安全保障に関する報道の2017年総括


目        次

1 概   論  (1) 概  観  (2) 係争地域の情勢  (3) 周辺国の情勢  (4) 国 内 情 勢


2 係争地域の情勢
 (1) イラク、シリア地域
  ア シリア内戦
  イ ISIS との戦い
  ウ クルドの勢力拡張と独立問題
  エ 化学兵器の使用疑惑
  オ ISIS 掃討後への動き
 (2) 東シナ海
  ア 中国の動き
  イ 我が国の対応
  ウ 米国の対応
 (3) 南シナ海
  ア 中国の動き
  イ 周辺国の動き
  ウ 米国の対応
  エ 欧州諸国の対応
  オ 我が国の対応
 (4) 中国対インド
  ア 中印国境紛争
  イ インド洋の覇権争奪
  ウ インドの対中配慮
 (5) インド対パキスタン
  ア 国境付近での紛争
  イ インドの軍備増強
  ウ パキスタンの軍備増強
 (6) ペルシャ湾岸
  ア イランの核問題
  イ イランとサウジアラビアの対立
  ウ イランの軍備増強
  エ 湾岸諸国の軍備増強
  オ ホルムズ海峡を巡る緊張
  カ イエメン内戦の拡大
  キ カタールの緊張
 (7) 北朝鮮を巡る緊張
  ア 北朝鮮の挑発活動
  イ 米国の対応
  ウ 中国の姿勢
  エ 韓国の姿勢
  オ 西欧諸国の対応
  カ ロシアの動き
  キ 国連の対応
  ク 我が国の対応
 (8) 欧 州
  ア ウクライナ情勢
  イ ロシア軍の動き
  ウ NATO / EU の情勢
  エ バルト諸国の動き
  オ ノルディック諸国/アイスランド情勢
  カ 黒海沿岸諸国の動き
  キ その他地域での動き
  ク 在欧米軍の動き
  ケ トルコの欧米との離反
 (9) その他の紛争/紛争潜在地域
  ア アフガニスタン
  イ イスラエルとその周辺
  ウ ナゴルノ・カラバフ
  エ 北極圏
  オ 黄 海
  カ 北アフリカ
  キ パキスタンvsイラン
  ク 中 南 米


3 周辺国の軍事情勢
 (1) 中 国
  ア 世界の覇権を狙う国家方針
  イ 軍の態勢強化
  ウ 台湾制圧に向けた準備
  エ 経済不振下の国防費増大
  オ 戦力の増強
  カ 高度な技術力保持
  キ 新たな戦闘様相への対応
  ク 軍事産業の振興と武器輸出
  ケ 周辺国の囲い込み
 (2) 北朝鮮
  ア 臨戦態勢の構築維持
  イ 対日姿勢
  ウ 核武装への邁進
  エ 長距離弾道弾の開発
  オ その他新戦力の構築
  カ サイバ戦の推進
  キ 生物化学戦の準備
  ク EMP 攻撃を示唆
 (3) 韓 国
  ア 国内の混乱
  イ 体制強化、国防計画
  ウ 核保有論
  エ 戦力の近代化
  オ 拡大する軍事予算
  カ 対北戦準備
  キ 米韓共同演習
  ク 軍事産業の振興と武器輸出
  ケ 対日軍事姿勢
 (4) 台 湾
  ア 新国防方針
  イ 米台関係の進展
  ウ 戦力の近代化
 (5) フィリピン
  ア 対米関係
  イ 対中関係
  ウ 対露関係
  エ 対日関係
  オ 対テロ戦での周辺国との連携
  カ 戦力増強
  キ 軍事産業の育成
 (6) 大洋州諸国
  ア オーストラリア
  イ ニュージーランド
 (7) ロシア
  ア 軍事拡大政策
  イ 財政難の影響
  ウ 軍事産業の再構築
  エ 極東での軍備増強と活動の活発化
  オ 米本土への軍事的挑発
  カ わが国に対する動き
 (8) 米 国
  ア 国防方針の変化
  イ 編成装備の見直し
  ウ アジア太平洋戦力の増強
  エ 北朝鮮による BM 発射への対応
  オ 在韓米軍の動き
  カ 在日米軍の戦力強化
 (9) その他諸国
  ア インド
  イ モンゴル
  ウ 東南アジア諸国
  エ カナダ


4 国 内 情 勢
 (1) 防衛構想の見直し
  ア 防衛計画大綱見直しの繰り上げ
  イ 次期中期の検討
  ウ 敵基地攻撃能力保有の議論
  エ 核兵器保有の議論
  オ 護衛艦いずもの空母化
  カ 防衛費上限の見直し
  キ インド太平洋戦略
 (2) 行政機能、制度の改革
  ア 陸上総隊、航空方面隊の創設
  イ 「統合運用計画」の策定
  ウ 参事官の増員、ポストの新設
  エ 民間船員に予備自衛官
 (3) 防衛費微増傾向の持続
  ア 防衛省の30年度予算要求
  イ 海上保安庁のの30年度予算要求
 (4) 南西防衛の強化
  ア 陸上部隊の南西防衛配置
  イ 離島奪還演習の実施
  ウ 中台有事への対応準備
  エ 離島管理の強化
 (5) 海外での活動
  ア 邦人保護活動
  イ 海外拠点の整備
  ウ 海外活動のための海外訓練
 (6) 各国との防衛協力
  ア 米 国
  イ ASEAN 諸国
  ウ 韓 国
  エ 英国、フランス
  オ オーストラリア
  カ インド
  キ その他諸国
  ク 各国沿岸警備隊への協力
 (7) B M D
  ア 脅威の増大
  イ BMD 体制の見直し
  ウ SM-3 Block ⅡA の共同開発
  エ Aegis Ashore の導入
  オ SM-6、NIFC-CA の導入
  カ JADGE の更新
  キ BMDS 整備計画の前倒
  ク 将来に向けた研究
 (8) 近代戦様相への対応
  ア 宇宙防衛
  イ 宇宙利用
  ウ サイバ戦
 (9) 装備行政
  ア 研究開発体制の見直し
  イ 装備品取得と新装備
  ウ Mast Asia 2017 展示装備品
  エ 武器輸出推進
  オ 技術協力、共同開発
  カ 防衛技術基盤の強化
  キ 業界再編の影響
  ク 金属材料品質に疑問の影響




1 概  論

(1) 概  観

ア. 係争地域の情勢

(ア) イラク、シリア地域

 シリアの内戦はロシアの全面介入によりアサド政府軍優勢になりつつある。
 ISISとの戦いはイラク、シリアのいずれでもISISがほぼ制圧され、今後は組織的な戦闘からテロへと様相を変化させると思われる。
 対ISIS戦ではイラク、シリアのいずれにおいても主たる働きを見せたクルド勢力は独立を指向したものの、イラクでは米国などの支持を得られず失敗に終わろ うとしているがシリアではまだ情勢がはっきりせず、この地域における今後の不安定要因になろうとしている。
(イ) 東シナ海

 尖閣諸島の領有権を巡る日中の対立は、引き続き中国からの挑発が続いているが、米国が日本支持を明確にしていることや、陸海空自衛隊の南西防衛体制が 強化されつつあることから、現状では大きな動きはない。
(ウ) 南シナ海

 南シナ海での中国の人工島造営と軍事基地建設は着々と進み、この海域における中国の軍事優勢はほぼ既成事実になっている。
 こうしたなか、一時フィリピンが中国寄りの姿勢を見せたが、結局中国の一方的な動きから動きから元に戻った模様である。
(エ) 中国対インド

 一時期平穏であった中印国境で再び小競り合いが始まっている。 特に近年チベットでのインフラ整備を進めてきた中国の強硬姿勢が目につく。
 また中国は、従来両国の緩衝地帯であったネパールやブータンを巻き込み、情勢を複雑化させている。

 インド洋では中国が潜水艦を遊弋させていることからインドが海軍力の増強に力を入れている。

 中国がスリランカやパキスタンなど南アジア諸国で港を99年租借してインド包囲している。

(オ) インド対パキスタン

 インド、パキスタン両国の軍備増強と近代化は相変わらず進んでいるが、2017年に両国間で目立った衝突はなかった。
(カ) ペルシャ湾岸

 異なったイスラム教宗派のサウジアラビアとイランの対立は、イエメンでの代理戦争の様相を呈しており、更にカタールの問題が絡んで複雑な様相を示してい る。
 その間にUAEとサウジのようにスンニ派国の間でも微妙な対立があり、状況を更に複雑にしている。
(キ) 北朝鮮を巡る緊張

 核とミサイルを背景にした北朝鮮の米国や日本に対する瀬戸際外交が既に限界を超えた状況にあり、米国が何時武力行使に出てもおかしくない状況が続いて いる。 更に中国との間も微妙になってきている。

 安倍政権は朝鮮半島で軍事衝突が起きた場合に備え、国家安全保障会議(NSC)が主導して自衛隊の対応に関するシミュレーションづくりに着手した。

(ク) 欧 州

 ウクライナ情勢は外見上落ち着きを見せているが、実際には東部におけるロシアも軍の進出が進んでおり、予断を許さない情勢にある。 こうしたなか東部の 武装勢力が独立を宣言したのは、ロシアがクリミアを併合して際と似た動きであり注意を要する。
 このようなロシアの動きに対して欧州諸国は警戒感を強め、NATOがeFP 4個大隊をバルト諸国に展開したり、旧東欧諸国が軍事的連携を強めたりしている。
 こうしたなか今まで中立政策を堅持してきたスウェーデンとフィンランドが西側傾斜を強め、もはや中立国とはいえない状況になってきている。
 また英国のEU脱退を機にEU独自軍創設の動きも始まり、PESCOが創設された。
(ケ) その他の紛争/紛争潜在地域

 一旦兵力を大幅に縮小したアフガニスタンで米軍の再増強が続いている。
 イスラエルと周辺国の間では小競り合いが散発してきたが、年末にトランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都としたことで、情勢が再び流動化する危険 が生じている。
 ナゴルノカラバフを巡るアゼルバイジャンとアルメニアの対立は、2017年に小規模な武力衝突を起こしている。
 北極圏を巡ってはノルウェーが特に北方兵力の増強を行っているが、目立った緊張は起きていない。
イ. 周辺国の軍事情勢

(ア) 中 国

 中国海軍は空母など戦闘艦の建造を進めているが、特に近年は補給艦や水陸両用艦の建造が目立っている。 更にジブチに大規模海外基地を建設し、海軍陸 戦隊(海兵隊)の増強や北斗測位衛星システムの全地球規模への拡大など、中国の世界覇権を狙った進出が進んでいる。

 戦闘機、爆撃機、各種ミサイルの開発、配備が進むなか、DEW、超高速飛翔体など高度な技術を要する装備開発も進められ、電磁カタパルト、永久磁石電動機 、在来潜水艦に搭載する原子力補助エンジンなどの艦載装備開発も進んでいる。

 中国の装備開発のなかで特に発展が著しいのがUAVで、その種類や規模、用途は極めて多彩で、開発を行っている企業も多数になっている。

 また積極的な武器輸出政策で国際武器市場でのシェア拡大を図っている。

(イ) 北朝鮮

 核と長距離BMの開発を進めている北朝鮮が2017年に初の水爆実験に成功した。 その爆発規模について250kTとの見方もある。 また2017年時点での核弾頭の 保有数を米当局は60発と推定している。 また各国は核兵器を用いたEMP攻撃にも警戒している。

 長距離BMについては米本土全域を射程に収める火星-15 ICBMの発射試験に成功しているほか、グアムを攻撃できる火星-12 IRBMの発射試験にも成功している。
 このほかに北極星-1 SLBMを元にした北極星-2やMusudanなどのMRBMと北朝鮮のBMは多種多様になっているが、BM技術の急速な発展の裏にはウクライナからの ロケットモータ技術の流出があると見られている。

 更に北朝鮮が力を入れているのがサイバ戦分野で、単なるネットワークの攪乱から軍事情報の略取、身代金による外貨稼ぎにまで目的が広がっている。

(ウ) 韓 国

 北朝鮮からの核やBM脅威の増大を受け、三軸体系構築の前倒し、特にKill Chainの迅速構築が進められている。 これと共に原子力潜水艦の保有が俎上に上が り始め、核武装論も討議されだしている。

 戦力の強化近代化では国産戦闘機KF-Xの開発が本格的に開始されたことや、米韓のミサイル指針が再見直しされることで大型弾頭型の玄武-2 BMが開発される ことになる。

 韓国で注目されるのは武器輸出の拡大で、インドネシアへの潜水艦輸出をはじめ、T-50/FA-50はフィリピン、インドネシア、タイ、イラクへ、K9 155mmSPHは インド、フィンランド、エストニアへと輸出されている。 更にエジプトには少なくとも1隻の中古コルベット艦が輸出された。

 韓国の対日姿勢は極めて悪く、米国が呼びかける日米韓の合同演習には一貫して参加を拒否している。

(エ) 台 湾

 台湾は宿願であった潜水艦の更新計画として国産艦8隻の建造を一番艦の2024年就役を目標に開始した。 このほかにも高速コルベット艦の追加建造や大型揚 陸艦の建造を行うほか、米国からのフリゲート艦購入も進めている。

 また保有しているF-16A/B戦闘機のF-16Vへの改良を進めているほか、新国産戦闘機の開発、超音速練習機の開発も始動しようとしている。

(オ) フィリピン

 反米的姿勢の強いドゥテルテ比大統領の誕生で米比関係は急速に悪化したかに見えたが、実質は米比軍の協力は途絶えることなく、結局ドゥテルテ比大統領も 反米発言を過去のこととして撤回した。
(カ) 大洋州諸国

 オーストラリアでは2020年代を見据えた海軍建艦計画が発表され、海軍力を中心とした軍備強化が図られている。
(キ) ロシア

 財政難の影響で国防費が大きく圧迫されるなか、核戦力の増強、連邦軍の兵力増強、東欧諸国への圧力強化、世界各地での勢力拡大など、積極的な軍事拡張 政策が進められている。

 特に極東地域では、北方領土と千島列島に新師団を配置したり、北方領土で大規模演習を行ったりと軍備増強と活動の活発化が行われている。

(ク) 米 国

 トランプ政権の誕生により外交姿勢が大きく変化している。 特に新START条約の否定、対北朝鮮先制攻撃論の台頭、軍備増強方向の回帰などから、FY18では 大幅な国防費増額が実現している。
 しかしながら極東では第二列島線へ後退するアジア戦略による対日依存の高まりが予想されている。

 こうしたなか南シナ海や北朝鮮情勢の緊張をうけ、米海軍は従来第7艦隊の担当海域であった日付変更線以西に第3艦隊の一部を投入し、実質的に西太平洋での 艦船を増強している。

 極東地域での緊張の高まりを受け海兵隊のF-35Bと空軍のF-35Aの海外初の展開を日本で開始した。 またTHAADの韓国展開も完了した。

(ケ) その他諸国

 インドは長距離SAMでイスラエル、潜水艦でフランス、空母技術で米国、次世代戦闘機でロシアの協力を得ながら、装備の国産化努力を進めている。

 一方ロシアと共同開発している空中発射型超音速CM BrahMos-Aの発射に成功したのに続き長射程型BrahMos-ERの開発を開始するなど、CM戦力の強化に努めて いる。

 東南アジアではシンガポールの軍備増強と、軍事産業の発展がめざましい。
 2013年に2隻発注している2,000t級潜水艦を更に2隻ドイツに発注したほか、1,200t級の国産沿岸防備艦も3番艦を就役させた。 ST Kinetics社は同国陸軍向 けに各種装軌戦闘車両を次々と開発している。
 サイバ戦対応にも積極的で、将官を指揮官とする2,000名規模のサイバ戦部隊を発足させた。

ウ. 国内情勢

(ア) 防衛構想の見直し

 政府が次期中期での防衛関係費の年平均の伸び率を現中期防の0.8%を上回ることで調整に入った。 また次期中期策定に合わせて衛計画の大綱を見直す検討 に入った。 検討の焦点はBM対処能力の強化と敵基地攻撃能力の保有になる。

 敵基地攻撃能力については、サイバによる敵基地攻撃、F-35へのALCMの搭載、長距離CMの導入、敵基地攻撃能力を持つCMの開発などが検討される。

 こうしたなか、自民党の石破元幹事長から核兵器保有の議論を進めるべきとの提起が成された。

 国際戦略については安倍政権が「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げた。

(イ) 行政機能、制度の改革

 陸上自衛隊に陸上総隊の創設を盛り込んだ改正自衛隊法が可決成立した。 また航空自衛隊の南西航空混成団が南西航空方面隊に格上げされた。
(ウ) 防衛費微増傾向の持続

 防衛費2,345億円を含む29年度補正予算案と、防衛費5兆1,911億円の30年度予算の政府原案が閣議決定された。 当初予算における防衛費の伸び率は僅か1.29% にとどまる。 更に東シナ海情勢などで強化が急がれる海上保安庁の30年度予算は0.3%増である。
(エ) 南西防衛の強化

 離島侵攻に際し初動対処にあたる警備隊及びSAMとSSM部隊を宮古島と石垣島にそれぞれ置く計画を進めており、平成30年度末の警備隊配置に向けて駐屯地の 建設工事に着手する。

 陸上自衛隊が米海兵隊と離島奪還の共同訓練"Dawn Bridge"に参加するほか、陸海空自が参加した離島防衛を想定した大規模演習を実施した。

 政府の総合海洋政策本部が策定した基本方針では、小笠原諸島、対馬、八重山諸島など148の島を「有人国境離島」に指定し、国有化や振興策を明記した。
 一方、領海やEEZの基点となる無人離島のうち所有者のいない273島については国有財産登録の手続きが終了した。

(オ) 海外での活動

 ジブチに設けている自衛隊の海賊対策活動拠点について、中国が拠点を開設したことを念頭に、自衛隊拠点拡張のため隣接地をジブチ政府から借り上げること にした。

 安全保障関連法で可能となった在外邦人の保護の演習や海外活動のための海外訓練が行われた。

(カ) 各国との防衛協力

 安全保障関連法で可能となった自衛隊の米軍艦船などを守る武器等防護演習が行われた。

 日本政府が朝鮮半島有事における事前協議について合意し、防衛相が北朝鮮によるグアムへBM攻撃をした場合には集団的自衛権発動の対象になるとの見解を示 した。

 日米物品役務相互提供協定(ACSA)が国会の承認を得て成立した。 また日米は各種共同訓練を度々実施した。

 自衛隊の中古装備品を他国に無償または低価格で供与できるようにする改正自衛隊法が可決成立した。 これを受けフィリピンにTC-90を無償供与すると共に フィリピン、ベトナム、マレーシアなどに巡視船艇を供与した。

 またASEAN諸国とは海上自衛隊、海上保安庁を中心に各種合同訓練を実施した。

 英国とは物品役務相互提供協定を締結し、訪問部隊地位協定(VFA)の締結に向けた協議も開始した。 VFAの協議が実現すれば2014年に協議入りし た豪州に次 いで二例目となる。
 物品役務相互提供協定(ACSA)はオーストラリアとの間で合意し、フランスとも締結に向けた交渉を開始することで合意した。

 英国とは航空自衛隊と英空軍による戦闘機の共同訓練を実施したほか、陸上自衛隊と英陸軍が2018年に日本国内で初めて共同訓練を実施することも決まった。
 更に仏、米、英との共同演習も北マリアナ諸島の米領テニアン島で行った。
 第1空挺団の隊員が米豪加やニュージーランドが行う"Talisman Saber"演習への参加し空挺降下した。

 インドとは海洋安全保障の協力強化で合意し、防衛装備の取引等に関する協定に調印した。
 日米は日米印豪の連携を深めることで合意し、海上自衛隊が米印海軍の合同海上演習"Malabar"に参加した。 更に日米印海軍が日本海で合同演習を行った。
 一方、陸上と航空自衛隊がインドの陸空軍と共同訓練実施の検討に入った。

(キ) B M D

 北朝鮮が発射したBM 4発が南北に等間隔で着弾したことから、政府内では脅威増大の認識が高まり、自民党幹事長もBMD関連予算の大幅な拡充を求めていく考 えを示した。 また独自の早期警戒衛星を保有すべきとの声も出始めている。

 北朝鮮のBMが我が国上空を飛翔したり飛翔する可能性が出てきたことから、PAC-3部隊の展開や住民避難の実施などの対応が取られた。

 SM-3 Block ⅡA の共同開発では2月に行われた初の迎撃試験は成功したが、6月に行われた2回目の試験は失敗した。 人為的なミスが原因と見られる。

 Aegis Ashoreの導入が決定し、陸上自衛隊が装備して2023年度に秋田市の新屋演習場と山口県萩市のむつみ演習場に配備されることになった。
 これに合わせてJADGEの更新や、SM-6とNIFC-CAの導入も検討されている。

(ク) 近代戦様相への対応

 スペースデブリや衛星破壊兵器の監視のため宇宙監視レーダが山口県山陽小野田市の海上自衛隊山陽受信所に設置されることになり、宇宙監視専門部隊を航 空自衛隊に新設することになった。

 宇宙利用では防衛省初のX-band通信衛星が打ち上げられた。 32年度末までに3基を打ち上げる。

(ケ) 装備行政

 F-2の後継とされるF-3は次期防に盛り込むためには国内開発の決定を2018年6~8月に行う必要があるが、決定が延期される見通しであると報じられた。

 護衛艦いずもにF-35Bを搭載し空母にする検討が進んでいると一斉に報じられた。

 防衛省は平成30年度に従来より船体を小さくした新型護衛艦2隻の建造に着手する。 最終的には20隻が建造されると見られる。

 武器輸出ではインドへのUS-2売り込みに失敗し、次はC-2の売り込みをUAEをはじめとする中東諸国とニュージーランドに対し行っている。

 防衛技術協力、共同開発の分野では英国と進めていたAAMの共同研究が共同開発に移行する。 一方英国と進めている次期戦闘機の共同開発実現には海外から 疑問視する声が上がっている。
 フランスとはUUVの共同開発の構想があり、そのほかにドイツ、イタリア、ウクライナなど共防衛技術協力の話が進んでいる。

エ. 対地攻撃兵器

(ア) 航 空 機

戦闘機,攻撃機

 米国のF-35A/Bは、ソフトウェアがまだ最終版ではないが配備は順調に進んでいる。 中国のJ-20やロシアのSu-57の配備も開始された。
 ただ、F-35A/Bのソフトは最終版でないためその能力には制限があり、J-31はまだ完成形にはなっていない模様で、Su-57の装備規模は縮小される模様である。
 こうしたなか米空軍やロシア空軍では軽戦闘機の必要論が台頭してきている。
 一方、米国や欧州では第六世代と言うべき次世代戦闘機の開発も始動している。

爆撃機

 米空軍の次世代爆撃機B-21の開発は順調に進められている模様で、中国の次世代爆撃機の名称もH-20であることが明らかにされた。
 ロシアでは旧式のTu-160がTu-160M2になるとの報道はあるが、次世代爆撃機については報じられなかった。

ヘリコプタ

 米陸軍の次世代ヘリFVLの技術検証機JMR-TD計画が順調に進み、V-280 Valorチルトロータ機は既に初飛行し、SB-1 Defiantよも2018年前半には初飛行する。
 ロシアでは既存戦闘ヘリの改良が進められている。

(イ) ミサイル

弾道弾

 米国ではICBMとSLBMの更新計画が進められているが、空軍が新型ICBMの開発を進めようとしているのに対し、海軍はTrident Ⅱ D5 SLBMの改良で対応しようとして おり、共通化は望めない。
 一方米陸軍ではATACMSの改良や新たな長距離BMであるLRPF計画が進められている。

 中国ではDF-5C、DF-31AG、DF-41などのICBMが多弾頭化している。 またSLBMの発射試験用潜水艦の改修が行われJL-3 SLBMの試験が近いことがうかがわれる。

 ロシアではIskander-Mの射程延伸が進められていると報じられた。

超高速飛翔体

 米国では技術戦略の見直しの焦点が超高速兵器になると言う。 こうしたなか超高速滑空飛行体の飛行試験が行われ、ハワイからマーシャル諸島まで飛翔し試験は 成功した。

 超高速飛翔体の開発は中露でも積極的に行われていて、ロシアはMach 8で飛行するジルコン対艦ミサイルの試射に成功しており、中国は超高速で滑空飛行するDF-ZF WU-14 HGVを2020年を目指して開発している。

巡航ミサイル

 米国ではAMG-86B ALCMの後継となるLRSOの開発が進められているが、秘匿度が高く詳細は明らかにされていない。
 米海空軍は長距離対艦ミサイルの開発に力を入れているほか、地対艦ミサイルの開発にも意欲を示している。

 中国ではKD-20Aと呼ばれると見られる光学式精密誘導型と見られるCJ-10K/KD-20 LACMが公開された。
 更にロシアの3M-54T Kalibr-NKと同じく三段推進の対艦ミサイルで、第一段はブー スタ、第二段はCM、第三段はロケット推進するYJ-18も公開された。

 ロシアは射程が500~5,500kmのBM及びCMの配備を禁止したINF全廃条約に違反して新型GLCMを配備したと見られている。

 ノルウェーではJSMの発射試験に成功したが、JSMのF-35A搭載は2021年配備が予定されているBlock 4.1ソフト以降になる。
 一方英仏は、2030年代にStorm Shadowtなどに代わるFuture Cruise/Anti-Ship Weaponの共同開発を開始する。

その他

 その他のミサイルでは、各国で有翼索敵弾の開発が盛んに行われている。

(ウ) UAV / UCAV

 UAV/UCAでは中国の躍進がめざましく、2017年に初飛行したHALE/MALE UAVの殆どが中国のものである。

 UAVの飛行能力や武装能力は更に進んだため、従来のHALE/MALE UAV、UCAV、TUAVといった区分は殆ど意味を持たなくなり、今後は用途別分類になるものと思われる。
 こうしたなか安価小型UAVの群制御技術が進み、米DARPAのGremlinsの様な空中発進/空中回収方式の安価小型UAV群が今後の技術として注目に値する。

 このほかにUAVの活用範囲が輸送用、空中給油用、UAV捕獲用と広がり、空中/水中両用UAVも出現しようとしている。

(エ) DEW

 米陸軍が、AH-64 Apacheに高出力レーザを搭載し、地上目標に照射する試験を実施した。
(オ) 爆弾,弾頭

 米空軍が初めて、アフガンでGBU-43/B 21,600-lb GPS誘導爆弾MOABを実戦で投下した。

 米空軍がB61核爆弾を最新型のB61-12に改良する開発計画がほぼ完了した。

 米空軍ではJDAMとSDB-Ⅰの調達数を増やしており、SDB-Ⅰの年間調達数は8,000発と今までのほぼ三倍で、JDAMは年間45,000に達している。

(キ) 電子戦装備

 各種電子戦機に搭載する妨害装置などの電子戦装置がL-band、S-bandなどの低周波領域をカバーできるようになってきている。

 米空軍のCHAMPに代表されるEMP CMの実用化が近づいている。

(ク) 情報取得,偵察等

 米国が2019年にU-2を退役させるとした従来の方針を撤回した。 しかしながらU-2やRQ-4に代わる生存性の高いISR UAVへの要求も高まっている。
オ. 防空システム

(ア) 宇宙防衛

 米国では空軍から要求のあった宇宙軍の創設は認められなかった。
 米空軍はスペーデブリの監視に力を入れており、Space Fenceレーダの設置が進められている。

 中国はASATの発射試験を7月に実施したが失敗した模様である。

(イ) 戦略ミサイル防衛

 米国防総省がBMD戦略の見直し作業を開始した。 トランプ政権はBMDに力を入れており、FY-18予算を待つことなくFY-17予算の追加を議会に要請した。

 米MDAはBMDSとしてのレーザ活用を検討していて、高出力レーザをHALE UAVに搭載しブースト段階のBMをスタンドオフで破壊するも検討している。

 米MDAが5月に初めてのICBM標的の迎撃試験を実施し迎撃に成功した。 44基計画されていたGBIの最終弾が設置され、今後20基が追加配備され総数を64基になる。
 かつて計画が中止されたMKV計画がMOKVとして復活するほか、現在のサイロ発射方式に代わる移動可能なGBIの開発も検討されている。

 SM-3 Block ⅡAの初めての迎撃試験が2月に行われ迎撃に成功したが、6月に行われた試験では人為的なミスで迎撃不成功になった。

(ウ) 防空/TBMD

 米MDAと陸軍がTHAADによるIRBM標的の迎撃試験に成功した。 IRBM標的の迎撃成功は初めてである。

 イスラエル空軍がArrow 2でシリアのSAMを撃墜した。 これはArrow 2初の実戦使用である。
 イスラエル空軍が1月にArrow-3のIOCを宣言した。 一方、将来の複雑化したBM脅威に対処するためArrow 4開発の初期段階を開始したと報じられた。

(エ) 中距離 SAM

 米陸軍はPatriotの後継としてMEADSを開発していたが採用されなかったことからIAMDシステムを開発している。

 2016年に標的機の撃墜に成功したAMRAAM SAMの射程延伸型AMRAAM-ERがNASAMS用に使われる。AMRAAM-ERはAMRAAM SAMに比べて射程が50%、射高が70%増大している。

 インドとイスラエルが印陸軍向けにMRSAMを共同開発する。射程は50~70kmとなる。
 海軍向けのLR-SAMは戦闘機に対し250km、各種水上 目標に対し25kmの射程を持つ。

(オ) 短距離 BMD / C-RAM

 射程が40~250kmのSRBM、ロケット弾、砲弾などを撃墜するイスラエル軍のDavid's Slingが、4月にoperationalになった。 一方Iron Domeを艦載したはC-Dome も本格装備される。
 Iron Domeは2011年以来1,700発以上の迎撃に成功している。
(カ) その他の防空システム

 DEW、ECM、ミサイル、ガンなどでUAVを撃退する各種C-UAVシステムが多数報じられた。 なかには捕獲網を用いてUAVでUAVを捕獲したり、地上から捕獲網を発射 するシステムも報告されている。

 在欧米陸軍からの強い要請で米陸軍がSHORADSの整備を緊急に行おうとしている。
 英海軍でAAM/SAM共用ミサイルCAMMの艦載型Sea Ceporの装備が開始され、陸上発射型のLand Ceptorも設計が固まった。

 米国や欧州でC-RAM/C-UAS用としての対空レーザ兵器の開発が行われている。 一方米空軍では戦闘機などの自衛用レーザ兵器SHiELDの開発も進められている。
 更に至近距離での対空/対舟艇用の艦載レーザ兵器も開発されているが、いずれも数十㍗~百数十㍗規模である。

 対空レーダではSPY-1の後継となるSPY-6がLRIP入りした。 米陸軍がIAMDSで中核として開発しているIBCSは計画が遅延している。

カ. 関連軍事技術

(ア) 陸戦兵器

 米陸軍が分隊用装備運搬装置SMETの配備を開始する。 また既存車両の無人走行化の開発も本格化している。

 今までイスラエルだけが装備化していたAPSを、いよいよ米陸軍が旅団戦闘団への装備を開始する。

 米海兵隊で水陸両用戦闘車の機種選定が開始されようとしている。

(イ) 海戦兵器

 米海軍の次期空母Gerald R Fordが就役し、英海軍でも次期空母Queen Elizabeth Ⅱが就役した。

 フリゲート艦の計画も米海軍でLCSに代わるFFG (X)、英海軍でType 26の不足を埋めるType 31など新規艦の計画が進められている。

(ウ) 空戦兵器

 機上FCSではAESA化されたレーダが次々と出現している。

 AAMではAMRAAM-ERの開発完了とF-35Bの機内弾庫に搭載するため尾翼の形状が変更されたMeteorの開発開始が報じられている。

(エ) サイバ戦

 サイバ戦の様相は米大統領選へのロシアの介入やカタール問題のきっかけとなったロシアによる偽情報の流布、さらには北朝鮮が疑われている身代金要求サイバ 攻撃など、多様化、大規模化が目立っている。

 これを受け各国ではサイバ戦部隊の新編と育成が進められている。

(オ) その他

 米海軍では電磁砲の試作機が完成し、洋上試験を待つ段階になっている。 また電磁砲からの発射も念頭に入れた超高速弾の開発も進められている。

 将来の軍事技術になり得るものとして空陸両用機の開発が民生分野では実用段階になろうとしている。

 小型で安価なUAVを群制御を用いて多数同時に飛行させる技術も実用に近づいており、米国ではこれを更に発展させて空中から発射して空中で回収するGremlins計画 も進められている。

 今後注目される技術として、UAV/UUV両用無人機も開発が進められている。

(2) 係争地域の情勢

ア. イラク、シリア地域

(ア) シリア内戦

ロシアの介入

 ロシアは7月に憲兵隊をダマスカス郊外に配置するなど、地上軍を含めた本格介入に入った。 その間、空母など一部を撤退させるなどとの発表があったものの 、2016年12月28日に撮影した画像にはSS-26 IskanderのTELが写っているなど、増強が明らかになった。

 ロシア軍等の支援下でアサド政権は、2016年12月に北部のAleppoを完全に制圧して軍事的に優位にたち、その後もシリア中央部の砂漠地帯への進撃を開始し、シ リア政府軍が優勢を保持している。

 ロシア軍は2016年11月にも地中海の艦船からCMでシリア攻撃を実施したのに続き、地中海に展開するロシア艦からCMを発射するなど直接戦闘加入を拡大している。  またA-50 AEW&CがLatakia航空基地に駐機しているのも確認されいる。
 一方で、4月に米海軍駆逐艦がシリアに向けTomahawk約60発を発射した際には、シリアに展開したロシアのSAMがこれを1発も撃墜できず、ロシアSAMの防空能力 限界を露呈した。

不期遭遇回避のための米露協定

 ロシアの本格参戦に伴う米軍との不期遭遇を回避するため両国間の話し合いが続けられ、一部では飛行安全に関するMoUが成立したが、実施は度々留保された。

有志連合軍とアサド政権軍の直接交戦

 5月には米軍主導の有志連合軍がヨルダンとの国境地帯でアサド政権派の部隊を空爆し直接交戦が行われた。 また6月には米軍機8が米国の支援するシリア民主 軍(SDF)に攻撃を加えたシリア政府軍機を撃墜した。 これに反発したロシアは、露空軍がシリア上空における飛翔体はすべて敵と見なすとの立場を示した。

(イ) ISIS との戦い

イラクにおける対 ISIS 戦

 モスルの奪還作戦を進めるイラク軍が1月に市内を流れるチグリス川の河岸に到達した。 2月には西岸への進撃を開始し、3月には旧市街地にある市庁舎からISIS を排除した。 5月にはモスル西部の9割を奪還し、7月にアバディ首相がモスルの解放を宣言した。
 モスル制圧以降は作戦がシリアとの国境地帯の確保に移った。 国境地帯では2月にイラク空軍によるシリアへの越境爆撃も行われていた。

 モスルの奪還作戦では米軍の本格介入も開始され、2017年前半の空爆回数は2016年後半の二倍に、爆弾等の投下量も1.5倍に増加した。
 またそれまで投入されていた米特殊部隊に加え、3月には第82空挺師団第2旅団戦闘団の部隊が新たにモスルの作戦に投入され、この時点でイラクに投入された 米地上軍は5,262名に達した。
 更に2016年4月以来イラクに展開していた米陸軍第101空挺師団第2歩兵旅団戦闘団の砲兵部隊はモスル奪還作戦で6,000発を発射した。 陸軍砲兵部隊はこの戦 闘に各種砲のほかHIMARSもを投入した。

シリアにおける対 ISIS 戦

 シリアにおける対ISIS戦でも米軍が関与を拡大した。 シリア北部では米軍の小部隊が各種部隊を支援するため展開し、Stryker ACVやHumveeが米国旗を掲げて その存在を誇示した。
 米国は、米特殊部隊以外の正規軍の投入をためらっていたが、ラッカ奪回作戦には揚陸艦からM777 155mm砲を装備した第11海兵遠征隊の一部を上陸させ作戦に 投入した。 また3月には陸軍のレンジャー連隊もStrykerで進駐した。
 また、イラクとシリアの戦闘員へHummvee 200両、軽装甲車80両、FMTVトラック25両などを供与した。

 シリアにおける対ISIS戦ではクルド軍を主力とする民主シリア軍(SDF)の活躍がきわだった。 ラッカ西方にあるISISが確保していたダムは3月にSDFが奪還した。  この結果SDFはユーフラテス川を自由に横断できるようになり、ラッカのISISを南と東から遮断することができるようになった。
 6月にはSDFが、ISISが2014年に首都と位置付け支配を続けてきたラッカに突入し、9月には旧市街を完全に制圧して、10月にSDFがラッカを完全に制圧した。

 ラッカの制圧後はISISがシリア北部アレッポ県の最後の支配地域からも撤退し、戦闘がデリゾール県での攻防に移った。 ここでシリア政府軍は、10月にCM攻 撃などを行ったロシアの支援を受け一気に攻勢に出て、SDFとの先陣争いを開始した。 アサド政権軍にはロシア軍のほかイラクのシーア派民兵も越境して参加し たとの情報もある。

トルコのロシアとの共同

 トルコが1月、シリアにおけるトルコ軍のal-Babでの作戦に対する支援を制限している米国に対し、米軍のトルコ国内航空基地使用に疑義を呈した。 その一方 でトルコは1月に アレッポの近郊でロシア空軍とISISの36目標に対してに初の共同空爆を行った。
 3月にはプーチン大統領がトルコのエルドアン大統領とモスクワで会談し、軍事、経済両面での協力を強化することで一致した。

 9月にはトルコ、ロシア、イランの3ヵ国が、シリア北西部イドリブの「安全地帯」に停戦監視部隊を展開することで合意したと発表した。 3ヵ国はそれぞれ500 名を派遣する。

イランの直接介入

 イラン革命防衛隊が6月、テヘランでのテロの報復と称してして、シリア東部のISIS拠点に対して複数のMRBMによる攻撃を行った。
 6月には米空軍のF-15Eがシリア上空でイラン製のShahed 129 UAVを撃墜している。

(ウ) クルドの勢力拡張と独立問題

イラクでの独立の是非を問う住民投票

 イラク北部に居住するクルド人は400~600万といわれ独立を強く望んでおり、対ISIS戦でのクルド軍Peshmergaの活躍を背景に、クルドの独立志向が一気に高ま り、クルド自治政府のバルザニ議長は6月に、独立の是非を問う住民投票を9月に実施する方針を表明した。
 クルド独立に強く反対するイラクのアバディ首相は原油輸出収入と国境検問所の管理権の移譲を自治政府に要求すると共に、自治区への国際線発着をすべて中 止させると警告した。
 イラク北部のクルド自治政府が行う独立の賛否を問う住民投票には、トルコやイランなど周辺国は自国のクルド人の分離独立の動きを刺激しかねないことから 実施に強く反対していて、イランは既に自治区からの航空機往来を遮断していた。

 クルド自治政府のバルザニ議長は欧米や周辺国が反対するなか独立の是非を問う住民投票を9月に強行し、投票率は80%を上回る勢いで独立賛成票が92.73%に達 する圧倒的多数を占めた。 賛成多数の投票結果を受けバルザニ議長はイラク中央政府に交渉を呼び掛けた。

イラク政府の報復とクルド軍との衝突

 イラク中央政府は住民投票を違憲で無効として独立交渉に応じない姿勢で、10月にイラク中銀がクルド人自治区の主要銀行へのドルの供給を停止するとともに 、同自治区への外貨送金を禁止した。
 更にイラク政府はクルド地区の携帯電話局操作員を撤収させると共に、クルド地区を経由しないでトルコに原油を輸出するパイプラインの建設を命じた。

 クルド自治政府部隊Peshmelgaは、イラク軍が自治政府への攻撃を準備しているとの情報に対応して、モスルと自治政府の中心都市アルビルなどを結ぶ幹 線道路を一時封鎖すると共に、中央政府と帰属を争う北部の油田都市キルクークに6,000名を増派した。 キルクークには既に10,000名のクルド軍が駐留していた。
 アバディ首相は同自治区を攻撃する計画はないと繰り返し述べているが、クルド自治政府はイラク軍がキルクーク油田南郊への戦車などの配備を大幅に拡大して いると主張していた。
 10月16日にはイラク軍部隊が、キルクークの市街地に進攻して同日中に市内のほぼ全域を制圧した。 クルド軍Peshmelgaはキルクークの前線から撤退した。
 その後イラク政府軍はキルクーク北方の町に進撃しPeshmergaと衝突した。 一時的な砲撃の応酬があった模様である。

シリアでの独立への動き

 シリアのクルド人勢力は米国などの支援を受けて10月にはISISがラッカを制圧するなど存在感を発揮する一方で、2016年3月にはシリア北部で自治を開始すると 一方的に宣言し支配地域を広げてきた。
 7月にはクルド人勢力の代表が会合を開き、11月に支配地域の町村議会の選挙を行ったうえで、2018年1月に地域全体の議会選挙を実施する方針を決めた。

トルコの対応

 クルドとの対立するトルコは、1月にロシアとトルコが主導してカザフスタンで開くシリア和平協議にクルド人勢力を招待するなら、シリア征服戦線(旧ヌスラ 戦線)やISISも呼んだらどうかと牽制した。
 トルコは民主シリア軍(SDF)の主力を成すクルド軍YPGを、トルコ国内の非合法武装組織PKKと同一視しテロ組織と見なしている。

 トルコ政府は5月に、米政府がシリアでISISと戦っているクルド人部隊への武器の供与を決定したことは、結果的に米政府にマイナスとなると抗議した。

 トルコは2016年8月にシリア北部に越境し、トルコが支援するシリア反政府武装組織の自由シリア軍(FSA)と協同でal-Babなどシリア北部での地盤固めを行ってい た。
 3月にはトルコの首相が、FSAがAl-Babを確保したことで作戦が完了したと宣言したが、4月にはシリア北東部とイラク北部のクルド人勢力の拠点に対する空爆を 行った。
 10月にエルドアン大統領はシリア北西部イドリブ県でFSAが本格的作戦を開始したと明らかにしたが、トルコ軍は越境していないという。 この作戦はトルコ軍 の展開に向けてアルカイダ系のイスラム過激派などのを排除するのが目的とみられる。
 更にエルドアン大統領は12月に、シリアとの国境地帯からクルド軍YPGを一掃すると述べた。

米国の対応

 米国はイラク政府の要請を受け、クルド軍Peshmergaが装備する2個歩兵旅団と2個砲兵大隊用の装備を発注した。  Peshmerga向け装備の主なものは、小銃4,400丁、Cal.50機関銃46丁、105mm砲36門、装甲強化型Humvee 77両などである。

 米国は5月にシリアのクルド軍への武器供与も開始した。 供与するのは小型武器や弾薬、重機関銃などで、PKKへの武器流出を懸念するトルコに配慮し、米軍 の軍事顧問がISIS戦以外に使用しないよう監視するため、シリアル番号を記録したデータベースを作成してトルコや他の同盟国と共有している。

(エ) 化学兵器の使用疑惑

ISIS の使用疑惑

 赤十字国際委員会が3月、モスル近郊で化学兵器が使われ子どもを含む7人が被害を受けたと発表した。 誰が化学兵器を使ったのかは触れていないが、イラ クではこれまでISISによる化学兵器の使用がたびたび報告されている。

シリア政府軍の使用

 シリア北部イドリブ県のハンシャイフンで4月4日に化学兵器を使ったとみられる空爆があり、58人が死亡し160人が負傷した。 2017年シリアで発生した化学兵 器使用が疑われる攻撃で最大級の民間人の死傷数となった。 シリアのアサド政権はさらに数百㌧の化学兵器を貯蔵していると見られる。
 シリア人権監視団は5月、今回の化学兵器による攻撃はロシア製サリン爆弾KhAB-250によると発表している。 化学兵器禁止機関(OPCW)は、サリンか類似の物質 が使われたことに疑いの余地はないとの分析結果を報告した。

 これに対して米軍は4月6日、化学兵器による空爆を行った航空機が飛び立ったシリア空軍基地に向け東地中海洋上の駆逐艦からTomahawk 59発による攻撃を行っ た。 この攻撃で燃料貯蔵施設や弾薬庫、防空施設に加え、稼働機の20%を撃破した。

国際機関の判定

 国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の共同調査パネルが10月、 国連安全保障理事会にシリアのアサド政権が4月4日にイドリブ県で化学兵器を使用したと報告した。  これまでも使用疑惑があったが、改めてサリンガスを100人以上の市民に使ったと結論づけた。

(オ) ISIS 掃討後への動き

シリアでの動き

 イラン、トルコ両首脳は、プーチン氏が提唱したシリアのアサド政権、反体制派が国家の将来像を協議する「シリア国民対話会議」の開催に支持を表明し、ロシ ア、トルコ、イランの連携を確認した。

 米空軍によるとISISが後退しているイラクとシリアの空域で、ロシア軍機の接近を知らせる米戦闘機での警報の頻度が上昇している。  これらの露軍機は米主導連合軍の地上部隊を攻撃できる距離まで侵入しているという。

 プーチン露大統領が、ロシア軍撤退開始を発表したが、へメイミーム空軍基地のほか、シリアのタルトス港にある海軍施設を維持する意向を明らかにした。

 ロシアがTartus港を向こう49年間使用するとしたシリアとの協定を批准した。 協定では原子力推進艦を含む艦船を同時に11隻まで停泊可能としている。
 ロシアは航空基地の使用について2011年3月にアサド政権と合意している。

 一方12月に米軍はシリアでISIS掃討作戦に加わっていた海兵隊400名以上を撤収させると発表した。 ただしトランプ米政権はアサド政権の後ろ盾であるロシア やイランの影響力を排除する構えで、ISISと戦うSDF支援のため500名以上の米軍をシリアにとどめ、アサド政権の全土回復を食い止めることも検討している。 

イ. 東シナ海

(ア) 中国の動き

挑発活動の増加

 尖閣諸島周辺で活動する中国公船が2016年秋以降、従来の3隻態勢から4隻態勢へと増強され、荒天時を除きほぼ毎日、尖閣周辺の領海外側の接続水域内を航行 していて、月3回の割で領海侵入を繰り返している。
 防衛省が4月、28年度に航空自衛隊が行った中国機に対する緊急発進回数が、27年度の280回から851回へと大幅に増加したと発表した。
 3月には、中国軍のAEW&C機、戦闘機、爆撃機の合わせて13機が、沖縄本島と宮古島の間を東シナ海から太平洋に向けて飛行した。 緊急発進の対象としては過 去最多だという。
 その後も中国軍の爆撃機等による琉球列島横断飛行が恒常化している。

 東シナ海の公海上空を飛行していた米空軍WC-135が5月、EP-3が7月に中国軍のSu-30やJ-10による異常接近を受けた。

海警局の警備艦増強

 中国海警局は第2の海軍を目指して装備強化に励んでおり、将来は米沿岸警備隊レベルの実力をつけると見られている。
 排水量10,000tを超える大型海警艦はすでに完成しており、海軍のフリゲート艦の船体を利用した警備艦も次々に進水している。

空軍が日本海まで進出

 爆撃機、AEW&C機、ELINT機の8機が1月、対馬の南側を通り東シナ海と日本海を往復した。 これには黄海まで戦闘機が随伴した可能性がある。
 中国軍機は12月にも対馬海峡から日本海に飛行している。

ガス田開発の拡大

 中国が東シナ海の日中中間線付近でガス田開発拡大に向けた動きを進めている。 米シンクタンクが10月に、中国が2017年に新たに3基の採掘施設を設置した ことを確認した。 また7月から9月にかけて採掘施設の周辺で中国の船舶の活動が活発化したと見られると指摘している。

(イ) 我が国の対応

政府の基本方針

 1月に、政府が中国との有事を想定した自衛隊の対処方針を柱とする「統合防衛戦略」を2017年夏までに策定する方針を固めと共に、自衛隊と米軍が連携して 南西諸島防衛を強化するため、「日米共同作戦計画」の策定も並行して進めると報じられたがその後の動きはない。

防空体制の強化

 尖閣諸島周辺で活動を活発化させている中国軍機を念頭に、これまで領空侵犯の恐れがある航空機1機に対して戦闘機2機で対処していたのを4機に増強した。  発進するF-15 4機のうち増強した2機は後方で中国機の行動を監視し追加の飛来を警戒する。
 またCAPの滞空時間を大幅に延長したほか、緊急発進の際にはE-2CやE-767をより多く飛行させ、中国機の情報を戦闘機に伝達するなど連携を強化した。

日米共同演習の強化

 海上自衛隊の複数の護衛艦と、米海軍のCarl Vinson空母打撃群が3月上旬に 東シナ海で共同演習を行った。 東シナ海での米空母と海自による演習は 異例である。
 更に3月下旬にも同様の演習を行っており、月に2回もこのような演習を行うことは珍しい。

南西諸島への部隊の配置

 防衛省は初動対処にあたる警備隊とSAMとSSM部隊を宮古島と石垣島に置く計画で、30年度末までに警備部隊380名をを配置し、宮古島には32年度中にSAM部隊を 配置して管理部隊を含めて800名規模の態勢を整えたい考えだが、ミサイル部隊の配置は31年度以降となる見通しである。
 陸上自衛隊に新編される水陸機動団は29年度末には相浦駐屯地をはじめ九州に置くが、2020年代の前半には沖縄県の米海兵隊跡地にも配置する。

(ウ) 米国の対応

 ティラーソン国務長官候補は中国が尖閣諸島を軍事力で奪おうとした場合は日米安全保障条約の適用範囲で、対日防衛の義務があると明言した。 またマティ ス国防長官も2月に、尖閣諸島を含めた日本の安全保障への関与を確認した上で日米同盟の重要性を強調し、第5条の重要性を明確にした。
ウ. 南シナ海

(ア) 中国の動き

人工島造成と軍事施設化

 中国がパラセル諸島(西沙諸島)で造成した最大のWoody島ではミサイルが配備するなど、軍事拠点化が特に進んでおり、中国は同諸島の3島に軍民の艦船多数 が停泊できる港湾、4島に小規模な港湾を整備し、さらに1島でも港湾建設を進めている。 また5島にヘリコプタ降着場が設けられ、うち1島には本格的なヘリ基 地がある。

 一方スプラトリー諸島(南沙諸島)に造成した人工島では、長距離SAMの配備が可能とみられる20以上の建造物の建設をほぼ完了しており、Subi礁、Fiery Cross礁には軍用滑走路も構築している。
 同諸島のSubi礁、Fiery Cross礁、Mischief礁ではレーダや海空軍施設の工事が完了し、戦闘機をいつでも配備できる状態にある。

海南島の軍備増強

 中国が東シナ海に面する海南島の加來航空基地にKJ-500 AEW&C 2機を配備していることが3月に明らかになった。 同基地にはそのほかに旧型のKJ-200 AEW&C 1機とY-8 2機、及びY-8J又はY-8Xと思われる1機も駐機している。
 また5月には、海南島の陵水航空基地にY-8Q対潜哨戒機4機が駐機しているのが確認され、6月にはBZK-005 HALE UAV 3機の存在も確認された。

情報網の強化

 中国が敵ミサイルの発射を探知するため、南シナ海上空の高層大気圏にレーダなどを搭載した飛行船を飛ばすシステムの開発を進めている。
 南シナ海にレーダ搭載飛行船を浮遊させた場合、米国にとって艦船の動きをリアルタイムで察知されASBMの射撃諸元として利用され致命的になる。

演習の実施による威嚇

 中国海軍の空母遼寧などの艦隊が1月に南シナ海で演習を実施し、J-15やヘリコプタの発艦訓練などを行った。
 対中強硬姿勢のトランプ次期米政権の発足を前に、南シナ海で軍事的存在感をアピールし、米国などを牽制する狙いがあると見られる。

米軍機、艦船への異常接近

 中国のKJ-200 AEW機が2月にスカボロー礁付近上空で、米海軍のP-3哨戒機と300mまで異常接近した。 また5月には、米海軍の駆逐艦Deweyがスプラトリ ー諸島Mischief礁で航行の自由作戦を実施した際に、J-10と思われる中国戦闘機2機が、パラセル諸島の北西220哩を飛行中の米海軍P-3 Orionに対し200ヤードま で異常接近した。

周辺国漁民等への威嚇、暴行

 パラセル諸島近海で6月、ベトナム漁船が中国船とみられる2隻から攻撃を受けた。 漁民が操業中に、小型船2隻から軍服姿の2人が漁船に乗り込み移動を命じ た上、船長に暴行を加え、物品も奪いったという。 その数日前にも別のベトナム漁船が同様の被害を受けた。
 8月には南シナ海で操業中のベトナム漁船4隻が中国から襲撃を受け、うち1隻が沈没した。 中国船には2014年に確認された中国海警局の船と同じ番号が書かれ ていた。

 8月に、スプラトリー諸島近くのThitu島周辺に中国海軍と海警局の艦船が多数集結し、この海域で伝統的に漁を行ってきたフィリピン漁民を排除したと述べた ことが明らかになった。

その他の動き

 中国が2018年にも南シナ海の海上から商用衛星を打ち上げると報じられた。
 中国の専門家は、赤道に近い場所で打ち上げれば、積載量を増やし費用を安くできるととし、南シナ海は発射場所の選択肢の一つだと述べたが、南シナ海の実 効支配を強化することになる。

 中国のウェブサイトが2016年12月に、桂林駅で約10両の新型軽戦車が無蓋車に載せられている画像を流したことから、これら戦車を装備した部隊は南部戦域軍 に派遣されている模様である。

 オーストラリア軍が2016年9月に南シナ海周辺で哨戒活動を行った際、中国空軍のJ-11に接近されるなど中国軍から複数回にわたって妨害を受けていた。

南シナ海行動規範協議を巡る動き

 ASEAN諸国と中国が第20回ASEAN首脳会議で、南シナ海の行動規範の協議を開始することに合意した。 公式協議は2018年早々に開始される見込みという。
 ASEANと中国は8月に、南シナ海の行動規範で大筋合意していた。

(イ) 周辺国の動き

ASEAN 首脳会議

 4月にマニラで開かれるASEAN首脳会議の議長声明案では、南シナ海問題について一部首脳の深刻な懸念を共有すると明記したものの、中国を名指しはしていな いなど中国への配慮がうかがえる。 ただ11月に開かれた第20回ASEAN首脳会議では、ASEAN諸国と中国が南シナ海の行動規範の協議を開始することに合意したと 発表した。

フィリピン

 4月にマニラで開かれるASEAN首脳会議の議長国であるドゥテルテ大統領が、南シナ海で中国に対する国際仲裁裁判の判断について、議題として取り上げないし 、誰も中国に圧力をかけられないなどと述べ、中国への配慮がにじんだ内容となっている。

 フィリピン国防相が、スプラトリー諸島で同国が実効支配するPag-asa島に滑走路と港を建設すると語った。 同相はドゥテルテ大統領がパグアサ島だけでな く、同国が南シナ海で実効支配する8つの島の軍事施設の拡張も承認したと付け加えた。
 ドゥテルテ大統領が4月に軍に対し、南シナ海で同国が実効支配している全島に部隊を配置すると共に要塞化するよう命じたことによるもので、大統領はすべて の国と友好関係を維持しようと努力したが、少なくとも現在実効支配している島だけでも権益を守らないといけないと述べた。

ベトナム

 7月に、ベトナムが南シナ海海域で石油探査に向けた海底掘削に着手したと報じられた。 ベトナム南東部の南シナ海の鉱区開発権を持った国際石油会社が委 託した探査船で、6月にベトナムから400kmの海底掘削を始めたという。
 この探査をめぐっては、中国人民解放軍首脳が激高し訪越日程を切り上げた経緯があり、報道が事実であればベトナム政府は中国側の猛抗議を無視して掘削を 強行したことになる。

(ウ) 米国の対応

トランプ政権の姿勢

 トランプ米新政権が南シナ海問題で中国への強硬姿勢を鮮明にしている。 ティラーソン国務長官もオバマ前政権に比べて中国に厳しく臨む姿勢を明確にして いる。
 マティス米国防長官は2月、中国の南シナ海での行動について地域での各国の信頼を失っていると厳しく批判したが、現時点で劇的な軍事力の展開は必要ない との見解を示した。

「航行の自由」作戦の継続実施

 米海軍駆逐艦Deweyが5月、トランプ政権下で初めてスプラトリー諸島Mischief礁に中国が造成した人工島から12nm内を航行する「航行の自由」作戦を 展開した。 また7月には駆逐艦Stethemが自由作戦の一環としてパラセル諸島Triton島から12nm内を航行した。 Triton島付近を航行中は中国軍艦艇が追 尾したという。 更に8月には、駆逐艦John S. McCainが中国が人工島を構築したスプラトリ諸島Mischief礁の6nm以内を航行した。
 10月には駆逐艦Chafeeがパラセル諸島付近を航行したが、人工島から12nm内には入らなかった。 この際に中国はType 054A級フリゲート艦と、J-11B 2機、Z-8 1機を投入してこれを妨害した。

空母が哨戒任務を開始

 米空母Carl Vinsonが2月、南シナ海での活動を開始した。 Carl Vinsonはここで恒常の哨戒任務に就くという。
 Carl Vinsonの南シナ海入りは今回が17回目で米軍は通常の作戦行動と発表しているが中国を牽制するものとみられる。

周辺国への武器等供与

 米沿岸警備隊がベトナムの沿岸警備隊に、退役したHamilton級警備艦1隻を供与した。 Hamilton級警備艦はバングラデシュとナイジェリアに2隻ずつ、フィリ ピンに3隻供与され、フィリピンではDel Pilarg級フリゲート艦として海軍が装備している。
 Hamilton級警備艦は全長115m、満載時排水量3,050t、速力29ktで、76mm砲のほか20mm CIWS、M242 Bushmaster砲などを装備している。

(エ) 欧州諸国の対応

 ファロン英国防相が7月、2018年に南シナ海に軍艦を派遣し「航行の自由作戦」を実施する計画を明らかにした。 同国防相は同海域でのプレゼンスを高めると 表明したうえで、南シナ海を航行するのに中国に制約されるつもりはなく、われわれは自由に航行する権利を持っておりそれを行使すると強調した。
 EUからの離脱交渉が本格的に始まった英国と、中国の関係が冷え込む可能性がある。
(オ) 我が国の対応

 稲田防衛相が2月に南シナ海への関与強化に関し、米軍による航行の自由作戦は支持するが 自衛隊は行かないと述べた。 同相は防衛協力、訓練で役割を果た していくと語り、周辺諸国の能力構築を支援する方針を示した。

 海上自衛隊が5月から3ヶ月間、護衛艦いずもを南シナ海とインド洋に派遣する。 いずもは5月中旬にシンガポールで行われる国際観艦式と国 際共同演習に参加し、7月中旬に日米印がインド洋で実施する共同演習"Malabar"にも参加するが、それまで日本に帰港せず南シナ海に2ヶ月間留まる。  海自はジャカルタ、スービック、コロンボへの寄港のほか、南シナ海の米海軍との共同訓練などを行う。

 護衛艦いずもと護衛艦さざなみが6月に南シナ海で米空母Ronald Reaganとの3日間に及ぶ共同訓練を終了した。 いずも さざなみは5月上旬から南シナ海で多国間演習を行っていた。

エ. 中国対インド

(ア) 中印国境紛争

国境での小競り合い

 6月にインド西部ウッタラカンド州で中国軍の攻撃ヘリ2機が越境侵入し短時間着陸した。
 8月には西部カシミール地方のラダック付近で中印両軍の兵士による小競り合いが発生した。 中国兵が2度にわたりインド領へ入り込もうとしたためインド兵 が阻止したところ、双方の間で投石などの小競り合いが発生した。

 6月には中国人民解放軍が中印両国の境界を超えて印北東部シッキム州に侵入した。 現地司令官同士の協議が行われたが緊張が続いているという。  中国軍は塹壕2ヵ所を破壊し、インド軍と10日間にわたりにらみ合いになっている。
 ブータンは中国軍がドクラムにあるブータン陸軍の兵舎に向かう道路の建設を始めたとして中国側に抗議した。 中国はこれに先立ち、インド国境警備隊がシッ キム地域の中印境界を超えて中国領に入り、ドクラムで、中国国境部隊の通常の活動を妨害したとインドに抗議していた。
 ドクラム高地はインド領に突き刺さる中国領チュンビ渓谷に隣接しており、南のインド主要部と北東部を結ぶ細長いシリグリ回廊に中国軍が侵入すればインド は東西に分断されるため、一帯は戦略的に重要な地域で、インドはブータンに支援を与え軍を駐留させている。
 現場はチベットとインドのシッキム、ブータンの3ヵ国の国境が接するトカラ地域で、中国はインドに対し自国領土を侵害していると抗議し、どれだけの代償を 払っても主権を守ると警告した。

 インドは中印両軍が数週間の外交交渉を続けた結果、国境の治安要員の迅速な撤退で合意したと発表したが、中国はインド軍の撤退に伴って部隊を縮小する方 針を示したものの駐留を続けると強調している。 インドは8月に「両国が撤退を完了した」と発表し軍事的対立が解消して1ヵ月が経過したが、インド紙が10月 に中国軍はまだドクラム高地にいると報じている。

国境付近での兵力増強

 中国は高地戦に向け、新型軽戦車の試験をチベット高原で実施したり、チベット高原でVTOL UAVの飛行試験を行ったりと装備の準備を進めているほか、7月に チベット高原の海抜5,000m地点で山岳戦用に開発された軽戦車も参加した各種重火器を動員した大規模演習を行った。

 これに対しインド陸軍も国産のRudra武装軽ヘリ1個飛行隊12機を、中国との国境に近いアッサム州に配備する計画である。

中国のネパール取り込み

 ネパール軍と中国軍の初の合同演習が、4月にカトマンズで始まった。 ネパール陸軍によると目的は対テロであるというが、中国にはネパールへの影響力を強 める狙いがあるとみられる。
中国のブータン取り込み

 中国は8月上旬に、ブータンがインド軍の侵入場所はブータン領ではないと明確に伝えてきたと主張した。 侵入場所とは、ブータンと中国が領有権を争うド クラム地方ドラム高原で、インド陸軍と中国人民解放軍が6月から対峙している。
 ヒマラヤ山脈でインド軍と2ヵ月対峙する中国が、第三の当事国ブータンを自陣営に引き込もうと外交攻勢をかけているもので、中国は$10Bに上る経済支援を ブータン に提示したとみられ、インドと共闘してきたブータンの対中姿勢は軟化している。

(イ) インド洋の覇権争奪

中国のインド洋進出

 中国海軍の通常動力型潜水艦長城と潜水艦救難艦長興島が1月にマレーシアのコタキナバルに入港した。 ソマリア沖とアデン湾で護衛任務に 就いていた潜水艦が、帰還途中に補給などのためマレーシアに寄港したもので、中国海軍の潜水艦がマレーシアに寄港するのは初めてである。  中国潜水艦インド洋で展開は、2014年9月にスリランカの港への停泊が報じられ初めてが確認されているが、南シナ海で領有権争いを抱える両国の軍事的な接 近とともに、中国潜水艦のインド洋周辺での活発な動きが裏付けられた。

 インド洋では中国軍の進出が拡大しており、5月と6月には戦闘艦、潜水艦、情報収集艦などが10隻以上確認されている。
 2016年5月に商業衛星が撮影した画像から、中国の攻撃型原潜(SSN)と母艦各1隻がパキスタンのカラチ港に入港していたことが分かった。 インド海軍はこの SSNを最新型であると見ているという。
 中国海軍とミャンマ海軍が5月にマータバン湾で合同演習を行った。 演習は1日限りであったが中国艦はチラワ港を訪問し、ベンガル湾やインド洋進出の足が かりを得た。

インドの対応

 インド海軍が3月にKalvari (Scorpene)級潜水艦からの対艦ミサイルの発射試験に初めて成功した。 発射したのはExocet SM39 Block 2と見られる。

 インド海軍は10月に行われた指揮官会議で、インド洋で戦闘艦と航空機による常続的な警戒監視活動の実施を決定した。  印海軍高官は中国の進出に備えて、ペルシャ湾からマラッカ海峡やアフリカ沿岸に12~15隻の駆逐艦等を展開すると共に、P-8I哨戒機と2013年8月に打ち上げた GSAT-7 Rukmini多帯域衛星を活用するとしている。

インド洋諸国の動き

 インドやオーストラリアなど、インド洋に面する21ヶ国でつくる地域機構の環インド洋連合が、設立20周年にあたり3月にジャカルタで初めての首脳会合を開催 し、インド洋における国際法の順守を強調する「ジャカルタ協定」を採択した。
 協定は関係国間の連携を強化することで一致したほか、インド洋における国際法の順守を強調する内容となってる。  スリランカが1月、スリランカ南部ハンバントタ港の株式の8割を中国企業に長期貸与する合意文書の調印が延期されたことを明らかにした。 スリランカ政府 は当初、調印時期を1月初めとしていた。 この結果、中国の「一帯一路」が壁に直面している。
 しかしながら結局、スリランカとハンバントタ港を中国国営企業が99年間租借契約が締結された。

オ. インド対パキスタン

(ア) 国境付近での紛争

 2017年には印パ両国正規軍による武力衝突は生起しなかった。
(イ) インドの軍備増強

Barak 8 SAM の導入

 インド国防省がIAI社に防空BMDシステムを発注した。 発注したのは印陸軍向けのMR-SAMと海軍向けのLR-SAMである。
 陸軍向けのMR-SAMは現在Barak-LRと呼ばれている射程70~80kmのBarak 8で、40個FUとミサイル200発が2023年までに納入される。
 海軍向けのLR-SAMは戦闘機に対し250km、各種水上目標に対し25kmの射程を持つ。

(ウ) パキスタンの軍備増強

各種ミサイルの発射試験

 パキスタン軍が1月、射程450kmの水中発射巡航ミサイルBabur-3の発射試験に初めて成功した。 インド洋の水中移動発射台から射出され標的に正確に着弾し たという。

 パキスタン軍が1月、射程2,200kmのMRBM「アバビール」の発射試験に成功した。

パキスタン軍の報道機関ISPRが3月16日、新型地対艦ミサイルの発射試験に成功したと報じた。 ミサイル名は特定していないがBubur LACMの対艦型とみられる。  パキスタンは2016年4月に、中国のC-602/YJ-62のパキスタン型であるZarbの発射試験に成功しているが、2016年11月にIDEAS 2016展で国産ASCMを開発している ことを明らかにした。

 パキスタンが3月、同国陸軍に中国製のLY-80 SAMを装備すると発表した。

FC-1 / JF-17 の発展型

 パキスタンがJF-17の5番目の飛行隊を発足させようとしているが、復座型のJF-17Bが初飛行する。 更にAESAレーダを搭載するBlock 3の契約も行われることに なっている。
 パキスタンはBlock 1を50機、Block 2を50機契約しているが、 Block 2の最終14機は50機予定されているBlock 3に切り替わる模様である。

カ. ペルシャ湾岸

(ア) イランの核問題

 2017年に特筆すべき動きはなかった。
(イ) イランとサウジアラビアの対立

イラン国会議事堂やホメイニ師廟などでテロ

 6月にテヘランで国会議事堂やホメイニ師廟などが襲われたテロ事件についてイラン情報省は、容疑者とサウジアラビアとの間に宗教上のつながりがあったと 主張している。

サウジアラビアによるイラン船舶拿捕と乗組員の拘束

 サウジアラビアが6月、ペルシャ湾の油田近くを航行中のイラン船舶1隻を拿捕し、乗組員を拘束した。 サウジ側は乗組員がイラン革命防衛隊員としているの に対し、イラン側は漁師だと主張している。
 ペルシャ湾では、イラン漁船がサウジ沿岸警備隊の発砲を受け、イラン人漁師が射殺されたばかりで、サウジとイランの緊張が一層高まる恐れがある。

イスラム軍事反テロ連合の本格始動宣言

 サウジアラビアが11月にリヤドで開かれたイスラム圏約40ヵ国の国防相らが参加した会議で、「イスラム軍事反テロ連合」の本格始動を目指す考えを示し、ス ンニ派諸国の軍事連合を主導する姿勢をアピールした。

(ウ) イランの軍備増強

長距離弾道弾の開発

 イランが新型SLVの発射試験に成功した。 このSLVは250kgの衛星を高度500kmの軌道に打ち上げることができるという。 長距離BMへの応用を警戒する米国の 反発を招くと見られる。

 米当局者が1月、イランがMRBMの発射試験を実施したと話した。 この当局者によるとこのMRBMは発射され1,010km飛翔後に爆発したという。
 米政府当局者が1月にイランが発射したミサイルについて、イランが2016年7月に発射したものと同じだと述べた。 Fox Newsは当時このミサイルはMusudanだと 報じており、事実であれば、イランと北朝鮮がBM開発で密接な協力を続けていることを示すことになる。
 イラン国防相が2月、弾道弾の試験を行ったことを認めた。

 イラン国営メディアが9月、国産新型BMホラムシャハル(Khorramshajr)の発射試験に成功したと報じた。 イラン国営TVが9月に、射程2,000kmのKhorramshajr の発射試験が1月に行われたと発表した。  Khorramshajrは北朝鮮の火星-10 (KN-07)とよく似ている。

 イランの半国営通信社Farsが3月、革命防衛隊が3月上旬ら洋上発射型弾道弾Hormos-2の発射試験を行い155哩離れた標的を破壊したと報じた。

 12月にはFateh-110シリーズのZolfagharのクローズアップ写真を公開した。

CM 開発

 イランが4月の陸軍記念日でNasir ASCMやMohajer-6 UAVなどを公表した。 Nasirの第一印象は中国のC-704をコピーした射程38kmのNasr短距離対艦ミサイルと 似ているが空気取り入れ口を持つことから、ロケットエンジンのNasr/C-704より長射程と見られる。

 Fox Newsが5月、イランが小型潜水艇からのミサイル発射に失敗したと報じた。 ミサイルを発射したのは北朝鮮Yono級小型潜水艇で、発射はホルムズ海峡で行 われた。
 イランは2月にNasirという潜水艦発射CMを発射している。 4月に公表されたNasirの画像からすると中国のC-704のイラン版であるNasrを元にしている模様であ る。

戦闘機の開発

 UPI通信が、イランで行われたQaher F-313国産戦闘機が公開された式典を報じた。
 この式典でQaher F-313は飛行しなかったが、滑走路を往復する地上滑走が公開された。

SAM 開発

 イランが2016年12月、Talash防空システムの発射試験を行った。 TalashはSayyard-2ミサイルとOfogh(あるいはOfoq)射統レーダで構成され、Sayyard-2は 1979年の革命前に米国から入手したRIM-66 SM-1をキャニスタ発射方式にしたものである。
 イランは2013年11月にSayyard-2の量産が開始されていることを公表している。

S-300 の導入

 イラン軍が3月、S-300の発射試験に成功したと発表した。 イランによるS-300試験実施が明らかになるのは初めてである。

(エ) 湾岸諸国の軍備増強

ミサイル防衛の強化

 カーター米国防長官が2016年12月に、カタールに捕捉距離5,000kmの長距離レーダを売却することで合意したと発表した。 カタールは2013年7月にRaytheon社 製AN/FPS-132 Block 5の売却を希望していた。

 米国防総省が5月に議会に、PatriotのPAC-3弾及びGEM-T弾をUAEに売却すると通知した。 米DSCAはUAEにPAC-3弾60発とGEM-T弾100発を売却するとこを国務省が 承認したことを明らかにした。

 米国務省が10月、サウジアラビアへのTHAAD売却を承認したと発表した。 国務省によると売却されるのは発射機44基や迎撃弾360発、レーダ7基などである。
 Lockheed Martin社は2015年にカタールとサウジアラビアからTHAADを受注しており、UAEは既にTHAADを保有している。

サウジアラビアの武器輸入

 トランプ大統領のサウジ訪問に合わせて米国が5月、$109Bにのぼる武器売却を明らかにした。
 売却されるのはCH-47 Chinook 48機、M1A2S Abrams 152両のほか、各種ヘリ、哨戒艇、P-8、THAAD、PAC-3など広範にわたっている。
 サウジアラビア国王がモスクワを訪問した10月にサウジがロシアとS-400の購入で合意し、システムの一部をサウジで生産することになったと発表した。

(オ) ホルムズ海峡を巡る緊張

米艦がイラン革命防衛隊の艦艇に警告射撃

 ホルムズ海峡付近を航行していた米駆逐艦が1月に高速で接近してきたイラン革命防衛隊の艦艇4隻に警告射撃を3度行った。
 米哨戒艇Thunderboltが7月にペルシャ湾の国際水域で演習中、警告を無視して接近してきたイラン革命防衛隊の艦艇に警告射撃を行った。

米軍機へのイラン軍 UAV の異常接近

 米中央軍のF/A-18Eがペルシャ湾上空の国際空域を飛行中、イラン軍のUAVによる異常接近を受けた。 F/A-18Eが空母に着艦しようと待機していた際にイラン のUAVが数十㍍にまで近づいてきたため、針路を変更せざるを得なかったという。
 イラン軍によるこうした危険行為は2017年に入って13回目という。

(カ) イエメン内戦

Houhtiによるスンニ派諸国に対する攻撃

 イエメンのシーア派武装勢力Houhti派が1月に紅海の出口Bab-a-Mandab海峡でサウジ艦を攻撃した。 Houhtiはサウジ海軍のフリゲート艦を米艦と間違えて攻 撃した模様である。

 Houthi派が5月にサウジアラビアの首都リヤドに向けて BM 1発を発射したが迎撃された。 サウジのメディアによると、リヤドの西200kmでの砂漠地帯で迎撃 され、人的被害はなかったという。 ロイタ通信はHouthi派系メディアの情報として、発射されたBMはBurkanだと報じた。
 サウジアラビア防空軍が9月にイエメンから飛来したBMをKhamis Mushaytの南方で迎撃した。  一方イエメン武装勢力派は、Qzher-M2 BMでKhamis Mushayにあ るKing Khalid空軍基地の攻撃に成功したと報じた。
 Houthi派が11月にリヤドの国際空港に向けてBMを発射したと表明したが、サウジ国営メディアによると、サウジ軍はリヤド北東でこのBMを迎撃し被害や負傷者 はなかったと報じた。 Houthi派は11月に再び、サウジアラビアに向けてBMが撃ち込んだが、途中のKhamis Mushait市付近で撃墜された。
 Houthi派が12月にUAE西部で建設中のバラカ原子力発電所に向けてCMを発射し目標に命中させたと主張したが、UAE政府はミサイル発射の情報は虚偽と否定して いる。

  ・Ansar Allah (Houthi) への支援国

 サウジアラビアによると、11月に射程900kmのイラン製BMがイエメンからリヤドに向け発射されたが、着弾前に迎撃された。 サウジが主導する連合軍によると サウジが撃墜したイエメンがBurkan-2Hと称するBMはイラン製のQiamであるという。
 撃墜したBMの一部と並べて掲載されたイランが2010年に公開したQiamの写真のマーキング等が同一である。

 イエメンの武装組織Houthi派が11月にAl-Mandab 1と名付けたASCMを公表したが、公表された写真からAl-Mandab 1は明らかに中国製のC-801と同じものである。  またHouthi派が2月にQasef 1と称するUAVを公表したが、これは明らかにイランのAbabil 2である。

 Houthi派メディアが、5月に行われたイエメン北部でのサウジアラビアによる攻撃でイエメン武装勢力を支援していたスーダン部隊83名が殺害されたと報じた。

米国の対応

 イエメンのAl Hudaydah港沖合の紅海で、サウジのフリゲート艦Al MadinahがHouthi派の自爆艇攻撃を受け2名が死亡したのを受け、その数日後に米海 軍は紅海の入り口であるBab el Mandeb海峡に駆逐艦Coleを派遣すると共に、紅海の反対側に地中海から駆逐艦2隻を派遣し哨戒にあたっている。

 トランプ政権がテロ組織の壊滅を最優先課題に位置づけたのを受け、米軍はイラクやシリアでのISISに対する軍事作戦に加え、イエメンでもイスラム過激派組 織に対し空爆を実施し攻撃を強化している。

(キ) カタールの緊張

湾岸諸国との対立

 サウジアラビア、エジプト、UAE、バーレーンの中東4ヵ国が6月、一斉にカタールとの国交断絶を発表した。 サウジは「テロと過激主義から国益を守る」とし て国境を閉鎖し、他の3ヵ国も商船、航空機の往来も停止するとしている。
 エジプトは現政権が敵視するムスリム同胞団をカタールが支援したのが理由だとしており、バーレーンも同国のテロ支援による国内治安の保全を理由に挙げた。
 カタールはスンニ派が主流だが、他の湾岸諸国同様一定のシーア派人口が存在しており、イランとの関係はそれぞれ微妙とされる。

トルコ軍のカタール派遣とトルコの介入

 トルコの国会が6月にトルコ軍のカタール派遣などを柱とする軍事協定を承認した。 協定は2016年4月に結ばれたが、サウジアラビアなどのアラブ諸国がカター ルとの国交断絶を発表したことを受け承認を早めた。  トルコは、多額の投資を行うなど関係の深いカタールを支える姿勢を明確にした。

 トルコのエルドアン大統領がサウジアラビアなどアラブ4ヵ国がカタールに提示した関係修復の条件について、主権侵害で国際法違反だと批判したことから、断 交問題はトルコとサウジの関係悪化にも発展した。

 8月にはトルコ軍とカタール軍がカタールで合同演習を開始した。 アラブ諸国によるカタール封じ込めが続くなか、トルコとカタールの協力関係を強化する 今回の演習は、アラブ諸国側を刺激する可能性がある。

米国との関係

 米中央軍は10月、カタールと他の湾岸同盟国の紛争を受け同地域での演習を取りやめることにしたことを明らかにした。
 米国はカタールに中央軍の前方司令部を置きal-Udeid航空基地を出撃拠点に使用しているほか、湾岸地域に第5艦隊司令部をおいているが、この紛争について 当初は作戦に影響しないとしていた。

 サウジアラビアなど中東4ヵ国が国交を断絶したカタールを巡っては、テロリズムを支援しているとトランプ米大統領も非難していたが、マティス国防長官が カタール代表団と会談しF-15 36機を売却する合意を締結した。

キ. 北朝鮮を巡る緊張

(ア) 北朝鮮の挑発活動

韓国に対する威嚇

 北朝鮮の朝鮮中央通信が8月に、ソウルまでも火の海になる可能性があると、2013年以降初めて北朝鮮メディアが「ソウルを火の海に」言及した。

 6月上旬に韓国の山地で発見された北朝鮮軍のUAVがTHAAD基地を撮影していた。

米国に対する挑発

 朝鮮中央通信が8月、北朝鮮戦略軍がグアム島周辺を火星-12 IRBMで包囲射撃する作戦計画を検討していると威嚇した。 朝鮮中央放送は北朝鮮軍戦略軍司令 官が火星-12 IRBM 4発の同時発射でグアム島包囲射撃する案を深重に検討していると発表したと報じた。

 金委員長が9月に声明を発表し、われわれも史上最高の超強硬な対応措置の断行を慎重に検討すると、さらなる軍事挑発の可能性を示唆した。

 北朝鮮の李外相が9月に、トランプ米大統領が北朝鮮は長くはないだろうと述べたことについて、彼は宣戦布告をしたと主張した。

中国に対する挑発

 中朝国境の鴨緑江に近接する住宅や公共の建物の解体撤去が本格化している。 「中国との国境線を第二の軍事境界線に作り変えよ」という指示によるもので 、国境から50m以内の家屋はすべて解体撤去してアパートを建設する作業が恵新洞、恵河洞で始まっているという。

(イ) 米国の対応

対北朝鮮戦略の見直し

 ペンス副大統領が4月、オバマ前政権の「戦略的忍耐」や過去の北朝鮮との対話が失敗に終わったとした上で、トランプ大統領は国際社会の力を結集し、経済 力、外交力で北朝鮮を孤立させ、朝鮮半島の非核化を達成すると述べ、対北朝鮮戦略の方針転換を明らかにした。 更に11月には、トランプ米大統領が北朝鮮を テロ支援国家に再指定した。

 8月には米NBC TVが、国防総省が北朝鮮に対する先制攻撃の選択肢の一つとして、B-1による北朝鮮のBM発射基地などに対する精密爆撃を実行する準備を整え、 大統領による命令があればいつでも実行できる状態にあると報じた。

 10月には米統合参謀本部が、北朝鮮の核関連施設を全て発見し破壊するには地上侵攻しか方法がないとの見方を明らかにした。

朝鮮半島周辺域での戦力強化

 在韓米軍が10月ごろに北朝鮮関連情報を担当するHumint部隊を創設した。 部隊は第524情報大隊で在韓米軍第8軍の第501情報旅団所属する。  現在Humint活動を行っている第532情報大隊は情報収集よりは主に分析を担当しているのに対し、第524情報大隊は北朝鮮関連情報を収集し、第532情報大隊が 行ってきた分析任務も引き継ぐ。

 潜航時排水量18,750tでTomahawk 154発を搭載できる米海軍のSSGN Michiganが4月に朝鮮半島海域に来たと報じられた。

 米太平洋艦隊司令部が4月、第3艦隊前方推進計画(TFFI)の元に西太平洋で行動していた第3艦隊所属のCarl Vinson CSGに対し、予定していたオースト ラリア訪問を中止して朝鮮海域に向かうよう命じた。
 更に第7艦隊の空母Ronald Reaganが修理中のため西太平洋に派遣されていたCarl Vinsonが、Ronald Reaganの修理完了で日本海を離れ るとしていた当初の計画を変更し留まり、2個空母打撃群が朝鮮半島周辺で同時に活動するという異例の状況が続いた。 この2隻は5月末と6月初めに朝鮮半島東 の日本海で韓国と日本とそれぞれ合同訓練を行った。

 中東でISIS掃討作戦を支援していた空母Nimitzは10月中旬に中東での任務を終えTheodore Rooseveltと交代すると見られていたが、Nimitz が中東を離れたのちもTheodore Rooseveltは西太平洋に留まったため、11月には異例の空母3隻体制になった。 更に11月中旬には西太平洋で、2007 年以来となる空母3隻が参加した演習を実施した。
 この演習間にRonald Reaganは日本海の北方境界線(NLL)から50nmまで北上した。

 5月に北朝鮮がBM 1発を日本海に向けて発射した直後に、米空軍のB-1Bが日本海上空を飛行し、韓国空軍の戦闘機とともに編隊飛行して日本海に展開している空 母Carl Vinsonなどと訓練をしたのち、韓国上空を経由して黄海側へ抜けた。  また北朝鮮が初めてのICBM発射試験を行った7月にもB-1Bと航空自衛隊 のF-15が東シナ海上空で、初めての夜間合同訓練を行った。
 その後8月以降毎月B-1Bが朝鮮半島空域に飛来し、日韓との合同訓練を実施している。 また11月には核爆弾のほか、14tのGBU-57を投下することができるB-2 がミズーリ州で、北朝鮮指導部を目標とする模擬爆撃訓練をしたことも報じられている。

 米軍が先制攻撃準備に入ったと度々報じられている。 4月にはグアムでも爆撃機も出撃態勢を整えていると報じられ、5月には9月に日本海にいた米艦に北朝 鮮を目標にTomahawk発射準備命令を出していたと報じられた。

武力行使の示唆

 マティス米国防長官が北朝鮮の核実験を受け9月に、米国やグアムを含む米国領土、あるいは米国の同盟国へのいかなる脅威にも大規模な軍事措置で対応する と警告し、その措置は効果的かつ圧倒的なものとなると述べた。

 マティス米国防長官が9月、ソウルを重大な危険にさらさずに北朝鮮に軍事力を行使する選択肢はあると語った。

BM 発射への対応

 豪紙が4月、米政府はオーストラリアなど同盟諸国に対して北朝鮮がBMを発射した際には迎撃する態勢が整ったと通知し、厳戒態勢で備えるよう要請したと報 じた。
 これを受け豪州は、北朝鮮のミサイル発射をレーダなどで監視している米軍が共同使用している豪州内陸部の基地が支援態勢に入るなど、迎撃を支援する態勢 を整えた。
 CNN TVが9月、米政府が北朝鮮のBMが米本土や同盟国を直接脅かさない場合でも迎撃を検討していると報じた。

 在韓米軍兵士の家族や軍務員に非戦闘員救出作戦(NEO)の定期訓練が最近強化されているという。
 12月韓国で行われてた"Vigilant Ace"米韓演習では韓国内の米軍基地で負傷者が出たため横田基地に運ぶという想定で、兵士が包帯をして乗り込んだり、機内 に医療機器を積み込むなどした。
 一方、 米上院議員が韓国に28,500名いる米軍家族の撤退を開始する状況にあると警告したことに対し、国防総省は「現在、撤退する計画はない」ことを明ら かにした。

 米ハワイ州で12月にミサイル攻撃を想定した警報サイレンの試験が行われた。 ミサイルを想定したサイレン試験は冷戦期の1980年代以来初めてである。

(ウ) 中国の姿勢

 中国人民解放軍が2016年5月に発行した仮想敵に備えた戦時演習ガイドラインで、北朝鮮を米国に次ぐ中国の脅威と位置付けている。 この文書の情勢分析で 「五つの潜在的脅威」としてまず米国、次いで2番目に北朝鮮を挙げている。

 台湾のメディアが、4月まで行われた米韓合同軍事演習での予期しない状況の発生に備えるため、中国東北地方の防衛を担当する北部戦区が、所属部隊に全面 的な戦備態勢命令を下令し、総兵力43万名のうち15万名を北朝鮮との国境地域に集結させたなどと報じた。

 金日成主席生誕105年記念日の4月15日を前に、遼寧省内の地方政府が上級部門の指示によりに緊急通知を関係部局に出し、北朝鮮で放射性物質や化学物質によ る突発事件が発生した場合に備え、地方政府全体が即日「緊急待命態勢」に入るよう指示した。 また4月25日の人民軍創建記念日にあわせて6回目の核実験ある いはBMの発射を強行する可能性が高まるなか、中国軍が朝鮮半島有事を想定して中朝国境に「2級戦備態勢」を発令したと報じられた。

 北朝鮮によるICBM発射直後に、中朝国境地帯を管轄する北部戦区の陸軍部隊が大規模演習を行った。 この演習には北朝鮮の軍事的挑発を牽制する狙いもあり そうである。

(エ) 韓国の姿勢

 韓国の文大統領が11月、北朝鮮は高度な核兵器を保有しており、こうした兵器を早期に放棄することは容易ではないと、北朝鮮の核保有を黙認するかのような 見解を示した。
(オ) 西欧諸国の対応

 英国政府が北朝鮮と米国間戦争が起きる場合に備えて対応策を設けることを軍に指示し、この計画が密かに進められている。
 この計画には現在試験航海中の空母Queen Elizabethの投入まで含まれているという。
(カ) ロシアの動き

 ロシア極東の一部のメディアは、露軍の装備が北朝鮮との国境に向けて移送されているとの地元住民の話を伝えた。
(キ) 我が国の対応

米軍との共同演習

 海上自衛隊が4月に空母Carl Vinson CSGと、6月と10月にRonald Reaganとの共同訓練を実施し、11月にはNimitzTheodore Roosevelt Carl Vinsonの3隻との合同演習を実施して北朝鮮を牽制した。

 航空自衛隊は5月以降ほぼ毎月、米空軍のB-1Bとの共同訓練を実施している。

半島有事における邦人脱出計画

 政府が朝鮮半島有事の際に6万人近い在韓日本人および旅行者などに影響を及ぼすと見て、段階別の対策を検討している。 北朝鮮が大規模な反撃た場合を想 定した第四段階では、韓国政府が民間機の安全を確保することができずに空港を閉鎖すると見て、釜山から船を利用して出国する案も盛り込まれているという。

 政府は1994年の朝鮮半島危機を受けて非戦闘員救出作戦(NEO)計画作成に着手しており、韓国内の港湾施設5ヵ所や空港、空軍基地から輸送する計画で、朝鮮半 島有事になれば韓国国内のシェルターに一時避難したのち、米軍などがあらかじめ指定している場所に集合して、空港や空軍基地や港湾施設に移動し、陸自の CH-47のほか空自のC-130と海自のおおすみ型輸送艦なども投入して日本へ移送することを想定している。

 ただ、韓国政府が米国以外とは各国軍の活動に関する協議を拒否しているため、日本政府は自衛隊の航空機と艦艇の活用に向け、カナダやオーストラリアなど 有志連合で韓国政府と協議する検討に入った。

難民対策の検討

 朝鮮半島有事で北朝鮮から日本に多数の避難民が押し寄せた場合を想定し、政府が対処方針を検討している。 米軍が北朝鮮への軍事攻撃に踏み切った場合、 政府は北朝鮮から数万人の避難民が漂着する可能性があると試算しており、工作員などが避難民を装って日本に上陸する恐れもある。
 計画は工作員などの上陸を防ぐため巡視船が日本海で警備を強化するとともに、港での厳格な受け入れ審査を行うことなどが柱で、一時受け入れを決めた避難 民は臨時収容施設で保護する。 施設の設置場所は九州が有力となっている。 

ク. 欧 州

(ア) ウクライナ情勢

ウクライナ内戦の状況

 ウクライナ東部で親露派が新国家の樹立を一方的に宣言した。 国名は帝政ロシア時代にウクライナの呼称だった「マロロシア」とし、首都はドネツクに置く としたうえで、独自の憲法を制定するという。

 ウクライナ東部での停戦などを監視する欧州安保協力機構(OSCE)特別監視団が、停戦ライン付近で合意違反の重火器の配備や使用が急増していると大規模な戦 闘への懸念を示した。 監視団は1月に紛争勃発後で最多の1日当たり11,000件以上の停戦違反を確認している。

 ウクライナは1月、武装勢力が122mm MRLと152mm MRLに併せて、120mm及び82mm迫撃砲で砲撃を行っているとした。

 親露派が3月に、支配地域にあるウクライナ企業の一部を事実上接収したことから、ポロシェンコ大統領が国連や赤十字などの人道支援物資を除いて、親露派 が支配する地域との物流を遮断する決定をした。
 ウクライナ政府は、今回の決定はあくまでも対抗措置で一時的なものだとしている。

 ウクライナ軍検事総長が10月に、ロシアが3,000名の正規軍を含む11,000名の兵力をDonbass地域に展開していると述べた。
 それによると3,000名の正規軍は2個大隊からなり、200両のMBT、400両のAPC、140門の砲、及び最新式のSAMを装備していて、更に民兵は650両のMBT、1,310両 のAPC、500門の砲、260両の MRL、100個システムのSAMを装備しているという。

ウクライナを支援する西側諸国

 米海軍第1機動建設大隊(NMCB)の設営部隊Seabeeが7月に、ドニエプル河口に位置しクリミアから120kmしか離れていない黒海に面したウクライナのOchakivで 海軍司令部施設の建設を開始した。 この施設建設に続いて艦船修理施設と周辺防御施設の建設も計画されている。
 Ochakivにはウクライナ海軍第5艦隊司令部が置かれている。

 米英などNATO加盟国とウクライナの合わせて15ヵ国が9月にウクライナ西部のリビウ州で合同演習を行った。 演習には過去最大の2,500名が参加していて、米 軍とウクライナ軍の軍用車両が共同で展開する訓練や、負傷者をヘリコプタで救急搬送する訓練などが行われた。

 カナダのトルドー首相が9月、親露派武装勢力との紛争が続くウクライナに 殺傷性のある武器の供与を検討していると明らかにした。
 また、トランプ米政権が戦火拡大を懸念して武器供与を控えたオバマ前政権からの方針転換して、殺傷力のある武器の供与を承認した。  承認されたのは狙 撃銃や弾薬などで、ウクライナ政府から要請されているATGMなど重火器供与の承認には踏み切っていないという。

ウクライナの目指す方向

 ポロシェンコ大統領が3月に、同国固有の双発多用途戦闘機を開発すると述べ軍事産業再建の方針を示した。
 開発する戦闘機は外観がMiG-29に似ているものの搭載品はすべてロシア製と異なり西側製かウクライナ製になるという。

 ウクライナのポロシェンコ大統領が7月にストルテンベルグNATO事務総長との会談後の共同記者会見で、NATO加盟に向けた準備段階であるMAPに参加する交渉 を開始すると述べた。
 また大統領は、2020年まで3年をかけて軍の作戦規定(SOP)をNATO式に変更するとも述べた。

(イ) ロシア軍の動き

対 NATO 戦力の強化

 ロシア国防省が6月に、完全編成の機甲師団及び機械化師団を24時間以内に1,000km離れた戦場に直接輸送する新たな兵種を新設し、戦力の急速投入能力を強化 した。 この兵種は連隊、大隊及び独立中隊からなる。

"Zapad 2017" 大規模演習の実施

 ロシアが9月にベラルーシと共同で、兵員12,700名、航空機70機、戦車250両、艦船10隻が参加する"Zapad 2017"演習をバルト三国とポーランドとの国境で実 施した。 演習の参加規模についてロシアは12,700名と発表しているが、 在欧米陸軍司令官によるとロシアは演習参加規模を通報義務の13,000を下回る12,700 名と発表しているものの、実際には数十万名で、範囲はベラル ーシから北極圏まで及びコーカサスで同時に行われた別の演習ともリンクしていたという。
 NATOは、2008年のジョージア侵攻や2014年のクリミア侵攻の際と同様に、ロシアが演習を装って軍事行動を行うことを警戒していた。

 この演習ではTopol、Topol-M、YarsなどのICBM 60基以上が参加し、重車両に搭載されたこれらのICBMは、モスクワ北西のTverから東シベリアのIrkutskまで 広範囲に展開した。
 更に演習は熾烈な電子戦環境下で行われ、ノルウェーではロシア国境から250km離れた地域でGPSが妨害を受け、民航機やその他に影響が出た。

米軍等への妨害

 ルーマニア主催で黒海で行われているNATO海上演習"Sea Shield 2017"に参加している米海軍駆逐艦Porterが2月に、三度にわたりロシア軍機の異常接 近を受けた。 また11月にも黒海上空で、米海軍のP-8Aがロシア軍のSu-30に異常接近された。

 バルト海上空でも6月に、ロシア軍のSu-27が飛行している米空軍のB-52に対し緊急発進した。

(ウ) NATO / EU の情勢

NATO 加盟国の拡大、29ヵ国体制

 モンテネグロが6月にNATO加盟関連文書を米国に寄託し正式加盟した。 加盟国拡大は2009年のクロアチア、アルバニア以来で、NATOは29ヵ国体制となった。

NATO 軍の東欧配置

 2016年7月にNATO首脳会議で決まったNATO東翼に派遣する4個戦闘大隊(eFP)の4番目が619日にラトビアで編成完結した。 この日にラトビアで編成を完結した eFPはカナダ陸軍を主力に、アルバニア、イタリア、ポーランド、スロベニア、スペイン軍で構成されている。
 NATO軍副最高司令官は編成完結式で、eFP大隊は実質的には旅団であると述べた。

 ハンガリー軍第25歩兵旅団の1個機械化歩兵中隊が7月に、米空軍のC-17でエストニアに到着した。 これはNATOのeFPを補完する中欧諸国の共同防衛合意によ るもので、ハンガリー中隊は3ヶ月交代でエストニア軍第2歩兵旅団に配属される。

新司令部の設置

 NATO国防相会議で11月、新たに2個司令部を創設することで合意した。 1個司令部は米欧を結ぶシーレーン防衛にあたる司令部で、もう1個軍は欧州での部隊 移動を管理する兵站司令部である。
 NATOにとって新司令部の創設は冷戦終結以来で、冷戦終結時には33個司令部、22,000名を擁していたが、現在では7個司令部、4,000名にまで縮小している。

軍事費増

 マティス米国防長官が2月に、初参加したNATO国防相理事会で、NATO加盟各国に負担の増大を要求した。

 NATOが3月に2016年の欧州加盟国の軍事支出について、GDP比で小幅ながら7年ぶりに増額したと明らかにした。
 NATOによると、2015年に対GDP比2.40%であったNATO全体の国防費は2016年に2.43%で、米国が2015年の3.58%から3.61%に上昇したのに対し、欧州の加盟国は 1.44%から1.47%に上昇した。
 加盟23ヵ国の中で2%を達成しているのはエストニア、ギリシャ、ポーランド、英、米の5ヶ国のみで、2017年中にルーマニア、2018年にラトビア、リトアニア が達成する計画であるという。

 ドイツ内閣が3月に、2018年度の国防予算の対GDP比を2017年の1.18%から1.23%に引き上げることを決めた。 ストルテンベルグNATO事務総長が6月、加盟する 欧州諸国およびカナダが、2017年の防衛費支出を4.3%増額する方針を固めたことを明らかにした。
 こうしたなか、フランス軍参謀長が7月、国防予算が€850M ($978.4M)削減されると報じられたことを不満に辞任した。

 NATO加盟の東欧諸国は米国からの国防費増額要求を受けて国防費の増額を目指しており、チェコも現在GDP比1.56%である国防費を2020年までに1.6%に引き上 げる計画である。

兵力増強

 ドイツ国防省が8月、連邦軍の兵力が7月に2015年2月以来初めて170,000名を超えたと発表した。 ドイツ国防相は2016年5月に国際情勢を受けて198,000名に 増員すると述べていた。

NATO の BMD

 10月に"Formidable Shield 2017"演習で、米海軍とMDAが駆逐艦Donald CookからSM-3 Block ⅠBを発射してMRBM標的を撃墜した。
 この演習ではSMART-Lレーダを装備した蘭海軍のフリゲート艦De Ruyterも標的を捕捉追随した。
 Donald Cookは3年前にEPAA Phase 1として スペインのRotaに配置された駆逐艦4隻のうちの1隻である。 ・トランプ政権の対 NATO 姿勢

 英国のEU離脱と米国のトランプ大統領誕生で、欧州の防衛は岐路に立たされている。
 トランプ大統領は大統領選中、応分の国防費を負担しない加盟国に対する義務履行に疑問を投げかけ、5月にベルギーで行われたNATO首脳会議の演説でも、5条 に触れずに国防費の負担は公平であるべきだと強調したことから加盟国から懸念が出ていた。

EU 独自防衛力構築の動き

 EUのユンケル欧州委員長が6月、欧州防衛はもう外国任せにできないと主張し、対米依存度を下げてEU独自の防衛力を強化する考えを示した。
 トランプ政権発足後、米欧同盟が揺らいでいることが背景にある。

 このようなかEUでは、EUの軍事活動を統括する組織の新設や治安部隊や防衛予算を創設する改革案、EDA が主導する装備開発を担うヨーロッパ防衛基金の設立 等が次々と合意された。

 EUが11月に外相理事会を開き、防衛協力拡大を図る新体制「常設軍事協力枠組み(PESCO)」創設に向けた文書に署名した。 署名式ではEU加 盟28ヵ国中、英国 などを除く23ヵ国がPESCOへの参加意思を表明する文書に署名し、外交安全保障上級代表に提出した。
 12月のEU首脳会議で開かれたPESCOの発足式では、11月の署名式に参加した23ヵ国に新たにポルトガル、アイルランドが加わり25ヵ国体制が署名したが、デン マーク、マルタと英国は参加していない。
 枠組みの概念は2009年発効のEU基本条約(リスボン条約)に盛り込まれていたが、英国がNATOとの重複を嫌って反対してきた経緯があったが、Brexitや欧州に おける安全保障上の脅威増大を受け、EU加盟28ヶ国は何年にもわたり議論してきた恒久組織(PESCO)の設立を確実にした。

地域連合の動き

 スウェーデン空軍が5月、ロシアの侵攻に際してフィンランドがスウェーデンの航空基地を戦略縦深として使用できる取り決めを結んだ。 これは両国間で新 たに設立したノルディック防衛協力機構NORDEFCOの一部になっている。

 NATO 30番目の加盟国となったマケドニアの新首相が8月、モンテネグロで開かれたアドリア憲章(Adriatic Charter)首脳会議で、軍の近代化のため国防支出 を増額すると述べた。
 アドリア憲章(Adriatic Charter)とは2001年5月に米国と旧ユーゴスラビアのアルバニア、クロアチア、マケドニアの4ヵ国で構成され、旧ユーゴ3ヵ国のNATO 加盟を支援するた組織であった。 その後ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロも加わって6ヵ国になり、セルビアとコソボもオブザーバとなっている。

独蘭連携の動き

 ドイツ空軍が8月、オランダとの陸上防空の共同運用計画Project Apolloの一環として、空軍第61 SAM群が8月末にオランダに派遣され、オランダ軍陸上防空 司令部の隷下に入ると発表した。

 ドイツ陸軍のPanzerbataillon 414戦車大隊がオランダ軍第43機械化旅団の隷下に入った。 オランダ軍第43機械化旅団はドイツ軍の第1戦車師団の隷下にある。
 ドイツ陸軍Panzerbataillon 414戦車大隊はドイツ軍戦車中隊3個と、Leopard 2A6 MBT 18両を有するオランダ軍の戦車中隊からなっている。

(エ) バルト諸国の動き

エストニア

 エストニア国防相が2月、今後3年間に€60M ($63.8M)の国防投資を行うと発表した。 これは大口径砲弾の購入に充てるという。
 この結果現在GDPの2.2%である同国の国防費はさらに引き上げられることになる。
 エストニアが、同国が装備しているFH-70牽引砲に代えて、中古の韓国製K9 155mm SPH 12門の購入を決めた。

 エストニアには英軍主力のeFP大隊が駐留した。

ラトビア

 ロシアが、ラトビアで人口230万人の1/3を占めるロシア系住民を対象に、偽情報、プロパガンダ、サイバ攻撃などを通じの情報戦を展開しているといわれてい る。 ロシアがラトビアに対しハイブリッド戦争を仕掛けているという。 このようなロシアの脅威に対しラトビアなどで4月から始まったNATO軍の長期駐留は 抑止効果が大きい。

 ラトビア大統領が6月に行われたNATO eFPの編成完結式後に、同国の国防予算が2018年1月にNATOの指標であるGDPの2%を達成すると述べた。
 ラトビアにはカナダ軍主力にアルバニア、イタリア、ポーランド、スロベニア、スペインが参加したeFP大隊が派遣された。

リトアニア

 リトアニアと米国が1月、米軍の同国駐留を認める協定に調印した。 リトアニア軍によると、現在同国には140名の米軍人が常駐すると共に、訓練のため部 隊が度々入国している。 リトアニアにはドイツ軍主力のeFP大隊が駐留している。
 リトアニアがノルウェーからNASAMS 2個中隊分を購入しており、2020年には引き渡される。 また7月には米国にPatriotの常駐を要求した。
 リトアニアの国防費は2014年にロシアがウクライナ東部を支配した時点で対GDP比0.89%であったが、2017年にはGDPの1.8%に上昇し、2018年には2.07%になる。

ポーランド

 ポーランドの閣議が6月、国防費をGDPの2%とする法案の骨子を了承した。 これにより同国の国防費は毎年数百万㌦増額されることになる。

 ポーランドがPatriotを二段階で導入する。 最初の2個中隊(4個FU)を2022年までに納入する第一段階の契約を2017年内に行い、Skyceptor迎撃弾と組み合わせ る残る6個中隊の契約を2018年末までに行うことになっている。
 ポーランドが2014年12月に発注したAGM-158A JASSM 40発の一次分が納入された。 ポーランドはこれに加えて、AGM-158B JASSM-ER 70発、AIM-9X Sidewinder 93発、AIM-120C-7 AMRAAM 65発、GBU-12 Paveway 440発、GBU-38B/B JDAM 480発等を既に発注している。

 ポーランドではNATOが、"Baltic Hegemon"演習、"Dragon-17"演習等を実施している。 ポーランドには米軍主力のeFP大隊が駐留している。

(オ) ノルディック諸国/アイスランド情勢

徴兵制の復活

 スウェーデンがロシアの脅威を含む治安情勢の変化に対応するため、3月に2010年に廃止した徴兵制を復活させると発表した。
 対象は18歳以上の男女で、2018年1月から4,000名が11ヶ月間の兵役に就く。

非同盟政策からの踏み出し

 非同盟政策をとってきたスウェーデンとフィンランドが英国主導の合同派遣軍に参加するほか、フィンランド軍と米軍の共同演習、フィンランド軍とスウェー デン軍の "Aurora 17" 演習への参加、対ハイブリッド戦部隊 Hybrid CoE の設立など、その政策に変化を見せ始めている。
 これに対してロシアは、フィンランドがNATOに加盟すれば対抗処置をとると警告し、圧力をかけている。
 ただ、スウェーデンはベルリンで開かれた欧州安全保障会議に今年パートナー国として出席し、国防相がロシアの挑発に対抗するため欧州の連帯と結束を呼び かけた。  スウェーデンはNATOの加盟国ではないがPfP国になっており、米国とも大西洋を挟んだパートナーシップ関係にある。

国防費の増額

 ノルウェー国防相が10月、国防予算をNOK3B ($378M)増額すると発表した。

新装備の導入

 スウェーデンが11月、PAC-3の最新型4個FUを購入すると発表した。 購入の最終決定は2018年中に行われ、2025年までのoperationalを見込んでいる。

 フィンランド国防省が2月、韓国から中古のK9 155mm SPH 48両を購入すると発表した。 この契約には更に追加購入のオプションもついている。
 同国は今まで122mm、130mm、152mmと、ソ連時代の口径砲及び弾薬を採用していた。

米軍の駐留再開

 米国は1月から海兵隊300名のノルウェー駐留を始めたほか、海兵隊の1個遠征旅団14,000名分に相当する戦車、火砲、その他装備のノルウェーでの備蓄を開始 している。

 米国が冷戦時代以来放置されていたアイスランドの海軍航空基地を修理し、P-8の哨戒飛行拠点として使用する。
 これはグリーランド、アイスランド、UKに囲まれた水域"GIUK gap"におけるロシアの原子力/通常動力潜水艦の動きが最近活発化していることに対応するもの である。 GIUK gapはロシア北方艦隊の大西洋への出口になっている。

(カ) 黒海沿岸諸国の動き

黒海とその上空

 黒海上空を飛行中の米海軍P-8Aに5月、ロシアのSu-27 1機が20ft以内まで異常接近した。 ロシアは2月に黒海で米駆逐艦Porterに3度にわたり航空機 を異常接近させ、2016年9月には黒海上空でP-8Aに対し10ftまで接近させている。

 一方米軍は、ウクライナ軍とロシア軍の戦闘が増加しているのを受け、米海軍の駆逐艦Jame's E. Williamsを11月下旬に黒海に入れた。 米艦がこの 種の任務に就くの は過去3ヶ月間では8月のPorterに次いで2隻目である。

ルーマニア

 米海兵隊とルーマニア軍が3月に黒海沿岸で合同演習"Spring Storm 17"を行った。この演習にはLCACを搭載した米海軍揚陸艦Cater Hallのほか、450名 の米海兵隊員と750名のルーマニア軍が参加しStingerの実射も行われた。

 米DSCAが7月、国務省がPatriot Config 3+の7個システムをルーマニアに売却することを承認したことを明らかにした。 売却にはMIM-104E GEM-T弾56発と PAC-3 MSE弾168発も含まれる。

 米国が8月、ルーマニアにHIMARSを売却すると発表した。 売却されるのはHIMARS 54両と単弾頭型 GMLRS 81発、代替弾頭型GMLRS 81発、ATACMS 54発、射撃 指揮装置24基などである。 また装甲型M1151A1 Humvee 15両と、2人乗りM1151A1 Humvee 15両も含まれている。

ブルガリア

 ブルガリアがBGN1.5B ($898M)をかけて戦闘機を新たに8機整備する計画が度々遅延するなか、同国国防相が7月日に保有しているMiG-29 15機と Su-25 14機の 維持改良について、ロシアMiG社と交渉を行っていることを明らかにした。
 一方でルガリア空軍が10月、緊急発進を除いて全てのMiG-29の飛行を停止した。 原因はロシアから新規に受領したRD-33エンジン10基のうち6基が使用不能で あることが判明したことによる。

モルドバ

 モルドバにはEU加盟国のルーマニアと統合を目指す政治勢力がある一方、2016年末に就任したロシア寄りのドドン大統領は、実権を握ってきた親欧米のフィリ プ首相や、親欧米派が主流の議会と対立している。

 ストルテンベルグNATO事務総長とモルドバ首相が11月に会談し、中立国であるモルドバとNATOの連携を強めることで合意した。
 NATOはモルドバに連絡官を派遣し、両者の支援と協力を密接にする。

(キ) その他地域での動き

キプロス

 キプロスの再統合に向け、南部のキプロス共和国とトルコだけが承認している北部の北キプロス・トルコ共和国に加え、関係国3ヵ国が参加する多国間会合が 1月に国連の仲介のもとジュネーブで始まった。 この会合では再統合に際しての安全保障問題について協議され、北側の後ろ盾となっているトルコが軍の撤退 をめぐり譲歩するかが焦点になる。
 トルコは1974年夏にギリシャ系住民を中心としていたキプロスに侵攻し、現在も35,000以上の部隊でキプロス国土の36%を支配している。

 国連の仲介で6月にスイスで再開されたキプロスの再統合交渉が、島北部に駐留しているトルコ軍部隊の撤退をめぐり南北の意見が対立し難航していて、双方 が歩み寄りの姿勢を見せなければ、交渉が決裂する可能性がある。

コソボ

 コソボ大統領が3月に議会に対し、同国の軽装備治安部隊を正規陸軍に格上げする要求を行った。 この動きに対しコソボ独立に反対しているセルビアは直ち にこれを非難した。
 米国とNATOが3月にコソボに対し、軽装備の治安維持部隊を憲法の改正なしに正規軍に格上げしようとしていることについて、そうなればコソボ治安維持部隊 との連携を縮小すると警告した。

(ク) 在欧米軍の動き

在欧米陸軍の再駐留

 在欧米陸軍が、冷戦終了後に規模が縮小された陸軍の再駐留に向け最近北ドイツで調査活動を行っている。 ドイツ当局者によると在欧米軍が視察したのは 、補給拠点であるBremerhavenに近いFallingbostelとBergenで、米陸軍は4,000名規模の駐留を考えているという。
 在欧米陸軍が、ドイツマンハイムにある閉鎖されている基地の再使用を検討している。 マンハイムのコールマン兵営は2011年に放棄され、その後2015年に 一時 使用されただけになっていた。 またこれに伴い1990年代に放棄されたドイツ南部クライグスフェルドにあった補給処の再開も検討している。

 米陸軍は2017年になって6,000名の部隊を、バルト三国、ポーランド、ドイツ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアに展開している。

 戦車やその他車両に搭乗した米軍が1月にドイツとの国境を越えてポーランドに入り、基地となる同国西部のZaganに向かった。 米国や西側各国は今までに も演習のため同国入りをしたことがあるが、恒久駐留はこれが初めてである。

 バルト諸国とポーランドにNATOが展開した部隊とは別に、米陸軍第1歩兵師団第2機甲旅団戦闘団が9月にポーランドのグダニスク港に上陸した。 これは米陸 軍が東欧に向け派遣する2個機甲旅団の一部である。

 在欧米陸軍司令官が6月、2個MLRS大隊と1個 SHORAD大隊からなる火力旅団が2018年に欧州へ派遣されることを明らかにした。
 米陸軍のPatriot複数中隊が7月に多国間防空演習"Exercise Tobruq Legacy 2017"に参加するため初めてリトアニアに入った。 演習は500名の兵員と30基の各 種防空システムが参加して行われる。

F-35A の欧州展開

 米空軍が4月にF-35A 8機を初めて海外展開した。 英空軍Lakenhealth基地に到着したのは、ユタ州Hill AFBを基地としているの6機である。
 英Lakeheath基地に展開している米空軍のF-35A複数機はエストニアのAmari航空基地に飛来し、連合国との共同訓練のため数週間駐留する。

陸軍航空部隊の欧州派遣

 Chinook、Aapache、Black Hawkなどの米陸軍ヘリ94機が2月にBremerhaven港に陸揚げされた。
 これらヘリの大半はバイエルン地方の基地に搬送されるが、一部はリトアニアとルーマニアに送られるという。

ロシア軍大規模演習への対応

 在欧米陸軍司令官が6月、ロシアが9月に行う大規模演習"Zapad"の間、米陸軍は3個空挺部隊、併せて600名をバルト諸国に駐留させると述べた。

(ケ) トルコの欧米との離反

トルコ独裁国家化への懸念

 ドイツなど欧州で、トルコの閣僚らが出席予定の集会の開催が拒否されるケースが相次いでいる。
 トルコでは4月に大統領権限を強化する憲法改正案の是非を問う国民投票が行われるが、欧州での集会は欧州に暮らすトルコ人に在外投票と改憲への賛意を 呼びかけるのが目的で、3月に入りドイツではケルンやハンブルクなどで企画された集会が、地元当局の要請で中止となった。

トルコの反発

 オランダ政府が駐トルコ・オランダ大使代理を召喚しトルコ外相の入国を拒否したことに対し、トルコ外務省が3月に正式に抗議した。
 エルドアン大統領はオランダ政府に対し、ファシストのように振る舞っていると非難し、EUへの対決姿勢を強調している。

欧州諸国との対立

 トルコが数十名の将校をクーデター未遂事件の容疑者として召還しようとし、その内の4名がノルウェーに亡命を受け入れられたことで、NATOの南北両翼を担 うノルウェーとトルコが外交関係が悪化している。

 欧州安保協力機構(OSCE)などで構成する国際投票監視団がトルコで実施された大統領権限の強化を目指す憲法改正の是非を問う国民投票について、投票は不公 平な状況下で行われ、欧州評議会の基準は満たしていなかったとの見解を示した。

 ドイツのガブリエル外相が6月、7月上旬にドイツを訪れるトルコのエルドアン大統領がドイツ国内で計画しているトルコ系住民向けの集会の開催を認めない考 えを表明したのに対し、エルドアン大統領はメルケル首相の与党など主要政党を支持しないよう求めており、露骨な内政干渉として独側の反発を呼びそうである。  ドイツには労働移民やその子孫にあたる世界最大300万人のトルコ人社会が存在しており、両国は二重国籍を認めている。

 ドイツのメルケル首相らがトルコのEU加盟交渉を打ち切る発言を行っているに対し、トルコが9月、欧州の視野の狭さを反映していると批判した。

米国のビザ発給制限

 トルコは、2016年7月に起きたクーデター未遂はイスラム組織のギュレン教団が計画したと断定し、米国に滞在するギュレン師の引き渡しを求めていて、9月に は イスタンブールの米総領事館勤務のトルコ人職員を教団とつながりがあったとして拘束した。 これを受け駐トルコ米大使館はトルコ国民に対するビザの発 給業務を停止すると発表した。 トルコ政府も米国民に対し同様の措置を取ると明らかにした。

 11月になって米国とトルコは相互に停止していたビザ発給業務を限定的に再開した。

ロシアへの接近

 トルコのエルドアン大統領が7月、ロシアのS-400を購入する方向でロシアと合意したと発表した。  ロシアとトルコは2015年11月のトルコ軍によるロシア軍機の撃墜で関係が悪化していたが、9月にトルコを訪問したプーチン露大統領がエルドアン大統領と首 脳会談を行い、シリアの内戦を巡って一時は対立していた両国が内戦の終結に向けてさらに関係を強化していく姿勢を強調した。

S-400の導入を決めたことによるNATOとの対立

 トルコがS-400の導入を決めたことについてNATO軍事委員会委員長が10月、S-400を装備するトルコはNATOの防空網に加入することやその他の技術的統制に入る こともできなくなると警告した。
 駐NATO米大使が11月、トルコがS-400を購入することになれば米国はトルコに制裁を科すことになるとと述べた。

 トルコが12月、ロシアとS-400購入契約を締結したと発表した。 購入したのは1個システムで、更に1個システムがオプションされている。
 エルドアン大統領は、代金はロシアからのルーブルの借款で賄われることを明らかにしている。

NATO軍の演習からトルコ兵を引き揚げ

 エルドアン大統領が11月、ノルウェーでのNATO軍の演習からトルコ兵40名を引き揚げた。 演習に使われた掲示物で、トルコ建国の父アタチュルク初代大統領 の写真とエルドアン大統領の名前が「敵一覧」の中に使われていたことが理由という。

ク. その他の紛争/紛争潜在地域

(ア) アフガニスタン

 米中央軍司令官が下院軍事委員会の公聴会で3月に証言し、ロシアがアフガニスタンでタリバンに軍事支援を行っているとの見方を明らかにした。
 ロシアはタリバンをテロ組織とみなし、かつては旧タリバン政権の対立勢力である北部同盟を支援してきたが、ISISがアフガンや中央アジアで影響力を拡大さ せ、ロシアの勢力圏への浸透を図っていることに警戒を強め、イランとともに2015年ごろからタリバンへの接近姿勢を強めている。

 マティス米国防長官が9月、トランプ大統領の戦略に基づき3,000名以上の米軍をアフガニスタンへ追加派遣することを明らかにした。

(イ) イスラエルとその周辺

イスラエルの軍備増強

 イスラエル空軍が1月、Arrow-3のIOCを宣言した。  Arrow-3はArrow-2の半分の重量で二倍の高度まで達することができる。

 イスラエル空軍が3月、ArrowでシリアのSAMであるSA-5を撃墜した。 Arrowが実際にSA-5撃墜は初めてである。

 イスラエルMDOと米MDAが合同で、5回目となるDSWSの一連の迎撃試験DST-5をイスラエルの試験場で成功裏に完了した。 イスラエル空軍高官がDavid's Sling が4月上旬にoperationalになると述べた。

 イスラエルが11月、Iron DomeをSa'sr-5級コルベット艦に搭載した18ヶ月に及ぶ試験を完了した。 C-DomeはIron Domeの艦載型で、Iron Domeは2011年以来 1,700発以上の迎撃に成功している。

海上警備の強化

 イスラエル海軍がアカバ湾の安全保障強化のためエイラートに基地に高速艇を配備する。 イスラエルの沿岸防備は従来ガザ周辺やレバノン国境付近が中心 であった。

米軍基地の開設

 イスラエルと米国が9月、イスラエル国内に初の米軍基地を開設した式典を行った。 この基地はイスラエルのBMDを補強するもので、数十名の米部隊が駐留す る。

周辺との関係

 イスラエル諜報相が10月、イランの核保有を阻止するために必要であれば軍事力の行使も辞さない考えを示した。
 同相は、トランプ米大統領が主導する国際的な努力がイランの核能力保有を止められないならば、イスラエルは単独で軍事行動を起こすとしたうえで、イラン が核を保有できないよう核合意を見直すことは可能だと述べた。

 イスラエル軍が4月にダマスカスの空港近くをミサイル攻撃し、レバノンのヒズボラ武器庫を破壊した。 武器庫や燃料タンクが炎上した。  イスラエル軍機が9月にシリアの兵器工場を空爆した。 シリア軍によるとイスラエル機がレバノン上空からシリアの軍事施設に対して数発を撃ち込んだ。

 イスラエル軍が6月と9月にシリアを空爆した。 更に10月にはシリアが、レバノン上空を飛行するイスラエル軍戦闘機に対しSA-5 (S-200)を発射したと発表し たがイスラエル機に被害はなく、イスラエル機はSAMを発射した中隊に対し報復攻撃を行った。

エルサレムの帰属問題

 トランプ米大統領が12月、エルサレムをイスラエルの首都と認定すると宣言し、テルアビブにある米大使館移転を指示した。
 ただ、実際に大使館が移転するには数年かかるとみられる。

(ウ) ナゴルノ・カラバフ

小競り合いの発生

 アゼルバイジャン国防省が2月、アルメニア人勢力が実効支配するアゼルバイジャンのナゴルノカラバフ自治州で2武力衝突が起き、アゼルバイジャン兵5名が 死亡したと発表した。

アゼルバイジャンの武器購入

 アゼルバイジャン国防省が6月に公表した映像を見ると、少なくとも12両のATGM搭載車がロシアから引き渡されている。
 アゼルバイジャンが9月に、人員15,000名、装甲車両150両、火砲120門が参加した5日間にわたる演習を開始したが、この演習にはチェコで設計された152mm SPH、122mm 40連装MRLも参加した。

(エ) 北 極 圏

ロシアの軍備強化

 ロシア軍が初めて、東シベリアの海岸からNew Siberian諸島のKotelny島までの車両縦隊による探査を行った。

 ロシアのTVが、5月に行われるロシアの戦勝記念日パレードの予行を報じたなかで、北極圏での作戦に適合させるためトラックに搭載したPantsyr-S1とTor-M2 が公表された。

北欧諸国の対応

 ノルウェーが10月、国防予算をNOK3B ($378M)増額して北極圏の防衛を強化する。  ロシアとの国境から5kmのSør-Varangerに軽対空火器や対装甲火器を装備 した北極レンジャー中隊200名を配置するほか、ロシア国境から200kmのPorsangerに400名規模の機甲大隊を配置する。
 また同県にある地域防衛隊を強化し、正規軍部隊と同一位置に配置する。
 更にTroms県のSkjoldに駐屯する主として実働予備役で構成された第2歩兵大隊を機械化大隊に改編し、急速動員部隊とする。

米国の対応

 米議会が6月、海軍に対し北極海での航行の自由作戦(FONOP)を遂行するため、砕氷艦の建造または既存艦船の耐氷能力強化を盛り込んだ2018国防権限法を採択 した。

(オ) 黄 海

韓国の軍備強化

 韓国国民安全処海洋警備安全本部が仁川市甕津郡にある延坪島、大青島、白ニョン島などの西海5島の海域で密漁する中国漁船の常時監視と取り締まりに専従す る「西海5島特別警備団」が4月に発足した。

中国の軍備強化

 中国海軍のType 052D駆逐艦は今までに就役した4隻が全て南海艦隊に配属されているが、5番艦が1月に就役し北海艦隊に配属された。
 7,500tのType 052Dは32セルのVLS を2基装備し、HHQ-9A長距離SAMを発射できる。

 中国軍機関紙の解放軍報が8月、黄海と渤海で7日に海軍と空軍が数十隻の艦艇、潜水艦、10機以上の航空機による大規模な演習を行ったと報じた。
 演習では数十発のミサイルの発射や上陸作戦の訓練も行われ、習近平指導部が進める統合運用能力の向上を誇示した。

(カ) 北アフリカ

米国の後退、ロシアの拡大

 ロシアはシリアでアサド政権を支援するために軍事介入し、内戦前から持つ西部タルトスの海軍基地に加えて、新たに北西部ラタキア近郊にも軍事基地を整備 した。

サハラ砂漠周辺5ヵ国が対テロ合同部隊創設

 国土にサハラ砂漠を含むブルキナファソ、チャド、マリ、モーリタニア、ニジェールの5ヵ国首脳(G5)が2月、イスラム過激派のテロに対抗するため合同部隊を 創設することで合意した。

ロシア軍特殊部隊がエジプト西部に展開

 米当局者が3月、ロシア軍特殊部隊がリビア国境に近いエジプト西部の空軍基地に展開したもようだと明らかにした。 2011年から続くリビア内戦に旧カダフィ 政権友好国のロシアが極秘介入している可能性がある。

エジプト軍のリビア東部空爆

 エジプト軍が5月、リビアの東部にある過激派の拠点を空爆した。 カイロ南方のミニヤで同日起きたキリスト教の一派、コプト教徒を狙ったテロ事件に絡み、 実行犯がこの拠点で計画の準備や訓練を受けていたため攻撃したという。

カタール問題の余波:ジブチ、エリトリア緊張の再燃

 ジブチとエリトリア間の係争地には、これまでカタール軍が駐留し衝突を防いできたが、サウジアラビア主導で6月に始まったカタールを孤立させる中東の騒 ぎにより、他国の仲介どころではなくなったカタールが撤退を発表したことから、エリトリア軍が即座に係争地を占領してしまった。

(キ) パキスタンvsイラン

 パキスタン外務省が6月、同国空軍がパキスタン領内3~4kmに侵入したイランのUAVを撃墜したことを認めた。
 5月以来イランのUAVが2度にわたりパキスタン領空に侵入して迫撃砲弾を投下し1名が殺害されたため、パキスタン軍が撃墜した。
(ク) 中 南 米

 ベネズエラのマドゥロ大統領が8月までに、民間人も参加する大規模軍事演習を月末に実施すると発表した。
 トランプ米大統領が軍事介入の可能性を示唆したことに対抗したもので、領土の防衛体制を整えると宣言した。
(3) 周辺国の情勢

ア. 中 国

(ア) 世界の覇権を狙う国家方針

積極的な海外進出

 1月に中国が将来『海上超大国』になり、米国の覇権を脅かすと報じられた。 コンテナ取扱量世界トップ10箇所の港湾のうち、中国が6箇所を占めており、中国 は経済構想「一帯一路」に基づいて港湾に投資してシルクロード復活を目指している。

 中国がジブチでの初の海外軍事基地建設を完了し、7月に運用を開始した。
 建設している埠頭は少なくとも4隻が停泊できる大きさで、40,000t以上のType 901補給艦も停泊できる。 8月の開所式に参列した第一陣部隊は30mm砲を装備 するIFVを少なくとも6両、12.7mm機関銃を装備する 4×4軽IFVを少なくとも4両装備している。

 中国海軍は7月にバルト海でロシア海軍との合同演習を行った。

南シナ海、東シナ海内海化の野望

 中国が東シナ海と南シナ海の海底に海洋環境の大規模な観測網を整備する。
 中国は2014年から西太平洋に水深500mの20基を含む400以上の観測装置を設置して、水温や塩分濃度 、海流などのデータを収集しているが、2017年中に全ての 深海観測装置を海面上のブイと遠隔探査衛星「遥感」を経由してリアルタイムで地上に伝送する新システムに改修する。

巨大海軍の構築

 中国海軍は世界の主要国で最も急速に増強し中国海警局は世界最大の艦隊を持っている。 中国海軍は現在世界の上位5位以内で太平洋での戦力は米国に次ぐ 2位になっており、20~30年後には中国海軍はこの地域における実力で米海軍を追い抜くだろうとみる専門家もいる。

渡洋侵攻能力の整備拡大

 中国は海軍陸戦隊(海兵隊)を南海艦隊の傘下から海軍直轄に格上げした。 3月には海軍陸戦部隊を2万から10万に増員する計画だと報じられ、海軍全体の 人員も235,000名から15%増やす計画であるという。

 水陸両用戦戦力の強化が進められ、米海軍のWasp級強襲揚陸艦と同規模で30機のヘリを搭載し6機同時発艦が可能な排水量40,000tのType 075強襲揚陸艦が 2020年に完成する。 また排水量20,000t程度で、中型ヘリ4機 、Type 726 LCAC 4隻を搭載できるType 071 LPDの5隻目が上海で建造されている。
 特に注目されるのは通常の揚陸艦には搭載できないPomornik級大型LCACを運ぶことが可能な半没式輸送船の就役で、4月半から本格的な訓練を始めている。

 中国海軍更に大型の洋上補給艦の整備にも力を入れている。
 中国海軍は5隻の補給艦を擁しているが、そのうちの3隻が新型艦でアデン湾での活動に参加している。 更に満載時排水量45,000tのType 901補給艦の一番艦 も9に就役した。

覇権確立の活動

 海洋覇権確立のための軍事的挑発も頻発していて、7月には情報収集艦が津軽海峡の領海に侵入した。 中国軍艦の領海侵入は2016年6月に鹿児島県口永良部 島周辺で確認されて以来で3回目である。
 1月に中露の海軍が日本海で共同訓練を実施したことから、今後日本海での活動が強まると見られ、中国海軍の動向次第では将来、日本海で緊張が高まる恐れ もある。

 中でも注目されるのは、南シナ海問題などで対中強硬姿勢を示す日系米国人である米太平洋軍司令官ハリス海軍大将を要求していたことで、主権国にとって 内政の重要事項である軍司令官人事に他国が更迭を求めるのは外交上極めて異例である。

北斗測位衛星システムの全世界展開

 中国が11月に新世代の衛星測位システム北斗-3に使う初めての衛星を予定の軌道に乗せることに成功した。 2020年までに35基を打ち上げて世界全体をカバ ーする。
 2012年にoperationalになっている12基からなる北斗-2は中国とアジアのみをカバーしている。

(イ) 軍の態勢強化

 中国が4月、人民解放軍の国内5戦区に所属する集団軍を18個から13個に再編することを明らかにした。 総兵力85万の中国陸軍は各戦区に3~5の集団軍が配 属されている。 戦力の近代化に向けて習近平指導部が進める軍改革の一環だが、軍内部の人事を掌握する狙いもあると見られる。
 また中国の中国陸軍が84個の軍団級部隊に再編される。 軍団級部隊の司令官は少将がつく。

 更に7月には地上軍の兵力を1,000,000以下に削減して、他の軍種を増員する計画であると報じられた。 中国の地上軍は現在、現役850,000、予備役510,000 である。

 軍制改革へは軍の反動もあり、北京中心部で2月に数百人の元軍人らが退役後の待遇改善を求める抗議活動を行った。

(ウ) 台湾制圧に向けた準備

上陸作戦の能力向上

 台湾国防部が8月に立法院に提出した報告書によると、中国軍が台湾への上陸や封鎖作戦を遂行する能力を大幅に向上させており、特別部隊を新設して上陸演 習も強化している。
 その結果、中国軍には台湾本島への上陸作戦を行う能力はまだないが、既に離島を奪う力を備えているとしている。

ミサイルの配置

 中国が台湾に向け射程800~1,000kmのBM DF-16を配備している。 DF-16は2015年9月に初公開されている。

台湾東岸の飛行

 人民解放軍のY-8 ELINT2機が8月にSu-30 2機の護衛を受けて台湾南部のADIZ外からバシー海峡を経て北東に向かって飛行した。 2機は太平洋から東シナ海に 向かって宮古海峡を北上した。 人民解放軍機が台湾東部の海域を飛行したのは8月に入って3回目である。

 11月にも複数の人民解放軍機がバシー海峡を通過して西太平洋に向かって飛行した。  飛行したのは爆撃機、輸送機、電子偵察機、空中給油機、戦闘機など で、機数は10機を上回るかという。
 更に12月にも台湾周辺空域での飛行を繰り返している。

米台接近に対する威嚇

 10日、中国の駐米公使が12月に、米国の軍艦が台湾に寄港すれば中国軍は台湾を武力で統一すると述べた。 米議会が9月に可決した国防授権法には、米国と 台湾の軍艦による交流訪問を検討することを求める内容が含まれている。

(エ) 経済不振下の国防費増大

経済の不振

 中国の1月末での外貨準備高が前月比$12.3B減の$2.9982Tになり、2011年2月以来約6年ぶりに$3Tの大台を割り込んだ。 減少は7ヵ月連続で資金流出が止まら ない。

 中国全土に31ある省クラスの地方政府が2月までに個別に公表した2016年のGDP値を合算すると、中国国家統計局が1月に発表した全国GDPの総額を2兆7,559億元 も超過していた。 中国のGDP水増し疑惑はたびたび指摘されてきたが、改めて国家統計の信頼性が疑問視されている。

国防費の伸び

 "Military Ballance 2017"によるとアジア太平洋地域全体で2016年の国防費が前年比5.3%増えた。 そのうち中国が39.4%を占め、日本の12.9%、インドの13.9% に比べ中国の突出ぶりが目立っている。 しかも中国の支出額は政府公表を元にしており、実際にはこれより多いと見られている。

 2017年の国防予算の伸び率が7%前後になりGDPの1.3%前後になることが3月に明らかにした。 中国の国防費が1兆元を超えるのは初めてで、米国に次ぐ世界第 2位、日本の平成29年度予算案の3.3倍にあたる。
 2017年の経済成長率目標が前年の6.5~7%からやや低い6.5%前後に設定しされていることから、国防費の伸びはGDPの伸びを大きく上回ることになる。

