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4. 国 内 情 勢

4・1 防衛政策の見直し

4・1・1 大綱見直しの背景

4・1・1・1 脅威認識

 小野寺防衛相が8月28日の閣議で平成30年版防衛白書を報告し了承された。
 北朝鮮の核やミサイルについて「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と明記し、前年の「新たな段階の脅威」から表現を強めた。
 不透明な軍拡や海洋進出を継続する中国に関しても「日本を含む地域・国際社会の安全保障上の強い懸念」と批判した。 (1809-082802)

 政府が8月28日の閣議で平成30年年版防衛白書を了承し、北朝鮮の核やミサイルの脅威と並んで、中国の実戦能力の向上に強い警戒感を表した。 「世界一流の軍隊」(習国家主席)を目指す中国の公表国防費は過去10年間で2.7倍に増加して、海空戦力や宇宙、サイバ分野の能力向上を急速に進め、太平洋や日本海での活動も拡大している。  小野寺防衛相は28日の記者会見で、「中国の急速な軍事力の近代化、運用能力の向上、わが国周辺での活動の一方的なエスカレートなどは、地域や国際社会の安全保障上の強い懸念になっている」と警戒感をあらわにした。 白書の骨子は以下の通りである。 (1809-082803)

・北朝鮮の核・ミサイル開発はこれまでにない重大かつ差し迫った脅威
・米朝首脳会談後も北朝鮮の脅威の認識は変わらず
・中国は海洋で力を背景にした現状変更の試みなど高圧的な対応を継続
・北方領土や千島列島で活発化するロシア軍の動向を注視
・宇宙やサイバ空間など新たな領域の能力向上を本格化
4・1・1・2 反撃能力保有論

4・1・1・2・1 敵地攻撃能力の保有

 防衛計画大綱の策定に関する与党ワーキングチームの座長である自民党の小野寺前防衛相が11月19日に東京都内で講演し、政府が年末に策定する新たな防衛大綱に同党が提言していた敵基地攻撃能力の保有は盛り込まれないとの見通しを示した。
 一方、宇宙領域での対処能力構築のため宇宙部隊の創設は明記されると明らかにした。 (1812-111903)

 政府関係者が11月19日、政府が防衛計画大綱の概案を作成して近く与党などに提示する見通しであることを明らかにした。 新たな大綱には相手のミサイル発射機などを破壊する敵基地攻撃能力の保有や、護衛艦いずもの空母化は明記を見送る方向で調整している。 (1812-111905)

 自民党は11月21日に新防衛計画大綱について党国防部会と安全保障調査会の合同会合を党本部で開いた。 席上中谷元防衛相は岩屋防衛相が敵基地攻撃能力保有の明記を見送る方針を示したことについて、しっかり議論した上で結論を出すべきだと異論を唱えた。
 他の出席者からも批判が噴出しており、新大綱策定に向けた焦点になりそうである。 (1812-112104)

4・1・1・2・2 サイバ攻撃への反撃

 政府が自衛隊にサイバ攻撃への反撃能力を持たせる方向で調整に入った。 反撃するのは、通常兵器などによる物理的な攻撃も受けた場合に限定する。
 敵の攻撃拠点となるサーバに大量のデータを送りつけ、まひさせるDDos攻撃を駆使する案が有力で、平成30年末にまとめる防衛計画の大綱への明記を検討している。 (1806-050301)
4・1・1・2・3 長射程ミサイルの導入

 政府が12月5日に、新防衛計画大綱と中期防の骨格を有識者懇談会と、自民、公明両党のワーキングチームにそれぞれ示す。
 Mach 5以上の超高速誘導弾や、高速滑空弾など射程が長い新型ミサイルの導入を盛り込む。 超高速ミサイルは相手のレーダ網をくぐり抜ける速さで飛行するのが特徴で、高速滑空弾はSSMで300km以上の射程が考えられている。
 またUUVの開発方針も盛り込まれ、いずれも実用化は2020年代半ば以降になると見られる。 (1901-120501)
4・1・1・3 DDH の空母化と F-35B の導入

4・1・1・3・1 DDH の空母化

 日本のメディアが2017年12月26日に、航空自衛隊がF-35B STOVLを購入し、護衛艦いずもかが で運用すると報じた。
 いずも級にスキージャンプ台を取り付ける可能性もあるが、同級の飛行甲板は248mあり、スキージャンプ台を装備していない米海軍のWasp級とAmerican級強襲揚陸艦の飛行甲板248mや273mとほぼ同級であるため必須ではない。 (1803-011011)

 小野寺防衛相が2月8日の衆院予算委員会で、護衛艦いずもに艦載可能な航空機の研究を2017年春にジャパンマリンユナイテッド社に委託していたことを明らかにした。 政府がいずもを戦闘機の発着が可能な空母に改修することを検討していることが明らかになった。
 海自は2016年12月に「ヘリコプター搭載型護衛艦の航空運用能力向上に係る調査研究」の委託業者を公募し、いずもによる「新種 航空機」の運用に必要な性能の検討を求め、2017年4月に同社と調査費378万円で委託契約を結んだ。 (1803-020901)

 小野寺防衛相が3月2日の参院予算委員会で、ヘリコプタ搭載型護衛艦にF-35Bを搭載して空母化することが可能か調査研究していることを初めて認めた。 調査研究は、いずも型とひゅうが型計4隻の航空運用能力向上が目的で、ジャパンマリンユナイテッドに今年度に378万円で委託していた。
 防衛相は答弁で、F-35Bのほかに固定翼と回転翼の2種類のUAVに関して基礎調査していると説明した。 (1804-030205)

 防衛省が4月27日、護衛艦いずもにF-35Bを搭載する空母化に関して、一定の改修によって発着艦や格納が可能だとする委託調査の報告書を公表した。
 共同訓練やトラブルの際に米軍のF-35B 1機が臨時に着艦する場面を想定し、格納庫に移送して給油などを行うために必要な改修内容を調査した。
 またUAV 2種類の艦載方法も検討した。 (1805-042703)

 防衛省が4月27日、護衛艦いずもに関し、F-35Bなどの航空機を搭載して運用できるかの調査報告書を公表した。 調査はいずもを建造したジャパンマリンユナイテッド社に委託し、2017年4月から2018年3月にかけて行われた。
 調査対象はF-35Bのほか固定翼UAV RQ-21、回転翼UAV MQ-8Cの3機種でそれぞれに必要な改修項目や工期、費用などが記載されている。 (1805-042704)

 防衛省が4月27日、いずも型ヘリ空母にF-35Bが離着艦出来るかに関して3月にジャパンマリンユナイテッド社が3月に提出した報告書を公表した。 ただ報告書は多数の部分が書き換えまたは黒塗りされていた。
 それによると、いずも型は元々、格納庫、エレベータ、飛行甲板など各所はF-35Bの重量に耐えられるようにできているが、船体の表面を防護する改造が必要であるとしている。 (1807-050908)

 複数の関係者が11月26日、政府が年末に策定する新防衛大綱に、事実上の航空母艦の役割を担う多用途運用母艦の導入を明記する方向で調整に入ったことを明らかにした。 具体的には護衛艦いずもを改修する。
 南西諸島海域などで中国軍をけん制する狙いがあるが、専守防衛の範囲を超える攻撃型空母に該当しないよう、母艦の運用用途や平時の戦闘機搭載数など詳細を詰める。
 従来の政府見解では、攻撃型空母の保有は憲法上、認められないとしており、与党内には「専守防衛の範囲内に収まる運用が担保されなければならない」(公明党幹部)との声も出ていて、今後、政府・与党間で擦り合わせが行われる。 (1812-112603)

 政府が南西諸島や日本周辺の太平洋の防衛力強化のため、空母の役割を担う多用途運用母艦の導入を念頭に、護衛艦いずもをF-35Bが離着艦できるよう改修する方針を来月新防衛計画大綱に盛り込む方向で調整している。
 現在は米海兵隊が装備しているF-35Bへの補給が緊急時などに行えるようになるということだが、自衛隊がF-35B導入するかどうかについてはまだ方針が固まっていない。 (1812-112702)

 岩屋防衛相が11月27日の記者会見で、いずも型護衛艦を改修しF-35Bを搭載することに前向きな姿勢を示した。 年末に策定する新防衛計画大綱に明記する。
 自民党が5月に示した防衛計画大綱に向けた提言には、いずも型護衛艦を空母化改修する多用途運用母艦と、F-35Bの導入が盛り込まれている。 (1812-112704)

 政府が新防衛計画大綱に、いずも型護衛艦の空母化やF-35Bの導入を明記する。
(1812-112710)

4・1・1・3・2 F-35A の増強、F-35B の導入

 複数の政府関係者が、政府が38年度頃の運用開始を目指しF-35Bの導入を検討していることを明らかにした。 滑走路の短い離島の空港を活用でき、離島防衛能力が高まるほか、空母化の改修を検討している護衛艦いずもでの運用も視野に入れている。
 政府は、F-4の後継機としてF-35A 42機導入を決めており、航空自衛隊三沢基地に1機目が先月に配備された。 F-35Bは年末にまとめる次期中期防に調達する機数を盛り込み、早ければ31年度予算案に関連経費を計上し、35年度頃からの納入を想定している。 (1803-021203)

 読売新聞が、政府が次期中期防でF-35Bの導入を目指している報じた。 消息筋によると導入されるのは2個飛行隊分の20~40機で、このほかにF-35Aの追加調達も盛り込まれる。 (1803-021204)

 自衛隊は現在200機保有するF-15の半分を改修する計画だが、改修に適さない残り100機の取り扱いも焦点となっていて、与党議員の中ではF-35Aであれば60機程度でF-15 100機相当の防空能力があるとして、F-35Aを60機、F-35Bを40機の計100機の購入が望ましいと主張する声がある。 (1812-112710)

 複数の政府関係者が11月28日、政府がF-35を最大100機追加導入する方向で検討に入ったことを明らかにした。
 政府は平成32年度に退役が完了する見通しのF-4の後継として、F-35を42機購入することを決定しているので、追加導入が実現すれば140機体制となる。 (1812-112802)

 複数の政府筋が11月28日、政府がF-35Bを導入する検討に入り、防衛計画大綱に明記する方向で調整していることを明らかにした。
 護衛艦いずもの改修を念頭に事実上の空母化に乗り出す方針を踏まえで、20機程度の調達を目指すという。 (1812-112901)

4・1・3・3 マルチドメインでの戦い

 政府が策定する新防衛計画大綱の骨格が11月29日に明らかとなった。 自衛隊のサイバ反撃能力保有に加え、電磁波を使った敵部隊への妨害能力の強化を明記する。
 宇宙やサイバ空間など新領域での脅威に備え、自衛隊の対処能力を向上させていく姿勢を明確に打ち出す。 (1812-113001)
4・1・3・4 大綱に盛り込もうとしているその他の項目

高出力レーザ対空システムの開発

 政府筋が12月5日、新防衛計画大綱に、高出力レーザ対空システムの開発方針を明記する方向で調整に入ったことを明らかにした。 (1901-120601)

統合作戦室の設置

 自民、公明が12月7日に開いた防衛大綱に関するワーキングチーム (WT) で、陸海空三自衛隊を一元的に指揮する統合作戦室(仮称)を設置する方針を固め新防衛計画大綱に明記することが了承された。
 現在は有事や大規模災害が発生する度に統合任務部隊 (JTF) を編成し司令部を設置する態勢をとっているが、立ち上げに時間がかかるなど課題も指摘されているため、常設組織ができれば事態への対処能力の向上も期待できる。 (1901-120704)

4・1・2 大綱の見直しと次期中期防の策定

4・1・2・1 大綱の見直し指示

 安倍首相が1月22日に国会で防衛力強化を推進すると述べた翌日、小野寺防衛相が防衛計画大綱 (NDPGs) を年末までに見直すと述べた。 (1803-013102)
4・1・2・2 大綱の見直しの焦点

 防衛計画大綱 (NDPGs) 見直しでは北朝鮮を念頭に入れたBMDのほか、宇宙空間及びサイバ空間での活動も焦点になるという。 (1803-013102)

 宇宙空間やサイバ空間は陸海空に次ぐ第4、第5の戦場とも言われていることから、2018年内に見直す防衛大綱の議論でも焦点になるとみられるが、防衛省はサイバ防衛や宇宙監視の分野の能力向上を急いでおり、省内に司令部機能を持つ専門組織の新設を検討するほか、サイバ防衛に従事する人員も30年度に4割増やし150名体制とする。
 サイバ攻撃への対処にあたるサイバ防衛隊や宇宙監視の部隊などを束ねる司令部機能を持つ組織は、海自の自衛艦隊、空自の航空総隊などと同格の扱いとし、陸海空の三自衛隊から要員を集め、早ければ2020年にも発足させる。 ()
【註】 サイバ戦部隊は米軍の6,000名以上をはじめ、各国で数千名規模が報じられている。 シンガポールですら2,000名規模の編成を準備している。

4・1・2・3 自民党の主導

自民国防族の実務派が NSC と連携して作業

 12月中旬に閣議決定する防衛計画大綱の見直し論議で、防衛政策に影響力を持つ自民党国防族の実務派が台頭してきており、関係省庁を束ねる国家安全保障会議 (NSC) と緊密に連携している。
 自民、公明両党は11月20日に大綱見直しに向けたワーキングチーム (WT) が議論を本格化させるが、WT座長は実務派の代表格の自民党の小野寺安全保障調査会長で、防衛政策にかかわる自民党の主要ポストには、小野寺氏が防衛相を務めたときの副大臣と政務官が並んでいて、国防部会長の山本朋広氏は副大臣だった。
 政府側の司令塔は2013年12月に発足したNSCで、事務局は外務、防衛両省を中心に約70人で構成する国家安全保障局 (NSS) が担っている。 NSSは2014年に発足したため前回の大綱見直し時はなかった。 (1812-112001)

大綱見直しに関する提言

 政府が2018年末に改訂する防衛計画の大綱に向け、自民党がまとめた提言骨子案が3月15日に判明した。
 陸海空に加えて新たな防衛分野の宇宙、サイバへの対処力を高めるとともに、空間や地域をまたいで対応する自衛隊の統合運用機能の強化を掲げ、他国のBM発射拠点を破壊する敵基地反撃能力の保有の検討を求めている。
 またF-35Bを念頭に、短距離離陸が可能な垂直離着陸機の取得も要求している。 (1804-031601)

 自民党が3月19日、新たな防衛大綱の基本概念に多次元横断防衛構想の実現を掲げるよう提言する方針を決めたことを複数の関係者が明らかにした。
 陸海空三自衛隊の一体的な運用の強化に加え、サイバや宇宙といった新たな防衛分野の対処力向上を打ち出す。 20日の党安全保障調査会の会合で示す防衛大綱の骨子案に明記し、取りまとめを図るという。
 新たな防衛戦略アクティブ・ディフェンスも打ち出し、BMの発射元をたたく敵基地反撃能力の保有も要請する。 (1804-032001)

 自民党の安全保障調査会が3月20日の会合で、次期防衛計画の大綱に向けた提言の骨子案をまとめた。 島嶼防衛への投入を想定した多用途防衛型空母の導入や、空母での運用を念頭にF-35Bの取得を盛り込んでいる。
 調査会会長の中谷氏は空母のイメージについて、掃海の母艦、病院船、災害時の拠点など多用途な移動できる滑走路と説明した。 また新造のほか、いずも型など既存のヘリ搭載護衛艦の改修を念頭に置いている考えを明らかにした。 (1804-032002)

 政府が2018年末に改定する防衛計画大綱と次期中期防に向け、自民党がまとめた提言の全容が5月24日に判明した。 防衛費についてNATOが対GDP比2%達成を目標としていることを参考に必要かつ十分な予算を確保すると明記して参考としつつ、事実上GDP比2%の目標を掲げた。
 提言は、島嶼防衛や災害時の拠点機能として多用途運用母艦の導入構想を打ち出した。 骨子案で使用していた「空母」の表現は避けたが、いずも型を念頭に既存艦艇の改修を含めた導入の検討を進め、早期実現を図るとし、F-35Bの取得 も盛り込んでいる。
 現行の大綱の「統合機動防衛力」に代わる新たな概念として多次元横断(クロスドメイン)防衛構想も掲げ、陸海空に加えて宇宙・サイバ領域も活用した防衛力整備を目指す。
 また敵基地反撃能力の必要性を訴えてCMなどの保有について検討を促進とし、各種経空脅威に対応できるIAMD態勢の構築も掲げた。 (1806-052503)

予算増に関する提言

 防衛計画大綱への自民党提言には、1機100億円以上とされるF-35Bや、多用途運用母艦など多くの高額装備品が並び、防衛費の目標をGDP比2%と明記した。 防衛費がGDPの2%となれば10兆円規模となり、党国防幹部会では現実的ではないとの慎重論も出たが、最終的に周辺の安全保障情勢の厳しさを考慮した。
 厳しい財政事情を承知の上で、自民党があえて提言に対GDP比2%を明記したのは、政府に大胆な方向転換を促すためで、提言のまとめ役を務めた中谷元元防衛相や若宮健嗣前防衛副大臣らが主導した。 (1806-052504)

 自由民主党が5月24日に政府に対し防衛費の増額を求める要望を公表した。
 自民党が防衛費増額を求めたのは今回だけではなく、過去10年間にわたり韓国や台湾なとGDPの2.4%にのぼる国防費を支出している国々並の防衛費を要求してきている。 (1807-060614)

4・1・2・4 戦闘機部隊の大幅増強

 政府が2018年内に防衛計画の大綱改定する際、現在12個の戦闘機飛行隊14個までに増強する検討に入った。 F-35Bを新たに導入し現在1個飛行隊だけの新田原基地への配置が有力視される。
 戦闘機部隊を現行の12個から13個に増強することを打ち出している平成25年に策定した現在の大綱では、新たに導入するF-35A 42機で2個飛行隊を編成してF-2の飛行隊を1個しか置いていない三沢基地に配置し、三沢基地のF-2は退役するF-4の飛行隊を2個置いている百里基地に移した上で、F-15飛行隊も1個つ増設して13個飛行隊に引き上げる計画だった。 (1802-012101)

 防衛省がF-35Bを約40機導入する方針を固め、このうち20機程度を12月18日に閣議決定する新中期防に盛り込む。
 まず20機を調達した時点で1個飛行隊を編成し、40機態勢が確立したところで2個飛行隊にする。 (1901-121302)

 政府はF-15の非近代化機の後継に決めたF-35を105機購入し、うち42機はF-35Bとする方針を固めた。 この結果F-35は既に購入を決めている42機と合わせて計147機体制となる。
 12月18日の閣議決定を目指す次期中期防では、42機のF-35Bうち半数程度の購入を盛り込む。 (1901-121303)

4・1・2・5 電子戦能力の強化

 防衛省は平成31年度予算概算要求で5兆3,000億円を計上する方針だが、電子戦対応を柱として打ち出し関連費用を盛り込む。 また政策立案を強化する専門部署として同省整備計画局に「電磁波政策室」(仮称)、統合幕僚監部に「電磁波領域企画班」(同)を新設する。
 防衛省は2018年末に見直す防衛大綱で電子戦の能力強化を盛り込む方針で、将来は電子攻撃機の導入も検討している。
 日本は電子戦への対応で各国に後れを取ってきているが米国はEA-18Gなどを配備している。 (1809-082203)
4・1・2・6 最終決定に至る経過

4・1・2・6・1 政府と与党の最終調整

 政府関係者によると11月20日に新大綱に関する与党ワーキングチームや政府設置の有識者による「安全保障と防衛力に関する懇談会」が開かれる見通しで、早ければこの場で概要を説明して理解を得て、12月18日の閣議決定を目指している。 (1812-111905)

 防衛計画大綱見直しに向けた政府の有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」が11月20日に第5回会合を開き、政府側から概案が提示された。
 それによると新大綱は以下の項目で構成し、このうち、宇宙、サイバ、電磁波といった新領域や「ゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術」に重きを置く方針を盛り込んでいる。 (1812-112006)

① 策定の趣旨
② わが国を取り巻く安保環境
③ 防衛の基本方針
④ 防衛力強化に当たっての優先事項
⑤ 自衛隊の体制
⑥ 防衛力を支える要素
⑦ 留意事項
4・1・2・6・2 多用途運用母艦に関する最終調整

 政府筋が12月5日、新防衛計画大綱で焦点だった護衛艦いずもの空母化構想に関して、大綱では多用途運用護衛艦と位置付け空母の名称を見送る方向で調整に入ったことを明らかにした。
 専守防衛からの逸脱懸念が国内外にあることへの配慮とみられる。 (1901-120601)

 自民、公明が12月7日に、新防衛計画大綱に関するワーキングチーム (WT) の会合を開き、いずも型護衛艦を改修して戦闘機の離着陸もできるようにすることについて政府から説明を受けたが、公明党が政府の説明に納得せず、5日の会合に続き了承を持ち越し週明けにも改めて協議することになった。 (1901-120703)

 自民、公明が12月7日に開いた防衛大綱に関するワーキングチーム (WT) で、護衛艦いずも改修による事実上の空母化構想についても協議したが、議員側は空母化の必要性や運用方法について政府側に一層の明確化を求めた。 (1901-120704)

 政府が12月中に決定する新防衛計画大綱を協議する自民、公明両党の与党ワーキングチーム (WT) が12月10日、いずも型護衛艦の事実上の空母化改修について3回目の協議をしたが了承を先送りした。
 11日のWTで4回目の協議を行う。 (1901-121001)

 政府が12月11日、新たな防衛大綱の骨子案を与党に提示した。 骨子案には現有艦を事実上の空母として運用可能とするよう必要な措置を取ると明記したが、与党は常に空母として運用するわけではないと文書で確認することを条件に大筋で了承した。
 岩屋防衛相は、戦闘機を常時艦載させないため、政府の従来見解で保有を禁じた攻撃型空母には当たらないとの認識を示した。
 与党の会合で、政府は平成30~34年度の中期防の骨子案も提示、了承された。 政府は新大綱と中期防を18日にも閣議決定する。 (1901-121102)

 政府が12月13日、新防衛計画大綱と次期中期防を自民、公明両党が開いたワーキングチーム (WT) 会合で提示し、了承された。
 両党は、護衛艦いずも改修による事実上の空母化では、改修は専守防衛の範囲内とする確認書をまとめた。 (1901-121304)

4・1・2・7 新防衛計画大綱と中期防の決定

4・1・2・7・1 閣議決定

 政府が12月18日、新たな防衛力整備の指針防衛計画の大綱と、大綱内容に沿って具体的な装備調達を進める次期中期防衛力整備計画を閣議決定した。 (1901-121801)
4・1・2・7・2 「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」

 政府は12月18日午前の閣議で、F-15 99機の後継としてF-35AとF-35Bを合わせて105機調達する方針を了承した。 内訳はF-35Aが63機、F-35Bが42機で、すでに導入を決めているF-35A 42機と合わせて147機態勢となる。 このうち、同日に閣議決定された中期防には、F-35A 27機とF-35B 18機が盛り込まれている。
 また、国内で行っているF-35Aの最終組み立てを取りやめ、平成31年度以降の取得は完成機輸入に切り替え、調達コストを1機あたり30億~40億円削減する方針も了承した。 (1901-121804)

 政府は12月18日に新防衛計画大綱を閣議決定して護衛艦いずもの改修に乗り出すが、いずもの運用開始はF-35Bの訓練を経て2023年中を目指している。
 また敵基地攻撃能力との関連が指摘される長距離CMの整備も進める。 (1901-121805)

4・1・2・7・3 「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)」

 政府は12月18日の閣議で決定した平成31年度からの次期中期防では今後5年間の防衛費は総額27兆4,700億円とした。 (1901-121802)
4・1・3 次期中期の主要内容

4・1・3・1 27兆円台の予算総額

 政府は防衛装備品の取得計画を定める平成31~35年度の次期中期防予算総額について27兆円台とする調整に入った。 26~30年度の総額は24兆6,700億円であることから2兆円を超す大幅な増額になり、年平均の実質伸び率は1.1%になる。 年間1.1%の伸び率でも35年度段階の額はGDP比1%以内に収める見込みである。
 30年度の防衛費はGDP比で0.9%程度だが、NATOの算定基準で計算すると1.2%前後になる。 (1901-120801)

 政府は防衛装備品の取得計画を定める次期中期防の大枠を固めた。 総額は27兆円台で伸び率は平成26~30年度の平均0.8%を上回り1.1%だが、最終的にはコスト削減努力などで総額を25兆円台半ばに抑えることを目指す。
 次期防では新規購入装備品の取得額を初めて明示し17兆円規模の枠を設けるが、防衛費は一般に人件費が4割以上を占め30年度では中期防対象経費の4兆9,388億円のうち、人件費は2兆1,850億円だったため、装備品を優先的に確保すればこうした予算を圧迫する可能性もある。 (1901-121101)

