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6. 国内情勢

6・1 防衛体制

6・1・1 制度・組織

6・1・1・1 国家安全保障局 (NSS) の体制

 政府は外交安全保障政策の司令塔を担う国家安全保障局 (NSS) に経済分野を担当する部署を新設する。
 米国と中国の貿易摩擦や中国が掲げる広域経済圏構想「一帯一路」など、経済と外交安保が密接に絡む問題に対処し、首相官邸の経済外交の機能を強化する狙いである。 (1910-091902>1910-091902)

 政府が国の安全保障にかかわる経済分野の規制を強化するため、2019年中に外交安全保障政策の司令塔を担う国家安全保障局 (NSS) に審議官ポストを新設し、経済班を立ち上げる。
 次世代通信規格である5Gの整備で先行する中国などを念頭に知的財産の流出を防ぐため、首相官邸主導で米国と連携し大学や投資、通信、サイバなど幅広い分野の基準を見直し、企業活動を阻害しないような対策が課題となる。 (1911-102901>1911-102901)

6・1・1・2 航空部隊の新編、改編

6・1・1・2・1 F-35A 飛行隊

 丸茂航空幕僚長が3月22日、三沢基地にF-35A最初の飛行隊を26日に新設すると明らかにした。 当初は12機、80名態勢で発足するが、最終的には20機程度の飛行隊になる。
 F-35Aの飛行隊は、F-4を装備する百里基地の第302飛行隊の名称を引き継ぐ。 (1904-032203>1904-032203)

 航空自衛隊三沢基地に3月26日、F-35A 12機で構成する第302飛行隊が発足した。 今後順次機数を増やし約20機体制にする。
 防衛省によると、三沢基地のF-2飛行隊は2020年3月までに百里基地に移駐し、代わって来年度中に同基地の第301飛行隊は三沢基地に移って新たなF-35Aの部隊となり、三沢のF-35Aは最終的に2個飛行隊の40機体制となる。 (1904-032614>1904-032614)

 航空自衛隊が3月26日に初めてF-35Aの戦闘飛行隊を三沢基地の第3航空団に発足させた。
 F-35A飛行隊は今まで百里基地を基地にしていたF-4改を装備していた第302飛行隊で、三沢基地に移駐してF-35Aの飛行隊となった。 (1906-041005>1906-041005)

6・1・1・2・2 E-2D 飛行隊

 三沢基地に新たに配備されるE-2Dが日本に到着し、現在Northrop Grumman社と米軍が機体を点検中で、近く三沢基地で空自に引き渡される。
 E2Dは三沢基地での訓練を経て、中国軍機などへの対処に当たっている那覇基地のE-2Cと交代する。 (1904-032614>1904-032614)

 航空自衛隊が装備するE-2Dの初号機が3月27日に米海軍岩国基地を飛び立ち三沢基地に到着した。 初号機の機体には海軍を表すNAVYの文字が確認されたが、今後日の丸が付けられて正式配備となる。
 空自によると、警戒航空隊が飛行を伴う実用試験を実施する。
 平成30年度中に2号機も三沢に配備され、令和元年度中には3、4号機が那覇基地へ配備される。 (1904-032803>1904-032803)

6・1・2 周辺脅威の増大

6・1・2・1 中国からの脅威

6・1・2・1・1 直接的な威嚇

 (特記すべき記事なし)
6・1・2・1・2 間接的な威嚇

 河野防衛相が9月27日の閣議で2019年版防衛白書を報告した。
 中国は日本の周辺海域や空域での活動を活発化させているだけでなく、米国やロシアを大きく上回る約30基の軍事衛星を2018年に打ち上げ、宇宙やサイバといった新たな領域での能力を増強していることを強調し、強い警戒感を示した。 (1910-092704>1910-092704)
6・1・2・1・3 我が国の対中姿勢

友好姿勢の堅持

 岩屋防衛相が3月8日、中国海軍が21日から山東省青島で開く国際観艦式に、海上自衛隊の護衛艦1隻を参加させると発表した。
 海自艦艇の中国派遣は3回目で、防衛相は日中防衛当局間で多層的な対話や交流を促進し、相互理解と信頼醸成を進めたいと語った。 (1904-030803>1904-030803)

国際観艦式に護衛艦を派遣

 防衛省が11日、中国が青島で23日に開く国際観艦式に護衛艦すずつきを派遣すると発表した。 海自艦の中国への派遣は2011年12月以来7年半ぶりとなる。
 日中両政府は2018年10月の首脳会談で、海自と中国海軍の艦艇の相互訪問に向けた検討を始めることで一致し、防衛当局間で艦艇訪問を調整していたもので、観艦式にあわせ、山村海幕長も22~25日に中国を訪問する。 海幕長の訪中は2014年4月以来5年ぶりとなる。 (1905-041106>1905-041106)

6・1・2・2 北朝鮮からの脅威

 朝鮮中央通信によると、北朝鮮の宋日昊日朝国交正常化交渉担当大使が11月7日の談話で、「島国(日本)の上空を飛行体が飛び越えた時の不安と恐怖が恋しくてわが国に挑戦しようとするなら、われわれは日本という孤島を眼中に置かず、自分のすべきことをする」と日本上空を越える中長距離ミサイル発射の可能性を示唆し、日本を牽制した。 (1912-110701>1912-110701)
6・1・2・3 ロシアからの脅威

 (特記すべき記事なし)
6・1・3 韓国との関係

6・1・3・1 日韓対立

兵器に転用可能な物資が第三国に不正に輸出

 FNNが韓国政府作成の不正輸出リストを独自入手した。 リストによると兵器に転用可能な物資が第三国に不正に輸出されており、2015年から2019年3月にかけて韓国から無許可で輸出された案件は156件に上っている。
 このリストには核兵器や生物化学兵器に転用される恐れがあるとして、国際社会が厳しく統制監視している物資が掲載されている。 例えば、2017年10月に韓国のD社がパキスタン、マレーシア、中国、シンガポールに輸出した「ジイソプロピルアミン」という物資は、化学兵器に転用可能だという。 (1908-071004>1908-071004)

防衛白書に見る対韓認識

 河野防衛相が9月27日の閣議で2019年版防衛白書を報告した。
 安全保障で協力する国々を紹介する章では、韓国の記載順がオーストラリア、インド、ASEANに続く4番目で、2018年版の2番目から後退した。 (1910-092704>1910-092704)

6・1・3・2 日韓の防衛協力

半島有事における我が国の立場

 日韓の紛争が経済や安全保障の領域まで急速に拡大している中、米国が日本の国連軍参加を検討するかのような動きを見せ論争が起きている。
 在韓米軍司令部が7月11日に発行した「在韓米軍2019戦略ダイジェスト」で国連軍司令部を紹介するなかで異例にも日本に関する内容を掲載し、危機の際に必要な日本からの支援および戦力協力を続けると記して、国連軍が日本を通して戦力支援を受けると明示した。
 国連軍は朝鮮戦争に参戦した関係17ヶ国から成り日本は構成員ではないが、日本には有事の際に国連軍の兵たん基地や入境基地の役割を果たす国連軍の後方基地7ヶ所ある。 (1908-071201>1908-071201)

日韓軍事情報包括保護協定の延長問題

 河野外相が7月17日付の中央日報の書面インタビューに応じ、8月に更新期限を迎える日韓軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) について、両国関係は非常に難しい状況に置かれているが、北朝鮮問題をはじめ協力すべき課題は引き続き韓国と協力すると述べ、更新すべきだとの考えを示した。 (1908-071705>1908-071705)

 韓国大統領府報道官が、大統領府の国家安保室長が与野党代表会談の場で7月18日、日韓軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) について、今は維持する立場だが、状況に応じて再検討もあり得ると語ったことを明らかにした。
 日本政府による対韓輸出規制をめぐり、追加措置をけん制する狙いとみられる。 (1908-071804>1908-071804)

アデン湾で韓国部隊が海上自衛隊と合同訓練

 韓国軍が9月29日、日韓関係が最悪に達しているなか23~26日にアデン湾で、日韓伊3ヵ国による合同訓練を日韓が主導して行ったと発表した。
 日本からは護衛艦さざなみ、韓国からは駆逐艦姜邯賛が、伊海軍からはフリゲート艦1隻が参加し、日韓は共同で船舶臨検訓練を行った。
 韓国軍関係者によると、アデン湾で日韓合同訓練は数回行われおり、臨検訓練も今回が初めてではないという。 (1910-093001>1910-093001)

韓国の要請に応じて、北朝鮮が発射した SLBM についての情報を提供

 政府関係者が10月3日、政府が北朝鮮が2日に発射したBMについて、韓国の要請に応じて日本の情報を提供する方針を固めたことを明らかにした。
 11月に有効期限が切れる日韓の軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) に基づく対応で、河野防衛相は3日夜にエスパー米国防長官と電話会談し、北朝鮮対応で日米の連携や日米韓の協力が重要だとの認識を確認した。
 河野防衛相は、このSLBMの最大射程を日本のほぼ全域が射程に入る2,500kmに達するとの分析を明らかにした。 (1911-100302>1911-100302)

6・1・4 テロ対策

6・1・4・1 武装工作員侵入への備え

対処訓練の実施

 宇都宮駐屯地で栃木県警と陸上自衛隊による治安出動を想定した共同実働訓練が行われ、訓練の一部が訓練4日目となった2月8日に公開された。
 この日の訓練は武装工作員が国内に侵入し、自衛隊に治安出動命令が出されたという想定で進められ、県警と合同で検問を張るため現場へ向かう手順を再現された。 (1903-020804>1903-020804)

6・1・4・2 UAV によるテロへの備え

 防衛省が6月13日、小型UAVの飛行規制対象を広げる改正ドローン規制法の施行に合わせ、対象となる防衛関係施設として市ケ谷の防衛省など13ヵ所を指定した。
 指定されたのは陸上総隊がある朝霞駐屯地や、自衛艦隊司令部がある横須賀地方総監部船越庁舎、航空自衛隊航空支援集団司令部がある府中基地などである。
 米軍施設や沖縄県名護市辺野古で進む米軍普天間飛行場の移設工事周辺は、米側と協議しつつ指定の必要性を検討している。 (1907-061304>1907-061304)
6・1・5 国際交流

海上自衛隊が西太平洋各国若手士官との交流事業

 海上自衛隊が西太平洋各国の海軍若手士官を招き、日本の安全保障環境への理解を深めてもらう交流事業の開会式が10月9日、海自幹部学校で行われた。
 韓国や中国、インドネシアなど27ヵ国から20~30代の士官30名が参加し、海自の若手幹部を含め交流する。 (1911-100902>1911-100902)

6・2 防衛予算

6・2・1 令和元年度防衛補正予算

 12月13日の臨時閣議で決定した令和元年度の補正予算案に、防衛省がPAC-3の改良費などを盛り込み、1回の補正予算としては過去最大となる4,287億円を計上した。
 PAC-3の改良費として789億円、すでに取得契約を済ませているF-35Aの支払いに充てる費用として652億円、不審UAVに対処する器材を整備する費用として22億円を計上している。 (2001-121304>2001-121304)
6・2・2 令和2年度防衛予算

6・2・2・1 概算要求

 防衛省が令和2年度予算の概算要求で、米軍再編関連経費を含めて5兆3,000億円超を計上する方向で調整に入った。
 令和2年度予算の概算要求額は過去最大の5兆2,574億円だった元年度の当初予算に比べ500億円以上増える。 (1909-080603>1909-080603)
【註】仮に500億円の増加となると増加率は1%に至らないことになり、物価上昇率を考慮すると実質マイナスになる。 因みに韓国の2020年度国防費は8%が要求されている。

 防衛省が8月30日、令和2年度予算の概算要求を発表した。 総額は過去最大の5兆3,223億円で、元年度当初予算比1.2%増、概算要求段階で7年連続の増額となっており、最終的に8年連続の増加予算となる。
 護衛艦いずも空母化のため改修費31億円を計上した。 改修は甲板の耐熱工事などが中心で、令和3年度の途中までかかる見通しである。 また搭載するF-35B 6機分の購入費として846億円を盛り込んだ。
 宇宙分野では524億円を計上し、航空自衛隊に約20名の宇宙作戦隊(仮称)を新設するほか、日本の人工衛星を標的とした電磁妨害の状況を監視する装置などを導入するとしている。
 サイバ分野は238億円で、陸海空共同のサイバー防衛隊を70名増員して290名とするよう要求した。
 電磁波領域では相手戦闘機のレーダを妨害するスタンド・オフ電子戦機の開発費207億円などを計上した。
 候補地の秋田県などが反発しているAegis Ashoreは発射装置の取得費など122億円を盛り込むにとどめ、配備予定地の造成費などは見送った。 (1909-083005>1909-083005)

 防衛省が8月30日、サイバ、宇宙、電子戦の3分野を重視した令和2年度予算として5兆3,200億円 ($50B) を要求した。 (1911-091104>1911-091104)

6・2・2・2 政府原案

 政府が令和2年度当初予算案の防衛関係費を5兆3,000億円規模とする方向で最終調整に入った。
 日本主導で開発を目指す将来戦闘機について初めて開発費を計上し100億円超とする。 また政府が検討を進める自衛隊の中東派遣にかかる経費も当初予算案に盛り込む可能性がある。
 防衛予算はここ数年、毎年度1%超の伸び率で推移しており、令和元年の当初予算は前8年度比で1.3%増えた。全体の予算に占める割合は5%台で推移している。 (2001-120702>2001-120702)

 政府が12月10日、近く閣議決定する令和元年度補正予算案の防衛費として、過去最大となる4,200億円を計上する方向で最終調整に入った。
 朝鮮半島情勢の緊迫化を受け、PAC-3をPAC-3 MSEへ換装する費用を盛り込み、BMD能力の強化などを前倒しする。 防衛省は4年度末までにPAC-3をMSEに換装していく方針である。
 また災害対処能力向上のための資機材や、C-2の整備費なども計上すると共に、情報収集能力を強化するためP-1や小型UAV対処機材などの整備費も盛り込む。 (2001-121001>2001-121001)

 12月20日に閣議決定した令和2年度予算案で防衛費は元年度当初比1.1%増の5兆3,133億円となった。
 次期戦闘機について初期設計費111億円を初めて計上した。 初期設計費に加え将来的に日本主導で改修できるコンピューターシステムの構築に向けた研究費なども合わせると関連経費は約280億円となる。
 護衛艦いずもの航空母艦への改修費31億円も盛り込んだ。
 航空自衛隊に20名の宇宙作戦隊(仮称)を新設するほか、宇宙状況監視 (SSA) 衛星の整備など計506億円を計上した。
【註】近年、わが国の防衛費は補正予算で大幅に増額されているため、当初予算だけでは伸び率を評価できなくなっている。
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 ┃     ┃ 当初予算 ┃ 補正予算 ┃ 総  額 ┃ up 率┃
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 ┃平成29年度┃5兆1,251億円┃ 2,300億円┃5兆3,551億円┃ 2.1% ┃
 ┃平成30年度┃5兆1,900億円┃ 3,998億円┃5兆5,898億円┃ 4.4% ┃
 ┃令和元年度┃5兆2,574億円┃ 4,287億円┃5兆6,861億円┃ 1.7% ┃
 ┃令和02年度┃5兆3,133億円┃     ┃      ┃(1.1%)┃
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 サイバ関連の256億円には、陸海空共同のサイバ防衛隊の70名増員を盛り込んだ。
 Aegis Ashore関係では発射装置の取得費115億円と、調査費など14億円を計上したが、配備候補地の再調査や地元との調整を続けているため、特定の土地への配備を前提とした予算は組まなかった。 米政府からのFMSによる調達経費は4,713億円で過去3番目の大きさで、F-35B 6機(793億円)や、F-35A 3機(281億円)が含まれる。 (2001-122001>2001-122001)

 政府が決定した令和2年度予算案で、米軍再編経費などを含む防衛費は過去最高の5兆3,133億円になったが、伸び率は1.1%と米中などに比べて低水準である。
 防衛費の対GDP比は1%以内で推移してきており、2年度予算案も0.9%となった。 (2001-122101>2001-122101)

= 各国の防衛費の伸び率 =
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┃   ┃2016┃2017┃2018┃2019┃2020┃
┣━━━╋━━╋━━╋━━╋━━╋━━┫
┃日 本┃1.5%┃1.4%┃1.3%┃1.3%┃1.1%┃
┃米 国┃0.5%┃0.6%┃5.6%┃8.6%┃2.8%┃
┃中 国┃7.6%┃7.1%┃8.3%┃7.5%┃  ┃
┃韓 国┃3.6%┃4.0%┃7.0%┃8.2%┃7.4%┃
┃豪 州┃0.6%┃7.0%┃3.0%┃6.4%┃  ┃
┃ドイツ┃4.0%┃7.9%┃4.1%┃12.2┃5.0%┃
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6・2・3 防衛予算の国際比較

6・2・3・1 ドイツを凌ぎ世界第8位の国防支出

 韓国が作成配布した「2018世界防衛産業市場年鑑」によると、韓国の国防費は2017年に$39.2Bを支出して世界10位に入った。 米国が$611Bで1位を守り、中国が$222.8Bで2位であった。
 2016年4位だったサウジアラビア ($69.4B) がロシア ($66.3B) を僅差で追い抜き3位に浮上し、5位インド ($63.9B)と6位フランス ($57.8B) が2016年度とは違って順位が入れ替わり、7位は英国 ($47.2B) 、日本は$45.4Bで8位、9位はドイツ ($44.3B) であった。 (1902-012803>1902-012803)
6・2・3・2 2017年の8位から9位に後退

 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) が4月29日、2018年の世界の軍事支出が前年比2.6%増の$1.822Tだったと発表した。 米国と中国の軍事費の増加が全体を押し上げた一方、日本は前年とほぼ同じで順位は2017年の8位から9位に後退した。 (1905-042902>1905-042902)
6・2・3・3 対 GDP 比算定の見直し

 岩屋防衛大臣が2018年11月27日に防衛予算の対GDP比の算定方法を、国防費に軍人恩給を含むNATO方式に切り替えることを明らかにした。
 2018年の防衛予算は$45Bで対GDP比は0.93%であるが、これとは別に軍人恩給か$2.2Bある。 (1902-120511>1902-120511)
6・3 ミサイル防衛

6・3・1 全体構想

6・3・1・1 北朝鮮の BM

北朝鮮 BM の特性

 岩屋防衛相が8月27日、北朝鮮が24日に発射したミサイルの軌道が変則的だったとし、北朝鮮は日本の防衛網を突破する新たなSRBMを開発しているようだと述べた。
 これに対し韓国国防省は同日、北朝鮮のミサイル発射に関する詳細な分析中であると明らかにした。 (1909-082802>1909-082802)

 河野防衛相が9月27日の閣議で2019年版防衛白書を報告した。
 北朝鮮が開発を進めるBMに搭載する核兵器の小型化、弾頭化が既に実現しているとみられると危機感の表現を強めている。 (1910-092704>1910-092704)

6・3・1・2 軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) 破棄の影響

 複数の関係者が9月22日、北朝鮮が5月以降に発射を繰り返した短距離ミサイルを、日本が複数回にわたり軌道を探知できなかったことを明らかにした。 日本を射程に収める可能性があるミサイルも含まれており、低い高度や変則的な軌道のため捕捉できなかったとみられる。
 韓国軍は探知に成功したとみられ、日韓の軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) 破棄が日本の安全保障に影響を及ぼす懸念も広がりそうである。 (1910-092301>1910-092301)
6・3・2 SM-3 Block ⅡA

6・3・2・1 共同開発の状況

 (特記すべき記事なし)
6・3・2・2 SM-3 Block ⅡA弾の調達

 米国務省が米国防安全保障協力局 (DSCA) から申請のあった日本とNATOに対するミサイル等の輸出3件を承認した。
 このうち2件は日本に対するSM-3とAMRAAMの輸出で、SM-3はBlock ⅡA 13発とBlock ⅠB 8発であわせて$561Mになっている。 (1902-010005>1902-010005)

 米国務省が4月9日、SM-3 Block ⅠB 56発の日本への売却を承認し、米議会に通知した。 関連費用も含め総額は$1.15Bと見積もっている。
 国務省は声明で「日本の本土と駐留米軍を守るBMDの能力を高めることになる」と表明した。 (1905-041001>1905-041001)

 米政府が8月27日、弾道弾迎撃ミサイル$3.3B相当の日本への売却を承認した。
 米国防総省によると、日本が購入するのはSM-3 Block ⅡA 73発で、艦載型Aegis システムから発射する分である。 (1909-082803>1909-082803)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が8月27日、総額$3.29BにのぼるSM-3 Block ⅡA (RIM-161D) 73発の対日売却を国務省が承認したと発表した。
 この契約にはMk 29キャニスタ10基と、関連支援業務も含まれている。 (1910-090412>1910-090412)

6・3・3 Aegis Ashore

6・3・3・1 FMS での調達

 米政府機関の一部閉鎖のため停止していたFMS関連業務が、閉鎖が終わったことで再開したことから、米国防安全保障協力局 (DSCA) が日本向けのAegis Ashore 2個システムの売却契約を承認した。
 契約額は合わせて$2.15Bで、契約にはAegis Weapon System、Multi-Mission Signal Processor、Command and Control Processor Refreshそれぞれ2個システムのほか、無線航法装置、見方識別装置 (IFF) や、収納施設の建設やVLS 6基の収納建屋も含まれている。 (1902-012906>1902-012906)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が1月29日、国務省が日本へAegis Weapon System 2基を$2.15BのFMSで売却することを承認したと発表した。 日本政府はこれを2ヵ所のAegis Ashoreとして装備する。
 この契約には多用途信号処理装置 (MMSP) 2個システムと、C&Cプロセッサ (C2P) 2個システムも含まれている。 (1903-020610>1903-020610)

 防衛省が4月26日、米政府とAegis Ashore 2基分の一部を取得する契約を結んだと発表した。 契約は1,399億円のFMSで行われた。
 内訳はAegisシステムや人材育成経費などで、Lockheed Martin社のレーダSSRの取得費は含まなていない。 (1905-042602>1905-042602)