(オ) 戦力の増強

戦略ミサイルの増強

 ICBMでは、1月の早い時期にMIRV弾頭10個を搭載するDF-5C ICBMを発射したと報じられた。
 2013年中頃にウェブサイトで初めて画像が公開されたDF-31Aは単弾頭であるが、7月に初めて公開されたDF-31AGは多弾頭を搭載し、射程は12,000km以上の DF-41は10個のMIRV弾頭を搭載するほかチャフやデコイも搭載しているという。
 中国国営Global Times紙は11月にDF-41が早ければQ1/2018にもoperationalになると報じた。

 7月下旬に中国のネットに、海軍が1隻だけ保有しているType 032 SSBが改造された画像が掲載された。  Type 032はSLBMの試験艦と見られており、今回の改 造でセールの後方部分が高くなったことから、JL-3 SLBMの試験に向けた改造と見られる。

艦船の建造

 中国が2016年に30隻近い新型艦の配備を達成し世界最多を記録し、そのうち主力艦艇は11隻で米国の3隻を上回った。 主力艦艇の建造数で中国が米国を上回 るのは史上初となる。

 中国海軍は2020年までに265~273隻に成長する模様で、これに対し米海軍は275隻である。

 2016年11月に戦闘可能が宣言された中国の空母遼寧を元にした初の国産空母Type 001A山東の進水式が4月に大連で行われた。 2020年までに就役すると いう。
 山東遼寧よりアイランドが短くハンガーが大きくなっているため、搭載できるJ-15の機数が遼寧の24機から32~36機に増え、速力も 29ktから31ktへと速くなっている。
 上海で建造中の3隻目の空母Type 002は平甲板型で電磁カタパ ルトが採用され、この電磁カタパルトでは今までにJ-15艦載戦闘機による発進試験を数千回実施 しているという。

 中国はディーゼル推進型潜水艦を2020年までに70隻体制とするほか、新たに攻撃型原潜を導入すると見られている。
 こうしたなか、14隻保有しているType 035明級の後継となるType 039B 元級の建造再開された模様を示す画像や、Type 093B商級と呼ばれ西側ではType 093Gと 呼んでいるVLSを装備しCJ-10 CM 12発を発射できる原子力潜水艦の画像もウェブ上に流れた。

 中国が最初の4隻を建造する中国海軍最大で最新のType 055駆逐艦の建造は大幅に進展していると見られる。 排水量10,000tのType 055は112~128セルのVLS を装備するほか130mm砲も装備する。

 排水量1,500tのType 056コルベット艦の41番艦が2016年12月に進水した。 この型のコルベット艦は30隻が就役し、更に10隻が建造又は試験中で、最終的には 70隻が建造されるとみられる。

 満載時排水量45,000tと中国海軍最大の艦船であるType 901補給艦の一番艦が9月に就役した。 建造中の二番艦は2018年中頃に完成するとみられる。
 更に原子力推進の大型補給艦(AOE)構想も公表された。

水陸両用戦艦艇、戦闘車両の整備

 水陸両用戦艦船ではType 071及びType 075の建造を進めると共に、3月には50,000tの軍民両用の半没式輸送船を就役させ、2016年12月には世界で二番目に大 い100,000tの半没式輸送船を就役させている。
 LCACでは更に4隻のType 726/726A LCACを建造していることが明らかになった。 Type 071揚陸艦に4隻が搭載されるType 726/726Aは既に6隻が就役している。
 水陸両用戦闘車も続々と開発され、水上走行試験で50km/hを記録した重量5.5tの4×4 AFV、6×6装輪AAV、上陸地点に1両で435m長の渡渉板を敷設できる水陸 両用装甲車搭載渡渉板施設車を開発している。

航空戦力の増強

 中国国営中央TV (CCTV)が3月にJ-20が空軍に実配備されたと報じた。 中国メディアは2017年内に相当数が配備され ると報じている。
 J-20に新型のターボファンエンジンが搭載された。 J-20の試作段階で国産のWS10エンジンを搭載していたが、量産機にはロシア製のSaturn AL-31FNが搭載さ れていた。
 中国軍のJ−20の調達規模は数百機になると見られており、比較的安価なJ−31と混合運用することになるという。  中国のウェブサイトにJ-31二次試作機の画像が流れた。 二次試作機は前部胴体、コックピット、尾翼、主翼など に大幅な改良が行われ一次試作機より重量が3t増え、若干大きくなっている。

 中国のウェブページに8月、SEAD装備を搭載したJ-10Bの画像が掲載された。  SEAD J-10BにはKh-31 ARMの中国型 であるYJ-91や、K/RKL007A ESM/ECM装置を搭載している

 中国の次世代爆撃機は名称がH-20で、米空軍のB-2並の特性を持つという。

 AG 600水陸両用飛行艇が3月に初飛行した。

 中国が24機発注しているSu-35の最初の4機が2016年12月までに納入された。 全24機は 2018年までに全機が納入さ れる。

各種戦術ミサイルの開発

 中国陸軍のロケット部隊が2月上旬行った演習で、DF-15BDF-16の展開 能力を誇示した。 DF-15Bの射程は800kmという。 DF-16はMIRV弾頭3発を搭載するとの報道もあり、射程は800~1,000kmと見られる。

 中国ロケット軍が11月に極超音速兵器(HGV)を搭載する推定射程1,800~2,500kmの次世代BM DF-17の発射試験をした。

 MLR/MRLではNORINCO社がロシアのBM-21 122mm 40連装MRLとよく似たSR4 122mm 40連装MRLを開発した。 SR4には各 種弾頭を搭載した射程15~50kmの弾種がある。
 同社はこの他に122mm 40連装/220mm 12連装のSR5 MRLも開発している。

 中国空軍関連Wサイトで、光学式精密誘導型と見られるCJ-10K/KD-20 LACM の画像が公開された。 先端に保護用のカバーが付いたEOまたはIR誘導と見られる KD-20は射程1,500kmでKD-20Aと呼ばれると見られる。  KD-20はINSとTERCOMレーダ及び測地衛星を使用していた。

 中国の軍事雑誌にType 052D駆逐艦がYJ-18 ASCMを発射する画像が初めて掲載された。
 YJ-18はロシアのKalibr-NK超音速ASCMとよく似た三段推進の対艦ミサイルで、第一段はブースタ、第二段はCM、第三段はロケット推進弾になっている。

 香港メディアが3月、中国軍が在韓米軍が配備中のTHAADに対抗してHQ-19 SAMを装備する大隊を新設し、24時間 戦闘準備態勢に入ったと報じた。 HQ-19は中国空軍が26個以上の連隊が装備している。
 中国空軍の防空司令部にはSAM大隊が70個あるが、長距離防SAMを装備している部隊は連隊級以上で30個ほどになる。

 2016年以来、PL-10 SRAAMとPL-15 LRAAMを装備したJ-10やJ-20 の画像をよく見かけるようになった。
 PL-15はSAM並の大きさで小型尾翼以外に翼を持たないAIM-120D級射程200kmのAAMで、米空軍は警戒感を示している。

各種 UAV の開発整備

 国営China Daiky紙が2016年12、昇龍(Xianglong)HALE UAVの量産型が近く軍へ納入されると報じた。
 昇龍は最大離陸重量(MTOW)7,500kgで、実用上昇限度18,000m、航続距離4,000nm、搭載能力650kgの性能を持つ。

 人民日報が2月、中国が開発した偵察攻撃一体型の多目的UAV翼竜-2 (WL-2 : Wing Loong Ⅱ)が初飛行に成功 したと報じた。
 WL-1の搭載能力が100kgであったのに対し、WL-2は480kgの武器を翼下6ヶ所に搭載する能力を有する。

 CASIC社もWJ-500 、WJ-600、 WJ-600A/DなどのUAVを開発している。 特に最新型のWJ-600A/Dはステルス性 を持ち、他の中国製UAVの最大速度が280km/hであるのに対し700km/hの高速を誇っている。
 CASC社がCH-4 MALE UAVの性能向上を行った。 2017年初期に配備された性能向上型CH-4は20kgの対装甲SAL誘 導ASMのAR-2を装備できる。
 CASIC社はさらに高度20~100kmを飛行する準衛星UAVにも関心を示している。

 2016年に初公開されたCH-5 UAVが7月に初飛行した。
 CH-5はMTOW 3.3tのMALE UAVで、航続距離10,000km以上、搭載武器1,000kg、その他の搭載装備200kgの性能を持つ。 また滞空性能は60時間で、ASMを搭載して も30時間滞空できる。

 北京UAV技術社がBZK-005 MALE UAVを元にしたTYW-1威力偵察UAVを公表した。
 TYW-1は翼端長18m、全長9.85m、全高2.5mで、最大離陸重量はBZK-005の1,250kgより重い1,500kgである。  7.5kgの武装が可能で、上昇限度7,500m、滞空能力40時間の性能を持つ。

 中国唯一の双胴双発UAVであるTB001が9月に初飛行した。 TB001はMTOW 2,800kmで、上昇限度8,000m、滞空能 力35時間の性能を持つ。
 TB002はMTOW 2,800kgの双胴型武装UAVで、滞空能力35時間の性能を持ち、両翼下にそれぞれ100kgの武器が搭載 可能である。

 中国国営AVIC社が11月にドバイ航空展にA-Hawk ⅠA-Hawk Ⅱ の2種類の攻撃型VTOL UAVを出品した。
 A-Hawk Ⅰは発射機2基を持ち65kgの搭載能力と30分間の滞空能力を持ち、上昇限度は3,000mで、チルトロータ4基のA-Hawk ⅡはMTOW 120kg、滞空能力4時間、 上昇限度5,000mで、偵察、攻撃のほか貨物輸送が可能である。

 中国のVTOL UAVではBH-90/160AW500W/AV500WQY-1/V750Ziyanなどの新機種も報告された。

 中国Tengoen社が9月、VTOL UAV 2機種と固定翼UAV 2機種を公開した。
 双発UAV TB001は、MTOW 2,800kgで、滞空能力35時間の性能を持つ。 各翼下のパイロンにはそれぞれ100kgの 武器を搭載できる。 TA001プロペラ後置式の単発機でMTOW 1,200kg、滞空能力24時間のの性能を持ち、左右の翼 下に武器またはEO照準器を搭載できる。
 回転翼UAVHA001はMTOW 450kg、滞空能力6時間、HB002はMTOW 280kg、滞空能力5時間の性能を持つ。

 中国が南シナ海の軍事施設への補給に新開発のAT200を使用する計画である。
 MTOW 3.4t、搭載能力1.5tのAT200はニュージーランド製P-750をUAV化したもので、10月に初飛行している。 AT200は航続距離2,183km、実用上昇限度6,100mで 8時間の滞空能力を持ち、200mの滑走路で離着陸できるという。

各種電子兵器

 中国CETC社が、今まで米国やロシアの市場であったアジア太平洋及び中東を狙った長距離レーダを公開した。
 SLC-7は移動式のL-band MFRで、性能はEL/M-2050S Greeb Pine Block-Bを凌ぐという。
 RCS=0.05㎡の捕捉性能は探知確率80%で450km、RCS=001㎡のBMは90% で300km以上という。

 固定レーダ網の補完用のYLC-8Bは戦術航空機は550km以上、ステルス機は350km以上で捕捉可能で、向かってく るミサイルは700kmで捕捉できるという。

 中国CETC社が開発したSLC-2Eは完全ディジタルのAESAレーダで対空用にも使用できる。 対空モードではアン テナを6/12/30rpmで回転し、RCS=2㎡の目標を距離260km、高度15,000mで捕捉できる。

 中国が4月にTHAADの韓国配備に対抗して新型装備の試験を続けているとしたが、香港紙はこの新型武器についてハードとソフトで破壊する兵器としている。
 ハードキルではDFシリーズのS/MRBMを使用し、ソフトキルはEMP弾とECM技術を使用する可能性があるとしている。

海外からの導入

 Interfax通信が、Rosoboronexport社が4月、S-400の中国への供給を開始したと明らかにしたと報じた。

 米海軍の特殊部隊SEALに対抗して、中国がWaterCar社製のPanther 4×4ジープを導入した。

その他の武器

 ST1装輪駆逐戦車は、中国軍が装備している105mm低反動砲を装備したZTK-11の輸出仕様で、105mm砲は同社製 で初速1,540m/sのAPFSDS弾であるBTA2を発射する。

 中国CASC社が青島で開かれた2017国際海洋技術展に、全長8.5mのB850、11.5mのA1150、15mのC1500の一連のUSVを出展した。
 C1500はASWを任務にするという。

 青島を本拠にするDigitech社が、C-UAVを目的にしたRF妨害装置JAM-1000、JAM-2000、JAM-3000の3種類を公開した。

 JAM-1000は車両屋上搭載型で、JAM-2000/-03は人力可搬式である。

 中国国防省が11月、車載C-UAVシステムの画像を公開した。 システムは目標を捕捉するレーダと妨害装置を車載ISO標準コンテナに収納し、屋上にEO/IR追随 機とレーザ照射装置を搭載している。

(カ) 高度な技術力保持

D E W

 中国のPoly社が対空レーザ兵器Silent Hunterを公開した。  Silent Hunterは既に公開されているLASSの発展型で、ファィバーレーザを用いて5層の2mm鋼板を800m、5mm鋼板を1,000mで貫通できるという。 LASSの出力は 30kWで有効距離は4,000mと言うが、Silent Hunterの出力は30~100kWである。
 同社によるとSilent Hunterは2016年9月に杭州で開かれたG20サミットで警備に使用されたという。

超高速飛翔体

 2020年を目指しているとみられる中国のDF-ZFはBMにより超高速に加速されたのち滑空飛行する。 最近行われたDF-ZF/WU-14 HGVの飛翔試験が行われた。

 中国China Daily紙が10月、中国の海軍工程大学が電磁砲(レールガン)の開発を進めていると発表したと報じた。

 環球時報が6月、中国が空中発射ミサイル用の固体燃料ラムジェットエンジンを開発し、既にミサイルに採用できる段階にあると報じた。
 中国が2015年12月に、初めての国産スクラムジェットで高度30km、速度Mach 7を実現した画像を公表した。
 中国が2017年後半に、combined-cycleエンジンTRREの試作品による試験を計画している。 TRREの実大機による最初の飛翔試験は2025年に予定されている。

ASAT

 Washington Free Beaconが8月、中国がASATの発射試験を7月に実施していたと報じた。 発射されたのは新型ASATのDN-3で、上空で作動不良を起こし試験は 失敗したとしている。

艦 船

 中国メディアが7月、上海で建造中の次期空母に電磁カタパルトが搭載される可能性もあると報じた。
 電磁カタパルトはリニアモータを利用した装置で、整備性と信頼性、出力向上の利点があり、さらに射出速度の細かい制御やスムーズな加速で航空機の負担 が低減するなどの特長もあるとされている。

 中国が、IDEX展に三胴型フリゲート艦の模型を出展した。 展示では排水量2,450tで速力25ktとあるが、量産型では30kt以上になると言う。

 中国国営の建艦メーカであるCSIC社が10月に、艦船の推進用となる永久磁石電動機を開発したととする声明を出した。
 それによると永久磁石電動機は従来の誘導電動機に比べ高出力・低雑音が実現できるため、艦船、特に原子力潜水艦の推進機として優れており、この分野の 技術で中国は米国を抜いたという。

 中国海軍のMa少将が、中国は欧米より進んだ統合電気推進(IEPS)技術を有していると述べた。

 8月に行われた中国海軍の近代化計画に関する講演で、効率化されたサイズの攻撃型原潜(SSN)、在来型潜水艦に搭載する原子力の補助エンジン、艦載ASBM、 次世代駆逐艦の4点が強調された。
 この講演ではType 093 SSNと似た形状のセイル前方にCM 12発を装備した7,000t級SSNのイメージ図が紹介された。

その他の先進技術

 中国CASC社がD3000 USVを公表した。 D3000は540nmを90日にわたり航行できる。 武装としてはType 730 30mm CIWS 4門、重魚雷発射管4本、軽魚雷発射管 8本を持つ。
 D3000にはMFRとバウソナーを装備する艦隊護衛用のD3000Aと、4発入り箱形発射機2基を持つ対艦任務用のD3000Bとがある。

 中国が地表面効果飛翔体(GEV)の技術を取り入れたCMを開発している模様である。
 この飛翔体はMTOE 3,000kgで、1,000kgの搭載能力があり、1.5時間の滞空能力を持つという。
 この飛翔体には'CH'とUAVであることを示す名称が付けられている。

 中国メディアが、CASC社が5月に、太陽電池UAV CH-T4の15時間に及ぶ飛行試験に成功したと報じた。
 CH-T4は外翼に上反角のある翼端長が45mのUAVで実用上限度20,000mを飛行する。 搭載能力は十数㌔㌘で4G/5Gの中継ができるという。

 国営新華社通信が6月、中国の電機メーカCETC社が119機のUAVによる群飛行に成功したと報じた。

 中国軍が7月、無人補給車両の走行試験映像を公開した。

 NORINCO社がMBTやAFVに装備するAPS GL-5の詳細を公表した。 GL-5は捕捉距離100m、高低角20゚レーダ4基を装備する。

 環球時報が6月、中国科学大学が従来の30倍の解像度を持つ画像レーダを開発したと報じた。
 このレーダは試験で、高速で飛翔するBoeing 737の画像を、エンジン、尾翼に至るまで識別できたという。

AI 技術

 CNASが11月の報告で、中国軍がAI技術で大きなブレークスルーを迎えようとしているとした。

米国の技術で作られている中国の兵器

 3月に行われた各種報告で、中国の兵器が米国の技術で作られていることが明らかになった。
 一例として、NASAやその他の研究機関で働いた中国人が、帰国後に米国の高度技術を使って兵器開発を行っていることを挙げている。

(キ) 新たな戦闘様相への対応

漁船群団の予備軍化

 台湾の聯合晩報が2月、遼寧の艦隊が2016年12月末と2017年1月に台湾周辺を航行した際、警戒監視中の台湾海軍フリゲート艦康定を名指しし 、遼寧から10nm以上を保つよう求めたと報じた。
 実際には康定遼寧に接近しておらず、レーダでは艦名まで特定できないことから、康定を発見した中国漁船が中国軍に報告し、台湾 軍の情報漏洩を疑わせる心理戦に用いた可能性がある。

(ク) 軍事産業の振興と武器輸出

軍事企業の再構築

 中国の国防科学技術生産本部が1月、AVIC社傘下の中国航空研究所とロシア航空エンジン中央研究所が1月中旬に航空機用エンジン開発での協力協定に署名し たと発表した。

積極的な武器輸出

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2月に発表した2012~2016年における世界の武器取引に関する報告書によると、中国は武器輸出を74%増やし世界3位 で、全体のシェアも3.8%から6.2%に拡大した。

 新華社が2月、中国が開発した新型の翼竜-2 UAVに海外から過去最大の受注があったと報じた。
 中国は低価格を売りに米国やイスラエルからUAVの市場シェアを奪おうと開発を加速しており、欧米諸国が販売をためらう国々への売り込みを目指している。

 タイ軍事政権が4月、中国からVT-4戦車10両を購入することを承認した。 タイはさらに11両を調達する計画である。 タイ陸軍はまたNORINCO社に、VN-1 8x8 APCを発注した。 発注したのは一次分34両である。
 更に5月には、CSOC社とType 041元級潜水艦のタイ型であるS26T潜水艦1隻を購入する契約を行った。

国際武器市場でのシェア拡大

 ル・モンド紙が3月、中国の武器輸出が急増しアフリカの2/3を超える国が中国製武器を使用していると報じた。
 中国の主要な輸出先は、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーで、アフリカでは2005年以降新たに10ヶ国が中国の武器輸出先となっている。

(ケ) 周辺国の囲い込み

ロシアとの合同演習

 中国国防省が6月、中露両国軍が9月中下旬に日本海とオホーツク海で合同演習を行うと発表した。 中露両軍の合同演習は2012年以降、毎年実施されている が、オホーツク海では初めてとなる。
 これに先立つ7月下旬にはバルト海でも合同演習を実施する。
 中露海軍は2016年9月に初めて南シナ海で演習を行っている。

マレーシア

 中国がマレーシアに対し、同国南端の基地に設置するレーダとMRLを提供する。 報道によると中国は償還期限50年の融資で12基のMLRを提供するが、融資規模 や装置の価格などは不明でレーダの種類も明らかにされていない。

パキスタン

 パキスタンのイスラマバードで3月に行われた軍事パレードに中国人民解放軍が初参加した。

ミャンマー

 中国の一帯一路経済圏構想の一環としてミャンマー西部チャオピューと中国雲南省を結ぶ原油パイプラインが4月に正式に稼働した。
 このパイプライン完成で中国はマラッカ海峡を経由せず原油を輸入できるようになる。

ネパール

 中国軍とネパール軍が4月、初めての合同演習'Sagarmatha Friendship 2017'を10日間の日程で行った。

イ. 北朝鮮

(ア) 臨戦態勢の構築維持

陸軍の増員

 北朝鮮で陸軍が102万人から110万人に増員され、戦略軍を新設するなどにより軍の総兵力が現在の120万から 128万人に増強された。
 軍団級部隊は15個から17個に、師団級部隊は81個から82個にそれぞれ増加した。

緊急着陸場の増設

 北朝鮮が2015年末から高速道路を緊急着陸場とするため、掩体格納庫や滑走路を整備している。
 滑走路は1,800mで、幅員も8~12mが15~22mに拡幅されている。

多用途 UAV の大量保有

 北朝鮮が多用途UAVを1,000機保有している。 現在のところ北朝鮮のUAVは主に韓国の情報把握や監視、偵察が目的とみられるが、今後UAVを利用し軍事的挑 発やテロを図る可能性がある。

(イ) 対日姿勢

武力を伴った漁船の違法操業

 外国漁船の違法操業に対応していた水産庁の漁業取締船が7月、北朝鮮籍とみられる船舶に接近され、取締船に対して銃口が向けられた。

(ウ) 核開発の継続

核燃料生産の再開と核開発の進展

 民間衛星が1月に撮影した画像から、寧辺の核施設にあるプルトニウム生産用の5MW原子炉が再稼働したことが分かった。

 北朝鮮が核弾頭をミサイル搭載可能な水準にまで小型化することに成功したと判断する米当局の分析が報じられた。

 米当局は7月時点で北朝鮮が保有する核爆弾を最大60発と推定している。

水爆実験の実施

 北朝鮮が9月3日にICBM用水爆の試験が完全に成功したと発表した。 爆発規模について防衛省は160kTと見ているが、250kTとの見方もある。
 北朝鮮は太平洋上での水爆実験も予告している。

(エ) 長距離弾道弾の開発

海外からの技術取得

 北朝鮮のロケットエンジン開発は中露からの技術取得とウクライナからの技術取得により推進されている。 専門家の間では北朝鮮が猛スピードでBMの技術 力を引き上げている核心的な背景として、ロシアと中国の水面下の支援が話題にのぼっている。
 一方8月には北朝鮮が発射したICBMは非合法に入手した旧ソ連製エンジンの改良型を搭載していた可能性が高いと報じられた。 北朝鮮の火星-12 IRBMと火星 -14 ICBMは旧ソ連の液体燃料エンジンRD250の改良型を搭載していたという。

 北朝鮮が黄海上に人工島を造成し、軍事施設と見られる構造物を建設している。 人工島はICBMの試験設備と見られる。

開発、装備の態勢固め

 北朝鮮軍が核・ミサイルを担当する戦略軍を1万人で編成した。
 韓国が朝鮮人民軍戦略軍火星砲兵部隊の実体について、この部隊は北朝鮮のミサイル戦力をまとめる戦略軍に所属し、BMの開発や運用を担っていると推定して いる。

発射試験の急増

 12月30日で就任して6年を迎える北朝鮮の金正恩委員長朝鮮人民軍最高司令官が2017年はBMを15回発射した。
 BMの発射回数は 2016年の14回を上回り、中長距離BMの開発に重点を置いた。

各種新型弾道弾

 北朝鮮が11月29日に火星-15 ICBM 1発を発射した。 火星-15は高度4,475kmまで達し53分間にわたり950km飛翔 した。 通常の角度で発射した場合には米国まで届く13,000km以上飛翔が可能だと見られている。
 公表された写真で火星-15は片側9輪のTELに積まれており、北朝鮮は9輪のTELを新たに開発したと量産化を示唆している。

 火星-14 ICBMの発射試験が7月4日と28日に続けて行われた。  朝鮮中央通信は28日行われた発射試験では 3,724.9kmまで上昇し998kmを47分12秒間で飛翔したと報じた。 もし火星-14が低い角度で打ち上げた場合9,000~10,000km 飛翔していた可能性がある。
 28日の試験ではRVが海面突入以前に分解したと見られる再突入の様子がNHKのカメラでとらえられ、再突入技術は未確立と結論づけられた。

 最大射程が5,000kmと見られる火星-12 IRBM (NK-17)の発射試験が4月29日、5月14日、8月29日、9月15日に行 われた。
 4月29日の発射は発射数秒後に空中爆発し失敗したもようである。 5月14日の発射では高度2,000kmのロフテッド軌道で800kmを飛翔したことからが、通常の 角度で発射した場合、グアムを射程に収める4,000kmを超える距離を飛翔する可能性が出てきた。 8月29日に発射したBMは北海道の上空を通過して太平洋上に落 下したと推定される。 9月15日の試験では北日本上空を越え襟裳岬の沖合2,200kmの太平洋上に落下し飛翔距離は北朝鮮からグアムまでの距離3,400kmを上回る 3,700kmであった。

 朝鮮労働党機関紙が8月に伝えた報道で、新型とみられるミサイルの説明図が映った写真を掲載した。  このミサイルには「水中戦略弾道弾北極星-3」と表記され、新型SLBMとして注目されている。

 米国メディアが4月、北朝鮮が空母などに対抗してKN-17を元にした新型ASBMの試射を行なっていると報じた。
 一部の専門家は北朝鮮が新しい対艦ミサイルを開発中であり、Scud-ERやNo Dong、北極星もASBMになる可能性があると見ている。

 米MITなどの専門家が、北朝鮮が2016年8月に試射に成功したとされる北極星-1 (KN-11) SLBMは、弾頭重量が1t の場合の射程600km、1.5tでは450kmと推定し、弾頭重量1tの場合の飛距離は800kmの可能性もあるとの見方も示した。

 北朝鮮が2月12日にBM 1発を発射し、高度550kmに達したのち500km飛行して日本海に落下した。 韓国軍はMusudan改良型の可能性が高いと発表した。  朝鮮中央通信(KCNA)によれば2月12日に発射したBMの名称は北極星-2で、2016年4月に発射したSLBMの名称が 北極星-1であったことからその発展型と見られる。
 この日の発射角度は89゚と垂直に近く、これを通常の角度で発射すれば射距離が2,000km以上になると見られている。  北朝鮮は5月21日にも北極星-2 (KN-15)と見られるBM 1発を発射した。 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、北極星-2 MRBMの発射試験について、核弾頭の末期誘 導性能を確認したと発表したと報じた。

Scud 改良型の KN-18 / KN-21

 北朝鮮が5月29日にMaRV弾頭を搭載したSRBM KN-18を発射した。 このSRBMは400km飛翔し、日本の排他的経済 水域(EEZ)内の日本海に着弾した。
 北朝鮮のKCNAは着 弾誤差が7mであったと報じた。

 北朝鮮が8月26日06:49頃に江原道の旗対嶺付近から北東方向の日本海に向け飛翔体数発を発射した。 飛距離は250kmという。  北朝鮮が8月26日にBM 3発を発射したが、いずれも失敗した。 連続して発射されたBMは、1発目と3発目が予定通り飛行せず、2発目は発射直後に爆発したとみ られる。
 米軍がKN-21と名付けた新型BMは、5月下旬に発射されたScud改良型のKN-18と似た精密誘導能力を持つとみられ が、KN-18とは異なり弾頭部分が分離せず飛行する。

既存の弾道弾

 北朝鮮が3月22日にBM 1発を発射したが失敗したとみられる。 米太平洋軍によるとBMは発射から数秒で爆発した。 このBMは 火星-10 (Musudan)またはその改良型と見られる。

 北朝鮮が3月6日に日本海に向けて4発のBMをほぼ同時に発射し、いずれも最大高度260kmで1,000km飛翔して男鹿半島の西方沖300~350kmの日本海に着弾 し、このうち3発がEEZ内、1発はEEZの手前に落下した。
 韓国は北朝鮮が発射したBM 4発はScud改良型である射程1,000kmの火星-6 (Scud-ER)と判断した。

 北朝鮮が4月5日に日本海に向けBMを発射したが、9分間にわたり40哩飛翔したのち海没した。 米当局は発射されたBMは制御を失い射程の一部しか飛行しなかっ たと見ている。
 北朝鮮が5日に発射したBMについて、米軍は当初推定したKN-15ではなくScud-ERだったと分析を修正したことを明らかにした。

 北朝鮮が4月16日にBM 1発の発射したが失敗した。 米太平洋軍はミサイルは発射直後に爆発したとの見方を示した。

拡散弾頭 (ERS) や化学弾頭

 北朝鮮が米韓のBMDSに対応するため、迎撃ミサイルの最大迎撃高度より高高度で子弾を散布する方式の拡散弾(ERS)を開発した。
 またERSには化学弾の使用も可能だという。

(オ) その他新戦力の構築

巡航ミサイルの開発

 北朝鮮が8日06:18から数分間にわたり元山から日本海に向けミサイル数発を発射した。 短距離のASCMと推定され、飛翔距離200km 、最高高度は2,000mだった。  北朝鮮は射程が160kmのASCM KN-01を保有しているが、8日発射されたミサイルは200km飛翔しており、改良型か新型の可能性もある。

 北朝鮮が6月8日、新型陸上発射型ASCMの初めての発射試験を実施し、日本海上の標的船を探知し命中したと報じた。  北朝鮮は日本海に向け陸上発射型ASCM と推定される数発を発射しており、これと同一のものとみられる。

艦艇の建造

 北朝鮮の2,000t級潜水艦は発射管が1本で1発しか発射できないが、SLBM複数発を発射できるように発射管両側に通風口を追加し改造した可能性がある。

 北朝鮮がSLBMの発射管2~3基を備えた長時間潜行可能な新型潜水艦建造を進め、8割がた完了いる。 新型潜水艦は新型SLBM北極星-3を搭載する可能性がある という。
 3,000t級の新型潜水艦 は2017年内に進水する模様で、動力にはAIPを採用しているとの情報もある。

防空能力強化、BMDS の構築

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信などが5月、新型SAMの発射試験が行われ成功したと報じた。 韓国メディアは、画像から稲妻-5 (KN-06) SAMの改良型とみられ ると見ている。 最大射程は150kmと推定されるという。

 北朝鮮東方沖北方限界線(NLL)の北側を9月に米空軍のB-1 2機とF-15が飛行したが、北朝鮮が全く対応措置を取っていなかったことから飛行に気づか なかった可能性が高く、北朝鮮の脆弱な防空体制が浮き彫りになった。
 北朝鮮は飛行判明後になって、西方の航空部隊を東海岸に移動させたり、哨戒飛行を実施したりするなど、防空態勢を強化した、中国やロシアにも飛行の事実 確認を行ったとされる。

通信、C3I能力の向上

 マレーシアの企業を装った北朝鮮の企業が各種C4Iシステムを取り扱っている。 取り扱っているのは携帯、車載、艦船搭載、航空機搭 載システムやBMS、暗 号装置と多彩で、すでに輸出も開始されている。

(カ) サイバ戦の推進

外貨獲得のためと見られるランサム(身代金)ウエア攻撃

 2017年5月に発生した日本を含め150ヵ国以上の30万台のパソコンが影響を受けた、端末のデータ復旧と引き換えに金銭を要求するランサム(身代金)ウエア によるサイバ攻撃について、セキュリティーの大手企業が5月、プログラムコードの一部が北朝鮮のハッカ集団ラザルスが過去の攻撃で使ったプログラムに類似 していたとの見方を示した。
 今回、世界規模で拡散したランサムウエアはWanna Cryと呼ばれるタイプで、北朝鮮偵察総局傘下の121部隊が関わった可能性もある。

米韓戦時作戦計画をハッキング

 2016年に北朝鮮のハッカーが米韓の戦時作戦計画を盗んだ。 ハッキングにあったのは韓国国防統合情報センタで、2016年9月にOPLAN 5015は最新の米韓合同 作戦計画であるOPLAN 5015やOPLAN 3100計画が盗まれたという。

米国に対するサイバ攻撃

 米FBIと米国土安全保障省(DHS)が11月に発表した2016年以降に同国の航空宇宙、通信、金融を標的として行われた北朝鮮政府が関与したサイバ攻撃に関する詳 細によると、北朝鮮のハッカはコンピューターシステムやネットワークシステムに不正アクセスするFallChillと呼ばれるマルウェアを使用していた。

北朝鮮サイバ戦能力の弱点

 東京の情報セキュリティ会社が11月、2016年8~12月にかけて北朝鮮が送受信しているネット情報の流れなどを調べた結果、北朝鮮内でサイバ攻撃に使用して いるPCが既に別のウイルスに感染しているなど、相当数のPCが相次いで外部の侵入を受けていたことを明らかにした。
 北朝鮮は他国へのサイバ攻撃に力を入れる一方で、ネット環境のセキュリティが不十分なことから守りの弱さが浮き彫りになった。

(キ) 生物化学戦の準備

 韓国軍は北朝鮮軍が連隊級部隊にまで生物化学部隊を配属したと判断している。

 北朝鮮がICBMに生物兵器の炭疽菌を搭載する実験をしていると報じられた。

(ク) EMP 攻撃を示唆

 北朝鮮が9月、ICBMのに搭載する水爆はEMP攻撃も加えられると主張した。
 米専門家は6月に、北朝鮮が2004年にロシアからEMP技術を獲得したと指摘し、最初の攻撃手段として直接的な核ミサイル攻撃より、EMP弾を使う可能性が高い との見通しを示していた。
ウ. 韓 国

(ア) 国内の混乱

 中国が韓国へのTHAAD配備に対し、レーダの捕捉範囲が中国の戦略的かつ安全保障上の利益を侵害しているとして反対している。

 在韓米軍へ配備されるTHAADの追加搬入について大統領府に報告されていなかったことを問題にした大統領は6月に追加の配備は用地の環境影響評価作業が終 了してから決定されると述べ、THAADの追加配備は事実上中断されるなどの混乱を生じた。

(イ) 体制強化、国防計画

 韓国国政企画諮問委員会が7月、常備兵力を51万人に、現在21ヵ月の兵士の兵役期間を18ヵ月に減らす案を100大国政課題に含めた。 兵役期間18ヵ月は文大統 領の大統領選挙公約の一つである。
(ウ) 核保有論

 9月に発表された韓国の世論調査結果によると、韓国が核兵器を保有することについて賛成は60%、反対は35%となった。

 米紙が10月、韓国が保有している24基の原子炉から出る再処理物質でプルトニウムを抽出すれば核爆弾4,300発以上を製造することができると報じた。
 一方、韓国国会に参考人として招かれた韓国の核専門家は10月、現在は再処理されていない原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを抽出すればプルトニウ ムが50tになり、核爆弾1万発の作る量に相当すると述べた。

(エ) 戦力の近代化

装備近代化の基本方針

 韓国国防部が4月、三軸体系の構築を当初計画の2020年代半ばから2020年代初めに前倒しした2018~2022年の国防中期計画を発表した。  Kill Chainでは射程500kmの玄武-2B、800kmの 玄武-2C TBM、1,000kmの玄武-3 CMをはじめとするミサイル、 230mm級のMRLなどの配備を1年早める。
 KAMDでは、PAC-3の追加購入、MSAMの改良、Green Pine BMEWR 2基の追加購入などを行う。
 KMPRでは、北朝鮮指導部を排除する特殊任務旅団の装備を充実する。

 国防部はKAMDより北朝鮮の大量破壊兵器を先制打撃するKill Chainに優先的に予算を配分することにしたという。 このため戦闘機から発射する精密誘導武 器を大幅に増やす計画である。

各種ミサイルの開発整備

 韓国が4月、射程800kmの玄武-2 SRBMの発射試験に成功したことを明らかにした。
 玄武-2の発射試験成功が明らかにされるのは初めてで、さらに数回の発射実験を重ねて信頼性を検証し、2017年内の実配備を計画している。

 米国防総省が8月、韓国側から要請を受け韓国との間で定めている「ミサイル指針」の見直しを行っていることを明らかにした。 トランプ米大統領と文韓国 大統領が9月に電話会談し、韓国製BMの弾頭重量制限を撤廃することで合意した。
 2012年の改定で合意した指針では、韓国が開発できるミサイルは射程800km以下、弾頭の重量500kg以下とされていた。

 韓国国防省が、北朝鮮が8月に火星-12 IRBMの発射を行ったのに対抗して玄武-2 TBMの発射した。
 公開されたのは射程500kmの玄武-2Bで、正確に地上の標的に命中した。 一方射程800kmの 玄武-2Cは海没した模様である。

 北朝鮮が9月15日06:57にBMを発射すると、韓国軍はその6分後の07:03に東海岸で北朝鮮の発射地点への反撃を想定して 玄武-2A 2発を発射したが、2発中1発は失敗した。  韓国が開発するBMの弾頭重量制限が撤廃され、韓国軍が戦術核兵器の破壊力に匹敵する地下数十㍍に構築された施設を破壊可能な弾頭重量2tのBM開発に乗り出 す。

 韓国が4月、海星を改良した戦術艦対地誘導弾(TSLM)海星-Ⅱの開発を完了したと発表した。
 今回開発されたのは垂直発射型で、潜水艦や車両搭載からの発射も可能であるという。 2018年から量産し2019年に配備を開始する。

 韓国軍消息筋が4月、Mach 3~4で射程300~500kmのASCMを2020年頃までの配備を目標に開発していることを明らかにした。

艦船の建造

 韓国が原子力潜水艦の保有に柔軟な立場を示している。 韓国の李首相が8月に、北朝鮮の核脅威に対抗するた め原子力潜水艦を導入する必要があると発言した。
 韓国は11月に、9月に行われた米韓首脳会談で原子力潜水艦導入は原則的な合意があったことを明らかにした。

 韓国では盧武鉉政権が2003年に、2020年までに4,000t級原子力潜水艦3隻を建造する計画を推進したが、計画が外部に漏れ1年後に白紙になっている。

 533mm魚雷発射管から玄武-3 CMを発射できる韓国のType 214 KSS-2潜水艦の後継KSS-3 3,000t潜水艦は、玄武-3 を垂直発射する発射管を6基装備するBatch 1が3隻建造され、そのうち2隻は建造中である。

 KSS-2 (Type 214)1,800t級潜水艦の6番艦が7月に海軍に引き渡された。
 一方KSS-2の9番艦が9月進水した。 就役は2019年になる。

 独島級(14,500t)大型輸送艦二番艦の起工式4月に行われた。 2018年4月に進水し2020年に就役する。

 2隻目となる4,500tの揚陸艦(LST-Ⅱ)が海軍に引き渡された。 海兵隊300名、揚陸艇3隻、戦車2両、水陸両用戦闘車8両を搭載でき、艦尾にヘリ2機が離着艦で きる飛行甲板を有する。

 HHI社がLSF-Ⅱ LCAC 2隻の建造を1年早めて2021年納入する。 LSF-Ⅱ LCACは2007年に受注した2隻が揚陸艦独島に搭載されている。

 HHI社が6月に機雷敷設艦南浦を納入した。 全長114.3m、排水量4,240tの南浦は、1997年に建造された103.8mの元山と共に機雷戦にあた る。

航 空 機

 韓国がインドネシアと共同開発するKFX/IFXは、米国が一部の技術について技術移転を承認していないことか ら、計画が躓いている。

 2022年初飛行、2024年初号機納入、2026年量産型初号機納入を目指して開発しているKF-Xの最終設計は固まりつつあり、事前設計審査(PDR)は2018年6月、最 終設計審査(CDR)は2019年9月に行われる。
 設計案はC101から始まり2012年までに現在の原型となるC103になったが、その後は徐々に大きくなり最新型であるC107の翼端長はC103より1.2m長い11.2mにな っている。
 KF-Xに搭載するAESAの開発はレーダは韓火(Hanwha)社が手こずった場合にElta社がそれを引き継ぐと見られていたが、5月にレーダの開発はElta社に発注され た。

 陸軍が245機の装備を計画しているKUH-1 Surion 30機が海兵隊向けに追加発注された。

 韓国防衛事業庁が6月、国内開発しているLAH小型武装ヘリの1号機の組み立てが開始されたことを明らかにし た。
 10月に最終設計審査を行い、2018年末に試作1号機をロールアウトて、早ければ2022年に配備を開始する。

U A V

 韓国で開かれたADEX 2017展でKAI社や大韓航空(KAL-ASD)など韓国各社が、Predator級やLittle Birdヘリの無人型を始め、固定翼、回転翼、チルトロータなど、 大小各種UAVを展示した。

 韓国宇宙航空研究所が7月、国内で開発したTR-60チルトロータUAVが初飛行したと発表した。
 TR-60は沿岸警備隊の警備艦に装備するUAVで、10ktで航行する艦で離着艦出来る。

SAM の開発と配備

 天弓はロシアの技術で開発され、ミサイルの形状はS-400の9M96弾と同型である。
 2015年までに配備が開始され、10個中隊が北朝鮮との境界沿いに、更に何個中隊かが別の地域に配備されている。

 射程40km、射高20kmのATBMシステムである天弓 PIPは2016年1月以来7回、Scudを模した標的弾K-BATSに対する 迎撃試験を行っている。

 LSAMは更に高性能なシステムであるが、まだ開発の初期段階にある。

軍事衛星計画

 韓国が4月、次世代小型衛星2号計画着手の会合を開催すると明らかにした。
 次世代小型衛星2号は2020年下半期の打ち上げを目指し、2017年3月から開発されており、全過程を韓国の独自技術で開発する計画である。

その他の軍事技術

 韓国が2014年12月にHyundai Rotem社に100両を発注したK2 Black Panther MBTの量産開始が3年遅れて2020年 になることになった。 原因はK2搭載されるにDoosan DST社製エンジンとS&T Dynamics社製のトランスミッションの信頼性と耐久性の問題で、2014年に納入さ れた一次分の100両はドイツ製のエンジンとミッションが搭載されたいた。

 韓国防衛事業庁が4月、対砲迫レーダⅡを韓国の技術で開発したと発表し、2018年から装備するという。

 韓国防衛事業庁が7月、小型UAVの探知も可能な局地防空レーダを国内の技術で開発したと発表した。 量産のための規格化も完了し、2018年から量産に入り 陸軍の軍団級部隊や海兵隊の前線部隊に配備するという。

 韓国DAPAが6月、Hanhwa社が開発しているEVO-105車載105mm榴弾砲の最終試験が完了し、2018年に量産を開始 すると発表した。
 EVO-105は米国製のM101牽引105mm砲をKIA社製KM500 6×6 5tトラックに搭載したもので、K9 Thunder SPH用の射統装置を元にした射統装置で射撃する。

 韓国が、特殊部隊を敵地に空輸するC-130Hなどに装備する国産のIR欺騙妨害(DIRCM)装置の試験に成功した。

 韓国軍関係筋が10月、北朝鮮の電力網を麻痺させることができる黒鉛を使用した盲目化爆弾の技術を確立した ことを明らかにした。
 ただし、この技術について国防省が2018年度予算に開発経費を要求したが、最終的に認められなかった。

海外からの武器購入

 New York Times紙が2016年12月に報じた主な兵器輸入国上位10ヵ国のうち、中東国家以外の国は4位の韓国と9位の中国だけだった。

 韓国軍が米国からJ-STARS 4機を導入し2022年までに配備する方針を固めた

(オ) 拡大する軍事予算

 韓国国防部が6月、2018年度国防予算要求を企画財政部に提出した。 これは前年比8.4%増で、年平均5%贈水準だった李明博、朴槿恵政権よりも増加率が高 い。

 韓国国会が12月に可決した2018年度予算で、国防予算は前年比7.0%増に確定した。 国防予算は国会が審議の段階で政府案に増額したため、前年比増加率は 8.7%増の2009年度以来9年ぶりの高水準となった。

(カ) 対北戦準備

対北戦の作戦計画

 韓国では2016年9月に米韓統合作戦計画OPLAN 5015と3100が北朝鮮のハッキングで盗まれたと報じられているが、韓国統参議長が10月に北朝鮮の新たな脅威 に対応した新作戦計画の策定を検討していると述べた。

5大ゲームチェンジャー構想

 韓国陸軍が10月、朝鮮半島で全面戦が起きた際の作戦概念である「5大ゲームチェンジャー」 構想を初めて公表した。
 「5大ゲームチェンジャー」は、3種類のBM、空地機動部隊、特殊任務旅団、有人/無人の複合戦闘システム、個人用先端戦闘システムから成る。

BMD 能力の整備、強化

 韓国軍は2021年の完了を目指して保有しているPAC-2発射機40基のうち15基をPAC-3に改良する。
 北朝鮮が韓国大統領府攻撃訓練の様子を公開したことへの対応し、早ければ2年以内に大統領府近傍にPAC-3を配備する。
 韓国軍が南東部の大邱に配備されたPAC-2 1個FUを首都圏に移動させている。

特殊任務部隊の新編

 宋長官が戦争遂行方式を「防衛的線形戦闘」から「攻勢的縦深起動戦闘」に変えると強調し、早期に敵陣深くに投入される攻勢的精鋭機動部隊として、空挺 師団を創設する必要性について発言した。

 12月には「金斬首部隊」と呼ばれる特殊任務旅団が、従来の特殊戦司令部隷下部隊の一部を改編して創設された。
 この旅団の規模は1,000名前後になるものと予想される。

Kill Chain の実働能力誇示

 韓国軍が11月29日に北朝鮮のBM発射直後の03:23に韓国軍がミサイル発射訓練を実施し、挑発に直ちに対応できる態勢を誇示した。
 北朝鮮がBMを発射したと推定される場所までの距離を考慮してミサイルを発射したという。

対潜能力の強化

 韓国国防省が1月、北朝鮮からの核や大量破壊兵器に対抗するため、2017年に数種類の新兵器を装備すると発表した。
 その中には対潜機能を高めるため新型TASSや長射程対潜魚雷、蔚山改型フリゲート艦の装備も含まれる。

特殊武器防護

 韓国国防省が1月に発表した2017年に装備する数種類の新兵器には、CBRN攻撃からの防衛と探知のため、K216A1を元にしたCBRN検知車CBRN Recon Vehicle Ⅱ の装備も入っている。

(キ) 米韓共同演習

Fall Eagle 合同機動演習

 韓国軍と在韓米軍が3月に定例の合同機動演習"Fall Eagle"を開始した。 演習は4月末まで続く。
 詳細は明らかにしなかったが、2016年の演習には、米軍17,000名、韓国軍300,000名以上が参加している。

B-1 との合同演習

 5月に北朝鮮がBM 1発を日本海に向けて発射した直後に、米空軍のB-1Bが日本海上空を飛行し韓国戦闘機との共同訓練を実施し、その後8月以降毎月B-1Bが朝 鮮半島空域に飛来し、合同訓練を実施している。

Vigilant Ace 空軍共同演習

 航空機240機が参加する大規模な米韓連合航空演習"Vigilant Ace"が12月上旬実施された。
 今回の演習には米空軍だけでなく海兵隊、海軍も参加し、F-22 8機、F-35A 6機のほか、B-1BやEA-18Gも参加した。

米空母との合同演習

 米韓海軍が10月に日本海と黄海で合同演習を開始した。 演習には米空母Ronald Reagan CSGや韓国海軍のAegis駆逐艦や潜水艦など約40隻が参加した。
 米潜水艦にはいわゆる「斬首作戦」を遂行する米特殊戦部隊の隊員らも乗艦しているという。

北朝鮮の弾道弾発射に対抗した弾道弾発射訓練

 韓国軍が11月29日の北朝鮮BM発射直後に実施しBM発射訓練では、米陸軍もM270 MLRSからMGM-140 ATACMSを発射した。

(ク) 軍事産業の振興と武器輸出

インドネシアへの潜水艦の輸出

 大宇造船海洋がインドネシアから受注した1,400t級潜水艦3隻のうち1隻目の引渡式が8月に行われた。

T-50 高等練習機の輸出

 KAI社がタイとT-50高等練習機8機の追加輸出交渉が進行中である。 タイは 2015年9月に4機のT-50THを発注している。

 T-50シリーズは12機のFA-50がフィリピンへ、16機のT-50がインドネシアに納入されているほか、イラクからはFA-50 24機を受注している。

 タイにとって韓国は主要な武器供給国で、既に大宇造船が建造したフリゲート艦1隻9受注しているほか、タイは韓国製の装甲車両や小火器に関心を持ってい るという。

K9 SPH の輸出

 エストニア国防省が2月、同国が装備しているFH-70牽引砲に代えて、中古の韓国製K9 155mm SPH 12門の購入を検討しており、購入交渉を開始したことを明 らかにした。 フィンランドも2月に韓国から中古のK9 155mm SPH 48両を購入すると発表した。
 韓国のハンファ社は4月、K9 155mm SPH 100両のインドへの輸出契約を行った。

 12月にはノルウェーからも24門の購入と24門のオプションを受注し、輸出先はノルウェー、フィンランド、エストニア、トルコ、インドの5ヵ国になった。

エジプトへの中古艦の輸出

 エジプト国防省が9月、少なくとも1隻の韓国艦がエジプトに引き渡されると発表した。
 引き渡される艦種は明らかにされていないが浦項級コルベット艦と見られる。

(ケ) 対日軍事姿勢

自衛隊機に対する緊急発進

 韓国軍関係者の話で1月日、自衛隊機が2016年に444回にわたり韓国の防空識別圏に入っていたことが分かった。 ほとんどが離於島付近に進入したもので、 竹島付近の韓国防空識別圏に入ったケースは事実上なかったという。

韓国海兵隊に『独島』防衛部隊を創設

 韓国海兵隊が、これまでの西北島嶼防衛中心から、周辺国の脅威にも同時に備える島嶼防衛司令部への改編を推進中である。
 戦略島嶼防衛司令部と鬱陵部隊は2018~2020年を目標に創設が進められ、編成には竹島への巡回配置部隊が組み込まれているとした。

安倍首相が提唱するインド太平洋戦略への反発

 韓国の文政権が、トランプ米大統領が11月の首脳会談で関与を呼びかけた「自由で開かれたインド太平洋戦略」に「不同意」や「協力の模索」を示すなど、 迷走を見せている。

 韓国大統領府補佐官は、日本が豪印米をつなぐ外交ラインを構築しようとしているが、われわれは編入される必要はないと述べ、別の大統領府関係者も日本 が推進してきたもので、国際情勢を考慮すると参加は望ましくないと述べた。

日米韓連合演習への参加を拒否

 韓国政府消息筋が、米国が日本海の公海上で空母3隻との訓練を提案し日本は同意をしたが、韓国は同意しなかったため実現しなかったとを明らかにした。

エ. 台 湾

(ア) 新国防方針

 台湾の国防部が3月、4年ごとの防衛計画見直し(QDR)報告を発表した。 中国の軍事的脅威に対抗するため、ステルスSTOVL戦闘機の配備や潜水艦の国内建造 を目標に掲げた。
 今回のQDRでは台湾の防衛産業の発展を目指す戦略が新たに盛り込まれ、潜水艦などを国産で建造する計画を進め、産業の振興にもつなげていく考えが示さ れた。

 台湾国防部が12月、蔡英文政権発足以来初めてとなる「2017年の国防報告書」を発表した。
 従来の水際で敵を食い止める「灘岸決勝」を「戦力防護、沿海決勝、灘岸せん滅」に変更し、決戦の場を沿海部における縦深防御と火力打撃に求め上陸を防ぐ としている。

(イ) 米台関係の進展

台湾関係の深化を定めたFY17/18米国防権限法

 2016年12月に米国会で可決されたFY17米国防権限法では、国防総省に対し台湾との軍事関係強化のため軍及び文民高官を台湾へ派遣することを求めている。

 米国会は米海軍の艦船を高雄など台湾の港に定期的に寄港させることなどを初めて盛り込んだFY18の国防権限法案を可決した。

台湾への武器売却を承認

 米国務省が6月、台湾へのEarly Warning Radar の技術支援のほか、AGM-154C JSOW、AGM-88 HARM、SM-2用部品、AN/SLQ-32A改良、各種魚雷など総額$1.3Bに 上る武器売却を承認した。

(ウ) 戦力の近代化

艦船の増強

 台湾の国防部が3月、台湾国際造船などと潜水艦の基本設計に関する契約を結び、記念式典を開催した。
 1,500~2,000t級の潜水艦を4年間で設計した上で自力で建造し、2024年の進水を目指している。

 台湾の国産潜水艦は8隻を建造する計画で、一番艦の就役は2028年に計画されている。

 台湾が米国から購入したOliver Hazard Perry級フリゲート艦2隻が5月に高雄の左営軍港に到着した。

 満載時重量567tで、速力43ktの性能を持つTuo Jiang級コルベット艦は、2015年3月当初12隻が建造するはずであったが、現在の計画では10隻が三次に分けて 建造されることになっている。

 台湾海軍が3月、国産揚陸艦の建造計画の概要を初めて公開した。  国産揚陸艦は排水量22,000t、速力30ktで、76mm砲のほかSAMも搭載される見込みで甲板には大型ヘリが少なくとも6機積載可能である。

航空機の近代化

 台湾はトランプ大統領にF-35の売却を働きかけようとしている。 購入希望兵器のリストにF-35の追加に伴い最新型F-16はリストから外れる模様である。

 台湾が保有するF-16A/BをF-16V 142機に改造する作業に着手した。 この改造でF-16のレーダは、F-16E/F Block 60が搭載するAN/APG-80を元にしたAN/APG-83 SABRに換装される。

 台湾国防部長が1月、国産戦闘機の開発計画を進めていると明かした。
 台湾国防部傘下の国家中山科学研究院が2月、独自に開発したAESAレーダを公開した。 同院はまた3月に、戦闘機用ジェットエンジンの開発に関する予算を 2018年にも計上したいとする考えを示した。

 台湾国防省が2月、超音速練習機XT-5 Blue Magpie 66機の契約を行ったと発表した。 試作1号機は2年以内に完成し 2026年までには全66機が納入されるとい う。
 XT-5は国産戦闘機F-CK-1 Ching Kuoを元にしている。

 台湾のE-2T Hawkeye AEW&C機が、米国でのE-2T Hawkeye 2000への改修を終え台湾へ戻ってきた。

各種ミサイルの開発と配備

 台湾は国産のASCM、SAM、AAMの射程延伸等の改良を行っており、HF-2とHF-3はそれぞれ射程を156哩、250哩に延ばしている。
 また射程375哩のHF-2E陸上発射型LACM は2011年に量産に入っている。

 台湾は東部の花蓮、台東地区にPatriotを配備した。

その他装備の開発と配備

 台湾の国立CSISTが開発した短距離自動火器SADWSは遠隔操作砲塔に搭載された射程2,000mの双連20mm砲で、外側の弾倉に200発が装填されている。

オ. フィリピン

(ア) 対米関係

ドゥテルテ比大統領の反米的姿勢

 ドゥテルテ比大統領が1月、米軍が比軍基地内に保管している装備品等の撤去を要求した。 大統領は、米軍の比国内駐留を認めた2014年協定の破棄を検討 していると述べた。

反米発言を繰り返すなか進む米軍基地の建設

 ドゥテルテ比大統領が反米発言を繰り返すなか、米国は両国間で結んだEDCA協定に基づき2017年内に基地施設の建設に取りかかる。

 基地施設が建設されるのはパラワン島のBasa航空基地、Pampanga、Bautista航空基地、及びCagayan De OroのLumbia航空基地などの比軍基地内である。

関係改善の兆しも

 フィリピンの国防相、財務相、司法相の3閣僚と安全保障当局者3名が、駐比米国大使の招聘を受けて南シナ海にいる米海軍空母Carl Vindonを訪問し た。

 ドゥテルテ比大統領は4月に米比退役軍人が行ったバターン戦の記念式典で大統領は米国を「唯一の防衛同盟国」と述べた。

米軍の比政府軍支援

 フィリピン軍がミンダナオ島マラウィで行っているISIS掃討作戦を米軍の有無人機か支援している。
 フィリピン軍は米軍のRQ-20 Pumaが撮影した画像を利用しており、同様の任務に就いている米国の標識をつけたP-3C Orionも目撃されている。

 ドゥテルテ大統領が6月、ミンダナオ島マラウィ市でのISIS系武装勢力の掃討作戦で 米国が支援の要請を受けたと明らかにしたことに関し、要請はしていな いと述べた。 在フィリピン米大使館は、フィリピン政府に支援を要請されたと発表していた。

米比合同演習の復活

 ドゥテルテ大統領が10月、米比合同演習が来年から元通り行われことを明らかにした。
 両国の関係は2016年ドゥテルテ大統領が米比演習の終了と米特殊部隊の撤退を求めて以来縮小していたが、マラウィでのISISとの戦いで米軍が協力したこと から変化し、大統領は両国間のもめ事を「済んだこと」とし、米国との友好関係を約束した。

(イ) 対中関係

中国からの武器購入

 フィリピン国防相が2016年12月に中国がフィリピンに対し中国製武器購入資金として$500Mの借款を提供することを明らかにした。
 その第一段階として中国は、小火器、高速艇、暗視ゴーグルの購入費$14.4Mを貸し付けるという。

中国艦隊の寄航

 駆逐艦長春を含む中国艦3隻が4月にダバオ港に寄港し、3日間にわたる友好訪問を開始した。
 ドゥテルテ大統領は5月、中国海軍の軍帽を被ってダバオ市に停泊している長春を視察した。

スカボロー礁を巡る妥協?

 フィリピン国防相が8月、フィリピンと中国は南シナ海で新たな島の占領を禁じる暫定的な協定に達し、中国はフィリピンに対し、南シナ海に おいて新たな 領有権を主張しないことを保証したと述べた。
 中国は新たな占領を行わず、スカボロー礁での建造物の建設も行わないという。

(ウ) 対露関係

 ロシア海軍の駆逐艦Admiral Vinogradovをはじめとする対潜艦3隻が、装備品を供与するため10月にフィリピンに入港した。
 別の2隻もスービック湾に入港し、供与する突撃銃5,000丁を卸下する。
(エ) 対日関係

 ドゥテルテ大統領が6月、親善訪問のためルソン島スービック港に寄港した護衛艦いずもに乗艦した。 大統領は艦内で、日本は歴史的な友人であり 、常に助けてくれると日本の支援に謝意を表明すると共に、2017年内には訪日する意向も示した。
(オ) 対テロ戦での周辺国との連携

 マレーシア国防相がシンガポールで開催中のアジア安全保障会議で6月、フィリピン、インドネシアと共に3ヵ国によるミンダナオ島沖での海上合同警備を 開始すると明らかにした。 活動を活発化させるISIS対策が目的で、後日空からの警備も始める。
(カ) 戦力増強

艦船の増強

 インドネシアのPT PAL社で建造された比海軍のドック型揚陸艦二番艦が5月にマニラ南港に入港した。
 この基準排水量7,400t、満載時排水量11,583tのTarlac型揚陸艦は、韓国がインドネシアに輸出したMakassar型揚陸艦の派生型である。

航空戦力の増強

 フィリピン国防省が11月、Embraer社とEMB 314 Super Tucano 6機を購入する契約を行ったと発表した。
 比空軍はSuper Tucanoを、保有しているOV-10 Broncoの後継としてCAS用に30機装備する計画であったが、現在では装備計画は6機に縮小している。

 フィリピン軍が1月、同国南部での戦闘が再開され、インドネシア人と見られる戦闘員1名を殺害し、フィリピン人のリーダーに重傷を負わせた。  この攻撃ではFA-50を含む空軍機の空爆で行われ、韓国製FA-50が初めて実戦投入された。

陸上戦力の増強

 フィリピン国防省が6月、Elbit Systems社にM-71 155mm牽引砲12門を発注したことを明らかにした。
 12門は陸軍と海兵隊がそれぞれ6門ずつ装備するもので、海兵隊は既に4月下旬に3門を受領している。

(キ) 軍事産業の育成

 フィリピン国防省が防衛産業育成のため長く放置されてきたSRDP計画を再活動させる方針である。
カ. 大洋州諸国

(ア) オーストラリア

国防方針

 オーストラリアが過去14年間で初めてとなる外交白書を作成し、その中で今後予想できる範囲内では米国が引き続き軍事非軍事のいずれでも世界を主導 しながらも、中国がインド洋~太平洋での影響力を増すことに警鐘をならしている。

 豪海軍の27,500t LHD 2隻のうちの1隻Canberraが"Talisman Sabre"米豪合同演習参加のため6月に出航した。
 この演習には米豪軍合わせて30,000名以上が参加する。

部隊の再編

 豪陸軍はPlan Beershebaで3個旅団の改編を計画しているが、ブリスベン駐屯第7旅団が最終となるMBT等の装備を受領して、2011年に発表されたPlan Beershebaに基づく改編を完了した。 第1旅団と第3旅団は既に改編を完了していることから計画は完了した。
 豪陸軍は第1、第3、第7旅団を隷下に持つ現役の第1師団と、6個旅団を隷下に持つ予備役の第2師団を主力に編成されている。

装備の充実

 オーストラリアが5月、2020年代を見据えた海軍建艦計画を発表した。 計画では潜水艦12隻、フリゲート艦12隻、外洋哨戒艦19隻、沿岸警備艦12隻が建造 される。

 豪海軍がCollins級6隻の後継として12隻建造する次期潜水艦の諸元が決まった。 それによると次期潜水艦は排水量4,500tで、元となったフランスの Barracuda級原潜より胴経は同じものの排水量は800t少なくなっている。

 豪海軍のHobart級防空駆逐艦(AWD)二番艦のBrisbane (7,000t)が2016年12月に進水した。 2017年末に公試運転が行われ、2018年9月に引き渡される。
 一方2015年5月に進水した一番艦Hobartは2016年9月に公試運転を完了し、予定より2年遅れて2017年6月に引き渡される。

 豪海軍が13隻保有している300tのArmidale級哨戒艇の後継として建造する1.761tの外洋哨戒艦(OPV)OPV 80 12隻は全長80mで、速力20kt、航続距離4,000nm以 上の性能を持ち、40mm砲1門、12.5mm機銃2丁を装備するほか、11mの内火艇1隻と8.4mの内火艇2隻を搭載する。

 オーストラリア政府が、ミサイル開発を続ける北朝鮮を念頭に脅威に備える必要があるとして、次期フリゲート艦にLockheed Martin社が製造する長距離弾道 弾迎撃システムを搭載することを発表した。
 Lockheed Martin社が製造する迎撃システムとはAegis BMDシステムを指すものとみられる。

防空 BMD

 豪政府が4月、装備して30年経つ同国の近距離防空システムRBS-70に換えて装備するGBADにNASAMSを選定した。

U A V

 オーストラリア空軍は当初、武装UAVとしてMQ-9 Reaperを当初検討し2年前には米国に調査団を派遣していたが、その後IAI社のHeron TPも候補に入ってきて いる。

その他

 豪国防省と米海軍が10月、AN/ALQ-249 NGJ-MBの共同開発に関するMoUに署名した。

 NGJ-MBは豪空軍が保有しているEA-18G Growlerが装備しているAN/ALQ-99に代わるもので、EA-18Gへの搭載は2021年に開始される。

 オーストラリア国防省がKongsberg社とJSMの精度を改善する開発を契約した。

 米国防安全保障協力局(DSCA)が10月、オーストラリア空軍へGBU-53/B SDB-Ⅱ 3,900発を売却すると発表した。
 豪空軍はSDB-ⅡをF-35Aに装備する計画である。

(イ) ニュージーランド

 特筆すべき報道はなかった。
キ. ロシア

(ア) 軍事拡大政策

核戦力の増強

 米欧州軍司令官が3月に米議会で、ロシアは欧州軍正面に相当量の戦術核を配備しており、その使用が懸念されると述べた。

連邦軍の兵力増強

 ロシア国防相が2月、ロシア軍にとって最優先課題は核戦力の強化であるが、通常戦力への依存度が徐々に高まっていると述べた。
 具体的な例として、通常弾頭を搭載したKalibr艦載CM、戦略爆撃機搭載のALCM、陸軍のIskander SRBMを挙げた。

 ボリソフ国防次官が8月に新型空母の建造を2025年までに開始する計画と明らかにした。
 またソ連時代末期に就役したAdmiral Kuznetsovは2018年に大規模改修に入る予定という。

 ロシア国防相が2016年12月、2017年に戦車や装甲車両905両と新型又は改良型航空機170機を取得すると述べた。 国防費が急落するなか、2016年の取得数が 139機から大幅に増加する。
 また4個連隊をS-400に換装する。 S-400は2016年にも4個連隊が装備した。
 更に海軍は水上艦船8隻と舟艇9隻を取得し、沿岸防衛部隊にBal及びBastion対艦ミサイル4個システムを取得する。

 ロシアが新たに地上発射型のCMのSSC-8を配備した。 ロシアは、移動式発射機4両を装備するSSC-8大隊2個を編成している。

東欧諸国への圧力強化

 リトアニアの外相が3月、ロシアが行う'Zaapd'演習について特にその規模が大きいと警鐘を鳴らした。
 ロシアは予告なしに100,000名以上の部隊を動員が可能という。

世界各地での勢力拡大

 アラブの春以降の混乱期に存在感を低下させた米国に代わり、ロシアが東地中海で影響力を強めている。
 ロシアは東地中海沿岸諸国との関係強化に動いており、シリア内戦ではアサド政権を支援しながらトルコとも連携し、エジプトでは軍事面などの交流を活発 化させて、内戦状態が続くリビアへの関与も深めつつある。

 ロシアが1月にシリア西部タルトスの海軍基地を拡張して近代化するとの合意をシリアと結んだ。 契約期間は49年間で、その後も合意に基づき25年の延長 可能とし、基地には兵員を守る武器を自由に持ち込めると明記されている。
 合意文書は、ロシア軍が同基地に一度に11隻まで艦船が停泊できると定め、原子力船寄港も可能としている。

 プーチン露大統領が12月にカイロを訪問してシシ大統領と会談し、軍事協力やエジプト初の原子力発電所建設への支援などを協議する。  シシ大統領との会談では、エジプトへの武器売却や同国にある空軍基地の相互利用など軍事協力と、エジプトの原発建設への支援などエネルギー分野の協力 などが話し合われる。

(イ) 財政難の影響

国家レベルでの影響

 2017年のロシアの国防費は前年度比25%減になった。 ロシア財務省が呈示した2018年度予算の指針によると、2018年度の国防費は5.0%下がって RUB2.73T ($47.13B)になる。 2019年には3.7%増えてRUB2.83Tになるが、2020年には0.5%減のRUB2.82Tになる。

 ロシアでは経済情勢の悪化からICBMの整備計画が1年以上遅れており、発射機の数が増えていないという。
 特に関心が持たれているのはTopol-M/RT-2PM2のMIRV弾頭型であるYars RS-24 (SS-29)は戦略ロケット軍の3個連隊が装備しているだけという。

極東露軍での影響

 ロシアが実効支配する北方領土のインフラ整備が、2017年は財政難により大きく減速する見通しとなった。
 クリール諸島の社会・経済発展計画について、露中央政府が2017~2019年分の支出を先送りする方針を示したためで、深刻化する財政難が背景にあるとみら れる。

(ウ) 軍事産業の再構築

 ロシア国営軍事企業のRostec社が11月、傘下High Precision Systems社株の49%を売却する相手を求めていると発表した。
 High Precision Systems社は45,000名の従業員と20以上の子会社を持ち、主力製品にはIskander-MやPantsir S1などがある。
(エ) 極東での軍備増強と活動の活発化

極東地上軍の強化

 ショイグ国防相が2月に、北方領土と千島列島に2017年中に新師団を配置する考えを示した。
 ロシア軍の師団は5,000名から20,000名程度の規模とされる。

 ロシア軍東部軍管区が8月、北方領土で兵員1,000名以上と戦車100両などが参加した演習を行った。

太平洋艦隊の活動が活発化

 韓国海軍のP-3が3月末に日本海海上で、韓米合同軍事演習Fall Eagleを監視していていたロシア海軍の潜水艦を78時間にわたって追跡し、最終的にロシア艦 が海面に浮上していた。
 潜水艦の浮上は事実上「降伏」を意味する。

空軍の挑発が活発化

 日本海上空で米空母Ronald ReaganにロシアのTu-95MS 2機が接近したため、Ronald Reagan搭載のF/A-18が緊急発進した。
 双方の航空機は空母から80哩以上遠方で遭遇した。

 統合幕僚監部が7月、航空自衛隊機が緊急発進した回数が29年度1Qで229回だったと発表した。 前年同期と比較すると52回減少したが、中国軍機に対する発 進が前年同期比でほぼ半減したのに対しロシア軍機に対する発進は中国軍機を上回る125回と、四半期ごとの発進数発表を始めた平成17年度以降では26年度1Qの 235回に次ぐ多さとなった。

(オ) 米本土への軍事的挑発

 ロシアの戦略爆撃機2機が4月、米アラスカ州に接近して米国の防空識別圏内を飛行したため、米戦闘機2機が緊急発進した。

 5月にはロシアの爆撃機と戦闘機がアラスカのADIZに侵入したためF-22が緊急発進した。
 侵入したのはTu-95 2機とSu-35 2機で、Su-35が米空軍に目撃されたのは初めてである。

(カ) わが国に対する動き

 千島列島南方の北方領土では、ロシア軍が択捉島にBastion、国後島にBalを配備したことが2016年11月に明らかになっている。

 日本近海におけるロシア海軍の活動が活発化している。 統幕によると日本近海へのロシア艦接近回数は2006年に4回であったのが2009年には二桁に上昇し 、2014年に19回、2015年に25回と増加して、2016年には27回に上っている。

ク. 米 国

(ア) 国防方針の変化

米国第一の安保戦略

 トランプ米大統領が12月、政権初の包括的な安保政策「国家安全保障戦略」を公表した。 トランプ大統領は米国の国益を最優先する米国第一に基づく戦略だとし 、中国とロシアは米国に挑戦するライバルと対抗意識を見せ、世界での米国の政治、経済的優位を保つ方針を表明した。

外交姿勢の変化

 米露は相互の領空への監視飛行を両国が参加する「オープンスカイ条約」で認めているが、ロシアがカリーニングラードへの米軍機の監視飛行を妨害して いるとして、米国が露軍機の飛行を制限する意向という。
 報道によると、米側はアラスカやハワイ上空への露軍機の飛行を制限する可能性がある。

 11月に米国防総省が中距離核戦力(INF)全廃条約で禁止されている中距離ミサイルの開発再開を検討していると報じられた。
 ロシアが同条約に違反してミサイル試験などを行っていることへの対抗措置とみられ、米国は数週間前に新たな中距離ミサイルの研究開発を進める意向を ロシア 側に伝えた上で、ロシアが条約を順守すれば開発を断念すると伝達したという。

新START条約の否定

 トランプ米大統領が2月、2010年に署名した新START条約について、一方的な条約で悪い条約だとコメントした。

トランプ米政権に対する身内の反感

 トゥスクEU大統領が加盟国首脳に宛てた書簡で1月、トランプ米政権についてロシアや中国、イスラム過激派と並びEUが直面する脅威だとの認識を示した。

 米STRATCOM司令官がで11月、トランプ大統領が「違法な」核攻撃を命じた場合には拒否するとの意向を示した。

対北朝鮮先制攻撃論の台頭

 米国でトランプ政権が発足すると、対北朝鮮先制打撃論の封印が解かれた。
 1994年の第一次北核危機で当 時のペリー国防長官が北爆計画を準備して以来23年ぶりになる。

二正面作戦能力の保持への回帰

 2018年早々に議会に提出する新"National Defense Strategy"(QDR 2018)を起草している作業チームは、二正面作戦能力の保持に回帰する方向で作業を進 めている模様である。

軍備増強方向の回帰

 米核戦略の3本の柱である戦略爆撃機ではLRSOを搭載するB-21 LRSB、ICBMでは GBSD、SSBNではOhio級の更新などの計画が進められている。

 トランプ次期大統領が艦船増強を主張しているのを受けて米海軍は2016年12月に空母12隻体制を含めた355隻体制と、トランプ要求を上回る規模の建艦要求 を公表した。
 レーガン大統領はかつて600隻体制を主張していたが、海軍の即応艦船数は現在、かつての308隻から274隻に減少している。

 ただ国防総省は追加47隻の経費について未だに見込みを持っていない。

 トランプ大統領が現在46.5万の陸軍兵力を54万にするとしている。 米陸軍の兵力はアフガンに派遣していた2011年に最大の56.6万であった。

 トランプ大統領が米空軍のパイロット不足対策として、退役軍人と再雇用の長期契約する計画の実施命令に署名した。
 これにより空軍は向こう3年間にわたり1,000名のパイロットを再雇用できるようになる。

国防費の増額/減額

 米国のFY18国防予算の大枠を定めた国防権限法が12月にトランプ大統領の署名を経て成立した。 同法はオバマ前政権下で規模が縮小した米軍の再建を目 指し予算総額を$700Bと規定した。

 米議会上下両院が、陸軍現役476,000、海軍327,900、海兵隊185,000、空軍325,100、陸軍州兵343,000、陸軍予備役199,000とするオバマ政権のFY18予算要 求に対し、下院軍事委員会は陸軍現役に10,000、陸軍州兵に4,000、陸軍予備役に3,000の追加増員を、上院軍事委員会は陸軍現役に5,000、陸軍州兵に500、 陸軍予備役に 1,000の追加増員を要求している。

 米空軍長官によると、空軍は冷戦直後の1991年当時134個の戦闘飛行隊を擁していたのに対し現在は55個飛行隊に減少したうえ、戦闘機のパイロットは必要 数を1,500名も下回っていて即応態勢に深刻な影響が出ており、早急に回復しなければならないと訴えた。

第二列島線へ後退するアジア戦略と対日依存

 2016年7月に退職した岩田元陸上幕僚長が、米国が南シナ海や東シナ海で中国と軍事衝突した場合に米軍がグアムまで一時撤退し、沖縄から台湾、フィリピ ンを結ぶ第一列島線の防衛を同盟国の日本などに委ねる案が検討されていることを明らかにした。
 中国のA2/AD戦略に対応するためで、中国が東風-21D ASBMによる空母撃沈を避ける狙いがある。

(イ) 編成装備の見直し

空母 Gerald R. Ford の就役と空母11隻態勢

 米海軍の空母Gerald R. Fordが7月に就役した。 米海軍の新型空母就役は40年ぶりで、就役後も試験を重ねて2020年の本格就役を目指している。
 これで米海軍は空母11隻態勢となる。

海兵隊

 米海兵隊は15年に及ぶテロとの戦いを繰り広げている間に進歩した対空、対艦能力に対抗する能力向上のための改革を迫られていて、米当局者が3月に明 らかにしたところによると、提案されている100件以上の新技術の検証を行うため海軍と海兵隊が4月に演習を行うという。

(ウ) アジア太平洋戦力の増強

西太平洋海軍の強化

 空母Carl Vinsonを旗艦とした第1空母打撃群が3月に南シナ海に入り、同海域を第7艦隊と二分して任務に就いた。
 Carl Vinsonが南シナ海に入ったことで、第二次大戦後初めて第3艦隊隷下の艦船が西太平洋での任務に就いたことになった。

 米太平洋軍司令官が8月、衝突事故で長期の修理が必要となった第7艦隊所属艦2隻の代替として、2018年にも別のAegis駆逐艦2隻を派遣すると明らかにした。

 米海軍のリチャードソン海軍作戦部長が11月2日、第7艦隊への艦船増派を検討していると明らかにした。 米海軍作戦部長が11月、第7艦隊で6月と8月に相 次いだ駆逐艦の衝突事故を受け、第7艦隊所属艦の任務増加が乗組員の疲労や訓練不足も原因の一つであるとして、負担を軽減して再発防止につなげたい考え である。

 グアムのAndersen AFBには、Triton 4機を収納する台風にも耐えられる巨大格納庫が建設されている。

太平洋空軍の増強

 米国防総省がグアムに複数のB-1を一時配備した。 B-1は2月にAndersen AFBに到着した。
 米空軍は2004年以降、戦略爆撃機をグアムなどに交代配備しており、B-1がグアムに一時配備されるのは2016年8月に続き2度目である。

 1月から岩国基地に駐留している米海兵隊F-35Bは日本国中ばかりか韓国にも飛行しているが、5月にはアラスカ州で行われた "Northern Edge"演習にも8機を 派遣した。 またアラスカ州のEielson AFBには、2020年に空軍がF-35Aを配備する計画になっている。

太平洋地上軍の増強、強化

 オバマ前米大統領が2011年に決めた豪北部ダーウィンに駐留する米海兵隊の第一陣が4月に到着した。 海兵隊によると、2017年の駐留規模は1,250名で、当 初計画していた2,500名を下回る。

 太平洋軍は、今まで日本や韓国、グァム、米領サモワなどに所在している予備役軍人が、動員時にハワイや米本土に参集することになっている招集計画を、 現在の所在地に出頭するするように変更する案の試行を行っている。

 国会を通ったFY18国防権限法ではハワイの防衛も強調されている。 ハナブサ下院議員は法案にKaiai島にあるPMRFの防衛を盛り込み、シャッツ上院議員は ハワイの防衛力整備に$300M以上を盛り込んだことを明らかにした。

東南アジア諸国との連携強化

 トランプ米政権が、2014年5月のクーデターで軍事政権下にあるタイとの安全保障関係の修復に乗り出し、2月にタイで行われた"Cobra Gold"多国間演習に、 太平洋軍司令官を3年ぶりに派遣した。

(エ) 北朝鮮による BM 発射への対応

 米ハワイ州の緊急事態管理局が7月、北朝鮮がICBMを発射したことを想定した対応の指針を策定し、避難訓練を11月から実施すると発表した。 米メディア に よると避難訓練は毎月行われる。
 同州では1980年代の東西冷戦時代にソ連の攻撃に備えた計画を策定しサイレンを鳴らした訓練したことがあったが北朝鮮のミサイルに備えた対応は初めて である。
(オ) 在韓米軍の動き

兵力の増強、装備の更新

 米韓両国が北朝鮮の脅威に対抗するため、F-22とF-35Bを朝鮮半島にローテーション配備することを本格的に検討しており、F-22とF-35Bを中部の烏山または 西部の群山にある在韓米軍基地に3ヵ月ごとに配備する案が有力視される。

 米国防総省が、2013年から在韓米軍に配備してきたOH-58Dの代替として、AH-64 Apache 24機をソウル郊外の水原基地に配備する。

 米陸軍の各師団級部隊にGray Eagle中隊を置くという方針に基づき、群山市の米空軍基地にMQ-1C Gray Eagleを配備する。 同基地に配備されるGray Eagle は第2師団第2航空旅団の装備である。

 米陸軍第1騎兵師団第2機甲旅団戦闘団(ABCT)通称Black Jack旅団が、テキサス州Ft. Hoodから韓国のCamp Humphreysに到着し、第1機甲師団第1 ABCTと交代 して9ヶ月間のロ ーテーション配置についた。

核兵器の再配備

 トランプ米政権が戦術核兵器を朝鮮半島に再配備する案を検討しているという。 在韓米軍が戦術核を再び持ち込むと1991年にブッシュ大統領が戦術核兵器 を朝鮮半島から撤収した以来26年ぶりの再配備になる。

THAAD の配備

 THAADの発射機2両と一部の装備が3月に韓国に到着し、韓国軍が4月星州カントリークラブにX-bandレーダと発射機を搬入した。  米軍が5月に韓国に配備 したTHAADがIOCになったことを明らかにした。

 その後発射機4基が追加搬入されことが大統領府に報告されていなかった問題で、THAADの追加配備は事実上中断された。

 しかしながら韓国の文大統領は北朝鮮のBM発射を受けた7月、配備済みの2基から増強することを米国と協議するよう指示し、北朝鮮の核やミサイル開発の進 展が止まらない状況を受け、THAADの追加配備を遅らせようとしていたこれまでの方針を転換し、積極的に乗り出す姿勢を見せた。

 結局発射機4基が9月に星州に搬入され、既に運用している発射機2基と合わせ6基の配備を完了した。

Patriot PAC-2/PAC-3

 米陸軍は米空軍基地防衛を担う在韓米軍第35防空砲旅団がPatriotの改良と訓練を完了した。 改良型PatriotとはPAC-3 MSEなのか、従来型のPAC-3 Conf3な のかは分かっていない。
 同旅団の2個大隊はPAC-2/PAC-3を12個FU装備しているとされ、韓国国内に分散配置されている。

AGM-158 JASSM の配備

 米空軍群山AFBのF-16に6月、AGM-158 JASSMが10発以上配備された。 配備されたのは基本型のAGM-158A JASSMかAGM-158B JASSM-ERかは明らかでないが、い ずれにせよ平壌まで届く。

(カ) 在日米軍の戦力強化

厚木基地艦載機部隊の岩国基地への移転

 厚木基地から岩国基地への艦載機部隊の移転は当初F/A-18 59機で、岩国基地に現在配置されているF/A-18やAV-8Bなど60機と合わせて岩国基地の米軍機は 120機となり、100機が常駐する嘉手納基地と並ぶ極東最大級の航空基地になる。

 F/A-18 48機の岩国移転は11月に始まり、2018年5月までに61機が段階的に移る計画である。 艦載機移転の第一陣としてはE-2D 5機が8月に到着している。

 第二陣はF/A-18 2個隊24機とEA-18G 1個隊6機の計30機で11月に到着した。

F-35B の岩国基地配備

 岩国基地に11月にF-35B 3機が飛来し、1月からF-35Bを装備している所属の第121飛行隊が16機の編成を完結した。 F-35が米国外の基地に配備されるのはこ れが初めてである。

F-35A の嘉手納基地配備

 F-35A 2機が10月30日に米軍嘉手納基地に飛来した。 米空軍は太平洋地域で初めて嘉手納基地にF-35A 12機を6ヶ月間の計画で配備する。
 米太平洋軍司令部が11月、空軍がF-35A初の海外展開を沖縄で開始したと発表した。

木更津駐屯地で Osprey の定期整備開始

 米海兵隊普天間飛行場所属のOspreyが1月、定期整備拠点の陸上自衛隊木更津駐屯地に到着し、国内で初めてとなる定期整備が2月から始まる。

RQ-4 Global Hawk の飛来

 グアムAndersen AFB所属のRQ-4 Global Hawk 1機が5月に横田基地に飛来し、10月まで日本で運用される。 この1機に続いて48時間以内に2機目が到着する という。
 台風などを避けるための一時的な配備というが北朝鮮への警戒とみられる。

(キ) 米軍の即応能力

 米空軍の最新資料によると、現在米空軍で即使用可能な爆撃機数は、保有機数の半分以下である。 これは今に限ったことではない。
 それによると75機保有するB-52で使用可能なのは33機、62機あるB-1は25機、20機のB-2で飛行可能なのは7~8機であるのが実情である。

 6月に伊豆半島沖でコンテナ船と衝突した米第7艦隊の駆逐艦Fitzgeraldに続き、姉妹艦John S. McCainがマラッカ海峡で石油タンカと衝突し た第7 艦隊で相次ぐ重大事故の背景には、国防予算削減の影響で海軍が人員や艦船の無理な運用を強いられている実態があるとの指摘も出ている。

ケ. その他諸国

(ア) インド

軍備の増強

 インドが3月、それまで290kmであったBrahMos超音速CMの射程を400kmを遙かに超えて延伸したBrahMos-ERの発射試験に成功した。
 インドは2016年6月に、それまでCMの射程にあった制限を撤廃したMTCRに加盟している。

 インド空軍が11月にベンガル湾上空で、改造したSu-30MKIにるBrahMos-A ALCMの発射試験に成功した。
 印空軍は2個飛行隊42機にBrahMos-Aを搭載する計画である。

 IAI社が5月にインド国防省と艦載長距離SAM LR-SAMの開発契約を行った。 また陸軍のMR-SAM購入の契約も行われた。
 インドのMR-SAMもLR-SAMも、Barak-LRとも呼ばれているBarak-8を元にしており、2018年に就役する初の空母Vikrantにも装備されるLR-SAMは、水上 目標を25km、空中目標を250km以遠で捕捉できる。

 インド海軍が6隻の建造を計画しているAIP推進潜水艦建造のRfIを発簡した。 インドは国内の戦略パートナでのライセンス国産を希望しており、全契約額 の30%を国産したい言う。

 インドが2005年10月に仏DNCS社とライセンス生産契約したScorpene級潜水艦6隻の一番艦が9月に印海軍へ引き渡された。
 同艦は2015年10月に進水し、2016年5月から試験を行ってきて、2017年3月にはExocetの発射試験に成功している。

 ティラーソン米国務長官が10月、インドに対して複数件の提案を承認したが、この中にはGA社から提案されていた電磁カタパルト(EMALS)技術のインドへの 提供も含まれている。

 インド空軍は現在33個戦闘機飛行隊を保有しているが、中国と対抗するには42個飛行隊が必要とみている。 このギャップを埋めるため更に200機の戦闘機 が必要となる。

 インドが2015年に模型を公開しすでに基本機能形状を固定している先進中型戦闘機AMCAの事前設計審査が3月に開始された。 AMCAはMirage 2000及びJaguar の後継として計画されており、2024年初飛行、2030年配備開始を目指している。

 インドがロシアと共同開発する第五世代戦闘機(FGFA)計画が、 ロシア側からの大幅な価格引き上げ要求にあい消滅しそうになっている。

 インド国防省が同国DRDOに対し、国産BMDSの最終的な導入戦略と時程を速やかに報告するよう要求した。 DRDOはかつて、射程2,000kmのBMに対抗する第一 段階を2012年か2013年に、5,000kmのBMに対抗する第二段階を2016年までに完成するとしていた。
 DRDOは2017年2月に、PDVが高度97kmの大気圏外で標的を迎撃したと発表している。 PDVの迎撃高度は50~150kmで、迎撃高度80kmのPAVに代わる迎撃弾であ るという。

 インドは 2016年10月に初飛行した長距離型のAvenger ERを、海軍向けに22機購入するMQ-9B Sea Guardianに続けて購入するとみられる。

軍事費の増額

 インド政府が2017/18の純国防費をIND2.74T ($40.6B)とすると発表した。 これは国家予算の12%にあたり、前年比名目5.6%増で対GDP比1.6%になる。

新装備の購入

 インド国防省が2016年12月、C-17 1機の購入を承認した。 C-17については 2011年に10機を購入した際に6機のオプションをしていた。
 この他にINR4.19Bで、低空目標捕捉用軽量3Dレーダ55基なども購入する。

 2007年にインドが中国を抜いてロシア最大の武器輸出先になった。 その後ロシアのシェアは西側企業からの競争にさらされているが、それでもロシアは 25~30%の シェアを確保している。

国内軍事産業の育成

 インドHAL社がSu-30MKI構成部品や補用部品の生産開始を目指してロシアとSu-30MKI 322機のライセンス生産について協議している。
 HAL社は2003年以来Su-30MKIの生産を行っており、2019~2020年までの生産数を270機と見ている。

 インド海軍高官が6月、6隻建造するKalvari級潜水艦で建造中の最後2隻に、国内で開発したAIP推進装置を搭載することを明らかにした。

イスラエルとの協力強化

 インドとイスラエルが7月、防衛装備品の共同取引で合意した。 この合意を通じてイスラエルは「インド国内生産」政策を支援する。
 インドは既に2017年初めに、印陸軍向けのMR-SAMを発注している。 MR-SAMはインドDRDOがIAI社と印海軍向けに開発したBarak 8を元にしており、報道によ ると印陸軍は5個連隊用として200個FUを調達する計画であるという。
 IAI社はまた7月に、MALE UAVの生産施設をインドのDTL社内に設置する契約をDTL社と結んだ。

ロシアとの軍事協力

 ロシアとインドの合同演習"Indra 2017"が10月にウラジオストクや周辺の海域で行われ、両国の陸海空軍から合わせて2,000名が参加した。
 印露合同演習に陸海空の三軍がすべて参加するのは、14年前にこの演習が行われるようになって以来今回が初で、東アジアで軍事的な影響力を拡大している 米国や海洋進出を続ける中国をけん制する狙いがあるものと見られる。

(イ) モンゴル

 特記すべき報道はなかった。
(ウ) 東南アジア諸国

ベトナム

 ベトナムがロシアから調達するKilo級潜水艦6隻のうち、最後の1隻が1月にカムラン湾の港に到着した。

 米国が5月、ベトナム沿岸警備隊に哨戒艇1隻を引き渡した。 米国は2016年5月には警備艦6隻を引き渡している。

インドネシア

 インドネシアのジョコ大統領が2月にオーストラリアのターンブル首相と会談し、関係修復を急ぐ方針で一致するとともに、一時停止していた軍事協力の全 面的な再開を決めた。

 1月に着任した新米国大使がインドネシア国防相と会談し、トランプ新大統領がインドネシアとの防衛協力を強化するとの方向を示したと述べた。

 インドネシア海軍が4月、2隻計画しているMartasinata級フリゲート艦の一番艦を就役させた。  同艦はオランダのDamen社と協同で建造した排水量2,400t のフリゲート艦で、Oto Malara 76/62 Super Rapid砲のほかVL-MICA、MM 40 Exocetなどを装備している。

 インドネシアとロシアがSu-35の売却で合意し8月に合意文書に署名した。 通商省は当初分11機の輸入を明らかにした。

 Kongsberg社が10月、インドネシアから完全編成のNASAMS 1個中隊分を受注した。 NASDAMSが発射するAIM-120 AMRAAM弾はインドネシアと米国政府間の別契 約で納入されるという。

ミャンマー

 ミャンマー軍が8月、ロヒンギャの武装勢力が西部ラカイン州で警察署など30ヶ所余りを襲撃したことをきっかけに、治安当局が7日間にわたり掃討作戦を続 けた結果、武装勢力370人を殺害したほか、軍の兵士や警察官それに戦闘に巻き込まれた住民を含めると、合わせて499人が死亡したと発表した。

マレーシア

 マレーシア政府高官が2月、金正男氏殺害事件を受けマレーシア政府が北朝鮮大使の追放や国交断絶を検討していると語った。 すべての外交通商の断絶も あり得るという。

 マレーシアが2011年に6隻を発注していた3,100tのLCSの一番艦が8月に進水した。 一番艦は2019年前半に就役する予定で、二番艦も2月に起工している。

 日本政府は2017年1月に海上保安庁の巡視船2隻をマレーシアに無償で供与し、このうちの巡視船1隻がマレーシア東部の港町コタキナバルに配備され、就役 式典が7月に行われた。

 マレーシア政府がFY2018国防予算を5.3%増額する。 ただ対GDP比は1.1%で変わらない。

シンガポール

 シンガポールが7月、サイバ戦の新たな部隊を11月に発足させる。 この部隊はC4 Commandと呼ばれる准将を指揮官とした部隊で、完全編成となる2027年に は2,000名規模になるという。

 シンガポールがドイツに排水量2,000tで、AIPで推進するType 218SG潜水艦2隻を追加発注した。 同国は2013年に同型潜水艦を2隻発注している。

 シンガポールの沿岸防備艦(LMV)の二番艦と三番艦の就役式が11日に行われた。 5月に就役した一番艦はタイ湾で行われる演習に参加するため既に出航して いる。
 LMVは排水量1,200tでOto Melara社製76mm Super Rapid砲を装備している。

 シンガポールではST Kinetics社が同国陸軍向けにM113 AFVに替えて装備する装軌戦闘車NG AFV、装軌路外輸送車Broncoの最新型 Bronco 3、次世代装軌車両 回収車などの装軌式戦闘車両を次々に開発している。

 米政府がシンガポールにFMS契約で6基売却するAN/TPQ-53対砲迫レーダをLockheed Martin社に発注した。

 シンガポールは訓練のためF-15SGをニュージーランド空軍のOhakea基地に配置する。 またこれに伴い隊員とその家族500名もOhakeaに駐留することになる。
 国土が狭いシンガポールは今までも航空機部隊を米、豪、仏などに駐留させているほか、陸軍もニュージーランドで砲兵の演習を行っている。

カンボジア

 カンボジアは米国に今年度の合同軍事演習の中止を通達した。 カンボジアは「延期」という表現を使っているが実質的には2017年度の中止を意味している。
 2010年から始まった合同演習は2017年で8回目を迎える予定だったが、突然中止が決まったのは中国が影響力を行使して演習を中止させたと見られる。

(エ) カナダ

 カナダの国防相が6月、今後10年間で国防費を約7割増やすと発表した。
 トランプ米大統領が5月のNATO首脳会議で各国に国防費の応分負担を求め、相互防衛の義務履行を明言しなかったため、安全保障での自立を進める狙いがあ るとみられる。
(4) 国 内 情 勢

ア. 防衛構想の見直し

(ア) 防衛計画大綱見直しの繰り上げ

 政府が次期中期防衛力整備計画の策定に合わせ、2020年代半ばまでをカバーする現行の防衛計画の大綱を見直す検討に入った。
 安倍首相が小野寺防衛相に対して8月、防衛大綱の見直しについて検討するよう指示したことについて防衛相は、BM対処能力の強化に関し自民党が提言する 敵基地攻撃能力の保有についても検討する意向を明らかにした。
(イ) 次期中期の検討

自民党安全保障調査会の方針

 自民党が安全保障調査会などの合同会議を6月に党本部で開き、次期中期防衛力整備計画に向けた中間報告を取りまとめた。
 中間報告は新迎撃ミサイルの導入などと共に、サイバ空間の監視防護体制を強化や自衛隊がサイバ攻撃能力を備える必要があると明記している。

次期中期防での防衛関係費の伸び率

 政府が次期中期防衛力整備計画での防衛関係費の年平均の伸び率について、現中期防の0.8%を上回ることを認める方向で調整に入った。

(ウ) 敵基地攻撃能力保有の議論

ミサイル攻撃を受ける前に相手国基地を攻撃

 安倍首相が1月の衆院予算委員会で、ミサイル攻撃を受ける前に相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力の保有を検討する意向を示した。

 また自民党の高村副総裁が2月に、他国からのミサイル攻撃を未然に防ぐための敵基地攻撃能力の保有について、現時点で装備体系はないので具体的な検討 を開始するかどうかという検討はしていって良いと述べた。

 自民党の安全保障調査会などが3月、北朝鮮の核ミサイルの脅威を踏まえ敵側の基地を攻撃する敵基地反撃能力の保有を政府に求める提言をまとめ、3安倍首 相に提出する。 提言では先制攻撃ではないと明確にするため反撃の語句を入れた。
 日米同盟の抑止力対処力向上を図るためCM保有も検討するよう求めている。

 安倍首相が11月に参院本会議での代表質問で敵基地攻撃能力の保有論に関して、日米の役割分担の中で米国に依存しており、役割分担を変更するとは考えて いないと 否定的な見解を示した。

サイバによる敵基地攻撃

 政府が3月の閣議で、サイバ攻撃を未然に防止するため自衛権の発動として相手国へのサイバ攻撃を行うことについて、対処方法やいかなる場合にサイバ攻 撃が武力攻撃の一環として行われたと認定するかについては個別具体的に判断する必要があるとする答弁書を決定した。
 サイバによる「敵基地攻撃」を必ずしも排除しない見解を示したものである。

F-35 への ASM 搭載の検討

 政府が配備予定のF-35にASMを装備するため平成30年度予算に関連経費の計上を目指していることを明らかにした。 国内の離島有事に備えるのが主目的だ が、自衛のために相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力も保有することになる。
 F-35に搭載するASMの有力候補として検討しているのは、ノルウェーが開発中のJSMで、空対艦/空対地能力を併せ持ち射程は300kmとされている。

敵基地攻撃可能な長距離 CM の導入

 防衛省が戦闘機に長距離CMを搭載するための調査費を平成30年度予算案に計上する方針を固めたことを与党幹部らに伝えた。
 敵艦船などを攻撃するためとしているが射程が長いため敵基地攻撃用としての転用も可能である。
 導入を検討しているのは、射程900kmのJASSM-ERでF-15に搭載する方向で検討している。

 小野寺防衛相は12月、自衛隊機に搭載する長距離CMの導入を正式表明した。 防衛省は30年度予算に21億9,000万円を追加要求したたが、その中にはJASSM-ER とLRASMの自衛隊機への搭載に向けた改修の調査費3,000万円も入っている。

敵基地攻撃用 CM 開発

 政府が地上目標を攻撃できるCMを開発する方向で検討に入った。 防衛省が30年度から開発を始める対艦ミサイルに対地攻撃能力の付加を計画しているもの で、日本がLACMを本格的に開発するのは初めてとなる。

 ミサイルはステルス性を追求した形状で、射程が300km以上になるとみられ、特殊車両、護衛艦、P-1、戦闘機などから発射できる。 GPSで目標に接近しレー ダシーカで終末誘導を行う。

 平成34年度の試作品完成を目指し、敵基地攻撃能力も持つCMの国内開発を検討している。

(エ) 護衛艦いずもの空母化

 12月下旬に護衛艦いずもの空母化が一斉に報じられた。 航空自衛隊もF-35BをF-15Jの旧式機体の後継として導入する方向で検討している。
(オ) 核兵器保有の議論

 自民党の石破元幹事長が11月、日本の周りは北朝鮮であれ中国、米国、ロシアであれ全部核保有国で、その気になれば核兵器を作ることができる技術は日本 は 持っておくべきだと述べた。
(カ) インド太平洋戦略

 日米政府が11月に行われる日米首脳会談で、安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」について協議し、日米共同の外交戦略として表明する方 向で最終調整に入った。
 日米が同盟を基軸に、インドや豪州とも連携し、南シナ海や東シナ海で権益拡大を図る中国を牽制する狙いがある。

 政府の総合海洋政策本部参与会議が12月、今後の海洋政策の柱となる「海洋基本計画」への提言を安倍首相に提出した。 提言では「自由で開かれたインド太 平洋戦略」に触れ、海洋安全保障の構築を打ち出すと共に、近隣諸国との間で不測の事態が広がることを防ぐ法執行などを促した。

イ. 行政機能、制度の改革

(ア) 陸上総隊、航空方面隊の創設

 陸上自衛隊に陸上総隊の創設を盛り込んだ改正自衛隊法が5月の参院本会議で可決成立した。 これにより180人規模の総隊司令部が2018年3月、朝霞駐屯地 に設置される。
 また、南西地域での防空態勢強化のため、航空自衛隊の南西航空混成団が南西航空方面隊に格上げされる。
(イ) 「統合運用計画」の策定

 政府関係者が8月、政府が陸海空自衛隊の一体的運用を進める中期的な目標を定めた「統合運用計画」を2018年にも新たに策定することを明らかにした。
(ウ) 参事官の増員、主席参事官ポストの新設

 防衛省が30年度に、統幕に部長級の首席参事官ポストを新設し、北朝鮮によるBM発射への対応など自衛隊の活動が増えていることを受け、対外的な説明を担 う態勢を強化する方針で概算要求に盛り込んだ。
(エ) 民間船員に予備自衛官

 島嶼防衛や災害派遣時の輸送手段として期待されている民間輸送船2隻は、フェリー会社や商社など8社が共同で設立した特別目的会社「高速マリン・トラン スポート」が所有し、平成28年から37年末まで10年近くの契約で 、自衛隊が優先的に利用する権利を持っている。
 契約に先立ち、陸上自衛隊が26年夏ごろから2隻を訓練輸送などに利用しており、2016年4月の熊本地震などでの試験運用を経て採用された。
ウ. 防衛費微増傾向の持続

(ア) 防衛省の30年度予算要求

平成29年度補正予算における防衛関係費

 政府が12月に閣議決定した29年度補正予算案の防衛費は2,345億円で、1回の補正予算での計上額としては最大だった。
 この結果29年度の合計額は前年度を2%上回る5兆3,596億円で、当初予算同士で比較する場合よりも伸び率は0.6%大きく、ここ5年間で1割ほど膨らんだことに なる。

平成30年度予算政府原案における防衛関係費

 政府が12月に閣議決定した平成30年度予算案で防衛費は、5兆1,911億円で過去最大を更新した。
 しかしながら8月末に提出した概算要求は5兆2,551億円であったことから、概算要求から650億円がカットされたことになり、29年度の当初予算が5兆1,251億 円であっ たので伸び率は僅か1.29%になる。 これに対し中国の国防費伸び率は7%増、韓国は7.0%増、米国は10.6%増である。
 しかも、補正後の29年度予算は5兆3,596億円で、30年度は1,685億円以上の補正を行わないと、最終的には実質的な予算削減になってしまう。

(イ) 海上保安庁のの30年度予算要求

 海上保安庁が8月に発表した平成30年度予算の概算要求要求総額は29年度予算比9%増の2,303億円で過去最高であったが、12月に閣議決定した政府案では0.3% 増の2,112億円にとどまった。
エ. 南西防衛の強化

(ア) 陸上部隊の南西防衛配置

宮古島への陸上自衛隊配置

 防衛省は離島侵攻や災害時に初動対処にあたる警備隊とSAMとSSM部隊を宮古島と石垣島にそれぞれ置く計画を進めており、宮古島には32年度中にSAM部隊を配 置して管理部隊を含めて800名規模の態勢を整える計画で30年度末までに警備部隊を配置する方針だが、弾薬庫の建設予定地選定が遅れていることから、ミサイ ル部隊の配置は31年度以降となる見通しである。
 宮古島への陸上自衛隊警備部隊とミサイル部隊の配置計画をめぐり、駐屯地の建設工事に着手する。 平成30年度末の警備隊配置に向けて、31年2月末までの 完成を目指す。

キャンプ・ハンセン跡地に水陸機動団

 陸上自衛隊に2018年3月に新編される水陸機動団を当初は相浦駐屯地をはじめ九州に置くが、2020年代の前半には沖縄県の米海兵隊キャンプ・ハンセン跡地に も配置する方針を固め、米側と調整に入った。

(イ) 離島奪還演習の実施

"Dawn Bridge" 日米共同演習

 陸上自衛隊が米海兵隊と離島奪還の共同訓練"Dawn Bridge"をカリフォルニア州で実施した。 隔年で行われる"Dawn Bridge"は今回が3回目で、10月~11月に 水陸両用車AAVやF-35Bも参加して行われた。

離島防衛を想定した大規模演習

 陸上自衛隊が10月~11月の1ヶ月間にわたり、離島防衛を想定した大規模演習を実施した。 この演習には西部方面隊と中央即応集団を中心に人員14,000名、 車両3,800両、航空機60機が参加し、北部方面隊からも1個連隊が鉄道、船舶、航空機で九州へ移動した。
 演習は沖縄本島、久米島、与那国島を舞台に、奄美大島を兵站拠点として行われた。

(ウ)中台有事への対応準備

 陸海空自衛隊が、中国と台湾の間の有事を想定した図上演習を1月に実施した。 演習は実際に部隊は動かさず防衛省内などで実施した。
 統幕は具体的なシナリオを明らかにしていないが、 関係者によると中台間の軍事衝突を想定しているという。
(エ) 離島管理の強化

 住民がいる国境近くの離島の保全策について、安倍首相を本部長とする政府の総合海洋政策本部が策定する基本方針の概要が3月に明らかになった。
 東京都の小笠原諸島や長崎県の対馬、沖縄県の八重山諸島など29地域148島を「有人国境離島」に指定し、国有化や港湾整備をはじめ島の人口増を目指す方向 性を明記した。
 総合海洋政策本部が4月、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)の基点となる無人離島のうち、所有者のいない273島について国有財産登録の手続きが終了したこ とを報告した。
オ. 海外での活動

(ア) 邦人保護活動

 防衛省が1月に安全保障関連法で可能となった在外邦人の保護演習を行った。
 統合幕僚監部によると、演習は陸海空8,700名が参加する図上演習で、陸海空の三自衛隊の合同で実施された。
(イ)海外拠点の整備

 小野寺防衛相が11月、ジブチに設けている自衛隊の海賊対策活動拠点について、拡張のため隣接地をジブチ政府から借り上げることで合意したと明らかにし た。 他の国が借り上げると基地の安全な運営に影響が出ると説明しており、ジブチで中国が7月に拠点を開設したことが念頭にあるとみられる。
(ウ) 海外活動のための海外訓練

 安全保障関連法制に基づくPKOでの駆けつけ警護や宿営地を守る共同防護の新任務を想定した7月~8月にモンゴルで開かれる米軍蒙軍主催の"Khaan Quest 17"多 国間共同訓練に、陸上自衛隊が初めて参加した。
 先遣されるのは中央即応集団の隊員ら45名で、PKO活動に伴う検問や救護などの訓練も実施するという。
カ. 各国との防衛協力

(ア) 米 国

米軍の艦船などを守る武器等防護

 防衛省が1月に安全保障関連法で可能となった自衛隊が米軍の艦船などを守る武器等防護の演習を行った。  統合幕僚監部によると、演習には陸海空8,700名が参加する図上演習で、陸海空の三自衛隊の合同で実施された。

 稲田防衛相が2015年に成立した安全保障関連法に基づき初めて、平時から自衛隊が米軍の艦船などを守る武器等防護を、米海軍の補給艦を防護対象に自衛隊 に命じた。
 護衛艦いずもは5月に横須賀基地を出港し、房総半島沖周辺で米海軍の補給艦と合流して四国沖までこの補給艦を守りながら一緒に航行した。  これにはいずもだけでなく、護衛艦さざなみも加わった。

朝鮮半島有事における事前協議

 日本政府筋によると、政府が米国に対し米軍が北朝鮮に対し武力攻撃を行う場合には、在日米軍基地を使用しない場合でも事前協議を行うことを要請し、米 側もこれを受け入れたという。

北朝鮮 BM の撃墜

 小野寺防衛相が8月、北朝鮮による米領グアムへの攻撃は我が国の米軍による抑止力に対する侵害とみなし、集団的自衛権発動の対象になると述べた。

日米共同訓練の実施

 自衛隊と米軍が陸上自衛隊の地対艦誘導弾(SSM)を使った共同訓練を初めて実施することが、2018年夏の米海軍主催による環太平洋合同演習(RIMPAC)で行う 調整に入った。
 米国では今まで沿岸防衛用のSSMは不要としてきたが、米太平洋軍司令官ハリス大将が2017年5月に列島線防衛の新しい方策を検討すべきで米陸上部隊に艦艇 を沈める能力の強化を指示したと発言し、SSMを念頭に陸自から学びたいとも述べた。

 護衛艦さざなみと米空母Ronald Reaganが9月~10月に共同訓練を行った。
 もともと9月に関東の南方から沖縄周辺の海域で訓練を実施する計画を公表していたが、これを3日間延長したもので、日米の艦艇はバシー海峡を抜け南シナ 海に入った。
 海自艦と米空母が20日間にわたって共同で航行するのは異例で、海自によると現時点で確認できる2014年以降では最長だという。

 米海軍と自衛隊の合同演習が東シナ海と日本海で行われた。 この演習には米海軍からNimitzRonald ReaganTheodore Roosevelt の空母3隻、海上自衛隊から護衛艦いせいなずままきなみ、航空自衛隊から小松基地第6航空団のF-15J 2機が参加した。

 日本海で共同演習を実施していた米原子力空母3隻は朝鮮半島周辺の海域を離れたが、このうちRonald Reaganはフィリピン海に移動し、海上自衛隊と の年次演習を始めた。
 Ronald Reaganと海自の演習は米駆逐艦3隻などが加わり沖縄県に近い海域で実施され、米海軍からは14,000名が参加した。

 航空自衛隊が8月、新田原基地所属のF-15 2機と、米空軍のB-1 2機、岩国基地のF-35B 4機が九州周辺の空域で共同訓練を実施したと発表した。 空自戦闘機 とB-1の共同訓練は頻繁に実施されているが、F-35Bが加わったのは初めてである。<
 米空軍第37遠征爆撃飛行隊に所属するB-1B 2機は航空自衛隊のF-15J 2機と尖閣諸島周辺を飛行した。

 航空自衛隊と在日米軍が12月、日本海と東シナ海の空域で戦闘機部隊による共同訓練を実施した。 空自からは築城基地のF-2と那覇基地のF-15がそれぞれ2機 ずつ参加し、在日米軍の嘉手納基地のF-35Aと岩国基地のF/A-18がそれぞれ2機ずつ加わり、対戦闘機の戦術などを擦り合わせた。

日米物品役務相互提供協定成立

 自衛隊が米軍を後方支援する際の手続きを定めた新たな日米物品役務相互提供協定(ACSA)が4月に国会で可決承認された。 2016年3月に施行された安全保障 関連法を反映したもので、日本に直接攻撃がない場合の米軍への弾薬提供や、発進準備中の戦闘機への給油が可能となる。
 海上自衛隊の補給艦が安全保障関連法に基づき、日本海などで北朝鮮のBM発射を警戒する米Aegis艦に燃料補給しているた。 安保法に基づく米軍への給油は 、同任務が可能になった4月以降複数回実施しているという。

(イ) ASEAN 諸国

ASEAN 諸国全体

 防衛省高官が1月、アジア諸国への防衛装備品輸出を拡大し友好国としてのネットワークを構築したと述べた。

 自衛隊の中古装備品を他国に無償または低価格で供与できるようにする改正自衛隊法が5月に可決成立した。
 財政法は、国の財産を「適正な対価なく譲渡、貸し付けてはならない」と規定しているが、今回の改正により財政法の特則を自衛隊法に新設し、自衛隊が使 用した船舶や航空機などの装備品の譲渡を例外扱いとした。  アジア太平洋地域最大規模の多国間合同軍事演習"Cobra Gold"が2月にタイで開始された。  2017年で36回目になる"Cobra Gold"は米タイ両国の共催で毎年 開催されているもので、日本や中国を含む29ヵ国、8,300名が参加してタイ各地で実施される。
 日本からは自衛隊員ら130名が参加し、在外邦人保護に関する訓練などを行う。

 政府がフィリピン、ベトナムに供与した巡視船艇を使用した初の共同訓練を、6月に海上保安庁と両国の海上保安機関との間で実施明した。

 護衛艦いずもが6月に南シナ海で中国と領有権を争うフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイだけでなく、対中関係を重視するカンボジアやラ オスも含め、ASEAN全加盟10ヵ国国の若手士官を招待周辺海域を航行する。
 艦上で勉強会を開き、この海域で起きている情勢の認識や国際法を順守することの重要性をASEAN各国と共有したい考えである。

 ASEANが創設50年に合わせ海軍の連携強化に向けた初の合同演習をタイで行った。 創設50年記念観艦式には米国、中国、ロシアなど合わせて18ヵ国の艦船 が参加し、日本からは護衛艦おおなみが参加した。
 観艦式に先立って現地ではASEANの海軍トップによる会議が行われ、災害時の人道支援や海賊対策で連携を強化することを確認した。

国別防衛協力の状況

 安倍首相が11月にフィリピンのドゥテルテ大統領とマニラで会談し日比首脳会談で防衛協力を確認した。
 防衛省が10月に海上自衛隊がフィリピンに貸与しているTC-90練習機2機を2018年3月末に無償で供与すると発表した。 また3月に新たに貸与する予定だった 別の3機も無償供与になる。
 そのほかフィリピンにはUH-1H 用補用品の無償供与、海上監視レーダの供与などと、P-3Cを派遣した合同訓練や海上保安庁との合同訓練も行われた。

 ベトナムを訪問中の安倍首相が1月にグエン・スアン・フック首相と会談し、海洋安全保障分野での連携や防衛協力の強化で一致した。
 また6月には海上保安庁とベトナム沿岸警備隊がダナン港沖で、同国海上警察と違法操業漁船の取り締まり訓練などを行った。 訓練にはヘリ搭載型巡視船 えちごが参加した。
 更に10月には防衛装備庁がベトナムの防衛技術と装備の協力を目指す協力会議の発会式が行われ、12月からはサイバ分野に精通した航空自衛隊員5名を派遣 してセキュリティ設定などを指導している。  日本が警備強化のためマレーシアに供与した大型巡視船2隻のうち1隻が3月に同国北部ランカウイ島で披露された。
 この巡視船はヘリ搭載可能な大型船で、マレーシアの海上警備当局が保有する最大の船となる。

 マレーシアが、日本政府に退役するP-3Cの供与を求めている。 要求機数は明らかでないが、同国はかつて4機必要と言っていた。

英国、フランス

 英空軍は2016年11月に三沢基地で航空自衛隊と英空軍による戦闘機の共同訓練を実施した。 日本国内で米国以外と訓練するのは初めてだった。

 日英両政府が1月、自衛隊と英軍が弾薬、燃料、食料、輸送などを相互に融通する物品役務相互提供協定(ACSA)を締結した。

 日本政府は英国との防衛協力を進めており、8月に来日した英国のメイ首相は海上自衛隊横須賀基地を訪れ護衛艦いずもに乗艦して、準同盟をアピール した。

 日英両政府が、自衛隊と英軍が互いの国で円滑に活動できるようにするため法的立場を明確にする訪問部隊地位協定(VFA)の締結に向けた協議に入り、12月 ロンドンで開かれる外務防衛閣僚会合(2-plus-2)で共同訓練の強化を確認して2018年中に協議入りした。
 VFAの協議が実現すれば2014年に協議入りし た豪州に次いで二例目となる。

 12月にロンドンで開かれた日英外務防衛閣僚会合(2-plus-2)で、陸上自衛隊と英陸軍が2018年に日本国内で初めて共同訓練を実施することが決まった。
 また2-plus-2では、中国の海洋進出を念頭に東/南シナ海における状況を引き続き懸念と盛り込み、日本政府が推進する「自由で開かれたインド太平洋戦略」を踏 まえインド太平洋地域への英国の関与強化も明記した。

 日仏政府が1月に外務防衛閣僚会合(2-plus-2)をパリで開き、自衛隊と仏軍が燃料や食料などを融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた交渉を 開始することで合意した。
 安倍首相が9月にマクロン仏大統領と会談し、防衛協力を強化することで一致した。 両首脳は交渉加速と防衛装備協力の推進を確認した。

日英米仏共同訓練

 自衛隊が仏軍、米軍、英軍と5月中旬に北マリアナ諸島の米領テニアン島で共同演習を行った。 演習には仏軍からMistral級強襲揚陸艦、英軍からはヘリ2機 、自衛隊 と米軍からは要員が参加した。

(オ) オーストラリア

物品役務相互提供協定の締結

 安倍首相が1月にターンブル豪首相と会談し、自衛隊と豪州軍が互いに弾薬を融通できるようにする新たな物品役務相互提供協定(ACSA)の署名式に立ち会っ た。

 稲田防衛相が4月に防衛省でペイン豪国防相と会談を行った。 会談はで防衛協力の強化などについて話し合い、2018年に日本で初の戦闘機による共同訓練 を実施することで一致した。 定例化を視野に入れているという。

訪問部隊地位協定(VFA)の締結

 豪首相が訪日する2018年1月に、訪問部隊地位協定(VFA)を締結する。

Talisman Saber 演習への参加

 オーストラリアのクイーンズランド州東部で米豪加やニュージーランドが行う"Talisman Saber"演習に陸上自衛隊が初参加した。
 演習では第1空挺団第3普通科大隊の隊員がニュージーランド空軍のヘリから降下し、アラスカ州から参加した米陸軍第25歩兵師団第4BCT(airborne)、豪陸軍 、加陸軍と合流した。

(カ) インド

海洋安全保障の協力強化で合意

 訪米中の河野外相が9月にティラーソン米国務長官、スワラジ印外相と会談し、インド洋でのプレゼンスを強化する中国軍を念頭に自衛隊と米印両軍による地 域国への戦略的寄港を増やすことで一致した。
 自衛隊が7月に初めて正式参加した日米印海上共同訓練など安全保障協力を強化することも確認した。

 日米印外相会談は2015年9月以来2回目で、「航行の自由」や「法の支配」の重要性を確認し、南シナ海で一方的な軍事施設建設を進める中国を牽制した。

防衛装備の取引等に関する協定に調印

 日本とインドが東京で防衛相会談を行い、5月に防衛装備の取引等に関する協定に調印した。

Malabar 演習への参加

 海上自衛隊と米印海軍が参加する合同海上演習"Malabar"が、インド東部チェンナイ港で7月に行われた。 インド東方沖で実弾射撃を含む対空戦、対水上戦、 対潜水艦戦の訓練を行う。
 海自は護衛艦いずもを初めて派遣し、護衛艦さざなみと合わせて隊員約700名が参加し、米空母Nimitzのほか印海軍の空母Vikramaditya も初めて加わった。

日米印豪の連携への動き

 河野外相が9月にティラーソン米国務長官、スワラジ印外相と会談し、インド洋でのプレゼンスを強化する中国軍を念頭に自衛隊と米印両軍による地域国への 戦略的寄港を増やすことで一 致した。
 また自衛隊が7月に初めて正式参加した日米印海上共同訓練など安全保障協力を強化することも確認した。

日米印海軍の合同演習

 北朝鮮に対する警戒活動に当たっている米海軍の空母Ronald Reaganと海上自衛隊の護衛艦が11月に日本海でインド海軍の艦艇と共同訓練を行った。  訓練では3ヵ国の艦艇が航行しながら、通信したり陣形を変えたりする手順を確認した。
 インドの艦艇は10月下旬にウラジオストクでロシア軍との合同演習を実施した帰路であった。

陸、空共同演習の検討

 日印外交筋が4月、陸上と航空自衛隊がインドの陸空軍と共同訓練実施の検討に入ったことを明らかにした。
 同筋によれば、4月にインドを訪問した岡部陸幕長がインドのラワット陸軍参謀長と会談し、陸自と印陸軍の共同訓練を実施することで合意し、空自と印空軍 の共同訓練についてもすでに協議が開始されているという。

インド北東部の開発や道路整備支援

 インドにとって戦略上重要な北東部の開発について、日印政府関係者ら40人が出席した会合が8月にニューデリーで開かれ、日本が支援して道路などの整備を 重点的に進めることで一致した。
 インド東北部は、1914年にチベット政府とイギリス領インド帝国の間で取り決められた国境線「マクマホンライン」の有効性を巡って中印が国境紛争を繰り 返している軍事的要衝で、中国がチベット側で道路、鉄道、空港などの整備を進めているのに対し、インド側では地域のインフラ整備の遅れが問題になっている。

(キ)その他諸国

台 湾

 自民党の鈴木馨祐衆院議員が12月に台北市内で開かれた「台米日三者安全保障対話シンポジウム」で、党内の有志議員で策定を目指している日本版「台湾関 係法」について今後2~3年以内に進展の可能性があると明らかにした。

インド洋周辺国

 自衛隊が2009年から続けているソマリア沖で護衛艦やP-3Cによる海賊対処活動の拠点であるジブチで、ジブチ軍工兵隊への能力構築支援を1月~3月の日程で 実施した。 ジブチ軍との信頼を深める狙いがあり、陸上自衛隊の隊員11人を派遣し、重機の操作方法などを教える。

 安倍首相が3月にモザンビークのニュシ大統領と首相官邸で会談し、海洋安全保障などで協力していくことで一致した。

欧州諸国

 日本とウクライナが防衛技術での協力関係を構築しようとしている。 このための二国間協議を進めることは、8月上旬にウクライナを訪問した真部防衛審議 官とRusnak第一国防次官の間で合意している。

カナダ

 海上自衛隊が12月に本州南方の海域でカナダ海軍の潜水艦1隻と共同訓練をした。 カナダの潜水艦が日本を訪れるのは極めて異例で、11月の海上自衛隊の演 習にも参加した。

トルコ

 河野外相が12月にエルドアン大統領と会談し、東アジアと中東の安全保障を協議する「日トルコ安全保障協議」を新設して2018年1月下旬に局長級の初会合を開 くことで合意した。

中央アジア諸国

 日本、カザフスタンが、防衛交流に関する覚書に署名することで大筋合意に達し、7月中旬にも防衛省政務官をカザフに派遣し覚書に署名する。
 覚書は防衛相の相互訪問や、制服組同士の交流による信頼醸成措置を活発化させることを盛り込むほか、日本政府によるカザフ軍の能力構築支援強化も明記す る。

(ク) 各国沿岸警備隊への協力

アジアの海上保安機関若手幹部育成

 海上保安庁がアジアの海上保安機関の若手幹部らに海上法執行などを教育する海上保安政策課程の募集国を海外7ヵ国に拡大した。
 海上保安政策課程は、海保が政策研究大学院大学などと連携して修士号を取得できる大学院で、各国の海上法執行機関の幹部候補が交流を深めるのも目的と している。

巡視船外交

 安倍政権による「巡視船外交」が本格化している。

インド洋での共同訓練

 安倍首相が4月にスリランカのウィクラマシンハ首相と会談し、海上保安庁とインド沿岸警備隊が実施している共同訓練にスリランカ沿岸警備隊が加 わるこ とで大筋合意した。

キ. B M D

(ア) 脅威の増大

脅威増大の認識

 稲田防衛相が3月、北朝鮮のBM発射が在日米軍への攻撃を想定した訓練だったとの朝鮮中央通信の報道について、新たな脅威の段階に入っていることが明確 になったと語った。

 北朝鮮が3月に発射したBM 4発が落下したのはこれまでで最も日本の本土に近いうえに、4発は南北に80km程度の等間隔で着弾したと見られることから、政府 内からは攻撃能力の向上が著しいと懸念する声が相次いでいて、政府は今後BMD迎撃体制のさらなる強化とともに、国民により迅速に情報を提供する方策の検討 を進める方針である。

 自民党の二階幹事長が7月、普通の予算、普通の年次計画ではなく、しっかりとした対応をしなければならないと述べ、ミサイル対処能力の向上など関連予 算の大幅な拡充を求めていく考えを示した。
 また地方や地域に大きな防空壕を造ることができるかできないかと述べ、日本に着弾する事態を想定した地下シェルター整備の必要性を訴えた。

我が国 BMD 体制の盲点

 我が国のBMDは米国に依存していることから、自衛隊関係者の間では見直しを求める声がある。
 BMDでは早期警戒衛星が発射兆候を探知した米本土から情報は数十秒で防衛省に届くとされるが、早期警戒衛星を持たない我が国は兆候の探知を米軍に依存し ているのが実情なため、早期警戒衛星の情報はどうしてもタイムラグが生じてしまうという。

(イ) BMD 体制の見直し

経費の増大

 防衛省が12月にAegis Ashoreが1個システムの見積額を1,000億円と明らかにしたことから、平成16年度に導入を始めたBMD整備費の累計額が30年度予算案で 2兆円を突破する見通しとなった。

PAC-3 部隊の展開

 防衛省が6月、北朝鮮による相次ぐBM発射を踏まえ、PAC-3の機動展開訓練を実施した。 訓練では第1、第2、第4の3個高射群の部隊が、小牧基地のほか朝霞 駐屯地などに移動展開した。

 防衛省が8月、北朝鮮によるグアム周辺へのBM発射予告を受けて上空通過の可能性がある中国、四国地方の陸上自衛隊出雲、海田市、松山、高知の駐屯地4ヵ 所にPAC-3の展開を完了した。

 北朝鮮が発射したBMが相次いで北海道南部の上空を通過したことを受け、同様のコースを狙ってBMを発射した場合を想定し、落下物などに備えるため、防衛 省が9月にPAC-3を函館駐屯地に展開した。

 航空自衛隊が10月、北朝鮮のBM発射に備え襟裳岬にある空自襟裳分屯基地でPAC-3の展開訓練をした。

米韓との合同 BMD 演習の実施

 海上幕僚監部が2月、米海軍第7艦隊と合同でBMに対処する図上演習を、横須賀基地と佐世保基地で実施した。
 BM発射に対する警戒や迎撃能力を日米で向上させるのが目的で、日米のBMD演習は今回で7回目になる。

 韓国国防省が3月、日米韓3ヶ国が日韓両国の近海でBMDの合同演習を実施すると発表した。 2016年6、11月、2017年1月に次いで4回目になる。
 同省によれば、日米韓のAegis艦のうち、日本近海に海上自衛隊のきりしまと米海軍のCurtis Wilburが、韓国近海に韓国海軍の世宗大王 がそれぞれ展開し、コンピュータを使って共同で探知する。
 日韓間の情報は米軍経由で共有するとした。

住民避難

 政府は3月の秋田県男鹿市を手始めに、ミサイルが発射された際の住民避難訓練を各自治体と実施しているが、これまではミサイルが洋上や山間地に落下する ケースを想定していたのに対し、7月に行われた長崎県での訓練はより人的被害が大きい場合を想定して自衛隊にも参加を要請し、避難誘導やけが人の救助に際 して警察や消防と自衛隊との連携を確認した。

 総務省消防庁が8月、北朝鮮によるグアム周辺にIRBMを発射する計画公表を受け、上空を通過する可能性のある島根、広島、高知各県を含む中国四国地方9県 の全市町村で、Jアラート(全国瞬時警報システム)の訓練を行うことを全都道府県に通知した。

 政府が12月、BM発射を想定した都内では初めてとなる住民避難訓練を2018年1月に東京都文京区で実施すると発表した。

(ウ) SM-3 Block ⅡA の共同開発

 米MDAがハワイ時間2月3日に防衛省、米海軍と協同でSM-3 Block ⅡAの初めての迎撃試験SFTM-01に成功した。  試験ではAegis Baseline 9.C2を装備したDDG 53 John Paul Jonesから発射されたSM-3 Block ⅡAが、Kauai島のPMRFから発射したMRBM標的を撃墜した。

 米MDAと防衛省が6月にSM-3 BlockⅡAの発射試験を行ったが迎撃に失敗した。 迎撃実験失敗の原因についてMDAが7月、人為的ミスが原因だった可能性が高 いことを示唆した。

(エ) Aegis Ashore の導入

高性能 BMDS 導入の検討

 グアム訪問中の稲田防衛相が1月にTHAADを視察し、視察後にTHAAD導入も将来の選択肢の一つだとの考えを示した。

 自民党の安全保障調査会が3月に国防部会との合同会議を党本部で開き、北朝鮮による相次ぐBM発射を受けBMDSの強化に向けた緊急提言をまとめた。
 提言ではTHAADやAegis Ashoreなどの新装備の導入に向けた早期に検討を始め、日本全国を守るに足る十分な数の確保に向けた予算措置を急ぐよう求めた。

Aegis Ashore の導入決定

 防衛省が最新のBMDSを導入する場合の試算をまとめた。 それによるとAegis Ashoreは1個システム800億円程度で、日本全域の防護に2個システム程度が必 要になる。 これに対しTHAADは1個システム1,250億円程度で6個システム必要と言う。

 政府関係者が4月、政府がより多層的なBMD態勢へ拡充するため加える新装備としてAegis Ashoreを優先して検討する方針を固めたことを明らかにした。
 5月には稲田防衛相が、北朝鮮のBM脅威に対抗するためAegis Ashoreを装備する考えを明らかにした。

 小野寺防衛相が8月にマティス国防長官と会談し、Aegis Ashoreを導入する意向を正式に伝え協力を求めた。 マティス長官は協力に応じる考えを示したとい う。

 Aegis Ashoreの導入に向け、防衛省が29年度補正予算案と30年度当初予算案に合わせて37億円程度を要求した。 政府は2個システムを35年度中に配備する ことを目指し、12月にも導入を閣議決定した。  防衛省は補正で30億円弱を確保し、29年度内にも調査などに着手したい考で、更に小野寺防衛相は10日に30年度予算案に7億3,000万円を追加要求したことを 明らかにした。 30年度分は基本設計や建設予定地の測量などに充てる。

 政府は12月に、Aegis Ashoreを2個システム導入し、陸上自衛隊に装備するとすることを閣議決定した。

導入の課題

 防衛省は北朝鮮のミサイル発射に備えて導入を決めたAegis Ashoreを陸上自衛隊に装備する方向で調整に入った。
 陸自が隊員を育て専用部隊をつくるには膨大な時間やコストがかかるうえ、交代制で24時間態勢の警戒監視をするには1個FUあたり100名規模の部隊が必要 との声もある。

 防衛省が12月に、1個システム800億円程度と見積もっていたAegis Ashoreの導入費について、1,000億円弱と修正した。  ただAegis Ashoreに搭載するSM-3 Block ⅡAの能力を生かすには最新鋭のSPY-6 AMDRレーダを備える必要があり、防衛省幹部は更に価格上昇の可能性が十分 あるという。 更にSM-3 Block ⅡAは1発数十億円と言われており、全体の運用コストがさらにかかるのは避けられない。

最優先事項としての取り扱い

 防衛省が8月北朝鮮による飛翔体発射を受けて開かれた党の対策本部役員会で、30年度予算案で関係費を要求するAegis Ashoreについて、最速導入に向けた 準備をしていると説明した。

配備時期、場所

 Aegs Ashoreの配備時期が、5年以上先の2023年度になる見通しである。

 政府がAegis Ashoreの配備先について、秋田、山口両県とする方向で最終調整に入った。 日本海側の陸上自衛隊施設に設置し、陸自主体で運用する。
 候補地には、秋田市の新屋演習場と山口県萩市のむつみ演習場が挙がっている。

(オ) SM-6、NIFC-CA の導入

 政府は2023年度をめどにSM-3 Block ⅡAを発射するAegis Ashore 2基を配備したい考えだが、これにSM-6も搭載してCMにも対処できるようにすることを明ら かにした。 中国の爆撃機が日本周辺での飛行を繰り返すなか、CMによる脅威にも備える必要があると判断した。
 また米軍はAegis艦のほか、陸上設備や航空機をネットワークで統合して瞬時に情報共有するNIFC-CAと呼ばれるシステムを導入しているため、日本の構想も 順次これを導入する。
(カ) JADGE の更新

 防衛省が平成30年度から、BMの落下地点を予測して必要に応じて迎撃を指示する自動警戒管制システム(JADGE)を刷新して演算能力を引き上げ、探知から迎 撃態勢をとるまでの時間を短縮して、ロフテッド軌道のBMなどを撃ち落としやすくする。 このため30年度予算の概算要求に107億円を計上し、34年度の本格 運用開始をめざす。
 複数の目標を瞬時に識別する能力も高め、複数のIRBM同時発射などにも対処しやすくすると共に、SLBMや固体燃料を使ったBMなど、あらかじめ発射の兆候を つかみにくい状況での迎撃精度も向上させる。
(キ) BMDS 整備計画の前倒

 安倍首相が11月に参院本会議での代表質問で、BMDに対応するAegis艦を現在の4隻から平成32年度に倍増させる計画に関し可能な限り前倒しすると述べ、BMD 能力向上を急ぐ考えを示した。
(ク) 将来に向けた研究

DEW の研究

 政府がブースト段階のBMに対し航空機や艦船などから高出力レーザを照射し熱によってミサ イルを変形させるBM迎撃するシステムの開発を検討している。  迎撃ミサイルに比べて安価なうえ多数のBM発射にも対処が可能になる。
 防衛省は30年度概算要求に、迫撃砲弾や小型UAVなどを迎撃対象とする高出力レーザシステムの研究費として87億円を計上した。

EMP/対 EMP 兵器の研究

 菅官房長官が9月、高高度核爆発で強力な電磁波を発生させ、地表近くの電子機器を破壊することができる電磁パルス(EMP)攻撃に北朝鮮が言及したことを受 け、対策の本格的な検討を開始すると表明した。

ク. 近代戦様相への対応

(ア) 宇宙防衛

スペースデブリや衛星破壊兵器の監視

 防衛省が、スペースデブリや衛星破壊兵器を監視する専用の地上レーダを開発し設置する準備を始めた。
 宇宙監視レーダはシステム設計の最終段階で、防衛省は平成30年度予算案概算要求にレーダの整備費を盛り込み、35年度からの運用を目指す。

宇宙監視レーダの設置

 防衛省が中国のASATやスペースデブリを監視する専用レーダを山口県山陽小野田市の海上自衛隊山陽受信所を配備地を決めた。 同市は11月に市内で市民向 けの説明会を開いた。

 防衛省は配備候補地について経度的に静止衛星の周辺を監視することに適している山口県の中から探していたが、周囲に山などの遮蔽物がないためレーダの 性能 が十分発揮できる一方、住宅が少なく電波干渉の影響もない場所にある海自山陽受信所を適地と判断した。

宇宙監視部隊の創設

 防衛省が、宇宙監視専門部隊を航空自衛隊に新設することに向け、準備要員の配置も始めた。

 政府が2020年にも、サイバ・宇宙分野での防衛能力を高めるため、司令部機能を持つ防衛相直轄の統合組織を創設することを、2018年末に見直す予定の防衛 計画の大綱への明記を検討している。
 統合組織のトップには将官を充て、 陸海空三自衛隊から要員を集める。
 3月に発足する陸自部隊を統括する陸上総隊や海自の自衛艦隊、空自の航空総隊と同格とし、サイバ・宇宙分野の権限を集約する。

シュリーバー多国間机上演習参加

 内閣府の宇宙政策委員会が12月にまとめた宇宙基本計画の行程表に、防衛省が平成30年度に人工衛星への攻撃などを想定した米空軍主導の多国間の机上演習 に初めて参加することを盛り込んだ。
 参加するのは米空軍宇宙司令部が2018年秋に行う「シュリーバー演習」で、この演習は2001年に始まり、米英や豪加などが参加して人工衛星などに対する軍 事攻撃やサイバ攻撃などを想定し、対処法などを机上で訓練している。

(イ) 宇宙利用

防衛用通信衛星

 防衛省初のX-band通信衛星を載せたH-2Aが1月に鹿児島県の種子島宇宙センタから打ち上げられた。
 これまで防衛省は商用衛星を利用してきたが、寿命が近づいていることから自前の衛星を32年度末までに3基を打ち上げる。 3基すべての運用が始まると通 信容量は現在の4倍に増える。

準天頂衛星

 日本版GPS衛星「みちびき」の4号機が10月に種子島宇宙センターからH-2Aで打ち上げられ、予定の軌道に投入されて打ち上げは成功した。
 「みちびき」の打ち上げは8月の3号機に続き4基目で、今回の打ち上げにより4基体制が整い2018年春に本格運用が始まればGPSの位置情報の誤差を現在の最 大10mから数センチにまで小さくできるという。

(ウ) サイバ戦

 総務省は8月、手口が多様化しているサイバ攻撃に迅速に対処するため、囮を使って未知の攻撃パターンを早い段階で把握し、被害防止に役立てる実証実験 を始める計画を明らかにした。
 囮となる複数のネットワークはインターネット上に構築される。
ケ. 装備行政

(ア) 研究開発体制の見直し

 自民党の安全保障調査会が6月、防衛産業や技術政策などに関する提言を稲田防衛相に提出した。
 研究開発では、電磁砲など戦闘のあり方を根底から覆すような最先端技術への投資が重要だとした上で、安保に関わる研究開発の司令塔となる「安全保障・ 科学技 術戦略会議」を内閣直轄で設けるべきだとしている。
(イ) 装備品取得と新装備

航空機

 2016年4月に初飛行したX-2技術検証機は、ステルス性などで目標を上回る成果を挙げ飛行試験を完了した。

 防衛省は2030年代に装備化する次期戦闘機を国産するか否かを2018年4月に決定するが、国産戦闘機F-3の最新 案である26DMUはF-22より大型になる可能性がある。

 IHI社が開発しているエンジンは極めて細くなり、3D可動式ノズルが取り付けられる模様である。

 2030年代中頃に退役するF-2 92機の後継となる将来戦闘機は、2019年4月からの次期防に盛り込むためには国内開発するか否かの決定を2018年6~8月に行う 必要があるが、ロイタ通信は決定が延期される見通しであると報じた。
 防衛装備庁の報道官が11月、「次期戦闘機F-3の決定延期」との報道を認めた上、まだ何も決まっていないことを明らかにした。

 政府が決定した平成30年度の防衛予算案に、将来戦闘機F-3の国産開発に必要なエ ンジン試験装置の取得費を計上することを見送った。
 BMDの強化など足元の脅威の対応に追われるなか、先の長いF-3計画の優 先順位が下がっていることが背景にある。

 国内で組み立てられたF-35Aの1号機が6月に三菱重工業小牧南工場でロールアウトした。

 政府関係者が12月、防衛省が護衛艦いずもを空母に改修する検討に入ったことを明らかにした。 米海兵隊のF-35Bが離着艦できるようにするが、航 空自衛隊もF-35Bを導入する方向で、将来は空自機を搭載する構想も浮上している。
 防衛省はF-35BをF-15Jの旧式機体の後継として導入する方向で検討している。

 日本が発注したE-2D 2機の一番機が11月13日に初飛行した。 2機は 2018年中に納入される。

艦 艇

 護衛艦いずもとにF-35Bを搭載し空母にする検討が進んでいると報じられ、ロイタ通信はいずもスキージャンプ台が設置されると報じているが、Defense Newsはいずもは248mの飛行甲板を有している ため滑走離陸が可能でスキージャンプ台取り付けの必要はないと報じている。

 防衛省は平成30年度に従来より船体を小さくした新型護衛艦2隻の建造に着手する。 基本装備を維持し速力は 通常の30ktとしながら排水量は2割少なくし、建造コストも従来の700億円から500億円程度に減らす。 建造期間は4年とする。
 次期護衛艦は排水量3,900tで、速力30ktの性能を持ち、主装備はMk 45 Mod 4 5吋62口径砲とVLSとキャニスタ発射型対艦ミサイル、SeaRAMで戦術データリンク や衛星通信、可変深度ソナーも装備し、最終的には20隻が建造されると見られる。

 海上自衛隊が8隻保有し、4隻を建造中のそうりゅう型潜水艦のうちSS511とSS512の2隻に、世界で初めてリチウ ムイオン電池を搭載する。

 そうりゅう型潜水艦の8番艦せきりゅう、DDH 184 かが 、掃海艦あわじが就役した。  防衛省が現中期でGlobal Hawk 3機を導入する計画であるが、当初の見積もりで510億円だった導入コストがレー ダ機器整備などに追加費用がかかるとして、23%増の630億円に膨らむことが判明した。
 同省の規則は、導入コスト15%増で事業の見直し、25%増で中止の検討をそれぞれ義務付けているため、同省は中止も含めて見直しを検討している。

 航空自衛隊が3月に美保基地で、C-2配備開始の記念式典を行った。 同基地は3月に3機が配備されていて、 2018年9月まで運用試験を行う。

 防衛省が96式APCの後継となる8x8装輪APCの試作車を公表した。

 米国防安全保障協力局(DSCA)が10月、航空自衛隊へのAIM-120C-7 56発を売却することを承認したと発表した。
 空自は既に2014年に購入した AIM-120C-5 17発を装備している。

(ウ) Mast Asia 2017 展示装備品

艦 艇

 6月に東京で開かれたMAST Asia 2017展で、防衛装備庁が三胴型多目的艦案を公表した。 この艦は排水量1,500tで、速力35kt以上の性能を持つ。

 MAST Asia 2017展で三井造船が、おおすみ型の後継となるLDPの案を公表した。 提案LPDは排水量16,000tで200名の兵員とV-22 Osprey 2機を収納する格納庫 を持つ。

 英国のBMT社が三井造船と共同でMAST Asia 2017展に海上自衛隊向けCaimen-90高速揚陸艇を公開した。 Caimen-90は排水量203tで90tの積載能力がある。

 MAST Asia 2017展で三井造船が海上自衛隊の要求に応じた戦車揚陸艇(LCT)4種類を公開した。 そのうち3種類は英国のBMT社との共同で、残りの1種類は三井 造船独自の設計である。
 4種類は排水量が70t、116t、750t、1,000tで、全長は25m、30m、76m、80mになっている。

水陸両用戦闘車両

 MAST Asia 2017展でMHI社が、陸上自衛隊に提案している水陸両用戦闘車の詳細を公表した。 MHI-AVは乗員15名で、水上航行間は車輪及び履帯を引き上げて 水の抵抗を軽減するという。

その他の装備

 MAST Asia 2017展でNECが水中接敵警報装置(UIWS)を展示した。 展示したUIWSは従来システムを小型化したもので、1km以内で360゚の捕捉ができる。

(エ) 武器輸出推進

インドへの輸出商談

 政府が進めてきた救難飛行艇US-2のインドへの輸出交渉は交渉開始から5年たつが、機体価格の高さなどを理由にインド側の熱意が冷めつつあり、頓挫する恐 れが出てきた。

 防衛省が、US-2の後継機の検討に本格着手した。 後継機はUS-2の性能を維持しながら機体の価格を引き下げる方針で、名称はUS-3が考えられる。
 後継機開発は政府の財政負担を減らすと同時に、インドや東南アジア諸国への輸出促進や安全保障面での協力強化にもつなげる狙いがある。

 インド海軍がProject 751としてAIP推進の潜水艦6隻の建造について世界の6社にRfIを発簡した。
 印海軍は各社からの回答を待ってRfPを発簡することになるが、関心を示していた6社のうちのスペインのNavantia社と共にMHI/KHIグループが撤退した。

東南アジア諸国への働きかけ

 防衛省が東南アジア諸国への装備輸出を進めるため、各国の国防当局者を集めた会議を6月に開いた。 会議はMAST 2017の機会を利用して行われ、フィリピン 、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアの当局者が出席した。
 会議で各国から具体的な要望を聞き、需要を掘り起こしたい考えである。

 タイと日本の装備品の輸出や技術移転に関する合意が締結に近づいている。 Jane'sは防衛生産協力には対空レーダ、通信システムのほか、P-1やC-2も対象 になると見ている。
 防衛省が航空自衛隊の地上防空レーダFPS-3のタイへの輸出に向け、9月下旬に予定される入札に参加する。

中東地域への武器輸出推進努力

 政府がC-2輸送機のUAEへの輸出する検討をしている。 UAE側からC-2複数機を購入したいとの意向が届いているため、防衛省や経済産業省が技術情報を提供し ており、今後は価格や購入機数を含めた交渉を本格化させており、輸出に必要な「防衛装備品技術移転協定」の交渉も近く始める。
 UAEのドバイで11月に中東最大の航空展示会「ドバイ航空展」が始まり、日本からはC-2の実機を海外で初めて展示し、各国の防衛関係者に売り込みを図る。

 C-2はUAEのほかニュージーランドなどへの輸出も見込まれている。

 防衛省が8月、装備品の輸出を念頭にUAEとの防衛協力を検討していることを認めた。 日本政府は2016年末にサウジアラビアと同様のMoUを結んでいる。

その他の武器輸出推進努力

 KHI社が防衛省と連携して、ニュージーランドにP-3K2及びC-130の後継としてP-1とC-2を売り込んでいたが、P-1はP-8の導入を内定したと見られることから敗 色濃厚となったことが7月に分かった。

(オ) 技術協力、共同開発

英国との戦闘機搭載次世代ミサイルの共同研究

 小野寺防衛相が11月、AAMの日英共同研究を29年度で終了して30年度は共同開発に格上げして試作を開始すると述べ、共同開発に踏み出す意向を示した。
 共同研究を2018年に共同開発に移行させるため、30年度予算に73億円を計上し、2020年代初期の量産開始を目指す。

英国との次世代ステルス機を共同研究

 日本と英国が3月、次世代ステルス機を共同研究することについての覚書を締結した。 2017年秋までに共同開発に進めるかどうかを判断する。 将来戦闘機 の日英共同開発が不発に終わっても、BAE Systems社がMHIに協力する可能性がある。

 ただ英国はTyphoonの退役を2040年と見ているうえ、2年後に開発を開始するには資金がない。

機雷探知技術の日仏共同研究

 稲田防衛相が1月にパリでルドリアン仏国防相と会談し、水中に設置された機雷の探知技術について日仏両国で共同研究を開始することで合意した。  共同研究では両国が強みを持つ技術を持ち寄り、機雷探知能力を備えた遠隔操作が可能なUUVの開発を目指す。

イタリアとの防衛装備品技術移転協定締結

 岸田外相とピノッティ伊国防相が5月に会談し、防衛装備品の共同開発や生産を可能とする防衛装備品の技術移転協定に署名した。
 日本政府が同様の協定に署名したのは米国や英国などに続き7ヵ国目になる。

ドイツとの防衛装備品技術移転協定締結

 日独政府が7月に防衛装備品技術移転協定を結んだ。 陸自の離島防衛強化に備え、戦車と装甲車の機能を持つ機動戦闘車の開発などに力を入れるのに必要と 判断したためで、戦車技術力の高いドイツと武器開発することは今後のプラスになる。

ウクライナとの防衛技術協力

 日本とウクライナが防衛技術の協力を進めようとしている。

(カ) 防衛技術基盤の強化

安全保障技術研究推進制度を国際的な制度へ拡張?

