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2. 係争地域の情勢

2・1 イラン

2・1・1 米国との緊張

2・1・1・1 米国の対イラン強硬姿勢

ハメネイ師財団を制裁対象に指定

 米政府が11月18日、イランに対する新たな制裁措置を発動し最高指導者のハメネイ師が管理するとされる財団を制裁対象に指定した。
 財務省は声明で、ハメネイ師が私腹を肥やし、政治的な仲間に金品を与え、反対勢力を迫害するために財団の資産を利用していると非難した。
 財務省は、ハメネイ師の重要な後援ネットワークとする財団をブラックリストに載せたほか、エネルギー、鉱業、金融サービスなどの分野で個人10人と50の関連会社も制裁対象にした。 (2012-111901)

12月10日: B-52H による示威飛行

 米空軍のB-52H 2機が12月10日、中東までの往復飛行を実施した。
 このような飛行はここ1ヵ月間で2度目となり、イランに対する抑止警告の一環であるという。 (2101-121006)

12月21日: SSGN Georgia がホルムズ海峡を通過してペルシャ湾入り

 米海軍が12月21日、同日にSSGN Georgiaが巡洋艦2隻と共にホルムズ海峡を通過してペルシャ湾に入ったことを明らかにした。 海軍が原潜の動きを公表するのは異例である。
 GeorgiaはTomahawk LACM154発の搭載が可能である。 (2101-122202)
【註】米海軍はOhio級SLBNの初期に建造された4隻を、Trident発射管22本それぞれにTomahawk LACMを7発ずつ搭載したSSGNに変えている。

2・1・1・2 Qads部隊司令官殺害とその余波

2・1・1・2・1 Qads部隊司令官殺害

 米国防総省が、バグダッドの空港で現地時間1月3日未明にイラン革命防衛隊の精鋭Qads部隊のソレイマニ司令官らを乗せた車列を空爆し、同司令官を殺害したと発表した。
 複数の米当局者によると、ソレイマニ司令官はバグダッドでUAVによる攻撃で殺害された。
 一方、イラン側は報復を予告するなど反発を強めており、米イランの対立激化が懸念されている。 (2002-010302)

 米国防総省が1月2日、空爆で殺害したイラン革命防衛隊Qads部隊のソレイマニ司令官について、イラクと中東で米国民を攻撃する計画を進めていたとの見解を示した。
 同省は声明で、大統領の指示により米軍は海外に駐留する米職員を守るため、ソレイマニ司令官を殺害したと表明し、今後も米国民や世界の利益を守るため必要な措置を講じていくとした。
 同省によると、ソレイマニ司令官は過去数ヵ月にわたり、イラクの連合軍基地への攻撃を画策していたほか、今週起きたバグダッドでの米大使館襲撃を承認したという。 (2002-010303)

 米国防総省が1月2日、イラン革命防衛隊Qads部隊のソレイマニ司令官を攻撃し殺害したと発表した。
 これを受け、米国務省はイラクに滞在する米国人に退避勧告を出した。 (2002-010304)

 ストルテンベルグNATO事務総長が1月6日、米国からイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害に関する説明を受けた加盟国が一致して米国支持の姿勢を示したと明らかにした。
 NATO加盟の欧州諸国の間では2019年、トランプ米大統領の中東政策に対する反発が広がったが、外交筋2人は6日の2時間に及ぶ会合は円滑に進んだと明言した。 (2002-010703)

 米国がトランプ大統領の命で1月2日遅く、バクダッド国際空港でイラン革命防衛隊Qods部隊司令官のソレイマニ少将を殺害したことで、イランとの対立がエスカレートしようとしている。
 米国防総省は殺害の詳細を明らかにしていないが、UAV 1機が2両の車両に対し複数発のミサイルを撃ち込み、イランが支援するカタイブヒズボラのメンバー5名とソレイマニ少将及びカタイブヒズボラリーダの2名を殺害した。 (2003-010801)

2・1・1・2・2 米軍の増派

中東地域に米軍3,500名を増派

 複数の米メディアによると、米国防総省当局者が1月3日、中東地域に米軍3,500名を増派する方針を明らかにした。 イラン革命防衛隊Qads部隊司令官が米軍の空爆で殺害され、イランが報復を警告しているのを受けた措置という。
 米政府は2019年12月末にバグダッドの米大使館前での大規模デモを踏まえ、中東地域に750名の部隊を増派すると発表したばかりで、追加増派により地域の緊張がさらに高まるのは必至と見られる。 (2002-010401)
【註】今回の追加派遣は2019年12月末に決まっており、Qads部隊司令官殺害に伴うものではない。
 また米大使館警備には100名の海兵隊が追加派遣されており、増派された空挺歩兵1個大隊750名はKata'ib Hezbollahとの戦いのためである。

 米国は事件後速やかに海兵隊100名を在外公館に派遣すると共に、陸軍は1月1日にノースカロライナに駐屯する第82空挺師団第1旅団戦闘団の第504空挺歩兵連隊第2大隊を米中央軍隷下に入れた。 またエスパー国防長官は第82空挺師団の3,500名に対しクウェートへの派遣を命じている。
 更に海軍及び海兵隊員4,500名を載せたWasp級強襲揚陸艦Bataanが中東近海を航行している。 (2002-010405)

在欧米軍の転用

 米軍が1月3日にUAVでイランQuds部隊司令官を殺害したことで緊張が高まっている中東に、イタリアに駐留している第173空挺旅団が展開したことを、旅団の広報が1月6日に明らかにした。
 3日には国防総省筋の話として第82空挺旅団4,000名程度が現地に向かっていると報じられていた。
 第173空挺旅団は第82空挺旅団同様に緊急対応部隊にしていされており、18時間以内に展開する能力を持っている。 3,800名の旅団は2個歩兵大隊、1個軽偵察大隊及び1個野戦砲兵連隊で編成されている。
 この他に第26海兵遠征隊 (MEU) を載せた強襲揚陸艦Bataanも現地に向かっている。
 現地にはイラク軍のISIS掃討戦を支援する5,000名規模の部隊と、米中央軍が2019年10月にイラクとシリアで合わせて3,000名を越える軍と契約した米民間人がいると発表している。 (2002-010607)

 中東情勢の緊張増大により米陸軍は、2020年に欧州で計画していた過去25年で最大規模の演習Defender-Europe 20の実施が危ぶまれている。
 駐欧米軍の広報官は演習は予定通り行われるとしているが、計画では欧州に送られる陸軍20,000名の先兵となる第82空挺師団は4,000名が危機対応部隊として中東に派遣されてしまった。
 また1月下旬にモロッコで行われることになっていたAfrican Sea Lion演習は、強襲揚陸艦Bataanに乗艦した海兵隊員を含む4,500名が中東に転用されたため中止になっている。 (2002-010608)

イラク撤退に向けて米軍再配置との報道

 ロイタをはじめとする各メディアが米軍の書簡をもとに、イラク撤退に向けて米軍が再配置されると報じた。
 この書簡はイラク駐留米軍のシーリー司令官がイラク国防省の統合作戦司令部に充てたもので、イラク議会とイラク首相の要請に応じて今後数日から数週間にわたって軍隊を再配置すると書かれていた。
 エスパー米国防長官は1月6日にこの報道を否定し、ミリー統合参謀本部議長も、報道された書簡では米軍の撤退をほのめかす不適切な表現があったが、それは事実と異なると説明して、撤退は計画されていないと強調した。 (2002-010702)

B-52H を Diego Garciaに派遣

 イラン情勢が緊迫化するなか、CNNが1月6日、B-52H 6機が英領Diego Garciaに派遣されたと報じた。 CNNは、この6機が核搭載型なのか否かについては明らかにしていない。
 米空軍はAFGSCの隷下にあるノースダコタ州Minot AFB所属第5爆撃航空団とルイジアナ州Barksdale AFB所属第2爆撃航空団、及びルイジアナ州兵空軍でBarksdale AFBに所属する第307爆撃航空団に76機のB-52Hを配備しているが、そのうち46機だけが核搭載型になっている。 (2002-010708)

第26 MEU が紅海入り

 米第26海兵遠征隊 (MEU) 2,500名が、公式に米第5艦隊の警備区域である紅海に入った。
 第26 MEUは米海兵隊に編成された7個MEUの1つで、第8海兵連隊第2大隊、第26戦闘兵站大隊、第2365チルトロータ飛行隊で構成されている。
 26 MEUはイランとの緊張の高まりを受けモロッコとの演習を中止して地中海を急行し、現地に数千名駐留している米軍と合流する。
 この他に海兵隊は大使館警備の増強として100名を急派すると共に、中東に4,000名を派遣している。 (2002-011404)

イラクに Patriot を配備

 エスパー米国防長官が1月30日、イランのBM脅威に対抗するためイラクにPatriotを配備する方向で、イラク政府と協議していると語った。
 エスパー長官は、配備にはイラクの許可が必要だとした上で、配備場所など運用面での課題を検討していると述べた。 (2002-013103)

 米国防総省当局者が4月1日、イラクへPatriot複数個中隊派遣したことを明らかにした。 派遣場所とoperationalか否かについては言及しなかった。
 派遣されたPatriot中隊はC-RAMシステムで防護されているという。 (2005-040207)

 米当局者によると、4月1月に米軍と有志国連合軍がイランからのBM攻撃を受けたイラクIrbilにあるal-Asad航空基地に米軍がPatriotとSHORADシステムを配備した。
 またCamp Tajiには短距離BMDシステムを配備した。 (2005-041304)

中東地域に空母を2隻配備

 米軍が3月13日、中東地域でのイランの脅威に対処するため当面は2隻の空母を配備することを明らかにした。 米軍が中東地域に配備したのは空母Dwight D. EisenhowerHarry S. Trumanである。
 米軍は通常、中東地域で空母1隻を運用しており2隻体制とするのは2012年以来で、米中央軍司令官のマッケンジ大将は米軍への追加攻撃に対応する万全の体制が整っていると強調し、イランや同国傘下の武装組織をけん制した。 (2004-031303)

Amphibious Ready Group と海兵遠征隊が待機

 中東地域には2012以来初めてDwight D. EisenhowerHarry S. Trumanの空母2隻を展開しているほか、アラビア海北部には強襲揚陸艦Bataanを中心に ドック型輸送揚陸艦New Yorkとドック型揚陸艦Oak HillからなるAmphibious Ready Groupが第26海兵遠征隊2,500名を載せて待機している。
 また更にPatriotも増派されている。 (2004-031403)

海兵遠征隊が中東入

 米当局者が6月1日、第1海兵遠征軍の部隊が中東に入ったことを明らかにした。 この部隊は第13海兵遠征隊の4個部隊で中央軍の指揮下に入り、危機管理中央軍の海兵空地特殊任務部隊として働く。
 部隊は第1海兵遠征軍、第1海兵師団、第1海兵兵站群、第3海兵航空団から、第5海兵連隊第2大隊、第166チルトロータ飛行隊、第25戦闘兵站派遣隊などの海兵隊員2,000と海軍兵200名である。 (2007-060207)

2・1・1・2・3 イラク治安部隊の訓練支援中止

 イラン革命防衛隊Qads部隊のソレイマニ司令官殺害で緊張が高まっているイラクで、米軍主導の有志国軍がイラク治安部隊の訓練支援を中止している。
 有志国軍に2,000~3,000名を派遣しているNATO軍も同様に中止している。
(2002-010405)
2・1・1・2・4 イランの反撃を危惧した各国の反応

 イラク議会が1月5日に外国軍の撤収を求める決議案を採択したのを受け、ドイツはイラク駐留部隊を一部周辺国に移動させる。
 イラクには主に同国軍の訓練を担うドイツ軍が120名が駐留しているが、ドイツ政府はこのうちの30名程度をヨルダンやクウェートに移す方針を示した。
 ドイツのマース外相は、外国軍のイラク撤収でISISが再び勢力を盛り返す可能性があると懸念を示した。 (2002-010706)

 ウォレス英国防相が1月7日に英議会下院で証言し、バグダッドに駐留する部隊の一部をバグタッド北方のタジ基地に配置転換したことを明らかにした。
 英報道によると、イラクに駐留する400名のうち数十名が対象になる。 また英国軍を含むイラク駐留軍の全ての訓練活動も中断したという。 (2002-010801)

 フランス政府筋が1月7日、イラン革命防衛隊Quds部隊司令官殺害を受けて中東地域の緊張が高まっているものの、フランスは現時点でイラクに駐屯する同国の部隊を削減する計画はないことを明らかにした。 (2002-010802)

 米国とイランの緊張が高まっている事態を受けて、欧州各国とカナダはバグダッドから駐留部隊の退避を始めた。 いずれも、イランがイラクの米軍と有志連合の基地に弾道ミサイルを撃ち込む前に明らかにした。
 ドイツ国防省は1月7日、イラクに駐留する120名のうち、バグダッドと近郊に駐留する35名をヨルダンとクウェートに退避させたと発表した。 NATOは6日、イラク治安部隊への訓練任務の中断を発表したことに伴って、ルーマニア、クロアチア、スロバキアも7日、クウェートや他のNATO軍基地への退避を発表した。
 イタリアはバグダッド中心部に駐留していた50名を避難させ、英国もバグダッドから50名を退避させた。
 カナダ軍はイラクに駐留する500名の一部をクウェートに撤収させると明らかにした。 (2002-010805)

2・1・1・2・5 イランの BM による報復

イランの SRBM 16発

 米当局者がロイタに対し1月5日、イランのミサイル部隊が国内全土で厳戒態勢を敷いていると明らかにした。 防衛的な動きかどうかは不明という。
 この当局者は匿名を条件に、状況を注視していることを明らかにした。 (2002-010603)

 米国防総省によると、イランがイラク北部の米軍基地に12発以上のBMを発射したという。 (2002-010803)

 イラン国営メディアが、イランが1月8日未明が米軍と有志連合軍が駐留するイラク西部のAin al-Asad空軍基地にミサイル攻撃を実施したと報じた。
 イラク治安筋は、攻撃は8日午前0時すぎに3回にわたって行われ、外国部隊が駐留するイラク最大の軍事基地Ain al-Asad基地にロケット弾9発が着弾したと語った。
 米国防総省は、イランがBM 12発超を米軍と有志連合軍が駐留するイラクの2基地に撃ち込んだと発表した。 同省報道官によると、うち3発はイランから発射されたという。 現時点では2基地で死傷者が出たとの報告はないという。 (2002-010804)

 ロイタ通信によると、イラン革命防衛隊の司令官が今回のミサイル攻撃は第1段階だと述べ、第2、第3の攻撃の可能性を示唆している。 またイランのメディアは、イラクの米軍基地への第2波攻撃を開始したと伝えていて、攻撃がさらに続く可能性がある。
 米政府関係筋はFNNの取材に対し、少なくとも20人に及ぶ死傷者が出ているもようだと話している。 (2002-010806)

 イラン国営TVが1月8日、同国がイラク国内の米関連施設に15発のミサイルを発射し、少なくとも80人の「米国のテロリスト」が死亡したと報じた。
 国営TVによると、ミサイル攻撃で米軍のヘリコプタと軍事施設が「激しく損傷」した。 (2002-010808)

 一部の米メディアが、イランによるBM攻撃を米国が事前に察知していたと報じた。
 Washington Postは複数の米政府高官の話として、イラク国内の米軍が駐留する基地に対するミサイル攻撃の兆候を攻撃の数時間前に把握して退避行動を取っていたと報じた。 米政府は今回の攻撃について、イラン政府が国内向けに体面を保つことが目的だったと分析している。
 一方、ロイタ通信がミリー米統合参謀本部議長の話として、イランが3ヵ所から16発のSRBMを発射し、そのうち11発がAin al-Asad空軍基地に、少なくとも1発がArbīlの基地に着弾したと報じた。 (2002-010903)

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が1月8日早朝にイラクの米軍基地をBM攻撃した。 IRGCの空軍司令官は9日、13発を発射したと述べた。
 これに対しミラー米統参議長は、イランから16発が発射され、そのうち少なくとも11発がAin al-Asad空軍基地に落下し、少なくとも1発がArbilの基地に落下したと述べた。 (2003-011501)

 イランのザリフ外相が1月25日発効の独誌とのインタビューで、1月8日にイラクの駐留米軍基地に対して行ったBM攻撃について、米側に死者を出す意図はなかったと述べた。
 ミサイル攻撃について、トランプ米大統領は当初「死傷者はいなかった」と表明したが、国防総省は24日に米兵34名が脳震盪などの診断を受けたと発表している。 (2002-012601)

米軍の損害

 イラク軍は、米軍が駐留するAin al-Asad空軍基地など2ヵ所の基地へのイランのミサイル攻撃で自国兵の犠牲者はでていないと発表した。
 イラク軍の声明によると、イランはAin al-Asad空軍基地に向けて17発、北部クルド人自治区の主要都市Arbīlの基地に5発の合計22発のミサイルを発射したがAin al-Asad空軍基地に向けられた17発のうち2発は爆発しなかったという。 (2002-010809)

 米国防総省が、イランが1月にイラクにある駐留米軍基地に対して行ったミサイル攻撃について新たに情報を公開し、米兵の負傷者数が64名に増えたことが明らかになった。
 1月8日にイランが行った、イラク西部にある米兵が駐留する基地への攻撃をめぐり、トランプ大統領は当初、米国人の負傷者はいなかったと発表していた。 (2003-020101)

 米国防総省が2月21日、イランが1月にイラクの米軍基地に対してミサイル攻撃を行った際に外傷性脳損傷 (TBI) を負った米兵の数が110名に達したことを明らかにした。
 国防総省は、110名全員が軽度の外傷性脳損傷と診断されたと発表する一方で、77名が既に原隊に復帰しているが、これまでに35名がドイツで精密検査を受け、そのうち25名が米国に移送されたことを明らかにした。 (2003-022201)

2・1・1・2・6 ウクライナ民航機の誤射事件

 ロイタ通信が1月9日、テヘラン近郊で8日にウクライナの旅客機が墜落した原因について、複数の米政府高官がイランによる偶発的な撃墜の可能性が最も高いとの見方を示していると報じた。
 米政府高官によると、米国の衛星が墜落の直前に2発のミサイルが発射され、その後に爆発が起きたことを探知していたという。 墜落で乗客乗員176人全員が死亡した。 (2002-011001)

 ポンペオ米国務長官が1月10日、ウクライナの旅客機が8日にテヘランの空港を離陸直後に墜落した原因について、イランがミサイルで撃墜したとみられると述べた。
 トランプ米大統領も9日、「誰かが間違いを犯した可能性がある」と述べ、撃墜の可能性を示唆した。
 米メディアによると、墜落直前にSAM 2発が発射されたことを米国の衛星システムが探知した。 (2002-011101)

 イランでのウクライナ旅客機墜落について、ウクライナ政府は現場で見つかったとされるイラン軍が使用するロシア製ミサイルの破片の写真がインターネット上で取り沙汰されていることに言及し、ウクライナの調査団がミサイル撃墜の可能性を巡り現場を調査する方針を示した。
 現場で見つかったとされるのは、ロシア製の自走式SAMであるTor-M1 (SA-15) に搭載されるミサイルの破片であるという。 (2002-011102)

 国営イラン放送による、イラン軍が1月11日にテヘランで8日に墜落したウクライナ機について、同機の技術的なトラブルが原因だとしていた主張を撤回し、軍が誤って撃墜したと認める声明を発表した。
 声明によると、イランの防衛システムが同機を敵と誤認したためで、対米報復攻撃の数時間後で、軍は厳戒態勢を敷いていた。
イラン当局が、国防に関わる主張を撤回し謝罪するのは極めて異例であるが、客観的で明確な証拠が存在し、事故との主張を維持できないと判断したとみられる。 (2002-011103)

 イランが1月8日にウクライナ国際航空の752便を誤射して撃墜した原因は謎に包まれているが、Teal Groupのミサイル専門家は、安全機能が不完全であったか技術的問題が考えられると指摘している。
 752便のBoeing 737-800を撃墜したSA-15 Torは戦時対応に作られていて、民航機を軽易に判別することはできないのではないかという。 (2002-011304)

 イラン民間航空のトップが、1月8日にイランがホメイニ国際空港を離陸したウクライナ国際航空の752便を撃墜したとの報道を否定した。 (2003-011502)

 イラン革命防衛隊 (IRGC) が、一連の錯誤から1月8日にウクライナ国際航空のPS752便を撃墜し176名が死亡したと認めた。
 その5日前に米軍がIRGCのスレイマニ少将を殺害したことから、IRGCは米軍が所在するイラクの基地2ヵ所をBM攻撃したため、IRGCの防空部隊は戦闘態勢にあり高度に緊張していたという。
 IRGCはSHORADを発射したことだけを明らかにしているが、米国はTor-M1 (SA-15) 2発が発射されたと見ている。 (2003-012203)

 イラン革命防衛隊 (IRGC) が、一連の錯誤から1月8日にウクライナ国際航空のPS752便を撃墜し176名が死亡したと認めた。
 その5日前に米軍がIRGCのスレイマニ少将を殺害したことから、IRGCは米軍が所在するイラクの基地2ヵ所をBM<攻撃したため、IRGCの防空部隊は戦闘態勢にあり高度に緊張していたという。
 IRGCはSHORADを発射したことだけを明らかにしているが、米国はTor-M1 (SA-15) 2発が発射されたと見ている。 (2003-012203)

 イランが1月8日にウクライナ国際航空のPS752便をTor-M1 2発で撃墜したことをイラン民間航空機構が認めた。
 イランは2015年12月にTor-M1 30基程度を購入している。 (2003-012911)

2・1・1・2・7 BM 報復への米国の反応

トランプ政権の反応

 トランプ米大統領が1月4日にツイッターで、もしイランがQuds司令官殺害の報復として米国の資産を攻撃すれば、直ちにイラン国内52ヵ所の重要施設を徹底的に攻撃すると述べた。
 また大統領は、この攻撃目標はイラン及びイランの文化にとって決定的なものになるとも述べた。
 イラン国内には古代ペルシャやアレキサンダー大王時代など20件以上の世界遺産のほか、各種歴史遺産がある。 (2002-010504)

 AP通信が米当局者の話として1月8日、イランによるイラク国内の米軍基地に対するミサイル攻撃で、米側に死者は確認されていないと報じた。
 ただ、攻撃対象となった施設内での捜索は引き続き続けられているという。 (2002-010807)

 トランプ米大統領は1月8日、イランがイラクの米軍駐留基地をミサイルで攻撃したことを受けて国民に向けて演説し、攻撃により米国人やイラク人の死者は出なかったと発表し、イランは「身を引いているようだ」と述べた。
 その上で大統領は、イランに対して直ちに厳しい追加制裁を科すと表明したが、報復の可能性については言及しなかった。 (2002-010901)

 CNN TVが1月16日、イランが8日にイラク駐留米軍に対して行ったBM攻撃で、米兵11人が爆発の影響で脳震盪を起こし、ドイツとクウェートに搬送されていたと報じた。
 国防総省当局者によると、負傷者が出たのは、ミサイル11発が着弾したAin al-Asad空軍基地で、症状は軽く回復し次第基地に復帰するとしている。
 トランプ政権は攻撃の被害について、負傷者がいたことは公表していなかった。 (2002-011704)

 米国防総省が1月24日、イランが1月8日にイラクの駐留米軍基地に対して行ったBM攻撃で、米兵34名が脳震盪や外傷性脳損傷の診断を受けたが、17名は既に任務に復帰したと発表した。
 トランプ大統領は当初、米国人に死傷者はいなかったと表明し、その後中央軍は11名が負傷したと発表するなど、説明が二転三転している。 (2002-012501)

議会の反応

 米上院が2月12日、イランに対するトランプ大統領の軍事行動を制限する決議案について、最終的な採決を行うための動議を賛成51、反対45で可決した。 最終採決は12日か13日にも行われる。
 決議案はトランプ大統領がイランに対し軍事行動を取る際に議会の承認を義務付ける内容で、共和党から8人の造反者が出た。
 民主党主導の下院も1月に同様の決議案を可決している。 (2003-021301)

部隊配置の変更

 米国主導の有志国連合軍が3月16日、al-Qaimなどに駐留する数百名の部隊をイラク国内のほかもシリアやクウェートの大きな基地に移動させると発表した。 (2004-031607)

2・1・1・3 イラクのシーア派武装組織との戦い

2・1・1・3・1 Kata'ib Hezbollah との交戦

米軍が Kata'ib Hezbollah の拠点を空爆

 米軍は2019年12月29日にKata'ib Hezbollahの拠点を空爆したのに続き、クウェートから第82空挺師団緊急即応部隊 (IRF) の歩兵1個大隊750名をイラクに急派した。
IRFの本隊4,000名も数日以内に追加派遣される。 この結果追加派遣された部隊は14,000名に達した。
 またバクダッドの米大使館が襲撃されたのに対応して国務省の要請を受けて海兵隊100名も12月31日に急派された。 (2002-010104)

イラク治安部隊が Kata'ib Hezbollah の拠点を襲撃

 イラクの治安部隊が6月25日遅く、バグダッド南部にあるイランが支援するシーア派武装組織Kata'ib Hezbollahの拠点を襲撃し10人以上を拘束した。
 米当局は以前から、同組織がイラク内の米軍駐留基地などにロケット弾を発射していると指摘していた。
 ただ、今回の襲撃について関係者の話は錯綜しており、拘束人数をPMF関係者は19人、政府当局者は23人としている。 (2007-062602)

2・1・1・3・2 シーア派民兵組織を攻撃

 イラクのメディアが、バグダッド北部で1月3日夜に米軍がシーア派民兵組織に新たな攻撃を行い6人を殺害したと報じた。
 イラクではイランの影響下にあるシーア派民兵組織が活動し、現地に駐留する米軍との間で緊張した状態が続いている。
 これについて米政府から発表はなく、詳しいことは明らかになっていない。 (2002-010404)
2・1・1・3・3 イラクの反応と米国の対応

 米軍がイランのQuds司令官をUAVで殺害したのを受けてイラク国会は米軍の撤退要求を決議した。
 イラク国会は、ISIS掃討のため4年前に米軍の駐留を認めた米国との合意を破棄する決議も行った。 (2002-010505)