6・3・3・2 日本企業の参画

 政府が配備を決めたAegis Ashoreに日本企業が開発した基幹部品の搭載が見送られる方向であることがわかった。
 政府はAegis Ashoreのレーダに日本企業の参画も考慮してLMSSRを選定しているが、LMSSRでの採用を検討していたGaNについてLockheed Martin社が予算や納入期日の要求を満たせないとして、採用を見送る意向を日本側に伝えてきた。 (1904-031602>1904-031602)
6・3・3・3 運用開始の遅延

 岩屋防衛相が配備に向けて準備を進めているAegis Ashoreについて4月5日、当初目指していた令和5年度の運用開始は難しいとの見通しを示唆した。
 政府が4月2日に閣議決定した答弁書によると、Aegis Ashoreが装備するLMSSRレーダは今年度から5年かけて製造した後に性能の確認試験や設置等の作業を行うため、運用開始は令和6年度以降になる。 (1905-040506>1905-040506)

 防衛省は平成30年度中にAegis Ashoreの開発に着手し、令和5年度に運用開始としていたが搭載する新型レーダの開発が遅れている。
 防衛省は2018年7月にLockheed Martin社製SSRの採用を決め、製造期間は2019年から5年と見込んでいる。 このため設置作業や性能確認試験などを考慮すれば、運用開始は令和6年度以降になる。 (1906-051501>1906-051501)

6・3・3・4 経費の追加負担

 岩屋防衛相が、取得価格のみで2基で2,400億円余りと見積もられているAegis Ashoreは、米国に実射試験施設を建設することになれば、追加の費用負担が生じる可能性があるという認識を示した。 (1904-031207>1904-031207)

 SSRの開発費用の分担について、米政府は試験施設の建設や迎撃実験の費用の一部負担を求めている。 (1906-051501>1906-051501)

6・3・3・5 CEC の不採用

 わが国が導入するAegis Ashoreに、AEW&C機やAegis艦と情報を共有する共同交戦能力 (CEC) システムを搭載しないことが4月5日に関係者への取材で分かった。
 このためわが国に配備されるAegis AshoreはBMDのみに特化され、航空機やCMに対する防空能力は持たないことになる。 (1905-040701>1905-040701)

 防衛省が4月9日、2ヵ所に配備するAegis AshoreではCM対処を考えておらず、従ってCECは装備しないことを明らかにした。 (1906-041708>1906-041708)

6・3・3・6 システムの発注

 Lockheed Martin社が11月20日、防衛省がAegis Ashoreに採用したSSR 2基を受注したと発表した。 LMSSRは米政府でAN/SPY-7(V)1と命名されている。
 防衛省は2018年7月にLMSSR採用決定時にコストを合わせて2,480億円と発表しており、今後30年間の維持費を合わせた2基の総経費は4,664億円と見積もられている。 (2001-120415>2001-120415)
6・3・3・7 建設工事契約

 政府が2017年12月の閣議で国内に2基配備することを正式に決めたAegis Ashoreについて、防衛省が11月29日にレーダを取り付ける建屋や隊舎など施設の設計業者と契約を締結した。
 契約したのは東京に本社を置く山下設計で、レーダを取り付け施設のほか、事務所や宿舎など19施設で、契約金額は4億6,970万円、納期は2021年3月末となっている。
 防衛省は10月に総額350億円で三菱商事とレーダ取得に関する契約を結んでいて、三菱商事が代理店となりLockheed Martin社とLMSSRの製造を進めている。 (1912-112903>1912-112903)
6・3・3・8 配備場所を巡る混乱

秋田市の新屋演習場を見直す方向

 政府関係者が10日、政府はAegis Ashoreの配備先について、秋田市の陸上自衛隊新屋演習場を見直す方向で検討に入ったことを明らかにした。
 このため2025年としているAegis Ashoreの配備時期がずれ込む可能性が出てきた。
 新たな配備先については、新屋演習場を選定した過程で浮上した秋田県内を含む別の19ヵ所を中心に検討するとみられる。 (2001-121101>2001-121101)

6・3・4 早期警戒衛星保有へ

 政府は北朝鮮などのBM発射を探知する早期警戒衛星機能の保有に向け、人工衛星にセンサを搭載した実証試験に乗り出す。
 センサは宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が令和2年度にH-2Aで打ち上げる先進光学衛星 (ALOS-3) に搭載される。
 搭載するのは極微小な半導体の粒を使う画像センサで、2波長帯のIRを検知する世界初の技術である。 課題だった搭載時の振動対策なども終え、宇宙空間からミサイル発射時のIRを探知できるかどうか、令和6年度ごろまで試験を重ね検証する。 (1907-061204>1907-061204)
6・3・5 03式中SAMに BM 迎撃能力を付与

 複数の政府関係者が12月28日、防衛省が北朝鮮などのBM脅威が高まっていることを受け、03式中SAMを改修してBM迎撃能力を付与する研究を来年開始することを明らかにした。
 北朝鮮が開発している変則軌道で飛来する新型ミサイルなどに対応する性能を目指すもので、具体的には誘導弾や射撃管制装置を改修し、敵のBMの軌道予測能力を高度化させることで、新型を含むBMへの対応を可能とする技術検証に着手する。 (2001-122801>2001-122801)
6・3・6 BMD の実行動

PAC-3 の市ヶ谷展開

 防衛省が10月11日、市ヶ谷の同省敷地内にPAC-3を展開した。 北朝鮮がICBMの発射再開などを示唆したことを受け、警戒を強化したとみられる。
 同省は態勢の詳細を明らかにしていないが、政府高官は状況に応じて対応していると語った。 (1911-101104>1911-101104)

BMD 任務 Aegis艦を2隻体制に増

 政府が12月20日、北朝鮮による年末年始に予想されるBM発射に備えて警戒にあたるAegis艦を2隻体制に増やす方針を固めた。
 政府は11月頃に日本海側でAegis艦1隻を展開したとみられているが、日本海側に加え、東シナ海周辺でも監視にあたる。
 日本は北朝鮮によるミサイル発射が相次いだ2016年夏以降、Aegis艦1~2隻体制で日本海側で24時間監視にあたっていたが、2018年には米朝首脳会談の開催を受けてミサイル発射が中断されたため、同年夏ごろから警戒態勢を解いていた。 (2001-122102>2001-122102)

6・4 我が国周辺の警備

6・4・1 海洋安全保障政策の推進

 (特記すべき記事なし)
6・4・2 中国に対する監視強化

東シナ海以外での中国に対する監視

 海上保安庁が3月23日12:30頃に沖ノ鳥島沖合で、中国の海洋調査船嘉庚がロープのようなものを海中に伸ばして航行しているのが確認した。
 中国の海洋調査船が調査活動を行っているとみられ、海上保安本部は中国船に中止を求めた。 (1904-032401>1904-032401)

日本の艦船を訓練の攻撃目標にした事案

 環球網が8月19日、中国軍機が東シナ海で日本の艦船を訓練の攻撃目標にしたと日本メディアが報じたことに対する中国の専門家の見解を報じた。
 記事は、日本メディアが日本政府関係者の話として、5月下旬に東シナ海の日中中間線の中国側ガス田周辺海域で、中国のJH-7複数機が航行中の海上自衛隊護衛艦に対艦ミサイル射程距離まで接近したと報じるとともに、中国軍は日本の艦船をレーダ照射しておらず、日本側は中国機の意図に気付いていなかったが、自衛隊の複数の通信傍受部隊が中国機の無線通信を傍受したことで、中国軍機が日本の艦船を攻撃訓練の目標にしていた可能性が高いと判断したと伝えていることを紹介した。 (1909-082003>1909-082003)

6・4・3 南西防衛を重視した部隊配置

6・4・3・1 水陸機動団

 陸上自衛隊が3月26日、水陸機動団を300名増強して2,400名態勢とすると共に、拠点とする相浦駐屯地の南東約10kmの同市崎辺地区に分屯地を開設した。
 分屯地は計約13.4haで水陸両用車を扱う戦闘上陸大隊などの160名が相浦駐屯地から移り操縦や射撃などの訓練を行う。
 2018年3月発足した水陸機動団の一部は大分県にも駐屯し、佐賀空港にはOspreyの配備計画も進んでいる。 (1904-032605>1904-032605)
6・4・3・2 石垣島への部隊配置

 2020年3月末までに宮古島に配置される12式SSM部隊とSAM部隊は将来は駐屯地建設中の石垣島にも配置される。 (1910-091601>1910-091601)
6・4・3・3 宮古島への部隊配置

 政府が2月22日の閣議で、南西諸島の防衛体制を強化するため陸上自衛隊の駐屯地を奄美大島、宮古島にそれぞれ3月26日に新設することを柱とする部隊の改編を決定した。
 宮古島駐屯地には警備隊380名を配置して最終的にはSAMやSSM部隊も合わせて700~800名規模となる見通しである。 (1903-022206>1903-022206)

 陸上自衛隊が3月26日、宮古島に駐屯地を新設した。  配置されるのは、SAM部隊とSSM部隊と警備隊で計560名であるが令和元年度は警備隊のみ380名を置き、部隊は令和2年度以降に配置し、最終的に700~800名規模とする。 (1904-032601>1904-032601)

 沖縄県宮古島への陸上自衛隊警備ミサイル部隊の配備計画をめぐり、防衛省は弾薬庫などのミサイル部隊関連施設の建設を10月に着手することが分かった。
 宮古島市内の採石場に用地を取得し、施設を整備する。
 宮古島では駐屯地を先行して3月に新設したが、地元への説明不足が原因で駐屯地に保管していた警備部隊の中距離多目的誘導弾と迫撃砲弾を島外に撤去した状態が続いており、施設の完成後は警備部隊用の弾薬を保管し直す予定で、万全とはいえない抑止力と対処力の状況が解消される。 (1909-082301>1909-082301)

 宮古島には12式SSM部隊とSAM部隊が2020年3月末までに配置される。 (1910-091601>1910-091601)

 沖縄防衛局が10月7日、宮古島東部の保良鉱山地区で弾薬庫を含む関連施設の造成工事に着手した。 完成には1年以上かかる見通しである。
 同省は3月に宮古島駐屯地を開設し、警備部隊を配置したが、弾薬庫などは駐屯地から離れた保良鉱山地区に建設する計画で、8月下旬には一部地権者と土地の売買契約を結んでいた。 (1911-100701>1911-100701)

6・4・3・4 奄美大島への部隊配置

 政府が2月22日の閣議で、南西諸島の防衛体制を強化するため陸上自衛隊の駐屯地を奄美大島、宮古島にそれぞれ3月26日に新設することを柱とする部隊の改編を決定した。
 防衛省によると、奄美駐屯地を中心に奄美大島には警備隊、SAMとSSM部隊を合わせて550名を配置する。 (1903-022206>1903-022206)

 陸上自衛隊が3月26日、奄美大島に駐屯地を新設した。 奄美大島に配置されるのは、SAM部隊とSSM部隊と警備隊で計560名である。 (1904-032601>1904-032601)

 陸上自衛隊が3月26日に南西諸島の2島に3ヵ所の駐屯地を開設した。 そのうち2ヵ所は奄美大島の奄美市と瀬戸内町で、奄美市には350名の隊員と03式中SAM改が配備される。 (1904-032610>1904-032610)

 3月に開設された陸上自衛隊の奄美駐屯地で、東北方面隊の部隊との共同訓練が行われ、報道陣に公開された。
 7月13日に公開されたのは、奄美駐屯地のSAM部隊と、東北から移動してきた第6師団の第22即応機動連隊による共同訓練で、奄美駐屯地の部隊が03式中SAMの発射機を展開し、その周囲で即応機動連隊が警備にあたった。 (1908-071502>1908-071502)

 2020年3月末までに宮古島に配置される12式SSM部隊とSAM部隊は、既に奄美大島に常駐している。 (1910-091601>1910-091601)

6・4・3・5 東シナ海の無人島に訓練基地

6・4・3・5・1 馬毛島

地権者との売買契約

 政府が、米軍空母艦載機の離着陸訓練 (FCLP) の移転候補地となっている鹿児島県西之表市馬毛島(まげしま)について、地権者との間で近く売買契約を結ぶ見通しとなった。
 日米両政府が2011年に馬毛島を候補地に選んで以来、長く停滞していた買収交渉が決着することになる。 (1902-010903>1902-010903)

F-35Bの離着陸訓練も実施

 政府は、米空母艦載機の陸上発着訓練 (FCLP) の移転候補地として買収交渉を進める馬毛島で、航空自衛隊に導入予定のF-35Bの離着陸訓練も実施する検討に入った。
 F-35Bの離着艦は、通常の離着陸より高度な操縦技術が必要になるため、FCLPが不可欠と判断した。 (1904-032802>1904-032802)

交渉打ち切り通告

 米空母艦載機の陸上離着陸訓練 (FCLP) の移転候補地とされる馬毛島について、島の大半を所有するタストン・エアポート社が、防衛省との間で進めていた売却交渉を打ち切ると通告したことが分かった。
 関係者によると、交渉打ち切りは、鹿児島地方協力局長宛ての5月7日付の文書で通告されたという。
 両者は1月に160億円で売買すると合意したが、2月に同社の社長が交代した後、関係が悪化し、今春ともされていた正式契約は見通せなくなった。 (1906-050801>1906-050801)

交渉妥結、買収

 米軍空母艦載機離着陸訓練 (FCLP) 候補地の馬毛島について、政府と地権者側が11月29日に約160億円の売買契約を結んだことが分かった。
 馬毛島ではFCLPを実施するほか自衛隊施設も整備し、中国の海洋進出を念頭に置いた南西防衛の拠点とする方針である。 (1912-112904>1912-112904)

建設工事

 関係者が12月30日、政府は米軍艦載機による離着艦訓練 (FCLP) の移転候補地となっている馬毛島について、令和2年度に飛行場など関連施設の工事を始める方向で調整に入ったことを明らかにした。
 政府は来年度から環境影響評価(アセスメント)を行う段取りで、関連費として2年度予算案に約5億円を計上しており、着工は環境アセスを終えた後となる。 (2001-123003>2001-123003)

6・4・3・5・2 臥蛇島

 鹿児島県十島村の肥後村長が自衛隊を誘致する方針を正式に表明した。 十島村には防衛省が離島奪還作戦に備えた初の訓練場を整備する候補地に浮上している臥蛇島がある。
 地元が自衛隊誘致の方針を固めたことで訓練場整備が具体化する可能性が高まってきた。 (1910-092302>1910-092302)
6・4・3・6 その他の部隊

滑走路復旧部隊の新設

 防衛省が中国による南西方面の離島への侵攻に備え、民間航空機が運航している離島の空港の滑走路を復旧する部隊の新設を検討している。
 宮古島や石垣島などの空港が対象で、武力攻撃への自衛隊の対処と住民避難で空港の機能は不可欠だが、敵の攻撃により滑走路が破壊されれば、平時に管理している県では復旧できないと判断した。 (1904-032402>1904-032402)

Osprey 佐賀配備の遅れと木更津暫定配備

 防衛省は2020年3月に、陸上自衛隊に導入されたOspreyを木更津駐屯地に暫定配備する方針を固め、5月中にも地元に説明する。
 防衛省は令和3年度までに17機を購入し佐賀空港に配備する方針だが佐賀との協議が整っておらず、納入済みの5機は現在は米国に置かれて操縦や整備の訓練中だが、米側との取り決めで期限は来年5月までで、配備先の選定が急務になっている。 (1906-051506>1906-051506)

健軍駐屯地に電子戦部隊とシステム防護隊

 防衛省は令和2年度末までに80名程度の電子戦部隊を健軍駐屯地に新編する。 同駐屯地には2019年3月にサイバ攻撃に対処する約40名の方面システム防護隊が発足している。 (1910-091601>1910-091601)

6・4・3・7 南西諸島での演習実施

6・4・3・7・1 離島奪還演習の実施

種子島での離島防衛演習

 自衛隊が11月21日までの日程で11日に実動訓練自衛隊統合演習を開始する。 自衛隊は陸海空の統合を図ろうと1年ごとに実動演習と指揮所演習を実施しているが、今回の統合演習は32,000名が参加する。
 演習は防衛計画大綱で盛り込まれた総合ミサイル防空や電子戦などを国内や周辺の海空域で実施すると共に、IAMD演習ではBMやCMなど多様化する攻撃にAegis艦やPAC-3でに対処する。
 種子島での離島防衛演習では護衛艦かがが指揮中枢を担い、陸自水陸機動団など陸海空1,500名が参加し、輸送艦から16両のAAV7が発進して上陸作戦を展開する。 (1912-111103>1912-111103)

6・4・3・7・2 奄美大島で対空戦闘訓練公開

 陸上自衛隊が九州各地で実施している島嶼防衛を想定した鎮西演習の一部で奄美大島で行われた対空戦闘訓練などが11月8日に公開された。
 鎮西演習は10月21日~11月22日の日程で実施する、人員17,000名、車両4,500両、航空機30機が投入される大規模演習である。
 奄美大島の訓練は、旧奄美空港滑走路で公開され、奄美駐屯地のSAM部隊のほか下志津と帯広の部隊計50名が参加し、SAMや対空監視レーダなど車両30両が展開して行われた。 (1912-111001>1912-111001)
6・4・4 航空自衛隊の緊急発進

平成30年度

 防衛省が4月12日、平成30年度における航空自衛隊の緊急発進回数が999回と、1958年以来平成28年度の1,168回に次ぐ二番目に多い回数になったと発表した。 (1906-042410>1906-042410)

令和元年度第一四半期

 防衛省が26日、4~6月に日本周辺の外国機に航空自衛隊が緊急発進した回数は、前年同期より25回減の246回だったと発表した。
 中国機が73%の179回でロシア機が26%の65回で、いずれも戦闘機に対する緊急発進が多かった。 (1908-072604>1908-072604)

令和元年度上半期

 防衛省が10月30日に自衛隊の緊急発進が、令和元年度上半期に470回あったと発表した。 前年度同期比91回減であるが、同省は活発な状況が続いているとみて警戒している。
 同省によると、中国機への対応は13回減の332回で、スクランブル全体の7割を占め、ロシア機への対応は76回減の135回であった。 (1911-103003>1911-103003)

6・4・5 竹島周辺事態への対応

 日本と韓国が領有権を争う島根県竹島周辺上空で23日、ロシア軍機と中国軍機が合同飛行を行ったことを受け、韓国軍と自衛隊の戦闘機が緊急発進し、防衛省はこのロシア軍用機が日本の領空を侵犯し、ロシアと中国の爆撃機が日本の周辺を飛行したと発表した。 (1908-072403>1908-072403)
6・4・6 中台有事への対応準備

 (特記すべき記事なし)
6・4・7 大和堆警備事案

6・4・7・1 北朝鮮漁船の不法行為

北朝鮮船が巡視船に小銃で威嚇

 海保によると8月23日に大和堆周辺で取り締まりをしていた水産庁の監視船から「船籍不明の高速艇が接近している」との通報を受けて巡視船が駆け付けたところ、日本の排他的経済水域内で、高速艇と北朝鮮の国旗が描かれた貨物船のような船を確認した。
 この際、巡視船に対し北朝鮮船とみられる高速艇が接近し、乗組員が小銃を向けて威嚇していた。 (1910-091302>1910-091302)

北朝鮮船が漁業取締船に体当たり

 水産庁の漁業取締船が10月7日09:00すぎに日本海大和堆周辺水域で北朝鮮漁船と衝突した。 漁業取締船が北朝鮮漁船に対し日本のEEZから出るように警告していた際に発生した。
 この海域では外国漁船による違法なイカ漁が行われていて、水産庁の漁業取締船は外国漁船に対して違法操業が疑われる場合には海域から退去するよう警告を行っている。 (1911-100702>1911-100702)

 日本のEEZ内で水産庁の漁業取締船おおくにと北朝鮮の大型の漁船が衝突し、北朝鮮漁船は沈没し乗組員が海に投げ出された。
 このた漁業取締船などが救助活動にあたった結果、これまでに海に投げ出された北朝鮮の乗組員およそ60人全員を救助した。
 海上保安庁によると、救助された漁船の乗組員は全員、別の北朝鮮の船に引き取られた。 (1911-100703>1911-100703)

 能登半島沖の日本のEEZ内で10月7日、水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突した事故では、沈没した漁船の乗組員全員が救助されたあと、別の北朝鮮の船に引き取られたことについて、自民党は8日に水産庁幹部を呼んで、漁船の乗組員を別の船で帰した理由などについて詳しく聞くことにした。
 乗組員を帰したことについて水産庁は、取締りの目的は違法操業をさせないことであり、通常の対応だったという認識を示している。 (1911-100802>1911-100802)

6・4・7・2 海上保安庁の対応

 (特記すべき記事なし)
6・4・8 離島管理の強化

6・4・8・1 領海線管理

国境離島のデータベース構築

 政府関係者が9月16日、政府が日本の領海線や排他的経済水域 (EEZ) の根拠となる国境離島の管理を徹底するため、各府省庁が保有する離島ごとの情報を共有できるよう新たなデータベースを構築する方針を固め、今年度中に着手することを明らかにした。
 データベースは内閣府と海上保安庁が中心となり整備する。 (1910-091605>1910-091605)

6・4・8・2 国境離島警備専門部隊

沖縄県警に国境離島警備専門部隊を創設

 警察庁が令和2年度に尖閣諸島をはじめとする国境離島の警備にあたる専門の部隊を沖縄県警に創設する方針を決めた。
 武装した集団が離島に不法上陸するといった事態を想定し、高度な能力を備えた多数の隊員で構成する計画だ。離島での対処を目的とした警察の本格的な部隊は初めてである。
 新たな部隊の展開などのため沖縄県警に大型ヘリ1機を配備するとともに、離島への避難民漂着の際の対応などをにらみ福岡県警にも1機配備する計画で、同庁はヘリ運用要員を含め両県警で警察官計159名を増するよう来年度概算要求で求める方針で、その大部分を新部隊の隊員が占めるとみられる。 (1909-083001>1909-083001)