 防衛装備庁が、防衛装備品に応用できる先端研究を大学などから公募して研究委託費を出す「安全保障技術研究推進制度」を国際的な制度へ拡張する検討を 始めたとの報道について、防衛省がこれを否定した。

学術会議の反応

 日本学術会議が3月に幹事会を開き、軍事目的のための科学研究をしないことを掲げた従来方針を継承する新声明を決定した。

(キ) 業界再編の影響

 三菱、川崎、三井など日本の造船各社は、民間船舶の受注減による損失を抑えるため造船部門の大幅削減を検討している。 川崎重工は4月に造船部門を30%に 縮小して一部を中国に移すことを明らかにした。
 三菱重工業は12月に造船及び艦船修理部門を再編し業務の効率化を図る計画を発表した。 計画では今まで3社あった関連子会社を2018年1月1日に三菱造船と MHIマリン社の2社に再編する。
(ク) 金属材料品質に疑問の影響

 経済産業省が10月、品質に疑問がある神戸製鋼所製の銅やアルミニウムなどの金属材料が複数の防衛企業で使用されていたことを明らかにした。


2 係争地域の情勢

(1) イラク、シリア地域

ア. シリア内戦

(ア) ロシアの介入

a. ロシアの派兵と増強

ロシア軍の全面介入

 ロシア軍参謀総長が7月24日、シリアでの停戦を監視するためロシア軍憲兵隊をダマスカス東側郊外に配置したと発表した。
 ロシア軍は2016年にはAleppoにも憲兵部隊を配置している。(MT 07/24)

ロシア軍の一部撤退?

 タス通信などが、ロシア連邦軍参謀総長が1月6日、シリアに展開しているロシア軍部隊の規模縮小を開始したことを明らかにしたと報じた。
 シリア沖の地中海に展開している艦隊をまず帰還させるという。(ロイタ 01/06)

 シリア全土で2016年12月月30日から停戦が実施されていることを受けて、ロシア軍が1月6日にシリア沖に派遣していた空母Admiral Kuznetsovなど一部の艦 船を撤収すると発表し、1月下旬に開催を検討している和平協議に向けた環境整備と受け止められている。
 ロシア軍が空母を作戦に投入したのは初めてだが、艦載機2機が着艦に失敗して海中に墜落するなど、空母の運用能力の問題も露呈した。 (NHK 01/07)
【註】 :  1985年に建造されて以来、2015年中頃に3ヶ月にわたるセミオーバーホールを受けた以外、大規模な修理改修は行われていないAdmiral Kuznetsovは、2017年 初期から大規模改修を行うと報じれており、今回の撤収はこのためと見られ、記事が言う「和平協議に向けた環境整備」ではないと思われる。

ロシア軍の増強

 IAI社の子会社であるImageSat Internationl (iSi)社が1月5日にウェブサイト上に、同国のEros B衛星が2016年12月28日に撮影した画像を公開した。
 その画像にはシリアのLatakiaにあるロシア軍のHmeymin基地にIskanderのTEL 2両が写っている。 IskanderのTELには射程500kmのSS-26が2発搭載できる。 (DN 01/06)

b. ロシア軍等の支援下でのシリア政府軍の優勢

 ロシア軍参謀本部作戦部長が2月7日、ロシア軍に支援されたシリア政府軍が、シリア中央部の砂漠地帯への進撃を開始したことを明らかにした。
 それによるとシリア政府軍はTadmur西方60kmのTiyas (T4)航空基地に迫っているという。 (JDW 02/15)

 ロシア軍の支援を受けたアサド政権は、2016年12月に北部のAleppoを完全に制圧して軍事的に優位にたち、反政府勢力が拠点としてきた西部の都市Homus郊外のワエ ル地区も包囲しているが、反政府勢力とその家族合わせて1万人以上が退去することで先週合意し、3月18日にバスでシリア北部にある反政府勢力の別の支配地域に向け て退去を始めた。
 シリア国営通信は現地の知事の話として、赤新月社やロシアの憲兵などが問題が起きないよう退去に立ち会っていると報じた。 退去が完了するまでには数週間かか ると見られる。(NHK 03/19)

 シリア反体制派と住民が6月12日、政権軍とイランが支援する民兵組織がシリア南部ダルアーの反体制派が支配する地域への攻撃を激化していることを明らかにし た。 政権軍は容器に金属片などを詰め込んだ「たる爆弾」の投下などを続けているという。
 反体制派「自由シリア軍」の南部組織のスポークスマンは、政権軍が精鋭部隊のほか、レバノンのヒズボラを投入していると述べた。 (ロイタ 06/12)

 AP通信が9月12日、シリア北西部ヘメイミーム空軍基地でのロシア軍当局者発言として、シリア内戦で優勢となったアサド政権軍が反体制派やイスラム過激派から全 土の85%を奪還したと明らかにしたと報じた。
 ロシア軍と、イランの指揮下にある民兵組織などがアサド政権軍を支援している一方、反体制派の自由シリア軍(FSA)は米国からの支援打ち切りが決定しており劣勢 が顕著になっている。 (東京 09/12)
【註】 :  FSAはトルコが支援している反政府勢力で、米国が支援しているクルド軍主力の民主シリア軍(SDF)とは敵対関係にある。

c. ロシア軍の戦闘加入

CM による攻撃の実施

 InterFax通信などが5月31日に、ロシア国防省が地中海に展開するロシア艦からCM 4発をシリア中部パルミラ近郊のISIS拠点に向け発射したと発表したと報じた。
 攻撃は事前に米国、トルコ、イスラエルに通知していたという。
 ロシアは2016年11月にも地中海の艦船からCMでシリア攻撃を実施していた。 (産経 05/31)
 ロシア国防省が6月23日、地中海上のフリゲート艦2隻と潜水艦1隻から、シリアHama県のISISに対しKalibr長距離CM 6発を発射したと発表した。 (MT 06/24)

AEW&C 機の投入

 イスラエルの衛星ImageSat Internarional Eros Bが5月3日に撮影した画像で、ロシアのA-50 AEW&C少なくとも1機が、シリアのLatakia航空基地に駐機しているの が確認された。
 A-50の最新型A-50Uは、航空目標であれば650km、地上目標は300kmから捕捉できる能力を有する。 (DN 05/07)

ロシア SAM の防空能力限界を露呈

 米海軍の駆逐艦2隻が4月7日にシリアのAl-Shayratに向けTomahawk 59発を発射したが、Tomahawkは地中海上空からレバノンを経て侵入したため、アースカバチャー の影響で北方80kmのLatakiaに展開しているロシアのS-400は迎撃できなかった。
 更にTartusにいるとされているS-300も Tomahawkを迎撃できなかった。 (JDW 04/19)

d. ロシア主導の和平工作

 ロシアなどの仲介によるシリア和平を巡るアサド政権と反体制派の第2回会合が2月16日、カザフスタンの首都アスタナで開かれた。
 InterFax通信が露外交筋の話として、ロシア、トルコ、イランの3ヵ国が参加する停戦監視団の創設で合意したと報じた。
 会合には国連と米国、ヨルダンの代表もオブザーバとして出席した。(毎日 02/17)

 シリア上空での安全空域設定についてロシア、トルコ、イランがカザフスタンの首都Astanaで合意したが、米国務省はこれについて慎重な見方を示している。 (JDW 05/10)

(イ) 不期遭遇回避のための米露協定

 ロシア国防省が4月8日、米国がAl-Shayratに対しCM攻撃を行ったことに反発して、米露間で結ばれていたシリア上空での飛行安全に関するMoUを留保すると発表し た。 (JDW 04/19)

 ロシアの通信社が同国防衛省の発表として、ゲラシモフ露連邦軍参謀総長とダンフォード米統合参謀会議議長が5月6日、シリア上空での衝突を回避する共同覚書の 履行を完全再開することで合意したと報じた。
 ロシアがシリア政府軍支援のため空爆を開始したのちの2015年10月に米露両国は飛行の安全に関する覚書に署名していた。 (ロイタ 05/08)

 米国務省高官はシリア全土での停戦合意が極めて困難なため、数ヵ月前にロシアやヨルダンとの間で南西部に限定した停戦協議を始めたと明らかにし、ISIS掃討の ためロシアによるアサド政権支援を事実上黙認した。
 トランプ大統領がプーチン大統領とシリア南西部での停戦で合意したのは、ウクライナ問題や米大統領選干渉疑惑で衝突してきた両国が決定的対立を避けるため協 力の糸口を探った結果だ。米側はロシアとの協力を拡大し、6年以上続くシリア内戦の全面終結につなげたい考えだが、同国のアサド大統領の処遇で隔たりが残って いる。(産経 07/09)

(ウ) 有志連合軍とアサド政権軍の直接交戦

シリア南部での戦闘

 米軍主導の有志連合軍が5月18日、シリア南部でヨルダンとの国境地帯に位置するタンフ近郊で同日、アサド政権派の部隊を空爆したことを明らかにした。 米軍 や反体制派の拠点に向けた進軍をやめなかったために攻撃したという。
 有志連合はシリアでISISを攻撃対象としており、アサド政権や支持勢力への攻撃は極めてまれである。 (時事 05/19)

 米軍主導の有志国連合が5月18日にシリア政府軍を空爆した。 空爆が行われたのはシリア、イラク、ヨルダンの国境が接するAl-Tanf近くで、この空爆で戦車4両 、ZSU-23-4 1両、その他車両12両が破壊された。(JDW 05/24)

 ヨルダンとの国境に近いシリア南部のTanf訓練基地北西17哩の地点で、この地域が非交戦地域であるとして再三撤退を求めているのに対し、イランの支援を受けシ リア政府軍をバックとするグループが最近宿営を行っていることから、米軍がこの基地への火力を強化している。 (S&S 06/01)

 米軍主導の有志連合が6月6日、シリア南部タンフ近郊で同日、有志連合側の陣地に向け進撃してきたアサド政権派の部隊に攻撃を加えたと発表した。 シリアで ISIS掃討戦を展開する有志連合は、5月18日にもタンフ近郊でアサド政権派の部隊を空爆している。
 有志連合によると、戦車や迫撃砲で武装したアサド政権派の60名以上が、現地に設定された安全地帯内へ進攻し、数回にわたり警告したにもかかわらず前進を続け 有志連合側に脅威が迫ったため攻撃した。 迫撃砲2門と対空火器1基を破壊し、戦車1両を損傷させたという。 (時事 06/07)

 ロイタ通信が米軍主導の有志連合報道官の話として6月8日、有志連合がシリア南部タンフ近郊で同日、アサド政権派のUAVから爆撃を受けたと発表した。
 それによると、政権派が有志連合に攻撃を加えたのは初めてで、死傷者はなく米軍機がこのUAVを撃墜した。
 このUAVは米空軍のMQ-1 Predatorと同程度の大きさで、タンフ近郊を巡回中だった有志連合部隊を空爆した。 (時事 06/09)

 CNNが、米軍がシリア南部のTanf付近にHIMARSロケット弾発射機を投入したと報じた。 HIMARSは射程185哩のロケット弾を発射できる。 (DN 06/14)
【註】 :  HIMARSはM270 MLRSの装輪型といえるもので、M270 MLRSが2個搭載する6発入りロケット弾パック1個をFMTVに搭載するほか、M270が2発搭載できるATACMSを1発搭載 できる。

 米軍主導の有志連合軍報道官が6月1日、ヨルダン及びイラクとの国境に近いシリアのAl-Tanfにある訓練基地が、いまだにシリア政府軍系の武装勢力の脅威に晒さ れていると述べた。 Al-Tanfでは政府軍系の武装勢力の前進を阻止するため5月18日に有志連合軍が空爆を行っている。
 イランのメディアはヒズボラがAl-Tanfに部隊を送り込んだと報じている。(JDW 06/07)

米軍機によるシリア軍機の撃墜とその波紋

 米軍のF/A-18が6月18日にシリアのTabqa近くで米国の支援するシリア民主軍(SDF)に攻撃を加えたシリア政府軍のSu-22を撃墜した。
 この地域では6月8日にも、SDFを攻撃したヒズボラが飛ばしたと見られるUAVを米戦闘機が撃墜している。 (S&S 06/18)

 米海軍のF/A-18 Super Honetがシリアで、シリア民主軍(SDF)部隊近くを爆撃したシリア政府軍のSu-22を撃墜した翌6月19日、ロシア国防省が米国と結んだ両国軍 機の不期遭遇を回避する協定を棚上げすると共に、ユーフラテス川西岸を飛行する飛翔体すべてを目標と認識し追尾すると発表した。 (MT 06/19)

 米軍がシリア政府軍機を撃墜したことと、イランがシリア東部にミサイル攻撃を行ったことで情勢が複雑化してきたため、トランプ政権は沈静化に躍起になってい る。
 最初に米政府高官として公式発言した統参本部議長のダンフォード海兵大将は、情勢を回復させるためには通信連絡の確保が必須であると述べており、また米大統 領府報道官は、同盟国を守るとしながらも、紛争を鎮静化させるためにも相互の通信連絡線の確保が必要であると述べている。 (S&S 06/19)

 ロシアの通信社が6月19日、米国の戦闘機によるシリア軍機撃墜を受けてロシア国防省が、露空軍がシリア上空における飛翔体はすべて敵と見なすとの立場を示し たと報じた。
 報道によると露国防省は、上空での不測の事態を回避するための米国との通信を19日から停止すると明らかにした。 (ロイタ 06/20)

 ロシアがユーフラテス川西岸を飛行する飛翔体すべてを目標と認識し追尾すると脅したことに対し、米統参本部議長のダンフォード海兵大将が6月19日、シリアで 行動しているすべての米軍は自衛能力を持つと反論した。
 その反面大将は、19日朝現在、両国間の通信は保たれているとも述べた。(S&S 06/19)

 シリア政府軍のSu-22が6月18日に米海軍のF/A-18Eに撃墜されたことを受け、ロシアが米軍との衝突回避のため協定を再度留保すると発表した。
 有志国連合軍が6月19日に発表したところによると、Su-22がAl-Tabqahの南に位置する町で民主シリア軍(SDF )が確保しているJa'Dinに対し爆弾を投下したことか ら米軍機が即座に撃墜したという。 (JDW 06/28)

シリア東部での戦闘

 ロシア国防省が6月9日、ロシアに支援されたアサド政権軍がイラクとの国境に近いシリア東部で米軍を包囲したことを明らかにした。
 現場はISISが堅固に保持しているBoujamal及びDeir el-Zourの方向のシリア東部でユーフラテス川沿いの地域であるという。 (MT 06/09)

(エ) アルカイダ系武装組織の台頭

 内戦が続くシリアの北部イドリブ県で、アルカイダ系のHTSが台頭している。
 イドリブ県はアサド政権に抵抗する反体制派の数少ない拠点の一つだが、6月には反体制派の有力組織Ahrar al-Shamが撤退し、代わりにHTSが県都イドリブ市を制 圧して急速に存在感を高めている。
 アルジャジーラなどによると、HTSはアルカイダから分離したシリア征服戦線(旧ヌスラ戦線)を前身とする組織で、他のグループも吸収する形で2017年1月に結成 された。
 トルコや湾岸諸国の支援を受けているとされるAhrar al-Shamと以前は連携していた時期もあったが、2017年7月に衝突し、民間人15人を含む92人が死亡し、その後 7月下旬にはHTSがイドリブ県での支配を確立している。(毎日 09/13)
イ. ISIS との戦い

(ア) イラクにおける対 ISIS 戦

a. モスル奪還作戦

チグリス川東岸の制圧

 ロイタ通信によると、モスルの奪還作戦を進めるイラク軍の対テロ部隊報道官が1月8日、2016年10月の作戦開始以降初めて市内を流れるチグリス川の河岸に到達し たと明らかにした。
 イラク軍はチグリス川を挟んで東西に二分されているモスルの東部で制圧地域を拡大し、この日チグリス川の東岸まで進出したという。 (時事 01/09)

 米主導連合軍の広報官が1月4日、2016年12月29日に開始されたモスルに対する第二波攻撃は大きな成果を上げていると発表した。
 イラク特殊部隊は2016年11月上旬からモスル東部に対し攻撃をしていたが、第二段階では第9機甲師団が南東部から、第16歩兵師団が北部から攻勢に参加している。 (JDW 01/11)

 イラク軍対テロ部隊司令官が1月18日、モスルの東部地区をISISの支配から解放したと宣言した。
 東部の北端部分では依然、ISISが活動しているものの、司令官は主要な地区は制圧したと強調した。(時事 01/18)

 イラクのアバディ首相が1月24日、政府軍などがモスル市東部をISISの実効支配から完全に解放したと宣言した。 首相は、治安部隊はチグリス川東岸からダーイ シュ(ISISの別称)を追い出し、政府庁舎にイラク国旗を掲げたと述べた。 政府軍や連邦警察は今後、モスル市西部の攻略を進める構えである。 (毎日 01/25)

ISIS による UAV を用いた攻撃

 モスル奪還作戦でイラク軍の指導に当たっている米陸軍第101空挺師団第2旅団戦闘団長のSylvia大佐が、ISISが民生品の小型UAVを用いて手榴弾程度の爆弾を投下し ていることを明らかにした。(MT 01/11)

 ISISが小型UAVの攻撃用への転用を進めていることから、イラク軍と有志国連合は無差別攻撃を仕掛けていると警戒しており、モスル奪還作戦中にISISの攻撃用UAV 10機以上を撃墜している。
 クルド軍によると、モスル郊外のバシカ近くで2016年10月、クルド軍が撃ち落としたISISのUAVを調べた結果、爆弾が搭載されていたことが判明した。 北部ドホー ク周辺でも2016年10月に撃墜されたISISのUAVが爆発しクルド兵2人が死亡した。
 当局者は毎日新聞の取材に対し、ISISは2016年から偵察用UAVを使い始め、前線から2~4kmほど相手側に入った地域偵察活動を行っていたが、攻撃用UAVが確認され たのは初めてだったと証言した。(毎日 02/21)

チグリス川西岸での戦闘

 イラク軍の作戦司令官が、ISISが支配するモスル西部の奪還作戦の準備を開始したと語った。
 現地TVは1月24日に司令官の発言として、シーア派民兵組織「人民動員隊」がチグリス川の西岸地区の奪還に向けた作戦を支援するため、2~3日以内に作戦を開始 する準備をしていると報じた。(ロイタ 01/24)

 イラクのアバディ首相が2月19日に国営TVでモスルの奪還作戦について、新たな軍事作戦を開始すると発表した。
 今回の作戦でイラク軍などは、米軍など有志連合による空爆支援を受けながら西側への進撃を開始し、ISISが拠点としていた2つの村を制圧したという。 (NHK 02/19)

 ISISからのモスル奪還を目指すイラク軍が、米軍などの支援を受けてモスルの東側を制圧したのに続き、2月19日からはチグリス川の西側へ進撃しており、23日に はISISが抵抗の拠点としていた空港を制圧し、今後は市街戦に移ることになった。(NHK 02/24)

 米軍の空爆と地上からの砲撃支援を受けたイラク軍、治安部隊、エリート対テロ部隊と即応部隊が2月26日にISISが支配するモスルの西部地区に進攻し、チグリス川 に架かる橋の確保を目指して攻撃の手を強めている。(ロイタ 02/27)

 モスルの奪還に向かうイラク軍各部隊が2月27日、米軍の支援下にチグリス川に架かる同市最南端の橋の確保を目指して戦闘を継続している。
 モスルのアル・ジョサク地区から1kmにあるこの橋は、チグリス川対岸の同市東部からの補給路と増援部隊のルートにもなり、西部地区に立てこもるISIS戦闘員に圧 力を掛けることができる。(ロイタ 02/28)

 モスル奪還を目指すイラク軍や米軍主導の有志国連合は、チグリス川に架かる橋を掌握し、ISISが抵抗する同市西部地区の中心部に向けて慎重に兵を進めている。
 ここ2日間は悪天候のため部隊は足踏みしていたが、3月5日になって政府軍即応部隊の一部が旧市街地にある政府庁舎から数百米のとろこまで進出した。 (ロイタ 03/06)

モスル制圧へ

 イラク軍が3月7日、モスルにある本庁舎からISISを排除したと明らかにした。
 イラク軍広報官によると、同軍の特殊部隊は夜半に行政区域の建物と周辺の合同庁舎を急襲し、数十人のダーイシュ(ISISのアラビア語名)を殺害したと述べた。 (ロイタ 03/07)

 イラク警察幹部が3月14日、モスル西部地区の攻防戦で警察の部隊が市内の駅をISISから奪還したことを明らかにした。
 部隊は同時に、駅付近にある同じく旧市街のバスターミナルも制圧した。(時事 03/15)

 イラク軍が5月16日、ISISの国内最大拠点であるモスルで西部の9割を奪還したと発表した。
 2016年10月に始まったモスル作戦で、イラク軍は2017年1月に東部を奪還し、西部で激しい戦闘が続いているが、イラク軍はモスルの完全制圧は近いとの認識を示 した。(日経 05/17)

 イラク軍が6月18日、ISISの戦闘員が立てこもるイラク北部モスルの旧市街の制圧に向け、本格的な攻撃を開始したと発表した。
 モスルはイラク軍や米軍主導の有志国連合が2016年10月に奪還作戦を開始し、現在までに市内のほぼ9割を制圧し、残るのは旧市街地域のみとなっている。 (毎日 06/18)

 イラク軍が6月21日、ISIS掃討作戦が最終局面を迎えているモスルで、ISISが旧市街にある歴史的なイスラム礼拝所「ヌーリ・モスク」を爆破したと明らかにした。
 このモスクはISISが支配の象徴とみなす重要拠点だが、そこを自ら破壊し敗走したことはISISが完全に追い詰められ、イラク軍などによるモスル奪還は目前である ことを示している。(時事 06/22)

 イラク軍が6月27日に、最終局面にあるモスル旧市街でのISIS掃討作戦をさらに進展させ、アバディ首相は勝利が目前に迫っていると表明した。
 イラク軍によると、旧市街に残るISIS戦闘員は最大でも350人で、住民を盾にしたり自爆攻撃などを仕掛けたりするため作戦に時間がかかっているが、モスル奪還は 数日内に完了する見通しという。(ロイタ 06/28)

モスル制圧宣言

 イラクのアバディ首相が7月9日に声明を発表し、2014年6月にISISが制圧しイラク最大の拠点として支配してきたモスルの解放を宣言した。
 イラク軍は2016年10月にモスル奪還作戦を開始し、チグリス川を挟んで市街地が東西に分かれるモスルのうち東部は2017年1月に奪い返し、翌2月に西部へ進んで いた。
 6月18日には旧市街に突入し、ISISは支配の象徴だったヌーリ・モスクを自ら爆破するなど追い詰められ、逃げる市民に紛れて自爆テロを多発させて抗戦したが、 陥落は時間の問題となっていた。(時事 07/09)

モスル制圧以降の戦闘

 複数のイラク政府軍機が8月15日、ISISが支配する北部の要衝タルアファルに空爆を行った。 空爆は地上部隊による奪還作戦の準備段階として実施された。
 7月にモスルが陥落した後、タルアファルがISISの主要拠点となっている。(時事 08/16)

 イラクのアバディ首相が8月20日、ISISが支配している北西部Tar Afarの奪還作戦開始を宣言した。
 軍や対テロ部隊が地上から進攻し、米軍主導の有志連合が空爆で支援する。 有志連合の推計では、Tar AfarにいるISIS構成員は1000人程度で、ほかに市民ら約 5万人が残っているとみられる。
 7月に陥落した北部モスルの西方80kmに位置するTar Afarは、シリア北部ラッカとモスルを結ぶ戦略的要衝となっている。 (時事 08/20)

 イラク軍が8月27日、北西部Tar AfarをISISから奪還したとの声明を発表した。
 イラク軍によるTar AfarでのISIS掃討作戦は8月20日に始まったことから8日間でISISを制圧したことになり、ISISの指揮系統や戦力が弱体化しているとの見解も 出ている。(産経 08/28)

 イラクのアバディ首相が8月31日に声明を出し、ISISが支配してきた北部の要衝タルアファルをイラク治安部隊が奪還し、モスルを州都とする北部ニナワ州全域を 手中に収めたと宣言した。
 ISISはイラク領内で、モスル南方のハウィジャなどでなお勢力を維持しているが、劣勢は鮮明になった。 (時事 08/31)

 イラクのアバディ首相が9月21日、ISISの拠点が残るキルクーク県西部のハウィジャ地区に対し攻撃を開始したと発表した。
 イラク軍は、シリアとの国境地帯に近い地域でもISISに対する軍事作戦を続けており、これで北部のモスル奪還後もISISの支配が残るイラクの主な地域すべてで攻 撃が始まったことになる。(NHK 09/21)

 イラクのアバディ首相が9月21日にISISの拠点の一つである北部キルクーク県ハウィジャの奪還作戦を開始したと発表したが、キルクーク県の議会はクルド人自治区 が独立の賛否を問う住民投票に参加することを決めている。
 油田地帯のキルクーク県は公式にはイラク中央政府の管轄だがクルド側も帰属を主張しており、クルド人のほかアラブ人、トルクメン人なども居住している。
 イラク軍とクルド自治政府軍Peshmergaはこれまで対ISISでは協力を続けてきたが、投票直前というタイミングでのイラク軍による作戦開始を受けPeshmergaの幹部 は地元メディアに、今回はクルド側は作戦に参加しないと明言し、クルド側地域へのISIS流入を防ぐことに集中するとの考えを示した。 (毎日 09/22)

b. シリア国境での戦闘

シリア国境地帯の確保

 イランに支援されたイラクのシーア派武装組織Popular Mobilizarion Foecesが5月19日、シリアとの国境から40kmの位置にあるBaaj市に攻勢をかけ、周辺の村々 を制圧してシリアとの国境に達した。(S&S 05/29)

 イラクのシーア派の民兵組織である人民動員軍(Popular Mobilization Forces)が17日、イラク北東部のシリアの国境の要点をISISから奪還した。
 イラク及び有志国連合軍の航空機に支援された部族軍と国境警備軍は、Al-Waleedの国境検問所を確保した。 (MT 06/17)
【註】 :  Al-Waleed検問所があるのは、ヨルダンとの国境にも近いイラクの最西端で、シリア側がTanfである。

 イラク軍が10月26日、国内におけるISISの最後の支配地域であるシリア国境に近い西部での作戦を開始した。 イラク軍などを支援している米軍主導の有志連合は 、国境沿いでの作戦を「最後の大きな戦い」と捉えており、ISIS掃討 作戦の正念場となる。
 イラク軍は、ISISが2014年以来実効支配していた国内の地域の9割以上を奪還している。(時事 10/26)

 イラク軍が11月3日朝、ISISが支配してきた西部アンバール県のシリアとの国境に接する町カイムに進駐した。 3日夜にはアバディ首相が声明を出し、軍はこれま でにない速さでカイムを解放したとしてカイムの奪還を宣言した。
 カイムはイラクからシリアにつながる幹線道路が通り、これまでISISが両国の往来に使ってきた要衝で、イラク軍が奪還したことでISISは国境に沿って分断された 形になり軍事的に一層追い詰められた。(NHK 11/04)

 イラク軍が11月17日、シリアとの国境に近い西部の町ラワをISISから奪還したと発表した。 ラワはイラク国内でISISが拠点としていた最後の町で、イラク軍を 支援する有志連合で調整役を担う米大統領特使もツイッターで、偽りのイスラム国家の終わりは近いと書き込み、作戦が順調に進んでいるとして自信を示した。
 イラク軍は11月初めに奪還した国境沿いの町カイムと同様に、ラワについても大きな抵抗を受けることなく奪還に成功し、今後は完全な掃討を目指して国境沿い の砂漠地帯で攻勢をかけることにしている。(NHK 11/18)

越境爆撃

 AFP通信によると、イラク空軍が2月24日に西部のシリア国境地帯の町カイムに近いシリア領内で空爆を実施した。 イラク空軍機が対ISIL戦でシリア領内を攻撃し たのは初めてとみられる。
 バグダッドで起きた爆弾テロ事件に関与した疑いのあるISIL戦闘員を標的にしたという。 (時事 02/24)

 米国防総省報道部長が2月24日、イラク軍が初めてシリア領内で実施したISILの拠点への空爆で、米軍が情報面で支援したことを明らかにした。 (東京 02/25)

c. 米軍の本格活動

空爆の規模拡大

 米軍主力の有志連合がシリアとイラクにおけるISIS掃討作戦で、トランプ米政権誕生後6ヵ月間の空爆回数がオバマ前政権最後の半年と比べて4割増加したことが、 時事通信社の集計で分かった。
 有志連合はオバマ前大統領退任前の6ヵ月間に3,319回の空爆を実施したが、トランプ政権下の6ヵ月間の空爆回数は4,652回に上った。
 また2017年1~6月に投下された爆弾やミサイルの量は23,413発で、オバマ政権下の2016年7~12月から5割増加している。 (時事 07/24)

 ラッカとモスルでの攻勢を強めるなか、米国は空軍などがISISに対して投下した武器が1月に3,440発、2月に3,600発と併せて7,000発を超えた。
 "Operaion Inherent Resolve"が開始されてから2年半以上の間で最高であったのは2015年11月の3,242発であった。 (MT 03/20)

米特殊部隊の投入

 イラク政府軍が1月5日、ISIS掃討のため西部アンバル州の対シリア国境に近い地区で攻勢を開始した。 攻略目標はアナ、ラワなどの町で、軍高官によると作戦に は陸軍第7師団のほか、警察、ISISと対立する部族の戦闘員が参加し、米軍が主導する有志連合の空軍から支援を受けている。
 イラク政府軍は2016年、アンバル州で主要都市のファルージャなどをISISから奪還している。(時事 01/06)

米地上軍の投入

 トランプ米大統領が1月28日にマティス国防長官にISIS打倒の計画案を30日以内に提出するよう命じたが、CNN TVが国防総省当局者の話として2月15日、国防総省は シリア北部への地上戦闘部隊の派遣を進言すると報じた。 承認されれば数週間以内に実現する可能性があるという。
 オバマ前政権は地上部隊派遣に慎重で、正式に決まれば大きな政策転換となる。
 現在、地元部隊の訓練や助言を目的としてシリアに500名、イラクに5,000名の米軍特殊部隊などが展開している。 (産経 02/16)

 人員数は明らかでないが、第82空挺師団第2旅団戦闘団(2/82 BCT)からの部隊が新たにモスルの作戦に投入される。 ノースカロライナ州のFt. Braggに駐屯する2/82 CBTは1,700名がイラクとクウェートに派遣されているが残る2,500名の一部が新規に投入されるとみられる。
 現在米地上軍はイラクに5,262名、シリアに503名派遣されていることになっているが実際にはイラクに6,000名近くが派遣されているとみられ、シリアにも数百名が 2~3週間以内に増派される。
 これに2/82 BCTからの増援が加わると、この地域の米地上軍は10,000名近くになる。(MT 03/26)

大規模な火力支援

 2016年4月以来イラクに展開していた米陸軍第101空挺師団第2歩兵旅団戦闘団(IBCT)団長のSylvia大佐が5月3日、モスル奪還作戦で陸軍砲兵部隊は6,000発を発射 したと述べた。
 同大佐によると、陸軍砲兵部隊はこの戦闘に、HIMARS、M777牽引砲、M109A6 Paladin SPHを投入しているという。 (JDW 05/10)

クウェートに予備部隊を派遣

 米当局者がロイタに明らかにしたところによると、トランプ政権はISISとの戦いの予備部隊としてクウェートに最大1,000名の米軍を派遣することを検討している。
 クウェート派遣予備部隊を展開する地域の最終的な判断は現地の司令官に委ねるという。(ロイタ 03/09)

米露軍の偶発的交戦への懸念

 米国防総省広報官が3月8日、シリアのManbijで通視距離にまで接近して行動いる米露軍が不測の事態を避けるため、お互いに国旗をたなびかせ頻繁に通信連絡を行っ ていることを明らかにした。(S&S 03/15)

 ISIS掃討作戦を主導する有志連合軍報道官が9月21日、米露両軍幹部がシリアにおける偶発的衝突を回避するために会談したと発表した。
 シリアに展開する両軍が通信回線を使わずに直接会談するのは初めてである。
 米軍が支援するクルド軍主力のシリア民主軍(SDF)とロシアが支援するアサド政権軍はISISからの東部デリゾール解放を目指して個別に軍事作戦を実施しており、SDF と政権軍の偶発的衝突が米ロ間の紛争に拡大する危険が高まっていた。(時事 09/22)

(イ) シリアにおける対 ISIS 戦

a. シリア北部での戦闘

 米国防総省報道官が1月9日、シリア東部Deir al-Zour近くで米特殊部隊がISIS指導者を襲撃しISIS戦闘員を殺害したが、米軍側には被害はなかったと発表した。
 この作戦を行ったのは統合特殊戦軍(JSOC)隷下の外征攻撃部隊 (ETF)で、在英のシリア人権監視団によるとISIS戦闘員25名が殺害されたという。 (S&S 01/09)
b. 米国の関与拡大

米軍投入規模の拡大

 米国防総省の報道官が3月6日、シリア北部で各種部隊を支援するため米軍の小部隊が展開したことを明らかにした。
 部隊が展開しているのはManbijで、米軍はStryker ACVやHumveeに米国旗を掲げ、その存在を誇示しているという。 (S&S 03/06)

 米国防総省は、米特殊部隊数百名をシリアで現地部隊の指導に当たらせているものの正規軍の投入をためらっていたが、2016年10月にサンディエゴを出航した揚陸 艦から第11海兵遠征隊の一部を上陸させラッカ奪回作戦に投入した。 投入されたのは第4海兵隊第1大隊の揚陸隊でM777 155mm砲で火力支援を行う。
 また先週末(3月4~5日)には陸軍の精鋭第75レンジャー連隊もManbijにStrykerで進駐した。 (S&S 03/08)
【註】 :  ラッカ奪回作戦で米軍が目立った行動を取り始めたのは、ラッカ作戦へのクルドの参加に強く反対しているトルコとクルドの武力衝突を避けるためではないか。
 特にクルド軍が支配しているManbijについては、トルコが「al-Babを完全制圧したら次の目標はManbijだ」と公言していることから、そこに米軍もいることを誇示 し、両者の衝突を回避する必要があると思われる。

 米国が支援するシリア民主軍(SDF)の報道官が3月9日、米軍500名がシリアに派遣されているとした上で、海兵隊と陸軍の特殊部隊400名の増派部隊が到着したと語っ た。
 増派は一時的な措置で、前線での役割を担うことはない見通しだという。(ロイタ 03/10)

 Washington Post紙が3月15日、トランプ政権がラッカ奪還作戦を支援するため、最大で1,000名の米軍をシリア北部に追加派遣する方針だと報じた。
 同紙によると、米軍はシリアに派遣済みの特殊作戦部隊500名に加えて、陸軍レンジャ部隊250名と海兵隊の砲兵隊200名を新たに派遣しているが、今回追加派遣され るのは、海兵隊の第24海兵遠征部隊と陸軍第82空挺師団の一部とみられている。
 追加派遣される部隊は、ラッカ奪還作戦の主力を担うクルド系とアラブ系の民兵から成る シリア民主軍(SDF)を支援する。 (産経 03/16)

 2016年5月から8月まで行われたシリアのManbij攻撃で、米空軍はMQ-1B Predatorと MQ-9 Reaperを500出撃近く参加させ、Hellfireを300発以上発射した。 (JDW 04/19)

 米海兵隊が9月29日、シリアとイラクでISISと戦っているシリアのアラブ人部隊とクルド軍を支援するため、ノースカロライナ州Camp Lejeuneに駐屯している 第10海兵隊第1大隊を派遣したと発表した。
 第2海兵遠征軍によると、この部隊は既に展開している部隊と交代することになると言う。 (MT 09/29)

米国の武器援助

 米国防総省はFY18予算要求に、ISISと戦うイラクとシリアの戦闘員への訓練と武器供与に$1.8Bを要求している。 この中にはイラク治安部隊への訓練と武器供与 に$445Mが計上されており、武器の損耗更新としてHummvee 200両 、軽装甲車80両、FMTVトラック25両、装甲ドーザー10両などに$329M、その輸送費に$60Mなどが計上 されている。(DN 06/01)

c. クルド軍の活躍

 シリアでラッカ西方の町Tabqa市近郊にあるISISが確保していたTishirinダムを、クルド軍主力の民主シリア軍(SDF)が3月24日に奪還した。 クルド軍はその3日前 に米軍機で空輸された。(MT 03/25)

 クルド軍主力の民主シリア軍(SDF)が3月26日、ラッカ西方45kmの戦略拠点であるTabqa航空基地を制圧し、現在ラッカの北方10kmに迫っている。
 今回の作戦では米軍が砲兵での支援のほか、数百名規模の兵員輸送で支援している。(S&S 03/26)

 クルド軍を主力とする民主シリア軍(SDF)は既に、ISISが首都とするAl-Raqqahと東側のDayr al-Zawrを結ぶユーフラテス川北岸の道路を遮断しており、両市を結ぶ 橋梁も空爆で使用不可能になっている。
 ISISにとって唯一ユーフラテス川を横切れるAl-Tabqahダムも、3月24日にSDFがその北端に到達しているが、SDFの進出に際してはその2日前に米軍がSDF部隊を空輸 すると共に、AH-64 Apache及び海兵隊の砲兵部隊が火力支援を行っている。(JDW 04/12)

d. ラッカ攻略準備の戦闘

 米国防総省報道部長が2月17日、ISISが首都と位置付けているシリア北部ラッカから、ISISの「官僚」ら指導部の退避を開始していることを明らかにした。
 同部長は、ISISの多くの官僚や行政担当者らによる組織的な退避としたうえで、彼らはラッカの陥落が近いと気付いていると述べた。 (産経 02/18)

 在英のシリア人権監視団が3月6日の声明で、ラッカの攻略を目指すクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF)が、ラッカと東部デリゾール県を結ぶ道路を遮断したことを 明らかにした。
 これにより、ISISはラッカからの脱出が困難になった。(時事 03/06)

 シリア民主軍(SDF)の報道官が3月9日、SDFがラッカに接近しているとし、2~3週間以内にラッカを包囲する見通しと明らかにした。
(ロイタ 03/10)

 米軍のAH-64によるCASと海兵隊の砲兵火力に支援された民主シリア軍(SDF)は敵の後方に降着し、3月21~22日の夜間にAl-Taqbahダムを確保した。
 この結果SDFはユーフラテス川を自由に横断できるようになり、Al-RaqqahのISISほ南と東から遮断することができるようになった。 (JDW 03/29)

 クルド軍主力の民主シリア軍(SDF)が4月30日、Raqqaの北東40kmで3月に確保したTabqaダムに隣接しISISが死守しているTabqaの近隣6ヶ所を制圧した。 米国はシリ ア北部での戦いで、SDFが最も信頼できる相手と見ている。(MT 04/30)

 米国が支援するクルド軍主力の民主シリア軍(SDF)が5月1日、TabqaをISISから奪還したと発表した。
 これによりSDFは、まもなくRaqqaへの攻勢を開始するとみられる。(S&S 05/01)

 米国が支援する民主シリア軍(SDF)が5月11日、Al-Tabqahダムを確保したと発表した。 この作戦は3月22日に開始されていた。
 これによりSDFはユーフラテス河を横断しAl-Raqqahに東から接近する経路を確保した。(JDW 05/17)

 クルド軍を主力とするシリア民主軍(SDF)の報道官が6月3日、ラッカ攻略戦が数日中に開始されると述べた。 それによるとSDFはすでにラッカの北側と東側を支 配下に入れており、3日にはラッカ南側を流れるユーフラテス川南岸まで進出したという。
 また、英国に拠点を置くシリア人権監視団によると、SDFはラッカ南西26kmに位置するMansouraの90%を支配下に入れているという。 (MT 06/03)

 シリアでISISと戦うクルド軍主力のシリア民主軍(SDF)の報道官が6月3日、ISISが首都と称するラッカの奪還を目指す最終作戦を数日中に開始すると語った。
 既にSDF部隊がラッカから数㌔に迫り、北と東からの補給路を封鎖しているという。(時事 06/04)

e. ラッカへの突入

 在英のシリア人権監視団などによると、シリアで米軍の支援を受けるクルド軍を主力としたシリア民主軍 (SDF)が6月6日、ISISが2014年に首都と位置付け支配を 続けてきたラッカに突入した。 米軍主導の有志連合も断続的に空爆を行い、SDFは既にラッカ東部の一部地域を制圧した。
 SDFによれば、部隊はラッカの北、西、東の三方向から市内に向けて進撃し、東部メシュレブ地区にある検問所や建物を掌握した。 西部や北部の郊外でも激しい 衝突が続いているという。(時事 06/06)

 シリアのクルド軍YPGを主力とするシリア民主軍(SDF)が6月6日、ISISが首都としているRaqqaへの攻撃を開始した。 Raqqaには30万人の住民と米国防総省が4,000 と見積もるISIS戦闘員がいる。
 一方のSDFは55,000名で、その半数がYPG、残りがアラブ人、キリスト教徒、トルコ人などで構成されている。 また米国防総省はシリア駐留の米軍を海兵隊の砲 兵隊、陸軍のAH-64 Apacheなど500名と発表しているが、実際には1,000名と見られる。(S&S 06/06)

 米軍主導の有志連合報道官が、米特殊作戦部隊SOFがラッカ市内に入ったと述べた。 SOFは最前線近くにいるが、直接戦闘行動は行っていないという。
 シリア人権監視団によると、クルド軍が6月8日にラッカ東部のal Mashlabをほとんど制圧したようで、のちに米軍もこれを確認している。 (MT 06/09)

 シリアのクルド軍を主力とするシリア民主軍(SDF)が6月6日、ISISが首都と位置づけるラッカの制圧に向けた最終的な作戦の開始を宣言し、東と西、それに北の3 方向から部隊を前進させている。
 このうち米国などが集中的に空爆を続けてきたラッカの西部では、11日にSDFが市内に入り司令官を殺害したとという。 SDFはラッカの東部でも道路や住宅など に仕掛けられた爆弾を取り除きながら少し ずつ中心部に向かい前進している。
 一方、北部ではISISがバリケードやざんごうを設置して激しく抵抗し、一進一退の攻防が続いているもようである。 (NHK 06/12)

 在英のシリア人権監視団が6月26日、ラッカの奪還作戦で米軍の支援を受けるクルド軍主力のシリア民主軍(SDF)がラッカの1/4分を奪還したことを明らかにした。 (時事 06/26)

 在英のシリア人権監視団が、クルド軍主力のシリア民主軍(SDF)が6月29日にラッカからデリゾール県などに撤退するための最後の脱出路を遮断したことを明らかに した。 これによりラッカを完全に包囲することができるという。
 SDFは6月6日にラッカに突入し一部地区を制圧したが、その後は進撃の速度は低下している。(時事 06/30)

 ISISの掃討を目指す米国主導の有志連合が7月3日、米軍の支援するシリア民主軍(SDF)がラッカの旧市街に進攻したと発表した。
 有志連合が旧市街を囲むラフィカの城壁の2ヵ所を砲撃したことで、突入が可能になったという。 (ロイタ 07/04)

 米主導の有志国連合軍報道官が7月27日、民主シリア軍(SDF)がラッカの45%を制圧したと述べた。 ラッカ市街に東西から迫るクルド女性軍YPJを含むSDF部隊は、 27日に数百名の部隊が数十発の迫撃砲弾を撃ち込むなどの激戦を行った。
 YPJ報道官によるとラッカはISISが仕掛けた爆発物だらけで、人間の盾と相まってSDFの進撃速度を遅らせているという。 (S&S 07/27)

 米国が支援するクルド軍主力のシリア民主軍(SDF)が8月11日、ラッカ市街に向け東西から前進していたSDF部隊がつながり、ISISのユーフラテス河へのアクセスを 遮断したと発表した。(S&S 08/11)

f. ラッカの制圧

 AFP通信によると、ISIS掃討作戦を行っているクルド人主力の民兵組織シリア民主軍(SDF)の報道担当者はが9月1日、ラッカの旧市街を完全に制圧したと宣言した。
 SDF報道担当者は、われわれはISISの軍事拠点が集中する『治安地区』を目前にしていると戦況を説明した。 (時事 09/01)

 在英のシリア人権監視団が9月20日、ISIS掃討作戦を続けるクルド軍主力のシリア民主軍(SDF)が、ラッカの90%を制圧したことを明らかにした。
 攻勢を受けるISIS戦闘員は、市中心部に追い詰められているという。(時事 09/20)

 シリアのクルド軍YPGが、クルド軍を主力としたシリア民主軍(SDF)が9月20日にラッカ北部への攻撃を開始し、同市の80%を制圧したと発表した。 (MT 09/20)

 米国が支援しているクルド軍を主力とする民主シリア軍(SDF)の報道官が、SDFが現在ラッカ総攻撃を準備中で、ラッカを巡る攻防が最終段階に入ったことを明らか にした。
 SDFの報道官はAP通信に対し、戦闘は7~10日間に及ぶとの見通しを示した。
 SDFは現在ラッカの80%を制圧している。(MT 10/09)

 ロイタ通信などによると、シリアで活動するクルド軍を主力とするシリア民主軍(SDF)が10月17日にISISが首都と位置付けるシリア北部ラッカを制圧した。
 SDFは数日前に地元の部族指導者と協議しISIS戦闘員の一部の退去を認めたが、投降を拒んだ外国人戦闘員ら200人が抗戦していた。
 現地からの情報によると、SDFは17日にISIS戦闘員が立てこもっていた市内のスタジアムと病院を制圧したが、周辺には地雷も多く残り、残党が潜んでいる可能 性もあるという。(毎日 10/17)

 クルド軍を主力としたシリア民主軍(SDF)が10月20日、ISISが首都と称していたラッカの解放を正式に宣言した。
 SDFは17日にラッカでの対ISISIS作戦を終え、約4ヵ月に及ぶ戦闘の末に制圧を果たしていた。(時事 10/20)

g. デリゾール県での攻防

ISIS がアレッポ県最後の支配地域から撤退

 在英のシリア人権監視団が6月30日、ISISがシリア北部アレッポ県の最後の支配地域から撤退したと発表した。 AFP通信によればシリア軍筋も撤退の事実を認めた。
 シリア政府軍が29日夜に中部ハマ県と北部ラッカ県を結ぶ道路を制圧したことが、残っていたISIS戦闘員の逃走を促すことになったという。 (時事 06/30)

クルド軍の進出

 クルド軍を主力とするSDFが、ラッカの攻略作戦を続け旧市街などを制圧しているが、この部隊は9月9日にラッカと並んでISISの重要拠点となっているシリア東部 のデリゾール県に対し北側から攻勢を開始したことを明らかにした。
 デリゾール県ではアサド政権軍が中心都市の制圧に向けてすでに西側から部隊を進めていて、9日にはISISが資金源としてきた油田の一つを奪還したという。 (NHK 09/10)

 米軍の支援を受けたシリアのSDFが9月23日、シリア東部のガス田地域をISISから確保したと発表した。 確保したのはConocoとal-Izbaのガス田で、SDFはDeir el-Zour県のユーフラテス河東岸を確保した。
 これに対しシリア政府軍は同県のユーフラテス河西岸を確保しており、両軍にとって次の目標は油田地帯であるal-Omarになる。 (MT 09/24)

 民主シリア軍(SDF)の主力を成すクルド軍YPGの広報官が12月3日、SDFが米軍及びロシア軍による空地からの支援を受け、ユーフラテス川東岸の都市al-Salihiyaを 確保したと発表した。
 ロシア軍からの支援を受けたことを明らかにしたのは、マティス米国防長官がYPGへの武器支援を終了すると発表した直後に行われた。 (S&S 12/03)

h. シリア政府軍の攻勢

ロシアの支援を受けた攻勢

 シリア政府が9月5日、政府軍が東部の都市Dayr al-ZawrでISISの包囲を突破したと発表した。
 SANAニュース社は、政府軍は同市の西側で包囲を突破し、7日には食料と医薬品を積載した輸送隊が同市内に入ったと報じた。 (JDW 09/13)

 ロシアが空爆とCM攻撃を行った翌日の10月6日、シリア政府軍がISISが未だに拠点としているシリア東部の村Mayadeenに対し攻撃を開始した。
 Mayadeenに対しては、ロシアの潜水艦2隻が地中海から10発のCM攻撃を行った。(S&S 10/06)

 在英のシリア人権監視団によると、シリアのアサド政権軍部隊が10月6日、東部デリゾール県マヤディーンへの進攻を開始した。
 マヤディーンは、ISISの幹部や戦闘員がラッカなどから多数逃げ込みISISの新たな拠点になっているとされている。 (時事 10/07)

SDF との先陣争い

 シリア国営メディアによると、アサド政権軍がロシア軍の空爆支援を受けながらISISが占拠していた東部Deir el-Zour県Mayadeenの進攻を10月6日に開始し、わ ずか1週間余りで14日に奪還した。
 Deir el-Zour県では政権軍とクルド軍主力のシリア民主軍(SDF)が別々にISIS掃討作戦を続けており、ISISの支配領域が急速に縮小している。 Mayadeenには ISISの構成員が陥落寸前の都市から大勢逃げ込み、新たな拠点になっているとされていた。(時事 10/14)

 シリアでのISIS掃討作戦は、ラッカなどの激戦地から敗走してきたISIS戦闘員が逃げ込み新たな戦闘拠点となっているイラクとの国境に近い油田地帯デリゾール 県に焦点が移る。 この地域は砂漠が広がるため、完全掃討に手間取るとの見方も強く、デリゾールの攻略は難航する可能性もある。
 デリゾール県には、ラッカ攻略を果たしたシリア民主軍(SDF)が兵力を移動させて挑む方針で、ロイタ通信によるとSDF報道官は18日にラッカでの戦闘を終えた部 隊の大半はデリゾールに向かうと述べ、部隊の増強を明言した。
 一方、 政権軍も14日にISISの拠点とされた同県マヤディーンを奪還し、SDFに先んじる形で支配権確保を急いでいる。
 シリア屈指の油田地帯であり、掌握すれば戦略的にも経済的にも大きな戦果となることから、アサド政権軍とSDFはそれぞれ西と北から、デリゾール県で別々に 掃討戦を実施している。(時事 10/19)

 シリア国営メディアによると、ロシア軍などの支援を受けながら掃討作戦を続けていたアサド政権軍が11月3日、東部の要衝デリゾールからISISを一掃し、市全域 を制圧したと宣言した。 この結果シリアでISISが占拠するのはイラク国境近くなどごく一部を残すだけとなった。
 米軍主導の有志連合が支援するクルド軍を主力としたシリア民主軍(SDF)も、デリゾール県で 政権軍とは別の方向からISIS攻略を続けている。 (時事 11/03)

 ロイタ通信やヒズボラ系のメディアが11月8日、シリアのアサド政権軍がISISの支配していた東部デリゾール県アブカマルを制圧したと伝えた。
 アブカマルは、シリア国内でISISが依然抵抗を続けていた最後の拠点都市で、政権軍が奪還すればISISはシリアからほぼ一掃されることになる。 ただ、シリア 人権監視団は制圧の情報を否定しており、シリア国営通信も奪還を報じていない。
 アブカマル奪還作戦には、アサド政権軍や支援するロシア軍のほかイラクのシーア派民兵も越境して参加したとの情報もある。 (時事 11/09)

ISIS の逆襲

 在英のシリア人権監視団が、シリアのアサド政権軍が11月9日に完全制圧を宣言した東部アブカマルで、ISISが待ち伏せ攻撃を仕掛け、11日までに市街地のほぼ 全域を再び占拠したことを明らかにした。
 監視団によると、ISISは敗走したと見せかけ、9日夜に政権軍や政権支援部隊を待ち伏せて攻撃した。(時事 11/11)

 在英のシリア人権監視団が12月9日、ISISがアルカイダ系の流れをくむ別の過激派組織「シリア解放機構」との衝突の末、シリア北西部イドリブ県の村バシクンを掌 握したと述べた。 同県にISISが進出するのは約4年ぶりという。
 ただ、シリア領内でISISが現在支配する地域は全体のごく一部にすぎず、イラクでは9日にアバディ首相が対ISIS戦の終結を宣言している。 (時事 12/10)

(ウ) トルコのロシアとの共同

al-Bab 作戦での亀裂

 トルコ国防相が1月4日、シリアにおけるトルコ軍の作戦に対する支援を制限している米国に対し、米軍のIncirlic航空基地使用に疑義を呈した。
 両国間の緊張は最近のal-Babでの作戦で高まっていた。(S&S 01/05)

 米主導の対ISIS有志国連合の報道官が1月17日、連合軍が16日と17日にal Bab近郊で4回にわたりISISの部隊やAPCに対して空爆を行ったことを明らかにした。
 米国は当初、トルコが主導する対ISIS戦への支援を控えていた。(S&S 01/17)

ロシアと共同で空爆実施

 ロシア国防省が1月18日、トルコ空軍とアレッポの近郊で、ISIS に対する初の共同空爆を行ったと発表した。
 空爆はアサド政権との合意に基づいて行われ、露・トルコの爆撃機など17機が36目標を攻撃したという。 (産経 01/19)

 トルコとロシアが1月18日に、12日に行われた両国間での合意に基づき、al-Babの戦闘で36目標に対して協同して空爆を行った。 この作戦はシリア政府も承認して いる。
 作戦にはロシア側からSu-24M 4機、Su-25 4機、Su-34 1機が、トルコ側からF-16とF-4がそれぞれ4機参加した。 (JDW 01/25)

ロシアへの政治的接近

 プーチン大統領が3月10日、モスクワでトルコのエルドアン大統領と会談し、軍事、経済両面での協力を強化することで一致した。
 内戦が続くシリア情勢でも、アサド政権を後押しするロシアは反政権勢力の後ろ盾であるトルコと対立してきたが、最近は和平協議を共同で仲介するなど連携を強 めている。(日経 03/11)

 プーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が3月10日にモスクワで首脳会談を行い、シリア情勢をめぐって協力を拡大することを確認するなど、関係の正常化をア ピールした。
 会談のあとプーチン大統領は、シリア情勢をめぐりロシアとトルコの仲介で停戦が達成されただけでなく、政権側と反政府勢力の直接対話が始まったと述べ、政治 解決に向けた両国の役割を評価した。
 一方エルドアン大統領は、ロシアから天然ガスを輸入するためのパイプラインの建設計画が進んでいることを歓迎したうえで、ロシアの支援によってトルコに原子 力発電所を建設する計画についても推進していく考えを示した。(NHK 03/11)

トルコ、ロシア、イランの3ヵ国停戦合意

 トルコ外務省が9月15日、トルコ、ロシア、イランの3ヵ国が14~15日にカザフスタンで協議し、シリア北西部イドリブの「安全地帯」に停戦監視部隊を展開するこ とで合意したと発表した。 ロイタ通信はロシア側の情報として 3ヵ国がそれぞれ500人派遣すると報じた。
 3ヵ国は5月にシリア国内4ヵ所に交戦や空爆を禁じる「安全地帯」設置で合意していたが、具体的な区域の線引きや監視体制などの調整が遅れていたが、イドリ ブ を除く3ヵ所ではロシアが独自に仲介するなどして停戦が発効している。(日経 09/16)

(オ) イランの直接介入

MRBMによる ISIS に対する攻撃

 イラン革命防衛隊が6月18日、テヘランの国会議事堂や廟に対するテロの報復として、シリア東部のDier el-Zour州のISIS拠点に対して複数のMRBMによる攻撃を行 ったと発表した。
 ミサイルはイランのKurdistan州及びKermanshah州から発射されたという。 (S&S 06/18)

 イランは6月18日夜に、シリア東部のISIS拠点に対しBM数発を発射したが、これはサウジアラビアと米国に対するメッセージであるという。 (MT 06/19)

 イランが1988年以来初めてBMを実戦使用したが、7発発射したうち目標に達したのは1発だけだった。
 イランは6月18~19日に射程700kmのFateh-110を発展したZolfaghar 7発をシリアの目標に向けて発射したが目標に達したのは1発だけで、3発はイラク国内に落下 したという。(JDW 06/28)

 イラン革命防衛隊(IRGC)が6月19日にイラン東部からシリア西部のISISに向けて6発発射したZolfaghars BMが目標手前に落下したとの報道について、IRGCの宇宙航 空司令官が6月25日に、BMのブースタが目標の100km程度手前に落下したのをBMが落下したと勘違いしたものだとこの報道を否定した。 (JDW 07/05)

イラン革命防衛隊 UAV の展開

 米空軍のF-15Eがシリア上空で6月にイラン製のShahed 129 UAV 2機を撃墜した。
 イラン革命防衛隊は2014年以来Shahed 129を5機がシリアに展開しているが、そのうちの1機は故障で使用できなくなり、更に3機が2017年に空中戦で失われている。
 6月8日にはイランのUAVが、米軍が訓練を行っているal-Tanfにある自由シリア軍の基地の近くをSadid 345小型誘導爆弾で攻撃したが米軍のF-15がAIM-120で撃墜 した。 また別のShahed 129 1機はパキス タン空軍のJF-17により撃墜された。(JDW 08/14)

(カ) レバノンの対 ISIS

 レバノン国営通信などが、同国軍が8月19日に北東部のシリア国境付近の一部地域を掌握するISISの掃討作戦を開始したと発表したと報じた。
 一方、レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラはシリア政権軍と共に国境付近のシリア側で対ISIS作戦を始めたと表明した。 レバノン軍報道官は、ヒズボラやシ リア軍と調整はしていないとしている。(東京 08/19)

 米英の反対にもかかわらずレバノンのヒズボラがISISと停戦協定を結んだため、レバノン/シリア国境に追い詰められていたISIS戦闘員と家族が、シリア東部でイ ラクとの国境に近いAl-Bukamalにバスで移動してしまい、レバノン政府軍が勝利を収めることができなくなってしまった。 (JDW 09/06)

ウ. クルドの勢力拡張と独立問題

(ア) クルド独立問題

a. クルドの独立志向

 イラクで続くISISの掃討作戦の一翼を担うクルド人治安部隊Peshmergaのモハメド副参謀総長がクルド人自治区の中心都市アルビルでインタビューに応じ、対ISIS戦 でのPeshmergaの貢献がクルド人国家の独立に結び付くと強調した。
 Peshmergaはモスルの奪還作戦でイラク軍の後方支援や、自治区外にあるモスルから逃れた人々が殺到する避難民キャンプの保護などを主な任務としている。
 副参謀総長は国際社会に対し、自治政府やPeshmergaへの直接支援の拡充を求めた。(時事 01/29)
b. イラクでの独立への動き

独立の是非を問う住民投票

 イラクのクルド自治政府のバルザニ議長が6月7日にツイッターで、独立の是非を問う住民投票を9月25日に実施する方針を表明した。 バルザニ氏の側近もツイッ ターに投稿し、住民投票はキルクーク、マクムール、シンジャル、カナキンの4ヵ所で行うと説明した。
 ただ、イラク政府は住民投票実施に強く反対する公算が大きく、シーア派系の政治運動組織であるイラク・イスラム最高評議会のアンマール・ハキーム議長は、 クルド勢力が大規模油田を抱えるキルクークを編入することがないよう警告を発している。(ロイタ 06/08)

 イラク北部のクルド人自治区は9月25日に、イラクからの独立を問う住民投票を計画しているが、住民投票の真意について自治政府のバルザニ議長が率いるクルド 民主党の対外交渉本部長は、独立は悲願だとした上で、個人的見解としながらも2018年の独立を目指し準備を進めたいと述べた。
 自治政府が実効支配している油田都市のキルクークについては、公式にはイラク中央政府の管轄だが、伝統的にクルド領で私たちが所管すると述べた。
 イラク北部に居住するクルド人は400~600万といわれる。(毎日 07/24)

 クルド系メディアによると、イラク北部クルド自治政府のバルザニ議長が9月20日、自治政府が25日に予定するイラクからの独立の是非を問う住民投票で賛成が多 数を占めた場合、2年以内に独立を宣言する可能性を示唆した。
 議長は演説の中で、イラク中央政府と真剣な交渉に入る用意があり、遅くとも2年以内ですべての問題を解決し、友好的に別れを告げられると語った。 (時事 09/21)

イラク中央政府の報復とクルド軍との衝突

 クルド自治政府のバルザニ議長が9月26日、独立の是非を問う住民投票で「賛成が多数だった」と宣言し、イラク中央政府に交渉を呼び掛けた。 これに対しイラ クのアバディ首相は投票の違憲性を主張し、自治政府の陸空路の封鎖を警告し、双方の対立が激しさを増している。
 アバディ首相は26日、原油輸出収入と国境検問所の管理権の移譲を自治政府に要求し、3日以内に応じなければクルド人自治区への国際線発着をすべて中止させる と警告した。 自治政府の中心都 市アルビルには欧州や近隣諸国から国際線が運航されているが、イランは既に自治区からの航空機往来を遮断している。 (時事 09/27)

 イラク政府がクルド自治政府が独立の是非を問う国民投票を実施する数時間前の9月24日夜に自治政府に対し、国境通過の管理と空港を連邦政府に戻すよう命じた。
 国民投票はキルクークを始めイラク政府と帰属を争っている数十の町や村を含むクルド地区の3つの県全てで実施することになっている。 (MT 09/24)

 クルド人自治区で独立の是非を問う住民投票が中心都市アルビルなど自治区各地で行われた9月25日夜、多数の市民が通りに繰り出して投票実施を祝った。 同日夜 に投票が締め切られたが、投票率は80%を上回る勢いで、独立賛成票が圧倒的多数を占める見通しである。 (東京 09/26)

 クルド自治政府が9月25日に実施した独立の賛否を問う住民投票の公式結果は出ていないが、クルドのメディアが報じる暫定中間集計では賛成票が9割を超す勢いで 、投票率は72%前後とみられる。 アバディ首相は25日に国営TVで投票を違憲と非難し、クルド側が求める独立交渉も拒否した。 (毎日 09/26)

 クルド自治政府のバルザニ議長が9月26日、独立の是非を問う住民投票で「賛成が多数だった」と宣言し、イラク中央政府に交渉を呼び掛けた。 これに対しイラク のアバディ首相は投票の違憲性を主張し、自治政府の陸空路の封鎖を警告し、双方の対立が激しさを増している。
 アバディ首相は26日、原油輸出収入と国境検問所の管理権の移譲を自治政府に要求し、3日以内に応じなければクルド人自治区への国際線発着をすべて中止させると 警告した。
 自治政府の中心都市アルビルには欧州や近隣諸国から国際線が運航されているが、イランは既に自治区からの航空機往来を遮断している。 (時事 09/27)

 クルド自治政府の独立を巡る国民投票で、投票管理委員会が9月27日、賛成票が92.73%に達したとする最終開票結果を正式に発表した。
 結果に法的拘束力はなく、イラク中央政府は違憲で無効として独立交渉に応じない姿勢で、クルド民族運動の広がりを恐れる周辺国も一斉に反発し強硬な対抗措置 を打ち出す構えである。(東京 09/28)

 銀行関係者や政府筋が、イラク中銀が10月3日にクルド人自治区の主要銀行へのドルの供給を停止するとともに、同自治区への外貨送金を禁止したことを明らかに した。
 イラクからの独立の是非を問う住民投票を実施した同自治区への報復を強化したもので、イラク政府はクルド自治区の銀行が中銀の管理下に入れば、ドル供給の中 止を解除するとしている。
 イラク政府は、自治区内の空港への国際便の着陸も禁止している。(ロイタ 10/04)

 イラク連邦裁判所が、先月独立の是非を問う国民投票を行ったクルド選挙管理委員会の委員に対し逮捕状を発行した。 アバディ首相は10月11日に逮捕状を執行 すると述べたが、イラク政府軍が展開していないクルド自治区で、どのようにして逮捕状を執行するのは不明である。
 イラク政府は今週初めにクルド地区の携帯電話局操作員を撤収させると共に、クルド地区を経由しないでトルコに原油を輸出するパイプラインの建設を命じてい る。(S&S 10/11)

イラク中央政府のキルクーク奪取

 イラクからの独立住民投票を強行したクルド自治政府が10月11日、イラク軍が油田地帯キルクークなどに展開するクルド治安部隊に対して大規模な攻撃を準備し ているとの情報があると主張した。
 クルドメディアによると、イラク軍は即座に否定し、攻撃対象はシリア国境付近に残るISISのみだと反論した。 (産経 10/12)

 イラクのクルド自治政府部隊Peshmelgaが10月12日、イラク軍が自治政府への攻撃を準備しているとの未確認情報に対応して、モスルと自治政府の中心都市アルビ ルなどを結ぶ幹線道路を一時封鎖した。
 自治政府は11日、シーア派民兵組織を含むイラク軍部隊が、自治政府領内に大規模攻撃を仕掛けるという危険なメッセージが寄せられたと主張していた。 (時事 10/12)

 イラクのクルド自治政府が10月13日、イラク中央政府からの脅威に対応するためキルクーク油田に部隊を増派したことを明らかにした。 キルクーク油田には、 すでに10,000名のクルド軍が駐留していたが、12日以降6,000名を増派したという。
 アバディ首相は同自治区を攻撃する計画はないと繰り返し述べているが、クルド自治政府はイラク軍がキルクーク油田南郊への戦車などの配備を大幅に拡大して いると主張している。(ロイタ 10/13)

 イラクのクルド軍Peshmelgaの司令官が10月13日、イラク政府ともめているキルクークの前線から撤退したと発表した。
 イラク政府軍第9機甲師団の将校もSashir村近くでライフ軍がPeshmelgaの撤退した後に進駐したことを明らかにした。
 尚、キルクークとはキルクーク市内だけでなく周辺地域も含んだ地名である(S&S 10/13)

住民投票へのイランの対応

 イラン外務省報道官が6月10日、イラクのクルド自治政府が9月に行うと発表した独立の是非を問う住民投票に対し反対する姿勢を表明した。
 クルド人はイラン国内にもおり、イラク領内に拠点を構えてイランに対する反政府活動を続けているクルド人の組織もある。 (時事 06/10)

 イランが、住民投票が実施されるなら自治区と接する部分の国境の検問所を封鎖するなどの措置をとると警告している。 (NHK 09/19)

 イラクのクルド自治政府が9月25日に独立の是非を問う国民投票を行うのに備えて、イラン革命防衛隊がイラン北西部のクルド人地域で演習を開始した。
 またイランはイラク政府の要請に応じて、クルド自治区と結ぶ空港を閉鎖した。(MT 09/24)

 タスニム通信が9月26日、イランがイラク国境に近い西部地域に防空強化を名目にミサイルを追加配備したと報じた。
 イラク北部のクルド自治政府がイランなどの反発を無視する形で独立の賛否を問う住民投票を強行した事態を受け、自治政府への圧力を強める狙いがあるとみられる。 (時事 09/26)

住民投票へのトルコの対応

 イラク北部のクルド自治政府が9月25日にイラクからの独立の賛否を問う住民投票を行うことから、トルコやイランなど周辺国は自国のクルド人の分離独立の動きを 刺激しかねないことから実施に強く反対している。
 こうしたなかトルコ軍が9月18日、クルド自治区と接する国境の検問所近くに多数の戦車などを派遣し演習を始めた。 トルコのメディアは住民投票を強行する構え のクルド自治政府をけん制する狙いがあると伝えている。(NHK 09/19)

 トルコ国会が9月23日、安全保障上の脅威が生じた場合にイラクとシリアへ侵攻することを認めた法案を承認した。
 これは25日に予定されているクルドの国民投票に対する最後通牒である。(S&S 09/23)

 クルド人自治区に隣接するイラクとトルコの両国軍が9月25日、26日から大規模な合同演習をトルコと自治区の国境地帯で実施すると明らかにした。
 クルド自治政府が住民投票を強行したことに反発した措置で、独立を封じる決意を軍事力誇示することにより、周辺地域の緊張が高まってきた。 (東京 09/26)

 ロイタ通信によると、イラク外務省が10月15日に、イランがイラク北部クルド人自治区との国境にある複数の検問所を封鎖したことを明らかにした。
 クルド自治政府を孤立させるための方策としてイラク政府が要請したのに応じたものであるという。 (時事 10/16)

住民投票への米、英、仏の対応

 米大統領府が9月15日、クルド自治政府が25日に予定する独立の是非を問う住民投票について、ISIS掃討作戦が継続中であることを理由に米国は支持しないと中止を 求める声明を発表した。
 声明では自治政府に対して、住民投票を中止してイラク政府との間で真剣な対話に入るよう促している。 (産経 09/16)

 アラブ紙アッシャルク・アルアウサトがクルド自治政府のバルザニ議長側近の話として、イラクからの分離独立を問う住民投票を9月25日に実施すると宣言したクル ド自治政府に対し、米、英、仏の各国が国連でクルド独立問題を討議することなどを条件に、投票実施の2年延期を要請したことが16日に明らかになったと報じた。 (産経 09/17)

 米国務省報道官が9月20日、イラクのクルド自治政府が予定している住民投票について「強く反対する」との声明を出し、強行すれば自治政府に対する支援停止など の措置もありえると警告した。
 また、周辺国や国際社会全体が反対しているとして、米国や国連などが仲介するイラク中央政府との対話を受け入れるよう求めた。 (毎日 09/21)

イラク政府軍とクルド軍の交戦

 クルド自治政府と中央政府の双方が管轄権を主張する油田都市キルクークでは9月25日に夜間外出禁止令が出され緊張が高まっている。 多民族都市キルクークで は9月に入り、クルド人とトルクメン人の衝突で死傷者が出るなど混乱が続いており、キルクーク市を含むキルクーク県の知事は25日に市民に対し、祝砲を放つなど のお祭り騒ぎを控え、平静を保つよう呼びかけた。
 一方アラブ人主体のイラク中央政府議会は25日、キルクークなど係争地帯に治安部隊を派遣するよう首相に要求した。 (毎日 09/26)

 イラク中央政府が10月15日、北部のクルド自治政府がトルコの非合法武装組織クルド労働者党(PKK)と連携し、油田地帯キルクークにPKK部隊を投入していると 指摘し、イラクに対する宣戦布告だと極めて強い調子で批判した。
 これに対して自治政府は同日、キルクークにPKK部隊は存在しないと即座に否定した。(東京 10/16)

 ロイタ通信によると、イラク外務省が10月15日に、イランがイラク北部クルド人自治区との国境にある複数の検問所を封鎖したことを明らかにした。
 クルド自治政府を孤立させるための方策としてイラク政府が要請したのに応じたものであるという。 (時事 10/16)

 イラク国営TVが10月16日、イラクのアバディ首相がキルクークの人々とPeshmergaと協力して、キルクークの治安を維持するよう治安部隊に指示したと、政府軍 部隊が衝突なしにキルクークの広大な地域を掌握したと報じた。 キルクーク西の油田も掌握したとしている。
 ただ、クルド自治政府高官はロイタ通信に対し、イラク軍がキルクークに近付くことや地域を掌握することは不可能だと発言し、キルクークの油田や空軍基地は 自治政府が掌握していると述べ、国営TVの報道を否定した。(ロイタ 10/16)

 イラクのアバディ首相は軍にキルクーク県の軍事施設の確保することを指示し作戦開始を承認した。 イラク政府はクルド自治政府が独立を問う住民投票を強行 したことに反発して強硬手段に踏み切り、大規模な交戦に発展する懸念が強まっている。
 AFP通信は、キルクーク南方で双方が迫撃砲やロケット砲で交戦していると報じた。
 一方自治政府の治安当局は、イラク軍とシーア派民兵がキルクークの南部から進攻し、基地や油田を制圧しようとしていると批判し、 イラク軍の車両4台を破壊したと主張している。(時事 10/16)

 イラク中央政府とクルド自治政府との帰属争いで緊迫する北部の油田都市キルクークで、イラク軍が10月16日に前進を続け、軍用空港や発電所、油田、ガス関連 施設などの主要拠点を次々と制圧した。
 これまでキルクークを実効支配してきたPeshmergaは、クルドへの宣戦布告だがわれわれは士気高く防衛に臨み、中央政府は重い代償を払うと徹底抗戦を強調し ているが、一部では撤退を始めたもようである。(時事 10/16)

 クルド軍が10月16日にキルクークから撤退した。 クルド当局者はイラク軍が複数の方向から攻撃したとしているのに対し、イラク軍の報道官はクルドは殆ど抵 抗なしに撤退したとしているが、クルド地域安全保障会議は16日早朝に、クルド軍はイラク軍の米国から供与されたHumveeを少なくとも5両破壊したと発表してい る。
 キルクークにはアラブ人、クルド人、トルコ人、キリスト教徒などが合わせて100万人居住している。 (S&S 10/16)

 イラク軍部隊が10月16日、イラク中央政府とクルド自治政府が帰属を争う北部の油田都市キルクークの市街地に進攻し、州知事庁舎などを次々と掌握して同日中 に市内のほぼ全域を制圧したもようである。
 自治政府が9月に強行した独立を問う住民投票で深まった対立は軍事衝突に発展し、独立阻止へ強硬姿勢を崩さない中央政府は軍用空港や油田、発電所など重要 施設を制圧しており、キルクーク支配の奪還を内外に誇示したい考えとみられる。(時事 10/17)

 イラク政府は、クルド自治政府が住民投票を実施したうえ独立の意思を示したことに反発し、クルド自治政府が実効 支配してきたキルクークの油田地帯を10月 16日に制圧した。 さらにイラク軍は18日、クルド側がISISから奪還した北部のシンジャールやイラク第2の都市モスルの近郊などを制圧したと発表し、これによ り双方が管轄権を争う地域はすべてイラク政府 の支配下に置かれることになった。
 こうした情勢を受けて、クルド自治政府の選挙管理委員会は18日、11月1日に予定していた議長選挙と議会選挙について延期することを決めたと発表するなど、 クルド側には混乱が広がっている。(NHK 10/19)

 イラクのクルド自治政府当局者は10月19日、イラク政府軍がキルクーク制圧のために進撃してきた16日以降、キルクークから約10万人が混乱を恐れてクルド人自 治区内の主要都市に逃れたことを明らかにした。
 AFP通信によると、イラク軍は既に自治政府が実効支配していた係争地のほぼ全域を制圧したが、クルド系メディアは、Peshmergaが19日未明にキルクーク周辺に 展開し、再び奪還の準備を進めていると報じている。(時事 10/19)

 元米陸軍将校で現在クルド軍に志願兵として参加しているAlexander氏が、イラク政府軍は10月16日01:00頃に米国が供与したM1A1 Abrams MBTを先頭にした装甲 車両200~300両でキルクークの西方から攻撃を仕掛けてきたと述べた。
 Abramsにはイランに支援されたPMFが従ってきたが、イラク軍とPashmergaの戦闘は1回だけであったという。 (MT 10/19)

 ロイタ通信などが、イラク政府軍が10月20日にキルクーク北方の町に進撃しPeshmergaと衝突したと報じた。 衝突による死傷者数など詳細は不明だが、一時的 な砲撃の応酬があった模様である。
 キルクーク県内でクルド側が実効支配する最後の地域で、衝突後にイラク軍が掌握して同県内の制圧を完了したという。
 クルド系メディア「ルダウ」によると、両軍が衝突があったのはキルクークから35km北西の町アルトゥンクプリ周辺で、イラク軍とシーア派民兵部隊がクルド側 に進撃しPeshmergaと衝突した。(毎日 10/20)

 イラク政府軍が、ISISが堅固に保持していたユーフラテス河畔を攻撃するのと同時に、クルド軍が支配しているシリア国境の拠点にも攻撃をかけた。
 イラク政府軍はISISが保持していたRawahを攻略し85km西方でシリアと国境を接するAl-Qaimに追い詰めたが、クルド自治区安全保障会議によると、同日にチグリ ス川を挟んでシリアと接するクルド軍が支配しているFaysh Khaburに四正面から攻撃をかけた。
 写真で見るとイラク連邦政府治安部隊はD-30 122mm榴弾砲や新型ロケット砲、迫撃砲でクルド軍を攻撃している。 (JDW 11/01)

米国の姿勢

 米国防当局者が10月16日、イラク政府軍がクルドへの攻撃を続けるのであれば、イラク政府に対する武器供与や訓練支援を停止すると警告した。
 イラクには現在5,000名以上の米軍が駐留してイラク軍の訓練支援を行っている。(DN 10/16)

 トルコ外相が11月24日、トランプ米大統領がエルドアン大統領に電話で、クルド軍への武器供与は行わないと述べたことを明らかにした。 (S&S 11/24)

その他諸国の姿勢

 DPA通信が独国防省筋の話として10月16日、ドイツ連邦軍はイラク北部クルド人自治区の情勢悪化を受けてPeshmergaに対して現地で実施している訓練を中断した と報じた。 独軍兵の安全確保が理由で、2018年以降の訓練継続の可否は今後検討するという。
 ドイツはISIS掃討支援の一環として、Peshmergaの訓練に兵士約140名を派遣し武器も供与している。 (産経 10/18)

住民投票後のイラククルド

 クルド系メディアが、クルド人自治区議会が10月24日、バルザニ議長の後任を選ぶ議長選と議会選を8ヵ月延期すると決めたと報じた。 当初は11月1日に投票が 行われる予定だったが、16日にイラク政府とPeshmergaが衝突して緊張が高まっているためで、自治政府の選管は18日に選挙の11月実施は困難と判断し、延期の方 針を発表していた。
 ただ、混乱に乗じバルザニ議長が任期を超えて居座る事態に「何の正当性もない。今すぐ辞めろ」と自治区内の反バルザニ派から強い反発が起きていた。 (時事 10/24)

 イラクのクルド自治政府が10月25日、9月に実施した独立の賛否を問う住民投票の結果を凍結して中央政府との間で対話を始めることを提案した。
 中央政府との衝突を回避し、国際的な孤立状態からも脱却する狙いがあるとみられ、同時に即時停戦も要求している。 (時事)

 イラクのクルド自治政府が先月の住民投票で、独立を求める民意が示されたと主張しているのに対してイラク政府が反発し、クルド側が実効支配してきたキルクー クの油田地帯をはじめ、双方が管轄権を争うすべての地域に軍を送って支配下に 置き、一部で小規模な衝突が続いている。  混乱の収拾に向けてクルド自治政府は住民投票の結果を凍結する代わりにイラク政府に対し軍事行動の中止を求めたうえで対話に応じるとした妥協案を提示した が、アバディ首相は10月26日、住民投票 の無効以外は受け入れられないとする声明を出し、クルド側の提案は不十分だとして拒否する考えを示した。
 このため、双方の部隊の衝突が収まるめどは立たず、クルド人自治区との境界付近では緊迫した状態が続いている。 (NHK 10/26)

 イラクのアバディ首相が10月27日に政府軍に対し、クルド支配地域への攻撃を24時間停止するよう命じた。 (S&S 10/27)

 イラク北部のクルド自治政府のバルザニ議長が10月29日、自治区議会宛ての書簡で11月1日に辞任する意向を示した。
 議会は24日、11月1日に実施予定だった議長選と議会選の8ヵ月間の延期を決めており、バルザニ議長は選挙実施まで続投するとみられていた。
 バルザニ議長が9月に強行したイラクからの独立の賛否を問う住民投票後の混乱を受け責任を取ることになった。 (時事 10/29)

 トルコのユルドゥルム首相が、イラク軍が10月31日にクルド人自治区内にあるトルコとの国境検問所を制圧したことを明かにした。 トルコ領内でトルコ軍と共同 訓練を行っていたイラク軍部隊が攻撃し、クルド側は抵抗することなく検問所の管理を明け渡した模様である。
 イラク軍が制圧したのはイブラヒム・ハリル国境検問所でトルコ南東部と接続する陸上貿易の主要拠点である。 (日経 10/31)

 クルド自治政府とPeshmergaは、自治政府が2014年以来確保してきたキルクークをイラク政府軍にあっけなく取られたことにより、その弱点を曝け出した。 (JDW 10/25)

c. シリアでの独立への動き

クルド議会選挙

 シリアでISISとの戦いで地上部隊の主力を担い、戦況を有利に進めて北部で支配地域を拡大しているクルド人勢力の代表が7月28日に会合を開き、11月に支配地域 の町や村ごとの議会選挙を行ったうえで、2018年1月には地域全体の議会選挙を実施する方針を示した。 2016年3月には大統領職や議会を備えた自治を始めると一 方的に宣言している。
 クルド人による自治をめぐっては、イラクでもISISとの戦いで自信を深めたクルド自治政府が9月に独立の賛否を問う住民投票を実施する予定で、地域の新たな火 種にならないか懸念が深まっている。
 これに対してトルコは自国のクルド人の独立を求める動きが刺激されることを警戒しており、今回の選挙に対しては反発も予想される。 (NHK 07/30)

 シリアのクルド人勢力が初めての議会選挙を行うと発表したことに対し、シリア政府の高官は領土のいかなる部分も分離させないと、これを認めない考えを示し 、実効支配を強めようとするクルド人勢力の動きをけん制した。
 シリアのクルド人勢力は支配地域を拡大し、2016年3月にシリア北部で自治を始めると一方的に宣言したのに続き、7月28日には初めての議会選挙を来年1月に実施 すると発表していた。(NHK 08/07)

 シリアのクルド人勢力は米国などの支援を受けて10月にはISISが首都と位置づけてきたラッカを制圧するなど存在感を発揮する一方で、2016年3月にはシリア北部 で自治を開始すると一方的に宣言し支配地域を広げてきた。
 更に12月1日に支配地域にある町や郡の議会選挙を1,300ヵ所余りの投票所で一斉に実施し、2018年1月には自治を宣言している地域全体の代表を選ぶ議会選挙も初 めて行うとしている。(NHK 12/02)

シリア政府軍とクルド軍の交戦

 シリアでISIS掃討作戦を続けるクルド軍主力のシリア民主軍(SDF)が9月16日、東部デリゾールでロシアとアサド政権軍の空爆を受け、兵士6人が負傷したと発表した。
 AFP通信によるとSDFがロシアに攻撃されたのは初めてで、SDFはラッカに加えシリア屈指の油田地帯であるデリゾールでも部隊を展開し、政権軍もISISのデリゾール 包囲網を突破して進攻を続けているため、ISIS駆逐後の支配権確保をめぐり衝突の懸念も指摘されている。 (時事 09/16)

クルド軍とトルコ側勢力の交戦

 シリアでISISと戦っている武装組織は各種あり、米国が支援しているシリア民主軍(SDF)もクルド人、アラブ人、アッシリア人、トルコ人などで構成されていて 複雑である。
 8月上旬にYPGが公表したEfrin地区での映像では、YPGが発射したATGMがトルコ側勢力の車両に命中する様子が映っている。 この地域はトルコとの国境に近く、 両勢力の小競り合いが絶えない。(MT 08/18)

(イ) トルコの対応

a. クルドとの対立

シリア和平協議でのクルドとの同席拒否

 トルコのチャブシオール外相が1月14日、ロシアとトルコが主導して23日にカザフスタンで開くシリア和平協議にクルド人勢力を招待するなら『シリア征服戦線』 (旧ヌスラ戦線)やISISも呼んだらどうかと述べ米国を牽制した。
 米国はシリアでクルド人組織の民主連合党(PYD)と連携しており、国務省報道官はPYDが和平プロセスに関わるべきだとの見解を表明している。 (時事 01/15)

ラッカ攻略に向けた駆け引き

 米国主導連合軍の司令官であるタウンゼント中将が3月1日、ラッカの攻略作戦にはクルド軍が何らかの形で参加すると述べた。 ただし作戦に参加するのは現地の クルド部隊で、トルコの脅威になるものではないとも述べた。
 トルコのエルドアン大統領は2月下旬に、トルコ軍はラッカ攻略作戦に参加するがYPGの参加は認めないと述べている。 (S&S 03/02)

 トルコのエルドアン大統領は4月30日、クルド軍主力の民主シリア軍(SDF)がTabqaの近隣6ヶ所を制圧したことに対し、イラクとシリアのクルド軍に対し更なる行動 をとると警告している。(MT 04/30)

 トルコのエルドアン大統領が6月23日、Raqqaへの攻撃を続けている米国に支援されているクルド軍に対し、トルコ軍が攻勢を開始することになると警告した。 (MT 06/24)

シリアでのクルド自治政府構築の阻止

 トルコのエルドアン大統領が8月16日にアンカラで、イラン軍参謀総長と会見した。
 シリアから米軍が徐々に撤退する場合に備えて、トルコはPKKの一派と見なしているシリアのクルド組織PYDが自治政府を構築することを防ぐためイランの支援を 求めている。(360 09/01)

クルドへの武器供与に反発

 トルコ政府が5月10日、米政府がシリアでISISと戦っているクルド人部隊への武器の供与を決定したことは、結果的に米政府にマイナスとなると抗議した。
 エルドアン大統領は、同盟国がテロリスト組織でなくわれわれの側についてくれると信じたいと述べ、トランプ大統領と来週初の直接会談や、5月下旬のNATO首脳 会議でトルコのスタンスを伝える方針を示した。(ロイタ 05/11)

 トランプ米大統領が5月16日にホワイトハウスでトルコのエルドアン大統領と初めて会談し、ISIS掃討作戦の協力推進で一致したが、米国がISIS戦でシリアのクル ド人民兵組織への武器供給を決めたことに、民兵らを反政府武装組織「クルド労働者党(PKK)」の一派と見なすトルコは反発しており、クルド人問題をめぐっては議 論は平行線をたどった。(時事 05/17)

クルド独立阻止に向けたイラク政府軍との連携

 トルコ軍が9月25日、訓練第三期のためイラク軍30名がC-130でトルコに到着したと発表した。 イラク軍はトルコ軍の第28機械化歩兵旅団のM-60TやACV APCと合 同で訓練を行う。
 トルコはクルド自治政府が独立を問う住民投票を行うまで、クルド軍と共同訓練を行ってきた。(JDW 10/04)

b. シリア北部での地盤固め

al-Bab の争奪戦

 トルコのエルドアン大統領が、トルコ軍とシリアの同盟軍がal-Babの心臓部に至り、ISISはal-Babを放棄し始めたと述べた。
 しかし英国を拠点とするシリア人権監視団は、トルコ軍はまだ市の中心部には入っていないと見ている。 (S&S 02/12)

 トルコが支援するシリア反体制派が2月23日、ISISの支配下にあったシリア北部のal-Babを完全に制圧したと宣言した。
 トルコ国境に近いal-Babに対しては、2016年12月にアレッポを掌握したアサド政権軍も部隊を進めていることから、今後al-Babの支配権をめぐり政権側と反体制派 の間で新たな衝突が起きる可能性もある。(時事 02/23)

Manbij の争奪戦

 トルコ外相が3月2日、al-Babを完全制圧したら次の目標はクルド軍が支配しているManbijで、米国がクルド軍を退去させなければトルコ軍とシリアの同盟軍はここ を奪取すると警告した。(S&S 03/02)

 米軍主導の有志国連合軍司令官が3月1日、シリア北部で、トルコ軍、シリア政府軍、クルド軍、ISISの四者間で緊張が高まっていると述べた。 各軍はそれぞれ 三つの敵と対峙しているという。
 Al-Babを制したトルコは、クルド軍主力で米軍が支援するSDFが確保しているManbijを次の目標と公言している。
 エルドアン大統領は2月28日、トルコが支援するシリアの勢力がAl-Raqqahへの攻撃を行うので、YPGはManbijから撤退すべきと述べた。 (JDW 03/08)

 トルコが国境付近からISIS掃討しal-Babを確保した後を見据え、シリア北部での足場を確保しようとしている。
 ここでトルコにとって米国を後ろ盾とするクルド軍が確保しているManbijを攻撃する上で脅威となったのは、この地域へのトルコの進出を防ぐために米国が新たな 部隊の派遣を決めたことである。(MT 03/11)

作戦終了宣言

 エルドアン大統領が主宰するトルコの国家安全保障会議(NSC)が3月29日の声明で、2016年8月にシリア北部で開始した軍事作戦を成功裏に終えたと発表した。
 ただ、部隊を撤収させるかどうか言明しておらず、作戦名を変えた上で新たな攻撃を開始する可能性もある。 (時事 03/30)

 トルコの首相が3月29日、トルコが支援する自由シリア軍がAl-Babを確保したことで、ユーフラテスの盾作戦が完了したと宣言した。
 今後状況により再びシリアに越境した作戦を行うことがあっても、別の作戦名がつけられるとも述べた。 (JDW 04/05)

新たな参戦の準備

 トルコのメディアによると、エルドアン大統領がシリアでの軍事作戦について4月3日、新たな作戦を準備中だと述べた。
 具体的な時期や場所は明言しなかったが、今後数ヶ月でトルコは春を迎えるが、テロリストにとっては暗黒の冬となるだろうと宣言した。 (時事 04/04)

 トルコのエルドアン大統領が、ISISと共に独立に指向しているクルド人勢力を引き合いに出し、トルコは速やかに2016年8月同様のシリア北部に侵攻することを決 定したと述べた。(S&S 08/05)

クルド軍拠点への大規模空爆

 トルコ軍が4月25日、シリア北東部とイラク北部のクルド人勢力の拠点に対する空爆を行ったと発表した。 空爆はテロ対策の一環で、武器や爆発物のトルコへの 流入を防ぐ狙いがあり、国際法の範囲内で越境攻撃を実施したと主張している。
 一方、在英のシリア人権監視団はこの空爆について、クルド人勢力の戦闘員ら18人が死亡したと発表している。
 トルコは3月末に、クルド人勢力などの排除を目的としたシリア北部での軍事作戦「ユーフラテスの盾」を終了したと発表していたが、今回の空爆は作戦終了後初 めてとみられる。(時事 04/25)

Afrin地方への攻撃準備

 トランプ米大統領が5月上旬、民主シリア軍(SDF)に武器を供与すると発表したが、クルド軍によるとトルコがクルド軍が確保しているAfrin地方に攻撃をかけようと 、シリア北部で戦力を構築しているという。
 トルコは4月に北部シリアのクルド拠点とイラクのSinjarを空爆し、YPGとPeshmergaの戦闘員を複数殺害しており、6月11日にはトルコが支援する自由シリア軍(FSA) がManbij近くでSDFを迫撃砲で攻撃している。(MT 06/23)

イドリブ県で本格的作戦を開始

 トルコからの報道によると、エルドアン大統領が10月7日にシリア北西部イドリブ県で、トルコ軍が支援するシリア反体制派が本格的作戦を開始したと明らかにし た。 ただ、トルコ軍は越境していないというが、トルコ軍の展開に向けてアルカイダ系のイスラム過激派などのを排除するのが目的とみられる。
 イドリブ県をめぐっては、シリア内戦の和平を仲介するトルコ、ロシア、イランが同県に戦闘行為を禁じる「安全地帯」を設定して3ヵ国の要員が監視に当たるこ とで合意していた。(時事 10/07)

 トルコ軍偵察部隊が10月8日、国境を越えてシリア北西部イドリブ県に入った。
 トルコ軍の偵察部隊の車両は、イドリブ県で強い勢力を持つイスラム過激派組織「シリア解放機構」の護衛の下、北部アレッポ近くの高台シェイクバラカットへ 向かっ たという。 同組織との間で何らかの合意に達した可能性がある。
 ロイタ通信がシリア反体制派筋の話として、トルコのエルドアン大統領が7日に、シリア北西部イドリブ県でトルコ軍が支援するシリア反体制派が作戦を開始した と発表していた。(時事 10/08)

トルコ、クルド軍 YPG の一掃方針

 トルコのエルドアン大統領が12月17日にKaram州で演説し、集まった群衆に対してシリアとの国境地帯からクルド軍YPGを一掃すると述べた。 (S&S 12/17)

(ウ) 各国の姿勢

a. 米 国

イラクのクルド軍 Peshmerga への武器供与

 米国務省がイラク政府の要請を受け、クルド軍Peshmergaが装備する2個歩兵旅団と2個砲兵大隊用の装備$300Mを発注した。 Peshmerga向け装備の主なものは以下 の通りである。(DN 04/19)

M16A4小銃  × 4,400丁
M2 Cal.50機関銃× 46丁
M240B機関銃  × 186丁
M119A2 105mm砲 × 36門
M1151 Humvee車 × 36両
M1151 装甲強化型Humvee車 × 77両
シリアのクルド軍 YPG への武器供与

 米国防総省が5月9日、トランプ米大統領がRaqqa奪還に向けISISと戦うクルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)への武器供給を承認したことを明らかにした。
 これまでのところトルコ側からの反応はないが、トルコはYPGをクルド労働者党(PKK)の派生組織とみなしており、今回の決定に強く反発するとみられている。 (ロイタ 05/10)

 イラク政府当局によると、米国がシリアで民主シリア軍(SDF)の主力を構成しているクルド軍YPGに対し武器供与を行う。
 有志連合軍の広報官によると、一部は既に現地に搬入され、引き渡しが開始されている。(MT 05/10)

 米国防総省が5月30日、ISIS掃討作戦に加わるシリアのクルド軍への武器供与を開始したことを明らかにした。
 供与するのは小型武器や弾薬、重機関銃などで、米軍の軍事顧問がISIS戦以外に使用しないよう監視すると、クルド労働者党(PKK)への武器流出を懸念するトル コに配慮したが、トルコは民兵組織をPKKの一派とみなしており、反発は必至である。(時事 05/31)

 しかしながらラッカ攻略後の米国の戦略が見えておらず、クルド武装勢力YPGの戦闘員からは不満の声が聞こえる。 (DN 06/01)

 米軍主導の有志連合軍報道官が6月1日、ラッカ攻略のためシリアのクルド軍に供与した武器について、トルコのPKKに渡るのを防止するためシリアル番号を記録し たデータベースを作成してトルコや他の同盟国と共有していると発表した。(JDW 06/07)

トルコの武力衝突回避努力

 シリアの監視団とクルド活動家が、トルコの空爆でクルド兵20名が殺害された数日後に、トルコとの国境に近いシリア北部に米軍の装甲車両が展開していること を明らかにした。
 米軍車両の走行が確認されたトルコ国境から数百米のDarbasiyahでは、トルコ軍の空爆翌日の4月28日にトルコ軍とクルド軍の衝突が起きている。 (S&S 04/28)

 シリア北部のクルド活動家によると、米特殊部隊がシリアとトルコの国境近くでクルド軍が支配しているTal Abyadに入った。
 その前の週にはトルコとトルコが支援する自由シリア軍(FSA)が、クルド人民防衛隊 (YPG)が確保しているAfrinに対し砲撃を加えている。 (MT 06/28)

 米特殊部隊司令官のトーマス大将はAspen安全保障フォーラムで、シリアのクルド人武装組織である人民防衛隊(YPG)が約前日に民主シリア軍(SDF)と名称変更した と述べた。 トーマス大将はシリアで共同しているクルド軍に対し名称変更を要求していた。
 彼らはSDFと呼ばれているが正式名称は依然としてYPGで、トルコはYGPを国際的にテロ組織と見なされているクルド労働者党(PKK)の一派と見なしている。 (MT 07/22)

 米国が主導する"Operation Inherent Resolve"作戦の報道官が、シリアManbij近郊で米軍とトルコが支援する自由シリア軍が砲火を交えたことを明らかにした。
 この地域では春から、米軍のStrykerが米国旗を掲げてパトロールしていた。(MT 08/29)

b. ロシア

 シリア北部クルド人民兵組織の人民防衛部隊(YPG)が3月20日、YPGがロシア軍から訓練を受けることになったと発表した。 19日に調印し20日に発効したという。
 YPGのスポークスマンは、北部アレッポの戦闘ではシリア駐留ロシア軍と協力してきたが、この種のものとしては初の合意だと述べた。
 YPGをクルド人のテロ組織と見なすトルコの反発は必至とみられる。(時事 03/21)
c. イラン

 イランのタスニム通信が7月24日、北西部の国境警備隊が同国に密輸された武器や爆発物の運搬に使用されていたラバや馬30頭を押収したと報じた。
 同通信は警備隊担当者の発言として、30頭はイラン北西部の地帯で、密輸が企てられた武器、弾薬、爆発装置などを運んでいたと報じた。
 イラン北西部のイラクやトルコ国境付近では、イラクに拠点をおくイランのクルド人勢力が絡む衝突がしばしば発生している。 (ロイタ 07/25)
d. イスラエル

 ロイタ通信が9月13日、イスラエルのネタニヤフ首相がイラク北部クルド人自治区で25日に予定される独立の是非を問う住民投票を控え、クルド人の独立国家建設を 支持する立場を明らかにしたと報じた。
 イラクの議会は12日、クルド人議員が採決を欠席するなか、住民投票延期を求める決議を採択した。
 クルド人を国内に多く抱えるトルコや米国なども投票延期を訴えているが、クルド自治政府のバルザニ議長は13日に自らの運命を自ら決める時が来たと投票を強行 する考えを強調している。(時事 09/13)
e. 日 本

 イラク北部のクルド人自治区に日本の領事事務所が新設され、周辺地域でISISに対する軍事作戦が続くなか、治安の悪化で影響を受けている地域経済の建て直しな ど、日本の支援策を探ることにしている。
 日本の領事事務所が開設されたのは、クルド人自治区の中心都市アルビルで、1月11日に薗浦外務副大臣など関係者が出席して開所式が行われた。
 これに先立って、薗浦副大臣はクルド自治政府のバルザニ議長と会談した。 この中でバルザニ議長は、教育システムの整備などが必要だという考えを強調し、日 本側もこれに協力していく考えを伝えた。(NHK 01/12)
エ. 化学兵器の使用疑惑

(ア) ISIS の使用疑惑

 赤十字国際委員会(ICRC)が3月3日、モスル近郊で化学兵器が使われ子どもを含む7人が被害を受けたと発表した。
 ICRCは誰が化学兵器を使ったのかは触れていないが、イラクではこれまでISISによる化学兵器の使用がたびたび報告されている。 (NHK 03/04)
(イ) シリア政府軍の使用

4月4日の化学兵器を用いた空爆

 在英の民間団体「シリア人権観測所」によると、シリア北部イドリブ県のハンシャイフンで4月4日に化学兵器を使ったとみられる空爆があり、少なくとも11人の子 供を含む58人が死亡し160人が負傷した。 2017年シリアで発生した化学兵器使用が疑われる攻撃で最大級の民間人の死傷数となった。
 現地を支配する反体制派はアサド政権軍かロシア軍による攻撃だとしているのに対し、シリア軍関係者やロシア国防省は関与を否定している。 (毎日 04/04)

 AP通信が米政府高官の話として4月10日、ロシアがシリア北西部イドリブ県で4日に起きた化学兵器攻撃を事前に把握していたと米政府が結論付けたと報じた。
 空爆の直後、負傷者が搬送された病院の上空でロシア軍UAVの飛行が確認されたことが根拠だという。 (産経 04/11)

 英Daily Telegrah紙が4月14日、シリアのアサド政権から離反した化学兵器研究責任者の元軍高官サカト氏が、政権はさらに数百㌧の化学兵器を貯蔵していると述 べたと報じた。
 アサド政権は2013年8月の化学兵器使用疑惑を受け、ロシアの提案で化学兵器の全面廃棄に合意し、化学兵器禁止機関(OPCW)が国外に搬送し2014年に廃棄を完了し たとされるが、サカト氏はアサド政権がOPCWを欺き1,300tしか申告しなかったが、少なくとも2,000tを保有していたと述べた。 (東京 04/15)

 化学兵器禁止機関(OPCW)事務局長が執行理事会4月16日、シリア北部で化学兵器が使用されたとみられる空爆で多数が死傷した事件について、サリンか類似の物質 が使われたことに疑いの余地はないとの分析結果を報告した。
 それによると、調査チームが犠牲者3人と治療中の7人から採取した試料をOPCWの4ヶ所の研究施設で分析した結果、サリンもしくはサリンに似た物質にさらされた ことが分かった。
 被害者が搬送されたトルコでは試料分析などから既にサリンの使用を断定していたが、国際機関であるOPCWがサリンが使用されたことを確認したのは初めてである。 (毎日 04/20)

 化学兵器禁止機関(OPCW)が4月19日に声明で、シリアのKhan Shaykhun市で4月4日に数百人が死傷した攻撃で使用されたのは、サリンのような神経剤であったと断定 した。(JDW 04/26)

更なる化学兵器攻撃を準備

 米大統領府が6月26日、シリア政府が化学兵器を使った攻撃を準備している兆候を察知したとし、アサド政権が化学兵器を使った攻撃行えば大きな代償を支払うこと になると警告した。
 大統領府の声明によると、多数の死者が出た4月4日の化学兵器による攻撃の前に取られていた準備に似た兆候が見られているという。 (ロイタ 06/27)

 マティス米国防長官が6月28日、シリアで新たな化学兵器による攻撃が懸念されると語った。
 国連のOPCWは6月29日、シリアのKhan Shayhunで4月4日に使用された化学兵器をサリンと断定した。 (JDW 07/05)

 マティス米国防長官が6月28日、化学兵器を使った攻撃の準備を進めていると指摘したシリアが米政府の警告を重く受け止めたようで、化学兵器は使用しなかったと 語った。
 米大統領府は26日に声明を出し、アサド政権が再び化学兵器を使えば、重い代償を払うことになると警告していた。 (時事 06/29)

化学兵器使用に対する各国の対応

 トランプ米大統領が4月4日、シリア北西部イドリブ県の反体制派支配地域で行われた攻撃でアサド政権が化学兵器を使用したとの見方を示し、文明世界はこの事件 を看過できないと非難した。 ロイタ通信によると、米政府は化学兵器のサリンが使用されたとみている。
 トランプ大統領は2012年にアサド政権による化学兵器使用をレッドラインとしたものの何もしなかった前政権の弱さと力不足の結果だとオバマ前政権を批判してい る。 ただ大統領は、アサド政権に対する具体的な対応を明らかにしていない。(時事 04/05)

 トランプ米大統領が4月5日、シリア北西部イドリブ県でサリンが使われたとみられる空爆について、アサド政権軍は多くの一線を越えたと非難したうえで、シリアと アサド大統領に対する私の考えは大きく変わったと、アサド氏退陣にこだわらないとする政策方針を修正する可能性を示唆した。 (東京 04/06)

 トランプ米大統領が4月6日、シリアのアサド政権によるとみられる毒ガス攻撃で多数の犠牲者が出たことを受け、アサド大統領に対して何らかの対応が必要との考 えを示した。
 また国防総省と大統領府は、軍事介入に関する選択肢について協議を開始したもようである。(ロイタ 04/07)

 トルコのエルドアン大統領がトランプ米大統領に対し4月6日、言葉だけにとどめるのではなく行動が求められると強調し、アサド政権に対する軍事行動を呼び掛け た。(時事 04/07)

4月4日の化学兵器使用に対する報復攻撃

 米当局者が4月6日、シリア政府軍が化学兵器を使用し多数の死者が出たとされたことを受けて、米軍がCMによるシリア空爆を開始したことを明らかにした。
 米政府高官は50発以上のTomahawkがシリア政府軍の拠点に向けて発射されたと述べた。(ロイタ 04/07)

 米軍は米東部時間4月6日20:40(日本時間7日09:40)、シリア西部のShyrat空軍基地に向け東地中海洋上の駆逐艦2隻からTomahawk 59発による攻撃を行ったと発表 した。 同基地は4日に北部イドリブ県で多数が死亡した空爆を行った航空機が飛び立った場所だという。
 トランプ米大統領は、独裁者のアサドが罪のない市民に猛毒の神経剤で恐るべき化学兵器攻撃を行ったと断言し、攻撃を指示したと明らかにした。 (毎日 04/07)

 米国防総省報道官が4月6日、米軍がシリア空軍基地への攻撃について事前にロシア軍に通知し、ロシア軍が駐留しているとされる場所を攻撃しなかったことを明 らかにした。(ロイタ 04/07)

 トランプ大統領が4月6日夜に海軍に対し、イラン軍が化学兵器投下に発進したとされるHomsの航空基地にTomahawk 59発を打ち込む命令を行ったことを米国議会は 好感している。 又更に大統領の次の一手を期待している。(DN 04/07)

 今回の攻撃の一連の経緯は以下の通りである。(DN 04/07)

・4月 4日 06:50:
 シリア軍の基地を発進したSu-22と見られる戦闘機1機がKahn Sheikoum市 街の真ん中に爆弾1発を投下。 着弾によるクレータに化学剤爆弾特有の線状飛散痕。

・4月 4日 07:00:
 神経剤特有の症状を呈した最初の患者が地元病院に搬入される。 その直後に小型UAVが飛来。

・4月5日:
 トランプ大統領がマティス国防長官に軍事的対応策の検討を指示。

・4月 6日 16:30:
 国防総省が大統領から計画実施命令を受領。

・4月 6日 17:40:
 駆逐艦PorterRossがShyratに向けTomahawk 60発を発射。 1発が発射に失敗した。

・4月 6日 20:40:
 別々に目標を配当された59発のTomahawkがすべて目標に命中。

 国連安全保障理事会が4月7日、米国がシリア軍事攻撃に踏み切ったことを受け緊急会合を開いた。 米国連大使は化学兵器の使用や拡散を防止することは国家安全 保障上の不可欠な利益で攻撃は完全に正当化されると強調し、昨夜は非常に控えめな措置を取ったもので更に行う用意があると追加攻撃を警告した。
 一方、ロシアの国連次席大使は言語道断の国際法違反で侵略行為だと強く非難し、米ロが激しい応酬を繰り広げた。 (時事 04/08)

 シリア政府軍が4月4日にKhan Shaykhunで化学兵器による攻撃を行ったことに対し、米軍は7日にAl-Shayrat航空基地に対し59発のTomahawkによる攻撃を行った。
 ティラーソン米国務長官は、シリア政府軍が3月25日と30日にHamah県で行った攻撃と同様に、Khan Shaykhunでサリンを使用したことを確信していると述べた。 (JDW 04/12)

Tomahawk 攻撃による Shyrat空軍基地の損害

 ロシア国防省報道官が4月7日、米軍がシリア中部のシャイラト空軍基地に向け発射した59発のCMのうち、同基地に到達したのは23発にとどまり、残りの36発がど こに命中したのかは分からないと発表した。
 米軍の攻撃の精度が低いと主張する狙いがあるとみられる。(産経 04/07)

 ロシアの国営TV「ロシア24」が4月7日に攻撃後の基地の様子を放映し、米国のシリア空軍基地攻撃で9機が破壊されたが、主要滑走路は比較的無傷と報じた。
 へこみや破片、がれきなどがあるものの、主要滑走路はほぼ影響がなかったという。(ロイタ 04/07)

 在英のシリア人権監視団によると、米軍のミサイル攻撃で損壊したシリア中部ホムス県のShyrat空軍基地から4月7日に戦闘機2機が離陸した。 人権監視団はこれ より先、基地はほぼ完全に破壊されたと発表し、アサド政権軍も基地にかなりの被害が出たと認めていた。
 政権側は打撃からの立ち直りをアピールするため、滑走路を急いで応急修復し、部分的に運用を再開したという。 (時事 04/08)

 マティス米国防長官が4月10日、シリアのアサド政権軍が使用している同国中部のShyrat空軍基地へのCM攻撃で、燃料貯蔵施設や弾薬庫、防空施設に加え、稼働機 の20%を撃破したとする声明を発表した。
 ロシア国防省は損害はわずかだったと主張していたが、米中央軍の報道官は10日、少なくとも20機を破壊したとしている。 (産経 04/11)

 4月7日に米国が59発のTomahawkをシリアのAl-Shayratに向け発射した件についてロシア国防省は、到達したのは23発と半数以下で6機のMiG-23が破壊されただけで あると発表したが、Airbus社の衛星が8日と9日に撮影した画像では、基地施設に40発の着弾跡と被害の程度がわからない4発の着弾痕と着弾痕とみられる9ヵ所が判定 でき、併せて57発が目標に達したことが明らかである。(JDW 04/19)

シア製サリン爆弾 KhAB-250 の使用疑惑

 ロシア国防省が、シリア政府軍が4月4日にKhan Shaykhunでロシア製のサリン爆弾KhAB-250を使用したとの報道を否定した。
 シリア人権監視団は5月1日、Khan Shaykhunでのサリン攻撃はロシア製サリン爆弾KhAB-250によると発表している。 (JDW 05/10)

(ウ) 国際機関の判定

 化学兵器禁止機関(OPCW)のウズンジュ事務局長が4月28日、内戦が続くシリアで2016年後半以来、化学兵器が45回使われたとの報告を受けていることを明らかにし た。 誰が使ったかには触れず、死傷者の数も不明である。
 事務局長によると、2016年後半に30回、今年初めからは15回で、それぞれ異なる攻撃で化学兵器が使われた。 (東京 04/29)

 国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の共同調査パネルが10月26日、 国連安全保障理事会にシリアのアサド政権が4月4日にイドリブ県で化学兵器を使用したと報告した。  これまでも使用疑惑があったが、改めてサリンガスを100人以上の市民に使ったと結論づけた。
 また共同調査パネルの報告は、2016年9月16日にISISがマスタードガスを使ったとも指摘した。
 一方、ロシアは24日に11月中旬に任期が切れる共同調査パネルの1年間の延長決議案に拒否権を行使し、否決に追い込んだ。 (日経 10/27)

 シリア政府が4月4日にKhan Shaykhunで化学兵器を使用したとする合同査察機構(JIM)の最終報告が10月26日に安保理に提出されたことからロシアが外交攻勢を強 めている。(JDW 11/08)

エ. ISIS 掃討後への動き

(ア) 完全制圧へ

 ISIS掃討作戦を展開する有志連合の調整を担当するマクガーク米大統領特使が12月21日、シリア、イラク両国で ISIS地域の98%を奪還したと発表した。
 ただ、シリアを中心にまだ3,000人のISIS戦闘員が活動しているとし、戦いは終わっていないと強調した。 (産経 12/22)
(イ) シリアでの動き

ロシア、トルコ、イランの連携

 ロシアのプーチン大統領とイランのロウハニ大統領、トルコのエルドアン大統領が11月22日に露南部ソチで会談し、シリア内戦終結後を視野に入れた協議を行っ た。
 イラン、トルコ両首脳は、プーチン氏が提唱したシリアのアサド政権、反体制派が国家の将来像を協議する「シリア国民対話会議」の開催に支持を表明した。
 10月末の和平協議で3ヵ国は「開催を検討する」との表明にとどまっており、「開催支持」はロシアにとって前進で、アサド政権支援のロシア、イランと、反体 制派支援のトルコが協調姿勢を強めたことで、シリア問題をめぐるロシアの求心力が高まる可能性があるが、国民会議の参加者をめぐって各国間で意見の対立があ るとされ、調整の難航も予想される。(産経 11/24)

ロシア軍機の活動範囲拡大

 UAEのAl Dhafra航空基地を拠点にF-22で活動している米空軍第95遠征戦闘機飛行隊の飛行隊長が、ISISが後退しているイラクとシリアの空域で、Su-30、Su-35 、Su-27を主としたロシア軍の動きによる警報の頻度が上昇していると述べた。
 これらの露軍機は米主導連合軍の地上部隊を攻撃できる距離まで侵入しているという。(AW&ST 11/27)

 米中央軍報道官によると、シリア東部のAbu Kamal近くで、米国主導の対ISIS連合軍がロシアと同意している爆撃の境界線であるユーフラテス川を越えて東側に侵入 したロシアのSu-25 2機に対し米空軍のF-22 2機が緊急発進したことを明らかにした。 両国軍機の遭遇は40分間続いたという。
 この際Su-35 1機もユーフラテ ス川を越えたという。
 同報道官によるとロシア軍機がユーフラテス川を越えて東側に侵入するのは平均して1日に6~8回と、出撃した露軍機の10%に及ぶという。 (S&S 12/14)

プーチン大統領が撤退宣言

 ロシアのプーチン大統領が、シリアのラタキア県にあるロシア軍のへメイミーム空軍基地を電撃訪問し、ロシア軍撤退開始を発表した。 大統領は、ロシアとシリ アは2年に及ぶ軍事作戦を経て、ISIS掃討という使命を達成したと強調した。
 一方、プーチン大統領は、へメイミーム空軍基地のほか、シリアのタルトス港にある海軍施設を維持する意向を明らかにした。 (ロイタ 12/11)

ロシア軍のシリア半永久駐留

 ロシア連邦議会が、ロシアがTartus港を向こう49年間使用するとしたシリアとの協定を批准した。 協定では原子力推進艦を含む艦船を同時に11隻まで停泊可能と している。
 ロシアは航空基地の使用について2011年3月にアサド政権と合意している。(S&S 12/21)

米軍のシリア残留

 トランプ米政権はシリアでのISIS掃討後をにらみアサド政権の後ろ盾であるロシアやイランの影響力を排除する構えで、ISISと戦うクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF)支援のため500名以上が駐留する米軍をシリアにとどめ、アサド政権の全土回復を食い止めることも検討している。
 ロシアがイランやトルコとシリア内戦の終結に向けた和平会議を開くことを、米政府はアサド政権の存続を狙ったものとみて警戒しており、国務省高官はシリア の将来は同国民が決めることだが、アサド大統領に正当性があるとは考えていないと語っている。 (産経 11/24)

 米軍が12月30日、シリアでISIS掃討作戦に加わっていた海兵隊400名以上を撤収させると発表した。
 ISISが首都と位置付けていた北部ラッカが10月に陥落し、シリアでの掃討作戦に一定の区切りが付いたためと説明している。
 米軍高官は声明で、撤収は治安状況が実際に改善しているという証拠だとしたうえで、必要に応じて部隊を撤収させるがISISの再来を防ぐために引き続き現地勢力 を支援していくと語った。(時事 12/01)

(2) 東シナ海

ア. 中国の動き

(ア) 挑発活動の増加

a. 接続水域、領海への侵入

 複数の政府関係者が2月23日、尖閣諸島周辺で活動する中国公船が2016年秋以降、従来の3隻態勢から4隻態勢へと増強されつつあることを明らかにした。
 中国公船は荒天時を除きほぼ毎日、尖閣周辺の領海外側の接続水域内を航行しており、月3回の割で領海侵入を繰り返している。
 海上保安庁発表の資料を基に調べたところ、2016年1~7月に尖閣周辺の接続水域を航行した中国公船は平均3.07隻だったのに対し、2016年9月~今年2月19日時点で は3.95隻に増加し、領海侵入した中国公船も平均3.00隻から3.66隻へと増えている。(産経 02/24)
b. 領空への接近、領空侵犯

過去最多の緊急発進回数

 防衛省が1月20日、自衛隊機による2016年4~12月の緊急発進回数が過去最多の883回だったと発表した。
 中国機に対する緊急発進は644回と前年同期の373回から二倍近く増え、このペースが続けば年間の回数も過去最多を更新する可能性がある。 (ロイタ 01/20)

 自衛隊機の緊急発進が、28年度は1月下旬までの10ヵ月間で1,000回を超えその後も増え続けている。
 年間の緊急発進の数はソ連機が活発だった東西冷戦時代の昭和59年度に確認された944回が過去最多であったが、平成28年度は2ヵ月を残す段階ですでにこれを上回 っている。
 内訳は中国機に対するものが急増し、2016年12月までの9ヵ月間で全体の73%を占め、次いで多かったのはロシア機に対するものは26%であった。 (NHK 02/15)

 防衛省が4月13日、28年度に航空自衛隊が行った緊急発進回数が、前年度の295回から1,168回へと大幅に増加したと発表した。 但し、領空侵犯はなかったという。
 この中でも中国機に対するものが、280回から851回に増加している。(JDW 04/26)

 しかし、統合幕僚監部が7月14日に発表した航空自衛隊機の緊急発進回数は、29年度1Qで229回と前年同期と比較すると52回減少しており、中国軍機に対する発進が 前年同期比でほぼ半減している。
 1Qの中国軍機に対するスクランブルは101回と、28年度の各四半期は199回、208回、237回、207回だった。 太平洋への展開を目的とした宮古海峡を通過する飛行 も、28年度は18回に上ったが、29年4~6月は1件も確認されなかった。(産経 07/14)

大規模編隊の通過

 防衛省によると、3月2日午前から午後にかけて、中国軍のY-8 AEW&C機1機のほか、戦闘機6機と、爆撃機6機の合わせて13機が、沖縄本島と宮古島の間を東シナ海か ら太平洋に向けて飛行した。 これら13機はその後反転して東シナ海方面に戻った。
 これに対し自衛隊機が緊急発進したが、防衛省によると今回確認された13機は緊急発進の対象としては過去最多だという。 (NHK 03/03)

琉球列島横断飛行の恒常化

 中国軍の爆撃機6機が7月13日、沖縄本島と宮古島の間の公海上空を相次いで通過し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進したと防衛省が発表した。
 防衛省によると、中国軍のH-6 2機は東シナ海から宮古海峡を通過して太平洋に抜けたのち、反転して東シナ海側に戻った。
 また、別の爆撃機4機は太平洋から宮古海峡を北上して東シナ海へ向かった。(中央 07/14)

 統合幕僚監部が23日、中国軍機5機が同日午前から午後にかけ、沖縄本島~宮古島間の宮古海峡上空を通過した と発表した。 領空侵犯はなかったが、中国軍機が宮古海峡を通過したのは今月3回目になる。  6機のうち4機はH-6爆撃機で、東シナ海から太平洋に抜けたのち反転し、前後してバシー海峡から飛来したY-8 情報収集機1機が宮古海峡を抜けて台湾海峡方面へ去った。 (産経 11/23)

c. 東シナ海周辺での演習実施

 台湾国防部が3月2日、中国軍が同日午前に戦闘機、爆撃機、偵察機、早期警戒機など多数を浙江省の東側海域から宮古島の東南海域へ飛行させ、駆逐艦、フリゲー ト艦、補給艦各1隻とともに海空合同演習を行ったと発表した。(産経 02/03)

 中国国防省が3月2日、海軍の爆撃機や戦闘機、早期警戒機など多数が宮古島と沖縄本島の間を経て、西太平洋で遠洋訓練艦隊と合同演習を実施したと発表した。 (日経 02/04)

d. 米軍機への異常接近

5月18日

 ロイタ通信によると、東シナ海の公海上空を飛行していた米空軍WC-135が5月18日、中国軍のSu-30 2機から異常に接近されるなどの慣行違反の妨害行為を受けた。  空軍報道官はWC-135は国際法を順守した通常の任務飛行をしていたとしている。
 空軍報道官は、中国機の飛び方や速度、接近距離の近さなどに関するWC-135の搭乗員からの報告に基づき、不適切な飛行と判断したとしている。 (産経 05/19)

7月23日

 米国防総省報道部長が7月24日、米軍のEP-3が23日に東シナ海の国際空域を飛行中、中国軍J-10 2機の異常接近を受けたと明らかにした。
 中国軍機のうち1機は高速で米偵察機の下方を飛行したのち、速度を落として米軍機の前方に出た。
 双方は90mにまで接近したといい、米偵察機は衝突を避けるため、方向転換を余儀なくされたという。 (時事 07/25)

 中国国防省の報道官が7月25日、23日に中国の戦闘機2機が東シナ海で米海軍のEP-3E Aries Ⅱ電子偵察機に接近したことについて、必要で合法であるとの声明を 発表した。(JDW 08/02)

(イ) 警備艦の増強

仮装フリゲート艦の投入

 海軍のType 054フリゲート艦の船体を利用した警備艦の三番艦が進水した。(CD 01/05)

