制裁を検討すると述べた。
 委員長は一段の攻撃には現行の制裁を拡大して対応するとしたうえで、同盟国と連携して追加の制限措置を講じる用意があると述べた。 (2201-120801)

2・5・3・4 トルコとの連携

Bayraktar TB2 UAV の購入

 ウクライナ海軍がトルコBaykar社から購入したBayraktar TB2 UAVが初めて納入された。 Bayraktar TB2は2019年に6機が$69Mで発注されていた。
 ウクライナ海軍参謀長によるとTB2は2021年内に配備され、黒海やアゾフ海での任務に就く。
 ウクライナとトルコは2014年3月のロシアによるクリミア半島併合以来軍事的結びつきを強め、ウクライナのMotor Sich社がトルコ軍のT129 Atakヘリ用エンジンを提供しているほか、トルコがI級フリゲート艦への装備を計画していたGE社製LM2500ガスタービンエンジンが米国の制裁で入手できなくなったことから、ウクライナZorya-Mashproekt社製のエンジンを搭載している。 (2108-072609)

 ウクライナ政府が9月15日、トルコからBayraktar TB2武装MALE UAV 24機を数ヶ月以内に受領すると発表した。
 TB2を生産しているBaykar Makina社は2年前に、ウクライナからTB2 6機と搭載する弾薬を$69Mで受注したと発表していた。
 トルコは、2019年にはウクライナとの武器技術の相互協力を取り決め、2020年12月にはAda級コルベット艦2隻を$200Mで売却する契約を行うなど、武器取引を拡大している一方で、ロシアからS-400を導入しており、なぜロシアと敵対しているウクライナに武器を輸出するのか、またなぜロシアがこれを妨害しないのかが注目されている。 (2110-092907)

トルコ製コルベット艦2隻をウクライナに売却

 ウクライナとトルコは2020年12月にトルコ製コルベット艦2隻をウクライナに売却することで合意しているが、駐イスタンブールのウクライナ総領事がトルコのTV番組で、売却されるのはAda級コルベット艦で、一番艦は2023年中に引き渡されると述べた。
 契約額は€200M ($236M) であるが、ワークシェアや搭載装備によっては変動する可能性があるという。
 全長99.44m、速力29ktのAda級コルベット艦はS70 Seahawkヘリを2機搭載でき、3Dレーダ、EOセンサ、ESM装置、レーザ警報装置、魚雷探知/破壊装置、12.7mm機銃2丁を装備する。
 2018年7月にパキスタンから4隻を受注し、1月には4隻目の起工式が行われている。 4隻のうち2隻をトルコで、2隻をパキスタンで建造する。 (2108-072812)
【註】Ada級コルベット艦は2011年に就役した排水量2,300t、CODAG推進、速力31kt(Wikipediaによる)で、主砲はOTO Meralla社製76mm Super Rapid、レーダはSMART-S Mk.2 1基を装備している。

トルコとウクライナが Mi-17 ヘリの整備と修理のチーム

 トルコとウクライナが、1,500機あるロシア製Mi-17ヘリの整備と修理のチームを9月上旬に発足させることで合意し、トルコで開かれている国際防衛企業展で合意文書に署名した。
 実施するのは補給処段階の整備と修理になる。
 トルコは憲兵隊が18機のMi-17を保有している。 (2109-083111)

2・5・3・5 英国の支援

 ウクライナ国防省と英国防省及び英Babcock社が6月23日、ウクライナ海軍の能力向上計画 (UNCEP) を支援するMoIに署名したと発表した。
 £1.25B ($1.74B) のウクライナ海軍強化計画は2020年10月にゼレンスキー大統領の訪英時合意しており、MoIの署名は21日にオデッサに入港していた英海軍駆逐艦Defenderの艦上で行われた。
 ウクライナはSandown級掃海艇2隻と搭載装備を購入し、要員の訓練を受けると共に、英国は新たな海軍基地の建設を請け負う。 (2108-063006)
2・5・4 防衛力整備

