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1. 概  観

1・1 全 般

1・1・1 2021年の総括

 中東地域ではイランが核開発の本格再開が懸念されているほかイエメンの内戦が周辺国を巻き込みますます拡大しているのが懸念される。

 中国の海外進出は一帯一路構想の綻びが目立つようになっている。 こうしたなかで、台湾周辺に作戦機を飛ばす動きを大幅に拡大し、台湾海峡の緊張を意図的に作為しているように見える。

 欧州では大統領選挙を控えたプーチン大統領がウクライナ危機を作為しているように見える。

 米国を初めとする世界は北朝鮮の度重なるミサイル発射を実質黙認している。

 中央アジアでは米軍等のアフガニスタンからの撤退が新たな不安定要因を作っている。

 増大する中国の脅威を受け、防衛政策の見直しが進んでいて、敵基地攻撃能力の保有が俎上に上がってきている。
 防衛費が増額されると共に経済安全保障が大きく着目されてきた。 また南西諸島防衛を重視した部隊等の配置も着々と進められている。
 また駐屯地周辺などの土地利用にも着目した法整備も行われた。

 サイバ戦や宇宙防衛/宇宙利用など将来戦への対応も進められている。

 自衛隊が外国軍と共同訓練する機会が増え、と週2回ペースで実施している。

 装備では射程1,000kmの長距離巡航ミサイルの開発や、これを発射できる潜水艦などが計画されている。

 対地攻撃兵器では依然として米国の次世代戦闘機が明らかにされていない。 これに対し米空軍は第四世代戦闘機を再登場させようとしてるのが注目される。
 各国が超高速ミサイルの開発にしのぎを削っている。 中露は配備を開始し、米国も近く配備を開始する。
 こうした中で遊弋索敵型ミサイルの普及拡大が注目される。

 UAVは各種新型が報告されているが、有無人連携や有人機随行UAVなど、UAVの活用技術が注目されている。

 防空/ミサイル防衛では衛星群による発見識別追随が話題中心になっている。
 また超高速ミサイルの迎撃弾も各種開発が進められている。
 防空のもう一つのハイライトはUAVからの防護C-UAVで、捕捉、ソフトキル、ハードキル、鹵獲など各種システムが報告されている。

 その他の防衛装備ではUUV/USVの活用や、超長距離砲、GPSに代わる測位システム、などに大きな進歩が見られる。

 また全ドメイン指揮統制システムの出現は、将来の戦場様相に革命的な変化をもたらすと共に、階層構造になっている軍隊組織の構造そのものにも変化をもたらす可能性がある。

 更に静止衛星軌道の外側で月までの空間、所謂Cislunarの軍事利用には必須と見られる原子力推進ロケットの開発が具体化されつつあるのも注目に値する。

1・1・2 係争地域の情勢

中東情勢

 イランが核開発を再開し、ウランの濃縮濃縮度を兵器レベルに高める共に備蓄量も大幅に拡大し、プルトニウム生産の準備も進めている。

 イエメンの内戦は終結の目処が立たない。

 UAEとサウジアラビアでは軍需産業の振興が進められ、特にUAEでは各種兵器が開発され一部は輸出されている。

 サウジアラビアとカタールの対決は終了した。

イスラエル

 2020年にUAEを初めとする多くのイスラム国がイスラエルを承認したのに続き、各国とイスラエルの交流が活発化した。
 反面、ユダヤ人の東エルサレム立ち入りや、ゴラン高原での入植地拡大など、新たな紛争になり得る動きも起きている。

 エルサレム・デーでの衝突を発端とした戦闘でガザから累計4,340発がロケット弾が発射されたがイスラエル軍の地上侵攻には至らなかった。

印・パ対立

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。

中印対立

 ヒマラヤ西部ラダック地区では2020年5月衝突の余波が残っており、ヒマラヤ山脈東部シッキム地区でも兵力増強の動きがある。

ウクライナ

 ウクライナ東部の国境地帯にロシア軍が10万を超える部隊を展開させているためウクライナへ侵攻するのではと懸念されている。
 これに対し欧米諸国はウクライナに兵器売却などの支援を行うと共に、ロシアに対し経済制裁などの警告を行っているが、武力介入でウクライナを支援するとは言っていない。

アフガニスタン

 米軍の全面撤退で、アフガンは再びタリバンが支配する国家となったが、国内の混乱と周辺国の警戒は収まっていない。

1・1・3 紛争潜在地域の情勢

朝鮮半島

 北朝鮮の核開発は脈々と続けられ、2027年に最大242発の核兵器と数十基のICBMを保有すると分析されている。
 長距離BMの発射試験はなかったが、度重なるSRBMの発射試験と潜航中の潜水艦からのSLBM発射も行われた。

 米韓では合同演習が大幅に規模を縮小して行われた。
 こうしたなか米海軍が日本海でTomahawkの模擬発射試験を実施した。

東シナ海

 中国海警局警備艦が1年間に尖閣諸島接続水域に332日とほぼ毎日侵入した。 また領海侵入は34件、延べ40日確認された。
 また海警局警備艦が度々日本漁船を追跡した。

 これに対し政府は、中国海警局警備艦の行動を国際法上認められた無害通航にあたらないとする見解を示した。

 米国はバイデン政権も、尖閣諸島が米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認した。

 日米は東シナ海やその上空で共同演習を行い、日米仏豪艦隊が東シナ海で離島防衛訓練を行ったほか、オランダ海軍が東シナ海を航行した。

南シナ海

 中国はインドネシアに石油天然ガス掘削中止要求したほか、フィリピン軍に物資を運んでいた船に海警局艦が放水銃を使用し、一方的な領有権主張を繰り返した。
 また海上民兵を乗せた200隻もの漁船を集結させ、海上での示威行為を行った。

 米海軍は航行の自由作戦として、中国が領有を主張している人工島周辺を度々航行した。 また航行の自由作戦以外でも空母CSGが何度か南シナ海に入り、日英米蘭加 NZ 6ヵ国艦隊の合同訓練も行った。

 我が国も米海軍の空母と南シナ海で護衛艦が共同訓練を実施し、11月には海上自衛隊の潜水艦が南シナ海で米海軍と初めて対潜戦の訓練を実施した。

 ASEANは中国に対し行動規範作成交渉の促進を求めているが目に見えた進展はない。
 中国の海警法施行に強く反発しているベトナムは、中国の海上民兵集団の来襲に対抗するため、軍事訓練を受け小銃などの小火器を装備した海上民兵の新たな部隊を発足させた。
 中国はこのほかにもインドネシアやマレーシアと摩擦を起こしている。

台湾海峡

 中国PLA空軍は台湾のADIZ内を頻繁に飛行させた。 特に米国などの動きを牽制するような挑発が目立った。
 またPLA海軍も台湾周辺で威嚇行動を繰り返した。

 台湾は中国軍機の防空識別圏侵入繰り返しに対し、時間と資源の無駄を減らという理由で空軍機を緊急発進させる措置を中止した。

 米海軍はほぼ毎月、駆逐艦や巡洋艦が台湾海峡を航行している。 また空軍は台湾海峡周辺で偵察機の飛行を行っている。

黄 海

 黄海の岩礁で韓国が領有権を主張している離於島付近では、中国の警備船が4年間で25回出現した。
 中国が海上作戦区域境界線だとして一方的に設定した東経124゚線では、中国海軍がこれを超えて活動した。

欧 州

 モルドバでは親欧のサンドゥ大統領が親露派多数の議会を解散した結果、総選挙で親EUの与党が勝利した。

 車両のナンバープレートを巡ってコソボとセルビアの間に緊張が高まり一時国境地帯に部隊が展開したが、NATOとEUの仲介で事態は一旦収まった。

 トルコはエルドアン大統領が分断されているキプロス島について2国家共存を唱え、欧米諸国の激しい批判を招いている。
 これに対しキプロスはエジプト、イスラエル、ヨルダンに次いでUAEとも軍事協力協定を結び、更にイスラエルの関係も強めている。

 黒海では米国及びNATOとロシアの鍔迫り合いが続けられている。

 ベラルーシではギリシャからリトアニアに向かっていた民航機を強制着陸させ、搭乗していた反政府活動家を拘束した事件でし欧州各国が反発を高め経済制裁などの処置を講じた。
 ルカシェンコ大統領はこれに対抗して、中東などから集めた移民をEU側に送り込もうとしたが失敗に終わった。

 コソボとセルビアの間では、車両のナンバープレートを巡って緊張が高まり一時国境地帯に部隊が展開したが、事態は一旦収まった。

コーカサス

 ナゴルノ・カラバフを巡っては、2021年にも小規模な戦闘は生起したが、アルメニアとアゼルバイジャンは国境画定作業の開始した。

 ジョージアでは米国防長官が訪問して武器の提供などの防衛協力を約束した。

アフリカ

 リビア内戦はなおも続けられている。

 モロッコとアルジェリアでは長くモロッコと険悪な関係にあったアルジェリアが、モロッコとの断交したため更に緊張が高まる恐れがある。 モロッコは西サハラの領有権を主張している。

北極海

 プーチン大統領が北極圏防衛を任務とするロシア北方艦隊を軍管区に格上げし北極圏での戦力強化を図っている。

 米沿岸警備隊が新型砕氷艦3隻の基地をシアトルを整備するほか、空軍が爆撃機を北極圏に展開させ、陸軍がMDTFのアラスカ配備を計画している。

 中国が北極圏にシルクロードを開設すると共に、北極と南極圏の開発に積極的に関与する方針を示した。

1・1・4 東アジア諸国

中 国

 巨大経済圏構想一帯一路を掲げて世界制覇を目指す中国は、140ヵ国が署名し協力国が増えたが、中国からの多額な借り入れで債務不履行に陥った国が数多く出て、これらの国々で反中国感情の高まりとなっている。
 中国はこれと絡んで親中政権が支配する東南アジアや南アジアのほか、中東やアフリカに次々と軍事拠点の建設を進めようとしている。
 一方、東アジアや中央アジアではロシアとの連携を深め、孤立化を防ごうとしている。

 中国経済は過去10年間低迷を続け、2010年以前には10$以上の伸びを示していたGDPが漸次伸び率を縮小し、2020年には2.2%まで低下している。
 しかしながら国防費は10年前に比べ76%の伸びを示し、2021年の伸び率は6.8%と、GDPの伸び率を遙かに超えている。

 台湾制圧準備や被征服民族への圧力をますます強め、共産党支配体制維持の努力を更に強くしている。

 中国は海上交通安全法の大幅改正、海事局の権限強化、海警法の改正、海警局装備の強化などにより海洋進出を強化し、日本を初めとする周辺国への軍事的圧力をますます強めている。

 世界の核弾頭/爆弾数が減少するなか、中国はその保有数を増加させている。 米国は中国が2027年までに700発、2030年には1,000発の核兵器を保有すると見ている。

 中国はTJSWシリーズのキラー衛星の開発を行っており、遥感シリーズの偵察衛星を軸とした尖兵海洋監視衛星群を構成している。  ミサイル防衛ではIRBM級に対抗するシステムDN-3を開発中のほか、HQ-19地上発射型中間軌道迎撃弾の試験を実施している。

 地上配備型BMの発射機数は2020年に533基で、2001年から2.7倍に増えた。 特にIRBMはこの10年間で急増し8倍に増大した。
 更にASBMの発射試験で航行中の船を標的にしていたり、陸軍ロケット部隊のミサイルが射程を延伸し精度も向上しているという。

 中国は急速なペースで艦船の建造を進めている。 航空母艦は3隻目の建造を進めていて、2025年頃に就役する可能性がある。
 JL-3 SLBMを搭載する改良型晋級原潜も就役した。
 水上艦では2隻目のType 055駆逐艦が就役し、Type 052D駆逐艦も7隻が就役した。 Type 054Aフリゲート艦は31番艦が進水し、Type 056Aコルベット艦の最終艦が就役し、合わせて72隻になった。
 Type 075 強襲揚陸艦は一番艦の就役し三番艦の進水した。

 航空機ではJ-20戦闘機やY-20重輸送機で国産エンジンの搭載が本格化している。 また戦闘機やAEW&C機などの艦載機も充実してきている。
 次世代爆撃機H-20はまだ開発段階である。

 軍事産業では国内の軍事産業が世界の売り上げ大ベスト10に3社が入る一方で、ロシアへの依存度が低下し続けている。

北朝鮮

 北朝鮮のGDPに占める軍事費の割合は24.0%で、世界で最も高かった。

 2021年に核実験は行われなかったが、核開発と核兵器の備蓄は鋭意進められている。

 北朝鮮が潜航中の潜水艦からSLBMを発射した。 Iskanderを北朝鮮が改良したKN-23のSLBM型とみられる。
 KN-23の発射試験は2回行われ2発ずつ発射した。 ミサイルは変則的な軌道を描き750km飛翔した。
 また鉄道移動式KN-23の発射試験も行われた。
 極高速ミサイル火星-8の発射試験を実施したが、飛行距離は200kmに届かなかった。
 新型長距離CMの発射試験を実施し成功し1,500km先の標的に的中したと発表したが、日本政府は何らかの原因で墜落し試験失敗したと見ている。

 北朝鮮は企業に対するランサムウエア攻撃で外貨獲得を行っている。

韓 国

 韓国2024年完了を目指して射程150kmのL-SAMを開発している。 L-SAMは対航空機型とBMD型の2種類がある。
 7個中隊計画されている天弓-2 M-SAM最初の中隊が韓国空軍に納入された。
 韓国が韓国版Iron Domeの開発を決めた。

 米韓ミサイル指針が撤廃された。

 KF-Xの試作1号機がロールアウトした。 2022年に初飛行し、2026年までに開発を終える。

 韓国空軍がKF-16V Block 70/72への改装を完了した10機を受領した。
 航続距離を伸ばなどのFA-50の能力向上計画を明らかになった。

 韓国海軍が軽空母の最新完成予想図を公表した。
 KSS-Ⅲ潜水艦の一番艦が就役した。 SLBMを10発搭載する4,000t級原子力潜水艦SLBMを10発搭載する4,000t級原子力潜水艦が発注された。
 3隻建造するKDX-Ⅲ Block 2駆逐艦一番艦が起工した。 また8隻建造するFFX-Ⅱフリゲート艦の7番艦が進水した。
 独島級大型輸送艦の二番艦が就役した。

 K2 MBTの三次生産54両が発注された。 2036年の配備を目指した次世代の国産水陸両用戦闘車 (KAAV) 計画が進められている。
 韓国陸軍が装備しているK1 MBTとK9 SPHをUGVに改造する研究開発の主契約社が選定された。

 韓国が軍事産業立国を目指し、フィリピンのフリゲート艦、インドネシアから小型潜水艦、タイ、インドネシア、イラクなどへT-50高等練習機などと輸出に力を入れている。
 なかでもK9 SHPは韓国と6ヵ国で1,700門が採用されている。

 対米関係では、2021年に戦時作戦統制権の移管問題や在韓米軍の縮小問題は特に進展がなかった。
 米韓合同演習は規模を縮小しながらも実施したが、日米豪印の4ヵ国連合体Quadには参加拒否し、米国から招待された演習への参加を断るなど、両国関係はギクシャクした。

 日韓関係では、2020年版の国防白書で、日本をパートナーとして位置づけるのを止めて単に隣国と記述し非友好国と見た。

台 湾

 中国の台湾侵攻が近いと一部で報じられるなか、予備役部隊の戦闘演習や射撃演習などを2022年から強化する。
 米国産豚肉輸入禁止案となどを巡って行われた台湾の国民投票で、蔡総統の民進党が反対してきた4案件全て否決され、有権者は中国ではなく米国を選ぶ劇的な勝利となった。
 米国は台湾の独立は支持しないと明言し、歴代米政権が踏襲してきた立場を確認した。

 米国が台湾で建造中の潜水艦に搭載する機密技術の輸出を承認したほか、バイデン政権は政権初の武器輸出M109A6 Paladin SPH 40門を台湾へ売却するなど、武器の売却を積極化させている。 また米国の在台湾協会が台湾とHIMARS 11両と沿岸防衛システム100両を売却する契約を行った。
 米台が米沿岸警備隊と台湾海巡署の関係強化を図るため、沿岸警備作業部会を設立することで合意した。
 米軍部隊は少なくとも1年前から台湾で活動しており、米特殊作戦部隊と海兵隊が台で訓練の支援を行っている。 また台湾海兵隊がグアムで米軍と合同訓練を行っている。

 先進7ヵ国 (G7) がで台湾への支持を表明した。 また欧州議会も台湾との政治関係と協力を可決し、EU議会の議員団が台湾を初めて公式訪問し蔡総統と会談した。

 現在PAC-3 CRI弾を装備している台湾がPAC-3 MSEを購入する。 また天弓-ⅢSAMの生産を拡大する。
 台湾が国産初となる潜水艦の船台起工式を実施した。 潜航時排水量2,500tの潜水艦は2024年に完成し2025年に納入される。
 沱江級より若干大きい沱江改級コルベット艦の一番艦が進水した。 引き渡しは2022年の予定である。
 満載排水量10,600tで海剣-2 SAMや76mm砲、Phalanxなどを搭載する新型ドック型輸送揚陸艦の一番艦が進水式した。 引き渡しは2022年の予定である。
 保有するF-16A/B/C/D 142機をF-16V Block 70/72に改装する計画の1次分42機の改装が完了し、これを装備した部隊が発足した。
 新型高等練習機勇鷹の量産1号機が初飛行した。

東南アジア

 国際刑事裁判所がフィリピンのドゥテルテ政権が麻薬犯罪容疑者の超法規的殺害について、人道に対する罪の疑いで捜査を開始した。

 米国務長官が、中国が南シナ海でフィリピン軍を攻撃すれば米国のフィリピン防衛義務を定めた米比相互防衛条約が適用されると警告した。
 米国防長官が、フィリピンが破棄を一方的に通告していた訪問軍地位協定について、今後も維持されることを明らかにした。
 2020年にはCOVID-19の影響で中止された米比軍が参加するBalikatan演習が開始された。
 米政府かフィリピンにF-16 12機や対艦ミサイルなどの武器売却を承認した。

 フィリピン政府がSecind Horizon近代化計画を推し進めている。
 韓国に発注していたフリゲート艦の二番艦にして最終艦がカポネス島に入港した。 またイスラエル製ミサイル搭載型高速哨戒艇を8隻装備する。
 このほかフィリピンは潜水艦2隻の建造を計画している。

 2020年から2044年まで25年間の軍近代化計画の素案を公表された。
 韓国とのKF-21/IF-X 計画に完全復帰した一方で、Su-35の購入を取りやめた。
 Type 209/1400潜水艦の3番艦にして最終艦が就役した。 更に潜水艦12隻の保有をめざしている。 またイタリアからFREMMフリゲート艦6隻を購入する。

 マレーシアがシンガポールと領海領空を巡り度々イザコザを起こしている。

 シンガポールが中国海軍との合同演習を実施し、中国との軍事関係が今後強化される可能性はある。 ただシンガポールにとって米国が安全保障上の第一のパートナーであることは変わらない。
 タイ空軍がT-50THを追加発注したり、ミャンマーが元インド海軍のKilo級潜水艦を就役させなどした。

大洋州

 豪政府が2021-2022会計年度の国防費を4.4%増と発表した。 対GDP比は2.1%になる。

 中国がオーストラリアとの戦略・経済対話に関する全ての活動を無期限に停止した。
 反面、米国とは軍事協力の強化に向けて合同演習を計画したり、米軍が豪州に巡回駐留する米軍の規模拡大で合意した。
 また米英豪3ヶ国安全保障協力AUKUSを創設と、3ヶ国の安全保障協力の一環として原子力潜水艦技術で協力する。
 Hobart級AWD駆逐艦の三番艦にして最終艦が、4ヶ月半の航海を終え帰港した。 またスペインに2隻発注していた洋上補給艦の一番艦が就役した。
 豪海軍が9隻建造するHunter級フリゲート艦の一番艦建造はCOVID-19感染拡大などの影響で18ヶ月遅れる。

 ニュージーランドは1985年以来核疑惑から米海軍艦の寄港を認めていなかったが、駆逐艦がウェリントンに入港した。

 南太平洋島嶼国では中国の進出とそれを阻止しようとする米豪の鍔迫り合いが続いている。
 事務局長の選出を巡って深刻な亀裂に直面している太平洋諸島フォーラムには、中国の影響力拡大懸念がある。
 海底通信ケーブル敷設計画では中国と日米豪の構想が起きている。 「東ミクロネシアケーブル」計画は中国企業の参加が安全保障上の脅威だとする米国の警告で頓挫し、日米豪はミクロネシア連邦とナウル、キリバスの3ヵ国を海底ケーブルで結ぶ事業に資金支援すると発表した。
 仏領ニューカレドニアでは独立の是非を問うの住民投票が行われ中国が独立支持派に急接近したが、独立が否決された。
 前政権がつくった対中国の巨額債務が問題化したサモアでは、新首相が中国の支援する港湾開発計画を棚上げした。
 2019年に台湾と断交して中国と国交を結んだソロモン諸島で政府への抗議デモが起き、一部が中国系商店に放火や略奪するなど暴徒化したため、中国が介入した。

1・1・5 周辺国を除く世界各国

米 国

 バイデン政権が誕生しトランプ政権政策の見直しが行われている。 対中、対露政策は大筋で変わらないが、欧州諸国との関係、特にドイツとの関係は元に戻されようとしている。
 北朝鮮戦略では核やミサイル戦力を事前に無力化するLeft of Launch戦略を検討している。

 各軍の戦略では陸軍が過去40年来最大の方針転換をして最優先課題を長距離精密打撃においている。
 海軍は、トランプ政権が2040年代初めまでに400隻にするとしていたが、最終目標は355隻が妥当とみている。
 空軍は現在7機種装備している戦闘機をA-10 CAS機も含めて4+1機種に削減し、残る4機種はNGAD、F-35A、F-15EX、F-16でF-22はリストになく、F-16は逐次F-35Aに換装されるという。 また爆撃機の大規模展開を世界規模で実施している。
 海兵隊が進めようとしているForce Design 2030では最優先として地対艦ミサイルNSMを挙げ、最初の部隊として第3海兵沿岸連隊が編制され、2030年までに3個沿岸連隊を太平洋地域に配置する。

 インド太平洋陸軍には地上配備遠距離打撃兵器を装備したMDTFを配置する。

ロシア

 プーチン露大統領が国家安全保障戦略と呼ばれる文書を6年ぶりに改訂し、NATOの軍事力増強がロシアの脅威になっていると強調した。
 プーチン露大統領はクリミアとセバストポリは永遠にロシアと共にあると述べ、ウクライナとジョージアの将来NATO加盟を巡る2008年の確約を撤回するよう要求し、ロシアのソ連時代への回帰を示した。
 また政権反対派の抑圧を進め、西側諸国の反発を買った。

 世界の核弾頭保有数は減少にあるが、依然として最大の保有国はロシアで、2位の米国を引き離している。

 軍の装備近代化は順調に進捗し、装備の充実も図られている。
 大規模な演習を実施して戦力を誇示する一方で諜報活動などのハイブリッド戦も引き続き活発に行い、更にエネルギー政策も戦略として活用している。
 極東地域では陸海空の活動を今までより活発化させ、我が国の北方領土での新装備配備や演習も活発化している。
 更にアフリカへも海軍基地建設を試みたり傭兵を派遣したりと進出を試みている。

欧 州

 NATOがロシア代表部員登録を取り消し追放した。 これに対抗してロシアがNATO代表部を閉鎖した。
 また中国の人権侵害への懸念が強まっていて、NATOは攻撃的なロシアに加えて台頭する中国にも対処できるとした。
 加盟30ヵ国で国防費が目標としたGDPの2%を達した国は2014年より3ヵ国増えて10ヵ国になった。
 NATOは連合国緊急対応軍団 (ARRC) の態勢を確認した。

 バイデン政権は駐独米軍を撤収するとしたトランプ政権の計画を凍結した。  米国防総省が、ドイツに500名を増派すると発表した。 増派されるのはMDTF-Europeと戦域火力司令部の2個部隊で、第56野戦砲兵司令部を、マルチドメイン火力統制のため復活した。

 EUは英国が米国との関係からNATOを重視し、EUの安保軍事面の統合にストップをかけていた事情があったが、英国の離脱によりEU加盟27ヵ国が欧州平和機関 (EPF) の設立で合意した。
 またEUが有志国だけで展開可能な最大5,000名の即応部隊を創設し、2025年には運用できる体制にする。 計画には独、蘭、芬、ポルトガル、スロベニアの5ヶ国が名乗りを上げた。
 旧ソ連構成国のウクライナ、ジョージア、モルドバの3ヵ国がEU盟交渉の開始を要請した。

 英国が米国と、中国やロシアの専制主義に断固として対抗する姿勢を鮮明にした新大西洋憲章に署名した。

 フランスは中国台頭を念頭に2018年にインド太平洋戦略を打ち出し、米国に加え日豪印を重要な協力国と位置づけている。

 ドイツがチェチェン独立派司令官だった男性が暗殺されたのはロシア政府の指示としてロシア外交官2人を追放した。

 バルト海沿岸国ではポーランドが軍備の強化を進めている。 エストニアが高い軍事工業力を示した。 リトアニアが発表した国防費のGDP比は2030年に2.5%になる。

 ルーマニアがNSM沿岸防備システムの購入を決めたほか、F-16の増強を41機を目標に進めている。

 トルコのエルドアン大統領はチュルク評議会を機構に格上げしチュルク世界の盟主にならんとしているが、その支持率は急低下している。

南アジア

 インドがAct East政策の元に海軍部隊を東南アジア、南シナ海、西太平洋へ派遣し、友好国との軍事的協力関係を深めようとしている。
 対外的にはロシアと米国の間で等距離を保とうとしている。

 パキスタンはパキスタン・タリバン運動との抗争に努力をそがれている。

 スリランカでは再び親中政権に戻り、中国企業の進出が目立っている。

中南米

 中南米ではエクアドル、ペルー、ニカラグア、ホンジュラスなどで次々と親中左翼政権が成立している。

アフリカ

 地中海沿岸でアルジェリアがモロッコの対立が表面化した。
 中部アフリカでもチャドと中央アフリカの国境で戦闘が起きたが、両国は和解に向かっている。

中央アジア

 ロシアは米国がアフガニスタンから撤退した後に、中央アジアでの影響力を主張している。 しかし中国や米国も進出の機をうかがっている。

1・1・6 国 内 情 勢

防衛体制

 経済安全保障が重視されるようになり、政府に関係閣僚会議を新設したほか、内閣府に「経済安全保障担当室」を新設する。 更に国会に「経済安全保障推進法」案の提出をめざす。
 安全保障の対象を北朝鮮から中国にシフトさせるため、自民党内で日米の防衛協力の指針を見直す案が浮上してきた。
 岸田首相が、防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画を改定する方針を示したが、自民党安全保障調査会は既存の3文書とは別に国家防衛戦略を新たに策定することを検討する方針である。

 岸防衛相が海洋進出を進める中国について、目立たないところで一歩ずつ侵略し、最終的には全部変わっている状況をつくろうとしているとの認識を示した。
 安倍首相が提唱したQuadは初のオンライン首脳会談を開催した。
 国際海底ケーブルの敷設をめぐり、急速に勢力を拡大する中国に対抗して日米豪が連携を強化する。
 海外から優秀な研究者を集める中国の人材招致プロジェクトである千人計画に多くの日本人研究者が関与し日本政府から多額の研究費助成を受け取った後、中国軍に近い大学で教えていた。

 バイデン米政権下で初めて行われた日米防衛相会談で、台湾有事に際しては緊密に連携する方針を確認した。

 武装工作員侵入への備え、警察と陸上自衛隊部隊が共同訓練を行っている。

防衛予算

 政府が閣議決定した令和3年度補正予算案に、防衛費を補正では過去最大の7,738億円計上した。 その結果、令和3年度の防衛予算防衛費は、補正と当初予算を合わせ6兆1,160億円となっり、GDP比で1%を超して1.09%となった。

 令和4年度予算案は防衛費が5兆4,005億円で、GDP比では0.957%となり1%枠内に収まったが、NATO基準では1%超になった。

ミサイル防衛

 北朝鮮や中国などの新型ミサイルを人工衛星で監視する最新技術の調査研究を開始すると共に、衛星コンステレーションに関するタスクフォースの初会合を開いた。  防衛省は令和4年度予算概算要求にAegis System搭載艦の建造費計上を見送った。

我が国周辺の警備

 グレーゾーン対処の自民党内の検討で、海上保安庁法改正などの法整備を含む強い措置を求める国防部会とこれに反対する国土交通部会が対立し、玉虫色の表現に落ち着いた。
 政府が令和4年度にAIと衛星を組み合わせた新たな不審船監視システムの運用を令和6年度にも開始する。

 奄美駐屯地に弾薬庫の整備、宮古島駐屯地にSSM、SAMなど弾薬の搬入、勝連分屯地に地対艦ミサイル配備、米軍空母艦載機の訓練上となる馬毛島での自衛隊基地整備や石垣島にミサイル部隊を配置するなど、南西防衛を重視した部隊配置が進められている。
 また航空自衛隊が、戦闘機などの運用拠点を離島へ拡充こと検討している。

 海上保安庁が巡視船の更新、大型UAVの導入、新型ジェット機の配備など、装備の充実を進めている。

 中国による尖閣諸島占拠を想定した、自衛隊、海上保安庁、警察、外務省の担当者が参加する図上演習を複数回実施していた。

海外活動

 ペルシャ湾で中東海域で情報収集任務に当たっている護衛艦とP-3Cは派遣期間を延長したが、規模を縮小した。

 アフガニスタンから邦人らを退避させるため、輸送機を派遣したが、退避できた日本人は1人のみであった。 この結果を受けて自衛隊法84条4改正を含む見直しが検討されている。