4・1・3・2 F-35A の追加購入

 日米の複数の関係者が、日本政府がF-35A 20機以上追加購入する方向で調整に入ったことを明らかにした。 2018年末にまとめる次期中期防に盛り込むという。
 F-4の後継としてF-35Aを42機調達することを決定済みであるが、追加購入するのは200機保有しているF-15の一部後継分で、関係者の1人は25機前後の調達が現実的としている。
 ただ調達費が割高になる国内での最終組み立てを取りやめ、完成機を輸入することも検討している。 (1803-022106)

 政府が航空戦力を急増する中国に対抗して、2018年末にまとめる次期中期防でF-35A 20機を追加取得し、現有機と合わせて60機態勢を目指す方向で検討に入った。
 複数の政府関係者によると、追加取得は早ければ平成32年度から始め、配備候補地は新田原基地、百里基地などが浮上しており、2018年末までに候補地を絞り込む。 (1811-101301)

 政府はF-15の非近代化機の後継に決めたF-35を105機購入し、うち42機はF-35Bとする方針を固めた。 この結果F-35は既に購入を決めている42機と合わせて計147機体制となる。
 12月18日の閣議決定を目指す次期中期防では、42機のF-35Bうち半数程度の購入を盛り込む。 (1901-121303)

4・1・5 現中期防の達成状況

4・1・5・1 現中期防の達成率

 平成26~30年度の現中期防で導入を明記した主要防衛装備品のうちC-2など全体の4割の項目で予算計上が遅れている。 予算計上した項目でも29年度末に発足する水陸機動団の水陸両用車など配備が遅れているものもある。
 中国の海洋進出や北朝鮮の挑発行為への懸念が高まるなか、離島防衛などの有事対応や警戒監視への支障を危ぶむ声が出ている。
 30年度予算案を踏まえて防衛省が現中期防の達成状況をまとめたところ、主要装備品23項目のうち目標値を100%達成できたのはAegis艦2隻やF-35A 28機など13項目で、10項目は100%に満たなかった。 (1802-010504)
4・1・4・2 潜水艦22隻態勢の状況

 海上自衛隊が2013年の防衛計画大綱で示された潜水艦22隻態勢を2020年代初期に達成する作業を2012年に開始している。
 海幕防衛課の西山1佐がシンガポールで開かれたADECS 2018で、おやしお型潜水艦7隻の艦齢延長工事が完了し、そうりゅう型と同程度の能力になったことを明らかにした。 (1803-020107)
4・2 組織、機能、制度の改革

4・2・1 国家安全保障会議の強化

防衛力整備立案の主導

 政府筋が1月6日、政府が防衛力整備を巡り、安全保障政策の司令塔である国家安全保障会議 (NSC) が主導し決定する方針を固めたことを明らかにした。
 陸海空各自衛隊の要求に力点を置いてきた従来方式を見直し、トップダウンで効率的な予算配分を目指すもので、装備選定で官邸の意向が一層強まる。
 新たな戦場と位置付ける宇宙、サイバ分野や、通信妨害を目的とする電子戦を重視し、予算を振り向ける狙いもある。 (1802-010701)

4・2・2 統合防衛の推進

4・2・2・1 統合防衛戦略の正式文書化

 防衛省が、陸海空三自衛隊が一体的に対処するための運用指針となる「統合防衛戦略」を初めて正式文書として統合幕僚監部を中心に年内に策定し公表する方針を固めた。 「統合防衛戦略」の策定により「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」と合わせ安保戦略3文書が確立する。
 防衛省は統合防衛戦略を正式文書に格上げすることを念頭に平成27年10月、昭和52年に出された「防衛諸計画の作成訓令」を改正して防衛諸計画の柱とした。
 それまでも戦略文書は統合幕僚長に報告されていたが、内部文書にとどめられていた。 (1803-020101)
4・2・2・2 統合司令部の創設準備

 防衛省が、陸海空自衛隊の運用を一元的に指揮する「統合司令部」創設に向け、改定防衛計画大綱と次期中期防に明記する方向で最終調整に入る。
 統合司令部は統幕から独立させ統幕運用部も統合司令部に移す案が有力で、当面は陸海空を指揮する司令官と横並びとするが、陸海空の教育訓練や補給も統括できるようになれば上部組織に格上げすることも視野に入れている。 (1805-042501)
4・2・2・3 クロスサービス施策

海空自衛隊の一部地上任務を陸上自衛隊に移管

 政府は防衛大綱に、陸海空の所属を超えた人員提供を意味するクロスサービスの実施を明記する方針で、海空自衛隊が行っている施設警備など地上任務の一部を陸上自衛隊に移管する方向で検討に入った。
 警備任務 の移管は来年度から準備に着手して数年以内の実現し、将来は車両による輸送業務などへの対象拡大も検討する。
 海空自衛隊の人員を艦艇や航空機の運用に関連する任務に優先配分し、海洋進出を強める中国への対処力を強化する狙いがある。 (1808-072402)

Global Hawk を共同運用する共同部隊を創設

 政府が平成33年度から導入するGlobal Hawkを陸海空三自衛隊で共同運用する方針を固め次期中期防に明記する。 150名規模の共同部隊を創設し中国や北朝鮮の軍事動向の監視などに活用する。
 Global Hawkは3機を空自三沢基地に順次配備する。 (1808-073003)

4・2・3 予備自衛官制度の改革

4・2・3・1 予備自衛官を雇用する企業への給付金制度を新設

 防衛省が30年度に予備自衛官を雇用する企業への給付金制度を新設する。 予備自衛官の資格をもつ従業員が災害派遣や訓練中の負傷で業務できない場合、1人につき1日あたり34,000円を支払うもので、30年度予算案に関連経費として約400万円を計上した。
 政府は必要な規定を盛りこんだ自衛隊法改正案を1月22日召集予定の通常国会に提出し成立をめざす。 (1802-010402)
4・2・3・2 即応予備自衛官の招集

 小野寺防衛相が、政府は7月11日の持ち回り閣議で、西日本豪雨の被害拡大を受けて即応予備自衛官を招集する方針を決めたことを明らかにした。
 12日以降、広島県を中心に被災者の生活支援活動に従事する。 招集は300名規模で東日本大震災、熊本地震に次いで3回目目になる。 (1808-071102)
4・2・4 部隊の新編、改編

陸上総隊の発足

 陸上自衛隊が64年前に創設されて以来最大規模となる組織改編を行い、陸上総隊を3月27日に発足させる。
 陸上総隊は、防衛大臣の指揮下に方面隊の管轄を超えて全国の部隊を一元的に運用する組織で、水陸機動団も直接の指揮下に入る。 (1804-032701)

 3月27日に発足した陸上総隊の隊旗授与式が4月4日に朝霞駐屯地で小野寺防衛相が出席して行われ、初代司令官の小林茂陸将に隊旗が授与された。
 小野寺防衛相は北朝鮮と中国の脅威に言及した上で、陸海空の全自衛隊の力を発揮させることが総隊に課せられた任務と訓示した。 (1805-040403)

 陸上自衛隊朝霞駐屯地で3月27日に陸上総隊が新偏された。 また総隊の隷下に入る水陸機動団が相浦駐屯地で編成された。
 水陸機動団は2,000名で発足したが、2018年内に2,400名にまで拡充される。 (1806-040411>)

4・3 防衛費増加傾向の持続

4・3・1 周辺国と比較した増加傾向

 ストックホルム国際平和研究所の推計では世界の軍事費は2017年に$1.739Tと2008年比9.8%増えた。 冷戦終結後は減少していたが21世紀に冷戦期を上回る規模に戻り、近年は伸び続けている。
 全体を押し上げるのは世界2位の軍事大国になった中国で、公表値は外国からの武器調達や研究開発費を含まないため同研究所の推計を使っているが、2008年で$10B程度の軍事費は2017年に2倍超の$22.8Bに膨らんだ。
 日本周辺各国の伸び率は以下の通りである。 (1809-081702)
・米 国: -14%
・中 国: 110% (年率7.7%)
・ロシア:  36% (年率3.1%)
・東南ア:  39% (年率3.3%)
・日 本:  4.4%(年率0.4%)
4・3・2 平成30年度の防衛予算

4・3・2・1 当初予算

 政府が30年度予算に5兆円を越える防衛費を要求した。 航空機ではF-35A、E-2D、KC-46A、V-22、SH-60K、C-2などを要求しているが、国内調達されるのはC-2 2機だけである。
 政策研究大学院大学は1年前にF-35で北朝鮮のミサイル発射機を破壊すべきとの提言を行っている。 (1802-122504)
4・3・2・2 平成30年度第2次補正予算

 2月21日に閣議決定した平成30年度第2次補正予算案には3,998億円を計上し、F-35Aの取得や自衛隊員の勤務環境改善に向けた費用などを盛り込んでいる。 (1901-122101)
【註】 第2次補正の防衛関係分は3,998億円で、29年度の補正予算2,345億円を1,653億円上回っている。 そもそもこの2,000億円を超える規模の補正は5~6 年前から続けられているもので、次年度予算の先取りの様なものである。
 31年度概算要求分の一部を30年度の補正予算に廻せば31年度の予算が見かけ上少なくなるばかりか、30年度中に予算が執行できるメリットがある。 この補正予算を加えると5兆1,251億円であった29年度は5兆3,596億円、5兆1,91億円と当初予算で1.3%増の30年度は2回の補正で5兆6,281億円と最終的に5%増になり、当初予算だけで防衛費の増加率を比較しても意味がないことになる。
4・3・3 平成31年度の防衛予算

4・3・3・1 平成31年度予算概算要求

4・3・3・1・1 実質7.2%増となる概算要求の総額

 政府が次期中期防で、米軍再編関連経費を除く防衛関係費の伸び率を現行の年0.8%から1%超に拡大する方針を固めた。 この結果平成31年度の防衛関係費は22年ぶりに過去最大を更新する見通しである。
 防衛省は次期防に向けて防衛関係費の大枠について財務省と協議を進めているが、平成26~30年度の現中期防では25年度の為替や物価水準で約23兆9,700億円の大枠が設定され、年平均0.8%の増加が認められていた。
 当初予算ベースの防衛関係費は平成9年度の約4兆9,412億円が過去最大で平成15年度から10年連続で減少したが、第2次安倍政権発足後の平成25年度から6年連続で増え、今年度は約4兆9,388億円だった。 (1808-070802)

 政府筋が7月15日、防衛省が平成31年度予算の概算要求で米軍再編関連経費を含め過去最大の5兆2,000億~5兆3,000億円程度を計上する方向で調整に入ったことを明らかにした。
 当初予算ベースの防衛費は安倍政権下で平成25年度に増加に転じており、31年度で7年連続増となる見通しである。 (1808-071502)

 防衛省が8月末に決める平成31年度予算の概算要求について、過去最大となる5兆2,986億円を計上する方向で最終調整に入った。 7年連続の要求増で、30年度当初予算から約1,000億円の増額となる。
 米軍再編経費などを含めた30年度の当初予算は5兆1,911億円で、第二次安倍晋三政権の発足以降、6年連続で増加している。 (1809-082204)

 防衛省幹部が8月22日に自民党国防部会関係者らに、平成31年度予算の概算要求の総額が過去最大の5兆2,986億円であると説明した。 (1809-082205)

 防衛省が8月31日、総額が過去最大の5兆2,986億円の平成31年度予算の概算要求を発表した。 前年度当初予算比2.1%の伸びで要求増は7年連続である。
 Aegis Ashore本体2基の導入費など関連経費に2,352億円を計上した。 (1809-083103)

 防衛省が8月31日、平成31年度予算概算要求に前年度当初予算比2.1%と過去最大の5兆2,986億円を計上した。 要求増は7年連続になる。
 過去に契約したF-35Aなど高額な装備品の後年度負担が増えたためで、例年なら2,212億円を計上する米軍再編関連経費の額を明示しないことで概算要求基準の範囲内に収めたが、実質的には6%超の大幅増となる。
 米軍再編経費を除いて比べた伸び率は7.2%増になる。 (1809-083104)

 防衛省の平成31年度予算概算要求は、過去に契約した装備品の支払額が総額を押し上げ5兆2,986億円と過去最高になった。
 前年度当初予算比で2.1%増だが、見かけ上の額を少なく見せる手法をとっており実態は大幅増と言える。 例年、米軍再編にかかる費用は前年度と同水準を計上するが、額を明示しない事項要求とした。 再編費を通常通り要求したとすると、5兆5,000億円を超える計算になる。 (1810-090101)

4・3・3・1・2 概算要求における個別項目

概算要求の主要項目

 防衛省が平成31年度予算に前年度比2.1%増の5兆2,900億円を要求した。 要求ではサイバ、宇宙、電子戦を特に強調している。 主な項目は以下の通りである。 (1810-090505)

・宇宙関係費       925億円(SSA:268億円)
・F-15のEW能力化× 2   101億円
・AGM-158B JASSM-ER取得
・F-35A× 6       916億円
・E-2D × 2       544億円
・JSM           73億円
・RQ-4 Global Hawk    81億円
・Aegis Ashore× 2   2,352億円
・03式中SAM改      138億円
・3,900t級護衛艦×2  2,995億円
・3,000t級潜水艦     711億円
・SM-3 BlockⅡA/ⅡB   818億円
・P-3C× 5        230億円
Aegis Ashore

 防衛省幹部が8月22日に自民党国防部会関係者らに説明した平成31年度予算の概算要求では、Aegis Ashoreの本体2基の取得費など関連経費に2,352億円を計上する。 (1809-082205)

 防衛省は当初Aegis Ashoreの本体価格について2基で2,679億円と公表していたが、CMの迎撃機能導入を取りやめたり、為替レートを見直したりするなどして、関連経費を300億円以上減額して計上することとした。 (1809-083103)

F-35A

 防衛省幹部が8月22日に自民党国防部会関係者らに説明した平成31年度予算の概算要求では、F-35A 6機分の取得費として916億円を計上する。 (1809-082205)

4・3・3・2 NATO 基準で見た防衛費の対 GDP 比

 政府はこれまで防衛省以外の省庁が所管してきた予算を含む新たな「防衛関連経費」を米国政府に提示する検討を始めた。
 日本の防衛費は防衛省が所管する予算に限っていて平成30年度は5兆1,911億円でGDP比は0.92%であるが、NATO基準に入る旧軍人遺族らの恩給費は2,371億円で総務省が、国連のPKO分担金は482億円で外務省がそれぞれ所管している。
 NATOが示す基準では、元軍人への恩給費や国連PKOのための分担金や、海外の戦没者の遺骨収集のほか、軍民共用施設の整備費の一部なども防衛支出の対象になっているため、我が国の防衛費はNATO基準で算定すると1.3%程度になる。 (1812-112401)
4・3・3・3 平成31年度予算政府原案での防衛費

 政府が12月18日、米軍再編経費を含む平成31年度当初予算案の防衛関係費を、前年度比1.3%増の5兆2,600億円程度とする方針を固めた。
 Aegis AshoreやF-35Aなど米国の高額装備品取得が総額を押し上げている。 (1901-121901)

 12月21日に閣議決定した平成31年度予算案の防衛費は、在日米軍再編関連経費などを含め前年度比1.3%増の5兆2,574億円で7年連続の増額となった。
 いずも型護衛艦の空母化改修に向けた調査研究費0.7億円や、Aegis Ashoreの取得費1,757億円などを盛り込んでいる。 またF-35A 6機の取得費は681億円、E-2D 9機は1,940億円をまとめて計上している。 護衛艦2隻の建造に951、UUVの研究費42億円も入っている。
 更にSM-3 Block ⅡAの取得に303億円、スタンドオフミサイルの調達に79億円を計上し、高速滑空弾に139億円、Mach 5以上の極高速誘導弾の研究に58億円を計上している。
(1901-122101)

4・4 周辺海域防衛の強化

4・4・1 海洋安全保障政策の推進

4・4・1・1 「海洋基本計画」の決定

 政府が5月15日の閣議で、今後5年間の海洋政策の新指針となる「海洋基本計画」を決定した。 海底資源開発など経済に軸足を置いた旧計画の方針を転換し、北朝鮮の脅威を初めて明記するなど安全保障重視を前面に打ち出したのが特徴で、12月の防衛大綱改定にも反映させる。
 計画は、日本周辺海域の安保環境について「放置すれば、悪化する可能性が高い」と指摘し、情報収集能力強化のため、自衛隊機や沿岸部レーダなどの増強に加え、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の先進光学衛星なども活用する。 (1806-051502)
4・4・1・2 海上保安庁の予算

 海上保安庁が8月29日、前年度当初比11%増で要求額としては過去最大になる総額2,338億円の平成31年度予算の概算要求を発表した。
 尖閣諸島周辺の警戒強化では3,500t級の大型巡視船の建造費を盛り込んだ。 また尖閣警備強化などのために429人の増員を要求した。
 大和堆への北朝鮮漁船の接近対策など「戦略的海上保安体制の構築」に483億円を計上し、このうち大型巡視船の建造費に24億円を充て、平成34年度の就航を目指す。 また木造船監視のためのジェット機1機と、沿岸部の海洋調査のための中型航空機1機の購入に計35億円を計上した。 (1809-082903)
4・4・2 南西防衛を重視した部隊配置

4・4・2・1 陸上部隊

4・4・2・1・1 水陸機動団の発足

水陸機動団の展開

 防衛省が、3月に相浦駐屯地で編成した水陸機動団を平成30年度中にも海上自衛隊艦艇で定期的に東シナ海へ展開し訓練すると共に、輸送艦が水陸機動団を乗せた状態で尖閣周辺も定期的に航行し、鹿児島沖縄両県の離島に配備する有事での初動対処部隊と連携を強化する。
 30年度末までに鹿児島県の奄美大島と宮古島に駐屯地を開設し警備隊を置く。 また石垣島にも警備隊の配置を計画している。
 水陸機動団は洋上展開の期間中はこれらの駐屯地にも展開し、警備隊と合同訓練を行ったり、島の地形や特性を把握したりする。
 尖閣から離れた場所を航行していても中国が尖閣に挑発を仕掛けてくれば、水陸機動団の人員と装備を搭載する準備に時間をかけることなく尖閣に緊急展開するという即応態勢を敷くことにもつながり、挑発を牽制できる。 (1809-080601)

離島奪還作戦訓練場

 防衛省が中国の離島侵攻の脅威をにらんで、陸海空自衛隊が本格的な離島奪還作戦の訓練場を整備する検討に入った。 候補地に鹿児島県十島(としま)村の離島の臥蛇島(がじゃじま)が浮上している。
 十島村では臥蛇島を無人島として放置すれば外国人の不法上陸や逃亡犯の潜入が懸念されるとして自衛隊の常駐を求める動きがあり、防衛省は隊員用施設の建設と管理隊員の常駐を検討している。 (1810-091601)

4・4・2・1・2 石垣島の駐屯地の建設

 防衛省が石垣島に陸上自衛隊警備隊とミサイル部隊を配置するための駐屯地建設に平成30年度中に着手する方針を固め、10月中にも工事の入札公告を行う。
 石垣島には島中央部に駐屯地を建設し、隊庁舎や弾薬庫、訓練場を設置し、地対艦ミサイル部隊とSAM部隊の隊員500~600名を配置する。
 沖縄本島より西は陸自が配置されていない防衛の空白地帯だったが、平成28年の与那国島への沿岸監視隊配置を皮切りに、宮古島でも警備隊とミサイル部隊の配置に向け駐屯地を整備している。  石垣島で駐屯地が完成すれば、奄美大島も加え中国による離島侵攻の脅威をにらんだ南西防衛強化が完結する。
 中山石垣市長は2018年7月に部隊の受け入れを表明したが、沖縄県は10月1日に新規の造成事業に関する環境影響評価条例を強化したが30年度内の着工は適用除外となっている。 (1811-102901)
4・4・2・1・3 宮古島に12式対艦ミサイルを配置

 朝日新聞が2月27日、政府が宮古島に12式対艦ミサイルを配備すると報じた。 (1804-030707)
4・4・2・1・4 補給処を沖縄県内に設置

 防衛省が陸上自衛隊の補給処を初めて沖縄県内に設置する。 補給処は九州補給処沖縄支処とし勝連分屯地に置く案が有力となっている。
 勝連分屯地は米海軍第7艦隊の物資補給の港として使われているホワイトビーチ地区に近く、海上輸送で同地区を使える利点がある。 (1808-070101)
4・4・2・1・5 陸上自衛隊が独自の海上輸送力を整備

 陸上自衛隊が独自の海上輸送力の整備を検討していることが分かった。 水陸機動団などを南西諸島で機動的に展開するため、離島の小さな港に接岸したり、海岸から人員や車両を揚陸できる輸送艇の取得を計画している。
 複数の関係者によると陸自は全長30m程度から100m程度まで、数種類の大きさを候補に調達の検討を進めている。
 南西諸島の離島間を行き来するには小さめの船が適する一方、日本本土から大量の物資や部隊を運ぶ場合は大きめの船が向いている。 (1806-050801)

 防衛省が南西諸島防衛強化の一環で、陸上自衛隊に輸送艦を導入する方向で検討している。
 陸自はCH-47やOspreyを装備しているが、空輸では十分な輸送力を確保できない。 海自の艦艇も中国海軍の警戒・監視などに追われており、陸自支援の輸送力は限界がある。 省内では陸自の海上輸送手段として輸送艇のほか戦車揚陸艦 (LST) の導入を求める声もある。
 大綱はおおむね10年間が対象で、この期間内に運用構想や艦種を検討する。 (1808-070201)

 防衛省は新たに策定される防衛計画大綱で、南西諸島の防衛力を強化するため陸上自衛隊では初めての海上輸送部隊の創設を盛り込む方針を固めた。
 離島では海上自衛隊の大型輸送艦が接岸できない港も多いことから、陸上自衛隊に中型輸送艦を導入し、物資の輸送を迅速化する狙いがあるものとみられる。 (1812-112202)

 複数の政府関係者が、政府が中・小型輸送艦を装備する陸海自衛隊の統合輸送部隊を創設する方針を固め、次期中期防に明記することを明らかにした。 統合輸送部隊は防衛相直轄の共同部隊とする。
 人員不足の海自は、離島への海上輸送を陸自にも担わせることにしたもので、海自は輸送艦を運用するための教育訓練を行う。 (1901-121103)

4・4・2・2 航空部隊

4・4・2・2・1 離島の民間空港にF-35Bを配置

 読売新聞が2月12日、離島防衛能力強化のため、FY2026頃から離島の民間空港にF-35Bを配置することを検討していると報じた。 配備する機数は20~40機になるとみられる。
 2017年12月26日にはJapan News紙が、政府がF-35Bの購入を購入し、いずも型 "強襲揚陸艦" 2隻にF-35Bを搭載する計画であると報じている。 (1804-022114)
4・4・2・2・2 馬毛島離着陸訓練場の活用

 防衛省が、米艦載機の離着陸訓練候補地となっている馬毛島を有事に戦闘機を分散配置するなど海空自衛隊の拠点として活用する方針を固めた。
 3月に岩国基地に拠点を移した米艦載機は馬毛島で離着陸訓練を実施するが、訓練期間は年間2週間程度で残りは滑走路が空く。 そのため防衛省は馬毛島を自衛隊機の訓練に活用する方針で、鹿屋航空基地のP-3Cや新田原基地のF-15が馬毛島で離着陸や防空などの訓練を行うことを検討している。
 更に新田原基地に配備する計画のF-35Bと、F-35Bの離着艦可能な空母に改修する護衛艦いずもが馬毛島を拠点に訓練をすることも視野に入れている。 (1808-071501)

 菅官房長官が11月29日、鹿児島県西之表市馬毛島の買収交渉が2018年内にもまとまる見通しとなったことから、米空母艦載機の陸上離着陸訓練の移転について、訓練施設の確保は安全保障上の重要な課題であり、早期に恒久的な施設を整備できるよう引き続き検討していきたいと強調した。 (1812-112905)

4・4・2・3 海上部隊

4・4・2・3・1 新型護衛艦を22隻建造

 政府は、機雷対処能力を持つ新型護衛艦を順次導入し、2030年代に22隻体制とする方針を固め12月に改定する防衛計画大綱に明記する。
 新型護衛艦は基準排水量3,900tで、平成30年度に2隻の建造を始め、平成31年度以降も毎年2隻ずつ建造して、2032年頃に22隻体制とする。
 建造費は約500億円で、730億円する最新の汎用護衛艦よりもコストが低い。 (1812-112402)
4・4・2・3・2 油送艦を装備