6・4・9 海上保安部隊の増強

6・4・9・1 役割の増大

 日本の海上保安庁は1948年に設立された警察機関だが、開庁以来使っていた英語名Maritime Safety Board(MSB)を、2000年にJapanese Coast Guard (JCG)に改めた。
 MSBという名称ではその任務が海上警備なのか海上サービスなのか判然としないという海外からの声に応えたもので、諸外国の沿岸警備隊・国境警備に相当する組織であることが明確になった。
 2001年の中央省庁再編で管轄が運輸省から国土交通省に変わったのに合わせて海上保安庁法の改正が行われ、海上法の執行と捜索救助に限定されていた海上保安庁の任務は拡大し、海上保安庁は軍事行動に関与してきた。 (2001-121604>2001-121604)
6・4・9・2 予算の増額

6・4・9・2・1 平成31年(2019年)度予算額

 海上保安庁によると、2018年に尖閣諸島周辺領海に侵入した中国公船は2017年より38隻減ったものの延べ70隻に上っているほか、接続水域での航行も引き続き確認されてる。
 また、能登半島沖の日本の排他的経済水域にある大和堆と呼ばれる漁場の周辺では、北朝鮮のイカ釣り漁船による違法操業が繰り返し行われていて、海上保安庁は2018年に1,624隻に警告を発した。
 日本の周辺海域で緊迫した情勢が続いていることに加え、原発を狙ったテロなどに備えるため、海上保安庁は平成31年度に大型巡視船をこれまでの62隻から5隻増やすなど過去最大の装備の増強を図る。 (1902-010601>1902-010601)
6・4・9・2・2 令和2度予算額

 国土交通省が8月28日、令和2年度予算の概算要求を発表した。 海上保安庁には、過去最高額となる2,480億円を計上した。
 尖閣諸島周辺の領海警備や日本海、小笠原諸島周辺での海洋監視体制の強化に向けて、大型巡視船や新型ジェット機などの整備を進める。 (1909-082804>1909-082804)
6・4・9・3 巡視船艇の増強

ヘリ搭載大型巡視船(しきしま型 PLH )の進水

 三菱重工業長崎造船所で3月8日、海上保安庁で最大の巡視船れいめいが進水した。
 全長150m、6,500総トンと、海上自衛隊の護衛艦に匹敵する大きさでヘリコプタ1機も搭載する。 (1904-030806>1904-030806)

ヘリ搭載大型巡視船(しゅんこう型 PLH )の進水

 東シナ海の尖閣諸島の警備にあたるために三菱造船江浦工場で建造されていた海上保安庁の最新鋭の巡視船が下関市で進水した。 今後1年以内に船体の内部の工事を終え、配備されることになっている。
 建造されたのは巡視船しゅんこうで、全長約140m、6,000総トンで、価格は172億円で、従来の船に比べ搭載する放水銃と警備艇の数を増やし不審船の取締りなどにあたる。 (1904-032001>1904-032001)

 平成28年度第2次補正予算で建造された新型巡視船が3月20日に三菱重工下関造船所で進水し、PLH-42 しゅんこうと命名された。 竣工は今年度中で、第10管区に配属される。
 しゅんこうは2018年11月に進水したPLH-41 みずほや3月8日に進水したPLH-33 れいめいと異なる新型のPLHでヘリコプタ2機を搭載する。 (1904-032209>1904-032209)

宮古島海上保安部に新造巡視船2隻増強

 尖閣諸島周辺の領海警備強化に向け3月15日、海上保安庁の規制能力強化型の新造巡視船2隻が宮古島海上保安部に新たに配備され伊良部の長山港に入港した。
 巡視船は今回の2隻で計9隻となり尖閣専従体制が整った。 (1904-031701>1904-031701)
【註】200総トンの規制能力強化型巡視船と称される「しもじ型」は、船体をアルミニウム合金から高張力鋼に変更して強度を高めるとともに、舷側のほぼ全長にわたって脱着式の防護プレートを装備し、16気筒V型ディーゼルエンジンとウォータージェットで推進する。 武装は20mmガトリング砲1門である。

石垣島に最大級の新型巡視船を配備

 政府関係者が6月13日、尖閣諸島周辺の領海警備のため海上保安庁が最前線の拠点となる石垣島に最大級の新型巡視船を配備する方針を固めたことを明らかにした。 新型船は全長150m、6,500総トンと海保最大級のヘリ搭載型巡視船 (PLH) で、令和3年度の配備を目指している。
 海保は現在、尖閣周辺で専従の大型巡視船12隻を中心に対応しており、新たなPLHは専従体制の枠組みに含めないものの実質的に尖閣領海警備の現場指揮船として運用する見通しである。 (1907-061303>1907-061303)

海上保安庁最大のヘリ搭載型巡視船3隻を鹿児島港に配備

 海上保安庁が尖閣諸島周辺の警備を強化するため、海上保安庁最大のヘリ搭載型巡視船3隻を鹿児島港に配備する。 同港は国内最大の警備拠点となる。
 配備する巡視船は海保としては最大級の6,500~6,000tで、令和2年度末までに鹿児島港に3隻、3年度末までに石垣島に1隻を配備する方針で、同庁は鹿児島県と沖縄県に方針を伝えた。  両県も埠頭や関連施設の整備方針を定めた港湾計画を変更し受け入れ環境を整える。 (1907-061406>1907-061406)

6・4・9・4 海上自衛隊との連携

海自と海保が南シナ海で初の共同訓練

 海上自衛隊と海上保安庁が6月26日、南シナ海のブルネイ沖で共同訓練を実施したと発表した。
 海自と海保が南シナ海で訓練を行うのは初めてで、尖閣諸島周辺や南シナ海で海洋進出を強める中国を牽制する狙いがある。
 共同訓練は海自から護衛艦いずもなど3隻、海保からは巡視船つがるが参加し、海難災害支援に必要な通信訓練や、いずも搭載ヘリがつがるに着船する人員輸送訓練で相互の連携を確認した。 (1907-062602>1907-062602)

6・4・9・5 大型 UAV の導入

 政府関係者への取材で8月23日、海上保安庁が大型UAVの導入を検討していることが分かった。 令和2年度10億円を計上し、実証試験や機種選定を進める方針という。
 海保は領海と排他的経済水域 (EEZ) だけで447万平方㌔㍍と世界有数の広さの海域で監視、取り締まりを担うため、少ない人員で安全に長時間、夜間や悪天候でも飛行可能という特性を持つUAVに大きな関心を寄せてきており、2018年5月には米GA社のGuardianのデモ飛行も視察した。 海保は海上運用を想定し、同機などの実機を借り入れる予定である。
 Guardianは全長11mで最高速度440km/h、滞空能力40時間で、上空10,000m以上を飛行し、高画質カメラで航行船舶の状況を詳細に把握することが可能である。 (1909-082306>1909-082306)
【註】GA-ASI社製でMQ-9A Reaperの一種であるMQ-9B Sky Guardianは、MALE UAVで世界で初めて米FAAの耐空証明を取得し民航機の空域で活動できる。
 英空軍はProtectorとして採用したが米空軍は高価な割りに性能向上はそれほど出なく、MQ-9Bを購入するよりMQ-9A Block5 Reaperを購入する方が良いとの結果を出している。
6・5 海外活動

6・5・1 ペルシャ湾への派遣

6・5・1・1 ペルシャ湾情勢への対応

 複数の政府関係者が8月5日、政府がホルムズ海峡での航行の安全確保のため、自衛隊の独自派遣を軸に検討していることを明らかにした。
 米国が呼びかける有志連合への参加は法的なハードルが高い上、イランとの関係悪化も避けられないため、自衛隊単独での警戒監視や情報収集などを通じ日本の役割を果たす方針である。
 派遣する場合は、海上自衛隊のP-3Cなどが有力で、艦船は送らない方向である。 艦船の場合、軍事衝突に直接巻き込まれるなどの可能性があるためで、活動は防衛省設置法の「調査・研究」に基づく情報収集や警戒監視などが想定されている。 (1909-080601>1909-080601)

 米国が結成を目指すホルムズ海峡での有志連合をめぐり、8月7日に行われた日米防衛相会談でエスパー国防長官が日本の協力を要請したことから、政府は、ほかの国の対応なども見ながら、自衛隊派遣の可能性などを慎重に検討することにしている。
 エスパー長官は会談に先立って、有志連合について日本が強く検討すべきものだと述べている。 (1909-080802>1909-080802)

 ホルムズ海峡などでの船舶の安全確保のため、米国が日本に有志連合構想の海洋安全保障イニシアチブへの協力を求めている問題で、政府がペルシャ湾外での自衛隊活動を想定し、海賊対処行動か海上警備行動を軸に検討していることがわかった。
 現在はソマリア沖で海賊対処行動をしている海自護衛艦と哨戒機を援用し、新たな部隊は派遣しない方向で、米側の要請や各国の協力姿勢も見極め、慎重に判断する。 (1909-080804>1909-080804)

 政府は8月15日の閣議で、自衛隊法に定める海上警備行動の地理的な範囲について、ホルムズ海峡も排除しないとする答弁書を決定した。
 立憲民主党の熊谷参院議員の質問に「地理的範囲は定めておらず、我が国領海のみならず公海上にも及ぶ」と答えた。 (1909-081502>1909-081502)

6・5・1・2 派遣部隊の任務についての議論

 自民党が10月23日に外交部会や国防部会の合同会議を党本部で開き、自衛隊の中東派遣について政府が想定する活動範囲にホルムズ海峡が含まれないことなどを疑問視する意見が相次いだ。
 政府は武器使用を伴わない情報収集目的での派遣を検討しているが、出席議員からは日本の船舶が攻撃を受けた場合に、防護できる態勢を明示すべきだとの指摘もあった。 (1911-102304>1911-102304)

 政府は中東地域での日本独自の取り組みとして自衛隊の派遣を検討していて、派遣は防衛省設置法に定められた調査・研究の一環として行うとしているが、10月23日開かれた衆議院外務委員会で防衛省の槌道防衛政策局長は、仮に状況が変化して必要な措置を取る場合には海上警備行動の発令も考えられると述べた。 (1911-102305>1911-102305)

 関係者への取材で11月4日、政府が計画する中東への海上自衛隊派遣で、防衛省が同省設置法に基づき護衛艦1隻を追加派遣し、海賊対処でジブチに展開中の哨戒機1機を情報収集活動に充てる案を軸に検討を進めていることが分かった。 同法に基づく派遣は国会承認が不要で、議論が尽くされないまま海外派遣がなし崩しに行われる恐れもある。
 政府は、海賊対処の護衛艦は2016年から1隻になってるため、追加で1隻出す案が有力である。
 哨戒機は海賊対処部隊の2機のうち1機を情報収集用に回すことを検討しているが、ジブチからオマーン湾までは2,000kmあり1時間しか実任務に就けないため、防衛交流のあるオマーンに哨戒機も含めた燃料補給などの協力を求めるとみられるが、当初はジブチに近いバベルマンデブ海峡を中心に飛行する案もある。 (1912-110501>1912-110501)

6・5・1・3 派遣準備

6・5・1・3・1 国内調整

 菅官房長官が10月18日の記者会見で、中東地域での航行の安全確保に向けて、自衛隊の艦船などを派遣する検討を始めると明らかにした。 同日、首相官邸で開いた国家安全保障会議で方針を確認した。
 米国が提案する『海洋安全保障イニシアチブ』には参加せず、日本独自の取り組みを適切に行うとことでイランに配慮した。
 菅官房長官は活動範囲にも触れ、オマーン湾、アラビア海の北部の公海、バブルマンデブ海峡の東側の公海を挙げホルムズ海峡には言及しなかった。 (1911-101802>1911-101802)

 安倍首相が10月18日に開いた国家安全保障会議 (NSC) 会合で、緊張が高まっている中東地域の航行の安全確保に向け検討してきた自衛隊の派遣を具体化するよう指示した。
 派遣の目的は情報収集体制の強化とし、派遣の根拠は防衛省設置法の調査・研究にした。
 菅官房長官は記者会見で、有志連合構想に参加しないと明らかにした一方、引き続き米国とは緊密に連携していくと述べた。 また派遣する自衛隊の装備として、艦船や哨戒機を検討していることも明らかにした。
 イエメンとソマリアに面したアデン湾では、海上自衛隊が海賊対処に取り組んでおり、現在も護衛艦1隻とP-3C 2機を派遣していることから、今回の派遣にはこれらの装備をあてる方針である。 (1911-101803>1911-101803)

 複数の関係者が11月13日、政府が早ければ来春にも実施する中東海域への自衛隊派遣に関し、隊員の処遇を拡充する方向で検討に入ったことを明らかにした。 防衛省の関連規則を改正して派遣隊員に特別手当を支給するほか、新たな保険も整備する。
 自衛隊の「特殊勤務手当」には、海賊対処におけるソマリア沖アデン湾での船舶護衛(2,000円/日)、BM対処(1,100円/日)、北朝鮮による洋瀬取りへの対処(1,100円/日)などがある。 (1912-111305>1912-111305)

 政府が日本船舶の安全を確保する自衛隊の中東派遣について、海上自衛官を中心に270名規模とする方向で調整に入った。
 防衛省設置法に基づく「調査・研究」目的で護衛艦1隻と哨戒機1機を派遣する。
 期限を定め、1年ごとに更新する案が有力である。 今後与党と調整し、これらを盛り込んだ実施計画を年内に閣議決定する。 (2001-120402>2001-120402)

6・5・1・3・2 中東諸国との調整

 河野防衛相が11月22日、同日から25日までの日程でバーレーンを訪問すると発表した。
 各国要人とも個別に会談し、自衛隊の中東派遣の検討状況を説明し、補給や情報共有の面で協力を要請する。
 またソマリア沖アデン湾での海賊対処などに当たる多国籍部隊 (CTF) 司令部も訪問する。 (1912-112202>1912-112202)

 バーレーンを訪問している河野防衛相が国軍司令官らと会談し、政府が検討している自衛隊の中東派遣について方針を説明した。
 一連の日程を終えた河野大臣は、中東地域での情報収集を強化するためだと自衛隊派遣の意義を強調した。 (1912-112501>1912-112501)

6・5・1・3・3 イランとの根回し

ロウハニ大統領が理解

 安倍首相が12月20日にイランのロウハニ大統領と首相官邸で会談した。
 首相が27日に閣議決定する方針の中東への自衛隊派遣計画について説明したのに対し、ロウハニ大統領は「自らのイニシアチブにより、航行の安全確保に貢献する日本の意図を理解し、透明性を持ってイランに説明していることを評価する」と述べた。
 ロウハニ大統領はまた、米国の一方的な核合意離脱を非合理的な離脱を強く非難すると、重ねて米国を批判した一方、イランが主導する船舶航行の安全確保に向けた取り組みへの日本の支援を要請した。
 首相は「域内諸国の参加を得て、緊張緩和に資する取り組みになるならば期待する」と応じた。 (2001-122002>2001-122002)

過去の事案

 複数の政府関係者が、ペルシャ湾で行われた国際訓練に参加した海自の艦艇2隻が10月にホルムズ海峡付近を航行中、イランの革命防衛隊とみられる船から短時間、追尾を受けていたことを明らかにした。 海自艦艇であることを伝えると離れていったという。
 防衛省によると、海自掃海母艦ぶんごと掃海艇たかしまが10月下旬から11月中旬にペルシャ湾内のバーレーン周辺海域で機雷の掃海や潜水作業の要領を確認する米国主催の国際海上訓練に参加した。
 同訓練は2012年から開催され2019年で6回目で海自は初回から参加しているが、防衛省幹部は「訓練参加が主目的だったが、今回の中東派遣をにらんでホルムズ海峡周辺の偵察も兼ねていた」と打ち明けている。 (2001-123002>2001-123002)

6・5・1・4 派遣、閣議決定

 政府が12月27日、情報収集強化を目的とする中東海域への海上自衛隊の派遣を閣議決定した。
 ソマリア沖アデン湾で海賊対処活動にあたるP-3C 2機のうち1機を活用し、2020年1月下旬に情報収集活動を始める。
 また護衛艦たかなみを2月上旬に派遣し、2月下旬に現地に到着させる方向で検討している。  派遣規模は護衛艦と現地の哨戒機の要員を合わせて260名で、護衛艦は4ヵ月ごとに交代する。 (2001-122701>2001-122701)
6・5・2 艦隊の海外派遣

6・5・2・1 南シナ海、インド洋への艦隊の派遣

護衛艦いずもむらさめ の派遣

 海上自衛隊が4月16日、護衛艦いずもむらさめを4月30日から7月10日にかけて南シナ海やインド洋に派遣し、東南アジア各国と共同訓練すると明らかにした。 2隻はベトナムやフィリピン、シンガポールなどに寄港する予定という。
 海自は2017年5月から3ヵ間、いずもなど2隻を、2018年8月から2ヵ月間、いずもと同型艦のかがなど3隻を南シナ海やインド洋に派遣している。 (1905-041605>1905-041605)

 陸上自衛隊が4月18日、4月末から南シナ海に派遣される護衛艦いずもに水陸機動団の隊員30名を乗艦させると発表した。 海自との連携を深めることで水陸両用作戦能力の向上を図るもので、南シナ海や東シナ海での海洋進出を強める中国を念頭に抑止力を強化する狙いもある。
 湯浅陸上幕僚長は18日に、統合機動防衛力の観点から長期乗艦により水陸機動団と海自の水陸両用作戦上の関係強化を図るとし、自由で開かれたインド太平洋構想に寄与し、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出しようとするものだとも強調した。 (1905-041804>1905-041804)

 護衛艦いずもが4月30日09:00すぎに南シナ海やインド洋への長期航海のため横須賀基地を出港した。 いずもには陸上自衛隊の水陸機動団の隊員30名も初めて乗艦し護衛艦むらさめとともに出港した。
 「インド太平洋方面派遣訓練」と題した南シナ海への長期派遣は今回で2回目で、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナムなどを訪問して共同訓練を実施し、7月10日に帰国する予定という。
 航海中は、周辺海域で米海軍やフランス海軍とも共同訓練が計画されている。 (1905-043003>1905-043003)

 海上自衛隊が6月14日、護衛艦いずもむらさめがベトナム中部のカムラン湾に寄港したと発表した。 17日まで停泊しベトナム海軍との親善を図る。
 海自はインド太平洋方面派遣訓練として、いずもなど護衛艦3隻を南シナ海やインド洋に長期派遣している。 (1907-061405>1907-061405)

 護衛艦いずもが6月30日、フィリピンのスービック港に寄港した。 いずもの寄港はフィリピンとの緊密な関係をアピールすることで海洋進出を強める中国を牽制する狙いがありそうである。
 艦内で記者会見した第1護衛隊群司令の江川海将補は、日本は航行の自由や法の支配など基本原則の維持を通じ「自由で開かれたインド太平洋」の実現に努めてきており、海洋の安定のためには周辺地域の海軍の関係強化と協力がより重要になると述べた。 (1907-063001>1907-063001)

 護衛艦いずもが2ヵ月に及ぶインド太平洋での訓練を終えて、フィリピンのスービック湾を後に母港横須賀に向かった。 派遣訓練部隊には護衛艦むらさめあけぼのが随伴した。
 今回の訓練には陸上自衛隊の水陸機動団の隊員30名も乗艦し、いずもの飛行甲板や格納庫で、戦闘訓練や負傷者の収容訓練を繰り返した。
 この訓練は、米海軍やインド太平洋地域各国海軍との間で共同訓練を通じ、部隊の戦術技量の向上と、各国海軍との連携強化を図るもので、派遣部隊は、中国が領有権を主張する九段線海域周辺で、ブルネイおよびフィリピン海軍と最後の共同訓練を行った。 (1908-070402>1908-070402)

6・5・2・3 各国との共同訓練

6・5・2・3・1 南シナ海での日米共同訓練

 (特記すべき記事なし)
6・5・1・3・2 多国間共同演習

 米海軍が5月9日、5月2~8日に南シナ海で行った日米比印海軍合同演習が終了したと発表した。
 この演習には米駆逐艦Wiliam P. Lawrence、護衛艦いずもむらさめのほか、インド海軍から駆逐艦と補給艦各1隻、比海軍から哨戒艦1隻が参加した。 (1906-050906>1906-050906)
6・5・2・3・3 陸上自衛隊水陸機動団の長距離輸送

 2018年3月に発足した陸上自衛隊水陸機動団の300名がオーストラリアまで2週間かけて輸送艦で移動し、日米共同訓練に参加する初の大規模な機動訓練を行った。 陸上自衛隊が今回のように長い航海を伴う大規模な機動訓練を行うのは初めてである。
 7月16日に公開されたオーストラリア北東部海岸での米海兵隊との共同訓練では、沖合に停泊した海上自衛隊の輸送艦から水陸両用車や揚陸艇を使って上陸し、陸上での戦闘を想定した行動を確認した。 (1908-071704>1908-071704)
6・5・3 国連 PKO 活動

 (特記すべき記事なし)
6・5・4 安全保障関連法に基づく国際連携平和安全活動

シナイ半島多国籍軍監視団の司令部要員

 政府が1月22日、エジプトとイスラエルの国境地帯での平和維持を監視するシナイ半島多国籍軍監視団の司令部要員として、陸上自衛隊員の派遣を検討すると発表した。
 実現すれば、安全保障関連法施行で可能となった国際連携平和安全活動の初適用となる見通しで、国連が統括しない多国籍軍へ派遣することになる。 (1902-012203>1902-012203)

 岩屋防衛相がシナイ半島の多国籍軍への自衛官派遣について、週内にも自衛隊に準備を指示する。 任務はイスラエルとエジプトの停戦監視で、日本政府は中東和平の根幹をなす活動と見ている。
 シナイ半島で任務にあたる「多国籍軍・監視団」 (MFO) から派遣を要請され、検討を進めていた。
 実施計画の閣議決定を経て、今春にも陸上自衛隊員2名を半島南部のシャルムエルシェイクの司令部に派遣する。 2015年成立の安全保障関連法で認められた「国際連携平和安全活動」に基づく初の事例で、海外派遣の実績づくりの側面もある。 (1903-022701>1903-022701)

 菅官房長官が2月28日、シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動をする多国籍軍監視団 (MFO) に司令部要員として自衛官2名を派遣すると発表した。
 安全保障関連法で新設された任務である国際連携平和安全活動の初適用となる。 (1903-022803>1903-022803)