 米国務省が3月16日、ポンペオ米国務長官が15日にイラクのアブドルマハディ首相と電話会談し、米軍部隊も駐留するバグダッド近郊の基地が攻撃されたのを受け、米国人への攻撃に対しては自衛のために必要な行動を取ると警告したと発表した。
 バグダッド近郊のタジ基地が11日にロケット弾攻撃を受け、米国人らが死亡下際には、報復のためイラクの親イラン民兵組織の関連施設を空爆している。 (2004-031604)

2・1・1・3・4 米国施設等にロケット弾

1月 4、5日:

 米軍などによると、バグダッドの北90kmにある米軍も使用するイラク空軍の基地に1月4日午後、ロケット弾が撃ち込まれた。
 また同じころ、バグダッドの「グリーンゾーン」と呼ばれる米大使館がある地区にもロケット弾が1発撃ち込まれた。 いずれもけがをした人はいなかった。
 これらのロケット弾を誰が発射したのか分かっておらず、地元の警察などが捜査している。 (2002-010501)

 バグダッドの米大使館付近に1月5日夜、再びロケット弾2発が撃ち込まれた。 医療関係者によると、このほか米大使館がある制限区域「グリーンゾーン」外の民家に1発が着弾し、4人が負傷した。
 在イラクの米施設を狙った攻撃は過去2ヵ月間で14回目となる。 (2002-010602)

1月26日:

 バグダッドにある米大使館に1月26日にロケット弾が撃ち込まれ3発が直撃した。 治安筋がAFPに語ったところによると、ロケット弾1発は夕食時の食堂を直撃し、2発は近くに着弾した。
 イラク高官によると、少なくとも1人が負傷したが、負傷の程度や、負傷者が米国人なのか、大使館で働くイラク人職員なのかは明らかになっていない。
 これまでの攻撃に対する犯行声明は出ていないが、米政府はイラク国内の親イラン派武装勢力の犯行と繰り返し非難してきた。 (2002-012701)

3月11日:

 複数の米政府当局者が匿名を条件に、バグダッド北方にあるタジ基地に3月11日、小型ロケット弾18発が撃ち込まれ、米軍関係者2名と英軍関係者1名が死亡し10数人が負傷したことを明らかにした。 当局者らによると、重傷者が複数いるため、死者の数は増える可能性がある。
 攻撃を仕掛けたのが誰かはまだ不明だが、イランの支援を受ける武装勢力による犯行との可能性があれば、米国とイランの対立が再び激化する恐れがある。 (2004-031201)

 米軍主導の有志連合の部隊が駐留しているバグダッド北方にあるタジ基地に11日夜に多数のロケット弾が撃ち込まれ、有志連合などによれば米国人2人と英国人1人が死亡、12人が負傷した。
 有志連合報道官はロケット弾約18発が着弾したと認めた上で、情勢分析と調査が続いていると説明した。 基地から数㌔離れた場所からは、ロケット砲を仕掛けたトラックが見つかった。
 同基地には2020年1月にもロケット弾攻撃があったが負傷者は出なかった。
 イラクでは、1月初旬にイランのソレイマニ革命防衛隊司令官が米軍に殺害された後、米国への報復とみられる攻撃が続発しており、いずれも犯行声明は出ていないがシーア派民兵による仕業とみられている。 (2004-031202)

3月11日攻撃への米軍の報復

 ロイタ通信が、エスパー米国防長官が3月12日にイラクの米軍駐留基地がロケット弾攻撃を受け、米国人2人を含む計3人が死亡したことに関し、トランプ米大統領から軍事的報復の承認を得たと述べたと報じた。
 長官は報復の対象を明言することは避けつつも、親イラン派民兵組織による攻撃だった可能性が高いと示唆し、すべての選択肢を排除しないと述べた。 (2004-031301)

 米軍が3月12日、11日にイラク国内の有志連合駐留基地がロケット弾攻撃を受け、米国人2人と英国人1人が死亡したことに対する報復として、イラクにある親イラン派民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」の拠点5ヵ所を空爆したと発表した。
 国防総省によると、米軍は武器貯蔵庫5ヵ所に対して精密爆撃を行った。
 同省は声明で、空爆はロケット弾攻撃と釣り合いの取れた規模であると説明した。 (2004-031302)

3月14日:

 イラク軍によると、米軍主導の有志連合部隊が駐留するバグダッド近郊のタジ基地に3月14日、ロケット弾30発以上が撃ち込まれた。 有志連合報道官によると、同連合メンバ3人とイラク軍関係者2人の計5人が負傷した。  同基地は11日にもロケット弾攻撃を受け、米国人2人と英国人1人が死亡、約12人が負傷した。
 米国は11日の攻撃をイラクの親イラン民兵組織カタイブ・ヒズボラによる攻撃と断定し、翌日に同組織の武器貯蔵庫5ヵ所を報復空爆し、イラク兵ら6人が死亡したが、今回もシーア派民兵による犯行の可能性が高い。 (2004-031401)

 バクダッドのTajiキャンプに対し3月14日11:00頃、少なくとも25発の107mmロケット弾の弾幕射撃が行われ、一部が有志連合部隊地区に、一部が防空部隊地区に着弾した。 この攻撃で有志国連合軍兵士が3名、イラク軍兵2名が負傷したと言う。
 その後イラク軍がバクダッド北部Abu Azam地区で、今回の攻撃に使われたとみられる7基の発射機と24発のロケット弾を発見した。 (2004-031402)

3月16日:

 3月16日午後、米国主導有志国連合の基地ととNATOの訓練基地のあるバクダッド近郊のBasmaya基地にロケット弾2発が着弾した。
 この攻撃でロケット弾攻撃は1週間に3回行われたことになる。 (2004-031709)

7月5日: 米大使館所在地域にロケット弾

 イラク軍が7月5日、バクダッド市内で厳重に警備された米大使館などが所在するGreen Zoneがロケット弾の攻撃を受け、子供1人が負傷したと発表した。
 ロケット弾は4日遅くにバクダッド市内のAli Al-Saleh地区から発射され、地元TV局の2軒隣に着弾し、子供が負傷した。
 イラク当局者によると大使館はC-RAM装置を導入し4日遅くにはoperationalになっており、迎撃戦闘を行ったとみられる。
 またバクダッドの北Umm al-Azan地区にある米軍と有志国連合軍が駐留しているTaji基地に対しても攻撃が仕掛けられた。 この基地では3月にロケット弾の弾幕射撃で米兵2名と英兵1名が死亡している。 (2008-070505)

9月30日: イラク・クルド人自治区の米軍駐留基地にロケット弾攻撃

 クルド人自治政府の内務省が、自治区のアルビール (Irbil) 国際空港付近で9月30日に米軍が駐留する基地の内外にロケット弾6発が撃ち込まれたと発表した。
 米軍要員のけがや施設の損傷は報告されていない。
 米国防当局者が最新情報としてCNNに語ったところによると、米軍部隊が駐留する基地の中に3発、その近くにもさらに3発が撃ち込まれた。 通常より大型のロケット弾が使われたとの未確認情報もある。 (2011-100103)

11月17日: 米国大使館を狙った複数のロケット弾攻撃

 米安全保障筋がAFPに、イラクの首都バグダッドで11月17日夜に米国大使館を狙った複数のロケット弾攻撃があったことを明らかにした。
 イランを支持する武装勢力は10月に米大使館を標的とした攻撃停止に合意していたが、合意以降の攻撃はこれが初めてである。
 AFPの現地記者らによると、大きな爆発音が数回と続けて連射音が聞こえ空に赤い炎が上がったことから、米大使館にC-RAMが配備されていたようである。 (2012-111801)

12月20日: 米国大使館周辺にロケット弾8発

 イラク軍などによると、バグダッドの米大使館周辺に12月20日夜にロケット弾8発が撃ち込まれ、イラク軍の検問所付近で兵士少なくとも1人が負傷した。
 現場は大使館や政府機関が集まり、厳重な警備が敷かれているグリーンゾーンの一角で、軍によるとロケット弾の大半は米大使館近くの住宅地に着弾し、複数の建物や車両が損壊した。 (2101-122104)

2・1・1・4 イラクでの親イラン勢力によるテロ

2・1・1・4・1 米軍の増派

 米政府が2019年12月31日、在イラク米大使館をデモ隊が襲撃した事件を受け、米兵750名を直ちに中東へ派遣することを決めた。
 また更なる増派も準備しており、数日以内に最大4,000名規模を追加派遣する可能性がある。 (2002-010103)

 米海軍の強襲揚陸艦Bataanが2020年初の大型艦としてホルムズ海峡を通過してペルシャ湾に入った。
 輸送揚陸艦New Yorkとドック型揚陸艦Oak Hillを従えたBataan即応揚陸群には第26海兵遠征隊の2,500名が乗り組んでいる。 (2003-021205)

2・1・1・4・2 先制攻撃も行うと牽制

 エスパー米国防長官が1月2日、イランや親イラン派組織が米国に対する更なる攻撃を計画している兆候があると指摘し、米軍と米国人の命を守るために先制攻撃も行うと牽制した。
 エスパー長官はイランをめぐる状況は一変したとした上で、人員や地域における国益、パートナー国を守るために必要なことをする用意があると強調した。 (2002-010301)
2・1・1・4・3 米軍のイラク撤収

撤収開始

 イラク駐留米国主導の有志国軍が3月19日、シリアとの国境近くのAl-Qaim近郊の6ヵ所から撤収した。
 これに続いて26日にはMosul県のWest航空基地、31日にはKirkuk北方のK1航空基地、4月4日にはAl-Anbar県のHabbaniyah航空基地からも撤収した。 (2006-041510)

 イランとの緊張増大のため2019年のクリスマス直後にイラクに派遣された米陸軍第82空挺師団第1旅団戦闘団の2,500名が撤収帰国することになった。 (2005-042604)

 米国とイラクが6月11日、経済安全保障協力を議論する次官級の戦略対話をビデオ会議方式で開き、イラク駐留米軍を今後数ヵ月で削減する方針を確認した。
 米国務省は声明で、米国はイラクでの恒久的な基地使用や駐留を求めないと強調した。 トランプ政権には海外駐留経費を削減したいとの考えがある。
イラク議会は1月に駐留米軍の撤退を求めていたのに対し、米側は撤退を否定したものの、その後一部の部隊がイラクを離れている。 (2007-061205)

米大統領選に向けた米軍の撤収

 米主要メディアが、米中央軍司令官のマッケンジー大将が訪問先のバグダッドで9月9日、イラク駐留の米軍5,200名を9月中に3,000名に縮小することを明らかにしたと報じた。
 トランプ大統領は大統領選に向けて自身の公約としてきた海外駐留米軍の撤収の成果として有権者にアピールするとみられる。 (2010-091001)

 米CNN TVが11月16日、トランプ米大統領が今週にもアフガニスタンとイラクに駐留する米軍部隊の追加削減を命じる見通しだと報じた。
 複数の当局者によると、トランプ大統領はアフガンに4,500名、イラクに3,000名が駐留している米軍をそれぞれ2,500名規模に縮小する方針という。
 2021年1月の自身の任期切れまでに削減する考えだが、アフガン和平プロセスが停滞する中、拙速な撤収は地域情勢の不安定化を加速する恐れもある。 (2012-111702)

2・1・2 ホルムズ海峡の緊張

2・1・2・1 イランの挑発

2・1・2・1・1 米艦への異常接近

 米海軍が4月15日、イラン革命防衛軍の舟艇が同日にペルシャ湾の公海上を航行中の米海軍や沿岸警備隊の艦船に異常接近し、繰り返し危険な航行を行ったと非難した。
 陸軍のヘリコプタを伴って公海上で訓練中だった米艦船6隻に、革命防衛隊の舟艇11隻が9mまで異常接近し、高速で前後を横切るなどの危険な航行を続けた。
 イラン側は米側の複数回の警告も無視し、約1時間にわたり「挑発的な行為」を続けたという。 (2005-041602)

 イラン革命防衛軍海軍の舟艇11隻が4月15日、ペルシャ湾北部で演習を行っていた米艦艇6隻に対し50ヤードの至近距離に接近したり、前方10ヤードを横切るなどの嫌がらせ行為を行った。
 演習を行っていたのは駆逐艦Paul Hamilton、外征基地艦 (expeditionary mobile base vessel) Lewis B. Puller、Cyclone級哨戒艇FireboltSirocco、沿岸警備隊警備艦WrangellMauiで、陸軍のAH-64E Apacheとの共同訓練を行っていた。 (2005-041605)

 トランプ米大統領が4月22日、イランの舟艇が米戦闘艦に嫌がらせをした場合には、破壊撃沈するよう海軍に指示したとツイッターに投稿した。
 米軍は4月15日に、イスラム革命防衛軍海軍の舟艇11隻がペルシャ湾で米海軍と沿岸警備隊の艦船に異常接近し、危険かつ挑発的と非難していた。 (2005-042206)

2・1・2・1・2 演習の実施

Zolfaghar 99演習

 イラン海軍が9月10日、ホルムズ海峡に近いオマーン湾で、3日間にわたるZolfaghar 99演習を開始した。 今回の演習はインド洋北部からホルムズ海峡の東端までの2,000,000万㎢で行われる。
 同軍は地対地および地対艦CMや魚雷に加え、艦艇や潜水艦、航空機、UAVに搭載されたロケット発射装置の試験も実施するという。 (2010-091202)

2・1・2・2 列国の艦隊派遣

2・1・2・2・1 米国を中心とした有志連合

特記すべき記事なし
2・1・2・2・2 フランスを中核とした連合

独仏の連携

 ミュンヘンで開かれたミュンヘン安全保障会議でカーレンバウアー独国防相が、ホルムズ海峡での海軍の行動で、既に実施しているフランスに頼ることを明らかにした。 (2003-021502)

日仏の連携

 安全保障をテーマにした国際会議に出席するためミュンヘンを訪れている河野防衛相が日本時間の2月15日夜にフランスのパルリ国防相と会談し、共に中東地域に艦船を派遣しているフランスと情報交換を進めたい考えを伝えた。
 会談のあと河野防衛相は、フランスはオランダやデンマークなどとともに行動するということなので、日本の船舶の航行の安全に資することがあれば、コミュニケーションをしっかり取っていきたいと述べた。
 ドイツもフランスとの連携を表明しており、ペルシャ湾周辺には米国を中心とした有志連合軍とは別に、フランスを核心とする連合艦隊ができつつある。 (2003-021601)

2・1・2・3 地上部隊の派遣

欧州からの防空部隊派遣

 ギリシャが2月3日、サウジアラビアに展開したギリシャ空軍のPatriotが1月20日に任務に就いたと発表した。 ギリシャ軍のPatriotは2019年5月からPrins Sultan航空基地に駐留している米陸軍の5個防空中隊と共同で任務に就く。
 派遣されたのは6個中隊からなる空軍第350誘導弾連隊で、PAC-3及びGEM弾を装備し、駐留経費はサウジが負担する。
 米軍は2019年9月14日のイランによるCM/UAV攻撃後、更に3個中隊のPatriotと1個THAADシステムを展開している。
 またフランスは2019年11月に、SAMOP/TシステムのレーダであるArabelを展開していることを明らかにした。 ArabelはPatriotと異なり360゚の監視ができる。 (2004-021211)

2・1・3 対外姿勢

2・1・3・1 友好国に対する姿勢

2・1・3・1・1 ロシア

特記すべき記事なし
2・1・3・1・2 中東の親イラン勢力

アラビア半島のアルカイダ (AQAP) に武器供与

 6月29日にサウジアラビアの首都リヤドで行われた記者発表で、米国のイラク担当特使とサウジ主導有志国連合の報道官が、イラン革命防衛軍 (IRGC) がアラビア半島のアルカイダ (AQAP) に武器を供与していると述べ、106mm無反動砲弾2発やSAM-7 (Strela-2) MANPADSなどその一部を展示した。 (2009-070811)

イラクの親イラン勢力

 米中央軍 (CENTCOM) 司令官のマッケンジー大将が6月18日、イランとイラクの親イラン組織が再び活動を活発化させていると述べた。 (2009-070110)

2・1・3・1・3 ベネズエラ

 ベネズエラの経済担当副大統領兼石油相が5月25日、同国のエルパリト港にイランからのタンカー5隻のうち1隻目が到着したと発表した。
 1隻目は01:00頃にエルパリト港に到着し、2隻目は25日午前の時点でベネズエラ海域に入りベネズエラ軍に護衛されているほか、3隻目はカリブ海に接近しているという。
 TankerTrackers.comの推計を総合すると、イランはベネズエラに153万バレルのガソリンと精製用の原料を提供するという。 (2006-052601)

 イラン外務省が6月1日、ベネズエラ政府から要請があれば同国向けにさらに燃料を輸出する方針を示した。
 ベネズエラはガソリン不足に見舞われており、イランはすでに燃料タンカー5隻をベネズエラに派遣している。
 米政府はイラン産燃料のベネズエラへのさらなる輸出を阻止するため、状況を注視しており、海外の政府、港湾局、海運会社、保険会社に対し、イランのタンカーを支援すれば制裁を科すと警告している。 (2007-060101)

2・1・3・2 敵対国に対する姿勢

2・1・3・2・1 米 国

特記すべき記事なし
2・1・3・2・2 イスラエル

 イラン革命防衛隊が国営メディアを通じて1月8日、シオニスト体制は犯罪国家の米国と一体だとして攻撃対象に含まれると示唆した。 イスラエルが攻撃されれば米国を巻き込む大規模紛争に至る懸念がある。
 イスラエルを敵視するイランは、レバノンのヒズボラなどのシーア派民兵組織に資金や武器を供与してシーア派の弧と呼ばれる親イラン勢力を構築してきたが、2011年のシリア内戦発生以降は、革命防衛隊の精鋭Quds部隊が現地入りしてアサド政権を支援し、軍事拠点を建設したとされる。 (2002-010905)
2・1・3・2・3 湾岸諸国

特記すべき記事なし
2・1・4 核 開 発

2・1・4・1 ウラン高濃縮の再開

2・1・4・1・1 無制限ウラン濃縮方針

 イラン政府が1月5日に声明で、2015年に欧米など6ヵ国と結んだ核合意の逸脱第5弾の措置として、無制限にウラン濃縮を進める方針を表明した。 但し、国際原子力機関 (IAEA) との協力は継続するとし、米国の対イラン制裁が解除されれば、イランは核合意の義務を履行する用意があるとしている。
 声明は、イランはウラン濃縮の能力や、濃縮度などについて一切の制限を受けないとの考えを表明した。 (2002-010601)

 イランのラリジャニ国会議長が1月19日、核合意当事国の英仏独3ヵ国が国連による制裁に道を開く紛争解決手続きの発動を表明したことを受け、国際原子力機関 (IAEA) の査察への協力の見直しもあり得るとけん制した。
 イランは5日にウラン濃縮の制限撤廃を宣言した後も、IAEAとの接触は続けると強調していた。 (2002-011901)

 イランの最高指導者ハメネイ師が31日の演説で、同国のBMや核計画を巡り米国と交渉する可能性を排除した。
 その上で、米国の残忍な制裁はわが国経済の崩壊を狙ったもので、彼らの狙いはわれわれの地域における影響力を制限し、ミサイルや核能力を止めることだとし、国内の能力に依存し原油輸出への依存を減らすことが、米国の圧力に抵抗するのに役立つと指摘した。 (2008-073103)

2・1・4・1・2 核開発拡大法

 イランで12月2日、政府に核開発の拡大を義務付ける法律が成立した。
 2021年1月に米次期大統領に就任する見通しのバイデン前副大統領は、イランの合意順守を条件にトランプ政権が離脱した合意に復帰する意向であるが、イランが合意違反を加速すれば復帰が困難になる。 (2101-120304)
2・1・4・2 ウラン濃縮の実績

2・1・4・2・1 濃縮のウラン貯蔵量

 国際原子力機関 (IAEA) がイラン核合意についての報告書で3月3日、イランの低濃縮ウラン貯蔵量が合意で定められた上限の5倍超に達したことを明らかにした。
 また、ロイタ通信によると、同日付の別の報告書で、IAEAの査察も拒否されたと指摘している。 (2004-030401)

 国際原子力機関 (IAEA) が6月5日、5月20日時点でイランの低濃縮ウラン貯蔵量が1.5t超になったとする報告書をまとめた。
 核合意で定められた上限202.8kg(六フッ化ウラン換算では300kg)の8倍の水準で、1t余りあれば核爆弾1個を製造できるとされる。
(2007-060601)

 イランの核開発に関する6月5日のIAEAの報告書によると、6月時点におけるイランの濃縮ウラン保有量は1,571.6kgと、3月の保有量を550.7kg上回っている。 ただし2019年11月~2020年3月の増加量648.6kgよりは少ない。
 U-235含有量4.5%の濃縮ウランは1,356.5kgであるが六フッ化ウラン (UF6) の状態にあるため、ウラン自体の量は917.2kgという。 残りは濃縮率3.67%の状態にある。 (2008-061701)
【註】弗素の原子量は19で、ウランは濃縮しても大部分が原子量が238のU-238であるため、UF6の分子量は352 (238+19×6) になる。
 即ち、殆どがU-238である濃縮率4.5%のウランによるUF6の中のウラン含有量の比率は238/352になり、1,356.5kgのUF6に含まれるウラニウムの量は、1,356.5×235÷352=917.2 (kg) になる。
 因みにこの中で核燃料であるU-235の量は917.2×0.045=41 (kg) ということになる。
 U-235の臨界量は22.8kgと言われているので、濃縮率3.67%の分を含めると、現時点で核爆弾2個が作れる量の濃縮ウランを保有していることになる。

 イラン核合意の検証に当たる国際原子力機関 (IAEA) が9月4日、イランの低濃縮ウラン貯蔵量が8月25日時点で、合意が定める上限を大幅に上回る2,105.4kgに増加したとの報告書をまとめた。 (2010-090406)

 米政府当局者が9月20日、イランは2020年中に核兵器の製造に十分な2.1tの低濃縮ウランを保有すると見ている。 (2011-093015)

 イラン核合意の検証に当たる国際原子力機関 (IAEA) が11月11日、イランの低濃縮ウラン貯蔵量が11月2日時点で、2,442.9kgに増加したとの報告書をまとめた。 濃度は4.5%以下だった。
 イラン合意が定める上限は202.8kgで、これを大幅に上回る状態が続いている。 (2012-111203)

2・1・4・2・1 高濃縮ウランの貯蔵

 国際原子力機関 (IAEA) が6月5日の報告書でイランのウラン濃縮度について、上限の3.67%を上回る4.5%の状態が続いており、大幅な核合意逸脱が続いているとしている。 (2007-060601)
2・1・4・3 各国の対応

2・1・4・3・1 IAEA の対応

 国際原子力機関 (IAEA) が6月5日、イランが過去に核兵器開発が行われていた疑いのある旧施設への立ち入りを数ヵ月にわたり拒否していることに対し、深刻な懸念を表明した。
 この日公表された報告書では、疑わしい施設では2003~2004年に核開発の痕跡をなくす大規模な措置が取られたとしたほか、IAEAによって指定されていない場所で核物質を使用し保管していた疑いがあると指摘している。
 IAEAは3月に公表した報告書で、イランが過去に3ヵ所の施設で行っていた核開発活動に関する質問に答えず、そのうち2ヵ所への立ち入りを拒否したことついてイランに警告していた。 (2007-060602)
2・1・4・3・2 米国の対応

特記すべき記事なし
2・1・4・3・3 欧州各国の対応

 英独仏の3ヵ国が1月14日に共同声明で、対イラン国連制裁の再開に道を開く紛争解決手続きを発動したと発表した。
 「紛争解決手続き」は核合意で定められた制度で、イランの違反をめぐり、合意加盟国間の協議で解決できない場合、国連安全保障理事会が対イラン制裁解除を維持するか否かを決める。 発動から制裁復活までには2ヵ月以上かかる。
 米、イランが対立を深める中、イランに合意復帰への圧力をかけ、外交による緊張解決を促した。 (2002-011402)
2・1・4・3・4 その他諸国の対応

サウジアラビア

 サウジアラビアのサルマン国王が11月12日に政府諮問機関への年次演説で、世界各国に対しイランの核開発に断固たる対応を取るよう呼び掛けた。 (2012-111204)

イスラエル

 消息筋が12月22日、核兵器を搭載している可能性のあるイスラエルの潜水艦Dolphinがスエズ運河を通過してペルシャ湾へ向かったことを明らかにした。
 スエズ運河通過はエジプト政府が承認した。 (2101-122310)

2・1・4・3・5 対イラン武器輸出入禁止の解除

 イラン外務省が10月18日、イランに対する国連の武器輸出入と関連の活動および金融サービスに課されたすべての制約が、2015年のイラン核合意に従って同日自動的に解除されたと発表した。
 イランが米国、中国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、EUと結んだ核合意は、対イラン武器禁輸を2020年10月18日から段階的に解除すると定めていた。 (2011-101802)

 イランとの武器取引禁止を定めた長年にわたる国連の措置が解除されたとのイラン政府の発表を受け、ポンペオ米国務長官が10月18日にイランへの武器取引は国連決議違反に当たるとの見解を示し、制裁につながると警告した。
 対イランの通常兵器の禁輸措置は、イランが2015年に世界の主要国と結んだ核合意を承認した国連決議に基づき、10月18日から段階的に解除されることが定められていた。 (2011-101902)

2・1・4・4 ウラン濃縮施設での事故

 イラン原子力庁が7月2日、国際原子力機関 (IAEA) の査察の対象となっている施設の1つであるナタンズのウラン濃縮施設で事故が発生したと発表した。
 この施設は大部分が地下にあり、その後に公表した写真では地上1階建ての建物の屋根と壁の一部が焼けているほか、ドアが一部吹き飛ばされている様子が確認され、火災と爆発が起きた可能性が指摘されている。
 匿名を条件にロイタの取材に応じたイラン当局者3人は、火災発生の原因はサイバ攻撃だったとの見方を示し、このうち2人はイスラエルが攻撃の背後にいる可能性があると述べた。
 ただ証拠は示さなかった。 イランは、自国の核関連施設に対するいかなるサイバ攻撃にも報復する姿勢を示した。 (2008-070402)

