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2. 係争地域の情勢

2・1 中 東

2・1・1 まだ続く ISIS との戦闘

2・1・1・1 イラクでの ISIS との戦闘

 イラクからの報道によると、北部キルクーク近郊で2月18日夜にシーア派民兵組織「人民動員隊」がISISの待ち伏せ攻撃を受け、少なくとも27人が死亡した。
 イラクではモスルが2017年7月に解放され、12月にはアバディ首相がISISの駆逐を宣言したが、残党が山岳地帯などに潜伏しているとされ、1月にはISISの犯行とされる連続自爆テロが首都バグダッド中心部で起きている。 (1803-021902)

 イラク政府がISISとの戦いに勝利を宣言して7ヶ月経つが中部イラクではISISの活動は継続しており、 過去2ヶ月間だけでも中央政府や地方政府の官僚など数十名が誘拐され殺害されている。 (1808-071707)

2・1・1・2 シリアでの ISIS との戦闘

 Afrinに侵攻してきたトルコとの戦いのためKurd軍を主力とするSDFがISISとの戦場から離れるのに伴い、ここ2週間におけるシリア東部での米軍による空爆が半減している。 (1804-030903)

 イランのTasnim通信が7月12日、シリアDeir al-Zour州のAl-Bukamal市で11日にイラン人戦闘員3名がISIS戦闘員に殺害されたと報じた。 (1808-070505)

 シリアにおける米国主導のOIRに参加している仏軍准将が7月24日、まだ数百名のISIS戦闘員が、Hajin市などイラクとの国境に近いユーフラテス川沿いで抵抗しており、シリア民主軍 (SDF) の動きが遅くなっているためその掃討には2~3ヶ月はかかると述べた。 (1808-072409)

 国連安保理の専門家会議が8月13日に配付した報告書が、シリアとイラクのISISは依然として20,000~30,000の勢力を保持しているとみられると共に、アルカイダと同様に国際的なネットワークを構築していると警告している。 (1809-081304)

 米中央軍が9月11日、シリア北東部におけるISIS掃討作戦が最終段階に入ったと発表した。 米国の支援を受けるクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) が10日、北東部のISIS残党の拠点に対し地上侵攻を開始した。
 米軍が主導する有志連合とSDFは5月にラッカを制圧した後にイラクとの国境地帯やユーフラテス川流域に散らばったISIS残党の掃討作戦を開始し、これまでの二段階の作戦で北東部の拠点2ヵ所を壊滅している。
 締めくくりとなる第三段階では、ユーフラテス川東岸にあるHajinなどの拠点制圧を狙う。 (1810-091203)

 クルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) が12月14日、3ヶ月の激戦の末ISIS最後の拠点Hajinを攻略した。
 これでイラクとシリアの都市は全てISISから奪還したが、残党はユーフラテス河東岸でSDFの支配地域の西側にあるSousa、Buqaan、Shaafah、Baghouz、Shajlaなどの農村部に逃げ込んでいる。 (1901-121405)

2・1・1・3 ISIS の薬物使用

 イラクとシリアでISISと戦ってきた連合国軍がISISの麻薬貯蔵施設を破壊した。 この施設には30万錠以上のCaptagon(フェネチリン)やその他不法薬物が貯蔵されており、ISISはこれらを "Jihadi pill" と呼んでいた。 (1807-061910)
2・1・2 クルド問題

2・1・2・1 イラクでのクルド問題

2・1・2・1・1 トルコの越境攻撃

 イラク北部のSinjarに駐留していたクルド労働者党 (PKK) の部隊は、トルコのエルドアン大統領が攻撃すると脅しているのを受け3月23日に撤退した。 トルコは3月中旬にPKKのキャンプに対し空爆を行っている。
 PKKはSinjarに住むヤジディ教徒をISISの虐殺からPeshmergaと協力して護るため、2015年にSinjarに入っていた。 (1804-032305)
2・1・2・1・2 空港管理権の連邦政府への移譲

 イラク首相府が3月13日、北部クルド人自治区の中心都市アルビルとスレイマニヤの2空港での国際線発着を再開させると発表した。 アバディ首相は封鎖解除の理由として、自治政府側が2空港の管理権を連邦政府に移譲することで合意したと説明した。
 クルド自治政府が2017年9月、独立の賛否を問う住民投票を強行したため、イラク中央政府が同月下旬を最後に発着を中止させ、空路封鎖の制裁を科していた。 (1804-031306)
2・1・2・2 シリアでのクルド問題

2・1・2・2・1 米国主導で国境警備隊の創設配置

 シリアとイラクでISIS掃討作戦を展開する有志連合軍の報道官がAFP通信に対し1月14日、シリア北部で30,000名規模の国境警備隊を創設する準備を進めていることを明らかにした。
 国境警備隊の約半分はクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) の兵士を再訓練して採用することからトルコが強く反発している。 (1802-011501)

 トルコのエルドアン大統領が1月15日、米国主導の有志連合がシリアでクルド人勢力を主体とする国境警備隊創設を準備していることに対し、私たちがやるべきことはこのテロ集団の芽を摘むことだと批判、警備隊発足を阻止する考えを表明した。
 トルコ外務省も大統領演説に先立つ14日に声明を出し、全く受け入れられないと計画に強く反発していた。(1802-011503)

 アサド政権の国営シリア・アラブ通信 (SANA) が1月15日、シリア外務省筋が米軍主導の有志連合がシリア北部でクルド軍を主力とする国境警備隊の創設準備を進めていることを非難し、入隊者は「国民と国家に対する裏切り者」と見なすと警告したと報じた。(1802-011601)

 マティス米国防長官が2月13日にローマでトルコのジャニクリ国防相と、同国がシリア北西部Afrinで実施しているクルド勢力への軍事作戦について協議した。 マティス長官はトルコ側の「正当な安全保障上の懸念」を話し合い、引き続きトルコ側にISIS掃討に集中するよう求めていく考えを示した。
 米国防総省が12日に発表したFY19国防予算案に、クルド軍などシリアの反体制派に対する訓練や装備品などの支援や国境警備部隊創設などに$550Mを計上したことにトルコ側は反発している。 (1803-021403)

2・1・2・2・2 トルコのロシアとイランの連携工作

 トルコのチャブシオール外相が1月10日に同国のアナトリア通信のインタビューで、シリア内戦をめぐってロシアとイランに対し、北西部イドリブ県でのシリア軍による反体制派への攻撃を阻止するよう要請した。
 シリア和平を仲介するロシア、トルコ、イランの3ヵ国は2017年9月に戦闘を禁じる「安全地帯」をイドリブ県に設け、3国の部隊が監視することで合意している。 (1802-011003)

 4月4日にトルコ、ロシア、イランの3ヵ国首脳会談ではシリア情勢を協議した。 3ヵ国はシリア和平を推進する「アスタナ・プロセス」を2017年から主導しているが、シリアでは戦闘が収まっていない。
 ロシアやイランが支援するアサド政権は陥落が目前のダマスカス近郊東グータ地区に無差別空爆や砲撃を行っており、トルコはシリア北西部への越境軍事作戦を続けていて、アサド政権の処遇などを巡る利害の不一致を抱え、長引く内戦の出口を示すのは難しそうである。 (1805-040404)

 ロシア、イランとの3ヵ国首脳会談に臨んでトルコのエルドアン大統領が4月4日、シリア北部のクルド人勢力を一掃する手を休めないと意思表示した。 (1805-040406)

2・1・2・3 トルコとクルドの戦い

2・1・2・3・1 トルコの主張

 オバマ政権時代の米国はトルコのとの間で、クルド軍をユーフラテス川以西に進出させないとの約束を盾に、クルド軍が2016年にISISを以来確保しているManbijからのクルド軍の撤退を要求している。 (1804-031004)
2・1・2・3・2 Afrin 争奪戦

 トルコのエルドアン大統領が1月14日、シリア北部のアレッポ県にあるクルド人の町Afrinで、トルコがテロ組織として敵視しているクルド人勢力に対する新たな軍事作戦を一両日中に開始する考えを明らかにした。  軍事作戦とは地上作戦を意味するとみられる。
 トルコのメディアによると、トルコ軍は既に同国南部ハタイ県の対シリア国境に戦車などを配置し、13日にAfrinに対し少なくとも40回以上の越境砲撃を加えたという。 (1802-011401)

 AFP通信などによると、トルコのエルドアン大統領が1月20日、シリアのトルコ国境に近い町Afrinに対する新たな地上戦を開始したことを明らかにした。 トルコのメディアによれば、トルコ軍戦闘機がAfrinのYPG拠点への空爆を開始し、これと同時にトルコが支援するシリア反体制派の自由シリア軍 (FSA) がAfrin に入った。
 Afrinはトルコがテロ組織とみなすクルド人民防衛部隊YPGが支配している。 (1802-012004)

 トルコのエルドアン大統領が1月20日、シリアのトルコ国境に近い町Afrinに対する新たな作戦を開始したことを明らかにした。 トルコ軍は戦闘機でクルド勢力のYPGが支配しているAfrinへの空爆を開始した。
 この前にトルコ軍の情報担当者がモスクワを訪問してロシア側に計画を説明しており、その2日後にAfrin近くに展開していたロシア軍は撤退していた。
 6日前にはティラーソン米国務長官が、シリア北部の治安維持のためクルド軍と共同で30,000名規模の国境警備隊を創設すると発表し、これに対しトルコ首脳部が激怒していた。 (1802-012007)

 トルコ軍が1月20日、シリア北西部のクルド人の町Afrinへの「オリーブの枝」作戦を開始した。 クルド軍YPGをシリア北部国境地帯から排除することが目的という。
 アナトリア通信によると、トルコ軍は21日までに空爆や砲撃でYPGの拠点150ヵ所以上を攻撃し、地上ではトルコ軍とトルコが支援する自由シリア軍 (FSA) がAfrinへの進攻を開始した。
 シリアでのISIS掃討作戦でYPGを支援してきた米国との関係がさらに冷え込む可能性がある。 (1802-012102)

 トルコがシリア北西部で1月20日に開始した作戦では、トルコ軍機による空爆に加えて地上ではトルコ軍部隊とトルコが支援する自由シリア軍 (FSA) がAfrinに進攻し既に幾つかの村を制圧した。
 トルコ大統領府報道官が23日、作戦はトルコに避難しているシリア難民約350万人が無事故郷に戻るまで続けると明言した。 (1802-012401)

 トルコ軍とその同盟関係にあるシリアの反政府勢力自由シリア軍 (FSA) が1月20日、Afrin北方の山岳地帯でクルド軍に対する作戦 "Operation Olive Branch" を開始した。 トルコ首相はかつて、トルコ国境からシリア側30kmを安全地帯として確保すると述べている。
 エルドアン大統領は26日、トルコ軍とFSAはAfrinを確保し、Manbijに向け進撃していると述べた。 ユーフラテ ス河西岸のManbijは2016年にYPGがISISから奪取している。 (1803-013101)

 米国やフランスが反対するなか、トルコにより機動化された自由シリア軍 (FSA) 10,000名がクルド軍が所在するシリア北部の都市Afrinに攻勢をかけている。
 トルコ国営通信社Anadoluが2月1日に、トルコ軍がAfrin北方のBulbulを制圧したと報じたが、在英のシリア人権監視団はトルコ軍はBulbulに達したものの攻防が続いているとしている。
 1日に撮影された映像には、トルコ側民兵が横たわる複数の女性クルド兵の胸を触ったり陵辱する様子が映っている。
 こうしたなかシリア政府軍は、反政府勢力が確保しているダマスカスとアレッポを結ぶ要衝であるIdlibに攻勢をかけている。 (1803-020106)

 Afrinのクルド軍YPGを攻撃するトルコ軍の "Operation Olive Branch" に参加するトルコ軍のM110 203mm SPHが、トルコのHatay県で目撃された。
 トルコ軍はこの作戦にT-155 155mm SPHも投入している。 (1804-020706)

 トルコ軍がAfrinのクルド軍攻撃にM60T MBTを投入している。
 トルコ軍は2017年9月にイラク軍と国境を挟んだ演習を行っている。 (1804-022103)

 シリア北西部Afrinではトルコ軍と自由シリア軍など武装諸派が作戦を展開し、クルド人民防衛隊 (YPG) との激しい攻防戦が続いてトルコ国境線地帯の多くの村々が制圧され、クルド側が苦戦を強いられるなか、Afrinにアサド政権派民兵が入った。
 トルコ国境沿いの村々は既に殆どが武装諸派の手に堕ち、村々から大勢の住民がアフリンに着の身着のままで逃れてきている。 (1803-022703)

 在英のシリア人権監視団が3月12日、シリア北西部Afrinでトルコ軍によるクルド人勢力に対する軍事作戦が激化し、Afrinから11日以降で民間人2,000人以上が北部アレッポ郊外へ逃れたと明らかにした。 (1804-031301)

 トルコ軍が3月13日の声明で、クルド人勢力の排除を名目としたシリアへの越境作戦で、シリア北西部Afrin中心部を12日から包囲したと明らかにした。
 在英のシリア人権監視団も13日、Afrinの東と南から進攻しているトルコ軍やその支援勢力によって、アフリンが周辺の数十の村と共に事実上包囲されたとした。 (1804-031305)

 シリアのアサド政権と後ろ盾のロシアがダマスカス近郊にある反体制派支配地域である東グータ地区への攻撃を一段と強化してから3月18日で1ヵカ月となり、在英のシリア人権監視団によると、政権軍は同日までに東グータの8割以上を制圧し、3月14日以降に東グータから逃れた市民らは約5万人に達したと言う。
 東グータの反体制派のうち3組織は、国連仲介の下で停戦に関しロシアと直接協議する用意があるとしつつ、戦闘員の強制的な移住は拒否すると徹底抗戦の姿勢を崩していない。 (1804-031801)

 トルコがシリア北西部Afrinでクルド人勢力に対して行っている軍事作戦をめぐり、トルコのエルドアン大統領が3月18日、トルコ軍自由シリア軍がAfrin中心部を完全に制圧したと宣言した。
 在英のシリア人権監視団などによれば、自由シリア軍は18日にアフリン中心部に3方向から進攻し、YPG戦闘員は撤退したという。 (1804-031802)

 トルコ外相が3月8日、シリアのクルド人に対しAfrinで行っている "Operaion Olive Branch" 作戦は3月中に決着するとの自信を見せた。 (1805-031413)

2・1・2・3・3 トルコの戦果拡張

Manbijを脅かすトルコ

 エルドアン大統領が3月18日、トルコ軍とその同盟軍がAfrinの中心部を完全に掌握したと述べた。 同大統領は繰り返し、国境地帯におけるテロの回廊は許さないと述べている。
 また大統領はAfrin制圧後は東進するとManbijを脅しているが、Manbijには2016年にISISを掃討して以来米軍も駐留している。 (1804-031804)

 3月上旬にAfrinを堕としたトルコがManbjiに軍を進めようとしており、そうなればトルコ軍はManbjiでクルド軍と行動している米軍と直接対峙することになる。
 この事態を回避するためトルコと米国は3月30日に協議するが、トルコが思いとどまるかは不透明である。 (1804-032904)

イラクに至る緩衝地帯構築を狙うトルコ

 Afrinを堕としたトルコはその勢いでイラクに至る緩衝地帯を作ろうとしている。
 トルコ外相が3月22日、トルコと米国がManbijとその周辺からYPGを撤退させることで合意したことを明らかにした。 その上でMabijを確保したのちにはユーフラテス川東岸の町々に進出すると述べた。 (1805-032801)

トルコがクルド軍支配地域にまで安全地帯を拡張する意思

 国連総会出席のため訪米したトルコのエルドアン大統領が9月23日、シリア北部に設定した安全地帯をクルド軍支配地域であるユーフラテス川東岸にまで拡張すると述べた。
 トルコは従来シリアのクルド軍をテロ組織と見なし、2016年と2018年にその排除を名目にシリア北部に侵攻していた。 (1810-092405)

トルコがクルド軍を砲撃

 トルコ軍砲兵部隊が10月28日、トルコが支援しているシリアの反政府勢力と米国が支援するクルド軍の境界となっているユーフラテス河を越えて、東岸の村Kobaniの西側にあるクルド軍拠点を砲撃した。
 YPGによるとこの砲撃で米国が支援している民主シリア軍 (SDF) を元に編成された自衛隊 (SDF) の兵士1名が死亡した。 (1811-102803)

 米国務省が10月31日、トルコがシリア北部で、米国が支援しているクルド軍に対して砲撃を行ったことに強い懸念を示した。
 トルコの砲撃を受けクルド軍を主力としたシリア民主軍 (SDF) はISISに対する攻撃を一時停止している。 (1812-110107)

 トルコがシリア北東部のクルド軍支配地域を砲撃したのを受け米国主導の多国籍軍と米国が支援するクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) が合同で巡察を行ったことに対し、トルコのエルドアン大統領か容認できないとの意向を示すと共に、この行動が国境地帯に深刻な問題を引き起こすと警告した。 (1812-110607)

2・1・2・4 クルドで対米不信の兆候

 シリアのクルド軍に対するトルコの攻撃に対し米軍はAfrinもクルドも護ろうとしていない。 このためクルド軍はAfrinを護るため、シリアの砂漠地帯でISISと対峙してきたYPGが次々と拠点を放棄している。
 クルド人の専門家で米国に居住しているAfrin出身のCiviroglu氏は、クルドの政治家や軍人にはAfrin出身者が多く、Afrinはクルド人の心のよりどころで、シリアのクルド世界KurdistanであるRojavaから切り離せないと主張している。 (1804-030904)
2・1・2・5 シリア政府軍とクルド軍

2・1・2・5・1 シリア政府軍とクルド軍の連携

 シリア国営メディアが2月19日、クルド人支配下のシリア北西部Afrinにアサド政権派の民兵部隊が間もなく進駐すると報じた。 アサド政権はかねてから、トルコによる越境攻撃を侵略行為と非難し政権派民兵を通じてクルド人勢力と共にトルコに対抗する構えで、トルコとの緊張激化も懸念される。
 トルコがテロ組織として敵視するシリアのクルド人民兵組織YPG排除を名目に、1月20日にAfrinへの侵攻を開始したためYPGはアサド政権に援軍を要請していたとされ、国営メディアは「トルコの攻撃からアフリン市民を守るため」と説明している。 (1803-021901)

 シリア人権監視団が複数の情報筋の話として2月18日、シリア政権軍がAfrinを掌握するクルド人勢力に対するトルコ軍の越境作戦を阻止するため、国境付近に政権軍部隊を配置することでクルド軍との間で合意に達したと明らかにした。
 クルドメディアもシリア政権軍が19日にもAfrinに入る見通しだと報じており、この結果トルコ軍と政権軍が衝突する可能性が出てきた。 (1803-021801)

 シリア国営TVが2月20日、トルコ軍などが侵攻して砲撃を続けているクルド人支配下のAfrinにアサド政権派の民兵部隊が到着したと報じた。 トルコとの国境地帯に配置されると見られる。 政権派民兵部隊は政権支配地域のアレッポからAfrin入りした。
 アサド政権がクルド人勢力と共闘し、トルコとの間で軍事衝突が発生しかねず、緊張が高まりそうである。 (1803-022101)

2・1・2・5・2 シリア政府軍とクルド軍の交戦

 シリア国営メディアが、アサド政権軍が4月29日に東部デリゾール県でSDFが支配していた複数の村を制圧したと報じた。
 かつてISISが占領していたデリゾール県で、その掃討作戦で米国の支援を受けたSDFとロシアが後ろ盾の政権軍が衝突するのは異例である。 (1805-042903)

 クルド軍が4月29日、一旦アサド政権側に奪われた東部の4ヵ村を奪還したと発表した。 この地域をめぐっては今後さらに緊張が高まることが懸念されている。
 アサド政権とクルド人勢力は、シリアの別の地域では協力関係にあるが、油田地帯が広がるこのデリゾール県をめぐってはこれまでにも衝突している。 (1805-043001)

2・1・2・6 列国の対応

 トルコ軍がシリア北部で、米国と同盟関係にあるクルドに対し攻勢に出た翌日の1月23日に、NATOの事務次長がトルコ軍の国防大学で講演し、NATOはトルコの対テロリズム戦を支持すると述べた。
 トルコとNATOは、ノルウェーでの演習からトルコ軍が引き上げたり、NATO諸国の反対にもかかわらずロシアからS-400を導入したりで、関係が悪化している。 (1802-012402)

 トルコ軍がシリアのクルド人勢力に対して進めている軍事作戦についてマクロン仏大統領は、侵略行為と認められれば深刻な問題だと強い調子で懸念を示した。 この問題をめぐってはトランプ米大統領が 24日にトルコのエルドアン大統領と電話で会談し、攻撃を自制するよう求めたものの、トルコ軍はその後も攻勢を強めていており 、トルコと欧米各国との対立が深まっている。
 この作戦をめぐってはトルコ国内からも懸念の声が上がっているが、トルコの捜査当局は作戦を批判した人々を相次いで拘束するなど締めつけを強めており、世論の動向に神経をとがらせていることがうかがえる。 (1803-020102)

2・1・2・7 米国の仲介

2・1・2・7・1 米国のジレンマ

 米国務省が1月21日、ティラーソン国務長官が20日にトルコのチャブシオール外相と電話し、シリア北西部のAfrin へのトルコの軍事侵攻について「深く懸念している」と伝えたと発表した。
 ロシアのラブロフ外相にも電話で同様の立場を示したという。(1802-012201)

 米国はシリアにおけるトルコ対クルド問題でどちらに付くべきかのジレンマに陥っている。 この問題がトランプ 大統領が対ISIS戦での勝利宣言をできないでいる一因になっている。 (1802-012403)

 トランプ米大統領が1月24日にトルコのエルドアン大統領と電話会談し、米国が支援するクルド人勢力への攻撃がトルコ軍と米軍との衝突の危険性にまで言及して自制するよう強く求めたがトルコ側は攻勢を強める構えを崩さず、この問題をめぐる両国間の溝が深まっている。
 トルコメディアによるとエルドアン大統領は米国に対し、クルド人勢力への武器の提供をやめるよう求めた。 (1802-012501)

 シリアのクルド軍は、1月20日にトルコがシリア北部でクルド軍が確保しているAfrinに向け開始した攻勢について米国が積極的にこれを阻止しようとしていないことについて不満を高めている。
 30万人以上が居住するAfrinはシリア領でポケットのような位置にあり、米国の部隊は所在しておらずその影響力も小さいが、クルド勢力にとってはアサド政権に対して立ち上がった際に最初に確保した地域の一つである。 (1803-020103)

 米国のトランプ大統領とトルコのエルドアン大統領が4月11日にシリア問題について協議した。
 両大統領はシリアにおける現在の危機について協議し、現況に関して引き続き緊密な連絡を取ることで合意したというが詳細には触れていない。 (1805-041208)

2・1・2・7・2 Manbijの取り扱いを巡るトルコと米国の合意

 トルコのメディアなどが、トルコが米国の代表団と5月25日にシリア北部でクルド人組織が支配しているManbijをめぐりアンカラで会談し、治安協力に向けたロードマップの概要をまとめたと報じた。
 今回の結果を受けトルコのチャブシオール外相は6月4日にワシントンでポンペオ国務長官と会談する予定だという。 (1806-052601)

 トルコを訪問中のポンペイオ米国務長官がトルコのチャヴシュオール外相と会談し、シリア北部の都市Manbijの今後に関するロードマップに合意した。
 合意の詳細は明らかにされていないが、チャ外相によるとクルド軍が6ヶ月以内にManbjiから撤退することになっているという。 (1807-060402)

 シリアのクルド人民兵組織である人民防衛部隊 (YPG) が6月5日声明を出し、YPGが駐留しているシリア北部Manbijから軍事顧問を引き揚げると発表した。
 YPGをテロ組織とみなすトルコと、YPGを支援してきた米国との合意に基づく措置とみられる。
 トルコのチャブシオール外相は5日、実施の準備は10日後に始まると述べた上で、YPGがマンビジュから撤退する際には米国からYPGに供与された武器は回収されることを明らかにした。 (1807-060504)

 6月7日に米軍主導対ISIS連合軍司令官ジャラード少将と会談したManij軍事委員会委員長が会談後、米国とトルコがMabijからのクルド軍撤退に合意したがトルコ軍もトルコと同盟関係にあるシリアの部隊もManbijには入らないと述べた。
 その上で米土両国はManbijの地区委員会を継続し、米国がこの地域を主導すると述べた。 (1807-060707)

 トルコ国営Anadolu通信が、トルコ国防相が6月8日にシリアのMabijからクルド軍が撤退した後、米軍とトルコ軍がここを協同でパトロールをすることになると述べたと報じた。 (1807-060902)
【註】 一方のManbij軍事委員会は、Manbijにトルコ軍もその支援するグループも入らないと言っている。

 トルコのエルドアン大統領が6月11日に、トルコがクルド人武装組織PKKのイラク北部の拠点に対して、本格的な軍事作戦に乗り出したことを明らかにした。 トルコ軍はイラク領内に越境して地上部隊を派遣し、すでに11ヵ所に基地を設けたという。
 トルコが6月4日に、クルド軍と協力する米国とクルド軍をシリア北部の街から退去させることで合意したため、イラクで新たな作戦に踏み出したとみられ、衝突の拡大が懸念さる。 (1807-061201)

 トルコ軍が6月18日に声明を出し、クルド人が支配するシリア北部の要衝Manbijの周辺一帯で警備活動を開始したと発表した。 アナトリア通信は、トルコ軍の車両がManbijの前線に展開中と報じた。
 トルコ軍の動きは、米国との合意に基くという。 (1807-061901)

 Manbijの軍事評議会のアドバイザとして残留していたクルド軍YPGの報道官が6月5日、米国とトル コがYPGがManbjiから撤退することで合意したことを認めた。
 ISISがManbijから撤退した2016年に設立されたManbji軍事評議会は引き続きManbji防衛のため砲兵部隊を展開させることになる。
 トルコ外相は米国務長官との会談後、YPGがManbjiから撤退した後の第一段階では米軍が引き続き境界に展開するとともにトルコの支援する武装組織が哨所を置いてトルコ軍と共にパトロールを行うことで米軍とトルコ軍が共同でMabjiの治安維持に当たると述べた。 (1808-061318)

 トルコ議会が10月3日、クルド軍やISISとの戦いのためトルコ軍をイラクとシリアに更に1年間駐留させることを承認した。 (1811-100306)

 米中央軍司令官が10月21日、数日以内に米軍とトルコ軍が合同でシリア北部のManbijの警備を開始すると述べた。 このための訓練をあと数日続けるという。 (1811-102102)

 米軍とトルコ軍がシリア北部の都市Manbijで11月1日15:53に共同パトロールを開始した。 ただし詳細は明らかにされていない。
(1812-110108)

2・1・2・7・3 トルコのユーフラテス河以東への攻勢

トルコが支援する武装勢力の間で戦闘

 在英のシリア人権監視団によると、シリア北西部Afrinで11月17、18の両日、トルコが支援してきた武装勢力の間で戦闘があり兵士ら25人が死亡した。 親トルコ派の武装勢力が、仲間割れしてトルコ軍に逆らっていると非難された200人の武装集団と衝突した。
 トルコ軍は3月、クルド人民兵組織の人民防衛部隊 (YPG) が支配していたAfrinを制圧した。 (1812-111902)

ユーフラテス河以東への攻勢宣言

 トルコのエルドアン大統領が12月12日、クルド人武装勢力を掃討するためシリア北東部のユーフラテス川の東側で数日以内に軍事作戦を開始すると発表した。
 一方、米国防総省は同日、一方的な軍事行動は受け入れられないとの見解を示した。 米国はトルコ国境の治安確保に全面的に協力する一方、ISISへの対応でYPGを含むシリア民主軍 (SDF) との協力にも引き続き行うするとした。
 米国はISISとの戦いで、トルコがテロ組織とみなすクルド人民防衛部隊 (YPG) を支援しており、米国とトルコはシリア情勢への対応を巡り長く対立している。 (1901-121305)

2・1・2・7・4 米軍の撤退とトルコの攻勢

トランプ大統領のシリア撤退宣言

 トランプ米大統領が12月19日にシリアからの米軍の撤退を表明したのを受けトルコの専門家は、トルコは米軍の撤退とPatriotの撤収をクルドに対するトルコ軍の攻撃容認と解釈すると述べた。
 トランプ大統領の発表の数日前にエルドアン大統領はシリア北東部のクルド軍に対する攻撃を宣言している。 (1901-122007)

 トルコのヒュリエト紙が12月21日、トランプ米大統領がシリアからの米軍部隊撤収を決断したのは14日に行われたトルコのエルドアン大統領との電話会談の最中だったと報じた。
 それによると、トランプ大統領は電話の中で、われわれが撤収したらトルコがISISの残存勢力を一掃できるのかと質問したのに対しエルドアン大統領は、ISIS掃討でクルド人勢力に頼る必要はないと強調し、われわれがやると答えたという。
 この直後、トランプ大統領は電話会談が続く中で、ボルトン大統領補佐官に撤収に向けた準備に取りかかるよう指示したという。 (1901-122105)

トルコ軍の攻勢とクルド軍の動揺

 シリアのクルド軍を主力とするシリア民主軍 (SDF) の政治部門であるシリア民主評議会 (SDC) 代表団が12月21日、米軍撤退後にクルド人支配地をトルコ軍が攻撃すればクルド軍は対トルコの前線に移動せざるを得ないと述べ、ISIS残党との戦闘は停止すると警告した。 (1901-122106)

 トルコのエルドアン大統領が12月21日、トランプ米大統領がシリアから軍を撤収するとしたのを受けてシリア北東部でのクルドに対する攻撃を延期すると述べた。 (1901-122111)

 トランプ米大統領がシリアから米軍を撤退させるとしたのを受けトルコは、トルコが支援するシリア反政府勢力とManbijに対する攻勢に出ようとしている。
 在英のシリア人権監視団は、トルコが数時間以内にMabij近郊の町を攻撃する命令を発したと見ている。 (1901-122502)

クルドと連携するフランス

 米軍がシリアから撤退するのを受けクルド勢力の代表が12月21日に訪仏し援助を求めた。 クルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) はISISを拘束するために数百名の部隊を維持することができないという。
 クルド代表と面会した仏大統領府当局者は、マクロン大統領は米国と共にISISとの戦いを続けると伝えたという。 (1901-122108)

 アナトリア通信が、トルコのチャブシオール外相が12月25日にシリア北部のクルド人民兵組織、人民防衛部隊 (YPG) を守るためにフランスがシリアに留まっても誰の利益にもならないと警告したと報じた。 (1901-122501)

クルドのシリア政府軍への接近

 クルド勢力が支配するシリアのManbijに12月28日、シリア政府軍が入った。
 米国が先週シリアからの軍撤退を発表したのを受け、トルコと対峙するクルド側が要請した。 (1901-122806)

2・1・2・8 イランにおけるクルド問題

 イラン革命防衛隊が8月11日にウェブ上で、10日遅くにイラクとの国境に近いクルド人の町Oshnaviehで武装勢力10名を殺害し、数名を負傷させたと発表した。 (1809-081102)
2・1・3 シリア情勢

2・1・3・1 米露軍の展開

2・1・3・1・1 米露の軍事基地合戦

 シリアで米露が軍事基地合戦を行っている。 ロシアがHmeimimに航空基地、Tartousに海軍基地を確保しているのに対し、シリア各地に展開している米軍はラッカに近い旧シリア空軍基地Al-Tabaqahで米特殊部隊がクルド軍の訓練を行っており、ヨルダン、イラク、シリアの国境に近いAl Tanfでは米軍がシリア軍やロシア軍の国境越えを阻止すると共に特殊部隊が反政府勢力の訓練を行っている。
 Al Tanfの米軍はまたDeir Ezzourの米軍とで国境地帯を挟み込み、イランの地中海への進出経路を封鎖している。 (1802-011702)
2・1・3・1・2 ロシアの対米強硬姿勢

 ヒズボラ系のアルマナルTVが4月10日夜、駐レバノン露大使がシリアに向けて発射された米国のいかなるミサイルも撃ち墜とすと述べたしたで、発射位置も攻撃の対象になるとの発言を放送した。 (1805-041104)
2・1・3・1・3 トランプ米大統領の撤退発言

 トランプ米大統領が3月29日に行った演説で、シリアに派遣している米軍を数週間以内に撤退させると述べた。 大統領は2月中旬に政権幹部の会合で、ISISに対する勝利宣言をできるだけ早く行って米軍を撤退させたいと述べていた。
 これについて欧州の外交筋は、対ISIS戦で正面で戦ってきたクルド軍がトルコのAfrin侵攻を受けて兵力を転用したため3月上旬以降戦況が進展していないことを憂慮していると述べている。 (1804-033002)
【註】 トランプ政権はトルコのAfrin侵攻の際に米軍をAfrinに派遣してトルコの侵攻を阻止しなかったのに加え、トルコが次に狙うManbjiから米軍部隊を撤退させればトルコの攻撃を許し、対ISIS戦で貢献したクルドを裏切ることになり、今後の対ISIS及び対アサド政権との戦いに大きな禍根を残すことになる。

 マッケンジー米統合参謀本部事務局長が4月5日、シリアでのISIS掃討作戦を継続する方針に変わりはないと述べた。
 トランプ大統領は米軍の早期撤収に意欲を示していたが、国家安全保障会議 (NSC) の助言を受け入れ、ISIS 全滅までは駐留を続ける方針を決めていた。 (1805-040602)

 トランプ大統領がシリアから米軍を撤退させる意向を示したことに対しシリアのクルド当局者が4月5日、ISISとの戦闘がまだ未完であると危機感を示した。
 トルコ軍のAfrin侵攻にクルド軍を主力とするSDFが対応している隙に、ISISは2017年イラクと シリアで劣勢になって以来初めてDeir al-Zour地域の油田地帯を奪還している。 (1805-040607)

 トランプ米大統領が4月13日のTV演説で、米国はシリアにおける長期的役割を求めていないと強調し、米軍部隊を早期に撤収させる意向を示した。
 ト大統領は、この地域の運命は地域の人々の手に懸かっていると述べ、ISIS壊滅後の治安維持は中東諸国に任せる考えを表明した。 (1805-041404)
【註】 前日の12日にトランプ大統領はトルコのエルドアン大統領と会見している。
 米軍のシリアからの撤退はクルド制圧のためトルコが行っているシリア侵攻を黙認し、クルド地域に駐留する米軍の撤退で、トルコ軍の更なる侵攻を許容することも意味する。

 マティス米国防長官が4月26日に上院軍事委員会で証言し、ISISとの戦いはまだ終わっておらず、米軍がシリアから撤退することはないとの考えを明らかにした。
 トランプ大統領はISISと戦うクルド軍の軍事顧問としてシリアに派遣している米軍2,000名を撤退させると述べている。 (1805-042608)

 トランプ米大統領が4月3日にシリアから米軍を撤退させると述べたが、米国の国防及び外交の高官は早期撤退を否定している。 またマクロン仏大統領は3月29日に、トルコの進撃を阻止するためManbijに部隊を派遣すると述べている。
 Manbij付近には米英の前哨基地があり、3月30日に衛星が撮影した画像にはManbij近くの前哨基地に米兵が写っている。 この前哨基地はトルコ軍とその支援部隊が確保しているDadatの南2.5kmに位置している。
 また4月3日の画像ではManbij市内を走る複数の米軍車両も確認されている。 (1806-041101)

2・1・3・1・4 米軍撤退後の態勢準備

 Wall Street Journalが4月16日、トランプ政権がシリアでのISIS掃討作戦の終結後、米軍部隊の撤収と入れ替えに中東湾岸諸国合同軍部隊を派遣させることを計画していると報じた。
 同紙によるとボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官が、エジプトの情報機関の総合情報庁 (GIS) 長官代行と電話で会談した際、エジプトが部隊派遣に協力できるか打診した。
 またトランプ政権は、サウジアラビアとカタール、UAEに対しても、シリア情勢の安定化に向けて数十億ドルを拠出するよう要請するとともに、部隊派遣も求めているとしている。 (1805-041803)
2・1・3・1・5 ロシアのシリア軍支援

S-300 SAMの引き渡し

 ロシアのIl-20偵察機が9月17日にシリアのSAMで撃墜されたのを受けてショイグ露国防相は9月24日、2週間以内にシリアへ統合指揮統制装置とロシア型IFF装置を引き渡すと述べたが、合わせてS-300 SAMを引き渡すことも明らかにした。 S-300については2013年にシリアへ4個FUを売却する契約を行ったが2016年に契約は破棄されていた。 (1812-100305)

 ロシアが10月2日、シリアへのS-300の搬入を完了したと発表した。 搬入されたのは発射機4基を含む49個アイテムで、ADS-Bによる航跡追随で9月18日から10月3日にかけてHumaymim航空基地に数十回の飛行が確認されている。
 確認されているのはIl-76が20回以上、Il-62が2回、Tu-154が6回、An-124が17回となっている。 (1812-101002)

 シリアにS-300が配備されたのに伴い、ユーフラテス河中流渓谷でISISに対するOperation Roundrup作戦が既に第3週に入っている米軍が、ロシアと空域での戦闘を回避する交渉を始める準備を行っている。 (1812-101003)

 イスラエルの偵察衛星が10月22日、ロシアがシリアに引き渡したS-300の1つの最初のサイトを撮影した。
 このサイトは今までS-200が配備されていた場所で、取り除かれたS-200の後にS-300が配置されている。 (1812-103101)

イラン産原油をシリアへ供与

 米政府が11月20日、イラン産石油のシリア政府への供与に関わったとして、ロシアを拠点にする企業などから成るネットワークの9の団体と個人を制裁対象に指定した。 国務省は声明で「イランに対する長期的な最大限の圧力の一環だ」と強調している。
 財務省によると、この国際ネットワークを通じてイラン産の石油数百万バレルがシリア政府に送られ、見返りとしてシリア政府はレバノンのヒズボラやパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスなどに資金を提供していた。 (1812-112102)

2・1・3・2 ロシア軍の活動

2・1・3・2・1 ロシア軍の強化

米軍機への ECM 攻撃

 米特殊部隊 (USSOC) 司令官のトーマス大将が4月24日、シリア上空で米AC-130U SpookyガンシップがECM攻撃を受けている事を明らかにした。
 同大将が公表した2週間前にはNBC Newsが、2018年初めにシリア上空でロシアのEW装置によるUAVに対するGPS妨害が開始されたと報じていた。
 2015年10月にはロシアが1RL247E Krasukha-4 ECM装置を露軍航空基地に持ち込んだことが確認されている。 1RL247E Krasukha-4は150~300kmの範囲で、地上基地、航空機搭載レーダ、レーダ誘導ミサイルを無力化できる。 (1807-050906)

空中給油機の派遣

 ロシア国防省のStar TVが9月3日、地中海で実施した演習のためIl-78 Midas空中給油機を少なくとも2機、恐らく4機をシリアLatakia県のHumaymim基地に配備したと報じた。 またStar TVには海軍の標識を付けたSu-30SM 6機も写っていた。  ロシアは2015年9月にシリアへ航空機を派遣して以来、空中給油機の派遣は行われていると見られていたが、確認されたのは初めてである。 (1811-091202)

2・1・3・2・2 反政府勢力のロシア軍への攻撃

 ロシア国防省が、シリアのロシア軍航空基地に対する反政府勢力の迫撃砲攻撃で2017年12月31日に ロシア兵2名が死亡したと発表した。 4日の国営TassとRIA-Novostiによる報道では、攻撃した反政府勢力は特定されていない。
 また同日、ロシア軍のMi-24 1機が墜落し、搭乗員2名のうち1名が死亡したが、墜落原因は技術的なトラブルで地上砲火によるものではないという。 (1802-010404)
2・1・3・2・3 反政府勢力の UAV 攻撃

 ロシア国防省が1月9日、シリアに駐留するロシア軍のHemeimeem航空基地とTartus海軍基地に6日に13機のUAVが飛来し、そのうち7機が撃墜され、6機が無傷で鹵獲されたと発表した。
 これについて露国防省は、これには米国などGPS技術を有する国の支援が不可欠であるとしている。 (1802-010906)

 ロシア国防省は、ロシア軍が駐留するシリアの空軍基地などが、複数のUAVによって攻撃されたことを明らかにし、背後には米国などによる高度な技術支援があったのではないかという見方を示した。
 ロシア国防省によると、攻撃を受けたのはシリアでいずれもロシア軍が駐留する、Hemeimeem空軍基地とTartusの海軍基地で、1月6日に合わせて13機のUAVから攻撃を受けたが、いずれも撃墜するなどして被害はなかったという。
 これについてロシア国防省は9日、UAV攻撃機は何らかの武装勢力によって運用されたという見方を示し、GPS誘導で正確に攻撃を行うには先進国における訓練が必要だとしている。 (1802-011001)

 1月5日にシリアのTatusなどにあるロシア軍基地を襲撃した小型安価なUAV群は、重量400g、有効半径50mの小型爆弾を10発ずつ搭載していた。 ロシア軍によるとこれらのIEDには外国製と見られる信管が取り付けられていた。
 ロシア当局者によるとこの UAV群は50km以上遠方から飛来したが、100kmを飛翔する能力を持っていると言う。 (1803-011502)

 ロシア国防省が1月8日、シリアの露軍基地が5~6日に、初めて多数の小型UAVによる攻撃を受けたと発表した。 攻撃があったのはHumaymim航空基地に対し10機、Taurus海軍基地に対し3機で、7機はPantsyr-S SHORADSで、3機は電子戦装置で撃墜された。
 これらが発射されたのはHumaymim当方50km、Taurusから100km離れたal-Muzarah村で、鹵獲された2機は市販品ではない手作り品で、両翼下に4発ずつのIEDを搭載していた。 (1803-011713)

2・1・3・3 イランの介入

 イラン政府が8月28日、イランのハタミ国防軍需相が8月下旬にシリアを訪れて軍事顧問の派遣を維持することやシリアの軍事施設の復興を支援することなどを盛り込んだ協定をシリアのアサド政権と結んだ。
 シリア内戦でアサド政権を支援しているイランは、革命防衛隊を軍事顧問として派遣しているほか、シーア派の住民を傘下の民兵として動員して戦闘に参加してきた。 このため米国やイスラエルは、イランのシリアからの撤退を求めていて、両国からの反発が強まることも予想される。 (1809-082902)
2・1・3・4 ダマスカス東 Ghouta 地区の戦い

 シリア政権軍が攻撃を行っている400,000人が居住する東Ghouta地区には20,000名以上の反政府武装勢力がいる。 (1803-022803)
Army of Islam

 東Ghouta最大の勢力で、戦車、APC、野砲、迫撃砲などを装備し兵力は10,000と見られる。 イスラムの厳格な教義を信奉する勢力で、背後にはサウジアラビアがいる。

Faikaq al-Rahman

 Army of Islamに次ぐ第2勢力で兵力は8,000、トルコやカタールが背後にいる。

Ahrar al-Sham

 IdlibやAleppoでアルカイダ系のLevant Liberation Committeeと死闘を繰り広げている勢力の一部で、アルカイダに近い勢力を含むイスラム各派で成る。

Levant Liberation Committee

 総兵力20,000と見られるアルカイダ系勢力で、東Ghoutaには600名が所在し、政府軍とのいかなる和平交渉も拒否している。

 シリア人権監視団によると、アサド政権が激しい空爆などを行ってきた首都近郊の東グータ地区へ地上部隊を進めて一部の地域を制圧した。
 政権側はロシア軍の支援を受けて東グータ地区を完全に包囲したうえで、激しい空爆や砲撃を続けている。 (1804-030101)

 シリアの国営TVが3月4日、アサド政権が反政府勢力が拠点とする東グータ地区に投入した地上部隊が進撃を加速させ広い範囲を制圧したと発表した。
 シリア人権監視団によると政権側は、これまでに東グータ地区全体の1/4を制圧したとみられるという。 (1804-030502)

 イスラム軍が残る同地区ドゥーマへの空爆は4月6日に再開され、人権監視団によれば、8日までに死者は計96人に達した。
 イスラム軍の一部の強硬な勢力が政権側との撤退合意に反対したため、完全制圧を急ぐ政権側が猛攻を加えていたが、激しい攻撃の結果、イスラム軍は8日に拘束中の政権軍兵士らを解放し、48時間以内にシリア北部へ撤退することで政権側と合意した。 (1805-040804)

 ロシアの複数の通信社がロシア軍関係者の話として4月12日、シリア政府軍は反体制派の最後の拠点であるドゥーマを完全に掌握したと報じた。 (1805-041209)

 シリアのアサド政権軍が5月21日に国営メディアを通じ、ISISが残存していた首都ダマスカス南部を制圧したと明らかにした。 この制圧で政権側は、反政府デモが始まった2011年以来初めて首都全体を掌握した。
 シリア内戦は今後、北西部イドリブ県や南部ダルアー県などでの戦闘が焦点となる。 (1806-052102)

2・1・3・5 シリア政府軍とクルド軍

2・1・3・5・1 シリア政府軍とクルド軍の交戦

 米軍が2月7日、シリアで米軍主導の有志連合が支援するシリア民主軍 (SDF) がアサド政権軍の攻撃を受けたことから、有志連合が反撃したと発表した。
 米軍によると、アサド政権軍はシリア北東部を流れるユーフラテス川沿いに設置された衝突回避線を超え、同線の東方約8kmに位置するSDFの拠点を小銃などで攻撃したため、有志連合は自衛のため空爆などで反撃したという。
 米軍は、政権派が数百人規模の部隊だったことから、油田地帯の支配を狙った組織的攻撃とみられると分析している。 (1803-020802)

 マティス米国防長官が2月8日、シリアのアサド政権派がシリア民主軍 (SDF) の拠点を攻撃 したことに関し、なぜ攻撃をしてきたのか分からず困惑していると語った。 アサド政権軍は7日にシリア北東部に設置された「衝突回避線」を超え、SDFの拠点を砲撃した。
 マティス長官によると、アサド政権派は300人程度で、ロシア製戦車や迫撃砲などで武装していた。 ただ、ロシア軍兵士が政権派部隊に加わっていたかどうかについては確認できていないと述べるにとどめた。 (1803-020902)

2・1・3・5・2 シリア政府軍とクルド軍の連携

 前 述(2・1・2・3・4
2・1・3・6 化学兵器使用の疑惑

2・1・3・6・1 シリア政府軍の製造と使用疑惑

 在英のシリア人権監視団が、シリア反体制派の支配下にある首都ダマスカス近郊のドゥーマで1月22日に政府軍による化学兵器使用が疑われる攻撃があり、少なくとも21人が呼吸困難に陥ったと発表した。
 監視団は、政府軍がドゥーマにロケット弾を発射した後で白煙が広がり、21人が苦しみ出したと状況をと伝え、住民や医療関係者は塩素ガスだと話していると訴えた。 (1802-012302)

 米政府当局者が2月1日、シリアでアサド大統領に忠誠を誓う勢力が新型の化学弾を開発していることを明らかにした。
 アサド軍は2017年4月4日のKhan Shaykhunへのサリン攻撃以来、比較的小型の化学弾を開発している。 (1804-020708)

 シリアのアサド政権軍が東Ghoutaで塩素ガスとみられる化学兵器を使い市民を殺傷していると報じられていることについて、オマーンに向かっているマティス米国防長官が同行記者団に対し月11日、まだ確認が取れていないとしながらも強く警告した。
 これについてCIA長官もワシントンで、大統領は化学兵器使用に寛容ではないが、まだ何も決心していないと述べた。 (1804-031103)
【註】 トランプ大統領は、オバマ前大統領がシリアの化学兵器使用に対し、警告していたのに武力行使に踏み切らなかったことを非難してきた経緯がある。 今まで米国は化学兵器使用を武力行使の名目に使用してきているので、今回も注意深く観察する必要がある。

 国連安保理の緊急会合で、シリアで化学兵器が使用された疑いが指摘され、ヘイリー米国連大使 はアサド政権による化学兵器の使用を阻止できなければ、再びシリアを攻撃する用意があると警告した。
 米国は2017年4月にアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、対抗措置としてアサド政権の軍事施設をCMで攻撃している。 (1804-031302)

2・1・3・6・2 東グータ地区での化学兵器使用

 在英のシリア人権監視団によると、ダマスカス近郊の東グータ地区で4月7、8両日、唯一抵抗を続ける反体制派イスラム軍に対するアサド政権と後ろ盾ロシアによる空爆が続き56人が死亡したが、負傷者らを救援するシリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメッツ)は、化学兵器が投下され、40人以上が窒息死したと主張している。
(1805-040804)

 米国務省報道官が4月7日の声明で、ダマスカスの東グータ地区での化学兵器使用情報について注視していると述べた。 事実と確認されれば国際社会による速やかな対応が必要だと警告した。
 またアサド政権が過去に国民に対して化学兵器を使用したことは議論の余地がないとしたうえで、同政権の後ろ盾であるロシアも責任を負っていると強調し、ロシアに対して、アサド政権への支援を直ちに中止するよう要求した。 (1805-040805)