将来戦への対応

 2020年に公表された三菱電機への不正アクセスによって流出したデータのうち、安全保障に影響を及ぼすおそれのあるものが59件あった。
 平成30年度末時点で計430名だったサイバ部隊は段階的に増員して令和3年度末に800名とし、5年度には千数百名規模に拡大する。
 政府が中国やロシアなどによるサイバ攻撃を念頭に、今後3年間の次期サイバーセキュリティ戦略案を策定した。

 政府が小型衛星による観測網の構築に向け、2020年代半ばに衛星3基を打ち上げ、実証試験を行う方針を固めた。
 また、米宇宙軍が準天頂衛星に、中国の宇宙活動を監視する目的で光学センサを搭載することで日米が合意した。
 防衛省が宇宙空間の警戒監視や人工衛星の修理補給を担う宇宙巡回船の建造を検討している。

防衛協力

 自衛隊が外国軍と共同訓練する機会が増えてきた。 2021年1~5月は陸海空の合計で38回と週2回ペースで実施した。  日豪両政府が円滑化協定 (RAA) を2022年1月にも締結する方向で最終調整に入った。
 日印物品役務相互提供協定 (ACSA)が承認された。
 自衛隊と英国軍の共同訓練などに関する円滑化協定 (RAA) の締結に向けた交渉に入る。
 フランス政府が円滑化協定の締結を打診してきた。
 ドイツとは情報保護協定が締結された。

 航空自衛隊がマニラ近郊で比空軍と共同訓練を行った。
 海上保安庁が、東南アジア周辺海域における海賊対策およびフィリピン沿岸警備隊との連携訓練のため、大型巡視船を派遣した。

装備行政

 防衛技術流出事案が何件か摘発された。
 政府が先端技術の海外流出を防ぐ狙いで防衛技術保全強化策を進めている。

 次期戦闘機の開発で、三菱重工業を中核に複数の日本企業による技術者チームが発足した。
 システムインテグレーション支援にLockheed Martin社を選定したが、エンジンを英国と共同開発する方向で、機体開発の一部に英国を参加させる方向で最終調整に入っている。

 装備庁が新型外洋哨戒艦 (OPV) の検討を行っているほか、潜水艦に長射程CMを装備する検討を行っている。
 護衛艦いずもの艦上で米海兵隊F-35Bによる発着試験が実施された。
 たいげい型潜水艦の2番艦が進水するととみに、もがみ型新型護衛艦が4番艦までが進水した。
 最新Aegis護衛艦はぐろやそうりゅう型潜水艦の12番艦で最終艦が就役した。

 射程を1,000km超まで延ばす地上発射型国産長射程ミサイルを、艦艇や戦闘機から発射可能な新たな長射程ミサイルとする開発に着手する。  また装備庁が超高速巡航ミサイル (HCM) を開発している。

1・1・7 対地攻撃兵器

航 空 機

 戦闘機では第6世代戦闘機の開発が開始される一方で、F-15、F-16、F/A-18などの第4世代戦闘機の再登板が注目される。
 こうした中、第5世代機Su-57の調達が始まったばかりのロシアでは軽戦闘機Su-75の開発が進められているのが注目される。
 中国では今まで全面的にロシアに依存してきた戦闘機のエンジンが徐々に国産エンジンに切り替わりつつある。
 また不評であったJ-15艦載機に代わり量産の見通しが見られなかったFC-31が艦載機として再登板しようとしている。

 爆撃機では米国で次世代機B-21が2022年にはロールアウトの段階にあるが中国H-20やロシアの次世代機については報じられていない。
 爆撃機等としては米国でガンシップにレーザ砲が搭載されたり、輸送機からCMを発射するアースネルプレーンが報じられている。

 ヘリコプタでは米陸軍の次期主力へりFARAとFLRAAの開発が佳境に入っている。

 その他の航空機では米空軍が水陸両用仕様のMC-130を2022年の初飛行を目指して開発中であったり、ロシアが極東でWIG効果を利用した輸送機を本格使用することなど注目される。

ミサイル等

 弾道ミサイルでは射程を500+kmに伸ばす米国のPrSMが能力向上で射程を1,000kmまで伸ばそうとしている。
 中国では射程が300kmであったDF-11が700km以上、600kmであったDF-15/16の射程は1,000kmになっている。

 超高速飛翔体は米国が陸海空軍及びDARPAで各種開発されているが、空軍のAGM-183A ARRWが2022年装備開始を目指している。
 中国は超高速兵器DF-17を既に相当数配備していることを明らかにしてお、米軍は中国が2025年までに超高速ミサイルを200基程度配備すると見ている。

 巡航ミサイルは射程が200~300km程度の中型が各国から各種報告されている。
 米空軍がAGM-86B ALCM後継となる核弾頭のLRSOWの開発を発注した。 米海軍も核弾頭の洋上発射型CM SLCM-Nの開発開始を要求している。

 弾頭を搭載したUAVである遊弋索敵弾は各種が急速に普及している。

U A V

 各国から各種UAVが報告されたが、注目されたのは多数機からなるUAV群の自動制御や有人無人機の連携、更に有人機を同行援護するLoyal Wingmanなどの、UAV活用に関する技術の進展であった。

その他

 米空軍でレーダ偵察機に代わり、全ての航空機、センサ、その他武器システムを連接するシステムABMSの開発が続けられている。

1・1・8 防空システム

宇宙防衛/戦略 BMD

 Cislunarの軍事利用に向け米DARPAが熱核推進装置を用いたDRACO宇宙船計画を開始した。 また静止衛星軌道以内の深宇宙を監視するレーダDARCの開発も開始される。

 米国でDSP衛星、SBIRS衛星に続く早期警戒衛星OPIR衛星の計画が開始されている。 陸上設置早期警戒レーダではLRDRが設置を完了した。

 米MDAが次世代迎撃システムNGIの開発を発注した。 MDAは2030年まででのoperationalを計画している。
戦域防空/TBMD

 超高速ミサイル防衛について米MDAは要域防護GPI (Glide Phase Interceptor) を重点に開発を進めている。

 イスラエルIMDOと米MDAが、Arrow 2の後継となるArrow 4の共同開発を開始した。

 中国が、Dong Neng-3 (DN-3) と呼んでいるIRBM級に対抗するシステムを開発している。 また地上発射型中間軌道迎撃弾のHQ-19試験を実施した。

 ロシアがS-500の発射試験を行い高速BM標的の撃墜に成功した。

その他の防空システム

 米陸軍がIM-SHORADを装備した最初の部隊をドイツに派遣した。 またIFPCのInc 2としてはSidewinderを中心としたシステムの採用を決めた。
 更にその先となる50kW級レーザを使用したDEM-SHORADの開発も進め、300kWレーザ兵器の開発も開始しようとしている。
 その一方でイスラエルから購入したIron DomeはCMD用に使おうとしている。

 対UAVでは、ソフトキル、ハードキル、鹵獲システムなどとUAVキラーUAVなどが報告され、特に小型UAV群への対処が焦点となっている。

 対空用空中センサでは再び係留気球が着目され、イスラエルやサウジアラビアで配備を開始している。

 対空C3Iでは米陸軍のIBCSの量産が発注された。

1・1・9 関連軍事技術

陸戦兵器

 各国でロボット戦闘車 (RCV) の開発が進み、米陸軍では軽量型RCV-Lの納入を受け、2022年に中隊規模の試験を計画している。

 APSはドイツとイギリスがそれぞれBMTにイスラエルのTrophy APSの搭載を決めた。

海戦兵器

 米海軍では現在の空母より小型で搭載機数が1/2~2/3の中型空母の検討を進めている。
 米海軍が発注しているVirginia級Block Ⅴ攻撃型原潜は艦首のVLSと胴体中部にCMを搭載し、更に将来は超高速ミサイルの搭載も計画されている。
 米海軍が次期駆逐艦DDG(X)の開発を立ち上げた。
 米海軍がUSVやUUVの開発を本格化させており、Ghost Fleet Overlord USVが4,700nmに及ぶ全自動航海に続いて揚陸演習に参加したり、USVからSM-6を発射し標的を撃墜することに成功している。

空戦兵器

 米空軍研究所がFY24での試験開始を目標に進めている航空機搭載自衛用レーザ装置SHiELDは、サブシステムが逐次納入されている。

サイバ戦

 中露及び北朝鮮による米韓や台湾に対するサイバ攻撃が多発し、特に北朝鮮はこれを外貨獲得手段に活用しているとみられる。

 これらのサイバ攻撃に対し米国はサイバ反撃を実施している。

砲熕兵器

 陸軍が開発中の長距離砲ERCAが70kmの試射に成功し、2023年の配備を目指して開発を続けており、ラムジェットで噴進し射距離を100km以上とする砲弾の開発を発注する。
 更に米陸軍は射程1,000nmの戦略長距離砲の開発を検討している。

 独仏が共同開発中のMBTは搭載砲が130mmか140mmになりそうである。

 米海軍が電磁砲をZumwalt級駆逐艦に装備する方針であったが、国防総省の関心が超高速ミサイルに移ったため、海軍の要求は削減されている。

共通技術

 EUのGalileo測位システムを構成する測位衛星が28基体制になった。

 GPSでは対妨害性に優れるM-Codeの利用が開始される。 一方でGPSによらない測位システムの開発が本格化している。

 米国防総省がJADC2の活用を開始した模様である。

関連基礎技術

 ミサイル、UAVや有人機に使用する低価格なラムジェット/クラムジェットエンジンの開発が進められている。
 英仏が共同で、機械可動部品を必要としないTVC装置を開発している。

 米国では小型可搬原子炉開発計画が進められてており、その用途を極地などの遠隔地、戦略支援地域及びHADRの三つとしている。
 マイクロ原子炉はアラスカ内陸の空軍基地に初めて配備された。

1・2 係争地域の情勢

1・2・1 中東情勢

1・2・1・1 イラン

核 開 発

 年頭にウラン濃縮率を、2015年に締結されたイラン核合意で定めた3.67%から20%にまで高めたイランは、その後新型遠心分離機IR-2mやIR-6、IR-5の設置で濃縮度を63%にまで引き上げた。
 また濃縮ウランの備蓄量も2月時点で濃縮ウランの貯蔵量は2,967.8kgと、上限である202.8kgの15倍近くに達した。 そのうち濃縮度20%のウランが17.6kgあった。
 更に核合意では15年間に製造や取得が禁止されている金属ウランの製造も開始し、IAEAは2月時点で3.6gの金属ウランを確認している。
 米国家情報長官室 (ODNI) は、イランがプルトニウムを生産できる重水炉の建設に新たに乗り出す可能性があると見ている。

 トランプ前政権は2018年に核合意を離脱して制裁を発動したが、バイデン政権にはイランとの関係改善の動き出し、欧州諸国やロシア、中国が仲介して間接協議を開始したが、度々の中断で進展していない。

軍備増強

 イランが革命防衛軍 (IRGC) の2022年予算を2021年の二倍以上に増額する。 また正規軍の予算も60%増額する。

 イランは人工衛星の打ち上げと称して大型ロケットエンジンの開発を進めているが、ここ数年、技術的な問題から何度も衛星打ち上げに失敗している。
 2021年にイランは、舶用コンテナに擬したFateh-100シリーズTBMの発射機など各種BMを公表している。 1月には洋上標的に対し ASBM を発射し命中させている。

 IRGC海軍はタンカーを改造した排水量121,000tで大型飛行甲板を持つ多用途艦を就役させたほか、大型の双胴艦を少なくとも3隻建造している。
 またIRGC海軍はペルシャ湾で多数攻撃をするための小型艇340隻を装備した。

 IRGCは航続距離7,000kmのUAVを複数保有しいるほか、行動半径が2,000kmのUAV Gazaも保有している。 また対地/対艦用のUAVを対空用としても使っているいう。

 IRGCが2019年にオマーン湾上空でRQ-4A Global Hawkを撃墜した3 Khordad SAMの短距離型9 Deyを公開した。
 米軍が358 SAMと呼んでいるイラン遊弋型SAMは射程が100km、射高は8kmと見られている。

大規模演習

 IRGCが1月にペルシャ湾で700隻以上の小中型艦艇が参加した演習を行った。 これに続いて1月にオマーン湾でヘリ空母に改造したタンカーを使った演習を公開した。

 また2月にはIRGC海軍とロシア海軍がインド洋の17,000kmに広がる海域で合同演習を実施した。

米国との対立

 IRGC海軍がペルシャ湾全域で度々米艦船への挑発行動を繰り返している。 これに対し米沿岸警備隊の警備艦が警告射撃も実施している。
 これについて米第5艦隊はIRGC現場指揮官の独走ではなくイランの政策変更によると見ている。

艦隊の大西洋進出

 5月にイランを出港しアフリカを廻りSt. Petersburgまで航行した、国内建造のフリゲート艦とヘリ用大型飛行甲板を持つ改造タンカーをが、45,000kmの航海を終え9月に帰港した。

アゼルバイジャンとの緊張

 2020年のナゴルノカラバフを巡る戦いで、アゼルバイジャンがハイテクUAVを導入するなどイスラエルとの軍事的結びつきを強めているのに対しイランは、イスラエルがアゼルバイジャンを拠点に攻撃を仕掛けてくる可能性があると警戒してアゼルバイジャンとの国境付近で大規模演習を実施して隣国の動きを牽制している。

周辺国との関係

 ヨルダンがイラン製の形状をしたUAVによる攻撃を受けているという。

 キプロスでイランが支援するグループがイスラエル人にテロ攻撃を実行しようとしたとイスラエルがイランを非難した。 キプロス当局逮捕した男の車からは銃と弾薬が見つかり、ほか数人とテロを起こそうとした疑いがあるという。
 キプロスにはイスラエルの多くの防衛関連企業が拠点をいている。

サイバ攻撃

 米国土安全保障省が、イラン政府と関係のあるハッカー集団が米国の重要インフラ分野を標的としたサイバ攻撃を仕掛けていると警告した。

1・2・1・2 イエメン

 イエメンの内戦は混沌とした情勢であるが、年末になって親政府軍の攻勢とサウジ主導の連合軍の空爆強化が報じられるようになってきた。

 フーシ派のサウジ攻撃は引き続きBMやUAVで空軍基地や石油関連施設を目標に頻繁に行われ、大半はサウジ防空部隊に迎撃されているようである。 ただ、迎撃に失敗したケースも報告されている。
 この結果サウジはPatriot弾の不足に見舞われ、米国に緊急供給を要請している。

1・2・1・3 カタール

 2017年にカタールと断交したサウジアラビアが1月、カタールに対する空域と陸海国境の封鎖を解除すると決定した。

 一方米財務省は、レバノンのヒズボラに支援を行ったとして、カタール、サウジアラビア、バーレーン、パレスチナ国籍の複数の個人に制裁を科すと発表した。

1・2・1・4 イラク

 イランと連携するシーア派の民兵組織がイラク駐留の米軍基地やバクダッドの米大使館などを、度々ロケット弾で攻撃した。
 またISISによる攻撃がクルド自治区に対して行われ、イラク軍がクルド軍Peshmergaと共同で対処している。

 イラクの国会議員総選挙で親イラン民兵組織勢力の議席大幅に減らしたことから宗派対立が激化し、シーア派民兵組織が関与していたと見られるイラン製のUAVや爆発物が使われたテロが発生している。

1・2・1・5 その他中東諸国

シリア

 シリアのアサド政権軍が反体制派の最終拠点であるイドリブ県への攻撃を再開した。
 この事態を受けてロシとトルコの首脳がが、シリアでの内戦激化への対応について協議した。

U A E

 トランプ前米政権が2020年に仲介したUAEとイスラエルの国交正常化を受けUAEへの武器輸出協議が開始された。 ただ米側は、中国との関係を深めるUAEに安全保障上の予防措置を講じるよう求めたが、UAE側が難色を示したため、UAEが強く求めていたF-35A 50機の売却交渉は中断された。

 Edgeグループを中心としたUAEの防衛産業がウクライナ、イスラエル、シンガポールなどの支援を受けて、めざましい発展を遂げている。
 Edgeグループは射程10kmのC-RAM弾、射程250kmの地対艦ミサイル、100km飛翔するASM、誘導爆弾テールキット、射程は290kmのALCMなどを開発している。 更にウクライナの企業にUGVの技術供与も行っている。

サウジアラビア

 サウジアラビア海軍は、フランス、スーダン、インドネシアなどと、空軍はパキスタン、ギリシャなどと、陸軍は米国と積極的に共同訓練を行っている。
 また米陸軍防空部隊がサウジから撤退したのを受け、フランスと英国がサウジに防空監視レーダを展開し、ギリシャがPatriot 1個中隊を展開させた。

 米陸軍防空部隊の撤退を受けMBDA社に車載VL MICAを発注すると共に、イスラエル製防空システムの導入を検討している。 また中国CETC社製の3Dレーダが展開したことも確認されている。

 サウジアラビアは10年以内に軍需品の国内生産比率を50%に引き上げる計画を進めている。 また12月には、中国の支援の下に国内でBMの製造を開始したと報じた。

ヨルダン

 米陸軍防空部隊がヨルダンからPatriot部隊を撤退させたのを受けて、仏空軍がSAMP/T 1個システムをヨルダンに展開した。

1・2・1・6 中東派遣米軍

 バイデン米大統領がサウジアラビアなど湾岸地域に展開していた米軍部隊の一部を撤収するよう国防総省に指示した。
 これを受け米国防長官が6月に米中央軍 (CENTCOM) 司令官に、CENTCOM戦域から防空システムを撤収するよう命じた。
 米政府は7月にイラク駐留米軍が2021年中に戦闘任務を終え、イラク軍などの訓練や助言に専念する見通しを明らかにした。
1・2・1・7 その他の中東情勢

トルコ軍がシリアへの越境軍事作戦を準備

 トルコ政府がシリアへの越境軍事作戦の準備を進めていることを表明した。
 テロ組織とみなすクルド系武装勢力を掃討し、低迷する政権支持率回復につなげる思惑がある。

Mayyun島に新たに滑走路

 紅海の入り口に位置する戦略的要衝であるMayyun島に新たに滑走路が建設されている。
 差し渡し5.6kmのこの島では、かつてUAEが全長3,000mの滑走路を建設しようとしていたが2016年末に放棄されている。

パレスチナ内部の勢力争い

 パレスチナ自治区のハマスはイスラエル軍との戦闘で、ロケット弾の集中発射などで戦力向上を誇示し、パレスチナ全土で支持を広げた。
 これはパレスチナ自治政府のアッバス議長に対抗し、政治力強化を狙ったとの見方も浮上している。

1・2・2 イスラエル

1・2・2・1 イスラエルの地位

国交樹立

 イスラエル外相が9月に、2020年9月に国交正常化で合意したバーレーンの首都をイスラエル大使館の開設に立ち会うため訪問しハマド国王が会談した。 12月にはベネット首相がUAEを訪問した。
 イスラエルとコソボが国交を樹立した。 両国は2020年9月にトランプ前政権の仲介で国交樹立に合意していた。 国交を樹立したコソボは大使館をエルサレムに置く。 エルサレムに大使館を置くのは米国とグアテマラに続き3ヵ国目となる。

 1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領された東エルサレムにある神殿の丘の礼拝は、イスラム教徒に限定されていたが、イスラエルの極右主義者らがユダヤ教の祝日7月18日に警察に警護され神殿の丘を訪問した。

国際関係の強化

 イスラエルが10月に8ヶ国から数十機の戦闘機を集めたBlue Flag演習を行った。 この演習はUAEの空軍司令官も観戦した。
 ドバイ航空展にイスラエルの国防省や防衛企業も初めて参加し、IAI社とUAE EdgeグループのEmirati社がUSVの共同開発で合意した。

入植地の拡大

 イスラエル政府がゴラン高原にユダヤ人入植者を5年間で倍増させる計画を承認した。

1・2・2・5 軍備増強

 イスラエル国防相が米国防長官などの米国防当局者と会談し、イスラエルは米国に空中給油能力の確保を強く要求した模様である。
 イスラエル空軍は米国とKC-46A 2機の売却契約を行うことになっていたが、イスラエル空軍はこの要求を変更して、KC-45Aを4機に変更し現在米空軍向けに生産している機体をイスラエル空軍向けにすることを求めてきたという。

 イスラエルが新電子偵察機や第五世代自律長距離ミサイルなどの開発を進めている。 また次期コルベット艦にIron Domeの艦載型C-Domeを装備する計画である。

 イスラエル海軍が紅海への関心を高め、海軍最大の戦闘艦Sa'ar 5コルベット艦3隻を地中海に面したHaifaに配備した。

1・2・2・3 イランとイスラエルの船舶攻撃

 インド洋、アラビア海、オマーン湾、ペルシャ湾でイスラエル船籍やイスラエル系企業が運行するタンカー等が襲撃される事件が頻発した。
 これに対しイラン船に対する襲撃も、地中海や紅海で発生している。
1・2・2・4 ハマスとの戦闘

エルサレム・デーでの衝突を発端とした戦闘

 イスラエルが東エルサレムを奪還した「エルサレム・デー」の5月8日に起きた衝突を発端に5月10日にハマスによる大規模なロケット弾攻撃が開始された。
 この攻撃では5月21日の停戦までに累計4,340発が発射された。

 これに対しイスラエル軍は大規模な空爆で報復すると共に、地上軍が予備役を招集し、境界地帯に部隊を増派し砲撃で応じたが地上侵攻には至らなかった。

その後の小競り合い

 停戦成立後も風船爆弾攻撃や小規模なロケット弾攻撃があり、その都度イスラエルは空爆で報復した。

1・2・2・5 シリアとの戦闘

 イスラエルがシリア東部の政府軍や親イラン派部隊を目標にした空爆を度々行った。
1・2・2・6 ヒズボラとの戦闘

 イスラエルにレバノンから何回かロケット弾が撃ち込まれ、イスラエルが迫撃砲や空爆で応戦した。
 またイスラエルは、ヒズボラがレバノンから飛ばしたUAVが国境を越えたため撃墜したと発表した。
1・2・3 印・パ対立

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・2・4 中印対立

1・2・4・1 ヒマラヤ西部ラダック

2020年5月衝突の余波

 2021年には大規模な武力衝突は生起していないが、中国側は実効支配線 (LAC) のインド側に集落を建設したり、LAC沿いに高性能兵器を配備するなどの挑発を繰り返している。
 これに対しインドはLACを超えて侵入した中国兵を拘束した。 更に偵察艇や軍用機を増強した。

和解の動き

 2月に2020年5月以来にらみ合いを続けてきた中印軍が撤退に合意した。
 その後も小競り合いがあり、9月末には中国兵士200名がインド側に入り建物を破壊しようとしたためインド軍が身柄を拘束したなどと報じられた。

1・2・3・2 ヒマラヤ山脈東部

 中国軍とインド軍の部隊がインド北東部シッキム州の北部ナクラの係争地で衝突した。 双方とも負傷者が出ているという。
 この事態に対応してインド陸軍が兵力増強と再編を行い印パ正面からの兵力転用を行った。
1・2・4・2 ヒマラヤ諸国への波及

 ブータンが中国と国境画定に向け覚書を交わした。
 インドでは軍事外交面でインドの強い影響下にあるブータンへの中国の接近に神経をとがらせている。
1・2・4・3 インド洋

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・2・5 ウクライナ

1・2・5・1 ロシアの意図

 ロシアがウクライナが分離独立派への全面的な攻撃を開始した場合はロシアが介入すると警告した。 ロシアは地上軍120,000名近くをウクライナとの国境に展開させている。
 ロシアはウクライナ国境の緊張緩和のためだとしてウクライナのNATO加盟断念を要求しているが、EUはロシア政府がウクライナ東部で違法な選挙を組織し、地域住民にパスポートを発行していることを挙げ、ウクライナ政府の支配が及んでいない地域を事実上ロシアに統合することが狙いだと分析している。

 またロシアがウクライナ経由のパイプライン追加入札に参加し内など、ガスパイプラインを利用したロシアの戦略も明らかになってきた。

1・2・5・2 親露派との戦闘

 ウクライナ政府軍が東部の紛争地域で親露派武装勢力への攻撃にトルコ製UAVを初めて使用した。 UAVは紛争の形勢を一変させるゲーム・チェンジャーとなり得るため、欧米はウクライナに苦言を呈した。

 ウクライナ東部のドネツクとルハンスクで親露派軍が大規模な演習を実施し、戦闘態勢を強化している。 演習には予備兵も参加したとしているという。

1・2・5・3 西側諸国の支援

 バイデン米大統領はゼレンスキー大統領に対し支援を約束し、ロシアに対してウクライナを侵攻すれば西側諸国は強力な経済措置やその他の措置を導入すると警告した。

 米国はウクライナに、Mk Ⅵ哨戒艇16隻をはじめ小火器や弾薬を含む装備品の売却または供与を約束し、対迫レーダ4基やJavelin ATGMなどが既に搬入されている。

 2021年末になって、ロシアがウクライナ国境へ部隊を集結させているのに対抗して、オースチン国防長官が海軍のHarry S. Truman CSGに中東への派遣を変更して地中海に留まるよう命じた。

 トルコがウクライナに既に受注したUAV 6機のほかにコルベット艦2隻の売却を決めた。
 英国はウクライナに掃海艇2隻と搭載装備を売却し、要員の訓練を行うと共に、新たな海軍基地の建設を請け負った。

1・2・5・4 防衛力整備

 ウクライナは米国とNATOの影響拡大を狙って、2021年内に軍港を2箇所に新設する。

 ウクライナ国防省がUkonboronprom傘下のLuch設計局に対艦ミサイルを発注した。 2021年に納入されるという。

1・2・5・5 NATO 加盟問題

 ウクライナのゼレンスキー大統領が、ウクライナのNATO加盟への前段階である加盟行動計画 (MAP) を巡り、バイデン米大統領からの明確な答えを求めている。

 ロシア政府は、ウクライナのNATO加盟は越えてはならない一線だとし、その可能性が取りざたされていることに不快感を示した。

1・2・5・6 防衛産業の振興

 大型装備については2021年に特に挙げるべき報道はなかった。

 ウクライナUkroboronprom社の子会社が、AGS-17自動擲弾銃用に開発したVOG-17V 30mm擲弾の量産を開始すると発表した。

1・2・6 アフガニスタン

米軍、NATO軍の撤退

 バイデン米大統領が、アフガニスタンの駐留米軍を米同時多発テロから20年の節目となる9月11日までに完全に撤収させると表明した。 アフガニスタン駐留米軍が4月に撤収を開始し、米中央軍司令官が8月30日に米軍がアフガニスタンからの撤退を完了したと発表した。

米国撤退後

 アフガニスタンのガニ大統領が8月15日に首都カブールから国外に脱出し、タリバンが同日に首都カブールにある大統領府を掌握した。

 タリバンの制圧を逃れたアフガニスタン北東部で、国民的英雄マスード司令官の息子と、暫定大統領を宣言したサレー第1副大統領が8月20日までに合流して反タリバン勢力が結集したが、9月6日にはタリバンが完全に掌握した。

 その後タリバンと対立するISISが自爆攻撃などを仕掛けたが、11月2日にカブールの軍病院に自爆攻撃を最後にあまり報じられなくなった。

1・3 紛争潜在地域の情勢

1・3・1 朝鮮半島

1・3・1・1 北朝鮮

核 開 発

 2021年に核実験は行われなかったが、核開発と核兵器の備蓄は鋭意進められている。
 国連の専門家委員会は北朝鮮がBM搭載核弾頭を完成したと見ており、米シンクタンクは北朝鮮が2027年に最大242発の核兵器と数十基のICBMを保有すると分析している。
 また金委員長は日本や韓国を対象とする戦術核兵器の開発を指示した。

BM 開発の継続

 最新衛星写真からICBMを格納している可能性がある基地が確認されている。 また既存の液体燃料ミサイルの固体燃料化を急速に進めているとも言われている。

 2021年にはICBM/IRBMの発射試験は行われなかったがMRBM/SRBM級の発射試練は度々行われた。 中でもIsknderの改良型と見られるKN-23 SRBMが注目された。
 列車搭載発射機からの発射試験も行われた。

 超高速ミサイルと称する火星-8の発射試験も行われた。

 SLBMは各種サイズが公表され、Iskanderと似たSLBMの潜水艦からの発射試験が行われた。

長距離 CM

 射程が1,500kmとされる長距離巡航ミサイルの発射試験も行われた。

安保理制裁決議違反の瀬取り

 安保理制裁決議違反となる瀬取りが世界各地で頻繁に行われ、各国がその監視活動に協力して摘発した。

 こうしたなか北朝鮮が、韓国企業のタンカー2隻を中国を通じて購入した。

1・3・1・2 韓 国

 韓国はバイデン米政権発足後初めてとなる日米韓外相会談に出席したが、北朝鮮政策を具体的に進める際には3ヵ国で緊密に連携すると申し合わせるに留まった。
1・3・1・1 米 国

 北朝鮮の核問題解決に向けたバイデン政権の政策見直しが完了した。 調整された実務的アプローチ」による外交解決を目指すという。

 米海軍第7艦隊の駆逐艦が日本海で、射程2,500kmのTomahawkの模擬発射訓練を実施した。

1・3・2 東シナ海

1・3・2・1 中国の動き

 海警局警備艦が2020年1年間に尖閣諸島接続水域に侵入したのが333日、2021年には332日であった。 また領海侵入は2021年に34件、延べ40日確認された。
 また海警局警備艦が度々日本漁船を追跡した。

