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1. 概  観

1・1 全  般

1・1・1 総  論

 中東ではISISとの戦いが一段落しようとしているが、今度はクルドとトルコの係争が表面化している。 こうしたなかカタールとサウジ等との間の緊張も高まっている。 いずれもトルコの動きが気になる。

 東アジアでは中国を軸に東南アジア諸国やインド洋周辺諸国、それに日本を巻き込んだ地域安全保障の不安定状態が続いている。
 特に中国の分身とも言うべき北朝鮮が繰り出す硬軟組み合わせた攪乱戦略に、米韓両国は翻弄されている。

 ロシアのウクライナ侵攻とクリミア奪取から来る欧州各国の高まりが欧州各国の防衛力増強を後押ししている。
 冷戦終了後欧州から殆どの部隊を撤退させた米国は、再び欧州への進駐を開始しているが、トランプ米大統領に対する欧州各国の不信から欧州独自の防衛力保有の動きが徐々に広がっている。

 周辺国では中国がGDPの伸びを大きく超えた軍事費で、質的にも量的にも兵力が大きく増強されており、部分的には米兵力と拮抗し始めている。 その狙いは世界にわたる覇権の確立にあり海外拠点の拡充や、いわゆる高利貸し外交を通じて海外から略取した港湾管理権を活用して世界規模の海軍を建設しようとしている。
 中国の戦力増強で目立つのは水陸両用戦遂行能力の拡大で、大型揚陸艦から水陸両用戦闘車両まで整備が進められており、海兵隊の大幅な増強も報じられている。

 経済不振のため軍事費が制約されているロシアも、大規模演習を繰り返すなどして兵力を誇示している。 ただ予算不足から装備の近代化は当初計画したとおりには進んでいない。

 強硬外交路線を取るトランプ政権は矢継ぎ早に安全保障や国防の基本方針を示した文書を公開しているが、具体的な施策はややチグハグで、大統領の発言との一貫性が見られない。

 こうしたなか中国との対決を強めるインドには防衛力を増強しようとする意欲が見える。

 我が国は2018年末に防衛計画大綱の見直し、次期中期防の決定、及びこれらを実現する平成31年度防衛関係予算政府案の決定など大な動きが集中した。
 これらを通じてDDHの実質空母化やF-35Bの導入、長距離超高速滑空弾の整備などと、宇宙、サイバ部隊の編成など多くの決定が成された。
 中でも2回の補正を経た平成30年度防衛予算が実質5%増になった意義は大きい。

 国内での独自開発が断念されたF-2戦闘機の後継開発は依然として方針が定まっていない。

1・1・2 係争地域の情勢

 中東ではまだISISとの戦闘が続いているが、ISISが概ね制圧されたことにより新たにクルド問題やイエメンを舞台にしたシーア派とスンニ派の抗争に焦点が移った。
 またカタールとサウジの対立も解決しておらず、これらを巡ってこの中でトルコの動きから目を離せない。

 東シナ海情勢は相変わらず中国が挑発行動を繰り返しているが、南西諸島での我が国の急速な防衛力強化や米国の強力なバックアップにより、当面中国は手出しできない状況にある。

 南シナ海情勢はほぼ中国の独り相撲の状況を呈している。
 米英仏豪などと我が国が南シナ海で艦船の活動を行っているが所詮一時的なもので、中国が行っている人工島の軍事基地化を止める力にはなっていない。
 ベトナムやインドネシア、マレーシアは中国への対抗策を強化しつつあるが、親中派のカンボジアや中国傾斜を強めるフィリピンは対中国でASEANの結束を乱している。

 中印の対立は2018年だけを見ると国境地帯での大な動きはない。 インド洋の覇権争いも中印両国による周辺国の取り込みが中心になっている。
 こうしたなか、スリランカ、モルジブ、マレーシアなどで親中国派が次々と政権を追われているのが注目される。

 朝鮮半島情勢は2018年に目まぐるしく変化した。
 平昌で冬季オリンピックが開かれた2018年当初には米軍が武力行使に踏み切るのが間近と思わせる動きがあったが、4月に南北首脳会談が行われると状況が一変した。
 7月には歴史的な米朝首脳会談も開かれ朝鮮半島の非核化で合意したかに見えたが、その後期待通りの進展は見られていない。

 欧州ではウクライナとロシアの対立が膠着状態にある。 東側の親露勢力と西側の政府軍の戦闘は大な動きは見られないが、アゾフ海からのウクライナ排除を狙うロシアの動きが新たな注目を浴びている。
 ロシアのクリミア侵攻を契機にNATOを中心とする欧州各国の軍備増強やフィンランド、スウェーデンなどの非同盟国の米国への傾斜が進んでいるが、トランプ大統領の一国主義や英国のEU離脱問題などから、欧州独自軍の保有が独仏を中心に強まってきている。

 この中でトルコが米国や西欧諸国から距離を置きつつあり、ロシアに接近する傾向が目立っている。
 エルドアン大統領はクーデター未遂事件の摘発と称して独裁体制を固めようとしており、シリアでISISとの戦いで中核となってきたクルド勢力への武力攻撃を進めようとしている。 更にロシアから黒海海底を経るガスパイプラインの設置を進めている。

 イスラエルはイランがシリアに進出しているとしてシリアのイラン軍基地空爆を行うと共に、ガザ地区のハマスなどとの戦いも進めているが、どちらも戦況に大な変化は見られない。

 地球温暖化に伴う北極海の融解により、その戦略的価値が急速に高まっている。
 このため北極海周辺国では砕氷艦の建造など、何十年ぶりとされる動きが高まっている。

 黄海では中国と韓国が領有を主張している海域での侵入事件が多発しているが、近い将来大な問題に発展する兆候はない。

 ロシアが南米ベネズエラに爆撃機と輸送機を派遣したのはその企図がまだ分からないだけに今後注意深く監視する必要がある。


1・1・3 周辺国の情勢

 中国軍は組織改革を通して、国土防衛型から外向進攻型への転換を意図している。

 中国は西太平洋に空母や爆撃機を進出させて大規模演習を行い、太平洋の覇権獲得しようとしている。 また既存の海外拠点を拡充すると共に新たな拠点を地中海や南太平洋に求めるなど、海外拠点の拡充に努めている。
 このため艦艇の大量建造を行うと共に、海軍の活動活発化、活動範囲の拡充などで、外洋遠征型海軍への発展を目指している。
 空軍でも積極攻勢論が台頭し、三段階で戦略部隊に発展させると計画が進められており、21世紀の中頃までに完全な世界規模の空軍に発展させようとしている。

 インフラなどの整備を熱望している開発途上国の弱みにつけ込み返済不可能な高額の資金を高利で貸し付け、その資金は工事を中国企業が受注して回収した上、開発途上国が返済に窮するとその国の港湾等の利権を奪う、「高利貸し外交」あるいは「債務の罠」外交を依然として進めているが、スリランカでその現実が見えてくると各国とも計画の見直しを始めている。

 これとは別にロシアへの接近やASEAN諸国の取り込みなどを行い、徐々に世界規模の覇権構築を行っている。

 台湾に向けたBMやCMの配備など台湾制圧の準備も一段落し、爆撃機等による台湾を周遊する飛行や、艦船の航行による威嚇などに発展している。
 また台湾侵攻が狙いと見られる航空基地の強化も行われている。

 我が国に向けた挑発は北海、東海艦隊への新造艦、特に新型揚陸艦の配備や、爆撃機や艦船の日本海進出などに発展しているが、米国に対してはグアムやハワイを狙ったと見られる爆撃機の飛行が行われている。

 中国は経済が不振であるなか、GDPの成長率を大きく上回る率で軍事費の増額を行っており、ASATなどの宇宙兵器から、艦船、航空機、ミサイル等の増強を進めている。 中でも揚陸艦を初めとする水陸両用戦力の増強と、遠距離作戦に欠かせない輸送艦の増強が注目される。
 またUAVやUSVについても熱心で、2018年に報告された新型MALE/HALE UAVは殆ど中国製になっている。
 更に電磁砲やレーザ砲、超高速飛翔体、UAVやUSVの群制御など、世界が注目している先端技術でも後塵を拝していない。

 北朝鮮では2018年始めにSLBM搭載潜水艦の建造などが報じられたが、南北/米韓首脳会談以降は、サイバ戦を除いて軍事力増強に関する報道が殆ど見られない。

 韓国も南北/米韓首脳会談を契機に大きく揺さぶられてはいるが、国防予算の伸び率、装備品の開発や整備、海外からの装備導入はほぼ規定方針通り進められている。
 またK9 155mm SPHを初めアジア諸国への艦艇の輸出は着実に売り上げを伸ばしている。
 こうしたなか北朝鮮に代わる仮想敵の設定のためか、厳しい対日姿勢が目立っている。

 台湾では戦闘機や艦船の国産能力を高める動きが盛り上がっている。
 トランプ政権の親台湾方針で台湾旅行法を成立し、高官の交流や艦船の台湾寄港が始められている。

 東南アジアではフィリピンが依然として中国接近を図っているものの、対米関係は共同演習の継続や武器の輸出などで、ドゥテルテ政権発足当初に比べて対米関係は改善されてきている。
 一方マレーシアでは新中国政権が倒れてマハティール政権が復活した。

 オーストラリアでは対中国の姿勢が二転三転しているものの、防衛力整備には大な影響を与えていない。 むしろニュージーランドが中国との対決姿勢を明確化したことの方が今後注目される。
 南太平洋諸国では進出を目論む中国とそれを阻止しようとするオーストラリアなどの動きについて、まだ方向性がハッキリしていない。

 ロシアは厳しい税制事情のなか軍備増強を進めている。 しかしながら最新鋭兵器の調達などで計画との乖離が大きくなっている。
 それでも軍は地中海や北太平洋で積極的な活動を繰り広げている。

 強硬外交路線を取るトランプ政権は2017年末から矢継ぎ早に国家安全保障や国防の基本方針を示した文書を公開しているが、出るべきはずの四年毎の見直しQDR 2018がまだ出ないのは奇異である。
 トランプ政権で特徴的なのは国防費の大幅増額で、FY20でも更なる増額が予想されている。
 太平洋軍をインド太平洋軍に改称したり、宇宙軍を創設したりしたが、当面は実態に大な変化はない。
 大統領は一時在韓米軍の削減撤収を主張したが、実際にはその動きはない。

 在日米軍では空母艦載機部隊の厚木から岩国への移駐が完了し、岩国基地が嘉手納基地を抜いて数では東アジア最大規模の米軍の航空基地となった。
 在日米軍では新田原基地と築城基地に米軍用弾薬庫などを新たに整備することになったのが注目される。

 インドではSLBMの搭載が可能な国産の原子力潜水艦が就役し、陸と空に加えて海からも核ミサイルで攻撃できるようになった。
 一方、初の国産空母は2020年に洋上試験を開始するという。

 5,000kmの射程を有するAgni Ⅴの発射試験に成功し、射程が600kmある実配備型Agni I SRBMの発射試験にも成功した。
 またBrahMos (PJ-10) 超音速CMをSea State 7状態で発射する試験に成功すると共に、2017年11月にSu-30MKIによるBrahMos-A ALCMの発射試験成功を受け、一部のSu-30MKIをBrahMos-A搭載可能に改造し、2個飛行隊を編成する計画である。

 インドはAshvin AADの発射試験に成功した。 しかし2014年までにデリーとムンバイに配備するとしていたBMDシステムは未だに開発段階にある。

 インドは敢えて米国の対露制裁に反してロシアから更に5個システムのS-400を購入する。
 一方、ロシアと11年間にわたり進めてきた第五世代戦闘機計画から撤退した。

1・1・4 国内情勢

 防衛計画大綱の見直しと、次期中期防の策定が行われた。

 防衛計画大綱の見直しでは敵地攻撃能力の保有、長射程ミサイルの導入、DDHの空母化、F-35Bの導入が主な争点になったが、最終的に敵地攻撃能力の保有は取り入れず、DDHの空母化は多用途運用護衛艦と位置付け空母の名称を見送った。
 F-35については中期防でF-35を45機整備し、その内18機をF-35Bとすると決めた。
 大綱ではこの他に、サイバー防衛部隊と海上輸送部隊を陸海空自とは別に新設し、陸自には島嶼防衛用高速滑空弾部隊と弾道ミサイル防衛部隊、空自には宇宙領域専門部隊と無人機部隊を親編するとした。 海自には中期防で護衛艦10隻、潜水艦5隻と共に哨戒艦4隻を新造するとした。

 防衛関係予算は平成30年度予算が2回の補正を含めて5兆6,281億円と5%増になった。
 平成31年度予算当初予算は政府原案で1.3%増の5兆2,574億円となった。

 周辺海域防衛の安全保障では、海洋安全保障政策の推進、南西防衛を重視した部隊配置、 離島奪還演習の実施などが強化された。 特に東シナ海だけでなく日本海警備の強化や全国規模の離島管理強化が注目される。

 海外での活動では、戦略的寄港として自衛艦の海外派遣、多国間合同軍事演習を通じての邦人保護活動訓練、海外拠点の整備などが盛り込まれた。

 各国との防衛協力では米国との防衛協力のほか米軍を含めた多国間の防衛協力が推進され、更にオーストラリア、インド、カナダ、欧州諸国、アジア太平洋諸国、その他諸国との2国間防衛協力も進められている。 韓国との防衛協力も僅かではあるが行われた。

 Aegis Ashore 2個システムの導入を決め、秋田県と山口県に配備されることになった。 Aegis Ashoreが使用するレーダは米国が採用しているAN/SPT-2やAN/SP-6ではなく、Lockheed Martin社製LMSSRに決まった。
 Aegis Ashoreが発射するSM-3 Block ⅡA の共同開発は、1月に迎撃に失敗したが、9月と10月に迎撃に成功している。
 米陸軍が西太平洋地域のBMD部隊を隷下に納める旅団の司令部を相模原に置いた。 更にBMD用早期警戒レーダHDR-Pを日本に置くという。

 宇宙利用で政府は、尖閣諸島など日本周辺の監視強化に向け、超小型衛星の導入を検討している。

 宇宙防衛で防衛省は、山口県山陽小野田市に宇宙状況監視 (SSA) 施設を建設し、JAXAや米軍と協力して人工衛星やスペースデブリと疑われる物体の識別追随を行う。
 また新中期防では、宇宙設置型光学望遠鏡及びSSAレーザ測距装置を新たに導入するとしている。 更に宇宙空間の状況を監視する人工衛星(SSA衛星)を導入する方向で検討に入っている。

 サイバ防衛では米国やNATOなどに要員を派遣し教育を行うと共に、ホワイトハッカーを特定任期付隊員として採用し活用することを考えている。
 また盗聴やハッキングが不可能とされる量子暗号通信の実用化に向けた研究に乗り出す。

 防衛省が国内企業から防衛装備品を購入する際の費用を抑えるため調達価格の算定基準を見直すと共に、米国からのFMSでの装備購入についても見直しを行い、中期防では27兆4,700億円と見積もられる総経費を25兆5,000億円程度に抑制するとしている。  政府はF-2後継機について、国内独自開発、国際共同開発、既存機の改修のいずれかで検討を進めてきたが、国内独自開発を断念する方向で最終調整に入った。
 これに対してLockheed Martin社がF-2後継にF-22とF-35の複合型を提案している。

 新装備ではAegis Baseline 7Jを装備しCECも装備するAegis護衛艦の七番艦まやが進水したほか、排水量3,900tの平成30年度護衛艦 (30FFM) 2隻を発注した。
 潜水艦ではそうりゅう型9番艦が就役し、そうりゅう型にリチウムイオン電池を搭載するなど最新技術を詰め込んだ27年度艦潜水艦が進水した。

 武器輸出ではUS-2のインドへの輸出、US-2のギリシャへの輸出、FPS-3の改良型防空レーダのフィリピンへの輸出などを目指したが、いずれも受注に至っていない。
 タイへのFPS-3の改良型防空レーダ輸出は受注を逃した。
 こうしたなか、航空自衛隊が保有するF-15の一部を米国に売却する検討が進められている。


1・2 係争地域の情勢

1・2・1 中 東

1・2・1・1 まだ続く ISIS との戦闘

 イラクでは2017年12月にはアバディ首相がISISの駆逐を宣言したが、残党が山岳地帯などに潜伏しているとされ、残存勢力との小競り合いが続いている。

 シリアではISISが劣勢にあるもののイラクとの国境に近いユーフラテス川沿いで抵抗しており、シリア民主軍 (SDF) が掃討作戦を続けているが、SDFはトルコの侵攻を受けて兵力を転用せざるを得なくなり作戦が遅滞することが懸念されている。

 こうしたなかイラクとシリアでISISと戦ってきた連合国軍がISISの麻薬貯蔵施設を破壊した。 この施設には大量の不法薬物が貯蔵されておりISISはこれらを使用していた疑惑が持たれている。

1・2・1・2 クルド問題

 イラクのクルド勢力はトルコの越境攻撃と、2017年にPeshmergaがイラク政府に制圧された結果、勢力が弱体化している。

 シリアでは>米国主導で国境警備隊の創設配置され他のに対しトルコが強い反感を示し、これに対抗してトルコはロシアとイランの連携工作を進め、ロシアとトルコが非武装地帯設置で合意している。

 トルコは1月にクルド人の町Afrinに対する攻勢作戦を開始して3月にこれを制圧した。
 更にトルコは2016年にISISを掃討して以来米軍も駐留しているManbijをも制圧する姿勢を見せたのに対し米国はトルコと妥協してManbijでのトルコ軍との共同パトロールを受け入れた。 これを契機にトルコはクルド支配地域であるトルコのユーフラテス河以東への攻勢もちらつかせている。

 米国が12月にシリアからの撤退を表明したことから、対米不信を高めたクルド側はフランスへの援助を求めると共にシリア政府側とも手を結び、Manbijへのシリア政府軍の進駐を許容した。

 クルド問題はイランも生起し、イラン革命防衛隊が8月にイラクとの国境に近いクルド人の町を攻撃している。

1・2・1・3 シリア情勢

 シリアではロシアと米国の勢力確保競争が繰り広げられ、両軍が基地合戦を繰り広げるなかトランプ米大統領が3月にシリアから数週間以内に撤退すると宣言した。 これは実現しなかったものの12月にも再び撤退を宣言し、対ISIS戦を実施しているクルド勢力から強い不信感をもたれている。
 この間、米露の直接交戦があったとも報じられている。

 シリア内戦にはロシアに加えてイランもアサド政権支援を行っている。

 アサド政権は3月に、首都ダマスカス東部Ghouta地区を勢力下に置く反政府勢力への攻勢を強め5月にはこれを制圧したが、この戦闘で政権軍は化学兵器を使用した疑惑が持たれた。 米政府はGhouta地区のドゥーマでは塩素ガスに加え、神経剤サリンも使用されたとみている。
 米軍は化学兵器使用の報復として4月に大規模な空爆とCM攻撃を実施した。

 その後もアサド政権軍は反政府勢力に対する戦いを優勢に進めている。

1・2・1・4 ペルシャ湾

 ペルシャ湾沿岸では引き続きイランと湾岸諸国が対立状態にあり、湾岸諸国がBMDSなどの軍備増強に努めている。 特にイエメンからのイラン製BM攻撃に晒されているサウジアラビアはPAC-3に加えてTHAADも保有しようとしている。
 THAADについては既にUAEが発注しており、カタールも売却を要求しているという。

 こうしたなかサウジアラビアなどとカタールの関係悪化して国交断絶に陥り、双方に基地を保有する米軍が板挟みになっている。

1・2・1・5 イエメン紛争

 ハディ暫定政権とフーシ派の内戦はサウジアラビアを中心とするスンニ派とイランが支援するシーア派との代理戦争の様相を呈している。
 特にスンニ派を主導するサウジはフーシ派からのイラン製BMの攻撃を受け、紅海の港湾都市Al-Hudaydahを支配するフーシ派はUAEなどの攻撃で追い詰められている。

 一方、紅海の入り口にあるBab al-Mandab海峡ではフーシ派がサウジのタンカーを攻撃したため、緊張が洋上にまで広がっている。

 この紛争で米国は反イランで一致しているサウジ側を、空爆機に対する空中給油などで支援していたが、サウジの国内問題などから距離を置く方向に傾いている。

1・2・1・6 イラン

 米トランプ政権が5月に、2015年に結ばれたイランとの核合意破棄を破棄したことから、米国とイランの間の緊張が高まり、ホルムズ海峡封鎖の事態も再度考えられるようになってきた。

 これに対抗してイランは、戦闘機の国内開発、弾道弾の整備や発射試験、防空システムの整備、長距離AAMの量産など、軍備強化に努めている。
 また海外の反米反イスラエル勢力等への支援を行うなど、米国への対決姿勢を強めている。

 ただ国内で反政府デモが拡大し、最高指導者のハメネイ師を頂点としたイスラム体制への異例の批判に発展するなど、国内の不安定化も懸念されている。

1・2・1・7 その他の中東情勢

 10月にサウジアラビアの反体制ジャーナリストがトルコのサウジ総領事館で行方不明になった事件で、サウジに対する国際世論の反発が高まっている。
 このためドイツやカナダがサウジに対する武器輸出を留保したが、フランスと米国は輸出を継続するとしている。 しかし米国はイエメンに向かうサウジ戦闘機にに対しての空中給油支援を中止するなどの反応を見せている。

 中東における米軍はPatriotの撤収やシリアからの地上軍撤収が行われる反面、空母が9月11日事件以来のペルシャ湾入りするなどしている。

1・2・2 東シナ海

1・2・2・1 中国の動き

 中国が6月に東シナ海の日中中間線付近に掘削船を設置し、9月には新たに移動式の掘削施設を設置し、11月にはこれを移動させて新たな試掘に着手するなど、我が国を挑発する動きを見せている。
 海上保安庁によると中国が、日本が排他的経済水域の境界として設定した日中中間線の日本側に「国家海洋局」と書かれブイを設置した。