6・5・5 人道支援活動

 (特記すべき記事なし)
6・5・6 爆発装置処理隊の新編

 国内の有事や国連平和維持活動 (PKO) などに派遣される陸上自衛隊の中央即応連隊に3月26日、IEDを処理する専門部隊の爆発装置処理隊が新編された。
 爆発装置処理隊は3佐の隊長と隊員約30名で、携帯式爆発物探知装置や爆発物破壊容器、耐爆防護衣などを装備している。
 将来の海外派遣や、安全保障関連法に基づく在外邦人保護活動に投入することを念頭に置いている。 (1904-032606>1904-032606)
6・6 将来戦への対応

6・6・1 サイバ戦

6・6・1・1 わが国に対するサイバ攻撃

 政府がサイバ攻撃情報を官民で共有する新組織サイバーセキュリティ協議会事務局を4月に発足させた。 米FireEyeの日本法人によると、6月に大阪で開かれるG20首脳会議や2020年東京五輪・パラリンピックなどを念頭に置くが、これら国際イベントはサイバ攻撃集団を日本に引き寄せる要因になる。
 更に脅威となるのは国家の意思を背景に、日本の防衛機密や先端技術を狙う中国からの攻撃で、Fire Eyeの追跡によると、2015年の米中政府が企業秘密の窃取を実行支援しないことで合意して以降、中国発の対米サイバ攻撃は大きく減少したが、一方で習政権は大規模軍改革の目玉としてサイバ戦を指揮する戦略支援部隊を2015年12月に発足させ、その約半年後にはサイバ攻撃の頻度は「復活」し始めていた。 (1905-040602>1905-040602)
6・6・1・2 サイバ戦体制の確立

6・6・1・2・1 国としてのサイバ戦体制

データの管理

 政府は2019年4月にも、電力、水道などの重要インフラ関連企業が持つ主要な電子データについて、国内のサーバでの保管を要請する方針を固めた。
 ネット空間におけるサイバ戦の脅威が指摘されるなか、セキュリティ対策の一環として取り組むもので、中国などによるサイバ攻撃を念頭に、国民生活の安全や産業競争力に不可欠な情報を守るのが狙いである。
 欧米では、政府機関の調達から中国通信大手の華為技術 (Huawei) と中興通訊 (ZTE) を排除する動きが広がっているが、日本政府も2018年12月に事実上この2社を排除し、重要インフラ事業者も追随する見通しである。
 電子データの国内保管は、こうした対中包囲網の延長線上にある。 (1902-010101>1902-010101)

重要インフラ事業者らのサイバ防衛指針

 政府が4月18日に情報通信や電力など14分野の重要インフラ事業者らのサイバ防衛指針の改定案をまとめた。 情報通信機器のリスクを巡っては米欧などの対応を調べる必要があると判断し明記は先送りした。
 柱はデータの厳重管理で、改定案は「適切な保護や保管場所の考慮をはじめとした望ましいデータ管理」と明記し、警備体制などの重要情報はクラウドサービスや海外のデータセンタではなく、自前のサーバに保管するよう促した。
 もう一つの柱が災害によるシステム停止の回避で、2018年9月は北海道地震の大規模停電で病院なども影響を受けことや、台風21号により関西国際空港が一時閉鎖したことなどから、改定案は情報システムやサーバを地震や豪雨の影響を受けにくい安全な場所に置き、被害を小さくできるよう事前に対策を練るよう求めている。 (1905-041901>1905-041901)

6・6・1・2・2 防衛省のサイバ戦体制

サイバ防衛に関する教育の一元化

 防衛省は陸、海、空の3自衛隊に分かれていたサイバ防衛に関する教育を平成31年(2019年)度から一元化する。 32年(2020年)度以降は有事の際に相手の通信ネットワークを妨げる反撃能力に関する技能を持つ専門人員の育成を始め、高度になる中国や北朝鮮によるサイバ攻撃の脅威に備える。
 このため陸上自衛隊通信学校に海空の自衛隊員も含めて教育する課程を今秋に設け、35年(2023年)度までにサイバ防衛隊を約500名と現状の3倍超に増やして対応する。 (1903-022001>1903-022001)

NATOサイバ防衛協力センタに職員を派遣

 岩屋防衛相が3月8日、エストニアにあるNATOのサイバ防衛協力センタに、防衛研究所の職員1人を9日から派遣すると発表した。
 エストニアはサイバ防衛の先進国として知られており、防衛相は防衛省・自衛隊におけるサイバ攻撃への対処能力の向上に努めたいと語った。 (1904-030804>1904-030804)

6・6・1・2・3 サイバ戦にも日米安全保障条約5条が適用

 日米政府が4月19日、外務防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会 (2-plus-2) で、大規模なサイバ攻撃にも米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条が適用されうることを初めて確認した。 (1905-042001>1905-042001)
6・6・1・2・4 サイバ戦攻撃に物理的反撃も

 岩屋防衛相が4月25日の参院外交防衛委員会で、外国から日本に対するサイバ攻撃への対処について「武力攻撃を排除するために必要な措置を取ることは当然で、物理的手段を講ずることが排除されているわけではないと述べ、サイバ空間での反撃だけでなく相手国に対して戦闘機やミサイルによる反撃も可能だとの見解を示した。 (1905-042503>1905-042503)
6・6・1・2・5 地方に初のサイバー部隊

 防衛省が3月に沖縄など南西諸島に展開する自衛隊の通信システムへのサイバ攻撃を防ぐため、陸上自衛隊西部方面隊に方面システム防護隊を新設した。 方面システム防護隊は50名で編成され、24時間態勢でサイバ攻撃に備える。
 また、南西諸島の有事の際には、現場に赴いた自衛隊の部隊が現地にアンテナを張り、中央のネットワークに接続して野外で部隊の活動を計画し指揮する。 こうした通信網を守るため、方面システム防護隊も同行して外部からの不正アクセスやウイルスから守る。
 地方に置くサイバ防衛部隊は初めてで、海洋進出を強める中国がサイバ戦力を増強していることを念頭に態勢を強化した。 (1907-061104>1907-061104)
6・6・1・2・6 NATO のサイバ戦演習に本格参加

 自衛隊が12月2日、NATOが主催する大規模サイバ演習に初めて正式参加した。 米国を含むNATO加盟国など30を超える国と地域が参加する演習Cyber Coalition 2019に参加している。
 エストニアのコントロールセンタを拠点に、2日から6日までの5日間、各国のサーバをオンラインで繋ぎ、サイバ攻撃を受けた場合を想定して連携して訓練する。
 自衛隊は約20名がオンラインで市ヶ谷の統合幕僚監部や専門部署であるサイバ防衛隊が中心に参加し、演習のために設けられた専用プログラムにログインし、各国との情報共有や意思決定に加わった。 (2001-120301>2001-120301)
6・6・1・3 サイバ戦技術の振興

6・6・1・3・1 反撃用ウイルス保有へ

 政府筋が4月29日、政府が日本の安全保障を揺るがすようなサイバ攻撃を受けた場合に反撃するとして、防衛省でコンピューターウイルスを作成、保有する方針を固めたことを明らかにした。 令和元年度内に作成を終えるという。
 相手の情報通信ネットワークを妨害するためのウイルスを防衛装備品として保有するのは初めてで、サイバ空間における新たな対処策となる。 (1905-043001>1905-043001)
6・6・1・3・2 サイバー戦に AI 技術の導入

 防衛省がAIの活用を大幅に拡大する。 防衛省は令和2年度予算の概算要求にサイバー関連の必要経費、補修に関する調査研究費をそれぞれ盛り込む。
 令和2年度から自衛隊サイバー防衛隊の情報通信ネットワークに導入し、マルウエアの分析や対策を効率的にできるようにするほか、艦艇など装備品のシステムにAIを搭載し、正確で無駄のない補修業務につなげ、米中などに比べ大幅に遅れている防衛分野での導入を急ぐ。 (1907-061701>1907-061701)
6・6・1・3・3 量子暗号技術の2025年実用化

 総務省が、解読困難な量子暗号と呼ばれる次世代技術の2025年に実用化を目指して研究開発を加速するため、令和2年度予算の概算要求に研究開発費15億円を盛り込む。
 2025年に全国で量子暗号を使える環境を整える考えで、既に設置されている光ファイバー網の活用を検討している。 (1909-082307>1909-082307)
6・6・2 宇宙利用、宇宙防衛

6・6・2・1 宇宙利用

6・6・2・1・1 宇宙利用体制

 政府の宇宙政策委員会が3月28日、平成31年度の宇宙基本計画工程表改訂に向けた議論を始めた。 6月に重点事項を取りまとめ、12月の宇宙開発戦略本部で行程表を改訂をする。
 出席者によると、委員からは2018年12月に策定した新防衛計画大綱について「防衛省は宇宙安全保障関連予算をどのように確保して行くか見通しを示してほしい」との指摘があった。 (1904-032809>1904-032809)
6・6・2・1・2 宇宙利用の実例

 岩屋防衛相が5月14日、防衛省が他国に関する画像データを収集するため利用していた商用衛星が1月に故障し使用できなくなっていると明らかにした。
 故障したのは商用の地球観測衛星WorldView-4であるが、防衛相は他の商用衛星や政府の情報収集衛星を使用するなど、重層的な体制をつくっていると述べ、監視網に不備は出ていないと説明している。 (1906-051403>1906-051403)
【註】WorldView-4(旧名GeoEye-2)は米国で2016年11月に打ち上げられた31cm解像度の撮影能力を持つ商用衛星で、寿命は7年とされていた。
 日本では一般財団法人リモート・センシング技術センターがデータを提供している。
6・6・2・2 宇宙防衛

宇宙基本計画の新工程表

 政府が6月4日、宇宙開発戦略本部の会合を開き、宇宙基本計画の行程表改定に向けた重点事項を決定した。
 宇宙安全保障の強化を重視し、自衛隊の宇宙領域専門部隊新設などについて宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米国と連携して早期実現を目指す方針を明記している。 更に宇宙開発の阻害要因となるスペースデブリ対策で世界をリードするとの目標も打ち出した。
 重点事項を示した文書は、宇宙開発に積極的な中国やロシアを念頭に、対宇宙兵器の開発や電波妨害、不審な人工衛星活動が見られるとして脅威が高まっていると指摘し、2018年末策定の「防衛計画の大綱」に盛られた、宇宙空間の状況を常時監視する航空自衛隊の専門部隊や専門職種の新設について具体化の作業を進める方針を示した。 (1907-060402>1907-060402)

日米共同の宇宙状況監視

 日米両政府は2023年度から自衛隊と米軍の宇宙状況監視 (SSA) システムを連結させ、リアルタイムで他国の衛星やスペースデブリなどの情報を共有する。 将来は他国衛星の攻撃などに備えた相互防護体制の構築を目指す。
 4月にワシントンで開く外務防衛閣僚の日米安全保障協議委員会 (2-plus-2) で、宇宙分野の連携強化を確認する。 (1904-033002>1904-033002)

 日米関係筋によると、米軍がVandenberg AFBにある宇宙作戦センタに、連絡官として航空自衛官を常駐させる方向で日本側と最終調整を進めているという。
 宇宙作戦センタでは、ミサイルや軍事衛星に対する攻撃への警戒のほか、宇宙ごみの監視などの任務が行われているということで、連絡官は日米間の調整や情報交換などにあたるとみられる。 (1904-033004>1904-033004)

米英豪など6ヵ国宇宙軍事協力強化合意への参加見送り

 米軍が4月10日、英豪など6ヵ国と宇宙分野での軍事協力を強化する方針で一致し、宇宙デブリの監視や情報共有などで連携を強化する方針を確認したが、日本は米国と宇宙安全保障協力を進める方針を示しているものの今回の合意には参加していない。
 ただ自衛隊がVandenberg AFBにある多国間共同宇宙作戦センタに連絡官を派遣し、今後の関係強化について協議する態勢が整えば、将来の自衛隊の参加もあり得るという。 (1905-041103>1905-041103)

準天頂衛星に米国のセンサーを搭載

 日米政府が4月19日、外務防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会 (2-plus-2) で、日本の衛星に米国の宇宙監視センサを搭載することでも合意し、宇宙での協力を前進させた。
 宇宙分野の日米協力を巡っては、中国やロシアの軍事衛星の動向や衛星を破損させる恐れがある宇宙ゴミなどを監視するため、日本が打ち上げ予定の準天頂衛星に米国のセンサーを搭載することを決めた。 (1905-042001>1905-042001)
【註】準天頂衛星は静止衛星と同じ高度36,000kmにありしかもわが国周辺の上空に留まることから、北朝鮮や中露のBMを常時監視するのに適するが、多くが高度数百㌔付近に漂う宇宙ゴミの監視に適するかは疑問である。

6・6・3 将来戦対応統合部隊の創設

6・6・3・1 サイバ戦部隊の創設

 防衛省が、宇宙/サイバ/電磁波という新たな領域の防衛を担う統合部隊の創設を検討している。 既存の陸海空自衛隊や統幕とは別枠の部隊で、司令部を備えた機能統合組織と位置付け、発足すれば自衛隊初となる。
 機能統合軍としてサイバ軍などを設けている米軍を参考に新領域での対処力を強化する。 (1902-012801>1902-012801)
6・6・3・2 宇宙防衛部隊の創設

 複数の防衛省関係者が5月13日、防衛省が2022年度までに発足予定の航空自衛隊の宇宙領域専門部隊を100名規模とする方針を固めたことを明らかにした。 拠点は空自府中基地に置く。
 また、宇宙分野を巡る自衛隊と米軍との連携強化に向けて、カリフォルニア州の空軍基地にある宇宙作戦センタに空自から常駐の連絡官を派遣する。 (1906-051302>1906-051302)
6・6・4 電子戦

6・6・4・1 電子戦運用

電子戦訓練への障害

 自衛隊が電子戦の訓練をめぐり、沖縄県の離島への中国の侵攻を想定した電波妨害訓練が、使用する電波の周波数について総務省の承認を得られない状態が続いているため行えず、支障が生じている。
 携帯電話の通信の送受信に使う電波と混信する可能性があるのが理由で、国防と民需で電波の争奪戦が激しくなっている。 (1904-032607>1904-032607)

6・6・4・2 電子戦体制

健軍駐屯地に電子戦部隊

 防衛省が、令和2度末に健軍駐屯地に電子戦部隊を80名規模で発足させる方針で、令和2年度予算概算要求に関連経費を計上する。
 陸自には電子戦部隊として東千歳駐屯地に第1電子隊があるが、新設する部隊への統合を検討しており、昨年3月に新設した水陸機動団と連携して前線に緊急展開し、対処力の強化につなげる。 (1909-082001>1909-082001)

6・6・4・3 電子戦装備

人工衛星への電波妨害に備え

 防衛省が人工衛星への電波妨害に備えようと新しい監視装置を開発する方針であることが分かった。
 防衛省は調査研究費を来年度予算概算要求に計上し、妨害への監視機能の保有に着手する。
 2018年秋のNATO軍演習の際に北欧でGPSへの妨害が起き、ロシアの関与が疑われ、衛星の電波への妨害の脅威は高まっている。 (1909-081902>1909-081902)

令和2年度予算での開発計画

 防衛省が令和2年度予算で電子戦能力の強化を目指す。 (1910-090503>1910-090503)

Ground-based systems

 陸上自衛隊が73式中トラ搭載のSIGINT/ECM装置NEWSを$97Mかけて整備する。 NEWSには1型~4型があり、それぞれ別の役割や担当帯域を持つ。 また熊本で来年度内に電子戦部隊を編成する。
 この他に$35.8Mかけて地上設置型対空EW装置を開発する。

Airborne EW

 来年度予算ではF-15J/DJの改良と新型SOJの開発継続にそれぞれ$36.7M及び$19.5Mを計上している。 F-15J/DJの改良はAGM-158 JASSM搭載に伴うもので、新型SOJC-2及びEP-3CのSOJ型開発である。

6・7 諸外国との防衛協力

6・7・1 多国間演習参加

6・7・1・1 Cobra Gold

 米タイ合同演習Cobra Goldが2月22日までの予定で12日に始まった。 この演習には29ヵ国が参加し、野外軍事訓練、人道支援、災害救助の3部門で行われる。
 演習にはタイ、米国のほか、日本、中国、韓国、シンガポール、インド、インドネシア、マレーシアの7ヵ国も実員を派遣し、陸海合わせて4,500名が参加する。 (1903-021207>1903-021207)
6・7・1・2 Rim Pac

 (特記すべき記事なし)
6・7・1・3 米国を核心とした3~4ヵ国演習

6・7・1・3・1 日米英

合同対潜演習

 米海軍が3月12日に、第2回目となる日米英三国海軍の合同対潜演習が14日に開始されると発表した。
 この演習に米海軍からは第16哨戒飛行隊のP-8A 1機、英海軍からはフリゲート艦Montrose、海上自衛隊からは護衛艦むらさめと潜水艦1隻及びP-1 1機が参加する。 (1904-031312>1904-031312)

6・7・1・3・2 日米豪

Cope North

 日米豪から100機近い航空機が参加したCope North演習が3月8日までの予定で2月18日に開幕した。 演習は人道支援と災害救助の訓練としてグアムを拠点として、パラオやミクロネシア連邦を含む西太平洋一帯で行われる。
 演習には米空軍、海軍、海兵隊と航空自衛隊、豪空軍が、米軍から2,000名以上、日豪から850名が参加した。 (1903-022008>1903-022008)

Talisman Sabre

 自衛隊がオーストラリアでの訓練を著しく大規模化している。
 米豪共同隔年演習Talisman Sabreには2015年と2017年にそれぞれ40名と50名が参加してきたが、6月下旬に行われる今回の演習には海上自衛隊が派遣する護衛艦いせと輸送艦くにさきには新編された水陸機動団の隊員と第1ヘリ団のヘリ複数機が乗り組んでいる。
 これに先立つ6月上旬に行われたSouthern Jackaroo演習は今まで米海兵隊がオーストラリアで行ってきたが、今回は陸上自衛隊が150名の隊員とFH-70砲2門を展開して、日本ではできない射距離15哩での長距離射撃を実施している。 (1907-061709>1907-061709)

 34,000名以上が参加し1ヶ月間にわたり行われる米豪合同演習Talisman Sabre 2019が、7月7日にブリスベーン港に停泊している米空母Ronald Reaganの艦上で開始された。
 演習は主としてクイーズランド州のShoalwater湾演習場とニューサウスウェールズ州のEvans Head射爆場で行われる。 米海兵隊はM142 HIMARSを搬入しており、8日には初の実射を行う計画である。
 この演習にはカナダ、日本、ニュージーランドも参加すると共に、インドと韓国もオブザーバーを派遣している。
 7日にはオーストラリアのABC TVが、中国の情報収集艦が近傍から情報収集するためオーストラリアに向かっていると報じており、豪軍も「追跡中」であることを明らかにした。 (1908-070803>1908-070803)

 オーストラリアで行われた米豪合同演習Talisman Sabreで、陸上自衛隊に新偏された水陸機動団が2ヵ所で上陸演習を行った。
 この演習に水陸機動団は団長の青木将補以下330名が、AAV-7 6両、CH-47JA Chinook 2機、120mm迫撃砲と共に参加した。 また海上自衛隊は護衛艦いせ、輸送艦くにさきがSH-60J 2機及びLCAC 2隻と参加した。
 7月16日にStanage湾で行われた演習ではAAV-7とLCACで上陸した部隊がヘリ降着地を確保し、Chinookが後続部隊を乗せ着陸した。
 7月22日にBowen市で行われた演習では未明に第1波がAAV-7で上陸し、23日払暁にChinook 1機が降着してBowen空港を確保した。 (1908-073111>1908-073111)

6・7・1・3・3 日米豪仏

La Perouse: 日米豪仏

 米海軍第7艦隊によると、駆逐艦William P. Lawrenceが5月16日にインド洋ベンガル湾で、日、仏、豪の5隻と合同演習La Perouseを実施した。
 参加したのは仏海軍空母Charles de Gaulle、護衛艦いずもむらさめ、豪海軍フリゲート艦Toowoombaと潜水艦Collinsである。 (1906-051606>1906-051606)

 海上自衛隊が5月19日に日仏豪米の4ヵ国による初の共同訓練をインド洋で開始した。
 護衛艦いずもや仏海軍原子力空母Charles de Gaulleなど10隻が参加し、22日までスマトラ島西方の海空域で、対潜水艦戦や搭載ヘリの相互発着艦などを訓練する。
 いずもは4月末に日本を出港し、3~9日には南シナ海などで、米、印、比海軍の艦艇計6隻とも訓練を行っている。 (1906-052003>1906-052003)

6・7・1・3・4 日米豪 NG

 毎年年末に人道支援物資等をミクロネシアで空投するOperation Christmas Drop作戦に、68年の歴史上初めてニュージーランド (NG) が参加した。
 作戦は12月9日から13日まで行われ、横田AFBの米空軍第36空輸飛行隊所属のC-130J 3機と日、豪、NGそれぞれ1機のC-130が、ミクロネシアの55島、20,000人以上に対し、176梱包の支援物資を空投した。 (2001-121307>2001-121307)
6・7・1・3・5 日米豪韓

米豪韓海軍との共同訓練

 海上自衛隊が5月23日に、米領グアムで米豪韓海軍と共同訓練を開始した。 海自から護衛艦ありあけあさひ、哨戒ヘリ2機が参加し、28日まで対潜水艦戦や防空戦などを想定して訓練する。
 この4ヵ国の枠組みでの海上訓練は初めてで、海自と韓国軍の本格的な訓練は、FCSレーダ照射問題で関係が冷え込んだ2018年12月以降、初めてである。 (1906-052305>1906-052305)

Pacific Vanguard 不参加

 韓国政府の消息筋が11月21日、韓国が5月に続いて参加する米軍主催の合同演習Pacific Vanguardが20日から始まったことを明らかにした。
 Pacific Vanguardは今年2回目で、5月の前回は韓国、米国、オーストラリア、日本の4ヵ国が参加し、グアム付近の海上で行われたたが、今回日本は参加しない。
 同消息筋によると、今回の演習では米グアム付近の太平洋上で合同機動訓練、射撃訓練、対空防衛訓練、対潜水艦作戦などの訓練が行われる。 (1912-112106>1912-112106)