2・5・4・1 軍港を2箇所に新設

 ウクライナのシュミハリ首相が2月9日にブリュッセルのNATO本部で、ロシアとの緊張に対応するため米国とNATOの影響拡大を狙って、2021年内に軍港を2箇所に新設すると述べた。
 2箇所のうちの1箇所は黒海沿岸、もう1箇所はアゾフ海沿岸になると言う。 シュミハリ首相は英国が資金面で支援すると述べた。 (2103-021004)
2・5・4・2 装備の開発、取得

RK-360MC Neptune 対艦ミサイル

 ウクライナ国防省が2020年12月30日に、Ukonboronprom傘下のLuch設計局にRK-360MC Neptune対艦ミサイルを発注したと発表した。 2021年に納入されるという。
 Neptuneは射程300kmのMS-400超低空CMを発射するシステムで、Janeは6月にウクライナが発射機6機からなる部隊を3個隊編成すると報じていた。 (2103-011308)

2・5・5 NATO 加盟問題

NATO 加盟行動計画への参画意思

 ウクライナのゼレンスキー大統領が6月14日、ウクライナのNATO加盟への前段階である加盟行動計画 (MAP) を巡り、バイデン米大統領からの明確な答えを求めていると述べた。
 ゼレンスキー大統領はNATOやMAPについて協議するのであればバイデン大統領から可否の明確な答えを聞きたいとし、ウクライナの加盟の可能性と明確な日付を知る必要があるとした。 (2107-061405)

ロシア、ウクライナの NATO 加盟は「越えてはならない一線」

 バイデン米大統領とプーチン露大統領による首脳会談が16日にジュネーブで開催され、両国は将来の軍備管理とリスク軽減に向け戦略的安定対話に着手することで合意した。
 一方、ロシア大統領府報道官は6月17日にウクライナのNATO加盟は越えてはならない一線だとし、その可能性が取りざたされていることに不快感を示した。
 ウクライナのゼレンスキー大統領が14日にウクライナのNATO加盟への前段階である加盟行動計画 (MAP) を巡り、バイデン米大統領からの明確な答えを望んでいると述べていたが、バイデン大統領はウクライナが加盟するためには、汚職を根絶するほか、基準を満たす必要があるとした。 (2107-061702)

2・5・6 防衛産業の振興

2・5・6・1 大型装備

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・5・6・2 その他の防衛生産

30mm擲弾の量産開始

 ウクライナUkroboronprom社の子会社であるImpulse Shotska社が11月1日、AGS-17自動擲弾銃用にVector-V社が自社開発したVOG-17V 30mm擲弾の量産を開始すると発表した。
 VOG-17Vの射程は1,700mで殺傷範囲は5mという。 (2201-111006)

2・6 アフガニスタン

2・6・1 米軍、NATO軍の撤退

撤退の決定と発表

 ロイタ通信などが、バイデン大統領がアフガン駐在米軍の撤退方針を直接発表する予定だと報じたが、米軍に続きNATO軍も2021年9月にアフガニスタンから撤退する見通しである。
 AFP通信によると、ドイツのクランプカレンバウアー国防相は公営ARD放送に出演し、NATO軍が米軍と共に9月にアフガンから撤収するものとみられると明らかにした。 (2105-041409)

 バイデン米大統領が4月14日、アフガニスタンの駐留米軍を米同時多発テロから20年の節目となる9月11日までに完全に撤収させると正式に表明した。
 撤収に理想的な条件が整うのを期待しながら、駐留の延長や増派を繰り返すことはできないと述べたうえで、米国史上最長の戦争を終わらせる時だと訴えた。 (2105-041501)

米国務/国防長官、アフガン早期撤収に反対

 米メディアが9月14日、アフガニスタン駐留米軍の早期撤収にブリンケン国務長官とオースティン国防長官が反対する意見をバイデン大統領に具申していたと一斉に報じた。
 Washington Post紙の著名記者ウッドワード氏らが出版する新著で明らかにしたという。
 それによると、ブリンケン長官は2021年3月のNATO外相理事会で同盟国とアフガン問題を協議し、早期撤収に反対する立場に転じた。 また、オースティン長官も同時期にバイデン長官に対し、米軍撤収を3~4段階に分けて行うべきだと提案していた。
 両長官は同盟国の意見も踏まえ、アフガン政府とイスラム主義勢力タリバンによる和解協議の進展を促すため、米軍撤収を取引材料に使う考えだったが、バイデン大統領は受け入れずに4月に完全撤収を表明した。 (2110-091601)