 また1月には商級原潜が接続海域で潜航通過したり、3月と7月には海警局の警備艦が相次いで日本の領海に侵入したりと挑発を続け、10月には中国の海洋調査船が日本の排他的経済水域で活動するなど、活発な活動を行っている。 この間も軍に編入された海警局の警備艦による接続水域の航行が日常的に行われている。

 空軍機によるJADIZ突破は常態化しており、5月には爆撃機を含む中国軍の多数機機が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡上空を飛行する特異な飛行も行われている。
 一方中国は、東シナ海に面した福建省寧徳市に2,700m滑走路とその端に戦闘機を収納できる24基のシェルタを持つ新たな航空基地を建設している。

1・2・2・2 我が国の対応

 東シナ海の緊迫に対応して南西諸島に新たに陸上自衛隊の配備を進めると共に、映像伝送能力の強化など海上保安庁の態勢強化も進めている。

 5月には自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を回避するための「海空連絡メカニズム」の運用開始で合意したが、中国政府が求めにより、対話開始まで最大48時間の待機時間を認める規定があることから、衝突回避の実効性を疑問視する声が出ている。

 7月には東シナ海を想定した、自衛隊、警察、海上保安庁が参加した夜間演習を実施している。

1・2・2・3 米国の対応

 米国は他国の領土問題には関与しないとの基本的な立場を取るものの、ペンス米副大統領が10月に尖閣諸島は日本の施政権下にあると述べ、東シナ海で覇権的な進出姿勢を強める中国に対抗していく姿勢を打ち出した。

 9月には複数のB-52が東シナ海を飛行し航空自衛隊の戦闘機との共同訓練を行うなど、示威活動を行っている。

1・2・3 南シナ海

1・2・3・1 中国の動き

1・2・3・1・1 人工島の軍事拠点化

 中国はスプラトニ諸島のFiery Cross礁やMischief礁、Subi礁など人工島にASCMとSAMを配備したり、この3箇所に建設した滑走路に軍用機を着陸させてたりと、人工島の軍事拠点化を加速している。 スプラトリー諸島に造成した人工島には電波妨害装置を配備したとも報じられた。

 またパラセル諸島Woody島に初めてH-6Kを着陸させ離着陸訓練を繰り返している。 H-6Kの航続距離は1,800kmで、Woody島から南シナ海全域をカバーできる。 更にパラセル諸島Bombay礁北端の海上に上部にドーム形構造物と太陽光パネルが確認され、このドームは付近の海上交通路で情報収集する軍事目的の探知装置である可能性が高いという。

 南シナ海の北端に位置する海南島の凌水航空基地にはKJ-200/500 AEW&C機と共にHALE UAVが配備されている。

 中国海軍は南シナ海で3月に大規模な演習を実施した後、4月に海南島沖の南シナ海で、空母遼寧を含む48隻の艦艇による史上最大規模の観艦式を行い威容を誇示した。 その後5月には中国海警局が南シナ海パラセル諸島周辺の海域で初めて海軍と合同で哨戒を行った。

 4月にはベトナム漁船がパラセル諸島のLinkoln東島近海で中国船から攻撃を受け沈没した。 ベトナム漁船は中国船2隻に体当たりを受け、乗り込んできた銃を持った5人から書類への署名と指紋押印を求められた。 しかしながらフィリピン漁船に対するこの種行動は報告されていない。

 中国国防省は、米艦2隻が5月にパラセル諸島近海に進入したことに対し、南シナ海での海空における戦闘準備態勢を強化すると発表した。
 9月にはスプラトリー諸島周辺で航行の自由作戦を実施していた米駆逐艦に中国の駆逐艦が41mの距離まで異常接近し、複数回にわたり攻撃的な接近を繰り返した。

1・2・3・2 周辺国の動き

 南シナ海における中国の活動に対しASEANは、名指しを避けながらも人工島の軍事拠点化を進める中国に自制を促した。
 声明草案には、ベトナムが懸念対象に「軍事化」を盛り込むよう求めているとの注釈があったが、中国に配慮するカンボジアなどが反発したため結果的に入らなかった。

 対中接近路線をとるフィリピンが、中国と南シナ海における石油・ガス開発の共同調査を検討する作業部会設置で合意した。 また4月に両国は、軍事防衛面での協力を強化し、中国側が新たに経済支援を供与することに合意した。

 これとは反対にベトナムは、中国がFiery Cross礁、Subi礁、Mischief礁にミサイルを配備したのを受け、5月に中国に対して撤去するよう要求した。

 インドネシアは12月に大ナトゥナ島にSAMや軍港、飛行機格納庫、病院などの軍用施設を建設し開所式を行った。 
 南シナ海南端ナトゥナ諸島の北側海域は、インドネシアの排他的経済水域 (EEZ) 内だが、中国が主張する九段線と一部が重複し、違法操業を続ける中国漁船の拿捕などをめぐり、両国は対立してきたが、

1・2・3・3 米国の対応

 ペンス米副大統領が11月、南シナ海はどの国にも属していないとし、米国は今後も国際法で認められる限り航行を続けると述べた。

 4月には米空母Theodore RooseveltとそのCSGが南シナ海で演習を行い、F/A-18が離着陸訓練を行った。

 米海軍は南シナ海で、3月、5月、9月、11月に航行の自由作戦 (FONOP) を実施した。 このうち3月と5月には中国が領有を主張する人工島の12見も以内を航行した。
 また9月、10月、11月にはB-52が南シナ海上空を飛行した。

 この様な状況から防衛研究所が中国の軍事動向についてまとめた年次報告書では、米中間で偶発的に危機や衝突が起きるおそれもあると指摘している。

1・2・3・4 諸外国の対応

 英国はは2月に豪州に到着するフリゲート艦が本国帰還の途中で南シナ海を航行し、英海軍にその権利があると明確にする。 また3月にはフリゲート艦が航行の自由の確保を目的に、オーストラリアを出港して南シナ海を航行すると明らかにした。
 更に8月末には揚陸艦Albionがパラセル諸島付近を航行した。

 6月にはフランスと英国の艦船が南シナ海の海域で合同で航行の自由作戦を遂行した。

1・2・3・5 我が国の対応

 米海軍が3月に空母Carl Vinsonと駆逐艦Wayne E. Mayerが 南シナ海で護衛艦いせと共同演習を行った。

 また8月に米海軍と海上自衛隊の艦船が南シナ海で共同訓練を行った。 訓練には米側から空母Ronald Reaganのほか巡洋艦Antietamと駆逐艦Milius、海上自衛隊からは護衛艦かがいなずますずつきが参加した。

 この演習後9月には潜水艦くろしおが合流して対潜水艦戦訓練を実施した。 くろしおは8月に呉基地を出港しバシー海峡を通って南シナ海に入った。

1・2・4 中国対インド

1・2・4・1 中印関係

 インドのモディ首相が4月に訪中し、国境地帯での対立などを適切に処理し関係の改善を進めることで一致した。
1・2・4・2 中印国境紛争

 2018年における中国軍の実効支配線侵犯件数が2017年の170件から137件へと20%減少している。

 ただ、中国軍の兵力増強は続いており、インドと国境を接する西部戦区の航空戦力を増強している。 また防空部隊の戦力も強化されている。
 これに対してインドは7月に、中国との国境地帯に9万名規模の山岳打撃軍団を配置する計画を、主として財政上の理由から保留することにした。

 中印は両国に挟まれたネパールとブータンを勢力下に置こうと働きかけている。
 モディ首相は5月にネパールを訪問しインフラ整備などでの協力を働きかけたが、11月にネパールの外相は中国との協力を拡大する意向を示した。 計画はカトマンズとチベットを結ぶ鉄道の建設が柱で、道路や通信も生かして結びつきを強める。

1・2・4・3 インド洋の覇権争奪

 インド洋周辺での中印による港湾争奪戦が続いており、インドは中国が支援するパキスタン西部Gwadar港はわずか120kmのイラン南東部Chabahar港に巨額投資をして港を建設しており、2017年12月には第一期工事を完了している。 また2月にはオマーンDuqm港をインド海軍が使用することに合意している。

 インドはまた9月にベンガル湾周辺諸国軍合同演習の主催したり、2019年3月にインド西部でアフリカ諸国との共同演習を計画するなど、環インド洋諸国との軍事協力関係強化に努めている。
 更に7月にはインド太平洋地域の海洋安全保障についてインドとASEANが話し合う会議が開かれた。
 一方でインド海軍は2月に、2ヶ月間にわたり実施してきた二正面同時作戦演習を終了している。

 中印がインド洋での覇権争奪を行うなか、この影響でインド洋島嶼国で中印どちら側につくかで国内政治情勢が不安定化している。

 3年前に中国一辺倒の大統領に選挙で勝利して政権を樹立したシリセナ大統領が、10月に首相を解任し親中派の前大統領を首相に指名したため、議会と大統領の対立が続いていたが、12月に議会で不信任決議が採択され、親中派の首相が辞任した。
 モルジブでは中国寄りのヤミーン大統領にナシード元大統領が「中国によって土地が収奪されている」と批判したため2月に大統領が非常事態宣言を出したが、9月に行われた大統領選でヤミーン大統領は敗北した。
 その後ヤミーン氏の大統領職居座ったが結局撤退し、親印派のソリ氏が新大統領に就任した。

 セーシェルではアサンプション島にインド軍が滑走路や埠頭を造ることを1月に政府間で合意したが、議会で過半数を握る野党が反発し承認しないとしたことから、政府議案提出しないことにした。
 モーリシャスでも一部の島にインドが軍施設を設けるとの情報が広がり、野党が議会で国家主権を放棄するなと追及している。

1・2・5 インド対パキスタン

 2003年の停戦合意にもかかわらず、最近になってカシミールを巡るインドとパキスタンの武力衝突が激化しており、1月の戦闘だけでも5名の民間人と兵士1名が死亡した。
 10月にはインド北部のジャム・カシミール州でインドからの分離を求める過激派武装グループを軍が包囲し銃撃戦となり、武装グループの3人が死亡、兵士2人が負傷した。 軍が武装グループを制圧したあと、掃討作戦終了後も残されていた爆発物が爆発し、7人が死亡、40人が負傷した。
 一方、インド側とパキスタン側を分断しているカシミール地方の実効支配線近くでも、インド軍と越境してきた武装グループとの間で銃撃戦が起き、兵士3人と武装グループの2人が死亡した。

 パキスタンの軍備増強も活発で、現在パキスタンが140~150発保有している核兵器は7年後に220~250発になると見積もられている。 またMIRV 弾頭の開発、国産CMの洋上発射と水中発射、地対艦CMの発射試験などが報じられている。
 また中国との武装MALE UAVの共同生産や、ロシアからのSu-35導入も伝えられている。

 一方米国は1月に、タリバンやその一派への対策が不十分であると判断し、パキスタンへの軍事援助を凍結すると発表した。

1・2・6 朝鮮半島

1・2・6・1 板門店宣言までの北朝鮮

 2月には平昌で冬季オリンピックが開かれる前日に北朝鮮が建軍記念日に閲兵式を行い、火星15 ICBMも数発を初公開するなど米国との対決姿勢を鮮明にした。

 しかしながら4月に発表された板門店宣言後の9月に行われた軍創建70周年記念日式典ではICBMを含むBMは登場せず、米国を意識して非核化に向けたアピールの狙いがあったとみられる。

1・2・6・2 板門店宣言までの米国

 ペンス副大統領は2月の来日に先立ちアラスカ州の米軍基地でICBMへの迎撃態勢を点検し北朝鮮をけん制している。 1月末には、2017年11月に来日したばかりの在韓米軍司令官のブルックス大将がひそかに再来日しに谷内国家安全保障局長や秋葉外務次官らと相次ぎ会談した。

 米太平洋軍司令官のハリス海軍大将が2月に議会公聴会で、朝鮮半島有事における民間人脱出計画 (NEO) を作成したと証言した。
 ハリス海軍大将は韓国に駐在する米民間人は200,000人程度と見られ、日本人も60,000人程度いると見られると述べたが、韓国の専門家は在韓米国人を230,000人、在日米国人を90,000人と見ている。
  Stars & Stripes紙は3月に、米軍が4月に行う米韓合同軍事演習で在韓米国人の大規模な国外退避訓練を行うと報じた。  米軍は毎年春と秋に米軍人の家族と軍属を対象に日本への退避訓練を行っているが、今回は初めてボランティアの参加者100名を実際に米本土まで移送する。
 トランプ米大統領は平昌冬季五輪開催前に在韓米軍の兵士らの家族を韓国から退避させる指示を記載した覚書を補佐官に作成させていた。

 2月下旬には米軍が朝鮮半島での戦争に備えて陸軍参謀総長と特殊戦司令官らが参加した軍の動員および北朝鮮攻撃を想定した図上演習を秘密裏に実施したと報じた。
 この演習では地上軍を支援するために、中東とアフリカに配置された多くの偵察機を朝鮮半島に移動させることも検討された。

1・2・6・3 板門店宣言後の北朝鮮

 北朝鮮が非核化の先行措置として1回目の米朝首脳会談が開かれる前の5月に豊渓里の核実験場を閉鎖したが、すでに6回目の核実験で豊渓里実験場が限界を迎え、もはや使用が困難になっていたことをうかがわせるとも報じられている。 ただ北朝鮮が破壊したと主張する豊渓里核実験場は一部が元のまま残っているとみられるとの報道もある。
 平壌共同宣言で北朝鮮は寧辺の核施設も米側の相応の措置を条件に廃棄する用意を示している。

 7月には38 Northが東倉里発射場の最新衛星写真では、構造物の一部が解体されているのを確認したが、38 Northは10月に、7月に一旦施設の一部の解体作業が始まったが8月上旬に作業は止まり、9月には解体作業で取り壊された施設の一部が放置されるなど、作業は止まったままだとした分析結果を発表した。

 ところが北朝鮮の各施設やBM発射施設の取り壊しは虚偽ではないかとの疑問がでいる。

 北朝鮮に対する制裁決議実施状況を調べる国連安保理の専門家パネルがまとめた上半期について中間報告書では、ウラン濃縮が行われてきた北朝鮮の核施設にある5MWの原子炉が2月~4月の数日間を除いて稼働し続けており、北朝鮮が6月の米朝首脳会談で完全な非核化を約束した以降も核開発を続けているとしている。 また国際原子力機関 (IAEA) が9月の報告書で北朝鮮が核開発活動を停止した兆候は一切みられないとの認識を明らかにした。
 更に12月には破壊したと主張する豊渓里核実験場に一部が残存しており破壊の程度が明らかでないとの指摘が出ている。

 7月にはミサイル関連施設についても東部咸興にあるミサイル開発施設が拡張されている可能性がりミサイル開発を続けている恐れがあると報じられ、北朝鮮が新たに1~2基のICBMを製造している兆候があることが判明したとも報じた。
 平壌共同宣言では、北朝鮮が東倉里のミサイル施設を廃棄することが明記されたが、北朝鮮は他のミサイル基地の廃棄は明言していない。
 更に12月には、北朝鮮がミサイルを発射する際に使用するテレメトリの試験を行っていたと報じられた。 北朝鮮は今までBMの発射に先立ちテレメトリの試験を行うことが多かった。

1・2・6・4 板門店宣言後の韓国

 北朝鮮が5月、米韓大規航空演習Max Thunderを理由に予定されていた南北高官級会談を中止すると一方的に通知した。 北朝鮮が問題視したMax Thunder演習は5月に行われる米韓空軍の年次連合演習で、F-22、B-52、F-15Kなど約100機が参加する。
 韓国政府が6月に予定される米朝首脳会談を前にB-52との共同演習Blue Lighteningへの参加を見送っていた。 米空軍のB-52H 2機が朝鮮半島南端付近の上空を飛行したが韓国の防空識別圏には進入しなかった。

 韓国が南北首脳会談を目前に、米韓軍が4月に合同の野外機動演習Fall Eagleを事実上終了した。 また合同指揮所演習Key Resolveについても南北首脳会談当日は一時中断する。
 Fall Eagleは陸海空軍と海兵隊が参加する野外実動演習で、米軍は海外増援戦力を含む11,50名、韓国軍は300,000名が参加した。
また合同指揮所演習Key Resolveについても南北首脳会談当日の27日は一時中断する。

 8月に実施される予定の米韓合同演習 "乙支Freedom Guardian" (UFG) を巡り、北朝鮮の反発で縮小される。
 米国と韓国が10月、12月に実施予定の定例合同軍事演習Vigilant Aceの中止を決定した。
 マティス米国防長官が11月、韓国と毎年春に行う合同演習Foal Eagleについて、2019年は範囲を縮小して、北朝鮮との外交関係に悪影響が及ばないようにする考えを表明した

 韓国軍関係者が6月下旬に実施を予定していた同軍単独の指揮所演習「太極演習」の延期を決めたことを明らかにした。 太極演習は指揮所演習で、合同参謀本部が主催して軍団級以上の作戦部隊が参加してきた。
 韓国軍が南北軍事境界線に近い北西島嶼で毎年下半期に実施している定例の砲撃訓練を2018年は行わない方針である。 韓国政府は、接敵地域での砲撃訓練は板門店宣言の敵対行為の全面中止の精神に抵触すると述べた。 韓国軍が10月東海岸で陸軍と海軍が毎年行ってきた韓国軍の大規模火力演習も中止した。

 韓国が10月に、南北は敵対行為の中断、非武装地帯の平和地帯化、黄海の平和水域化を継続的に進展させていくとして、実質的な措置として非武装地帯内にある哨所 から人員と装備を撤収する方針を明らかにした。

 9月に平壌で開かれた第3回南北首脳会談で軍事境界線付近の飛行停止合意した。 これは米軍にとってはとうてい受け入れられない内容だったうえに、韓国側から事前に詳細な説明や協議がなかったという。 この合意で韓国が休戦ライン前方師団に配備する予定だった師団用偵察UAVが南北軍事合意のため無用になる。

 韓国軍が北朝鮮の核やミサイルに対抗する3軸体系の構築を再検討するとした。 また北朝鮮のBMを迎撃するため開発している長距離SAM (L-SAM) の発射試験が大統領府の指示で複数回にわたり延期されていた。

1・2・6・5 板門店宣言後の米国と西側諸国

 トランプ米大統領が5月に金委員長に対し、体制保証を見返りとして非核化に応じるよう促した。 これに対し北朝鮮は「一方的な核放棄強要」と反発して6月の米朝首脳会談中止も警告した。 また北朝鮮は5月に米韓合同のMax Thunder空軍演習に反対して、6月にシンガポールで開催される米朝首脳会談を中止することもあり得ると警告した。
 これに対しトランプ米大統領が5月に、6月に米朝首脳会談を中止すると表明した。 その上で北朝鮮のばかげた行動に対して米軍は用意ができていると警告した。
 このため北朝鮮は対米非難を自制してきたが、米朝首脳会談の実務交渉が軌道に乗ると今度は例年実施している乙支Freedom Guardian 米韓連合訓練の中断を要求し対米圧力を再開した。

 トランプ大統領は6月12日に米韓首脳会談で韓国との合同演習を凍結する事にした。 この決定について米国は何の見返りもなしに北朝鮮に対し妥協したとの批判が出ている。
 今回の米朝首脳会談で最大の懸案だった北朝鮮の非核化をどのように、いつまでに成し遂げるのかの問題は、北朝鮮の主張を米国がほぼ丸のみした。
 米韓軍は6月に、8月に予定されている定例の米韓合同指揮所演習 "Ulchi(乙支)Freedom Guardian (UFG)" を中止すると発表した。

 米韓合同軍事演習中止に対しては米国内でも懸念が広がったが、米大統領府関係者は定例的な合同演習は続けるが、大規模な演習は中断するという意味だと説明した。

 米国はFFVDという新しい表現を使い出した。 最終的で十分に検証された非核化 (Final、Fully Verified Denuclearization) という意味だが、今までは完全かつ検証可能で不可逆的な非核化 (CVID=Complete、Verifiable、Irreversible Denuclearization) を使い、一時期はPVID (Permanent、Verifiable、Irreversible Dismantlement) を使っていた。
 非核化には進展がないのに、言葉遊びではないのかという指摘もある。

 北朝鮮に対する国連制裁の実行監視のため、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどの西側諸国による制裁逃れの監視が行われている。

1・2・6・6 我が国の対応

 北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の艦艇が2017昨年末から朝鮮半島西側の黄海や日本海の公海上で警戒監視に当たっている。

 2月20日上海の沖合の東シナ海の公海上で、北朝鮮籍のタンカに船籍不明の小型船が横付けしているのを確認した。 2月24日に北朝鮮のタンカーとモルディブ船籍船が東シナ海で接舷しているのを確認した。 5月には中国国旗とみられる旗を掲げた船籍不明の小型船と北朝鮮籍のタンカが洋上で積荷を移し替える瀬取りを行っていたと発表した。 また5月に東シナ海の公海上で互いに横付けし、ホースを接続していた2隻を確認したという。
 6月には北朝鮮籍のタンカが上海南南東の東シナ海公海上で船籍不明の船舶に横付けしているのを発見した。 この2隻は翌日も同じ海域で横付けしているのが確認され、船籍不明の船はその後、中国の国旗とみられる旗を掲げたという。
 外務省が、北朝鮮船籍タンカが7月に東シナ海の公海上で瀬取りを行った疑いがあると発表した。 中国国旗とみられる旗を掲げた船籍不明船が北朝鮮船籍タンカに横付けしていた。

1・2・7 欧 州

1・2・7・1 ウクライナ

 2014年にウクライナ東部で起きたマレーシア航空機撃墜事件で、国際合同捜査チームが5月に使用されたミサイルはロシア軍部隊から搬入されたものだと発表した。

 米国務省が5月、ロシアがクリミア半島とロシア本土を結ぶ橋を開通させたことについて「国際法を無視するロシアの意思を改めて示すものだ」と非難する声明を出し、米国が科した制裁をロシアが半島の支配をウクライナに戻すまで続けると強調した。
 ロシアが12月にウクライナ南部クリミア半島とウクライナ本土を隔てる高さ2mの「国境」フェンスを60kmにわたり完成させたと発表した。