警備艦の強力化

 中国海警局は現在「第2の海軍」を目指して装備強化に励んでおり、将来は米沿岸警備隊レベルの実力をつける方針だという。
 排水量10,000tを超える大型海警艦の海警 3901はすでに完成し、海警 2901も東海分局に配備されている。
 新浪軍事は「中国海警の多くの艦船に艦砲搭載、日本海保の挑発に対抗」と題した1月29日の記事で軍事専門家の意見として、中国海警局には小型艦艇が多く艦砲 搭載艦が少ないため、長時間や風雨が強い際の警備に支障が出ており、20kt以下とスピードが遅い船が大部分で、海上保安庁に見劣りしているという指摘を紹介して いる。(RC 01/31)

(ウ) 日本海まで進出

 統合幕僚監部が1月9日、中国空軍機が対馬海峡の上空を往復したと発表した。 領空侵犯はなかった。
 統幕によると 対馬海峡上空を通過したのはH-6 6機と、Y-8 AEW&C、Y-9 ELINT各1機の計8機で、長崎県の対馬の南側を通り、東シナ海と日本海を往復した。
 中国軍は日本周辺の海空域で活動を活発化させており、防衛省は中国軍の意図について分析を進めている。 (産経 01/09)

 聯合ニュースが政府消息筋の話として1月9日、中国軍機十数機が同日に済州島南方の離於島付近で韓国側の防空識別圏内を数時間にわたって複数回飛行し、韓国空 軍の戦闘機十数機が緊急発進したと報じた。
 離於島は中韓が管轄権を争う海中岩礁で、両国の識別圏はこの上空などで重なっている。
 米軍がTHAADを韓国に配備することに対する中国の反発と関連がある可能性もある。(産経 01/10)
【註】 :  防衛省が「対馬海峡を8機が往復」としているのに対し、韓国では「十数機」していることから、黄海まで戦闘機が随伴した可能性がある。

(エ) ガス田開発の拡大

 岸田外相が8月1日、政府が東シナ海の日中中間線付近の中国側海域で中国が移動式掘削船を使用してガス田開発拡大に向けた動きを進めていることが確認できた として外交ルートで中国に抗議したことを明らかにした。
 岸田外相は、中国が掘削船を停船させ何らかの作業を行っているが、日中間の海洋の境界が画定されていない状況で、一方的な開発に向けた行為を継続している ことは極めて遺憾だと非難し、ガス田開発の既成事実化の試みを直ちに中止するよう強く求めていく方針を示した。 (時事 08/01)

 米シンクタンクのCSISが10月2日、中国が東シナ海で行っているガス田開発についての分析結果を公表した。
 それによると衛星写真の分析から中国が2017年に入って日中の中間線の中国側の海域に新たに3基の採掘施設を設置したことを確認したという。 また7月から9月 にかけて採掘施設の周辺で中国の船舶の活動が活発化したと見られると指摘している。
 外務省は、日中の中間線の中国側の海域でこれまでに16基の構造物を確認したとしているが、今回CSISが新たな施設を確認したことで採掘施設の数は19基になっ た。(NHK 10/03)

イ. 我が国の対応

(ア) 政府の基本方針

 複数の政府関係者が、政府が尖閣諸島をめぐる中国との有事を想定し、自衛隊の対処方針を柱とする「統合防衛戦略」を2017年夏までに策定する方針を固め、日中 が衝突した場合のシナリオを作成することを明らかにした。
 自衛隊と米軍が連携して南西諸島防衛を強化するため、「日米共同作戦計画」の策定も並行して進め、中国に対し万全の備えを取るとともに抑止効果も狙う。
 想定する尖閣有事は、
① 中国の漁業監視船と海上保安庁の巡視船の偶発的衝突
② 中国が監視船の一斉送り込み
③ 中国海軍艦艇の展開
④ 中国空挺部隊が尖閣上陸
といったシナリオで、これに対し、
① 陸上自衛隊のSSMで中国軍艦を牽制
② 戦闘機や護衛艦の対地射撃で敵を制圧
③ 陸上自衛隊部隊の上陸
などの作戦を規定している。(読売 01/06)
(イ) 防空体制の強化

緊急発進機数の増強

 複数の政府関係者が2月25日、尖閣諸島周辺で活動を活発化させている中国軍機を念頭に航空自衛隊の緊急発進の態勢を見直し、これまで領空侵犯の恐れがある航 空機1機に対して戦闘機2機で対処していたのを4機に増強したと話した。
 発進するF-15 4機のうち増強した2機は後方で中国機の行動を監視し、追加の飛来を警戒する。
 またCAPの滞空時間を大幅に延長したほか、緊急発進の際にはE-2CやE-767をより多く飛行させ、中国機の情報を戦闘機に伝達するなど連携を強化した。 (産経 02/27)

 共同通信が1月26日、航空自衛隊の緊急発進件数が二倍になったと報じた。 航空自衛隊は2016年から緊急発進に際し、1件あたり4機の戦闘機を発進させている。 (JDW 03/08)

(ウ) 日米共同訓練の強化

 複数の政府関係者が、海上自衛隊の複数の護衛艦と、米海軍のCarl Vinson空母打撃群が3月7日から 東シナ海で共同訓練を行っていることを明らかにした。
 東シナ海での米空母と海自による訓練は異例で、日米同盟の強固さを誇示し、BM発射を繰り返す北朝鮮や海洋進出を強める中国をけん制する狙いがあるとみられる。 (讀賣 03/10)

 海上自衛隊が3月26日、東シナ海で27~29日の3日間にわたり日米共同訓練を行ったと発表した。 海自からはゆうだちなど護衛艦5隻が、米海軍からは空母 Carl Vinsonなど3隻が参加し、艦隊を組んだ上で戦術運動の確認や通信訓練などを行った。
 海自は3月7~10日にも東シナ海で同様の共同訓練を実施しており、月に2回もこのような訓練を行うことは珍しい。 (産経 03/29)

(エ) 南西諸島への部隊の配置

宮古島への陸上自衛隊警備部隊とミサイルの配備

 防衛省が宮古島への陸上自衛隊警備部隊とミサイルの配備に向け、拠点となる駐屯地の建設に8月に着手する。 それに先立ち6月中に用地を買収する。
 防衛省は宮古島の駐屯地用地となるゴルフ場で測量を終えており、8月には敷地造成に着手し、施設整備は3年程度で完成させることが可能で、2020年に部隊を配 置できるとみられる。
 2016年3月に与那国島に沿岸監視隊を配備したのに続き、宮古島では初めて実戦部隊の拠点整備に着工することで、中国の脅威に備える南西防衛強化は新たな段階 に入る。(産経06/04)

 防衛省が宮古島に700名規模の陸上自衛隊部隊を配置する計画を進めている。
 宮古島の配備計画で防衛省は来年度予算の概算要求に部隊庁舎などの建設工事費用や射撃訓練場の用地取得費として260億円を計上し、29年度末までに警備部隊 380名配置するため、島中部のゴルフ場を国有化して庁舎や車両整備工場などを建設する。
 SSMやSAM部隊合わせて270名も配備する計画であるが、弾薬庫などの建設予定地選定が遅れたため配置は31年度以降となる。 約100名の管理部隊も配置する。 (時事 10/08)

奄美大島、石垣島への配置

 防衛省が奄美大島、石垣島にも配置する計画である。(時事 10/08)

(オ) 個別事案への対応

中国艦から発進する小型 UAV への対応

 政府が、小型UAVによる領空侵犯への対処策として、巡視船に電波妨害装置を搭載しUAVの飛行を阻止する検討に入った。
 尖閣諸島周辺で5月に中国公船から発進したとみられるUAVが領空を侵犯したことを受けた措置で、法的根拠も整備する。
 5月に領空侵犯したUAVは、尖閣周辺の領海に侵入した中国海警局の警備艦の近くを飛行しているのを巡視船が発見した。 海保から連絡を受けF-15が緊急発進で 対応したが、小型のUAVはF-15のレーダに映らず、パイロットが目視もできないため、政府は巡視船にUAVに対処する能力を保有させる方向で検討に着手し、電波妨 害装置の導入が有力になった。
 巡視船は尖閣周辺を航行する中国海警局の船を常時監視しており、船からUAVが発進すれば即座に対処できる利点が大きい。 (産経 07/30)

ウ. 米国の対応

 ティラーソン国務長官候補は中国が領有権を主張する尖閣諸島が軍事力で奪われようとした場合は日米安全保障条約の適用範囲で、対日防衛の義務があると明言し ている。(日経 01/24)

 来日したマティス国防長官が2月3日に安倍首相と会談し、尖閣諸島を含めた日本の安全保障への関与を確認した上で、日米同盟の重要性を強調した。
 マティス長官は会談の冒頭、核やミサイル開発を進める北朝鮮の脅威を例に挙げ、1年前、5年前と同じく、日米安全保障条約第5条が本当に重要なものであることを 明確にしたいとし、5年先、10年先も変わらないだろうと語った。
 これに対して安倍首相も、日本自身も防衛力を強化する方針を伝えた。(ロイタ 02/03)

(3) 南シナ海

ア. 中国の動き

(ア) 人工島造成と軍事施設化

a. パラセル諸島(西沙諸島)

 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が人工衛星画像から2月8日、中国が実効支配する南シナ海パラセル諸島で進める軍事化の最新状況を公表した。
 同諸島で最大のWoody島では2016年にミサイルが配備されるなど、軍事拠点化が特に進んでいる。
 CSISによると、中国はパラセル諸島の3島に軍民の艦船多数が停泊できる港湾、4島に小規模な港湾を整備し、さらに1島でも港湾建設を進めている。
 5島にヘリコプタ降着場が設けられ、うち 1島には本格的なヘリ基地がある。(時事 02/09)

 CSISのアジア海洋透明化計画(AMTI)が2月8日、中国がパラセル諸島の軍事拠点化を進めているとの報告を行った。
 CSIS-AMTIによると、中国は同諸島の20ヶ所に部隊を置いて占拠し、そのうち数ヶ所には港湾、ヘリ降着場、ヘリコプタ基地などを建設しているという。
 パラセル諸島は1974年に、かつての南ベトナムとの紛争のあと中国が占拠している。(DN 02/09)

 3月6日に撮影されたPlanet Labs衛星の画像で、中国が南シナ海のパラセル諸島の北島で新たな建設を開始したことが分かった。
 画像では整地や港湾整地とみられる作業などが確認できる。 専門家は今後、軍事施設の建設につながる可能性もあるとみている。 (ロイタ 03/15)

b. スプラトリー諸島 (南沙諸島)

長距離 SAM 基地の設営

 米政府関係者2人の話で、中国が南シナ海スプラトリー諸島に造成した人工島で、長距離SAMの配備が可能とみられる20以上の建造物の建設をほぼ完了していること を明らかになった。 関係者2人は、これは軍備増強と見なされる可能性があるとの見方を示した。
 中国はSubi礁、Mischief礁、Fiery Cross礁の人工島にコンクリート製で開閉式屋根が付いた建造物を建設し、すでにスプラトリー諸島の人工島で滑走路を建設し ている。(ロイタ 02/22)

 ロイタ通信が米当局者2人の話として、中国が南シナ海に造築した島で24ヶ所近い長距離SAM用と見られる建造物をまもなく完成させると報じた。 これらの建造物 は長さが20m、高さが10mあり、複数のSAM中隊が収納される模様である。
 中国はスプラトニー諸島のSubi礁、Fiery Cross礁に軍用滑走路を構築している。(JDW 03/01)

 米戦略国際問題研究所(CSIS)傘下のアジア海事透明性イニシアチブ(AMTI)が3月27日、中国が南シナ海に造成した人工島で進めてきた主要な軍事施設の建設をほぼ完 了し、戦闘機をいつでも配備できる状態にあるとの見方を示した。
 CSIS-AMTIによると、南シナ海のスプラトリ諸島のSubi礁、Fiery Cross礁、Mischief礁でレーダや海軍・空軍の施設の工事が完了しつつある。 (ロイタ 03/28)

軍事施設の拡大

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)傘下のアジア海事透明性イニシアチブ(AMTI)が6月29日、 中国が南シナ海で新たな軍事施設を建設したとことが衛星画 像で明らかになったと発表した。 画像ではスプラトリ諸島のSubi礁、Mischief礁、Fiery Cross礁で、ミサイル用シェルタとレーダ、通信施設が建設されているのが 確認できるという。
 Fiery Cross礁では既存の8つのミサイルシェルタに加えて新たに4つのシェルタ、Mischief礁では大型のアンテナアレイが設置されていて、周辺監視能力を強化する とみられる。(ロイタ 06/30)

c. スカボロー礁

 特記すべき記事はなかった。
(イ) 海南島の軍備増強

 民間衛星のDigitalGlobeが3月24日に撮影した画像から、中国が海南島の加來(Jialaishi)航空基地にKJ-500 AEW&C 2機を配備していることが明らかになった。
 同基地にはそのほかに旧型のKJ-200 AEW&C 1機とY-8 2機、及びY-8J又はY-8Xと思われる1機も駐機している。 (DN 05/12)

 DigitalGlobe社の民間衛星が5月10日と20日に撮影した画像から、東シナ海に面する海南島の陵水(Lingshui)航空基地にY-8Q対潜哨戒機4機が駐機しているのが確認 された。 また6月10日の画像にはBZK-005 HALE UAV 3機の存在も確認された。
 更にいずれの日も、KJ-500 AEW&C 2機の存在も確認されている。(DN 06/22)

(ウ) 情報網の強化

 中国軍のBMEWS構築に関するの専門家が執筆したと見られる文書で、中国が南シナ海上空の高層大気圏にレーダなどを搭載した飛行船を飛ばし、敵ミサイルの発射 を探知する新型装備の開発を進めていることが1月10日までに分かった。
 配備時期は不明だが、実現すれば中国軍の宇宙開発を絡めた防空能力は大きく高まり、米軍を念頭に置いていることから南シナ海を巡る軍事バランスにも影響する と見られる。(東京 01/10)
【註】 :  南シナ海にレーダ搭載飛行船を浮遊させた場合に米国にとって、艦船の動きをリアルタイムで察知されてASBMの射撃諸元として利用されることが致命的であると思 われる。
 中国はASBMを装備しても、目標情報を入手する効果的な手段は持っていないと考えられる。
(エ) 演習の実施による威嚇

 China Daily紙が2016年12月16日、空母遼寧の艦隊が初の実弾演習を行ったと報じた。
 この演習でJ-13艦載戦闘機は空対空及び空対艦ミサイルを発射したほか、遼寧がType 730 CIWSやHHQ-10ミサイルを元にしたSHORADSの射撃を行っている画 像が紹介されている。(JDW 01/04)

 中国国防省によると、空母遼寧などの艦隊が1月2日に南シナ海で演習を実施した。 演習ではJ-15やヘリコプタの発艦訓練などが行われた。 国防省は具 体的な演習海域については触れていない。
 対中強硬姿勢のトランプ次期米政権の発足を前に、南シナ海で軍事的存在感をアピールし、米国などを牽制する狙いがあると見られる。 (時事 01/03)

(オ) 米軍機、艦船への異常接近

 ロイタ通信によると、中国が実効支配する南シナ海スカボロー礁付近の上空で2月8日、米海軍のP-3哨戒機と中国の軍用機が300mまで異常接近した。
 米太平洋軍報道官は9日、産経新聞にニアミスの事実を確認した上で、通常の任務飛行を行っていた米機と中国軍のKJ-200 AEW機が接近したとしている。 (産経 02/10)

 米海軍の駆逐艦Deweyがスプラトリー諸島Mischief礁で航行の自由作戦を実施した5月24日、J-10と思われる中国戦闘機2機が、海南島の南東150哩、パラ セル諸島の北西220哩を飛行中の米海軍P-3 Orionに対し200ヤードまで異常接近した。(S&S 05/26)

(カ) 周辺国漁民等への威嚇、暴行

ベトナム漁民への威嚇、暴行

 ベトナム漁業組合が産経新聞に、南シナ海のパラセル諸島近海で6月18日、ベトナム漁船が中国船とみられる2隻から攻撃を受けたと被害を受けたことを明らかにし た。
 現地メディアが24日伝えた被害内容によると、船長が18日午前7時頃に他の漁民らと操業中に、小型船2隻が漁船に近づき軍服姿の2人が漁船に乗り込み別の場所へ移 動するよう求めてきた。 2人は船を大破させた上、船長に暴行を加え、物品も奪い、被害額は10億ドン(490万円)と推計されるという。
 15日にも別のベトナム漁船が同様の被害を受けたとしており、中国がベトナム漁船への妨害と暴力を再び活発化させている可能性がある。 (産経 06/29)

 ベトナム漁業協会(VFA)が8月24日、8月に南シナ海で操業中のベトナム漁船4隻が中国から襲撃を受け、うち 1隻が沈没したとする非難声明を発表した。
 VFAによると、船体に「46102」と「56105」と書かれた2隻の中国船が18日午前にベトナム漁船を襲撃し、魚を奪い漁具を破壊し船を沈没させた。 漁船の乗組員 6人は近くの僚船に救助されたという。 同様の襲撃は4日、10日、13日にも相次いだとしている。
 現地メディアによるち、確認された中国船の中には、パラセル諸島周辺で2014年に石油掘削を強行する中国がベトナム公船とにらみ合いになった際、現場海域に いた中国海警局の船と番号が一致するものがあったとしている。(産経 08/25)

フィリピン漁民の排除

 フィリピンの国会議員が8月16日、スプラトリー諸島近くのThitu島周辺に中国海軍と海警局の艦船が多数集結し、この海域で伝統的に漁を行ってきたフィリピン 漁民を排除したと述べた。(JDW 08/23)

(キ) 南シナ海行動規範協議を巡る動き

 フィリピン外務省が11月13日、マニラで開かれている第20回ASEAN首脳会議でASEAN諸国と中国が、南シナ海の行動規範の協議を開始することに合意したと発表し た。 公式協議は2018年早々に開始される見込みという。
 ASEANと中国は8月に、南シナ海の行動規範で大筋合意していた。(JDW 11/22)
(ク) その他の動き

衛星打ち上げ基地の建設

 人民日報系の環球時報などが11月9日、中国が2018年にも南シナ海の海上から商用衛星を打ち上げると報じた。
 中国航天科技集団公司の専門家は、赤道に近い場所で打ち上げれば、積載量を増やし費用を安くできるととし、南シナ海は発射場所の選択肢の一つだと述べた。
 具体的な発射地点は不明だが、南シナ海の実効支配を強化することになる。(時事11/09)

新型軽戦車の南方配備

 中国のウェブサイトGJDBYとFYJSが2016年12月31日、桂林駅で約10両の新型軽戦車が無蓋車に載せられている画像を流したことから、これら戦車を装備した部隊が南 部戦域軍に派遣されている模様である。
 この新型軽戦車は500mmの装甲を打ち抜くことができるタングステン合金の徹甲弾や砲発射ミサイルを発射できる105mm砲を装備しており、2011年に初めて公表されて いる。(JDW 01/11)

オーストラリア軍の哨戒活動を妨害

 オーストラリア軍が南シナ海周辺で哨戒活動を行った際、中国軍から複数回にわたって妨害を受けていたことを、2016年12月中旬に開かれた日米豪3ヵ国の防衛当局 者の会合で豪政府が説明した。
 具体的事例として、2016年9月26日に中国空軍のJ-11が豪軍機に接近したケースを示した。
 また、2016年8月24日にマラッカ海峡で、中国海軍の宋級潜水艦が航行しているのも確認した。(産経 01/12)

不期遭遇回避メカニ ズムの構築で米中合意

 トランプ米大統領と習主席が4月6~7日に会談し、両国軍が偶発的な接触を防ぐためのメカニ ズムを構築することで合意した。 (JDW 04/19)

イ. 周辺国の動き

ASEAN 首脳会議

 4月25日に中身が分かった29日にマニラで開かれるASEAN首脳会議の議長声明案では南シナ海問題について、開発や活動の活発化に対する一部首脳の深刻な懸念を 共有すると明記したものの、中国を名指しはしていないなど中国への配慮がうかがえる。(毎日 04/26)

フィリピン

 フィリピンのロレンザーナ国防相が、南シナ海スプラトリー諸島で同国が実効支配するパグアサ島に滑走路と港を建設すると語った。
 同相は、ドゥテルテ比大統領がパグアサ島だけでなく、同国が南シナ海で実効支配する8つの島の軍事施設の拡張も承認したと付け加えた。 (RC 03/20)
【註】 :  タガログ語でPag-asa島、英語でThitu島と呼ばれるこの島には、1970年代に未舗装の1,400m滑走路をもつ飛行場は建設されているが港はなかった。

 フィリピンのドゥテルテ大統領が3月21日、訪問先のタイでプラユット暫定首相と会談し、南シナ海問題について、2017年中の行動規範の枠組み策定を目指す決意を 表明した。
 行動規範をめぐっては、中国とASEANは2016年9月の首脳会議で発表した議長声明で、行動規範の概要に関する協議を2017年前半中に終えるとする目標期限を明記し、 中国の王毅外相も3月8日に、2月末にASEANと行った事務レベル協議で、行動規範の枠組み草案を初めて取りまとめたと明らかにしていた。 (時事 03/21)

 フィリピンのドゥテルテ大統領が4月6日に軍に対し、南シナ海で同国が実効支配している全島に部隊を配置すると共に要塞化するよう命じた。
 大統領はすべての国と友好関係を維持しようと努力したが、少なくとも現在実効支配している島だけでも権益を守らないといけないと述べた。
 フィリピンは南シナ海で9~10個の島を支配しているが、大統領は同国の独立記念日にその内のPag-asa島を訪問し国旗を立てると言う。 (S&S 04/06)

 マニラで4月29日に開かれるASEAN首脳会議で、議長国であるフィリピンのドゥテルテ大統領が27日、南シナ海で中国に対する国際仲裁裁判の判断について、議題 として取り上げないし、誰も中国に圧力をかけられないなどと述べた。
 この発言を裏付けるように今回の首脳会議の議長声明の草案では、人工島や仲裁裁判の判断について直接の記述はなく、南シナ海をめぐる問題は中国への配慮が にじんだ内容となっている。
 ドゥテルテ大統領には、5月に予定されている自身の中国訪問を控え、中国に対する融和的な姿勢を示す狙いもあると見られる。 (NHK 04/27)

 フィリピンのドゥテルテ大統領が4月6日、南シナ海で現在比軍が占領していない全島に部隊を配置するよう命じた。
 大統領によると該当する島は9~10島になるという。(JDW 04/19)

ベトナム

 BBC放送がシンガポールの石油コンサルタントの話として7月5日、ベトナムが南シナ海海域で石油探査に向けた海底掘削に着手したと報じた。
 ベトナム南東部の南シナ海の鉱区開発権を持った国際石油会社が委託した探査船で6月21日にベトナムから400kmの海底掘削を始めたという。
 この探査をめぐっては、中国人民解放軍首脳が激高し訪越日程を切り上げた経緯がある。
 報道が事実であれば、ベトナム政府は中国側の猛抗議を無視して掘削を強行したことになり、中国による報復も予想される。 (産経 07/05)

 英BBC放送が7月24日、ベトナムが南シナ海の海域で6月に石油の掘削を開始したものの、最近になって作業を停止したと報じた。 中国の強い警告を受けた対応と で、掘削を続けるならスプラトリー諸島に駐留するベトナム軍を攻撃すると威嚇したという。
 問題になったのは、ベトナム南東部から400km沖の海域で、同国政府がスペインの石油ガス企業に鉱区の掘削を認めているが、中国も同じ鉱区の採掘権を別の企業 に与えており、ベトナムの動きを見過ごすわけにはいかなかったとみられる。(時事 07/24)

ウ. 米国の対応

トランプ政権の姿勢

 スパイサー米大統領報道官が1月23日に中国が造成した人工島で軍事施設建設が進む南シナ海について、1つの国による占拠から防衛すると語り、中国を強く牽制し た。
 ティラーソン国務長官候補も上院の指名承認公聴会で、中国の人工島への接近を認めない可能性を示唆しており、オバマ前政権に比べて中国に厳しく臨む姿勢を 明確にした。(産経 01/24)

 トランプ米新政権が南シナ海問題で中国への強硬姿勢を鮮明にしている。
 次期国務長官として米上院で承認される見通しのエクソンモービルの前CEOティラーソン氏は、トランプ大統領と同様に中国に厳しい姿勢で知られる。 スパイサ ー大統領報道官も1月23日、南シナ海は公海と強調している。(日経 01/24)

 訪日中のマティス米国防長官が中国の南シナ海での積極的な行動について2月4日、地域での各国の信頼を失っていると厳しく批判したが、現時点で劇的な軍事力の 展開は必要ないとの見解を示した。(ロイタ 02/04)

「航行の自由」作戦の継続実施

 米当局者が匿名を条件に、米海軍の駆逐艦Deweyが、南シナ海スプラトリー諸島のMischief礁に中国が造成した人工島から12nm内を航行する「航行の自由」 作戦を展開したと明らかにした。
 トランプ政権下で初めてとなる。(ロイタ 05/25)

 米FOXニュースなどが米国防当局者の話として報じたところでは、米海軍駆逐艦Stethemが7月2日に南シナ海パラセル諸島Triton島から12nm内を航行した。  航行の自由作戦の一環とみられる。
 Stethemは横須賀基地所属で、Triton島付近を航行中は、中国軍艦艇が追尾したという。
 米軍による南シナ海での航行の自由作戦が明らかになったのは5月にパラセル諸島のMischief礁付近で行って以来、トランプ政権では2回目とみられる。 (時事 07/02)

 航行の自由作戦(FONOP)として米海軍の駆逐艦Stethem(DDG 63 Flight Ⅰ)が7月2日に南シナ海パーセル諸島のTriton島の12nm以内を中国側に通告しない で航行したのをうけ、中国 が南シナ海での海軍による哨戒を強化すると発表した。 Stethemの航行に際して中国は、駆逐艦、フリゲート艦、掃海艦各1隻 とJ-11B 2機を派遣した。
 トランプ政権になってから米海軍が南シナ海でFONOPを行うのは、5月24日に駆逐艦Dewey (FlightⅡA) がスプラトニ諸島のMischief環礁の12nm以内を航行 して以来二度目である。(JDW 07/12)

 米海軍当局者が8月10日、駆逐艦John S. McCainが航行の自由作戦の一環として、中国が人工島を構築したスプラトリ諸島Mischief礁の6nm以内を航行した ことを明らかにした。(S&S 08/10)

 米海軍のFlight ⅡA駆逐艦DDG 90 Chafeeが10月10日、中国が実効支配する南シナ海パラセル諸島付近を航行した。 米海軍筋によると Chafeeは 中国が造成した人工島付近を航行したが、人工島から12nm内には入らなかった。
 トランプ政権発足後、南シナ海の係争海域での航行の自由作戦は4回目とみられる。(時事 10/11)

 米海軍駆逐艦Chaffeeが10月10日、南シナ海パラセル諸島で航行の自由作戦(FONOP)を実施した。
 これに対し中国は強く抗議すると共にType 054A級フリゲート艦と、J-11B 2機、Z-8 1機を投入してこれを妨害した。 (JDW 10/18)

空母が哨戒任務を開始

 米空母Carl Vinsonが2月18日、南シナ海での活動を開始した。 米軍は通常の作戦行動と発表しているが、中国を牽制するものとみられる。
 Carl Vinson空母打撃群は1月初めに米西海岸のサンディエゴを出航し、これまでハワイとグアムなどの沖合で訓練を実施してきた。 (時事 02/19)

 米大平洋艦隊がWeb上で2月18日、サンディエゴを母港とする空母Carl Vinsonが駆逐艦Wayne E. Meyerを伴って18日に南シナ海に入ったと発表した。
 Carl Vinsonはここで恒常の哨戒任務に就くという。 今回でCarl Vinsonの南シナ海入りは17回目になる。 (MT 02/21)

 空母Carl Vinsonを中心とした米海軍第1空母打撃群(CSG)が2月18日に南シナ海に入った。 Carl Vinsonには第1駆逐戦隊の駆逐艦DDG 108 Wayne E Meyerと、第2空母航空団が同行した。
 米海軍は国際日付変更線を第3艦隊と第7艦隊の境界としていたが、今回Carl Vinsonは第3艦隊の指揮下に行動している。 (JDW 03/01)

周辺国への武器等供与

 米沿岸警備隊がベトナムに、退役したHamilton級警備艦1隻を供与した。 Hamilton級警備艦はバングラデシュとナイジェリアに2隻ずつ、フィリピンに3隻供与さ れ、フィリピンではDel Pilarg級フリゲート艦として海軍が装備している。
 Hamilton級警備艦は全長115m、速力29ktで、76mm砲のほか20mm CIWS、M242 Bushmaster砲などを装備している。 (JDW 06/07)

エ. 欧州諸国の対応

英 国

 ファロン英国防相が7月27日、2018年に南シナ海に軍艦を派遣し「航行の自由作戦」を実施する計画を明らかにした。
 EUからの離脱交渉が本格的に始まった英国と、中国の関係が冷え込む可能性がある。
 ファロン国防相は同海域でのプレゼンスを高めると表明したうえで、南シナ海を航行するのに中国に制約されるつもりはなく、われわれは自由に航行する権利を持 っておりそれを行使すると強調した。(ロイタ 07/28)

オ. 我が国の対応

 稲田防衛相が2月5日のNHKの番組で、マティス米国防長官との会談で一致した南シナ海への関与強化に関し、米軍による航行の自由作戦は支持すると申し上げたが、 自衛隊は行かないと述べた。
 稲田氏は、防衛協力、訓練で役割を果たしていくと語り、周辺諸国の能力構築を支援する方針を示した。 (時事 02/05)

 複数の関係者によると、海上自衛隊が5月から3ヶ月間、護衛艦いずもを南シナ海とインド洋に派遣する。 長期航海の訓練のほか、フィリピンなどへの寄港 を通じ南シナ海の軍事拠点化を進める中国をけん制する。
 いずもは5月中旬にシンガポールで行われる国際観艦式と国際共同演習に参加し、7月中旬に日米印がインド洋で実施する共同演習Malabarにも参加するが、 それまで日本に帰港せず、南シナ海に2ヶ月間留まる。
 海自はインドネシアのジャカルタ、フィリピンのスービック、スリランカのコロンボへの寄港のほか、南シナ海の米海軍との共同訓練などを調整している。
 フィ リピンではドゥテルテ大統領を艦上に招待することも検討している。(ロイタ 03/13)

 防衛省が6月16日、ヘリ空母いずもと護衛艦さざなみが南シナ海で15日 に米空母Ronald Reaganとの3日間に及ぶ共同訓練を終了したと発表 した。 いずもさざなみは5月上旬から南シナ海で多国間演習を行っていた。
 一方6月上旬にはヘリ空母ひゅうがと護衛艦あしがらが日本海で、米空母Carl Vinsonとの共同訓練を行っている。 (S&S 06/17)

(4) 中国対インド

ア. 中印国境

(ア) 国境での小競り合い

a. 西部ウッタラカンド州での小競り合い

ウッタラカンド州へ中国軍ヘリが侵入着陸

 インドのスワラジ外相が6月5日、中国軍のヘリ2機が越境してインド北部のウッタラカンド州に侵入し、短時間着陸したことを明らかにした。 インド国営通信 は政府関係者の話として、越境してきた中国軍の攻撃ヘリは5分間にわたってウッタラカンド州にとどまったあと、中国側に戻ったと報じている。
 これについてインド政府は中国側を批判し、モディ首相が中国の首脳と会談する際に釈明を求めていく方針を明らかにした。 (NHK 06/06)

カシミール地方ラダック付近での小競り合い

 Times of India紙など複数のメディアが、インドと中国の国境地帯の西部カシミール地方のラダック付近で8月15日、中印両軍の兵士による小競り合いが発生した と報じた。 小競り合いは両国の実効支配線で仕切られているパンゴン湖の北岸土手で起きた。
 インド消息筋は同紙に対し、中国兵が2度にわたりインド領へ入り込もうとしたためインド兵が阻止したところ、双方の間で投石などの小競り合いが発生したと明 らかにした。  中国兵は鉄棒を手にしていたもようで、両軍兵士が軽傷を負い、双方はその後現場から撤収した。 (産経 08/16)

b. 東部シッキム州での小競り合い

小競り合いの発生:6月

 インドのPTI通信が当局者の話として6月26日、中国人民解放軍が中印両国の境界を超えて印北東部シッキム州に侵入したと報じた。 現地司令官同士の協議が20日 に行われたが、緊張が続いているという。
 塹壕2ヵ所を破壊し、インド軍と10日間にわたりにらみ合いになっており、中国へ向かうインドのヒンズー教巡礼者の一団も阻止した。 (産経 06/26)

 ブータンのナムギャル駐インド大使が6月28日、中国軍がドクラムにあるブータン陸軍の兵舎に向かう道路の建設を始めたとして中国側に抗議したことを明らかにし た。
 中国外務省はこれに先立ち、インド国境警備隊がシッキム地域の中印境界を超えて中国領に入り、ドンラン(ドクラムの中国名)で、中国国境部隊の通常の活動を 妨害したとインドに抗議していた。
 ドクラム高地はインド領に突き刺さる中国領チュンビ渓谷に隣接しており、南のインド主要部と北東部を結ぶ細長いシリグリ回廊に中国軍が侵入すればインドは東 西に分断されるため、一帯は戦略的に重要な地域であるため、インドはブータンに支援を与え、軍を駐留させている。 (産経 06/29)

 中印間のLoACのインド側でインドが支配するシッキム州で6月17日以来、両軍のにらみ合いが続き、双方が非難の応酬を行っている。 (JDW 07/05)

中国の反論と対応

 チベットとインドのシッキム、ブータンの3ヵ国の国境が接するトカラ地域で、中国がインドの領土に道路を建設したためにインド軍が出動したとインドが主張し、 中国はインド軍が国境を侵犯して中国軍が対応したと反論している今回の衝突は、両国関係全般に深刻な悪影響を及ぼしている。 (東亞 07/18)

 中国がドクラム地区での道路建設について官製メディアなどを通じ連日インドを激しく非難してインド軍の撤退を要求しており、問題となっている道路建設は単な るインフラ整備ではなく、係争地を自国領に組み込む国策の一環との見方が強く、習近平政権は南シナ海における人工島の造成同様、断固として推進していく模様で ある。
 中国外務省報道官は7月26日、問題を解決するには中国領に不法に越境してきたインド部隊の撤退しかないと強調した。 (産経 07/27)

 中国外務省が8月2日、インド、ブータンとの国境地帯で続く緊張で中国の立場を説明する文書を発表し、インド部隊が中国側の領土に侵入したとして無条件での インド軍撤退を要求した。
 文書によると、インド部隊270名が6月18日に中国側に侵入しその後最多で400名が越境したと主張し、7月末現在で40名が中国領土内にとどまっているとしている。
 文書で中印境界は、1890年に中国と英国間で結ばれた条約に基づき決まっていると、インド側による越境を示すとする写真も掲載した。 (日経 08/02)

 中国がインドに対し、自国領土を侵害していると抗議し、どれだけの代償を払っても主権を守ると警告した。 (JDW 08/02)

両軍、国境対峙解消に合意

 インド外務省が8月28日、インド、中国、ブータン3ヵ国が国境を接するドクラム高地で2ヵ月以上にらみ合いを続けていた中印両軍が、数週間の外交交渉を続けた 結果、国境の治安要員の迅速な撤退で合意したと発表した。
 一方、中国はインド軍の撤退に伴って部隊を縮小する方針を示したものの駐留を続けると強調しており、国境をめぐる問題の根本的解決には至っていない。 (時事 08/28)

 中国外務省が8月28日、中国軍とインド軍が2ヶ月にわたり対峙していた中国、インド、ブータンの3ヵ国が国境を接するDoklam地方から、同日14:30にインド軍の 兵員と装備が撤退したと発表した。
 一方、インド外務省は、両国は停戦に合意に基づき相互に撤退したとしている。
 これについて中国外務省は、中国軍は引き続き現地でパトロールを継続しているとしている。 (JDW 09/06)

両軍合意解釈のズレ

 中国とインドの係争地ドクラム高地をめぐり、インドで再び中国に対する警戒感が高まっている。
 ドクラム高地をめぐっては、2ヵ月の対立の末、8月28日にインドが「両国が撤退を完了した」と発表し軍事的対立が解消して1ヵ月が経過したが、Indian Express 紙が政府筋の話として10月6日、中国軍はまだドクラム高地にいると報じ、インド軍などは神経をとがらせている。 (JDW 10/16)

(イ) 国境付近での兵力増強

a. 中国の兵力増強

高地戦に向けた装備準備

 中国国防省の広報官が6月29日、陸軍がチベット高原で新型軽戦車の試験を実施したことを認めた。 この記事は画像と共に、中国のウェブサイトGuancha.cnで 6月11日に公表されていた。
 この軽戦車は105mm砲を装備しており、形状はType 96やType 99Aに似た箱形をしている。 (JDW 07/12)

 中国軍が装備しているZTQ-15軽戦車は輸出用のVT-5と全く同じようで、 105mm砲のほかRWS、35mm AGL、12.7mm重機関銃を装備している。 (CD 10/07)
【註】 :  この軽戦車は、先般中国軍がチベット高原で試験したと報じられたものと同じとみられることから、中国軍はZTQ-15をヒマラヤ高地における対インド戦用に考え ている可能性がある。
 China Dailyが11月24日、AV500W回転翼UAVが11月18日に、チベット高原の青海省でASM 2発を搭載して海抜高度4,300mを飛行したと報じた。 AV500Wは10月31日に は高度5,006mを飛行したという。
 一方11月9日には、複数ロータUAVのXM20が、全備状態で4,600mを飛行している。(CD 11/24)

大規模な演習の実施

 インド東部シッキム州での小競り合いが続くなか、China Dailyなど中国国営メディアは7月17日、中国人民解放軍がチベット高原の海抜5,000m地点で各種重火器 を動員した大規模演習を行ったと報じた。
 演習では山岳戦用に開発された軽戦車も参加したという。
 中国メディアは7月初めにも、海抜5,100mの地域で陸軍部隊が実弾演習を行ったと明らかにした。 (東亞 07/18)

 中国は7月中旬頃に海抜5,000m以上のチベット高原で実弾射撃訓練を実施し、その模様を国営TVを通じて報じた。
 この演習には迫撃砲、車載榴弾砲、MRL、対空砲などの重火器と、ATM、RPG、重機関銃なども参加した。
 また香港のSoutjh China Morning Post紙は7月18日、中国軍がチベットに数万㌧の軍事物資を輸送して演習を実施したと報じた。 (JDW 08/02)

b. インド軍の兵力増強

武装軽ヘリ飛行隊のアッサム州配備

 インド陸軍が国産のRudra武装軽ヘリ1個飛行隊12機を、中国との国境に近いアッサム州に配備する計画である。
 RudraはHAL社が設計製造した実用上昇限度6,000mのヘリで、機首のTHL-20ターレットM621 20mm砲、左右の固定翼に併せて4発のMistral ASMまたは12発ロケット弾 ポッド4基を搭載できる。(JDW 06/21)

(ウ) 中国のネパール取り込み

 ネパール軍と中国軍の初の合同演習が、4月16日にカトマンズで始まった。 ネパール陸軍報道官によると目的は対テロで、25日まで10日間の日程で行われる。
 中国にはネパールへの影響力を強める狙いがあるとみられ、ネパールと安全保障や経済で密接な関係を持つインドを刺激しそうである。 (産経 04/17)
(エ) 中国のブータン取り込み

 ヒマラヤ山脈でインド軍と2ヵ月対峙する中国が、第三の当事国ブータンを自陣営に引き込もうと外交攻勢をかけている。 中国は$10Bに上る経済支援をブータン に提示したとみられ、インドと共闘してきたブータンの対中姿勢は軟化する。
 中国の外交官は8月上旬にインド人記者団に対し、ブータンがインド軍の侵入場所はブータン領ではないと明確に伝えてきたと主張した。 侵入場所とは、ブータ ンと中国が領有権を争うドクラム地方ドラム高原で、インド陸軍と中国人民解放軍が6月から対峙している。
 この外交官発言が事実なら、ブータンとインドの対中共闘関係のほころびを意味する。(日経 08/20)
イ. インド洋の覇権争奪

(ア) 中国のインド洋進出

南アジアで港を99年租借してインド包囲

 中国がスリランカやパキスタンなど南アジア諸国への浸透を進めている。
 スリランカでは、国内有数の規模を誇る港を中国国営企業が99年間租借契約が締結された。
 パキスタンでは、グワダルで港湾整備に携わってきた中国がパキスタンと2015年に港の43年間の租借で合意している。 (時事 12/30)

潜水艦の遊弋

 インドのNDTVが1月6日、商業衛星が2016年5月に撮影した画像から、中国の攻撃型原潜(SSN)と母艦各1隻がパキスタンのカラチ港に入港していたことが分かったと 報じた。 インド海軍はこのSSNを最新型であると見ているという。
 中国は旧式のType 091漢級と2006年に一番艦が就役したType 093商級の2種類のSSNを保有している。 (JDW 01/18)

 インド洋では中国軍の進出が拡大しており、5月と6月には戦闘艦、潜水艦、情報収集艦などが10隻以上確認されており、7月には中国軍がジブチに配置されている。 (JDW 11/01)

ミャンマ海軍とマータバン湾で合同演習

 中国海軍とミャンマ海軍が5月21日にマータバン湾で合同演習を行った。 演習には中国から駆逐艦、フリゲー ト艦、補給艦の各1隻、ミャンマーからはフリゲート 艦、コルベット艦の各1隻が参加した。
 演習は1日限りであったが、中国艦はチラワ港を訪問し、ベンガル湾やインド洋進出の足がかりを得た。 (JDW 05/31)

(イ) インドの対応

海洋軍備の増強

 インド海軍が3月2日、Kalvari (Scorpene)級潜水艦からの対艦ミサイルの発射試験に初めて成功したと発表した。
 発射したのはExocet SM39 Block 2と見られる。(JDW 03/08)

海洋警備活動の強化

 インド海軍が隔年行っている指揮官会議が10月末まで4日間開かれ、インド洋で戦闘艦と航空機による常続的な警戒監視活動の実施が決定された。
 印海軍高官は中国の進出に備えて、ペルシャ湾からマラッカ海峡やアフリカ沿岸に12~15隻の駆逐艦等を展開すると共に、P-8I哨戒機と2013年8月に打ち上げた GSAT-7 Rukmini多帯域衛星を活用するとしている。(JDW 11/01)

(ウ) インド洋諸国の動き

a. 環インド洋連合初の首脳会合

 インドやオーストラリアなど、インド洋に面する21ヶ国でつくる地域機構の環インド洋連合は、設立20周年にあたり3月7日にジャカルタで初めての首脳会合を開催 し、インド洋における国際法の順守を強調する協定を採択した。
 海洋進出を加速させる中国をけん制する狙いもあり、中国と連携を深めるパキスタンは参加していない。
 各国は海洋協力などの面で意見を交わし、会合の成果として「ジャカルタ協定」を採択した。
 協定ではインド洋の安定を保つために、関係国間の連携を強化することで一致したほか、国際法に基づき航行と飛行の自由を行使できることを確保するとの文言が 盛り込まれ、インド洋における国際法の順守を強調する内容となってる。(NHK 03/07)
b. スリランカ

 スリランカの地域開発相が1月18日、スリランカ南部ハンバントタ港の株式の8割を中国企業に長期貸与する合意文書の調印が延期されたことを明らかにした。
 スリランカ政府は当初、調印時期を1月初めとしていた。(産経 01/19)

 スリランカ南部ハンバントタ港の権益を中国企業へ長期貸与する計画が宙に浮いており、中国の「一帯一路」が壁に直面している。
 現地で反対運動や訴訟が起きているためで、スリランカ政府は1月初めの調印を目指していたが、予定から2ヶ月近くたってもめどは立っていない。 (産経 03/09)

 アジアで最も小さな国の一つであるインド洋の島国スリランカに最先端施設を備えた港湾が存在する理由とは。 また中国がそれほど使われないHambontota港を人 道支援目的を理由に建設し、米軍が先月2週間近くもここに寄港した理由とは。
 現在インド洋には世界のコンテナ船の半分以上が航行し、貨物の1/3、石油の2/3が輸送されている。 そのシーレーンはマラッカ海峡を経て南シナ海に通じている。 (S&S 03/20)

(エ) 周辺国の動き

a. パキスタン

 パキスタンでは、グワダルで港湾整備に携わってきた中国がパキスタンと2015年に港の43年間の租借で合意している。 (時事 12/30)
b. マレーシア

 Wall Street Journalが、中国海軍の通常動力型潜水艦長城と潜水艦救難艦長興島が1月3日にマレーシアのコタキナバルに入港したと報じた。
 中国国防省も1月7日、ソマリア沖とアデン湾で護衛任務に就いていた潜水艦が、帰還途中に補給などのためマレーシアに寄港したことを認めた。 中国海軍の潜水 艦がマレーシアに寄港するのは初めてである。
 中国潜水艦インド洋で展開は、2014年9月にスリランカの港への停泊が報じられ初めてが確認されているが、南シナ海で領有権争いを抱える両国の軍事的な接近とと もに、中国潜水艦のインド洋周辺での活発な動きが裏付けられた。(産経 01/08)
ウ. インドの対中配慮

 海軍当局者や外交筋によると、オーストラリアは2017年1月にインド国防省に書簡を送り、7月に行われる日米印の共同演習に艦船を派遣してオブザーバー参加す ることが可能かどうか打診したが、インドは軍事演習の拡大に反対してきた中国に配慮し、オーストラリアの要請を拒否したという。
 しかしインドはその代わりに日米印3ヵ国艦から演習を視察してはどうかとオーストラリアに提案したという。 (ロイタ 05/31)
(5) インド対パキスタン

ア. 国境付近での紛争

 特筆すべき記事はなかった。
イ. インドの軍備増強

Barak 8 SAM の導入

 IAI社が4月6日、インド国防省から同社に防空BMDシステムを受注したと発表した。 受注したのは印陸軍向けのMR-SAMと海軍向けのLR-SAMで、受注額は$1.6B~$2B になると言う。
 陸軍向けのMR-SAMは現在Barak-LRと呼ばれている射程70~80kmのBarak 8で、40個FUとミサイル200発が2023年までに納入される。
 海軍向けのLR-SAMは戦闘機に対し250km、各種水上目標に対し25kmの射程を持つ。(JDW 04/12)

ウ. パキスタンの軍備増強

SLCM Babur-3 の発射試験

 パキスタン軍が1月9日、水中発射巡航ミサイルBabur-3の発射試験に初めて成功したと発表した。 インド洋の水中移動発射台から射出され、標的に正確に着弾した という。
 パキスタン軍によると、Babur-3の射程は450kmで、2016年12月に発射実験に成功した地上発射型Babur-2の派生型という。 (時事 01/10)

 Babur-3はBabur-2 GLCMの潜水艦発射型で、2016年12月に発射試験に成功したBabur-2の射程はJane's Weapons: Strategicによると750kmという。 (JDW 01/18)

MRBM「アバビール」の発射試験

 パキスタン軍が1月24日、射程2,200kmのMRBM「アバビール」の発射試験に成功したと発表した。(日経 01/24)

新型地対艦ミサイルの発射試験

 パキスタン軍の報道機関ISPRが3月16日、新型地対艦ミサイルの発射試験に成功したと報じた。 ミサイル名は特定していないがBubur LACMの対艦型とみられる。
 パキスタンは2016年4月に、中国のC-602/YJ-62のパキスタン型であるZarbの発射試験に成功しているが、2016年11月にIDEAS 2016展で国産ASCMを開発していること を明らかにした。
 また2016年12月に起工した 国産のAzmat Block Ⅱミサイル艇の完成予想図には、Block Ⅰが装備している中国製C-802A/CSS-N-8 Saccade用より大型の発射機が装備 されている。(DN 03/16)

FC-1 / JF-17 の発展型

 パキスタンがJF-17の5番目の飛行隊を発足させようとしているが、復座型のJF-17Bが1Qに初飛行する。 更にAESAレーダを搭載するBlock 3の契約も行われること になっている。
 パキスタンはBlock 1を50機、Block 2を50機契約しているが、 Block 2の最終14機は50機予定されているBlock 3に切り替わる模様である。
 5月に決定されるBlock 3のAESAレーダにはCETGC社製KLJ-7Aの改良型のほかLeonardo社(旧Selex ES社)製品など数機種が候補に上がっている。 (AW&ST 02/20)

中国製 LY-80 SAM の装備

 パキスタンが3月12日、同国陸軍に中国製のLY-80 SAMを装備すると発表した。(JDW 03/22)

(6) ペルシャ湾岸

ア. イランの核問題

 特筆すべき記事はなかった。
イ. イランとサウジアラビアの対立

イラン国会議事堂やホメイニ師廟などでテロ

 イラン情報省が6月8日、テヘランで国会議事堂やホメイニ師廟などが襲われた7日の同時テロで、容疑者5人の身元や経歴を公開した。 容疑者はISIS戦闘員とし て、シリアやイラクでの戦闘に参加ており、イランと敵対する サウジアラビアで信奉される「ワッハーブ派」と結び付いていると指摘し、テロ関与を改めて示唆し ながらサウジへの批判を強めている。
 ワッハーブ派は、イスラム教聖典コーランの厳守を唱えるスンニ派の中でも特に戒律が厳しい一派で、サウジで国教となっている。 (時事 06/08)

 6月7日に起きたテロ事件についてイラン情報省は、5人の容疑者とサウジアラビアとの間に宗教上のつながりがあったと主張しており、対立するサウジアラビアへ の反発がイラン国内で強まることも予想される。
 イランが8日に新たに発表した情報によると、容疑者たちは過去にるシリア北部のラッカなどで戦闘に参加していたほか、2016年の夏にはイランに帰国してテロ を企てたものの未遂に終わったため、いったん国外に逃亡していたという。(NHK 06/09)

 イランは6月18日夜に、シリア東部のISIS拠点に対しBM数発を発射したが、これはサウジアラビアと米国に対するメッセージであるという。 (MT 06/19)

サウジアラビアによるイラン船舶拿捕と乗組員の拘束

 サウジアラビア政府が6月19日、ペルシャ湾の油田近くを航行中のイラン船舶1隻を16日に拿捕し、乗組員3人を拘束したと明らかにした。 サウジ側は3人がイラ ン精鋭部隊の革命防衛隊員としているのに対し、イラン側は3人は漁師だと主張している。
 ペルシャ湾では、イラン漁船2隻がサウジ沿岸警備隊の発砲を受け、イラン人漁師1人が射殺されたばかりで、サウジとイランが敵対姿勢を強め、緊張が一層高ま る恐れがある。(時事 06/20)

イスラム軍事反テロ連合の本格始動宣言

 サウジアラビアのサルマン皇太子が11月26日、リヤドで開かれたイスラム圏約40ヵ国の国防相らが参加した会議でエジプトで起きた過去最悪規模のテロについて テロや過激主義を批判し、「イスラム軍事反テロ連合」の本格始動を目指す考えを示し、次期国王と目される皇太子を中心にスンニ派諸国の軍事連合を主導する姿 勢をアピールした。
 会議に参加したのはエジプトやアフガニスタン、トルコなどスンニ派主体の国々で、シーア派大国イランのほか、イランの影響力が強まっているイラクやシリア は加わっていない。 また、イランに融和的だとしてサウジが6月に断交に踏み切ったカタールも招待されなかった。 (産経 11/27)

ウ. イランの軍備増強

(ア) 予算の増額

 イラン国会が8月13日、米国の制裁に対抗したミサイル開発促進と、革命防衛隊の活動強化 のため$520Mの予算を承認した。
 国営イラン通信(IRNA)によると、今回の予算の半分は革命防衛隊のために使われ、米国がテロ支援組織と見なす海外で暗躍する特殊部隊アルクッズ部隊の工作費 が強化される。(時事 08/13)
(イ) 長距離弾道弾の開発

新型 SLV の発射試験に成功

 イランの国営通信が7月27日、国立の宇宙センタで新型SLVの発射試験に成功したと発表し、発射の様子を撮影した映像を公開した。 このSLVは250kgの衛星を高 度500kmの軌道に打ち上げることができ るという。 長距離BMへの応用を警戒する米国の反発を招くと見られる。
 イランは2009年に初めてとなる国産の衛星の打ち上げに成功していて、今後新たに通信などを目的とした衛星を打ち上げる意向を示している。 (NHK 07/28)

 イランが7月27日、Simorgh SLVの発射試験が行われたことを初めて公式に発表した。
 Simorgh SLVは250kgの衛星を高度500kmの低軌道に打ち上げる能力を有する。(JDW 08/02)

MRBM の発射試験

 米当局者が匿名を条件に1月30日、イランがMRBMの発射試験を29日に実施したと話した。この種のミサイル発射実験が前回行われたのは2016年7月だという。
 この当局者によると、テヘラン東方のセムナン近郊にある発射場から発射され、1,010km飛翔後に爆発したという。 (ロイタ 01/31)

 ・ホラムシャハル(Khorramshajr)の発射試験

イラン国営メディアが9月22日、国産新型BM ホラムシャハルの発射試験に成功したとして発射の映像を公開した。 発射の日付や場所は明らかにしていない。
 米国がイランとの核合意破棄も辞さない姿勢を強めるのに対し、イランが反発を示したとみられる。
 射程2,000kmで複数の弾頭が搭載可能なホラムシャハルはテヘランで22日行われた軍事パレードで公開されたばかりで、ロウハニ大統領は抑止力のために必要なら、 防衛力、軍事力を強化すると述べていた。(時事 09/23)

 イラン国営TVが9月23日に、射程2,000kmのKhorramshajrの発射試験が1月29日に行われたと発表した。
 Khorramshajrは北朝鮮の火星-10 (KN-07)とよく似ている。(JDW 10/04)

洋上発射型弾道弾 Hormos-2 の発射試験

 イランの半国営通信社Farsが3月9日に革命防衛隊の宇宙航空部門司令官の話として、革命防衛隊が3月上旬ら洋上発射型弾道弾Hormos-2の発射試験を行い155哩離れ た標的を破壊したと報じた。(DN 03/09)

Zolfagharの写真を公開

 イランのFars通信が12月16日、Fateh-110シリーズのZolfagharのクローズアップ写真を公開した。
 それによると弾体の多くには 重量軽減のため複合材が使用されていると言う。
 イラン革命防衛隊(IRGC)が2016年9月にZolfagharを公開した際に射程は700kmとしていた。 これはその2年前に公開されたFateh-313の射程500kmを上回っている。
【註】 :  弾頭部と見られる位置に小さな十字翼があるが、その形状から可動翼のようで、弾頭部は終末弾道で経路修正が行われる可能性を示唆している。 (360 12/20)

北朝鮮との連携

 ロイタ通信によると、米政府当局者が1月29日にイランが発射したミサイルについて、イランが2016年7月に発射したものと同じだと述べた。 Fox Newsは当時この ミサイルはMusudanだと報じており、事実であれば、両国がBM開発で密接な協力を続けていることを示すことになる。
 イランが今回発射したミサイルはMusudanの射程よりかなり短い1,000km飛行したのちに爆発したことから失敗との見方があるが、米国の核問題専門家は飛行距離 をわざと抑えた可能性を指摘している。(産経 02/02)

 イラン国防相が2月1日、弾道弾の試験を行ったことを認めた。 ロイタ通信は1月30日に試験を報じ、Fox Newsが米政府当局者の話として発射されたのは Khorramshahr MRBMで600哩飛翔した後に爆発したと報じた。 またロイタ通信はイランが1月29日にSemnan市近くからMRBMを発射し、630哩飛行したのちに爆発したと 報じた。
 Fox Newsは2016年7月15日に、イランが7月11~12日の夜にSemnan市近くから北朝鮮のBM-25 Musudanを発射したが発射直後に爆発してと報じていた。  Musudanであれば2,500哩の射程がある。(JDW 02/08)

 イランが9月22日にパレードで公開したKhorramshahrは北朝鮮のBm-25 Musudanを元にしたものとみられる。
 米外交筋は2009年12月に、イランが北朝鮮からMusudan 19発を入手したことを示す直接的な証拠があると述べている。
 Khorramshahrは射程が2,000kmのRV切り離し式で、RVには複数の弾頭が搭載されているという。 イランにはShahab-3シリーズのGhadr-Fの様にKhorramshahrより射 程の長いMRBMがあるが、KhorramshahrはShahab-3より全長が短く胴経が太く、大型の弾頭が搭載されていると見られる。 (JDW 09/27)

米国との対立

 米国とイラン関係は、トランプ政権がイランを含むイスラム圏7ヵ国出身者の入国を禁止する大統領令を出したことで緊張が高まっていたが、BM発射試験を強く非難 したことで、両国の間に一層の関係悪化は避けられそうにない情勢である。
 国営イラン通信によると、今回の発射試験についてイラン最高安全保障委員会事務局長が2月1日、外国の許可を求めることはないと表明し、今後もミサイル開発を 進める姿勢を示している。(時事 02/03)

欧州との対立

 イランのファルス通信が11月25日、革命防衛隊副司令官が、欧州がイラン政府の脅威となる場合革命防衛隊はミサイル射程を2,000km以上に延長すると警告したと 報じた。
 フランスはイランのBM開発を巡り妥協のない対話を求め、2015年の核合意とは別に交渉を行う可能性を示唆しているのに対し、イランはミサイル開発は防衛目的 で、交渉の余地はないとの立場を繰り返している。(ロイタ 11/27)

(ウ) CM 開発

 ドイツのウェルト紙が情報機関筋の話として2月2日、イランが国内で製造したCMの発射試験に初めて成功したと報じた。
 同紙によると、CMの試射が行われたのは1月29日で、飛距離は600kmであったが、射程は2,000~3,000kmに及ぶ可能性があるという。 (時事 02/02)

 イランが4月18日の陸軍記念日でNasir ASCMやMohajer-6 UAVなどを公表した。
 Nasirの第一印象は、中国のC-704をコピーした射程38kmのNasr短距離対艦ミサイルと似ているが空気取り入れ口を持つことから、ブースタ発進ターボジェット推進 のようで、ロケットエンジンのNasr/C-704より長射程と見られる。
 その意味では射 程140kmのC-705に近いがC-705は2枚の翼を持つのに対しNasirは4枚のフィンを持っている。 (JDW 04/26)

 Fox Newsが米政府当局者2人の話として5月3日、イランが小型潜水艇からのミサイル発射に失敗したと報じた。 ミサイルを発射したのは潜水時排水量130t、浮上 時76~95tの北朝鮮Yono級小型潜水艇で、イランはGhadirと命名して使用している。 発射はホルムズ海峡で行われた。
 イランは2月にNasirという潜水艦発射CMを発射している。 4月に公表されたNasirの画像からすると中国のC-704のイラン版であるNasrを元にしている模様である。 (JDW 05/10)

(エ) 戦闘機の開発

 UPI通信が、イランで行われたQaher F-313国産戦闘機が公開された式典を報じた。
 この式典でQaher F-313は飛行しなかったが、滑走路を往復する地上滑走が公開された。(DN 04/20)

 イランのQaher F-313ステルス戦闘機の地上滑走試験映像が、同国国営メディアとYouTube上に流れた。
 機体は2013年に公開されたモックアップから若干修正されているが、基本的には同じである。(JDW 04/26)

(オ) SAM 開発

 イランが2016年12月28日、Talash防空システムの発射試験を行った。 TalashはSayyard-2ミサイルとOfogh(あるいはOfoq)射統レーダで構成され、Sayyard-2は 1979年の革命前に米国から入手したRIM-66 SM-1をキャニスタ発射方式にしたものである。
 イランは2013年11月にSayyard-2の量産が開始されていることを公表している。(JDW 01/11)

 イラン国防相が7月22日、Sayyad-3 SAMが量産開始式を行った。 2013年11月にも同様の儀式がSayyad-2で行われたが、Sayyad-2は1970年代に米国から購入した RIM-66 SM-1とよく似た形状をしていた。
 Sayyad-3は明らかにSayyad-2の改良型で、固定翼、操舵翼、弾尾の誘導制御部などが変更されている。 (JDW 08/03)

(カ) S-300 の導入

 イラン軍が3月4日、S-300の発射試験に成功したと発表した。 イランによるS-300試験実施が明らかになるのは初めてである。
 同国への圧力を強める米国やイスラエルはこれまで、S-300のイラン配備は中東情勢を不安定化させると主張しており、反発を強める可能性がある。 (産経 03/04)
エ. 湾岸諸国の軍備増強

(ア) ミサイル防衛の強化

カタールへの長距離レーダ売却

 カーター米国防長官が2016年12月10日にバーレーンで、カタールに捕捉距離5,000kmの長距離レーダを売却することで合意したと発表した。 カタールは2013年7月 にRaytheon社製AN/FPS-132 Block 5の売却を希望しており、売却価格は$1Bとみられていた。
 湾岸諸国ではBMDSとして数ヵ国がPatriotを装備しているほか、UAEはTHAADを装備している。 (JDW 16/12/21)
【註】 :  AN/FPS-132はUEWRとして、米BMDSでのBMEWSの中心を成している、開口径22.1mのアンテナ三面を固定配置した大型レーダである。

UAE への Patriot の売却

 米国防総省が議会に、PatriotのPAC-3弾及びGEM-T弾をUAEに$2Bで売却すると通知した。(ID 05/12)

 米DSCAが5月11日、UAEにPAC-3弾60発とGEM-T弾100発を売却するとこを国務省が承認したことを明らかにした。 契約額は$2Bと見られる。 (JDW 05/24)

サウジアラビアへの THAAD 売却

 ロイタ通信が5月5日、米政府がサウジアラビアに数十億㌦の武器輸出をしようとしていると報じた。 サウジアラビアは THAADの売却を希望しているという。 (JDW 05/17)

 Lockheed Martin社が9月5日、サウジアラビアからTHAADを受注したと発表した。 6月の報道によると受注額は$13.5Bにのぼると見られる。
 同社は既にUAEからTHAADを受注し、カタールも要求しているという。(JDW 09/13)

 米国務省が10月6日、サウジアラビアへのTHAAD売却を承認したと発表した。 国務省によると売却されるのは 発射機44両や迎撃弾360発、レーダ7基など総額$15B 規模になる。
 トランプ米大統領は5月にサウジを訪問した際、総額$120Bに上る武器売却でサウジ側と合意しており、THAADもその一環という。 (時事 10/07)
【註】 :  Lockheed Martin社は2015年にカタールとサウジアラビアからTHAADを受注しており、UAEは既にTHAADを保有している。

 米国防安全保障協力局(DSCA)が10月6日に、かねてからサウジアラビアが要求していたTHAADの売却を、国務省が承認したことを明らかにした。
 売却されるのは発射機6基で編成した7個 FUと迎撃弾360発で、売却額は$15Bにのぼると見られる。
 サウジアラビアはロシアのS-400にも関心を持っていると伝えられている。(JDW 10/18)

 米国は2015年7月にサウジにPAC-3弾600発を$5.4Bで売却し、2017年10月にはTHAAD 360発と発射機44基を$15Bで売却する決定をしている。 (DN 11/14)

(イ) サウジアラビアの武器輸入

米国から武器大量購入

 トランプ大統領のサウジ訪問に合わせて米国が5月20日、$109Bにのぼる武器売却を明らかにした。
 売却されるのはCH-47 Chinook 48機、M1A2S Abrams 152両のほか、各種ヘリ、哨戒艇、P-8、THAAD、PAC-3など広範にわたっている。 (JDW 05/31)

ロシアから S-400 購入

 サウジアラビアのサルマン国王がモスクワを訪問した10月5日にサウジ軍需工業界が、サウジがロシアとS-400の購入で合意し、システムの一部をサウジで生産 することになったと発表した。(JDW 10/11)

(ウ) その他

戦闘指揮システムの整備

 Harris社がUAEの戦闘指揮システム(BMS)のシステムとりまとめを$189Mで受注した。
 開発するシステムは旅団規模部隊以下を対象とするものである。(IDR 4月)

RIM-116C RAM Block 2 の購入

 Raytheon社がUAEとの数百万弗の直接商取引(DCS)で、RIM-116C RAM Block 2を売却する。
 RIM-116CはRIM-116B RAM Block 1の機体やセンサを大幅に改良したもので、有効範囲の拡大が図られている。 (IDR 4月)

オ. ホルムズ海峡を巡る緊張

米駆逐艦へ革命防衛隊の艦艇4隻が接近

 ロイタ通信が米国防当局者の話として1月9日、ホルムズ海峡付近を航行していた米駆逐艦が8日に高速で接近してきたイラン革命防衛隊の艦艇4隻に警告射撃を3度 行ったと報じた。
 米駆逐艦はイラン側に無線で減速するよう求めたがイラン艦艇は応じず、800mまで接近したため艦載ヘリが発煙浮揚物を投下すると共に、駆逐艦も警告射撃を行 った。(時事 01/10)

米哨戒艇が革命防衛隊艇に警告射撃

 米中央海軍が7月25日、米哨戒艇Thunderboltがこの日にペルシャ湾の国際水域で演習中、警告を無視して接近してきたイラン革命防衛隊の艦艇に警告射撃 を行ったと発表した。
 中央海軍によると、イラン艦艇は哨戒艇の繰り返しの警告にもかかわらず、高速で接近し無線にも応答しなかったため百数十㍍まで接近したところで警告射撃を 受け停止したという。(時事 07/26)

米軍機へのイラン軍 UAV の異常接近

 米中央軍が8月8日、F/A-18Eがペルシャ湾上空の国際空域を飛行中、イラン軍のUAVによる異常接近を受けたと発表した。
 米軍によると、F/A-18Eが空母に着艦しようと待機していた際にイランのUAVが接近し、度重なる無線での警告を無視して数十㍍にまで近づいてきたため、針路を 変更せざるを得なかったという。
 イラン軍によるこうした危険行為は2017年に入って13回目という。(時事 08/09)

カ. イエメン内戦の拡大

(ア) スンニ派諸国への攻撃

Houhtiの艦船攻撃

 ホワイトハウスが、1月31日にイエメンのHouhtiが紅海の出口Bab-a-Mandab海峡でサウジ艦を攻撃したについてイランを非難した。
 Houhtiはサウジ艦を米艦と間違えて攻撃した模様で、その映像の音声では「米国に死を」と叫ぶのが聞き取れる。 (NT 02/01)

 サウジアラビアが1月31日、イエメン西部のAl-Hudaydah港でサウジ海軍のフリゲート艦1隻がイエメンの武装勢力Ansar Allah (Houthi)の自爆艇3隻の攻撃を受けた と発表した。
 これについてHouthiはミサイル攻撃を行ったとしている。(JDW 02/08)

サウジアラビアへの BM 攻撃

 イエメンからの報道によると、同国のシーア派系武装組織Houthi派が5月19日に、トランプ米大統領が20日に訪問する予定のサウジアラビアの首都リヤドに向けて BM 1発を発射したが迎撃された。 サウジのメディアによると、リヤドの西200kmでの砂漠地帯で迎撃され、人的被害はなかったという。
 ロイタ通信はHouthi派系メディアの情報として、発射されたBMはBurkanだと報じた。(時事 05/20)

 サウジアラビア報道局が、イエメンの武装勢力がAl-Raynに向け発射したBMをサウジ防空部隊が5月19日20:45に撃墜したと報じた。 イエメン武装勢力派のAl-Masirah TVも、19日遅くにリヤドに向けBurkan-2を発射したと報じた。
 Burkan-2とは射程800kmで、2016年にJiddahとAl-Taifのサウジ空軍基地に打ち込まれたBurkanの改良型という。 (JDW 05/31)

 サウジアラビアのSPA通信が9月24日、同国防空軍が23日にイエメンから飛来したBMをKhamis Mushaytの南方で迎撃したと報じた。
 一方イエメン武装勢力派のSaba通信は、Qzher-M2 BMでKhamis MushayにあるKing Khalid空軍基地の攻撃に成功したと報じた。 Qzher-M2とはS-75 SAM (SA-2)を BMに転用したものである。(JDW 10/04)

 イエメンのシーア派系武装組織フーシ派が11月4日、サウジアラビアの首都リヤドの国際空港に向けてBMを発射したと表明した。 サウジ国営メディアによると、 これに対してサウジ国軍はリヤド北東でBMを迎撃し、被害や負傷者はなかったと報じた。
 英BBC放送は、空港付近で大きな爆発音がしたと報じ、衛星TVアルジャジーラは目撃情報として、サウジなどがフーシ派が掌握するイエメン首都サヌアの拠点に 対して、BM攻撃に対する報復とみられる空爆を実施したと報じた。(東京 11/05)
【註】 :  リヤドの国際空港はイエメンとの国境から700kmの位置にあり、PAC-3と思われるサウジアラビアのBMDSは、射程700km以上のBMを迎撃したことになる。
 因みに今まで報じられていた米国内でのPAC-3迎撃試験では、MSE弾ですらWSMRから最大でも350km程度しか離れていないニューメキシコ州Ft. Wingateから発射さ れた標的弾を迎撃したものであった。

 サウジアラビア軍がイエメンのフーシ派がリヤド国際空港に向けて発射したBMを撃墜した。 この際、撃墜したミサイルの破片がリヤド北方に落下したが居住地 域ではなかったので被害はなかった。 また民航当局によると空港への被害はなく運航に支障も出ていない。
 サウジアラビアは2015年3月以来、フーシ派が発射したBMを度々迎撃しているが、今回のBM攻撃は人口密集地帯の近くに向け発射されたのは初めてで、イエメンと の国境から620哩(1,000km)と、今まで一番長距離の攻撃である。(DN 11/05)

 Raytheon社首脳がドバイ航空展で、サウジアラビアがイエメンとの紛争が始まった2015年以来Patriotで100発以上のTBMを撃墜し、そのうち90発以上はPAC-2 GEM-T弾によるものであったと述べた。
 イエメンからサウジに対するBM攻撃について米シンクタンクのCSISは、18発が着弾し40発を迎撃したとしており、イエメンの報道では93発が発射されたとしてい る。(DN 11/14)

 11月30日に再び、サウジアラビアに向けてイエメンからBMが撃ち込まれたが、途中のKhamis Mushait市付近で撃墜された。 (DN 12/01)

 サウジアラビア国営メディアが12月19日、イエメンのイスラム教シーア派系反政府武装組織「フーシ派(Huthi)」が発射したBMを、首都リヤドの上空で迎撃した と発表した。
 フーシ派側もまた、BM攻撃の目標はリヤドにあるサルマン国王の公邸だったと表明した。(AFP 12/19)

UAE で建設中の原子力発電所に CM 攻撃

 イエメンのイスラム教シーア派系武装組織フーシ派が12月3日、UAE西部で建設中のバラカ原子力発電所に向けてCMを発射し目標に命中させたと主張した。
 これについてUAE政府は国営通信を通じ、ミサイル発射の情報は虚偽と否定している。(時事 12/03)

(イ) Ansar Allah (Houthi) への支援国

a. イランの武器供与

BM の供与

 サウジアラビアによると、射程900kmのイラン製BMがイエメンからリヤドに向け発射されたが、着弾前に迎撃されたと発表した。  サウジ報道局(SPA)によるとフーシ派が人口密集地帯近くにBMを撃ち込んだのは初めてであるという。
 イエメン反政府勢力によるとリヤド北方のハリド国王国際空港に向けBurkan-2H 1発を発射し、目標に命中したという。
 イエメンからは7月22日にもサウジにBMが撃ち込まれていたが、同国はこれを確認していなかった。 イエメン武装勢力は国境から880kmの位置にあるYanbu油田 を初めてBurkan-2Hで攻撃したと発表していた。(JDW 11/15)

 サウジが主導する連合軍Joint Forces Command of the Arab Coalitionが11月6日に、前日にイエメン武装勢力がリヤド近郊にあるハリド国王国際空港をBM攻撃 した件の報告文書を公表した。 それによるとサウジが撃墜したイエメンがBurkan-2Hと称するBMはイラン製のQiamであるという。
 報告書では撃墜したBMの一部とイランが2010年に公開したQiamの写真が並べて掲載され、両者のマーキング等が同一であることが示されている。 (JDW 11/22)

中国製 ASCM の供与

 イエメンの武装組織が11月6日、Al-Mandab 1と名付けたASCMを公表した。 公表された4発の写真からAl-Mandab 1は明らかに中国製のC-801と同じもののようで ある。
 C-801は射程42kmで、イエメン海軍が3隻保有しているType 021高速艇用に導入していることが知られている。 (JDW 11/15)

UAV の供与

 イエメンの武装勢力が2月26日にQasef 1と称するUAVを公表したが、これは明らかにイランのAbabil 2と思われる。
 Qasef 1は全長300cm、翼端長250cmで、滞空時間120分、航続距離150kmの性能を持つという。(JDW 03/15)

b. スーダンの派兵

 イエメン武装勢力派のSABAニュース社が5月23日、22日に行われたイエメン北部でのサウジアラビアによる攻撃でイエメン武装勢力を支援していたスーダン部隊83名 が殺害されたと報じた。
 この際、破壊されたT-72 MBTの画像も流れたが、T-72はリアクティブ装甲を装着していた。(JDW 05/31)
(ウ) 湾岸諸国の対応

 UAEが1月28日、同国空軍機が紅海に面したイエメンのAl-Mukha港近くで、車載発射機上にあったイラン製UAVを破壊したと発表した。 (JDW 02/08)

 ジブチとイエメンの間にあるBab al-Manfdab海峡の島Mayyunに長大な滑走路が建設されている。
 Perim島あるいはBerim島とも呼ばれる火山島のMayyun島はイエメン本土から3.2kmしか離れておらず、2015年10月4日にUAEが報道陣をヘリで連れてきて以来、 UAE 軍とイエメン軍が占拠している。(JDW 02/22)

(エ) イエメン情勢を巡るサウジと UAE の亀裂

 サウジアラビアはイエメン情勢を巡り盟友UAEと亀裂を生じたのを受けて、イエメン南部に部隊を派遣した模様である。
 これについてサウジは公表していないが、8月17日にアデンのコンテナターミナルで撮影された不鮮明な画像には、サウジアラビア国営海運会社の貨物船に Oshkosh社製M-ATVをはじめとする各種軍用車両が搭載されているのが写っている。 (JDW 08/30)
(オ) スーシ派内の混乱

 内戦下にあるイエメンのサレハ前大統領が12月4日、同国のイスラム教シーア派反政府武装勢力フーシ派によって殺害された。
 サレハ氏が率いていた政党「国民全体会議」もフーシ派による同氏殺害を発表した。 同党幹部によると、サレハ氏は複数の党幹部と共にサヌアから避難した際、 フーシ派の銃撃を受けた。
 ある軍事筋の話では、フーシ派はサヌアの南40kmの地点でサレハ氏らの車列を止め、同氏と同党幹部2人を射殺したという。 (AFP 12/04)
(カ) 米国の対応

 ロイタ通信などによると、米軍が2月3日までにイエメン沖で紅海の入り口に位置するBab-a-Mandab海峡付近に、艦船の護衛を含む哨戒任務に就く駆逐艦Cole を派遣した。
 Coleは2000年10月に、アデン港に停泊中に爆弾を積んだゴムボートが突っ込むテロ攻撃を受け17人が殺害されている。 (時事 02/04)

 イエメンのAl Hudaydah港沖合の紅海で、サウジのフリゲート艦Al MadinahがHouthi派武装勢力の自爆艇攻撃を受け2名が死亡したのを受け、その数日後の 2月3日に米海軍は紅海の入り口であるBab el Mandeb海峡に駆逐艦Coleを派遣すると共に、紅海の反対側に地中海から駆逐艦2隻を派遣し哨戒にあたっている。
 更に同海域には第11海兵遠征隊を載せた強襲揚陸艦1隻も待機している。(DN 02/11)

 トランプ政権がテロ組織の壊滅を最優先課題に位置づけたのを受け、米軍はイラクやシリアでのISISに対する軍事作戦に加え、イエメンでもイスラム過激派組織に 対し空爆を実施し攻撃を強化している。
 米国防総省によると、米軍は3月2日から2日間にわたってイエメンでアルカイダ系のイスラム過激派組織「アラビア半島のアルカイダ」に対して合わせて30回以上の 空爆を実施したという。
 米軍は1月にこの組織に対し、トランプ大統領の承認を受けて軍事作戦を実施し、海軍の特殊部隊の隊員1名が死亡している。 (NHK 03/04)

 米国防総省報道部長が4月3日、米軍によるイエメンでの空爆が2月末以降で70回を超えたと明らかにした。 空爆はアラビア半島のアルカイダ(AQAP)が標的で、3月末 から新たに20回前後の空爆を加えた。
 イエメンでは内戦に乗じ、南部を中心にAQAPが勢力を伸ばしており、トランプ米政権は掃討作戦を強化している。 (時事 04/04)

キ. カタールの緊張

湾岸諸国との対立

 サウジアラビア、エジプト、UAE、バーレーンの中東4ヵ国が6月5日、一斉にカタールとの国交断絶を発表した。 国境を接するサウジは「テロと過激主義から国益を 守る」として国境閉鎖を発表、他の3ヵ国も商船、航空機の往来も停止するとしている。
 エジプトはシーシー現政権が敵視するムスリム同胞団をカタールが支援したのが理由だとしている。 バーレーン政府も同国のテロ支援による国内治安の保全を 理由に挙げた。
 豊富な天然ガス資源を有し、対米重視路線をとってきたカタールはスンニ派が主流だが、他の湾岸諸国同様一定のシーア派人口が存在しており、イランとの関係 はそれぞれ微妙とされる。(産経 06/05)

 CNN TVが6月6日、サウジアラビアなどがカタールとの断交に踏み切るきっかけの一つになったとされる国家元首のタミム首長の発言について、米当局がロシアか らのサイバ攻撃で国営カタール通信がハッキングされ、偽ニュースが流されたとみて捜査していると報じた。
 カタール政府は、5月23日にカタールの国営通信からイランやイスラエルに親和的な内容で、トランプ米大統領が職に留まることをタミム首長が疑問視したされる 偽ニュースが流れたと主張している。(時事 06/07)

 ドイツのガブリエル外相が6月7日、サウジアラビアなどがカタールと国交を断絶するなど中東で突如緊張が高まっていることに警戒感を示し、同地域へのトラン プ米大統領の影響について懸念を表明した。
 ガブリエル外相はサウジアラビア外相との会談後に湾岸地域での緊張の高まりの度合いに衝撃を受けたとし、すべての関係各国に危機の収束に向け努力するよう 呼び掛け、トランプ米大統領の中東政策に関する質問に対しては、ドイツはイランに対する完全な敵対政策は支持しないと述べた。 (ロイタ 06/07)

 サウジ国営通信によると、サウジやエジプトなど4ヵ国は7月25日、カタールが米国と締結したテロ対策の覚書や、反テロ法改正の取り組みが不十分と批判し、カ タールが支援するとみられる18の個人と組織を新たにテロ指定した。(時事 07/25)

トルコ軍のカタール派遣

 アナトリア通信が、トルコの国会が6月7日にトルコ軍のカタール派遣などを柱とする軍事協定を承認したと報じた。 協定は昨年4月に結ばれたもので、サウジア ラビアなどのアラブ諸国が5日にカタールとの国交断絶を発表したことを受け承認を早めた。
 トルコに多額の投資を行うなど関係の深いカタールを支える姿勢を明確にした。(日経 06/08)
【註】 :  トルコは2016年4月28日に、湾岸初の軍事基地としてカタールに設置した統合軍基地を正式に開所している。

 トルコ軍が23名の兵員と5両の装甲車両をカタールに派遣したことを明らかにした。
 カタールに派遣されているトルコ軍の数は明らかにされていないが、5月に議会で94名が派遣されていることが明らかにされている。 (JDW 06/28)

 サウジアラビアとその同盟国がトルコ軍のカタールからの撤退を求める中、カタール駐留のトルコ軍が徐々に増強されている。
 カタール国防省がトルコ軍がドーハに到着したと発表した7月11日に、トルコ紙は45名がドーハ入りしたと報じた。 更に16日から19日にかけてT-155 Firtine SPHが25名の兵員と共にドーハ入りするという。
 カタール国防省によると、6月18、22、29日にはACV-15 APCと兵員がドーハ入りしたとし、トルコ軍は6月22日に装甲車両5両と兵員23名が到着したとしている。
 トルコ国会は5月に、94名のカタール常駐を承認している。(JDW 07/19)

トルコの介入

 AFP通信などによると、トルコのエルドアン大統領が6月25日、サウジアラビアなどアラブ4ヵ国がカタールに提示した関係修復の条件について、主権侵害であるこ とを理由に国際法違反だと批判したことから、断交問題はトルコとサウジの関係悪化にも発展しそうな雲行きとなってきた。
 サウジを中心とするアラブ諸国は関係修復の条件として、カタールの衛星TV局アルジャジーラ閉鎖を含む13項目の要求を提示しているが、カタール政府は24日に理 不尽だと反発していた。(時事 06/25)

 アナトリア通信によると、サウジアラビアなどのカタールとの断交問題を調停するためペルシャ湾岸諸国を歴訪したトルコのエルドアン大統領が7月24日、事態収 拾に向けた具体的な進展は得られなかったことを認めた。 エルドアン大統領はカタール支持の姿勢を鮮明にしており、断交をめぐる調停能力を疑問視する声が出て いた。(時事 07/25)

 トルコのメディアが、トルコ軍とカタール軍が8月1日にカタールで合同演習を開始したと報じた。
 アラブ諸国によるカタール封じ込めが続くなか、トルコとカタールの協力関係を強化する今回の演習は、アラブ諸国側を刺激する可能性がある。 (時事08/02)

米国との関係

 カタール国防省が6月14日、米国からF-15を$12Bで購入することで合意したと明らかにした。 Bloombergは36機が売却されると報じている。
 米政府は2016年11月にカタールにF-15 72機を$21.1Bで売却することを承認していた。
 サウジアラビアなど中東4ヵ国が国交を断絶したカタールを巡っては、テロリズムを支援しているとトランプ米大統領も非難していたが、マティス国防長官が14日 にカタール代表団と会談し合意を締結した。 (ロイタ 06/15)

 サウジアラビア、エジプト、バーレイン、UAEの4ヵ国が6月にカタールと断交したことにより、米国が微妙な立場に立っている。
 バーレインには米海軍第5艦隊司令部あり、カタールには米中央軍の前方司令部がありal-Udeid航空基地はシリア、イラク、アフガンでの航空作戦の拠点になってい て合わせて13,500名の米軍が駐留している。(S&S 09/14)

 米権威筋がAP通信に対し10月6日、カタールと他の湾岸同盟国の紛争を受け、米中央軍は同地域での演習を取りやめることにしたことを明らかにした。
 米国はカタールに中央軍の前方司令部を置きal-Udeid航空基地を出撃拠点に使用しているほか、湾岸地域に第5艦隊司令部をおいているが、6月5日から続いている この紛争について、当初は作戦に影響しないとしていた。(S&S 10/06)

(7) 北朝鮮を巡る緊張

ア. 北朝鮮の挑発活動

(ア) 韓国に対する威嚇

「ソウルを火の海に」と威嚇

 北朝鮮の朝鮮中央通信が8月8日02:00、韓国海兵隊の西北諸島射撃訓練に対して、白翎島や延坪島はもちろんソウルまでも火の海になる可能性があると、2013年 以降初めて北朝鮮メディアが「ソウルを火の海に」言及し、白翎島駐屯海兵隊第6旅団と海兵隊延坪部隊が実施した射撃訓練を問題にした。
 この射撃訓練で第6旅団と延坪部隊はK-9 SPH 200発、AH-1Sの2.75吋ロケットとバルカン砲を発射した。 (中央 08/09)

DNZ を超えた UAV の飛行

 6月上旬に韓国江原道麟蹄郡の山地で発見された北朝鮮軍のUAVがTHAAD基地を撮影していた。
 韓国軍の合同参謀本部は、UAVに搭載されたソニー社製アルファ7Rカメラのメモリに保存された200~300枚のを分析した結果、UAVは星州の北方数㌔の地点から撮影 を開始し、THAADが配備された地域の南数㌔の地点まで南下した後、再び北上して撮影を続けた。
ただ、保存された画像のうちTHAADの発射機が映っているものは十数枚だという。(朝鮮 06/13)

 韓国防衛当局が6月13日、北朝鮮のUAVが在韓米軍のTHAADを写真撮影したと発表した。 墜落したUAVに搭載された64G個GBのメモリには数百枚の画像が保存されて いて、そのうち十数枚がTHAADの写真であった。
 UAVは全長1.8m、翼端長2.4mで、サイズ及び形状は2014年3月に黄海の白翎島に墜落したものと似ているという。 (JDW 06/21)

(イ) 米国に対する挑発

グアムに対する IRBM 発射威嚇

 朝鮮中央通信が8月9日、北朝鮮戦略軍報道官が8日の声明で、グアム島周辺を火星-12 IRBMで包囲射撃する作戦計画を慎重に検討していると威嚇した。
 火星-12の射程は4,500~5,000kmと推定され、グアムを射程に収めているとみられる。(時事 08/09)

 北朝鮮の朝鮮中央放送が、北朝鮮軍でBMを所掌する戦略軍のキム司令官が8月10日、すでに明らかにしたように我々の戦略軍はグアム島の主要軍事基地を制圧牽制 し、米国に厳重な警告信号を送るために 火星-12 IRBM 4発の同時発射で進行するグアム島包囲射撃する案を深重に検討していると発表したと報じた。 (中央 08/10)

 朝鮮中央放送が、北朝鮮の戦略軍が8月10日、火星-12 IRBMを4発を同時に発射してグアムの主要軍事基地の包囲射撃を検討していると発表したと報じたが、火星 -12は島根県、広島県、高知県の上空を通過することにり、3356.7kmを1,065秒間飛翔し、グアム島と周辺30~40kmの海上に着弾すると威嚇した。 (聯合 08/10)

 CNN TVが複数の米当局者の話として8月14日、北朝鮮がこの数日の間に少なくとも1両のTELを移動させていることが偵察衛星で確認されたと報じた。 米国防総省 は、北朝鮮がグアム沖に向けてIRBMの発射準備を進めている可能性もあるとして警戒を強めている。
 マティス国防長官は14日、もし北朝鮮が米国に向けてBMを発射すれば即座に戦争にエスカレートする恐れがあると警告した。 (産経 08/15)

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)が8月15日、金委員長がグアムへのミサイル発射計画について軍から報告を受けたと報じた。
 KCNAによると金委員長は、何らかの決定を下す前にもう少し米国の行動を注視する姿勢を示した。 (ロイタ 08/15)

さらなる軍事挑発の可能性を示唆

 トランプ米大統領が国連総会での9月19日に演説で、米国と同盟国を守らざるをえない場合には北朝鮮を完全に壊滅するほか選択肢はなくなると述べて核開発をやめ るよう強く警告したのに対し、北朝鮮は22日朝に国営メディアを通じて金委員長の声明を発表した。
 声明では、わが国をなくすという歴代で最悪の宣戦布告をしてきた以上、妄言に対する代価を必ず支払わせるとしたうえで、われわれも史上最高の超強硬な対応措 置の断行を慎重に検討すると、さらなる軍事挑発の可能性を示唆して強く反発した。(NHK 09/22)

米国が宣戦布告と挑発

 国連総会のため訪米中の北朝鮮の李外相が9月25日、トランプ米大統領が北朝鮮は長くはないだろうと述べたことについて、彼は宣戦布告をしたと主張した。
 その上で、北朝鮮には米爆撃機の撃墜を含む自衛的な対応を取るあらゆる権利があると警告した。(時事 09/26)

(ウ) 中国に対する挑発

 北朝鮮北部両江道恵山市に住む複数の取材協力者が10月30日、中朝国境の鴨緑江に近接する住宅や公共の建物の解体撤去が本格化していると伝えてきた。 目的 は住民を国境から遠ざけ脱北と中国からの情報流入を阻止するための安全地帯を作ることにあるという。
 恵山市に住む取材協力者A氏は、「国境から50m以内の家屋はすべて解体撤去してアパートを建設する作業が恵新洞、恵河洞で始まっていると現地の状況を伝えた。
 またB氏は「脱北と密輸の拠点のようになった恵山一帯に安全地帯を作ることにしたとするほか、中国からの見栄えを気にしてのことであると述べた。
 更に「中国との国境線を第二の軍事境界線に作り変えよ」という指示だった」とも述べた。(Asia 11/06)
イ. 米国の対応

(ア) 対北朝鮮戦略の見直し

対北朝鮮戦略の方針転換

 訪日中のペンス米副大統領が4月18日、北朝鮮に核ミサイル開発を中止させるため日米韓3ヶ国や中国が圧力を強めているとし、北朝鮮がメッセージを理解し続け ることを望んでいると述べた。
 ペンス副大統領は、オバマ前政権の「戦略的忍耐」や過去の北朝鮮との対話が失敗に終わったとした上で、トランプ大統領は国際社会の力を結集し、経済力、外 交力で北朝鮮を孤立させ、朝鮮半島の非核化という目標を達成しようとしていると述べた。 (産経 04/19)

テロ支援国家再指定

 ティラーソン米国務長官が4月19日、米政府が北朝鮮をテロ支援国家に再指定することを検討 していると述べた。 (JDW 04/26)

 トランプ米大統領が11月20日に閣議の冒頭で、北朝鮮をテロ支援国家に再指定すると発表した。 2008年に指定解除して以来9年ぶりで、大規模な追加制裁を実施 することも明らかにした。
 大統領は追加制裁に関し、財務省が21日に発表するのをはじめ、向こう2週間のうちに具体的な措置を順次打ち出す方針を示し、最高レベルの制裁となると強調し た。(時事 11/21)

武力行使の可能性を言明

 米国防総省報道部長が3月17日、ティラーソン国務長官が対北朝鮮で武力行使も排除しない姿勢を示したことを巡り、朝鮮半島有事に備えた「複数の計画がある」と 述べた。 計画は情勢にあわせて常に見直しているとも説明した。
 先制攻撃の可能性に関しては、我々の任務は軍事的選択肢を提供することだと回答を避けた。(日経 03/18)

 トランプ米大統領が4月12日にストルテンベルグNATO事務総長との共同会見で、米国は必要な場合には中国の協力なしに北朝鮮を巡る危機に対応する用意がある との考えを示した。
 トランプ大統領は4月上旬に中国の習近平国家主席と首脳会談を行い12日にも電話で協議したが、大統領はは中国側に対し、北朝鮮への対応で米国に協力すること が米国との通商合意を良いものにすると伝え、協力が得られない場合は米国だけで対応するつもりだと述べた。 (ロイタ 04/13)

先制攻撃準備を完了

 米NBC TVが8月9日、国防総省が北朝鮮に対する先制攻撃の選択肢の一つとして、B-1による北朝鮮のBM発射基地などに対する精密爆撃を実行する準備を整え、大統 領による命令があればいつでも実行できる状態にあると報じた。
 複数の軍当局者がNBCに語ったところでは、グアムAndersen AFBのB-1は北朝鮮24ヵ所のミサイル基地や実験場、関連施設などを攻撃するという。
 グアムに現在6機が配備されているB-1は、爆弾のほか射程1,000km以上CM JASSM-ERなどの通常兵器を60t搭載することができる。 (産経 08/10)

グアムへの BM は撃墜する方針

 マティス長官とティラーソン国務長官は8月14日付けのWall Street Journal紙に連名で寄稿し、一連の平和的な圧力政策の目的は朝鮮半島の非核化で、米国は体 制転換や性急な南北統一に関心はないと強調している。(産経 08/15)

BMD 予算の増額

 トランプ米大統領が8月10日、北朝鮮のBM脅威増大に対抗してBMDに数十億㌦を増額すると公言した。 (DN 08/10)

米中央情報局(CIA)に「朝鮮ミッションセンタ」を新設

 米中央情報局(CIA)が5月10日、北朝鮮の核/ミサイル問題を専門に扱う内部組織「朝鮮ミッションセンタ」を新設したと発表した。
 CIAには「東アジア・太平洋」「アフリカ」「対テロ」など地域分野別に計10のミッションセンタがあるが、特定の国に関するセンタ設置は初めてである。 (時事 05/11)

陸上侵攻の必要性を示唆

 米統合参謀本部を代表してデューモント海軍大将が10月27日にLieu議員に送った書簡で、北朝鮮の核関連施設を全て発見し破壊するには地上侵攻しか方法がない との見方を明らかにした。
 その結果、軍人と民間人に多大な損害が出ることになるとも述べた。(JDW 11/15)

(イ) 朝鮮半島周辺域での戦力強化

情報体制の強化

 米韓軍当局が5月7日、在韓米軍が10月ごろに北朝鮮関連情報を担当するHumint部隊を創設することを明らかにした。
 部隊は在韓米軍第8軍の第501情報旅団所属で、呼称は第524情報大隊に決まっている。
 現在も第532情報大隊がHumint活動を行っているが、情報収集よりは主に分析を担当しているのに対し、第524情報大隊は人や情報機関などを通じて北朝鮮関連情報 を収集し、第532情報大隊が行ってきた分析任務も引き継ぐとされる。(聯合 05/07)

Carl Vinson CSG の朝鮮半島海域への投入

 米太平洋艦隊司令部が第3艦隊所属のCarl Vinson CSGに対し、予定していたオーストラリア訪問を中止して朝鮮海域に向かうよう命じた。
 Carl Vinson CSGはサンディエゴに司令部を置く第3艦隊の指揮下で、第3艦隊前方推進計画(TFFI)の元に西太平洋で行動しており、シンガポールを訪問して いた。(DN 04/08)

 ロイタ通信が4月8日、米海軍の空母Carl Vinsonがシンガポールから朝鮮半島近海へ向かうと報じた。
 BM発射の挑発行為を繰り返す北朝鮮をけん制する狙いがあるという。(時事 04/09)

 米空母Carl Vinsonが、北朝鮮軍創建記念日である4月25日前後に日本海に入ることが分かった。
 韓国メディアの毎日経済などは韓国政府の高官消息筋を引用して17日、Carl Vinsonが日本海に入れば韓国海軍と共に海上訓練を行うなど、北朝鮮への圧 力というレベルで武力示威を行う計画と報じた。(中央 04/17)

 米海軍が空母Carl Vinson CSGを朝鮮半島海域に向かわせると発表して1週間以上経つが、シンガポールを出航したCarl Vinsonは依然としてシンガ ポールの数百哩南方スンダ海峡にいて、豪海軍との演習を行っている。
 一部でCarl Vinsonは横須賀を母港とするRonald Reagan及びワシントン州のNimitzと空母3隻体制を組むと報じられているが、Ronald Reaganは5月まで横須加で定期整備中で、整備が終了し出撃前訓練中のNimitzは、西太平洋に向かうもCarl Vinsonと交代するためである。 (DN 04/17)

 CNN TVが米国防当局者の話として4月18日、空母Carl Vinsonが4月中に朝鮮半島近海に到達すると報じた。
 Carl Vinsonは8日にシンガポールを出港し北朝鮮をけん制するため朝鮮半島に向かうとの観測が出ていたが、米海軍は15日に同半島から5,600km離れたイ ンドネシア近海を航行中とする写真を公開していた。
 New York Times紙などによると、Carl Vinson CSGはシンガポール出港後、インド洋での豪海軍との演習に参加するため朝鮮半島とは逆方向に航行したが 現在は朝鮮半島に向かって北上中とされ、CNNは最高速度で航行すれば4日間程度で移動できる距離だと伝えている。 (時事 04/19)

 トランプ大統領が4月中旬、北朝鮮への警告として強力な艦隊を派遣したと表明したが、その時点でCarl Vinson CSGは朝鮮半島から遠く離れた地点を半島 とは逆方向に航行していたが、米大統領府報道官が4月19日にCarl Vinson CSGの到着日を示したことはなく、現在は朝鮮半島に向けて航行中だと釈明した。 (ロイタ 04/20)

 空母Carl Vinsonが4月29日に日本海に入った。 共同訓練を実施していた海上自衛隊が、同日正午過ぎに長崎県対馬の東沖で訓練を終了したと発表した。  このあと韓国海軍とも訓練を実施するとみられる。
 シンガポールを出航したCarl Vinsonはオーストラリア軍との訓練などをこなしながらゆっくりと北上し、西太平洋で海自の護衛艦2隻と合流して、29日に 対馬海峡を抜けた。(ロイタ 04/29)

 米政府が4月8日、空母Carl Vinson CSGを朝鮮半島海域に派遣すると発表 した。 CSGにはCarl VinsonのほかDDG 108 Wayne E Meyer、DDG 112 Michael Murphy、CG 57 Lake Champlainなどが加わっている。
 これに対し北朝鮮外務省は4月10日に抗議声明を出した。(JDW 04/19)

日本海で空母2隻態勢

 米第7艦隊の空母Ronald Reaganが修理を終えて試運転に入ったが、北朝鮮のミサイル挑発でCarl Vinsonは今週中に日本海を離れるとしていた当初 の計画を変更し、現在も韓国海軍と機動訓練を行っているという。
 これに伴い韓国軍では、2個空母打撃群が朝鮮半島周辺で同時に活動するという異例の状況が1ヵ月以上続くこともあり得るとの見方もなされている。 (朝鮮 05/16)

 韓国政府の消息筋が5月19日、米韓軍が6月初めに日本海で米空母2隻と韓国海軍による合同訓練を行う方向で協議中であることを明らかにした。
 同消息筋は、Carl VinsonRonald Reaganが6月初めに日本海で数日間、合同訓練を行う計画だとし、Ronald Reaganが5月末に日本海に入る とみられると述べた。(聯合 05/19)

 韓国政府の消息筋が8月2日、米軍が8月中旬に朝鮮半島周辺で空母2隻と韓国軍による合同演習を行う方向で検討中であることを明らかにした。
 訓練に参加する空母はRonald ReaganとCarl Vinsonで、この2隻は5月末と6月初めに朝鮮半島東の日本海や近海で韓国と日本とそれぞれ合同訓練を行った。
 同消息筋によると、21日から実施される米韓合同指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン (UFG)」を機に米空母の展開を検討していたが、北によるさらなる挑 発の可能性が高まったことで、空母の展開が前倒しになるものとみられるとした。(朝鮮 08/02)

 米海軍が10月24日、空母Theodore Rooseveltが駆逐艦など4隻とともに第7艦隊が管轄する西太平洋の海域に入ったと発表した。
 Theodore Rooseveltは10月初めにサンディエゴの母港を出港して太平洋をアジア方面に向けて航行していた。
 朝鮮半島の周辺で現在、空母Ronald Reaganが活動しておれ、西太平洋の海域で空母2隻が展開することになる。 (NHK 10/25)

空母3隻による演習

 米海軍が5月26日、空母Nimitzを西太平洋に派遣することを明らかにした。 6月1日にワシントン州の海軍基地を出港する予定という。 米地元紙によれ ばNimitzは6ヵ月間派遣される。
 西太平洋ではCarl Vinsonに加えRonald Reaganも展開しており、3隻目の空母派遣で核ミサイル開発を続ける北朝鮮へのけん制を強める狙いがあ るとみられる。
 米CNNテレビによると、16日に横須賀基地を出港したRonald Reaganは朝鮮半島沖に向かい、Carl Vinsonと合同演習を実施するが、Carl Vinson Ronald Reaganと交代する予定で、3隻が同時に西太平洋に展開するかどうかは不明である。 (時事 05/27)

 韓国政府関係者が5月28日、Carl Vinsonが韓国海軍との連合訓練を終え、今週中に母港の米カリフォルニア州サンディエゴへ向かうとし、近く在韓米軍 が公式発表するだろうと述べた。 この関係者は、米国が現在の朝鮮半島を危機状況でないと判断をしたと分析されるとの見方を示した。
 Carl Vinsonは1月5日にサンディエゴを出た後、作戦期間が5ヵ月間と長くなったためで、米空母の作戦期間は普通6ヵ月という。 (中央 05/29)

 米空母Nimitzが6月1日にワシントン州の海軍基地を出港したが、CNN TVによると西太平洋を通過してペルシャ湾に向かう予定で、朝鮮半島付近では活動し ないという。
 米海軍は北朝鮮情勢をにらみ、日本海にCarl VinsonRonald Reaganの2隻を展開しているが、韓国海軍は5月31日夜のうちにCarl Vinson が 朝鮮半島周辺海域から離れると明らかにしている。(東京 06/02)

 米海軍が6日、空母Theodore Rooseveltがサンディエゴを出港したと発表した。 海軍によるとTheodore Rooseveltを中心とする第9CSGは太平洋 を通り中東へ向かう。
 シリアとイラクでのISIS掃討作戦を支援する空母Nimitzは10月中旬に中東での任務を終えるため、Theodore RooseveltNimitzと交代し てISIS掃討に加わるとみられる。(時事 10/07)

 米太平洋軍司令部が10月4日に報道資料で、6日にサンディエゴを出港する第3艦隊所属の空母Theodore Roosevelt CSGは、米第7艦隊と第5艦隊の作戦区域 で協力することにことを明らかにした。
 Theodore Roosevelt CSGが朝鮮半島近海に来ることになれば、2017年6月に続き2個CSGが同時に対北圧力作戦を展開することになる。 (朝鮮 10/09)

 米海軍が10月25日、空母Nimitzと駆逐艦5隻などからなる第11 CSGが中東での任務を終えて第7艦隊の管轄海域であるインド洋周辺に入ったと発表した。
 24日にはTheodore Rooseveltが第7艦隊の管轄海域に入ったと発表したばかりである。
 第7艦隊では現在Ronald Reaganが朝鮮半島周辺で活動しており、第7艦隊の管轄海域を空母3隻が同時に航行していることになる。 (NHK 10/25)

 米軍筋への取材で、米海軍の空母3隻が11月中旬に西太平洋で合同演習を行う予定であることが10月26日に分かった。 自衛隊も参加する方向で調整している。
 空母3隻による合同演習は2007年にグアム沖で実施して以来で、今回の演習場所は未定だが朝鮮半島付近で実施される可能性もあるという。 (時事 10/27)

 複数の米政府当局者によると、米軍の空母NimitzRonald ReaganTheodore Rooseveltの3隻が西太平洋で合同演習を実施する。
 米海軍空母3隻が西太平洋で合同演習を行うのは2007年以来となる。(ロイタ 11/07)

 米海軍第7艦隊が、空母NimitzRonald ReaganTheodore Rooseveltの3隻を中心とする艦隊が、11月11~14日に西太平洋で演習を実施す ると発表した。 演習海域について米国防総省当局者はNHKの取材に対し「日本海になる」と述べた。
 米軍が西太平洋で空母3隻による演習を実施するのは2007年以来10年ぶりである。(NHK 11/09)

 複数の米海軍当局者が11月15日、日本海で合同演習を実施した米空母3隻が朝鮮半島周辺の海域を離れたことを明らかにした。
 横須賀基地を拠点とするRonald Reaganはフィリピン海に移動し、Nimitzは母港である米西部ワシントン州の海軍基地に戻る模様である。
 Theodore Rooseveltは別の海域で展開を続ける。(産経 11/16)
【註】 :  Theodore Rooseveltは第5艦隊の中核として中東で任務に就いていたNimitzと交代する途中に朝鮮半島海域に入っていたもので、両艦は間もなく Theodore Rooseveltは第5艦隊の海域に、Nimitzは第3艦隊の海域に入って、それぞれバーレーンとサンディエゴに入港すると見られる。

 空母Nimitzを基幹とする米海軍第2CSGの司令官が11月13日、今回西太平洋に空母3隻を同時投入したことで、米海軍は多種部隊の運用要領の変更を行う事になっ たと語った。(360 11/17)

 米海軍が11月11~14日に西太平洋で、2007年以来となる空母3隻が参加した演習を実施した。
 この訓練には日韓艦船も加わり、海上自衛隊からはDDH 182いせ、DD 105いなずま、DD 112まきなみが参加した。 韓国側は詳細を明らか にしていない。(JDW 11/22)

 米海軍は過去10年間で初めて西太平洋で3個CSGが行動を共にするため、数千時間にわたる計画立案と準備を行った。 これにより演習では航空機の離着艦で多 くの変更がなされたという。 ただNimitzを中心とした第2 CSG司令官のハリス少将によると、今回3個CSGが一緒に行動したのは作戦の前半部分だけで、 後半部分はどこで作戦を行うかにより異なるため実施していないという。
 またNimitz乗り組みのの士官によると、日本海での行動は多の地域と異なり北にロシア、南に中国、西に北朝鮮と対峙することから、極めて厳しい状況 下での作戦になると述べている。(JDW 11/22)

空母の NLL 接近

 米空母が11月13日に日本海の北方境界線(NLL)から50nmまで北上した。 これに対し北朝鮮は、国連に抗議書簡を送り強く反発した。
 この日に韓国のマスコミに公開した空母Rnald Reaganの位置について米軍は公式には公開しなかったが、NLLから南に50nmで鬱陵島から北東側に50nmの 洋上で訓練を繰り広げたという。(ハンギョレ 11/15)

SSGN の投入

 聯合ニュースが4月24日、米海軍のSSGN Michiganが朝鮮半島海域に来ていると報じた。 一方UPIは東亜日報の記事を引用して、SSGNが25日に釜山に入港 すると報じた。 これらの報道に対し米当局はコメントしていない。
 SSGN Michiganは潜航時排水量18,750tでTomahawk 154発を搭載できる。(DN 04/24)
【註】 :  米海軍はTrident SLBMを装備するOhio級SSBNのうち、初期に建造された4隻をTomahawkを装備するSSGNに改造している。
 SSGNは24本あるTrident用発射管のうち22本にTomahawkを7発づつ、計154発搭載すると共に、海軍特殊部隊SEALS用の潜航艇も装備している。

 米軍のOhio級SSGN Michiganが4月25日午前に釜山に入港した。 朝鮮半島に向け航行中の米空母Carl Vinson CSGとの一員として朝鮮半島に展開さ れたもので、CSGは26~27日ごろ朝鮮半島東の日本海に入ると予想されている。
 Michiganは射程2,000km以上のTomahawk約150発を搭載しており、離れた場所から北朝鮮の重要施設を攻撃できる。 (聯合 04/25)

B-1B の示威飛行

 北朝鮮国営朝鮮中央通信が5月30日、米帝は悪名高い核戦略爆撃機B-1B編隊をまた韓国上空に飛ばして 核爆弾投下訓練を行う深刻な軍事的挑発を敢行したと報じ た。
 続いて「この日未明にグアム島を離陸しB-1B編隊は軍事境界線から近い北朝鮮東側80kmの日本海上空まで飛行し、すでに同海域に展開して 韓国海軍と共同訓練 を行っている空母Carl Vinson搭載戦闘機とともに精密打撃の合同訓練を行ったと主張した。 (中央 05/30)

 韓国国防省が5月30日、米空軍のB-1Bが29日午前に日本海上空を飛行したと明らかにした。 同日朝に北朝鮮がBM 1発を日本海に向けて発射した後に飛来し、韓 国空軍の戦闘機とともに編隊飛行したという。
 聯合ニュースによると、米軍の爆撃機2機が日本海に展開している空母Carl Vinsonなどと訓練をしたのち、韓国上空を経由して黄海側へ抜けたという。 (日経 05/30)

 米戦略爆撃機B-1B 2機が6月20日に朝鮮半島に飛来し韓国空軍のF-15Kとの合同訓練を行う。
 B-1Bは5月1日に日本海上空で韓国空軍の戦闘機と共同で訓練を行ったのに続き、5月29日には北朝鮮のBM発射から5時間後に日本海上空に現れ訓練を行った。 (聯合 06/20)

 北朝鮮が7月4日に初めてのICBM発射試験を行ったのを受け、米空軍のB-1B Lancer 2機と航空自衛隊のF-15が東シナ海上空で、初めての夜間合同訓練を行った。  またB-1Bは帰路に東シナ海上空で、F-2との共同訓練も実施した。
 訓練に参加したのはテキサス州Dyess AFBを基地とする第9遠征爆撃飛行隊の2機でグアムのAndersen AFBから飛来した。 (JDW 07/19)

 航空自衛隊が8月9日、築城基地のF-2 2機とグアムAndersen AFBのB-1 2機が8日に九州周辺空域で、F-2がB-1を援護する編隊飛行の共同訓練を行ったと発表した。
 B-1はその後韓国に向かい、韓国空軍とも共同訓練を実施した。(讀賣 08/09)

 米空軍は9月18日、B-1 2機とF-35B 4機を朝鮮半島上空で飛行させた。 韓国軍関係者によると、米韓空軍は韓国東部で爆撃訓練を実施した後、北朝鮮との軍事境界 線付近まで北上し、抑止力を顕示した。(時事 09/18)

 米国防総省報道官が9月23日、B-1とF-15が北朝鮮東方の国際空域を飛行したと発表した。 声明によると、沖縄を拠点とするF-15がグアムから飛来した複数のB-1を 護衛した。
 また、北朝鮮と韓国の軍事境界線を越え今世紀で最も北まで飛行したと説明した。(時事 09/24)

 米太平洋空軍が10月10日、B-1B 2機が朝鮮半島周辺に飛来し、自衛隊と韓国軍とそれぞれ訓練を行ったと発表した。
 米軍などによると、グアムを離陸したB-1Bは10日夜に日本海上空で自衛隊のF-15 2機と飛行訓練を実施したのち、韓国軍のF-15K 2機と訓練を行った。 日韓の戦 闘機と夜間飛行訓練を実施するのは初めてという。
 B-1Bの展開は9月23日以来で、新たな挑発の動きを見せる北朝鮮をけん制する狙いがあるとみられる。 (時事 10/11)

 グアムのAndersen AFBを飛び立った米空軍のB-1B 2機が10月9~10日に日韓両軍機と日本海上空で初の夜間合同訓練を行った。 この訓練には空自のF-15 2機と 韓国空軍のF-15K 2機が参加した。
 B-1Bは9日20:50に韓国の防空識別圏(KADIZに入り射撃訓練を実施したのち黄海に抜け、23:30にKADIZの外に出た。 (JDW 10/18)

 朝鮮半島近傍で日本と韓国戦闘機が参加した訓練を行った。
 B-1Bは北朝鮮の相次ぐBM発射と追加の核実験以降は朝鮮半島周辺にほぼ毎月飛来しており、10月10日にも韓国空軍のF-15K 2機とともに朝鮮半島上空で連合訓練 をした。 続いて10月23日夜には日本海の北方限界線(NLL)側まで飛行して引き返している。
 この日の訓練はトランプ米大統領のアジア訪問を翌日に控えて行われたという点で注目されるが、米空軍は3日、今回の訓練は事前に計画されていたもので、現在 の特定の事件に対応するものではないと明らかにした。(中央 11/03)

B-2 の模擬爆撃訓練

 米空軍が11月2日にミズーリ州でB-2爆撃機が北朝鮮指導部を目標とする模擬爆撃訓練をしたことも報じられている。
 B-2は核爆弾のほか、14tのGBU-57を投下することができる。(中央 11/03)

特殊作戦による攻撃を準備

 米陸海空海兵隊特殊戦の戦力を総括するトーマス米特殊作戦軍(SOCOM)司令官が5月2日に米下院聴聞会で、朝鮮半島有事の際、核施設など北朝鮮の大量破壊兵器 (WMD)施設を無力化するための訓練を積極的に行っていると述べた。(中央 05/04)

先制攻撃準備

 米NBC TVが複数の米情報当局者の話として4月13日、北朝鮮が6回目の核実験を強行しようとした場合、米軍が通常兵器による先制攻撃を行う準備に入ったと報じ た。
 NBCによると、米海軍は北朝鮮近海にTomahawkを発射できる駆逐艦2隻を展開し、うち1隻は北朝鮮の核実験施設がある豊渓里から480kmに配置されている。
 また米軍は4月8日、空母Carl Vinsonを中心とする空母打撃群を朝鮮半島近海に航行させていると発表した。 更にグアムでも爆撃機も出撃態勢を整えて いるという。(毎日 04/14)

 米外交専門誌Foreign Policyが軍関係者の話として10月18日、米軍が9月に日本海にいた米艦に北朝鮮を目標にTomahawk発射準備命令を出していたと報じた。
 北朝鮮が同15日に火星-12 IRBMを発射したことに対応したものとみられる。
 Tomahawkは米軍が4月のシリア攻撃でも使用しており、同誌は「準備命令は初めて聞く話ではないが、Tomahawk発射の可能性が高まっていることを示す重要な指 標だ」との米国防総省元高官のコメントも紹介した。(日経 10/19)

MGM-140 ATACMS の実射

 北朝鮮がICBMの発射試験を行った7月4日の翌日に、米韓軍が日本海に向けた精密打撃兵器の発射訓練を実施した。
 訓練を実施したのは第2米韓合同師団第210野戦砲兵旅団で、発射されたのは米陸軍のMGM-140 ATACMSと韓国陸軍の玄武-2(Hyunmoo 2)であった。 (JDW 07/12)

ステルス偵察機、戦闘機が北朝鮮上空を飛行?