英国の方針

 ウォレス英国防相が8月13日にLBCラジオで、アフガニスタンが国際武装組織アルカイダを再び保護し、西側諸国を脅かすようになれば、英国はアフガンに軍を再派遣すると述べた。
 駐留米軍の撤退に伴いタリバンは攻勢を続けており、地元当局者らが13日に明らかにしたところによると、同国第2の都市カンダハルと第3の都市ヘラートを制圧した。 (2109-081304)

NATO の方針

 NATOが8月13日、アフガニスタン情勢の急激な悪化を受け、ブリュッセルで緊急会合を開催し、ストルテンベルグ事務総長が声明で、反政府武装勢力タリバンの激しい暴力に深い懸念を表明した上で、われわれの目的はアフガンの政府と治安部隊を全力で支援し続けることだと強調した。
 タリバンに対しては「武力で国を奪っても国際社会から認められないことを理解する必要がある」と警告した。 (2109-081401)

2・6・2 撤退作戦

撤退作戦援護部隊の派遣

 米国防総省のカービー報道官が4月23日、中東にB-52 2機を派遣したと発表した。 アフガンから撤収する駐留米軍を援護するためタリバンやテロ組織が攻撃しないように牽制する狙いがある。
 アフガンには現在、米兵2,500名が駐留しており、国防総省は撤収中の米軍部隊が攻撃された場合は強力な反撃を行うと警告していた。
 一方、オースティン国防長官は中東地域に展開中の空母Dwight D. Eisenhowerに対し、同地域にしばらくとどまるよう指示した。 (2105-042401)

 Wall Street Journalが5月26日、米海軍横須賀基地を母港とする空母Ronald Reaganが、数ヵ月間にわたり中東方面に派遣される見通しだと報じた。
 複数の国防当局者が同紙に語ったところでは、Ronald Reaganは2021年夏に出港し、最大4ヵ月間にわたってアフガニスタン駐留米軍の撤収を支援する。
 中東で現在展開中の空母Dwight D. Eisenhowerは母港のノーフォークに帰港する予定で7月までに現地を離れるという。  Ronald Reaganは現時点でアジア太平洋地域に展開している唯一の米空母で、中東に派遣されればその間、第7艦隊はアジア太平洋で空母抜きの作戦行動を強いられることになる。 (2106-052702)

アフガン前方軍司令部をカブールに設置

 オースチン米国防長官が、米軍が8月末までにアフガニスタンから撤収するのに伴い、アフガンでの外交上のプレゼンス維持とカブールのカルザイ国際空港の安全を確保するため、アフガン前方軍司令部をカブールに設置することを明らかにした。 (2109-071404)

米軍、NATO 軍の撤退開始

 米軍当局者が4月29日、アフガニスタン駐留米軍が撤収を開始したと明らかにした。 米同時テロから20年の節目を迎える9月11日までに完全撤収する。
 NATO軍も足並みをそろえ、駐留部隊の撤収を開始した。 (2105-043002)

バグラム空軍基地、最後の外国部隊が撤収

 米政府は7月2日、アフガニスタンの首都カブール北郊にあるBagram空軍基地から、米軍やNATO駐留部隊の撤収が完了したと発表した。
 Bagram空軍基地は2001年10月に始まったアフガニスタン空爆以来、反政府勢力のタリバンやアルカイダに対する米軍などの最大の作戦拠点だった。 (2108-070303)

大使館員の撤収支援部隊を派遣

 米国防総省が8月12日、アフガニスタン各地でタリバンの攻勢が強まる中、在アフガン大使館員の撤収を支援するため、米軍3,000名を派遣することを明らかにした。
 国防総省報道官によると、部隊は24~48時間以内に首都カブールの空港に展開する計画で、派遣はあくまで大使館員らの保護が目的だと強調した。
 これに先立ち国務省は大使館の人員縮小を発表したが、大使館は閉鎖せずにビザ発給などは継続する。 (2109-081302)