 トランプ米大統領が4月8日、シリアでの化学兵器攻撃情報について、アサド大統領を「けだもの」とののしり高い代償を払うとツイッターで非難し、報復も辞さない考えを示唆した。 またアサド政権を支援するロシアとプーチン大統領とイランも批判した。
 攻撃があった首都ダマスカス近郊の東グータ地区は政権軍に囲まれて外部と遮断されていると述べ、攻撃の検証や負傷者救援のため、直ちに開放するよう要求した。 (1805-040806)

 EUが4月8日、ダマスカスの東グータ地区での反体制派に対する空爆について声明を出し、アサド政権側が化学兵器を使用したことを示す証拠があることを明らかにした。 またアサド政権を支援しているロシアとイランに向けて影響力を行使してこれ以上の攻撃を防ぐよう求めた。 (1805-040901)

 米国務省が4月13日、シリア政府軍が4月7日にシリアの東グータ地区のドゥーマで化学兵器を使用した疑いが出ていることについて、シリア政権が攻撃を実施した信頼性の高い証拠を米政府が入手したことを明らかにした。  現在、どのような化学物質の組み合わせが使用されたのか調査しているとしている。
 その上で、化学兵器禁止機関 (OPCW) の調査団が情報を収集するために14日にシリア入りすることを明らかにした。 (1805-041401)

 米国務省報道官が4月19日、シリアのアサド政権軍による化学兵器使用疑惑に関し、ロシアとシリアが化学兵器が使われたとみられる東グータ地区ドゥーマの現場一帯の清浄作業を行い、証拠を隠滅していると非難した。
 同報道官はまた、ロシアがアサド政権に協力て化学兵器禁止機関 (OPCW) の現地調査を阻止し遅 らせていることを示す「確度の高い情報を得ている」と強調し、同情報によれば「現地の人々はロシアとシリアから化学兵器攻撃はなかったと口裏を合わせるよう圧力をかけられているとも指摘した。 (1805-042001)

 化学兵器禁止機関 (OPCW) が4月21日、シリアのアサド政権の化学兵器使用疑惑を調査する調査団が同日、使用現場とされる東グータ地区ドゥーマに入り試料を採取したと発表した。 今後、オランダにある研究施設で詳細に分析するが、結果の判明には数週間かかる。
 米政府はドゥーマでは塩素ガスに加え、神経剤サリンも使用されたとみている。 (1805-042202)

2・1・3・6・3 シリアでの使用疑惑に対する OPCW の結論

 化学兵器禁止機関 (OPCW) が6月13日、シリア中部ハマ県ラタムネの2ヵ所で2017年3月にサリンや塩素系物質が化学兵器として使用された可能性があるとする報告書を発表した。
 ラタムネでは2017年3月に国境なき医師団 (MSF) が支援する病院が空爆を受け、医師と患者の2人が死亡、13人が負傷した際にMSFは呼吸器障害や粘膜炎症など化学兵器特有の症状が見られると発表していた。 (1807-061403)

 化学兵器禁止機関 (OPCW) が、シリアのAl-Lataminahで2017年3月24日に使用された化学剤はサリンであったと結論づけた。
 またその翌日にAl-Lataminah病院で塩素ガスが使われたとも結論づけた。 (1808-062005)

 化学兵器禁止機関 (OPCW) に6月27日、OPCW事務局にシリアにおける化学兵器による攻撃を行ったのは誰かを特定する権限が、ロシアと他の23ヵ国が反対したものの82ヵ国が賛成して与えられた。 (1808-070415)

2・1・3・6・4 トルコの使用疑惑

 在英のシリア人権監視団が2月17日、トルコ軍などが16日にシリア北部Afrin近郊を砲撃し、その後6人が呼吸困難を訴えて病院に運ばれたと明らかにした。 患者の症状から毒ガスが使用された疑いが出ている。
 AFP通信によれば、治療に当たる医師が「せきが出て、全身の皮膚が赤くただれているため衣服を保存して調べる」と話した。 (1803-021702)

 トルコ軍などが砲撃を加えているシリア北部Afrin近郊で6人が呼吸困難を訴えたことを受け、クルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) 所管の研究機関が砲撃現場で採取した土壌を分析した結果、高濃度の塩素ガスが検出されたことを2月18日に明らかにした。 (1803-021802)

2・1・3・7 化学兵器使用に対する対抗措置

2・1・3・7・1 4月13日の空爆

攻撃の予告

 ルドリアン仏外相が、マクロン大統領の表明通りフランスは化学兵器との戦いで責任を果たすと述べた。
 マクロン大統領は2月にシリアでの 化学兵器の使用が確認されれば空爆で応じると再度警告している。 (1805-040901)

 シリアで化学兵器によるとみられる攻撃により多数の死者が出たことに対し、国土安全保障・テロ対策担当のボサート米大統領補佐官が4月8日にABC TVの番組で、対抗措置として何も排除しないと述べ、シリアへのミサイル攻撃も含めて検討しているとの考えを示した。  同補佐官は化学攻撃を詳しく調べている段階だと述べた。
 トランプ政権は2017年4月にも、アサド政権軍がサリンを使用したとしてCMでシリア軍施設を攻撃している。 (1805-040902)

 マクロン仏大統領が4月10日、シリアで化学兵器使用の疑惑があるアサド政権への軍事対応について「米英と連携して近く判断する」と述べた。
 マ大統領はこれまでも、化学兵器使用には軍事攻撃で対応すると主張してきた。
 仏メディアによると、プーチン露大統領が昨年5月にフランスを訪れた際、化学兵器使用は即刻、反撃の対象になると直接警告したという。 (1805-041105)

 英Times紙が4月11日、メイ首相はアサド政権に対して米国が検討中の軍事行動について、英国が加わるには同政権の関与を裏付けるさらなる証拠が必要だと、攻撃参加に慎重な立場を米側に伝えたと報じた。 メイ首相は、アサド政権がサリンを使用したとして米国が 2017年4月に実施した軍事行動の効果に疑問を呈したという。
 英政府内ではジョンソン外相が、化学兵器使用は罰せられるべきだと主張し、米仏と共同歩調を取る必要性を訴えている。 (1805-041106)

 トランプ米政権がシリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑を受け、軍事行動に向けた環境整備を急いでいる。
 シリアへの攻撃を射程に入れる駆逐艦を地中海に集結させ、広範な拠点への攻撃を想定した作戦も検討しており、英仏との共同軍 事行動の調整も進める。
 既に米軍は地中海に展開する駆逐艦Donald CookとPorterの2隻がシリア にTomahawkを撃ち込める態勢を整え、数日内には空母Harry S. Trumanも同海域に向かう。
 トランプ大統領は一両日中にも軍事行動の是非を判断する構えを示しており、AP通信によると米英仏各国は早ければ4月中旬にも軍事行動に踏み切る可能性があるという。 (1805-041107)

 Daily Telegraph紙が、メイ英首相が英国の潜水艦を4月12日夜にも開始される可能性のあるシリアに対する軍事行動に備え、ミサイルの射程圏内に移動させるよう命令したと報じた。
 同紙は、化学兵器が使用された疑いが出ているシリアに対する米国とフランスの軍事行動への英国の参加についてメイ首相はまだ最終的に決定していないものの、迅速に対応できるようにしたいとしていると報じている。 (1805-041203)

 在英のシリア人権監視団が4月11日、アサド政権軍が支配地域にあるすべての主要な空港や軍基地から退去したと明らかにした。
 人権監視団のラフマン代表は、退去は軍参謀本部の命令に基づくと説明し、国防省や軍の主要関連施設では2日前に全員が退避したと語った。 (1805-041204)

4月13日に CM 攻撃

 米英仏3ヵ国が4月13日、ダマスカス近郊での化学兵器使用疑惑を受け、シリアのアサド政権への空爆を実施した。 トランプ米大統領はホワイトハウスで演説し、シリアの化学兵器関連施設を標的にした精密攻撃を命令したと発表した。
 国防総省の発表によるとシリアへの攻撃は現地時間14日04:00に開始された。 攻撃目標はダマスカスの化学兵器研究開発拠点、中部ホムスの貯蔵施設、ホムスの化学兵器作戦の司令部の3ヵ所で、シリア国内に駐留するロシア軍に対し攻撃前の対象の通知はなかったという。
 記者会見したダンフォード統合参謀本部議長は「攻撃目標は破壊された」と述べた。 ロイタ通信は米当局者の話としてTomahawkによる攻撃が実施されたと報じ、CNN TVはシリア領空外からのスタンドオフ攻撃も用いられたと伝えている。
 これに対し国営シリア・アラブ通信は速報で、わが国の防空システムが侵略に対抗し、ミサイルを撃ち落としたと報じた。 (1805-041403)

 シリア国営メディアが4月14日、米英仏によりダマスカス近郊の航空基地や科学研究センタなどが攻撃を受けたと報じた。 シリア側の防空システムが作動し、ミサイル13発を撃ち落としたと主張している。
 シリア側は、3ヵ国が攻撃を行ったのは化学兵器使用が疑われる首都近郊の東グータ地区で14日から化学兵器禁止機関 (OPCW) の現地調査が始まる前に「うそを隠すことが狙いだ」と批判した。 (1805-041405)

 英国防省が、Tonado 4機が4月14日にシリア中部ホムスの西24kmにある軍施設をCMで攻撃したことを明らかにした。 (1805-041406)

 シリア軍に対し米英と共同で軍事攻撃を実施したパルリ仏国防相が4月14日、地中海沖の仏海軍フリゲート艦からシリアに向けてCMが発射される映像を公開した。 (1805-041407)

 米政府が4月13日のシリア攻撃発表に合わせ、同国での化学兵器使用に関する分析結果を公表した。
 ダマスカス近郊の東グータ地区ドゥーマで多数が死傷した7日の攻撃について、サリンが使われたことを示唆している。 (1805-041408)

 ロシア軍参謀本部のルツコイ作戦総局長が、攻撃は日本時間の4月14日09:42から11:10まで1時間半にわたって続き、Tomahawkを含む103発が発射されたことを明らかにした。
 これに対しシリア軍は71発を迎撃することに成功したとした。 またこれまでのところ、市民やシリア軍の兵士らが死亡する被害は確認されていないという。 (1805-041409)

 米国防総省と米軍の高官が4月14日、米英仏によるシリア攻撃は精密、圧倒的、効果的だったと強調した。
 また、アサド政権は40発のSAMで応戦を試みたが、ほとんど効果がなく、ロ シアの防空システムが稼働したことを示す情報はないと語った。 (1805-041410)

 米英仏の3ヵ国はシリア攻撃にTomahawk、JASSM-ER、MdCN(フランス向けScalpで、旧称は Scalp Naval)、Scalpなど105発を発射した。
 このうち米軍が発射したのはTomahawk 57発、AGM-58B JASSM-ER 19発の合わせて76発であった。 (1805-041411)

 シリアの化学兵器使用に対抗した米英仏によるシリア攻撃が4月14日に行われたが、米国防総省報道官によると攻撃は主として海軍が行い、105発発射したうち少なくとも69発は3箇所の化学兵器関連施設に向けられた。
 紅海では巡洋艦Montereyが30発のTomahawkを発射した。 (1805-041412)

 米英仏の3ヵ国が4月14日にシリアの化学兵器関連施設3箇所に対して105発のCMで攻撃を行った。 内訳は以下の通りである。 (1805-041413)

・Barzah 研究センタを破壊、最も堅固に防護された施設
  米: Tomahawk 57発、JASSM-ER 19発

・Him Shinshar 化学兵器施設を破壊
  米: Tomahawk 9発
  英: Storm Shadow 8発
  仏: SCALP 2発、艦船発射CM(MdCN) 3発

・Him Shinshar 化学兵器貯蔵所に損傷
  仏: SCALP 7発

【註】 英国のStorm ShadowとフランスのSCALPは両国が共同開発したCMのそれぞれの名称で、MdCNはSCALPを潜水艦の魚雷発射管から発射できるように形状等を改造したもので、かつてはSCALP Navalと呼ばれていた。

 米英仏が、4月14日にシリアの化学兵器関連施設3箇所に向け発射した105発のCM全弾が目標に命中したと発表した。 内訳は以下の通りである。

・UGM/RGM-109 Tomahawk 66発
・AGM-158 JASSM 19発
・Storm Shadow 8発
・SCALP 9発
・MdCN 3発
 これに対しロシア国防省は2日後に、103発が飛来したが71発がシリアの防空システムで撃墜され、目標に達したのは10発以下と発表した。
 このうちPantsyrは25発を発射して23機を撃墜し撃墜率は92%に達し、Buk-M2Eも82%の撃墜率を記録したと言う。 (1806-042501)

空爆戦果の評価

 ロシア軍参謀本部作戦部長が4月25日、米国などが4月14日にシリアに対して行ったCM攻撃では103発が発射されたが22発だけが目標に命中したと発表した。 発射されたうち66発はシリア軍が撃墜し、不特定数のCMは故障を起こしたと見ている。
 この命中弾数は4月16日に国防省報道官の、103発のうち71発を撃墜したとの発表より少ない。
 米国は105発全てが目標に至ったとしているが、ロシアの専門家は全弾が命中した様子はないと見ている。 (1805-042610)

 米国などが4月14日にシリアに対して行ったCM攻撃について露軍参謀本部作戦部長が4月25日に、米英仏軍が発射した103発のうち目標に達したのは僅か22発であると発表した。 米国は105発を発射しているとしている。 4月16日の国防省報道官発表では71発をシリア防空部隊が撃墜したとしていた。
 この際作戦部長はこの日、Storm ShadowとSCALP数発の残骸を展示した。 Tomahawkについてはスライドだけが展示されたが、これは2017年4月7日に米国がシリアのAl-Shaytat航空基地を攻撃した際にロシアが鹵獲したものだという。 (1806-050218)

2・1・3・7・2 地上軍の展開?

 シリア政府軍がDoumaで化学兵器を使用したことにより緊張が高まるなか、米陸軍と第26海兵遠征隊の3,600名近くがヨルダンとの共同演習 "Eager Lion" に参加するためヨルダンに入る。
 数千名の海兵隊員のほかAV-8B Harrier、MV-22 Osprey、攻撃ヘリを搭載したSan Antonio級強襲揚陸艦New Yorkは4月12日、イタリアのAugusta湾を出航した。 (1805-041304)
2・1・3・7・3 西欧諸国の介入

ドイツの介入?

 ドイツ政府が9月10日、シリアへ軍を派遣する可能性について同盟国と協議していると明らかにした。 独大衆紙ビルトは、シリア政権が再び化学兵器を使った場合、ドイツ国防省が米国と英国、フランスとともに軍事行動に出ることについて、さまざまな選択肢を検討していると報じた。
 ある関係筋は報道を追認した上で、ドイツが戦闘被害を調査したり空爆のために戦闘機を海外へ送り込む選択肢についてドイツと米国の当局者が8月に協議したと明かした。 こうした活動は1990年代に旧ユーゴスラビアで紛争が起きて以来のこととなる。
 これを受け、連立与党の社会民主党 (SPD) からは強い批判が上がり、メルケル首相率いるキリスト教民主社会同盟 (CDUCSU) との連立政権に新たな亀裂が生じている。 (1810-091101)

2・1・3・8 シリア政府軍が全土制圧

2・1・3・8・1 シリア南西部の制圧

 シリア政府軍とロシア軍憲兵隊が7月12日、停戦協定に従い反政府勢力が保持していたDeraaを合法的に確保した。 これにより政府軍はDeraaのほかSuwaydaやヨルダンとの国境Naseeb Borderも手中に収めた。
 停戦協定に反対する勢力と234,000人の難民は、ゴラン高原のシリア側非武装地帯に押し込められている。 (1808-071308)

 シリア国営メディアが7月19日、シリアの武装勢力が最後まで確保していた同国南西部Quneitra県から撤退することに合意したと報じた。
 この結果アサド政権は2011年以来初めて、イスラエルと国境を挟んで直接対峙することになった。 (1808-071906)

 ロイタ通信などが、シリア南西部でアサド政権側と戦っていた反体制派武装勢力が撤退交渉で合意に達し7月20日に移動を始めたと報じた。 これにより政権側は南部一帯の領域をほぼ回復した。
 撤退で合意したのは、スラエルとの境界沿いにある南西部Quneitra周辺の武装勢力で、BBCは戦闘員らが乗っているとみられるバスの車列が移動する様子を放映した。
 政権側の支配を拒否した戦闘員らは、シリア国内に残存する数少ない反体制派拠点である北西部Idlib県に向かうもようで、同県には国内各地から撤退した武装勢力が多数集結している。 (1808-072001)

 ロイタ通信などが、シリアのアサド政権が攻撃を続ける反体制派の支配地域で人命救助にあたっていた市民組織シリア民間防衛隊ホワイトヘルメッツのメンバらが7月22日、同国南部からイスラエル経由でヨルダンに逃れたと報じた。 イスラエル軍が救出作戦にあたったという。
 ホワイトヘルメッツはアサド政権軍の攻勢で立ち往生し、危機的な状況にあった。
 イスラエル軍はシリア内戦に関与しない姿勢だったが、欧米諸国の要請で例外的に救出作戦を実行したという。 (808-072301)

2・1・3・8・2 クルド軍との和解

 シリア内戦で軍事的に優勢なアサド政権と、クルド人を中心とするシリア民主軍 (SDF) が内戦終結を見据えた協議を開始した。 SDFの7月28日の声明によると、会合は政権側の求めで26日にダマスカスで開かれ、、対話のための委員会設置が決まった。
 設置される委員会では、「分権的で民主的なシリア」に向けた行程表づくりや、暴力と紛争の終結に向けた取り組みが話し合われる予定という。 (1808-072902)
2・1・3・8・3 イスラエルとの取引

 イスラエルとシリアの国境で緊張が高まっている。 このため6月上旬にはイスラエルかシリア南西部で政府軍が武装勢力を攻撃することに反対しない代わりに、ロシアに対しイランが支援する部隊がイスラエルが支配しているゴラン高原に近づかないとする合意を行っている。 (1809-071812)
2・1・3・8・4 Idlib 県での攻勢

 シリア内戦で反体制派の最後の拠点である北西部Idlib県で8月12日に爆発があり39人が死亡した。 10日には同県などで砲撃や空爆があり、同県や近郊 のAleppo県西部への空爆や砲撃で民間人53人が死亡した。 Idlibでは9日にもロケット砲が着弾している。
 アサド政権軍や後ろ盾のロシア軍の攻撃とみられ、国内支配を確実にするため、政権軍がIdlib近郊に配置されたとの情報もあり、シリア人権監視団によると、Idlibには装備や兵士、弾薬など増強した政権軍が周辺に続々と到着しているという。
 現時点では砲撃や空爆にとどまり、政権軍による侵攻は始まっていないようである。 (1809-081301)

 トルコ外相が8月24日、シリア政府軍がIdlib県に対し攻勢を懸けようとしていることに対し懸念を示した。
 トルコは今までIdlibを含むシリアとの国境近くの地域で自国の支援している反政府勢力と政府軍の間の停戦を仲介してきたが、アサド政権を支援するロシアとイランは別の地域で停戦を画策してきた。 (1809-082408)

 内戦が続くシリアの北西部Idrib県をめぐり軍事的緊張が高まってきた。 反体制派武装勢力の“最後の砦”に対しアサド政権が大規模な掃討作戦に着手するとの観測が相次いでいるためで、シリア北部に派兵しているトルコは戦火拡大を避けるためアサド政権の後ろ盾であるロシアに協力を求めているが、アサド大統領はトルコを「違法な占領者だ」と非難している。
 内戦にはトルコとの対立が深まる米国のほかイランも関与しており、一触即発の事態も懸念される。 (1809-082503)

 在英のシリア人権監視団によると、アサド政権の後ろ盾ロシアの戦闘機が9月4日、シリア反体制派最後の拠点であるIdlib県内を空爆した。 空爆はIdlib県西部の町などを目標に40回以上に達し、監視団によれば市民9人が死亡した。
 8月中旬を最後に止んでいたIdlib県内に対するロシアの空爆は約3週間ぶりという。 Idlib県内ではアサド政権側の部隊による砲撃も行われているという。
 Idlib県には、約7年に及ぶ内戦で圧倒的優位を固めているアサド政権が近く総攻撃を開始するとの観測が強まっている。 (1810-090407)

2・1・3・8・5 ロシア、イラン、トルコの思惑の違い

 シリア内戦でロシア、イラン、トルコの3ヵ国が協調をアピールしてきたが、思惑はさまざまに異なっている。
 ロシアとイランは前大統領時代からのシリアの友好国で、イランは地上戦でアサド政権を支えてきたが、2018年の夏には両国の協調が乱れているとの観測が出ている。
 シリアを中東をにらむ橋頭堡と位置付けるロシアと、シーア派住民や民兵部隊を基盤に周辺国への影響力の拡大を図るイランの間には微妙なずれが生じている。
 トルコはシリア北部のクルド人民兵部隊を制圧するため内戦に介入しているが自国の安全確保が主な目的で、ロシアとイランとは動機が異なる。 (1810-090703)

 シリア北西部Idlib県でアサド政権が反体制派武装勢力への大規模攻撃を準備している問題で、ロシアとイラン、トルコの首脳協議が不調に終わり、北部の都市Allepoでの凄惨な激戦が再現されかねないとの懸念が強まっている。
 9月7日に行われた3ヵ国の首脳協議では、避難民の大量発生を懸念するトルコが自制を求めたが、ロシアとイランが政権側を支援する方針を示して物別れに終わった。 (1810-090802)

2・1・3・8・6 ロシアとトルコが非武装地帯設置で合意

 ロシアのプーチン大統領が9月17日、南部ソチでトルコのエルドアン大統領と会談し、内戦が続くシリアで近くアサド政権軍による総攻撃が行われるとの見方が強まっていたIdlib県に非武装地帯を設置することで合意した。 タス通信によるとショイグ国防相は合意に伴い、総攻撃は当面行われないとの認識を示した。
 アサド政権の後ろ盾であるロシアは総攻撃に前向きだったが、今回は反対してきたトルコに歩み寄った形だが、Idlib県は以前にも戦闘行為を禁じる「安全地帯」が設けられたが、形骸化した経緯があり、今後には不透明感も漂う。 (1810-091801)

 トルコの傘下にあるシリアの武装組織が、9月にトルコとロシアが北部Idlib県で10月15日までに前線から9~12哩兵力を引き離すことで合意したのに従い、10月7日に撤退を開始した。 (1811-100705)

 シリア内戦で最後に残った反体制勢力の拠点であるIdlib県では、9月中旬に交わされたロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の合意に基づいて、政権支配地域の手前の幅15~20kmに帯状の非武装地帯を設置し、そこから反体制勢力は撤退することになった。 その設置の期限が10月15日である。
 これまで停戦が何度も合意されては崩壊した経緯を考えれば、今回の合意によって停戦が継続するかどうかは予断を許さない。 当面停戦が継続するか破綻するかは、トルコがイドリブ県で強い勢力を張る元アルカイダ系のシリア解放機構 (HTS) や、アルカイダ系が今年2月に結成したフッラース・ディーンなどイスラム過激派勢力を、武力によってではなく政治的な圧力と交渉によってどこまで抑え込むことができるかにかかっている。
 トルコはシリア内戦では欧米とともに穏健な反体制勢力とされる自由シリア軍を支援してきたが、トルコに接するIdlibなどシリア北部ではISISやアルカイダ系のヌスラ戦線(現・シリア解放機構)などが勢力を拡大し、トルコにとっても国内でのテロ拡散の脅威となってきた。 (1811-101401)

2・1・3・8・7 米国の活動

米国の存在感主張

 米中央軍が7日、シリア南部Tanfの駐留地付近で演習を開始したと発表した。 声明によると米軍は航空機と地上部隊による実弾演習を実施し、米メディアによれば、海兵隊100名以上が参加した。 ロシアがTanf周辺で対テロ作戦を実施する意向を示していることに対する警告とみられる。
 ロシアは9月に入り、Tanf周辺で軍事作戦を行うと米軍に2度にわたって通告しているが、米軍は現地に設置された「衝突回避地帯」でロシア軍が活動すれば、軍事的緊張を高めると反発していた。
 Tanf近郊では2017年6月、米軍主導の有志連合が駐屯地に向けて進撃してきたシリアのアサド政権派の部隊を攻撃するなど、小競り合いが続いている。 (1810-090801)

米露の直接衝突

 シリア作戦の特別代表である米大使が先週ロシアのジャーナリストに、シリアで米露軍の衝突が少なくとも1回は起きていると述べた。
 2月に起きた衝突はロシアの傭兵とシリア政府派の混成部隊がシリア東部のDeir ez-Zorで米軍と米軍が支援する部隊を攻撃したため、米軍が近接航空支援 (CAS) を要請したためロシア側で200名が死亡した。
 この戦闘で米兵に負傷者は出なかったが、支援する部隊で1名が負傷した。 (1812-112605)

2・1・4 ペルシャ湾

2・1・4・1 湾岸諸国の軍備増強

2・1・4・1・1 サウジアラビア

国防費

 サウジアラビア財務省が2017年12月19日、2018年の国防費を前年比10%増のSAR210B ($56B) とすると発表した。 (1802-010308)

PAC-3 の配備

 サウジアラビアのSaudi Armed Force News Twitterに8月20日に掲載された写真から、メッカにPAC-3 1個中隊が配置されていることが初めて確認された。
 サウジへのPAC-3売却は2014年10月に米国防総省国防安全保障協力局 (DSCA) が議会に、PAC-3弾202発と発射機36基など関連装備の改良を報告した時点で明らかになっていた。 (1810-082913)

THAAD の購入

 米国務省の報道官が11月28日、サウジアラビアが26日にTHAADを$15Bで購入する契約に署名したことを明らかにした。 THAAD売却交渉は2016年12月から続いていた。
 国務省によると、売却されるのは発射機44基と迎撃ミサイルおよび関連装備品である。 (1812-112904)
【註】 サウジアラビアへのTHAAD売却は米国防安全保障協力局 (DSCA) が2017年10月に発射機6基で編成した7個 FUと迎撃弾360発の売却を承認している。 売却額は$15Bにのぼると見られていた。
 Lockheed Martin社は既にUAEからTHAADを受注し、カタールも要求しているという。

2・1・4・1・2 防衛産業振興の願望

 サウジアラビアの国営軍事企業SAMI社が10月3日、南アフリカの主要軍事企業全社との提携交渉を進めていることを明らかにした。 南アの公共企業省はSAMI社と交渉していることを認めたが、提携の可能性に言及するのは時期尚早とした。
 南アではかつて軍事産業が主要産業の一つだったが、最近は世界的な軍事費の削減などで苦戦している。 一方サウジの軍事支出は米国、中国に次いで世界第3位だが国内には軍事機器の生産能力が乏しく、輸入に頼らざるを得ない部分が多くなっている。 (1811-100503)
2・1・4・2 カタール問題

2・1・4・2・1 サウジアラビアなどとの関係悪化

サウジアラビアなどとの国交断絶

 カタール国防省が4月19日、カタール軍がサウジアラビアが主導する "Gulf Shield 1" 演習に参加したと発表した。 TV放送された4月16日の演習終了式典にはカタールの国旗が写っていた。
 サウジは2017年6月にカタールとの国交を断絶している。 (1806-042515)

 カタールが5月26日、サウジアラビア、UAEなど4ヵ国で製造された商品の輸入と販売を禁止すると発表し、中東の混迷を一段と深めているカタールと4ヵ国の対立は長期化しそうである。
 断交からおよそ1年がたち、カタールが4ヵ国との貿易に依存しなくて済むようになったことに自信を深めていることが背景とみられる。 (1806-052804)
【註】 一方でカタールはサウジが主催する合同演習 "Gulf Shield 1" には参加している。

サウジアラビア、カタールとロシアの関係に「深い懸念」を表明

 仏ルモンド紙が6月1日、サウジアラビアのサルマン国王がマクロン仏大統領に書簡を送り、カタールがロシアS-400を取得した場合、カタール攻撃も辞さないと警告したと報じた。 事態の悪化を阻止するため、マクロン氏に仲介を要請している。
 国王は書簡で、カタールとロシアの関係に「深い懸念」を表明し、S-400排除のためなら軍事行動を含め必要なあらゆる措置を取る用意があると強調した。 (1807-060301)
【註】 当のサウジアラビアはS-400の導入を決め、ロシアRosoboronexprt社とMoUを結んでいる。

サウジアラビアの思惑裏目に

 サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトのアラブ4ヵ国が、2017年6月5日にカタールとの断交を発表して1年が過ぎた。
 4ヵ国はイランとの関係縮小などを求めて経済封鎖したが、カタールはイランとの結びつきを強める裏目に出た。 両者に歩み寄る姿勢は見られず、対立解消のめどは立たない。 (1807-062301)

カタールの戦力増強

 カタールが発注しているRafale、F-15、Typhoonなどの戦闘機に合わせるため、新たな航空基地を建設する一方で既存航空基地の拡張を行っている。 (1810-090511)

2・1・4・2・2 米国のスタンス/対米関係

 米国防総省が2017年12月22日、カタールに36機をFMSで提供するF-15QA をBoeing社に発注したと発表した。
 引き渡しは2022年12月30日までに行われる。 (1802-010307)

 カタールの国防相が、米軍が駐留している同国al-Udeid航空基地に家族居住地区や娯楽施設などを新設し、米軍の居住環境を改善すると述べた。 Al-Udeid航空基地には米軍10,000名が駐留し中央軍の前方司令部が置かれている。
 この背景にはサウジアラビア、UAE、その他の湾岸諸国との関係が悪化しているカタールが米軍との関係を強めたい思惑がある。 (1802-013104)

 カタールが7月23日、同国にある米軍基地を$1.8Bかけて拡張することを明らかにした。 拡張地域には将校家族用200世帯分以上を含む10,000名の住居を建設するという。 (1808-072410)

 カタールが新編した防空軍司令官が11月27日、少なくとも1個FUのPatriotが配置についたことを明らかにした。
 更に残りのFUも2年以内に配備されるとも述べた。 (1812-112711)

2・1・4・2・3 中国のスタンス

 カタールがドーハで2017年12月18日に行った閲兵式で中国CPMIEC社製のJARMを公開した。 公開されたのは発射機2両と運搬車2両で、JARMはBP-12A弾とSY400弾を発射できる。 (1802-010315)
2・1・4・3 イラクの動き

S-400 の購入に関心

 イラク外相が2月27日、イラクがS-400の購入に関心を持っていることを明らかにした。 イラクがS-400に関心を示していることは2月8日に駐シリアのロシア大使がInterfaxに述べていたが、イラクの駐露大使が否定していた。
 S-400の導入についてはカタールとサウジアラビアも関心を持っている。 (1804-030704)

2・1・5 イエメン紛争

2・1・5・1 イランの介入

イラン製 Qiams と見られる Burkan-2H

 米国連大使が2017年12月14日の記者会見で、イランがイエメンのフーシ派に武器を供給している証拠を展示した。 一方11月4日の記者会見で米国はミサイルの残骸を展示し、Burkan-2Hとアラビア語で書かれた緑色の塗装を剥がすとQiamsと書かれたカーキ色の塗装が現れた。
 サウジアラビアは2017年7月22日と11月4日にイエメンから撃ち込まれたBM Burkan-2Hはイラン製のQiamsであると主張していた。 (1802-12200)

 イエメンのAnsar Allah (Houthis) が2017年12月19日、Burkan-2H TBMでリヤドのAl Yamamah攻撃する映像を公開した。 サウジアラビアのSPA通信はこの攻撃を確認した上で、Burkan-2Hはリヤド南方でPatriotにより撃墜されたと発表した。
 公開された映像からするとBurkan-2Hは弾尾に安定翼を持たない独特の形状で、これは2011年にイランが公開したQiamと同じである。
 米国防総省は12月14日に、11月4日にリヤドに向け発射されたBurkan-2Hの残骸を公表した。 (1802-010318)

イラン製と見られる Badr-1P 誘導弾

 イエメンのフーシ派が28日、Badr-1ロケット弾の誘導弾型であるBadr-1Pを公表した。
 Badr-1Pの射程は150kmで精度は3m以内という。 (1811-103001)

 イエメンのフーシ派が10月28日、Badr-1ロケット弾の誘導型であるBadr-1Pを公表した。 射程は130km以上で、精度は3m以内という。
 Badr-1Pは3月に公表された胴径300~350mmのBadr-1と異なり、軌条発射方式で飛行安定のためのスピンは行わない。 (1901-110712)

2・1・5・2 スンニ派諸国の介入

 イエメンでサウジの支援を受けているハディ暫定政権と対立するフーシ派の双方が4月7日、イエメン北部で6日未明にサウジアラビア主導の連合軍の部隊が待ち伏せ攻撃を受け、スーダン兵多数が死亡したことを確認した。 (1805-040803)
2・1・5・3 サウジアラビアに対する攻撃

イラン製と見られる BM による攻撃

 イエメンの武装勢力Ansar Allahが2月10日、紅海に面した港Al-Mukha (Mocha) 近くに配備された PAC-3を破壊したと発表した。
 Al-Mukhaには有志連合のUAE軍がPAC-3を展開していた。 (1804-022116)

 中東のTV局アルアラビーヤなどが、3月25日にサウジアラビアの首都リヤドの北東上空でBMが迎撃されたと報じた。
 イエメンのシーア派系武装組織フーシ派のメディアは、指導者の公約を果たすためサウジの標的へミサイルを発射したと報じた。 (1804-032601)

 イエメンのフーシ派は、3月25日遅くにリヤドのハリド国王国際空港にBrkan-2H BMを1発、Asir県のAbha空港にQaher-2M SRBM 1発、Najran及びJizan県にBadr-1複数発を撃ち込んだと発表した。 (1806-040401)

 サウジアラビア軍が国営通信を通じて3月31日、イエメンのフーシ派がサウジ南部ナジュランに向けて発射したBMを迎撃したと発表した。
 住宅地に落ちた破片でインド国籍の1人が負傷したという。
 25日には首都リヤドの上空で同様のミサイルが迎撃され、破片でエジプト人1人が死亡、2人が負傷していた。 (1804-033103)

 サウジアラビア空軍が4月11日、イエメンで活動する武装組織フーシ派が首都リヤドなどに向け発射したBM 3発を迎撃した。
 国営メディアやサウジ主導の連合軍によると、ミサイルは首都や南部2都市の上空で迎撃された。
 フーシ派は、リヤドの国防省のほか、ナジュラーンにある国営石油会社、サウジアラムコの物流施設を狙ったと明らかにした。 (1805-041201)

 イエメン内戦に軍事介入しているサウジアラビアに対し、イエメンのシーア派系武装組織フーシ派がBM攻撃を強めている。 4月22日はサウジ南部ナジュラン、23日も南西部ジザンを狙って連日発射し、いずれもサウジ軍が迎撃した。
 対立は激化 の一途で、サウジは防空態勢強化を余儀なくされている。 (1805-042401)

 サウジアラビア防空軍が5月9日、イランが支援するAnsar Allah (Houthis) が北イエメンのAmranからリヤドに向け発射したBMを撃墜したと発表した。
 二発目も捕捉されたがリヤド南方100kmに広がる無人の砂漠に落下したという。
 これについてAnsar Allahは、リヤドに向け複数のBurkan-2Hを発射し目標に命中したと発表している。
 国連の専門家会議はイエメンのBurkan-2H についてイラン製Qiamの長距離型と見ている。 (1807-051611)

 イエメンのフーシ派がサウジアラビアに向けて発射したBurkan-2Hの弾数について、サウジアラビアは14発とし、その内12発を撃墜したが2発は目標に届かなかったと発表している。 迎撃はPAC-2で行われたという。
 サウジはPAC-3も購入しているが、PAC-3が配備されたかは確認されていない。 (1808-070421)

 ┏━━━━━┳━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┓
 ┃     ┃目 標┃サウジ発表弾数┃フーシ発表弾数┃
 ┣━━━━━╋━━━╋━━━━━━━╋━━━━━━━┫
 ┃2017.07.22┃Yanbu ┃   1    ┃   1    ┃
 ┃2017.11.04┃Riyadh┃   1    ┃   1    ┃
 ┃2017.12.19┃Riyadh┃   1    ┃   1    ┃
 ┃2018.01.05┃不 明┃   1    ┃  発表なし  ┃
 ┃2017.02.30┃Riyadh┃   1    ┃   1    ┃
 ┃2018.03.25┃Riyadh┃   3    ┃   1    ┃
 ┃2018.04.11┃Riyadh┃   1    ┃   1    ┃
 ┃2018.05.09┃Riyadh┃   2    ┃  特定せず  ┃
 ┃2018.06.05┃Yanbu ┃   1    ┃  発表なし  ┃
 ┃2018.06.24┃Riyadh┃   2    ┃  特定せず  ┃
 ┣━━━━━╋━━━╋━━━━━━━╋━━━━━━━┫
 ┃ 合 計 ┃   ┃   14    ┃   8+   ┃
 ┗━━━━━┻━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┛
 イエメンの武装組織が7月10日、サウジアラビアの紅海に面したAl-ShuqaiqにBMを撃ち込んだが同国防空軍が撃墜した。
 この件について武装組織Ansar Allahはコメントしていない。 (1808-071104)

イラン製と見られる UAV による攻撃

 サウジ主導の連合軍がイエメンのフーシ派が爆装したUAVを1週間に少なくとも3機飛行させたことを確認している。
 UAE軍は4月18日の声明で、同国防空部隊が紅海沿岸でフーシ派が発射したQasef-1 UAV 1機を撃墜したと発表した。 また連合軍報道官が11日にサウジ軍防空部隊がフーシ派のUAV 2機を撃墜したと発表している。
 一方フーシ派はAl-Mukhaに展開しているUAEのPatriot中隊を攻撃したと発表している。
 フーシ派は2017年3月にQasel-1は150kmの航続距離と30kgの搭載能力があることを明らかにしている。 Qasef-1は明らかにイランのAbabil-2と同じもので、イスラエルによるとヒズボラが2006年8月にこれをAbabil-Tとして使用している。 (1806-042517)

 イエメンのフーシ派 (Ansar Allah) が9月11日、航空部隊と砲兵部隊が連携しているとした航空部隊の活躍を報じた。
 報じられたのは紅海の沿岸4箇所をUAVが撮影した映像で、その内の1箇所にはUAEが支援する部隊が支配しているAl-Hudaydahの港と海岸道が写っていた。 (1811-091911)

2・1・5・4 BM 撃墜とするサウジアラビア発表に対する疑惑

 サウジアラビア連合軍は2017年12月19日と12月4日にイエメンからリヤドに向けて発射されたBurkan-2HをPatriotで撃墜したと発表しているが証拠がない。
 11月4日の場合には弾頭の破片も展示されたが、弾頭が空中で破裂した場合には破片の回収が困難であることから、地上に着弾したのち爆発した可能性が高い。 (1802-012606)

 サウジアラビアが主導する多国籍軍が、2017年12月19日にイエメンから発射されたBurkan-2Hをリヤド南方15哩でサウジ軍のPatriotが撃墜したと発表しているが、1月17日にサウジ軍の基地を取材したCNN TVの取材班は、それを裏付ける証拠は全く見つけられなかったと報じている。 (1803-013112)

 イエメンの武装勢力がサウジアラビアに向けてBMを発射したのに対し、サウジは7発全てを撃墜したと発表しているが、ネット上の映像を見るとこの発表は疑わしい。
 3月25日夜の映像では、発射されたPatriot 1発が突然コースを変えてリヤド近郊に墜落爆発している。 その他もリヤドで発射直後に破裂している。
 専門家によるとサウジは1980年代後半に開発されたPAC-2に大きく依存しているという。 (1804-032703)
【註】 PAC-3弾はPAC-2弾のようなHE弾頭は搭載していないことから、地上に落下して、あるいは空中で破裂したとなるとPA-2弾の可能性が高い。

 米中央軍司令官が、サウジアラビア防空軍が3月25日遅くにイエメンから発射されたBMを撃墜したと発表した。
 サウジが主導する有志連合軍報道官はリヤドに向けBM 7発が発射されたが全て撃墜したと発表した。 (1806-040401)

2・1・5・5 サウジアラビアの S-400 導入問題

 サウジアラビア産業省とロシアRosoboronexprt社が2017年10月にS-400の売却で合意しMoUを結んだが、ロシア紙が2月7日に大統領補佐官の話として、サウジが国内での製造を主張しているため交渉が進展していないと報じた。 (1804-021408)
2・1・5・6 フーシ派による F-15 の撃墜

 サウジアラビアのSPA通信が、同国空軍のF-15が3月21日に北部イエメンでSAMによる攻撃を受けたと報じた。 SAMはSadah空港から15:48に発射されたが、F-15は無事帰還したという。
 フーシ派の映像によると発射されたのはR-27T AAMのようで、AAMをSAMとして使用した模様である。
 R-27Tはかつての イエメン空軍が装備していたMiG-29が標準装備するIR誘導の中距離AAMである。 (1805-032811)
2・1・5・7 サウジアラビア連合軍の反攻

2・1・5・7・1 Al-Hudaydah の争奪戦

UAE が Al-Fazah で上陸作戦

 UAEが5月14日にイエメンのAnsar Allah (Houthis) が確保している港町Al-Hudzydahの南方80kmのAl-Fazahで上陸作戦 "Red Thunder" を実施し作戦は成功した。
 作戦を行ったのは特殊部隊の小部隊で、80m級の揚陸艇が使われた。
 上陸部隊はAl-Hunaydahに向け進撃中で、既に漁村のHimaを確保している。 (1807-052305)

UAE の Al-Hudaydah 奪還作戦

 内戦が続くイエメンで6月14日、フーシ派が支配する西部ホデイダをめぐるハディ暫定政権との攻防が激化し、AFP通信によるとフーシ派戦闘員30名が死亡した。 奪還を目指す暫定政権側も兵士9名が死亡し、戦闘が一段と泥沼化する様相となっている。
 暫定政権側はサウジアラビア主導の連合軍の支援を受けて13日にホデイダ奪還作戦を開始し、フーシ派が掌握する首都サヌアとホデイダを結ぶ幹線道路なども空爆してフーシ派の補給路を断つことで軍事的圧力を強め、降伏を迫っている。 (1807-061405)

 イエメン内戦で現場司令官が政権を軍事支援するUAEのメディアに、ハディ暫定政権が反政府勢力から奪還を目指す西部の要衝Hodeidaを巡り、暫定政権側は20日までに反政府戦闘員が主要拠点としてきたHodeidaの空港制圧を宣言したと語った。
 2015年の連合軍による介入後では最大規模の戦闘となり、多数の死傷者を出しているフーシ派は劣勢のもようである。 (1807-062004)

 イエメンの港湾都市Al-Hudaydahの攻防では、UAEが支援するイエメン軍が6月に同市南にある空港を制圧し、9月に同市東側のKilo 16交差点を確保したことから、首都サナアとを結ぶ経路を分断している。 (1812-110907)

 イエメンで、西部の要衝Al-Hudaydahを支配するフーシ派に対するハディ暫定政権の攻撃が激しさを増し、AFP通信は12日に過去24時間で市民7人と双方の戦闘員ら計150人が死亡したと報じた。 Al-Hudaydahをめぐる攻防での死者は11月に入り600人に達するという。  報道によれば、既に政権軍はAl-Hudaydahの住宅地に進攻し、フーシ派は建物の屋上に狙撃手を配置するなど徹底抗戦している。 (1812-111204)

 UAEが装備その他で支援しているイエメン政府軍が港湾都市Al-Hudaydahの攻防で新たな攻勢を展開している。
 6月に同市南側の空港を制圧した政府軍は9月に同市東側のKilo 16交差点を制圧して首都サナアへの経路を遮断していたが、11月2日にはKilo 16の西3.5kmにある凱旋門も奪取したと発表した。 (1901-111413)

Al-Hudaydah での停戦

 スウェーデンで開かれていたイエメン内戦の和平協議で12月13日、ハディ暫定政権とフーシ派は西部の要衝ホデイダでの停戦と同地からの全部隊撤退で合意した。 主要港を擁するホデイダはフーシ派の支配下にあり、奪還を目指す暫定政権との戦闘で被害が深刻化していた。
 協議に参加したグテレス国連事務総長によれば、部隊撤退は数日以内に開始され、停戦監視で国連が主要な役割を担うという。 (1901-121306)

2・1・5・7・2 米国のスタンス

 UAE高官が、サウジアラビア主導の連合軍がイエメンの港湾都市Hodeidaをイランが支援しているシーア派から奪還する作戦に際し、UAEが米軍に対し過去24時間に行った衛星画像の提供、偵察活動、地雷原処理の3件の支援要求を米側が拒否したと語った。
 UAEなどが行ったこの作戦に対し米国は公式には反対していないが、同港での人道支援物資陸揚げ続行を強く要望している。 (1807-061406)
2・1・5・8 Bab al-Mandab海峡の緊張

サウジアラビアのタンカに対するフーシ派の攻撃

 サウジアラビア国営石油企業Aramco社が、大型原油タンカ2隻が7月25日にBab al-Mandab海峡でイエメンのフーシ派から攻撃を受けたため、同海峡の運航を停止していると発表した。 船の損傷は軽微で負傷者もなく、原油の流出もなかったという。
 サウジ国営海運会社Bahri社のタンカは1月6日と4月3日にも襲撃を受けている。 (1809-080114)

 サウジ国営石油会社Saudi Aramcoが7月25日、同国のタンカー2隻がこの日早くに紅海でイエメンの武装勢力から攻撃を受け、その内の1隻は船尾に損傷を受けたことから、Bab al-Mandab海峡を通過するタンカーの運航を一時停止していると発表した。
 この結果サウジアラビアのペルシャ湾岸JuaymahにあるSaudi Aramco社の積み出し港からエジプトのAin al-Sukhan港への輸送ができなくなる。 (1809-080205)

イスラエルの反応

 イスラエルのネタニヤフ首相が8月1日、イランが紅海のBab al-Mandab海峡の封鎖を試みた場合、イスラエルは軍を派遣すると言明した。
 Bab al-Mandab海峡では7月下旬に、イランが支援するイエメンのフーシ派がサウジアラビアのタンカ2隻を攻撃したことを受け、サウジが同海峡経由の原油出荷を停止している。 (1809-080201)

Bab al-Mandab海峡運行の再開

 サウジアラビア国営Aramco社が7月25日に、同日にサウジの超大型原油タンカー2隻が紅海でイエメンの武装勢力の襲撃を受けたことから、Bab al-Mandab海峡を通過するタンカーの運航を停止すると発表したが、ペルシャ湾岸のサウジの原油搬出港JuaymahからエジプトのAin al-Sumedに向かっていた同国のタンカー3隻がAISのトランスポンダを切った上で船団を組んでオマーン南部のSalalah港を出港した。 3隻は29日朝にもBab al-Mandab海峡を通過すると思われる。  超大型原油タンカーはスエズ運河を通過できないため紅海に面したAin al-Sumedまで運搬し、そこからSumedパイプラインで地中海に運んでいる。 (1810-080801)

 サウジアラビアが8月4日、紅海のBab al-Mandab海峡を経由した原油輸送を再開したと発表した。
 サウジは紅海上で7月25日に原油タンカー2隻がイエメンのフーシ派に攻撃されたことを受け、原油出荷を一時的に停止していた。 (1809-080603)

フーシ派が爆装 USV を装備

 イエメン政府軍が9月8日に、フーシ派が爆装したUSVを保有していると発表した。
 このUSVは木箱入り爆薬を複数搭載し、随所にこれを敷設できるという。 (1810-091405)

2・1・5・9 米国のサウジアラビア支援

 サウジアラビア主導の連合軍が11月10日、今後米空軍機による空中給油支援は行わないと発表した。
 マティス米国防長官は10月30日に、米空軍による空中給油支援は全体の20%未満であると述べている。 (1901-112112)
2・1・6 イラン

2・1・6・1 核開発問題などを巡る諸外国との対立

2・1・6・1・1 トランプ政権の反イラン方針

6ヵ国核合意からの離脱

 トランプ米大統領が5月8日、イランと欧米など6ヵ国が2015年に締結した核合意から離脱し、対イラン経済制裁を再開すると表明した。
 オバマ政権下で締結された核合意についてトランプ大統領は、イランの弾道ミサイル開発プログラムや2025年以降の核開発活動、イエメンやシリア危機への関与などに対処していないと指摘し、偏ったひどい内容で決して合意すべきではなかったと語った。 (1806-050901)

米独自制裁の強化

 米財務省が5月22日、イエメンのフーシ派にBM技術を提供したとしてイラン人5人を米独自制裁の対象に指定した。
 ポンペオ米国務長官は21日、イランが政策を変更するまで史上最強の制裁を続けると表明していた。
 財務省によると、5人はイラン革命防衛隊精鋭のQuds Forceと関係がありBM開発にも関わっていた。 財務省は5人の活動によりフーシ派がサウジアラビアをミサイル攻撃したとしている。 (1806-052301)