 ロシアが新たに建設したKerch橋の防衛を名目に、カスピ海小艦隊の艦艇をアゾフ海に回航して新たに設立された国土防衛隊 (National Guard) に配属した。 またウクライナが近く米沿岸監視隊から巡視艇2隻を取得することから、ロシアが10月にウクライナ艦艇のアゾフ海への進入を引き続き拒否すると主張した。
 こうしたなかウクライナ海軍の捜索救難艦2隻が米軍の偵察機が見守るなか9月にケルチ海峡を通過して黒海からアゾフ海に入った。

 11月にウクライナ海軍艦艇3隻とロシア沿岸警備隊の艦船がケルチ海峡で小競り合いを起こた。 ウクライナのオデッセイから黒海を経てアゾフ海に向かっていたウクライナ海軍砲兵の艦艇2隻と随伴していたタグボート1隻をロシア沿岸警備隊が砲撃し拿捕した。

 この事件では米国と欧州がロシアに侵略行為を止めさせられなかったことから、トランプ大統領が真剣に同盟を維持しようとしているのかに疑問が起きている。 ストルテンベルグNATO事務総長は事件の翌日にウクライナとの緊急会合を召集することを決定し、ウクライナの領土保全と主権を完全に支援していると述べた。 トゥスクEU大統領もウクライナ艦船の拿捕を非難し、英国、フランス、ポーランド、デンマーク、カナダも今回の事件を非難している。
 ポンペオ米国務長官はロシアによるウクライナの艦船3隻の拿捕は国際法違反だと非難するとともに、両国に対して自制を求めた。

 ウクライナのポロシェンコ大統領は12月、ウクライナ海軍艇拿捕事件後ロシアが国境沿いに地上軍を増強していると警告を発した。 増強兵力は80,000名以上で、砲やMRL 1,400門、MBT 900両、装甲車両2,300両、航空機500機、ヘリ300機を装備しているという。
 現在ケルチ海峡の両側には両国の艦艇140隻以上が集結しているという。

 国防総省がウクライナに対する$200Mにのぼる追加支援を再確認した。 $200Mはウクライナ軍の訓練、装備購入、訓練支援活動に当てられる。 この結果2014年にロシアがウクライナに侵攻して以来、米国の支援額の累計が$1Bに達した。

 在欧米空軍が9月、NATO加盟国でないウクライナが10月に実施するClear Sky演習に米空軍が他の8ヵ国と共に参加すると発表した。
 Clear Sky演習は2018年にウクライナが実施する数件の多国籍演習の1つで、米国は450名を参加させる。  米国防総省が12月、締約国の軍事活動の透明性確保を目的とする領空開放条約に基づき、ウクライナ上空を偵察飛行したと発表した。

 ウクライナのポロシェンコ大統領が9月、NATOに加盟するため憲法を改正する必要があると述べた。 またウクライナ陸軍は2020年までにNATO軍基準に合わせるとも述べた。

1・2・7・2 ロシア

 ロシアが東地中海における海軍戦力構築を目指している。 露国防省は3月に黒海艦隊を計画通りセバストポリから地中海に移動させたと発表した。
 NATOはロシアの潜水艦が大西洋や地中海への進出を活発化させ、その活動は冷戦終結後で最高レベルにあると、その増強に対する警戒を強めている。

 ロシア国防省が1月、Tu-160M2最初の10機をUAC社に発注したと発表した。 露空軍は当初暫定的にTu-160MをTu-160M2に改造し、その後Tu-160M2を新規製造するという。
 国防省によると開発は2021年に完了し、2023年から年産3機のペースで量産するという。

 ロシア陸軍が旧式のm自走榴弾砲と自走迫撃砲を、砲身内を含めオーバーオールして現役に復帰させている。 露陸軍は現在、3種類の152mm SPHと1種類ずつの203mm/122mm SPH、合わせて5種類のSPHを装備しているが、これらを新型の152mm SPHに換装しようとしている。

1・2・7・3 NATO / EU

1・2・7・3・1 欧州諸国の軍備増強

 NATOが2月に開かれた国防相理事会で、米欧間の海上輸送路防衛と欧州域内での部隊や装備の移動の迅速化を担う二つの司令部の新設などで合意した。 新設する2つの司令部は米バージニア州NorfolkとドイツのUrumに置く。

 ドイツ軍の第1戦車師団が2019年に発足するNATO急速展開部隊 (VJTF) の地上部隊VJTF(L)の基幹になる。 VJTF(L)は3~5個戦闘大隊と支援部隊からなる旅団で、ドイツが陸軍4,000名と他軍から1,000名、オランダ、ノルウェー、フランス、ベルギー、ルクセンブルグ、チェコ、ラトビア、リトアニア、米国が3,000名を派遣する。

 マティス米国防長官が6月に、露地上軍の増強に対抗してNATOが "30-30-30-30" 計画を2020年までに達成することを求めた。  "30-30-30-30" 計画とは、30日以内に地上軍30個大隊、航空機30個飛行隊、艦船30隻を動員可能にする計画である。
 "30-30-30-30"隊は東欧防衛の第3防衛線で、

  ・第1防衛線は小規模なTripwire 大隊
  ・第2防衛線は40,000名規模のNATO緊急対応部隊 (NRF)
  ・最終的に第3防衛線の30-30-30-30隊

が対処する。

 7月にデンマーク、ラトビア、エストニアが北方多国籍師団の創設文書に署名した。 この合意にはカナダ、英国、リトアニアも支援国として名を連ねている。
 ドイツとリトアニアが10月に、リトアニア陸軍のIron Wolf旅団をドイツ陸軍戦車師団に編入する合意文書に署名した。

 米国が4月にブリュッセルで開かれるNATO外相理事会で、加盟諸国に国防費の増額を要請した。 NATOは2014年に開かれた首脳会合で、加盟各国が2024年までに国防費を対GDP比で2%に引き上げ、国防費の20%を主要装備品の購入に充てることなどで合意しているが、加盟28ヵ国のうち達成しているのは6ヵ国、具体的な達成計画を提示しているのは9ヵ国、ドイツを含む13ヵ国は未達成である。

 トランプ大統領のアメリカ第一主義を受け、欧州固有の防衛力保持への動きが活発化している。

   英国が主導する欧州介入部隊 (JEF) 計画が2018年後半に完全実働可能になるため、オランダ軍のJutland Dragoon連隊、リトアニアのIron Wolf旅団、ラトビアの機械化歩兵旅団、英軍の空挺連隊第3大隊をはじめとする欧州9ヵ国が参加した最終演習Joint Warrior が4月~5月に英国南部で行われた。
 EU理事会が7月、ソマリア沖で行っているEU海軍 (EU NAVFOR) の海賊対策作戦Operation Atalantaを2020年末まで継続する決定を行い、EU NAVFORの司令部を現在のロンドンのNorthwoodからスペインのRotaとフランスのBrestに移すことも決めた。

 ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領が6月に会談し、ユーロ圏の共通予算創設を含めたEUの改革案に合意した。
 一方EUの政策執行機関である欧州委員会は5月に、次期 (2021~2027年) の中期予算枠組みにおいて7年間の予算総額£1.279Tのなかで防衛費に£13Bを求めていることを明らかにした。

 2017年12月に開かれたEU外相会議と首脳会議で正式に発足したEUのPESCは、優先任務として港湾防衛、洋上哨戒、サイバセキュリティ、急速展開など多彩にわたる17項目を挙げが、半分は医療や兵站などになっている。

 EUの欧州委員会が3月、NATOと連携してロシアの脅威に備えるため部隊や兵器の域内移動の迅速化に向けた軍事版「シェンゲン」と呼ばれる行動計画を公表した。
 計画の中心は部隊や兵器輸送に関連する道路や橋、鉄道といったインフラ整備と規制及び事務手続きの簡略化するもので、2018年半ばまでに必要な基準をまとめ、優先事業の選定などを行う。

 ドイツのメルケル首相が11月に欧州議会で欧州軍創設を呼び掛けた。 メルケル首相はフランスのマクロン大統領との会談に先立ち、マクロン大統領と共に提唱する欧州軍について創設に向けた協力体制を取ることで一致しているとの考えを示した。
 マクロン大統領も、欧州に共通の防衛体制と安全保障が必要だと述べた。

 マクロン仏大統領が提案した欧州軍創設構想についてトランプ米大統領が11月、侮辱的な話だと強く批判した。

 NATO加盟を希望しているマケドニアが国名を北マケドニアにすることでギリシャと和解したのを受け、NATO軍最高司令官がマケドニアを表敬訪問した。  マケドニア議会は10月に、「北マケドニア」に国名を変更する憲法改正の審議開始を承認し、国名変更に向けて前進した。
 ロシアがマケドニアのNATO加盟を阻止しようと工作活動を拡大し、バルカン諸国を影響下に置こうとするロシアの野望が浮き彫りとなっている。 ロシアの外交官がギリシャで極右勢力に資金を提供したり、治安当局職員に賄賂を渡そうとしたりしたという。

 EU欧州委員会が2月、西バルカン地域の6ヵ国のEU加盟について早期実現を目指す計画を発表した。 加盟交渉で先行するセルビア、モンテネグロに対しては2025年の加盟目標を明示した。
 6ヵ国は、既にEU加盟候補国となっているセルビア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニアの4ヵ国と、潜在的な候補国と見なすボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの2ヵ国である。

 ロシアの脅威増大を受けNATOは、ポーランドやバルト三国を舞台に行われるSaber Strike 2018演習を6月、20ヵ国から5,500名以上が参加するSaber Junction演習を9月、NATOが行う過去10年間で最大規模の演習Trident Junctureを10月~11月にノルウェーを舞台に実施した。

 ポーランド首相がNATO議会で5月に、ロシアが進めているNord Stream 2ガスパイプライン計画を「欧州安全保障に対する毒薬」と呼び、新たなハイブリッド兵器であると警告した。
 Nord Stream 2はシベリアで新たに採掘した天然ガスをドイツに送り供給量を倍増しようというものであるが、この計画を巡っては米国やEU加盟国の一部もポーランドと同じ立場に立っており、EU内に亀裂が生じている。

1・2・7・4 在欧米軍

 5月に、Operation Atlantic Resolve演習やSaber Strike 18演習に参加するするため、機甲旅団戦闘団 (ABCT) の3,000名がM-1 MBT 87両、Bradley IFV 125両、Paladin SPH 18門、装輪車両976両と共にテキサス州から派遣された。

 7月には欧州に恒久配置された米陸軍の3個旅団、イタリア駐留第173空挺旅団 、ドイツ駐留第12戦闘航空旅団、ドイツ駐留第2騎兵連隊が7月、准将が指揮するドイツGrafenwoehr駐留陸軍第7訓練コマンドの隷下に入った。

 10月中旬に駐独米空軍基地にコンテナ約100個の弾薬が搬入された。

 米陸軍は在欧米軍から強い要望があったSHORAD能力強化のため、Strykerをベースとした暫定装備のM-SHORAD計画を開始した。
 11月には冷戦終了以来SHORAD部隊を廃止していた米陸軍が、冷戦終了以来初のSHORAD部隊を編成した。

1・2・7・5 バルト諸国/バルト海

 エストニアのシンクタンクが同国国防省に、バルト地域における防空に穴が生じているとする勧告を行った。 それによると、低空域監視レーダの欠落、防空C4ISRの脆弱性などが挙げられている。

 ラトビアは対空監視レーダの取得や中距離SAMの導入などで防空力の強化を図っている。  10月行われたラトビアの議会選で、親露派政党が議席を微減したものの第1党を維持した。 連立政権を組む与党も議席を減らした。

 ポーランドでは2017年12に、基礎訓練を終えた250名が参加して国土防衛隊 (WOT) の創隊記念式典が開かれた。 同国は2017年1月に国防相直轄としてのWOTを創設しており、三期に分けて53,000名17個旅団を編成する計画で、最後の4個旅団が2018年末までに編成され、2019年末までに17個旅団の編成を完了する。

 ポーランドが5月に、現在暫定的に巡回配置されている米軍を恒久配置するよう米政府に要望していることを明らかにした。  ポーランドが要望しているのは1個機甲師団、数千名規模で、ポーランドはそのインフラ整備を用意するという。
 9月にポーランド大統領が恒久的な米軍基地設置を要請したのに対しトランプ米大統領は「真剣に検討している」と応じた。
 またエストニアも米軍の常駐を希望している。

 ポーランドが3月にPatriotの購入契約に署名したほか、7月に米国からHIMARSを購入すると発表した。 米政府は2017年にGMLRS弾25発、ATACMS弾61発、GMLRS弾誘導部1,642セットを売却することを承認している。
 一方ポーランド空軍は7月にMiG-29A 1機が墜落事故を起こしたのを機に、31機保有するMiG-29Aと18機保有するSu-22の全機を飛行停止にしている。

1・2・7・6 ノルディック/アイスランド

 ノルウェー国防省が8月、同国にローテーション配備の形で駐留する米海兵隊の規模を現在の330名から最大700名に増やすことで米側と合意したと発表した。
 この合意により2019年以降も駐留するほか、駐留場所はロシア国境により近い北部Setermoen基地も加えた2ヵ所となる。

 米国務省がPatriot 4個FUを$3.2BのFMS契約でスウェーデンに売却することを承認した。 売却されるのはPatriot Config 3+ 4個システムと、MIM-104E GEM-T弾100発、PAC-3弾200発である。

 フィンランドが、ロシアとNATOの対立にに伴い戦略的な価値が高まってきたバルト海及びボスニア湾の防衛のため多目的砕氷コルベット艦4隻を建造する。 この4隻はIAI社のGabriel対艦ミサイルを装備する。

 フィンランド、スウェーデン、米国の3ヵ国が5月に国防に関する協力関係を強化する合意文書に署名した。 両国はNATOには加盟しておらず、米国が懸念している欧州の軍事産業を保護するPESCOをEUの一員として支えている。

1・2・7・7 黒海沿岸

 2月中旬に米海軍第6艦隊の駆逐艦2隻が2月中旬に黒海に入った。 米海軍の戦闘艦2隻が黒海に入るのは2014年のクリミア事件以来初めてである。 11月に米海軍駆逐艦と外征高速輸送艦の2隻が黒海に入った。
 米陸軍では、テネシー州兵の装甲騎兵連隊の部隊がYavoriv演習場で訓練を支援している。 またルーマニアには第1騎兵師団第1装甲旅団戦闘団と第4歩兵師団第4戦闘航空旅団が巡回駐留している。
 10月に行われたこの地域で最大規模の演習Clear Sky 2018ではカリフォルニア州兵空軍がウクライナ空軍と共同演習を行った。

 英空軍のRC-135 Rivet Joint ELINT機が、ロシア海軍や基地の動きを偵察するため地中海及び黒海での偵察飛行を開始している。

 1月には黒海上空でSu-27がEP-3に異常接近し、11月にもSu-27がEP-3に異常接近するなど、ロシアの対米挑発が続いている。

 ルーマニアがPatriotを発注した。 納期は2020年4月になっている。

 ブルガリア空軍はMiG-29のRD-33エンジン10基のうち6基が使用不能であることから、2017年10月に全機を飛行停止にしていたが、2017年12月にMiG-29 15機を向こう48ヶ月間維持する保守契約をRSK MiG社と結んだ。 同国空軍が同機の保守整備を行えるのはRSM MiG社だけと判断したことによる。  モルドバで政府の腐敗に抗議する改革派が勝利した首都キシニョフの市長選の結果が無効にされたため反政府デモが広がっていて、7月には国旗とEUの旗を掲げた数万人がキシニョフの政府庁舎前の広場を埋め尽くした。 背景には欧米とロシアの勢力争いを利用し「親欧米」を隠れみのにした政府与党の金権政治がまん延がある。

 アルメニアで2018年春の大規模な街頭デモで親露派のサルキシャン首相が退陣に追い込まれ、ジャーナリスト出身の民主派指導者パシニャン氏が政権に就いた。
 アルメニアは歴史的に親露的とされ、ジョージアやウクライナとは立ち位置が異なり露軍事基地を擁しており、アゼルバイジャンとの間でナゴルノカラバフの領有権問題ではロシアの軍事的庇護がなければアゼルバイジャンに対抗できない特殊事情があるためパシニャン氏は首相就任後、ロシアとの関係が変わることはないと力説する一方、欧米との関係も重視するといった慎重な対外方針を示している。

1・2・7・8 トルコ

 トルコと米国の関係が急速に悪化している。 また西欧諸国との離反も続いている。

 トルコのエルドアン大統領が8月、トルコ在住米国人牧師の拘束で主導的な役割を果たしたとして、トルコのギュル法相とソイル内相を資産凍結などの制裁対象としたことへの対抗措置として、米国の法相と内相の資産がトルコにあれば凍結すると述べた。
 また米上下両院で採択されたFY19国防権限法では、トルコがロシアからS-400を購入することによるF-35の秘密保全上のリスクについて、議会に対し報告が行われるまでトルコにF-35を 引き渡さしてはならないとの条項が盛り込まれている。
 結局トルコの裁判所が10月に、テロ関連の罪で有罪判決を受け拘束されていた米国人牧師の釈放を決定した。

 このためトルコはロシアへの接近を強め、S-400の購入を進めているほか、ロシア南部から黒海の海底を通ってトルコ北西部に至る2本の天然ガスパイプラインTurkStreamの建設にも協力している。

1・2・7・9 その他の欧州

 ダマスカス東部に勢力圏を持つ反政府勢力に米国が干渉しようとしているのを受け、ロシアが東地中海における海軍戦力構築を目指していて、露国防省が3月に黒海艦隊を計画通りセバストポリから地中海に移動させたと発表した。

 地中海東部における緊張の高まりを受け米海軍がP-8Aによる哨戒飛行を開始した。 4月にはシシリー島のSigonella海軍航空基地 (NAS) を離陸したP-8Aが東地中海までの飛行を4回にわたって行った。 また翌日にも4回の同様の飛行を行った。
 またその前後にはクレタ島のNAS Souda BayからEP-3E Aries Ⅱ SIGINT機が、更にその前日にはRC-135V SIGINT機が東地中海での哨戒飛行を行っている。

 ギリシャとトルコがそれぞれ領有権を主張するエーゲ海のカルダク岩礁で2月に双方の沿岸警備艇同士が衝突した。ギリシャ警備艇に設置された監視カメラ映像では、停泊中のギリシャ艇の船尾にトルコ警備艇が衝突したように見える。
 同岩礁の領有権を巡る両国間の緊張は1996年には戦争一歩手前まで高まった経緯があり、いままたギリシャによるキプロス島沖での天然ガス掘削を巡ってトルコが海軍艦艇を派遣するなど、両国の間で緊張が高まっている。

 6月にキプロス、ギリシャとイスラエルの国防相が、東地中海における共同演習の拡大や捜索救難活動の共同実施などの防衛協力で合意した。
 その上でキプロスの国防相は明らかにトルコを意識してに、キプロスとイスラエルが発見した天然ガス田の防衛で緊密に連携すると述べた。 キプロス近海のガス田探査にはトルコが強く反対している。

 コソボのサチ大統領が12月に、同国の治安部隊を軍に格上げする方針は後戻りできない状況にあると述べた。 コソボ議会は圧倒的多数で軍の創設を承認している。  しかしながら、かつてセルビアの一部であった同国内にはスラブ人も居住しており、セルビアは同国が自国領内と見なす地域に軍を作れば軍事侵攻するとしている。

1・2・8 その他の紛争地域

1・2・8・1 アフガニスタン

 戦闘は継続しており、いまだに出口が見えない。
1・2・8・2 イスラエルとその周辺

 米国が5月にイスラエルの建国70年に合わせて、大使館をテルアビブからイスラエルの首都と認定したエルサレムに移転した。 またイスラエル国会は7月、イスラエルを「ユダヤ人の国」とする法案を賛成多数で可決した。
 ポンペオ米国務長官が10月、エルサレムに移転した在イスラエル大使館と事実上のパレスチナ代表部として機能してきたエルサレム総領事館を統合する方針を発表した。 今後はパレスチナ自治区の事案はイスラエル大使館で対応することになる。

 シリア領内のイラン軍関連施設へのイスラエル軍の空爆が続いている。

 5月にはイスラエル空軍がF-35Iを初めて実戦使用したと発表している。 7月にはハマスの兵站基地、大隊本部、トンネルなどの軍事拠点40箇所に対し2014年以来最大規模の空爆を行った。
 この間、ダマスカス国際空港やダマスカス近郊の武器庫に対する攻撃も行っている。 このような状況からロシアは9月にアサド政権軍にS-300を供与した。

 9月の攻撃後帰投するイスラエル軍機と誤って、シリア軍がロシア軍のIl-20偵察機を誤撃墜する事件が生起している。

 反対にイスラエル軍はシリア方面からの航空機や飛翔体の撃破も行っている。

 5月にはイラン革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊 (Quds Force) が主導してゴラン高原にロケット弾20発を発射したが、イスラエルのIron Domeが数発を迎撃した。
 7月にはシリア政府軍がゴラン高原近くで反政府勢力に対しSS-21 2発を発射したため、イスラエル軍は初めてDavid's Sling Weapon Systemを実使用しStunner迎撃弾2発を発射した。
 また戦闘機やUAVの撃墜も行っている。

