米国の軍事戦略の歴史的変化と日本の防衛の在り方
(自らの国は自ら守る体制への大転換)
日本安全保障戦略研究所上席研究員  用田和仁



               ― 目次 ―
1 はじめに
2 米国の戦略・作戦思想の変化とその本質
(1) 米国訪問の概要
(2) 中国の作戦の特色
 ア 中国の作戦目標は米中戦争ではなく,第1列島線の国々に対する局地戦の勝利
 イ ノルマンディ上陸作戦とは異なる中国の地上軍等の攻撃要領
(3) 第3次OSの特色と問題点
(4) ASB作戦構想の特色
 ア ASBの本質と同盟国・友好国との役割分担
3 第1列島線防衛の雛形となる日本の南西諸島防衛とASBとの一体化
(1) 日本版A2/ADネットワークの構築による日本の防衛
 ア 阻止作戦
 イ 抗堪力,継戦力の発揮・維持
 ウ 米軍の防勢作戦間の攻勢の一部への参加
 エ C4ISRネットワークの構築
 オ 日本版A2/ADネットワークの実態は,領域拒否/領域支配
(2) ASBを補強し日本の自主的な防衛力を助長する起死回生の方策
 ア 問題は何か
 イ 新たな日米共同海軍打撃構想)
4 終わりに
*OS:offset strategy,ASB:Air-Sea Battle ,A2/AD:Anti-Access/Area Denial


1 はじめに


 昨年,陸海空OBで米国を訪問し,日米の対中作戦・戦略から核兵器の考え方まで幅広く議論を交わしてきた。細部にわたり全てを公表できないが, 間違いなく日本は未曽有の危機的状況の中にある。それは単に中国・北朝鮮の軍事的脅威が差し迫った現実であることのみならず,米国の作戦・戦略 の考え方が大きく変わったと見られるからである。

 もはや従来の外交・防衛努力や従来規模の防衛予算の延長で国防の目的を達成できるという甘い考えは通用しない。なぜなら,2015年1月に発表 された今後の米国の根幹となるであろう「第3次相殺戦略(OS)」(後述)が,圧倒的な経済力・軍事力に裏付けされた従来の米国戦略の延長線にはなく, 経済力・軍事的影響力ともに低下していく中での軍事戦略だからである。
 また,相殺戦略に先行して発表され,進化し続けている作戦の基本的考え方である エアシーバトル(ASB)は,OSと一体となって従来の日本の防衛の考え方に大きな衝撃を与えるものになっている。

 ここでは,米国の軍事作戦・戦略の考え方の変化を中心に,日米の対中軍事戦略の骨格について具体的に述べたいと考える。なお,共著で 「アジア太平洋・インド地域防衛戦略(仮題)」を出版する予定(2017.5)しているので,あわせて参考にして頂きたい。
 

2 米国の戦略・作戦思想の変化とその本質

(1) 米国訪問の概要

 すでに2014年版のディフェンスで,米国の作戦思想の根幹であるASBの考え方が変質しているのではないかということを問題として記述したが, 本稿は,その答えとなるものである。その問題意識とは,ASBの考え方と日本の南西諸島防衛構想に食い違いが出ているのではないのかということである。
 例えば,
 中国のミサイルの飽和攻撃を主体としたA2/AD環境下にあって,今も米空母や米空軍等が,短期間で日本や日本周辺に集結して攻勢に打って出る ことを基本としているのか?
 中国本への攻撃はやるのか?
 さらには同盟国に対する核の傘は有効なのか?
等々の疑問を解決し日本の防衛の考え方を見直すための米国訪問であった。

 このため,2015年3月,陸海空の将官OBのグループで,ワシントンに所在する米国戦略予算評価センター(Center for Strategic &Budgetary Assessments:CSBA), 米国防大学国家戦略研究所(National Defense University,Institute for National Strategic Studies:NDU,INSS),米国海軍大学(Naval War College:NWC)を訪問し, 米国の作戦思想と日本の防衛について意見交換したが,特にCSBAの内容が米国の作戦構想の基本であると考えて間違いないものと確信を掴むことができた。 従って,この時の議論やCSBAから提示されたものを中核としてじ後の話を進めたい。
 CSBAは国防省と密接な関係がある民間のシンクタンクであり,2010年にASBを提唱し, その後,これを包含する戦略である相殺戦略(オフセットストラテジー,OS)を提言するなど,現在の米国の戦略と作戦思想の両方を牽引している中心的な研究所である。 このOSは2015年1月にCSBAでのOSセミナーにおいて広く知られるようになったものであるが,時期的には前後するものの2010年に発表されて以来,変化し続けている ASBの上位概念となるものであると同時に,ASBを実現するための具体的な技術と装備の方向性を明示したものである。