 複数の政府関係者が、海上自衛隊が沖縄本島の補給基地への給油体制を増強するため、積載量5,000kl級の油送艦を装備することを検討していることを明らかにした。 海自艦が東シナ海周辺海域で監視任務を増やしていることに対応する。
 背景にあるのは中国海軍の動向を監視する海自艦のの数が増えたが、補給のため佐世保基地まで帰ると時間がかかるので、沖縄で補給して再び東シナ海やこの海域で活動しているため南西諸島唯一の補給拠点である沖縄基地隊に寄港している。
 本土の海自基地から沖縄基地隊へ、艦船の燃料である軽油を輸送することを検討していて次期中期防に盛り込むという。 (1804-030504)
4・4・3 離島奪還演習の実施

米軍が実施する Keen Sward 統合演習に参加

 3月末に発足した水陸機動団が秋に、南シナ海や南西諸島で米軍などと相次いで合同演習を実施する。
 発足から半年は基礎的訓練を続けてきたが10月末からは沖縄県の周辺海域などで自衛隊と米軍が実施する統合演習 "Keen Sward" に参加し、米海兵隊と共に離島奪還を含む訓練をする。 大規模な統合演習に水陸機動団が加わることで、日米の共同作戦の中で離島防衛の位置づけがさらに高まる。
 "Keen Sward" は陸海空の三自衛隊のほか米国の陸海空軍や海兵隊が参加する。 2016年は自衛隊が25,000名、米軍10,000名規模で実施した。 (1810-090301)

4・4・4 日本海警備の強化

4・4・4・1 海上保安庁の対応

 海上保安庁が日本海での北朝鮮漁船の動きや尖閣諸島での中国船を監視するため、23箇所の離島で灯台のそばに鉄塔を設け、レーダや監視カメラを設置する予算を30年度予算に要求していると読売新聞が報じた。 (1803-020204)

 日本の排他的経済水域 (EEZ) にある大和堆付近での北朝鮮漁船による違法操業問題で、海上保安庁が本格的な監視警戒に向け、新潟港に各地の巡視船を集結させている。 大和堆で2年目の取り締まりを開始するとみられる。
 スルメイカ漁期を前に現場入りして北朝鮮漁船を待ち受け、予防的措置で日本漁船の安全を確保する。
 産経新聞は21日、大和堆を管轄する第9管区海上保安本部がある新潟港で各地の巡視船5隻が停泊しているのを確認した。 5隻は大型巡視船れぶん(室蘭)、同いわみ(浜田)、中型巡視船いしかり(釧路)、同ほろべつ(小樽)、同えちぜん(敦賀)で、2017年の取り締まり開 始時と同じく5隻程度で対応するとみられる。 (1806-052201)

4・4・4・2 UAV を用いた洋上哨戒の試験

 長崎県壱岐市の白川市長が4月17日に都内で会見し、米GA-ASI社製の洋上哨戒用UAV Gurdianの壱岐空港を離着陸する飛行試験を5月に3週間の予定で行うと明らかにした。
 2009年に開発されたGurdianは全長11m、翼端長20~24mで、機体後部のプロペラを回し、最長40時間まで飛び続けることができる。 (1805-041802)
【註】 Gurdianは米空軍などが装備しているMQ-9 Reaperの洋上哨戒型で上昇限度50,000ft、滞空能力30時間の性能を持つ。
4・4・5 離島管理の強化

4・4・5・1 「保全上重要な土地」の指定

 政府が「保全上重要な土地」を指定する制度を作り、土地の保全策を講じる方針で、平成29年度に日本の領海や排他的経済水域 (EEZ) の基点となる国境離島の私有地を初めて実態調査する。 安全保障上の脅威になり得る土地取引の監視を強め、領海の保全や海洋権益の確保を図る狙いがある。
 調査対象は、全国に525島ある国境離島のうち私有地がある98島で、内閣府が今夏までに有識者会議を設置して「保全上重要な土地」の定義を決める。
 具体的には、海岸沿いの陸地のほか、水源地や空港・港湾、発電施設などの周辺地が対象となる見込みで、この定義に当てはまる私有地を優先的に調査して、不動産登記の情報から所有者や取得原因などを把握する。 (1805-040801)
4・4・5・2 小笠原諸島の警戒強化

 小野寺防衛相が参院外交防衛委員会で、小笠原諸島など太平洋側の島嶼部が防空態勢の面で空白地域となっていることを認め、防空態勢のあり方を検討すると述べた。
 防衛省は平成28年度から小笠原諸島で電波環境などを調べる適地調査に着手しており、当面は固定式レーダを配備するのではなく移動式レーダを展開させる方針を固め、展開候補地の絞り込みに入っている。
 一方、南西諸島では2016年3月に与那国島に陸自沿岸監視隊を配置し、空自の移動式レーダも展開させることにしており、空白は解消されつつある。 (1805-040201)

 防衛省が4月5日、西太平洋に於ける中国軍の動きが活発化していることから、硫黄島に設置したレーダの能力向上を計画していることを明らかにした。 このための予算50億円は平成29年度補正予算に盛り込まれている。
 このレーダ更新について毎日新聞が5日に、計画は平成30年度に開始し3年かけて32年度に完了すると報じたがも防衛省はこの報道を否定している。 (1806-041104)

4・4・5・3 衛星情報を活用した国境離島の保全

 政府関係者が12月29日、政府が日本の領海や排他的経済水域 (EEZ) の基点となる国境離島を保全するため、政府機関の衛星画像情報を海上保安庁の新システムに集約し、監視態勢を強化する方向で検討に入ったことを明らかにした。
 内閣府によると、国境離島は約480島あるが、波の浸食で消失する恐れといった状況の変化を把握し、迅速な対策に役立てる。 (1901-122901)
4・4・6 海上保安部隊の増強

4・4・6・1 海上保安庁の予算

 安倍首相が12月18日、首相官邸で開かれた海上保安体制強化に関する関係閣僚会議で、尖閣諸島周辺の領海警備のため、平成31年度予算案に大型巡視船の導入費を盛り込む方針を明らかにした。
 東シナ海や日本海での海洋監視用として新型ジェット機を調達する考えも示した。 (1901-121803)
4・4・6・2 南西諸島部隊の強化

 尖閣諸島周辺の哨戒強化に向け、海上保安庁が平成30年度に新型ジェット機2機の配備に合わせ、航空要員を過去最大規模の60名増員し交代クルーを配置して運用する方針を固めた。 2012年9月の尖閣国有化後、航空面で初めての大型補強となる。
 尖閣周辺の上空からの警戒監視はこれまで、那覇航空基地配備のFalcon 900 2機が中心だったが、平成30年度に夜間の監視活動能力などを強化したFalcon 2000LXS 2機を配備して、Falcon 900 2機のうち1機を退役させる。 (1805-041301)

 政府関係者が7月18日、海上保安庁が尖閣諸島周辺海域の警備の要と位置付ける宮古島で、離島で初めてとなる海保専用の射撃訓練場建設に着手することを明らかにした。 (1808-071802)

4・4・6・3 小笠原諸島に初の巡視船配備

 海上保安庁が父島への巡視船配備を計画している。 小笠原諸島周辺海域では2014年9月~2015年1月に、1日で最大200隻以上の中国漁船が出没しサンゴ密漁の違法操業を行ったが、当時は父島にある小笠原海上保安署の監視取締艇だけでは対応が追いつかず、より高性能な巡視船の応援に頼らざるを得なかった。
 今も巡視船が配備されていない小笠原では有事に即応できない状態が続いている。
 このため海保は、小笠原の人員増強と巡視船配備を計画しており、現在常駐する6名に巡視船に乗船する15名前後を加えた20名前後を収容できる宿舎を整備する方針を決め、平成30年度予算に宿舎の設計費4,000万円を計上して同保安署内に用地を確保し、平成31年度以降の着工を目指している。 (1807-062402)

 政府関係者が7月18日、海上保安庁が小笠原諸島周辺海域での取り締まり能力強化に向けて、父島への巡視船配備を数年内に実現する方針で計画していることを明らかにした。 (1808-071802)

4・5 海外での活動

4・5・1 自衛艦の海外派遣

4・5・1・1 戦略的寄港

ブルネイ寄港

 河野外相が訪問先のブルネイで2月11日、中国企業が開発に関与するムアラ港に寄港した海上自衛隊の練習艦隊を視察した。 河野外相はこうした取り組みを「戦略的寄港」と位置づけ、 中国による戦略拠点の排他的軍事利用を牽制しようとしている。
 海上自衛隊は中国の経済圏構想「一帯一路」のもとで開発が進む港湾施設への寄航を強化しており、練習航海や海賊対処を行うソマリア沖への往復の際、インド太平洋地域での戦略的寄港を強化している。 2017年は中国の影響力が強まるスリランカに3回入港し、中国と南シナ海の領有権を争うベトナム、フィリ ピンにも寄港した。
 外務省幹部は「どこに寄港できるか防衛サイドと緊密に連携している」と明かしている。 (1803-021202)

フィリピン/ベトナム寄港

 ソマリア沖のアデン湾での海賊対処活動に派遣され帰路に就いている護衛艦せとぎりが5月25日に親善のためマニラ港に寄港した。
 1990年に就役し1997年に大湊基地に配備されたせとぎりは、2016年にはベトナムのカムラン湾に海自艦船として初めて寄港し、同年6月には尖閣諸島の接続水域に侵入した中国艦と対峙した。
 せとぎりは2017年12月にアデン湾に派遣され、飛鳥Ⅱなどを護衛した帰路にインド海軍などとの訓練に参加し、6月2日に大湊に戻る予定になっている。 (1806-052506)

 海上自衛隊の護衛艦かがなど3隻が1日にスービック港に寄港し、ドゥテルテ大統領が艦内を視察した。 大統領の訪問には大野防衛政務官も立会した。 ドゥ大統領は2017年6月に寄港した護衛艦いずもにも乗艦しており、日本との緊密な関係をアピールした。
 ドゥ大統領は最近になって中国と領有権を争う南シナ海問題で友好関係を築いてきた中国に強気の態度を見せ姿勢を微妙に変えていることから、日本はフィリピンとの防衛協力を誇示し、南シナ海に進出する中国を牽制しようとしている。 (1810-090104)

シンガポール寄港

 南シナ海とインド洋で長期航海中の護衛艦かがが10月18日に最後の寄港地シンガポールに入港した。 艦上で記者会見した福田海将補は、今回の訓練が日本政府が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」に沿ったものだと強調し、海洋進出を強める中国を念頭に、来年以降も航行を継続する方針を述べた。
 シンガポールでは18日~20日にASEAN拡大国防相会議が開かれ、かがでは同会議参加国の要人らを招いて艦上レセプションなども行い存在感をアピールする。 (1811-101803)

4・5・1・2 DDH の南シナ海、インド洋派遣

 複数の日本政府関係者によると、政府が9月から2ヵ月間、ヘリ空母かがを南シナ海とインド洋へ派遣する調整に入った。
 かがは8月下旬に日本を出港してフィリピンやインドネシアなどASEAN各国のほか、インドやスリランカに寄港する方向で調整している。
 米軍などとの共同訓練を計画するほか、他の海軍との訓練が急遽決まった場合でも、形式的な親善ではなく、対潜水艦戦といった高度で内容が濃いものを行えるようにする狙いがある。
 昨年は同型艦いずもを3ヵ月間派遣しており、中国がこの海域に影響力を広げるなか、海自艦の中でも大型で目立つヘリ空母の長期活動を定例化する。 (1808-070402)

 海上自衛隊が8月21日、護衛艦かがと護衛艦いなづますずつきの 3隻が26日から10月30日にかけ、南シナ海やマラッカ海峡を通りインド洋に至る海域で、米国やインドなどの各国海軍と共同訓練をすると明らかにした。 3隻はフィリピンやインドネシア、シンガポールなどに寄港する。
 海自は2017年も3月から3ヵ月間、ヘリ搭載型護衛艦など2隻を南シナ海やインド洋に派遣している。 (1809-082106)

4・5・2 邦人保護活動

"Cobra Gold" 演習への参加

 米国とタイの両軍が主催するアジア太平洋地域最大級の多国間合同軍事演習 "Cobra Gold" が2月13日に始まり、人道支援や災害救助を中心に29ヵ国の11,000名が訓練を実施する。
 米国は派遣人数を昨年の3,500名から6,800名に増やした。 2014年5月のタイの軍事クーデタ後、タイへの軍事支援を停止し演習参加者数を抑えていたが、トランプ政権になって両国関係は改善している。
 14回目の参加となる日本は自衛隊員150名を派遣し、在外邦人保護や人道、民生支援活動の訓練に当たる。 (1803-021303)

4・5・3 海外拠点の整備

4・5・3・1 ジブチ拠点の強化

 政府が、自衛隊がジブチに置いている拠点に邦人保護や人道支援の機能を改定防衛計画大綱に盛り込む検討に入った。
 機能強化は安全保障関連法で在外邦人の輸送や保護が自衛隊の新任務となったことを受けたもので、政府はジブチを中東やアフリカでの邦人保護活動の足場と位置づけ、2016~2017年に関連訓練を実施している。 一時滞在施設や物資の集積拠点として活用したい。
 ただ ジブチ政府との借地契約は現行では1年ごとで、中長期的な運用を見据え複数年契約に変更する案もある。
 ジブチは米国と共に推進する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の拠点とする思惑もある。 (1806-050601)

 防衛省が、海賊対策のためジブチに置いている自衛隊の活動拠点の機能を強める方針を固め、12月に改定する防衛計画大綱に盛り込む方向で最終調整している。 自衛隊の海外活動を拡大させた安全保障関連法を踏まえ、海賊対策以外の幅広い任務でも使える拠点とする狙いがある。
 海賊対策は、2009年からマリア沖のアデン湾で海上自衛隊による監視活動が始まり、現在は護衛艦1隻とP-3C 2機を派遣しており、2011年にはジブチ国際空港に隣接する12haをジブチ政府から賃借し、駐機場や格納庫、隊員宿舎などの拠点を開設して2017年には新たに土地を借り上げて15haに広げている。 (1812-111501)

4・5・3・2 ジブチ拠点を恒久基地化

 防衛省が、自衛隊唯一の海外根拠地としてジブチに置いている拠点を恒久化する方針を固めた。 現在はソマリア沖での海賊対処のための一時的な拠点だが、海賊対処が終了しても拠点の維持活用が不可欠と判断した。
 恒久化にジブチ政府の同意を得るため、自衛隊装備品の無償譲渡と整備支援に着手することに向け年内に調整に入る。
 巨大経済圏構想「一帯一路」を推進し、ジブチに初の海外軍事基地を設けた中国に対抗する狙いもある。 (1811-101404)
4・5・4 国際貢献としての活動

シナイ半島多国籍監視軍に陸上自衛隊員を派遣

 複数の政府関係者が、政府がエジプト東部のシナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の活動を監視している多国籍監視軍 (MFO) に陸上自衛隊員2名の派遣を検討していることを明らかにした。 2015年に成立した安全保障関連法によって付与された海外活動の新任務で、派遣が決まれば初適用となる。
 MFOは四次にわたる中東戦争の後、エジプトとイスラエルが1979年に締結した平和条約に付属する議定書に基づいて創設された。 (1810-091703)

4・6 各国との防衛協力

4・6・1 米 国

4・6・1・1 共同防衛体制の強化

4・6・1・1・1 共同防衛計画

 複数の政府関係者が11月3日、尖閣諸島有事を想定して日米政府が2015年改定の日米防衛協力指針に基づき、自衛隊と米軍による初の対中国共同作戦計画の策定作業を進めていることを明らかにした。
 軍拡を続ける中国に対抗し、一体化を加速させる日米の実態が一層鮮明になった。
 来年3月までの取りまとめを目指すし2016年3月に施行した安全保障関連法の新任務も盛り込むとみられるが、計画内容に関する調整が難航する可能性もある。 (1812-110401)
4・6・1・1・2 日米共同統合任務部隊創設の提案

 アーミテージ元米国務副長官やナイ元国防次官補ら超党派の外交安全保障問題の研究者グループが3日に日米関係のあり方に関する提言をまとめた「21世紀における日米関係の更新」と題する報告書を発表した。
 報告書では安全保障分野について、中国と北朝鮮の脅威が増大しているとし、日本は防衛支出をGDP比1%以上に引き上げることが必要だと強調し、日米の同盟強化に向けた具体的な方策としては、東/南シナ海、台湾海峡などでの有事に備え、米軍と自衛隊による「日米共同統合任務部隊」の創設や、日米による基地の共同運用の拡大、自衛隊の統合司令部の創設、共同作戦計画の策定などを提案している。 (1811-100403)
4・6・1・2 日米共同演習

4・6・1・2・1 米朝首脳会談後の方針

 小野寺防衛相が6月29日午前に来日中のマティス米国防長官と会談し、北朝鮮の全ての大量破壊兵器とあらゆる射程のBMの完全、検証可能、不可逆的な廃棄を実現するため、日米が国際社会と連携して取り組むことで一致した。 両相の会談は5回目で6月12日の米朝首脳会談後では初めてである。
 マティス長官は会談後の共同記者会見で、我々の目標は北朝鮮の完全、不可逆的、検証可能な核やBM計画の解体だと強調した。 (1807-062902)
4・6・1・2・2 米つなぎ予算失効の影響

 防衛省が1月22日、百里基地で同日から予定していた米空軍との共同訓練が中止になったと発表した。 共同訓練は戦闘機を使った戦闘訓練で、26日まで予定していた。
 同省関係者によると、米軍からは政府の予算措置の関係上とだけ通知があったという。 米政府のつなぎ予算が失効した影響とみられる。 (1802-012202)
4・6・1・2・3 日米共同訓練の実施状況

6月16~23日:米海軍第15駆逐戦隊と共に行動した共同訓練

 6月16~23日に海上自衛隊員が米空母Ronald Reaganに乗り込み対潜戦を主とした共同訓練を実施し、海上自衛隊と米空母打撃群 (CSG) の共同作戦能力を更に高めた。
 この訓練で海上自衛隊は米海軍の第15駆逐戦隊と共に行動した。 (1807-062606)

8月:南シナ海での共同訓練と共同哨戒

 米空母Ronald Reaganと駆逐艦Milius、巡洋艦Antietamが8月14日に横須賀を出航し、フィリピン海で海上自衛隊の護衛艦きりしまと共同訓練を行いながら哨戒任務についた。 (1809-081708)

10月5~19日:種子島で島嶼防衛を想定した訓練

 陸上自衛隊が10月1日、島嶼防衛を想定した日米共同訓練を5~19日に種子島で行うと発表した。 陸自が米軍と国内で水陸両用作戦に関する実働訓練を行うのは初めてで、陸自からは水陸機動団など230名、米側からは海兵隊員90名が参加し、海上やヘリからの上陸訓練などを行う。
 海上自衛隊の輸送艦おおすみも参加する。 (1811-100105)

 陸上自衛隊水陸機動団が種子島で米海兵隊と日本国内で初めてとなる共同訓練を行った。
 10月14日に種子島で行われた訓練は、日本の離島が敵に奪われた想定で行われ、海上自衛隊の輸送艦から出撃した水陸機動団とアメリカ海兵隊が島を奪い返す訓練が公開された。 ボートで上陸した自衛隊の部隊と、ヘリから降下した米海兵隊員が連携しながら訓練を行った。 (1811-101403)

10月29日~:Keen Sword 日米共同演習

 Keen Sword日米共同演習は米国から10,000名、自衛隊から47,000名が参加して、10月29日から日本周辺の陸海空を舞台に行われた。
 2018年の演習には新編された水陸機動団も参加し、グアム島やテニアン島周辺で上陸演習を行った。 また横田基地に駐留している大空軍第374輸送航空団のC-130Jが11月4日に築城基地から陸自空挺隊員70名を乗せ、初めて日本国内に降下させた。 (1812-110511)

 日米共同統合演習 "Keen Sword" の一環として11月4日、大分の演習場上空で陸上自衛隊の降下隊員70名が米軍輸送機2機から降下する訓練を国内で初めて実施した。
 公開された訓練では米軍輸送機に向かい、隊員らがパラシュート降下の訓練を行った。
 訓練は、有事の際の連携を確認するもので10月末から続く。 (1812-110501)

 米インド太平洋司令部が11月9日、フィリピン沖の太平洋で10月29日から10日間実施した日米共同統合演習Keen Swordの写真を公開した。 米空母Ronald Reaganから艦載機が離着艦する場面もある。
 Ronald Reaganの周囲を海上自衛隊艦が航行し、日米共同で潜水艦を探知する訓練も行われた。 (1812-111002)

4・6・1・3 米艦船や武器などの防護

 防衛省が2月5日、安全保障関連法で可能となった自衛隊による米軍の艦船や武器などの防護に関し、2017年は計2回実施したと発表した。
 防衛省によると、防護は米軍と共同訓練した際、米艦艇と米軍機にそれぞれ1回ずつ実施した。 (1803-020501)
4・6・1・4 米海軍艦船への補給

 防衛省が3月30日、海上自衛隊が2017年4~12月に安全保障関連法に基づき弾道弾の警戒などにあたる米海軍艦船に、食料や燃料を提供した事例が計17件だったと明らかにした。 警戒中の米軍への物品提供は、具体的手続きを定めた改正日米物品役務相互提供協定 (ACSA) が2017年4月に発効したのちに始まった。
 安保関連法に基づく新任務では、自衛隊による米艦や米航空機の防護も2017年に2件あった。 (1804-033101)
4・6・2 米国を含む多国間

4・6・2・1 日米豪

Cope North 演習

 米海空軍と海兵隊、航空自衛隊、豪空軍から100機以上の航空機と2,500名が参加する "Cope North" 演習が、3月2日までの日程で2月14日にグアムのAndersen AFBで始まった。 演習は人道支援や災害救助を想定して行われる。
 "Cope North" 演習は元々、米空軍と航空自衛隊が三沢基地で行ってきたが、1999年からはグアムで行われるようになった。 (1803-021505)

インフラ協力強化

 日米豪3ヵ国が11月17日、同日開幕のアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議に合わせ、インド太平洋地域でのインフラ協力強化に向けた共同声明を発表した。
 共同声明は、インフラ協力で開放性や透明性、財政持続性を重視する方針を明記し、相手国を債務不履行に陥らせる中国の「借金漬け外交」を念頭に「非持続的な債務負担を避けつつ、地域の真のニーズを満たす一助となる」と強調した。 (1812-111702)

4・6・2・2 日米印

日米印3ヵ国外務局長級会合

 日米印3ヵ国の外交当局の局長級会合が4月4日にニューデリーで開かれ、インド洋や南シナ海への進出を強める中国を念頭に、海洋安全保障などの分野で協力を強化していく方針を確認した。
 日米印の共同声明によると、3ヵ国は対テロや大量破壊兵器の拡散阻止での協力深化も確認した。
 また港湾などのインフラ整備を通じ、インド太平洋地域の連結性を 高めていく方針で一致した。 (1805-040402)

'Malabar' 演習

 日米印海軍合同演習 'Malabar' が2018年は6月7日~16日に初めてグアムで行われる。 6月7日~10日には米海軍グアム基地で行われ、11日からは洋上で行われる。 (1807-060404)

'2JA 2018' 演習

 日米印海軍による合同掃海訓練 "2JA 2018" が7月18~30日の間陸奥湾で行われ、日本から艦艇19隻、米国からは掃海艦Chiefが参加し、インドからは機雷敷設の専門家がオブザーバー参加した。 (1808-073010)

4・6・2・3 日米英

 海上自衛隊が12月19日、日米英海軍が本州の南方の海上と空で22日に共同訓練を行うと発表した。 海上自衛隊によると3ヵ国共同訓練は今回が初めてだという。
 日本からは護衛艦いずもとP-1、英国海軍からはフリゲート艦Argyll、米国海軍からはP-8A哨戒機と艦艇が参加し、艦艇の陣形を変える戦術訓練と通信訓練が実施される。 (1901-122003)

 日米英海軍による初の合同対潜演習が12月21~22日にフィリピン海で行われた。
 この演習には英海軍が9ヶ月の哨戒任務を終えたフリゲート艦Argyll、海上自衛隊が護衛艦いずもと潜水艦1隻、米海軍が第7潜水艦群とフロリダ州所属の第16哨戒飛行隊所属のP-8A 1機が参加した。 (1901-122109)

4・6・3 オーストラリア

訪問部隊地位協定 (VFA) について協議

 安倍首相が1月18日午前、オーストラリアのターンブル首相と共に習志野演習場を訪れ、訓練などを視察した。
 両首脳は同日午後には首相官邸で首脳会談に臨み、自衛隊と豪軍の共同演習を見据え、相手国での隊員の法的地位を定める訪問部隊地位協定 (VFA) について協議するほか、安倍首相が掲げる外交指針「自由で開かれたインド太平洋戦略」を巡っても意見交換する。 (1802-011801)