 中国海軍艦の沖縄本島~宮古島の通過や大隅海峡通過、与那国島~台湾の通過も度々確認されている。
 こうしたなか中国海軍のものとみられる潜水艦が奄美大島沖の日本の接続水域内を潜航しているが確認された。

 軍用機の接近や通過も頻発し、TB-001及びBZK-005などのUAVの沖縄本島と宮古島間の通過も確認されている。

 更に艦艇と戦闘機、戦闘爆撃機による海空の示威的な演習も確認されている。

1・3・2・2 わが国の対応

 外務省が外交に関する世論調査結果、中国との外交について「領海侵入などに強い姿勢で臨む」が69.3%で最も多かった。

 中国海警艦が尖閣諸島周辺の領海侵入を繰り返していることについて政府は、国際法上認められた無害通航にあたらないとする見解を示した。

1・3・2・3 諸外国の対応

 オースティン米国防長官とブリンケ米国務長官が、尖閣諸島が米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認した。

 日米は東シナ海やその上空で共同演習を行い、その存在感を示した。 3月には米軍伊江島補助飛行場で遠征前方基地作戦行った訓練の様子を公開した。

 このほか日米仏豪艦隊が東シナ海で離島防衛訓練ARC 21を行ったほか、オランダ海軍が東シナ海を航行した。

1・3・3 南シナ海

1・3・3・1 中国の動き

 中国はインドネシアに石油天然ガス掘削中止要求するなど、一方的な領有権主張を繰り返している。 また一方的にに禁漁期を設定し、周辺国漁船の取り締まりを強化している。
 11月には南シナ海でフィリピン軍に物資を運んでいた船に中国海警局艦が放水銃を使用した。

 南シナ海に向けては海南島やスプラトニー諸島などの軍備を強化する一方、海上民兵を大量動員して海上での示威行為を行っている。 3月には海上民兵を乗せた200隻もの漁船をWhitsun礁に集結させた。

1・3・3・2 米国の行動

 米海軍は航行の自由作戦として、中国が領有を主張している人工島周辺を度々航行した。
 航行の自由作戦以外でも空母CSGが何度か南シナ海に入り、10月には日英米蘭加 NZ 6ヵ国艦隊の合同訓練を行った。

 南シナ海でフィリピンの補給船に向けて放水銃を使った中国の行動を危険で挑発的とした米国は、フィリピン船への武力攻撃を受けて米国の相互防衛義務を発動させる可能性があると警告した。

1・3・3・3 周辺国の対応

ASEAN

 中国に対し行動規範作成交渉の促進を求めているが目に見えた進展はない。
 このためASEANは国防相会議で中国に自制を促す共同宣言を行うなど、徐々に対中姿勢を変えつつある。

ベトナム

 ベトナムは中国の海警法施行に強く反発している。
 また中国の海上民兵集団の来襲に対抗するため、軍事訓練を受け小銃などの小火器を装備した海上民兵の新たな部隊を発足させた。

フィリピン

 国際仲裁裁判判断の価値を認めない考えのドゥテルテ大統領に対し、国防相はWhitsun礁に海上民兵200隻以上に反発している。
 また外相も中国の海警法施行に反発し、中国の「違法プレゼンス」に継続抗議ている。

インドネシア

 インドネシアが南シナ海の排他的経済水域で進める資源開発に中国が中止を求めているが、中国との間に南シナ海に関する領有権の争いはないとの立場のインドネシア政府は、抗議を公にして反応すれば領有権問題の存在を国際社会に認めることにつながる可能性があるため中国に対する抗議と中止要求を公表していない。

マレーシア

 マレーシア空軍の戦闘機が、中国空軍の軍用輸送機16機がマレーシアが実効支配する浅瀬近くまで接近したため緊急発進した。
 マレーシアが、中国の調査船が南シナ海のマレーシアの排他的経済水域に侵入したため、抗議した。

1・3・3・4 その他諸国の対応

 英空母 Queen Elizabeth CSGが南シナ海に入った。 仏海軍攻撃型原潜 Emeraude が南シナ海を巡回した。 独海軍フリゲート艦 Bayern が南シナ海を巡回した。
 インドがフリゲート艦やコルベット艦4隻からなる艦隊を南シナ海に派遣した。
1・3・3・5 わが国の対応

 米海軍の Carl Vinson CSG が10月に南シナ海で護衛艦かがと共同訓練を実施した。  11月1には海上自衛隊がフィリピン西方の南シナ海で、海自の潜水艦が米海軍と初めて対潜戦の訓練を実施した。  海上自衛隊のP-3C 2機が2018年に南シナ海ミスチーフ礁付近の上空を飛行したのに対し、同地域で主権を主張する中国が無断で通過したと日本に抗議していたが、日本は「飛行の自由の制約」だと反論した。 P-3Cは過去3年間で複数回ミスチーフ礁の近くを飛行している。
1・3・4 台湾海峡

1・3・4・1 中国軍の動き

台湾 ADIZ 内の飛行

 中国機の台湾防空識別圏 (ADIZ) に入りが2020年に380回と過去最多だった。 中国軍機によるADIZ進入は、2021年10月には過去最多の196機がで、うち149機は中国の建国記念日を含む4日間に集中していた。
 台湾が環太平洋連携協定 (TPP) への加盟を申請した翌日には中国の作戦機24機が台湾の防空識別圏 (ADIZ) を飛行した。

台湾周辺海域での行動

 台湾近海では4月に空母 遼寧 を含む艦隊が訓練を行い、7月には台湾東海岸沖に情報収集艦、8月には戦闘艦が与那国島と台湾間に停泊するなど、艦船による威嚇を続けている。
 台湾が環太平洋連携協定 (TPP) への加盟を申請した翌翌日に中国のフリゲート艦が花蓮県の東40nmを南に向けて航行しているのが発見された。

対岸基地の増強

 厦門南西にヘリ基地を新設、福建省の空軍基地3ヵ所を増強、閉港した民間空港を航空基地に転用など、台湾対岸で中国の航空基地が増強され、東部戦区でき老朽化したJ-7をJ-10Cに換装するなどの装備の近代化が行われた。

演習の実施

 4月には台湾周辺海域、8月にはプラタス諸島(東沙諸島)付近とバシー海峡周辺、9月には台湾南西沖で海軍の演習を行うと共に、10月には福建省の島で上陸演習を行った。

台湾への侵攻能力

 米議会の超党派諮問機関が、中国軍が台湾侵攻の初期能力を確保した可能性を示し、米通常戦力による抑止が困難と警告した。

1・3・4・2 台湾軍の動き

 中国軍機が台湾の防空識別圏への侵入を繰り返している問題で、台湾側は時間と資源の無駄を減らという理由で空軍機を緊急発進させる措置を中止した。

 台湾は、PLAが台湾の主要な港や空港を封鎖する能力があると見積もっている。
 またPLAはまず演習の名目で台湾の対岸である中国南東の沿海部に部隊を展開し西太平洋にも艦隊を集結させて台湾を包囲したうえで、演習からミサイル攻撃や上陸作戦に転じ、最短の時間と最小の損害で台湾を制圧しようとする可能性があると見ている。

1・3・4・3 米軍の動き

 バイデン米大統領が「台湾有事なら防衛にかけつける」発言し、国務長官が中国が台湾攻撃なら同盟国と共に対応するなどと発言し、台湾防衛を示唆している。

 米海軍はほぼ毎月、駆逐艦や巡洋艦が台湾海峡を航行している。 また空軍は台湾海峡周辺で偵察機の飛行を行っている。

1・3・4・4 その他諸国の動き

 豪国防相が台湾有事の際に米国を支援する姿勢を明確にした。

 また英仏加海軍が艦船の台湾海峡航行を実施している。

1・3・5 黄 海

 黄海の岩礁で韓国が領有権を主張している離於島付近では、中国の警備船が4年間で25回出現した。

 中国が海上作戦区域境界線だとして一方的に設定した東経124゚線では、中国海軍がこれを超えて活動した。

1・3・6 欧 州

1・3・6・1 モルドバ

 親欧のサンドゥ大統領が親露派多数の議会を解散した結果、総選挙で親EUの与党が勝利した。
1・3・6・2 旧ユーゴスラビア

コソボ

 コソボは2008年にセルビアからの独立を宣言したが、セルビアは認めず対立が続いている。

 2月に行われた議会選挙が、新興左派野党「自己決定運動」が第1党の座を確実にした。
 自己決定運動はセルビアへの強硬姿勢で知られ、政権を握れば関係改善に向けた交渉が難航する可能性がある。

セルビア

 米陸軍とNATO軍の大規模演習DEFENDER-Europe 2021に対抗して、ロシアとセルビアが演習を実施した。

 セルビアが新たな祝日「セルビア統一の日」を制定しバルカン半島のセルビア人がセルビア国旗の元に団結するよう呼びかけ、バルカン半島に再び緊張が高まっている。

コソボとセルビアの国境で緊張

 車両のナンバープレートを巡ってコソボとセルビアの間に緊張が高まり一時国境地帯に部隊が展開したが、NATOとEUの仲介で事態は一旦収まった。

1・3・6・1 東地中海

 事実上の南北分断状態にあるキプロスの和平に向けた関係者会合が物別れに終わった。

 トルコのエルドアン大統領が南北に分断されているキプロス島について2国家共存を唱え、欧米諸国の激しい批判を招いている。

 キプロスがUAEと軍事協力協定を結んだ。 キプロスは今までにエジプト、イスラエル、ヨルダンとも同様の協定を結んで共同訓練を実施しており、レバノン陸軍とも共同訓練を行っている。 また近年キプロスとイスラエルの関係は強まっている。

 トルコの地中海における存在感増大に対抗してイスラエルが主導する演習にギリシャとキプロスが参加した。 またイスラエルとギリシャがギリシャ空軍固定翼機操縦士の訓練をイスラエルが請け負う契約をした。

 ロシアがシリアへTu-22M3を派遣し、地中海上空で超高速ミサイルを含む演習を行うなど、その存在感を主張しようとしている。

1・3・6・4 黒 海

 米国及びNATOとロシアの鍔迫り合いが続けられている。

 ロシアは黒海で度々演習を行い、接近する偵察機等に対し接近飛行を繰り返すと共に、クリミアに核兵器を配備する準備を進めているとも伝えられている。
 また英海軍駆逐艦に対し警告射撃を行ったと発表している。 ただ英国はこれを否定している。

1・3・6・5 ベラルーシ

 ベラルーシでの反政府運動の高まりのなか、ギリシャからリトアニアに向かっていた民航機を強制着陸させ、登場していた反政府活動家を拘束した。
 このような動きに対し欧州各国が反発を高め経済制裁などの処置を講じた。

 経済制裁に対抗したベラルーシは中東やアジアから航空便やビザを手配して移民を連れ込み、EU諸国へ送り込もうとしたため、ポーランドやリトアニア、ラトビアとの間で緊張が高まった。
 これに対しEU、欧州国境沿岸警備機関、NATOなどが対抗手段を講じたためベラルーシは移民の送り込みを断念した。
 ベラルーシが更に天然ガス供給停止を示唆したが、欧州にガスを輸出して外貨を得てきたロシアが対応に苦慮し実現には至らなかった。

 この間ロシアは、Tu-160をベラルーシに派遣して上空から無言の圧力をかけたり、ロシア空挺部隊がポーランドとの国境近くでベラルーシと合同演習を行ったりと軍事的な圧力をかけ続けた。

1・3・7 コーカサス

1・3・7・1 ナゴルノ・カラバフ

 ロシアの仲介で停戦になった2020年戦争の停戦監視をトルコとロシアが合同で開始した。

 2021年にも小規模な戦闘は生起したが、アルメニアとアゼルバイジャンは国境画定作業の開始した。

1・3・7・2 ジョージア

 トビリシを訪問したオースチン米国防長官が、ジョージアでの米国主導の軍事訓練を延長に合意した。

 ジョージアは米国からJavelin ATGMを導入すると共に、UAV、新型砲兵システムのほか、軍事インフラの整備を行う。 またポーランドや南アフリカの企業と合弁企業を2022年に設立し、小型から大型までのUAVを生産する。

1・3・8 アフリカ

1・3・8・1 リビア内戦

 リビア内戦はトルコが国民統一政府 (GNA) に防空兵器やMBTなどの重装備を供与してなおも続けられている。
1・3・8・2 モロッコとアルジェリア

 西サハラ独立派のポリサリオ戦線を支援し長くモロッコと険悪な関係にあったアルジェリアが、モロッコとの断交したためさらに緊張が高まる恐れがある。
 一方モロッコは西サハラの領有権を主張している。
1・3・8 北極海

1・3・8・1 北極圏諸国

 プーチン大統領が北極圏防衛を任務とするロシア北方艦隊を軍管区に格上げした。 またノバヤゼムリア諸島にMiG-31BMを配備するなど、北極圏での戦力強化を図っている。
 ロシアが史上初の北極圏での戦闘機への空中給油や原子力潜水艦の同時浮上、氷面下からの魚雷発射などを訓練した。

 米沿岸警備隊が2030年代に新型砕氷艦3隻の基地としてシアトルを整備する。 米沿岸警備隊司令官が3隻が建造される極地警備砕氷艦を更に増強するよう要求している。
 米空軍が初めて北極圏内にB-1Bを展開させたほか、陸軍はマルチドメイン戦闘部隊 (MDTF) を北極圏に配置する計画である。

1・3・8・2 北極圏外国

中 国

 中国が全人代で、北極圏にシルクロードを開設すると共に、北極と南極圏の開発に積極的に関与する方針を示した。

日 本

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が日本初の砕氷観測研究船を建造する。 引き渡しは令和8年度の予定だという。

1・4 東アジア諸国

1・4・1 中 国

1・4・1・1 世界制覇の国家目標

一帯一路構想

 一帯一路関連の協定に140ヵ国が署名し協力国が増えた。  一帯一路計画でビエンチャン~昆明鉄道の開通し、中国は東南アジアへの進出路確保した。

 モンテネグロを走る新しい高速道路は中国からの資金に頼り建設されているが、この事業のために同国の経済は危機に直面している。
 このためモンテネグロは中国への債務の肩代わりをEUに要請した。 EUの欧州委員会はモンテネグロ政府からの支援要請を認め、債務の肩代わりは否定しつつも資金支援の可能性を残した。

 中国からの借り入れなどで債務を膨らませ債務不履行に陥ったザンビアで現職大統領が不信任となり行われた大統領選で野党党首が初当選した。

海軍の活動

 フランス海軍によると、インド太平洋に展開した仏軍艦が常に中国艦に追尾された。

 中国がELF波を利用した世界最大のアンテナを中国中部地域に設置した。 この施設は水中と地上で長距離での通信が可能という。

海外軍事拠点の建設

 中国がカンボジアの海軍基地を利用の計画を進めている。 またキリバスで、離島に放置されていた滑走路の修復を計画している。
 中国が主導するインフラ整備計画を巡り、同国によるスリランカの支配が強まってきた。 中国港湾工程はスリランカで高速道路を所有する初めての外国企業になる。

 またUAEの港湾に軍事施設と疑われるものを秘密裏に建設している。 更にイスラエルのハイファに港湾施設を建設し向こう25年間中国のSIPG社が運営する。

 アフリカ東部ではジブチに開設した基地を空母が接岸するに十分な規模に拡張する兆候がある。  西アフリカでは赤道ギニアに軍事基地を建設する意向である。

ロシアとの連帯

 中国軍の大規模演習にロシア軍が参加し、日本のEEZを含む日本海でロシア海軍と中国海軍が合同演習、中露爆撃機編隊が韓国の識別圏に進入するなど、ロシアとの連携を強めている。
 10隻からなる中露艦隊は日本海での演習に引き続き日本を周回する航海を行い、連携を誇示した。

友好国の取り込み

 中国とイランが25年間を期限とした戦略的互恵包括協定を結んだ。

水陸作戦能力の強化

 海軍陸戦隊の統合軍化が進められ、PLA陸海空軍及び海兵隊が、3月間に120回以上の海上演習を実施し、即応能力を高めている。

1・4・1・2 経済低迷下の国防費増大

経済の低迷

 国内総生産 (GDP) の伸び率が2010年に10.3%、2011年に9.2%、2015年に6.7%になった中国は、その後も伸びを弱め2019年には6.1%にまで落ち込んできたが、2020年のGDPの確定値が実質で前年比2.2%増と極端に低迷している。

国防費増大

 COVID-19の感染拡大で世界経済が打撃を受けるなかでも各国が軍事費を増加させているが、世界第2位の中国は26年連続での増加で10年前に比べて76%増となっている。

2021年度の国防費

 中国が2021年の国防予算を2020年の伸び率をわずかに上回わる6.8%増とした。

1・4・1・3 共産党支配体制維持の努力

台湾制圧準備

 米インド太平洋軍司令官が6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性大と述べた。 一方、米統合参謀本部議長、近い将来に起きる可能性は低いと述べている。
 米国務長官は米軍の台湾防衛義務を明確にしていない。

 中国PLAは上陸作戦を想定した統合演習など台湾周辺海域などで演習120回超実施し武力による威嚇を行うと共に、台湾軍への浸透工作を活発化させている。

被征服民族への圧力と反発

 中国PLA地上軍が新疆軍の装備近代と戦闘力強化を続けている。  中国国外に居住するウイグル族を標的に中国のハッカ集団が、Facebookを利用してマルウエアに誘導していた。

1・4・1・4 欧米との対立

米国との対立

 PLA陸軍のロケット砲部隊が渤海の海上にある空母に見立てた標的に対して連続して射撃する訓練映像を公開した。

 バイデン米政権が中国に対し、国防長官と中国軍の制服組との対話を3回にわたって打診したものの拒否された。

G7 との対立

 先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)が採択した首脳宣言で、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し両岸問題の平和的解決を促すと明記した。

1・4・1・5 核戦力の強化

核兵器の増強

 米専門家が衛星画像を分析した結果、中国がICBM用とみられる地下施設を新疆ウイグル自治区の砂漠地帯に110ヶ所建設している。

 SIPRIが9ヵ国の核弾頭総数が昨年より320発減ったとする報告書を発表した。 ただ中国は30発増の350発である。
 米国防総省が報告書によると中国は2027年までに700発、2030年には1,000発の核兵器を保有すると見られる。

FOBS を復活

 中国軍が7月に、FOBSとなるHGV搭載ロケットを初めて地球軌道に発射したという。 続いて8月にも2回目の試験を行った。

1・4・1・6 周辺国への圧力強化

わが国への挑発

 中露艦隊が日本周回したり海軍艦が沖縄近海を航行したほか、空母 遼寧 が北大東島と沖大東島周辺海域で戦闘機の発着艦を行ったりと、我が国への圧力を強めている。

海上交通安全法の大幅改正、海事局の権限強化

 中国が、海事当局を傘下に持つ交通運輸省が外国船による領海の通航を国際法で認められた無害通航でないと判断すれば阻止できるように、海上交通安全法を大幅改正した。
 改正案は原子力船や有害物質を運ぶ船、中国が海上交通に危害を及ぼすと判断した外国船に海事局への報告を義務づけ、海事局に外国船を領海から退去させたり追跡したりする権限も与える。

海警法の改正

 中国が海警局の武器使用を含む任務を定めた海警法を可決し施行した。
 改正海警法では中国が管轄する海域で外国の船が違法に活動し、停船命令などに従わない場合、武器を使用できるなどと規定している。

海警局装備の強化

 中国海警局が南シナ海での海上パトロールのため、新たに基準排水量5,560tの大型哨戒艦を建造し、海南省の海南海上保安署に配備する。
 中国海事局が満載排水量13,000tの警備艦を広東省広州に配備した。

1・4・1・7 軍備増強

基本方針

 中国の解放軍報が、Mechanisation、Information、Inteligensation の軍の「3つの近代化」を報じた。

宇宙、BMD、防空

 中国はTJSWシリーズのキラー衛星の開発を行っており、2月にはTJSW-6衛星を打ち上げている。
 中国が遥感-31 観測衛星3基を打ち上げた。 この3基は尖兵-8海洋監視衛星群の一部となる。
 尖兵-8は遥感-20、遥感-25、遥感-31で構成され、6つの軌道を周回している。

 中国はIRBM級に対抗するシステムDN-3を開発中という。 一方、HQ-19地上発射型中間軌道迎撃弾の試験を実施したと発表した。

弾道ミサイル

 中国の地上配備型BMの発射機数は2020年に533基で、2001年から2.7倍に増えた。 特にIRBMはこの10年間で急増し82基と8倍に増大した。
 中国が北西部の砂漠地帯にICBMの地下格納庫とみられる施設を建設している。 施設は119ヵ所に上り、中国による核戦力の大幅な増強を示唆している可能性がある。

 中国国防省によると超高速兵器DF-17を既に相当数配備している。 米インド太平洋軍によると、中国が2025年までに超高速ミサイルを200基程度配備するという。

 中国軍筋によると、南シナ海で行ったASBMの発射試験で航行中の船を標的にしていた。

 米陸軍の報告書によると、中国陸軍ロケット部隊のミサイルが射程を延伸し精度も向上しているという。 300kmであったDF-11の射程は700km以上になり、600kmであったDF-15/16の射程は1,000kmになっているという。

艦 船

 中国が急速なペースで艦船の建造を進めている。

 航空母艦は現上海の造船所で3隻目の建造を進めていて、2021年末までに進水し、2025年頃に就役する可能性があると見られている。
 また、COVID-19の影響で遅れていた4隻目となる空母の建造が2021年初めにも開始された。 4隻目の空母について動力を原子力とする案が検討されている。

 JL-3 SLBMを搭載する改良型晋級原潜が就役した。 また改良型Type 039A/B元級が確認された。

 3月に2隻目のType 055駆逐艦を就役させ北海艦隊に配属された。 また7隻目のType 052D駆逐艦が就役し北海艦隊に配属された。
 既に30隻が就役しているType 054Aフリゲート艦の建造は3年以上の空白を開けて再開され、31番艦が進水した。
 Type 056Aコルベット艦の最終艦となる2隻が就役し、合わせて72隻になった。

 Type 075 強襲揚陸艦は一番艦の就役し三番艦の進水した。

航空機

 戦闘機では国産エンジンを搭載したJ-20であるJ-20Aや複座型J-20Aが報じられ、同じくJ-10Bに国産エンジンを搭載したJ-10Cも報じられた。
 艦載戦闘機ではJ-15の生産が継続している模様であることが判明した一方で、FC-31の艦載機仕様機も公開された。
 J-16戦闘爆撃機を電子戦機にしたJ-16Dも公開された。

 開発中のH-20爆撃機について米戦略軍は10年以内に開発を終えると見ている。

 KJ-600艦載AEW&Cの試験飛行に成功したと報じられると共に、Y-20 AEW&C機についても現実味を帯びてきた。

 Y-20重輸送機のエンジンを国産に換えたY-20Bも出現した。  UH-60 Black Hawkと良く似た外観のZ-20ヘリに、海軍型やATGM搭載型などが報じられた。

U A V

 CH-5/-6/-7、WZ-7/-8、WJ-700、Tengdenなどの各種MALE/HALE UAVやGJ-11 UCAVなどが報じられる中で、中天飛龍社が同社製のUAVによる小型UAVの放出に成功したのが注目された。

その他

 東部戦区のPLA陸軍が演習で新型UGVが使用した。 このUGVは35mm弾を発射するQLG-10擲弾発射筒2門を装備していた。

 チベットのPLA陸軍が射程は従来より30km伸ばしたMRLの配備を開始した。

1・4・1・8 高度な技術力獲得

 研究開発設備の増強するなどして高度な技術力獲得に務めると共に、民間企業に偽装して海外の軍事企業を買収して技術情報の略取を行っている。
1・4・1・9 軍事産業の振興と武器輸出

ロシア依存の低下

 軍事産業のロシア依存低下が顕著になっている。  中国は2014年と2015年にロシアからS-400、Su-3、Mi-17の購入し、2015年~2018年に対中輸出がピークを迎えたがその後新たな契約はなく、2021年には大幅に減少していて、2020年代末には1/6にまで落ち込むと見られる。

企業の再編、拡張

 造艦企業の合併が行われたほか、NORINCO社が電子装備企業と協力関係強化している。

軍事の企業売上増大

 軍事企業売上高世界7~9位に中国企業3社が入った。

外国技術の略取

 ウクライナの航空機エンジンメーカ買収の試みたが失敗した。

 サイバ攻撃による技術略取もおこなっており、COVID-19ワクチン情報の略取 などが確認されている。

武器輸出

 世界的な武器取引の縮小傾向を受けて、米仏独の3ヵ国は輸出を増やしたが、ロシアと中国は減った。

1・4・2 北朝鮮

対 GDP 比世界一の北朝鮮軍事費

 国際シンクタンクの報告書によると、北朝鮮のGDPに占める軍事費の割合は24.0%で、調査対象国・地域のうち最も高かった。

核兵器

 2021年に核実験は行われなかったが、核開発と核兵器の備蓄は鋭意進められている。
 国連の専門家委員会は北朝鮮がBM搭載核弾頭を完成したと見ており、金委員長は日本や韓国を対象とする戦術核兵器の開発を指示した。

ICBM / IRBM

 北朝鮮のICBM級はTaepodong-2、火星-13、火星-14、火星-15型の4種類だが、火星-13だけは実際に発射したことがない。
 2020年10月の軍閲兵式で公開した新型ICBMを火星-17と命名したようである。

SLBM

 北朝鮮が1月に行った閲兵式に、北極星-5と記された開発中の新型SLBMが登場した。
 北朝鮮が10月に日本海で潜航中の潜水艦からSLBMを発射した。 SLBMは最高高度50kmを変則軌道で600km飛翔した。 KN-23のSLBM型とみられる。

SLBM 搭載潜水艦

 北朝鮮が新型潜水艦の進水を準備している。 建造中の3,000t級潜水艦は1,800t級の潜水艦を改造したもので、SLBMを3発搭載可能と見られる。
 金委員長は、新しい原子力潜水艦設計研究が完了し、最終審査段階にあると述べている。

SRBM / MRBM

 3月にIskanderを北朝鮮が改良したKN-23 2発を発射し600km飛翔した。
 9月にはKN-23の改良型を2発発射した。 このミサイルは変則的な軌道を描き750km飛翔し高度50kmに達した。

列車発射式ミサイル

 北朝鮮が2021年に編成した鉄道機動ミサイル連隊が新型の鉄道移動式ミサイルの発射試験を行った。
 ミサイルは800km飛翔した。

火星-8 超高速ミサイル

 北朝鮮が9月に、新たに開発した極高速ミサイル火星-8の発射試験を実施した。 ただ、飛行距離は200kmに届かず、到達高度は30km程度だったという。

長距離巡航ミサイル

 北朝鮮が9月に新型長距離CMの発射試験を実施し成功したと発表した。 1,500km先の標的に的中したという。
 ただ、日本政府は、何らかの原因で墜落し試験失敗したと見ている。

サイバ攻撃

 韓国の原子力研究機関や大宇造船へのハッキングで情報が盗まれるた。 韓国が2020年に受けた攻撃のうち90~95%は北朝鮮によるものであったという。
 韓国の公共分野が北朝鮮から受けたサイバー攻撃はら急増し、2020年は2016年の4倍になる1日平均162万件に達した。

 北朝鮮は年間1,000人の「サイバー戦士」を育成し、企業に対するランサムウエア攻撃で外貨獲得を行っている。

1・4・3 韓 国

1・4・3・1 国内情勢

 韓国では2022年に大統領選挙が行われる。
1・4・3・2 国防予算

国防省が4.5%増を要求

 韓国国防省が2022年度国防費に前年度比4.5%増となるKRW55.23T ($47.6B) を要求した。

国会審議で大幅削減

 韓国軍の大型装備導入予算が国会の審議過程で大幅に削減された。
 軽空母基本設計予算をKRW7.2BからKRW500Mに大きく減らし、防衛力改善費は2021年よりもKRW266.6B減となった。

1・4・3・3 軍備増強

改編等

 韓国初の空輸師団が創設された。

 韓国軍海兵隊が航空団を48年ぶりに復活した。

防空/BMD

 韓国ADDが2024年完了を目指してL-SAMの開発を進めている。 L-SAMは対航空機型とBMD型の2種類が作られ、射程はいずれも射程150kmという。

 2020年11月に7個中隊計画されている天弓-2 M-SAM最初の中隊が韓国空軍に納入された。

 韓国DAPAが韓国版のIron Dome開発を推進することを決めた。

SLBM

 韓国が射程500kmの玄武-2Bを元に開発しているSLBMの潜水艦からの水中発射試験を行い成功した。

長距離ミサイル

 韓国が射程120kmと見られるKTSSM戦術SSMの量産に入る。 KTSSは200発以上が発注されており、2025年までに納入される。

 米韓ミサイル指針が撤廃された。 2012年に指針は改訂され、弾頭重量が500kgであれば射程800kmまで、1,000kgであれば500km、2,000kgであれば300kmまでにされていた。

 2020年に試験発射した玄武-4は弾頭重量が2tを超え、地下300mの掩体を破壊できるという。

KF-X

 開発中のKF-Xの試作1号機が4月にロールアウトした。 KF-Xは2022年7月までに地上テストを完了して初飛行し、2026年までに開発を終える。

 一時、共同開発からの離脱も懸念されていたインドネシアが計画に復帰した。

その他の航空機

 韓国空軍がKF-16V Block 70/72への改装を完了した10機を受領した。

 FA-50の能力向上計画を明らかになった。 それによると新たに300ガロンのコンフォーマル増槽を取り付けて航続距離を伸ばし、照準用ポッドを取り付ける。

 韓国DAPAがKAI社が試作したLAHに対し、実用に供し得るとの仮宣言を行った。
 海兵隊が20~24機の装備を計画している戦闘ヘリをKAI社製MUH-1 Marineonを元に開発する。 開発は2031年に完了する。
 陸軍が攻撃ヘリを36機追加購入する。