 バイデン米大統領が、アフガニスタンの首都カブールから民間人などを国外に避難させるため、5,000名規模の軍を派遣することを発表した。
 AP通信によると、タリバンはカブールまでわずか11kmの地区まで侵攻している。
 このためバイデン大統領はカブールに残されている大使館員や民間人などを国外に退避させるために、これまで承認したものに加え、合わせて5,000名規模の軍を派遣することを発表した。 (2109-081502)

2・6・3 米国撤退後

2・6・3・1 タリバンが全国制圧

タリバンがカブールを制圧する可能性

 アフガニスタンのタリバンが支配地域を急速に拡大し、陥落した州都は全34州の半数を超える18州となり、タリバンがカブールを制圧する可能性もでている。
 こうした中、米国や英国に続き各国がカブールに駐在する大使館職員の国外退避や、大使館の一時閉鎖の動きを加速させている。
 ロイタによると、デンマークとノルウェーは大使館を一時的に閉鎖して職員を退避させることを決めた。 またドイツも現地に残る職員を最小限まで削減し、他の職員はチャーターで退避させる。
 国連は現状では退避はさせていないものの、情勢を注視しているという。
 米国と英国は大使館の職員らの退避を支援するため、軍の緊急増派を決めている。 (2109-081402)

ガニ大統領国外へ脱出

 アフガン政府でタリバンとの和平交渉を担当するアブドラ国家和解高等評議会議長が、ガニ大統領が8月15日に首都カブールから国外に脱出し隣国のタジキスタンに向かったことを明らかにした。
 アブドラ議長は公開したビデオメッセージで、ガニ大統領を「元大統領」と呼んでおり、大統領は既に辞任している可能性がある。
 この結果2001年の米軍進攻後に成立したアフガンの民主政権は事実上崩壊した。 (2109-081503)

ハザラ人の殺害

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが10月5日、アフガニスタンでタリバンが8月に10代の少女1人も含む少数派ハザラ人13人を殺害したと発表した。
 犠牲者のうち9人はタリバンに投降した前アフガニスタン政府軍の兵士だったため、この殺害は戦争犯罪に当たるとみられるという。  ほかの2人は民間人で、タリバンが前政府軍の兵士たちの家族に発砲した際に撃たれたとされ17歳の少女も含まれる。
 ハザラはアフガニスタンで3番目に大きい民族で主にイスラム教シーア派であることから、スンニ派の多いアフガニスタンやパキスタンで長年にわたって差別と迫害を受けてきた。
 タリバンが8月にアフガニスタンの実権を握って以降、ハザラ人を殺害したとして非難されるのは今回で2度目である。 (2111-100603)

タリバンが首都制圧

 ロイタ通信などによると、タリバンは8月15日にアフガニスタンの首都カブールにある大統領府を掌握した。 アルジャジーラTVは、大統領府の中にいる大勢のタリバン戦闘員の姿を報じている。
 大統領府を掌握したことで、近くタリバンによる首都制圧の発表が行われる公算が高まっている。
 タリバンの広報官は、海外の外交官やジャーナリストらに対し「安全を保障する」との声明を発表しているが、現地の米大使館は空港で銃声が確認されたことから、厳重な警戒を呼びかけている。 (2109-081602)

 国外に脱出したアフガニスタンのガニ大統領が8月15日、駐留米軍の撤退完了を前に全土で猛攻を続けたタリバンが勝利したとする声明を発表し、タリバンによる政権掌握を認めた。
 これにより民主政権は瓦解し、今後タリバン主導の国家づくりが進む。
 タリバンが同国を支配するのは、2001年の米中枢同時テロ後の米英軍による攻撃で旧タリバン政権が崩壊して以来約20年ぶりになる。
 タリバンは旧政権時代、イスラム教の厳格な適用を掲げ、女性の権利をないがしろにするなど恐怖政治を敷いた。 (2109-081603)

米大使館の退避完了

 CNN TVによると、アフガニスタンの首都カブールにある米大使館に掲げられていた米国旗が8月15日に降ろされ、職員らの退避が完了した。
 大使館業務はカブールの空港にある施設で続ける。 (2109-081604)