 ガザからのロケット弾攻撃とそれに対する反撃も続いている。

 8月のロケット弾攻撃では、ガザから150発以上のロケット弾がイスラエル側に発射され、イスラエル軍が報復してハマスの軍事教練施設や武器貯蔵庫など、20ヵ所以上を攻撃した。 10月にはガザ地区からイスラエルに向けて30発のロケット弾が発射されたことへの報復としてガザ地区のハマスの関連施設など80ヵ所に大規模な空爆を行った。
 11月にはイスラエルがガザ地区南部に少人数の特殊部隊を送り込みハマス側と銃撃戦になり、ハマスの軍事部門の幹部ら7名が死亡し、特殊部隊の兵士1名も死亡した。  この急襲作戦への報復としてハマスやイスラム聖戦はイスラエル領に370発以上のロケット弾を発射し、イスラエルはハマスなどの関連施設100ヵ所以上を空爆するなどして報復した。 イスラエル軍はガザから発射されたロケット弾のうち100発以上を迎撃した。

1・2・8・3 ナゴルノ・カラバフ

 ナゴルノ・カラバフを巡るアゼルバイジャンとアルメニアの紛争は小康状態を保っているが、その間もアゼルバイジャンはトルコRoketsan社製のSOM CMや、ベラルーシからPolonez、イスラエルからLORA精密打撃SSMを購入し兵力の増強を図っている。
1・2・9 その他の紛争潜在地域

1・2・9・1 北極圏

 ロシアが2018年中に北極圏でのTu-142 BearやIl-38 Mayなどの対潜哨戒機など航空活動を活発化させている。 また北極圏一帯で多数の航空基地の開設や再開も行っている。
 また地上軍の増強にも積極的で、北極圏に2個独立自動車化狙撃旅団を新設した。 これら部隊は深雪を走破する高い機動力と高い火力を有している。
 ロシアは極地用戦闘車両の装備も進めている。

 米国は沿岸警備隊が装備する砕氷艦の建造を計画しており、大型砕氷艦を3隻を含む少なくとも6隻の砕氷艦が必要としている。 また2018年内に新たな北極圏戦略を構築するとしている。
 更に9月にB-52Hが北極圏のロシア沿岸で長距離飛行を行い、10月には空母Harry S. Trumanを中心とした空母打撃群 (CSG) が27年ぶりに北極海を航行した。

 カナダは5月に自国のADIZ (CADIZ) を北極海の群島域上空まで拡大すると発表した。

 カナダ沿岸警備隊は艦齢35年以上の砕氷艦4隻の更新を要求している。
 8月に民間の砕氷船3隻を警備艦に改修する発注を行い12月にはその1番艦か引き渡された。 カナダで砕氷艦が就役するのは25年ぶりである。

1・2・9・2 黄 海

 中国と韓国が領有権を争っている黄海の離於島付近に韓国が設けた防空識別圏 (KADIZ) に中国軍機の侵入が頻発している。
 また3月には韓国海洋警察庁などが、中国艦艇が2017年に頻繁に黄海で中韓EEZの中間線を越えて軍事行動をしたことを明らかにした。
 中国艦艇は2018年も2月までで20回と2017年を上回るペースで中間線を越えしており、中国は黄海上に音響情報探知用ブイも設置したとされる。
1・2・9・3 北アフリカ

 米国務省が7月、米国がエジプトに対し人権問題を理由に停止していた$185Mの軍事援助を再開することを明らかにした。

 フランスがエジプトに米国製部品を搭載したSCALP CMの輸出を、米国が米国の国際武器取引規則 (ITAR) を盾に反対しているため、米国製部品をフランス製に替えて輸出を強行しようとしている。

 9月にエジプトを訪問したインド国防相が、両国軍事産業の提携、訓練や研究開発の協力など、広範な軍事協力の強化で合意した。

1・2・9・4 中 南 米

 米大統領府が8月、エルサルバドルが台湾と断交し中国と国交を結んだことについて、西半球諸国の内政に対する中国のあからさまな介入を受け入れるもので、米国にとって重大懸念だと表明した。
 その上で、エルサルバドルとの関係を見直す方針を明らかにした。

 ロシア国防省が、Tu-160 2機が10,000kmを飛行してベネズエラに着陸したと発表した。 同機にはAn-124輸送機とIl-62旅客機も同行したという。
 Tu-160がいつまでベネズエラに留まるのか、どのような武器を搭載しているのかは明らかにしていない。

1・2・9・5 そ の 他

 8月にロシア、イラン、カザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンのカスピ海沿岸5ヵ国の首脳会議が各国沿岸から15nmを領海とし、25nmの排他的漁業権を設定した「法的地位に関する協定」に署名した。
 カスピ海は湖と海では各沿岸国が得られる権益が大きく異なるため、20年以上にわたって沿岸5ヵ国が論争を繰り広げてきたが、今回、事実上「海」で決着した。
1・3. 周辺国の軍事情勢勢

1・3・1 中 国

1・3・1・1 軍近代化に向けた体制構築

 台湾の国家級防衛シンクタンクである国防安全研究院が12月に行った報告で、中国軍が国土防衛型から外向進攻型への転換を意図した組織改革を行っていると指摘した。

 中国は軍の兵力を200万名にまで削減したことを明らかにした。 削減は主として非戦闘要員及び管理要員で行われた。
 これに対し中国各地で元軍人らのデモが拡大し、公安当局が催涙ガスなどで阻止に動いたのに対し、退役軍人らはこん棒や消火器などで抵抗したが10月までにほぼ鎮圧された。

 中国には人民解放軍のほかに実質陸軍の武装警察や準海軍の海警局があり、海軍民兵も活動を活発化させている。

 中国空軍は11月に三段階からなる空軍近代化計画を明らかにした。 第一段階は2020年に完了するという。

1・3・1・2 世界の覇権を狙う国家方針

艦船の大量建造

 中国海軍の艦船大量建造が注目されている。
 2014年以降に中国で就役した潜水艦、戦闘艦、水陸両用艦、補助艦艇の総数は、独、印、西、英海軍が現在保有し ている艦艇の総数よりも多いという。

太平洋の覇権獲得

 中国空軍が3月、H-6KやSu-30などの空軍機が宮古海峡を通過して西太平洋で演習を実施した。 4月には空母遼寧など7隻が宮古海峡を通過し太平洋上で遼寧から戦闘機が離着艦した。
 中国がグアム近くに超強力なSONARを設置して米海軍潜水艦の動向を監視していると報じられた。
 8月に米国防総省が16日に公表した中国の軍事動向に関する年次報告書では、中国空軍がH-6Kを過去3年間で第一列島線を越え、西太平洋にまで飛行させていると分析し、米国や日本などへの攻撃を想定した訓練の一環として、爆撃機の飛行範囲を拡大している可能性が高いと指摘している。

海外拠点の拡充

 1月に中国海軍がパキスタンのGwadarに第2の海外基地の建設を検討していると報じられた。 また 中国がジブチに開設した軍事基地で4月以降に埠頭の建設を急いでおり、5月の画像では沖合に向け300m以上が伸びていることが判明した。
 中国は2015年にイスラエルと、2021年からハイファ港を25年間租借する契約を行っているが、これに対し米国が、ハイファ港における米国海軍の長期行動を変更する可能性があるとイスラエルに通告したため、イスラエルがこの取り決めについて再検討しているという。
 更に、中国がサモアで港湾の拡張など再開発の資金融資に向けて交渉していると11月に報じたことから、海洋進出を強める中国が太平洋の戦略上の拠点として軍事利用する可能性があるとの懸念が浮上している。

海軍の活動活発化、活動範囲の拡充

 ソマリア沖での海賊対策に当たっていた中国海軍第27次護衛艦隊が、1月にモロッコへの友好訪問としてカサブランカ港に入港した。

 中国海軍が輸送/揚陸能力の拡大に力を入れていて、中国SinoTrans社のRORO船 (20,000t) が、Type 99A MBTを含む完全編成の陸軍大隊戦闘団2個を海上輸送できることを実証した。

 米国防総省が8月に公表した中国の軍事動向に関する年次報告書によると、中国海軍は敵前上陸などを担う 陸戦隊(海兵隊)を現在の2個旅団10,000名規模を2020年までに7個旅団30,000名規模超まで拡大させる計画である。
 陸戦隊には新たに「遠征作戦」などの任務も付与されるとしており、台湾の軍事的統一や尖閣諸島の占拠などを視野に入れている可能性がある。

 中国海軍は情報収集艦の急速増強も行っており、2月にはType 815/815A情報収集艦の9番艦 が上海の造船所で進水した。

空軍の役割拡大

 最近の中国の報道では、「H-6Kの南シナ海進出はマラッカ海峡制圧を見据えたもの」や「J-20は防衛用でなく侵攻用」など空軍による積極攻勢論が多くなっている。
 更に中国空軍は、現在主として国防を任務とする空軍を三段階で戦略部隊に発展させるとして、2020年までの第一期に宇宙航空軍へ発展させ、第三期に入る21世紀中頃まで完全な世界規模の空軍にするのが目標という。

高利貸し外交による海外利権の獲得

 中国の高利貸し外交による海外利権の獲得が世界的に問題になっている。

 中国商務省によると、金融を含む中国の2017年度対外投資は2016年比で19%減と統計開始以来初めて減少したが、一帯一路沿線64ヵ国向けの直接投資が、32%増と過去最高になった。 このうち米シンクタンクが過剰な借り入れを指摘したパキスタンやラオスなど8ヵ国向けは前年比43%増に急増しており、小国に貸し込んで借金漬けにする債務のワナとの批判が強まっている。
 この他にも、トンガやバヌアツなどの南太平洋諸国、トルクメニスタンやタジキスタン及びキルギスなどの中央アジア諸国、更にエルサルバドルなど中南米諸国に加えて旧ソ連の親欧諸国も中国の高利高額融資の対象になっている。

 このような中国のやり方には国内からも批判が出ており、高利貸し外交破綻に兆しが見えてきており、スリランカ、マレーシア、ミャンマー、パキスタン、モルディブなどの各国からは、既に計画の見直し要求が出ている。

周辺国の取り込み

 こうしたなか中国は、9月中旬に開始されたロシア軍が行った過去30年間で最大規模の演習Vostok 2018にモンゴル軍と一緒に参加し、蒙中国境近くの演習場で行われる最も熾烈な場面では、中国軍がロシア軍の一翼となった作戦を展開するなど、対露友好政策を取ると共に、10月にASEAN諸国との合同軍事演習を行うなど周辺国の取り込み工作も行っている。

1・3・1・3 台湾制圧に向けた準備

 中国は台湾周辺の飛行の拡大や台湾周辺海域での艦船による示威行動などを通して台湾への圧力を継続的にかけている。
 5月には台湾に面した海岸に近い寧徳航空基地に建設された重掩体の数が倍増されことが確認され、5月には湖南省の永州零陵空港にK軍用機が確認され、この空港が軍用飛行場に拡張されている模様であるなど、航空基地の強化が明らかになっている。

 しかしながら台湾に向けたBMやCMの増強については2018年に殆ど報じられていない。

1・3・1・4 日米に対する挑発

 航空機や艦船などの日本海などへの進出や、北海艦隊に新造フリゲート艦を配属したり、東海艦隊に大型揚陸艦を配属するなどで対日圧力を強めている。

 特に11月に発生した鹿児島西方沖の日本のEEZ内で違法操業中国漁船1隻に対する水産庁職員の立ち入り検査で、職員十数人を乗せたまま逃走し数十隻の中国漁船団が接近してきた事件では、中国外務省は日本のEEZで漁をしていた事実を真っ向から否定したうえで、水産庁の職員が乗船して検査したことに反発するなど、法を無視してまでの対日強硬姿勢を崩していない。

 一方米国に対してもALCMを装備したH-6とSu-35が5月に台湾を一周する飛行をないグアム攻撃能力の誇示したほか、ジブチの中国軍基地沖合では洋上から米軍機に向け強力なレーザ光を照射するなどの挑発活動を繰り返している。
 特に中国艦が西太平洋で英国や米国の艦船に対して強硬に態度を見せていることから、米軍は中国が戦闘艦の交戦規定を変更したのか否かを見極めようとしている。

1・3・1・5 経済不振下の国防費増大

 中国は2018年のGDP伸び率の目標を6.5%前後に設定したが、国防費にはGDPの伸びを上回る8.1%増を計上した。 2017年は7%増を計上している。
1・3・1・6 戦力の増強

宇宙戦/ミサイル防衛

 米国国家情報長官が2月に、中国がASATの開発を推進していることに懸念を示した。 長官によると中国は地上発射宇宙兵器を装備する部隊の編成完結に向けた訓練中であるという。

 中国国防省が2月、飛来するBMを弾道中期で迎撃する試験に成功したと発表した。 迎撃に使われたのは2007年にASAT試験を行ったSC-19と見てられている。
 中国はこの種迎撃システムの迎撃試験を2010年1月、2013年1月、2014年7月に実施し成功しており、今回が4回目の成功になる。
 TASS通信が1月、ロシアが2014年の契約に基づくS-400の中国への納入を開始したと報じた。 第一次分は既に出荷したと言う。

長距離ミサイル

 中国が5月にDF-41 ICBMの10回目の発射試験を行ったと報じられた。 射程15,000kmのDF-41は10個のMIRV弾頭を搭載するとされ、2018年上半期に部隊配備されるという。
 中国が射程9,000~14,000km前後と推定されJL-3 SLBMの発射試験を11月下旬に渤海で実施し成功した。 JL-3は10個のMIRV弾頭を搭載するとされ、中国近海から発射しても米本土のほぼ全域を射程に収める。
 中国国防省が4月、DF-26 IRBMの配備を開始したことを明らかにした。 DF-26は射程が4,000kmと推定されグアムを含む米軍基地を射程圏内におさめる。

艦 船

 中国軍は空母運用能力の向上を急いでおり、Type 001遼寧が3月下旬から1ヵ月にわたり南シナ海や西太平洋などを航行している。
 中国初の国産空母であるType 001Aが5月に洋上試験のため大連の造船所を出航した。
 中国が6月に3隻目の空母Type 002のCGを公表した。 Type 002はType 001とType 001AがSTOBAR離着艦方式であるのに対しカタパルト発進/拘束着艦 (CATOBAR) 方式になっており、 Type 002には3基のカタパルトが見られる。
 ただ搭載されるJ-15には欠陥があるためJ-31などの代替え機種が検討されている。

 建造中の新型潜水艦画像がネット上で公開された。 この潜水艦はセイルが見当たらないのが大な特長である。

 駆逐艦、フリゲート艦、コルベット艦などの水上艦が速いピッチで建造されている。

 中国メディアが12月、中国型Aegis艦などと呼ばれる駆逐艦が30隻体制になり、新型フリゲート艦と合わせて60隻体制になると報じた。 それによると就役したType 052D及びType 052Eは23隻に達し、Type 052Cの6隻を加えると30隻になる。
 Type 055 10,000t級駆逐艦2隻が大連の造船所で同時に進水した。 Type 055はType 052Dを大型化した駆逐艦で112セルのVLSを装備している。
 12月にはType 055駆逐艦の公試運転画像が公開された。
 4月にはType 052D駆逐艦の飛行甲板を4m伸ばした改良型を建造していることが判明した。 中国海軍は従来より大型のヘリを駆逐艦に搭載しようとしている模様である。
 中国海軍が1月、Type 054Aフリゲート艦の26番艦を就役させた。 またType 054Aを小型化し推進装置にウォータージェット推進機4基を装備した高速艦が建造されている。 高速法執行艦と呼ばれているこの艦は40kt以上の速度性能を持つと見られる。

 水陸両用戦用艦艇やその他の補助艦も速いピッチで建造されている。

 中国海軍で7隻目となるType 071 LPDが12月に進水した。
 排水量が45,000t以上である中国海軍Type 901補給艦の二番艦が近く就役する。 また 中国国営メディアが9月、原子力空母には原子力推進の補給艦が必要であるとする論文を掲載した。
 中国海軍は2,500名の収容が可能で30日間にわたって洋上に待機させることができる洋上兵舎艦2隻を、他の観光用クルーズ船と合わせた海上輸送能力を保有しようとしている。

 中国が2021年を目標に大型の自動航行UUVを開発中である。 この計画は米海軍のXLUUV計画に対抗するものであるという。
 中国CSOCが9月に20tの新型戦闘USVを公表した。 このUSVはJARI多目的戦闘USVと呼ばれ、速力42ktと航続距離500nmの性能を持つ。 武装としては小型SAMと連動した30mm機関砲と船体中央に対艦/対空ミサイル用VLS、両側に対潜軽魚雷発射管を装備している。
 殊海航空展では各種新型武装USVが公開された。

航空機

 3月に、中国がJ-20の新型と第六世代戦闘機の開発を準備していると報じられた。
 J-31は飛行安定と着艦に問題があるJ-15に代わる艦載機になると見られる。 最初のJ-31はMTOWが25tであったが、艦載型は30tになると見られる。 この結果行動半径は1,500kmにまで伸びることになった。
 中国空軍が2月にJ-20を部隊配備したと発表した。 香港のSouth China Morning Post紙が9月に、中国がこれまで問題になってきたJ-20のエンジン欠陥問題を解決して量産体制に入ると見通しと報じた。
 中国国営英字紙が3月、AVIC社の高官がJ-20戦闘機の新型を開発していることを明らかにしたと報じた。
 中国で開発中と見られているJ-17戦闘爆撃機の機体と思われる写真が流出した。 J−17はSu−34を元に開発しているとされるが、機首形状はステルス性に優れたひし形になっている。
 中国の艦載機J-15の欠陥による墜落事故が相次いでいることから、性能や運用能力については疑問視されてきた。 J-15はSu-33を基に設計され遼寧に搭載されているが、J-15の墜落事故が少なくとも4回発生したという。
 12月に中国国営CCTVが復座型J-15の試験映像を流した。 この機体はJ-15Dと呼ばれるECM機と見られる。
 中国のウェブサイトに2017年12月、不鮮明ながらJ-10がTVCエンジンを搭載したと見られる画像が掲載されたが、11月に開かれる殊海航空展でスラスト偏向式のWS-10エンジンを搭載したJ-10Bが公開された。

 中国が開発を進めてきたステルス戦略爆撃機H-20が近く初飛行する見通しである。
 H-20の航続距離について環球時報は5月に12,000km以上とみる専門家の分析を伝えていることから、ハワイを目標として視野に入れている可能性がある。

 AVIC社が殊海航空展に、同社のヘリコプタ部門である昌河航空機 (CAIC) が開発した戦闘偵察ヘリZ-10MEを展示した。

 2017年12月に初飛行したAG600飛行艇が、10月に初めて離水し14分間の飛行の後に着水する飛行に成功した。

 民間衛星が11月に撮影した画像に、両翼に空中給油ポッドを装着したY-20輸送機が写っていた。 中国軍の空中給油機はH-6Uを改造した20機で、H-6Dを改造した何機かも報じられていた。

UAV

 Wing Loong Ⅱ、Wing LoongⅠ-D、CH-4C、WJ-700、HK-5000G 空母搭載用 UAV、CloudShadow 空母搭載用 UAV、Yaoying Ⅱなどおびただしい数のHALE/MALE UAVが報告されている。
 またXY-280 ステルス UAV、CH-7 UCAV、FL-71 / FL-2 UAV、Star Shadow、An Jian UCAVなどのステルスUCAVと見られるUAVも多数公表されている。
 更にCH-804C 固定翼ハイブリッド VTOL UAV、YJ-300 AEW UAV、CH-10 チルトロータ式 UAV、TW-356 重量物運搬用 VTOL UAV、TW-765 重量物運搬用 VTOL UAVなどの特殊用途UAVも多数公開された。

各種戦術ミサイル

 HQ-2後継HQ-22、HQ-8大型SAM、CM-401戦術ASBM、YJ-12ラムジェット推進地対艦ASCM、YJ-18潜水艦発射型ASCM、HD-1ラムジェット推進高速超音速ASCM、などの各種戦術ミサイルが公表された。
 またJARM、改良型WS-32、Fire Dragon 280AなどのMRLや射程400kmの長距離AAMを装備しているということも公表された。

 H-6G 搭載 ECM ポッド、車載チャフ/デコイ発射機の電子戦装備やJ-15D ECM機、ミサイルに搭載する耐妨害北斗測位衛星受信アンテナなどの電子戦装備も出現した。

 Marine Lizard 水陸両用戦闘車や、Giant Tiger、CASC社製ATV、King Leopardなどの全地形走破UGVも報じられている。

1・3・1・7 高度な技術力保持

 カナダの安全保障情報組織が3月の報告書で、中国が将来 軍事技術の分野で米国を超越し、戦争様相を中国優勢に転換しようとしているとした。
 ただ先端技術を海外から略取する傾向も続き、6月には米検察が、対潜水艦戦に使われる可能性のある機器を入手しようと共謀したとして、人民解放軍と繋がりのある中国の大学を米国輸出法違反で起訴している。

 電磁砲、レーザ砲、小型偵察衛星群、超高速飛翔体、緻密に統率されたUSV群、戦闘艦用の全電気推進装置 (FEP)、太陽光動力源長期滞空型UAVなど、列国が開発にしのぎを削っている最先端技術分野でも着々と成果を上げている。

 また世界最大級の遷音速風洞や世界最先端超音速風洞の建設を建設するなど、研究環境の整備にも力を入れている。

1・3・1・8 軍事産業の振興と武器輸出

 米政府の検討会議が10に、中国の軍事産業が今後米国の安全保障上の脅威になると警告した。

 ストックホルム国際平和研究所 (SIPRI) が報告書で、中国の2013〜2017年の武器輸出が2012年までの5年間と比べて38%増となったことが明らかにした。

 中国AVIC社が9月、2017年における同社の輸出額が国家全体の24%に当たる記録を達成したと発表した。 AVIC社は現在、一帯一路政策の一環として世界28ヵ国に65箇所の施設を有しているという。

 国別に見ると、バングラディッシュへのコルベット艦、パキスタンへのフリゲート艦、UAEへの Wing Loong Ⅱ UAV、エジプトへの Wing Loong UAV、ヨルダンへのCH-4B武装 UAV、クウェートへのPLZ-45 155mm/45口径 SPH、モロッコへの Sky Dragon 50 SAMなどの輸出が報じられてるが、4月にはロシアが中国から空母を購入する可能性が十分にあると分析も出ている。

