揚陸能力
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2013年5月19日に、ノーボスチ・ロシア通信社によると、ウクライナは中国にポモルニク型 ACV 揚陸艇(上右図)1隻を引き渡したと報じられた。 ウクライナは中国海軍向けに2隻を受注しており、現在は2隻目が建造中である。 更に、中国は同型艇を国内で2隻建造するという。 中国海軍は近年、水陸両用戦能力の強化を強力に推し進めている。 |
2 新型揚陸艦の建造
歴史的に陸軍国で、強力な海軍を有していなかった中国には大型揚陸艦の設計経験は無く、設計に際してはアメリカ製の二次大戦型 LST を参考にしつつ、試行錯誤しなが ら作業を進めざるを得なかった。
こうして1978〜1995年に中国国産の LST 型揚陸艦 Type 072(右図)7隻が就役した。
Type 072 は3,172tで、小型の ACV 艇2隻と小型揚陸艇2隻を搭載している。その後1992年〜2002年に、3,430tへと大型化した Type 072U型10隻が就役し、2003年からは3,770tのドック型揚陸艦 Type 072V型が就役を開始し、2005年までに9隻が 就役した。
(1) Type 071 ドック型揚陸艦3 中国の ACV 揚陸艇
2000年代中頃になると、それまで沿岸海軍であった中国海軍が外洋海軍へ変質するのに合わせて、輸送揚陸艦船の革新的な増強が開始された。
2006年には、中国海軍が大型ヘリコプターや ACV を搭載し、対空ミサイルも装備した大型強襲揚陸艦の建造計画を進めていることが明らかになった。 軍事関係者による と、中国海軍が建造を検討しているのは艦内に ACV 揚陸艇4隻 を収納できる15,000〜20,000t級の大型艦で、100mm砲や対空ミサイルを装備するステルス性重視の新鋭艦であ る。
同艦の模型写真が英国に本拠を置く shinodefence のサイトに掲載された。【関連記事:0607-031601 (産経新聞 2006.03.16)】
一番艦の 崑崙山 は2006年6月に起工、同年12月に進水し、2007年11月に就役した。Type 071 は満載排水量17,600〜18.500tで、排水量170tの Type 726 大型 ACV 揚陸艇4隻、小型揚陸艇2隻、ヘリコプタ2〜4機を搭載し、戦闘車両15〜20両、揚陸兵員400〜 800名の輸送能力を持つと見られる。
2010年には一番艦 崑崙山 がアデン湾派遣艦隊に編入され、二番艦の 井崗山 及び三番艦の 長白山 も2012年に就役している。
Type 071 の出現で、中国海軍の水陸両用戦能力は飛躍的に向上した。
(2) Type 081 強襲揚陸艦
バンコクで開かれた防衛博に、中国の造船会社である CSC社が Type 081 LHD と見られる模型を展示した。 この LDH は排水量20,000tで、兵員1,068名を輸送する能力を し、ヘリ12機(そのうち4機はドック内)を搭載できる。
【関連記事:1204-032802 (Defense News 2012.03.28)】
Type 081 は全通型飛行甲板を有するヘリ空母である点が、既に就役している Type 071 (20,000t) と異なる。CSC社は大型 Ro-Ro 船を建造する能力を持っており、この模型は同社の Ro-Ro 船 Sprint によく似ている。
2012年12月には、かねてから噂されていた J-18 STOVL 戦闘機の開発が進展していると報じられた。
J-18 STOVL機が完成すれば Type 081 は、米海軍と海兵隊が F-35B STOVL機を強襲揚陸艦の搭載するのと同様の能力を保有することになる。
【関連記事:1301-120701 (朝鮮日報 2012.12.07)】
Type 072 LST が搭載している Type 724 小型 ACV 艇(下図左)は排水量6.35tで、10名の兵員を輸送揚陸する能力を有している。
艦固有の武装は搭載されておらず非装甲で、特に兵員区画はオープントップのため被弾に対しては脆弱である。 船体前部が兵員区画、中央部は操縦室、後部が動力部とな っている。
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Type 071 に搭載される Type 726 大型 ACV 揚陸艇(上図右)は、最大搭載重量は60tであり、Type 96 戦車であれば1両、軽車輌やトラックであれば4両程度の搭載が可能で、航続距離 200nmの性能を持つ。今回ウクライナから取得した Pomornik型は ACV 揚陸艇としては世界最大で150tのペイロードを持ち、400uの車両甲板を有し、戦車なら3両、歩兵戦闘車なら8両を搭載する ことができる。
同型は LCAC のように揚陸艦から発進する揚陸艇ではなく、単艦運用される大型の揚陸艇である。 ただし、本型は長距離渡洋侵攻を目指したものではなく、運用が想定さ れているのは内海や近距離での作戦である。
同型はロシアでは Zubr 型と呼ばれている。