 またこれは,国防省における「米国が長期的に優勢を維持する方策を追求する構想」の原型となるものである。その特色・問題点等は後述するが,OSとASBの 2つが合わさって,米国の作戦・戦略の原型が出来上がったと言えるであろう。

 なお,国防省はエアシーバトル(ASB)の名称を止め,今後はJAM-GC(Joint Concept for Access & Maneuver in the Global Commons)と呼称することとし, 従来ASBの検討をしてきたASB室は,統合参謀本部J-7統合戦力開発課に統合されることになった(公式にはASBの名称は使われなくなったが,本章では従来から 慣れ親しんできたASBという表現で統一する)。

 今後は,国防省の中でASBとOSを核心として具体化されていくものと考えられる。すでに米国の2017年度の国防予算案では, これらに基づく具体的な装備が現実化してきている。一方,米国の有力な研究所であるランド研究所が,2015年に発表した「米中軍事スコアカード(US-China Military Scorecard)」 (台湾,南沙有事シナリオに基づき,細部にわたって米中いずれが有利かを明らかにしたもの)でもASBを基本としており,また,その中で提言している 今後投資すべき勝利のための装備等についても,OS及びASBが提言したものと同じであることから,OS及びASBは米国の作戦・戦略の向かうべき方向であると言って間違いないであろう。 その細部に触れる前に,中国の特色ある2点について述べておきたい。

 

(2) 中国の作戦の特色

ア 中国の作戦目標は米中戦争ではなく,第1列島線の国々に対する局地戦の勝利

 中国は,2021年の中国共産党創立100周年の記念を中間目標として,2020年までに総合的な作戦が可能な軍事力の構築や統合運用の体制を整えようとしている。このような流れの中で,日米ともに中国との本格的な紛争が生起する可能性がある時期は2020年から2030年の期間と考えている。
 この際,一般的に米中戦争の枠組みで日米共に語られることがほとんどだが,中国の目指す「情報化条件下の局地戦に勝利する」すなわち,中国が当面目指している短期高烈度決戦の目標は「米国」ではなく,「第1列島線の国々」である。局地戦とはいってもその広がりは南西諸島全域に亘り,台湾やフィリピン に対する戦争もこの概念に含まれる。

 もちろん,南西諸島の全域を必ず占領するということではないが,中国は南西諸島全域を作戦地域と捉え,どの島々へ侵攻するかは中国の判断にかかっている。台湾有事においても中国の作戦範囲は南西諸島全域を含んでおり,必然的に日本は台湾有事に巻き込まれるであろう。日本が独断で中国の 侵略を沖縄や宮古島以西の先島諸島に限定したり,あるいは,尖閣諸島に限定することは誤りである。中国から見れば,南西諸島は中国本土から約800~1000kmのほぼ同距離に位置しており,小型船舶ですら南西諸島のどの島へも約1日で到達できるし,また,日本列島はどこもすっかりCJ10 巡航ミサイル等の射程圏下に入っていることを忘れてはならない。

 このように中国は,第1列島線の国々を目標としていることから,日本に対して徹底して日米間の分断を図り,さらに日本を国際社会において孤立 させるであろう。歴史戦は日米分断の手段であり,強力なカードとなると考えられる。

 中国が日本に戦争を仕掛ける場合は,米国に対しては,「これは日中間の紛争であり,米国とは関係ない。日米同盟のために米中が争えば, 世界の経済に計り知れない打撃を与える」と主張するであろう。また,日本の南西諸島だけが目標であり,在日米軍は攻撃しないと言うかもしれない。さらに ,平時からの三戦の効果を最大限に発揮し,最終的に,国連の常任理事国の特権である「日本に対する敵国条項の発動」を独断で実施するかもしれない。

 また,核兵器についても日本に対して核恫喝を行うであろう。あるいは,限定的に核爆発による電磁波(EMP)の効果を利用し,一挙に指揮・通信網等を 停止させることも考慮に入れなければならない。いずれにしても,第1列島線の国々に対する戦争は,「米国との分断」を図り,あるいは, 「米軍の戦力の投入を躊躇させること」に特色がある。

  我々は,米中戦争という枠組みで米国が自動的に中国に対して全面戦争をしてくれる と言うことは幻想であり,むしろそこには米中の妥協の危険性が存在することを考慮に入れておかねばならない。
 このため,日本は米国を中国から離反させるとともに,積極的に米国を我が方に引き込む努力を惜しんではならない。
 