 イラン中部ナタンズの核関連施設で7月2日に起きた火災について、イランの治安当局者はサイバ攻撃を受けた可能性があるとして標的になったことが証明されたら反撃すると述べている。
 英BBC放送は当局による火災発生の発表に先立ち、「祖国のチーター」と名乗るイランの反体制組織から、ナタンズの施設を攻撃したとする電子メールを受け取っていたと報じた。
 イランでは6月26日にテヘランの東にあるパルチン軍事基地の近くで大きな爆発があり、国防省は民間の施設で起きたガス漏れが原因だとしているが、New York Timesは専門家が衛星写真を分析した結果、爆発はパルチン軍事基地に近いホジルのミサイル製造施設で起きたと報じた。
 ホジルではミサイルの液体・固体燃料を製造しているとされ、専門家の間では破壊工作を疑う見方も出ている。
 イランではこのほか、6月30日にテヘラン北部の診療所でガス漏れによるとみられる爆発で19人が死亡し、今月4日にも南西部アフワズの発電所で火災が起きている。 (2008-070603)

 イラン国営メディアが、ナタンズの核関連施設で7月に起きた火災についてイラン原子力庁が8月23日に破壊工作と確認したと報じた。 原子力庁報道官は火災で爆発が起きたとも指摘した。
 手口や実行者には言及せず、治安当局が「適切な時期に詳細を発表する」とした。
 関係筋によると、イラン当局は火災発生の早い段階から、イスラエルなどが関与した疑いがあるとみて捜査していたが、破壊工作との見方を公表したことでイランが今後、報復に出る可能性がある。 (2009-082403)

 ロイタ通信が、イランのサレヒ原子力庁長官が9月8日に中部ナタンズの核関連施設の近くに新たな地下施設を作り、高性能の遠心分離機を製造すると述べたと報じた。
 ナタンズの核関連施設は大半が地下にあり、国際原子力機関 (IAEA) の査察対象となっている。
 ナタンズの施設では7月に火災があり、イラン当局は高性能機の製造に遅れが出ると述べていた。 当局は破壊工作が行われたとしており、サイバ攻撃を受けたとの観測も出た。
 イランでは2020年夏にナタンズのほか首都テヘランの軍事基地の近くなどでも火災が相次いだ。 (2010-090902)

2・1・4・5 遠心分離機の組立施設建設を開始

 国際原子力機関 (IAEA) のグロッシ事務局長が10月27日、イランが遠心分離機の組立施設の建設を始めたと述べた。 一方で完成していないとしたうえで、機密情報だとして詳細は明らかにしなかった。
 イランメディアによると、イラン原子力庁のサレヒ長官は9月、核開発の中枢を担う中部ナタンズの核関連施設の一部が7月の爆発で破壊されたことを受け、近くの山間部にウラン濃縮に用いる遠心分離機の組み立てに使う新たな施設を建造すると表明している。 (2011-102802)

 ロイタが入手した国際原子力機関 (IAEA) の報告書によると、イランが主要国との核合意に違反して数百基におよぶ最先端のウラン濃縮用遠心分離機を地下施設に設置する計画である。
 地下施設は空爆に耐えられるように設計されているという。
 報告書では「イランが2020年12月2日に書簡で、ナタンツのウラン濃縮工場でIR-2m遠心分離機を連結したカスケード3列の設置を開始するとIAEAに通知してきた」とした。
 核合意ではイランが地下施設で使用できる遠心分離機は効率が劣る第一世代のIR-1のみとされている。 (2101-120501)

 イラン核合意の当事国である英仏独が12月7日に共同声明を発表し、イランによる新型の遠心分離機の設置計画は合意違反であり深刻な懸念だと批判した。
 英仏独はまた、1日にイラン国会が核開発強化を政府に求める法律を可決したことにも懸念を表明し、米国の合意への復帰を模索するバイデン次期米大統領と関係を構築する重要な機会を「危険にさらす」と警告した。 (2101-120705)

2・1・4・6 IAEA の査察に合意

 イランが国際原子力機関 (IAEA) との間で、これまでかたくなに拒否していた国内2ヵ所の核関連施設への査察受け入れで合意し、一転して協力姿勢を打ち出した。
 疑念が強まる核開発への透明性をアピールし、孤立回避と苦境脱却を図る狙いがありそうだが、査察を認めても、国際社会ではイランの核合意からの逸脱措置などに不満が強く、緊張緩和に向かうかは予断を許さない。 (2009-082705)
2・1・4・7 核開発科学者の殺害に伴う緊張

核開発科学者の殺害

 革命防衛隊に近いファルス通信が11月29日、イランの核開発で主導的役割を担ったとされるイラン人科学者ファクリザデ氏が首都テヘラン郊外で暗殺された事件は遠隔操作による自動式機関銃を使って無人で行われ、3分間で完了していたと報じた。
 また、国営のプレスTVは関係筋の話として30日、現場で回収された武器がイスラエル製だったことが判明したと報じた。
 これについてイラン政府は30日、首謀者はイスラエルで、在外の反体制派組織も加担したと主張し報復を警告しているが、イスラエルは暗殺への反応を控えている。 (2012-113002)

米空母のペルシャ湾展開

 ロイタ通信などが11月28日、米海軍空母Nimitzがペルシャ湾に展開していると報じた。
 イランは、核開発の主導的役割を担ったとされるイラン人科学者が何者かに暗殺され、対立するイスラエルや米国の関与を疑い報復を警告しており、米軍はイラン情勢の緊張悪化をにらみ、警戒を強めているもようだ。 展開したのは暗殺2日前の25日という。
 米第5艦隊の報道官は、特定の脅威があったわけではないと述べて暗殺との関連を否定し、トランプ政権が表明したアフガニスタンとイラクの駐留米軍削減の支援が目的で、いかなる脅威にも対抗し、撤収する米軍に対する敵の行動を防ぐためだと強調した。 (2012-112803)

2・1・5 軍備増強

2・1・5・1 北朝鮮との長距離ミサイル技術協力の再開

 ロイタ通信が匿名の米当局者を引用して9月20日、北朝鮮がイランとの長距離ミサイル計画で協力を再開したと報じた。 ただ両国がいつから協力を始め、いつ中断し、いつ再開したかについては返答を拒否した。
 またイランが2020年末までには核兵器製造に必要な核物質を十分に保有することになるだろうと付け加えた。
 この当局者は、米国政府が21日にイランを相手に通常兵器を売買した20人以上の個人および集団を制裁する行政命令などを出す予定と明らかにした。 (2010-092105)

 国連安保理の北朝鮮制裁委員会が9月28日に制裁履行状況に関する専門家パネルの中間報告書を公表し、北朝鮮の武器輸出を担う朝鮮鉱業開発貿易会社(KOMID)が武器禁輸制裁の対象国であるイランで活動を継続していると明らかにした。
 KOMIDは、北朝鮮がBMに関する装備や通常兵器を輸出する際の主要ルートに挙げられている組織である。
 イランの軍需企業に対し、液体燃料のBMやロケットの地上試験に使うバルブ、電子部品、計測機器などを販売してきたとされる。 (2010-092902)

 米政府当局者が9月20日、北朝鮮が再びイランのミサイル開発を支援していると述べた。 イランのKhorramshahrは北朝鮮の火星-10を元にしていると見られている。 (2011-093015)

 米議会調査局 (CRS) のホームページ上で1月9日に更新した「イランの弾道ミサイルと宇宙発射プログラム」と題する報告書で、「イランは依然として核心部品と要素を北朝鮮に依存している可能性がある」と明らかにした。
 CRSはイランのMRBMは核心要素と部品を北朝鮮に依存している見ており、特にShahab 3は北朝鮮のNo Dongを元にして800~1,000km射程の多様なバージョンが存在すると分析している。 (2002-011202)

2・1・5・2 BM 戦力

2・1・5・2・1 BM 戦力の強化

BM の保有数

 米中央軍司令官のマッケンジー大将が3月10日に議会上院軍事委員会で、イランはこの地域で米軍及び同盟国の脅威となっているBMが2,500~3,000基あると述べた。
 マッケンジー大将はBMの種類を特定しなかったが、その殆どがSRBMと見られる。 (2004-031304)

 米中央軍 (CENTCOM) 司令官のマッケンジー大将が3月10日に上院軍事委員会で、イランが2,500~3,000発のBMを保有し、米国と同盟国の脅威になっていると述べた。
 同司令官はイランが保有しているBMの種類には言及しなかったが、その多くはSRBMと見られることがスルタン王子空軍基地 (PSAB) に米軍を集中している理由とした。
 PSABはイラン本土から580kmの距離にあり、米軍は少なくとも1個中隊のPatriotを配置している。 (2005-031809)

地下発射基地の公開

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が11月4日、BMを連射または斉射する地下施設の映像を公開した。  映像ではEmad BMが小型の移動車に乗せられて地下施設に入りガントリクレーンで移動型発射機に似た固定式のエレクタに搭載されてレール上の発射パッドに搭載される。 レール上には5発のBMが載せられてトンネル内を別の発射位置に移送されるが、発射位置は明らかにされていない。 (2101-111106)

2・1・5・2・2 新型 BM

新型TBM Raad 500

 イラン革命防衛軍が2月9日、新型TBM Raad 500を公表した。
 第四世代TBMであるRaad 500はロケットモータ殻が炭素繊維製で重量がFateh-100の半分になり射程はFateh-100より200km延びて500kmになったという。
 終末誘導用に4枚のカナード翼を持ち、誘導精度向上はイラクのAl Assad米空軍基地攻撃で実証されたとしている。 (2003-020902)p>  イラン革命防衛軍が2月9日にFateh-110 TBMの軽量射程延伸型であるRaad-500を公表した。 Raad-500は弾体を炭素繊維樹脂化することで重量をFateh-100の半分にすることで射程を200km延伸している。
 また弾頭を機動型 (MaRV) 化したことで精度を上げており、公開されたTVの高速撮影映像では弾頭が正確に標的に着弾していた。 (2003-021203)

Soleimani を公表

 イランが8月20日に新型BMを公開した。 ハタミ国防軍需相は射程を1,400kmと説明した。
 BMは空爆で死亡したQads部隊司令官の名を取りSoleimaniと命名された。 (2009-082002)

射程と精度を向上させた Khorramshahr

 イランのFars通信が8月16日に、射程と精度を向上させた最も強力なBMであるKhorramshahrの発射の様子を報じた。
 KhorramshahrのRVは40㎡の標的に命中したという。
 独仏英は2019年3月に安保理に連名で書簡を送り小型化したRVを搭載したKhorramshahrについて警鐘を鳴らした。
 1,500kgのRVを搭載したKhorramshahrは弾頭をShahab-3の750kg RVにすることで、射程を2,000kmから3,000kmに延伸したという。 (2010-082615)

Shahed Haj Qasem

 イランが防衛企業の日と定めた8月21日、1月3日の米軍による攻撃で死亡した2名の名を冠した新型ミサイル2種類を公表した。
 元Qods部隊司令官Qasem Soleimani少将の名を冠した射程1,400kmのBMで、全長11m、重量7t、弾頭重量500kgで、大気圏にMach 12で再突入し、Mach 5で着弾するという。 (2010-090229)

2・1・5・2・3 特異な BM

機動式再突入弾頭搭載 BM の発射試験

 イランの国連大使が2019年12月7日に安保理に書簡を送り、イランが最近行った機動式再突入弾頭搭載BMの発射試験が安保理決議第2231に違反するという英独仏の見解を根拠がないと否定した。
 2019年4月22日に公表されたメディア報道を見ると新型のShahab-3の弾頭が4枚の三角翼を持ち、その弾頭形状はイランが2018年9月30日にシリア東部のISISに対し発射したQiamと良く似ており、イエメンのフーシ派がサウジアラビアを攻撃したBurkan-2Hとも似ているという。
 Burkan-2HはQiamの射程を1,000km以上にした長距離型と見られている。 (2002-121801)

F4CL ALBM

 イランがロケット砲弾の開発を進めていて、5月9日にSu-22からの投下試験を実施した。
 このロケット弾はFadjr-5Cを短くしたF4CLで2019年1月に行われた展示会で公表されている。
 胴径333mmのFadjr-5CはFadjr-5ロケット弾の誘導型で2017年2月に公表されていた。
 F4CLはイスラエルIAI社とIMI社が開発した、IMI社製306mm Extra誘導ロケット弾を元にしたRampageと良く似た構想で造られている。 (2007-052008)

BM の地中発射

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が7月29日、ペルシャ湾付近の砂漠で実施した演習の最終日に、地下深くからのBM発射に成功したと発表した。
 国営TVが報じた空撮映像には、日中の砂漠で爆発が起きて煙と砂塵が巻き起こり、上空に4発の飛翔体が打ち上がる様子が映っている。
 IRGC航空宇宙部隊のハジザデ司令官は国営TVで、地中に埋まったミサイルが突然、地面を突き破り、正確に標的を攻撃すると説明し、世界初だと強調した。 (2008-073003)

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が7月28~29日に行ったGreat Prophet 14年次演習で、地下に埋設したBMを発射した。
 発射されたのはFateh-110シリーズとみられるTBM 2発で、別の映像では初めてFateh-110が半没のキャニスタから発射されるところも写っていた。
 またこの演習の映像には、Fateh-110がTHAADのレーダであるAN/TPY-2のモックアップに命中する場面もあった。 (2010-080512)

Zolfaghar Basir ASBM

 イラン革命防衛軍がテヘランに国立宇宙航空公園を開設し、新たに開発したZolfaghar Basir ASBMを展示した。
 Zolfaghar Basirの弾頭後部には小さな透明のドームがあることからEO誘導であると推測される。
 Fateh-110シリーズTBMでは2011年に射程300kmのKhalij Fars ASBMが公開されているがZolfaghar Basirの射程は700kmであるという。
 Khalij FarsはEOシーカを搭載していたがレーダ誘導型のHormuzもあった。
(2010-092906)

 イラン革命防衛軍がテヘランに国立宇宙航空公園を開設し、新たに開発したZolfaghar Basir ASBMを展示した。
 Zolfaghar Basirの弾頭後部には小さな透明のドームがあることからEO誘導であると推測される。
 Fateh-110シリーズTBMでは2011年に射程300kmのKhalij Fars ASBMが公開されているがZolfaghar Basirの射程は700kmであるという
。 Khalij FarsはEOシーカを搭載していたがレーダ誘導型のHormuzもあった。
 Zolfaghar Basir公表の直前にはイラン海軍が射程1,000km以上の対艦ミサイルShahed Abu Mahdiを発表している。 (2012-100711)

2・1・5・2・4 人工衛星打ち上げ

2月9日: 打ち上げ失敗

 イランが2月9日、テヘラン東方300kmにある打ち上げ基地から人工衛星を搭載したSLVを発射したが、衛星の軌道投入に失敗した。
 当局者はイランのメディアに、衛星が軌道に乗るために必要な速度に達しなかったと語った。 (2003-021002)

4月22日: 打ち上げ成功

 イラン革命防衛隊が4月22日、同国初の軍事衛星の打ち上げに成功したと発表した。
 国営TVは、軍事衛星Noorは中部の砂漠から22日朝に打ち上げられ、地上から425kmの軌道に乗ったと報じたた。
 革命防衛隊は、3段式ロケットのQasedを使って打ち上げたと説明したが、技術面の詳細は明らかにしていない。 Qasedは固形燃料と液体燃料の両方を使っているという。 (2005-042205)

 イラン革命防衛軍が4月22日、同日早朝にDasht-e Kavir砂漠から初の軍事衛星Noor-1を打ち上げ、高度425kmの軌道投入に成功したと発表した。
 これに先立ちイランは1月15日にSimorgh SLVでPayami画像衛星の打ち上げを、2月6日にSafir SLVでDousti衛星の打ち上げを試みていた。
 Safir SLVは8月29日にNahid衛星の軌道投入に成功していた。 (2006-042901)

 米宇宙軍司令官のレイモンド大将が4月23日、22日にイラン革命防衛軍が打ち上げたNoor-1衛星は3U CubeSatと見られると述べた。
 3U CubeSatは重量1.33kg、寸法10×10×10cmの箱を3個重ねたものである。 (2007-050603)
【註】CubeSatとは数kg程度の小型人工衛星で、3Uとは30×10×10cm寸をいう。
 因みに10×10×10cmは1U、20×10×10cmは2Uと呼ばれる。

2・1・5・3 生物・化学兵器

 米財務省が12月3日、化学兵器開発に関与したとしてイランの防衛技術革新機構 (SPND) 傘下の団体と幹部1人を独自の制裁対象に指定した。
 同省の声明によると、団体は無力化ガスの開発に関わったという。
 ムニューシン財務長官は声明で「イランの大量破壊兵器の開発は、近隣と世界の安全保障にとって脅威だ」と非難した。 (2101-120402)
2・1・5・4 CM / UAV の開発整備

Ababil-3 UAV

 イランが4月18日、3種類の引き渡し式で武装型Ababil-3 UAVを公表した。 列席したハタミ国防相によるとAbabil-3の航続距離は150kmという。
 工場で11機並べられたAbabil-3の内の1機が翼下にTV誘導弾を搭載していた。 このTV誘導弾はMohajer-6が搭載していたGhaemファミリの誘導爆弾とみられる。
 標的機と似たUAVも2機が爆装して展示され、そのうちの1機にはKarrar-3と表示されていた。
 また標的機とみられるジェット機も展示されていた。 国防相によると重量470kg、速力900km/h、航続距離1,000km、滞空能力180分、上昇限度40,000ftで試験中であるという。 (2006-042909)

ASCM の誤射事件

 イラン海軍が5月10日にJask沖のオマーン湾で訓練中に、ASCMが誤って支援船Konarakに当たり、19名が死亡し、15名が負傷した。
 支援船Konarakは全長47mで排水量420tである。 (2007-052007)

短距離および長距離の新型CM発射試験

 イラン海軍が6月18日、短距離および長距離の新型CM発射試験を行ったと発表し、オマーン湾で行われた試射の画像をウェブサイトに掲載した。
 画像には艦艇や車両の後方部からミサイルが発射される様子や、沖合の船が爆発する様子が写っていた。
 イランでは5月10日のミサイル試験で同国艦が誤射されて19名が死亡する事故が起きており、同様の軍事演習はそれ以来初となる。 (2007-061809)

 イラン国営IRNA通信が6月18日、イラン海軍がオマーン湾で行った演習でASCMの発射試験を行い、ミサイルは280km離れた標的ブイに直撃したと報じた。
 発射されたミサイルは2種類で、1発は車両から、1発は艦上から発射された。
 今回の発射は5月にホルムズ海峡付近で実施した試験で洋上標的と謝ってイラン艦を誤射し、19名が死亡、15名が負傷した事故以来である。 (2007-061811)

Muhandes を公表

 イランが8月20日に新型のCMを公開した。 ハタミ国防軍需相は射程を1,000kmと説明した。
 CMはシーア派武装組織副司令官の名からMuhandesと命名された。
 ロウハニ大統領は「ミサイル、特にCMはわが国にとって非常に重要であり、2年足らずで射程を300kmから1,000kmに伸ばしたのは大きな成果だ」と述べた。 (2009-082002)

 イランが防衛企業の日と定めた8月21日、1月3日の米軍による攻撃で死亡した2名の名を冠した新型ミサイル2種類を公表した。
 Qasem Soleimani少将と共に死亡したイラクの親イラン武装勢力司令官の名を冠したCMで、イラン国防相によると従来のイランのCMの3倍の射程を有するというが、どの様にして目標情報を得るかは明らかにしていない。 2019年2月に公表されたHoveizehの射程は1,350kmと言う。 (2010-090229)

2・1・5・5 艦船の増強

6,000t駆逐艦の建造

 イランが4月4日、排水量6,000tの駆逐艦を建造すると発表した。
 イランが国内で建造した最大の艦艇は、1970年代に就役した英国製で排水量1,400tのAlvand級を元にした1,500tのMawj級3隻である。 (2006-041501)

新型高速ミサイル艇 (FAC-M) を100隻以上

 イラン革命防衛軍海軍 (IRGCN) が5月28日、新型高速ミサイル艇 (FAC-M) を100隻以上受領したと発表した。
 これらはAshoura級、Zolfghar級、Haidar級、Raad級などで、公開された図ではIRGCNの本拠であるBandar Abbasで少なくとも90隻が3梯隊をなして並んでいた。
 殆どが機銃と多連装ロケット発射機を装備した従来の型であるが、5隻は2002年に北朝鮮から購入したPeykaap魚雷艇の発展型で米海軍がPeykaap Ⅱと呼ぶ型で、5隻は更にその発展型で米海軍はPeykaap Ⅲと呼んでいる。 (2008-061011)

2・1・5・6 防空能力の強化

長距離対空レーダの強化

 イラン軍が4月19日、明らかに在来機種の改良型とみられる2種類の対空レーダを公表した。

Khalij Fars

 航空機及びBMを対象とした捕捉距離800kmの低周波の長距離バイスタティックレーダである。

Moraqency

 捜索距離400kmの3Dフェーズドアレイレーダで、中低空の小型航空機やミサイルを捕捉する。

(2005-042208)
【註】Khalij Farsは八木アンテナのアレイ形状からVHFレーダとみられ、HF波を使用する電離層反射式のOTH-Rではないと見られる。
 アレイが円形に配置されていることから360゚監視であるが、バイスタティックというものの送信アンテナは見当たらない。

 イランが4月19日に、Khalij Fars低周波バイスタティックレーダとトレーラ搭載のMoraqeb 3Dレーダの2種類の長距離レーダを公表した。 それぞれの捕捉距離は800kmと400kmという。
 Khalij Farsの設置位置は公表していないが、ホルムズ海峡に面した港町Bandar Abbasの北方30kmと見られる。
 低周波帯のKhalij Farsは4本の八木アンテナをつけたポール15本を直径26mに配置したもので、Tabasの東方28kmに設置されているNazirレーダと同型と見られる。
 Nazirは2012年に建設が開始され2015年8月に運用が開始された800kmレンジのレーダで、2015年9月に公表されていた。 (2006-042908)

 イラン革命防衛軍 (IRGC) 航空宇宙軍司令官のHajizadeh准将が10月6日に行われた6基目と7基目のGhadir長距離レーダ就役式典で、2020年内に8基を装備することになると述べた。
 同准将によるとGhadirは小型目標を350kmで捕捉でき、目標高度よっては1,000kmで捕捉追随できるという。
 このレーダはロシアのRezonans-NEシステムに酷似している。 (2012-101414)
【註】Rezonans-NEは2001年にIOCとなったVHF-bandの長距離レーダで、4面の100m×100mアンテナで360゚をカバーする。
 距離10~1,100km、高度100kmの範囲で500目標を追随でき、戦闘機大の目標であれば350kmで捕捉できるという。

3 Khordad SAM の船上発射

 イランの通信社TasnimとFarsが6月19日、革命防衛軍が6月6日にFarsi島近海で輸送船Shahid Siyavashiaの船上で3 Khordad SAMの発射試験を行ったと報じた。
 両通信社が報じた映像にはShahid Siyavashiaの船上に3 KhordadのTELとレーダが写っていた。
 3 KhordadはGlobal Hawkの撃墜に使われている。 (2009-070109)

Bavar-373

 イランが10月21~23日に実施したGuardians of Velayat's Sky 99演習で、イランが開発した長距離SAM Bavar-373を公開した。
 IRGCと正規軍の防空司令部があるKhatam al-Anbia基地で公開されたのは発射機だけであったが、従来10×10車に搭載されていたのが8×8車搭載になり、2×2発搭載が2発搭載になっていた。 (2012-110417)

2・1・6 部隊の海外派遣

シリア派遣イラン軍

 イスラエル軍が5月21日、シリアのイラン軍がイスラエル軍による攻撃と自国の財政状況及びCOVID-19パンデミックにより、シリアから徐々に撤退していることを明らかにした。 (2006-052102)

 イランのラフマーニ駐日大使が5月22日にTV電話会議での記者会見で、イランはシリアでのプレゼンスを維持すると述べ、シリアでイラン革命防衛隊が当面は駐留を続けるという見通しを示し、イランがシリアから撤収するとの一部の報道を否定した。 (2006-052203)

2・2 シリア内戦

2・2・1 Idlib県での攻防

2・2・1・1 アサド軍の攻勢

 シリア国営SANA通信が2019年12月26日に、シリア軍がIdlib県の村Al-Surmanを奪取した映像を報じた。
 このことからトルコ軍がシリア北部に設置した監視哨の1ヵ所が、トルコが支援する武装勢力と繋がる北方を分断され、シリア軍に包囲されていることが明らかになった。 (2002-010201)

 シリア人権監視団が、シリアのアサド政権軍が1月28日に反体制派の最終拠点であるIdlib県第2の都市Maarrat Numanを制圧したたことを明らかにした。 政権軍は全土奪還に向け大きく前進した。
 Maarrat Numanはダマスカスと北部アレッポを結ぶ交通の要衝で、AP通信によると2012年から反体制派の支配地域となっていた。 (2002-012901)

2・2・1・2 トルコの大規模な兵力投入

 シリア政府軍が停戦に違反してIdlib県と近くのAleppo近郊に侵攻したのに対抗して、トルコ軍の大車両縦隊が武装勢力が支配するシリア北西部に入った。
 シリア人権監視団によると、シリアに入ったトルコ軍車両は195両にのぼるという。 (2003-020204)

 トルコ高官が2月9日、シリア政府軍の急速な進撃を食い止めるためIdlibに多くの部隊や軍装備品を送ったとしたうえで、あらゆる選択肢がテーブル上にあると述べた。
 トルコがシリア領内に持つ12ヵ所の軍事拠点の内いくつかはシリア政府軍に包囲されているため、これを増強するMBTやAPCなどを運ぶ車両部隊がすでにシリア入りしていて、8日には軍用車両300両がIdlib入りし、2月の総数は1,000両に達したという。 (2003-021003)

2・2・1・3 アサド政権軍とトルコ軍の衝突

2月3日: アサド政権側による砲撃

 トルコが2月3日、シリア北西部Idlib県でトルコ軍兵士が攻撃され5名が死亡したため、報復としてシリアのアサド政権軍に攻撃を行ったと発表した。
 トルコ国営アナドル通信によるとアカル国防相が、トルコ軍が54ヵ所で報復攻撃を行い、シリア政府軍の兵士76名を無力化したと発表した。
 これについてシリア人権監視団は、トルコの報復でシリア政権軍兵士13名が死亡したとしているが、シリア国営テレビは、政府軍に死者は出ていないと報じた。 (2003-020401)