 安倍首相が首相官邸で1月18日、オーストラリアのターンブル首相と会談し、陸海空部隊の相互訪問や防衛装備に関する協力強化で一致した。
 自衛隊と豪州軍が互いの国で円滑に活動するための「訪問部隊地位協定 (VFA) 」については可能な限り早期に交渉を妥結させると確認した。 日豪両政府は協定について、首脳会談での大枠合意を目指していたが、調整が遅れた。 (1802-011802)

 日本とオーストラリアが10月10日の外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2) で、自衛隊と豪軍が共同活動する際の法的な扱いを定める訪問部隊地位協定 (VFA) を早期に妥結させる方針を確認した。
 日豪2-plus-2は昨年4月以来で、共同声明ではVFAについて「可能な限り早期に交渉を妥結することへの強いコミットメントを再確認した」と明記した。
 また安全保障上の協力の前提となる規定を整えて共同訓練の機会を増やし、2019年中に両国で初となる戦闘機訓練をするとし、航空自衛隊と豪空軍が訓練や演習を実施する機会を拡充する方針で一致した。
 両国は中国の海洋進出をにらみ準同盟国の位置づけを明確にする。 (1811-101003)

4・6・4 インド

共同訓練の実施

 日米印海軍による合同掃海訓練 "2JA 2018" が7月18~30日の間陸奥湾で行われ、日本から艦艇19隻、米国からは掃海艦Chiefが参加し、インドからは機雷敷設の専門家がオブザーバー参加した。 (1808-073010)

 インド報道局 (PIB) が8月20日、日本とインドが2018年秋に初めての地上部隊による合同演習を行うと報じた。 ただ実施場所や時程等については明らかにしていない。
 PIBはまた、11月には海幕長が初めてインドを訪問すると共に、12月にはインド空軍司令官が初めて訪日することも明らかにした。 (1810-082908)

 2017年9月に行われた日印首脳会談などでの合意を受けて、陸上自衛隊とインド陸軍との共同訓練が初めて行うことになった。
 訓練は10月27日から11月18日までインド国内の訓練施設で行われ、双方の部隊からそれぞれ約30名が参加して、テロを想定してた簡易爆弾への対応のほか人質の救出などの訓練を行うという。 (1811-101909)

 陸上自衛隊が10月25日、対テロ戦を想定したインド陸軍との共同訓練を11月1~14日の日程でインド国内で行うと発表した。
 インドとの共同訓練は初めてで、陸自から30名の隊員を派遣し、市街地戦闘や人質救出などの技量向上を図る。 (1811-102502)

 航空自衛隊が12月3~6日に、インドのアグラ空軍基地で初めてインド空軍と共同訓練を行う。
 陸自と海自はインドと共同訓練を行っており、米英両国に続き3自衛隊がそれぞれ共同訓練を行う3ヵ国目となる。 空自は美保基地の第3輸送航空隊のC-2 1機と隊員20名を派遣し、インド空軍のC-17などと編隊飛行や離着陸の訓練を行う。 共同訓練は定例化させ訓練のレベルも引き上げる。
 派遣される空自隊員は同時期に行われる米印両空軍の共同訓練CORP Indiaにも初めてオブザーバー参加し、インド洋への進出を加速させている中国をにらみ日米印の連携も強化する。 (1812-113002)

物品役務相互提供協定 (ACSA)

 訪印中の小野寺防衛相が8月20日にシタラマン国防相と会談して両国のさらなる連携強化を確認し、自衛隊とインド軍との間で食料や燃料を融通する物品役務相互提供協定 (ACSA) の締結に向けた調整作業を行うことで合意した。
 また両国は共同訓練実施に向けた協議が進展していることなどが確認した。 (1809-082005)

 平松駐印大使が10月22日、自衛隊とインド軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) の締結に期待感を示した。 平松大使は、互いに後方支援を行うべき時がきており、ACSA締結に向けた公式交渉を開始したいと述べた。
 インドのモディ首相は10月下旬に来日する予定で、安倍首相との会談ではACSAが取り上げられる見通しである。
 同協定はアジアで存在感を高める中国を念頭に、日印両国の防衛関係を強化する狙いがある。 日印は既に、インド洋と太平洋で、米海軍も巻き込んだ海自とインド海軍による共同訓練を行っている。 (1811-102301)

2-plus-2 を次官級から閣僚級に格上げ

 複数の日本政府関係者が日印両政府が外務防衛当局間の定例協議 (2-plus-2) を次官級から閣僚級に格上げすることに合意したことを明らかにした。
 インドは中国への配慮などから慎重だったが、中印関係の改善などを受け、日本側が提案した格上げに同意したもので2019年にも初会合を開く。 (1809-082305)

 安倍首相が10月29日にインドのモディ首相と官邸で会談し、外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) を初開催することに合意した。
 安倍首相の外交政策「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、安全保障分野で連携を強めるのが狙いで、同地域の連結性を高めるため東南アジアやアフリカなどで質の高いインフラ開発に協力していく方針でも一致した。
 両首脳が立ち会った文書交換式で両政府は、AIなどを念頭に先端技術分野で企業間連携や研究開発を進める「日印デジタル・パートナーシップ協力」を含む成果文書を交わした。 (1811-102905)

4・6・5 カナダ

 河野外相が3月27日、フリーランド加外相と都内で会談し、外務防衛担当の次官級協議を早期に開催することで一致した。
 6月に次官級による経済協議も実施し、2国間の安全保障、経済分野における協力を深化させていく方針を確認した。 (1804-032801)

 日本とカナダがG7外相会議の開かれたトロントで4月21日、カナダ軍と自衛隊の連携を深めることを目的に物品役務相互提供協定 (ACSA) に調印した。 (1805-042205)

 10月29日~11月上旬まで日本周辺を舞台に行われている日米共同演習 "Keen Sword 19" にカナダ海軍が初めて参加している。 アジア太平洋に積極的に関与していくというカナダ政府の新政策による。
 この演習には護衛艦こんごう、空母Ronald Reaganをはじめ両国から57,000名以上が参加しているが、カナダ海軍はフリゲート艦Calgaryと給油艦Asterixを参加させている。 (1811-103003)

4・6・6 欧州諸国

4・6・6・1 EU

戦略的パートナーシップ協定 (SPA) の締結

 ミュンヘンを訪問中の河野外相が2月16日午後にEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表と電話会談し、日EU戦略的パートナーシップ協定 (SPA) の締結で合意した。
 SPAは日本とEUUが民主主義や法の支配など基本的な価値を共有することを初めて条約に明文化するもので、経済や安全保障など約50分野での連携強化を盛り込んでいる。 (1803-021701)

4・6・6・2 NATO

駐 NATO 大使の派遣

 北大西洋理事会が5月24日、日本から要求されている駐ベルギー大使館を兼NATO大使館とし、駐ベルギー大使を兼NATO大使とする要求を承認した。
 この問題は2017年10月にシュトルテンベルグNATO事務総長が訪日し安倍首相、河野外相、小野寺防衛相と会談した際に合意していた。 (1806-052510)

NATO 首脳会議への出席

 安倍首相は7月中旬のベルギー、フランス、中東歴訪に合わせ、ブリュッセルで11~12日に行われるNATO首脳会議に出席する方向で調整に入った。 外務省によると、日本の首相がNATO首脳会議に出席すれば初めてになる。
 首相はブリュッセルで、日本とEUとの経済連携協定 (EPA) の署名式にも臨む。 (1807-062602)
【註】 この欧州訪問は7月上旬に生起した西日本豪雨災害への対応の必要から実現しなかった。

4・6・6・3 英 国

4・6・6・3・1 共同行動

 英海軍の揚陸艦Albionが8月3日に晴海埠頭に入港した。
 対北朝鮮制裁の履行状況を監視する任務に従事してきた同艦が東京に寄港するのは初めてで、東アジアの安全保障情勢を踏まえ、日本など関係国との連携を強化するのが狙いである。 (1809-080303)
4・6・6・3・2 共同訓練の実施

英海軍との共同訓練

 防衛省が4月29日、海上自衛隊と英海軍が初の共同訓練を関東沖で実施したと発表した。 初の共同訓練は日英両政府が2017年12月の外務防衛閣僚会合 (2-plus-2) で合意していた。
 防衛省によると、海自から護衛艦すずなみ、補給艦ときわ、 P-1哨戒機、潜水艦が、英海軍からフリゲート艦Southerlandが参加し、27~28日に対潜水艦訓練や洋上給油の手順確認などを行った。
 防衛省は海自の戦術技量の向上と英海軍との連携強化のためとしているが、北朝鮮へ圧力を示す狙いもあるとみられる。 (1805-042902)

 インド洋に長期派遣中の海上自衛隊ヘリ空母かがが9月26日、南シナ海へ向かう英海軍のフリゲート艦Argyllと共同訓練を実施した。 訓練にはかがArgyllのほか護衛艦いなずまが参加した。
 訓練ではコンテナ船や石油タンカが行き交うスマトラ島西方の穏やかな海上を、3隻が陣形を組んで航行し、かがの艦載ヘリが上空から見守った。
 Argyllはこの後、南シナ海から日本周辺へ向かい、北朝鮮の瀬取り取り監視に加わる。 (1810-092703)

英陸軍との共同訓練

 防衛省が9月14日、陸上自衛隊と英陸軍が30日から10月12日の日程で富士学校、北富士演習場、王城寺原演習場の3ヵ所で、敵陣地に偵察部隊を潜入させるなどの共同訓練すると発表した。 国内で陸自が米国以外の陸軍と共同訓練するのは初めてで、自衛隊から60名、英陸軍から50名が参加する。
 共同訓練の実施は2017年12月に開いた日英両政府の外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2) で合意していた。 (1810-091402)

 陸上自衛隊が10月2日に英陸軍との共同訓練の一部を、富士学校で報道陣に公開した。 陸自が国内で米国以外の陸軍と共同訓練するのは初めてである。
 陸自と英陸軍20名が陸自のCH-47に乗り込み、着陸後に駆け降りて素早く警戒態勢を取った。 (1811-100202)

4・6・6・3・3 防衛技術協力

 日英政府が2017年12月14日にロンドンで2-plus-2会合を持ち、防衛技術協力の発展で合意した。
 会同ではJNAAM計画を次の段階に移行させることや、2014年に設立された日英高度防衛技術協力推進会議を発展させることなどでも合意した。 (1802-010317)
4・6・6・4 フランス

4・6・6・4・1 物品役務相互提供協定

 日仏両政府が1月26日に東京都内で開催する外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) で、自衛隊と仏軍が物資を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) について大筋合意する見通しとなった。 日本がACSAを 締結するのは米豪英に続き4ヵ国目になる。
 日仏両政府は中国による南シナ海の軍事拠点化に懸念を強めており、両国の防衛協力を強化していきたい考えである。 (1802-012301)

 日仏両政府が1月26日、外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) を東京都内で開催し、自衛隊とフランス軍が物資と役務を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) について大枠合意した。 (1802-012603)

 政府が7月13日の閣議で、自衛隊とフランス軍との間で食料や弾薬などを相互に提供できるようにする物品役務相互提供協定 (ACSA) を結ぶことを決めた。 ACSA締結は2017年1月に行われた、外務防衛の閣僚協議 (2-plus-2) で合意していた。
 日本は米、豪、英3ヵ国とすでにACSAを結んでいて、カナダとも締結に向けた手続きを進めている。
 この決定を受け訪仏中の河野外相が協定に署名し、協定の承認を求める議案などを国会に提出する。 (1808-071304)

4・6・6・4・2 海洋安全保障協力の強化

 安倍首相が10月17日午後にマクロン仏大統領とエリゼ宮で会談した。 首相は会談に先立ち、中国の海洋進出を念頭にフランスとの海洋安全保障協力を強化する考えを示した。
 フランスは南太平洋のニューカレドニアやタヒチなどの領土を持つ太平洋国家で、南シナ海を含むシーレーンへの関心は強く、大統領はインド太平洋における均衡と安定という課題もあると述べ、日仏が連携して対応していく意向を示した。
 両首脳は7月に署名した自衛隊と仏軍が物資を融通し合う物品役務相互提供協定 (ACSA) を踏まえ、共同訓練などの具体的協力を重ねることで一致し、北朝鮮が制裁逃れのため海上で物資を積み替える瀬取りについても共同で対処することを確認した。 (1811-101701)
4・6・6・4・3 共同訓練の実施

 日仏両政府が1月26日、外務防衛閣僚協議 (2-plus-2) を東京都内で開催し、2月に仏海軍フリゲート艦が日本に寄港し、自衛隊と共同訓練を実施することで一致した。 日本政府によると、両国のみで共同訓練を行うのは初めてである。 (1802-012603)
4・6・6・4・4 防衛技術協力

 日仏の外務防衛閣僚が1月26日に東京で2-plus-2を開き、防衛協力と防衛技術協力の拡大で合意した。
 防衛技術協力では掃海作戦用UUVの共同開発と共同生産の可能性と共に、ロボット技術やサイバ防衛技術の共同研究についても話し合われた。 (1804-020711)
4・6・6・5 その他の欧州諸国

バルト諸国

 安倍首相が1月12日にバルト三国との間で、サイバ防衛、物流、医療など、年度ごとにテーマを設定し、政府関係者や専門家が参加して協議する「日バルト協力対話」を創設することを提案した。 30年度に初会合を開く。 (1802-011301)

4・6・7 アジア太平洋諸国

4・6・7・1 ASEAN 諸国

4・6・7・1・1 各国との防衛協力関連協定

マレーシア

 日本とマレーシア両政府が4月18日、マレーシアのクアラルンプールで防衛装備品および技術移転に関する協定に署名し発効した。 協定は宮川駐マレーシア大使とマレーシア国防省のラヒム次官の間で交わされた。
 協定は防衛装備品と技術の移転に関する法的枠組みを設定するもので、この協定により、移転される防衛装備品および技術の第三国移転や目的外使用などに対しても適正な管理が確保されるという。
 マレーシアは、日本の偵察機、レーダ、衛星、通信機器などに関心を抱いているという。 (1805-041902>)

4・6・7・1・2 ASEAN 諸国との共同演習、教育訓練

日米比共同演習

 フランスのラジオ局RFI社が10月6日にFocus 台湾の報道を引用して、自衛隊が同日にフィリピン沿岸で行われた米比共同演習Kamandagに参加したとし、日本の当局者の話として「日本の装甲車が第2次大戦以来初めて外国の領土に上陸した」と報じた。
 演習は米比海兵隊がテロリストグループからフィリピンの領土を奪還するため水陸両用車を用いて上陸するという想定で行われ、負傷者の救助を担当した非武装の自衛隊員50名は装甲車4両の後ろを進みながら、負傷兵の救助にあたった。 (1811-100704)

ASEAN 加盟国の空軍士官を招聘

 岩屋毅防衛相が10月20日に日本とASEANの防衛相会合に出席し、全加盟国の空軍士官を日本に招聘し、航空自衛隊の訓練や装備を視察するプログラムを新たに設けると発表した。
 また、インド太平洋地域は複雑な安全保障上の課題に直面しており、一致協力した対応が求められていると強調し、自衛隊の机上演習に各国の佐官級を招く考えを示した。 (1811-102004)

国連PKO活動への派遣教育支援

 防衛省が10月25日、国連PKO活動への発展途上国の派遣を支援する早期展開プロジェクトをベトナムで実施すると発表した。 11月5日~12月14日の日程で陸上自衛隊員20名をハノイ近郊に派遣し、ベトナムや周辺の東南アジア諸国の軍の工兵に油圧ショベルの操作などを教育することで、国連のPKOへの派遣が円滑に進むよう後押しする。
 同プロジェクトは2015年からケニアで展開し同国のほか、ガーナやナイジェリア軍などに教育をしてきたが、今回は対象をアジアに広げ国際貢献に取り組む姿勢を示す。 (1811-102503)

4・6・7・1・3 日本・メコン地域諸国首脳会議を主催

 安倍首相が10月9日、タイ、ミャンマー、ベトナム、ラオス、カンボジアの5ヵ国首脳と「日本・メコン地域諸国首脳会議」を迎賓館で開いた。 会議では人材育成や質の高いインフラ、水資源管理などでの連携・協力を柱とする共同文書「東京戦略2018」を採択した。
 東京戦略は、日本とメコン諸国の関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げし、国連の持続可能な開発目標 (SDGs) の実現に向けた協力プロジェクトとして、郵便制度の近代化や金融分野の技術協力など約30項目を盛り込んだ。 (1811-100902)
4・6・7・1・4 ASEAN 諸国への武器供与

マレーシアと防衛装備品技術移転協定

 日本政府が4月18日、東南アジアではフィリピンに続き2ヵ国目となるマレーシアと防衛装備品技術移転協定に署名した。 インドネシアとも同協定の締結に向けて交渉中で、ベトナムとの協議も視野に入れている。 哨戒機の供与などを通じて沿岸国の海上監視能力を強化し、対中包囲網を敷きたい考えである。
 日本が防衛装備品の移転に関する協定を締結したのは全体を通じてマレーシアで9ヵ国目で、武器輸出を事実上禁止してきた「武器輸出三原則」に代わり、政府は2014年4月に「防衛装備移転三原則」を閣議決定したのち、米欧の主要国に加えてアジアの関係国とも協定の締結が広がった。 (1806-050702>)

マレーシアに P-3C

 日本政府がフィリピンにTC-90をマレーシアにP-3Cを無償供与したが、東南アジア諸国が日本からの装備品の供与を求めている。
 しかしながら自衛隊の首脳は外国への援助より我が国の要求達成が優先すると述べている。 (1804-030902)

フィリピンに TC-90 KingAir

 フィリピン海軍が日本から供与されるTC-90 KingAirの追加3機を受領した。 日本政府はフィリピンに5機のTC-90を供与し、同国海軍の哨戒能力向上を図ろうとしている。 (1806-040412)

フィリピンへのヘリ部品無償供与

 小野寺防衛相が訪問先のシンガポールで6月2日にロレンザーナ比国防相と会談し、陸上自衛隊のUH-1Hの部品をフィリピン空軍に2018年内にも無償供与すると合意した。
 無償供与するのはエンジンやベア リングなどまだ使用できる部品で、比軍の能力向上を支援しすることで南シナ海の軍事拠点化を進める中国をけん制する狙いがある。
 UH-1Hはすでに自衛隊で退役した機種で、比空軍は海上監視などに使用しているが、民生品としても使える部品のため防衛装備移転三原則に基づく国家安全保障会議 (NSC) での承認は必要ない。 (1807-060203)

4・6・7・1・5 インフラ整備の支援

カンボジアでの港湾整備支援

 カンボジアで唯一、大型のコンテナ船が寄港できる港がある南部の港湾都市シアヌークビルで、日本は1990年代後半からODAを活用して港の整備を支援してきたが、新たに多目的ターミナルが完成しフンセン首相も参加して記念の式典が開かれた。
 日本政府は今後235億円の円借款を供与してシアヌークビルで新たなコンテナターミナルを整備する計画である。
 カンボジアでは、2010年以降、中国が日本に代わって最大の支援国となり、水力発電用のダムなどインフラ整備を進めており、シアヌークビルでもすでに100社を超える中国企業が進出しているほか、各地で中国主導のリゾート開発が相次ぐなど影響力が強まっている。 (1807-062504)

4・6・7・2 南太平洋諸国

4・6・7・2・1 太平洋諸島フォーラム

 オセアニアの地域協力機構である太平洋諸島フォーラム (PIF) 首脳会議の一連の会合が9月6日まで4日間の会期で3日に島国ナウルで開幕した。 太平洋諸国に影響力を強める中国の動きなど、最近の情勢を踏まえ新たな安全保障の枠組みの採択を目指す。
 オーストラリアやニュージーランドなど16ヵ国と2地域が加盟するPIFは、太平洋諸国に影響力を強める中国の動きなど、最近の情勢を踏まえ新たな安全保障の枠組みの採択を目指し、域内の紛争に対処するために2000年に定めた安保の枠組みを、包括的な内容に発展させた「ビケタワ・プラス宣言」を議論する。
 また、気候変動や国境を越えた犯罪、違法漁業などを対象に加え、加盟国間の協力を促進するため、自然災害に強い施設などの整備に使う基金の創設も話し合う。 (1810-090302)
4・6・7・2・2 ニュージーランド

 河野外相が10月15日、訪問先のニュージーランドでピーターズ副首相兼外相と会談し、連携して太平洋島嶼国の支援を進めることで合意すると共に、両国の戦略的協力パートナーシップを深化させることを確認、北朝鮮の完全な非核化実現に向け、国連安全保障理事会の制裁決議を着実に履行する重要性でも一致した。
 日本は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、太平洋地域への関与強化を掲げるニュージーランドと連携し、質の高いインフラ整備や海洋安保分野などで島嶼国を支援する。 (1811-101504)
4・6・7・2・3 南太平洋島嶼国

フィジー

 安倍首相が5月18、19日に福島県いわき市で開かれる「太平洋・島サミット」に合わせて来日しているフィジーのバイニマラマ首相と会談した。 15日のサモアのツイラエパ首相に続き、2日続けて太平洋島嶼国首脳を招き公邸で夕食会も開いた。
 日本はフィジーが2006年のクーデタで軍政に転じた後、島サミットへの首相招待を控えていたが、2014年の民政復帰を受けて前回2015年の会合に招いている。
 フィジー首相を厚遇する背景には、軍政下のフィジに日本が接触を控えていた間に中国が経済支援を積 み増したことから中国寄りに傾いていたフィジーを日本寄りに引き戻す狙いがあると見られる。 (1806-051603)

マーシャル諸島

 政府は太平洋の島嶼国に自衛隊機を積極的に派遣し、現地との交流を進める方針を決めた。 安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿ったもので、太平洋諸国への中国の活発な進出をけん制する狙いがある。
 米軍との空輸戦術訓練のために米アリゾナ州に向かう途中のC-130が、12月7日にマーシャル諸島の首都マジュロに立ち寄り、日本の民間活動団体 (NGO) が現地に寄付する車いすやスポーツ用品などを輸送する。
 空自の航空機が訓練に向かう途中に第三国に立ち寄り、交流を図るのは初めてという。 (1901-120705)

4・6・7・3 インド洋周辺諸国

4・6・7・3・1 インド洋北辺諸国

 政府が、ミャンマー、スリランカ、バングラデシュのインド洋沿岸3ヵ国で、円借款による港湾の整備に乗り出す。
 港を整備する候補地はミャンマー南東部ダウェイ、スリランカ北部トリンコマリー、バングラデシュ南東部マタバリの3ヵ所で、ダウェイでは日本、ミャンマー、タイの3ヵ国共同で新港を建設する。
 開発には数百億~2,000億円程度かかるとみられ、 新港の隣に経済特区を作ってバンコクからダウェイまでの幹線道路も整備し、新しい経済圏を生み出す。
 安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」の一環で、アジアから中東、アフリカをつなぐシーレーンを確保する狙いがある。 (1806-052505)

 護衛艦かががインド洋で、スリランカ軍、インド軍と初の合同訓練を行い、中国がインド洋での海洋進出を強める中、沿岸諸国との連携強化をアピールした。 訓練には米海軍第7艦隊の将校もかがに乗り込み連携を確認したほか、海上でけが人が出たという想定で捜索救難の訓練も行った。
 かがは9月30日、護衛艦いなづまとともにスリランカのコロンボ港に寄港したあと、インド洋沖でスリランカ海軍との合同訓練を行ったのちかがは7日にインド海軍と合流した。
 このあと更に10日間ほどインド洋で訓練を行う予定で、潜水艦の追跡や砲撃など戦術面での連携を確認するという。 (1811-100801)

4・6・7・3・2 スリランカ

 スリランカ訪問中の河野外相が1月5日にシリセナ大統領らと会談し、海洋安全保障の協力強化で一致した。
 河野外相は同国の貨物の9割を扱うコロンボ港も視察した。 同港は1980年代から日本が整備を支援してきたが、現在は中国企業による拡張整備が進められて、2014年には中国の潜水艦が付近に寄港したこともあり、軍事転用が懸念されている。
 日本とスリランカの海洋安全保障での協力はすでに進んでいて、日本の海上保安庁とインド沿岸警備隊の合同訓練への参加の提案にスリランカが応じて、今月初めてオブザーバー参加する。 (1802-010505)
【註】 スリランカでは2015年1月に行われた大統領選で、それまで中国依存政策を進めてきたラジャパクサ大統領を破り、中国と距離を置くシリセナ現大統領が当選している。

 スリランカのシリセナ大統領が3月12~15日に来日する。 安倍首相は大統領との首脳会談で、自身が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」の重要性を訴え、連携強化を確認する。 インド洋などで活発に活動する中国を牽制する狙いもある。
 スリランカでは、シリセナ大統領が日本のほかインドや欧米を含めたバランス外交を標榜するのに対し、親中派のラジャパクサ前大統領が復権へ攻勢をかけていて、2月の地方選挙でもラジャパクサ氏の政党が圧勝した。
 日本としてはスリランカが再び親中路線に傾かないよう、シリセナ氏との連携を強化し現政権の外交戦略を側面支援する思惑もある。 (1804-030207)