イ ノルマンディ上陸作戦とは異なる中国の地上軍等の攻撃要領

 2014年にロシアはクリミアにおいて,多数の民兵や階級章を付けていない「軍人」を使いクリミアを併合したが,この形態の攻撃をNATOは「あいまいハイブリッド攻撃」と称した。 NATOとしてこれまでは正規軍の侵略を主に想定してきたが,このような侵略に対して軍事的にどこまで対応できるのかの答えがなく,今後の喫緊の課題と考えている。
 米国は,この攻撃をリトルグリーンメン(Little Green Men)の攻撃と呼んだが,ASBにおいては,これを忍び込む攻撃(Creeping Aggression)と称している。 なお,米海軍大学では,中国の海上民兵等による不正規軍の攻撃をリトルブルーメン(Little Blue Men)の攻撃と呼ぶようになってきた。
 クリミアのような攻撃のパターンを,中国に当てはめるとまさに海上民兵を活用した攻撃のことであり,極めて対処が困難な形態である。 海上民兵は,約200~250隻で1個師団の部隊を運搬し,侵略を支援するとされている。
 2013年には,中国の大型の新造船100隻余りの漁船が五島列島の港奥深くに侵入して長期間停泊をした。
 また,2014年には約200隻の漁船が第2列島線の父島,母島周辺で不法な赤サンゴ漁を行うとともに,いつでも第2列島線まで侵略できることを日米に見せつけるということが起こった。
 尖閣に対しても過去同様に200~300隻を集結させて示威行動を実施し,最近では2016年1月に,中国公船とともに約400隻の漁船を尖閣諸島周辺の領海も含めた海域に集中させた。
 これらは全て侵略の為の準備行動と真剣に捉えなければならないであろう。このように海上民兵の漁船群を使えば,南西諸島の小さな港へも30~50隻程度は侵入することができることから, 幾つかの港を使えば短期間の内に1個師団程度の「正規軍」を上陸させることが可能である。

 一般的に上陸作戦における正規軍に関しては,海軍歩兵や揚陸艦が議論になるが,これだけに着目して中国の地上部隊の特性を語るのは片手落ちである。 中国には,初動対処・局地戦対処(独立作戦能力を保有)を主任務とする師団レベルの「快速反応部隊」が存在し,総兵力は約28万人で,空軍の空挺軍, 軽機械化師団,特殊作戦部隊,海軍陸戦隊で編成されている。
 すなわち,真っ先に運用されるのはこの「快速反応部隊」であり, それらの部隊が漁船等を含めあらゆる経空・経海輸送の手段をもって敵地に侵攻することになるであろう。 米国の緊急展開部隊であるストライカー旅団や日本がこれから整備する機動師団,機動旅団に匹敵するもので,どのように快速反応部隊が使われるのかに着目しなければならない。
 特に南西諸島は,島の周囲はほとんどがサンゴ礁に囲まれ,彼我共に現有の水陸両用車ではこれを乗り越えることは困難であることから,侵攻のパターンを海岸からと決めつけることは誤りである。

 この際,中国の国防動員法の発動により,日本国内の中国人旅行者や留学生等も軍務に服さなければならなくなることに注意を要する。 すなわち,特殊部隊を含む旅行者等が内部蜂起してゲリラ部隊と連携して,日本国内に混乱を起こし,海上民兵の侵攻を支援することになるであろう。


(3) 第3次OSの特色と問題点

 まず,ASBの前提となる上位概念である第3次OSが提起している特色と問題点,すなわち,軍事力と経済力が低下していく中での米国の作戦・戦略の限界を十分に認識しておくことが, ASBを理解する上で必須である。第3次OSが提起した特色と問題点については次の通りである。
@ 相殺戦略は,第1次,第2次相殺戦略がソ連を対象として圧倒的な核戦力,技術力で打ち負かすことを狙いとしたが,今回の第3次相殺戦略は, 敵の「A2AD能力に対抗して戦力を展開するための戦略」であり,最終的に敵とどのように決着を付け戦争を終わらせるかについては明確にされていない。 狙いは,「敵に長期のコストを強制させて戦争の意思を断念させる」ことにある。(2010年に公表されたASBでは,中国との全面戦争も恐れず, 中国本土深く攻撃して決着を付けることが明確化されていた)

A 相殺戦略では,前方基地と宇宙を基地とする戦力の依存を減らす一方,同盟国を活用して地勢的位置の優位性を確保させ負担を分担させるべきとして, 「同盟国等の軍事力の強化を前提」とした考え方となっている。この戦略においては,優越する5つの分野(無人機作戦,長距離航空作戦,ステルス航空作戦, 海中作戦(水中の支配),複合化システム・エンジニアリングと統合)における能力を最大限に発揮しようとするものである。簡単に言うと, 今後の米国の勝ち目は,「長距離打撃力と水中の作戦,そしてこれらを繋ぐ軍種を超えた作戦を支えるシステム」ということになる。

B 戦略的なリスクの認識
 米国の前方展開基地及び部隊,衛星に対して,敵は先制攻撃を仕掛けようとする強い意志を持っており,米国は高いコストの負担を強いられ, 防御的な地域ハブは敵に安価に対抗される。このため,「米国に対する抑止の信頼性と同盟国の自信は低減」し, 同盟国は,米国の安全保障の関与の信頼性に対して疑問を持ち始めるとしている。米国は,第1列島線や同盟国等の価値を重視しているとしながら, 相殺戦略では,米国の前方展開への自信を失い,このため同盟国は米国に対する信頼を失っていくことを認め心配している。