アフガン軍機の脱出

 InterFax通信によると、ウズベキスタン国防省が8月16日、15日に隣国アフガニスタンから不法に越境しようとしたアフガン軍機をウズベク領内で撃墜したと明らかにしたと報じた。 パイロット2名は重体という。
 一方、同じくアフガンの隣国タジキスタンは16日、複数のアフガン軍機のタジク南部の空港への着陸を許可した。
 アフガン機から救難信号が発信されていたといい、100名超の兵士が到着した。 (2109-081606)

 8月15日にアフガニスタンがタリバンの手に落ちたことから、40機以上のアフガン空軍機がウズベキスタンのTermez空港へ脱出した。
 16日にPlanet Labsの衛星がTermez空港を撮影した画像には21機の小型固定翼機と26機のへりが写っていた。
 映っていたのはC-208 11機、A-29軽攻撃機10機、Mi-17 16機、Mi-25 5機、UH-60 5機で、17日には少なくとも3機のUH-60が確認されている。
 米議会報告書によるとアフガン空軍は6月末の時点でA-29 23機、AC-208 10機、C-130 3機、C-208 23機、Mi-17 32機、MD-530 43機、UH-60 33機を保有していた。 (2110-082501)

米軍がアフガニスタンからの撤退を完了

 米中央軍司令官のマッケンジー海兵隊大将が米東部時間8月30日に、米軍がアフガニスタンからの撤退を完了したと発表した。
 マッケンジー大将は、最後のC-17がカルザイ国際空港を米東部時間30日15:29に離陸し、撤退完了と救出作戦の終了を宣言すると述べた。 (2109-083101)

2・6・3・2 諸国の反応

2・6・3・2・1 中露の反応

「5・7 中央アジア」で記述
2・6・3・2・2 中央アジア諸国の反応

(2021年には特記すべき記事見当たらず)
2・6・3・2・3 欧米諸国の反応

ドイツ

 メルケル独首相が8月17日、タリバンが権力を掌握したアフガニスタンに対して、現在の状況では開発援助はできないと述べ、一時的に停止する方針を明らかにした。
 ドイツはアフガニスタンの援助に1,000名以上が関わっており、首相は「現地スタッフの退避を急いでいる」と述べた。
 マース外相はタリバンが完全に支配すれば、1セントたりともアフガニスタンには送らないとの考えを示していた。 ドイツはアフガニスタンに対する主要な援助国の一つで、他の援助国の方針にも影響を与えそうである。
 DPA通信によると、ドイツからアフガニスタンへの援助は2021年に総額€430Mが予定され、インフラ構築のほか、地元警察の訓練、女性教育の向上などを目的としていた。 (2109-081802)

2・6・3・3 反タリバンの動き

サーレ第1副大統領が挙兵

 アフガニスタンの第1副大統領として政権を支えていたサーレ氏が、全国で唯一タリバンによって制圧されていない北東部パンジシール州に身を潜めていることが、複数の住民への取材でわかった。
 タリバンが権力を掌握した後、サーレ氏は政権の崩壊を認めず、ツイッターで暫定大統領に就任したと宣言し、同州に避難した軍兵士や地元軍閥らと武装闘争の準備を急いでいるとみられる。
 パンジシール州の住民男性が8月15日に撮影して朝日新聞に提供した動画の一場面では、迷彩服を着た男たちが、装甲車を連ねて渓谷を進む。
 男たちはタリバンの猛攻を受け守りが堅い渓谷に避難した政府軍兵士らで、住民によると19日までに数千人が全国から同州に逃げてきたという。
 広場には軍用ヘリや軍用車が並んでいる。 (2109-081904)

8月20日: マスード司令官の息子が合流

 タリバンの制圧を逃れたアフガニスタン北東部で反タリバン勢力が結集し始めた。
 2001年に崩壊した旧タリバン政権に抵抗し暗殺された国民的英雄マスード司令官の息子と、暫定大統領を宣言したサレー第1副大統領が8月20日までに合流した。
 ただ、反タリバン勢力の拠点はタリバンに取り囲まれ補給路を断たれている上、兵力は推定2,000~3,000人で、75,000人と推定されるタリバンとの差は大きく、欧米諸国に武器や弾薬の支援を求めている。 (2109-082001)