 多用途中型輸送機の開発が計画されている。

 主翼に4基の電動プロペラを持つBlack Kita電動式の基本練習機が提案されている。

艦 船

 韓国海軍が軽空母の最新完成予想図を公表した。 最新案にスキージャンプ台はなく、甲板は2アイランド式になっている。
 軽空母の建造にはDSME社とHHI社がそれぞれ提案している。

 設計から建造までを初めて韓国で行ったKSSⅢ潜水艦の一番艦が就役した。 KSS-Ⅲの建造は3つのBatchで3隻ずつ、計9隻が建造される。
 韓国DSME社がKSS-Ⅲ Batch Ⅱ潜水艦の一番艦を受注した。 海軍への納入は2026年になる。
 KSS-Ⅲ Batch-ⅢはSLBMを10発搭載する4,000t級原子力潜水艦で、全備重量は5,000t以上になるものとみられる。
 原子炉は旧ソ連の原潜用原子炉を基に設計された韓国製小型原子炉であるSMARTを改良して使うものとみられる。

 3隻の建造が計画されているKDX-Ⅲ Block 2駆逐艦一番艦の起工式が行われた。

 8隻建造するFFX-Ⅱフリゲート艦の7番艦が進水した。 就役は2023年になる。

 独島級大型輸送艦の二番艦が、一番艦の独島から14年ぶりに就役した。

陸戦兵器

 Hyundai Rpotem社がK2 Black Panther MBTの三次生産を受注した。 受注数は54両と見られる。
 Hyundai Rotem社が指揮車型K808装輪装甲車の開発を完了した。 量産契約は2022年に予定されている。
 DAPAが2036年の配備を目指した次世代の国産水陸両用戦闘車 (KAAV) 計画を進めている。

 韓国ADDが将来の地上設置防空兵器への応用を目指したレーザ装置を開発した。

U S V

 LIG Nex1社がHae Gum 3 (Sea Sword 3) USVを発表した。 Sea Sword 3は12.7mm機銃1丁と2.75吋誘導ロケット弾1発を装備できる。

U G V

 HYudai Rotem社が、韓国陸軍が装備しているK1 MBTとK9 SPHをUGVに改造する研究開発の主契約社に選定された。 研究開発の契約は2024年に完了することになっている。
 ADDとHanwha社が開発していた偵察用UGVの開発を完了した。
 Hyundai Rotem社がDAPAに多用途UGV MPUGV 2両を納入した。 今後6ヶ月かけて韓国陸軍が評価試験歩行う。
 Hanwha社が開発した1.5tの多用途UGV MPUGVを大型化し2tとした知能型UGVのI-MPUGVが、陸軍第5歩兵師団で試験運用を開始した。 I-MPUGVはAIを利用した6輪車で、国内開発した遠隔操作砲塔を装備する。

U A V

 KAL社がADDから受注した契約で2010年から2021年8月までKaori-X UAVの開発を行っている。
 DAPAが限定数を調達した国産VTOL UAVを陸軍と海兵隊が2022年から沿岸監視用に使用すると発表した。
 韓国がヘリコプタによる有無人連携 (MUM-T) 計画を進めようとしている。
 KAI社がUAV型にしたFA-50をLoyal WingmanとしてKF-21に随伴させる構想を公表した。

電子兵器

 DAPAがAN/FPS-117に代わる地上固定型長距離レーダの開発をLIG Nex1社に発注した。 開発には48ヶ月かけ2027年には配備するという。
 DAPAが海軍が装備する国内開発した沿岸監視レーダMaritime Surveillance Radar-Ⅱの量産をLIG Nex1社に発注した。
 ADDがステルス目標を捕捉追随できるアクティブフェーズドアレイ技術を用いた高出力、高感度レーダを開発した。

 DAPAが韓国軍が装備する個人装備の戦況表示装置の開発をHanwha社に発注した。 開発は2024年に完了する。

1・4・3・4 宇宙利用

軍事用宇宙開発

 韓国DAPAが米韓ミサイル指針の終了に伴いBMの開発を促進するのに続いて、今後10年間にKRW16T ($13.6B) を支出して軍事用宇宙開発を行う計画である。

Nuri KSLV-Ⅱ

 韓国が国産初となるSLVである三段推進のNuri KSLV-Ⅱに模擬衛星を取り付け打ち上げたが、模擬衛星を低高度軌道に乗せるに必要な7.5km/sに達することができず失敗した。

1・4・3・5 軍事産業立国

軍事産業の育成

 韓国DAPAが、2~3年後に世界トップクラスの武器輸出国になることを目指している。 このためDAPAは、将来のハイテク軍事技術開発に向けた15年計画"2021-35 Core Technology Plan"を発表した。
 DAPAが防衛技術開発と企業の支援にあたる新たな組織KRITが公式に発足したと発表した。 KRITに移管されるのは防衛技術の立案、管理、国内軍事産業の強化であるという。

海外技術の導入

 遊弋索敵ミサイルの技術でIAI社から技術導入するほかイスラエルElbit社との UAV 技術提携、英国と空母技術の導入など軍事技術協力で合意、Northrop Grumman社と韓国空軍が計画しているレーダ偵察機ISTARに提案するJSTARS-Kを共同開発するなど、積極的に海外技術の導入を図る。

武器等の輸出

 艦船ではフィリピンのフリゲート艦2隻を発注したほか、同国の潜水艦商談にも参加している。 インドネシアから受注した1,400t級小型潜水艦3隻の最終艦引渡が行われた。

 航空機ではタイ国空軍にT-50TH高等練習機を2機を追加輸出、インドネシアにT-50i 6機を追加輸出するほか、T-50の欧州への輸出努力も行われている。 更にイラクからT-50IQの保守契約も受注 した。

 陸戦兵器ではUAEへのKM-SAM輸出が決まった。 UAEにはChunmoo MRLが輸出されている。  豪陸軍のM113AS4 APC後継にHanwha社製Redback IFVがRheinmetakk社製Lynx KF41 IFVが候補に残り、争豪陸軍に納入する3両の製造が開始された。  豪陸軍からはK9 155mm SPH 30門も受注している。  K9 SHPは韓国と6ヵ国で1,700門が採用されており、これまでトルコ、ノルウェー、フィンランド、エストニアなどに輸出されたほか、エジプトへの輸出の協議も進行している。

1・4・3・6 対外関係

対米関係

 2021年に戦時作戦統制権の移管問題や在韓米軍の縮小問題は特に進展がなかった。

 日米外務防衛担当閣僚会合 (2-plus-2) の翌日にソウルで開かれた米韓2-plus-2後の共同声明は、日米の発表とはあまりにもかけ離れており、米国にとって最優先事項のはずの「中国」と「北朝鮮の非核化」の文字が抜け落ちていた。
 12月にソウルで米韓国防相が参加して定例安保協議 (SCM) を開き、核ミサイル開発を進める北朝鮮に対応するため、朝鮮半島有事の際の作戦計画を見直すことで合意した。

 米韓合同演習は規模を縮小しながらも実施した。

 米国は文政権の対北ビラ散布禁止を表現の自由制限と糾弾した。
 米国は、中国を牽制する日米豪印の4ヵ国連合体クアッドに「韓国の参加をいつでも歓迎するだろう」とコメントしたが、韓国は参加拒否した。
 米国が黒海でウクライナ海軍と主管する多国間演習を実施し、32ヵ国から艦艇、航空機が参加し、米6艦隊司令部は公式発表資料に韓国を参加国に明記したが、韓国国防部と海軍は参加しなかった。

対中関係

 韓国が台湾の閣僚を会合に招待して講演を予定しながら、両岸関係を理由に中止するなど、対中気遣いが目立った。

対欧関係

 韓国とドイツが防衛および安全保障のキーパートナーとして協力関係を深めることに合意した。

1・4・3・7 日韓関係

五島列島沖の EEZ

 長崎県五島列島の南西に位置する女島西方の東シナ海で日本の排他的経済水域 (EEZ) 内で海洋調査をしていた海上保安庁の測量船昭洋に対し、韓国の海洋警察庁所属船が接近し「ここは韓国の海域だ」として、調査の中止を繰り返し要求した。

非友好国と見た対日認識

 2020年版の国防白書で北朝鮮について敵との記述が盛り込まれなかったが、従来パートナーとして位置づけていた日本は隣国と記述するにとどめた。

1・4・4 台 湾

1・4・4・1 国内環境

親米、反中感情の高まり

 米国産豚肉輸入禁止案となどを巡って行われた台湾の国民投票で、有権者は蔡総統の民進党が反対してきた4案件全てに反対票を投じ、有権者は中国ではなく米国を選ぶ劇的な勝利となった。

米国の立場

 米国家安全保障会議ル調整官が、台湾の独立は支持しないと明言し、歴代米政権が踏襲してきた立場を確認した。
 しかしながらFY22の国務省対外活動関連計画歳出法案を可決した米議会下院は、親台派議員が提出した政府に対して台湾を中国の一部とした地図の作成などを禁止する修正案を、全会一致で可決し歳出法案に盛り込くだ。

防衛計画

 台湾国防部が4年ごとの防衛計画の見直しを行い、今後の重点として長距離攻撃の能力の向上を挙げ、射程を大幅に伸ばした空中発射型ミサイルを増強することなどを挙げた。
 また、今回の見直しでは武力攻撃に至らない、いわゆるグレーゾーン事態への対応について新たに1つの章を立てた。

国防予算

 台湾の2022年の国防予算の伸び率は2021年の10%を下回る4%増と小幅な増額にとどめた。
 一方で台湾立法院は、上限を2,400億台湾元(9,900億円)とする海空の戦力増強のため武器の購入に関する特別条例を可決した。

対大陸政策

 米国が、中国の情報技術企業制裁に同盟国を引き入れている中で台湾もこれ賛同して、台湾行政院が全ての公共機関に2021年末まで中国製情報通信製品の使用を禁止した。

予備役の強化

 台湾の国防部は予備役部隊の戦闘演習や射撃演習などを2022年から強化する。

1・4・4・2 米台関係

台湾の地位

 バイデン米大統領が元上院議員と元政府高官などの非公式代表団を台湾に派遣したり、米上下両院議員団の数度にわたる訪台などで、台湾との緊密な関係を維持している。
 またパラオの大統領が台湾を公式訪問した際には、駐パラオの米国大使も同行した。 更に台湾陸軍司令官の大将が率いる代表団が訪米し、米陸軍協会 (AUSA) の年次総会と博覧会に出席した。

 米国務長官が台湾の国連参加支持する声明を出すと共に、上院共和党議員が台湾支援法案を提出した。
 米議会が可決したFY 22NDAAてはRIMPACへの台湾招待を提言している。 米政府は中国大使よりも先に米国の対台湾窓口機関である米国在台協会台北事務所長を任命している。

武器売却

 台湾が建造中の新たな潜水艦に搭載する機密技術の輸出を米国が承認した。
 バイデン政権は政権初の武器輸出M109A6 Paladin SPH 40門を台湾へ売却する。 また米国の在台湾協会が台湾とHIMARS 11両と沿岸防衛システム100両を売却する契約を行った。

 これとは別に台湾はJASSM 100発以上の売却要望している。

米沿岸警備隊との連携

 米台が沿岸警備作業部会を設立するとしたMoUを交わした。
 MoUは米沿岸警備隊と台湾海巡署の関係強化を図るもので、具体的には、規制に従わない漁業活動の取締りや捜索救難活動に協力して取り組むなどとしている。

台湾への米軍派遣

 米特殊作戦部隊と海兵隊が秘密裏に台湾に派遣され、軍事訓練を施していると報じられた。
 米当局者によると、米軍部隊は少なくとも1年前から台湾で活動しており、米特殊作戦部隊とその支援部隊の20数名は台湾陸軍の小規模部隊に訓練を、米海兵隊は台湾海軍に小型艇を使った訓練を行っているという。

共同演習

 台湾海軍陸戦隊(海兵隊)がグアムで米軍と合同訓練を行っている。 報道によると、40名の陸戦隊員がグアムに派遣され、1ヵ月間で水陸両用上陸作戦の合同訓練が行われている。

1・4・4・3 その他諸国との関係

西側諸国

 先進7ヵ国 (G7) 外相会合が共同声明を採択した。 共同声明では台湾やウクライナへの支持を表明したが、具体的な措置に関する言及はなかった。

 欧州議会外務委員会がEUと台湾間の政治関係と協力に関する報告書を賛成多数で可決した。 またEU議会の議員団が台湾を初めて公式訪問し蔡総統と会談した。

 フランス国民議会上下両院が世界保健機関 (WHO) など国際機関への台湾の参加を支持し、政府に対して実現に向けた外交努力を強化するよう求める決議案を可決した。 このほかオランダ議会下院が台湾を支持する動議を可決した。

 フランス上院議員団が台湾を訪問し蔡総統と会談した。 欧州からはこのほかに、バルト三国の国会議員団が台湾訪問したほか、スロバキアの経済副大臣率いる訪問団がスロバキアの国名や国章が入った専用機で台湾に到着した。

 オーストラリアからはアボット元首相が台湾を訪れ、総統と面会した。

台湾承認国

 パラオ共和国のウィップス大統領が台湾を公式訪問した。
 台湾が外交関係を持つ15ヵ国のうちの1国であるホンジュラスのエルナンデス大統領が蔡総統の招待に応じ台湾を訪問した。

 このほかに台湾承認国ではないが、ガイアナとリトアニアが台湾事務所を新規開設した。

 一方でニカラグアは中国が唯一の合法政府だとして台湾との国交を断絶した。

1・4・4・4 日台間係

 日米台の有力国会議員による初の日米台戦略対話や、日台議員が「与党版2プラス2」など、非政府レベルでの交流が持たれた。

 台湾の民間シンクタンクが行った世論調査の結果によると、58%が台湾有事で日本は自衛隊を派遣して台湾防衛に協力するだろうと答え。

1・4・4・5 防衛力整備

体制の整備

 台湾が陸海空統合の強化策として陸軍の再編を行う。 改編は各種軍団を戦域戦闘軍に改編するもので、Penghu, Huadong, 第6、第8、第10軍団は、第1~第5の戦域戦闘軍に改編される。

 台湾立法院が2022年1月1日に国防動員庁 (NDMA) を創設する。 NDMAは国防部にあった国家総動員室と予備役軍司令部を併合した組織である。

 HF対艦ミサイルをのサイトを全土の9ヶ所に設置するた。 サイトの詳細位置は明らかにされていないが、新台北市、桃園市、嘉義県などが含まれるという。

軍備増強

 台湾がPAC-3 MSEを購入する。 台湾は現在PAC-3 CRI弾を装備している。
 台湾が天弓-ⅢSAMの生産を拡大する。 追加生産分の天弓-Ⅲは2022年6月に馬祖列島の一部である東引島に配備をするという。

 台湾が国産初となる潜水艦の船台起工式を実施した。 潜航時排水量2,500tの潜水艦は2017年に受注したもので、2024年に完成し2025年に納入される。
 Tuo Jiang(沱江)改級コルベット艦の一番艦が進水した。 沱江改級は沱江級より若干大きい。
 満載排水量10,600tで、海剣-2 SAM 2基や76mm砲1門、Phalanx 2基などを搭載する新型ドック型輸送揚陸艦の一番艦が進水式した。 引き渡しは2022年の予定である。
 台湾が自力で建造した4,000t級警備艦の初号艦が海洋委員会海巡署に引き渡された。

 台湾空軍の保有するF-16A/B/C/D 142機をF-16V Block 70/72に改装する計画の1次分42機の改装が完了し、これを装備した部隊が発足した。
 新型高等練習機勇鷹の量産1号機が初飛行した。 2021年12月末までに量産機2機が完成し、2026年までに66機の引き渡しを完了する。
 台湾NCSISTが次世代戦闘機を国内開発すると発表した。 NCSISTは2018年にもTFE-1042-70を元にしたエンジン開発10年計画を開始している。

 台湾が長距離ミサイル1種類の量産を開始したことを明らかにした。 これとは別に3種類の長距離ミサイルを開発していることも認めた。
 これらの詳細は明らかにされていないが、ラムジェット推進で射程1,500~2,000km、速力Mach 3の雲峰CMの発射試験が報じてられいる。
 台湾NCSISTがミサイルの発射試験を行うと発表した。 発射されるミサイルは射程が600kmで量産可能段階にある陸上発射CM HF-ⅡE及びその射程延伸型で射程1,000km以上のミサイルと見られている。

 NCSISTがミサイルの発射試験を行った。 詳細を明らかにされていないが、Thunderbolt-2000の射程延伸型と見られる。
 台湾が直射火力支援型Cloud Leopard 8×8戦闘車が装備する徹甲弾を米陸軍に発注した。 発注したのは105mm砲用のAPFSDS-T弾で、台湾は低反動戦車砲2門を米国に発注している。

防衛産業の振興

 台湾が防衛産業の振興と国際的なサプライチェーンへの参画を目指して企業協力計画 (ICP) の全面的な見直しを行おうとしている。

1・4・5 東南アジア

1・4・5・1 東南アジア諸国全体

 ブリンケン長官が8月2日から始まるASEAN関連のオンライン会合に出席し、民主主義の重要性を掲げ、中国など専制主義国家と対峙する上で東南アジアやインドを重視する姿勢を鮮明にした。 ただ、ASEANはミャンマーや軍政の流れをくむタイ、社会主義のベトナムなど多様な国家を擁し、加盟国ごとに米国との間に大きな温度差がある。

 12月に開かれた主要7ヵ国(G7)外相会合では、インド太平洋地域への関与強化を打ち出された。

1・4・5・2 フィリピン

国内情勢

 国際刑事裁判所 (ICC) がフィリピンのドゥテルテ政権が麻薬戦争として進めた麻薬犯罪容疑者の超法規的殺害について、人道に対する罪の疑いで正式に捜査することを承認した。

対米関係

 ブリンケン米国務長官が、中国が南シナ海でフィリピン軍を攻撃すれば米国のフィリピン防衛義務を定めた米比相互防衛条約が適用されると警告した。

 ロレンザーナ国防相と会談したオースティン米国防長官が、フィリピンが破棄を一方的に通告していた訪問軍地位協定について、今後も維持されることを明らかにした。

 2020年にはCOVID-19の影響で中止された米比軍合わせて約1,000名が参加するBalikatan演習が開始された。

 米政府かフィリピンにF-16 12機や対艦ミサイルなどの武器売却を承認した。

軍備増強

 フィリピン政府がSecind Horizon近代化計画を推し進めている。

 韓国に発注していたフリゲート艦の二番艦にして最終艦がカポネス島に入港した。
 海軍が8隻装備する計画のイスラエル製Shaldag Mk Ⅴミサイル搭載型高速哨戒艇 の最初の3隻が1Q/2022年に引き渡される。
 フィリピンは潜水艦2隻の建造を計画している。

1・4・5・3 ベトナム

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・4・5・4 インドネシア

 海軍が合同演習を行ったり、瀬取りの取り締まりを行ったりと、硬軟交えて距離を保っている。

 2020年から2044年までの25年間に$125Bをかける軍近代化計画の素案を公表した。

 韓国とのKF-21/IF-X 計画に完全復帰した。 一方でSu-35の購入を取りやめ、F-15EXとRafaleが4.5世代戦闘機の候補となった。

 インドネシア海軍のType 209/1400潜水艦の3番艦にして最終艦が就役した。 更に潜水艦12隻の保有をめざしている。
 しかしながらType 209/1300潜水艦が訓練中に沈没する事故を起こしている。
 イタリアからFREMMフリゲート艦6隻を購入する。 この他に伊海軍で退役する予定のMaestrale級フリゲート艦2隻も改修して購入する。
 このほかに双胴型高速艇の試作や、2012年に火災で失った三胴型高速攻撃艇の2番艇を進水させた。

1・4・5・5 マレーシア

 シンガポールと領海領空を巡り度々イザコザを起こしている。。
 北朝鮮がマレーシアとマネーロンダリングなどを巡るトラブルから国交を断絶した。

 中国に4隻発注した沿岸警備艦 (LMS) の二番艦と三番艦が就役した。

1・4・5・6 シンガポール

安全保障政策

 シンガポールが約5年ぶりに中国海軍との合同演習を実施した。 中国との軍事関係が今後強化される可能性はあるものの、米国がシンガポールにとって「安全保障上の第一のパートナー」であることは変わらないと見られる。
 シンガポールは米アーカンソー州兵空軍基地でシンガポール空軍のF-16及びF-35Bの訓練を行う。
 陸軍が17年かけた第3世代 (3G) 近代化計画を3G混成師団の運用開始をもって完了した。

装備開発と装備の導入

 ハイブリッドVTOL miniUAVや個人用システム装具、軽量型航空機武器搭載装置などを開発し公表した。

 シンガポール空軍がAster 30 SAMP/Tを公開した。

 UAEのアブダビ造船社にFalaj 3級外洋警備艦を発注した。

武器輸出

 ニュージーランド多用途艦の大規模整備を受注した。

 IAI社とST Engeneering社の合弁企業がBlue Spearをエストニア軍へ納入する。

1・4・5・7 タ イ

 タイ空軍がT-50TH 2機を追加発注する。 これによりタイ空軍のT-50THは合わせて14機になる。
1・4・5・8 その他

ミャンマー

 ミャンマー海軍が初の潜水艦を就役させた。 この潜水艦は元インド海軍のKilo級潜水艦で2020年初めにミャンマーへ引き渡されていた。

 ミャンマー中部でパイプラインを警備していた警察官3人が刺殺された。 国軍によるクーデターに抗議する市民の間では、国軍と関係が深い中国に対する反感が強まっていた。

カンボジア

 中国が米国の建てた施設を取り壊して改修した。 これを受け米政府がカンボジアに対する武器の禁輸と新たな輸出規制を発表した。

1・4・6 大洋州

1・4・6・1 オーストラリア

国防費の増額

 豪政府が2021-2022会計年度の国防費を4.4%増と発表した。 対GDP比は2.1%になる。

対中政策

 政府がビクトリア州が中国政府と結んだ一帯一路で協力する合意文書を無効にした。
 また地方政府が中国企業と結んだダーウィン商業港の賃借契約について、連邦政府が見直しの検討を始めた。

 政府が大学に対する外国の干渉規制を強化した。

 中国がオーストラリアとの戦略・経済対話に関する全ての活動を無期限に停止した。

米国との軍事協力強化

 米国との軍事協力の強化に向けてオーストラリアでの米陸軍との合同演習を計画している。 これに伴い、最北部にある軍事訓練施設4ヵ所を改修する。
 また米豪は豪州に巡回駐留する米軍の規模拡大で合意した。
 更にオーストラリアは米軍が駐屯する基地を提供することで合意した。 米軍機がオーストラリアに巡回配備され、パースの潜水艦基地に米軍が配備されることもあり得る。

米英豪3ヶ国安全保障協力 AUKUS

 米英豪が中国に対抗する3ヶ国の安全保障協力の一環として原子力潜水艦技術で協力する。
 原子力潜水艦の建造にい、仏との潜水艦建造契約は破棄された。

 米英豪はAUKUSに基づく情報交換協定に署名し、AUKUSの運営組織が発足した。

軍備の増強

 豪国防省は、米英との協力に基づく原子力潜水艦の国内建造に先立ち、米英からのリースや購入も検討している。
 Hobart級AWD駆逐艦の三番艦にして最終艦が、戦闘能力確認のための4ヶ月半の航海を終え帰港した。
 豪海軍が9隻建造するHunter級フリゲート艦の一番艦建造はCOVID-19感染拡大などの影響で18ヶ月遅れる。
 スペインに2隻発注していた洋上補給艦の一番艦が就役した。

技術開発の促進

 吸気式超高速飛翔体 SCIFiRE の開発を米豪共同で開始する。

1・4・6・2 ニュージーランド

対米関係

 米海軍駆逐艦がウェリントンに入港した。 ニュージーランドは1985年以来核疑惑から米海軍艦の寄港を認めておらず、このため米国はANZUS条約に基づくニュージーランドへの義務を停止していた。

対中政策

 ニュージーランド議会がウイグル人に対する人権侵害に重大な懸念を表明する動議を全会一致で可決した。
 これに対して外相は、対中関係について通商関係や見解の相違を超えた成熟した関係を望むと発言した。

1・4・6・3 南太平洋

太平洋諸島フォーラム

 太平洋の島嶼18ヵ国と地域でつくる域内協力機構太平洋諸島フォーラムが、事務局長の選出を巡って深刻な亀裂に直面しており、中国の影響力拡大懸念もある。

海底通信ケーブル敷設計画

 世界銀行主導の海底通信ケーブル「東ミクロネシアケーブル」の敷設計画が、中国企業の参加が安全保障上の脅威だとする米国の警告で頓挫した。

 ナウル共和国が中国企業による海底ケーブル建設計画に代わり新たなオーストラリアのケーブルと接続する交渉を進めている。
 日米豪がミクロネシア連邦とナウル、キリバスの3ヵ国を海底ケーブルで結ぶ事業に資金支援すると発表した。

仏領ニューカレドニア

 世界有数のニッケル産出地である仏領ニューカレドニアで独立の是非を問う3回目の住民投票が行われた。 中国が独立支持派に急接近したためフランス国内で警戒感が強まった。
 1998年の協定で独立を問う住民投票を3回実施することが決まっていたが、独立賛成派が投票ボイコットを呼びかけた結果、独立反対が96.49%を占めた。

バヌアツ

 バヌアツの警察が同国海域内で違法操業をしていた中国漁船2隻とロシア船1隻を拿捕した。

サモア

 ツイラエパ前政権がつくった対中国の巨額債務が問題化したサモアでは、フィアメ新首相は中国が支援する港湾開発計画を棚上げする方針を正式に表明した。
 サモアが抱える対外債務のうち、対中債務が全体の4割ほどを占めている。

ソロモン諸島

 ソロモン諸島で政府への抗議デモが起き、一部が中国系商店に放火や略奪するなど暴徒化した。 ソロモン諸島は2019年に台湾と断交して中国と国交を結んだことで、一部の住民から政府に対する不満が高まっていた。
 中国政府はソロモン在住の中国国民の正当的権益を断固維持すると述べ、ソロモン諸島政府からの要請だとして中国が警備用物資の提供とともに、警備の知識を持った専門家チームを派遣した。

1・5 世界各国(周辺国を除く)

1・5・1 米 国

1・5・1・1 基本政策

核 戦 略

 バイデン政権が2022年初めに公表が予定された報核態勢見直し (NPR) に盛り込む米国の核政策で、核兵器の先制不使用政策を検討していたが、国防総省からの反発を受け、報復だけに使う単一目的に制限する案に落ち着きそうである。

トランプ政権政策の見直し

 バイデン政権が駐独米軍11,900名を撤収してブルガリアとイタリア及び米本土に再配置するとしたトランプ政権の計画を凍結して再検討している。
 一方、トランプ前政権が2020年11月に脱退したOpen Sky条約にバイデン政権が復帰しないことを決め、トランプ政権政策を継承した。

核 軍 縮

 就任時点でロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長を目指していたバイデン米大統領が、ロシアとの条約を5年間延長するための批准法案に署名して批准書を交換し、正式に新STARTが延長された。
 米国とロシアが核軍縮などを協議する戦略的安定対話の2回目の協議を開催し、将来的な軍備管理の原則と目標などを策定する二つの作業部会を設置することで合意した。

対中戦略

 オースティン国防長官が、対中戦略を優先課題とするトランプ前政権の方針を継続する構えを示唆した。
 ブリンケン米国務長官は米中関係について、中国政府によるウイグル族迫害をジェノサイド(集団虐殺)とする見方は変わっていないと強調し、人権問題に厳しい姿勢で臨む意向を鮮明にした。

 バイデン米大統領が議会の上下両院合同会議で行った施政方針演説で、中国に対しては習国家主席を「専制主義者」と呼び、民主主義の優位を示して中国との競争に勝つとの決意を示した。
 シャーマン米国務副長官が中国の王毅外相らと会談を行い、香港、新疆ウイグル自治区、チベットなどにおける中国の行動のほか、サイバ攻撃などを巡る懸念を表明し、世界保健機関 (WHO) が計画している2回目のCOVID-19起源調査に中国が協力的でないことに懸念を示した。
 米政府は、中国政府による人権侵害に直面するチベットに向けた米国の取り組みで、チベット問題担当特別調整官を任命した。

 トランプ米大統領が国家安全保障上の懸念を理由として、中国人民解放軍と関係の深い中国企業に対する証券投資の禁止を命じた大統領令が1月に発効した。
 米証券取引委員会が、外国企業に米当局の会計監査受け入れを義務付ける新規則を検討している。 会計監査を受け入れない場合には上場廃止となる恐れがある。
 米当局は2002年からこの要求を行っているが、受け入れていないのは中国と香港の企業だけで、導入されれば200社余りが米市場から締め出される可能性がある。

 バイデン米大統領が2019年にトランプ大統領が署名した安全保障上の脅威となる通信機器やサービスを米企業が使うことを禁じる大統領令の期限を1年延長した。
 米連邦通信委員会 は、国家安全保障を脅かすと指定した中国企業の製品を認証しない方針を発表した。
 バイデン大統領が華為技術(ファーウェイ)など中国通信機器企業の製品の使用を制限する安全な機器に関する法律に署名し成立した。

 バイデン米大統領がジョンソン英首相と対中政策を協議し、中国の一帯一路経済圏構想に対抗するため、民主主義国家が連携して途上国の開発を支援する構想を提案した。
 米議会が、中国の新疆ウイグル自治区からの輸入を禁じるウイグル強制労働防止法案を可決した。