 シリアの反体制派武装勢力が最後の拠点とする北西部Idlib県で2月3日、アサド政権側による砲撃でトルコ軍兵士ら8名が死亡した。 これに対してトルコ軍が報復作戦を行い、シリア人権監視団によると政権側兵士13名が死亡した。
 トルコは2018年に、アサド政権の後ろ盾であるロシアとの間でIdlibに非武装地帯を設けることで合意し、監視任務などのために部隊を駐留させているが、トルコのエルドアン大統領は、Idlib情勢が「収拾不能」になったとして、作戦継続の意向を示した。 (2003-020402)

2月7日: アサド政権軍がトルコ軍部隊を空爆

 シリア反体制派最後の拠点、北西部イドリブ県で2月7日、アサド政権軍がトルコ軍部隊を空爆しトルコ当局によると兵士29名が死亡した。 政権軍との衝突が激しくなって以来、トルコ側にとって最大の被害となった。
 エルドアン大統領は緊急治安会議を開催し、アサド政権に報復することを決めた。
 戦闘の激化は必至でシリア内戦は重大局面を迎えた。 (2003-022801)

2月10日: アサド政権軍の空爆にトルコ側が報復

 シリアのアサド政権軍は2月10日、北西部Idlib県で進軍を続け、トルコ国防省によるとトルコ軍の拠点が攻撃を受け、兵士5人が死亡した。
 トルコのメディアによると、攻撃があったのはシリア北部の中心都市アレッポと同県中心部を結ぶ道路が通る要衝タフタナズの近辺で反体制派が制圧した政権軍の旧空軍基地があり、トルコ軍はここで軍事拠点の構築を進めているという。 (2003-021006)

 シリアIdlib県で2月10日にアサド政権軍による砲撃を受けてトルコ兵士5人が死亡し5人が負傷したのに対しトルコ軍は同日、大規模な報復攻撃を実施した。
 トルコ国防省によると、政権側115ヵ所を攻撃し、戦車などを破壊し101人を殺害した。 (2003-021102)

2月20~21日: アサド政権軍とトルコが支援するシリア反体制派が交戦

 シリア内戦で反体制派の最後の牙城となっている北西部Idlib県で、アサド政権軍と反体制派を支援するトルコ軍の戦闘が激化している。
 アサド政権が全土の掌握を急いでいるのに対し、トルコは難民流入の抑止などを名目にシリア北部で緩衝地帯を広げる狙いだとみられる。 (2003-021403)

 トルコのエルドアン大統領が2月19日、シリアのアサド政権軍が反体制派の拠点である北西部Idlib県に進攻するのを止めるため、トルコ軍が軍事作戦を開始するのは時間の問題だと警告した。
 トルコ軍は既にIdlibに多数の兵士を投入し、追加の部隊をシリアとの国境に向けて移動させており、トルコ軍とアサド政権軍が全面衝突する可能性が高まっている。 (2003-022001)

 シリア北部で反政府勢力を支援していたトルコ兵2名が2月20日、アサド政権側の空爆で死亡した。 これでシリアでのトルコ兵の死亡は少なくとも15名になった。
 トルコのエルドアン大統領は2月12日に、もしこれ以上のトルコ兵が死亡または負傷することがあれば、トルコはシリア全域で作戦を実施すると述べていた。 (2003-022002)

 内戦が続くシリアの北西部Idlib県で2月20日、アサド政権の部隊とトルコが支援するシリア反体制派が交戦し、シリア人権監視団によるとトルコ兵2名を含む27人が死亡した。
 シリア人権監視団によると、Idlib県のナイラブ一帯にトルコ軍の支援を受ける反体制派が攻撃を仕掛けたため政権側が応戦し、衝突は数時間にわたって繰り広げられた結果、トルコ兵のほか反体制派武装組織の14人、政権側の11人がそれぞれ死亡した。
 これによりトルコと、アサド政権の後ろ盾であるロシアの間で緊張が高まる恐れがある。 (2003-022101)

 トルコが支援するシリアの反政府勢力が2月20日にAl-Nayrabで、トルコから支給されたM114榴弾砲(155mm砲、自衛隊も装備していた)の火力支援を受けACV-15(トルコ製水陸両用戦闘車)及びM113 APCでアサド軍に攻撃をかけた。
 この攻撃はトルコ軍のT155榴弾砲中隊とT-122 Sakarya MLRSの火力支援も受けた。
 これに対しロシアはSu-24による空爆で反撃し、攻撃は失敗した。
 この2日前にロシアは複数のSu-24がロシア南部からイランを経由してシリアに増強されていた。 (2003-022104)

2月27日: トルコ軍を空爆

 2月27日にシリア北西部Idlib県で、アサド政権軍の空爆でトルコ軍兵士33名が死亡し、同地域で2月に死亡したトルコ兵士は54名となった。 トルコは28日に報復攻撃を実施した。
 RIA通信の28日の報道によると、ロシア軍はトルコ軍と常時連絡をとりあっているが、27日の攻撃については、事前に対象地域にトルコ軍兵士がいるという連絡はなかったと述べ、この空爆にロシア軍は参加しておらず、もしトルコ軍がいると知っていたら、トルコ兵の防護に全力をあげていたと主張したという。
 インタファクス通信は28日に、CMを搭載したロシア黒海艦隊の2隻がシリア沖に派遣されると報じた。 (2003-022803)

 ロシア国防省が、2月27日から8日間に渡りトルコが行った攻撃でロシア製のPantsir-S1防空システム2両が破壊されたと発表した。
 一方トルコのエルドアン大統領は3月10日、Idlibへの攻撃を阻止するためトルコがUCAVによる攻撃を行い、シリア軍のPantsir 8両を破壊したと述べた。
 ただロシア国防省によるとIdlibでシリア軍を援護しているPantsir-S1は4両以下であったという。 (2005-031810)

 シリア北西部Idlib県でアサド政権軍の空爆によりトルコ軍兵士33名が死亡したのを受け、トルコのアカル国防相は2月28日に、同国が報復として政権軍の施設など200ヵ所を攻撃し、ヘリコプタや戦車、弾薬倉庫を破壊したと述べた。
 一方、アサド政権の後ろ盾であるロシアのラブロフ外相は29日、軍事的緊張の緩和が必要だという点でトルコ側と一致したと述べたが、戦闘が収束するかは不透明である。 (2003-022901)

3月1日: シリア軍機を撃墜

 トルコ国防省が、シリア北西部Idlib県の上空で3月1日に、トルコ軍がトルコ側に攻撃を加えようとしていたアサド政権軍のSu-24 2機を撃墜したと発表した。  国営シリア・アラブ通信は「パイロットはパラシュートで脱出し、無事だ」と報じている。 (2004-030102)

 トルコのアナトリアが3月1日、アカル国防相が「Idlibにおける2月27日の憎むべき攻撃を受け、Spring Shield作戦が成功裏に続けられている」と発言したと報じた。
 ただ同相はロシアとの衝突を望んだり意図していないとも述べた。 (2004-030103)

3月1日: トルコが UAV 攻撃

 シリア人権監視団が、トルコが3月1日にシリア北西部のIdlib県にUAVで攻撃を実施し、シリア政府軍の兵士19人が死亡したことを明らかにした。
 同監視団によると、19人の兵士はジャバル・ザーウィヤ地域での軍車列およびマーラトヌマン市付近の基地を狙った攻撃で死亡した。 (2004-030203)

3月2日: アサド政権軍、サラケブに再進駐

 シリアのアサド政権軍が3月2日、反体制派の拠点である北西部Idlib県の要衝サラケブに再び進駐した。 シリア国営テレビの記者によると、反体制派の撤退を受け、アサド政権軍は同市内をパトロールしているという。
 シリア人権監視団は、反体制派はサラケブを奪還することを狙っており、反体制派筋は同市の西部で衝突が継続していると述べている。
 また反体制派を支援するトルコはアサド政権軍への攻撃を継続する考えを示した。 (2004-030302)

3月6日: トルコ軍、シリア政府軍に UAV 攻撃

 トルコ国防省が3月6日、シリア北西部Idlib県で、トルコ軍への攻撃に対する報復としてロシアとの停戦合意発効前の5日に、シリア政府軍にUAV攻撃を行ったと発表した。
 トルコ国防省によると、攻撃によってシリア政府軍の21名を殺害した。
 エルドアン大統領とプーチン大統領は同日、Idlib県で6日から停戦することで合意し24:00に発効したが、攻撃は16:00前後に実施したという。 (2004-030602)

 シリアで2月27日にトルコ兵34名が殺害された報復として、3月5~6日の深夜に停戦が発効するまでの8日間にトルコは広範囲でUAVを使用し、数百名のシリア人を殺害し、数十両の戦車、装甲車、砲を破壊したとしているが、少なくとも4機を失い、シリアの対空火力に対する能力が疑問視されている。
 攻撃にはBayraktarTB2武装UAVが使用され、Hatay空港から発進したとみられる。 (2004-030604)

 シリアのIdlibで、停戦が発効する3月5日~6日にかけての深夜にトルコがシリア政府軍に対しUAVによる攻撃を行った。 これは2月27日にシリアの攻撃でトルコ側に34名の犠牲が出たことへの報復で、トルコ国防省によるとシリア側で数百名が負傷し、戦車や装甲車両及び砲など数十両を破壊したという。
 ただ、この戦闘でトルコは少なくとも4機をシリア側の防空システムにより撃墜されており、トルコの能力が疑問視されている。 (2005-031101)

2・2・1・4 アサド政権軍の優勢

 シリア国営メディアが2月8日、アサド政権軍が反体制派最後の拠点となっている北西部Idlib県の要衝サラケブを制圧したと報じた。
 サラケブは、首都ダマスカスと北部アレッポを結ぶ幹線道路と、地中海岸の西部ラタキアとアレッポを結ぶ幹線道路が合流する交通の要衝で、政権軍は今月初めに町を包囲し、敗走した反体制派が残した爆発物や地雷などの除去を進めていた。
 政権軍は1月下旬に、同県の主要都市Maarrat Numanを反体制派から奪還しており、それに続く戦果となる。 (2003-020802)

 在英のシリア人権監視団が2月11日、アサド政権軍がシリアの南北を貫く幹線道路M5を2012年以来初めて完全に制圧したと明らかにした。
 監視団によれば、政権軍はIdlib県近郊で反体制派が支配していたM5の一部を新たに攻略した。 これに対し、アサド政権軍と衝突が続くトルコ軍の増援部隊もIdlib県に到着しているという。
 M5はダマスカスからIdlib県を通り、北部の商都アレッポを結ぶほか、南部ダルアー県からヨルダンにもつながっている。
 M5による軍用車両など物資の移動が容易になれば、反体制派を駆逐してシリア全土の掌握を目指すアサド政権の攻勢が一段と強まると見られる。 (2003-021106)

 シリアのアサド政権軍が2月16日、反体制派の拠点である北西部アレッポ県の大部分を制圧したと発表した。
 同軍は、アレッポとダマスカスを結ぶ幹線道路から反乱軍を一掃し、戦略的に大きく前進した。 シリアの2大都市を結ぶ幹線道路は数年ぶりの再開である。 (2003-021801)

2・2・2 外国勢力の介入

2・2・2・1 米国主導の有志国連合

2・2・2・1・1 政権軍と米有志連合が衝突

 米軍主導の有志連合が声明で、シリア北東部カミシュリ近郊で2月12日朝に巡回中に政権側部隊が設けた検問所で小火器による攻撃を受けたため、自衛のため応戦したと発表した。 部隊は無事に基地に戻ったという。 当時の状況は調査中と説明している。
 シリア国営メディアは12日、有志連合部隊がアサド政権軍の検問所を通過しようとした際に群衆へ発砲し、市民1人が死亡、1人が負傷したと報じている。
 群衆は「米国の占領部隊」を追い返そうとして、装甲車4台を破壊したという。 (2003-021202)
2・2・2・1・2 米兵力の動向

在シリア米軍兵力の縮小

 米政府当局者が8月28日、イラク駐留軍を現在の5,200名から向こう2~3ヵ月以内に3,500名に縮小させると明らかにした。
 米国とイラクは6月に駐留米軍の縮小を確認しており、トランプ米大統領も8月20日のイラクのカディミ首相と会談で、米軍の撤収を改めて確約した。
 国防総省からこの件に関するコメントは得られていない。 (2009-082902)

在シリア米軍兵力の増強

 米中央軍 (CENTCOM) 報道官が9月18日、シリア北東部に駐留する米軍の兵士と装備を増強すると発表した。
 報道官は声明で、同軍がSentinelレーダの配備、戦闘機によるパトロール頻度の増加、Bradley IFVの配備を実施したと発表した。
 匿名を条件に取材に応じた米当局者によると、増強されるBradleyは6両を超えず、そのために派遣される兵士は100名以下という。
 駐留米兵の削減に向け圧力がかけられているが、同地域の米軍とロシア軍の関係は緊張している。 同地域は、米軍および米軍と同盟関係にあるクルド軍が掌握している。 (2010-091903)

2・2・2・1・3 米国主導有志国連合の空爆

 米主導の有志国連合軍が11月4日、連合軍が2014年8月から2020年9月までの6年間にイラクとシリアで行った空爆は34,917回に上ることを明らかにした。 (2012-110604)
2・2・2・2 ロシア軍の直接介入

3月5日: ロシア軍が空爆

 シリア人権監視団、シリア反体制派の最後の拠点となっている北西部Idlib県で3月5日、ロシア軍による空爆があり、子ども1人を含む民間人少なくとも15人が死亡したと発表した。
 それによると、5日00:00過ぎにマーラトミスリン郊外の国内避難民が集まる場所が空爆された。 負傷者の多くが重体で、死者数は増える恐れがあるという。
 空爆が実施された同日には、モスクワを訪れたトルコのエルドアン大統領がプーチン大統領とイドリブ県内の状況について協議している。 (2004-030507)

6月3日: ロシア軍が空爆

 ロシア軍機が6月3日早く、シリア北西部Idlib県近くで過去3ヶ月で初めて反政府勢力への空爆を行った。
 ロシアとトルコは3月上旬以来この地域での停戦を行ってきた。 (2007-060405)

10月26日: ロシア軍が空爆

 在英NGOのシリア人権監視団が、シリア北西部で10月26日に政府軍を支援するロシア軍による空爆があり、トルコが支援する反体制派の戦闘員78人が死亡したと発表した。
 3月の停戦合意以降、最多の死者が出たという。
 同監視団によると、ロシア軍機による空爆の対象となったのは、Idlib県Jabal Duwayliにある反体制派組織Faylaq al-Shamの訓練キャンプで、負傷者も90人を超えているという。 (2011-102604)

2・2・2・3 トルコの介入

中距離SAM Hisar-O の展開

 トルコが6月22日、シリアのIdlib近郊に射程が25kmある国産のHisar-O中距離SAMを配備したことを明らかにした。
 Hisar-OはHAWK SAMの後継であるが、3月にはIdlib南5kmにHAWK 1個中隊が展開していたのが確認されていた。
 Hisar SAMには短距離型のHisar-Aもある。 (2009-070111)

2・2・2・4 ロシアとトルコで停戦

 シリアでアサド政権軍とトルコ軍の戦闘が続くなか、政権側の後ろ盾であるロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が3月5日にモスクワで首脳会談を行った。
 プーチン大統領は冒頭、状況は私たちの対話を必要とするほど緊張しているとしたのに対し、エルドアン大統領も会談での決定が状況を緩和するだろうと応じたが双方の隔たりは大きく停戦で合意できるかが焦点である。
 ロシアはシリア内戦の過程で同国内に新たな軍事基地を得ており、アサド政権の意向に反するようなトルコの提案を受け入れるのは困難とみられる。
 アサド政権とロシアは、トルコがイドリブの反体制派武装勢力の武装解除を約束通り進めず、難民流入の防止を名目に実効支配を進めていると批判してきた。 (2004-030506)

 ロシアとトルコの大統領が、シリア北西部で3月5日深夜から停戦することで合意したと発表した。
 また、Idlib県を東西に走る国道沿いに安全地帯を設けることでも合意した。 (2004-030509)

 トルコとロシアの合意で3月6日に停戦が始まったシリア北西部Idlib県では、重要な交通網の支配を巡りトルコが譲歩しアサド政権が優位を固めた。
 合意では、Idlib県を走る道路M4に沿って幅12kmの安全地帯を設け、ロシア軍とトルコ軍がパトロールする。 (2004-030603)

 ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領は3月5日にシリア北西部Idlib県を東西に貫く高速道路M4の南北それぞれ6kmを緩衝地帯とし、共同パトロールを行うことで合意したのを受け、15日にロシア軍とトルコ軍による共同パトロールが行われた。 両国はパトロールを通じて停戦の定着を目指す。
 シリア内戦は15日で10年目に突入したが、イドリブではたびたび停戦が破られており、収束はなお見通せない。 (2004-031601)

2・2・2・5 ロシア軍と有志国連合軍の遭遇

 シリア北東部で通常のパトロールを行っていた対ISIS連合軍の車列がDayrick近くでロシアの車列と遭遇した。
 この際に米軍車両がロシア軍車両に衝突され、米兵数名が負傷した。 (2009-082607)
2・2・2・6 イランの直接介入

 イラン政府が「テロとの戦い」と米国の圧力への対抗を目的としたシリアとの二国間軍事協定の一環として、シリアの防空システムを強化すると述べた。
 イラン国営TVによると、バゲリ参謀総長は今回の協定では、両国の軍事協力を増強させるためシリアの防空システムを強化すると言明した。
 2011年にシリアが内戦に突入して以降、イスラエルはシリアで数百回に及ぶ空爆を実施し、イラン勢力もその目標となってきたが、イランはこれまで常に自国軍のシリア派遣を否定し、シリアに軍事顧問団のみ駐留させていると述べている。 (2008-070901)
2・2・3 化学兵器の使用

 化学兵器禁止機関 (OPCW) が4月8日、シリアで2017年3月下旬に起きた3回の化学兵器攻撃はアサド政権軍が行ったとの報告書を発表した。
 報告書はシリア軍の軍用機やヘリコプタが同国北西部ラタミナで
① 24日、サリンを詰めた爆弾を投下
② 25日、塩素ガスを詰めた筒を病院に投下し、屋根を貫通して破裂
③ 30日、サリンを詰めた爆弾を投下
などとしている。
 OPCWが化学兵器使用の実行組織を特定したのは初めてで、化学兵器使用を否定してきた同政権と後ろ盾のロシアの反発は必至と見られる。 (2005-040901)

 化学兵器禁止機関 (OPCW) 執行理事会が7月9日、シリアが未申告のサリンなどの化学兵器を保有し2017年3月に使用したと結論付けたOPCW報告書を受け、シリアに対し保有する同兵器や関連物資、製造備蓄施設などを90日以内にOPCWに申告するよう求める決定をした。
 執行理はシリアに対し、化学兵器攻撃に直接関連があると報告された中部ハマなど2ヵ所の空軍基地を年2回査察することも決めた。 (2008-071002)

2・3 イスラエル

2・3・1 イスラエルの地位

2・3・1・1 イスラエルの承認

2・3・1・1・1 湾岸諸国のイスラエル承認

アラブ首長国連邦 (UAE)

 トランプ米大統領が8月13日、イスラエルとアラブ首長国連邦 (UAE) が国交正常化で合意したと発表した。
 トランプ氏の仲介で、イスラエルのネタニヤフ首相、UAEのアブダビ首長国のムハンマド皇太子の3者が同日電話会談し、合意に達した。
 アラブ諸国はこれまで、パレスチナ国家樹立と引き換えにイスラエルと国交正常化する案を提示しており、これまでアラブ諸国でイスラエルと国交があるのはエジプトとヨルダンの2ヵ国だけである。 (2009-081401)

 米議員が10月29日、米国がUAEにF-35を売却することに同意したことを明らかにした。
 売却はUAEがイスラエルとの国交を正常化したことを受けた措置で、中東の勢力図を変える可能性がある。
 イエメンやリビアへの介入を通じ中東地域での存在感を高めているUAEは、9月に実現したイスラエルとの国交正常化に先立つ米国との協議で、F-35購入を希望する意向を伝えていた。 (2011-103001)

 米トランプ政権が11月10日、UAEにF-35 50機、MQ-9B 18機など総額$25Bを売却することを承認したと議会に通知した。
 UAEがイスラエルが国交正常化で合意したことを受けたもので、当初は売却に反対していたイスラエルは、容認する考えを示した。 (2012-111103)

バーレーン

 トランプ米大統領が9月11日、イスラエルとバーレーンが国交正常化で合意したと明らかにした。
 米政権の仲介によるイスラエルとペルシャ湾岸諸国の国交正常化は、8月発表のUAEに続き2ヵ国目で、他のアラブ諸国も追随する可能性があり、パレスチナ問題で対立してきたイスラエルとの関係改善が進んでいる。 (2010-091201)

 バーレーンの首都マナマで10月18日、先に正式合意したイスラエルとバーレーンの関係正常化について、具体的な内容を確認する文書の署名式が行われ、両国の国交が実質的に樹立された。
 署名式には合意を仲介した米国のムニューシン財務長官も式典に立ち会い、3ヵ国の結束を内外に印象付けた。 (2011-101906)

オマーン

 オマーン国営通信が9月13日、同国がイスラエルとバーレーンの国交正常化合意を歓迎する声明を発表したと報じた。
 オマーンはイスラエルとUAEが8月に国交正常化合意を発表した際も歓迎する声明を出していた。  合意を仲介した米政権はオマーンにもイスラエルとの関係改善を促している。 (2010-091401)

サウジアラビア?

 イスラエルの各メディアが関係筋の話として11月23日、ネタニヤフ首相が22日にサウジアラビアを秘密裏に訪問したと一斉に報じた。
 イスラエル首相のサウジ訪問が報じられるのは初めてで、同国の事実上の最高権力者ムハンマド皇太子と会談したとされるが、サウジ側は会談の事実を否定している。
 歴史的に敵対してきたアラブ諸国との国交正常化を進めるイスラエルにとって、湾岸産油国の盟主であるサウジとの正常化は最大の焦点となっており、会談が事実ならその地ならしを進めたとみられる。 (2012-112304)

2・3・1・1・2 北アフリカ諸国のイスラエル承認

スーダンのイスラエル承認

 イスラエルとスーダンが米国の仲介により、10月23日に国交正常化で合意した。
 イスラエルとアラブ諸国の正常化合意は、UAE、バーレーンに続き3ヵ国目になる。 (2011-102401)

モロッコのイスラエル承認

 トランプ米大統領が12月10日、モロッコとイスラエルが国交正常化で合意したと発表した。
 2020年イスラエルを国家承認したアラブ国家は4ヵ国目で、米国は引き換えに領有権争いが続く西サハラに対するモロッコの主権を認めた。 (2101-121101)

 ロイタ通信が12月11日、米政府がモロッコにMQ-9Bや精密誘導弾などを売却する方針を固め、議会に通知したと報じた。 総額は$1B規模になると見られる。
 モロッコがイスラエルとの国交正常化に合意したことを受け、売却を承認したとみられる。 (2101-121203)

2・3・1・1・3 その他諸国のイスラエル承認

コソボ

 セルビアのブチッチ大統領とコソボのホティ首相が9月4日に経済関係を正常化することで合意した。 またセルビア、コソボ両国はイスラエルとの関係改善でも一致した。
 米政府によると、コソボは合意の一環としてイスラエルとの関係正常化と外交関係樹立を約束した。 (2010-090502)

ブータンボ

 イスラエル外務省が12月12日、イスラエルとブータンが国交を樹立することで合意したと明らかにした。 (2101-121304)

2・3・1・2 大使館のエルサレム移転

セルビア

 セルビアのブチッチ大統領とコソボのホティ首相が9月4日に経済関係を正常化することで合意した。
 米政府によると、セルビアも2021年7月までに在イスラエル大使館をエルサレムに移転することで合意した。 (2010-090502)

中南米、カリブ海各国

 ドミニカ共和国外務省が11月3日までに、現在テルアビブにある在イスラエル大使館のエルサレム移転を検討することを明らかにした。
 1980年までは大使館はエルサレムにあり、国内のイスラエル関連団体から戻すよう要請があったという。
 中南米やカリブ海各国域では、米国やイスラエルからの支援に期待してエルサレムに大使館を移す動きがあり、グアテマラは既に移転し、9月にはホンジュラスも2020年内にも移すと発表した。
 更にブラジル大統領も2021年中の移転を口にしている。 (2012-110403)

2・3・2 軍備の強化

2・3・2・1 BMD / SRBMD

 イスラエルIMDOが米MDAと共同で、一連のDavid's Sling Weapon System (DSWS) の試験DST-7を成功裏に完了した。 この試験はDSWSの7回目の試験になる。
 DSWDはIron Dome、Arrow 2、Arrow 3と共に構成する多層BMD組織の中で中核となるシステムである。 (2101-121505)
2・3・2・2 マルチドメインの戦闘力

 イスラエル軍が1月1日に、初のマルチドメイン部隊を発足させた。 部隊は歩兵、機甲兵、C4I兵、情報兵及び空軍の部隊で編成される。
 部隊の人員数は明らかにされていないが、第98火力師団の隷下に入ると報じられている。 同師団は中央軍隷下で空挺予備員で構成されているという。 (2003-010813)
2・3・2・3 打撃力の強化

LORA TBM の船上発射能力

 IAI社が6月2日、LORA TBM 2発の艦上発射試験に成功し、何れも水上の標的に命中したと発表した。
 2発はそれぞれLORAの最小射程と最大射程に近い90kmと400kmで発射された。
 IAI社によるとGPS/INSで誘導されるLORAのCEPは10m級という。 (2007-060205)

 IAI社が6月2日にLORA BM 2発の船上発射試験を実施し、別々の標的に命中させた。
 1発目はLORAの最小射距離である90km、2発目は最大射距離の400kmで行われ、商船から発射された。 LORAの発射はいかなる船上からも可能であるという。
 200kgの侵徹または破片効果弾頭を搭載しGPS/INS誘導のLORAはCEP≦10mの精度を持つ。 (2008-061010)

新型艦載対艦ミサイル Gabriel 5

 イスラエル国防省が9月25日、海軍が新型艦載対艦ミサイルの試験を行い標的艦に命中したと発表した。
 国防省が公開した映像から発射したのはSa'ar 5コルベット艦と分かるが、ミサイルの名称等は不明である。 (2012-100712)