8月21日: タリバン制圧の3地区を奪還

 アフガニスタン地元メディアが8月21日、北部でタリバンが制圧していた3地区を地元勢力が奪還したと報じた。
 アフガンでは、タリバンの支配が唯一及んでいない北東部のパンジシール州で、タリバンに組織的に抵抗する動きが出ていて、地元メディアによるとパンジシール州に隣接する北部のバグラン州で、タリバンに抵抗する勢力が3地区を奪還したという。
 タリバンが実権を掌握した後、支配地域が奪還されたのは初めてで、双方に多数の死傷者が出たもようである。 (2109-082203)

8月23日: タリバンが再制圧

 アフガニスタンで実権を掌握したタリバンの報道担当者は8月23日、反タリバン勢力が奪還した北東部バグラン州の3地区を再制圧したと述べた。
 AFP通信によると報道担当者は、首都カブール北方のパンジシール州の渓谷で反タリバン勢力を包囲したとも明かし、平和的な問題解決を試みていると、戦闘より交渉を優先する姿勢を見せている。 (2109-082302)

9月 2日: パンジシールで戦闘再開

 アフガニスタン北東部パンジシール州でタリバンの統治に抵抗する武装勢力が9月2日までに、パンジシール渓谷付近でタリバンとの戦闘が再開したと発表した。
 タリバンの司令官もこの事実を認めた。
 山地が多いパンジシールは同国で実権を握ったタリバンの手に落ちていない唯一の州で、この武装勢力は「アフガニスタンの反タリバン国家抵抗戦線 (NRF)」と名乗っている。
 NRFの司令官はCNNの取材に、同州へつながるカワク峠で激しい戦いが続いているとしたうえで、タリバン側の攻撃を退けたと述べた。 タリバン側に数百人規模の死者が出たとも述べた。 (2110-090205)

 アフガニスタンの首都カブールから80kmの距離にあるパンジシール渓谷を拠点にタリバンに対する武力闘争を続ける抵抗勢力は9月3日、タリバンからの激しい攻撃に応戦していることを明らかにした。
 3日夜にはパンジシールが陥落したとのうわさが広まり、カブール市内では祝砲が鳴り響いたがタリバンからの正式発表はなく、AFPの電話取材に応じた住民はパンジシール陥落の情報を否定している。
 両者による和平交渉は失敗し、国内のほぼ全域を制圧したタリバンは、パンジシールを掌握することで軍事作戦に終止符を打つことを目指している。 (2110-090401)

 アフガニスタンではタリバンが反タリバン勢力の最後の拠点である北東部の州に攻勢を強めているが、反タリバン勢力も抵抗し攻防が続いている。
 ロイタ通信などによると、タリバンと北東部パンジシール州を最後の拠点とする反タリバン勢力との間で9月4日も戦闘が続いている模様で、タリバンは州境の高地に到達したものの、反タリバン勢力に押し戻されたという。
 反タリバン勢力は、旧タリバン政権に対抗して2001年に暗殺されたマスード司令官の息子、アフマド・マスード氏が率いている。 (2110-090501)

9月 6日: タリバンがパンジシール州を完全に掌握

 アフガニスタンのタリバンが9月6日、抵抗勢力の支配地域として残っていた北東部パンジシール州を完全に掌握したと表明した。
 SNSにはタリバンのメンバーがパンジシール州知事庁舎の門の前に立つ写真が投稿されている。
 これについて反タリバン勢力、アフガニスタン民族抵抗戦線 (NRFA) を率いるマスード氏のコメントは得られていない。 (2110-090602)

 アフガニスタンで実権を掌握したタリバンが9月6日、反対勢力が最後の拠点としていた北東部パンジシール州を完全制圧したと発表し全土制圧を宣言した。
 タリバンのムジャヒド報道担当者は6日の記者会見で、交渉での解決に全力を尽くしたが、妥結しなかったため武力を行使したと述べた。
 これに対し同州の反タリバン勢力のアフガン国民抵抗戦線 (NRFA) はツイッターで、タリバンの州制圧の情報は誤りで、われわれは複数の戦略的拠点で抵抗を続けていると反論した。
 NRFAを率いるマスード氏も私は無事だとツイッターに投稿し、インターネットに投稿した動画で「国の尊厳、自由、平和のための全土蜂起」を呼び掛けた。 (2110-090603)