 トランプ米政権が11月5日、イラン核合意からの離脱表明に伴い、原油、イラン中央銀行や金融機関、海運を対象にした制裁を再発動した。 トランプ大統領は4日に「史上最強の制裁だ」と述べ、イランへの圧力を強めると強調した。
 8月の自動車部門などへの制裁再開に続く第2弾で、オバマ前政権が2015年の核合意に伴い解除した制裁が復活した。 (1812-110601)

イランの反応

 トランプ米大統領がイランのBM開発を制限する追加措置を求め、満たされなければ合意離脱も辞さない構えであるのに対し、イラン最高安全保障委員会の事務局長が4月24日に、欧米など6ヵ国とイランが結んだ核合意から米国が離脱すれば、イランの核拡散防止条約 (NPT) 脱退もあり得ると警告したと、ロイタ通信が報じた。 (1805-042402)

 イランの最高指導者ハメネイ師が6月4日、トランプ米大統領が5月に一方的に離脱を表明したイラン核合意が無効になった場合、ウラン濃縮活動を加速させるとし、準備を整えるよう国内担当機関に指示したと明らかにした。
 英仏独の欧州3ヵ国は核合意維持に向け、米制裁によるイランの経済的打撃の回避策などを模索している。 (1807-060501)

イラク国内の米国人や米外交施設への攻撃に警告

 米大統領府が9月11日、イラク国内の米国人や米外交施設への攻撃に対し「迅速かつ断固として対応する」との声明を発表し、攻撃の黒幕とされるイランに警告を発した。
 声明は、過去数日間にわたり、南部バスラの米領事館やバグダッドの米大使館に対して「命に危険を及ぼす攻撃があった」と指摘し、イランがイラク国内の武装勢力に武器や資金を供与しているとして、米国人が負傷した場合や米施設に損害があった場合はイラン政府に責任を問うとした。
 米メディアによれば、バグダッドの米大使館付近に7日、複数の迫撃弾が着弾したという。 (1810-091202)

2・1・6・1・2 ホルムズ海峡封鎖の駆け引き

ホルムズ海峡の封鎖を警告

 米海軍報道官が7月5日、イランがホルムズ海峡の封鎖を警告していることを受け、米海軍は航海の自由と通商の自由な流れを確実に確保する用意ができているとの立場を示した。
 イラン革命防衛隊高官は前日、米国がイラン産原油の輸入を停止するよう各国に圧力をかければ、ホルムズ海峡を通過する原油輸送を阻止する可能性があると警告している。 (1808-070602)

 トランプ米政権がイラン産原油の輸入停止を各国に呼び掛けていることを受けイランの最高指導者ハメネイ師の事務所がイラン外務省高官らとの会談内容として、同師が原油輸出が不可能になればホルムズ海峡の封鎖に踏み切るとの可能性を示唆したロウハニ大統領の発言への支持を7月21日に表明したと発表した。 (1808-072201)

 米中央軍によると、イラン海軍がホルムズ海峡に集結している。 7月31日にはイラン海軍司令官がホルムズ海峡を封鎖する準備ができていると述べたが、7月下旬にはマティス米国防長官がホルムズ海峡封鎖はここを通過する全船舶に対する攻撃と見なすと述べている。 米海軍は1988年にフリゲート艦Samuel B. Robertが機雷で大破した際にイランのフリゲート艦1隻を撃沈している。
 バーレーンを本拠にする米第5艦隊は現在、 空母打撃群を持っていないが陸上に航空基地を保有している。 (1809-080204)

ホルムズ海峡近くで大規模演習

 米当局者らが8月1日、イランがペルシャ湾で近く大規模演習を実施するための準備を進めている兆候を米政府が確認したことを明らかにした。 米国との緊張が高まるなか、年次演習を前倒しして行うとみられる。
 米中央軍は、イラン革命防衛隊が封鎖する可能性を警告しているホルムズ海峡などでイランの活動が活発化していることを確認している。 米当局者らは匿名を条件に、イラン革命防衛隊は演習に100隻以上の艦艇を動員する準備を進めているもようだと語った。
 地上部隊からも数百名が参加する可能性があるという。 (1809-080202)

 米国防当局者が米メディアに対し8月2日、イランがペルシャ湾一帯で大規模な軍事演習を開始したと明らかにした。 演習には革命防衛隊の小型舟艇数十~100隻余りが参加しているもようで、週内にも終了する可能性がある。
 演習海域にはホルムズ海峡が含まれ、同海峡を封鎖する能力を誇示する狙いがあるとみられる。 米艦船との接触は起きていないという。 (1809-080302)

2・1・6・1・3 核問題に関するイスラエルの対応

 「2・8・2・6・1 イランに対する核疑惑非難」で後述
2・1・6・1・4 核問題に関する湾岸諸国の対応

 CBS TVが3月15日、サウジアラビアのムハンマド皇太子とのインタビューを報じた。 その中で皇太子は、対立するイランが核兵器開発に成功すれば、サウジも直ちに核兵器開発を行うとの考えを強調した。 (1804-031501)

 サウジアラビアが5月8日、米国のイラン核合意離脱を歓迎する声明を発表した。
 イランは経済制裁解除による収益をBM 開発やテロ組織支援に費やしてきたと批判し、制裁再発動への支持を強調した。
 一方、シリア外務省は国営メディアを通じて米国の決定に反発し、米国の敵対的態度による影響をイランが克服すると確信していると表明した。 (1806-050902)

2・1・6・1・5 その他諸国との関係

モロッコが国交断絶

 モロッコ政府が5月1日、イランとの外交関係断絶を表明した。
 モロッコが領有権を主張する西サハラの独立派組織であるポリサリオ戦線に対し、イランが軍事訓練や武器支援を行っているというのが理由で、モロッコはアルジェリアにあるイラン大使館やレバノンのヒズボラを経由して、SAMがポリサリオ戦線に渡っていたと批判している。
 これに対しヒズボラは声明で、モロッコは虚偽の嫌疑を持ち出したと反発している。 (1806-050204)

2・1・6・2 軍備強化

2・1・6・2・1 戦闘機の国内開発

Qaher F-313

Kowsar

 イランが8月21日、国産の新型戦闘機Kowsarを公開し軍事力を強化する方針を示した。
 ロウハニ大統領は演説で、われわれは国土を侵し資源を奪おうとする軍事大国と戦う態勢をとるべきだと訴えた上で、「なぜ米国がわが国を攻撃しないのか。 それは、わが国の威力のためで、攻撃がもたらす結果を認識しているからだ」と述べた。 (1809-082104)

 イラン空軍がローハニ大統領を迎えて8月21日、1970年代に取得したNorthrop F-5F Tiger Ⅱ戦闘機を新型国産第四世代戦闘機Kowsar (or Kosar) として披露する式典を行った。 イラン空軍は既に2017年4月にKowsarを公表していた。
 イラン空軍は今までにもF-5派生型としてSimorghとAzarakhshを公表しており、そのほかに尾部に安定翼を取り付けたSaeqehも公表している。
 F-5やKowsarには、F-5が2基搭載しているGE社製J85に代わって2016年に公表されたOuj (or Awj) ターボジェットエンジンが搭載されている。 (1810-082912)

 イランのメディアが11月3日、国産戦闘機Kowsarの量産を開始したと報じた。
 8月に初公開されたKowsar(国産ジェット練習機も同名なので注意を要する)は明らかにNorthrop社製F-5 Tiger Ⅱを元にしている。 イランは1979年の革命までにF-5E 141機、F-5F 28機を米国から購入していた。 (1901-111415)

2・1・6・2・2 弾道弾の整備、発射試験

Zolfaghar

 イランのFars通信が2017年12月16日、Fateh-110シリーズのZolfagharのクローズアップ写真を公開した。 Zolfagharは従来型と異なり弾頭切り離し式で、弾頭だけが目標に向け引き続き誘導され るという。
 イラン革命防衛隊 (IRGC) が2016年9月にZolfagharを公開した際に射程は700kmとしていた。 これはその2年前に公開されたFateh-313の射程500kmを上回っている。
 イランは2017年6月19日にISISを攻撃するとして、シリア東部のAl Mayadinに向けてイラン西部からZolfagharを6発発射している。 (1802-010316)

Fateh-110

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が9月8日にイラク北部のクルド軍に向けFateh-110 6発を発射し、その内5発が目標地域に到達し4発が目標近くに着弾した。 これは6月に同じミサイルでシリアのISISを攻撃した際と比べて格段と向上している。
 6月の場合はFateh-110の長距離型のZolfagharを6発発射したが、目標に到達したのは僅かに2発であった。 (1811-091912)

IRBM の発射試験

 ポンペオ米国務長官が12月1日、イランがIRBMの発射試験を実施したとして非難する声明を出した。 ポンペオ長官はミサイル発射の場所や時期を特定していないが、ミサイルは複数の弾頭を搭載可能という。
 中東全域に加えて欧州諸国の一部を射程に入れているとし、BMに関わるあらゆる活動を禁じた国連安保理決議に違反して、ミサイル開発に関わる全ての活動をやめるよう求めた。 (1901-120201)

MRBM の発射試験

 イランのFars通信が10月10日、革命防衛軍がMRBMの発射試験に成功したと報じた。
 この発射試験については12月1日にポンペイオ米国務長官が指摘していた。 (1901-121105)

2・1・6・2・3 新型ミサイルの登場

未公開 ALCM

 イランが4月18日に行った陸軍記念日の観閲式で、未だ公開されたことのないALCMを登場させた。  CSISのミサイル専門家はこのALCMはEOまたはTV方式のシーカーを持つと見ている。 (1805-041807)

Kamin-2 発展型 SAM

 イランが4月18日に行った陸軍記念日の観閲式典でローハニ大統領は、イランは他国の支援なしで必要な兵器を製造できると断言したが、式典には低空目標やUAV対処用のSAMであるKamin-2の発展型も登場した。 (1805-041807)

Fateh-110 の最新型 Fateh Mobin

 イラン革命防衛隊 (IRGC) が8月13日にFateh-110の最新型Fateh Mobinを公表した。
 最新型Fatehの先端にはカバーが付けられていることからEOシーカが取り付けられている可能性がある。
 Fox Newsは8月11日に米当局者の話として、米衛星が8月上旬にFateh-110 Mod3がオマーン湾岸のBandar-e-JaskにあるIRGCの基地から発射され、ホルムズ海峡上空を160km以上飛翔して砂漠に着弾するのを捕捉したと報じた。 (1810-082201)

2・1・6・2・4 防空システム

Bavar-373

 イランのFars News Agencyが9月10日、イランが開発したBavar-373防空システムがBMの迎撃に成功したと報じた。
 Tasnim News Agencyはイラン軍准将の発言として、Bavar-373はロシアから導入したS-300PMU2より性能でも信頼性でも優れていると報じた。 (1811-091913)

Talash

 イランがDefenders of the Velayat Skies 97演習に登場したTalash防空システムの鮮明な画像を公表した。  Talashはイラン海軍が装備していたRIM-66 (SM-1) を元にしたSayyad-2 SAMを中心としたシステムで、イランは2013年にSayyad-2の量産を開始したと発表している。
 システムのOfoghレーダは今までパレードでしか見られていない。 画面にあるシステムの捕捉レーダはイラン製の車両に搭載されたMIM-23 HAWK SAMのAN/MPQ-50 PARと思われる。 (1901-111414)

2・1・6・2・5 UAV の国産

Mahajer 6

 イランが2月5日にMahajer 6 UAVの量産開始式典を行った。 式典には5機が展示されたが、機体番号からすると既に少なくとも9機は生産されていると見られる。
 展示されたMahajer 6には2種類の爆弾が搭載されており、不透明なシーカ窓を持つ方にはGhaemと記され、透明なシーカ窓を持つ方には Ghaem 1と記されていた。
 このことからGhaemはLOBLのIR誘導、後者はSAL誘導と見られる。 (1804-021409)

2・1・6・2・6 Fakour 長距離 AAM の量産

 イラン軍が7月23日、Fakour AAMを量産中であると発表した。 国防相が参加して行われたこの日の式典では6発のFakour が展示されていた。
 イランのメディアによるとFakourの射程は150kmで速度はMach 5である。 (1808-072408)

【註】 この画像から見る限り、Fakourとは米海軍がかつてF-14に搭載していたAIM-54 Phoenixそのものである。 因みにPhoenixも実弾の塗装は黄色であった。

 イラン軍が7月23日、Fakourレーダ誘導AAMが量産に入っていることを公表した。 射程150km、最大速度Mach 5のFakour-90はF-14搭載用として2013年2月にに公表されていた。
 Fakourの外観は、米国が1970年代にF-14と共にイランに売却したAIM-54 Phoenixと殆ど同じである。 (1809-080113)

2・1・6・3 シリア反政府勢力への BM 攻撃

 イラン南西部のアフワズで8月22日に武装グループが軍事パレードに乱入して銃を乱射し、革命防衛隊員など25名が死亡して、ISISとイランで分離独立運動を展開するアラブ系組織が犯行を主張していることを受け、イラン革命防衛隊が1日に声明を発表し、報復措置としてMRBM 6発を発射して、シリア東部の過激派組織の拠点を攻撃し、事件に関わった関係者を殺害したと発表し、さらに強力な措置を取ると警告した。 (1811-100104)

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が10月1日に、9月イランの軍事パレードを襲撃した報復としてシリア東部Deir el-Zourに対して6発のBMと爆装UAVで攻撃し、IRGCによるとISISの幹部40名を殺戮したが、シリア外務相は2日にこの攻撃はシリア、イラン両国の合意で行われたことを明らかにした。 (1811-100208)

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が10月1日、Ahvazで起きたパレードへの発砲で25名が死亡した9月22日の事件への報復として9月30日02:00に、570km離れたイラクとの国境に近いシリア北部のAl-Bu KammalにBM 6発を撃ち込んだと発表した。
 Fars通信によると撃ち込んだのはR-17 Scudを元にした液体燃料のQiamと固体燃料のFateh-110で射程が最長のZelfaghar (Zelfiquar) であるという。 (1812-101011)

2・1・6・4 海外反米反イスラエル勢力等の支援

武器援助

 米国防総省が12月18日、ワシントン市内の米軍基地に保管されているイラン製とされるSRBMやSAM、武装UAVなどを一部外国報道陣に公開した。
 公開されたのは、イラン革命防衛隊の支援を受けるイエメンのフーシ派がサウジ国内に撃ち込んだとされるQiam SRBMの残骸3発分や、Sayyad-2C SAM 1発、カセフ-1 UAV 2機の残骸、各種ATGMなどで、いずれもサウジによって回収されたとしている。
 このうちSRBMについては、外形的特徴やエンジン部品にイラン国有企業の刻印が打たれていることなどからイラン製なのは明白だとしている。 (1901-121904)

2・1・6・5 国内の不安定化

 イランでは2017年12月28日に物価の高騰や就職難に不満を募らせた市民が北東部の都市マシュハドで抗議行動を行ったのをきっかけに反政府デモが40以上の都市に広がり、最高指導者のハメネイ師を頂点としたイスラム体制への異例の批判に発展している。
 1月1日夜には中部イスファハン州の町で警察署を襲撃して武器を奪おうとした6人が射殺され、2日夜も各地でデモが続いたもようで、一連のデモによる 死者は23人となり、これまでに700人以上が拘束されている。
 これに対して最高指導者ハメネイ師は、反政府デモが広がって以降初めてとなる反応を2日に国営TVで示し、米国などを念頭に「敵がもめごとをつくりだそうとしている」と述べ、外国がデモを扇動していると批判した。 (1802-010301)
2・1・7 その他の中東情勢

2・1・7・1 イラン、イラク、シリア、ヒズボラの連携

 ロイタ通信が8月31日、イランやイラク、西側諸国の関係筋の情報として、イランが数ヵ月前からイラク国内のシーア派組織にBMを渡し、これらの組織がミサイルを製造できるよう支援していると報じた。
 これについてイラク政府や軍は当初コメントを控えていたが、イラク外務省が9月2日に声明を発表し、具体的な証拠のない報道に反応する必要はないとした上で、イラクの全機関は、他国の安全を標的とした活動の拠点や通過点としてイラク国土を使うことを禁じた憲法第7条を守るとした表明を出した。 (1810-090303)

 イスラエルのリーベルマン国防相が9月3日、イラク国内にあるとされるイランの武器弾薬等を攻撃する可能性を示唆した。 その前の週にロイタは、イランやイラク、西側諸国の関係筋の情報として、イランが数ヵ月前からイラク国内のシーア派組織にSRBMを渡していると報じた。 イラン、イラク両政府は報道内容を否定している。
 イスラエルはこれまで、シリアにあるイランの軍事インフラを繰り返し攻撃している。 (1810-090403)

2・1・7・2 サウジ記者殺害事件

トルコの対応

 サウジアラビアの記者カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された疑惑をめぐり、サウジ人の容疑者がカショギ氏に加えた暴行に関する情報は次々にメディアで報道されたが、この件についてトルコ当局はこれまで捜査状況を公式な形では発表していない。
 しかし追い込まれたサウジは最終的にカショギ氏が「口論と殴り合いの末、死亡した」と認めざるを得なくなった。
 トルコとサウジは事件前から関係が悪化しており、サウジの政権に打撃を与えるためトルコが情報をリークした可能性も指摘されるが、手法には疑問の声も出ている。 (1811-102007)

 サウジアラビアの反体制記者がトルコのサウジ総領事館で死亡した事件で、トルコが巧みな駆け引きを展開している。
 政府は事件への言及を控える一方でメディアが捜査関係者の発言を次々に報じ、サウジ政府に同氏の館内での死亡を認めさせた。 サウジに批判的な国際世論の醸成にも成功し、主導権を握ったトルコのエルドアン大統領は23日に事件に関して声明を出す方針を示している。
 通貨リラ急落など経済低迷に悩むトルコは近年、サウジや米国との関係が冷え込んでいるが、捜査情報を一手に握っている強みを外交面に生かし、外資導入などにつなげる狙いだという指摘もあった。 (1811-102205)

 トルコのエルドアン大統領が10月23日、イスタンブールのサウジアラビア総領事館内で、カショギ氏が死亡した事件を受け、殺害に関わったとみられるサウジ人容疑者18人の裁判をトルコで行うよう要求し、事件への関与者全員が刑罰を受けるべきだと訴えた。
 また同大統領は、記者殺害はそれを企図してイスタンブールへ派遣されたサウジ人グループがまとめた行程表に沿って、数日前から計画されていたとの見解を示した上で、このグループに誰が命令を出したのか、遺体はどこにあるのかなど、多くの疑問に対する答えが引き続き待たれると述べた。 (1811-102302)

米国の対応

 サウジアラビアの反体制ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコのサウジ総領事館で行方不明になった事件で、トランプ米大統領は10月18日にサウジ、トルコ両国訪問から帰国したポンペオ国務長官から報告を受け対応を協議した。
 米国とサウジの関係についてトランプ大統領は、サウジはイランの脅威を食い止めている中東における非常に重要な同盟国だと述べるとともに、サウジに対する巨額の武器輸出合意を維持することの重要性を改めて強調した。 (1811-101901)

 ムニューシン米財務長官が10月18日、サウジアラビアで来週開催される経済投資フォーラム「砂漠のダボス会議」への参加を取りやめる意向を表明した。 (1811-101902)

 サウジアラビアの記者カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で死亡した事件で、イランを脅威と見なしてサウジやイスラエルと連携を強化する方針を取ってきたトランプ米政権のサウジとの共闘関係にほころびが出るのは避けられない状況になっている。
 トランプ大統領は従来、対イランで連携するサウジについて「重要な同盟国だ」と強調してきたが、サウジが20日にカショギ氏が総領事館内での暴力沙汰で死亡したことを認めた後、対サウジ制裁も「あり得る」との立場を取るようになった。 (1811-102204)

 ポンペオ米国務長官が10月23日、サウジアラビアのカショギ氏の殺害に関わったサウジ政府当局者の米国への入国査証を取り消すと発表した。
 トランプ政権がカショギ氏の殺害に関連してサウジ政府に対抗措置を講じるのは今回が初めてとなる。 (1811-102305)

フランスの対応

 フランス政府が10月22日、サウジアラビア向け武器輸出を停止するかどうか明言を避けた。 これに先立ち、ドイツ政府はサウジのカショギ氏が殺害された疑惑の真相が解明されない限り、サウジへの武器輸出を中止するようEU加盟国に呼び掛けていた。
 フランスとサウジは、エネルギ・金融・武器など様々な分野で、密接な外交通商関係を築いており、仏国防省のデータによると2008~2017年にかけてサウジはフランスから€11B ($12.6B) 以上の武器を購入し、フランスにとって第2位の輸出相手先となっている。
 フランス外務省は、同国の武器売却制限政策は厳格なものであり、省庁間の委員会がケースバイケースで分析して決定すると表明したうえで、サウジへの武器輸出はこうした状況で検討されているとしている。 (1811-102303)

 マクロン仏大統領は10月26日、サウジアラビア人記者カショギ氏が殺害された事件を受けてドイツなどがサウジへの武器輸出の凍結を呼び掛けていることについて「事件とは無関係だ」と同調しない考えを示した。
 サウジはフランスにとってインドに次ぐ武器輸出先である。 (1811-102702)

ドイツの対応

 ドイツが11月19日、サウジアラビア人記者カショギ氏の殺害に関与した疑いのある同国籍の18人について欧州の大部分への渡航を禁止した。 18人は欧州諸国を国境検査なしで自由に往来できる「シェンゲン協定」に加盟する26ヵ国に渡航できなくなる。
 またサウジへの武器売却を凍結した。 この結果Lürssen社製巡視船や、Thales、Airbus、Lockheed Martinの各社などが参加する企業体が製造する対砲兵レーダ4基が主な影響を受ける。 (1812-112003)

カナダの対応

 カナダのトルドー首相が10月22日、サウジアラビア人記者カショギ氏の殺害を巡り武器の悪用があったとの結論に至った場合にはサウジとの大型武器取引を凍結する用意があると述べた。
 この発言により、2014年に米GD社のカナダ部門がサウジと結んだ総額$13Bの軽装甲機動車供給契約が凍結される可能性がある。 (1811-102304)

 カナダのトルドー首相が12月16日、サウジアラビアと2014年に契約した総額CAD15B(1兆2,000億円)の武器輸出についてイスタンブールのサウジ領事館での記者殺害や、イエメン内戦への介入を理由に取りやめを検討していると語った。
 ロイタ通信によると、カナダ政府に兵器を供給している米GD社のカナダ法人は17日、契約を破棄すればカナダ政府は数十億ドルの債務を負うとコメントした。 (1901-121704)

2・1・7・3 紅海の情勢

 DigitalGlobe衛星が2月に撮影した画像から、UAEがBab al-Mnadab海峡のPerim島に建設していた滑走 路の建設を中止している模様である。
 UAEは2016年後半にイエメン南部での作戦での活用と海路上の隘路となっている同海峡を確保するため、同島に3,200mの滑走路を建設していたが、同衛星の画像から1年近く工事が中断していることが明らかになった。 (1806-040414)
2・1・7・4 駐留米軍の動き

2・1・7・4・1 Patriot の撤収

 Wall Street Journalが米軍当局者の話として、米陸軍が中東に配置している複数のPatriot中隊を10月に引き上げると報じた。 対象となるのはクウェートの2個中隊とバーレーン、ヨルダンに配置したそれぞれ1個中隊で、撤収の狙いはロシア、中国、イランなどの脅威への対処のためという。
 撤収したPatriot中隊は米本土に戻り、再配置に備えて再生と能力向上の改修を行うという。 (1810-092603)

 Wall Street Journalが9月26日、米国がバーレーン、ヨルダン、クウェートに展開していたPatriotを撤収していると報じた。 同紙によるとクウェートから2個システム、バーレーンとヨルダンからそれぞれ1個システムという。
 ただクウェートは既存のPatriotをPAC-3対応に改良し、更に追加の2個システムを新たに購入している。 (1812-100314)

 バーレーンとヨルダンに展開していた米陸軍のPatriotが10月27日までに撤退した。 カタールとUAEに配置したPatriotはそのままのようである。
 Wall Street Journalは9月26日、中国とロシアの脅威に備えるため、クウェートから2個中隊、バーレーンとヨルダンからそれぞれ1個中隊ずつのPatriotを撤退させたと報じている。 (1901-110713)

2・1・7・4・2 シリアからの地上軍撤収

 米大統領府が12月19日、シリアから米軍の撤収を開始したと発表した。 また国務省は24時間以内にシリアにいる職員を全員撤収させる方針を示したという。 シリアには現在、特殊部隊を中心に2,000名の米軍部隊が駐留している。
 大統領府報道官はシリアから完全撤収するのか、また撤収の時期については明確にしていないが、米高官によると政府は完全撤収を検討しているもようである。 (1901-122001)
【註】 シリア駐留米軍にはISISの掃討と共にクルドを攻撃しようとしているトルコを牽制する役割もあるが、両軍の間に立っていた米軍が撤退することはトルコのクルド攻撃を容認することを意味すると言える。
 このことから米軍の撤退はトルコと米国の密約による可能性もある。

 米大統領府が12月19日、シリアに展開する米軍が撤退を開始したと明らかにした。 トランプ大統領は19日にツイッターに投稿した動画で「シリアに駐留する米軍は帰還する時がきた」と訴え、シリアでのISISとの戦いに勝利したと繰り返し強調し撤退の正当性を訴えた。
 New York Times紙によると大統領は30日以内に全ての米兵がシリアから撤退するよう関係者に命じたと報じ、CNN TVも米軍が全面的かつ迅速な撤退に向けた計画を進めていると報じた。
 これに対して米議会からISISの勢力が一部に残る中での撤退には重大な失敗になるとする反発の声があがっている。 (1901-122002)

2・1・7・4・3 空母が9月11日事件以来のペルシャ湾入り

 米海軍の空母John C StennisとそのCSGが12月21日に、米国が5月にイランとの核合意を破棄して以来初めてペルシャ湾に入った。 John C Stennisにはイラン革命防衛軍の艦艇が付きまとった。
 米空母がペルシャ湾を不在にしていたのは9月11日同時多発テロ事件以来最長であった。 (1901-122110)
2・1・7・5 中東諸国の国防費

サウジアラビア

 サウジアラビアが2019年国家予算で、全体が7%増大するなか国防費は9.1%削減すると発表した。
 2018年度に国防費は実質3.8%増であった。 (1901-121907)

2・1・7・6 その他の中東諸国

レバノン

 欧州やサウジアラビアなどアラブ諸国、日本や中国など約40の国や地域と国際機関が15日、緊迫が続くレバノン支援会合を開き、欧州を中心にレバノン政府軍の増強に向けた支援を決めた。
 レバノンを巡ってサウジアラビアと イランが対立から紛争への発展も懸念されているため、欧州は政府軍の支援で混乱を早期に収拾したい考えである。
 レバノンではイラン傘下のシーア派組織ヒズボラの存在感が増しており、政府に閣僚を送り込むほか軍事部門を持ち、装備などで政府軍を圧倒している。 2017年11月にはハリリ首相が唐突に辞任を表明したが、イランやヒズボラに接近するハリリ氏に同氏を長年支援してきたサウジが辞任を迫ったとの見方が多い。
 その後、ハリリ首相は辞任を撤回したものの、サウジの動きをイランは批判しており、イエメンやシリアでの代理戦争がレバノンにも波及する恐れが出ている。 (1804-031602)

バーレーン

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が9月28日、バーレーンへのGMLRSとATACMSの売却を国務省が承認したと発表した。
 売却されるのはM31 GMLRS 120ポッドとM57 ATACMS 110発で、総額は$300Mという。 (1812-101012)

2・2 東シナ海

2・2・1 中国の動き

2・2・1・1 一方的なガス田開発

6月:移動式掘削船を設置

 菅官房長官が6月29日午前、東シナ海の日中中間線付近で中国がガス田開発のために移動式掘削船を設置した件について、日本政府として抗議したと明らかにした。
 長官は、日中間の海洋の境界がいまだ確定していない状況で、中国側が一方的な開発に向けた行為を継続していることは極めて遺憾だと述べた。 (1807-062901)

9月:移動式掘削船を設置

 防衛省が9月下旬に、中国が東シナ海の日中中間線付近に新たに移動式の掘削施設を設置したことを確認した。 新たな移動式掘削施設はガス田開発のためとみられ、中間線の中国側に固定された。
 日中中間線付近には中国の海上施設が16基あり、このうち12基が稼働していて、政府は6月にも中間線付近で別の移動式掘削施設を確認し、中国側に抗議している。 この施設はその後、問題の海域から離れたという。 (1810-092902)

11月:新たな試掘に着手

 政府関係者が11月30日、東シナ海の日中中間線付近で中国が一方的に進めるガス田開発で、中国側が9月に投入した移動式掘削船(リグ)が移動し、新たな試掘に着手した疑いがあることを明らかにした。 永続的な採掘設備建設につながる恐れがあり、政府は動向を注視している。
 ガス田をめぐっては10月に訪中した安倍首相と中国首脳が共同開発の交渉再開へ意思疎通を図る姿勢で一致したが、一方的開発を継続する中国側の姿勢が浮き彫りになった。 (1812-113005)

 菅官房長官が12月3日、東シナ海の日中中間線の中国側で中国がガス田開発のための掘削船を配置し掘削している様子が確認できたことから、外交ルートを通じて中国側に抗議したことを明らかにした。
 外務省によると、掘削船は9月に周辺海域で確認され同省はその際も抗議したが、11月中旬になって海域を移動し、再び掘削をしている様子が確認できたという。 (1901-120302)

2・2・1・2 艦船の侵入

2・2・1・2・1 商級原潜が接続海域で潜航通過

 防衛省などによると、護衛艦おおなみとP-3Cが1月10日夜、宮古島の接続水域を潜航しながら北西に進んでいる外国籍の潜水艦1隻を発見した。 潜水艦はそのまま直進し、11日午前に尖閣諸島の大正島北東沖の接続水域に入った。  いずれも領海侵入はなく数時間後の11日午後に接続水域を出た。
 国籍は探知能力を露呈するとして公表されていないが、中国艦1隻が随伴しており、潜水艦も中国海軍の所属とみられる。
 尖閣諸島周辺の接続水域で外国籍の潜水艦が確認されたのは初めてで、この水域での中国艦の航行は2016年6月以来2回目となる。 (1802-011101)

 中国外務省報道局長が1月11日、中国軍艦が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入したことについて、尖閣諸島は中国固有の領土だと主張し、2隻の海上自衛艦が接続水域内に入ったので中国海軍が追跡、監視したと、中国軍の行動は自衛艦の動きに対処するためだったとの理屈を述べた。 (1802-011102)

 防衛省が1月12日夜、11日午前に尖閣諸島沖の日本の接続水域を潜航していた潜水艦が中国潜水艦だと確認したと発表した。
 潜水艦は12日午後に尖閣諸島北西の東シナ海の公海上で浮上し、中国国旗を掲げたという。 潜水艦は潜航中も浮上後も護衛艦からの問いかけに返答せず公海上に出たという。
 浮上し国旗を掲げた理由について防衛省幹部は、東シナ海は水深が浅く潜航したままだと座礁する恐れがあるため浮上する必要があったと見ている。 (1802-011203)

 複数の政府関係者が、尖閣諸島周辺の接続水域内を1月11日に航行した中国海軍の潜水艦について、 商級原潜と断定したことを明らかにした。
 商級は漢級の後継として開発された攻撃型原潜で、SLBMは搭載できないもののCMの搭載は可能だという。
 政府は、潜航能力や静粛性などを詳細に分析すると同時に、尖閣諸島周辺などでの警戒監視を強める。 ()

 小野寺防衛相が1月15日、11日に尖閣諸島周辺の接続水域内を潜航した中国の原潜について、海上自衛隊の警告を無視していたと明らかにした。
 中国側の意図について政府関係者は、接続水域の潜航後に東シナ海上で浮上し中国国旗を掲げたことから、示威行為が目的だったと分析している。 (1802-011502)

 NHKが1月15日に防衛当局者の話として、10~11日に尖閣諸島海域を潜航した潜水艦は中国海軍のType 093商級原潜と断定したと報じた。
 海上自衛隊がこの潜水艦を発見したのは10日で、その後宮古島東北方海域を24nm潜航したのち浮上して中国国旗を掲揚したという。 (1803-012405)

2・2・1・2・2 領海侵犯

 第11管区海上保安本部によると、2月21日10:00ごろ尖閣諸島の久場島の沖合で、中国海警局の船3隻が相次いで日本の領海に侵入した。
 3隻は2時間にわたって日本の領海内を航行したあといずれも正午までに領海を出て、その後も接続水域を航行していたが、13:30すぎまでに接続水域を出た。
 尖閣諸島の沖合で中国海警局の船が領海に侵入したのは、2月13日以来で今年に入って合わせて4日となる。 (1803-022107)

 中国海警局の3隻が4月3日午前、尖閣諸島から12nmの領海に相次いで侵入したため、第11海上保安本部(那覇)の巡視船が領海から出るよう警告した。
 同本部によると侵入は午前11時ごろで、巡視船が追跡して繰り返し警告した。 中国当局の船による領海侵入は今年7回目である。
 政府は首相官邸の危機管理対策室の機能を強化し、中国船に関する情報収集と警戒を強める。 (1805-040301)

 第11管区海上保安本部によると、中国海警局の警備艦4隻が4月23日10:00すぎに、尖閣諸島久場島の沖合で日本の領海に相次いで侵入した。 4隻は久場島の北18kmから北北東20kmの日本の領海内を航行している。 尖閣沖で中国海警局の警備艦が領海に侵入したのは4月3日以来で、2018年に入って合わせて8日となる。
 政府は、総理大臣官邸の危機管理センタに設置している「情報連絡室」を「官邸対策室」に切り替えて、情報収集と警戒監視にあたっている。 (1805-042203)

2・2・1・2・3 接続水域の航行

 防衛省が6月29日、尖閣諸島周辺の接続水域内を中国海軍の病院船1隻が航行したと発表した。 病院船は同日04:30に接続水域に入り、約1時間後に出た。 領海侵入はなかった。
 防衛省によると、接続水域に入る前から海上自衛隊が東シナ海で監視を続け、接続水域に入った後は巡視船が無線による呼びかけなどを行った。
 外務省は同日、在日中国大使館に対し航行の意図を確認する「関心表明」を行った。 (1807-063001)
2・2・1・2・4 海洋調査船が日本の排他的経済水域で活動

 第11管区海上保安本部によると、10月7日16:20頃沖縄県の波照間島の南東198kmの日本の排他的経済水域で、中国の海洋調査船向陽紅-10が、船体の後部からワイヤのようなものを海中に垂らしているのを海上保安本部の航空機が確認した。
 日本への通報を行わず調査とみられる活動を行っているのが確認され、海上保安本部が活動の中止を求めるとともに監視を続けている。 (1811-100802)
2・2・1・2・5 軍に編入された海警局警備艦の領海侵入

 第11管区海上保安本部によると、7月4日08:03分頃から08:18頃に掛けて、中国海警局の海警2305/2401/31241の3隻が久場島北北西から日本の接続水域に入った。
 3隻は2時間後の10:19から10:30頃に掛けて、魚釣島北北西から領海侵入して領海内を航行後、11:46から11:59に掛けて魚釣島西から領海を退去した。
 中国海警局による領海侵入は6月25日以来である。 (1808-070403)

 尖閣諸島周辺の日本の領海に7月4日午前、中国海警局の公船3隻が侵入した。 海警局が中央軍事委員会指揮下にある人民武装警察部隊(武警)に編入されて以降、初めてで、外務省は在日中国大使館に電話で抗議した。
 海警局はこれまで治安を担当する公安省の指導下にあったが7月1日に武警に編入されており、政府は海警の役割の変化など中国側の動きを注視していて、中国が軍編入後も公船による尖閣領海への侵入を常態化させる姿勢が示された。 (1808-070404)

2・2・1・3 航空機の進出

2・2・1・3・1 緊急発進対象中国機の減少と特異な飛行の増加

 防衛省が1月19日に発表した航空自衛隊機による2017年4~12月期の緊急発進回数は736回と過去最多だった前年同期から147回減少した。 中国機向けが大きく減ったたためだで、中国機に対する緊急発進は395回と、前年同期から249回減少した。
 ロシア機に対しては328回と、前年同期から97回増加し、台湾機に3回、その他も10回あった。
 一方、特異な事例として公表した中国機の飛行は前年同期の23件から12件増えた。 2017年12月18日には同国軍の戦闘機が初めて対馬海峡を通過し、東シナ海と日本海を往復し、さらに東シナ海から太平洋へ抜ける飛行が何度も確認された。 (1802-011901)

 防衛省が3月23日、同日午前から午後にかけてH-6 4機、Tu-154 偵察機1機、Y-6 ELINT機1機など計6機の中国軍機が、沖縄本島と宮古島の間の公海上空を東シナ海方面から宮古海峡上空を通過したと発表した。 中国軍機は太平洋に出た後に反転して中国大陸へ向かった。
 またほぼ同時刻に戦闘機とみられる2機も東シナ海方面から沖縄本島と宮古島付近まで飛行した。
 このルートで中国軍機の飛行が確認されたのは2017年12月20日以来となる。
 防衛省は特異な飛行と判断し中国側の意図を分析している。 (1804-032303)

 統合幕僚監部が10月12日、航空自衛隊機の緊急発進回数が今年度上半期で561回だったと発表した。 前年同期と同数で、半期ごとの統計を取り始めた平成15年以降で2番目の多さだった。
 国別では中国機へが345回で最も多く、前年同期から58回増加して過去2番目の多さだった。 (1811-101206)

2・2・1・3・2 JADIZ 突破の常態化

 潜水艦による尖閣諸島周辺の接続水域侵入で中国海軍の動向に警戒が高まる一方、中国空軍の動きも活発化している。
 1月29日に中国軍の情 報収集機が日本海に進出するなど、2017年11月以降は特異な飛行をして日本の防空識別圏に侵入する中国軍機が相次いでおり、専門家からは日米両国が確保している制空権を突き崩そうとしているとの危惧の声も上がっている。
 防衛省統合幕僚監部は、2017年の3/四半期に中国軍機が沖縄本土と宮古島間の宮古海峡を通過するなどして防空識別圏に侵入した事例を前年の3/四半期より12件増加した23件と公表している。 23件は11月18日~12月20日の1ヵ月間に集中していた。 (1803-021503)
2・2・1・3・3 特異な飛行

 統合幕僚監部が5月11日、H-6爆撃機4機を含む中国軍機8機が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡上空を飛行したと発表した。 戦闘機2機も含まれていた。
 領空侵犯はなかったが、防衛省は特異な飛行と判断し中国側の意図を分析している。 (1806-051201)
2・2・1・4 尖閣諸島近くの日本側にブイを設置

 尖閣諸島近くの日本が排他的経済水域の境界として設定している日中中間線の日本側に、中国が高さ直径とも10mのブイを設置したため政府が中国側に抗議した。 海上保安庁によるとブイが設置されたのは尖閣諸島から北西80kmの海域で、ブイには「国家海洋局」と書かれ、アンテナが取り付けられているとみられるという。
 尖閣付近での中国のブイの設置は2016年8月にも確認されていた。 (1811-100302)
2・2・1・5 大規模演習の実施

 中国海軍が7月18日08:00に東シナ海の台湾の面積に相当する海域で大規模演習を開始した。 演習は23日18:00まで続けられるという。 (1808-071803)
2・2・1・6 基地の増強、拡充

 中国が東シナ海に面した福建省Xiapu(寧徳)市に新たな航空基地を建設している。 この基地は台北から160哩、尖閣諸島から225哩、那覇からも260哩の位置にある。
 衛星写真から既に誘導路や各種建築物のほか、2,700m滑走路の端に24基のシェルタが建設されていることがわかり、シェルタは100ft×60ftの大きさで、Su-30/35やJ-11/15/16を収納するのに十分な広さがある。 (1806-051403)
2・2・2 我が国の対応

2・2・2・1 防衛/警備態勢の強化

2・2・2・1・1 南西諸島配備の強化

 「4・4 周辺海域防衛の強化」で記述
2・2・2・1・2 海上保安庁の態勢強化

映像伝送能力の強化

 海上保安庁は尖閣領海警備の専従巡視船全12隻への映像伝送装置 (通称・船テレ)の整備を平成29年度に完了し通信衛星を介して巡視船が撮影した映像を海保本庁に送信し、官邸にも転送されるようにしているが、平成30年度に現場映像を海保本庁や官邸にリアルタイムで伝送する衛星回線を1本から2本に増強し、中国公船の巡視船への接近など不測の事態発生時、政府は2隻の巡視船からの映像で複眼的な状況把握が可能になった。
 これに伴い映像編集専従の「映像処理士」「映像処理官」を、巡視船と海保本庁に配置する。 (1806-050402)

2・2・2・2 東シナ海を想定した演習

自衛隊、警察、海上保安庁が参加した夜間演習

 NHKが6月22日、尖閣諸島の防衛を目的に自衛隊と警察、海上保安庁が参加する夜間演習を7月に実施すると報じた。
 報道によると、鹿児島県のある離島で共同夜間訓練をする計画だが、夜間離島防御訓練をするのは今回が初めてである。
 今回の訓練は中国が尖閣諸島の島を占領するというシナリオに対応するものであり、中国側の反発も予想される。 (1807-062203)

2・2・2・3 海空連絡メカニズム

 複数の日中政府関係者が、両国が5月に東京で予定する安倍首相と李克強首相との会談に合わせて、両国の艦艇や航空機による偶発的な軍事衝突を避けるための海空連絡メカニズムの運用開始で正式合意する調整に入ったことを明らかにした。
 尖閣諸島を巡る対立を背景に、対象地域をどのように表記するかの調整が難航していたが、地域を明示しない案で折り合うことで合意を優先する。 (1804-032501)

 安倍首相が5月9日、公賓として初来日した中国の李克強首相と迎賓館で約2時間会談し、東シナ海での自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を回避するための「海空連絡メカニズム」の運用開始で合意した。
 海空連絡メカニズムは、日中の防衛当局間にホットラインを設置し、艦艇・航空機が接近した際の直接通信の仕組みで6月から運用を始める。 尖閣諸島をめぐる日中の対立を考慮し、具体的な地域を明示しないことで双方が折り合った。 (1806-050905)

 安倍首相と中国の李首相が5月9日に東京で会談し、日中間での偶発的な衝突を回避する緊急通信「海空連絡メカニズム」の運用を6月8日に開始することで合意した。
 海空連絡メカニズムは2012年9月以来中国側が拒否していたが、2014年9月に両国が原則合意していた。 (1807-051608)

 東シナ海などでの軍事衝突回避を目的とした日中間のホットラインの合意内容に、一触即発の事態発生から対話開始まで最大48時間の待機時間を認める規定があることが分かった。
 中国政府が求めたもので、衝突回避の実効性を疑問視する声が出ている。 日中両政府は合意の詳細を公表していないがホットラインに加え、
 ① 現場で日中の艦艇や航空機が直接通信するルールを定める。
 ② 日中防衛当局が定期会合を開催する
などが主な内容となっている。 (1809-082402)

2・2・2・4 日中防衛交流

 笹川平和財団の笹川陽平名誉会長が2月5日、自衛隊と中国人民解放軍の若手幹部による交流事業を再開することで中国側と一致したと明らかにした。 4月にも中国側の代表団が日本に派遣される。
 事業は2001年から民間主導の防衛交流として行われていたが、2012年に尖閣諸島をめぐる対立で中断していた。 (1803-020503)
2・2・3 米国の対応

2・2・3・1 基本姿勢

 ペンス米副大統領が10月4日、中国は尖閣諸島の周辺で恒常的に監視活動をしていると指摘した上で、尖閣諸島は日本の施政権下にあると述べ、東シナ海や南シナ海で覇権的な進出姿勢を強める中国に対抗していく姿勢を打ち出した。
 副大統領はまた、中国が11月の米中間選挙で共和党の勝敗を左右する重要州で干渉を画策しているとすると共に、中国が米国内で反中的な中国人留学生を対象に嫌がらせ行為などを図る一方、中国に批判的な米学者にビザを発給しないなど、学問の自由を侵害していると非難した。 (1811-100501)
2・2・3・2 示威活動

B-52 の飛行、日米共同訓練

 米国防総省が9月26日、複数のB-52が25日に東シナ海を飛行したと明らかにした。 今週初めには南シナ海も飛行したという。
 国防総省の報道担当者は「同盟国やパートナ国との相互運用性を高めることを目的とした通常の活動」と説明している。
 一方で「米軍は国際法が許す限り、いつでもわれわれが決めた場所を航行・飛行し続ける」と強調し、東・南シナ海などで領有権を主張する中国をけん制した。 (1810-092701)

 航空幕僚監部が9月28日、米軍のB-52と航空自衛隊の戦闘機が東シナ海で共同訓練を行ったと発表した。 東シナ海から日本海を北上する形で順次編隊飛行訓練を行ったとみられる。
 訓練は27日に東シナ海と日本海上空で実施し、空自からは那覇基地、築城基地、小松基地、千歳基地から各4機のF-15など計16機、米軍からはB-52 1機参加した。 (1810-092803)

2・3 南シナ海

2・3・1 中国の動き

2・3・1・1 人工島の軍事拠点化

2・3・1・1・1 スプラトリ諸島

スプラトリ諸島の軍事基地化

 米CNBC TVが米情報機関による最新分析に詳しい関係者の話として5月2日、中国が過去30日間に南シナ海スプラトニ諸島のFiery Cross礁やMischief礁、Subi礁など人工島にASCMとSAMを配備したと報じた。 スプラトニ諸島では軍用レーダの設置も確認されている。
 事実なら南沙諸島では初のミサイル配備で、北朝鮮の核やミサイル問題に国際社会の注目が集まるなか、中国が南シナ海の軍事拠点化を加速させている恐れがある。 (1806-050302)

Fiery Cross礁に空軍基地

 フィリピンのロレンザーナ国防相が1月8日、中国が南シナ海の人工島を軍事拠点化しないと宣言していたにもかかわらず空軍基地らしきものが建設されていることを受け、外務省を通じて中国に抗議すると表明した。
 中国中央テレビ (CCTV) が2017年12月30日に放映した映像では、Fiery Cross礁に空軍基地が建設されているように見える。 (1802-010902)

大型軍用機の離着陸地

 AMTIが5月9日に行った報告で、商用衛星が4月28日に撮影した画像から、中国が南シナ海スプラトリー諸島に建設した人工島にY-8輸送機を着陸させていることが分かった。
 このことから中国は諸島のFiery Cross礁、Subi礁、Mischief礁の3箇所に建設した滑走路に軍用機を着陸させている事が明らかになった。 (1807-051602)

電波妨害装置を配備

 Wall Street Journal電子版が複数の米国防当局者の話として4月9日、中国が南シナ海のスプラトリー諸島に造成した人工島に、電波妨害装置を配備したと報じた。
 これに対し中国国防省は10日、南沙諸島は中国国有の領土だと主張した上で「必要な国土防衛施設を設 置するのは主権国家の当然の権利だ」と強調し、装置の設置を正当化する談話を発表した。 国防当局者は「中国は航海の安全や救難活動のために建設していると主張している。
 しかしながら妨害装置は軍事目的にのみ使用されるもので、米国は中国による軍事拠点化の加速に警戒感を示している。 (1805-041003)

2・3・1・1・2 パラセル諸島

Woody島で H-6K の離着陸訓練

 米戦略国際問題研究所 (CSIS) が5月18日、中国空軍が南シナ海パラセル諸島Woody島に初めてH-6Kを着陸させ離着陸訓練を繰り返していると中国メディアが報じたことを明らかにした。 H-6Kの航続距離は1,800km で、Woody島から南シナ海全域をカバーできる。
 中国はMischief礁などスプラトリー諸島の三つの人工島にも戦闘機や爆撃機の格納施設建設を続けるなど、南シナ海の実効支配や軍事拠点化を進めている。 (1806-051903)

 China Daily紙が5月19日、中国空軍が南シナ海でH-6Kの離着陸訓練を行ったとする中国国防省が18日付声明を報じた。 実施場所と時期は明らかにしていない。
 これについてワシントンのアジア海洋透明性計画 (AMTI) は中国メディアの報道から、場所をパラセル諸島Woody島と特定した。
 戦闘行動半径1,900nmのH-6KをWoody島に置けば、南シナ海全域をカバーできる。 (1806-051904)

