「目  次」へ戻る

1. 概  観

1・1 全  般

1・1・1 総  論

1・1・1・1 2020年の総括

 2020年は中国武漢を発生源とするCOVID-19のパンデミックの影響で世界の安全保障環境も大きな影響を受けた。

 中東でISIS掃討に一段落するとリビア内戦など新たな紛争が激化している。 こうしたなかで注目されるのはアルメニアとアゼルバイジャンの様な過去の紛争の再燃で、こうした意味ではキプロスと東地中海、モルドバ、コソボなどの過去の紛争地に動きがあることに注意を要する。

 アジアでは中国がインド、ブータン、南シナ海、台湾、東シナ海などで強引に自己利益を主張している。 こうした中国の動きは習体制の維持のため敢えて関係国からの軍事行動を誘おうとする挑発とも解釈できる。

 北朝鮮はICBMやIRBMなどの発射を行っていないが、より実用性の高いMRBM/SRBMや超長射程のMRL発射を繰り返している。

 保有する艦船数で中国に越されそうになっている米国はそれに代わる大型のUUVやUSVの開発を進めており、将来の海戦に新たな方向性を示している。
 またUAVでも戦闘機に随伴して戦闘に参加するLoyal Wingmanの出現も、航空作戦に大きな変化を及ぼす可能性がある。

 わが国の安全保障では米豪印を交えたクアッド体制が構築されつつあり、英語圏諸国のFive Eyesに仲間入りしてSix Eyesにしようとする話も話題になっている。
 一時議論となった敵基地攻撃能力の保有問題は先送りになったが、現有ミサイルの長射程化など、実質的な能力は着々と整備されつつある。
 F-2後継となる次期戦闘機の開発も本格的に開始されようとしている。

 対地攻撃兵器としては第六世代戦闘機の出現間近な反面、F-1EXの出現で第四世代戦闘機への回帰も見られる。 次世代爆撃機はB-21やH-20などが徐々に明らかになってきたが、外観上はB-2と大きな差はない。
 超高速兵器では中露に先を越された米国の全軍が全力で開発を進めているため、計画乱立の感が否めない。
 UAVで注目されるのはLoyal Eingmanの出現と、群飛行小型UAVで、努力の方向が機体開発から運用構想へと変化してきた。
 こうしたなかでトランプ政権の主張を受け、核弾頭と核爆弾の近代化が進められている。 特に戦術核となる低威力核兵器の開発が進み、一部で既に配備されている。

 HGVを弾頭とするICBM等の出現でBMDは発射から着弾までの全飛翔経路を追随する必要に迫られ、小型衛星群の構成が急速に進められようとしている。
 反面、主として在欧米軍の要求によりSHORADの要求が強まり、IM-SHORADの開発が進められている。
 レーザ兵器を中心としたDEWの開発も徐々にではあるが進められている。

 艦船ではUUVやUSVの開発が進められ、小型潜水艦やコルベット艦と同規模な艦も計画されてて、将来の海上作戦様相に多大な影響を与えそうな状況にある。
 通信C3IではJADC2の出現は、単なる高速大容量のデータ交換に留まらず、従来の陸海空の枠組みだけでなくそれぞれにおけるEchelonの役割区分も変えようとしている。 

1・1・1・2 係争地域の情勢

 ウクライナ情勢は停戦が成立し落ち着きを見せた。
 米トランプ政権の対イラン強硬政策で、湾岸情勢が度々緊迫した一方、UAEをはじめとする多くのイスラム諸国がイスラエル承認に舵を切ったことで、中東情勢には大きな変化が起こりそうな情勢になった。
 中印両国が大規模な兵力投入を行ってきたヒマラヤのラダックでは45年ぶりに犠牲者を出した紛争が起きたが、大規模戦闘にまでは発展しなかった。 ただ、この衝突の前後に中国軍は道路、通信、施設などに大規模な投資をした模様で、冬季が終わった後の中国軍の動きから目を離せない。
 アラブの春以降不安定化したリビア情勢はトルコとロシアの代理戦争の状況を呈したが、更にエジプトやUAEも絡み複雑な様相を呈している。
 ソ連崩壊以来数度にわたる戦闘が繰り返されてきたアルメニアとアゼルバイジャンでは大規模な戦闘が生起し多くの犠牲者を出したが、装備が優勢なアゼルバイジャンの勝利で停戦に至った。 しかしながら本来アゼルバイジャン領であったナゴルノ・カラバフは依然としてアルメニアの支配下にあり、まだ紛争の火種は消えていない。
1・1・1・3 紛争潜在地域の情勢

 東アジアでは北朝鮮の核開発再開のほか、東シナ海、南シナ海、台湾海峡などでの中国による軍事行動が活発化しており、相手国の軍事行動を誘引しようとするとみられる挑発が続いているため、偶発的な軍事衝突が生起する懸念が持たれている。
 欧州ではモルドバやキプロス周辺などかつての紛争地域に再び動きがあるのが懸念される。
 また地球温暖化により北極海に無氷海域が広がったことで、この海域、地域がにわかに紛争潜在地域に浮かび上がってきている。
1・1・1・4 東アジア諸国

 東アジアでは、中国の活発な動きが際立つ。 東シナ海や南シナ海での挑発的動きに加え、2020年には台湾に対する威嚇的な動きが目立ってきた。
 特に海軍力の強化に力を入れており、艦船の隻数で米海軍を凌ごうとしている。 また超高速兵器などの高度技術による装備でも躍進が目立つ。
 朝鮮半島では韓国の文政権による親北路線で米国との安全保障体制に少なからず影響を及ぼしている。 またわが国に対しても非友好的な動きを見せ、対日を狙ったとも思える装備を整備しようとしている。
 台湾情勢では米国が武器輸出の拡大、要人の台湾訪問、米海兵隊の台湾での共同訓練など、台湾支援を明確に打ち出す政策を採っている。
 東南アジア諸国ではフィリピンの反米姿勢に僅かながら変化が見られると共に、インドネシアが中国に対しハッキリとした姿勢を見せだしている。
 大洋州ではオーストラリアが反中姿勢を強める一方、南太平洋島嶼国への働きかけと進出を強めている。
1・1・1・5 世界各国(周辺国を除く)

 米国では反中状況が益々強まり、チベット、ウィグルなどに対する人権保護や香港の民主化活動支持の法律が成立した。 またトランプ政権の非国際協調路線により、各種条約や機構からの脱退が続いている。
 こうした中、中露に対する軍事的優性の維持のためマルチドメイン戦略などによる軍の改革が進められようとしている。 特に海兵隊はその存続をかけて大きく変革しようとしている。
 また陸軍が欧州に第5軍団を復活させ、2019年に第2艦隊を復活させた海軍もインド太平洋艦隊に第1艦隊を編成しようとしている。
 経済不振のなかにある兵力増強には限度があるロシアは、航空機など新装備の調達に遅れが出ている。 それでも超高速滑空弾を弾頭としたICBMやSLBMなどの整備は着々と進めている。
 こうしたなか、周辺海域での米軍に対する挑発のほか中東やアフリカに対する積極的な進出などを進めている。
 欧州ではNATOの即応性強化が図られる一方で対米不信から欧州固有の防衛力を持とうとする動きが台頭してきている。 特に米トランプ政権への不信がこの動きに拍車をかけている。
 欧州ではトルコのエルドアン政権がオスマン帝国への回帰とも取れる独自の動きを強めていることが警戒を要する。
 中国やパキスタンとの抗争を抱えるインドは防衛力と共に防衛生産能力の強化に力を入れている。 インド洋諸国を含む南アジア諸国は、親中国と親インドの政権が絶えず入れ替わり不安定で、目が離せない状況にある。、
1・1・1・6 国内情勢

 わが国の防衛問題では近年、国際化の機運が高まり、国際的な防衛協力や主として海上自衛隊の海外進出が進んでいる。
 一方、尖閣諸島を中心とした東シナ海情勢の緊迫化から、九州を含む南西方面の防衛力強化が進められている。
 こうした中、BMD計画の中心として進められていたAegis Ashore計画が中止になり、代わってAegis艦の洋上配置が進められることになった。
 Aegis Ashoreの計画中止に伴い積極的BMDとしての敵基地攻撃能力保有論が俎上に上がったが、最終的に明文化はされなかった。 しかし実際に敵基地の攻撃能力を有するかも知れない中距離ミサイルの開発は着々と進められている。
 F-2の後継となる次期戦闘機の開発はMHIと契約がなされ、本格的に進められることになった。 一方でF-15を改良してF-15JSIにする計画は経費の折り合いがつかず見送りになった。
 いずも型護衛艦の改修は二番艦で艦型の変更を伴う大幅改造が実施される。
 国際水準に比べてかなり低い防衛費の伸び率は、COVID-19の感染拡大の影響から令和3年度にはゼロに近い低水準になろうとしている。
1・1・1・7 対地攻撃兵器

 TempestやFCAS/SCAFなど欧州で第六世代戦闘機の開発が開始されているなか、遅々として進んでいないかに見えた米国の第六世代戦闘機NGADが既に飛行していると米空軍高官が述べた。
 次世代爆撃機は米国のB-21が2021年にもロールアウトする一方で、中国のH-20もベールが外されようとしている。
 米陸軍の次世代ヘリ計画は順調に進んでおり、2021年には機種決定に至る模様である。
 超高速兵器では出遅れて後追いになっている米国で計画が乱立していて、未だに飛行試験が行われていない。
 UAVは新機種投入から、その使い方の発展に関心が移っていて、群制御、有無人連携などと共に各国でLoyal Wingmanの開発が進められている。
 トランプ政権の核回帰戦略から各種核爆弾、核弾頭の開発が進められており、特に低威力核弾頭は既に配備されつつある。
1・1・1・8 防空システム

 宇宙の軍事利用が地球-月間 (cislunar) 空間にまで広がろうとしている。
 超高速兵器を弾頭とするICBM等の出現により、早期警戒衛星の役割が変化し、警戒衛星群による全軌道追跡の必要性が出てきた。 このため捕捉したデータの伝送のための衛星などを含む大規模衛星群の構築が計画されている。
 イスラエルが積極的に進めてきたC-RAMなど短距離BMDも、米国をはじめ各国で積極的に進められようとしている。
 また、超高速兵器を迎撃する新たな迎撃システムも開発されようとしている。
 在欧米軍や欧州各国軍でSHORAD、特に機動部隊を随行援護できるM-SHORADへの要求が急速に高まっている。
 更に防空の対象に小型マルチロータUAVも含むUAVが加わり、C-UAVが大きなテーマになっている。 このためUAVに対しソフトキル、ハードキル、鹵獲などのC-UAVが次々に出現し、キラーUAVも登場している。
1・1・1・9 関連軍事技術

 米空軍基地で初めてロボット犬が警備任務に就いた。
 米海兵隊が装輪式の水陸両用戦闘車を装備開始した。 また陸軍は軽戦車の試験を開始する。 米海軍で次期駆逐艦の検討が始まると共に、次期フリゲート艦の機種選定が行われた。
 UUV/USVの開発が各国で行われている。 特に米海軍では潜水艦や水上艦の不足を補完するため、大型のUUVやUSVの建造が計画されている。
 戦闘機に装備し飛来するSAMやAAMを撃墜する超小型AAMの検討が進められている。
 情報の略取などを狙った国家ぐるみと思われるサイバ攻撃が頻発している。 このような攻撃に対し国連は自衛の対象と見なそうとしている。
 米国で砲熕兵器の長射程化が進められようとしている。 次の段階ではラムジェット推進の超長射程弾が検討されている。
 全ドメイン戦闘を裏付けるJADC2などのネットワークが実用化になろうとしている。
 次世代のミサイルや航空機に使用される将来型のエンジンが各種提案されている。
1・1・2 係争地域の情勢

1・1・2・1 イラン

 米国が1月早々にイラン革命防衛軍Qads部隊司令官を殺害したことと、11月にイランの核開発を主導したとされるイラン人科学者が暗殺された事件で、湾岸情勢は2度にわたり緊迫した。
 Qads部隊司令官を殺害の際にはイランがイラク駐留米軍に対し16発のSRBM攻撃を行い、緊張は頂点に達した。
 この間イランは各種弾道弾、CM、UAVを公表し戦力を誇示した。 この中でも弾道弾を砂漠の地中から発射したことと、ASBMの開発を本格的に行っていることが注目される。
 核開発では、米国が2018年に核合意から離脱したのを受け本格的に再開し、合意の10倍を超える低濃縮ウランを保有すると共に、合意に反した45%の高濃縮ウランも保有している。
1・1・2・2 シリア内戦

 シリアの内戦はトルコの大規模な介入にもかかわらず、ロシアとイランが支援するアサド政権軍が2~3月に反政府軍をほぼ制圧した。
1・1・2・3 イスラエル

 一部の湾岸諸国や北アフリカ諸国など、イスラム各国でもイスラエルを承認する国家が現れた。 また大使館をエルサレムに移転させて、ここをイスラエルの首都と認める国も増加した。 一方でトランプ政権が提案した中東和平案は、あまりにもイスラエルよりのため受け入れられなかった。
 その間もレバノンとシリアのヒズボラやガザのハマスとの小規模な戦闘は散発した。 またシリアに駐留するイラン軍及び親イラン民兵に対する空爆も頻繁に行われた。
 イスラエルの軍備増強ではBMDの多層防衛組織がほぼ完成したほか、艦載打撃兵器の増強が目立った。
1・1・2・4 その他の中東

 イスラム教スンニ派諸国とイランを中心としたシーア派の対立はイエメン内戦を代理戦争化させている。
 こうしたなかシーア派の反政府勢力フーシ派によるサウジアラビアに対するイラン製ミサイルを使用した攻撃は激しさを増している。
 一方でスンニ派の足並みに乱れが見られ、UAEが独自路線を歩もうとしている。
1・1・2・5 インド

1・1・2・5・1 パキスタンとの対立

 印パ両国が実効支配するカシミールで、自治州の自治権を取り上げたり、逆に準州に格上げするなどの政治的緊張があったが、印パ両軍の砲撃戦はあったものの、殆どイスラム武装勢力とインド軍の小競り合いで済んでいる。、
1・1・2・5・1 中国との対立

 中印間では5月に45年ぶりに犠牲者のでる衝突があった。 両国はかなり以前から部隊や装備を大量に投入していたが、本格的な戦闘には至らなかった。
 この小競り合いは中国側が以前から本格的に部隊集結をしたりインフラを整備するなどの準備を進めてきたと思われ、事後相当量の中国軍施設が推進配備される結果となった。
 またこれを機に東部戦線でも中国がブータンに手を伸ばそうとしている。
1・1・2・6 ウクライナ

 東部戦線での動きは見られなかった。 7月には停戦が発効した。
 米国はウクライナ安全保障援助計画の元にFY21に$3250Mの軍事援助を行うと共に、高速警備艇16隻を含む$600Mの援助を行うとした。
 NATOには正式加盟国ではないもののEOPとしての参加が認められ、NATOの一員としてイラクへの派遣も行われた。
1・1・2・7 リビア

 リビアではトルコとロシアが対立し、UAEやエジプトも介入の姿勢を示し、代理戦争の様相を呈している。
 シリア人傭兵を投入しているとの疑惑が持たれているトルコはまた、国連のリビアへの武器禁輸に違反とも疑われているが、米大統領の支持を取り付けたトルコは強気で防空システムを配備した。
1・1・2・8 ナゴルノ・カラバフ

 ソ連崩壊以来、アルメニアに自国領を奪われ続けたアゼルバイジャンが、アルメニアと大規模な戦闘を行い、主要装備で2倍前後の優性にあるアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ自治州は依然としてアルメニアの支配下に残ったもののその他の地域を奪還した。
 この戦いではアゼルバイジャンが多用したUAVの有効性が改めて明らかにされた。
1・1・3 紛争潜在地域の情勢

1・1・3・1 朝鮮半島

 北朝鮮が核開発とミサイル開発の再開を公言し、停止していた施設の再開や新設を行っている。 保有する核弾数も現状で20~60発程度、10年以内に100発になるとみられている。
 この他にも北朝鮮が韓国と米国または日本を狙って炭疽菌と天然痘菌をミサイルに搭載できるとの見方も報じられている。
 北朝鮮が韓国に対する挑発的な活動が目立つが韓国の文政権は南北融和路線を崩そうとしていない。
 米国ではトランプ大統領が親北鮮の姿勢を示しているのに対し、国防総省や国務省は対決姿勢を崩していない。
1・1・3・2 東シナ海

 尖閣諸島周辺のわが国の接続水域に、ほぼ常続的に警備艦を侵入させている中国は領海侵犯を繰り返し、度々日本漁船を追い回す行為を行っている。
 これに対しわが国は海上保安庁の巡視船を増強すると共に、航空自衛隊が行っている緊急発進の基準を見直すなど対応している。
 尖閣諸島防衛の意思を示している米国は東シナ海にU-2やB-1Bを飛行させ、中国を牽制している。
1・1・3・3 南シナ海

 南シナ海で中国が埋め立ての継続、軍備の強化など周辺国への圧力を強め、南シナ海に防空識別圏を設定しようとする動きを見せている。  これに対しASEANは懸念を表明した。
 中国の動きに対しインドネシアがNatuna諸島防衛で強い意思表示をする一方、フィリピンは中国に妥協する姿勢を示している。
 南シナ海問題について従来中立的な立場をとってきた米国は一転して積極関与姿勢へ変化し、南シナ海での艦船の動きを活発化させている。
 このような米国の姿勢に対し豪独をはじめわが国も同調している。
1・1・3・4 台湾海峡

 台湾海峡を米中艦が頻繁に航行し緊張を高めている。
 また中国軍機の台湾防空識別圏 (ADIZ) 内飛行も度々起き、一部は台中の実質的な停戦ラインと見なされていた中間線を越える飛行も行われた。 中国は中間線は存在しないとの立場を打ち出している。
 米艦の台湾海峡通過も何度か行われ、米軍機の台湾周辺飛行も頻繁に行われた。
1・1・3・5 欧 州

 モルドバの大統領選挙では現職親露派に代わり親欧派が当選し、沿ドニエストルに駐留するロシア軍の撤退を要求している。
 東地中海ではキプロスと海底資源開発でトルコとギリシャの対立が再燃し、ギリシャを支援する南欧諸国とトルコの対立が激化している。
 ベラルーシでは経済統合を共用していたロシアと対立したルカシェンコ大統領が、大統領選挙の不正を糾弾する運動の高まりからロシアに接近し、軍事的な支援を期待するようになっている。
1・1・3・6 コーカサス(ジョージア)

 ロシアによると見られるサイバ攻撃以外、特に報道はなかった。
1・1・3・7 北極海

 40隻以上の砕氷艦を持つロシアに対して警備艦1隻しかない米国が極めて劣勢にある。
 更に中国も北極海進出を狙って砕氷艦の建造を進めている。
1・1・4 東アジア諸国

1・1・4・1 中 国

 世界制覇を目指す中国は主要核保有国のなかで唯一、核兵器の保有数を増加させている。
 世界中での活動を目指した地球規模の測位衛星網も完成させた。
 海軍力の増強が目覚ましく、艦船保有数では既に世界最大の海軍になっている。 これに加えて海警局の強化や大規模な海上民兵の存在も脅威になる。
 装備の面では艦船、航空機、UAV、各種ミサイル、電子装備など全ての領域で充実強化が図られ、更に宇宙兵器の装備化も進められている。
 装備の強化と共に中印国境、南シナ海、台湾海峡、東シナ海での活動活発化も世界の不安定要因になっている。
1・1・4・2 北朝鮮

 ICBM、IRBM、SLBMなどの戦術兵器は、新兵器が公表されたものの実射はなかった。 一方でATACMS似のKN-24や大口径MRLのKN-25などの戦術弾道弾は発射が度々行われた。
 北朝鮮は大規模なサイバ部隊を有していると見られ、一部は海外に展開し、サイバ戦を行っている。
1・1・4・3 韓 国

 親北路線を進む文政権と米国との関係は必ずしもシックリとはいっていない。 このため文大統領任期内に戦時作戦統制権の移管はないと見られ。
 わが国との関係についても、日本の空母に対抗するため少なくとも2隻の空母を保有すべきとの論調もでている。
 一方で、高い伸び率によりわが国の防衛費に迫る国防費を背景に、防空/BMD装備、艦船、航空機、ミサイルなどの装備を充実させると共に、自走砲や艦船をはじめとする武器輸出を積極的に進め、着々と実績を上げている。
1・1・4・4 台 湾

 総統選挙で圧勝した蔡総統と立法委員選挙で単独過半数を確保した与党民進党の元、主権国家としての道を進んでいるが、中国1/5でしかない国防費では両国の軍事力は差が拡大している。
 このため台湾は非対称戦に適応した新戦力の開発を行っている。
 一方で台湾を支援する姿勢を明確にしているトランプ米政権により大規模な武器の売却や、要人の台湾訪問、台湾国内での米海兵隊との合同訓練実施など、米台の緊密化が目立っている。
1・1・4・5 東南アジア

 ASEAN諸国で対中懸念が強まってきており、親中路線のドゥテルテ比大統領も少しずつ姿勢に変化を見せている。
 またインドネシアも南シナ海での対中姿勢に変化を見せ始めている。
 この中で高い経済力と軍事生産能力を持つシンガポールは特異な存在になっている。
1・1・4・6 大洋州

 オーストラリアが反中姿勢を明確化し始め、国防費の大幅増額を進めている。
 特に南太平洋島嶼諸国に対する中国の進出には敏感で、このためこれら諸国への武器供与などを行っている。
 また米国もパラオに米軍基地を設けるなど、積極的に関与しようとしている。
1・1・5 世界各国(周辺国を除く)

1・1・5・1 米 国

 非国際協調路線のトランプ政権は米軍の海外派遣や駐留に消極的で、部隊の前方展開を大幅に見直す動的戦力運用 (DFE) に乗り出した。
 欧州諸国に比べ対露圧力に力を入れたがらない政権は中国には強硬で、知的財産の保護、中国企業の排除、人権保護法の制定と、対中圧力を強めている。
 核政策では核戦力の近代化や核弾頭の更新を進める一方で、期限の切れる新START条約の延長に向けロシアとの駆け引きを行っている。
 陸軍は2022年までにインド太平洋地域にマルチドメイン作戦を実施する新たな部隊を2ヵ所に配置する。 国防長官は海軍に対し、2030年までに355隻体制にするとの方針を見直すよう指示した。  空軍は実員演習を通じて機動展開 (ACE) 戦略の検証を行っている。 海兵隊は戦車を全廃し火砲を削減する代わりにロケットやミサイル部隊を大幅に増強し、新しい主力兵装として地対艦ミサイルを導入して中国艦隊と戦うとしている。
1・1・5・2 ロシア

 COVID-19の感染拡大への警戒感から原油の先物価格が値下がりしたことで経済不振が助長される恐れがある。
 プーチン大統領が更新を承認した核兵器使用の指針を定めた原則では、ロシアや同盟国に対するBM発射の情報を得た場合には核兵器を使用できるとしている。
 2012年以来露空軍と海軍は12,000品目以上の近代化兵器、1,400機以上の航空機、190隻以上の艦艇を取得し、全てのミサイル旅団がIskanderに換装されたという。
 ロシアはベーリング海、黒海、バルト海、東地中海などの海域とその上空で対米挑発活動を続けている。
 シリアを拠点化したほか、スーダンに拠点を設けようとし、更に中央アフリカに軍事顧問団を派遣したりと、中東アフリカへの進出を強めている。
1・1・5・3 欧州 (NATO/EU)

 NATO即応部隊の編成が着々と進んでいる。 また北マケドニアの加盟も実現し、参加30ヵ国になった。 更にロシア製兵器を装備している8ヵ国の米国製兵器への切り替えも進みつつある。
 一方で駐独米軍の大幅削減などの在欧米軍の再編も進んでいる。
 英国が離脱して27ヵ国になつたEUでは、北マケドニアとアルバニアとの加盟交渉が開始された。
 EUの独自防衛機構の整備も進み、27ヵ国中25ヵ国が参加した常設軍事協力枠組み (PESCO) が機能している。
 対米依存を引き下げた独自防衛力の整備も、地中海 EU 海軍 (EUNAVFOR Med ) Iriniが発足したほか、バルカン半島駐留のEU軍 (EUFOR) 平和維持軍も機能している。 更に常設指揮所の設置や、防衛政策の決定に全会一致の原則を止めるべきとの提言もでている。
 こうしたなかでエルドアン大統領の独裁が強まり、オスマン帝国時代への回帰が懸念されている。 トルコはシリアやリビアの内戦への介入のほか、キプロスを含む東地中海での独自の動きを強め、フランス含む南欧州諸国の反発を招いている。
1・1・5・4 南アジア

 インドは慢性的な経済不振から掃海艇やAEW&Cヘリ調達数の見直しを行った。  中印国境地帯でインド軍と中国人民解放軍が衝突し、インド兵20名が死亡したが、モディ首相は米国に次ぐ貿易相手国の中国に対し強硬な措置は取りにくく対応に苦慮している。
 米国はインドに統合防空システムIADWSを売却すると発表した。
 インドは武器の国産化方針の下、ASAT、各種ミサイルなどの開発を進め、艦船の国内建造を進めながらイスラエルとの連携も強めている。
 インド洋島嶼諸国では親印反中政権と反印親中政権が絶えず入れ替わり、不安定な状況を呈している。
1・1・5・5 中南米

 反米左派政権が支配するベネズエラでは2019年に反政府勢力が蜂起したが、結局不発に終わった。
1・1・5・6 アフリカ

 アフリカでは中国とロシアがアフリカに軍事拠点を作ろうとしており、中国はセネガルに港湾を建設、ロシアはソマリアで分離独立派の支配地域に拠点を作ろうとしている。
1・1・6 国 内 情 勢

1・1・6・1 防衛体制

 国家安全保障局 (NSS) 内に経済安保を扱う経済班が発足したほか、国際政策課にインド太平洋に専門部署ができた。
 宇宙やサイバなど新領域での防衛強化や、BMD用Aegis艦建造のため陸海空の枠を超えた配置転換が計画されている。
 陸上自衛隊では水陸機動団の増強、Ospreyを装備した輸送航空隊の新編、電子戦部隊を健軍駐屯地に創設などの改編が行われたほか、海、空自任務の一部を負担する案も検討されている。
 航空自衛隊では宇宙防衛部隊宇宙作戦隊が新偏された。 また令和2年度に運用を始めるGlobal Hawkの準備部隊も新編された。
 警視庁では北朝鮮や中国を担当する部署を拡充する方針で、更に沖縄県警に離島警備警察隊を新編する。

 安倍前首相が2020年内のとりまとめを求めていた敵基地攻撃能力を含むミサイル阻止の新たな方針の決定は2021年以降に先送りした。

 連帯した対中国戦略のため日米豪印4ヵ国連携への動きが活発になっている。 更に日本は英語圏諸国のグループであるFive Eyeaにも参加しSix Eyesにしようという動きもある。
 一方で日韓関係は改善がなく、わが国のEEZ内で調査をしていた海上保安庁の測量船に対し韓国艦が調査中止を求めたり、米国が呼びかけた日米韓の国防相会議への参加を拒否したりしている。
 北方領土ではロシアが地対艦ミサイルBastionやT-72B3 MBT、更にS-300を配備している。 北方領土の領有権について米政府は四島で出生したロシア人に出生地日本と申告させるなど、間接的にロシアの領有権を認めていない。

 中国武漢を発生源としたCOVID-19の感染拡大では多国間国防大臣会合の延期や共同訓練の延期や中止などの影響はあったものの防衛態勢に致命的な影響は出ていない。
 ただ、自衛隊による医療支援は予備自衛官を招集してまで行われたが、大規模感染症に対する対応能力などに課題を残した。

1・1・6・2 防衛予算

 令和3年度予算の概算要求で防衛省は当初予算で前年度当初予算比3.3%増の5兆4,897億円を要求したが、予算案政府原案では防衛関係費は前年度比0.5%増の5兆3,422億円となった。
 しかも令和2年度防衛費は3回の補正で4,051億円が加算され5兆7,184億円になっており、補正後の予算と比較すると3,762億円の大幅減になる。
1・1・6・3 ミサイル防衛

 河野防衛相が6月、秋田県と山口県で進めてきたAegis Ashore配備計画について、コストと配備時期に鑑みてプロセスを停止することを表明した。
 代替案として各種検討されたが、最終的にAegis Ashore用に発注したAN/SPY-7レーダをはじめとする装置を艦載したBDM艦とすることになった。

 早期警戒衛星について米国の小型人工衛星群(コンステレーション)計画に参加するほか、わが国独自の衛星についても議論があった。
 PAC-3が沖縄の全高射隊に配備されると共に、PAC-3 MSE弾が本土の4個高射隊に配備され、今後その他の高射隊にも配備される。

1・1・6・4 我が国周辺の警備

 政府が北極海での観測活動を進めるためとして、砕氷機能を持つ研究船建造に本格着手する。
 政府が令和元年度までに予算化された03式中距離地対空誘導弾改善型(中SAM改)3個FU全てを、初の配備地として沖縄本島に振り向け2021年3月までに配備する。
 陸上自衛隊奄美駐屯地に令和3年度、電子戦の専門部隊が新たに編成される。
 鹿児島県西之表市の馬毛島に整備する自衛隊基地の計画案では滑走路2本を新設し、格納庫や燃料施設、弾薬庫なども備える。 また陸海空の各自衛隊も馬毛島基地で訓練を実施する。
 航空自衛隊新田原基地で緊急時に米軍を受け入れるための施設の工事が始まり、弾薬庫や燃料タンク、それに駐機場などを建設する。

 航空自衛隊が2019年4~12月に中国機に対し緊急発進したのは47回増えて523回で、尖閣諸島周辺などを担当する南西航空方面隊が461回で最多だった。

 政府が、自衛隊基地など安全保障上重要な施設周辺の土地を外国人らが取得することへの監視を強化するため、新法を制定する方針を固めた。
 海上保安庁は大型 UAV の試験運用を開始するなど能力の強化を図っている。 また警察庁も、尖閣諸島をはじめとする離島の警備にあたる沖縄県警に「国境離島警備隊」を発足させた。

1・1・6・5 海外活動

 ペルシャ湾情勢の緊迫化に伴い、防衛省設置法の「調査・研究」を名目にした海上自衛隊部隊のペルシャ湾への派遣が行われた。
 派遣に先立ち河野防衛相が、イランのハタミ国防軍需相と電話会談するなど、事前の了解工作を行った。
 派遣されたのは護衛艦1隻とP-3C 2機でジブチを活動拠点とした。

 海上自衛隊は1ヵ月余りの日程で護衛艦などを南シナ海からインド洋にかけての海域に派遣し、各国の海軍などと共同訓練を行った。 この訓練には潜水艦も参加させたが、潜水艦の派遣を公表したのは異例である。

1・1・6・6 将来戦への対応

 防衛省との関係が深い三菱電機、NEC、NTT コミュニケーションズの各社がサイバ攻撃を受けていたことが明らかになった。
 防衛省は防衛機密流出防止策の強化のため、サイバ戦教育専門部隊を新設すると共に、サイバー専門人材を民間から採用する。
 更に全ての通信アクセスを疑ってかかるゼロトラストの採用も決めた。

 政府が安全保障や防災への利用を重視して宇宙基本計画を改定し、情報収集衛星を現在の4機から10機に増やすなどを行う。
 また情報収集衛星のデータ中継衛星を打ち上げたほか、小型人工衛星群(コンステレーション)導入の検討に着手する。

1・1・6・7 防衛協力

 RIMPAC演習参加をはじめ、日米豪3ヵ国の共同訓練、日米仏共同演習、その他の多国間演習への参加に数多く参加した。
 日豪円滑化協定の締結協議、インドとの物品役務相互提供協定 (ACSA) 調印など、防衛協力関連協定の締結協議が進められ、特にオーストラリアは準同盟国として位置づけられた。
 更に、フィリピン、ベトナム、インドネシアなど東南アジア各国との防衛協力関係も深まった。

 一方、防衛技術協力や武器輸を出通じての防衛協力も、アジア諸国や米英と進められている。

1・1・6・8 装備行政

 中国を念頭に、国内企業の買収防止、中国製UAVの排除など、技術流出阻止の施策が行われた。 また防衛産業の装備品事業承継支援を行うことになった。

 次期戦闘機の開発は三菱重工業との契約が行われ、Lockheed Martin社が技術協力を行うことになった。
 いずも型護衛艦のF-35B離着艦に向けた改修は2段階で行われ、最終的には飛行甲板が四角型になる。 これと共に強襲揚陸艦に相当する艦の建造をイメージした調査検討も発注された。
 リチウムイオン電池を装備した3,000t級SSKの一番艦と、FFMタイプの護衛艦が進水し、それぞれたいげい及びくまのと命名された。 更にそうりゅう型11番艦おうりゅうと、まや型の一番艦まやが就役した。
 P-1に装備する射程400km以上のASMを開発してる。 また超音速対艦ミサイルASM-3の射程延伸型であるASM-3(改)とは別の、ASM-3Aが令和3年度予算案に計上された。 更に射程2,000kmの地対艦誘導弾の開発も報じられた。
 この他に多目的誘導弾改、装輪戦闘車両、新小銃、拳銃なども報じられた。 一方でF-15JをF-15JSIに改修する計画は見送られた。

1・1・7 対地攻撃兵器

1・1・7・1 航空機

 米空軍の次世代戦闘機NGADは初飛行し、システムは期待したとおりに働いたという。 米空軍がF-15EXの一次生産分8機を発注した。 米空軍はF-15C/Dの後継として最終的に144機のF-15EXを装備する計画である。
 英国が主導するTempest将来戦闘機 (FCAS) 計画に参加する企業は、英国のBAE Systems社、イタリアのLeonardo社、スウェーデンのSaab社の3社になった。  独仏西が共同開発する次世代戦闘機FCASの要求性能について、3ヵ国空軍が合意した。
 ロシアが間もなくSu-57の量産を開始する模様である。 ロシアは最終的に76機のSu-57を調達する計画であるという。

 米空軍のB-21は飛行試験用機の組み立ては開始され、初飛行は2022年初めになるという。 空軍は2020年代中頃の配備開始を計画している。
 米空軍では輸送機からJASSM-ERを発射するArsenel Plane計画も進められている。
 米国では次期攻撃偵察ヘリFARA及び中型輸送FLRAAの機種選定が迫っている。

1・1・7・2 ミサイル等

 米空軍がMinuteman Ⅲ ICBMの後継となるGBSDのEMDを発注した。 EMDは2029年2月までとなっている。
 米DARPAが1月、陸軍と進めている陸上発射式中距離HBGWであるOpFires開発の次段階を発注した。 システムとしての発射試験は2022年に開始される。  米陸軍のPrSMは3回目となる発射試験が実施された。
 ロシアではAvanguard(Vanguard)HGV を搭載したICBMを装備した最初の連隊がoperationalになった。

 米国では陸海空軍とDARPAが、それぞれ各種の超高速兵器の開発を進めている。 その中で空軍のAGM-183A ARRWの発射試験は2020年末に実施されるはずであった。
 ロシア北方艦隊のフリゲート艦が超高速ミサイル3M22 Zirconの発射試験に成功した。 ロシア空軍のKh-47M2核/非核ASMは最大速度Mach 10で飛行する。
 NORADは中国が大陸間超高速滑空兵器の試験を行っていると見ている。
 中国のDF-17はDF-16 SRBMに超高速弾を取り付けたものである。 H-6Nが胴体下に搭載されたALBMはDF-17のALBM型と見られる。
 その他に英国やインドからも超高速兵器の報告がある。

 米海軍がTomahawk Block Ⅳを全てBlock Ⅴに換装するという。  Block Ⅴaは対艦型で、後に続くBlock Ⅴbは対地型である。
 米空軍が4AGM-86Bの後継となるLRSOWの開発にRaytheon社を選定した。 LRSOはAGM-86Bだけでなく通常弾頭のAGM-86C/D後継としても考えられている。
 ロシアではKalibur CMの輸出仕様であるClubに新たにClub-Tが加わった。 Club-Tは、潜水艦発射のClub-S、水上艦発射のClub-N、空中発射のClub-Aに加えて4番目の機種になった。

 各国から遊弋索敵式のSSMが数多く報告されている。

1・1・7・3 U A V

 Airbus社のZephyrのほかにも、BAE Systems社のPHASA-35、ベラルーシの ApusDuo、英SPL社のHAPSなど各国からHAPS UAVの報告があった。 わが国でもソフトバンク傘下のHAPSモバイル社が、成層圏通信用のSunglider UAVの4度目の飛行試験に成功した。

 米空軍がMQ-9 Reaper後継の検討を開始している。 また陸軍でもAUAS計画が進められ、MQ-1C ERが候補になっている。
 中国からは引き続き各種新型HALE/MALE UAVが報告されている。
 MALE UAV、UCAV、TUAVでは有人機に随伴しISRやEWの支援をしたり、対地や対空戦闘まで行うLoyal Wingmanが、豪米英露中などから報告されだした。
 またこのクラスや更に小型のUAVの群飛行を自動で行う技術や有無人連携の技術も多く報告されている。

1・1・7・4 D E W

 米空軍が飛来するAAMやSAMを撃墜する自衛用高出力レーザ装置の試作計画SHiELD計画を進めている。 また米空軍特殊作戦軍もAC-130J搭載レーザ兵器を要求している。
 中国やイスラエル軍も航空機搭載攻撃用レーザポッド計画を進めている。

 UAVの撃墜や幻惑用レーザ兵器の開発や装備化も進められている。

1・1・7・5 爆弾,弾頭

 米空軍は爆撃機からの巨大爆弾投下を実用化した。 また地中の空隙数を感知計測して作動する深深度目標攻撃用の空隙感知式深深度用信管の試験も行われている。

 B61-12核爆弾に取り付ける新型誘導装置試験が完了し、現有のB61-3、-4、-7、-10と逐次換装される。
 米国では現有の核弾頭を低威力化させる各種計画が進行し、一部は既に配備を干渉している。

1・1・7・6 電子戦

 米国ではNGJの中周波領域用の装備化に続いて低周波領域用と高周波領域用の開発を進めている。
 艦載電子戦装置では米海軍がSEWIP Block 3の画像を初公開した。
1・1・7・7 情報取得,偵察等

 米海軍がSAR衛星搭載のSARを発注した。
 米空軍が今後5年間かけて全ドメイン統合の指揮統制装置ABMSの開発を行う。
 米空軍がU-2に搭載しているSYERS EO/IR装置の最新型であるSYERS-2Cの飛行試験を完了した。
 米陸軍はJLENS計画が2018年に終わったが、依然として係留気球に関心を持っている。

 計画開始から25年経って、NATOのAGS計画が漸く現実のものとなった。

1・1・8 防空システム

1・1・8・1 宇宙防衛/戦略 BMD

 軍関係者は中国が地球-月間 (cislunar) 空間を軍事利用しようとしていることに危機感を抱いてる。
 GPSは地球から離れた宇宙空間での使用には適していないため、米国防総省は宇宙量子センサと名付けられたシステムの研究を行っている。

 SBIRSの後継となる次世代赤外線探知衛星Next-Gen OPIR計画が進められている。
 米MDAは、敵のHBGWを発射から弾着まで継続して追随しようとするHBTSS計画を進めているが、所管がMDAなのか米宇宙開発庁 (SDA) なのかの混乱が続いている。
 一方米宇宙軍はミサイル警報システムの全面的な見直しを完了した。 米SDAのNDSAは7層からなるLayerで構成される。
 地上では 米宇宙軍がマーシャル諸島Kwajalein環礁に設置したSpace Fanceレーダがoperationalになった。

 米宇宙開発庁 (SDA) が衛星間光学通信標準 (OILOS) の開発を開始する。
 米空軍がBMEW用地上設置情報処理装置FORGE MDPAFの開発と生産を発注した。
 BMの捕捉追随や目標分別機能を持つLRDRの空軍への引き渡しはFY23になる。
 米国防総省がBMDでの迎撃成功可否を評価するシステムSKAを2022年までに配備する。 初期型は民間衛星に搭載した小型システムをネットワーク化する。

 米国防総省がGBIの後継となる次世代迎撃弾NGIの装備時期を、早ければ2028年とした。 またNGI開発と並行して、THAADやSM-3 Block ⅡAによる多層防衛システム2種類の検討を進めている。
 米国防総省は中国がBMを弾道中期で迎撃するシステムを開発しており、IRBMの迎撃で好成績を収めていると見ている。
 ロシアはPL-19 Nudolは移動可能なDA-ASATで、低高度軌道衛星の破壊を目指している。 またCosmos シリーズのキラー衛星を打ち上げている。
 ロシア軍がA-235 Nudor ABMによる迎撃試験に成功したと発表した。 A-235はA-135の後継で、迎撃弾であるPRS-1MはMach 12で飛翔し、Mach 10までの目標を撃墜できる。

1・1・8・2 戦域防空/TBMD

 MDAが超高速ミサイル防衛HDWS計画にはLockheed Martin社がValkyrie、Raytheon社がSM-3 Hawk、更にLockheed Martin社がDART、Boeing社がHypervelocity Interceptorを提案している。
 一方DARPAは超高速飛翔体防衛の終末段階迎撃RGPWSのRfPを発簡した。 Northrop Grumman社のGlide Breakerは超高速飛翔体を大気圏上層部で撃墜する構想である。
 EUはPESCO枠組みで、陸上発射型の超高速弾/衛星群対抗システムTWISTER構想を進めている。

 THAADのAN/TPY-2レーダが捕捉した目標情報で発射したPAC-3 MSE弾がBlack Dagger標的の撃墜に成功した。
 ドイツがPatriotの後継として開発を進めているTLVSシステムは、独政府と企業の間で未だに合意が成立していない。
 ロシア最初のS-350 Vityaz防空システムが演習場に展開した。

 米海軍はSM-3 Block ⅠBを174発調達する計画で、最終納入は2026年になる。
 SM-3 Block ⅡAがICBMを模した標的の撃墜試験に成功した。
 米海軍がSM-6の射程延伸と速度の向上を目指したSM-6 Block ⅠBを開発している。

1・1・8・3 短距離 BMD / C-RAM

 イスラエルが一連のDavid's Sling Weapon System (DSWS) の試験をに完了した。 DSWDはイスラエルの多層BMD組織の中で中核となるシステムである。
 イスラエル国防省によるとIron Domeは2,000発以上を実戦使用したという。
 米国議会は陸軍が気乗りしないIron Dome 2個中隊分を陸軍が進めているIFPCの一部としての購入することを強要したが、陸軍ではIFPCでのミサイル撃墜にHELの採用を望んでいる。
 イスラエルが一連のDavid's Sling Weapon System (DSWS) の試験DST-7を成功裏に完了した。 DSWDはイスラエルの多層BMD組織の中で中核となるシステムである。
1・1・8・4 巡航ミサイル防空

 米空軍が、HELWSによるCMD能力の試験も開始した。
1・1・8・5 近距離防空

 2019年9月にサウジがUAVやCMで攻撃されたことからSHORADの必要性が見直されている。
 米陸軍がIM-SHORADの開発試験を完了し運用試験に移行した。 陸軍は4個大隊分として144両のIM-SHORADを要求している。
 米陸軍が超高速ミサイル迎撃レーザシステムを要求している。
 米陸軍がStingerに換えてM-SHORADに搭載するMANPADSの開発を開始した。 一方HEL-IFPCは主としてCM対処用で、10×10 PLS車に搭載する。

 欧州各国からはSkyranger Boxer、Kongsberg MGBADS、9A33-2BOsa (SA-8)、IRIS-T-SLS Mk Ⅲ、VL MICA NGなど各種SHORADが報告されている。

 中国ではFM-2000 SHORADの国内仕様であるHQ-17Aが2018年に公開されている。

 ロシアはGibka-S至近距離防空システム (VSHORAD) の国家試験を完了した。

1・1・8・6 対 UAV システム

 対UAVシステムとしてはソフトキル方式、ハードキル方式、鹵獲方式に加えてキラーUAVでの鹵獲や撃墜だとが各種報告されている。
 いずれも小型UAV (C-sUAS) 対処が主になっている。
1・1・8・7 防空 C3I

 米陸軍向けに試作されているLTAMDSレーダは、1号機が2021年に陸軍へ納入される。
 船台組み立てが開始されたDDG 51 Flight Ⅲの一番艦に搭載されるAN/SPY-6レーダの1号機が納入された。
 モジュラー式のSPY-6はFlight Ⅲには一面に37個が組み込まれるが、Flight ⅡAに24個が組み込めることからFlight ⅡA 15隻はAN/SPY-6(V)1に換装され、一番艦には2024年に装備される。

 中国のType 055駆逐艦はType 052D同様に四面アンテナを装備しているが、約40%大きくなっている。

 ロシアがモルドビア共和国に設置したKonteyner OTH-Rがフル稼働に入った。
 Elta社が電波を放射しないレーダシステムPCLを公表した。 システムはFM放送、ディジタルオーディオ放送など別システムの発する電波を捕捉することで全周3Dの監視を行う。

1・1・9 関連軍事技術

1・1・9・1 陸戦兵器

 米空軍の空軍基地で犬型ロボットが警備任務に就いた。
 米海兵隊に新型ACVの第一陣が配備された。
1・1・9・2 海戦兵器

 米海軍が次世代駆逐艦DDG Nextの調達を2025年に開始する。 米海軍が次期フリゲート艦にFREMMを選定した。
 米海軍が軽揚陸艦LAWを30隻装備しようとしている。 LAWは全長200ft以下、速力14ktとしている。
 米海軍がFY21に1社を選定して2隻の大型UUV であるDUUVを試作する。
 米海軍は2,000~3,000tのLUSVと500t程度のMUSV計画を進めようとしている。
 英国防省が有人潜水艇S201を無人化する巨大UUV XLUUV開発を発注した。

 米海軍駆逐艦ZumwaltがMk 57 VLSからSM-2 Block ⅢAZを初めて発射する試験に成功した。

1・1・9・3 空戦兵器

 機上FCSレーダのAESA化が進められている。
 Gripen C/D 搭載 S-15/Aファミリ、Typhoon搭載レーダのCaptor-Eのほか、米空軍予備役のF-16搭載AN/APG-83 SABR AESAレーダもoperationalになった。

 AIM-120 AMRAAMのソフトウェア更新計画SIPが動き出したほか、内蔵GPS、データリンク、ソフトが改良されたAIM-120C-8も輸出されている。
 2019年夏に公表されたAIM-260はAIM-120 AMRAAMとほぼ同寸であるが、射程はAMRAAMより遙かに長い。
 米空軍が開発するAAMやSAMを撃墜する自衛用小型ミサイルMSDMは、AIM-9Xの25~30%の大きさという。

1・1・9・4 サイバ戦

 中国によると見られるサイバ攻撃が頻発している。  5月には中国系のハッカー集団がCOVID-19感染症に関する研究資料を略取したほか、在米中国人による米国内外の企業にハッキング、シンガポール人によるスパイ活動などが発覚した。
 また中国に対する対決姿勢を強めたオーストラリアに対するサイバ攻撃の頻度が急速に高まっている。

 ロシアによると見られるポーランド、ドイツ、ノルウェーなどに対するサイバ攻撃のほか、メール転送ソフト Ixim の脆弱性を狙ったハッキング、米ITインフラ管理大手に対する攻撃、Micro Officeのライセンス販売業者のアクセス権を利用した攻撃などの高度なサイバー攻撃が目立っている。

 多くの国は大規模なサイバ攻撃も武力攻撃と認定し、国連憲章が各国固有の権利と定めている自衛権を行使できると解釈している。

1・1・9・5 砲熕兵器

 米陸軍の長射程野砲計画ERCAは2023年までに1個大隊分となる18両の生産が計画されている。 更にラムジェット推進弾をも考慮に入れたこのERCA計画では最終目標を射程1,000nm (1,852km) と考えている。

 Rheinmetall社が、新型130mm滑腔戦車砲初期型の開発を完了した。
 米陸軍はBushmasterに代えてBradleyの後継となるNGCVに50mm砲を搭載する。

 155mm野砲、127mm艦載砲 (Mk 45 Mod 4)、57mm艦載砲用の誘導砲弾を開発している。

1・1・9・6 共通技術

 10基計画しているGPS Ⅲの2号基が実運用可能な状況になった。 米宇宙軍は測位衛星の耐妨害性を高めるNTS-3計画を進めようとしている。
 米陸軍がGPSが使えない状況で自己位置標定やタイミング (NPT) を行う装置MPAS Gen 1を装備しているおり、更にMAPS Gen 2の開発を行っている。
 米陸軍は開発中のLTAMDSで、測位タイミング (PNT) 装置にOrolia社製が採用された。