C 作戦的なリスクの認識
 ・「敵に近い港や空港」は敵の攻撃に脆弱である。すなわち第1列島線の国々は中国の攻撃に対して脆弱である。
 ・「水上艦艇や空母」は,敵に発見され易く,追跡され易く,長距離から攻撃され易い。
 ・非ステルス航空機は,近代的な統合防空システムに対して脆弱である。すなわち,中国本土への攻撃は困難になりつつある
  ことを認識している。
 ・宇宙はもはや聖域ではなく,戦場となり得る。
 このように,戦略的・戦術的視点から分析すると,米国が中国本土に接近すればする程米国の優越は減少し,第1列島線は重要ではあるが, 守り通すことは難しくなってきているということを表している。このことは,「前方展開を有事の作戦の基本としてきた米国の戦略の大転換」 として捉えなければならないであろう。

 さらに大きな問題は,圧倒的な打撃力を誇った空母打撃群が作戦の主役でなくなったことだ。同時に米国としての決定的な切り札の1つがなくなった事を意味している。 ゲーツ元国防長官は,ASBが公表された2010年にすでに空母打撃群を中心とした考えは古いと述べていた。このため,中国への直接攻撃を恐れなかった当時のASBでも, 「中国のミサイルによる第1撃の兆候があった場合,米空母等の艦船,米空軍は第2列島線以遠に安全に避退することが,戦勝の鍵である」とされていた。

 これは何もCSBA等の研究所だけの考えではなく,米国海軍大学においても空母の役割は変化したという認識を持っている。 このように確かに空母の運用に関して,中国のA2/AD環境下では従来の運用は困難になってきているが,FY2017の国防予算案では無人給油機の導入を図るなど, 長距離からの関与に徐々に変化していくようである。
下図は空母はグアム島周辺に位置して長距離作戦を遂行することを表している。 少なくとも空母の有事運用には大きな「幅」が出てきたことは事実であり,我が国も厳しいシナリオで対応できるように準備しなければならないであろう。
長距離作戦
図-1 CSBAの資料 長距離作戦


(4) ASB作戦構想の特色

 ここでは,第1列島線の防衛の前提となる,中国の作戦の特色を踏まえた米国の作戦の考え方と,作戦・戦略の従来からの変化要因の詳細について明らかにしたい。

ア ASBの本質と同盟国・友好国との役割分担

 2010年にCSBAがASBを発表して以来,多様な議論を経てASBは変化をしてきたが,では一体国防省に引き継がれていったASBの本質は何であろうか。
 ASBの大きな変化の1つは,2010年に発表されたASBが明確に中国を対象とし,核の抑止力は効いているとの前提で,例え核戦争へとエスカレートすることがあっても, 宇宙への攻撃を含み中国本土への攻撃を実施するというものであったものが,2012年の公式ASBにおいては,中国という名ざしではなく一般的な「敵」という表現になり, また,阻害されたアクセスを取り戻す「限定的」なものを狙いとするということに変質してしまったことである。
 米国の戦力を展開することは分かったが, 戦争をどのようにして決着させるかが見えなくなってしまったことは日本にとって大きな問題である。
 実際の所,国防省の中でどのように集約されているのかは分からないが,昨年のCSBAの議論とFY2017の国防省予算案から大まかな流れを把握することは可能である。
 ASBの作戦の本質については,CSBAの議論の中で提示された次の3点であると考えられる。
  @ 拒否し防御する。
  敵の戦力投射もしくは防御地域の統制能力を制限するために,空と海の拒否能力を活用する。
 ・同盟国のA2/AD能力は,抑止力の強化と地域における敵の戦力投射への妨害に役立つ。
  しかし,これらの能力は,米国の前方プレゼンスの代用ではない。
 ・ピンポイントの攻撃は許さない。
 ・敵に戦いを仕掛けないが,費用をかけさせて効果的に防御する。
  A 長引かせ疲弊させる。
  侵略者が直面する一連のリスクを大きくするため長期戦へ持ち込む。
 ・資源流入の阻止(例えば経済封鎖による経済的締め付け)
  これは抑止するために重要だが,特効薬ではない。
  B 懲罰を科す。
  潜在的侵略者に「戦争を始めることは,自らの安全保障や重要な軍事力および国内の安定を危機にさらすかもしれないような高い
  危険を伴う」と思わせる。
 ・敵の領域とアセットへの攻撃を除外すべきではない。
 ・潜在的侵略者に聖域を与えることは,防衛に対する大きな投資をしないことを彼らに許すことになる。
 ・敵のC4ISR(指揮・統制,通信,コンピュータ,情報,監視,偵察)の機能を低下させ,惑わせ,破壊するための準備をする。
 これを解説すると,
 @の拒否し防御する主体は,同盟国や友好国である。結局,米国が求めていることを端的に言うと「同盟国等は自らの国は自ら守れ」ということである。一方,これらは米国のプレゼンスの代用ではないということは,米国は第1列島線の価値と同盟国の価値を十分に理解しているので,米軍も第1列島線に「可能な限り」踏みとどまり,同盟国等を見捨てないと言う意味である。
 問題は,開戦当初から全力で踏み止まることができるのか,踏み止まるためには米国や同盟国等は何をすればいいのかである。
 ピンポイントの攻撃を許さない,という事は敵のC4ISRに対する電子妨害(電子戦)やサイバー攻撃のような「非物理的攻撃」のことであり,これは開戦当初から行うという事である。また,これはBにあるC4ISRへの攻撃の内,直接打撃での中国本土への攻撃を除いて同趣旨のものであり,ASBの切り札の1つとなるものである。(盲目化作戦と言われる) 