1・3・2 北朝鮮

 金正恩委員長が新年の声明で、北朝鮮は既に米国に対して核兵器を使用できる能力を有しており、2018年に核兵器とBMの量産に入ると述べた。

 米NBCが9月に、米国の情報機関は北朝鮮が2018年に5~8個の新たな核兵器を生産した可能性があると見ていると報じた。 米NBCが12月、シンクタンク分析を引用し、北朝鮮が2020年には100発の核弾頭を保有することになるだろうと報じた。

 SLBM搭載新型潜水艦の建造について38 Northは、2017年初めてSLBM搭載潜水艦を建造する時と類似した部品と装備の移動が捉えられたとして建造が進められているか、新しい潜水艦の建造のために準備中とみられるとしている。

 北朝鮮が2月に行った閲兵式に、9軸TELに搭載された火星-15と共に、ロシアの9K720Iskander-Mと酷似したSRBMが登場したが、問題のSRBMは外観形状が玄武-2と類似していることから、韓国内外の専門家の間で北朝鮮による設計図がハッキングされた可能性が指摘されている。

 米サイバーセキュリティ企業が、北朝鮮のハッカ集団APT38が2014年以降サイバ攻撃によって世界の金融機関から$100M以上を不正に取得していたとの分析を発表した。 APT38による活動の増加は北朝鮮に対する経済制裁の強化が関係していると見ている。
 北朝鮮はこの他にも報道機関などを狙ったサイバ攻撃によるインフラ等の攪乱も行っている模様である。

 RFAが1月、「中国は1000年の宿敵!北朝鮮政府が民衆の反中感情を扇動」と題する記事を掲載するなど、民衆の反中感動をあおる宣伝活動を行っていた。

1・3・3 韓 国

1・3・3・1 国内情勢

 韓国陸軍が、2017年12月に予告していたUAV/UGV部隊Dronebot Warriorを2018年10月に発足させ、2019年に編成を完結することを公式に明らかにした。 部隊は大隊規模になると見られる。

 韓国政府が1月、現在603,000名の兵力を2022年までに500,000名に減らし、陸軍と海兵隊の兵役期間を現行の21ヵ月から18ヵ月に短縮することにした。

 韓国DAPAが2月、PAC-3 MSE弾をFMSで購入することを承認した。 契約は2018年の上半期に行われ、納入は2020年以降になる。
 韓国は2015年にドイツから中古のPAC-3弾とPAC-2の地上装置をPAC-3用に改造するキットを購入している。

 韓国が新開発のSSMを装備する旅団を10月に創設する。 この旅団はDMZ近くに配備された北朝鮮の長距離砲を開戦初期に破壊することを任務とし、この計画は4月に文大統領に提出されるDefense Reform 2.0計画に盛り込まれる。

 4月27日に開かれた南北首脳会談で、文大統領と金委員長が「韓半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」を発表した。
 宣言文によると、南と北は地上と海上、空中をはじめとするあらゆる空間での軍事的緊張と衝突の根源になる相手に対する一切敵対行為を全面中止する。
 板門店宣言によると、南と北は不可侵合意を再確認し厳格に遵守し、このため段階的に軍縮を実現して2018年に終戦を宣言して停戦協定を平和協定に転換することにした。

 4月27日の板門店宣言に伴い北朝鮮指揮部を除去するため韓国が特殊任務旅団(斬首部隊)を平壌など北朝鮮後方に侵入させる特殊作戦用ヘリを装備する計画が事実上中止になった。

 韓国国防部が、軍情報部隊の国軍機務司令部を解体して新たに創設する「軍事安保支援司令部」の発足式を9月に安保支援司令部の庁舎で開く。
 これにより4,200名であった機務司令部の人員は2,900名に減る。

 韓国軍統合参謀本部が10月、SM-3を購入する決定を行ったことを明らかにした。
 韓国海軍が10月に、新たに建造する駆逐艦でBMD能力の向上を図るためAegis Weapon System Baseline K2を発注した。 Baseline K2はBaseline 9.C2の韓国型である。
 また韓国は10月に、Iron DomeをモデルにしたArtillery Killerと呼ばれる射程120km以上の防空システムを独自開発することも明らかにした。

1・3・3・2 国防予算

 韓国の2018年度国防費はGDPの2.6%にあたる。

 韓国国防省が8月、2019年度国防予算に前年度比8.2%増を要求すると発表した。

1・3・3・3 装備品の開発、装備

 韓国が独自開発する次期戦闘KF-Xの事前設計審査 (PDR) は6月に行われ、2019年9月に最終設計審査 (CDR) が計画されている。
 試作初号機は2021年6月にロールアウトし、その1年後の2022年6月に初飛行する計画である。

 ところがKFX/IFXの共同開発であるインドネシアが財政上の理由から共同開発から撤退しそうな情勢にある。 もし撤退しなくても、役割は縮小されることになる。

 タイが韓国に12機発注T-50THの一次生産分4機の内の最初の2機がバンコクに向けソウルを出発した。 K二次生産分の8機を含め12機であるがタイ空軍は16機のT-50TH を要求しており、最終的には18機になると見られる。
 T-50シリーズはこのほか既に12機のFA-50がフィリピンへ納入され、16機のT-50もインドネシアに納入されている。 更にイラクからは24機発注されたFA-50のうち6機が引き渡し中である。

 韓国の3,000t級次期潜水艦KSS-Ⅲ Batch 1の一番艦が8月に進水した。
 2020~23年に就役するBatch 1の3隻にはBMの垂直発射管6門が設置され、射程50kmの玄武-2Bが搭載され、 2025年以降に就役するBatch 2の3隻に垂直発射管10門が設置される。
 更に韓国海軍はフランスのBarracuda級5,300t原潜をモデルにした5,000t級原潜の建造を検討している。

 韓国が排水量30,000~40,000tの大型揚陸艦(LPH)の建造を進め、この艦にF-35Bの搭載も検討している。 40,000tの揚陸艦となると中型空母になる。

 DSME社が11月、FFX-Ⅱフリゲート艦2隻を追加受注したと発表した。 FFX-Ⅱの一番艦は2月1日に引き渡されている。

 韓国海軍の18番目にして最終となる排水量579tの高速艇 (PKG-A) が1月に就役した。 PKG-AはSSM-700K対艦ミサイルのほか76mm砲、40mm砲各1門を装備している。

 韓国はこの他に排水量5,200tの潜水艦救難艦の開発と、排水量14,500tの大型輸送艦 (LPH) の建造を開始している。 また4隻の建造を計画している戦車揚陸艦 (LST-2) の三番艦が4月に韓国海軍へ引き渡された。

 韓国DAPAが12月、艦載SAM海弓を独自開発したと発表した。

 韓国はKUS-FS MALE UAV、輸送用UAV、Striker Drone 4ロータUAVなどの計画を進めている。

 この他に歩兵用システム装具Warrior Platform、K2 Black Panther MBT、K806 16t 6×6 / K808 20t 8×8装輪装甲車、CBRN Recon Vehicle Ⅱなど陸戦兵器の計画も進めている。

1・3・3・4 海外装備の導入

 韓国の購入したF-35A一号機の引き渡し式が3月に行われた。  F-35A 40機は2019年上半期から順次韓国に導入され、2021年までに配備される。

 韓国空軍が初めて導入した空中給油機A330MRTTの1号機が11月に到着した。 同機は2019年にも3機が追加される。

 韓国がP-3 Orionの後継をP-8Aに決めた。 6機を購入する。 韓国は2018年末までに古いP-3を改造してP-3CKとする契約を行っていた。

 韓国が10月、Global Hawk 4機の導入を2019年までに完了する計画であることを明らかにした。
 Global Hawkの導入完了後、空軍は2020年までに複数機のMALE UAVを追加で導入する計画だという。

 韓国が2月に射程500km以上のTAURUS ALCM 90発を追加発注した。 T韓国軍は2013年に170発の購入契約を結び配備している。
 またFA-50から発射できる小型のTaurus 350K-2も保有している。 Taurus 350K-2の射程は300kmと短くなっている。

 韓国DDAPAが11月27日、イスラエルからGreen Pine BMEWレーダ2基を追加購入することを決めた。 韓国軍は既に2基のGreen Pineを装備しているが、今回導入される機種は探知距離が800km以上で、600km以上だったこれまでの機種よりも性能が上がっている。

1・3・3・5 武器輸出

 韓国は武器輸出の推進に力を入れており、11月にはDAPAに武器輸出の推進を担当する部局DExProを立ち上げた。

 航空機ではT-50/TA-50/FA-50がフィリピン、タイ、インドネシア、イラクへの輸出のほか、アルジェリア、ボツワナ、ペルーとも商談が進められている。

 艦船ではインドネシアから3隻受注した潜水艦の2隻目を4月に引き渡し、2016年にフィリピン海軍から受注したフリゲート艦の二番艦の建造を9月に開始した。 一番艦は5月に起工しており、2隻は2021年までに比海軍に引き渡される。

 陸上装備ではK9 SPHの輸出が好調で、6月にエストニアが12門を購入すること決めた。 K9 SPHは既にフィンランド、ノルウェー、ポーランド、インド、トルコも採用を決めており、オーストラリア、エジプト、マレーシア、スペイン、UAEの各国も試験を行っている。
 この他にBlack Foxを元にしたTigon AFVを、主として東南アジアや中東を輸出先とした売り込みを図っている。

1・3・3・6 戦時作戦統制権返還

 10月に行われた米韓安全保障協議会で、戦時作戦統制権返還で最大の課題の一つだった未来連合司令部創設に合意した。
 韓国軍と在韓米軍を指揮する米韓連合司令部に代わり未来司司令官を韓国軍が担うもので、現在の連合司令部は米軍大将が司令官として韓国軍を指揮しているが、創設案では韓国軍が司令官を、米軍大将が副司令官を担う指揮体系が明示された。
1・3・3・7 対日姿勢

 日韓では米国を仲立ちにした共同演習のみが実施されている。

 12月に海上自衛隊のP-1が能登半島沖で警戒監視活動中、韓国海軍の駆逐艦から射撃照準用射撃管制 (FCS) レーダで照射され事件が発生した。
 日本側は不測の事態を招きかねない極めて危険な行為と韓国側に強く抗議したが、韓国側は説明を二転三転させながら韓国側の非を認めていない。

1・3・4 台 湾

1・3・4・1 基本政策

 台湾国防部が8月に公表した2018年の中共軍事力報告書の中で、中国は2020年までに全面的な侵攻作戦能力の完備を目指しているとの見方を示した。
 ただ中国は上陸用舟艇や後方補給能力が不足しているため、現段階では軍事的脅威や封鎖作戦、制圧射撃などの可能性が大きいとしている。

 台湾軍が長年にわたり続けてきた徴兵制度を12月に正式に終了した。

1・3・4・2 軍事力増強

 台湾が8月、2019年度の国防予算を2018年度から5.6%増額して対GDP比を2.16%にする方針を明らかにした。

 米外交専門誌が9月に台湾は米国からの直接的な支援がなくても、侵攻する中国軍を制圧できるとの見解を示した。
 迎え撃つ台湾の方が戦いを有利に進められるとし、中国と同規模の軍事力がなくても侵攻は阻止できるとみている。

1・3・4・3 装備品の開発、装備

 台湾が127機保有するF-CK-1A/-1B国産戦闘機をF-CK-1C/-1Dに改良する計画が2017年12月に完了した。
 台湾のAIDC社が6月、4機試作する予定のXAT-5 Blue Magpie高等練習機一号機の組み立てを開始したと発表した。 一号機は2020年6月に初飛行する。

 F-CK-1 IDFを元にしたXAT-5は2026年までに66機生産される。  10月に台湾が142機のF-16A/Bを最新型のF-16Vに改良する1号機が、台湾空軍に納入された。 別の3機もテスト飛行中で2018年内には納入される。
 F-16A/Bは今後20~24機/年のペースでF-16Vに改造される。

 台湾が自力建造する潜水艦の一番艦が2025年に完成するとみられている。
 建造に備えた建造施設の建設が進行中で、総合工場は2017年末までに竣工する見通しである。

 台湾海軍が米海軍から購入したOliver Hazard Perry級フリゲート艦2隻が11月に就役した。
 沱江型ステルスコルベットは2019年から本格的な量産が入り、2025年には第1段階の3隻が完成する見通しで、2019年か2020年に始動する第2段階では8隻の建造が予定されている。
 台湾国営のNCSIST社が9月、輸出を視野に進めている軽フリゲート艦構想を公開した。

 台湾がミサイル戦力の強化を行っている。 射程1,500kmのHF-ⅡE LACMには2017年に対艦攻撃能力が付加された。 Wan Chien ALCMの年産数を100発に引き上げている。

 台湾が国内開発した雲豹8×8 IFVが間もなく量産に入る。  雲豹には自走迫撃砲型も公開されている。

1・3・4・4 米台関係

 台湾重視の姿勢を強く打ち出すトランプ政権は、3月に米国と台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした台湾旅行法を成立させている。

 米政府が9月、台湾への海兵隊派遣を見送る方針を固めた。 国務省は大使館に相当する米国在台協会台北事務所の警備要員として海兵隊を派遣するよう国防総省に要請していたが、国防総省が要員不足を理由にこの要請を拒否した。

 米政府が4月、蔡政権が進める潜水艦の国内建造計画について米企業に対し台湾側との商談を許可した。

 米議会上院が可決したFY19国防権限法案では、台湾軍の演習への米軍の参加を米国防長官に要請する内容などが盛り込まれた。

 米政府が6月、台湾への武器売却の方法を従来の一括供与から、ケースバイケースの方式に改めるつもりであることが明らかになった。
 米国防次官補が10月、台湾への武器売却についてもっと常態化した、しかもFMS 的な関係の構築を目指すとの考えを示した。

 米海軍の海洋調査艦が10月に高雄港に寄港した。 米海軍艦の高雄への寄港は2018年4回目で、物資の補給や船員の交代が目的だという。

 7月に駆逐艦2隻、10月に駆逐艦と巡洋艦、11月に駆逐艦と補給艦の米艦船がの台湾海峡を通過した。

1・3・5 東南アジア

1・3・5・1 フィリピン

 米海軍駆逐艦が1月にスカボロー礁の12nm内を航行したことに中国政府が強烈な不満を表明したことについて、フィリピン大統領報道官スカボロー礁をめぐる米国と中国との争いに関与するつもりはないとの立場を表明した。

 米空母Ronald Reaganと巡洋艦2隻が南シナ海を経て6月にマニラに入港した。 米空母が南シナ海に入るのは2018年になって3回目である。
 また7月に米国がテロと戦うフィリピンの警察を支援し訓練、装備品購入、その他法の支配の確立支援に使用されるするための資金供与を行うことを明らかにした。
 更にフィリピン海軍が11月、8月に南シナ海で座礁し破損したフリゲート艦の修理について、スクリューや水中装備は米国に送り修理するほか、新たに25mm砲を搭載することを明らかにした。

 ドゥテルテ大統領は2016年に米比共同演習を中止し米軍部隊を撤退させると主張していたが、5月に米比軍が行う最大規模の年次演習Balikatanが開始され、9月にはフィリピン軍が米比両軍が合同訓練の回数を2019年は2019年の261回から287回に拡大することで合意たと発表した。

 このような動きから米比関係が好転したかに見える。

 8月にはドゥテルテ大統領が、中国が南シナ海での行いを考え直すよう望むとし、紛争海域にある中国の人工島付近を通過する外国の航空機や船舶を追い払う権利は中国にはないと述べた。
 一方で11月2に中国の習国家主席がフィリピンを訪問した際には、南シナ海でエネルギーの共同開発を行うことで合意している。
 ドゥテルテ大統領は2月に同国EEZ内にあるBenham隆起と呼ばれる浅瀬について、同海域での主権を宣言し同海域をフィリピン隆起と改称した。

 オーストラリアのAustal社がフィリピン海軍からCape級を元にした哨戒艦6隻を受注した。 同社はセブ島にある子会社で建造する。
 Cape級哨戒艇は全長58mだが、比海軍が建造するのはこれを80mに大型化しヘリ甲板を装備した外洋哨戒艦 (OPV) である。
 ドゥテルテ大統領が6月、2018~2022年の第2次軍近代化計画 を承認した。 計画には多用途戦闘機や潜水艦の導入が盛り込まれている。
 潜水艦の導入は当初、2023~2027の第3次計画に盛り込まれていた。 フィリピンが導入するのはKilo級と見られ、装備数についてかつて海軍当局者は2隻以上と述べていた。

 7月にフィリピン政府が現有及び将来装備するフリゲート艦の基地としてセブ島にある海軍基地を改修すると報じられた。 今後韓国から購入する2,600t級フリゲート艦2隻の基地としても使用されるという。

 10月には、フィリピン国防省が新戦闘機購入の検討を終えたと報じた。 Saab社製Gripenが最有力だという。

1・3・5・2 ベトナム

 米沿岸警備隊が2017年5月にベトナム沿岸警備隊に引き渡したHamilton級警備艦が2017年11月にホノルルを出港し、途中マニラに寄港したのち2017年12月にベトナムに入港した。
 基準排水量2,716t、満載時3,050tのHamilton級警備艦は、76mm砲1門、M242 Bushmaster砲2門、20mm CIWS 1門を装備しヘリ甲板を持ち、ベトナム戦争時では艦砲射撃を行い参戦していた。

 米海軍の空母Carl Vinsonが3月にダナン港に寄港した。 米空母としてはベトナム戦争が終結した1975年以来初めてで、ベトナムが米国との戦略的連携を強化していることが鮮明となった。

1・3・5・3 インドネシア

 マティス米国防長官が1月にジャカルタを訪問し、インドネシア国防相と防衛協力の拡大と米国製装備の売却で合意した。
 売却の対象になっているのはF-16 48機の追加購入で、インドネシアは2017年12月に、米空軍が使用していたF-16C/D Block 25をBlock 52に改修した中古機24機を$670MのFMSで購入している。

 インドネシア国防省が2月、ロシアからSu-35を購入する契約に署名した。 購入機数は11機で、最初の2機は2018年10月までに納入されるという。

 インドネシア空軍が老朽化した3機のBoeing 737-2x9哨戒機に替えてAEW&C機4機を装備する検討に入った。

 インドネシアのPTDT社が11月、Anka MALE UAVのサポートでトルコのTAI社と提携すると発表した。

 大宇造船海洋は2011年12月にインドネシアから潜水艦3隻を受注し、2017年8月に1隻を引き渡したのに続き、4月に2隻目を引き渡した。
 インドネシアのDRU社が6月日、全長117mのLSTを進水させた。 このLSTは40mm砲2門のほか12.7mm機銃を随所に配置できる。

 インドネシア国営のPT Len社が、国内開発したソリッドステート対空監視レーダを公表した

1・3・5・4 マレーシア

 5月に実施されたマレーシア下院選で、野党連合「希望連盟」を率いた92歳のマハティール元首相が議席の過半数の獲得を決め新首相に就任した。マハティール元首相が返り咲いたことにより中国への過度な依存からの脱却を図ることになりそうである。
 マハティール首相は早速、5に表明した高速鉄道計画の廃止と合わせて、同国最大規模の鉄道建設計画である東海岸鉄道計画についても、中国と契約条件の再交渉を行っており、中国の一帯一路の 野望が逆回転を始めた。
 また8月にはシンガポールとマレーシアの両政府が両国間を結ぶ高速鉄道計画を延期することで合意した。

 安倍首相が6月、5月の総選挙で返り咲いたマハティール首相と首相官邸で会談した。 今回の来日がマハティール首相にとって就任後初の外国訪問である。
 両首相は、安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現へ連携を確認した。

 マレーシアのDeftech社がAludra Camar偵察/マッピング用UAVを公開した。 既に2017年7月に初飛行しており、2019年までには完成するという。
 またマレーシア陸軍が11セットを斥候兵に装備しての部隊実験を行っているシステム装具FSSを発表した。 次の段階では大隊の3個中隊に配備しての試験が計画されいる。

 マレーシア海軍が7隻保有するLCS装備用としてKongsberg社製のNSMを発注した。

1・3・5・5 シンガポール

 シンガポールは中国と4月に一帯一路に関して協力を拡大する覚書を結び、中国と関係強化をはかる姿勢を鮮明にしている。  シンガポール海軍とインドネシア海軍が4月に、テロ対策共同演習をインドネシアスラバヤ港を中心にして実施した。
 この演習は両国艦で年次演習として実施するもので、今回が1回目である。

 シンガポール政府が2月、2018年の国防費が前年度比3.9%増にのぼることを明らかにした。
 東南アジアで最も多額の国防費を支出しているシンガポールは低い出生率が国防上の問題点になってきてことから、軍は装備品の省人化に努めている。

 シンガポールが8隻計画している沿岸警備艦LMVの7番艦Dauntlessが8月に進水した。 同艦は2019年末までにシンガポール海軍に引き渡され、2020年までには8隻態勢が整う。
 排水量1,200tのLMVは、OTO Melera社製76/62 Super Rapid砲のほか、25mm砲1門、遠隔操作12.7mm機銃2丁を装備し、VL Mica SAM用の12セルVLSも装備している。

 このほかシンガポールは、Cyber戦力の拡充、Jaeger UGVやAirfish 8 WIG機などの先端技術兵器の開発を進めると共に、HIMARS、Aster 30 SAMP/T、SPYDER SAMなどの導入も行っている。

1・3・5・6 タ イ

 タイ政府が海軍の豆潜水艦計画を承認した。 計画では150~300tで、航続距離300nm、乗組員10名の豆潜水艦を7年懸けて試作する。

 タイ空軍が2015年に12機発注したT-50THの最初の4機が4月に就役した。

1・3・5・7 ミャンマー

 中国国防省が5月、ミャンマー軍と武装勢力との交戦でミャンマーと中国の国境にある瑞麗市でに中国人3名が死亡したことについて、国境防衛に必要な措置を取ると警告した。

 ミャンマーの計画財務相が7月、中国がミャンマーのチャオピュー経済特区で進める港湾開発事業の規模縮小を求める考えを明らかにした。 この事業は一帯一路の中核事業の一つで、投資の原資を中国からの多額の借金で賄うことに懸念を示した。
 計画では大型貨物船が入れるミャンマー最大規模の港湾施設を建設し、周辺に工業団地や住宅地を設けるとしている。