 イスラエル軍が9月25日、Sa'ar 5コルベット艦から射程200km以上のIAI社製の新型SSM Gabriel 5を発射する試験に成功し、実用化に近づいたと発表した。
 イスラエルはかつて独自にHarpoonの能力向上計画HEPを行っており、Gabriel 5はHEPの技術が取り入れられていると見られる。 (2012-110002)

2・3・2・4 軍事産業の振興と武器輸出

対米輸出努力

 イスラエルRafael社が米国市場を席巻している。
 米議会がIron Domeの導入を承認した僅か2~3ヶ月後に陸軍はAH-64Eに搭載する長距離ATMにSpikeNLOSを選定した。
 またRafael社はSpice 1000 1,000-lb誘導爆弾の生産でLockheed Martin社とチームを組んだ。 (2003-012703)

対欧輸出努力

 IAI社が6月8日、欧州の某主要国から特殊用途機を$350Mで受注したと発表した。
 受注先は明らかにしなかったが、既に同社製品を装備している国であることを臭わせたことからイタリアとみられる。 イタリアはCAEW機を2機装備している。 (2008-061705)

2・3・3 対シリアの戦闘

2・3・3・1 イスラエル軍の空爆

2・3・3・1・1 シリア空爆の強化

 イスラエルがシリアにいるイラン兵とその影響下にある武装勢力への空爆を強化している。
 7月20日夜にはダマスカス近郊での空爆で、複数個中隊の対空部隊が破壊された。 この際にはイスラエル機少なくとも1機がシリアKhmeimim航空基地から離陸したロシア軍戦闘機に接近されたが、ロシア軍機は射撃や進路妨害を行わず、単なる示威行為に留まった。
 7月9日にはイラン国防相がダマスカスでシリア国防相と会談し、イランがシリアに最新型のSAMを提供することで合意した。
 これに対し17日にはイスラエル国防相がロシア国防相に電話で、イランがシリアにKhordad SAMを供与することをイスラエルは見過ごさないと警告した。
 Khordadは2019年6月に米軍のRQ-4A Global Hawkを撃墜している。 (2008-072112)
2・3・3・1・2 空爆の実績

2月6日: ダマスカスと南部ダラアを空爆

 シリアの首都ダマスカスと南部ダラアで2月6日未明に空爆があり、シリア国営通信は、イスラエルの軍用機から複数の場所にミサイルが発射され、9人の戦闘員が負傷したとしている。
 反体制派で在英のシリア人権監視団は同日、この空爆でイラン系の民兵15人とアサド政権軍の兵士8人の合わせて23人が死亡したと発表した。
 イスラエル軍は攻撃の有無についてコメントしていない。 (2003-020701)

2月23日: イスラム聖戦関連施設を空爆

 イスラエル軍によると2月23日夜、シダマスカス近郊で過激派イスラム聖戦の関連施設を空爆し、シリア人権監視団によると6人が死亡した。
(2003-022403)

3月31日: Shayrat空軍基地に対し攻撃ミサイル

 シリア国営TVが、イスラエル軍機がレバノン上空からシリア中部のHoms県に向けミサイルを発射したが、防空部隊がその一部を撃墜したと報じた。
 在英のシリア人権監視団によると、イスラエル軍機はHoms県のShayrat空軍基地に対し8発のミサイルを発射したという。 (2004-033102)

5月05日: イランが支援する民兵組織への空爆

 在英のシリア人権監視団が5月5日、シリア東部でイランが支援する民兵組織への空爆があり14人が死亡したことを明らかにした。 死者にはイラン人やイラク人も含まれるという。
 人権監視団の代表は恐らくイスラエル軍の空爆だと述べた。
 現場はイラク国境に近い砂漠地帯で、シリア国営放送によると、シリア軍は空爆直前の4日深夜にAleppo県を狙ったイスラエル軍の攻撃を阻止していた。 (2006-050601)

6月04日、06日: アサド政権を支援する親イラン民兵組織を空爆

 シリア人権監視団が6月7日、シリア東部Deir ez Zor近郊で6日深夜に空爆があり、アサド政権を支援する親イラン民兵組織の成員が少なくとも12人が死亡したと発表した。
 死亡したのはイラク人やアフガニスタン人で、特定はできないとしながらも「イスラエルの攻撃の可能性がある」という。
 シリアでは政権軍や親イラン民兵の施設を狙った空爆が相次いでおり、4日にもHama郊外でイスラエル軍用機のミサイル攻撃で9人が死亡している。 (2007-060801)

7月20日: ダマスカス周辺のイラン革命防衛隊弾薬庫を空爆

 シリア空軍が7月20日、イスラエルがダマスカス上空を侵略したため迎撃したと発表した。
 国営TVによるとイスラエル軍のミサイルはゴラン高原を越えてダマスカス周辺を襲撃した。 ライブ動画には、ダマスカス一帯の上空でミサイルが爆発する様子が映し出された。
 シリア国営TVによると、軍報道官は、ダマスカス南部郊外を狙ったミサイルの大半を迎撃したと話した。 着弾したミサイルの被害は軽微だったとした。
 シリア軍から離脱した元関係者らはイスラエルの攻撃について、キスワ地区近くのイラン革命防衛隊がひそかに展開する地域の主要な弾薬庫を標的にしていたと述べた。
 またキスワ地区近くで、レバノンのヒズボラが他の親イラン部隊と共に展開している別の町も攻撃された。
 地元の親イラン連合筋は、イラン革命防衛隊側やヒズボラ側に負傷者はいないと主張している。 (2008-072102)

11月18日: シリア軍とイラン革命防衛隊Quds部隊を空爆

 イスラエル軍が、シリア南部で11月18日にシリア軍とシリアに展開するイラン革命防衛隊Quds部隊に対し、空爆を実施したと発表した。
 イスラエルが支配するゴラン高原に爆発物が仕掛けられたことに対する報復という。
 イスラエル軍は声明で、同国の軍機がシリア軍とQuds部隊を標的にし、倉庫や軍施設などに空爆を行ったとしている。
 シリア国営メディアは、イスラエルの攻撃で軍関係者3名が死亡し1名が負傷したと報じた。 (2012-111804)

11月26日: 親イラン民兵組織を標的とした空爆

 シリア人権監視団が11月26日、シリア東部デリゾール近郊で同日未明にアサド政権を支援する親イラン民兵組織を標的とした空爆があり、19人が死亡したと発表した。 イスラエルによる空爆の可能性があり、死者のうち2人は民兵組織の幹部だったという。  シリアではイランの民兵を目標としたイスラエルによるとされる空爆がたびたび行われている。 (2012-112701)

2・3・3・2 シリアからの攻撃

特記すべき記事なし
2・3・4 対ヒズボラの戦闘

2・3・4・1 シリアからのヒズボラとの戦闘

8月03日:

 イスラエル軍が8月3日に、同国が支配しているゴラン高原に爆発物を仕掛けた4名をシリアで殺害したのについて、ネタニヤフ首相が翌4日にヒズボラに対し、いかなる報復も躊躇なく行うと警告した。 (2009-080407)

2・3・4・2 レバノンからのヒズボラとの戦闘

7月27日: ヒズボラの戦闘員がレバノンからイスラエル領内に侵入

 イスラエルのネタニヤフ首相が27日、レバノンのヒズボラの戦闘員がイスラエル領内に侵入してきたため、武力で撃退したと明らかにした。 銃撃戦になったが、双方に負傷者は出なかったという。
 イスラエル軍は、ヒズボラ戦闘員3~5名が越境したが、イスラエル側の砲撃などを受け、レバノン領内に戻ったと主張した。 (2008-072802)

7月27日: Shebaa Farmsでの係争

 レバノンのディアブ首相が7月28日、イスラエルが国境で軍事行動をエスカレートさせてレバノンの主権を侵していると指摘し、警戒を呼び掛けた。
 イスラエルのネタニヤフ首相は、同国軍が27日にヒズボラの越境攻撃を撃退したと発表しているが、ヒズボラはこれを否定している。
 レバノンのロイタ記者は、イスラエルとの国境に近いShebaa Farmsにイスラエルの砲弾数十発が着弾したと報告した。
 Shebaa Farmsは、レバノンが領有権を主張しているが、イスラエルが占領している。 (2008-072804)

2・3・5 ハマスとの戦闘

2・3・5・1 ロケット弾攻撃と空爆の応酬

2月23日:

 イスラエル軍によると2月23日夜、ガザからイスラエル領内に向けて約20発のロケット弾が発射された。 軍は約半数をIron Domeで撃墜し、報復としてガザの過激派イスラム聖戦の施設を空爆した。
 3月2日に総選挙を控えるイスラエルのネタニヤフ首相は、ガザからのロケット弾発射がやまなければ厳しい対応を取ると警告した。  今回の応酬はイスラエル軍が23日午前にイスラエルとの境界付近に爆発物を置こうとしたイスラム聖戦の戦闘員2人を銃撃しうち1人が死亡したたことがきっかけで起きた。
(2003-022403)

7月5日:

 イスラエル軍が、7月5日夜にガザ地区にあるハマスの地下施設を目標に空爆を実施したと発表した。 更に、これに先立ち今夜、ガザ地区からイスラエルに向けてロケット弾3発が発射されたとした上で、その報復として攻撃ヘリと戦闘機で攻撃を実施したと明らかにした。
 同国メディアは、ロケット弾の1発目と2発目は空き地に着弾したと報じ、3発目はイスラエル軍がIron Domeで迎撃したと発表している。 (2008-070602)

8月21日: 過去数ヶ月間で最も激しい戦闘

 イスラエル軍が8月21日早朝、ガザ地区のパレスチナ武装勢力がイスラエルに向け12発のロケット弾を発射し、その内9発を撃墜したと発表した。
 イスラエル軍は報復としてハマスの指導者を目標に3箇所を空爆した。
 今回はガザ地区において過去数ヶ月間で最も激しい戦闘であったという。 (2009-082107)

8月26日: 風船爆弾攻撃への報復空爆

 イスラエル軍は、パレスチナのガザ地区からイスラエルに向けて発火物を付けた風船が飛ばされているのに対抗して、ガザにあるハマスの拠点を8月26日朝に空爆したことを明らかにした。
 けが人は報告されていないが、イスラエル軍によると、空爆はハマスの地下施設を標的に行われた。
 ハマスはここ数週間、パレスチナ住民に発火物を運ぶ風船を飛ばさせるなどしており、イスラエル南部では農地の一部が焼ける事態となっていたため、イスラエルはこうした事態を容認しないとして、過去2週間にわたりほぼ連夜ハマスの拠点を爆撃している。 (2009-082603)

9月15日: ガザからロケット弾攻撃、報復空爆

 9月15日にガザからイスラエル領内にロケット弾が発射された。
 イスラエル軍などによるとロケット弾は2発確認され、このうち1発が南部アシュドッドに着弾したため少なくとも2人が負傷した。
 同時間帯にイスラエルとUAE、バーレーンの国交正常化の調印式が行われており、抵抗の意思を示す狙いがあった可能性もある。 (2010-091602)

2・3・5・2 地上侵攻

特記すべき記事なし
2・3・6 中東和平

トランプ和平提案

 パレスチナ自治政府のアッバス議長が2月1日、トランプ米政権が発表したイスラエル寄りの中東和平案を改めて批判した上で、「安全保障面を含む米国とイスラエルとの全ての関係を断絶する」と明言した。
 一方、アラブ連盟は1日、カイロで緊急の外相級会合を開催し、和平案はパレスチナ人の最低限の権利や願望を満たしておらず、不公平だとして、米国との協力を拒否すると表明した。 (2003-020201)

 EUが2月4日、トランプ米大統領が先週発表した中東和平案の一部であるヨルダン川西岸のユダヤ人入植地のイスラエル併合を認めない考えを示した。
 トランプ大統領の和平案では、パレスチナに独立国家建設を認める一方で、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地でのイスラエルの主権を認めるなどイスラエル寄りの内容となっている。 これに対してEUはボレル外交安全保障上級代表の声明で、トランプ大統領の和平案は国際的合意の基準から逸脱していると指摘し、公正かつ恒久的な平和を築くために、最終的な地位に関する未解決の問題は、両当事者間の直接的な交渉を通じて解決される必要があるとして、パレスチナ自治政府の境界線やエルサレムの最終的な地位などはまだ解決していないとの認識を示した。 (2003-020501)

2・4 その他の中東

2・4・1 スンニ派とシーア派の対立

2・4・1・1 スンニ派諸国の兵力増強

2・4・1・1・1 BMD 能力の強化

バーレーンの Patriot

 Raytheon社が3月9日、バーレーン向けのPatriotを1月30日に$551Mで受注したとだけ発表した。
 バーレーンへのPatriot輸出については、米国防安全保障協力局 (DSCA) が2019年5月2日に、Patriot 2個システムとPAC-3弾60発、GEM-T弾36発を$2.5Bで輸出することを国務省が承認したと発表していた。 (2004-031204)

 Raytheon社が3月9日にバーレーン向けPatriotの生産開始を$551Mで受注した。
 米国防安全保障協力局 (DSCA) は2019年5月2日に国務省から、Patriot 2個FU、PAC-3弾60発、GEM-T弾36発を$2.5Bでバーレーンに輸出する承認を得ている。 (2005-031811)

サウジアラビアの THAAD

 米MDAが3月24日に、サウジアラビア向けのTHAADの改良をLockheed Martin社に$981Mで発注した。
 この契約追加でサウジ向けの契約額は$5.3Bから$6.3Bに修正された。 (2004-032608)

クウェートへの PAC-3 MSE

 米国務省が5月28日、国防安全保障協力局 (DSCA) からから出されていたクウェートへのPAC-3 MSE輸出申請を承認した。
 承認されたのは$1.4Bで、$800Mと見られるPAC-3 MSE弾84発のほか、発射機の改良や$200MでのGEM-T弾の修理費などが含まれている。 (2008-061012)

2・4・1・1・2 スンニ派諸国とイランとの緊張

イラン UAE 間の緊張

 イラン外務省が8月20日、UAEの沿岸警備隊が17日にイラン漁船に発砲し、漁師2人を殺害したと発表した。
 また、同じ日にイラン領海を侵犯したとしてUAE籍の船舶を拿捕したことも明らかにした。
 UAEがイスラエルとの国交正常化を発表した先週以来、イランとUAE間の緊張が高まっている。 (2009-082101)

2・4・1・2 米国のスンニ派への肩入れ

 Wall Street Journalが5月7日、米軍がサウジアラビアに派遣していたPatriot部隊を撤収すると報じた。
 当局者によると、撤収するのはPatriot 4個中隊と2個戦闘飛行隊で、これに加えてペルシャ湾に展開中の海軍艦艇についても撤収が検討される。
 米国の戦略的利益に対するイランの脅威が低下しているためという。 (2006-050801)
2・4・2 イエメン内戦

2・4・2・1 内戦の推移

UAE が支援する勢力がサウジ勢力から分離

 内戦が続く中東のイエメンで4月26日、UAEが支援する分離派「南部暫定評議会」(STC) が南部アデンなどを支配すると宣言した。 これに対し、サウジアラビアが支援するハディ暫定政権は悲惨な結果を招くことになると警告した。
 イエメンではハディ暫定政権と親イラン武装組織フーシ派との対立による内戦状態が続いており、サウジ主導のアラブ有志連合が暫定政権の後ろ盾となってきた。
 UAEもサウジと共闘してきたがSTCと暫定政権の対立によって争いは三つ巴の様相を呈している。 (2005-042701)

首相ら新内閣の閣僚20人の暗殺未遂

 AP通信などが、イエメン南部アデンの空港で発生した爆発で、12月31日までに少なくとも25人が死亡し、約50人が負傷したと報じた。
 アブドルマリク首相ら新内閣の閣僚約20人などを乗せた飛行機がサウジから到着した直後に、ミサイル3発が飛来し、爆発と同時に銃撃も起きた。
 サウジアラビア主導の有志連合軍は反政府武装組織フーシが関与した攻撃とみて、フーシが占拠する首都サヌアを空爆した模様である。 (2101-123103)

2・4・2・2 フーシ派のサウジ攻撃

1月29日:UAVとロケット弾

 イエメンのフーシ派が1月29日、サウジアラビアの複数の施設をUAVとロケット弾で攻撃したとする声明を発表した。 攻撃対象にはサウジ国営石油会社サウジアラムコの石油施設も含まれている。
 フーシ派の報道官は、エスカレートする空爆への報復として過去1週間にサウジ国内で15種類以上の「作戦」が実行され、サウジ南部ジザンのアラムコの施設も標的の一つだったと述べた。
 フーシ派が4ヵ月前に停戦を申し出て以来、攻撃を明らかにしたのは今回が初めてだが、その詳しい内容は不明で、今のところサウジ当局も攻撃を受けたと認めていない。 (2002-013001)

 イエメンのフーシ派が1月29日、4ヶ月の攻撃停止後初めてサウジアラビアをミサイルとUAVで攻撃したと発表した。
 攻撃を行ったのは紅海沿岸のジーザンにあるアラムコ石油会社の施設と空港、及びアバとハーミス・ムシャイトであるという。 (2004-020508)

2月21日:BM攻撃

 サウジアラビア国営サウジ通信 (SPA) がサウジ主導の連合軍の情報として、2月21日未明にイエメンのフーシ派がサウジに向けて撃ち込んだ複数のBMを迎撃したと報じた。
 SPAによると、連合軍の報道官はミサイルがイエメンの首都サヌアから撃ち込まれ、サウジの都市や一般市民が目標とされたとの見方を示した。 (2003-022102)

3月28日:首都リヤドなどに BM 攻撃

 サウジアラビアの国営TVなどによると、3月28日深夜にイエメンから首都リヤドなどに向けてBM 2発が発射され、軍が撃墜したものの落下した破片によって市民2人が負傷したという。
 首都が目標となったBM攻撃について、サウジアラビアが主導する連合軍は、フーシ派が発射したものだと強く反発しており、報復の連鎖による緊張の高まりが懸念される。 (2004-032902)

 イエメンのフーシ派が3月28日にサウジの首都リヤドに撃ち込んだ新型というBM Zulfiqarはイラン製のQiamと良く似ている。
 サウジ主導の有志連合軍報道官は、28日23:23にリヤドとJizanに向け2発のBMが発射されたが、サウジ空軍防空部隊が撃墜したと述べている。 フーシ派の報道官はリヤドの他に国境地帯のNajram、Jizan、Asirにも打ち込んだとしている。
 フーシ派はまたリヤド攻撃にはZulfiqarの他にSamad-3 UAVも使い、国境地帯の攻撃にはBadr弾やQasif-2K UAVも使ったという。 (2005-040806)

6月23日:サウジの2都市に向けて BM 3発と UAV で攻撃

 サウジアラビア国営TVによると、サウジ主導の連合軍が6月23日未明、イエメンのフーシ派がサウジの2都市、NajransとJizanに向けて発射したBM 3発を迎撃したと発表した。
 連合軍は、22日にも爆発物を載せてサウジに向けフーシ派が飛ばしたUAV 8機を迎撃したと発表している。 (2007-062303)

 イエメンのフーシ派報道官が6月23日、サウジアラビアの首都リヤドの国防省と軍の基地に向けてBMとUAVで攻撃を行ったと表明したが、サウジ側は攻撃を阻止したと発表した。  ロイタは夜明け近く、リヤド上空で2度の大きな爆発音が鳴り響き、煙が上がったことを確認したが、現時点で被害や死傷者などの報告はない。 (2007-062304)

 イエメンのフーシ派が、6月23日にサウジアラビアをZulfiqar BMとQuds CM及び爆薬を搭載したSamad-3 UAVで攻撃したと発表した。
 これらはサウジ国防省とKing Salman航空基地に直撃したという。 また国境に近いJizan及びNajranの軍事目標も攻撃したという。
 一方、サウジが主導する有志国連合軍は、Sanaaから発射されたBM 1発をリヤドの市街地に落下する前に撃墜したほか、その他のBM 3発と爆薬を搭載したSamad-3 UAV 8機を撃墜したと発表した。
 ただ、CMに関する発表はなかった。
 フーシ派は2019年7月にQuds CMを公開しており、このQudsと見られるデルタ翼のCMが9月14日のサウジ施設攻撃に使用されている。 (2009-070108)

7月12日:サウジ南部Jizanの大規模石油施設を UAV とミサイルで攻撃

 イエメンのフーシ派が7月13日、前日深夜にサウジアラビア南部Jizanの大規模石油施設をUAVとミサイルで攻撃したと発表した。
 Jizanは紅海に面した町でイエメンとの国境からは60kmで、国営サウジアラムコの石油精製施設がある。
 これより先、サウジアラビアが主導する連合軍は、フーシ派がサウジに向けて発射したミサイル4発と、爆発物を搭載したUAV 6機を迎撃し破壊したと発表した。 ただ、迎撃した場所や、施設などに被害があったかは明らかにしていない。
 UAVはフーシ派が支配するイエメンの首都サヌアからサウジに向けて発射されたとしている。 (2008-071301)

9月8日:サウジ南部アブハー国際空港を多数のUAVで攻撃

 イエメンのフーシ派が、サウジアラビアのアブハー国際空港を9月8日に多数のUAVで攻撃したと発表した。
 これに対しサウジアラビア主導の有志連合は、サウジ南部の民間へのUAV攻撃を阻止し撃破したと発表した。
 サウジ南西部のイエメンとの国境近くにあるアブハー国際空港は、たびたびフーシ派のUAV攻撃を受けている。 (2010-090806)

11月23日:ジッダ北部の石油施設を CM 攻撃

 サウジアラビア西部ジッダで11月23日、イエメンのフーシ派による石油施設を狙ったミサイル攻撃があり火災が発生した。 石油施設はジッダ北部にあり、ミサイルは貯蔵タンクの一つに着弾した。
 石油施設を所有する国営サウジアラムコは、すぐに鎮火させたので石油供給に問題はないとしている。
 フーシ派報道官は23日、イランの支援で開発されたとみられるCM Quds を発射したと発表した。
 サウジ側は24日、紅海でフーシが敷設したとみられる機雷160発を発見したと公表した。 (2012-112402)

11月25日:石油タンカで爆発

 サウジアラビア国営TVなどが11月25日、西部ジザン州沖の紅海に停泊していたマルタ船籍の石油タンカで爆発が起き、船体の一部が損傷したが、乗組員にけがはないと報じた。
 国営TVは爆発について、イエメンの反政府勢力フーシ派が攻撃したと報じたが、フーシ派はこれについてこれまでのところ反応は示していない。 (2012-112601)

2・4・2・3 フーシ派が使用しているその他の装備

AAM を転用した SAM

 イエメンのフーシ派が改良型のSAMでサウジ連合軍に衝撃を与えていると発表した。
 発表された写真にあるThaqib-1と表示されている3発はR-73 (AA-11) IR誘導短距離AAMで、Thaqib-2と表示されている3発はR-27 (AA-10) IR誘導短距離AAMである。 またThaqib-3と表示されている3発はR-77 (AA-17) レーダ誘導中距離AAMである。 (2003-022806)

遊弋型 SAM

 米軍当局者が2月19日、イランからイエメンのフーシ派に武器を輸送していた2隻のダウ船から、今まで報告されたことのないタイプのミサイルが鹵獲されたことを明らかにした。
 これらのダウ船は2月9日に米巡洋艦Normandyがアラビア海で拿捕した1隻と、2019年11月25日に駆逐艦Forrest Shermanが拿捕した1隻で、かつて報じられていないCMを搭載していたが、これらは遊弋型のSAMの可能性がある。
 固体燃料ロケットブースタを持つジェットエンジンのこれらミサイルはEOセンサと光学式の近接信管を搭載している。 (2004-022602)

2・4・2・4 COVID-19の感染拡大を受けた停戦

 サウジアラビア主導のアラブ連合軍がCOVID-19の世界的な感染拡大を受けて4月8日、軍事介入するイエメン内戦で9日から2週間の停戦に入ると表明した。
 イエメンでは新型コロナ感染者は今まで確認されていないが、内戦で医療体制がほぼ崩壊し、一旦感染が広がれば壊滅的被害となるのは確実しと見られている。 (2005-040902)
2・4・2・5 イランのフーシ派支援

武器の供給

 国連のグテーレス事務総長が6月11日に安保理に送った報告書で、2019年にサウジアラビアの石油施設の攻撃に使用されたがCM等はイラン製と断定した。
 報告書では、2019年6月と8月にサウジ南西部のAbha国際空港に対し行われたのと9月にAbqaiq及びKhuraysに対して行われたCM及びUAV群の残骸を調査した結論である。 (2007-061206)

2・4・2・6 有志国連合軍の反撃

 国営サウジ通信 (SPA) が、イエメンで反政府武装組織フーシ派と戦闘中のサウジアラビア主導の有志連合が8月30日にアブハー空港で爆発物を搭載したUAVを撃墜すると共に、紅海西部で遠隔操作された爆発物搭載のUSVを撃沈したと報じた。
 共にフーシ派が発射したものという。 (2009-083101)
2・4・3 ISIS の掃討

2・4・3・1 まだ続く ISIS 掃討作戦

2・4・3・1・1 シリアでの対 ISIS 戦

ISIS崩壊以降で最大規模の攻撃

 在英のシリア人権監視団によると、シリア東部Dayr Az Zawr県で12月30日にISISがアサド政権軍の兵士らの乗ったバスに待ち伏せ攻撃を仕掛け、37人が死亡した。
 監視団によると、ISISが崩壊した2019年3月以降で最大規模の攻撃という。 (2101-123104)

2・4・3・1・2 イラクでの対 ISIS 戦

特記すべき記事なし
2・4・3・2 欧米の戦闘参加

2・4・3・2・1 米 国

特記すべき記事なし
2・4・3・2・2 欧 州

 マクロン仏大統領が1月16日、中東でのISIS掃討作戦支援のため、空母Charles de Gaulleを近く派遣すると表明した。 派遣は4月まで予定されている。
 大統領はCharles de Gaulleが、オランダやベルギーなど欧州各国による合同作戦の中心になると指摘した。 (2002-011705)
2・4・4 クルド問題

 トルコの支配下にあるシリアのAfrinで4月28日に自動車爆弾 (VBIED) により53人以上が殺害され、50人以上が負傷した。
 この事件についてトルコ当局はYPGの仕業としているが、犯行の手口からクルド武装組織Ghadab al-Zaytounの犯行のようである。 (2006-050401)
2・4・5 カタール情勢