 米空軍のJADC2は超高速ミサイルやCM対処能力を迅速かつシームレスに持たせる基本的なシステムである。  米海軍がRIMPAC演習及びValiant Shield演習でJADC2の検証を行った。
 米統合幕僚会議が、空軍が進めてきたJADC2を全軍の事業として"C"を付加したCJADC2にした。
 Link 16を経由する戦術データリンクMIDSの艦載型であるMOSの試験を開始した。

1・1・9・7 関連基礎技術

 航空機関連では電動航空機、Mach 5で飛行する超高速旅客機、それを支えるエンジンなどの研究開発が進められている。

 ミサイル関連では固体燃料ラムジェットエンジン、回転爆轟エンジンなどの研究開発が進められている。

 UAV関連では群制御に関する研究が鋭意行われている。
 また有無人連携飛行や可変形状翼の研究開発が進められている。

 その他にUAVとUGVを一体として運用するOFFSET計画、米DARPAのDRACO原子力推進ロケット計画、米国防総省のProject Pele 移動型原子炉計画、3DSoCコンピーターの軍事利用などが進められている。
 また、AI技術で副操縦手をAIにさせて飛行をする試験も行われた。

1・2 係争地域の情勢

1・2・1 イラン

1・2・1・1 米国との緊張

1・2・1・1・1 米国の対イラン強硬姿勢

 米国は11月にハメネイ氏の財団を経済制裁の対象としたほか、12月にはB-52Hの中東飛行やSSGNのペルシャ湾入りなど、強硬姿勢を強めている。
 特にTomahawkを154発搭載できるSSGNのペルシャ湾入りは、イランに対する強いメッセージになるとみられる。
1・2・1・1・2 Qads部隊司令官殺害とその余波

 米国は1月早々にイラン革命防衛軍Qads部隊司令官のソレイマニ少将らをバクダッド空港でUAVを用いて殺害した。 これにより湾岸情勢は一気に緊迫し、イランはイラク駐留米軍に対しSRBM 16発による攻撃を行ったほか、この緊張下でウクライナ民航機を誤射すると言った事件も引き起こした。
 これに対して米軍は直ちに中東地域に米軍3,500名を増派すると共に、中東地域に空母を2隻配備しB-52HをDiego Garciaに派遣したり、海兵隊を紅海に、Patriotをイラクに配備したりと臨戦態勢を整えた。
 こうしたなかイランの反撃を危惧した各国の反応も大きく、イラクに部隊を派遣していた欧州各国は部隊を一時的にイラク外に移動させるなどの処置を行った。
1・2・1・1・3 イラクのシーア派武装組織との戦い

 イラク国内のシーア派武装組織に対する米軍による攻撃が行われ、これに対する駐留米軍に対するロケット弾攻撃が頻発した。 特に3月には3回のロケット弾攻撃が報告されている。
1・2・1・1・4 イラクでの親イラン勢力によるテロ

 イラクでの親イラン勢力によるテロの激化を受け米軍はイラクへの増派を行ったほか、先制攻撃も行うと牽制した。
 一方でトランプ政権は大統領選に向けたアピールとして米軍の撤収も進めている。
1・2・1・2 ホルムズ海峡の緊張

1・2・1・2・1 イランの挑発

 Qads部隊司令官ソレイマニ少将の殺害で湾岸情勢が緊迫するのに合わせホルムズ海峡の緊張も高まり、イラン革命防衛軍の舟艇が米海軍や沿岸警備隊の艦船に異常接近する事件が生起した。
 4月にはイラン革命防衛軍海軍の舟艇11隻が米艦艇6隻に至近距離に接近したり、前方を横切るなどの嫌がらせ行為を行った。
 9月にはイラン海軍がホルムズ海峡に近いオマーン湾で3日間にわたる演習を行った。 演習には艦艇、航空機のほか、地対地および地対艦CMやロケット発射装置を搭載したUAVも参加した。
1・2・1・2・2 列国の艦隊派遣

 ホルムズ海峡の緊張を受け米国は各国に艦隊の派遣を要請した。
 一方フランスなどの欧州各国は米軍の艦隊派遣に応じず、フランスを核心とする連合艦隊を派遣した。
1・2・1・2・3 地上部隊の派遣

 湾岸情勢緊迫をうけ、地上部隊ではサウジアラビアに展開したギリシャ空軍のPatriotが任務に就いた。
1・2・1・3 対外姿勢

1・2・1・3・1 友好国に対する姿勢

 イランはイエメンのフーシ派やシリアなどイランに友好的な中東諸国やアラビア半島のアルカイダなどに武器供与の支援を行うと共に、反米で一致するベネズエラに石油を提供しようとするなど、海外勢力との提携を強めようとしている。
1・2・1・3・2 敵対国に対する姿勢

 イラン革命防衛軍はイスラエルに対し、シオニスト体制は犯罪国家の米国と一体だとして攻撃対象に含まれると示唆した。
1・2・1・4 核 開 発

1・2・1・4・1 ウラン高濃縮の再開

 米国が2018年にイランのイラン核合意から離脱したのをうけ、2015年の6ヵ国合意の逸脱措置として無制限にウラン濃縮を進める方針を表明した。
 更に12月には政府に核開発の拡大を義務付ける法律を成立させた。
1・2・1・4・2 ウラン濃縮の実績

 イランの低濃縮ウランの貯蔵量は合意が定める上限の10倍以上に達している。
 またウランの濃縮度についても合意の上限である3.67%を上回る4.5%の状態が続いており、大幅な核合意逸脱が続いている。
1・2・1・4・3 各国の対応

 国際原子力機関 (IAEA) は、核兵器開発が行われていた疑いのある旧施設への立ち入りをイランが数ヵ月にわたり拒否していることに対し深刻な懸念を表明した。
 英独仏の3ヵ国は、対イラン国連制裁の再開に道を開く紛争解決手続きを発動した。 サウジアラビアは世界各国に対しイランの核開発に断固たる対応を取るよう呼び掛けた。
 イスラエルは核兵器を搭載している可能性のあるの潜水艦をスエズ運河を通過してペルシャ湾へ向かわせた。 スエズ運河通過はエジプト政府が承認した。
 一方で、対イラン武器禁輸を2020年10月18日から段階的に解除すると定めていた6ヵ国と結んだ合意は、中露の反対で禁輸の延長ができなかった。
1・2・1・4・4 ウラン濃縮施設での事故

 イランのナタンズのウラン濃縮施設で事故が発生したことにについて、イランはイスラエルなどが関与したサイバ攻撃を受けた可能性があるとして、反撃を予告している。
1・2・1・4・5 遠心分離機の組立施設建設を開始

 イランはナタンズの核関連施設が破壊されたことを受け、遠心分離機の組立施設の建設を始めた。 IAEAによると、イランは核合意に違反して数百基におよぶ最先端のウラン濃縮用遠心分離機を地下施設に設置する計画である。 地下施設は空爆に耐えられるように設計されているという。
 イランはIR-2m遠心分離機を連結したカスケード3列の設置を開始するとIAEAに通知してきた。
1・2・1・4・6 IAEA の査察に合意

 イランが国際原子力機関 (IAEA) との間で、これまでかたくなに拒否していた国内2ヵ所の核関連施設への査察受け入れで合意し、一転して協力姿勢を打ち出した。
1・2・1・4・7 核開発科学者の殺害に伴う緊張

 11月にイランの核開発で主導的役割を担ったとされるイラン人科学者が暗殺された。 イランは、首謀者はイスラエルで在外の反体制派組織も加担したと主張し報復を警告して情勢が再び緊張した。
 この緊張を受け米海軍は、ペルシャ湾で空母を展開した。
1・2・1・5 軍備増強

1・2・1・5・1 北朝鮮との長距離ミサイル技術協力の再開

 北朝鮮がイランとの長距離ミサイル計画で協力を再開した。
 米議会調査局 (CRS) は、イランは依然として核心部品と要素を北朝鮮に依存している可能性があると見ている。
1・2・1・5・2 BM 戦力

 米中央軍は、イランは脅威となっている弾道弾を2,500~3,000基保有しているとみている。 イランは11月に弾道弾の地下発射基地を公開した。
 イランはRaad 500、Soleiman、射程・精度向上型Khorramshahr、Shahed Haj Qasemなどの各種新型弾道弾を公表した。
 更に、機動式再突入弾頭搭載弾、Fadjr-5Cを短くしたF4CL ALBM、Zolfaghar Basir ASBMなども公表すると共に、砂漠の地中から弾道弾を発射する試験も公表した。
 4月には人工衛星の打ち上げにも成功している。
1・2・1・5・3 生物・化学兵器

 米国が12月に、化学兵器開発に関与したとして団体と個人を制裁対象に指定した。 この団体は無力化ガスの開発に関わったという。
1・2・1・5・4 CM / UAV の開発整備

 イランはAbabil-3 UAVやMuhandes CMを公表すると共に、各種の短距離および長距離の新型CM発射試験を公表した。
 一方で5月はイラン海軍がオマーン湾で訓練中に、ASCMが誤って支援船に当たり多数の死傷者を出した。
1・2・1・5・5 艦船の増強

 イランが排水量6,000tの駆逐艦を建造すると発表した。
 イラン革命防衛軍海軍 (IRGCN) が、新型高速ミサイル艇 を100隻以上受領したと発表した。
1・2・1・5・6 防空能力の強化

 捕捉距離800kmの低周波の長距離バイスタティックレーダと捜索距離400kmの3Dフェーズドアレイレーダを公表した。
 革命防衛軍が6月に3 Khordad SAM の船上発射を行った。 10月にはイランが開発した長距離SAM Bavar-373を公開した。
1・2・1・6 部隊の海外派遣

 イラン革命防衛軍がシリアから撤収するとの一部の報道を否定し、シリアで当面は駐留を続けるという見通しを示した。
1・2・2 シリア内戦

1・2・2・1 Idlib県での攻防

1・2・2・1・1 アサド軍の攻勢

 2019年末以降、シリア軍がIdlib県での攻勢を強めていて、1月にはダマスカスと北部アレッポを結ぶ交通の要衝で反体制派の最終拠点である都市を制圧した。
1・2・2・1・2 トルコの大規模な兵力投入

 シリア政府軍が停戦に違反して侵攻したのに対抗して、トルコ軍数百両の車両縦隊を武装勢力が支配するシリア北西部に投入した。 2月には軍用車両300両が入り、2月の総数は1,000両に達した。
1・2・2・1・3アサド政権軍とトルコ軍の衝突

 2月にはアサド政権軍とトルコ軍の砲撃戦が繰り返され、3月にはアサド政権軍の空爆やトルコ軍によるUAV攻撃が度々行われた。
1・2・2・1・4 アサド政権軍の優勢

 2月にはアサド政権軍が北西部アレッポ県の大部分を制圧した。
1・2・2・2 外国勢力の介入

1・2・2・2・1 米国主導の有志国連合

 2月には米軍主導の有志連合軍が巡回中に政権側部隊が設けた検問所で小火器による攻撃を受けたため応戦した。
 8月には在シリア米軍兵力の縮小が発表されたが、9月には駐留米軍の兵士と装備が増強されてもいる。
 米主導の有志国連合軍が2014年8月から2020年9月までの6年間にイラクとシリアで行った空爆は34,917回にのぼった。
1・2・2・2・2 ロシア軍の直接介入

 アサド政権軍を支援するロシア軍は3月、6月、10月に空爆で支援を行った。
1・2・2・2・3 トルコの介入

 トルコが6月、シリアのIdlib近郊に国産のHisar-O中距離SAMを配備したことを明らかにした。
1・2・2・2・4 ロシアとトルコで停戦

 ロシアとトルコの大統領が、シリア北西部で3月に停戦することで合意した。
1・2・2・2・5 ロシア軍と有志国連合軍の遭遇

 パトロールを行っていた有志国S連合軍の車列がロシアの車列と遭遇する事態が生起した。
1・2・2・2・6 イランの直接介入

 イランがシリアとの二国間軍事協定を結んだ。 協定ではシリアの防空システムを強化すると言明した。
1・2・2・3 化学兵器の使用

 化学兵器禁止機関 (OPCW) が4月、シリアで2017年に起きた3回の化学兵器攻撃はアサド政権軍が行ったとの報告書を発表した。
1・2・3 イスラエル

1・2・3・1 イスラエルの地位

1・2・3・1・1 イスラエルの承認

 2020年には湾岸諸国ではUAE、バーレーン、オマーンがイスラエルを承認したほか、サウジアラビアもイスラエルとの接触を行っているとの報道があった。 湾岸諸国以外でもスーダン、モロッコの北アフリカ諸国とコソボ、ブータンもイスラエルを承認した。
1・2・3・1・2 大使館のエルサレム移転

 大使館のエルサレムへの移転は、セルビアとドミニカなどの中南米やカリブ海各国が意向を表明した。
1・2・3・2 軍備の強化

1・2・3・2・1 BMD / SRBMD

 12月に成功したDavid's Slingの一連の試験成功で、Iron Dome、Arrow 2、Arrow 3と共に構成するイスラエルの多層BMD組織がほぼ完成した。
1・2・3・2・2 マルチドメインの戦闘力

 1月1日にイスラエル軍に初のマルチドメイン部隊が発足した。
1・2・3・2・3 打撃力の強化

 LORA TBM の船上発射に成功すると共に、新型艦載対艦ミサイルGabriel 5の発射試験にも成功するなど、艦船の打撃力強化が行われている。
1・2・3・2・4 軍事産業の振興と武器輸出

 Rafael社がIron Dome、Spike NLOS、Spice 1000などで米国市場を席巻している一方で、イタリアからCAEW機を受注したIAI社は欧州各国への特殊用途機輸出に力を入れている。
1・2・3・3 対シリアの戦闘

1・2・3・3・1 イスラエル軍の空爆

 イスラエルがシリアにいるイラン兵とその影響下にある武装勢力への空爆を強化している。
 空爆の目標にはイスラム聖戦関連施設、親イラン民兵組織、イラン革命防衛軍弾薬庫などが含まれている。
1・2・3・3・2 シリアからの攻撃

 特記すべきシリアからの攻撃はなかった。
1・2・3・4 対ヒズボラの戦闘

 レバノン及びシリアからのヒズボラ戦闘員の侵入などの事案があった。
1・2・3・5 ハマスとの戦闘

 ガザからのハマスの攻撃はロケット弾によるほか風船爆弾によるものも始まった。
 8月には12発のロケット弾と、過去数ヶ月で最大の攻撃が行われた。
 イスラエルはこれらの攻撃に対し、その都度報復の空爆を行った。
1・2・3・6 中東和平

 トランプ米政権が中東和平案を発表したが、パレスチナ自治政府はこの提案をイスラエル寄りと拒否した。
 トランプ大統領の和平案は、パレスチナに独立国家建設を認める一方で、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地でのイスラエルの主権を認めるなどイスラエル寄りの内容となっていた。
1・2・4 その他の中東

1・2・4・1 スンニ派とシーア派の対立

 スンニ派諸国ではバーレーンがPatriot、サウジアラビアがTHAAD、クウェートがPAC-3 MSEと、イランからの弾道弾攻撃に備えた防空/BMD能力の強化が進められている。
 一方、UAEがイスラエルとの国交正常化を発表して以来、イランとUAE間の緊張が高まっている。
1・2・4・2 イエメン内戦

 イエメンの政府軍を支援するサウジアラビアに対する反政府勢力フーシ派の攻撃は、主要都市や空港、石油関連施設などに対し、弾道弾に加えて武装UAVやCMにより繰り返し行われている。
 こうした攻撃は主としてイランからの武器により行われている。 イランからの支援武器としてはAAMを転用したSAMや、遊弋型SAMなども報じられた。
 フーシ派に対抗するスンニ派諸国では、UAEが支援する勢力がサウジ勢力から分離するなど、一部で足並みの乱れが見られている。
1・2・4・3 ISIS の掃討

 イラクやシリアにおけるISISとの戦いは完全には収束していない。
 年末にはシリアでISIS崩壊以来最大規模の攻撃があり、シリア政府軍兵士37名が死亡している。
 対ISIS戦では米国が及び腰になってきているのに対し、フランスが空母を派遣するなど主導権を取ろうとしているように見える。
1・2・4・4 クルド問題

 クルド軍の動向に大きな変化はないが、トルコの支配下にあるシリア北部でクルド武装勢力によるとみられる大規模なテロが発生している。
1・2・4・5 カタール情勢

 2017年に中東4ヵ国から断交されたカタールに大きな変化は見られないが、カタールが装備しているPatriotの多くが、イラン方向ではなくサウジ方向を向いていると報じられている。
1・2・4・6 その他の中東情勢

 サウジアラビアが主導してきた湾岸諸国で、UAEが存在感を高めようとしている。
 イスラエルとの国交正常化に踏み切り、米国から大量の武器を導入するほか、サウジが主導してきた石油輸出国で独自路線を主張し始めている。
 この間、ロシアがサウジに武器輸出を行うほか、英国がオマーンの英軍補給基地を拡張するなど、各国が影響力拡大に動いている。
 ただトランプ米政権は中東からの撤収願望を露骨にしている。
1・2・5 インド

1・2・5・1 パキスタンとの対立

 インドが2019年に同国が実効支配するジャム・カシミール州から自治権を剥奪したのに対抗して、パキスタンがカシミール地方北部のギルギット・バルティスタン地域を準州に格上げするなど対立を高めている。
 カシミールを巡ってインド軍は武装勢力の抗争を強いられているが、両国軍による砲撃戦も生起している。
1・2・5・2 中国との対立

1・2・5・2・1 中国の対印軍備強化

 中国はインドとの武力衝突に備えて、5月下旬の段階でインド東北部ラダック地域の中国国境に5,000名と装甲車両を配置し砲兵部隊も増強して備えていた。
1・2・5・2・2 インドの対中軍備強化

 中国軍の増強に対してインド軍もRafale戦闘機やヘリ部隊を前方に配置すると共にSAM部隊も展開した。
 更にMiG-29とSu-30MKIの緊急調達も開始した。
1・2・5・2・3 武力衝突

 中印軍の衝突は5月にラダックのパンゴン湖近くで、インドが進める道路建設を巡って両軍兵士による殴り合いが発生し負傷者が出たことで始まった。 それ以来、中国軍がインド軍の支配地域に徐々に侵入したとみられ、その後も小競り合いが頻発したが、6月にはインド軍から45年ぶりの死者を伴う衝突に発展した。
 事態発生後に中国軍はこの地域に機械類を持ち込んだり、施設を建設したり、光ケーブルや道路を整備したりとインフラを整備し、J-20戦闘機の前方配備や重車両、自走砲及び各種装備品等の大量搬入を行い、事態の発展に備えた。
 これに対しインド軍はヒマラヤ地域に35,000名の追加配置を決め、MBTやAPCを追加派遣すると共に、軽戦車を含む200両の追加調達を決めた。
 その後も小規模な衝突はあったものの大きな衝突には至っていない。
1・2・5・2・4 東部国境での対立

 インドは、北西部ラダック地方で中国との国境紛争が始まった以降に、北東部アルナーチャルプラデーシュ州アにも部隊を移動させた。
1・2・5・2・5 ヒマラヤ諸国への影響

 中国が6月以降、ブータン東部の領有権を新たに主張している。 中国は過去にこの地域に領有権を主張したことはない。
 11月には中国がブータンの領内に9km入った地点まで道路を造成し、途中に集落も建設したと報じられた。
1・2・5・2・6 インド洋の覇権争奪

 NECが12月、インドのチェンナイとアンダマン・ニコバル諸島を結ぶ大容量光海底ケーブルの建設を完了した。
1・2・6 ウクライナ

1・2・6・1 東部戦線

1・2・6・1・1 戦 況

 戦況に目立った変化はなかった。
1・2・6・1・2 停 戦

 ウクライナ、ロシア両国などが合意した完全停戦が7月に発効した。
 ウクライナ東部紛争ではこれまでに14,000人が死亡した。
1・2・6・2 戦力の強化

 トルコとの防衛生産の提携交渉が進んでいる。
1・2・6・3 欧米との連携

 米国がウクライナに対しウクライナ安全保障援助計画の元にFY21に$250Mの軍事援助を行うことを認めた。 米国務省が6月、ウクライナに高速艇16隻を含む$600Mを供与することを承認した。
 ウクライナはNATOのEOPとしての資格を得た。 またウクライナ軍がイラク軍の訓練支援に参加し、NATOとの連携を強化した。
 一方英陸軍空挺部隊はウクライナ軍との共同降下訓練をウクライナで実施した。
1・2・7 リビア

1・2・7・1 リビア内戦

 リビア内戦は暫定政権が6月に拠点とする首都トリポリを全て掌握したと宣言し、主要油田や石油輸出港につながる要衝の中部シルトを巡る攻防が焦点になってきた。
1・2・7・2 各国の介入

 リビアではトルコとロシアが対立し、UAEやエジプトも介入の姿勢を示し、代理戦争の様相を呈している。
 トルコはシリア人傭兵を投入しているとの疑惑が持たれている。 また国連のリビアへの武器禁輸に違反とも疑われており、国連のリビアへの武器禁輸履行の臨検も妨害している。
 米大統領の支持を取り付けたトルコは強気で、SentinelレーダとHAWK SAM 2個中隊を配置した。
1・2・8 ナゴルノ・カラバフ

1・2・8・1 アルメニアとアゼルバイジャン

 アゼルバイジャンは2016年の4日間戦争と2018年のナゴルノ・カラバフ争奪戦で、自国領であったナゴルノ・カラバフ自治州を失ったばかりか、その周辺の自国領をアルメニアに占領されていた。
 2020年7月にはアルメニアのMovsesとアゼルバイジャンのTovuzで小規模な紛争が生起した。
1・2・8・2 大規模衝突

1・2・8・2・1 大規模衝突の生起

 9月に両国軍による大規模な戦闘が起き、砲撃などによって民間人を含む死者が出た。 戦闘ではアゼルバイジャン軍のヘリやUAVを撃墜したと発表した。
 戦闘はMBT、IFV、APC、MRLなど主要装備の数で2倍前後の勢力を有するアゼルバイジャンの優勢下に推移した。 特にアゼルバイジャンはトルコ製やイスラエル製のUAVやCMを多用した。
1・2・8・2・2 関係国の対応

 トルコはこの戦闘に介入する姿勢を示したのに対し、フランスやギリシャなどはトルコを強く非難した。 またロシアもアルメニア支持を表明した。
 一方米国は中立の姿勢を示した。
1・2・8・2・3 傭兵投入の疑惑

 ロシア外務省はアゼルバイジャンとアルメニアの戦闘にシリアやリビアから違法な武装集団を送り込んでいるとの懸念を示した。
 在英のシリア人権監視団によると、アゼルバイジャン側に加勢しているシリア人戦闘員は1,200人という。
1・2・8・2・4 停 戦

 10月には数次にわたる停戦が報じられたが何れも失敗に終わり、11月になってロシアが停戦維持部隊を派遣することで停戦が成立した。
 ただその後も散発的な小規模な停戦違反事件が報告されている。
1・2・8・2・5 戦闘の教訓

 この戦いではUAVの有効性が改めて明らかになった。
 アルメニア側ではSAM 26基、 MBT 130両以上が破壊されたが、アゼルバイジャンのUAV損失は25機にとどまったという。
1・3 紛争潜在地域の情勢

1・3・1 朝鮮半島

1・3・1・1 北朝鮮

1・3・1・1・1 核、BM 開発の再開

 金委員長が年頭の演説で核実験やICBM発射の再開を示唆した。 5月には金委員長の指導で核抑止力強化へ、党軍事委員会で戦略戦力を高度の臨戦状態で維持するための新たな方針が提示されたという。
 また国連の北朝鮮代表が7月に核活動中止の撤回表明した。
 これらの発言を裏付けるように、ミサイル関連施設では活動再開を示す動きがあり、秘密核施設が稼働したとも報じられた。
 国連の機密報告書によると、北朝鮮は2019年も国連制裁に違反し核やBM開発を強化し続け、安保理決議に違反していると指摘している。
1・3・1・1・2 中国との国境地域に大型トンネル基地

 北朝鮮が中朝国境近くに、入り口だけで出口のない地下ミサイル基地の疑いのある大型トンネルを建設した。
1・3・1・1・3 大量破壊兵器

 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) は2020年1月における北朝鮮の核保有数を前年の20~30発から30~40発となったと見ている。
 米陸軍省も北朝鮮の核爆弾の保有量が20~60個と推計され、2020年代には100個まで増える可能性があるとしている。
 米陸軍省は北朝鮮が韓国と米国または日本を狙って炭疽菌と天然痘菌をミサイル搭載できると見ている。
1・3・1・1・4 挑発的な活動

 北朝鮮がMiG-29を前方地域へ前進配備させたり、韓国との通信線をすべて遮断したり、非武装地域に部隊を再進出させたり、南北連絡事務所を爆破したりと、韓国に対する挑発的な活動が目立つ。
1・3・1・1・5 安保理制裁違反

 国連安保理は、北朝鮮に対して石油精製品の輸入制限や北朝鮮産石炭の輸出禁止などの制裁を科しているが、北朝鮮は瀬取りの手口で制裁逃れを繰り返している。
 しかしながら日米などが東シナ海で実施している瀬取りの監視活動に対し、中国軍艦艇が牽制する動きを強めている。
1・3・1・2 韓国の反応

 韓国の文大統領は新年の辞で開城工業団地や金剛山観光再開などの南北協力について提案した。
 また更に、北朝鮮との関係改善のため北朝鮮に科している国連の制裁を解除するかも知れないと述べるなど、一貫して南北融和の姿勢をとった。
1・3・1・3 米国の対応

1・3・1・3・1 柔軟対応

 トランプ米大統領は1月に、2019年12月に金委員長が核やミサイル実験の再開を宣言したにもかかわらず、金委員長が非核化の約束を守ると信じていると述べた。
1・3・1・3・2 強硬姿勢

 エスパー米国防長官は1月に、米韓合同演習再開の可能性をほのめかした。 また国防総省は、いわゆる斬首作戦動画の一部を再び公開した。
 また6月には空母3隻をフィリピン海など朝鮮半島から遠くない西太平洋に集結させた。
1・3・1・3・3 軍事行動

 韓国軍は2019年初めにKey Resolve演習およびFoal Eagle演習を廃止し、代わって指揮所演習 のみを実施したが、2020年もまた2019年レベルの縮小された合同演習を行った。
 ただ演習の8月の開始日には、B-1B、B-2合わせて6機の爆撃機が対馬海峡と日本付近の上空を飛行した。
 米国営放送のVOAが、北朝鮮の核施設を核兵器で攻撃した場合の人命被害と放射性降下物による被害を予測したと報じた。 この中ではB61核爆弾20発を使用した場合の人命被害は従来型作戦レベルに留まると分析した。
1・3・1・4 南北の小競り合い

 南北軍事境界線の非武装地帯 (DMZ) で5月に北朝鮮側が韓国側の軍監視所を銃撃した。
1・3・2 東シナ海

1・3・2・1 中国の動き

1・3・2・1・1 軍事挑発

 COVID-19の感染が世界的に拡大するなか中国が依然として日本周辺での軍事的な挑発を続け、1~3月の中国公船による尖閣諸島周辺の接続水域内への進入は前年同期比で57%増えた。
 10月には中国艦が尖閣諸島沖の領海に連続滞在時間57時間39分侵入した。 これまでの最長は7月の39時間23分だった。  沖縄本島と宮古島の間を空母遼寧を含む中国艦が通過するのが確認されたほか、6月には奄美大島沖の日本の接続水域を他国の潜水艦が潜航したのが確認された。  一方、令和元年度における中国軍機に対する航空自衛隊の緊急発進の回数は675回と前年度を5.8%上回った。
 12月には露軍爆撃機と中国軍爆撃機の共同編隊飛行が、日本海と東シナ海で行われ、宮古海峡上空の通過も行われた。
1・3・2・1・2 日本漁船に対する威嚇行動

 尖閣諸島沖で中国艦が日本漁船を追跡する事件も頻発している。 殆どが日本の領海内で行われ、12月には4時間以上にわたり追跡する事件が生起している。
1・3・2・1・3 中国漁船の動き

 日本政府は、中国が東シナ海での漁船操業を解禁する8月に中国漁船が警備艦とともに沖縄県尖閣諸島海域で示威的な活動をすることを警戒していた。 2016年8月の休漁明けには中国漁船200~300隻が尖閣に出漁したのに続いて中国艦が領海侵入を繰り返した。
 しかしながら休漁期間が明けるのを前に、中国の地元当局が漁民に対し周辺30nmへの進入禁止など、尖閣への接近を禁じる指示をしていた。
1・3・2・2 わが国の対応

1・3・2・2・1 わが国の姿勢

 河野防衛相が尖閣諸島の周辺海域問題について、自衛隊としても海上保安庁と連携し、必要な場合にはしっかり行動したいと述べた。
 自民党の防衛関係議員グループが尖閣地域で自衛隊の演習や日米共同演習を行うことを求めた要望書を纏めた。
1・3・2・2・2 警備の強化

 平成27年度までに巡視船12隻の尖閣領海警備専従体制を構築し、2016年に尖閣警備と大規模事案の同時対応を掲げた「海上保安体制強化方針」を策定している海上保安庁では、PLHの建造ラッシュが続き、6,500t型2隻が令和2年度と3年度、6,000t型2隻が5年度に就役する。  防衛省は明らかに領空侵犯の恐れがある場合のみ戦闘機を緊急発進させていたが、緊急発進の基準を見直して2019年の早い段階から中国福建省の航空基地を離陸する全戦闘機に対し、即時に戦闘機を発進させるなど、大幅に対応を強化していることを明らかにした。
 沖縄県石垣市議会が尖閣の住所地の字名を10月から登野城尖閣に変更する議決をした。 また八重山防衛協会が防衛省に八重山地方への海上自衛隊の基地整備を要請した。
1・3・2・3 米国の動き

 米国は尖閣問題について中立な立場をとっているが、同盟国である日本が攻撃に対応する場合は支援する方針を示している。
 尖閣諸島周辺における中国艦による前例のない侵入を繰り返していることについて在日米軍は、米軍が監視を支援することが可能との見解を示した。
 米空軍は8月に中国が設定した飛行禁止区域でU-2を飛行させ、更に11月にはB-1B 2機が東シナ海の中国防空識別区域(ADIZ)に進入した。
1・3・3 南シナ海

1・3・3・1 中国の動き

埋め立ての継続

 中国が南シナ海パラセル諸島Woody島で行っている埋め立てが、同島北部の2箇所で今も続いている。

軍備の強化

 中国が南シナ海に造営した人工島に、AEW&C機や爆撃機を駐機させると共にHQ-9 SAM中隊を駐留させていることが判明した。
 また空母山東の海南島配置も行っている。

周辺国への圧力

 中国は南シナ海で大規模演習を度々実施しているほか、爆撃機の飛行や8月にはIRBM/ASBMを南シナ海に向けて発射して威嚇している。
 周辺国漁民に対しては5月から3~4ヵ月間の休漁期に入ったとして一方的に漁船の締め出しを行ったほか、4月には警備艦をベトナム漁船に体当たりさせ沈没させている。

東沙諸島奪取の目論み

 中国人民解放軍が8月に、台湾が実効支配する南シナ海東沙諸島の奪取を想定した大規模な上陸演習を計画していた。

南シナ海に防空識別圏を設定

 中国が南シナ海に防空識別圏を設定する可能性が浮上している。

COVID-19の感染拡大に乗じた挑発的動き

 COVID-19の感染拡大で米空母が撤収した隙を中国が埋めようと艦隊を南シナ海に送った。
 中国空母遼寧と随伴艦6隻で構成された艦隊がMacclesfield堆付近で航海中の様子を商用衛星が撮影した。

米軍の動きに呼応した動き

 米海軍空母Ronald Reaganが南シナ海で週末に防空演習を行った翌日に、中国海軍のコルベット艦が南シナ海で実弾射撃演習を実施した。

1・3・3・2 周辺国の動き

ASEAN

 ASEAN議長国のベトナムが9月に開いたASEAN外相会議で、中国の動きに懸念を表明した共同声明を公表した。

フィリピン

 フィリピンが6月スプラトリー諸島のうち自国が実効支配するPag-asa島で建設を進めていた埠頭が完成した。 Pag-asa島を管轄するカラヤアン町が、島周辺の砂州と岩礁に命名した。
 フィリピンのドゥテルテ大統領が、中国からCOVID-19のワクチンを提供してもらう代わりに、南シナ海領有権問題を棚上げしかねない発言をした。 中国の海洋進出を勢いづける恐れもあり、識者から「敗北主義者」との批判も飛び出した。
 ドゥテルテ大統領が南シナ海での石油探査の再開を許可し、中国との共同開発も含めたプロジェクトが再開する可能性がある。

インドネシア

 インドネシアが南シナ海Natuna諸島では、中国船によるインドネシアEEZへの進入が増大している。 インドネシアは同国の排他的経済水域 (EEZ) 内に進入した中国海警局の警備艦に対し退去を要求した。
 インドネシアはNatuna諸島最大の大Natuna島にコルベット艦や陸軍の混成大隊を追加派遣し、2018年から配備されている潜水艦と合流させた。 また空軍のBoeing 737 MPA 1機が飛行した。
 インドネシア海軍は中国を牽制する狙いで、南シナ海の南方海域で7月に駆逐艦など24隻が参加する大規模な演習を実施した。

マレーシア

 マレーシアが1ジョホール州沖の海域で無許可で停泊したなどとして、中国漁船6隻を拿捕した。

オーストラリア

 オーストラリアが南シナ海における中国の主張が1982年国際海洋条約に反し不当であると国連に文書で申し入れた。

1・3・3・3 米国の対応

積極関与姿勢への変化

 トランプ米政権が従来の中立的な立場を転換して、南シナ海の海洋権益に関する中国の主張を完全に違法と否定した。

 米海軍が6月、空母NimitzRonald ReaganのCSGがフィリピン海で/共同作戦を開始した。 6月上旬にはNimitzTheodore Rooseveltが同様の行動を行っており、南シナ海に繋がる海域で3個CSGが活動していることになる。 第7艦隊海域で3個CSGが活動するのは2017年に韓国近海に展開して以来となる。
 陸軍は特殊部隊をインド太平洋地域に配置する計画で、2個隊を送りうち少なくとも1個隊は南シナ海周辺国に常駐する計画である。
 米インド太平洋軍が4月に南シナ海に強襲揚陸艦Americaと巡洋艦Bunker Hillの2隻を展開した。

航行の自由作戦

 米第7艦隊は毎月概ね1回のペースで積極的な航行の自由作戦 (FONOP) 実施した。

米軍機の南シナ海上空飛行

 南シナ海における米軍の偵察飛行回数が5月から飛躍的に増大している。 特に5月に35回であった大型偵察機による飛行が7月には67回になっているという。

大規模演習の実施

 米海軍は7月、南シナ海に空母2隻を派遣し近年では最大級となる演習を実施した。

経済制裁

 米国務長官が8月に、南シナ海の埋め立てや軍事拠点化などに関与した中国人に対してビザ制限を実施すると発表した。

1・3・3・4 豪州欧州諸国の対応

 南シナ海で中国の調査船が他国の排他的経済水域 (EEZ) 内で調査活動を続けている問題をめぐり、米軍とオーストラリア軍がマレーシア沖に艦艇を派遣した。
 ドイツが12月に、インド太平洋諸国との連帯を示すため、独連邦軍のフリゲート艦を近くインド太平洋地域に派遣すると表明した。
1・3・3・5 わが国の対応

 わが国は、米国務長官が南シナ海を巡る中国の主張は違法だとの声明を発表したことに対し、米国のコミットメントを支持した。  河野防衛相が8月に南シナ海の現状を変更しようとする中国の試みについて、国際社会から厳しい対応を招く可能性があるとの認識を示し、力による現状変更を試みる者は全員、高い代償を支払うことを余儀なくされる必要があると警告した。
1・3・4 台湾海峡

1・3・4・1 中国の示威活動

艦船の活動

 駆逐艦等4隻が台湾東方海域を航行、遼寧など6隻が台湾東部および南部沿岸で演習、台湾東部沖合で演習、台湾の接続水域にで接近など、台湾周辺海域での威嚇行動が行われた。

航空機の活動

 中国軍の戦闘機、爆撃機、AEW機、偵察機などの台湾周辺での飛行が頻発し、台湾の防空識別圏 (ADIZ) に進入した軍用機は2020年当初以来10月までに1,710機に達した。
 また爆撃機と戦闘機が台湾海峡の中間線を越えて飛行する事案も何度か行われた。

台湾海峡中間線の否定

 台湾海峡の中間線は台中間の事実上の停戦ラインとして機能していたが、中国外務省が9月に台湾は中国の一部だとして台湾海峡の中間線など存在しないとの方針を示した。

ロケットの台湾上空飛翔

 中国が9月に地球観測用などの衛星9基を黄海の洋上から打ち上げ、台湾の上空を北から南方向へ縦断した。 これについて台湾は、挑発する目的で飛行軌道を意図的に設定したとの見方をしている。

台湾海峡付近で大規模演習

 中国が9月に台湾海峡付近で軍事演習を実施していると表明し、同海峡における現状への対応で、中国の国家主権と領土の一体性を守るためだとした。

対米威嚇の航空機飛行

 米保健福祉長官が訪台した翌日に、中国空軍の戦闘機2機が台湾海峡で中間線を越えて飛行した。
 また3日後には中国軍東部戦区が、台湾海峡で実戦的演習を最近行ったとする談話を発表した。

1・3・4・2 米国等の示威活動

1・3・4・2・1 艦船の海峡通過

 米海軍第7艦隊の駆逐艦が13回にわたり台湾海峡を通過した。
1・3・4・2・2 航空機の飛行

 米空軍の爆撃機や電子偵察機、特殊戦機が頻繁に台湾周辺を飛行した。
1・3・4・2・3 台湾の対応

 台湾の蔡総統が9月、台湾海峡での中国軍機の動きが活発化していることに警鐘を鳴らした。
1・3・5 欧 州

1・3・5・1 モルドバ

 モルドバで11月に大統領選挙の決選投票が行われ、欧州との関係を重視するサンドゥ元首相が親露で現職ドドン大統領を破り初当選した。
 サンドゥ次期大統領が、ロシア系住民の実効支配下にあるモルドバ東部の沿ドニエストルに駐留するロシア軍の撤退を要求する方針を表明している。
1・3・5・2 旧ユーゴスラビア

コソボ

 セルビア大統領とコソボ首相が9月にワシントンで会談し、経済関係を正常化することで合意した。 コソボは2008年に一方的に独立を宣言したが、セルビアは独立を認めていない。

1・3・5・3 東地中海

1・3・5・3・1 キプロス

 米国が9月に、30年以上継続している武器禁輸を一時解除する方針を示した。 北キプロス・トルコ共和国を唯一承認するトルコは猛反発している。
 トルコ軍が9月、北キプロス・トルコ共和国で年次演習を開始した。
1・3・5・3・2 トルコがキプロス周辺海域へ進出

 トルコのエルドアン大統領が8月、トルコの探査船が東地中海での海底資源探査を再開したと発表した。 トルコは軍艦の護衛で問題の地中海域に探査船を派遣した。
 現場はギリシャとトルコそれぞれが自国の大陸棚と主張する海域で、ギリシャは支援するEUを巻き込み対立が激化している。
 トルコ海軍は南部沖で砲撃訓練を行うと発表したのに対し、フランスは同海域でイタリア、ギリシャ、キプロスと軍事演習を開始した。
1・3・5・3・3 トルコ軍による牽制

 ギリシャとトルコが、東地中海で天然ガス採掘をめぐって双方が海域の領有権を主張し対立しているが、トルコ軍は艦艇5隻で調査船を囲み警護している。 こうしたなかトルコ海軍のフリゲート艦がギリシャ海軍のフリゲート艦と衝突した。
 また同海域上空でトルコ軍機がギリシャ軍機を追尾した。
1・3・5・3・4 反トルコ諸国の連携

 東地中海を巡りギリシャとトルコが対立する中、エジプトとギリシャが EEZ 画定で合意した。
 反トルコのキプロス、フランス、ギリシャ、イタリアがキプロス南東海域で3日間の演習を開始した。 フランスは、クレタ島に配備していた戦闘機を、演習が行われているキプロスに派遣すると共に、ヘリ空母も派遣すると発表した。
 10月にドイツはキプロスとギリシャ側の立場だとした。 更にEU首脳会議が10月に声明を出し、トルコを非難した。
1・3・5・3・5 EU / NATO の対応

 EU外相会合が8月にトルコ制裁を協議した。 EUは12月の外相会議でトルコ制裁について検討し、首脳会議で決定するとした。
 一方フランスをはじめとするEUの南部7ヵ国が首脳会議を開き、トルコに対し撤収しなければEUによる制裁を科すと警告した。
 ギリシャの首相が9月に、軍を強化すると宣言し、戦闘機 18機を購入するほか、フリゲート艦4隻、海軍ヘリ4機を新たに増強すると共に、現在140,000名の総兵力を15,000名増員する。
1・3・5・3・6 ロシアの進出

 英戦略軍司令官が東地中海におけるロシアのA2/AD装備の増強について警告した。
 トルコ海軍が、ロシア海軍が東地中海で9月に演習を行うと発表した。
 ロシア外相が9月、キプロス大統領にキプロスとトルコの問題について仲介を申し出た。
1・3・5・4 ベラルーシ

1・3・5・4・1 ロシアとの対立

 ロシアは、ベラルーシはロシア国内と同一価格で石油とガスの供給を受けるのであれば、ロシアとの経済統合が不可欠としてこれらの供給を停止した。 このためベラルーシは米国からの原油輸入を開始した。
 ベラルーシの治安当局が8月の大統領選を前に、同国の情勢不安定化を画策したとしてロシア人の傭兵32人を拘束した。 ルカシェンコ大統領は、反対勢力の一部がロシアに操られていると主張している。
1・3・5・4・2 大統領選挙後の混乱

 30年近くにわたる長期政権を築いてきたルカシェンコ大統領は、6選を目指す今回の大統領選で主要対立候補を拘束するなどの措置を取った。
 EUは再選を決めたルカシェンコ大統領への抗議行動が続くベラルーシ情勢を巡り緊急首脳会議を開催し、選挙の結果を認めないとして選挙の不正や抗議活動の取り締まりに関与したとみられる当局者らに金融制裁を加えることを決定した。
1・3・5・4・3 ロシアへの依存

 大統領選挙後の混乱が続くベラルーシに対しロシアのプーチン大統領が、ルカシェンコ大統領の要請に応じて、現地に派遣する治安部隊を編成するなど、準備を進めていることを明らかにした。  プーチン大統領はルカシェンコ大統領に軍事面も含めた全面的な支援を約束した。
 ロシアが集団安全保障条約機構 (CSTO) 加盟国と共にベラルーシで6ヵ国軍合同演習を行うと発表した。
 また、ロシア軍はポーランドと国境を接するベラルーシ西部でベラルーシ軍と合同演習を開始した。
1・3・5・4・4 西側の対応

 バルト三国がベラルーシのルカシェンコ大統領とその他29人の当局者に対し、渡航を禁止する制裁措置を発動した。
 米政府がベラルーシでの大統領選挙で不正や抗議デモの抑圧に関与した疑いがあるとして、4団体と40人の個人を制裁対象に指定した。
 欧州議会がベラルーシのルカシェンコ大統領の再選を認めない方針を決定した。 またEUがルカシェンコ大統領に制裁発動した。
1・3・5・4・5 ベラルーシの対決姿勢

 ベラルーシのルカシェンコ大統領が9月にポーランドおよびリトアニアとの国境を閉鎖し、ウクライナとの国境管理を強化する必要があるとの見方を示した。
1・3・6 コーカサス(ジョージア)

 ジョージアでは019年10月に政府や民間企業や報道機関などが一斉にサイバ攻撃を受けたが、ジョージアが2月に攻撃を仕掛けたのはロシア軍の参謀本部情報総局だったことを明らかにした。
1・3・7 北極海

ロシア

 ロシアは40隻以上の砕氷艦船を保有し更に3隻を建造中で、2030年代に12隻の建造を計画している。 更に閉鎖していたソ連時代の基地50ヵ所以上を再開し、アラスカ近くに早期警戒レーダやミサイルを配備している。  ロシアの空挺部隊がが4月に、史上初めて北極圏での降下を行った。 またアラスカ近くで冷戦以来最大規模の演習を行った。

米 国

 米国は2隻しか保有していない砕氷艦のうちの1隻が火災で動けない状況である。 米沿岸警備隊は2024年までに重砕氷艦1隻を含む砕氷艦6隻の建造を計画しているが、少なくとも2023年までは艦齢を20年以上過ぎているこの1隻を使用しなければならない。
 米空軍は7月にArtic Strategy文書を公表した。 新戦略は中国やロシアによる挑発の増大を受けたもので、空軍は海路の拡大や資源の開拓、主権の争いに対応する。

中 国

 自らを近北極圏国と称し北極海への進出を狙っている中国は建造を進めている。

1・4 東アジア諸国

1・4・1 中 国

1・4・1・1 世界制覇の国家目標

1・4・1・1・1 国防の基本方針

 中国全人代常務委員会で12月、宇宙、電磁波、サイバー空間を重要な安全保障分野として軍事活動の対象とすることが明記された改正国防法が成立した。 習政権は軍民融合を通じて軍事力の近代化を進めているおり、特にサイバ、宇宙、海洋を重視している分野として挙げた。
 中国共産党の第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で第14次5ヵ年計画(2021~2025年)と2035年までの長期目標に関する基本方針が採択された。
1・4・1・1・2 核戦力の増強

 米戦略軍 (USSTRATCOM) が7月、中露の核戦力が2020年代末までに米国に匹敵するようになると警鐘を鳴らした。
 米国防総省は、中国の核弾頭保有数は現在の200発程度から今後10年間で少なくとも倍増するという見通しを持っているた。 これに対し米国のあるシンクタンクは中国が保有する核弾頭数について、米国防総省の見積もりより多い350発とした報告書を公表した。
1・4・1・1・3 拡大外交政策

 ハンガリーがブダペストとセルビアの首都ベオグラードを結ぶ高速鉄道の建設資金の85%前後を中国が融資することで両国が合意するなど、中国は引き続き一帯一路政策による世界進出を図ろうとしている。
 中国はイランと、今後25年間に市場価格を大幅に下回る価格で原油を供給する見返りに、中国から25年間で$400B規模のインフラ投資を受けるという協定を結ぶ見通しになった。
 それによると中国はイランに対し、高速鉄道の建設や経済特区の整備、次世代通信規格5Gの導入などを支援すると共に、更に兵器開発など軍事支援も行うとしている。
1・4・1・1・4 海洋軍拡で世界進出

海軍の増強と海洋進出

 米国防総省は、米海軍の艦船数が293隻であるのに対し中国は350隻で世界最大の海軍になっているとしている。 米海軍情報当局は中国海軍の艦艇数を2020年中に360隻、2030年には425隻に増えると分析している。
 中国海軍は2019年12月だけで5隻の艦船を進水させるなど、世界的にもまれにみるペースで建艦を進めている。 Type 056/056Aで71番艦になる最艦が完成した。
 2020年初めには中国艦隊が小笠原諸島や米領グアムを結ぶ第2列島線を越え、初めてハワイを含む第3列島線まで進出して演習を実施した。

海警局の強化

 世界最大級警備艦を保有し、海軍艦と同じ76mm砲を搭載した警備艦が確認されているなど、装備面での海警局強化が図られている。
 全人代が人民武装警察法を改正し、通常は国内の治安維持を担う人民武装警察部隊(武警)の任務に海上での権益を守る活動を追加する条項が加えられ、海上で周辺国の民間漁船などと摩擦が生じた場合、現行では海警局が対応しているのが、法改正後は武警も海上警備に投入できるようになる。
 全人代が中国海警局の権限を定める海警法を制定した。 海警法では外国船が海警局の停船命令などに従わない場合は武器の使用を認める内容になっている。

海軍の大規模演習

 中国軍の空母遼寧山東の2隻が9月に、それぞれ黄海と渤海で初めて同時期に演習を行った。 2隻の空母が一体的に運用されるという見方も出ている。

大規模海上民兵

 中国には平時には生業に従事し、戦時には軍に編入される民兵制度があり、海上民兵隊は18~35歳の漁民らに加入が義務付られていて、その規模は30万人と推定されている。
 中国の漁船団は世界最大で、中国政府によれば世界の海で魚を獲る中国漁船は2,600隻というが、一部の海洋専門家によれば遠洋漁船数はほぼ17,000隻にものぼる可能性がある。

インド洋への進出

 中国海軍とパキスタン海軍の合同演習がカラチに中国艦隊を迎えて行われた。 この演習には中国側から駆逐艦、フリゲート艦、補給艦、潜水艦支援艦の各1隻が、パキスタン側からはフリゲート艦と高速艇各2隻が参加した。