1・3・6 大洋州諸国

1・3・6・1 オーストラリア

 豪州の対中姿勢は必ずしも一貫してきたとはいえず、2015年9月に安倍首相と蜜月関係にあったアボット首相が退任してから、中国ビジネスで成功を収めたターンブル首相が就任した直後、豪州は軍事的要衝である北部ダーウィン港を中国企業に99年間貸与する契約を許した。
 そのターンブル首相が2017年後半から対中強硬路線にかじを切り、安保協力の進展に再び期待感が高まったが、2018年8月に豪州内の政変によりモリソン政権が誕生した。
 豪海軍が主催して9月に豪北部のダーウィン沖で隔行われた大規模多国間演習Kakaduに中国軍が初めて参加したが、中国は実弾訓練には参加しないなどの参加は限定的である。
 Kakaduは隔年で行われる大規模演習で、2016年の演習には日米加印韓比など19ヵ国から水上艦や潜水艦19隻、3,000名が参加した。

 中国が巨額の資金援助を通して太平洋の島嶼国で影響力を強める中、オーストラリアのモリソン首相が11月に島嶼国との関係強化に力を入れていく方針を発表した。
 具体的には島嶼国が必要としているインフラ開発を支援するための基金を設け、通信やエネルギ、運輸など重要度の高いインフラの整備を支援していくという。

 オーストラリアのAustal社が5月にPacific Patrol Boatの一番艇を進水させた。 全長39.5mで、30mm艦載砲と12.7mm機銃を搭載できるPacific Patrol Boatは21隻の建造が計画されており、太平洋諸島12ヵ国に供与されてこれら諸国の哨戒艇22隻と換装される。 一番艇は2018年10月にパプアニューギニアに引き渡される。

 オーストラリアのターンブル首相が6月にバヌアツのサルワイ首相と二国間の安全保障条約の締結に向け交渉を開始することで合意した。

 オーストラリアのモリソン首相が11月にパプアニューギニアのオニール首相と協力関係を強化していくことで合意した。
 オーストラリアは、パプアニューギニア北部のマヌス島にある海軍基地の改修にあたって資金を援助するなど、両国の軍事的な連携を強化するという。

 豪海軍防空駆逐艦 (AWD) 一番艦がハワイ沖で米海軍駆逐艦と初めてのCECの試験を実施した。 AWDの二番艦Brisbaneは7月に豪国防省に引き渡された。 AWDの三番艦で最終艦が5月に進水した。

 オーストラリアが6月、Anzasc級の後継として2020年代末に配備する次期フリゲート艦に英海軍Type 26フリゲート艦のオーストラリア型であるGCS-Aを選定した。

 豪海軍が1月、13隻保有しているArmidale級に代わり12隻計画している沿岸警備艦OPV建造にドイツのLürssen社を選定した。 Lürssen社はオーストラリアのCivmec社と合弁会社AMSEG社を設立して建造にあたる。

 オーストラリア政府が4月、向こう10年間を見据えた国内防衛産業の振興策であるDefence Industrial Capability Planを発表した。

1・3・6・2 ニュージーランド

 ニュージーランド政府が7月に公表した防衛に関する報告書で、南太平洋地域における中国の影響力拡大が地域の安定を脅かす可能性があると警告した。
 NZと中国の二国間関係の緊張が高まる可能性がある。

 韓国HHI社が2016年にニュージーランドから受注した洋上給油艦の船台組み立てが8月に蔚山で始まった。 この洋上給油艦は排水量24,000tで、ニュージーランドは南島東岸のAntarcticaからペルシャ湾まで燃料を輸送する計画である。

1・3・6・3 南太平洋諸国

 習国家主席が訪中中のトンガ国王ツポウ6世と3月に会談し、両国は貿易や投資のほか海洋資源の保護など幅広い分野での協力を強化して関係をさらに発展させることで一致した。
 トンガに対してはオーストラリア、ニュージーランド、日本などが無償資金協力などを通じて経済発展を支援してきたが、このところ中国が支援を強化し、急速に関与を強めており、中国が南太平洋地域で影響力を一層拡大する狙いがあるものとみられる。

 9月にナウルで開かれている太平洋諸島フォーラム首脳会議で、ナウル政府が参加する中国代表団に外交旅券による入国を拒否していた。 台湾と外交関係を持つナウルは、外交関係がないことを理由に中国代表団に対して一般旅券で入国するよう通告したが、最終的にナウル側が妥協した。

 フランス政府ではマクロン政権がオランド前政権の中国寄り外交を修正し、南シナ海で航行の自由を確保するため2017年だけで少なくとも5隻の艦船を派遣して、中国による海洋覇権の拡大を牽制する姿勢を鮮明にしている。
 フランスはインド太平洋にニューカレドニア、仏領ポリネシアなど海外領土を保有して8,000名の部隊を展開しており、中国の強引な権益拡大に対して既成事実化の押しつけは断じて認めない方針を示している。

 南太平洋のフランス特別自治体ニューカレドニアで11月に独立の是非を問う住民投票が実施され、即日開票の結果、独立反対が56.4%を占め否決された。
 ニューカレドニアは防衛を除く治安や医療、経済など幅広い自治権を保持しているが、貧富の差に不満を抱える先住民カナクの間で独立志向が強い一方、財界を中心とした独立反対派は、豊富なニッケル資源を狙う中国の進出を警戒している。

1・3・7 ロシア

1・3・7・1 軍事拡大政策

 プーチン露大統領が2017年12月に、シリアのTartus港の使用に関する条約に正式に署名した。 それによるとロシアは原子力艦船を含む最大11隻の艦船を随時停泊することができる。 条約の期限は49年になっているが自動的に25年間延長されるとも示されている。

 米海軍の駆逐艦がキプロスを4月に出航しシリア領海近くに向かっていたところロシア軍戦闘機の妨害を受けたという。 駆逐艦は妨害機の影響を受けず航行を続けた。

 露海軍巡洋艦が給油艦とタグボートを従えて11月に、2年ぶりに北アフリカのスペイン領Ceuta港に寄港した。  ロシア空軍のTu-160 2機がベネズエラに着陸した。 同機にはAn-124輸送機とIl-62旅客機も同行したという。  Tu-160がいつまでベネズエラに留まるのか、どのような武器を搭載しているのかは明らかにしていないが、ロシアは中南米への影響力を拡大しようとしている。

 ロシアが1月、Topol-M及びYars ICBMをTELに搭載した機動演習を開始した。 この演習はモスクワ北東のIvanovoから東シベリアのIrkutskにわたる広域で実施される。

 ロシアの航空宇宙軍と海軍が9月に初めて地中海で演習を実施し、シリアに駐留する爆撃機や戦闘機など34機のほか、潜水艦2隻を含む26隻の艦船が参加した。
 この演習のためロシアは 8月中旬に巡洋艦と駆逐艦を北方艦隊から、ミサイルコルベット艦を黒海艦隊から地中海に入れ存在感を高めた。

 9月に独立国家共同体(CIS)加盟7ヵ国の空軍による合同演習が始まった。 演習には加盟各国の航空機最大100機、40以上のSAM部隊などが参加した。

 ロシア軍のロケット砲兵部隊 (MT&A) 司令官が11月、MT&Aが新装備を受領していると述べた。 ロシア陸軍では火力部隊を中心に近代化が進められている。

1・3・7・2 財政難下での軍備増強

 国の財政難から2017年におけるロシアの国防費は前年比27%減で、対GDP比は3.1%であった。 更に2018年の国防支出は、当初5.1%減になるはずであったが最終的には8%増になった。
 ロシアは2010年に大規模な軍近代化計画を開始したが、財政上の問題から大幅な見直しを行っている。
 52機調達する計画であったSu-57 PakFaは12機に削減され、2020年までに2,300両調達するとしていたArmata T-14ハイテク戦車は、ソ連時代の1970年代中頃から1990年代初期に生産された3,000両を修理して使用することにしている。
 8月にモスクワ近郊で開かれたArmy 2018展の出展品の中に第五世代通常兵器はなく、Echo Moskvy通信機だけが唯一脚光を浴びていた。

 このような厳しい財政状況のなかでも軍備の増強は続けられている。

 ロシアが3月に新型ASATの発射実験に成功した。 米国防当局者によるとPL19 Noodleと呼ばれるASATはTELから打ち上げられたが、標的の破壊は行われなかったとみられる。
 ASATの発射実験は今回を含め6回行われ、うち4回は成功したとされる。

 プーチン露大統領が3月に、Dagger (Kinzhal) 超高速 ALCM、Avantguard HGV、Sarmat ICBM、原子力推進エンジン、核推進のUUV、A-235 (PRS-1M) ABM、S-500 SAM、高出力レーザ兵器など各種新型戦略兵器を開発していることを公表した。

 露政府系メディアが6月、Su-57 12機の引き渡し契約が結ばれ、2019年にも配備されると述べたと報じた。

 ロシア海軍が唯一保有している空母Admiral Kuzunetsovの近代化改修が発注された。 近代化改修は2020年末に完了し2021年に再就役するという。

 新型フリゲート艦の一番艦が就役した。 排水量5,400tの新型艦は130mm砲1門のほか、Kalibr ASCM/LACM 16発、3M89 CIWS 2基などを装備し、対潜ヘリ1機を搭載できる。

 また主としてアラスカ方面で爆撃機による挑発飛行が行われている。

 北米航空宇宙防衛司令部 (NORAD) によると、ロシア軍のTu-95 2機が5月にアラスカ州沖合の防空識別圏に侵入した。  アラスカ近辺で米空軍がロシア軍機に対して緊急発進を行ったのは2017年5月以来という。
 また8月には、Tu-160 2機がベーリング海を挟んで米国と面するチュクチ半島まで7,000kmを飛行し帰投する訓練飛行を行った。 この演習には複数のTu-95や空中給油機も参加したという。
 ロシアの戦略爆撃機がチュクチ半島上空を飛行するのは初めてである。

1・3・7・5 アジアでの活動の活発化

 ロシアは極東軍区での軍備増強も進めている。

 ロシアがウラジオストック近郊のS-300PSをS-400 2個中隊に換装した。
 ロシアはまた12月までに、露太平洋艦隊に最新鋭のLada型通常動力潜水艦を装備する新たな潜水艦隊を配置する方針を固めた。
 9月には北方艦隊が東シベリアコテリヌイ島で初めて行ったBastion超音速ASCMの発射試験を行った。 BastionはP-800 Oniksの陸上発射型で、Oniksは高度20,000mをMach 2.5~2.7で300km飛行する。

 9月には、1981年に実施したソ連陸軍のZapad 81 演習以来最大規模の大規模演習Vostok 2018を実施し、中国軍とモンゴル軍も参加した。

 我が国北方領土その周辺における活動も活発化している。

 2月にはロシア軍2,000名が北方四島で演習を行い、4月には択捉島や国後島などで2,500名以上が参加する大規模演習を行った。
 ただ9月に行ったVostok 2018演習では日本の要請を受け北方領土を除外した。
 しかしロシアは10月に国後島の周辺海域などでミサイルの射撃を行うと伝えてきたほか、択捉島の周辺海域などで射撃訓練を行うと通告してきている。
 更に12月にはロシア軍が北方領土を含む島々にレーダ基地を新設したと報じられ、ロシア国防省も12月に、北方領土に部隊を駐留させる新施設を建設し、装甲車両用の施設も建設すると発表した。  ロシア国防省によると、12月に択捉島と国後島にそれぞれ2箇所新設した施設に軍人とその家族を派遣するという。

1・3・7・6 わが国に対する動き

 ロシア軍爆撃機による日本周回飛行が再開されている。

 2月にはTu-95 2機が太平洋上空を日本列島に沿って沖縄本島付近まで進出する長距離飛行を行った。 また9月にはTu-142 2機が日本を周回飛行するのが確認されている。
 ロシア軍機が同様のコースで太平洋を沖縄付近まで飛行したのは、2013年11月にTu-142 2機が、同月にTu-95 2機が確認されて以来で、2017年1月にはTu-95 2機が日本海から逆時計回りに日本 列島をほぼ一周したことがあった。

 ロシアのSu-35が9月に日本海上空を飛行した。 Su-35はSu-24戦術偵察機などと3機で能登半島沖から北海道沖の日本海を飛行した。

 9月にVostok 2018演習の一環として極東沿海の半島に位置するクレルク軍事演習場で、海兵部隊が航空機と砲撃の支援を受けて史上最大規模の上陸演習が行われた。
 またロシア海軍の艦艇28隻が宗谷海峡を、オホーツク海から日本海へ航行した。

1・3・8 米 国

1・3・8・1 トランプ政権の国防政策

 トランプ政権が2017年12月にNational Security Strategy、1月にNational Defense Strategy(要約)、2月にNuclear Posture Reviewと、安全保障戦略を示す文書を相次いで公表した。 ただし2月頃の公表が予想されていたQDR 2019は発簡されなかった。
 Nuclear Posture Reviewでは潜水艦発射Low-yield Ballistic Missileと潜水艦発射Nuclear Cruise Missileの計画が新たに示された。

 ペンス米副大統領が10月に行った演説で中国に対して歴代政権よりも厳しく対抗していく考えを示し、米国の対中国政策の硬化が鮮明になった。

 10月にはトランプ米政権が旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力 (INF) 全廃条約から離脱する意向を表明した。
 ポンペオ米国務長官が12月にロシアに対し、60日以内に完全かつ検証可能な形でINF 全廃条約を順守するよう迫り、応じない場合米国は破棄へ進む方針を表明しロシアに執行猶予を与えたが、ロシアが順守する可能性は低く、条約は崩壊する公算が大きい。
 もし米国がINF禁止条約を破棄した場合、直ぐに実施可能な施策はTomahawkの地上発射型の開発と、射程300kmのATACMSを射程延伸することの2件である。

 ペンス米副大統領が10月に宇宙空間に核兵器を配置する考えを示した。
 トランプ米大統領は2018年末までに宇宙軍を創設するとし12月に創設を命じたが、内容は大統領の意向とは異なり、独立した宇宙軍 (Space Force) ではなく今まで通り空軍隷下の宇宙軍 (Space Command) のままで、その代わりにサイバ軍のような位置付けになった。

 トランプ政権が2月、総額$686.1BのFY19国防予算要求を公表した。 このうち基本経費は$617B、海外戦費 (OCO) は$69Bになっている。
 トランプ大統領の署名を経て8月に成立したFY19国防予算の大枠を定めた国防権限法は、すべての米政府省庁と取引する企業に対し、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)や華為技術(ファーウェイ)など中国政府と関係のある企業の商品を使うことを禁止し、安全保障に関するハイテク技術を中国などから保護するため、対米外国投資委員会(CFIUS)の審査権限を強化することも盛り込んでいる。

 トランプ米大統領が10月に、国家予算全体削減の一環としてFY20の国防予算は$700Bまで削減されると述べたが、米高官が12月にトランプ大統領が国防総省が要求すると見込まれる$733B程度を上回る$750Bとしていることを明らかにした。

 マティス米国防長官が9月に陸海空軍長官に対し、F-35、F-22、F-16、F-18の主要4機種の戦闘可動率を来年9月末までに80%以上に引き上げることを命じた。
 米空軍が3月に発表したFY17の戦闘稼働率は71.3%とFY16の72.1%より下がっている。

 10月9にはFY18の米国の武器輸出額が前年度比で33%増加したと報じた。 米国防安全保障協力局 (DSCA) も10月に、FY18におけるFMSでの海外への販売額が33%増になったと発表した。

1・3・8・2 ミサイル防衛政策

 トランプ大統領が2017年に、2010年の脅威を念頭に置いた現行Ballistic Missile Defense Reviewの見直しを命じたが、新たなBMDRでは標題からBallisticが外される模様である。

 米国防総省次官が10月に、Missile Defense Review作業が完了したことを明らかにした。 ただし公表時期は未定という。

1・3・8・3 陸海空軍の戦略戦術

 米陸軍のFY19予算要求で、陸軍の重点が重車両部隊に移ったことで、これまで予算額が首位であった航空機の調達額が装軌車両を下回った。

 米陸軍が7月、次世代型戦闘車両や長距離精密誘導弾の開発配備など軍の近代化を一手に担う部門になるArmy Future Commandをテキサス州オースティンに設置すると明らかにした。  新司令部は2019年夏までに編成完結する計画で、要員は500名規模となる。
 Army Future Commandでは電磁砲などの新型装備や軽量な装甲車、離島防衛にも威力を発揮する長距離ミサイル、垂直離着陸機の開発が重視されるもようである。

 米陸軍長官が11月、ここ何年かをテロとの戦いに費やしてきたため陸軍の本来機能が失われていると述べた。

 陸軍SMDCがAMDに関する新たなドクトリンと戦略を検討している。
 元JIAMDO司令官の海軍少将が陸軍のAMDについて、過去20年間何も変わっておらず、再検討は25年前の湾岸戦争にまで遡るべきとしている。
 またCSISのミサイル防衛に関する責任者は、陸軍のAMDは分散展開に意味があり、遠隔発射交戦能力やネットワーク化に力を入れるべきとしている。
 新設されたArmy Future CommandでのAMDに関する責任者が、陸軍は今後、連邦軍に10個大隊、州兵に8個大隊のSHORAD部隊を整備する計画であることを明らかにした。 現在米陸軍には州兵に7個大隊のSHORAD部隊しかなく、その全てが首都圏の防空任務に就いている。

 7月に陸軍が初めて対艦ミサイルの発射をKauai島で実施した。 発射はRimPac演習の一環として陸軍MDTSの指揮下で米陸軍、空軍、及び陸上自衛隊が操作し、沖合60哩の米海軍のLSTを標的に行われた。

 ロシア軍に対抗するため米陸軍が装備を強化した旅団戦闘団 (BCT) である装甲BCT (ABCT) を編成する。
 またこれと共に武装勢力と戦う6個部隊を親偏する。

 米陸軍長官が11月、欧州や中東への米軍派遣で訓練時間が不足しており、現在476,000名の兵力を2028年までに500,000名とする計画に疑問を呈している。
 長官によると派遣部隊と拘置部隊の人員比の理想は1:3で、最悪でも1:2であるのに対し、現状は1:1.4であるという。

 米海軍はFY19予算要求で2050年代までに355隻態勢を実現する第一歩を踏み出そうとしている。 このため向こう5ヵ年にFY18要求より11隻多い建艦を計画している。
 米議会調査局5月、米海軍がFY23までにAegis BMD艦を50%増強するとした報告を行った。 FY18に38隻保有しているAegis BMD艦をFY19末に41隻、FY23末に57隻にまで増やす。

 米海軍が5月、経費上の理由から2011年に廃止され米艦隊総軍に吸収されていた第2艦隊を復活させると発表した。 第2艦隊は2019年春operationalになるという。
 司令部はNorfolkに置かれ、第4艦隊と共に米南方軍の隷下に入る。

 水陸両用参戦能力が強化され、従来揚陸艦船34隻であった米海軍が、海軍355隻になれば38隻になるという。

 米空軍長官が9月、2030年までに実戦に投入できる飛行中隊の数を24%増やす目標を明らかにした。 計画では現在の312隊から386隊態勢を目指しており、実現すれば冷戦後で最大規模の空軍増強になる。
 このためには今後10年間で戦闘機182機、爆撃機60機、給油機210機、輸送機15機と40,000名の増員が必要になる。

 米海兵隊が、中露からの長距離CMやその他近未来の高度な脅威に対抗して運用構想の大規模な見直しを行っている。

1・3・8・4 中露の進出阻止

 ポンペオ米国務長官が8月、南シナ海などの安全保障分野への協力へ新たに資金を拠出する方針を発表した。 支援対象には、東南アジアなどにおける人道支援や平和維持なども挙げた。
 ASEANが、2019年に米国と海軍合同演習を実施する方向で調整を進めている。 米国がASEAN全体との共同演習実施は異例である。
 ASEANは10月に中国海軍と合同演習の実施を予定しているため、米中両国とバランスの取れた関係を維持する思惑があるとみられる。

 マティス米国防長官が6月、中台関係について現状を変更するあらゆる一方的な措置に反対すると述べ、台湾周辺で軍事活動を活発化させている中国を牽制した。

 米国が中国の武器輸出拡大への警戒を強めている。 このため中国の武器輸出拡大の阻止や米軍内での中国製品への過度な依存に対処するという。

 米太平洋艦隊の駆逐艦が12月、ロシア極東ウラジオストク沖のピョートル大帝湾付近を航行の自由作戦の一環として航行した。
 この海域で航行の自由作戦を実施するのは初めてで、国際法を逸脱する海洋権益を主張しているロシアを牽制する狙いという。

1・3・8・5 インド、太平洋戦略

 マティス米国防長官が5月、太平洋軍をインド太平洋軍に改名すると発表した。

 5月に米太平洋艦隊司令官に着任したアキリノ大将は、Third Fleet Forwardを推進しサンディエゴを拠点とする第3艦隊をハワイ以西で活動させた前任者の方針を元に戻そうとしている。

 26回目になる2018年のRIMPAC合同演習は中国抜きで6月に開始された。

 米海軍強襲揚陸艦Waspとドック型揚陸艦Ashlandの2隻が8月上旬佐世保を出航し西太平洋での哨戒任務に就いた。  1月に日本に派遣された強襲揚陸艦Waspは2018年初めにF-35Bを搭載した初めての哨戒任務に就いた。
 米海軍が2月に、佐世保基地を母港とする強襲揚陸艦Waspを中心とする新たな打撃群を編成した。 F-35を搭載する強襲揚陸艦に複数の駆逐艦を組み合わせることで空母打撃群に近い能力を持たせた強化型遠征打撃群の編成は初めてである。
 Waspは8月にドック型揚陸艦と2隻で佐世保を出航し西太平洋での哨戒任務に就いた。

