「海洋安全保障情報」の収集に当たって
筆者がSSRIのホームページに2017年1月から、ポータルサイト、「海洋安全保障情報」を開設して、今年で6年目を迎えた。
筆者が、中国を含むアジア諸国や米欧のシンクタンクやメディア等のホームページを博捜して、各国の研究者やコラムニストの論評、メディアが報じる動態情報などを収集する作業を始めたのは、
2007年5月、当時の海洋政策研究財団(現笹川平和財団海洋政策研究所)で、海洋安全保障情報に関する海外情報を週報、月報の形で発信する編集スタッフの一員に加わってからであった。
これは現在でも、季報、旬報の形で継続されており、筆者は現在も部外委託スタッフとして関係している。
本サイトでも、(公財)笹川平和財団海洋政策研究所の海洋情報サイト、
From Oceansを関連リンク先として挙げている。
長年、この作業を続けていると、その時々の国際情勢の関心の焦点がよく分かる。
例えば、2012年をピークとするソマリア沖の海賊による船舶ハイジャック事案は、当時の海洋政策研究財団での週報、月報の最大の焦点であった。
そして、この事案は我が国が自衛隊派遣を通じてインド洋の安全保障に直接関わる端緒ともなった。
SSRIでポータルサイトを開設した当時から今日までの傾向を見れば、インド太平洋と南シナ海に関する情報が焦点になっていることがよく分かる。
更に、2022年2月末のロシアのウクライナ侵略を契機に、ウクライナ情勢と、「次は台湾か」との関心もあって、これに関する海外の論評が圧倒的に多くなった。
地球儀を俯瞰すれば、自由民主主義諸国は今日、「戦争とは他の手段をもってする政治の延長である」ことを信奉し、かつての「最大版図」復活を標榜し、「力による現状変更」を強行する、ユーラシア大陸の2つの「覇権国家」に直面している。
しかもユーラシア東部の狭間には、核・ミサイル戦力の強化に邁進する北朝鮮も存在する。
我が国は、これら3国と海を隔ててはいるが隣接する位置にある。
我が国は、ユーラシア大陸の東端にあって、第1列島線――日本列島、台湾、フィリピン、南シナ海、そしてインドネシアを経てオーストラリアに至る、大陸の前面に南北に連なる「阻止の壁」の要の位置にある。
そして台湾は、「第1列島線における不可欠の結節点」(ラトナー米国防次官補)に位置している。東の覇権国家、中国がその併合を「最重要の核心的利益」とする対象こそが台湾である。
国家の安全保障は、その地理的位置を無視しては成り立たない。「台湾有事は日本有事である。」故安倍元総理が喝破した所以である。
各位が我が国の安全保障戦略を考察するに当たって、このポータルサイトがその手掛かりを与えてくれるサイトとして役立ってくれることを、作成者としては期待している。
(令和4年8月18日)