2・4・5・1 軍備増強

特記すべき記事なし
2・4・5・2 対外姿勢

2・4・5・2・1 対サウジアラビア

Patriot をサウジに向け

 民間衛星の取得した画像の分析から、カタール防空軍が装備しているPatriotのうち3個システムがイランの方角ではなくサウジアラビアを向いていることが分かった。
 カタールは2014年にPatriot 10個システムを発注し2019年10月に最初のシステムがイランに向け米空軍が駐留しているAl-Udeid空軍基地に配備されたが、6~7月に配備された2番目のシステムは発射機4基がサウジの方向である南南西に向けられている。
 Al-Udeid空軍基地の北方19kmに新たに配備されたPatriotは1個システムはイランを向いているものの、もう1個システムは南南西に向けられている。
 3箇所目となるAl-Shamal Campの2個システムは2基のレーダのうち1基と発射機2基もが南南西を向いている。 (2011-090918)

2・4・5・2・2 対イスラエル

特記すべき記事なし
2・4・5・2・3 対トルコ

特記すべき記事なし
2・4・5・2・4 その他諸国との関係

英 国

 2022年にドーハで行われるFIFA World Cupの安全保障のためカタールでTyphoonを装備した英国/カタールの連合飛行隊として活動している英空軍第12飛行隊は、2023年からは英空軍単独の部隊としてConningsbyで任務に就く。 (2011-091606)

2・4・6 その他の中東情勢

2・4・6・1 UAE の存在感拡大

2・4・6・1・1 対米接近

イスラエルの承認と武器売却承認

 ポンペイオ米国務長官が11月10日、UAEにF-35 50機とMQ-9B 18機を、それぞれ$10.4Bと$2.97Bで、またその他の武器を$10Bで売却すると発表した。
 その他の武器には

・AGM-154C JSOW 650発
・AGM-154Es JSOW-ERs 60発
・AGM-88E AARGM
・AIM-120C8 AMRAAM 802発
・500-lb/1,000-lb/2,000-lb JDAM 4,000キット
・GBU-39/B SDB Ⅰ 2,500発
などのほか、MQ-9B搭載用として、
・AGM-114 Hellfire 515発
・Paveway Ⅱ 12キット
その他が含まれている。 (2101-111804)
2・4・6・1・2 石油輸出国で独自路線

 UAEが石油輸出国機構 (OPEC) でサウジアラビアの考えに常に同調してきたが、12月上旬のOPECでは協調減産の順守強化の要求を突き付けてサウジ主導の合意形成の取り組みに水を差し、OPECとロシアなど非加盟産油国でつくるOPECプラスの生産方針決定をどたんばで事実上延期させる役回りを演じた。
 こうした異例の動きは、今後は何年かかけて増産とシェア拡大を目指そうとするUAEの存在感がOPEC内で高まっていることを物語ると共に、UAEがサウジに対して政治的独自性を高めている表れとも言える。
 この独自性はUAEがペルシャ湾岸諸国で真っ先にイスラエルと国交を正常化したことでもはっきりとした。 (2101-120202)
【註】UAEとサウジの足並みの乱れは、かなり前からイエメンのフーシ派に対する対応で現れてきている。
2・4・6・1・3 防衛生産能力強化

 UAEが空投武器の国内開発能力向上に力を入れている。
 米議会が2019年7月に、サウジが主導するイエメン内戦への介入に対する人道的懸念から、サウジとアブダビに対するミサイルやロケットの輸出を禁ずる決議を行ったため、トランプ大統領が拒否権を行使して輸出を継続した経緯がある。 (2002-120902)

 UAEの複合企業体Edgeが2月23~25日にアブダビで開かれたUMEX展で、Garmousha VTOL UAVを公開した。
 Edge参加のADASI社が設計したGarmoushaは100kgまでの搭載が可能で、6時間の滞空能力があり150kmまで飛行できる。
 用途としてはパイプラインの漏洩監視、インフラの点検、捜索救難、偵察監視、目標捕捉などという。 (2003-022504)

2・4・6・2 ロシアの進出

2・4・6・2・1 サウジへの武器輸出

TOS-1A MRL 10個システムを輸出

 国連通常兵器登録制度 (UNROCA) が最近の報告書で、2019年にロシアがサウジアラビアに野砲を10個システム輸出したと指摘した。
 報告書はシステムの種類を明らかにしていないが、2019年4月にInterfax通信が、サウジへのTOS-1A MRLの引き渡しを完了したと報じていた。
 TOS-1AはT-72 MBTの車体に24連装発射機を搭載したもので、発射する220mmロケット弾はサーモバリック弾頭を搭載し射程は6kmという。 (2008-061013)

2・4・6・3 英国の勢力拡大努力

オマーン Duqm英軍補給基地の拡張

 英国防省が9月12日、オマーンのDuqm港の英軍補給基地を3倍に拡張するため£23.8M ($31M) を追加支出すると発表した。 (2011-092312)

2・4・6・4 トランプ政権の撤収願望

 米国防総省が12月4日、トランプ大統領がソマリア駐留米軍の大半を撤退させるよう命じたと明らかにした。
 2021年1月に退任するトランプ大統領はアフガニスタンとイラクの駐留軍縮小も発表しており、世界的な米軍撤退の一環だという。
 ソマリアの米部隊規模は約700名で、アルカイダとつながりがあるイスラム過激派アルシャバーブの掃討に向けソマリア軍の支援に重点を置いており、アルカイダ対策の拠点とされている。 (2101-120502)
2・5 インド

2・5・1 パキスタンとの対立

2・5・1・1 カシミールの帰属問題

パキスタンがギルギット・バルティスタン地域を準州に格上げ

 パキスタンのカーン首相が11月1日、同国が実効支配するカシミール地方北部のギルギット・バルティスタン地域を準州に格上げすると表明した。
 これに対しインド外務省報道官は、違法に武力で占領しているインド領の一部に対し、重大な変更をもたらすパキスタンの試みを断固拒否すると述べた。
 インドは昨年、同国が実効支配するジャム・カシミール州から自治権を剥奪し、パキスタンが反発していた。 (2012-110201)

2・5・1・2 インド軍と武装勢力の抗争

4月12日: 

 インドとパキスタンが4月12日に、カシミールの実効支配戦線 (LoC) を挟んで砲迫戦を繰り広げ、双方で民間人数名ずつが死亡した。 (2006-042206)

4月18日: 

 インドが実効支配している新型ウィルスの感染拡大を受けカシミールで4月18日夕、インド兵3名が殺害され2名が負傷した。
 事件があったのはSopore北西地域で、バイクに乗った少なくとも2名の武装兵が銃を乱射した。 (2005-041804)

5月: Hizbul Mujahideenのリーダと支持者を殺害

 インドの治安当局者と与党の党員が、インド政府部隊がカシミールでインドからの分離を求める最大の武装組織Hizbul Mujahideenのリーダと支持者を殺害したと発表した。 (2006-050608)

2・5・1・3 イン・パ正規軍同士の戦闘

5月01日: 銃撃戦

 インド軍が5月1日、カシミールの実効支配線 (LOC) 近くのUri西側で、パキスタン軍の銃撃でインド兵2名が死亡し、数名が負傷したと発表し、これは2003年の休戦協定違反だとパキスタンを非難した。 (2006-050201)

11月12日: 砲撃戦

 印パ陸軍がカシミールの実効支配線 (LoC) を挟んで小火器を交えた砲迫の砲撃戦を行い、少なくとも12名の兵士と4名の民間人が死亡した。
 インド陸軍によると、パキスタンからの砲撃で兵士5名と民間人4名が死亡した翌日の11月13日に747kmのLoCにわたって報復砲撃を行ったという。 (2101-112503)

2・5・2 中国との対立

2・5・2・1 中国の対印軍備強化

2・5・2・1・1 高地作戦の準備

 中国CCTVが、2019年8月に標高4,200mの青海チベット高原一帯でType 99A MBTを装備した機甲部隊がロボットと共に演習を行った状況を報じた。
 演習に参加したのはかつて第21群と呼ばれていた第76合成 (synthetic) 旅団で、MBTを中核とした有無人チーム (MUM-T) を編成して数日間にわたり実施した。 (2002-012803)

 中国CCTVが最近、2019年8月に海抜4,200mの青海チベット高原で陸軍機甲部隊とロボット兵器が行った演習の模様を報じた。
 この番組では、Type 99A MBTを装備した第76合成旅団がロボット共に行動し射撃を行う様子が放映された。 (2004-020505)

2・5・2・1・2 中印国境近くで兵力増強

地上軍部隊の大規模増強

 Broomberg通信が、中印軍がインド東北部のラダック地域の国境を挟んで対峙しており、軍事衝突の緊張が高まっていると報じた。
 中国軍は5月下旬の段階で、ラダック地域の中国国境に5,000名と装甲車両を配置し砲兵部隊も増強しており、インド側も国境に軍を集結させており、両軍で10,000名が対峙している。
 インド側は外交的な努力を続ける意向だが、中国軍は多数の軍用車両や最新鋭兵器を現地に投入して軍事的にインドを挑発しており、折から欧米から批判を浴びている香港問題に関する関心を逸らす意図も働いているとの指摘もある。 (2007-060603)

精度向上長射程型 PHL-03 MRL をチベットに配備

 中国国営CCTVが10月20日、長射程化し精度が向上した新型ロケット弾を装備したPHL-03 MRLがチベット軍管区に配備されていると報じた。
 300mmロケット弾12発を搭載するPHL-03 MRLの射程は130kmであるが、新型は射程が30km延伸した160kmになっている。 (2011-102006)

2・5・2・2 インドの対中軍備強化

2・5・2・2・1 陸上部隊の増強

 インド政府筋が6月28日、中印の実効支配線 (LoAC) に近いLadakh州に、陸軍がM777及びFH-77B榴弾砲や、2016年以来この付近に派遣されている2個連隊のT-72M1 MBT も展開しているほか、T-90M MBT 45両程度からなる1個連隊も空輸されていることを明らかにした。 (2009-070805)
2・5・2・2・2 前方配備戦闘機の増強

MiG-29 と Su-30MKI の緊急調達

 インド国防省が6月中旬に、中印国境の緊張に伴いインド空軍がMiG-29 21機とSu-30MKI 12機を緊急調達することを明らかにした。 引き渡しは2022年に開始されるという。
 復座型2機を含むMiG-29 21機は中古でRD-33エンジンを搭載し、Zhuk-MEレーダを装備している。
 インド空軍は60機のMiG-29を装備しており、この21機で補完される。
 Su-30MKIはHAL社がライセンス生産しており、2021年3月には222機のライセンス生産を完了し印空軍は272機を保有することになる。 (2009-070102)

新規導入した Rafale の前方配備

 インド空軍が7月末に、新たにフランスから導入したRafale戦闘機のうち5機を、ラダックから885km離れたアンバーラー空軍基地に配備している。 (2009-081906)

2・5・2・2・3 SAM 部隊の展開

 インド政府筋が6月28日、中印の実効支配線 (LoAC) に近いLadakh州に陸軍と空軍が数個中隊のSAM部隊を派遣していることを明らかにした。
 派遣されたSAMは国産のAkash、イスラエル製Spyder、ソ連製OSA-AKMでLoACの内側10~20kmに展開しているという。 (2009-070805)
2・5・2・2・4 ヘリ部隊の展開

国産軽戦闘ヘリ LCH の前方配備

 インド国営HAL社が国内で設計した軽戦闘ヘリLCH 2機が、5月上旬から中国軍との紛争が続いているヒマラヤ・ラダク地方の実効支配線 (LoAC) 近くで空軍に配備された。
 LCHは高度4,000m以上での運用を想定しており、配備前には高高度における攻撃を模擬した試験を実施している。
 HAL社は2月に、年末までに15機の限定生産を開始しており、10機は空軍、5機は陸軍に納入される。
 陸軍は114機、空軍は65機の配備を計画している。
 LCHは500kgの搭載能力を持ち、作戦航続距離550km、実用上昇限度6,500mの性能を持っている。 (2009-081204)

2・5・2・3 武力衝突

2・5・2・3・1 ラダック地方での衝突

両国軍が殴り合い

 インドメディアによると、インド北部の連邦直轄地ラダックのパンゴン湖近くで5月5日、インドが進める道路建設を巡って両軍兵士250名による殴り合いが発生し負傷者が出た。
 双方が兵士5,000名を増派したが、両国は実効支配線付近で警備する兵士同士が衝突しても武器を使わないなど、本格的な戦闘を避けるための対策を講じており、対話を通じた事態打開の道を探っているとみられる。
 9日にはインド北東部シッキム州の両国の国境でも兵士による殴り合いが起きたが、両軍兵士による殴り合いなどはこれまでも度々発生してきた。
 核保有国の両国は、領土問題で緊張が過度に高まることは望んでおらず1993年、1996年、2013年の計3回、国境防衛に関する合意を結び、本格的な戦闘を避ける対策を講じてきた。 (2006-053001)

 インド国防省が5月10日に北東部シッキム州の中国との国境で、小規模な衝突が発生したと発表した。
 国防省は詳細を明らかにしていないが、インド紙によると騒ぎが起きたのは9日で、両軍総勢150人の殴り合いになり、軍関係者は同紙に、インド軍4人、中国軍7人が負傷したと語った。 (2006-051001)

 インドメディアが5月28日までに、北部のラダック地方と中国の係争地域で両軍兵士がにらみ合いを続けていると報じた。
 それによると、にらみ合いは両国の実効支配線があるパンゴン・ツォ湖周辺のほか数ヵ所で発生し、5日には湖周辺でインドの道路建設を巡り両軍兵士の小競り合いが起きて双方の100名以上が負傷した。
 その後、湖周辺も含め数ヵ所で中国軍が兵士を増強し、インド軍も対抗し同数を配置したという。 両軍が5,000~6,000名を増強したとの報道もある。 (2006-052803)

45年ぶりの死者を伴う衝突

 インド軍が6月16日、カシミール地方の係争地で中国軍とインド軍による衝突が発生し、インド軍の3名が死亡したと明らかにした。
 インド軍の発表によると、衝突があったのは15日夜で、インド軍の将校1名、兵士2名が死亡し、中国側にも負傷者が出たという。 衝突の経緯は不明で、武器が使用されたかなど詳細は分かっていない。
 インド軍は双方の間に発砲はなかったとしており、両軍の高官は状況を沈静化するために話し合いを行っていると話している。
 インド・メディアによると、双方の衝突で死者が出るのは1975年以来45年ぶりで、中印両国の緊張が高まる可能性がある。 (2007-061609)

 インド軍が6月16日、数週間前から中国軍とにらみ合いが続いていた国境付近で衝突が起き、兵士20名が死亡したと発表した。
 インド軍によると衝突が起きたのは15日夜で、両国の係争地域であるラダック地方のガルワン渓谷である。
 中国外務省もインド側と衝突があったことを認めたが、中国軍側の被害は明らかにしていない。 インド政府筋は、交戦では鉄の棒や石が使われ、銃は使用されなかったと明かした。 (2007-061611)

 インドのモディ首相が6月19日、北部ラダック地方の中国との係争地域で両国軍が衝突しインド兵20名が死亡したことに関し「国民は傷つき、中国の行動に憤っている。 軍に必要な措置を取る自由が与えられ、インドの立場を中国に明確に伝えた」と中国をけん制した。
 インドメディアは、両軍のにらみ合いは係争地域周辺でのインドのインフラ整備に対する中国の反発が原因と報じている。 (2007-062002)

 インド軍と中国軍が標高4,419mのヒマラヤGalwan峡谷で6月15~16日の夜に戦闘を交え、インド軍の20名が死亡した。
 16日の第1報ではインド軍歩兵大隊の大隊長を含む3名が死亡したとされていた。 (2008-062401)

2・5・2・3・2 中国軍が徐々に侵入か

 中印国境の山岳地帯で緊張が高まっており、インド国防省が5月25日に中国軍が全長4,057kmに及ぶ実効支配線 (LoAC) の数ヶ所で侵入してきたと発表した。
 5月上旬にはLadakh州東部の3~4kmにわたる4ヵ所で、3,000~5,000名の中国軍が徐々に侵入し、全長134kmに及ぶPangone湖北岸の標高5,000mにあるGalwan渓谷とGogran山の第5ピークと第8ピークに拠を構築したという。 (2008-060302)
2・5・2・3・3 事態後の中国軍の兵力増強

衝突を受けた兵力増強

 中印軍による小競り合いが両国の実効支配線があるパンゴン・ツォ湖周辺のほか数ヵ所で発生し、5月5日には湖周辺でインドの道路建設を巡り両軍兵士の小競り合いが起きて双方の100名以上が負傷したのを受け、湖周辺も含め数ヵ所で中国軍が兵士を増強し、インド軍も対抗し同数を配置したという。
 両軍が5,000~6,000名を増強したとの報道もある。 (2006-052803)

中国軍が衝突数日前までに機械類の持ち込み

 中印国境付近における両軍の衝突を巡り、中国軍が衝突までの数日間に機械類を持ち込んだり、ヒマラヤ山脈の山腹に道路を啓開したりしていたほか、川を堰き止めた可能性もあることが、衛星写真によって示唆されている。
 衛星写真は地球の画像を手掛ける企業Planet Labsが衝突翌日の6月16日に撮影したもので、ロイタが入手した写真によると、1週間前と比べ衝突の起きたガルワン渓谷で活動が活発化した様子が見て取れる。
 樹木のない山沿いとガルワン川の中に機械類が設置されているのが見られる。 (2007-061904)

実効支配線 (LoAC) 沿いで兵力を増強

 Maxar Technologies社の5月22日に撮影した衛星写真に、中国軍が,4,057kmに及ぶインドと対峙する実効支配線 (LoAC) 沿いで兵力を増強しているのが写っていた。
 現地はLoACから2km程中国が実効支配しているAksai Chin地区に入った場所で、少なくとも10両の戦車と12門の牽引砲が写っている。
 戦車は整列駐車状態であるが、牽引砲は砲列に展開し、LoACから3kmインド側にあるインド軍の拠点2ヵ所に狙いを定めている。 更にLoACから5km中国の2ヵ所には車両と天幕が見て取れる。
(2008-061002)

J-20 の前進配備

 中印国境をめぐる対立が4ヵ月目に入る中、商業衛星画像から中国空軍のJ-20 2機が新疆ウイグル自治区のホータン空軍基地に駐機しているのが確認された。
 ホータンは、中印国境のラダックから320kmほどしか離れていない。
(2009-081906)

8×8重トラックを配備

 中国国営CCTV7が7月28日、陝西汽車集団製の8×8重トラックを装備した中国地上軍チベット軍管区の部隊を放映した。 (2010-081207)

SH4 122mm SPHの配備

 中国CCTVが8月10日、陸軍チベット軍管区に配備している4×4車搭載の自走砲 (SPH) を放映した。 Global TimesによるとこのSPHは122mm砲を搭載しているという。
 このSPHは標高4,600m以上のヒマラヤ山中に配置されている混成旅団が装備しているという。
 このSPHは2016年の殊海航空展にNORINCO社のChina South部が展示したSH4 122mm SPHのようである。 (2010-081906)

光ファイバーケーブル敷設疑惑

 インド政府当局者2人が、中国軍がインド国境の係争地帯で光ファイバーケーブル網を敷設していることを明らかにした。
 インド政府高官によると、通信ケーブルはラダック地方にあるパンゴン湖の南で最近確認された。 こうしたケーブルは前線部隊と後方基地をつなぐ安全な通信手段を提供する。
 両国の外相は9月上旬、ヒマラヤの係争地での緊張を緩和することで合意したが、通信網の敷設は中国が長期戦に備えている可能性を示唆している。 (2010-091504)

 中国外務省報道官が9月15日の記者会見で、中国軍がインドとの国境の係争地で光ファイバーケーブルを敷設しているとの報道を否定した。 (2010-091505)

武器、装備品、越冬用物資などの大量搬入

 中国とインドがにらみ合いを続けるラダック地方のインド軍駐屯地には、ヒマラヤ地方の厳しい冬に備え、大量の武器や装備品、燃料、越冬用の物資や食料などの補給物資の搬入が急ピッチで進められている。
 中国との対立が続くインドにとってラダックは最前線基地で、ヒマラヤ地方に厳しい冬が訪れるのを前に、駐留する数千名の兵士への物資が滞らないよう態勢を整えている。 (2010-091702)
高高度作戦用UAVの展示

 中国国営CCTVが10月30日に、20社以上の民間中小企業が10月下旬にPLA陸軍チベット軍管区で国境防衛及び高高度作戦用UAVの展示を行ったと報じた。
 CCTVは殊海のZiyan UAV社製Blowfish A2、成都のJouav社製CW-10、CW-25など数種類の飛行を放映した。 (2101-111114)

2・5・2・3・4 事態後のインド軍の兵力増強

インド軍の兵力増強

 インド筋によると、インド軍は3,000~5,000名の部隊とT-72M1 MBT 100両、APC 50両を増強している。 インド陸軍は2016年にLoAC近傍にT-72M1 130両の配備を開始している。 (2008-061002)

 インドが7月20日、ヒマラヤの実効支配線 (LoAC) での緊張の高まりから軽戦車100両と装輪直接照準戦闘車200両の調達を決めた。 軽戦車は全長7.8m、全高2.8m、重量22tで105mmまたは120mm砲を装備する。
 これに対して中国軍はType 15戦車をLoAC沿いに配備しているとみられている。 (2009-072908)

 インド陸軍が冬季に備えて、ヒマラヤのLoAC付近に25,000名以上の追加派兵を行う準備をしている。
 Ladakh地区には現在陸軍第14軍団の80,000名が駐屯している。 (2010-082603)

インド軍が銃使用許可

 Times of Indiaなどのインドメディアが6月22日、インドのシン国防相が21日に中国との国境地帯での銃の使用を禁止する交戦規則を改正する方針を固めたと報じた。
 両国は、国境地帯での偶発的な衝突が戦争に拡大することを防ぐために、1996年と2005年の合意により中国との国境地帯2km以内で兵士が銃や爆発物を携帯することはできなかった。
 このため、両国軍はこれまで銃の代わりに拳や石、棒など原始的な手段を使ってきたが、インド側は最近、中国軍がクギの打ち込まれた棒を使うなど、以前とは比較できないほど危険な武器を使ったと主張している。 (2007-062307)

35,000名の追加配置

 インドがヒマラヤ山脈の国境沿いにある中国との係争地に、35,000名を追加配置する準備を進めている。
 複数のインド高官がメディアへの発言に関する規則を理由に匿名で語ったところによると、追加配備が実現すれば全長3,488kmに及ぶ実効支配線 (LoAC) 沿いの状況が変わるほか、すでに逼迫している国防予算の節約を迫られるという。 (2008-073004)

Dassault Rafale の北方配備

 インド空軍が2016年末にDassault社に36機発注したRafaleの最初の5機が、7月29日にインド軍パイロットが操縦してインド北部のAmbala航空基地に着陸した。
 この5機は8月末までに同基地の第17 Golden Arrow飛行隊に配備される。 同飛行隊が配備する残りの13機も2~3ヶ月以内に到着する。
 2番目のRafale飛行隊はインド東北部で中国との国境に近いHasimara航空基地に2022年中頃までに配備され、第101 Falcons飛行隊の所属となる。 (2010-080503)

2・5・2・3・5 両軍司令官が「平和的解決」で合意

 ヒマラヤの実効支配線 (LoAC) を挟んで5月上旬以来緊張を高めている中印が、対立している5ヵ所について6月22日を持って部隊を撤退させることで合意した。 (2009-070104)

 インド政府が6月7日、インドと中国が国境付近で5月に緊張を高める小競り合いが発生したことを受けて、両国の軍司令官によるハイレベル協議を実施し、平和的に解決することで合意したことを明らかにした。
 中印両国の間ではここ数週間、正確には確定していない3,500kmにおよぶ国境をめぐって緊張が高まっていた。 (2007-060703)

2・5・2・3・6 中国軍が拠点確保

中国が新たな構造物を建設

 インド軍筋によると、ガルワン渓谷で6月15日に発生し過去53年で最も多くの死者を出した印中両軍の衝突の後、中国軍は同渓谷の出入り口にある数平方キロの領域を確保し続けているという。
 これを受けて、インド軍が24日に現地に軍用機を飛ばすなどして軍事行動を活発化させ力を誇示している。
 インドと中国はいずれも、衝突後に現地から部隊を撤退させたと公言しているが、ガルワン渓谷周辺に部隊を残しており、インドがより多くの部隊を展開している。
 標高約3,500mに位置するLehの基地からは、24日に240km離れた山岳地帯の国境に向かってインド軍機が飛び立った。
 Lehから延びる幹線道路には複数の検問所が設けられ、インド軍はLeh周辺で軍事行動を活発化させている。 住民らは近くの道路で軍用トラックと火砲の長い列を見たと語った。 (2007-062503)

 中国とインドの国境付近における両軍の衝突を巡り、ヒマラヤ山脈西部の衝突現場近くで中国が新たな構造物を建設したとみられることが衛星写真で判明した。 衝突再燃の懸念が強まりそうだ。
 インド兵20名が死亡したガルワン渓谷での15日の衝突を受け、インドと中国の軍司令官は22日、係争地に沿った複数の場所から対峙する軍を撤退させることで合意したが、衝突1週間後の22日に撮影した衛星写真ではガルワン川の河岸段丘に、中国の新たな構造物が増えている様子が見て取れる。
 インドは構造物ができた地域について、実効支配線 (LAC) の自国側に当たるとしている。
 一方中国はガルワン渓谷全体が自国領だとし、インド軍が衝突を誘発していると非難している。 (2007-062504)

中国軍に撤退の動き

 インド政府筋は、中国軍が7月6日にインドとの国境係争地から撤退し始めたと明かした。
 政府筋によると、中国軍は係争地近くのガルワン渓谷に設置されたテントなどを解体し、他の国境係争2地域からも車両が撤退したという。
 両国は6月に軍事衝突しインド兵20名が死亡したが、中国側は被害状況を依然として明らかにしていない。 (2008-070605)

中国軍、インド側支配域に建造物を設置

 民間衛星が7月29日に撮影した衛星画像から、カシミール地方のインド側支配域で複数の建造物が設置されていることがわかったが、インド国防省幹部は中国軍が設置したと主張している。
 衛星画像ではパンゴン湖北岸の道路沿いに赤や青の建造物が点在している。
 Indian Today誌によると、白い建造物は12戸あり、兵士が滞在するプレハブ小屋だと見られ、また桟橋付近には中国軍の青いボート約10隻が係留されているという。 (2009-081403)