 F-35B 1個飛行隊を含む海兵遠征隊が乗り組んだ強襲揚陸艦Essexを中心に3隻からなる水陸両用戦群 (ARG) が7月にサンディエゴを出航し、西太平洋/中東に向かった。
 今回が米本土の部隊がF-35Bを搭載して出撃する初めてのケースになる。

 空母Theodore RooseveltHarry S TrumanRonald ReaganJohn C. Stennisが相次いで西太平洋に投入され、同時に空母2~3隻が同一海域にいる状況を呈した。

 米空軍が1月にB-52 6機がグアムのAndersen AFBに展開したと発表した。
 空軍によるとB-52と300名の要員はB-1から任務を引き継ぐため、ルイジアナ州からグアムに到着したが、グアムには1月にB-2が到着しており、一時的に米軍の戦略爆撃機3機種が集結した。

 ペイン豪国防相が3月、同国北部に近く巡回駐留する米海兵隊員が過去最高の1,587名になると発表した。

1・3・8・6 在韓米軍の動き

 5月にトランプ大統領が国防総省に対して在韓米軍縮小の選択肢を検討するよう指示したと報じられた。 複数の政府筋によれば、完全撤収の可能性は低いものの、平和協定が結ばれれば現在の規模を維持する必要がなくなる可能性があるという。
 これに対し米議会下院軍事委員会は5月、安全保障に関する確実な保証がない限り在韓米軍を22,000名未満に削減してはならないとする国防権限法の修正案を可決した。
 現在公式の在韓米軍兵力は28,500名となっている。

 ソウルの竜山基地から移転する在韓米軍司令部の新庁舎の開館式が6月に平沢のCamp Humphreysで行われた。

 米MDA長官が6月、米韓合同演習は中止になったが朝鮮半島のBMD計画は今後も推進すると述べた。
 在韓米軍筋が9月、平沢基地を防御するため在韓米軍がPAC-3 1個大隊を平沢基地に配備する件について韓国と協議中であることを明らかにした。 在韓米軍には現在、烏山空軍基地と倭館のキャンプキャロルにそれぞれPatriot 1個大隊が配置されている。

1・3・8・7 在日米軍の戦力強化

 米空母艦載機部隊が2017年8月以降、厚木基地から段階的に岩国基地に移転を進めてきたが、3月にF/A-18 12機が岩国基地に到着した。
 これで岩国基地は、配備機数が120機とこれまでの二倍になり、数では東アジア最大規模の米軍の航空基地となった。

 米陸軍が10月、第38防空砲兵旅団を現役復帰する式典を在日米陸軍司令部のある座間で開いた。 現役復帰した旅団は司令部を相模総合補給敞に置き、嘉手納AFBに駐留する第1防空連隊第1大隊(PAC-3)、日本本土の第10及び第14 BMD中隊(TPY-2)とグアムのTHAAD中隊を隷下に入れる。

 在日米海軍が4月に、米海軍が2021年以降にF-35CをRonald Reagan CSG所属の第5艦載航空団に配備することを明らかにした。 CAG5は3月に海軍厚木航空基地から海兵隊岩国航空基地へ移駐している。
 12月4日に、米海軍が唯一海外展開している強襲揚陸艦Waspが2019年のいつかに佐世保を離れてバージニア州Norfolkに戻ることが明らかになった。

 米海軍駆逐艦Miliusが4月に横須賀に向けSan Diegoを出航する。 横須賀には5月下旬に到着し第7艦隊に配属される。
 第7艦隊は2017年起きた2件の駆逐艦の衝突事故で2隻が不足していた。
 これで横須賀を事実上の母港とする艦船は空母Ronald Reaganを含め過去最多の14隻となった。

 米空軍が4月、CV-22 Osprey 5機が横田基地に飛来すると発表した。 これらは特殊部隊飛行隊に属する10機の先遣隊で、2020年配備予定であったのが繰り上げ配備された。

 米空軍が5月にF-22を嘉手納基地に暫定配備した。 配備されたF-22は14機で、まで10機が到着し残りも近く飛来する。
 F-22の嘉手納配備は2014年4月以来約4年ぶりで、配備期間は1ヵ月間を予定しているという。
 政府が、有事などの緊急時に米軍の航空部隊を受け入れるため、航空自衛隊新田原基地に弾薬庫などを新設する方針を地元自治体に伝えていた。
 新たに整備されるのは米軍が使用する弾薬庫や駐機場などで、平成31年度以降、設計作業などを本格化させる見通しだという。
 日米合同委員会が10月、航空自衛隊の新田原基地と築城基地に米軍用弾薬庫などを新たに整備することで合意したと発表した。 整備費は日本が全額を負担する。

1・3・9 その他諸国

1・3・9・1 モンゴル

 モンゴルについて特記すべき記事はなかった。
1・3・9・2 インド

 インドと米国が9月、初の外務国防閣僚協議 (2-plus-2) をニューデリーで開き、南アジアやインド洋への影響力を強める中国を念頭に、2019年にインド東岸で陸海空軍の合同演習を実施することを決めた。
 軍事情報の共有を進めるための通信互換性保護協定 (COMCASA) も締結した。
 この結果インドが保有するC-130、C-17、P-3Iへの暗号化された通信装置の売却が可能になり、更に2017年末から交渉が続けられているGuardian UAVや、AH-64、CH-47Fの売却にも弾みがつくことになる。

 インドとロシアが両国の軍事技術協力 (IRIGC-MTC) に新部門を立ち上げたことを10月に明らかにした。 新部門では既存協力計画の修正、高官の相互訪問、共同訓練演習などを取り扱う。
 IRIGC-MTCは18年前に設立され、2010年に10年間の期限延長を行っている。

 インド政府がFY2018-19国防費を前年度比7.73%増とすると発表した。 しかしながら国防当局者や専門家からは物価上昇率が5%程度であり、長く遅れている軍近代化計画達成には不十分だとしている。

 インドのモディ首相が11月、軍事力の強化のために開発を進めていた核ミサイルが搭載可能な国産の原子力潜水艦が就役できるようになったと発表した。
 これによりインドは、陸と空に加えて海からも核ミサイルを使って攻撃できるようになった。

 インドは5月にベトナムの海軍との合同演習を行うほか、5月にインドネシアとのインド洋での防衛協力に合意し、同じく5月にシンガポール海軍との協力強化で合意し、インド洋で軍事的な存在感を高める中国に対して、東南アジア諸国と一致して対応する構えを鮮明にしている。

 インドは1月に、1.5tの弾頭を搭載し5,000kmの射程を有するAgni Ⅴの発射試験に成功した。 また2月に、射程が600kmある実配備型Agni I SRBMの発射試験に成功した。
 更にインド陸軍戦略軍が2月、射程350kmの液体燃料SRBMであるPrithvi Ⅱの夜間発射試験に成功した。

 インド政府が7月、インド初の国産空母は2020年に洋上試験を開始すると発表した。
 推進装置、発電装置、甲板機構、その他補助設備の搭載は完了しており、今後航空機運用に関する設備を搭載するという。
 2016年8月に就役したインド国産初のSLBM搭載原子力潜水艦が1ヶ月に及ぶ初の核抑止航海を終えて帰港したのを受け、インド国防相が11月に陸海空三極からなる核戦力が完成したと宣言した。
 インド海軍が2017年12月、6隻をライセンス生産するScorpene級潜水艦の一番艦を就役させた。
 インド国防省が10月にロシアと、Admiral Grigorovich級フリゲート艦2隻を購入する契約を行った。 2隻は36~48ヶ月以内に納入される。
 但し同型艦2隻をゴアの国営造船所で建造する件については合意しなかった。

 インドが7月、波高9mのSea State 7状態でのBrahMos (PJ-10) 超音速CM発射試験に成功した。
 インド空軍が2017年11月22日にSu-30MKIによるBrahMos-A ALCMの発射試験成功を受け、Su-30MKI 40機程度をBrahMos-A搭載可能に改造し、2020~2021年までに2個飛行隊を編成する計画である。

 インドDRDOは2011年に、BMDシステムを2014年までにデリーとムンバイに配備するとしていたが、システムは未だに開発段階にある。
 インド国防省とDRDOがAshvin AADの発射試験に成功したと発表した。 試験は2017年12月28日に、Prithvi Ⅱ SRBMを元にした標的に対して行われた。
 インド国防相が9月、改良型Akash MSAM 2個連隊分の調達することを承認したと述べた。

 インドが政府が4月、ロシアと11年間にわたり進めてきた第五世代戦闘機 (FGFA) 計画から撤退した。
 FGFAはロシアのSu-57 (T-50 PakFa) を元にした計画であったが、開発コストと技術的能力を理由に中止したことを明らかにした。
 印空軍はSu-57を元にした開発を進め、7機の原型機の飛行試験をロシアで行ったところ、ステルス性、レーダをはじめとする戦闘用電子機器、センサなどがインド側の要求を満たしていないことが判明したという。

 インドが6月に敢えて米国の対露制裁に反してロシアから更に5個システムのS-400を購入すると発表した。 引き渡しは2020年10月に開始される。

 インド政府は8月にイスラエルのIAI社とRafael社に対し汚職疑惑から取引を停止したが、国営BEL社が10月にBarak-8 LRSAM 7個システム分をIAI社に発注した。
 BEL社はBarak-8 LRSAM建造中のフリゲート艦7隻に装備する。

1・3・9・3 カナダ

 カナダ海軍が2月、潜水艦1隻が西太平洋で哨戒活動を行っていることを明らかにした。
 派遣された潜水艦の任務は約200日間で、日本やグアムに寄港するし、外国海軍との演習や商船の監視活動も行うという。
1・4. 国 内 情 勢

1・4・1 防衛政策の見直し

1・4・1・1 主な争点

 防衛計画大綱の見直しが2018年末を目指して進められ、見直しに際しては敵地攻撃能力の保有が争点になった。
 大綱見直しの検討では長射程ミサイルの導入、DDHの空母化、F-35Bの導入、F-35Aの増強などが焦点になり、マルチドメインでの戦いが打ち出されている。

 そのほかサイバ攻撃への反撃の是非や、高出力レーザ対空システムの開発、統合作戦室の設置も話題になった。

1・4・1・2 大綱の見直しと次期中期防の策定

 防衛計画大綱の見直し及び次期中期防の策定作業は、自民国防族の実務派が中心にNSCと連携して進められた。
 自民党提言には、防衛費の目標をGDP比2%と明記した。

 新防衛計画大綱で焦点だった護衛艦いずもの空母化構想に関して、大綱では多用途運用護衛艦と位置付け空母の名称を見送る方向で調整に入った。

 政府が12月、新たな防衛力整備の指針防衛計画の大綱と、大綱内容に沿って具体的な装備調達を進める次期中期防衛力整備計画を閣議決定した。

1・4・1・3 次期中期の主要内容

 政府は防衛装備品の取得計画を定める次期中期防の総額を27兆円台とした。 伸び率は平成26~30年度の平均0.8%を上回り1.1%だが、最終的にはコスト削減努力などで総額を25兆円台半ばに抑えることを目指す。

 次期中期防でF-35A 20機を追加取得し、現有機と合わせて60機態勢を目指す方向で検討に入った。  複数の政府関係者によると、追加取得は早ければ平成32年度から始め、配備候補地は新田原基地、百里基地などが浮上しており、2018年末までに候補地を絞り込む。  政府はF-35を105機購入し、うち42機はF-35Bとする方針で次期中期防では、F-35B 42機のうち半数程度の購入を盛り込む。  見直す防衛大綱で電子戦の能力強化を盛り込む方針で、将来は電子攻撃機の導入も検討している。

1・4・1・5 現中期防の達成状況

 現中期防で導入を明記した主要防衛装備品のうちC-2など全体の4割の項目で予算計上が遅れている。 予算計上した項目でも水陸両用車など配備が遅れているものもある。
 3防衛省が現中期防の達成状況をまとめたところ、主要装備品23項目のうち目標値を100%達成できたのはAegis艦2隻やF-35A 28機など13項目で、10項目は100%に満たなかった。

 海上自衛隊が潜水艦22隻態勢を2020年代初期に達成する作業を2012年に開始しているが、おやしお型潜水艦7隻の艦齢延長工事が完了し、そうりゅう型と同程度の能力になった。

1・4・2 組織、機能、制度の改革

1・4・2・1 国家安全保障会議の強化

 政府筋が政府が防衛力整備を巡り、陸海空各自衛隊の要求に力点を置いてきた従来方式を見直し、トップダウンで効率的な予算配分を目指して安全保障政策の司令塔である国家安全保障会議 (NSC) が主導し決定する方針を固めたことを明らかにした。
1・4・2・2 統合防衛の推進

 防衛省が「統合防衛戦略」を初めて正式文書として策定し公表する方針を固め、「」の策定により「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」と合わせ安保戦略3文書が確立するとしていたが、いまだ公表されていない。

 防衛省が、陸海空自衛隊の運用を一元的に指揮する「統合司令部」創設に向け、改定防衛計画大綱と次期中期防に明記する方向で最終調整に入ると報じられたが、大綱と中期には具体的な記載がない。
 政府がGlobal Hawkを陸海空三自衛隊で共同運用する方針を固め次期中期防に明記すると報じられたが、中期防にはその様な記載はない。

1・4・2・3 予備自衛官制度の改革

 予備自衛官を雇用する企業への給付金制度を新設された。

 西日本豪雨の被害拡大を受けて即応予備自衛官を招集し、広島県を中心に被災者の生活支援活動に従事した。
 招集は300名規模で東日本大震災、熊本地震に次いで3回目目になる。

1・4・2・4 部隊の新編、改編

 陸上総隊が朝霞駐屯地で新編された。 また総隊の隷下に入る水陸機動団が相浦駐屯地で編成された。
1・4・3 防衛費増加傾向の持続

1・4・3・1 周辺国と比較した増加傾向

 日本周辺各国の国防費の、2008~2017年の平均伸び率は、中国7.7%、ロシア3.1%、東南アジア3.3%、日本0.4%であった。
1・4・3・2 平成30年度の防衛予算

 第2次補正予算を加えた平成30年度の防衛予算は5兆6,281億円と最終的に5%増になった。
1・4・3・3 平成31年度の防衛予算

 防衛省が平成31年度予算概算要求に前年度比2.1%増の5兆2,900億円を要求した。
 12月に決定した政府原案では米軍再編経費を含む防衛関係費が、前年度比1.3%増の5兆2,574億円となった。
1・4・4 周辺海域防衛の強化

1・4・4・1 海洋安全保障政策の推進

 政府が今後5年間の海洋政策の新指針となる「海洋基本計画」を決定した。 北朝鮮の脅威を初めて明記するなど安全保障重視を前面に打ち出した。

 海上保安庁が、2,338億円の平成31年度予算の概算要求を発表した。 前年度当初比で11%増となる。

1・4・4・2 南西防衛を重視した部隊配置

 相浦駐屯地で編成した水陸機動団を海上自衛隊艦艇で定期的に東シナ海へ展開し訓練すると共に、輸送艦が水陸機動団を乗せた状態で尖閣周辺も定期的に航行し、鹿児島沖縄両県の離島に配備する有事での初動対処部隊と連携を強化する。
 防衛省が石垣島に陸上自衛隊警備隊とミサイル部隊を配置するための駐屯地建設に平成30年度中に着手する。 また政府が宮古島に12式対艦ミサイルを配備すると報じられた。
 防衛省は陸上自衛隊の補給処を初めて沖縄県内に設置する。
 更に中国の離島侵攻の脅威をにらんで、陸海空自衛隊が本格的な離島奪還作戦の訓練場を整備する検討に入った。 候補地に鹿児島県十島(としま)村の離島の臥蛇島(がじゃじま)が浮上している。

 陸上自衛隊が独自の海上輸送力の整備を検討していたが、次期中期防では中・小型輸送艦を装備する陸海自衛隊の統合輸送部隊を創設すると明記された。

 防衛省が、米艦載機の離着陸訓練候補地となっている馬毛島を有事に戦闘機を分散配置するなど海空自衛隊の拠点として活用する方針を固めた。

 政府は、機雷対処能力を持つ新型護衛艦を順次導入し、2030年代に22隻体制とする方針を固めた。
 また海上自衛隊が沖縄本島の補給基地への給油体制を増強するため、積載量5,000kl級の油送艦を装備することを検討している。

1・4・4・3 離島奪還演習の実施

 米軍が実施する Keen Sward 統合演習に参加した。 Keen Swardは陸海空の三自衛隊のほか米国の陸海空軍や海兵隊が参加した。
 2016年には自衛隊が25,000名、米軍10,000名規模で実施した。
1・4・4・4 日本海警備の強化

 海上保安庁が日本海での北朝鮮漁船の動きや尖閣諸島での中国船を監視するため、23箇所の離島で灯台のそばに鉄塔を設け、レーダや監視カメラを設置する予算を30年度予算に要求している。
1・4・4・5 離島管理の強化

 政府が「保全上重要な土地」を指定する制度を作り、土地の保全策を講じる。
 具体的には、海岸沿いの陸地のほか、水源地や空港・港湾、発電施設などの周辺地が対象となる。

 小笠原諸島など太平洋側の島嶼部が防空態勢の面で空白地域となっていることから、防衛省はレーダの設置を検討している。
 当面は固定式レーダを配備するのではなく移動式レーダを展開させる方針を固め、展開候補地の絞り込みに入っている。

 政府が日本の領海や排他的経済水域 (EEZ) の基点となる国境離島を保全するため、政府機関の衛星画像情報を海上保安庁の新システムに集約し、監視態勢を強化する方向で検討に入った。

1・4・4・6 海上保安部隊の増強

 尖閣諸島周辺の哨戒強化に向け、海上保安庁が新型ジェット機2機の配備に合わせ、航空要員を過去最大規模の60名増員する。
 また尖閣諸島周辺海域の警備の要と位置付ける宮古島で、離島で初めてとなる海保専用の射撃訓練場建設に着手する。

 海上保安庁が父島への巡視船配備を計画している。 小笠原諸島の警備には父島にある小笠原海上保安署の監視取締艇だけでは対応が追いつかず、巡視船が配備されていない小笠原では有事に即応できない状態が続いている。

1・4・5 海外での活動

1・4・5・1 自衛艦の海外派遣

 海上自衛隊がブルネイ、フィリピン、ベトナム、シンガポールなどに、河野外相の言う戦略的寄港を行っている。
 またDDHを南シナ海やインド洋に派遣し、フィリピンやインドネシアなどASEAN各国のほか、インドやスリランカに寄港し、米軍などとの共同訓練を計画するほか、他の海軍との訓練は形式的な親善ではなく、対潜水艦戦といった高度で内容が濃いものを行えるようにする。
1・4・5・2 邦人保護活動

 米国とタイの両軍が主催する人道支援や災害救助を中心にしたアジア太平洋地域最大級の多国間合同軍事演習Cobra Goldが2月13日に自衛隊員150名を派遣し、在外邦人保護や人道、民生支援活動の訓練に当たる。
 Cobra Gold参加は今回が14回目となる。
1・4・5・3 海外拠点の整備

 防衛省が、海賊対策のためジブチに置いている自衛隊の活動拠点の機能を強め、拠点を恒久化する方針を固めた。
 恒久化にジブチ政府の同意を得るため、自衛隊装備品の無償譲渡と整備支援に着手する。
1・4・5・4 国際貢献としての活動

 政府は国際貢献としての活動の一環としてシナイ半島多国籍監視軍に陸上自衛隊員を派遣する。
1・4・6 各国との防衛協力

1・4・6・1 米 国

 日米政府が尖閣諸島有事を想定して、2015年改定の日米防衛協力指針に基づき、自衛隊と米軍による初の対中国共同作戦計画の策定作業を進めている。

 日米は以下のような共同訓練を行った。
  6月16~23日:米海軍第15駆逐戦隊と共に行動した共同訓練
  8月:南シナ海での共同訓練と共同哨戒
  10月5~19日:種子島で島嶼防衛を想定した訓練
  10月29日~、Keen Sword 日米共同演習

 防衛省が安全保障関連法で可能となった自衛隊による米軍の艦船や武器などを2017年は2回実施したと発表した。
 また海上自衛隊が2017年4~12月に安全保障関連法に基づき米海軍艦船に、食料や燃料を提供した事例が17件だった。

1・4・6・2 米国を含む多国間

 米軍に英豪印の友好国を交えた3ヵ国合同演習を行った。

 オーストラリアとは、米海空軍や海兵隊、航空自衛隊、豪空軍から100機以上の航空機と2,500名が参加するCope North演習を実施した。
 インドとはMalabar演習や2JA 2018演習、英国とは初の日米英合同対潜演習をフィリピン海で行った。

1・4・6・3 オーストラリア

 日本とオーストラリアが外務防衛担当閣僚協議 (2-plus-2) で、自衛隊と豪軍が共同活動する際の法的な扱いを定める訪問部隊地位協定 (VFA) を早期に妥結させる方針を確認した。
 また日豪首脳は陸海空部隊の相互訪問や防衛装備に関する協力強化で一致した。
1・4・6・4 インド

 日印は物品役務相互提供協定 (ACSA) の締結に向けた調整作業を行うことで合意した。 また外務防衛当局間の定例協議 (2-plus-2) を次官級から閣僚級に格上げすることに合意した。

 陸上自衛隊が対テロ戦を想定したインド陸軍との共同訓練をインド国内で行い、陸自から30名の隊員を派遣して市街地戦闘や人質救出などの技量向上を図った。
 航空自衛隊はインドのアグラ空軍基地で初めてインド空軍と共同訓練を行った。