1・4・1・1・5 海外拠点の確保

 海外拠点の確保についての特記すべき報道はなかった。
1・4・1・1・6 地球規模の測位衛星網

 中国版GPSの北斗を構成する最後の衛星1基が6月に打ち上げられ、予定軌道への投入に成功した。
 最新の北斗3号システムは僅か2年半で30基体制を構築し、GPSに依存しない中国の軍民共用インフラが完成する。
 北斗関連製品の輸出は既に120ヵ国以上に及んでおり、ナビゲーション分野でも米中の覇権争いが本格化する。
1・4・1・2 台湾制圧準備

1・4・1・2・1 外交圧力

 COVID-19を巡る情報共有が阻害されていると批判がでているのにもかかわらず、台湾は中国の反対で世界保健機関 (WHO) に参加できていない。
1・4・1・2・2 武力による威嚇行動

 中国は台湾海峡や台湾周辺で海空軍動きを活発化させ威嚇を行っている。
 中国人民解放軍が8月に、台湾が実効支配する南シナ海東沙諸島の奪取を想定した大規模な上陸演習を行った。 中国軍の空母遼寧山東の2隻を投入して行った大規模演習は台湾侵攻作戦も演習の目的の一つとなっているという。
 台湾方面を担当する中国人民解放軍東部戦区が市街地への侵攻を想定した訓練を公開した。 東部戦区が福建省と広東省で上陸作戦を想定して演習を実施し、水陸両用戦闘車や上陸部隊とUGVの様子を公開した。 
 中国は広州、深圳、殊海、仏山など珠江デルタの9都市が連携して組織化された市民防空網を構築する。
 米国防総省は中国の地上発射BM及びCMの数は2018年より810発増えて2,740発になっていると見ている。 10月には中国が台湾の対岸となる東南部の海岸に、超高速BM DF-17を配備していると報じられた。 DF-17は東南部の海岸に配備していたDF-11及びDF-15と換装されることになるという。
1・4・1・3 米中対立

対米挑発活動

 中国海軍駆逐艦が米海軍P-8にレーザ照射したり、南シナ海に向けDF-26 ASBMの実射訓練を開始したりと、対米挑発を続けている。

国内の引き締め

 中国軍が戦争に備えた訓練の強化など、戦争準備の動きを強めている。
 北京の町中に「人民防空の使命と任務」と題した奇妙な看板が掲示された。 いきなり「戦時防空」という項目から始まるこの看板に、ネット上では不安の声が上がっている。
 中国軍が香港でも海空合同の訓練を実施した。

1・4・1・4 わが国への挑発

 東シナ海でのわが国に対する挑発と共に、沖ノ鳥島沖の日本の排他的経済水域 (EEZ) でも、中国船が無許可で海洋調査を行うなど、わが国に対する挑発が拡大している。
 中国が山東省にIRBM DF-26を配備したことが商用衛星の写真で明らかになるなど、日韓が射程内に納める新型弾道弾の配備をすすめている。。
1・4・1・5 経済低迷下の国防費増大

 2019年における中国の国内総生産 (GDP) の増加率は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前年比6.1%と、2018年から0.5%鈍化し、天安門事件翌年の1990年(3.9%)以来、29年ぶりの低い伸びにとどまった。
 こうした中で2020年の国防費は前年実績比6.6%増と、2019年の7.5%増を下回ったが高い水準を維持した。 2019年の国防費伸び率はGDPの伸び率を上回っていた。
1・4・1・6 戦力の再構築

統合作戦能力の強化

 中央軍事委員会が陸海空軍などによる統合作戦の概要を定めた規範である中国軍の統合作戦綱要を軍に配布した。
 中国軍は米軍に比べると陸海空軍などの部隊の連携が劣っていると指摘されており、習主席は米軍との対抗を念頭に能力向上を図っている。

混成大隊が陸軍の作戦基本部隊

 解放軍報が、陸軍が正式に混成大隊を作戦基本部隊したとすると報じた。 2008年に開始された混成大隊の編成が完了したことを意味する。

1・4・1・7 戦力の増強

1・4・1・7・1 宇宙、BMD

偵察衛星

 中国は2013年以来Gaofen(高分)シリーズ衛星を25基打ち上げているが、そのうち高分-4と、高分-13の2基がアジア太平洋上空の静止軌道に打ち上げられている。
 中国は高分-4について50mの分解能があることを明らかにしたが、陸上監視、気象予報、穀物収穫予測、災害対応が任務という高分-13の詳細は公表されていない。
 ただ中国政府は9月に米海軍空母打撃軍 (CSG) の偵察と照準の能力があると述べている。

ASAT

 2020年に中国ASATについての特筆すべき報道はなかった。

BMD

 人民解放軍出身の核ミサイル専門家が中国の早期警戒システムについて、米露に比べて遜色ないと強調している。
 米国防総省は中国がBMを弾道中期で迎撃するシステムを開発しており、IRBMの迎撃で好成績を収めているとしている。 このシステムは2020年代後半より前にIOCになる可能性はないと見ている。
 国防総省はまた、米国のTHAADに匹敵する中国のHQ-19 BMDシステムが2021年にIOCになると予測している。
 1月には中国向けで2番目の連隊分となるS-400E Triumfの引き渡しが完了したと報じられた。 3月に撮影した衛星画像から、中国軍が改良型HQ-9B SAMの5番目の中隊を配置したことが明らかになった。

1・4・1・7・2 長距離 BM

 米北方軍は中国が大陸間HGVの試験を行っていると見ている。 2019年10月に出現したHGVを弾頭とするDF-17とは別物という。
1・4・1・7・3 艦 船

航空母艦

 2019年12月に海南島で就役した中国で二隻目となる空母山東が、最終試験では大連を出航して台湾海峡を通過して海南島への航海を行った。
 12月には4隻のフリゲート艦を伴って同日に台湾海峡を南下したたことが確認された。  電磁カタパルトが初めて装備されるという見方が出ている中国の3隻目の空母は2025年までに就役する見通しという。

潜水艦

 4月に新型SSBNのType 096唐級が公表された。
 ロシアが中国と共同で次世代通常動力潜水艦設計をしている。 英仏露独などの潜水艦先進国は潜水艦を輸出するが核心技術は教えない。

駆逐艦

 全長を伸ばした7,500t級駆逐艦Type 052Dの一番艦が1月に就役した。 これで就役しているType 052Dは13隻になり、更に12隻が進水して艤装工事中である。
 10,000t級のType 055駆逐艦一番艦が1月に就役した。 造船所の画像には進水したType 055駆逐艦の7番艦が、5番艦と並んで写っていた。

フリゲート艦/コルベット艦

 1月にType 056/056Aの71番艦で最終艦となるType 056Aが完成した。

揚陸艦艇

 初の強襲揚陸艦Type 075が8月に初の試験航海を開始した。
 Type 075強襲揚陸艦の二番艦が4月進水した。 三番艦も建造中だという。
 中国国営造船企業がType 076と見られるUCAVの発進用に電磁カタパルトを装備したLHD強襲揚陸艦の設計を進めている。

支援艦船

 ヘリ降着補給基地に活用する民間の重量物運搬船が公表された。

U U V

 中国が各種UUVを開発しており、全長3mで魚雷形状で潜行深度2,000mのHaujing 2000、3.5mのQianlong-2は4,500m潜航できる。
 中国が2019年11月の閲兵式でHSU001 UUV を公開した。 HSU001は全長5~7m、胴径1m程度、排水量3tと報じられている。

1・4・1・7・4 航空機

戦闘機

 国産WS10シリーズのエンジンを搭載したJ-10が公表された。
 艦載多用途戦闘機J-15の生産が再開された。
 広東省の第2航空旅団で老朽化したJ-10AをJ-16に換装している。
 J-20のエンジンの推力を大幅に向上させたJ-20Bが量産に入った。
 開発中の空母艦載機が2021年に初飛行する可能性があると報じられた。 専門家はJ-31を基にした新型艦載機だと見ている。

爆撃機

 開発中の中国次世代ステルス爆撃機H-20とされている画像が公表されたが、従来報じられてきた戦術爆撃機タイプの想像図とは全く異なり、米空軍のB-2に酷似した形状であることから、中国は2種類の爆撃機を並行して開発している可能性がある。
 H-6爆撃機の最新型H-6NはASBMのほか、DF-100超音速CMか、ロケット推進の超音速偵察用UAVを搭載すると見られる。

ヘリコプタ/ VTOL機

 対潜型 (ASW) と見られるZ-20へりZ-20Fが紹介された。
 Z-8G中型輸送ヘリのワイドボディ型Z-8Gが公開された。 一般にはZ-10Lと呼ばれている。
 改良型Z-10ヘリの外観から分かる改良点はIR捕捉を避けためエンジンの噴気ノズルを上向きにし、胴体両側面に補助装甲板と見られるパネルを3枚ずつ取り付けている。
 ロシアが2019年に121機のヘリを中国に輸出した。

偵察機/電子戦機

 Y-9特殊作戦機が量産に入った。  海軍航空隊がKJ-200 AEW&C機とY-9JZ ELINT機の共同訓練飛行を行った。
 CMなどを早期探知する警戒システムとして新たに飛行船基地を建設した。

その他の航空機

 空中給油プローブを装備したKJ-500 AEW&C機の画像が公開された。
 KJ-600艦載AEWの組み立てを完了した模様である。 KJ-600はカタパルト発進であることから、使用はType 003空母に限定される。
 空中給油機型のY-20戦略輸送機が公表される。 Y-20を空中給油機にするとIl-78空中給油機並みの90tを搭載できる。

1・4・1・7・5 U A V

HALE / MALE / TUAV

 武装偵察用3発MALE UAV TW328/TB001が初飛行した。
 ガスタービン推進のMALE UAV WJ-700の画像を公開された。 コンセプトでは翼下に4箇所のハードポイントを持ち、超音速ARMや対艦ミサイルを搭載できる。

UAV 活用技術

 48機の小型UAVを発射する発射機を装甲車に搭載してUAVを発射する画像を公開した。
 2017年6月には119機のUAV群を飛行させる世界記録を達成している。

1・4・1・7・6 戦術ミサイル

超高速弾頭 BM

 米北方軍は中国が超高速弾を弾頭とするICBMの試験を実施していると見ている。
 DF-17は射程が700km越えと報告されているDF-16 SRBMに超高速弾を取り付けたものである。
 中国空軍H-6Nが胴体下にALBMを搭載している映像が流れた。 このミサイルは陸上発射のDF-17に良く似ている。

MRBM / SRBM

 米軍の早期警戒衛星などが中国が2019年1年間に百数十発のBMを発射していたことを探知していた。

MLR / MRL

 射程延伸型のPHL-03 MRLは射程を従来より30km延びて160kmとした300mmロケット弾を12発搭載している。

巡航ミサイル

 DF-100は巡航速度Mach 4、最大速度Mach 4.5で飛翔する。
 YJ-12ラムジェット推進レーダ誘導超音速対艦ミサイル4発を搭載したH-6Jが報じられた。

A R M

 YJ-91 ARMを搭載した中国空軍のJ-16の画像がネット上に流れた。 YJ-91がJ-16に搭載された画像は初めてである。
 YJ-91はKh-31Pをライセンス生産した射程120kmのARMであるが、射程を50kmにした対艦型のYJ-91Aも報じられている。

ASM / GB

 ヘリコプタから発射した新方式ASM BA-21の発射試験に成功した。
 米国のAGM-154 JSOWにも酷似した500kgの非推進滑空型の子弾散布弾を公表した。 外見は2018年の殊海航空展で公表されたY6-Jと似ている。
 JH-7AにTiange GB 100 2発を搭載している画像が流れた。 GB 100は130kgのSALと衛星航法併用誘導の誘導爆弾で、最大飛距離30km、CEP≦3mの性能を持つ。

1・4・1・7・7 陸戦兵器

S A M

 PLA陸軍が2020年初めから新型SAMのHQ-17Aを装備している。 HQ-17Aは現在装備しているHQ-10Aより改良され、僅かに広い覆域を有する。

1・4・1・7・8 電子兵器

 台湾は中国が台湾の防空や制海、反撃作戦を麻痺させる能力をすでに備えており、戦地の統制権を有効的に奪取、保持し、台湾海峡の通路を遮断することが可能だとして、脅威は非常に大きいとの見解を示している。
1・4・1・7・9 DEW 兵器

航空機搭載 DEW 兵器

 中国が、ポッドに収納して航空機に搭載するレーザ兵器について提案要求した。  国営Global Timesはこのレーザ兵器をレーザ攻撃ポッドと呼んでいる。

ソフトキル DEW

 香港の軍事専門家が、米軍の南シナ海への侵入は米艦の武器管制装置を幻惑させる低出力レーザも含む電磁兵器で阻止できるとしている。

1・4・1・8 高度な技術力獲得

1・4・1・8・1 第13次5ヵ年計画の成果

 中国が2016~2020年の第13次5ヵ年計画で、武器の研究開発、調達、試験評価、生産に関する能力向上を目指して大規模な企業再編を行った。
1・4・1・8・2 宇 宙

 中国が軌道を変更してASATとして使える衛星の試験を行っている。
1・4・1・8・3 研究開発能力

 連続送風式で、2.4m×2.4mの試験空間をMach 0.3~1.6で送風できる大型遷音速風洞FL-62が稼働に向けた主要な試験に合格した。
 更に超高速飛翔体試験用にMach 2.5の風洞を建設中という。
1・4・1・8・4 超高速飛翔体の研究開発

 中国科学院力学研究所が600秒間のスクラムジェット地上燃焼試験に成功した。
 DF-17は固体燃料で発射された後切り離される滑空式超高速ミサイルであるためその射程は打ち上がる高度によって決まってしまうが、2018年8月に打ち上げたXingKong-2はロケットモータで垂直に打ち上げられたのち、搭載した推進装置でMach 6での飛行を400秒間行った。
1・4・1・8・5 高度技術素材

 NORINCO社が展示したレーザ兵器に使用する人工ダイヤは1~22カラットの各種サイズで、レーザ兵器に使用すると各種波長の光を発することができるという。
1・4・1・9 武器輸出

1・4・1・9・1 艦 船

  マレーシアが4隻の建造を発注していた沿岸警備艦 (LMS) の一番艦がマレーシア側へ引き渡された。
1・4・1・9・2 航空機

 特記すべき報道がなかった。
1・4・1・9・3 ミサイル

 ウズベキスタン陸軍が2019年11月にFD-2000中距離SAMの発射試験を行った映像を公開した。
1・4・1・9・4 陸戦装備

 タイ陸軍から受注していた戦闘車両VN1 8×8 IFV 38両とVT4 MBT 11両を納入した。
 UAEが122mmロケット弾20発を装填したポッド2個を搭載できるNORINCO社製SR5 MRLを披露した。
 タジキスタンがVP11 MRAP車、CS/VN3 装甲戦闘車、Tiger偵察車、4×4車など大量の中国製武器等を公開した。
1・4・2 北朝鮮

弾道ミサイル

 韓国情報当局が、金委員長が2019年12月に述べた新たな戦略兵器は多弾頭 (MIRV) ICBMと分析した。 また米中央情報局 (CIA) は北朝鮮がICBMの大気圏再突入技術を獲得したと評価している。
 北朝鮮が10月に行った閲兵式に、新型ICBM火星-16と北極星-4SLBMが登場した。 火星-16の射程は火星-15の15,000kmを上回り、弾頭はMIRVと見られている。
 北極星-4の射程や搭載能力は北極星-3を凌ぐと見られ、北極星-3/-4を3発搭載する3,000t級新型潜水艦 (SSB) はほぼ完成している。 さらに6発搭載できる4,000~5,000t級SSBの建造も開始されている。
 戦術弾道弾ではATACMS似のKN-24、大口径MRLのKN-25の発射が度々行われた。

ASBM

 韓国は北朝鮮が対艦弾道弾 (ASBM) を開発している可能性があるとみている。

ASCM

 北朝鮮が4月、日本海に向けてASCMとみられる飛翔体数発を発射した。
 北朝鮮は2017年に行われた閲兵式で、ロシアの3M24 ASCMの北朝鮮型と見られるTELを登場させている。

サイバ戦

 北朝鮮のサイバ戦部隊には4つのサイバ戦組織があり、6,000名以上のハッカーが海外で活動していると推計される。 サイバ戦闘員らは主にベラルーシをはじめ、中国やインド、マレーシア、ロシアなどに広く展開しており、社会的混乱が主な目的のラザルスと、敵から情報を収集するアンダリエル、金融サイバ犯罪を指揮するブルーノロフ、そして北朝鮮内には電子妨害連隊があるという。

1・4・3 韓 国

1・4・3・1 国内情勢

1・4・3・1・1 政権基盤

 特記すべき報道がなかった。
1・4・3・1・2 対北朝鮮姿勢

 韓国の文大統領が9月に国連総会で終戦宣言を提案した。 また10月に訪米した大統領府国家安保室長が米国務長官と会談し、北朝鮮の非核化と終戦宣言が切り離せないと語った。
 更に年末には、国連や米国など国際社会が批判に対抗して対北朝鮮ビラ禁止法を制定しようとするなど、親北朝鮮政策に傾注している。
1・4・3・2 国防予算

 韓国の2020年国防費は2019年度比で7.4%増のKRW50.15T ($42B) で対GDP比2.5%であったが、COVID-19感染症対策のための補正予算で合わせてKRW2.2Tも減額され、最終的にKRW48.9Tであった。
 韓国国防省が9月に2021年度の国防費に前年当初予算より5.5%多いKRW52.92T ($44.6B) を要求した。
1・4・3・3 軍備増強

1・4・3・3・1 防空/BMD戦力

 韓国の国防部が8月に発表した2021~2025年の国防中期計画では、ミサイル探知能力を現行の2倍以上に強化し、現在の約3倍の迎撃ミサイルを保有すると共に、韓国型Iron Domeを2020年代後半にも戦力化するとしている。
 4月には国産中距離SAMであるKM-SAM Block-1の量産システムが空軍へ配備された。 また2017年6月にはKM-SAM Block 2の量産を開始している。
 11月には国内の技術で開発したATBM 天弓-2(KM-SAM Ⅱ)が韓国軍に納入され初配備された。 2019年12月には弾道弾を高度50~60kmの終末弾道段階で撃墜するL-SAMを開発すると発表した。 開発は2024年まで行われる。
 韓国軍が、北朝鮮のBMを発射直後の上昇段階で迎撃する航空機搭載レーザ兵器を開発している。
 韓国軍がソウル近郊で対空砲などが配備されていた陣地にPatriotを配備した。 またF-35を配備した清州基地に、PAC-3を緊急配備していた。
1・4・3・3・2 海軍力

 海軍は大型輸送艦Ⅱ計画を軽航空母艦計画に変更する。 空母建造経費は2021年予算では非査定であったが、12月に長期計画として進めていた軽空母建造計画を中期計画に格上げした。
 KSS-Ⅲ Batch-Ⅰ 3,000t級潜水艦の2番艦が11月に進水した。 1番艦は2018年9月に進水しており、6月には3番艦が起工している。
 KSS-Ⅲ Batch-Ⅱ 3,600t級潜水艦はリチウムイオン電池を搭載する。
 SLBMなど武装も大幅に強化されるKSS-Ⅲ Batch-Ⅲ 4,000t級潜水艦について大統領府高官は、核燃料を使うエンジンを搭載する潜水艦だと発言している。
 I-MSTにS-bandとX-bandのMFRが装備される次世代駆逐艦KDDXの基本設計は2023年下半期に完了し、2024年に建造を開始する。
 韓国海軍が8隻建造するFFX-Ⅱフリゲート艦の4番艦が4月に進水した。 FFX-Ⅲは海軍が6隻計画している3,500t級新型フリゲート艦Batch-Ⅲ (FFX-Ⅲ) で、詳細設計と一番艦建造を発注した。 2024年に納入される計画である。
 韓国は高速哨戒艇PKX-Bを16隻発注しており、2019年暮れには4隻が進水している。
 5月には将来FFX-Ⅱフリゲート艦やKDDX駆逐艦に装備するCIWSの国内開発を開始することを決めた。  北朝鮮が対艦弾道弾 (ASBM) を開発している可能性があるとみて、韓国が開発したVLS (KVLS) を改良してBMに対して終末段階での迎撃をさせようと、KVLS-Ⅱの開発を開始した。
1・4・3・3・3 航空戦力

 韓国は追加導入するF-35を当初の20機から2倍の40機に増やし、F-35Bを20機を先に導入してその後F-35A 20機を追加を導入する。
 韓国が開発中のKFXは既に組み立て中で、1号機は2021年4月ロールアウトし、2022年に初飛行する計画である。 搭載するレーダはイスラエルの協力で国内開発する。
 共同開発国であるインドネシアはCOVID-19感染の余波を理由に自国の技術者を韓国から帰国させたり、分担金の支払いを渋ったりしており、事業離脱の可能性もある。
 韓国ADDがT-50 Block 1高等練習機にE射統レーダを搭載してAAMやASMを搭載できるようにしたTA-50 Block 2を20機発注した。 また韓国ADDとKAI社はFA-50の航続距離延伸と戦闘能力向上を狙っている。
 韓国空軍が2,000-lb爆弾に取り付けるJDAMを5,000キット購入する計画である。
 韓国がAEW&C機とSIGINT機を追加調達する。 Peace Eyeを装備している空軍は、同型機2機の追加装備を希望している。 またISTAR強化策としてSIGINT機を増強する。
 KAI社が防衛事業庁から、小型武装ヘリコプタLAHのシステム暫定戦闘用適合との判定を取得した。
1・4・3・3・4 ミサイル

 韓国は2020年から2025年までに射程120kmで侵徹弾頭を搭載するSRBMを200発量産する。
 韓国ADD が3月に射程800km、弾頭重量2tの新型BM玄武-4の発射試験を初めて行ったが、2発のうち1発は失敗した。 玄武-4は高度500~1,000kmまで上昇したのちにMach 10で降下し、弾着時の威力はTNT 1ktの戦術核並になるという。
 韓国は2005年から装備している射程150kmのSSM-700Kを射程200km以上に性能向上させる計画である。
1・4・3・3・5 陸戦力

 韓国は2022年までに、現在610,000である兵力を500,000にまで削減する。
 韓国DAPAが6月、30mm SPAAGの量産を発注した。
 韓国がK1A2 MBTの能力向上を計画している。 状況監視装置の採用や装甲の換装と共に、運動性を高めるため懸架装置がK2 MBTと同じものに取り替える。
 K600 工兵戦闘車 (CEV) 、Rexton Sports指揮統制車、120mm自走迫撃砲の量産を開始した。 またK806/K808装輪装甲車の3次生産を発注した。
 韓国Hyundai Rotem社が11月に緊急調達で陸軍向けに2両の多用途UGV MUGVを受注した。  イスラエルRafael社が、韓国陸軍のMBTとAPC合わせて600両に装備するTrophy APSとArmor Shield Pパッシブ装甲を供給する。
1・4・3・3・6 U A V

 韓国航空宇宙研究院が、高高度長期滞空太陽光UAVのEAV3が53時間連続飛行したと発表した。
 韓国は翼端長25mで上昇限度45,000ftであるMALE UAVのMUAVを調達する。 韓国ADDは8月に初期設計段階にあるStealth UAVを公表した。
1・4・3・3・7 その他

 韓国では、港湾監視システム、超高速ミサイル、小型 SAR 衛星、IR遮蔽煙幕、停電爆弾 (Blackout Bomb) などの開発が報じられた。
1・4・3・4 軍事産業立国

1・4・3・4・1 軍事産業の振興

 韓国では軍事産業の振興のための防衛産業支援開発法と国防科学技術振興法が成立した。
 また韓国DAPAが4月に軍事技術振興15ヵ年計画を発表した。
1・4・3・4・2 武器輸出の推進

 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) が3月に発表した報告書「2019年武器国際取引」によると、韓国は武器輸出は世界で10番目だった。
 2010~2014年の世界の武器輸出で韓国は世界の0.9%だったが2015~2019年には2.1%に増えた。
1・4・3・4・3 個別の輸出案件

艦 船

 インドネシアで初めて組み立てられたNagapasa級潜水艦が公称深度試験に合格した。 同艦は2011年3月に韓国大宇造船 (DSME) に発注した3隻の3番艦である。
 フィリピン海軍が韓国で2隻建造する多用途フリゲート艦の一番艦が5月に韓国を離れフィリピンに向かった。
 ニュージーランド海軍が韓国HHI社に発注していた全長173.2m、排水量26,000tの洋上補給艦が6月に韓国を出航しニュージーランドへ向かった。
 退役した浦項級コルベット艦1隻をコロンビアへ無償供与すると共に、退役した警備艇2隻をエクアドルに供与する。

航空機

 4月にタイ政府がT-50TH 2機の追加購入を取り消した。
 FA-50のアルゼンチンへの輸出は英国の対アルゼンチン禁輸措置によりできなくなった。 FA-50は6品目の英国製部品を使用している。

陸上装備

 韓国とインドが防衛生産で協力するロードマップで合意した。 ロードマップには研究開発分野も含まれている。 インドは2017年にK9 155mm/52 SPH 100両の導入を決めており、韓国はK30 Biho SPAAGの売り込みも行っている。
 韓国Hanwha社は豪陸軍の次期IFVに、韓国軍が2009年に採用しているK21 IFVを重量化したAS21 Redback IFVの売り込みに成功している。
 Hanwha社製K9 SPHのUAEへの輸出がドイツの輸出規制の影響で頓挫している。 K9はドイツ製エンジンを搭載しているが、ドイツではサウジアラビアとUAEへの武器輸出が禁止されている。
 K9 SPHは2001年にトルコに輸出されたのをはじめ、ポーランド、インド、フィンランド、ノルウェー、エストニアなどに輸出され、世界で1,700両が使用されている。

1・4・3・5 対外関係

1・4・3・5・1 対米関係

 韓国政府が、文大統領任期内に戦時作戦統制権の移管を終えようとしているが、米韓連合軍司令官は、現時点での韓国軍の戦作権遂行能力に懐疑的な考えを明らかにした。
 米韓両政府が2002年から全国の在韓米軍基地80ヵ所の返還に向けた手続きを開始していたが、ソウル竜山の在韓米軍基地の一部が12月に韓国政府に返還された。
 米国防総省が韓国に対し在韓米軍削減に向けた複数の選択肢を提示した。 韓国には現在28,500名の米軍が駐留している。
 米韓両軍は8月に局地的挑発やテロへの対応を想定した合同演習の事前演習となる危機管理参謀訓練 (CMST) を実施したが、有事作戦統制権移管に向けた「未来連合軍司令部」の(FOC) 検証は行われなかった。
1・4・3・5・2 対中関係

 韓国軍が文政権に入って発生した中国軍用機の韓国防空識別圏 (KADIZ) 進入回数を大幅に縮小して公開した疑いが浮上し、中国への擦り寄り姿勢が指摘されている。
 韓国の資料によると、2019年黄海で違法操業をしたため拿捕されたり退去を命じられたりした中国漁船は2017年より113%増加した。 2020年は8月時点ですでに4,603隻に上っている。 しかし海洋警察が拿捕した中国漁船は2017年の278隻から、2018年258隻、2019年195隻と減っており、中国漁船の違法行為に対する韓国政府の対応は弱くなっている。
1・4・3・5・3 対露関係

 特記すべき報道はなかった。
1・4・3・6 日韓関係

 韓国の一部では日本と中国の空母に対抗するため少なくとも2隻の空母を保有すべきとの意見まで出ている。
 米韓の国防長官が米韓安保協議会議で日米韓の三角安保協力の強化方案を議論した。
1・4・4 台 湾

1・4・4・1 国内環境

1・4・4・1・1 大陸に対する脅威認識

 台湾国防部が8月に、中国の軍事力に関する年次報告書を発表し、中国の軍事力は増大しているが、全面的に台湾を侵攻する能力はなお備わっていないとの認識を示した。
1・4・4・1・2 総統選挙/立法委員選挙

 台湾総統選挙は1月投開票され、現職の民進党蔡英文総統が再選を果たした。 また総統選と同時に行われた立法委員選では、民進党が113議席中、単独過半数の61議席を獲得し、国民党は38議席だった。
 1月の総統選で中国国民党の公認候補として出馬し大敗した韓高雄市長のリコール投票が6月に行われ、リコールが成立した。 リコール成立に伴う市長選挙では民進党の陳候補が70.03%の得票率で圧勝した。
1・4・4・1・3 反浸透法を施行

 台湾政府が1月、台湾社会への浸透を図る中国を念頭に、海外の敵対勢力による政治的干渉の防止を目的とする反浸透法を施行した。
1・4・4・1・4 国際社会での地位主張

 蔡総統が9月に開かれたアジア太平洋地域の安全保障に関するフォーラムで、中国が周辺地域で示している拡張主義に対し民主主義諸国は立ち向かおうと呼び掛けた。
 台湾外交部が、環太平洋連携協定 (TPP) 参加に向け、既存の参加11ヵ国と非公式協議を進めている。
1・4・4・1・5 漢光36号大規模演習

 台湾国防部が3月、COVID-19の感染予防のため4月と5月に予定していた年次演習「漢光36号」を下半期に延期し、7月に実施した。
1・4・4・2 防衛力整備

1・4・4・2・1 対大陸防衛方針

 中国の軍事力拡大に対応して台湾は非対称戦に適応した新戦力の開発を行っている。
 台湾は空軍力と海軍力に期待すると共に、沿岸及び海浜に重点を置いた防御を追求している。
1・4・4・2・2 国防費

 前年比6.6%増となる中国の2020年国防費が1兆2,680億500万人民元(19兆1,440億円)であるのにに対し、台湾の国防予算は約3,512億台湾元(1兆2,570億円)にとどまり、中国の 1/15 であることが分かった。
 これについて台湾国防部は軍備で中国共産党と競い合わないと述べ、非対称戦力の強化を重視する台湾の姿勢を強調した。
 台湾の行政院(内閣)が8月に2021年の防衛費をTWD453.4B ($15.42B) と、10.2%増額する方針を示した。 これについて米国防総省は、中国の脅威が高まる中で強靭な防衛を確固たるものにするには不十分だとの不満を表明した。
1・4・4・2・3 新装備の開発

艦 船

 台湾が8隻を国内建造する水中排水量2,500tの潜水艦の1隻目が起工した。 この潜水艦は2024年に完成し、試験が行われた後に2025年に就役する計画である。
 台湾が自力で建造した沱江級改良型のコルベット艦塔江が12月に進水した。 塔江沱江に改良を加えたもので、排水量は685tと沱江の500tから大型化した。
 台湾海軍が4隻の建造を計画している10,600t LPDの1番艦の船台起工式が6月に行われた。 このLPDは76mm艦載砲1門とCIWS 2門、遠隔操作機銃2丁のほか、艦中央部にHF-Ⅱ/-Ⅲ対艦ミサイルを発射する発射機2基を装備している。
 台湾が4隻建造する高速機雷敷設艇FMLB-Ⅰの3番艇と4番艇の船台組み立て式が4月に行われた。
 台湾が国内で建造する海洋委員会海巡署の4,000t級警備艦の進水式が6月に行われた。 また海軍のコルベット沱江を元に高圧放水銃が増設された760t級警備艦が海洋委員会に引き渡された。 この警備艦には対艦ミサイル16発を搭載するためのスペースが確保されていて、有事の際には即戦力として運用することができる。

航空機

 台湾が1990年代中頃に開発された国産戦闘機F-CK-1 IDFを元にした双発超音速機T-5勇鷹を6月に公開した。
 空軍は66機を調達し2026年までにAT-3練習機と換装すると共に軽攻撃/戦闘機型はF-5Eと換装する。

ミサイル

 台湾では毎年ミサイルの発射を行っているが2020年はPatriot級というSAMである天弓ⅡをPatriotの標的として発射した。 またラムジェット推進のATBMと言われている天弓Ⅲも既に全国に配備されている。 軍は更に最大射高を45kmから70kmに延伸した長距離型の開発も行っている。
 台湾が4月、雲峰 (Yun Feng) LACMの発射試験を行った。 雲峰は固体燃料ロケットで発射しラムジェットで推進し、Mach 3で1,500km~2,000km飛翔する。
 雲峰の量産は2019年8月に開始され、発射機10両と少なくとも20発のミサイルを生産していると報じられている。
 Wan Chien(萬剣)CMの高高度発射試験が11月に行われた。 台湾が開発したWan Chienは射程200kmであるが、中国本土の攻撃が可能な射程400km以上の長距離型も開発中である。

U A V

 台湾軍が5月、2010年に32機発注し2013年9月から使用しているAlbatross TUAV全機の信頼性と安全性を改善した改良を完了したと発表した。

陸戦装備

 台湾陸軍は284両のCM-34装輪 IFVを装備する計画で、一次生産分の32両は2019年末に納入されている。

1・4・4・3 米台関係

1・4・4・3・1 台湾の地位、米国の認識

 米下院が3月、台湾の外交的孤立を防ぐことを米政府に促す「台北法案」を賛成415、反対0で可決した。
 ポンペオ米国務長官が11月に、台湾が中国の一部でないとの米国の立場はレーガン政権時代から35年間にわたって続いていると強調した。
1・4・4・3・2 武器売却

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が7月、$620MにのぼるPAC-3の再保証契約を国務省が承認したと発表した。
 台湾が32両追加発注したAAV7の最初の1両が8月に台湾に到着した。
 台湾がF-16V 66機を調達することが8月までに確実となった。 台湾にとっては過去数年間で最大規模の兵器調達となる。
 米政権が10月HIMARSやSLAM-ERなど3種類の新鋭兵器の台湾向け売却計画を議会に通知した。 米国務省が、台湾に地上発射型Harpoon 400発を含むHarpoon沿岸防衛システム (HCDS) 100基を、$2.37Bで売却することを承認し議会に通知した。
 米政府は21日にも、台湾へのALCM 135発などの売却を承認しており、この問題で中国政府は関連する米企業への制裁を発表していた。
 米政府が台湾へAGM-84H/K SLAM-ERを売却する。 売却は過去2番目に多額な$7Bの売却契約の一部として行われる。
 米国務省が11月、台湾へのMQ-9B SeaGuardian MALE UAV 4機のFMSによる売却を承認した。
1・4・4・3・3 米台合同演習

 米議会上院軍事委員会が採択したFY21 NDAAでRIMPAC演習に台湾を招聘することを求めた。
 米海兵隊と台湾海兵隊の共同訓練が高雄市の左營海軍基地で11月に行われた。 米台の共同訓練は1979年に米国が台湾との外交関係を絶って以来40年ぶりとなる。
1・4・4・3・4 その他の米台関係

 米国務長官が5月、蔡英文総統の2期目就任に際して祝電を送った。 米中の関係が更に悪化しそうである。
 アザー長官が台湾を訪問した。 米閣僚の台湾訪問は2014年のマッカーシー環境保護局長官以来6年ぶりである。
 米国連大使が9月に日米と台湾が開催したイベントで、世界は台湾が国連システムに完全加盟することを必要としていると述べた。
 台湾の駐米代表部が11月に米国と台湾が同日に新設した経済対話の初会合で、包括的な経済協力で覚書に署名したと発表した。
1・4・4・4 その他諸国との関係

1・4・4・4・1 ロシアとの関係

 ロシアの軍艦3隻がバシー海峡から北東に向けて航行し、台湾東部の離島である蘭嶼から10nmまで近づいたのち花蓮沖に向かって航行した。
1・4・4・4・2 台湾を承認する国々との関係

 太平洋のマーシャル諸島共和国の新大統領に選出されたカブア氏が湾との国交を堅く支持するとの姿勢を表明した。
 パラグアイのベニテス大統領が中国に対し、国交樹立にノーを突き付けた。
 国連総会一般討論演説で台湾と外交関係を持つカリブ海の3ヵ国代表が、国連諸機関から台湾が除外されるべきではないと主張した。 一般討論演説では10ヵ国が台湾のために声を挙げた。
1・4・4・4・3 非承認国の親台湾勢力

 チェコ上院議長と90人の訪問団が9月に台湾を訪問した。 チェコ上院議長による立法院での演説に中国外務省が対抗措置をほのめかしたのに対し、フランスはチェコとの結束を表明すると訴え、ドイツもチェコに対する脅しは適切でないとチェコを支持する考えを示した。
 リトアニアの新連立政権が11月、台湾で自由のために戦う人々を支援する方針で一致した。
1・4・4・4・4 台湾承認を取り消した国々

 南太平洋の島国キリバスは2019年9月に台湾と断交し中国と国交を回復した。
1・4・4・5 日台間係

 李登輝元総統に弔意を示すため8月に訪台した森喜朗元首相らが、蔡英文総統と総統府で面会した。
1・4・5 東南アジア

1・4・5・1 東南アジア諸国全体

1・4・5・1・1 ASEAN

 一部のASEAN加盟国は南シナ海の領有権などを巡り中国との緊張を高めており、6月に開いた首脳会議の議長声明で、名指しを避けつつも最近の中国の動きを牽制した。
1・4・5・1・2 COVID-19 パンデミックの影響

 中国を発生源とするCOVID-19パンデミックの影響で、東南アジア各国は防衛費を圧縮してCOVID-19対策の財源に振り向け始めている。
1・4・5・2 フィリピン

1・4・5・2・1 対米関係

駐留米軍との地位協定 (VFA) の破棄

 フィリピン政府が2月にVFAの破棄を通告したと発表した。 ドゥテルテ大統領の指示による措置で180日後に有効となる。
 しかし6月に、ドゥテルテ大統領がVFAを破棄するかどうかの判断を12月まで延期していたが、11月に判断を再び半年間延期すると発表した。

ドゥテルテ大統領の反米発言

 ドゥテルテ比大統領が2月、比軍は米国の助けを借りずにイスラム過激派や武装勢力と戦えると述べた。

南シナ海での他国との合同演習参加を禁止

 比国防相が8月、ドゥテルテ大統領が海軍の南シナ海における他国との合同演習に参加することを禁じたことを明らかにした。

米国から武器輸入

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が7月、国務省がフィリピンへの武器輸出を承認したと発表した。 輸出されるのは3m偵察艇30隻、10m突撃艇10隻、16m軽支援艇18隻と、これに伴う各種機銃や暗視装置等である。

米中との関係

 ドゥテルテ大統領が7月に議会で、南シナ海での領有権争いについて、米国の後ろ盾を求めずに米中との等距離外交を進める考えを示した。
 親中国の姿勢を見せてきたフィリピンのドゥテルテ大統領が9月に行われた国連総会の一般討論演説で、常設調停裁判所 (PCA) が2016年に下した南シナ海における中国の領有権主張を国際法違反とした裁定を今までになく強く支持する演説を行い、中国から離れて米国側に付く姿勢を示した。

1・4・5・2・2 その他諸国との関係

 フィリピンの沿岸警備隊と中国の海警局が1月にマニラ湾で初の合同訓練を行った。 捜索救助や消火、パトロールといった訓練を合同で行う。
1・4・5・2・3 旧米軍施設の開発

スービック湾旧米海軍基地

 1992年まで米海軍の基地があったスービック湾は、施設を保有していた韓国企業が倒産したため中国企業が買収に意欲を示していたが、再開発を日本が支援することになり、1月に茂木外相と比財務相が協定に署名した。
 フィリピン海軍がスービック湾の韓国企業保有地を買収する計画である。 海軍はここに水陸両用戦大隊などを置く計画である。

クラークフィールド旧米空軍基地

 フィリピンが、クラーク国際空港からマッカーサー・ハイウエーへの接続道路の工事入札を開始した。 ただ、応札できるのはフィリピン人のみで、合弁企業などの場合は発行済み株式の60%以上をフィリピン人が所有している必要がある。

1・4・5・2・4 軍備増強

国 防 費

 ドゥテルテ比大統領が8月、2021年国防費を前年比11%増とする大幅引き上げを発表した。

艦 船

 フィリピンが2016年に韓国に2隻発注していたHDF-3000型フリゲート艦の一番艦が5月2にスービック湾に到着した。
 フィリピンは南シナ海情勢を受け、2023年~2027年の計画にあげていた潜水艦2隻の建造を2022年までに前倒した。

ミサイル

 フィリピンがインドとBrahMos超音速CM購入について協議中で、BrahMosは陸軍に新編成された地対艦ミサイル中隊が装備する。

U A V

 フィリピン空軍がHermes 900 MALEの運用を開始した。 フィリピンが9機発注していたHermes 900の最後の6機が2020年内に納入される。

1・4・5・3 ベトナム

 米空母Theodore Rooseveltが巡洋艦を従えて3月にダナンに入港した。  米空母のベトナム訪問は1975年のサイゴン陥落以来2度目となる。
1・4・5・4 インドネシア

1・4・5・4・1 対外姿勢

 インド国防省が7月、インドネシアと防衛協力を強化する合意を行ったと発表した。 合意には防衛装備の共同生産や技術協力が盛り込まれている。
1・4・5・4・2 軍備増強

国 防 費

 2021年国防予算は当初比では16.2%増であるが、2020年予算を補正で増額された額から見れば4.6%増となる。 その後COVID-19パンデミックにより国防費が大きく減額されたためこれと比較すれば11.9%増になる。

装備調達優先計画

 インドネシア国防省が2020~2024年の優先的に調達すべき装備計画を示した。 それによると優先項目にはHawk 攻撃機の後継としてF-16V Block 70/72 32機、F-5Bの後継機が挙がっている。

戦闘機の機種選定

 インドネシアは2018年始めにSu-35を購入する計画を立てたがまだ実現していないため、Su-35に代わる戦闘機の機種選定中である。

装備の国産

 インドネシア国営航空機企業PTDI社が2019年12月、武装MALE UAV Elang Hitamを発表した。
 インドネシア海軍が4隻建造する新型沿岸哨戒艦 (OPV) 建造の提案要求を行った。

1・4・5・5 マレーシア

1・4・5・5・1 情 勢

 マハティール首相が2月に国王に辞表を提出したと発表した。 与党連合の分裂を招いた責任を取ったとみられる。
 マレーシアが2021年の国防費を前年比1.8%増とした
1・4・5・5・2 装備の充実

 マレーシア海軍が保有するScorpène級攻撃型潜水艦の二番艦が18ヶ月に及ぶ改修を終え4月に戦列復帰した。
 マレーシア海軍が第2次沿岸警備艇 (LMS) 建造計画を開始した。 計画には米、蘭、独やマレーシア企業が名乗りを上げている。
 マレーシアは2017年に中国に4隻のLMSを発注し、最初の2隻は中国で、残りの2隻はマレーシアで建造することにしていたが、のちに経費を削減のため4隻全てを中国で建造することにしていた。
1・4・5・6 シンガポール

1・4・5・6・1 国防の基本政策

狭隘な国土と限られた人口

 シンガポールと米国が2019年12月にシンガポール空軍がF-15SGとF-16及びGulfstrem 550 AEW&C機の飛行訓練のためグアムのAndersen AFBに駐留することに合意した。 この合意でシンガポールは同基地に格納庫、エプロン及び支援施設を建設し、2029年から1個飛行隊を駐留させる。
 シンガポールがF-35Bの訓練を行うことになっているアリゾナ州のLuke AFBでF-16の訓練も行いたいと要求した。
 シンガポールは2016年に行われた演習で、F-15SGの離着陸のために空軍基地横の道路で街路灯やバス停標識などを撤去して滑走路を構築した。

軍事産業の奨励

 シンガポールのST Engineering社が7月にIAI社との合弁会社を対等出資で設立すると発表した。 設立した合弁会社は第五世代対艦ミサイルであるBlue Spearの開発にあたる。
 シンガポールと韓国が6月に防衛技術の協力を強化すると発表した。

1・4・5・6・2 防衛力増強

 シンガポールの海上保安軍 (MSTF) が固有の艦艇を装備しようとしている。 シンガポール海上保安軍は2009年1月に海軍沿岸警備隊を改編して発足した陸海空軍と並ぶ軍で、シンガポール海峡領海での主権の確保と海上からの脅威に対する警備を担当する。
1・4・5・6・3 武器開発と輸出

Hunter 装軌 AFV

 ST Engeering社が4月にHunter装軌AFVの二次生産分を受注した。 Hunter AFVはM113A2 APCの後継として、2019年6月にシンガポール軍で装備を開始している

Veloce シリーズの固定翼 VTOL UAV

 ST Engineering社が2月にVeloceシリーズの固定翼VTOL UAVのうち、販売可能な段階にあるVeloce 15とVeloce 30を公開した。

Orion H+ 軽量 C-UAV 装置

 TRD Singapore社がjamming方式のOrion H+軽量C-UAV装置を公表した。

Venus 16 USV

 シンガポールのST Electronics社製USVが洋上試験を終え、同国海軍のFearless級哨戒艦とIndependence級沿岸警備艦に搭載されて任務に就いている。

1・4・5・7 タ イ

1・4・5・7・1 国防費

 タイ陸軍が4月、Covid-19対策費THB1.9Tの一部に充てるためFY20国防費8%削減した。
1・4・5・7・2 装備の増強

中国から購入する2隻の潜水艦

 タイ議会下院委員会が8月、中国からS26T潜水艦を2隻追加購入する予算を承認した。
 しかしながら、COVID-19パンデミックの影響で経済が停滞する中、この計画に反発が強まり計画を延期した。

TRML-3D 移動型レーダ

 ドイツ企業がタイ陸軍からTRML-3D移動型レーダの3号機を受注した。 既に受注している1,2号機は2022年に納入される計画になっている。

1・4・5・8 その他の東南アジア

ミャンマー

 ミャンマー空軍が2019年12月に、JF-17戦闘機2機など固定翼/回転翼機10機を就役させた。

カンボジア

 衛星写真の分析からカンボジア南西部にあるリアム海軍基地で米国が建設した施設が破壊されたことが確認された。
 周辺の土地を中国政府とつながりのある中国企業が借り上げており、中国が軍事利用するとの疑念が強い。

1・4・6 大洋州

1・4・6・1 オーストラリア

1・4・6・1・1 国防の基本方針

2020 Defence Strategic Update & 2020 Force Structure Plan

 モリソン政権が7月、インド太平洋地域を重視した新たな国防戦略文書を公表した。 計画では国防費をGDPの2%に設定し、軍用衛星、新型UAV、サイバ能力のほか、水中監視能力の強化も挙げられている。

国防費

 モリソン豪首相が8月、国防費をAUD1B ($716.8M) 増額する方針を示した。 これにより防衛費をGDPの2%以上とする公約にも寄与する。 増額分は軍の施設や装備品の更新や予備役の増強に充てられ、予備役を27,000名増強する。
 また中小企業の参入を促すため通常の国防費とは別に今後2年間でAUD1B ($721M) の支出を行うと発表した。
 豪政府が10月、2020-21会計年度の国防費を発表した。 この結果対GDP比は2.19%になる。
 オーストラリアは今後3年間にわたり国防費を6.7%、8.3%、6.2%と増額し、2023-2024会計年度ではGDPの2.38%にする計画である。

1・4・6・1・2 対外政策

対 中

 オーストラリアが4月にCOVID-19の発生源調査を世界に呼び掛けたのに対し、中国が猛反発して対抗処置を執った。 これに対してモリソン首相は6月、脅しには屈しないと述べた。
 オーストラリア議会が12月、同国の州政府や大学などが外国政府と結ぶ協定が国益を損なうと判断すれば、外相が拒否権を発動できるとした法案を可決した。
 中国政府が11月、オーストラリア産の小麦や大麦などの穀物の輸入を全面禁止すると報じた。 輸入禁止には、大麦、砂糖、赤ワイン、木材、ロブスタ、銅鉱石なども含まれると予想される。

対 印

 モリソン首相とインドのモディ首相が6月にオンラインで首脳会談を開き、両国の軍隊が互いに、艦船や航空機への燃料補給、整備施設を利用できるようにする相互後方支援協定の締結を決めた共同声明を発表した。

対南太平洋諸国

 オーストラリアが3月、南太平洋12ヵ国と東チモールに合わせて21隻供与する哨戒艇の6番艇をフィジーに引き渡した。

1・4・6・1・3 軍事産業の振興と輸出の拡大

 オーストラリア国防省が10月、総額AUD28M ($20M) のDefence Innovation Hub計画で小規模の防衛技術を振興する事業を開始した。 事業は最大でもBlueZone Groupが進めるWave Glider USV計画でAUD7Mである。
 国防省のR&D庁がDEW技術を発展させるためのネットワークを構成する。
 2020年代末には武器輸出で世界のトップ10入りを目指しているオーストラリアでは、豪貿易促進庁が日本の防衛市場への売り込み強化を図ろうとしている。
1・4・6・1・4 軍備増強

艦 船

 海軍が12隻装備する計画のArafura級外洋哨戒艦 (OPV) の3番艦が3月に船台組み立てを開始した。 OPVは哨戒艦のほか、掃海艦、測量艦の後継でもある。
 オーストラリアがCape級哨戒艇5隻を同国海軍向けに調達する。 Cape級は同国国境警備隊が8隻保有しているが、海軍がその内の2隻を借用している。
 2016年にスペインのNavantia社に2隻発注した洋上補給艦 (AOR) の一番艦が受領検査を完了し、8月末にオーストラリアに向け出航した。
 豪国防省が10月、Hunter級次期フリゲート艦9隻の建造をBAE Systems社と協同で行うことで英政府と合意しMoUを交換した。 Hunter級はType 26級を元に建造される。