 Aの「長期戦に持ち込み,長引かせ疲弊させる」と言う考え方の基本である経済封鎖については,第1列島線の国々ではなく,米国が主体となる作戦となるであろう。
 問題は,中国の短期・高烈度の局地戦ですら「1〜2か月間戦争が継続する」であろうという見積もりがある中で,その期間あるいはそれ以上の長期間,第1列島線の国々の中で戦い続けられる国は恐らく1つもないであろう。まさにここが,広い太平洋を緩衝地帯とした「懐の深い戦略・作戦を考えられる米国」と,中国と「広くない海」で接していることから,「当面の国土防衛の作戦・戦闘に専念しなければならない第1列島線の国々」との考え方の大きな差異である。

 Bで敵の領地とアセットへの攻撃は考慮されているものの,考え方としてOSにある「ライバルに長期のコストを強制」する懲罰的な抑止として位置づけされている。このため,中国との核戦争へのエスカレートの危険を冒してまで実行するのかは米国内でも議論となっており,確実に発動するかは明確にされていない。
 すなわち,核攻撃も含め,通常戦力による中国本土への攻撃は高度な政治的判断を要するとして,米国大統領がその攻撃発動の引き金を握っているということだ。同時に同盟国等には,中国本土に対する直接攻撃の権限は与えないという事でもある。このことは,同盟国等として,米国が中国本土への攻撃を実行しないか,やっても実行のタイミングが遅れることもあることを念頭に作戦を考えなくてはならないということである。

 以上のことをCSBAが提示する図2の「米国と同盟国・友好国の役割分担」で見比べると,より鮮明に同盟国等に頼らざるを得ないASBの特色がお分かりであろう。

役割分担
図2 米国と同盟・友好国の役割分担
 図2にある通り,同盟国・友好国の主要な役割は,「忍び寄る不正規軍による攻撃(Creeping Aggression)」すなわち「グレーゾーンから生起し海上民兵(リトルブルーメン)等に支援された地上軍(不正規軍も含む)の攻撃対処」とASBで「阻止し防御する」とされた「「対中A2/ADネットワークの構築」である。
 また,この中で米国の役割は,明らかに「遠距離作戦」に移行し,「周辺作戦(経済封鎖作戦)」で長期戦に持ち込み,中国を疲弊させることにある。先にも述べたように,米国が遠距離作戦で中国本土への攻撃を躊躇したり,あくまで米中の動向だけを見て長期戦を続けるのならば,中国よりも先に同盟国や友好国の方が疲弊する可能性は高いであろう。大きな問題である。
 また,同盟国,米国の役割に重複している抗堪力・強靭力は,第1列島線の国々に要求されていることである。例えば,米空軍は日本に残り戦いを継続するとしているが,その前提は,日本の民間飛行場を含めて分散し運用できることが前提であり,これが使用できなかったり,弾薬・燃料等が集積されていなければ日本に残留せず,第2列島線以遠へ避退することになる。すべては日本の本気の努力にかかっている。

 一方,ASBの構成要素として重要ではあるが,はっきりと記述されていないことが2つある。
 一つは,日米やインド,オーストラリアを含んだ,潜水艦や対潜哨戒機等による水中の支配は,ASB構想のみならず第1列島線の防衛の中核となる極めて重要な作戦の1つであることである。 このため,日米共同で作戦当初から攻勢的かつ積極的に運用されるだろう。幸いに,日米の潜水艦,対潜水艦能力は極めて高いことから, 切り札としてしっかりとした投資と開発をすることが期待される。
 二つ目は,ASBの鍵となるA2/ADネットワークの構築における陸軍の役割の再評価である。これに関するCSBAでの議論では, 太平洋における米陸軍を陸上自衛隊のような対艦ミサイル,防空ミサイル,さらには地上発射型の対潜水艦ミサイルを保有する部隊に改編して, 第1列島線全般に防衛線を作るべきであると強調されている。