 3月12日から来日し安倍首相と会談するスリランカのシリセナ大統領が、来日を前にしたNHKとの単独インタビュで、経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国の開発が国際社会の脅威にならないようくぎを刺すとともに、日本の開発には長年の友人で信頼できると述べ期待を示した。
 シリセナ大統領は3年前に中国一辺倒の外交政策をとってきたラジャパクサ前大統領に選挙で勝利して政権の座に就き、バランスのとれた外交を政策に掲げている。 (1804-031201)

 スリランカを訪問中の小野寺防衛相が8月21日にシリセナ大統領と会見し両国の防衛協力、特に海洋安全保障の協力強化を確認した。
 また大統領は日本政府がスリランカ沿岸警備隊にSLR1.8B ($11M) で警備艇2隻を供与することに謝意を示した。 (1809-082308)

 海上自衛隊が10月4~7日にインド洋でスリランカ海軍と共同訓練を行う。 スリランカと連携を深めるのが狙いで、周辺地域への進出を強める中国へのけん制も意図しているとみられる。
 訓練では、護衛艦かがにスリランカ海軍の将兵が乗艦し、遭難救助や人道支援のノウハウの共有を図ったり、海自の訓練を見学する機会を設けたりする。 海上幕僚監部広報室によると、他国の軍関係者を海上訓練中に乗艦させるのは珍しい。 (1811-100402)

4・6・7・3・3 モルジブ

 河野外相がモルディブの首都マレで1月6日に同国のアーシム外相と会談し、安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」を説明して戦略の共有と緊密連携を要請した。
 モルディブを含むインド洋周辺国との結び付きを強める中国を意識した対応と言える。 (1802-010601)

 河野外相が6月15日にモルディブのアーシム外相と外務省で会談し、安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」のもと、海洋安全保障分野の協力を推進する方針で一致した。 モルディブの海上保安当局の人材育成支援などを想定している。
 河野外相はインド洋の要衝に位置するモルディブの安定は海上輸送路の安定に貢献すると表明したのに対し、アーシム外相は日本との連携を強化したいと応じた。 (1807-061503)

4・6・7・4 韓 国

4・6・7・4・1 日韓軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) の1年間再延長

 韓国国防省関係者が8月24日、日本との防衛機密の共有を可能にする日韓軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) について、1年間再延長する考えを示した。
 GSOMIAは2016年11月に締結され有効期間は1年で、期限の90日前までに一方が破棄を通告しない限り延長される仕組みとなっている。 (1809-082403)
4・6・7・4・2 防衛交流

韓国艦の日本寄港

 韓国艦3隻が陸海空軍の士官候補生を乗せて11月5日に佐世保港に入港した。 韓国軍士官候補生の航海実習「合同巡航訓練」の一環で、駆逐艦大祚栄など3隻が入港したという。
 韓国海軍の艦艇が日本の港に入ったのは2017年12月以来で、今回が22回目になる。 (1812-110505)

4・6・8 その他諸国との防衛協力

4・6・8・1 大量破壊兵器拡散防止構想に基づく多国間訓練の主催

 大量破壊兵器拡散防止構想 (PSI) に基づく海上での多国間訓練が7月25日に房総半島沖であり、自衛隊のほか米軍や韓国沿岸警備隊などが参加した。 海自は護衛艦が疑わしい貨物船を止まらせ、防弾チョッキをつけてボートで乗り込んだ隊員らが銃を構え、船内を捜索する手順を確認した。
 PSIは2003年に米ブッシュ政権が「ならず者国家」やテロリストに核や生物化学兵器や関連物質が密輸されないようにと提唱し、日米韓豪や欧州など21ヵ国が今の中心メンバになって多国間訓練を毎年実施しており、日本開催は4回目になる。 (1808-072503)

 日米韓による大量破壊兵器拡散防止構想 (PSI) に基づく多国間演習が7月25日に、護衛艦むらさめと米海軍駆逐艦Miliusが参加して東京湾で行われた。 この演習は "Pacific Shield 2018" 演習の一環でもある。
 演習ではむらさめから13名がゴムボートで不審船を想定した貨物船に向かい、数分後に貨物船に乗り移って捜索して結果、疑わしい箱を 発見した。 (1808-072504)

4・6・8・2 湾岸諸国

 中東訪問中の安倍首相が4月30日に、UAEでムハンマド皇太子と会談し、経済や防衛など12分野での協力強化を明記した共同声明を発表した。
 安倍首相はUAEが進める脱石油の産業構造づくりを支援し、日本の原油輸入量1/4を頼る同国との関係を強化する。 (1805-043002)
4・6・8・3 イスラエル

 外務省はイスラエルと初の外務防衛当局間協議を10月9日にテルアビブで開催したと発表した。 日本側は外務省中東アフリカ局長や防衛省防衛政策局次長、イスラエル側は国家安全保障会議や国防省の幹部らが出席し、中東、東アジア問題での緊密な連携を確認した。
 安倍首相が5月にイスラエルでネタニヤフ首相と会談して協議の開催を決めたもので、今後も定期的に開催する。
 外務省によると日本は同様の枠組みの協議を英仏などとも実施している。 (1811-101103)
4・6・8・4 その他

ヨルダン

 安倍首相は11月27日午前、ヨルダンのアブドラ国王と共に習志野演習場を訪れ陸自特殊作戦群の訓練を視察した。 同省は「機密性が高い」として視察の様子を公開しなかったが、ヨルダンとテロとの戦いで連携する狙いがある。
 ヨルダンはシリア、イラクと国境を接し、米国主導の対ISIS有志連合に参加しており、アブドラ国王は即位前に国軍特殊部隊の司令官を務めている。
 首相は2018年1月にもオーストラリアのターンブル首相(当時)と同部隊の訓練を視察している。 (1812-112705)

4・6・9 各国沿岸警備隊への協力

4・6・9・1 東南アジア、南太平洋諸国への協力

マレーシア

 海上保安庁とマレーシアの海上警備当局による合同訓練が南シナ海で行われ、日本政府が2017年マレーシアに無償 供与した警備艦も参加し連携を確認した。
 海上保安庁は2017年10月に、外国の海上警備当局の人材育成などを支援する専門部署を設け、東南アジア諸国を重点に支援を進めている。 (1802-012902)

インドネシア

 インドネシアで日本とインドネシアの巡視船が参加した合同訓練が2日間にわたって行われ、7月11日には函館海上保安部の巡視船つがるも参加した。
 合同訓練は日本は南シナ海などで海洋進出を強める中国を念頭に、日米が提唱している「自由で開かれたインド太平洋戦略」への協力を各国に呼びかけているもので、こうした合同訓練を通じて連携を深め理解を得たい考えである。 (1808-071202)

パラオ

 パラオの海上保安体制を支援する日本財団が新たに同国海上法令執行局新庁舎、中型巡視船と専用埠頭を供与し、2月13日にコロールの新庁舎前でレメンゲサウ大統領が出席して引渡式が行われた。 メレンゲサウ大統領がケダムと命名した中型巡視艇は全長40mで航続距離が長く、監視能力も高い。 既に供与された3隻の小型艇とともに警備にあたる。
 パラオは広大な排他的経済水域 (EEZ) を有すが、監視体制は十分とはいえず、近年ではベトナムやフィリピン漁船などによる違法操業が横行し、取り締りは急務になっているため、ミクロネシアやマーシャル諸島など隣国との連携を進めるほか、日本とオーストラリアの海上保安機関と協力し監視を強化している。 (1803-021305)

フィリピン

 安倍首相が11月17日に訪問先のオーストラリア北部ダーウィンに寄港中の海上保安庁巡視船えちごを視察する。
 海保の巡視船は豪州のシドニーやブリスベンには寄港したことあるが、ダーウィンは初めてで、えちごは東南アジア周辺海域の海賊対処のため10月30日から1ヵ月、ダーウィン周辺の海上交通路で警戒監視をするほか、フィリピンのミンダナオ島南部で同国の沿岸警備隊と訓練するなどの任務にあたる。 (1812-111701)

4・6・9・2 インド洋諸国への協力

 海上保安庁とインド沿岸警備隊が1月17日、インド南部チェンナイ沖で合同訓練を実施した。 訓練には巡視船つがる、インドの警備艦シャウリャなど11隻や、双方のヘリコプタなどが参加して過去最大規模となり、船舶が海賊などに襲撃された事態を想定し、海と空から情報収集や追跡訓練などを行った。
 日印の合同訓練は16回目だが、今回は初めて中国が接近を図るスリランカとモルディブの当局者も参加した。 (1802-011701)
4・7 B M D

4・7・1 我が国への BM 脅威

 安倍首相が2月14日の衆院予算委員会で、日本のほぼ全域を射程に収める北朝鮮のNo Dongがすでに数百基配備されているとの認識を明らかにし、北朝鮮の脅威を強調した。
 ただNo Dongに核兵器を搭載できるかについては、No Dongに小型核兵器を搭載して起爆できる状態にあるか、米国などの情報を収集していると説明したうえで、確たることは答えられないとかたり明言を避けた。 (1803-021404)
4・7・2 BMD 体制の整備

4・7・2・1 早期警戒衛星で日米協力

 政府が6月7日に、BMなどの探知能力を高めるため早期警戒衛星の分野で日米の協力を進めると明記した宇宙基本計画の工程表改定に向けた中間とりまとめを了承した。
 工程表には宇宙デブリの除去技術の確立に向け、2019年度から官民で実証実験を始めることも盛り込んだ。 (1807-060704)
4・7・2・2 CEC の採用

 防衛省は2020年3月と2021年3月に就役するAegis艦の7、8隻艦に搭載するCECを運用を開始する。 CECは平成31年度にも配備するE-2Dへの追加装備を検討するほか、35年度の導入を目指すAegis Ashoreにも組み込む可能性がある。
 いままでAegis艦は自らのレーダが探知した場合にしか撃ち落とすことができなかったがもCECの採用によりレーダ情報を複数の艦船や航空機で、同時に把握できるようになる。
 防衛省は従来のBMDにとどまらず、CMやUAVなども一体で迎撃する統合防空ミサイル防衛 (IAMD) という概念を新防衛大綱に明記する見込みで、この構想の実現の軸になるのがCECになる。 (1809-082501)
4・7・3 装備の充実

4・7・3・1 Aegis Ashore

4・7・3・1・1 Aegis Ashore の配備推進

配備の概要

 防衛省の深沢雅貴大臣官房審議官が8月27日に秋田県庁を訪れ、秋田市の新屋演習場が候補地となっているAegis Ashoreの配備計画全体構想を初めて示した。
 防衛省側が示した計画によると、レーダと指揮統制所、VLS 3基などを新屋演習場に配置する。
 VLSは1基でミサイル8発を発射できる。 (1809-082801)

関連予算の計上

 共同通信が2017年12月10日、防衛省が平成30年度予算にAegis Ashore導入費として7.3億円を追加要求したと報じた。 (1802-122002)

 安倍内閣が2017年12月19日に開かれた閣議でAegis Ashore 2個システムの導入を決めた。 2個システムは秋田県と山口県に配備され、日本全域をカバーするという。
 導入に必要な経費は2,000億円 ($1.8B) という。 (1802-010309)

 複数の政府関係者が、防衛省がAegis Ashoreの導入費について、2基で総額6,000億円以上となると試算していることを明らかにした。 米国から購入する主要装置に加え、防護対策や弾薬庫など関連施設も必要となるためで、当初の想定以上に費用が膨れあがった。 防衛省は導入費については2基で2,000千億円と説明している。
 防衛省は今後5年程度をかけて段階的に関連予算を計上し、平成35年度の運用開始を目指して いる。 (1808-072302)

 政府関係者が7月23日、平成35年度の運用開始を目指すAegis Ashoreの取得費について、防衛当局が2基で4,000億円になりうると新たに試算していることを明らかにした。
 防衛省は1基1,000億円と説明してきたが、試算通りなら倍増となる。
 搭載ミサイルの購入費などを含めると、総額で6,000億円近くに膨らむ可能性もある。 (1808-072303)

 時事通信によるとVLSは24セルになる。 SM-3 Block ⅡAの単価は35億円あるためミサイルだけで合わせて1,680億円になる。 (1810-082004)

基地建設、地元説得の難航

 政府はAegis Ashoreを山口県萩市と秋田市にある自衛隊の演習場にそれぞれ1基ずつ配備する方針で、現地の地質の状態や周辺住民の生活環境への影響を調べる調査業者を選ぶ入札を7月26日から受け付ける予定であったが、地元の自治体から調 査の手続きを延期するよう要請が出ていて、防衛省が対応を検討していた。
 その結果、住民の理解が得られないまま手続きを進めれば、さらに反発が強まりかねないとして、調査業者の入札を延期する方針を固めた。 (1808-072501)

計画遅れの可能性

 防衛省が7月31日、Aegis AshoreにLMSSRレーダを装備すると発表したが、レーダを含む2基の取得経費は2,679億円、維持運用費と教育訓練費を加えると4,664億円に膨らむ見通しになった。
 更に運用開始は目標の平成35年度から2年遅れる可能性が出てきた。 (1808-073102)

4・7・3・1・2 Aegis Ashore のレーダ

LMSSR の採用

 防衛省が導入予定のAegis AshoreのレーダにLockheed Martin社製LMSSRを採用する方針を固め近く正式発表する。 LMSSRは米国がアラスカ州に建設中のBMD用レーダと同じ技術を使い、探知距離は1,000kmを大きく上回る。
 防衛省は Raytheon社製SPY-6とLRSSRの2案を軸に選定を進めていたが、LMSSRが探知距離などで優位だったことが選定の決め手となった。
 防衛省は、朝鮮半島警戒をLMSSRに担わせ、Aegis艦を東シナ海などの警戒監視に重点的に振り向けたい考えである。 (1808-070301)

 防衛省がAegis AshoreにLockheed Martin社製SSRを採用する方針を固めたことを政府関係者が明らかにした。 SSRの探知範囲は1,000km以上とみられる。
 防衛省はSSRとRaythoen社製SPY-6の2案を軸に検討を進めていた。 当初はSPY-6が有力だったがSPY-6が開発途中だったため完成しているSSRの導入を決めたという。 (1808-070302)

 防衛省はAegis Ashoreのレーダに、Lockheed Martin社製のSSRを採用する方針を固めた。 省内には米海軍との相互運用性を重視する立場からSPY-6を推す声もあったが、関係者によるとSSRのほうがライフサイクルコストや探知能力が優位と判断した。
 SSRは富士通製の半導体素子を使うことから、日本の国内産業が関与できることも選定に影響した。 (1808-070401)

 防衛省が2023年に運用開始を目指すAegis Ashoreが装備するレーダを7月中にも正式決定する。
 Lockheed Martin社製SSRが選定される見込みだが、Raytheon社製SPY-6を推す声も省内には根強い。 SSRとSPY-6はともにミサイル探知距離1,000kmを上回りSPY-1の2倍の能力を持つ。
 当初はSPY-6の採用が有力視されていたが、防衛省内の選定作業はSSRに傾いている。 要因の一つは運用開始時期の違いで、SPY-6を装備するAegis艦の就役は早くても2023年以降であることから日本向けの対応はその後となり、目標とする2023年の導入に間に合わないとの指摘がある。 (1808-071601)

 小野寺防衛相が7月30日、平成35年度の運用開始を目指すAegis AshoreのレーダをLockheed Martin社製LMSSRにすると発表した。
 LMSSRにするとAegis Ashore 1基の本体価格は1,340億円となり、迎撃ミサイルの取得費用を含めると費用はさらに膨らむ可能性があるが、防衛省は2基を導入する計画である。 (1808-073001)

 防衛省が7月30日、2基の配備を計画しているAegis AshoreのレーダにAN/SPY-6ではなくLockheed Martin社が提案していた同社が開発中のLRDRを元にしたSSRの採用を決めた。 防衛省によると採用の理由は性能、価格、後方支援の3点であるという。
 SSRはGaN素子を採用したレーダで、元となるLRDRは2017年に最終設計審査 (CDR) を終え2020年のoperationalを目指している。 (1810-080803)

 防衛省がAegis Ashoreに装備するレーダをLockheed Martin社が提案するLRDRを元にしたレーダにした。 選定の理由は目標捕捉、同時追随目標数、継続運用性能などの基本性能によると言う。  Lockheed Martin社のレーダは2,679億円でこれにはVLSは含まれていない。 VLSはBAE Systems社製である。 (1810-082004)

Aegis艦の次世代レーダを日米共同開発?

 日米両政府はBMDを担うAegis艦向けの次世代レーダを共同開発する検討を始めた。 日本企業の半導体技術を使い、現在の2倍以上の半径1,000kmを超える探知能力にする。
 海上自衛隊のAegis艦はSPY-1レーダを装備しているが、米海軍は今後、探知距離がSPY-1の2倍以上となる1,000km超とされるRaytheon社製SPY-6を搭載する。
 今回、開発するのはさらに次世代レーダで、小型化したうえ捕捉距離を広げ、日本海側に展開するAegis艦で朝鮮半島全域に加え中国の東側の一部の地域も捕捉できるようにする。 (1808-070601)

 小野寺防衛相が海上自衛隊のAegis護衛艦に採用するレーダの開発を進めていることを認めた。 ただ、この開発が米国と共同で行われているとの報道は否定した。 この技術でAegisシステムの目標捕捉距離は2倍に伸びるという。
 防衛相の発言に反して防衛装備庁は、この計画に2ヵ国が関心を示していることを明らかにしている。
 一方MHI社と富士通がLockheed Martinと協力したAegisの改良を準備している。 両社は輸出も視野に入れている。 (1809-071810)

SSR 開発への日本企業の参画見送り

 複数の政府関係者が12月30日、防衛省がAegis Ashoreで使用するレーダSSRについて日本企業の開発参画を見送る方針を固めたことを明らかにした。
 日本企業が参画することにより納期が遅れ、導入費用も増えることが判明したためで、Lockheed Martin社が日本企業の参画をアピールしていただけに、日本の防衛産業への貢献を期待する自民党国防族からは「話が違う」との声も上がっている。 (1901-123002)

4・7・3・1・3 SM-6 の追加装備

 小野寺防衛相が1月12日、政府が北朝鮮のBMへの対抗策として導入を決めたAegis Ashoreについて、将来はCMを迎撃する機能を付加する方向で検討に入ったことを明らかにした。 (1802-011202)

 小野寺防衛大臣が1月12日の記者会見で、自衛隊が2箇所に配置するAegis AshoreにCM対処能力を付加することを検討していることを明らかにした。 (1803-012404)

4・7・3・2 現有 BMDS の迎撃試験

9月12日: SM-3の迎撃成功

 防衛省が9月12日、護衛艦あたごが米ハワイ沖でSM-3の迎撃に成功したと発表した。
 防衛省によると12日17:40頃にKauai島の試験施設から発射された標的弾をあたごが探知しSM-3を発射し、大気圏外で標的に命中するのを地上からの映像などで確認した。
 海自Aegis艦によるSM-3の迎撃試験は5回目で、うち4回で成功している。 (1810-091206)

 海上自衛隊と米MDAが9月11日にAegis BMDの迎撃試験を行い成功した。
 試験 (JFTM-05) ではAegis BMD J6を装備した護衛艦あたごがPMRFから11日22:37に発射された弾頭切り離し式のBM標的を、SM-3 Block ⅠBの能力向上型であるSM-3 Block ⅠB TU弾で撃墜した。 (1810-091303)

 海上自衛隊と米MDAが9月11日にSM-3 Block ⅠB TUの迎撃試験JFTM-05に成功した。 試験にはAegis BMD J6を装備した護衛艦あたごにより行われ、弾頭分離型標的が使用された。
 海上自衛隊は2020年代初期にAegis BMD J7を装備した改あたご型2隻を就役させる。 (1811-091902)

4・7・3・3 SM-3 Block ⅡA

4・7・3・3・1 SM-3 Block ⅡA の装備、engage-on-remote システムの導入

 海上自衛隊がFY2019とFY2020に2隻のAegis艦を取得し、8隻の体制を整える。 更にFY2021には2,000kmとSM-3の三倍の射程を持つSM-3 Block ⅡAの装備を始める。
 しかしながら各艦が装備するSM-3は最大8発で、海上自衛隊は北朝鮮からの大量のBM攻撃を懸念している。
 これについて米国はAegis艦が取得した目標情報を使って他のAegis艦からSM-3弾を発射する "engage-on-remote" システムを開発し、米海軍のAegis艦に搭載しようとしている。 (1802-011105)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が1月9日、日本にSM-3 Block ⅡA 4発を$133.3MのFMSで売却することを国務省が承認したと発表した。 (1803-011711)

4・7・3・3・2 SM-3 Block ⅡA の共同開発

1月31日: 迎撃失敗

 ハワイにあるAegis Ashore試験設備で1月31日、SM-3 Block ⅡAの発射試験が行われたが、標的の迎撃に失敗した。
 SM-3 Block ⅡAの迎撃試験は2017年2月に成功しているが、6月に行われた試験では失敗しており、今回で失敗は2度目になる。 (1802-013103)

10月26日: 迎撃成功

 防衛省が10月26日、日米両国が共同開発しているSM-3 Block ⅡAの迎撃試験が米ハワイで行われ、成功したと発表した。 米軍のAegis艦がSM-3 Block ⅡAを発射し標的を迎撃した。
 迎撃試験は4回目で直近2回は失敗に終わっていた。
 政府は北朝鮮などのBMに備えるためSM-3 Block ⅡAを平成33年度までに配備する。 (1811-102701)

4・7・3・3・3 SM-3 Block ⅡA の対日売却

 米国務省当局者が1月9日、国務省がSM-3 Block ⅡAの日本への売却を承認したことを明らかにした。
 国務省はこの日、ミサイル4発と関連装備品を日本に$133Mで売却する方針について、議会に承認を求めた。 (1802-011002)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が11月19日、日本とNATOに総額$950Mにのぼるミサイルと誘導爆弾を売却すると発表した。
 このうち日本向けはSM-3 Block ⅠB 8発とBlockⅡA 13発合わせて$561Mと、AIM-120C-7 32発の$63Mである。 (1812-112009)

4・7・3・4 CECの装備

 海上自衛隊が次期Aegis護衛艦にCECを装備する。 CECの装備により次期Aegis護衛艦はセンサ、武器ネットワークの構成が可能になり、米海軍ともネットワークを共有できるようになる。
 あたご型より5m長い次期Aegis護衛艦にはAegis BMD 5.1とCECを含めたAegis Baseline J7が搭載されるが、Baseline J7は改良あたご型も装備するという。 (1803-012407)

 防衛省が5月17日、BMD能力を強化するため艦艇や航空機の間で標的情報を相互に共有するCECシステムを、2019年以降に本格運用するE-2Dに搭載する方向で検討に入った。
 同システムを既に運用している米Aegis艦との情報共有も可能になり、自衛隊と米軍の運用一体化はさらに進みそうである。
 防衛省は2018年12月からE-2D 4機を順次装備する計画で、CECを搭載すれば上空で探知した敵の長距離CMなどの情報が離れた場所にいる海上自衛隊や米軍のAegis艦でも瞬時に共有され、その照準情報に基づきAegis艦が迎撃が可能となる。 (1806-051703)
【註】 護衛艦がLOS外を飛翔するASCM等をCECを用いて射撃することは、現在装備しているLOS外射撃能力を持たないSM-2ではできず、アクティブホーミング誘導のSM-6を装備する必要がある。

4・7・4 米朝首脳会談後の動き

4・7・4・1 Aegis Ashore 必要性の議論

 政府が平成35年度に配備を目指すAegis Ashoreへの慎重意見が相次いでいる。 南北や米朝の首脳会談を通じて北朝鮮が融和姿勢を示すなか、与野党や配備候補地の秋田、山口両県からは巨額の費用を投じて導入する必要性を疑問視する声が上がっている。
 これに対し、政府は日本を射程に入れるBMの脅威は消えていないとみて、計画通り配備を進める方針である。 (1807-062103)

 防衛省が平成30年度予算の概算要求にAegis Ashoreの調達費を計上する方向で調整に入った。 早期配備の必要性を問う声が出る中、複数の関係者によると次週にもレーダの機種選定を行う。
 Aegis Ashoreのレーダには複数の選択肢があり、防衛省は米海軍がAegis艦への採用を決めたRaytheon社製のSPY-6と、米MDAがアラスカ州に配備するレーダを元にしたLockheed Martin社製SSRを候補に選定を進めてきた。 (1807-062903)