U A V

 Boeing Australia社がLoyal Wingman UAVの胴体組み立てを完了した。
 オーストラリアが2024年に始まる5ヵ年計画で、25kg~300kgの海上UAVを増強する。

ミサイル

 米国が2月、オーストラリアへAGM-158C LRASM 200発を売却すると発表した。 AGM-158C LRASMの輸出は日本に続くものである。

電子装備

 オーストラリア国防省が3月電子戦防衛計画の一環としてFlinders大学との共同出資で国立電子戦センタを設立すると発表した。

陸戦装備

 オーストラリアが9月、韓国が開発したK9 SPHを豪陸軍用に選定した。 K9 30両とK10装甲弾薬運搬車15両が輸出される。

1・4・6・2 ニュージーランド

1・4・6・2・1 外交政策

特記すべき報道はなかった。
1・4・6・2・2 防衛力整備

 ニュージーランド海軍が韓国に発注していた26,000tの洋上補給艦が、6月にオークランド港に入港した。
1・4・6・3 南太平洋諸国

1・4・6・3・1 中国の影響力拡大

 中国がバヌアツとソロモン諸島に軍事拠点設置を提案したとされている。
 中国企業が11月に周辺に大きな漁場はないパプアニューギニア南部のダル島に大規模な多機能漁港を建設する計画で、パプアニューギニア政府と覚え書きを交わした。 ダル島はオーストラリアにとって重要なシーレーンであるトレス海峡に面しており、漁港を隠れみのにした中国民兵などの活動拠点になりかねないとの懸念が出ている。
1・4・6・3・2 米国の巻き返し

 フィリピンの東方約1,000kmに位置し第2列島線上にある島国パラオが8月、同国を訪れたエスパー米国防長官に米軍基地を受け入れる意向を伝えた。
1・4・6・3・3 南太平洋諸国個別の動向

キリバス

 キリバスの大統領選挙が6月に行われ、親中派のマーマウ現大統領が再選を果たした。

ソロモン諸島

 ソロモン諸島のマライタ州が、独立の是非を問う住民投票を実施すると発表した。 同州は、中央政府が2019年に決定した台湾との断交および中国との国交樹立に反発している。

パプアニューギニア

 パプアの最高裁判所が9月、世界有数の金山であるポルゲラ鉱山で採掘を行ってきたBNL社の採掘権延長に関する同社の申し立てを却下した。 パプア政府は2020年4月にBNLによる採掘権の延長申請を認めないと突如発表し、8月に採掘権を国営企業に与えていた。
 BNLは中国の紫金鉱業集団とカナダ企業の合弁企業で、紫金鉱業が50%を出資している。

パラオ

 米国はフィリピン海でのプレゼンスを高めようと、パラオと米軍部隊の駐留で合意している。
 米海軍は揚陸艦を派遣して休養目的に1週間停泊させ、10月にはC-130 1機と24名の空軍要員を派遣してパラオ本島のBabeldaobのほかPeleliu、Babeldaob島南西の島々にあるAngaurの飛行場で滑走路や施設の調査をしている。  更に10月には沿岸監視隊の警備艦も寄港している。

1・5 世界各国(周辺国を除く)

1・5・1 米 国

1・5・1・1 基本政策

1・5・1・1・1 基本的な国防政策

非国際協調路線

 米国が11月、非武装の偵察機を批准国の領域内で飛ばすことなどで相互監視を認めるOpen Slies条約から脱退した。
 トランプ大統領は5月に、ロシアが条約を守っていないとして脱退する意向を表明していて、通告から6ヵ月経過した11月に米国務省が正式に脱退を発表した。

対露路線

 米政府が12月に欧州の同盟諸国や民間企業に対して、海底パイプラインNordStreem 2の建設に加わらないよう呼び掛け、幅広い追加制裁を発動することを明らかにした。
 ロシアからドイツへ天然ガスを送る海底パイプラインNordStreem 2の建設は既に全区間の90%を完成させたが米国による制裁で作業は1年間中断していたが、ロシアは12月に入ってNordStreem 2の建設を再開している。

宇宙防衛戦略

 米国防総省が6月、宇宙戦略"2020 Defense Space Strategy"を公表した。
 国防総省は2019年にSpace CommandとSpace Forceの2つの組織を立ち上げ、宇宙空間を戦争領域として位置づけた。

攻撃的な BMD 戦略

 米国防総省が、NGIの開発を含むGMD近代化の遅れを補う新戦略の一部として、北朝鮮の長距離BMを発射以前に攻撃する計画を立てている。
 FY21要求の本土防衛では攻撃的なBMDも取り入れられている。

米軍の世界規模展開

 国防総省が中露を睨んだ世界的な米軍部隊の配置見直しに2020年内に着手する可能性がある。  エスパー米国防長官が1月に米南方軍 (SOUTHCOM) 司令部でSOUTHCOMの見直しに着手したことを明らかにした。
 米国合同参謀本部議長のミリー陸軍大将が12月、米軍の一部の海外基地駐留を永久的なものよりか循環式で一時的な駐留の方が良いと思うと語った。

動的戦力運用 (DFE) 構想

 米軍は本土から離れた地域に前方展開する部隊の運用を大幅に見直す動的戦力運用 (DFE) に乗り出した。 4月にはグアムに交代で配備していた戦略爆撃機を、米本土から展開させる方式に切り替えている。
 米軍はDFEの狙いを即応力の強化とし、抑止力や即応能力の低下は起きないと主張するが、海外駐留米軍の削減を唱えてきたトランプ政権が打ち出した戦略だけに、同盟国に不安が広がるのは必至とみられる。

1・5・1・1・2 対中路線

人権保護法

 米議会が、中国の人権問題に抗議したチベット人権法、ウイグル族人権法、香港自治法などを次々と可決した。

知的財産の保護

 米政府はテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命じた。
 ヒューストンの中国総領事館は、長年にわたり医療研究などの知的財産を盗み出すための拠点になっていたと見られている。

中国企業の排除

 トランプ米大統領が11月、米国の投資家による中国軍関連企業への投資を禁止する大統領令に署名した。
 国防総省が指定した華為技術(ファーウェイ)を含めて現在31社が対象で、先端技術や情報の流出阻止が狙いである。

1・5・1・1・3 核戦略

 トランプ政権のFY21予算要求で核弾頭関連が20%近く増額された。
 中国の脅威が増大しているのを受け、米国防総省はFY21国防予算の4.1%を核兵器関連に振り分けようとしている。
 FY21ではMinuteman Ⅲ ICBMの後継となるGBSD、B-2の後継となるB-21、AGM-129の後継となるLRSOの開発に当てられ、特にB-21の開発では、FY20予算要求時の5ヵ年計画では毎年$5.9Bとしていたのを、FY21要求では$22.6Bにしている。
1・5・1・1・4 核軍縮

新 START の期限切れ問題

 2021年2月に期限を迎える新戦略兵器削減協定New STARTについて米露が延長交渉中である。 条約は最長5年間の延長が可能だが、それよりも大幅に短い期間の延長を視野に入れているという。
 米国が中国も協議に参加するよう求めたのに対して中国は拒否し、条約の延長に向けた交渉は難航が予想される。

中国の言い分

 中国は、米国が核保有数を中国と同じ水準に引き下げるのであれば、米露の軍縮協議に喜んで参加すると述べた。

ロシアとの合意先行検討

 政権が進めてきた中国を交えた3ヵ国の同時合意にこだわる方針を修正して、ロシアとの2国間での核軍縮協議を先行させる案を検討していると明らかにした。
 条件には、ロシアが新START対象外の短距離核兵器を増強していることへの対応や検証システムの強化が含まれるという。

ロシア、米提案を拒否

 ロシアは米側の主張を、中国の参加は見込められず明らかに成功の見込みがないとして、拒否する意向を明らかにした。
 ロシアは、次善の策として米露2国間での対話を継続すべきだと述べ、新STARTを延長した上で交渉を続けることを主張した。

米、ロシア提案を拒否

 米側は、無条件で1年間延長するよう求めたロシアの提案に対し「見込みがない」と述べ、拒否する考えを示した。

ロシア、核弾頭規制する米提案に応じる用意

 ロシアは新STARTを1年間延長した場合、この期間中は米側が提案している核弾頭の規制に応じる用意があると表明した。
 米国は、ロシアの意志に感謝すると表明したうえで、米国は、直ちに検証可能な合意をまとめるために協議する用意があるとの姿勢を示した。

1・5・1・1・5 国防予算

FY20 予算

 米議会が2019年12月、$738BにのぼるFY20国防予算を承認した。

FY21 トランプ政権の要求予算

 トランプ政権のFY21予算教書で国防予算要求は、国防総省要求が$705B、国家核安全保障局その他を含めて$740Bで、この他に海外戦費 (OCO) が$69Bとなっている。
 核兵器の近代化向けにはFY19から18% の増額を求めたのに対し、陸海空軍はそれぞれ減額された。
 核兵器のほか研究開発費の増額を盛り込んでおり、研究開発費の要求額は過去70年間で最大規模である。

予算要求に盛り込まれなった優先項目 (UPL)

 MDAは議会に対し、FY21要求の$9.2Bに加えて、SM-3 Block ⅡAやTHAAD中隊の追加購入や超高速飛翔体防衛などの追加分として$1.1Bのリストを提出した。
 FY21予算要求に盛り込まれなった中での優先項目 (UPL) に陸軍は、$3.85Bの海外戦費 (OCO) を含む$7Bや$1.9Bの施設建設をあげている。

FY21 NDAA

 米国のFY21国防予算法案 (NDAA) が議会の上下両院で可決され、今後大統領が署名をすれば成立する状態となった。
 戦費を含む予算総額は$740.5Bで、インド太平洋地域に展開する米軍の活動強化のための特別枠が今回初めて設けられるなど、中国への対応を意識したものとなっている。

大統領の拒否権発動

 トランプ米大統領がFY21国防権限法案 (NDAA) に対して拒否権を行使した。
 法案にトランプ大統領が進めるアフガニスタンなど外国からの米軍撤収を制限する条項が盛り込まれたことや、南北戦争で奴隷制を支持した南部連合の将官らの名前を冠した米国内の米軍基地の名前を改称することを定めた条項が盛り込まれたことなどを理由に挙げた。
 拒否権行使を受け上両院は改めて法案の採決を行うが、先の採決では上院、下院共に大統領の拒否権を覆すのに必要な2/3を上回っており、拒否権が覆されるとみられるが、再採決は2021年に持ち越された。

1・5・1・1・6 米本土防衛

 米北方軍 (NORTHCOM) が5月、初めての宇宙軍、輸送軍、戦略軍を交えての4コマンド統合演習を米東海岸で行った。
 この演習は米本土への攻撃を想定したもので、空母Harry S. Truman搭載機の他、カナダ軍戦闘機や空軍のF-15も参加した。 またB-1B 1機も参加する。
1・5・1・1・7 COVID-19 の影響

 COVID-19の艦内感染拡大で空母の不稼働が起きたり、米軍の移動停止のほか、サプライチェーンの停滞による装備品開発の遅延など、少なからずの影響が出た。
1・5・1・2 各軍の戦略戦術

1・5・1・2・1 陸 軍

マルチドメイン

 米陸軍が2022年までにインド太平洋地域にサイバ分野や極超音速ミサイルの運用などマルチドメイン作戦を実施する新たな部隊を2ヵ所に配置する。 米メディアは南西諸島が位置する台湾以東の島々とフィリピンを配備先の候補に挙げた。
 米陸軍参謀総長が4月、マルチドメイン作戦構想を元にした新たな編成の構想"AimPoint Force"を承認した。 AimPoint Forceは今までのマルチドメイン作戦構想MDOに代わるものである。

欧州派遣に備えた改編

 米陸軍が5月、2013年に在欧陸軍の縮小に伴い廃止していた第5軍団を復活させた。 第5軍団は200名からなる部隊を欧州に巡回配置する。

遠距離火力の強化

 米陸軍が実施したロシアや中国を相手にした図上演習の結果、射程2,000km程度の中距離火力が欠落していることが判明した。
 陸軍はこの中距離火力は試作品が2023年にoperationalになるとした上で、それまでにERCA SPH最初の大隊、PrSM最初の試作中隊、長距離超高速ミサイルLRHW最初の試作中隊がなどが発足する。

1・5・1・2・2 海 軍

355隻の構築

 トランプ政権は海軍の350隻体制を唱えているが、実際の計画はオバマ政権が目指した308隻体制ペースでしか進んでいない。 また350隻以上の態勢を達成しても中国は2030年に425隻態勢になるという。
 エスパー米国防長官が2月に海軍に対し、2030年までに355隻体制にするとの方針を見直すよう指示した。

Advantage at Sea

 米海軍、海兵隊、沿岸警備隊の三軍が12月に、中国とロシアの脅威増大に対処する戦略"Advantage at Sea"を公表した。 文書では、過去20年間で3倍に膨れ上がった中国海軍の戦力に対抗するため、米海軍もUSV/UUVを導入するなど近代化を推進し、海兵隊や沿岸警備隊との統合運用を急ぐべきだとしている。

小型艦と USV / UUV へ

 米国防総省が、現在2030年までに355隻体制とする海軍の計画を、USVと合わせて534隻体制とする構想を進めようとしている。
 このため空母などの大型艦を減らして小型艦を増やすという。

COVID-19 の影響

 3月に空母Theodore Rooseveltの乗組員3名からCOVID-19の陽性反応が出たが、そのわずか2日で感染者が25名に急増した。
 海軍は今後も艦内の陽性者は増える見込みだとしている。

1・5・1・2・3 空 軍

機動展開 (ACE) 戦略

 1月に沖縄で行われたWestPac Rumrunner演習における3軍共同の後方支援は、空軍が進めようとしている機動展開 (ACE) 戦略の検証でもある。
 前方展開する部隊の運用を大幅に見直す動的戦力運用 (DFE) に関連している。

欧州への展開能力の確認

 米空軍が最近、爆撃機を欧州まで飛行させて欧州への展開能力を確認している。
 5月にはB-2、B-52 44機が欧州に飛行し、B-1が黒海上空でウクライナの戦闘機やトルコのKC-135と飛行した。 更に6月にはB-52 2機がバルト海上空を飛行した。

東シベリア海上空を飛行

 テキサス州Dyess AFBのB-1 3機が9月にロシアに近い東シベリア海上空を飛行した。
 B-1は欧州に展開する第345爆撃飛行隊の先遣で、14時間の飛行後にアラスカ州フェアバンクに近いEielson AFBに着陸した。

COVID-19パンデミック以来最大の演習

 英国に駐留している米空軍第48戦闘航空団が主催する航空演習が5月に、COVID-19パンデミック以来最大の演習として行われた。
 米空軍は空中給油機を伴った戦闘機が北海上空を横切り大規模空襲を想定した飛行を行い、これに対して16機の同盟軍機が18機の敵機を英海岸線への来襲前に会敵することができた。

1・5・1・2・4 海兵隊

Force Design 2030 報告書

 米海兵隊が3月に、今後の海兵隊が目指す新たな方針を示した報告書"Force Design 2030"を公表した。
 その内容は戦車を全廃し火砲を削減する代わりにロケットやミサイル部隊を大幅に増強し、新しい主力兵装として地対艦ミサイルを導入して中国艦隊と戦うとしている。

地対艦ミサイルの整備

 米海兵隊司令官が3月に議会で、陸上装備で海兵隊の最優先は中国海軍に対抗する地対艦ミサイルであると述べた。
 海兵隊は地対艦ミサイルとしてNSMと、INF禁止条約脱退で装備が可能になったTomahawkの2種類を考えている。

太平洋地域での戦闘を見据えた改編

 中国との太平洋地域での戦闘を見据えて米海兵隊が2030年までに、戦車大隊3個の全てと架橋中隊を廃止する。
 更に歩兵大隊を24個から21個に、加農砲中隊を21個から5個に、水陸両用車中隊を16個から10個に削減する。 またMV-22 Osprey飛行隊も削減する。 またF-35B/C飛行隊は機数を16機から10機に削減する。

M1A1 Abrams MBT 200両等を陸軍に管理替え

 米海兵隊が計画に基づき、M1A1 Abrams MBT 200両を退役させると共に戦車回収車や戦車橋と共にこれらを陸軍に管理替えした。

1・5・1・2・5 宇宙軍

 米宇宙軍創設1周年の直前となる12月に米大統領府が新たなNational Space Policyを発表した。
1・5・1・3 インド太平洋軍

1・5・1・3・1 インド太平洋軍の戦略的役割

極高速兵器のアジア太平洋地域への配置

 エスパー米国防長官が3月に極高速兵器の開発は最優先事項の一つだと述べ、特にアジア太平洋地域の部隊で極高速兵器が必要とされていると述べた。
 国防総省として今後、数年のうちに配備するとし、中国とロシアに対抗するため数年以内にアジア太平洋地域に配備する方針を明らかにした。 米インド太平洋軍が、沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線への地上発射型ミサイル配備や、グアムのAMD体制強化などを求めた。

海兵隊のオーストラリア駐留

 米海兵隊の第1陣200名がオーストラリアのダーウィンに到着したが、計画されている9回目の年次交代配置はCOVID-19の影響で2ヶ月遅れると共に、2019年駐留した2,500名の半分にも満たない1,200名になった。

在独米軍のアジアに再配置案

 オブライエン米大統領補佐官が6月、在独米軍から削減される9,500名のうち数千名はインド太平洋地域に再配置されるとの見通しを示した。

爆撃機の進出

 グアムに飛来しているB-1B 2機のうちの1機が8月、グアムを離陸して日本近海で航空自衛隊のF-2 8機とF-15 6機と共同訓練を行った。 このB-1Bは朝鮮半島と日本の間の空域で空母Ronald Reagan CSGと共同訓練を行った。 B-1Bはグアムへの帰路航空自衛隊のF-15Jと再び会合訓練を実施した。
 ミズーリ州Whiteman AFBのB-2 3機が所要の人員と共にインド洋のディエゴガルシア島に飛来し、インド太平洋軍の隷下に入った。

RIMPAC 演習

 2020年のRIMPAC演習はCOVID-19パンデミックの影響で艦艇部隊の洋上訓練のみと規模を縮小して実施された。

1・5・1・3・2 戦力の再編

インド太平洋軍の再配置計画

 米海兵隊が新基地Camp BlazをグアムのAndersen AFB近くに開設した。 ここには5年以内に沖縄駐留の第3海兵遠征軍が移駐する。

海 軍

 米海軍長官が11月、中国の脅威増大に対抗するためインド洋と太平洋の交わる海域に新たな第1艦隊を創設したいとの考えを明らかにした。
 洋上哨戒UAVのMQ-4C Triton BAMSが、米海軍が1月に初めて実配備された。  MQ-4C Tritonを装備する第7艦隊に編成された無人哨戒飛行隊はグアムのAndersen AFBに配備され、P-8、P-3、EP-3と連携した任務に就く。
 米政府が10月、沿岸警備隊の艦艇を西太平洋に配備する方針を発表した。

海兵隊

 対艦ミサイルを装備するなど、西太平洋でのhigh-tec戦闘に対応した初めての沿岸海兵連隊がハワイで編成された。  沿岸海兵連隊ハワイ駐屯の第3海兵連隊を改編する。 第3海兵連隊の歩兵部隊と兵站部隊はそのままにして、米本土から対空部隊を編入し、2年以内にはMLR部隊も編入する。
 今後更に日本やグアムに追加の連隊が配置される。

空 軍

 米太平洋空軍が4月、グアムに交代で配備していた戦略爆撃機について、今後は米本土からの運用に切り替えると明らかにした。 グアムに展開していたB-52は本土に帰還した。
 ところが5月にテキサス州Dyess AFBのB-1B 4機と要員200名が、訓練と作戦のためグアムへ飛来した。
 空軍のF-22 2機が12月にグアムから嘉手納基地に前進配備された。 またB-1B 1機がグアムから朝鮮半島に近い日本側の日本海上空を飛行した。 F-22 2機が、KC-135Rと共にグアムのAndersen AFBから嘉手納基地に移動した。  米国は11月にバージニア州Langley AFBのF-22 7機をAndersen AFBに前進配備している。

陸 軍

 米陸軍AMCが、欧州にさらなる前置補給品 (APS) を構築すると共に、アジアにおいても設置の準備を行っている。

1・5・1・3・3 COVID-19の感染拡大による影響

 空母Theodore Rooseveltの艦内で乗組員のCOVID-19への感染が見つかった問題で、4月初めに1,000名を下船させており、数日以内にさらに1,700名を下船させるため、4,800名が乗り組んでいる同空母は、フィリピン海に展開中に感染者が発覚したためグアムに停泊していた。
 Theodore Rooseveltは、6月にグアムを出航し通常任務に復帰した。
1・5・1・4 在韓米軍

配置変更と基地返還

 在韓米軍は韓国に4ヵ所の基地を返還すると共に更に13ヵ所の返還を計画している。

韓国からの撤退を検討

 トランプ米大統領の最側近が6月、韓国と日本から米軍を撤収することを望むと述べた。

1・5・1・5 在日米軍

地上発射型中距離ミサイルの日本配備問題

 米国がINF禁止条約から脱退し、この種ミサイルをアジアに配備しようとしていることに対し、ロシアが8月に米国が日本に中距離ミサイルを配備すれば対抗措置を取ると米国に通告した。

COVID-19 感染拡大

 米海軍横須賀基地に停泊中の空母Ronald Reaganの乗組員2名がCOVID-19に感染していることが確認されたたため、基地は向こう48時間にわたり封鎖され、関係者は屋内にとどまるよう指示された。

RQ-4 Global Hawk の飛来

 米空軍が5月、この夏も台風を避けるためグアムに展開しているRQ-4 Global Hawkを横田基地に退避させると発表した。

米軍宇宙部隊を沖縄に配置

 在沖米軍に米宇宙軍の部隊第16宇宙管制隊が空軍から移転した兵員で構成され9月に編成された。
 米宇宙軍の部隊が配置されるのは初めてで、米国と同盟国のための衛星通信の監視のほか、沖縄に駐留する米海兵隊の第31海兵遠征部隊や陸軍部隊の作戦などを支援する。

駐日航空機の動き

 海兵隊が2019年に公表した計画では、現在岩国基地に配備されているF/A-18 12機をF-35B 16機に更新するとされており、岩国基地のF-35Bは現在の16機から32機へと増えることとなる。

1・5・2 ロシア

1・5・2・1 国内情勢

経済不振

 COVID-19の感染拡大への警戒感から原油の先物価格が値下がりしたことで経済不振が助長される恐れがある。

COVID-19 の影響

 ロシアが5月、COVID-19パンデミックの影響でロシア軍の訓練が縮小していることを明らかにした。

政敵の毒殺未遂疑惑

 NATOが9月に、ロシアが反体制派指導者を軍用神経剤で毒殺しようとしたことを受け徹底的に非難した。
 この問題でドイツは、ガスパイプラインNordstreem 2計画へのドイツの支援は危うくなると警告した。 EUはロシアに制裁を科す独仏の提案を支持した。

1・5・2・2 核戦略

核使用の指針

 プーチン露大統領が6月、核兵器使用の指針を定めた文書「核抑止力の国家政策原則」の更新を承認した。 原則ではロシアや同盟国に対するBM発射の信頼できる情報を得た場合には核兵器を使用できるなどと明記している。

1・5・2・3 通常戦力の強化

1・5・2・3・1 通常戦力の近代化

 ショイグ露国防相によると、2012年以来露空軍と海軍は12,000品目以上の近代か兵器、1,400機以上の航空機、190隻以上の艦艇を取得し、全てのミサイル旅団がIskanderに換装されたという。
1・5・2・3・2 BMD / 防空

 ロシアがKonteiner次世代レーダをカリーニングラードと米国の超高速ミサイル防護用に配備する。
 ロシアはまた対超高速ミサイル用レーダを北極圏にも配備する計画という。
1・5・2・3・3 艦 船

航空母艦

 Nevskoye設計局が1月、Project 11430E Lamantin級空母の模型を初公開した。
 Project 11430E Lamantin級空母は原子力推進で、Project 1143.5 Kuznetsov級空母より大型になるという。

水上艦

 プーチン大統領が7月、露海軍は2020年内に40隻の新造艦船を就役させると述べた。 また数日前に更に6隻の外洋艦船の船台組み立てが開始されたとも述べた。
 ロシア海軍のProject 22350 Gorshkoc級フリゲート艦の三番艦が5月に進水した。 2022年後半には北海艦隊で就役する。 Project 22350フリゲート艦は排水量5,000tで、Kalibr及び3M55 Onyx、Tsyrcon (Zircon) 超高速ミサイルを発射する。
 Project 1155対潜フリゲート艦を多目的フリゲート艦に改造したProject 1155Mの一番艦が日本海で洋上試験を開始した。 Project 1155MはKalibrやUranミサイルを装備するようになった。 将来はTsirkonも発射するという。
 Project 20380コルベット艦の7番艦が進水した。 同じ造船所では更に2隻が建造中で別の造船所で同型艦が2隻建造されている。
 また同じ造船所ではProject 20380発展型であるProject 20385とProject 20386も合わせて3隻が建造中または洋上試験中である。

水陸両用戦艦

 ロシアが近く同国初となるヘリコプタ搭載型強襲揚陸艦2隻の建造に着手すると報じられた。 2隻は2027年までに露海軍に引き渡される計画という。

1・5・2・3・4 航空機

 特記すべき報道はなかった。
1・5・2・3・5 陸戦兵器

 特記すべき報道はなかった。
1・5・2・3・6 戦術ミサイル

TBM / MLR / SSM

 露国防省が9K720 Iskander-Mの増強を行う。 Iskander-M旅団はTEL 4両を装備する大隊3個で編成されているが、大隊を1個ずつ増やして旅団のTEL数を12両から16両にするという。
S A M

 トルコがS-400を購入するが、ロシア製SAMの効果に疑問の声がでいる。  イスラエルは2019年にシリアでヒズボラを支援するイランを対象に200回以上の空爆を行っており、2020年になってもイスラエルによる空爆が継続している。 これに対しシリアは2020年だけでも1,000発以上のSAMを発射しているが、大した成果を上げていない。
 アゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフ自治州を巡る戦闘で、アルメニア軍に圧勝したアゼルバイジャン軍がUAVを駆使しロシア製のSAM網も突破しため、露軍は衝撃を受けている。

1・5・2・4 対米挑発活動

1・5・2・4・1 ベーリング海とその上空

 ロシアがベーリング海上空でTu-142 Bear偵察機、Tu-95爆撃機。Il-38洋上哨戒機などによる飛行を繰り返した。 8月にはアラスカ州の防空識別圏 (ADIZ) 内に入ったロシア軍のTu-142 2機が米空軍F-22の緊急発進を受けた。
 8月には、ロシア海軍がアラスカ沿岸ベーリング海で、50隻以上の艦艇と40機の航空機が参加してソ連時代以来最大規模の演習を行った。
1・5・2・4・2 黒海とその上空

 6月に黒海上空の中立空域で、米国の偵察機2機と空中給油機1機を露空軍の戦闘機1機が捕捉した。 米軍機はP-8A、RC-135、KC-135の各1機で、露軍戦闘機はSu-30であった。
 会合地点はロシア南部軍管区の領空よりかなり離れた空域であったという。
1・5・2・4・3 バルト海とその上空

 バルト海の公海上空で4月、ロシア軍のSu-24 2機とSu-27、Su-30の計4機が米海軍駆逐艦に低空での接近を試みたが、リトアニアのシャウレイ空軍基地から緊急発進したベルギー空軍機がこれを阻止した。
 ロシア軍機はこれより先に2度、米軍機に異常接近を繰り返していた。
1・5・2・4・4 東地中海とその上空

 地中海の公海上空で4月、米海軍のP-8AがロシアのSu-35 1機に異常接近された。 またその4日後にも地中海の公海上空を飛行中のP-8が、ロシア軍のSu-35に異常接近された。
 5月にも東地中海の公海上空で、米海軍P-8AがロシアのSu-35 2機に危険な異常接近をされた。 このようなロシア軍機の嫌がらせ飛行は過去2ヶ月間に3回行われている。
1・5・2・4・5 その他の海域とその上空

 米海軍駆逐艦が1月にアラビア海北部でロシア艦から異常接近された。
1・5・2・4・6 米国の反撃

 米海軍駆逐艦が11月、ロシアが主権を主張するウラジオストク沖のピョートル大帝湾を航行する航行の自由作戦を実施した。
 この際露海軍対潜艦が体当たりなどを示唆する行動をとった。
1・5・2・5 対欧州戦略

 特記すべき報道はなかった。
1・5・2・6 中東・アフリカ戦略

1・5・2・6・1 シリアを拠点化

 シリアにおけるロシアのA2/AD装備配備は西側に対する挑戦として注目される。 ロシアのS-400、Bastion、Kilo級潜水艦、Krasukha-4電子戦装置、及び恐らくIskander-MなどのA2/AD装備展開をロシアのマルチドメイン作戦の良い例という。
1・5・2・6・2 スーダンに拠点

 スーダンが11月に、ロシアに艦船基地を提供することで合意した。 無償で提供される基地にはシビリアンを含む300名が駐留する。
 基地は原子力艦を含む4隻の停泊が可能で、補給及び修理に必要な陸上も含み、向こう25年間の契約で10年毎の更新が可能になっている。
1・5・2・6・3 アフリカへ進出

 ロシアが12月、中央アフリカ共和国に軍事顧問団300名を派遣した。
1・5・2・7 極東地域での活動

MiG-31BM 飛行隊の追加配備

 改良を施されたMiG-31 1個飛行隊がカムチャッカ半島の航空基地に追加配備される。
 配備されるのは改良型のMiG-31BMで2019年に2機が到着し、2020年内に更に2機が配備される。

2019~2025年防衛計画の見直し

 ショイグ露国防相が9月、極東軍管区の2019~2025年防衛計画の見直しを行ったことを明らかにした。
 これにより2020年内に500アイテム以上の装備を受領し、S-400 2個連隊やBuk-M1-2 2個師団など14個部隊の装備が更新される。

大規模演習

 ロシア軍が9月に北方領土を含む千島列島で、敵の上陸作戦を想定した演習を開始した。 ロシア軍は東方軍管区の砲兵部隊など1,500名以上を動員し、200両以上の車両を投入して、国後島などの演習場で陣地の構築などを訓練した。

1・5・3 欧州 (NATO/EU)

1・5・3・1 NATO

1・5・3・1・1 即応体制の強化

NATO 即応計画

 NATOが2019年12月にNATO即応計画を配付した。  これは2018年に、NATOが2020年までに25,00名の将兵と300機の航空機を持って、30隻の戦闘艦と30個飛行隊の作戦機、30個機械化旅団を30日以内に投入できるようにするとした計画に基づくものである。

部隊の新編

 NATO即応部隊 (NRF) 2020の指揮を、独蘭軍団から欧州軍団 (Eurocorps) に引き継ぐ式典が1月にフランスで行われた。
 NATOが9月、米第2艦隊の本拠地であるノーフォークでJFCのIOCを宣言した。 JFC Norfolkは米第2艦隊と共同で米東海岸からグリーンランド、アイスランド、英国を結ぶ線から北極までを担当海域とする。

1・5・3・1・2 西欧諸国とトルコの対立

 フランスはトルコのリビア紛争介入に対して非難を強めている。
 フランスは更に、トルコ艦が6月に地中海でリビアへの武器禁輸違反が疑われた輸送船を臨検しようとした仏艦に対し、レーダを照射したとNATOの会議で非難している。
1・5・3・1・3 北マケドニアの加盟

 北マケドニアが3月、30番目の加盟国としてNATOに正式加盟した。
1・5・3・1・4 国防費の引き上げ

 国防支出はトランプ米政権が再三にわたって各国に引き上げを要求してきているが、2019年における欧州諸国の国防費は2018年から4.2%増の$259Bで、世界平均の4%を上回っている。
 NATOは各国の国防費を2024年までにGDP比2%とすることを目標にしているのに依然多くの国が未達成となっているが、2020年は欧州とカナダで国防費が6年連続で増加して実質4.3%増になり、この傾向は続くとの見通しを示した。
1・5・3・1・5 大規模演習

 NATOはCOVID-19パンデミックの影響をうけながらも、2020年にはCrossed Swords サイバー演習、Defender-Europe 20演習、Baltic Operations (BALTOPS)、Sea Breeze 2020年次演習などの大規模演習を、一部で規模を縮小しながらも実施した。
1・5・3・1・6 中東派兵

 NATO加盟国国防相が2月、トランプ大統領の圧力に屈してNATO軍のイラク駐留 (NMI) 延長に同意した。
 数百名からなるNMIはISISと戦うイラク軍の訓練にあたっている。
1・5・3・1・7 中国に対する姿勢

 NATOが12月に開いた外相理事会で、2030年を目標とするNATO改革に関する有識者会議の報告書を提示した。
 報告書では中国の台頭をロシアと並ぶ脅威と位置付け、政治的戦略を構築する必要があると指摘して対中戦略の協議機関設置のほか、中国の活動監視や対中防衛の強化を促している。
1・5・3・1・8 後方・兵站

 NATOは、衛星通信の共同、地上戦用弾薬の備蓄、武器体系を NATO に切り替えなどの後方・兵站活動を行った。
 武器体系については米国務省が、ロシア製兵器を保有している欧州8ヵ国に対し米国製兵器への切り替えを促す政策の第二弾を開始している。
1・5・3・2 在欧米軍

1・5・3・2・1 在欧米軍兵力

駐独米軍の削減

 トランプ大統領が国防総省に対して6月、駐独陸軍の9,500名を9月までに撤退させるよう命じた。 在欧米軍は現在34,500名であるため、これにより25,000名に削減されることになる。
 トランプ米政権は削減する在独米軍の一部をポーランドやアジア太平洋地域に再配置する方針を示している。
 米下院軍事委員会は7月、全会一致で可決したFY21国防権限法 (NDAA) 案では、トランプ大統領のドイツ駐留米軍削減方針に関し、国防総省が国家安全保障に影響が及ばないことを証明しない限り削減を禁止する内容を盛り込んだ。

駐欧米軍の再配置

 エスパー米国防長官が駐独米軍の削減を受け7月、欧州軍司令部を独シュツットガルトからベルギーに移転する方針を表明した。
 削減される駐独米軍のうち約半数の5.600名弱がイタリアやポーランド、黒海周辺に再配置され、残りの6,400名は帰国することを明らかにした。
 ポーランドのデュダ大統領が11月、駐留米軍を増強する協定に署名した。 これにより駐独米陸軍第5軍団の5,500名がポーランドに移駐することになる。
 エスパー米国防長官が7月に発表したドイツ駐留米軍の一部を他の欧州諸国に移動させる計画では、F-16を装備してドイツにに駐留している戦闘飛行隊をイタリアのに移駐させる。
 エスパー米国防長官が8月に、ドイツから撤収する米軍の一部がルーマニアに派遣されることを明らかにした。 長官は7月に、ドイツ駐留米軍を帰国させ、そののちに1個Stryker旅団を黒海沿岸に派遣すると述べていた。

1・5・3・2・2 在欧米軍の戦力強化

 ドイツGrafenwoehrに駐留する米陸軍第41野戦砲兵旅団の隷下に2番目のMLRS大隊が入った。
 第41野戦砲兵旅団は冷戦時代の33年間にわたりドイツに駐留していたが2005年に撤収しており、今回再びドイツ入りしていた。
1・5・3・2・3 大規模演習

 在欧米軍が2020年に、Defender 2020、Thracian Summer、Thracian Viper 20などの大規模演習を実施した。
1・5・3・2・4 爆撃機の欧州上空飛行

 米空軍がB-1BやB-52などの爆撃を欧州上空で飛行させた。 8月にはB-52 6機がNATO加盟30ヵ国上空を飛行した。
 10月にはルイジアナ州Barksale AFB所属のB-52 2機が大西洋を横断して北海で行われたNATO軍の演習に参加し、無着陸で米国へ帰投した。 その間米、蘭、独、伊軍機から空中給油を受けた。  北海で先週行われたNATOの演習は50機以上の航空機と陸海空軍が参加して行われた。
1・5・3・3 E U

1・5・3・3・1 対露・台中政策

対露政策

 特記すべき報道はなかった。

対中政策

 EUのミシェル大統領が9月に中国と首脳会談を行い、中国に利用されないと述べて一段と公平な貿易関係を要求したと語った。
 中国によるウイグル族への弾圧に対する国際社会の批判が強まっており、欧州でも制裁を科す法整備が進んでいる。
 ドイツ政府が12月、人工衛星や次世代通信規格5G関連技術を手掛ける独企業が、中国国有軍需企業航天科工集団の子会社に買収されるのを、安全保障への重大な脅威と判断し阻止した。

1・5・3・3・2 新規加盟

 EUが3月、加盟国の閣僚会議を開き北マケドニアとアルバニアとの加盟交渉を開始することで合意した。 バルカン半島では中国やロシアが存在感を高めていて、EUとしては加盟交渉もテコにこの地域での影響力を強めるねらいがあるとみられる。
 交渉にあたるヨーロッパ委員会の委員は、ほかのバルカン諸国々との加盟交渉にも意欲を示した。
1・5・3・3・3 EU独自防衛機構の整備

財政協力機構 (CFM)

 欧州防衛庁 (EDA) が計画していた財政協力機構 (CFM) が、2019年12月に欧州投資銀行 (EIB) が署名したことで最終的に機能する。 CFMは欧州防衛基金 (EDF) や常設軍事協力枠組み (PESCO) に資金供給をする仕組みである。

常設軍事協力枠組み (PESCO)

 EUの常設軍事協力枠組みPESCOには英国が離脱して27ヵ国となったEUのうち、デンマークとマルタが参加せず、25ヵ国が参加している。
 PESCO が2019年11月、航空機搭載電子攻撃 (AEA) 装置の開発に出資することを明らかにした。
 欧州議会が2019年11月、大気圏上層部での迎撃システムTWISTERの開発をPESCOとして進めることを承認した。
 EUのPESCO参加25ヵ国が11月、非EU諸国の参加を認める決定を行った。

MAJES

 欧州防衛庁 (EDA) に加盟しているフランス、オランダと非加盟国であるが提携国であるノルウェーが、クラウドを元にした戦場研究、各軍のネットワーク、バーチャル兵士など、答えの見えない研究で提携するMAJESを立ち上げる。

防衛能力組織的年次報告 (CARD)

 EUが11月に国防相会議で、初めての完全版である防衛能力組織的年次報告 (CARD) を承認した。
 CARDは欧州の共同防衛能力を焦点に、国防予算、研究開発などの現状と将来を分析するもので、陸海空、宇宙、サイバなどにまたがる55件を含む100以上の事業が対象となっている

1・5・3・3・4 EU独自防衛軍

対米依存を引き下げた独自防衛力

 独国防相が7月、中国が米国と並ぶライバルとなってきたことを受け、米国は例え大統領選でバイデン氏が勝っても、欧州への影響を徐々に薄めてゆくであろうと述べた。
 その上で欧州は米国やNATOに頼らない防衛力の強化を目指すべきで、その第一歩として欧州情報センタを中心に欧州全域の脅威分析を行うべきと主張した。

地中海 EU 海軍 (EUNAVFOR Med ) Irini の発足

 EU加盟国が3月、リビアへの武器搬入に対抗するため、地中海EU海軍 (EUNAVFOR Med) Iriniを4月に発足させる。

バルカン半島駐留のEU軍 (EUFOR) 平和維持軍が Quick Response 2020 演習

 2020年初めに英国がEUを離脱して初めて、バルカン半島駐留のEU軍 (EUFOR) 平和維持軍が実施する演習に参加する英陸軍空挺連隊のA中隊が参加した。

EuroDefense が EU に常設指揮所などを要求

 14ヵ国横断のネットワークで、産業界、軍、教育研究機関などからのメンバーで構成されているEuroDefenseがEUに送った文書で、EUの防衛のためには根本的な見直しが必要であると訴えた。
 そのためには防衛計画の策定や部隊運用を行う常設指揮所が必要であると共に、防衛政策の決定には全会一致の原則を止めるべきとしている。

1・5・3・3・5 EU独自装備開発

PESCO の枠組みでの装備開発

 EUが2019~2020年に€500M ($585M) かけて進めてきた欧州防衛産業開発計画 (EDIDP) が取り上げる先行計画が、期限となっている12月までに発注される。

独仏共同での装備開発

 次世代戦闘機FCASの開発が独仏共同ですすめられている。
 ドイツとフランスが次世代MBTであるMGCSの共同開発を行う。 MGCSをドイツ陸軍はLeopard 2 MBTの後継として、フランス陸軍はLeclerc MBTの後継として2035年から装備する。

1・5・3・4 欧州諸国

1・5・3・4・1 英 国

EU から離脱

 英国が1月31日にEUから離脱した。 英国民が離脱を選択した2016年6月の国民投票から約3年半続いた混迷にようやく終止符が打たれた。

国防費の増額

 ジョンソン英首相が11月、国防費を向こう4年間で£16.5B増額すると発表した。 この結果国防費は2020年の£46.2Bから2024年には£54Bになる。
 計画では2021年に10%、2024年に2%増額するという。

極東への進出

 英国が7月、Queen Elizabeth空母打撃群が2021年初めに極東に派遣され、周辺海域に当面の間留まる計画が進められていると報じられた。 ・Joint Warrior 多国間共同演習

 英国が主催する多国間共同演習Joint Warriorを前に、米海兵隊のF-35B 10機が英国東部の空軍基地に到着した。
 Joint Warriorは毎年秋に英国が主催して実施される多国籍共同演習で、米海兵隊のF-35Bは英空軍のF-35Bとともに、空母Queen Elizabethと行動する。

1・5・3・4・2 フランス

2020年国防予算

 仏国防省が8月に前年度比4.5%増の2021年度国防予算案を議会に提出した。 対GDP比も1.86%になる。
 NATOは10月に報告書で、フランスの2020年国防費がGDPの2.1%に達するとの見通しを示した。

空母 Charles de Gaulle で COVID-19 感染

 空母Charles de Gaulleと随伴艦などの乗組員2,300名のうち、半数近くの1,081名にCOVID-19の陽性反応が出た。 このため派遣先の大西洋から予定を早めて同艦を帰国させた。
 同艦の定員は2,000名で、イラクとシリアでISISと戦うOperation Chammalに参加した後、NATOの合同演習の一環で大西洋に配備されていた。

1・5・3・4・3 ドイツ

中国偏重政策の転換

 ドイツが中国偏重と指摘されてきたアジア太平洋政策の修正に乗り出していて、重視してこなかった日本との関係緊密化に目を向けている。
 独国防相は12月に中国の南シナ海での覇権主義を批判し、岸防衛相との討論ではインド太平洋に軍艦を派遣すると表明している。
 また独政府が9月に策定したインド太平洋指針にも、中国の南シナ海での領有権主張を否定した仲裁裁判所判決への言及など、中国牽制の要素が盛り込まれている。

独軍への追加支出を承認

 ドイツ議会予算委員会が2019年12月、独軍への追加支出を承認した。
 追加支出にはMeteor BVRAAM 100発、AGM-88B HARMのAGM-88E AARGMへの改修などが含まれている。

Tornado の後継として F-18 を採用

 独国防省が4月、Eurofighter 93機とF/A-18E/F及びF/A-18 Growler合わせて45機の、計138機を2020年代中頃までに調達すると発表した。
 米国の核爆弾を搭載できるTornadoの後継としてF/A-18を調達するが、F/A-18にB-61の搭載が可能なのかはまだ確認されていない。

在欧米軍との訓練を再開

 ドイツ国防軍が8月、Covid-19パンデミックにより2020年初めから中止していた在欧米軍との訓練を再開した。

1・5・3・4・4 イタリア

 イタリア国防省が10月、2020年~2022年の防衛計画であるDPP2020-2022を公表した。
 これによると3ヵ年の国防費は2020年対GDP比1.38%、2021年対GDP比1.3%、2022年対GDP比1.2%になっている。
1・5・3・4・5 ノルディック諸国

NATO との協力体制

 米第2艦隊の発足を受け2019年には米海軍、NATO及び英国が主導するJEFが合同演習BALTOPSを実施たが、JEFにはスウェーデン海軍とフィンランド海軍も参加していた。
フィンランドとスウェーデンの連携

 ロシアバルチック艦隊の活動活発化によるバルト海での緊張の高まりを受け、スウェーデンとフィンランドが両国海軍共同部隊SFNTGの活動を活発化させようとしている。
 スウェーデンとフィンランドの海軍が3月にバルト海北部で、海事状況認識共同演習を実施した。 この演習では両国艦がそれぞれ相手国艦の指揮を行った。

スウェーデン

 スウェーデンが2021年から2025年に国防費を40%増額することを12月に議会が承認した。 この上昇率は過去70年間で最大である。
 これに伴い兵力を毎年8,000名増員して2030年までに90,000名とし、退役していた数個連隊を復役させる。 2017年12月には第2次大戦後初めて歩兵連隊を新設し、350名の部隊をバルト海の戦略的拠点であるGotland島に派遣している。
 ロシアからの脅威を受けスウェーデンがバルト海における防衛を強化すると共にNATOとの協調を進めている。
 米空軍のB-1Bが5月に欧州へ飛来し、初めてスウェーデンの上空を飛行した。 B-1Bはスウェーデンの射爆場でスウェーデンの地上統制官の指示の元で、Gripenと共にCASの訓練を実施した。
 11月には米空軍のF-15E 4機がスウェーデンに飛来した。 F-15はスウェーデンが主催する演習に参加したもので、バルト海に面したスウェーデン各地で演習を行い、バルト海への進出能力を確認した。

フィンランド

 特記すべき報道はなかった。

ノルウェー

 特記すべき報道はなかった。

1・5・3・4・6 バルト海及び東岸諸国

Swalki Gap の防衛

 ポーランドとリトアニアが1月、ロシアと対峙して駐留している米軍に協調してそれぞれの旅団を差し出すことで合意した。 差し出されるのはリトアニアの旅団とポーランドの機械化旅団で、防空、機動で協力すると共にSuwalki Gap防衛の増援としてNATO軍北東司令部の統制下に入る。
 Swalki Gapとはロシア領となっているカリーニングラードとベラルーシ間の50km程度の地帯で、ここがポーランドとリトアニアの国境になっており、NATOにとっての弱点とされている。

エストニア

 エストニアが9月2021年度国防予算案を公表した。 この額はGDPの2.29%にあたる。
 イスラエル企業がエストニアの企業と、遊弋索敵弾6発入りキャニスタ発射機をUGVに搭載したシステムを公表した。

ラトビア

 特記すべき報道はなかった。

リトアニア

 リトアニア空軍が6月、最新型のNASAMSであるNASAMS 3中距離SAMシステムを受領した。
 NASAMS 3はノルウェーに続いてリトアニアが初めて装備する。

ポーランド

 米国とポーランドが7月、防衛協力強化に合意 (EDCA) した。 この合意に基づきポーランド駐留米軍は4,500名から5,500名に増強され、陸軍第5軍団の前方指揮所が置かれると共に、1個師団司令部とISR装置が置かれ、1個装甲旅団戦闘団 (ABCT) 及び戦闘航空旅団のためのインフラが整備される。
 ポーランドがF-35 32機を購入する契約を行った。 同国空軍はソ連時代からのMiG-29とSu-22をF-35に換装する計画で、引き渡しは2024年に開始される。
 米国・ポーランド合同演習Allied Spiritが6月に実施された。 師団級の対抗演習であるこの演習には6,000名以上の将兵が参加し、3,000品目の装備が欧州へ運ばれる他、米国がドイツに備蓄している6,000両の車両も参加しポーランド北西部で行われた。
 ポーランドで新編された第18機械化師団が6月にIOCになった。 第18機械化師団の親編は2018年に第1機甲旅団と第21機甲旅団が隷下に入った時から開始され、新たに第18機械化旅団、第8兵站連隊、第18指揮大隊が加わった。 砲兵、防空砲兵、工兵連隊及び偵察大隊は2021~2026年に加わる。

1・5・3・4・7 黒海及び沿岸諸国

米空軍がブルガリアで航空警察活動

 米空軍のF-16が9月、ブルガリアでNATO南翼での航空警察活動を開始した。
 参加しているのはイタリアの基地に所属する6機で、バルカン半島中央部の航空基地で4週間の任務に就いている。

米陸軍が黒海に向けHIMARSの射撃

 ルーマニアに駐留する米陸軍がルーマニア陸軍と行ったRapid Falcon演習に、米陸軍野戦砲兵旅団のHIMARS2両が参加し、黒海に向け射撃を実施した。

1・5・3・4・8 バルカン半島諸国

セルビアが中国から SAM システムを購入

 セルビアが中国からFK-3防空システムを導入する検討を行っている。
 セルビアはEU加盟を希望しながらも2006年に軍事的中立を宣言し、NATOにはスウェーデンもメンバーとなっているPfPとして連携するとの方針を宣言している。