2・5・2・3・7 両軍の対峙の長期化

 5月に始まったインド軍と中国軍による係争地域でのにらみ合いが長期化しており、両軍は7月に部隊を段階的に撤収させることで合意したが、インドメディアによると、合意後も両軍は自国の実効支配地域に侵入されたと非難し合って部隊や装備を増強している。
 インド軍関係者によると、中国軍はガルワン渓谷を含む複数の場所では1~2km後退したが、場所によっては全く撤収の気配を見せておらず、更に戦術的な要衝であるパンゴン湖周辺などで新たな構造物を建設しているという。
 インドメディアによると、両軍は現在、係争地域に合わせて10万名を配置して緊張が続いている。 (2010-090702)
2・5・2・3・8 インド側がインフラ整備

 インドが、中国との係争地があるヒマラヤ山脈でトンネル建設工事の最終段階を迎えており、完成すれば中国との国境に移動するまでの時間が大幅に短縮される。
 インドのインフラ強化計画には、道路や橋のみならず、高地のヘリパッドや、軍民共用の仮設滑走路の建設も含まれており、一番の目玉は、Himachal Pradesh州で$400Mをかけて建設中のトンネルで、これにより地滑りが多く冬は雪に覆われる50kmの道のりを徒歩で4時間かけて移動する必要がなくなる。
 9月下旬からはこのトンネルによりわずか10分で済むようになる。 (2010-092003)

 インドのヒマチャルプラデシュ州で10月3日、国境地帯への通年のアクセスを容易にする山岳トンネルが開通した。 モディ首相は開通式で、国境地帯のインフラ整備は、住民だけでなく軍の助けにもなると意義を強調した。
 全長9kmのトンネルはヒマラヤ山脈沿いの標高3,000mの高地に建設され、開通により45km短縮され国境地帯への軍部隊や物資の移動が容易になった。
 周辺は例年、大雪によって1年のうち半年近い期間、道路の通行が困難となっていた。 (2011-100305)

2・5・2・3・9 その後の小競り合い

インド軍が中国軍の進出阻止

 インド軍が8月31日、中国人民解放軍が国境の係争地で現行の態勢を変えようとしたが、未然に防いだと表明した。 インド軍関係者が匿名を条件にロイタに明らかにしたところによると、衝突には至らなかった。
 インド軍は声明で、中国軍が8月29~30日の夜にかけてラダック地方の対立を巡る取り決めに違反し、挑発的な軍事活動を行ったため、インド軍が現場の事実を一方的に変更しようとする中国軍の試みを阻止したと述べた。 (2009-083103)

インドが中国軍が挑発行為を非難

 インド外務省が9月1日、中国軍が両国国境の係争地で挑発行為を行ったと非難する声明を発表した。
 インド当局者が、インド軍は中国が週末にラダックの国境沿いで侵入を試みたとして、部隊を実効支配線のインド側にある4箇所の丘陵に配置したと述べた。
 また、中国の兵士らは軍の車両に援護され、インドの兵士に接近、口論が起きたが、衝突には至らなかったという。 (2010-090203)

インド軍特殊部隊のチベット出身兵が戦死

 チベット亡命政府が9月1日、インド軍の特殊部隊に所属するチベット出身の兵士が、ヒマラヤ地域にある中国との係争地で殺害されたことを明らかにした。 国境地帯では過去48時間で衝突が2件発生していたが、死者が報告されたのはこれが初めてである。
 少なくともインド兵20名が死亡した6月の衝突からわずか2ヵ月余り経ったが、両国の緊張は再び高まっている。 (2010-090207)

中国国営メディアがインド軍部隊に警告

 中国国営メディアが、人民解放軍がインド軍部隊に深刻な損害を与え得ると警告した。
 これは、中印両国間の国境紛争が8月29日からの週末にかけて再燃したことを受けたもので、両国とも相手国が実効支配線を越えて不法侵入したと非難している。 (2010-090212)

チベット高原の訓練映像を公開しインド側を牽制

 中国軍がチベット高原の標高4,500mを超える地域での訓練の映像を公開した。 昼夜間にわたる訓練を行ったとしている。
 中国は5月からインドと衝突を繰り返していて、チベットでの訓練の映像を公開することでインド側を牽制する狙いがあるとみられる。
 両国は9月1日も相手が実効支配線を越えて挑発行為を行ったと非難し合った。 (2010-090213)

中国軍がインド人5人を拉致

 インドの閣僚が9月6日、国境係争地でインド人5人が中国人民解放軍に拉致されたとされ、インド軍はホットラインで中国に警告したことを明らかにした。 (2010-090705)

9月8日: 威嚇射撃

 中国軍が9月8日朝、インド側が7日に国境地帯で二国間協定に反して空中に向けて威嚇射撃を行ったと非難する声明を出した。
 中国側によると、国境警備隊が事態鎮静化のための「対応」を行ったというが、どのような対応を行ったのか、あるいは中国側も威嚇射撃で応じたのかは明らかにしていない。 (2010-090803)

 インド軍が9月8日に声明で、中印国境地帯で合意に反して威嚇射撃を行ったとする中国側の主張に反論し、空中に向けて発砲したのは中国側だと非難した。
 声明によると、中国軍兵士がインド軍の前線に接近しようと試みインド部隊に遭遇した際、空中に向けて数回発砲したという。 (2010-090804)

国境で両軍にらみ合い越年へ

 中印小競り合いから半年、国境で両軍にらみ合い越年へ (2101-122002)

・標高5,000m、氷点下40度、5万人が対峙
・45年ぶり死者出る衝突、進展ない高官協議
・小国ブータンとの国境付近にも中国の集落
2・5・2・4 東部国境での対立

 インド政府当局者が、北西部ラダック地方で中国との国境紛争が始まった6月以降に、同じく中国と国境を接する北東部アルナーチャルプラデーシュ州アンジョー東部に部隊を移動させたことを明らかにした。
 同地域もインドと中国が領有権を巡って争っており、両国の対立が一段と深まる可能性がある。 ただ今のところインドの政府と軍の関係者は直ちに衝突が起きることはないとの認識を示している。
 インド軍の報道官はロイタに、基本的にいつも実施している部隊の交代で、それ以上のものではないと説明し、現時点で何も懸念すべきことはないと述べた。 (2010-090210)
2・5・2・5 ヒマラヤ諸国への影響

2・5・2・5・1 ネパール

特記すべき記事なし
2・5・2・5・2 ブータン

中国がブータン東部の領有権を新たに主張

 中国が6月以降、ブータン東部の領有権を新たに主張しているため、ブータンとその後ろ盾のインドは激しく反発している。
 中国が領有権を主張し始めたのは、途上国の環境保護を支援する国際基金「地球環境ファシリティー」の席上で、ブータンが助成を申請した同国東部「サクテン野生生物保護区」について、中国代表が保護区は中国とブータンの国境画定協議で議題になっている紛争地域だとして異議を訴えた。
 これに対し南アジア諸国代表は、保護区はブータン固有の領土であり過去に中国側が領有権を主張したことはないと反論した。
 中国とブータンは国交がなく、両国間の国境画定協議は1984年から24回行ったが未画定のままである。
 一連の協議で中国側が主張したのはブータン西部のドクラム地域と中部の領有権だけで、保護区のある東部については提起したことがないという。 (2008-071304)

 中国がブータン東部の領有権を主張し反発を招いている。 中国外務省は7月21日、ブータン東部、中部、西部いずれも長らく未画定の係争地があると述べた。
 国交がない両国は2016年まで国境画定交渉を24回重ねているが、ブータン側によれば東部が議題に上ったことはなかった。
 中国による新たな争点化は、ブータンと結び付きが強く、対中国境紛争が再燃しているインドを牽制する狙いもあるとみられる。 (2008-072602)

中国がブータン領内に集落建設

 インド民放のNDTVが衛星写真を根拠に11月22日、中国がブータンの領内に9km入った地点まで道路を造成し、途中に集落も建設したと報じた。
 現場は3ヵ国の国境地帯で、2017年に中国軍とインド軍がにらみ合ったドクラム高地の一角から東に10km以内という。
 ただブータンの駐インド大使はNDTVに対し、ブータンに中国の集落は存在しないと述べたという。 (2012-112302)

2・5・2・6 インド洋の覇権争奪

アンダマン・ニコバル諸島インフラ整備

 NECが12月18日、NEC Corporation Indiaを通じて2018年7月に供給契約を締結したインドのチェンナイとアンダマン・ニコバル諸島を結ぶ大容量光海底ケーブルの建設を完了し、インド国営のBSNL通信社に引き渡したと発表した。
 建設した光海底ケーブルは、総延長約2,300kmで毎秒100Gbpsの光波長多重伝送方式を採用している。
 ケーブルの敷設により、アンダマン・ニコバル諸島の通信環境は飛躍的に向上するとともに、インド政府によるデジタル・インディア政策にも貢献するとしている。 (2101-122101)
【註アンダマン・ニコバルでは、北側でミャンマー領のココ島に建設する発電所を、京セラコグループの現地合弁会社KCKM社が受注している。

2・6 ウクライナ

2・6・1 東部戦線

2・6・1・1 戦 況

特記すべき記事なし
2・6・1・2 停 戦

 ウクライナ東部で2014年から続く政府軍と親露派武装勢力による紛争を巡り、ウクライナ、ロシア両国などが合意した完全停戦が7月27日に発効した。
 ウクライナ東部紛争ではこれまでに14,000人が死亡した。
 停戦合意はこれまでに何度も破られており、長期的な停戦につながるかは不透明だ。今後の和平交渉はなお難航が予想される。
 2019年12月にウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの4カ国首脳会談で全域での停戦などで合意したが、実施は難航していた。
 4月までの開催を目指していた次の4ヵ国首脳会談のめども立っていない。 (2008-072801)
2・6・2 戦力の強化

2・6・2・1 装備の強化

特記すべき記事なし
2・6・2・2 電子装備

C-UAV 電子戦装置

 ウクライナがDonboss地域でのロシアの電子戦に対抗して電子戦装置を開発し配備している。
 Bukovol-ADシステムとNotaシステムを装備している部隊によると、同国陸軍は2015年からこの活動を続けており、Uniden、AOR、Hack RF社などが自主的に開発を行っているという。
 Proximus社製のBukovol-ADとTritel社製のNotaの少なくとも2種類のシステムがC-UAVという。 (2009-080005)

2・6・3 欧米との連携

2・6・3・1 米国の軍事援助

ウクライナ安全保障援助計画

 米国防総省が6月11日、ロシアの侵略に対抗するウクライナに対しウクライナ安全保障援助計画の元にFY21に$250Mの軍事援助を行うことを認めた。
 計画額の半分は軍の近代化に当てられ、30mm機関砲を装備した複数の警備艇やサイバ戦、戦略通信能力の強化も行われる。 (2007-061105)

ウクライナ海軍の強化

 米国務省が6月17日、ウクライナにMark Ⅵ高速艇16隻を含む$600Mを供与することを承認した。 この中には各種武器やセンサ、通信装置なども含まれている。
 これはロシアがアゾフ海の入り口であるケルチ海峡を封鎖したことへの対抗策で、トランプ大統領が2月にウクライナに対し約束していた。 (2007-061705)

 ロシアが2018年12月にアゾフ海の入り口であるケルチ海峡で、ウクライナのタグボート1隻と砲艇2隻を銃撃の末拿捕した事件を受け、米国がウクライナ海軍の強化に力を入れている。
 これを受け米国務省は6月、ウクライナに米海軍が河川警備に使用している全長25.8m、排水量72tのMark Ⅵ型重武装警備艇16隻を輸出することを承認した。
 Mark Ⅵ型はMk38 Mod 2 25mm砲2門、Mk50 .50機銃2丁を装備している。
 更に$250Mの援助の一環としてMark Ⅵ 2隻が供与されたほか、米沿岸警備隊が装備している全長34m、排水量168tのIsland級警備艇2隻も供与されている。 (2008-070206)

2・6・3・2 NATO 等との連携

イラク軍の訓練支援に参加

 ウクライナ国防省がブリュッセルで開かれたウクライナとNATO当局者会議後の1月15日、イラン情勢の緊迫でNATOが保留しているイラク軍の訓練支援が再開されれば、ウクライナはNATOの支援に20名の部隊を派遣すると発表した。 (2002-011504)

NATO の EOP としての資格

 NATOが6月12日、ウクライナがNATOのEOPとしての資格を得たと発表した。
 NATO EOPは2014年ワルシャワ首脳会議で合意したPII計画に基づくもので、アフガンやコソボでのNATOの作戦やNATO即応軍 (Response Force) やNATOの演習にも参加できるようになる。 (2008-062403)

英陸軍空挺部隊との共同降下訓練

 9月22日から始まった英国とウクライナの合同演習の冒頭で、英陸軍第16空中強襲旅団隷下の空挺部隊250名が空挺降下した。 降下訓練にはウクライナ陸軍の空挺隊員200人も参加した。
 部隊はC-130で、イングランドの空軍基地からウクライナ南部の演習場まで、途中空中給油を受けながら無着陸で飛来した。
 演習には英軍の工兵連隊、騎兵砲兵隊、通信部隊、兵站部隊、電気機械工兵隊などから選抜された将兵も参加している。 (2010-092503)

 英陸軍空挺部隊250名が9月19日にウクライナ南部で降下した。
 降下したのは英陸軍第16空挺突撃旅団のPathfinder偵察隊で、C-130で英本土から直行して高度600ftから降下した。 降下には工兵隊、騎馬砲兵隊、空挺連隊、通信隊、兵站隊の隊員も含まれていた。
 降下した英陸軍部隊は9月22日に8,000名で開始されたJoint Endeavour演習に参加した。
 この演習には米国及びカナダからも若干名が参加した。 (2011-093009)

2・6・3・3 東欧諸国との連携

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2・6・3・4 NATO 加盟願望

特記すべき記事なし
2・7 リビア

2・7・1 リビア内戦

 ロイタ通信などが、リビアの暫定政権が6月4日に拠点とする首都トリポリを全て掌握したと宣言したと報じた。
 暫定政権は3日までにリビア国民軍(LNA)が占拠していたトリポリ南方の空港を奪還しLNAも撤退を認めた。
 2019年4月に首都への進軍を開始したLNAが、近郊の要衝を制圧するなど激しい攻防が続くが、暫定政権側はトルコの軍事支援で勢力を盛り返した。
 トルコは地上戦に加えてUAVによる攻撃も行ったという。 (2007-060403)

 内戦状態のリビアで、中部シルトを巡る攻防が焦点になってきた。
 シルトは主要油田や石油輸出港につながる要衝で、トルコの軍事支援を受けてシルト奪還を目指すシラージュ暫定政権部隊の報道官は7月8日までに、部隊がシルト中心部まで30kmの地点まで到達したと明かし「シルトにも近いうちに入る」と述べた。 (2008-070803)

2・7・2 各国の介入

2・7・2・1 地理的な宿命

 今日トルコとロシアが対立しているリビアでは、地理的にも歴史的にも同様の戦いが繰り広げられている。
 WWⅡではロンメル将軍率いるドイツ軍と英国軍が戦闘を繰り広げているが、古代にはプトレマイオス王朝とカルタゴが、中世には西ローマ帝国と東ローマ帝国がここで戦っている。
 現在はトルコとムスリム同胞団が支援するトリポリを拠点とするGNAと、ロシア、エジプト、UAE、フランスとその他諸国が支援するトブルクを拠点とするLNAが戦っている。 (2008-072808)
2・7・2・2 トルコの介入

シリア人傭兵の投入

 シリアでは内戦の停戦合意によってロシアが支援するアサド政権軍と、トルコが支援する反体制派の戦闘が減少しているが、それと入れ替わる形で両国出身の傭兵たちは今度はリビアで戦闘を続けている。
 シリアで反体制派の一部を支援しているトルコは、リビアでは国連の承認を受けた国民統一政府 (GNA) を支援している。 これに対しシリアでアサド大統領とその政権軍を支援しているロシアは、リビアでは東部を拠点とする軍事組織を率いるハフタル司令官を支援している。
 リビアに科された武器禁輸措置を監視している国連の専門家らは報告書で、地上の情報源から推測するとハフタル司令官の作戦を支援するシリア人傭兵は2,000人未満と推測している。 (2006-052403)

 リビアでは独裁政権の崩壊後に国が分裂し、西部の首都トリポリを拠点とする暫定政府と、東部の軍事組織が激しい戦闘を続けていて、それぞれの勢力を周辺国などが支援している。
 シリア人権監視団はこの戦闘について6月1日、シリア人1,1600人が傭兵としてリビアに送り込まれていると発表した。
 傭兵はリビアの暫定政府側を支援しているトルコによって月額$2,000の報酬で送り込まれており、すでに351人が死亡しているが、このうち20人は18歳未満の子どもだとしている。 (2007-060201)

 米アフリカ軍 (AFRICOM) が8月28日、リビア内戦に合わせて7,000名のシリア兵が参加しているとの見積もりを示した。
 その内5,000名はGNA、2,000名はLNAの戦闘員になっているという。 (2010-090303)

 米国務省の監察官が報告書で、トルコがシリアの戦闘員3,500~3,800名をリビアへ送り込んだことにより、リビアの戦況が変化したと結論づけている。 (2008-071903)

 米監察総監室 (OIG) が8月28日に行った報告によると、米アフリカ軍 (AFRICOM) がリビアにシリアからの戦闘員が7,000名いると見積もっている。
 そのうち5,000名がGNAに所属しており、GNAに属しているシリア兵はトルコのSadat社に雇われている。 (2011-090919)

国連のリビアへの武器禁輸に違反

 泥沼化したリビア内戦を受け、フランス、イタリア、ドイツの3ヵ国首脳が7月18日付で共同声明を出し、国連安保理によるリビアへの武器禁輸を破る国に対し、制裁を検討する用意があると警告した。 情勢次第ではEUの提案としてさらに圧力をかける構えである。
 共同声明は密輸国を名指ししていないが、首都を拠点にする暫定政権を支えるのはトルコで、仏独伊対土のNATO加盟国同士で亀裂が深まりそうである。 (2008-072001)

国連のリビアへの武器禁輸履行の臨検を妨害

 フランス外務省が6月17日、国連のリビアへの武器禁輸の履行をトルコ艦が妨害したと非難した。
 フランス国防省によるとリビアへ武器を輸送している疑いのある貨物船をフランス海軍フリゲート艦Courbetが臨検しようとしたところトルコ海軍のフリゲート艦から3度にわたりレーダ照射を受けたという。 リビアへの武器輸送が疑われたのはタンザニアの旗を掲げた貨物船Cirkinであったという。
 またギリシャのメディアによると、6月10日に国連のリビアへの武器禁輸作戦Operation Iriniを遂行していたEuropean Naval Forceに参加していたギリシャ海軍のフリゲート艦Spetsaiが武器輸送が疑われる貨物船を護衛していたトルコのフリゲート艦2隻に遮られたという。 (2008-062411)

米大統領の支持取り付け

 トルコ大統領府が7月14日、エルドアン大統領とトランプ米大統領がリビア情勢に関して電話で会談し、両国の協力を強化して安定化の継続を目指すことで一致したことを明らかにした。
 トルコが支持している国際的にも認知されたリビア暫定政府が戦っている東部に拠点を置く武装組織リビア国民軍 (LNA) は、UAE、エジプト、ロシアが支援している。 (2008-071506)

SentinelレーダとHAWK SAM 2個中隊の配置

 Maxa衛星の画像によると、リビア西部のAl-Wattiyah航空基地基地の滑走路南側には7月3日にトルコがSentinelレーダとHAWK SAM 2個中隊を配置していることが確認されている。 (2009-071509)

2・7・2・3 ロシアの介入

 米アフリカ軍が5月26日、ロシアがリビアに戦闘機を派遣したとする分析結果を公表した。
 欧米や中露、トルコなどの関係各国は1月にリビア内戦への軍事介入停止や武器禁輸徹底などを盛り込んだ共同声明を採択しているが、これに反するロシアの介入強化はリビアの不安定化を加速させ、内戦の犠牲者増加につながりかねない。
 米軍によると、戦闘機はロシア軍機であることを隠すため、経由地のシリアで偽装を施された後、リビアに送られ、西部の首都トリポリを拠点とする暫定政権に対し、東部の軍事組織リビア国民軍(LNA)を援護するロシアの民間軍事会社に航空支援を提供するとみられる。 (2006-052703)

 駐欧米空軍司令官が5月26日にアフリカ空軍 (AFRICOM) の声明で、ロシアがリビアに空軍機を送り、ここを地中海における第2の拠点国に使用としていると述べた。 ロシアはリビア政府軍 (GNA) と戦闘を繰り広げているLNAを支援している。
 GNAの内相は5月21日、ロシアがMiG-29 6機とSu-24 2機をリビアに展開したと述べた。 Maxar衛星が5月19日に撮影した画像にはAl-Jufrah航空基地の滑走路上にいるMiG-29 1機が写っている。
 AFRICOMは5月20日、Al-Jufrah航空基地にいるMiG-29 2機の画像を公開した。
 またMaxarが5月24日、Su-24 4機がAl-Khadim航空基地に建設された重掩体に格納された画像を撮影している。 Al-Khadim航空基地ではUAEがLNAの支援を行っている。 (2008-060301)

 米アフリカ軍 (USAFRICOM) が6月18日、リビアのAl-Jufrah航空基地におけるロシアの活動が写った衛星画像を公開した。 その中の1枚にはP-12/18 Spoon Restレーダが写っていた。
 また格納庫の外に置かれたMiG-29 1機も写っていた。
 P-12/18レーダとMiG-29の存在はWorldView-2衛星の6月8日に撮影した画像でも分かっていた。 (2009-070101)

 米監察総監室 (OIG) が8月28日に行った報告によると、米アフリカ軍 (AFRICOM) がリビアにシリアからの戦闘員が7,000名いると見積もっている。
 そのうち2,000名がLNAに所属しており、LNAのシリア兵はロシアに雇われている。 (2011-090919)

2・7・2・4 UAE の介入

 UAEの兵員がリビアにロシア製Pansir-S1防空システムを持ち込んでいる映像が6月8日にツィッター上に流出した。 UAEはGNAと対抗するLNAを支援している。 (2008-061713)

 国籍不明機が7月4~5日の夜にリビア西部のAl-Wattiyah航空基地を空爆した。
 Maxa衛星の画像によると、同基地の滑走路南側には7月3日にトルコがSentinelレーダとHAWK SAM 2個中隊を配置していることが確認されている。  GNAを支援しているトルコはUAEがPansyr-S1を配備していたAl-Wattiyahに対しUAV攻撃を行いLNAから奪取していた。 (2009-071509)

2・7・2・5 エジプトの介入示唆

 エジプトのシシ大統領がリビアの暫定政権に対し6月20日、トルコの支援を受けた暫定政権軍が奪還に向け攻勢を強める中部の要衝Sirteについて、越えてはならない一線だと強調し、軍事介入を警告した。
 エジプトはリビア東部を拠点とするリビア国民軍 (LNA) を支援している。 (2007-062103)

 エジプト国会が7月20日、エジプト軍をリビアに派兵することを出席した議員510人全会一致で承認した。
 エジプトが支援するリビア国内の武装組織が劣勢に転じ、国会はエジプトの安全保障上の脅威が強まったと判断したもので、今後はシーシ大統領が派兵の規模やタイミングを決める。 (2008-072101)

2・8 ナゴルノ・カラバフ

2・8・1 アルメニアとアゼルバイジャン

アゼルバイジャンの失地回復願望

 現在、未確定の国境10kmの近くのアゼルバイジャン側に150,000人が居住している。 (2010-091404)

・ソビエト時代 :凍結

・2016年 4月  :4日間戦争

・2018年    :アゼルバイジャンNakhhivanの争奪戦

・2020年 7月12日:アルメニアのMovsesとアゼルバイジャンのTovuzで紛争

アルメニア側の怨念

 アルメニアとアゼルバイジャンの間で続くナゴルノカラバフ紛争で、少数民族のヤジド教徒がアルメニアの義勇兵として出征した。
 父祖らが100年前にアルメニア人と共にトルコから迫害を受けた歴史が、彼らを戦場へと駆り立てている。
 ヤジド教(ヤジディ教)はゾロアスター教などから生まれクジャクを神聖視する宗教で、アルメニアはヤジド教徒の安息の地とされ民族構成で国民の1%を占めている。
 聖堂があり、独自の言語教育が認められて国会に議員を送り込んでいる。 (2011-102803)

小規模衝突(7月12日~14日)

 アゼルバイジャンとアルメニアの間で戦闘があり、7月14日までの3日間で双方合わせて15人が死亡した模様である。
 両国軍の交戦は12日にアゼルバイジャン北西部のアルメニアとの国境地域で始まり、14日も銃撃や砲撃が続いた。
 InterFax通信によると、14日までの戦闘でアゼルバイジャン軍に11名の死者が出た。 アルメニア軍でも4名が死亡したと報じられ、双方に負傷者も多数出ている。 (2008-071502)
 InterFax通信などが、アゼルバイジャン国防省が7月16日にアルメニアとの緊張が高まっていることで、われわれがアルメニアのメツァモール原発を高精度で攻撃できる最新ミサイルシステムを保有していることを忘れてはならないと警告したと報じた。
 アルメニアのメディアが、アゼルバイジャンに対するダム攻撃の可能性に触れたのに対し、アゼルバイジャンはダム攻撃への対抗措置として原発攻撃の可能性に言及した。 (2008-071701)

 アルメニアが最近撃墜したというアゼルバイジャンのUAVを展示した。 展示されたのはBlueBird ThunderB 1機、Aeronautics Orbiter 3 2機、Hermes 200 1機である。
 アルメニアとアゼルバイジャンは7月17日に衝突した後、小火器や砲迫での攻撃を繰り返している。
 両国がUAVを使用していることは以前から報じられており、アゼルバイジャンはElbit社製SkyStriker索敵遊弋弾やOrbiter 3 UAVを、アルメニアはX-55 UAVが報じられている。 (2009-072907)