新たな軍事施設建設

 米シンクタンクCSISのウェブサイト「アジア海洋透明性イニシアチブ (AMTI)」が公開した7月7日付の衛星画像では、パラセル諸島Bombay礁北端の海上に長さ27m、幅12mの施設が設置され、上部にドーム形構造物と太陽光パネルが確認された。
 ドームは、中国が飛行場を建設し軍事拠点化を進めているWoody島に設置されたものより小さいが、付近の海上交通路で情報収集する軍事目的の探知装置である可能性が高いという。 (1812-112103)

2・3・1・2 海南島の軍備増強

祥龍 HALE UAV の配備

 民間衛星が2月に撮影した画像から、海南島の凌水航空基地に祥龍HALE UAVが2機配備されていることが分かった。
 全長13.25m、翼端長22.5mで巡航速度405kt、上昇限度18,000m、航続距離3,780nmと、RQ-4 Global Hawkと同程度の能力を有する祥龍は、2017年 8月にチベット自治区のShingatse航空基地で3機、2018年2月に中国東北部のYishuntun航空基地で2機が確認されている。 (1805-032802)

2・3・1・3 艦船の活動

2・3・1・3・1 大規模演習と観艦式実施

 中国海軍が4月12日、海南島沖の南シナ海で空母遼寧を含む48隻の艦艇による史上最大規模の観艦式を行った。 観艦式には、76機の戦闘機と10,000名が参加した。
 習国家主席は駆逐艦長沙艦上で閲兵し、新時代の党の強軍思想を貫徹し、世界一流の海軍建 設に努力しなければならないと演説した。 (1805-041207)

 中国海軍が4月12日に南シナ海で、習主席を迎えて艦船48隻、航空機76機、人員10,000名を動員して観艦式を行った。 式典には晋級 (Jin-Class: Type 094) SLBN 2隻、商級 (Shang-Class: Type 093) 攻撃型原潜4隻、空母遼寧、Type 901空母支援艦1隻、Type 071揚陸艦2隻、駆逐艦11隻、フリゲート艦5隻、コルベット艦8隻のほか多数の補助艦船や支援艦船が参加した。
 また航空機ではZ-8/Z-9ヘリ、KJ-200/KJ-500 AEW&C機、KQ-200 MPA、H-6 爆撃機、J-10/J-11/JH-7戦闘機とJ-15 4機が空母を離艦して参加した。 (1806-042513)

2・3・1・3・2 中国海警局と海軍が合同哨戒

 中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」が5月20日、中国海警局が南シナ海パラセル諸島周辺の海域で初めて海軍と合同で哨戒を行ったと報じ、海警局の警備艦が海軍と連携した活動を活発化させる可能性が出ている。
 合同哨戒は5日間にわたって実施され、40隻の船の調査を行った結果、外国籍の漁船10隻を追い出したと、海洋権益を守ったと意義を強調している。
 中国海警局は3月に軍の指揮下にある武装警察の傘下に置かれることが発表されている。 (1806-052001)
2・3・1・4 制圧作戦の準備

 中国海軍内で権威ある専門誌の2017年6月号は、海軍陸戦隊(海兵隊)幹部による制圧作戦研究を掲載したことから、中国海軍が陸空海による南シナ海での制圧作戦を詳細に研究していることが分かった。
 「敵」は明示はされていないが、対象としているのはベトナムが実効支配するSouthWest島、フィリピンが実効支配するPag-asa島、台湾実効支配する太平島などの岩礁がある海域である。 (1810-090103)
2・3・1・5 情報活動の強化

 中国が南シナ海を監視できる衛星システムを開発中だと中国官営メディアが8月16日に報じた。
 報道によると中国は2019~2021年に南シナ海上空に光学衛星6基、超広帯域衛星2基、SAR衛星3基など計10基の衛星を打ち上げる計画で、このうち最初の衛星は2019年下半期に打ち上げられるものと予想される。 (1809-081701)
2・3・1・6 周辺国漁民の強制排除

2・3・1・6・1 ベトナム

 ベトナム漁業者組合 (VFS) が4月23日、ベトナム漁船が20日に南シナ海パラセル諸島のLinkoln東島近海で中国船2隻から攻撃を受け沈没していたことを明らかにした。
 船長は地元メディアに、全長約50mの中国船2隻から体当たりを受けてエンジンが故障し、乗り込んできた銃を持った5人から、書類への署名と指紋押印を求められたと語った。
 越メディアによると南シナ海では2018年3月以降、ベトナム漁船10隻以上が中国船から攻撃や略奪を受けた。 (1805-042301)

 ベトナム紙が5月29日、南シナ海のパラセル諸島周辺海域で操業中のベトナム漁船1隻が25日、中国の警備艇と衝突し沈没したと報じた。 (1806-052905)

2・3・1・6・2 フィリピン

 特記すべき記事なし。
2・3・1・7 米軍の動きに対する反応

南シナ海での戦闘準備態勢強化

 中国が領有を主張している南シナ海パラセル諸島近海に5月27日に米艦2隻が進入したことに対し、中国国防省が南シナ海での海空における戦闘準備態勢を強化すると発表した。 (1807-060609)

米駆逐艦に中国駆逐艦が異常接近

 米太平洋艦隊が10月1日、南シナ海スプラトリー諸島周辺で9月30日に航行の自由作戦を実施していた米駆逐艦に中国の駆逐艦が41mの距離まで異常接近したと明らかにした。
 米太平洋艦隊によると、中国駆逐艦は複数回にわたり攻撃的な接近を繰り返した。 (1811-100201)

2・3・2 周辺国の動き

2・3・2・1 ASEAN

 ASEANの一連の外相会議が8月2日にシンガポールで開幕した。
 終了後に発表された共同声明は南シナ海問題について、「複数の加盟国が表明した埋め立て活動への懸念に留意する」との表現で、名指しを避けながら、人工島の軍事拠点化を進める中国に自制を促した。
 産経新聞が入手した1日段階の声明草案には、ベトナムが懸念対象に「軍事化」を盛り込むよう求めているとの注釈があったが結果的に入らなかった。 中国に配慮するカンボジアなどが反発したとみられる。 (1809-080203)
2・3・2・2 フィリピン

対中接近路線

 フィリピンと中国が、領有権を争う南シナ海における石油・ガス開発の共同調査を検討する作業部会設置で合意した。
 共同開発の構想は1986年に浮上したが、両国間の論争や主権問題で実現に至っていない。 (1803-021402)

 博鰲アジアフォーラムに参加するため中国を訪問中のドゥテルテ比大統領が4月10日に習近平国家主席と会談した。
 比大統領府によるとド大統領は、両国は軍事・防衛面での協力を強化できると提案し、中国側が新たに38億ペソ(78億円)の経済支援を供与す ることを明らかにしたという。 (1805-041102)

2・3・2・3 ベトナム

2・3・2・3・1 軍事施設の撤去要求

 米CNBCが5月2日に、中国がFiery Cross礁、Subi礁、Mischief礁に YJ-12B対艦ミサイルやHQ-9B SAMを配備したと報じたのを受け、ベトナム外務省報道官が5月8日に中国に対し、南シナ海の軍事施設を撤去するよう要求した。 (1807-051609)
2・3・2・3・2 油田開発の中止

 BBC放送が3月23日、ベトナムが中国と領有権を争う南シナ海の海域で計画していた油田開発の中止を決めたと報じた。 中国の圧力が理由としており、南シナ海問題をめぐる同国の強硬姿勢に屈した。
 ベトナム政府が石油掘削を認めたスペインのレプソルに社対し、ベトナム国営の石油ガス企業が停止を求めたという。 (1804-032402)
2・3・2・4 インドネシア

2・3・2・4・1 米国との温度差

 東南アジア歴訪中のマティス米国防長官が1月23日、最初のインドネシアでリャミザルド国防相と会談し、両国間の防衛協力強化や、イスラム過激派などによるテロへの対策での協力を確認した。
 マティス長官は今回、インドネシアとベトナムを訪れ、南シナ海への中国の進出を念頭に両国との防衛関係を強化することを目指しているが、会談後の記者発表でマティス長官が、南シナ海の安全保障への支援を強調したのに対し、リャミザルド国防相は中国との対話促進により南シナ海の安保上の問題は減少していると述べるにとどまり、南シナ海での防衛協力については、両者の認識に差もみられた。 (1802-012304)
2・3・2・4・2 ナトゥナ諸島に基地建設

 インドネシアが12月18日に南シナ海南端のナトゥナ諸島に建設した軍事基地の開所式を行った。 現地メディアなどによると、基地は同諸島の本島、大ナトゥナ島に建設され、SAMや軍港、飛行機格納庫、病院などの軍用施設が整備され、人員は数百名以上とみられる。
 同諸島北側海域は、インドネシアの排他的経済水域 (EEZ) 内だが、中国が南シナ海の大部分を管轄していると主張する根拠の境界線九段線と一部が重複し、違法操業を続ける中国漁船の拿捕などをめぐり、両国は対立してきた。 (1901-122107)
2・3・3 米国の対応

2・3・3・1 米国の基本姿勢

 ペンス米副大統領が11月16日、南シナ海はどの国にも属していないとし、米国は今後も国際法で認められる限り航行を続けると述べた。 (1812-111601)
2・3・3・2 空母打撃群が演習

 米空母Theodore RooseveltとそのCSGが4月10日に南シナ海で演習を行い、F/A-18 20機が20分間、離着陸訓練を行った。 米軍は定期的な演習だとしており、その後フィリピンへと向かった。
 南シナ海での米空母の航行は、中国が同海域で3月末に大規模な軍事演習を実施した後に行われた。
 中国の演習について一部の専門家は、増強する中国海軍力をこのように大規模に誇示することは異例だと指摘していた。 (1805-041206)
2・3・3・3 航行の自由作戦

3月23日の作戦

 米当局者が、米国海軍の駆逐艦Mustinが航行の自由作戦として3月23日、南シナ海で中国が造成した人工島から12nm内を航行したことをし明らかにした。
 この当局者によると、Mustinは南シナ海スプラトリー諸島のMischief礁付近を航行したという。 (1804-032302)

5月27日の作戦

 ロイタ通信が5月27日、米海軍の駆逐艦Higginsと巡洋艦Antietamの2隻が同日、南シナ海パラセル諸島で航行の自由作戦の一環として中国が主権を主張する島の12nm内を航行したと報じた。
 今回の作戦は、中国が飛行場を建設し軍事拠点化を進めているWoody島や、Triton島、Tree島、Lincoln島周辺などで行われたという。 (1806-052703)

 中国中央TVが空母遼寧から5月24日夜間にJ-15を離着艦させたと報じた直後の27日に米艦2隻が航行の自由作戦 (FONOP) を行った。
 この日FONOPを行ったのは巡洋艦Antietamと駆逐艦Higginsで、Tree島、Woody島、Lincoln島、Triton島周辺を航行した。 (1807-060609)

9月30日の作戦

 ロイタ通信が米当局者の話として、米海軍駆逐艦Decaturが9月30日に中国が実効支配する南シナ海スプラトリ諸島付近を航行したと報じた。 DecaturはGaven礁とJohnson South礁から12nm以内を通過した。
 中国の過剰な海洋権益主張を否定する航行の自由作戦の一環とみられる。 (1810-093001)

 南シナ海で航行の自由作戦 (FONOP) を実施していた米海軍駆逐艦Decaturが9月30日の08:30頃にGaven礁近くで、中国のType 052B駆逐艦の危険な接近行動を受けた。 この際中国艦は45ヤードにまで接近したため、Decaturは回避行動を余儀なくされた。
 その直前の9月23日と25日には米空軍のB-52Hが南シナ海周辺を飛行していた。 (1812-101004)

11月26日の作戦

 米太平洋艦隊が11月29日、巡洋艦Chancellorsvilleが26日に中国が実効支配する南シナ海パラセル諸島付近を通過する航行の自由作戦を実施したと明らかにした。
 28日には駆逐艦など2隻が台湾海峡を通過しており、12月1日にブエノスアイレスで予定される米中首脳会談を前に中国をけん制する狙いがあるとみられる。 (1812-113003)

2・3・3・4 B-52 の飛行

9月23日と25日の飛行

 9月23日と25日には米空軍のB-52Hが南シナ海周辺を飛行した。 (1812-101004)

10月16日の飛行

 米太平洋空軍が声明で、B-52が10月16日に南シナ海付近で通常の訓練を実施したとし、自由で開かれたインド太平洋に向けた取り組みだと強調した。 米軍は9月にもB-52を南シナ海と東シナ海に派遣している。
 これに対し中国外務省は10月18日に、悪意を持って周辺国の主権と安全保障上の利益を損ねることに断固として反対すると主張し、必要な時にわれわれも断固とした措置を取り、自らの主権を守ると述べた。 (1811-101802)

11月21日の飛行

 米CNN TVによると、米太平洋空軍は11月21日、B-52 2機が南シナ海付近を飛行したと明らかにした。 B-52はグアムのAndersen AFBを離陸し、南シナ海付近で訓練を実施したという。
 空軍は定期的な訓練で訓練は国際法に沿っており、自由で開かれたインド太平洋地域を実現するという米軍の長年の取り組みに合致するものだと強調しているが、南シナ海の軍事拠点化を進める中国をけん制する狙いとみられる。 (1812-112105)

2・3・3・5 偶発的に危機や衝突が起きるおそれ

 防衛研究所が中国の軍事動向についての報告書を毎年まとめているが、2018年はトランプ政権の外交姿勢も踏まえ米国との関係に焦点を当てている。
 報告書では、南シナ海をめぐる問題は「近年、急速に米中関係の焦点となり、安定的に処理するメカニズムは存在せず、安定性は高いとは言えない」として、米中間で偶発的に危機や衝突が起きるおそれもあると指摘している。 また中国が北朝鮮に対する経済制裁などに協力する見返りに、南シナ海での活動に米国の理解を求めるかどうかも注目されるとしている。
 北朝鮮問題については北朝鮮の行動によってはコントロールが難しい危機が発生する可能性があると分析している。 (1804-030206)
2・3・4 諸外国の対応

2・3・4・1 英 国

 豪有力紙オーストラリアンが2月13日、ウィリアムソン英国防相が英海軍フリゲート艦が3月に航行の自由の確保を目的に、オーストラリアを出港して中国が軍事拠点化を進めている南シナ海を航行すると明らかにしたと報じた。
 同紙によると、2月中旬に豪州に到着するフリゲート艦Suthernlandが本国帰還の途中で南シナ海を航行し、英海軍にその権利があると明確にする。 (1803-021304)

 英海軍の揚陸艦Albionがパラセル諸島付近を航行したことが明らかになった。 海軍の報道官は航行の自由に関する権利を行使したと説明した。
 日本国内と周辺での活動を終えた同艦は、西沙諸島近くを航行したのちホーチミン市に3日に入港した。
 中国はAlbionに警告するため、現場海域にフリゲート艦1隻とヘリ2機を派遣したが、双方ともに冷静な対応を取ったという。 (1810-090602)

 英海軍のドック型揚陸艦 (LPD) Albionが日本からベトナムに向かう途中の8月31日に、パラセル諸島で航行の自由作戦 (FONOP) を実施した。 (1811-091203)

2・3・4・2 フランス

 香港のSouth China Morning Post紙が、パルリ仏国防相がシンガポールでのアジア安全保障会議で6月3日、フランスと英国の艦船が来週、南シナ海の海域で合同で航行の自由作戦を遂行すると表明したと報じた。 さらに英紙Daily Telegraphの報道を引用し、ウィリアムソン英国防相も3日に同会議で「英国は2018年に、アジア太平洋地域に軍艦3隻を派遣すると述べたことを紹介した。
 これについて同会議に中国代表として出席した中国軍事科学院の何副院長は、南シナ海は自由でありすべての艦船の航行に開かれており、正常な航行の自由活動はいかなる制限も受けないとした一方で、中国への主権侵害は許されないと述べ、英仏が中国の島の12nm内に入ればそれは意図的な挑発行為だとの認識を示した。 (1807-060505)
2・3・5 我が国の対応

2・3・5・1 南シナ海での日米共同演習

 米海軍が3月13日、米空母Carl VinsonとCSGの駆逐艦Wayne E. Mayerが 南シナ海で護衛艦いせと共同演習を行ったと発表した。 演習は11日に両国艦が南シナ海に入り開始されたとい う。
 この演習では海上自衛隊から4名の連絡幹部がCarl Vinsonに乗艦し、作戦の調整に当たっている。 (1804-031309)

 米海軍と海上自衛隊の艦船が8月31日に南シナ海で共同訓練を行った。 訓練には米側から空母Ronald Reaganのほか巡洋艦Antietam駆逐艦Milius、海上自衛隊からはDDH かがと護衛艦いなずますずつきが参加した。 (1810-090408)

2・3・5・2 艦船の寄港

 フィリピンのメディアが、海上自衛隊のおおすみ型揚陸艦がマニラ港に寄港すると報じた。
 記事によると揚陸艦は4月26日にマニラ港に到着して3日間停泊しフィリピン海軍が歓迎式典を行うという。
 海自の艦艇がフィリピンの港に寄港するのは2018年に入って3隻目で、2月2日には護衛艦あまぎりがマニラに、4月13日には護衛艦あきづきがスービック湾に寄港している。 (1805-042503)
2・3・5・3 潜水艦が活動

 防衛省が海上自衛隊の潜水艦を南シナ海へ派遣し、東南アジア周辺を長期航海中の護衛艦の部隊と合流させて、9月13日に対潜水艦戦訓練を実施したことを複数の政府関係者が明らかにした。
 中国が軍事拠点化を進める南シナ海に潜水艦を派遣して実施したのは初めてで、政府関係者によると派遣したのは海自の潜水艦くろしおと、護衛艦かがいなづますずつきの4隻という。 くろしおは8月27日に呉基地を出港し、バシー海峡を通って南シナ海に入った。
 防衛省はこれまで、くろしおの動向について一切公表しておらず訓練は秘密裏に行われたが、事後的に実施を発表する方向で検討していて、公海の「航行の自由」を強くアピールし、中国を牽制する狙いがあるとみられる。 (1810-091702)
【註】 くろしおは2004年に就役したおやしお型(水中排水量3,500t)の潜水艦で、そうりゅう型(水中排水量4,200t)より前の型でAIPは搭載していない。

 ベトナム国営メディアが9月17日、海上自衛隊の潜水艦くろしおが、1973年9月21日の日越国交樹立から45周年を記念してカムラン湾に寄港したと報じた。
 日程は17~21日で訓練中の海自隊員がベトナム軍の将兵たちとスポーツを含めた交流を現地で行うとともに、同湾がある中部カインホア省に表敬訪問するとしている。 (1810-091703)

 安倍首相が9月17日夜のテレビ朝日番組で、海上自衛隊の潜水艦が南シナ海で訓練を実施したことについて「実は15年前から行っており、2017年も2016年も行っている」と明らかにした。
 中国は南シナ海で一方的な軍事拠点化を強行しているが、首相は「自衛隊の練度を向上させるものであり、特定の国を想定したものではない」とも述べた。
 秘匿性の高い潜水艦の訓練実施を自衛隊が公表することは異例だが、首相は「事実上、訓練は近くの国々も知っている」と述べた。 (1810-091704)

 中国軍は空母部隊の建設を進めているが、空母を作戦展開させるには護衛役の潜水艦をつける必要がある。 また米本土を直撃しうるSLBMを搭載した晋級原潜を南シナ海に配置し、先々は後継艦の唐級を日本海に配置する公算が大きい。
 しかしながら中国の潜水艦は60隻と自衛隊の22隻を大幅に上回ったものの、静粛性や運用実績では日本が大きく先行している。
 こうした中、日本が南シナ海への潜水艦派遣を公表したことは、中国には不愉快な現実に他ならない。 日本は南シナ海への派遣を公表したことで、有事には中国が南シナ海に配備した潜水艦も無事ではないとのメッセ―ジを周辺国にもわかる形で送ったのものであると同時に、米軍が果たしてきた中国潜水艦封じの役割を一部肩代わりできるとトランプ政権に強調しておく意味合いも込められている。 (1811-101704)

2・4 中国対インド

2・4・1 中印関係

 中国の習国家主席が訪中しているインドのモディ首相と4月28日までの2日間会談し、国境地帯をめぐる対立などで悪化してきた両国の関係の改善や多国間の貿易体制を守ることで一致し融和ムードを強調した。
 中国外務省によると、2017年2ヵ月以上にわたり両国軍がにらみあう事態となった国境地帯での対立などを適切に処理するとしたうえで関係の改善を進めることで一致した。 (1805-042901)
2・4・2 中印国境紛争

2・4・2・1 実効支配線の侵犯/武力衝突

2・4・2・1・1 中国軍による侵犯

 インド国防省によると2018年における中国軍の実効支配線 (LoAC) 侵犯件数が2017年の170件から137件へと20%減少している。
 中国軍のLoAC侵犯は殆どがインドJammu州とKashmir州にまたがる標高が5,065m以上のLadakh地方で起こっている。 (1810-092601)
2・4・2・1・2 インド軍による侵犯

 特記すべき記事なし。
2・4・2・1・3 武力衝突

 特記すべき記事なし。
2・4・2・2 国境を挟む兵力増強

2・4・2・2・1 中 国

航空戦力の増強

 中国人民解放軍がインドと国境を接する西部戦区の航空戦力を増強している。
 チベット自治区などを管轄する西部戦区の空軍部隊が2月13日に空中戦訓練を実施し、参加したJ-10、J-11の写真を軍公式サイトが公開した。 これを受けて人民日報系の環球時報が20日、「中国はインドの脅威に対応するため西部戦区の体制を増強している」とする軍事専門家のコメントを報じた。
 ドクラム地区の国境問題をめぐり対峙を続けた中印両部隊が2017年8月に撤退で合意したが、その後も中国側は紛争地に近い空港に戦闘機を重点配備し、新たな滑走路まで建設するなど軍事拠点化を進めており、両国間の緊張が再び高まる可能性がある。 (1803-022201)

防空戦力の増強

 中国はチベット軍管区に第52、第53、第54の3個旅団を配置しているが、その支援部隊は限定的である。
 チベット軍管区に駐留する唯一の防空部隊である中国地上軍の第651独立防空旅団はPG59 57mm高射機関砲、PG99 35mm高射機関砲、HQ-7A SAM、HQ-16 SAM、NH-6 MANPADSを装備している。 (1807-062401)

2・4・2・2・2 インド

山岳打撃軍団配置計画を保留

 インド陸軍当局者が7月18日、中国との係争が続く国境地帯に90,270名からなる山岳打撃軍団 (MSC) を配置する計画を、主として財政上の理由から保留することになったことを明らかにした。
 この計画にはINR600B ($875M) かかると見積もられていた。 (1808-071805)

2・4・2・3 ネパール、ブータンの取り合い

2・4・2・3・1 ネパール

 インドのモディ首相5月11日にカトマンズでネパールのオリ首相と会談し、 鉄道や河川の整備を通じた両国の連結性強化や農業分野での協力深化などで一致した。
 オリ政権が中国主導の「一帯一路」の枠組みを生かしてインフラ整備を進める方針を示すなか、インドとしてはネパールとの関係強化を通じて中国の浸透を防ぎたい考えがある。 (1806-051202)

 ネパールのギャワリ外相は都内で日本経済新聞の取材に応じ、インフラ整備で中国との協力を拡大する意向を示した。
 計画はカトマンズとチベットを結ぶ鉄道の建設が柱で、道路や通信も生かして結びつきを強める。 チベット自治区では中心都市ラサからネパールに至るルート上にあるシガツェまでは2014年に鉄道が開通しておりこれを延伸する。 地元報道によると、延伸距離は660kmになるという。
 外相は、今後1年半程度で実現可能性の詳細な評価を実施し、その後6年程度かけて建設すると述べ、初期調査の段階で見込まれる投資額は$2.5Bだが建設現場はヒマラヤ山脈など厳しい環境下にあるため経費は膨らむ可能性もあるとした。
 中国の資金供与が大半となる見通しというがネパール政府も一部を負担する考えだという。 (1812-112107)

2・4・2・3・2 ブータン

 特記すべき記事なし。
2・4・3 インド洋の覇権争奪

2・4・3・1 インド軍の進出

2・4・3・1・1 二正面作戦能力の保持

 インド海軍が2ヶ月間にわたり実施してきた二正面同時作戦演習が2月28日に終了した。
 このうち西海岸沖で繰り広げられたのが "Paschim Lehar" 演習で、アンダマン・ニコバル諸島までの東海岸沖で行われたのが "Eastern Naval Command operation readiness" 演習であった。 (1805-031412)
2・4・3・1・2 インド洋周辺での港湾争奪

イラン南東部 Chabahar 港

 インド洋での主導権を争いインドか中国とにらみ合う最前線といえるのがイラン南東部で、インドは中国が支援するパキスタン西部Gwadar港はわずか120kmのChabaharに巨額投資をして港を建設している。
 日本も部分的に支援し順調に動き出したように見えるChabaharだが、米国によるイラン制裁発動が、この戦略的な港に暗雲として垂れこめようとしている。
 Chabaharはもともとはエビ漁が盛んな漁港だったが、1993年に小規模な港湾施設が建設され、2016年にインドのモディ首相が関連事業も含め$500Mの投入を表明したことで一気に注目を集めた。
 2017年12月に1期工事がほぼ終了して開港し、全長1,200mの岸壁部分が完成して付近には経済特区も設けられ、製鉄や石油化学などの分野で融資を呼び込もうとしている。 (1807-060101)

オマーン Duqm 港

 オマーンのONA社が2月11日、オマーンとインドがオマーンのDuqm港をインド海軍が使用することに合意しMoUを交わしたと報じた。
 印海軍は2017年にShishumar級潜水艦と駆逐艦2隻、P-8I 1基を4週間以上にわたりDuqmに駐留させた実績がある。 (1804-022115)

2・4・3・1・3 環インド洋諸国との連携

ベンガル湾周辺諸国軍合同演習の主催

 インド洋のベンガル湾周辺にあるインドやスリランカ、タイなど6ヵ国軍による初の合同訓練がインドで行われていて、地域で影響力を強める中国をけん制する狙いもあるとみられる。
 この軍事訓練はインドの呼びかけで6ヵ国から200名が参加し、9月10日から7日間の日程でインド西部のプネで行われている。 (1810-091102)

アフリカ諸国との軍事協力関係強化

 インド陸軍がアフリカ諸国との軍事協力関係を深めるため、2019年3月18~27日の10日間にインド西部で共同演習IAFTXを行う。 演習にはガーナ、ケニヤ、南ア、タンザニアなど12ヵ国が参加する。
 更に印軍参謀総長が12月末にタンザニアとケニアを訪問し、共同作戦について協議する。 (1901-121706)

2・4・3・1・4 ASEAN との連携

 インド太平洋地域の海洋安全保障についてインドとASEANが話し合う会議が7月20日までの 2日間ニューデリーで開かれた。 この中でインド海軍のクマール副参謀長が、マラッカ海峡で中国が影響力を高めようとする動きが 地域への脅威だとして、問題の解決には多国間の枠組みが必要だと述べ、各国海軍の連携強化を提案した。
 これを受けてシンガポールのバラクリシュナン外相は歓迎の意を示した。
 インド海軍はこれまで行ってきたインド洋での警戒活動の範囲を南シナ海にまで拡大することには慎重な姿勢だったが、今回の会議をきっかけに立場を変えるか注目される。 (1808-072002)
2・4・3・2 中国海軍の進出

オマーン Duqm 港の確保

 特記すべき記事なし。

2・4・3・3 スリランカ

不安定な政情

 スリランカのシリセナ大統領が10月26日、ウィクラマシンハ首相を解任し新首相に2015年まで大統領を務めたラジャパクサ氏を指名したことを対し、ウィクラマシンハ首相は「議会は自分を支持している」とし首相続投を主張しており、大統領は27日に対抗措置として議会を11月16日まで停止させることを決め、政治的混乱が広がっている。 (1811-102703)
【註】 シリセナ大統領は3年前に中国一辺倒の外交政策をとってきたラジャパクサ前大統領に選挙で勝利して政権の座に就き 、バランスのとれた外交を政策に掲げていた。

 スリランカ最高裁が11月13日、シリセナ大統領が宣言した議会解散について差し止め命令を下した。 大統領に解任されたウィクラマシンハ前首相率いる統一国民党などが議会解散の無効確認を求め、最高裁に提訴していた。
 最高裁が前首相派の主張を受け入れ、大統領の決定を覆したことで、大統領は難しい立場に追い込まれることになる。 (1812-111305)

 スリランカで政界の混乱が深まっている。 10月26日にシリセナ大統領がウィクラマシンハ首相を突然解任し、親中派ラジャパクサ前大統領を新首相に据えたことが発端で、対立は泥沼化している。
 ラジャパクサ氏復権で再度の対中接近も予想され、中国とインドが主導権を争うインド洋の勢力図にも影響しかねない事態である。 (1812-112106)

 スリランカで12月15日、議会で不信任決議が採択され、裁判所から首相としての権限を差し止められていたラジャパクサ首相が辞任した。
 AFP通信はシリセナ大統領がウィクラマシンハ氏の再登板に同意したという大統領派議員の発言を伝え、10月末にシリセナ大統領に首相を解任されたウィクラマシンハ氏が、16日にも首相に返り咲く可能性があると報じた。 (1901-121501)
【註】 スリランカでは3年前に、シリセナ大統領が中国一辺倒のラジャパクサ前大統領に選挙で勝利してウィクラマシンハ氏を首相とした政権を樹立したが、大統領は10月末にウィクラマシンハ首相を解任しラジャパクサ前大統領を首相に指名したため、議会と大統領の対立が続いていた。

米海軍が空母搭載航空機の一時的な支援施設を設営

 米海軍が空母John C Stennis搭載航空機の一時的な支援施設をスリランカに設けた。 支援施設には滑走路や貯蔵施設が含まれている。
 活動範囲をインド太平洋地域に拡大しようとしている米海軍とってこのような後方施設は不可欠になる。 (1901-121308)

2・4・3・4 モルジブ

2・4・3・4・1 政変と大統領交代

中国寄りのヤミーン大統領にナシード元大統領が批判

 政治的混乱が続くインド洋の国モルディブで、野党指導者のナシード元大統領が「中国によって土地が収奪されている」と批判を強めている。
 中国に傾斜するヤミーン大統領を批判する思惑もあるが、不透明な土地取引が行われ、投資には高額の金利が課されていると強引な中国の手法に警戒感を示している。
 ナシード氏によると、中国はモルディブで既に17の島々の権利を取得しているが、どれも手続きは不透明だという。 中国は取得した島に$40Mを投資すると約束しているが、ナシード氏側は高金利であり、いずれモルディブ側は返済に窮すると主張している。 (1803-022202)

 中国外務省副報道局長が2月13日、政治混乱が深まるモルディブのナシード元大統領が「中国はモルディブを乗っ取る」などと発言していることについて「まったくの捏造でありでたらめでありばかげている」と厳しく批判した。
 2016年に英国に亡命し中国寄りのヤミーン現大統領と対立しているナシード氏は12日の日本経済新聞のインタビューで、中国はすでにヤミーン政権下のモルディブから16以上の島々を買い取ったなどと指摘し、モルディブが巨額の負債を抱える中国への領土割譲に追い込まれるとの見通しを示した。 (1803-021306)

ヤミーン大統領が非常事態宣言

 モルディブのヤミーン大統領が2月5日に15日間の非常事態宣言を出した。
 モルディブでは2013年にヤミーン大統領が就任後、野党政治家が弾圧や投獄されるなど混乱が継続している。
 今回の決定は大統領と最高裁の対立が背景にある。 最高裁は1日に獄中の野党政治家9人の釈放と、与党離党後に罷免された国会議員12人の復職を命令したが、これでは国会で与野党が逆転してしまうほか、亡命したナシード元大統領(2015年に反テロ法違反罪で有罪)が2018年の大統領選で返り咲くことにつながりかねず、ヤミーン大統領は命令を拒否していた。 (1803-020601)
【註】 ナシード前大統領は2012年2月に警察によるクーデタで辞任し、中国寄りとされるワヒード氏が大統領になったが、2013年の選挙でナシード氏が大統領に復帰していた。

北朝鮮の瀬取りにヤミーン大統領の親族と関係する船舶

 外務省が2月27日、24日に北朝鮮のタンカーとモルディブ船籍船Xin Yuan 18が東シナ海で接舷しているのを海上自衛隊の哨戒機が確認したと発表し、北朝鮮の瀬取りにモルディブの船が関与している疑いに言及した問題で、ヤミーン大統領が28日付の声明で同国の関与を否定しているが、同国の野党モルディブ民主党は3月1日、その船が同国で登録されていることに加え、同国のヤミーン大統領の親族と関係する船舶だとの調査結果を公表した。
 モルディブ民主党に所属する元閣僚性は日経新聞の取材に対し、モルディブ船籍の27隻とモルディブ人11人が北朝鮮の密輸にかかわっているとの情報があると話した。 (1804-030105)

大統領選でヤミーン大統領敗北

 インド洋の島国モルディブで9月23日実施された大統領選で、野党統一候補のソリ氏が親中派の現職ヤミーン大統領との一騎打ちを制する見通しとなった。
 野党統一候補のソリ氏は24日、「国民の意思を受け入れ、円滑に政権を移譲するようヤミーン氏に呼び掛けたい」と述べ、勝利宣言を行った。 (1810-092401)

 モルディブの大統領選で選挙管理委員会が9月24日、インドなどとのバランス外交を目指す野党モルディブ民主党 (MDP) のソリ候補が有効投票数の58.3%を獲得したことを明らかにした。
 親中派の現職ヤミーン大統領は2013年の就任後、中国から「一帯一路」を通じた支援を受け、首都マレに$200Mを投じた「中国モルディブ友好大橋」を建設するなどインフラ整備を次々と推進したが、ヤミーン大統領は敗れたためモルディブで進んだ中国依存政策が転換されることになる。
 更にヤミーン大統領は野党幹部や最高裁判事を拘束する強権政治も展開し、国内外から反発を招いていた。 (1810-092402)

ヤミーン氏の大統領職居座りと撤退

 ロイタ通信によると、モルディブのヤミーン大統領が10月17日にTVで、公務から退く準備をしていると退陣を示唆した。
 ヤミーン大統領は9月23日の大統領選で敗北したが、大統領の出身政党モルディブ進歩党 (PPM) が選管の不正を訴えて最高裁に判断を委ねている。 最高裁はPPMの訴えを受け、14日から選挙の正当性の判断に入ったが結論は出ていない。 (1811-101702)

ナシード元大統領の帰国

 モルディブの元大統領で、2016年に英国に政治亡命していたナシード氏が11月1日に2年9ヵ月ぶりに帰国する。
 最高裁が10月30日に反テロ法違反で禁錮13年の刑が確定していた元大統領の刑執行の留保を決めたことによるが、親中派で独裁色の強かったヤミーン現大統領が9月の大統領選で敗れ、司法の正常化が進んでいる。 (1811-103102)

 モルディブで9月に行われた大統領選挙で、親インド派のソリ氏が現職で親中国派のヤミーン大統領をおさえて当選しましたたため、ヤミーン政権下で反テロ法違反の有罪判決を受けたあと、事実上国外に追放され亡命生活を送っていたナシード元大統領が11月1日に帰国した。
 帰国は最高裁判所が先月にナシード氏に対する刑の執行を停止する決定を出したこと受けて実現した。
 親インド派のナシード氏は今回の選挙で側近のソリ氏を擁立してヤミーン大統領の中国一辺倒の外交政策や独裁的な政治手法を批判しており、ナシード氏は集まった数万人の支持者を前に、中国の資金によるプロジェクトを見直す考えを明らかにした。 (1812-110203)

モハメド・ソリ氏が新大統領に就任

 モルディブで11月17日に9月の大統領選で野党統一候補として勝利したモハメド・ソリ氏が新大統領に就任した。 就任式にはインドからモディ首相が出席し、ヤミーン前政権が進めたモルディブによる親中国路線からの脱却をアピールした。
 ソリ新大統領は式典で、インド洋の安定を維持するために役割を果たすと演説し、インドなど近隣諸国との関係を重視する姿勢を明らかにした。
 就任式後の首脳会談でインドにインフラ整備での支援を要請した。 (1812-111801)

2・4・3・4・2 中国の後退、インドの進出

中国と合意した自由貿易協定を撤回

 モルディブの新連立政権を率いるモルディブ人民主党のナシード党首がロイタとのインタビューで、新政権が中国と合意した自由貿易協定 (FTA) を撤回する方針を明らかにした。
 モルディブはヤミーン前大統領の政権下で2017年12月に中国とのFTAに調印し、議会が野党の反対を押し切って批准していた。 (1812-112004)

インドが資金協力

 インドのモディ首相が12月17日、ニューデリーを訪問中のモルディブのソリ大統領と会談し、同国への財政支援として$1.4Bの融資枠を設けると表明した。
 モルディブはヤミーン前政権下で中国から多額のインフラ資金を借り対外債務が膨らんでおり、インドは支援を通じて中国をけん制してモルディブを自国の影響圏に取り込む狙いがある。 (1901-121703)

2・4・3・5 その他インド洋周辺国

 インドがインド洋で軍事拠点の候補地探しに苦戦している。 セーシェルではアサンプション島にインド軍が滑走路や埠頭を造ることを1月に政府間で合意したが、議会で過半数を握る野党が反発し承認しないとしたことから、政府議案提出しないことにした。
 モーリシャスでも一部の島にインドが軍施設を設けるとの情報が広がり、野党が議会で国家主権を放棄するなと追及している。  モルディブでは2013年にインドが貸与していたヘリ2機を返却する決定を行い、海洋安保で協力してきた2国間関係の亀裂が深まっている。
 一方の中国は昨年8月にジブチに海軍基地を開設し、スリランカからは昨年12月に南部のハンバントタ港の99年の使用権を取得して、インド洋で着々と足がかりを設けている。 (1807-062205)

 セーシェルのファウル大統領が6月4日、1月27日にインドと取り交わした同国Assumption諸島にインド軍の基地を設置するとの合意を破棄すると述べた。
 大統領は2019年度予算でAssumption諸島に自国で沿岸警備隊の基地を建設する予算を組むと述べている。 (1808-062709)

 中国がアフリカへの兵員派遣や兵器輸出が増える中、中国がジブチに続き新たな軍事拠点を設けるという観測が絶えない。
 習国家主席は中国軍のアフリカでの活動を重視しており、2015年の国連総会で習氏はアフリカ連合(AU)に5年間で$100Mの無償軍事援助を行う方針を表明している。中国は国連PKOに常任理事国としては最多の2,400名の軍事要員を派遣し、中でもアフリカは2,000名を占めている。
 中国は2017年夏にジブチで軍事基地の運用を開始したのに続き、中国から経済支援を受けるアフリカ南部や東部の国が港を軍用として中国に提供する可能性があるとされ、米国などは警戒を強めている。 (1810-090402)

2・5 インド対パキスタン

2・5・1 国境付近での紛争

2・5・1・1 カシミールを巡る武力衝突の激化

 2003年の停戦合意にもかかわらず、最近になってカシミールを巡るインドとパキスタンの武力衝突が激化しており、既に6人の民間人と3人の兵士が死亡している。
 1月19日の戦闘だけでも5名の民間人と兵士1名が死亡した。 (1802-012006)
2・5・1・2 過激派武装グループとの戦闘

 インド北部のジャム・カシミール州で10月21日、インドからの分離を求める過激派武装グループが住宅に潜んでいるという情報があったため軍が住宅を特定して包囲したところ銃撃戦となり、武装グループの3人が死亡、兵士2人が負傷した。 軍が武装グループを制圧したあと、現場には掃討作戦に反対する多くの市民が集まり、住宅に立ち入ったところ残されていた爆発物が爆発し、7人が死亡、40人が負傷した。
 一方、インド側とパキスタン側を分断しているカシミール地方の実効支配線近くでも、インド軍と越境してきた武装グループとの間で銃撃戦が起き、兵士3人と武装グループの2人が死亡した。 (1811-102203)
2・5・2 インドの対パキスタン軍備の増強

UAV の投入

 カシミールの帰属を巡ってパキスタンとの小競り合いの続くインドは2015年にイスラエルか らHeron TPを10機購入する契約を結んだが、その納入が2018年に開始される。
 その一方でインドはGA社製Predator C/Avengerの導入にも意欲を示している。 (1804-022602)

2・5・3 パキスタンの情勢

2・5・3・1 核武装

 米国科学者協会 (FAS) が8月31日の報告書 "Bulletin of teh Atomic Scientists" のなかで、現在パキスタンが140~150発保有している核兵器が、7年後には220~250発になると見積もっている。 (1811-091201)
2・5・3・2 対インド軍備の増強

MIRV 弾頭の開発

 パキスタンがMIRV弾頭を開発するため中国の科学技術大学EO研究所から光学追随装置4基を購入する。 (1806-040410)

国産 CM の洋上発射

 パキスタン海軍が1月3日にAzmat級哨戒艇Himmatから国産CMを発射した。
 Azmat級哨戒艇の3番艇として2017年7月に就役したHimmatは中国海軍のType 037/2を元にした全長63m、排水量560tの哨戒艇で、C-802A SSMを4発装填した発射機2基のほか25mm砲と30mm CIWSを装備している。 (1803-011010)

国産 CM の水中発射
 パキスタン軍のメディアであるISPRが3月29日、Babur-3 SLCMの水中発射試験に成功したと報じた。 Babur-3は450kmを飛翔して標的に正確に命中したという。
 Babur-3は2016年12月に発射試験に成功した地上発射型CMであるBabur-2の艦載型で、最初の発射試験は2017年9月に報じられていた。 (1805-040305)

Babur-1B

 パキスタン軍のメディア部門であるISPRが4月14日、Babur-1B CMの発射試験に成功したと報じた。
 Babur-1Bの射程は明らかにされていないが、この日の試験ではTELから発射されたBabur-1BはTERCOMとDSMACで誘導され、700km離れた標的に命中したという。
 Babur-1Bの発射試験はBabur-3 SLCMの発射試験成功の2週間後に行われた。 (1805-041707)

 パキスタンが4月14日にBabur CMの長射程型Babur-1Bの発射試験に成功した。 軍のメディアであるISPRが報じた映像では、Babur-1BはTELから発射された。
 ISPRによるとBabur-1Bは対艦/対地両用で、いずれの目標に対しても700kmの射程を有するという。 誘導にはGPSのほか TERCOMとDSMACが用いられているという。 (1806-042514)

Zarb 地対艦 CM

 パキスタン海軍機関誌の4月号にZarb地対艦CMの発射画像が初めて掲載された。 画像から見るとZarbは中国軍のYJ-62の輸出型であるC-602のようで、C-602であれば300kgの弾頭を搭載し射程は280kmである。 (1806-050214)

Wing Loong Ⅱ の共同生産

 パキスタン空軍が10月6日に、パキスタンと中国がWing Loong Ⅱ 武装偵察UAV 48機を共同生産すると発表した。 (1812-101703)

2・5・3・3 ロシア製最新装備の導入

Su-35

 中国メディアの新浪網が10月10日、「パキスタンにロシアからSu-35導入の意向か、FC-1に頼るだけではインドに対抗不能」と題する記事を掲載した。
 パキスタン空軍は520機の戦闘機を保有しているが、多くは中国のJ7-P、Mirage 3/5など就役してから20年以上が経過している。
 1980年代に始まったFC-1の開発を当初、改革開放政策を採用した中国に好意的であった米国が協力したが、天安門事件を受け協力を打ち切った。 そのため中国はパキスタンから、同国が保有していたF-16の情報を得て完成させたとされる。
 ただ中国にとってFC-1は輸出用であり、自国では装備していない。 (1811-101004)

2・5・3・4 対米関係

 米国務省が1月4日、アフガニスタンでテロ行為を展開するタリバンやタリバンの一派ハッカニ・ネットワークへの対策が不十分であると判断し、パキスタンへの軍事援助を凍結すると発表した。
 米政府は、パキスタン軍や政府の一部勢力がタリバンやハッカニ派に対して自国内に隠れ家を提供するなど、対テロ掃討作戦に本腰を入れていないとして、繰り返し是正を要求していた。
 凍結額についてロイタ通信が米政府当局者の話として伝えたところでは$255Mを上回る規模になる見通しだという。 (1802-010503)

 米国が決定した$300Mの軍事支援停止を受け、パキスタンのカーン政権が対応に苦慮している。 支援打ち切りに反発する一方、米国が求めるアフガニスタンのタリバンとの関係遮断は、国内で強い影響力を持つ軍の意向もあり簡単ではない。
 経済状態が急速に悪化し、米国との対立は避けたい局面の中、カーン首相のかじ取りが注目される。 (1810-090406)

2・6 朝鮮半島

2・6・1 板門店宣言までの北朝鮮

2・6・1・1 軍事パレードでの BM 誇示

2月8日: 建軍記念日

 北朝鮮が朝鮮人民軍創設70年を記念する軍創建記念日の2月8日午前、平壌の金日成広場で閲兵式を行った。 パレードでは初公開となる火星15 ICBMも数発公開され、米国との対決姿勢を鮮明にした。 (1803-020803)

 平昌で冬季オリンピックが開かれる前日に北朝鮮が建軍70周年記念閲兵式を行った。 規模は2017年4月15に行われ た前回を下回るが、同国軍能力の一端を見せた。
 火星-15 ICBMを含むミサイルは中国のWS512000と見られる車両を元にした9軸のTELに乗せられていたが、火星-14 3基はTELではなく牽引トレーラに乗っていた。 北朝鮮はWS512000を最小限6両保有していることが知られている。
 今回披露された唯一のミサイルはKN-02の改良型であったが、専門家によると長射程型KN-02を2発搭載したTELはロシアの9K720 Iskanderのものである。
 またM1993 120mm、M1991 240mm、KN-09 300mm MLRも登場したが、CSISによるとこれらはロシアのBM-21 Grad及び中国のType 63を元にしたものだという。 (1803-020805)

9月9日: 軍創建70周年記念日

 北朝鮮では9月9日に軍創建70周年記念閲兵式が行われたが、パレードではICBMを含むBMは登場せず、北朝鮮メディアは閲兵式の開催自体をまだ報じていない。
 北朝鮮としては米国を意識して非核化に向けた歩み寄りを進めているとアピールする狙いがあったとみられる。 (1810-090901)

2・6・1・2 和平模索を臭わせる動き

非核化合意を臭わせる動き

 新華社通信が、北朝鮮の金正恩委員長が3月25~28日の訪中の際に、米政府と接触することを希望しており、非核化について話し合う用意があることを明らかにしたと報じた。 (1806-040402)

核実験場の破壊

 朝鮮中央通信が4月21日、北朝鮮が20日に朝鮮労働党中央委員会総会を開き、北東部、豊渓里の核実験場の閉鎖を決めたと報じた。 同通信によると、総会では21日から核実験とICBMの発射実験を中止するとの内容を含む決定書を採択した。
 金正恩党委員長は核兵器の実用化などが既に検証されたと述べた上で、われわれはいかなる核実験、IRBM/ICBM発射試験も必要なくなったと述べたという。 (1805-042101)

 北朝鮮が5月24日に実施した北東部の豊渓里にある核実験場の廃棄は約5時間にわたり坑道などを爆破する手順で進められた。
 北朝鮮は同日11:00、2番坑道と観測所の爆破で廃棄を開始した。 2番坑道は2回目から6回目の核実験が実施された場所で、核実験場の中心施設であった。
 約3時間後の14:14には4番坑道、同14:45には生活施設など5ヵ所、同16:02には3番坑道や観測所を爆破した。 (1806-052402)

 米国の研究グループが5月、5月6日に撮影した衛星写真から北朝鮮寧辺の核施設で煙が確認されたなどとする分析結果を公表し、使用済み核燃料の再処理の準備に向けた動きの可能性もあると指摘している。
 この動きはこれまでの例ではプルトニウムの抽出につながる使用済み核燃料の再処理の兆候だったとして、初期段階の準備に向けた動きの可能性もあるとしている。 (1806-053102)

BM 発射試験用発射機の撤去?