モンテネグロの政変

 モンテネグロで行われた議会選挙の結果、およそ30年にわたって政権を担ってきたEU寄りの与党が過半数に達しない一方、ロシア寄りの野党の政党連合が躍進し、今後、この地域でロシアの影響力が高まる可能性が出てきた。

1・5・3・4・9 その他の欧州諸国

NATO 加盟国

 ハンガリーと米国がAMRAAM-ERを搭載したNASAMSの装備で合意し、ハンガリーの防空システムがソ連時代装備から脱却しようとしている。

スイス

 スイス議会が2019年12月、F/A-18C/DとF-5Eの更新と陸上防空システム (GBAD) の更新を承認した。
 戦闘機の機種決定は2020年末~2021年4月に行われ、GBADにはABM性能とC-UAV性が求められることになる。

1・5・3・5 トルコ

1・5・3・5・1 国是の変更

オスマン帝国時代の再評価

 トルコのエルドアン政権下で、建国の父とされてきたアタチュルクの記念行事や建築物などの歴史的遺産を縮小、廃止する動きが相次いでいる一方で進むオスマン帝国時代への再評価しており、社会のイスラム主義化や親欧米外交からの転換を目指している。
エルドアン独裁体制

 2019年3月のトルコ統一地方選挙の首長選で勝利したクルド系野党である国民民主主義党(HDP)の65人のうち、10月までに48人がテロに関与した疑いなどで当局に解任され、選挙で選ばれていない代理人に交代させられ、エルドアン独裁体制が強まっている。

1・5・3・5・2 対米、対欧戦略

S-400 購入問題

 ロシア当局者が3月、トルコとS-400の追加売買交渉を行っていることをで明らかにした。
 トルコは当初4月に予定していた運用開始を延期した。 COVID-19の影響で経済が大きな打撃を受けるなか、米国が制裁に踏み切る事態を回避しようと模索しているとみられる。
 トルコがS-400を用いて地中海上で活動しているNATO機に対してレーダ照射を行ったと共に、S-400をNATOの戦術データリンクに結んでいる可能性があることが10月に明らかになった。
 トランプ政権が12月に、ロシアからのS-400を導入したトルコに対し。2017年に制定した対敵対国制裁法 (CAATSA法) に基づいた制裁を発動した。

米露とのバランス外交

 S-400の導入などで対米関係が悪化している一方で、トルコはシリアで反体制派を支援してアサド政権を支援するロシアとの対立が深まっている。

米国からの武器購入問題

 トルコのエルドアン大統領が、米政府からS-400を運用しないと約束すればPatriotを売却するとの提案を受けたと明らかにした。
 これに対し米国防総省は、S-400を返還しない限りトルコがPatriotシステムを受けとることはないとの立場だという。

シリア難民の取り扱い

 トルコ政府によると11万7,000人余りのシリア難民がヨーロッパを目指しトルコを出国したが、ギリシャやブルガリア側の検問所は閉じられたままで、大勢の難民がそのはざまで立往生している。

フランスとの感情的対立

 トルコのエルドアン大統領が10月に、イスラム教に対する考え方をめぐり、フランスのマクロン大統領には精神の治療が必要だと発言した。
 これに対し仏政府は駐トルコ大使を召還するなど猛反発している。

1・5・3・5・3 対外進出

シリアへの進出

 前 述

カタールへの進出

 特記すべき報道はなかった。

リビアへの介入

 エジプトが3月に国連安保理に書簡を送り、トルコがリビア国民合意政府 (GNA) を支援するため、スルタン・ムラービト師団や自由シリア軍のアル・ハムザ師団などの過激派から戦闘員を募り、報酬を払ってリビアへ送り込んでいると非難した。
 リビア国民軍 (LNA) は2月、トリポリ港で陸揚げされているリビア国民合意政府 (GNA) にトルコが送った武器弾薬をロケット弾で攻撃した。

地中海への進出

 トルコ空軍が6月に地中海中部で往復4,000kmに及ぶ長距離飛行演習を実施し、地中海中部での航空能力を誇示した。
 演習には17機の航空機のほかフリゲート艦とコルベット艦8隻も参加した。

ソマリアへの進出

 ソマリアが15,000~16,000名の陸軍を目指しているのに対しトルコは5,000名の訓練を行う約束をしているが、8月にトルコがソマリア陸軍の1/3を訓練することになると報じられた。

1・5・3・5・4 軍備増強

 特記すべき報道はなかった。
1・5・3・5・5 軍事産業の振興

国産初の USV 開発計画

 トルコのAres造船とMeteksan社が10月に国産初のULAQ USV計画を公表した。
 ULAQ USVは12月に進水し2021年初期に実射試験を実施する計画である。

中距離対艦ミサイル用ターボジェットエンジンの開発

 トルコ産業技術相が6月、中距離対艦ミサイルに使えるターボジェットエンジンの試験に成功したことを明らかにした。
 またこのエンジンはUAVの動力としても使えるという。

ウクライナと防衛企業が提携

 ウクライナが8月にトルコと防衛企業の提携について話し合った。 ウクライナはAn-178輸送機の共同生産を提案したという。
 話し合いの焦点は航空機用エンジンの開発で、トルコはTK-Xの開発を行っているものの同国防衛産業の弱点はエンジンの開発生産能力にあるとみられている。

ウクライナへの武器輸出

 トルコとウクライナが12月、ステルスコルベット艦4隻をウクライナに売却することで合意した。
 合意では合わせてトルコ製武装UAVのウクライナへの技術移転でも合意した。

1・5・4 南アジア

1・5・4・1 インド

1・5・4・1・1 基本的な国防政策

財政難の影響

 インド政府当局者が1月、慢性的な経済不振から12隻計画していた掃海艇を8隻に、10機計画していたAEW&Cヘリを6機に削減する調達計画の見直しを行っていることを明らかにした。

対中関係

 インド北部ラダックの対中国境地帯で6月中旬にインド軍と中国人民解放軍が衝突し、インド兵20名が死亡した事件を受け、モディ首相が対応に苦慮している。
 米国に次ぐ貿易相手国の中国に対し強硬な措置は取りにくい一方、国内で反中感情が高まる中、対応を誤れば国民の支持を失いかねない。
 インドにとって中国は経済的に不可欠の存在になっている。

対米関係

 トランプ米大統領が2月、就任後初めてのインドを訪問し、装備品をインドに提供する用意があると表明した。
 米国が2月にインドへ統合防空システムIADWSを売却すると発表した。 売却されるのはAN/MPQ-64FI Sentinel 5基、AIM-120C-7/C-8 AMRAAM 118発、FIM-92L Stinger 134発などである。

対露関係

 インド国防省が7月、中印国境での緊張増大を受け、改良した中古のMiG-29 21機と、ライセンス生産しているSu-30MKI 12機の調達を承認した。

1・5・4・1・2 装備の増強

宇宙兵器

 インドが2月、2019年3月に自国の衛星を撃破したインドASATの実大模型を公開した。 開発したDRDO当局者は、既に量産可能な状態にあるが、政府からは何ら指示が出ていないと述べた。

長距離ミサイル

 インドが1月に核搭載可能なK-4中距離SLBMの発射試験に成功した。 K-4は2,200kmを飛翔した。
 インドが国産したNirbhay CMの発射試験が10月に行われたが、エンジンの故障と見られる技術的問題で失敗した。 Tomahawk似のNirbhayの射程は1,000kmである。
 インド空軍が12月、BrahMos-A超音速CMのSu-30MKIへの搭載作業が完了し、インド南東岸の航空基地に配置したと発表した。
 300km近い射程を持つBrahMos-Aは最終試験でSu-30MKIから沖合の標的に向け発射された。
 インド政府によるとBrahMosについて、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムなどの東南アジア諸国が購入に関心を持っているという。

艦 船

 インドが通常動力潜水艦の不足を補うため中古のKilo級3隻をロシアから購入する計画を進めている。
 インド初の国産空母の就役は当初計画から4年以上遅れて2022年とされてきたが、COVID-19パンデミックの影響から更に遅れる見通しである。

航空機

 国営HAL社が、2020年代末の就役を目指している次世代中型戦闘機AMCAの開発を、民間企業との合弁で行う。
 BrahMos-Aを装備したSu-30MKI最初の飛行隊が1月に任務に就いた。
 国産軽戦闘機Tejas Mk 1 LCAの飛行隊が8月に初めてパキスタンとの国境に近い西部に配置された。
 HAL社が9月、同社のLUHヘリがヒマラヤの高温な高地での試験を完了し、対応能力を実証したと発表した。

1・5・4・1・3 戦術ミサイル

Quich-Reaction SAM (QRSAM)

 インド国防相が12月、国内開発した射程25~30kmのQuich-Reaction SAM (QRSAM) の技術試験を完了したと発表した。 システムは2021年に量産可能になるという。

Pinaka Mk Ⅰ MRL

 インド国防省がPinaka Mk Ⅰ MRL 6個連隊分を発注した。 6個連隊分の納入は2024年に完了し、殆どか北部及び東部の中国との国境に配備される。
 納入されるのは自動整地装置付きの発射機114両と指揮所装置45機で、合わせて330両の車両はINR8.42Bになる。  発射されるロケットの射程は38~40kmと見られ、12発を44秒で発射する。

Rudram ARM

 10月にDRDOが国内技術で開発したRudram ARMをSu-30MKIから発射した画像が公開された。
 Rudramは長距離空中発射ARMで、2021~2022年に配備される模様である。

1・5・4・1・4 武器国産能力の強化

武器国産化方針

 武器等の国産化を進めているインドが8月に、今後7年間に外国からの輸入を禁止する101品目のリストを公表した。
 その中には、野戦砲、突撃銃、コルベット艦、ソナー、輸送機、弾薬、レーダ、ディーゼル推進潜水艦、通信衛星、艦載CMなどが含まれている。

イスラエルとの連携

 イスラエルのUVision社が1月、インド企業と現地に合弁会社を設立すると発表した。
 この合弁会社は索敵遊弋弾PALM Heroの生産を行う。

1・5・4・2 パキスタン

1・5・4・2・1 中国との連携

 パキスタンが発注した復座型のJF-17B 26機のうち、最初の12機がパキスタンへ納入された。
 納入された12機は4機が中国で組み立てられ、8機がパキスタンで組み立てられた。
1・5・4・2・2 軍備増強

弾道ミサイル

 特筆すべき報道はなかった。

巡航ミサイル

 パキスタンが2月、射程600kmの空中発射型CM Ra'ad Ⅱの発射試験に成功した。
 Ra'ad Ⅱはエンジンの換装などによりRa'ad Ⅰの350kmより射程が伸びている。

艦 船

 パキスタン海軍が2017年にオランダDamen社に発注していた2,300t級コルベット艦2隻のうちの1隻が2月に就役した。
 2019年9月に進水した2番艦も5月には就役する。

1・5・4・3 インド洋諸国

1・5・4・3・1 スリランカ

親中国政権の復活

 8月のスリランカの議会選挙で、かつて中国寄りの政策を推し進めたマヒンダ元大統領が率いるスリランカ人民戦線が225議席のうち過半数の145議席を獲得して勝利した。
 マヒンダ元大統領は、中国寄りの政策を推し進めたことで知られ、現在は2019年11月に就任した弟のゴタバヤ大統領のもとで首相を務めている。

JICA による支援事業を中止

 スリランカで親中派として知られるラジャパクサ政権が、コロンボでの国際協力機構(JICA)による支援事業に中止を指示した。

1・5・4・3・2 モルジブ

 米国とモルディブが9月に防衛協定を結んだ。 2013年に両国の協定に反発したインドはインド洋に中国の影響力が強まったことで、方針を転換し締結に反対しなかった。
 ポンペオ長官が10月にモルディブの首都マレを訪問し、モルディブに米大使館を開設する方針を示した。
1・5・4・3・3 アンダマン・ニコバル諸島

 ミャンマーがココジュン郡区(ココ諸島)に建設する発電所を、京セラコグループの現地合弁会社が受注した。
 NECが12月、インドのチェンナイとアンダマン・ニコバル諸島を結ぶ大容量光海底ケーブルの建設を完了し、インドに引き渡したと発表した。
1・5・4・4 バングラディッシュ

 中国海軍で退役したType 053H3フリゲート艦2隻がバングラディッシュに供与された。
1・5・4・5 ネパール、ブータン

 特筆すべき報道はなかった。
1・5・5 中南米

1・5・5・1 ベネズエラ

1・5・5・1・1 民主化運動

 ベネズエラで2019年に反米左翼マドゥロ政権への蜂起を呼び掛け不発に終わった野党指導者ロペス氏が、10月までに約1年半避難していた首都カラカスのスペイン大使公邸を後にし、秘密裏に出国しスペインへ向かった。
1・5・5・1・2 米国の姿勢

 トランプ米大統領が4月、ベネズエラのマドゥーロ政権がCOVID-19の感染拡大に伴う混乱に乗じて米国への麻薬の密輸を増やす兆候があり、これを取り締まる必要があるとして、ベネズエラの周辺に展開している米軍部隊を増強する方針を明らかにした。
1・5・5・1・3 イランへの接近

 米国が8月、ベネズエラに向けて航行していたイランの燃料タンカー4隻を拿捕した。
 米制裁に違反するイラン・ベネズエラ間の主要供給路を阻止したもので、トランプ大統領は、イランはベネズエラに燃料を送るべきではないと主張している。
1・5・5・1・4 中国、ロシアの動き

 特筆すべき報道はなかった。
1・5・5・2 その他の中南米諸国

 特筆すべき報道はなかった。
1・5・6 アフリカ

 中国とロシアがアフリカに軍事拠点を作ろうとしている。 中国はセネガル海軍の支援を名目に、西アフリカのセネガルに港湾を建設しようとしている。
 一方ロシアはソマリアで分離独立派が支配しているBerberaに拠点を作ろうとしている。
1・6 国 内 情 勢

1・6・1 防衛体制

1・6・1・1 制度・組織

1・6・1・1・1 内部部局等

安保局「経済班」が発足

 国家安全保障局 (NSS) 内に経済安保を扱う経済班が4月に正式に発足した。
 サイバーセキュリティー対策や機微に触れる技術の流出防止に当たるほか、COVID-19感染症が日本経済に与える影響にも対処することになる。

国際政策課にインド太平洋に専門部署

 防衛省が軍事転用可能な先端技術の情報収集から保全までを担う経済安全保障情報企画官を新設する方針を固め、令和3年度予算案に盛り込んだ。
 防衛省が7月に、一帯一路構想を掲げる中国に対抗するため、防衛分野の国際交流を担当する国際政策課を実質的な2課態勢に改編して課長級職員を新たにおいて、開かれたインド太平洋構想に関する業務に特化した専門部署を新設する。

防衛装備庁に FMS 対応の新部署

 防衛装備庁が令和3年度、米国から有償軍事援助 (FMS) 契約で購入する装備品の納入の遅れや前払い金の余剰額回収などに専念する履行管理促進班(仮称)を新設する。

1・6・1・1・2 編制定員の見直し

宇宙やサイバなど新領域での防衛強化のため人員配置見直し

 防衛省は令和2年度から宇宙やサイバといった新領域での防衛を強化するため人員配置見直しを行う。
 但し、自衛隊全体として247,000名体制は維持する。

BMD 用 Aegis艦建造のため陸海空の枠を超えた配置転換

 政府はBMD Aegis艦2隻を5年程度かけて新造する計画で、その乗組員を確保するため海上自衛隊の隊員を500名増員する。
 ただ新規採用だけでは不十分で、陸海空の枠を超えた配置転換も検討する。

1・6・1・1・3 陸上自衛隊

水陸機動団の増強

 防衛省が北海道に駐屯地を新設し新たに編成される水陸機動団3個目の連隊を配置すること検討している。 北海道は即応性は不十分だが、浜大樹訓練場(大樹町)など海に面した訓練場があり、訓練実績も多い。
 この第3連隊の配置に、現在2個水陸機動連隊が配置されている相浦駐屯地への誘致に佐世保市が名乗りを挙げ、次いで大村市が竹松駐屯地への誘致に乗り出し、更に五島市も誘致に取り組むと表明した。

Ospreyを装備した輸送航空隊を新編

 陸上自衛隊が3月、Ospreyを装備した輸送航空隊を木更津駐屯地に新編した。 部隊は発足したが機体は6月末から7月に配備され将来は17機態勢になる。
 佐賀空港から水陸機動団が所在する相浦駐屯地までは60kmですぐに到着できるのに対し、木更津駐屯地からは1,000kmで2時間かかり、一刻を争う有事への即応性の低さは否めない。

電子戦部隊を健軍駐屯地に創設

 防衛省が2021年春に陸上自衛隊で80名規模の電子戦専門部隊を健軍駐屯地に創設し、相浦駐屯地の水陸機動団と連携する。

陸自が海、空自任務の一部を負担

 政府が、陸海空自衛隊に共通する任務を陸自に一元化し、相互協力を拡充させる方針を決めた。
 陸自に移管する任務は、施設整備、通信、警備などを想定しており、陸自部隊が海空自の基地の地上任務も担う。 また、攻撃を受け損傷した施設の復旧作業を陸自が担うことも検討している。

1・6・1・1・4 海上自衛隊

 特記すべき報道はなかった
1・6・1・1・5 航空自衛隊

航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改称

 政府が、航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」に改称する方向で調整に入った。 自衛隊法などの改正を経て、令和5年度までの実現を目指す。

宇宙防衛部隊の新編

 自衛隊初の宇宙防衛部隊宇宙作戦隊が5月に航空自衛隊内に20名人態勢で発足した。
 5年度の宇宙監視の本格化に向け、山口県山陽小野田市にレーダ施設を建設し、宇宙情報を集約するシステムを空自府中基地に整備して100名態勢に拡充する。 更に8年度までに宇宙監視衛星を打ち上げる計画もある。

F-35 の配備拡大

 現在17機を配備している三沢基地のF-35Aは来春には20機になり、運用試験を終え次第、緊急発進などの任務が付与される。
 防衛省は令和3年度予算の概算要求で、新たに4機のF-35Aの取得費を計上し、7年度に取得する。 この4機は三沢基地以外への配備が検討されている。

Global Hawk 部隊の新編

 参院本会議で4月に可決成立した改正防衛省設置法には、サイバー防衛隊を70名増員し290名体制とすることや、令和2年度に運用を始めるGlobal Hawkの三沢基地配備に向けた70名の準備部隊新編も盛り込まれた。

1・6・1・1・6 警 察

外事部門の強化

 警視庁が北朝鮮や中国を担当する部署を拡充する方針で、外国によるスパイ活動などを捜査する外事部門を再編し、北朝鮮関連の事案に専従する課を新設するという。

離島警備警察隊の新編

 後 述

1・6・1・2 周辺脅威の増大

1・6・1・2・1 対中危機意識の増大

 政府が7月に公表した令和2年版防衛白書では、日本周辺海空域での中国の活動活発化について「不測の事態を招きかねない危険な行為を伴い、強く懸念される」と表明し、北朝鮮の新型SRBM開発に対し「BMD網の突破を企図している」と危機感を示した。
1・6・1・2・2 沖ノ鳥島周辺 EEZ を否定した行動

 沖ノ鳥島沖の排他的経済水域 (EEZ) 内で、中国の海洋調査船が調査活動したことを受け、自民党関連部会が、拿捕など取り締まりが可能になる法整備を検討する方針で一致した。
1・6・1・3 敵地攻撃能力の保有

1・6・1・3・1 敵地攻撃能力を有する装備

 防衛省がStanf offミサイルと位置付ける射程500kmのJSMは開発が完了し、2022年3月中旬までに納入されF-35Aに搭載される。
 F-15Jのうち近代化される機体は射程900kmのLRASM(AGM-158C)やJASSM(AGM-158B JASSM-ER)の搭載が検討されている。
 政府関係者が12月、開発を進める新型対艦誘導弾の射程が2,000kmに及ぶことを明らかにした。 射程2,000kmとなると日本からの地上発射でも中国や北朝鮮が射程に入る。
 12式地対艦誘導弾の射程を将来1,500kmに延伸する案も浮上している。
1・6・1・3・2 Aegis Ashore計画停止の代案として敵基地攻撃能力保有論

 安倍首相が6月、Aegis Ashoreの導入計画停止を受け、今夏に国家安全保障会議 (NSC) で安保戦略を練り直す方針を表明した。
 これについてミサイル攻撃を未然に防ぐため、発射前に相手の基地を攻撃する敵基地攻撃能力の保有も検討対象とする考えを示した。
1・6・1・3・3 大綱への明記見送り

 安倍前首相が2020年内のとりまとめを求めていた敵基地攻撃能力を含むミサイル阻止の新たな方針の決定は2021年以降に先送りした。
1・6・1・4 日米防衛協力

1・6・1・4・1 日米防衛協議

 河野防衛相が8月にグアムでエスパー米国防長官と会談し、中国の海洋進出が強まる南シナ海情勢に強い懸念を共有した。
 またAegis Ashore計画断念を巡り、新たなBMD体制の構築に向けて連携することも確認した。  更に宇宙、サイバなど新領域での連携強化も確認した。
1・6・1・4・2 米国を核心とした多国間協力

 河野防衛相が7月、エスパー米国防長官、レイノルズ豪国防相と会談したのち共同声明を発表し、東・南シナ海での中国の軍事活動活発化を踏まえ「威圧的で一方的な行動に対する強い反対」を表明し、3ヵ国が部隊の相互運用性を高め、連携を強化していくことで一致した。
 日米豪印4ヵ国による防衛協力がすすめられている。
 米国など英語圏5ヵ国による情報共有の枠組みFive Eyesへの参加も話題となった。
1・6・1・4・3 米軍等の武器防護

 防衛省が2月、自衛隊が安全保障関連法に基づき日本周辺で米軍などを守る武器等防護について、2019年に14件実施したと発表した。
 武器等防護は、2016年施行の安保関連法で可能になった任務で、初めて発表した2017年は2件、2018年は16件だった。
1・6・1・4・4 日米共同演習

Keen Sword 21 日米共同演習

 10月~11月にKeen Sword 21演習が、日本側から37,000名と艦艇20隻、航空機170機が、米側からは太平洋軍と在日米軍など9,000名が参加して行われた。
 新田原基地に米空軍が飛来し、護衛艦かがの甲板に米軍のOspreyが着艦した。
 臥蛇島では水陸機動団と護衛艦ひゅうがなど1,500名と、米海兵隊200名やOspreyが参加離島奪還を想定した演習を実施した。

陸上演習

 陸上自衛隊と米海兵隊による日米共同訓練が、12月に2017年以来3年ぶりに関山演習場と相馬原演習場で始まった。

海上演習

 米海軍強襲揚陸艦Americaが1月に海上自衛隊との演習を東シナ海で行った。
 米海軍LCSが南シナ海で6月に、海上自衛隊の練習艦隊と共同訓練を実施した。
 海上自衛隊が8月に、護衛艦すずつきが東シナ海で駆逐艦Mustinと戦術訓練を実施したほか、沖縄県南方海域で護衛艦いかづちが空母Ronald Reaganなどの米海軍の艦艇と洋上補給などの訓練を行った。
 海上自衛隊と米海軍との日米共同掃海訓練が、海上自衛隊から艦艇19隻と航空機3機、隊員およそ1,200名が、米海軍からは掃海艦1隻と水中処分員10名が参加して日向灘沖で行われた。  ハワイ周辺海域で2年に1度開催される多国間共同演習RIMPACに参加していたた護衛艦いせと搭載ヘリ2機、護衛艦あしがらと、米、韓、豪の艦艇が、その帰途を利用して9月にハワイからグアムにかけての太平洋で4ヵ国共同訓練を行った。

航空演習

 航空自衛隊のF-15などが2月に米空軍のB-52と日本周辺で共同訓練を実施した。 編隊を組んで東シナ海などを飛行する訓練で、空自からは北海道から北陸、沖縄など6部隊の計45機が交代しながら参加した。 この演習は発表された中では過去最大規模で、北朝鮮や中国を牽制する狙いがある。
 この他に4月にはB-1B 2機とF-2など15機をはじめ、B-1BやB-52Hと連携した訓練が度々行われた。

BMD での連携

 河野防衛相が8月に在日米軍司令官と会談し、Aegis Ashore導入断念を踏まえた新たなBMD網の構築に向け日米が連携していくことで一致した。

サイバ戦に関する共同訓練

 陸上自衛隊が2月、サイバ防衛について日米の担当者が意見交換するセミナを開いた。

1・6・1・4・5 米空軍への燃料補給と援護

 米空軍の外征空軍への燃料補給と援護を航空自衛隊が引き継ごうとしている。
 8月に千歳基地で行われた訓練では米空軍がC-130Jで空輸した燃料を航空自衛隊のF-15に給油したり、航空自衛隊の輸送機が輸送した燃料を米空軍のF-16に給油したりした。
1・6・1・4・6 指揮系統の連携

 茂木外相とヤング米臨時代理大使が8月、米軍と自衛隊のC4ISRの指揮系統の連携を進めるため、共同研究を進めることを確認した書簡を交換した。
 日米相互防衛援助協定 (MDA) に基づくもので、宇宙やサイバなど幅広い分野での防衛協力強化を念頭に、米軍と自衛隊の統合運用ネットワークの情報共有時などの安全性や柔軟性について技術面の課題を研究する。
1・6・1・5 周辺国との関係

1・6・1・5・1 対中戦略

基本姿勢の表明

 ASEAN諸国に加え、米中なども参加する東アジア首脳会議で菅首相が、海洋進出を強める中国を念頭に南シナ海と東シナ海情勢について、「法の支配、開放性とは逆行する動きが起きている」と懸念を表明した。
 その上で、尖閣諸島を念頭に「東シナ海では、日本の主権を侵害する活動が継続している」と述べた。

日米豪印の連携

 9月に梶山経産相、インド商工大臣、オーストラリア貿易相が3ヵ国の経済担当相会議を行い、今後インド太平洋地域でCOVID-19パンデミックで打撃を受けた各国の供給網強化に向けて協力することで合意した。
 日米豪印4ヵ国外相が10月に東京都内で会合を開き、台頭する中国を念頭に自由で開かれたインド太平洋構想の推進に向けた連携の強化で一致した。
 インドを中心に米国と日本が参加する多国籍海上連合演習Malabarが、2020年はオーストラリアが13年ぶりに参加して11月に始まった。 演習はベンガル湾で実施した第一段階に続く第二段階を、インド沖のアラビア海で行った。
 日米豪印4ヵ国が12月に外務省局長級協議を開き、海洋安全保障やテロ、サイバ対策など幅広い分野で協力を進めることで一致した。 協議では10月に確認した年1回開催の定例化の方針を再確認し、2021年中の開催で一致した。

Five Eyes から Six Eyes に

 日本が英語圏5ヵ国の機密情報共有枠組みであるFive Eyesへの参加を促す発言が相次いでいる。
 英議会で対中国政策にかかわっている議員たちの話として7月に、Five Eyesに日本を含めてSix Eyesに改編し、協力分野も軍事情報だけでなくレアアースや医療物品の共同管理などに拡大する可能性があると報じられた。
 河野防衛相がFive Eyesとの関係について、価値観を共有している国々であり日本も近づいてSix Eyesと言われるようになっても良いと述べ連携拡大に意欲を示した。

Covid-19対策で台日米豪が会合

 台湾で、COVID-19パンデミック関連の犯罪防止やデマ対策について日台米豪が意見を交わすワークショップが10月に38ヵ国と地域の警察関係者らを招いて開催された。

1・6・1・5・2 対韓対策

韓国の非友好的行為

 長崎県男女群島女島の西方の日本の排他的経済水域 (EEZ) 内で海洋調査をしていた海保の測量船が8月に、韓国公船から即時中止を求められた。
 現場海域は日韓双方から200nmの範囲にあるが、海保の測量船は両国の中間線の日本側で調査をしていた。
 米国が韓国政府に日米韓国防長官会議を提案していたが韓国政府が回答しなかったため、これと共に計画されたミリー統合参謀本部議長の訪韓も実現しなかった。

1・6・1・5・3 北方領土

領土問題

 米国務省はホームページで、住権を申請する手続きについて、歯舞群島、色丹、国後、択捉各島で生まれは日本出身、サハリン南部生まれはロシア出身と記入するよう求めている。
 これについてロシア外務省が12月、第2次大戦の結果に疑義を呈するものだと反発する声明を発表した。

ロシア軍の動き

 ロシアは陸軍第18機関銃砲兵師団が択捉島と国後島に駐留し、2018年には択捉島のヤースヌイ空港を軍民共用化してSu-35を配備した。 また2016年に射程300kmの地対艦ミサイルBastionを択捉島、130kmのBalを国後島に配備しているが、10月にT-72B3 MBTクリール諸島(千島列島と北方領土)へ配備したと報道された。
 更にロシア国防省は12月に、クリル諸島にS-300を初めて配備したと発表した。

1・6・1・6 テロ対策

 6月に宮城県など東北各地で、気球のような物体が目撃されたが、飛行物の正体はまだ分かっていない。 発見が報じられて以来数日経つも所有者の申し出でがないことから、海外の何者かが意図的に飛ばしている可能性もある。
 陸上自衛隊と北海道警察が北海道大演習場で10月に、武装した工作員が侵入した想定でテロに備えた合同訓練を行った。
1・6・1・7 COVID-19 感染拡大の影響

1・6・1・7・1 防衛協力への影響

 防衛省がCOVID-19の感染拡大を受け4月に予定していた同省としては初の主催となる多国間の国防大臣会合を延期したほか、各種共同訓練の延期や中止などの影響が出た。
 インドとの防衛交流も、航空自衛隊が2020年にインド軍を日本に招き、初めて戦闘機の共同訓練をする準備を進めてきたが見通しが立たなくなった。
1・6・1・7・2 サプライチェーンの多元化

 安倍首相が3月に、COVID-19の世界的な広がりを受け、中国などから日本への製品供給減少によるサプライチェーンへの影響が懸念されるなか、一国への依存度が高く付加価値の高い製品は、日本への生産回帰を進めると述べた。
 またそうでない製品も一国に依存せずASEANなどへの生産拠点の多元化を進めるとも述べた。
1・6・1・7・3 防疫体制の強化

 防衛省、自衛隊はCOVID-19に対応した経験を踏まえ感染症対策の強化に乗り出し、自衛隊病院での受け入れ体制を拡充し医官の育成もめざす。
 また患者を長距離輸送できる機材などを新たに取得する。
1・6・1・7・4 予備自衛官の招集

 河野防衛相が2月、COVID-19の感染拡大に対応するため、予備自衛官の招集命令を発令した。
1・6・1・7・5 病院船建造の動き

 政府が取り纏めるCOVID-19の感染対策の補正予算案に、病院船の建造に向けた調査費を盛り込んだ。
1・6・1・8 在外邦人の保護活動

 在外日本人が、治安情勢の悪化で取り残されたことを想定し、自衛隊が保護輸送にあたる訓練が陸上、航空の自衛隊員や外務省職員など300名が参加して行われた。
 こうした訓練は今回が12回目である。
1・6・2 防衛予算

1・6・2・1 令和2年度予算の補正

 政府は、令和2年度第3次補正予算案の外交防衛費に計5,000億円を計上した。 そのうち防衛費が3,000億円台で、COVID-19に関する国内輸送支援としてC-2輸送機や、車両整備の関連経費を盛り込むと共に、医療用機材の整備費なども計上した。
 COVID-19関連以外では尖閣諸島周辺で中国艦船の活動が活発化するなか、警戒監視態勢の充実が急務と判断し、P-1哨戒機の関連経費も盛り込んだ。
1・6・2・2 令和3年度防衛予算

1・6・2・2・1 防衛予算

概算要求

 防衛省が9月末日に、令和3年度予算に前年度比3.3%増の5兆4,900億円を要求した。
 概算要求の締め切りは例年8月末日であるが、今年はCOVID-19感染拡大の影響から9月末日になった。

政府原案

 政府が12月21日の閣議で令和3年度予算案を決定した。 防衛費は5兆3,235億円で、F-2後継戦闘機の開発費として576億円を計上した。

1・6・2・2・2 その他関連予算

海上保安庁の概算要求

 海上保安庁の概算要求では、尖閣領海の警備態勢強化と大規模事案の同時発生に対応できる態勢整備の費用として、2年度当初予算比41億8,000万円増の250億円を要求した。

1・6・3 ミサイル防衛

1・6・3・1 全体構想

 特記すべき報道はなかった。
1・6・3・2 SM-3 Block ⅡA

 特記すべき報道はなかった。
1・6・3・3 Aegis Ashore

1・6・3・3・1 配備場所問題

 政府Aegis Ashoreについて、当初予定していた新屋演習場への配備を、地元の反対感情が強く配備は困難と判断し断念する方向で検討に入った。
1・6・3・3・2 工事等の発注

 米国防総省が3月、日本に設置する2箇所のAegis Ashoreの設計から支援までをLockheed Martin RMS社に発注した。
 この結果、対日FMS契約の額は$3.21M上がって$25.9Mになった。
1・6・3・3・3 配備計画停止と代替案検討

 河野防衛相が6月、秋田県と山口県で進めていたAegis Ashoreの配備計画を停止すると発表した。 安倍首相には報告し了承を得たという。
 山口配備をめぐって、大きな懸案になっていたのがミサイル発射後に切り離すブースタの落下だった。

代替案検討

 Aegis Ashoreの計画停止を受け、政府はBMDの代替策の検討に着手し、防衛省が7月、自民党に対し以下の3案を説明した。

1. 新たなAegis艦の建造
2. 地上にレーダ、海上や臨海部に発射機の分離配備案
3. メガフロートや艦艇といった洋上施設への配備案
Aegis Ashore 代替

 政府が9月に、Aegis Ashoreの構成品一式を洋上で運用する以下3案を自民、公明両党の関連部会に提示した。

1. 民間の商船
2. 自衛隊の護衛艦
3. 海上に構築した石油採掘装置のような施設
 防衛省はAegis Ashoreの代替案として艦船方式で調整している。 Aegis Ashoreの代替策3案のうち、石油掘削装置(オイルリグ)型は外部からの攻撃に弱いことなどから検討対象から外したため、残る2案はいずれも艦船で、タンカーなど商船型かAegis艦を含む護衛艦型である。
 政府は10月にAegis Ashore代替としてAegis艦を新造する方針を固めた

国家安全保障戦略、防衛計画大綱、中期防の修正

 政府が12月に国家安全保障会議 (NSC) 4大臣会合を首相官邸で開き、Aegis Ashoreの代替として新型Aegis艦を2隻建造に向けた詰めの協議を行った。
 新型Aegis艦は護衛艦まやをベースとし、更に大型化させてAegis Ashoreで導入予定だった装備を転用したい考えである。
 政府が12月18日の閣議で、Aegis Ashore代替としてAegis艦2隻の新造を含むBMDに関する文書を決定した。

1・6・3・4 早期警戒衛星

1・6・3・4・1 日本独自衛星

 防衛省が中露の最新鋭ミサイルに対応する新たな手法の調査研究に乗り出す。
 同一軌道上に複数の人工衛星を展開し、遠くを飛んでいるミサイルを横方向から探知するリム観測と呼ばれる手法で、今後実用化の可能性を探る。
1・6・3・4・2 米計画との共同

 複数の政府関係者が12月、政府が極超音速滑空兵器への対処策取りまとめに向け、2021年初めにも本格的な研究に着手することを明らかにした。
 中国やロシアの開発進展を警戒し、日米協力による抑止力向上を目指す。
 具体的には、米側の小型人工衛星群(コンステレーション)計画に参加する意向である。
1・6・3・5 PAC-3

 航空自衛隊がPAC-3の改良型であるPAC-3 MSE弾を、習志野、浜松、芦屋、築城の4基地に配備したと明らかにした。 今後、各地の部隊で順次改修を進める。
 航空自衛隊が沖縄県内に配置した4個高射隊にはPAC-2が配備されていたが、8月までにPAC-2の2個高射隊をPAC-3に切り替えた。
1・6・3・6 03式中SAMの改良

 防衛省が令和2年度に、北朝鮮がBMの性能を上げていることに対応するため、新たな迎撃システムの研究に着手する。
1・6・3・7 BMD の実行動

 特記すべき報道はなかった。
1・6・4 我が国周辺の警備

1・6・4・1 海洋安全保障政策

 政府が令和3年度から北極海での観測活動を進めるため砕氷機能を持つ研究船建造に本格着手するため、令和3年度予算案に4億数千万円を計上し、5年間で総額335億円を投じる。
1・6・4・2 中国に対する監視

 特記すべき報道はなかった。
1・6・4・3 南西防衛を重視した部隊配置

1・6・4・3・1 対空/対艦ミサイル部隊

中 SAM 改を沖縄本島に

 政府が03式中距離地対空誘導弾改善型(中SAM改)初の配備地として沖縄本島を選定し2021年3月までに配備する計画である。
 中SAM改は令和元年度までに予算化された3個FU全てを沖縄本島に振り向け、現在中SAMを装備している第15高射特科連隊に配備する。

宮古島に中 SAM / SSM

 2019年3月に普通科部隊を主軸として新設された陸上自衛隊宮古島駐屯地に、2020年に入りミサイル部隊の増強が開始された。
 陸上自衛隊が3月に12式SSM部隊を宮古島駐屯地で新編したと発表した。 03式中SAM部隊も竹松駐屯地から第7高射特科群を宮古島駐屯地に移駐させた。

1・6・4・3・2 陸上部隊

 陸上自衛隊が南西諸島の離島などで過去最大規模の戦時医療訓練を行っており、11月はヘリによる戦闘地域で負傷した人たちの輸送などがあった。
 訓練は鹿児島県徳之島の防災センタに野戦病院が設置され、負傷者を熊本県に搬送するという内容で、実際の離島を戦時医療の拠点とした実地訓練は自衛隊史上初めてという。
1・6・4・3・3 海上部隊

 特記すべき報道はなかった。
1・6・4・3・4 航空部隊

 中国機へのスクランブル任務が頻発している那覇基地には、能力向上型のF-15を継続して配備する見通しである。
1・6・4・3・5 電子戦部隊

 陸上自衛隊奄美駐屯地に令和3年度、電子戦の専門部隊が新たに編成される。
 陸上自衛隊は3年度に電子戦部隊を朝霞駐屯地を司令部に、留萌、相浦、奄美、那覇、知念の駐屯地合わせて6ヵ所に新編する。
 奄美駐屯地には健軍駐屯地の部隊の一部が加わるとみられるが、規模などは明らかになっていない。
1・6・4・3・6 馬毛島の FCLP 基地計画

 防衛省が8月、鹿児島県西之表市の馬毛島に整備する自衛隊基地の計画案を公表した。 滑走路2本を新設し、格納庫や燃料施設、弾薬庫なども備える。
 また陸海空の各自衛隊も馬毛島基地で訓練を実施する。
1・6・4・3・7 南西諸島部隊配置の問題点

 南西諸島で、自衛隊の航空機や艦艇が使用できる空港や港湾が少ないとの懸念が出ている。
 南西諸島の20空港のうち、18空港は2,000m以下の滑走路のため、戦闘機、哨戒機、早期警戒機が離着陸できず、戦闘機が支障なく離着陸できる長さの滑走路は沖縄本島にしかないが、尖閣諸島からは420km離れている。
 南西諸島には大型護衛艦や輸送艦が停泊できる水深6~7m以上の港湾も少ない。 先島諸島では宮古島の平良港と石垣島の石垣港のみで、輸送艦が入れなければ有事の際、海上ルートで速やかに住民を避難させることができない。
1・6・4・3・8 緊急時米軍受け入れ基地の準備

 航空自衛隊新田原基地で緊急時に米軍を受け入れるための施設の工事が9月に始まる。
 整備されるのは、弾薬庫や燃料タンク、それに駐機場などで、7月中に工事を始めたいとしていたがCOVID-19感染者が増加した影響などで9月着工となった。
1・6・4・4 航空自衛隊の緊急発進

1・6・4・4・1 対中国

 防衛省の1月発表によると、航空自衛隊が2019年4~12月に緊急発進した回数は742回と、前年の同時期より16回減少したが、対中国機は47回増えて523回で、尖閣諸島周辺などを担当する南西航空方面隊が461回で最多だった。
1・6・4・4・2 対ロシア

 航空自衛隊が2019年4~12月に緊急発進した回数は742回と、前年の同時期より16回減少し、中でも対ロシア機は216回で54回減った。
1・6・4・5 南西諸島防衛演習

 尖閣諸島の日本からの奪取を狙う中国の動きが激しさを増しているなか、8月に関係者が「夏の態勢」とひそかに呼んでいた演習が秘密裏に実施された。
 演習は陸上総隊司令部が前進司令部を沖縄に置き、陸上自衛隊のさまざまな部隊が、沖縄本島および周辺の島嶼部に秘密裏に展開する。
1・6・4・6 日本海警備の強化

1・6・4・6・1 大和堆周辺での違法操業

 能登半島沖の日本の排他的経済水域にある大和堆周辺では、ここ数年北朝鮮の漁船による違法操業が相次いでいて、2019年に海上保安庁は1,308隻に退去警告を行い、このうち252隻に放水を行ったという。
 水産庁は9月末にわが国の排他的経済水域 (EEZ) にもかかわらず、日本漁船に対し安全を確保するため特定の海域に入らないよう求めた。 自国のEEZにある漁場に入れないのは異常事態である。
1・6・4・6・2 日本海での対潜哨戒

 朝鮮半島周辺の海中では韓国と北朝鮮だけでなく、米露中日の潜水艦が密かに行き来する。 特に水深が深い日本海は世界で潜水艦の活動が最も旺盛な海域の一つである。
 日本は冷戦時代には、宗谷海峡に2隻、津軽海峡に2隻、対馬海峡に2隻の潜水艦を配置していた。
1・6・4・7 重要施設周辺地の監視強化

 政府が10月、自衛隊基地など安全保障上重要な施設周辺の土地を外国人らが取得することへの監視を強化するため、新法を制定する方針を固めた。
 新法では、日本の領海や排他的経済水域 (EEZ) の基点となる国境離島や、自衛隊関連施設、原発などを「安保上の重要施設」に指定し、周辺の土地を調査対象とする方向で、事前に土地買収計画の届け出を求めることも検討する。
1・6・4・8 海上保安部隊の増強

大型 UAV の試験運用

 海上保安庁は海難事故の捜索や不審船の監視などにUAVが活用できるかを検証するため、10月から三陸沖や日本海などで実証試験を始める。 試験に使われるのはGA社製のSea Guardianで、一日以上連続で飛行して日本の排他的経済水域の最も外側を一周する能力がある。
 海上保安庁は実証実験を始めた大型UAVについて、早ければ令和4年度にも導入する方向で検討している。

1・6・4・9 国境警備

1・6・4・9・1 離島管理の強化

 河野防衛相が、海上自衛隊の南鳥島基地を初めて視察し、海洋進出を強める中国を念頭に島嶼防衛の重要性について強調した。
 河野防衛相は南鳥島について、周辺にはレアアースなどの資源がある可能性もあり、日本の権益を守るための重要な拠点だと強調した。
1・6・4・9・2 離島警備警察隊の新編

 尖閣諸島をはじめとする離島の警備にあたる沖縄県警に「国境離島警備隊」が4月に発足した。
 離島での対応を専門にした初めての警察の部隊で、武装集団が離島に不法に上陸占拠するといった事態に備える。
1・6・5 海外活動

1・6・5・1 ペルシャ湾への派遣

1・6・5・1・1 派遣準備

 河野防衛相が1月、イランのハタミ国防軍需相と電話会談し、ホルムズ海峡を通過する日本関連船舶の航行の安全に関してイランの協力を求めた。
 電話会談は2019年10月以来2回目で約30分間行われ、1月に派遣命令を出す海上自衛隊の中東派遣も説明した。
1・6・5・1・2 派遣命令発令

 河野防衛相が1月、護衛艦たかなみとP-3Cに対し、防衛省設置法の「調査・研究」を名目にした中東海域への派遣命令を出した。
 1月10日の派遣命令を受けP-3C哨戒機部隊が1月11日、海自那覇航空基地を出発した。 部隊はP-3C 2機で構成され、活動拠点があるジブチに向けて出発した。
 護衛艦たかなみは2月2日、司令部要員を含め200名が乗艦して横須賀基地を出港した。 2月下旬に現地に到着する。
1・6・5・1・3 活動開始

 中東海域に派遣された護衛艦たかなみが2月26日にアラビア海北部で情報収集活動を開始した。
 たかなみは1月から活動中のP-3C 2機とともに調査・研究を行うが、日本関係船舶が攻撃を受けるなどの不測の事態が生じた場合には、自衛隊法の海上警備行動に切り替えて対応する。
1・6・5・1・4 OVID-19感染拡大下での派遣部隊交代

 河野防衛相が4月、中東海域で情報収集活動をしている護衛艦たかなみの後任として、COVID-19感染拡大下での派遣部隊交代を行うため、護衛艦きりさめを派遣すると発表した。
1・6・5・1・5 派遣期間延長

 政府が、中東地域に派遣している自衛隊の護衛艦と哨戒機を引き続き現地で活動を続ける必要性があるとして、12月6日に期限を迎える派遣期間を1年延長する方針を固めた。
1・6・5・2 艦隊の海外派遣

 海上自衛隊は9月に1ヵ月余りの日程で護衛艦かがなどを南シナ海からインド洋にかけての海域に派遣し、各国の海軍などと共同訓練を行うことにしているが、この訓練に潜水艦しょうりゅうを追加で参加させると発表した。
 潜水艦は相手に居場所を知られず警戒監視を行うのが任務で、中国が海洋進出を強めるこの海域への派遣を事前に公表するのは異例の対応である。
1・6・5・3 国連 PKO 活動

 特記すべき報道はなかった。
1・6・5・4 国際連携平和安全活動

 特記すべき報道はなかった。
1・6・5・5 人道支援活動等

 森林火災が続くオーストラリアへの支援活動で、航空自衛隊のC-130H 2機が1月にニューサウスウェールズ州の豪空軍基地に到着した。
 国際緊急援助空輸隊として、消火や復旧活動に必要な物資や人員の輸送を行う。
1・6・6 将来戦への対応

1・6・6・1 サイバ戦

1・6・6・1・1 わが国に対するサイバ攻撃の実情

三菱電機に対するサイバ攻撃

 三菱電機が大規模なサイバ攻撃を受け、機密性の高い防衛関連、電力や鉄道といった重要な社会インフラ関連など官民の取引先に関する情報が広く流出した恐れがある。
 2019年6月に発覚した攻撃について同社は不正アクセスの手口などから、防衛関連の機密情報を主に狙う中国系のサイバ攻撃集団Tickが関与した可能性があるとみている。
 三菱電機が再び大規模なサイバ攻撃に見舞われた。 前回はBlackTechという中国系ハッカ集団の関与が浮上しているが、同社では今回も中国系集団による攻撃との見方を強めている。

NEC に対するサイバ攻撃

 NECが2018年までの数年間にわたり大規模なサイバ攻撃を受け、本社などのパソコンやサーバに保存されていたファイル28,000点が外部流出した可能性がある。
 中国系ハッカ集団が関与した「標的型」攻撃の疑いがあり、流出した中には同社が手がける潜水艦用センサの情報など自衛隊装備に関する資料も含まれていた。

NTT コミュニケーションズに対するサイバ攻撃

 河野防衛相が5月、NTTコミュニケーションズが不正アクセスを受けて顧客情報が流出した可能性がある問題に関し、自衛隊が同社の取引先であり、自衛隊の通信情報が流出していた。
 この問題で、海上保安庁での通信回線機器の工事情報も流出していた。

1・6・6・1・2 サイバ戦体制の強化

防衛機密流出防止策の強化

 防衛省は令和2年度からサイバ攻撃による防衛機密の流出防止策を強化すると共に、サイバ攻撃の増加を受けて契約企業にも対策を呼びかける。
 防衛省が令和2年度予算に、AIを用いたシステムの構築を含むサイバ対策に256億円を計上している。

サイバ戦教育専門部隊を新設

 自衛隊のサイバ部隊は令和元年度末で580名だが、防衛省は5年度までに千数百名規模に引き上げる計画で、7月には河野防衛相が陸上自衛隊通信学校を視察し、サイバや電磁波攻撃対処の専門人材の育成を強化する方針を明らかにした。
 防衛省が令和3年度末にサイバ防衛教育専門部隊を新設する方針で、令和3年度予算概算要求に関連経費を計上する。 サイバ防衛の教育専門部隊は陸上自衛隊久里浜駐屯地で陸海空三自衛隊の共同の部隊として発足させ、年間に数十人の隊員に教育を行う。