 冷戦時代に米国が北朝鮮領空に、今日最速のMach 3.3で飛行するSR-71 Black Birdなどの偵察機を送り込んでおり、SR-71は最近機密解除された米CIAの文書による と、1696年に日本海から黄海に何度も北朝鮮を横断する飛行ルートで偵察飛行を遂行している。 北朝鮮軍はSR-71の撃墜を試みたが毎回失敗した。
 1981年8月26日には撃墜に失敗し、1983年3月には撃墜用ミサイルが民家に落ちたという情報がある。
 2004年に文芸春秋と2007年に米国のAir Force Times紙が、F-117が夜間に北朝鮮領空に侵入し金正日の秘密の別荘上空に急降下して対応態勢を調べたと報じている。 (中央 09/26)

(ウ) 武力行使の示唆

大規模報復の予告

 マティス米国防長官が北朝鮮の核実験を受け9月3日、ホワイトハウスでダンフォード統合参謀本部議長と臨んだ会見で、米国やグアムを含む米国領土、あるいは 米国の同盟国へのいかなる脅威にも大規模な軍事措置で対応すると警告し、その措置は効果的かつ圧倒的なものとなると述べた。
 これに先立ち、トランプ大統領は国家安全保障チームによる協議を開催し、マティス長官は大統領から米国が利用可能な全ての軍事的選択肢についての説明を求 められたと明らかにした。(ロイタ 09/04)

限定的武力行使の可能性に言及

 マティス米国防長官が9月18日、ソウルを重大な危険にさらさずに北朝鮮に軍事力を行使する選択肢はあると記者団に語った。
 具体的な方法など詳細については明らかにしなかったが、北朝鮮が米国の軍事行動を誘発しない 範囲で「可能な限りの挑発」を慎重に行っていると述べた。
 北朝鮮への武力行使については、報復攻撃により韓国や日本で甚大な犠牲が出ることが想定され、実際に踏み切るのは困難視されてきたが、マティス長官の発言に は、実行可能な軍事オプションがあると強調することで北朝鮮側をけん制する狙いがあるとみられる。 (東京 09/19)

(エ) BM 発射への対応

BMD 態勢の確立

 豪紙Daily Telegraphが当局筋の話として4月11日、米政府はオーストラリアなど同盟諸国に対して北朝鮮がBMを発射した際には迎撃する態勢が整ったと通知し、 厳戒態勢で備えるよう要請したと報じた。
 北朝鮮は、故金日成主席の生誕105周年を迎える4月15日かそれ以前にBMを試射する可能性があるため米軍は迎撃準備を整えたという。 (時事 04/11)

 豪紙Daily Telegraphによると、米政府が4月11日までにオーストラリアなど同盟国に対し、北朝鮮がBMを新たに発射した場合には迎撃する用意があると通知した。  これを受け豪州は、北朝鮮のミサイル発射をレーダなどで監視している米軍が共同使用している豪州内陸部のPine Gap基地が支援態勢に入るなど、迎撃を支援す る態勢を整えた。
 Pine Gap基地は、旧ソ連のBM監視などにも対応してきた。(産経 04/12)

 CNN TVが9月19日、米政府が北朝鮮のBMが米本土や同盟国を直接脅かさない場合でも迎撃を検討していると報じた。
 国防総省関係者も、日本上空を2発が通過した時点で、直接脅威にならないBMであっても迎撃を検討する必要があると語った。
 北朝鮮は8月29日と9月15日に日本上空を通過して北太平洋に向かってBMを発射したが、米国は迎撃しなかった。 (朝鮮 09/21)

在韓米軍の家族らの避難訓練の強化

 28,000人の米軍の家族や米外交官らが在住する韓国では、在韓米軍の家族らが北朝鮮の有事に備えた定期避難訓練を行っているが、毎日経済TVによると訓練は最近 強化されているという。
 在韓米軍関係者によると、有事には主にソウルの竜山基地やソウル南方の平沢、南部の大邱から輸送ヘリコプタで釜山西方の金海に移動し、輸送機で日本に避難す る。 一部は、平沢に隣接する烏山米空軍基地から民間航空機を利用したり、釜山から船舶で避難したりするという。 (産経 09/22)

 在韓米軍が9月22日にFacebookを通じて、在韓米軍兵士の家族や軍務員に非戦闘員救出作戦(NEO)が発令されたことを知らせる偽メッセージが配信されたと複数の通 報があったが、在韓米軍はこのようなメッセージを送信していないことを明らかにした。
 在韓米軍周辺では、定期NEO訓練が来月実施される予定だが、これが誤った形で伝わったようだとも言われている。
 在韓米軍は1994年の第一次北朝鮮核危機以降、有事の際に韓国国内の米国民間人を海外に避難させる手順に慣れることが目的のNEO訓練 を上半期と下半期に1回ずつ、年2回実施してきた。 韓国在住の米国民間人は20万人と推定される。 (朝鮮 09/23)

 Stars & Stripe紙が10月12日、北朝鮮の攻撃などに備えて在韓米軍が韓国に住む米国の民間人を避難させる「非戦闘員退避活動」(NEO)訓練を10月23日~27日に 実施すると報じた。
 この訓練の目的は、有事の際に韓国国内の米国民間人を海外へ避難させる手順に習熟することで、米軍人の家族や米国市民権の保持者がパスポートなど所要の書 類を持ってソウルの竜山基地など韓国各地に点在する集結地に集まり退避手続きの説明を受ける。
 このうち一部は日本へ退避する手続き を実際に演練するため対象者が選ばれたと報じた。(朝鮮 10/14)

 米上院議員が、韓国に28,500名いる米軍家族の撤退を開始する状況にあると警告したことに対し、国防総省報道官は「現在、撤退する計画はない」ことを明らかに した。(S&S 12/05)

 韓国で行われている"Vigilant Ace"米韓演習では韓国内の米軍基地で負傷者が出たため横田基地に運ぶという想定で、兵士が包帯をして乗り込んだり、機内に医療 機器を積み込むなどしている。
 地上の兵士の一部は化学兵器使用を想定して防護マスクを装着している。(キョク 12/08)

ハワイ州でミサイル攻撃を想定した警報サイレン試験

 Washington Postなどによると、米ハワイ州で12月1日にミサイル攻撃を想定した警報サイレン の試験が行われた。 サイレンは1日11:45から州内約400ヵ所で鳴ら された。
 ミサイルを想定した試験は冷戦期の1980年代以来初めてで、ロイタ通信によれば津波などの際に鳴らされる通常の警報音と空襲を想定 した警報音の両方が使われ 、今後も月1回行われる。(時事 12/02)

ウ. 中国の姿勢

北朝鮮防衛の原則

 中国人民日報の姉妹紙である環球時報が4月22日、米韓が北朝鮮を攻撃すれば中国も軍事行動を開始するだろうとした内容の社説を掲載した。
 社説では、我々は北朝鮮を積極的に説得しているが北朝鮮が耳を傾けず、北朝鮮の核ミサイル発射と韓米軍事訓練の同時中断を提案したが韓米両国が受け入れ ないとし、このように主張した。(中央 04/22)

北朝鮮を脅威として明確に位置づけ

 中国人民解放軍が2016年5月に発行した仮想敵に備えた戦時演習ガイドラインで、北朝鮮を米国に次ぐ中国の脅威と位置付けている。
 この文書の情勢分析で「五つの潜在的脅威」としてまず米国、次いで2番目に北朝鮮を挙げ、核保有国を宣言して多くの核施設を中国との国境近辺に設けて中国を 人質化しているとし、一旦戦争が起きれば中国の東北地方や華北地方に巨大な脅威となると強い警戒心をむき出しにした。
 北朝鮮は外交的には依然中国の友好国だが、核・ミサイル開発などにより軍事的には仮想敵に匹敵する脅威と見なしていることを示唆している。 (産経 01/30)

北朝鮮への兵力集中

 韓国の複数のメディアが台湾メディアの報道を引用して4月9日、4月まで行われる米韓合同軍事演習での予期しない状況の発生に備えるため、中国東北地方の防衛 を担当する北部戦区が、所属部隊に全面的な戦備態勢命令を下令し、第16、第23、第39、第40集団軍の総兵力43万名のうち15万名を北朝鮮との国境地域に集結させた などと報じた。
 これに対し中国外交部報道官が10日、韓国の報道機関はこれまでに何度か同様の報道をしてきたが、最終的に作り話と証明されたと述べ否定した。 (RC 04/11)

朝鮮半島海域への艦隊派遣

 中国人権民主化運動情報センタが中国消息筋を引用して4月14日、中国当局が北海艦隊と東海艦隊が潜水艦をそれぞれ10隻ずつ朝鮮半島海域に急派したと伝えた。
 これは中国軍が米国の軍事行動警告で緊張が高まる朝鮮半島海域で、戦争勃発の可能性に備えていると判断されるという。
 中国が朝鮮半島に派遣した潜水艦のうちType 039(宋型)の1隻は、13日に日本列島付近に出没したことも分かっている。 (中央 04/14)

緊急待命態勢

 北朝鮮の金日成主席生誕105年の記念日である4月15日を前に、中国当局が中朝国境に近い東北部で、放射性物質や化学物質の拡散を想定した緊急の24時間即応態 勢を敷いていた。
 遼寧省内の地方政府が上級部門の指示により14日に緊急通知を関係部局に出し、北朝鮮で放射性物質や化学物質による突発事件が発生した場合に備え、地方政府 全体が即日「緊急待命態勢」に入るよう指示した。
 6回目の核実験に踏み切る構えをみせる北朝鮮に対して米国が軍事圧力を強める中、中国が強い危機感を抱いていた実態が浮かんだ。 (産経 04/17)

 北朝鮮が4月25日の人民軍創建記念日にあわせて6回目の核実験あるいはBMの発射を強行する可能性が高まるなか、読売新聞が24日、中国軍が朝鮮半島有事を想定 して中朝国境に「2級戦備態勢」を発令したと報じた。
 同紙は北京の中国軍など複数の関係消息筋を引用して、中朝国境一帯に10万人規模の兵力を展開しているという情報もあると明らかにしている。
 中国国防部が2013年に公開した白書によると、2級戦備態勢は3段階の戦備態勢で2番目の段階で、自国に対する直接的な軍事的脅威が一定水準に達したと判断した 時、武器や装備の準備や隊員の禁足、当直態勢の強化などを行う。(中央 04/25)

朝鮮半島に近い海域で低空飛行ミサイル撃墜訓練

 中国国防部が、中国軍が9月5日に渤海湾付近で低空飛行ミサイルを撃墜する訓練を行ったと報じられたことについて、年度計画に基づいて行う定例の演習であり 、部隊の任務遂行能力の向上を目的としたもので、特定の国や目標を対象にしたものでは ないと明らかにした。
 香港のSouth China Morning Post紙が中国軍の公式ニュースサイトである中国軍網からの情報として、北朝鮮が核実験を実施した直後の深夜に開始したこの訓練 は、中国軍が渤海湾上空で低空飛行ミサイルを撃墜することにチャレンジするものだと報じていた。
 また、この訓練は7月下旬以降に中国と北朝鮮の間の黄海の渤海湾で行われた3回目のものだとし、1回目は人民解放軍の創設90周年を記念して行われた3日間の海 上訓練、2回目の4日間の訓練は、北朝鮮が7月28日に2回目のICBMを発射した1週間後に行われたとも報じていた。 (RC 09/07)

 北朝鮮が水爆実験を行ったと発表した直後の9月5日と6日の2日間、中国海軍が渤海湾で演習を行った。
 これについて中国は、予め決められていた定例の演習で、特定の国を対象としたものではないと述べている。 (MT 09/07)

ICBM 発射直後に北部戦区で大規模温習

 中朝国境地帯を管轄する中国人民解放軍北部戦区の陸軍部隊が大規模演習を行い関心を集めている。 この演習には北朝鮮の軍事的挑発を牽制する狙いもありそう である。
 人民解放軍機関紙の解放軍報などによると、演習は厳寒のもと11月下旬に始まり長距離の機動訓練や実弾射撃が実施され、-17゚Cの内モンゴル自治区東部の大草原 では、強力なECMや航空戦力も交えながら行われた。(産経 11/29)

エ. 韓国の姿勢

北朝鮮の核保有を黙認するかのような動き

 韓国の文大統領が11月14日にフィリピンで記者団に述べた内容を大統領府が発表した。
 文大統領は北朝鮮は高度な核兵器を保有しており、こうした兵器を早期に放棄することは容易ではないとの見解を示した。 (ロイタ 11/15)

オ. 西欧諸国の対応

英国の対応、空母 Queen Elizabeth 投入を検討

 英日刊紙Daily Mailが10月9日、英国政府が北朝鮮と米国間戦争が起きる場合に備えて対応策を設けることを軍に指示し、この計画が密かに進められていると報 じた。 特に現在試験航海中の空母Queen Elizabethの投入まで含まれていることが分かった。
 Daily Telegraph紙も、戦時に動員できる空母と戦闘機を相当数準備しており、戦時状況が起きるれば最新型装備を動員するだろうという政府消息筋の話を報じた。
 Queen Elizabethは現在ポーツマスで試験航海を行っていて、2021年に就役する計画であるが、朝鮮半島で戦争が起きれば艦載機の飛行試験を経ていない にもかかわらず投入される可能性がある。(中央 10/10)

カ. ロシアの動き

 ロシア極東の一部のメディアは、露軍の装備が北朝鮮との国境に向けて移送されているとの地元住民の話を伝えていた。
 ロシア通信(RIA)は4月21日、この報道に対して大統領報道官は、ロシア国内の部隊の配備についての情報を公開しないとしてコメントを拒否したと報じた。 (ロイタ 04/21)
キ. 国連の対応

鉱物、水産物の輸出禁止制裁決議 (08/05)

 国連安全保障理事会が8月5日、北朝鮮の2回にわたるICBMの発射試験を受け、北朝鮮に石炭、鉄や鉄鉱石など主な鉱物、水産物の輸出を全面的に禁止する新しい 制裁決議を中国とロシアを含む全会一致で採択した。
 関係者によると、今回の輸出禁止措置により北朝鮮に年間$1.1Bの資金を遮断する効果があると見込まれ、$3Bと推定される北朝鮮の年間輸出 額の1/3となる。 (聯合 08/06)

ク. わが国の対応

米海軍 CSG との共同演習

 複数の日本政府関係者が、朝鮮半島周辺海域に向けて航行中の米空母Carl Vinson CSGと海上自衛隊の護衛艦による共同訓練を、日本海でも実施する方針 を固めたことを明らかにした。
 Carl Vinsonは数日内に対馬沖を通過して日本海に入る予定だが、日本海での米空母と海自の共同訓練は極めて異例だという。
 共同訓練には、護衛艦さみだれあしがらの2隻が、米海軍からはCarl Vinsonと駆逐艦など3隻が参加し、4月24日は沖縄近海で艦船が陣形 を変える戦術運動の確認や通信訓練などを実施した。(讀賣 04/25)

 政府関係者が5月30日、米空母Ronald Reagan CSGと海上自衛隊艦が、近く共同訓練を実施するため防衛省が米海軍と調整を始めたことを明らかにした。
 Ronald Reaganは6月中にも日本海へ派遣される見通しで、日本海に入る前に共同訓練することで、軍事的挑発を続ける北朝鮮に日米の連携姿勢を示して 牽制する狙いがある。 海自艦は4月にもCarl Vinson CSGと西太平洋で共同訓練を実施している。 (朝日 05/31)

 海上自衛隊が10月11日、護衛艦が米空母Ronald Reaganなどと沖縄周辺の太平洋で10月7日から共同訓練を実施していると発表した。 海自からはしま かぜが参加し、米海軍の艦艇と連携した対潜水艦戦など各種戦術の訓練を行っており、北朝鮮をけん制する狙いがある。
 同空母は訓練終了後に日本海へ抜けて朝鮮半島周辺で、韓国海軍と共同訓練を行うとみられる。 (時事 10/11)

米空軍 B-1B との共同訓練

 岸田外相兼防衛相が7月30日午前、航空自衛隊のF-2戦闘機が同日に九州周辺から朝鮮半島の空域で米空軍B-1と共同訓練を実施したと発表した。 訓練に参加した のは第8航空団のF-2 2機と、Andersen AFBのB-1 2機で、B-1はその後、韓国空軍とも共同訓練を行った。
 28日深夜にBMを発射するなど挑発行動を続ける北朝鮮を牽制する狙いがある。(産経 07/30)

自衛隊の対応検討

 政府筋が12月30日、安倍政権が朝鮮半島で軍事衝突が起きた場合に備え、国家安全保障会議(NSC)が主導して自衛隊の対応に関するシミュレーションづくりに着手 したことを明らかにした。
 安全保障関連法に基づく「事態」別に、米軍との連携や自衛隊の具体的な対処要領を検討するもので、米軍による北朝鮮への先制攻撃や北朝鮮軍の韓国侵攻、両軍 の偶発的な衝突、北朝鮮ミサイルの日本着弾などへの対応を想定している。(東京 12/31)

半島有事における邦人脱出計画

 日経新聞が7日、政府が朝鮮半島有事の際に6万人近い在韓日本人および旅行者などに影響を及ぼすと見て、段階別の対策を検討中だと報じた。 (朝鮮 05/07)

第一段階

 北朝鮮が韓国でテロなどを準備していることが事前に感知された場合で、不必要な渡航を控えることと告知し、短期滞在者をできる限り減らす。

第二段階

 更に危険性が高い状況で、韓国と北朝鮮の間で銃撃戦が発生した場合などで、この場合には渡航中止を勧告するとともに、韓国に滞在している日本人のうち高齢 者や子どもなどの早期帰国を勧める。

第三段階

 北朝鮮に対する米国の爆撃などがあった場合で、日本政府が避難と旅行中止を勧告すると共に、空港に大使館職員を派遣して民間機による出国を支援するほか、民 間機利用が不可能な場合はチャータ機による支援も検討する。
 この避難勧告は2017年4月にシリアが米国の爆撃を受けた際に、同国に滞在する日本人に対しても下された。

第四段階

 北朝鮮が大規模な反撃に出て、韓国政府が民間機の安全を確保することができずに空港を閉鎖する場合で、韓国に滞在する日本人を待機場所に避難させるか、自宅 待機を命じた上で、状況が安定すればさらに安全な地域に避難させる。
 釜山から船を利用して出国する案も対策に盛り込まれているという。

 北朝鮮のBM発射など朝鮮半島情勢が緊迫するなか、在韓邦人の退避計画を検討している日本政府は、北朝鮮からの攻撃などの際に韓国政府が全国で指定している 避難所(シェルター)に邦人全員を収容できることを確認した。
 外務省などによると、在韓邦人は仕事などを理由にした長期滞在者が38,000人、観光目的などの短期滞在者が19,000人の計57,000人である。 (讀賣 08/17)  安倍首相が、11月5日に初来日するトランプ米大統領と、朝鮮半島有事の際の 在韓邦人退避の方策について協議する方向で調整している。
 6万人の在韓邦人や、20万人以上と推定される在韓米国人の退避は有事対応の最大の焦点で、日本政府は在韓米軍による陸路と海路での輸送を、退避計画の基本に 据えたい考えである。
 トランプ大統領は核やミサイル開発を続ける北朝鮮への対応として軍事措置を排除しておらず、マクマスター米国家安全保障担当大統領補佐官は2日のインタビュ ーで、アジア歴訪で軍事措置の可能性について話さなければ無責任なことになると述べており、日米首脳会談などでは朝鮮半島有事への対応が議題となると見られる。 (讀賣 11/05)

 来日しているブルックス在韓米軍司令官が11月15日に小野寺防衛相と河野外相と相次ぎ会談し、核やミサイル開発を続ける北朝鮮の情勢について意見交換した。
 小野寺防衛相との会談では、朝鮮半島有事を含め様々な事態を想定して日米がしっかり連携し対応することを確認し、有事の際に在韓邦人や米国人を退避させる 方策についても話し合ったとみられる。(日経 11/15)

 複数の政府関係者が12月16日、政府が北朝鮮有事を想定し、陸上自衛隊のCH-47を投入して対馬と釜山の間で在韓邦人の非戦闘員退避活動(NEO)を実施する。
 政府は1994年の朝鮮半島危機を受けてNEO計画作成に着手しており、韓国内の港湾施設5ヵ所や空港、空軍基地から輸送する計画で、朝鮮半島有事になれば韓国国内 のシェルターに一時避難したのち、米軍などがあらかじめ指定している場所に集合して、空港や空軍基地や港湾施設に移動し、陸自のCH-47のほか空自のC-130と海自 のおおすみ型輸送艦なども投入して日本へ移送することを想定している。(産経 12/17)

カナダなど連携した朝鮮半島からの邦人脱出

 米国の軍事行動などに伴う朝鮮半島有事にあたり各国が自国民を避難させる非戦闘員退避活動(NEO)について、韓国政府が米国以外とは各国軍の活動に関する協議を 拒否しているため、日本政府は自衛隊の航空機と艦艇の活用に向け、カナダやオーストラリアなど有志連合で韓国政府と協議する検討に入った。
 協議の枠組みとしてティラーソン米国務長官が提案した国連軍派遣国会合を有志連合会合に改編することも視野に入れる。
 NEOでの自衛隊の活用には韓国政府の同意が必要だが、韓国では自衛隊に抵抗感が強いため日本政府は米国やカナダなどを中心とした有志連合の一角として、各国軍 と連携した形で自衛隊を派遣することを検討している。(産経 12/16)

難民対策の検討

 朝鮮半島有事で北朝鮮から日本に多数の避難民が押し寄せた場合を想定し、政府が検討している対処方針の概要が分かった。
 工作員ら危険人物が上陸するのを防ぐため巡視船が日本海で警備を強化するとともに、日本の港で厳格な受け入れ審査を行うことなどが柱で、一時受け入れを決 めた避難民は臨時収容施設で保護する。 施設の設置場所は九州が有力となっている。
 米軍が北朝鮮への軍事攻撃に踏み切った場合、政府は「北朝鮮から木造船などで数万人の避難民が日本に漂着する可能性がある」と試算しており、工作員やテロ リストが避難民を装って日本に上陸する恐れもある。(讀賣 11/16)

(8) 欧 州

ア. ウクライナの情勢

(ア) ウクライナ内戦の状況

東部の親露派が新国家樹立宣言

 ウクライナ東部で親露派の指導者が新しい国家の樹立を一方的に宣言し、双方の対立は一段と深まると見られる。 国名は帝政ロシア時代にウクライナの呼称だ った「マロロシア」とし、首都はドネツクに置くとしたうえで、独自の憲法を制定する考えを示した。
 ウクライナ東部では、2015年2月に政府軍と親露派の間で停戦合意が結ばれたが、その後も散発的な戦闘が繰り返されているなか、親露派の指導者ザハル チェンコ 氏が7月18日、ウクライナのポロシェンコ政権は正統性がないとして、クリミア半島を除くウクライナを継承する新しい国家を樹立したと一方的に宣言した。 (NHK 07/19)

東部への重火器の配備が急増

 ウクライナ東部での停戦などを監視する欧州安保協力機構(OSCE)特別監視団の第一副団長が共同通信のインタビュで、停戦ライン付近で合意違反の重火器の配備や 使用が急増していると述べ、市民の被害や大規模な戦闘への懸念を示した。
 監視団は1月31日、紛争勃発後で最多の1日当たり11,000件以上の停戦違反を確認していると言う。
 緊張状態は依然続いており、2月27日~3月5日に確認された停戦違反は前週の2倍以上の17,000件で、うち重火器の砲撃は同3.3倍の2,228件だった。 (東京 03/10)

 親露派武装勢力による実効支配が続くウクライナ東部情勢を巡り、同国とロシア、仲介役の独仏を加えた4ヵ国の首脳が7月25日に電話協議を行った。
 独政府が公表した共同声明によると、4ヵ国首脳はすべての紛争当事者が停戦協定である「ミンスク合意」を順守し、重火器の撤去を最優先課題として取り組むこ とで合意した。(毎日 07/25)

東部での戦闘の増加

 ウクライナ東部で1月29日から30日にかけて政府軍と親ロシア派の間で戦闘が起き、これまでに兵士計7人が死亡した。
 ウクライナ内戦は2015年、ドイツなどの仲介でミンスク和平合意が成立し停戦が続いていたが、2016年12月中旬に戦闘が再開され、年を越して激化の様相を呈して いた。(ロイタ 01/31)

 米国務省報道官代行が2月26日、ウクライナ東部でこの数週間にわたり戦闘が増えているとして、親露派が停戦合意を遵守していない状況を注視しているとの声明を 発表した。
 さらに2月24日には、OSCEの監視団が親露派に狙われ監視のためのUAVが奪われたとして非難しており、トランプ大統領がロシアとの関係改善に意欲を示す一方で厳 しい姿勢を見せている。(NHK 02/27)

 最近になって戦闘が再開されているウクライナ東部のDonbasが、2015年1月に親露勢力がロシア製Grad MRLの砲撃で数百名が犠牲になったDebaltseveの二の舞になる ことが懸念されている。
 ウクライナ外務省は1月31日、武装勢力は122mm MRLと152mm MRLに併せて、120mm及び82mm迫撃砲で砲撃を行っているとした。
 Donbasでは過去3年間の戦闘で1万人近くが犠牲なっており、その半分は非戦闘員である。 (JDW 02/08)

親露派によるウクライナ企業の接収とウクライナの対抗処置

 ウクライナのポロシェンコ大統領が3月15日に安全保障会議を開き、国連や赤十字などの人道支援物資を除いて、親露派が支配する地域との物流を遮断する決定を提 案し承認さた。
 政府は、今回の決定は停戦合意が順守され、接収された企業が返還されるまでの一時的な措置だとして、あくまでも対抗措置だと強調している。
 これより先の3月1日に親露派は、支配地域にあるウクライナ企業の一部を事実上接収している。 (NHK 03/16)

ロシア正規軍と民兵の展開

 ウクライナ軍検事総長が10月2日にTVで、ロシアが3,000名の正規軍を含む11,000名の兵力をDonbass地域に展開していると述べた。
 それによると3,000名の正規軍は2個大隊からなり、200両のMBT、400両のAPC、140門の砲、及び最新式のSAMを装備しているという。
 更に民兵は650両のMBT、1,310両のAPC、500門の砲、260両の MRL、100個システムのSAMを装備している。 (360 10/06)

 ウクライナ軍検事総長が10月2日にTVで、親露派が支配しているDonbassにロシアが正規軍3,000名を含む11,000名の兵力を投入していると述べた。 またその兵 力構成や装備についても詳細を明らかにした。
 それによるとロシアの義勇軍は戦車650両、APC 1,310両、各種火砲500門、MRL 260両、SAM 100個システムを装備し、2個大隊戦闘群は戦車200両、APC 400両、 火砲140門と、最新式のSAMを装備しているという。(JDW 10/11)

米国の対露制裁拡大

 米国務省が10月27日、ロシアの国防当局や情報機関と関連する武器輸出企業ロスオボロン エクスポルトや銃器メーカーのカラシニコフなど39団体のリストを公表 した。
 これらの団体と取引のある個人や団体が8月に成立したロシア制裁強化法に基づき制裁対象になる可能性があり、発表したリストに基づく制裁は2018年1月に発動さ れる見通しである。(時事 10/28)

(イ) ウクライナを支援する西側諸国

トランプ米大統領の誕生に対する不安

 ウクライナのポロシェンコ政権は2016年11月の米大統領選で、友好的だったオバマ前大統領の後継クリントン氏の勝利を期待したが、ロシアによるクリミアの一方 的編入を認める可能性を示唆したトランプ氏が当選した。
 ポロシェンコ大統領は選挙後の2016年11月中旬にトランプ氏へ電話し、ロシアの侵略への対抗には米国の支援が重要と強く訴えたが、トランプ政権はウクライナ情 勢と距離を取り続けており、5月10日にトランプ大統領はロシアのラブロフ外相と会談し停戦合意の履行を求めたが、和平に向けた具体的成果はなかった。 (毎日 05/12)

米国の武器売却

 訪米したポロシェンコ大統領の発言などから、トランプ政権はオバマ政権での方針を変更しウクライナに対し防御用武器の提供を行う模様である。 対象となるの は以下のような内容となる。(JDW 07/05)

・対砲迫レーダ
・秘匿化された戦術通信機
・先進対戦車武器
・ECM装置を搭載したUAV
・Bradley IFV、Humvee、JLTVなどの車両
・リアルタイムの情報共有
・訓練支援
・軍事産業の再建支援
 米政府の安全保障担当者は、Javelin ATMを含む殺傷性武器$50Mのウクライナへの売却を強く求めているが、プーチン大統領との軋轢を避けたいトランプ大統領 はなかなか承認しない。
 議会及び国務省筋は11月20日、NSCの後押しも受けていることを明らかにした。(S&S 11/20)

 Washington Postが12月20日、トランプ米政権が親露派武装勢力との紛争が続くウクライナに対し、戦火拡大を懸念して武器供与を控えたオバマ前政権からの方針 転換して、殺傷力のある武器の供与を承認したと報じた。
 承認されたのは狙撃銃や弾薬などで$41.5M相当で、ウクライナ政府から要請されているATGMなど重火器供与の承認には踏み切っていないという。 (東京 12/21)

米海軍工兵隊によるウクライナ海軍基地の建設

 ウクライナのメディアが、米海軍第1機動建設大隊(NMCB)の設営部隊Seabeeが7月25日に、黒海に面したウクライナのOchakivで海軍司令部施設の建設を開始したと 報じた。
 ドニエプル河口に位置しクリミアから120kmしか離れていないOchakivには現在、ウクライナ海軍第5艦隊司令部が置かれている。 (360 08/14)

 米海軍第1移動建設大隊のSeabee隊が7月25日、黒海に臨むウクライナのOchakivで海軍の指揮施設の建設を開始した。
 Ochakivはクリミアから僅か120kmしか離れていない。
 この施設建設に続いて艦船修理施設と周辺防御施設の建設も計画されている。(JDW 08/23)

NATO 軍との共同演習

 ウクライナ情勢をめぐって欧米と対立するロシアは、ベラルーシとともに4年に1度の大規模合同演習を行っていて、欧米側は演習の規模や内容が不透明だとして警 戒を強めているなか、米英などNATO加盟国とウクライナの合わせて15ヵ国が9月8日 からウクライナ西部のリビウ州で合同演習を行っていて、19日にその様子が公開さ れた。
 演習には過去最大の2,500名が参加していて、米軍とウクライナ軍の軍用車両が共同で展開する訓練や、負傷者をヘリコプタで救急搬送する訓練などが行われた。 (NHK 09/20)

カナダが殺傷性武器を供与

 カナダのトルドー首相が9月22日、同国を訪問中のウクライナのポロシェンコ大統領と会談したのちの共同記者会見で、親露派武装勢力との紛争が続くウクライナに 殺傷性のある武器の供与を検討していると明らかにした。
 これまで国外からウクライナへの殺傷性のある武器の供与は行われていないとされており、ロシアは警戒している。 (産経 09/24)

トルコがロシアのクリミア併合を認めない立場表明

 ウクライナを訪問中のトルコのエルドアン大統領が10月9日、ロシアのクリミア併合を認めないとの立場を明らかにする共に、クリミアのタタール人を兄弟して、 今後もタタール人の支援を続けると述べた。(S&S 10/09)

(ウ) ウクライナの目指す方向

軍事産業の再建

 ウクライナのポロシェンコ大統領が3月15日に訪問した同国最大のIvchenko社のエンジン工場で、同国固有の双発多用途戦闘機を開発すると述べた。
 開発する戦闘機は外観がMiG-29に似ているものの搭載品はすべてロシア製と異なり、エンジンはAI-322Fの発展型、電子機器は西側製かウクライナ製になるという。 (JDW 03/22)
【註】 :  AI-322Fエンジンは超音速練習機や軽攻撃機用にIvchenko社製のターボファンエンジンで、中国のL-15軽攻撃/練習機が搭載している。

NATO 加盟の願望

 ウクライナのポロシェンコ大統領が7月10日、ストルテンベルグNATO事務総長との会談後の共同記者会見で、NATO加盟に向けた準備段階であるMAPに参加する交渉 を開始すると述べた。
 また大統領は、2020年まで3年をかけて軍の作戦規定(SOP)をNATO式に変更するとも述べた。 (JDW 07/19)

イ. ロシア軍の動き

(ア) 対 NATO 戦力の強化

戦力の急速投入能力強化

 ロシア国防省が6月21日、完全編成の機甲師団及び機械化師団を24時間以内に1,000km離れた戦場に直接輸送する新たな兵種を編成した。
 この兵種は連隊、大隊及び独立中隊からなる。 部隊はMTKTを装備するが主装備は11t 3軸のKamaz-65225で65tを牽引でき、中隊は30両、連隊は600両を装備する。 (JDW 07/05)

(イ) "Zapad 2017" 大規模演習の実施

大規模な部隊投入

 リトアニア大統領が7月31日に、ロシアが行う"Zapad"演習の実施間に米空軍がリトアニアに駐留するF-15Cの数を4機から7機に増強すると述べた直後からロシア の挑発が増大している。
 リトアニア国防相によると7/31~8/6の間にロシア軍のMiG-31、Su-27、Il-38、Tu-142など18機が捕捉されており、その殆どがIFFの応答機をOFFにし、航空管制に も応答していないという。(JDW 08/16)

 ロシアとベラルーシの"Zapad"演習が9月14日から20日までカリーニングラードなどで行われる。 同演習は4年ごとに実施されているが2014年にロシアがクリミア 半島を併合してからは初めてで、ロシア国防省によるとカリーニングラード、ベラルーシ、ロシア西部で行われ、航空機70機のほか、車両680両、艦船10隻を投入する。
 ロシアは参加する兵士を12,700人と説明しているが、NATO加盟国の一部は100,000人以上とする見方を示し警戒を強めている。 (時事 09/13)

 ロシアが9月14日から20日までの間にベラルーシと共同で、兵員12,700名、航空機70機、戦車250両、艦船10隻が参加する"Zapad 2017"演習をバルト三国とポーラン ドとの国境で実施するが、NATOは警戒を強めている。
 演習の参加規模についてロシアは12,700名と発表しているが、ドイツのライエン国防相100,000名以上と見ている。
 ストルテンブルグ事務総長は10日のTV番組で、ロシアが演習を装って軍事行動を行うことを警戒していると述べている。 2008年のジョージア侵攻や、2014年のク リミア侵攻の際もそうであったという。(S&S 09/13)

 在欧米陸軍司令官のホッジ中将によるとロシアは演習参加規模を通報義務の13,000を下回る12,700名と発表しているが、実際には数十万名規模で、範囲はベラル ーシから北極圏まで及びコーカサスで同時に行われた別の演習ともリンクしていたという。(DN 10/10)

 NATOとロシアの協議会が10月26日に開かれたが、相互の不信感は払拭できていない。 特にNATO側は、ロシアが行った"Zapad 2017"演習が事前に発表された規模 と範囲を大幅に上回ると不信感を呈した。(JDW 11/01)

ICBM 部隊や核部隊も参加

 ロシア国防省が10月3日にInterfaxを通じて発表した声明によると、ベラルーシと実施した大規模演習にはTopol、Topol-M、YarsなどのICBM 60基以上が参加した という。
 これらの重車両に搭載されたこれらのICBMは、モスクワ北西のTverから東シベリアのIrkutskまで広範囲に展開した。 (S&S 10/03)

 在欧米陸軍司令官のホッジ中将によると、現在も核戦力が参加した演習の最終段階が行われているという。 (DN 10/10)

熾烈な電子戦環境下での演習の実施

 ロシアがベラルーシと9月に行った隔年演習"Zapad"について、NATO諸国、特にバルト諸国とポーランドはその動きを間近に観測することができ多くの教訓を得た。
 米国と欧州の安全保障に永く関わってきて現在シンクタンクCNASの研究員であるタウンセンド氏は、最大の収穫は電子戦分野に関する教訓であったとしている。
 演習は熾烈な電子戦環境下で行われたとしている。(DN 11/22)

 ノルウェー国防相が12月14日、ロシアが9月に行った"Zapad"演習の際、ロシア国境から250km離れたFinnmarkの東部でGPSが妨害を受け、民航機やその他に影響が 出たことを明らかにした。(360 12/20)

(ウ) 米軍等への妨害

黒海での妨害活動

 ルーマニア主催で黒海で行われているNATO海上演習Sea Shield 2017に参加している米海軍駆逐艦DDG 78 Porterが、2月10日に三度にわたりロシア軍機の異 常接近を受けた。
 一度目はIl-38偵察機で、異常な低空でPorterの近くを飛行した。 二度目はSu-24 2機が低空を高速で飛行し、三度目にはSu-24 1機が最も近い距離200ヤード、高 度300ftを500ktで通過した。(S&S 02/14)

 在欧米軍の報道官が11月28日、米海軍のP-8Aが23日に黒海上空でロシア軍のSu-30 1機に異常接近されたことを明らかにした。
 Su-30は25分間にわたりP-8Aから50ftまで接近し、Su-30がアフタバーナをふかしたことからP-8Aは15゚傾いたことも明らかにした。 (S&S 11/28)

バルト海上空での妨害活動

 ロシア国防省が、ロシア軍のSu-27 1機が国境近くのバルト海上空を飛行している米空軍のB-52 1機に対し緊急発進し警戒に当たったと発表した。
 これについて在欧米空軍の広報官はB-52がロシア機の緊急発進を受けたことを認め、この飛行は米空軍の恒常任務で露軍機の発進も日常であると述べた。 (S&S 06/06)

 米国防総省が6月20日、バルト海上空の国際空域で19日に米偵察機RC-135にロシア軍のSu-27が異常接近したと発表した。
 Washington Post紙によればSu-27は数㍍まで接近し、両翼を揺らすなどしながら数分間並走した。 (時事 06/21)

ロシアも NATO 軍機が妨害活動と非難

 ロシアの複数メディアがバルト海の公海上空で6月21日、ショイグ露国防相の搭乗機にNATO軍のF-16が接近したため、護衛していた露軍のSu-27が退散させたと報じ た。 ロシア国防省が機内から撮影したという映像には、F-16が航空機の近くを飛行し後方から現れたSu-27が翼を振って警告する様子が映っている。
 ショイグ国防相は、カリーニングラード州で行われた軍の会議に出席する途中であった。 この報道は米国防総省が露軍機の異常接近を批判したことに対抗したも のと見られる。(NHK 06/21)

ウ. NATO / EU の情勢

(ア) NATO 加盟国の拡大、29ヵ国体制

 NATOが6月5日、モンテネグロが加盟関連文書を米国に寄託し、正式加盟したと発表した。 加盟国拡大は2009年のクロアチア、アルバニア以来で、NATOは29ヵ国 体制となった。(時事 06/06)
【註】 :  モンテネグロのNATO加盟は、2016年5月19日に加盟条約に署名し正式決定している。
(イ) NATO 軍の東欧配置

eFP の編成完結

 NATO軍副最高司令官のEverard英陸軍将軍が6月19日に行われたラトビアでの4番目のeFP編成完結式で、eFP大隊は実質的には旅団であると述べた。
 この日にラトビアで編成を完結したeFPは<カナダ陸軍を主力に、アルバニア、イタリア、ポーランド、スロベニア、スペイン軍で構成され、ラトビア軍の軽歩兵 旅団がホストとなる。(JDW 06/28)

 チェコ国防相が7月12日、2018年1月から2019年12月までポーランドとバルト三国に派遣されるNATO eFPに、陸軍から290名を派遣することを国民議会で承認された と述べた。
 このうち250名はリトアニアに派遣されるドイツ軍へ、残りの40名からなる小隊は ラトビアに派遣されるカナダ軍に配属される。 (JDW 07/26)

 ストルテンブルグNATO事務総長が8月25日、カリーニングラードから僅か80哩にあるポーランドの小都市Orzyszを訪問し、ここに駐屯している1,000名のNATO軍大 隊に対しNATOの役割は更に拡大すると激励した。
 この部隊はドイツVilseckに駐留している第2騎兵連隊(Stryker)から派遣されている。(S&S 08/25)

eFP 補完部隊

 ハンガリー軍第25歩兵旅団の1個機械化歩兵中隊が7月2日、米空軍のC-17でエストニアに到着した。 BTR-80 APCなどの重装備は鉄道で輸送される。
 これはNATOのeFPを補完する中欧諸国の共同防衛合意によるもので、ハンガリー中隊は3ヶ月交代でエストニア軍第2歩兵旅団に配属される。 (JDW 07/12)

(ウ) 新司令部の設置

 NATO軍事委員会委員長であるチェコ軍のPetr Pavel将軍が10月25日、11月8~9日にブリュッセルで開かれる期に一回のNATO国防相会議で、補給の円滑化と大西 洋及び北極海の安全保障強化のため新たな司令部を創設する件について協議されると述べた。
 冷戦間NATOには大西洋同盟司令部ACLANT及び欧州同盟司令部 ACEがあったが、いずれも2002年に解散している。 (360 10/25)

 四半期に一度開かれるNATO国防相会議で11月に、欧州での兵站組織の改善と大西洋及び北極海での安全保障強化に向け、複数の司令部組織を新設することが決ま った。
 冷戦時代にNATOには陸海の作戦指揮機能としてACLANTとACEが置かれていたが、冷戦終結後の2002年に主たる関心がロシアからテロリズムに変わったため、両指 揮所は廃止されている。(JDW 11/01)

 NATOがブリュッセルで開いた国防相会議で11月8日、新たに2個司令部を創設することで合意した。
 1個司令部は米欧を結ぶシーレーン防衛にあたる司令部で、もう1個軍は欧州での部隊移動を管理する兵站司令部である。 設置場所などの細部は2018年2月に開か れる次回会同までに詰める。
 NATOにとって新司令部の創設は冷戦終結以来で、冷戦終結時には33個司令部、22,000名を擁していたが、現在では7個司令部、4,000名にまで縮小している。 (MT 11/08)

 NATOが11月8日にブリュッセルの本部で開いた国防相理事会で、ロシアの脅威に対処するため2つの司令部を創設することで基本合意すると共に、サイバ戦への対 応能力向上のためサイバ指令センタを新設することでも一致した。
 新設で基本合意したのは、米国と欧州を結ぶ大西洋のシーレーンを守る司令部と欧州域内で展開する部隊や装備の移動を迅速にする後方支援を担う司令部の2つで 、配置場所などの詳細は2月の次回理事会で決める。
 冷戦終結後、東欧などの加盟国拡大を進める一方、組織のスリム化を進めてきたが、ロシアの脅威拡大への対応が必要と判断した。 (日経 11/09)

(エ) 軍事費増

米国からの軍事費増の要求

 マティス米国防長官が初参加したNATO国防相理事会で2月15日、米国が関与を低下させるのを目にしたくなければ、全加盟国が国防支出の形で示す必要があると述 べ、NATO加盟各国に負担の増大を要求した。
 これに対しストルテンベルグ事務総長は、米国以外の国防相らが支出を増加させる用意があるとのしっかりしたメッセージを返したと述べ、米国の要求に応じるこ とで各国が一致したことを明らかにした。(時事 02/16)

 トランプ米大統領が4月12日にストルテンベルグNATO事務総長との共同会見で、大統領選で示していた見解を転換し、NATOはもはや時代遅れではないと述べた。
 ただ、NATO加盟国は公平に応分の費用を負担すべきとの主張は変えなかった。(ロイタ 04/13)

2016年の実績

 NATOが3月13日に2016年の欧州加盟国の軍事支出について、GDP比で小幅ながら7年ぶりに増額したと明らかにした。 ただ、依然としてトランプ米大統領が達成を 重視する目標を下回っている。
 NATOによると、2015年に対GDP比2.40%であったNATO全体の国防費は2016年に2.43%で、米国が2015年の3.58%から3.61%に上昇したのに対し、欧州の加盟国は1.44%か ら1.47%に上昇した。(ロイタ 03/14)

 NATOが3月13日に発簡した年次報告で、欧州のNATO加盟国の軍事費は2016年に3.8%、額にして$10B増加したが、目標とする対GDP比2%には遙かに及ばないとした。
 加盟23国の中で2%を達成しているのはエストニア、ギリシャ、ポーランド、英、米の5ヶ国のみで、2017年中にルーマニア、2018年にラトビア、リトアニアが達成 する計画であるという。(JDW 03/22)

2017年以降の予算

 ドイツ内閣が3月15日、2018年度の国防予算を€1.4B ($1.5B)引き上げて€38.5Bにすることを決めた。 これにより対GDP比は2017年の1.18%から1.23%に引き上げら れることになる。
 併せて2017~2021年の財政計画で2021年の目標値も€8.3B引き上げられて€42.3Bになった。(JDW 03/29)

 ストルテンベルグNATO事務総長が6月28日、加盟する欧州諸国およびカナダが、2017年の防衛費支出を4.3%増額する方針を固めたことを明らかにした。
 事務総長、国の安全維持のため、防衛費の増額と加盟国間の公平な負担に向けた取り組みを続ける必要があると強調し、防衛支出は数年にわたり減少してきたが、 2015年には欧州加盟国とカナダで実質的に拡大して、2017年は一段と大幅な増額を予想していると述べた。 (ロイタ 06/28)

 こうしたなか、フランス軍参謀長のVilliers大将が7月18日、国防予算が€850M ($978.4M)削減されると報じられたことを不満に辞任した。 (JDW 07/26)

各国軍事予算の今後

 米国からの国防費増額要求を受けてNATO加盟の東欧諸国は国防費の増額を目指しており、チェコも現在GDP比1.56%である国防費を2020年までに1.6%に引き上げる計 画である。
 一方で東欧諸国からは、NATOは対ISISだけでなくロシアや中国からのハイブリッドやその他の攻勢に対抗する指針を示す要求が強くなっている。 (JDW 06/07)

(オ) 兵力増強

軍備増強の要求

 ポーランドのシンクタンクであるCarimir Pulaski財団が、西側の現役退役軍高官、国家安全保障及び情報当局者等を集めて4日間にわたり行ったコンピュータ演習 の結果、バルト諸国がロシアの侵略を防止するためにはNATOはさらなる努力が必要との結論を得た。 (JDW 02/08)

ドイツ連邦軍の増員

 ドイツ国防省が8月15日、連邦軍の兵力が7月に2015年2月以来初めて170,000名を超えたと発表した。
 ドイツ国防相は2016年5月に、国際情勢を受けて198,000名に増員すると述べていた。(JDW 08/23)

(カ) NATO の BMD

Formidable Shield 2017 演習

 米海軍とMDAが10月15日にDDG 75 Donald CookからSM-3 Block ⅠBを発射してMRBM標的を撃墜した。 Donald Cookは3年前にEPAA Phase 1として スペインのRotaに配置された駆逐艦4隻のうちの1隻である。
 この試験では同時に、スペイン海軍のフリゲート艦がASCM標的1発をESSMで、オランダ海軍のフリゲート艦がASCM標的2発をESSMで撃墜している。
 更に米海軍のDDG 74 McFaulがSM-6の発射を行い、Aegis BMD駆逐艦がSM-6の射撃もできることを実証した。 (JDW 10/25)

 北大西洋で9月24日~10月18日に艦船14隻以上、航空機10機、人員3,300名が参加して行われた、"Formidable Shield 2017"演習で、米海軍駆逐艦DDG 75 Donald CookがTerrier Oriole MRBM標的をBM-3 Block ⅠBで撃墜したが、この際に蘭海軍のフリゲート艦De Ruyterの捕捉追随した情報が直接射撃に使われたの か、単にキューイングだけに終わったのかが明らかにされていない。
 蘭海軍はかねてからこの演習を通じてSMART-L D-bandレーダとLink 16 (JREAP-C)データリンクを用いた遠隔発射(LoR)の実証を計画していた。 (IDR 12月)

(キ) トランプ政権の対 NATO 姿勢

 4人の米政府筋が3月20日、ティラーソン米国務長官が4月6~7日とみられる米中首脳会談に同席するため、5~6日のNATO外相理事会への出席を見合わせることを明 らかにした。 長官は4月にロシア訪問も控えているといい、NATOよりもロシアとの関係を優先したと受け止められる可能性がある。
 トランプ大統領はロシアのプーチン大統領を尊敬しているとたびたび話しており、国務長官はエクソンモービル会長としてロシア政府と長年仕事をしており、米企 業に悪影響を及ぼすとして対露制裁に疑問を呈したことがある。
 元米国政府筋の2人は、国務長官のロシア訪問とNATO外相理事会の欠席は、トランプ大統領が大国との取引を重視し安全保障面で米国に依存している規模の小さい 国々を後回しにしているとの認識を与える危険性があると指摘した。(ロイタ 03/21)

 英国のEU離脱と米国のトランプ大統領誕生で、欧州の防衛は岐路に立たされている。(JDW 04/05)

 トランプ米大統領が6月9日、ルーマニアのヨハニス大統領と会談後にホワイトハウスで行った共同記者会見で、米国は他国から攻撃された場合に集団的自衛権に基 づいてその国を支援する義務を定めた第5条を絶対に果たすと明言した。
 トランプ大統領は大統領選中、応分の国防費を負担しない加盟国に対する義務履行に疑問を投げかけ、5月にベルギーで行われたNATO首脳会議の演説でも、5条に触 れずに国防費の負担は公平であるべきだと強調したことから加盟国から懸念が出ていた。(毎日 06/10)

(ク) EU 独自防衛力構築の動き

対米依存度を下げる EU の方針

 EUのユンケル欧州委員長が6月9日、欧州防衛はもう外国任せにできないと主張し、対米依存度を下げてEU独自の防衛力を強化する考えを示した。
 トランプ政権発足後、米欧同盟が揺らいでいることが背景にある。
 EU加盟28ヵ国中の22ヵ国がNATO加盟国だが、ユンケル委員長はEUの独自防衛力はNATOと張り合うのではなく互いに補完し合うとしている。 (日経 06/10)

英国の EU 離脱への対応

 Brexitや欧州における安全保障上の脅威増大を受け、EU加盟28ヶ国は何年にもわたり議論してきた恒久組織(PESCO) の設立を確実にしようとしている。
 EUの外交安全保障責任者は5月に開かれたEU国防相会議で、6月までのできる限り早い時期にPESCOを設立すことで合意したと述べた。 (JDW 05/24)

 EU首脳会議が6月22日にブリュッセルで始まり、加盟国間の防衛協力強化を推進する方針で一致した。 EU内の防衛協力には英国が反対姿勢を貫いてきたが、英国の EU離脱が決まってから、独仏主導で急速に議論が進んでいる。 記者会見したトゥスクEU大統領は、歴史的な一歩だと協力を推進する決意を示した。
 一部採択された総括文書は、防衛分野での調達や開発共通化を進めるため、欧州委員会が提案している「欧州防衛基金」について、EUの高い水準の目標を満たす鍵 となると支持する文言を盛り込んだ。
 会議はこの後、英国にあるEU機関の移転問題などを協議し、英国のEU離脱決定により持ち上がった課題に道筋を付けた。 (時事 06/22)

軍事活動を統括する組織の新設

 EUが5月18日にブリュッセルで外相国防相理事会を開き、英国のEU離脱をにらんだ域内の防衛協力の強化策として軍事活動を統括する組織の新設を短期的な目標に据 えることを決めた。 新組織の設立方針は3月の閣僚理事会で合意済みで、今回は設立の実行を正式決定した。
 外相国防相理事会が設立で一致したのは加盟国で構成する多国籍部隊の域外活動などを一元管理させる狙いの軍事計画行動能力(MPCC)と呼ぶ新組織で、現時点では 戦闘行為を伴わない軍務の調整のみに役割を限定するが、将来的にはEU部隊の総司令部への発展も取り沙汰されている。 (日経 05/19)

 ドイツのメルケル首相が5月28日にミュンヘンのビヤホールで行われた選挙運動の遊説で、欧州はもはや 米国と英国の同盟だけに依存することはできず、他の国 に依存する時代は終わったと述べ、我々は自分たちの運命を自分たちの手で決めなければならないと宣言した。
 首相は、同盟に依存できないということをこの数日で経験したと、27日に終わったNATO首脳会議とG7首脳会議でトランプ米大統領と会って感じた失望が今回の発 言の背景にあることを明らかにした。
 これについてWashington Post紙は、第二次大戦後70年間で最も強く独立的な役割をするという宣言と評価した。 (東亞 05/30)

治安部隊や防衛予算を創設する改革案

 マクロン仏大統領が9月26日にパリで演説し、EU加盟各国共通の治安部隊や防衛予算の創設を柱とする改革案を明らかにした。
 EU内で強い発言力を持つドイツのメルケル首相が24日の独総選挙で勝利したことを踏まえ、マクロン氏が持論とするEU改革を加速する狙いがある。 (時事 09/27)

ヨーロッパ防衛基金の設立

 EUの欧州委員会が6月7日、UAVやロボットなど防衛上の先端技術開発のため2019年~2020年に€500M ($563M)にのぼる新たな基金を設立すると発表した。 基金は 2020年以降更に二倍の€1Bになるという。
 防衛装備の研究開発費は現在、EU加盟国全体で米国の1/7でしかない。(DN 06/07)

 EUの執行機関にあたる欧州委員会が6月7日、EUが基金を設立して研究や装備の調達を共同で行うとする新たな防衛計画を発表した。
 それによると、EUはEU予算や加盟国の支出によって「ヨーロッパ防衛基金」を設立し加盟国が個別に行っていた暗号化ソフトやロボットなど防衛技術に関する研 究開発やUAVやヘリコプタといった装備の調達を共同で行うとしている。
 基金は2017年内に試験運用を始め、2020年からは基金の規模を年間€5.5Bに引き上げ、拡充を図るという。 (NHK 06/08)

 6月7日にEUが設立を提案した防衛装備の研究開発のための欧州防衛基金(EDF)に€500 ($597M)が提案された。 (360 11/27)

EDA が主導する装備開発

 欧州防衛庁(EDA)がUAVに搭載するレーザ兵器の事前フィジビリティ検証契約の相手先を9月19日に決める。 この契約は€150,000 ($180,000)、期間は1年間で、7月 15日に申し込みの募集が行われていた。
 EDAが目指しているのはIR欺騙(DIRCM)のダイオード励起式レーザで、波長は2μmである。(JDW 09/06)

常設軍事協力枠組み (PESCO) の創設

 EUが11月13日に外相理事会をブリュッセルで開き、防衛協力拡大を図る新体制「常設軍事協力枠組み(PESCO)」創設に向けた文書に署名した。 署名式ではEU加 盟28ヵ国中、英国などを除く23ヵ国がPESCOへの参加意思を表明する文書に署名し、外交安全保障上級代表に提出した。 次回理事会で正式に決定して12月のEU首 脳会議で始動させる。
 EUの共通外交安全保障政策は全会一致が必要だが、EU基本条約であるリスボン条約は意欲的な加盟国だけで軍事協力を拡大できるとも定めており、防衛分野の 統合に慎重だった英国の離脱決定などを受け、仏独が主導してこの規定を初めて活用する議論が加速した。
 具体策としては共同の研究開発や調達、兵站拠点設置、共同訓練の実施などが検討されており、仏独が計画中の戦闘機開発も含まれる可能性がある。 (産経 11/14)

 EU加盟28ヵ国のうち、オーストリア、フィンランド、スウェーデンを含む23ヵ国が11月13日、新設される常設の軍事協力の枠組み(PESCO)への参加を公式に表明 した。 アイルランドとポルトガルは12月11日に開かれる次回の外相会議で参加を表明するという。
 一方EU離脱を表明している英国のほか、EUの防衛統合に反対しているデンマークは参加しない。(JDW 11/22)

 12月14日のEU首脳会議で、加盟国間の防衛協力の強化に向けた軍事技術の開発や調達などに共同で取り組む軍事協力枠組み(PESCO)の発足式を開いた。
 11月の署名式に参加した23ヵ国に新たにポルトガル、アイルランドが加わり25ヵ国体制でスタートするが、デンマーク、マルタと英国は参加していない。
 枠組みの概念は2009年発効のEU基本条約(リスボン条約)に盛り込まれていたが、英国がNATOとの重複を嫌って反対してきた経緯がある。 しかし、英国のEU離脱 決定で話が進み、離脱交渉の節目となる今回のEU首脳会議の場でお披露目となった。(時事 12/15)

(ケ) 地域連合の動き

a. ノルディック防衛協力機構 (NORDEFCO)

 スウェーデン空軍が5月8日、ロシアの侵攻に際してフィンランドがスウェーデンの航空基地を戦略縦深として使用できる取り決めを結んだ。
 これは両国間で新たに設立したノルディック防衛協力機構NORDEFCOの一部になっている。(JDW 05/17)
b. アドリア憲章 (Adriatic Charter)

 NATO 30番目の加盟国を目指すマケドニアの新首相が8月2日、モンテネグロで開かれたアドリア憲章(Adriatic Charter)首脳会議で、軍の近代化のため国防支出を 増額すると述べた。 同国の2017年の国防費は€101M ($119.6M)でGDP比1.1%に過ぎない。
 このため前国防相はMi-8/17、Mi-24の改良、4×4装輪APC、155mm SPHの新規購入、及びT-72A MBTの能力交渉計画を中止していた。 (JDW 08/09)
【註】 :  アドリア憲章(Adriatic Charter)とは2001年5月に米国と旧ユーゴスラビアのアルバニア、クロアチア、マケドニアの4ヵ国で構成され、旧ユーゴ3ヵ国のNATO加盟 を支援するた組織であった。
 その後ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロも加わって6ヵ国になり、セルビアとコソボもオブザーバとなっている。
(コ) 独蘭連携の動き

ドイツ軍がオランダ防空の強化

 ドイツ空軍が8月14日、空軍第61 SAM群が8月末にオランダに派遣され、オランダ軍陸上防空司令部の隷下に入ると発表した。
 これは両国で結ばれた陸上防空の共同運用計画Project Apolloの一環で、同計画はGreen Apollo、Purple Apollo、Black Apollo、Red Apolloなどで構成されてい る。(JDW 08/23)

Green Apollo: SHORAD、VSHORAD統合軍
Purple Apollo: 統一指揮能力
Black Apollo: ドクトリン、コンセプトの共有
Red Apollo: 陸上防空教育の統合
ドイツ、オランダ混成の戦車師団

 ドイツ陸軍のPanzerbataillon 414戦車大隊がオランダ軍第43機械化旅団の隷下に入った。 オランダ軍第43機械化旅団はドイツ軍の第1戦車師団の隷下にある。
 ドイツ陸軍Panzerbataillon 414戦車大隊はドイツ軍戦車中隊3個と、Leopard 2A6 MBT 18両を有するオランダ軍の戦車中隊からなっている。 (JDW 11/01)

エ. バルト諸国の動き

(ア) バルト三国

NATO の Enhanced Forward Presence
 バルト三国は防衛支出を大幅に伸ばしているが、小国であるため空軍力の整備には手が回らないため、NATOは3年前に開かれたウェールズでの首脳会議で Enhanced Forward Presence計画を決め、バルト三国等の支援を行っている。
 陸軍は大隊規模の部隊をすでに派遣し、空軍はバルト海上空での警備行動を行っている。 また米陸軍は2月に、UH-60、C-47、AH-64など 80機からなる航空旅団を 、ラトビア、ポーランド、ドイツに派遣している。
 更に5月には、フィンランド、スウェーデンと共にArctic Challenge演習の一環として90機以上の作戦機を投入した。 (AW&ST 05/01)

 英空軍のTyphoon 2機が8月29日、エストニアにeFPとして派遣された英軍を主力とする戦闘団の演習に参加するため、エストニアのÄmari 航空基地に飛来した。
 英空軍機はエストニアで、ベルギー空軍のF-16AM 4機及び米空軍のF-15C 3機と共に活動する。(JDW 09/06)

 ラトビアに派遣されたカナダ軍主力にアルバニア、イタリア、ポーランド、スロベニア、スペインが参加したeFP戦闘団が8月21~27日に戦闘能力評価演習(CERTEX) を終えてoperationalになったのを受け、NATOがバルト三国とポーランドに派遣したeFPのoperationalを8月28日に宣言した。
 カナダ軍主力のeFPがCERTEXを完了したのは、リトアニアに進駐したドイツ軍主力、ポーランドに進駐した米軍主力、エストニアに進駐した英軍主力のeFP戦闘団 に次いで4番目になる。(JDW 09/06)

ロシアの大規模演習 "Zapad 2017" に対する警戒

 ペンス米副大統領が7月末にエストニアを訪問し、31日にはバルト三国の大統領と会見し9月にロシアがベラルーシと行う"Zapad 2017"演習への対応について協議 した。 同日リトアニア大統領は、演習期間中米国はNATOのバルト警察飛行活動のため派遣している戦闘機の数を倍増すると述べた。
 前日の30日にペンス米副大統領はエストニアの首相と会談し、Patriotの派遣について協議した。 (JDW 08/09)

エストニア

 エストニア国防省が2月7日、同国が装備しているFH-70牽引砲に代えて、中古の韓国製K9 155mm SPH 12門の購入を検討しており、6日に購入の交渉を開始したことを 明らかにした。 契約は2017年内に行われ2021年には配備されるという。
 K9はフィンランドも導入しており、フィンランドとの共同購入ではないが両国は密接に協力するという。 (JDW 02/15)

 エストニアの国防相が2月9日、今後3年間に€60M ($63.8M)の国防投資を行うと発表した。 これは大口径砲弾の購入に充てるという。
 この結果現在GDPの2.2%である同国の国防費はさらに引き上げられることになる。(JDW 02/22)

ラトビア

 ロシアが、ラトビアで人口230万人の1/3を占めるロシア系住民を対象に、偽情報、プロパガンダ、サイバ攻撃などを通じの情報戦を展開しているといわれている。
 ラトビアのリンケービッチ外相が産経新聞の単独取材に応じ、ロシアがラトビアに対し宣伝工作、情報操作などを組み合わせたハイブリッド戦争を仕掛けていること を明らかにした。 またラトビアなどで4月から始まったNATO軍の長期駐留はロシアの脅威に対し抑止効果が大きいと強調した。 (産経 06/29)

 ラトビアの元国防相で現在欧州議会議員であるPabriks氏がNATO及び米国に対し、ロシアの脅威に対抗するためPatriotをバルト諸国に配備することを要求した。 (DN 05/26)

 ラトビアのVejonis大統領が6月19に行われたNATOeFPの編成完結式後に、同国の国防予算が2018年1月にNATOの指標であるGDPの2%を達成すると述べた。 (JDW 06/28)

 ラトビアが2018年の国防予算を€126.8M ($151.2M)引き上げて€576.34M(28.2%の上昇)とし、NATOの基準であるGDPの2%を達成することになった。
 同国の中期計画では国防費は、2019年に€600.55M、2020年に€634.11Mになることになっている。 (360 11/27)

リトアニア

 かつてソ連海軍航空隊の基地であったエストニアのAmari航空基地が、現在ではリトアニアのSiauliai航空基地と共に2ヶ所あるNATOのバルト航空警察活動(BAP)基地 の一つになっていて、Typhoon 5機が駐留している。
 両基地には独空軍と仏空軍が展開している。(AW&ST 01/09)

 リトアニアと米国が1月16日、米軍の同国駐留を認める協定に調印した。
 リトアニア軍によると、現在同国には140名の米軍人が常駐すると共に、訓練のため部隊が度々入国している。 (MT 01/17)

 リトアニアが3月9日に発表した"Lithuanian Defence Ssytem: Facts and Trend 2017"によると、同国は2021年までにBoxer IFV、PzH2000 SHP及び NASAMSを調達す る。
 リトアニアの国防費は2014年にロシアがウクライナ東部を支配した時点で€321.8M、対GDP比0.89%であったが、2017年には€723.8M、GDPの1.8%に上昇し、2018年に は€873M、2.07%になる。(DN 03/10)

 リトアニアがノルウェーからNASAMS 2個システムを$110Mで購入しており、2020年には引き渡される。
 これによりリトアニアは6発搭載発射機12両、レーダ8基を保有することになる。(DN 05/26)

 リトアニア大統領が多国間防空演習"Toburuq Legacy 2017"に際し7月20日、米国に対してPatriotの常駐を要求した。
 この要求はポーランドが7月にPatriotの導入を決めたのに続いて行われたが、7月18日にはエストニア国防相が同盟国に防空システムの同国への展開を求める交渉 を行っていることを明らかにしていた。(JDW 08/02)

 リトアニア国防省が10月26日、Kongsberg社からNASAMS 2個中隊分を€109M ($127.7M)で購入する契約を行った。
 NASAMSの購入に関しては2016年10月にリトアニアとノルウェーの間で合意している。(360 10/29)

(イ) ポーランド

防衛戦略見直し

 ポーランド国防省が3月末までに新たな防衛戦略見直し(SDR)を行う。 新SDRは、2015年末にPiS党による新政権が成立して以来初である。 (JDW 01/18)

国防費の増額

 ポーランドの閣議が6月27日、国防費をGDPの2%とする法案の骨子を了承した。 これにより同国の国防費は毎年数百万㌦増額されることになる。 (JDW 07/05)

 ポーランド議会が9月15日、国防費の増額を圧倒的多数で可決した。 この結果ポーランドの国防費はNATOの基準であるGDPの2%を超え、2020年には2.1%以上、2030年 には2.5%以上になる。(DN 09/15)

防空/BMD の強化

 ポーランドのマチェレウィチ国防相が、米政府がPatriotの売却に合意し覚書に署名したことを明らかにした。
 ポーランドは3月に、2017年末までにRaytheon社からPatriot 8個中隊分を$7.6Bで購入することで合意に達する見込みだと明らかにしていた。 (ロイタ 07/06)

 ポーランドがPatriotを二段階で導入する。 同国のWisla計画は3月に対抗馬であ ったMEADSやDavid's Slingがまだ開発中であることを理由にPatriot 8個中隊の 採用を決めたが、同国は当初の2個中隊を2019年までに米国でまだ開発中で2022年IOC予定のIBCSとの組み合わせで、残りの6個中隊を360゚監視可能なレーダとの組み 合わせで要求していた ため協議が難航していた。
 今回の合意ではIBCSとPAC-3 MSEとIBCSを組み合わせた最初の2個中隊(4個FU)を2022年までに納入する第一段階の契約を2017年内に行い、Skyceptor迎撃弾と組み 合わせる残る6個中隊の契約を2018年末 までに行うことになっている。(DN 07/06)
【註】 :  SkyCepterはRafael社が開発したDavid's Slingシステム(DSWS)の迎撃弾であるStunnerで共同開発したRaytheon社は米陸軍にもIFPCInc2-Iとしても売り込んでいる。

新装備の導入

 ポーランドが2014年12月に発注したAGM-158A JASSM 40発の一次分が納入された。
 JASSM搭載のためF-16C/D Block 50+をM4.3仕様からM6.5に改造する工事は2016年末に開始されており、JASSMは3月にIOCになると思われる。
 ポーランドはこれに加えて2016年12月に以下の空投武器を発注している。(JDW 02/01)

・AGM-158B JASSM-ER:     70発
・AIM-9X Sidewinder Block Ⅱ: 93発
・AIM-120C-7 AMRAAM:     65発
・Mk 82爆弾:         550発
・GBU-12 Paveway:      440発
・GBU-38B/B JDAM:      480発
 ポーランドが軍の監視能力を高めるための技術検討を開始するため2件の提案要求を行った。
 10月30日に出された1件目は沿岸の警戒と低空侵入目標警戒のための沿岸配置レーダで、提案の締め切りは11月24日、協議の実施は12月~1月になっている。
 12月8日に出されたもう1件目は係留気球で、2018年1~2月に協議が行われる。(JDW 11/29)

NATO が "Baltic Hegemon" 演習

 NATOが9月12~14日に"Baltic Hegemon"演習をポーランドで実施した。 この演習にはNATOの即応部隊ARRCのほか、ポーランド正規軍と国土防衛隊(TDF)も参加した。 (JDW 09/27)

NATO が "Dragon-17" 演習

 ロシアがベラルーシと実施している"Zapad (West) 2017"演習に対抗して、ポーランドとNATOが同国北部の Drawsko Pomorskie演習場で"Dragon-17"演習を開始した。
 9月21日~29日に行われるこの演習はポーランドにとって今年最大規模で、NATO軍と併せて兵員17,000名、装備3,500ユニットが参加している。
 またこの演習にはポーランドで新編された民間志願兵で構成される国土防衛隊も初参加する。(S&S 09/21)

オ. ノルディック諸国/アイスランド情勢

(ア) 徴兵制の復活

スウェーデン

 スウェーデンが3月2日、2010年に廃止した徴兵制を復活させると発表した。 対象は18歳以上の男女で、意欲や能力に応じ2018年1月から4,000名が11ヶ月間の兵役 に就く。
 ロシアの脅威を含む治安情勢の変化に対応するのが目的という。(時事 03/03)

(イ) 非同盟政策からの踏み出し

英国主導の合同派遣軍に参加

 英国防省が、スウェーデンとフィンランドが、英国が主導する即応部隊である「合同派遣軍」 に参加することを決め、6月30日にストックホルムで3ヵ国の国防相が 出席して署名式が行われたと発表した。
 合同派遣軍は世界的な脅威への対応や人道支援を 行うことを目的に2015年に発足し、英国のほかデンマークやノルウェー、オランダとバルト三国の7ヵ国が参加し ており、2018年には10,000名の動員可能となる。
 スウェーデンとフィンランドはいずれもNATO非加盟国であるが、英国などと防衛協力を強化する背景には、バルト海などでのロシアの脅威拡大があるとみられる。 (産経 06/30)

フィンランド軍と米軍の共同演習

 米空軍のA-10 10機、MC-130J 1機、及び兵員270名が16日間の訓練のためエストニアのÄmari空軍基地とJäGALA陸軍基地に展開した。
 A-10はフィンランドで、同国空軍のF/A-18C及び、NATOの航空警察活動でエストニアとラトビアに展開しているスペイン空軍のEF-18Aを交えた共同訓練を行う。 (JDW 08/16)

 ロシアがより独善的になるなか、フィンランドやその他ノルディック諸国が米国との共同演習を進めようとしている。 マティス米国防長官は11月6日から2日間 フィンランドを訪問して国防相と、同国と米国及びNATOの連携強化を強調した。
 フィンランドは9月にスウェーデンが行った米国との共同演習"Aurora"を参考に検討をしている。 この演習には1,400名の米軍を含む20,000名と、過去20年間で 最大規模が参加した。(S&S 11/06)

フィンランド軍、スウェーデン軍の "Aurora 17" 演習への参加

 ロシアとベラルーシがバイト三国との国境近くで9月14日から"Zapad 2017"演習を行っているが、非NATO加盟国スウェーデンの連隊複数が"Aurora 17"演習の準備段 階として米陸軍の増強機甲中隊と合同訓練を行っている。
 11日に開始された"Aurora 17"演習は過去20年で最大のもので、非NATO加盟国のフィンランドをはじめ、デンマーク、ノルウェー、フランス、エストニア、リトアニ ア、米国により、ゴッドランド島やストックホルム周辺のバルト海で米軍1,000名以上を含む20,000名が参加して行われる。 (S&S 09/14)

 スウェーデンで行われている多国間演習"Aurora 17"が、9月11~29日に新たな段階に入った。
 この演習には非同盟のフィンランドをはじめ、NATO加盟国のノルウェー、デンマーク、エストニア、ラトビア、フランス及び米国から、合わせて20,000名が参加し ている。(JDW 09/20)

対ハイブリッド戦部隊 Hybrid CoE の設立

 スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェーのNORDEFCO加盟ノルディック諸国が、サイバ戦における協力を深めようとしている。
 フィンランドは10月3日にヘルシンキに司令部を置く対ハイブリッド戦部隊Hybrid CoEを設立した。 (Fifth Domain 10/06)

フィンランドに対するロシアの圧力

 駐フィンランド露大使が、フィンランドがNATOに加盟すれば対抗処置をとると警告した。
 フィンランドは1994年にNATO Partnership for Peace計画に参加しており、最近にはヘルシンキにNATOのサイバ防衛センタを開設している。
 しかしながらフィンランドの民意は、NATO加盟賛成派が21%、反対派が51%と、非同盟政策の維持を望んでいる。 (DN 10/13)

スウェーデンの立ち位置

 ベルリンで開かれた欧州安全保障会議に今年パートナー国として出席したスウェーデンの国防相が、ロシアの挑発に対抗するため欧州の連帯と結束を呼びかけた。
 スウェーデンはNATOの加盟国ではないがPfP国になっており、米国とも大西洋を挟んだパートナーシップ関係にある。 (JDW 12/06)

(ウ) 国防費の増額

 ノルウェー国防相が10月12日、国防予算をNOK3B ($378M)増額すると発表した。(JDW 10/25)
(エ) 新装備の導入

スウェーデン

 スウェーデン政府が11月7日、PAC-3の最新型4個FUを$1.2Bで購入すると発表した。 購入の最終決定は2018年中に行われ、2020年に引き渡しが開始されて2025年 までのoperationalを見込んで いる。
 スウェーデンは長くMEADSの採用を検討してきたが結局PAC-3の採用になった。 同様にMEADSを検討してきたポーランドとルーマニアもPAC-3の採用を決めている。 (JDW 11/15)

ノルウェー

 ノルウェー国防省が2月6日、2000年代初期に決めた陸上配備の防空は空軍の任務としたの方針を覆し、陸軍に防空部隊を創設すると発表した。 これにより陸軍は 空軍同様にAIM-120 AMRAAMを使用した射程20kmのシステムNASAMSを装備することになる。(JDW 02/15)

フィンランド

 フィンランド国防省が2月20日、オランダから中古の装甲工兵作業車(Enginering Tank)を購入すると発表した。
 購入する装甲工兵作業車はLeopard 1 MBTを元にしている。(JDW 03/01)

 フィンランド国防省が2月18日、韓国から中古のK9 155mm SPH 48両を€146M ($155M)で購入すると発表した。 この契約には更に追加購入のオプションもついてい る。 納入は2017年に開始され、2024年までに完納する。
 同国は今まで122mm、130mm、152mmと、ソ連時代の口径砲及び弾薬を採用していた。(JDW 03/01)

(オ) 米軍の駐留再開

ノルウェー

 米国はノルウェーとの連携強化を行っており、1月からは海兵隊300名が駐留を始めたほか、海兵隊の1個遠征旅団14,000名分に相当する戦車、火砲、その他装備の ノルウェーでの備蓄を開始している。(S&S 11/06)

アイスランド

 米国防総省がFY18国防予算で、冷戦時代以来放置されていたアイスランドのKelfavik海軍航空基地を$14.4Mかけて修理し、P-8の哨戒飛行拠点として使用する。
 これは最近"GIUK gap"におけるロシアの原子力/通常動力潜水艦の動きが活発化していることに対応するものである。
 GIUK gapとはグリーランド、アイスランド、UKに囲まれた水域のことで、ロシア北方艦隊の大西洋への出口になっている。 (S&S 12/04)

カ. 黒海と沿岸諸国の動き

(ア) 黒海とその上空

ロシア軍機の異常接近

 米国防総省が5月12日、黒海上空を飛行中の米海軍P-8AにロシアのSu-27 1機が20ft以内まで異常接近したことを明らかにした。
 ロシアは2月に黒海で米駆逐艦Porterに3度にわたり航空機を異常接近させ、2016年9月には黒海上空でP-8Aに対し10ftまで接近させている。
(S&S 05/12)

米軍の対応

 ウクライナ軍とロシア軍の戦闘が増加しているのを受け、米海軍の駆逐艦Jame's E. Williamsが11月下旬に黒海に入った。 米艦がこの種の任務に就くの は過去3ヶ月間では8月のPorterに次いで2隻目である。
 ロシアは2014年にクリミア半島を併合して以来、米海軍のこの様な動きを好戦的と見ている。(S&S 11/29)

(イ) NATO 加盟諸国

ルーマニア

 米海兵隊とルーマニア軍が3月16日から22日までの日程で黒海沿岸で合同演習"Spring Storm 17"を行っている。
 この演習にはLCACを搭載した米海軍揚陸艦Cater Hallのほか、450名の米海兵隊員と750名のルーマニア軍が参加し、20日にはStingerの実射も行われた。 (S&S 03/20)

 ロイタ通信が4月20日、ルーマニアが米国にPatriotの売却を要求していると報じた。 詳細は明らかになっていない。
 ルーマニアは最近購入したF-16 6機とPatriotで防空システムを構築するという。(DN 04/20)

 米DSCAが7月11日にHPで、国務省がPatriot Config 3+の7個システムをルーマニアに売却することを承認したことを明らかにした。
 売却にはMIM-104E GEM-T弾56発とPAC-3 MSE弾168発も含まれ、契約額は$3.9Bと見られる。(DN 07/11)

 ルーマニアの最高軍事委員会が8月1日に、2017~2026年の軍事費をNATO基準であるGDPの2%となる€9.8B ($11.5)とすることを決めた。
 一方同国国防相は先週、米国からPatriotを$3.9Bで購入すると発表している。(DN 08/01)

 米国防安全保障協力局(DSCA)が8月18日、ルーマニアにHIMARSを$1.25Bで売却することを国務省が了承したと発表した。
 売却されるのはHIMARS 54両と単弾頭型 GMLRS 81発、代替弾頭型GMLRS 81発、ATACMS 54発、射撃指揮装置24基などである。
 また装甲型M1151A1 Humvee 15両と、2人乗りM1151A1 Humvee 15両も含まれている。(DN 08/18)

 米国防安全保障協力局(DSCA)が8月18日、国務省がルーマニアへのHIMARSの売却 を承認したと発表した。
 契約の総額は$1.25Bで、HIMARS発射機54両のほか、GMLRS弾162発、ATACMS弾54発、縮射訓練弾30発、野戦砲兵戦術データシステム24基とHUMMVEE 30両などが含ま れている。(JDW 08/30)

 米国務省は2016年7月にPatriot Config 3+ 7個FUと、GEM-TBM弾56発、PAC-3 MSE弾168発をルーマニアに売却することを承認している。 またRaytheon社はポーラ ンドにPatriotを$5Bで売却する可能性がある。
 このほかにRaytheon社はNASAMSを€100M ($119M)でリトアニアに売却する。 NASAMSの採用は欧州で五番目であるが、東欧では初となる。 (DN 09/06)

 ルーマニアの新国防相が10月23日、Patriotの購入計画を明らかにした。 国防省によると2017年のPatriot購入経費は$700Mであるが、最終的には$3.8Bにのぼる と見られる。
 この他にコルベット艦4隻やGD社から8×8装 輪装甲車の購入計画もあり、2017年国防費はGDPの2%になる。 (JDW 11/01)

ブルガリア

 ブルガリアがBGN1.5B ($898M)をかけて戦闘機を新たに8機整備する計画が度々遅延するなか、同国国防相が7月21日に国営ラジオで、保有しているMiG-29 15機と Su-25 14機の維持改良について、ロシアMiG社と交渉を行っていることを明らかにした。 (JDW 08/09)
【註】 :  ブルガリアでは2016年11月に実施された大統領選挙で、親ロシアの野党社会党の支持を受けたラデフ前空軍司令官が当選している。

(ウ) ジョージア

 特筆すべき記事はなかった。
(エ) アルメニア

 特筆すべき記事はなかった。
(オ) モルドバ

 モルドバのドドン大統領が3月28日、大統領権限の強化などの是非を問う国民投票を9月24日に行うとする文書に署名した。 国民投票では大統領に議会解散権を 与え、一院制議会の定数を101から71に削減することのほか、学校の歴史の授業でルーマニア史主体ではなくモルドバ史を中心に教えるようにするなどの提案につ いて問う。
 モルドバにはEU加盟国のルーマニアと統合を目指す政治勢力がある一方、2016年末に就任したロシアのプーチン政権寄りのドドン大統領は、実権を握ってきた親 欧米のフィリプ首相や、親欧米派が主流の議会と対立している。(日経 03/29)

 ロシア外務省が5月31日、モルドバが29日に同国駐在のロシア外交官5人の国外退去処分したことへの対抗措置として、ロシアに駐在するモルドバの外交官5人の国 外退去処分を発表した。 モルドバは政治の実権を持つ内閣は親欧米派政党で構成されるが、深刻な汚職への反発から昨年の大統領選では親ロシア派のドドン氏が 選ばれ、国内世論が二分されている。
 ロシア外務省はまた同日、エストニアが先週ロシア外交官2人の国外退去処分を決めたことに対抗して、同国に駐在する隣国エストニアの外交官2人を国外退去に したことも発表した。(産経 06/01)

 ストルテンベルグNATO事務総長とモルドバ首相が11月23日に会談し、中立国であるモルド バとNATOの連携を強めることで合意した。
 NATOはモルドバに連絡官を派遣し、両者の支援と協力を密接にする。
 事務総長はモルドバの中立は尊重するとも述べた。(S&S 11/24)
【註】 :  モルドバ東部で分離独立を宣言し政府と対立し、一時期は内戦まで引き起こしている親露の沿ドニエルテル共和国に、ロシアは平和維持と武器庫の警備を名目に 1,000名の部隊を駐留させている。

キ. その他地域での動き

(ア) キプロス

 43年間にわたり、国際的に認められているギリシャ系の南と、分離しているトルコ系の北に分断されているキプロスが再統一される可能性が出てきた。
 19ヶ月の交渉の末、1月12日にジュネーブで統一に向けた会議が開始される。
 トルコは1974年夏にギリシャ系住民を中心としていたキプロスに侵攻し、現在も35,000以上の部隊でキプロス国土の36%を支配している。 (S&S 01/07)
【註】 :  EUはトルコのEU加盟要求を、キプロス問題を巡るギリシャとトルコの対立を理由に拒んできたが、キプロス問題が解決すればトルコでのクーデター未遂事件後の エルドアン大統領の対応など別の理由を、加盟拒否の理由にしなければならなくなる。

 キプロスの再統合に向け、南部のキプロス共和国とトルコだけが承認している北部の北キプロス・トルコ共和国に加え、関係国3ヵ国が参加する多国間会合が1月 12日に国連の仲介のもとジュネーブで始まった。
 この会合では再統合に際しての安全保障問題について協議され、北側の後ろ盾となっているトルコが軍の撤退をめぐり譲歩するかが焦点になる。 (時事 01/12)

 キプロスの再統合にむけ1月12日にジュネーブで開かれた再統合交渉では、島の北側に駐留するトルコ軍部隊の扱いなど安全保障問題について協議されたが、合意に 至らなかった。
 仲介役の国連は12日、当事者と関係国3カ国が参加する多国間会合を今後も継続することを決めたと発表した。 (時事 01/13)

 国連事務総長報道官が5月31日、グテレス事務総長がニューヨークで4日、分断が続くキプロスの再統合問題をめぐる協議のため、南部のキプロス共和国(ギリシャ 系)大統領と北キプロス・トルコ共和国(トルコのみ承認)大統領との三者会談を行うと発表した。
 現在の交渉は2015年5月に国連の仲介の下で再開したもので、今年1月にはスイスでの首脳会談に加え、関係国3ヵ国も参加する多国間会合を開いたが、合意に至ら なかった。(時事 06/01)

 国連の仲介で6月28日にスイスのクランモンタナで再開されたキプロスの再統合交渉が、島北部に駐留しているトルコ軍部隊の撤退をめぐり南北の意見が対立し難 航している。
 トルコのチャブシオール外相が「これが最後の会議」とするなか、双方が歩み寄りの姿勢を見せなければ、交渉が決裂する可能性もある。 (時事 07/07)

(イ) コソボ

 コソボ大統領が3月7日に議会に対し、同国の軽装備治安部隊を正規陸軍に格上げする要求を行った。
 この動きに対しコソボ独立に反対しているセルビアは直ちにこれを非難した。(S&S 03/07)

 米国とNATOが3月8日にコソボに対し、軽装備の治安維持部隊を憲法の改正なしに正規軍に格上げしようとしていることについて、そうなればコソボ治安維持部隊と の連携を縮小すると警告した。(S&S 03/08)

 9月に就任したコソボのHaradinaj新首相が10月12日に治安部隊司令部を訪問し、憲法を改正して治安部隊を正規軍に格上げすると述べた。
 コソボでは2017年初めにHashim Thaci大統領がNATOや米国の圧力から、正規軍創設の法案を撤回した経緯がある。 (S&S 10/12)

ク. 在欧米軍の動き

(ア) 在欧米陸軍の再駐留

欧州での兵力増強、恒久的な部隊配置

 ロシアの侵略を見据えて米議会上下両院はFY18国防権限法に、欧州での兵力増強、恒久的な部隊配置と予算配当を盛り込もうとしている。
 トランプ政権はFY18で、欧州安全確約計画(ERI)計画に$4.8Bを要求(FY17要求は$3.4B)している。 (JDW 07/12)

ドイツへの再駐留

 ドイツのBremerhavenで1月6日、米陸軍のM1 Abrams MBT 1両が陸揚げされた。 このM1はコロラド州Ft. Carson駐屯の第4歩兵師団、第3機甲旅団戦闘団の装備で、 受領後ポーランドでの9ヶ月駐留に向け運ばれる。 この機甲旅団戦闘団の到着で在欧米陸軍は、機甲旅団の欧州常駐を再開した。
 Ft. Carson旅団は、MBT 87両、Paladien 18門、Bradley 144両と、更に2,000両の各種車両とトレーラを搬入する。 (S&S 01/06)

 在欧米陸軍が、冷戦終了後に規模が縮小された陸軍の再駐留に向け最近北ドイツで調査活動を行っている。
 ドイツ当局者によると在欧米軍が視察したのは、補給拠点であるBremerhavenに近いFallingbostelとBergenで、米陸軍は4,000名規模の駐留を考えているという。 (S&S 03/08)

 4月29日にポーランド西部の都市Poznanに設置された師団司令部規模の米陸軍戦術司令部が5月4日、100名の部隊がドイツからポーランドに入ったと発表した。
 米陸軍は2017年になって6,000名の部隊を、バルト三国、ポーランド、ドイツ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアに展開している。 (MT 05/04)

 在欧米陸軍が、ドイツマンハイムにある閉鎖されている基地の再使用を検討している。 マンハイムのコールマン兵営は2011年に放棄され、その後2015年に一時 使用されただけになっていた。
 またこれに伴い1990年代に放棄されたドイツ南部クライグスフェルドにあった補給処の再開も検討している。 (S&S 06/14)

米陸軍の東欧進駐

 多数の市民が米国旗を振って迎えるなか、戦車やその他車両に搭乗した米軍が1月12日にドイツとの国境を越えてポーランドに入り、基地となる同国西部のZaganに 向かった。
 米国や西側各国は今までにも演習のため同国入りをしたことがあるが、恒久駐留はこれが初めてである。 (MT 01/12)

 米陸軍が、ロシアとの国境から100哩ほど離れたポーランド東部に大隊戦闘団規模の部隊派遣を準備している。 これはNATOの前方推進配備(EFP)計画によるもので 、在欧米陸軍から第2騎兵連隊第2大隊の1,000名とルーマニア軍と英軍併せて350名が参加し、ポーランド国内では同国陸軍第15機械化旅団と行動を共にする。
 米騎兵大隊は兵員輸送車、自走迫撃砲車、救急車など各種Stryker装甲車、ルーマニアからは防空砲兵、野戦砲兵、憲兵中隊が、英国からは偵察中隊が参加する。 (S&S 02/24)

 在欧米陸軍第2騎兵連隊第2大隊が3月25日、ドイツのRose兵営からポーランド北部のOrzyszを目指して530哩の車両更新を開始した。
 大隊はここに半年間駐留する。(S&S 03/25)

 ロシアの脅威に対抗してNATOは、米国のERI計画を背景にウクライナを含む東欧における訓練施設の強化を図っている。
 米陸軍予備役及び州兵で構成された第926工兵旅団が、ルーマニア軍、英軍、ポーランド軍と、2016年10月からルーマニアのCincuで行っている"Resolute Castle 2017"演習では、訓練施設の改良と工事を通じた練度向上を目指している。
 7月14日時点でこの訓練には342名の米兵と、78名のルーマニア陸軍、148名の英軍兵士が参加していた。 (DN 07/14)

 在欧米陸軍が主導する"Saber Guardian"演習が、25ヵ国、25,000名が参加して2週間の予定でルーマニア、ブルガリア、ハンガリーを舞台に開始された。 (S&S 07/15)

 バルト諸国とポーランドにNATOが展開した部隊とは別に、米陸軍第1歩兵師団第2機甲旅団戦闘団が9月13日にポーランドのグダニスク港に上陸した。
 これは米陸軍が東欧に向け派遣する2個機甲旅団の一部である。(S&S 09/13)

米海兵隊のノルウェー配置

 ノルウェー国防省が6月21日、米海兵隊のローテーション配置が2018年まで延長されると発表した。
 2017年1月に同国軍との訓練のため派遣された330名の海兵隊は2017年末に撤収するが、代わって新たな部隊が2018年末まで派遣されるという。 (S&S 06/21)
【註】 :  ノルウェーはNATOに1949年の発足時から加盟したが、当時から外国軍駐留を禁じる政策を取ってきていた。

火力旅団の派遣

 在欧米陸軍司令官が6月20日、ロシアの脅威に対抗するため、2個MLRS大隊と1個 SHORAD大隊からなる火力旅団が2018年に欧州へ派遣されることを明らかにした。
 特にSHORAD大隊の派遣には州兵のAvenger中隊が欧州に派遣されることを意味する。(JDW 06/28)

Patriot のリトアニア入り

 米陸軍のPatriot複数中隊が7月10日、多国間防空演習"Exercise Tobruq Legacy 2017"に参加するため初めてリトアニアに入った。 演習は500名の兵員と30基の各 種防空システムが参加して7月22日まで行われる。
 リトアニアはロシアからの脅威に警戒を強めており、特にロシアがNATOとの国境近くに100,000名を集めて行う"Zapad 2017"演習に懸念を示している。 (S&S 07/10)

(イ) 在欧米陸軍の改組

 在欧米陸軍司令官が6月20日、ロシアの脅威に対抗するため編組の再検討を行っており、複数のモジュラー型旅団戦闘団(BCT)の増強が検討されていると述べた。 (JDW 06/28)
(ウ) F-35A の欧州展開

 米空軍が4月15日にF-35Aを初めて海外展開した。 英空軍Lakenhealth基地にこの日に到着したのは、ユタ州Hill AFBを基地としている第388戦闘機航空団第34戦闘 機飛行隊と、空軍予備第419戦闘機航空団第466戦闘機飛行隊からの6機である。(JDW 04/26)

 エストニアのメディアによると、米空軍のF-35A複数機が4月25日にエストニアのAmari航空基地に飛来し、連合国との共同訓練のため数週間駐留する。
 ユタ州Hill AFBを基地とする米空軍第34戦闘機飛行隊及び州兵空軍第466戦闘機飛行隊からのF-35A 8機は、4月15日から英Lakeheath基地に展開している。 (DN 04/24)

(エ) 陸軍航空部隊の欧州派遣

 米陸軍Ft. Bliss当局が1月17日、Ft. Bliss駐屯の戦闘航空旅団に所属する第501飛行連隊第1大隊(1-501st)の400名とAH-64 Apache 24機が、2月から9ヶ月間欧州に 派遣されると発表した。
 同旅団からは現在、3-501stから300名、2-501stから90名が欧州に派遣されているが、これら部隊の帰還は3月に開始される。 (S&S 01/18)

 ドイツの通信社が2月12日、Chinook、Aapache、Black Hawkなどの米陸軍ヘリ94機がBremerhaven港に陸揚げされたと報じた。
 これらヘリの大半はバイエルン地方Illesheim市近郊の基地に搬送されるが、一部はリトアニアとルーマニアに送られるという。 (S&S 02/12)

(オ) バルト諸国への PAC-3 配備の可能性

 マティス米国防長官が訪問先のリトアニアで5月10日、ロシアによるカリーニングラードへのIskander配備などの動きを地域を不安定化させると批判した。
 これに関連してロイタ通信などは米当局者の話として、バルト諸国にPAC-3が一時配備される可能性があると報じた。 (時事 05/11)
(カ) 陸上演習の実施

 東欧に巡回配置される米陸軍第4歩兵師団第3機甲旅団戦闘団が1月6日、ドイツのBremerhavenに上陸した。
 同旅団の車両2,800両はポーランドのDrawsko Pomorskie及びZagan演習場に向け、鉄道、民間輸送手段又は自走により輸送される。 (JDW 01/18)

 米陸軍第66機甲連隊第1大隊のM1 Abrams戦車が、訓練のため初めてポーランドからドイツのGrafenwoehr演習場に到着した。
 この部隊は1月上旬に9ヶ月間の交代配備で欧州に派遣されていた。(S&S 01/27)

 在欧米陸軍の第3機甲旅団戦闘団が来たる任務に備えてウクライナ軍及びルーマニア軍と実弾射撃演習を行った。
 演習ではRQ-7 Shadow UAVが上空を旋回するなか、M109 Paladin SPHが M1 Abrams MBTの支援射撃を実施した。 (S&S 04/10)

 コロラド州Ft. Carsonに駐屯している米陸軍第4歩兵師団第2歩兵BCT所属の第12歩兵連隊第2大隊が、緊急展開訓練として数日かけてドイツにある米空軍基地の2ヶ 所に飛来している。
 今後、陸軍事前集積装備を取得装備し、バイエルン州東部にあるGrafenwoehr演習場で1ヶ月間に及ぶ演習を実施する。 (S&S 05/17)
 リトアニアに駐留するドイツ軍主力でベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー軍からなる eFP戦闘群を指揮する独陸軍第122機械化歩兵大隊長のフーバー独陸軍中佐が6月20日、'Iron Wolf 2017'演習 に備え戦闘可能状態になったことを明らかにした。 このeFPはLeopard 2A6 MBT、Marder 1A3 IFVなどを装備している。  'Iron Wolf 2017'演習は'Saber Strike'演習の一部をなすもので、ポーランド駐留の米eFP大隊と共に、 初めて2個eFPが参加して行われる。 (JDW 06/28)

(キ) ロシア軍大規模演習への対応

 在欧米陸軍司令官のホッジ中将が6月16日、ロシアが9月に行う大規模演習Zapadの間、米陸軍は3個空挺部隊、併せて600名をバルト諸国に駐留させると述べた。 (JDW 06/28)

 リトアニア大統領が7月31日に、ロシアが行う"Zapad"演習の実施間に米空軍がリトアニアに駐留するF-15Cの数を4機から7機に増強すると述べた直後からロシア の挑発が増大している。(JDW 08/16)

 西側外交筋によると、ロシアが9月14~20日に100,000名以上を投入して行った"Zapad 2017" 演習を監視していた西側は、ロシア軍の戦術や戦略について多くのも のを学び取った。(JDW 10/04)

 在欧米陸軍司令官のホッジ中将が米陸軍協会(AUSA)の年次コンファレンスで、ロシアが9月に実施した大規模年次演習"Zapad 2017"の際して、NATOのeFPが行った バルト三国、ポーランドなど欧州東翼への展開で自信を深めたことを明らかにした。(DN 10/10)

ケ. トルコの欧米との離反

トルコ独裁国家化への懸念

 ドイツなど欧州で、トルコの閣僚らが出席予定の集会の開催が拒否されるケースが相次いでいる。
 トルコでは4月16日に大統領権限を強化する憲法改正案の是非を問う国民投票が行われるが、欧州での集会は欧州に暮らすトルコ人に在外投票と改憲への賛意を呼び かけるのが目的であるが、3月に入りドイツではケルンやハンブルクなどで企画された集会が、地元当局の要請で中止となった。
 集会禁止はドイツ以外の国にも広がり、スイスのチューリヒ、オーストリアのリンツでも取りやめとなった。 オーストリアのケルン首相は、EU域内でトルコの政 治家が出席する会合を禁じるべきだと訴える。
 これに対しエルドアン大統領は、こうした対応をナチス時代と変わらない行為と批判している。(産経 03/12)

 オランダ政府が3月11日、トルコのチャブシオール外相らの入国を拒否した。 オランダ当局は11日に同外相の乗った航空機の着陸を許可しなかった。
 外相はロッテルダムで予定されていたトルコ系住民による政治集会に参加する予定だったが、集会は中止された。
 エルドアン大統領はオランダ側をファシストと激しく非難しているのに対しオランダのルッテ首相もばかげた発言だと応酬し対立が激しくなっている。 (日経 03/12)

トルコの反発

 トルコ国営TV VRTによると、オランダ政府が駐トルコ・オランダ大使代理を召喚しトルコ外相の入国を拒否したことに対し、トルコ外務省が3月13日に正式に抗議 した。
 エルドアン大統領は11日にオランダ政府に対し、ファシストのように振る舞っていると非難し、EUへの対決姿勢を強調している。 (毎日 03/14)

 独フンケ・メディアグループが3月15日、ドイツのペーター・アルトマイヤー官房長官がトルコの国民投票を巡り、同国政治家の入国を禁止する可能性を排除しない 考えを示したと報じた。
 トルコの閣僚は4月に実施される大統領の権限強化のため国民投票で賛成票を集めるため、トルコ系住民の暮らす欧州各国で集会を計画しているが、ドイツが治安へ の懸念から複数の集会開催を禁止したことから対立が激化している。(ロイタ 03/15)

ドイツとの対立

 NATOの南北両翼を担うノルウェーとトルコが、トルコが数十名の将校をクーデター未遂事件の容疑者として召還しようとし、その内の4名がノルウェーに亡命を申 し入れ、3月に受け入れられたことで外交関係が悪化している。
 トルコではクーデター未遂事件後、160名の将官を含む7,000名の将校が逮捕されている。(S&S 04/08)

 欧州安保協力機構(OSCE)などで構成する国際投票監視団が4月17日、トルコで実施された大統領権限の強化を目指す憲法改正の是非を問う国民投票について、投票 は不公平な状況下で行われ、欧州評議会の基準は満たしていなかったとの見解を示した。
 エルドアン大統領は前日、国民投票は賛成多数となったと勝利宣言し、欧州の投票監視団の見解は西側諸国の「十字軍的な精神」に基づいていると批判し、EU加 盟に向けた協議が破談になったとしてもとトルコにとり重要ではないと述べた。(ロイタ 04/18)

 ドイツのガブリエル外相が6月29日、7月上旬の20ヵ国地域(G20)首脳会合のためドイツを訪れるトルコのエルドアン大統領がドイツ国内で計画しているトルコ系住民 向けの集会の開催を認めない考えを表明した。 ガブリエル外相の発言にエルドアン氏が反発するのは必至である。
 エルドアン政権は2016年7月のクーデター未遂事件後、軍人や公務員らの粛清を強化しているのに対しドイツ政府は強権的政治を懸念すると同時に、トルコ国内の対 立がドイツのトルコ人社会に持ち込まれることを警戒している。(日経 06/29)

 ドイツとトルコの当局者と業界関係者は、両国関係の悪化は一時的なもので、ドイツで議会選挙が行われる9月には沈静化すると見ている。 また両国関係の悪化 は防衛装備の取引には影響しないと見ている。
 ドイツのトルコへの輸出額€84M ($99M)のうち、現在、宇宙航空と防衛関係が€58M ($68.5M)を占めている。 (DN 07/31)

 トルコのエルドアン大統領がトルコ系ドイツ人に対し8月18日、9月に行われるドイツ総選挙でトルコの敵を支持するなと呼び掛けた。
 エルドアン大統領はメルケル首相の与党など主要政党を支持しないよう求めており、露骨な内政干渉として独側の反発を呼びそうである。
 ドイツには労働移民やその子孫にあたる世界最大300万人のトルコ人社会が存在しており、両国は二重国籍を認めている。 (日経 08/19)

 ドイツのメルケル首相らがトルコのEU加盟交渉を打ち切る発言を行っているに対し、トルコの大統領府報道官が9月4日、トルコとエルドアン大統領を攻撃し根本 的で喫緊の問題を無視するのは、欧州の視野の狭さを反映していると批判した。 外務省も4日に発表した声明でドイツでの大衆迎合的な選挙運動が2国間関係を損 なってはならないと強調した。
 トルコの英字紙によると、トルコのEU担当相が7、8日にエストニアで開かれる非公式のEU外相会合に出席し、トルコを選挙戦の材料に使っていると非難するとみ られる。(毎日 09/06)

米国のビザ発給制限

 トルコは、2016年7月に起きたクーデター未遂はイスラム組織のギュレン教団が計画したと断定し、米国に滞在するギュレン師の引き渡しを求めていて、9月には イスタンブールの米総領事館勤務のトルコ人職員を教団とつながりがあったとして拘束した。
 これを受け駐トルコ米大使館は8日、トルコ国民に対するビザの発給業務を停止すると発表した。
 一方、トルコ政府も米国民に対し同様の措置を取ると明らかにし、貿易や留学などに影響が出ると見られてい る。 (NHK 10/09)
【註】 :  米国は8日に、トルコに対し非移民ビザ(Nonimmigrant Visa)の発給を停止している。

 AFP通信などが、米国とトルコは相互に停止していたビザ発給業務を限定的に再開したことを明らかにしたと報じた。
 トルコで起きたクーデタ未遂事件に関連した捜査で、在イスタンブール米総領事館のトルコ人職員が拘束されたことに反発し、両国は10月に相互にビザ発給を停 止していた。(日経 11/07)

ロシアへの接近

 トルコのエルドアン大統領が7月25日、ロシアのS-400を購入する方向でロシアと合意したと発表した。 NATOの加盟国トルコのロシア接近は、シリアの内戦の行方 など中東情勢にも影響を与えそうである。
 ロシアとしてはトルコに軍事的に接近することで、サイバ攻撃をめぐる問題などで対露制裁を強化する動きを見せる米国を揺さぶる狙いもあるものと見られる。
 トルコはNATOが対ISIS作戦に使用しているトルコ国内の基地をドイツの議員団が訪問するのを認めないなど、NATO内で孤立を深めており、7月25日のEUとの協議で もテロ対策や難民などの問題をめぐって関係改善の兆しは見えていない。(NHK 07/26)

 トルコを訪問したプーチン露大統領がエルドアン大統領と9月28日に首脳会談を行い、シリアの内戦を巡って一時は対立していた両国が内戦の終結に向けてさらに 関係を強化していく姿勢を強調した。
 ロシアとトルコは2015年11月のトルコ軍によるロシア軍機の撃墜で関係が悪化していたが、最近では経済関係も撃墜の前の水準まで回復するなど結びつきを強め ており、シリア内戦ではアサド政権を支援するロシアと反政府勢力を支援するトルコは、5月に停戦の徹底に向けて「非戦闘地域」を設けることで合意している。 (NHK 09/29)

S-400の導入を決めたことによるNATOとの対立

 プーチン大統領が6月1日、トルコとS-400の売却交渉を進めていると発言した。
 トルコのT-LORAMIDS計画は2013年に一旦、$4Bで中国機種に決まったが2015年11月にキャンセルになり、SAMP/TやPatriotと再検討が行われていた。 (JDW 06/14)

 エルドアン大統領が7月25日、トルコがロシアとS-400の売買に同意し署名したことを明らかにした。 大統領は、NATOの一員であるギリシャも何年も前からS-300 を装備していると、ロシア製兵器導入の妥当性を主張した。
 トルコ政府当局者はかつて、まず2個大隊分を輸入し、その後更に2個大隊分をトルコ国内で生産する計画である。 (JDW 08/02)

 トルコの国営Anadolu通信が9月20日にロシアから購入するS-400の写真を報じ、その中でS-400はB-52、B-1、F-15、F-16、F-22やその他の米軍機を撃墜できると強調 した。
 米国とトルコの関係は、米国が5月にシリアでISISと戦うクルド軍に武器を供与して以来悪化している。 (MT 09/20)

 トルコがS-400の導入を決めたことについてNATO軍事委員会委員長のPavel将軍が10月25日、全ての加盟国は国防について独自の決定権を行うことができるがその 結果については責任を持つべきで、S-400を装備するトルコはNATOの防空網に加入することやその他の技術的統制に入ることもできなくなると警告した。 (DN 10/25)

 トルコのジャニクリ国防相がS-400の購入を完了したと明らかにしたうえで、独自のBMDS構築に向け、欧州の企業連合の協力を受けることも検討していると述 た。 ただNATOの上級司令官は先週ロイタに対し、S-400はまだトルコに搬入されていないと述べていた。
 NATO加盟国であるトルコがロシアからS-400を購入したことについて、NATOを軽視した行為だとして一部の加盟国は批判的な見方をしており、S-400がNATOのシス テムに組み入れ不可能であることについても懸念がある。(ロイタ 11/13)

 駐NATO米大使が11月17日、トルコがS-400を購入することになれば米国はトルコに制裁を科すことになるとと述べた。
 また更に、トルコはこのことを承知しているとも述べた。(DN 11/18)

 トルコの防衛調達当局SSMが12月29日、ロシアとS-400購入契約を締結したと発表した。 購入したのは1個システムで、更に1個システムがオプションされている。  S-400ではトルコが開発したIFFが使用される。
 エルドアン大統領は25日に、代金はロシアからのルーブルの借款で賄われることを明らかにしている。 大統領は10月に、トルコがS-500についても関心を持って いることを明らかにしている。(DN 12/29)

NATO軍の演習からトルコ兵を引き揚げ

 トルコのメディアによると、エルドアン大統領が11月17日、ノルウェーでのNATO軍の演習からトルコ兵40名を引き揚げたことを明らかにした。
 演習に使われた掲示物で、トルコ建国の父アタチュルク初代大統領の写真とエルドアン大統領の名前が「敵一覧」の中に使われていたことが理由という。
 これを受けて、ストルテンベルグNATO事務総長は声明で、「気分を損ねさせてしまったことを謝罪する。 個人の行動の結果でありNATOの見解を示すものではな い」と弁明し、「トルコは大事な同盟国だ」と強調した。(時事 11/18)

(9) その他の紛争/紛争潜在地域

ア. アフガニスタン

 米中央軍司令官が下院軍事委員会の公聴会で3月29日に証言し、ロシアがアフガニスタンでタリバンに軍事支援を行っているとの見方を明らかにした。
 ロシアはタリバンを「テロ組織」とみなし、かつては旧タリバン政権の対立勢力である北部同盟を支援してきたが、ISISがアフガンや中央アジアで影響力を拡大さ せ、ロシアの勢力圏への浸透を図っていることに警戒を強め、イランとともに2015年ごろからタリバンへの接近姿勢を強めている。
 トランプ政権は16年目を迎えたアフガンでの対テロ戦争の戦略練り直しを進めており、ロシアによるアフガン情勢への介入強化は米露の新たな対立要因となり得る。 (産経 03/30)

 AP通信が米当局者の話として6月15日、国防総省がアフガニスタンに米軍4,000名を増派する方針を固めたと報じた。
 増派が決まればトランプ政権下では最大規模の派兵となる。 週明けにマティス国防長官が発表する。
 今年2月の米上院軍事委員会でアフガン派遣司令官が数千名規模の派兵が必要と訴えた。 国防長官も米上院で6月、アフガンは危険な状態が続いており、テロ組 織を倒す必要があると発言していた。
 米軍は現在8,400名を派兵しているが、テロが頻発するなど治安悪化に歯止めがかからない。 (毎日 06/16)

 トランプ米大統領が8月21日夜、バージニア州Ft. Myer陸軍駐屯地で国民向けに演説し、治安が悪化するアフガニスタンに関する新戦略を発表した。
 新戦略はアフガニスタンへの追加派遣に道を開くもので、大統領は性急な米軍の撤収によりイラクの二の舞となってはならないと主張した。
 大統領は派遣規模について明らかにしなかったが、米メディアによれば、マティス国防長官は近く4,000名規模の増派を計画しているという。 (産経 08/22)

 マティス米国防長官が9月19日、トランプ大統領の戦略に基づき3,000名以上の米軍をアフガニスタンへ追加派遣するとこを明らかにした。 (JDW 09/27)

イ. イスラエルとその周辺

(ア) イスラエルの軍備増強

a. ミサイル防衛網の確立

Arrow-3 の IOC 宣言

 イスラエル空軍が1月18日、Arrow-3のIOCを宣言した。
 Arrow-3はArrow-2の半分の重量で、二倍の高度まで達することができる。(DN 01/18)

シリアの SA-5 を Arrow 2 で撃墜

 イスラエル空軍高官が3月20日、Arrowが17日にシリアのSAMであるSA-5を撃墜したことを明らかにした。 Arrowが実際にSA-5撃墜は初めてである。
 SA-5はシリアを爆撃したイスラエル機に対し発射されたが、イスラエル側ではBMかSAMかの判定がつかないことから、その弾道、高度などがScudと同じであったた めArrowで撃墜したという。(DN 03/20)

David's Sling Weapon System

 イスラエルMDOと米MDAが合同で、5回目となるDSWSの一連の迎撃試験DST-5をイスラエルの試験場で成功裏に完了した。
 試験では実際的で進化した目標の迎撃を行った。(MDA HP 01/25)

 イスラエル空軍高官が3月20日、David's Slingが4月上旬にoperationalになると述べた。
 David's Slingの就役によりイスラエルでは多層BMDSが完成することになる。(DN 03/20)

Iron Dome

 イスラエルの洋上ガス田に対する脅威が、ロシア製 YakhontやUAV、イラン製誘導ロケット弾などと増大するのに伴い、イスラエル海軍はSaar 4.5 Hetz級コルベット 艦に次ぐ Saar 5級を装備しており、更にSaar 6級4隻も2019年から装備する。

・ELM-2258 ALPHAレーダ及びBarak 1/8

 Saar 4.5級全10隻とSaar 5級の最初の2隻に装備

・ELM-2248 MF-STARレーダ及びC-Domeの装備

 Saar 5級の一部ととSaar 6級に装備。 Saar 4.5級には搭載不能。

 C-DomeはIron Domeの艦載型で、2016年にSaar 5級3番艦Lahavのヘリ甲板からの発射試験に成功している。 (JDW 06/07)

C-Dome

 イスラエルが11月27日、Iron DomeをSa'sr-5級コルベット艦に搭載した18ヶ月に及ぶ試験を完了した。 イスラエルは現在ドイツで建造中のSa'ar-6級コルベット 艦に計画の二倍数を装備する。
 艦載したIron DomeはC-Domeと呼ばれ、低空域目標のみならずP-800 Yakhont超音速ASCMにも対処するという。
 Iron Domeは2011年以来1,700発以上の迎撃に成功している。(DN 11/27)

米軍基地の開設

 イスラエルと米国が9月18日、イスラエル国内に初の米軍基地を開設した式典を行った。 この基地はイスラエルのBMDを補強するもので、数十名の米部隊が駐留する。 (S&S 09/18)
【註】 :  イスラエルには既に米陸軍がAN/TPY-2レーダを展開させており、今回の基地開設は形式的なものではないか。

 イスラエル軍か9月18日、イスラエル国内初の恒久的な米軍施設が同国南部に開設されたと発表した。
 在欧米陸軍広報官によると、この施設はCamp Bislaに隣接する要域防空学校内に開設されたが米軍基地ではなく、在欧米軍第13 BMD大隊から数十名が派遣されるとい う。(JDW 09/27)

b. 海上警備の強化

 イスラエル海軍がアカバ湾の安全保障強化のためエイラートに基地を置く第915艇隊にSuper Dvora Mk 1b高速艇を配備する。
 イスラエルの沿岸防備は従来ガザ周辺やレバノン国境付近が中心であった。(JDW 01/11)
【註】 :  Super Dvora哨戒艇にはMk Ⅰ~Ⅲがあり、基準排水量38t、満載排水量45tのMk Ⅰは1988年から就役している最も旧型である。
 因みにイスラエル海軍は台湾やスリランカも装備しているMk Ⅰを9隻、1996年就役のMk Ⅱを4隻、2004年就役のMk Ⅲを8隻保有している。
(イ) 周辺との関係

a. イランとの対立

 来日中のイスラエルのカッツ諜報相がロイタとのインタビューで10月26日、イランの核保有を阻止するために必要であれば軍事力の行使も辞さない考えを示した。
 同相は、トランプ米大統領が主導する国際的な努力がイランの核能力保有を止められないならば、イスラエルは単独で軍事行動を起こすとしたうえで、イランが 核を保有できないよう核合意を見直すことは可能だと述べた。(ロイタ 10/26)
b. ヒズボラとの係争

 アルジャジーラなどによると、イスラエル軍が4月27日未明にダマスカスの空港近くをミサイル攻撃し、レバノンのヒズボラ武器庫を破壊した。 武器庫や燃料 タンクが炎上したが、人的な被害はないという。
 現場は空港から25km南西の道路沿いで、ミサイルは5発撃ち込まれた。(毎日 04/27)

 イスラエル軍機がシリアの兵器工場を空爆した模様である。 シリア軍によると現地時間で9月7日02:42にイ スラエル機がレバノン上空からシリアHamah県Masyaf 近郊の軍事施設に対して数発を撃ち込んだ。
 しかしながらMasyafには7月6日にイスラエル製Heron UAVを撃墜したロシア軍のPantsyr-S1が少なくとも1両はいたはずである。 (JDW 09/13)

 イスラエル軍によると12月29日、パレスチナ自治区ガザからイスラエルに向けてロケット弾が少なくとも3発発射されたが、うち2発をIron Dome撃墜し残りの1発は イスラエル南部に着弾し建物に被害が出た。
 イスラエル軍はガザのハマス関連施設に戦車などで報復攻撃を実施した。 負傷者は確認されていない。 (日経 12/29)

c. シリアとの係争

6月25日のシリア空爆

 イスラエルがゴラン高原をシリアから砲撃された数日後の6月25日、シリア軍に対し一連の攻撃の2日目を行った。 目標となったのはシリア軍の砲兵陣地2ヵ所と 弾薬輸送車1両であった。
 これとは別にシリア政府軍を支援しているヒズボラの輸送車列に対して空爆を行った模様である。 (S&S 06/25)

9月のシリア空爆

 シリア軍が、イスラエルの戦闘機がシリア西部で地中海近くの都市Masyafを空爆しシリア兵2名が死亡したと発表した。 シリア軍によるとイスラエル機はレバ ノン上空からミサイルで攻撃したという。
 報道によるとMasyafにはシリア軍の化学兵器関連施設があるという。(S&S 09/07)

10月16日にシリアがSAM を発射

 イスラエル国防省が10月16日、レバノン上空を飛行するイスラエル軍戦闘機に対しシリアがSA-5 (S-200)長距離SAM 1発を発射したと発表した。
 イスラエル機に被害はなく、イスラエル機はSAMを発射したダマスカスから50km離れた中隊に対し報復攻撃を行ったという。
 これに対しシリア国営のSANA通信は、同日08:51にレバノンのBaalbek近くで同国防空部隊が空域を侵犯したイスラエル機に命中させたと報じた。 (360 10/18)

 イスラエル国防省が10月16日、レバノン上空を飛行するイスラエル軍戦闘機に対しシリアがSA-5 (S-200)長距離SAM 1発を発射したと発表した。
 イスラエル機に被害はなく、イスラエル機はSAMを発射したダマスカスから50km離れた中隊に対し報復攻撃を行ったという。
 これに対しシリア国営のSANA通信は、同日08:51にレバノンのBaalbek近くで同国防空部隊が空域を侵犯したイスラエル機に命中させたと報じた。
 一方レバノン軍は、イスラエルの航空機2機が08:40に南部海岸のAl-Naqueahから領空内に侵入し、35分後にTripoli近くで領空から抜けたと発表したが、撃墜の 有無については明らかにしていない。(JDW 10/25)

d. サウジアラビアへの連帯呼びかけ

 イスラエル参謀総長が、サウジアラビアのメディアとのインタビューに応じた記事が11月16日にインター ネット上に掲載された。
 この中で参謀総長は、サウジアラビアはイランに対抗するという目的を共有しておれり、イスラエルは経験や情報を共有する用意があると述べて、サウジアラビ アに向けて異例とも言える連帯を呼びかけた。
 また14日には、レバノンの新聞がサウジアラビア政府内部の機密文書を入手した内容として、サウジアラビアとイスラエルは協力してイランの脅威に対抗し、経 済制裁を強化するようアメリカなどに働きかけることで一致していると報じている。(NHK 11/17)
(イ) エルサレムの帰属問題

 トランプ米大統領が12月6日、エルサレムをイスラエルの首都と認定すると宣言し、商都テルアビブにある米大使館移転を指示した。 ただ、実際に大使館が移転す るには数年かかる(米当局者)とみられ、当面はテルアビブにとどまるとみられる。
 New York Times紙は今回の決定について、外交的な計算でなく公約によって突き動かされたと指摘している。 (時事 12/06)
ウ. ナゴルノ・カラバフ

小競り合いの発生

 アゼルバイジャン国防省が2月27日、アルメニア人勢力が実効支配するアゼルバイジャンのナゴルノカラバフ自治州で25日未明に武力衝突が起き、アゼルバイジャン 兵5名が死亡したと発表した。
 アゼルバイジャンはアルメニア側が攻撃したと批判したのに対し、ロイタ通信によるとアルメニア側はアゼルバイジャン軍が侵入してきたと応酬した。 (産経 02/27)

アゼルバイジャンがロシアから武器購入

 アゼルバイジャン国防省が6月24日に公表した映像を見ると、少なくとも12両の9K123-1 Khrizantema-S ATGM搭載車がロシアから引き渡されている。
 同国は15両以上を2018年末までに受領する。  これは2009~2010年に$5Bで行われた契約によるので、4月25日に40両のBTR-82A APCが納入されたのに次ぐ今年二番目の納入になる。 (JDW 07/05)

アゼルバイジャンがチェコから武器購入

 アゼルバイジャンが9月18日に、人員15,000名、装甲車両150両、火砲120門が参加した5日間にわたる演習を開始した。
 この演習にはチェコで設計されたDana 152mm SPH、RM-70 Vampir 122mm 40連装MRLも参加した。 演習を報じた映像には少なくとも9両のDana SPHと8両のRM-70 Vampir MRLが写っていた。 現地メディアによるとこれら2機種は2016年に購入したもので、初めての演習参加であるという。
 同国陸軍には複数のRM-70 Vampir中隊があったが2010年に全て退役している。 Czechoslovak Groupは2015年2月に改良型のRM-70 Vampirを公表していた。 (JDW 09/27)

エ. 北極圏

(ア) ロシアの軍備強化

 ロシア軍が初めて、東シベリアの海岸からNew Siberian諸島のKotelny島までの車両縦隊による探査を行った。
 低圧タイヤを装着したTrekol路外装輪車のほか、DT-10PM及びDT-30PM装軌車からなる縦隊は2月20日に出発し、Laptev海の氷上を1,140km走破した。 (JDW 03/22)

 ロシアのTVが4月5日、5月9日に行われるロシアの戦勝記念日パレードの予行を報じた中で、北極圏での作戦に適合させるためDT-30トラックに搭載したPantsyr-S1と Tor-M2が公表された。(JDW 04/19)

(イ) 北欧諸国の対応

ノルウェー

 ノルウェー国防相が10月12日、国防予算をNOK3B ($378M)増額し、北極圏の防衛を強化する。  Finnmark県ではロシアとの国境から5kmのSør-Varangerに軽対空火器や対装甲火器を装備した北極レンジャー中隊200名を配置するほか、ロシア国境から200kmの Porsangerに400名規模の機甲大隊を配置する。 また同県にある地域防衛隊(Home Guard)を強化し、正規軍部隊と同一位置に配置する。
 更にTroms県のSkjoldに駐屯する主として実働予備役で構成された第2歩兵大隊を機械化大隊に改編し、急速動員部隊とする。 (JDW 10/25)

(ウ) 米国の対応

砕氷艦建造の動き

 米議会下院軍事委員会の沿岸警備海上輸送小委員会座長のHunter議員が2月21日、トランプ大統領宛に北極海警備のため沿岸警備隊に砕氷艦6隻を装備する要望書を 送った。 同議員はオバマ大統領にも同趣旨の要望をしていたが受け入れられなかった。
 同議員は17日に、マティス国防長官に対して同じ書簡を送っている。(DN 02/22)

 米議会が6月28日、海軍に対し北極海での航行の自由作戦(FONOP)を遂行するため、NDSF費による砕氷艦の建造または既存艦船の耐氷能力強化を盛り込んだ2018国 防権限法を採択した。(JDW 07/05)

オ. 黄 海

(ア) 黄海における中韓の紛争

 特筆すべき記事はなかった。
(イ) 韓国の軍備強化

 聯合ニュースが3月14日、韓国国民安全処海洋警備安全本部が仁川市甕津郡にある延坪島、大青島、白ニョン島などの西海5島の海域で密漁する中国漁船の常時監 視と取り締まりに専従する「西海5島特別警備団」が4月4日に発足するとと報じた。
 特別警備団は警察官400名、艦艇9隻、高速防弾艇3隻で構成され、海洋警察特殊部隊出身の精鋭からなる特殊鎮圧隊を延坪島と大青島に常駐させる。
 また23日に海軍と合同訓練を行い、海軍や海洋水産部など関連当局との情報共有や合同取り締まりを強化する。 (RC 03/15)
(ウ) 中国の軍備強化

北海艦隊の強化

 中国海軍Type 052D駆逐艦の5番艦が1月22日に就役し北海艦隊に配属された。 今までに就役した4隻は全て南海艦隊に配属されている。
 7,500tのType 052Dは32セルのVLS を2基装備し、HHQ-9A長距離SAMを発射できる。
 北海艦隊は現在、以下の駆逐艦を装備している。(JDW 02/01)

・Type 052 × 2隻
・Type 051C× 2隻
・Type 051 × 2隻(旧式)
対米韓示威行動

 中国国防省が5月10日、韓国のTHAAD配備に不快感を示す中国が朝鮮半島に近い渤海湾で新方式ミサイルの発射試験に成功したと発表した。
 ミサイルの型やその他詳細は明らかにしなかったが、香港のPhoenix TVのコメンテータはおそらくDF-26 ASBMであろうと述べている。 (S&S 05/10)

 中国軍機関紙の解放軍報が8月8日、黄海と渤海で7日に海軍と空軍が数十隻の艦艇、潜水艦、10機以上の航空機による大規模な演習を行ったと報じた。
 演習では数十発のミサイルの発射や上陸作戦の訓練も行われ、習近平指導部が進める統合運用能力の向上を誇示した。
 習指導部による軍改革後、黄海と渤海で同時に実弾演習を行うのは初めてで、海軍の沈金竜司令官らが参加した。 (時事 08/08)

カ. 北アフリカ

米国の後退、ロシアの拡大

 ロシアが東地中海沿岸諸国との関係強化に動いている。 シリア内戦ではアサド政権を支援しながらトルコとも連携し、エジプトでは軍事面などの交流を活発化さ せて、内戦状態が続くリビアへの関与も深めつつあり、アラブの春以降の混乱期に存在感を低下させた米国に代わり、東地中海で影響力を強めている。
 ロシアはシリアでアサド政権を支援するために軍事介入し、内戦前から持つ西部タルトスの海軍基地に加えて、新たに北西部ラタキア近郊にも軍事基地を整備した。
 さらにエジプトとも2016年6月と10月に海上と陸上で相次いで合同軍事演習を実施し、エジプト初の原発建設計画を支援するなど関係強化を進める。 (毎日 01/14)

サハラ砂漠周辺5ヵ国が対テロ合同部隊創設

 国土にサハラ砂漠を含むブルキナファソ、チャド、マリ、モーリタニア、ニジェールの5ヵ国首脳(G5)がマリの首都バマコで2月6日、イスラム過激派のテロに対抗す るため合同部隊を創設することで合意した。
 ニジェールのイスフ大統領は、テロとの戦いを進めるにはG5軍を創設するしかないと決意するに至ったと述べた。 (時事 02/07)

ロシア軍特殊部隊がエジプト西部に展開

 米当局者が3月14日、ロシア軍特殊部隊がリビア国境に近いエジプト西部の空軍基地に展開したもようだと明らかにした。 2011年から続くリビア内戦に、旧カダ フィ政権友好国のロシアが極秘介入している可能性がある。
 内戦では、カダフィ時代の軍将校で東部の実力者であるハフタル氏の部隊が2016年9月に石油輸出港を次々と制圧し、これにより国連が支援する統一政府に対する影 響力を確保した。
 3月に入って主要な石油輸出港の支配権を失い劣勢に転じていたが、ハフタル氏の部隊は14日になって奪還したと宣言した。 (時事 03/15)

エジプト軍のリビア東部空爆

 エジプト軍が5月26日、リビアの東部デルナにある過激派の拠点を空爆した。 カイロ南方のミニヤで同日起きたキリスト教の一派、コプト教徒を狙ったテロ事 件に絡み、実行犯がこの拠点で計画の準備や訓練を受けていたため攻撃したという。
 シシ大統領は、エジプトの安全に脅威となる拠点への空爆をためらわないと述べ、対テロ強硬姿勢を貫く意向を強調した。 (時事 05/27)

カタール問題の余波:ジブチ、エリトリア緊張の再燃

 ジブチとエリトリア間の係争地には、これまでカタール軍が駐留し衝突を防いできたが、サウジアラビア主導で6月5日に始まったカタールを孤立させる中東の騒 ぎにより、他国の仲介どころではなくなったカタールが14日に撤退を発表し、エリトリア軍が即座に係争地を占領してしまった。
 これを受けてアフリカ連合(AU)は17日、ジブチ・エリトリアの両国に対し自制を呼び掛けた。(時事 06/17)

キ. パキスタン vs イラン

 パキスタン外務省が6月21日、同国空軍が19日にパキスタン領内3~4kmに侵入したイランのUAVを撃墜したことを認めた。
 これは同国のメディアが、イランのUAVが5月27日以来2度にわたりパキスタン領空に侵入して迫撃砲弾を投下し1名が殺害されたため、パキスタン軍が撃墜したと 報じたのを追認したものである。(JDW 06/28)
ク.中 南 米

ベネズエラ

 ベネズエラのマドゥロ大統領が8月15日までに、民間人も参加する大規模軍事演習を月末に実施すると発表した。 トランプ米大統領が11日に軍事介入の可能性を 示唆したことに対抗したもので、領土の防衛体制を整えると宣言した。
 一方でトランプ大統領に対話も呼びかけており、演習は不安定な情勢が続く国内の引き締めが目的とみられる。 (日経 08/16)



3 周辺国の軍事情勢

(1) 中 国

ア. 世界の覇権を狙う国家方針

(ア) 積極的な海外進出

a. 海洋交易の拡大

 Financial Times紙が1月31日、中国が将来『海上超大国』になり、米国の覇権を脅かすと報じた。
 コンテナ取扱量世界トップ10の港湾のうち、中国が6ヵ所を占めており、中国は経済構想「一帯一路」に基づいて港湾に投資し、シルクロード復活を目指している。
 投資先は中国が支援して建設されたパキスタン南西部バルチスタン州のグワダル港をはじめ、アジア、中東、アフリカ、欧州など60ヵ国に及び、いずれ米国と海上 覇権を争うことになる。(RC 02/02)
b. 海用調査活動の強化

 国営新華社通信が中国科学院海洋研究所の王副所長の話として、中国は2014年から西太平洋に水深500mの20基を含む400以上の観測装置を設置して、水温や塩分濃度 、海流などのデータを収集しているが、これまで即時の送信はできず、海洋科学検証船が年1回、海中の装置を回収しデータを集めていた。
 ところが2016年、海面上のブイと有線無線でやりとりする技術を確立し、遠隔探査衛星「遥感」を経由し深海のデータをリアルタイムで地上に伝送することが可能 にり、2017年中にすべての深海観測装置を新システムに改修すると報じた。(産経 01/07)
c. 海外軍事拠点の構築

ジブチでの大規模基地建設

 米国防総省が6月6日に米議会に提出した中国の軍事力に関する年次報告書の中で、中国がジブチでの初の海外軍事基地建設を完了したのち、他国でも海外基地建 設を推し進めていく可能性が高いとの見方を示している。
 報告書は、中国は例えばパキスタンなど、長年にわたり友好的関係と同様の戦略上の利益を持つ国々に、追加的な軍事基地を建設しようとする可能性が高いとし ている。
 パキスタンについては、中国の武器輸出で既にアジア太平洋地域の主要市場になっているとしていて、中国は2016年にパキスタンと潜水艦8隻の売却で合意している。 (ロイタ 06/07)

 米国防総省が6月6日に議会へ提出した中国の軍事力に関する報告書によると、中国が海外進出の拠点をインド洋、地中海、大西洋に構築しようとしている。
 それによると、中国は日本が唯一の海外基地を持つジブチに2016年2月から基地を建設している。 (JDW 06/14)

 中国国防省が7月11日、中国軍にとって初の海外拠点となるジブチに建設を進めてきた軍事基地の運用を開始すると発表した。
 部隊の出陣式が広東省の湛江でこの日に開かれ、兵士や関連設備を乗せた艦船が出航した。
 中国軍は2016年、ジブチ市の沿岸部で艦艇が停泊できる軍事施設の建設に着手し、ソマリア沖などの海賊対策や航路の安全維持、海難救援活動のための後方支援基 地だと説明している。(時事 07/12)

 中国がジブチに建設した基地に部隊を輸送する船団の第一 陣が7月11日に、南海艦隊の基地である湛江を出航した。
 この日出航したのはType 071揚陸艦(右図右)1隻と、半没式輸送艦(右図左)1隻で、Type 071艦の飛行甲板には海兵隊員80名が整列した。 (JDW 07/19)

 中国軍海兵隊の第一陣がジブチに駐留する式典の画像から 判断すると、30mm砲を装備するZBL-08 IFVが少なくとも6両、12.7mm機関銃を装備するDongfeng Warrior 4×4軽IFVが少なくとも4両配備されていることが明らかである。(CD 08/01)

 国営の中国中央TVなどによると、中国軍がジブチに先月開設した海外初の補給基地で運用開始を記念する式典を8月1日に行った。
 インド洋やアフリカ大陸で存在感を高めるとともに、遠洋で海軍を展開するうえでの拠点にする狙いもあると見られる。
 ジブチには米仏軍が基地を置いているほか、日本もソマリア沖の海賊対策にあたるための自衛隊の活動拠点を拡大する方針である。 (NHK 08/02)

 中国が陸軍創立90周年の8月1日に、ドバイに建設中の初の海外基地を公式に開所した。 開設式典には中国軍海兵隊、海軍兵、衛生兵合わせて240名と、少数のド バイ兵、及びZBD-09装輪IFV 8両、Dongfeng 4×4軽装甲車4両も参加した。
 基地は中国が建設費の一部を負担して建設し5月に開設されたドバイ多目的港に隣接して建設された。 Airbus社の衛星が7月17日に撮影した画像(下図)では、 まだ建設の半ばであった。
 基地の北西部とヘリポートには掩体も建設されており、燃料及び恐らく弾薬の貯蔵に使用されると見られる。
基地内の施設は中国の駆逐艦やフリゲート艦に装備しているZ-9ヘリの整備にあたるのに使用されると見られる。 中国はダルフールでの国連PKOに参加するMi-17I へり4機のうちの1機を6月にスーダンに搬入している。(JDW 08/09)


 香港の英字紙Sputh China Morning Postが9月27日、中国がジブチに建設した海外基地に埠頭を建設し艦船を泊渠させようとしていると報じた。
 建設する埠頭は少なくとも4隻が停泊できる大きさで、40,000t以上のType 901補給艦も停泊できるという。 (JDW 10/04)

 ジブチに駐留している中国軍が、11月23日に重装備による実弾射撃訓練を当地で実施した。
 訓練では装輪駆逐戦車数量が数十発の射撃を実施した。(CD 11/27)

ジブチ基地での自衛隊との摩擦

 中国最高人民検察院(最高検)機関紙の検察日報が8月2日までに、中国がジブチで停泊していた中国艦に海上自衛隊の潜水員が違法に接近したため、警告を与 えて追い払ったと報じた。
 同紙などによると、ジブチに停泊していたのは2016年12月から2017年7月までアデン湾で海賊対処活動などにあたった中国海軍のフリゲート艦衡陽 玉林、補給艦洪湖で、付近に停泊していた日本艦が潜水員を派遣し中国艦の近くまで接近したと報じた。
 自衛隊も拠点を置くジブチで日中間の軍事的摩擦が伝えられるのは初めてである。(産経08/03)

 中国紙の検察日報が8月1日、ジブチに停泊していた中国艦に海上自衛隊の潜水員が違法に近づいたため 警告したなどと報じたことに対し、河野統合幕僚長が3日 の会見で、中国側が指摘するような危険行為があった事実はないと述べた。
 河野統合幕僚長は、船が入港した場合、安全確保の観点から船底などを点検しており、潜水作業は通常のことで、警告を受けた事実も認識していないと述べた。 (朝日 08/03)
【註】 :  外洋での行動の経験が浅い中国海軍は、長期航海後に船底を潜水して点検することを知らず、隣に停泊している日本艦から潜水員が入水したのを、てっきり自艦 の偵察と勘違いしたのではないか。

d. バルト海、地中海への進出

 中国国営新華社通信が、中国とロシアの海軍が7月22日にバルト海で合同演習の開幕式を行ったと報じた。
 中国から参加する最新鋭駆逐艦合肥やフリゲート艦運城などは6月中旬に海南省三亜の基地を出航し、7月21日にカリーニングラードに到着していた。
 中露海軍は2012年以降、毎年合同演習を実施しているが、バルト海での演習は初めてである。(産経 07/23)
(イ) 南シナ海、東シナ海内海化の野望

南シナ海、東シナ海に大規模対潜網構築

 中国が東シナ海と南シナ海の海底に海洋環境の大規模な観測網を整備することを正式決定した。 中国中央TVは5月28日、海洋環境の観測、災害の予測、国防安 全、国家権益など多方面のニーズに応えるものだと、海洋権益の確保も狙いであることを明言した。
 この観測網は国家重要科学技術インフラ建設プロジェクトの一つで、20億元(320億円)以上を投じ5年かけて整備し、上海市の臨海部に設ける観測データセンタ ーに情報を集約し、海洋環境をリアルタイムで観測する。(時事 05/28)
【註】 :  これは大規模な対潜水艦監視網の構築と見ることができる。

(ウ) 巨大海軍の構築

艦船の大量建造

 Financial Times紙が1月31日、中国が将来『海上超大国』になり、米国の覇権を脅かすと報じた。
 中国海軍は世界の主要国で最も急速に増強し中国海警局は世界最大の艦隊を持っている。 漁船は20万隻ある。 (RC 02/02)

 ロシアの軍事専門家政治軍事分析研究所副所長が、中国海軍に新たに加わる空母は太平洋のパワーバランスを変化させ、中国の発展に有利な方向にシフトさせると し、20~30年後には中国海軍はこの地域における実力で米海軍を追い抜くだろうと指摘している。
 同副所長は、中国海軍は現在世界の上位5位以内にあり、特定の分野では上位3ヶ国に入っていて、太平洋での戦力は米国に次ぐ2位であると指摘している。
 軍事分析会社のGlobal Fire Power社は、中国が1隻の空母と1,230機の戦闘機、200機の武装ヘリを保有し、太平洋の空母群にそれらを効果的に移すことができると している。(RC 03/27)

大規模演習の実施

 中国海軍が大規模軍事行動のためとして、江蘇省連雲港沖から北海艦隊の基地がある山東省青島までの黄海で40,000㎢を封鎖した。
 大規模軍事行動の中身は明らかにされていない。(S&S 07/28)

(エ) 渡洋侵攻能力の整備拡大

a. 海兵隊の強化

海兵隊の大幅増強

 香港英字紙South China Morning Postが3月14日、中国軍関係者が海軍陸戦部隊を2万から10万に増員する計画だと表明したと報じた。 増員部隊はジブチやパキス タンのグワダル港などに派遣するとみられる。
 ジブチには現在、 4,000名以上の米軍が駐留しており、グワダル港には中国軍拠点は建設されていないが、今回の海軍陸戦部隊の増員は将来この2ヶ所への駐留をに らんだものとみられる。
 軍関係者によると、海軍全体の人員も23万5,000名から15%増やす計画であるが、陸戦部隊だけで10万名に増やすとしたら、23万5,000名の15%を大幅に超えることに なり、数字は海外メディアの推測に過ぎないとしている。(RC 03/15)

 中国が陸軍の数個旅団を海兵隊に編成替えするとの計画についての以下の疑問が残っている。(CD 03/18)

・この改編は序章に過ぎず、陸軍が保有する攻撃ヘリも海軍のLHAや輸送艦に引き渡すのか。
・海軍海兵隊に移管される陸軍の旅団には、Z-10を装備する陸軍航空隊も含まれるのか。
 米国防総省が6月6日に公表した中国の軍事動向に関する報告書は、海軍陸戦隊(海兵隊)について尖閣諸島における潜在的な新たな任務を視野に入れていると指 摘している。 報告書によると中国陸軍の揚陸部隊が台湾侵攻を目指すのに対し、海軍陸戦隊は南シナ海や尖閣の占拠に狙いを定めているという。
 海軍陸戦隊は装備を充実し兵力の増加も進められ、将来は米国の海兵隊のような独立性の強い組織に昇格させるとの観測も出ている。 (時事 06/07)

海兵隊を南海艦隊の傘下から海軍直轄に格上げ

 台湾国防部が9月2日までに立法院に送付した中国の軍事力に関する年次報告によると、中国は海軍陸戦隊(海兵隊)を南海艦隊の傘下から海軍直轄に格上げした。
 習国家主席が主導する軍改革の一環で、陸軍の関連部隊との連携も強化しており、台湾や尖閣諸島など島嶼への侵攻能力を高めていることが覗える。
 また、2020年までに台湾への全面作戦能力を完備する計画を着実に進めていることも改めて浮き彫りになった。 (産経 09/02)

b. 水陸両用戦戦力の強化

Type 075強襲揚陸艦の建造開始

 米National Interest誌が、中国が建造を進めている米海軍のWasp級強襲揚陸艦と同規模で、30機のヘリを搭載し6機同時発艦が可能な排水量40,000tのType 075強襲 揚陸艦が2020年に完成することにより、中国海軍の影響力が高まるとする記事を掲載した。
 中国にはType 071ドック型輸送揚陸艦4隻があり2隻が建造中で、Type 075/071が一体となった水陸戦能力を高めており、台湾やフィリピンなど周辺各国に圧力をかけ 、更に空母を建造すれば影響力がさらに強まるとの見方を示した。(RC 04/03)

Type 071 LPD の増強

 最近撮影された衛星画像から、中国海軍が5隻目のType 071 LPDを上海で建造していることがわかった。 Type 071 LPDは全長210m、排水量20,000t程度で、Z-8など 中型ヘリ4機 、Type 726 LCAC 4隻を搭載できる。
 更に3月28日に中国海軍司令官は、Type 726 LCAC 4隻を搭載するType 075強襲揚陸艦の建造も明らかにしている。 (JDW 04/12)

半没式輸送船の登場

 中国メディアの今日頭条が4月20日、中国が保有する半没式輸送船について紹介し、これこそが「日本が中国を恐れる理由だ」とする記事で、新たに就役した半没式 輸送船振華-33が4月半ばから本格的な訓練を始めることで、民船参軍を積極的に進めていくとしていると報じた。
 記事によれば、振華-33は最大積載量が50,000t、全長227m、主甲板面積7,700㎡、幅43mで、速力14kt、航続距離18,000nmの性能を持つ。
 半没式輸送船について中国は、2015年から全長175.5m、幅32.4mの半潜没式重量物運搬船東海島を保有していて、通常の揚陸艦には搭載できない重量物や LCACを運ぶことが可能で、50,000t級振華-33の就役でその能力が一段と向上する。 (SC 04/23)

世界最大の Pomornik級 LCAC

 (9枚の画像のみで記事なし) (CD 08/04)
【註】 :  写真は2013年にウクライナからの引き渡しが開始された世界最大のPomornik級LCACで、ウクライナから2隻を購入し更に2隻を国内で建造するという。
 中国はこのほかの大型LCACとしては、Type 071揚陸艦に4隻搭載できる推進機2基のType 726を保有している。

c. 補給艦船の充実

 中国海軍は5隻の補給艦を擁しているが、そのうちの3隻が新型艦でアデン湾での活動に参加している。
 これら補給艦は海賊対処だけでなく、日本近海や南シナ海での活躍能力も保有している。(CD 07/11)
(オ) 覇権確立の活動

対日挑発

 防衛省が7月2日、中国海軍の情報収集艦が同日に津軽海峡の領海に侵入したと発表した。 防衛省によると、領海に侵入したのはドンディアオ級情報収集艦で 2日10:40頃津軽海峡なある北海道松前町の「小島」南西の領海に入り、13:10頃小島の南東で領海を出たことをP-1哨戒機などが確認した。  政府は、中国艦が国連海洋法条約上の無害航行でないと見られる行為を行った確定的な情報がないとして、自衛隊への海上警備行動の発令は見送った。
 中国軍艦の領海侵入は2016年6月に鹿児島県の口永良部島周辺で確認されて以来で3回目で、政府は外交ルートで中国側に懸念を表明した。 (産経 07/02)

 7月6日に分かった8月上旬に閣議に報告される2017年版防衛白書の概要では、中国軍が積極的な海洋進出を続けているとして、海上戦力の日本海における活動が活 発化する可能性があると懸念を表明したほか、北朝鮮の核・ミサイル開発については新たな段階の脅威と位置付けた。
 概要は、中国海軍艦艇と爆撃機などが2017年1月に日本海で共同訓練を実施したことに触れ、今後日本海での活動が強まると予測し、対北朝鮮で連携する自衛隊と 米軍をけん制する狙いがあるとみられ、中国海軍の動向次第では将来、日本海で緊張が高まる恐れも出てくる。 (時事 07/07)

 中露の海軍は2016年9月に初めて南シナ海で演習を実施しており、2017年の9月には日本海とオホーツク海でも合同演習を行う計画である。 (産経 07/23)

 防衛省によると、中国のH-6 6機が8月24日、沖縄本島と宮古島の間を通過して紀伊半島沖まで飛行し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した。
 領空侵犯はなかったが、統合幕僚監部によると、このルートで中国機の飛行が確認されたのは初めてである。
 中国国防省は24日、中国空軍が同日に遠海飛行訓練を実施したと発表した。
 空軍報道官は声明で、中国空軍が遠海訓練を常態化させているのは国際法と国際慣例に合致していると主張し、どのような妨害に遭おうとも、中国空軍はこれか らも頻繁に飛行訓練を行うとの態度を明らかにした。(産経 08/25)

 12月18日、バシー海峡から飛来した中国軍のY-8電子戦機が沖縄本島と宮古島間の上空を抜け、中国本土方面へ飛び去ったのも確認された。 (産経 12/18)

中国軍機の日本海進出

 統合幕僚監部が12月18日、中国軍のSu-30など5機が同日に東シナ海から対馬海峡を通過し、日本海を往復飛行したのを確認したと発表した。 領空侵犯はなかった。
 中国軍の戦闘機が対馬海峡を通過して日本海に進出したのは初で、防衛省で目的を分析している。
 統幕によると、確認されたのはSu-30 2機、H-6 2機、Tu-154 1機で、東シナ海から対馬の南方を通過し、日本海へ抜けた後、同じルートを引き返した。 中国軍機 による同ルートの飛行は、2017年1月にH-6など8機が確認されて以来となる。
(産経 12/18)

 中国空軍が12月18日、日本海上空で新たな遠洋訓練を実施し、韓国軍機が緊急発進した。 中国空軍は声明文で、戦闘機と爆撃機が韓国と日本の間の対馬海峡を通過し、日 本海の国際水域上空を飛行したと明らかにした。  韓国統合参謀本部は、中国軍用機5機が韓国防空識別圏(KADIZ)に進入したことを確認し戦闘機を緊急発進させた。 中国軍機は日本の 防空識別圏にも進入したという。  中国空軍は台湾近海の上空も飛行しており、中国は最近数ヵ月、台湾付近を中心に遠洋訓練を増やしている。 (ロイタ 12/18)
米国への政治的圧力

 米中関係筋が5月6日、中国の習指導部がトランプ米政権に対し、北朝鮮への圧力を強める見返りとして、南シナ海問題などで対中強硬姿勢を示す米太平洋軍司令官 ハリス海軍大将を要求していたことを明らかにした。
 ハリス大将は日系米国人で、主権国にとって内政の重要事項である軍司令官人事に他国が更迭を求めるのは外交上極めて異例である。 (東京 05/06)
【註】 :  対中強硬姿勢を示しているのは米政府の方針で太平洋軍司令官個人でないことは中国もわかっているはずで、日本人を母に持つハリス大将の更迭要求はあからさま な反日活動とも思われる。

(カ) 北斗測位衛星システムの全世界展開

 中国国営の新華社が、西昌衛星発射センタが11月5日に長征3B SLVで新世代の衛星測位システム「北斗衛星導航 系統3号(北斗3号)」に使う初めての衛星を予定 の軌道に乗せることに成功したと報じた。 2020年までに35基を打ち上げて世界全体をカバーする。
 北斗3号は測位精度を現行の北斗2号の2~3倍の最大2.5mに 引き上げるもので、2018年末までに18基を打ち上げて一帯一路の沿線各国で測位サービスを提供する。 (日経 11/06)

 中国が11月5日に長征3B SLVを用いて北斗-3測位衛星2基を中高度軌道に打ち上げた。 北斗-3は2018年末までに更に18基が打ち上げられ、最終的には2020年には 27基で全地球規模のサービスを行う。
 中国とアジアのみをカバーする12基からなる北斗-2は2012年にoperationalになっている。(JDW 11/15)

イ. 軍の態勢強化

(ア) 軍制改革

集団軍を18個から13個に再編

 中国の国営メディアが4月19日、中国陸軍が84個の軍団級部隊に再編されると報じた。 この決定は党中央委員会と中央軍事委員会で4月17日に決定したという。
 84個軍団級部隊の司令官は少将がつくという。(JDW 04/26)

 中国国防報道官が4月27日、人民解放軍の国内5戦区に所属する集団軍について、18個から第71~第83の13個に再編することを明らかにした。 総兵力85万の中国陸 軍で集団軍は複数の師団や旅団からなり、現在は各戦区に3~5の集団軍が配属されている。
 戦力の近代化に向けて習近平指導部が進める軍改革の一環だが、組織再編を通じて軍内部の人事を掌握する狙いもあると見られる。 (産経 04/28)

地上軍兵力の削減、他軍種の増員

 環球時報が解放軍報の記事を引用して7月11日、人民解放軍が地上軍の兵力を1,000,000以下に削減して、他の軍種を増員する計画であると報じた。
 中国の地上軍は現在、現役850,000、予備役510,000である。(JDW 07/19)

(イ) 改革への反動

軍制改革への反動

 北京中心部にある共産党中央規律検査委員会が入る建物の周辺で2月22日、数百人の元軍人らが退役後の待遇改善を求める抗議活動を行った。 今回の抗議活動は、 同日午前から始まったとみられ、現場では迷彩服姿の元軍人らが大通りに面した歩道に並んだ。
 元軍人らは、3月上旬に開幕する全人代直前の時期に、要求をアピールしようとしたとみられる。 (朝日 02/23)

(ウ) 即応性の向上

 China Daily紙が4月10日、中国陸軍が演習の頻度や複雑性を高めることにより、即応性の向上を図っていると報じた。
 それによると、歩兵、砲兵、防空の15個旅団が2016年に合わせて100回以上の実射訓練を行ったという。 (JDW 04/19)
ウ. 台湾制圧に向けた準備

上陸作戦の能力向上

 台湾の中央通信が、国防部が中国軍の軍事力の分析と、台湾軍の強化方針に関する報告書を8月末に立法院に提出したと報じた。
 報告書では中国軍が陸海空の戦力を統合し、台湾への上陸や封鎖作戦を遂行する能力を大幅に向上させており、特別部隊を新設して上陸演習も強化しているとし ている。
 中国軍には台湾本島への上陸作戦を行う能力はまだないが、既に離島を奪う力を備えているとし、サイバ攻撃や電磁波を活用し、新たな作戦形態を構築している ことへの懸念もあらわにした。(日経 09/01)

ミサイルの配置

 台湾国防部が3月20日に立法院への書面で、中国がDF-16を台湾向けに配備していることを明らかにした。
 DF-16は2015年9月に行われたパレードで初公開された射程800~1,000kmのBMで、米国防総省が2016年5月の報告書にも配備について記載されている。 (産経 03/20)

台湾東岸の飛行

 台湾国防部が8月13日、人民解放軍のY-8 ELINT2機が同日午前にSu-30 2機の護衛を受けて台湾南部のADIZ外からバシー海峡を経て北東に向かって飛行したと発表 した。 国防部によると、2機は太平洋から東シナ海に向かって宮古海峡を北上した。
 9日にもY-8が、12日にはY-8 ELINT機とH-6が同じルートで台湾東部の海域をそれぞれ飛行しており、人民解放軍が台湾東部の海域を飛行したのは8月に入って3回 目である。(台湾 08/13)

 台湾国防部が11月22日、複数の人民解放軍機が同日午前にバシー海峡上空を通過して第一列島線を越え西太平洋に向かって飛行したと発表した。
 国防部によると、飛行したのはH-6爆撃機、Y-8輸送機、Tu-154電子偵察機、II-78空中給油機、Su-30戦闘機などで、同日午前の立法院外交国防委員会で機数につ いて馮国防部長は「10機を上回るか」との質問に「おおよそそのくらい」と答えた。(台湾 11/22)

 中国のY-8が12月18日午前にバシー海峡から宮古海峡上空へ抜ける長距離飛行を行った。 17日にもY-8情報収集機とY-8電子戦機が同経路で飛行したことが確認さ れている。
 馮国防部長は立法院で2018年度の予算に関する質疑に応じる予定だったが、午前11時ごろに同院を後にして台北市内にある連合作戦指揮センタに向かい、中軍機 の行動を監視するように指示すると共に、軍用機や艦艇を派遣して対応したという。
 中国大陸軍機による台湾周辺空域での演習が繰り返されていて、12月17日のほか9日にも、H-6やSu-30が宮古海峡周辺を飛行している。 (台湾 12/18)

米台接近に対する威嚇

 香港紙の明報が12月10日、中国の李駐米公使が8日に米国の軍艦が台湾に寄港すれば中国軍は台湾を武力で統一すると述べたと報じた。
 同紙は中国政府は米台の軍事交流に一貫して反対してきたが、中国の外交官が戦争にまで言及したのは初めてだと指摘した。
 李公使は、米議会が9月に可決した国防授権法には、米国と台湾の軍艦による交流訪問を検討することを求める内容が含まれており、中国と米国の国交正常化当時の 共同声明に反すると述べた。 米上院は今年6月に両国の艦船がハワイ、グアムまたは台湾の高雄を訪問する案が話し合われた。 (朝鮮 12/11)