 CSBAの元所長であったクレピネビッチ氏は,「中国を抑止する島嶼防衛の在り方」という論文で
役割分担
  図3 同盟国によるA2/ADの構築米国と同盟・友好国の役割分担
「米国および同盟国・友好国の最終目標は,中国側に武力による目的達成が出来ないと認識させる拒否的抑止力(力を発揮させず封じ込める)を達成すべきである」とし, 「米国とその同盟国・友好国はその陸上戦力の潜在力を強化することで一連のリンク防衛を実現できる」と述べている。(図3参照)
 また,短・中距離弾道ミサイルの一方的な不利を解消するために,米陸軍に地上配備型の弾道ミサイルを持たせて第1列島線に配置することも考えているようだ。 このためには,第1列島線沿いに地上部隊を配置し拠点化するとともに,海空からの迅速な展開により地上部隊を配置・増強できることが必須となる。 現在のところ米陸軍はこの考え方の全ては受け入れていないが,陸軍こそが米国の国家意思であることを肝に銘じ,陸上自衛隊のみならず 日本を挙げて米陸軍を納得させ第1列島線に展開させる努力が必要である。


 ASBに直接記述されていない事項も含め,同盟国・友好国との役割分担を加味して,ASBの実態を図にすると下図の通りである。
役割分担
図4 エアシーバトルの本質と同盟国との役割分担
 

3 第1列島線防衛の雛形となる日本の南西諸島防衛とASBとの一体化

(1) 日本版A2/ADネットワークの構築による日本の防衛

 さて,このような戦略環境の中で,如何にして日米一体の作戦を前提としつつ,日本の防衛を全うすることができるのかが喫緊の課題であり,また,日本防衛の焦点である。
 まず,米海空軍・海兵隊が,作戦当初に後退する中で,第1列島線のA2/ADネットワークの構築による阻止作戦は,1~2か月続く中国の短期高烈度決戦に対する陸海空自衛隊,そして国民を挙げた「総力戦での国土防衛」であると覚悟する必要がある。
 その基本は,南西諸島の主要な島々を中国に取らせないことである。そのためには,中国の航空機,ミサイル,艦艇等を国土や阻止線に侵入さない態勢を速やかに作り,その態勢を強化しながら陸海空自衛隊一体となった阻止作戦を粘り強く遂行して列島線及び本土を守り切ることが肝要である。その前提で,中国の海軍,空軍を西太平洋に進出させないことが必須のこととなろう。
 この際,米海空軍の十分な支援が期待できない状況にあっても,島嶼からの阻止作戦を基盤としながら,海空自衛隊の打撃力を連携させて,統合運用による粘り強い作戦を遂行しなければならない。
 なお,島嶼奪回作戦は,海空優勢の確保が不十分な中での作戦になるであろうから,限定的ではあっても確実に成功出来るよう慎重に実施することが必要である。
 このような中で,日本版A2/ADネットワークの構成は大きく次の4つになるであろう。なお,核抑止力の維持,宇宙・サイバー戦における優越の獲得,経済封鎖等については米国等に依存せざるを得ないであろう。

 @ 阻止作戦
 A 抗堪力・継戦力の発揮・維持
 B 米軍の防勢作戦間の一部攻勢への参加
 C これらを繋ぐC4ISRネットワークの構築

ア 阻止作戦

 南西諸島に,対艦ミサイル,防空ミサイル,地上発射型対潜ミサイルの壁,すなわち,対艦・対空・対潜水艦の壁を構築し,これを連接させて島嶼防衛と列島線の封鎖網を構築して中国の島嶼への侵攻を阻止するとともに,中国海空軍の西太平洋への進出を阻止する。
 また,北太平洋からの中国艦隊の迂回行動を阻止するために,対馬,津軽海峡,宗谷海峡にも対艦・対空・対潜の壁を構築する必要がある。
 この際,当初の防勢作戦は,海空作戦が不利な状況で展開することが予想されるので,島嶼の拠点を地下化し抗堪力を増すとともに,地上部隊や兵站・弾薬等を途切れなく輸送し続けるための高速・大量の海上輸送力を保持することが必要である。

イ 抗堪力,継戦力の発揮・維持

 ・喫緊の課題は,中国のミサイルによる飽和攻撃対処である。米軍は,既存のMDでは中国の飽和攻撃に対処できないと認識しており,このため,既存のMDを維持しつつも,レーザ兵器,マイクロウエーブ(電子戦),レールガンを開発して5年から10年の内に装備化し部隊に配備する方向である。ASBで,「敵のミサイルを味方に命中させない」と言及しているのは,まさに新たなMDへ移行することを示している。一方,日本はレーザや電子戦に関する優秀な技術を有していることから,早急に日米共同開発へ移行することが必要である。