 米国家安保補佐官が日豪印など4ヵ国が参加するQuadについて、参加に消極的な韓国の代わりに英国がこれに参加し、QuadがQuintaに拡大する可能性が浮上している。
 米国が中国の侵略行為を抑止するため、インド太平洋地域に重心をシフトする方針を明示し、欧州のEDI(欧州抑止計画)の様な計画PDIを進めている。
 米国防総省が発表した、バイデン大統領の指示で進めていた世界規模の米軍態勢の見直し (GPR) では、急速に軍事力を拡大する

対露戦略

 バイデン米大統領が国務省で行った初の外交政策演説で、米国が抵抗せずにいた時代は終わりを迎えたと述べ、ロシアの攻撃的な行動に対抗して行く強硬姿勢を鮮明にした。

 米政府がロシア発とされるサイバ攻撃などを受け、ロシア企業などへの制裁やロシア外交官10人を追放した。

 米政府がロシアに対し、ビザ有効期限切れに伴い24人の外交官の国外退去を求めた。 退去の対象となる外交官の大多数は補充されない。
 ロシア外交官27人とその家族が米国からさらに追放され、2022年1月30日に出国する。
 ロシアは、米露関係が悪化した2016年以降、100人超の外交官とその家族が米国から退去を余儀なくされているとしている。

 バイデン米政権がNordostreem 2建設に関与するロシア船籍の船舶と関連企業2社を制裁対象とした。

対北朝鮮戦略

 対北朝鮮戦略を再検討中の米国のバイデン政権が北朝鮮の核やミサイル戦力を事前に無力化するLeft of Launch戦略を再検討している。
 これは発射準備→発射→上昇→下降というミサイル飛行4段階のうち「発射」の左側にある「発射準備」段階でミサイルを無力化することを意味する。

 在韓米軍が、北朝鮮首脳部に対する斬首作戦の訓練を実施したことを公表した。

同盟国、友好国との連携

 米海軍駆逐艦と海兵隊のF-35Bが英空母Queen Elizabeth CSGに派遣され、CSG 2021を編成した。

 NATO事務総長が、トランプ前政権時代の数年間は話し合いが難しかったが、バイデン大統領はNATOをよく理解していると同盟再強化に期待を示した。

国防予算

 米上院が1月1日、メキシコ国境の壁建設問題でトランプ大統領が拒否権行使したためり審議差し戻しになっていた国防権限法 (NDAA) を賛成80、反対12で再可決した。 下院も2021年12月に拒否権を覆すのに必要な2/3以上の賛成で可決しており、同法は成立した。

 バイデン米大統領がFY22の国防総省予算として$715Bを議会に要求した。 米議会は政権の要求より$25B多い総額$740BのFY21 NDAAを可決した。
 FY22 NDAAではF/A-18に12機、F-15EXに5機多く配分したほか、F-35にも85機を振り当てた。 艦船ではSSKと駆逐艦にそれぞれ2隻ずつと、要求より5隻多い13隻を割り当てた。

1・5・1・2 各軍の戦略戦術

宇 宙 軍

 米宇宙軍は最初の部隊となる複数の軌道を周回する衛星によるミサイル早期警戒部隊の編成を明らかにする。

 SDAが進めている地上及び宇宙空間の脅威を発見識別するNDSAはTracking Layer、Battle Management Layer、Navigation Layerなど6層で構成され、センサを宇宙空間に配置しようとしている。

陸 軍

 陸軍は過去40年来最大の方針転換をして最優先課題を長距離精密打撃におき、西太平洋諸島を移動展開して中国艦の撃沈や不法占拠地上軍の撃破を行う。

 陸軍は2005年に旅団戦闘団を編成したが、それから20年近く経ち中露との対決に入り更なる改編の必要が生じている。 再編では編制の中核を師団とし、突破師団 (penetration division) 2個と突入師団 (forcoble-entry dicision) 2個を編成する考えで、第1騎兵師団は突破師団になるもので、陸軍は2020年にReARMM部隊としていた。

 陸軍が新兵器の導入と新部隊の創設により野戦砲兵の改革を行おうとしている。
 機甲旅団の砲兵大隊は射程40kmのM109A7 Paladin 155mm SPH、機甲師団の砲兵大隊はM1299 ERCA、軍団砲兵は長射程型のGMLRSと射程300哩以上のPrSMを装備する。
 戦域軍砲兵には射程150kmのGMLRS-ER、600kmのPrSM、1,800kmのMRC、2,775kmのLRHWを装備するMDTFが編成される。

海 軍

 トランプ政権は、海軍の規模を2040年代初めまでに400隻にするとしていたが、米海軍は最終目標は355隻が妥当とみている。

 している。  海軍は大型無人艦艇が将来大きな役割を果たすようになると見て、FY22~FY26に大型USV (LUSV) 12隻、中型USV (MUSV) 1隻、超大型UUV (XLUUV) 8隻建造する計画である。
 LUSVは排水量1,000t~2,000t、MUSVは45ft~190ftで500t程度、XLUUVは胴径が84吋以上という。

空 軍

 空軍は現在7機種装備している戦闘機をA-10 CAS機も含めて4+1機種に削減する。 残る4機種はNGAD、F-35A、F-15EX、F-16でF-22はリストになく、F-16は逐次F-35Aに換装されるという。

 空軍は爆撃機の大規模展開を世界規模で実施している。 ロシアは米国が爆撃機を使ってロシアを目標とする核攻撃演習を実施したと非難した。

 米空軍研究所が優先的に実施している先進技術開発Vanguard計画では現在、Skyborg低価格自動戦闘UAV、Golden Horde群飛行UAV、NTS-3 NTSなどが挙がっている。

海兵隊

 海兵隊が進めようとしているForce Design 2030の推進が要求している軽揚陸艦 (LAW) などFY23の予算次第で微妙な状態になっていると述べた。

 海兵隊司令官が海兵隊の最優先として地対艦ミサイルNSMを挙げた。 NSMはForce Design 2030に基づき編成される最初の部隊である第3海兵沿岸連隊に編制される2個中距離ミサイル中隊が装備する。

1・5・1・1 インド太平洋軍

 世界の軍事力の重心が西から東へ移ってきた。 米軍の国外の兵員配置は20年間で欧州や中東に代わり東アジア太平洋が最も多くなった。

 インド太平洋軍が、インド太平洋地域で米軍の拠点を分散させていく方針を示した。 一方でインド太平洋軍は、中国有事の際に重要軍事拠点となる米領グアムに強固なIAMD体制を築くことが最優先だとしてAegis Ashore の設計開始した。

 インド太平洋陸軍が地上配備遠距離打撃兵器を装備したMDTFを配置する。 海軍は太平洋地域に常設の海軍Task Forceを創設することを検討しているた。 沿岸警備隊はホノルルに5隻の最新警備艦を配備した。 空軍はB-52HがB-1Bと交代してグアムに展開すると共にPacific Iron 2021演習でハワイ州兵空軍とアラスカからF-22が西太平洋に展開した。 海兵隊ではハワイ海兵沿岸連隊が第3海兵連隊第1大隊を元に1,800~2,000名で発足し、2030年までに3個沿岸連隊を太平洋地域に配置する。

1・5・1・4 在韓米軍

 在韓米軍ではTHAAD能力向上の第1段階は2019年末に完了し、第2、3段階は2021年上半期に終わる。
1・5・1・5 在日米軍

 空母Carl Vinson CSGが横須賀に入った。 Carl VinsonにはF-35Cが初めて搭載されているほか、C-2A Greyhoundに代えてCMV-22B Ospreyが装備されている。
 岩国基地でF-35Bを装備する海兵隊第1航空団で2番目の飛行隊であるVMFA-242がIOCになった。 空軍ではF-22やRQ-4 Global Hawk HALE UAVが一時飛来した。 陸軍では、沖縄展開部隊がハワイ州Kauai島のPMRFでPAC-2の射撃を実施し、CMを模した標的の撃墜に成功した。
1・5・2 ロシア

1・5・2・1 国内情勢

対米関係

 プーチン露大統領が国家安全保障戦略と呼ばれる文書を6年ぶりに改訂し、NATOの軍事力増強がロシアの脅威になっていると強調する一方、中国やインドとの関係強化を重視する方針を示した。
 欧米との対立が深まっているロシアが非友好国のリストを正式に発表したが、リストに記されたのは米国とチェコの2ヵ国だけである。
 ラブロフ露外相が米国による対露制裁を受け、米外交官10人の国外退去を求めた。 米露の外交関係が大きく悪化する中で、モスクワにある米大使館員は2017年初の1,200名から120名にまで減少し、大使館は管理者のみしか滞在しない状況になりつつある。

ソ連時代への回帰

 プーチン露大統領はクリミアのセバストポリを訪問し、演説でクリミアとセバストポリは永遠にロシアと共にあると述べ、ウクライナに返還する意思がないことを強調した。
 ロシアが、ウクライナとジョージアの将来NATO加盟を巡る2008年の確約を撤回するよう要求し、同時にNATOに対しロシアと国境を共有する国に兵器を配備しないと確約するよう求めた。

政権反対派の抑圧

 2020年8月の毒殺未遂事件後、ドイツで療養していたロシアの反体制派指導者ナワリヌイ氏が、帰国した直後に空港で当局に拘束された。
 毒殺されそうになったナワリヌイ氏らが殺人犯と指摘している連邦保安局の化学兵器専門グループが、過去にも活動家や記者ら3人を尾行し、変死事件に関与した疑いが浮上した。
 米政府がナワリヌイ氏の毒殺未遂事件について、ロシアが化学兵器使用と断定し、個人と団体に対する制裁を導入した。

 ロシアの治安当局がサンクトペテルブルク空港で、ポーランド航空旅客機に搭乗していた反政権運動団体の元幹部を、離陸前の旅客機に乗り込んで拘束した。

1・5・2・2 核戦略

ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) によると、2019年末の世界の核弾頭の総数は13,440発で、最大の保有国はロシアで6,375発、2位の米国が5,800発である。
1・5・2・3 戦力の強化

装備近代化の進捗

 ロシアは2022年に200機の航空機とS-350及びS-400 26個システムを取得するほか、初めて量産型S-500の取得を行う。 この結果防空部隊の新装備の比率は2025~2027年に80%に達するという。
 また新型強襲揚陸艦を含む30隻が建造中で、海軍は49隻の艦艇と沿岸防備ミサイルシステム9個、航空機10機も取得する。  更にUAV 2,000機も装備するという。

装備の充実

 ロシアがS-500の発射試験を行い、高速BM標的の撃墜に成功した。 発表では、射程600kmのS-500は、射程と速度にかかわらず、既存のいかなるBMの撃破も可能という。

 ロシアがProject 20380コルベット艦4隻とProject 20385コルベット艦2隻を発注した。 いずれも2024年~2028年に太平洋艦隊へ納入される。

 Su-57は2024年末までに22機、2028年までに76機を受領する。
 ロシアは安価軽戦闘機Su-75 Checkmateを発表したが、競争が激しいこの機種で受注が期待できる保証はない。

軍事産業の奨励、輸出の拡大

 モスクワ近郊で開かれたMAKS 2021航空展で13件の契約を受注した。

1・5・2・4 対米挑発活動

 ロシアがソ連時代から一方的に内海と宣言しているピョートル大帝湾に近い中露艦隊が演習を行っている海域で、接近した米海軍駆逐艦を露海軍駆逐艦Tributsが阻止した。

 米国防長官がジョージア、ウクライナ、ルーマニアを歴訪した直後に、NATOの年次演習Steadfast Noonに参加していた米空軍のB-1とKC-135が黒海上空の国際空域で、ロシア空軍のSu-30の迎撃を受けた。

1・5・2・5 対欧州戦略

イタリアでの諜報活動

 伊海軍士官がロシア軍士官に現金を受け取る見返りに、NATOに関する情報も含まれてた機密扱いの文書を渡した疑いが持たれている。
 イタリアは極めて重大な敵対的行為だと怒りを表明し、外交問題に発展している。

東欧諸国への挑発

 チェコ、スロバキア、ハンガリー、ポーランドの旧共産圏東欧4ヵ国首相が首脳会議を開き、共同声明で2014年にチェコで起きた弾薬庫爆発について「ロシア情報機関が実行した違法で凶暴な活動を強く非難する」と述べ、ロシアの侵略を非難した。
 バルト三国がロシアと対立を深めているチェコに連帯を示すため、ロシア外交官追放を発表した。
 ラトビア外相は、自国内はもちろん友好国領内であっても破壊活動は許さないとロシアを非難した。

 ブルガリアでも2011~2020年に起きた4回の爆発事件について、ロシア人が関与した疑いで検察当局が証拠を集めている。

対 NATO 戦略

 露外務次官が、NATOが中距離核戦力 (INF) の配備に動いていることを示す間接的な示唆があるとし、そうなればロシアもINFを配備せざるを得なくなると述べた。
 ロシアがNATOに東欧とウクライナでの軍事行動を放棄することなどを要求した。 政治行動が見られない場合には軍事力行使も辞さないと牽制した。

大規模演習

 ロシアが4月に実施した演習の参加規模を明らかにした。 それによると参加規模は300,000名以上の兵員、35,000点以上の装備、180隻の艦艇、航空機900機、輸送機40機で、ロシア全土の500箇所の演習場で4,000を越える演習を行ったという。

 ロシアとベラルーシが9月にポーランドに隣接するベラルーシ西部国境などで大規模なZapad(西部)2021演習を開始した。
 演習は両国の演習場で行われ、約20万名の将兵や80機以上の航空機、760の地上兵器が参加した。

武器としてのエネルギー政策

 Nordo Streem 2は操業開始準備が整っているものの、ドイツ規制当局の承認が必要で、停止したままでになっている。

 ロシア国営ガスプロムが、ウクライナが実施した2021年11月分の天然ガスパイプラインへの追加輸送の入札への参加を見送った。
 Nordstreem 2はウクライナを介さずドイツに直接ガスを供給することから、ロシアはガスを「地政学的な武器」にしている。

1・5・2・6 中東戦略

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・5・2・7 極東地域での活動

太平洋艦隊

 ロシア太平洋艦隊が千島列島中部の松輪島に地対艦ミサイルBastionを配備した。 Bastionは北方領土の択捉島に2016年に配備済みで、その射程は500kmという。

 太平洋艦隊はロシア海軍艦6隻が宗谷海峡を東に向けて通過したり、大和堆を含む日本海でミサイル射撃したり、Tu-95MSとSu-35が日本海上空を飛行したりと、日本近海での活動を活発化させている。

 またロシア艦4隻が対馬海峡を南下して東シナ海へ入ったり、沖縄本島と宮古島の間を北上し日本海にと、東シナ海近海での活動も活発に行っている。

東部軍管区

 ロシアの情報収集機とロシアのものとみられる航空機8機の計9機が、オホーツク海経由で日本海と太平洋を往復するなど長距離飛行した。  一部は北方領土の国後島と択捉島の間を通過した。

 北海道知床岬沖でロシアのAn-26が2回、領空侵犯した。

北方領土

 ロシア首相が択捉島を訪問して、ロシアが実効支配する北方四島に欧米なども含めた外国投資を誘致するため関税を免除する特別区を設置する構想を示し、現地の経済開発に本腰を入れる姿勢を鮮明にした。
 またロシア財務相が、北方領土への外資誘致を目的に一方的に準備している特別地区での優遇期間を20年間に延長する方針を明らかにした。

 択捉島に複数のS-300V4を配備した。 防衛省が北方領土のロシア軍に最新の電子戦装備が配備されたと分析している。
 東部軍管区がクリール諸島にT80BV MBTを配備することを明らかにした。 配備場所は明言していないが、拠点がある択捉島や国後島とみられる。

 ロシア軍東部軍管区が北方領土を含むクリール諸島で1,000名超が参加する演習を実施した。 また国後島周辺で射撃訓練が度々行われた。

1・5・2・8 アフリカ進出

 ロシアが2020年12月、スーダンに海軍施設を置く合意を結んだと発表したが、2021年に入ってスーダンが合意を停止し、ポートスーダンに運び込まれた資材の撤去を要求したと現地で報じられた。 この報道に対しロシアが4月、事実を報じていないと抗議する騒ぎになっていた。

 欧州各国の政府によると、ロシアの傭兵がアフリカのマリ共和国に派遣されているという。

1・5・3 欧 州

1・5・3・1 NATO

増大する脅威への対抗

 NATOロシア代表部の8人が未申告のロシア情報機関員だったとして登録を取り消し追放された。 これに対抗してロシアがNATO代表部を閉鎖した。
 こうしたなか、中東欧9ヵ国が、バイデン米大統領に軍事支援を求めた。
 NATO軍最高司令官がルーマニアとブルガリアへ多国籍戦闘群を派遣すべきと訴えた。

 ストルテンベルグNATO事務総長が中国の台頭について、われわれの安全や繁栄、生活様式に影響をもたらす可能性がある決定的な課題だと懸念を表明した。
 欧州では中国の人権侵害への懸念が強まっており、対中国で米欧協調の素地が広がっていて、NATO事務総長も攻撃的なロシアに加えて台頭する中国にも対処できると語った。

国防費の増額

 加盟30ヵ国で国防費が目標としたGDPの2%を達した国は2014年より3ヵ国増えて10ヵ国になった。 10ヵ国とはクロアチア、エストニア、フランス、ギリシャ、ラトビア、リトアニア、ボーランド、ルーマニア、英国、米国で、ノルウェーが1.85%と続いている。

組織の強化

 NATOの東方拡大に対するロシアの抵抗が続いている。 ボスニアがNATO加盟へ向けた動きを進めればロシアは対抗策を採ると発表した。
 米大統領報道官がウクライナのNATO加盟に対する政権の姿勢ついて、条件を満たした国々にNATOのドアを開き続けると述べた。

活 動

 NATOはバルト海上空航空警察活動 (BAP) のほか、増強警察飛行活動 (eAP) や南部警察飛行活動 (SAP) を行っている。

 NATOは2020年11月に行ったLoyal Leda演習で、連合国緊急対応軍団 (ARRC) の態勢を確認した。
 ロシアの侵攻を想定した4,700名規模のCombined ResolveⅩⅤ演習がドイツにある欧州最大の演習場で行われた。
 ここ数十年で最大級の規模となる米/NATO演習Defender Europe 2021が師団規模で実施され、27ヵ国から28,000名が参加し、十数ヵ国、30以上の演習場で行われた。
 NATO加盟11ヵ国の15隻が参加して北大西洋で実施したFormidable Shield 2021演習では、亜音速、超音速の経空脅威に加えてBM脅威に対処するC&C能力の検証が行われた。
 ウクライナとNATOが黒海で合同演習Sea Breeze 2021を実施した。 このにはウクライナとNATO各国から30隻の艦船、40機の航空機が参加した。

1・5・3・2 在欧米軍

トランプ政権の再配置計画

 米議会が、2021年1月に退くトランプ政権が在独米軍を12,000名削減する計画を阻止する項目をFY21 NDAAに盛り込んだ。
 バイデン政権は駐独米軍を撤収するとしたトランプ政権の計画を凍結した。

戦力強化

 米国防総省が、駐独米軍を削減するとしたトランプ前政権の方針を覆して、ドイツに500名を増派すると発表した。
 増派されるのはMDTF-Europeと戦域火力司令部の2個部隊で、第56野戦砲兵司令部を、マルチドメイン火力統制のため復活した。

 米海軍がロシア潜水艦の動きを監視するため、駆逐艦2隻をスペインのロタに追加派遣する。

 米空軍がB-1Bを爆撃機タスクフォース (BTF) として英国に配備するため英空軍Fairford基地に到着した。

1・5・3・3 E U

防衛政策

 EUは加盟国の安保軍事面での統合は進んでいなかった背景には英国が米国との関係からNATOを重視し、EUの同分野の統合にストップをかけていた事情があった。

 EU加盟27ヵ国が2020年12月に欧州平和機関 (EPF) の設立で合意した。 またEUの欧州防衛基金 (EDF) が正式に発足した。
 ミシェルEU大統領が2022年を「欧州の防衛の年」と位置付け、マクロン仏大統領は安保防衛面で共同演習や防衛産業育成のほか、海事や宇宙、サイバ空間でEUの戦略共有を進めると表明し、2022年の首脳会議でEUの新戦略決定を目指す。

外交戦略

 米国家安全保障局 (NSA) の対独スパイ活動を行ったことに対しEUの対米不信が高まっている。 また米英豪が発表した新たな安全保障の枠組みQuadと、フランスとの潜水艦建造契約破棄が、フランスを中心にEUに波紋を広げている。
 ただ独仏首脳は、欧州が目標としている防衛の自律性はNATOとの共存が可能としている。

 EU外相は、ロシアがウクライナに侵攻すれば高い経済的代償と政治的結果を招くと制裁を警告する姿勢を明確に示した。
 EUはロシアの民間軍事企業がロシア政府に代わり秘密裏の活動を行っているとし、個人と企業に対し制裁を発動させた。
 EUが首脳会議で、ウクライナ国境周辺で軍備を増強するロシアに対し、ウクライナへの侵攻にともなう制裁の準備を整えたと表明した。

 EUは中国が新疆ウイグル自治区で深刻な人権侵害を行っていたとして、制裁に踏み切ることで合意した。
 EU初の包括的なインド太平洋戦略をまとめた。 EU報道官は、中国が南シナ海の平和を脅かしていると批判し、同海域での領有権を巡る中国の主張の大部分を否定した仲裁裁判所の判断に従うよう促した。
 中国とは協力関係を志向してきた中東欧で、ロシアに加え中国との経済関係拡大を阻止する動きが強まっている。
 欧州議会が台湾との関係強化をEUに求める報告書を圧倒的賛成多数で可決した。
 EUが中国の中国の一帯一路に対するEUの対抗策の中核を成す世界的な投資計画Global Gatewayを発表した。
 EUが、リトアニアが事実上の大使館設置を台湾に認めたことに中国が反発している問題をめぐり、EUは加盟国へのあらゆる政治圧力や威圧的措置には対抗する用意があると中国を牽制した。

EU 独自軍

 EUが有志国だけで展開可能な最大5,000名の即応部隊を創設する検討を始めた。 部隊は陸海空からなり、2023年から訓練を開始して2025年には運用できる体制にする。
 独、蘭、芬、ポルトガル、スロベニアの5ヶ国が、計画に名乗りを上げた。

新規加盟と離脱

 旧ソ連構成国のウクライナ、ジョージア、モルドバの3ヵ国が東方パートナーシップ首脳会議でEU盟交渉の開始を要請した。
 アルメニアとアゼルバイジャンはEU加盟は求めておらず、ベラルーシは会議に出席していない。

1・5・3・4 欧州諸国

英 国

 ジョンソン英首相がバイデン米大統領との首脳会談で「新大西洋憲章」に署名した。 新憲章では名指しを避けながらも、中国やロシアの専制主義に断固として対抗する姿勢を鮮明にした。
 英政府が2030年までの外交や安全保障などの政策を定めた統合レビューを公表した。 中国の台頭を踏まえ、同地域への関与を強化する方針を明記した。
 英政府が空母Queen Elizabeth CSGの東アジア展開すると共に、アジア太平洋に外洋哨戒艦2隻を常駐させることにした。

 英国は現在76,000名の陸軍を2025年までに72,500名に削減する一方で、核兵器の増強に乗り出す方針だと報じられた。

フランス

 仏軍は攻撃型原子力潜水艦を南シナ海に派遣し、5月には強襲揚陸艦が佐世保に寄港して日米豪と共同訓練を行うなど、インド太平洋への艦船派遣を活発化している。
 フランスは中国台頭を念頭に2018年にインド太平洋戦略を打ち出し、米国に加え日豪印を重要な協力国と位置づけている。

ドイツ

 ドイツが2019年にチェチェン独立派司令官だった男性が暗殺されたのはロシア政府の指示としてロシア外交官2人を追放したのに対すし、ロシアが報復としてドイツの外交官2人を追放した。

 ドイツがフリゲート艦を日本に派遣した。 海外領土を持たないドイツが極東に艦船を送るのは極めて異例で、対中警戒論が急速に強まる欧州におけるアジア政策の転換を象徴する出来事になる。

ポーランド、バルト三国

 ポーランドでは新たな機械化師団がoperationalになると共に、米国からM1A2 MBT 250両を購入したり中古の耐地雷、耐藪 (MRAP) 車300両を購入するなど、軍備の強化を進めている。

 ロンドンで開かれているDESI展でエストニアがNordic Robotic Wingmanを公開し、高い軍事工業力を示した。
 またエストニア軍は、沿岸防備用に改良した射程290kmのBlue Spear沿岸防備ミサイルシステムを発注した。

 リトアニア国防省が発表した国防費の上昇率は2021年の2.03%から2022年には2.05%になる。 国防費のGDP比は2030年に2.5%になるという。
 台湾を巡って中国との関係が悪化しているリトアニアの駐中国外交代表団が中国から出国し大使館を閉鎖した。

ノルディック諸国

 ノルウェー陸軍との合同戦闘訓練を行う1,000名以上の米海兵隊と米海軍の部隊が到着した。 米海兵隊は冷戦以来ノルウェーに駐留すると共に、ノルウェーの洞窟に大量の武器を備蓄している。

 スウェーデンは汎ノルディック防衛協力構想に従いデンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドとの防衛協力を推進している。
 スウェーデン議会が承認したTotal Defence 2021~2025計画によると、スウェーデンの国防費は2025年には現在の1.4倍以上になる。

 フィンランドが韓国からK9 155mm SPHを追加購入する。 フィンランドはソ連製の旧式火砲と弾薬体系を西側体系に切り替えることになる。
 またかつてはMiG-21も装備していたフィンランドがF-18後継にF-35を選定し、航空機は完全に西側体系に切り替わっている。

黒海沿岸諸国

 ルーマニア政府がNSM沿岸防備システムの購入を決めた。  ルーマニアはノルウェーから中古のF-16 32機を購入する。
 2013年にはポルトガルからF-16 12機を購入しており、2019年にはF-16A/B 5機を追加購入する交渉をしていて、今後何年かかけて更に41機を購入する計画である。

1・5・3・5 トルコ

エルドアン政権の方向

 トルコが主催するアゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンで構成されるチュルク評議会の首脳会議が行われ、機構に格上げすることを決定した。
 エルドアン大統領は、太陽が再び東から昇り始める時期は近いと訴え、新設のチュルク諸国機構にはトルクメニスタンとハンガリーのほか、ウクライナなども参画を検討しているという。

 エルドアン大統領がボスポラス海峡を迂回する全長45kmのイスタンブール運河の建設を開始した。

 エルドアン大統領の支持率はトルコリラの急落による株価も急落などから落ち込み、不支持が57.2%にまでなってきた。

対外政策

 フランスが歴史的にトルコと敵対関係にあるギリシャに戦闘艦3隻を含む武器売却協定を結んでことに対し、トルコがこれはNATOの団結を乱すものと非難している。
 ギリシャとトルコは近年、東地中海におけるガス田開発などで対立を深めている。

 トルコのエルドアン大統領がトルコの活動家の即時解放を求める声明を発表した米、独、仏、加、蘭、フィンランド、デンマーク、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンの10ヵ国大使を国外退去処分にするよう命令した。

 バイデン米大統領がトルコのS-400購入に対して米国の敵対者に対する制裁措置法 (CAATSA) に基づく対トルコ制裁を維持するとにした。

 エルドアン大統領は西側諸国から制裁を受けているのに対抗し、ロシアとの戦闘機及びエンジンの技術提携やS-400の第二次導入をほのめかしている。

 エンドアン大統領が反西欧政策を進め欧米の反発を買っているが、2021年のNATO即応部隊 (NRF) 高度即応統合任務部隊 (VJTF) の主力がトルコ軍になった。

軍備の増強

 トルコはUSVの開発投入やSiper AMDの発射試験実施など共にMIUS UCAV構想の推進など、先端軍事技術に力を入れている。

1・5・4 南アジア

1・5・4・1 インド

国防の基本方針

 インドがAct East政策の元に海軍部隊を1ヶ月間、東南アジア、南シナ海、西太平洋へ派遣し、友好国との軍事的協力関係を深める。

国 防 費

 インドが2021年~2022年の国防費を前年度比3%増と発表したが、インフレの結果物価上昇分を差し引いた実質比は7%の減少になる。
 この結果国防費の対GDP比は2020年の2.52%から2021年には2.15%に低下している。

対外政策

 バイデン政権がインドにP-8I 6機を売却する決定をした。 インドは2009年にP-8I 8機を購入し、2016年に更に4機を購入している。
 ロシアがインドへのS-400の引き渡しを開始した。 米国はS-400を調達したトルコに敵対者に対する制裁措置法 (CAATSA) の下で制裁を発動しており、インドに制裁を科す可能性がある。

 モディ印首相とプーチン露大統領が2031年までの10年間の軍事技術協力協定を結んだ。 協定案では、露海軍の艦艇がインド沿岸部の港で燃料補給などができるとし、事故など緊急時にはインド洋上の海軍基地も利用可能となる。

軍備増強

 イスラエルとインドが共同開発してきた MRSAMの試験が行われ成功した。 MRSAMはIAI社製BarakシリーズSAMを元にしたSAMでインド型の射程は70kmである。
 インドが国内開発したQRSAMの全システムによる試験が成功裏に完了した。 QRSAMはSA-8と(SA-6 に代わるシステムで射程は30kmである。
 インド空軍がAkash SAMを追加発注した。 ソ連製SA-6とよく似たAkashは射程30kmの性能を持つ。