 北朝鮮分析サイト38 Northが6月6日に商業衛星写真に基づき、北朝鮮がBMの発射中止を表明した4月から5月中旬までに、北西部亀城の北方にあるBM発射試験用の発射機を撤去したとの分析を発表した。
 38 Northによると、この発射機は北極星-2 IRBMの開発用に使われていたが、ICBMのような大型BMの発射試験にも使われた可能性があるという。
 ただ、発射機撤去が北朝鮮のBM開発中止を示唆しているのか、別の発射機を設置するのかは不明だとしている。 (1807-060701)

 38 Northが8月22日、北朝鮮が7月に解体を始めた北西部のミサイル基地西海衛星発射場で8月初め以降は目立った動きがないとの分析を発表した。
 3日に撮影した衛星写真によると実験台で鉄骨の解体作業が続き、解体された掩体から燃料などが取り除かれていたが、16日の写真を分析した結果、新たな動きはみられず、解体された部品なども放置されているという。 (1809-082301)

2・6・2 板門店宣言までの米国

2・6・2・1 武力行使を示唆する動き

2・6・2・2・1 海上封鎖の可能性

 特記すべき記事なし。
2・6・2・2・2 副大統領の日韓歴訪

 平昌冬季五輪への出席に合わせた日韓歴訪で2月6日に来日したペンス米副大統領は7日に安倍首相らと会談するが、このタイミングでの米副大統領の訪問を五輪後の朝鮮半島有事をにらんだ米軍の動きを嗅ぎ取る向きもある。
 副大統領は来日に先立ち、アラスカ州の米軍基地も訪れ、同基地でICBMへの迎撃態勢を点検し北朝鮮をけん制している。 1月末には、2017年11月に来日したばかりの在韓米軍司令官のブルックス大将がひそかに再来日し、1月30日に谷内国家安全保障局長や秋葉外務次官らと相次ぎ会談したたが、この会談内容も明らかにされていない。 (1803-020603)
2・6・2・2・3 民間人脱出計画 (NEO)

計画の作成

 米太平洋軍司令官のハリス海軍大将が2月14日の議会公聴会で、在韓米軍司令官のブルック陸軍大将が朝鮮半島有事における民間人脱出計画 (NEO) を作成したと証言した。
 ハリス大将は、現在韓国に駐在する米民間人は200,000人程度と見られ、日本人も60,000人程度いると見られると述べた。
 一方韓国の専門家は2月に、韓国にいる米国人を230,000人、日本にいる米国人を90,000人と見ている。
 2017年11月に米議会調査室は、北朝鮮による在来兵器の攻撃で開戦初日だけで30,000~300,000人が犠牲になると見積もっている。 (1803-021704)

NEO 演習の実施

 Stars & Stripes紙が3月23日、米軍が4月1日から開始される米韓合同軍事演習に合わせて在韓米国人の大規模な国外退避訓練を行うと報じた。
 同紙によると、退避訓練は "Focused Passage" と名付けられ、北朝鮮との間で戦争が起きたという想定で、4月16~20日の日程で行われる。
 米軍は毎年春と秋に米軍人の家族と軍属を対象に日本への退避訓練を行っているが、今回は初の試みとしてボランティアの参加者100名を実際に米本土まで移送する。 (1804-032503)

トランプ米大統領が退避指示?

 CNN TVが5月15日、トランプ米大統領が平昌冬季五輪開催前に在韓米軍の兵士らの家族を韓国から退避させるようマクマスター補佐官に指示を記載した覚書を作成させた。
 しかしながらマティス国防長官やケリー大統領首席補佐官が、大規模な退避に踏み切れば緊張を高めると説得し内容を変更させたという。 (1806-051604)

2・6・2・2・4 北朝鮮攻撃を想定した秘密図上演習の実施

 New York Times紙が2月28日、米軍が朝鮮半島での戦争に備えて2月下旬に陸軍参謀総長と特殊戦司令官らが参加した軍の動員および北朝鮮攻撃を想定した図上演習を、秘密裏にハワイで数日間実施したと報じた。
 今回の演習では待ち構える北朝鮮軍に対する米国の攻撃を阻む恐れがある危険要因を点検したと同紙は報じた。 そのリストには朝鮮半島で毎日負傷者を後送する能力が制限されている点や、北朝鮮が化学兵器で報復した場合、さらに深刻な問題が発生する点などが含まれていると国防総省関係者らは述べた。
 また、地上軍を支援するために、現在中東とアフリカに配置された多くの偵察機を朝鮮半島に移動しなければならない問題と、在韓米軍や在日米軍の参加方式も検討された。 (1804-030204)
2・6・2・2・5 大規模防空/BMD (AMD) 演習の実施

 米陸軍は2005年を最後に大規模な防空/BMD (AMD) 演習を行っていないが、10年以上ぶりに2週間にわたり大規模AMD演習 "Roving Sands" をWSMRとFt. Bliss、合わせてロードアイランド州と同じ広さで行った。 演習には1,800名以上が陸路、空路、鉄路で集結した。
 "Roving Sands" 演習は1989年から2000年代初期まで行われ、"Operation Desert Shield" 作戦や "Operation Desert Storm" 作戦の事前訓練としても使われた。 (1804-031102
【註】 朝鮮半島有事を想定した作戦計画に基づく事前演習か。
2・6・2・3 対北朝鮮制裁違反への監視強化

2・6・2・3・1 北朝鮮の瀬取り

 米国連代表部が国連安保理の北朝鮮制裁委員会に対し7月12日、北朝鮮が1~5月に瀬取りの手法で、石油精製品を少なくとも89回輸入したと指摘する文書を提出した。
 米代表部は衛星写真の分析などにより、北朝鮮の船舶が瀬取りで石油製品を積み込んだ後、北朝鮮西部の南浦や東部の元山の港に計89回入港したと指摘している。 (1808-071301)
2・6・2・3・2 関係国との連携強化

 米国が朝鮮半島近隣の海上で国連の制裁を避けて北朝鮮のタンカと精油精製品の密輸をして摘発された中国とロシアの船舶に対する圧力を強化している。
 マティス国防長官は2017年12月29日に、国連加盟国は安保理決議が禁止する取引をする船舶を自国の港で発見した場合、拿捕する義務があると強調した。
 ティラーソン国務長官も1月16日にバンクーバーで朝鮮戦争参戦16ヵ国+韓国、日本、インドなど19ヵ国の外相会議を開き、こうした不法取引を完全に封鎖することを対北朝鮮封鎖に同盟国の参加を呼びかける。 (1802-010201)
2・6・2・3・3 米沿岸監視隊の派遣

 米トランプ政権とアジアの主要同盟国が対北朝鮮制裁に違反している疑いがある船舶に対する臨検の強化を準備している。
 米高官によると米沿岸警備隊をアジア太平洋地域に派遣する可能性もあるという。
 複数の当局者によると、米国は日本や韓国、オーストラリア、シンガポールなどと取り締まりの強化策について協議中だという。 (1803-022602)
2・6・3 板門店宣言後の北朝鮮

2・6・3・1 板門店宣言を受けた動き

2・6・3・1・1 核実関連施設の廃棄

豊渓里核実験場の破壊

 読売新聞が11月28日、北朝鮮が非核化の先行措置として1回目の米朝首脳会談が開かれる前の2018年5月に豊渓里の核実験場を閉鎖したが、すでに6回目の核実験で豊渓里実験場が限界を迎え、もはや使用が困難になっていたことをうかがわせると報じた。
 2017年9月に北朝鮮が実施した6回目の核実験の際、豊渓里の核実験場の地下に直径80m以上の空洞が生じ、これが崩れて8分後に小規模な地震を引き起こしていたという。 (1812-112903)

寧辺核施設の廃棄

 北朝鮮を訪問している韓国の文大統領と金委員長が、9月19日午前に2日目の会談を行なうと共に、韓国の宋国防相と北朝鮮の努人民武力相も軍事分野の合意書に署名した。
 平壌共同宣言によれば、北朝鮮は寧辺の核施設も米側の相応の措置を条件に廃棄する用意を示した。 (1810-091903)

 38 Northが10月5日、9月の南北首脳会談後に撮影された商業衛星写真に基づき、北朝鮮北西部寧辺の核施設にある黒鉛減速炉やウラン濃縮施設に目立った変化は見られないとの分析を発表した。
 北朝鮮は9月の南北首脳会談で、米側の「相応の措置」を条件に、寧辺の核施設の永久廃棄を約束したので、7日に訪朝するポンペオ国務長官は北朝鮮側に何らかの対応を提示すると見られる。 (1811-100602)

 38 Northの管理責任者であるウィット氏が、北朝鮮が米側の相応の措置を条件に廃棄の用意を表明している寧辺の核施設について、もはや北朝鮮の核兵器製造計画の中心ではなく、高濃縮ウランの製造用と疑われる施設が他に多数あると明言した。
 その上で、北朝鮮が寧辺の核施設を廃棄したとしても大きな前進と見なすことはできないと指摘し、核兵器製造能力を抑制する効果は限定的という見方を示した。 (1811-101304)

2・6・3・1・2 ミサイル試験場の解体

解体の動き

 北朝鮮の動向を分析している38 Northが7月23日、東倉里発射場の最新衛星写真の分析結果を発表した。 それによると7月20日に撮影された写真では、BMを組み立てるための四角い大型の構造物の周りにクレーン などが確認され、その2日後の写真では構造物の一部が解体され近くの地面に置かれているのが確認されたという。 (1808-072401)

 北朝鮮分析サイト38 Northが商業衛星写真に基づき9月12日、平壌近郊の平城にある自動車工場「3月16日工場」敷地内で火星-15 ICBM用TELの試験設備が解体されたとの分析を発表した。
 38 Northによると火星-15が発射される以前の2017年11月21日の衛星写真では、TELの稼働試験で使用された覆いなどが確認されたが、2018年8月8日の衛星写真では解体準備が始まっており、9月1日にはなくなっていた。 (1810-091301)

 北朝鮮を訪問している韓国の文大統領と金委員長が、9月19日午前に2日目の会談を行なうと共に、韓国の宋国防相と北朝鮮の努人民武力相も軍事分野の合意書に署名した。
 平壌共同宣言によれば、北朝鮮は北東倉里のミサイルエンジン試験場と発射設備を、関係国専門家の監視の下で廃棄することに同意した。 (1810-091903)

解体作業の停止

 38 Northが10月4日、北朝鮮北西部の東倉里にある西海衛星発射場と呼ばれるミサイル発射場の衛星写真について、2018年7月に一旦施設の一部の解体作業が始まったが8月上旬に作業は止まり、9月27日に撮影された最新の写真でも、8月までの解体作業で取り壊された施設の一部が放置されるなど、作業は止まったままだとした分析結果を発表した。
 この発射場については9月の南北首脳会談で署名された共同宣言で「関係国の専門家の立ち会いのもと、永久に廃棄する」とされていることから、北朝鮮が専門家による立ち会いの日程が決まるのを待っているか、10月7日に予定されているポンペイオ国務長官の訪朝の結果を見極めようとしている可能性もあると指摘している。 (1811-100502)

2・6・3・1・3 その他の動き

国際民間航空機関の現地調査受け入れ

 共同通信が8月19日、国際民間航空機関 (ICAO) の関係者の言葉を引用し、北朝鮮がBM発射に関連した現地調査を受け入れることで合意したと報じた。 それによるとICAOは北朝鮮が事前通報なくBMを発射する行為を自制すると約束したことを受け、実際に措置を取ったかどうかを確認するために北朝鮮に専門家らを2019年に派遣する。
 国連傘下専門機関のICAOには192ヵ国が加盟しており、北朝鮮は1977年に加盟したため、ミサイルや人工衛星の打ち上げ前に関連計画をICAOに通知する義務がある。 しかし2016年2月に光明星-4の打ち上げで事前通報をした後、2017年はBM発射を繰り返しながらもICAOと国際海事機関 (IMO) に関連情報を提供しなかった。 (1809-082003)

2・6・3・2 板門店宣言に反する動き

2・6・3・2・1 核戦力非放棄の姿勢

ウラン濃縮活動を継続

 北朝鮮に対する制裁決議実施状況を調べる国連安保理の専門家パネルが上半期について中間報告書をまとめ、8月3日に制裁委員会に提出した。
 報告書はウラン濃縮が行われてきた北朝鮮の核施設にある5MWの原子炉が2015年12月以降、2018年2月から4月の数日間を除いて稼働し続けており、北朝鮮が6月の米朝首脳会談で完全な非核化を約束した以降も核開発を続けているとしている。 (1809-080404)

核技術継続保持宣言

 イランのメヘル通信が、北朝鮮の李容浩外相が8月9日に訪問先のイランでラリジャニ国会議長と会談し、非核化に合意したが米国がわれわれに対する敵視を放棄しないことは承知しているため、われわれは核技術を保持するだろうと語ったと報じた。
 李外相は朝鮮半島全体を完全に非核化するとの目標について米国が自らの約束を順守する必要があるが彼らはそれを拒んでいると述べ、米国への根強い不信感をあらわにした。 (1809-081001)

IAEA が核開発活動を停止した兆候一切なしと報告

 国際原子力機関 (IAEA) が9月の理事会に提出する報告書を8月20日に公表し、北朝鮮が核開発活動を停止した兆候は一切みられないとの認識を明らかにした。
 報告書によると、4月終わりから5月初めにかけ、放射化学実験施設に当たる蒸気プラントの稼動を示す兆候があったという。 (1809-082201)

破壊したと主張する豊渓里核実験場に一部が残存

 38 Northが12月12日、北朝鮮が破壊したと主張する豊渓里核実験場の一部が元のまま残っているとみられるなど破壊の程度が明らかでなく、検証のためにきちんとした査察が重要だと報じた。
 豊渓里核実験場は、北朝鮮が2018年5月に非核化措置の一環として使用できないよう爆破したと主張している。 (1901-121401)

2・6・3・2・2 ミサイル施設

ミサイル施設拡張、ICBM 生産継続疑惑

 Wall Street Journal紙が7月1日、最新の人工衛星画像を基に北朝鮮東部咸興にあるミサイル開発施設が拡張されている可能性があると報じた。
 北朝鮮は非核化に向けた米朝協議の準備が進むなか、ミサイル開発を続けている恐れがある。 (1808-070202)

 Washington Post紙が複数の米当局者の話として7月30日、北朝鮮が新たに1~2基のICBMを製造している兆候があることが判明したと報じた。 米朝が「完全非核化」で合意した6月の首脳会談以降、北朝鮮が新たなミサイルを製造している疑いが発覚するのは初めてである。
 同紙によると、複数の米情報機関が過去数週間内に撮影された衛星写真の画像などを分析したところ、平壌郊外の山陰洞にある大型研究施設で液体燃料式のICBMを製造していることが分かった。 同施設では過去に火星-15を含む2基のICBMが製造されており、現在製造中のミサイルも火星-15とみられるという。 (1808-073103)

 北朝鮮がBMの射程距離を伸ばすだけでなく発射準備時間を大幅に短縮する施設の開発に積極的に取り組んでいるという分析が出てきた。
 英軍事情報会社IHS Jane'sが8月28日に報告書「情報レビュー」で、北朝鮮がソウルから北125kmの距離のカルゴル基地は黄海北道のミサイルベルト内にあるカルゴルミサイル基地で2002年以降にBMの発射準備態勢を強化する建設作業が続いているとし、この基地は北朝鮮のBM部隊を指揮する人民軍戦略軍が管理しているとしている。 (1809-083102)

解体は虚偽との見方

 米戦略国際問題研究所 (CSIS) が11月12日、北朝鮮が公表していないミサイル基地のうち13ヵ所を特定したと発表した。 CSISは未公表のミサイル基地が20ヵ所あると推定している。 これらの基地はSRBMからICBMまですべてのミサイルに対応できるという。
 平壌共同宣言では、北朝鮮が東倉里のミサイル施設を廃棄することが明記されたが、北朝鮮は他のミサイル基地の廃棄は明言していない。 (1812-111301)

新たなミサイル基地の建設

 CNN TVが12月5日、北朝鮮が北部山岳地帯にあるICBM基地を大幅に拡張していることを示す最新の衛星画像を政策研究機関Middlebury国際問題研究所から入手したと報じた。
 同研究所の核問題専門家の分析によると、米情報機関が既に存在を確認済みのミサイル基地から11km離れた谷間で、新たなミサイル基地とみられる施設の建設が進められているのが判明した。 両基地が別個の施設であるのか、新たな施設が既存の基地に付属するのかは不明としている。
 また、一帯では2017年から巨大な地下基地が建設されているとみられ、6月の米朝首脳会談で北朝鮮の金委員長が非核化に合意した後の2018年8月現在も建設作業が続けられていることが分かったとしている。 (1901-120604)

テレメトリ電波信号の試験実施

 読売新聞が北朝鮮軍事情報筋の話として12月30日、北朝鮮がミサイルを発射する際に使用するテレメトリと呼ばれる電波信号の試験を12月上旬に行っていたと報じた。
 テレメトリはBMの角度、位置、速度などの諸元を地上で観測するもので、北朝鮮は今までBMの発射に先立ちテレメトリの試験を行うことが多かったことから、この試験は北朝鮮のミサイル発射の前兆と見て日米や韓国は電波を常時監視している。 (1901-123102)

2・6・3・2・3 制裁逃れの活動

 北朝鮮に対する制裁決議実施状況を調べる国連安保理の専門家パネルが上半期について中間報告書をまとめ、8月3日に制裁委員会に提出した。
 報告書は2018年4月に東シナ海の公海上でロシア船籍タンカーからベリーズ船籍タンカーに石油精製品を積み替えたのち北朝鮮の港で荷揚げされた 瀬取りが行われたと指摘し、発覚しにくいようした新たな手口だとしている。
 さらに北朝鮮が安保理決議で輸出が全面禁止された石炭を、2018年3月~4月にベトナム沖の公海上で船籍不明の複数の貨物船に洋上で積み替えたこともわかったとしたほか、北朝鮮との合弁企業の新設を禁じた決議に違反してロシアが建設分野などで合弁事業を行っているとしている。 (1809-080404)
2・6・4 板門店宣言後の韓国

2・6・4・1 板門店宣言を受けた米韓演習の中止

Max Thunder 米韓大規航空演習の中止

 北朝鮮が国営朝鮮中央通信を通じて5月16日早朝、米韓大規航空演習 "Max Thunder" を理由に16日に予定されていた南北高官級会談を中止すると一方的に通知した。
 北朝鮮が問題視した "Max Thunder" 演習は5月11~25日に行われる米韓空軍の年次連合演習で、F-22 8機、B-52、F-15Kなど約100機が参加するもので、F-22 8機が参加したのは今回が初めてである。 (1806-051602)

Blue Lightening 航空演習への不参加

 Wall Street Journalが米政府当局者の話として5月18日、韓国政府がB-52との共同演習 "Blue Lightening" への参加を見送っていたと報じた。
 6月に予定される米朝首脳会談を前に、戦略爆撃機との共同演習が北朝鮮を刺激して緊張が高まるのを懸念したという。 (1806-051902)

 米空軍のB-52H 2機が5月17日に朝鮮半島南端付近の上空を飛行した。 韓国の防空識別圏には進入しなかった。
 B-52Hはグアムを離陸した後、沖縄付近で日本の防空識別区域に入り、航空自衛隊のF-2と訓練飛行をした。
 Wall Straat Journalは18日、当初この訓練は日米韓が参加する連合訓練として計画されたと報じた。 24日まで行われる米韓連合空軍訓練 "Max Thunder" とは別の "Blue Ligtning" と呼ばれるこの訓練は韓国側の不参加で日米間だけで進行された。
 北朝鮮fは16日に "Max Thunder" を南北高官級会談無期限延期を宣言しち理由に挙げている。 (1806-052101)

乙支 Freedom Guardian 演習の中止

 2018年8月に実施される予定の米韓合同演習 "乙支Freedom Guardian" (UFG) を巡り、北朝鮮の反発で縮小されるとの懸念が韓国軍の内外で強まっている。
 論争が大きくなっていることを受け、国防部報道官が5月21日に、防衛的な性格で実施される米韓合同演習については、従来の立場から変化はないと説明した。
 にもかかわらず、こうした懸念が広まっているのは北朝鮮が板門店宣言を掲げてUFGに抵抗する可能性が強いからで、北朝鮮は今月16日に南北高官級会談を突如キャンセルするとともに、その理由として米韓両国空軍が実施する合同航空演習 "Max Thunder" が板門店宣言への露骨な挑戦だと主張している。 (1806-052202)

2019年予定の米韓合同演習

 複数の韓国政府消息筋と米国の国防当局が12月6日、2019年3月に予定されている定例の米韓合同指揮所演習Key Resolveを実施する一方、野外機動訓練Foal Eagleは事実上猶予する方向で最終調整を行っていることを明らかにした。  実動訓練Foal Eagleは、来年は米軍が参加しない計画のため中止となるという。 (1901-120603)

 韓国国防省が12月20日、2019年の米国との定例の合同軍事演習について、Foal Eagle演習を含めて縮小する可能性を協議していると明らかにした。 指揮所演習 (CPX) は2回実施する方針を示した。
 マティス米国防長官は11月に、2019年のFoal Eagleは範囲を縮小して、北朝鮮との外交関係に悪影響が及ばないようにする考えを表明していた。 (1901-122004)

2・6・4・2 米韓合同演習の縮小

2・6・4・2・1 米韓年次演習の規模縮小

 米韓両軍が4月1日、朝鮮半島有事を想定した定例の米韓合同軍事演習を韓国や周辺海域で開始した。 1日からは約4週間にわたる野外機動訓練 "Fall Eagle" が始まり、米軍11,500名と韓国軍290,000名が参加し、4月中旬からは指揮所演習 "Key Resolve" が約2週間行われ、米韓両軍計22,000名が加わる。
 2018年は冬季五輪と時期が重なったため演習開始を延期していた。
 米韓の複数の軍当局者によると、米軍は演習期間中、空母を派遣しない方針で、両軍の参加人員は過去最大規模とされた昨年と同規模だが、演習期間は約半分に短縮される。 27日の南北、5月末までの米朝首脳会談開催へ調整が進む中、対話ムードに水を差さないよう抑制的な内容になる。 (1805-040101)

 韓国軍関係者が南北首脳会談を目前に、米韓軍が4月26日に合同の野外機動演習 "Fall Eagle" を事実上終了するもようであることを明らかにした。 "Fall Eagle" は陸海空軍と海兵隊が参加する野外実動演習で、米軍は海外増援戦力を含む11,50名0人、韓国軍は300,000名が参加した。
 また合同指揮所演習 "Key Resolve" についても南北首脳会談当日の27日は一時中断する。 (1805-042602)

 マティス米国防長官が11月21日、韓国と毎年春に行う合同演習Foal Eagleについて、2019年は範囲を縮小して、北朝鮮との外交関係に悪影響が及ばないようにする考えを表明した。 (1812-112201)

2・6・4・2・2 米韓年次演習の実施状況

Vigilant Ace 米韓合同航空演習

 韓国空軍が国会の国政監査で10月19日、定例の米韓合同航空演習 "Vigilant Ace" を12月の第1週に実施する計画で米国と協議して充実した内容で行うと明らかにした。
 空軍作戦司令部によると、Vigilant Aceには2016年の同訓練に韓国側70機、米国側約100機が、2017年には韓国側約90機、米国側約180機の航空機が参加しており、昨年は米国側からステルス戦闘機F-22とF-35Aも参加したという。 (1811-101908)

 米国防総省が10月19日、北朝鮮を巡る外交努力を継続するため米国と韓国が12月に予定していた定例合同軍事演習 "Vigilant Ace" の中止を決定したことを明らかにした。
 この日行われたマティス米国防長官と韓国の鄭国防相との会談で決まったという。 (1811-102001)

 韓国軍合同参謀本部が12月3日、韓国空軍が同日から7日にかけ戦闘準備態勢総合訓練を実施すると発表した。
 米韓は毎年12月に実施する定例の合同空軍演習Vigilant Aceを2018年は行わないことにしており、今回の総合訓練はこれを補う意味で実施する韓国空軍の単独訓練となる。 (1901-120301)

米韓海兵隊連合訓練

 韓国海兵隊司令部が国会の国政監査で10月19日、連合作戦遂行能力の向上のため、米韓連合訓練を活性化させるとして、2019年に米韓海兵隊合同演習 (KMEP) を24回実施する方針を明らかにした。 同演習は2016年に14回、2017年に17回、今年は11回実施されている。
 2018年は19回行う予定だったが、朝鮮半島の非核化や平和体制構築に向けた南北、米朝対話を考慮し8回を取りやめたことから、2019年も朝鮮半島情勢次第では計画済みの一部演習が取りやめになる可能性がある。 (1811-101906)

 朝鮮半島の非核化や平和定着に向けた南北・米朝対話の円滑な推進のために中止していた米韓海兵隊合同演習 (KMEP) が6ヵ月ぶりに再開される。 韓国軍によると、11月5日から韓国南東部の浦項で韓国海兵隊と沖縄に駐留している米海兵隊第3海兵遠征軍が参加する訓練を、500名と韓国の水陸両用強襲車 (KAAV) などが2週間実施する。
 KMEP演習は朝鮮半島の非核化や平和定着に向けた外交努力を後押しするため、5月から6ヵ月間中止となっていた。 (1812-110404)

2・6・4・2・3 韓国軍単独演習も中止や延期

指揮所演習の延期

 韓国軍関係者が6月20日、次週に実施を予定していた同軍単独の指揮所演習「太極演習」の延期を決めたことを明らかにした。 この関係者は、26日から3日間実施する予定だった太極演習の延期が決定したとしながらも、最も適切な時期に最適な方策で実施できるよう検討中と述べた。
 太極演習は、朝鮮半島の有事に備え作戦遂行能力を高める目的で1995年から実施してきた指揮所演習で、合同参謀本部が主催して軍団級以上の作戦部隊が参加し、毎年5~6月に行われているが、延期は今回が初めてである。 (1807-062002)

自走砲射撃訓練も中止

 韓国軍が南北軍事境界線に近い北西島嶼で毎年下半期に実施しているK-9 SPHなどによる定例の射撃訓練を2018年は行わない方針である。
 韓国政府筋は、接敵地域での砲射撃訓練は「板門店宣言」の「敵対行為の全面中止」の精神に抵触すると述べた。 (1807-062501)

年次大規模火力演習の中止

 12月に予定されていた米韓連合航空演習Vigilanr Aceが中止になったなか、韓国軍関係者が10月24日、東海岸で陸軍と海軍が毎年行ってきた韓国軍の大規模火力演習も中止になったことを確認した。
 2017年4月の陸海合同射撃演習には、陸軍第8軍団をはじめとする前方5個軍団の砲兵部隊から、K239天舞MLRをはじめ、K163A1九龍130mm MLR、K9 SPHとKH179牽引砲など30門やUAV、ARTHUR-K対砲レーダが参加した。 また海軍からは哨戒艦、高速艦、高速艇など10余隻が参加している。 (1812-102401)

2・6・4・3 軍事境界線 (MDL) 付近の兵力縮小

2・6・4・3・1 非武装地帯の平和地帯化、黄海の平和水域化

 韓国の鄭国防部長官が10月12日、韓国海軍国際観艦式に合わせて済州島で開いた「西太平洋海軍シンポジウム」で演説し、南と北は9月の南北首脳会談で署名した『板門店宣言履行のための軍事分野合意書』の履行を通じ、敵対行為の中断、非武装地帯 (DMZ) の平和地帯化、黄海の平和水域化を継続的に進展させていくと述べた。 (1811-101205)
2・6・4・3・2 非武装地帯の哨所から人員と装備を撤収

 韓国国防部が7月24日に国会国防委員会に提出した資料で、南北首脳会談の板門店宣言の履行に向けた実質的な措置として、非武装地帯 (DMZ) 内にある哨所 (GP) から人員と装備の撤収を推進する方針を明らかにした。
 DMZ内の南北のGPには機関銃などの重火器が配備されている。 (1808-072404)

 韓国国防相が8月21日、北朝鮮との間の非武装地帯 (DMZ) に置かれた約10箇所の哨舎から兵員を撤退させることを明らかにした。 (1810-082911)

 韓国と北朝鮮が11月4日、非武装地帯 (DMZ) 内にある見張り所 (GP) のうち、試験的に撤収することにした11ヵ所ずつに黄色い旗を掲げ、撤収手続きを始めた。 国防部は11月末までにGPの兵力や装備の撤収、破壊などの措置を完了し、12月中に双方が検証する手続きなどを終える方針を明らかにした。
 南北は9月19日に署名された軍事分野合意書で、2018年末までにそれぞれ11ヵ所のGPを試験的に撤収することで合意し、10月26日に板門店で開かれた将官級軍事会談で11月末までに撤収対象のGPを完全破壊することで一致した。 (1812-110405)

2・6・4・3・3 軍事境界線 (MDL) 南側に敷設された地雷の撤去

 韓国陸軍の関係者が4日、非武装地帯 (DMZ) の軍事境界線 (MDL) 南側と民間人出入統制線の北側と南側に敷設された地雷の撤去には、前線に配置された工兵大隊を全て投じても200年かかるとの見解を示した。
 この関係者は、板門店宣言に明示されたDMZ平和的利用の本格化に備え陸軍本部内に『地雷撤去作戦センタ』(仮称)を設置する必要があるとした。 陸軍が構想する地雷撤去作戦センタは地雷撤去に関する計画を立案し、調整統制して地雷撤去を実行する専門組織になる。 (1810-090405)
2・6・4・3・4 軍事境界線 (MDL) 付近の飛行停止

米国の了解のない決定

 日経新聞が10月10日、ポンペオ米国務長官が康韓国外交長官との電話会談で、康長官に対して激怒した騒ぎがあったと報じた。
 この報道によると、ポンペオ長官が激怒したのは9月18~19日に平壌で開かれた第3回南北首脳会談で合意した内容のうち軍事分野のためで、米軍にとってはとうてい受け入れられない内容だったのはもちろん、韓国側から事前に詳細な説明や協議がなかったという。
 特に米国側が怒ったのは軍事境界線の上空を飛行禁止区域に設定したためで、韓米両国軍はこの地域の上空に随時偵察機などを飛ばして北朝鮮軍を監視してきたが、これが封鎖されてしまえば、北朝鮮に向かった目を塞いでしまうことに他ならないためということになる。 (1811-101002)

韓国政府、米軍爆撃機の朝鮮半島上空飛行中断を要請

 米太平洋空軍司令官が11月26日、韓国政府の要請により米軍爆撃機の朝鮮半島上空飛行を中断させたと話した。
 米空軍はB-1BとB-52、B-2などの戦略爆撃機をグアムに配置し、朝鮮半島一帯で定期的に訓練を行ってきた。
 特に北朝鮮の核とミサイルの試験がある際に、朝鮮半島への展開して北朝鮮への圧力レベルを高めてきた。 (1812-112706)

国連軍司令部は態度を留保

 朝鮮半島の非武装地帯 (DMZ) を管轄する朝鮮国連軍司令部が10月19日、韓国と北朝鮮の国防相が9月に署名した「軍事分野合意書」のうち、地雷撤去や警戒兵力の削減などについては支援すると発表した。 そのうえで、南北による追加の地雷撤去や監視哨所の撤収、警戒兵力の削減、武器撤収、病死者の遺骨発掘への支援を表明した。
 一方、南北が11月1日から実施することで合意した飛行禁止区域の設定については態度を表明しなかった。 偵察能力の低下につながる可能性がある軍事境界線の上空における飛行禁止区域の設定などには言及せず、部分承認にとどまった。
 軍事分野合意書では、軍事境界線を挟んだ南北に、固定翼機は東部地域で40km、西部で20km、UAVは東部15km、西部10km、回転翼機は東部、西部ともに10kmの範囲で飛べなくしている。 (1811-101910)

開発中の UAV が無用に

 休戦ライン前方師団に配備する予定だった師団用偵察UAVが南北軍事合意のため無用になる。 このUAVは南方限界線と軍事境界線 (MDL)の間の2km区間に飛ばして北朝鮮のGPなど指揮所や砲兵部隊など (DMZL)一帯を監視するというため2010年に開発を決めた。  師団用偵察UAVの偵察可能距離は5kmと確認されたが、9月19日の南北軍事合意書のUAV飛行禁止距離は、軍事境界線 (MDL) から東部15km、西部10kmで、来月1日からはこのUAVをMDL付近に飛ばして北朝鮮軍の動向を監視するのが不可能になる。 (1811-101501

2・6・4・3・5 北朝鮮の長距離砲撤去協議

 複数の韓国政府筋によると、6月14日に板門店の北朝鮮側施設「統一閣」で開かれた南北将官級軍事会談で、韓国側から「板門店宣言」に盛 り込まれた軍事分野の合意内容の履行に向けた案の一つとして、北朝鮮の長距離砲を軍事境界線 (MDL) から30~40km後方に移すことを提案し議題として取り上げられた。
 韓国軍は、北朝鮮がMDL付近に1,000門余りの砲を配備し、このうち射程54kmの170mm SPGと60kmの240mm MRLの合わせ330門が韓国の首都圏を狙っていると分析している。 (1807-061702)
2・6・4・4 三軸体系の見直し

2・6・4・4・1 構築計画の見直し

 韓国軍合同参謀本部が10月12日に国政監査のため国会国防委員会に提出した業務報告資料で、米軍の戦略兵器の展開と北朝鮮の核やミサイルに対抗する3軸体系の構築は、北の非核化の進行と絡めて柔軟に検討すると報告した。
 北朝鮮の非核化が進展すれば米戦略兵器の朝鮮半島への展開を要請しない可能性があり、3軸体系の構築計画も見直すことがあり得るという意味に解釈される。 (1811-101204)
2・6・4・4・2 LSAM 開発の中断

 韓国軍は北朝鮮のBMを迎撃する長距離SAM (L-SAM) の開発を進めているが、その発射試験が韓国大統領府の指示で複数回にわたり延期されていたことが10月14日までに分かった。
 韓国軍は北朝鮮の核ミサイルの脅威に対抗するため韓国型ミサイル防衛システム (KAMD) の整備を進めているが、中でもL-SAMはKAMDの中核を占めるSAMである。 (1811-101502)
2・6・4・5 一切の敵対行為を中止

 韓国国防部が10月31日、9月に平壌で開かれた南北首脳会談の際に締結した「板門店宣言の履行に向けた軍事分野合意書」でいかなる場合でも武力を使用しないとしたことを受け、南北は11月1日午前0時から陸海空での一切の敵対行為を中止すると発表した。
 国防部は、軍事分野合意書に明示された
・軍事境界線 (MDL) 近傍での砲撃訓練や連隊級以上の機動訓練の中止
・航空機種別の飛行禁止区域の設定
・南北艦艇の出入りが禁じられる緩衝海域内の設定
などを徹底して履行すると伝えた。 (1811-103101)
2・6・5 板門店宣言後の米国と西側諸国

2・6・5・1 米 国

2・6・5・1・1 米朝首脳会談

 トランプ米大統領が5月17日に北朝鮮の金委員長に対し、体制保証を見返りとして非核化に応じるよう促した。 米側は北朝鮮側に核兵器の引き渡しを求め、1~2年内の非核化完了を目標として年内にも具体的な行動を起こすよう要請している。
 ただ北朝鮮は「一方的な核放棄強要」と反発して6月の米朝首脳会談中止も警告しており、激しい駆け引きが続いているもようである。 (1806-051802)

 6月12日に迫った初の米朝首脳会談をめぐって両国の神経戦が続いている。
 会談中止の可能性もちらつかせ始めた北朝鮮の動きをめぐっては、交渉を有利に運ぶための揺さぶり戦術との見方もあるが、米国の圧力がかつてないレベルにまで達したことを目の当たりにして焦燥感を強めているのだと推察される。
 圧力の高まりを象徴するのが、前米太平洋軍司令官ハリス海軍大将の駐韓米国大使への起用である。 (1806-052302)

 北朝鮮の朝鮮中央通信 (KCNA) が5月16日、11日から航空機100機が参加して行われている米韓合同の 'Max Thunder' 演習に反対して、6月12日にシンガポールで開催される米朝首脳会談を中止することもあり得ると警告した。 (1807-052303)

 米統合参謀本部事務局長が5月24日、米軍は北朝鮮との首脳会談の話が進んでいる間も高い水準の警戒態勢を保ってきたと述べ、今後も北朝鮮をめぐって米軍の態勢に変化があるとは思わないと強調した。 (1806-052501)

 トランプ米大統領が5月24日にホワイトハウスで、6月12日にシンガポールで予定していた米朝首脳会談を中止すると表明した。 その上で北朝鮮のばかげた行動に対して米軍は用意ができていると警告した。
 また、金正恩が建設的な対話を選ぶのを私は待っていると述べ、それまでは最大限の圧力を維持すると強調した。 (1806-052502)

 韓国の文大統領と北朝鮮の金委員長が5月26日に再び会談した。 米朝首脳会談開催をめぐるトランプ米大統領の揺さぶりに動揺がみられた北朝鮮だが、朝鮮半島の平和を訴える韓国と米朝対話が途絶えることへの危機感で一致したようである。
 北朝鮮は、国内メディアで米朝首脳会談の開催に同意したと報じているいるうえ、経済制裁や米軍による軍事的脅威もあり、簡単に米朝会談を中止できない状況に追い込まれていた。 (1806-052701)

 北朝鮮はトランプ米大統領が5月24日に米朝首脳会談の中止を発表したのち対米非難を自制してきたが、米朝首脳会談の実務交渉が軌道に乗ると今度は毎年8月に実施している "乙支Freedom Guardian" (UFG) 米韓連合訓練の中断を要求し対米圧力を再開した。 ただ、トランプ大統領が問題視した露骨な敵対感や暴言は自制している。
 北朝鮮労働党機関紙の労働新聞が29日に「対話の雰囲気に合わせて対応すべき」という論評を掲載し、米国が会談を心から望むのなら相手を力で脅迫する賭けをしてはいけないと、UFGを中断するよう主張している。 (1806-052903)

2・6・5・1・2 米朝合意

 トランプ大統領が6月12日に北朝鮮と行った核を巡る交渉で、米国が韓国との合同演習を凍結する事になった。 この決定について米国は何の見返りもなしに北朝鮮に対し妥協したとの批判が出ている。
 米国は今まで、春の "Foal Eagle" と "Key Resolve"、秋の "Ulchi Freedom Guardian" の二大合同演習のほか、各種の小規模合同演習を毎年行ってきた。 (1807-061206)

 今回の米朝首脳会談で最大の懸案だった北朝鮮の非核化をどのように、いつまでに成し遂げるのかの問題は、北朝鮮の主張を米国がほぼ丸のみした。
 ポンペオ米国務長官は「完全で検証可能、不可逆的な非核化 (CVID) が受け入れられる唯一の結果だ」と主張して事前協議でも直前まで米国はCVIDを強く主張したが、北朝鮮は「米国も体制保証に関する具体的な期限や方法を示すべきだ」などと抵抗していた。
 結局6月12日の共同声明は「朝鮮半島の完全な非核化」との表現に留まり、金委員長が5月9日にポンペオ氏と会談した際、「余すところなく非核化する」と語ったのと比べて進展があったとはいえず、結局、北朝鮮が押し切った格好になった。 (1807-061301)

 ロイタ通信によると、米国防総省のホワイト報道官が6月12日、トランプ大統領が米朝首脳会談後の記者会見で米韓合同演習の凍結を打ち出したことについて、記者団に「マティス国防長官は驚いていない」と述べ、事前にトランプ氏から相談を受けていたことを示唆した。
 また、マティス長官の考えが大統領と「完全に一致している」と説明した。 (1807-061302)

 NHKが防衛省関係者の話として、マティス米国防長官がの小野寺防衛相と6月14日夜に電話会談を行い、8月に予定された米韓合同図上演習 "Ulchi(乙支)Freedom Guardian (UFG)" を中止する方向で韓国側と調整しているという立場を伝えたと報じた。 (1807-061502)

2・6・5・1・3 米韓合同軍事演習中止に対する懸念

 トランプ大統領が6月12日に米韓合同軍事演習の中断に言及したことをめぐり混乱が続いているが、Washington Post紙が12日にホワイトハウスの関係者が「定例的な合同演習は続けるが、大規模な演習は中断するという意味だ」と説明したと報じた。
 これに先立ちペンス副大統領は同日に行われた共和党上院議員との昼食会で、半年に1度実施している米韓合同軍事演習は中断するものの、通常の演習は続けると明らかにした。 (1807-061303)

 米朝首脳会談から一夜明けた6月13日に北朝鮮の国営メディアが、トランプ米大統領が米韓合同軍事演習を中止する考えを会談で示したと報じた。
 演習が実際に中止されそれが長引けば、北朝鮮に対する抑止力は低下する。会談のあいまいな合意の「落とし穴」が早くも露呈した。
 韓国軍の元将校は、北朝鮮は米韓演習の度にそれに対応する即応体制を取らざるを得ず重い負担になっていたが、演習中止が長引けば新たな挑発を行えるようになると心配している。 (1807-061401)

 トランプ米大統領が6月12日の記者会見で、米韓共同演習を不適切だと断言し、戦争ゲームは費用が掛かるうえ挑発的だと述べて北朝鮮と交渉が行われている間は、米韓共同演習を凍結すると宣言したことについて、日韓両国だけでなく米国内にも当惑が広がっている。
 米韓演習につて米側はこれまで演習は防衛目的との立場を堅持し北朝鮮攻撃の意図を否定きたが、トランプ大統領の唐突な凍結宣言はこうした主張をすべてひっくり返したもので、グリーン元米国家安全保障会議 (NSC) アジア上級部長は「かなり衝撃的だった」と振り返る。
 その上で、大統領が初期の交渉で大きな譲歩を示したことで今後の非核化交渉の上で、米側に何一つ利益にならないと批判している。 (1807-061402)

 韓国と米国が6月17日、北朝鮮の金朝鮮労働党委員長が約束した東倉里ICBMエンジン試験場の廃棄を確認後、8月に予定された"Ulchi(乙支)Freedom Guardian (UFG)" 演習など主要な合同演習の中止を最終決定する方向でまとまったことを明らかになった。
 外交筋は、北朝鮮が約束したミサイル試験場の廃棄と後続の米朝高官級会談などが合同軍事演習の中止に対する韓米間の最終決定に影響を与えるだろうと明らかにした。 (1807-061803)

2・6・5・1・4 米韓合同軍事演習中止決定

 米韓軍が6月19日、8月に朝鮮半島で予定されている定例の米韓合同指揮所演習 "Ulchi(乙支)Freedom Guardian (UFG)" を中止すると発表した。 朝鮮半島の非核化や平和体制の構築に向けた米朝対話の円滑な推進のための措置である。
 UFG以外の "Foal Eagle" と "Key Resolve" については、まだ方針は決まっていないようである。 (1807-061904)

 米韓が北朝鮮の非核化に伴う緊張緩和から、8月に計画されていた2018年の年次合同演習 "Ulchi Freedom Guardian" の中止を決めた。 (1808-062703)

 米国防総省が6月22日、8月に実施予定であった米韓合同演習 "Ulchi Freedom Guardian" を無期限に延期すると発表した。
 米韓合同演習については、6月12日にシンガポールで開かれた米朝首脳会談後にトランプ大統領が、米朝の話し合いが続けられている間は行わないと述べていた。 (1808-070419)

 韓国国防相と行政安全相が7月10日、米韓合同軍事演習中止の一環として行われてきた政府の動員演習を2018年は実施しないと発表した。 ただ2018年に予定している単独での演習は実施するとした。
 中止を決めたのは乙支 (Ulchi)と呼ばれる演習で、通常は米韓合同演習の "Freedom Guardian" と並行して毎年8月に行われている。 (1808-071002)

2・6・5・1・5 その後の動き

 米国防総省報道官が6月23日、8月に予定していた米韓合同指揮所演習 "Ulchi(乙支)Freedom Guardian (UFG)" に加え、向こう3ヵ月以内に実施予定だった2件の演習を無期限で中止すると発表した。
 今回中止が決まった演習は米韓の海兵隊が参加して毎年行われている「韓国海兵隊交換プログラム (KMEP)」と呼ばれるもので、例年は実弾演習や上陸訓練などが行われている。 (1807-062304)

 ポンペオ米国務長官の3度目の訪朝を控え、今度はFFVDという新しい表現が登場した。 最終的で十分に検証された非核化 (Final、Fully Verified Denuclearization) という意味だが、国務省が7月2日にポンペオ氏の平壌訪問の日程と議題を公開する際に使用した。
 トランプ政権は、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化 (CVID=Complete、Verifiable、Irreversible Denuclearization) を使い、ポンペオ長官が永久的非核化を強調して一時PVID (Permanent、Verifiable、Irreversible Dismantlement) を使った。
 何度も変化する表現をめぐって、非核化には進展がないのに、言葉遊びではないのかという指摘もあるものの、表現が違うだけで核心は検証 (Verify) にあるというのが専門家たちの共通の解釈である。 (1808-070406)

 韓国と北朝鮮は4月27日の南北首脳会談であらゆる空間での敵対的な行為を中止するとしたが、韓国では北朝鮮によるものと推定されるサイバ攻撃が相次いでおり、韓国のセキュリティー業界は、情報収集と外貨稼ぎを目的とする北朝鮮のサイバ攻撃は依然として活発とみなしている。 (1808-070503)

 北朝鮮外務省報道官が、平壌を訪問していたポンペイオ米国務長官との2日間にわたる協議について談話を発表し、米側の態度と立場は実に遺憾なこと極まりないとして、非核化に向けた取り組みを迫った米側を批判した。
 ポンペイオ長官が、非核化の進め方などをめぐって協議では一定の進展があったという認識を示したのとは対照的で、今後の協議をにらんで米側を牽制したものと見られる。 (1808-070702)

 トランプ米大統領が8月29日、現時点で米韓合同軍事演習に大金を使う理由がないとの立場を表明した。 ホワイトハウスは、トランプ大統領は北朝鮮の金委員長と非常に良く、温かい関係にあると信じているとする声明を発表した。
 一方、マティス国防長官は米韓合同演習について同日、いかなる決定も下していないとする声明を発表した。 前日の会見では米韓演習をさらに中止する計画はないと発言し、これが演習の再開と受け止められていることから、自ら火消しに乗り出したとみられる。 (1809-083001)

 トランプ米大統領が8月29日、米朝首脳会談を受けて中止している米韓合同軍事演習について「もし演習を再開したらかつてないほどの大きな規模になるだろう」とツイッターで表明し、演習は自身の判断でいつでも再開可能とも訴えた。 膠着している非核化交渉の打開に向け、北朝鮮をけん制した可能性がある。
 ただ、大統領は北朝鮮の金委員長との関係について「とても良好で、温かいものだと確信している」と強調し、現時点では「米韓合同演習に巨額の資金を費やす理由はない」とも指摘した。 (1809-083002)

2・6・5・1・6 中国の姿勢に対する米国の見方

 トランプ米大統領がツイッターに7月9日、北朝鮮の金委員長は非核化に向けて署名した文書を尊重し、さらに重要なことは我々が交わした握手を尊重していると確信していると投稿した。
 一方で中国が非核化の合意に負の圧力をかけているのかもしれないと指摘し、そうでないことを望むと訴えた。 (1808-071001)
2・6・5・2 西側諸国による制裁逃れの監視

2・6・5・2・1 英 国

 英国防省が4月11日、揚陸艦Albionを北東アジアに派遣したと発表した。 核開発を進める北朝鮮への対応などで同盟国を支援することが目的という。
 ウィリアムソン国防相は声明で、北朝鮮が言行を一致させるまで、同盟国と緊密に連携しながら圧力をかけていくと述べた。 (1805-041101)

 英海軍のフリゲート艦Southerlandが4月11日に横須賀に入港した。 Southerlandは英海軍が2018年日本に派遣する3隻のうちの1隻で、北朝鮮に対する国連の制裁を監視するほか、海上自衛隊やアジア太平洋地域の海軍との共同訓練も実施する。
 Southerlandと合わせて強襲揚陸艦Albionも国連制裁の監視にあたり、今年後半にはフリゲート艦Argyllも加わる。 (1805-041111)

 読売新聞が8月20日、日英が11~12月に太平洋などの公海上で北朝鮮船舶が石油など禁輸品を積み替える瀬取りを合同で監視すると報じた。 それによると、両国政府は英海軍Type 23フリゲート艦Argyllの訪日に合わせて合同監視を行う方向で調整中だという。
 英軍艦が北朝鮮の違法瀬取りの監視を行うのは、2018年に入りType 23フリゲート艦Southerland、揚陸艦Albionに続き3隻目になる。 (1809-082102)

2・6・5・2・2 オーストラリア、カナダ

 北朝鮮の船舶による、いわゆる瀬取りを監視するため、オーストラリア軍とカナダ軍の哨戒機が米空軍嘉手納基地に派遣される。
 米軍が中心となって北朝鮮の非核化に向けて圧力をかけ続ける狙いだが、日本を拠点に各国の部隊が活動するのは極めて異例である。 (1805-042801)

 安保理決議に違反して北朝鮮が瀬取を行っている疑いがあることから、カナダとオーストラリアが嘉手納基地に哨戒機を送り監視活動に参加している。
 オーストラリアはP-8A 1機を、カナダも哨戒機1機と兵員40名を派遣している。 (1807-050901)

 北朝鮮に石油などを密輸する「瀬取り」を監視するため、日本政府が諸外国との連携を強めている。
 オーストラリアとカナダ、英国が監視活動に加わり、太平洋島嶼国とも協力を確認している。
 北朝鮮の密輸監視は日米両国に加え、4月末にオーストラリアとカナダが参加して、米軍嘉手納基地を拠点に航空機で監視活動を始めた。 英国は5月上旬からフリゲート艦Southerlandを日本周辺の公海に派遣して海上での情報収集に当たっている。 (1806-052103)