4・7・4・2 住民避難訓練の中止

 政府関係者が6月21日、政府が北朝鮮のBM発射を想定して平成30年度中に全国各地で予定していた住民避難訓練を中止する方針を固めたことを明らかにした。
 北朝鮮BM発射の可能性は低いと判断したもので、訓練を予定していた宮城、栃木、新潟、富山、石川、奈良、徳島、香川、熊本の9県には総務省が近く通知を出し正式に伝える。 (1807-062102)
4・7・4・3 展開中のPAC-3を撤収

 河野統幕長が6月28日、北朝鮮によるBM発射の可能性が低下したことを受け、展開中のPAC-3を撤収させる可能性を示唆した。
 防衛省は北朝鮮のBM発射に備え、2016年8月から自衛隊法に基づく破壊措置命令を常時発令し、市谷の防衛省内などにPAC-3を配備し、2017年8月には中四国4県の駐屯地にも展開させた。 またAegis艦も日本海などに派遣し24時間態勢で警戒監視に当たっている。 (1807-062803)

 複数の政府関係者が、防衛省が7月30日に北朝鮮のBM発射に備え、北海道、中国、四国地方に展開していたPAC-3を撤収することを決めたことを明らかにした。 ただ市ヶ谷の防衛省敷地内のPAC-3は維持するという。
 同省は、北朝鮮が2017年グアム周辺を狙ったBM発射を予告したり、BMが北海道南部の上空を通過したりしたことから、8月に島根、広島、愛媛、高知の4県にある陸上自衛隊駐屯地にPAC-3をそれぞれ展開し、9月には北海道の陸自函館駐屯地に展開していた。 (1808-073002)

 防衛省が7月31日、北海道、島根、広島、愛媛、高知の各県に展開していたPAC-3を撤収したと発表した。
 PAC-3は2017年8月に北朝鮮が日本上空を越えてグアム近海に向けて4発のIRBMを発射したのを受けて展開し、その後8月29日と9月15日に北海道上空を越えて火星-12 (KN-17) 2発を発射したため北海道にも展開していた。 (1810-080813)

4・7・4・4 警戒監視レベルを緩和

 複数の政府関係者が、北朝鮮のBMの発射に備えた自衛隊の警戒監視レベルを6月29日から緩和したことを明らかにした。 自衛隊の警戒レベルの緩和は首相官邸にも報告され了承されたという。
 Aegis艦の日本海での常時張り付け警戒を見直し、24時間以内に迎撃の配置につける状態で待機する態勢に改めた。
 米朝対話局面を受けての対応だが、破壊措置を常時発令した状態は続ける。 (1808-070103)
4・7・5 米 HDR-P の日本配備

 複数の米国防総省関係者への取材で12月23日、米国防総省が新型のミサイル防衛用米本土防衛レーダ (HDR) の日本への配備を検討していることが分かった。
 FY24中の配備を計画して日本政府とも協議しているいるが、日本国内のどこに設置するかは未定である。
 関係者によると、日本配備が検討されているHDRはBMの精密な追跡に加え、おとり弾頭の識別や迎撃の成否を分析するレーダで、収集した情報は (GBI) などによる迎撃に活用される上、日本とも共有される。 (1901-122402)
【註】 HDRにはハワイ州に配備されるHDR-Hと太平洋地域のどこかに配備されるHDR-Pがあり、オアフ島に設置されるHDR-Hは12月18日にアラスカに設置されるLockheed Martin社製LRDRレーダに決まっていたが、HDR-Pの設置場所はグアムとみられていた。
 尚、日本が装備するAegis AshoreではレーダにLRDRを小型化したものが使用される。
4・8 近代戦様相への対応

4・8・1 新司令部の創設

 政府が2020年にも、サイバ・宇宙分野での防衛能力を高めるため、司令部機能を持つ防衛相直轄の統合組織を創設することを、2018年末に見直す予定の防衛計画の大綱への明記を検討している。 統合組織のトップには将官を充て、 陸海空三自衛隊から要員を集める。
 3月に発足する陸自部隊を統括する陸上総隊や海自の自衛艦隊、空自の航空総隊と同格とし、サイバ・宇宙分野の権限を集約する。 統合組織の隷下には、サイバ防衛隊や2020年代初めに創設予定のスペースデブリやASATなどの監視に当たる宇宙部隊を置く。
 サイバ防衛隊は現在110名の要員を30年度は150名に増員する。 (1802-010401)
4・8・2 宇宙利用/防衛

4・8・2・1 宇宙における安全保障への対応

 自民党の宇宙・海洋開発特別委員会が4月25日に党本部で会合を開き、統合幕僚監部に宇宙に関する運用を統括する部門を新設することや、宇宙における安全保障の基本方針を定めた「国家安全保障宇宙戦略」の策定などを、政府に求める提言案を示した。
 提言案は、宇宙も含めた軍備を進める中国の脅威などを念頭に、自衛隊の対応能力について危機的に不足していると明記し、防衛費に占める宇宙予算を現状の400億円から1,000億~2,000億円に増額するよう訴えている。
 またキラー衛星に対処するため、宇宙空間を監視する衛星の打ち上げなども検討するべきだと指摘している。 (1805-042601)

 内閣府の宇宙政策委員会が5月28日付で新たな委員に折木良一元統幕長を任命した。 これまで学識経験者や産業界関係者が就いてきたが、防衛省出身者は初めてである。
 宇宙基本計画が掲げる宇宙安全保障の確保に沿った人事とみられる。 (1806-052801)

 防衛省が宇宙開発能力向上のため宇宙開発機構 (JAXA) との連携を強化しようとしている。
 小野寺防衛相か7月2日に文書で、新防衛計画大綱や次期中期防において宇宙関連技術が優先順位のハイライトになると述べている。 (1809-071114)

4・8・2・2 宇宙利用

4・8・2・2・1 情報収集衛星 IGS

光学6号機の打ち上げ

 日本が2月27日にH-2Aを用いて情報収集衛星IGS Optical 6を打ち上げた。 日本は現在光学衛星3基とレーダ衛星4基を運用しており、更に3基を打ち上げる計画である。 (1804-030708)

レーダ6号機の打ち上げ

 政府の情報収集衛星レーダ6号機を搭載したH-2A 39号機が6月12日13:20に種子島宇宙センタから打ち上げられ、予定の軌道に投入されて打ち上げは成功した。
 レーダ6号機は設計上の寿命を超えて運用している4号機の後継機で、電波を使って夜間や曇りでも地上を撮影できる。 識別可能な物体の大きさは運用中の5号機とほぼ同じ50cm程度とみられ、性能は4号機の約二倍に向上している。 (1807-061205)

4・8・2・2・2 ナノ衛星が取得した画像を購入

 防衛省が5月22日、同省が数週間前に米Planet Labs社と2億円で同社のDoveシリーズナノ衛星が取得した画像を購入する契約を結んだことを明らかにした。
 契約によると2018年6月1日~2019年3月31日の間に防衛省の情報本部が同社の画像データベースにアクセスしダウンロードできる。
 今まで同省は、内閣衛星情報センターと米DigitalGlobe社からの情報を使っていたが、これらの情報は衛星の軌道上で限られた時間でしかなかった。 (1807-053004)
4・8・2・2・3 超小型衛星の導入

 政府が尖閣諸島など日本周辺の監視強化に向け、超小型衛星の導入を検討している。
 既存の情報収集衛星を低コストで補完し、中国の積極的な海洋進出に対抗するもので、構想では多数の超小型衛星を打ち上げ、情報収集衛星との同時運用で尖閣諸島や南シナ海などを監視する。 1基当たりの費用は情報収集衛星の数百億円に対し、超小型衛星は数億円に抑えられる利点がある。
 政府は国内の民間チームが来年打ち上げる超小型レーダ衛星の性能を見極めた上で、数年内での導入も視野に議論を加速させる。 (1809-081501)
4・8・2・2・4 準天頂衛星の本格運用開始

 日本版GPS衛星である準天頂衛星「みちびき」の本格的なサービスが11月1日に開始された。 専用の受信装置を使えばこれまで最大10mあった位置情報の誤差が数cmにまで縮まることから、さまざまな分野での活用が期待されている。
 「みちびき」は、2017年10月までに合わせて4基が打ち上げられ調整が行われていたが、衛星を管轄する内閣府は24時間運用ができる4基体制の準備が整ったとして、1日から本格的なサービスを開始した。 (1812-110102)
4・8・2・3 宇宙防衛

4・8・2・3・1 宇宙監視部隊

宇宙監視部隊の新編

 防衛省は34年度に、スペースデブリを常時監視する部隊を航空自衛隊に新たに発足させる。 同省は宇宙の状況を24時間体制で監視する新システムを構築中で、35年度の運用開始を目指している。
 監視システムは、情報収集用レーダと、情報解析用コンピュータで構成され、海上自衛隊の山陽受信所跡地に設置するレーダが衛星周辺のデータを取得し、得られたデータを府中基地に転送してデブリの軌道などを分析する。 デブリが衛星に接近すると判断すれば、衛星の運用を委託している会社を通じ、軌道を修正する。
 防衛省は23年度ごろから米コロラド州の空軍基地に職員や自衛隊員を継続的に派遣し、宇宙業務課程を履修させている。 (1802-010302)

 防衛省は人工衛星との衝突が懸念されるスペースデブリ監視などの知見を高め、「宇宙部隊」創設に向け準備を進めており、来年度予算の概算要求で宇宙状況監視システムの取得費268億円を計上して、レーダを山口県山陽小野田市の海自山陽受信所跡地に、情報を集約処理するシステムと宇宙部隊を空自府中基地にそれぞれ設置し、平成35年度から運用を始める。 (1810-091403)

宇宙状況監視多国間演習 Global Sntinel 2018 に参加

 航空自衛隊が9月18日から米戦略軍が主催する宇宙状況監視 (SSA) の多国間演習 "Global Sntinel 2018" に参加する。 演習への参加は今年で3回目で航空自衛官ら5名人が28日までLockheed Martin社の施設で人工衛星と宇宙ごみの衝突の予測や回避、発射されたロケットの監視などを机上で訓練する。
(1810-091403)

米空軍宇宙軍主催多国間机上演習 Schriever Wargame に参加

 米空軍宇宙軍が主催した多国間机上演習Schriever Wargameが10月9~19日の間にアラバマ州Maxwell AFBで、米軍の宇宙関連の部隊や米政府機関からの350名のほか、初めて参加した日本を含む7ヵ国で行われた。
 日本からは防衛省、外務省、内閣府、内閣衛星情報センタ、JAXAなどの職員が参加した。
 演習の内容は「機密」扱いだが、複数の政府関係者によれば演習は2028年に米インド太平洋軍の管内で、米国の偵察衛星や通信衛星が「ある競合国」から攻撃や電波妨害を受け、GPSもダウンしたとの想定で行われた。 (1812-112501)

宇宙状況監視 (SSA) 施設の建設

 防衛省が2018年末までに改訂する防衛計画大綱で宇宙軍の創設を計画している。
 防衛省は2022年度までにかつて海上自衛隊の山陽受信所が置かれていた場所に宇宙状況監視 (SSA) 施設を建設し、JAXAや米軍と協力して人工衛星やスペースデブリと疑われる物体の識別追随を行う。
 日本の報道によるとこのレーダは5,800km遠方まで監視できるという。 (1901-112813)

4・8・2・3・2 宇宙監視システム

宇宙監視衛星

 複数の政府関係者が、宇宙空間の状況を監視する人工衛星(SSA衛星)を導入する方向で検討に入ったことを明らかにした。 宇宙ゴミの衝突や他国の衛星による妨害などから、日本の人工衛星を防護するもので、2024~2028年の打ち上げを視野に入れている。
 政府は経て2018年末に改定する防衛計画の大綱でSSA能力の大幅強化に政府全体で取り組むと明記する方向で調整している。 (1809-081703)

 防衛省は宇宙空間で増加している宇宙ごみ(デブリ)や他国の衛星と、日本の衛星が衝突する のを防ぐため、大気圏外から宇宙空間を監視する人工衛星を打ち上げる検討に入った。 導入時期や衛星の数などは今後 、内閣府や文部科学省とも協議するが、平成40年度をメドに導入する方向で、平成31年度予算概算要求には衛星の打ち上げを視野に調査研究費を計上する。 (1809-082101)

宇宙監視レーダ

 防衛省は地上から宇宙空間を監視するため、システムの運用を平成35年度以降に始める。
 レーダを山口県に配備する計画で、来年度予算で高度5,800km以上の宇宙空間を監視できるレーダの取得に向けた経費を求める。 (1809-082101)

4・8・3 サイバ戦

4・8・3・1 サイバ戦体制の構築

4・8・3・1・1 サイバ戦に対する政府の姿勢

 安倍首相が4月26日、自民党サイバーセキュリティ対策本部の高市本部長からサイバ攻撃対策に関する提言書を受け取った。
 首相は、喫緊の課題でありわが国はサイバーセキュリティでも先進国にならなければならないと述べ、政府として積極的に取り組む姿勢を示した。 (1805-042603)

 政府が2021年までの3年間を対象にした新たなサイバーセキュリティ戦略の概要が6月6日に分かった。 新戦略は政府のサイバーセキュリティ戦略本部の7日の会合でとりまとめ7月に閣議決定する。
 原発や交通機関といった重要インフラを狙った大規模なサイバ攻撃への対処態勢を強化すると明記し対抗措置の拡充も視野に入れる。
 新戦略は日本の先端技術や防衛関連技術をサイバ攻撃から守る姿勢も打ち出し、武力攻撃だけでなく巧妙化するサイバ攻撃も大きな脅威になっていると強調して、重要インフラや通信を狙ったサイバ攻撃により多大な経済的社会的な損失が生ずる可能性は拡大していると指摘ししている。 (1807-060602)

 政府は菅官房長官を本部長とするサイバーセキュリティ戦略本部の会合を7月25日に開催し、サイバ攻撃に伴う被害の深刻度基準を新たに策定した。

 評価基準は深刻度を、「著しく深刻な影響が発生」のレベル4から「影響なし」のレベル0までの5段階に分類している。 (1808-072502)

4・8・3・1・2 サイバー司令部の新設

 防衛省が宇宙/サイバ空間の司令部を新設する。 宇宙/サイバ司令部は陸海空自衛隊と同格で、宇宙状況を監視する部隊は2022年に、サイバ部隊は陸海空自衛隊から要員を集めて早ければ2020年に発足させる計画である。
 注目されるのは官民協力のレベルを越え、自衛隊のサイバ防衛任務の一部を民間企業に委託することにした点で、これは軍事強国が紛争地域で軍と情報機関はもちろん、所属不明のハッカ集団と密かに連係してサイバー作戦を広げ、技術力のある企業をサイバ防衛に積極的に参加させるのと同じである。 (1808-071602)
4・8・3・1・3 西部方面システム防護隊の新設

 政府関係者が8月16日、陸上自衛隊西部方面隊にサイバ空間への攻撃に対する防御を専門とする部隊方面システム防護隊(仮称)を平成30年度内に新編する方針を固めたことを明らかにした。 防護隊は、通信状況の監視し現場で使う野外通信システムと指揮系統に関わるネットワークに対するサイバ攻撃発生時の対処が主な任務となる。
 地方にサイバ戦部隊を置くのは初めてで、サイバ戦力の増強を進める中国を見据え、南西諸島を管轄する西部方面隊の体制を強化する。 (1809-081604)
4・8・3・1・4 我が国に対するサイバ攻撃

防衛省 OB などを装ったウイルスメール

 2017年11月下旬から2018年3月中旬にかけて、防衛省OBや海洋政策に携わる関係者らに向けて、内閣府や防衛省の職員を装ったウイルスメールが相次いで送信されていたことが、日本最大級のサイバ攻撃監視センタを有するセキュリティ企業「ラック」の調査で判明した。
 数百件のメールが確認されており、中国のハッカー集団が関与しているとみられることも判明している。
 添付ファイルを開封するとウイルスに感染し、パソコン内の情報が抜き取られる仕組みで、受信者の一部がファイルを開封したという情報もあり、安全保障に関わる機密情報が流出した恐れもある。
 受信者に開封させるために、メールの本文には実在する名称を使用するなどの巧妙な手口も判明しており、2017年11月下旬に防衛省OBに届いたメールでは、防衛省の現職職員の名前が表記され、「防衛省北関東防衛局等から提供された情報を随時お知らせいたします」などと書かれていた。 (1805-041202>)

4・8・3・1・5 量子暗号通信実用化の研究開始

 政府関係者が2月8日、政府が盗聴やハッキングが不可能とされる量子暗号通信の実用化に向けた研究に乗り出すことを明らかにした。
 在外公館や遠隔地の艦船との情報伝達など外交安全保障分野での利用が期待されることから、政府は平成31年度から5年間かけて実証実験を行い、早期の実用化を目指している。 (1803-020804)
4・8・3・1・6 官民の共同

 政府が1月4日、サイバ攻撃に関する情報を共有し対策を考える官民の協議体を創設する方針を固め、22日召集予定の通常国会に創設に必要なサイバーセキュリティ基本法改正案を提出して平成31年度からの施行を目指す。
 協議体の名称は「サイバーセキュリティ協議会(仮称)」で、国の行政機関や地方公共団体のほか、発電所や鉄道など重要インフラの事業者、セキュリティーソフト会社、国立大学などの教育研究機関、有識者で構成し、情報を戦略的かつ迅速に共有する。
 協議会の事務局は政府の内閣サイバーセ キュリティセンター (NISC) が務め、構成メンバーに守秘義務を課すことで、企業秘密を理由に情報提供を行わない事態を避けるとともに、情報提供を促す仕組みを整える。
 また米国を中心にノウハウを持つ諸外国の行政機関やセキュリティー会社などとも連携する。 (1802-010501)

 政府が、国内へのサイバ攻撃の情報を収集解析して対処策を周知する官民の連合体を2019年4月にも創設する方針を決めた。 官民連合体は、内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンタ (NISC) が情報セキュリティー対策に関する国内の主要な専門機関や企業数社とつくる。
 2019年6月に大阪市で開かれる主G20首脳会議や2020年夏の東京五輪・パラリンピックを標的にしたサイバ攻撃に備え、防御能力を強化する狙いがある。 (1811-102801)

4・8・3・1・7 ホワイトハッカーの採用

 防衛省が高度化するサイバ攻撃に対処するため、高度な技術や知識を持つ民間の専門家を任期付きで採用することを検討している。 平成31年度からサイバー防衛隊の一部業務を特定任期付隊員と呼ばれる枠を使う案が有力で、マルウエアの監視分析などのため5~10名のチームを防衛省に常駐させる。
 サイバ攻撃からの防御に携わるホワイトハッカーは最先端の技術に精通している場合、年収が数千万円に上るというが、防衛省は5年以内の任期で、年収2000万円超の事務次官級の待遇でも採用できるようにする。 (1811-102201)
4・8・3・2 海外諸国との協力

4・8・3・2・1 NATO

 政府がNATOのサイバ防衛演習に本格的な参加を検討している。 政府はサイバ防衛を協力の優先分野に位置付け、NATOとの関係を深化させる考えである。
 政府が検討しているのはNATOのサイバ防衛協力センタ (CCDCOE) が毎年行っている世界最大のサイバ防衛演習 "Locked Shields" への参加で、2015年と2016年にも参加したがオブザーバー参加だった。 (1810-090201)
4・8・3・2・2 エストニア

 安倍首相が1月12日からバルト三国など欧州6ヵ国を歴訪する。 首相が今回訪れるのはエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国とブルガリア、セルビア、ルーマニアの計6ヵ国である。
 最初に訪れるIT先進国のエストニアとはサイバ防衛の情報提供などで連携を強化する。 エストニアは2007年に大規模なサイバ攻撃を受け、サイバ防衛技術の向上に力を入れてきており、NATOもサイバ防衛拠点を同国に置いている。
 日本政府は北朝鮮や中国によるサイバ攻撃に危機感を抱いていて、原子力発電所などの重要インフラが狙われれば甚大な被害が発生する可能性があり、先行するエストニアから協力を仰ぐ方針である。(1802-011202)

 安倍首相が1月12日にエストニアのラタス首相と首相府で会談し、IT立国を掲げる同国とサ イバ防衛協力を強化することや、北朝鮮に核やミサイル開発を断念させるため圧力を高めることを確認した。
 首相はバルト三国との間で、サイバ防衛、物流、医療など、年度ごとにテーマを設定し、政府関係者や専門家が参加して協議する「日バルト協力対話」を創設することを提案した。 30年度に初会合を開く。 (1802-011301)

 エストニアを訪問した小野寺防衛相が5月6日にルイク国防相と会談し、サイバ防衛分野での協力を強化することで一致した。 エストニアは首都タリンにNATOのサイバ防衛協力センタを誘致しており、サイバ分野に高い知見を持っている。
 日本政府も2018年1月に同センタへの参加を承認されており、小野寺防衛相は「防衛省からの職員派遣を通じて協力関係をさらに発展させたい」と意欲を示したのに対し、ルイク国防相は「日本の参加を歓迎する」と応じた。 (1806-050602)

 小野寺防衛相が9月21日にエストニアのルイク国防相と防衛省で会談し、サイバ分野での協力強化で一致した。 小野寺防衛相は会談後、エストニアにあるNATOサイバ防衛センタに防衛省職員を派遣し、能力向上に努めていくと述べ、エストニアの協力に期待感を示した。
 政府は2018年末に見直す防衛計画の大綱でサイバ空間の能力向上を掲げる方針で、サイバ防衛の先進国であるエストニアの知見を得たいと考えている。 (1810-092104)

4・8・3・2・3 イスラエル

 安倍首相が5月2日にエルサレムの首相府でネタニヤフ首相と会談し、経済、サイバ分野で緊密に連携する方針で一致した。
 安全保障協力を強化するため外交防衛当局間の協議を新設することで一致すると共に、日本のサイバ分野の専門家を育成するため、イスラエルが協力することでも合意した。 (1806-050205)
4・9 装備行政

4・9・1 装備行政

4・9・1・1 装備品の調達

4・9・1・1・1 調達改革の取り組み

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会が4月6日の分科会で、2019年度予算編成に向けた防衛分野の議論に着手した。
 中期防衛力整備計画の見直しを2018年末に控えていることもあり、財務省は調達改革の取り組みが不十分だとして高コスト体質の改善を求めた。 (1805-040603)

 防衛省が国内企業から防衛装備品を購入する際の費用を抑えるため、調達価格の算定基準を見直す方針で、平成30年度中にも算定基準を変更する。 見積もりに比べて原価が膨らめば利益分の支払いを減らし、原価が減れば利益を増やす。 調達見直しで年間数百億円の調達費抑制を目指している。
 装備品の価格の多くは原価に一定の利益を上乗せする原価計算方式で算出しており、装備品によって異なるが、原価の5%程度を利益として支払っている。 人や作業時間が増えて原価が上がると利益も膨らむため、全体の価格が当初より上がる一因になっていた。
 装備品は製造企業が限られているため企業がコストを抑える動機が乏しくなりがちで、当初の想定より価格が上がる問題があった。 (1811-100803)

 財務省が10月24日の財政制度等審議会の分科会で防衛装備品の調達費をめぐる今後5年間の合理化目標について、年2,000億円程度の水準を最低限達成した上で、さらなる上乗せを目指すべきではないかと提言し、計1兆円以上抑制する考えを示した。 政府は2018年内にまとめる次期中期防への反映を目指す。
 現中期防の防衛装備品調達計画に一括購入や整備方法の見直しなどを通じて7,000億円程度の経費を圧縮する目標を設定していた。 (1812-102402)

4・9・1・1・2 F-35 完成機輸入へ

 骨格案が判明した政府の新防衛計画大綱では、多用途運用母艦の導入を念頭にF-35Bを導入する方針を盛り込んでいる。
 ただ政府はすでに配備が進められているF-35Aを日本国内で組み立てを行う方式が費用高騰の原因の一つとされていることを踏まえて、国内での組み立てを行わない方針を固め、今後は米国から完成機を購入する方式に改め、1機150億円の費用を数十億円程度抑制する考えである。 (1901-120502)
4・9・1・1・3 FMS 依存からの脱却

 岩屋防衛相がNHKの討論番組で、FMSによる米国からの調達が多すぎるのではないかという指摘について、高性能で日本に必要な装備を調達するにはそういう方法によらざるを得なかったということがあるとしながらも、これからは同盟国からの調達のみならず、さまざまな調達方法をできるだけコストがかからないようにしながら進めていく必要があると思っていると述べた。 (1811-100702)
4・9・1・1・4 FMS 調達方式の見直し

 防衛省が、米国からの有償軍事援助 (FMS) による装備品の購入費を縮減するため、 6~10年の長期契約を新たに導入する検討に入った。 調達予定数を一括契約することで、部品のまとめ買いなどによるコスト縮減を図る。
 今年度末に失効する長期契約法の期限を延長し、平成31年度以降に契約する予定のF-35などに適用したいとしている。 (1807-061701)