6・7・1・3・6 日米印

掃海訓練

 海上自衛隊と米海軍、それにインド海軍が7月23日、青森県沖で行った掃海訓練を報道陣に公開した。
 この訓練は3ヵ国の隊員およそ1,100名が参加し、7月18日から30日までの予定で訓練用の機雷を使って機雷を敷設する訓練のほか、掃海艇による掃海訓練が行われている。
 米国は中東のホルムズ海峡付近でタンカーなどを護衛するため有志連合を構想しており、機雷の処理なども想定しているとみられている。 (1908-072404>1908-072404)

Malabar 演習

 日米印海軍のMalabar年次合同演習が9月に10日間の日程で佐世保沖で行われている。 2019年のMlabarは初めて日本が主導して行われている。
 この演習には米海軍から駆逐艦McCampbell、強襲揚陸艦Green Bay、Los Angelsg級攻撃型原潜が、インド海軍からはフリゲート艦Sahyadari、対潜コルベット艦KiltanとP-8I Poseidonが、海上自衛隊からはヘリ空母かが、駆逐艦さみだれ、巡洋艦ちょうかいが参加している。 (1910-092504>1910-092504)

6・7・1・3・7 日米比

Kamandag 米比定期合同演習

 駐比米大使館が10月7日、第3回目となる米比合同演習Kamandagが10月9~18日にルソン島とパラワン島で行われると発表した。 今年の演習には災害救助人道支援活動などで自衛隊も参加しする。
 今回の参加規模は米軍1,400、比軍350、自衛隊100の計1,850名で、米軍からは沖縄の第3海兵遠征軍とカリフォルニアの第11海兵遠征隊がする。 (1911-100805>1911-100805)

Sama Sama 米比合同年次演習

 米沿岸警備隊の警備艦Strattonがパラワン島周辺の南シナ海で米海軍とフィリピン海軍及び海上自衛隊が実施する年次演習Sama Samaに参加する。
 米比合同演習であるこの演習に海上自衛隊が参加するのは初めてである。
 演習には米海軍LCS Montgomery、揚陸艦Germantownと高速輸送艦及びサルベージ船の各1隻、更にP-8A Poseidon 1機が参加している。 (1911-101704>1911-101704)
【註】海上自衛隊の発表によると、日本からはP-3C 2機が参加している。 因みにフィリピンから参加しているのはC-90 1機と艦艇1隻である。

6・7・2 米州諸国との防衛協力

6・7・2・1 日米安全保障体制

 政府が日本へのサイバ攻撃に対し、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条を適用するため米政府と協議に入る。 日米外務防衛担当閣僚による安全保障協議委員会 (2-plus-2) で5条適用を盛り込んだ成果文書のとりまとめを目指す。
 日本政府がサイバ領域での米国との協力関係について念頭に置くのは、NATOが2014年に採択したWales宣言で、サイバ攻撃でも加盟国への武力攻撃をNATO全体への攻撃とみなす集団防衛条項(5条)を発動する意思を明確にしている。 (1902-010401>1902-010401)
6・7・2・2 米軍艦艇航空機の防護

 防衛省が2月27日、自衛隊が安全保障関連法に基づいて行う米軍の艦艇や航空機の防護について、2018年は16回実施したと発表した。 2017年の2回から大幅に増加した。
 防衛省は、日米相互が制度に習熟して、信頼関係が増した結果だと説明している。
 防衛省によると、2018年は初めてBMDを含む情報収集と警戒監視活動中の米艦艇に対する防護が3回行われたほか日米共同訓練中の防護で、航空機に対して10回、艦艇に対して3回だった。 (1903-022703>1903-022703)

 他国を武力で守る集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法の施行から3月29日で3年となったが、政府は自衛隊が米軍の艦艇や航空機を守る武器等防護を2018年に16件実施し、前年の8倍に急増した。 BM警戒中の米艦の防護も初めて行い、日米の軍事的一体化を加速させた。
 防衛省によると、自衛隊が2018年に実施した米軍防護は前年の共同訓練とは違い、実任務に踏み込んだ物であるが、具体的な活動内容は米軍の部隊運用に直結するとして公表していない。 (1904-032902>1904-032902)

6・7・2・3 防衛協力分野の拡大

 複数の政府筋が1月26日、政府は自衛隊と米軍による新たな日米共同作戦計画の検討に着手したことを明らかにした。 今春行われる両国の外務防衛担当閣僚安全保障協議委員会 (2-plus-2) で、計画策定に向けた作業加速を確認する。
 陸、海、空に宇宙、サイバ空間、電磁波を加えた6領域を作戦計画の対象範囲に位置付け、複数の領域での同時多発的攻撃に備え、日米両部隊の一体的運用を図る狙いがある。 (1902-012701>1902-012701)

 日米政府が4月19日、外務防衛担当閣僚による安全保障協議委員会 (2-plus-2) をワシントンで開催する。
 宇宙やサイバなどの新領域で脅威を増す中国、ロシアを念頭に、日本が昨年末に策定した新防衛大綱を踏まえて両国間の防衛協力を強化することが柱で、協議の成果を盛り込んだ共同声明を発表する方向で調整を進めている。 (1905-041705>1905-041705)

 防衛装備庁が7月31日、宇宙、サイバ、電磁領域などの新ドメインでの防衛力強化のため、日米の防衛技術協力を強化して行く方針を明らかにした。
 新ドメインの防衛力強化は2018年末に発表された防衛計画大綱でも取り上げられている。 (1908-073110>1908-073110)

6・7・2・4 日米共同訓練

6・7・2・4・1 洋上共同訓練

6月:南シナ海で空母Ronald Reagan

 複数の政府関係者が6月11日、護衛艦いずもと米空母Ronald Reaganが10日から南シナ海で共同訓練を行っていることを明らかにした。
 海自と米空母が南シナ海で共同訓練を行うのは2018年8月以来で、海自からはいずものほか、護衛艦むらさめあけぼのが参加し、Ronald Reaganと艦隊を組んだ上で戦術運動の確認などを行った。 (1907-061202>1907-061202)

6・7・2・4・2 洋上機動訓練

 米海軍強襲揚陸艦Waspを中心としたARGが1月12~13日に東シナ海で海上自衛隊のくにさきと共同演習を行った。
 この演習にはドック型揚陸艦AshlandGreen Bayも参加した。 (1902-011706>1902-011706)
6・7・2・4・3 揚陸訓練

Iron Fist

 第14回となる日米共同演習Iron Fistが2月8日までカリフォルニア州南部で陸上自衛隊と米海兵隊が参加して実施され、水陸機動団がfull operationalになったことを実証した。
 この演習では初めて陸上自衛隊の水陸両用車が参加した。 (1903-021507>1903-021507)

6・7・2・4・4 航空訓練

B-52 との共同飛行

 米インド太平洋軍が、3月4日にB-52 2機がAndersen AFBを離陸し、1機は南シナ海周辺を飛行し、もう1機は航空自衛隊及び米海軍と共同訓練を行ったと発表した。
 東シナ海では台湾、2013年に中国が一方的に日本、韓国のADIZが接する空域にADIZを設定している。 (1904-030609>1904-030609)

6・7・2・4・5 陸上訓練

Orient Shield 演習

 米陸軍1,000名と陸上自衛隊750名が9月5日に、全国の演習場で年次演習Orient Shieldを開始する。 演習は9月23日まで行われる。
 演習にはイリノイ州兵の第33歩兵旅団戦闘団と、マルチドメイン戦闘部隊1個隊が参加する。
 陸軍にとってマルチドメイン戦闘隊の試験運用は2018年ハワイで行われたRim of the Pacific演習以来で、砲兵旅団司令部に対しサイバ、電子戦、宇宙などの情報を収集し提供する。
 Orient Shield演習は4年前に開始したPacific Pathway計画の一環で、Pacific Pathway計画では90日間にわたり米陸軍部隊を海外に派遣している。 (1910-090403>1910-090403)

 陸上自衛隊が9月17日、熊本県の大矢野原演習場で地上から艦艇を攻撃する訓練を国内では初めて日米共同で実施する。
 2018年は初の共同対艦戦闘訓練を米国で行ったが、より中国に近い日本で実施することで、牽制を強める狙いがあるとみられる。
 予定されている地対艦ミサイル訓練は、国内各地で行っている自衛隊と米陸軍の実動訓練Orient Shield 19の一環で、米側はHIMARSを日本国内での共同訓練で初めて展開し、日本側は12式 SSMの部隊が参加する。 (1910-091702>1910-091702)

ヤマサクラ-77 演習

 日本の有事を想定した自衛隊と米軍の大規模な図上演習ヤマサクラが朝霞駐屯地などで6,600名が参加して始まり、サイバ攻撃への対処など従来の陸海空にとどまらない新たな領域での連携の在り方を確認している。
 演習は首都圏と南西地域で、BMやゲリラによる攻撃、それに離島への侵攻といった複数の事態が同時平行で起きた場合を想定し、コンピュータ上で部隊を指揮して対処する。
 またサイバや電磁波による攻撃の対処など、従来の陸海空にとどまらない新たな領域で、日米がどのように連携するかを確認するという。 (2001-120901>2001-120901)

 2週間にわたる日米共同指揮所演習ヤマザクラ-77が、12月9日に東部方面総監部で開始された。
 この演習には米陸軍第1軍団の1,000名のほか米空軍海兵隊も参加し、開始式典ではオブザーバ参加の英、加、豪隊員も整列した。 (2001-120905>2001-120905)

6・7・2・5 カナダとの防衛協力

物品役務相互提供協定 (ACSA) 批准

 自衛隊とカナダ軍と食料や弾薬、役務を提供し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) が5月8日の参院本会議で可決承認され、6月にも発効する見通しである。
 日本の締約国は既に運用している米国、オーストラリア、英国、フランスを含め5ヵ国になる。 (1906-050804>1906-050804)

南シナ海で KAEDEX 2019演習

 海上自衛隊とカナダ海軍が6月13~15日にベトナム沖の南シナ海でKAEDEX 2019演習を実施した。 演習には護衛艦いずもあけぼの、カナダ海軍フリゲート艦Reginaと補給艦Asterixが参加した。
1907-061807)

6・7・3 大洋州諸国との防衛協力

6・7・3・1 オーストラリア

6・7・3・1・1 日豪国防相会談と共同声明

岩屋防衛相、パイン豪国防相会談

 岩屋防衛相が1月23日、パイン豪国防相と防衛省で会談し、両国は特別な戦略的パートナーであり連携を一層強化するため円滑化協定の早期妥結に向け尽力していくと述べたのに対し、パイン国防相は、日本は重要な準同盟国であり、防衛協力をさらに深化させたいと応じた。
 会談では、円滑化協定を3月を目指して妥結できるよう、交渉を加速させることで一致した。
 この協定は両国が相互訪問して共同訓練を行ったり、災害が起きた際に支援したりする場合に、武器弾薬の取り扱いや、事件事故を起こした際の裁判権などについて、あらかじめ取り決めておくものである。 (1902-012302>1902-012302)

河野防衛相、レイノルズ豪国防相会談

 河野防衛相が11月20日、来日中のレイノルズ豪国防相と会談し、会談後に共同声明を発表した。
 安全保障協力強化の一環として訓練計画の調整などを目的に陸上自衛隊に豪陸軍の連絡将校を常駐させることを確認した。
 両相は豪空軍が主催する多国間演習Pitch Blackに2020年初めて航空自衛隊の戦闘機を参加させることや、日本で実施する日豪共同演習武士道 Guardianを定例化することを明記した。
 また装備品などの共同研究開発のため、防衛装備庁と豪国防省科学技術グループの交流プログラム設立も決めた。 (1912-112005>1912-112005)

6・7・3・1・2 地位協定締結が難航

 日本の死刑制度が、予想外のところでオーストラリアとの関係に影を落としている。 両国は、自衛隊とオーストラリア軍が相手国で共同訓練をしたり、滞在したりするときの地位協定を結ぼうと交渉しているが、死刑制度がある日本とすでに死刑制度を廃止した豪州との調整が難航している。
 日豪訪問部隊地位協定は、日本の自衛隊と豪軍の部隊が相手国で共同訓練を実施する際や、災害時に相手国に派遣して滞在する際の法的な扱いを定めるもので、締結されれば出入国の手続きが簡略化され、豪軍の軍用車両や戦闘機を自衛隊の演習場に持ち込んで訓練に使えるようになる。
 日本がこうした訪問部隊地位協定を外国と結ぶのは初めてとなる。 (1904-032103>1904-032103)
6・7・3・1・3 共同訓練

武士道ガーディアン

 航空自衛隊とオーストラリア空軍による共同訓練「武士道ガーディアン」に参加するため、豪空軍のF/A-18 6機が9月20日に千歳基地に到着した。
 空自が国内を拠点に豪軍と実施する共同訓練は初めてで、空自から北部航空方面隊のF-15 10機とF-2 3機が参加し、千歳基地を拠点に北海道沖の日本海や青森県沖の太平洋上で訓練を行う。
 日豪共同訓練は2018年9月にも計画されたが胆振東部地震のため中止され、同10月の外務防衛閣僚会合 (2-plus-2) で今年中に実施する方針で合意していた。 (1910-092004>1910-092004)

6・7・3・2 ニュージーランド

 (特記すべき記事なし)
6・7・3・3 南太平洋諸国

フィジー

 政府が自衛隊による他国軍への能力構築支援 (Capacity Building) をフィジーに拡大し、太平洋島嶼国の軍支援で日米豪3ヶ国連携が初めて実現することが分かった。
 島嶼国では中国が経済支援と合わせ軍事的な影響力を高め、有事で米豪連携阻止を図っていることから、多額の支援を受けてきたフィジーは中国の軍事拠点になりかねず、日米豪の安全保障協力で巻き返しを狙う。
 太平洋島嶼国は14ヶ国あるが自衛隊の能力構築支援の対象となる軍を保有するのはフィジーとパプアニューギニア、トンガで、自衛隊はパプアニューギニアの軍楽隊育成などを支援し、2018年秋にはフィジー軍に短期研修を行ったこともあるが、新たにフィジーに対する本格的な支援に乗り出す。 (1908-071303>1908-071303)

パプアニューギニア

 米豪合同演習Talisman Sabre 19に参加していた護衛艦いせ、輸送艦おおすみ、陸自水陸機動団員等330名が8月3~5日、パプアニューギニアのポートモレスビーに寄港し、各種の親善行事等に参加した。 (1909-082206>1909-082206)

6・7・4 インド、インド洋諸国との防衛協力

6・7・4・1 インド

6・7・4・1・1 防衛協力協定等

日印 2-plus-2 を閣僚級に格上げ

 河野外相が1月7日、ニューデリーでスワラジ外相と戦略対話を行い、日印の外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) を2019年内の早い時期に実施する方向で一致した。
 宇宙やサイバ分野でも協力を進めていくことで合意した。
 日印2-plus-2を巡っては、昨年10月に東京都内で開かれた首脳会談で、次官級で行われているものを閣僚級に格上げすることで合意していた。 (1902-010801>1902-010801)

 安倍首相が6月27日、大阪市でインドのモディ首相と会談し、日印関係をさらに高い次元に引き上げたいと表明した。
 首相は、2018年10月の首脳会談で設置を決めた外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2)の早期開催に意欲を示し、モディ首相は安全保障での協力を進展させたいと応じた。 (1907-062702>1907-062702)

物品役務相互提供協定 (ACSA) 締結に向けた交渉加速

 岩屋防衛相が9月2日に防衛省でインドのシン国防相と会談し、外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2) を年内に初めて開催することで合意した。 12月で調整している日印首脳会談の前に開く。
 2-plus-2の設置は、2018年10月に東京で開かれた日印首脳会談で合意していた。
 また両国防相は、自衛隊とインド軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) の締結に向けて交渉を加速することも確認した。 (1910-090204>1910-090204)

 政府が11月26日、北村国家安全保障局長が訪問先のインド・デリーで25日にドバル国家安全保障担当補佐官と会談したと発表した。
 自衛隊とインド軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) の締結に向けて協議したとみられる。 (1912-112603>1912-112603)

初の日印 2-plus-2

 河野防衛相が11月29日、同日から12月1日の日程でインドを訪問し、茂木外相と共に初の外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) に出席すると発表した。
 自衛隊とインド軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) 締結に向け協議を加速させたい考えである。 (1912-112902>1912-112902)

 インド訪問中の茂木外相と河野防衛相が11月30日に初の日印外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) に臨み、航空自衛隊とインド空軍の戦闘機訓練を日本で開催する方針で一致した。
 中国の海洋進出をにらみ、安全保障協力の戦略的深化を図るもので、自衛隊とインド軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) の交渉加速も確認した。 (1912-113001>1912-113001)

6・7・4・1・2 共同演習

海上自衛隊

 護衛艦いずもが5月24日、インド海軍と対潜共同訓練をインド洋上で行った。
 インド洋では、中国軍の潜水艦や艦船が進出し、存在感を高めていて、インド軍は警戒を強めている。 (1906-052505>1906-052505)

陸上自衛隊

 陸上自衛隊とインド陸軍が10月30、31の両日にインド北東部ミゾラム州バランテの軍訓練施設で行った対テロ共同訓練を報道陣に公開した。
 今回は初めて湯浅陸上幕僚長が視察し、インド側との関係深化を図った。
 10月中旬に始まった訓練には、陸自からは首都圏防衛を担当する部隊が参加した。 (1911-103101>1911-103101)

6・7・4・2 バングラディッシュ

 (特記すべき記事なし)
6・7・4・3 インド洋諸国

6・7・4・3・1 スリランカ

 日本政府がインド、スリランカとコロンボ港を共同開発する方針で、夏までに3ヵ国で覚書を交わし、令和元年度中にも着工する。 一帯一路を進める中国の動きをにらみつつ、日本が唱える自由で開かれたインド太平洋構想を後押しする。 (1906-052007>1906-052007)
6・7・4・3・2 モルディブ

 海上自衛隊第2航空群第2航空隊(八戸)所属のP-3C 1機が7月22日、モルディブ東方空域でモルディブ哨戒艇Shaheed Aliと親善訓練を実施した。
 主な訓練項目は、捜索救難、通信であった。 (1909-082205>1909-082205)
6・7・5 欧州諸国との防衛協力

6・7・5・1 NATO との防衛協力

 (特記すべき記事なし)
6・7・5・2 英国との防衛協力

6・7・5・2・1 外務防衛閣僚協議 (2-plus-2)

 (特記すべき記事なし)
6・7・5・2・2 訪問部隊地位協定の締結を検討

 複数の政府関係者が、政府が自衛隊と英軍との訪問部隊地位協定の締結を検討していることを明らかにした。
 自衛隊と英軍の部隊が相手国で共同訓練を実施する際や、災害時に相手国に部隊を派遣する際の法的な扱いを定めるもので、日英間の防衛協力を強化するねらいがある。 (1905-040502>1905-040502)
【註】「訪問部隊地位協定 (VFA)」の締結に向け2018年に協議に入りすることは、2017年12月の2-plus-2で確認されていた。
6・7・5・2・3 日英共同演習

 (特記すべき記事なし)
6・7・5・2・4 艦船の日本寄港

フリゲート艦の派遣

 ロンドンで1月10日に安倍首相と会談したメイ英首相が、地域の平和の維持と北朝鮮の非核化達成のため2019年初めにTypa 23フリゲート艦Montroseを日本に派遣すると述べた。 (1902-011103>1902-011103)

6・7・5・3 フランスとの防衛協力

6・7・5・3・1 外務防衛閣僚協議 (2-plus-2)

 日仏両政府が1月11日に、外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) をフランス北西部ブレストの海軍施設で開き、インド太平洋地域での海洋安全保障で連携を強化する方針を確認した。
 安全保障や環境問題を含めた包括的海洋対話の発足で合意し、2019年内に初開催する見通しである。 (1902-011101>1902-011101)
6・7・5・3・2 物品役務相互提供協定 (ACSA)

 自衛隊とフランス軍と食料や弾薬、役務を提供し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) が5月8日の参院本会議で可決承認され、6月にも発効する見通しである。
 日本の締約国は既に運用している米国、オーストラリア、英国、カナダを含め5ヵ国になる。 (1906-050804>1906-050804)
6・7・5・3・3 海洋安全保障分野での協力

 安倍首相が6月26日、訪日中のフランスのマクロン大統領と会談し、海洋進出を強める中国を念頭に、海洋安全保障分野での協力を具体化する方針で一致した。
 途上国の債務返済能力を考慮する質の高いインフラ整備での連携も確認し、今後5年間、幅広い分野での協力目標を定めた新たなロードマップを発表した。 (1907-062601>1907-062601)

 日仏政府が9月20日に外交当局間で海洋政策について議論する包括的海洋対話を初めて開く。
 対話は南太平洋の仏領ニューカレドニアで開き、外務、防衛、環境、国土交通など関係省庁の審議官らが出席する。 両政府が1月に開いた外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2) で合意し、年に1回程度定期的に開催する。
 南シナ海などアジア太平洋で海洋進出を進める中国を念頭に、日仏の安全保障協力を深めて抑止効果に期待している。 (1910-090904>1910-090904)

6・7・5・3・4 日仏共同演習

 日仏両政府が1月11日、仏西部のブレストで外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2) を開き、南シナ海などで強引な海洋進出を続ける中国の抑止を念頭に、自衛隊と仏海軍の共同訓練を定期的に実施することを決めた。 協議後の共同声明では、あらゆる部隊で、実戦的で定期的な共同訓練を実施すると確認したなどとした。
 日仏の海上での訓練は従来、比較的規模の小さい親善訓練が中心だったが、2018年は対水上戦の共同訓練を太平洋で実施するなど実戦的な中身に移っている。 (1902-011202>1902-011202)
6・7・5・3・5 艦船の日本寄港

フリゲート艦の佐世保派遣

 フランスのメディアが、フランスが日本海で北朝鮮を監視するために海軍艦艇を日本に派遣する方針を固めたと報じた。
 フランスは2019年4月から洋上哨戒機とフリゲート艦Vendémiaireを佐世保海軍基地に派遣し、北朝鮮を監視するための海上巡回査察に参加する。 (1902-011403>1902-011403)