 国連安保理が対北制裁決議禁じている瀬取りの監視には4月下旬からは1ヵ月間、オーストラリアとカナダの哨戒機が嘉手納基地を拠点に加わっていた。 (1810-090702)

 カナダ軍のバンス参謀総長が12月19日、北朝鮮の国連安全保障理事会制裁の違反監視をしていたカナダ機が、中国空軍機から妨害を受けたことを明らかにした。
 それによると、10月に北朝鮮の近海空で、国連安保理の制裁を違反する貨物船とタンカの活動を監視していたカナダ空軍CP-140 Auroraが中国空軍機から飛行妨害と不適切な挑発を受けた。 (1901-122005)

2・6・5・2・3 ニュージーランド

 政府が9月7日、北朝鮮による瀬取り対策として日本や米国が行っている警戒監視活動に、9月中旬からオーストラリアとニュージーランドが参加すると発表した。
 両国は哨戒機を派遣し、米軍嘉手納基地を拠点に上空から監視活動を行う。 日本政府は国連軍地位協定に基づき基地利用を認める。 (1810-090702)
2・6・6 我が国の対応

2・6・6・1 制裁逃れの監視

 複数の政府関係者が、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の艦艇が2017昨年末から朝鮮半島西側の黄海や日本海の公海上で警戒監視に当たっていることを明らかにした。 半島の両側で監視を強め、海上で外国船舶から北朝鮮船舶に石油精製品を移し替える形での密輸を防ぐ狙いがある。
 国連決議の実効性を高めるための国際協力に自衛隊が関与するのは初めてで、海自の艦艇が黄海に入ることについては中国の反発も強いが、日本政府として黄海にまで範囲を広げて警戒監視にあたる必要があると判断した。 (1802-011302)
2・6・6・2 摘発の実例

 防衛省が2月20日夜、海上自衛隊のP-3Cと護衛艦が16日昼に上海の東250km沖合の東シナ海の公海上で、北朝鮮籍のタンカに船籍不明の小型船が横付けしているのを確認したと発表した。
 両船はホースを接続しており、国連安全保障理事会決議で禁止された物資を積み替える瀬取り中だった疑いが強い。 明るみに出るのは今年3件目である。 (1803-022103)

 外務省が2月27日、24日に北朝鮮のタンカーとモルディブ船籍船Xin Yuan 18が東シナ海で接舷しているのを海上自衛隊の哨戒機が確認したと発表し、北朝鮮の瀬取りにモルディブの船が関与している疑いに言及した。
 モルディブ民主党に所属する元閣僚は日経新聞の取材に対し、モルディブ船籍の27隻とモルディブ人11人が北朝鮮の密輸にかかわっているとの情報があると話した。 (1804-030105)

 外務省が5月29日、中国国旗とみられる旗を掲げた船籍不明の小型船と北朝鮮籍のタンカが洋上で積荷を移し替える瀬取りを行っていた疑いがあると発表した。
 外務省によると、海上自衛隊の哨戒機が5月19日未明に東シナ海の公海上で互いに横付けし、ホースを接続していた2隻を確認したという。 日本が北朝鮮船の瀬取りを公表するのは3ヵ月ぶりで今回で5件目となる。
 日本政府は国連安保理に通報、中国にも連絡した。 (1806-052904)

 外務省が6月27日午後、北朝鮮籍のタンカーが6月21日に上海の南南東およそ400kmの東シナ海公海上で船籍不明の船舶に横付けしているのを海上自衛隊の補給艦が発見したと発表した。 この2隻は翌22日も同じ海域で横付けしているのが確認され、船籍不明の船はその後、中国の国旗とみられる旗を掲げたという。
 政府はさきの米朝首脳会談後も北朝鮮による制裁逃れが続いている可能性があるとみて監視を強めることにしている。 (1807-062703)

 外務省が8月3日、北朝鮮船籍タンカーが7月31日に東シナ海の公海上で瀬取りを行った疑いがあると発表した。
 外務省によると、中国国旗とみられる旗を掲げた船籍不明船が北朝鮮船籍タンカーに横付けしていたことを補給艦とわだが確認した。 2隻がホースでつながれていたことなどから瀬取りが疑われると判断した。
 日本政府が確認した瀬取りが疑われる事例としては10件目になる。 (1809-080304)

2・7 欧 州

2・7・1 ウクライナ

2・7・1・1 クリミアを奪取したロシア

2・7・1・1・1 2014年マレーシア航空機撃墜事件の真相

 2014年にウクライナ東部で起きたマレーシア航空機撃墜事件で、国際合同捜査チームを主導するオランダ捜査当局が5月24日に記者会見し、使用されたミサイルはロシア軍部隊から搬入されたものだと発表した。
 記者会見でオランダ当局者は、撃墜にはTELAR式のBuk SAMが使用されたと断定し、このSAMはロシアのクルスクを拠点とする 第53防空旅団のものだとの見方を示した。  ミサイルをだれが発射したかは特定できておらず、同機が故意に撃墜されたかどうかは調査中だとした。
 この事件では、オランダ安全委員会が2015年に同機撃墜にBukが使われたとする報告書を発表したため同国やオーストラリアなど5ヵ国の国際合同捜査チームが結成され、刑事立件を目指している。 (1806-052403)

 2014年7月17日にウクライナ上空でマレーシア航空のMH17便が撃墜された事件を調査していたオランダが主導する合同調査委員会 (JIT) が5月24日、撃墜にはロシアのKursk市近くに駐屯する第53防空旅団の9K37 Buk TELAR搭載のミサイルが使用されたと結論づけた。
 JITの会見では撃墜当日に回収された残骸7点が展示され、ロケットモータに記載された文字から、ミサイルは1986年製でS/Nが9032の9M38弾であることが分かったという。
 JITは、2014年6月23~25日にKurskからTRLAR 6両を含む50両の車両がロシアのStary Oskol、Rossoshを経由してウクライナ国境から16哩のMillerovoのまで270哩を移動しウクライナ東部に入ったことを確認している。 (1806-052404)

2・7・1・1・2 ウクライナ侵攻ロシア軍の装備

 NGOのInform NapalmがウクライナConbass地域にいるロシア軍と装備及びサイバ攻撃についての報告を公表した。
 それによるとT-72B3 MBTなどの装備のほか各種電子装備、電子戦装備などが確認されている。 (1802-010305)
2・7・1・1・3 ロシア本土と結ぶ橋を開通

 米国務省報道官が5月15日、ロシアがクリミア半島とロシア本土を結ぶ橋を開通させたことについて「国際法を無視するロシアの意思を改めて示すものだ」と非難する声明を出し、米国が科した制裁に関しては「ロシアが半島の支配をウクライナに戻すまで続ける」と強調した。 (1806-051601)
2・7・1・1・4 クリミアの戦力強化

S-400 の配備

 ロシア軍が11月28日、クリミア半島に近くS-400を配備し2018年末までにoperationalになると発表した。 クリミア半島周辺でウクライナ艇3隻がロシア当局に拿捕され緊張が高まっているが、S-400の配備は以前から計画されていた可能性が高い。
 ロシアはクリミアにはすでに3基のSAMを配備して黒海上空を掌握しているが、S-400の配備で空の防衛領域がさらに広がることになる。 (1812-112804)

2・7・1・1・5 クリミア半島とウクライナ本土を隔てるフェンスの建設

 Itar-Tass通信が、ロシア連邦保安局が12月28日にウクライナ南部クリミア半島とウクライナ本土を隔てる高さ2mの「国境」フェンスを60kmにわたり完成させたと発表したと報じた。
 ロシアにはクリミアの実効支配を強化する狙いがあり、ウクライナ側は反発している。 (1901-122902)
2・7・1・2 アゾフ海での緊張

2・7・1・2・1 ロシア艦船の増強

 ロシアが新たに建設したKerch橋の防衛を名目に、カスピ海小艦隊の艦艇をアゾフ海に回航して新たに設立された国土防衛隊 (National Guard) に配属し、ウクライナに対する圧力を強めている。
 5月28日にはShmel級河川砲艇2隻やZhuk級沿岸哨戒艇1隻を含む第一陣がカスピ海のAstrakhanを離れた。
 6月1日にはクリミアのFeodosiaで建造されたSargan級高速哨戒艇の一番艇が国土防衛隊の南部軍管区に配属された。
 6月4日には2015年の10~11月にカスピ海からシリアにKalibr-NK CMを発射したBuyan-M級 コルベット艦2隻がボルガドン運河を牽引されてアゾフ海に向かった。
 また2017年10月にはBC-16高速揚陸艇が Kerch海峡で国土防衛隊に引き渡された。
 これとは別に露国防省がTver地方のToropetsに建設していた弾薬庫を10月に開所すると発表した。 弾薬庫の掩壕にはそれぞれ240tを備蓄できるという。 (1808-061311)

 ウクライナが近く米沿岸監視隊からIsland級巡視艇(満載排水量165t)2隻を取得することから、ロシアが10月18日にウクライナ艦艇のアゾフ海への進入を引き続き拒否すると主張した。
 ロシアはケルチ海峡に5月、クリミアとロシア本土を結ぶ橋を$3.7Bかけて建設すると共に、アゾフ海を目指す数百隻に及ぶウクライナ商船のアゾフ海入りを遅滞させている。
 一方ウクライナは米国にOliver Hazard Perry級フリゲート艦2隻の譲渡を要求しており、現在交渉が続けられている。 (1811-101915)
【註】 ロシアと国境を接するアゾフ海北岸は国境近くでは親露派と政府軍の戦闘が続いているが、マリウポリ、ベルジャンシクなどウクライナの港湾都市が位置している。

2・7・1・2・2 ウクライナ艦艇のケルチ海峡通過

 ウクライナ海軍の捜索救難艦2隻が米軍の偵察機が見守るなか9月23日に、ロシアが確保しているケルチ海峡を通過して黒海からアゾフ海に入った。
 ウクライナは現在黒海沿岸のMykokaivにある同国海軍で二番目に大な基地をアゾフ海のBerdyanskに移して、そこに小艦隊を配置すると共に、同国への上陸作戦や艦砲射撃に備えて、ミサイルを装備した海兵隊(海軍歩兵)を配置しようとしている。
 この2隻がロシアのEEZ及び最近ロシアが建設したケルチ橋を通過する際の数時間は、米空軍のRC-135W Rivet Joint SIGINT機が見守った。
 更にその2日後には3隻計画しているGyurza-M級装甲砲艇1隻を陸路Berdyanskに輸送した。 (1812-100308)
2・7・1・2・3 ロシアによるウクライナ艇銃撃拿捕

事件の発生

 黒海とアゾフ海を結ぶケルチ海峡でウクライナ海軍艦艇3隻とロシア沿岸警備隊の艦船が11月25日に小競り合いを起こし、緊張が高まっている。
 ウクライナ海軍によると25日朝、ウクライナのオデッセイから黒海を経てアゾフ海に向かっていたウクライナ海軍砲兵の艦艇2隻に随伴していたタグボート1隻をロシア沿岸警備隊が砲撃し拿捕した。 この事件でウクライナの水兵2名が負傷した。 (1812-112502)

西側諸国の対応

 米議会の与野党議員からウクライナがロシアとケルチ海峡で起こしている問題に、もっと強硬な姿勢で臨めと要求している。
 今回の事件は米国と欧州がロシアに侵略行為を止めさせられなかったことから、トランプ大統領が真剣に同盟を維持しようとしているのかに疑問が起きている。 (1812-112606)

 ロシアが11月25日にクリミア半島沖でウクライナの艦艇3隻を砲撃後に拿捕した問題で、ロシアは26日現在、艦艇と乗組員の解放を巡る西側諸国の要請に応じていない。
 ウクライナ政府はロシアによる攻撃を非難し、ウクライナには自国を防衛する権利があるとして軍隊を完全な戦闘態勢に置いた。 ポロシェンコ大統領は28日付で全土に戒厳令を発令する方針を表明している。
 ストルテンベルグNATO事務総長はウクライナのポロシェンコ大統領と電話会談を行った後、26日にウクライナとの緊急会合を召集することを決定した。 事務総長はウクライナの領土保全と主権を完全に支援していると述べた。
 トゥスクEU大統領もウクライナ艦船の拿捕を非難し、英国、フランス、ポーランド、デンマーク、カナダも今回の事件を非難している。 (1812-112701)

 ポンペオ米国務長官が11月26日、ロシアによるウクライナの艦船3隻の拿捕は国際法違反だと非難するとともに、両国に対して自制を求めた。
 ポンペオ長官はロシアの行為を批判し、艦船をウクライナに返還するよう要求した。 (1812-112703)

 ロシアによるウクライナ艦艇の拿捕事件で、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアの裁判所が11月27日、乗組員24名のうち負傷者を含む15名の逮捕と2019年1月下旬まで2ヶ月間の勾留を決定した。 残る乗組員についても28日に同様の逮捕、勾留を決定する見通しである。
 ウクライナやNATOは即時解放を求めており、勾留決定で事件を巡る対立が長期化する恐れが強まっている。 (1812-112801)

ロシアの言い分

 ウクライナ南部クリミア半島周辺の海域で、ウクライナ艇がロシア警備艇に銃撃、拿捕された事件で、ロシア連邦保安局 (FSB) は12月8日に記者会見し、ウクライナ艇が通常の量を超える規模の兵器や弾薬を載せた重装備だったと発表した。
 また、ウクライナ政府の主張と異なり、艦船はクリミア半島脇のケルチ海峡の航行をロシア当局に通告していなかったとしている。 (1901-120804)

ロシア地上軍の増強

 ウクライナのポロシェンコ大統領が12月1日、11月25日に起きたウクライナ海軍艇拿捕事件後ロシアが国境沿いに地上軍を増強していると警告を発した。
 増強兵力は80,000名以上で、砲やMRL 1,400門、MBT 900両、装甲車両2,300両、航空機500機、ヘリ300機を装備しているという。 (1901-120102)

ケルチ海峡に両国艦艇140隻以上が集結

 ウクライナ国防相が7日、アゾフ海がロシアの内海化されるのを防ぐためウクライナ海軍艦船が近くケルチ海峡を抜けてアゾフ海に入ると述べた。
 現在ケルチ海峡の両側には両国の艦艇140隻以上が集結しているという。 (1901-120707)

2・7・1・3 西側諸国の支援

2・7・1・3・1 武器の売却

Javelin の売却

 米政府当局者が2017年12月22日、ウクライナ政府がかねてから売却を求めてきたFGM-148 Javelinを売却することになることを明らかにした。 (1803-011002)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が3月1日、ウクライナにFGM-148 Javelin対戦車ミサイルを売却することを国務省が承認したことを明らかにした。
 売却されるのはミサイル210発と予備の2基を含む発射誘導装置 (CLU) 39基の合わせて$47Mで、ミサイルは米陸軍の備蓄弾から、CLUは軍事調達特別会計で調達される。 (1804-030108)

 トランプ大統領がNATO加盟国であるモンテネグロを名指ししてその共同防衛義務に疑問を呈した翌日、国防総省がウクライナに対する$200Mにのぼる追加支援を再確認した。 $200Mはウクライナ軍の訓練、装備購入、訓練支援活動に当てられる。
 この結果2014年にロシアがウクライナに侵攻して以来、米国の支援額の累計が$1Bに達した。 (1808-072003)

2・7・1・3・2 NATO との合同演習

Clear Sky 演習

 在欧米空軍が9月17日、NATO加盟国でないウクライナが来月実施する "Clear Sky" 演習に米空軍が他の8ヵ国と共に参加すると発表した。
 Clear Sky演習は2018年にウクライナが実施する数件の多国籍演習の1つで、米国は450名を参加させる。 その内250名が操縦手及び飛行支援要員で、残りは演習の支援業務に当たる。 (1810-091807)

 ウクライナ西部で、NATO加盟国の大規模空軍演習 "Clear Sky 2018" が10月19日まで開催されている。
 700名の将兵が参加しており、その半数は米、英、オランダ、ポーランド、ルーマニアなどNATO加盟国である。 (1811-101303)

2・7・1・3・3 米軍による偵察飛行

 米国防総省が12月6日、締約国の軍事活動の透明性確保を目的とする領空開放条約に基づき、ウクライナ上空を偵察飛行したと発表した。
 声明は、ロシアが黒海でウクライナ艦船に対して行った理不尽な攻撃は、挑発的かつ脅迫的な一連の活動を危険な水準にエスカレートさせたと批判したうえで、この偵察飛行は、米国によるウクライナやその他の友好国に対する関与を改めて示したものだと強調した。 (1901-120702)
2・7・1・4 対露態勢の強化

2・7・1・4・1 NATO 加盟願望

憲法改正の準備

 ウクライナのポロシェンコ大統領が9月20日、NATOに加盟するため憲法を改正する必要があると述べた。
 またウクライナ陸軍は2020年までにNATO軍基準に合わせるとも述べた。 (1810-092003)

砲体系を NATO 標準に切り替え

 ウクライナが自国の砲体系をNATO標準の155mm/52口径に切り替える長期計画を持っており、ルーマニアで開かれたコンファレンスで装軌及び装輪の2種類の155mm/52口径SPHをロシア規格の122mm及び152mmSPH及び牽引砲と換装して行く計画を明らかにした。
 ウクライナは装軌装甲車両を独自に開発生産する能力を有しているが、砲はロシアの122mm 2S1、152mm 2S3、152mm 2S5、152mm 2S19、203mm 2S7などのSPH及び、122mm D-30、 152mm 2A36、152mm 2A65牽引砲を使用していた。
 一方ウクライナは、射程が20kmである152mm SAL誘導砲弾Kvitnykの試験も行っている。 (1806-040002)

2・7・1・4・2 装備開発

Neptun ASCM

 ウクライナ国営Ukroboronprom社が、8月17日にNeptun ASCMの発射試験を行い、100km離れた洋上の標的に命中したと発表した。
 Neptunは射程が280~300kmのASCMで、破片効果弾頭を搭載して海面上10~30mを巡航する。
 ウクライナ当局によるとNeptunは港湾や黒海、アゾフ海沿岸の艦船を攻撃できる。 (1809-082907)

2・7・2 ロシア

2・7・1・1 活動の活発化

2・7・1・2・1 東地中海での海軍戦力構築

 ダマスカス東部に勢力圏を持つ反政府勢力に米国が干渉しようとしているのを受け、ロシアが東地中海における海軍戦力構築を目指している。
 ロシア海軍のAdmiral EssenPytivyyのフリゲート艦2隻が3月12~13日にポスポラス海峡を通過したのを船舶監視組織が確認しているが、Admiral Essenは射程2,500kmのKalibr CMを装備している。
 また露国防省は3月15日、黒海艦隊を計画通りセバストポリから地中海に移動させたと発表した。 (1805-032110)
2・7・1・2・2 潜水艦隊の活動

 NATOがロシアの潜水艦が大西洋や地中海への進出を活発化させ、その活動は冷戦終結後で最高レベルにあると、その増強に対する警戒を強めている。
 ストルテンベルグNATO事務総長は2017年末、ロシアは海軍力特に潜水艦に大きな投資をしており、2014年以降13隻が追加配備されたと指摘し、潜水艦の活動は冷戦以来、最高水準にあると述べた。
 ドイツ紙によると、露潜水艦は2017年5月に地中海から行ったISISへの攻撃した際に北海や大西洋を経て地中海に入り、リビア沖でシリアのISIS拠点へCMを発射後、黒海へ移動したことから、露潜水艦への警戒感が特に高まった。 (1802-010403)
2・7・2・2 軍備の増強

2・7・2・2・1 核戦力の増強

 特記すべき記事なし。
2・7・2・2・2 航空戦力の近代化

Tu-160M2への改造、Tu-160M2の新造

 ロシア国防省が1月25日、Tu-160M2最初の10機をRUB160B ($2.7B) でUAC社に発注したと発表した。 露空軍は当初暫定的にTu-160MをTu-160M2に改造し、その後Tu-160M2を新規製造するという。
 国防省の公式紙によると開発は2021年に完了し、2023年から年産3機のペースで量産するという。 (1804-020705)

2・7・2・2・3 海軍力の近代化

 特記すべき記事なし。
2・7・2・2・4 地上軍の増強、再編

砲兵火力の強化

 ロシア陸軍が2S7M Malka 203mm自走榴弾砲と2S4 Tyulpan 240mm自走迫撃砲を、砲身内を含めオーバーオールして現役に復帰させている。
 中央軍管区の砲兵隊は6月下旬に2S7M SPH 12両を受領しており、東部、南部軍管区はMalkaを装備している。
 露陸軍は現在、3種類の152mm SPHと1種類ずつの203mm/122mm SPH、合わせて5種類のSPHを装備しているが、これらを新型の2S35 Koalitsya-SV 152mm SPHに換装しようとしている。 (1809-071110)

2・7・3 NATO / EU

2・7・3・1 欧州諸国の軍備増強

2・7・3・1・1 二つの司令部の新設

 ストルテンベルグNATO事務総長が2月14日に開かれた国防相理事会で、米欧間の海上輸送路防衛と欧州域内での部隊や装備の移動の迅速化を担う二つの司令部の新設などで合意したことを明らかにした。 設置時期や場所、人員規模などについては6月の国防相理事会で決定するという。
 海上輸送路防衛は米国、部隊移動はドイツが自国への司令部誘致を提案している。 ドイツのフォンデアライエン国防相は、ドイツは冷戦期の最前線として後方支援の経験が豊富だと記者団に述べ、司令部のドイツ国内設置に意欲を示した。 (1803-021502)

 NATOが6月7日の国防相理事会で、新設する二つの司令部を米バージニア州NorfolkとドイツのUrumに置くことを決めた。
 危機発生の際に30日以内に必要な部隊を動員する即応体制を2020年までに整備することでも合意した。 (1807-060801)

2・7・3・1・2 NATO 急速展開部隊 (VJTF)

 ドイツ軍の第1戦車師団が2019年に発足するNATO急速展開部隊 (VJTF) の地上部隊VJTF(L)の基幹になる。
 VJTF(L)は3~5個戦闘大隊と支援部隊からなる旅団で、ドイツが陸軍4,000名と他軍から1,000名、オランダ、ノルウェー、フランス、ベルギー、ルクセンブルグ、チェコ、ラトビア、リトアニア、米国が3,000名を派遣する。
 VJTF(L)の基幹になるのは独陸軍第1戦車師団の第9戦車旅団に属する第93大隊、第3偵察大隊、第130機甲工兵大隊、第141補給大隊と、PzH 2000 SPHやMLRSを装備する第325砲兵大隊である。 (1806-042512)

 ドイツ国防軍の第9機甲旅団が6月9~19日に行われた演習で、NATO即応部隊 (NRF) の急速対応地上部隊 (VJTF(L)) としての認証を受けた。
 この演習にはドイツ、オランダ、ノルウェーから1,700名と80両以上の装甲車両が参加した。
   兵力8,000名以上のVJTF(L)は独軍第9機甲旅団第93機甲大隊を軸に、ドイツ軍から5個大隊と医療部隊、オランダ軍の第45装甲歩兵大隊、ノルウェー軍のTelemark大隊からなり、ドイツ軍はLeopard 2A6 MBTとMarder IFV、ノルウェー軍はLeopard 2A4 MBTとCV9030 IFV、オランダ軍はCV9035 IFVを装備している。 (1807-062506)

2・7・3・1・3 30-30-30-30 計画

 マティス米国防長官が6月上旬にNATO加盟国の国防相と会合し、露地上軍の増強に対抗してNATOが "30-30-30-30" 計画を2020年までに達成することを求める。  "30-30-30-30" 計画とは、
30日以内に

地上軍30個大隊

航空機30個飛行隊

艦船30隻

を動員可能にする計画であるが、最近のRand研究所の研究によると、英軍仏は1ヶ月以内にそれぞれ重旅団1個ずつを東欧に派遣することは可能であるが、それを維持することは困難で、米軍の役割に期待するとしている。 (1807-060604)

 7月11~12日にブリュッセルで開かれるNATO首脳会議に先立ち6月7日に国防相会議が開かれ、緊急対応の時間短縮と規模拡大を確認した。
 中でも重要な決定は "30-30-30-30" 計画の承認で、有事には30日以内に30個機械化大隊、30個飛行大隊、戦闘艦30隻を動員することを目指している。
 "30-30-30-30"隊は東欧防衛の第三線で、

・最初は小規模な "Tripwire 大隊"

・二番目には40,000名規模のNATO緊急対応部隊 (NRF)

・最終的に "30-30-30-30 隊"

が対処する。 (1808-061303)
2・7・3・1・4 軍備の増強、国防費の増額

米国からの増額要請

 米国務省高官が4月25日、ブリュッセルで27日に開かれるNATO外相理事会で、ドイツなど加盟諸国に国防費の増額を要請する方針だと明らかにした。
 27日にワシントンで開かれる米独首脳会談でも増額問題が議題の一つとなる。
 NATOは2014年に開かれた首脳会合で、加盟各国が2024年までに国防費を対GDP比で2%に引き上げ、国防費の20%を主要装備品の購入に充てることなどで合意しているが、加盟28ヵ国のうち達成しているのは6ヵ国だけで、達成に向けた具体的な計画を提示しているのは9ヵ国と、ドイツを含む13ヵ国は未達成である。 (1805-042605)

 米Foreign Policy誌が6月27日、トランプ大統領が7月11、12両日にブリュッセルで開かれるNATO首脳会議を前に、複数の加盟国に防衛費支出の増額を求める書簡を送ったと報じた。 (1807-062804)

 トランプ米大統領が7月11日開幕したNATO首脳会議で、正式な提案ではないが加盟各国の国防費をGDP比4%に引き上げるよう要請した。
 トランプ大統領自身は、米国か欧州の防衛のために多額の支出を行う一方、貿易で多額の損失を出しており、防衛支出の対GDP比率を直ちに2%に引き上げる必要があるとの考えを示した。
 ブルガリアのラデフ大統領も記者団に対し、トランプ大統領が防衛費を対GDP比で2%に拡大する目標の達成だけでなく、4%という新たな目標を設定したと語った。 (1808-071201)

米国製武器購入に対する支援の意向

 トランプ米大統領が7月12日、NATO加盟国が米国から武器を購入する場合に支援 する用意があることを明らかにした。 大統領はNATO首脳会議後の記者会見で、会議の期間中に財政がさほど豊かでない一部の加盟国から米国製武器の購入支援を打診されたと述べたが、国名は明かさなかった。
 大統領は、これらの加盟国の武器購入を「米政府として多少は支援する」と発言した。 (1808-071303)

NATO 加盟諸国の国防費増額見通し

 NATOが2月14日にブリュッセルで国防相理事会を開開き、ストルテンベルグ事務総長が米国が他国に求める国防費のGDP比2%超の基準を今年は8ヵ国、2024年には少なくとも15ヵ国が達成の見込みだと報告し、一層の努力を要請した。 (1803-02150)

 ストルテンベルグNATO事務総長が7月12日、NATO加盟国が国防費の対GDP比を2%とする目標の達成を確約したことを明らかにした。 ただトランプ米大統領が提案した4%の目標は確認しなかった。
 同事務総長はCNNに対し、国防費の対GDP比率を2%とすることにコミットメントは得られていると表明すると共に、重要なことはより多くの資金を投じることでトランプ大統領が今回の首脳会議で発した明白なメッセージを加盟国は理解していると述べた。 (1808-071302)

英 国

 英国労働党の下院決算委員会委員長と保守党の国防委員長がメイ首相に書簡を送り、国防費の更なる増額を要望した。 (1807-060804)

 英国議会国防委員会が6月18日、国防費をGDPの3%に引き上げるよう求めた "Beyond 2 per cent: A preliminary report on the Modernising Defence Programme" と題する報告書を公表した。
 それによると英国の国防費は1990年代中頃にはGDPの3%であったという。 (1807-061908)

 英議会下院軍事委員会が6月18日、国防費をGDPの3%に引き上げるべきとの勧告を政府に送った。
 英国の国防費は1990年代中頃にはGDPの3%であったが、現在は2%を僅かに越える額になっている。 (1808-062701)

 軍近代化計画 (MDP) について英国の閣議は閣僚の意見が分かれていてまだ決定することができない状況である。
 MDPの素案を見た国防当局者によると、計画では国防費に毎年£2B ($2.6B) が追加されることになっているという。 (1809-071801)

 ウイリアムソン英国防相が9月30日にバーミンガムで開かれた与党の会合で、水陸両用戦闘艦を維持すると共に北極圏における軍事的存在感を高めると主張した。 英海軍は海兵隊のためAlbionとBulwarkの強襲揚陸艦2隻を保有しているが、国防相の発言の前に海軍が両艦の退役と海兵隊を1,000名に削減する検討を行っていた。
 また国防相はロシアのA2/ADに対抗して新たに決めたDefence Arctic Strategyに基づき、2020年までにP-8Aの北極圏への展開や潜水艦の遊弋などの施策を講じるとも述べた。 (1812-101007)

 ハモンド英財務相が10月29日、2020年3月までの国防費にGBP1B ($1.3B) を追加支出することを明らかにした。 (1901-110704)

フランス

 政府が2月8日、2019~2025年の国防7年計画を閣議決定した。 国防費を2025年にGDPの2%に引き上げることを明記した。
 2018年の国防費は€34.2Bだが、計画では国防費を2022年まで毎年€1.7B積み増して2023年に€44B、GDP比1.91%まで高め、2019~ 2025年の国防費総額は€400Bを見込んでいる。
 仏軍は2005~2015年に60,000名を削減したが、2025年までに6,000名を増員する計画で、このうち3,000名をサイバ防衛、情報分野に配置する。 またそのほかに軍の緊急展開、情報収集力の強化に重点が置かれ、攻撃能力を持つUAV、攻撃型原潜、多目的フリゲート艦の装備などが盛り込まれた。
 核抑止では2023年までに€33Bを支出する。 (1803-021001)

 フランス国防省が9月25日、2019年の国防予算に2018年から5%増額した€35.9B ($42.2B) を要求することを明らかにした。
 これは対GDP比1.82%で、2019年度は2025年までに国防費の対GDP比を2%に引き上げるとした2019~2025国防予算法の初年度にあたる。 (1810-092602)

ドイツ

 ドイツ国防相が5月14日、同国の国防費を来年度にGDPの1.3%までに引き上げ、 2025年までに1.5%までに引き上げると述べた。 これはトランプ大統領が求めている2%に遠く及ばない。
 メルケル首相はトランプ大統領に、2030年までに2%にまで引き上げると言っていた。 (1806-051404)

 ドイツ紙Handelsblattが7月3日、6日に財務相が公式発表する2019年度予算案で、国防費が2018年度の€38.5Bから名目11.45%、実質10.24%上がって€42.9B ($49.9B) になると報じた。 (1808-070410)
【註】 我が国の防衛費は2017年が$48.31B(補正後)、2018年が$45.07Bと報じられている。

 ドイツ国防省が今後10年以上にわたる大幅な防衛力増強計画を明らかにした。
 それによると現在GDPの1%前後で年€40B程度の国防費を、中間段階の2024年までにGDPの1.5%になる€60B ($69B) に引き上げるという。 (1810-090502)

 ドイツが2018年にGDPの1.2%である国防費を2019年には1.3%とし、2024年までに1.5%まで引き上げる計画である。
 現在ドイツ軍装備の稼働率は低く、常時可動の戦闘機は全体の半分以下、ヘリは1/3である。 (1811-091702)

ハンガリー

 ハンガリー国防相が1月3日、総額HUF428B ($1.7B) の2018年国防費のうち30%をNATOの要求に応じて装備品調達及び軍の近代化に当てると述べた。 (1803-011706)

ポルトガル

 ポルトガル政府が10月15日に議会に提出したFY19予算要求では、国防費に前年度を17.5%上回る€2.339B ($2.688B) が配当されている。 (1812-102409)

ポーランド

 ポーランド議会下院財政委員会が10月15日、2019年の国防予算をPLN1.6B ($432M) 、率にして3.9%増額してPLN42.7Bとすることを承認した。 (1812-102410)

トルコ

 トルコの2018~2019年中期計画では、2019年度の国防予算に前年度を21.5%上回るTRY100B ($17.3B) を要求している。 (1812-102411)

2・7・3・1・5 徴兵制の復活

フランス

 フランスのマクロン大統領が軍の幹部らを前に演説を行い、15年以上前に廃止された徴兵制度を復活させる考えを示した。
 相次ぐテロの脅威に備えるためなどとして18歳から21歳の男女に対し、1ヵ月間の兵役という形で導入を目指すと見られる。 (1802-012002)

 フランス政府は徴兵制度の復活について兵役の導入は見送り、代わりに16歳の男女に対し1ヵ月間、寮での集団生活などを義務化する方針を明らかにした。
 フランスの徴兵制度は15年以上前に廃止されたが、マクロン大統領は去年の大統領選挙でフランスへの帰属意識を高めるためなどとして、18歳から21歳の若者を対象に、軍による訓練を中心とした1ヵ月間の兵役の義務化を公約に掲げていた。 (1807-062801)

2・7・3・1・6 ハイブリッド攻撃への備え

 軍事力に加え、情報操作といった非軍事力を組み合わせたハイブリッド攻撃と呼ばれる攻撃に備え、欧州では防衛体制の整備が進んでいる。
 フィンランドは「欧州ハイブリッド脅威対策センタ」を主導、防衛の最前線となっている。 NATOの支援でヘルシンキに設置されたセンタは職員は十数人2017年に活動を開始し、EUやNATO加盟国から16ヵ国が参加して調査分析と教育訓練に従事している。 (1807-062303)
2・7・3・1・7 多国籍部隊の創設

北方多国籍師団の創設

 NATO首脳会議の初日となる7月11日に、デンマーク、ラトビア、エストニアが北方多国籍師団の創設文書に署名した。 この合意にはカナダ、英国、リトアニアも支援国として名を連ねている。
 師団は2~4個旅団からなり、司令部は9月にoperational、師団は2019年前半にIOC、2020年中頃にFOCになる。 師団にはNATO軍からも300名以上が配属されてNATO軍の一部としてeFP大隊とも連携して活動する。 (1808-071105)

リトアニア陸軍 Iron Wolf 旅団をドイツ陸軍戦車師団に編入

 ドイツ陸軍とリトアニア陸軍の首脳が10月21日にヴィリニュスで、リトアニア陸軍のIron Wolf旅団をドイツ陸軍戦車師団に編入する合意文書に署名した。
 また、リトアニア陸軍とドイツ陸軍の共同訓練を強化するため、リトアニア軍将校をドイツ陸軍第1及び第10戦車師団に配属することも明らかにした。 (1812-110106)

 ドイツ陸軍とリトアニア陸軍の司令官が10月21日にビルニュスで、リトアニア陸軍のIron Wolf旅団をドイツ陸軍の戦車師団に編入する協定に署名した。 またリトアニア軍将校がドイツ陸軍戦車師団に配属されるという。 編入の狙いは主として共同訓練の実施にあるという。
 ドイツ陸軍には第1と第10の2個戦車師団があるが、Iron Wolf旅団は当初NATOのeFPに指定されている第10戦車師団に編入される。 (1901-110706)

2・7・3・1・8 東欧諸国のソ連装備体系からの脱却

 チェコ陸軍参謀総長のオバタ中将が総額CZK100B ($4.5B) にのぼる軍近代化計画を明らかにした。 計画はソ連時代の兵器体系からの脱却を図るもので、2027年までにIFV 210両、SPH 50門 、多用途ヘリ12機、輸送機2機と、SHORADシステムや戦闘用UAVの整備も図る。
 イスラエルElta社からEL/M-2084レーダ8基を購入する計画もあるが、この件は目下、憲兵隊が捜査中である。
 チェコの2018年国防費は、前年度比12%増のCZK58.9Bである。 (1807-062006)
2・7・3・1・9 研究開発の推進

フランス

 フランスが将来装備の構想研究費を€2.8 ($3.4B) まで引き上げるという。 この中には大型兵器の概念設計に€1.8B、現在€730Mである装備品の構想研究を2022年までに€1Bに増額することなどが含まれている。 (1804-032103)

独仏の MBT 共同開発

 ドイツが6月19日、フランスが主導し英、蘭が加盟しているEII (European Intervention Initiative) に加盟する基本合意書に署名した。 これによりドイツとフランスの共同防衛が一段と進むことになる。
 両国の防衛協力は2015年にドイツの戦車メーカKMW社とフランスのNexter社がKNDS基金を設立し、KMW社製Leopard 2 MBTの台車にNexter社製Leclerc砲塔を載せた戦車を試作した実績がある。
 今回もまだ定義づけされていないが新世代MBTのMGCS開発が視野にある。 (1807-062008)

 ドイツとフランスの国防省が6月19日、次期MBTとなるMGCSと、将来戦闘機FCAS計画の一部となる次世代兵器システムNGWSの共同開発で合意した交換書簡 (LoI) に署名した。
 MGCSの開発で両国は2019年中頃に試作段階を開始し、2024年に要求性能をまとめ、2035年に配備を開始する。 (1808-062707)

2・7・3・2 英仏の核戦力

2・7・3・2・1 英 国

 特記すべき記事なし。
2・7・3・2・2 フランス

 パルリ仏国防相が2月8日、軍備増強に€300Bを支出する計画の一環として2025年までに€37Bを投じ、核兵器を刷新する方針を表明した。
 国防相は、これまでの不足を埋め、近代的かつ持続的で、防衛力のある軍隊を築き上げると強調した。 (1803-020905)
2・7・3・3 欧州固有の防衛力

2・7・3・3・1 英国の EU 離脱 (Brexit)

EU 離脱法の成立

 英国のエリザベス女王が6月26日、上下両院で可決されたEU離脱法案を裁可し同法は成立した。 これにより英国は2019年3月にEUを離脱する。
 EU離脱法ではEU加盟の基礎となる欧州共同体法の廃止や、英国が現在受け入れているEU法の国内法化を定めている。 (1807-062605)

英国5大国防調達計画達成に赤信号

 英IPAが2018年報告で、5大国防調達計画が達成不可能な状況にあると警告した。 これは1件のみに赤旗を立てた前年の報告に比べ5倍に増えている。
 5大計画とは以下の通りである。 (1809-071109)

・原潜用新原子炉: £1.5B
・Astute級原潜: £9.9B
・Marshall軍用ATC: £1.8B
・Protector UAV: £907M
・Warrior AFVの改良: £1.6
2・7・3・3・2 固有防衛力保持への胎動

欧州介入部隊 (JEF) 計画

 英国が主導するJEFが2018年後半に完全実働可能になるため、オランダ軍のJutland Dragoon連隊、リトアニアのIron Wolf旅団、ラトビアの機械化歩兵旅団、英軍の空挺連隊第3大隊をはじめとする欧州9ヵ国が参加した最終演習 'Joint Warrior' が4月20日から5月5日の間に英国南部のSalisbury Plainで行われた。
 JEFにはバルト三国、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、オランダと英国が参加している。 (1806-050907)

 フランスが、英国などを含む軍事部隊「欧州介入構想」(JEF)に参加する。 6月25日にはルクセンブルグで式典が開催され、フランスとドイツ、ベルギー、英国、デンマーク、オランダ、エストニア、スペイン、ポルトガルが同意書に署名した。
 JEFは、欧州の国境近辺で危機が発生した際に、NATOや米国なしに軍事行動を取ることを目指すEUの枠組み外の仕組みで、域内の軍事政策について指揮を取りたいフランスとドイツが何ヵ月もの間、交渉を進めてきた。
 英EU離脱後も英国を欧州防衛の一部にとどめたい考えである。 (1807-062603)

 英国が主導し9ヵ国が参加する連合部隊欧州介入構想(JEF)が、7月28日に開かれた9ヵ国国防相会議で包括的合意 (CMOU) に署名しFOCになった。 CMOUでは意思決定手順や連合軍指揮所 (SJFHQ) などで合意している。
 JEFは2015年に英国が主導して始まった計画で、英国のほかノルウェー、スウェーデン、フィンランド、バルト三国、オランダ、デンマークが参加し、10,000名以上の部隊を展開できる機構である。
 ただNATOの緊急対応部隊NRFと違って待機部隊は常設されない代わり、定期的な合同訓練を行う。 (1809-071106)

EU 海軍 (EU NAVFOR)

 EU理事会が7月30日、ソマリア沖で行っているEU海軍 (EU NAVFOR) の海賊対策作戦 "Operation Atalanta" を2020年末まで継続する決定を行った。
 またEU NAVFORの司令部を現在のロンドンのNorthwoodからスペインのRotaとフランスのBrestに移すことも決めた。 (1810-080805)

ユーロ圏予算創設

 ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領が6月19日にベルリン近郊で会談し、ユーロ圏の共通予算創設を含めたEUの改革案に合意し、2021年までの予算実現を目指して28、29両日に開かれるEU首脳会議に提案する。
 欧州経済の両輪である独仏の合意で、欧州の財政統合の強化で不可欠となる共通予算の実現が近づいた。 (1807-062001)

EU 固有の防衛費

 EUの政策執行機関である欧州委員会が5月2日、次期 (2021~2027年) の中期予算枠組み (MFF) において7年間の予算総額£1.279Tのなかで防衛費に£13Bを求めていることを明らかにした。
 そのうち £4.1Bは技術研究費、£8.9Bは欧州防衛基金 (EDF) に配当される。 (1807-051607)

 欧州議会 (MEP) が7月3日、欧州防衛産業開発計画 (EDIDP) に€500M ($582M) を支出することを478対179で可決した。
 EDIDP計画は2019年から2年間の試行が行われる各国の国防費のうち20%を共同予算とする計画で、中小国により高い防衛力を保障すると共にPESCOの活動にも提供される。 (1809-071107)

2・7・3・3・3 恒久構造防衛協力(PESCO)の正式発足

 2017年12月11日~15日に開かれたEU外相会議と首脳会議で正式に発足したEUのPESCは、優先任務として17項目を挙げた。
 これらの項目は、港湾防衛、洋上哨戒、サイバセキュリティ、急速展開など多彩にわたるが、半分は医療や兵站などになっている。 (1802-122004)

 欧州防衛機関 (EDA) が共同防衛における戦略共同のケースや技術主導のシナリオついて定義づけを今秋に開始することを決めた。
 これらのケースは、6月28日に開かれた参加27ヵ国の国防相会議で決まった2035年以降を見据えた能力開発計画 (CDP ) の元になると共に、恒久構造防衛協力 (PESCO) の指針にも使われる。
 EDAの執行責任者は7月2日に、次に行われるPESCOの二回目の会同は11月になると述べた。 (1809-071101)

 EUが11月19~20日にブリュッセルで会議を開き、恒久構造防衛協力(PESCO)に17個の計画を追加することを決めた。 これでEUの防衛協力計画は34個になった。  しかしながら2018年に€32.5Mである欧州防衛庁(EDA)の予算を2019年に€35Mに増額する案は認められなかった。 (1901-112808)

2・7・3・3・4 欧州委員会防衛計画の初の案件

 Rheinmetall社2月19日、EUに新たに設立された欧州委員会防衛計画の初の案件である兵員装着シス テム装具GOSSRAを受注したと発表した。 (1803-021903)
【註】 GOSSRAは兵士が装着する音声/データ通信、センサを含むソフトウェアや電子装置で、Rheinmetall社はドイツ軍向けのIdZ-ESを製造し、最近ではGladius 2.0システムを発表している。
2・7・3・3・5 Action Plan on Military Mobility

 EUの欧州委員会が3月28日、NATOと連携してロシアの脅威に備えるため部隊や兵器の域内移動の迅速化に向けた行動計画を公表した。
 欧州諸国の国境検問を廃止し、自由往来を定めた協定になぞらえ、軍事版「シェンゲン」と呼ばれる。
 計画の中心は部隊や兵器輸送に関連する道路や橋、鉄道といったインフラ整備と規制及び事務手続きの簡略化するもので、2018年半ばまでに必要な基準をまとめ、優先すべき事業の選定などを行う。 インフラ整備にはEU予算からの拠出も検討する。 (1804-032902)

 欧州委員会が3月28日、11ページからなるNATOを支援する行動計画 "Action Plan on Military Mobility" を公表した。
 計画はNATOや欧州防衛庁 (EDA) と連携して数千万ユーロをかけて輸送インフラを改善しようというもので、欧州委員会の輸送担当理事はこの計画がEU加盟国全てを対象とするもので 'Schengen' の軍事版ではないと述べている。 (1804-032903)

2・7・3・3・6 欧州軍創設への動き

 ドイツのメルケル首相が11月13日、フランス東部ストラスブールの欧州議会で演説し、欧州軍創設を呼び掛けた。 メルケル首相は「真の欧州軍創設が重要だ」と訴え、欧州全体の防衛政策を統括する「欧州安全保障理事会」設置も提案した。
 マクロン仏大統領の主張に同調し、欧州の両輪である独仏が足並みをそろえたもので、トランプ米政権が国際協調に背を向ける中、NATOを中心とした軍事面での過度な対米依存を見直す動きが欧州で強まっている。 (1812-111401)

 ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領が11月18日にベルリンで会談した。 会談に先立ちメルケル首相は、マクロン大統領と共に提唱する欧州軍について創設に向けた協力体制を取ることで一致しているとの考えを示した。 マクロン大統領も、欧州に共通の防衛体制と安全保障が必要だと述べた。
 フランスはかねてから欧州軍創設を提唱し、メルケル首相も13日の欧州議会で創設の意向を示しNATOと欧州軍は共存できるとしたが、トランプ米大統領は「米国に対抗する欧州自衛の軍だ」と反発している。 (1812-111901)

 EUがブリュッセルの軍指揮所(MPCC)の現在60名の人員を94名まで増員して2,500名規模の部隊を動かせるようにする。  MPCCはマリやソマリアで行っている軍事訓練などを担当しているが、更に強力な行動を起こすためには経費が問題になる。 6月にEUの安全保障の計画責任者モッゲリーニ氏が、EUの予算から独立した年間数十億ユーロのEPFの設立を提案している。 (1901-112809)

2・7・3・3・7 米国の反応

EU 独自の防衛協力に米国の壁

 EUが防衛面でも結びつきを強めており、2018年3月のEU理事会は有志国で防衛協力を進める常設軍事協力枠組み (PESCO) の行程表を採択し、2017年夏にはEU域内で効率的な軍事投資を支援する欧州防衛基金 (EDF) も創設された。
 ただEU独自の防衛力強化はNATOを主導する米国の利益に反する恐れがあるほか、加盟国間でも意見が一致しているとは言い難く、EU独自の安全保障の先行きはいまだ流動的である。
 イタリアやオランダなどは米国にとっては兵器の重要な取引先で、EUが兵器を共有化し米国からの輸入が減ればEUと米国の関係に悪影響が生じる恐れがある。
 加盟国内の意思疎通の問題もあり、EUの軍事力を他地域への影響力や政治的利益実現の手段にすることを望むフランスに対し、ドイツは純粋な域内防衛力にとどめるべきだと考えている。
 各国には兵器の共通化により自国の軍事技術やサプライチェーンに打撃が加えられることへの危惧や、要求が異なる軍事能力の共有化がどこまで可能かを疑問視する声もある。 (1808-070305)

トランプ大統領が批判

 訪仏したトランプ米大統領がツイッターで11月9日、マクロン仏大統領が提案した欧州軍創設構想について、侮辱的な話だと強く批判した。
 マクロン大統領は6日、真の欧州軍創設を決断しなければ、欧州を守れないとして、中国やロシア、さらにトランプ政権の米国からも私たちを守る必要があると述べていた。 (1812-111001)

2・7・3・4 NATO / EU 加盟国の増加

2・7・3・4・1 NATO

(北)マケドニア

 ロシアがマケドニアのNATO加盟を阻止しようと工作活動を拡大し、バルカン諸国を影響下に置こうとするロシアの野望が浮き彫りとなっている。
 ギリシャとマケドニアは6月に、マケドニアの国名を「北マケドニア共和国」に変更することで合意し、30年近い対立関係の解消に動き出したが、ギリシャからの報道によると、ロシアの外交官はギリシャで極右勢力に資金を提供したり、治安当局職員に賄賂を渡そうとしたりしたという。
 これに対しギリシャは7月にロシアの外交官2人を追放し2人を入国禁止としたが、ロシア外 務省は報復措置として8月6日、モスクワに駐在ギリシャ外交官の国外追放を通告した。 (1809-080701)

 NATO加盟を希望しているマケドニアが国名を北マケドニアにすることでギリシャと和解したのを受け、NATO軍最高司令官のスカパロッティ米陸軍大将がマケドニアを表敬訪問した。
 国名変更は9月30日に予定されている国民投票で決定される。 (1809-080902)

 マケドニアで9月30日に行われた国名を北マケドニアに変更する国民投票で変更が承認されたことから、国名を巡るギリシャとの対立が解け、第30番目のNATO加盟国となることに道が開けた。 (1811-100106)