 インドがAgniファミリの最新型である射程1,000km~2,000kmのAgni Pの発射試験に成功した。
 インドが射程5,000kmのAgni-5の夜間発射試験を行った。

 インド初の国産空母Vikrantが洋上処女航海を終えて帰港した。 海軍への納入は2022年上半期になる。
 インドがディーゼル/電気推進攻撃型潜水艦 (SSK) 6隻のRfPを発簡した。

 HAL社が印政府が進めているMiG-29Kに代わる艦載戦闘機計画MRCBF要求に応えた双発艦載戦闘機TEDBF構想を初公開した。

1・5・4・2 パキスタン

 パキスタン・タリバン運動との抗争が続き、11月には停戦に合意したものの1ヶ月で停戦終了となった。

 FY2021-22国防予算を前年6.2%増の国家予算の16%にのぼる額にした。

 中国から4隻購入するフリゲート艦の一番艦が就役した。

 陸軍が中国製のHQ-9 SAMのパキスタン仕様HQ-9/Pを装備した。 HQ-9/Pは射程が100km以上で高いSSKPを誇るという。
 陸軍は2013年から2015年に射程40kmのHQ-16AEを9個システムしている。 またフランス製Crotale SAMの中国版であるHQ-7Bも数基装備している。

1・5・4・3 スリランカ

 2019年11月の大統領選で当選したゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が兄のマヒンダ・ラジャパクサ元大統領を首相に起用した。
 マヒンダ氏は親中派として知られ、現政権下で中国の存在感は大きくなっている。

 親中派として知られるスリランカのラジャパクサ政権が、コロンボ港のコンテナターミナル建設工事の発注先として中国国有企業を指名する方針だと報じられた。
 この計画は日印が出資して完成後も運営に関与する予定だったが、政権が2021年2月に撤回を決めていた。

1・5・4・4 バングラディッシュ

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・5・4・5 ネパール

 ネパールで、与党共産党の内紛による分裂の危機に際し、中国が仲裁に乗り出した。
 中国はインドを牽制するためネパールの共産系諸派をまとめ上げ2017年の総選挙で勝利につなげたが、最近の共産党分裂による影響力低下にいら立っている。
1・5・5 中南米

1・5・5・1 メキシコ

 オブラドール大統領は米国によるキューバへの経済制裁を非人道的と批判し、電力や食料、医薬品が不足し困窮するキューバへの人道支援を本格化した。
1・5・5・2 ブラジル

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・5・5・3 ベネズエラ

 ベネズエラの反米左派マドゥロ大統領の与党が2020年12月の議会選で約9割の議席を確保した。
 マドゥロ大統領は、唯一掌握できていなかった国会をコントロールすることで、さらに独裁色を強めている。
 これに対し米国は、野党指導者グアイド氏について、引き続き暫定大統領として支持する方針を示した。
1・5・5・4 その他中南米諸国

エクアドル

 エクアドルの次期大統領に右派のラソ氏が決選投票で52%の票を獲得し当選した。
 ラソ氏は対中警戒論者として知られ、中国の債務増加を懸念していた。

ペルー

 ペルー大統領選で急進左派のカスティジョ氏が勝利宣言した。
 決選投票で僅差で敗れた対立候補の中道右派ケイコ・フジモリ氏は結果に異議を唱えているものの、覆る可能性は薄い。

ニカラグア

 ニカラグアの国会が、反米左派のオルテガ大統領の連続4選を民主的正統性がないと批判した米州機構 (OAS) から脱退手続きを取るよう求める声明を圧倒的多数で決議した。

 ニカラグアが、台湾との外交関係を断ち再び中国と国交を結んだ。 中国は台湾と断交し中国との国交を回復したことへの見返りとして、中国製COVID-19ワクチン20万回分を送った。

ホンジュラス

 ホンジュラスで大統領選挙が行われ、元大統領の妻で野党のシオマラ・カストロ候補が勝利宣言を行った。
 カストロ氏は選挙公約で、当選すれば台湾と断交して中国と国交を結ぶと訴えていた。

グアテマラ

 台湾と外交関係を持つグアテマラのジャマテイ大統領が、中国からCOVID-19ワクチンの提供を見返りに国交を結ぶよう提案されたがこれを拒絶した。

1・5・6 アフリカ

1・5・6・1 地中海沿岸

 アルジェリアがモロッコによる敵対行為を受けて国交を断絶した。
 モロッコはイスラエルとの間の防衛協力拡大に向けた覚書に署名した。
1・5・6・2 紅海沿岸

 米国がソマリアでイスラム過激派アルシャバーブに空爆を加えた。
1・5・6・3 中南部アフリカ

 チャドと中央アフリカが共同声明を出し、国境で起きた戦闘について合同調査を行うと発表した。 戦闘ではチャド兵6人が死亡した。

 フランスがサハラ砂漠南部一帯のサヘル地域でのフランス軍縮小の方針を明らかにし、サハラで続けられてきたイスラム過激派との戦いが大転換を迎えようとしている。

 モザンビークでは2017年からイスラム過激派組織による反政府活動が活発化して3,100人超が死亡し、近年は北部で攻撃が激化して近隣各国へ飛び火する恐れが高まっている。
 このため南アフリカがモザンビークへ1,500名の部隊派遣を決めた。

1・5・7 中央アジア

1・5・7・1 ロシアの影響力主張

 ロシアは米国がアフガニスタンから撤退した後に、米国とNATO軍が中央アジアに駐留することに強し反対した。

 アフガニスタン情勢への懸念が深まるなか、中国など上海協力機構加盟8ヵ国がロシアで対テロ演習を行った。 演習には中国とロシアのほか、パキスタンやウズベキスタンなどから合わせて4,000名の将兵が参加した。

 ロシア軍とロシア主導の集団安全保障条約機構構成国であるタジキスタン軍が、アフガニスタンからの安全保障上の脅威に備えてタジキスタンとアフガニスタン国境の北方で合同演習を実施した。

1・5・7・2 中国の進出

 タジキスタンと中国が、アフガン情勢についてテロ対応で連携することを確認し、中国がタジクの警察施設建設支援することで合意した。

 米軍が完全撤収するのを前に中国とタリバンが接近している。 タリバンは中国とパキスタンが一帯一路の一環として進める大規模インフラ整備事業の中パ経済回廊 (CPEC) を、アフガンまで拡大するよう呼びかけた。

1・5・7・3 米国の進出

 米国が、アフガニスタンやウズベキスタンとの国境を防衛するためのタジク南西部の施設更新を米国が支援する。
 米軍が完全撤退したアフガニスタンに対するテロ対策などでの越境作戦で、米国がウズベキスタンやタジキスタンを軍事拠点を構築する有力候補地として見据えている。
1・5・7・4 その他各国の動き

 インドが主催したアフガン周辺国会議が開かれ、ロシアやイラン、中央アジア5ヵ国が出席したが、中国とパキスタンは参加を見送った。
1・5・7・5 域内の紛争

キルギスとタジク

 キルギスとタジキスタンの国境地帯で軍が衝突し、キルギス側で多数の死傷者が出た。 タジク側も死傷者が出ているもようであるが、両国は同日に停戦で合意した。

トルクメニスタン

 トルクメニスタンで行われた閲兵式にセルビア製のLazar 3 APCや、MAN-M及びMAM-Mマイクロ誘導弾を装備したトルコ製Bayraktar TB2 UAVなどが参加した。

1・6 国 内 情 勢

1・6・1 防衛体制

1・6・1・1 防衛の基本

 自民党が次の通常国会で、緊急事態条項の創設を軸に改憲議論を進展させたい考えである。

 岸田首相が敵基地攻撃能力の保有について改定する国家安全保障戦略への明記に意欲を示した。

 外務省が、台湾と尖閣諸島などの海洋問題を担当する新たな課長級ポストを2022年4月に設置する方針である。

経済安全保障

 岸田政権が経済安全保障政策をより強力に進めるため、政府が省庁横断的に協議する関係閣僚会議を新設し、経済安全保障の司令塔となる数十人規模の「経済安全保障担当室」(仮称)を内閣府に新設する。
 防衛省が経済安全保障に関する情報収集態勢を強化するため、令和4年度から専従職員を新たに置く。

 更に2022年の通常国会へ「経済安全保障推進法」案の提出をめざす。
 政府が重要な防衛装備品のサプライチェーン強化のため検討している「防衛産業維持強化法」案で、部品調達先に海外のリスクがある事業者には調達先の変更命令を出すなどの措置を検討している。

日米防衛協力指針

 自民党内で日米の防衛協力の指針を見直す案が浮上してきた。
 日米防衛協力指針が誕生したのは東西冷戦下の1978年までさかのぼり、当初はソ連の北海道侵攻を想定した日米協力の枠組みだった。
 その後これまで改定したのは北朝鮮のBM発射を受けた1997年と、集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法が成立した2015年の2回しかない。

防衛の基本計画

 岸田首相が初の所信表明演説で、外交防衛政策の基本方針国家安全保障戦略の改定と、防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画を改定する方針を示した。
 国家安全保障戦略の改定時期は2022年末とし、併せて防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画も見直す。

 中国の動きなどを念頭に置いた経済安保の推進を明記する方針で、敵基地攻撃能力保有の是非が検討の焦点となる。

 自民党の安全保障調査会は既存の3文書とは別に国家防衛戦略を新たに策定することを検討する方針である。

1・6・1・2 制度・組織

 サイバ攻撃に対応するため民間企業からサイバーセキュリティ統括アドバイザーを採用した。 企業に籍をおいたまま非常勤で週2~3日、防衛省で勤務する。

 陸上自衛隊は建軍駐屯地で第301電子戦中隊が編成を完結した。

 航空自衛隊はF-35A 2番目の配備場所を小松基地にすると共に、F-35Bの配備場所を新田原基地にした。

1・6・1・3 日米防衛協力態勢

 菅首相がバイデン米大統領と初の首脳会談を行い、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。
 日米首脳の合意文書に「台湾」が盛り込まれるのは、日中国交正常化前の1969年に佐藤首相とニクソン大統領が出した共同声明以来である。

 日米が2-plus-2 を東京都内で開き、共同声明で中国の海警部隊に武器使用を認める海警法などに深刻な懸念を表明し、中国を強く牽制した。
 米新政権発足から2ヵ月という異例の早さで日米2-plus-2を開き、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官は初の外遊先に日本を選んだ。
 日米2-plus-2ではまた、尖閣諸島について米側は対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が適用されると改めて確認した。

 2020年における安全保障関連法に基づく自衛隊の米軍艦艇や航空機防護が2019年の14回から増加し25回実施した。

 海上自衛隊と米海軍の共同訓練が2021年に入って急増している。 2020年1~8月に実施した回数は8回、2019年の同期間は9回だったのに対し、2021年1~5月の実施回数は日米が参加する多国間訓練を含め23回と、例年に比べ突出している。

 航空自衛隊と米空軍の共同演習は3月には東シナ海空域で、4月には日米ステルス機が、12月には百里基地で行われた。
 陸上自衛隊は3月に過去最大規模の合同降下訓練富士演習場で、6月~7月には奄美大島で米陸軍Patriot部隊や、矢臼別でHIMARSを交えた過去最大規模の実働共同演習を全国規模で実施したほか、第1空挺団がグアムで共同降下訓練を行った。
 更に米海兵隊が12月に陸上自衛隊と実施した共同演習Resolution Dragon 21で、新たな作戦構想の遠征前方基地作戦 (EABO) に基づき長距離空輸を行った。

1・6・1・4 対中戦略

対中脅威認識と基本姿勢

 岸防衛相が海洋進出を進める中国について、目立たないところで一歩ずつ侵略し、最終的には全部変わっている状況をつくろうとしているとの認識を示した。
 令和3年版外交青書では、尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国の海警部隊の動きを、初めて「国際法違反」との表現で批判した。

友好国との連携

 安倍首相が提唱したQuadは初のオンライン首脳会談を2月にTV電話方式で開催し、共同声明で海洋安全保障の協力促進をうたった。

 9月にき初の首脳直接会合が開かれ、名指しこそしなかったものの覇権主義を強める中国への牽制が事実上の焦点となった。
 ただ、米政府高官はQuadは地域安全保障機構ではないと明言している。

対中経済安全保障

 国際海底ケーブルの敷設をめぐり、急速に勢力を拡大する中国に対抗して日米豪が連携を強化する。
 日米欧の企業が約9割を占める海底ケーブルのシェアに華為技術(ファーウェイ)の傘下企業が世界4位と存在感を高めている。
 このため太平洋地域での新たな敷設事業に3ヵ国が共同で関与し、各国の政府系金融機関などが計画を資金面で支援する

 脱炭素化の次世代技術で存在感を強める中国を念頭に、政府が豪州、インドとの3ヵ国で資源、技術を相互に供給するサプライチェーンを構築する調整に入る。

技術流出

 海外から優秀な研究者を集める中国の人材招致プロジェクトである千人計画に、少なくとも44人の日本人研究者が関与していた。
 日本政府から多額の研究費助成を受け取った後、中国軍に近い大学で教えていたケースもあった。

1・6・1・5 台湾との関係

 台北にある日本大使館に相当する日本台湾交流協会の玄関に、日本国旗が掲げられるようになった。

 バイデン米政権下で初めて行われた日米防衛相会談で、台湾海峡で不測の懸念を共有し台湾有事に際しては緊密に連携する方針を確認していた。
 岸防衛相が、台湾から110kmに位置する日本最西端の与那国島を訪問し、陸上自衛隊の沿岸監視隊を視察した。

 政府が台湾海峡有事の際の自衛隊活動に関わる法運用の本格的な検討に入った。
 台湾有事の自衛隊活動としては、米軍などへの後方支援を行う重要影響事態か、集団的自衛権の行使を認める存立危機事態に該当するかどうかの判断が焦点となる。

 日米が台湾有事に備えた作戦計画の草案を起草したと報じられた。 それによると台湾有事に際しては米海兵隊が南西諸島のどこかに応急陣地を構築するという。

1・6・1・6 安全保障に関する日韓対話

 4月と11月に米国を介した日米韓3ヵ国対話が行われたが、日韓の直接対話はなかった。 11月の日米韓次官級協議では会議後の共同記者会見を日本側が拒否した。
1・6・1・7 海上自衛隊の役割見直し

 日本維新の会と国民民主党が領海警備の強化に向けて、自衛隊が警戒監視を担えることなどを明確にする自衛隊法などの改正案を国会に共同で提出する。
 まとめた自衛隊法などの改正案では、自衛隊が必要な警戒監視や情報収集などを担えることを明記し、活動中の部隊が武力の行使に至らない範囲で武器の使用を認める規定も設けている。

 政府が南西諸島に配置した陸上自衛隊の部隊に物資を運ぶ中型と小型の輸送艦3隻を導入する方針を固めた。
 陸自への輸送艦配備は初めてである。

1・6・1・8 諸情勢への対応

 武装工作員侵入への備え、県警が県ごとに県内に駐屯する陸上自衛隊部隊と共同訓練を行っている。

 少子化の影響で将来隊員不足になることを見据えて、装備品の艦船の省人化や無人装備の開発が進められている。

 政府はCOVID-19感染再拡大を受け、患者治療にあたる病床を増やす自治体向けに自衛隊派遣の態勢を整えた。 またヘリコプタなどの装備品を活用し、離島の患者を搬送する対処も準備した。
 COVID-19のワクチン接種を迅速に進めるため、東京都内と大阪市内に大規模接種センタを開設した。
 大規模接種センタは防衛省が中心となって運営し、自衛隊の医官や看護官が接種に従事した。
 防衛省は全国に点在する自衛隊病院を再編し、首都圏3病院の機能を拡充して感染症や災害対応の中核病院と位置づけ、病床拡張など非常時の対処力を高める。

1・6・1・9 大規模演習

陸上自衛隊演習

 陸上自衛隊が9月から11月にかけて、島嶼有事などを想定した過去最大規模の演習を実施した。 全国規模の演習は28年ぶりで、ほぼ全隊員の約14万人が参加した。
 演習には予備自衛官を含む100,000名、車両20,000両、航空機120機が参加し、尖閣諸島や台湾を巡る有事における九州への部隊投入が念頭に、師団や旅団ごとに隊員の移動や装備品などの輸送手段を確認することが主な目的で、戦闘訓練は含まれていない。

統合演習

 統合幕僚監部が、東北地方太平洋側や四国沖、鹿児島県の種子島、長崎県の津多羅島などで、人員30,000名、車両1,900両、艦艇10隻、航空機140機、米軍から5,800名が参加する実動の統合演習を行った。 

1・6・2 防衛予算

1・6・2・1 令和3年度防衛予算

 中国軍の近代化と独善的なやり方により、日本の防衛力増強の政治的な圧力が強まっている。
 ただ円建てで見たわが国の防衛費は令和元年度、2年度に5%程度の上昇を示しているが、ドル建てで見ると逆に減少傾向である。

 自民党は衆院選のマニフェストで、防衛費をGPDの1%から2%に引き上げるとした。

1・6・2・2 令和3年度予算の補正

 政府が閣議決定した令和3年度補正予算案に、防衛費を補正では過去最大の7,738億円計上した。
 令和3年度の防衛予算防衛費は、補正の7,738億円と年度当初予算の5兆3,422億円と合わせ6兆1,160億円となっり、GDP比で1%を超して1.09%となった。
1・6・2・3 令和4年度防衛予算

 12月に閣議決定した令和4年度予算案は、防衛費はデジタル庁への計上分を含め5兆4,005億円で、4年度のGDP見通しとの比較では0.957%となり1%枠内に収まったが、旧軍人の恩給費や海上保安庁予算などを含めるNATO基準では1%超になった。
1・6・3 ミサイル防衛

1・6・3・1 早期警戒、探知追随

監視衛星

 防衛省が北朝鮮や中国などの新型ミサイルを人工衛星で監視する最新技術の調査研究を委託するために競争入札を行ったが、最安値の22円を出した三菱電機が落札したため、三菱電機と正式に契約を結んだ。

 防衛省がミサイルの捕捉追随などに当たる衛星コンステレーションに関するタスクフォースの初会合を開いた。
 防衛省は令和2年度以降、衛星コンステレーションに関する研究を実施しており、タスクフォースは先行する米国との協力などを検討し、導入の可否や運用の方法について早期に結論を得るとしている。

UAV の活用

 防衛省が、Mach 5以上の超高速ミサイルの早期探知を可能にするため、UAVの活用を検討している。

1・6・3・2 Aegis Ashore 代替

 防衛省が計画を中止したAegis Ashore 2個システムの代替としてAegis艦2隻を追加建造する。
 米MDAと海軍が、日本がAegisシステム搭載艦 (ASEV) にSPY-7レーダを搭載するのに伴うソフトウェアJ7.Bの試験に成功した。
 J7.Bは米海軍のBaseline 9を元に既に就役しているJ7を元にしている。

 しかし防衛省は令和4年度予算概算要求にAegis System搭載艦の建造費計上を見送った。

1・6・3・3 BMD システムの整備

 防衛装備庁がSM-3 Block ⅡAを米国に300.8億円で発注した。
 米国防安全保障協力局 (DSCA) は2019年8月に、SM-3 Block ⅡA 73発を日本へ売却することを国務省が承認したと発表している。
 これより先の2018年1月にDSCAはSM-3 Block ⅡA 4発の$133.3Mでの対日輸出を承認している。
1・6・3・4 BMD 実行動

 航空自衛隊が2月、陸上自衛隊春日井駐屯地でPAC-3の機動展開訓練を実施した。

 BM対処要領などをシミュレーションで演練する令和2年度日米共同統合IAMD訓練が、全国の各駐屯地、基地と米海軍横須賀基地などをつないで行われた。

 米ニューメキシコ州のマクレガー射場に同時期に派遣されていた陸自中SAM部隊と空自Patriot部隊が初の協同射撃訓練を行い、陸・空の協同対処能力を向上させた。

1・6・4 我が国周辺の警備

1・6・4・1 周辺安全保障政策

グレーゾーン対処

 自民党国防、国土交通両部会などがとりまとめる尖閣諸島の防衛に関する提言原案では、尖閣周辺で中国海警船による領海侵入が常態化していることを踏まえ、現行法では自衛隊の対応に限界があると指摘した、対処するための方策を検討し必要な法整備を行うことを求めている。
 ただ、海上保安庁法改正などの法整備を含む強い措置を求める国防部会とこれに反対する国土交通部会が対立し、取りまとめの調整は難航し、必要があれば法整備も検討するとの玉虫色の表現に落ち着いた。

不審船の活動、不審船監視システムの構築

 海上保安庁がMANPADSを装備した北朝鮮当局船が我が国排他的経済水域内の大和堆を航行していたことを確認した。

 政府が令和4年度にAIと衛星を組み合わせた新たな不審船監視システムの実証実験を行い、令和6年度にも運用を開始する。
 システムは、衛星が取得した船舶の位置や速度などのデータをAIが分析し、不審な動きをする船舶を早期に探知する仕組みで、海上保安庁が巡視船を派遣するなどして、迅速に追跡できる態勢を整える。

1・6・4・2 中国に対する監視

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・6・4・3 南西防衛を重視した部隊配置

水陸機動団

 政府は陸上自衛隊水陸機動団のうち、新たに発足させる3番目の第3水陸機動連隊を、竹松駐屯地に配置する方向で検討に入った。

南西諸島への部隊配置

 奄美駐屯地の瀬戸内分屯地にSAMなど弾薬を保管する弾薬庫地区の整備を平成30年度から進めており、現在は2本目の整備が進められている。
 陸自奄美駐屯地は2019年3月に開設され、同駐屯地には警備部隊、中SAM部隊など350名、瀬戸内分屯地には警備部隊、SSM部隊など210名が配置されている。

 防衛省が令和4年度末に陸上自衛隊のミサイル部隊を石垣島に配置する方針を固めた。 石垣駐屯地は警備部隊や中SAM、SSM部隊など570名を配置する計画である。

 陸上自衛隊がうるま市の勝連分屯地に地対艦ミサイル (SSM) を配備し、南西諸島の4ヵ所に配置するSSM部隊をまとめる連隊本部を同分屯地に置く。
 SSM部隊は、奄美大島と宮古島にすでに配備されており、令和4年度に開設する石垣島の駐屯地にも配備する。

 防衛省が、宮古島市の陸上自衛隊施設内にSSM、SAMなど弾薬の搬入を開始した。

 西之表市馬毛島への米軍空母艦載機陸上離着陸訓練 (FCLP) 移転を伴う自衛隊基地整備計画を巡り、南種子町が自衛隊基地関連施設を誘致する方針で、中種子町議会も全会一致で容認の意見書可決したのに対し、西之表市は一貫して反対の立場で、種子島1市2町の立場の違いが鮮明になった。
 防衛省が示したイメージ図では、島の東側に輸送艦船や護衛艦などの停泊に使う係留施設や堤防のほか、仮設桟橋3本を建設する。

 沖縄県北大東村の宮城村長が防衛省に対し、北大東村への自衛隊配備について正式に要請した。 村は周辺空海域の情勢を踏まえてレーダ施設の誘致などを求める考えを示している。

電子戦部隊の配置

 陸上自衛隊が3月に建軍駐屯地で第301電子戦中隊の編成を完結した。 中隊は最近開発された車載電子戦装置NEWSを装備する。
 陸上自衛隊の電子戦専門部隊を令和5年度末までに与那国島と対馬に配置する。
 電子戦部隊は、北海道から九州にかけた「列島の弧」と九州と沖縄の「南西の弧」という2つの弧を描く形で10ヵ所以上に配置して中国とロシアに対抗する構えを築く。

戦闘機拠点を離島へ拡充

 航空自衛隊が、戦闘機などの展開能力を強化し壊滅的な被害を防ぐため、運用拠点の拡充を検討している。
 沖縄県では下地島空港には3,000mの滑走路がありF-35B以外の戦闘機も離着陸が可能だが、宮古空港と新石垣空港、与那国空港は滑走路が2,000mで、2,400m以上の滑走路が必要なF-15、F-2、F-35Aは長さが足りないが、F-35Bは数百㍍の滑走路でも離陸でき、C-2やC-130、C-1も3空港で離着陸できる。

1・6・4・4 航空自衛隊の緊急発進

 航空自衛隊の令和2年度の緊急発進が前年度から222回減って725回だった。 このうち中国を対象としたのは217回減の458回だった。
 令和3年度上半期に緊急発進が、390回あった。 前年同期と比べて19回増加で、特に中国機への対応が増え、全体の7割を超えた。

 防衛省が東シナ海などの中国機に対する緊急発進を日本領空に侵入される恐れがより高い機体に対象を絞り、総量を抑制している。

1・6・4・5 南西諸島防衛演習

 南西諸島防衛を想定した演習は日米共同演習や陸上自衛隊演習などのほかにも、北部方面隊の総合戦闘力演習も北海道大演習場で離島の防衛を想定して行われた。

 大規模災害を想定した離島での日米共同訓練が行われ、在日米軍が初めて沖縄地域での防災訓練に参加した。

1・6・4・6 周辺海域警備

 Type 055駆逐艦を初めフリゲート艦や補給艦などの各種艦船が、対馬海峡を通過して日本海を度々航行している。

 沖ノ鳥島近海の日本の排他的経済水域 (EEZ) 内で中国の海洋調査船が活動していた。
 防衛省が小笠原諸島周辺空域での領空監視をするため、航空自衛隊の移動警戒隊を同諸島に展開する。
 将来は固定式レーダを設置し、監視態勢を強化することも検討している。

1・6・4・7 重要施設等の保全

 自衛隊基地の周辺や国境離島などの土地の規制を強化する土地利用規制法案が成立した。  外国資本の取引を規制する指定区域には、自衛隊のレーダ施設など600ヵ所程度の防衛関係施設のほか、原子力発電所などの周辺も検討されている。
1・6・4・8 海上保安部隊の強化

 政府が、尖閣諸島に外国公船から乗員が上陸を強行しようとした場合、海上保安庁が阻止するために危害射撃が可能との見解を示した。

 尖閣諸島周辺で領海警備に当たっていた尖閣専従巡視船が任務中故障し、一時航行不能状態に陥っていた。 巡視船は老朽化が進み、382隻の36%である139隻が耐用年数を超えて老朽化が進んでいる。
 尖閣諸島の警備を担う石垣海上保安部に、現在は6,500総トンのヘリ搭載大型巡視船を配備した。

 洋上監視機能の強化のため大型UAVの導入する。 海保は2020にMQ-9B Sea Guardian 1機を使用し八戸基地を拠点に大型UAVの実証実験を実施している。
 また北九州空港にある第7管区海上保安本部航空基地にFalcon 2000新型ジェット機を配備した。

 九州西方海域、若狭湾、伊豆諸島周辺海域などで海上自衛隊との共同訓練を行い、海保との共同対処能力の強化を図った。
 更に巡視船と米沿岸警備隊の警備艦が小笠原諸島周辺で合同訓練を実施した。

1・6・4・9 国境警備

 中国による尖閣諸島占拠を想定した、自衛隊、海上保安庁、警察、外務省の担当者が参加する図上演習を複数回実施していた。
 11月に内閣官房が初めて発表した島での対処能力向上が目的とした海上保安庁、警察、自衛隊の共同訓練が、他国による尖閣諸島占拠を想定していた。

 警察庁が尖閣諸島への不法上陸事案などに対処するため沖縄県警に2020年に発足した国境離島警備隊の訓練施設を沖縄県内に整備する。

 海上保安庁巡視船が2017年から2021年8月まで竹島付近の海上に404回出現していた。
 ただ、この5年間に日本の巡視船が竹島周辺の韓国が領海とする海域に進入したことはない。

1・6・5 海外活動

1・6・5・1 ペルシャ湾

 政府が中東海域で情報収集任務に当たっている護衛艦とP-3Cの派遣期間を1年間延長することを決めた一方、海上自衛隊の護衛艦1隻を撤収させることを決めた。
1・6・5・2 アフガンへの輸送機派遣

 アフガニスタンから邦人らを退避させるため、銃を携行した陸上自衛隊員も乗り込んだ輸送機を派遣したが、派遣の根拠である自衛隊法に活動を制約されて自衛官は首都カブールの空港から一歩も外に出られず、最大500人と想定した退避希望者の多くはアフガン国内に残されたままで、退避できた日本人は1人のみであった。
 この結果を受けて自衛隊法84条4改正を含む見直しが検討されている。
1・6・5・3 エチオピアへの輸送機派遣準備

 政府は紛争が激化しているエチオピアから自衛隊機で日本人を退避させる場合に備え、隣国ジブチに先遣隊を派遣したが、反政府勢力が首都に向けて南下する可能性が低くなったため、ジブチに派遣していた同省と外務省の調査チームを撤収した。
1・6・6 将来戦への対応

1・6・6・1 サイバ戦

 日本の研究機関や企業に対するサイバ攻撃をめぐり中国共産党員で中国籍の男を送検したことで、PLA第61419部隊を背景に持つTickと呼ばれるサイバ攻撃集団が関与した可能性が高いことが判明した。
 中国籍の元留学生が、日本企業向けのウイルス対策ソフトを不正に購入しようとしていた疑いから詐欺未遂容疑で逮捕状を取ったが男は既に中国に帰国してため、国際刑事警察機構 (ICPO) を通じて国際手配した。 元留学生の妻は日本企業などにサイバ攻撃を仕掛ける中国のハッカー集団Tichと同体とみられている中国軍サイバ攻撃部隊の61419部隊に所属していたとされる。