 ・先にも述べたように,米空軍が日本に残留して戦闘を継続するためには,日本の民間飛行場に必要な弾薬・燃料等を集積し,多数の飛行場を使用することができるかにかかっている。日本は,自国防衛の責任を自覚し,早急に民間の飛行場の使用を可能として日米が作戦に使用できるようにしなければならない。また,海空自衛隊の航空基地,港湾を含め,防空・対ゲリコマ対処は極めて不十分であり防御態勢を充実させる必要がある。なお,日本が独自に開発した短距離・中距離対空ミサイルは巡航ミサイルを撃破できる能力を有していることから,陸海空自衛隊で共通して多数装備化することが必要である。

 ・陸上自衛隊は有事,そのほぼ半分の勢力を南西諸島に展開することから,日本本土における対ゲリコマ戦力は極めて少ないと言わざるをえない。現大綱からも全国にわたるゲリコマについての脅威認識は欠落していることから,自衛隊の大幅増員は避けて通れないであろう。

ウ 米軍の防勢作戦間の攻勢の一部への参加

 ・電子戦を主体とする中国のC4ISRに対する盲目化作戦は,当初の防勢作戦から実施されるであろう。海空自衛隊のみならず陸上自衛隊も電子戦能力の開発・拡充は喫緊の課題であることから,早急に装備化を進め,陸海空自衛隊と米軍との連携を進化させなければならない。

 ・水中の支配は潜水艦のみならず,水中の無人機,潜水艦探査システム,対潜哨戒機及びこれらを繋ぐネットワーク等の総合的な運用により初めて圧倒的な力を発揮することができる。日米は中国に対して決定的な力を持っているが,さらにオーストラリア,インド,ベトナム等と連携することにより,絶対的に有利な状況を作り上げることが必要である。

エ C4ISRネットワークの構築

 C4ISRネットワークの一元的な構築は作戦の前提である。この際,通信のパイプの太さ,強さを見極め,予備手段を含めた残存性の高いシステムを構築する必要がある。特に,南西諸島は,海上に点在する島嶼群を連ね,かつ,米軍と一体化させるために空中,地上,海底のネットワークを構築しなければならない。
 この際,情報・通信のバックアップとして,米軍と同様に小型即応型衛星(小型で,F15のような戦闘機からも射出可能)や無人機等を多数装備化する必要があろう。また,地上用として航空自衛隊が保有する移動式の多重無線通信装置で残存性の高いシステムを構築することが必要である。

オ 日本版A2/ADネットワークの実態は,領域拒否/領域支配(AD/ADo:Area Denial/Area Dominance)

 中国版A2/ADは東シナ海がAD(領域拒否)で西太平洋がA2(接近阻止)であるが,日本の南西諸島防衛は国土防衛であることと,列島線の太平洋側は日米の生命線である海上連絡路(SLOC)があり,また,米軍が進出するエリアであることから,完全な支配ゾーン,ADo(領域支配)でなければならない。このため,列島線の太平洋側は,列島線沿いの阻止作戦に加え,対艦ミサイルや日米の対潜哨戒機・潜水艦等により日本側の支配ゾーンとしなければならない。
 また,列島線の東シナ海側も国土を守るためにはA2ではなく,ADでなければならないし,それを可能とする手段も日本は保有している。将来の対艦ミサイル等の射程の延伸を考慮すると,少なくとも日中中間線付近までは拒否ゾーンとすることが可能である。

日本版A2
       図5 日本版A2/ADネットワーク(AD/ADo)
 なお,図5は日本版A2/ADネットワークの全体像であるが,この中の水中の支配ゾーンは明確な線ではなく,日米の水中の支配作戦の動向によって前後に動くであろう。
 この日本版A2/ADネットワークは,例えば尖閣事態という場合においても,躊躇することなく南西諸島に対艦,対空,対潜水艦の火力の壁を構築することが必要である。その前提で海空作戦が有利に展開される。これは中国の言い分だが,2013年の自衛隊統合演習に際し,中国のインターネット環球網では「日本の自衛隊の対艦ミサイル部隊が,初めて宮古島に到着し,以前,那覇に配置したミサイル部隊とともに尖閣をカバーする攻撃網を組織し,かつ,宮古海峡への完全な封鎖を終えた」と述べている。まことに当を得た評価である。
 日本も,防衛力の行使は,小さな島であっても全力で対処する「牛刀をもって鶏頭を絶つ」ことだと理解することが必要である。
 反対に中国が尖閣諸島を占領したら,南シナ海のウッディー島(パラセル諸島,中国名,西沙)のように防空ミサイル,対艦ミサイルを配置して南西諸島の南半分を射程内に収めるであろう。
 