エ. 経済不振下の国防費増大

(ア) 経済の不振

外貨の流出

 中国人民銀行(中央銀行)が2月7日、1月末の外貨準備高が前月比$12.3B減の$2.9982Tになったと発表した。 2011年2月以来約6年ぶりに$3Tの大台を割り込んだ。
 減少は7ヵ月連続で、資金流出が止まらないなか、人民元急落を阻止するため外貨準備を取り崩しドル売り元買いの介入を続けたことが要因である。 (時事 02/07)

GDP 報告値の水増し

 中国全土に31ある省クラスの地方政府が2月8日までに個別に公表した2016年のGDP値を合算すると、中国国家統計局が1月20日に発表した全国GDPの総額を2兆7,559億 元も超過していた。
 中国のGDP水増し疑惑はたびたび指摘されてきたが、改めて国家統計の信頼性が疑問視されている。(産経 02/09)

(イ) 国防費の伸び

突出した中国の国防費の伸び

 英国の国際戦略研究所(IISS)が2月14日にMilitary Ballance 2017を発表した。 南シナ海での軍事化のみならず西太平洋やインド洋の支配権確保も狙う中国の軍拡 で海洋権益をめぐる各国との緊張が高まり、アジア太平洋地域全体で2016年の国防費が$367.7Bと前年比5.3%増えた。
 報告書によるとオセアニアを含むアジア各国の2016年の国防費の総額のうち、中国が39.4%を占め、日本の12.9%、インドの13.9%に比べて中国の突出ぶりが目立っている 。 中国の支出額は政府公表を元にしており、実際にはこれより多いと指摘している。 (産経 02/15)

GDP の伸びを上回る国防費の伸び

 中国の国会に当たる全人代の報道官が3月4日に2017年の国防予算の伸び率について、7%前後になりGDPの1.3%前後になることを明らかにした。
 2016年の国防予算は前年実績比7.6%増の9543億5,400万元だったことから、2017年の国防予算は1兆200億元程度になると見られ、これで今年の国防予算は初めて1兆元 (16兆5,500億円)の大台に乗ることが確実になった。
 中国の国防予算は1989年以降、2010年を除いて二桁増だったが、経済成長の鈍化により2016年は6年ぶりの一桁増にとどまっていた。 (時事 03/04)

 AP通信が3月6日までに、中国財務省当局者が2017年度の国防予算が前年度実績比7%増の1兆 440億元(17兆2,000億円)に上ることを明らかにしたと報じた。
 中国の国防費が1兆元を超えるのは初めてで、米国に次ぐ世界第二位、日本の平成29年度予算案の3.3倍にあたる。 (産経 03/06)

 中国の第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議が3月15日、2017年の経済成長率目標を前年の6.5~7%からやや低い6.5%前後に設定した政府活動報告や2017年度 の予算案などを承認し閉幕した。 成長率目標は3年連続で引き下げられた。
 2016年度実績比7%増の1兆443億9,700万元(17兆3,000億円)の国防費を盛り込んだ予算案も反対棄権票が279票と2016年より100票以上減少し、体制内の異論の萎縮 をうかがわせた。(産経 03/15)

オ. 戦力の増強

(ア) 戦略ミサイルの増強

a. ICBM

DF-5C

 米国の一部メディアが米情報機関筋の話として、中国軍が1月の早い時期にMIRV弾頭10個を搭載するDF-5C ICBMを山西省太原の発射場から北西部の砂漠に向けて発射 したと報じた。 米メディアは、トランプ政権を牽制する狙いがあると報じている。
 これについて中国国防省は2月3日、国内メディアの取材に答える形でDF-5C発射試験の実施を認めた。 (朝日 02/05)
【註】 :  DF-5は1970年代半ばに就役した中国最初のICBMで、1980年代中頃から改良型のDF-5Aに換装された。 その後MIRV弾頭型のDF-5Bが2015年9月3日のパレードに初登場 した。 DF-5Aの弾頭数は3個と見られている。
 更にDF-5Aの弾頭をMIRV型に換装しているとも報じられたがその弾頭数も3個と見られている。

DF-31AG

 中国政府の公式発表はないが、中国国営メディアはDF-31AG ICBMはMIRV弾頭搭載であると報じている。
 2013年中頃にウェブサイトで初めて画像が公開されたDF-31Aは単弾頭であるが、7月30日に行われた人民解放軍創立90周年記念パレードで初めて16両が公開された DF-31AGについて、China Daily紙は8月7日に多弾頭を搭載すると報じた。(JDW 08/16)

DF-41

 中国国営のGlobal Times紙が11月19日、DF-41 (CSS-X-20)が早ければQ1/2018にもoperationalになると報じた。
 DF-41は三段推進で射程は12,000km以上、10個のMIRV弾頭を搭載するほかチャフやデコ イも搭載しているため、BMDSを突破できるという。 (JDW 11/29)

b. SLBM

JL-3

 7月下旬に中国のネットに、海軍が1隻だけ保有しているType 032 SSBが改造された画像が掲載された。
 Type 032はSLBMの試験艦と見られており、今回の改造でセールの後方部分が高くなったことから、JL-3 SLBMの試験に向けた改造と見られる。
 JL-3は次世代SSBNであるType 096に装備される。(JDW 08/09)

c. IRBM

 特記すべき記事はなかった。
d. HGV

 カナダの漢和防務評論が、中国が日本や韓国などに配備されているBMD網を突破するために、射程の短い超高速兵器を開発していると報じた。
 この兵器はHGVと呼ばれるMach 5~10の飛翔体で、核兵器に代わる次世代兵器として米国やロシアも開発にしのぎを削っている。 (産経 02/27)
(イ) 艦船の建造

a. 急激な建艦ペース

 中国軍網が1月8日、2016年に中国は新型輸送機Y-20を配備したほか、2016年に30隻近い新型艦の配備を達成し、世界最多を記録していると報じた。 (RC 01/12)

 中国海軍が2016年に就役させた主力艦艇は11隻で、米国は3隻にとどまった。 主力艦艇の建造数で中国が米国を上回るのは史上初となる。 (RC 02/26)

 ワシントンのCenter for Navl Analysisによると、中国海軍は2020年までに265~273隻に成長する模様で、これに対し米海軍は275隻である。 (S&S 06/28)

b. 国産空母

Type 001A

 中国の空母遼寧は2016年11月に戦闘可能が宣言され、その後艦隊を率いて海南島の三亜市近郊の海軍基地まで航海した。 この航海で遼寧は12機 以上のJ-13のほか、Z-9、Z-18ヘリ数機と、2機以上のZ-18J AEWヘリを搭載していた。
 ソ連時代の空母Kuznetsovを改修した遼寧はType 001とされているが、同じ大連の造船所で建造されている国産初の空母はType 001Aは遼寧 の小改良型と見られる。 Type 001Aは2017年後半に進水する模様である。(DN 01/31)

 中国初の国産空母Type 001Aは組み立て櫓が取り外され、船体下部に赤い塗装が施されていることから、間もなく進水式が行われると見られる。 Type 001Aは2020 年までに就役する模様である。
 ウクライナで建造された中国最初の空母遼寧はType 001であるが、Type 001Aは技術的にも戦闘能力においても大きく改良されているという。 (CD 02/20)

 米情報機関によると、中国は2025年までに6隻の空母を建造する計画で、うち2隻が原子力空母という。 初の国産空母となる山東は2017年内にも完成する。 (RC 02/26)

 中国がソ連の空母を改修した遼寧に続き、遼寧省大連で建造を進める初の国産空母の進水が近づいている。
 この空母は遼寧を元にしているものの、中国国防省報道官によると多くの面で改善と向上が見られるという。 中国の軍事専門家の分析では、遼寧 より艦橋が小さく、その分飛行甲板が広くなるため、搭載機数をより多くできる模様である。
 空母を常時展開するには、修理や訓練なども想定して少なくとも3~4隻は必要とされることから、大連で建造中の空母のほか、上海郊外の造船施設でも別の国産空 母の建造を進めている。
 中国国内の電子メディアが一斉に、大連で建造中の中国初の国産空母が4月23日の中国海軍創設記念日に進水する見通しになった報じた。
 報道によると、国産空母は排水量67,000tの遼寧を基に設計された50,000t級の通常動力型で、遼寧より12機多い36機の艦載機が搭載できるとの分 析もあり、2020年頃に就役する。(毎日 04/11)

 中国国営新華社通信によると、中国初の国産空母の進水式が4月26日午前、遼寧省大連で行われた。
 中国メディアは2020年までに就役するとの見方を伝えている。
 遼寧を基に2013年11月に着工した排水量50,000tで動力に蒸気タービンを使う国産空母の名称は山東になるという報道もある。 (時事 04/26)

 中国で4月26日、国産初となる空母Type 001Aが進水した。
 Type 001Aは遼寧を元に建造されているが、アイランドが短くハンガーが大きくなっている。 このため搭載できるJ-15の機数が遼寧の24機から32 ~36機に増え、速力も29ktから31ktへと速くなっている。(JDW 05/03)

 4月26日に進水した中国で二番目で初の国産空母について建造責任者が8月3日、予定より早く9月にも係留試験を開始することを明らかにした。 (CD 08/04)

 PLA Dailyによると、CV 17 山東は間もなく洋上試験を開始する。(CD 12/16)

 香港紙South China Postが12月12日、中国空母2隻の相違点に関する記事を掲載した。 記事によるとType 001遼寧に続く002型空9母は4月26日に進水し、 11月から中国東北部の大連で試験が行われている。
 外見や排水量、通常動力の推進装置、飛行甲板などは遼寧とよく似ているが、実際には最新の技術が盛り込まれて中国海軍の求める仕様を満たす空母に仕q 上げられている。
 スキージャンプ式飛行甲板は遼寧では勾配が14゚だがType 002では12゚に変更されて滑走距離が短縮されるとともに燃費も向上し、J-15の機数は遼寧 より50%多い35機になっている。(RC 12/18)

Type 002/003

 環球時報は、上海で建造中の3隻目の空母ではカタパルト発進方式が採用される可能性があるとの専門家の見方も伝えている。 (朝日 02/27)

 中国の報道が、建造中の国産空母の二番艦で2020年代に就役するType 002 85,000tはスチームカタパルトを3基装備すると報じているのに対し、米国の空母設計者は 疑問を呈している。(JDW 02/22)

 環球時報が海洋軍事専門家の話として2月21日、建造中の3隻目の空母Type 002はロシアの空母ではなく米国の空母に似た形状になると報じた。 その上で西太平洋 とインド洋で活動するためには少なくとも5~6隻の空母が必要になるという。
 Type 002はカタパルト発進拘束着艦(CATOBAR)方式になるとみられている。(JDW 03/01)

 米国の中国語スサイト「多維」が5月25日、同国3隻目となる国産空母の建造が大連の造船所で開始された可能性があると報じた。
 中国の軍事サイトが報じた造船所内のドックの写真に、空母建造に使用されるとみられる部品が写っていたという。 (産経 05/25)
 武漢に設置されている空母のモックアップに、中国三番目の空母Type 002に合わせたと見られる改造がなされた画像が、9月上旬に中国のネット上に流れた。
 画像では艦橋上の構造物にフェーズドアレイのレーダアンテナが取り付けられ、今までより高くなっている。
 また主アンテナ面の上に小型のアンテナが取り付けられていることから、Type 002には6月に進水したType 055駆逐艦同様に二周波レーダが取り付けられると見 られる。(360 09/11)

 9月上旬に中国のウェブ上に武漢にあるType 002空母のモックアップの画像が流れたが、上部構造の高さが高くなっていた。
 レーダのアンテナアレイパネルが取り付けられ、主アレイの上に小型のアレイが配置されていることから、Type 002はType 055駆逐艦同様に二周波レーダを採用 する模様である。(JDW 09/201)

 South Cjina Morning Post紙が中国海軍及び軍事産業当局者の話として、国産空母の二番艦Type 002では電磁カタパ ルトが採用されると報じた。
 伝えられるところによるとこのシステムは、米海軍のGerald R. Ford級が装備するGA社製EMALSとよく似ているという。
 Type 002はウクライナから購入した空母Type 001 遼寧を元にした国産空母の一番艦Type 001Aと異なり、カタパルト発進の平甲板型になるという。 (JDW 11/08)

 中国海軍専門家会議の主席であるZhuo少将がCCTVで11月6日に国営China Daily紙の記事を引用して、一般にType 002と呼ばれている国産空母には、通常動力によ る電磁カタパルトが装備されると述べた。 CCTVによるとこの電磁カタパルトでは今までにJ-15艦載戦闘機による発進試験を数千回実施しているという。
 香港のSouth China Morning Post紙も11月1日に、Type 002は電磁カタパルトを装備すると報じている。 また、DigitalGlobe衛星が11月1日に Huangdicun航空 基地を撮影した画像にはカタパルト試験場とJ-15が写っている。(JDW 11/22)

c. 潜水艦

潜水艦の増勢

 米国防総省が6月6日に公表した中国の軍事力に関する年次報告書では、海洋進出積極化を背景に中国はディーゼル推進型潜水艦を2020年までに現状より15~24隻 多い70隻体制とすると分析したほか、新たに攻撃型原潜の導入を図るなど、対空攻撃能力の強化に加え隠密性が高い対地攻撃力が高まると強い警戒感をにじませた。
 中国は現在、SLBMを搭載するSSBNを4隻、攻撃用原潜を5隻、ディーゼル推進型潜水艦を54隻それぞれ保有しており、今後、ディーゼル推進型の潜水艦を69~78隻 までに増強するほか、2020年代初頭には新型のSSBNを着工すると分析し、さらにCMを搭載するSSGNの導入を図っているとしている。 (毎日 06/07)

Type 039B 元級の建造再開

 中国のウェブサイトで2016年12月に、武昌の造船所に新造されたType 039B 元級潜水艦3隻が停泊している画像が流れた。 そのうちの1隻は12月12日に進水したと みられる。
 元級は533mm魚雷発射管6本を装備してYJ-82 ASCMやYu-6重魚雷を発射できる水上排水量2,700t、水中排水量3,600tの潜水艦で、一番艦が2006年に就役した初期型の Type 039Aは4隻建造され、小改造されたType 039Bは2010~2013年に9又は10隻が建造されたものの、今回公表された3隻まで建造の報道はなかった。
 Type 039 元級はロシアのRomeo級の発展型で14隻保有しているType 035 明級の後継となる。(JDW 01/11)

Type 093G SSGN

 中国ではType 093B(商級)と呼ばれ、西側ではType 093Gと呼んでいるVLSを装備しCJ-10 CM 12発を発射できる原子力潜水艦の画像である。
 CJ-10は射程が1,500kmで、駆逐艦やH-6爆撃機からも発射できる。(CD 11/05)

d. 駆逐艦

Type 055 駆逐艦

 民間衛星が4月11日に撮影した画像から、中国が最初の4隻を建造するType 055駆逐艦の建造は大幅に進展していると見られる。 上海近くの造船所では一番船体 がモジュールの全てが船台に集められており、二番船体でもほとんどのモジュールが船台にある。
 Type 055は全長180m、全幅19mと、7,500tのType 052D (157m、17m)より大型で、前部胴体には64セルのVLSが取り付けられる模様である。
 後部胴体にはネットに流れた画像では48セルが装備される。(JDW 05/03)

 中国海軍最大で最新の駆逐艦Type 055が6月28日に上海の造船所で進水した。 Type 055の一番艦は2019年に就役すると見られる。
 Type 055は全長175~180m、全幅20m、排水量10,000tで、艦首に64セル、艦尾と合わせて112~128セルのVLSを装備するほか、130mm砲1門も装備する。
 レーダはType 054D搭載と似たフェーズとアレイMFRを装備する。(DN 06/28)

 中国が6月28日、最大の駆逐艦Type 055を上海の造船所で進水させた。 Type 055は排水量では米海軍のAeleigh Burke級に匹敵する。
(S&S 06/28)

 6月28日に進水したType 055は現在最新鋭の駆逐艦Type 052Dを40%大型化した排水量10,000tで、VLSのセル数は前部に64、後部に48か64で、合わせて112または128 セルになっている。(JDW 07/12)

e. フリゲート艦、コルベット艦

フリゲート艦

 Type 054Aフリゲート艦が広州の造船所で進水した。 排水量4,000tのType 054Aフリゲート艦は新たに2隻が進水したことから、まだ建造が続けられている模様で ある。(JDW 04/12)

コルベット艦の大量建造

 中国海軍Type 056 1,500tコルベット艦の41番艦が2016年12月14日に進水した。(JDW 01/04)

 中国のType 056コルベット艦が2016年12月29日に上海の造船所で進水した この型のコルベット艦は30隻が就役し、更に10隻が建造又は試験中で、最終的には70隻 が建造されるとみられる。(JDW 01/11)

 Type 056/056Aコルベット艦の10番艦が就役し南海艦隊に配属された。 排水量1,500tのType 056は76mm砲1門、 30mm砲2門及び10セルのHQ-10短距離SAMの発射機を 装備している。(JDW 04/12)

f. 水陸両用戦艦船

半没式輸送艦

 中国が3月14日、50,000tの軍民両用の半没式輸送船振華-33を就役させた。 中国海軍最大の振華-33は全長227m、全幅43m、喫水10mで、半没時の喫 水は27mになる。 速力は14ktで18,000nmの航続性能を持つ。
 中国海軍は2015年7月に振華-33より小型でZubr級大型LCACを輸送できる20,000tの半没式輸送艦を就役させているほか、 2016年12月には世界で二番目に大きい100,000tの半没式輸送船新光華 (Xin Guang Hua)を就役させている。 (JDW 03/29)

【註】 :  中国がウクライナから購入したZubr (Pomornik)型LCACはACV揚陸艇としては世界最大で150tのペイロードを持ち、400㎡の車両甲板を有し、戦車なら3両、歩兵戦闘 車なら8両を搭載することができるが、ACVであるため凌波性に限界があり渡洋作戦には不向きであった。
 このため中国はZubr級LCACを渡洋させる半没式輸送艦MLPの整備を進めてきた。

強襲揚陸艦

 香港のSouth China Morning Post (SCMO)紙が3月29日、中国海軍がType 075強襲揚陸艦の建造を開始したと報じた。 SCMP紙によると、Type 075は中国海軍最大の全 長250m、排水量40,000tで米海軍のWasp級に匹敵し、最大30機の武装ヘリを搭載し同時に6機のヘリが発艦できる。
 SCMP紙は、中国海軍の消息筋の話を引用して、Type 075は2019年進水、2020年就役との見込みを報じた。
 中国海軍は現在、20,000t級の揚陸艦Type 071を4隻保有している。(朝鮮 03/31)
【註】 :  Type 051は2016年10月に建造中の衛星画像が報じられており、今回建造を開始したというのは二番艦のことか。

 米National Interest誌が、中国が建造を進めている米海軍のWasp級強襲揚陸艦と同規模で、30機のヘリを搭載し6機同時発艦が可能な排水量40,000tのType 075強襲 揚陸艦が2020年に完成することにより、中国海軍の影響力が高まるとする記事を掲載した。
 中国にはType 071ドック型輸送揚陸艦4隻があり2隻が建造中で、Type 075/071が一体となった水陸戦能力を高めており、台湾やフィリピンなど周辺各国に圧力をかけ 、更に空母を建造すれば影響力がさらに強まるとの見方を示した。(RC 04/03)

 最近撮影された衛星画像から、中国海軍が5隻目のType 071 LPDを上海で建造していることがわかった。 Type 071 LPDは全長210m、排水量20,000t程度で、Z-8など 中型ヘリ4機 、Type 726 LCAC 4隻を搭載できる。
 更に3月28日に中国海軍司令官は、Type 726 LCAC 4隻を搭載するType 075強襲揚陸艦の建造も明らかにしている。 (JDW 04/12)

LCAC

 民間衛星が11月24日に撮影した上海近くのJiangnan造船所の画像から、中国が更に4隻のType 726/726A LCACを建造していることが明らかになった。
 Type 071 20,000t揚陸艦に4隻が搭載されるType 726/726Aは 既に6隻が就役している。
 Type 726/726Aの最初の3隻はウクライナ製のUGT 6000エンジンを搭載していたが、続く3隻は国産のQC-70ガスタービンエンジンを搭載している。 (JDW 12/06)

水陸両用戦闘車

 中国NCIVR社が試作した重量5.5tのAFVが、水上走行試験で50km/hを記録した。
 但しこれは試作車であるため軽装甲はなく、実用型の航続距離、巡航速度などは不明である。 (CD 06/032)

 NORINCO社の子会社であるCNVRI社が、水陸両用APCを開発している。 このAPCは5.5tの4×4車で、静止水上における試験では水上速度50km/hを記録している。
 このAPCは中国海軍が4隻保有するType 071 LPDやその他のLHDで水陸両用作戦を行う海兵隊軽機械化部隊に適している。 (JDW 06/14)

 NORINCO社がVP10 8×8装輪APCの新型を開発した。 新型は105mm砲を装備している。
 基本型VP10は乗員2名のほか、後部室に12名の兵員が搭乗でき、車体上の遠隔操作砲塔には12.7mm機銃1丁が搭載されている。 また車体後部には覆いで保護された プロペラが2基あり水陸両用になっていて、水上速力8km/hの性能を持つ。 但し 105mm砲搭載型は重量が増加したため水陸両用性を持たないとみられる。
 これとは別に同社は最近、同社製遠隔操作砲塔に30mm砲を搭載したVP10も開発している。
 30mm砲は120発を発射可能で、このほかに 200発の7.62mm弾と7.61mm同軸銃身機銃も装備している。 (IDR 10月)

 中国のネット上に新型6×6水陸両用装甲車の試験の様子が掲載された。 掲載されたのは2両で、基本的には同型とみられるが微妙に違っている。
 そのうちの1両は後部に油圧開閉の昇降扉を持つ従来型であるのに対し、もう1両は吸気口と排気口を車体の上に持つと共に、昇降扉の両側に予備電源用と武器等 の収納用とみられる箱を搭載していて全長が若干長くなっている。(360 11/01)

 中国が新型の6×6装輪AAVの試験を行っている画像がウェブ上に流れた。
 新型AAVには2種類あり、2種類は殆どが同じ形状であるが後方に予備電源を収納しているとみられる箱を2個搭載した方は、全長が長くなっている。
 いずれも水上用として後方にダクトプロペラをもつほか、1枚の前方折りたたみ式のtrim vane装備している。 (JDW 11/08)

水陸両用戦支援車両

 NORINCO社が揚陸戦闘を高速化するGLM122水陸両用装甲車搭載渡渉板施設車(AV-CAT)を開発した。
 AV-CATは25tの装軌車を元にして、砂や泥の上陸地点に1両で4m幅、35m長の渡渉板を5分以内に敷設して揚陸の高速化を図る。
 敷設した渡渉板は40tの装軌車及び軸重15tまでの装輪車が通過できる。(IDR 11月)

g. 各種支援艦

洋上補給艦
 中国海軍最大の艦船であるType 901補給艦の一番艦Hulun Huが9月1日に就役した。 全長240m、全幅31m、満載時排水量45,000tのType 901は5箇所の燃料 補給点と2箇所の貨物補給点を持つほか、搭載するZ-8中型輸送ヘリによる補給も可能である。
 2015年12月に進水し2016年末から洋上試練を行ってきたType 901は、5月にはType 071 20,000t揚陸艦への洋上補給(RAS)試験を実施したのは確認されているが、 空母遼寧へのRAS試験が行われたかは不明である。
 建造中の二番艦は2018年中頃に完成するとみられる。(JDW 09/13)

 中国のCSIC社が12月5~8日に上海で開かれたMarine China展で、原子力推進の大型補給艦(AOE)構想を公表した。 最初のイメージ画は6日にWeiboに投稿された。
 それによると原子力AOEは後部にヘリ甲板を持つがハンガーはなく、形状は9月1日に就役した45,000tのガスタービン推進AOE Type 901によく似ている。 (360 12/08)
【註】 :  そもそも艦船に洋上補給(給油)するため膨大な量の燃料を積載する"タンカー"であるAOEを原子力推進にする意味があるのであろうか。
 AOEを原子力推進にするのは、国産空母二番艦Type 002の次の空母(Type 003?)を原子力推進にするための試験が狙いではないであろうか。

情報収集艦
 中国メディアが、中国海軍の情報収集艦開陽星の就役式が1月10日に青島港で行われ、北海艦隊の作戦支援艦支隊に配備されたと報じた。
 開陽星は、全長130m、排水量6,000tのType 815情報収集艦で、中国海軍は同型艦を5隻保有している。 (中央 01/14)

 上海の造船所で9月8日、Type 815A改東調型情報収集艦の7番艦が進水した。
 Type 815Aは原型となったType 815と同じ造船所で建造され、2014年3月から6隻が進水しており、2017年2月までに就役している。
 Type 815Aは全長130m、全幅16m、排水量6,000tで、3~4基の巨大レドームを装備すると共に、5番艦以降は艦橋の上にHot Hatと呼ばれる円筒形レドームも装備し ている。(JDW 09/20)

水中測量、海洋調査艦双胴型艦

 双胴型の海軍艦が広州市の黄埔造船所で建造されている画像が中国のネット上に流れた。 最近進水した模様で目下艤装中と見られる。
 画像から見ると同艦は米海軍のImpeccableほぼ同型同寸と見られ、水中測量または海洋調査艦と見られる。 Impeccableは全長90m、全幅30mで、 排水量は5,000tである。(JDW 06/28)

(ウ) 航空戦力の増強

a. Flankerとその派生機を中心にした現有戦闘機

 中国が装備しているFlanker戦闘機とその派生機は10機種に上り、そのほかにJ-10の2機種やJ-7、J-8もある。 更にこれにJ-20が加わろうとしている。
 一方AVIC傘下の瀋陽航空機製J-31は空軍での採用にいたっておらず、同じくAVIC傘下の成都航空機のJF-17は輸出専用である。 (AW&ST 02/20)

┏━━━┳━━━━━━━┳━━━━━━━┳━━━┓
┃   ┃ 製 造 元 ┃ 型   式 ┃機 数┃
┣━━━╋━━━━━━━╋━━━━━━━╋━━━┫
┃   ┃Avic Chengdu ┃J-7      ┃  527┃
┃   ┃       ┃J-10     ┃  319┃
┃   ┠───────╂───────╂───┨
┃   ┃Avic Shenyang ┃J-8      ┃  144┃
┃   ┃       ┃J-11A     ┃  95┃
┃   ┃       ┃J-11B, J-11BS ┃  110┃
┃空 軍┃       ┃J-11D     ┃   1┃
┃   ┃       ┃J-16     ┃   4┃
┃   ┠───────╂───────╂───┨
┃   ┃Sukhoi    ┃Su-27SK    ┃  43┃
┃   ┃       ┃Su-27UBK   ┃  32┃
┃   ┃       ┃Su-30MKK   ┃  73┃
┃   ┃       ┃Su-35S    ┃   4┃
┣━━━╋━━━━━━━╋━━━━━━━╋━━━┫
┃   ┃Avic Chengdu ┃J-10     ┃  23┃
┃   ┠───────╂───────╂───┨
┃   ┃Avic Shenyang ┃J-8      ┃  24┃
┃海 軍┃       ┃J-15     ┃  15┃
┃   ┠───────╂───────╂───┨
┃   ┃Sukhoi    ┃Su-30MK2   ┃  24┃
┣━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━╋━━━┫
┃    合         計    ┃ 1,438┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┻━━━┛
b. 航空機の開発整備

J-20

 中国国営中央TV (CCTV)が3月9日にJ-20が空軍に実配備されたと報じた。 J-20の配備が公式に確認されるのは初めてである。
 全国人民代表大会の開会期間中に配備を明らかにしたのは、国威発揚の意図していると見られる。 (産経 03/10)

 中国中央電視台(CCTV)が3月9日、J-20 2機が各種フォーメーションで飛行する映像と共に、J-20が就役したと報じた。 CCTVは就役機数を明らかにしなかったが、 まだごく少数と見られる。
 一方、中国メディアは2017年内に相当数が配備されると報じている。(JDW 03/22)
 中国のオンラインフォーラムに載ったJ-20の画像から、J-20に新型のターボファンエンジンが搭載されたことが分かった。
 J-20の試作段階で国産のWS10エンジンを搭載していたが、量産機にはロシア製のSaturn AL-31FNが搭載されていた。
 今回の新型エンジンは排気口の形状からTVCが行われる模様で、排気口の花弁がF-35搭載のF135エンジンと似たステルス製を考慮した形状になっている。 (JDW 09/13)

 人民網が9月29日、中国国防部新聞局局長で国防部報道官の呉謙上級大佐が9月28日の定例記者会見で、J−20はすでに部隊に配備され試験飛行が順調に進んでいる と述べたと報じた。
 中国中央TVは軍事専門家の話として、J−20が東部沿岸や南シナ海などの戦略的に重要な地域に配備される可能性もあるとしたうえで、中国軍のJ−20の調達規模は 数百機になると予測しており、比較的安価なJ−31と混合運用することになるであろうと報じた。 (RC 10/03)

 国営中国中央TV (CCTV)の軍事チャネルであるChannel 4が10月23日、CAC社製J-20が間もなく量産に入ると報じた。 番組では過去最大の5機のJ-20が隊形を組ん で飛行する様子が報じられた。
 番組で同社の代表は、2020年末までに100機以上を生産すると述べた。(JDW 11/01)

J-31

 中国のウェブサイトにFC-31二次試作機の画像が流れた。 FC-31二次試作機については2016年12月23日に試験飛行が行われたとChina Dailyで報じられていた。
 FC-31二次試作機の全長は17.3m、最大離陸重量は28tと、一次試作機の16.8m、25tに比べて大きくなっている。 (JDW 01/11)

 前部胴体、コックピット、尾翼、主翼などに大幅な改良を行ったFC-31の試作2号機が2016年12月に飛行した。 (AW&ST 01/09)

 SAC社が開発しているFC-31/J-31/F-60は2012年の殊海航空展で初公開され、2014年の同展で飛行が初公開されたがステルス性を満足しなかった模様で、改良され た第二次試作機が2016年に12月に初飛行した。
 第二次試作機は全長が50.8cm長く、重量も3t増加しており、機体の外部形状もRCS低減のため変えられている。 更にIRST装置も付加されている。 (JDW 05/10)

次世代爆撃機

 中国の海軍中将が2016年12月7日、ウェブサイトChina Military Onllineで中国の次世代爆撃機について、名称がH-20であることを明らかにすると共に、米空軍の B-2並の特性を持つことを明らかにした。(JDW 01/04)

J-10B SEAD機

 中国のウェブページに8月10日、SEAD装備を搭載したJ-10Bの画像が掲載された。
 SEAD J-10BにはKh-31 ARMの中国型であるYJ-91や、K/RKL007A ESM/ECM装置を搭載している。(JDW 08/23)

水陸両用飛行艇

 AG 600水陸両用飛行艇が初飛行した。(CD 03/10)

 中国が開発している飛行艇AG600が初飛行した。 初飛行は40km×60kmの空域を高度3,000m以下で行われた。
 世界最大の飛行艇であるAG600は陸上の飛行場でも離着陸できる。
 全長37m、翼端長38.8m、高さ12.1mのAG600は、最大速度500km/h、滞空能力12時間、航続距離4,500kmで、海南省三亜を離陸すれば南シナ海全域を哨戒飛行すること ができる。(東亞 12/25)

艦載 AEW 機

 中国のブログ上に、武漢にある空母甲板のモックアップ上にAEW機のモックアップが乗せられている不鮮明な画像が流れた。
 このAEW機は外観がHaweyeとよく似た双発機で、全長が約18mとHawkeyeの17.5mとほぼ同じである。 (AW&ST 02/20)

c. 海外からの導入

Su-35

 TASS通信が2016年12月14日、中国が24機発注しているSu-35の最初の4機が12月25日までに納入されると報じた。
 2015年11月に総額$2B(1機あたり$83M)で発注されたSu-35 24機は、2016~2018年に納入されることになっている。 (JDW 16/12/21)

 中国の英字紙China Dailyが1月6日、Su-35 4機が、2016年12月下旬に中国に引き渡されたと報じた。 ロシアは$2.3Bで24機を中国に売却する契約を交わしている。
 中国軍のニュースサイトは、中国国産機の性能が上がったことによりSu-35の市場価値が下がることを懸念したロシアが、最近になって供与に積極的になったと説明 している。(時事 01/06)

 中国が24機購入するSu-35の最初の4機が、2016年12月25日に河北省滄州市にある空軍の飛行訓練基地に到着した。
 Su-35はロシアが第四++世代と位置づける戦闘機で、中国が初の輸出先になった。(JDW 01/11)

 中国が2016年12月末に、24機発注していたSu-35の最初の4機を受領した。 全24機は 2018年までに全機が納入される。
 Su-35はロシアが第四++世代に位置づける戦闘機で、高度36,089ftをMach 2.25で飛行する。 (JDW 01/18)

ウクライナからの航空機エンジン導入

 貿易促進のため中国を訪れていたウクライナの経済発展相が5月15日、同国の航空機エンジンメーカであるMotor Sich社が中国のSkyrizon社から$250Mを受注したこと を明らかにした。 その中でCM搭載用の MS400エンジンの中国内での組み立てにも合意している。
 Motor Sich社は2016年11月に開かれた殊海航空展に、軍用のAI-222シリーズを含む各種航空機エンジンを出展している。 AI-222シリーズのAI-222-25はL-15練習機 が採用しているほか、中国での生産が開始されるAn-225 Cossack戦略輸送機にも搭載されている。 (JDW 05/24)

d. 作戦支援機の増強

AEW&C

 中国海軍の乗組員訓練や電磁干渉試験などを行っている武漢通信技術大学で撮影された、中国版E-2 HawkeyeであるJZY-01の画像である。 (CD 01/31)
【註】 :  空母にはAEW機の搭載が必須であることから、JZY-01の存在は注目される。

 中国Weiboに1月26日、空母の地上モックアップにE-2に似たAEW&C機の実大モックアップが置かれている画像がアップされた。 (JDW 02/08)

(エ) 各種戦術ミサイルの開発

a. MRBM / SRBM

DF-15B / DF-16

 中国陸軍のロケット部隊が2月上旬行った演習で、DF-15BとDF-16の展開能力を誇示した。
 China Military Onlineは2月4日、豪雨下を想定した演習でDF-15Bを起立させるロケット部隊隊員の様子を報じた。 DF-15Bの射程は800kmという。
 これとほぼ同時にChiba Daily紙がこの演習で、DF-16のTEL数両が走行している様子を報じた。 DF-16には空力形状のRVを搭載した原型のほか、DF-15B同様に機動 可能なRVを搭載した新型もあるとみられている。 さらにMIRV弾頭3発を搭載するとの報道もある。 DF-16の射程は800~1,000kmと見られる。 (JDW 02/15)

 中国国防省が5月9日、米韓が配備したTHAADに対抗したミサイルの試験を渤海湾に向け行ったと発表した。
 ミサイルの種類と実施時期は明らかにしなかったが、発表の2週間前に中国のウェブ上に内モンゴルで行われたミサイルの試験映像で切り離されたロケットモータ が写っており、E/DF-26Bと表記されていたことから、渤海湾に向け発射されたのがDF-26と推測される。 (JDW 05/17)

DF-17

 香港紙明報が12月29日、中国ロケット軍が11月に極超音速兵器(HGV)を搭載する推定射程1,800~2,500kmの次世代BM DF-17の発射試験を2回実施したと報じた。
 発射実験は11月1日と15日に実施し、このうち1日の試験では1,400km飛行、搭載されたHGVは新疆ウイグル自治区に設定された攻撃目標に命中したとしている。
 米情報筋は、DF-17が2020年ごろに実戦配備が可能な能力を獲得するとみているという。
 HGVは現在のBMDSでは迎撃困難とされ、中国をはじめ米国やロシアも開発にしのぎを削っている。
 報道によると、中国は2014~2016 年にHGVの試験を既に7回行っている。(産経 12/30)

b. ASBM

 特記すべき記事はなかった。
c. MLR / MRL

SR 4 / SR 5

 NORINCO社がロシアのBM-21 122mm 40連装MRLとよく似たSR4 122mm 40連装MRLを開発した。 SR4は6×6車に20発入りポッドを2個搭載し、40発を30秒で以下の弾種を 斉射できる。

・散布地雷弾: 射程15km
・気体爆薬弾: 射程20km
・榴   弾: 射程30km
・鋼球入榴弾: 射程30km、40km、50km
・鋼球焼夷弾: 射程30km
 同社はこの他に122mm 40連装/220mm 12連装のSR5 MRLも開発している。(IDR 1月)
d. LACM

KD-63
 2016年12月末に中国のネット上に、H-6Kが6ヶ所ある翼下パイロンに250kg爆弾をそれぞれ6発ずつ、計36発搭載した画像が流れた。 また12月28日にはCCTVがH-6Kか らKD-63 LACMが初めて発射される映像を流した。 KD-63は全長7.36m、射程200kmのEO誘導CMである。
 この他にH-6KがKD-88 TV/IIR誘導ミサイルを搭載している画像も公表されている。(JDW 01/18)

 射程180~200kmのKD-63はTV誘導式で、終末誘導にはIIRが用いられている。(JDW 08/16)

光学式精密誘導型 CJ-10K/KD-20

 中国空軍関連Web SiteのBlue Skyで、光学式精密誘導型と見られるCJ-10K/KD-20 LACM の画像が公開された。
 7月中旬に掲載された画像ではH6K爆撃機にKD-20 2発とYJ-63/KD-63 LACM 2発が搭載されているが、KD-20の先端には保護用のカバーがついていることから、EOま たはIRシーカが付いていると見られる。 新型シーカの付いた射程1,500kmのKD-20は KD-20Aと呼ばれると見られる。  KD-20はINSとTERCOMレーダ及び測地衛星を使用していた。(360 08/10)

 中国空軍組合をスポンサとするウェブサイトBlue SkyにCJ-10K/KD-20 LACMの光学誘導式精密誘導型の画像が載った。 1,500kmの射程を有するKD-20の光学誘導 式はKD-20Aと呼ばれるようで先端に保護カバーがつけられている。
 画像ではH-6Kの翼下にKD-20とYJ-63/KD-63 LACMが2発ずつ装備されている。(JDW 08/16)

e. ASCM

 中国の軍事雑誌Modern ShipsにType 052D駆逐艦がYJ-18対艦ミサイルを発射する画像が初めて掲載された。
 YJ-18はロシアの3M-54T (SS-N-27A) Kalibr-NKとよく似た三段推進の対艦ミサイルで、第一段はブースタ、第二段はCM、第三段はロケット推進弾になっている。
 中国はロシアから潜水艦発射の3M-54E (SS-N-27B、Club-Sの輸出仕様)を購入しているが、ロシアが3M-54の中国国内生産権を売却したか否かは不明である。 (JDW 09/13)
i. ARM

 特記すべき記事はなかった。
f. SAM

HQ-19 装備大隊の増強

 香港メディアの東網が中国軍事専門家や軍事メディアなどを引用して3月21日、中国軍が在韓米軍が配備中のTHAADに対抗してHQ-19を装備する大隊を新設し、24時間 戦闘準備態勢に入ったと報じた。 HQ-19は中国空軍が26個以上の連隊が装備している。
 中国空軍の防空司令部にはSAM大隊が70個あるが、長距離防SAMを装備している部隊は連隊級以上で30個ほどになる。 (中央 03/22)

g. AAM

PL-10

 PL-10は搭載機の機首方向大きくずれた目標を射撃できるTVC操舵を行うAAMで、パイロットのヘルメットサイトを介して目標にロックオンし射撃できる。 (CD 11/12)

PL-15

 2016年の殊海航空展以来、PL-10 SRAAMとPL-15 LRAAMを装備したJ-10やJ-20の画像をよく見かけるようになった。
 PL-15は射程200kmで米国のAIM-120D級のAAMである。 (CD 11/12)  米空軍は中国の長射程AAM PL-15に警戒感を示している。
 このミサイルはSAM並の大きさで小型尾翼以外に翼を持たず、射程は200kmと見られている。
 目標となるのはAEW機のような小回りのきかない航空機で、大型のJ-20を補完する兵器とみられる。
 2016年11月にはJ-16が新型AAM 2発を搭載している画像がブログ上に流れている。 (AW&ST 16/12/02)

(オ) 各種 UAV の開発整備

a. HALL UAV

 中国国営China Daily紙が3月9日、CASIC社が長期滞空ステルスUAVと近宇宙UAVを開発していると報じた。 また訓練用多目的ステルス標的機も開発中であるとい う。
 近宇宙UAVは高度20~100kmを飛行するという。(JDW 03/22)

 米National Interest誌が6月10日、「中国が米国空母を撃沈させる新たな手段を見いだした可能性がある」との記事を掲載した。
 中国公式メディアが、太陽光エネルギで飛行する大型UAV CH−T4(彩虹−T4)が高度20,000m の高高度の飛行に成功したと報じた。 同機はBoeing 737よりも大き いという。
 中国のDF−21が注目されているが、ミサイル以上に重要なのが攻撃目標のリアルタイム情報となる。 CH−T4は偵察や監視、通信で多大 な効力を発揮するとみられ 、米国にとっては「空母キラー」になる可能性もある。(RC 06/13)

b. HALE / MALE UAV

殊海航空展で展示した三機種

 2016年11月1~6日に開かれた殊海航空展で、3機種のUAVが初披露された。 AVIC社はWingLoongプロペラ推進UAVのその発展型WingLoong2とCloud Shadowジェット推 進UAVを、CASC社はCH-4の発展型であるCH-5ジェット推進UAVを展示した。
 これら3機種は、長時間滞空性能、細長い翼、V字尾翼、機首近くに衛星通信用アンテナと、ほぼ同じ形状をしている。 (AW&ST 16/11/07)

昇 龍

 国営China Daiky紙が2016年12月6日、Xianglong(昇龍)HALE UAVの量産型が近く軍へ納入されると報じた。
 Xianglongは主翼である後退翼後方にある前進翼の先端が後退翼と連結した独特な翼形状をしている。
 性能諸元は公表されていないが、Jane航空年鑑によると翼端長23m、最大離陸重量7,500kgで、巡航速度400kt、実用上昇限度18,000m、航続距離4,000nm、搭載能力 650kgの性能を持つ。(JDW 01/04)

翼 竜-2

 人民日報が2月28日、中国が開発した偵察攻撃一体型の多目的UAV翼竜-2が27日に初飛行に成功したと報じた。 同紙は、中国の偵察攻撃一体型UAVが世界の一流水準 に到達したことを意味すると強調している。
 中国メディアによると、翼竜-2は翼竜-1と比べ性能が格段に向上し、上昇限度9,000m、最高速度は370km/hに達し、滞空能力は20時間という。 (東京 02/28)

 中国最新のUCAVであるWing Loong Ⅱ (WL-2 : 翼竜-2)が2月27日に初飛行した。 WL-2の上昇限度は9,000mで20時間の滞空能力を持つ。
 WL-1の搭載能力が100kgであったのに対し、WL-2は480kgの武器を翼下6ヶ所に搭載する能力を有する。 (DN 03/01)

 新華社が、MQ-9 Reaper似の成都航空機製Wing-Loong Ⅱが、2月27日に31分間の初飛行を行ったと報じた。
 Wing-Loong Ⅱは翼端長36ft、重量9,300-lbの大きさである。(AW&ST 03/06)

 新華社が2月28日、Wing Loong Ⅱ武装、偵察用UAVが海外からの受注を確実にしたと報じた。 この商談は中国にとって今まで最大の輸出商談であるという。
 この商談はWing Loong Ⅱが初飛行した27日に公表された。(JDW 03/08)

 パリ航空展では大方の予想に反し、AVIC社の子会社である成都航空機製造(CAI)社が、Wing Loong Ⅱの実大模型を展示した。 このモデルは4月にメキシコで開か れた航空宇宙展でも展示されている。
 2月に初飛行した自重4,200kgのWing Loong ⅡはWing Loongを改良したMALE UAVで480kgの搭載能力を持ち、YJ-9E対艦ミサイル、Blue Arrow 7、TL-2、AG-300など のASMやLS-9 SDBを搭載できる。(AW&ST 06/26)

WJ-600A/D

 中国の大型UAVではCHファミリやWing Loongシリーズが一般的で、CHシリーズは10ヶ国以上で採用されており、Wing Loong Ⅱは先週初飛行したが、CASIC社もWJ-500 、WJ-600、 WJ-600A/DなどのUAVを開発している。
 特に最新型のWJ-600A/Dはステルス性能を持ち、他の中国製UAVの最大速度が280km/hであるのに対し700km/hの高速を誇っている。
 CASIC社はさらに高度20~100kmを飛行する準衛星UAVにも関心を示している。(CD 03/09)

CH-4

 CASC社がCH-4 MALE UAVの性能向上を行った。
 2017年初期に配備された性能向上型CH-4は 20kgの対装甲SAL誘導ASMのAR-2を装備できる。 (IDR 9月)

CH-5

 2016年の殊海航空展で初公開されたCH-5 UAVが7月14日に初飛行した。
 開発者によるとCH-5は、監視、偵察、哨戒、照準、打撃が可能であるという。(CD 07/15)

 中国最強のUAVであるCH-5が、7月14日に河北省で初飛行した。
 CH-5は全長11m、翼端長21m、最大離陸重量3.3tのMALE UAVで、航続距離10,000km以上、搭載武器1,000kg、その他の搭載装備200kgの性能を持つ。 また滞空性能 は60時間で、ASMを搭載しても30時間滞空できる。
 CH-5は両翼のパイロンに45kgで射程10kmのAR-1 ATGMを合わせて8発と、20kgで射程8kmのAR-2SAL誘導ATGM 4発入りポッド合わせて8発を搭載できる。 (CMR 07/16)

 中国日報が7月15日、量産型CH-5 UAVが14日に初飛行に成功し、CH-5の量産が開始されたと報じた。 (JDW 07/26)

 試作機が2015年8月に初飛行したCASC社製CH-5 MALE UAVの量産型機が7月14日に初飛行した。
 CH-5は全長11.3m、翼端長21m、最大離陸重量3,300kgで、機内搭載200kgを含む1,200kgの搭載能力を持つ。
 武装では45kgのAR-1及び20kgのAR-2を装備できる。 AR-1は5kgの炸薬を搭載してMach 1.1で飛翔し、CEP=1.5mの精度を持つ。 (IDR 9月)

 CACS社が9月21日、CH-5 MALE UAVによる80kg PGMの投下試験に成功した。
 試験は高度11,482ftからLOBLで行われた。 またAR-1 45kg級 SAL ASMの発射にも成功している。 AR-1は射程8km、弾頭重量10kg、Mach 1.1で飛翔しCEP=1.5m という。
 CH-5は全長11.3m、翼端長21m、MTOW 3,300kgで、機内に200kgを搭載できるほか 、各翼には250kgの武装ができるパイロンが3箇所ずつある。 更に胴体内側2箇 所に150kgずつ、外側2箇所に100kgずつを搭載できる。
 しかし同社は、機内搭載能力を500kgに、胴体内側に300kg、外側に120kgを搭載できることを目指している。 (IDR 11月)

TYW-1 威力偵察 UAV

 北京UAV技術社がBZK-005 MALE UAVを元にしたTYW-1威力偵察UAVを公表した。
 TYW-1は翼端長18m、全長9.85m、全高2.5mで、最大離陸重量はBZK-005の1,250kgより重い1,500kgである。
 7.5kgの武 装が可能で、上昇限度7,500m、滞空能力40時間、最大速度200km/hの性能を持つ。
 一方BZK-005は2016年4月に南シナ海Woody島近くで目撃されたほか、2013年9月には東シナ海の尖閣諸島付近で航空自衛隊F-15Jの要撃を受けている。 (360 11/15)

 中国の北航UAV社が11月13日、BZK-005の発展型とみられるTYW-1武装偵察UAVを発表した。 TYW-1は全長9.85m、翼端長18mの双胴型で、MTOWはBZK-005の1,250kg より重い1,500kgという。
 最大搭載量は翼下に4箇所に合わせて370kgで、上昇限度7,500m、滞空能力40時間、最高速度200km/hの性能を持つ。
 また搭載したEO装置は高度5,000mで50kmまで監視できる。(JDW 11/22)

TB001/TB002 双胴双発 UAV

 中国唯一の双胴双発UAVであるTB001が9月26日に初飛行したと新華社が報じた。
 TB001は全長10m、翼端長20m、最大離陸重量2,800kmで、上昇限度8,000m、滞空能力35時間、航続距離6,000kmの性能を持つ。
 TB001は衛星経由の誘導が可能で、胴体下にはEO照準センサを持ち、両翼にはそれぞれ100kgの武器を搭載できるパイロンを持つ。 (360 10/12)

 中国のTengoen社が南寧市で開かれたChina-ASEAN Expoで2種類の固定翼UAVを公表した。
 TB002は全長10m、翼端長20m、MTOW 2,800kgの双胴型武装UAVで、滞空能力35時間、航続距離6,000kmの性能を持つ。
 両翼下にそれぞれ100kgの武器が搭載可能である。(JDW 09/27)

c. TUAV

AVIC社の攻撃型VTOL UAV

 中国国営AVIC社が11月12~16日にドバイで開かれた航空展にA-Hawk ⅠとA-Hawk Ⅱの2種類の攻撃型VTOL UAVを出品した。
 直径が3.47m、MTOWが175kgのA-Hawk Ⅰは65kgの搭載能力と 30分間の滞空能力を持ち、上昇限度は3,000m、速力60km/hで 発射機2基を持つ。
 チルトロータ4基のA-Hawk ⅡはMTOW 120kg、滞空能力4時間、速力60km/h、上昇限度5,000mで、偵察、攻撃、貨物輸送が 可能である。(JDW 11/29)

VTOL UAV

 中国のVTOL UAVではBH-90/160、AW500W/AV500W、QY-1/V750、Ziyanなどの新機種が報告された。 (IDR 3月)

Tengoen社の UAV

 中国Tengoen社が、9月12~15日に南寧市で開かれた第14回ASEAN ExpoでVTOL UAV 2機種と固定翼UAV 2機種を公開した。 (360 09/19)

TB001

 双発UAV TB001は、全長10m、翼端長20m、最大離陸重量2,800kgで、滞空能力35時間、航続距離6,000kmの性能を持つ。
 各翼下のパイロンにはそれぞれ100kgの武器を搭載できる。

TA001

 プロペラ後置式の単発機で、最大離陸重量1,200kg、滞空能力24時間のUAVで、左右の翼下に武器またはEO照準器を搭載できる。

HA001/HA002 VTOL UAV

 中国のTengoen社が南寧市で開かれたChina-ASEAN Expoで2種類の回転翼UAVを公表した。 (JDW 09/27)

HA001: MTOW 450kg、滞空能力6時間

HB002: MTOW 280kg、滞空能力5時間

d. 特殊用途 UAV

AT200 輸送用 UAV
 中国科学院工程熱物理研究所が10月27日、中国が南シナ海の軍事施設への補給に新開発のAT200輸送用UAVを使用する計画であることを明らかにした。
 MTOW 3.4t、搭載能力1.5tのAT200はニュージーランドのPacific Aerospace社製P-750を同研究所がSF Expressグループと共同でUAV化したもので、10月26日に初 飛行している。
 AT200は巡航速度313km/h、航続距離2,183km、実用上昇限度6,100mで8時間の滞空能力を持ち、200mの滑走路で離着陸できるという。 (JDW 11/08)
(カ) 各種電子兵器

b. レーダ

対空レーダ

 中国CETC社が、今まで米国やロシアの市場であったアジア太平洋及び中東を狙った長距離レーダを公開した。 (IDR 12月)

SLC-7

 移動式のL-band MFRで、性能はEL/M-2050S Greeb Pine Block-Bを凌ぐという。
 RCS=0.05㎡の捕捉性能は探知確率80%で450km、高度は30,000mで、RCS=001㎡のBMは90% で300km以上という。

YLC-8B

 固定レーダ網の補完用で、アンテナは6rpmで回転する。 戦術航空機の捕捉は550km以上、ステルス機の捕捉は350km以上で可能で、向かってくるミサイルは700km で捕捉できるという。

対砲迫レーダ

 中国CETC社が、SLC-2対砲迫レーダ(WLR)の新型SLC-2Eを開発した。 SLC-2Eは完全ディジタルのAESAレーダで対空用にも使用できる。
 対砲迫では155mm砲弾を50km、300mmロケット弾を90kmで捕捉できる。
 対空モードではアンテナを6/12/30rpmで回転し、RCS=2㎡の目標を距離260km、高度15,000mで捕捉できる。 (IDR 12月)

b. 電 子 戦

電子戦全般

 ロシアがウクライナで高度な電子戦を繰り広げたのに続き、中国も太平洋地域で同様な能力を見せている。
 米国防総省が議会に対して行う中国の軍事力に関する年次報告の2016年版では、特に中国がGPSシステムやJTIDSに対する妨害で米国のC4ISRシステムを麻痺させよう としていることやSARレーダに対する妨害について警告している。(DN 03/22)

電子戦装置

 香港のSouth China Morning Post紙が元南京軍区副司令官の話として3月14日、中国にはTHAADのレーダを無力化する手段があり、われわれはTHAADの運用が開始され る前に装置の配備を完了するだろうと報じた。
 韓国への配備を阻止できないとの分析を示した上での発言で、配備を撤回させる見通しが立たないなか、国内世論に向けた強気のメッセージの意味合いもありそうで ある。(産経 03/19)

 中国国防部報道官が4月27日、THAADの韓国配備に対抗して新型装備の試験を続けていると発言したが、香港のSouth China Morning Post紙はこの新型武器について 北京の軍事アナリストの話として、ハードとソフトで破壊する兵器と指摘している。
 ハードキルではDFシリーズのS/MRBMを使用することが可能で、ソフトキルについてはTHAADのレーダを無力化するためのEMP弾とECM技術を使用する可能性があるとし ている。(RC 05/02)

(キ) 海外からの導入

S-400 の導入

 Interfax通信が、ロシア国営武器輸出企業Rosoboronexport社社長が4月26日、S-400の中国への供給を開始したと明らかにしたと報じた。
 現在、S-400の構成品を順次輸送しており、供給が完了するのは数年先になる見通しだという。 (日経 04/26)
WaterCar Panther の導入

 米海軍の特殊部隊SEALに対抗して、中国がWaterCar社製のPanther 4×4ジープを導入した。 (CD 12/09)
【註】 :  当該装備はWaterCar社製の民生用で$155,000で市販されている。 中国がこれを輸入して軍用としているものとみられる。

(ク) その他の武器

ST1 装輪駆逐戦車

 ST1装輪駆逐戦車は、中国軍が装備している105mm低反動砲を装備したZTK-11の輸出仕様で、105mm砲は同社製で初速1,540m/sのAPFSDS弾であるBTA2を発射する。 (IDR 12月)

A1150/B850/C1500 USV

 中国CASC社が青島で開かれた2017国際海洋技術展に、一連のUSVを出展した。
 出展したのは全長8.5mのB850、11.5mのA1150、15mのC1500で、C1500はASWを任務にするという。
 B850は全長8.5mの組み立て式ボートに船外機を取り付けたもので、速力40kt、連続使用可能24時間、航続距離107nmの性能を持つ。 (360 09/21)

JAM-1000/2000/3000 C-UAV

 青島を本拠にするDigitech社が、C-UAVを目的にしたRF妨害装置JAM-1000、JAM-2000、JAM-3000の3種類を公開した。
 JAM-1000は車両屋上搭載型で2.4GHz及び5.8GHzの通信妨害及びBeiDou、GLONASS、GPSなどの妨害を行い、有効範囲は300mである。
 20kgのJAM-2000は8kgと12kg分離でき、三脚付きで24kgのJAM-2000/-03は人力可搬式である。 バッテリは80分間の連続使用に耐え25Wで0.8km、50Wで1.2km、 100Wで2.1kmに対し有効である。
 JAM-3000は800mにわたり120゚の範囲を妨害できる。(IDR 12月)

車載 C-UAV システム

 中国国防省が11月28日、車載C-UAVシステムの画像を公開した。
 システムは目標を捕捉するレーダと妨害装置を車載ISO標準コンテナに収納し、屋上にEO/IR追随機とレーザ照射装置を搭載している。 (JDW 12/06)

カ. 高度な技術力保持

(ア) D E W

対空レーザ兵器 Silent Hunter

 中国のPoly社がIDEX展で対空レーザ兵器Silent Hunterを公開した。
 Silent Hunterは南アフリカで開かれたAAD展で公開されたLASSの発展型で、ファィバーレーザを用いて5層の2mm鋼板を800m、5mm鋼板を1,000mで貫通できるという。
 LASSの出力は30kWで有効距離は4,000mと言うが、Silent Hunterの出力は 30~100kWである。  同社によるとSilent Hunterは2016年9月4~5日に杭州で開かれたG20サミットでの警備に使用されたという。 (JDW 03/01)

(イ) 超高速飛翔体

a. 高速滑空飛翔体

 2020年を目指しているとみられる中国のDF-ZFはBMにより超高速に加速されたのち滑空飛行する。 (AW&ST 02/20)

 最も注目されるのは最近行われたDF-ZF/WU-14 HGVの飛翔試験である。(AW&ST 04/17)

b. 電磁砲

 中国の英字紙China Dailyが10月10日、中国の海軍工程大学が電磁砲(レールガン)の開発を進めていると発表したと報じた。
 中国は電磁砲の研究に着手しているとみられてきたが、公式に確認されたのは初めてという。 (時事 10/10)
c. 高速弾

 China Dailyが5月27日、CASICが弾丸の10倍以上の早さの目標を撃墜できる超高速迎撃弾を開発したと報じた。 China Dailyは中国の専門家の話として、迎撃高度 を100km以下と見ている。
 弾丸の10倍の早さの目標とは、弾丸の速度が通常1,200km/hであることから、12,000km/hの迎撃が可能ということを意味すると見られる。 (JDW 06/07)
【註】 :  1,200km/hとはほぼMach 1で、この記事で言う「通常の弾丸速度は1,200km/h」というのは少し過小評価ではないかと思われる。
d. 高速飛翔体用エンジン

空中発射ミサイル用の固体燃料ラムジェットエンジン

 環球時報が6月5日、中国が空中発射ミサイル用の固体燃料ラムジェットエンジンを開発し、既にミサイルに採用できる段階にあると報じた。
 このエンジンはJ-20やその他の航空機が装備するAAMやASMに採用可能で、Mach 5で300kmの飛翔が可能になるという。 (JDW 06/14)

Scramjet エンジン

 中国が2015年12月に、初めての国産スクラムジェットで高度30km、速度Mach 7を実現した画像を公表した。 (AW&ST 04/17)

Combined-cycle エンジン

 中国が2017年後半に、combined-cycleエンジンTRREの試作品による試験を計画している。
 TRREの実大機による最初の飛翔試験は2025年に予定されている。(AW&ST 04/17)

(ウ) ASAT

米ニュースサイトのWashington Free Beaconが8月2日、中国がASATの発射試験を7月23日夜に実施していたと報じた。
 米当局者によると、発射されたのは新型ASATのDN-3で、中国北西部の酒泉衛星発射センタから打ち上げられたが上空で作動不良を起こし、試験は失敗したとして いる。
 同サイトによればDN-3の発射試験は2015年と2016年にもそれぞれ1回確認されている。(産経 08/04)
(エ) 艦 船

a. 次期空母に電磁カタパルト?

 中国メディアの「観察者」が7月6日、上海で建造中の次期空母に電磁カタパルトが搭載される可能性もあるとの海軍少将の発言を紹介した。
 電磁カタパルトはリニアモータを利用した装置で、整備性と信頼性、出力向上の利点があり、さらに射出速度の細かい制御やスムーズな加速で航空機の負担が低減 するなどの特長もあるとされ、米国で試験中のGerald R. Fordには電磁カタパルトが搭載されている。 (RC 07/07)
b. 積極的な次世代艦の建造への挑戦

 中国が、アブダビで開かれているIDEX展に三胴型フリゲート艦の模型を出展した。
 展示では排水量2,450t、全長142m、幅32m、喫水6.2mで、速力25ktとあるが、量産型では30kt以上になると言う。 エンジンはMTU社製のディーゼルが検討されてお り、3基のウォータージェットで推進する。
 主砲は76mmか100mmで、SAM用に1基のVLSが装備されてしまう。(DN 02/21)
【註】 :  米海軍の三胴型LCSであるIndependent級は40kt以上であるのに対し、せいぜい30ktしか出ないのに三胴型とした意味が分からない。
 たしかに32mと2,450tにしては幅の広い甲板が確保できるが、喫水が6.2m(Independent級は4.4m)にもなり浅深度海域での活動が大きく制約される。
c. 艦船推進用永久磁石電動機

 中国国営の建艦メーカであるCSIC社が10月23日にWeChat上の公式ページに、艦船の推進用となる永久磁石電動機を開発したととする声明を掲載した。
 それによると永久磁石電動機は従来の誘導電動機に比べ高出力・低雑音が実現できるため、艦船、特に原子力潜水艦の推進機として優れており、この分野の技術で中 国は米国を抜いたという。(CD 10/25)
【註】 :  永久磁石(同期)電動機とは回転子に永久磁石を使用した同期発動機で、誘導電動機が必要とする整流子、ブラシ、界磁励磁回路、スリップリングが不要で、高効 率が期待できる反面、回転速度が電源周波数によって決まるため、速度を変化させる目的には専用の可変電圧可変周波数制御インバータが必要である。

 中国国営ニュースサイトであるGlobal Timesが海軍少将の言葉を引用して10月24日、米英に先んじて永久磁石電動機を開発したと報じた。
 この電動機は中国で建造される在来型潜水艦に搭載されるという。(JDW 11/08)

d. 欧米より進んでいると自画自賛する統合電気推進技術

 中国海軍のMa少将がCCTVで、中国は欧米より進んだ統合電気推進(IEPS)技術を有していると述べた。
 Ma少将によると、中国海軍のIEPSは米海軍のZumwqalt級や英海軍のType 45より優れているという。(JDW 06/14)
e. 中国海軍近代化計画の詳細

 中国の複数のウェブサイトに、趙退役海軍少将が東北高等工科大学で8月21~22日に行った中国海軍の近代化計画に関する講演内容の詳細が掲載された。
 その主要要素は以下の通りである。(JDW 09/06)
・効率化されたサイズの攻撃型原潜(SSN)

・在来型潜水艦に搭載する原子力の補助エンジン

・艦載ASBM

・次世代駆逐艦

 この講演ではType 093 SSNと似た形状のセイル前方にCM 12発を装備した7,000t級SSNのイメージ図が紹介されたが、これがAsian Military Review誌が2015年に 報じた2020年代に量産に入るというType 095なのかは分からない。 中国海軍は14隻のType 095 SSNを建造する計画であるという。
 同少将はまた、従来型潜水艦に発電用として搭載する小型、低圧、低出力の原子力エンジンについても言及した。
(オ) その他の先進技術

a. U S V

 中国CASC社が海洋科学技術展でD3000 USVを公表した。
 D3000は全長30mで540nmを90日にわたり航行できる。
 武装としてはType 730 30mm CIWS 4門、重魚雷発射管4本、軽魚雷発射管8本を持つ。
 D3000にはMFRとバウソナーを装備する艦隊護衛用のD3000Aと、4発入り箱形発射機2基を持つ対艦任務用のD3000Bとがある。 (IDR 11月)
b. 航空機から発射するロケットの開発

 China Daily紙が、中国最大のロケット製造企業である中国運載火箭技術研究院(CALT)の幹部が、上空で航空機から発射するロケットを開発する計画を明らかにした と報じた。 ロケットはY-20に搭載し、一定の高度に達したら投下、点火すると言う。
 同社は100kgの衛星を地球の低軌道に打ち上げることができる固体燃料ロケットの設計を完了、将来は200kgの積載能力を持つロケットを開発する計画である。 (ロイタ 03/07)
c. 地表面効果飛翔体(GEV)技術を取り入れた CM の開発

 中国が地表面効果飛翔体(GEV)の技術を取り入れたCMを開発している模様である。 ネットに流れた売り込み用パンフレットの画像では海軍の水色の塗装が成され ている。 この飛翔体には'CH'とUAVであることを示す名称が付けられている。
 この飛翔体は最大離陸重量3,000kgで、1,000kgの搭載能力があり、1.5時間の滞空能力を持つという。 (JDW 05/10)
【註】 :  この記事で言うGEVとは従来WIGと呼ばれてきた技術を指すと思われる。 WIGはソ連が積極的に開発してきた技術で、中国も開発を行っている。

 CASCの研究所CAAAが開発したWIG効果を利用したUAVであるCH-T1が、ウェブ上で5月に公開された。
 CH-T1は全長5.8m、最大離陸重量3,000kgで、高度1~6mを最大巡航速度Mach 0.65で飛行し、実用上昇限度9,842ftの性能を持つ。
 搭載能力は1,000kgで、主力艦や構築物を破壊する破片効果弾頭のほか散布子弾も搭載でき、その際はパラシュートとエアクッションで回収することができる。 (IDR 9月)

d. 疑似衛星 UAV

 中国メディアが、CASC社が5月24日に、太陽電池UAV CH-T4の15時間に及ぶ飛行試験に成功したと報じた。
 CH-T4は外翼に上反角のある翼端長が45mのUAVで実用上限度20,000mを飛行する。
 搭載能力は十数㌔㌘で、4G/5Gの中継ができるという。(JDW 07/05)
e. UAV の群制御

 中国国営新華社通信が6月11日、中国の電機メーカCETC社が119機のUAVによる群飛行に成功したと報じた。
 これは同社が持つ今までの記録67機を更新するものである。(JDW 06/28)
f. 無人走行補給車両

 中国軍が7月16日、無人補給車両の走行試験映像を公開した。
 米国のHEMTTとよく似たこの車両は陝西自動車社製で、同社はオーストリアのSteyr社やドイツのMAN社と技術提携している。 (JDW 07/26)

g. A P S

 NORINCO社がMBTやAFVに装備するAPS GL-5の詳細を公表した。
 GL-5は捕捉距離100m、高低角20゚レーダ4基を装備する。
 公表されたMBT-3000/VT-4 MBTへの搭載例では、砲塔上の全面に2基、砲塔の後方に2基を搭載していた。 (360 08/20)

 NORINCO社が8月15~16日に内モンゴルで開かれた"機甲の日"で同社製のGL5 APSを公開した。 このイベントには50ヵ国から230名が招待された。
 GL5 APSは4基の高低上を20゚で捜索するレーダと4基の発射機で構成されている。 レーダが100m以内に飛来した目標を捕捉すると発射機からロケット弾が発射さ れ7m先で破裂して、その破片による弾幕で目標を10m±1mで無力化する。
 展示では180m先から発射された120mmの対戦車ロケットをGL5が2発の迎撃弾で破壊して見せた。 (JDW 08/30)

h. 画像レーダ

 環球時報が6月13日、中国科学大学(CAS)が従来の30倍の解像度を持つ画像レーダを開発したと報じた。
 このレーダは試験で、高速で飛翔するBoeing 737の画像を、エンジン、尾翼に至るまで識別できたという。 (JDW 06/28)
(カ) AI 技術

 CNASが11月28日の報告で、中国軍がAI技術で大きなブレークスルーを迎えようとしているとした。(JDW 12/06)
(キ) 米国の技術で作られている中国の兵器

 3月に行われた各種報告で、中国の兵器が米国の技術で作られていることが明らかになった。
 一例として、NASAやその他の研究機関で働いた中国人が、帰国後に米国の高度技術を使って兵器開発を行っていることを挙げている。 (JDW 04/05)
キ. 新たな戦闘様相への対応

(ア)

(イ) 漁船群団の予備軍化

 台湾の聯合晩報が2月3日、遼寧の艦隊が2016年12月末と2017年1月に台湾周辺を航行した際、警戒監視中の台湾海軍フリゲート艦康定を名指しし、 遼寧から10nm以上を保つよう求めたと報じた。
 しかし、実際には康定遼寧に接近しておらず、レーダでは艦名まで特定できないことから、康定を発見した中国漁船が中国軍に報告し、 台湾軍の情報漏洩を疑わせる心理戦に用いた可能性がある。(産経 02/03)
ク. 軍事産業の振興と武器輸出

(ア) 軍事企業の再構築

 中国の国防科学技術生産本部(SASTIND)が1月24日、AVIC社傘下の中国航空研究所(CAI)とロシア航空エンジン中央研究所(CIAM)が1月中旬に航空機用エンジン開発で の協力協定に署名したと発表した。(JDW 02/01)
(イ) 積極的な武器輸出

世界3位の武器輸出国

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2月20日に世界の武器取引に関する最新の報告書を発表し、2012~2016年における主要な通常兵器の取引量が2007~2011年 と比べて8.4%増加し、冷戦終結以来最大規模になったと発表した。
 最大の輸出国は米国で21%増え全体の33%を占め、2位は4.7%増のロシアで全体に占める割合は23%である。 中国は74%増やし世界3位で、全体のシェアも3.8%から6.2% に拡大した。
 輸入ではアジア・オセアニア地域で7.7%増加し、輸入全体の43% を占め地域別トップとなった。 最大の武器輸入国はインドで世界全体の13%となり、中国の4.5%や オーストラリアの3.3%、パキスタンの3.2%、ベトナムの3%の4ヵ国が上位10位に入った。(産経 02/21)

UAV でのシェア拡大

 新華社が2月27日、中国が開発した新型のUAV 翼竜-2に海外から過去最大の受注があったと報じた。 発注した国や規模は明らかにされていない。
 中国西部で27日に31分間の初飛行を行った翼竜-2は翼端長20m余りで、偵察に加え攻撃の能力も備えている。
 中国は低価格を売りに米国やイスラエルから市場シェアを奪おうとUAVの開発を加速しており、欧米諸国が販売をためらう国々への売り込みを目指している。 (ロイタ 02/28)

 サウジアラビアのKACST社が3月16日に中国のCASC社と、UAVの製造に関する合意文書に署名した。
 合意内容の詳細は明らかにされていないが、サウジ軍はすでにCASC社製のCH-4 MALE UAVを装備している。 (JDW 03/29)

タイへの輸出拡大

 タイ軍事政権が4月4日の閣議で、陸軍が老朽化したM-41軽戦車の後継として中国からVT-4戦車10両を約20億バーツ(64億円)で購入することを承認した。
 タイはさらに11両を調達する計画である。 陸軍はティラチャイ前陸軍司令官時代にも中国との間でVT-4 28両の購入契約を結んでいる。
 プラユット暫定首相は、西側諸国製の価格は3倍するため予算上の制約で中国製を選定したと述べた。 (時事 04/04)

 タイ国防相が4月4日、中国NORINCO社からVT-4 MBT 10両をTHB2B($58M)で追加購入することを明らかにした。 また更に11両の追加購入交渉も後日開始することも明 らかにした。
 VT-4 MBTはNORINCO社製MBT-3000の輸出仕様で、タイは既に28両を発注して2017年末までに納入されることになっており、11両の追加を含めると49両が揃うことにな る。(JDW 04/12)

 タイ陸軍が中国NORINCO社に、VN-1 8x8 APCを発注した。 発注したのは一次分34両である。
 VN-1はNORINCO社製ZBD-09の輸出仕様である。(JDW 04/12)

 タイ海軍が5月5日、中国のCSOC社と、Type 041元級潜水艦のタイ型であるS26T潜水艦1隻を購入する契約を行った。
 契約額はTHB13.5B ($390M)で、引き渡しは2023年になる。(JDW 05/17)

 NORINCO社が8月15~16日に内モンゴルで開かれた"機甲の日"のパレードに、タイへ輸出するVT4 MBTの一次生産分を参加させた。 (JDW 08/30)

 タイ国防省が10月2日、陸軍がNORINCO社に発注したVT4 MBTの一次納入分28両が、契約から18ヶ月後となる10月中旬に、タイ海軍のSattahip基地で陸揚げされる ことを明らかにした。(JDW 10/11)

カタールへの戦域 SSM 輸出

 BP12Aは軍及び軍団が装備している戦域SSMで、敵の指揮所、空港、ミサイル発射機、ロケット及び長距離砲中隊、通信所、集結地、兵站・輸送拠点など、縦深作戦 に使用する。
 尤も、カタール軍が中国軍と同じ構想でBP12Aを装備しているかどうかは分からない。(CD 12/18)

(ウ) 国際武器市場でのシェア拡大

 ル・モンド紙が3月9日、中国の武器輸出が急増しアフリカの2/3を超える国が中国製武器を使用していると報じた。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、中国は2011年から2015年までの間に世界3位の武器輸出国となっている。 中国の武器輸出シェアは米国の33%、ロ シアの25%%に次ぐ5.9%になっている。
 中国の主要な輸出先は、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーで、アフリカでは2005年以降新たに10ヶ国が中国の武器輸出先となり、2/3を超える国が中国製武 器を使用している。(RC 03/13)
ケ. 周辺国の囲い込み

ロシアとの合同演習

 中国国防省が6月18日、中露両国軍が9月中下旬に日本海とオホーツク海で合同演習を行うと発表した。 またこれに先立つ7月下旬にはバルト海でも合同演習を実 施する。
 中露海軍は2012年から大規模な合同演習を毎年実施しており2016年9月に初めて南シナ海で演習を行っている。 (時事 06/18)

 中露海軍が北朝鮮付近で合同演習を9月18日に開始した。 国営新華社によると、演習はウラジオストク港沖の日本海とオホーツク海南部で実施される。
 中ロ海軍の演習は2017年で2回目で、1回目は7月にバルト海で実施された。(ロイタ 09/18)

 統合幕僚監部が9月25日、中露海軍の軍艦6隻が24日に宗谷海峡を通過したと発表した。 両軍は18日からウラジオ ストク軍港周辺で合同軍事演習を行っており、オ ホーツク海上での演習実施のために同海峡を通過したとみられる。
 中露両軍の合同演習は2012年以降、毎年実施されているが、オホーツク海では初めてとなる。(産経 09/25)

 中露共同演習"Cooperation 2017"の3日目となる12月5日、両軍の特殊部隊が輸送ヘリを用いた索敵訓練を行った。
 この日の訓練には中国側から武装警察部隊、ロシア側からロシア連邦National Guardが参加した。(CD 12/06)

マレーシア

 中国がマレーシアに対し、同国南端の基地に設置するレーダとMRLを提供すると複数のメディアが報じた。
 インターネットメデイアのMalaysian Insightは匿名の関係 者の話として、8月9日にマレーシアを訪れた中国政府関係者の派遣団によって行われたと報じた。
 報道によると、中国は償還期限50年の融資で12基のMLRを提供するが、融資規模や装置の価格などは不明でレーダの種類も明らかにされていない。
 シンガポールの安全保障に対する懸念が高まる可能性があるが、マレーシア軍当局はこの報道を否定している。 (ロイタ 08/10)

パキスタン

 パキスタンのイスラマバードで3月23日に行われた軍事パレードに中国人民解放軍が初参加した。 フセイン大統領は中国軍が外国でこうしたパレードに加わるのも 初めてだと述べ、両国の密接な関係を象徴する出来事となった。
 パレードにはサウジアラビア、トルコ軍も参加した。(産経 03/23)

ミャンマー

 中国の一帯一路経済圏構想の一環としてミャンマー西部チャオピューと中国雲南省を結ぶ原油パイプラインが4月10日に正式に稼働した。
 パイプラインの全長は770kmで年間輸送量2,200万㌧で設計されており、中国にはマラッカ海峡を経由せず原油を輸入できるようになる。 (産経 04/12)

 中国海軍とミャンマ海軍が5月21日にマータバン湾で合同演習を行った。 演習には中国から駆逐艦、フリゲー ト艦、補給艦の各1隻、ミャンマーからはフリゲート 艦、コルベット艦の各1隻が参加した。
 演習は1日限りであったが、中国艦はチラワ港を訪問し、ベンガル湾やインド洋進出の足がかりを得た。 (JDW 05/31)

ネパール

 中国軍とネパール軍が4月16日、初めての合同演習'Sagarmatha Friendship 2017'を10日間の日程で開始した。 (JDW 04/26)

ギリシャ

 ロイタ通信が、EUが6月中旬にジュネーブで開かれた国連人権理事会で、中国の人権状況を批判する声明のとりまとめを目指したにもかかわらず、ギリシャの反対 で断念していたと報じた。
 EUは、中国が主要港への開発投資などを通じてギリシャとの経済関係を強化する一方、ギリシャ同様に中国との関係強化を進める東欧の一部の国をテコにEUの外交 政策に影響を与えることを懸念している。(産経 06/19)

(2) 北朝鮮

ア. 臨戦態勢の構築維持

陸軍の増員

 韓国国防部が1月11日に発刊した2016年国防白書で、北朝鮮で陸軍 が102万人から110万人に増員され、戦略軍を新設するなどにより軍の総兵力が現在の120万から 128万人に増強されたことを明らかにした。
 空軍は12万人から11万人に減少したが、海軍は6万人と例年と同水準だった。
 軍団級部隊は15個から17個に、師団級部隊は81個から82個にそれぞれ増加した。(中央 01/11)

米空母攻撃を想定した演習

 米空母2隻と海上自衛隊が日本海で共同演習を行った直後の6月5日、北朝鮮の労働新聞が空軍による空母攻撃を想定した訓練の様子を報じた。 (JDW 06/14)

緊急着陸場の増設

 商業衛星の画像から、北朝鮮が2015年末から高速道路を緊急着陸場とするため、掩体格納庫や滑走路を整備していることが判明している。 滑走路は1,800mで、幅 員も8~12mが15~22mに拡幅されている。
 北朝鮮空軍の緊急飛行場には平均的に、全長2,100、幅30~40mの滑走路がある。(JDW 01/18)

砲兵部隊の前方配置

 韓国政府の消息筋が2月12日、北朝鮮が開城工業団地に配備していた火砲30門を2016年末に撤収させたと明らかにした。
 北朝鮮が2016年1月に核実験を実施したのに続き、長距離BMの発射強行を受け、韓国政府が2月10日に開城団地の稼働を中断したが、その翌日に北朝鮮は団地の閉鎖 や韓国側関係者の追放を発表し、軍事統制区域に指定して240mm MRLなど40門近くの火砲を配備していた。 (聯合 02/12)

多用途 UAV の大量保有

 韓国政府系シンクタンクの統一研究院が、北朝鮮が多用途UAVを1,000機保有しており、備えが必要だとの報告書を発表した。
 報告書では現在のところ北朝鮮のUAVは主に韓国の情報把握や監視、偵察が目的とみられるが、今後UAVを利用し軍事的挑発やテロを図る可能性があるとの懸念を示 した。(朝鮮 03/29)

潜水艦の活発な活動

 CNN TVが7月20日、北朝鮮のRomeo級潜水艦(1,800t)が48時間連続で、本国から100km離れた日本海で活動していると報じた。 沿岸地域で行う典型的な訓練活動と は異なるといい、米軍が偵察衛星から監視を続けている。 北朝鮮の潜水艦がこれほど離れた海域を航行するのは異例で、米韓両軍は警戒を強めているが、米軍はこ の潜水艦が母港から遠く離れた海域で航行する能力はないとみていた。
 CNNによると、Romeo級は全長65mの旧式潜水艦で、BMの発射能力は備えていない。(東京 07/21)

イ. 対日姿勢

武力を伴った漁船の違法操業

 日本海で外国漁船の違法操業を取り締まっていた水産庁の漁業取締船が7月7日17:00頃、違法操業の外国漁船に対応していたところ、北朝鮮籍とみられる船舶が接 近し、乗組員が取締船に対して銃口を向けたため、安全を確保して海域を離脱していたことが、12日に水産庁への取材で分かった。
 水産庁によると、現場は男鹿半島から西に500kmの北大和堆の西側にある日本のEEZ内にある北大和堆で、北朝鮮船のスルメイカ違法操業が問題になっている大和堆 から北西に100kmにある。
 大和堆には海上保安庁が巡視船を派遣し、抑止対策に当たっている。(産経 07/12)

 政府関係者への取材で7月13日、日本のEEZ内にある日本海で北朝鮮漁船が違法操業している問題で、第9管区海上保安本部などが好漁場として知られる日本海中部 の大和堆周辺海域に巡視船を派遣し、警戒していることが分かった。
 海保は水産庁と情報共有しながら、北朝鮮の違法操業船を排除しているとみられる。(時事 07/13)

ウ. 核武装への邁進

(ア) 核燃料生産の再開

 民間衛星が1月22日に北朝鮮を撮影した画像から、寧辺の核施設にあるプルトニウム生産用の5MW原子炉が再稼働した模様である。
 ウェブサイト38 Northは同施設から水蒸気が立ち上っていると報じている。(JDW 02/08)
(イ) 核開発の進展

 Washington Postが8月8日、北朝鮮が核弾頭をミサイル搭載可能な水準にまで小型化することに成功したと判断する米当局の分析を報じた。
 同紙によると、米国防情報局(DIA)が7月28日にまとめた分析では、北朝鮮がICBM級を含むBMで運搬する核弾頭を生産したと米国の情報機関はみていると報じた。
 トランプ大統領はこの日、北朝鮮がこれ以上米国を脅かせば世界が目にしたことのないような火力と怒りに直面することになると強く警告した。 (時事 08/09)

 Washington Post紙が8月8日、米DIAが7月28日に行った夏期報告を元に、北朝鮮が既に核兵器を長距離BMに弾頭として搭載できる小型化に成功しており、60発分の 核材料を保有していると報じた。(JDW 08/16)

(ウ) 水爆実験

本格的な水爆実験の実施

 菅官房長官が9月3日午後に緊急記者会見し、気象庁が北朝鮮付近を震源とする地震波を観測したとして、「北朝鮮による核実験の実施に伴い、発生した可能性が ある」と述べた。
 官房長官によると、3日12:31に気象庁が北朝鮮付近を震源とする自然地震ではない可能性のある地震波を観測した。 この地震は過去の事例などを踏まえると北 朝鮮による核実験の実施に伴い、発生した可能性があると考えている。
 気象庁によると、当該地震の震源は北緯41.3゚、東経129.1゚、深さ0kmで、地震の規模はマグニチュード6.1とされている。 (産経 09/03)

 朝鮮中央テレビによると、北朝鮮の核兵器研究所が9月3日にICBM用水爆の試験が同日正午に北東部の実験場で行われ「完全に成功した」と発表したと報じた。
 核爆発実験は2016年9月9日の建国68周年に際し実施して以来1年ぶり6回目、トランプ米政権発足後では初めてで、水爆と主張する試験は2016年1月6日以来2回目に なる。(時事 09/03)

爆発規模、250kTとの見方も

 小野寺防衛相が9月3日、北朝鮮が同日行った核実験の爆発の規模について、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)が初期値として発表したマグニチュード5.8を基準 に推定すれば、今回の核実験の推定出力は70kTになると考えられるとしたうえで、過去の核実験に比べてはるかに大きなものだと認識しており、水爆実験の可能性 も否定できないと述べた。
 北朝鮮が2016年9月に行った5回目の核実験の爆発の規模は、10~30kTと推定されている。(産経 09/03)

 北朝鮮が9月3日、6回目にして今まで最大規模の熱核爆発試験を実施したと発表した。 これはICBM弾頭用の水素爆弾と見られ、小野寺防衛大臣はその規模を70kT と推定すると述べている。
 一方、朝鮮の国営メディアは3日、金委員長がICBM用の水爆弾頭を視察したとする画像を報じている。(MT 09/03)

 小野寺防衛相が9月5日午前、北朝鮮6回目の核実験の爆発規模について当初、推定値として公表した70kTから上方修正する可能性に言及した。
 70kTとの推定値は、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)が地震波をM 5.8とした暫定値に基づき算出していたが、暫定値がM 5.9~M 6.0に上方修正される可能性に 触れ、そうなれば破壊力はさらに大きなものと推定されるため、CTBTOの数値が確定した段階で、また能力を判定したいと述べた。 (産経 09/05)

 山本防衛副大臣が9月5日の参院外交防衛委員会で、北朝鮮の核実験の爆発規模は120kTに達する可能性があるとの見解を示した。
 政府は核実験直後には70kTと推定しており上方修正した。(時事 09/05)

 小野寺防衛相が9月6日午前に北朝鮮核実験の爆発規模について、当初試算した70kTから160kTに大幅上方修正したことを明らかにした。
 広島に投下された原爆の10.7倍、長崎の7.6倍となり、小野寺防衛相は水爆の可能性は否定できないと述べた。 (朝日 09/06)

 韓国国防部が北朝鮮の今回の核実験の威力を50kTと推定した。 これは10kTと見られる2016年9月に行われた5回目の核実験の5倍に達する。 国防部は、北朝鮮が 今回の核実験で核分裂・融合物質などさまざまな核物質を使用したと推定されると報告したが、水爆実験かどうかは明らかにしなかった。 (聯合 09/04)

 John Hopkins大の北朝鮮分析サイト38 Northが9月12日、北朝鮮が3日に強行した6回目の核爆発の規模を250kTだったとする推定を発表した。
 これまで160kTとされた推定を大きく上回り、水爆実験とする北朝鮮の主張を裏付けるものだとしている。
 日本政府は包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)が発表した地震規模のM 6.0を元に160kTと推定したが、38 NorthはCTBTOがM 6.1に上方修正したことを受けて、250kT と推定した。(産経 09/13)

 北朝鮮が現地時間9月3日12:30に6回目にして過去最大の核実験を行った。 爆発規模について韓国は50~60kT、防衛省は160kTと見積もっている。 (JDW 09/13)

太平洋上での水爆実験を予告

 金委員長が9月21日の声明で、トランプ米大統領が国連演説で北朝鮮を完全に破壊するしかなくなると警告したに対して、史上最高の超強硬措置を慎重に検討すると 述べたことについて、北朝鮮の李外相は21日に訪問先のニューヨークで、おそらく太平洋上で過去最大級の水爆実験を行うことになるのではないかと語った。 (時事 09/22)

 CNN TVが平壌での北朝鮮外務省高官へのインタビュー内容について10月25日、太平洋上での水爆実験を示唆した李外相の発言を文字通り受け取るべきと警告したと 報じた。
 李外相は9月にニューヨークで、「北朝鮮の完全な破壊」に言及したトランプ米大統領の国連演説に猛反発し、「太平洋上で過去最大級の水爆実験を行うことにな るのではないか」と述べていた。(時事 10/26)

(エ) 核兵器の保有数

 韓国国防部が1月11日に2016年版国防白書を発刊した。 同白書によると、北朝鮮は寧辺の核施設で再処理したプルトニウムを50kg保有していると推定される。
 2008年版国防白書では40kgと推定しており、8年で10kg増えたことになる。
 核兵器1個を作るには4~6kgのプルトニウムが必要とされ、北朝鮮は10個程度の核兵器を作ることができると推定される。 (連合 01/11)

 韓国国防省が1月11日に発簡した2016年版国防白書で、北朝鮮は軍事用水準のプルトニウムを核兵器10個分に相当する50kg保有していると述べ、2014年版より10kg増 の見積もりをしている。(JDW 01/18)

 韓国政府は、北朝鮮が製造できる核兵器数をプルトニウム保有量を中心に10~15個と見積もっていたが、米韓情報当局は北朝鮮が核兵器を最大60個ほど製造できる と判断している。
 2月8日に中央日報が確認した軍と情報当局の北朝鮮核物質に関する対外秘文書には、2016年を基準に北朝鮮の高濃縮ウラン(HEU)保有量を758kg、プルトニウム保有量 を54kgとしている。 核兵器1個を作るのにプルトニウム4~6kg、HEUでは16~20kgがで、情報当局の推定値を考慮すると北朝鮮が保有する核物質でプルトニウム弾9~ 13個、HEU弾37~47個を作ることができ、計46~60個の核兵器を製造できることになる。(中央 02/09)

 中央日報が2月9日、北朝鮮は高濃縮ウラン758kgとプルトニウム54kgを保有しており、核弾頭1個の製造に高濃縮ウランであれば16~20kg、プルトニウムであれば 4~6kg必要なことから、北朝鮮はすでに核弾頭46~60個分の核原料を保有していると報じた。(JDW 02/15)

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が7月3日に世界の核軍備に関する最新報告書を発表し、北朝鮮が2017年1月時点で推定10~20発の核弾頭を保有していると 推計する分析結果を明らかにした。 またSRBMやMRBMに搭載可能な小型弾頭の製造技術も確保したと考える専門家の見方も掲載した。
 更に、2017年と2016年の軍事パレードの写真を分析した結果、移動式のICBMも開発中と推測した。(時事 07/03)

 Washington Postが8月8日、米当局が7月時点で北朝鮮が保有する核爆弾を最大60発と推定しているとしていると報じた。 (時事 08/09)

(オ) 核戦力部隊

 韓国国防部が1月11日に発刊した2016年国防白書で、北朝鮮軍は核・ミサイルを担当する戦略軍を1万人で編成した。
 韓国国防部は戦略軍について、核開発計画が最終段階に入ったとみられると分析した。(中央 01/11)
(カ) 核兵器保有国として国際認識

 小野寺防衛相が9月10日、北朝鮮は脅威となる核兵器を持っていると考えざるを得ず、国際社会が核保有国として認めるかは別として、核実験を繰り返し相当の 能力を持っている国であると述べた。
 政府高官が北朝鮮の核保有を明言するのは異例である。(毎日 09/10)
エ. 長距離弾道弾の開発

(ア) 開発、装備の態勢固め

a. 海外からの技術取得

中露からの技術取得

 北朝鮮のロケットエンジン開発の経緯は大きく三段階に区分される。(中央 06/05)

第一段階:

 1981年初めにエジプトから入手したScudを元にScud Aを開発し、その後その技術を元にScudシリーズとTaepo Dong、銀河-3、光明星-4などを開発。

第二段階:

 1990年代に入ると、液体燃料を使用するソ連のSLBM R-27のエンジンを模倣してMusudanを開発し、更に固体燃料エンジンのSS-21を改良したと推定されるKN-02を 開発。

第三段階:

 中国は1990年代「東風」の輸出型M-11、M-9をイランとパキスタンに輸出した。 北朝鮮は北朝鮮が主導する形でパキスタンやイランと数十年間にわたりミサイル 技術を取引してきたが、北極星-1の固体燃料エンジンの直径が1.25mという点などからみて、イランが配備した「セジル」と諸元が同じという分析が出ていおり、 最近は流れが逆転し、中国→イラン→北朝鮮とミサイル技術が流れたと強く推定されている。

 Washington Post紙が7月8日、北朝鮮が猛スピードでBMの技術力を引き上げている核心的な背景として、専門家の間ではロシアと中国の水面下の支援が話題にのぼ っていると報じた。 専門家は特にロシアの貢献が大きいとみている。
 ロシアの科学者からミサイルの設計やノウハウの伝授を受け、中国企業がミサイルの誘導システムに必要な電子装備などを北朝鮮当局に供給しているという。 (中央 07/10)

ウクライナからの技術取得

 New York Times紙が8月14日、英国際戦略研究所(IISS)のミサイル専門家などの分析に基づき、北朝鮮が発射したICBMは非合法に入手した旧ソ連製エンジンの改良 型を搭載していた可能性が高いと報じた。 専門家らは、ウクライナ中部ドニプロ(旧ドニエプロペトロフスク)にある工場を流出元とみているという。
 北朝鮮のミサイル技術が予想を上回るペースで向上した背景には、闇ルートを通じた国外からの高性能エンジン調達があったことになる。
 IISSの専門家は発射画像の分析から、北朝鮮の火星-12 IRBMと火星-14 ICBMは旧ソ連の液体燃料エンジンRD250の改良型を搭載していたと指摘した。 過去2年以 内にロシアを経由して鉄道で北朝鮮に持ち込まれた可能性が高いという。
 工場を運営する企業やウクライナ当局は、同国から流出した可能性を否定している。(時事 08/15)

 IISSのロケット技術専門家が8月14日に、北朝鮮の火星-14 ICBMなどでソ連製エンジンの改良型が使われている可能性が高いという分析結果を発表し、このエンジ ンがウクライナの工場から闇市場を通じて北朝鮮に流れ、北朝鮮がICBM技術を急速に進展させた可能性があると指摘していることについてウクライナは15日、ウク ライナで2001年まで製造しロシアに供給したエンジンはすべてロケットに使用されたと述べ、北朝鮮との友好的な関係を考えるとロシアにはロケットやエンジンな どを提供する理由があるだろうと、ロシアが北朝鮮にエンジンを提供した疑いがあるという見方を示した。 (NHK 08/16)

 北朝鮮が7月4日と28日に発射した火星-14 ICBMについて、ロンドンのIISSの専門家が8月14日に、火星-14が使用しているエンジンはロシアのPivdenMashと EnergoMashが設計しウクライナ製のGlushko社が生産したRD-250であるとの報告書を公表した。
 ウクライナ政府はこの報道を否定している。(JDW 08/23)

b. 北朝鮮戦略軍火星砲兵部隊

 韓国政府当局が北朝鮮で3月6日にBMを発射した朝鮮人民軍戦略軍火星砲兵部隊の実体について、この部隊北朝鮮のミサイル戦力をまとめる戦略軍に所属し、BMの開 発や運用を担っていると推定している。
 火星という名称は北朝鮮ではBMを示しており、火星-5、火星-6、火星-7、火星-10、火星-13などと呼んでいる。 (聯合 03/07)

 中央日報が入手した2014年に作成された韓国軍と情報当局の非公開北核評価会議資料によると、北朝鮮の戦略軍は2014年の創設時点はScud旅団、No Dong旅団、 Musudan旅団3個旅団が編成され、TEL 100両、BM 800発を保有していると軍が判断していた。
 その資料によると、射程50~1,000kmのScudを装備する旅団は、休戦ライン近傍に配置した前方軍団のすぐ北に展開して韓国全域を射程圏内に置いた。
 射程300~1,300kmのNo Dongを装備する旅団は北朝鮮の北部に位置し、米軍が韓半島に増援を送るのを遮断するため在日米軍基地を打撃する。
 射程500~3,500kmのMusudanを装備する旅団は中部地域に位置し、日本とグアム、大邱より南側への攻撃が可能だと軍は判断していた。 (中央 08/15)

c. 試験環境の整備、構成品試験の推進、生産の拡大

ICBM 試験用新施設の建設?

 北朝鮮が黄海上に人工島を造成し、軍事施設と見られる構造物を建設しているのが衛星画像から明らかになった。
 人工島は5年前から平壌から130哩離れたソヘア市近くで構築しており、ICBMの試験設備と見られる。 (S&S 05/03)

新型ロケットエンジンの試験

 米当局者が6月22日にロイタに対し、北朝鮮が新型ロケットエンジンの試験を実施したと明かした。 ICBMの開発計画の一環とみられるという。
 別の当局者も実験の実施を確認したが、ロケットエンジンの種類や大陸間弾道ミサイル開発計画に沿ったものかどうかなどの詳細は明らかにしなかった。 (ロイタ 06/23)

固体エンジンと弾頭の増産、研究所拡張

 朝鮮中央通信が8月23日、金委員長が国防科学院化学材料研究所を視察し、研究所を拡張してBM用の固体燃料エンジンや弾頭を増産を指示したと報じた。
 同研究所はICBMの弾頭やエンジン噴出口に使われる炭素複合材料などを開発している。(東京 08/23)

(イ) 各種新型弾道弾

a. 弾道弾開発の加速

発射試験の急増

 12月30日で就任して6年を迎える北朝鮮の金正恩委員長朝鮮人民軍最高司令官が2017年はBMを15回発射し、6回目の核実験も強行して11月には核戦力完成を宣言した。
 金委員長は2017年の新年の辞でICBM発射試験の準備は最終段階と発言し、それを実証するかのように核やミサイル開発に邁進した。
 BMの発射回数は 2016年の14回を上回り、中長距離BMの開発に重点を置いた。
 3回発射した火星-12 IRBMは9月の発射後、戦力化が実現したと実戦配備への準備を指示した。
 火星-14 ICBMも2回発射し、11月には火星-14より直径と全長を延ばし、飛行距離は推定13,000km以上と米全土を射程に収める火星-15も発射した。
 金委員長は「国家核戦力完成の歴史的大業、ミサイル強国の偉業が実現した」と宣言した。(日経 12/29)

米 DIA の見積もり

 Washington Post紙が7月25日、北朝鮮が早ければ2018年にもICBMを完成させる可能性があるとの報告書をDIAがまとめたと報じた。 報告書は北朝鮮がICBMについ て試験段階から量産、配備に移行すると指摘している。
 北朝鮮のミサイル開発をめぐっては、米シンクタンクが2年以内に米西海岸を射程に収める可能性があると指摘していた。 (時事 07/26)

新型 ICBM

 韓国の政府高官や韓米の軍事外交筋によると、北朝鮮が新型BM 2基を製造したもようで、2基はTELに搭載されているという。 米韓両国はこのミサイルをICBMと判 断したという。
 このミサイルは二段型で、胴体の長さは15mを超えておらず、従来のICBMであるKN-08 (19~20m)、改良型のKN-14 (17~18m)より短いという。 (聯合 01/19)

 北朝鮮の平壌で4月15日開催された金日成主席生誕105年を祝う軍事パレードには、新型ICBMと推定されるミサイルやSLBM、KN-08またはMusudanの改良型KN-14と推定 される2種類のミサイルなど多数が登場し、聯合ニュースは最大3種類のICBM が登場したとみられると報じている。
 聯合ニュースによると、新型ICBMとみられるミサイルについて、これまでに公開されたKN-08やKN-14よりも全長が長いように見えるという。 (時事 04/15)

b. 火星-15 ICBM

 政府が11月29日朝、本日03:18に北朝鮮西岸よりBMが1発発射され04:11ごろに日本海の我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられると発表した。
 付近を航行する航空機や船舶への被害は確認されていないという。(朝日 11/29)

 小野寺防衛相が11月29日未明、北朝鮮によるBM発射について、ICBM級と判断できる過去最大級の高さだと語った。
 同相によると、BMは03:18に北朝鮮西岸から1発発射され、53分間飛行して青森県西方250kmの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。
 4,000kmを大きく超える高度に達しておりロフテッド軌道だったとみられる。( 讀賣 11/29)

 米軍備管理専門家のデービッド・ライト氏が北朝鮮が発射したBMについて11月28日、通常軌道で発射された場合の飛距離は13,000km以上に達し、ワシントンを含 む米全土が射程を収めることができるとの分析を明らかにした。( 産経 11/29)

 小野寺防衛相が11月29日朝、北朝鮮が同日未明に発射したBMについて多弾頭の可能性もあると述べた。
 発射時点では1発だったとの見方を示しつつ、いくつかに分かれて落下したことから多弾頭の可能性は否定できないと指摘した。
 ミサイルの射程に関しては、過去最長になるとの認識を示した。(日経 11/29)

 韓国大統領府が、文大統領が11月29日にトランプ米大統領との電話会談で、北朝鮮が同日発射したBMについて、これまでより性能が改良されているとみていると述 べたことを公表した。 これに関連し韓国国防省当局者は、発射されたのは火星-14 ICBM系列と推定していることを明らかにした。
 米大量破壊兵器専門家のジェフリー・ルイス氏も取材に、火星-14の改良型とみていると述べ、通常の角度で飛行すれば射距離は13,000km近くになるという見方もあ ると指摘ししている。(時事 11/29)

 北朝鮮の国営メディアが11月29日、新型ICBM「火星-15」の発射試験に成功したと発表した。 火星-15は同国が保有する最も強力なミサイルで、米国全土への到達が 可能としている。
 北朝鮮側の発表によると、試験で火星-15が到達した高度は4,475km、飛行距離は950kmで、飛行時間は53分だったという。
 北朝鮮がミサイルの発射試験を行うのは9月半ば以来である。(ロイタ 11/29)

 北朝鮮が29日未明に発射したBMについて新型ICBM火星-15と発表したが、専門家らはこの火星-15を北朝鮮が7月 4日と28日に発射した火星-14のエンジンの一部を改良 し推力を高めたことで、少なくとも500~600kgの弾頭を搭載できるようになった可能性もあるとみている。
 韓国航空大の張泳根教授は、火星-15は火星-14の延長線とみられるとした上で、1段目は火星-14のエンジンを使い、2段目は新型エンジンに交換した可能性が高いと説 明している。 軍の専門家も同様の見方を示した上で、2段目のエンジンの性能を改良して火星-15と命名した可能性が高いと分析している。 (聯合 11/29)

 北朝鮮の労働新聞と朝鮮中央通信が11月30日、北朝鮮が前日未明に実施した新型のICBM火星-15の発射試験の写真40枚を公開した。
 公開された写真を見ると、火星-15は北朝鮮が7月に2度発射した火星-14とは二段目の上部の形態が異なり、火星-14は先端が尖っていたのに対し火星-15は丸い。 また 、移動式発射台に積まれた写真では、火星-15のミサイルの胴体は火星-14よりも長いように見える。
 火星-15が片側9輪のTELに積まれた写真もあり、朝鮮中央通信は29日の報道で、新たに9輪のTELを開発したと言及している。 (聯合 11/30)

 朝鮮労働党機関紙の労働新聞公開した火星-15発射の様子を伝えた記事と写真では、火星-15のTELは新規開発されたもので国産化可能と報じ量産化を示唆している。  同紙によれば、火星-15に使用されたTELは軍需工業部門が新たに開発した9軸のTELで、7月に発射された火星-14では、片側8輪のTELが使用されていた。 (時事 11/30)

 北朝鮮は11月29日に発射実験に成功したと発表した新型のICBM火星-15の写真を公開した。
 金委員長がミサイルを載せたTELを視察する様子や、暗闇のなかでミサイルがオレンジ色の炎を吹き出しながら上昇する光景が写っている。 (日経 11/30)

 韓国国防部が12月1日、11月29日に北朝鮮が発射した火星-15を新型ICBMと判断し、通常の角度で発射した場合、13,000km以上飛翔が可能だと評価した。
 国防部は、火星-15は火星-14に比べてミサイルとTELの全長がそれぞれ2m、胴径は0.4~0.8m増加したことを明らかにした。 (WoW 12/01)

 北朝鮮が11月28日夜、Hwasong 15 (HS-15)を平壌の北25kmのPyongsongから発射した。
 HS-15は高度4,472kmに達し、53分間にわたって950kmを飛翔し日本海に落下した。
 ミサイルの専門家Norbert Brügge氏によるとHS-15は40tの二段推進で139秒間燃焼し、一段目には北朝鮮がRD-250をコピーしたエンジンが使われ、燃焼機を2基にし たことで推力がHS-14の170%に増大している。(DU 12/01)

 CNN TVが米当局者の話として12月2日、北朝鮮が11月29日に発射したICBMの弾頭部が大気圏に再突入する際に分解していた可能性があると報じた。
 この分析が正しければ、米本土攻撃能力の獲得に不可欠な大気圏再突入技術が、北朝鮮ではまだ確立されていないことになる。 (時事 12/03)

 北朝鮮が11月29日に、米国まで届く火星-15 ICBMの発射試験に成功したと発表した。 火星-15は02:48に発射され、高度4,475kmまで達し53分間にわたり950km飛翔 した。(JDW 12/06)

c. 火星-14 ICBM

KN-08 から KN-14 への発展

 朝鮮日報が1月10日、韓国国防省が北朝鮮のKN-08及びKN-14 ICBMが、いずれも移動式でTELから発射されると見ていると報じた。
 KN-08の全長は19~20mであるのに対しKN-14は17~18mと若干短くなっている。(JDW 01/25)

 韓国政府当局者が、北朝鮮がKN-14(火星-14)を多弾頭ICBMとして開発中だと述べた。
 中央日報が7月3日に入手した米国防情報弾道ミサイル分析委員会(DIBMAC)の報告書「弾道・巡航ミサイル脅威」によると、北朝鮮は13種類のBMを保有していて 、このうち射程5,000km以上のICBMはTaepoDong-2、火星-13型 (KN-08)、火星-14 (KN-14)の3種類で、報告書は火星-14を液体エンジンの二段推進としている。
 報告書で注目されるのは弾頭の数が"unknown"とされている点で、火星-13を単弾頭としているのに対し火星-14の弾頭部は火星-13より周囲が大きく先が太いた め、搭載空間が相対的に大きく、匿名を求めた情報消息筋は米韓情報当局の共同の認識としていると述べた。
 火星-14は設計過程でロシアの多弾頭ミサイルを模倣したというのも情報当局が多弾頭方式とみる理由の一つである。 (中央 07/04)

7月4日の発射試験

 韓国軍合同参謀本部などによると、北朝鮮が7月4日09:40頃に亀城市付近から日本海に向けBM 1発を発射した。 日本政府によれば約40分間飛行し、日本海の日 本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。
 ロフテッド弾道で発射した可能性があり、韓国軍は930km飛翔したと推定している。 一方米国防総省はIRBMだと発表した。
 北朝鮮のBMが日本のEEZ内に落下したとみられるのは、2016年8月以降5回目で、2017年3月には北西部から発射した4発のうち、3発がEEZ内に落ちたとされている。 (時事 07/04)

 防衛省が7月4日午後、北朝鮮が同日09:39に発射したBMについて、2,500kmを大きく超える高度に達したと推定されると発表した。
 飛行時間は約40分間、飛距離は900kmで、日本の排他的経済水域(EEZ )内の日本海に落下したとみられる。 (讀賣 07/04)

 北朝鮮の朝鮮中央TVが7月4日午後に特別重大報道を放送し、火星-14 ICBMの発射試験に成功したと発表した。
 それによると、火星-14は高度2,802kmに達し、39分間にわたり933km飛翔して日本海の目標水域に正確に着弾した。
 ただ、米太平洋軍は4日にIRBMが発射されたと発表しICBMとは判断しておらず、関係各国が分析を進めている。
 ICBMは通常、射程5,500km以上のBMを指す。(時事 07/04)

 北朝鮮の朝鮮中央TVが7月4日、この日午前に発射されたICBMと称する火星-14の写真を公開した。 同TVは火星-14の運搬から分離、発射に至るまでの写真11枚を 放映したが、映像は公開しなかった。
 公開された写真によると、火星-14は8軸16輪のTELに搭載発射された。 またブースタが分離される写真も公開した。 (聯合 07/04)

 北朝鮮が7月4日に発射したBMについて、韓国や日本の専門家は北朝鮮が公開した火星-14の飛行距離と最高高度が事実である場合、正常な角度で発射すれば射程 は8,000kmを超えるICBM級と判断している。
 韓国軍は射程5,500km以上のBMをICBMに分類していることから、火星-14もICBMに含まれることになる。 (聯合 07/04)

 北朝鮮が米国独立記念日の7月4日にBMを発射した。 朝鮮中央通信によると発射したのは火星-14で、39分間にわたり580哩を飛翔し、高度は1,740哩以上に達し た。 このBMについて米太平洋軍司令部はIRBMと見ている。
 火星-14の到達高度について韓国軍は1,430哩、防衛省は1,560哩を遙かにしのぐ高度と発表している。
 射程について「憂慮する科学者同盟」は、正常な発射角で発射すれば4,160哩に達すると述べている。 (S&S 07/04)

 北朝鮮が7月4日にKN-14(火星-14)の発射試験を行った。 北朝鮮によると到達高度は2,802kmで40分にわたり933kmを飛翔した。 このことから最適軌道で飛翔 させれば7,000kmは飛翔することになり、射程5,500km以上とするICBMの定義から火星-14はICBMと見なせる。 専門家には最大射程を8,000kmと見る向きもある。
 北朝鮮は5月14日に火星-12 IRBMを発射したがその際の到達高度は2,100km、飛翔距離700kmであった。 KN-12は単段推進であったのに対しKN-14 は二段推進のよ うである。 噴射の画像から液体エンジンには主エンジンの他にステアリング用のエンジン4基があることがわかる。 (DU 07/04)

 Fox NewsやNBCが、北朝鮮がICBMの発射に成功したと発表したことについて、米当局者らがICBMの発射試験だったとの見方を示したと報じた。
 米国防総省と国務省は7月4日、他の米政府機関と発射についてより詳しい分析を進めていると説明したが、米軍は発射後まもなくIRBMだったとの初期分析を発表 していた。(ロイタ 07/05)

 北朝鮮の国営TVが7月4日に放送したBMの発射で、迷彩塗装された大型車両の荷台でBMが垂直に立てられ、発射準備が進む様子が報じられたが、ミサイルの運搬と 発射に中国製の木材運搬用車両を使ったもようである。
 国連委員会の2013年の報告書によると、この車両は北朝鮮が民生用として中国から輸入していたもので、国連の北朝鮮制裁委員会が以前に中国の木材運搬車を改 造した可能性が高いと指摘した車両と同一のものとみられる。(ロイタ 07/05)

 米国防総省報道官が7月4日、北朝鮮がICBMの発射実験を行ったとの見解を明らかにした。 米軍は当初、発射されたのはIRBMとの見方を示していた。 (ロイタ 07/05)
【註】 :  今まで北朝鮮が超えてはならない一線(red line)はICBMの発射とされてきたことから、米国は7月4日に発射されたミサイルをICBMと断定すれば、軍事行動などの 対応 をせざるを得なくなることから、断定には慎重であったと思われる。

 韓国の国会議員が7月11日、北朝鮮が7月4日に発射し弾頭の再突入試験に成功したと称する火星-14 (Hwasong-14) ICBMについて、韓国国家情報局(NIS)は再突入 に失敗したと見ていることを明らかにした。
 NISは火星-14を、5月14日に発射した火星-12 (KN-17)の改良型と見ている。(JDW 07/19)

7月28日の発射試験

 北朝鮮が7月28日23:41にICBMを発射した。
 北朝鮮の発表によるとミサイルは高度3,724.9kmに達し998kmを47分間飛翔したという。 これからするとミサイルは10,000km飛翔できると見られる。 (DU 07/28)

 北朝鮮が7月28日23:42頃、同国中部からBMを発射した。 ミサイルは45分程度飛翔し奥尻島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下したとみられる。  防衛省などによると高度は3,000km 以上に達したとみられるという。
 北朝鮮が7月4日に火星-14 ICBMをロフテッド軌道で発射した際は、40分間飛行し高度は2,500km超に達したと推定されているが、今回の飛行時間はそれよりも長い 45分間飛行している。
 北朝鮮のBMが日本のEEZ内に落下するのは6回目で、BM発射は今年11回目である。(讀賣 07/29)

 北朝鮮が発射したBMについて米国防総省が7月28日、ICBMであったとの見方を示した。 国防総省の報道官によると、BMは北朝鮮北部から発射されて1,000km飛翔 、北海道沖167kmの日本の排他的経済水域 (EEZ)内に落下したという。
 今回発射されたBMについて韓国軍もICBM級だったとの見方をしており、高度は3,700kmに達したとしている。 (ロイタ 07/29)

 米Johns Hopkins大高等国際問題研究大学院の米韓研究所が7月28日、北朝鮮が同日発射したICBMとみられるBMについて、低い角度で打ち上げた場合9,000~10,000km 飛翔していた可能性があると分析した。
 同研究所は、飛行時間が45分間、最大高度が3,000kmという情報が正確なら、火星-14の二段目を大型高推力化したエンジンを搭載した想定と完全に一致するとした。 (時事 07/29)

 北朝鮮から発射されたBMが北海道西方の日本海に落下したと見られるのとほぼ同じ時刻に、NHKが道内に設置している複数のカメラに閃光のような映像が捉えられ ていた。 このうち室蘭市では、室蘭放送局の屋上と祝津町地区の2ヵ所に設置されたカメラに、00:28 26秒頃に北西の空を流れ星のようなものが光りながら落下して 行く様子が写っていた。 これとほぼ同じ時刻に江差町で北西に向けて設置されたカメラにも、海面が短い間、まばゆい光に照らされる様子が写っており、また奥尻 島に設置されたカメラは北の方角を向いていましたが、映像からは同じ00:28頃に西側の上空が一 瞬明るくなったのが確認できた。
 米国の専門家はこの映像を見たうえで、断言することは難しいが弾頭部分が落下している様子をとらえたものである可能性があると述べ、撮影された時間がBMが発 射されてから46分後であることを考えれば、北朝鮮のBMである可能性が高いと分析している。 (NHK 07/29)

 Tass通信などによると、ロシア国防省が7月28日に北朝鮮が同日発射したBMについて航跡を追った結果、到達高度681km、飛翔距離732kmで、日本海中部に落下した としIRBMだと発表した。 ロシアの発表は、高度3,500km以上、飛翔距離1,000kmとする日本政府の分析とかけ離れている。
 ロシアは4日に発射されたBMについても、ICBMではなくIRBMだと発表していた。(東京 07/29)

 北朝鮮の朝鮮中央通信が7月29日、金委員長がICBMの発射試験で奇襲能力を誇示したとし、米本土全域がわれわれの射程圏内にあることが裏付けられたと主張した と報じた。
 朝鮮中央通信はこの日の報道で、28日夜に火星-14 ICBM 2回目実験が成功裏に実施され、3,724.9kmまで上昇して998kmを47分12秒間で飛翔し、公海上の設定された 水域に正確に弾着したと報じた。(聯合 07/29)

再突入技術は未確立

 北朝鮮が行った2回目のICBM発射試験について、John Hopkins大学のロケット技術の専門家が7月31日にNHKのカメラが捉えた落下推定時刻とほぼ同じ時刻に閃光の ような映像の詳細な分析から、北朝鮮が発射したBMの弾頭部分を含む再突入体と見られるとした。
 そのうえで、映像では上空20kmの辺りで摩擦熱などにより発光し、4秒ほど光を発し続けたあと、稜線に隠れる手前の3~4km辺りでその光がかすんで消えていった ように見えることから、この物体が最終的に突入の負荷に耐えきれず分解した可能性を示しているとして、大気圏への再突入技術を確立させていないという見解を 明らかにした。(NHK 08/01)

 朝日新聞が8月12日に日米韓3ヵ国政府関係筋の話として、3ヵ国政府が北朝鮮が7月に試験発射した火星-14 ICBMについてNHKが落下推定時刻に北海道で撮影した閃 光の映像の分析の結果、大気圏再突入に失敗したとの結論を下したと報じた。
 NHKの映像では光点が徐々に暗くなり、海面に到達する前に見えなくなった。 これは弾頭が最終的に消滅したものとみられる。 (中央 08/13)

d. 火星-13 ICBM

 北朝鮮の国営朝鮮中央通信社(KCNA)が8月23日、金党委員長が火星-13と称する三段式BMの横に立っている写真を公開した。
 写真を分析した専門家らは、このBMが開発を完了したことを意味しないとしたうえで、まだ発射試験はしていないため飛距離を推測することは不可能だが、三段 式BMは二段式の火星-14よりも強力だと見ている。
 火星-14の射程は10,000kmと推測されているのに対し、慶南大学極東問題研究所の軍事専門家は火星-13を、米国本土全部が射程内に入れる12,000kmのICBMとみる と述べいる。(ロイタ 08/25)

 ロシア通信(RIA)が、10月2日から6日まで北朝鮮を訪問した3人のロシア下院議員が6日、北朝鮮は米西海岸が射程に入る長距離BMの発射試験を計画しているとの見 方を示していると述べたと報じた。
 露議員によると、北朝鮮は新たな長距離BMの発射実験の準備を進めており、彼らはBMが米国の西海岸を攻撃できることを証明すると考える数学の計算式も提示し た。(ロイタ 10/07)

e. 火星-12 (NK-17) IRBM

4月29日の発射試験

 聨合ニュースなどによると、北朝鮮が4月29日午前に西部の北倉周辺からBMを発射したが、発射数秒後に空中爆発したとみられ失敗したもようである。
 防衛省幹部も発射情報について、失敗したとの見方を示した。(時事 04/29)

 聯合ニュースが韓国軍合同参謀本部の話として、北朝鮮が4月29日05:30頃、西部平安南道北倉からBM 1発を発射したものの失敗したと見られると伝えた。
 これについてABC TVは米政府の当局者の話として、ミサイルは発射の数分後にバラバラになり日本海に落ちたと報じた。 (NHK 04/29)

 菅官房長官が4月29日朝、北朝鮮が5:30頃北朝鮮内陸部から1発のBMが発射したが、ミサイルは北朝鮮の内陸部に落下したもようだと語った。 (日経 04/29)

 北朝鮮が4月29日に平安南道北倉付近から北東方向に向けて発射したBMについて、日本政府によると50km離れた同国内陸部に落下したもようで、米韓当局は失敗した と推定している。 これで発射は4回連続で失敗したことになる。
 米軍はこのBMはIRBM KN-17の可能性があり、発射後数分で爆発したとみている。 韓国軍によると高度71kmまで上昇したようだという。 (ロイタ 04/29)

 韓国軍合同参謀本部が4月29日、北朝鮮が同日早朝に発射したBMについて、最大高度は71kmで数分飛翔した後に爆発したと明らかにした。
 AP通信はこのミサイルについて、米軍関係者がScud系列のASBM KN-17と推定していると報じた。
 同関係者によると、ミサイルは発射から2分後に爆発し、残骸が日本海に落下した。(聯合 04/29)

5月14日の発射試験

 韓国軍合同参謀本部が、北朝鮮が5月14日午前に北西部の亀城付近からBMと推定される飛翔体1発を発射したと発表した。
 北朝鮮が飛翔体を発射したのは、4月29日のBM発射以来で、韓国の文大統領就任後初めてである。(聯合 05/14)

 菅官房長官が5月14日早朝、北朝鮮が同日05:28にBM 1発を発射し、30分ほど飛翔して日本海に落下したとみられることを明らかにした。
 ミサイルの着弾地点は日本の経済的排他水域(EEZ)ではないと推測され、現時点で着弾地点の付近を航行する航空機や船舶などの被害は確認されていないという。 (産経 05/14)

 連合ニュースが韓国軍の合同参謀本部の話として、北朝鮮が5月14日05:27に北西部平安北道の亀城付近からBMと見られる1発を発射し、700km余り飛翔したと報じた。  北朝鮮による発射は、韓国で5月10日に文大統領が就任してから初めてのことで、韓国軍が情報の収集と分析を急いでいる。
 北朝鮮は、2017年2月にも同じ亀城からBM 1発を発射して、発射地点から東に500km離れた日本海に落下し、北朝鮮は固体燃料エンジンを搭載した『北極星2型』の 発射実験に成功したとしたうえで、発射の映像を公開している。(NHK 05/14)

 稲田防衛相が5月14日午前、北朝鮮が同日朝に発射したBMについて、高度が2,000kmを超えるものだったと推定され、新型のBMだった可能性があると述べた。
 2,000kmを超える高度は初めてだとも語り、意図的に通常よりも高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」での発射だった可能性もあるとした。 (産経 05/14)

 北朝鮮が5月14日発射した新型とみられるBMは、高度2,000km、飛距離800kmに達したが、通常の角度で発射した場合、射程は4,000kmを超えるとの分析もあり、グ アムを射程に収める可能性が出てきた。
 北朝鮮は2016年6月、高度1,400kmを超える飛距離400kmのミサイルを発射し、当時は射程2,500~4,000kmのMRBM Musudanと推定されたが、今回は大幅に上回る高度 、飛距離を達成し、技術向上を見せつけた。(時事 05/14)

 北朝鮮国営メディアが5月15日、新型IRBMの発射試験に成功したと報じた。 北朝鮮は5月14日、北西部の亀城からBM 1発を発射しており、これを指すとみられる。  国営メディアは発射したBMを「火星-12」だとしていており、SLBMを改良した新型のIRBM Musudanと見られる。
 この発射試験で、威力が強い大型の核弾頭の装着が可能な新型BMの技術特性を確認するために行ったとしたうえで、通常より角度をつけて高く打ち上げるロフテ ッド軌道を用いたと明らかにし、高度2,111kmまで上昇し、787km離れた公海上の目標水域に正確に攻撃したとしている。 (NHK 05/15)
【註】 :  北朝鮮は移動式SSMを火星、固定式BMを木星と命名しており、Scud-B改良型は火星-2、Scud-C改良型は火星-6、No Dong 1は火星-7、Musudanは火星-10と呼んでい る。 これに対しKN-11 SLBMを「北極星」、KN-11を陸上発射型にして射程を延長したKN-15を「北極星-2」と呼んでいる。

 北朝鮮が打ち上げに成功した「火星-12」(KN-17)は高度2,111kmに達し、787kmを26分間飛行した。 もしこれを最適弾道(MET)で発射していれば4,500kmは飛翔し たと見られる。
 グアムまでの距離が3,500kmであるので、グアムはKN-17の射程圏内に入ることになる。(DU 05/15)

 米NBC TVが複数の米国防当局者の話として5月19日、北朝鮮は14日に行ったBMの発射試験で弾頭の大気圏再突入に成功したと報じた。 再突入時に弾頭は燃え尽き なかったという。
 ただ、マティス国防長官は19日、北朝鮮は今回の発射で多くのことを学んだとみられると述べるにとどめ、成否の確認を避けた。 (時事 05/20)

 北朝鮮が5月14日に火星-12ミサイルを発射した。 火星-12は高度2,000mまで達し、30分間にわたり800km飛行し日本海に落下した。 (JDW 05/24)

8月29日の発射試験

 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮が日本時間8月29日05:57、平壌の順安付近から日本海に向けて飛翔体を発射した。 発射したのはBMで日本の上空を通過し た。 米軍も北朝鮮が飛翔体を発射したことを確認した。(時事 08/29)

 8月29日朝に北朝鮮が発射したBMをめぐって政府が、日本海上空で3個に分離した可能性があるなどと、自治体などにメールで連絡するエムネット(緊急情報ネッ トワークシステム)で発信し、菅官房長官が記者会見で説明したが、防衛省はさまざまな情報を総合的に分析した結果29日夜、分離していない可能性もあるとして 、これまでの説明を修正した。
 防衛省によると、レーダでは3個ミサイルの航跡が確認されたが、気象状況などによっては実際は1個のものが複数に映ることもあるということで、引き続き分析 を進めることにしている。(NHK 08/29)

 8月29日に北朝鮮がに発射したBMは北海道の上空を通過して太平洋上に落下したと推定され、防衛省は新型のIRBMの可能性が高いとしているが、飛行距離がこの IRBMの最大射程の半分ほどだったことから、意図的に飛行距離を抑えたか失敗した可能性があると見てさらに分析を進めている。
 このIRBMの最大射程は5,000kmとされているが、防衛省によると今回は最も飛行距離が出る軌道で発射されたと見られるものの、飛行したのは最大射程の半分ほど であった。 (NHK 08/30)

 朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)が8月30日、金委員長が米韓合同軍事演習への対抗措置として29日にIRBM火星-12の発射を指揮したと報じた。 (ロイタ 08/30)

 北朝鮮の朝鮮中央放送が8月30日、金委員長がIRBMの発射訓練を指導したと報じた。 訓練には米国軍基地の打撃任務を担う朝鮮人民軍戦略軍とIRBM火星-12が参 加したという。
 金委員長は、今回の訓練はわが軍隊が行った太平洋上での軍事作戦の第一歩で、グアム島を牽制するための意 味ある前奏曲となると述べた。 また、太平洋をタ ーゲットにしたBMの発射訓練を重ね、戦略武力の戦略実戦化を積極的に進めるべきだとした。 (聯合 08/30)

 小野寺防衛相が9月1日、北朝鮮が8月29日に発射したBMの航跡が三つに分離していたことについて、以下の可能性を示した。

(1) 弾頭、ブースタ、接合部品に分かれる構造だった
(2) 想定外の分解だった
(3) 実際には存在しないゴーストがレーダに映った
 複数弾頭やデコイが使用された可能性も排除せず、実際に分離したか否かについては詳細については分析中だと述べた。 (毎日 09/01)

 北朝鮮が8月29日、火星-12の発射試験を行った。 火星-12は日本の上空を越えて14分間にわたり2,700mを飛翔した。
 4月15日に平壌で行われたパレードで初披露された火星-12は、5月14日に行われた発射試験で高度2,111kmまで上昇し787kmを飛翔している。 (JDW 09/06)

9月15日の発射試験

 菅官房長官が9月15日07:30すぎに臨時の記者会見を行い、本日06:57に北朝鮮西岸から北東方向に発射されたBM 1発が07:04に日本の領域に侵入し、07:06に領域から 出て07:16に襟裳岬の東方2,000kmに落下したと発表した。
 そのうえで、現在のところ日本の領域への落下物は確認されず、付近を航行する航空機や船舶への被害報告なども無いと述べた。 (NHK 09/15)

 北朝鮮は日本時間の9月15日06:57、平壌の順安付近から北東方面に向けBM 1発を発射した。 高度は 800kmに達し、飛距離は3,700kmと推定される。
 小野寺防衛相はBMの種類について火星-12 IRBMとの見方を示した。 自衛隊は迎撃措置を取らなかった。 (時事 09/15)

 北朝鮮国営メディアが9月16日06:30頃、15日に平壌郊外の順安付近から北海道の上空を通過させ太平洋に向けて発射したBMについて、火星-12の発射訓練を再び行っ たと発表した。(NHK 09/16)

 北朝鮮の朝鮮中央通信が9月16日、金委員長が火星-12 IRBMの発射を視察したと報じた。 金委員長は、核戦力の完成目標が終着点にほぼ達したとの認識を示し、火 星-12がoperationalになったと宣言した。
 その上で核攻撃力で米国との力の均衡を成し遂げるという最終目標に向け、国家の総力を挙げるよう指示した。 (産経 09/16)

 北朝鮮が、9月15日に火星-12発射の映像を公開した。 映像では、5月と8月29日には片側6輪のTELで垂直に立てたあとに車体から切り離して発射されていた火星-12 が、今回は初めてTELから直接発射された様子が捉えられている。
 また、合わせて公開された写真では、金委員長が見つめるモニター画面に「19分45秒」という飛行時間が表示され、8月にグアム島周辺に向けて、火星-12 4発を同 時に発射する計画を検討中だと発表した際に予告した「17分45秒」よりも2分長かったとしていることが確認できる。 (NHK 09/16)

 北朝鮮が9月15日06:57に火星-12 IRBMを発射した。 火星-12は北日本上空を越えて19分間飛翔し襟裳岬の沖合2,200kmの太平洋上に落下した。 防衛省によると高 度800kmに達し飛翔距離は北朝鮮からグアムまでの距離3,400kmを上回る3,700kmであった。
 北朝鮮は8月29日にも火星-12を発射しているが、その際は到達高度は1,000kmであった。(JDW 09/20)

 北朝鮮が9月15日に発射試験を行った火星-12 (KN-17) IRBMの発射画像を公表した。 火星-12はMAZ-547Vと似たTELから発射された。
 TELの車輪には保護用のカバーが取り付けられており、ミサイルは車両後部から発射された。 発射場所は明らかに飛行場の滑走路上であった。 (JDW 09/27)

f. 北極星-3 SLBM

 朝鮮労働党機関紙の労働新聞が8月23日に金党委員長による国防科学院科学材料研究所視察を伝えた報道で、新型とみられるミサイルの説明図が映った写真を掲載 した。
 このミサイルには「水中戦略弾道弾北極星-3」と表記され、新型SLBMとして注目されている。(時事 08/23)

 軍事関係筋によると、北朝鮮東部で日本海に面し北朝鮮軍の潜水艦基地がある新浦で9月中旬にミサイル用エンジンの地上噴射試験が行われたが失敗したという。
 試験では爆発が起き、北朝鮮技術者に死傷者が出たという。
 米韓両国は、今回の試験は新型の北極星-3 SLBMの開発試験の可能性があるとみて注視している。(朝日 09/30)

 Johns Hopkinse大の北朝鮮分析サイト38 Northが12月1日、北朝鮮西部の南浦にある海軍造船所で建造されていたSLBMの発射試験用の可潜式のはしけが近日中に運 用可能になるとする、商業衛星の画像に基づく分析を発表した。
 38 Northによると11月11日に撮影された画像でははしけの建造が完了しており、16日の画像では中央にSLBM発射装置の支持架が設置されたはしけが浮きドックに乗 せられて近くの埠頭に接岸しているのが確認された。
 また24日の画像では、はしけが浮きドックから離れ造船所の艤装ドックに移動していた。(産経 12/02)

g. ASBM 開発の動き

 複数の韓国情報当局関係者が3月13日、北朝鮮が「空母キラー」と呼ばれるASBMを開発中と見ていることを明らかにした。
 情報当局の関係者は、北がASBMに必要な誘導技術と軌道修正技術を開発したとし、2016年9月と2017月6日にScud-ER 4発の同時発射でこの技術を検証したと述べた。  特に2016年9月の試験では3発のScud-ERが弾着群を形成するほどほとんど似た地点に落ちた。
 別の情報当局関係者は、当時北が海上目標物攻撃状況を仮定して発射したとみていると話した。(中央 03/14)

 韓国軍当局は北朝鮮が超音速の対艦ミサイルを開発していると分析している。 北朝鮮はミサイル艇に搭載するASCMを開発し、4月15日に平壌で行われた軍事パレー ドで公開した。
 一部の専門家は北朝鮮が新しい対艦ミサイルを開発中であり、Scud-ERやNo Dong、北極星もASBMになる可能性があると見ている。
 これと関連して米国メディアが4月18日、北朝鮮が空母などに対抗してKN-17を元にした新型ASBMの試射を行なっていると報じた。 (聯合 04/20)

h. 北極星-1 (KN-11) SLBM

KN-11 SLBM

 韓国学術研究院の季刊英文学術誌Korean Observerの2016年12月号に掲載に掲載した海外の専門家の論文が、北朝鮮がSLBMに1tの弾頭を搭載した場合、韓国全域の 攻撃が可能であると分析した。
 論文は、米MITのセオドア・ポストル名誉教授とドイツ・STアナリティクスのミサイル専門家マーカス・シラー博士の共著で、北朝鮮のKN-11 SLBMは弾頭重量が1t の場合の射程600km、1.5tでは450kmと推定しているが、見積もりには更に詳しい情報が必要だとした上で、弾頭重量1tの場合の飛距離は800kmの可能性もあるとの見 方も示した。(聯合 01/02)

 ソウル所在の研究機関IKSが出版している'Korea Ocserver'の2016年12月号で、北朝鮮のSLBMは1.5tの弾頭を搭載して450km、1tの弾頭では600km飛翔すると述べて いると、聯合ニュー スが報じた。(JDW 01/11)

 韓国軍の関係者によると、北朝鮮が新たに開発したエンジンを搭載している可能性のある新型ICBMと見られる2基が、いつでも発射可能な状態で平壌の北に展開し ており、韓国軍が警戒と監視を続けている。
 この関係者によると、ミサイルは二段式でMusudanに似ているものの一段目の形状が異なり、新型エンジンを搭載している可能性があるという。 (NHK 01/22)

4月15日パレードでの公開

 北朝鮮の平壌で4月15日開催された金日成主席生誕105年を祝う軍事パレードには、2016年8月に試射に成功したとされるSLBM「北極星(KN-11)」や、KN-11を陸上発 射型にして射程を延長した「北極星 2( KN-15)」とみられるミサイルも登場した。(時事 04/15)

発射試験実施の動き

 John Hopkins大の北朝鮮分析サイト38 Northが8月11日、7日に民間衛星が撮影した画像から北朝鮮が北極星-1 SLBM発射 試験の準備をしている可能性があるとの 分析を発表した。
 38 Northによると、北朝鮮東部新浦の造船所に停泊している新浦級潜水艦の船首と船尾部分に、隠蔽網かシートのようなものがかけられているが、同様の動きは 北朝鮮が2016年7月にSLBM発射試験を行う前にも確認されている。(東京 08/12)

発射機にロシアの技術?