 2020年に公表された三菱電機への不正アクセスによって流出したデータのうち、安全保障に影響を及ぼすおそれのあるものが59件あった。

 防衛省は平成30年度末時点で計430名だったサイバ部隊は段階的に増員して令和3年度末に800名とし、5年度には千数百名規模に拡大する。

 政府がサイバーセキュリティ戦略本部の会合を開き、中国やロシアなどによるサイバ攻撃を念頭に、今後3年間の次期サイバーセキュリティ戦略案を策定した。

1・6・6・2 宇宙利用、宇宙防衛

 政府が、特に重点的に取り組む事項の筆頭に宇宙安全保障の確保を掲げた宇宙基本計画工程表の改定に向けた重点事項を決定した。
 政府が小型衛星による観測網の構築に向け、2020年代半ばに衛星3基を打ち上げ、実証試験を行う方針を固めた。

 防衛省が日本の人工衛星への妨害を監視する第2宇宙作戦隊を、令和4年度中に防府北基地に新編する方針を固めた。 更に、3年度には宇宙作戦指揮所運用隊を府中基地に置き、作戦隊などと合わせて宇宙作戦群としたうえで、4年度には府中基地の作戦隊を第1宇宙作戦隊に改編し宇宙システム管理隊と第2作戦隊を含む作戦群全体で120名程度に増やす。

 防衛省が宇宙空間の警戒監視や人工衛星の修理補給を担う宇宙巡回船の建造を検討している。

 米宇宙軍が、2023年と2024年に打ち上げられる準天頂衛星に、中国の宇宙活動を監視する目的で米SMSCが製造した光学センサを搭載することで日米が合意した。
 政府が民間事業者が打ち上げる人工衛星の監視を強化するため、宇宙活動法の指針を見直して宇宙での作業計画や軌道情報を国に詳しく報告することを義務づける。

1・6・6・3 電 子 戦

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・6・6・4 将来戦対応統合部隊の創設

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・6・7 防衛協力

1・6・7・1 多国間防衛協力

 自衛隊が外国軍と共同訓練する機会が増えてきた。 2021年1~5月は公表ベースで陸海空の合計で38回と週2回ペースで実施した。

 水陸機動団が米、豪、英、日、韓、ニュージーランドから17,000名が参加する隔年水陸両用作戦演習Talisman Sabreに参加した。

 海上自衛隊が2月に九州西方海域で米仏艦と共同訓練を、5月には日米豪仏軍による離島防衛の共同訓練ARC 21が実施された。
 日本国内でこの3ヵ国の陸上部隊が本格的な実動訓練をするのは初めてである。

 日米豪印にフランスを加えた5ヵ国が拡大Malabar演習をベンガル湾で実施した。

 海上自衛隊が10月に沖縄の南西海域で米英蘭加及び、ニュージーランド海軍と合同演習を行った。

1・6・7・2 大洋州諸国との防衛協力

オーストラリア

 日豪両政府が外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2) を6月にオンライン形式で実施した。
 日豪両政府が自衛隊と豪州軍が互いの国に滞在した際の法的地位を定める円滑化協定 (RAA) を2022年1月にも締結する方向で最終調整に入った。

 安全保障関連法に基づき自衛隊が他国の艦艇や航空機を守る武器等防護任務をオーストラリア軍に対して初めて実施した。

 日豪政府が日豪安全保障共同宣言の改定を検討している。 2007年に策定した安全保障協力に関する日豪共同宣言は北朝鮮の核やミサイルとテロに対する協力が中心であったが、改定して中国に対する協力強化を前面に掲げる。

ニュージーランド

 両国による初の共同訓練が実施された。

太平洋島嶼国

 日本と太平洋の島嶼国3ヵ国の防衛担当者によるオンライン会議が開かれた。

 菅首相が7月の太平洋・島サミットで、太平洋島嶼国に対するインフラ整備支援に向けた意欲を強調した。
 政府は表向き中国に対抗する意図を否定するが、太平洋島嶼国への進出を強める中国系企業に対する警戒感を強めている。

1・6・7・3 インド、インド洋諸国との防衛協力

 日本とインド政府が4月に東京で外務防衛閣僚会合 (2-plus-2) を開催する方向で調整を進めていたがCOVID-19感染拡大で延期された。

 日印物品役務相互提供協定 (ACSA)が可決承認された。 日本はすでに米英豪仏加とも同様の協定を結んでいる。

 海上自衛隊の補給艦が東シナ海で、インド海軍のコルベット艦と洋上補給訓練を実施した。 日印が東シナ海で共同訓練するのは異例で、インド太平洋で活動を強める中国を牽制する狙いがある。
 インド海軍と海上自衛隊が2021年で5回目となる両海軍合同年次演習JIMEXをアラビア海で実施した。

 航空自衛隊がインド空軍と初めて戦闘機による共同訓練を行う。 印空軍は中国空軍も採用しているSu-30を派遣する。

1・6・7・4 欧州諸国との防衛協力

 日英が、自衛隊と英国軍の共同訓練などに関する円滑化協定 (RAA) の締結に向けた交渉に入ることで合意した。
 7月には空母Qeen Elizabeth CSGが日本に寄港した。
 8月には日本の南方海域で米蘭海軍を交えたQeen Elizabeth CSGが海上自衛隊と共同演習を行った。

 フランス政府が円滑化協定の締結を打診してきた。
 フランスとは、5月に補給艦ましゅうが沖縄周辺海域でフリゲート艦と共同訓練を行い、ましゅうから燃料を補給したり、強襲揚陸艦とフリゲート艦が沖縄に寄港したりした。
 更に5月には日米仏共同演習ARC 21の一環として東シナ海で3ヵ国にオーストラリアも加わり11隻が共同訓練を行った。

 ドイツとは情報保護協定が締結された。
 11月にはドイツ海軍フリゲート艦Bayernが日本に寄港し、関東南方海域で海上自衛隊と共同訓練を行った。
 今後ドイツは海洋進出を強める中国をにらみ、太平洋に2年ごと艦船を派遣する。

 航空自衛隊のパイロットが、イタリアのGalatina飛行学校で訓練を受けている。

1・6・7・5 東南アジア諸国との防衛協力

 茂木外相がASEAN外相とのオンライン会議に参加し、中国を念頭にASEAN独自のインド太平洋構想 (AOIP) について協力を惜しまないと述べた。

 航空自衛隊がマニラ近郊で比空軍と共同訓練を行った。

 フィリピンで行われるKamabdag日米比合同演習は、COVID-19の影響でフィリピンで米海兵隊12名、比海兵隊242名、陸上自衛隊25名が参加して行われた。

 岸防衛相が9月11日午後にハノイでファン・バン・ザン国防相と会談し、防衛協力を拡大することで一致し、防衛装備品の技術移転協定に署名した。

1・6・7・6 中東諸国との防衛協力

 イスラエルとイランでそれぞれ新政権が発足したタイミングを捉え、茂木外相がでエジプト、パレスチナ自治区、イスラエル、ヨルダン、トルコ、イラン、カタールの中東7ヵ国と地域を訪問した。
1・6・7・7 その他諸国との防衛協力

 東シナ海で北朝鮮に対する国連の制裁措置支援に当たっていたカナダ海軍のフリゲート艦が佐世保に寄港した。

 日米韓の制服組トップが4月にハワイで3者会談を開き、北朝鮮の核とBM開発への懸念を共有したと発表した。
 日米韓3ヵ国の北朝鮮問題を担当する高官が9月に東京で協議を開催し、北朝鮮のミサイルや核プログラム抑制に向けた方策を話し合った。

1・6・7・8 海上保安庁の協力事業

 海上保安庁が、東南アジア周辺海域における海賊対策およびフィリピン沿岸警備隊との連携訓練を実施するため、大型巡視船をフィリピン周辺海域に派遣した。
1・6・7・9 技術協力、武器輸出

 政府が防衛装備品の輸出促進のため低金利融資を行う。 融資は国際協力銀行が日本貿易保険の支援を受けて実施する。

 インドネシアへのFFM、インドネシアへの潜水艦、マレーシアへの防空レーダの売り込みを行ってきたが、受注には至っていない。

 Meteor BVRAAMとAAM-4BのRFシーカを組み合わせるJNAAMは、平成30年度に開始され令和4年度に試験を完了する計画で、F-35への装備み計画されている。
 日英は、次世代戦闘機F-Xが搭載するレーダでも共同研究を行う計画で予算が計上されている。

1・6・8 装備行政

1・6・8・1 調達行政

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・6・8・2 防衛技術保全

防衛技術流出事案

 住友重機が機関銃設計図を中国に流出させる事件や、軍用UAVに転用可能なモーターを中国に輸出しようとした事件、軍事転用可能なソナーを不正輸出した事件などが生起した。

防衛技術保全強化策

 AIなど先進技術の軍事転用に関する情報収集を進めるため、防衛省が専門の新たなポスト経済安全保障情報企画官を新設した。

 政府が資金源の透明性を高め先端技術の海外流出を防ぐ狙いで、国から資金援助を受ける研究者に対し、外国を含めた資金提供状況の開示を義務付ける方針を固めた。
 中国を念頭に軍事関連技術の流出防止を図る狙いで、政府が軍事利用が可能な先端技術について日本の大学などの外国人留学生や研究者に対する移転の規制を強化する方針を固めた。 外国為替及び外国貿易法(外為法)の運用を厳格化する。
 政府が、日本の大学や研究機関を通じて軍事転用可能な先端技術が海外に流出するのを防止するため、外国政府の強い影響下にある留学生や日本人研究者に対する技術提供は、経済産業相の許可制とする方針を固めた。
 日本政府が主として防衛技術の流出を防ぐため、海外からの直接投資に対する規制を強化する。

 政府が、中国政府が出資し日本国内の大学に開設している孔子学院の透明性確保に乗り出す。

 公安調査庁が「我が国留学歴を有する極超音速分野の中国人研究者」と題した資料を関係省庁に提出し注意を喚起した。

1・6・8・3 次期戦闘機の開発

 F-2の後継となる次期戦闘機の開発で、三菱重工業を中核に複数の日本企業による技術者チームが発足した。 役割分担はエンジンがIHI、機体がSUBARUと川重、電子戦装備を制御するミッションシステムが三菱電機、レーダを含む電子機器が東芝と富士通、NECになる。

 防衛省がMHIが開発するF-Xのシステムインテグレーション支援にLockheed Martin社を選定した。 またNorthop Grumman社も開発チームに参加する。

 次期戦闘機の開発で政府は、エンジンを英国と共同開発する方向で最終調整に入った。 日本はIHI社、英国はRolls-Roys社の参加を見込んでいる。 エンジンの実証機開発を2020年1月に開始する。
 政府が次期戦闘機の機体開発の一部に英国を参加させる方向で最終調整に入っている。

1・6・8・4 その他新装備

艦 艇

 装備庁が新型外洋哨戒艦 (OPV) の検討を行っている。 1番艦は令和8年度に就役する見込みである。
 敵基地攻撃能力を具体化する装備として、海上自衛隊の潜水艦に地上の目標も攻撃可能な国産の長射程CMを装備する方向で検討に入った。 配備は2020年代後半以降の見通しである。

 甲板の耐熱性向上などの改修を6月に終了した護衛艦いずもの艦上で米海兵隊F-35B 2機による発着試験が10月に実施された。

 新型護衛艦が進水しもがみと命名された。 2022年以降に就役する。
 もがみ型FFMで3番艦が進水しのしろと命名された。 就役は2022年の予定である。
 もがみ型FFM4番艦が進水しみくまと命名された。 2023年3月に防衛省に引き渡される。
 たいげい型潜水艦はくげいが進水した。 引き渡しは2023年3月の予定である。
 海上自衛隊が2隻建造する新型の4,900t油槽船の1隻目が進水した。 就役は2022年4月に予定されている。 2隻目も2022年2月に進水する計画である。

 最新Aegis護衛艦はぐろが3月に就役した。
 そうりゅう型潜水艦の12番艦で最終艦となるとうりゅうが就役した。
 海上自衛隊のあわじ型掃海艦の三番艦となるえだじまが就役した。

航空機

 装備庁がC-2を元にしたSOJの開発を川崎重工業 (KHI) に発注した。
 装備庁がUH-2ヘリの開発を完了したと発表した。
 MHI社がSH-60Kの改良型2機を装備庁に納入した。

ミサイル

 防衛省はAGM-158C LRASMをF-15J/DJに装備する計画を破棄した代替えとして、12式地対艦誘導弾をベースとして射程を1,000km超まで延ばす地上発射型国産長射程ミサイルを、艦艇や戦闘機から発射可能な新たな長射程ミサイルとする開発に着手する。 2020年代後半までの配備をめざす。
 国産の空中発射型長距離ミサイルをF-2やF-2後継戦闘機に搭載することを計画している。

 防衛省がASM-3Aの量産を開始すると発表した。 ASM-3Aは開発中のASM-3改の技術を取り入れた改良型である。
 ASM-3はMach 3、射程200kmであり、ASM-3改は射程が400km以上という。

 装備庁が三菱重工業 (MHI) と自衛隊向けの超高速巡航ミサイル (HCM) を開発している。 ただこれは自衛隊での装備化を前提としたものではない。
 これとは別に装備庁は2026年装備化を目指して平成30年度から超高速滑空弾 (HVGP) 計画を進めており、更に2030年代初期に改良型を装備化するという。

U A V

 防衛省が航空自衛隊のF-Xと共同で任務に当たる和製 Loyal Wigman UAVを、早ければ2035年にも装備するた。 開発は令和元年に開始されている。 ・5G の導入

 防衛省が令和3年度から、高速大容量通信規格5Gの導入に向けた実証試験に乗り出している。 自衛隊の基地に5G網を張り巡らし様々な機器をネットワーク化するもので、スマート基地構想と呼ばれている。

1・6・8・5 導入新装備

 政府がF-15J/DJにAGM-158C LRASMを装備する計画を中止した。 LRASMの中止によりF-15のF-15JSIへの改修費は抑えられた。

 Boeing社が防衛省から4機受注していたKC-46Aの1号機をシアトルの同社工場で引き渡した。

 航空自衛隊向けに3機製造されるRQ-4 Global Hawk Block 30iの1番機がカリフォルニア州Palmdaleで初飛行した。

1・6・8・6 将来技術の研究

 装備庁が16式機動戦闘車に搭載するデーゼルエンジンと電動モータのハイブリッドエンジン開発を三菱重工業に発注した。 計画は令和6~7年度に完了する。

 防衛省が令和3年度からF-XやTempestでの活用を狙ったDBFレーダの英国との共同開発を開始する。

 防衛省が人工衛星の電波を妨害する能力を備えるための研究に着手した。

 防衛省が超高速兵器への対抗手段としてUAVの活用を検討している。

1・6・8・7 防衛技術の育成

 防衛省が自衛隊と防衛産業の連携強化を進める方針で、こうした方針は2019年に策定された防衛計画大綱や中期防衛計画でも取り上げられている。
1・6・8・8 その他の装備行政

 三菱重工が三井造船の艦艇部門の買収に合意した。

 安全保障環境が厳しさを増すのに伴い国内防衛企業の発展が進められており、2021年の世界トップ100社にMHI(32位)、KHI(51位)、スバル(85位)の3社が名を連ねている。 特に前年には番外であったKHIが復帰している。
 MHIは42%も落ち込んだのに32位(前年は21位)を維持している。

 BAE Systems社が2021年末から2022年初めまでに日本に現地法人を設立することを発表した。

1・7 対地攻撃兵器

1・7・1 航空機

1・7・1・1 戦闘機等

第四世代戦闘機の再登板

 F-15Eを大規模改良したF-15EXが初配備され、当初144機の計画が現在では200機と装備数を増やす模様である。
 米空軍は既に生産を終了しているF-16の生産を再開した。 またF/A-18E/FもBlock Ⅲとして調達が再開される。

 英空軍がMeteor BVRAAMやBrimstone ASMの装備が可能なほか、MIDSやLink 16テータリンクも搭載されるEurofighter Typhoon改良パッケージP3Ecを装備する。

 J-10の国産エンジン搭載型J-10Cが報じられた。

第五世代戦闘機

 米国のF-35のBlock 4は開発が遅れ、Block 4で使用する計画のハードウェアはBlock 4の後半でしか使用できない。
 F-22の近代化は空対空能力の強化が行われたIncrement 1及び2に続き、空対地能力の強化が行われるIncrement 3に向かう。

 中国ではJ-20に複座型や国産エンジンを搭載したJ-20Aが装備化を開始した。
 J-31は艦載戦闘機として再出発するようでFC-31は国産エンジンを搭載してる模様である。

 ロシアのSu-57は僅かながら装備を開始した。

第六世代戦闘機

 米空軍のNGADは搭載される装備の開発完了がFY29となっていることから、F-22やF-35の開発時程からして既に実証機が飛行していても良いはずだが、何ら報道がない。

 Air Combat Cloudが特徴の英国主導のTempestはイタリア、スウェーデンも加わり順調に進んでいるが、海外では日本も開発チームに入っているとの報道がある。

 仏独が進めるFCAS/SCAF計画はスペインも加わり、漸くコンセプトの合意が得られた。

 ロシアからはMiG-31の改良型PAK DPが報じられ、一部ではこれをMiG-41と呼んでいる。

その他の戦闘機

 ロシアが単発の軽戦闘機Su-75 Checkmateを発表した。 初飛行は2023年に計画されており、2025~2026年に開発を完了して2026~2027年に納入を開始できるという。

 トルコが開発しているTF-Xは2023年にロールアウトが予定されている。

 イランのKowsar及びインドの次世代中型戦闘機AMCAの開発については報道がなかった。

1・7・1・2 爆撃機等

次世代爆撃機

 Northrop Grumman社の施設でB-21 Raiderの試作機5機が製造されている。 初飛行は2022年に予定されていて、空軍は2020年代中頃にB-21の配備を開始し、少なくとも100機を調達する計画である。

 米国戦略軍は今後10年以内に中国がH-20の開発を終えると見ている。

現有爆撃機

 米空軍で最初に退役するB-1B 17機の1番機がEllsworth AFBを離れた。

 ロシアUACがTu-95MSの改良を受注した。 Tu-95MSMは翼下に8発のKh-101/Kh-102 CMを搭載するなどミサイル搭載能力などが改良されTu-95MSMになる。

ガンシップ

 Lockheed Martin社がAC-130J Ghostriderガンシップに搭載するレーザ砲の社内試験を完了し空軍へ納入した。

アースネルプレーン

 米空軍研究所が輸送機からCMを投下して発射するRapid Dragonの最終試験を実施し、実際にCMを発射し目標に命中させた。

1・7・1・3 ヘリコプタ、VTOL機

 米陸軍で次期偵察攻撃ヘリFARAと次期長距離侵攻ヘリFLRAAの計画が進んでいる。
 FARAにはSikolsky社を参加に入れたLockheed Martin社が同軸反転ロータのRaider X、Bell社は360 Invictusで臨んでおり、競争fly-offは2022年11月に計画されている。
 2030年を目標に進めているFLRAAはBell社が提案するV-280チルトロータ機とSikorsky-BoeingチームのDefuant Xが競っている。

 中国ではUH-60 Black Hawkと良く似た外観のZ-20に海軍型やATGM搭載型などが報じられている。

1・7・1・4 その他の航空機

 米空軍で2022年の初飛行を目指したMC-130の水陸両用型の開発が進められている。
 また空軍はMach 5で飛翔する高速人員輸送機の研究も進めている。

 ロシアはサハリン州などでWIGを用いた海上高速交通網の構築を検討している。 一方米DARPAも洋上輸送を念頭にWIG効果を利用した超大型輸送機の検討を進めている。

1・7・2 ミサイル等

1・7・2・1 弾 道 弾

 米空軍でMunuteman ICBMの後継になるGBSDの開発は一連の最終設計審査段階に入った。 発射試験は2023年に開始される。
 米陸軍はINF禁止条約を脱退により射程を500+kmに伸ばすPrSMは能力向上型で射程1,000km以上を目指すと見られる。 地対艦型PrSMの開発は2023年装備化時点では間に合わず、後年度になるという。
 陸軍は射程が70kmであるGMLRSの長射程型であるER-GMLRSを開発しており、その最大射程を150kmとしている。

 中国では内モンゴル自治区なとでICBM発射施設の増強を行っており、はこれまで18~20基の発射施設を整備したと見られている。
 ASBMの配備も進められ航行中の船を標的にした発射試験も確認されている。 また日本やインドに向けたASBMの配備も進められている。
 中国陸軍ロケット部隊のミサイルが射程を延伸し精度も向上しており、300kmであったDF-11の射程は700km以上になり、600kmであったDF-15/16の射程は1,000kmになっている。

 韓国では米韓ミサイル指針を撤廃され、最大射程と弾道重量の制限がなくなった。
 射程500kmの玄武-2Bを元にしたSLBMの潜航潜水艦からの発射試験が行われた。 また射程120kmと見られるKTSSMの量産が開始された。

1・7・2・2 超高速飛翔体

 米国では陸海空軍及びDARPAがOpFires、HAWC、LRHW、CPS、AGM-183A ARRW、Mayhemなど各種超高速ミサイルの開発を進めている。
 このうちAGM-183A ARRWは2022年装備開始を目指しており、陸軍のLRHWは2023年に最初に装備する中隊がミサイル以外の装備を取得して既に発足している。
 陸軍のLRHWと同じミサイルを使用する海軍のCPSはFY25にZumwalt級駆逐艦、FY28にはVirginia級原潜に搭載する。

 中国は超高速兵器DF-17を既に相当数配備していることを明らかにした。 米インド太平洋軍は中国が2025年までに超高速ミサイルを200基程度配備するとしている。

1・7・2・3 巡航ミサイル

 米空軍がAGM-86B ALCM後継となるLRSOWの開発を発注した。 LRSOWはB-52やB-21に装備する射程が1,500哩を超える核弾頭のALCMで、2027年に本格量産が開始され1,000発以上が生産される。 米海軍も核弾頭の洋上発射型CM SLCM-Nの開発開始を要求している。
 米空軍のAGM-158B-2とは、従来JASSM-XR或いはAGM-158Dと呼ばれていたもので、Lockheed Martin社が2018年に開発を受注していた。 500nmの射程を1,000nmまで伸ばす。
 Lockheed Martin社とThales豪社がAGM-158C LRASMの陸上発射型を共同開発することで合意した。 陸上発射型LRASMはLRASM-SLと呼ばれることになる。

 欧州からはASN4G、FC/ASW、Spear 2、CW-ITPなど各種サイズのCMが報告されている。

 ロシアではBurevestnik原子力推進式CMが報じられた。 プーチン大統領はかつて、このミサイルは無限の射程を持つと述べている。 また射程285kmのKh-59MKMkについても報じられた。

 イスラエルが、300kmの射程を有する第5世代長距離精密誘導ミサイルSea Breakerを公表した。 Sea Breakerは対地対艦CMで自動目標捕捉/目標認識能力を持ち、陸上発射では6発搭載の車載発射機を使用する。

1・7・2・4 S S M

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・2・5 A S M

 フランスの将来戦術ASM MAST-FやイスラエルのSPICE 250 ERなどが報じられた。
1・7・2・6 A R M

 米海軍がAGM-88G AARGM-ERのF/A-18E/Fからの投下試験を初めて実施した。
1・7・2・7 遊弋索敵弾

 小型のSwitchblade 300を装備している米特殊作戦軍がSwitchblade 600遊弋索敵ミサイルを発注した。 Switchblade 600は80km以内を最高速力115mphで40分以上遊弋できる。
 Switchblade 600はまた米UUSSOCOMが海軍特殊部隊舟艇への搭載用に発注した。 Switchblade 600を装備するのは中型艇CCMと24.3mの大型艇CCHで、陸上及び海上の非対称脅威対処用になる。
 米海兵隊がHero-120遊弋索敵兵器を発注した。 Hero-120は100kmの射程を有する。  Hero-120は100ktで60分間、通視距離40kmを飛行し、GPS/INS誘導とEO/IRでCEP<1mの精度で攻撃できる。
1・7・2・8 誘導装置付きロケット弾

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・3 U A V

1・7・3・1 HAPS UAV

 米海軍と中央軍が、成層圏を遊弋するC4ISRシステムSCOSの検討を進めていて、提案要求によると成層圏気球か太陽電池で飛行するUAVが考えられている。
1・7・3・2 HALE/MALE/TUAV

 米空軍が2026~2027年に装備化し2030年には将来多用途UAVのRfIを発簡した。 また陸軍はRQ-7B Shadowの後継となるFTUASの選定を行っている。

 中国はWJ-700 HALE/MALE 武装偵察UAVが公開された一方でCH-5、CH-6 MALE UAV及びCH-7、WZ-7などのHALE UAVなどについても報じられている。

 ロシアが武装仕様のOrion-E MALE UAVを公表した。 Orion-Eはロシア初の本格的武装UAVである。

1・7・3・3 UCAV

 米DARPAがAAMを装備する空中発射UAVであるLongShot計画を開始した。 初飛行はFY24以降になる模様である。

 中国のGJ-11 UCAVは機内弾庫2ヶ所を持ち、それぞれに4発ずつのPGMを搭載できる。

 ロシアが2024年配備を目指した改良型S-70 Okhotnik重UCAVの初飛行に向け準備を進めている。 S-70 Okhotnikは20tで、速力1,000km/h、航続距離6,000kmの性能を持つ。

 トルコが搭載能力1.5tのMIUS UCAVを公表した。 2023年の初飛行が計画されている。  MIUSはAAM、ASM、CMを搭載でき、武器は機内弾庫に搭載する。

1・7・3・4 mini/micro/nano UAV

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・3・5 特殊用途 UAV

 空中給油UAV MQ-25AがF/A-18E/FやE-2Dに初めて空中給油する試験に成功した。

 Aevum社がSLV打ち上げを目的とした全自動UAVであるRavn Xを開発した。 Ravn Xが打ち上げるロケットは低高度軌道 (LEO) であれば500kg、太陽同期軌道であれば100kgの打ち上げが可能である。

 ノースカロライナ州のBlue Force社が2年間にわたりREDMidium UASの開発を行っている。  米空軍が行う訓練で対抗部隊として60%の能力を発揮できるREDMidiumという仮想敵UAVの試験が行われている。

1・7・3・6 有人機随行 (Loyal Wingman)

 Boeing社がAirpower Teaming Systemと呼んでいるLoyal Wingmanが豪南部のWoomera試験場で初飛行した。

 米空軍研究所がXQ-58A Valkyrie UAVの試験を実施した。 XQ-58Aが初めて機内弾庫から小型UAVを発進させる試験に成功した。
 米空軍研究所が開発を進めているSkyborgは、既存のUAVにも搭載できるソフトウェアを軸にしたシステムで、米空軍で優先課題とされてい。 2023年IOCを見込んでいる。
 SkyborgをKratos社製UTAP-22 Meko UAVやMQ-20 Avenger-ERに搭載した試験が行われた。

 英国が2030年代に戦列化するMosquitoはミサイル、監視センサ、電子戦装置などを搭載して、単独またはLoyal Wingmanとして運用される。

 独仏西3ヶ国がFCAS/SCAF計画の構成要素であるNGWSの共同開発に合意した。 この合意では次世代戦闘機 (NGF)、RC Loyal Wingman、AACネットワークシステムを2021年から2027年の間に開発する。

 インドが欧米で開発が進められているLoyal Wingmanと似た構想のCATSを公開した。 CATSで中心となるのは大型ステルスUAVのCATS Warriorで、複数のCATS Warriorが有人戦闘機と連携飛行する

1・7・3・7 UAV 活用技術

UAV 群制御

 中国共産党創立100年記念日に深圳市で開かれたショーでは、UAVの編隊飛行によって空に鳥や中国共産党の党旗などが描かれた。

空中発進、空中回収

 米DARPAがX-61 GremlinのC-130による空中回収試験に成功した。

 ロシアが群飛行用のUAVとしてMolniyaを開発しており、輸送機から発進して群集団を構成し、Gremlinと似た方式で回収されると見られる。

1・7・4 D E W

1・7・4・1 殺傷型 DEW

 AC-130Jガンシップに搭載するレーザ砲が米空軍へ納入された。 AC-130Jに搭載しての飛行試験はFY23になる。

 米海軍がLAWSを用いた水上目標の破壊に成功した。

1・7・4・2 非殺傷型 DEW

 米外交官等を狙った非殺傷型DEW攻撃と考えられているハバナ症候群がアジアや欧州でも発生している。
1・7・4・3 DEW 支援システム

 米海軍がAIを活用してHEL兵器使用の意思決定と操作の補助を行うHEL FCDAを開発した。
1・7・5 爆弾,弾頭

1・7・5・1 在来型爆弾

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・5・2 弾 頭

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・5・3 誘導爆弾

 米空軍がGolden Hordeの試験で6発が複数標的に向けて投下され標的に命中して成功した。
1・7・5・4 巨大爆弾

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・5・5 侵徹爆弾

 米空軍がF-15EからのBoeing社製の新型5,000-lb侵徹爆弾GBU-72初の投下試験を実施した。

 イスラエルはハマスがガザに構築したMetro Cityを攻撃するイスラエルが多用しているGBU-28 5,000-lb bunker busterに換え、米空軍にGBU-72の売却を要求する。

1・7・5・6 核爆弾/弾頭

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・6 電子戦

1・7・6・1 電子戦全般

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・6・2 電子戦装備

航空機搭載電子戦装備

 米海軍がALQ-99に代わり装備するNGJは高帯域 (HB) 型、中帯域 (MB) 型、低帯域 (LB) 型の3種類のポッドからなるが、このうちの中帯域型NGJ-MBの量産が開始された。

 F-16V Block 70/72に搭載するViper Shield EW装置は機内搭載方式のためハードポイントを占有せず、RWRは搭載されるAESAレーダに組み込まれるという。