ゼロトラストの採用

 防衛省は近く、ゼロトラストと呼ばれる最新鋭のサイバーセキュリティー対策の調査研究を始める。
 ネットワークの内側と外側にかかわらず、全ての通信アクセスを疑ってかかる手法で、民間事業者に委託する調査の結果を2021年3月末までに受け取る。

サイバー専門人材を民間採用

 防衛省が令和3年度から、サイバー攻撃などに対処できる人材の育成を本格化させるため、自衛官を大学などに派遣して専門知識を身につけさせるほか、専門的な知見を備えるサイバーセキュリティー統括アドバイザー(仮称)を採用する方針である。

1・6・6・1・3 サイバ戦演習

 政府が2020年秋にも米国や欧州、ASEANと共同で、電力や水道など重要インフラを狙うサイバ攻撃を想定したサイバ演習を主催し、脅威を増す中国やロシアのサイバ攻撃に備えて平素から連携し、手口や対処策を迅速に共有する。
 この規模のサイバー演習を日本が主催するのは初めてで、米国や英国、フランス、ASEAN 10ヵ国など20ヵ国以上の参加を見込んでいる。
1・6・6・2 宇宙利用、宇宙防衛

1・6・6・2・1 宇宙利用

宇宙基本計画の改定

 政府が6月に宇宙基本計画を5年ぶりに改定した。 自立した宇宙利用大国を掲げ、情報収集衛星を現在の4機から10機に増やすなど安全保障や防災への利用を重視する。
 計画では、準天頂衛星「みちびき」に宇宙ごみの接近を知らせるセンサを搭載するなど運用態勢を強化するほか、米国との連携を強めて多数の小型衛星でミサイルを探知するシステムの開発も検討する。

小型人工衛星群によるミサイル早期警戒

 防衛省が、ミサイルの探知追尾など早期警戒能力向上のため、小型人工衛星群(コンステレーション)導入の検討に着手する考えで、小型衛星の打ち上げや地上局の整備を検討する。
 ただ、実用化には先行する米国の協力が前提となるため、導入時期は未定である。

情報収集衛星のデータ中継衛星打ち上げ

 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が11月にデータ中継衛星を搭載したH-2A 43号機を種子島宇宙センタから打ち上げた。
 打ち上げた衛星は、情報収集衛星で収集したデータを中継するデータ中継衛星1号機と、JAXAの光データ中継衛星の2機能が電源、制御系などを共有し、搭載されている。

1・6・6・2・2 宇宙防衛

宇宙基本計画

 12月に明らかになった政府が2020年内に決定する宇宙基本計画工程表の改訂案では、衛星のデータを狙ったサイバ攻撃の予防策をまとめた指針を来年度に策定することなどを盛り込んだ。
 一方、中国やロシアが開発中の超高速滑空兵器 (HGV) への対策として、多数の小型衛星で宇宙空間からHGVを探知追尾するシステムを調査研究するなど安全保障の取り組みも強化する

宇宙防衛関係予算

 2019年12月に閣議決定した令和2年度予算政府原案における宇宙関連費は896億円である。

宇宙作戦隊の新編

 航空自衛隊に5月、宇宙作戦隊が編成された。 宇宙作戦隊は統幕のC4システム部に設置された宇宙領域計画室と活動を行う。
 宇宙作戦隊はJAXAの協力を受けて宇宙ゴミや衛星の位置情報を収集するシステムを構築すると共に要員の訓練を行うほか、米国と協力してASAT、レーザ照射、通信妨害、キラー衛星などの監視にあたる。

宇宙防衛の日米協力

 米MDAが7月、米軍が計画中の極超音速/弾道追跡宇宙センサ (HBTSS) 宇宙監視網を活用したBMDについて、日本政府と協議していることを認めた。
 政府が米国との宇宙領域での協力を強化するため、Vandenberg AFBの連合宇宙運用センタに、航空自衛官を10月から派遣している。 令和3年度から自衛官を正式な連絡官として常駐させたい考えで、米側と調整を進めている。
 茂木外相とヤング駐日米臨時代理大使が12月に会談し、宇宙監視能力の強化を目的に人工衛星を相互利用するホステッド・ペイロード協力についての合意文書を交わした。 これにより日米どちらかが運用する人工衛星に、もう一方が開発した監視機器などを取り付けることが可能になった。
 令和5年度の運用開始を目指す日本の準天頂衛星みちびき 6、7号機に、宇宙ごみへの監視能力向上を図るため米国の宇宙状況監視センサーを搭載することが検討されている。

1・6・6・3 電 子 戦

艦隊情報群の親編

 河野防衛相が9月、自衛艦隊に艦隊情報群を新たに編成すると発表した。 10月1日付で情報業務群を改編して30名増の230名体制とする。

陸上自衛隊の電子戦専門部隊

 防衛省が電磁波を使う電子戦専門部隊を来年度末に朝霞駐屯地に新設する。 北海道と熊本県に続く3番目の部隊で、電子戦で先行する中国とロシアに対抗する態勢を敷く。
 朝霞には3部隊を統括する司令部機能も新設し、陸自の全国の部隊を指揮する陸上総隊の傘下に置く方針である。

1・6・6・4 将来戦対応統合部隊の創設

 特筆すべき報道はなかった。
1・6・7 諸外国との防衛協力

1・6・7・1 多国間防衛協力

1・6・7・1・1 安全保障協力の多角化

 政府は安全保障協力の多角化で日米同盟を補完し中国を牽制する狙いで、自衛隊と外国軍が共同訓練で相互訪問する際の法的地位を定める円滑化協定の締結国拡大を本格検討する。
 11月の首脳会談で締結に大枠合意したオーストラリアに加え、英国、フランス、インドなどが有力候補になっており、英国とは既に水面下で交渉前の協議を始め、互いに締結に前向きという。
1・6・7・1・2 多国間演習への参加

日米豪3ヵ国の共同訓練

 米国が2019年に開始した対潜訓練Sea Dragonが1月にグアム周辺海域で行われた。 演習には米、日、豪、ニュージーランドと共に、韓国海軍も参加している。
 ニュージーランドと韓国は初めて本格参加した。
 7月には西太平洋と南シナ海で日米豪3ヵ国の共同訓練を実施した。 3ヵ国艦は南シナ海を出発してフィリピン東方沖を通り、グアム周辺の海空域で、対潜、対艦、対空訓練を行った。

RIMPAC 演習

 ハワイ周辺海域で2年に1度開催される多国間共同演習RIMPACに参加していた護衛艦いせと搭載ヘリ2機、護衛艦あしがらと、米、韓、豪の艦艇が、その帰途を利用して9月にハワイからグアムにかけての太平洋で4ヵ国共同訓練を行った。

日米仏共同演習

 日米仏の艦艇と陸上部隊が結集し、南西方面の無人島で着上陸訓練を行った。  東シナ海と南シナ海で高圧的な海洋進出を強める中国の面前で牽制のメッセージを発信する訓練に欧州の仏軍も加わり、対中包囲網の強化と拡大を示す狙いがある。
 仏海軍は練習艦隊の、2015年、2017年に続く3度目の日本寄港を2021年5月に計画している。 2015年の寄港時は5月に日米仏の枠組みで初めて日本で共同訓練を行い、九州西方海域で海自と米仏両海軍の艦艇が航空機の相互発着艦の訓練をしている。 2017年5月は陸自と英軍も参加し、日本周辺海空域で偵察用ボートの発進・収容訓練などを実施した。
 米海軍が12月、米海軍駆逐艦がフィリピン海でフランス海軍潜水艦、海上自衛隊護衛艦ひゅうがと合同で対潜訓練を実施した。  訓練に参加したのはMcCainのほか仏海軍原潜Emeraudeと護衛艦ひゅうがであった。

1・6・7・2 大洋州諸国との防衛協力

1・6・7・2・1 オーストラリア

日豪円滑化協定の締結協議

 自衛隊とオーストラリア軍が互いの国に滞在する際の部隊の法的地位を定める日豪円滑化協定について、7月に両国首相が会談し、大筋合意する見通しとなった。
 菅首相と来日するモリソン豪首相とが11月に実施する首脳会談で、軍事と経済安全保障分野での協力を含めた特別な戦略的パートナーシップの強化の方針を日豪政府が固めた。

豪艦警護に向け調整を開始

 岸防衛相がレイノルズ豪国防相と会談し、自衛隊が豪艦などを警護できるようにする、いわゆる武器等防護の実施に向け調整を開始した。

準同盟国としての位置づけ

 菅首相が11月に来日したモリソン豪首相と会談し、自衛隊と豪軍が共同訓練で相互訪問する際の法的地位を定める円滑化協定について大枠で合意した。
 安全保障分野を中心に準同盟国として関係を強化するもので、締結されれば戦後初めてとなる。

陸軍連絡将校を受け入れ

 陸上自衛隊がオーストラリア陸軍から連絡将校を、2020年1月中旬ごろから陸軍の少佐1名を座間駐屯地にある陸上総隊日米共同部に受け入れる。

1・6・7・2・2 ニュージーランド

 特記すべき報道はなかった。
1・6・7・2・3 南太平洋諸国

太平洋島嶼国との国防相級会合を主催

 河野防衛相が、4月初旬に太平洋島嶼国との国防相級会合を東京で開催すると発表した。  太平洋地域に影響力を強める中国を意識したもので、パプアニューギニア、フィジー、トンガの3ヵ国の国防相と、同地域に関係の深い米、英、仏、豪、ニュージーランドの関係者が出席する。

パラオの光海底ケーブル支援

 茂木外相が10月、米豪と連携して太平洋の島国パラオへの光海底ケーブル敷設を支援すると発表した。

1・6・7・3 インド、インド洋諸国との防衛協力

1・6・7・3・1 インドとの防衛協力

物品役務相互提供協定 (ACSA) 調印

 政府が9月に自衛隊とインド軍が物資や役務を互いに融通する物品役務相互提供協定 (ACSA) に署名した。
 日本政府は米、英、仏、豪、加とそれぞれASCAを締結しており、インドは6ヵ国目になる。

戦闘機の共同訓練

 河野防衛相がインドのシン国防相と電話協議し、日本で予定していた自衛隊とインド軍による初の戦闘機共同訓練をCOVID-19の感染拡大を受け延期すると決めた。
 感染終息後に速やかな実施を目指す。

1・6・7・3・2 その他諸国

 特記すべき報道はなかった。
1・6・7・4 欧州諸国との防衛協力

 特記すべき報道はなかった。
1・6・7・5 東南アジア諸国との防衛協力

1・6・7・5・1 フィリピン

 河野防衛相が5月にフィリピンのロレンザーナ国防相と協議し、東シナ海や南シナ海での中国の活動を念頭に、一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致した。
1・6・7・5・2 ベトナム

 日本国際協力機構 (JICA) が7月にハノイでベトナム政府と、ベトナム海岸警備隊の海上救助および海洋法の執行を改善するのが目的で、360億円規模の哨戒艇6隻の借款契約を締結した。
 菅首相がベトナムを訪問した10月に、日越両国が「防衛装備品の輸出と技術移転に関する合意」に署名した。
1・6・7・5・3 インドネシア

 インドネシアを訪れている菅首相が10月にジョコ大統領と会談し、菅首相は海洋進出を強める中国を念頭に、自由で開かれたインド太平洋構想の推進を訴え、ジョコ大統領は南シナ海を安全で安定的な水域にしていきたいと述べた。
1・6・7・6 中東諸国との防衛協力

 特記すべき報道はなかった。
1・6・7・7 その他諸国との防衛協力

国連 PKO

 防衛省が6月、国連平和維持活動 (PKO) に提供可能な装備品として、航空自衛隊の輸送機C-2とC-130Hを国連の「即応能力登録制度」に基づき登録したと発表した。
 今回の登録は、航続距離の長い輸送機を持たない国が、PKOに要員や装備品を送るなどの需要に応じることが狙いで、PKOへの派遣を義務付けるものではない。

ロシア

 ロシア海軍のバルチック艦隊が1月、アラビア海で日本と海賊対策の合同訓練を実施したと発表した。 訓練は2日間にわたり、海賊に奪われた船舶の奪還作戦などにあたった。
 同艦隊の艦艇と日本の海上自衛隊による合同訓練は初めてという。

1・6・7・8 海上保安庁の協力事業

インドとの協力

 海上保安庁とインド沿岸警備隊の合同訓練が1月にインド南部チェンナイ沖で実施された。
 日印の合同訓練は18回目で、日本からは巡視船えちごと搭載ヘリ、インドからは巡視船など計5隻やヘリ、航空機が参加した。

ASEAN 諸国との協力

 マレーシアで、現地の海難当局が日本の海上保安庁との合同訓練が行われた。
 日本としては訓練を通じて、海上の要衝、マラッカ海峡があるマレーシアとの連携を強化したい考えである。

1・6・7・9 技術協力、武器輸出

1・6・7・9・1 技術協力

日米防衛技術協力

 米シンクタンクAtlantic Councilが4月に公表した報告書で、日米防衛技術協力の必要性を挙げている。 報告書が挙げている主な項目は以下の通りである。

・群制御及び有人/無人連携
・UUVと対潜技術
・AIを活用した訓練環境
・対無人システム
三井造船がマレーシア企業と協力協定

 三井造船が8月下旬、マレーシア企業とベトナム海軍及び沿岸警備隊の艦艇建造で協力するMoUを締結した。
 この合意は日本の東南アジアにおける武器輸出の足がかりになるとみられる。

日英共同開発 AAM JNAAM

 防衛省が令和3年度予算の概算要求で、日英共同開発AAMであるJNAAMに12億円を要求した。
 平成30年度に本試作に移行したJNAAMはMBDA社製Metor BVRAAMに三菱電機製AAM-4Bのシーカを搭載するもので、令和5年度に試験を完了する計画である。

1・6・7・9・2 武器輸出

防衛装備輸出推進重点4ヵ国

 政府が総合商社、防衛産業など関連業界と協力してインド、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど4ヵ国を対象に防衛装備輸出を本格化しようとしていると8月に報じられた。

輸出推進の努力

 政府は令和3年度から防衛装備を輸出するため、民間企業との協力を拡大して新たに輸出先の市場調査などを委託する。 当面は台頭する中国への対応で協力を目指すインドとインドネシア、ベトナム、マレーシアの4ヵ国を対象とする。
 UAEへのC-2輸出は現時点で最も期待できる計画だが、C-2は不整地離着陸能力を有していないことが輸出を実現する上で弱点であるため、C-2による未舗装地での離着陸試験の実施に踏み切り、実証試験を実施した。

個別案件

 三菱電機がフィリピン政府から防空レーダ4基を受注した。 受注したのはJFPS-3 3基ととJTPS-P14 1基をそれぞれ改良したシステムである。
 ドイツとフランスによる哨戒機共同開発への参画について、ドイツ政府が9月に、2025年を目処に調達予定の哨戒機の候補から、P-1が正式に外れたことを明らかにした。
 日本政府が海上自衛隊と同型の護衛艦をインドネシアに輸出する計画を推進していると読売新聞が両国政府関係者の説明に基づいて11月4日に報道した。
 インドネシアは日本から護衛艦4隻を輸入し、技術移転を受け自国で追加で4隻を建造したいとの希望を日本側に伝え、両国はこれと関連して協議を進めていると11月に報じられた。

1・6・8 装備行政

1・6・8・1 調達行政

1・6・8・1・1 国内調達

 COVID-19感染拡大で、世界規模のF-35サプライチェーンで基幹となる2ヵ所が影響を受けている。
 その一つがMHI社にある最終組立と点検施設で1週間にわたり停止しているという。
1・6・8・1・2 米国からの輸入急増

 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) が3月に2015~2019年に世界で行われた兵器取引に関する報告書を発表した。 世界最大の輸出国である米国は2010~2014年と比べて輸出量が23%増加し、世界全体に占めるシェアも5%増の36%に上った。
 米国の輸出先で日本は85%増加した。
1・6・8・1・3 FMS 調達の運用見直し

 FMS契約では代金を原則前払いし、納入が完了すると精算が行われて余剰金の返還を受けるが、納入や精算が遅れることが多く、会計検査院が問題視している。 このため防衛装備庁は米国防安全保障協力局 (DSCA) と協議しFMS契約の合理化で合意した。
 防衛省が米国とのFMS契約に関して、FMSを利用しているオーストラリアや韓国など10ヵ国と共に、改善策をまとめ米側に提示する方針を決めた。 これら諸国はFMSで、納入遅れや未精算が多発している共通の問題を抱える
1・6・8・1・4 中国製 UAV の排除

 政府が各省庁などが保有している1,000機超のUAVについて、原則としてセキュリティー機能の高い新機種に入れ替える方針で、安全保障の観点から事実上中国製UAVを排除する狙いがある。
 このため、政府は令和3年度から、全省庁や独立行政法人特殊法人のUAV運用を抜本的に見直し、
1. 防衛や犯罪捜査
2. 重要インフラの点検
3. 機密性の高い情報を扱う測量
4. 救命・救難
などを「重要業務」に指定し、これらの分野ではサイバー対策が講じられた機種のみ使用を認める。
1・6・8・2 技術力の維持向上

民間研究に重点とした新技術取り込み

 防衛省はAIやUAVなどの先端技術を向上させるため研究開発の強化に乗り出し、令和2年度予算案では研究開発費として過去最大の1,676億円を計上した。

国内企業の買収防止

 日本政府が防衛や宇宙航空分野などの安全保障を強化するため外国為替及び外国貿易法を改正した。 改正法ではCOVID-19パンデミックにより不安定化した国内企業を中国の買収から防ぐことも含んでいる。

1・6・8・3 F-2 後継戦闘機の開発

1・6・8・3・1 連携海外メーカの選定

 政府は次期戦闘機の開発に関し、日米共同で取り組む方向で調整に入ったが、共同開発でも日本主導の方針を維持するため、日本が開発費の大半を負担する。
 F-2後継戦闘機開発の協力にはBAE Systems、Lockheed Martin、Northrop Grumman、Boeingの各社が名乗りを上げた。
1・6・8・3・2 提携先の決定

 政府は次期戦闘機開発の海外からの協力として、Lockheed Martin社からステルスなどの協力を受ける方針を固めた。
1・6・8・3・3 次期戦闘機 (F-X)

次期戦闘機としての開発、正式に開始

 防衛省はF-2戦闘機開発で、今まで次世代戦闘機 (Future Fighter) としていた計画名を次期戦闘機F-Xと改称した。

開発時程

 防衛省が7月に自民党に対し次期戦闘機の開発行程案を提示した。 それによると令和6年度に試作に着手し、13年度に量産開始、F-2が退役時期を迎える17年度からの配備を目指す。

国内開発する技術

 防衛省が7月、ステルス性能など主要機能は原則、国内開発を目指す一方、米英政府や企業と部分協力する方針で協議を進めており、国内開発を目指すのは、ステルス性、ネットワーク戦闘機能、先進統合センサーシステムなどとする案を示した。
 一方で米軍と一体的に作戦を遂行するインターオペラビリティーは米国の支援を受け、同時期に新戦闘機開発を進める英国からはエンジン開発で協力を受ける案などを検討している。

主契約社に1社を選定

 次期主力戦闘機開発の主契約社として三菱重工業と正式に契約した。

1・6・8・4 その他新装備

1・6・8・4・1 艦船の建造と就役

新造艦の計画と着工

 ジャパン マリンユナイテッドが7月に防衛省から「新たな艦艇に関する調査研究」を受託した。 研究内容はDDH,輸送艦および掃海母艦の機能を併せ持つ、いわゆる強襲揚陸艦に相当する艦と考えられる。

新造艦の進水

 リチウムイオン電池を装備した3,000t級SSKの一番艦たいげいの進水命名式が10月にあった。
 新しいFFMタイプの護衛艦が11月に進水しくまのと命名された。
 双胴船体で満載時排水量3,048tのひびき型音響測定艦の3番艦あきが1月に進水した。

新造艦の就役

 そうりゅう型11番艦でリチウムイオン電池を動力源とする潜水艦おうりゅうが3月に就役し呉の第1潜水隊群に配属された。
 2隻の建造が計画されているまや型の一番艦まやが3月に就役し、横須賀の第1護衛隊群第1護衛隊に配属された。

現有艦の改修

 いずも型護衛艦のF-35B離着艦に向けた改修が6月に開始された。 令和2年度の改修はオーバーホールに合わせた改修で、最終工事は平成7年度に行われる次回のオーバーホールに合わせて行われる。
 海幕広報が10月、いずも型護衛艦の先端形状を米海軍のWasp級やAmerica級のような四角に変更する計画について、スキージャンプ台は取り付けないと述べた。

1・6・8・4・2 航空機及び搭載装備

電子戦機

 防衛省が1970年代以前に装備した電子戦機に代わる3種類の電子戦機を同時に開発している。

・ RC-2 ELINT
・ C-2 SOJ
・ P-1 ELINT
ヘリコプタ

 防衛装備庁が3月にUH-X 6機を発注した。 陸上自衛隊は127機保有するUH-1JをUH-X 150機に換装する計画である。
 防衛省は対戦車ヘリの飛行隊は削減すると共に、新たに艦載攻撃ヘリの装備を目指している。

A A M

 英国と日本は2023年の発射試験開始を目指すMETEOR BVRAAMに日本製AESAシーカを搭載するJNAAM計画が2020年で3年目を迎えている。

A S M

 防衛装備庁が2月、現在P-3CやP-1に装備している91式ASMの後継としてP-1に装備する射程400km以上のASMを開発してることを認めた。
 防衛省が12月、超音速対艦ミサイルASM-3Aの取得経費を令和3年度予算案に計上したと発表した。  このASM-3AはASM-3の射程延伸を図ったASM-3(改)とは別の装備である。

無人戦闘機

 河野防衛相が8月、将来的な無人戦闘機の開発について「現実的にしっかり考えたい」と検討に意欲を示した。

電子装備

 特記すべき報道はなかった。

1・6・8・4・3 陸戦装備

射程が2,000kmの地対艦誘導弾

 12式地対艦誘導弾の射程を伸ばす方針を固めた。 開発を進める新型対艦誘導弾の射程が2,000kmに及ぶことが12月に明らかにされた。
 新対艦誘導弾は防衛装備庁が平成30年度から研究を始めており、4年度までに試作を行い同年度中に性能試験を行う計画である。

S A M

 防衛装備庁が93式SAMの後継で航空自衛隊と陸上自衛隊が装備する車載SAMの開発を令和3年度に開始する。

多目的誘導弾改

 防衛装備庁が多目的誘導弾改の開発を川崎重工業 (KHI) に発注したた。 多目的誘導弾改は近隣国でLCACを含む上陸用舟艇などが増強されていることを受けたもので、脅威の質と量の増大に対応しようとしている。

装輪戦闘車両の開発

 防衛装備庁がMHI社に、16式機動戦闘車 (MCV) を基にした3車種の試作を発注した。 試作するのは

・ 歩兵戦闘車 (ICV)
・ 偵察戦闘車 (RCV)
・ 自走迫撃砲 (MMCV)
で、何れも重量はMCVの26t以下であることが求められている。
 一方装備庁は、96式APC後継の装輪装甲車の開発も計画している。

19式装輪自走155mm榴弾砲と16式機動戦闘車の継続調達

 陸上自衛隊が令和2年度予算で、MAN社製8×8車に155mm52口径砲を搭載した19式装輪自走155mm榴弾砲を7門をと16式機動戦闘車を33両を調達する。

新小銃、拳銃

 陸上自衛隊が30年ぶりに更新した20式5.56mm小銃を初公開した。 豊和工業が開発した20式は射程が伸び銃身が14cm短くなっているという。
 さらに、拳銃もドイツ製になり今後、1万4,000丁配備される。

レーザ C-UAV 装置

 防衛省が小型UAVを使ったテロなどに備える車載型のレーザ装置を開発する。 また車載だけでなく艦載して洋上で対応することなども検討する。

陸上配備型の電波妨害装備

 防衛省が、北朝鮮のBMを電波で妨害できる装備の導入に着手する。 ミサイルと地上との電波の送受信を妨害して自爆に導いたり発射を抑止したりするもので、現行の装備では不可能な発射直後の上昇段階でミサイルに対処できるようになるという。

1・6・8・4・4 超高速ミサイル

 防衛装備庁がウェブ上で超高速兵器開発の行程を公表した。 それぞれ2024~2028年に装備化し、2030年代での配備を目指している。
 開発するのは超高速CM HCMと超高速滑空弾HVGPで、前者はスクラムジェット推進、後者は高高度に打ち上げたあと超高速で滑空し目標に至る。
1・6・8・5 導入新装備

1・6・8・5・1 長距離スタンドオフミサイル

 前 述
1・6・8・5・2 航 空 機

F-35A / F-35B

 米国務省が7、F-35 105機の日本への売却を承認したと発表した。 内訳はF-35A 63機とF-35B 42機である。
 日本がF-35 105機の購入を決めたことにより、日本が米国に次いで2番目に多いF-35保有国になる。 またF-35B 42機の購入により、米英に次いで3番目のF-35B保有国になった。

F-15J を F-15JSI に改修

 Boeing社が7月、MHI社とBoeing社が航空自衛隊のF-15Jを、射程900kmのJASSM-ERなどを搭載できるようにするF-15JSIに改修する作業の直接民間取引 (DCS) 契約を行ったと発表した。
 しかし改修の初期費用が膨らんだことから米政府に関連経費の減額を要求したが要求に応じなかったため、政府は令和3年度予算案でF-15の改修費用の計上を見送った。

E-2D

 航空自衛隊が第一次分として4機発注したE-2Dの3番機と4番機が3月に米海兵隊岩国基地に到着していた。 2機は組み立てと試験が終了し次第三沢基地に移動する。

Citation Latitude 飛行点検機

 Cessna社が4月、3機受注しているCitation Latitude 2機を航空自衛隊に納入した。 3番機の納入は2021年始めになる。

F-35A への Auto GCAS 搭載

 三沢基地に配備したF-35Aへの自動地表衝突回避システム (Auto GCAS) の搭載が5月に完了した。

MV-22B Osprey

 日本政府が2015年に5機発注したMV-22B Ospreyのうちの最初の2機が、5月に米海兵隊岩国基地に到着し、最初の1機が7月に木更津駐屯地へ飛来した。
 Ospreyは11月に木更津駐屯地で就役した。

Global Hawk Block 30

 令和3年度の配備を計画しているGlobal Hawk 3機について、調達中止も視野に再検討を行っていることが分かった。
 見直しは、米空軍がFY21 NDAAでGlobal Hawk Block 30とBlock 20の退役方針を示したことで、米空軍が退役させればBlock 30を保有するのは日本と韓国だけになる。

KC-46A

 Boeing社が航空自衛隊向けに2機追加されるKC-46Aを受注した。 日本政府は2017年12月に最初のKC-46A、2018年12月に2番機を発注している。

1・6・8・5・3 ミサイル

AIM-120C-8

 米国務省が8月、AIM-120C-8 32発を日本へ売却する契約を承認した。

1・6・8・5・4 指揮通信装備

 3月に就役し7隻目のAegis艦まやが、海上自衛隊艦で初めてCECを搭載した。
 CECを既に搭載しているE-2Dや米海軍のAegis艦が得た探知情報をリアルタイムで共有することが今後可能となり、自らが目標を捕捉していなくても攻撃できるようになる。
1・6・8・6 将来技術の研究

長距離監視航空機搭載センサ技術

 防衛装備庁がBMやCMを監視する捕捉距離を20%向上させた長距離監視航空機搭載センサを明らかにした。

随伴戦闘 UAV 技術

 防衛省は、航空自衛隊の次期戦闘機の開発に関連し、同戦闘機に随伴するUAVの開発を本格化させる。

1・6・8・7 軍事応用研究の助成

 防衛装備庁が8月、軍事技術に応用可能な基礎研究に費用を助成する令和2年度の安全保障技術研究推進制度に、120件の応募のなかから21件の研究課題を採用した。
1・6・8・8 その他の装備行政

COVID-19 パンデミックの影響

 防衛省が、防衛力整備計画に基づく装備品の調達について、COVID-19パンデミックにかかわらず計画に変更がないことを明らかにした。

三井 E&S 造船が玉野工場の艦艇事業を三菱重工業へ譲渡

 三井E&Sホールディングスが6月、三井E&S造船が玉野艦船工場で手掛けている防衛省向け艦艇事業について、三菱重工業への譲渡に向けて協議を開始したと発表した。
 同工場は補助艦と呼ばれる補給艦や輸送艦を建造している。

防衛産業の装備品事業承継支援

 政府が防衛装備品の生産に関わる企業の経営環境悪化を受け撤退を検討する企業が増えたため、令和3年度から事業承継支援を始める。
 この2年間でもコマツが陸上自衛隊車両の開発を一部中止したほか、火薬などを製造するダイセルもひきあげを決めた。
 防衛装備庁が装備品の部品などを供給する下請け企業を調査しており、実際に複数の企業が撤退を検討していることが分かった。

1・7 対地攻撃兵器

1・7・1 航空機

1・7・1・1 戦闘機等

1・7・1・1・1 米 国

次期戦闘機 (NGAD) 計画

 米空軍の調達責任者が6月、次期戦闘機 (NGAD) 開発計画は予定通り2020年夏に大きく前進すると述べた。
 米議会下院歳出委員が、FY21に空軍が要求しているNGAD関連予算を$506M削減する案を示している。
 米空軍の調達責任者が9月に、NGADの実大実証機が既に飛行しており、多くの記録を塗り替えていると述べた。 米空軍次官補が9月、NGADが初飛行したことを明らかにした。 詳細は明らかにしなかったが、システムは期待したとおりに働いたという。

F-35

 米空軍が4月、F-35Aをアラスカ州のEielson AFBに配備したと発表した。 F-35Aが太平洋空軍に配備されるのは初めてである。
 太平洋空軍は今後機数を増やし2021年末までに54機を配備する。
 米国防総省がF-35Aに完全なSEAD/DEAD能力を付与する契約を行った。 契約の対象は米空軍のほかF-35Aを採用している諸外国にも及ぶ。 今回の契約でF-35Aは、SiAW計画で開発中のAGM-88E AARGMを搭載できるようになる。
 米核兵器開発研究所がF-35機内弾庫から戦術核爆弾を投下する試験に初めて成功した。

F-15EX / F-15E

 米空軍が7月、F-15EXの一次生産分8機を発注した。 F-15EXはコックピットの大画面表示、フライバイワイヤ操縦系を採用し、レーダはRaytheon社製AN/APG-82(V)1 AESAレーダとし、エンジンをGE F-110-129としたほか、ディジタル電子戦装置やヘルメットサイトなどを搭載している。  また機外の武器搭載箇所も2ヵ所増設されている。
 米空軍はF-15C/Dの後継として最終的に144機のF-15EXを装備する計画である。

COIN 機

 米特殊作戦軍 (SOCOM) の武装偵察計画でLeidos社がBronco Ⅱ軽攻撃偵察機の主契約社に指名された。  Bronco Ⅱは翼下に6ヵ所とオプションで胴体下に2ヵ所のハードポイントを持ち、6.5時間以上の滞空能力と、2,000nmの航続距離を持つ。

1・7・1・1・2 欧 州

Tempest

 スウェーデンが7月に、英国が主導するTempest将来戦闘機 (FCAS) 計画に参加するMoUを結んだ。 Tempest計画の参加各国で主導する企業は、英国のBAE Systems社、イタリアのLeonardo社、スウェーデンのSaab社の3社になった。

 BAE Systems社は既に前部胴体の組み立てを開始している。

FCAS / SCAF

 2040年代を目指して独仏西が共同開発する次世代戦闘機FCASの要求性能について、3ヵ国空軍が5月上旬に合意した。
 ドイツはFCASに大幅な自動化を取り入れようとしている。 具体的には航空機同士を結ぶネットワークを高度化してcombat cloudを構成し、AIを用いた目標の分析を行って操縦士を支援するなどである。

既存機

 ドイツ空軍がTranche 4 Eurofighter 38機を発注した。 Tranche 4は今までTranche 3BまたはTranche 3+と呼ばれていた機種で、レーダがE-Scan Radar 1 AESAレーダになっている。

1・7・1・1・3 中 国

 前 述
1・7・1・1・4 ロシア

 MiG社は2011年以来110機のMiG-31をMiG-31BM仕様に改良しており、現在も130機のMiG-31の改良作業中であるという。
 ロシアが間もなくSu-57の量産を開始する模様である。 ただ本格生産までには数年かかると見られる。
 12月に、Su-57が初めて軍に納入され、カフカス地方を管轄する南部軍管区の航空部隊に配備されたと報じられた。 ロシアは最終的に76機のSu-57を調達する計画であるという。
1・7・1・1・5 韓 国

 韓国がKF-X第五世代戦闘機にMeteor BVRAAMを搭載する。
1・7・1・1・6 その他

 トルコTAI社がTF-X開発計画へのマレーシアの参加を働きかけている。 TAI社はこの他に、インドネシア、パキスタン、バングラデッシュ、カザフスタンなどにも計画参加を呼びかけている。  TAI社は2019年にTF-Xの共同生産でアジアのある国とMoUを結んだとしていた。
 イランの戦闘機開発については、特筆すべき報道はなかった。
1・7・1・2 爆撃機等

1・7・1・2・1 米 国

次世代爆撃機 B-21

 B-21の飛行試験用1号機の組み立ては開始され、既に機体の全容が姿を現し始めているという。 B-21の初飛行は当初計画の2021年後半からやや遅れて、2022年初めになるという。
 空軍は2020年代中頃の配備開始を計画している。

既存爆撃機

 米空軍が5月、B-52 76機に8基ずつ搭載しているTF33エンジンを民航機用エンジンに換装する計画のRfPを発簡した。
 米空軍が11月、B-1BにJASSMの擬製弾を機外搭載した飛行試験を行った。 これによりB-1Bが超高速ミサイルを機外搭載することに一歩近づいた。

Arsenel Plane

 米空軍がB-1B、B-2A、B-52H合わせて158機保有する爆撃機より遙かに多いC-130 248機、C-17 222機保有する輸送機からJASSM-ERを発射するArsenel Plane PMEC計画を進めており、Lockheed Martin社が10月にこの計画のPhase 4を受注した。

ガンシップ

 米海兵隊がKC-130J Harvest HAWKガンシップに観目線外 (BLOS) 射撃能力を着ける計画で、5月にRfIを発簡した。
 Harvest HAWKは左側空中給油パイロンにHellfire Ⅱ 4発を搭載するほか、後部貨物扉からViper Strike及びGriffin A ASMを10発発射する。

1・7・1・2・2 中 国

 前 述
1・7・1・2・3 ロシア

次世代爆撃機

 ロシアが同国初のステルス戦略爆撃機PAK DAの試作を開始したと5月に報じられた。 機体の最終組み立ては2021年に完了するという。

既存爆撃機

 改良型Tu-160 Blackjackが2月に初飛行した。 Tu-160の改良は二段階で行われ、最初のTu-160M1では航法装置とオートパイロットの換装が、続くTu-160M2ではレーダの換装とエンジンの改良が行われる。
 1950年代に初めて就役したTu-95の最新型Tu-95MSMが8月に初飛行したと発表した。 Tu-95はその後改良が繰り返されて、Tu-95MSMでは最新のターボファンエンジンと新型プロペラが装備されて、航続距離が画期的に延伸すると共に振動が低減されたという。

1・7・1・3 ヘリコプタ、VTOL機

1・7・1・3・1 米 国

JMR / FLV 計画

 米陸軍のJMR-TD計画でSikorsky/BoeingグループのSB-1 Defiantと競っているBell社製V-280 Valorチルトロータ機が、2019年12月に初めての全自動飛行に成功した。  Sikorsky社とBoeing社で開発しているSB>1 Defiant同軸ロータヘリが、6月に205ktを記録した。 ただこれは50%以下の推進力での飛行という。 SB>1 Defiantは230kt以上で設計されているが、2~3ヶ月以内に250ktの飛行を行うという。
 米陸軍がUH-60 Black Hawkの後継となるFLRAAの前身として進めているJMRはSikorsky-BoeingグループのSB-1 DefiantとBell社のV-280 Valorで競っているが、FY20の8月には結論が出るとされていたが、まだ結論は出ていない。

FARA 計画

 米陸軍OH-58 Kiowa及びAH-64 Apacheの後継となる次期攻撃偵察ヘリFARAの競争試作に進む機種をSikorsky社案とBell社案に絞った。 これによりAVX社、Boeing社、Karen社は脱落した。
 陸軍は2028年配備に向け2023年中頃にこのうちの1社を選定する。 飛行試験は2022年末に開始されるとみられる。

FLRAA 計画

 陸軍はUH-60 Black Hawkの後継となるFLRAAにSikorsky社、Bell社の2社とBoeing社を選定した。
 AVX Aircraft社が米陸軍のFLRAA計画に同軸反転ロータとダクテッドファン2基を装備した案を提案しており、貨物の卸下積載や人員の出入りに便利な後部ランプを持つ案のAVX社は、自社開発を継続すると報じられている。

高速ヘリコプタ計画

 米陸軍がFARAやFLRAAの開発におけるリスク低減活動として、NASAと共同で高速ヘリコプタの研究を進めている。

1・7・1・3・2 中 国

 前 述
1・7・1・3・3 ロシア

 Ka-52M偵察/攻撃ヘリが初飛行した。 Ka-52を大幅改良したKa-52Mは戦車を45kmで発見できるAESAレーダを搭載し、30mm砲を装備している。
 Mi-171Shの改良型であるMi-171Sh-VNが初公開された。 Mi-171Sh-VNはMi-171特輸送ヘリを改良して攻撃能力を付与したもので、機体はチタニウムとケブラーにより耐弾性を高めるとともに、エンジンとロータも新型に更新されている。
 改良型であるMi-35P攻撃ヘリの量産が開始された。 Mi-35Pでは照準装置や各種EO/TV装置が新型になっている。
1・7・1・3・4 韓 国

 前 述
1・7・1・3・5 欧 州

 特記すべき報道はなかった。
1・7・1・4 その他の航空機

 特記すべき報道はなかった。
1・7・2 ミサイル等

1・7・2・1 弾道弾

1・7・2・1・1 米 国

ICBM

 1970年に配備が開始されたLGM-30G Minuteman Ⅲ ICBMが2029年からGBSDに換装される。 空軍はMinuteman Ⅲの後継となるICBM GBSDについて、Minuteman Ⅲとは異なりモジュラー方式を考えている。
 米空軍が9月にNorthrop Grumman社に対し、Minuteman Ⅲ ICBMの後継となるGBSDのEMDを発注した。 EMDは2029年2月までとなっている。
 米国が長距離非核弾頭兵器の開発を進めているのに対しロシア軍高官が、飛来するミサイルが核弾頭か否かを判別するのは困難であるため、全て核弾頭と見なし報復すると述べた。

OpFires

 米DARPAが1月、陸軍と進めているOpFires開発の第3段階をLockheed Martin社に発注した。 最終設計審査 (CDR) は2021年後半、構成品の試験開始は2021年、システムとしての発射試験は2022年に計画されている。 OpFiresはDARPAと陸軍が共同で進めている計画で陸上発射式中距離HBGWである。
 Exquadrum社がDyneticsと共同で6月上旬、米DARPAの超高速ミサイルOpFiresに使用する液体制御固体燃料ロケットの2度目にして最終となる地上燃焼試験を完了した。

CD-ATACMS

 米国防総省はFY21要求に、陸軍が進めているATACMSを元に中距離の対艦能力を持たせるCD-ATACMS計画を要求したが、議会はFY21 NDAAでゼロ査定し計画は終了した。
 CD-ATACMSはATACMSの後継としてLockheed Martin社が受注したPrSMと陸上発射型超高速ミサイルLRPFのギャップを埋めるシステムであったが、既にLockheed Martin社が中距離用としてRaytheon社製のSM-6とTomahawkを陸上発射するシステムを受注している。

LRPF (PrSM)

 LRPF (PrSM)ではRaytheon社と Lockheed Martin社が競っていたが、Raytheon社が3月にDefense Newsに米陸軍のPrSM計画から撤退することを明らかにした。 Lockheed Martin社が4月に、3回目となるPrSMの発射試験を実施した。
 米陸軍が6月、PrSMの改良型Spiral Oneに搭載するマルチモードシーカの試験を開始した。 このシーカはレーダ等に対しホーミングし敵の防空組織破壊を目指すもので対艦攻撃も目指している。
 米議会が、陸軍がPrSM計画を次の段階に進め、マルチモードシーカの開発のため直ちに支出を2倍以上にすることを承認した。 この結果PrSMの配備開始がFY27からFY25に早まる。

1・7・2・1・2 中 国

 前 述
1・7・2・1・3 ロシア

ICBM

 2019年12月にAvanguard(Vanguard)HGV を搭載したICBMを装備した最初の連隊がoperationalになった。  またショイグ国防相が、2020年内に戦略ミサイル軍 (RVSN) でYars及びVanguardの発射機22基が戦闘警戒態勢に入ることを明らかにした。

SLBM

 ロシア国防省が12月、太平洋艦隊所属の原潜がオホーツク海からSLBM Bulava 4発の発射試験を行ったと発表した。

1・7・2・1・4 インド

 特記すべき報道はなかった。
1・7・2・1・5 イラン

 前 述
1・7・2・1・6 その他諸国

パキスタン

 特記すべき報道はなかった。

イスラエル

 前 述

1・7・2・2 超高速飛翔体

1・7・2・2・1 米 国

米国の超高速飛翔体計画

 HGVを弾頭にしたロシアのAvangard ICBMが2019年末にoperationalとなるが、米国で最初のHGVが装備化されるのはその2~3年後になる。
 最初に就役するのは空軍のHCSWとARRWで2022年になる。 その後陸軍のLRHW、海軍のIRCPSと続く。
 スクラムジェット推進で空中発射式のHAWCもHCSWとARRWと同じ頃に実用化すると見られる。  米国防総省で研究開発を所管するグリフィン次官が、Joint Hypersonic Transition Officeを立ち上げて超高速飛翔体の開発を一元的に行うことを明らかにした。

超高速飛翔体関連予算

 米国防総省はFY21予算で超高速飛翔体にFY20より14%多い$2.865Bを要求している。
 このうち陸海軍は前年度のほぼ2倍を要求した一方、空軍の要求は35%減になっている。

陸軍の計画

 米陸軍は2023年までに装備化できる2種類の超高速ミサイル、射程数千kmの長距離型LRHWと射程1,800kmの中距離型MRCを計画している。  このうちMRCがDARPAと陸軍が共同で進めているOpFiresで、Phase 2でのスクラムジェットエンジンの一連の試験を完了した。 縮小型エンジンを用いた試験Phase 1は2019年末に完了している。

海軍の計画

 米国防総省が3月、共用超高速滑空体C-HGBの飛翔試験を行ったと発表した。 C-HGBはハワイ州Kauai島のPMRFから発射された。
 陸軍と海軍が開発している超高速兵器に搭載されるC-HGBは弾頭、誘導装置、配線、熱防護装置からなり、最初の飛翔試験は2017年10月に行われている。 2017年10月に行われた試験ではハワイから発射されたHGVが、約3,500km離れたマーシャル諸島まで飛翔したと報じられている。
 米国家安全保障担当オブライエン補佐官が10月、米海軍は全てのArleigh Burke級駆逐艦に超高速ミサイルを装備すると述べた。 ただ駆逐艦の発射機Mk 41 VLSは胴径の大きな超高速ミサイルを搭載するには換装が必要なため、駆逐艦搭載用には吸気式など別の小型超高速ミサイルも検討されている。

空軍の計画

 米空軍が2月、開発を進めている2件の超高速兵器のうちHCSWの計画中止を明らかにした。 HCSWの開発を続けてきたLockheed Martin社は、同社が開発を行っているARRWの開発に専念するという。
 米空軍が吸気式超高速CMの開発計画を開始した。 この>吸気式超高速CMは戦闘機または爆撃機から発射するもので、推進にはラムジェット、スクラムジェット、または2モードのエンジンが考えられている。
 米空軍がLockheed Martin社と、AGM-183A ARRWの2回目となるB-52Hの機外に搭載した状態での飛行試験を実施した。 初めてのエンジンを噴射しての試験は年末に行われることになっていたがまだ行われていない。
 Generation Orbit社が1月、米空軍研究所 (AFRL) と進めているX-60A超高速飛翔体実験機の地上試験を実施した。 X-60AはAFRLの小規模企業との研究開発計画でUrsa Major Technologies社、Ganeration Orbit社と進められているジンバルエンジンによるTVCの空中発射方式の単段液体燃料推進ロケットである。

DARPA の計画

 米DARPAと陸軍が地対地HGBW OpFires開発の第3段階をLockheed Martin社に発注した。
 DARPAと海軍が2007年~2010年に3回の飛翔試験を実施し、3回とも失敗したHyFly計画が再登板しようとしている。 この計画がHyFly 2と呼ばれている。

メーカーの対応

 Leidos社が12月にDynetics社を買収すると発表した。 Dynetics社は2019年8月に米陸軍からLRHWの試作を受注している。
 シアトルを拠点にするStratolaunch社が2022年のIOCを目指して空中発射式のTalon-A超高速無人試験機を自社開発している。
 Talon-AはMach 6以上の性能を持ち、空気取り入れ方式の液体燃料ロケットエンジンで飛翔するため酸化剤は搭載していない。 エンジンをロケット/スクラムジェットエンジンにすることもできる。
 空中で投下されてロケット推進し、滑空飛行で巡航する。

同盟国との共同研究

 米国防総省が超高速CM技術の共同研究を2019年にノルウェーと開始した。 米陸海軍の将来超高速ミサイルが装備するラムジェットエンジン技術で提携する。
 米国防総省がオーストラリアと新たな超高速研究計画SCIFiREを進めている。

飛翔試験環境

 カリフォルニア州を拠点とするMojave社が、中距離ロケットの空中発射機として作られた搭載能力500,000-lbのStratolaunch機を、同社が提案する超高速飛翔体のテストベッドとして利用する案を公表している。

1・7・2・2・2 中 国

 前 述
1・7・2・2・3 ロシア

Avangard ICBM

 特記すべき報道はなかった。

3M22 Zircon

 北方艦隊のフリゲート艦が2月に超高速ミサイル3M22 Zirconの発射試験に成功した。 発射された3M22 Zirconは北ウラルの地上標的まで500km以上を飛翔した。
 プーチン露大統領が7月、海軍艦に超高速兵器や原子力魚雷などの新型兵器を配備し、戦闘能力を大幅に強化すると表明した。
 ロシアが10月に3M22 Zirconの発射試験をバレンツ海で成功させた。 Zirconは白海でAdmiral Gorshkov級フリゲート艦から発射された。

Kh-47M2

 ロシア空軍のKh-47M2核/非核ASMは最大速度Mach 10で飛行する。

1・7・2・2・4 その他

英 国

 英DSTLと米空軍研究所 (AFRL) が共同で超高速飛翔体THRESHERの開発計画を進めている。 THRESHERは最高速度Mach 5、着弾時の速度Mach 2+、射程2,500~3,000kmの空中発射超高速滑空弾 (HGV) である。
 MBDA社は迎撃弾のほか、2030年代中頃を目指しASMP-Aに代わるスクラムジェット推進CMであるASN4Gの開発も進めている。

インド

 インドDRDOが9月、超高速飛翔体HSTDVの飛行試験に成功した。  ロケットモータで高度30kmまで打ち上げられるHSTDVは、国内開発したスクラムジェットエンジンで20秒以上をMach 6で飛翔し、600秒にわたり1,500kmを飛翔する計画である。

1・7・2・3 巡航ミサイル

1・7・2・3・1 米 国

既存システム及び改良

 米海軍がTomahawk Block Ⅳを全てBlock Ⅴに換装するという。  対艦型のBlock ⅤaにはMSTへ海上の移動目標への終末誘導能力が付与され、更にその2年後には対地型のBlock Ⅴbが配備される。
 Lockheed Martin社は今までに、射程370kmのJASSMと1,000km近いJASSM-ERを併せて3,000発以上を受注している。
 米海軍が2019年11月、F/A-18E/Fに搭載してのAGM-158C LRASMのEOCを宣言した。
 米海軍がQ長射程型AGM-154C-1 JSOW (JSOW ER) の開発をRaytheon社に発注する。 JSOW ERの射程は200nm以上という。
 F-35によるネットワーク型AGM-154C JSOWであるJSOW-NEWの投下試験が2月に行われ、海上移動目標に対する有効性が確認された。
 米海兵隊がFY21に、既存の車両と既存のミサイルを組み合わせ、中国の艦船を陸上から攻撃する計画GBASMとROGUEを開始する。 ROGUE Fire Vehiclesは陸軍の軽装甲車JLTVを無人化してNSMを搭載しようというもので、GBASMは陸海空軍が装備しているミサイルを陸上発射型にしようとする計画である。 米陸軍は2018年に陸上発射型NSMを沖合63哩の標的船に命中させている。