 マケドニア議会が10月19日夜、「北マケドニア」に国名を変更する憲法改正の審議開始を賛成80、反対39で承認した。
 与党系議員は72人で、議会の2/3である80人の支持獲得が危ぶまれていたが、国名変更に反対する野党から造反者が出た。
 憲法改正にはさらに2回の議決が必要になるが、マケドニアは国名変更に向けて前進した。 (1811-102006)

モンテネグロ

 トランプ米大統領が7月18日放映のFOX TVのインタビューで、NATO加盟国のモンテネグロに対する集団防衛義務に疑問を投げ掛けるような発言をした。
 「モンテネグロが攻撃を受けたとして、なぜ私の息子が守りに行かねばならないのか」と問われた大統領は、「よく分かる。 私も同じことを言ってきた」と応じた。 モンテネグロに集団防衛で軍事介入すれば第3次世界大戦になるとも語った。
 かねてから同盟軽視の姿勢が目立つだけに、他の加盟国からの信頼を揺るがしかねないと懸念する声が上がっている。 (1808-071901)

2・7・3・4・2 EU

 EU欧州委員会が2月6日、西バルカン地域の6ヵ国のEU加盟について早期実現を目指す計画を発表した。 加盟交渉で先行するセルビア、モンテネグロに対しては2025年の加盟目標を明示した。
 6ヵ国は、既にEU加盟候補国となっているセルビア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニアの4ヵ国と、潜在的な候補国と見なすボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの2ヵ国である。 (1803-020701)

 EU欧州委員会が4月17日、加盟候補国である東欧のアルバニアとマケドニアの加盟交渉開始を勧告したと発表した。
 両国など西バルカン諸国ではロシアなどの影響力拡大が懸念されており、加盟の展望を示すことでEUにつなぎとめる狙いがある。 (1805-041805)

2・7・3・5 NATO 軍の大規模演習

Saber Strike 2018 演習

 米国が主導してNATO加盟19ヵ国から18,000名が参加しポーランドやバルト三国を舞台に行われる "Saber Strike 2018" が6月3日に開始され15日まで続けられる。 今回の演習にはNATOから6,000名が参加するほか、非加盟国であるイスラエルも参加する。
 一方リトアニア国防省によると同国最大の演習である "Thunder Storm" も9,000名が参加して行われる。 (1807-060304)

Saber Junction

 20ヵ国から5,500名以上が参加するNATO軍の合同演習 "Saber Junction" の冒頭である9月19日の日没時に、米陸軍第173空挺旅団戦闘団の1,000名がバイエルン州で米軍及びイタリア軍のC-130から降下した。
 演習の計画主任は、18時間以内に3,000~4,000名の空挺旅団戦闘団を敵後方に降下させることができると述べている。 (1810-092004)

Trident Juncture

 2018年秋遅くにNATOが行う過去10年間で最大規模の演習 "Trident Juncture" には米海兵隊が第24海兵遠征隊 (MEU) をノルウェーに派遣する。 今回の "Trident Juncture" は兵員40,000名、航空機100機、艦艇数十隻が参加し、ロシアとの国境近くで実施される。  26MEUが派遣された2015年の "Trident Juncture 2015" と異なり、今回は北極圏を舞台に実施される。 (1810-090606)

 ナポリにあるNATOのAllied Joint Force Commandが10月9日、10月25日~11月7日にノルウェーを舞台に行われる2002年以来最大規模のNATO演習Trident Junctionに米空母Harry S. Truman CSGが6,000名の将兵と共に参加すると発表した。 Harry S. Trumanは数週間前から欧州海域におり、アイスランド近海や北海を航行していた。
 Trident Junction演習には45,000名の将兵と航空機150機、艦船60隻以上、車両10,000両が参加するが、Harry S. Truman CSGの追加参加で米軍の参加数は18,000名にのぼることになる。 (1811-100904)

 NATOが10月25日、冷戦終結後最大規模の演習Trident Junction 2018を11月7日までの計画で開始した。
 演習はスカンジナビアの某国領が仮想敵に侵略されたことに対する奪還作戦を想定しており、NATO加盟29ヵ国全てと非加盟国のフィンランド及びスウェーデンが参加してノルウェー中央及び東部、北大西洋、バルト海で行われ、将兵50,000名、艦船65隻、航空機150機、車両10,000両が参加している。
 演習はロシアに事前通告され視察団も招待されているが、ロシアは強い不快感を示している。 (1811-102505)

 NATOが10月25日から11月23日までノルウェーを舞台に実施しているTrident Junction演習 (TRJE18) では5,000名規模の急速即応部隊 (VJTF) を含む40,000名規模のNATO即応集団 (NRF) の評価が行われるが、冷戦時代以来最大の部隊間ではそのインターオペーラビリティが課題になる。
 特に旅団や大隊レベルでの多国間連携が必要になる。 (1812-102405)

 NATO加盟31ヵ国と友好国から、50,000名の将兵と65隻の艦船及び8機の洋上哨戒機が参加して、10月から11月末までノルウェーを舞台に行われるNATOの陸海空合同演習Trident Junctionは、10月末に実員演習段階に入った。
 実員段階を海軍は、5,000名ずつと30隻ずつで二手に分かれて行った。 (1812-110507)

2・7・3・6 EU 離脱を見据えた英国の動き

 英国防相が2月21日に議会軍事選択委員会で、将来の航空戦力に対する要求を示す新たな "Combat Air Strategy" を作成しようとしていることを明らかにした。
 これは2017年に作成した産業政策方針と連携しており、EU離脱後を見据えたものとみられる。 (1804-022805)

 英陸軍の250名が訓練施設や補給施設及び独英合同旅団に留まると共に、両国は共同でM3自走浮橋後継計画を進める。 (1809-080110)

2・7・3・7 NATO 内/ EU 内の亀裂

2・7・3・7・1 Nord Stream 2 ガスパイプライン計画を巡る EU 内の亀裂

 ポーランド首相がワルシャワで開かれたNATO議会で5月28日に、ロシアが進めているNord Stream 2 ガスパイプライン計画を「欧州安全保障に対する毒薬」と呼び、新たなハイブリッド兵器であると警告した。
 Nord Stream 2はシベリアで新たに採掘した天然ガスをエネルギーが不足しているドイツに送り供給量を倍増しようというものであるが、この計画を巡っては米国やEU加盟国の一部もポーランドと同じ立場に立っており、ドイツvsポーランド間のようにEU内に亀裂が生じている。 (1806-052807)
【註】 ドイツのメルケル政権は福島事故を受けて脱原子力に転じ、2011年7月に最も古い7基を閉鎖するとともに、運転中の9基も2022年までに段階的に閉鎖することを決めたためエネルギ事情が切迫している。

 ロシア最大の政府系ガス会社ガスプロムが、西欧の大手エネルギー企業5社とともに、バルト海の海底に1,200kmの天然ガスのパイプラインNord Stream 2を来年末の稼働開始を目指して建設しており、2018年7月にはバルト海での敷設工事が始まり、9月11日にその様子がNHKなど一部のメディアに公開された。
 パイプラインの終点となるドイツの町、ルブミンの沖合10kmの洋上では、船からパイプを海底に沈める作業が24時間態勢で進められていた。
 Nord Stream 2をめぐっては、ポーランド、バルト三国、米国などが「ヨーロッパのロシアへのエネルギー依存が強まることになる」として反対している。 (1810-091205)

2・7・3・7・2 ドイツによるロシア産天然ガスの購入問題

 トランプ米大統領が7月11日に行われたストルテンベルグNATO事務総長との会談で、ドイツによるロシア産天然ガスの購入について、われわれがロシアから欧州を守ろうとしている中、ドイツはロシアに莫大な金を払っており非常に不適切だと批判した。
 トランプ政権は中・東欧に米国産天然ガスの売り込みを図っており、ドイツを名指しで批判した背景には競合するガス輸出計画があるとみられる。 (1808-071101)

 トランプ米政権が7月11日、ドイツがロシアから大量の天然ガスを輸入する計画に関わる企業が経済制裁の対象になりうるとの考えを示した。
 欧州企業がすでに大型投資を実施しており、米国が実際に制裁を発動すれば米欧摩擦がさらに激しくなるのは必至である。
 トランプ政権は2017年8月に成立した対露制裁強化法でロシアのエネルギーパイプライン計画に関わる投資をする企業が制裁対象になりうると定めたが現在まではドイツなどの同盟国に配慮して発動が見送られてきたことに対し、政権内や米議会の対露強硬派の間では制裁発動を求める声が根強い。 (1808-071204)

 ドイツのキリスト教民主同盟 (CDU) 党首としてメルケル首相の後を継ぐ有力候補が、相次ぎ天然ガスパイプライン計画Nord Stream 2に疑問を投げかけ、アゾフ海におけるロシアの最近の行動を受け計画を再評価すべきだと主張している。 CDU幹事長で後継候補であるクランプカレンバウアー氏と、同じく後継党首の座を狙っているメルツ元院内総務もNord Stream 2について強い疑問を呈した。
 Nord Stream 2が完成すると、ロシアはバルト海経由でドイツへ送る天然ガスの量を二倍に増やし、ウクライナを経由する従来ルートを迂回することができる。
 反対派は、これによりエネルギー輸入の面での欧州のロシア依存が高まることを恐れている。 ドイツは中欧やバルト三国からの猛反対にもかかわらずプロジェクトを強く支持してきた。 (1901-120503)

2・7・3・7・3 チェコのイスラエル製レーダ購入を巡る問題

 NATOの防空C&C安全保障会議 (ASAB) が6月7日にチェコ政府に対し、同国が採用したIAI Elta社製EL/M-2084 3D MADRレーダについて、NATO加盟国製ではないことを理由にNATOの防空システムに加入できないと通知した。
 これに対しチェコ首相はカナダも同型レーダを採用していると強く反発している。 (1807-061907)
2・7・4 在欧米軍

2・7・4・1 欧州戦争抑止計画 (DRI) 予算

 米政府は2月12日に公表したFY19国防予算で陸軍に$182Bを要求している。 この中で欧州戦争抑止計画 (DRI) に$1.7B増の$6.5Bを要求している。
 かつてはDRIと呼ばれていたEDIにはFY18には $4.8B、FY17には$3.4Bを要求していた。
 在欧米陸軍は1980年には200,000名であったが、2015年には33,000にまで削減され、在欧米軍の施設も2006年以降100箇所以上が閉鎖されている。 (1803-021206)
2・7・4・2 機甲旅団戦闘団 (ABCT) の派遣

 "Operation Atlantic Resolve" 参加のため9ヶ月周期で欧州に派遣されるテキサス州Ft. Hood駐屯の米陸軍第1師団第1機甲旅団戦闘団 (ABCT) の第一陣200名と装備が5月20日朝に輸送艦Enduranceでアントワープに入港した。
 派遣されるのは3,000名で、残りの部隊と装備は2隻の輸送艦で25日までに到着し、M-1 MBT 87両、Bradley IFV 125両、Paladin SPH 18門、装輪車両976両は、駐独第16支援旅団によりポーランド国内5箇所に輸送される。
 部隊は6月3日から東欧で12日間にわたり19ヵ国から18,000名が参加して行われる "Saber Strike 18" 演習に参加する。 (1806-052207)
2・7・4・3 SHORAD 能力の強化

暫定装備 M-SHORAD

 米陸軍は在欧米軍から強い要望があったSHORAD能力強化のため、2017年9月に各社に対し暫定装備M-SHORADの提案を各社に求めた。 これに応じたIron Domeを提案するイスラエルのRafael社とBiho Flying Tigerを提案する韓国のHanwha社の海外2社を除いてはStrykerを元にし た提案であったことからM-SHORADはStrykerベースになる模様で、年末までに陸軍はStrykerに何を搭載するかの決定を行う。 (1804-030110)

GD / Boeing: StrykerにAvengerを搭載する案。

Orbital ATK: 非殺傷性のECMと曳火射撃弾の組み合わせ。
        Orbital ATK社の30mm砲搭載Strykerは一部が既に在欧米軍に配備済み。

Oshkosh: 同社製JLTV車搭載システムを元にし、Q-53レーダと連接したシステム。

Raytheon: StrykerにStingerを搭載したシステム。

冷戦終了以来初の SHORAD 部隊編成

 米陸軍は冷戦終了以来SHORAD部隊を廃止していたが、在欧米陸軍が11月28日にドイツで第4防空砲兵連隊第5大隊を編成した。 大隊は中隊レベルの部隊5個からなりFIM-92 StingerとAvengerを装備している。
 これは夏に発表された陸軍1,500名を2020年までに欧州増派する計画に基づくもので、今後MLRS 2個大隊からなる野戦砲兵旅団も派遣されることになっている。 (1812-112810)

2・7・4・4 欧州に恒久配置された米陸軍

 欧州に恒久配置された米陸軍の3個旅団、イタリア駐留第173空挺旅団 、ドイツ駐留第12戦闘航空旅団、ドイツ駐留第2騎兵連隊が7月25日、准将が指揮するドイツGrafenwoehr駐留陸軍第7訓練コマンドの隷下に入った。 (1808-073009)
2・7・4・5 米軍駐留のための基地建設

 ルーマニアとポーランドで米陸軍州兵と予備役が、"Resolute Castle 18" 演習として5月から6ヶ月間、米軍駐留のための基地建設にあたっている。
 建設が行われているのはルーマニアの訓練センタとドイツ国境から70哩にあるポーランドの戦車部隊駐屯地で、建設にはミシガン州、デラウェア州、ウエストバージニア州、テネシー州の州兵と、ミネソタ州、アイオア州、コロラド州の予備役があたっている。 (1808-072505)
2・7・4・6 弾薬等の搬入

 10月中旬、駐独米空軍Ramstein AFBにコンテナ約100個の弾薬が搬入された。
 在欧米空軍は搬入された弾薬の量や種類を公表していないが、Ramstein AFBの第86弾薬中隊の班長は、1999年に旧ユーゴスラビアで行われたOperation Allied Force以来最大量であると述べている。 (1811-103002)
2・7・5 バルト諸国/バルト海

2・7・5・1 全般の情勢

2・7・5・1・1 ロシアによる侵攻のシミュレーション

 RAND研究所が2016年に、2014~2015年に実施した模擬戦闘の結果から、ロシアがバルト三国に重装部隊を侵攻させれば、それぞれの首都を60時間以内に制圧できると警告している。 それ以降NATOはバルト三国とポーランドにeFP大隊を配置し、ラトビアとリトアニアはエストニアに合わせて国防費をGDPの2%にした。
 しかしながら同研究所はロシア軍部隊の配置に更に注意すべきであると警告している。 (1806-040416)
2・7・5・1・2 バルト地域における防空に穴

 エストニアのシンクタンクが同国国防省に、バルト地域における防空に穴が生じているとする勧告を行った。
 それによると、低空域監視レーダの欠落、防空C4ISRの脆弱性などが挙げられている。
 また現有陸上防空システム (GBAD) が統合されていないことも問題視している。 (1808-061310)
2・7・5・1・3 西側の飛行活動

警察飛行

 ポーランド空軍が2019年1月から4月まで担当するバルト海警察飛行 (BAP) に当初予定していたMiG-29A 4機ではなくF-16C 4機を派遣する。 (1810-090605)

偵察飛行

 英空軍のSentinel R1が2度にわたりカリーニングラード周辺を偵察飛行した。 一度目は1月24日でADS-Bのトラポン軌跡によると、カリーニングラードの南側及び北側境界とバルト海沿岸を飛行した。
 二回目は2月15日に同じルートで行われたが、英空軍のRC-135が同行した。 (1804-022804)

2・7・5・2 エストニア

 特記すべき記事なし。
2・7・5・3 ラトビア

2・7・5・3・1 親露派政党が第1党を維持

 ラトビアで10月6日に議会選が行われ、即日開票の結果、親露派政党「調和」が23議席を獲得して第1党を維持した。 連立政権を組む国民連合(13議席)、緑と農民連合(11議席)、新統一(8議席)の3党は汚職疑惑を批判されて議席を減らした。
 「調和」は2017年にロシアの政権党「統一ロシア」との提携を解消するなど、ロシア寄りの態度を修正したとアピールしてきたが、現在の24議席から微減した。 一方いずれも新興政党のKPV (16議席)、新保守党(16議席)、発展(13議席)が躍進した。
 焦点は連立協議に移るが、ロイタ通信は「調和」の親露的な立場が他党から警戒されており、政権入りは微妙だと伝えている。 (1811-100703)
2・7・5・3・2 装備の増強

対空監視レーダ

 ラトビア国防省が3月1日、3基発注していたLockheed Martin社製TPS-77 MRRレーダの初号機を受領した。 これはオンサイトでの受領試験に合格したためで、試験には米陸軍第1航空騎兵旅団の第227航空連隊が協力した。
 TPS-77 MRRはGaN素子を使用した移動型レーダで、同国軍が既に装備している固定型のAN/TPS-77レーダを補完する。 (1807-050004)
【註】TPS-77 MRRはAN/TPS-77より小型のアンテナを有し、捕捉距離が470kmに対し150+kmと短くなっている。

中距離 SAM の導入

 ラトビア国防相が11月28日、同国のStingerやRBS-70による防空を強化するため中距離SAMを導入するとの考えを示した。
 ただしPatriot級ほどのシステムは考えていないと強調したことから、Kongsberg社のNASAMSが候補と思われる。 (1812-113007)

2・7・5・4 リトアニア

 特記すべき記事なし。
2・7・5・5 ポーランド

2・7・5・5・1 地上軍の増強

 ポーランド国防相が6月21日、4番目の師団を編成する準備中で、目下隷下部隊の展開や装備取得などをしていると述べた。
 ポーランドは2011年に第1ワルシャワ機械化師団を廃止している。 (1808-070417)

 ポーランド国防相が陸軍記念日の9月9日に、同国軍で四番目となる師団の詳細を明らかにした。 同師団は2011年に解散した第1ワルシャワ師団の代わりに国内防衛にあたる。
 新師団は第1機甲旅団、第21ポドハレ狙撃旅団と新編された即応編成旅団からなり、第1機甲師団はLeopard 2A5 MBT大隊2個からなる。
 ポーランド陸軍はこのほかに第11機甲騎兵師団、第16機械化師団、第12ポメラニアン機械化師団があり、第12師団はNATOの東北多国籍師団に指定されている。 (1811-091908)

2・7・5・5・2 国土防衛隊 (WOT)

国土防衛隊 (WOT) の創隊

 ポーランド東部のBialystokで2017年12月16日、基礎訓練を終えた250名が参加して国土防衛隊 (WOT) の創隊記念式典が開かれた。 この種式典は同国東部一帯で開かれており、既に職業軍人1,200名と防衛隊員6,000名の合わせて7,200名が編成されている。 WOTは12月15日に基本装備となるGrot小銃の一次分1,000丁を受領している。
 同国は2017年1月1日に国防相直轄としてのWOTを創設しており、三期に分けて53,000名17個旅団を編成する計画である。 (1802-010312)

 ポーランド国防相が6月21日、17個旅団編成する国土防衛隊 (WOT) の最後の4個旅団が2018年末までに編成され、2019年末までに17個旅団の編成を完了すると言う。
 ただ完全充足が完了するのは2020年末で、WOTのfull operationalは2025年になる。 (1808-070417)

2・7・5・5・3 米陸軍常駐の要求

 ポーランド国防相が5月28日にラジオ番組で、現在暫定的に巡回配置されている米軍を恒久配置するよう米政府に要望していることを明らかにした。
 ポーランドが要望しているのは1個機甲師団、数千名規模で、そのインフラ整備に$2Bを用意するという。 (1806-052806)

 ポーランド国防省が、米陸軍のポーランド国内常駐を求める文書を公表した。 その中で同国政府は1個機甲師団の駐留を求めている。 (1807-060608)

 6月18日に採決が予定されている米議会上院のFY19国防権限法案で、上院は国防総省に対し米軍のポーランド常駐を検討し、2019年3月1日までに検討結果を提出するよう求めている。 (1807-061804)

 トランプ米大統領がホワイトハウスでポーランドのドゥダ大統領と会談した9月18日に、米国がポーランドの要請に応じて米軍をポーランドに常駐させることを検討していると述べた。 会談後の共同記者会見でドゥダ大統領は、ポーランドの米軍常駐基地はFort Trumpと呼ばれることになると述べた。
 2014年にロシアがクリミアに侵攻して以来ポーランドは訓練名目で第173空挺旅団戦闘団などの米軍を受け入れており、8月にはF-22 5機と40名の空軍部隊がポーランドに展開している。
 またエストニアも米軍の常駐を希望している。 在欧米陸軍は先週、ドイツに1,500名を追加派遣すると発表した。 ドイツには既に33,000名が駐留している。 (1810-091806)

 トランプ米大統領が9月18日にホワイトハウスでポーランドのドゥダ大統領と会談し、BMD分野など軍事面での連携を強化することで合意した。
 ドゥダ大統領が軍事的圧力を強めるロシアを念頭にポーランドにおける恒久的な米軍基地設置を改めて要請したのに対しトランプ大統領は「真剣に検討している」と応じた。 (1810-091901)

2・7・5・5・4 Patriot の導入

 ポーランドが総額$4.75BにのぼるPatriotの購入契約に署名した。 デューダ大統領によると同国にとって過去30年間最大の装備購入契約であるという。
 購入するのは発射機16基とレーダ及び射統装置4基と言う。 (1804-032803)

 ポーランド国防省が3月28日、同国Wisla計画の第一段階としてPatriot 2個中隊分とNorthrop Gumman社製のAMD戦闘指揮装置IBCSを購入することに同意した文書に署名したことを明らかにした。 (1806-040408)
【註】 IBCSは2016年に実施された限定実員試験LUTでソフトウェアーの何ヶ所かに不備が見つかっていたことから計画が遅れており、IOCが2022年予定とまだ開発中である。
 しかしながらポーランドはPatriot採用の条件をIBCSの導入としていた。

2・7・5・5・5 GMLRS / HIMARS / ATACMS の導入

 ポーランド国防省が7月20日、国産やイスラエルIMI社製ではなく米国からHIMARSを購入すると発表した。
 米政府は2017年11月に、ポーランドに対してGMLRS弾25発、ATACMS弾61発、GMLRS弾誘導部1,642セットを売却することを承認している。 (1809-080105)
2・7・5・5・6 MiG-29A, Su-22 の全機を飛行停止

 ポーランド空軍では7月6日にMiG-29A 1機が墜落事故を起こしたのを機に、31機保有するMiG-29Aと18機保有するSu-22の全機を飛行停止にしている。 (1810-090605)

 ポーランド国防省が2019年1月~4月に参加するバルト警察飛行 (BAP) Orlik 8 BAPに当初予定していたMiG-29A 4機ではなく、第23戦術航空基地所属のF-16C 4機をバルト三国に派遣することにした。
 同国は5月にMiG-29Aの派遣を決めていたが7月6日に第22戦術航空北所属のMiG-29Aが夜間訓練中に墜落した際、操縦士は脱出を試みたがロシア製射出座席の不良で死亡して以来、保有するMiG-29 31機とSu-22 18機全機を飛行停止にしている。 (1811-091206)

2・7・6 ノルディック/アイスランド

2・7・6・1 ノルウェー

2・7・6・1・1 米海兵隊の駐留

 ノルウェーにはノースカロライナ州Camp Lejeune駐屯第6海兵連隊第1大隊から300名の海兵隊が派遣され駐留しているが、ノルウェー国防相は駐留米軍の増強を要望している。 (1804-032104)

 ノルウェー国防省が8月15日、同国にローテーション配備の形で駐留する米海兵隊の規模を現在の330名から最大700名に増やすことで米側と合意したと発表した。 当初の駐留は半年間の予定だったが、その後2018年末までに延長されていた。
 合意により2019年以降も駐留するほか、駐留場所はロシア国境により近い北部Setermoen基地も加えた2ヵ所となる。
 1949年のNATO発足時から加盟しているノルウェーは自国内での外国軍駐留を禁じる政策をとってきたが、ロシアの脅威増大を受け2017年1月から中部Trondheim郊外に米海兵隊を駐留させている。 (1809-081601)

2・7・6・1・2 NATO の 'Trident Juncture' 演習

 NATOの 'Trident Juncture' 演習に参加する部隊の装備がイタリアのRO/RO船でノルウェーに到着し、ノルウェー郷土防衛隊と国防兵站機構 (Defence Logistics Organisation) の手で卸下された。 (1810-082907)
【註】 ノルウェー郷土防衛隊とはノルウェー軍の一部で1946年に創設された予備軍である。
 陸海空軍があるが殆どが地上軍で、平時の常備要員は600名ほどしかいないが、有事においては約83,000名の人員を動員できる。
2・7・6・2 スウェーデン

Patriot の導入

 米国務省がPatriot 4個FUを$3.2BのFMS契約でスウェーデンに売却することを承認した。 スウェーデンは2017年末に同国のAMDとしてEurosam社のSAMP/Tを押さえてPatriotの採用を決め11月7日に発表していた。
 スウェーデンが購入するのはPatriot Config 3+システムで、内訳はAN/MPQ-65レーダ4基、アンテナマスト9基、発射機12基、GEM-T弾100発、PAC-3 MSE弾200発などとなっている。 (1803-022205)

 米国務省がスウェーデンにPatriot Config 3+ステムをSEK10B ($1.2B) のFMSで売却することを承認した。 この結果SAMP/Tは敗れた。
 売却されるのはPatriot Config 3+ 4個システムと、MIM-104E GEM-T弾100発、PAC-3弾200発である。 (1806-040007)

(1810-082206)  スウェーデン防衛装備本部が8月10日、米国とPatriot購入のFMS契約を行ったと発表した。 この契約については米国防総省国防安全保障協力局 (DSCADSCA) が2月に国務省が承認したと発表していた。
 今回売却されるのはPatriot Config 3+で購入する品目数量は以下の通りで契約額は$3.2Bにのぼる。 (1810-082206)

・AN/MPQ-65レーダ    ×  4基
・AN/MSQ-132 ECS    ×  4基
・アンテナマストグループ×  9基
・M903発射機      ×  12基
・MIM-104E GEM-T弾   × 100発
・PAC-3 MSE弾      × 200発
・電源装置Ⅲ      ×  4基
2・7・6・3 フィンランド

2・7・6・3・1 非同盟政策の今後

 特記すべき記事なし。
2・7・6・3・2 NATO、米国との軍事協力

 フィンランドが5月7日~18日に実施した年次演習 "Arrow" に米海兵隊が戦車を参加させた。
 参加したのは海兵隊第4戦車大隊でもノルウェー某所に保管されていた戦車が投入された。 (1806-052107)
2・7・6・3・3 国防費の増額

 フィンランド国防省が2019年度予算に前年比11%増のEUR3.2B ($3.6B) を要求した。
 この結果GDPに占める国防費の割合が、2018年の1.23%から2019年には1.32%へと増加することになった。 (1810-082204)
2・7・6・3・4 装備の強化

砕氷コルベット艦の建造

 ロシアとNATOの対立にに伴い戦略的な価値が高まってきたバルト海及びボスニア湾の防衛のため海軍力の近代化目指しているフィンランドが$1.5BかけてSquardon 2020計画を進めている。
 この計画の中心となるのは多目的砕氷コルベット艦4隻の建造で、搭載装備にIAI社のGabrielがExocet、NSM、Harpoon、RBS 15を抑えて採用された。 Gabrielは2019~2025年に納入される。 (1811-101914)

2・7・6・4 防衛協力

フィンランド、スウェーデンと米国

 フィンランド、スウェーデン、米国の3ヵ国国防相が5月8日に米国防総省で、国防に関する協力関係を強化する合意文書に署名した。
 これら各国は今までも防衛協力に関する2ヵ国関係を持っていたが、2014年のロシアによるウクライナ併合をきっかけに、より正式な協力関係を築いている。
 ただフィンランドとスウェーデンは米国が防衛の柱としているNATOには加盟しておらず、米国が懸念している欧州の軍事産業を保護するPESCOをEUの一員として支えている。 (1806-050909)

2・7・7 黒海沿岸

2・7・7・1 黒海とその上空

2・7・7・1・1 米軍の進出

 米海軍駆逐艦Carneyが2017年8月以来3番目の駆逐艦として緊張の高まる黒海に入った。
 それまで米艦は演習などに際して不定期に黒海に入っていたが、2017年8月にPorter、11月にJames E. Williamsが哨戒任務に就くようになっている。 (1802-010803)

 米海軍第6艦隊副司令官が、駆逐艦RossCarneyの2隻が2月中旬に黒海に入ったことを明らかにした。
 米海軍の戦闘艦2隻が黒海に入るのは2014年のクリミア事件以来初めてである。 (1803-022002)

 米海軍駆逐艦Carneyと外征高速輸送艦の一番艦Carson Cityの2隻が先週、黒海に入った。
 2隻の艦船が同時に黒海に入ったことは2014年以来たった1度しかない。 (1809-082310)
【註】 Carson City高速輸送艦 (JHSV) は最大速力45kt以上であるため最大速力45ktのLCSに随伴可能で、605tの物資又は海兵隊員250名の輸送が可能である。

 ロシアが25日にケルチ海峡でウクライナ艇2隻を銃撃し船と乗組員を拿捕し緊張が高まっているが、米軍はすでに黒海とその沿岸に部隊を展開している。 (1812-112712)

陸 軍

 テネシー州兵の第278装甲騎兵連隊の部隊が、Yavoriv演習場で訓練を支援している。 またルーマニアには第1騎兵師団第1装甲旅団戦闘団と第4歩兵師団第4戦闘航空旅団が巡回駐留している。

海兵隊

 黒海沿岸には殆ど駐留していないが、数百名の海兵隊員と海軍隊員が演習に参加している。

空 軍

 10月に行われたこの地域で最大規模の演習Clear Sky 2018ではカリフォルニア州兵空軍がウクライナ空軍と共同演習を行った。 この演習では空軍特殊部隊の降下も行われた。

海 軍

 2017年夏に米第6艦隊の巡洋艦Hué Cityがウクライナ海軍の補助艦Baltaと監視鹵獲演習Sea Breezeを実施した。 また駆逐艦James E. WilliamsCarneyRossPorterがOperation Atlantic Resolveの一環としてルーマニアとブルガリアに寄港している。

2・7・7・1・2 英軍機の ELINT 活動

 英空軍のRC-135 Rivet Joint ELINT機が、ロシア海軍や基地の動きを偵察するため地中海及び黒海での偵察飛行を開始している。
 航空機の運航を監視するオープンソースADS-Bは9月上旬に、東部及び中部地中海で飛行するZZ666という番号の英空軍機を追随している。 (1812-100304)
2・7・7・1・3 米露の摩擦

1月29日: Su-27 が EP-3 に異常接近

 在欧米海軍第5艦隊所属のEP-3が1月29日に黒海上空で2時間40分にわたり、ロシアのSu-27 1機の異常接近を受けた。
 Su-27はEP-3に50ftまで接近し進路を妨害したため、EP-3はアフタバーナの噴流などにより15゚まで傾いた。 (1802-012903)

11月6日: Su-27 が EP-3 に異常接近

 黒海の公海上空を飛行中の米海軍EP-3Eが11月5日、ロシア軍のSu-27 1機に異常接近された。 ロシア機はEP-3Eの周りを高速で通過するなどの危険行為を繰り返した。
 黒海におけるロシア軍機の異常接近は5月にも行われ、この際は20ftまで接近された。 (1812-110510)

2・7・7・2 ルーマニア

Patriot の導入

 Raytheo社が米陸軍から、ルーマニアが装備するPatriotを$395.85Mで受注した。 納期は2020年4月になっている。
 この結果ルーマニアは、独、希、蘭、西、ポーランドに続いてNATOにおける5番目のPatriot装備国になる。
 またこのほかにNATOとのパートナー国であるスウェーデンもPatriotの導入を決めている。 (1807-053003)

2・7・7・3 ブルガリア

MiG-29 の不稼働問題

 ブルガリア国防省が2017年12月7日、MiG-29 15機を向こう48ヶ月間維持する保守契約をRSK MiG社と結んだ。 同国空軍が同機の保守整備を行えるのはRSM MiG社だけと判断したことによる。
 同国空軍は単座のMiG-29A 12機と復座のMiG-29 3機のうち、少なくとも10機を常時使用可能な状態に置きたいとしている。 (1802-122007)
【註】 ブルガリア空軍はロシアから新規に受領したRD-33エンジン10基のうち6基が使用不能であることから、2017年10月24日に全機を飛行停止にしていた。

MiG-29 後継機の機種選定

 ブルガリア国防省が10月1日、1988年以来12機保有しているMiG-29の後継戦闘機に3ヵ国から提案があったと発表した。
 提案されているのはEurofighter Typhoon、Saab Gripen C/D、F/A-18E/F、F-16Vの4機種である。 (1811-100203)

2・7・7・4 その他

2・7・7・4・1 モルドバ

 モルドバで政府の腐敗に抗議する改革派が勝利した首都キシニョフの市長選の結果が無効にされたため反政府デモが広がっていて、7月1日には国旗とEUの旗を掲げた数万人がキシニョフの政府庁舎前の広場を埋め尽くした。 背景には欧米とロシアの勢力争いを利用し「親欧米」を隠れみのにした政府与党の金権政治がまん延がある。
 6月の市長選の決選投票では、親欧改革派ナスタセ氏が52%得票し親露派社会党の候補を破ったが、投票当日に双方が交流サイトで選挙運動を行ったとの理由で裁判所が無効判決を下した。
 このためナスタセ陣営は政府が介入して司法を動かしたと反発し、「政府は親民主主義でも親欧米でもない」と糾弾している。 (1808-070407)
2・7・7・4・2 ジョージア

 ジョージア国防省が5月31日に、ネット上で同国防空軍創立23周年記念を報じた中で、Rafael社製Python SAMとThalesRaytheon社製GroundMaster 200及び400移動型対空レーダの画像を公表した。
 Jane'sは2016年11月にジョージアが2015年中頃にMistral 3 SAMとGroundMaster 200レーダを導入したと報じていたが、Pythonを装備しているのが報じられたのは初めてである。
 GroundMaster 200と400はそれそれ捕捉距離が200km、400kmで、いずれもPythonの射程の4倍/8倍の捕捉距離を有する。 (1808-061312)

 グルジア戦争の10周年記念を迎えるジョージアで、米、英、独、仏、ポーランド、ノルウェー、トルコ、リトアニア、エストニアのほか、ウクライナ、アゼルバイジャンも参加した年次演習 "Noble Partner" が7月30日から2週間の予定で行われている。
 この演習には在欧米陸軍から第2騎兵連隊と第1機甲旅団戦闘団の兵員1,170名と、Stryker 28両、Bradley 12両、Abrams 5両など車両140両、更に米陸軍ジョージア州兵からApache及びBlackhawkヘリ9機が参加している。
 この演習に対しロシアのメドベーエフ首相は8月7日、NATOとジョージアが危険な戦争を目論んでいると非難した。 (1809-080805)
【註】 NATO未加盟国であるジョージアで行われるこの演習にウクライナが参加しているのは理解できるが、旧ソ連邦構成国でカスピ海に面するアゼルバイジャンが参加しているのは奇異に感じる。 トルコ系民族の国家である同国はジョージアと国境を接しており、トルコ、ジョージアと組めばナゴルノ・カラバフを巡り対立するアルメニアを包囲することができる。 アルメニアはトルコとの関係も良くない。

2・7・7・4・3 アルメニア

 人口293万人のアルメニアで2018年春、大規模な街頭デモで親露派のサルキシャン首相が退陣に追い込まれ、ジャーナリスト出身の民主派指導者パシニャン氏が政権に就いた。
 アルメニア情勢が流動化したのは4月で、2008年から大統領を務めたサルキシャン氏が首相に転じて政権に居座ることにしたことによる。
 アルメニアは歴史的に親露的とされ、ジョージアやウクライナとは立ち位置が異なり露軍事基地を擁し、ロシアを盟主とする集団安全保障条約機構 (CSTO) の加盟国でもある。 アルメニアはアゼルバイジャンとの間でナゴルノカラバフの領有権問題を抱えており、ロシアの軍事的庇護がなければアゼルバイジャンに対抗できない特殊事情がある。
 このためパシニャン氏は首相就任後、「ロシアとの関係が変わることはない」と力説する一方、「欧米との関係も重視する」といった慎重な対外方針を示している。 (1810-090102)
2・7・8 トルコ

2・7・8・1 西欧諸国との関係

2・7・8・1・1 米国との離反、米国による制裁

米国による資産凍結と報復関税

 トルコのエルドアン大統領が8月4日、米国の法相と内相の資産がトルコにあれば凍結すると述べた。
 米財務省は1日、トルコ在住米国人牧師の拘束で主導的な役割を果たしたとして、トルコのギュル法相とソイル内相を資産凍結などの制裁対象としたことへの対抗措置という。
 20年以上トルコで暮らしてきた米国人のブランソン牧師は、2016年にトルコで起きたクーデター未遂事件に関わったとして逮捕起訴され、7月下旬に自宅軟禁となるまで2年近く収監されていた。 トランプ米政権は即時解放を要求しているがトルコは応じず、NATO同盟国に制裁を科す異例の事態に発展している。 (1809-080501)

 米政府が8月1日に米国人牧師の拘束問題でトルコの2閣僚に経済制裁を科したのに続き、10日には鉄鋼アルミニウムの輸入制限措置としてトルコに発動した追加関税の税率を2倍に引き上げると発表したためトルコ通貨リラが急落した。
 これに対しエルドアン大統領は10日付の米New York Times紙に寄稿し、悪化している対米関係について、米国が単独行動主義の傾向を見直さない限り、トルコは新たな友人と同盟国を探し始める必要があるだろうと警告した。 (1809-081101)

F-35 売却の凍結

 7月24日までに米上下両院で採択されたFY19国防権限法で、トルコがロシアからS-400を購入することによるF-35の秘密保全上のリスクについて、議会に対し報告が行われるまでトルコにF-35を 引き渡さしてはならないとの条項が盛り込まれている。 (1809-080106)

 トルコが、2016年のクーデター未遂事件に関わったとして米国人牧師を拘束していることをめぐって、トランプ大統領はトルコからの鉄鋼やアルミ製品の関税の引き上げを決めるなど圧力を強めているが、トランプ大統領が8月13日に署名し成立したFY19国防権限法では、F-35のトルコへの売却を凍結する条項を盛り込んでいる。
 国防権限法では、トルコ政府が不法に拘束している米国人牧師らを直ちに解放するよう求めと共に、S-400 SAMを導入するトルコが米国の兵器システムに影響を与えないと米議会が確認できるまで、トルコへのF-35売却を凍結するとしている。 (1809-081402)

 米国務省はトルコに対し、F-35かS-400のいずれかを選択するよう求めており、両方の取得はダメだとしている。 (1810-082002)

 8月27日にトルコを訪問した米議員代表団がもトルコがロシアからのS-400購入契約を破棄すればF-35の売却停止を解除すると提案したが、トルコ外相がこの提案を拒否した。 (1810-090508)

拘束米国人牧師の釈放と対米関係改善の兆し

 トルコの裁判所が10月12日、テロ関連の罪で有罪判決を受け拘束されていた米国人牧師のブランソン氏を釈放する決定を下した。 同氏はテロ関連の罪で3年と1月半の禁錮刑を言い渡され、2年間の収監後に今年7月から自宅軟禁下に置かれていた。
 米国との関係回復に向けた重要な一歩となる可能性がある。 (1811-101208)

 国防総省国防安全保障協力局 (DSCA) が12月18日、国務省がトルコに対しPatriotを$350Mで売却する計画を承認したと発表した。 売却が承認されたのはGEM弾80発と他のミサイル60発で、関連するレーダ、射撃管制装置や発射機も売却する。
 国務省はトルコに対し、ロシアからのS-400を継続購入しないようPatriotの売却を働きかけたが、トルコ政府はPatriotの購入を見送っていた。 (1901-121903)

2・7・8・1・2 西欧諸国との離反

 米ロードアイランド州選出のCicilline下院議員が、トルコのエルドアン大統領が近年独裁色を強めているとして、F-35とその関連技術等のトルコへの売却を禁止する法案を提案した。
 この法案でF-35の禁輸は、米大統領がトルコがNATOの相互運用性を低下させていないことを判断した場合にのみ解除することができるとしている。 (1806-051803)

 米上院軍事委員会が5月24日に総額$716Bの国防権限法 (NDAA) を可決したが、その中で議会は国防総省に対しNATO加盟国の中でF-35計画に参加させない国を指定するように求めている。 5月初めにはトルコに対して広範囲にわたりFMS契約を禁じる下院版のNDAAが明らかにされている。
 これに対してトルコ外務省は、もしその様なことになれば報復を行うと警告している。 (1806-052509)

2・7・8・1・3 西欧諸国との関係修復を狙う動き

 トルコがS-400の導入を決めた直後にエルドアン大統領とマクロン仏大統領がパリで会談し、トルコが2020年代中頃に装備するT-LORAMIDSとしてEurosam社の18ヶ月間のSAMP/T計画に参加することで合意した。(1803-011505)

 トルコとフランスが1月5日、Eurosam社とAselsan社及びRoketsan社の間で、長距離AMDシステムの初期段階研究を行う契約に署名した。
 トルコにはロシア製S-400採用で悪化したNATOとの関係を和らげたいとする狙いがある。 (1803-011707)

2・7・8・2 ロシアへの接近

2・7・8・2・1 S-400 の購入

 トルコが2017年12月29日、ロシアからS-400 1個FUを購入する契約に署名した。 契約では更に1個FUがオプションされている。
 契約額は$2.5Bであるがトルコが支払うのはその45%で、残りの55%はロシアからのローンによると言う。 (1803-011004)

 ロシアのプーチン大統領が4月3日にトルコを訪問してエルドアン大統領と会談し、緊密な両国関係をアピールした。
 両首脳は、遅れていた両国の協力事業、南部アックユでの原発建設開始を宣言するとともに、プーチン大統領はS-400供与をめぐる作業をもっと急ぐと表明した。 (1805-040401)

 トルコで同国初となる原子力発電所の起工式が、建設を担うロシアのプーチ ン大統領も出席して4月3日に開かれた。 プーチン大統領はエネルギから安全保障まで幅広い分野での連携深化をエルドアン大統領と確認した。 (1805-040404)

 ロシアROE社が8月21日、トルコへのS-400の引き渡しを当初見込まれた2020年以降の引き渡しの前倒しして2019年に開始すると発表した。
 米政府は、トルコがS-400を導入すれば米国の対ロ制裁に違反するとして、トルコへのF-35の売却を凍結しており、両国の関係悪化が続いている。 (1809-082105)

 トルコのチャブシオール外相が11月20日、トルコ政府によるロシアからのS-400購入は完了しており、キャンセルできないと明らかにした。
 その上で、トルコ政府はさらなる国防物資の調達を必要としており、それらを米国から購入する可能性があるとした。 (1812-112101)

2・7・8・2・2 ガスパイプライン TurkStream の建設

 プーチン露大統領が11月19日にイスタンブールを訪問し、エルドアン大統領とともに建設中のガスパイプラインTurkStreamの海底部分完成式典に出席した。
 式典でプーチン大統領はガスの分野で両国の協力関係を拡大させると述べ、エルドアン大統領もロシアは信頼できる友人で、長期的な協力ができると挨拶し、両国が協力関係を深めていることをアピールした。
 TurkStreamはロシア南部から黒海の海底を900km余り通ってトルコ北西部に至る2本の天然ガスパイプラインで、2019年にすべて完成すれば1本はトルコ国内向け、もう1本はヨーロッパへの輸出用となる。 (1812-112002)
2・7・8・3 クルドとの抗争

 「2・1・1・3 トルコとクルドの戦い」で記述
2・7・8・4 イスラエルとの関係悪化

 イスラエルのネタニヤフ首相がトルコのエルドアン大統領を北キプロスの占領者などと糾弾したことを受けエルドアン大統領がイスタンブールで12月23日に演説し、パレスチナに対する占領や過剰な武力行使を念頭に、ネタニヤフ首相をテロ国家のリーダーと罵倒した。
 一方、ネタニヤフ氏はツイッターで、エルドアン氏の指揮下にあるトルコ軍が「トルコ内外のクルド人の村で、女性や子どもの虐殺を繰り広げている」とも主張した。 (1901-122403)
2・7・8・5 アルメニアとの和解交渉

 アルメニアのサルキシャン大統領が3月1日、トルコとの間で締結された2009年の和解合意に基づく国交樹立などに向けた手続きを停止すると宣言した。
 米仏露が仲介して調印された合意文書は、オスマン帝国時代のアルメニア人虐殺を認めるかどうかで行き詰まり、結局両国議会で批准されることなく終わった。
 1991年にソ連からアルメニアが独立して以来、トルコとの国境は一度も開かれたことがない。 (1804-030201)
2・7・8・6 カタールとの関係強化

 トルコによる米国人牧師拘束やその他の外交問題を背景に両国の関係は悪化し、トルコ政府は8月15日に乗用車やアルコール、たばこなど一部の米国製品に対する関税を2倍に引き上げた。
 一方トルコ政府関係筋が15日、カタールがトルコに$15Bの投資を約束したことを明らかにした。 資金はトルコ国内の金融市場や銀行に回るという。
 カタールのタミム首長が、トルコのエルドアン大統領とアンカラで会談後、投資提案が公表された。 (1809-081602)
2・7・9 その他の欧州

2・7・9・1 地中海東部

2・7・9・1・1 ロシアの進出

東地中海での海軍戦力構築

 ダマスカス東部に勢力圏を持つ反政府勢力に米国が干渉しようとしているのを受け、ロシアが東地中海における海軍戦力構築を目指している。
 ロシア海軍のAdmiral EssenPytivyyのフリゲート艦2隻が3月12~13日にポスポラス海峡を通過したのを船舶監視組織が確認しているが、Admiral Essenは射程2,500kmのKalibr CMを装備している。
 また露国防省は3月15日、黒海艦隊を計画通りセバストポリから地中海に移動させたと発表した。 (1805-032110)

2・7・9・1・2 米国などの対応

 緊張が高まる地中海東部で米海軍がP-8Aによる哨戒飛行を開始した。
 飛行情報放送システムADS-Bの4月11日の情報によると、シシリー島のSigonella海軍航空基地 (NAS) を離陸したP-8Aが東地中海までの飛行を4回にわたって行った。 また12日にも4回の同様の飛行を行った。
 また10日と12日にはクレタ島のNAS Souda BayからEP-3E Aries Ⅱ SIGINT機が、9日にはRC-135V SIGINT機が東地中海での哨戒飛行を行っている。 (1806-041801)
2・7・9・2 ギリシャ対トルコ

2・7・9・2・1 キプロス

 キプロス、ギリシャとイスラエルの国防相が6月22日に、東地中海におけるサイバセキュリティや共同演習の拡大や捜索救難活動の共同実施などの防衛協力で合意した。
 その上でキプロスの国防相は明らかにトルコを意識してに、キプロスとイスラエルが発見した天然ガス田の防衛で緊密に連携すると述べた。
 キプロス近海のガス田探査にはトルコが強く反対している。 (1807-062207)
2・7・9・2・2 エーゲ海

 ギリシャとトルコがそれぞれ領有権を主張するエーゲ海のカルダク岩礁で2月12日午後10時30分過ぎ、双方の沿岸警備艇同士が衝突した。
 同岩礁の領有権を巡る両国間の緊張は1996年には戦争一歩手前まで高まった経緯があり、いままたギリシャによるキプロス島沖での天然ガス掘削を巡ってトルコが海軍艦艇を派遣するなど、両国の間で緊張が高まっている。
 映像からはこの事故が故意によるものか、行き過ぎた威嚇行動なのか、あるいは別の原因なのかは分からないが、ギリシャ警備艇に設置された2台の監視カメラ映像では、停泊中のギリシャ艇の船尾にトルコ警備艇が衝突したように見える。 (1803-022001)
2・7・9・3 コソボ

 コソボのサチ大統領が12月16日に、同国の治安部隊を軍に格上げする方針は後戻りできない状況にあると述べた。 コソボ議会は16日に圧倒的多数で軍の創設を承認している。
 しかしながら、かつてセルビアの一部であった同国内にはスラブ人も居住している。
 これに対してセルビアは同国が自国領内と見なす地域に軍を作れば軍事侵攻するとしており、この問題について国連安保理は近く協議を行う。 (1901-121707)
2・7・9・4 その他

2・7・9・4・1 ベラルーシ

 ベラルーシ国防相が、2018年内に5番目となるTor-M2 SAM中隊装備とYak-130練習機4機を受領することを明らかにした。
 同相によると2017年にSu-30SM 12機を$600Mで発注していて2019年に最初の4機を受領する。 (1806-041105)
2・7・9・4・2 マケドニア

 マケドニアで9月30日に国名を「北マケドニア」に変更するかを問う国民投票が実施されたが、開票率98.6%で賛成票が90%以上に達したものの、投票率は36.8%にとどまり、憲法上の成立要件の50%を大幅に下回って不成立の見通しとなった。
 このため国名変更を推進する与党と反対する野党がともに「勝利宣言」をする異例の事態となった。 (1811-100101)
2・8 その他の紛争地域