 UAV自衛用ポッドSPPをMQ-9に搭載した飛行試験が行われた。 SPPはRWR、DAIRCM、ディスペンサ、アクティブデコイなどを装備している。

艦載電子戦装備

 Arleigh Burk級駆逐艦に後付け搭載するため開発している艦載電子戦装置SEWIP Block 3の1号機が納入された。

1・7・6・3 GPS 電子戦

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・6・4 ステルス

 中国J-20のステルス性能がF-35より若干劣ったとしても第四世代戦闘機を先に発見し攻撃できることは明らかである。
1・7・6・5 EMP / HPM

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・7・7 情報取得,偵察等

1・7・7・1 偵察衛星

 中国が遥感-31観測衛星3基を打ち上げた。 遥感-31は3基の衛星からなる衛星群で構成されており、今回打ち上げられた3基は4番目の衛星群になると見られる。
1・7・7・2 偵察機,哨戒機

 英空軍のSentinel R1 ASTORが退役し、その役割はProtector UAVに引き継がれる。

 NATOがRQ-4D 5機からなるAGSがIOCになったと発表した。

1・7・7・3 その他の情報取得システム

 米空軍が計画しているABMSは、全ての航空機、センサ、その他武器システムを連接するシステムで、最初に装備する機種はF-15EXとKC-46Aになる。

 米陸軍が観目線外 (NLOS) 目標を画像化するTactical Space Layerの実験、開発試作を承認した。
 米DARPAがBlackjack計画のPhase 2を発注した。 Blackjack計画は低高度軌道を回る小型衛星網を構築し、そのデータを地上の戦闘部隊に伝送するシステムである。

1・8 防空システム

1・8・1 宇宙防衛/戦略 BMD

1・8・1・1 地球-月間空間の軍事利用

Cislunar の軍事利用

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。

DRACO宇宙船計画

 米DARPAがDRACO宇宙船計画を開始した。 DRACO計画は高い推力重量比が特長の熱核推進装置を用いて低高度軌道より上を飛行する計画で、2025年の初打ち上げを目指している。
 原子力推進ロケットには原子炉の熱で水素ガスなどを加熱して噴射推進する核熱推進方式 (NTP) と、原子炉で発電してガスをイオン化させて噴出させる核電子推進方式 (NEP) があるが、当面実現が可能なNTPの開発を行う。

1・8・1・2 宇宙配備 BMD システム

早期警戒衛星

 米宇宙軍が静止軌道SBIRSの5号機で最後から2番目となるGEO-5を打ち上げた。 最終機となるGEO-6は2022年に打ち上げられる。
 SBIRSの後継となる次世代のNext-Gen OPIRはBlock 0で5基が打ち上げられる。 OPIR GEOの打ち上げは2025年、2027年、2028年に、HEO衛星は2028年と2030年に打ち上げられる。

探知追随衛星

 米SDAの衛星群20,000哩以上の高高度軌道に少数の衛星を打ち上げるもので、最初の二層Tracking LayerとTransport Layerをそれぞれ発注した。
 また宇宙軍は各種の衛星に搭載できるセンサの開発をすすめており、宇宙軍が保有する衛星のほか世界中の各種衛星にこのセンサを搭載する計画で、日本の準天頂衛星にこのセンサを搭載する協定も結んでいる。

 米MDAがHBTSSの最終設計審査 (CDR) を完了した。 HBTSSは現有の早期警戒衛星より低い高度100km~2,000kmの低軌道に数百基が打ち上げられる衛星群で、BMや超高速ミサイルのキューイングを受けて追随し、その諸元を地上のBMDSに送る。

宇宙配備レーザ兵器

 米MDAがBMや超高速CMを飛行段階の全てで破壊する地上、海上、空中、宇宙に設置する新型レーザ兵器の検討を行っている。

その他の計画

 米空軍と宇宙軍が進めているSpace Prime計画は宇宙空間で活動し衛星の支援やデブリの回収などで使える技術を追求する計画である。

 米DARPAが低高度軌道を周回する相関性のない各種衛星を結ぶ、低価格で高速通信が可能で構成の変更が可能な光学通信システムの開発を進めている。

1・8・1・3 早期警戒レーダ

深宇宙レーダ (DARC)

 DARC構想は将来脅威に対抗するため静止衛星軌道以内の深宇宙を監視するレーダで、米SDAが開発を開始しようとしている。

North Warning System (NWS)

 NWSで任務に就いている北米防空組織NORADは、システムの設計寿命20年は2025年に切れてしまうが、NESを2035年まで使用すると言う。

Long Range Discriminating Radar (LRDR)

 米MDAがアラスカに設置していたLRDRの設置が完了した。 LRDRは小型目標を極めて長距離で捕捉と追随を同時に行い、飛来する弾頭をデコイなどから分別することができる。

Homeland Defense Radar (HDR)

 米MDAが検討してきたハワイ州へのBMDレーダHDR-H設置は、当初オアフ島の3箇所の候補地が候補から外れ、次に候補地となったオアフ島のKahku陸軍演習場とカウアイ島の海軍PMRFも反対運動で外れた。
 これに対し米議会がFY22 NDAAでHDR-H)を2028年末までに設置し、遅くとも2028年中にoperationalとするよう求めている。

1・8・1・4 地上配備 BMDS

米 BMDS の欧州配備

 米国防総省が議会に対し、元々研究開発用として調達したSM-3 Block ⅡA最初の11発を、EPAA Phase 3の更なる遅れを防止するため実配備することに用途変更したと通告した。
 米国がEPAAとしてポーランドに建設中のAegis Ashoreでシステムの取り付けが開始され、SPY-1D(V) 4面とFCSイルミネータ1基がDeckhouseに取り付けられた。

米 GMD

 米MDAが次世代迎撃システムNGIの開発を発注した。 MDAは2030年まででのoperationalを計画しており、発射試験は2020年代中頃に実施する。
 米MDAが模擬EKVを搭載したGBIの発射試験に成功した。 この試験で使用されたのは、三段推進のブースタを二段目だけ点火して早期にEKVを放出する二/三段選択GBIで、迎撃における柔軟性の向上が狙われている。

米 多層防衛構想

 MDAはGMDの下層を護るシステムの検討をしており、SM-3 Block ⅡAとTHAADの使用を考えている。 米議会下院はFY22予算審議で米本土BMDについて、SM-3 Block ⅡAのへの活用を検討するよう要求した。

米 Home Land BMD

 米国防総省がグアムに対する中国からの脅威に対抗するため、海軍のAWS、陸軍のIAMDをMDAのC2BMCに連接する検討を行っている。 国防総省は、グアムで陸軍のIAMDにAegis Ashoreを組み入れることを可能とした最新のグアム防衛構想を呈示した。

1・8・1・5 空中発射 BMDS

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・8・1・6 DEW による BMD

 米MDAがレーザ迎撃システム研究開発の再開する。 米議会はFY22 NDAAでBM及び超高速ミサイル防衛でレーザを用いる研究開発を認めると共に、合わせて研究開発に$100Mを配当した。
1・8・1・7 ASAT システム

中 国

 中国はTJSWシリーズのキラー衛星の開発を行っており、2月にはTJSW-6衛星を打ち上げている。

ロシア

 ロシアが11月にASATの試験を行った。 この結果追跡可能なデブリだけで1,500個以上できた。
 ロシアは2020年に3回のASAT試験を行っており、そのうちの2回は直撃式のASATミサイル (DA-ASAT) 、1回はキラー衛星によるものだった。

1・8・1・8 軍用宇宙船

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・8・2 戦域防空/TBMD

1・8・2・1 超高速ミサイル防衛

 米MDAは、MDAは対超高速ミサイルの多層防衛として2段階のアプローチを進めていた。 最初は滑空段階を既存のブースタとKVで迎撃し、その後大気圏内で迎撃するものであった。

 その後MDA要域防護GPI (Glide Phase Interceptor) に重点を置いた。 GPIはかつてRGPWSと呼ばれており、更に以前にはHDWSと呼ばれていた。
 GPIはSM-3が護るBMの中期弾道とSM-6が担当する終末弾道の中間となる高度70km付近で迎撃し、誘導は主としてHTBSS衛星群が担当する。

1・8・2・2 陸上配備戦域 BMDS

Aegis Ashore(米 国)

 米海軍水上戦部長が、海軍の立場からするとAegis Ashoreは海軍の任務に馴染まないと述べた。 ただしAegis Ashoreを他軍種に引き継ぐ交渉は当面延期するとも述べた。

米 THAAD(米 国)

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。

Arrow(イスラエル)

 イスラエルIMDOと米MDAが、Arrow 2の後継となるArrow 4の共同開発を開始した。
 Arrow 2とArrow 4の迎撃高度はPAC-3よりも高くTHAADよりはやや低い、大気と宇宙の狭間および大気圏内である。

Dong Neng-3 (DN-3) IRBM 迎撃システム(中 国)

 中国はIRBM級に対抗するシステムを開発中という。 米政府はこれをDong Neng-3 (DN-3) と呼んでいる。

HQ-19(中 国)

 中国が地上発射型中間軌道迎撃弾のHQ-19試験を実施した。 HQ-19は射程が3,000km級のBMに対抗するシステムである。

 米国防総省の報告書によると、HQ-19 (CH-AB-X-02) はS-300の中国型であるHQ-9を元にしており、既に中国西部に配備している。

S-500(ロシア)

 ロシアがS-500の発射試験を行い高速BM標的の撃墜に成功した。 射程600kmのS-500は、射程と速度にかかわらず既存のいかなるBMの撃破も可能という

1・8・2・3 TBMD /中長距離 SAM

 欧州ではAMRAAM-ERを用いたNASAMS、Aster 30 B1 NTを用いたSAMP/T NG、Land Ceptor/Sea Viper/CAMM-ERなどのCAMMファミリーなどが報じられ、イスラエルからはI-Derby ER AAMの陸上発射型、BARAK-ERなどが報じられた。

 注目されるのは米海軍がアデン湾で拿捕したイラン製武器の密輸船に積載されたガスタービンエンジン推進遊弋型SAMで、このSAMは低速で敵機を発見するまで遊弋する。

1・8・2・4 艦載 BMDS

 米MDAがSM-3 Block ⅡAによるICBMを模した標的の迎撃に成功した。
 米MDAはまた、Sea-Based Terminal防衛としてSRBM/MRBMを大気圏内で撃墜するようにSM-6 Block ⅠA弾のソフトを遠距離用に変えたSM-6 Dual ⅡによるSRBM撃墜に成功した。
1・8・3 短距離 BMD / C-RAM

1・8・3・1 SRBMD

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・8・3・2 USRBMD / C-RAM

 米陸軍でCMやUAVに対抗するIFPC 2は、AIM-9X SidewinderをMML発射機から発射するDynetic社提案のEnduring Shieldに決まった。 初期分として発射機16基とミサイル60発が2024年3月末までに納入されるが、最終な受注数は発射機400基にのぼると見られる。
1・8・3・3 DEW SRBMD

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・8・4 巡航ミサイル防空

1・8・4・1 米国の CMD

 米陸軍がイスラエルから購入したIron Dome 2個中隊のうちの1個中隊を、CMDとしてグアムのAndersen AFBに展開した。
1・8・4・2 その他諸国の CMD

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・8・5 近距離防空

1・8・5・1 近距離 SAM

 ドイツ駐留米陸軍第4防空砲兵連隊第5大隊 (5-4 ADAR) が最初のIM-SHORAD装備部隊となり試作品32両を受領する。 米陸軍は2021年から合わせて144両のIM-SHORADを4個大隊に装備する。
 米海兵隊がJLTV車を元にした新防空システムMADIS Inc 1の開発をEMD段階に移行させた。 MADIS Inc 1にはStingerと直射火器を搭載したMk 1と、レーダと直射火器を装備しC3能力を持つC-UAS用のMk 2がある。

 Almaz-Antey社がTor-M2 SHORADの能力向上が進めている。

 Diehl社がIRIS-T-SLS MkⅢを開発した。 IRIS-T-SLS MkⅢはIRIS-T IR誘導SAM 4発をレーダやC2と共に6×6装輪装甲車に搭載し機動性を高めたシステムである。

 Sky Sabre防空システムがRapierと換装するため初めて英陸軍砲兵部隊に装備された。

1・8・5・2 MANPAD

 米陸軍がFIM-92 Stingerの後継となるMANPADSのRfIを発簡した。 陸軍は8,000発を発注する計画である。
1・8・5・3 対 空 砲

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・8・5・4 対空レーザ兵器

 米陸軍が50kWレーザをStrykerに搭載したDEM-SHORADの開発を進めている。 陸軍は2021年中に検証した後、2022年に試作した4両で小隊を編成する。
 米陸軍から300kW固体レーザを用いた対飛翔体用のDistributed Gain HELシステムの開発を発注した。 システムはSHORAD用として使用できるという。
 米海軍が2021年内にレーザ兵器HELIOSをFlight ⅡA駆逐艦1隻に搭載し、Aegisシステムに組み込む。

 Rheinmetall社とドイツMBDA社の共同事業体ARGEが、2021年にかけて艦載レーザ兵器の開発を行い、2022年に独海軍フリゲート艦で艦載試験を行う。

 英国防省がType 23フリゲート艦、トラック、装甲車などに装備するDEWの開発3件を発注したと発表した。 開発は2023年に開始し2025年に完成する計画である。

1・8・6 対 UAV システム

1・8・6・1 対 UAV 戦

 米軍の宇宙防衛及びAMDシンポジウムでは、ナゴルノカラバフでの戦いでの武装UAVの威力などが議論された。
1・8・6・2 C-sUAV 体系

 米陸軍が3軍のC-sUASを主導しており、30mm近接信管弾、5.56mm/7.62mm弾、EWシステムなどを体系づけようとしている。
1・8・6・3 UAV 捕捉システム

 オーストラリアのDroneShield社が各種 UAV 捕捉システム、方探装置及びC2システムを提案している。
1・8・6・4 ハードキルシステム

 米空軍がバギー車搭載レーザ兵器HELWSのC-UAVシステムの改良を行っている。
 米海兵隊はJLTV車に30mm砲を主に25.7mm機銃を同軸に配置しStinger発射機も搭載するMADIS C-UAVシステムを発注した。 今後発注数は200両になると見られるという。

 Rheinmetall社がRevolver Gun Mk 3 30mm砲によるUAV群に対する射撃試験を実施した。

 イスラエルの軍事企業が世界で初めて、航空機に搭載した100kWのソリッドステートレーザよるUAV撃墜に成功した。

1・8・6・5 UAV キラー UAV

 錯綜した都市環境で爆薬を搭載している恐れのある小型UAVを探知、識別、追随して防護するUAVを用いたシステムAerial Dragnetが米企業から提案された。
 小型UAV群を爆発や射撃などによらずにC-UAV用のHPM装置を搭載して無力化するCoyote Block 3NKの試験が行われた、UAV 10機を無力化することに成功した。
1・8・6・6 ソフトキルシステム

 米陸軍が、空軍研究所で開発中のTHORをIFPC-HPMとして装備する。
 GDLS社がStrykerにC-UAV用としてHPM DEWを搭載する提案を行っている。
 米陸軍が、HPMに固定基地に飛来する小型UAVを撃退する能力の評価を行っている。
1・8・6・7 鹵獲システム

 米陸軍が捕獲網でUAV鹵獲するシステムDroneHunter C-UAV 6ロータUAVを採用した。
1・8・7 防空 C3I

1・8・7・1 対空レーダ

地対空レーダ

 Lockheed Martin社が陸軍のIFPCに組み込むSentinel A4レーダを公表した。 Santinel A4はRAM、CM、UAVなどの各種目標を、モード切替をすることなく捕捉できる。
 コロラド州のNumerica社が、C-UAVやSHORAD用の3DレーダSpyglassを発表した。 Spyglassは至近距離でUAVなどを捕捉するため、従来のレーダの持つ近距離死界を生じない。

 Hensoldt UK社がる陸上型中距離X-band AESAレーダSpexer 600を公表した。 捕捉するのは小型/マイクロUAV、車両等の地上目標、大型UAVなどである。

艦対空レーダ

 Arleigh Burke級Flight Ⅲ駆逐艦で乗員への訓練が開始されているAN/SPY-6は、AN/SPY-6(V)1~(V)4の4バーションを7種類の戦闘艦に今後5年間に59基搭載する。

 ドイツがSachsen級フリゲート艦3隻のレーダを2024~2028年にBMD能力のあるレーダに換装する。

1・8・7・2 空中センサ

 米空軍が老朽化したE-3 Sentry AWACSの後継機を計画していてE-7A Wedgetailを検討している。

 中国がKJ-600艦載AEW&Cの試験飛行に成功した。 KJ-600は機械走査と電子走査を組み合わせたレーダを搭載している。
 一方で中国はより小型及びより大型のAEW&C機が必要であると報じたことから、Y-20のAEW&C型が一段と現実味を帯びてきている。

 米空軍が、低空侵入するミサイルや航行機を捕捉するレーダを係留気球に搭載したシステムをサウジアラビア13箇所に配備する計画である。

 イスラエルが係留気球HAASの同国北部に配備する。 最終的にHAASを全国に展開させる計画である。

1・8・7・3 情報処理、指揮統制

 米国防総省がNorthrop Grumman社にIBCS 454基を発注した。 納入には10年かかる。 またIBCSのIOT&Eが開始された。
1・9 関連軍事技術

1・9・1 陸戦兵器

1・9・1・1 ロボット、UGV

 米陸軍がロボット戦闘車 (RCV) の軽量型RCV-Light (RCV-L) の納入を受け、2022年に中隊規模の試験を計画している。
 米陸軍が無人発射機AMLによる射撃のCG映像を公表した。 AMLはHIMARSと有無人チームを構成してPrSMの射撃を行った。

 オーストラリアのCyborg Dynamics社がSpike ATGMを装備したWarfighter UGVであるWarfighter Spike UGVを発表した。

 ロシア国防省が初めてT-72 MBTを元にしたUran-9 UGVを発注した。 UGVは5両でチームを組み、4両は125mm滑腔砲、サーモバリックロケット発射機、30mm砲2門、TOS-1AサーモバリックMRLを搭載し、5両目に乗車した8名からなるチームがこれらを操作する。

1・9・1・2 A P S

 ドイツとイスラエルがTrophy APSをドイツ軍のLeopard 2 MBTに搭載することで合意した。 Trophy APSはLeopard 2A6MA3に取り付けられ名称がLeopard 2A7MA1になる。

 英国防省がChallenger 3 MBTに装備するAPSをに決めた。

1・9・1・3 戦闘車両

 米陸軍が計画が遅れている新型軽戦車の機種決定を2022年の4~6月に行う。

 国防省は6月28日にChallenger 2 148両をRheinmetall社製L55A1 120mm滑腔砲に換装したChallenger 3に改良する。

1・9・1・4 システム装具

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・1・5 対地雷、対 IED

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・2 海戦兵器

1・9・2・1 航空母艦

 中国の対艦兵器の能力向上から、米海軍では現在の空母より小型で搭載機数が1/2~2/3の中型空母の検討を進めている。
 英国で2019年12月に就役したPrince of Walesが乗組員が乗艦し運用試験を行っている。
 フランスが次世代空母PA-Ngの2年間に及ぶ事前設計を発注した。

 中国が建造中の国産2隻目の空母Type 003が早ければ2022年2月にも進水する。
 中国初の原子力空母となると見られる4隻目の空母は、2021年初めにも建造を開始すると報じられた。

 韓国DSME社とHHIC社が、韓国海軍が計画している軽空母CVXの設計、開発、建造を共同で行うと発表した。
 ただ韓国軍の大型装備予算が国会で大幅に削減され、実効性への疑問が指摘されてきた軽空母関連も90%以上が削減された。

1・9・2・2 潜 水 艦

 米海軍が発注していたVirginia級Block Ⅴ攻撃型原潜9隻の契約に10番艦を追加した。 Block Ⅴ Virginia級は艦首のVLSにTomahawk 12発、胴体中部にCM 40発を搭載する。 更に将来は超高速ミサイルの搭載も計画されている。
1・9・2・3 水 上 艦

 米海軍Arleigh Burke級Flight Ⅲ駆逐艦の一番艦が進水し2023年に就役する。
 米海軍が次期駆逐艦DDG(X)の開発を立ち上げた。 DDG(X)一番艦の調達はFY28になる。 DDG(X)はAN/SPY-6 AMDRを装備するが、超高速ミサイルまたは長距離ミサイルを搭載することになるためVLSはMk 41では小さすぎる。
 米海軍のConstellation級次期フリゲート艦はリスク低減のため既存技術を活用する。 このためレーダにはAN/SPY-6(V)3が装備される。
 米海軍の軽揚陸艦 (LAW) はFY22要求の建艦計画に載せられなかったが計画は続行している。
1・9・2・4 遠征海上基地

 米海軍が遠征海上基地ESBを就役させた。 100名の海軍乗組員のほか、航行支援を行う40名の民間技術者らが乗り組み、人道支援や災害派遣のほか、同盟国との合同演習、軍事作戦拠点としての活用される。
1・9・2・5 USV / UUV

 米海軍第5艦隊の演習New Horizonをバーレーン海軍、沿岸監視隊、米沿岸監視隊と実施した。 この演習ではこの海域で初めてUSVが使われた。 FLIRを装備するMANTAS USVは多数隻をネットワーク化してスワームとして運用できることからホルムズ海峡に於けるイランの監視に役立つと見られている。
 米海軍が特大型UUV (XLUUV) を潜水艦隊に配備する。 これはインド太平洋軍からの強い要望によるもので、XLUUVは特殊任務に当たるという。
 米DARPAがManta Ray全自動UUVの開発を進めている。 Manta Rayは外洋での長距離、長期間にわたり搭載物を載せて潜航するUUVで、Phase 2では実大試作を行い試験を実施する。
 GDMS社がKnifefish対水雷UUVの1号機を米海軍に納入した。 FY22には30隻の受注が見込まれている。 Knifefish UUVはLCSが搭載する対水雷戦バッケージの構成品て、6ktで16時間航行できる。
 米海軍が大型USV (LUSV) 開発の資を得るため建造したGhost Fleet Overlord USVが、4,700nmに及ぶ全自動航海に続いて揚陸演習に参加した。
 米海軍と国防総省戦略能力室がUSVからSM-6を発射し標的を撃墜することに成功した。

 トルコがULAQ武装USVを進水させた。 ULAQ USVは初めて70mm誘導ロケット弾の実射試験を行った。 ULAQ USVにはISR/EW ULAQ、ASW-LT ULAQ、ASW-HT ULAQ、ASuW ULAQの大小4種類がある。

 NATOが融解の進む北極圏のデータを収集するため自動UUVであるAUVを活用しようとしている。

1・9・2・6 艦載装備

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・3 空戦兵器

1・9・3・1 機上 FCS 装置

 イタリアLeonardo社がEurofighter Typhoonに装備するAESAレーダのRadar 2を英国と開発している。
1・9・3・2 A A M

 ロシアVympel社が10年前に開発を中止していた短距離AAM K-30の開発を再開する。
1・9・3・3 戦闘機自衛装置

 米空軍研究所がFY24での試験開始を目標に進めている航空機搭載自衛用レーザ装置SHiELDは、3個サブシステムのうちの1個サブシステムは2月、残りの2個サブシステムは7月に納入される。
1・9・3・4 その他の機上搭載装備

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・4 サイバ戦

1・9・4・1 サイバ戦の様相

 中国が台湾を標的とするサイバ攻撃のほかロシアから軍事技術をハッキングしたりMicrosoft社Mailerへのサイバ攻撃を行ったりとサイバ戦を活発化させていることから、米国はインド太平洋地域において日米豪印4ヵ国 (Quad) による枠組み創設を行い、ソフトウエアの改善や重要インフラの防護などの対策で連携を進める考えである。
 米軍司令官が2020年11月の米大統領選への外国の干渉に対抗するため、二十数件のサイバ作戦を実施したと証言した。 サイバ軍から同盟国など9ヵ国に要員を派遣し、作戦を行ったという。
 バイデン米大統領が、米国に対する大規模サイバ攻撃が本物の武力戦争の引き金となる可能性があると述べした。

 複数の米政府機関が標的となった大規模なサイバ攻撃について米関係機関は、ロシア発とみられると結論付けた見解を明らかにした。
 米最大級とされる石油製品パイプラインの操業がサイバ攻撃を受けて停止したが、FBIはDarkSideと呼ばれるロシアのハッカ集団が犯行に関与していると断定した。
 このほかにもロシア情報当局に近いハッカー集団は、米露首脳会談前に米機関を攻撃したり、共和党にサイバー攻撃を仕掛けたほか、ドイツの政治家へのサイバ攻撃を繰り返していると報じられた。

 北朝鮮は韓国の原子力研究機関をハッキングしたり大宇造船の原子力潜水艦資料ハッキングしたりして情報を略取したほか、ランサムウェアによるサイバ攻撃で資金の略取も頻繁に行い、制裁下での外貨獲得策を確立しようとしている。

1・9・4・2 サイバ戦技術

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・4・3 サイバ戦体勢

 米政府がランサムウエアを使ったサイバー犯罪への対策強化に向け、日本を含む30ヵ国以上が参加するオンライン会合を開いた。
 アジア、欧州、中東、アフリカなどの各国とEUが参加したこの会合は、犯罪者は国境を越えたネットワークによって攻撃を仕掛けてくるため一国だけでは解決できないと強調した。
1・9・4・4 サイバ戦装備

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・5 砲熕兵器

1・9・5・1 従来型火砲

超長射程砲

 陸軍が開発中の長距離砲ERCAが70kmの試射に成功したのを受け、2023年の配備を目指して開発を続けている。 米陸軍は次の段階で23発の自動装填機を採用する。
 米陸軍がラムジェットで噴進し射距離を100km以上とするXM1115 ERAMS砲弾の開発を近く発注する。
 ノルウェーのNammo社が米陸軍の155mm砲用に射程150km~200kmを目指して開発している固体燃料ラムジェット噴進弾155mm ramjet弾の実射試験が2022年5月に行われる。
 更に米陸軍は射程1,000nmの戦略長距離砲の開発を検討している。

戦 車 砲

 独仏が共同開発中のMGCS MBT搭載砲は130mm砲と140mm砲とで競っている。

1・9・5・2 電 磁 砲

 米海軍は電磁砲をZumwalt級駆逐艦に装備すべく開発を進めてきたが、国防総省の関心が超高速ミサイルに移ったため、海軍の要求は削減されている。
1・9・5・3 誘導砲弾

 フランスNexter Munitions社がCAESAR 155mm砲を用いた砲を用いた誘導砲弾KATANAの発射試験を行い成功した。
 KATANAは単なる弾道ではなく射程延伸に適した飛弾経路を飛翔した。
1・9・5・4 砲熕発射ミサイル

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・6 共通技術

1・9・6・1 測位、タイミング (PNT)

 米国防総省が対妨害性に優れるM-Codeを利用するGPSモジュールMGUEを発注した。

 Arianespace社がGalileo測位システムを構成する測位衛星2基を打ち上げた。 今回新たに2基が打ち上げでGalileoは28基体制となった。

 米空軍研究所が新たなPNTシステムの開発に重点を置いている。 ただ米空軍研究所が進めているVanguard計画で第1優先に挙げられているGPSに替わるPNTであるNTS-3は、当初2020年に計画されていた打ち上げが2030年に延期された。

1・9・6・2 通信,C4I

 米統合参謀本部が、JADC2開発完了の文書が近くオースチン国防長官に提出されるとの見通しを示した。
 国防次官と統参議長の審査は完了しており、米国防総省がJADC2の活用を開始した模様である。

 NATOが有事に際して24時間以内に戦域に展開できることが要求されている初の戦域クラウドシステム (defense cloud solution) の開発にThales社を選定した。

1・9・6・3 見方識別

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・7 関連基礎技術

1・9・7・1 航空機関連技術

 米国防総省が低コストのラムジェット/スクラムジェットエンジンを目指したMetacomet計画を進めている。
1・9・7・2 ミサイル関連技術

 米空軍がMSCC計画で試作した大型スクラムジェットエンジンが、推力5,897kgを達成した。
 Kratos社がUAVや低価格CMに使用する低価格ターボジェットエンジンを公表した。
 ノルウェーNAMMO社が長距離高速ミサイルに使用する固体燃料ラムジェットの発射試験が2022年初期にノルウェーで行われる。
 仏英が機械可動部品を必要としないTVC装置Coanda TVCを開発している。
1・9・7・3 UAV 関連技術

 米国とスペインの企業であるSkydweller Aero社がSolar Impulse 2有人ソーラー機の技術を元にしたソーラーUAVの組み立てを開始する。
1・9・7・4 高出力 Laser 技術

 2021年には特に挙げるべき報道はなかった。
1・9・7・5 その他の関連技術

小型可搬原子炉

 米国防総省が進めている小型可搬原子炉開発計画Project PeleでSCOは、この原子炉の出力は1~5MWで3年間は連続使用できるとしており、その用途を極地などの遠隔地、戦略支援地域及びHADRの三つとしている。
 アラスカ内陸のEielson AFBにマイクロ原子炉が初めて配備された。

AI 技術

 米空軍がAIをU-2Sの副操縦手として活用した。 これはAIの新たな活躍の場として注目されている。

量子技術

 米DARPAが量子技術によるRF検出計画を進めている。 RF探知に量子技術を使うことで感度などの向上が期待できるが、計画ではアンテナ装置に量子技術を用いて画期的に感度、帯域幅、ダイナミックレンジが向上した人力可搬システムを開発することを目指している。

衛星間光通信

 米DARPAが、官民で多用が拡大される低軌道小型衛星群での光を用いた新たな衛星間通信Space-BACN構想を進めている。



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