1・4・6・5 カナダ

 河野外相がフリーランド加外相と会談し、外務防衛担当の次官級協議を早期に開催することで一致した。

 日本とカナダが物品役務相互提供協定 (ACSA) に調印した。

 日本周辺を舞台に行われた日米共同演習Keen Sword 19にカナダ海軍が初めて参加した。

1・4・6・6 欧州諸国

 河野外相がEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表と電話会談し、日EU戦略的パートナーシップ協定 (SPA) の締結で合意した。

 北大西洋理事会が、日本から要求されている駐ベルギー大使館を兼NATO大使館とし、駐ベルギー大使を兼NATO大使とする要求を承認した。

 安倍首相がブリュッセルで行われるNATO首脳会議に出席する方向で調整に入ったが、7月上旬に生起した西日本豪雨災害への対応の必要から実現しなかった。

 海上自衛隊と英海軍が初の共同訓練を関東沖で実施した。 初の共同訓練は日英両政府が2017年12月の外務防衛閣僚会合 (2-plus-2) で合意していた。
 陸上自衛隊と英陸軍が富士学校、北富士演習場、王城寺原演習場の3ヵ所で共同訓練した。 国内で陸自が米国以外の陸軍と共同訓練するのは初めてで、自衛隊から60名、英陸軍から50名が参加した。
 日英が2017年12月にロンドンで2-plus-2会合を持ち、防衛技術協力の発展で合意した。
 会同ではJNAAM計画を次の段階に移行させることや、2014年に設立された日英高度防衛技術協力推進会議を発展させることなどでも合意した。

 政府が日仏物品役務相互提供協定 (ACSA) を結ぶことを決めた。 ACSA締結は2017年1月に行われた外務防衛の閣僚協議 (2-plus-2) で合意していた。
 日本は米、豪、英3ヵ国とすでにACSAを結んでいて、カナダとも締結に向けた手続きを進めている。

 安倍首相がマクロン仏大統領との会談に先立ち、中国の海洋進出を念頭にフランスとの海洋安全保障協力を強化する考えを示した。
 両首脳は署名した物品役務相互提供協定 (ACSA) を踏まえ、共同訓練などの具体的協力を重ねることで一致し、北朝鮮による瀬取りについても共同で対処することを確認した。

1・4・6・7 アジア太平洋諸国

 日本とマレーシア両政府が防衛装備品および技術移転に関する協定に署名し発効した。 マレーシアは、日本の偵察機、レーダ、衛星、通信機器などに関心を抱いているという。

 自衛隊がフィリピン沿岸で行われた米比共同演習Kamandagに参加した。 演習は米比海兵隊が水陸両用車を用いて上陸するという想定で行われ、負傷者の救助を担当した非武装の自衛隊員50名は装甲車4両の後ろを進みながら、負傷兵の救助にあたった。

 国連PKO活動への発展途上国の派遣を支援する早期展開プ
ロジェクトをベトナムで実施した。 ハノイ近郊に派遣された陸上自衛隊員20名が、ベトナムや周辺の東南アジア諸国の軍の工兵に油圧ショベルの操作などを教育した。  同プロジェクトは2015年からケニアで展開し同国のほか、ガーナやナイジェリア軍などに教育をしてきたが、今回は対象をアジアに広げ国際貢献に取り組む姿勢を示した。  安倍首相がタイ、ミャンマー、ベトナム、ラオス、カンボジアの5ヵ国首脳と「日本・メコン地域諸国首脳会議」を迎賓館で開き、人材育成や質の高いインフラ、水資源管理などでの連携・協力を柱とする共同文書「東京戦略2018」を採択した。

 日本政府がフィリピンにTC-90をマレーシアにP-3Cを無償供与した。 またフィリピン空軍には陸上自衛隊のUH-1Hのエンジンやベア リングなど部品を無償供与することに合意した。

 政府は太平洋の島嶼国に自衛隊機を積極的に派遣し、現地との交流を進める方針を決め、米軍との空輸戦術訓練のために米アリゾナ州に向かう途中のC-130がマーシャル諸島の首都に立ち寄り、日本が現地に寄付する車いすやスポーツ用品などを輸送した。

 スリランカ訪問中の河野外相がシリセナ大統領らと会談し、海洋安全保障の協力強化で一致した。 また河野外相がモルディブの外相と会談し、海洋安全保障分野の協力を推進する方針で一致した。 モルディブの海上保安当局の人材育成支援などを想定している。

 日韓は軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) の1年間再延長を決めた。 また韓国艦3隻が陸海空軍の士官候補生を乗せて佐世保港に入港した。 韓国海軍の艦艇が日本の港に入ったのは2017年12月以来で、今回が22回目になる。

1・4・6・8 その他諸国との防衛協力

 大量破壊兵器拡散防止構想 (PSI) に基づく海上での多国間訓練が房総半島沖であり、自衛隊のほか米軍や韓国沿岸警備隊などが参加した。

 中東訪問中の安倍首相がUAEでムハンマド皇太子と会談し、経済や防衛など12分野での協力強化を明記した共同声明を発表した。
 外務省はイスラエルと初の外務防衛当局間協議をテルアビブで開催したと発表した。
 安倍首相はヨルダンのアブドラ国王と共に習志野演習場を訪れ陸自特殊作戦群の訓練を視察した。 ヨルダンとテロとの戦いで連携する狙いがある。

1・4・6・9 各国沿岸警備隊への協力

 海上保安庁がマレーシア、インドネシア、パラオ、フィリピンなど東南アジア各国の沿岸警備隊への協力を行った。

 また海上保安庁とインド沿岸警備隊が1月17日、インド南部チェンナイ沖で合同訓練を実施し、スリランカとモルディブの当局者も参加した。

1・4・7 B M D

1・4・7・1 我が国への BM 脅威

 安倍首相が、日本のほぼ全域を射程に収める北朝鮮のNo Dongがすでに数百基配備されているとの認識を明らかにし、北朝鮮の脅威を強調した。
 ただNo Dongに核兵器を搭載できるかについては、確たることは答えられないとかたり明言を避けた。
1・4・7・2 BMD 体制の整備

 政府が6月7日に、BMなどの探知能力を高めるため早期警戒衛星の分野で日米の協力を進めると明記した宇宙基本計画の工程表改定を了承した。 工程表には宇宙デブリの除去技術の確立に向け、官民で実証実験を始めることも盛り込んだ。

 防衛省が、就役するAegis艦の7、8隻艦に搭載するCECを運用を開始する。 CECは平E-2Dへの追加装備を検討するほか、Aegis Ashoreにも組み込む可能性がある。

1・4・7・3 装備の充実

 安倍内閣が2017年12月にAegis Ashore 2個システムの導入を決めた。 2個システムは秋田県と山口県に配備され、日本全域をカバーする。  政府関係者がAegis Ashoreの取得費について、防衛当局が2基で4,000億円になりうると新たに試算していることを明らかにした。
 防衛省は1基1,000億円と説明してきたが、試算通りなら倍増となる。 搭載ミサイルの購入費などを含めると、総額で6,000億円近くに膨らむ可能性もある。
 VLSは24セルになることから、SM-3 Block ⅡAの単価は35億円あるためミサイルだけで合わせて1,680億円になる。

 防衛省はAegis AshoreのレーダにLockheed Martin社製LMSSRを採用する方針を固めた。 LMSSRは米国がアラスカ州に建設中のLRDRレーダと同じ技術を使い、探知距離は1,000kmを大きく上回る。

 小野寺防衛大臣が、自衛隊が2箇所に配置するAegis AshoreにCM対処能力を付加することを検討していることを明らかにした。

 海上自衛隊がAegis艦8隻の体制を整え、2,000kmとSM-3の三倍の射程を持つSM-3 Block ⅡAの装備を始めるが、各艦が装備するSM-3は最大8発で、海上自衛隊は北朝鮮からの大量のBM攻撃を懸念している。 このため米海軍のAegis艦に搭載しているengage-on-remoteシステムの導入を考えている。
 Engage-on-remoteシステムではAegis艦が取得した目標情報を使って他のAegis艦からSM-3弾を発射することができる。

 SM-3 Block ⅡA の共同開発は1月に迎撃に失敗したが、9月と10月に迎撃に成功している。

1・4・7・4 米朝首脳会談後の動き

 南北/米朝首脳会談後に北朝鮮のBM脅威が切迫しなくなったとして、住民避難訓練の中止や展開中のPAC-3の撤収、更に警戒監視レベルを緩和するなどの動きがあった。
 しかしながら政府はAegis Ashoreの配備は計画通り進める考えである。
1・4・7・5 米 HDR-P の日本配備

 米国防総省が新型のミサイル防衛用米本土防衛レーダ (HDR) の日本への配備を検討している。
 オアフ島に設置されるHDR-Hはアラスカに設置されるLockheed Martin社製LRDRレーダに決まっていたが、HDR-Pの設置場所はグアムとみられていた。
1・4・8 近代戦様相への対応

1・4・8・1 新司令部の創設

 政府が2020年にも、サイバ・宇宙分野での防衛能力を高めるため、司令部機能を持つ防衛相直轄の統合組織を創設することを、見直す防衛計画の大綱への明記を検討していると報じられたが、大綱ではサイバ防衛隊と電磁波作戦部隊は陸上総隊の隷下、宇宙領域専門部隊は航空自衛隊に設置されることになった。
1・4・8・2 宇宙利用/防衛

 自民党の宇宙海洋開発特別委員会が、統合幕僚監部に宇宙に関する運用を統括する部門を新設することや、宇宙における安全保障の基本方針を定めた「国家安全保障宇宙戦略」の策定などを、政府に求める提言案を示した。
 またキラー衛星に対処するため、宇宙空間を監視する衛星の打ち上げなども検討するべきだと指摘した。
 新中期防では、宇宙設置型光学望遠鏡及びSSAレーザ測距装置を新たに導入するとしている。
 政府は宇宙空間の状況を監視する人工衛星(SSA衛星)を導入する方向で検討に入っている。 宇宙ゴミの衝突や他国の衛星による妨害などから、日本の人工衛星を防護するもので、2024~2028年の打ち上げを視野に入れている。

 情報収集衛星 (IGS) は光学6号機と識別能力50cm程度とみられるレーダ6号機が打ち上げられた。
 防衛省が米Planet Labs社と同社のDoveシリーズナノ衛星が取得した画像を購入する契約を結んだ。
 政府が尖閣諸島など日本周辺の監視強化に向け、超小型衛星の導入を検討している。 構想では1基当たりの費用が情報収集衛星の1/100に抑えられる多数の超小型衛星を打ち上げ、情報収集衛星との同時運用で尖閣諸島や南シナ海などを監視する。
 日本版GPS衛星である準天頂衛星の本格的なサービスが11月に開始された。

 防衛省がスペースデブリを常時監視する部隊を平成34年度に航空自衛隊に親編する。 防衛省は既に要員を米コロラド州の空軍基地に派遣し、宇宙業務課程を履修させている。
 防衛省は山口県山陽小野田市に宇宙状況監視 (SSA) 施設を建設し、JAXAや米軍と協力して人工衛星やスペースデブリと疑われる物体の識別追随を行う。

1・4・8・3 サイバ戦

 防衛省が宇宙/サイバ空間の司令部を新設する方針で、サイバ部隊は陸海空自衛隊から要員を集めて早ければ2020年に発足させる計画である。
 政府が陸上自衛隊西部方面隊にサイバ空間への攻撃に対する防御を専門とする部隊方面システム防護隊(仮称)を平成30年度内に新編すると報じられた。

 防衛省が、高度な技術や知識を持つ民間のホワイトハッカーを任期付きで採用することを検討している。 平成31年度からサイバー防衛隊が行うマルウエアの監視分析など一部業務を、5~10名のチームを防衛省に常駐して行わせる。

 政府はNATOのサイバ防衛演習Locked Shieldsに本格的な参加を検討している。 政府はサイバ防衛を協力の優先分野に位置付け、NATOとの関係を深化させる考えである。  Locked ShieldsはNATOのサイバ防衛協力センタ (CCDCOE) が毎年行っている世界最大のサイバ防衛演習で、2015年と2016年にも参加したがオブザーバー参加だった。
 政府はIT先進国のエストニアとサイバ防衛の情報提供などで連携を強化する。  また安倍首相はネタニヤフ首相と会談し、サイバ分野で緊密に連携する方針で一致した。

 政府が盗聴やハッキングが不可能とされる量子暗号通信の実用化に向けた研究に乗り出す。

1・4・9 装備行政

1・4・9・1 装備行政

 防衛省が国内企業から防衛装備品を購入する際の費用を抑えるため、調達価格の算定基準を見直す方針で、算定基準を変更する。
 政府はF-35Aを日本国内で組み立てを行う方式が費用高騰の原因の一つとされていることから、今後は米国から完成機を購入する方式に改め、1機当たり数十億円程度抑制する。

 一方日米が米国のFMS手続きの再検討を行っている。

 防衛省が、米国からのFMSによる装備品の購入費を縮減するため、 6~10年の長期契約を新たに導入する検討に入った。 またFMSによる調達は、納入の遅れや価格の不透明さが課題になっていたが、米側が追加で雇う人件費分などの事務コストを日本側が負担することで折り合った。
 更に政府はFMSの運用を改善するため、米側が行っている事務処理の一部を日本側が代行する方向で調整に入った。

 防衛省がC-2の単価が平成23年度の調達開始時と比べ40%、70億円も高くなっていることから、発注方法を企業共同体 (JV)) に変更する検討に入った。
 防衛関連が連結売上高のほぼ1割を占め安定した収益を上げ続けてきた三菱重工だったが、調達側の国が競争原理を強め、受注環境が厳しくなるとともに、従来のように 利益を確保できなくなってきた。
 これに対して川崎重工業防衛部門売り上げが15%を占めている。
 こうしたなか海外軍事産業の日本進出も始まり、イスラエルのエムプレスト社日本への事業進出に向けて準備を進めており、Pradator、Reaper などのUAVを製造しているGA-ASI社が日本での提携企業を探していると発表した。

1・4・9・2 防衛技術研究

 防衛装備庁が小口径電磁砲 (EMG) を開発しているほか、AIを活用して不審船を探知する技術やロボット技術の研究を行っている。
1・4・9・3 新 装 備

F-35A/B

 MHI社で組み立てられたF-35Aの一番機が1月に三沢基地に配備され、平成30年度中に更に9機が配備される。
 5月にはF-35A 5機が米軍空中給油機の支援を受けながらハワイから到着し同基地のF-35Aは既存の2機と合わせて7機となった。
 日本は既に発注したF-35A 42機に加えてF-35A 63機とF-35B 42機を調達の調達を決めたことで、F-35は147機と138機を装備する計画の英国を凌ぎ世界第二のF-35保有国になる。

ATD-X / F-3

 政府はF-2後継機について、国内独自開発、国際共同開発、既存機の改修のいずれかで検討を進めてきたが、国内独自開発を断念する方向で最終調整に入った。
 開発はMHI社を中心にしてIHI社が手がけるエンジンや、高性能半導体を使ったMELCO社のレーダなどを生かしたい考えで、防衛省は米企業による共同開発案や既存機の輸入案などと比較検討した上で、2018年内にも開発方針を決定するとしていた。
 F-2後継戦闘機は開発方針が決まらないなか鋭意技術開発が進められており、その中にはスラスト変向式エンジンの開発も含まれている。
 Lockheed Martin社がF-2後継にF-22とF-35の複合型を提案してきた。 LM社が提案しているのはF-22の機体にF-35の搭載品を載せることを基本にしている。
 英国がTempest次世代戦闘機に対し日本が計画参入を検討していて更なる協議を進める模様である。
 Northrop Grumman社が30年ぶりに戦闘機開発への復帰を目指しF-2後継機開発への参画を模索している。

超高速ミサイルの開発

 防衛省が島嶼防衛用高速滑空弾の開発を進めている。
 第一段階では円筒形で滑空性の低い弾頭を装備化する。 さらに第二段階で滑空性の高い平らな形状の弾頭開発も進め、実用化に成功すれば平成40年度以降の装備化を目指すという。

 防衛省がMach 3以上で飛翔するASM-3の開発を完了し平成31年度に量産を開始して島嶼防衛などを担うF-2戦闘機に装備する。

EA-18G

 政府が電子攻撃機を導入する検討を、EA-18Gなどを候補に開始した。

艦船進水/就役

 Aegis Baseline 7Jを装備しCECも装備するAegis護衛艦の七番艦まやが進水した。
 海上自衛隊が4隻建造するあさひ型護衛艦の一番艦あさひ (25DD) を就役させ、佐世保の第2護衛隊群に配属した。
  MHI社が平成30年度護衛艦 (30FFM) 2隻を受注した。 排水量3,900tの30FFMはヘリ1機を搭載し、艦載型の03式改SAMが装備される。 このほかに127mm 62口径砲1門、VLS 1基、SeaRAM CIWS 1基が装備される。

 そうりゅう型9番艦のせいりゅうが就役し横須賀の第2潜水隊群に配属された。 一方そうりゅう型にリチウムイオン電池を搭載するなど最新技術を詰め込んだ27年度艦潜水艦が進水しおうりゅうと命名された。 2020年3月の引き渡される。
 潜水艦救難艦ちよだが就役式し横須賀の第2潜水隊群に配属された。

 あわじ型掃海艦の二番艦ひらどを就役させ、横須賀の第1掃海隊に配属した。

その他の新装備等

 防衛装備庁がMAN社製トラックに搭載した装輪155mm/52口径SPHの試作品5両を受領した。 新型SPHは標定や照準がネットワーク化されているという。

 AH-1S攻撃ヘリの後継機に関して出されたRfIでは艦載能力が求められている。
 陸上自衛隊が計画しているUH-Xが地上試験に入っている。 2019年はじめに初飛行が行われる。

 平成30年度に開発を終える計画でコマツに試作品を発注した96式装輪装甲車後継の試作品が要求性能を満たさなかったことから開発を中止した。  そのほかに機雷探知UUV、地雷原処理装置、車載対IEDシステムなどの開発が進められている。

 防衛省が海上自衛隊向けに1件、航空自衛隊向けに1件のELINT及びEW機に関するRfIを発簡した。
 また自衛隊がECM機を装備する検討を始めた。 SOJとしての運用を想定しており独自に開発する場合にはC-2輸送機や民間旅客機を改造する案が有力と見られる。
 この他にF-15の改良計画やE-767ミッションコンピュータの能力向上なども計画されている。

 東シナ海で中国軍などの潜水艦を警戒監視する能力を強化する狙いで警戒監視用の大型UUVを導入する方向で検討に入った。
 平成31年度から試作機の開発を始め、37年度の運用開始を目指す。

その他の装備導入

 米国務省が日本から既に4機が発注されているE-2D Advanced Hawkeyeを更に9機売却することを承認した。
 これらのE-2Dは現在装備しているE-2C 13機と一緒に運用される。

 日本政府がRQ-4 Block 30i Global Hawk 3機のFMS契約に署名した。 3機は2022年9月までに納入される。
 政府は、武装UAV Avengerを海上自衛隊に導入する方向で検討に入った。

 防衛省があたご改型護衛艦2隻にSM-6を装備することを明らかにした。
 米国防安全保障協力局 (DSCA) が日本へのSM-3の輸出を国務省が承認したと発表した。 承認されたのはSM-3 BlockⅠB 13発とBlock ⅡA 8発である。

 この他にAIM-120C-7の追加購入、Mk15 Phalanx CIWS Block ⅠB Baseline 1の Baseline 2への改良、AN/ALR-69A(V) RWRの購入などが報じられた。

1・4・9・4 武器輸出

 インドは2010年末に新明和を含む4社に飛行艇に関するRfIを発簡したが、その中でSea State 5でも運用できる機種はUS-2iだけである。
 日本とインドの政府間でUS-2のインドへの輸出について協議が続くなか、インド側が要求していた製造技術の移転へ向けたインドと日本のメーカの合意が成立し、今後両国政府の協議が大きく進展する可能性が出ている。
 インド側は一定数の機体をインド国内で生産することを条件に挙げ、技術移転を求めてきた。
 インドのMahindra社がUS-2iの生産と整備などについて新明和工業と協力するMoUを結んだ。

 政府がUS-2をギリシャに輸出する検討に入った。 ギリシャは消防飛行艇としての活用する考えで、数十機規模の需要があるとみられる。

 国家安全保障会議がタイ空軍が実施する防空レーダの入札に三菱電機がFPS-3を基に参加することを承認したが、スペイン企業が落札し、2016年のオーストラリアへの潜水艦売り込みに続く失敗となった。

 政府がFPS-3の改良型防空レーダをフィリピンへ輸出する検討に入り、フィリピン政府への技術情報の提供を始めた。

 航空自衛隊が保有するF-15の一部を米国に売却する検討を始め、 すでに日米高官が協議を始めており、機体の数や売却額など詳細を今後詰める。
 米側は日本から購入したF-15を、空軍力が脆弱な東南アジアなどに売却する可能性も含め検討する意向を示している。
 そのほか防衛装備庁がF-35国産の際に国内生産する構成品を輸出することを考えている。

1・4・9・5 技術協力、共同開発

 小野寺防衛相がパルリ仏国防相と会談し、機雷探知技術の共同研究など防衛装備技術分野での協力推進で一致した。
 インド国防相と小野寺防衛相が会談し、防衛装備の開発と生産での協力強化で合意した。 US-2の商談が進んでいない中、両国はUGVやロボットの共同開発で合意した。
 日本とインドネシアが防衛技術協力と装備品の輸出について協議中である。

 政府が、独仏共同開発の新型哨戒機の開発生産に協力するため両国と協議に入った。 川崎重工業のP-1の技術や部品の売り込みを検討している。
 独仏は日本ほど哨戒機を活発に運用しているわけではないため、調達コストをできるだけ削減する目的で両国で共同開発をする覚書を結んでいる。

1・4・9・6 防衛技術基盤の強化

 Rolls-Royce社が海上自衛隊が200基以上装備しているMT30ガスタービンエンジンのKHI社との共同生産と将来を見据えた協力を継続してゆくことを明らかにした。
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