 John Hopkins大学高等国際問題研究大学院の米韓研究所が最新の人工衛星画像に基づき5月1日、北朝鮮西部の南浦の海軍造船所で、東部の新浦に続いて2基目とされ るSLBM試験用の発射機が新たに確認されたと発表した。
 4月19日撮影の画像で新たに確認された発射機は、長さ22m+、幅9mと1基目とほぼ同じ大きさで、どちらもロシアの発射機と極めて似ている。 (時事 05/02)

i. 北極星-2 (KN-15) MRBM(陸上発射型 KN-11)

2月12日の発射試験

 韓国軍合同参謀本部などによると、北朝鮮が日本時間の2月12日07:55ごろ、北西部の亀城からBM 1発を発射した。 ミサイルは高度550kmに達し、500km飛行して日 本海に落下した。 韓国軍はMusudan改良型の可能性が高いと発表した。
 韓国軍は当初No Dongとの見方を示したが、その後の分析でNo Dongよりも飛行速度が速かったことなどからMusudanに修正した。
 新型の固体燃料エンジンが使用された可能性があるという。 (時事 02/12)
【註】 :  発射されたBMがこの報道の言うように射程2,500~4,000kmのMusudanであれば飛翔距離が500kmとはどう言う事か。 上昇高度が550kmであれば高射角発射ではない。  固体燃料ロケットであれば燃料を減らしてとか、燃焼時間を短くしてとは考えにくい。
 北朝鮮はこのBMを「北極星-2」と呼んでおり、2016年8月に発射したSLBMも"Bukgeukseong-1"(北極星-1)であったことから、Musudan改ではなくKN-11 SLBMではな いか。

 韓国軍合同参謀本部が2月12日、同日に北朝鮮が発射したBMがNo DongよりもMusudanの改良型である可能性が高いとの見解を示し、ミサイル発射の成否を判断するた めには引き続き分析を進める必要があるとした。
 同関係者は、北朝鮮が発射したBMについて合同参謀本部が修正した理由について、飛行速度がNo Dong (Mach 9.5)を上回ったためと説明した。 (聯合 02/12)

 北朝鮮が2月12日、改良型MusudanとみられるBMを高射角発射したことで、韓国側ではTHAAD配備の必要性がさらに強まったとの見方が出ている。
 現在韓国軍と在韓米軍が装備しているPAC-2/3では、Mach 4~5で落下するミサイルしか迎撃できないが、高角発射ではMach 10以上で突入するため、北朝鮮の弾道弾 を迎撃できるのは現時点でTHAADしかない。(朝鮮 02/13)

 北朝鮮が日本時間の2月12日07:55に発射し高度550kmに達したのち、500km飛行して日本海に落下したBMについて北朝鮮国営朝鮮中央通信が13日、新型の中長距離戦 略弾道弾「北極星 2」の発射試験に成功したと報じた。
 このBMは固体燃料エンジンのSLBM改良型で、飛距離を抑えて高度を高める高射角発射で発射されたという。 (時事 02/13)

 韓国軍合同参謀本部の関係者が北朝鮮が2月12日発射したBMについて13日、SLBM技術を利用した新型の固体燃料MRBMと判断したことを明らかにした。 合同参謀本部 は前日、改良型Musudanの可能性が高いとの見方を示していた。
 射程距離は、K-11 SLBMの2,000~2,500kmよりは長いが、Musudanの3,000~3,500kmよりは短い2,500~3,000kmと推定される。 (聯合 02/13)

 北朝鮮が2月12日07:55に発射したBMの名称は朝鮮中央通信(KCNA)によればPukguksong-2で、2016年4月に発射したSLBMの名称がPukguksong-1であったことからその発 展型と見られる。
 Pukguksong-2はコールドロンチ方式の固体燃料ミサイルで、Pukguksong-1とは弾頭/RVの形状が異なっている。
 KCNAは、Pukguksong-2は迎撃を回避できると主張しているが、そのやり方については述べていない。(DN 02/13)

 韓国情報機関の国家情報院が北朝鮮が2月12日に発射したBMについて14日に行った国会情報委員会への報告で、発射角度は89゚と垂直に近く、これを通常の角度で発 射すれば射距離が2,000km以上になると明らかにした。(朝鮮 02/14)

 北朝鮮が2月12日に発射したBMを「北極星 2」と命名したが、開発したミサイルに星の名前をつける北朝鮮の長い慣行によるもので、対戦車ミサイルの名称は水星 (後に火の鳥に改称)、対艦ミサイルは金星、移動式SSMは火星、固定式BMは木星と命名している。
 最も多いのは火星で、北朝鮮が開発したScud-B改良型は火星 2、Scud-C改良型は火星 6、No Dong 1は火星 7、Musudanは火星 10である。
 新型ミサイルに太陽系惑星の名前を順につけた北朝鮮のミサイルの慣行に従うなら、2016年8月に発射したSLBMは土星となるはずだが北極星と名付けられた。 これ は北極海経由でワシントンを狙う意思が込められているためと見られる。(東亜 02/14)

 北朝鮮が2月12日07:55に朝鮮半島の西海岸から日本海に向けてBMを発射した。 韓国軍は飛翔距離を550kmとしている。
 国営朝鮮中央通信(KCNA)はこのBMをPukkuksong-2と呼び、固体燃料エンジンの新型ミサイルであるとしている。 (JDW 02/22)

5月21日の発射試験

 北朝鮮が5月21日16:59に同国西部の平安南道北倉付近からBM 1発を発射した。 韓国軍合同参謀本部によると、高度560kmに達し、発射軌道などの特徴が2月12日 に初めて発射された新型のMRBM北極星-2(射程2,000km)と類似しているという。
 北朝鮮のBM発射は5月14日に続く今年8回目で、航空機や船舶への被害は確認されていない。
 日本政府によると、BMは朝鮮半島から東方向に500km飛翔し、北朝鮮東岸から東に350kmの日本の排他的経済水域(EEZ)外の日本海に落下した。 稲田防衛相は弾 頭の落下地点について、男鹿半島から700km、隠岐諸島から400kmだったと述べ、1,000kmを超えるような特異な高度ではなかったと語った。 (讀賣 05/21)

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)が5月22日、MRBM北極星-2の発射試験に成功し、核弾頭の末期誘導性能を確認したと発表したと報じた。
 専門家は固体燃料エンジンと移動式発射装置により、発射の兆候を察知するのが一段と困難になると見ている。 (ロイタ 05/22)

 北朝鮮の朝鮮中央通信が5月22日、MRBM北極星-2の発射実験に再度成功したと報じ、実験に立ち会った金労働党委員長が実戦配備を承認したと報じた。 中央通 信は北極星-2の量産の準備を完了しており、今回の実験は北極星 2の技術を最終的に確認し、部隊に実戦配備することを目的に行われたと説明した。
 北極星-2はSLBMを地上配備型に改良したミサイルで、敵に察知されることなく迅速に発射できる固体燃料が使われている。 (聯合 05/22)
 韓国合同参謀本部が5月22日、北朝鮮が21日に発射した北極星-2は正常な角度で発射された場合でも射程はMRBMで、3,500km離れたグアムまでは到達できないと 判断したことを明らかにした。
 北朝鮮は、北極星-2が5月14日に発射した火星-12と共にIRBMだと主張している。(中央 05/22)

 北朝鮮が5月21日、北極星-2 MRBMの発射試験を行った。 北極星-2は16:49に平安南道北倉付近から発射され500kmを飛翔して日本海に着弾した。
 北極星-2初の発射試験は2月12日にが行われている。
 聯合ニュースは到達高度を560kmと報じた。 北朝鮮はその1週間前に火星-12を発射して、高度2,000kmに達していた。
 北極星-2は「天馬」か「暴風」戦車の車体を利用したと見られるTELから発射された。(JDW 05/31)

(ウ) Scud 改良型の KN-18 / KN-21

5月29日、KN-18 の発射

 聯合ニュースが、北朝鮮が5月29日朝に東部の元山から何らかの飛翔体を発射したと報じた。 韓国軍が詳しい情報の収集を急いでいる。
 日本政府は、05:40頃に北朝鮮からミサイルが発射され、日本海のわが国の排他的経済水域内に着水する可能性があると発表した。 (NHK 05/29)

 米太平洋軍が北朝鮮がSRBMを発射し、6分間飛行したと発表した。 ミサイルは400km飛翔し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。 発射したのはScud系 列とみられる。
 5月14、21日に続く3週連続のBM発射で、今年に入り9回目、EEZ内への落下は3月6日以来、4回目となる。 (讀賣 05/29)

 北朝鮮の朝鮮中央通信が5月30日、精密誘導システムを導入したBMの発射試験に成功したと報じた。 29日朝に日本海に向けて発射したSRBMを指すとみられ、新 型ミサイルは艦船を含む目標を精密に打撃できるとして、空母などを目標としたASBMの能力も持つと主張した。
 朝鮮中央通信によると、試験はミサイルの誘導技術や装軌式TELの信頼性を確認する目的で行われ、予定された目標に誤差7mで命中した。 (毎日 05/30)
【註】 :  洋上に海没した弾頭の位置を特定することは不可能であるため、北朝鮮が主張する「7mの誤差で着弾」とは「テレメータの送信データから7mの誤差と推測される」 程度の値と思われる。
 いずれにせよ、この日発射されたのはKN-17 ASBMのようである。

 北朝鮮が5月29日05:40、MaRV弾頭を搭載したSRBMを発射した。 このSRBMは400km飛翔し、日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に着弾した。 北朝鮮のKCNAは着 弾誤差が7mであったと報じた。
 この発射試験では、Scud AのTELである2U218とよく似た装軌式のTELが使用された。(JDW 06/07)

8月26日、KN-21 の発射

 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮が8月26日06:49頃に江原道の旗対嶺付近から北東方向の日本海に向け飛翔体数発を発射した。 飛距離は250kmという。
 これについて米国防総省は、北朝鮮がBM 3発を発射し、いずれも失敗したとの初期の分析を明らかにした。 国防総省によると、ミサイルは06:49~07:19に連続 して発射されたが、1発目と3発目は予定通り飛行せず、2発目は発射直後に爆発したとみられる。 (時事 08/26)

 北朝鮮が8月26日朝に日本海に向け発射した飛翔体について、韓国大統領府の首席秘書官が、改良型300mm MLRと推定されるとした上で、軍が分析を続けていると 伝えた。 北朝鮮が今回発射したのがMLRだった場合、性能改良のための発射試験だった可能性もある。
 一方、米太平洋軍司令部は北朝鮮がBM 3発を発射し、いずれも失敗したとみられるとの見方を示している。 300mm MLRの射程は200kmとみられるのに対し、今回 発射された3発のうち一部は250km飛翔したとされるためである。(聯合 08/26)

 米太平洋軍報道担当官が8月26日、北朝鮮が同日発射した飛翔体について、初期の分析を訂正して3発のうち2発は失敗ではなく、北東方向に250km飛翔したと述べ 、日韓両国の分析を追認した。(時事 08/26)

 複数の韓国政府消息筋が8月27日、前日北朝鮮が発射した短距離飛翔体について、高度が50kmに達したと分析されたと明らかにし、通常はが80kmに達する一般的な BMの飛行高度に遠く及ばないことから、北朝鮮が発射した のは新型の300mmMLRか、新型SRBMの可能性が高いとの見方が出ている。
 北朝鮮が配備しているMLRのうち射程が200kmに達するのは300mmだけなため、今回発射されたのが300mm MLRだった場合、北朝鮮が改良型を開発したとの見方が出 ている。(聯合 08/27)

 韓国軍関係者が8月28日、北朝鮮が26日に発射した飛翔体について、米国との共同分析の中間結果として、SRBMの可能性が高いと明らかにした。
 韓国大統領府は発射当日、300mm MLRと推定されると発表しており、事実上、発表を訂正したことになる。 (聯合 08/28)

 複数の韓国政府消息筋が8月28日、北朝鮮IRBM、MRBMに続きSRBMを開発し試験に乗り出した状況を捉えたと明らかにした。
 26日に発射した短距離飛翔体も地対地BMの可能性が高いとみられている。
 北朝鮮が開発中のSRBMはKN-02とは形状が異なる新型で、固体燃料を使うという。(聯合 08/28)

 アジア太平洋地域問題を扱うオンラインのDiplomat誌が9月14日、北朝鮮が8月26日に発射した3発のBMについて米政府筋がScud系列改良型の新型SRBMと分析している と報じた。
 米軍がKN-21と名付けた新型ミサイルは、5月下旬に発射されたScud改良型のKN-18と似た精密誘導能力を持つとみられが、KN-18とは異なり弾頭部分が分離せず飛行 する。(時事 09/14)

(エ) 既存の弾道弾

a. 火 星-10 (Musudan) IRBM

3月22日の発射失敗

 韓国国防省当局者によると、北朝鮮が3月22日午前に元山の飛行場付近からミサイル1発を発射したが、失敗したとみられる。 ロイタ通信は米太平洋軍報道官がミサ イルは発射から数秒で爆発したようだと語ったと報じた。
 菅官房長官は22日午前の記者会見で、日本の安全保障に直接影響を与える事態は生じていないと述べた。 (時事 03/22)

 北朝鮮が3月22日朝に元山付近から発射したBMは発射数秒後に空中で爆発したが、日本政府関係者は日本を射程に収めるMRBMだった可能性があると見ている。
 日米韓は、北朝鮮が失敗克服のため近くさらなる発射を強行する恐れがあるとして監視を強化している。
 このBM発射は、トランプ政権による対北朝鮮政策の見直しや米韓合同軍事演習をけん制する狙いがあるとみられる。 (東京 03/22)

 複数の韓国軍関係者が3月23日、北朝鮮が22日午前07:49に元山の葛麻飛行場付近で発射し数秒後に空中爆発したBMはMusudanという暫定結論を韓米が出したことを明 らかにした。
 軍関係者は米軍側が分析の結果、Musudanまたはその改良型とみられると知 らせてきたとし、米韓は共同で追加の確認作業を始めているという。
 米軍がMusudanと見なした理由は、TELが装輪式でミサイルの外形がMusudanに似ていたからという。 北朝鮮が2月12日に発射した「北極星-2」のTELは装軌車だった。 (中央 03/24)

 北朝鮮が3月22日にミサイル1発を発射したが、米韓両軍は発射数秒後に爆発したことを確認した。(JDW 03/29)

b. 火 星-7 (No Dong)

 特記すべき記事はなかった。
c. 火 星-6 (Scud-ER)

3月6日の4発斉射成功

 北朝鮮が3月6日07:34に東倉里付近から日本海に向けて4発のBMをほぼ同時に発射し、うち3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。
 防衛省などによると、BMはいずれも最大高度260kmで1,000km飛翔し、男鹿半島の西方沖300~350kmの日本海に着弾し、このうち3発がEEZ内、1発はEEZの手前に落下 したとみられる。
 北朝鮮が発射したBMの弾頭が日本のEEZ内に落下したのは、2016年9月5日以来3回目である。 (讀賣 03/06)

 韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が3月6日に発射したBMは最高高度が260kmだったことからICBMの可能性は低く、射程1,000kmのScud-ERか1,300kmのNo Dongの可能性が 高いが、固体燃料を使った新型ミサイルの可能性もあることから慎重に分析している。
 同本部などによれば、4発の落下地点はそれぞれ100km前後離れ、南北に300~350kmの範囲に広がっていることから、北朝鮮は発射方位を真北を0゚として75゚から93゚ の範囲で発射し、あえて別々の場所を狙ったとみられる。
 4発は10分以内の間に次々と発射したとみられる。(朝日 03/06)

 米政府当局者が北朝鮮が3月6日に発射したBMについて、射程1,000kmのScud-ERが含まれていた可能性があるとするとともに、合わせて5発が発射されが、このうち1発 は発射直後に爆発していたという分析を明らかにした。(NHK 03/07)

 韓国軍合同参謀本部が3月7日、前日に北朝鮮が発射したBM 4発はScudの改良型だと判断したと発表した。 Scudの改良型とは射程1,000kmのScud-ERを意味する。
 北朝鮮はこの日、在日米軍基地の打撃任務を遂行する部隊が6日に4発のBM発射演習を行ったと発表した。 (聯合 03/07)

 北朝鮮国営の朝鮮中央TVが3月6日に発射したBMについて7日、在日米軍への攻撃任務を担う部隊が6日にBM 4発を同時に発射かる訓練を行ったとする映像を放送した。
 映像では、カウントダウンの数字が表示されたあと、一列に並んだTELに搭載されたBM 4発がほぼ同時に上昇していく様子をさまざまな角度で捉えている。
 映像によるとTELは片側4輪で、ミサイルの先端が尖っていることから、発射されたのは射程1,000kmのMRBM Scud-ERである可能性が高い。 (NHK 03/08)

4月5日の発射失敗

 韓国軍合同参謀本部が4月5日、北朝鮮が咸鏡南道新浦から日本海に向け、BMとみられる飛翔体を発射したと明らかにした。 (聯合 04/05)

 米太平洋軍が米国時間4月4日、北朝鮮が東部の咸鏡南道新浦付近の地上施設からBM 1発を発射したと発表するとともに、MRBM KN-15(北極星-2)だったとする初期 分析結果を示した。
 韓国軍の合同参謀本部は、ミサイルは06:42に新浦付近から発射され、飛距離は60kmだったと発表している。 (朝鮮 04/05)

 米中首脳会議の直前に北朝鮮がMRBMを発射した。 ミサイルは9分間にわたり40哩飛翔し海没した。
 このBMについて米太平洋軍は当初KN-15と見られると発表したが、後に国防総省高官がScud-ERとの見方を示した。 (S&S 04/05)

 匿名の米ホワイトハウス当局者が4月5日、北朝鮮が前日に発射したBMはScudだったことを明らかにした。 同当局者、発射されたミサイルは制御を失い射程の一部 しか飛行しなかったと述べた。
 米軍は当初、北朝鮮が発射したのはKN-15 MRBMとの見方を示していた。(ロイタ 04/06)

 米国防総省当局者が4月5日、北朝鮮が5日に発射したBMについて、米軍は当初推定したKN-15ではなくScud-ERだったと分析を修正したことを明らかにした。
 KN-15は固体燃料エンジンだが5日のミサイルは液体燃料を使っていたという。
 米太平洋軍はミサイルが9分飛行したとみていたが、国防総省当局者は発射後間もなく制御不能に陥り飛行したのは1分程度だったと説明し、発射は失敗だったと みている。(東京 04/06)

 北朝鮮が4月5日にBMを発射したが失敗した模様である。 BMは60km飛翔したのち日本海に落ちた。
 このBMについて米韓は当初KN-15と見ていたが、液体燃料であったことからScud-ERと見られる。(JDW 04/12)

4月16日の発射失敗

 米韓両軍によると、北朝鮮が4月16日06:21に東部の新浦付近からBM 1発の発射したが失敗した。 米太平洋軍は、ミサイルは発射直後に爆発したとの見方を示し た。 ペンス副大統領に同行している米大統領府当局者も、発射4~5秒後に失敗に終わったと語った。
 また発射したのはICBMではなく、MRBMだったとみられると明らかにした。 やはり新浦付近で5日に発射され60km飛行したScud-ERの可能性もある。 (時事 04/16)

 北朝鮮が4月16日日本時間06:21に東部の咸鏡南道新浦付近から発射し直後に爆発したBMについてマティス米国防長官は15日、トランプ大統領と政権の軍事チーム は、不成功だった北朝鮮のミサイル発射について把握しているとしたうえで、大統領からこれ以上のコメントはないとの声明を発表した。
 BMの射程について日本政府高官は、1,000km以上のMRBMと分析していることを明かした。(産経 04/17)

(オ) 拡散弾頭 (ERS) や化学弾頭

 北朝鮮が米韓のBMDSに対応するため、迎撃ミサイルの最大迎撃高度より高高度で子弾を散布する方式の拡散弾(ERS)を開発した。 またERSには化学弾の使用も可 能だという。
 情報消息筋は、北朝鮮が開発を完了したERSはPAC-3の迎撃高度20kmより高空の25kmで子弾を散布するためPAC-3で迎撃するのは難しいと見ている。
 米韓情報当局によると、ERSはNo DongとScud系列BMに搭載可能で、北朝鮮朝鮮中央TVが8月14日に報じた金委員長が戦略軍司令部を視察した写真では金委員長の 右側には、Scudの弾頭部が外皮がない状態で展示されていた。
7月4日に朝鮮中央TVが放送した番組では、金委員長が「散布」と書かれた弾頭部を眺める場面が登場している。 (中央 08/22)
オ. その他新戦力の構築

(ア) 巡航ミサイルの開発

 韓国軍合同参謀本部が6月8日、北朝鮮が8日朝に元山付近から日本海に向け地対艦ミサイルと推定される何らかの飛翔体を数発発射したと発表した。
 北朝鮮のBM発射は、5月29日に元山付近から、地対艦、地対地兼用と見られるScud系列のBMを発射してから10日ぶりで、文政権発足後のBM発射はこれで4回となる。 (聯合 06/08)

 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮が6月8日06:18から数分間にわたり元山から日本海に向けミサイル数発を発射した。 短距離のASCMと推定され、飛翔距離200km 、最高高度は2,000mだった。
 北朝鮮は射程は160kmのASCM KN-01を保有しているが、8日発射されたミサイルは200km飛翔しており、改良型か新型の可能性もある。 (時事 06/08)

 北朝鮮の朝鮮中央通信が6月9日、新型陸上発射型ASCMの初めての発射試験を実施し、日本海上の標的船を探知し命中したと報じた。
 北朝鮮は8日、日本海に向け陸上発射型ASCMと推定される数発を発射しており、これと同一のものとみられる。 (毎日 06/09)

 北朝鮮が6月8日に短距離ASCMの発射試験を実施した。
 最初の発射は06:18で、その後数分間にわたり4発が連射されたと見られる。
 発射されたのはロシア製3M24 ASCMの北朝鮮型と見られ、水平距離200km、最高高度2km を飛翔し日本海に海没した。 (JDW 06/14)

(イ) 艦艇の建造

SLBM 搭載潜水艦の建造

 北朝鮮関係者が、北朝鮮がSLBMの発射管2~3基を備えた長時間潜行可能な新型潜水艦 建造を進め、8割がた完了いるとの情報があることを明らかにした。
 新型潜水艦は新型SLBM北極星-3を搭載する可能性があるという。
 北朝鮮が現在保有するSLBM搭載潜水艦は発射管が1基だけで、浅海で数日間しか潜航できない2,000tの新浦型だけとされるが、関係者によると3,000t級の新型潜水艦 は2017年内に進水する模様で、動力にはAIPを採用しているとの情報もある。(東京 09/14)

2,000t級潜水艦の SLBM 搭載改造

 米Washington Free Beaconが4月20日に国連の報告書を引用して、北朝鮮の2,000t級潜水艦の発射管両側に通風口が追加されSLBM複数発を発射できるように改造 した可能性があると報じた。
 北朝鮮の2,000t級潜水艦は発射管が一つしかなく1発しか発射できないのに対し、北朝鮮はSLBMを3発以上搭載できる3,000t級の新型潜水艦を建造中であるとさ れる。
 この報道に対し韓国軍は21日、もう少し分析が必要だと慎重な立場を示した。(聯合 04/21)

(ウ) 防空能力強化、BMDS の構築

KN-06 SAM改良型の発射試験

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信などが5月28日、新型SAMの発射試験が行われ成功したと報じた。
 韓国国防省当局者は28日、米韓は北朝鮮が27日にSAMを発射したことを把握しているが、具体的な種類については特定していないと述べたが、聯合ニュースなど の韓国メディアは、画像から「ポンゲ(稲妻)5」(KN-06)SAMの改良型とみられると伝えた。 最大射程は150kmと推定されるという。 (時事 05/28)

 北朝鮮が、ロシアのS-300Pまたは中国のHQ-9を元にしたと見られるKN-06 (Pongae-5)の発射試験を行った。 (JDW 06/07)

現在の防空能力に疑問

 韓国情報機関の国家情報院が9月26日に国会に、23日深夜から24日未明にかけて北朝鮮東方沖北方限界線(NLL)の北側を飛行した米空軍のB-1 2機とF-15に対し、北 朝鮮が全く対応措置を取っていなかったと報告した。 飛行に気づかなかった可能性が高く、北朝鮮の脆弱な防空体制が浮き彫りになった。
 北朝鮮は飛行判明後になって、西方の航空部隊を東海岸に移動させたり、哨戒飛行を実施したりするなど、防空態勢を強化した。 中国やロシアにも飛行の事実 確認を行ったとされる。(産経 09/27)

(エ) 通信、C3I能力の向上

 国連の調査でマレーシアのGlocom社が北朝鮮の企業で各種C4Iシステムを取り扱っていることが判明した。 取り扱っているのは携帯、車載、艦船搭載、航空機搭 載システムやBMS、暗号装置と多彩で、すでに輸出も開始されている。
 Glocom社が定挙すしているGR-150は1.6~30MHzをカバーするソフトウェア無線機で、毎秒10回の周波数変換を行う周波数ホッピングを行う。 またAEW246ディジタ ル暗号機や 3G ALE、NVISなどの機能も持つ。 伝送速度は110~4,800Bites/sでプリセットの100チャネルを有する。
 GR-930 BMSはIPをベースにして、各種センサ、通信、位置情報などの統合を行う。(IDR 5月)
カ. サイバ戦の推進

サイバ攻撃の活発化

 聯合ニュースが3月22日、韓国軍のコンピュータネットワークに対するハッキングが3月になって急増していると報じた。 (JDW 03/29)

外貨獲得のためと見られるランサム(身代金)ウエア攻撃

 大規模なサイバ攻撃が世界各地で一斉に発生したことが5月12日に確認された。 この攻撃により英国の日産自動 車の現地工場で生産に影響が発生し、フランス では自動車大手ルノーも製造を一部停止した。
 攻撃はロシアや中国を含む約100ヵ国で起きており、件数は75,000件に達するとみられ、近年では最大規模の被害が出る可能性がある。 (産経 05/14)

 ロイタ通信が5月15日に、セキュリティー大手シマンテック社とカスペルスキー社の見方として、世界各地で起きた大規模サイバ攻撃は攻撃を受けた端末のデータ 復旧と引き換えに金銭を要求するランサム(身代金)ウエアのプログラムコードの一部が北朝鮮のハッカ集団ラザルスが過去の攻撃で使ったプログラムに類似してい たと報じた。
 シマンテック社によると、ラザルスは北朝鮮の意を受けて2016年2月にバングラデシュ中央銀行にサイバー攻撃を仕掛け、$81Mを盗んだとみられている。
 両社はロイタに対し、プログラムコードは現時点で問題のランサムウエアWanna Cryの源流をたどる最大の手がかりだと語ったが、北朝 鮮が今回の攻撃に関与したかは今の段階では断定できないというが、 欧米の安全保障当局者はロイタに対し、北朝鮮が攻撃に関与した可能性を排除しないとした。 (産経 05/16)

 ロイタ通信などが、身代金要求型のウイルスランサムウエアによる大規模サイバ攻撃を巡り、米セキュリティーソフト大手のシマンテック社とロシアの情報セキュ リティー会社カスペルスキー社が5月15日に、北朝鮮によるものと指摘された過去の攻撃との関連を調査していると明らかにしたと報じた。
 今回、世界規模で拡散したランサムウエアはWanna Cryと呼ばれるタイプで、シマンテック社によると2016年10月以降に世界31ヵ国104機関が標的とされた攻撃で用 いられたウイルスと、プログラムの一部が類似しているという。
 前回の攻撃を実施したのはハッカ集団ラザルスとされ、北朝鮮の関与が強く疑われている。(毎日 05/16)

 世界各地で起きた大規模サイバ攻撃に北朝鮮が関与した可能性が浮上した。 社会の混乱や外貨の獲得を狙ったとみられ、北朝鮮偵察総局傘下の121部隊が関わっ た可能性もある。
 国家ぐるみのサイバ犯罪が事実であれば、国際社会にとって大きな脅威となる。
 Googleの研究者は、今回の攻撃に使われたソフトWanna Cryの初期版に北朝鮮が関与した技術的痕跡があると指摘し、北朝鮮のハッカ集団ラザルスが2015年に使っ た攻撃ソフトと同じ記述がプログラムに見つかったとしている。
 ロシアの情報セキュリティー企業のカスペ ルスキー研究所は、ラザルスはウイルス工場を運営していると指摘した。 (日経 05/17)

 サイバーセキュリティの専門家で元米国家安全保障局(NSA)首席監察官、ブレナー 氏が都内で産経新聞の単独インタビューに応じ、世界各地で5月に発生した大 規模サイバ攻撃について 北朝鮮による外貨獲得が目的との見方を示した上で、北朝鮮のサイバ攻撃の能力は急速に上昇していると警鐘を鳴らした。 (産経 05/26)

 日本を含め150ヵ国以上の30万台のパソコンが影響を受けた2017年5月に発生したサイバ攻撃は、ランサムウエアの一種である「ワナ・クライ」が使用され、北鮮の 関与が指摘されたが、米ソフトウエア会社シマンテックによると、今回使用されたのはワナ・クライに似た「PETYA」と呼ばれるウイルスで、「コンピュータの機能回 復のために$300の支払いを要求するメッセージがディスプレー上に表示されるという。 (毎日 06/28)

米韓戦時作戦計画をハッキング

 聯合ニュースが、2016年に北朝鮮のハッカーが米韓の戦時作戦計画を盗んだと報じた。 ハッキングに会ったのは韓国国防統合情報センタで、2016年9月にOPLAN 5015やOPLAN 3100計画が盗まれたという。
 OPLAN 5015は最新の米韓合同作戦計画である。(JDW 10/18)

米国に対するサイバ攻撃

 米FBIと米国土安全保障省(DHS)が11月14日、2016年以降に同国の航空宇宙、通信、金融を標的として行われた北朝鮮政府が関与したサイバ攻撃に関する詳細を発 表した。
 発表によると、北朝鮮のハッカはコンピューターシステムやネットワークシステムに不正アクセスするFallChillと呼ばれるマルウェアを使用していた。 (ロイタ 11/15)

北朝鮮サイバ戦能力の弱点

 東京の情報セキュリティ会社トレンドマイクロ社が11月19日、2016年8~12月にかけて北朝鮮が送受信しているネット情報の流れなどを調べた結果、北朝鮮内が サイバ攻撃に使用しているPCが既に別のウイルスに感染しているなど、相当数のPCが相次いで外部の侵入を受けていたことを明らかにした。
 北朝鮮は外貨獲得などのため他国へのサイバ攻撃に力を入れているとされる一方で、セキュリティが不十分なフリーメールサービスが公共機関で利用されている ことも判明し、ネット環境をめぐるお粗末さや、守りの弱さが浮き彫りになった。(産経 11/20)

キ. 生物化学戦の準備

(ア) 生物化学戦体制の構築

 マレーシアで殺害された金正男氏の遺体からVXが検出されたことで北朝鮮の生物化学戦能力に対する不安が高まるなか、韓国軍は北朝鮮軍が連隊級部隊にまで生物 化学部隊を配属したと判断している。(聯合 02/27)
(イ) 生物化学弾頭の準備

 朝日新聞が韓国の情報関係筋を引用して12月20日、北朝鮮がICBMに生物兵器の炭疽菌を搭載する実験をしていると報じた。
 同紙は、北朝鮮はICBMの大気圏再突入時に発生する7,000゚以上の高温でも炭疽菌が死滅しないように、耐熱 耐圧装備などの実験を始めたとしている。
 米国政府が18日に発表した国家安保戦略にも、北朝鮮は核と生物化学兵器で米国を脅かしていると記述されたという。 (中央 12/20)
ク. EMP 攻撃を示唆

 北朝鮮の朝鮮中央通信が9月3日、金委員長が視察したICBMのに搭載する水爆はEMP攻撃も加えられると主張した。
 米ミサイル専門家は6月に、北朝鮮が2004年にロシアからEMP技術を獲得した事実が米議会の調査を通じて確認されたと指摘し、金正恩政権が最初の攻撃手段として 直接的な核ミサイル攻撃より、EMP弾を使う可能性が高いとの見通しを示していた。(産経 09/03)
(3) 韓 国

ア. 国内の混乱

 中国は韓国へのTHAAD配備に対し、レーダの捕捉範囲が中国の戦略的かつ安全保障上の利益を侵害しているとして反対しているが、同型のX-abndレーダはすでに日本 で2ヶ所に配備され探知距離が2,000kmのForward Based Modeで使用されているのに、韓国に配備されるTHAADレーダは探知距離1,000kmのTeminal Based Modeで使用さ れる。 ところが中国は探知距離が長い日本のレーダを問題視したとは聞いたことがない。
 中国には日米韓同盟から韓国を引き離す意図があるとの見方もあったが、最近は習主席が公の席で反対したにもかかわらず、韓国が聞き入れなかったことへの怒り という見方の方がより説得力がある。(朝鮮 03/09)

 在韓米軍へ配備されるTHAADの発射機4基が韓国に追加搬入され、大統領府に報告されていなかった問題で、大統領府高官は6月7日、4基の配備は用地の環境影響評 価作業が終了してから決定されると述べた。 環境影響評価作業は最短でも1年かかるとみられており、THAADの追加配備は事実上中断される。
 同高官は、既に配備済みの発射機2基とX-bandレーダは撤去する必要はないとの立場を示しており、当面は発射機2基で運用される。 (時事 06/07)

 米陸軍THAADの韓国への更なる配備は、韓国で誕生した新政権が環境影響調査を要求してきたことから1年程度遅れる見通しになった。 (JDW 06/14)

イ. 体制強化、国防計画

兵役期間の縮小と装備の先進化

 韓国国政企画諮問委員会が7月19日、常備兵力を51万人に、現在21ヵ月の兵士の兵役期間を18ヵ月に減らす案を100大国政課題に含めた。
 兵役期間18ヵ月は文大統領の大統領選挙公約の一つである。
 これは装備の先進化と精鋭化で国防力を強化しながらも、兵士の軍生活期間を減らすというのが狙いで、盧政権が追求した国防改革の再現である。 (中央 07/20)

ウ. 核保有論

 韓国ギャラップ社がが9月8日に発表した、5~7日に全国の成人男女1,004人を対象に実施された世論調査結果によると、韓国が核兵器を保有することについて賛成 は60%、反対は35%となった。
 北朝鮮が核を放棄しない場合、「全ての支援を中止すべきだ」との回答が65%、「人道支援は維持すべきだ」との答えが32%だった。 (聯合 09/08)

 New York Times紙が10月28日に米国科学者連盟の報告書を引用して、韓国の核兵器製造能力を分析した結果、韓国が保有している24基の原子炉から出る再処理物質 でプルトニウムを抽出すれば核爆弾4,300発以上を製造することができると報じた。
 同紙はまた、韓国が1970~1980年代に2度にわたって秘密裏に核兵器開発を試み、2004年には韓国科学者が国際原子力機関(IAEA)に報告せず核物質を再処理して濃縮 したことがあるとも報じた。(中央 10/30)

 ソウル大原子核工学科の徐教授が10月31日の韓国国会外交統一委員会に参考人とし、韓国の核兵器開発に必要な時間についての質問に対し、核兵器の開発には現在 は再処理されていない原発で使用済みの核燃料からプルトニウムを抽出することになるが、これを再処理すればプルトニウム50tとなり、核爆弾1万発の作る量に相当 すると述べた。(中央 11/01)

エ. 戦力の近代化

(ア) 装備近代化の基本方針

2018~2022年の国防中期計画(三軸体系の構築の前倒し)

 韓国国防部が4月14日、三軸体系の構築を当初計画の2020年代半ばから2020年代初めに前倒しした2018~2022年の国防中期計画を発表した。
 三軸体系とは、北朝鮮を先制攻撃するKill Chain、北朝鮮が発射したミサイルを迎撃するKAMD、北朝鮮の指導部などに報復攻撃を行うKMPR(大量反撃報復)を指 す。
 Kill Chainでは当面、偵察衛星4~5基を海外からリースして北朝鮮全域を監視すると共に、2022年までに独自の軍事衛星 5基を打ち上げるする計画で、北朝鮮地域の衛星映像を分析するシステムも来年から構築を始めることにしている。
 また、射程500km(玄武-2B)、800km(玄武-2C)のTBM、1,000km(玄武-3)のCMをはじめとするミサイル、230mm級のMRLなどの配備を1年早める。
 KAMDでは、北朝鮮のSLBM発射を探知する能力の補強、BMの迎撃能力と韓国重要施設の防衛能力向上のため、PAC-3の追加 購入、MSAMの改良、Green Pine BMEWR 2基の追加購入などを行う。
 KMPRでは、金朝鮮労働党委員長をはじめとする北朝鮮指導部を排除する特殊任務旅団が装備するUH-60ヘリのエンジンや 機体を改良し、特殊作戦用UAVなどを新たに導入する。(朝鮮 04/14)

攻撃型武器への集中投資

 複数の韓国国防部関係者らが7月18日、宋国防部長官が就任後に国防部の幹部に対し、軍を豹に変えるのが国防改革と述べ強力な改革を強調したことを明らかにし た。 国防部はミサイル防衛(KAMD)より北朝鮮の大量破壊兵器を先制打撃するKill Chainに優先的に予算を配分することにしたという。
 また別の軍消息筋は、KAMDを完成するには多くの費用と時間がかかるため、敵が撃つ前に先に破壊するKill Chainが北の核やミサイル挑発を抑止するのに有効と述 べた。
 韓国軍はKill Chain強化のために玄武系列のBMやCMと戦闘機から発射する精密誘導武器を大幅に増やす 計画である。 (中央 07/19)

(イ) 各種ミサイルの開発整備

a. 米韓ミサイル指針の改定

 韓国政府当局者が7月24日、政府がBMの弾頭重量を現在の二倍の1tに増やす計画を進めていることを明らかにした。
 2012年に米国との交渉を通じて改定したミサイル指針では韓国のBMを最大射程800km、弾頭重量を500kgに制限しているため、政府は5年ぶりに米韓ミサイル指針の 改定に取り組もうとしている。
 CMには射程と弾頭重量の制限がない。(中央 07/25)

 米国防総省が8月7日、韓国側から要請を受け韓国との間で定めている「ミサイル指針」の見直しを行っていることを明らかにした。
 2012年の改定で合意した現行の指針では、韓国が開発できるミサイルは射程800km以下、弾頭の重量500kg以下とされている。 (ロイタ 08/08)

 韓国の文大統領が9月4日夜にトランプ米大統領と電話会談し、ミサイル指針に定められている韓国軍のミサイル弾頭の重量制限を解除することで合意した。
 現行のミサイル指針では韓国軍のミサイル射程は800km、弾頭の重量は500kgに制限されている。 (聯合 09/05)

 トランプ米大統領と文韓国大統領が9月4日に電話会談し、韓国製BMの弾頭重量制限を撤廃することで合意した。 現在の規定では、

・射程800kmで弾頭重量 500kgまで
・射程500kmで弾頭重量1,000kgまで
・射程300kmで弾頭重量2,000kgまで
 北朝鮮にある目標の殆どは38度線から225km以内にあり、射程が1,000kmあれば韓国内のいずれの位置からも北朝鮮全土を射程に入れることができる。 (JDW 09/135)

 トランプ米大統領と韓国の文大統領が11月7日、韓国ミサイルの弾頭重量に制限を設けていた米韓のガイドラインを廃止することで合意した。 (JDW 11/15)

b. SLBM

 特記すべき記事はなかった。
c. 玄武-2 SRBM

 韓国政府の高官が4月6日、国防部傘下の国防科学研究所(ADD)の試験場で、射程800kmの玄武系BMの発射試験を実施し、成功したことを明らかにした。
 ただ、韓国の試験場はBMを最大射程まで飛ばせないため飛距離を短縮し、精度をはじめとする性能の検証に焦点を合わせたという。
 射程800kmの玄武系ミサイルの発射試験成功が明らかにされるのは初めてで、さらに数回の発射実験を重ねて信頼性を検証し、2017年内の実配備を計画している。
 韓国軍は今まで、北朝鮮が挑発するたびに玄武系ミサイルの試験状況を公開してきた。 (聯合 04/06)

 韓国軍は6月23日、文大統領が見守るなか射程800kmの玄武系列BMの発射試験に成功した。 北朝鮮全域を射程に収めるミサイルで、事実上開発は完了しており、近 く量産に入るという。
 玄武-2Cは、北朝鮮のBMの射程圏には入るが、長距離砲の射程からは外れる韓国の南部に配備しても北朝鮮全域を攻撃でる。
 現在、韓国軍が配備しているBMは射程300km以上の玄武-2Aと500km以上の玄武-2Bの2種類で、今回試射を行った玄武-2Cの射程は800kmとされているが、米韓ミサイル 指針により韓国が保有できるBMの射程は800kmに制限されているが、実際には1,000km近く飛翔することからMRBMに分類される。 (聯合 06/23)

 韓国は2008年と2009年に配備が開始された玄武-2A、玄武-2Bに次ぐTBMである玄武-2Cの、計画されている6回の試験のうち4回目を完了し、6回目の試験が終わり 次第配備を開始すると見られる。
 玄武-2CのRVには米国のPershing Ⅱと似たフィンが付いており、終末での誘導が行われることを示している。 (AW&ST 07/24)

 韓国政府が8月29日に国会に提出した来年度国防予算案では、玄武ミサイルの開発と量産にKRW500B (489億円)を投じる。
 韓国政府消息筋は、玄武計画予算を当初の計画のKRW300B~KRW400Bよりも増額したのは三軸体系を速やかに構築するよう求める文大統領の指示に従ったものと話 した。(中央 08/30)

 北朝鮮のICBM発射に対抗して韓国が7月28日にTBMの試射映像を公開した。
 発射は4発を装填できる固定式発射機から行われ2発が発射された。 1発目は標的に命中し、2発目はバンカ構築物と見られる標的の破壊に成功した。 (JDW 08/09)

 韓国軍が9月4日、北朝鮮の核実験に対する最初の独自対抗措置として東海岸で玄武-2AとAGM-84H SLAM-ERを発射し、武力誇示を行った。
 国防部はまたTaurus ALCMの射撃訓練を9月中に行う計画だという。(聯合 09/04)

 北朝鮮が9月15日06:57にBMを発射すると、韓国軍はその6分後の07:03に東海岸で北朝鮮の発射地点への反撃を想定して玄武-2A 2発を発射したが、2発中1発は失敗し た。
 1発は250km飛行して標的に命中したが、他の1発は発射して数秒後に日本海上に落下した。(中央 09/15)

 韓国国防省が、北朝鮮が8月29日に火星-12 IRBMの発射を行ったのに対抗して玄武-2 TBMの発射映像を公開した。
 公開されたのは射程500kmの玄武-2Bで、正確に地上の標的に命中した。
 一方射程800kmの玄武-2Cは海没した模様である。(JDW 09/06)

d. 玄武-4 大弾頭 BM

 韓国が開発するBMの弾頭重量制限が9月5日に撤廃され、韓国軍が戦術核兵器の破壊力に匹敵する弾頭重量2tのBM開発に乗り出すことが分かった。
 韓国毎日経済はこれを「怪物ミサイル」と表現し報じ、地下数十㍍に構築された施設を破壊可能であるという。
 韓国政府筋によると、この合意に基づき、現在射程800kmの玄武-2Cの弾頭を2tに大型化する案を検討中だという。 弾頭重量tのBMが開発されれば、弾頭重量2.2t の米GBU−28バンカーバスターより大きな破壊力と貫通能力を持つとされる。(RC 09/06)
【註】 :  深深度侵徹爆弾を実用化するためには炸薬量を増大させるより、地表に着弾した際には破裂せず深深度まで貫徹したのちに起爆する深深度用信管の開発する方が 難しい。
 地下施設を建設する側は侵徹弾の攻撃を避けるため地表と地下施設間に疑似のコンクリート面を作り、これを地下施設と誤認識させて信管を誤作動させる工夫も している。
e. 艦対地/地対地 LACM

TSLM ASCM/LACM

 韓国の防衛事業庁が4月18日、新たな戦術艦対地誘導弾の開発を完了したと発表した。 敵地の沿岸部と地上の目標を攻撃するシステムで、装甲車を貫通する子弾 数百個を散布し、サッカー場2面分の面積を焦土化できる。
 今回開発されたのは垂直発射型で、2018年から量産し2019年に配備を開始する。 斜発射型は2014年に開発され2016年に配備を開始している。 (聯合 04/18)

 韓国DAPAが4月18日、海星(Hae Seong)を改良した海星-Ⅱ LACMを開発し、2017年後半に量産を開始して2019年配備開始を目指していることを明らかにした。
 海星-Ⅱ (TSLM)は潜水艦や車両搭載からの発射も可能であるという。(DN 04/21)

 韓国DARPAが4月18日、垂直発射(VL)型対地ミサイル(TSLM)の開発を完了したと発表した。
 VL-TSLM短距離CMはSSM-700K Haeseong ASCMを元に開発され、FFX-ⅡおよびFFX-Ⅲフリゲート艦に2019年までに装備される。 (JDW 04/26)

 韓国国防省がLIG Nex1社にTSLM艦対地ミサイルの量産を承認したことで、同国海軍は間もなく対地攻撃能力を拡大させる。
 TSLMは重量718の軌のSSM-700K海星-1対艦ミサイルを元にしており、RGM-84 Harpoonより20%大型で、1,500kgの玄武-3の半分の大きさである。
 射程は200kmと海星-1の180kmを上回る。(AW&ST 05/15)

Patrol Boat Killer

 名称が公表されていないMLR似のホーミング弾で2017年10月に配備が開始される。
 北朝鮮が保有する200隻以上の哨戒艇と100隻以上のACVに対抗するもので、250tの大鷲型哨戒艇に20発以上装備する。 (AW&ST 05/15)

TAURUS CM

 韓国空軍が9月13日、前日にF-15KからTAURUS CMを発射する初めての訓練を実施し、標的に正確に命中したとたと発表した。
 泰安半島付近から発進したF-15Kが発射したTAURUSは、黄海の上空1,500mから発射後に下降して高度500mを維持して400kmを飛行し、群山沖にある島の射撃場近くで 3,000mまで急上昇してからほぼ垂直に降下して標的に命中した。
 TAURUSは大田の上空から発射しても平壌にある北朝鮮指導部の重要施設を精密打撃する能力を備えているとされる。 (聯合 09/13)

f. 超音速対艦ミサイル

 南北朝鮮をはじめとする朝鮮半島周辺の国が超音速対艦ミサイルの開発競争を行なっている。
 韓国軍消息筋が4月20日、韓国がMach 3~4で射程300~500kmのASCMを2020年頃までの配備を目標に開発していることを明らかにした。 (聯合 04/20)
(ウ) 艦船の建造

a. 潜水艦

原子力潜水艦の建造構想

 韓国国防部が原子力潜水艦の保有に柔軟な立場を示している。
 同部は2016年までは 原子力潜水艦の建造計画はないとの立場だったが、6月に就任した宋長官は7月31日に国会で、原子力潜水艦の建造を検討する準備ができてい ると発言した。 就任前の6月の人事聴聞会でも、敵の潜水艦を制圧するためにわれわれも潜水艦が必要であるため原子力潜水艦を考えていると答えていた。
 韓国では盧武鉉政権が2003年に、2020年までに4,000t級原子力潜水艦3隻を建造する計画を推進したが、計画が外部に漏れ1年後に白紙になっている。 (聯合 07/31)

 韓国の李首相が8月16日にTV番組に出演し、北朝鮮の核脅威に対抗するため原子力潜水艦を導入する必要があると発言した。
 韓国が核保有を主張することは北東アジアの核武装を加速化させることになりかねないとしながらも、原子力潜水艦の導入は別問題だとして、検討する時期が来 たと述べた。(聯合 08/16)

 韓国大統領府関係者が11月8日、原子力潜水艦導入は9月に行われた首脳会談で原則的な合意があったことを明らかにした。 大統領府は当時、米国が原潜保有に 合意したとの報道について事実でないと述べていた。
 この関係者は原潜を購入する可能性や、米韓が共同開発する可能性や購入も検討しているものの、米国が原潜を他国に販売した前例がないことから国内建造なり そうで、国防部の原潜研究に参加している専門家は、米国が積極的に技術支援をすれば3年あれば進水が可能と述べている。  原潜の燃料は米韓原子力協定により濃縮率20%以上のウランを米国から購入することが制限されているが、トランプ大統領が原潜保有に合意しただけに、米韓原子 力協定が韓国に有利な方向に改定される可能性がある。(中央 11/09)

KSS-3 3,000t潜水艦

 533mm魚雷発射管から玄武-3 CMを発射できる韓国のType 214 KSS-2潜水艦の後継 KSS-3は、玄武-3を垂直発射する発射管を6基装備するBatch 1が3隻建造され、その うち2隻は建造中である。
 これに続くKSS-3 Batch 2は垂直発射管を10基以上装備してSLBMを発射するとみられ、SLBMを搭載したKSS-3は2025年頃に就役する模様である。 (AW&ST 16/11/07)

 韓国が蔚山現代重工業で6月30日に、張保皐-Ⅲ級潜水艦(3,000t)三番艦の起工式を行った。 張保皐-Ⅲ級は一、二番艦が大宇造船海洋で建造中で、三番艦を含む3隻 の建造は2020~2024年に完了する。
 張保皐-Ⅲ級は初めて韓国独自技術で建造される潜水艦で、SLBMを発射する垂直発射管を6本装備し、射程500kmの玄武-2Bの発射が可能である。 (中央 06/30)

 韓国DAPAが6月30日、KSS-Ⅲ潜水艦の起工式を蔚山にある現代重工(HHI)社の造船所で行ったと発表した。
 今回起工したのはKSS-Ⅲの三番艦で、一番艦、二番艦は大宇造船(DSME)社で建造されている。(JDW 07/12)

 韓国は2020年から3,000t級のKSS-3 9隻を装備する計画である。(JDW 09/13)

KSS-2 1,800t潜水艦

 聯合ニュースが7月10日、KSS-2 (Type 214)潜水艦の6番艦が海軍に引き渡されたと報じた。
 排水量1,800tのKSS-2は水中速力20kt、水上速力12ktのAIP推進艦で、533mm魚雷発射管を8本持つほか、機雷敷設機能もあるという。 (JDW 07/19)

 韓国のKSS-2 (Type 214) 1,800t級潜水艦の9番艦が9月7日に現代重工(HHI)の造船所で進水した。 就役は2019年になる。
 全長63mのKSS-2は最大潜行深度400m、水中速力20kt、水上速力12ktの性能を持つ。 (JDW 09/13)

b. 駆逐艦

 特記すべき記事はなかった。
c. フリゲート艦

 特記すべき記事はなかった。
d. 揚陸艦艇

独島級二番艦の起工

 韓国防衛事業庁が4月28日、独島級(14,500t)大型輸送艦二番艦の起工式を同日、釜山の韓進重工業で行うと明らかにした。 2018年4月に進水し2020年に就役する。
 大型輸送艦を建造するのは2007年の独島建造から約10年ぶりになる。(聯合 04/28)

次期揚陸艦(LST-Ⅱ) の引き渡し

 韓国防衛事業庁が7月31日、蔚山現代重工業から2隻目となる次期揚陸艦(LST-Ⅱ) LST-687天子峰を海軍に引き渡すと発表した。 防衛事業庁は2014年11月 1日に一番艦LST-686天子峰を海軍に引き渡している。
 天子峰は海軍が保有していた高俊峰級揚陸艦(LST-Ⅰ)より速力、搭載能力が向上している。
 4,500tの天子峰は速力23ktで、海兵隊300名、揚陸艇3隻、戦車2両、水陸両用戦闘車8両を搭載でき、艦尾にヘリ2機が離着艦できる飛行甲板を有する。
 また国産の戦闘システム及び指揮統制システムを備えているため、上陸作戦指揮所の役割を果たすことができる。 (中央 07/31)

 韓国海軍が基準排水量4,500tのLST-Ⅱの二番艦Cheon Jabongを8月1日に受領した。 今後4ヶ月間の乗員訓練を経て2017年後半に配備される。
 LST-Ⅱの乗員は130名で、完全武装兵300名、MBT 2両、水陸両用車8両を搭載でき、ヘリ2機の離着艦が可能な飛行甲板を有している。 (JDW 08/09)

 韓国防衛事業庁が11月2日、海軍の新型揚陸艦露積峰の進水式を行った。 同艦は2018年11月に海軍に引き渡され、2019年に就役する。
 同艦の全長は127mで、最大速力は23kt、乗組員120名で、兵員300名や上陸用舟艇(LCM)、戦車、水陸両用強襲車(KAAV)などを搭載し、上陸機動ヘリコプタ2機が離着 艦できる。 (聯合 11/02)
【註】 :  露積峰は基準排水量4,950t、満載時排水量7,140tの天王峰級揚陸艦(LST)の4番艦で、一番艦の天王峰は2013年に進水し2014年に就役している。

Kite 631 (LSF-Ⅱ)

 韓国DAPAが2月9日、HHI社に2016年暮れに発注したLSF-ⅡまたはKite 631と呼ばれるLCAC 2隻の建造を1年早めて2021年納入とすると発表した。
 同社は2007年にLSF-Ⅱ 2隻を受注し、これら2隻は揚陸艦独島に搭載されている。(JDW 02/15)

e. 機雷敷設艦

 韓国海軍の機雷敷設艦南浦が6月9日、海軍に引き渡される。
 海軍は7ヵ月間にわたり性能を検証した上で、2018年初めに配備する。
 南浦は排水量3,000t、速力は23ktでヘリ甲板を備え、海上と空中で立体的な作戦が可能である。
 海軍が現在保有している機雷敷設艦には、2,600tの元山がある。(聯合 06/09)

 韓国DAPAが6月9日、HHI社が機雷敷設艦を納入したと発表した。
 南浦と命名されたこの艦は、全長114.3m、排水量4,240tで、1997年に建造された103.8mの元山と共に機雷戦にあたる。 (JDW 06/21)

(エ) 航空機

a. KFX

インドネシアとの共同開発

 韓国がインドネシアと共同開発するKFX/IFXは、米国が一部の技術について技術移転を承認していないことから、計画が躓いている。 (JDW 02/15)

設計の進捗と大型化

 韓国が2022年初飛行、2024年初号機納入、2026年量産型初号機納入を目指して開発しているKF-X戦闘機のモデルは、C101から始まり2012年までに現在の原型と なるC103になった。
 その後設計が進むにつれモデルは徐々に大きくなり、最新型であるC107の翼端長はC103より1.2m長い11.2mになっている。 (AW&ST 10/16)

設計の進捗と設計審査

 KAI社のKFX開発当局者が10月17日に、来月から行われる審査等に備えKFXの最終設計が固まりつつあることを明らかにした。
 それによると事前設計審査(PDR)は2018年6月、最終設計審査(CDR)は2019年9月、試作一号機のロールアウトは2022年に計画され、2026年配備開始を目指してい る。(JDW 10/25)

搭載する AESA レーダ

 韓国のKF-X開発で、韓火(Hanwha)社がレーダの開発に手こずった場合にはおそらくElta社がそれを引き継ぐと見られる。
 KF-X開発で最も困難と見られているAESAレーダの開発は2016年4月にHanhwa社が指名されている。 対抗馬のLIG Nex1社がFA-50に搭載するセンサを生産している のに対し、Hanhwa社はEL/M-2030レーダの送信機を製造した実績がある。
 KF-Xの初期型には高いステルス製は求められておらず、KAI社は目下RCSの低減について研究している段階である。 (AW&ST 02/20)

 韓国DAPAが5月23日に声明で、KFXに搭載するAESAレーダの開発をElta社にKRW40B ($35.5M)で発注したと発表した。 Elta社は2012年に韓国からEL/M-2080 Green Pine Block-B EWレーダを2基受注した実績がある。
 KFXの開発は2026年量産開始を目指して進められており、2017年に試作を開始して、2021年に試作機6機を完成させる計画である。 (JDW 05/31)

 韓国防衛事業庁が7月13日、韓国国産戦闘機(KFX)の中核装備であるAESAレーダの試作品が完成されたことを明らかにした。
 このレーダは国防科学研究所(ADD)主管でハンファシステム社が開発している。
 今回製作されたのはレーダのハードウエアを国内で開発する能力があるかどうかを検証するためのもので、今後は更に小型化し重量を減らした試作品を開発する。 (聯合 07/13)

b. SIGINT機の装備

 韓国がDassault社製Falcon 2000を用いたSIGINT機を8機装備する。 機器の搭載はL3社製をLIG Nex1社とHanwha社が行う。 (AW&ST 06/26)
c. ヘリコプタ

KUH-1 Surion

 韓国陸軍が245機の装備を計画しているKUH-1 Surion 30機が、$520Mで海兵隊向けに追加発注された。 (AW&ST 01/09)

LAH 小型武装ヘリ

 韓国防衛事業庁が6月27日、韓国が国内開発している小型武装ヘリの1号機の組み立てが開始されたことを明らかにした。
 防衛事業庁は10月に詳細設計審査を行い、2018年末に試作1号機をロールアウトし、早ければ2022年に配備する。 (中央 06/27)

(オ) UAV

韓国各社の UAV

 韓国で開かれたADEX 2017展でKAI社や大韓航空(KAL-ASD)韓国各社が各種UAVを展示した。(JDW 10/25)

KUS-VH (KAL-ASD):Little Birdヘリの無人型

KUS-FT (KAL-ASD):固定翼TUAV

KUS-FS (KAL-ASD):MALE UAV

KUS-VT (KAL-ASD):チルトロータUAV

KUS-FC (KAL-ASD):ステルスUAV

KUS-HD (KAL-ASD):ハイブリッド・マルチコプタUAV

Next Corps UAV (KAI):Predator級

Tactical UAV (KAI):

Stealth UCAV (KAI):

TR-60 チルトロータ UAV

 韓国宇宙航空研究所が7月11日、国内で開発したTR-60チルトロータUAVが7月7日に初飛行したと発表した。
 TR-60は沿岸警備隊の警備艦に装備するUAVで、10ktで航行する艦で離着艦出来る。
 TR-60は重量200kgで30kgの搭載能力があり、最大速度250km/h、上昇限度 14,763ft、行動半径200kmの性能を持つ。 (JDW 07/19)

 大韓航空が開発したチルトロータのVTOL UAV TR-60が、7月7日に航行中の船上での自動離着艦試験に成功した。
 試験を行ったTR-60の重量は210kgであった。(AW&ST 07/24)

(カ) SAM の開発と配備

 韓国が各種の天弓SAMシステムを開発し配備している。(AW&ST 01/23)
天弓

 ロシアの技術で開発され、ミサイルの形状はS-400の9M96弾と同型。
 2015年までに配備が開始され、10個中隊が北朝鮮との境界沿いに、更に何個中隊かが別の地域に配備されている。

天弓 PIP

 射程40km、射高20kmのATBMシステムである天弓 PIPは2016年1月以来7回、Scudを模した標的弾K-BATSに対する 迎撃試験を行っている。
 弾頭を搭載していないK-BATSは700~800kmの射程で、弾頭を搭載すれば射程200~300km のTBMになる。

LSAM

 更に高性能なシステムであるが、まだ開発の初期段階にある。

 韓国軍関係者が4月16日、北朝鮮のBMを下層で迎撃するKAMDの中核となるM-SAMの開発を完了し、早ければ2018年にも実配備することを明らかにした。 同関係者 によると、M-SAMはすべての試験評価を終え、行政手続きだけを残した状態だという。
 韓国軍の中距離のSAM天弓を改良したM-SAMは高度20kmでBMを破壊する直撃型で、迎撃試験では約10発の標的弾を撃墜したという。 (聯合 04/16)
【註】 :  韓国が開発したというM-SAMは、天弓の改良型であることや迎撃高度が20kmと大気圏内であることから、PAC-3級のシステムと思われる。
 更に操舵がPAC-3のようなインパクトスラスタではなく従来型の操舵翼を用いた空力操舵であれば、PAC-3が対処できるBMより短射程のBMにしか対処できないと思 われる。

 聯合ニュースが4月16日、韓国が国内開発しているCheongung KM-SAMの開発が最終段階に入ったと報じた。
 同通信によると2017年後半に量産を開始し、2018~2019年にMIM-23 HAWKに代わり装備を開始するという。 (JDW 04/26)

 韓国軍関係者が6月17日、KAMDの中核となるKMSAMが試験評価で適合の判定を受けたことを明らかにした。
 同関係者によると、KMSAMの試作品は全ての評価項目で基準を満たし、6月の初めに戦闘用に適するとの判定を受けたという。 (聯合 06/17)

 韓国のBMDS (KAMD) を構成するKMSAMが運用評価で北朝鮮のBMを模擬した5発の標的全てを迎撃することに成功し、戦闘用として適合との判定を受けた。 韓国防衛 事業庁の関係者は6月18日に、システム開発は正式に完了し2017年末から本格的な量産が可能と述べた。
 今回開発が完了したKMSAMは、高度20km以下で北朝鮮のBMを破壊する直撃型迎撃弾で、来年導入されるPAC-3と共にKAMDの下層防衛網 を構成する。 韓国は高度40 ~60kmで北朝鮮のBMを迎撃する長距離SAM (LSAM)も開発している。(朝鮮 06/18)

 聯合ニュースが6月17日、韓国が国内開発した改良型天弓(Cheongung) KM-SAMの量産が開始されると報じた。
 最大射高20,000mの天弓は直撃を目指すSAMであるという。(JDW 06/28)

 韓国防衛事業庁が11月17日、韓国のBMDSであるKAMDの核心となるM-SAMの量産を決定した。 宋国防部長官が10月に 同計画の見直しを指示したことから計画中止 をめぐり議論になっていた。
 この際国防部も、攻勢的な戦力の増強を優先するとしてM-SAMの再検討を示唆していた。(ハンギョレ 11/19)

 韓国DAPAが12月26日に声明を出し、長距離レーダと航空機搭載 IRCMの開発を再開することを明らかにした。 また声明では、自動指揮統制装置と改良型KM-SAMの 量産移行決定と、防衛開発生産5ヵ年計画決定も明らかにした。(360 12/28)

(キ) 軍事衛星計画

 韓国未来創造科学部と韓国科学技術院(KAIST)が4月6日、次世代小型衛星2号計画着手の会合をKAIST人工衛星研究所で開催すると明らかにした。
 次世代小型衛星2号は2020年下半期の打ち上げを目指し、2017年3月から2020年12月までにKRW29.7B(29億円)の予算が投じられて開発されており、システム、本体 および搭載体などの設計、組立、試験、検証など、全過程を韓国の独自技術で開発する計画である。 (中央 04/07)
(ク) その他の軍事技術

K2 Black Panther MBT

 韓国が2014年12月にHyundai Rotem社に100両を発注したK2 Black Panther MBTの量産開始が3年遅れて2020年になることになった。 原因はK2にトランスミッシ ョンの信頼性と耐久性の問題で、K2には新たにDoosan DST社製エンジンとS&T Dynamics社製のトランスミッションが搭載されることになっている。
 2011年に発注され2014年に納入された一次分の100両はドイツ製のエンジンとミッションが搭載されたいた。  韓国陸軍は併せて600両のK2を装備する計画である。(JDW 10/25)
【註】 :  K2 MBTは当初、国産のパワーパック(エンジン+ミッション)を搭載しようとしていたが2008年にパワーパックに重大な欠陥が見つかったため計画延期を余儀 なくされ、結局第一次生産分ではドイツ製のパワーパックを採用した経緯がある。

局地防空レーダの開発

 韓国防衛事業庁が7月14日、小型UAVの探知も可能な局地防空レーダを国内の技術で開発したと発表した。 開発は韓国企業のLIG Nex1社が担当した。
 量産のための規格化も完了し、2018年から量産に入って 陸軍の軍団級部隊や海兵隊の前線部隊に配備する。
 このレーダは既存品に比べ探知距離が長く、迅速な展開と移動が可能で、目標を探知するとその位置情報が瞬時にで軍の攻撃兵器に伝えられる。 (聯合 07/14)

 韓国DAPAが7月14日、LIG Nex1社と開発した車載3Dフェーズとアレイレーダの量産を2018年に開始すると発表した。
 このレーダは北朝鮮から飛来する小型UAVの捕捉追随が可能であるという。(JDW 07/26)

対砲迫レーダの開発

 韓国の防衛事業庁が4月24日、対砲迫レーダⅡを韓国の技術で開発したと発表し、2018年から装備すると発表した。
 このレーダの探知距離は60km以上と、韓国軍が保有する探知距離は40kmのスウェーデン製レーダをしのぐ。 国産化率は95%に達するという。 (聯合 04/24)

 韓国DAPAが4月24日、対砲レーダの開発に成功したと発表した。 このレーダは既に戦闘可能状態にあり、2018年に配備が開始されるという。
 このレーダの捕捉距離はARTHERより長いという。(JDW 05/03)

車載105mm榴弾砲の量産開始

 韓国DAPAが6月28日、Hanhwa社が開発しているEVO-105 車載105mm榴弾砲の最終試験が完了し、2018年に量産を開始すると発表した。
 EVO-105は米国製のM101牽引105mm砲をKIA社製KM500 6×6 5tトラックに搭載したもので、K9 Thunder SPH 用の射統装置を元にした射統装置で射撃する。 (JDW 07/05)

IRDCM の国内開発

 韓国が、特殊部隊を敵地に空輸するC-130Hなどに装備する国産のIR欺騙妨害(DIRCM)装置の試験に成功した。 (JDW 10/04)

盲目化爆弾の開発

 聯合ニュースが軍関係筋の話として10月8日、韓国が有事に北朝鮮の電力網を麻痺させることができる黒鉛を使用した盲目化爆弾の技術を確立したと報じた。
 この技術については、国防省が2018年度予算にKRW500M ($437,000)を要求したが、最終的に認められなかった。 (JDW 10/18)

(ケ) 海外からの武器購入

旺盛な武器輸入

 New York Times紙が2016年12月26日、米議会調査局報告書「2008~2015年における開発途上国への通常兵器移転」が2015年の全世界の兵器取引額は$80Bで、2014年 に比べて小幅減少したが、米国は2014年に比べて$4B増加したと報じた。
 主な兵器輸入国上位10ヵ国のうち中東国家以外の国は韓国が4位($5.4B)と中国が9位($2.2B)のみだった。 (ハンギョレ 01/01)

米国からの武器輸入

 トランプ米大統領の訪韓をきっかけに、韓国は数十億㌦をかけて軍備増強を図ろうとしている。
 その中にはKN-11(北極星-1)SLBMに対抗するための原潜の保有や、ISR能力向上のためのE-8 JSTARSやRQ-4 Global Hawkの導入、米国と同意した重量弾頭搭載の BM開発などが含まれている。(DN 11/08)

JSTARS の導入

 韓国軍が米国の地上監視特殊偵察機J-STARS 4機を2022年までに配備する方針を固めた。 J-STARSの具体的な導入時期が確認されたのは初めてである。
 通常、海外兵器の導入には契約締結から引き渡し配備までに少なくとも2、3年かかることから、2018年初頭から導入計画が本格的に着手されるものと見られる。 (東亞 12/05)

オ. 拡大する軍事予算

 韓国国防部が6月8日、KRW43.7114T(4兆2,800億円)規模となる2018年度国防予算要求を企画財政部に提出したと明らかにした。 これは前年比8.4%増で、年平均 5%贈水準だった李明博、朴槿恵政権よりも増加率が高い。
 国防部は北朝鮮の核ミサイルの脅威に備えた三軸体系の早期構築に向けて2017年度比KRW265.5B増となるKRW3.6485Tを要求した。 軍用偵察衛星、長距離ASM、 Patriotの改良、特殊作戦用UAVおよびF-35Aなどが核心になる。
 また、全面戦争に備えた防衛能力の強化には2017年度比KRW733.32B増となるKRW6.6413Tを要求した。
 空中給油機、揚陸作戦用ヘリ、装輪装甲車、歩兵用中距離 誘導武器などが核心になる。(中央 06/09)

 韓国国防省が6月8日、2018年予算に前年度比8.4%増のKRW43.7T ($38.8B)を要求した。 (JDW 06/21)

 ┏━━━━┳━━━━┳━━━━┳━━━━┳━━━━┓
 ┃    ┃ 2014 ┃ 2015 ┃ 2016 ┃ 2017 ┃
 ┣━━━━╋━━━━╋━━━━╋━━━━╋━━━━┫
 ┃ USD bn ┃  32.09┃  32.94┃  33.62┃  34.73┃
 ┃% of GDP┃ 2.41% ┃ 2.40% ┃ 2.41% ┃ 2.44% ┃
 ┗━━━━┻━━━━┻━━━━┻━━━━┻━━━━┛
 韓国大統領府報道官が、文大統領が7月18日に国防部長官、元長官や軍首脳部を招いた昼食会で、北との対話を追求するには圧倒的な国防力がなければ意味がない、 国防予算のGDP比を現在の2.4%水準から任期内に2.9%まで引き上げることを目標にしているとと述べたことを明らかにした。 (聯合 07/18)

 韓国政府が国会に提出する来年度(1~12月)の予算案のうち国防予算は前年比6.9%増となる43兆1,177億ウォン(4兆1,983億円)となり、2009年の7.1%に次ぐ増 加幅となった。
 国防予算の二つの柱の一つ、防衛力改善費は前年比10.5%増加した13兆4,825億ウォン、もう一つの柱である戦力運営費は同5.3%増の29兆6,352億ウォンとなった。  防衛力改善費のうち、北朝鮮の核と大量破壊兵器の脅威に備える予算は4兆3,359億ウォンで前年比13.7%増加した。
 年度別の国防予算の増加率は2009年の7.1%から2013年には4.2%、2014年には4.0%、2015年には4.9%、2016年には3.6%と変遷し、2017年は4.0%だった。 (聯合 08/29)

 韓国国防省が8月29日、2018年度国防費を前年度比6.9%増のKRW43.1T ($38.2B)とすると発表した。
 なかでも三軸体制の整備費には14%増のKRW4.3Tが割り当てられいる。(JDW 09/06)

 韓国国会が12月6日、2018年度(2018年1~12月)予算案を可決し、国防予算は前年比7.0%増のKRW43.1581T(4兆4,500億円)に確定した。 国防部によると2018年度の国 防予算は国会の審議段階で、政府案からKRW40.4B増額された。 前年比増加率は8.7%増の2009年度以来9年ぶりの高水準となった。
 北朝鮮の核やミサイルの脅威が危険な水準に達していることに対抗したKill Chain、KAMD、KMPRからなる「3軸体系」関連予算を大幅に増やした。
 国防予算のうち戦力増強の予算である防衛力改善費が国会審議でKRW37.8B増額され前年比10.8%増となった。 (聯合 12/06)

カ. 対北戦準備

(ア) 対北戦の作戦計画

 聯合ニュースが、韓国統参議長が10月16日に北朝鮮の新たな脅威に対応した新作戦計画の策定を検討していると述べたと報じた。
 韓国では2016年9月に米韓統合作戦計画OPLAN 5015と3100が北朝鮮のハッキングで盗まれたと報じられている。 (JDW 10/25)
(イ) 5大ゲームチェンジャー構想

 韓国陸軍が10月19日に陸軍本部で行われた国会国防委員会による国政監査で、朝鮮半島で全面戦が起きれば早い段階で3種類のBMを発射し北朝鮮の核やミサイル 施設と長距離砲基地を焦土化する作戦概念である「5大ゲームチェンジャー」 構想を初めて提示した。
 5大ゲームチェンジャーは、
① 全天候型、超精密、高威力な3種類のBM
② 空挺部隊、航空部隊、機械化部隊からなる空地機動部隊
③ 北朝鮮指導層の排除などを担う特殊任務旅団
④ UAVとロボットを活用した有人/無人の複合戦闘システム
⑤ 個人の装具を先端化した個人用先端戦闘システム
からなる。
 3種類のBMは戦術SSMと玄武-2、玄武-4(仮称)で、陸軍はこれらを用いて開戦初期に北朝鮮の核、ミサイル、長距離砲を無力化するとしている。
 玄武-4は米韓ミサイル指針の改定した後に開発する弾頭重量2t以上のBMで、米軍の戦術核兵器に匹敵する威力を持つという。 (聯合 10/19)
(ウ) BMD 能力の整備、強化

KAMD の整備

 韓国防衛事業庁が2月24日、2017年にKRW600B(約596億円)を投入することを柱とする2017年の国防科学技術振興実行計画を防衛事業推進委員会で議決したと明らか にした。
 北朝鮮の脅威に対応するための三軸体系と関連し、偵察衛星や長距離SAM (L-SAM)、中高度UAVなど11種の兵器を開発する。 (聯合 02/24)

 韓国は2021年の完了を目指して韓国軍が保有したPAC-2発射機40基のうち15基をPAC-3に改良する計画を進めている。 (東亜 03/10)

大統領府への Patriot 配備

 北朝鮮が韓国大統領府攻撃訓練の様子を公開し、大統領府を火の海にすると脅迫したことへの対応し、早ければ2年以内に大統領府近傍にPAC-3を配備する。
 政府消息筋によると、中部以南地域に配備されたPAC-2をPAC-3に改良し、大統領府付近のA山に配備することに決め、関係機関と時期などについて協議している。
(東亜 03/10)

PAC-2 1個 FU を首都圏に移動

 韓国軍が南東部の大邱に配備されたPAC-2 1個FUを首都圏に移動させている。
 軍はいままで、THAADの発射機6基の配備が完了したのに合わせて南部地域のPAC-2をTHAADの防衛範囲の外にある首都圏に配備する計画を明らかにしてきた。 (聯合 09/13)

(エ) 特殊任務部隊の新編

空挺師団を創設を検討

 宋韓国国防部長官が、有事の際に米陸軍の第101、82空挺師団のように早期に敵陣深くに投入される攻勢的精鋭機動部隊として、空挺師団を創設する必要性につ いて発言したことが確認された。
 宋長官が最近行われた国会国政監査で、「防衛的線形戦闘」から「攻勢的縦深起動戦闘」に戦争遂行方式を変えると強調したのも、空挺師団のような攻勢的部隊 創設を念頭に置いているという。(東亞 10/17)

特殊任務旅団の編成

 韓国国防部が1月4日、2019年に計画していた金正恩ら北朝鮮の軍事指導部を除去して戦争指揮施設の機能を麻痺させる任務を担う特殊任務旅団を、2年前倒しして 2017年内に編成する方針を黄大統領権限代行首相への2017年度業務計画報告で明らかにした。(聯合 01/04)

 金斬首部隊と呼ばれる特殊任務旅団が12月1日、従来の特殊戦司令部隷下部隊の一部を改編して創設された。 この旅団の規模は1,000名前後になるものと予想され る。
 この部隊は朝鮮半島の有事の際に「金正恩除去作戦」を含め、北朝鮮の首脳部を狙った特殊作戦を遂行する。 (WoW 12/01)

(オ) 海兵隊航空隊が復活

 韓国海兵隊航空隊が44年ぶりに復活する。 防衛事業庁が1月30日、海兵隊にSurionを元にKAI社が開発した上陸機動ヘリ2機が今年装備されることを明らかにした。
 上陸機動ヘリは、揚陸艦で海兵隊兵力や装備を輸送する上陸作戦、地上作戦の支援のための空爆、島嶼地域の局地挑発への迅速対応などの任務を遂行する。
 海兵隊はこれまで米海兵隊の上陸機動ヘリに依存してきたが、今回の2機を皮切りに2023年までに2個大隊28機を配備する計画である。 (中央 01/30)
(カ) Kill Chain の実働能力誇示

 聯合ニュースが韓国軍合同参謀本部の関係者の話として11月29日未明、北朝鮮のBM発射直後の03:23に韓国軍がミサイル発射訓練を実施したと報じた。
 挑発に直ちに対応できる態勢を誇示し北朝鮮を牽制したとみられ、北朝鮮がBMを発射したと推定される場所までの距離を考慮してミサイルを発射したという。 (日経 11/29)
(キ) 対潜能力の強化

 韓国国防省が1月24日、北朝鮮からの核や大量破壊兵器(WMD)に対抗するため、2017年に数種類の新兵器を装備すると発表した。
 対潜機能を高めるため新型TASSや長射程対潜魚雷、蔚山改型フリゲート艦も装備する。(JDW 02/01)
(ク) 特殊武器防護

 韓国国防省が1月24日、北朝鮮からの核や大量破壊兵器(WMD)に対抗するため、2017年に数種類の新兵器を装備すると発表した。
 特にCBRN攻撃からの防衛と探知のため、K216A1を元にしたCBRN検知車CBRN Recon Vehicle Ⅱを装備する。 (JDW 02/01)
キ. 米韓共同演習

(ア) Fall Eagle 合同機動演習

 韓国の国防省と在韓米軍が3月1日、米国と韓国が1日に北朝鮮の脅威に備えた定例の合同機動演習Fall Eagleを開始したことを確認した。 演習は4月末まで続く見 通しと述べたが、詳細は明らかにしなかった。
 2016年の訓練には、米軍17,000名、韓国軍300,000名以上が参加している。
 これに対し北朝鮮は、この演習を同国に対する戦争準備とみなしており、過去には報復として軍事行動を取ったこともある。 (ロイタ 03/01)
(イ) B-1 との合同演習

 米太平洋空軍が3月22日、B-1戦略爆撃機が航空自衛隊と韓国空軍の戦闘機と合同演習を実施したと発表した。
 グアムのAndersen AFBを発進したB-1は新田原基地からのF-15と訓練したのち韓国側に移動し、韓国空軍と編隊飛行訓練などを行った。 (時事 03/22)
(ウ) Vigilant Ace 空軍共同演習

 韓国空軍が11月23日、米空軍のF-22とF-35Aが12月4日から8日まで韓国に展開することを明らかにした。
 韓国空軍によると、嘉手納基地に配備されたF-22とF-35Aの各6機が韓米空軍の連合訓練に参加するため韓国に飛来する。 これらステルス戦闘機は有事の際に精 密打撃武器で北朝鮮の指揮部を除去する斬首作戦と、北朝鮮の核やミサイル施設を打撃する訓練をする計画という。
 F-22とF-35Aが韓国で訓練をするのは今回が初めてで、ステルス戦闘機の朝鮮半島での展開規模も過去最大になる。 (中央 11/24)

 韓国空軍が11月24日、航空機240機が参加する大規模な米韓連合航空演習"Vigilant Ace"が12月4日から8日まで実施されることを明らかにした。 今回の演習には 米空軍だけでなく海兵隊、海軍も参加し、F-22 8機、F-35A 6機のほか、B-1BやEA-18Gも参加する。
 軍消息筋は、米軍機だけでも約150機が参加するが、これは在韓米空軍と在日米空軍の戦闘機の大半が参加するもので、米韓連合航空訓練では歴代最大規模と述べ た。(中央 11/25)

 韓国軍によると、米韓空軍が12月4~8日に230機と過去最大規模が参加して実施する航 空演習"Vigilant Ace"に参加する米空軍のF-22とF-35Aが韓国に到着した。  F-22 6機は2日、F-35A 6機とEA-18G 1個隊6機、F-15C 10機 、F-16 10機などが韓国に到着している。
 F35-BやE-3などは期間中に在日米軍基地から韓国上空に派遣され基地に復帰する。 更にB-1Bの編隊 もグアムから派遣され、両国戦闘機の護衛を受けながら爆撃 訓練を実施するという。
 演習では敵の航空機の空中侵入を防ぎ、TELなど北朝鮮の核やミサイル関連施設の標的を攻撃する訓練を集中的に行う。 (聯合 12/03)

 韓国で行われている米韓合同"Vigilant Ace"演習に12月6日からB-1Bが参加し、韓国上空をB-1Bを先頭に、F-35A 4機、F-15CとF-16CがV字で編隊飛行をした。 (キョク 12/08)

(エ) 空母 Ronald Reagan との合同演習

 韓国国防省が国会の国防委員会で9月18日、北朝鮮の核実験や相次ぐBM発射に対抗するため、10月に米空母との合同演習を実施すると明らかにした。 米海軍第7艦 隊の空母Ronald Reaganが朝鮮半島沖に展開する見通しである。(時事 09/18)

 韓国軍関係者が米韓共同演習について10月1日、米空母Ronald Reaganを中心とした CSGは10月中中旬か下旬に日本海で韓国海軍と共に訓練を行うとを明ら かにした。
 これは最近の朝鮮半島危機とは関係なく、以前から計画されていたという。(ハンギョレ 10/02)

 米韓海軍が10月16日に日本海と黄海で合同演習を開始した。 20日までの演習には、米空母Ronald Reagan CSGや韓国海軍のAegis駆逐艦や潜水艦など約40 隻が参加する。 米潜水艦には敵の首脳部を排除するいわゆる「斬首作戦」を遂行する米特殊戦部隊の隊員らも乗艦しているという。
 演習では防空戦や対潜戦、ミサイル警報訓練、海上封鎖、対艦対空艦砲射撃訓練などを実施すると共に、北朝鮮の海上挑発に対応する対特殊戦 部隊作戦(MCSOF) 訓練も行う。
 この演習間両国は、北朝鮮のBM発射などの挑発に備えて監視を強化し、米国は高度9~12kmで北朝鮮地上部隊の動きを探知するJSTARSを投入している。 (聯合 10/16)

(オ) 北朝鮮の弾道弾発射に対抗した弾道弾発射訓練

 北朝鮮が7月4日にBMを発射したのに呼応して、その丁度1日後に米陸軍と韓国軍が日本海に向けたBM発射訓練を実施した。
 この訓練で韓国軍は玄武-2 BMを、米陸軍は第210砲兵旅団第18野戦砲兵連隊第1大隊がM270 MLRSからMGM-140 ATACMSを発射した。 (MT 07/04)

 韓国の合同参謀本部は7月5日午前、米韓のミサイル部隊がこの日07:00、北朝鮮の度重なるBM挑発に対応して日本海沖で米韓合同弾道BM発射訓練を実施したこと を明らかにした。
 今回の訓練で、韓国軍の玄武-2と米第8軍のATACMSを同時射撃し命中させることによって、有事の際に敵挑発指導部を精密打撃できる能力を誇示したと合同参謀 本部は説明した。(中央 07/05)

ク. 軍事産業の振興と武器輸出

インドネシアへの潜水艦の輸出

 韓国の大宇造船海洋が2011年にインドネシアから受注した1,400t級潜水艦3隻のうち1隻目の引渡式が、巨済の玉浦造船所で8月2日に行われた。
 韓国で初の輸出に成功した潜水艦は、1988年にドイツから技術提供を受けて開発された。(中央 08/02)

T-50 高等練習機の輸出

 KAI社が7月11日、タイとT-50高等練習機8機の追加輸出交渉が進行中であることを明らかにした。 タイ軍事政権ナンバー2のプラウィット副首相兼国防相がこの日 閣議に予算承認を要請した。 正式契約は29日に締結するという。
 KAI社は2015年にタイ政府とT-50TH 12機の輸出契約を結び、4機は2018年初めに引き渡す計画になっている。 (中央 07/12)

 タイ内閣が7月11日、KAI社製T-50TH 8機をTHB8.8B ($258M)で購入することを承認した。
 タイは 2015年9月に4機のT-50THを発注しており、後日更に4機の発注が見込まれている。(JDW 07/19)

タイにとって韓国は主要な武器供給国

 韓国DAPAとタイ国防省が6月下旬にソウルで協議し、両国が軍事協力を推進することで合意した。
 タイにとって韓国は主要な武器供給国で、既に大宇造船が建造したフリゲート艦1隻やKAI社製のT-50THの一次分として4機を受注しているほか、DAPAによるとタイ は韓国製の装甲車両や小火器に関心を持っているという。(JDW 07/12)

K9 SPH の輸出

 エストニア国防省が2月7日、同国が装備しているFH-70牽引砲に代えて、中古の韓国製K9 155mm SPH 12門の購入を検討しており、6日に購入の交渉を開始したことを 明らかにした。 契約は2017年内に行われ2021年には配備されるという。
 K9はフィンランドも導入しており、フィンランドとの共同購入ではないが両国は密接に協力するという。 (JDW 02/15)

 フィンランド国防省が2月18日、韓国から中古のK9 155mm SPH 48両を€146M ($155M)で購入すると発表した。 この契約には更に追加購入のオプションもついてい る。 納入は2017年に開始され、2024年までに完納する。(JDW 03/01)

 インド内閣が3月29日、改良型の韓国Hanwa社製K9 Vahra-T 155mm/52口径SPPH 100両をINR42B ($646M)で購入することを承認した。
 K9は合弁会社によりインド国内で生産される契約が3月31日に結ばれた。(JDW 04/05)

 韓国のハンファ社が4月21日、K9 155mm SPH 100両のインドへの輸出契約を行った。
 初期に引き渡される10両は韓国で生産され、残りの90両はインド内のL&T工場でハンファ社の技術指導のもと生産される。 (聯合 04/21)

 ノルウェー国防省が12月20日、韓国Hanwha社からK9 Thunder 155mm SPH 24門をNOK1.8B ($215.2M)で購入する契約を行ったと発表した。 この契約には更に24門の オプションも含まれている。
 ノルウェーはK9を現有のM109 Krit後継とする計画で、2019年から取得して2021年に完了する。
 K9は既にフィンランド、エストニア、トルコ、インドでも採用を決めている。(DN 12/20)

エジプトへの中古艦の輸出

 エジプト国防省が9月15日、少なくとも1隻の韓国艦がエジプトに引き渡されると発表した。 引き渡される艦種は明らかにされていな いが浦項級コルベット艦と見 られる。
 浦項級は1984~1993年に24隻が建造されたが1隻は北朝鮮の潜水艦による攻撃と思われる事件で沈没し、そのほか7隻が今までに除籍になっている。 (JDW 09/27)
【註】 :  浦項級コルベット艦は基準排水量950t、満載時排水量1,220t、速力31ktのCODOG推進艦で、76mm砲1門、30mm/40mm機関砲2門のほか、ExocetまたはHarpoonを装備して いる。

ケ. 対日軍事姿勢

自衛隊機に対する緊急発進

 韓国軍関係者の話で1月12日、日本の軍用機が2016年に444回にわたり韓国の防空識別圏に入っていたことが分かった。 ほとんどが離於島付近に進入したもので、 竹島付近の韓国防空識別圏に入ったケースは事実上なかったという。
 日本が離於島付近で中国に対する軍事作戦を活発に行ったことを意味している。(聯合 01/12)

韓国海兵隊に『独島』防衛部隊を創設

 韓国陸海空軍統合本部で10月19日に国会国防委員会による国政監査が行われた際、海兵隊は業務報告で、中国や日本など周辺国の上陸戦力の増強対応して、これ までの西北島嶼防衛中心から、周辺国の脅威にも同時に備える島嶼防衛司令部への改編を推進中であることが明らかにされた。
 戦略島嶼防衛司令部と鬱陵部隊は2018~2020 年を目標に創設が進められる。
 鬱陵部隊は竹島に接近する脅威を防ぐ任務も担うことになるため、編成には竹島への巡回配置部隊が組み込まれているとした。 (聯合 10/19)

安倍首相が提唱するインド太平洋戦略への反発

 韓国の文政権が、トランプ米大統領が11月7日の首脳会談で関与を呼びかけた「自由で開かれたインド太平洋戦略」に「不同意」や「協力の模索」を示すなど、 迷走を見せている。 中国の海洋進出に対抗するために安倍首相が提唱した戦略であるためだ、中国の反発を恐れる文政権としては、おいそれとは乗れないようだ。
 大統領府経済補佐官が文大統領の訪問先のジャカルタで9日、日本は、豪、印、米をつなぐ外交ラインを構築しようとしているが、われわれは編入される必要は ないと述べたことが騒動を招いた。 別の大統領府関係者も「日本が推進してきたもので、国際情勢を考慮すると参加は望ましくない」と述べた。 (産経 11/11)

日米韓連合演習への参加を拒否

 韓国政府消息筋が、文大統領と習国家主席の首脳会談を翌日に控えた11月10日、米国の空母3隻が投入される日米韓3ヵ国連合演習が韓国側の拒否で実現しなかっ たとを明らかにした。
 米国が日本海の公海上で空母3隻との訓練を提案し日本は同意をしたが、韓国は同意しなかったという。
 これについて韓国国防部報道官は前日、日米韓連合訓練計画はないと述べたが、その理由は説明しなかった。 (中央 11/11)

(4) 台 湾

ア. 新国防方針

QDR の発表

 台湾の国防部が3月16日、4年ごとの防衛計画見直し(QDR)報告を発表した。
 中国の軍事的脅威に対抗するため、ステルスSTOVL戦闘機の配備や潜水艦の国内建造を目標に掲げた。 (時事 03/16)

 台湾は4年ごとに防衛戦略を見直しているが、2016年5月に発足した蔡英文政権による初の報告書が3月16日に議会で説明された。
 報告書では台湾海峡の情勢について、中国は台湾周辺を封鎖して離島を奪取する能力をすでに備えていると分析し、中国の軍備増強に対する警戒感を示している。
 その上で、ステルス性能を持つ新型VTOL戦闘機などの導入計画を進めるほか、サイバ攻撃への対応にも取り組むことなどによって、防衛力を強化する方針を明らか にした。
 さらに、台湾の防衛産業の発展を目指す戦略が新たに盛り込まれ、潜水艦などを国産で建造する計画を進め、産業の振興にもつなげていく考えが示された。 (NHK 03/16)

 中国が今週国防費を7%増の$151Bと発表したが、台湾国防省が3月16日に今年度の国防費を1%弱増の$11.4Bとすることを明らかにした。 (DN 03/16)

2017年の国防報告書

 台湾国防部が12月26日に2017年の国防報告書を発表した。 報告書は隔年に発簡されており、今回は蔡英文政権発足以来初めてである。
 革新・非対称戦略を用いて戦力を構築していく方針を示しており、防衛作戦では従来の水際での阻止から沿海部での決戦にまで押し上げる新たな理念を初めて公式 に提示した。
 中華民国軍はこれまで、水際で敵を食い止める「灘岸決勝」を採用してきたが、今回新たに提示した「戦力防護、沿海決勝、灘岸せん滅」の理念では、決戦の場を 沿海部における縦深防御と火力打撃に求め上陸を防ぐとしている。(台湾 12/26)

イ. 米対関係の進展

軍及び文民高官を台湾へ派遣

 FY17米国防権限法(2017 NDAA)が2016年12月2日に議会下院で375:34、8日に上院で92:7で可決されたが、同法の第1284項では国防総省に対し、台湾との軍事関係強化 のため軍及び文民高官を台湾へ派遣することを求めている。
 ここで言う軍高官とは将官を指し、文民高官とは次官補以上を指している。(JDW 16/12/21)

台湾への武器売却を承認

 米国務省が6月29日、以下のような総額$1.3Bに上る台湾への武器売却を承認した。(DN 06/29)

Early Warning Radar の技術支援: $400M
AGM-154C JSOW: $185.5M
AGM-88 HARM: $147.5M
Mk 48 長魚雷: $250M
Mk 46 短魚雷及び Mk 54 短魚雷の改良: $175M
SM-2 構成品: $125M
AN/SLQ-32A 艦載電子戦装置の改良: $80M
台湾関係の深化を定めたFY18米国防権限法案

 米上院軍事委員会が6月28日、米海軍の艦船を高雄など台湾の港に定期的に寄港させること などを初めて盛り込んだFY18の国防権限法案を可決した。 同法案は今後 、米上下両院で審議される。
 米上院軍事委員会が公表した法案の要約によると、同盟国への支援に関する項目の中には米軍艦の台湾寄港のほか、米太平洋軍が台湾の入港や停泊の要請を受け入れ ることや水中戦での攻撃能力向上を目指す台湾への技術支援、台湾と米国のさらなる関係強化などが記されている。 (台湾 06/30)

ウ. 戦力の近代化

(ア) 艦船の増強

a. 潜水艦

 香港誌の亜州週刊が3月7日、台湾の国産潜水艦計画が暗礁に乗り上げたと報じた。 記事によると、台湾海軍と台湾国際造船社が潜水艦外殻の設計図と特許使用権 の取得のため2月初めに蘭、伊、独、英を密かに訪問したが、「一つの中国」原則などを理由に提供を拒否されたという。
 米軍は昨年10月、台湾海軍に外殻の特許使用権を獲得できなければ、関連設備や作戦システムを提供することはできないと伝えていたとされ、記事は欧州4ヶ国の拒 絶により台湾の国産潜水艦自主建造計画は最初の一歩で封殺されたと報じた。
 その一方で、台湾が日本からスクラップの名目で、おやしお型、はるしお型潜水艦を買い取り、米国から作戦システムや電子設備を売ってもらう計画を始めるかも しれないと、台湾にとって日本からの購入が最後の手段だと報じている。(RC 03/08)

 台湾の国防部が3月21日、造船最大手の台湾国際造船などと潜水艦の基本設計に関する契約を結び、高雄市の左営海軍基地で記念式典を開催した。
 1,500~2,000t級の潜水艦を4年間で設計した上で自力で建造し、2024年の進水を目指している。 (時事 03/21)

 台湾国防省が3月21日、国立のCSIST及び建艦企業のCSBCと国産潜水艦の建造契約を行った。
 政府は4年間かける当初の設計段階に$65.64Mの予算を配分しており、最終的に8年間で6~8隻を建造し、10年以内に就役させるという。 (JDW 03/29)

 台湾が潜水艦を国産するに当たり5件の技術が入手できないでいる。 このため米国や日本を含む各国に代表団を送り協力を求めたが、日本は中国の反感を恐れて 台湾の要求を拒否した。(DN 04/07)

 台湾NCSISTが4月5日、議会外交国防委員会のヒアリングを前に、潜水艦の国産には外国技術の導入が不可欠であることを明らかにした。
 台湾の国産潜水艦はNCSISTがCBSB社と8隻を建造する計画で、一番艦の就役は2028年に計画されている。 (JDW 04/12)

b. 水上艦

駆逐艦等

 台湾が米国から購入したOliver Hazard Perry級フリゲート艦2隻が5月13日午前に高雄の左営軍港に到着した。
 米から台湾へのフリゲートの売却は、2014年末にオバマ前政権下で承認されたもので、米海軍を退役した艦齢約30年の今回の2隻は、銘伝逢甲 と命名された。(台湾 05/13)
【註】 :  Oliver Hazard Perry級フリゲート艦はSM-1 MRを装備する満載排水量4,057~4,100tのCOGAG推進艦で、先に購入した同じくSM-1 MRを装備するKidd級駆逐艦(満載 排水量10,500t)より小型である。

 元米海軍のOliver Hazard Perry級フリゲート艦2隻が台湾に引き渡された。
 元FFG 50 TaylorとFFG 51 GaryはそれぞれPFG-1112 FengChia及びPFG-115 Ming Chuanと艦名が変えられ、5月13日に台湾国旗を掲げ 台湾兵が乗務して高雄市の左営海軍基地に入港した。(JDW 05/24)

Tuo Jiang級コルベット艦
 台湾が国内で建造したTuo Jiang(沱江)級ステルスコルベット艦は、全長60.4m、満載時重量567tで、速力43ktの性能を持つ。
 一番艦Tuo Jiangは主砲にOtoMelara社製76mm砲、艦尾にVulcan Phalanx CIWSを各1門装備するほか12.7mm機銃を4丁装備している。
 ASCMとしては艦中央の起立式発射機に、亜音速のHF-2と、ラムジェット推進でMach 2のHF-3を合わせて16発装備している。
 Vulcan Phalanx CIWSはSea Oryx SAMに換装される計画が進められている。 Sea Oryxは国産戦闘機IDFが装備しているTC-1 AAMや、そのSAM型で陸軍が装備してい るAntelope SAMの発展型で、8又は16発が搭載される。
 Tuo Jiang級コルベット艦は2015年3月当初、12隻が勢揃いするはずであったが、現在の計画では10隻が三次に分けて建造されることになっている。
 TC-2N SAMの垂直発射装置を持つFlight 1の3隻は、計画が遅れて2017年に建造が開始される。 (IDR 1月)

揚陸艦(揚陸戦支援艦)

 台湾海軍が3月7日、国産揚陸艦の建造計画の概要を初めて公開した。 国産揚陸艦については2016年の時点で言及があったものの、具体的な概要についてはこれま で触れられておらず今回が初めて公開となった。
 国産揚陸艦は全長220m、排水量22,000t、速力30ktで、甲板には大型ヘリが少なくとも6機積載可能で、76mm砲のほかSAMも搭載される見込みである。 (台湾)
【註】 :  揚陸艦の速力は一般に22kt前後で、台湾の揚陸艦の速力が駆逐艦並みの30ktは異様である。 76mm砲やSAMも装備すると支援艦というより戦闘艦と見ることができる。
 台湾は76mm砲2門、40mm単装砲4門、CIWS 2門などを装備する満載排水量20,859tの戦闘支援艦盤石も保有している。

 台湾が国産LPD建造のRFTを発簡した。 応募締め切りは5月10日になっている。 2021年までの建造費は$207Mで2017年には$42.75Mが計上されている。
 更に2隻の建造も計画されており、2021年には就役する。
 国産LPDは全長502ft、排水量10,000tで速力21kt、航続距離7,000哩の性能を持ち、76mm砲1門とPhalanx CIWSや国産のTC-2Nミサイルも装備する。 (DN 04/19)

(イ) 航空機の近代化

a. F-35 の売却要求と F-16C/D 売却要求の取り下げ

 トランプ大統領と習主席の間で緊張緩和が進むのに対抗して、台湾はトランプ大統領にF-35の売却を働きかけようとしている。
 台湾は早ければ7月にもLockheed Martin社に購入希望兵器のリストを提出するが、F-35の追加に合わせて最新型F-16はリストから外れる模様である。 (S&S 04/27)
b. F-16 の F-16V への改修

 台湾が保有するF-16A/BをF-16V 142機に改造する作業に着手した。 この改造でF-16は、F-16E/F Block 60が搭載するAN/APG-80を元にしたNorthrop Grumman社製 AN/APG-83、別名SABRに換装される。(JDW 01/25)  台湾国防省は、保有しているF-16を米国の技術を取り入れて最先端のステルス戦闘機に改良することを計画していると発表した。 (DN 03/16)
【註】 :  台湾のF-16ではレーダをAESA化する計画が進められているが、Lockheed Martin社が提案しているF-16Vでは、このほかに増槽のコンフォーマル化も含まれている。
 さらに同社は、インドのMMRCA向けとしてF-16IN Super Viperを提案したこともあった。
c. 国産戦闘機の開発

戦闘機の開発

 台湾の馮国防部長が1月23日、国産戦闘機の開発計画を進めていると明かした。 空軍内にはすでに「空軍航空科学技術研究発展センター」が設立されており、 国軍の将来の発展にとって重要だとしている。
 馮部長は、航空機や艦艇の国産化は蔡総統就任後の国防部で重要な政策として位置付けられていると強調し、国産潜水艦の建造計画で進展が見られていることに 触れた上で、国産戦闘機の製造も合わせて進める方針を示した。(台湾 01/24)

AESA レーダの開発

 台湾国防部傘下の研究機関である、国家中山科学研究院が2月7日、独自に開発したAESAレーダを公開した。
 国防部は同日、台中市の同院航空研究所で新型高等練習機の委託製造に関する協議書と協力覚書の調印式を開催し、式典の会場ではAESAレーダをはじめ、同院の研究 成果が多数展示された。
 同院副院長は次世代戦闘機関連の技術がすでに出発点に立ったとし、今後計画に沿って一歩一歩前進させていくと述べた。 (台湾 02/08)

エンジンの開発

 台湾国防部傘下の研究機関で兵器開発などを行う国家中山科学研究院院長が3月2日に立法院外交および国防委員会で、戦闘機用ジェットエンジンの開発に関する予 算を2018年にも計上したいとする考えを示した。
 開発プロジェクトの名称は織女星計画で、国産戦闘機経国に搭載されているエンジンを基礎にするとしている。 (台湾 03/02)

d. 高等練習機/軽攻撃機の開発

 台湾国防省が2月7日、TWD68.6B ($2.2B)にのぼる超音速練習機XT-5 Blue Magpie 66機の契約を国立CSISTと国営AIDC社と行ったと発表した。 試作1号機は2年以内 に完成し 2020年までには試練飛行が開始され、2026年までには全66機が納入されるという。
 XT-5は1984年以来装備しているAT-3及び1970年代にライセンス生産されたF-5E/F戦闘練習機の後継になる高等練習機で、2015年に開かれた台北航空展ではAT-3を元 にした亜音速のAT-3 MAXと、国産戦闘機F-CK-1 Ching Kuoを元にした超音速のXAT-5が候補になっていた。 (JDW 02/15)
e. E-2T Hawkeye AEW&C 機の改良

 台湾のE-2T Hawkeye AEW&C機が、米国でのE-2T Hawkeye 2000への改修を終え台湾へ戻ってきた。(CMR 12/10)
【註】 :  台湾はE-2Tを6機保有していて、これら全ては2013年までに米海軍のE-2C 2000と同等の性能を持つE-2Kに改造されたと報じられていた。
(ウ) 各種ミサイルの開発と配備

国産ミサイルの改良

 台湾は国産のASCM、SAM、AAMの射程延伸等の改良を行っており、HF-2とHF-3はそれぞれ射程を156哩、250哩に延ばしている。 また射程375哩のHF-2E陸上発射型LACM は2011年に量産に入っている。
 天弓-ⅢSAMはTBMの迎撃にも成功している。(DN 02/06)

Patriot の東海岸配備

 台湾国防部が立法院に提出された報告書で、東部の花蓮、台東地区にPatriotを配備したことを初めて明らかにした。 (台湾 03/01)

(エ) その他装備の開発と配備

短距離自動火器 SADWS

 台湾の国立CSISTが、短距離自動火器SADWSの詳細を明らかにした。
 SADWSは遠隔操作砲塔に搭載された射程2,000mの双連20mm砲で、外側の弾倉に200発が装填されている。
 砲塔には目標自動追随装置とセンサパッケージが搭載され、センサとしては高分解能TV、IIRセンサ、レーザ測遠器が内蔵されている。 (IDR 7月)
【註】 :  SADWSを取り上げているWebSite Jane's 360では、これを歩兵用兵器として取り扱っている。
 また重量を1,000kgとしている。

エ. 対日関係

自衛隊機が台湾の防空識別圏を飛行?

 台湾野党国民党の議員が中央社の取材に対し10月18日、台湾交通部民用航空局の飛行点検機に対し緊急発進したが自衛隊機2機が中華民国の防空識別圏に進入し たと語った。
 飛行点検機は11日に台北飛行情報区と日本のADIZが重複する空域である東経123~124度を飛行中、那覇基地から発進したF-15J 2機に退去を求められたという。
 これに対し空軍司令部は、近日わが国の防空識別圏に入った日本機はないと発表し事実を否定した。 (台湾 10/19)

(5) フィリピン

ア. 対米関係

ドゥテルテ比大統領の反米的姿勢

 ドゥテルテ比大統領が1月29日、米軍が比軍基地内に保管している装備品等の撤去を要求した。
 大統領はこの日の報道番組で、米軍の比国内駐留を認めた2014年協定の破棄を検討していると述べた。 (S&S 01/29)

 ドゥテルテ比大統領がTVで1月29日に、米比協定の破棄をちらつかせて、米国がPalawan、Cagayan de Oro、Pampangaに武器等を永久的に貯蔵しているのは2014年4月 に結ばれた協定に違反すると抗議した。(JDW 02/08)

反米発言を繰り返すなか進む米軍基地の建設

 ドゥテルテ比大統領が反米発言を繰り返すなか、米国は両国間で結んだEDCA協定に基づき2017年内に基地施設の建設に取りかかる。
 基地施設が建設されるのはパラワン島のBasa航空基地、Pampanga、Bautista航空基地、及びCagayan De OroのLumbia航空基地などの比軍基地内である。 (S&S 01/27)

関係改善の兆しも

 フィリピンの国防相、財務相、司法相の3閣僚と安全保障当局者3名が、駐比米国大使の招聘を受けて南シナ海にいる米海軍空母Carl Vindonを訪問した。 (DN 03/04)

 数千名の米特殊部隊(SOF)が5月にBalikatan演習に参加するためフィリピンを訪れる。
 ドゥテルテ比大統領は2016年9月に、外国軍隊の駐留を望まないとして、米軍に対し2年以内の退去を求めたが、4月9日に米比退役軍人が行ったバターン戦の記念式典 で大統領は米国を「唯一の防衛同盟国」と述べた。
 ハワイ大学のフィリピン専門家は先週、ドゥテルテ 一派はすぐに反米方針を棚上げするであろうと述べている。 (S&S 04/24)

 在比米大使館が6月5日、ミンダナオ島マラウィ市でのISIS系集団掃討作戦を支援のため、フィリピン海兵隊に小銃300丁や拳銃200丁、機関銃4丁などの武器を供与 したと発表した。
 米比両国は同盟関係にあるが、嫌米のドゥテルテ大統領は米軍撤退を求め、米国から供与された武器も「中古品だ。要らない」と文句を付けていた。 (時事 06/05)

 米海軍が6月6日、フィリピンへScanEagleを$13.5Mで譲渡する契約を明らかにした。
 機数は明らかでないが、一般に1個システムは12機で構成されている。(JDW 06/14)

米軍の比政府軍支援

 フィリピン軍がミンダナオ島マラウィで行っているISIS掃討作戦を米軍の有無人機か支援している。
 フィリピン軍は米軍のRQ-20 Pumaが撮影した画像を利用しており、同様の任務に就いている米国の標識をつけた P-3C Orionも目撃されている。
 マラウィでは6月9日の戦闘で比海兵隊員13名が死亡しており、作戦開始からの比軍死者は58名に上っている。 (DN 06/10)
【註】 :  RQ-20 Pumaは米特殊部隊が装備している電動手投げ式mini UAVで、これが使用されているということは米特殊部隊が前線に進出していることを意味する。

 在フィリピン米大使館が6月10日の声明で、ミンダナオ島マラウィ市でのISIS掃討作戦で、米軍の特殊部隊が支援に乗り出していることを認めた。
 マラウィ市では9日に14時間に及ぶ銃撃戦が続き、比海兵隊員13名の死亡が確認されるなど軍側に大きな被害が発生している。 (時事 06/11)

 フィリピンのドゥテルテ大統領が6月11日、ミンダナオ島マラウィ市でのISIS系武装勢力の掃討作戦で 米国が支援の要請を受けたと明らかにしたことに関し、要請はしていないと述べた。 在フィリピン 米大使館は、フィリピン政府に支援を要請されたと発表していた。  親米派のフィリピン軍が、反米姿勢を繰り返し示している大統領を通さず米国に支援を要請したかどうかは不明である。 (ロイタ 06/12)

 アブサヤフが人質を取り身代金を取ろうとするのを防ぐため、米海軍と比海軍が比南部のスールー海で共同哨戒を行った。
 参加したのは米海軍のLCS 4 Coronadoと比海軍フリゲート艦Ramon Alcarazで、7月1日に4日間の作戦を終了した。 (S&S 07/01)

米比合同演習の復活

 駐比米大使館によると、米海兵隊と比軍の合同演習Kamahdag "Cooperation of Warriors of the Sea"演習が、10月2日にフィリピンで開始された。
 ドゥテルテ大統領が2016年、米特殊部隊のミンダナオからの撤退を求めたのちも、米特殊部隊はISISと戦う比軍を支援してきたが、Balikatan米比年次合同演習は 規模が縮小されてきた。
 Kamahdagは、2016年米軍1,500名と比軍500名が参加して行われたPHIBLEX上陸演習に代わるものである。 (S&S 10/02)

 フィリピンのドゥテルテ大統領が10月5日、米比合同演習が来年から元通り行われことを明らかにした。
 両国の関係は2016年ドゥテルテ大統領が米比演習の終了と米特殊部隊の撤退を求めて以来縮小していたが、マラウィでのISISとの戦いで米軍が協力したことから 変化し、大統領は先週に両国間のもめ事を「済んだこと」とし、米国との友好関係を約束していた。 (S&S 10/06)

イ. 対中関係

中国からの武器購入

 フィリピン国防相が2016年12月20日、中国がフィリピンに対し中国製武器購入資金として$500Mの借款を提供することを明らかにした。
 その第一段階として中国は、小火器、高速艇、暗視ゴーグルの購入費CNY100M ($14.4M)を貸し付けるという。 (JDW 01/04)

 国営フィリピン通信が5月15日、訪中中のロレンザーナ比国防相が同日、中国最大級の国有武器製造輸出企業である保利科技有限公司との間で武器購入に関する同 意書に署名したことを明らかにしたと報じた。
 ロイタ通信は15日、米国が人権問題を理由にフィリピンへの武器輸出を拒否したためドゥテルテ大統領は、中国やロシアがフィリピンの武器輸出商になりたがって いると発言したことを踏まえ、ロレンザーナ国防相が米国の姿勢に不満を示したと紹介し、フィリピン政府が来週にはロシアとの間で武器やUAVの購入を含む防衛合 意に署名する運びであると報じた。(RC 05/16)

中国艦隊の寄航

 フィリピンの中国語紙フィリピン商報が4月29日、中国海軍の艦艇3隻がフィリピン南部ミンダナオ島ダバオ市を30日から3日間訪問すると報じた。 滞在中にはフィ リピン海軍とのスポーツ交流イベントが予定されているほか、一般市民の乗艦交流会も予定されている。  またドゥテルテ大統領も表敬のために乗艦する可能性が高 いという。
 中国海軍のフィリピン寄港は2010年以来、7年ぶりとなる。(RC 05/01)

 フィリピンの中国語紙フィリピン商報によると、駆逐艦長春を含む中国艦3隻が4月30日にダバオ港に寄港し、3日間にわたる友好訪問を開始した。
 ドゥテルテ大統領は5月1日、中国海軍の軍帽を被って自身の地元ダバオ市に停泊している長春を視察した。 (RC 05/02)

スカボロー礁を巡る妥協?

 フィリピンのロレンザーナ国防相が議会の聴聞会で8月14日、フィリピンと中国は南シナ海 で新たな島の占領を禁じる暫定的な協定に達し、中国はフィリピンに 対し、南シナ海に おいて新たな領有権を主張しないことを保証したと述べた。
 国防相は、中国は南シナ海で新たな占領を行わず、スカボロー礁での建造物の建設も行わないと述べた。 スカボロー礁はフィリピン近海の漁場だが、中国が 2012~2016年まで実効支配していた。
 国防相は、中国船5隻が12日にスプラトリー諸島でフィリピンが実効支配する最大のパグアサ島(英語名ティトゥ島)から5kmに現れたことについてはコメントし なかった。(ロイタ 08/15)

ウ. 対露関係

 ASEAN国防相会議に出席するショルグ露国防相のフィリピン訪問に合わせてロシア海軍のAdmiral Vinogradov駆逐艦(6,200t)をはじめとする対潜艦3隻が 、装備品を供与するため10月20日にフィリピンに入港した。  21日には別の2隻もスービック湾に入港し、供与する突撃銃5,000丁を卸下する。(DN 10/20)

 ロシアが5月にフィリピンと契約したAK-74M突撃銃5,000丁、百万発の弾薬、Ural-4320 6×6トラックの出荷を開始した。
 ロシアはフィリピンから、この他にRPG-7V RPGも受注している。(JDW 11/01)

エ. 対日関係

 フィリピンのドゥテルテ大統領が6月4日、親善訪問のためルソン島スービック港に寄港した護衛艦いずもに乗艦した。 大統領は艦内で、日本は歴史的 な友人であり、常に助けてくれると日本の支援に謝意を表明すると共に、2017年内には訪日する意向も示した。
 大統領は6月上旬に予定されていた訪日をミンダナオ島での治安悪化を受けて中止したが、護衛艦を訪問することで対日関係重視に変わりがないことを示す狙いが あるとみられる。(時事 06/04)
オ. 対テロ戦での周辺国との連携

 マレーシア国防相がシンガポールで開催中のアジア安全保障会議で6月3日、フィリピン、インドネシアと共に3ヵ国によるミンダナオ島沖での海上合同警備を19日 から開始すると明らかにした。 活動を活発化させるISIS対策が目的で、空からの警備も後日始める。
 ミンダナオ島では5月下旬、北部マラウィ市をISISを名乗る武装集団が襲い軍との交戦が今も続いているため、同国防相はASEANの中で少なくともこの3ヵ国は無策 のそしりを受けないよう率先して警備に取り組むと語った。(時事 06/03)
カ. 戦力増強

(ア) 艦船の増強

インドネシア製ドック型揚陸艦

 インドネシアのPT PAL社で建造された比海軍のドック型揚陸艦二番艦であるDavao del Surが、5月10日にマニラ南港に入港した。
 Davao del SurはPHP3.8B ($76M)で建造された。(S&S 05/10)
【註】 :  2016年6月1日に一番艦が就役した基準排水量7,400t、満載時排水量11,583tのTarlac型揚陸艦は、韓国がインドネシアに輸出したMakassar型揚陸艦の派生型である。

(イ) 航空戦力の増強

近接航空支援機の機種選定を開始

 フィリピン国防省が2016年12月下旬に、保有しているOV-10 Broncoの後継となる近接航空支援(CAS)機の機種選定を開始した。  計画は6機をPHP4.96B ($99M)で購入するもので、PHP90Bとされる第一次軍近代化計画の一部となる。
 候補機としてはKAI社製KT-1練習機を共にしたKT-1Cが有力視されているが、Embraer社のEMB 315 Super Tycanoも挙がっている。 (JDW 01/11)

 フィリピン国防省の広報官が10月17日、ブラジルEmbraer社とSuper TucanoをCAS用として購入する契約が間もなく署名されることを認めた。 (JDW 10/25)

 フィリピン国防省が11月30日、Embraer社とEMB 314 Super Tucano 6機をPHP4.96B ($99M)で購入する契約を行ったと発表した。
 比空軍はSuper Tucanoを保有しているOV-10 Broncoの後継としてCAS用に30機装備する計画であったが、現在では装備計画は6機に縮小している。 (JDW 12/06)

韓国製 FA-50 の実戦投入

 フィリピン軍参謀総長が1月29日、同国南部での戦闘が再開され、インドネシア人と見られる戦闘員1名を殺害し、フィリピン人のリーダーに重傷を負わせたと発表 した。
 攻撃は26日夜から27日にかけてFA-50を含む空軍機の空爆で行われ、韓国製FA-50が初めて実戦投入された。 (S&S 01/29)

 KAI社製FA-50PHの最終2機がフィリピンに納入され、計画されていた12機が完納した。
 FA-50PH搭載用としてはRafael社がSpice 250爆弾やDerby SRAAMの売り込みを行っているほか、IAI/Elat社は先進レーダを提案している。 (JDW 06/07)

(ウ) 陸上戦力の増強

 フィリピン国防省が6月13日、Elbit Systems社にM-71 155mm牽引砲12門を発注したことを明らかにした。
 12門は陸軍と海兵隊がそれぞれ6門ずつ装備するもので、海兵隊は既に4月下旬に3門を受領している。 (JDW 06/21)
キ. 軍事産業の育成

 フィリピン国防省が防衛産業育成のため長く放置されてきたSRDP計画を再活動させる方針である。 (JDW 01/18)
(6) 大洋州諸国

ア. オーストラリア

(ア) 国防方針

a. 国際情勢の分析

 オーストラリアが過去14年間で初めてとなる外交白書を作成した。
 その中で今後予想できる範囲内では米国が引き続き軍事非軍事のいずれでも世界を主導するしながらも、中国がインド洋~太平洋での影響力を増すことに警鐘を ならしている。(JDW 11/29)
b. 同盟の強化

 推進装置の異常で5月以来就役していない豪海軍の27,500t LHD 2隻のうちの1隻Canberraは改修を終えて、"Talisman Sabre"演習参加のため6月29日に出航 した。
 この演習には米豪軍合わせて30,000名以上が参加する。(JDW)
(イ) 部隊の再編

 オーストラリア陸軍のブリスベン駐屯第7旅団が、最終となるASLAV及びM113AS4 APC 65両とM1A1 Abrams MBT 3両を受領して、2011年に発表されたPlan Beersheba に基づく 改編を完了した。 豪陸軍はPlan Beershebaで3個旅団の改編を計画していたが、第1旅団と第3旅団は既に改編を完了していることから計画は完了した。
 各旅団は2個歩兵大隊と1個戦車大隊で増強された騎兵隊のほか、砲兵隊、通信隊、工兵隊及び兵站諸隊により構成され、6個旅団で構成されている第2師団(予 備)、第16航空旅団、第17兵站旅団、第6支援旅団(通信、情報)及び特殊部隊と共に行動する。(JDW 11/15)
【註】 :  豪陸軍は第1、第3、第7旅団を隷下に持つ現役の第1師団と、6個旅団を隷下に持つ予備役の第2師団を主力に編成されている。
(ウ) 装備の充実

a. 艦 船

Collins級後継次期潜水艦

 豪海軍がCollins級6隻の後継として12隻建造する次期潜水艦の諸元が決まった。
 それによると次期潜水艦は全長97m、胴経8.8m、排水量4,500tで、元となったフランスのBarracuda級原潜より全長が2.4m短く、胴経は同じものの排水量は800t 少なくなっている。(JDW 10/25)

Hobart級防空駆逐艦 (AWD)

 豪海軍のHobart級防空駆逐艦(AWD)二番艦のBrisbane (7,000t)が2016年12月15日に進水した。 2017年末に公試運転が行われ、2018年9月に引き渡される。
 2015年5月に進水した一番艦Hobartは2016年9月に公試運転を完了し、予定より2年遅れて2017年6月に引き渡される。
 三番艦Sydneyも2017年中に船台組み立てが開始される。(JDW 01/04)

 豪海軍が3隻建造する防空駆逐艦AWDの1番艦Hobartが1月30日に公試運転のため出航した。 メーカの試験は2016年9月に完了している。
 二番艦Brisbaneは2018年9月、三番艦Sydneyは2020年3月に引き渡される計画である。 (JDW 02/08)

 ターンブル豪首相が2月20日、豪政府が建艦能力向上のため、2017~2020年にAUD100M ($77M )を追加支出すると述べた。
 この追加支出でオーストラリアの建艦予算はAUD4.3Bになる。(JDW 03/01)

 3隻建造される豪海軍の7,000t級防空駆逐艦(AWD)の一番艦Hobartが9月23日に海軍へ引き渡された。 就役は2018年末になる。  建造中の二番艦 Brisbaneの引き渡しはFY17 4Q、三番艦Sydneyは2019年12月になる。
 AWDはMk 45 Mod 4 5吋62口径砲のほか、Mk 41 VLS 48セル、SM-2 Block ⅢA/ⅢB、RIM-162 Block Ⅰ ESSM、RGM-84 Harpoon Block Ⅱ 4連装発射機2基、M242 25mm Bushmaster砲2門などを装備している。(JDW 10/04)

 豪海軍のHobart級防空駆逐艦(AWD)の二番艦Brisbaneが、第一段階の 洋上試験に入った。 Brisbaneの引き渡しと就役は2018年中頃に予定されて いる。
 Hobart級防空駆逐艦は豪海軍が6隻保有している米海軍のOliver Hazard Perry級フリゲート艦であるAdelaide級フリゲート艦の後継で、スペ インNavantia社の F-100フリゲート艦を元にAN/SPY-1D(V)を装備している。(JDW 11/29)

1,761tの外洋哨戒艦 (OPV)

 ターンブル豪首相が11月24日、豪海軍が13隻保有している300tのArmidale級哨戒艇の後継としてAUD4B ($3.04B)かけて建造する1.761tの外洋哨戒艦(OPV)12隻の建 造に、ドイツのLürssen社を選定したと発表した。
 建造されるOPV 80は全長80mで、速力20kt、航続距離4,000nm以上の性能を持ち、40mm砲1門、12.5mm機銃2丁を装備するほか、11mの内火艇1隻と8.4mの内火艇2隻を 搭載する。
 またヘリハンガはないが11tまでのヘリが離着艦できる。(JDW 11/29)

 豪海軍の外洋警備艦(OPV)12隻を受注したドイツLürssen社が11月4日、豪企業との連携を明らかにした。
 Lürssen社製OPV80を元に建造される12隻の内の10隻はAustal社と共同で建造される。(JDW 12/06)

2020年代を見据えた建艦計画

 オーストラリアが5月16日、2020年代を見据えた海軍建艦計画を発表した。
 総額はAUD90Bで、潜水艦12隻、フリゲート艦12隻、外洋哨戒艦19隻、沿岸警備艦12隻が建造される。 (JDW 05/24)

次期フリゲート艦に Aegis BMDシステム

 オーストラリア政府は、ミサイル開発を続ける北朝鮮を念頭に脅威に備える必要があるとして、次期フリゲート艦に長距離弾道弾迎撃システムを搭載することを 発表した。
 オーストラリアは国防費を増額し海軍の能力の向上を目指していて、日本円にしておよそ3兆円を投資してフリゲート艦9隻を2020年から建造する計画を進めてい るが、ターンブル首相は10月3日に北朝鮮を念頭に、フリゲート艦の対空戦の能力を強化する方針を明らかにした。
 具体的には、Lockheed Martin社が製造する迎撃システムを搭載するという。(NHK 10/03)
【註】 :  「Lockheed Martin社が製造する迎撃システム」とはAegis BMDシステムを指すものとみられる。
 豪海軍は既にAeigis搭載の防空駆逐艦AWDを3隻建造する計画で、一番艦のHobartは9月末に就役している。

b. 防空 BMD

近距離防空システムの更新

 豪政府が4月10日、装備して30年経つ同国の近距離防空システムの後継にRaytheon/Kongsberg社製NASAMSを選定したと発表した。
 所要経費はAUD3B ($1.5B)という。(DN 04/10)

 オーストラリア国防省が4月10日、陸軍第16空地連隊が現有のRBS-70に換えて装備するGBADにNASAMSを選定したことを明らかにした。
 契約額はAUD2B ($1.5B)で、最終納期は2019年になる。(JDW 04/19)

c. U A V

 オーストラリア空軍は当初、武装UAVとしてMQ-9 Reaperを当初検討し、2年前には米国に調査団を派遣していたが、その後IAI社のHeron TPも候補に入ってきている。 (AW&ST 04/17)
d. その他

AN/ALQ-249 NGJ-MB の開発に参画

 豪国防省と米海軍が10月18日に、AN/ALQ-249 NGJ-MBの共同開発に関するMoUに署名した。 この共同開発について豪国防相は3月上旬、AUD250M ($190M)を分担 すると述べている。
 NGJ-MBはEA-18G Growlerが装備しているAN/ALQ-99に代わるもので、EA-18Gへの搭載は2021年に開始される。 豪空軍は7月にEA-18Gの最終12機を受領している。 (JDW 11/08)

JSM の改良

 オーストラリア国防省がKongsberg社と、NOK150M ($17.4M)をかけてJSMの精度を改善する開発を契約した。
 計画は豪国防省の対艦艇火力支援計画の一環で、JSMのIIR終末誘導シーカにBAE Systems社が開発した4チャンネルESM装置を取り付けるものである。 (IDR 6月)

GBU-53/B SDB-Ⅱ の装備

 米国防安全保障協力局(DSCA)が10月2日、オーストラリア空軍へGBU-53/B SDB-Ⅱ 3,900発を$815Mで売却すると発表した。
 豪空軍はSDB-ⅡをF-35Aに装備する計画である。(JDW 10/11)

イ. ニュージーランド

 特記すべき記事はなかった。
(7) ロシア

ア. 軍事拡大政策

(ア) 核戦力の増強

欧州正面での戦術核増強

 米欧州軍司令官が3月28日に米議会で、ロシアは欧州軍正面に相当量の戦術核を配備しており、その使用が懸念されると述べた。 (JDW 04/05)

(イ) 連邦軍の兵力増強

通常戦力の強化

 ロシア国防相が2月21日、ロシア軍にとって最優先課題は核戦力の強化であるが、通常戦力への依存度が徐々に高まっていると述べた。
 具体的な例として、通常弾頭を搭載したKalibr艦載CM、戦略爆撃機搭載のALCM、陸軍のIskander SRBMを挙げた。 (MT 02/21)

新型空母の建造、現有空母の大規模改修

 ロシア国防省が2016年12月5日、空母Admiral Kuznetsov搭載のSu-33 1機が東地中海で着艦拘束装置の不具合で海没したことを明らかにした。 国防省は事 故の発生時期を明らかにしなかったが、他の報道から12月3日とみられる。
 Admiral Kuznetsov搭載機では11月14日にもMiG-29KR 1機が墜落している。 この際も着艦拘束装置の不具合からMiG-29KRは着艦できず周回飛行をしていた が、燃料切れで墜落したとみられている。(JDW 16/12/14)

 ロシア通信が、ボリソフ国防次官が8月24日に新型空母の建造を2025年までに開始する計画と明らかにしたと報じた。
 ソ連時代末期に就役したAdmiral Kuznetsovは2018年に大規模改修に入る予定という。 (産経 08/25)

2017年の武器調達

 ロシア国防相が2016年12月22日、2017年に戦車や装甲車両905両と新型又は改良型航空機170機を取得すると述べた。 国防費が急落するなか、2016年の受領数139機 から大幅に増加する。
 また東シベリア、西シベリア、南ウラルの3ヶ所にYeniseysk長距離EWレーダを設置し、4個連隊をS-400に換装する。 S-400は2016年にも4個連隊が装備した。
 更に海軍は水上艦船8隻と舟艇9隻を取得し、沿岸防衛部隊にBal及びBastion対艦ミサイル4個システムを取得する。 (JDW 01/11)

 ロシアの国防次官が3月10日、ロシア空軍が2017年内に16機のSu-34を受領すると述べた。
 ロシアはNovosibirsk航空機製造社に92機のSu-34を長期一括発注している。
 同社は又、2018年にSu-34の改良を開始するという。 この改良でレーダが新型に換装されるほか、新型の空対空、空対地武器が搭載される。 (JDW 03/22)

SSC-8 GLCM の配備

 New York Times紙が米高官の話として2月14日、ロシアが新たに地上発射型のCMのSSC-8を配備したと報じた。 同紙によるとロシアは、移動式発射機4両を装備する SSC-8大隊2個を編成しており、1個大隊は南部アストラハニ州カプスチンヤルのミサイル実験施設に、もう1個大隊は国内の別の基地に配備されている。
 オバマ前米政権は同ミサイルの実験段階から、中距離核戦力(INF)全廃条約に違反すると警告しているが、実戦配備が事実なら対ロシア関係の改善を掲げるトランプ 米政権は対応に苦慮することになる。(時事 02/15)

(ウ) 東欧諸国への圧力強化

 リトアニアの外相がJane'sに対し3月28日、ロシアが行う演習について特にその規模が大きいと警鐘を鳴らした。 計画されている大規模演習は9月に行われる 'Zaapd'演習で、バルト諸国に接するロシア北西部、カリーニ ングラード、ベラルーシ、バルト海にわたり行われるという。
 2013年に行われた演習では120,000以上の部隊が参加し、8,000両の貨車がチャーター されて50,000名ものベラルーシの予備役兵を輸送している。
 ロシアは予告なしに100,000名以上の部隊を動員が可能という。(JDW 04/05)
(オ) 世界各地での勢力拡大

東地中海沿岸

 ロシアが東地中海沿岸諸国との関係強化に動いている。 シリア内戦ではアサド政権を支援しながらトルコとも連携し、エジプトでは軍事面などの交流を活発化させ て、内戦状態が続くリビアへの関与も深めつつある。 アラブの春以降の混乱期に存在感を低下させた米国に代わり、東地中海で影響力を強めている。
 ロシアはシリアでアサド政権を支援するために軍事介入し、内戦前から持つ西部タルトスの海軍基地に加えて、新たに北西部ラタキア近郊にも軍事基地を整備した。
 さらにエジプトとも2016年6月と10月に海上と陸上で相次いで合同軍事演習を実施し、エジプト初の原発建設計画を支援するなど関係強化を進める。 (毎日 01/14)

 InterFax通信がロシア軍の動向に詳しい関係者の情報として1月15日、シリア北西部のラタキア郊外の空軍基地と、軍事物資の輸送拠点となっている西部のタルトゥ ース港の詳しい整備計画について伝えた。
 ラタキア郊外の空軍基地では、大型の輸送機が離着陸できるように2本目の滑走路を改修するほか、基地の司令部の建物や兵舎を新設するという。
 タルトゥース港では、2つの埠頭を新設し巡洋艦が接岸できるようになるという。
 さらに、空軍基地と港の周辺に引き続きSAMを配備して防衛能力を維持し、中東での軍事拠点としての役割を強化する狙いがあると見られる。 (NHK 014/16)

 ロシアが1月20日、シリア西部タルトスの海軍基地を拡張して近代化するとの合意を18日にシリアと結んだとして、合意文書を政府ウェブサイトに発表した。
 契約期間は49年間で、その後も合意に基づき25年の延長可能とし、基地には兵員を守る武器を自由に持ち込めると明記されている。
 合意文書は、ロシア軍が同基地に一度に11隻まで艦船が停泊できると定め、原子力船寄港も可能としており、批准に向けて議会で審議される。 (東京 01/21)

中東への接近政策

 プーチン露大統領が12月11日にカイロを訪問してシシ大統領と会談し、軍事協力やエジプト初の原子力発電所建設への支援などを協議する。 その後にトルコに移 動してエルドアン大統領に会う。
 ロシア政府関係者によるとシシ大統領との会談では、エジプトへの武器売却や同国にある空軍基地の相互利用など軍事協力と、エジプトの原発建設への支援などエ ネルギー分野の協力などが話し合われる。
 首脳会談で注目されるのがエジプト空軍基地の利用で、ロシアは現在もシリアの空軍基地や港を利用しており、エジプト空軍基地を軍用機の発着に使えるようにな れば、中東での軍事的な存在感が高まる。
 トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことで中東との関係がきしむ米国の隙を突き影響力を高める思惑がにじむ。 (日経 12/11)

イ. 財政難の影響

(ア) 国家レベルでの影響

 ロシアでは経済情勢の悪化からICBMの整備計画が1年以上遅れており、発射機の数が増えていないという。
 特に関心が持たれているのはTopol-M/RT-2PM2のMIRV弾頭型であるYars RS-24 (SS-29)は戦略ロケット軍の3個連隊が装備しているだけという。
 これはロシアのKommersant紙が1月10日に、同紙が入手したミサイルの設計を担当しているMITT社がRostec社に送った書簡で明らかにされていると報じた。 (JDW 01/18)

 2017年のロシアの国防費は前年度比25%減になった。(JDW 03/22)

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┃ 2009 ┃ 2010 ┃ 2011 ┃ 2012 ┃ 2013 ┃ 2014 ┃ 2015 ┃ 2016 ┃ 2017 ┃
┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━┫
┃20,465┃22,285┃26,234┃31,855┃36,193┃42,698┃54,906┃65,559┃48,842┃
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 ロシア財務省が呈示した2018年度予算の指針によると、2018年度の国防費は5.0%下がってRUB2.73T ($47.13B)になる。
 2019年には3.7%増えてRUB2.83Tになるが、2020年には0.5%減のRUB2.82Tになる。(360 09/20)
(イ) 極東露軍での影響

 ロシアが実効支配する北方領土のインフラ整備が、今年は財政難により大きく減速する見通しとなった。
 2016~2025年にRUB70B(1,355億円)を投じるとしているクリール諸島の社会・経済発展計画について、露中央政府が2017~2019年分の支出を先送りする方針を示し たためで、深刻化する財政難が背景にあるとみられる。
 北方領土における日本との「共同経済活動」を急いでいるロシアは、2007~2015年の前回計画では択捉島の新空港建設など大型事業が注目されたが、今回は出足から つまずいた形である。(産経 01/06)
ウ. 軍事産業の再構築

 ロシア国営軍事企業のRostec社が11月7日、傘下High Precision Systems社株の49%を売却する相手を求めていると発表した。
 現在Rostec社はHigh Precision Systems社株の100%を保有しているため49%を売却しても51%は引き続き保有することになる。
 High Precision Systems社は45,000名の従業員と20以上の子会社を持ち、主力製品にはIskander-MやPantsir S1などがある。 (JDW 11/15)
エ. 極東での軍備増強と活動の活発化

(ア) 極東地上軍の強化

千島列島への新師団配置

 ロシアのショイグ国防相が2月22日に下院での報告で、北方領土と千島列島に2017年中に新師団を配置する考えを発表した。
 ロシア軍の師団は5,000名から20,000名程度の規模とされる。(朝日 02/22)