 政府が米政府から防衛装備品を購入する際にかかる米側の人件費の一部を負担する調整に入った。
 米政府と直接契約して取得する有償軍事援助 (FMS) による調達は、納入の遅れや価格の不透明さが課題になっていたが、米側が追加で雇う人件費分などの事務コストを日本側が負担することで折り合った。
 防衛省は独自に米側に価格の詳細な内訳の提示や納期の短縮などを求めていたがFMSを所管する米国防総省国防安全保障協力局 (DSCA) は人員の不足を理由に難色を示していた。 (1808-070405)

 日米が米国のFMS手続きの再検討を行っている。
 米国防安全保障協力局 (DSCA) によると2010~2017年の対日FMS契約は$5.8Bで年平均$725Mになる。 また1950~2017年の累計額は$19.5Bにのぼる。 (1809-072509)

 政府関係者が8月4日、政府が米政府から防衛装備品を購入する有償軍事援助 (FMS) の運用を改善するため、米側が行っている事務処理の一部を日本側が代行する方向で調整に入ったことを明らかにした。 調達する装備品価格の透明化や未精算額の解消を図る狙いがある。
 政府はかねて、価格の詳細な内訳の提示や会計など事務処理の迅速化を米側に要請していたが、FMSを所管する米国防総省は人員不足を理由に慎重姿勢を示していた。 (1809-080402)

 米トランプ政権当局者が8月8日、米国軍事産業を奨励して新興する中国やロシアに対抗して影響力を維持するため新時代に合わせたFMSの検討を始めていると述べた。 (1809-080806)

 日本がFMSで米国から購入する装備の額が、2016年度は2011年度の$390Mから10倍以上の$4.4Bにまで達しており、平成30年度も$3.6Bにのぼっている。 (1809-081505)

 政府関係者が11月30日、政府は、2018年末に策定する新防衛計画大綱で、米国から装備を購入する際に提示額を受け入れる制度である対外有償軍事援助 (FMS) について、装備を言い値で買わされているとの批判があることから改善する方針を初めて盛り込む方向で調整に入ったことを明らかにした。
 防衛予算膨張への懸念がある中、政府は調達額の透明性向上や効率化努力を迫られた。 (1901-120101)

 岩屋防衛相が12月21日、防衛予算増加の要因となっている米政府からのFMSについて、契約を順守するよう米側に働き掛ける考えを示した。 防衛相は事務レベルで協議に入るよう指示し、自らも交渉を行う意向を明らかにした。
 FMSによる調達では、日本側は米側の条件を受け入れなければならず、契約時以降の価格高騰や引き渡し延期などの問題が生じていたため、契約を順守させることで防衛費の膨張を抑制したい考えだが、米側が応じるかは不透明である。 (1901-122102)

4・9・1・1・5 国産装備品の調達方式見直し

C-2、価格高騰に伴う調達方式の見直し

 防衛省が今年度2機の調達を予定しているC-2の単価が、平成23年度の調達開始時と比べ40%、70億円も高くなっていることがわかった。 部品高騰などの影響とされるが、価格算定のあり方への疑義や別機種への切り替えを求める意見も出始めた。
 内部資料などによると、調達を始めた平成23年度は1機166億円であったのが24年度は165億円、30年度は236億円と見積もられている。 (1807-062201)

 防衛省幹部が6月27日、価格が高騰を続けているC-2輸送機について、企業共同体 (JV)) による製造に発注方法を変更する検討に入ったことを明らかにした。 すでに量産段階に入っている防衛装備品の発注方法が見直されるのは極めて異例である。
 同省関係者によると、C-2はスバルが主翼や垂直尾翼、MHIが胴体の後部など複数の企業で機体各部を分担製造し、KHIが最終的に機体全体を組み立てる方式でそれぞれが利潤を積み上げる算定方式となっていることから価格高騰の原因とされていた。
 JV方式にすれば利潤の二重取りは防げるとみられている。 (1807-062702)

4・9・1・1・6 海外防衛企業の日本進出

イスラエル エムプレスト社

 Iron Domeの指揮統制システムを開発したイスラエルのIT企業エムプレスト社が日本への事業進出に向けて準備を進めていることを、11月11日に同社幹部が明らかにした。
 2019年にも進出したい考えで、防衛分野で培ったノウハウを生かして電力設備の効率化やスマートシティー(環境配慮型都市)などでのシステム受注を目指すという。 (1812-111201)

GA-ASI社

 GA-ASI社が日本での提携企業を探していると発表した。 (1901-120305)
【註】 MQ-1 Predator、MQ-9 Reaper (Predator B)、Avenger (Predator C) などのUAVを開発生産する企業として知られているGA-ASI社は、UAV搭載レーダLynxの生産や電磁砲の開発も行っている。
 GA-ASI社の元になったGeneral Atomics (GA) 社はGeneral Dynamics社の原子力部門を扱う会社で、数多くの原子炉を製造してきた。

4・9・1・2 防衛産業

4・9・1・2・1 三菱重工業の苦境

 三菱重工にとって防衛関連は売上高は4,000億円程度とみられ、連結売上高のほぼ1割を占め安定した収益を上げ続ける「優等生」だったが、調達側の国が競争原理を強め、受注環境が厳しくなるとともに、従来のように 利益を確保できなくなってきた。
 大型案件として期待された新型Aegis艦をJMUが連続で受注したのも防衛省がコストを重視したためで、三菱重工は2017年に4年ぶりの護衛艦受注で巻き返したが、それがなければ長崎造船所で2020年以降に造る艦艇がなくなるところだった。
 さらに、トランプ政権の営業攻勢もあって米国からの装備品の調達が急増し、日本勢のシェアは縮小している。 特にFMS取引が拡大しているが、FMSでは技術流出への懸念や自国産業の保護からライセンス供与を原則認めていない。 (1804-031202)
4・9・1・2・2 川崎重工業の堅調な伸び

 川崎重工業 (KHI) の防衛生産が平成29年度の2,368億円から30年度は2,377億円に伸びている。 2018年における同社の売り上げが1兆5,700億円であることから防衛部門の売り上げは15%を占めることになる。
 同社の主な防衛生産は、そうりゅう型潜水艦、P-1哨戒機、C-2輸送機などである。 (1901-112818)
4・9・2 防衛技術研究

4・9・2・1 電磁砲

 防衛装備庁が7月31日、開発中の小口径電磁砲 (EMG) の映像を公開した。 同庁は平成 28~33年度に1億円を投じてEMGの研究を行っている。  装備庁の映像は2MAのEMGで、10kgの弾を初速2,000m/sで打ち出せるという。 (1809-080703)

 防衛装備庁が7月31日、2017年11月10~11日に開かれた防衛技術シンポジウムで公開した小口径電磁砲の映像を公開した。 防衛省は電磁砲の研究に平成28年度から33年度に10億円を支出するという。
 装備庁当局者によると、これと並行して大口径電磁砲の試作を進めており、最終的に砲口エネルギー20MJを目指しているという。 (1810-081502)
【註】 米海軍は当初64MJの電磁砲を目指して開発していたが、現在では規模を32MJに下げ試作を行っている。

4・9・2・2 AI 関連技術

AI を活用して不審船を探知する技術

 政府が日本周辺の海洋監視能力を強化するため、AIを駆使して不審船を探知する技術開発に乗り出した。 開発するのは船舶に搭載されている船舶自動識別装置 (AIS) が発信する情報を解析するシステムで、船の位置や速度、船首方位などの大量の情報をAIに学習させ、通常の航路から極端に外れたり、逆方向に航行したりする異常行動を自動で検出する。
 自衛隊は警戒レーダなどと照らし合わせて不審船を特定して護衛艦や哨戒機などが警戒監視に当たり、不審船の情報は海上保安庁など関係機関と共有して迅速な対処に役立てる。
 北朝鮮が行う「瀬取り」の監視などへの活用を視野に、自衛隊による試験運用を平成33年度中に開始することを目指している。 (1809-082002)

4・9・2・3 ロボット技術

 防衛省が作戦の一部を人からロボットに置き換える省人の一環として力仕事の負担を軽減するパワードスーツや小型UAVといったロボット技術の研究開発を進める。
 急速な少子高齢化や人口減少に伴う自衛隊員の不足に対応するのが狙いで、島嶼防衛や大規模災害時の活用を見込んでいる。 (1901-122802)
4・9・3 新 装 備

4・9・3・1 F-35A/B

4・9・3・1・1 F-35A の配備開始

 F-35A 1機が1月26日午前、航空自衛隊三沢基地に初めて配備された。 政府はF-4の後継にF-35Aを選定し42機導入する方針を決めていて、三沢基地には30年度中に10機態勢になる。
 小野寺防衛相は、周辺国が航空戦力の近代化や増強を急速に進めるなか、我が国の安全保障上、極めて大きな意義があると述べた。 (1802-012601)

 MHI社で組み立てられたF-35Aの一番機が1月26日に三沢基地に配備された。  平成30年度中に更に9機が配備される。
 MHI社では平成33年度までに年産6機のペースで38機を組み立てる計画である。 (1805-031207)

 小野寺防衛相が5月15日、F-35A 1機を同日中に空自三沢基地に追加配備すると発表した。
 26日にさらに5機を配備し、5月中に7機態勢とする。 (1806-051504)

 航空自衛隊のF-35A 5機が5月28日に、空自三沢基地に追加配備され、同基地のF-35Aは既存の2機と合わせて7機となった。
 5機は26日にハワイから到着する予定だったが、同行する米軍空中給油機の不具合のため延期されていた。 (1806-052805)

4・9・3・1・2 F-35A の受け入れ

 国内におけるF-35Aパイロット5名の訓練が順調に進められている。 訓練は臨時F-35飛行隊で行われ、今後更に5名を訓練し更なる機体を受領したのち、2019年3月に百里基地から三沢基地に移駐して第302飛行隊を編成する。
 防衛省はF-35A 42機を装備する計画であるが、更に100機を追加調達する模様である。
 報道によるとその中には艦載型のF-35Bも含まれるという。 (1812-112808)
4・9・3・1・3 F-35A / F-35B の追加

 日本政府が既に発注したF-35A 42機に加えてF-35A 63機とF-35B 42機を調達の調達を決めたことで日本のF-35は147機と、138機を装備する計画の英国を凌ぎ世界第二のF-35保有国になる。 (1901-121810)
4・9・3・2 ATD-X / F-3

4・9・3・2・1 開発の基本方針

国産開発を断念する方向で最終調整

 防衛省が2030年ごろから退役するF-2の後継機の国産開発を断念する方向で最終調整に入った。 防衛省は今後、国際共同開発を軸に検討を進めるが、F-35Aを追加購入する代替案もある。 今週中にもF-2後継機への要求性能に関するRfIを米政府に呈示し、米企業からの情報提供を求める。
 航空自衛隊にはF-15 200機、F-4 50機、F-2 90機の3機種のほか、F-35A後継機のF-35A 1機がある。 (1804-030501)

 2030年代に退役するF-2の後継機をめぐり、防衛省が米国や英国の企業にRfIを呈示し、国際共同開発も視野に入れた調査を行っていることについて朝日新聞が3月5日、「国産を断念する方向で最終調整に入った」と報じたが、防衛省幹部は方針は何ら決まっておらず海外企業への照会もしているが、判断材料となる情報を集めているだけだと強調した。
 政府はF-2後継機について

① 独自開発

② 国際共同開発

③ 既存機の改修

のいずれを選ぶかの検討を進めている。 (1804-030601)

 防衛相が2030年代に退役するF-2後継機の国内開発を財務省の反対から断念したとの報道を否定した。 (1805-031201)

 F-2の後継機種選定に海外機種を選定することになったとの報道について防衛省は認めていない。 (1805-031411)

米英両政府に設計構想を伝達

 F-2後継機について、防衛省がまとめ3月に要求性能として米英両政府に伝達した設計構想が明らかになった。
 要求性能では小型UAVを子機として搭載発射してレーダ情報を共有する機能を備えするほか、

① F-35Aの2倍となる8発のAAMを機内装備

② F-2と同等の最大速度Mach 2

③ F-35Aと同等以上の航続距離、ステルス性、レーダ探知距離

を兼ね備えた戦闘機を目指す。 ASMは機外装備を想定している。 (1805-042102)
【註】 ここで言う小型UAVとは、米国のALE-50チャフディスペンサからの発射可能なRaytheon社製のSilentEyesのようなminiUAVか、機内弾庫に搭載し発射するそれより大型のUAVが考えられる。

開発には国内企業を参画させる方針

 複数の政府関係者が5月26日、防衛省がF-2後継機について日本主導による国際共同開発案を秋にもとりまとめる方向で検討に入ったことを明らかにした。
 開発はMHI社を中心にしてIHI社が手がけるエンジンや、高性能半導体を使ったMELCO社のレーダなどを生かしたい考えで、防衛省は米企業による共同開発案や既存機の輸入案などと比較検討した上で、年内にも開発方針を決定する。 (1806-052702)

 新任の岩屋防衛相が10月5日、F-2後継戦闘機には国内企業に参画させるとの方針を示した。  一方で国内開発するとの一部報道は否定した。 (1812-101709)

方針決定が遅れるとの見方

 次期防の焦点の一つであるF-2戦闘機の後継について自民党には国内の防衛産業を維持するため国際共同開発を求める意見があが、いずれの選択肢も開発費用に関する情報が不十分なことから、政府内では方針決定の先送り論が強まっている。 現行の中期防ではF-2退役時期までに必要な措置を講ずると明記している。
 F-2後継機には自主開発、国際共同開発、米国製既存戦闘機の改良の三つの選択肢があったが、自主開発について政府は巨額の開発費用を理由に断念しており、共同開発や製既存機の改良では、これまでに提案をしたのがLockheed Martin社のみにとどまっていることから、現時点で判断するのは難しいとの見方もある。 (1812-110403)

 日本政府は次期戦闘機の開発方針を2~3ヶ月以内に決定して平成31年度に開発を開始し、2025年に試作機を初飛行させる計画であったが、計画は遅れそうである。 (1901-111205)

搭載エンジン開発の進行

 F-2後継戦闘機は開発方針が決まらないなか鋭意技術開発が進められている。 その中にはスラスト変向式エンジンの開発も含まれている。
 現在試験が行われている推力15tのアフタバーナ付きターボファンエンジンXF-9は、X-2実証機が搭載しているXF-5より70%高い推力を実現している。 (1812-113009)

開発は我が国主導とする方針決定

 政府関係者が11月4日、防衛省が2030年代に退役を迎えるF-2の後継機をめぐり、次期中期防に国内防衛産業の参画を重視する開発方針を明記する方向で調整に入ったことを明らかにした。 日本が開発主体となることで、防衛産業の基盤維持や戦闘機開発の技術蓄積を図る狙いがある。
 防衛省はF-2後継機について国内開発、国際共同開発、既存機の輸入を検討してきたが、純粋な国産開発はコスト、技術両面でハードルが高いことから政府内の意見集約が進まず、中期防への結論の明記は先送りする可能性もあるが、日本主体の開発方針は示す方向である。 (1812-110502)

 政府が12月7日、防衛計画大綱に関する与党ワーキングチーム (WT) の会合で、F-2後継機について、日本の主導で早期開発を目指す方針を説明した。 12月まとめる次期中期防にも明記し、具体的な開発計画を数年以内に決める。
 国内防衛産業の技術力を保つ狙いがあるが、国際共同開発も視野に入れる。 (1901-120803)

4・9・3・2・2 Lockheed Martin社の F-22とF-35を土台にした機体の提案

 Lockheed Martin社がF-2戦闘機の後継に、F-22とF-35を土台にした機体を開発する案を日本政府に非公式に打診してきた。 Lockheed Martin社は米政府と議会の認可を得た上で、夏までに正式提案する。
 一方で日本側には30年前に米国とF-2を共同開発したときの苦い経験がある。 当初は国内開発を目指したがF-16を土台に日米で開発することが決まり、仕事量の4割を米国に保証することとなった。
 米国は戦闘能力を左右する基本ソフトのソースコードも日本に供与しなかった。 (1805-042002)

 F-2後継戦闘機について防衛省が3月にRfIを発簡したが、Lockeed Martin社はF-22やF-35で 得た第五世代戦闘機技術を盛り込んだ提案を行うとしている。
 この計画はBoeing社やBAE Systems社も<狙っているいるが、防衛省はLockheed Martin社有利との報道を否定している。 (1806-050208)

 航空自衛隊の次期主力戦闘機に、Lockheed Martin社がF-22とF-35の混合型開発を日本政府に打診したことが分かった。 Lockheed Martin社は夏にも開発計画の詳細をまとめる。 ただこの提案には貿易と安保を天秤にかける米政権の思惑が透けており、純国産を目指してきた日本側には米主導に懸念がもたれている。
 F-22は高いステルス性と飛行性能に優れる一方、F-35はネットワークが特長で、自機のセンサに加え他機や地上のレーダの情報を瞬時に取り込むことができる。 (1806-050401)

 Lockheed Martin社が航空自衛隊のF-2後継にF-22とF-35の複合型を提案したのは、日英が共同開発を行おうとしていることに対する米国の懸念がある。
 LM社が提案しているのはF-22の機体にF-35の搭載品を載せることを基本にしているが、F-22の機体を覆う電波吸収材は全世代のもので、2017年の報告によるとF-22の稼働率はかつての73%から60%にまで落ちているという。
 一方のF-35については英三軍研究所 (Royal United Service Institute) が、そもそも制空戦闘機ではなく中国軍のSu-35との格闘戦には向いていないとしている。 (1807-051613)

 F-2後継機を巡り、日本主導の国際共同開発を模索してきた防衛省の路線が大本命と目される Lockheed Martin社の提案が想定より高額で揺らいでいる。  13日にLockheed Martin社が示した正式な提案では、1機あたりの価格が200億円超で、150億円とみていた 防衛省の予測やF-35の131億円を大きく上回る結果となり、防衛省幹部は高額すぎでこのままでは受け入れられないと嘆いている。 (1808-071703)

 航空自衛隊が2030年をメドに導入する次期戦闘機を巡り、Lockheed Martin社が防衛省に提出した開発計画が分かった。  提案はF-22を改修するもので、日本企業に開発生産の分担比率50%以上を認めている。
 門外不出とされたF-22は世界最強の戦闘機と称され米国はこれまで輸出を禁じてきたが、今回日本に機体などを提供するのは技術流出の恐れがなく、アジアの安全保障にも つながるとみるからで、日本がエンジンなど中核部品を担えば防衛産業の生産技術基盤を底上げできる。 (1809-082207)

 防衛省が新規開発して2030年代に導入する次期戦闘機について、F-22を基にエンジンなどに日本独自の技術を採用するLockheed Martin社との共同開発が有力案として浮上した。
 平成30年末に策定する新たな中期防に新規開発の方針を盛り込んだうえで、日米共同開発に踏み切る見通しである。 (1811-102902)

4・9・3・2・3 その他海外企業の関心

BAE Systems社

 英国が7月中旬にFarnborough航空展で公開したTempest次世代戦闘機に対し日本が計画参入を検討していて更なる協議を進める模様である。
 防衛装備庁は2月にF-2後継に関するRfIを発簡したが、米国のLockheed Martin、Boeing、Northrop Grummanの各種と共にBAE Systems社も回答を寄せているという。 (1809-080104)

Northrop Grumman社

 米空軍の主力機選定でLockheed Martin社に破れたNorthrop Grumman社が30年ぶりに戦闘機開発への復帰を目指し航空自衛隊のF-2後継機開発への参画を模索している。
 F-3とも呼ばれるF-2後継機の開発に防衛省はこれまでに3回、国内外の企業から情報提供を呼びかけたが、関係者によるとNorthrop Grumman社はこのうち 2回に回答を提出し、提供可能な技術の一覧を示した。 また協力することになる日本の防衛産業とも初期段階の意見交換をしていて、関係者の1人は同社の関心は高いと言っている。
 F-2後継機にはLockheed Martin社も名乗りを挙げる見通しで、日本を舞台に両社が再び火花を散らす可能性がある。 (1808-070604)

4・9・3・3 超高速ミサイルの開発

 防衛省はMach 5以上で飛行し、相手のレーダ網などをくぐり抜ける極超音速CMの開発に乗り出し、2019年度予算の概算要求にエンジンの技術研究費として64億円を計上した。 防衛省は島嶼防衛のためのALCMなどへの使用を想定している。
 これについては相手のミサイル発射基地などをたたく敵基地攻撃能力保有につながるとの懸念が強まる可能性があるが、防衛省は「既存の対艦ミサイルの能力向上が目的で、米国などとは用途が違う」と説明している。 (1810-091904)

 防衛省が尖閣諸島などの離島防衛を強化するため、島嶼防衛用高速滑空弾の開発を進めている。
 ロケットブースタで高度数十㌔に打ち上げられ弾頭を分離し超高速で地上の目標に落下させ着弾する。 高速で対空火器に迎撃されにくく敵が侵攻した離島周辺の島から発射するもので、陸上自衛隊による離島奪還戦力の一つと位置付けている。  防衛省は平成38年度の実用化を目指して当初の計画より7年早めて平成30年度から予算化しており、来年度予算の概算要求では138億円を計上している。 (1810-092403)

 防衛省は操舵翼付きの弾頭を滑空させて目標を狙う高速滑空弾を装備化する方針を固め平成38年度の装備化を目指して、30年度予算で滑空弾の技術研究として46億円を計上し、早期装備化に向け31年度予算の概算要求で138億円を追加した。
 開発は二階に分け、第一段階では円筒形で周囲に複数の翼が付いた滑空性の低い弾頭の試験を37年度までに終え、翌年度にも装備化する。 さらに第二段階で滑空性の高い平らな形状の弾頭開発も進め、実用化に成功すれば40年度以降の装備化を目指すという。
 同省関係者によると、陸上自衛隊による運用を想定した離島防衛用と位置づけて射程を300~500km程度にする見込みである。 (1811-101503)

4・9・3・4 EA-18G

 政府がECM敵の防空網や指揮通信システムを無力化する電子攻撃機を導入する検討を、EA-18G などを候補に2018年末に改定する次期中期防に盛りこむ方向で開始した。
 現在、防衛省は電波情報を集める測定機や訓練機をもつが、攻撃機は保有していない。
 EA-18Gはぃそも攻撃のほか敵のレーダを壊すミサイルも備えている。 (1802-010101)
4・9・3・5 Osprey

 防衛省は今後4年間でOsprey 17機を導入し佐賀空港に配備し、3月27日に相浦駐屯地で発足する水陸機動団と連携させ、南西諸島防衛の対処力と抑止力を強化する計画であったが、米軍のOsprey事故や、陸自のAH-64Dの民家墜落などで計画通りの佐賀配備が難しい状況となっている。
 このため、2018年秋までに納入される最初の5機については木更津駐屯地に暫定的に配備する方向となった。 ただ、木更津は佐賀に比べて南西諸島から遠く、島嶼攻撃など有事の際の対処が遅れる可能性もある。 (1804-032602)
4・9・3・6 ASM-3

 防衛省が国産初の超音速ASMとなるASM-3の開発を完了し平成31年度に量産を開始して島嶼防衛などを担うF-2戦闘機に装備し抑止力を強化する。
 平成15年度に開発をす開始し2017年7月まで15回の実射試験を重ね2017年末に分析を終えたASM-3はMach 3以上で艦船に迫るため迎撃がより困難になる。
 ASM-3の射程は百数十㎞と既存のミサイルと同程度だが、新型のジェットエンジンを搭載したことで超音速を実現した。 (1802-010702)
4・9・3・7 艦船進水/就役

Aegis 護衛艦の七番艦まやが進水

 海上自衛隊7隻目のAegis護衛艦まやの命名進水式が7月30日に行われた。 まやには海自艦で初めてCECを搭載され、2020年3月に就役する。
 また、乗員300名の1割程度が女性になると想定し、女性用のベッドや風呂、トイレを集めた区画を初めて建造時から設けられた。 (1808-073004)

 防衛省が2隻建造する改あたご型Aegis駆逐艦の一番艦まやが7月30日に進水した。 7隻目のAegis駆逐艦になるまやはAegis Baseline 7Jを装備しCECも装備する。
 全長はあたご型より5m長い170m、排水量が400t増えて8,200tで、GE社製LM2500ガスタービン2基によるCOGLAGで推進し30ktの性能を持つ。 (1808-073006)

 防衛省が2隻建造する27DDGの一番艦まやがマリンユナイテッド社磯子事業所で進水した。 全長170m、排水量8,200tのまやはAegis Baseline 9/BMD 5.1の日本仕様であるBaseline 7JとCECを装備し、2020年に就役すればE-2Dとの連接ができるようになる。 4機発注したE-2Dの1号機も2020年に引き渡される。
 まや型の二番艦は2019年に進水し、2021年に就役することになっている。 (1808-073007)