6・7・5・3・6 中東の緊張緩和へ連携

 外務省の森外務審議官が9月6日、パリでフランス外務省のエレラ総局長と会談し、中東の緊張緩和に向けた日仏の連携を確認した。
 中東地域の緊張が高まるなか、日仏両政府は米イラン両国の仲介を模索しており、安倍首相は9月下旬の国連総会で、トランプ米大統領、イランのロウハニ大統領それぞれとの会談を調整している。 (1910-090705>1910-090705)
6・7・5・4 その他の欧州諸国との防衛協力

6・7・5・4・1 ドイツ

 安倍首相が2月4日、メルケル独首相と首相官邸で会談し、両首脳は安全保障分野での協力を強めるため、情報保護協定の締結で大筋合意した。
 またトランプ米政権の保護主義的な動きを踏まえ、自由貿易の推進で一致するとともに、6月に大阪市で開くG20首脳会議の成功に向けた連携を確認した。 (1903-020404>1903-020404)
6・7・5・4・2 イタリア

 安倍首相が4月24日にコンテ伊首相とローマで会談し、両国の防衛装備品と技術移転に関する協定発効を受け、防衛協力を強化していくことで一致した。 コンテ首相は安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想に支持を表明した。
 一方、イタリアが先進7ヵ国 (G7) で初めて中国の一帯一路構想に参画したことを踏まえ、インフラ開発も議題となったもようである。 (1905-042405>1905-042405)
6・7・6 東南アジア諸国との防衛協力

6・7・6・1 ASEAN との防衛協力

 海上自衛隊のアジア及び西太平洋海域での活動と、フィリピンへのヘリ部品、マレーシアへのP-3C、ベトナムへの警備艦艇の装備品の供与などで、日本が存在感を高めている。 (1906-053103>1906-053103)

 防衛省が7月8~11日にASEAN全加盟国を日本に招き、航空防衛に関する初の実務者会議を開く。 会議は2016年の日本とASEANによる防衛協力の指針「ビエンチャン・ビジョン」に基づくもので、加盟10ヵ国の空軍担当者らが出席する。
 政府は領空侵犯への国際法に基づく対応や、軍用機の事故防止に関する取り組みを擦り合わせ、ASEANを自由で開かれたインド太平洋構想の要所と位置付けて部隊間の協力拡大につなげる。 (1908-070703>1908-070703)

6・7・6・2 フィリピンとの防衛協力

UH-1H 用部品の無償供与

 防衛省が3月12日、陸上自衛隊のUH-1H用部品をフィリピン空軍に無償譲渡する式典を開いた。 両国の代表者が目録に署名し、エンジンやブレードなどの部品を引き渡した。
 UH-1Hはすでに自衛隊で退役した機種だがフィリピン空軍は洋上監視などに使っている。 (1904-031208>1904-031208)

小型高速警備艇の無償供与

 日本政府がフィリピン沿岸警備隊に11月11日、高速小型舟艇で移動するテロリストなどの取締りに使う小型高速警備艇を供与し、首都マニラで記念の式典が行われた。
 供与されたのは日本政府が新造した全長15m、速度力50km/hの高速警備艇1隻である。 (1912-111102>1912-111102)

6・7・6・3 ベトナムとの防衛協力

 日本とベトナムが、防衛安全保障分野の交流を強化している。
 練習艦せとゆきなど練習艦2隻が6日にダナンに入港し歓迎式典が行われた。 一方、同国人民軍首脳が訪日し岩屋防衛相らと両国の連携を確認した。 (1904-030604>1904-030604)

 安倍首相が7月1日に首相官邸でベトナムのグエン・スアン・フック首相と会談し、防衛装備品の技術移転協定の締結交渉を開始することで一致した。
 両首脳は北朝鮮情勢や安全保障分野での連携を確認し、自由で開かれたインド太平洋構想の実現についても意見交換した。 (1908-070103>1908-070103)

6・7・6・4 タイとの防衛協力

 (特記すべき記事なし)
6・7・6・5 インドネシアとの防衛協力

 (特記すべき記事なし)
6・7・6・6 マレーシアとの防衛協力

 海上自衛隊の護衛艦あさぎりが9月18日にマレーシア東部のクアンタン港に寄港した。
 あさぎりはアデン湾での海賊対策の任務を終えたあと日本に戻る途中で、20日まで停泊する。  あさぎりは3日間の寄港中、マレーシア海軍と合同訓練などを行い交流した。 (1910-092003>1910-092003)
6・7・6・7 その他東南アジア諸国との防衛協力

 (特記すべき記事なし)
6・7・7 その他諸国との防衛協力

6・7・7・1 中東諸国

カタール

 安倍首相がカタールのタミム首長と会談し、両国の関係をより深めるため、経済や外交・安全保障について協議する外相級の戦略対話を新設することで合意した。
 会談で安倍首相は、カタールがサウジアラビアなど周辺国から国交を断絶されていることについて、対話を通じて平和的に解決することが重要だという認識を伝えた。 (1902-012905>1902-012905)

6・7・7・2 中南米諸国

ジャマイカ

 安倍首相が12月12日にジャマイカのホルネス首相と会談し、海洋秩序の維持などに向けた協力を確認し、日本がジャマイカに新造の警備艇や救助艇、計4億円相当を無償で供与することを記した交換公文を交わした。 (2001-121203>2001-121203)

6・7・8 海上保安庁の協力事業

6・7・8・1 共同訓練、訓練支援

マレーシア海難当局の海難救助訓練支援

 マレーシア沖の南シナ海で3月4日、同国の海難当局が日本の海上保安庁から海難救助の技術を学ぶ訓練が行われ、マレーシアの海難当局の職員と日本の海上保安庁の特殊救難隊など40名が参加した。 訓練には2017年に日本から供与された警備艦(元巡視船)が使用された。
 影響力を強めている東南アジアの国々に対し日本は、人材育成を強化することで連携を深めようとしている。 (1904-030501>1904-030501)

インドネシアとの協力体制を確認

 海上保安庁の岩並長官が6月26日、インドネシア海上保安機構のタウフィク長官と海上保安の協力体制を確認する覚書を交わし、合同訓練による両機関の能力向上や情報共有などを通し、協力関係を推進すると確認。
 文書交換式は国土交通大臣室で開かれた。 海保はこれまでに米国や韓国など8ヵ国の海上保安機関と協力を約束する文書などを交わしている。 (1907-062603>1907-062603)

6・7・8・2 東南アジア海域での海賊対策活動

 東南アジア海域における海賊対策のため海上保安庁の巡視船つがるが6月17日に函館港を出航した。
 つがるは海賊が出没しているインド太平洋海域の安全確保のた1ヵ月間、フィリピン、インドネシアと連携し東南アジア海域での警戒活動を行う。
 周辺では2018年、海賊による略奪や強盗が10件発生するなど危険が増している。 (1907-061702>1907-061702)
6・7・9 技術協力、武器輸出

6・7・9・1 技術協力

6・7・9・1・1 対米技術協力

研究開発分野での日米協力

 防衛省が研究開発分野での日米協力を強化しようとしている。
 防衛装備庁 (ATLA) 広報官が7月31日、両国の代表が宇宙、サイバ、電磁波など複数の分野での協力について協議したことを明らかにした。 (1909-080717>1909-080717)

AMDR-X (SPQ-9B 後継)

 日米外交筋が3月17日、日米両政府がミサイル防衛網の強化に向け、米海軍Aegis艦に搭載する新型レーダを共同開発する方向で最終調整に入ったことを明らかにした。
 北朝鮮の核やミサイルの脅威に直面する日本側は共同開発を通じ日米同盟の強化にも役立てたい考えである。 (1904-031702>1904-031702)

6・7・9・1・2 対英技術協力

 (特記すべき記事なし)
6・7・9・1・3 対仏技術協力

 関係者が6月10日、日仏政府間で航空機エンジンや座席など装備品に関する民間連携を強化することで基本合意したことを明らかにした。
 17日に開幕するパリ航空ショーで、経済産業省と仏民間航空総局が協力覚書を締結する。 日本の航空機産業の育成が狙いで、仏大手メーカとの取引拡大や新型エンジンなどの共同開発を視野に入れている。
 覚書は仏Safranグループと日本企業・研究機関の製造・技術革新での連携を促す内容になっている。 (1907-061102>1907-061102)

 防衛装備庁が10月3日、令和2年度予算要求における研究開発項目の詳細を明らかにした。
 6年計画である次世代機雷探知技術には令和2年度に24億円を要求している。
 この計画は2018年の日仏合意に基づく研究で、低周波/高周波ソナーの合成開口によりリアルタイムで機雷を探知しようとするものである。 (1912-100907>1912-100907)

6・7・9・1・4 開発途上国との技術協力

 (特記すべき記事なし)
6・7・9・2 武器輸出

6・7・9・2・1 武器輸出の現状

輸出規制の緩和

 長い造船不況でもがく造船各社が自衛隊や海上保安庁向けに建造してきた艦船の輸出に商機を見いだそうとしている。
 日本の艦船は性能は高いものの、武器の輸出規制により海外で日の目を見る機会がなかった。 (1904-030806>1904-030806)

解禁5年で輸出実績ゼロの厳しい現実

 政府は防衛装備の協力を通じて日米同盟を一段と強化するとともに、他の友好国と安全保障分野で協力を深めるため、2014年4月に定めた装備移転三原則で、日本の安全保障に資するなどの条件を付けて共同開発と輸出のハードルを下げた。
 しかしながら新たな原則のもとで始まった共同開発はなく、国産完成品の輸出もゼロが続いており、世界のマーケットに飛び出した日本は厳しい現実を突きつけられている。 (1906-051201>1906-051201)

技術移転や部品等の輸出にも力

 防衛装備庁が防衛装備品の輸出について、従来の主体品だけで無く技術移転や部品等の輸出にも力を入れて行くことを明らかにした。
 部品等の輸出ではかつてPAC-2の部品を米国に輸出した実績がある。 MHIが輸出したPAC-2部品はその後カタールに輸出されたが装備庁は関知していないという。 (2001-112013>2001-112013)

6・7・9・2・2 主要な案件

オーストラリアへの潜水艦輸出案件のその後

 オーストラリアが2016年4月に決めた次期潜水艦のフランスへの発注が、ここにきて豪国内から異論が相次ぎ、2019年内に予定される議会選挙など今後の展開次第では発注が取りやめになる可能性が出てきた。
 海上自衛隊と同型の潜水艦に米国の武器システムを搭載した日本の当時の提案を最善とする声は今なお豪国防関係者の間では根強いとされる。
 防衛装備品の輸出は国際的には単なるビジネス以上に、安全保障上のパートナー国との協力を深め、情報収集体制を強化する手段として位置づけられる。 (1902-012904>1902-012904)

 フランスのNaval Group社とオーストラリアが2月11日、Attack級潜水艦12隻を建造する$35Bの契約に署名した。
 オーストラリアは2016年4月にNavl Group社を選定して以来、技術移転と作業分担について協議を重ねてきた。 (1903-021103>1903-021103)

フィリピン軍装備に対する協力

 岩屋防衛相が4月17日、フィリピンのロレンザーナ国防相と防衛省で会談し、中国が軍事拠点化を図る南シナ海情勢を念頭に、フィリピン軍への装備品に関する協力や、同国軍と自衛隊との部隊間交流を着実に進める方針を確認した。
 岩屋防衛相は、装備品の引き渡しを着実に進め、人道支援や警戒監視能力の向上に今後も貢献していきたいと述べ、ロレンザーナ国防相も日本との戦略的パートナーシップを強化したいと表明した。 (1905-041703>1905-041703)

6・7・9・2・3 売り込み活動

C-2、P-1 のパリ航空ショー参加

 航空自衛隊が6月17日に開幕する第53回パリ航空ショーにC-2輸送機を参加させる。 空自によると国外運航訓練の一環で、航空支援集団第3輸送航空隊の隊員約15名が参加するという。
 主催者によると、2機とも地上展示のみを予定している。
 C-2の同航空ショー参加は初めてで、前回自衛隊機として初参加したP-1哨戒機も参加する。 (1907-061002>1907-061002)

DSEI Japan 2019 の開催

 日本初開催となる世界最大級の防衛装備品の見本市DSEI Japanが11月18日に千葉市で始まった。
 日英両政府が支援するこの見本市では、国内外の約150社が参加し、陸海空の装備からサイバ攻撃関連まで、安全保障に関する全分野が扱われている。
 見本市の実行委員長も務める元防衛事務次官の西正典氏は、産業の裾野を広げていくうえで必要なことと話した。 (1912-111804>1912-111804)

 河野防衛相が11月20日、千葉市で開催中の防衛装備品の見本市DSEI Japanを訪れ、Aegis AshoreのレーダSPY-7などを視察した。 またイスラエルの航空機メーカーによるUAVの操縦も疑似体験した。
 視察後河野防衛相は、技術以前に外国企業と日本企業のプレゼンテーションに大きな差があったと外国企業を評価した。 (1912-112004>1912-112004)

6・7・9・2・4 民生品扱いで武器輸出

北朝鮮へのマリーレーダ

 黄海の北方限界線 (NLL) 付近の咸朴島に北朝鮮が設置したレーダについて、韓国軍は軍事用に使用可能なレーダと見なしていることが分かった。
 咸朴島レーダの監視距離は178kmとの見方も出ている。 韓国軍は当初、このレーダを民生用と説明していた。
 自由韓国党の白議員が咸朴島に設置されたレーダを製造した古野電気などに問い合わせたところ、このレーダーは2015年に北朝鮮が公表した新型高速艇はもちろん、米国やフランス、イタリア、デンマークなどの海軍で軍事用として使用されていると明らかにした。
 北朝鮮軍は海軍艦艇やスパイ船など数百隻でこのレーダを使用しているという。 (1910-093002>1910-093002)

6・8 装備行政

6・8・1 調達行政

6・8・1・1 防衛受注の減少

三菱重工業の防衛部門受注減

 三菱重工業が5月9日、同社宇宙航空事業部の2018年度売り上げが5.6%減の7,183億円であったと発表した。 この下げ幅は過去最大である。
 また新規受注額も14.5%減の6,106億円であったという。 (1906-051003>1906-051003)

川崎重工と石川島播磨重工の防衛部門業績不振

 川崎重工 (KHI) と石川島播磨重工 (IHI) が、業績不振の防衛部門を今後2~3年で回復するため新製品の開発に力を入れる方針を株主説明会で示した。
 平成30年度におけるKHI社の宇宙航空部門と造船部門はそれぞれ1%、17%の減収で、IHI社も宇宙航空部門が23%の減収になっている。 (1906-052204>1906-052204)

6・8・1・2 業界の技術基盤強化

 岩屋防衛相が2月22日の閣議後の記者会見で、日本の防衛産業が安全保障環境に適応した高性能な装備品を十分に開発していないと指摘した。
 コマツが陸上自衛隊向けに開発生産してきた車両の一部の新規開発を中止したことに関連して言及したもので、主要装備品の国内調達が増えず厳しい状況にあることは認識しているので国内産業基盤の強靱化に取り組みたいとも語った。 (1903-022205>1903-022205)
6・8・1・3 長期契約法の有効期限延長

 防衛装備品の国庫債務負担期間を最長10年間と定めた時限立法の長期契約法の有効期限が3月末に切れるため、法の有効期限を2024年3月末まで5年間延長する改正案が3月7日に衆院本会議で審議入りした。
 財政法は国による支払期間を原則5年以内と規定しているが、高価な装備品をまとめて購入するには適さないとして、F-35など特定防衛調達に限って支払いを最長10年間に延ばしている。
 野党は、後年度にツケを回すことは米国製装備品の購入費増大につながると反発している。 (1904-030704>1904-030704)

 高額な防衛装備品の調達コストを長期契約による一括購入で圧縮する改正特別措置法が3月27日午後の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決成立した。
 3月末で失効する現特措法の有効期限が2024年3月末まで延長された。 (1904-032705>1904-032705)

6・8・1・4 調達価格低減の努力

F-35の組み立てから撤退

 日本政府がF-35の組み立てから撤退し、代わって整備、修理、改良の拠点MOR&Uとして機能することに決めた。
 ATLAは1月17日、MRO&Uの機体担当にMHI名古屋航空機製作所、F135エンジン担当にIHI瑞穂工場を指定したことを明らかにした。 (1903-013003>1903-013003)

F-35の生産シェアー

 防衛省は2011年にF-35A 42機を発注し、2018年1月にはF-35A 68機とF-35B 42機の購入方針を決めた結果、全購入数は147機となり、英国が長期的に計画している138機を凌ぐことになっている。
 しかしながらその生産におけるシェアーはMELCO社がAN/APG-81レーダの部品7品目、IHI社がF135エンジンの部品19品目のみで、しかも日本向け機についてのみである。 このため防衛省は生産シェアーの拡大を目指して交渉中であるが米政府とLockheed Martin社は詳細を明らかにしていない。 (1910-090208>1910-090208)

F-35の最終組み立てを継続

 政府がF-35の取得をめぐり、2019年度以降も国内での最終組み立てを続ける方針を固め、近く調達方法の変更を閣議了解する。
 当初、完成品輸入の方が費用が抑えられるとみて米国から完成品を輸入することにしたが、国内での工程を見直して単価が下がり、継続しても問題がないと判断したたため方針を転換した。 (2001-121002>2001-121002)

6・8・1・5 サプライチェーンの維持

 防衛装備庁が防衛装備品のサプライチェーンを維持するため中小企業の支援に乗り出す方針で、来年度予算に1,000万円を要求している。 (2001-120403>2001-120403)
6・8・1・6 業界再編

 1月16日に発刊された英語版防衛計画大綱によると、政府は防衛企業の国際競争力を高めるため防衛企業の再編を進めようとしている。 (1902-011704>1902-011704)

 MHI社が長崎造船所香焼製造所をライバル企業である大島造船所に売却すると報じられたことについて同社は否定しなかった。
 報道によると同社はLNGタンカの建造から撤退し、艦艇などの特殊船舶建造に特化するという。 (2001-121306>2001-121306)

6・8・1・7 防衛技術の保全

防衛機密漏洩の懸念から調査研究予算が執行できない状況

 防衛省の調査研究にかかわる予算が、中国などに防衛機密が漏洩する懸念から執行できない状況になっている。 対象には、いずも型護衛艦の事実上の空母化に向けた改修のための調査研究費などが含まれている。
 2018年に防衛省のコンサルティング業務を請け負う企業の系列会社の幹部に中国人女性が就任したことなどから、防衛機密が漏洩する懸念が生じたためだという。
 米国ではファーウェイなどの製品について政府機関の使用を禁じているが、防衛省も5月に防衛機密の漏洩を防ぐため調査研究などの入札に新たな規則を設け、経歴や国籍なども含めた総合評価方式にすることを決めている。 (1907-060602>1907-060602)

 サイバ攻撃が広がり、安全保障に関する情報が漏洩する危険性が高まっていて、防衛省と取引する防衛産業の企業に第三者が潜入し、情報を詐取する可能性もでてきたことから、防衛省は装備品や調査研究の入札に参加する企業に対し、資本関係や情報保全体制、担当者の経歴と国籍などを報告するよう義務付けることにした。
 中国などへの機密情報の流出を防ぐ狙いだが、こうした厳格な基準は初めてである。
 米国は中国との貿易戦争に関連し、各国の政府調達で安全保障上のリスクに対処するよう求めており、米国と装備品の共同開発もしている日本は米国と足並みをそろえる。 (1907-062103>1907-062103)

防衛技術流出防止へ外資規制強化

 欧米では中国を念頭に先端技術の流出防止措置が強化されており、日本も監視対象の基準を引き上げる。 政府が外国資本による日本企業への投資に関して規制を強化する方向で最終調整に入った。
 原子力や通信など安全保障上の理由から監視対象を外資が10%以上を出資する際に義務付けている事前の届け出基準を1%以上に厳格化することが柱となる。 (1910-091801>1910-091801)

 政府関係者が11月3日、防衛省が自衛隊装備品のサプライチェーンを構成する国内企業に対し、経営状況の監視を強化する方針を固めたことを明らかにした。
 装備品調達の安定と安全性を確保する狙いで、信用調査会社を通じて恒常的にチェックする。
 欧米との共同開発拡大に備えるほか、兵器のハイテク化を進める中国へ技術が流出する危機感も背景にある。 (1912-110302>1912-110302)

6・8・1・8 FMS 方式調達の見直し

会計検査院の指摘

 日本の会計検査院が10月18日に公表した検査報告書で、防衛省の米国からのFMSでの購入案件について、2017年末で600件以上計1,417億円について調査検査したところ、製品未納のため決済が完了していない案件があると、防衛省に改善を促している。 (1912-103004>1912-103004)

韓国など10ヵ国と連携した FMS 契約の改善交渉

 毎日新聞が12月12日、日本政府が韓国など10ヵ国に対し、米国から武器を購買する有償軍事援助 (FMS) 契約の改善交渉で共同対応を提案したと報じた。
 同紙によると防衛省は今年4月から韓国など関係国と協議を進めてきたが、来年春ごろ米国側にFMS改善案を出す計画だという。
 2国間で行われてきたFMS交渉を今後、多国間の連携で有利に進めて不公正な慣行を減らすという。 (2001-121202>2001-121202)

6・8・2 技術力の維持向上

6・8・2・1 技術保全

 政府が3月1日、イノベーション政策強化推進のための有識者会議を東京都内で開き、武器や軍事転用可能な機微技術の流出防止策を検討すべきだとの認識で一致した。 政府が6月に策定する「統合イノベーション戦略」2019年度版に具体策を盛り込む。
 政府は流出事案に関する情報を産業界、学術界で共有できる仕組みづくりを行うほか、大学や研究機関向けに外国企業との共同研究に関する情報管理の指針も平成31年度中に作成する。 (1904-030104>1904-030104)
6・8・2・2 民間の先端技術を活用

 防衛装備庁が、民間の先端技術の活用に向けた管理機能を4月1日から同庁の研究所の「先進技術推進センター」に集約し、同センターに所属する100名のうち1/3の所員が担当する。
 大学や企業などに公募している先進的な基礎研究について、技術開発の進捗状況や研究成果を同庁内で共有し、防衛装備品の開発や実用化への移行を円滑にする狙いがある。 (1904-033006>1904-033006)
6・8・2・3 防衛装備品に関する官民対話の枠組み設置