(2) ASBを補強し日本の自主的な防衛力を助長する起死回生の方策

ア 問題は何か

 新しい相殺戦略の作戦構想の柱を成すASBは,敵のA2/AD能力に対抗して戦力を展開することが目的であることは既に述べた通りである。繰り返しになるが,その作戦は,作戦当初の防勢作戦において,中国のミサイル攻撃等からの損害を回避するため米海空軍は第2列島線以遠へ避退し,代わりに電子戦による盲目化作戦,水中の支配作戦を主体として反撃を継続し,攻勢の機会を窺うことになるであろう。
 この際,攻勢作戦における中国本土への攻撃について米国は懲罰的抑止力として捉えており,軍事的に合理的であっても,政治的判断として実際に中国本土への攻撃をするかどうかは不明である。これは,当初の盲目化作戦における中国のC4ISRへのネットワークの弱点に対する物理的攻撃もエスカレートする危険を孕んでいることから,実際に実行されるかは微妙である。
 このようなOSやASBの考え方の中で,少なくとも核兵器を除く通常戦力で,日本が自らの国の命運を自らが決めることができないことは問題である。
 米国が努めて中国本土への攻撃を避けたいという願望と,中国が短期高烈度決戦を第1列島線の国々に仕掛ける一方,米国は長期戦に持ち込んで中国を疲弊させ終戦に持ち込みたいというように時間的尺度が食い違っている中にあって,それでも日本は自らの国の防衛は自らが決着を付けたいという願望とを,同時に解決できる方策はないものだろうか。
 そのヒントとなるものを,米海軍大学で2012年に発表された「海上制限戦争戦略」(A War at Sea Strategy:WaSS)に見出すことができるであろう。

イ 新たな日米共同海軍打撃構想(Japan-U.S. Combined Master Plan to Defeat China at Sea)

 米海軍のWaSSの構想が優れている点は,核戦争へのエスカレーションを回避するため,中国本土への攻撃は行わず,紛争を海洋に限定することにある。すなわち,「遠隔地における中国の海上交通路を遮断しつつ,中国の軍港や商業港に機雷を敷設,また,東アジア諸国に向けた友好的な通航路を残し,封鎖水域を設定してその中の中国の商船を撃沈する。そして,これに連携して中国にとって象徴的な艦艇(中枢艦)と核ミサイル発射型の原子力潜水艦を除き,その他の潜水艦は全て沈める」というものである。
 これを端的に言うと,中国が海洋強国として発展するための中核となる中国海軍及び中国海上交通路に目標を絞り,これを撃滅できる能力を示して,中国の侵略の意図を断念させようとするものである。抑止が破綻しても,中国海軍の息の根を止め,速やかに終戦へと導くことができると考えられる。
 この海軍を主体としたWaSSの考え方を基本として,さらに「日本の対中AD/ADoネットワーク及び米国の長距離打撃力と一体化させ,中国に対して強烈な抑止力を発揮するとともに,抑止が破れても日米が一体となった実体のある打撃力を行使し,中国の侵略の意図をすみやかに破砕する新たな日米共同海軍打撃構想」として発展させることで,より強固な対中抑止の核心を構築することができるであろう。勿論,南西諸島の阻止の壁が崩れない事と,航空戦において少なくとも中国に優勢を取らせない事は前提である。

 このような考え方は日米双方にとって魅力的であるばかりではなく,実現の可能性は極めて高いと言える。元々,WaSSの原型は,米海軍の構想であることから米国が受け入れやすく,また,日米のコントロール下で作戦が実施できることから,米国が懸念する日本単独による中国本土への攻撃の懸念も払拭することができよう。
 CSBA等の議論においても,日米共同海軍打撃構想の有効性について米側も理解を示し,中国海軍を撃滅することが第1であるとの見解を同じくできたことは大きな成果であったし,ASBとの一体化は可能であると考えられる。


4 終わりに


 以上述べてきたように,日本は近い将来,極めて厳しい状況に置かれるであろうことは明白である。我々は,はっきりと時代は変わったと認識すべきであろう。
 少なくとも通常戦力においては,「自らの国は自ら守る」体制へと早急に舵を切らなければ,米国のASBと一体となった抑止力を発揮することは勿論,自らの国を守りきることすら出来ないであろう。実力のない防衛組織体であっては足元を見られるだけで,全く抑止は効かないのである。
 そのためにはもう一度防衛計画の大綱を作り直し,防衛予算を現状の2倍から3倍にしなければならない。
 国は年間80兆円の円を刷り,すでに2年続けている。デフレ脱却ができない日本は今こそ財政出動し,通常は投資が難しいインフラ整備や研究開発等,そして,防衛費にお金を投資すべきであるとの意見もある。賛成である。例えば,10年間防衛費を倍にしても50兆円である。余力は十分あるし,民間にお金が循環していくであろう。
 問題は,迫りくる中国の脅威や,米国の軍事戦略の変化という2つの日本を襲う危機を説き,日本の防衛のあるべき姿を明らかにしても,国民がこれを自覚せず,自立の意思を持たないことである。