 横浜のJMU社で2隻建造する改あたご型護衛艦の一番艦が7月30日に進水しまやと命名された。 まやはあたごより5m長く排水量も400t増え8,200tになる。 就役は2020年3月の予定である。  まやはAegis Baseline J7を装備してSM-3 Block ⅡAを装備するほかSM-6も搭載できる。 またCECも装備し、同じくCECを装備する他の艦船と監視や照準のための目標情報を共有できる。 (1810-080810)

あさひ型護衛艦 (25DD) 一番艦あさひ

 海上自衛隊が3月7日、4隻建造するあさひ型護衛艦 (25DD) の一番艦あさひを就役させ、佐世保を基地とする第2護衛隊群に配属した。
 全長51m、基準排水量5,100tのあさひはCOGLAG推進で、2016年10月に進水した。 二番艦のしらぬいも2017年10月12日に進水している。 (1805-032107)

平成30年度護衛艦

 MHI社が1日、防衛省から護衛艦2隻を受注したと発表した。 契約額は明らかにしなかったが平成30年度予算には2隻分として922億円が確保されている。 2隻は2022年3月に引き渡される。
 同級艦の建造は4隻が計画されていて、残りの2隻分として31年度予算に995億円が要求されている。
 建造される護衛艦は全長130m、全幅13m、排水量3,900tでヘリ1機を搭載し、艦載型の03式改SAMが装備される。 このほかに127mm 62口径砲1門、VLS 1基、SeaRAM CIWS 1基が装備される。 (1812-110205)

そうりゅう型9番艦せいりゅう

 3月12日に、そうりゅう型9番艦のせいりゅうが就役し横須賀の第2潜水隊群に配属された。 (1805-032107)

そうりゅう型11番艦おうりゅう

 そうりゅう型を大幅に改良し初めてリチウムイオン電池を搭載するなど最新技術を詰め込んだ潜水艦(27年度艦)が、10月4日に三菱重工業神戸造船所で進水しおうりゅうと命名された。 2020年3月の引き渡しを予定している。
 そうりゅう型11番艦のおうりゅうは全長84m、基準排水量2,950t、水中速力は20ktで、従来の鉛蓄電池に代えてリチウムイオン電池を搭載したことにより蓄電容量が大幅に増大し、非大気依存推進 (AIP) の搭載もやめた。 (1811-100404)

 MHI神戸で10月4日、初めてリチウム電池を搭載したそうりゅう型潜水艦おうりゅうが進水した。 おうりゅうは2020年に就役する。 (1812-101704)

あわじ型掃海艦二番艦ひらど

 海上自衛隊が3月16日、あわじ型掃海艦の二番艦ひらどを就役させ、横須賀の第1掃海隊に配属した。 同型の一番艦であるあわじは2017年3月に就役している。
 あわじ型掃海艦は全長67t、全幅11m、喫水5.2m、基準排水量690tで速力14ktの性能を持つ。 (1804-031904)
【註】 満載時排水量780tのあわじ型掃海艦は、基準排水量1,000t、満載時1,700tのやえやま型の後継艦で、3隻の建造が計画されていたが、更に建造数が増える可能性がある。

潜水艦救難艦ちよだ

 三井造船玉野造船所で3月20日、海上自衛隊の潜水艦救難艦ちよだの就役式が行われ、横須賀を基地とする第2潜水隊群に配属された。
 全長128m、全幅20m、喫水5.2m、排水量5,600tのちよだは速力20ktの性能を持ち、534億円で建造された。 (1805-032809)

4・9・3・8 その他の新装備等

4・9・3・8・1 陸上装備

装輪155mm/52口径 SPH

 防衛装備庁 (ATLA) が装輪155mm/52口径SPHを開発しているが、6月下旬にJSW社からMAN社製トラックに搭載した試作品5両を受領した。
 試作品は全長11.4m、幅2.5m、全高3.4mで、ATLAによると現有のFH-70に比べて機動性に優れ、標定や照準がネットワーク化されているという。 (1809-071112)

機雷探知 UUV

 複数の政府関係者が、海底の機雷を探知する初の国産UUVを、平成31年度に調達する方針を固め、31年度予算の概算要求に数億円を計上し、34年度から運用を始めることを明らかにした。 日本の離島が占拠され、周辺海域に機雷が敷設された場合に機雷を除去することができる。
 UUVは全長5m、重量1tでUSVと組み合わせて使用する。 機雷の処分では、まず護衛艦からUUVを投入して設定した海域を自動航行させ、搭載したソナーで海底に敷設された機雷を探し出し、機雷を探知したら位置情報をUSVに送り爆雷を投下する。 (1807-062802)

地雷原処理装置

 防衛省が、離島防衛の能力強化の一環として、平成35年度の導入を目指してAAV-7に搭載する水際地雷などを爆薬を投射して破壊する地雷原処理装置の開発に着手する。
 3月末に相浦駐屯地に新設される水陸機動団は31年度までに52両のAAV-7を配備するが、開発する地雷原処理装置はこれらの水陸両用車の上部ハッチに装着できるようにする。 (1803-021201)

車載対 IED システム

 防衛装備庁陸上装備研究所が10月6日、IEDを高速で探知する車載システムを開発していると発表した。 展示されたシステムは自衛隊の高機動車に搭載されていた。
 システムはマイクロ波レーダ、ミリ波レーダ及びIRカメラからなり、市街地や準市街地の道路の路面上設置又は埋設されたIEDのデータを高速で3Dマップ化し探知する。<
 装備庁は平成27~29年度にNECに7.1億円で試作を発注し、30年度に10億円で試験を行ってきた。 31年度概算要求では更なる試験に20億円を要求している。
 一方陸上装備研究所は、平成22~24年にレーザイメージングレーダLIDARを試作しており、IED探知用に車両搭載するよう提案している。 (1812-102413)

AH-X

 陸上自衛隊は現在70機のAH-1S Cobra攻撃ヘリを保有しているが、その後継機に関して出されたRfIにBell社はAH-1Z Viper 50機を提案している。
 AH-1S後継には艦載能力が求められている。 (1812-112809)

 防衛省が現有AH-1S Cobra攻撃ヘリの後継を検討しており、2018年初めにRfIを発簡している。 RfPは3~4ヶ月後に発簡される模様である。
 RfIでの要求性能についてBell社の顧問で元米海兵隊航空部隊長であったトゥルーマン退役中将は、艦載型で前進基地や艦上で運用できることが要求されていることを明らかにした。 また生産機数が30機、40機、50機の場合についての価格も求められているという。
 AH-1S後継についてはBell社がAH-1Z Viper、MHI社がUH-60J/JA Black Hawkにスタブを取り付け武装する案、Boeing社がAH-64E Apache、Leonald社がAW249を提案している。 (1812-112907)
UH-X

 陸上自衛隊が150機装備する計画のUH-Xが、宇都宮のスバル社工場で試作機の地上試験に入っている。
 UH-XはBell 412EPを元にした多用途ヘリで、2019年はじめに初飛行が行われる。 (1812-112807>)

96式装輪装甲車後継の開発中止

 防衛省が7月27日、平成30年度に開発を終える予定だった96式装輪装甲車後継の試作品が要求性能を満たさなかったことから開発を中止すると発表した。
 陸上自衛隊は380両保有している96式後継の開発を2014年に開始し、19.7億円でコマツに試作品を発注したが、防弾板や軽量化の点で要求性能を満たさず、2017年12月には開発完了の時期を2021年に延期したものの、それでも開発の見通しが立たないとみて中止を決めた。 (1808-072904)

4・9・3・8・2 航空装備

F-15の改良計画

 防衛省がF-15の改良を計画していて、そのための予算を平成31年度に$89M要求している。 改良では搭載武器数の増加やAGM-158 JASSM搭載能力付与などが計画されている。
 武器搭載能力では現有のF-15がAAM 8発であるのに対し、Boeing社が11月30日まで東京で開かれていた国際航空博に展示したAdvanced F-15Eは18発搭載している。
 レーダのAESA化も考えられており、サウジのF-15SAやシンガポールのF-15SGでは既にRaytheon社製のAN/APG-63(V)3 AESAレーダが搭載されている。 (1812-113010)

次期 ELINT / SOJ機

 防衛省が海上自衛隊向けに1件、航空自衛隊向けに1件のELINT及びEW機に関するRfIを発簡した。 P-3を母体としたEP-3、OP-3などの後継となるもので、機体にはMHI社製のMRJも候補になる。
 搭載電子機器の小型化と省力化からこれらの機体はビジネスジェット機で足りるが日本ではその種の機体を製造していない。 上昇限度では39,000ftのMRJはビジネスジェット機に劣るが、MRJの機体縮小型のMRJ70が提案されると見られる。
 このほかC-2も選定対象になると見られる。 (1807-052102)

 防衛省が自衛隊がECM機を装備する検討を始めた。 SOJとしての運用を想定しており独自に開発する場合にはC-2輸送機や民間旅客機を改造する案が有力と見られる。
 しかし、電子攻撃機は政府が否定する敵基地攻撃能力の保有につながる可能性があり、「専守防衛」との整合性が問われそうだ。 (1808-072903)

E-767 のミッションコンピュータ能力向上

 米国防総省が3月29日、航空自衛隊のE-767 AEW&C機のミッションコンピュータの能力向上のFMS契約を$64.8MでBoeing社に発注したことを明らかにした。 E-767 4機のミッションコンピュータ能力向上は4回目で、累計額は$125.7Mに達する。
 今回の契約にはESM装置や衝突予防装置の搭載や、IFF応答機をAN/APX-119からUPX-40に換装することも含まれている。 (1805-040407)

 Boeing社が航空自衛隊のE-767 AEW&C機のコンピュータ能力向上を$64.8Mで受注した。 契約はFMSで行われ、この結果E-767搭載コンピュータの累積コストは$125.7Mに上る。
 今回の能力向上によりE-767は米空軍などが装備するE-3 AWACSとの共通性が高まることになる。 (1806-041111)

4・9・3・8・3 海上装備

大型 UUV 開発へ

 政府筋が11月4日、防衛省が次期中期防に「無人装備の活用推進」として大型UUVの開発を明記し、高い警戒監視能力を持ち島嶼防衛強化の目玉装備と位置付ける意向を固めたことを明らかにした。
 尖閣諸島周辺を含め海洋進出を図る中国に対して警戒監視能力を高める必要性に迫られていることが要因で、防衛省はUUVなど隊員が搭乗しない無人装備を重視する。 (1812-110503)
【註】 UUVの開発については、かねてから日仏防衛技術協力の主要テーマとなっていた。

 政府が、尖閣諸島がある東シナ海で中国軍などの潜水艦を警戒監視する能力を強化する狙いで警戒監視用のUUVを導入する方向で検討に入った。 防衛省は平成31年度から試作機の開発を始め、37年度の運用開始を目指す。
 開発するUUVは全長10~15mで、事前に設定した海域を数日から1週間程度、自動航行できる性能を持つ。
 ただ潜水艦の探知、警戒監視には海中の水温分布や塩分濃度、海底の地形なども影響することから、UUVは海洋観測も行い、必要なデータを収集する。 (1812-113004)

病院船の検討

 政府や民間の既存船舶を活用して海上から被災地の医療活動を支援する病院船の在り方について検証した内閣府の報告書が5月12日に判明した。
 米海軍などが保有している病院船について日本では2011年の東日本大震災の津波被害を受け、沿岸の広い範囲で医療機能が麻痺したことから建造構想が浮上したが、巨額費用がかかることなどから建造を断念した経緯があり、代替策を検討していた。 (1806-051301)

4・9・3・9 その他の装備導入

4・9・3・9・1 E-2D

E-2D の3/4号機を発注

 米国防総省が6月1日、防衛省が4機の購入を計画しているE-2Dの3号機を$153.2Mで発注したと発表した。 2020年3月までに納入される。
 防衛省は2015年11月と、2016年7月に1機ずつを発注しており、E-2Dの累計発注額は$780Mに上っている。 (1808-061317)

 9月6日には最初の売却するE-2D 4機の最終機号機の契約が行われた。 (1810-091103)

E-2D の追加装備

 米国務省が9月10日、日本から既に4機が発注されているE-2D Advanced Hawkeyeを更に9機売却することを承認した。 米国防安全保障協力局 (DSCA) によると総額は$3.135Bにのぼる。
(1810-091103)

 老朽化で今後退役するE-2Cの代替機を検討してきた防衛省がE-2Dを最大9機追加調達する方針で平成31年度予算の概算要求に2機分の取得費として544億円を計上している。 次期中期防に追加取得を明記する。
 総額は9機で3,000億円超の見込みで、これとは別に7機分の一部部品を先行取得する費用も盛り込んだ。 (1811-101104)

 Northrop Grumman社が日本から9機が追加発注されるE-2Dの製造準備に入っている。
 11月16日に米国防総省から$32.73Mで受注した4機は生産の各種段階にあり、5号機の先行生産に入っている。 一次生産分は2019年末から2020年末までに納品され、5号機についても2022年末には納品される。
 これらのE-2Dは現在装備しているE-2C 13機と一緒に運用される。 (1901-112811)

4・9・3・9・2 UAV

RQ-4 Block 30i Global Hawk

 日本政府が11月19日、RQ-4 Block 30i Global Hawk 3機を$489.9MのFMS契約に署名した。 3機は2022年9月1日までに納入される。
 契約には搭載機器のほか、地上用制御装置2基と補用部品などが含まれている。 (1812-112010)

 日本政府が11月19日にRQ-4 Global Hawk 3機を$489.9Mで発注した。 米国防総省は3機のBlock 30i (international) をFMSで売却する。
 引き渡しは2022年9月1日で、契約の総額は$1.2Bにのぼると推測されている。 (1901-112812)

Avenger 武装 UAV の導入検討

 政府は、日本周辺で活動する中国軍の艦艇や北朝鮮の密輸取引の監視体制を強化するため、武装UAV Avengerを海上自衛隊に導入する方向で検討に入った。 新防衛計画の大綱にUAVの活用を位置づけ、2020年代後半に運用を始めることを目指す。
 Avengerはジェットエンジン推進で、最高時速は740km/h、滞空能力18時間以上の性能を持ち対艦ミサイルや爆弾も搭載可能とされ、人員を危険にさらすことなく敵の艦艇などに反撃できる。
 海自は日本周辺を航行する中国海軍の艦艇や、北朝鮮の瀬取りなどの警戒監視に活用したいとしている。 (1812-110903)
【註】 Avengerは、MQ-1 Predator、MQ-9 Reaper (Predator B)、に続くシリーズの三世代でPredator Cとも呼ばれている。
 翼端長を伸ばしウイングレットも装備し、搭載燃料を増やして、滞空能力20時間に延長した長距離型Avenger-ERが、2016年に初飛行している。
 ただ、初飛行から10年近く経つが米国での採用は僅か2機でしかない

4・9・3・9・3 ミサイル

SM-6 の導入

 防衛省が9月3日、あたご改型護衛艦2隻にSM-6を装備することを明らかにした。 このため平成31年度予算にSM-6弾購入として111億円、試験用弾購入費として210億円を要求している。 (1811-091207)

SM-3 の追加購入

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が11月19日、日本へのSM-3の輸出を国務省が承認したと発表した。  SM-3 BlockⅠB 13発とBlock ⅡA 8発であわせて$561Mである。 (1901-112804)

AIM-120C-7 の追加購入

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が11月19日、日本へのAMRAAMの輸出を国務省が承認したと発表した。  AMRAAMはAIM-120C-7で、32発で$63Mである。 (1901-112804)

4・9・3・9・4 その他

Mk15 Phalanx CIWS Block ⅠB Baseline 1 を Baseline 2 に改良

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が3月2日、国務省が日本が装備しているMk15 Phalanx CIWS Block ⅠB Baseline 1 24基をMk15 Phalanx CIWS Block ⅠB Baseline 2に改良する$45MのFMS契約を承認したと発表した。 (1804-030602)
【註】 Baseline 1とBaseline 2の違いは脅威判定性能の向上並びに信頼性の向上で、Baseline 1との見分け方としては、レドームの色が白色から灰色になっている。

AN/ALR-69A(V) RWR

 Raytheon社が米空軍から、日本にFMSで売却するAN/ALR-69A(V) RWRを$90Mで受注した。 AN/ALR-69Aは米空軍がC-130HやKC-46A搭載用として779基購入しており、F-16への搭載試験も行われている。
 AN/ALR-69A(V) の特徴は学習機能を持つことで、新たに出現した脅威に対し自動的に対応することができる。 (1806-053003)
【註】 F-35の最終版のソフトBlock 3Fでも、脅威データなしでもMiG-29とSu-27を見分け ることができるようになるMDF機能が搭載される。

4・9・4 武器輸出

4・9・4・1 インドとの US-2i 商談

 日本とインドの政府間でUS-2のインドへの輸出について協議が続くなか、インド側が要求していた製造技術の移転へ向けたインドと日本のメーカの合意が成立し、今後両国政府の協議が大きく進展する可能性が出ている。 インド側は一定数の機体をインド国内で生産することを条件に挙げ、技術移転を求めてきた。
 こうした中、インドの有力財閥Mahindra傘下企業Mahindra Defence社が4月中旬にインド南部で開かれた兵器の国際見本市で、新明和工業と機体の製造や組み立てなどで協力することで合意しMoUを締結したことを明らかにした。 (1805-041701)

 インドのMahindra社が4月11日、インド政府が調達しようとしているUS-2iの生産と整備などについて新明和工業と協力するMoUを結んだと発表した。
 インドは2010年末に新明和を含む4社に飛行艇に関するRfIを発簡したが、その中でSea State 5でも運用できる機種はUS-2iだけである。 (1806-041806)

4・9・4・2 ギリシャとの US-2i 商談

 政府がUS-2をギリシャに輸出する検討に入った。 ギリシャは消防飛行艇としての活用する考えで、取得交渉を進める意向を日本側に伝えており、今後本格的な協議に入る。
 ギリシャは老朽化した機材の更新を検討中で、数十機規模の需要があるとみられる。
 ただ深刻な財政危機を経験したギリシャの懐事情は厳しく、日本政府関係者によるとギリシャはEUの支援を求める考えで、日本政府もEUと協議する構えでいる。 (1808-072901)

 Nikkei Asian Review紙が7月下旬に日本とギリシャがUS-2の商談を開始したと報じたが、防衛装備庁が8月2日にJane'sに対しこの事実を認めた。 ギリシャが検討しているのは消火活動用の数十機という。
 US-2については今までにインド、インドネシア、タイから商談があった。 このうち最大となるのはインドで、完成機2機とライセンス生産機10機の合わせて12機が検討されている。 (1809-080305)

4・9・4・3 タイ空軍レーダへの応札

 国家安全保障会議 (NSC) の閣僚会合が3月、タイ空軍が月内にも実施する防空レーダの入札に三菱電機が参加することを承認した。 入札には米国や欧州など複数国の企業が参加するもようで、結果は今春にも判明する見通しである。
 入札の対象はタイ北部に配備するレーダで、三菱電機が製造したFPS-3を基にタイが求める仕様に合わせて提案する。 価格は10億~20億円程度になる見込みである。
 タイ空軍は今後、老朽化したレーダ順次切り替えていく予定で、さらに10基程度の需要があると見込まれている。 (1804-031002)

 防衛装備庁が、三菱電機が参加していたタイ空軍の防空レーダの入札でスペイン企業が落札したと明らかにした。
 初の国産装備品輸出を狙ったが、2016年のオーストラリアへの新型潜水艦売り込みに続く失敗となった。 (1808-072101)

4・9・4・4 フィリピンへのレーダ応札

 政府が防空レーダをフィリピンへ輸出する検討に入り、フィリピン政府への技術情報の提供を始めた。 実現すれば初めての国産装備品の海外輸出となる。
 フィリピンに打診しているのはFPS-3の改良型で、日本国内では旧世代のレーダだが、フィリピンが想定する用途にあわせて改良しコストを抑えて受注をめざす。 価格は10億~20億円程度になる見込みである。
 日本政府関係者によるとフィリピンは日本だけでなく米国やイスラエルにも打診しており、それぞれの提案を見比べた上で2019年早々にも発注先が決まる見通しである。 (1901-120802)
4・9・4・5 その他の案件

F-35 構成品の輸出

 防衛装備庁がF-35国産の際に国内生産する構成品を輸出することを考えている。
 F-35の国産ではエンジンを生産するIHI社や電子装置を生産するMELCO社などが下請けに入るが、IHI社は19アイテム、MRLCO社は10アイテムの構成品を国産するという。 (1811-091208)

保有する F-15 の一部を米国に売却

 複数の政府高官が、航空自衛隊が保有するF-15の一部を米国に売却する検討を始めたことを明らかにした。 すでに日米高官が協議を始めており、機体の数や売却額など詳細を今後詰める。
 米側は日本から購入したF-15を、空軍力が脆弱な東南アジアなどに売却する可能性も含め検討する意向を示している。
 航空自衛隊はF-15を約200機保有し約半数を搭載する電子機器を更新するなど近代化改修を順次進めてきた。 今回売却を検討するのは設計上、電子機器を更新できない旧型の約100機で、政府は12月18日の閣議でこの旧型をF-35に換装する方針を決めている。 (1901-122401)

4・9・5 技術協力、共同開発

4・9・5・1 技術協力

4・9・5・1・1 英国との技術協力

 特記すべき記事なし。
4・9・5・1・2 フランスとの技術協力

 小野寺防衛相が6月3日、訪問先のシンガポールでパルリ仏国防相と会談し、機雷探知技術の共同研究など防衛装備技術分野での協力推進で一致した。
 北朝鮮問題についても意見交換すると共に、双方は中国を念頭に南シナ海情勢を巡る一方的な力による現状変更を許さず、地域の平和と安定のため引き続き連携すると確認した。 (1807-060303)
4・9・5・1・3 その他諸国との技術協力

インドとの技術協力

 小野寺防衛相がインドを訪問し、8月20日にインドのシタラマン国防相と会談した。
 日本とインドの間はUS-2の共同開発と生産では進展がないが、インドDRDOと防衛装備庁の間では2018年初めにUGVの共同開発で合意してる。 (1809-082107)

 インド国防相と小野寺防衛相が8月20日にニューデリーで会談し、防衛装備の開発と生産での協力強化で合意した。
 US-2の商談が進んでいない中、両国はUGVやロボットの共同開発で合意した。 (1810-082914)

インドネシアとの技術協力

 防衛装備庁技術戦略部の佐々木副部長がジャカルタで開かれているIndo Defence 2018展で、日本とインドネシアが防衛技術協力と装備品の輸出について協議中であることを明らかにした。
 これは2017年始めに発表された共同声明を具現化するもので、2017年8月に防衛企業の協議会が設立されている。 (1812-110701)

4・9・5・2 共同開発

4・9・5・2・1 哨戒機共同開発への参画構想

 防衛省が、ドイツとフランスが計画する哨戒機の共同開発に参画を目指して両国国防当局と接触しており、3ヵ国の企業はすでに情報交換をしているという。

 複数の政府関係者によると日本がP-1の機体を提供し、全体の取りまとめや搭載システムの開発をDassault社やThales社が行う構想である。
 しかしこの案件には欧米企業との激しい競争が予想され、Airbus社はA320neoを軍用機に転用することを計画を、Dasdsault社はビジネスジェットのFalcon 8Xを活用することを考えている。 またBoeing社はP-8を提案してくるとみられる。 (1805-042502)

 政府が、独仏共同開発の新型哨戒機の開発生産に協力するため両国と協議に入った。 川崎重工業のP-1の技術や部品の売り込みを検討している。
 政府は国内の装備品産業の振興のため、完成品輸出を働き掛けているが難航しているため、開発協力や部品輸出も並行して進める考えである。
 独仏は日本ほど哨戒機を活発に運用しているわけではないため、調達コストをできるだけ削減する目的で2018年4月に両国で共同開発をする覚書を結んでいる。 (1809-082001)

4・9・5・2・2 掃海作戦用 UUV の日仏共同開発

 日仏の外務防衛閣僚が1月26日に東京で2-plus-2を開き、防衛協力と防衛技術協力の拡大で合意した。
 防衛技術協力では掃海作戦用UUVの共同開発と共同生産の可能性と共に、ロボット技術やサイバ防衛技術の共同研究についても話し合われた。 (1804-020711)
4・9・6 防衛技術基盤の強化

海外製品の共同生産

 Rolls-Royce社が5月21日、海上自衛隊が200基以上装備しているMT30ガスタービンエンジンのKHI社との共同生産と将来を見据えた協力を継続してゆくことを明らかにした。
 MT30はあさぎり型、はたかぜ型、むらさめ型、たかなみ型のDD及びあぶくま型DEで採用している。 (1806-052205)