 政府は防衛装備品の研究開発、調達に関する官民対話の枠組みを令和元年度中にも設置する。
 2018年末に閣議決定した防衛大綱と中期防に沿って、宇宙やサイバなど新領域での防衛力強化でも経済界と幅広く連携し、国内技術や開発力の引き上げを目指す。
 政府が早期開発を目指す日本が主導する将来戦闘機の設計を促進する狙いもある。 (1906-052001>1906-052001)
6・8・3 装備開発

6・8・3・1 令和2年度予算要求に見る装備開発

 防衛装備庁が10月3日、令和2年度要求の内訳を明らかにした。
 24億円かける次世代機雷探知システムには長波長/短波長合成開口センサを用いたリアルタイム信号処理の研究開発は、2018年に日仏が共同研究で合意している。
 陸上自衛隊からは8億円かけて、従来の低空レーダ、沿岸監視レーダ、対砲迫レーダに代わる多用途レーダの開発が要求されている。
 航空自衛隊からは射程延伸型長距離ASMであるASM-3の開発に161億円が要求されている。
 ASM-3は射程を従来の200kmから400km以上に延伸するもので、最高速度はMach 3に達する。 (1911-100303>1911-100303)
6・8・3・2 F-2 後継戦闘機

6・8・3・2・1 開発方針

中期防に盛り込み

 防衛省がわが国主導でF-2の後継となる次期戦闘機を2030年代での就役を目標に開発することを次期中期防に盛り込んだ。  (1904-021303>1904-021303)

開発のスケジュール

 政府は2030年代半ばから退役するF-2の後継戦闘機を、平成32年 (2021年) 度に開発に着手し、2035年度末からの部隊配備をめざして2020年夏までに開発計画を固める方針だが、次期戦闘機に必要な性能がまだ詰まっておらず、今夏に締め切る来年度予算案の概算要求に開発費を盛り込むのは難しいと判断した。
 次期戦闘機の開発方法については国産、国際共同開発、既存機の改修の3案を検討しており、現在は必要な性能を詰めていて、3月中にも固めた上で国内防衛産業や、連携を探る米国、英国両政府との交渉に入り、最適な開発方法を選ぶ。 (1904-030301>1904-030301)

令和2年度予算概算要求への開発関連経費計上見送りへ

 複数の政府関係者が6月23日、2030年代半ばから退役が始まるF-2戦闘機の後継機をめぐり、防衛省は令和2年度予算概算要求への開発関連経費の計上を見送る方向で調整に入ったことを明らかにした。
 後継機に求める性能や設計の概要がまとまっていないためで、事務次官をトップとする検討チームはとりまとめを急いでいる。 (1907-062401>1907-062401)

 防衛省は国際共同開発の相手が決まっていないが、令和2年度に将来戦当機の開発を開始したいと予算要求に挙げている。 (1910-091006>1910-091006)

令和2年度予算政府原案への盛り込み

 防衛省が12月下旬に閣議決定する令和2年度予算案に将来戦闘機の開発費を計上するため詰めの作業に入った。
 夏の概算要求の時点では金額を示さない事項要求としていたが、2年度は関連する研究費も含めて数百億円規模の予算要求になる可能性がある。
 米欧との国際協力を視野に日本主導で開発を進めており、協力国の決定は2年以降になる見通しである。
 2年度予算では任務遂行能力の基盤となるレーダやセンサ、電子機器などの基幹機能をまとめたミッションシステムを柔軟に改良できるような研究を進めるが、これらの基幹システムは戦闘力の向上のために数年単位で更新する必要があるという。 (1912-112801>1912-112801)

将来戦闘機開発室の新設

 防衛装備庁が、2020年4月に将来戦闘機開発室を新設することを明らかにした。 (2001-111605>2001-111605)

6・8・3・2・2 共同開発相手を巡る日米の駆け引き

米国が開発参入に強い意欲

 読売新聞が4月17日、日米が世界最高水準の最先端ステルス機の共同開発に向けた本格的な協議に入ったものとみられる。
 米国が日本の次世代戦闘機開発計画に参与するために、今まで一度も外国に開示したことのなかったF-35の設計機密を日本側に開示する意向を明らかにしたと報じた。 (1905-041803>1905-041803)

日米技術協力で合意

 防衛省と米政府が、航空自衛隊のF-2後継開発で技術協力を深めることで合意した。
 焦点となるのはF-35の技術であるが、防衛省によると 米側からF-35の秘ソースコードを開示する提案はないという。 (1906-050905>1906-050905)

Lockheed Martin社、技術開示しない方針

 F-2後継機の開発はLockheed Martin社が提案するF-22とF-35をベースとする共同開発の案が有力視されてきたが、関係者によるとLockheed Martin社はコンピューターシステムなど中枢の技術は開示しないと日本側に伝えたという。
 この場合、政府の中期防に盛り込んだ「国際協力を視野に日本が主導する開発」とはほど遠く、いわば下請けになってしまう恐れがあって調整は難航しそうである。 (1907-060203>1907-060203)

Northrop Grumman社が競合に参画

 Northrop Grumman社の新駐日代表プラカシュ氏が9月16日までにF-2の後継機開発を巡り、競合に参画する意向を明らかにした。  日本政府が日本主導の国際共同開発を選択した場合には、日本企業に重要な技術についても情報を開示する用意があるとの認識を示した。
(1910-091606>1910-091606)

米国と組む可能性

 防衛省が令和2年度予算にF-2後継となる将来戦闘機の開発を、共同開発相手が決まらないまま要求した。 共同開発相手国は英国か独仏西グループが最有力で、米国と組む可能性は極めて低い。
 予算には試作機の製造と、防衛装備庁に将来戦闘機開発室の設置を求めている。 (1911-091602>1911-091602)

英国が共同開発の有力候補に浮上

 航空自衛隊の次期戦闘機計画を巡り、英国が共同開発の有力候補に浮上していることがわかった。
 自国軍向けの開発計画をすでに発表している英国が、日本と協力しようと秋波を送っており、米国以外とも安全保障面の関係を強化したい日本は関心を強めている。
 英国は次期戦闘機Tempest計画を進めており、2020年末をめどに負担を共有できるパートナ国を探している。
 関係者によると、英国は日本に対し戦闘機の中身であるシステムや電子機器の共同開発を提案している。
 開発した技術の知的財産権を活用するのに制限を設けず、機体やエンジンも日本が自由に設計できるという。 日本側の関係者は英国の提案に対する関心が高まっていると話している。 (2001-121303>2001-121303)

6・8・3・2・3 部分試作の進行

部分試作の進行状況

 航空自衛隊の戦闘機F-3の姿が見えてきた。 米国や英国との共同開発案もささやかれる中、日本主導で開発できるだけの技術力があるのか疑問を呈する声もあるが、最も重要な大出力エンジンと高性能レーダ、そしてステルス技術の核心でもあるウエポン・ベイなどがすでに完成の域に達している。 (1902-010802>1902-010802)

機内弾庫

 防衛装備庁 (ATLA) が2030年代の実用化を目指して機内弾庫の開発を行っている。 弾庫の大きさは長さ6.4m、幅2m、深さ1.5mと小型である。
 この機内弾庫は空対空戦闘を念頭に超音速での開閉を考えており、風洞試験ではMach 1.4での放出を検証している。
 機内弾庫の開扉、放出、閉扉のサイクルは短時間が要求され、F-35の開発にJSF段階で参加したBoeing社によると1~3秒、F-22では0.3秒以内と言う。 (1902-112601>1902-112601)

機体構造材

 近年の戦闘機では重量軽減のため機体表面にCFRPが使用されているが、その内部は依然として金属である。 次世代戦闘機ではこれは変わると見られている。
 日本では胴体も機体表面同様に取り付け器具ではなく接着剤で組上げようとしており、複合材料性の機体表面がそれぞれ接着剤で結合された構造体に接着されている。
 実大モデルを用いた中部胴体の耐荷重試験が行われていて2019年3月31日までに完了することになっているが、当局者は技術的困難を認めており、試験期間が延びる可能性もある。 (1902-112602>1902-112602)

空気取り入れ口

 防衛装備庁 (ATLA) が将来戦闘機のステルス空気取り入れ口の風洞試験による検証を行った。 試験はMach 2を想定して行われた。
 ATLAは2030年装備化を目指し概念設計を行っており、2014年には25DMを発展させた26DMを発表している。
 エンジンにはIHI社製のXF-9Jが考えられている。 (1902-112603>1902-112603)

エンジン

 IHI社が日本初の戦闘機用高出力エンジンXF9-1の開発を行っている。 XF9-1の出力はアフタバーナなしで11,000kg、ありで15,000kgと、2016年に初飛行した実証機X-2が搭載したXF5-1の三倍であるが防衛装備庁 (ATLA) は更なる出力増大を望んでいる。
 XF9-1はF-22が搭載しているP&W社製F119同様逆回転2軸で、3段のファン、6段の高圧圧縮機、単段の高圧タービンと低圧タービンで構成されている。
 ATLAは噴気偏向ノズルの採用も考えている。 (1902-112604>1902-112604)

レーダ、統合型センサ

 日本の防衛企業は過去数年間にわたり将来戦闘機に向けた技術開発を行ってきたが、11月28~30日に行われた国際航空展で防衛装備庁は三菱電機が開発したF-2に搭載するJ/APG-2レーダと同じサイズの新型レーダのAESAアンテナを展示した。
 J/APG-2は初のAESAレーダであるJ/APG-1の後継として6年前からF-2に搭載された幅72cmのレーダで、新型AESAアンテナは幅74cmになっており、他の類似レーダ同様に地上からの捕捉を避けるため数度上向きに傾いている。
 素子は恐らくGaNが採用されていると思われるが、アンテナの裏には液冷用と見られるホースがついていた。 (1902-121002>1902-121002)

 防衛省が次期戦闘機に搭載する統合型センサの飛行試験を実施した。 試験結果は良好であったという。
 統合型センサの開発は次期戦闘機関連技術の一環として10年かけて行われ、GaN素子を利用したレーダ、パッシブRFセンサ、IRカメラなどで構成されている。 (1910-091202>1910-091202)

 F-2後継となる将来戦闘機に装備するGaNを主としたセンサのF-2に搭載しての飛行試験が5月から7月に行われ良好な成果が実証された。
 搭載センサはF-2が標準装備しているJ/APG-2と同寸で、東芝製GaNレーダ、パッシブRFセンサ、IRカメラからなり、パッシブ探知で最大限目標の発見を行い、レーダを放射する際にも捕捉される確率を低減することを目標にしている。
 J/APG-2はMelcon製J/APG-1の発展型で、J/APG-1は世界初の戦闘機搭載AESAレーダであった。 (1911-091603>1911-091603)

6・8・3・2・4 米国からの導入が必要な構成品

 政府がF-2後継となる将来戦闘機について、米軍の相互運用性を維持するため米軍が使用する戦術データリンクを搭載する方針を固めた。
 日米両政府は2019年9月に防衛当局の実務者レベルで将来戦闘機構想に関する協議を本格化させ、自衛隊と米軍との共同作戦に最低限必要な環境を整えるため、情報や画像を共有する戦術データリンクやIFF装置は米側から提供を受けたい意向を伝えている。
 日本企業は防衛装備庁の支援で機体、エンジン、レーダ、センサなどの要素技術の開発を進めているが、過去に米国の支援でF-2を開発した際、米側が主要なシステムの機密情報をブラックボックス化したことから、政府は最も難しいとされる各システムの統合も日本企業に担わせたいとしている。 (2001-121501>2001-121501)
【註】米空軍ではF-22がIFDL、F-35がMADLと異なる戦術データリンク装備しており、現在は相互接続のための接続装置の開発を進めている。
6・8・3・2・5 令和2年度開発開始

令和2年度予算概算要求

 複数の政府関係者が、政府がF-2後継機開発費を令和2年度予算案に計上する方向で最終調整に入ったことを明らかにした。
 開発費は概算要求では金額を示さない事項要求とする見通しで、年末の予算編成までに機体の概念をまとめ、金額を算定するが、開発費は現時点で総額1兆5,000億円以上と見積もられている。 F-2と同様の90機の配備を想定している。
 政府内では、海洋進出を強める中国への抑止力を念頭に、後継機は国産初のステルス戦闘機とし、長距離CMを搭載して高水準の対艦能力を併せて備えさせる案もある。 (1909-082101>1909-082101)

6・8・3・3 艦 船

6・8・3・3・1 新型艦計画

30FFM

 防衛装備庁が7月1日、平成30年度計画で建造される3,900トン型護衛艦 (30FFM) の主要目と建造スケジュールを公表した。
 30FFMは,基準排水量3,900t、全長132.5m、全幅16m、深さ9m、速力30ktで、127mm62口径単装砲1門、VLS一式などを装備するが、予算取得済みの本型1~4番艦のVLSは後日装備とされる。
 2019年9月起工、2020年11月進水、2022年3月就役の予定である。 (1908-072307>1908-072307)

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展でMHI社が、次期3,900t多用途フリゲート艦の詳細を公表した。
 FFMは全長132.5m、幅16m、喫水9mで、MAN社製ディーゼル2基とRills-Royce社製ガスタービン1基からなるCODAGで推進し、速力30ktの性能を持つ。
 主要装備は5吋62口径砲1門、03式中SAM改、VLS 1基(模型の写真からみると16セル)、SeaRAM 1基となっている。 (1912-111807>1912-111807)

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展でMHI社が、次期3,900t多用途フリゲート艦の詳細を公表した。
 FFMは全長132.5m、幅16m、喫水9mで、MAN社製ディーゼル2基とRills-Royce社製ガスタービン1基からなるCODAGで推進し、速力30ktの性能を持つ。 主要装備は5吋62口径砲1門、03式中SAM改、VLS 1基、SeaRAM 1基となっている。
 8隻の建造はMHIに一括発注され、三井造船 (MES) がその下請けに入り、一番艦を含む6隻をMHI、2隻を三井造船 (MES) が建造する。 最初の2隻の建造は既に開始されており、2020年11月に進水、2022年3月に就役する計画である。 (2001-112707>2001-112707)

12隻建造する計画の哨戒艦

 海上自衛隊は2020年末までに排水量1,000tで乗り組み員30名の哨戒艦を12隻建造する計画で、次期中期ではその内の4隻を建造する。 (1902-010207>1902-010207)
【註】国産初のDE型護衛艦であった排水量1,060tのあけぼのは乗組員が190名であったのは別として、昭和56年就役の1,290t DEのいしかりの乗組員は90名で、1,000tの警備艦が30名というのは極めて異例である。 因みに300t~400tの掃海艇で75名、かつてあった100tの魚雷艇でも30名近くの乗組員がいた。

そうりゅう型後継潜水艦

 三菱重工業 (MHI) 社が7月4日、そうりゅう型の後継となる潜水艦の建造を開始したと発表した。 728億円で建造される3,000tの新型SSKは少なくとも3隻が建造され、1番艦は2022年3月に就役する。
 これと合わせて89式重魚雷の後継となるG-RX6の開発も進められている。 (1908-071009>1908-071009)

 DSEI 2019展でKHI社が、7隻以上の建造が計画されている3,000t級潜水艦の二番艦の建造が開始されたことを明らかにした。
 そうりゅう型SSKの後継となる3,000t級SSKは、2020年と2021年に就役するそうりゅう型最後の2隻同様に、鉛蓄電池に代えてリチウムイオン電池を搭載している。 (2001-112704>2001-112704)

強襲揚陸艦となる次期 LHD 候補

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展でJapan Marine United (JMU) 社が、次期LHDの初期段階設計を公表した。
 この艦は全長220m、幅38m、喫水7m、基準排水量19,000tで速力24ktの性能を持ち、ヘリ5機の飛行甲板とその下に5機の格納庫を持つ。
 AAV-7など水陸両用戦闘車のRo-Ro搭載能力を持ち20両以上を搭載でき、LCAC 2隻も搭載する。
 強襲揚陸艦となる次期LHDについて防衛省はまだ要求を挙げていないが、JMFは将来の発注を見込んでいる。 (1912-112008>1912-112008)
【註】現有の輸送艦おおすみ型は、全長178m、幅25.8m、喫水6m、基準排水量8,900t(満載排水量14,000t)で速力22ktである。

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展でJapan Marine United (JMU) 社が、次期LHD強襲揚陸艦の初期段階設計を公表した。
 この艦は全長220m、幅38m、喫水7m、基準排水量19,000tで速力24ktの性能を持ち、ヘリ5機の飛行甲板とその下の2ヵ所の格納庫に5機を収納出来る。
 更にもう1ヵ所の格納庫もあり、用途は海自次第だという。
 AAV-7など水陸両用戦闘車のRo-Ro搭載能力を持ち20両以上を搭載でき、LCAC 2隻も搭載する。 (2001-112702>2001-112702)

6・8・3・3・2 新造艦の進水

Aegis艦はぐろ

 海上自衛隊の新型Aegis艦の進水式が7月17日に、横浜市内で開かれはぐろと命名された。 2021年3月に予定され就役後はAegis艦8隻態勢が整う。
 Aegis艦は現在5隻で、今年度中には能力向上の改修によって1隻増え、来年3月には更にまやが就役する。 (1908-071706>1908-071706)

 Japan Marine United社で7月17日、まや型の2番艦が進水した。 2021年3月に就役する。
 まや型は全長170m、基準排水量8,200tで、Aegis Baseline J7を装備し、SM-3 Block ⅡAやSM-6を発射できる。
 レーダはAN/SPY-1D(V)とAN/SPQ-9B X-band搭載し、主機はLM2500ガスタービン2基と電動を組み合わせたCIGLAGで速力は30ktである。 (1909-072412>1909-072412)

そうりゅう型潜水艦最終艦とうりゅう

 KHI社神戸造船所で11月6日、そうりゅう型潜水艦の最終艦となる12番艦のとうりゅうが進水した。 就役は2021年3月になる。
 とうりゅうは鉛蓄電池をリチウムイオン電池に代えた二番艦で、世界で初めてリチウムイオン電池を採用している。 (1912-110604>1912-110604)

 そうりゅう型の12番艦で最終艦となるとうりゅうが11月6日にKHI神戸造船所で進水した。 2021年3月に就役する。
 とうりゅうを含むそうりゅう型の最終艦2隻は世界で初めてGS湯浅製のリチウムイオンデンが搭載されている。 (2001-111309>2001-111309)

6・8・3・3・3 新造艦の就役

潜水艦しょうりゅう

 海上自衛隊の潜水艦しょうりゅう2,950tの引き渡し式が3月18日に川崎重工業神戸工場で行われた。
 しょうりゅうはそうりゅう型の10番艦で、同日午後に乗組員65名を乗せて訓練を行いながら配備される呉基地に向かった。 (1904-031804>1904-031804)

 そうりゅう型の10番艦となるしょうりゅうがKHI神戸造船所で3月18日に就役し、呉の第1潜水隊群の所属になった。 総工費は560億円になった。
 Jane海軍年鑑によると、そうりゅう型は全長84m、幅9.1m、喫水8.4m、基準排水量2,947t、潜航時排水量4,100tで、水中速力20kt、水上速力12ktの性能を持ち、533mm魚雷発射管を6本装備して89式重魚雷またはUGM-84C Harpoonを発射する。 (1905-032712>1905-032712)

 12隻建造されるそうりゅう型の最後の2隻 (SS 511, SS 512) は2020年と2021年に就役する。
(1908-071009>1908-071009)

護衛艦しらぬい

 あさひ型護衛艦の二番艦しらぬいが2月27日に就役し、第3護衛隊群第7護衛隊の所属となった。 定係港は陸奥になる。
 あさひ型護衛艦は全長151m、基準排水量5,100tで、速力30ktである。
 海上自衛隊は2020/2021年度には3,900t級の多目的フリゲート艦8隻を建造する計画である。 (1905-031311>1905-031311)

6・8・3・3・4 企業からの公開提案

装備展示会で三井造船が外洋哨戒艦 (OPV) の提案

 6月17~19日に東京近郊で開かれた海洋安全保障の国際会議と装備展示会で三井造船が、海上自衛隊が12隻の建造を計画している外洋哨戒艦 (OPV) への提案を公開した。
 OPVは安倍政権が2018年に示した防衛計画大綱で明らかにしたもので、三井造船はMHIやマリンユナイテッド社と対抗して提案を行っている。
 提案されているのは全長100m、排水量2,000t、乗員23名で、76mm砲1門のほか、遠隔操縦の12.7mm機銃2丁、自動USV 2隻などを装備する。 (1908-070310>1908-070310)

6・8・3・4 その他の開発計画

6・8・3・4・1 長距離誘導弾 (ASM-3改)

 岩屋防衛相が3月19日、長距離対艦ミサイルを複数開発する方針を表明した。 同相は、相手国の装備の射程がどんどん長くなっており、自衛隊員の安全を確保しつつ事態に対応するため、スタンドオフ装備が必須だと説明した。
 防衛省は、平成29年度に開発済みの射程200kmのASM-3を改良し、射程400km以上を目指す。 陸自の12式地対艦誘導弾の射程も伸ばす。 (1904-031902>1904-031902)

 政府筋が3月17日、戦闘機に搭載して敵の射程圏外から艦艇を攻撃できる長距離CMを初めて開発する方針を固めたことを明らかにした。 現有のASMを改良し射程を400km以上に伸ばす。
 中国海軍艦艇の能力向上などを踏まえた抑止力向上が狙いで、予算案に関連費を早期に計上し実用化を目指す。 (1904-031703>1904-031703)

 岩屋防衛相が3月19日にASM-3の射程を400km以上に延伸することを明らかにした。
 射程200km、速度Mach 3のASM-3は開発を完了しているが、搭載するF-2の新型ミッションコンピュータが開発中で、まだF-2搭載が実現していないという。 (1904-032005>1904-032005)

 岩屋防衛相が3月19日、南西諸島防衛のため長距離ALCMを開発していることを明らかにした。 この長距離ALCMは射程が200kmで超音速のASM-3の射程を400km以上に伸ばすものである。
 ASM-3は93式シリーズ対艦ミサイルの後継でMach 3で飛行する。
 ただしASM-3の開発は完了しているものの搭載するF-2戦闘機のミッションコンピュータの改良が終了していないため、まだ実装備されてはいない。 (1905-032702>1905-032702)