2・8・1 アフガニスタン

 特記すべき記事なし。(紛争は継続中)
2・8・2 イスラエルとその周辺

2・8・2・1 イスラエルはユダヤ人の国法案可決

 イスラエル国会が7月19日、イスラエルを「ユダヤ人の国」とする法案を賛成多数で可決した。
 法案はヘブライ語を唯一の公用語に指定し、アラビア語に「特別な地位」を与えたものの公用語からは外したことから、人口の20%を占めるアラブ系住民は差別が広がるとして反発している。
 またイスラエルが占領を続ける東側を含めたエルサレムを「統一された首都」と規定し、ユダヤ人による入植活動を国益として位置づけた。 (1808-071903)
2・8・2・2 米大使館のエルサレムへの移転

 米国務省が2月23日、イスラエルの建国70周年に当たる5月に在イスラエル米大使館を現在のテルアビブからエルサレムに移転する計画だと発表した。
 新たな大使館は、当初はエルサレムのアルノナ地区にある総領事館のある建物内に入る見通しで、最終的な移転先は現在選定中だという。
 フリードマン大使は安全上の理由から引き続きテルアビブ北部ヘルツリーヤに住み、移転した大使館に通うという。 (1803-022601)

 米国が5月14日にイスラエルの建国70年に合わせて、大使館をテルアビブからイスラエルの首都と認定したエルサレムに移転した。 恒久的な大使館建設には時間がかかるため、今回は象徴的な移転とされる。
 しかし、東エルサレムを首都とする国家樹立を目指しているパレスチナは猛反発しており、パレスチナ当局によるとガザ自治区ではイスラエル軍による銃撃でパレスチナ人52人が死亡、2400人以上が負傷し、和平交渉の再開は一層不透明となった。 (1806-051401)

 駐米トルコ大使館によると、トランプ政権が5月14日にエルサレムに大使館を移転したのに対し、トルコ政府は駐米大使を召還する方針を決めたという。
 またイスラエルに駐在する大使も召還する方針だという。 (1806-051501)

2・8・2・3 米国、パレスチナ自治政府と距離

 ポンペオ米国務長官が10月18日、エルサレムに移転した在イスラエル大使館と事実上のパレスチナ代表部として機能してきたエルサレム総領事館を統合する方針を発表した。 今後は大使館にパレスチナ問題担当部局を新設してヨルダン川西岸などのパレスチナ自治区の事案にはイスラエル大使館で対応することになる。
 これに対し、パレスチナ解放機構 (PLO) のアリカット事務局長は声明を発表し、トランプ政権が2国家共存でなく大イスラエル主義実現のためにイスラエル政府と連携していることが明らかになったと批判した。 (1811-101905)
2・8・2・4 イスラエル軍の強化

2・8・2・4・1 国防予算

 イスラエルの国防予算はGDPの5.7%を越える国防支出の他、米国から毎年数十億㌦の軍事支援を受けており、その支援額は今後10年間で$38Bを越える。 (1802-122503)
2・8・2・4・2 BMD 体制

"Juniper Cobra" BMD演習

 米軍とイスラエルが隔年に実施しているBMD演習 "Juniper Cobra" が3月4~15日に行われる。 この演習ではイスラエルに上陸する2,000名を含め、2,500名以上の米軍が参加する。 (1803-022207)

 米海兵隊第26遠征隊の2,500名がイスラエルと共同で行う隔年BMD演習 "Juniper Cobra 2018" のため、第6艦隊の強襲揚陸艦Iwo Jimaでイスラエルに上陸した。
 海兵隊はBMD演習に直接は参加しないが、イスラエル各所の人口密集地域に随時展開する。 (1804-030702)

2・8・2・4・3 F-35I の導入

 イスラエル空軍が2017年12月6日、F-35I Adirのoperationalを宣言した。 F-35I最初の2機は2016年12月12日に納入されていた。
 イスラエルは既に50機を発注しているが、最終的にはF-35Bを含む75~100機を装備すると見られる。 (1802-121302)
2・8・2・4・4 BM の増強

Predator Hawk

 IMI社が2月5日、イスラエル国防省と地対地ロケットの生産について交渉中であることを明らかにした。
 またイスラエル軍は射程150kmのEXTRA 306mmロケットシステムを装備する複数の中隊を新たに編成するという。 イスラエル紙は、この中隊は今後射程300kmのロケットを装備すると報じた。 このロケットとはIMI社製で射程300kmのPredator Hawkを指すと見られる。 (1804-021410)

2・8・2・4・5 装備の近代化

 特記すべき記事なし。
2・8・2・5 シリアとの係争

2・8・2・5・1 イスラエル機によるシリア攻撃

シリア領内のイラン軍関連施設への攻撃

 イスラエルのハーレツ紙などが、イスラエル軍当局者が9月4日に内戦が続くシリア領内で過去1年半、202目標に対し攻撃を実施したと明らかにしたと報じた。
 約800発のミサイルや迫撃砲を使用し、大半は敵対するイラン関連の目標だったという。 (1810-090501)

1月9日の攻撃

 シリア軍が1月9日、イスラエルがダマスカス北方のAl-Qutayfahに対し3波の攻撃を行ったと発表した。
 シリア軍によると同日02:40にイスラエル軍機がレバノン上空から数発のミサイルを発射したが、ミサイルとイスラエル軍機1機がシリアの防空部隊に撃墜された。
 第2波として03:04にゴラン高原からSSMが発射されたが防空部隊が撃退したと言う。 (1802-011004)

 シリア軍が1月9日、同日未明にイスラエル機3機がダマスカス北方のal-Qutayfahを攻撃したと発表した。
 シリアの通信社によると、02:40頃にイスラエル機がレバノン上空から数発のミサイルを発射したが、ミサイルとイスラエル機1機がシリアの防空部隊に撃墜された。
 更に03:04にはゴラン高原からSSMが発射されたが、これも防空部隊が阻止した。 (1803-011714)

2月10日の攻撃

 イスラエル軍が2月10日にシリアにあるイランの拠点を空爆した。 その際F-16 1機がシリア軍のSAMによる攻撃でイスラエル領内に墜落した。 操縦士2名は機外に脱出したが重軽傷を負った。
 イスラエル軍の発表によると、この日朝にイスラエル上空にシリアから飛んできたイランのUAVを戦闘ヘリで迎撃したのち、報復措置としてイスラエル軍機がシリアにあるイランのUAV管制施設を攻撃した。 (1803-021002)

 2月10日早朝にシリアからイスラエル領空に侵入したイランのUAVをイスラエル空軍のAH-64D Apacheが撃墜した。 これをイランによる侵略と見なしたイスラエル空軍はダマスカス近くにあったイランのUAV管制用トレーラを目標に F-16Iで空爆を行った。 これに対しシリアがSAMで反撃したためイスラエル空軍は第2波攻撃を実施した。
 この結果イスラエルの空爆はシリアのSAM中隊3箇所とシリアにイランが構築した施設4箇所を含む12箇所を目標にした大規模なものになった。
 出撃したイスラエル機の大半は無事帰還したが、1機が被弾しイスラエル領内まで戻ってから乗組員2名が脱出したが重傷を負った。 イスラエル軍機がシリア軍に撃墜されたのは1982年以来初である。 (1803-021003)

4月9日の攻撃

 シリア国営メディアが4月9日、中部ホムス郊外にある軍基地にミサイル数発が撃ち込まれたと伝えた。 同メディアは「米国による攻撃とみられる」とし、数発を迎撃したと報じている。 米国防総省はこの報道について、米軍は現時点でシリアで空爆を行っていないと述べ、関与を否定した。
 その上で、化学兵器を使用した者の責任を問うため、状況を引き続き注視しながら、外交努力を支援すると語った。 (1805-040903)

 シリア国営メディアが4月9日、中部ホムス郊外にある軍用基地に同日未明にイスラエル軍のF-15がミサイル攻撃を行ったと報じた。 ミサイルはレバノン領空から発射されたとしている。
 また、Interfax通信によると、ロシア国防省はシリア軍により5発が迎撃されたが基地西側に3発が着弾した。 (1805-040904)

 露国防省が、4月9日未明にイスラエルのF-15 2機がレバノン上空からミサイル8発をシリア軍Tiyas航空基地に向けて発射したが、そのうちの5発をシリア軍防空部隊が撃墜したと発表した。
 ロシアはシリアにPantsyr-S1 40両を追加供与したと報じられている。 (1805-041302)

 ロシア国防省が4月9日、モスクワ時間で同日03:25と03:53にイスラエルのF-15 2機がレバノン上空からシリアのT4空軍基地に向けミサイル8発を発射したが、そのうち5発はシリア軍防空部隊が撃墜し、3発だけが基地の西部に着弾したと発表した。 (1806-041814>)

4月29日の攻撃

 シリア国営メディアが、4月29日22:30頃に中部のハマ県などにある軍の複数の施設に対し、ミサイル攻撃があったと報じた。
 内戦の情報を集めている人権団体は、アサド政権を支援するイランの民兵の施設が攻撃されて、少なくとも26名が死亡し、イスラエルが関与した可能性があると指摘している。 (1805-043003>)

 シリア内戦の情報を集めている人権団体とイランの通信社が4月30日、シリア北部ハマ県とアレッポ県にある政府拠点が29日夜に特定していない敵からのミサイル攻撃を受け、イラン兵を主とした26名が死亡したと報じている。 ただ攻撃したのはイランと対決しているイスラエルと見られている。
 シリア人権監視団によるとハマの町から10kmには第47旅団と呼ばれているイランの補給所があり、SSMを含む大量の武器等が保管されていて、攻撃による爆発でM 2.6の地震が発生した。 (1805-043004)

5月8日の攻撃

 シリアの国営TVが軍の情報として5月8日夜に、イスラエルが発射したミサイル2発をダマスカスの郊外でシリア軍が撃墜したと報じた。
 これについてイスラエル側は今のところコメントしていない。 (1806-050903)

 シリア国営通信が5月8日、トランプ米大統領によるイラン核合意離脱表明から2時間以内にイスラエルがシリアに対して複数のミサイルを発射したと報じた。
 攻撃を受けたのはダマスカス南方の町キスウェで、シリア軍がイスラエルのミサイル2発を撃墜したという。
 一方イスラエル軍は、シリア国内のイラン勢力の活動に変化がみられるとして、ゴラン高原の市民に防空壕などの用意を進めるよう指示し、イスラエル軍参謀総長も予定していた会合への出席を取りやめた。 (1806-050904)

5月10日の攻撃

 イスラエル軍報道官が、イスラエルがシリア国内に展開するイラン軍事基盤のほぼすべてを5月10日に攻撃したと明らかにした。 イスラエルはシリア国内にある数十のイラン軍拠点のほか、シリアの対空組織を破壊したと公表した。
 シリア国営メディアによると、イスラエルのミサイル数十発がレーダ基地1ヵ所や複数のシリア防空拠点、弾薬庫1ヵ所に着弾した。
 これに先立ちイラン軍は、イスラエル占領地域に向けロケット弾を発射した。 イラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊が発射したとみている。
 イスラエルはイランのロケット弾20発について、防空システムで撃墜するか、ゴラン高原の目標地点に達しなかったとの見方を示した。 (1806-051002)

 シリア国営メディアが、イスラエル軍の空爆でシリア国内のレーダ施設や武器貯蔵庫などが破壊されたが、大半が標的に達せずシリア軍が数十発を撃墜としたと主張している。 (1806-051003)

 米大統領府が5月10日に声明で、イランがシリア領内からイスラエルに向けてロケット弾を発射したことを非難するとともに、米国はイスラエルの自衛権を強く支持すると表明した。
 声明は、イランの革命防衛隊を名指ししてこの無謀な攻撃の全責任があるとして、革命防衛隊とレバノンのヒズボラを挙げ、これ以上の挑発行為を控えるよう要求した。 (1806-051004)

 イラン革命防衛隊が5月10日、ゴラン高原にあるイスラエル軍拠点に対しシリ アから20発のミサイルを発射した。 イスラエル当局によるとその内の4発はイスラエルの防空網で撃墜され、16発はシリア領内に落下したという。
 これに対しイスラエルはシリアに対し1974年のYom Kippur War(第四次中東戦争)以来最大規模の空爆を行った。 同国国防相によるとシリア領内にある全てのイラン施設50箇所が攻撃目標になったが、これは大規模軍事作戦の始まりにすぎないと強調した。 (1806-051005)

 イスラエル軍の報道官が、イランのQuds Forceが5月10日早朝にゴラン高原のイスラエル軍拠点に対し20発のミサイルを撃ち込んだが、4発は撃墜され残りは目標に届かずにシリア領内に落下したと発表した。
 これに対しイスラエルはシリアに対し1973年の中東戦争以来最大規模の空爆を行い、在英シリア人権監視団によるとシリア兵5名を含む23名が死亡した。 この中にイラン兵が含まれているか否かは明らかになっていない。
 ロシア軍によるとイスラエルは28機の戦闘機を投入し70発のミサイルを発射したが、その半数は撃墜されたという。
 シリア内戦が始まった2011年以来イスラエルは100回を越える空爆をシリアで行ってきたが主たる目標はヒズボラに対するイランからの武器供給に対するものであった。 しかしながらイランとの緊張が高まったここ数週間では、イラン軍を直接攻撃するようになってきている。 (1806-051006)

 イスラエルのネタニヤフ首相が5月10日に声明を出し、シリア領内からイスラエルに向けてロケット弾を発射したとされるイランに対し、レッドラインを越えたと強く非難し、イスラエルが行った大規模な報復については「相応の対応だ」と正当化した。 (1806-051101)

 イスラエルがゴラン高原から20発のロケット弾が発射されたことに対し、5月9日~10日の夜間にシリアの駐留するイラン部隊を再び攻撃した事で緊張が高まっている。
 イスラエルは攻撃を行ったのはイラン革命防衛隊の海外派遣部隊であるQudsであるとしている。 ロケット弾の一部はIron Domeで撃墜され、イスラエル側に死傷者はなかったという。
 イスラエルはダマスカス近郊にあるQuds部隊の兵站司令部やダマスカス空港にある補給品集積所を標的に数十発の攻撃を行ったのに対し、シリア防空部隊は射撃を行ったが成功しなかったとして、Pantsyr-S1が破壊されるミサイルのIIRシーカか らの映像を公表した。 (1807-051601)

 シリアで戦闘に加入しているヒズボラの事務局長が5月14日、イスラエルが5月9日にロケット弾攻撃を受けたことを認めた。 同事務局長はイスラエルが占領している地域にロケット弾55発を撃ち込んだと述べた。
 これに対しイスラエル国防省は、シリアに進出しているイランのQods部隊がゴラン高原に対し20発程度のロケット弾を撃ち込んだが一部はIron Domeに撃墜されたと発表した。
 イスラエルはシリア国内のイラン軍施設全ての 数十箇所を空爆し、ほぼ全てを破壊したことを明らかにした。 (1807-052302)

5月24日の攻撃

 シリアのアサド政権軍が5月24日、中部ホムス県の軍用飛行場に同日、ミサイル攻撃があり、政権軍が迎撃したと発表した。 攻撃元への言及はないが、最近シリア領内でイランの関連軍事施設への攻撃を繰り返しているイスラエルによるものとの見方が出ている。 イスラエル側からの反応は出ていない。
 在英のシリア人権監視団によると、6回の爆発音が聞こえたホムス県の飛行場はレバノンのヒズボラが拠点としていたという。 (1806-052508)

7月13日の2014年以来最大規模の空爆

 ハマスがイスラエル領内に向けガザ地区から約60発のロケット弾を発射した。 このうち10発はイスラエル軍がIron Domeで撃墜した。
 この報復としてイスラエルはハマスの兵站基地、大隊本部、トンネルなどの軍事拠点40箇所に対し2014年以来最大規模の空爆を行った。 (1808-071403)

アレッポ空港近くを空爆

 シリア軍が7月15日、イスラエル軍がアレッポ空港近くを空爆したことを非難した。 このような攻撃は過去3ヶ月間で2回目になる。
 シリアのSANA通信によると、攻撃はアレッポ国際空港に隣接するAl-Nayrab航空基地の北側に位置する陸軍基地に対して行われた。 またイスラエルの衛星画像企業iSi社によると攻撃は7月7~17日の間に行われた。
 シリア軍によるとこの攻撃は4月29日の攻撃とよく似ているという。 4月29日の空爆では少なくとも1発のGBU-39 SDB が使われていたか、高高度投下で110km飛翔するSDBをAleppoに到達させるのにはシリア領空に200km以上侵入する必要がある。
 イスラエル空軍は5月22日にF-35Iを初めて実戦使用したと発表している。 (1809-072508)

9月15日: ダマスカス国際空港にミサイル攻撃

 シリア国営通信が9月15日、ダマスカス郊外のダマスカス国際空港に向けて同日午後にミサイル攻撃があり、シリア軍が防空システムで迎撃して複数を撃ち落としたと報じた。 攻撃はイスラエルによるものだとしているが、イスラエル軍はコメントしていない。
 在英のシリア人権監視団は、最近武器が運ばれた空港付近の倉庫に大きな被害があったが負傷者の情報は入っていないとしている。
 イスラエルは、イランなどがシリアで影響力を拡大することを懸念し、シリア領内のイラン関連拠点に攻撃を繰り返している。 (1810-091602)

9月17日の攻撃とシリア軍のロシア軍機誤撃墜

 ロシア国防省が9月18日、シリア沖の地中海で17日夜にロシア軍機がシリア政権軍のSAMによる誤射で撃墜され兵士15人が死亡したと発表した。 ロシア軍機Il-20はラタキア近郊ヘメイミームのロシア空軍基地に戻る途中だった。
 露国防省によると、イスラエル軍のF-16 4機が17日夜にシリア北西部ラタキア近郊の目標を攻撃した際にロシア軍機を盾にしてシリア政権軍のSAM攻撃を防いでいたと主張し、イスラエル軍の無責任な行動の結果と強く非難した。 (1810-091803)
【註】 Il-20は4発のターボプロップ旅客機Il-18を元にした電子偵察機である。

 イスラエル軍が9月18日に声明で、ロシア軍機がシリア沖の地中海でアサド政権軍に誤って撃墜されたことに遺憾の意を表す一方、完全にアサド政権の責任だと述べた。
 イスラエル軍は、戦闘機で17日夜にシリア北西部Latakia近郊のアサド政権軍施設を攻撃したことを認め、精密で殺傷能力を持つ武器を作るシステムがレバノンのヒズボラに輸送されるところだったと攻撃の正当性を強調した。
 またアサド政権軍がSAMを発射した時点でイスラエル軍機は既に自国領空に戻っていたとも主張した。 (1810-091804)

 ロシア空軍のIl-20 Coot偵察機が地中海上空で9月17日にシリア政府軍のSAMに撃墜され乗員5名が死亡した。
 ロシア国防省は当初フランス軍のフリゲート艦によるとしてフランスに抗議したが、のちにシリア政府軍のS-200 (SA-5) によるものと判明した。
 ロシアは、Latakiaのシリア政府軍を空爆したイスラエル軍のF-16 4機がIl-20を盾にしたためとしてイスラエルを非難した。 (1810-091805)

 ロシアが、Il-20電子偵察機が9月17日にシリア軍のSAMで撃墜されたのはイスラエルの戦闘機がIl-20を盾にしたからと抗議したことに対しイスラエルは18日、露軍機が撃墜された時間にイスラエル機は既にイスラエル領空に戻っていて露軍機と同じ空域にはおらず、シリア軍が友軍機とロシア軍機の存在を確認しないでSAMを発射したのが原因と反論した。
 この日イスラエル軍機は武器を製造していると思われるLatakiaのシリア軍施設を攻撃していた。 (1811-092601)

 ロシアのIl-20偵察機が9月17日にシリアのSAMで撃墜されたのは、イスラエルの戦闘機がロシア機を盾にしたとしている件について、イスラエルは20日にロシアに対し、イスラエル機が自国領空に戻った後にシリアが20発以上のSAMを発射した証拠を示し反論した。 (1812-100305)

 イスラエル当局者が10月29日に記者団に、シリアの防空部隊がロシアのIl-20M ELINTを誤射した9月17日以来イスラエル軍がシリアに対する攻撃を継続していることを明らかにした。
 ロシアは10月2日に、シリアへS-300を引き渡したと発表している。 (1901-110714)

12月25日: ダマスカス近郊の武器庫にミサイル攻撃

 シリア国営メディアが、ダマスカス近郊で25日深夜にイスラエル軍機によるとされる空爆があり、武器庫が被害を受け兵士3名が負傷したと報じた。 イスラエル軍機はレバノンの上空からミサイルを発射したという。
 在英のシリア人権監視団によれば、目標となった武器庫はシリア領内に駐留するイラン軍のものかレバノンのヒズボラのものとみられる。
 InterFax通信によると、アサド政権を支えるロシアの国防省が26日にイスラエルが発射したミサイル16発のうち14発がアサド政権軍の防空システムによって迎撃されたと強調した。 (1901-122603)

2・8・2・5・2 シリア方面からの航空機や飛翔体の撃破

ロケット弾の撃墜

 イスラエル軍が5月10日、イランがシリア領内からイスラエルに向け約20発のロケット弾を発射したと発表した。 イスラエル軍によると、革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊 (Quds Force) が主導してゴラン高原にロケット弾を発射したが、イスラエルのIron Domeが数発を迎撃した。
 イランがシリアからイスラエルの実効支配地域に攻撃を加えたのは初めてとみられる。 イスラエル軍は報復としてシリアにあるイラン革命防衛隊の軍事拠点を空爆したため、在英のシリア人権監視団によ れば、アサド政権軍や外国人の兵士を含む23人が死亡した。
 イスラエルのリーベルマン国防相は10日、シリアにある ほぼすべてのイラン拠点に打撃を与えたと語った。 イスラエル軍の空爆は対イラン攻撃としては近年で最大規模となった。 (1806-051003)

SS-21 との交戦

 イスラエルが7月23日に初めてDavid's Sling Weapon Systemを実使用した。 この日シリア政府軍がゴラン高原近くで反政府勢力に対しSS-21 2発を発射したため、イスラエルはStunner迎撃弾2発を発射した。
 迎撃弾のうち1発はゴ ラン高原上空で自爆し、SS-21 2発はいずれもシリア領内に落下した。 イスラエルは現在この迎撃が成功したのか否かを調査している。
 2017年3月にはArrowがシリアの発射したSAMを撃墜している。 (1808-073105)

戦闘機の撃墜

 イスラエル軍は7月24日、北部の占領地ゴラン高原でシリア軍のスホイ戦闘機が領空侵犯したとしてPatriot 2発で撃墜したと発表した。 操縦士の安否は不明だが、両国間で緊張が高まる可能性がある。
 イスラエル軍は戦闘機がイスラエル領空に2km侵入したと主張している。 (1808-072405)

UAV の撃墜

 2月10日早朝にシリアからイスラエル領空に侵入したイランのUAVをイスラエル空軍のAH-64D Apacheが撃墜した。 これをイランによる侵略と見なしたイスラエル空軍はダマスカス近くにあったイランのUAV管制用トレーラを目標に F-16Iで空爆を行った。 (1803-021003)

 イスラエル軍によるとイスラエルの占領下にあるゴラン高原で7月11日、シリアから飛来したUAVがイスラエル領内に10kmまで侵入し、イスラエル軍がPatriotで撃墜したという。 イスラエル軍はその報復として12日未明、シリア国内にある3ヵ所の軍事施設に対して攻撃を行ったことを映像とともに公表した。
 シリア内戦は6月からイランが支援するアサド政権がイスラエル側に隣接するシリア南西部のダラア県やクネイトラ県で、大規模な軍事作戦に乗り出しているのに対し、イスラエルはイランの脅威が差し迫っているとして強硬な手段も辞さない構えで新たな軍事的な緊張が高まっている。 (1808-071203)
【註】 進入したUAVをPatriotで撃墜したとすれば当該UAVは戦闘機に近い大きさと速度を有するものであったと推測される。

 イスラエルが7月11日に続いて13日にも、ゴラン高原の非武装地帯を越えてシリアから飛来したUAV 1機をPatriotで撃墜した。 イスラエルは11日に撃墜されるまでイスラエル領内に10kmまでUAVが侵入した際は、シリアの軍事施設に対し12日に報復空爆を行っている。
 イスラエルは6月にもシリアとの国境近くでUAV 1機を撃墜しており、2月にもイランのものとするUAVを撃墜している。 (1808-071305)

2・8・2・5・3 ロシアがシリアの防空能力強化

 ロシア国営TVが、アサド政権軍を支援するロシアのショイグ国防相が9月24日に、2週間以内にアサド政権軍にS-300を供与することを明らかにしたと報じた。 ロシアによるアサド政権軍の防衛能力強化は、シリア領内への攻撃をくり返すイスラエル軍を牽制する意図がある。
 シリアでは18日にイスラエル軍の攻撃に反撃しようとしたアサド政権軍が、誤ってロシア軍機を撃墜する事件が起きている。 (1810-092404)
2・8・2・6 ガザ地区との抗争

2・8・2・6・1 ガザからのロケット弾攻撃とその反撃

8月8日のロケット弾攻撃

 イスラエルのハーレツ紙が8月8日夜、ガザから150発以上のロケット弾がイスラエル側に発射され、イスラエル軍が報復してハマスの軍事教練施設や武器貯蔵庫など、20ヵ所以上を攻撃したと報じた。
 イスラエル南部スデロトで11人が負傷し、ガザでは妊婦とその1歳の子供ら3人が死亡した。 (1809-080901)

10月26日のロケット弾攻撃とその反撃

 イスラエル軍が10月26日、ガザ地区からイスラエルに向けて30発のロケット弾が発射されたことへの報復としてガザ地区のハマスの関連施設など80ヵ所に大規模な空爆を行った。
 パレスチナ暫定自治区のガザ地区では、イスラエルとの境界沿いでパレスチナ人による抗議デモが続いていたのに対しイスラエル軍が発砲し5人が死亡したためロケット弾が発射された。 (1811-102704)

11月12日のロケット弾攻撃とその反撃

 イスラエル軍が11月12日、パレスチナ自治区ガザ各地の70ヵ所以上に空爆や砲撃を行い、ガザの保健省によると少なくとも3人が殺害された。 イスラエル軍の攻撃はガザ側の7人とイスラエル兵1人が死亡した11日の急襲作戦に続くもので、ガザ情勢は緊迫の度合いを増している。
 ハマスやイスラム聖戦は12日、急襲作戦への報復としてイスラエル領内に大量のロケット弾を撃ち込んでおり、これがイスラエル軍の攻撃を激化させた。
 イスラエル軍によれば、ロケット弾は300発に達したが、多数を対空防衛システムで迎撃した。 (1812-111303)

 イスラエル紙ハーレツが11月13日、ガザを実効支配するハマスなどが12日、イスラエル領に370発以上のロケット弾を発射し、イスラエルはハマスなどの関連施設100ヵ所以上を空爆するなどして報復したと報じた。
 イスラエル軍はガザから発射されたロケット弾のうち100発以上を迎撃したが、一部が同国の中南部に着弾し、アシュケロンで男性1人が死亡したほか、ロケット弾がバスを直撃するなどして数十人が負傷したもようである。 (1812-111304)

 11月12~13日の24時間にガザからイスラエル南方に約460発の107mm/122mmロケット弾が撃ち込まれたが、そのうち100発以上をIron Domeが撃墜した。 (1812-111504)

 11月12~13日にガザからイスラエルに向け460発の107mm及び122mmロケット弾と迫撃砲弾が撃ち込まれたが、Iron Dome中隊がそのうちの100発以上を撃墜した。
 発射されたロケット弾等の大部分は人のいない方向に向かったためIron Dome中隊が対応することがなかったが、それでも西岸地区から働きに来たパレスチナ人1名が死亡し、その他50名ほどが負傷した。 (1901-112102)

2・8・2・6・2 地上軍の動き

地上軍の展開

 イスラエル軍が10月18日、ガザ地区との境界に60両以上の戦車を展開した。 ガザ周辺に多数の戦車が展開するのは2014年にイスラエル軍がガザ地区に侵攻し2,000人以上が死亡した大規模な戦闘以来で軍事衝突が懸念されている。 またイスラエル航空当局はテルアビブの国際空港を発着する航空会社に対し18日、ガザ周辺の上空を飛行しないよう要請した。
 現地では17日、ガザ地区から発射されたロケット弾がイスラエル南部のベエルシェバの民家に着弾したことに加え、このところ抗議デモが激しさを増していて、イスラエル軍はガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスへの圧力を強める構えである。 (1811-101904)

特殊部隊の侵入

 イスラエル軍が11月11日深夜、ガザ地区南部のハンユニスに少人数の特殊部隊を送り込みハマス側と銃撃戦になった。 この銃撃戦でハマスの軍事部門の幹部ら7名が死亡し、特殊部隊の兵士1名も死亡した。
 パレスチナ側の報道によると、イスラエル軍特殊部隊はパレスチナの民間人を装い、ガザ地区のナンバープレートが付いた乗用車でハマスの軍事部門の幹部の住宅に接近した。 銃撃戦のあとイスラエル軍は特殊部隊の脱出を支援するために空爆に乗り出し、これに対しハマスはロケット弾攻撃で応戦し、衝突は12日未明まで断続的に続いた。 (1812-111203)

2・8・2・7 イランとの直接対決

2・8・2・7・1 イランに対する核疑惑非難

 ロイタ通信などが、イスラエルのネタニヤフ首相が4月30日、イランが極秘で核兵器開発を計画していたとする大量の「証拠」を公表し、イランは嘘をついていると非難したと報じた。 トランプ米政権がイランとの核合意の継続の可否を判断する期限が5月12日に迫り、米側に事実上の破棄を求める狙いがある。
 イスラエルが入手したとしているのは「アマド計画」と呼ばれるイランの核兵器開発に関する資料55,000頁の書類と183枚のCDで、核兵器を設計製造実験する包括的な計画だと言うが、英BBC放送は「資料の多くは目新しいものではなく、米政府に対する政治的アピールだ」という識者の見方を示している。 (1806-050201)

 国際原子力機関 (IAEA) が5月1日、イランは2015年の核合意後も核開発を再開できる状態を保っていると主張するイスラエルに対し、イランで2009年以降、核開発の「確たる兆候」は見られないとの従来の調査結果を確認する声明を発表しイスラエルに反論した。
 IAEAは、2015年12月に発表した報告書に盛り込んだ調査結果について「検討は終わっている」と断言した。 (1806-050202)

 イスラエルのネタニヤフ首相がイラン核兵器開発疑惑の証拠を示したことを受け、欧州では改めて開発阻止のためには核合意の堅持が必要との見解が上がった。
 EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は4月30日の声明で、合意が締結された2015年以降のイランの合意順守に疑問を生むものではないと、現在の核兵器開発を示す資料ではないとの認識を示唆した。 (1806-05023)

 イスラエルのネタニヤフ首相が5月6日、イランが2015年に欧米などと結んだ核合意について、欠陥を見直すことなく放置すればイランは非常に短期間で核兵器を手にすることになると述べ、トランプ米政権に離脱を迫った。
 ネ首相は合意について、イランが核爆弾を所持する全ての道をふさいだとするが、事実は全くの正反対だとし、完全に見直すか破棄するかのどちらかしかないと訴えた。 (1806-050701)

 イスラエルのネタニアフ首相が4月30日、イスラエル情報機関がイランが明らかに核合意 (JCPOA) に反して核開発を進めていることを示す0.5tにものぼる文書を入手していると主張した。
 ネ首相によると、イランはミサイルに搭載可能な10kT級核弾頭を5発保有することを目指しているという。 (1807-050902)

 イスラエルのネタニヤフ首相が9月27日に国連総会の一般討論演説で、イランの首都テヘランに別の秘密核倉庫があると主張し、イラン核合意を改めて批判した。
 ネ首相は秘密核倉庫の写真や座標を示して秘密核計画の装備や原料を大量に保管していると指摘した上で、イスラエルがその存在を公表して以降イランは核倉庫の処分を行っていると述べた。
 倉庫内にあった放射性物質15kgは8月に撤去され、テヘラン市内に分散して保管されているという。 (1810-092801)

2・8・2・7・2 イランとの軍事対立

 イスラエル国防相が4月26日、イランがテルアビブを攻撃すればイスラエルはイランを攻撃すると述べた。 同国防相はイランの統制下にある80,000名のシーア派戦闘員をダマスカスから8kmの基地に派遣しているとも述べた。
 また2月に撃墜したイラン製のShahed-129 UAVには爆薬が搭載されたことも明らかにした。 (1805-042609)

 イスラエル軍が4月17日、シリアに所在する以下の5箇所イラン軍の拠点について詳細を明らかにした。

・T4 (Tiyas) 航空基地(ホムス)
・ダマスカス国際空港
・Sayqal航空基地(ダマスカス)
・Dayr al-Zawr航空基地(シリア東部)
・Aleppo空港
 また衛星写真からSayqalとDayr al-Zawrではイラン軍の輸送機が確認され、2017年12月1日のDiditalGlobe衛星の画像では、Dayr al-Zawrにはイラン軍のものとみられるUAVが写っていた。 (1806-042516)

 イスラエルとイランの対立が先鋭化し衝突の危機が高まっている。 イスラエル軍は5月初旬にイランがイスラエル占領地ゴラン高原に向けてロケット弾約20発を発射した報復としてシリアにあるイラン革命防衛隊の拠点を空爆した。
 イスラエルと敵対するシリア、レバノンに近接するゴラン高原の住民は戦時下への警戒を強めている。 (1806-052802)

2・8・2・8 NATO との連携

"Saber Strike 2018" 演習への参加

 イスラエルは6月3日~15日の間、米国が主導してNATO加盟19ヵ国から18,000名が参加しポーランドやバルト三国を舞台に行われる "Saber Strike 2018" にNATO非加盟国であるが参加する。 (1807-060304)

2・8・3 ナゴルノ・カラバフ

2・8・3・1 アゼルバイジャン

 アゼルバイジャンのバクーで6月26日に開かれた毎年恒例のパレードで、トルコRoketsan社製のSOM CMが初め て公開された。
 射程250km以上、弾頭重量226kgのSOMには、原型であるGPS誘導のSOM-Aと、地形照合誘導と終末にIIR誘導を行うB1及びB2型がある。 (1807-062904)

 アゼルバイジャン国防省が6月11日、ベラルーシからPolonez、イスラエルからLORA精密打撃SSMを購入したことを明らかにした。 バクー近くに新設された基地の画像にはPolonezの発射機が3両、LORAの発射機が少なくとも2両写っている。
 ロシアのKommersant紙は4月にアゼルバイジャンがPolonezを発注したことは報じていたがLORAを購入したことは初めて報じられた。 (1808-062003)

2・8・3・2 アルメニア

 特記すべき記事なし。
2・9 その他の紛争潜在地域

2・9・1 北極圏

2・9・1・1 ロシアの活動

航空基地の開設

 ロシアが発表した新年のプレスリリーズで、2018年中に北極圏でのTu-142 BearやIl-38 Mayなどの対潜哨戒機など航空活動を活発化させることを明らかにした。  また以下のような航空基地の開設や再開も明らかにした。 (1803-011705)

・Severomorsk-1: Kola半島
・Severomorsk-3: Kola半島
・Nagurskoye: Alexandra群島、Franz Jisef諸島
  MiG-31、Su-34、Il-78給油機が離着陸可能な2,500m滑走路
・Rogachevo: Novaya Zemlya
・Naryan-Mar: Nenets、バレンツ海
・Vorkuta: カラ海
・Norilsk-Alykel: 中央シベリア
・Severnaya Zemlya島: Krasnoyarsk Krai、カラ海
・Tiksi: ラブテフ海
・Anadyr: ベーリング海峡
・Cape Schmidt: チュクチ海
・Wrangel島: チュクチ海
・Temp: Kotelny島、ニューシベリア諸島
地上軍の増強

 ロシア国営メディアが、ショイグ国防相が2017年末のメッセージで北極圏での軍事力増強について述べたと報じた。 それによると北極圏基地に配備されているZSU-23-4 Shilka自走対空機関銃は2017年内にTor-M2の局地仕様であるTor-M2DTに換装されるという。
 また現在進めている北方艦隊行動計画2016-20は2020年末には完成し、北極海とバレンツ海の間にあるフランツヨセフ諸島のNagurskoyeに建設中の飛行場も2018年中に完成するという。
 同国防相は2017年のハイライトとして、フィンランド国境から50kmに所在する第80独立自動車化狙撃旅団やノルウェー国境から10kmの第100独立自動車化狙撃旅団と北方艦隊の一部である陸軍第14軍団の再構築を挙げた。 (1803-011006)

 ロシアが北極圏に2個独立自動車化狙撃旅団 (SMB) を新設した。 これら部隊は深雪を走破する高い機動力と高い火力を有している。
 第200SMBはT-80BVM MBTを装備する1個戦車隊、BTR-82A APCを装備する3個自動車化狙撃隊、及び砲兵隊と防空隊で構成され、極地仕様のT-80BVM以外は在来型装備である。
 2015年に編成された第80SMBはソ連時代のMT-LBV APCを装備しているが、履帯を565mm幅に切り替え接地圧を低減している。
 また装備してい るTor-M2DT及びPantsir-SA SAMは極地仕様車DT-30PMに搭載されている。 (1809-080008)

2・9・1・2 米国の活動

沿岸警備隊の砕氷艦建造

 米沿岸警備隊 (USCG) 司令官が3月1日、砕氷艦建造のRfPを2日に発簡すると述べた。
 USCGは6隻の砕氷艦を装備したいとしており、一番艦は2023年の進水を計画している。 (1804-030109)

 米沿岸警備隊が3月上旬に大型砕氷艦3隻の詳細設計と建造に関するRfPを発簡した。
 現在の計画では大型砕氷艦3隻の建造に続いて中型砕氷艦3隻も建造することになっているが、沿岸警備隊は大型艦6隻に計画を拡大する望みを捨てていない。 (1805-041108)

 米沿岸警備隊司令官のSchultz提督がCSISで8月1日、米国が2018年内に新たな北極圏戦略を構築すると述べた。 提督は大型砕氷艦を3隻を含む少なくとも6隻の砕氷艦が必要と述べた。
 ロシアは原子力砕氷艦を含む砕氷艦を保有しており、北極圏国でない中国も複数の砕氷艦を建造している。 (1810-080808)

B-52H のロシア沿岸長距離飛行

 米空軍のB-52H 1機が9月15日に北極圏のロシア沿岸を長距離飛行した。
 コールサインChaos 43のB-52Hは15日早朝に英空軍Fairford基地を離陸し、途中で英空軍Mildenhall基地から飛来したKC-135Rによる空中給油を受けながらノルウェーのSvalbard周辺を飛行したのちNorth Capeを通過してバレンツ海に入り、ロシア領ゼムリア諸島東海岸まで飛行して、12時間後にFairfordに帰投した。 (1811-092604)

空母の北極圏航行

 米海軍は10月19日、空母Harry S. Truman空母打撃群 (CSG) が同日、ノルウェー海に入り北極圏で航空訓練などを実施したと発表した。
 米空母が北極圏に入るのは1991年にNATOの演習を行って以来27年ぶりで、北極圏で活動を活発化させるロシアをけん制する狙いがあるとみられる。 (1811-102005)

米海軍と沿岸監視隊が合同作戦

 米海軍と沿岸監視隊が北極圏で合同作戦を行った。 米国が2隻だけ保有する砕氷艦の1隻でシアトルを母港とするHealyが海軍研究本部 (ONR) 計画のArctic West Summer 2018で10月18日に北極海での2度目の任務を完了した。
 一方空母Harry S Trumanと随伴艦は10月19日にノルウェー海で北極圏に入った。 米空母が北極圏に入るのは1991年9月にNATOのNorth Star演習の一環として空母Americaが入って以来約30年ぶりになる。 (1812-103108)

2・9・1・3 中国の動き

 特記すべき記事なし。
2・9・1・4 カナダの活動

ADIZ (CADIZ) を北極海の群島域上空まで拡大

 カナダ国防省が5月24日に公式声明で、自国のADIZ (CADIZ) を北極海の群島域上空まで拡大すると発表した。 (1806-052906)

砕氷艦の更新

 カナダ公共事業調達省 (PSPC) が、沿岸警備隊から出ている艦齢35年以上の砕氷艦4隻の更新要求について、3隻に縮小できないか交渉中である。 (1808-061309)
極地外洋哨戒艦 の調達

 カナダ国防省が11月2日、極地外洋哨戒艦 (AOPS) の6番艦を調達すると発表した。
 5隻の建造と1隻のオプションが計画されて2015年から建造されているAOPSは、一番艦のHarry DeWolfが9月に進水し、2019年に海軍で就役する。
(1812-110509)
【註】 Harry DeWolf級AOPSは全長103.6m、全幅19m、排水量6,615tで、外洋速力17kt、砕氷速力3ktの性能を持ち、BAE社製Mk 38 25 mm砲1門とBrowning M2機銃2兆を装備している。

民間の砕氷船3隻を警備艦に改修

 カナダ沿岸警備隊が民間の砕氷船3隻を警備艦に改修する工事は、12月始めに一番艦の改修が完了する。  改修工事は8月10日にCAD610M ($462M) で発注され、改修は警備艦塗装にするなどの最小限にとどめられている。 (1812-112604)

25年ぶりに砕氷艦を就役

 カナダ沿岸警備隊が12月14日、25年ぶりに砕氷艦を就役させた。
 就役したCaptain Molly Koolisは民間の砕氷船を改造したもので、8月10日にCAD610M ($457M) で発注した3隻のうちの1隻である。 (1901-121402)

2・9・1・5 欧州諸国の活動

英 国

 英国議会国防委員会が8月15日に "On Thin Ice: UK Defence in the Arctic" と題する報告書を政府に送り、ロシアに対抗するため北極圏及び高緯度地帯での防衛力強化を訴えた。 (1810-082205)

2・9・2 黄 海

2・9・2・1 中国軍の接近、侵入

2・9・2・1・1 航空機の接近、侵入

2月27日

 韓国軍合同参謀本部が2月27日、中国の軍用機1機が同日09:34に離於島付近の韓国防空識別圏 (KADIZ) に入ったのを確認し、F-15やKF-16など戦闘機10機を緊急発進させたと明らかにした。
 離於島の西南から防空識別圏に入った軍用機は、対馬海峡を通過し釜山東南の海上を経て鬱陵島の西北56kmまで進んだ後、同じ経路を南下して14:01にKADIZを出るまで4時間27分にわたり飛行した。 韓国軍はこの軍用機をY-9偵察機と推定している。
 防空識別圏に進入した中国軍用機が韓国の領海に接近し飛行したのは初めてという。 (1803-022701)

 韓国軍合同参謀本部が4月28日、中国軍機1機が離於島付近から韓国の防空識別圏内に進入したため、戦闘機を緊急発進させたと発表した。
 中国軍機の進入は2月以来で、韓国軍は28日の中国軍機の飛行ルートが2月のルートと似ていると発表した。 (1805-042802)

7月27日

 韓国合同参謀本部によると、中国の軍用機は7月27日07:10ごろ、離於島西南地域の韓国防空識別圏 (KADIZ) に侵入し た。 その後08:53ごろ浦項東南側に機首を向けて海岸線から74kmほど離れた地点に移動、江陵東側90kmまで移動した後、09:19ごろ機首を南側に向けた。
 続いて侵入した経路にそって進み、11:27ごろKADIZから抜けた。
 今回の中国軍用機の航跡は2018年2月と4月に発生した航跡と似ていた。 中国軍用機はY-9偵察機と推定される。 (1808-072701)

8月29日

 韓国軍合同参謀本部が8月29日、中国の軍用機1機が同日07:30過ぎに済州島の南の岩礁、離於島付近から韓国防空識別圏 (KADIZ) に進入し4時間飛行したと明らかにした。
 同軍用機はY-9情報収集機と推定される。 飛行経路は7月27日にKADIZに進入した際と似ているという。
 中国軍用機のKADIZ進入は2018年に入り1月、2月、4月、7月に続き5回目になる。 (1809-082905)

1~9月中旬までの中国軍用機の無断進入

 東亜日報が10月19日、中国の軍用機による韓国防空識別圏への無断進入が2018年1~9月中旬までに110回に達したことが韓国空軍作戦司令部の関連資料から分かったと報じた。 2017年の10件余りから11倍増えたという。
 航空機が他国の防空識別圏に進入する場合は、事前通報することが国際的な慣例だが、中国軍用機が韓国に通報せず韓国の防空識別圏に無断進入するケースがますます急増する傾向にあることから、与野党議員は国会国防委で積極的な対策を求めたなどと報じた。 (1811-102306)

10月29日

 韓国軍合同参謀本部が10月29日、Y-9 ELINT機と推定される中国軍機1機が同日10:03に済州島北西から韓国防空識別圏 (KADIZ) に入り、10:37ごろに済州島の離於島東方にで識別圏を離れた。
 その後、日本の防空識別圏の内側を飛行し、11:48に浦項の東方93kmの上空で再びKADIZに入った。
 北側に機首を向けた中国軍機は江陵東方の上空まで北上後、南に旋回し、最初の進入経路に沿って15:02にKADIZを出た。 (1811-102903)

2・9・2・1・2 艦船の接近、侵入

3月1日

 韓国政府当局と海洋警察庁などが3月1日、中国艦艇が2017年に頻繁に黄海で中韓EEZの中間線を越えて軍事行動をしたことを明らかにした。
 2016年までは10回前後の越境にとどまっていたが、2017年は80回前後に急増した。 黄海で中国艦による訓練が大幅に増えたことが影響しているものと見られる。
 中国艦艇は今年も2月までで20回と昨年を上回るペースで中間線を越えしており、中国は黄海上に音響情報探知用ブイも設置したとされる。 韓国政府関係者はブイ設置地点がこれまでよりも韓国側に近づいているたる越境と軍用ブイ設置について抗議を続けているが、中国側は何の反応を示さないと述べている。 (1804-030203)

2・9・2・2 韓国側の動き

 特記すべき記事なし。
2・9・3 北アフリカ

2・9・3・1 エジプト

米国の軍事援助再開

 米国務省が7月25日、米国がエジプトに対し人権問題を理由に停止していた$185Mの軍事援助を再開することを明らかにした。 (1808-072506)

フランスが SCALP CM を輸出

 フランスがエジプトに米国製部品を搭載しているSCALP CMを輸出する件で米国が米国の国際武器取引規則 (ITAR) を盾に反対しているが、フランスは米国製部品をフランス製に替えて輸出を強行しようとしている。 (1810-080806)

インドと軍事産業の提携、訓練や研究開発の協力

 エジプトを訪問中のインド国防相が9月20~22日にエジプト軍司令官、国防相、軍需相と会見し、両国軍事産業の提携、訓練や研究開発の協力など、広範な軍事協力の強化で合意した。 (1810-092504)

2・9・3・2 その他

 特記すべき記事なし。
2・9・4 中 南 米

2・9・4・1 エルサルバドル

 米大統領府が8月23日に声明を出し、エルサルバドルが台湾と断交し中国と国交を結んだことについて、西半球諸国の内政に対する中国のあからさまな介入を受け入れるもので、米国にとって重大懸念だと表明した。
 その上で、エルサルバドルとの関係を見直す方針を明らかにした。 (1809-082403)

 ロシア国防省が、Tu-160 2機が10,000kmを飛行してベネズエラに着陸したと発表した。 同機にはAn-124輸送機とIl-62旅客機も同行したという。
 Tu-160がいつまでベネズエラに留まるのか、どのような武器を搭載しているのかは明らかにしていない。
 Tu-160は射程5,500kmのKh-101 CMを搭載できる。 (1901-121004)

2・9・4・2 その他

 特記すべき記事なし。
2・9・5 そ の 他

2・9・5・1 カスピ海の領有権問題

 ロシア、イラン、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンのカスピ海沿岸5ヵ国の首脳会議が8月12日、各国沿岸から15nmを領海とし、25nmの排他的漁業権を設定した「法的地位に関する協定」に署名した。
 5ヵ国首脳会議は2002年に始まり今回が5回目になる。 (1809-081201)

 カスピ海は湖と海では各沿岸国が得られる権益が大きく異なるため、20年以上にわたってロシア、イランなど沿岸5ヵ国が論争を繰り広げてきたが、カザフスタンで8月12日に開催された5ヵ国首脳会議で、事実上「海」で決着した。
 湖であるとこれまで強硬に主張してきたイランが譲歩したためで、背景にはトランプ米政権によるイラン制裁再発動で懸念される国際的孤立を回避し、ロシアなどとの関係強化を図る方が国益にかなうとの現実的判断があったとみられる。 (1810-090304)

2・9・5・2 その他

 特記すべき記事なし。
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