2・6・3・4 対 ISIS 戦の再来

カブール空港で自爆攻撃、米中央軍が IS-K 拠点を UAV で攻撃

 アフガニスタンのカブール空港で8月26日18:00頃、米英軍の兵士が空港に入る人たちの手続きをしていたゲートで自爆攻撃があり、複数の地元情報によるとこの攻撃による爆発で死者は170人に及ぶおそれがある。
 これに対し米中央軍司令部は日本時間28日午前にIS-Kをナンガルハール州でUAVで攻撃し、計画者1人を殺害したと発表した。
 IS-KとはIS系のアフガニスタン地元組織ISKP(ISISホラサン州、ISIS-KあるいはIS-Kなどと呼ばれる)のことで、25日夜にカブール空港の入り口で起きた自爆攻撃については、このIS-Kが犯行声明を出している。
 バイデン米大統領は攻撃後の演説で、攻撃を忘れず許さず、責任者を追い込み代償を払わせると言明していた。 (2109-082801)

カブールのカルザイ空港にロケット弾5発

 カブールのカルザイ空港へ向けて8月30日朝にロケット弾5発が撃ち込まれ、米軍のBMDに迎撃されたという。
 アフガニスタンの地元メディアは同日朝、カブール市内の自動車から発射され、市内を越えて空港の方向へ向かったと報じた。
 31日までカブール空港を管理する米軍は、ロケット弾や迫撃砲を迎撃するシステムを配備している。
 米大統領府はロケット砲撃があったことを認めた上で、米軍撤収期限の8月31日まで、退避支援活動は不断で継続すると述べた。 (2109-083002)

 アフガニスタン・カブールの空港に8月30日にロケット弾5発が打ち込まれたが、そのうちの1発を米軍のC-RAMが撃墜し、米軍に死傷者は出なかった。
 Kandahar航空基地には米軍がC-RAMシステム(Phalanx CIWSのトレーラ搭載型LPWS)を配備し、2018年1月18日には試射が行われている。 (2109-083004)

2・6・3・5 タリバンと ISIS の対立

9月18、19日: タリバンを狙ったる爆発

 アフガニスタンのカブールなどで9月18日にタリバンを狙ったとみられる爆発が相次ぎ、タリバンの構成員ら少なくとも3人が死亡したとみられる。
 AP通信などによると、カブールで18日に止まっていた車が爆発し2人がケガをした。
 また、東部のジャララバードでもタリバンの車両3台が相次いで爆発し、タリバンの構成員ら3人が死亡し、市民を含むおよそ20人がケガをしたという。
 いずれの爆発もタリバンを狙ったものとみられるが、犯行声明は出ていない。 (2110-091901)

 AP通信などが、アフガニスタン東部ナンガルハル州ジャララバードで9月18、19両日にタリバンの車両を狙った爆発が相次いで起こり、ISIS系組織が19日に系列ニュースサイトで犯行声明を出したと報じた。
 AP通信によると、両日の爆発では複数のタリバン戦闘員を含む少なくとも8人が死亡した。 またロイタ通信は、病院や目撃者からの情報として18日の爆発で20人が負傷したと伝えている。
 爆発現場のナンガルハル州は、IS系組織が拠点を築いてきたことで知られる。
 ISIS系組織はタリバンと敵対関係にあり、8月にはカブール国際空港のゲートなどで自爆テロを起こし、米兵13人を含む170人以上が死亡した。 (2110-092002)

10月 3日: カブールのモスクで爆発

 アフガニスタンの首都カブールにあるモスクの入り口付近で10月3日に爆発が発生し複数の民間人に死傷者が出たことについて、ISISが4日に犯行声明を発表したことをもISISが運営するアマク通信が無料通信アプリ「テレグラム」で明らかにした。 (2111-100502)