 岩屋防衛大臣が、ある国のSAMの射程が伸びたことでF-2戦闘機の安全が確保できなくなったことを理由に200kmであるASM-3の射程を400kmまで伸ばすことを明らかにした。 中国のType 025D駆逐艦はHQ-9を装備している。
 全長6m、発射重量840kgのASM-3は開発が7年遅れたが2017年には配備可能になっていた。
 日本はスクラムジェット推進の超高速対艦ミサイルの研究を既に開始している (1906-040801>1906-040801)

6・8・3・4・2 地対艦ミサイルの射程延伸

 複数の政府関係者が4月28日、防衛省が南西地域に配備する陸上自衛隊の地対艦誘導ミサイル (SSM) を改良して射程を2倍に延伸する検討に入ったことを明らかにした。  また改良した同型のミサイルを海上自衛隊の哨戒機にも搭載し空対艦ミサイルとしても活用する。
 射程を延伸するのは12式SSMで、現在200kmの射程を400km程度にまで伸ばすもので、令和5 (2023) 年度に部隊配備する。 (1905-042901>1905-042901)
6・8・3・4・3 03式中距離 SAM を元にした艦載 SAM

 防衛装備庁が5月10日、03式中距離SAMを元にした艦載SAMの開発を三菱電機に100億円で発注したと発表した。
 この計画は2018年3月にも88億円で契約されている。 (1906-051702>1906-051702)
6・8・3・4・4 ヘリコプタ

次期多用途ヘリ UH-X

 陸上自衛隊が装備する次期多用途ヘリUH-Xは2018年12月25日に初飛行し現在は3ヶ月間の社内飛行試験に入っており、平成30年度末には防衛省に納入されて官側の試験に入る。
 陸上自衛隊はUH-1Jの後継として150機を装備する計画である。 (1903-011406>1903-011406)

次期攻撃ヘリ

 一方、防衛省は当初、30~50機の攻撃ヘリを5年かけて装備する計画であったが、その調達は次期中期防には盛り込まれていない。 (1903-011406>1903-011406)

6・8・3・4・5 Stand Off Jammer

 政府は、敵のレーダや通信を無力化する電子攻撃機を開発する方針を固めた。
 電子攻撃機の開発は、2018年12月に閣議決定した防衛計画の大綱の内容を具体化するもので、C-2輸送機やP-1哨戒機に強力なECM装置を搭載する。
 C-2を基にした機種は2027年度の導入を目指し、P-1については開発スケジュールを含めて検討する。 (1902-011301>1902-011301)

 防衛省が次期中期防及び新防衛計画大綱でSOJの開発と装備を打ち出した。
 読売新聞は1月13日に、SOJはC-2及びP-1に電子戦装置を搭載したものになると報じている。 (1903-012311>1903-012311)

6・8・3・4・6 陸上装備

96式装輪装甲車後継

 防衛省が老朽化した96式装輪装甲車の後継開発を再開する。 このため装備庁は5月14日に企業説明会を開いた。 (1906-051602>1906-051602)

 防衛装備庁が96式装輪装甲車後継にGDLS、Patria、MHIの3社を選定した。
 GDLS社はLAV 6.0、Patria社はAMVを提案するが、MHIは同社製の16式機動戦闘車を元にした案を提案する模様である。
 96式後継については装備庁が2018年7月に装甲性能不足を理由に計画中止を決め、試作を担当した小松は2月に装甲車両の開発及び生産からの撤退を公表していた。 (1910-091805>1910-091805)

 防衛装備庁が9月10日、96式8×8装輪APC後継候補にGD Land Systems (GDLS)、Patria、MHIの3社を選定した。
 AMV XPを提案しているPatria社は既に2両を試験用として受注しており、もし選定されれば日本国内で生産するとしている。
 GDLS社はカナダ陸軍に現有LAV-Ⅲの後継として開発したLAV 6.0を提案する。
 MHI社はパリで開かれたEurosatory 2014に装輪APCの模型を展示している。 (1911-092502>1911-092502)

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展にMHI社が、96式APCの後継として提案している8×8装輪APCを出品した。
 このAPCは全長8m、幅2.8m、高さ2.2m、重量28tで、最高速度100km/h以上の性能を持つ。
 同社はこれでPatria社製AMVやGDLS社製LAV 6に対抗している。 (1912-111806>1912-111806)

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展にMHI社が、96式APCの後継として提案している8×8装輪APC MAVを出品した。 同社はMAVをEurosatory 2014で公表している。
 MAVは全長8m、幅2.8m、高さ2.2m、重量28tで、最高速度100km/h以上の性能を持つ。 同社はこれでPatria社製AMVやGDLS社製LAV 6に対抗している。
 エンジンは出力400kW以上の同社製4MA 4気筒ディーゼルエンジンをしており、同展ではエンジン単独でも展示していた。 (2001-112706>2001-112706)

19式155mm52口径装輪 SPH

 陸上自衛隊が8月22~25日に行った富士総合火力演習で19式155mm52口径装輪SPHの試作品を展示した。
 19式SPHはMAN社製8×8社に搭載されJSW社が製造した。
 防衛省は既に一次生産分7門を51億円で調達しており、令和2年度予算に二次分7門を47億円要求している。 (1911-091112>1911-091112)

次期水陸両用戦闘車

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展に装備庁が次期水陸両用戦闘車の模型を展示した。
 エンジンは小型の3,000馬力で珊瑚礁の走破に適しており、推進にはウォータージェットを使用している。 (1912-111808>1912-111808)

水陸両用輸送車

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展でJapan Marine United社の子会社であるJMU Defense Systems社が2種類の水陸両用装輪車を公開した。 (1912-112009>1912-112009>)

4×4車

 2018年に受注した94式水際地雷敷設装置(JMU製)の後継で、全長11.8m、幅2.8m、路上50km/h、水上6ktでSea State 4で航行可能
 輸送型は人員30名または6tの輸送が可能

6×6車

 同社が11年前に開発を完了した全長12m、幅2.5mの輸送車両で、6tの搭載能力があり、路上70km/h、水上9ktの性能を持つ。

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展でJapan Marine United社の子会社であるJMU Defense Systems社が2種類の水陸両用装輪車を公開した。 (2001-112703>2001-112703)
4×4車

 2018年に受注した94式水際地雷敷設装置後継で、2021年に試作が開始され、2025年装備化、2026年配備開始が計画されている。
 全長11.8m、幅2.8m、路上50km/h、水上6ktで航行可能な4×4車の輸送型は人員30名または6tの輸送が可能である。

6×6車

 同社が11年前に開発を完了した全長12m、幅2.5mの輸送車両で、6tの搭載能力があり、路上70km/h、水上9ktの性能を持つ。

6・8・3・4・7 U A V

CoasTitan沿岸警備システム(下図左)

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展でMHI社が、CoasTitan沿岸警備システムを公開した。
 システムは陸上施設からばかりでなく、UAV、USV、UUVから発進する広域警戒システムで、海上保安庁、海上自衛隊のほか民生用としても活用できる。
 CoasTitanシステムのUAVは全長2m、幅80cmで2時間の滞空能力があり、現在海上保安庁が試験を行っている。
 MHI社はまたリチウムイオン電池を動力源とする全長2.7mのUUV Naminowも公表した。 Naminowは潜航可能深度200m、潜航時間8時間の性能を有する。 (1912-111809>1912-111809)

6・8・3・4・8 水中武器(上図右)

機雷の自動探知 AUV

 11月18~20日に千葉で開かれているDSEI 2019展にIHI社が、機雷の自動探知AUVを出品した。
 システムは全長5mの魚雷型とその母艇の2隻の無人艇からなり、魚雷型は4kt、24時間潜航能力があり、300m、600m、3,000m深度潜航型がある。 (1912-111805>1912-111805)

6・8・3・4・9 構成品、要素技術の開発

推力400kgの小型ターボジェットエンジン

 川崎重工業は地上静止時推力が400kgの小型ターボジェットエンジンKJ100を開発した。
 自衛隊の標的機用として90基納入しているKJ14は推力が70kg台であるのに対しKJ100は5倍強の推力を持つことから、大重量の標的機に搭載することが可能になり、長距離の島嶼防衛用のUAVへの搭載も可能になる。
 防衛省は島嶼防衛の強化に向けUAVを増強する考えで、同機への搭載も視野に入れている。 (1908-072901>1908-072901)

P-1 に AI を採用

 防衛装備庁が11月13日、P-1の一部にAIを採用して情報能力を向上させるため令和2年度予算に9億円を要求していることを明らかにした。 (2001-112011>2001-112011)

6・8・4 導入新装備

6・8・4・1 航空機

6・8・4・1・1 F-35

調達単価

 防衛省が1月8日、2018年12月に閣議決定された次期中期防に盛り込まれた主要な防衛装備の単価を公表した。
 27機取得予定のF-35Aは1機100億円超と見込まれていたが、116億円と明示した。 (1902-010803>1902-010803)

アジア太平洋地域の整備拠点を日本国内に設置

 防衛省が2月13日、F-35が搭載する戦闘システムの部品のアジア太平洋地域の整備拠点を日本国内に設置することを米政府が決めたと発表した。 拠点の設置場所など詳細は今後詰めるが、三菱電機が2025年以降に受注する見通しである。
 アジア太平洋地域のF-35整備は、機体は三菱重工業、エンジンはIHIが担うことがすでに決まっている。 (1903-021307>1903-021307)

F-35B の導入

 日本政府が2018年12月にF-35B 42機を装備する方針を決め、2019~2023年にそのうち18機を装備する。
 このため現在、RfPの発簡準備中である。 (1905-032504>1905-032504)

 防衛省が8月16日、新たに導入する戦闘機42機の機種をF-35B STOVL機に正式決定し発表した。 防衛省によるとSTOVL機は狭い滑走路でも運用できる利点があるという。
 F-35は1機140億円で、令和4年度までに42機のうち18機分の予算を計上する予定で、残り24機については未定である。 (1909-081606>1909-081606)

 防衛省が8月16日、いずも型ヘリ空母に搭載する戦闘機の機種をF-35Bに決定したと発表した。 2018年12月に決定した中期防ではF-35A 27機とSTOVL機18機を調達するとしている。
 航空自衛隊は既にF-35A 42機を発注済みでそのうち13機を取得しているが、4月9日に1機を訓練事故で失っている。 (1910-082809>1910-082809)

 日本政府がヘリ空母いずもかがをF-35Bを搭載する空母に改修する計画で、防衛省が平成2年度予算にいずもの部分改修費として3.1億円を要求している。
 全長248m、満載時排水量26,000tのいずもには10機程度が搭載されるが、全長197m、満載時18,300tのいせ及びひゅうがを空母化する計画はない。 (1911-093003>1911-093003)

F-35 計画 Level Ⅲ メンバ参加問題

 日本政府が米政府に対し6月18日、F-35計画にLevel Ⅲの完全なメンバとして参加することを公式に要請したが、米政府は日本からの要求を断った。
 F-35のSDD Level Ⅲメンバは2002年7月15日に決まっており、新たなメンバの参加はないとの理由による。 (1908-072905>1908-072905)

米国に次ぐ F-35 保有へ

 防衛省は2011年にF-35A 42機を発注し、2018年1月にはF-35A 68機とF-35B 42機の購入方針を決めた。 この結果、全購入数は147機となり、英国が長期的に計画している138機を凌ぐことになっている。 (1910-090208>1910-090208)

6・8・4・1・2 F-35 搭載武器

J S M<・J S M

 Kongsberg社が3月11日、航空自衛隊からJSFを初めて受注したと発表した。 同社によるとこの契約はJSMの量産における大きな一歩である。
 対地/対艦スタンドオフミサイルであるJSMの開発は2008年に開始され2018年中頃に完了した。
 JSMは航空自衛隊がCTOLのA型105機、STOVLのB型42機装備するF-35の機内弾庫から発射できる射程500kmのミサイルで、平成31年度予算で$71Mを確保している。 (1904-031210>1904-031210)
【註】JSMには平成30年度予算に22億円、31年度予算で79億円が計上されている。

 Kongsberg社が3月11日、F-35に搭載されるJSM初の販売契約を航空自衛隊と行ったと発表した。 防衛省によるとJSMの射程は500kmである。
 F-35を装備している国々はJSMに関心を持っており、今回の契約で各国のJSM採用に弾みがつくと見られる。 (1905-032014>1905-032014)

 ノルウェーのKongsberg社が、日本からJSM初の輸出契約を受注した。 航空自衛隊はJSMをF-35Aに搭載する。 (1905-032503>1905-032503)

 Kongsberg社が11月12日、日本からJSMをNOK450M ($49.2M) で追加受注したと発表した。 弾数及び納入時期等は公開されていない。
 同社は3月11日に最初のJSMを受注していた。 (1912-111203>1912-111203)

 Kongsberg社が11月12日、日本からJSFの二次契約NOK450M ($49.2M) を受注したと発表した。
 航空自衛隊は既に42機のF-35Aを発注し既に13機以上が引き渡されているが、最終的にF-35B 42を含めて105機を装備する計画で、その全てが射程500kmのJSMを搭載するという。 (2001-112012>2001-112012)

Taurus KEPD 350

 ドイツTaurus社がDSEI 2019展で、射程500kmの同社製KEPD 350 ALCMを空自のF-2及びF-15J搭載用に売り込んでいることを明らかにした。
 同社は既に防衛省当局者に情報を提供しており、更に協議が発展するのを待っているという。 (2001-112705>2001-112705)

6・8・4・1・3 F-15J の F-15JSI への改修

 防衛省が201機保有するF-15の半数を大規模改造する。 開発費と改造する最初の2機の予算は平成31年度予算に439億円が計上されている。
 この改造ではレーダが換装され電子戦装備が強化さるが国産になる可能性もある。 またAGM-158 JASSMの搭載も可能になる。
 2018年11月に行われた国際航空展にBoeing社はAIM-120を18発搭載するモデルを公開したが、日本政府は英国と開発しているMeteor改を考えている模様である。 但しそのためには米国の承諾が必要になる。 (1902-121003>1902-121003)

 米国務省が10月29日に、航空自衛隊のF-15J 98機分の電子戦能力を向上させるのに必要な関連機器の売却を承認したと発表した。
 費用は$4.5Bで、国防安全保障協力局 (DSCA) が同日、議会に売却方針を通知した。 (1911-103002>1911-103002)

 米国務省が10月29日に、航空自衛隊のF-15J 98機分の能力向上に必要な関連機器の売却を承認したと発表した。
 費用は$4.5Bで、国防安全保障協力局 (DSCA) が同日、議会に売却方針を通知した。 この改良を終えたF-15Jの名称はF-15JSIになる。
 F-15JSIへの改良点には、レーダを米空軍がF-15Eに搭載しているAN/APG-82(V)1 AESAレーダへ、ミッションコンビューをHoneywell社製ADCP Ⅱへ換装されると共に、BAE Systems社製AN/ALQ-239ディジタル電子戦装置や対妨害性GPSの搭載などがある。
 また中期防で採用が決まったAGM-158 JASSM搭載に向けた改良も行われる。
 契約はFMSと商取引 (DCS) の併用で行われる。 (1911-103007>1911-103007)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が、国務省が総額$4.5Bにのぼる日本でのF-15J能力向上を承認したことを明らかにした。
 対象となるのは156機保有するF-15Jのうちの98機で、45機保有するF-15DJは対象にならない。 改修後のF-15JはF-15JSIになる。
 主な改修はAN/APG-82(V)1 AESAレーダの搭載、AN/ALQ-239 DEWS電子戦装置、ADCP Ⅱディスプレイコアプロセッサなどの搭載で、Advanced Eagleが装備するフライバイワイヤや大型表示装置の搭載及び搭載武器数を9発から11発に増やすリアクティブ翼下搭載装置2基の搭載は行わない。 (1912-110610>1912-110610)

6・8・4・1・4 E-2D Advanced Hawkeye

 Northrop Grumman社が、航空自衛隊のE-2D 1号機を3月29日に納入したと発表した。
 政府は更に3機のE-2Dを発注しており、Northrop Grumman社は2018年末には9機追加受注したE-2Dの生産を開始したと発表している。 また同社は2018年11月16日に米国防総省から日本向けの5機目を$32.73M受注している。
 追加分のうち3機は2019年末から2020年末に納入され、5機目は2022年末に納入される。
 航空自衛隊は1983年以来13機のE-2Cを保有しているが、これらをE-2Dに換装する。 (1906-053101>1906-053101)

 Northrop Grumman社が3月29日、2015年に受注した最初のE-2Dを航空自衛隊に納入した。 同社は2018年末に追加の3機を受注している。
 この3機は2019年末から2020年末までの間に納入される。
 同社は更に9機の追加生産を受注しており、5号機は2022年末までに納入される。 (1908-061210>1908-061210)

 米国防総省が9月26、航空自衛隊向けのE-2Dを更に9機、合わせて$1.36Bで売却すると発表した。 これで航空自衛隊向けE-2Dは既に受注している4機と合わせて13機になる。
 最初に受注した4機のうちの最初の1機は3月29日に納入されいて、残りの3機は2019年末から2020年末までに納入される。 (1912-100906>1912-100906)

6・8・4・2 陸上装備

新水陸両用戦闘装甲車

 ロンドンで1月14~21日に開かれた国際装甲車両会議で日本が、開発中の水陸両用戦闘装甲車について講演した。
 この車両は珊瑚礁の海岸と急峻な地形で使用することが求められる装軌車で、3,000馬力のエンジンで高速な航行が可能なものになるという。 (1903-013005>1903-013005)

96式後継装輪装甲車

 防衛装備庁が9月10日、96式装輪装甲車後継にGD社 (GDLS)、フィンランドのPatria社及び三菱重工業 (MHI) を選定したと発表した。
 Patria社はAMV XP 8×8車(右図)2両を納入する契約を受注しており、同社はもし選定されれば技術移転を行い国内に生産ラインを構築することを明らかにしている。 (1910-091706>1910-091706)

 防衛装備庁が96式装輪装甲車後継にGDLS、Patria、MHIの3社を選定した。
 GDLS社はLAV 6.0、Patria社はAMVを提案するが、MHIは同社製の16式機動戦闘車を元にした案を提案する模様である。
 96式後継については装備庁が2018年7月に装甲性能不足を理由に計画中止を決め、試作を担当した小松は2月に装甲車両の開発及び生産からの撤退を公表していた。 (1910-091805>1910-091805)

6・8・4・3 誘導武器

JSM、TAURUS KEPD 350、AGM-158 JASSMが報じられた。
6・8・4・3 U A V

MQ-8C Fire Scout の艦載

 政府が尖閣諸島での監視警戒能力を強化するため、海上自衛隊の護衛艦に装備する大型UAV約20機の調達を検討している。
 搭載するのはいずも型やひゅうが型護衛艦のほか、掃海能力を持つ新型護衛艦で、令和4年度に機種を決定し5年度から調達する計画である。
 機種としてはMQ-8C Fire Scoutが有力視されている。 (1908-072805>1908-072805)

6・8・4・5 C-UAV

 防衛省はサウジアラビアで起きた石油生産施設への攻撃でUAVの脅威を改めて認識し、UAVによる攻撃対処の研究を急いでいおり、高出力レーザで機体を落下させる方法や、妨害電波を出し飛行能力を無力化する技術を開発中である。
 防衛省は2019年版防衛白書で、中国が人工知能 (AI) を搭載した自律型UAV群によるスウォーム飛行技術の確立を進めていると指摘している。
 高出力レーザを使った対処方法は令和4年度までに研究を終えて装備品水準に引き上げたい考えである。 電波を照射して誤動作を誘発し機能を無効化する方法も令和2年度中に研究を終える方針である。 (1911-100101>1911-100101)4
6・8・5 将来装備の研究

超高速兵器究

 防衛省が11月18~20日に開かれたDSEI 2019で配付した18頁に及ぶ資料で、2020年代に装備化する超高速兵器について明らかにした。
 開発しているのは超高速滑空弾 (HVGP) と超高速CM (HCM) で、それぞれ2段階で開発される。 (2001-112701>2001-112701)

HVGP

 射程数百㌔㍍のSSMで陸自が装備し島嶼間射撃に使用する。
 令和2年度に285億円を要求
 Block Ⅰ: 令和 8年度装備化
 Block Ⅱ: 令和15年度装備化

HCM

 スクラムジェット推進でMach 5
 基本型: 令和10年度装備化
 改良型: 令和18年度装備化

6・8・6 その他の装備行政

6・8・6・1 装備品の不具合

OH-1 のエンジン不具合

 陸上自衛隊が3年間飛行を停止していたOH-1 37機の飛行を3月1日に再開した。
 OH-1は2015年12月4日に、2基ある三菱重工が開発したTS1-M-10エンジンの片方が高圧タービンの複数のブレードが過度なストレスで損傷したことによる推力低下が起きたことにより飛行停止になっていた。 (1904-030807>1904-030807)

 陸上自衛隊が装備しているKHI社製OH-1観測ヘリが3年間以上の飛行停止のすえ飛行を再開した。
 飛行停止の原因はMHI社製TS-1ターボシャフトエンジンの不具合であった。 (1905-032502>1905-032502)

6・8・6・2 コマツ、装甲車輌から撤退

装輪装甲車

 自衛隊向けに砲弾や装輪装甲車輌等を生産してきたコマツが3月に装甲車輌の開発、生産から事実上撤退を決意した。
 同社は今後今後新規の装甲車開発は行なわず、現在生産中のNBC偵察車の生産と、一定期間の既存の装甲車輌の保守だけは行うと同社の広報担当者は説明している。 (1908-072305>1908-072305)

軽装甲機動車

 コマツが陸上自衛隊向けに開発生産してきた車両の一部について、採算が見込めず現状が続く限り開発製造体制を維持するのが難しく新規開発はできないと防衛省に伝えた。 偵察車や榴弾などは継続して生産するという。
 開発中止を決めたのは軽装甲機動車(LAV)で、イラク派遣や国連平和維持活動などで使われている。 同社は2000年代にLAVを200両近く受注したが、その後は発注が止まり生産を終えていた。 防衛省から新規開発の打診があったが、「現状では新規開発は難しい」と伝えていた。
 コマツは平成30年度での開発完了を目指していた新型装輪装甲車での射撃試験で防弾板などの不具合が発覚し、開発を中止した経緯がある。 (1903-022102>1903-022102)




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