MMRM

 米陸軍が2023年に編成されるPrSMとLRHWの中間として装備する中距離火力 (MRC) 中隊が装備するミサイルMMRMを、艦載のTomahawk及びSM-6の地上発射型にする方向で動いている。

新型システム

 米空軍が4月、2030年には退役するAGM-86Bの後継となる次世代核弾頭ALCMであるLRSOWの開発にRaytheon社を選定した。 LRSOはAGM-86Bだけでなく通常弾頭のAGM-86C/D後継としても考えられている。
 米空軍研究所が3月、低価格のターボジェットを動力としたCM Gray Wolf計画を進めていると発表した。 Gray Wolfは250nm以上巡航できる設計で、ネットワーク化して群攻撃することを目指している。
 米国防総省がFY21予算要求に潜水艦発射核搭載新型CM (SLCM-N) 計画開始を盛り込んでいる。 潜水艦発射核搭載新型CMの配備により、核搭載艦の数は12隻から20~30隻に増えることになる。  SLCM-Nの射程は1,250~2,500kmの非核Tomahawkより長くなりそうである。

1・7・2・3・2 中 国

 前 述
1・7・2・3・3 ロシア

 ロシア国営Almaz-Antey社が2月、Kalibur CMの輸出仕様であるClubに新たにClub-Tが加わったことを明らかにした。 Club-Tは3M-14E1 LACMと3M-54E2 ASCMが発射できる多用途型で、潜水艦発射のClub-S、水上艦発射のClub-N、空中発射のClub-Aに加えて4番目の機種になった。 同社によるとClub-Tの対地モードでの精度はCEP≦50mという。
1・7・2・3・4 欧 州

 特筆すべき報道はなかった。
1・7・2・4 S S M

1・7・2・4・1 米 国

 特筆すべき報道はなかった。
1・7・2・4・2 英 国

 英陸軍が2035年を目指した新構想CF(L)35で要求しているLJFにMBDA社がComplex Weaponを元にした提案を準備している。
 MBDA社はBrimstone、Spear、CAMMなどのASMか、Sea Venomなどを候補に考えている。
1・7・2・5 A S M

1・7・2・5・1 米 国

 米海軍がBoeing社に、発展型ラムジェット (SPEAR) ASMの共同開発を発注した。 SPEAR ASMはF/A-18 Soper HornetとCSGが装備するもので、Boeing社と海軍は2022年末に発射試験を計画している。
 米海軍NAWCWDがノルウェーNammo社と米海軍用に、ラムジェット推進長射程高速兵器THOR-ERの共同開発を開始している。
1・7・2・5・2 中 国

 前 述
1・7・2・5・3 ロシア

 ロシアKronshtadt社が、Orion UAVに搭載する20~100kgの各種武器を公表した。
1・7・2・5・4 その他

 MBDA社が50kg級のBrimstone ASMをMQ-9B Protector RG Mk1から発射する準備をしている。
1・7・2・6 A R M

1・7・2・6・1 米 国

 米空軍が1月にF-35Aの機内弾庫に搭載するstand-in ASM SiAW計画におけるEMD段階のRfIを発簡した。 SiAWはAGM-88E AAGM ARMの長射程型AARGM-ERを強く意識した計画である。
 Northrop Grumman社が11月、米海軍がAGM-88G AARGM-ERのLRIP開始の決定を行うと発表した。
1・7・2・6・2 中 国

 特記すべき報道はなかった。
1・7・2・6・3 欧 州

 英空軍がF-35Bに搭載しようとしているSPEAR-EWはSPEAR ASMの弾頭を撤去してEWを装置を搭載すると共に、発射後には捕捉したデータをデータリンクで母機に送るELINTとしての機能も持たせている。
1・7・2・7 遊弋索敵弾

1・7・2・7・1 米 国

Coyote Block 3

 Raytheon社がCoyote UAVの最新型であるCoyote Block 3の開発を完了した。
 Block 1は既に米陸軍が採用している小型、安価、使い捨て型のUAVで、Block 2は体当たり攻撃型のUAVキラーである。 Block 3は破壊弾頭、EW装置及びISR装置その他を搭載する多用途型である。

Switchblade 600

 今まで米陸軍向けにSwitchblade 300遊弋索敵弾を生産してきたAeroVironment社が、より長射程で対装甲能力も持つSwitchblade 600を開発した。
 陸軍は、Switchblade 300と同じ人力可搬形状で打撃力や射程及び滞空能力の向上を要求しているという。

1・7・2・7・2 イスラエル

micro UAV や遊弋索敵攻撃 UAV に力

 米国防総省は引き続き大型UAVの装備化を進めているが、Hermes 900やHeron TPなどのMALE UAVを発売してから10年経つイスラエルは、2019年10月6日に東南アジアの某国と交わした契約ではSkylark TUAVやHermes 450 MALE UAVと共に数千機のTHOR mini-UAVが含まれるなど、輸出市場で異なる方向を示している。 ・Spike Firefly

 イスラエル軍がRafael社にSpike Fireflyミニチュア遊弋索敵弾を発注した。  Spike Fireflyは人力可搬で、垂直離陸する遊弋索敵弾で、双方向データリンクを搭載しバックパックの総重量は14kgである。
 電池1個と弾頭を搭載した場合の滞空能力は15分、弾頭を搭載しないで電池を2個搭載すると30分滞空でき、風速10m/s以下の環境で速力60km/h(突入速度70km/h)で飛翔する。

Hero シリーズ

 特記すべき報道はなかった。

1・7・2・7・3 欧 州

 特記すべき報道はなかった。
1・7・2・8 誘導装置付きロケット弾

 BAE Systems社が6月、米海軍及びArnold社と共同でAPKWS-Ⅱ ASMをSSMとして使用する試験が完了したと発表した。
1・7・3 U A V

1・7・3・1 HAPS UAV

PHASA-35

 BAE Systems社が2月、PHASA-35 UAVが南オーストラリアのウーメラ試験場で飛行したと発表した。 PHASA-35は高高度擬衛星太陽光動力 (PHASA) UAVで、1年間の滞空能力を持つという。

ベラルーシの ApusDuo

 ベラルーシのUAVOS社が2019年10月に、改良型ApusDuo HAPS UAVの飛行試験を行った。 原型となる翼端長10mのApusDuoは2018年10月に初飛行している。
 次回の飛行試験では成層圏を飛行させる。

英 SPL社の HAPS

 広帯域を要する5G携帯電話では、4Gの10倍の基地局を必要とする。 このため英国のSPL社が高度60,000ft以上を9日間、水素燃料電池で飛行するUAVを提案している。

Sunglider 成層圏通信用 UAV

 ソフトバンク傘下のHAPSモバイル社(東京都港区)が、ニューメキシコ州で、太陽電池を搭載した成層圏通信用のSunglider UAVの4度目の飛行試験に成功した。
 この試験で基本性能の確認を完了し、今後は成層圏での飛行に向けた準備を進める。

1・7・3・2 HALE/MALE/TUAV

1・7・3・2・1 米 国

MQ-9 Reaper 後継

 米空軍がFY22での予算化を視野に2030年代に戦力化するためMQ-9 Reaper後継の検討を開始している。
 MQ-9 Reaper後継には民間の高性能UAVも検討対象となつている。

AUAS 計画

 米陸軍でMQ-1C ER (Gray Eagle ER/MP UAS) が候補になっているAUAS計画も進められている。
 AUASの基本設計段階は2019年始めに完了しているが、陸軍は余り多くを明らかにしていない。

Protector

 英空軍は9機保有しているMQ-9 Reaperを当初は16機のProtectorと換装する計画である。  Protectorは上昇限度45,000ftとReaperの50,000ftより低く、最高速度も240ktより遅い200ktである代わりに滞空能力は40時間とReaperの27時間より長くなり、外部搭載箇所も5ヵ所から9ヵ所になっている。

GA-ASI社の ISR/攻撃用 UAV 構想

 GA-ASI社が9月ISR/打撃用UAVの完成想像図を公表した。
 超長期滞空性能を目指しているこのUAVは何らかの要求に基づいたものではないという。

Northrop Grumman社の SQ-2

 2030年に考えられるMQ-9の後継として提案するUAVにNorthrop Grumman社がSQ-2を公表した。
 SQ-2はhunter-killerのステルスUAVで、航続距離は1,000nmという。 数十機で敵の防空網を突破して目標の捕捉追随を行い、要すればレーダサイトや移動式発射機の破壊も行うという。

FTUAS

 米陸軍が9月、将来TUAVであるFTUASのRfIを発簡した。
 FTUASの受注にはV-Batを提案しているMartin UAV/Northrop Grummaグループのほか、Textron、L3Harris、Aecturus UAVの各社も名乗りを上げている

1・7・3・2・2 中 国

 前 述
1・7・3・2・3 ロシア

 ロシア初の大型UAVが就役した。 Kronstadt社製のGromはLoyal Wingmanとして、有人戦闘機に先行して相手の防空システムを目標とする。
1・7・3・2・4 イスラエル

 特記すべき報道はなかった。
1・7・3・2・5 欧 州

 特記すべき報道はなかった。
1・7・3・3 UCAV

1・7・3・3・1 米 国

XQ-58A Valkyrie

 米空軍研究所 (AFRL) が1月にXQ-58A Valkyrie長距離、高亜音速UAVの4回目となる飛行試験に成功したと発表した。 4回目の飛行試験でXQ-58A Valkyrieは、より実戦に近い高高度で飛行した。
 12月には9日にXQ-58A ValkyrieがF-22及びF-35と連携飛行をした。 XQ-58Aはデータリンク形式が異なるF-22とF-35の中継機を搭載して両機の間で情報を交わせるようにした。

Predator C Avenger

 GA-ASI社はIRSTを装備したPredator C AvengerにAAMを搭載して、空中給油機や偵察機の護衛に当てる提案を行っている。

1・7・3・3・2 中 国

 特記すべき報道はなかった。
1・7・3・3・3 ロシア

 特記すべき報道はなかった。
1・7・3・3・4 その他

 フランスがnEUROn UCAVの技術を開発中のFCAS/SCAFに取り入れようと、Dassault社と共同で飛行試験を行っている。
1・7・3・4 mini/micro/nano UAV

 米陸軍が4月、40mm擲弾発射筒から発射するISR UAV GLUAS構想を明らかにした。
 GLUASは発射後高度2,000ftに達して、電動で2km以内を90分間滞空できる。
1・7・3・5 特殊用途 UAV

1・7・3・5・1 Jamming 用 UAV

MALD-N

 米海軍が3月にRaytheon社に対し、MALD-NのLRIPを発注した。
 MALD-Nは空軍のECM UAVであるADM-160C MALD-Jを元にしており、M900kmを巡航速度Mach 0.6、最高速度Mach 0.9で飛翔する。

BriteCloud EW 装置搭載 UAV 群

 英空軍が行ったシミュレーションで、Leonald社製BriteCloud EW装置を搭載したUAV群が敵防空組織の制圧に成功した。
 BriteCloudは缶詰カン程度の小型smart jammer装置で、擬目標を発生させて敵のレーダを無力化する。

1・7・3・5・2 輸送用 UAV

 米空軍が10月、空軍が開発中の電動VTOL UAV (eVTOL) のAgility Primeは無人補給用であることを明らかにした。
1・7・3・5・3 その他の特殊用途 UAV

監視、レーザ照準用係留式 UAV

 米陸軍が、遠方から地上目標の監視やレーザ照準を行う係留式UAVの調達を行うRfIを4月に発簡した。

衛星を介した指揮統制用 UAV

 EUの欧州防衛庁 (EDA) と欧州宇宙庁 (ESA) が共同でCBRNe環境下での衛星を介した指揮統制に使うUAVの試作と試験の契約を行う。
 この計画はAUDROS CBRNeとしても知られており、計画の第一段階は2018年12月に完了している。

1・7・3・6 UAV 活用技術

1・7・3・6・1 UAV の群制御

 特記すべき報道はなかった。
1・7・3・6・2 Gremlins 計画

X-61A UAV が初飛行

 米DARPAのGremlins計画第3段階で、使用するX-61A UAVが2019年11月に初飛行した。 X-61AはC-130Aから発進して1時間半にわたり飛行してパラシュートで回収された。
 Gremlins計画では本来、UAVをC-130Aで空中回収するが、パラシュート回収は試験だけの処置である。

空中回収試験

 Gremlins計画は10月からX-61 Gremlins Air Vehicle (GAV) の空中回収試験に入った。
 試験は9回行われたが回収に成功したのは3回だけであった。
 GA-ASI社が9月にSparrowhawk小型UAV (sUAV) をMQ-9Aに搭載した状態での飛行試験 (CCT) を実施した。
 SparrowhawkはDARPAのGremlins計画でDynetic社と競争して負けている。

1・7・3・6・3 随伴戦闘 UAV

米 国

 米空軍が5月に、全自動、低価格でAI技術を採用したUAV Skyborg計画を開始した。 Skyborgの運用構想はF-35やF-15EXとチームを組むもので、2023年の実用化を目指している。
 既にKratos社は空軍のLCAAT計画の元でXQ-58A Valkyrieを開発し、1月に4度目の試験飛行を行っている。 一方Boeing社は5月に豪Boeing社でLoyal Wingman UAVをロールアウトしている。
 米空軍がFY23に実用型Skyborg UAVの配備を開始するが、空軍研究所は機内弾庫からAIM-120 AMRAAMを発射する空中戦型Skyborgなど各種ファミリを検討している。

オーストラリア

 Boeing Australia社が豪空軍から3機受注していたLoyal Wingmanは戦闘機並のサイズで、実用航続距離が3,000km以上あり、FA-18E、EA-18G、E-7A、F-35A、P-8Aなどの有人機に同行して、有人機の生存性を高めることが期待されている。
 Boeing Australia社が5月、Loyal Wingman UAVの1号機をロールアウトした。 初飛行は2020年末になるというがまだ初飛行の報道はない。
 Boeing社が7月、オーストラリアで高性能試験機3機によるend-to-endの自動飛行に成功したと発表した。 この計画はBoeing社が勧めているLoyal Wingmanを含む広範囲に適用する技術開発で、2020年末にかけてクイーズランドで試験が続けられる。

英 国

 英国防省が4月、第216飛行隊が復役してUAV群を装備すると共に開発を継続すると発表した。
 第216飛行隊は最低限の有人機を保有し、UAV群で敵の防空組織を混乱させると言う。

欧 州

 Airbus社が7月、ドイツ空軍が行った演習でRemote Carrier (RC) UAVがEurofighterやTornadoとLoyal Wingmanとして働く試験を実施した。

1・7・3・6・4 有無人機連携 (MUM-T)

 英QinetiQが6月、初の有無人連携飛行 (MUM-T) 試験飛行に成功した。
 Leonardod社が10月、英軍のための有無人機連携 (MUM-T) 試験を実施し、AW 159 WildcatヘリとCallen-Lenz半自動TUAVが連携飛行をを行った。
 BAE Systems社が11月、米陸軍のA-Team計画に関する契約を受注したと発表した。 A-Teamは陸軍が将来ヘリFVLで実現しようとしている有無人連携 (MUM-T) 技術で、有無人インターフェスや状況掌握などの技術が盛り込まれる。
1・7・3・6・5 米陸軍空中火力システム (ALE)

 米陸軍が8月、空中火力システム (ALE) の10件の計画を進めることになった。 ALE計画は飛行体、搭載品、ミッションシステムからなり、10件の計画は3分野からなっている。
1・7・4 D E W

1・7・4・1 殺傷型 DEW

1・7・4・1・1 航空機搭載自衛用レーザ兵器

米 国

 米空軍がポッド搭載のレーザ装置で飛来するAAMやSAMを撃墜する自衛用高出力レーザ装置の試作計画SHiELD計画を進めていて、2021年までにF-15に搭載した試験を実施し、その後F-16やF-35の搭載も考えている。
 米MDAがBoeing社と、2021年春までに100kW級レーザの最終試験を行う。  Boeing社とGA-EMS社が、寸法可変の100~250kW級HELの共同開発で合意したと発表した。
 このHELはBoeing社のビーム指向装置で精密捕捉や追随ができ、陸上、海上、航空機など各種プラットフォームに搭載して、単独でも、統合システムの一部としても使用できるという。

中 国

 中国軍が航空機搭載攻撃用レーザポッドの提案要求 (ITT) を行ったと報じられた。

イスラエル

 Rafael社とElbit社が共同で、航空機搭載自衛用レーザを開発している。 自衛用レーザ兵器には50~100kWの出力が必要とされ、現在はダイオード励起式レーザが考えられている。

1・7・4・1・2 空対地レーザ兵器

 米空軍特殊作戦軍 (AFSOC) が航空機搭載レーザ兵器を要求しており、FY22にはその試験が行われることになっている。
 試験を行うのは60kW HELでAC-130J Ghostriderに搭載される。
1・7・4・2 非殺傷型 DEW

1・7・4・2・1 米 国

THOR

 米空軍はDEWとしてのHPMに強い関心を持っていて、7月には空軍研究所 (AFRL) は固体発振技術によるHPM DEWによるUAVの撃墜に成功している。

ODIN UAV 幻惑用艦載レーザ兵器

 米海軍が2月、FY21に駆逐艦やLCSにUAV幻惑用レーザ兵器ODINを後付け装備すると発表した。 最初のODINは駆逐艦Deweyに入渠定期集中工事で取り付けられる。

1・7・4・2・2 その他

 特記すべき報道はなかった。
1・7・5 爆弾,弾頭

1・7・5・1 在来型爆弾

 特記すべき報道はなかった。
1・7・5・2 弾 頭

1・7・5・2・1

 Raytheon社が米海軍から、Tomahawk LACMに搭載する多効果新型弾頭JMEWSのEMDを受注した。
 JEWSでは従来RGM-109E/UGM-109E Tomahawkが搭載してた破片効果弾頭に侵徹能力とミッションプランニング機能が付加される。
1・7・5・3 誘導爆弾

1・7・5・3・1 誘導爆弾

 特記すべき報道はなかった。
1・7・5・3・2 有翼滑空型誘導爆弾

GBU-53/B StormBreaker (SDB-Ⅱ)

 F-15Eに搭載してのSDB Ⅱ StormBreakerが9月にoperationalになった。

1・7・5・3・3 小型誘導爆弾

 特記すべき報道はなかった。
1・7・5・4 巨大爆弾

 米空軍が6月、B-2から大型侵徹爆弾であるGBU-57 MOPを投下する試験を行った。 重量14tで地下60mまで貫通するMOPは全土に6,000ヵ所以上の地下施設を設置している北朝鮮が恐れる武器である。
1・7・5・5 特殊爆弾

 米空軍が2月、Northrop Grumman社に深深度目標 (HDBT) 攻撃用のFMU-167/B空隙感知式深深度用信管 (HTVSF) の2度目の発注を2019年9月に行ったことを明らかにした。
 HTVSFは地中の空隙数を感知計測して作動する信管で、コンクリート貫通時の15,000psiにも耐えることができる。
1・7・5・6 核爆弾/弾頭

1・7・5・6・1 核爆弾

 F-15EやB-2に搭載するB61-12核爆弾に取り付ける新型誘導装置 (TKA) のIOT&Eが完了した。 B61-12は現有のB61-3、-4、-7、-10と逐次換装される。
 米国で初めて公式にB61-12核爆弾を搭載することになるF-15Eによる模擬弾の投下試験が3月に行われ成功した。
1・7・5・6・2 核弾頭

W76-2

 低威力化したW76-2核弾頭を弾頭にしたTrident SLBMを装備した潜水艦Tennesseeが2019年末にKingd Bay潜水艦基地を出港した。 米軍はこのTrident 2に90~475kTある核弾頭に代えて5~7kTの低威力核弾頭を搭載しているという。
 米国の核兵器を管理する国家核安全保障局 (NNSA) が12月、FY20にW76-2の製造を完了し全量を海軍に引き渡したことを明らかにした。

W80-4

 米空軍と国家核安全保障局 (NNSA) がLRSOWに搭載する小型核弾頭の評価を行っている。
 LRSOWは核弾頭搭載AGM-86B ALCMの後継となる核弾頭CMで、弾頭にはALCMが搭載していた核弾頭の再生型であるW80-4が考えられている。

W87-1

 米FY21予算要求で、国家核安全保障局 (NNSA) が次期ICBM GBSD搭載核弾頭W87-1改良計画にFY20より多い$540Mを計上しているが、これは当初の要求額を満たすものではなくなっている。

SLBM 搭載用新型核弾頭 W93 の開発

 米議会下院の水資源開発および関連機関小委員会が7月、SLBM搭載用新型核弾頭W93開発予算を認めない決議案を可決した。 W93開発費については下院軍事委員会がFY21で$32Mを認めていることから議長裁断になる。  W93はTrident Ⅱに搭載されているW88とTrident Ⅰに搭載されているW76の中間サイズで、2040年までに装備する計画である。

1・7・6 電子戦

1・7・6・1 電子戦全般

 特記すべき報道はなかった。
1・7・6・2 電子戦装備

1・7・6・2・1 電子戦機

 特記すべき報道はなかった。
1・7・6・2・2 電子戦装置

航空機搭載

 EUの常設軍事協力枠組み (PESCO) が2019年11月に、航空機搭載電子攻撃 (AEA) 装置の開発に出資することを明らかにした。
 米海軍がEA-18G Growlerにポッドで搭載する中波長領域用のNGJであるNGJ-MBの開発試験を完了し、飛行試験を開始した。 NGJであるNGJ-MBはポッド2基で構成される。
 米海軍が12月、NGJの低周波領域装置NGJ-LBにL3 Harris社を選定し契約を行ったと発表した。 NGJ-HBはまだ明らかにされていない。

艦 載

 SEWIP Block 3はAN/SLQ-32(V)のファミリでAN/ALQ-32(V)7と呼ばれ、AN/SLQ-32(V)6のSEWIP Block 2を改良した電子戦装置で、GaN素子を使用したAESAアンテナ送信機を採用している。
 中国海軍の演習での写真に写っていたType 052D駆逐艦の艦尾に、対艦ミサイルデコイの発射管と見られる一対が映っていた。 この装置は米海軍のMk 59対艦ミサイルデコイと良く似ている。
 Thales UK社が、オランダやポルトガルが艦船に装備している艦載ESM装置Vigile D用のコンパクトアンテナの量産を開始した。 新型コンパクトアンテナの取り付けは2020年末に計画されている。

地上型

 米国防総省のDOT&E室が1月、陸軍に対し電子戦システムと情報システムの連携や味方との競合回避などで更なる検討を要するとした。
 Lockheed Martin社が米陸軍からの契約で、Stryker搭載のSIGINT/サイバ戦装置TLS-Largeの開発の16ヶ月間に及ぶPhase 1を進めている。

1・7・6・3 GPS 電子戦

 特記すべき報道はなかった。
1・7・7 情報取得,偵察等

1・7・7・1 偵察衛星

 米海軍が5月、Capella Space社にSARを発注した。 但しSARを搭載する衛星はまだ打ち上げられていない。 Capella社は36基打ち上げ予定の衛星に1基ずつのSARを搭載するが、最初の衛星を2019年末に打ち上げ、2020年中に6基を打ち上げるはずであった。
 SAR衛星は目標の材質、湿度、3D測定能力を持つことから精密な動きや高度も判別でき、分解能は0.5m以上という。
 Capella Space社が解像度50cm×50cmの高解像度SAR衛星の画像を公表した。 今までの解像度は1m×25cmであった。
1・7・7・2 偵察機,哨戒機

1・7・7・2・1 米 国

U-2

 米空軍がCollins社及びLockheed Martin社と、U-2が搭載しているSYERS EO/IR装置の最新型であるSYERS-2Cの飛行試験を完了した。
 Lockheed Martin社によるとSYERS-2Cは10波長のEO/IRセンサで、従来品より高精細な画像で、固定及び移動目標の発見、追随、分析が可能になる。
 米空軍は訓練用の復座機5機とNASAが使用しているER-2 2機を含めて33機のU-2を保有している。

新固定翼電子偵察機計画

 米陸軍は2006年1月に電子偵察機ACS計画を中止したが、FY28頃の装備を目指して固定翼電子偵察機計画を進めようとしている。

OSTAR 計画の停止

 米政府が5月にOpen Skies条約から11月に単独で離脱するとしたのを受け、米空軍が公式にOpen Skies条約履行のための航空機増強計画 (OSTAR) を停止した。

1・7・7・2・2 中 国

 前 述
1・7・7・2・3 ロシア

 特記すべき報道はなかった。
1・7・7・2・4 欧 州

 計画開始から25年経って、NATOのAGS計画が漸く現実のものとなった。 シシリー島のSigonellaを基地にするNATO AGS Force (NAGSF) はRQ-4D 5機を装備する。
 NATO AGS計画は当初Airbus A321で開始されたが、その後MP-RTIPレーダを搭載したRQ-4D Block 40に計画が変更された。
 イタリアがC4ISTAR特殊任務機に使用するGulfstream G550を1機購入する。 C4ISTARには戦略情報取得のためと電磁優勢獲得のための最新式センサが搭載される。
1・7・7・3 その他の情報取得システム

1・7・7・3・1 係留気球

 米陸軍はJLENS計画が2018年に終わったが、依然として係留気球に関心を持っている。
 その一つとして国防総省は9月下旬にTCOM社に各種サイズからなるPSS-T係留気球計画を発注している。 PSS-TはISRや通信用の戦術係留気球である。
1・7・7・3・2 ネットワークシステム

米 国

 米空軍が今後5年間かけて全ドメイン統合の指揮統制装置ABMSの開発を行う。 米空軍は2019年12月にABMS初の野外試験を実施し、ABMSの28機能中26機能を検証したが、軍は今回の試練に満足しておらず、4月に更に厳しい試験を行うという。
 試験には空軍からF-35とF-22、海軍から駆逐艦、陸軍からHIMARS部隊が参加し、米国がCM攻撃を受けたとの想定でCMを模したQF-16標的機を飛行させたが、米GAOは4月に、計画が遅延しコストが増大している空軍のABMSについて、空軍の要求が確定しておらず、使用する技術を確定する計画もないと空軍の決定に対し警鐘を鳴らす報告を行った。
 米インド太平洋軍が9月に行ったValiant Shield演習で、米空軍が3回目となるABMSの試験を行った。

イスラエル

 Rafael社が2月、イスラエル軍からFire Weaverシステムを受注したと発表した。 Fire Weaverは機甲旅団に配備され2020年中にoperationalになるという。
 Fire Weaverはセンサと火器をIPで結ぶ射撃統制ネットワークシステムで、Rafael社とイスラエルDDRDが陸軍と共同で開発した。

1・8 防空システム

1・8・1 宇宙防衛/戦略 BMD

1・8・1・1 宇宙空間の軍事利用

1・8・1・1・1 地球-月間 (cislunar) 空間の軍事利用

 軍関係者は中国が地球-月間 (cislunar) 空間を軍事利用しようとしていることに危機感を抱いてる。
 米宇宙開発庁 (SDA) がcislunar 空間の軍事利用計画を、予算上の優先度から断念した。 SDAの構想ではcislunarに200基程度の衛星と、X-37Bの様な軌道変更が可能な宇宙船 (AMV) を最小限3基打ち上げようというものであった。
 米宇宙軍とNASAが、業務提携に関する5頁にのぼるMoUを結んだ。 このMoUは特に、静止軌道と月の間の空間cislunarでの活動に焦点を当てている。
 GPSは本来、地球周辺での測位やタイミングを目的としたシステムで、地球から離れた宇宙空間での使用には適していないため、米国防総省は宇宙量子センサ (Quantum Space Sensor) と名付けられたシステムの研究を行っている。
1・8・1・1・2 宇宙空間の軍事利用制限

 ロシアのプーチン大統領が9月に国連総会一般討論で、「宇宙への兵器配備を禁止する法的拘束力のある条約」を締結するよう各国に提案した。
1・8・1・2 BMD センサ

1・8・1・2・1 宇宙配備型センサ

DSP 早期警戒衛星

 米SMSCがNorthrop Grumman社に、2030年3月31日までのDSP早期警戒衛星の維持管理を発注した。 1970年から2007年まで打ち上げられたDSP衛星は現在ではSBIRS衛星と交代しつつある。

SBIRS

 SBIRSは静止軌道にGEO 4基、長楕円軌道にHEO 2基を配しているが、GEOの1号機と2号機に代わる5号機 (GEO-5) と6号機 (GEO-6) の製造が2021年打ち上げ予定で進められている。
 更に2基の打ち上げが計画されていたが、新システムへの移行のため2018年に計画は中止になった。

1・8・1・2・2 BMEWR

 特記すべき報道はなかった。
1・8・1・2・3 LRDR

 Lockheed Martin社と国防総省が2020年代中頃を目指し、ICBM探知用のLRDRのソフトを改良し軌道上の宇宙監視を行う計画を検討している。
1・8・1・3 次世代早期警戒システム

1・8・1・3・1 次世代 OPIR 衛星

 SBIRSの後継となる次世代赤外線探知衛星Next-Gen OPIRは、静止軌道 (GEO) 衛星3基と高高度楕円軌道 (HEO) 衛星2機からなるが、Next-Gen OPIR Block 0に次ぐBlock 1の打ち上げ軌道について、今まで36,000kmの静止軌道に打ち上げていたものを大きく変え、低高度軌道と中高度軌道の混用にする模様である。
 静止軌道衛星は大型目標の捕捉に適している。
1・8・1・3・2 分散配備型警戒システム

宇宙配備宇宙監視システム

 米DARPAが進めているBlackjack計画の第一段階として2022年夏に20基程度の低高度軌道衛星を打ち上げる。 この計画はSDAが進めようとしている衛星群計画の試行で、最終的には数百基の衛星群を目指している。

 米MDAは、敵のHBGWを現在盲点となっている部分を含め発射から弾着まで継続して追随しようとする新たな宇宙配置センサであるHBTSSを早ければFY22にもIOCにしたいと考えている。 しかしながらHBTSSを所管するのがMDAなのかSDAなのかの混乱が続いている。
 米宇宙軍司令官が5月、ミサイル警報システムの全面的な見直しを完了したと発表した。 米SDAのNDSAは以下のようなLayerで構成される。

・Tracking Layer ・Battle Management Layer ・Navigation Management Layer ・Deterrence Layer ・Support Layer ・Transport Layer ・Custody Layer
 Tracking Layerは2段階で開発され、Tranche 0では広視野角 (WFOV) 監視を行う衛星をFY22末に、中視野角 (MFOV) 監視を行う衛星をFY23中頃に、それぞれ10基ずつを打ち上げる。
 Transport Layerでは統合全ドメイン指揮統制 (JADC2) の実現を目指していて、Tranche 0では20基を打ち上げる。

地上配備宇宙監視システム

 米宇宙軍が3月、マーシャル諸島Kwajalein環礁に設置したSpace Fanceレーダがoperationalになったと発表した。 Space Fenseは10cm以下の目標を追随できると言うが、設置されている場所が1ヵ所だけなため、継続した追随はできない。
 米宇宙軍が4月、地上配備型宇宙監視EOシステムGEODSSの向こう10年間にわたる維持管理契約を発注した。 この契約には3州に配備されたレーダ3基についても含まれる。

衛星間ネットワーク

 米宇宙開発庁 (SDA) が低高度軌道に多数の衛星を打ち上げて相互通信を行うシステムを構築するため、衛星間光学通信標準 (OILOS) の開発を開始する。
 米空軍がBMEW用地上設置情報処理装置FORGE MDPAFの開発と生産を発注した。 FORGE MDPAFは赤外線早期警戒衛星SBIRSやその後継となるNext-Gen OPIR衛星だけでなく、その他の衛星や海空のセンサ情報を収集分析する。

1・8・1・3・3 長距離目標判別レーダ (LRDR)

 敵BMの捕捉追随に加えて、デコイや他の飛翔体から実弾頭を見分ける目標分別機能を持つLRDRは、FY22に空軍へ引き渡される計画であったが、COVID-19のパンデミックの影響で1年程度遅れ、空軍への引き渡しはFY23になるという。
1・8・1・3・4 宇宙配備迎撃成果評価システム (SKA)

 米国防総省がMDSの一環として正式にSKAを取り入れた。 SKAはBMDで迎撃成功の可否を評価するシステムで、2022年までに配備する初期型は民間衛星に搭載した小型システムをネットワーク化する。
1・8・1・4 地上配備 BMD システム

1・8・1・4・1 米 国

BMD の多層防衛化

 米国防総省は北朝鮮からのBM脅威に対し新型迎撃弾 (NGI) で対抗しようとしているが、同時にTHAADとSM-3 Block ⅡAの多層防衛システム2種類の検討を進めている。
 SM-3 Block ⅡAは搭載艦を沿岸に配置する案とAegis Ashoreを米本土に配備する案が検討されている。

G M D

 GMDの能力向上にMDAはRKVを進めていたが技術的な問題からこの計画を中止し新たにNGI計画を進めている。 NGIにはMKV技術やモジュラ方式などが求められている。
 米国防総省のグリフィン次官がGBIの後継となる次世代迎撃弾NGIについて3月、当初2020年代末としていた装備時期を、早ければ2028年としたと述べた。 MDAは4月にNGIのRfPを発簡した。

1・8・1・4・2 欧 州

米 BMDS の欧州配備 (EPAA)

 米議会上院軍事委員会がFY21 NDAA案の中で、イランからのBM脅威に対抗するため地中海に配備したAegis艦を増強する可能性についての報告を求めている。
 米国はオバマ政権時代に定めたBMDSの欧州への段階的配備計画EPAAの第一段階でAegis駆逐艦4隻を配備している。

欧州固有の BMD

 特記すべき報道はなかった。

1・8・1・4・3 中 国

 前 述
1・8・1・4・4 ロシア

 ロシア軍が2019年6月にカザフスタンの試験場でA-235 Nudor ABMによる迎撃試験に成功したと発表しているが、TASS通信は6月にロシア宇宙航空軍が別の新型迎撃ミサイルの発射試験に成功したと報じている。
 A-235は現在モスクワ周辺に配備されているA-135の後継で、迎撃弾であるPRS-1MはMach 12で飛翔し、Mach 10までの目標を撃墜できる。
1・8・1・4・5 イスラエル

 特記すべき報道はなかった。
1・8・1・4・6 インド

 特記すべき報道はなかった。
1・8・1・5 空中発射 BMD システム

 特記すべき報道はなかった。
1・8・1・6 DEW による BMD

1・8・1・6・1 米 国

 レーザの効果について評価を行ってきた米国防総省の技術担当責任者が、MDAが進めようとしている航空機搭載レーザによるBM撃破計画にブレーキをかけている。 これを受けMDAはFY21予算要求にDEDDを挙げていない。
 米MDAが9月、超高速ミサイル防衛 (HDWS) でHPMを活用することを検討しており、Raytheon社にMTT計画として15ヶ月の契約を発注した。
1・8・1・6・2 中 国

 特記すべき報道はなかった。
1・8・1・6・3 ロシア

 ロシアのBeriev社がABL搭載航空機の特許を登録した。 Beriev ABLはIl-76MD-90A重輸送機をABLに改造したものである。
 一方、SAMの開発を行っているAlmaz設計局は航空機搭載HELの開発を行っており、Beriev社は1981年に気球の破壊を目的とした計画としてIl-76に炭酸ガスレーザ砲を搭載したA-60を試作している。 A-60は1984年4月に気球の破壊に成功し1991年に2度目の試験にも成功した。
1・8・1・6・4 イスラエル

 イスラエル国防省が1月、レーザ兵器を開発中であることを公表した。  システムには地上設置型、車載型、航空機搭載型があり、航空機搭載型はHALEまたはMALE UAVに搭載して、雲上で飛来するロケット等を撃墜する。
1・8・1・7 ASAT システム

1・8・1・7・1 米 国

 特記すべき報道はなかった。
1・8・1・7・2 中 国

 中国とロシアのキラー衛星が米国と日本の衛星に接近するのが観測されたと報じられた。
1・8・1・7・3 ロシア

PL-19 Nudol DA-ASAT

 PL-19 Nudolは移動可能なDA-ASATで、低高度軌道衛星の破壊を目指している。 ロシアは今までに少なくとも9回のPL-19 Nudol DA-ASATの発射試験を行っているが、何れもデブリを生じるものではなかった。
 米宇宙軍が12月、ロシアがASATの発射試験を行ったと発表した。 ロシアによる衛星攻撃兵器の試験は今年3回目になる。

Cosmos シリーズキラー衛星

 米宇宙軍が7月、ロシアが宇宙配備型の衛星攻撃兵器の実験を行ったと発表した。 宇宙軍によると、ロシアは地球周回軌道上にある衛星から別のロシアの衛星周辺に向けて物体を発射したが、衛星の破壊は行われなかった。
 ロシアは以下のようなキラー衛星を軌道に置いている。

・Cosmos 2519: 主衛星で軌道を変更でき、Cosmos 2521を放出する。
・Cosmos 2521: Cosmos 2519から放出される衛星でCosmos 2523を放出する。
・Cosmos 2523: Cosmos 2521から放出された後に軌道を変更する。
1・8・1・7・4 インド

 特記すべき報道はなかった。
1・8・1・8 軍用宇宙船

 米宇宙軍が5月、X-37B OTV 6度目の打ち上げを行った。 2010年4月に初めて打ち上げられたX-37Bは270日のミッションが可能なように設計されているが、最近では最長780日の周回飛行を行っている。
1・8・2 戦域防空/TBMD

1・8・2・1 BMD レーダ

1・8・2・1・1 HRD レーダ

 ハワイに設置するBMD用レーダHDR-HについてMDAは当初、FY21に着工し1年半後のFY23にIOCになるとしていたが、設置場所の第一候補がハワイ原住民の聖地であることから、計画が大幅に遅れている。
 米MDAが太平洋地域にBMDレーダを設置する計画の破棄を決め、FY21国防予算案にはハワイ設置のHDR-Hも、他の場所に設置するHDR-Pも予算計上されていない。
 12月に米議会がFY21 NDAAで、トランプ政権が最近計画中断の意思を明らかにしたハワイに配備する本土防衛レーダ (HDR-H) を予算復活させた。 
1・8・2・1・2 その他の BMD レーダ

 米北方軍が、HDR-HやPacific Radarの計画遅延から、米空軍とMDAがアラスカに設置したCobra Daneレーダの延命計画を急いでいる。
1・8・2・2 超高速ミサイル防衛

1・8・2・2・1 米 国

方式の検討

 ロシアがAvangard HGV ICBMを配備したのを受け、米MDAは当面、短距離での迎撃に重点を置こうとしている。 米DARPAが1月に、超高速飛翔体防衛の終末段階迎撃RGPWSのRfP素案を発簡した。
 MDAが今後5年間のHDWS計画にはLockheed Martin社がValkyrie、Raytheon社がSM-3 Hawk、更にLockheed Martin社がDART、Boeing社がHypervelocity Interceptorを提案している。
 MDAは2018年9月までにHDWSとしての各社提案を21件に絞り込み、2019年8月下旬と9月上旬に5件に絞り込んでいる。
 一方DARPAは1月に、超高速飛翔体防衛の終末段階迎撃RGPWSのRfP素案を発簡した。 また1月にNorthrop Grumman社にGlide Breakerを発注している。 Glide Breakerは超高速飛翔体を大気圏上層部で撃墜する迎撃弾で、構想は2018年7月に公表されていた。

実用システムの計画

 実用システムとしては、DARPA の Glide Breaker 計画、SM-6 活用案、RGPWSなどの計画があがっていたが、MDAは超高速滑空兵器への第二層防衛として終末段階で撃墜する洋上配備型迎撃システムの開発を開始した。
 洋上配備型迎撃システムとしてはRaytheon社がSM-3 Hawkを、Lockheed Martin社がTHAADの艦上発射型であるDartを、Boeing社がHyvintを提案している。

1・8・2・2・2 欧 州

TWISTER構想

 EUはPESCO枠組みで、陸上発射型の超高速弾/衛星群対抗システムTWISTER構想を進めている。
 TWISTERは軌道上に置かれた早期捕捉システムと迎撃システムの2個システムで構成される。 迎撃対象とするのは機動飛翔する中距離ミサイル、超高速または超音速CM、HGVや次世代戦闘機などの従来型目標で、現在装備している陸上及び艦載システムとの整合が求められている。

MBDA社のラムジェット推進迎撃システム

 TWISTER構想とは対照的にMBDA社は吸気式である亜音速または超音速ラムジェット推進の迎撃システムを検討している。

Quartet迎撃弾

 Quartetは現在及び近未来の推進装置、シーカ、システムの技術を元にした地上発射システムで、ロケットブースタと4発の副迎撃弾でできている。

1・8・2・3 戦域高高度ミサイル防衛

1・8・2・3・1 米 国

Home Land BMD

 米MDAがFY21に要求したHome Land BMDには計画中止となったRKVに代わるNGIを計上しているが、NGIは2027~2028年配備可能なため、MDAは現在のGMDが2020年代の中頃から後段に陳腐化するとして、その間の補完を検討している。 候補となるのはSM-3 Block ⅡAとTHAADで、FY21に発展型THAADの開発と試験を要求している。
 SM-3 Block ⅡAは間もなくICBM迎撃試験が行われる計画で、搭載艦を沿岸に配置する案とAegis Ashoreを米本土に配備する案が検討されている。

太平洋軍の BMD

 米MDAがハワイ防衛のためのSM-3 Block ⅡAを2020年中にKauai島のAegis Ashore試験センタに配備することを明らかにした。  北朝鮮のICBMに対してはアラスカとカリフォルニアのGBIで迎撃するが、第二線となる都市の防衛はSM-3 Block ⅡAで行い、最終段の迎撃はグアムのTHAADが行う。
 米国防次官が1月、北朝鮮のBM脅威に対応してグアム島に配備されているTHAADに代えてインド太平洋軍にAegis Ashoreを配備したいと述べた。  米インド太平洋軍司令官が7月、2026年までにグアムにAegis Ashoreを配備するHomeland Defense System Guam計画が最優先事業であると述べた。  グアムに配備されるAegis Ashoreは既に配備されているTHAADと連携して360゚のBMD戦闘を行うという。

 ダビットソン大将は4月に議会で2021~2026年に$20Bを要求すると述べている。

Aegis Ashore

 2018年8月のIOCを計画していたポーランドに建設中のAegis Ashoreは、地元建設業者の工事遅延から完成が2020年に延期されたが、天候不順と人手不足などから更に2年延期される。

SM-3 Block ⅡA

 特記すべき報道はなかった。

THAAD

 FY21国防予算を審議している米議会の上下両院が、8番目のTHAAD中隊新編を承認する方向で動いている。
 MDAは10年近く前からTHAAD 9個中隊を要求しているが7個中隊だけが認められ、最後の2個中隊については何年も予算化されていなかった。

 MDAが、THAADの射程と射高を2倍にするTHAAD-ERの開発を進めている。 Lockheed Martin社は2006年からTHAAD-ERの開発を進めており、Aerojet社は現在14吋であるTHAADブースタの胴径を21吋にする開発を進めている。
 MDAが1月から8月の間に米BMDSの欧州配備 (EPAA) 第3段階となるPatriotとTHAADの連接試験を3回実施した。  GTI-20 Sprint 1は米中央軍と在欧米軍の指揮下に行われた。

1・8・2・3・2 中 国

 前 述
1・8・2・3・3 ロシア

 特記すべき報道はなかった。
1・8・2・3・4 イスラエル

 米国がイスラエルの強い要求を受け、SBIRS早期警戒衛星のような秘匿度の高い衛星の取得情報をイスラエルが米国を経由せずに直接入手できるようにする。
 IAI社副社長が、Arrow 4の検討に入っていることを示唆した。 Arrow 4に要求されている性能機能は明らかにされていないが、イランの次世代MRBMがMIRV弾頭を搭載すると見ている可能性もある。
1・8・2・4 TBMD /中長距離 SAM

1・8・2・4・1 米 国

 PAC-3は2019年、低価格仕様弾PAC-3であるPAC-3 CRI弾を用いた航空機標的の迎撃試験で、今まで最大射距離での撃墜に成功している。
 10月にTHAADのAN/TPY-2レーダが捕捉した目標情報で発射したPAC-3 MSE弾がBlack Dagger標的の撃墜に成功した。
1・8・2・4・2 欧 州

 ドイツがMIM-104C Patriotの後継として開発を進めているTLVSシステムは、独政府と企業の間で未だに合意が成立せず、RfPと提案書の交換が度々繰り返されているが、MBDA独社とLockheed Martin社の合弁であるTLVS GmbH社が10月にも最終提案を提出した。
1・8・2・4・3 中 国

 前 述
1・8・2・4・4 ロシア

 ロシア国防省が2月、宇宙航空軍の防空部隊が最初のS-350 Vityaz防空システムをレニングラード地区のGatchina演習場に展開したと発表した。
 最初のS-350は2019年12月末にVKSに引き渡されていた。
1・8・2・4・5 インド

 特記すべき報道はなかった。
1・8・2・4・6 イスラエル

 チェコ国防省が9月、イスラエル政府とRafael社製SPYDER防空システムの購入交渉に入ったことを明らかにした。
1・8・2・4・7 イラン

 前 述
1・8・2・4・8 その他

 特記すべき報道はなかった。
1・8・2・5 艦載 BMD システム

1・8・2・5・1 SM-3 Block ⅠB

 Raytheon社が3月、米MDAからSM-3 Block ⅠBのFY19~FY23の多年度契約を受注したと発表した。
 MDAはFY21でSM-3 Block ⅠBに34発分を要求している。 MDAによるとBlock ⅠBを174発調達する計画で、最終納入は2026年になる。
1・8・2・5・2 SM-3 Block ⅡA

量産移行

 米国防総省のOT&E責任者が2019年秋、SM-3 Blovk ⅡAについて量産移行を勧告しており、2月には実用に供しうるとの結論を下す。  しかしながら2018年12月の迎撃試験で、開発段階から量産段階に移行できない欠陥が見つかったがその事実が公開されなかったことが、GAO最近公開した年次報告で明らかになった。
 米議会上院歳出委員会がFY21国防予算で、依然として量産への移行ができていないSM-3 Block ⅡAの改良について、メーカからの改造提案 (ECP) への支出を提案した。

ICBM の迎撃試験

 米MDAが11月、SM-3 Block ⅡAがICBMを模した標的の撃墜試験に成功したと発表した。
 Aegis Baseline 9を装備した駆逐艦は他のセンサが捕捉した情報をC2BMC経由で取得し、遠隔射撃モードで射撃を行った。

1・8・2・5・3 SM-6 Block ⅠB

 米海軍がSM-6のロケットモータを改良して射程延伸と速度の向上を目指したSM-6 Block ⅠBを開発している。
 Block ⅠBではロケットモータの胴径を21吋に大型化し、操舵翼の形状や操舵装置を改良する。
1・8・3 短距離 BMD / C-RAM

1・8・3・1 SRBMD

 イスラエルIMDOが米MDAと共同で、一連のDavid's Sling Weapon System (DSWS) の試験DST-7を成功裏に完了した。 この試験はDSWSの7回目の試験になる。
 DSWDはイスラエルの多層BMD組織の中で中核となるシステムである。
1・8・3・2 USRBMD / C-RAM

1・8・3・2・1 イスラエル

 イスラエル国防省が1月、一連の改良型Iron Domeの試験が成功裏に終了したと発表した。 国防省は改良の内容を明らかにしていない。
 国防省によるとIron Domeは2,000発以上を実戦使用したという。
1・8・3・2・2 米 国

IFPC

 米陸軍はC-RAMのほかC-UAVやCMDの機能も持つIFPCの開発について4月末に提案を締め切り、5月末にはHWILを含む次の段階に移行する。  その後FY21に実射を行い21に機種選定を完了してFY23には配備を開始する。

Iron Dome の取り扱い

 米国議会は陸軍が気乗りしないIron Dome 2個中隊分を陸軍が進めているIFPCの一部としての購入することを強要したが、陸軍ではIFPCでのミサイル撃墜にHELの採用を望んでいる。
 米陸軍に11月、Ft. Blissで2個Iron Dome中隊が創設された。 10月にイスラエルから搬入された最初の中隊機材は12月に部隊が受領し、2個目の中隊機材は2021年1月に受領する計画である。
 米陸軍はIron DomeをIAMDに繰り入れることを渋っているが、海兵隊はIron Domeの採用を進めており、Iron DomeをAN/TPS-80 G/ATORレーダ及びCAC2Sに連接して使用するという。

1・8・3・3 DEW SRBMD

 特筆すべき報道はなかった。
1・8・4 巡航ミサイル防空

 米空軍が、HELWSによるCMD能力の試験も開始した。
 Anduril社のCMD Sentry Towersシステムが基地や国境におけるCM捕捉機能として、11ヶ月にわたり米空軍ABMSで機能している。 システムは光学装置とレーダからなり、CMの発見、識別、追随機能を果たす。 システムはABMSの連接を行う。
 米議会がFY21NDAAで軍に対し、CM攻撃、とりわけ北極圏からの接近に対する防衛について報告するよう求めている。
1・8・5 近距離防空