2・8・2 大規模衝突

2・8・2・1 大規模衝突の生起

9月27日の衝突

 アルメニアとアゼルバイジャンの係争地であるナゴルノカラバフで9月27日、両国軍による大規模な戦闘が起き、砲撃などによって民間人を含む死者が出ている。
 戦闘は27日朝に始まり、アゼルバイジャン軍のヘリやUAVを撃墜したと発表した。
 アルメニア軍はアゼルバイジャン軍が攻撃を仕掛けてきたと主張し、アゼルバイジャン軍は「アルメニア軍の攻撃を阻止し、民間人の安全を守るため反撃を開始した」と反論した。 (2010-092701)

 アゼルバイジャンとアルメニアが領有を主張する紛争地ナゴルノカラバフ自治州で9月27日に大規模な戦闘が発生し、民間人を含む複数の死傷者が出ているもようである。
 イタル・タス通信などによると、両国は相手が先に攻撃をしてきたと主張し、互いに軍事施設への砲撃などを行った。 ヘリコプタや戦車、無人機などの被害も確認されている。
 アゼルバイジャンの友好国であるトルコは同国への支援を表明しアルメニアを非難する一方、アルメニアの後ろ盾でアゼルバイジャンにも影響力を持つロシアは双方に自制を求めた。 EUのミシェル大統領も即時停戦を要求した。
 両国間では7月にも、同自治州から数百キロ離れたアゼルバイジャン北西部トブス地区で10人以上が死亡する戦闘が発生しており、両国間の緊張が再び高まった。 (2010-092702)

 アルメニアとアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフで9月27日から始まった大規模な軍事衝突は28日になっても続いていて、民間人を含む数百人の死者が出ている可能性がある。
 アルメニア側はアゼルバイジャン軍の兵士200名を殺害したと発表したのに対し、アゼルバイジャン側もアルメニア軍兵550名を殺害したと発表したがアルメニア側が即座に否定するなど情報は錯そうしているが、民間人を含む数百人の死者が出ている可能性がある。 (2010-092803)

 アゼルバイジャン外務省が10月4日、アゼルバイジャン第2の都市ギャンジャにアルメニア側から攻撃があり、民間人1人が死亡し4人が負傷したことを明らかにした。
 人口約33万人のギャンジャはアゼルバイジャン西部に位置しナゴルノカラバフから離れており戦火が拡大している。
 両国の衝突は8日目に入り、双方の死者は240人を超えた。 (2011-100404)

 アゼルバイジャンのアリエフ大統領が10月4日、ナゴルノカラバフ地域での戦闘でアルメニアに同地域やその周辺から軍を撤退させる期限を設定するよう求め、応じない限り軍事行動を停止しないと表明した。
 アリエフ大統領はテレビ演説で、同国軍は1990年代にアルメニア人勢力が占領した同地域を取り戻すために進軍していると述べた。 (2011-100502)

アゼルバイジャンの軍備優勢

 ナゴルノ・カラバフを巡る19日間に及ぶアルメニアとアゼルバイジャンの戦闘はロシアが仲介した停戦に両国が10月8日に合意したが、状況は不安定である。 (2012-102105)

アゼルバイジャンにイスラエル製武器

 アゼルバイジャンの大統領顧問であるハジエフ氏は9月30日、イスラエル製のHaropが過去数日間の戦闘で非常に効果的であることが証明されたと述べた。
 アゼルバイジャンは2016年4月の軍事衝突時にもアルメニア側の軍用輸送車に対してHaropを使用して7人の兵士を殺害していた。

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 ┃    ┃アルメニア┃ アゼル ┃
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 ┃M B T  ┃  325  ┃  582  ┃
 ┃I F V  ┃  300  ┃  588  ┃
 ┃A P C  ┃  236  ┃  637  ┃
 ┃SHORAD ┃  122  ┃  44  ┃
 ┃MSAM  ┃  12  ┃  18  ┃
 ┃MRL   ┃  66  ┃  198  ┃
 ┃自走砲 ┃  30  ┃  167  ┃
 ┃戦闘機 ┃   4  ┃  13  ┃
 ┃攻撃ヘリ┃  10  ┃  30  ┃
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 Haropは全長2.5m、翼端長3mほどで、23kgの弾頭を搭載して行動半径1,000kmを最大6時間遊弋し、敵の電波を感知すると突入して自爆する。 (2011-100304)

 ナゴルノカラバフでアゼルバイジャンが10月10日の停戦発効後もアルメニアに係争地からの撤退を求め、今後の作戦再開も辞さない構えだが、その強気の背景にはイスラエルから供給された兵器の存在がある。
 アゼルバイジャンは民族的な関係が深いトルコや、旧ソ連時代からつながりがあるロシアからも兵器を調達しているが、イスラエルは取引額で両国をしのぐ最大の供給国で、兵器輸入の6割を占めるとされる。
 AFP通信などによればアゼルバイジャンのアリエフ大統領は、2016年にイスラエルから$4.85Bの防衛装備品を購入したと述べている。 (2011-101202)

アゼルバイジャンの目的

 ナゴルノ・カラバフを巡るアルメニアとアゼルバイジャンの戦いは、収まりそうにもない。
 アゼルバイジャン軍にとって戦闘の目的は、1994年の戦いでアルメニアに奪取されたFuzuliとJabrayliの奪還であるかである。 (2012-100701)

長距離火力の応酬

 ナゴルノ・カラバフを巡りアルメニアとアゼルバイジャンの間で9月27日に生起した武力衝突は、長距離火力の応酬に発展している。
 アゼルバイジャン軍は10月1日にナゴルノカラバフの中心都市StepanakertをBM-30 Smerch 300mmロケット弾で攻撃している。 その報復としてアルメニア軍もアゼルバイジャンのGanja空港をBM-30で攻撃した。
 アゼルバイジャンはイスラエル製のHaropを装備しており、6月30日にはアルメニアのD-30 122mm砲を攻撃した映像を公開している。 (2012-101401)

犠牲者数の増大

 プーチン露大統領が10月22日、アゼルバイジャンとアルメニアの戦闘による犠牲者が両国でそれぞれ2,000名を超え合わせて5,000名に近づいているとの独自情報を示した。
 9月27日から始まった戦闘で、アルメニア側は22日までに軍人900名の死亡を発表したが、アゼルバイジャン側は市民63人の死亡と292人の負傷を発表しているが、軍人の死者を公表していない。 (2011-102301)

 Interfax通信が、アゼルバイジャン国防省が12月3日にナゴルノカラバフ自治州をめぐる紛争で9月27日の戦闘開始から11月10日の停戦までに同国軍人2,783名が戦死したと発表したと報じた。
 一方、アルメニア保健省は今月2日に、今回の紛争で自国側の軍人2,718名が戦死したと公表している。 (2101-120306)

2・8・2・2 関係国の対応

トルコの介入姿勢

 アゼルバイジャン北西部トブス周辺のアルメニアとの国境地帯で7月12日にアルメニアとの間で交戦が発生し、少なくとも20人が死亡し、両軍のにらみ合いが続いているが、アゼルバイジャンと同国を支援するトルコが29日にアゼルバイシャンとの大規模な合同軍事演習を開始した。
 演習は8月10日までの予定で、砲兵などの地上部隊と航空戦力が参加する。
 ロシアを後ろ盾とするアルメニアは「挑発行為だ」と猛反発しており、この地域の緊張がさらに高まる恐れがある。
 アルメニアにはロシア軍基地があり、アルメニアは露主導の集団安全保障条約機構 (CSTO) に加盟している。
 プーチン露大統領は今月24日、アルメニアとアゼルバイジャンの衝突について「たいへん繊細な問題だ」と警戒心をあらわにした。 (2008-073008)

 ロイタ通信が、トルコのアカル国防相が9月28日にアルメニアとアゼルバイジャンの交戦が続くナゴルノカラバフ情勢をめぐり、アルメニアが外国からの傭兵やテロリストを現地に送り込んでいると主張し、直ちに撤収させるよう求めた。 (2010-092804)

 トルコのエルドアン大統領が9月28日にイスタンブールで演説し、アルメニアとアゼルバイジャンによる交戦が激化したナゴルノカラバフ紛争をめぐり、問題は占領から始まったもので、アルメニアが占領地から去れば平和が戻ると述べ、ナゴルノカラバフからアルメニアが手を引くという解決策以外は受け入れられないという認識を示した。 (2010-092901)

 アルメニアのパシニャン首相が10月6日、9月27日の開戦から10日目を迎えたナゴルノカラバフをめぐる戦闘について、トルコが関わってこなければ始まることはなかったと強調してアゼルバイジャンの背後にいるトルコを非難した。 (2011-100701)

トルコの参戦疑惑

 アルメニア国防省が9月29日、ナゴルノカラバフをめぐるアゼルバイジャンとの戦闘で、アゼルバイジャンを支援するトルコのF-16がアルメニア軍のSu-25 1機を撃墜したと発表した。
 アルメニア国防省報道官は、トルコ機はアルメニア機を撃墜した際、アゼルバイジャン機がアルメニアの民間人居住地を爆撃するのを支援していたと述べた。
 トルコはこの主張を全面的に否定している。 (2010-093001)

フランスとトルコが対立

 アゼルバイジャンとアルメニアの間で勃発したナゴルノカラバフ地域を巡る戦闘が激化し、NATO同盟国のフランスとトルコが対立する事態となっている。
 トルコのチャブシオール外相は9月30日、要請があればアゼルバイジャンを軍事支援するとした一方、アルメニア人が多く住むフランスのマクロン大統領は、トルコの発言を好戦的と非難している。
 アルメニアは、トルコに撃墜されたとするSu-25の写真をネットに掲載したのに対して、トルコは撃墜を否定しアゼル側は2機が山に墜落したと反論している。
 ナゴルノカラバフは国際法上はアゼルバイジャン領だが、1991年の旧ソ連崩壊時に独立を宣言しアルメニア系住民が実効支配する自治州になっている。 (2011-100101)

 マクロン仏大統領が10月2日、シリアのイスラム過激派がトルコを経由してアゼルバイジャン入りしているとして、トルコに説明を求め、トルコの行動に立ち向かうよう全加盟国に呼び掛けた。
 マクロン大統領によると、シリア北部アレッポからトルコのガジアンテプを経由して、シリアのイスラム過激派300人がアゼルバイジャン入りしたことが情報報告によって示されたという。
 マクロン大統領はEU首脳との会合後、越えてはならない一線を越えており容認できないとして、トルコのこうした行動に立ち向かうようすべての加盟国に求めると述べた。 (2011-100202)

ロシアがアルメニア支援の姿勢

 ナゴルノカラバフ自治州をめぐる戦闘は、両国が停戦に合意したあとも続き死傷者が増えている。
 こうした中、ロシアとアルメニアなどの軍事同盟CSTOが10月12日にベラルーシで900名規模の軍事演習を開始し、アゼルバイジャンを牽制している。
 CSTOを主導するロシアは、アルメニア本土が攻撃された場合、要請に基づいて防衛する義務がある。 (2011-101301)

米国の中立姿勢

 米国務省報道官が9月27日に声明を発表し、アルメニアとアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフで起きた大規模戦闘を受け、ビーガン国務副長官が両国の外相と電話会談して敵対行為の即時停止を要求したと明らかにした。
 またトランプ大統領は同日の記者会見で大規模戦闘を止めることができるか見てみようと述べ、情勢を注視する考えを示した。 (2010-092801)

ギリシャがトルコを非難

 ギリシャのデンディアス外相が10月16日にアルメニアを訪れ、トルコが紛争に干渉していると訴えた。
 また、ギリシャとアルメニアは「共通の問題を抱えている。 それはトルコだ」と強調した。
 ギリシャもトルコとは歴史的に関係が悪い。 (2011-101702)

アゼルバイジャンの戦勝祝賀式典にトルコ大統領が列席

 アゼルバイジャンで12月10日にアルメニアとの戦闘に勝利したことを祝うパレードが行われ、トルコのエルドアン大統領も出席した。
 パレードには両国の兵士3,000名以上が参加して、戦闘に大量に投入されたトルコ製のUAVなどが披露され、旧ソ連圏でのトルコの影響力拡大を見せつける形となった。 (2101-121102)

2・8・2・3 傭兵投入の疑惑

 ロシア外務省が、アゼルバイジャンとアルメニアの戦闘にシリアやリビアから違法な武装集団が送り込まれているとの懸念を示した。
 今回の戦闘では、アゼルバイジャンとアルメニアがそれぞれ、相手国が中東の紛争地帯で活動してきた戦闘員を傭兵として送り込んでいると非難し合ってきた。
 シリア人権監視団は9月30日から1日に、アゼルバイジャンに傭兵として送り込まれたシリア人は850名に上り、さらに数百名が準備をしていると指摘した。
 これらの傭兵は油田地帯や国境を守るということでアゼルバイジャンに送り込まれたが、実際にはアルメニアとの戦闘に参加しており今までに28名が死亡したという。
 さらにアルメニア側で戦っているシリア人もいるとの情報も寄せられている。 (2011-100107)

 在英のシリア人権監視団が10月3日、ナゴルノカラバフでの戦闘で、これまでにシリア人戦闘員少なくとも64人が死亡したと明らかにした。
 人権監視団によると、アゼルバイジャン側に加勢しているシリア人戦闘員は1,200人という。 (2011-100402)

2・8・2・4 停 戦

2・8・2・4・1 停戦協議

早期実現が微妙な停戦協議

 アルメニアが10月2日、米仏露主導の仲介による停戦協議を歓迎する声明を出していたが、アゼルバイジャン国防省が同日にナゴルノ・カラバフ自治州でアルメニア軍の拠点を爆撃したとする映像を公開した。
 アゼルバイジャン側は3日にも爆撃を行ったと発表しており、停戦協議の早期実現は微妙な情勢になっている。 (2011-100401)

10月10日停戦の発効、破綻

 アゼルバイジャンとアルメニアの外相が10月9日から10日未明にかけてモスクワでロシア外相を交えて会談し、アゼルバイジャン領のナゴルノ・カラバフ地域周辺で続く両国軍の戦闘を10日12:00から停止させると宣言した。
 停戦は戦死者の遺体の返還や捕虜の交換を目的とし、具体的な条件はさらに協議するという。 (2011-101004)

 アゼルバイジャンとアルメニアが、アゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフ自治州を巡る戦闘を停止する合意が、現地時間の10月10日12:00に発効した。
 9月27日に勃発したアゼルバイジャンと、自治州を実効支配するアルメニア系住民を支援するアルメニアとの大規模戦闘は、双方の死者が民間人を含め420人を超え、1994年の停戦合意後、最大規模の戦闘に発展していた。 (2011-101006)

 トルコ外務省がナゴルノカラバフをめぐるアゼルバイジャンとアルメニアの停戦について10月10日に声明を出し、捕虜や遺体の交換のためで、恒久的な解決策ではないと強調した。
 その上で、ナゴルノカラバフを実効支配するアルメニアに対する最後の機会だと述べ、直ちに係争地から撤退するよう要求した。 (2011-101007)

 アゼルバイジャン政府が10月11日、同国第2の都市ギャンジャが隣国アルメニア軍のミサイル攻撃を受け、市民9人が死亡したと発表した。
 両国はロシアの仲介で10日から停戦合意が発効したばかりで、アルメニア側は攻撃を否定し逆にアゼルバイジャン軍の停戦合意違反と批判の応酬が続いている。 (2011-101103)

 各国がナゴルノカラバフをめぐる停戦合意を順守するよう求めているにもかかわらず、アゼルバイジャンとアルメニアが10月13日に再び交戦した。
 ナゴルノカラバフを実効支配するアルメニア人勢力は、アゼルバイジャンが同地域の南部と北部、北東部で攻勢を開始したと非難する一方、アゼルバイジャンはアルメニアがナゴルノカラバフ近隣の自国領、ゴランボイ、タルタル、アグダム地区への爆撃を開始したと非難している。 (2011-101406)

 アゼルバイジャンのアリエフ大統領が10月14日、同国軍がナゴルノカラバフ地域の周辺8村を解放したと述べた。
 アリエフ大統領は14日、アルメニアがアゼルバイジャンからジョージア、トルコへ向かう石油やガスのパイプラインへの攻撃を試みているとも批判した。
 両国は10日に停戦合意したが、互いに攻撃を続けているもようで、停戦の履行は難航している。 (2011-101501)

 アゼルバイジャンが10月14日、アルメニア国内からアゼルバイジャンの都市を攻撃していたミサイル発射装置を破壊したと発表した。
 アルメニアは国内の軍展開地が攻撃を受けたことを認めたが、同国軍によるアゼルバイジャン領土への攻撃はなかったと主張し、アルメニア側もアゼルバイジャン国内の軍施設に対する攻撃を開始する可能性があると警告した。
 ナゴルノカラバフをめぐる両国間の紛争に地域大国のロシアとトルコを引き込む恐れを高める展開になってきた。 (2011-101504)

 アゼルバイジャン第2の都市ギャンジャで10月17日未明に複数の民家がミサイル攻撃で破壊された。 ミサイル攻撃があった時、多くの住民は就寝中だった。
 同国とアルメニアの係争地をめぐる3週間におよぶ紛争は一層激化している。 (2011-101705)

 アゼルバイジャン西部ギャンジャで10月17日未明にミサイルの直撃によるとみられる爆発で住宅地が破壊され、住民13人が死亡、50人以上が負傷した。
 ギャンジャの住民に多数の犠牲が出たのは停戦合意が発効した10日以降だけで2度目になる。
 アゼルバイジャンはアルメニアへの反撃を明言し、停戦合意の維持が極めて難しくなっている。 (2011-101706)

10月18日: 新たな停戦が発効

 アゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突で、両国は新たに人道的停戦で合意し、10月18日00:00に発効した。
 ロシアの仲介により10日に停戦が発効していたが双方は戦闘を続け、停戦崩壊の危機に瀕していた。 (2011-101801)

 アルメニアとアゼルバイジャンが10月18日00:00からの停戦で合意したが、双方が相手方はその後も戦闘を続けていると非難している。
 アゼルバイジャン国防省は、ナゴルノカラバフ自治州に隣接するアグダム地域がアルメニアの空爆を受け、ジャブライル県なども砲撃に晒されたとした上で、同国軍が適切な報復措置を行ったと発表した。
 一方アルメニア側は、アゼルバイジャン軍が2度にわたる攻撃を行い、戦場から負傷兵を後送したいとの申し出を拒否したとしている。 (2011-101903)

10月26日発効の3度目の停戦、1時間足らずで崩壊

 ナゴルノカラバフでは10月26日朝に米国の仲介による3度目の停戦が発効したが、1時間も経たないうちに双方が相手の停戦違反を非難する事態となった。
 今回の「人道的停戦」は米政府が25日に発表し26日08:00に発効したが、それから1時間もせずに最初の違反疑惑が浮上した。 (2011-102603)

11月8日: アゼルバイジャン軍がシュシャを奪還

 アゼルバイジャンの首都バクーからの報道によると、同国のアリエフ大統領が11月8日に、同国領でアルメニアが実効支配するナゴルノ・カラバフ地域内の第2の都市シュシャを自国軍が奪還したと述べた。
 これに対してアルメニア側も戦闘を認めており、国防省報道官は戦闘は継続中だとSNSに投稿してシュシャの陥落を否定した。
 シュシャは同地域の中心都市ステパナケルトの南十数㌔に位置する。 (2012-110801)

11月9日: アゼルバイジャン軍がロシア軍ヘリを誤って撃墜

 タス通信によると、アゼルバイジャン国防省が11月9日にアゼルバイジャンとの国境に近いアルメニア領空を飛行していたロシア軍のMi-24を誤って撃墜したと発表、謝罪した上で、賠償の用意があると表明した。 ロシア国防省によると、乗員2名が死亡、1名が負傷した。  ロシアはアルメニアとの軍事同盟に基づき、アルメニア国内に軍を駐留させている。 (2012-111002)

2・8・2・4・2 停戦の成立

11月10日停戦合意

 ナゴルノカラバフ紛争をめぐる11月10日に行われたアルメニアとアゼルバイジャンの停戦合意は、ロシアを後ろ盾とするアルメニア側がトルコの支援を受けるアゼルバイジャンに大幅な譲歩をする内容だった。
 10日の停戦合意は、アゼルバイジャンが9月末以降の戦闘で奪還したナゴルノカラバフ自治州内の領域を引き続き支配下に置くことを認め、更に今回の戦闘以前にアルメニアが実効支配していた自治州周辺の多くの地域をアゼルバイジャンに返還するとした。
 一方、分断される自治州とアルメニア本国には幅5kmの回廊を維持すると共に、ロシアは2,000名のの停戦監視部隊を前線地帯に投入するとしている。
 停戦合意を仲介したロシアは、戦闘を放置すればアゼルバイジャン側がナゴルノカラバフ自治州の全域を掌握しかねないと判断し、事実上のアルメニア敗北を容認した。 (2012-111104)

 9月下旬に始まった戦闘は、アルメニアが占領していた多くの領土を奪還したアゼルバイジャンの戦果を認める形で収束する見通しとなったが、ロシアの仲介で合意した停戦の共同声明はナゴルノカラバフの帰属や、アゼルバイジャンの背後で影響力を増すトルコの役割に触れておらず、本格和平に向けて課題を残した。 (2012-111101)

 ナゴルノカラバフを巡るアゼルバイジャンとアルメニアの激しい戦闘は11月16日までに、停戦合意に基づきロシア軍の平和維持部隊が現地に展開し、双方の攻撃は完全に停止した。
 事実上敗北したアルメニアはこれまで占領していた地域をアゼルバイジャンに順次引き渡す。 (2012-111605)

ロシアの停戦維持部隊の派遣

 ロシアが11月10日、ナゴルノカラバフを巡る戦闘停止で合意したことを受け、ロシア軍の停戦維持部隊の派遣を始めた。
 1990年代から続くナゴルノカラバフ紛争で、停戦維持部隊の投入は初めてである。
(2012-111101)

 プーチン露大統領とアルメニアのパシニャン首相、アゼルバイジャンのアリエフ大統領が11月10日に合意した停戦に基づき、ロシア軍の平和維持部隊が現地入りした。
 90両のAPCとその他車両380両からなる1,960名の露軍の平和維持部隊は、ナゴルノカラバフとラチン回廊の境界沿いに展開した。 (2101-111802)

アルメニア軍の撤退/アゼルバイジャン軍の進駐

 アゼルバイジャン国防省が11月20日、ナゴルノカラバフをめぐるアルメニアとの停戦合意で約30年ぶりに返還されたAghdam県に、アゼルバイジャン軍の駐留部隊が入ったと発表した。
 Aghdam県は、ロシアの仲介で成立した停戦合意でアルメニアからアゼルバイジャンに返還が決まった3県の一つで、現地では返還期限を前に19日にアルメニア系住民らが大急ぎで自宅周辺に生えたザクロや柿の木の実を収穫し、家財道具を車に積み込んで退避する様子が見られた。 (2012-112001)

 アゼルバイジャンが11月25日、同国西部キルバジャル県への部隊配置を開始した。 これに先立ちアルメニアは、南西部のアグダム県をアゼルバイジャンに返還した。
 ナゴルノカラバフ以外でアルメニアが実効支配する地域は、11月10日にロシアの仲介で成立した停戦協定で、アゼルバイジャンへの返還が合意されていた。  キルバジャル県は11月15日に返還される予定だったが、アルメニア系住民の大量脱出にアルメニア軍の撤退が重なり、悪天候に加えて山岳地帯の道路事情など複合的理由で、アルメニアが返還期限の延長を要請し、アゼルバイジャンがこれを容認したため、当初の予定より10日遅れの領土返還となった。 (2012-112605)

 ナゴルノカラバフをめぐる紛争の停戦合意に基づき、アゼルバイジャン軍が12月1日にアルメニアが返還したラチン県に入った。
 停戦合意ではアルメニアが実効支配していたナゴルノカラバフ周辺の3県を1日までに順次返還すると定められており、ラチン県は最後の県だった。 (2101-120101)

依然としてアルメニアが支配するナゴルノ・カラバフ

 11月10日にロシアの仲介で成立した停戦協定で、1994年のナゴルノカラバフ戦争終結以降にアルメニア系住民が移住していたアゼルバイジャン領は同国に返還されるが、紛争の根本的原因であるナゴルノカラバフは、依然アルメニアが実効支配したままである。 (2012-112605)

散発的な停戦違反

 アルメニア国防省が12月12日、ナゴルノカラバフ自治州南部にアゼルバイジャン軍の攻撃が行われたと発表した。 攻撃の規模は明らかになっていない。
 ITAR-TASS通信によると、ロシア国防省も12日に「同自治州南部でアゼルバイジャン軍による停戦違反が11日に1件確認された」と発表した。
 紛争はロシアの仲介で11月に停戦合意していたが、攻撃が事実であれば停戦合意後としては初となる。 アゼルバイジャンは攻撃の実施について発表していない。 (2101-121303)

 アゼルバイジャン国防省が12月13日、ナゴルノカラバフ一帯で停戦後に起きた戦闘で、自国軍兵士4名が死亡したと確認した。
 11月26日にアルメニア人勢力の奇襲を受け3人が殺害され、12月8日にも戦闘があり1人が死亡したという。 (2101-121403)

 アゼルバイジャン国防省が12月28日、ナゴルノカラバフ周辺で27日にアゼルバイジャン軍部隊がアルメニアの武装組織の攻撃を受け、部隊の兵士1人が死亡したと発表した。
 アゼルバイジャン軍は応戦し、武装組織側の全員が死亡したという。
 両国は11月10日に完全停戦しロシアが平和維持部隊を展開しているが、散発的に戦闘が起きている。 (2101-122803)

2・8・2・5 戦闘の教訓

UAV の効果が絶大

 アゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフ自治州を巡る戦闘で、アルメニア軍に圧勝したアゼルバイジャン軍がUAVを駆使しロシア製のSAM網も突破しため、露軍は衝撃を受けている。
 両国は今まで兵器をロシアに依存してきたが、旧ソ連製の旧式兵器が多いアルメニアに対し、アゼルバイジャンはイスラエル製やトルコ製の比重を高め、多角化を図っていた。
 今回の戦闘では、イスラエル製自爆型UAVのHarpyや新型ミサイルを多用した。 また米戦略国際問題研究所 (CSIS) が今月公表した分析によると、トルコ製UAVのTB-2の活躍が目立ったという。
 戦闘での被害を分析した専門家グループによると、アルメニア側はS-300など26基、T-72 MBT 130両以上が破壊されたが、アゼルバイジャンのUAV損失は25機にとどまったという。 (2101-122103)



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