旧政府軍兵士ら ISIS 合流

 Wall Street Journal紙が10月31日に複数のアフガン軍、治安関係者の証言として、タリバンが崩壊させた旧民主政権の政府軍兵士や情報機関員が、かつての同僚がISIS系武装勢力に合流しつつあると報じた。
 まだ比較的少数とみられているが増加しつつあると警告している。
 軍事の専門知識や治安の機微に触れる情報がISIS系勢力に流れ込めば、組織の強化が飛躍的に進む恐れがある。 (2112-110801)

11月中旬: ISKP がアフガン全土に拡大

 国連アフガニスタン支援団 (UNAMA) のライオンズ事務総長特別代表が11月17日、タリバンが実権を掌握した後のアフガニスタン情勢に関する調査結果を国連安全保障理事会で発表し、ISIS系の組織であるイスラム国ホラサン州 (ISKP) が拡大しており、全土34県のほとんどに存在が確認されると説明した。
 特使は、ISKPは一時は首都と一部の県にのみ存在していたが現在はほぼ全県に存在し、活動が一段と活発になっていると説明し、タリバンはISKP拡大に歯止めをかけられておらず、対処の方法はISKP戦闘員と疑われる人物の超法規的拘束や殺害に強く依存しているとし、国際社会がもっと注目すべき領域だと述べた。 (2112-111809)

11月下旬: タリバンがアフガン東部で IS 協力者狩り

 人権グループが11月30日、タリバンがアフガニスタン東部ナンガルハル州で、ISに協力している疑いがある市民狩りを始めていることを明らかにした。
 同州のジャララバードでは30日にタリバン治安部隊がISのアジトを急襲、8時間におよぶ激しい戦闘が続いた。
 同情報筋の話では、タリバンは8月に政権に復帰以降、これまでに100人以上の元警察官や元情報関係者らを殺害するか始末しており、人権グループによると、元アフガニスタン軍兵士に対する報復も続いているという。
 同グループによると、これまでに報復処刑が行われたのは4州だけだったが、同様のケースが他の州でも起きているという。 (2201-120101)

2・6・3・6 ISIS によるシーア派攻撃

10月 8日: 北部クンドゥズ州のシーア派モスクで爆発

 ロイタ通信によると、10月8日にアフガニスタン北部クンドゥズ州にあるシーア派のモスクで爆発があり、これまでに46人が死亡、140人以上が負傷した。
 多くの信者が集まる金曜礼拝が狙われたとみられ、今後、死傷者はさらに増える可能性がある。 (2111-100901)

 アフガニスタン北部クンドゥズ州にあるシーア派のモスクで10月8日昼に起きた爆発で、AFP通信は死者が少なくとも55人に達したと報じた。
 自爆テロとみられて、ISISの支部組織が同日夜に系列のアマク通信を通じて犯行声明を出した。
 ISIS支部は、同国で実権を握ったタリバンと対立しているほか、少数派にあたるシーア派を異端視しており、各地で攻撃を続けている。 (2111-100902)

10月15日: 南部カンダハルのシーア派モスクで自爆攻撃

 アフガニスタン南部カンダハルのシーア派モスクで10月15日に自爆攻撃があり、医療当局によると少なくとも41人が死亡、70人前後が負傷した。
 爆発が起きたのは週で最も人が集まる金曜礼拝の最中だった。
 犯行声明は今のところ出されていないが、1週間前にも北部クンドゥズのシーア派モスクでた自爆攻撃があり、ISISが犯行声明を出していた。 (2111-101503)

11月 2日: カブールの軍病院に自爆攻撃

 アフガニスタンの首都カブールにある軍のサルダル・モハマド・ダウド・カーン病院が11月2日に襲撃を受け、保健当局者によると少なくとも19人が死亡し50人が負傷した。
 タリバンの報道担当者によると、バイクに乗った自爆犯が病院の入り口で爆弾を起爆させた後、武装集団が病院構内に入り銃撃に及んだ。 襲撃犯は全員死亡したという。
 現地のAFPスタッフは最初の爆発から30分後に2度目の爆発音を聞いた。
 タリバンは国内の安定化を目指しているが、ISISのアフガン分派による攻撃が相次ぎ、多数の死者が出ている。
 2日の襲撃については、現時点で犯行声明は出ていない。 (2112-110205)



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