1・8・5・1 近距離 SAM

1・8・5・1・1 米 国

 1980年代や1990年代には近距離防空は軽視されてきたが、GPS誘導装置の普及で状況は一変した。 特に2019年9月にサウジがUAVやCMで攻撃されたことからSHORADの必要性が見直されている。
 米陸軍が5両試作した暫定配備機動型近距離防空システムIM-SHORADに対して行っている開発試験は6月に完了し、運用試験に移行する。
 陸軍は4個大隊分として144両のIM-SHORADを要求している。
 米陸軍が9月、IM-SHORADの初期生産分をGDLS社に発注したと発表した。 納期は2025年9月末という。
1・8・5・1・2 欧 州

Skyranger Boxer

 SHORAD機能が不足しているドイツ陸軍用にRheinmetall社がSkyranger Boxerを提案している。
 システムは空中炸裂弾 (ABM) を発射する35mm砲のほか高出力レーザ装置 (HEL) も装備している。

Kongsberg MGBADS

 ノルウェー陸軍がKongsberg社にMGBADSを発注した。 納入は2022年後半に開始され、2023年中頃に完納する。
 MGBADSは装軌APCにIRIS-T-SLS発射機と3D捜索追随レーダを搭載したもので、C2にはNASAMS Ⅲの構成品を採用している。

9A33-2BOsa (SA-8)

 ベラルーシが9K33 Osa (SA-8) システムの9A33BM2車及び9A33BM車を改良した9A33-2Bを開発した。

IRIS-T-SLS

 スウェーデン陸軍が6月中旬から下旬にIRIS-T-SLS SAMの評価試験を完了した。 IRIS-T-SLSはIRIS-T AAMの地上発射型でLOAL方式のミサイルである。

IRIS-T-SLS Mk Ⅲ

Diehl社が新型のIRIS-T-SLS Mk Ⅲの開発を間もなく完了する。

VL MICA NG

 MBDA社が10月、MICA NG AAMのSAM型であるVL MICA NGを公表した。 MICA NGはMICA NTに代わるAAMで2018年11月に開発が開始された。

1・8・5・1・3 中 国

 前 述
1・8・5・1・4 ロシア

 ロシア国防省が2019年12月、Gibka-S至近距離防空システム (VSHORAD) の国家試験を完了したと発表した。
 Gibka-Sは装甲車にMANPADを装備するシステムで、発射可能状態に4発と予備弾として4発搭載できる。
1・8・5・2 MANPAD

 米陸軍が11月、Stingerに換えてM-SHORADに搭載するMANPADSのRfIを発簡した。 これに伴いStinger-Reprogrammable MicroprocessorはFY23に廃止される。
1・8・5・3 対空砲

1・8・5・3・1 対空機関砲

 セルビア国防省が8月、Bofors社製L/70 40mm砲の標準砲塔を車載した装輪自走高射機関砲 (SPAAG) にIgla MANPADS 2発を搭載したと発表した。
1・8・5・3・2 対空砲弾

 Northrop Grumman社が、米陸軍及び海兵隊向けの近接信管付き30mm軽量弾LW30 PROXの政府による試験を完了した。
 LW30 PROXはsensor fuzed weaponsの技術を利用した弾で初速1,105m/sで発射される。
1・8・5・4 対空レーザ兵器

1・8・5・4・1 米 国

 米陸軍がFY21 NDAAで超高速ミサイル迎撃レーザシステムを要求している。 これは前年度に比して高出力レーザで209%増になっている。
 これらでは実験室段階から実用段階への移行が目指され、2022年にはStryker装甲車に50kWレーザを搭載、2024年には100~300kWレーザの車載が計画されている。

 米陸軍が8月、50kWと300kWの異なる2種類のレーザ兵器を、予定通り2022年から装備することを明らかにした。 C-RAMを目的に50kWレーザをStrykerに搭載したシステムで、2022年に4両からなる1個小隊を編成する。 米国防総省がGeneral Atomics (GA) 社など3社にCMが撃墜でき300kW程度のレーザ兵器の開発を発注した。
 HEL-IFPCは主としてCM対処用で、開発は100kWを経て300kWに達した。 レーザ本体はLockheed Martin社がDynetics社と共同で担当し、Oshkosh社製10×10 PLS車に搭載する。
 米太平洋艦隊が5月、高出力レーザ兵器LWSDを搭載した輸送揚陸艦が無人標的機の撃墜に成功したと発表した。 LWSDは2014年にAFSB Ponceに搭載された40kWを超えた150kWである。
 米海軍が2019年11月にUAVのセンサを無力化できるODINを駆逐艦に搭載し、実用試験に着手した。 設置位置は艦橋前のCIWSが搭載されていた場所で、米海軍ではUAVに対処するため、新たな能力を艦艇に付加するものだと説明している。

1・8・5・4・2 中 国

 特記すべき記事はなかった。
1・8・5・4・3 ロシア

 ICBMの5個師団には2019年12月にPeresdetレーザシステムが配備されたという。 Peresdetは拠点防空用であるが、限定的ながら対衛星能力も持つという
1・8・5・4・4 欧 州

 ドイツ政府がRheinmetall社に、艦載レーザ兵器の試作を発注した。 試作されるレーザ兵器は出力2kWのファイバレーザを12本束ねて単一ビームに合成して20kWの出力とするもので、将来は100kWを目指す。
1・8・6 対 UAV システム

1・8・6・1 小型 UAV 群対処

1・8・6・1・1 米国の C-sUAS 体系

 2019年11月から米陸軍主導で進められてきた対小型UAV (C-sUAS) 検討結果から、国防総省がC-sUAS候補を約40から8機種に絞り込んだ。
 米陸軍が7月、小型UAV対処 (C-sUAS) システムであるM-LIDSシステムの開発と8両の生産を発注したと発表した。
 海兵隊はC-sUASとして独自システムL-MADISを装備しており、2019年にはイラン沿岸でUAVの撃墜を行っている。
1・8・6・1・2 中国の UAV 群対処

 PLA陸軍の防空部隊が10月、演習でUAV群に対抗した。
 この演習で部隊はMANPADSや対空砲のほか、突撃銃形状の携帯型RF妨害機2基も登場させた。 更に鹵獲網を発射する2種類の砲も登場させた。
1・8・6・2 UAV 捕捉システム

1・8・6・2・1 据え置き/可搬システム

Wingdog-200

 リトアニアがデンマークからC-UAV装置を購入する計画を進めている。
 購入するのはWingman-105小型ハンドヘルド/装着式UAV検知器とWatchdog 200ネットワークRFセンサで、2020年9月までに納入される。

1・8・6・2・2 携帯型/装着型システム

RfPatrol MkⅡ

 オーストラリアDroneShield社が4月、RfPatrol着装型UAV検知器の新型RfPatrol MkⅡを公表した。 RfPatrolはUAVとその操作員の通信を傍受し、その機数までも知らせる。

Wingman-105

 リトアニアがデンマークからC-UAV装置を購入する計画を進めている。
 購入するのはWingman-105小型ハンドヘルド/装着式UAV検知器とWatchdog 200ネットワークRFセンサで、2020年9月までに納入される。

1・8・6・3 ハードキルシステム

1・8・6・3・1 米 国

Boeing社の CLWS

 Boeing社が1月、C-UAV用コンパクトレーザ兵器 (CLWS) を公表した。  Boeing社のCLWSには2kW型と5kW型がある。

Northrop Grumman: 30mm近接信管装着弾 LW30 PRROX と M-ACE

 Northrop Grumman社がBushmaster 30mm砲から発射するC-UAV弾用に軽量30mm近接信管装着弾の試験を完了し、2020年内に陸軍と海兵隊の防空部隊への納入が可能になった。

Raytheon社製 C-UAV システム

 Raytheon社が2019年12月の試験成功を受け、地上発射式の新型C-UAVシステムの陸軍への納入を開始する。 システムは新型のCoyote Block 2迎撃弾を車載している。

1・8・6・3・2 欧 州

 特記すべき報道はなかった。
1・8・6・3・3 ロシア

 特記すべき報道はなかった。
1・8・6・3・4 その他

SMASH 2000 小火器用射撃統制装置

 イスラエル製の照準装置は機関銃や小銃への取り付けるUAV撃墜用の小火器用射撃統制装置で、昼夜間を問わず引き金を引いている間、目標を追随する。

風船爆弾撃墜用レーザ装置(イスラエル)

 イスラエル警察が8月に新型レーザ装置の照射試験を行った。 このシステムはガザ地区から飛ばされる風船爆弾を撃ち落とすことが狙いで命中率は90%を超えるという。

1・8・6・4 UAV キラー UAV

Iron Drone

 IAI社がDronw Guard C-UAVシステムに、迎撃用UAVとしてIron Drone社製Iron Droneキラー UAVを組み入れた。 Iron Droneは相手のUAVに接近し体当たりするUAVで、撃墜を確実にするためワイヤを放出する。

Skylord mini-UAV

 米国がイスラエル製Skylord mini-UAVをCUAVに活用する検討を行っている。 Skylordは操作員の操作で敵のUAVに体当たりして撃墜するUAVである。

ロシアが C-UAV 用無人ヘリを開発中

 ロシアが11月からC-UAV用の無人ヘリの開発を行っていると報じられた。 このUAVは低速で超低空を飛行する小型目標を追随できるという。

1・8・6・5 ソフトキルシステム

1・8・6・5・1 米 国

THOR システム

 米空軍が小型UAV対処のHPM装備であるTHORを2020年秋に海外に運び実戦下での試験を行う。 またRaytheon社が開発したHELWSとHPM兵器であるPHASERの試験も同時に行う。

DroneShield社のシステム

 DroneShield社が2019年7月に拳銃型のUAV jammerである2kg以下のDroneGun MKⅢを発表している。 DroneGun MKⅢは着装式のUAV警報装置RfPatrolと併せて使用できる。
 DroneShield社が米空軍からC-UAVシステムを受注した。 空軍が購入するのはDrangonSentry C-UAVシステムで、RF方探装置とECM装置からなる。

1・8・6・5・2 イスラエル

Drone Dome-L

 Rafael社が2月、Land Rover車搭載Drone DomeレーザC-UAV装置で4ロータUAVの撃墜に成功した。

EnforceAir

 米国防総省が1月、特殊部隊や小部隊が装備するC-UAV装置にイスラエル製のEnforceAirを採用する決定をした。 EnforceAirはUAVを自動で捕捉、識別、標定し、その指揮統制システムを乗っ取って指定した地点に強制着陸させる。

1・8・6・5・3 欧 州

 フランスのCERBAIR社が小型UAV (sUAV) に対抗するChimera人力可搬型C-UAV装置を開発した。
 ChimeraはWi-Fiを含む全てのRFを使用するsUAVに有効で、システムは無指向性アンテナを収納した箱と、指向性アンテナ付きでリチウムイオン電池で動く妨害機で構成されている。
1・8・6・5・4 ロシア

 ロシアRostec社が、四段階からなるソフトキル/ハードキル両用型のC-UAV装置を開発した。
 第一段階のソフトキルでは4種類のECMが可能で30kmの有効範囲を持つ。 第二段階、第三段階は3~4km有効なJammingをおこない、第四段階では重量4.5mm空気銃で撃墜する。
1・8・6・5・5 オーストラリア

 特記すべき報道はなかった。
1・8・6・5・6 その他

サウジアラビアの C-UAV システム

 サウジアラビアが他国と共同で、国家レベルのCUAVシステムを開発している。 システムはsoft killと各種hard killを組み合わせるものでシステム規模が可変という。

シンガポール TRD社の Orion H+ 軽量 jammer C-UAV装置

 シンガポールのTRD社が重量6kg以下のOrion H+軽量jammer C-UAV装置を公開した。

PLA 陸軍の軽量型 C-UAV jamming装置

 中国CCTVが9月、PLA陸軍の兵士が軽量型C-UAV jamming装置を取り扱っている映像を報じた。

1・8・6・6 鹵獲システム

DDP、E-FEND Enforce Air 鹵獲装置

 ELTA North America社が米戦闘テロ技術支援局 (CTTSO) と、機動型対小型UAV (C-sUAV) DDPを軍に配備する準備を進めている。 DDPは各種センサと指向性jammer、E-FEND Enforce Air鹵獲装置、Smart Shooter撃墜装置などで構成される。

Drone Guard と Iron Drone社製UAV迎撃装置の組み合わせ

 IAI社がメキシコのIron Drone社と、Drone GuardシステムとIron Drone社製UAV迎撃装置の組み合わせで共同する。  Drone Guardは各種センサなどを組み合わせたC-UACシステムで、Iron DroneはUAVを鹵獲する独特な方式であるため、プログラム飛行をするUAVや、妨害に対し強い通信を使用するUAVも排除できる。

1・8・7 防空 C3I

1・8・7・1 対空レーダ

1・8・7・1・1 地対空レーダ

米 国

 米空軍が2014年にRaytheon社と開発契約を行っている前進配備長距離3Dレーダ (3DELRR) 計画を各種技術的問題などから中止しようとしている。
 Raytheon社が3月に米陸軍向けに試作しているLTAMDSレーダは、屋内の試験設備における最初のアンテナアレイ試験に成功した。 レーダの1号機は2021年に陸軍へ納入されると言う。

ロシア

 ロシアがリビアの航空基地にP-12/18 Spoon Restレーダを展開していた。
 P-12は1956年から使用している車載VHFレーダで捕捉距離は200km、P-18は1970年に装備された同じく車載VHFレーダで捕捉距離は250kmである。

欧 州

 オランダ空軍が1月にSMART-Lレーダを受領した。 SMART-Lは多ビーム方式の艦載AESAレーダの地上設置型で、捕捉距離は2,000kmという。

1・8・7・1・2 艦対空レーダ

米 国

 11月に船台組み立ては開始されたDDG 51 Flight Ⅲの一番艦に搭載されるAN/SPY-6レーダの1号機が7月に納入された。 捕捉距離は従来の3倍になる。
 SPY-6はモジュラー式でFlight Ⅲには一面に37個が組み込まれるが、現有のFlight ⅡAには電力とスペースの制約から24個が組み込める。Flight ⅡA 15隻はAN/SPY-6(V)1に換装され、一番艦には2024年に装備される。

中 国

 中国で、Type 055駆逐艦が対衛星能力を持つと報じたのに続いて、搭載レーダは低軌道衛星を捕捉する能力を有すると報じられた。 Type 055はType 052D同様に四面アンテナを装備しているが、約40%大きくなっている。
 中国海軍がType 909A試験艦で将来水上艦に装備する捜索レーダの試験を行っている。

1・8・7・1・3 特殊レーダ

OTH レーダ

 ロシアがモルドビア共和国に設置したKonteyner OTH-Rが2019年12月にフル稼働に入った。
 オーストラリアがBAE Systems社に発注しているJindalee OTHレーダ3基の改良工事は2028年に完了する。

バイ/マルチスタティックレーダ

 Elta社が10月、電波を放射しないで航空情報を取得するセンサシステムPCLを公表した。
 システムはFM放送、ディジタルオーディオ放送など別のシステムの発する電波を捕捉することで全周3Dの監視を行うため、周波数帯域はレーダなどより遙かに低い100MHz付近を使用する。

パッシブレーダ

 特記すべき報道はなかった。

レーザレーダ

 特記すべき報道はなかった。

1・8・7・2 空中センサ

1・8・7・2・1 AEW&C 機

米 国

 特記すべき報道はなかった。

中 国

 前 述

ロシア

 特記すべき報道はなかった。

欧 州

 NATOがドイツに置いているE-3 Sentry AEW&C機を2035年まで使用したいとして延命計画の契約を行ったが、2035年以降のE-3に代わる構想には、情報をマルチドメインで配付するシステム同士をつなぐシステムAFSCもある。 計画には米空軍が開発しているABMSの導入も考えられている。
 英空軍が5機の調達を計画していたE-7A Wedgetailが3機に縮小されると報じられた。

1・8・7・2・2 AEW UAV

 特記すべき報道はなかった。
1・8・7・2・3 AEW 係留気球/飛行船

 フランスDGAがThales Alena Space社とThales社に、高高度滞空偵察監視用飛行船の研究を発注した。 Stratobusは高度65,600ftで太陽電池だけを動力源として4基の電動モータで位置を維持し、500km先の水平線までを監視する。
 電力の一部で水を電気分解して水素と酸素をタンクに貯蔵し、夜間はこれを使って電気を得る。
1・8・7・3 情報処理、指揮統制

1・8・7・3・1 米 国

IBCS

 米陸軍が実施したIBCSの実員部隊実験で、同時に襲来するBMとCMを模した2標的をPAC-2弾とPAC-3弾で撃墜したことで、量産移行への準備が整った。 2016年に行われたLUTが失敗していたため、装備化が4年遅れになった。
 米国防総省が12月に陸軍のIAMDシステムのLRIPへの移行を決定するMilestone Cを実施し、調達責任者の評定待ち状態にある。

CEC / NIFC-CA

 特記すべき報道はなかった。

1・8・7・3・2 その他

 2019年のパリ航空ショーでRafael社がSky Spotter IR広域監視システムを公表した。 イスラエルの国境に覆域を重複させながら配置されたSky Spotterはそれぞれ20゚×90゚の監視範囲を持つ中波長IRセンサで、30~60kmの捕捉能力を持つ。
1・9 関連軍事技術

1・9・1 陸戦兵器

1・9・1・1 ロボット、UGV

 米空軍が11月、フロリダ州の空軍基地で犬型ロボットが警備任務に就いている映像を公開した。
 後ろに屈伸する4足で、頭がないものの犬と同じ形をしたロボットは同基地の第325保安大隊で120㎢の施設警備に当たっていると言う。
1・9・1・2 A P S

1・9・1・2・1 米 国

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・1・2・2 中 国

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・1・2・3 イスラエル

 Elbit社が1月、Iron Fist APSの120mm APFSDSの撃破試験に成功したと発表した。 Iron Fistは近接撃破式で、公開された映像ではIFLKから発射されたIron Fist弾がAPFSDSの直近で破裂した。
1・9・1・2・4 ロシア

 ロシア国防省が2019年12月、試験用としてTKB-0252 Drozd-2 APSのT-72BK MBTへの取り付けを発注した報じられた。
1・9・1・3 戦闘車両

1・9・1・3・1 米 国

ACV の追加調達

 米海兵隊がACV 26両を追加調達した。 調達するのはLRIPの追加分で、これにより海兵隊の保有数は合わせて116両になる。
 米第1海兵師団が11月、新型ACVの第一陣が第3水陸強襲大隊D中隊に配備されたと発表した。 第二陣は2021年1月か2月に配備される計画である。
 BAE Systems社が12月、ACVの本格量産 (FRP) を受注したと発表した。 受注したのは36両であるが、2021年初めには72両に増えるという。 更に契約では、今後5年間で80両のオプションも行われている。

MPF 軽戦車

 BAE Systems社とGDLS社で製造が進められている米陸軍の軽戦車MPF 12両の3月から8月末とされていた納品が、COVID-19パンデミックの影響で10月以降のFY21にずれ込む。

Bradley 更新計画

 Northrop Grumman社が米陸軍のBradley更新計画用としてXM913 50mm砲の納入を行っており、8月下旬に4門を納入したのに続き10月末には7門を納入する。 更に2021年に10門を納入する。
 50mm砲はBushmaster機関砲と混用されると共に次世代戦闘車NGCVにも採用される。

1・9・1・3・2 その他

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・1・4 システム装具

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・1・5 対地雷、対 IED

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・2 海戦兵器

1・9・2・1 航空母艦

1・9・2・1・1 米 国

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・2・1・2 中 国

 前 述
1・9・2・1・3 英 国

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・2・1・4 インド

 前 述
1・9・2・1・5 ロシア

 前 述
1・9・2・2 潜水艦

1・9・2・2・1

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・2・3 水上艦

1・9・2・3・1 米 国

巡洋艦 (LSC)

 米海軍はFY20予算のFYDPで次期大型水上艦 (LSC) 初号艦の調達をFY25としていたが、FY21予算要求ではLSCについて述べられておらず、計画は再度延期される模様である。

駆逐艦

 米海軍作戦部長が10月、Arleigh Burk級に代わる次世代駆逐艦DDG Nextの調達を2025年に開始すると述べた。 DDG Nextは16,000t近いZumwalt級よりは小型になるという。

LCS / フリゲート艦

 米海軍が次期フリゲート艦にイタリアFincantieri社製のFREMMを選定した。 次期フリゲート艦にはAN/SPY-6レーダの派生型と32セルのVLSが搭載される。
 最初に10隻が建造され、FY21以降毎年2隻ずつ発注されて最終的には20隻の建造が計画されている。

1・9・2・3・2 中 国

 前 述
1・9・2・3・3 欧 州

 ドイツ海軍はMKS 180フリゲート艦4隻を発注している。
 英海軍の次期フリゲート艦Type 31については、特筆すべき報道はなかった。
1・9・2・3・4 ロシア

 前 述
1・9・2・4 水陸両用戦艦

1・9・2・4・1 米 国

 米海軍がインド太平洋地域での作戦を見据えた軽揚陸艦LAWを進めようとしている。 LAWは全長200ft以下、速力14ktとしている。
 構想では30隻装備する。
1・9・2・4・2 中 国

 前 述
1・9・2・4・3 その他

 特筆すべき報道はなかった。
1・9・2・5 USV / UUV

1・9・2・5・1 米 国

全体計画

 米国防総省長官官房 (OSD) が海軍に対し、空母2隻の削減を検討するよう求めている。 また駆逐艦を含む大型艦を現状に留め、無人艦や小型艦で補う検討も求めている。
 それによると現在11隻ある空母を9隻にし、無人艦や小型艦を65隻装備するという。

U U V

 米海軍が、2019年に4隻を受注しているOrca巨大UUV (XLUUV) が敷設するHammerheadとも呼ばれるカプセル収納式の敷設機雷を2024年1月までに30発試作する。
 米海軍が12月、大型UUVであるLDUUVの試作に関するRfPを発簡した。 海軍はFY21に1社を選定して2隻のLDUUVを試作する計画である。
 米海軍が開発を行っているKnifefish UUVについて、国防総省が最近の試験結果を元に、更なる開発が必要との評価を下した。
 KnifefishはLCSから発進する機雷などを発見する中型UUVで、LRIP 開始の承認となるMilestone Cは2019年8月に通過し、5隻の生産を発注している。
 米海軍はKinefefish 30隻の装備を計画している。

U S V

 各種対艦/対地ミサイルを装備する米海軍の大型USV (LUSV) は全長200~300ft、排水量2,000~3,000tとの記載もある。 米海軍は9月にLUSV の検討を数社に発注した。
 米海軍は全長45~190ft、排水量500t程度の中型USV (MUSV) の検討を行っている。 米議会はFY21予算案で、海軍が要求しているLUSV 2隻の建造を認めていないが、MUSV の建造は認めている。
 米DARPAがSea Train構想を進めている。 この構想は4隻の中型USVを連結して外洋を航海させるもので、それぞれは離岸して15nm程沖合で自動的に集結して連結し、連結後は6,500nmの航続距離を持ち東南アジア海域の目的地に向けて航海する。 目的地到着後は連結を解いてぞれぞれ情報収集などの任務に当たり、任務終了後は再び連結して帰投する。
 米海軍は現在、大型及び中型水上艦を基幹とした作戦構想を検討しているが、BMD任務にUSVを活用することを検討している。 駆逐艦の行動の自由を確保し、より広域での活動ができるようにしようというものである。

1・9・2・5・2 中 国

 前 述
1・9・2・5・3 英 国

 英国防省が3月上旬、2019年9月にMSubs社に、有人潜水艇S201を無人化する巨大UUV XLUUV開発のStage 1を発注したと発表した。 S201 XLUUVは全長8.9m、重量8.9tでMantaと呼ばれている。  英MBT社が新型自動USVを公表した。 用途はASW、ISR、哨戒、音響測定など多岐にわたる。 船体の外形は三胴型に似ているが両側に張り出たスポンソンは常に水中にあるのではない。
1・9・2・5・4 その他

シンガポール

 特筆すべき報道はなかった。

韓 国

 特筆すべき報道はなかった。

1・9・2・6 艦載装備

 米海軍が6月、CVN-78 Gerald Fordが装備している電磁カタパルトEMALSが洋上で故障し、修理が終わるまで航空機の離着艦ができないことを明らかにした。
 米海軍駆逐艦Zumwaltが10月、Mk 57 VLSからSM-2 Block ⅢAZを初めて発射する試験に成功した。 Mk 57 VLSはMk 41と違って艦中央ではなく舷側に配置されている。
1・9・3 空戦兵器

1・9・3・1 機上 FCS 装置

KF-X 搭載 Elta社製 GaN AESA レーダ

 2023年の飛行試験に向けイスラエルと開発が進められている韓国のKF-X搭載レーダは量産型の試作が行われている。 イスラエル社の下請けとして開発にあたっているHanwha社によるとGaN素子を採用している。

Gripen C/D 搭載 S-15/Aファミリ X-band 多機能 AESA レーダ

 Saab社がGripen C/Dに搭載するPS-15/AファミリのX-band多機能AESAレーダの飛行試験を開始した。
 このレーダはAESAにGaN素子を使用しているものの、送受信モジュール以外の送受信装置、信号処理装置などの総称であるバックエンドにはPS-05/A Mk4のものを使用している。

Captor-E AESA レーダ

 Eurofighter Typhoon搭載レーダをAESAにするCaptor-Eが、共同計画国のドイツで初めて採用される。 ドイツは106機に搭載するとみられ、スペインからは最終的に40~50基の受注が見込まれている。
 Captor-E搭載Typhoonは既にクウェートに28機、カタールに24機輸出されている。

米空軍予備役 F-16 の AN/APG-83 SABR が operational

 Northrop Grumman社が10月、米空軍が予備役のF-16に搭載したAN/APG-83 SABR AESAレーダのoperationalを宣言したと発表した。
 米空軍は現在F-16C/D Block 40/42/50/52を合わせて1,000機以上保有している。

1・9・3・2 A A M

1・9・3・2・1 米 国

AIM-120 AMRAAM SIP

 米空軍が9月Raytheon社に、4年間の契約でAIM-120 AMRAAMのSIPを発注した。 SIPはAMRAAMの戦闘能力や新たな脅威対応能力を向上させるソフトウェアの更新で、現有のAIM-120C-7やAIM-120Dに適用される。

AIM-120C-8

 AIM-120C-8はAIM-120C-7の改良型で、シーカはC-7と同じであるが、内蔵GPS、データリンク、ソフトが改良され、160kmの射程とMach 4の速度と言われている。

AIM-260 JTAM

 米空軍は2019年夏に公表したAIM-260はAIM-120 AMRAAMとほぼ同寸であるが、射程はAMRAAMより遙かに長い。 しかし吸気式推進装置ではないという。

自衛用小型ミサイル (MSDM)

 米空軍研究所 (AFRL) が、秘密裏に開発する自衛用小型ミサイル (MSDM) の担当にRaytheon社を選定した。  MSDMはAIM-9Xの25~30%の大きさという。

1・9・3・2・2 中 国

 特記すべき報道はなかった。
1・9・3・2・3 その他

 特記すべき報道はなかった。
1・9・3・3 戦闘機自衛装置

1・9・3・3・1 自衛用小型 AAM

 前 述
1・9・3・3・2 機上搭載 DEW 装置

 戦闘機の自衛手段となる高出力レーザ (SHIELD) 計画は50kWの固体レーザで、Phase 2では2021年に航空機に搭載した試験を計画している。
 Phase 3では2021~2025年に150kWレーザで実際の迎撃を行う。
1・9・3・4 その他の機上搭載装備

1・9・3・4・1 アビオニクス

 米DARPAがCOINやCAS戦闘用として、ASMと砲を連動させて射撃するGunslingerシステムを検討していてFY21予算を要求している。
1・9・3・4・2 武器等の投下システム

 特記すべき報道はなかった。
1・9・4 サイバ戦

1・9・4・1 サイバ戦の様相

1・9・4・1・1 中国によるサイバ攻撃

NEC に対するサイバ攻撃

 NECがサイバ攻撃を受けたのは、米司法省が中国政府と関連すると見ているハッカ集団APT10が関与した疑いが強いことが、専門家らの分析で明らかになった。

COVID-19 関連情報の略取

 米連邦捜査局 (FBI) と国土安全保障省が5月、中国系のハッカー集団がCOVID-19感染症に関する研究を手掛ける米国機関に不正侵入していると発表し、科学者や公衆衛生当局者に注意を呼び掛けた。

在米中国人による米国内外の企業にハッキング

 米司法省が7月、10年以上にわたり米国内外の企業にハッキングを仕掛け情報を盗んだとして、中国籍の男性ハッカー2人を企業秘密の窃盗など11の罪で起訴したと発表した。
 日本企業も標的になっていたという。

シンガポール人によるスパイ活動

 米司法省が7月までに、中国の情報機関のために米国で情報収集活動をしていたとしてシンガポール人の男を訴追した。
 このシンガポール人は企業のコンピューターネットワークに不正侵入し、情報を盗んだとされる。

オーストラリアに対するサイバ攻撃

 オーストラリア国防相が9月、同国に対するサイバ攻撃の頻度がここ数ヵ月の間に高まったと述べた。 公表さたサイバーセキュリティの脅威に関する初の報告書では、当局は6月末までの1年間に2,266件の事例に対応し、59,806件のサイバ犯罪の報告を受けたとしており、1日で4,500回のハッキング未遂があった事例が示された。

1・9・4・1・2 ロシアによるサイバ攻撃

ポーランドに対するサイバ攻撃

 ポーランドの保安部門報道官が、ロシアが米国との同盟関係を弱体化させる目的で、ポーランドに対しサイバ攻撃で継続的に偽情報を流す情報操作を行っていると述べた。

ドイツに対するサイバ攻撃

 ドイツのメルケル首相が5月、2015年に同氏の事務所や議会のコンピュータがハッキングされた問題について、ロシアが関与した確かな証拠があると述べ、同国に強い懸念を示した。

メール転送ソフト Ixim の脆弱性を狙ったハッキング

 米国家安全保障局 (NSA) が5月、ロシアが特殊な技術を用いてハッキングを行っているとして、政府当局や民間企業に警戒するよう呼び掛けた。

COVID-19ワクチン開発情報の略取

 英政府が7月、ロシアのハッカー集団がCOVID-19のワクチンを開発する研究機関にサイバ攻撃をしかけていると発表した。
 ワクチンや治療法に関わる情報を盗み出すのが目的だったとみられる。

米大統領選への干渉

 Microsoft社が9月、中国とロシア、イランをそれぞれ拠点とするハッカー集団からのサイバ攻撃を確認したと発表した。
 11月の米大統領選の共和党候補トランプ大統領と民主党候補バイデン前副大統領の両陣営とも標的にされており、外国勢力が選挙を狙った攻撃を強めていることがはっきりしたと分析している。

ノルウェーに対するサイバ攻撃

 ノルウェー外相が10月、同国議会のシステムが8月にサイバ攻撃を受けた事案について、政府が入手した情報に基づき、ロシアがこのサイバ攻撃の黒幕だと判断したとし、ロシアが関与していたと非難した。

米ITインフラ管理大手に対する攻撃

 米ITインフラ管理ソフトウエア大手ソーラーウィンズ社が12月、同社の顧客がロシア系とみられるハッカー集団からサイバー攻撃を受けたと発表した。 同社の顧客には米国内有力企業のほとんどと、米陸海空など5軍、国務省、国家安全保障局、大統領府が含まれている。

Micro Officeのライセンス販売業者のアクセス権を利用した攻撃

 サイバーセキュリティのCrowdStrike Holdings社が12月、ロシア系とみられるハッカー集団がMicro Officeのライセンス販売業者のアクセス権を利用して同社の電子メールを不正に取得しようとしていたと発表した。

1・9・4・1・3 トルコが疑われるサイバ攻撃

 複数の欧米安全保障当局者が、欧州および中東地域で発生した大規模なサイバ攻撃に、トルコ政府が関与していた疑いがあるとみられることを明らかにした。
 サイバ攻撃を受けたのは政府省庁、大使館、セキュリティーサービス、企業など30以上の組織と団体で、キプロス政府およびギリシャ政府の電子メールサービスやイラク政府の国家安全保障担当補佐官なども含まれるという。
1・9・4・1・4 韓国に対するサイバ攻撃

 韓国軍の軍事機密を盗み出すためのハッキングがここ3年で急増した。 ただ軍事資料の流出はなかったという。
 韓国国防部によると、外国から韓国軍の国防情報システムへのハッキングを試みた事例が2017年の約4,000回から2019年は9,533回に増えた。
1・9・4・1・5 COVID-19パンデミックに絡むサイバ攻撃

 COVID-19パンデミック下でCOVID-19に関連したデータを盗むため政府との関連が疑われるハッキング集団などが研究機関に攻撃を仕掛けるなど、医療機関がサイバ攻撃の対象となっている。
 Microsoft社が11月、ロシア政府や北朝鮮政府との繋がりが疑われるハッカー集団が、Covid-19感染症ワクチンと治療薬を開発している世界中の製薬会社や研究機関などを標的にサイバー攻撃を仕掛けていたことを明らかにした。 大部分は攻撃の失敗したものの、一部は成功したという。
1・9・4・1・6 サイバ攻撃に対する制裁

 EUが7月、ロシア、中国、北朝鮮の3組織と計6人が対象として、域内企業などへのサイバ攻撃に対する初の制裁を決定した。
1・9・4・2 サイバ戦技術

 米空軍研究所 (AFRL) が1月、空軍がサイバとSIGINTの統合を考えていて、企業からの情報提供を求めていることを明らかにした。
 サイバとSIGINTの統合で、自動的な捕捉、識別、追随、優先順位付、信頼度区分や、更に地形情報などの取得能力を向上させようとしている。
1・9・4・3 サイバ戦体勢

 サイバ空間での国際的なルールづくりを求める機運の高まりから、国連の作業部会が報告書を取りまとめる。
 国連憲章は自衛権を各国の国際法上の固有の権利と定めており、多くの国は大規模なサイバ攻撃も武力攻撃と認定し、各国が自衛権を行使できると解釈している。
1・9・4・4 サイバ戦装備

 米陸軍が4月、バージニア州のResearch Innovation社に、サイバ戦を見据えた戦闘状況把握装置Cyber SUの試作を発注した。
1・9・5 砲熕兵器

1・9・5・1 従来型火砲

1・9・5・1・1 超長射程砲

ERCA

 米陸軍が長射程野砲計画ERCAのIncrement 1 (Inc 1) の試験を本格化させると共に、2022年にInc 2を完成させ、2023年までに1個大隊分となる18両の生産が計画されている。
 ラムジェット推進弾をも考慮に入れたこのERCA計画で陸軍は最終目標を射程1,000nm (1,852km) と考えている。
 BAE Systems社が担当したInc 1では39口径の砲身を9.14mに伸ばして58口径としたM109A7 Paladin SPHを使用したが、Inc 2ではM109A7を使用するか他の車体を使用するか決まっていない。  米陸軍が3月に射距離65kmで2種類の弾を試射した。

超高速砲弾 (HVP)

 米陸軍が、現有榴弾砲の射程を100kmまで伸ばす吸気式エンジン噴進砲弾のエンジン開発で、米欧企業チームを選定した。
 ERAPはラムジェット推進の155mm誘導砲弾で、100kmの射程が求められている。

1・9・5・1・2 大口径戦車砲

 Rheinmetall社が、新型 (NG) 130mm滑腔戦車砲初期型の開発を完了した。 130mm NG砲は米陸軍が計画している次世代戦闘車 (NGCV) での採用を目指すもので、新高張力鋼にクロームメッキを施している。
1・9・5・1・3 Bradley 後継 NGCV 搭載50mm砲

 Northrop Grumman社が8月、米陸軍にXM913 50mm砲4門を納入した。 10月末までに更に7門を納入するほか、2021年にも10門が納入される。
 50mm砲はBushmasterに代えてBradleyの後継となるNGCVに搭載され、XM1204 HEAB-T弾またはXM1203 APFSDS-T弾を発射する。
1・9・5・2 電 磁 砲

 特記すべき報道はなかった。
1・9・5・3 誘導砲弾

1・9・5・3・1 米国、欧州

155mm野砲弾

 Raytheon社が2月、GPS誘導のExcaliburにSAL誘導装置を取り付けて移動目標攻撃型にしたExcalibur Sによる移動目標に対する射撃試験に成功したと発表した。
 誘導装置は榴弾砲の発射衝撃に耐えて機能した。

155mm艦載砲 (AGS) 弾

 特記すべき報道はなかった。

127mm艦載砲 (Mk 45 Mod 4) 弾

 イタリア国防省が10月に公表した2020年~2022年の防衛計画に127mm誘導誘導砲弾Vulcanoの2020年度分が計上された。

57mm艦載砲弾

 米DARPAが8月にMAD-FIRES計画のPhase ⅢをRaytheon社に発注した。 MAD-Firesは艦載57mm砲用RAP弾に採用する経路修正弾で、2015年にPhase Ⅰを開始した。

迫撃砲弾

 特記すべき報道はなかった。

1・9・5・3・2 中 国

 特記すべき報道はなかった。
1・9・5・3・3 ロシア

 特記すべき報道はなかった。
1・9・5・4 砲熕発射ミサイル

 インド政府が9月、インドDRDOがArjun MBTの120mm施旋砲からレーザ誘導ミサイルを発射する試験に成功したと発表した。
 ロシアが3UBK 25 Sokol-V (Falcon) 砲熕発射125mmホーミングミサイルの試験を開始した。 Sokol-Vはロシア軍が装備する唯一の砲熕発射ミサイルでT-14 Armata MBT用に開発されたが、T-80 MBTの2A82 125mm滑腔砲からも発射する。
1・9・6 共通技術

1・9・6・1 測位、タイミング (PNT)

1・9・6・1・1 測位衛星

G P S

 米宇宙軍が3月、10基計画しているGPS Ⅲの2号基が実運用可能な状況になったと発表した。 GPS Ⅲは従来より精度が3倍、対jamming性能が8倍向上しているという。
 米宇宙軍が測位衛星の耐妨害性を高めるNTS-3計画を進めようとしている。
 NTS-3はL3Harris社が空軍研究所 (AFRL) の先進技術開発Vanguards計画の一環として受注しているもので、2023年の打ち上げが必須とされている。

GPS ⅢF

 特記すべき報道はなかった。

北 斗

 前 述

1・9・6・1・2 その他の PNT

Orolia社製 LTAMDS 用 PNT装置

 Orolia社が、Raytheon社が7月8日に米陸軍向けに開発中のLTAMDSで、測位タイミング装置にOrolia社を選定したことを明らかにした。
 ニューヨークを拠点とするOrolia社は同社製のSecureSync及びVersaSyncをLTAMDSに特化させた装置を提案している。

MAPS Gen 2

 米陸軍はGPSが使えない状況で自己位置標定やタイミング (NPT) を行う装置MPAS Gen 1を2019年に駐独第2騎兵連隊のStrykerに装備しており、今後第1歩兵師団第1旅団のBradley IFVや戦車への装備も進める。
 米陸軍は9月、MAPS Gen 2の開発Phase 2から、Milestone Cに向けたPhase 3担当を月内に1社に絞り込むことを明らかにした。

1・9・6・2 通信,C4I

1・9・6・2・1 ネットワーク

Joint All-Domain Command and Control (JADC2)

 米MDAのC2BMC責任者が5月、JADC2は現在BMD用に構築されたシステムに超高速ミサイルやCM対処能力を迅速かつシームレスに持たせる基本的なシステムであると述べた。
 C2BMCはアラスカとカリフォルニアに配備したGMDシステムからPatriotのような戦術BMDシステムを結ぶ現有システムで、MDAはまずC2BMCシステムと開発中のJADC2の連接を確認したのち、空軍が行うABMSの第2段階の試験であるOn Ramp演習に参加するという。
 米陸軍次官が7月、全軍のセンサをネット化して全軍がデータをシェアするJADC2の開発で、陸軍はシステムへの要求書を作成する前の初期段から企業と連携したいと述べた。
 在欧米空軍司令官が6月、2021年春に在欧米空軍が実施する演習でJADC2経由でABMSを参加させ、同盟国も含めたISRの共有機能について検証すると述べた。
 米海軍が、太平洋で行ったRIMPAC演習及びValiant Shield演習でJADC2の検証を行った。 この試験では潜水艦からUAVまでの連接が行われた。
 米空軍が11月、空軍が進めてきたJADC2を統合幕僚会議が全軍の事業として"C" (Cmbined) を付加したCJADC2にしたことを明らかにした。

その他のネットワーク

 イスラエル軍が2月にRafael社にFire Weaverを発注した。 Fire WeaverはRafael社がイスラエルDDRD及び地上軍と開発した射撃指揮装置で、機甲旅団が装備する。
 米国防総省が防空、BMD、宇宙に関する正確、適時、明確に情報を提供する次世代指揮統制ITW/AAの事前検討を行っている。
 米陸軍のNetwork-CFTは民生品 (COTS) 技術や既に開発されている技術 (NDI) 技術を活用して戦術ネットワークを統合して高速かつ精密にデータを共有するネットワークシステムである。
 NORADと米北方軍 (NORTHCOM) がPathfinder Initiative計画を開始した。 この計画は中露の脅威増大に対応する米加の能力を向上しようとするもので、空中及び海上の捕捉能力を向上させJADC2と接続させるNORADとNORTHCOMのSHILD計画の中心となるものである。

1・9・6・2・2 データリンク

共用データリンク

 BAE Systems社が、Link 16を経由する戦術データリンクMIDSの艦載型MOSの試験を開始した。 試験結果が良ければ250ユニットが艦載されることになる。
 MIDS JTRSにより海軍のF/A-18のほか空軍のF-15、F-16、F-22ともデータ交換ができるようになる。

戦闘機搭載データリンク

 特記すべき報道はなかった。

UAV搭載データリンク

 Collins社がNASAの計画で9年間続けてきたC2データリンク開発が間もなく完成する。 CNPC-1000は送信出力1Wで、消費電力8Wである。
 同社は当初L-bandで計画を進めたが、国防総省が同じL-bandを使用している軍用のTACANや民間のDMEと干渉すると難色を示したためその後C-bandに変更された。

1・9・6・3 見方識別

 特記すべき報道はなかった。
1・9・7 関連基礎技術

1・9・7・1 航空機関連技術

1・9・7・1・1 電動航空機

 米空軍が2月に、3年後の配備を目指して電動VTOL (eVTOL) 機であるAgility Prime計画を正式に開始した。 Agility Prime計画は民間が先行しているeVTOL を戦闘地域での人員や物資の輸送に活用というもので、計画には米海兵隊も関心を示している。

1・9・7・1・2 超高速旅客機

 乗客20名を乗せ4,000nmをMach 5で飛行する超高速航空機の開発を目指しているアトランタを拠点とするHermeus社が、TBCCエンジンの縮尺モデルによるMach 5を模擬した地上試験を完了した。
1・9・7・1・3 エンジン

 カリフォルニア州のHyperSpace Propulsion社が、Mach 8以上で飛行する軍民の航空機やミサイル用に、超電導電磁力、ガスタービン、ラム/スクラムジェット、磁気流体力学を組み合わせたTBCCハイブリッドエンジンを開発している。
 Rolls-Royce社が、Reaction Engines社が行っている高マッハを実現する軍民両用のエンジンであるSABRE超高速エンジンの開発及び熱管理技術で、過去2年間にわたり密接に協力して来たことを明らかにした。
 米空軍研究所 (AFRL) が新型高速吸気型推進装置の開発を開始した。
1・9・7・2 ミサイル関連技術

THOR-ER ミサイル推進用の固体燃料ラムジェットエンジン

 ノルウェー国営兵器メーカのNanmo社と米海軍が4月、共同でミサイル推進用の固体燃料ラムジェットエンジンTHOR-ER計画を進めていることを公表した。
 ロケットの燃料では重量の80%を酸化剤が占めていることから、これを外から取り込めば推力を3~5倍にすることができ、その結果射程を300~500%にすることができる。 またラムジェットをサステナとすればMach 5~6を維持できることになる。

回転爆轟エンジン (RDE)

 回転爆轟エンジン (RDE) は逐次回転式に吸気に燃料を噴射して爆轟させるエンジンで、使い捨てに適する超安価なため、まずは高速CMの推進装置として考えられている。

HPAF 構想

 米DARPAが出資する研究開発機構であるASTROが2年間の研究成果として9月に、数千基のスクラムジェットエンジンを生産できる設備HPAF構想を発表した。

GPAW 将来空対地武器

 米空軍が10月に将来の空対地武器GPAWに関する画期的な技術提案を求めた。
 GPAWはF-35やB-21の機内弾庫に搭載でき、コックピットで弾頭の効果、信管の動作、センサの働き、推進装置その他の選択ができ、JADOに適応できることが求められている。

1・9・7・3 UAV 関連技術

1・9・7・3・1 UAV 群飛行

UAV 及び UGV の群制御に関する DARPA の計画

 米DARPAが4月中旬までに、UAV及びUGVの群制御に関する9件の研究開発を発注した。 群制御ではUAV及びUGVの群とは250基以上の集団を想定している。

Golden Horde 群飛翔弾計画

 米空軍がこの飛行試験を夏に開始する群飛翔弾計画Golden Hordeの当初試作飛翔体にSDB-ⅠとMALDを選定した。
 連携飛翔SDB (CSDB) と連携飛翔MALD (CMALD) の試験は秋になる。

1・9・7・3・2 有無人連携飛行

 Boeing社が2月、米海軍が無人のEA-18G Growler 2機と有人のF/A-18 1機が同時に飛行し、F/A-18がEA-18Gを制御する試験に成功したと発表した。
 有無人機連携飛行を追求している米海軍は、UCAVを空中給油なしで3,000nm飛行させ対潜や電子戦任務を行わせる構想を持っている。
1・9・7・3・3 可変形状翼

 米陸軍研究所 (ARL) が可変形状翼 (morphing) UAV設計のツールとなるソフトを開発した。
 Morphing UAVは飛行間に翼形状を変えることができるUAVでISR用のUAVで応用した場合、翼を縮小して高速で目的地に急行し、到着後は翼を拡張して低出力で長時間遊弋することができる。
1・9・7・4 高出力 Laser 技術

 イスラエル国防省が1月、レーザ技術の開発でブレークスルーがあったと発表した。 開発しているのは電気励起式レーザで、この技術を用いれば高効率にシステムを実現できるという。
1・9・7・5 その他の関連技術

米 DARPA の OFFSET 計画

 米DARPAが進めているOFFSET計画の3回目の試験が市街戦を想定した状況下でUAVとUGVを展開して行われた。
 OFFSET計画では最大250基のUAVやUGVを自動制御する。

米 DARPA の DRACO 原子力推進ロケット計画

 DARPAのFY21予算要求でROAR計画とも呼ばれている原子力推進ロケットDRACO計画には予算が増額して$21Mが当てられる。 DRACO計画はHALEUとも呼ばれている原子炉を用いた地球と月の間で使用するロケットで、これと似た計画はNASAでも進めている。

Project Pele 移動型原子炉計画

 米国防総省が出力10MWの超小型原子力発電装置を軍施設に配備する計画で、2月に通称Project Pele計画の移動型原子炉の開始作業を発注した。

空中及び地上の無人システムの連接

 米陸軍が2月、空中及び地上の無人システムを連接する技術の提案要求を企業に対し行った。

3DSoC コンピーターの軍事利用

 米DARPAが1月に、1つのチップ上に立体で回路を構成する3DSoCにより処理能力を画期的に高めたコンピーターの軍事利用についてRfIを発簡した。
 3DSoCの処理能力は今までの高速処理装置が400Gbsecであったのに対して40Tb/secを目指している。

多帯域多用途 (MBMM) アンテナ

 Lockheed Martin社が8月、米宇宙軍から受注している新型アンテナ試作機のmilestone審査に合格したと発表した。
 このアンテナは多帯域多用途 (MBMM) アンテナと呼ばれるL-band及びS-bandの通信用アンテナで、異なる軌道上にある異なる周波数帯域の衛星と同時に交信できる。

Golden Horde計画/Vanguard計画

 米空軍研究所 (AFRL) が空軍の最優先項目の一つであるGolden Hordeの、計画推進要領の見直しを行っている。
 Golden Hordeは在来の武器をネットワーク化することで自動交戦能力を付与しようという計画で、2020年末に実証試験を行う計画であった。

AI が副操縦士

 米空軍が12月、AIを副操縦士とした初の飛行試験を行ったと発表した。 空軍によると使用したAIアルゴリズムはARTUμと呼ばれ、西部カリフォルニア州のBeale AFBでU2に副操縦士として「搭乗」した。





 「2. 係争地域の情勢」 へ