北方領土で戦車100両が参加した演習

 InterFax通信によると、ロシア軍の極東地域を管轄する東部軍管区が8月10日、北方領土で兵員1,000名以上と戦車100両などが参加した演習を開始したと発表した。
 演習は国後島と択捉島の演習場で実施し、部隊間の連携や戦術の確認のほか、化学兵器や生物兵器の攻撃に対する防御訓練も行うという。 (産経 08/11)

(イ) 太平洋艦隊の増強

問題点の露呈

 韓国海軍のP-3が日本海海上で3月末に、韓米合同軍事演習Fall Eagleを監視していていたロシア海軍の潜水艦を78時間にわたって追跡し、最終的にロシア艦が海面に 浮上していたことが分かった。 潜水艦の浮上は事実上「降伏」を意味するもので、韓国軍が潜在的な敵国の潜水艦を追跡し、浮上にまで追い込むのは極めて異例であ る。
 韓国海軍はロシア太平洋艦隊司令部に対し、この件について抗議の書簡を送り、ロシア太平洋艦隊は同艦が韓米合同演習の情報収集のため出動した事実を認める 異例の返信を行ったと伝えられている。(朝鮮 02/25)

(ウ) 空軍の活動が活発化

米軍への挑発

 日本海上空で米空母Ronald ReaganにロシアのTu-95MS 2機が接近したため、Ronald Reagan搭載 のF/A-18が緊急発進した。
 双方の航空機は空母から80哩以上遠方で遭遇した。
 これについてロシア国防省は、Tu-95MSは日本海及び太平洋の公海上空で、通常の哨戒任務中であったと述べた。 (S&S 11/02)

我が国への挑発

 統合幕僚監部が7月14日、航空自衛隊機が緊急発進した回数が29年度1Qで229回だったと発表した。 前年同期と比較すると52回減少したが、中国軍機に対する発進 が前年同期比でほぼ半減したことが原因である。
 ロシア軍機に対する発進は中国軍機を上回る125回と、四半期ごとの発進数発表を始めた平成17年度以降では、26年度1Qの235回に次ぐ多さとなった。
 残りの3機は国籍不明だった。(産経 07/14)

オ. 米本土への軍事的挑発

 米FOX Newsが4月18日、ロシアの戦略爆撃機2機が17日に米アラスカ州に接近して米国の防空識別圏内を飛行したため、米戦闘機2機が緊急発進したと報じた。
 トランプ政権発足後、米軍の対応が必要になるほどロシア爆撃機が米国に接近したのは初めてで、米露関係の冷え込みが史上最低レベルとも言われるなか、プー チン政権による揺さぶりの可能性がある。(東京 04/19)

 米国防総省広報官が5月4日、ロシアの爆撃機と戦闘機が3日にアラスカのADIZに侵入したためF-22が緊急発進したと述べた。
 侵入したのはTu-95 2機とSu-35 2機で、Su-35が米空軍に目撃されたのは初めてである。
 このあとA-50 AEW&C機も侵入したが、これには緊急発進しなかった。(S&S 05/04)

カ. わが国に対する動き

(ア) わが国北方領土周辺での動き

 Izvestiaが11月29日、千島列島中部の松輪島と北部の幌筵島にロシア軍基地が建設され、2018年には地対艦ミサイルBastionとBalの配備に着手すると報じた。
 千島列島南方の北方領土では、ロシア軍が択捉島にBastion、国後島にBalを配備したことが2016年11月に明らかになっている。 (産経 11/29)
(イ) わが国周辺海域での動き

 日本近海におけるロシア海軍の活動が活発化している。 特に2006年に統合幕僚監部が陸海空の作戦を統合するようになってからその傾向が顕著で、護衛艦は中国 や北朝鮮と共にロシア海軍の動きの監視にも追われている。
 統幕によると日本近海へのロシア艦接近回数は2006年に4回であったのが2009年には二桁に上昇し、2014年に19回、2015年に25回と増加して、2016年には27回に上 っている。(S&S 01/10)

 防衛省が4月13日、28年度に航空自衛隊が行った緊急発進回数が、前年度の295回から1,168回へと大幅に増加したと発表した。 但し、領空侵犯はなかったという。
 この中でも中国機に対するものが、280回から851回に増加している。(JDW 04/26)
【註】 :  この記事からすると、FY15における中国機以外(恐らくロシア機)に対するものが15回(=295-280)であったのに、FY16ではこれが317回(=1,168-851)に急増してい ることが読み取れる。

(ウ) わが国との軍事協力の動き

 日露国防相が会談し両国の軍事協力について話し合ったのちの3月20日に、ショイグ国防相が2017年に両国軍が30件以上の共同活動を行うと発表した。
 一方両国防相は、北方四島にロシアが3K60 BalとK300P Bastion-Pを配備し今年後半には1個師団を配置することについても意見を交換し、ロシア側はこれらが純粋 に国防のためで他国を相手にしたものではないと強調した。(JDW 03/29)
(8) 米 国

ア. 国防方針の変化

(ア) 米国第一の安保戦略

 トランプ米大統領が12月19日、政権初の包括的な安保政策「国家安全保障戦略」を公表した。
 演説でトランプ大統領は米国の国益を最優先する米国第一に基づく戦略だとし、米国は再び強くなると強調して、中国とロシアは米国に挑戦するライバルと対抗意 識を見せ、世界での米国の政治、経済的優位を保つ方針を表明した。
 また核や生物化学兵器を追求する北朝鮮とテロを支援するイランを「ならず者政権」と非難した。 (東京 12/19)
(イ) 外交姿勢の変化

a. 対ロシア

ロシアと協調する姿勢

 ティラーソン米国務長官が7月5日、米国はシリア情勢の安定化に向けて、飛行禁止区域の設定を含む取り組みロシアと協議する用意があると述べた。
 また、現地への停戦監視団の派遣や人道支援での協力についてもロシアと協議したいとの考えを示した。 (ロイタ 07/06)

ロシアと対決する姿勢

 英国を訪問した米国のマティス国防長官が3月31日にロシアの脅威について言及し、クリミア侵攻、選挙妨害などロシアの違反行為については記録があり、NATOは 団結してロシアの脅威に立ち向かう必要があると述べた。(産経 04/01)

 米統合参謀本部議長のダンフォード海兵隊大将が11月14日にTufts大学で講演し、中露に対する米国の軍事的優勢が崩 れつつあると警告した。 (JDW 11/29)

露軍機の監視飛行を制限

 米露は相互の領空への監視飛行を両国が参加する「オープンスカイ条約」で認めているが、ロシアがカリーニングラードへの米軍機の監視飛行を妨害しているとし て、米国が露軍機の飛行を制限する意向という。
 リャプコフ露外務次官が9月27日、米国が露軍機による米領空内への監視飛行を来年1月から制限する方針だとの見通しを示し、米側に報復措置を取る考えを明らか にした。
 報道によると、米側はアラスカやハワイ上空への露軍機の飛行を制限する可能性がある。(産経 09/28)

中距離ミサイルの開発再開を検討

 Wall Street Juornalが11月16日、米国防総省が中距離核戦力(INF)全廃条約で禁止されている中距離ミサイルの開発再開を検討していると報じた。
 ロシアが同条約に違反してミサイル試験などを行っていることへの対抗措置とみられ、米国は数週間前に新たな中距離ミサイルの研究開発を進める意向をロシア 側に伝えた上で、ロシアが条約を順守すれば開発を断念すると伝達したという。
 1987年に米ソ間で調印されたINF条約は、両国が保有する射程500~5,500kmの地上発射型のBM及びCMの全廃を定めたが、米政府や議会では近年、ロシアが 条約に 違反してミサイル開発を進める一方で米国だけが条約に縛られていることに不満の声が高まっていた。 (時事 11/17)

 米国務省報道官が12月8日、冷戦時代にソ連との間で結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約が締結30年を迎えたことを受けて声明を発表し、ロシアによる同条約違反 の対抗措置として、中距離ミサイルの開発に着手すると表明した。
 1987年に調印されたINF条約は、両国が保有する射程500~5,500kmの地上発射型BM/CMの全廃を定めたが、米国内ではロシアが条約に違反して中距離ミサイルの開発 を進める一方で、米国だけが規約に縛られていると不満が高まっていた。(時事 12/09)

b. 対北朝鮮

 英国を訪問した米国のマティス国防長官が3月31日にファロン国防相と会談した後の記者会見で、北朝鮮が核実験やミサイル発射を強行していることについて無謀だ と非難し、核実験などは阻止する必要があると強調した。(産経 04/01)
c. 対中国

 トランプ米大統領が2月20日、新たな国家安全保障担当大統領補佐官に陸軍能力統合センタ長マクマスタ陸軍中将を充てる人事を決め、前任のフリン氏の辞任騒動に ひとまず区切りをつけた。
 新補佐官は対ロシア強硬派で共和党主流派の評価も高いが、親露路線の大統領とは意見の隔たりがあり、ロシアにどう臨むかが新体制の大きな課題になる。 (日経 02/22)
(ウ) 新START条約の否定

 トランプ米大統領が2月23日、2010年に署名した新START条約について、一方的な条約で悪い条約だとコメントした。
 新START条約は米露2国間だけで取り決めた条約で、2018年までに核弾頭数を1,550発、運搬手段を700に削減するとしている。 (DN 02/23)

(エ) トランプ米政権に対する身内の反感

同盟国からの反発

 トゥスクEU大統領が加盟国首脳に宛てた書簡で1月31日、トランプ米政権についてロシアや中国、イスラム過激派と並び、EUが直面する脅威だとの認識を示した。
 EUは2月3日に、英国を除く27加盟国首脳はマルタで非公式会合を開く予定で、書簡はそのための招待状である。 (産経 01/31)

軍からの反発

 米STRATCOMのハイテン司令官がカナダのノバスコシア州で開催されたハリファクス国際安全保障フォーラムで11月18日、トランプ大統領が「違法な」核攻撃を命 じた場合には拒否するとの意向を示した。
 同司令官は、違法な命令があった場合どのように対応するかのシナリオを一通り調べることは、標準的な慣例であると述べた。 (ロイタ 11/20)

(オ) 対北朝鮮先制攻撃論の台頭

 米国でトランプ政権が発足すると、対北朝鮮先制打撃論の封印が解かれた。 コーカー上院外交委員長が1月31日の外交委員会公聴会で先制打撃について、北朝鮮の 核の脅威の緊急性を受け米国が発射機上にあるICBMを攻撃する準備をするべきかと投げかけた。
 これはこれまでの交渉と制裁を繰り返した対北朝鮮政策の限界を越え、非現実的だと見なされた先制打撃案の議論を再開するもので、1994年の第一次北核危機で当 時のペリー国防長官が北爆計画を準備して以来23年ぶりになる。(中央 02/02)
(カ) 二正面作戦能力の保持への回帰

 米消息筋によると、2018年早々に議会に提出する新"National Defense Strategy"(QDR 2018)を起草している作業チームは、二正面作戦能力の保持に回帰する 方向で作業を進めている模様である。
 マチス国防長官は1月31日に、新戦略では軍の増強方針が示されると述べている。(ID 08/30)
(キ) 軍備増強方向の回帰

核戦力の近代化

 米戦略軍(STRATCOM)司令官が6月20日に米空軍協会の朝食会で、核戦力の近代化促進を訴えた。
 米核戦略の3本の柱である戦略爆撃機ではLRSOを搭載するB-21 LRSB、ICBMでは GBSD、SSBNではOhio級の更新などの計画が進められている。 (JDW 06/28)

艦船の増強

 トランプ次期大統領が艦船増強を主張しているのを受けて米海軍は2016年12月、355隻体制とトランプ要求を上回る冷戦以降最大規模の建艦要求を公表した。
 海軍が改訂した"Force Structure Assessment"では空母1隻、大型水上艦16隻、攻撃型潜水艦18隻など47隻の追加建造を求めており、議会研究機関の海軍専門家は これによる追加経費は年間$5~5.5Bになると見積もっている。
 レーガン大統領はかつて600隻体制を主張していたが、海軍の即応艦船数は現在、かつての308隻から274隻に減少している。 (S&S 01/08)

 トランプ米大統領が3月2日、バージニア州で2017年に就役する空母Gerald R. Fordの艦上で演説し、米海軍は第1次世界大戦以来、艦船数が最小規模となっ ているが、空母12隻体制を含め、海軍全体の拡張計画を協議していると表明した。(時事 03/03)

 米議会上院と下院がFY17国防予算で艦船建造費を増額することで合意したという。 これによりFY17の艦船建造では3隻と$2.8Bが追加され$21.2Bになる。
 上下両院の合意ではVirginia級潜水艦2隻、DDG 51 3隻、LCS 3隻、LHA、LPD各1隻の計10隻と、砕氷艦1隻が建造されることになる。
 この報道はトランプ政権が沿岸警備隊の警備艦建造をやめて建造費$640Mを海軍艦建造に回す決定の翌日に行われた。  トランプ大統領は空母の艦上で3月2日、海軍の規模を275隻から355隻にすると述べている。(DN 03/03)

 米海軍がマティス国防長官に対し、FY17から艦船23隻を$61.8Bで追加建造する計画を提出した。
 2016年12月に海軍が作成した将来構想では355隻体制を謳っている。(ID 04/06)

 米議会予算局(CBO)が4月24日、海軍の艦船数を現在の計画である275隻から355隻に増やした場合の経費増について、15年、20年 、25年、30年以内のケースについ て算定した結果を報告した。
 それによると予算増は併せて$300~400Bで、最短達成時期は18年後の2035年になると見られる。 (JDW 05/03)

 2016年に当時大統領候補であったトランプ米大統領が、当時2021年までに海軍を308隻体制にするとしていたのを350隻にすると発言し、その1ヶ月後に海軍は355 隻計画を打ち上げたが、国防総省は追加47隻の経費について未だに見込みを持っていない。(S&S 11/18)

陸軍兵力の増強

 トランプ大統領が現在46.5万の陸軍兵力を54万にするとしていることに対し退任する米陸軍長官が、このためには$12Bの経費が必要になり、その戦略的必要性を説 明しなければならないと発言した。 同長官によると兵力を1万名増強するに必要な経費は$1.6Bであるという。
 米陸軍の兵力はアフガンに派遣していた2011年に最大の56.6万であった。(S&S 01/20)

 ミラー米大統領補佐官(政策担当)が2月12日、北朝鮮のBM発射を受け、米軍再建を主張してきたトランプ大統領が近く米議会指導者との間で予算措置を含めた対応 を協議することを明らかにした。
 オバマ前政権下で国防予算が削減されたことによる軍事力の低下を懸念してきたトランプ政権は、陸軍新兵の募集目標を6,000名上積みする案などが検討されている。  これに関連しUSA Todayは12日、陸軍が今年秋までに予定している新兵の募集目標を62,500名から68,500名へ6,000名上積み する計画だと報じた。 これは1973年に完全志願兵制になって以来最大の募集規模で、$300Mの追加予算が必要になる。 (産経 02/14)

パイロット不足の対策

 米空軍がパイロット不足の対策として、退役軍人と再雇用の長期契約する計画で、トランプ大統領が実施命令に署名した。
 これにより空軍は向こう3年間にわたり1,000名のパイロットを再雇用できるようになる。(JDW 11/01)

(ク) 国防費の増額/減額

国防費の大幅増の方針

 ホワイトハウスの予算管理事務所が2月27日にFY18予算要求について国防総省に対し、$549Bとしている制約を超えて、前年度より$54B多い$573Bで行うよう命じた。
 これはオバマ政権が国防総省に示した$51Bを$17B、率にして3%上回るものである。(ID 02/27)

 トランプ米大統領が2月27日、3月半ばに議会に提出するFY18予算教書で、国防費を歴史的に増額することを明らかにした。 増額分は他の項目の削減で相殺すると いう。 米政府高官は国防費は$54B増えると述べた。
 一方、米行政管理予算局の高官は、海外援助費を大幅に削減するほか、国防総省以外の大半の政府機関で予算が削減されると語った。 (時事 02/28)

 ホワイトハウスはFY18国防予算を、前年度比2.43%増の$603Bとすると発表したが、これは国防総省の要求に基づくものか否かが未だに明らかでない。
 $603Bの内訳として、基本国防費に$545B、海外戦費に$58Bとしている。(JDW 03/08)

 トランプ政権が9月30日までのFY17国防予算に$30Bの追加要求を行ったが、これは10月1日以降も引き続くことから、$639B要求しているFY18国防予算は$680Bになる ことになる。(S&S 03/16)

FY18予算案で国防費

 5月22日にトランプ政権が公表したFY18予算案で国防費は、大統領が掲げていた「歴史的な増額」には至らず、$603Bと前政権案を僅か$19Bだけ上回るもので、 下院軍事委員会委員長は22日に、基本的にオバマ路線であると述べている。(DN 05/22)

 トランプ米政権が23日に議会に提出するFY18予算教書で、外国への軍事支援金の一部を融資に転換することが、22日に公表された教書 の概要で明らかになった。  外交や海外援助に関する国務省の予算を29%超削減する計画の一環として行うもので、削減分の一部は国防予算の増額に充てる。
 教書の概要によると、FY18の国防費は$603Bと、オバマ前政権が提案していた同年度の額を3%上回る。 (ロイタ 05/23)

 大統領のFY18予算教書では、即応性、バランス及び打撃力の強化を謳っている。 このための予算額は基本経費で$574.5B、海外戦費で$64.6Bと併せて$639.1B になり、基本経費は2011予算管理法の上限を$52B上回っている。(DoD HP 05/23)

 トランプ大統領は選挙活動中、軍の再強化を主張してきたが、FY18予算教書では必ずしもそうなっていない。 (AW&ST 05/29)

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 ┃   ┃ FY15 ┃ FY16 ┃ FR17 ┃ FY18 ┃FY18の上昇率┃
 ┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━━━━┫
 ┃陸 軍┃ $6.7B┃ $7.9B┃ $8.0B┃ $9.5B┃   19%  ┃
 ┃海 軍┃$16.1B┃$18B ┃$18.5B┃$17.8B┃   -4%  ┃
 ┃空 軍┃$24B ┃$25B ┃$26B ┃$35B ┃   35%  ┃
 ┣━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━╋━━━━━━┫
 ┃総 額┃$64.1B┃ $71B ┃$72.3B┃$83.3B┃   15%  ┃
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 トランプ政権がFY18の欧州再保証計画(ERI)に$4.777Bを要求した。 $4.777Bは上限額が規定されていない海外戦費(OCO)に組み込まれている。
 ERIはオバマ政権が2014年に始めたもので、オバマ政権はFY17に$3.419Bを計上している。(JDW 05/31)

 トランプ政権がFY18予算で、対外軍事基金(FMF)を、FY16の$6Bから$5.1Bへと大幅に削減しようとしている。 これにより援助対象国は51ヵ国から4ヵ国に縮小され る。
 FY18で対象となるのはイスラエル($3.1B)、エジプト($1.3B)、ヨルダン($350M)、パキスタン($100M)である。 (JDW 05/31)

 米上院が9月18日にFY18国防権限法の上院案を、賛成89、反対8の圧倒的多数で可決した。 総額は$700Bとトランプ大統領が唱える軍増強を支持する内容となった。
 下院も7月に同院の国防権限法案を可決しており、総額は上院案とほぼ同じ水準になっ ている。 (ロイタ 09/19)

 米国のFY18国防予算の大枠を定めた国防権限法が12月12日、トランプ大統領の署名を経て成立した。
 同法はオバマ前政権下で規模が縮小した米軍の再建を目指し、予算総額を$700Bと規定した。(時事 12/13)

兵力増強を盛り込んだFY18国防権限法

 米議会上下両院が、陸軍現役476,000、海軍327,900、海兵隊185,000、空軍325,100、陸軍州兵343,000、陸軍予備役199,000とするオバマ政権のFY18予算要求に対 し更なる増員を要求している。
 下院軍事委員会は陸軍現役に10,000、陸軍州兵に4,000、陸軍予備役に3,000の追加増員を、上院軍事委員会は陸軍現役に5,000、陸軍州兵に500、陸軍予備役に 1,000の追加増員を要求している。(JDW 07/12)

空軍の予算不足、保有機減少、部隊縮小

 ウィルソン米空軍長官が空軍の現状について10月5日、保有機数や部隊が縮小され予算も削減される一方、中東などでの作戦行動が飛躍的に増大したことで、有事 の際の即応態勢に深刻な影響が出ており、即応能力を早急に回復しなければならないと訴えた。
 同長官によると、空軍は冷戦直後の1991年当時134個の戦闘飛行隊を擁していたのに対し現在は55個飛行隊に減少したうえ、戦闘機のパイロットは必要数を1,500名 も下回っているとした。
 一方で、空軍はシリアやイラク、アフガニスタンでのISISなどの空爆作戦などにより、冷戦期に比べてはるかに活発に戦闘行動を展開しており、いついかなる戦 いに勝とうにも、能力は精いっぱいになりつつあると警告した。(産経 10/07)

成立した FY18 国防権限法

 米議会下院が356対70で、総額$700BにのぼるFY18国防予算を可決した。 法案ではBMDSの速やかな構築を命じている。 法案は上院でも可決されるとみられる。
 $700Bの国防費は$634Bの基本支出と$66Bの海外戦費からなり、基本経費には北朝鮮の核に対抗するためとしてMDAに$12.3Bが配当されている。 (S&S 11/14)
【註】 :  トランプ大統領が5月に議会に提出したFY18予算教書は、基本経費で$574.5B、海外戦費 $64.6Bと併せて$639.1Bで、それでも基本経費は2011予算管理法の上限を $52B上回っていた。

(ケ) 第二列島線へ後退するアジア戦略と対日依存

 2016年7月に陸上幕僚長を退職した岩田清文氏がワシントンのシンポジウムで、米国が南シナ海や東シナ海で中国と軍事衝突した場合に米軍がグアムまで一時撤 退し、沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線の防衛を同盟国の日本などに委ねる案が検討されていることを明らかにした。
 中国のA2/AD戦略に対応するためで、中国が東風-21D ASBMによる空母撃沈を避ける狙いがある。 (東京 09/16)
イ. 編成装備の見直し

空母Gerald R. Ford の就役と空母11隻態勢

 米海軍の空母Gerald R. Fordが7月22日に就役した。 米海軍の新型空母就役は40年ぶりで、就役後も試験を重ねて2020年の本格就役を目指している。
 これで米海軍は空母11隻態勢となる。(時事 07/22)

海兵隊

 米海兵隊が15年に及ぶテロとの戦いを繰り広げている間に進歩した対空、対艦能力に対抗する能力向上のための改革を迫られている。
 米当局者が3月23日に明らかにしたところによると、米海軍と海兵隊は4月にカリフォルニアで演習を行い、提案されている100件以上の新技術の検証を行う。 (MT 03/23)

ウ. アジア太平洋戦力の増強

(ア) 西太平洋海軍の強化

a. 第3艦隊の西太平洋投入

 米海軍がCarl Vinson空母打撃群を西太平洋に近く派遣する。
 米海軍によると、空母打撃群は1月5、6の両日にかけて西海岸サンディエゴを出港し、アジア太平洋地域で対潜水艦作戦や砲撃訓練を含む軍事演習を行う。 国防総 省報道官は1月3日、南シナ海を含むアジア太平洋地域に多数の艦艇を派遣してきたが、これからも続けていくと強調した。
 遼寧を西太平洋や南シナ海に進出させるなど遠洋での海軍力を急速に強める中国への警戒感が背景にあるとみられ、トランプ次期大統領も中国の海洋進出に 警戒感をあらわにしており、米中緊張への懸念が高まっている。(時事 01/04)

 米空母Carl Vinsonが2ヶ月前にサンディエゴを出航してハワイに来たことは、第二次大戦後初めて第3艦隊の艦船が同艦隊の指揮下に太平洋での任務に就いた ことを意味する。
 Carl Vinsonを旗艦とした第1空母打撃群は3月2日朝に南シナ海に入り、同海域を第7艦隊と二分して任務に就いた。 (S&S 03/02)

 米太平洋軍司令部が北朝鮮のた暴走を阻止するため、東太平洋を担当する第3艦隊の朝鮮半島周辺への展開を大幅に増やす検討を進めている。
 横須賀基地を母港とする第7艦隊にはRonald Reaganを中心とした1個CSGが配属されているが、サンディエゴを母港とする第3艦隊にはNimitzCarl VinsonGeorge WashingtonJohn C. Stennisの4個CSGが配属されている。
 更にAegis巡洋艦と駆逐艦は30隻あまりで、原潜も20~30隻に上る。(東亞 09/12)
【註】 :  第3艦隊の極東派遣は情勢緊迫と言うより、第7艦隊で駆逐艦の衝突事故が続いたことからその補充が必要になったことと、事故頻発の原因の一つに任務過重によ る乗組員の多忙が挙げられているためではないか。

b. 第7艦隊の増強

艦船の増派

 米海軍のリチャードソン海軍作戦部長が11月2日、第7艦隊への艦船増派を検討していると明らかにした。
 同艦隊所属艦の任務増加が乗組員の疲労や訓練不足につながっているためで、6月と8月に相次いだ駆逐艦の衝突事故を受け、第7艦隊の負担を軽減して再発防止に つなげたい考えである。
 また米海軍は同日、第7艦隊の駆逐艦衝突事故に関する包括的調査報告書を公開し、北朝鮮情勢が緊迫するなか西太平洋で要求される任務が横須賀を拠点とする艦 船では賄いきれなくなっていたと、海軍全体の財源や艦船不足が第7艦隊に負担を強いていたと認めた。 (時事 11/03)

MQ-4C Triton の配備

 グアムのAndersen AFBには、Triton 4機を収納する台風にも耐えられる巨大格納庫が建設されている。
 TritonはP-8A Poseidonと共に運用され"罠"としての役割を担う。(AW&ST 11/27)

c. 損耗艦の補充

 米太平洋軍司令官のハリス海軍大将が8月28日に太平洋軍司令部で時事通信と単独会見し、衝突事故で長期の修理が必要となった第7艦隊所属艦2隻の代替として、 2018年にも別のAegis駆逐艦2隻を派遣すると明らかにした。
 ハリス大将は第7艦隊について、現在は2隻が離脱した状態だが、日本などの防衛に十分な数はそろっているとしたうえで、さらに必要があればいつでも艦船を増 強できる用意があると述べ、北朝鮮のミサイルの脅威に十分対応できるとの見方を示した。(時事 08/31)
(イ) 太平洋空軍の増強

爆撃機のグアム配備

 B-1Bとの共同訓練のためグアムのAndersen AFBに来ていたB-2 3機が、1月12日に3週間の訓練を終えてモンタナ州のWhiteman AFBに帰還した。 (S&S 02/01)

 米国防総省が2月9日、グアムに複数のB-1を一時配備したと発表した。 国防総省によるとB-1は6日にAndersen AFBに到着した。
 米空軍は2004年以降、戦略爆撃機をグアムなどに交代配備しており、B-1がグアムに一時配備されるのは2016年8月に続き2度目である。 (毎日 02/10)

 テキサス州Dyess AFB所在第9遠征爆撃飛行隊(EBS)のB-1B 4機が2月6日にグアムのAndersen AFBに飛来した。
 B-1Bはサウスダコタ州Ellsworth AFB所在第34 EBSの爆撃機(34th EBS もB-1Bを装備)と交代し、大平洋軍への爆撃機配備を継続する。 (MT 02/10)

 サウスダコタ州Ellsworth AFBを基地とする米空軍第28爆撃航空団の第37遠征爆撃飛行隊の350名が7月末にグアムに飛来し、テキサス州Dyess AFBの第9飛行隊と交 代した。(MT 08/09)

F-35 の配備

 1月から岩国基地に駐留している米海兵隊のVMFA 121飛行隊はF-35B 10機を装備して日本国中ばかりか韓国にも飛行しているが、5月1~12日にアラスカ州で行われた "Northern Edge"演習にも8機を派遣した。
 アラスカ州のEielson AFBには、2020年に空軍がF-35Aを配備する計画になっている。(AW&ST 05/29)

(ウ) 太平洋陸軍の増強、強化

海兵隊のオーストラリア常駐

 オバマ前米大統領が2011年に決めた豪北部ダーウィンに駐留する米海兵隊の第一陣が4月18日に到着した。 駐留期間は6ヶ月でその間に豪軍、中国軍との合同 軍事演習を予定している。
 海兵隊によると、2017年の駐留規模は1,250名で、当初計画していた2,500名を下回る。
 ただ、OspreyやSuper Cobraなど航空機13機も派遣される予定で、これまでの駐留で最多となる。(ロイタ 04/18)

予備役招集計画の変更

 ワシントンで開かれた米陸軍協会(AUSA)の年次コンファレンスで米太平洋軍が10月10日、過去1年半準備してき た太平洋地域での予備役招集計画の試行が順調に 進んでいることを明らかにした。
 太平洋軍は、現在は日本や韓国、グァム、米領サモワなどに所在している予備役軍人が、動員時にハワイや米本土に参集することになっている現在の招集計画を 、現在の所在地に出頭するするように変更する案の試行を行っている。(DN 10/10)

ハワイ防衛の強化

 アジア太平洋での北朝鮮からの脅威を念頭に置いた$700BにのぼるFY18国防権限法が国会を通ったが、ここではハワイの防衛も強調されている。
 ハナブサ下院議員は法案に、Kaiai島にあるPMRFの防衛を盛り込み、シャッツ上院議員はハワイの防衛力整備に$300M以上を盛り込んだことを明らかにした。 (S&S 11/20)

(エ) 南シナ海に艦船を派遣

 米国防総省が3月6日、沿岸国が過剰な海洋権益を主張していると見なした海域に、米国が艦船などを送り込む「航行の自由 作戦」に関する年次報告を公表した。
 それによると、2015年10月から2016年9月までの間、中国など22ヶ国と地域を対象に作戦を実施した。 (時事 03/07)
【註】 :  航行の自由作戦 (FON: Freedom Of Navigation)は少なくともFY1991から行われており、毎年報告書が出されている。
(オ) 東南アジア諸国との連携強化

タイとの関係改善

 トランプ米政権が、2014年5月のクーデターで軍事政権下にあるタイとの安全保障関係の修復に乗り出した。 米国防総省は、2月14日からタイで始まったCobra Gold 多国間演習に、太平洋軍司令官を3年ぶりに派遣した。
 タイ軍事政権は近年、民政復帰を求めて軍事支援を凍結したオバマ前政権に反発して中国への傾斜を強めており、今回の動きには東南アジアで最も重要な同盟国に 位置づけられてきたタイを中国から引き戻し、東南アジア戦略を再構築する狙いがある。(産経 02/16)

エ. 北朝鮮による BM 発射への対応

BMD 民防態勢の構築

 米ハワイ州の緊急事態管理局が7月21日、北朝鮮がICBMを発射したことを想定した対応の指針を策定し、避難訓練を11月から実施すると発表した。 米メディアに よると避難訓練は毎月行われる。
 同州では1980年代の東西冷戦時代にソ連の攻撃に備えた計画を策定しサイレンを鳴らした訓練したことがあったが北朝鮮のミサイルに備えた対応は初めてである。 (産経 07/22)

オ. 在韓米軍の動き

(ア) 兵力の増強、装備の更新

F-22とF-35B ローテーションの配備検討

 複数の韓国政府筋よると、米韓両国が北朝鮮の脅威に対抗するため、F-22とF-35Bを朝鮮半島にローテーション配備することを本格的に検討しており、近く具体的 な内容を確定する。
 F-22とF-35Bは、中部の烏山または西部の群山にある在韓米軍基地に3ヵ月ごとに配備することが有力視される。 (聯合 09/03)

AH-64 Apache の追加配備

 米国防総省が、在韓米軍にAH-64 Apache 24機を追加配備し、ソウル郊外の水原基地に配備させる。
 AH-64の追加配備は、2013年からOH-58Dを在韓米軍に配備してきたOH-58Dの代替で、OH-58D 30機は米国本土に順次戻す。
 在韓米軍は当初同機を平沢に配備する計画だったが、基地の内部工事の関係から水原配備を決めたが、平沢基地の工事が終わり次第、同機を水原から平沢に移す。 (聯合 01/09)

Gray Eagle中隊の配置

 韓国軍関係者の話で3月13日、米陸軍が群山市の米空軍基地にMQ-1C Gray Eagleを配備する手続きに入ったことが分かった。
 同基地に配備されるGray Eagleは第2師団第2航空旅団の装備である。
 米陸軍の各師団級部隊にGray Eagle中隊を置くという方針に基づくものという。(聯合 03/13)

 在韓米軍が3月12日、在韓米陸軍にMQ-1C Gray Eagle 1個中隊を常駐させると発表した。
 Gray Eagle中隊は第2歩兵師団隷下の第2戦闘航空旅団に配属されるが、これは米陸軍が全ての師団にGray Eagle中隊を配置する方針に基づくものという。 (JDW 03/22)

ローテーション派遣の継続

 米陸軍第1騎兵師団第2機甲旅団戦闘団(ABCT)通称Black Jack旅団が、テキサス州Ft. Hoodから韓国のCamp Humphreysに到着し、1st ABCT,1ADと交代して9ヶ月間のロ ーテーション配置についた。
 Black Jack旅団が最初に韓国に来たのは2015年で、50年間韓国に駐留したのち予備役になったIron旅団(3rd BCT, 4ID)と交代した。 (S&S 06/28)

 ここ2週間にわたり緊張が続く朝鮮半島のDMZから数哩しか離れていないRodriguez実射場で、テキサス州から派遣されている第8騎兵連隊第1大隊が実弾射撃訓練を 行っており、この演習はクリスマスまで続けられるという。(S&S 11/29)

(イ) 核兵器の再配備

 トランプ米政権が戦術核兵器を朝鮮半島に再配備する案を検討しているという。 在韓米軍が戦術核を再び持ち込むことになると26年ぶりの再配備になる。
 在韓米軍は1958年1月にHonest Johnや280mm砲などの配備を確認し、その後爆弾、155mm砲、超小型破壊用特殊爆弾などの核兵器を装備してきたが、冷戦終了後の 1991年にブッシュ大統領の軍縮計画によって、これらの戦術核兵器は朝鮮半島から撤収した。
 米国科学者連盟(FAS)の資料によると、米軍は2016年末現在、F-15、F-16、B-52、B-2などから投下できるB-61戦術核爆弾500発を保有している。 米国はこれらB-61 核爆弾150発をベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの5ヶ国、6ヶ所に配備し、残りは米本土に保管している。 (ハンギョレ 03/06)

 米NBC TVが複数の情報機関や軍の高官の話として4月7日、米国家安全保障会議(NCS)が対北朝鮮政策見直しの一環として、トランプ大統領に核兵器を在韓米軍に再 配備することを提案したと報じた。 NBCは配備先として、ソウル南方の米空軍烏山基地の可能性があるとしている。
 在韓米軍は冷戦時代に戦術核を配備していたが、約25年前のブッシュ父政権時代に撤去したとされている。 (日経 04/08)

(ウ) 米韓合同軍事演習

 ロイタ通信が、米韓軍の定例演習"乙支Freedom Guardian"への米軍の参加人数を縮小したことについてマティス 米国防長官が8月20日、、北朝鮮の挑発にならな いよう配慮した結果ではないと語ったと報じた。
 21~31日の間行われる同演習はコンピュータによるCPXで、米軍からは2016年の25,000名より少ない17,500名人が参加し、韓国軍からは2016年と同規模の50,000名 が参加する。
 マティス長官は、米韓軍事演習の計画は数ヵ月前から決まっていたもので、今年の演習は異なる要素の統合を目指す指揮系統の訓練を重視していると述べ、2016 年ほど多くの人員を必要としなかったと説明した。(時事 08/20)
(エ) 艦船の寄港

Ohio 級 SSGN の寄港

 米海軍Ohio級SSGNのMichigan 18,000tが10月13日に釜山に入港した。 Michiganの母港はワシントン州のBremertonであるが、現在はグアムを拠 点にしている。(S&S 10/13)
【註】 :  Ohio級SSGNはかつてTrident SLBMを装備するSSBNであったが、Ohio以下初期に建造された4隻がTridentの発射管22基にTomahawkを7発ずつ、計154発搭載 したもので、4隻全部がそろうと600発のTomahawkを発射できることになる。
 残りの2基は閉鎖されてドライデッキシェルタと、Advanced SEAL Delivery Systemとなり、海軍特殊部隊SEALが使用する。

(オ) THAAD の配備

韓国への搬入

 韓国国防部が3月7日、THAADの一部が韓国に到着したことを明らかにした。 THAADの発射機2両と一部の装備は6日夜に輸送機で韓国に搬入さ れた。
 兵員や残りの装備も順次到着する予定で、THAADの配備は1~2か月で完了する模様である。(聯合 03/07)

 韓国軍がTHAADの配備に必要な資材を慶尚北道星州郡のゴルフ場に搬入したことが4月13日に確認された。 韓国軍は11日から13日までヘリコプタ8~12機ずつ を使ってブルドーザー、掘削機、貯水タンクなどをゴルフ場に運んだ。
 特に、12日にはヘリコプター12機で終日物資を搬入し、THAAD配備のための施設機材などを運び込んだ。 (聯合 04/13)

 ペンス副大統領に同行している米大統領府当局者が、在韓米軍へのTHAAD配備について4月16日、5月選出される次期大統領が判断すべきだと述べ、配備完了の先 送りを示唆した。
 ただその後、副大統領報道官は、これまでTHAAD配備における政策変更はないと述べた。(時事 04/16)

 韓国軍が4月26日午前、慶尚北道星州郡草田面韶成里のロッテスカイヒル星州カントリークラブにTHAADシステムの核心装備であるX-bandレーダと発射機を搬入し た。
 米国から発射機2基が3月6日に搬入された後、THAADの核心装備は京畿道烏山と慶尚北道漆谷郡倭館の米軍基地で保管されており、これまではTHAAD部隊の建設に 必要な重装備や物資だけが星州ゴルフ場に運び込まれていた。(中央 04/26)

IOC 宣言

 米当局者が5月1日、韓国に配備したTHAADがIOCになったことを明らかにした。
 当局者の一人は、FOCに達するにはあと数ヶ月かかるが、暫定的に運用可能な状態にあるとの認識を示し た。 (ロイタ 05/02)

 在韓米軍(USFK)広報官が5月2日の声明で、USFKに配備されたTHAADがIOCになり、北朝鮮のBMを迎撃できるようになったことを確認した。 (JDW 05/10)

追加配備の延期

 在韓米軍へ配備されるTHAADの発射機4基が韓国に追加搬入され、大統領府に報告されていなかった問題で、大統領府高官は6月7日、4基の配備は用地の環境影響評 価作業が終了してから決定されると述べた。 環境影響評価作業は最短でも1年かかるとみられており、THAADの追加配備は事実上中断される。
 同高官は、既に配備済みの発射機2基とX-bandレーダは撤去する必要はないとの立場を示しており、当面は発射機2基で運用される。 (時事 06/07)

 米陸軍THAADの韓国への更なる配備は、韓国で誕生した新政権が環境影響調査を要求してきたことから1年程度遅れる見通しになった。 (JDW 06/14)

度重なる北朝鮮の BM 発射試験の影響

 韓国の文大統領が、北朝鮮のBM発射後の7月29日未明に開いた国家安全保障会議(NSC)で、韓国南部で配備が始まっている米軍のTHAADについて、配備済みの2基か ら増強することを米国と協議するよう指示し、北朝鮮の核やミサイル開発の進展が止まらない状況を受け、中露や地元住民の反対で米軍THAADの追加配備を遅らせ ようとしていたこれまでの方針を転換し、THAAD配備に積極的に乗り出す姿勢を見せた。(東京 07/29)

 韓国国防部当局者がTHAADの配備について、小規模環境影響評価が終わったら資材・装備を入れなければならず、その時点でまだ配備されていない発射機の配備時 期について協議し日取りが決まれば少なくとも一日前には公開したいと語った。
 韓国環境部が7月24日から行 ってきた小規模環境影響評価は8月28日ごろ終わる予定で、その後すぐに電気工事や整地工事などの施設工事が始まる。 この結果残 余の発射機4基を来週配備する可能性が高い。
 4基の発射機は現在、近くの在韓米軍基地で4ヵ月以上も保管が続いている。(朝鮮 08/26)

追加配備の完了

 在韓米軍によると、THAADの発射機4基が9月7日朝に配備先の星州に搬入された。
 既に運用している発射機2基と合わせ6基の配備を完了し、北朝鮮のミサイルに備えた運用に向けた準備を進める。 (時事 09/07)

 米陸軍が韓国に配備するTHAAD中隊は、9月7日に残りの発射機4基の搬入を完了した。 THAAD中隊はAN/TPY-2レーダと8発搭載発射機6~9基で構成され、48発のミ サイルを保有する。
 THAADはBMを射距離200km、高度150kmで迎撃する。(JDW 09/13)

 THAADを装備しFt. Bliss駐屯していた米陸軍第11防空砲兵旅団隷下の第2防空砲兵連隊D中隊(D-2ADA)が韓国星州郡に移動し、在韓米軍第35防空砲兵旅団の隷下に 入った。
 D-2ADA中隊はIOC後に帰還し、代わってFt. BlissのA-4ADA中隊が任務に就くもようである。(S&S 10/22)

中国の反対と対応行動

 米政府当局者によると、中国軍が7月29日に中国北部でTHAADやF-22を模した標的をMRBMやCMなどで破壊する試験を行ったことがわかったという。
 この当局者は今回の中国軍の行動について、米国が監視していることを承知のうえで破壊試験を実施したのは明らかで、中国にはいつでもTHAADを破壊する能力が あると見せつける狙いがあったと分析していると話した。(NHK 08/02)

(カ) Patriot PAC-2/PAC-3

PAC-3 の展開訓練

 在韓米軍によると、第8軍の第35防空砲旅団は2016年、Fort Blissの第11防空砲旅団隷下部隊、沖縄に駐留する第1防空砲兵連隊と合同でPAC-3部隊の朝鮮半島へ の展開訓練を3回行ったという。
 在韓米軍は2016年7月、沖縄にいるPatriot部隊を朝鮮半島に展開する訓練を公開したことがあり、Patriotの発射機1基を輸送船で南東部の釜山に運び、西部の 群山に移動させた後、韓国軍のPatriot部隊と合同演習を2週間行った。(聯合 04/21)

Patriotの改良

 米陸軍は、米空軍基地防衛を担う在韓米軍第35防空砲旅団がPatriotの改良と訓練を完了したと発表した。 改良型PatriotとはPAC-3 MSEなのか、従来型のPAC-3 Conf3なのかは分かっていない。
 同旅団の2個大隊はPAC-2/PAC-3を12個FU装備しているとされ、韓国国内に分散配置されている。(聯合 08/16)

(キ) AGM-158 JASSM の配備

 聯合ニュースが6月26日、米空軍群山AFBのF-16にAGM-158 JASSMが10発以上配備されたと報じた。 配備されたのは基本型のAGM-158A JASSMか射程延伸型のAGM-158B JASSM-ERかは明らかでないが、いずれにせよ平壌まで届く。
 JASSMには炸薬として109kgのAFX-757を充填したWDU-42/B (J-1000)侵徹/破片効果弾頭が搭載されている。 (JDW 07/05)
カ. 在日米軍の戦力強化

厚木基地艦載機部隊の岩国基地への移転

 在日米海軍が5日、厚木基地から岩国基地への艦載機部隊の移転を2017年7月以降に開始すると発表した。 移転するのは当初でF/A-18 59機で、岩国基地に現在配置さ れているF/A-18やAV-8Bなど60機と合わせて岩国基地の米軍機は120機となり、100機が常駐する嘉手納基地と並ぶ極東最大級の航空基地になる。
 岩国基地では今年8月までにAV-8Bなどの代替としてF-35B 16機の配備も計画している。(毎日 01/05)

 米海軍の空母Ronald Reaganの航空部隊CAW-5に所属している厚木基地所属第125 AEW飛行隊(VAW-125)に代わるVAW-125が2月、岩国基地に飛来する。
 現在バージニア州Norfolkを基地としているVAW-125はE-2の最新型であるE-2Dを装備している。(S&S 01/05)

 防衛省中国四国防衛局が11月23日、F/A-18 15機が24日岩国に飛来すると発表した。 同防衛局によると、今回の飛来について米軍は、沖ノ鳥島周辺で22日に発生 したC-2艦載輸送機の墜落事故を受けた一時的な処置であり、厚木基地の艦載機部隊を岩国基地へ移転する計画による正式移転ではないと説明しているが、F/A-18 48機の岩国配備が11月に始まり、2018年5月までに61機が段階的に移る計画であることから、飛来がそのまま配備につながる可能性もあるとみている。
 艦載機移転は第一陣のE-2D 5機が8月に到着している。(毎日 11/23)

 米空母Ronald Reagan艦載機の厚木基地から岩国基地への移駐で中国四国防衛局が11月26日、第二陣としてF/A-18など30機が27日にも移駐すると、山口県と 岩国市に伝えた。 第一陣のE-2D 5機は8月に移駐しており、2018年5月までに艦載機計61機が段階的に移駐する。
 防衛局によると、第二陣はF/A-18 2個隊24機とEA-18G 1個隊6機の計30機で、このうち24、25日に岩国基地に到着しているF/A-18など11機について防衛局は当初、 沖ノ鳥島沖で22日に発生したC-2艦載輸送機の墜落事故を受けた運用の一環で正式移駐ではないと説明していたが、そのまま配備されることになるとしている。 (毎日 11/27)

F-35B の岩国基地配備

 米海兵隊が1月10日、岩国基地に配備するF-35B 10機がアリゾナ州の基地から9日に出発したと発表した。 F-35が米国外の基地に配備されるのはこれが初めてで、 今週中にも岩国基地に到着してF/A-18などと交代する。
 米国防総省は、今回の10機に加えて今年後半にも6機を岩国基地に派遣し、合わせて16機にする。(NHK 01/11)

 米海兵隊が1月10日の声明で、第121戦闘攻撃飛行隊 (VMFA-121)のF-35Bが9日に岩国海兵隊航空基地(MCAS)を目指し、アリゾナ州Yuma MCASを飛び立ったと発表した。
 岩国MCASへのF-35Bの配備はF-35初の海外配備で、F-35計画にとって意義のある一歩となる。(S&S 01/11)

 岩国基地に配備されるF-35Bが1月18日に到着した。
 防衛省によると1月に10機、8月に6機が到着し、合わせて16機が配備されるという。(産経 01/18)

 1月中に配備されるF-35B 10機の1番機が18日17:30に岩国基地に到着した。 VMFA-121飛行隊"Geen Knights"の残りの6機は夏までに到着する。
 VMFA-121飛行隊は今年アラスカで行われるNorthern Edge演習、GuamのForager Fury演習、韓国でのSsang Yong及びMax Thunder演習に参加する。 このうち秋に行 われるNorthern Edge演習ではF-35Bが初めて強襲揚陸艦Waspに搭載される。
 バージニア 州Norfolkを母港としているWaspは、この時点で第7艦隊の所属になり母港を佐世保に移す。 (DN 01/18)

 米国防総省が1月10日、アリゾナ州Yuma MCAS駐留第3海兵航空団第121飛行隊所属の海兵隊のF-35Bが、岩国MCASに移動し初の海外展開をしたと発表した。
 121VMFAは2012年11月に海兵隊で初めて、2015年7月にIOCとなった実用型F-35Bを装備している。(JDW 01/18)

 米海兵隊VMFA-121飛行隊のF-35Bが1月18日、初の海外展開として岩国 MCASに到着した。(AW&ST 01/23)

 米海兵隊岩国基地に11月15日にF-35B 3機が飛来し、1月からF-35Bを装備している所属の第121飛行隊が16機の編成を完結した。 (S&S 11/16)

F-35A の嘉手納基地配備

 米空軍が11月上旬、太平洋地域で初めて嘉手納基地にF-35A 12機を6ヶ月間の計画で配備する。
 嘉手納に派遣されるのはユタ州Hill AFB所属の第34戦闘機飛行隊で、300名を超える兵員も派遣される。 (DN 10/23)

 F-35A 2機が10月30日に米軍嘉手納基地に飛来した。 米太平洋軍が6ヵ月間のローテーションによる配備を発表していた12機のうちの2機とみられる。
 太平洋軍が管轄するアジア太平洋地域では初の実戦配備となる。(産経 10/30)

 米太平洋軍司令部が11月21日、米空軍がF-35A初の海外実戦展開を沖縄で行ったと発表した。 F-35Aは4月に欧州に派遣されたことはある。
 嘉手納AFBに派遣されたのはユタ州Hill AFBを基地とする第388及び第419戦闘飛行隊からのF-35A 12機と兵員300名以上で、11月上旬から同基地所属第18航空団の F-15Cと共に任務に就いている。(360 11/22)

 米太平洋軍司令部が11月21日、空軍がF-35A初の海外展開を沖縄で開始したと発表した。
 嘉手納基地には11月上旬からユタ州Hill AFBの第388戦闘機航空団(FW)と第419FWから12機と人員300名以上が移動し、嘉手納に駐留している第18 FWのF-15Cと行動 を共にしている。(JDW 11/29)

木更津駐屯地で Osprey の定期整備開始

 米海兵隊普天間飛行場所属の新型輸送機Ospreyが1月30日、定期整備拠点の陸上自衛隊木更津駐屯地に到着し、国内で 初めてとなる定期整備が2月1日から始まる。
 定期整備では、5年に1度の大規模な分解点検を行う。(産経 01/30)

RQ-4 Global Hawk の飛来

 グアムの米空軍Andersen AFB所属のRQ-4 Global Hawk 1機が5月1日、横田基地に飛来し、10月まで日本で運用される。 今回の1機に続いて48時間以内に2機目が到着 するという。
 米空軍横田基地広報部によると、台風などを避けるための一時的な配備というが北朝鮮への警戒とみられる。
 同基地にはGlobal Hawk 5機 と人員105名を配置するという。(産経 05/01)

キ. 米軍の即応能力

爆撃機の可働率

 米空軍の最新資料によると、現在米空軍で即使用可能な爆撃機数は、保有機数の半分以下である。 これは今に限ったことではない。
 それによると75機保有するB-52で使用可能なのは33機、62機あるB-1は25機、20機のB-2で飛行可能なのは7~8機であるのが実情である。 (MT 08/12)
【註】 :  半数しか可動でないと言うことは逆に、半数は即戦闘可能であることを意味する。 即ち、今北朝鮮との戦闘が開始された場合には、B-52 33機、B-1 25機、B-2 7~8機が投入できると言うことである。

第7艦隊の事故多発と即応性への不安

 6月に伊豆半島沖でコンテナ船と衝突した米第7艦隊の駆逐艦Fitzgeraldに続き、姉妹艦John S. McCainがマラッカ海峡で石油タンカと衝突した第7 艦隊で相次ぐ重大事故の背景には、国防予算削減の影響で海軍が人員や艦船の無理な運用を強いられている実態があるとの指摘も出ている。
 リチャードソン海軍作戦部長は相次ぐ艦船事故について、「われわれが知らない何かがある」と語り、乗組員の訓練実態から艦船の運用サイクル、装備品の保守 状況までを包括的に調べる方針を決めた。(時事 08/22)

 米議会付属の政府監査院(GAO)高官が9月7日、第7艦隊所属艦の衝突事故が相次いだことについて下院軍事委員会で証言し、同艦隊の乗組員の4割近くが定期訓練を 受けていなかったと明らかにした。
 任務が増える中で人員が減ったため、十分な訓練時間を確保できなかったとみられることから、過度な負担や訓練不足が事故につながった可能性がある。 (時事 09/08)

(9) その他諸国

ア. インド

(ア) 軍備の増強

a. ミサイルの開発、改良

BrahMos-A

 インド空軍が11月22日にベンガル湾上空で、改造したSu-30MKIにるBrahMos-A ALCM の発射試験に成功した。 (360 11/22)
【註】 :  BrahMosはロシアのK310 Yakhontラムジェット推進超音速CMを元にしたMach 2.5~2.8の性能を持つCMで、地上発射型と潜水艦発射型は既に配備されている。

 インド空軍が11月22日、空中発射型のBrahMosであるBrahMos-AをSu-30MKIから発射する試験に成功した。
 BrahMos-Aはラムジェット推進でMach 2.8の性能を持つBrahMos LACMを、全長で0.5m縮めて8.4m、発射重量を500kg軽くして2.5tにしたものでHAL社はBrahMos搭載用 にSu-30MKI 2機目の改造を終えている。
 印空軍は2個飛行隊42機にBrahMos-Aを搭載する計画である。(JDW 11/29)

BrahMos-ER

 インドが3月11日、それまで290kmであったBrahMos超音速CMの射程を400kmを遙かに超えて延伸したBrahMos-ERの発射試験に成功した。
 インドは2016年6月に、それまでCMの射程にあった制限を撤廃したMTCRに加盟している。(JDW 03/22)

LR-SAMの共同開発

 IAI社が5月21日、インド国防省と艦載長距離SAM LR-SAMの開発契約を行ったと発表した。 最初の契約は$630Mで、最終的には$2Bにのぼると見られる。 また陸軍 のMR-SAM購入の契約$1.6Bも行われた。
 インドのMR-SAMもLR-SAMも、Barak-LRとも呼ばれているBarak-8を元にしており、2018年に就役する初の空母Vikrantにも装備されるLR-SAMは、水上目標を 25km、空中目標を250km以遠で捕捉できる。(JDW 05/31)

b. 艦船の建造

国産初の潜水艦

 インド海軍が6隻の建造を計画しているAIP推進潜水艦の建造で、MHIを含む海外6社にRfIを発簡した。 回答期限は9月中旬になっている。
 インドは国内の戦略パートナでのライセンス国産を希望しており、全契約額の30%を国産したい言う。 (JDW 07/26)

 インドは老朽化したロシア製などの潜水艦に代わる高性能の潜水艦を建造する計画を進めていて、インドの企業がフランスの協力を得て国内で初めて建造した1,600t 級の潜水艦が完成し9月23日までに 海軍に引き渡された。 インド政府はこの潜水艦を6隻建造して配備する。
 インドはインド洋で海洋進出を強める中国に対する警戒を強化している。(NHK 09/24)

 インドが2005年10月に仏DNCS社とINR230B ($3.6B)でライセンス生産契約したScorpene級潜水艦6隻の一番艦Kalvariが9月21日に印海軍へ引き渡された。
 全長66m、速力20ktの同艦は2015年10月に進水し、2016年5月から試験を行ってきて、2017年3月にはExocetの発射試験に成功している。
 印海軍は現在13隻の通常動力潜水艦を保有しているが、建艦計画にある24隻には11隻足りていない。 (JDW 10/04)

米国からの EMALS 技術提供

 ティラーソン米国務長官が10月18日にCSISで、インドに対する複数件の提案を承認したと述べた。
 この中にはGA社から提案されていた電磁カタパルト(EMALS)技術のインドへの提供も含まれている。 (JDW 10/25)

c. 航空戦力の増強

 インド空軍は現在33個戦闘機飛行隊を保有しているが、中国と対抗するには42個飛行隊が必要とみている。
 このギャップを埋めるため更に200機の戦闘機が必要となるが、政府は財政能力などから単発機を検討している。
 一方海軍は艦載戦闘機で、HAL社が提案した国産のTajas戦闘機を重すぎることを理由に退けている。 (AW&ST 02/20)
d. 戦闘機の開発

AMCA

 インドが2015年に模型を公開し、すでに基本機能形状を固定している先進中型戦闘機AMCAの事前設計審査が3月に開始される。
 AMCAはMirage 2000及びJaguarの後継として計画されており、2024年初飛行、2030年配備開始を目指している。
 双発となるエンジンには、Euroje社のEJ200、Safran社のM88、GE社のF414などが候補として上がっているが、F/A-18E/F、KF-X、JAS 39E/F Gripenのほかインドの Tajas Mk.2でも採用されているF414が本命と見られる。 エンジンの機種選定はまもなく開始される。 (AW&ST 03/06)

FGFA

 インドがロシアと共同開発する第五世代戦闘機(FGFA)計画が、 ロシア側からの大幅な価格引き上げ要求にあい消滅しそうになっている。
 ロシアはインド側が高度技術の技術移転を求めてきたことから、分担を$7B以上に引き上げる要求してきているという。 (DN 05/24)
【註】 :  FGFA計画は、当初ロシアが$5Bの分担を要求していたが、その後$3.7Bにまで引き下げられたことから開始されることになった経緯がある。

e. BMDS の開発

 インド国防省が同国DRDOに対し、国産BMDSの最終的な導入戦略と時程を速やかに報告するよう要求した。 インドは国産BMDSの計画遅延から、昨年S-400を$5Bで 導入することを決めている。
 DRDOはかつて、射程2,000kmのBMに対抗する第一段階を2012年か2013年に、5,000kmのBMに対抗する第二段階を2016年までに完成するとしていた。
 DRDOは2017年2月に、PDVが高度97kmの大気圏外で標的を迎撃したと発表している。 PDVの迎撃高度は50~150kmで、迎撃高度80kmのPAVに代わる迎撃弾であるとい う。(DN 05/18)

 インドが2月中旬にPDVを用いたBM標的の迎撃試験に成功した。 PDVは高度50kmの大気圏外で迎撃を行う。 (IDR 4月)

f. UAV の活用

 GA-ASI社が開発したジェット推進のPredator C Avengerは、初飛行から8年経過しているが空軍が1機、明らかにされていない政府機関が秘匿任務用としてもう1機 購入したものの、8機が製造されただけで本格的な受注は受けていない。
 ところが同社によると、ここに来て明らかにされていない国から90機近い受注が見込まれそうである。 明らかにされていない国とはインドの模様で、同国は 2016年10月に初飛行した長距離型のAvenger ERを、海軍向けに22機購入するMQ-9B Sea Guardianに続けて購入するとみられる。 (AW&ST 09/04)
(イ) 軍事費の増額

 インド政府が2017/18の純国防費をIND2.74T ($40.6B)とすると発表した。 これは国家予算の12%にあたり、前年比名目5.6%増で対GDP比1.6%になる。
 しかしながら国防関係費全体ではINR3.59T ($53.1B)でGDPの2.2%を占める。 (JDW 02/08)
(ウ) 新装備の購入

a. 米国からの武器購入

 インド国防省が2016年12月27日、INR71.84B ($1.066B)の装備購入費と、C-17 1機の購入を承認した。 C-17については 2011年に10機を$4.1Bで購入した際に6機の オプションをしていた。
 この他にINR4.19Bで、低空目標捕捉用軽量3Dレーダ55基なども購入する。(JDW 01/11)
b. ロシアからの武器購入

 2007年にインドが中国を抜いてロシア最大の武器輸出先になったが、ロシアのシェアは常に西側企業からの競争にさらされている。 それでもロシアは25~30%の シェアを確保している。
 MiG社はMiG-35がインド空軍MMRCAの受注競争で敗れたが、MiG-29Kがインド軍初の艦載戦闘機に採用され、今ではエンジンをRD-33か らBARK-88に換装したMiG-29KUPG となって2月14~18日にバンガロールで開かれるAero India 2017展で初披露されることになっている。 (AW&ST 02/06)
(エ) 国内軍事産業の育成

航空機産業

 インドHAL社がSu-30MKI構成部品や補用部品の生産開始を目指している。
 印露はSu-30MKI 322機のライセンス生産について協議している。 HAL社は2003年以来Su-30MKIの生産を行っており、2019~2020年までの生産数を270機と見ている。
 Su-30MKIのライセンス生産については、2002年に全140機を$4.91Bとしていたのが2005年には$8.71Bと倍増され問題になっている。 (JDW 01/18)

艦船建造業

 インド海軍高官が6月22日、6隻建造するKalvari級潜水艦で建造中の最後2隻に、国内で開発したAIP推進装置を搭載することを明らかにした。 (JDW 06/28)

(オ) イスラエルとの協力強化

 インドとイスラエルが7月5日、防衛装備品の共同取引で合意した。 この合意を通じてイスラエルは「インド国内生産」政策を支援する。
 インドは既に2017年初めに、印陸軍向けのMR-SAMをINR170B ($2.5B)で発注している。 MR-SAMはインドDRDOがIAI社と印海軍向けに開発したBarak 8を元にしてお り、報道によると印陸軍は5個連隊用として200個FUを調達する計画であるという。
 IAI社はまた7月6日に、MALE UAVの生産施設をインドのDTL社内に設置する契約をDTL社と結んだ。(JDW 07/12)
(カ) ロシアとの軍事協力

 ロシアとインドの合同演習"Indra 2017"が10月19日から11日間、ウラジオストクや周辺の海域で行われ、両国の陸海空軍から合わせて2,000名が参加する。 19日 には露海軍太平洋艦隊の司令部があるウラジオストクに印海軍の駆逐艦2隻が入港し歓迎を受けた。
 演習の主目的は国際テロ対策で、ウラジオストクの演習場や飛行場で陸軍や空軍が、また沖合いの日本海では来週から両国の海軍が演習を実施する。
 印露合同演習に陸海空の三軍がすべて参加するのは、14年前にこの演習が行われるようになって以来今回が初で、東アジアで軍事的な影響力を拡大している米国 や海洋進出を続ける中国をけん制する狙いがあるものと見られる。(NHK 10/19)
イ. モンゴル

 特記すべき記事はなかった。
ウ. 東南アジア諸国

(ア) ベトナム

軍事力の増強

 ベトナムがロシアから調達するKilo級潜水艦6隻のうち、最後の1隻が1月20日にカムラン湾の港に到着した。
 同国海軍へ引き渡され就役する。(時事 01/20)

対中関係改善の動き

 ベトナム共産党書記長が4日間にわたって中国を訪問し、南シナ海の平和的解決で合意した。(JDW 01/25)

米国の接近策

 在ベトナム米大使館が5月26日、ベトナム沿岸警備隊に哨戒艇1隻を引き渡したと発表した。
 米国は2016年5月のオバマ大統領のベトナム訪問時に同国沿岸警備隊の強化に協力する方針を打ち出し、5月22日には警備艦6隻を引き渡している。
 米国には、海上法執行や救難・救護に関する能力向上を支援するで、南シナ海への進出を強める中国をけん制する狙いもある。 (時事 05/26)

(イ) インドネシア

オーストラリアとの対決と和解

 インドネシアのジョコ大統領が2月26日にオーストラリアのターンブル首相とシドニーで会談し、関係修復を急ぐ方針で一致するとともに、一時停止していた軍事 協力の全面的な再開を決めた。
 インドネシア軍は1月に、豪軍が侮辱的な教材を使っていたと非難し共同訓練など軍事協力を停止していた。 教材はパプア地方のインドネシアからの独立に共感 を示す内容だったとみられる。(時事 02/26)

米国との関係改善

 インドネシア国防相が1月30日、着任した新米国大使と会談し、トランプ新大統領がインドネシアとの防衛協力を強化するとの方向を示したと述べた。 (JDW 02/08)

国産フリゲート艦の就役

 インドネシア海軍が4月7日、2隻計画しているMartasinata級フリゲート艦の一番艦Raden Eddy Martasinataを就役させた。
 同艦は同国PT PAL社がオランダのDamen社と協同で建造した排水量2,400t、速力18ktのフリゲート艦で、Oto Malara 76/62 Super Rapid砲のほかVL-MICA、MM 40 Exocetなどを装備している。(JDW 04/19)

Su-35 の導入

 TASS通信が6月6日、ロシアとインドネシアがSu-35購入交渉を続けており、2017年内にも契約が行われると報じた。 機数についてはインドネシア国防相が2016年 に8機の購入を検討していると述べている。
 インドネシアは1980年代に就役したF-5Eと換装する計画である。(JDW 06/14)

 インドネシアとロシアがSu-35の売却で合意し、8月3日に合意文書に署名した。 インドネシアは2017年末までに売買契約を結ぶと見られる。
 Su-35はF-5Eの後継となるもので、国防省は購入機数を明らかにしていないが、通商省は当初分11機の輸入を明らかにした。 (JDW 08/16)

NASAMS の導入

 Kongsberg社が10月31日、インドネシアから完全編成のNASAMS 1個中隊分を$77Mで受注したと発表した。 NASAMSが発射するAIM-120 AMRAAMは米国からFMS契約で 購入する。 NASAMSは隣国オーストラリアもSaab社製RBS 70の後継として採用を決めている。
 NASAMSはレーダと6発搭載発射機2~4基からなり、レーダはThales-Raytheon社製AN/MPQ-64F1かEADS社製TRL-3Dを選択できるが、インドネシアはAN/MPQ-64F1とLink 16データリンクを使用するNASAMS 2を選択する模様である。(DN 11/01)

 Kongsberg社が10月31日、インドネシアからNASAMS完全1個 FUを$77Mで受注したと発表した。
 但しNASDAMSが発射するAIM-120 AMRAAM弾はインドネシアと米国政府間の別契約で納入されるという。 (JDW 11/08)

(ウ) ミャンマー

 ミャンマー軍は8月31日夜、ロヒンギャの武装勢力が西部ラカイン州では25日に警察署など30ヶ所余りを襲撃したことをきっかけに、治安当局が7日間にわたり掃 討作戦を続けた結果、30日までに武装勢力370人を殺害したほか、軍の兵士や警察官それに戦闘に巻き込まれた住民を含めると、合わせて499人が死亡したと発表した。
 双方の死者はこれまでで最多になった。(NHK 09/01)
(エ) マレーシア

北朝鮮への対応

 ロイタ通信がマレーシア政府高官の話として2月23日、金正男氏殺害事件を受けマレーシア政府が北朝鮮大使の追放や国交断絶を検討していると報じた。
 それによると、マレーシア政府は事件捜査をめぐる北朝鮮からの批判に反発し、北朝鮮からの批判がやまない場合には、すべての外交通商の断絶もあり得るという。 (時事 02/23)

我が国との関係

 東南アジア各国の海上警備当局との連携を強化する一環で日本からマレーシアに供与された海上保安庁の巡視船の就役式典が7月15日に行われた。
 日本政府は2017年1月に海上保安庁の巡視船2隻をマレーシアに無償で供与し、このうち境海上保安部に所属していた巡視船おきがマレーシア東部の港町コ タキナバルに配備された。
 マレーシアでは2016年3月にマレーシアの排他的経済水域で中国の漁船100隻が航行しているのが目撃され、海上警備能力の向上が課題となっていた。 (NHK 07/15)

軍備の増強

 マレーシアが2011年に6隻を$2Bで発注していた3,100tのLCSの一番艦Maharaja Lelaが8月24日に進水した。 Maharaja Lelaは2019年前半に就役す る予定で、二番艦も2月に起工している。
 Maharaja Lela級LCSはフランスのGowind 2500コルベット艦を元にLumutにある造船所で建造されている。
 主な装備はMk3 57mm砲、VL Micaを発射する16セルのSylver VLS、NSM対艦ミサイルの4発発射機2基、Seahawk 30mm機関 砲2門、Smart-S Mk2 3Dレーダなどである。
 同国は海軍の近代化を進めており、2015年には現在15船種ある艦艇を5船種に絞る"15-to-5計画"を決めている。
 5船種とは、LCS 12隻、Kedar級沿岸警備艦18隻、中国製沿岸警備艇18隻、多目的支援艦3隻、潜水艦4隻になっている。 (DN 08/24)

 マレーシアが2014年7月に6隻をMYR9B ($2.1B)で同国のBNS造船所に発注していたLCSの一番艦が8月25日に進水しMaharaja Lelaと命名された。  Maharaja Lelaは2019年に就役する予定になっている。
 このLCSはフランスのGowind 2500コルベット艦の設計を元にしており、全長111m、全幅16m、喫水3.85mで、57mm主砲、30mm砲2門とKongsberg社製NSM、VL MICAを 装備する。
 またSMART-S Mk 2 3DレーダとRheinmetall社製TMEO Mk 2 TMX/EO射統装置を装備している。(JDW 08/30)

軍事予算の増額

 マレーシア政府がFY2018国防予算を、MYR15.1B (USD3.6B)から5.3%増のMYR15.9Bに増額する。 ただ対GDP比は1.1%で変わらない。
 これ以外に軍及び国防省の運用経費としてMYR11.7Bから7.6%増のMYR12.6Bの経常予算を計上している。 (360 10/27)

(オ) シンガポール

旅団格のサイバ戦部隊の新編
 シンガポール国防相が7月1日、サイバ戦の新たな部隊を11月に発足させると述べた。
 この部隊は C4 Commandと呼ばれる准将を指揮官とした部隊で、完全編成となる2027年には2,000名規模になるという。
 C4 CommandはC4 Operations Group (C4OG)とCyber Defence Group (CDG)の2つの旅団級部隊からなり、完全編成時700名のC4OGは軍全体のネットワークを操作、 監視し、1,300名になるCDGは四六時中サイバ脅威の監視を行い、攻撃に対処する。(IDR 8月)

潜水艦の購入

 シンガポールが、2013年にドイツに2隻発注し2021年と2022年に引き渡されることになっている Type 215SG潜水艦を、更に2隻購入すると発表した。  Type 218SGは全長230ft、排水量2,000tで、追加発注分は2024年から引き渡される。(DN 05/16)

 シンガポールがドイツTKMS社にType 218SG潜水艦2隻を追加発注した。 同国は2013年に同型潜水艦を2隻発注している。
 Type 218SGは全長70m、全幅6.3m、排水量2,000tで、AIPで推進する。(JDW 05/24)

沿岸防備艦 (LMV) の就役

 シンガポールの沿岸防備艦(LMV)の二番艦Soverignty と三番艦Unityの就役式が11月14日に行われた。 5月に就役した一番艦Independenceはタイ湾で行われる演習に参加するため最近出航している。  全長80mのIndependence級LMVは、11隻保有している全長55mのFearless級LMVに代わって8隻が建造されることになっている。 (DN 11/14)
【註】 :  Independence級LMVは排水量1,200tで速力27kt、航続距離3,000nmの性能を持ち、Oto Melara社製76mm Super Rapid砲を装備している。

 5月に就役したシンガポール海軍の1,250t LMVの一番艦Independenceが、11月13~22日にタイ湾で行われるASEANの多国間海軍演習"AMNEX 2017"で初披露 される。 また、19日にパタヤ湾で行われるASEAN 50周年記念式典にも参加する。
 Independenceは全長80m、全幅12m、喫水3mで、15ktで航行して3,500nmの航続性能を有する。 (360 11/15)

 シンガポール海軍が11月14日、国内で建造したLMV 2隻を就役させた。 この2隻は5月5日に就役したIndependence級の2番艦と3番艦で、同級は8隻が建造される。
 Independence級LMVは全長80m、全幅12m、喫水3m、排水量1,250tで、速力27kt、15ktでの航続距離3,500nmの性能を持つ。
 主要装備はOto Melara 76/62 Super Rapid砲1門、Rafael 25mm Typhoon砲1門、VL Micaを発射する12セルVLS 1基などである。 (JDW 11/22)

次世代装甲戦闘車の開発

 ロンドンで開かれた国際装甲車両会議でシンガポールのST Kinetics社が、同国陸軍向けに開発したNG AFVを公表した。
 NG AFVは現有のM113シリーズの後継となるもので、車体の基本構造は完全な鋼製鋳物になっている。 (IDR 3月)
【註】 :  米海兵隊がAAV7A後継を開発するACVで最終候補に残った2社のうちSIAC社のACV 1.1はST Kinetics社製Kunetics Terrex 2を元にしている。

 シンガポール国防省がSingapore Technologies Engineering社に次世代装甲戦闘車(NG AFV)を発注した。 同社はST Kinetic社の陸上部門などと共同で生産を行う。  同国軍はNGAFVを2019年からM113 APCに代えて装備する。
 NGAFVは全長22.6ft、全幅10.8ft、全高10.5ft、重量29tで、最高速度44mphの性能を持つ。(DN 03/22)

 シンガポール国防省が3月22日、同国軍がM113 AFVに替えて装備するNG AFV をST Engeneering社に発注した。 NG AFVは2019年から装備される。
 NG AFVは最高速度70km/hと航続距離500kmの性能を持ち、各種30mm砲を装備できる。 公表された画像ではATK社製Mk44 30mm砲がST Kinetics社製Adder M30遠隔操縦 砲塔に搭載されていた。(JDW 03/29)

装軌路外輸送車 Broncoの 最新型 Bronco 3 の開発

 シンガポールのST Kinetics社が装軌路外輸送車Broncoの最新型Bronco 3の開発を完了した。
 Broncoは原型となったBronco 1がシンガポール軍の要求に基づいて開発され、以来45車種、730両以上が生産されている模様である。 (360 09/22)

 シンガポールのST Kinetics社が装軌路外輸送車Broncoの最新型Bronco 3の開発を完了した。 Broncoは原型となったBronco 1がシンガポール軍の要求に基づい て開発され、以来45車種、730両以上が生産されている模様である。
 Bronco 2 Warthogはアフガンで使用する英陸軍の要求に合わせて開発され115両が製造されたが現在では退役になっている。 Warthogは優れた耐弾性と耐地雷 性を有していたが、英陸軍の水陸両用性は満足していなかった。
 Bronco 3はBronco 1 同様に水陸両用性を持ち、5km/hで水上航行をできる。
 Bronco 3の自重は10.2tで最大戦闘重量は16.5tであるが、これを18tにまで引き上げる余力を持っている。 (IDR 11月)

9次世代装軌車両回収車の開発

 シンガポール陸軍が5月27、28両日に行われた行事で、次世代装軌車両回収車(NGARV)の試作車を公表した。
 NGARVは同国DSTAとST Kinetics社が開発している全長6.9m、重量29tの装軌車で、最大牽引力25,500kgの性能を持つ。
 NGARVは同国の次世代AFV (NFAFV)の支援を行う。(IDR 7月)

AN/TPQ-53対砲迫レーダの導入

 米政府がシンガポールにFMS契約で6基売却するAN/TPQ-53対砲迫レーダをLockheed Martin社に$63Mで発注した。 納期は2019年3月13日になっている。
 TPQ-53の売却は4月13日に契約されたもので、オプションを含めると契約額は$81Mに膨らむ。(IDR 10月)

国軍の海外での訓練

 ニュージーランド国防相によると、シンガポールが訓練のためF-15SGをニュージーランド空軍のOhakea基地に配置する。 またこれに伴い隊員とその家族500名も Ohakeaに駐留することになる。
 国土が狭いシンガポールは今までも航空機部隊を米、豪、仏などに駐留させているほか、陸軍もニュージーランドで砲兵の演習を行っている。 (DN 02/28)

(カ) カンボジア

 カンボジアが米軍との合同軍事演習を中止した。 米メディアの報道によると、カンボジアは米国に2017年度の合同軍事演習の中止を通達した。
 カンボジアと在プノンペン米国大使館は共に「延期」という表現を使っているが、実質的には2017年度の合同演習取り消しを意味しているもようである。
 2010年から始まった合同演習は2017年で8回目を迎える予定だったが、突然中止が決まったことについて一部専門家は、中国が影響力を行使して演習を中止させたと の見方を示している。(RC 01/18)
エ. カナダ

 AP通信などが、カナダのサージャン国防相が6月7日に、今後10年間で国防費を約7割増やすと発表したと報じた。
 トランプ米大統領が5月のNATO首脳会議で各国に国防費の応分負担を求め、相互防衛の義務履行を明言しなかったため、安全保障での自立を進める狙いがあるとみ られる。
 計画では2016年度でCAD18.9B(1兆5,000億円)だった国防費を、2026年度にCAD32.7Bに引き上げる。 (産経 06/08)


4 国 内 情 勢

(1) 防衛構想の見直し

ア. 防衛計画大綱見直し

 北朝鮮や中国の軍事的脅威が高まるなか、政府が次期中期防衛力整備計画(平成31~35年度)の策定に合わせ、2020年代半ばまでをカバーする現行の防衛計画の 大綱を見直す検討に入った。 ただ、現大綱は2013年末に策定されたばかりで、改定を急げば見通しが甘いという批判が出そうである。
 防衛省は近く、新たなBMDSの導入に向けた検討会を発足させ、早ければ次期中期防で購入費を計上すると共に、陸海空の自衛隊の統合運用を強化する常設統合司 令部の設置も視野に入れているが、これらは防衛大綱の改定が必要になる。(毎日 01/24)

 政府が6月にも防衛省内で検討会議を立ち上げ、防衛計画大綱の前倒し改定する方向に向けた作業に本格着手する。
 防衛省が28年度から進めるTHAADやAgis Ashoreなど新型BMDSの調査・研究の結果を反映させると共に、南西諸島地域に配備する護衛艦や航空機を拡充するほか、 UAVやAIなどの最新技術を取り入れた装備開発にも資源を重点配分することが想定される。(産経 01/30)

 政府関係者が2月18日、10年間程度の防衛力整備の指針として2013年末に閣議決定した防衛計画の大綱を前倒しで改定する方向で検討に入ったことを明らかにした。
 BMD能力の向上を目指し、THAADやAegis Ashoreの導入などが具体的な課題となる。
 26~30年度の5年間の装備品導入や費用の詳細を定めた中期防を継ぐ次期中期防は2018年後半に作成されるが、これと連動した新大綱づくりが見込まれている。 (産経 02/18)

 安倍首相が新任の小野寺防衛相に対し8月3日、防衛大綱の見直しについて検討するよう指示した。
 これについて小野寺防衛相は、BM対処能力の強化に関し、自民党が提言する敵基地攻撃能力の保有についても検討する意向を明らかにした。 (時事 08/04)

 日米両国の外務・防衛担当閣僚会合(2-plus-2)が8月17日にワシントンで開かれ、会合後の共同記者会見で小野寺防衛相は地域情勢が変化していると指摘し、防 衛計画の大綱の改定を行う考えを米側に伝えたことを明らかにした。
 小野寺防衛相は、「わが国自身の防衛力を強化するため検討を本格化させる。 こうした状況について今日の会議で説明し理解を得た」としたうえで、防衛大綱 に加え中期防衛力整備計画も改定をする考えを示した。(朝日 08/18)

 安倍首相が都内で講演し、防衛計画の大綱について2018年初頭から見直しに向けた議論を本格化していきたいという考えを示した。
 専守防衛は大前提としながらも北朝鮮の核やミサイル技術の進展など厳しい現実に真正面から向き合い、従来の延長線上ではなく国民を守るために真に必要な防衛 力のあるべき姿を見定めていきたいと述べた。(NHK 12/15)

 訪英中の小野寺防衛相が、安倍首相が2018年初頭から防衛計画の大綱の見直しに向けた議論を本格化させる考えを示したことに関連して、北朝鮮が核やミサイル開 発を大きく進展させ、中国は軍事力を増強し、ロシアも北方での活動を活発化させているのに適応させるというのが安倍総理大臣の考えだと述べた。 (NHK 12/16)

イ. 次期中期の検討

自民党安全保障調査会の方針

 自民党が安全保障調査会などの合同会議を6月20日に党本部で開き、次期中期防衛力整備計画(平成31~35年度)に向けた中間報告を取りまとめた。
 中間報告は新迎撃ミサイルの導入などと共に、サイバ空間上の脅威は深刻さを増し、わが国に対するサイバ攻撃は高度化、巧妙化の一途をたどっているとした上 で、サイバ空間の監視防護体制を強化するとともに、自衛隊がサイバ攻撃能力を備える必要があると明記し、サイバ攻撃への対処力を強化するため敵のサイバ拠点 を反撃する能力の保有を自衛隊に認めることも求めた。(時事 06/20)

次期中期防での防衛関係費の伸び率

 政府が31~35年度の次期中期防衛力整備計画での防衛関係費の年平均の伸び率について、現中期防の0.8%を上回ることを認める方向で調整に入った。
 2013年末に策定した現在の中期防は、中国による海洋進出などを踏まえて防衛費を増やしてきたが、米軍再編関係費などを除く当初予算ベースの年平均伸び率は 0.8%で、29年度の防衛費も前年度比0.8%増の4兆8,996億円だった。(日経 08/18)

ウ. 敵基地攻撃能力保有の議論

ミサイル攻撃を受ける前に相手国基地を攻撃

 安倍首相が1月26日の衆院予算委員会で、ミサイル攻撃を受ける前に相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力の保有を検討する意向を示した。
 首相は、安全保障環境が一層厳しくなるなか、国民の生命と財産を守るために何をすべきかという観点から検討していくべきで、専守防衛の中でもわが国独自の 抑止力はどのようなものがあるかということも含めて考えていかないといけないと述べた。(読売 01/26)

 自民党の高村副総裁が2月19日のNHK番組で、他国からのミサイル攻撃を未然に防ぐための敵基地攻撃能力の保有について、現時点で装備体系はないので具体的な検 討を開始するかどうかという検討はしていって良いと述べた。 日本維新の会の片山共同代表も、検討を始めても良いし、検討を始めることが北朝鮮への圧力になる かもしれないと前向きな姿勢を示した。
 これに対し公明党の山口代表は、日本が具体的にそうした攻撃能力を検討する計画はないと慎重な立場を強調した。 (時事 02/19)

 菅官房長官が3月1日、敵基地攻撃能力の保有を自民党が議論していることについて、政府としてコメントすることは控えたいとした上で、わが国は敵基地攻撃を目 的とした装備体系を保有しておらず、保有する計画もないと強調した。
 一方、今後政府として保有を検討する考えはあるか問われ、常に国民の安全をどういう形で守っていくかということは考えていると述べるにとどめた。 (産経 03/01)

 自民党が敵基地攻撃能力の保有に向けた提言を3月中にまとめ、政府に検討を求めることを決めた。
 2017年夏前までに防衛力全般の強化を提言する方針だったが、発射が相次ぐ北朝鮮のBMへの対応部分については、検討を速める必要があると判断した。 (ロイタ 03/22)

 自民党の安全保障調査会などが3月29日、北朝鮮の核ミサイルの脅威を踏まえ、敵側の基地を攻撃する敵基地反撃能力の保有を政府に求める提言をまとめ、30日に安 倍首相に提出する。
 提言では先制攻撃ではないと明確にするため反撃の語句を入れた。 日米同盟の抑止力対処力向上を図るためCM保有も検討するよう求めている。 (毎日 03/29)

 自民党の安全保障調査会が3月29日に国防部会との合同会議を党本部で開き、政府に対し、他国のミサイル基地などを攻撃する敵基地攻撃能力の保有に向けた早期検 討などを求めた。(産経 03/29)

 自民党の安全保障調査会が5月31日にまとめた北朝鮮の核ミサイルへの対処能力強化を求める提言原案は、早期警戒衛星の導入や敵基地反撃能力の保有など、日 米安全保障体制による米軍との役割分担からこれまで導入に慎重だった分野にも切り込むよう求めた。
 稲田朋美防衛相も出席し31日に自民党本部で開かれた安保調査会の幹部会では、早期警戒機能、サイバ防衛などを分野別に検討してきた議員が説明し、意見交換 した。(毎日 05/31)

 安倍首相が11月22日の参院本会議の代表質問で、BMなどの発射前に敵の拠点を攻撃する敵基地攻撃能力の保有について「安全保障環境が一層厳しくなる中、現実 を踏まえてさまざまな検討をしていく責任があると述べ、保有に含み を持たせた。
 また首相は国内の防衛力について「質と量を必要かつ十分に確保することが不可欠だ」としたうえで、「今後も防衛力の強化を図っていく」と強調した。 (日経 11/22)

 安倍首相が11月22日に参院本会議での代表質問で敵基地攻撃能力の保有論に関して、日米の役割分担の中で米国に依存しており、役割分担を変更するとは考えて いないと 否定的な見解を示した。
 ただ、安全保障環境が厳しくなる中、常に現実を踏まえてさまざまな検討を行う責任があると述べ、将来的な検討には含みを残した。 (産経 11/22)

F-35 への ASM 搭載の検討

 複数の政府関係者が、政府が配備予定のF-35にASMを装備するため平成30年度予算に関連経費の計上を目指していることを明らかにした。
 国内の離島有事に備えるのが主目的だが、自衛のために相手国の基地などを攻撃する敵基地攻撃能力も保有することになる。
 F-35に搭載するASMの有力候補として検討しているのは、ノルウェーが開発中のJSMで、空対艦/空対地能力を併せ持ち射程は 300kmとされている。 (讀賣 06/26)

Tomahawk 導入の検討?

 政府関係者が5月5日、政府は北朝鮮の脅威は新たな段階になったとして、発射拠点をCMなどにより破壊する敵基地攻撃能力の保有を目指し、将来のCM導入に向けた 本格検討に入ったことを明らかにした。
 早ければ、30年度予算案に調査費などを計上したいとしている。(東京 05/06)

 政府関係者が5月5日、政府は北朝鮮による相次ぐBM発射や核開発継続を受け、北朝鮮の脅威は新たな段階になったとして、発射拠点をCMなどにより破壊する敵基地 攻撃能力の保有を目指しており、早ければ30年度予算案に調査費などを計上したい意向であることを明らかにした。
 CMとしてはTomahawkの導入を想定しているという。(産経 05/08)

 日本では物事がゆっくりと決まるものであるが、北朝鮮が日本に対しAgeis AshoreやTomahawkの導入を急がせている。 北朝鮮が5月14日に発射した火星-12の射程は 5,000kmであるのに対し、PAC-3は1,000kmのBMにしか対処できない。
 Tomahawk最新型のBlock Ⅳは射程が1,600kmであるため、日本海だけでなく太平洋上の駆逐艦からも北朝鮮を攻撃できる。 (AW&ST 05/29)

サイバによる敵基地攻撃

 政府が3月14日の閣議で、サイバ攻撃を未然に防止するため自衛権の発動として相手国へのサイバ攻撃を行うことについて、対処方法やいかなる場合にサイバ攻撃が 武力攻撃の一環として行われたと認定するかについては個別具体的に判断する必要があるとする答弁書を決定した。
 サイバによる「敵基地攻撃」を必ずしも排除しない見解を示したものである。(時事 03/14)

 サイバ空間で戦いに向け、自衛隊にシステムをサイバ攻撃から守る演習のため初めて攻撃要員を配置する。 反撃する能力の育成も視野に入れる。
 政府は29年度予算に「実戦的サイバー演習の実施体制の整備」という項目を盛り込み、サイバ防衛隊を1割増の110名体制に拡充し、28年度とあわせ約8億円をかけ て訓練環境を設ける。(朝日 05/11)

敵基地攻撃用 CM 開発

 政府が、地上の目標を攻撃できるCMを開発する方向で検討に入った。 防衛省が30年度から開発を始める対艦ミサイルに対地攻撃能力の付加を計画しているもの で、日本がLACMを本格的に開 発するのは初めてとなる。
 敵に占領された離島の奪還が主目的だが、敵基地攻撃も性能上は可能で、北朝鮮への抑止力向上にもつながる。 (讀賣 11/20)

 防衛省が30年度から開発する対艦ミサイルに対地攻撃能力を持たせることを検討している。 このミサイルの開発は30年度に77億円が計上されており、試作品の 製造と試験は34年度に行われる。
 ミサイルはステルス性を追求した形状で、射程が300km以上になるとみられ、特殊車両、護衛 艦、P-1、戦闘機などから発射できる。 GPSで目標に接近しレーダ シーカで終末誘導を行う。 (S&S 11/20)
【註】 :  平成30年度予算の概算要求では下記のように示されている。
「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術研究(77億円)
 諸外国が保有するミサイルの長射程化を踏まえ、その覆域外から対処が可能となるよう、現有の対韓ミサイルの射程及び残存性の向上を目的として、新たな島嶼 防衛用対艦誘導弾の要素技術の研究を実施」

 複数の関係者が12月27日、政府が敵基地攻撃能力の保有も視野に入れ、平成34年度の試作品完成を目指し長距離CMの国内開発を検討していることを明らかにした。
 政府は30年度予算案に長距離CMの調達費を計上したが、米国製の射程が900km、ノルウェー製が500kmであるのに対し自衛隊が保有するASCMの射程は170kmである。  これまでは長距離CMの国産化は可能とされていたが、専守防衛の立場から開発は見送られていた。(産経 12/28)

敵基地攻撃可能な長距離 CM の導入

 防衛省が12月5日までに、戦闘機に長距離CMを搭載するための調査費を平成30年度予算案に計上する方針を固めたことを与党幹部らに伝えた。
 有事の際に敵艦船などを攻撃するためとしているが射程が長いため敵基地攻撃用としての転用も可能で、専守防衛を堅持する政府方針との整合性が問われそうだ。
 導入を検討しているのは、射程900kmのJASSM-ERと300kmのJSMで、前者はF-15、後者はF-35に搭載する方向で検討している。 (朝日 12/05)
【註】 :  AGM-158B JASSM-ERは米空軍がAGM-86 ALCMの後継に位置づけている対地攻撃用CM (LACM) AGM-158A JASSMの長射程型で、対艦CM (ASCM)としてはJASSM-ERに敵艦を 追尾できるようにシーカを取り付けたAGM-158C LRASMを開発している。
 ノルウェーKongsberg社が開発したJSMは同社製のASCMであるNSMをF-35の機内弾庫搭載が可能な対地/対艦両用のCMに改良したものである。

 複数の政府関係者が12月5日、政府が敵基地攻撃能力も持つ戦闘機搭載CMを導入するため平成30年度予算案に必要経費を盛り込む方針を固めたことを明らかにした。
 30年度予算案に費用を計上するのはノルウェーなどが開発中の JSMで射程は500kmとされ、空対艦と空対地の能力を持ち、F-35Aに搭載する。
 政府はJASSM-ERと対艦/対地ミサイルLRASMの導入に向けた経費も30年度予算案に計上する方針で、 空自戦闘機に搭載するための改修関連費用を盛り込む。 (産経 12/06)

 小野寺防衛相が12月8日の記者会見で、自衛隊機に搭載する長距離CMの導入を正式表明した。 防衛省は30年度予算として取得費など21億9,000万円を追加要求した。
 追加要求したのは、JSMの取得費21億6,000万円と、JASSM-ERとLRASMの自衛隊機への搭載に向けた改修の調査費3,000万円である。 (時事 12/08)

エ. 護衛艦いずもの空母化

 政府が、護衛艦いずもを戦闘機の離着艦が可能となる空母に改修する方向で検討に入った。 2020年代初頭の運用開始を目指す。
 米軍のF-35Bの運用を想定しており、日米連携を強化することで北朝鮮や中国の脅威に備える狙いがある。
 攻撃型空母は保有できないとする政府見解は維持し、離島防衛用の補給拠点など防御目的で活用する。 (讀賣 12/26)

 複数の政府関係者が、政府が新中期防で護衛艦いずもを戦闘機の離着艦が可能となる空母に改修する方向で検討に入ったことを明らかにした。
 F-35Bの運用を想定するとともに、航空自衛隊が同型機を導入することも視野に入れている。 国内の滑走路が長距離ミサイルなどで破壊され、戦闘機が使用でき なくなることに備えるほか、中国が活動を強める 南西諸島周辺の守りを強化する。
 複数の政府関係者によると、いずもは元々F-35Bの運用を前提に設計され、エレベータは同機を乗せることが可能で、改修では短距離滑走で離陸できるよう スキージャンプ台を増設したり、垂直離着陸時に出る熱に耐えられるよう甲板の耐熱性を高めること、管制機能を強化することなどを検討している。 (ロイタ 12/26)

 政府関係者が12月26日、防衛省が護衛艦いずもを空母に改修する検討に入ったことを明らかにした。 米海兵隊のF-35Bが離着艦できるようにするが、航空 自衛隊もF-35Bを導入する方向で、将来は空自機を搭載する構想も浮上している。
 防衛省はF-35BをF-15Jの旧式機体の後継として導入する方向で検討している。
 F-35Bであれば有事に主要基地の長い滑走路が破壊されても離着陸でき、洋上拠点とすればさらに運用の幅は広がる。 (産経 12/26)

 共同通信と聯合ニュースが、日韓両国で護衛艦いずもと揚陸艦独島にF-35B を搭載し空母にする検討が進んでいると報じた。
 いずも独島はそれぞれヘリコプタ14機と10機を搭載する能力があるが、垂直着艦時の排気温に耐えられる飛行甲板の改修や、滑走離艦に合わせた 飛行甲板の形状変更が必要になる。 更に燃料搭載量の増加や搭載武器収納庫の拡張や強化も必要になる。
 ロイタ通信はいずもにスキージャンプ台が設置されると報じているが、いずもは248m、独島は199mの飛行甲板を有しているため滑走離陸が可能でスキージャンプ台 取り付けの必要はない。(DN 12/26)

オ. 核兵器保有の議論

 自民党の石破元幹事長が11月5日、日本の周りは北朝鮮であれ中国、米国、ロシアであれ全部核保有国で、その気になれば核兵器を作ることができる技術は日本は 持っておくべきだと述べ、原子力関連の技術を維持するため、原発は当面続けるべきだとの考えを示した。 (讀賣 11/06)
カ. 防衛費上限の見直し

 安倍首相が防衛費の対GDP比について2日の参院予算委員会で、安倍政権にはGDPの1%以内に抑える考え方はないと述べた。 安倍政権は毎年防衛費を増額してきたが 1%未満にとどまっていた。
 防衛費については、1976年に三木内閣が1%以内に抑える方針を閣議決定したが、中曽根内閣が昭和627年度予算で1%枠を突破した。 その後は対GDP比1%弱で推移し てきたが、民主党政権の22年度予算で1%を超えた。(朝日 03/02)
キ. インド太平洋戦略

 日米政府が11月6日に行われる日米首脳会談で、安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」について協議し、日米共同の外交戦略として表明する方向 で最終調整に入った。
 日米が同盟を基軸に、インドや豪州とも連携し、南シナ海や東シナ海で権益拡大を図る中国を牽制する狙いがある。 (朝日 11/01)

 安倍首相が11月13日にマニラでトランプ米大統領、オーストラリアのターンブル首相と日米豪3ヵ国による首脳会談を開いた。
 日米両首脳は6日の首脳会談で「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に向け協力することで一致しており、3ヵ国での確認を目指すとみられる。
 マニラでは12日に、日米豪にインドを加えた4ヵ国の外交当局の局長級会合も開かれ、航行の自由などの共通の原則に基づく協力の深化を確認した。 (毎日 11/13)

 宮原日本郵船相談役を座長とする政府の総合海洋政策本部参与会議が12月18日、今後の海洋政策の柱となる「海洋基本計画」への提言を本部長の安倍首相に提出し た。
 提言では首相が推進する「自由で開かれたインド太平洋戦略」に触れ、海洋安全保障の構築を打ち出すと共に、近隣諸国との間で不測の事態が広がることを防ぐ法 執行などを促した。
 海賊対策として、海外の海上法執行機関との連携を進めると明記し、シーレーン沿岸国の法執行機関の能力向上を支援する必要性を訴え、防衛政策を含めた海洋安 全保障の全体像を基本計画で明示するよう求めた。(日経 12/18)

(2) 行政機能、制度の改革

ア. 陸上総隊、航空方面隊の創設

 陸上自衛隊に陸上総隊の創設を盛り込んだ改正自衛隊法が5月26日の参院本会議で可決成立した。 これにより180人規模の総隊司令部が2018年3月、朝霞駐屯地 に設置される。
 また、南西地域での防空態勢強化のため、航空自衛隊の南西航空混成団が南西航空方面隊に格上げされる。 (日経 05/26)
イ. 「統合運用計画」の策定

 政府関係者が8月6日、政府が陸海空自衛隊の一体的運用を進める中期的な目標を定めた「統合運用計画」を2018年にも新たに策定することを明らかにした。
 尖閣諸島などの島嶼防衛やBM防衛の強化に重点を置く統合運用の基本文 書となる。 防衛計画の大綱の見直しや、次期中期防の策定と並行して作業を進める。  統合運用計画ポイントは以下の通りである。(毎日 08/07)
・陸海空三自衛隊の一体運用の中期的計画

・島しょ防衛やミサイル防衛強化に重点

・防衛計画大綱、中期防、国家安全保障戦略と並ぶ文書

ウ. 参事官の増員、ポストの新設

 防衛省が30年度で、統幕に部長級の首席参事官(仮称)ポストを新設し、北朝鮮によるBM発射への対応など自衛隊の活動が増えていることを受け、対外的な説 明を担う態勢を強化する方針で概算要求に盛り込んだ。
 防衛省は、統幕長を補佐する背広組のポストとして2015年に、首相官邸や与党議員らに活動内容を説明するのが役割を担う課長級の参事官を設置したが、BMDや 中国機に対する緊急発進、災害対応など自衛隊の任務が増えていることから、参事官の負担が強まっていた。 このため参事官を3人に増やし、そのうちの1人を 部長級の首席参事官として、説明に出向くことができる相手が与党幹部などにも広げる。(時事 09/17)
エ. 民間船員に予備自衛官

特別目的会社の設立

 島嶼防衛や災害派遣時の輸送手段として期待されている民間輸送船はくおうナッチャン Worldの2隻で、かつて北海道と本州を結ぶ高速フェリーと して活躍した性能を生かし、さまざまな訓練や2016年4月の熊本地震などで大活躍しており、有事における補給の切り札として第二の人生を忙しく送っている。
 2隻は現在、フェリー会社や商社など8社が共同で設立した特別目的会社「高速マリン・トランスポート」が所有し、平成28年3月から37年12月まで10年近くの契約で 、自衛隊が優先的に利用する権利を持っている。
 契約に先立ち、陸上自衛隊が26年夏 ごろから2隻を訓練輸送などに利用しており、この試験運用を経て採用された。 (産経 02/01)

(3) 防衛費微増傾向の持続

ア. 防衛省の30年度予算要求

概算要求の総額

 防衛省が平成30年度予算の概算要求で4年連続となる5兆円超を計上する方針で、過去最大の要求額となる見通しである。
 防衛費は中期防に沿って編成するもので、現計画は30年度が最終年度となるため、自民党内には北朝鮮の脅威の高まりに対応し 前倒しで次の中期防を作るべきだ との意見があったが、政府は予定通り新計画は31年度からとする。
 トランプ米政権の発足や安全保障環境の厳しさが増すなかで防衛費のGDP 1%超えを求める声もあるが、防衛省幹部は現時点で従来の考え方を大きく変える議論に はなっていないと話している。(日経 07/17)

概算要求の概要

 防衛省がBMD強化に向け、Aegis Ashoreの取得を平成30年度予算案の概算要求に盛り込む方針を固めた。 Aegis Ashoreの概算要求は米政府の協力が必要なため、 額を明示しない「事項要求」とする。
 またステルス機やBMの早期発見のため、次期警戒管制レーダMIMOの試作費196億円も計上する。 MIMOは複数の小型アンテナを分散配置し、それぞれのアンテナが 受信した情報を統合処理するもので、既存のレーダよりも早期にステルス機発見をできるうえ、BM探知能力も備えており現有のFPS-より性能が向上するという。
 MIMOは35年度までに開発を完了し36年度からの装備する。(産経 08/17)

 防衛省が8月22日、平成30年度予算の概算要求を過去最大の5兆2,551億円とする方針を固めた。 前年度当初予算比2.5%増になる。
 BMDの目玉としてAegis Ashoreの導入を要求するが額を明示しない事項要求とし、年末までに具体額を確定させ平成30年度予算案に反映することになる。 (時事 08/22)

 防衛省が8月31日、平成30年度予算の概算要求を発表した。 総額は過去最大の5兆2,551億円と、29年度当初予算比で2.5%の伸びで、要求増は6年連続となった。
 BMDSの整備に重点を置き、海上配備型ではSM-3 Block Ⅱ2Aなどの迎撃ミサイル取得費657億円を計上し、地上配備型ではPAC-3の改良型の取得に205億円を積んだ。
 Aegis Ashoreは額を明示しない事項要求とした。 1個システム800億円程度かかるが、防衛省は設計費などの一部経費を年末までに算定し予算案に反映させる。 (時事 08/31)

 防衛省が8月30日に、前年度比2%増で総額5兆2,600億円にのぼる防衛費の平成30年度要求を明らかにした。
 このうちBMDに1,790億円が当てられ、SM-3 Block ⅡAとSM-3 BlockⅠBに657億円、PAC-3 MSEに205億円が計上されている。 Aegis Ashoreの導入は年末に最終決 定される。 またJADGEの改良に107億円が積まれている。
 このほかにMIMOレーダの開発に196億円、3,900t護衛艦2隻の建造に964億円、3,000t潜水艦の建造に715億円、E-2D 2機の購入に491億円、RQ-4 Global Hawk 1機 に144億円、MV-22 Osprey 4機に457億円が基以上されている。
 更に宇宙戦部隊の創設にも44億円が割り当てられている。(JDW 09/06)

平成29年度補正予算における防衛関係費

 複数の政府関係者が12月13日、22日に閣議決定する29年度補正予算案の防衛費について、2,000億円を上回る規模とする方向で最終調整に入ったことを明らかにした。
 28年度の防衛費に関する補正予算額1,986億円よりも多い。(東京 12/13)
【註】 :  過去の補正予算案における防衛費は

・28年度: 1,923億円(第2次、第3次補正)
・27年度: 1,966億円
・26年度: 2,110億円
・25年度: 1,197億円
・24年度: 2,124億円
と推移しており、29年度が突出しているわけではない。

平成30年度予算政府原案における防衛関係費

 政府は12月15日、平成30年度当初予算案の防衛関係費(米軍再編経費を含む)を過去最高の5兆1,900億円とする方針を固めた。 北朝鮮の核やミサイル開発の進展 を踏まえてBMDを強固にするため、6年連続で増額する。
 30年度予算案とあわせて22日に閣議決定する29年度補正予算案の防衛費も過去最高の2,300億円を計上する。 (日経 12/16)
【註】 :  防衛省が8月末に提出した概算要求は5兆2,551億円であったことから、概算要求から650億円がカットされたことになる。 29年度の当初予算が5兆1,251億円であっ たので伸び率は僅か1.26%になる。 これに対し中国の国防費伸び率は7%増、韓国は6.9%増、米国は10.6%増である。
 しかも、補正後の29年度予算は5兆3,550億円で、30年度は1,650億円以上の補正を行わないと、最終的には実質的な予算削減になってしまう。

 12月22日に閣議決定された平成30年度予算案の防衛費は、5兆1,911億円で6年連続で増加し過去最大を更新したが、このうちFMSで契約した防衛装備品の支払額は 2,786億円で、前の年より359億円増えて過去最大となる。
 主なものでは、Osprey 4機が595億円、F-35A 6機が554億円、SM-3 Block ⅡAが16億円などとなっている。 (NHK 12/23)

イ. 海上保安庁の30年度予算要求

 海上保安庁が8月29日発表した平成30年度予算の概算要求に、尖閣諸島周辺の領海警備強化方針を受けて、尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生への対 応に30億円を盛り込んだ。
 概算要求では、同庁最大の全長150mヘリ搭載6,500t型1隻を新造し33年度に就役させる方針を決め、整備費46億円を盛り込んだ。 同型の巡視船は現在、全国で しきしまあきつしまの2隻をがあり、尖閣対応では3隻目の新造になる。
 海保は28年2月にヘリ搭載3,800t型2隻と1,000t型10隻からなる「尖閣領海警備専従体制」を整え、同12月には政府が「海上保安体制強化に関する方針」を関係閣 僚会議で決定していた。
 要求総額は29年度予算比9%増の2,303億円で過去最高となり、定員増の要求は493名だった。
 尖閣警備のほか原発でのテロなどにも対処する1,000t型の大型巡視船も新造する。(産経 08/29)
(4) 南西防衛の強化

ア. 陸上部隊の南西防衛配置

宮古島への陸上自衛隊配置

 防衛省が平成30年度予算の概算要求で、米軍再編関連経費などを含めて前年度比2.5%増の総額5兆2,551億円を計上することを決定したが、宮古島への陸上自衛隊 配置計画では260億円を計上し、30年度に警備部隊380名を配置する。
 南西地域の部隊配置関連に計552億円を計上した。(沖縄 09/01)

 防衛省が11月3日、宮古島への陸上自衛隊警備部隊とミサイル部隊の配置計画をめぐり、2017年内に駐屯地の建設工事に着手する方針を固めた。 平成30年度末の 警備隊配置に向けて、31年2月末までの完成を目指す。
 宮古島での駐屯地建設は当初2017年夏にも着工する計画だったが、建設予定地の売買賃貸借契約が遅れていたもので、10月上旬に契約の締結を終えた。
 防衛省は離島侵攻や災害時に初動対処にあたる警備隊とSAMとSSM部隊を宮古島と石垣島にそれぞれ置く計画を進めており、宮古島には32年度中にSAM部隊を配置し て管理部隊を含めて800名規模の態勢を整えたい考えで、30年度概算要求で予算を計上し、30年度末までに警備部隊を配置する方針だが、弾薬庫の建設予定地選定が 遅れていることから、ミサイル部隊の配置は31年度以降となる見通しである。(産経 11/04)

 宮古島への陸上自衛隊配置計画をめぐり、防衛省は11月20日に駐屯地の建設工事に正式に着手する方向で調整に入った。 平成31年3月の警備隊配備に向けて完 成を目指す。
 宮古島陸自駐屯地をめぐっては、当初2017年夏にも着工する計画だったが、建設予定地全地権者との売買・賃貸借契約が遅れずれ込んでいた。
 沖縄防衛局はすでに隊舎や宿舎などの建設に向けた入札を公示しており、12月の開札を経て工事を加速させる。 (産経 11/16)

キャンプ・ハンセン跡地に水陸機動団

 複数の政府関係者が、陸上自衛隊に2018年3月に新編される水陸機動団を当初は相浦駐屯地をはじめ九州に置くが、2020年代の前半には沖縄県の米海兵隊キャンプ・ ハンセンにも配置する方針を固め、米側と調整に入ったことを明らかにした。
 在日米軍再編に伴って沖縄に駐留する米海兵隊の一部がグアムに移転した後を想定しているという。 (朝日 10/31)

AAV-7 の取得に遅れ

 島嶼防衛のためとして2018年3月に相浦駐屯地に新設される水陸機動団に配備される予定のAAV-7が、部隊の新設時には30両が配備される予定にもかかわらず、防 衛省によると、少なくとも23両の導入が遅れる見通しになったという。
 部品の不足などで米国メーカの製造が遅れていることが原因で、2018年夏ごろまでに順次、配備される予定だという。 (NHK 12/22)

イ. 離島奪還演習の実施

"Dawn Bridge" 日米共同演習

 陸上自衛隊が9月29日、米海兵隊と離島奪還の共同訓練"Dawn Bridge"をカリフォルニア州で実施すると発表した。 隔年で行われる"Dawn Bridge"は今回で3回目 で、10月7日から11月4日まで、水陸両用車AAVやF-35Bも参加する。
 陸自は水陸両用部隊の新設を29年度末に控えている。(ロイタ 09/29)

離島防衛を想定した大規模演習

 陸上自衛隊が10月23日~11月22日の1ヶ月間にわたり、離島防衛を想定した大規模演習を実施する。 この演習には西部方面隊と中央即応集団を中心に人員 14,000名、車両3,800両、航空機 60機が参加し、北部方面隊からも1個連隊が鉄道、船舶、航空機で九州へ移動する。
 演習は沖縄本島、久米島、与那国島を舞台に、奄美大島を兵站拠点として行われる。
 この演習に米軍はLCU 1隻が参加するが、沖縄駐留米軍は参加せずオブザーバの派遣もない。(S&S 10/16)

ウ. 中台有事への対応準備

 陸海空自衛隊が、中国と台湾の間の有事を想定した図上演習を計画していることが1月20日に分かった。 統合幕僚監部の発表によると、演習は23~27日に防衛省 内などで実際に部隊は動かさず実施する。
 統幕は具体的なシナリオを明らかにしていないが、 関係者によると中台間の軍事衝突を想定しているという。
 この演習で、放置すれば日本の安全に影響が及ぶ重要影響事態が発生した場合の対応を検証する。 (ロイタ 01/20)

 中国外務省副報道局長が1月20日、陸海空三自衛隊が中国と台湾の軍事衝突を想定した統合演習を1月下旬に行うとの報道に対し、台湾問題は中国の内政で中国の核 心的利益に及ぶとして、日本側には言行を慎むよう求めると不快感を示した。
 共産党機関紙人民日報系の環球時報も20日、中国国防省の関係者が「事実であれば中日関係、特に双方の安全保障関係を著しく破壊する」と非難したと報じた。 (産経 01/20)

エ. 離島管理の強化

 住民がいる国境近くの離島の保全策について、安倍首相を本部長とする政府の総合海洋政策本部が策定する基本方針の概要が3月4日に明らかになった。
 基本方針では有人国境離島の振興について、我が国の領海などの保全にとって極めて重要と、安全保障上の意義を強調したうえで、基本目標に離島が有する活動拠 点としての機能を継続的に維持することを挙げ、4月の同本部会合で正式に了承する。
 東京都の小笠原諸島や長崎県の対馬、沖縄県の八重山諸島など29地域148島を「有人国境離島」に指定し、国有化や港湾整備をはじめ島の人口増を目指す方向性を 明記した。(讀賣 03/05)

 安倍首相を本部長とする政府の総合海洋政策本部が4月7日、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)の基点となる無人離島のうち、所有者のいない273島について国有 財産登録の手続きが終了したことを報告した。
 この日の会合では、国境に近い29地域148島を「有人国境離島」に指定し、住民生活を支援するための基本方針も了承した。 (讀賣 04/07)

(5) 海外での活動

ア. 邦人保護活動

在外邦人保護の演習

 防衛省が1月20日、安全保障関連法で可能となった在外邦人の保護演習を23~27日に行うと発表した。
 統合幕僚監部によると、演習には陸海空8,700名が参加する図上演習で、陸海空の三自衛隊の合同で実施される。 (時事 01/20)

朝鮮半島有事における在韓邦人の保護

 「2 係争地域の情勢」で記述

イ. 海外拠点の整備

 小野寺防衛相が11月18日、ジブチに設けている自衛隊の海賊対策活動拠点について、拡張のため隣接地をジブチ政府から借り上げることで合意したと明らかに した。
 小野寺防衛相は、他の国が借り上げると基地の安全な運営に影響が出ると説明しており、ジブチで中国が7月に拠点を開設したことが念頭にあるとみられる。 (時事 11/18)
ウ. 海外活動のための海外訓練

 防衛省が安全保障関連法制に基づき6月29日、国連平和維持活動(PKO)での駆けつけ警護や宿営地を守る共同防護の新任務を想定した多国間の共同訓練に、陸上自衛隊 が初めて参加すると発表した。
 この訓練は7月23日から8月5日までモンゴルで開かれる米軍・モンゴル軍主催のKhaan Quest 17で、ウランバートルの南西50kmにあるFive Hills訓練場で実施される。 先遣されるのは中央即応集団の隊員ら45名で、PKO活動に伴う検問や救護などの訓練 も実施するという。 (朝日 06/29)
(6) 各国との防衛協力

ア. 米 国

(ア) 米軍の艦船などを守る武器等防護

 防衛省が1月20日、安全保障関連法で可能となった自衛隊が米軍の艦船などを守る武器等防護の演習を23~27日に行うと発表した。
 統合幕僚監部によると、演習には陸海空8,700名が参加する図上演習で、陸海空の三自衛隊の合同で実施される。 (時事 01/20)

 政府は防衛計画大綱の前倒し改定する作業とは別に外務防衛当局者の日米協議を行う方針で、アジア太平洋地域の戦略環境認識をすり合わせた上で、日米間の役割 分担を話し合い、大綱改定作業に反映させて行く。(産経 01/30)

 複数の政府関係者が、稲田防衛相が2015年に成立した安全保障関連法に基づき初めて、平時から自衛隊が米軍の艦船などを守る武器等防護を、米海軍の補給艦を防 護対象に自衛隊に命じたことを明らかにした。
 政府関係者によると、海上自衛隊の護衛艦いずもが5月1日午前に横須賀基地を出港し、房総半島沖周辺で米海軍の補給艦と合流して、四国沖までこの補給艦 を守りながら一緒に航行する計画とされる。(朝日 04/30)

 安全保障関連法で認められた米艦防護を行う護衛艦いずもが5月1日午前の横須賀基地を出港した。
 政府関係者によると、いずもは昼頃には浦賀水道を抜け、夕方から夜にかけて房総半島沖で米補給艦と合流して四国沖まで随行する。 (讀賣 05/01)

 安全保障法制に基づいて初めて実施された米艦防護で、護衛艦いずもだけでなく、護衛艦さざなみも加わることが5月2日にわかった。
 さざなみは同日午前に呉基地を出港した。(讀賣 05/03)

(イ) 朝鮮半島有事における事前協議

 日本政府筋によると、政府が米国に対し米軍が北朝鮮に対し武力攻撃を行う場合には、在日米軍基地を使用しない場合でも事前協議を行うことを要請し、米側も これを受け入れたという。(S&S 04/13)
(ウ) 北朝鮮 BM の撃墜

 小野寺防衛相が8月10日、北朝鮮による米領グアムへの攻撃は、我が国の米軍による抑止力に対する侵害とみなし、集団的自衛権発動の対象になると述べた。 (JDW 08/016)
(エ) 日米共同訓練の実施

米海軍との共同訓練

 複数の日本政府関係者が4月11日、海上自衛隊が朝鮮半島の近海に向けて航行中の米空母Carl Vinsonと共同訓練を検討していることを明らかにした。 関 係者の1人はロイタに、東シナ海、日本海に入ってくるCarl Vinson CSGに護衛艦を数隻派遣すると語った。
 挑発行為を繰り返す北朝鮮をけん制する狙いで、制裁だけでなく軍事面でも日米の緊密な連携を示す。 (ロイタ 04/12)

 自衛隊と米軍が陸上自衛隊の地対艦誘導弾(SSM)を使った共同訓練を初めて実施することが、来夏のハワイでの米海軍主催による環太平洋合同演習(RIMPAC)で行う 調整に入った。
 米国では今まで沿岸防衛用のSSMは不要としてきたが、ここにきて米軍がSSMに意欲を示しているのは南シナ海での対中シフトに不可欠だと認識しているためである。  米太平洋軍司令官ハリス大将が2017年5月、列島線防衛の新しい方策を検討すべきで米陸上部隊に艦艇を沈める能力の強化を指示したと発言し、SSMを念頭に陸自か ら学びたいとも述べた。(産経 06/25)

 海上自衛隊が9月22日、朝鮮半島周辺に向かっているとみられる米空母Ronald Reaganと海自の護衛艦が神奈川県沖から沖縄周辺の太平洋で共同訓練を行って いると発表した。 訓練は28日までの予定で、護衛艦と米空母との共同訓練は今年4月と6月にも日本海などで行われた。
 海自によると、今月11日以降、いせあけぼのさざなみの3隻が1週間交代で、同空母や随伴する米Aegis艦数隻と共に陣形を変えながら進 む訓練などを実施している。(讀賣 09/22)

 海上自衛隊が10月2日、護衛艦さざなみと米空母Ronald Reaganが9月29日から10月1日まで 共同訓練を行ったと発表した。
 もともと9月11日から28日にかけ、関東の南方から沖縄周辺の海域で訓練を実施する計画を公表していたが、これを3日間延長したもので、日米の艦艇はバシー海峡 を抜け、中国が影響力を強める南シナ海に入った。
 海自艦と米空母が20日間にわたって共同で航行するのは異例で、海自によると現時点で確認できる2014年以降では最長だという。 (ロイタ 10/02)

 米海軍と自衛隊の合同演習が東シナ海と日本海で行われた。 この演習には米海軍からNimitzRonald ReaganTheodore Rooseveltの空 母3隻、海上自衛隊から護衛艦いせいなずままきなみ、航空自衛隊から小松基地第6航空団のF-15J 2機が参加した。 (DN 11/10)

 日本海で共同演習を実施していた米原子力空母3隻は朝鮮半島周辺の海域を離れた。 米海軍第7艦隊が15日、このうちRonald Reaganはフィリピン海に移 動し、日本時間の16日午前に海上自衛隊との年次演習を始めたことを 明らかにした。
 Ronald Reaganと海自の演習は米駆逐艦3隻などが加わり沖縄県に近い海域で11月26日まで実施され、米海軍からは14,000名が参加する。 (産経 11/16)

B-1B との共同訓練

 航空自衛隊が8月31日、新田原基地所属のF-15 2機と、米空軍のB-1 2機、岩国基地のF-35B 4機が同日、九州周辺の空域で共同訓練を実施したと発表した。
 空自戦闘機とB-1の共同訓練は頻繁に実施されているが、F-35Bが加わったのは初めてである。 (産経 08/31)

 グアムAndersen AFBに駐留する米空軍第37遠征爆撃飛行隊に所属するB-1B 2機が8月15日、航空自衛隊のF-15J 2機と日中の係争地となっている尖閣諸島周辺を飛 行した。
 B-1Bは1997年以来核搭載能力を持っていないが、34,019kgの武器を搭載できる。(JDW 08/231)

F-35A を交えた共同訓練

 航空自衛隊と在日米軍が12月4日、日本海と東シナ海の空域で戦闘機部隊による共同訓練を実施した。
 空自からは築城基地のF-2と那覇基地のF-15がそれぞれ2機ずつ参加し、在日米軍の嘉手納基地のF-35Aと岩国基地のF/A-18がそれぞれ2機ずつ加わり、対戦闘機の戦 術などを擦り合わせた。(日経 12/04)

(オ) 日米物品役務相互提供協定成立

 安全保障関連法に基づき自衛隊と米軍による物資融通を拡大する日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定案が、3月23日に衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数 により可決され、参院に送付された。 合わせて可決された日豪の同改定案、日英の同承認案とともに、今国会中で承認される見通しである。
 政府は更にカナダ、フランスともACSA締結に向け交渉中で、ニュージーランドとも検討に入る方針で一致している。 (日経 03/23)

 自衛隊が米軍を後方支援する際の手続きを定めた新たな日米物品役務相互提供協定(ACSA)が4月14日の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数 で可決承認された。 民進、共産両党などは反対した。
 2016年3月に施行された安全保障関連法を反映したもので、日本に直接攻撃がない場合の米軍への弾薬提供や、発進準備中の戦闘機への給油が可能となる。 (讀賣 04/14)

 複数の日本政府関係者が、海上自衛隊の補給艦が安全保障関連法に基づき、日本海などで北朝鮮のBM発射を警戒する米Aegis艦に燃料補給していることを明らかにし た。
 安保法に基づく米軍への給油は、同任務が可能になった4月以降複数回実施しているという。(日経 09/14)

イ. ASEAN 諸国

(ア) ASEAN 諸国全体

装備品無償供与の法制化

 政府が1月18日、フィリピンなどASEAN諸国との防衛協力の強化のため、自衛隊の中古装備品を無償または安価で供与することを可能にする関連法案を20日召集の 通常国会に提出する方針を固めた。
 財政法の9条は国有財産について、適正な価格なくして譲渡してはならないと規定し、無償や安価での供与を禁じているため、法案では自衛隊法に財政法9条の例 外規定となる特則を加え、こうした供与を可能にする。(読売 01/19)

 自衛隊の中古装備品を他国に無償または低価格で供与できるようにする改正自衛隊法が、5月26日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決成立した。
 財政法は、国の財産を「適正な対価なく譲渡、貸し付けてはならない」と規定しているが、今回の改正により財政法の特則を自衛隊法に新設し、自衛隊が使用 した船舶や航空機などの装備品の譲渡を例外扱いとした。(時事 05/26)

 小野寺防衛相が10月23日、日本とASEAN 10ヵ国の防衛相会合に出席し、自衛隊の中古装備品の無償譲渡など防衛装備技術協力の推進を表明した。
 南シナ海などで海洋進出を強める中国に対抗する狙いがある。(讀賣 10/23)

防衛装備品輸出による友好国ネットワーク構築

 防衛省高官が1月18日、アジア諸国への防衛装備品輸出を拡大し、友好国としてのネットワークを構築したと述べた。 (JDW 01/25)

Cobra Gold 演習への参加

 アジア太平洋地域最大規模の多国間合同軍事演習Cobra Goldの開幕式が2月14日にタイ中部サタヒップの海兵隊基地で開かれた。
 2017年で36回目になるCobra Goldは米タイ両国の共催で毎年開催されているもので、日本や中国を含む29ヵ国、8,300名が参加して24日までタイ各地で実施される。
 日本からは自衛隊員ら130名が参加し、在外邦人保護に関する訓練などを行う。(時事 02/14)

各国沿岸警備機関との協力

 政府がフィリピン、ベトナムに供与した巡視船艇を使用した初の共同訓練を、6月に海上保安庁と両国の海上保安機関との間で実施する方針であることが明らかに なった。
 このうちフィリピンとの訓練では、日本が供与した40m級の新造巡視船を使用し、日本が派遣するヘリ搭載型巡視船とともに、同国近海で海賊対策などを想定した 訓練を行う。 ベトナムとの訓練では、中古の供与船1隻を使用する。
 従来の共同訓練では、フィリピンやベトナムが所有する20m前後の小型船が使われてきたが、これらの船は外洋で長時間の巡視活動が難しかった。 (讀賣 05/13)

各国海軍との交流

 護衛艦いずもが6月19日から、ASEAN 10ヵ国の士官を乗せて南シナ海を航行する。  防衛省の発表によると/、いずもは19日にシンガポールを離れ 、23日まで周辺海域を航行する。
 南シナ海で中国と領有権を争うフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイだけでなく、対中関係を重視するカンボジアやラオスも含め、ASEAN全加盟国の若手 士官を招待した。
 艦上で勉強会を開き、この海域で起きている情勢の認識や国際法を順守することの重要性をASEAN各国と共有したい考えである。 (ロイタ 06/19)

 ASEANが創設50年に合わせ海軍の連携強化に向けた初の合同演習をタイで行っていて、11月20日にタイ中部のパタヤ沖で観艦式が行われた。
 観艦式にはタイの空母チャックリ・ナルベートなどのほか、米国、中国、ロシアなど合わせて18ヵ国の艦船が参加し、日本からは護衛艦おおなみ が参加した。
 一方、観艦式に先立って現地ではASEANの海軍トップによる会議が行われ、災害時の人道支援や海賊対策で連携を強化することを確認した。 ただ南シナ海の問 題については主要議題として取り上げられず、この地域で影響力を強めている中国に配慮した形となった。 (NHK 11/20)

(イ) 国別防衛協力の状況

a. フィリピン

日比首脳会談で防衛協力を確認

 安倍首相が11月13日にフィリピンのドゥテルテ大統領とマニラで会談し、両国の防衛協力を確認した。
 会談に合わせ、両政府は海上自衛隊がフィリピン海軍に貸与していたTC-90練習機を無償譲渡する文書も交換した。 (東京 11/14)

TC-90 2機の貸与/供与

 防衛省が3月21日、フィリピンへの貸与が決まっているTC-90 2機が23日に日本を出発し、27日に比海軍に引き渡されると発表した。
 2016年9月に5機の引渡しが正式決定し、残り3機も平成29年度中に引き渡される。
 自衛隊機の他国への移転は初めてである。(産経 03/21)

 防衛省が10月25日、海上自衛隊がフィリピンに貸与しているTC-90練習機2機を2018年3月末に無償で供与すると発表した。 また3月に新たに貸与する予定だった別 の3機も無償供与になる。
 改正自衛隊法が先の通常国会で成立し、自衛隊の中古の防衛装備品を発展途上国に無償で譲渡できるようになったのを踏まえたもので、フィリピンで23日に開い た小野寺防衛相とロレンザーナ国防相との会談で合意した。(日経 10/25)

 日本政府が10月25日の声明で、2018年3月末までにフィリピンにTC-90 5機を無償供与することを明らかにした。
 無償供与されるTC-90のうち2機は既に比海軍へ貸与されており、残りの3機も2018年初期に貸与される計画であった。 (JDW 11/08)

UH-1H 用補用品の無償供与

 日本とフィリピンの複数の関係者が日本政府がフィリピン軍に対し、中古の航空機と自衛隊のヘリコプタ部品を2017年度中に無償で引き渡す調整に入ったことを 明らかにした。 陸上自衛隊のUH-1Hの補用品4万点を同機を使用しているフィリピン軍に供与する。
 陸自はUH-1HとUH-1Jの2機種を装備しているが、1973年度に配備が始まったUH-1Hは2012年度にすべて退役しており、補用品が使われないまま残っている。 日本 はこれを活用する考えで、さらにヘリの保守支援なども提供できないか検討している。(ロイタ 08/10)

 日本は安倍首相のマニラ滞在中、陸上自衛隊のヘリコプタ部品をフィリピン空軍に供与することで合意する見通しである。 (ロイタ 11/10)

海上監視レーダの供与

 日本政府が、フィリピンに海上監視レーダを供与することを決め、同国南部の海域で多発する海賊の取り締まりを支援する。
 レーダはフィリピン沿岸警備隊が装備し、同国南部のスールー海とセレベス海の4ヵ所に設置する計画である。 同海域の海賊対策をめぐっては、中国も関与を強 めている。(ロイタ 11/10)

P-3Cを派遣した合同訓練

 海上自衛隊が9月12日、P-3Cをフィリピンに派遣して13日から同国海軍と南シナ海で共同訓練を行うと発表した。 中国が人工島を造成する南沙諸島に近い海域 だが、村川海上幕僚長は「一般的な捜索救難訓練で、航行の自由作戦とは関係ない」としている。
 P-3Cがフィリピンで共同訓練をするのは2015年6月以来2回目で、比海軍からは哨戒艇と哨戒機が参加してパラワン島周辺の南シナ海とスールー海で、捜索救難の 訓練を実施する。(ロイタ 09/12)

海上保安庁との合同訓練

 海上保安庁とフィリピン沿岸警備隊が6月3日、ミンダナオ島最大の都市ダバオの沖合で海賊対策の合同訓練を実施した。 訓練には新潟海上保安部所属のヘリ搭 載型巡視船えちごと共に、日本側40名、フィリピン側150名が参加した。
 訓練は、オーストラリアから中国へ向かう船舶が公海を航行中に海賊に襲われたと想定し、現場に急行した巡視船が停船するよう警告した上で、沿岸警備隊員らが 高速ゴムボートで接近、海賊の船に乗り移って制圧した。(産経 06/03)

b. ベトナム

海洋安全保障分野での連携や防衛協力の強化

 ハノイを訪問中の安倍首相が1月16日にベトナムのグエン・スアン・フック首相と会談し、中国が南シナ海に強引な進出を進めていることを念頭に、紛争の平和的解 決や航行の自由の重要性を確認し、海洋安全保障分野での連携や防衛協力の強化で一致した。
 安倍首相はベトナムの海上保安能力強化に向け、新造巡視船6隻の供与を表明した。(読売 01/16)

 共同通信が1月16日、日本がベトナムに哨戒艇6隻を$1Bの借款で供与すると報じた。(JDW 01/25)

防衛技術と装備の協力を目指す協力会議の発会

 防衛装備庁が、日本とベトナムの防衛技術と装備の協力を目指す協力会議の発会式が10月5日に開かれたことを明らかにした。 (JDW 10/11)

サイバー対策を指南

 政府が、ベトナム国防省からの要請を受け、サイバ分野に精通した航空自衛隊員5名を12月11日から派遣してセキュリティ設定などを指導する。
 派遣される空自の隊員は、ベトナムの空軍や海軍、海上警察の担当者ら20名を対象に20日まで講義を実施し、実際のサイバ攻撃の具体的な手法やソフトウェアの安 全対策など実践的な技術を教える。(時事 12/10)

海上保安庁との合同訓練

 海上保安庁とベトナム沿岸警備隊が6月16日、ダナン港沖で、同国海上警察と違法操業漁船の取り締まり訓練などを行う。 訓練には新潟海上保安部所属のヘリ搭 載型巡視船えちごが参加する。(産経 06/03)

 日本の海上保安庁の巡視船えちごが6月13日、ベトナム中部のダナン港に入港した。 ベトナム沿岸警備隊との交流、海賊対策の合同訓練などを行い、19日 に出航する。
 海保と沿岸警備隊が2015年9月に協力覚書を交わして以降、海保の巡視船によるベトナムへの寄港は初めてで、日越間の連携を強化し海洋進出を活発化させる中国 をけん制する狙いもあるとみられる。(時事 06/13)

c. マレーシア

艦船の供与

 南シナ海で軍事拠点化を強める中国を念頭に、日本が警備強化のためマレーシアに供与した大型巡視船2隻のうち1隻が3月21日、同国北部ランカウイ島で披露された。
 2016年3月、東部ボルネオ島沖の南シナ海で、マレーシアの排他的経済水域(EEZ)に中国海警局の船舶や多数の中国漁船が侵入したのを受け、マレーシア政府が日本政 府に船の供与を求めていた。(東京 03/21)

 東南アジア各国の海上警備当局との連携を強化する一環で、日本政府からマレーシアに供与された海上保安庁の巡視船が現地で披露され、記念の式典が行われた。
 この巡視船はヘリ搭載可能な全長90mの大型船で、マレーシアの海上警備当局が保有する最大の船となる。
 日本政府は2017年1月、マレーシアに対し巡視船えりもおきの2隻を供与し、このうちえりもは3月に現地の海上警備当局に配備された。 (NHK 03/22)

P-3C の供与要望

 スプラトニー諸島の領有権を主張している6ヶ国の一つであるマレーシアが、日本政府に退役するP-3Cの供与を求めている。 要求機数は明らかでないが、同国は かつて4機必要と言っていた。
 日経アジアレビュー紙によると、国有財産を他国に無償供与するには防衛省設置法の改正が必要だという。 また供与が決まってもレーダなどの装備は機体から取 り外される事になると言う。(DN 05/09)

ウ. 韓 国

 韓国海軍が1月20日、日米韓3ヵ国がミサイルの探知追跡演習を20日から3日間にわたり実施すると発表した。
 演習には日米韓のAegis艦が参加し、海上で実際に目標を探知、追跡し3ヵ国が情報を共有する。(聯合 01/20)
エ. 英国、フランス

(ア) 英国との防衛協力

日英の準同盟関係

 8月30日に来日した英国のメイ首相が31日に海上自衛隊横須賀基地を訪れ、護衛艦いずもに乗艦した。 小野寺防衛相が同行した。
 日本政府は英国との防衛協力を進めており、準同盟をアピ ールした形で、2016年11月には三沢基地で航空自衛隊と英空軍による戦闘機の共同訓練を実施し、日本 国内で米国以外と訓練するのは初めてだった。
 また31日午後には首相官邸で開かれる国家安全保障会議(NSC)にも参加し、安倍首相との会談では防衛協力の強化について話し合う。 2017年内には日英外務・防 衛担当閣僚会合(2-plus-2)を英国で開催する。(朝日 08/31)

日英訪問部隊地位協定 (VFA) 締結に向けた協議

 日英両政府が、自衛隊と英軍が互いの国で円滑に活動できるようにするため、法的立場を明確にする「訪問部隊地位協定(VFA)」の締結に向けた協議に入る方針を 固め、12月14日にロンドンで開かれる外務防衛閣僚会合(2+2)で 共同訓練の強化を確認して2018年中に協議入りする。
 日本政府は準同盟国と位置付ける英国との防衛協力を拡大し、朝鮮半島や東・南シナ海の情勢悪化に備えたい考えで、VFAの協議が実現すれば2014年に協議入りし た豪州に次いで二例目となる。(讀賣 11/27)

日英物品役務相互提供協定 (ACSA)の締結

 日英両政府が1月26日、自衛隊と英軍が弾薬、燃料、食料、輸送などを相互に融通する物品役務相互提供協定(ACSA)を締結した。 日本の国会と英議会の承認を経 て発効する。
 ACSAは、国連平和維持活動や大規模災害支援で、物資やサービスを互いに提供する際の決済手続きなどを定めている。 (読売 01/27)

陸上自衛隊と英陸軍が共同訓練

 日英両政府が12月14日にロンドンで外務防衛閣僚会合(2+2)を開催し、核やミサイル開発を進める北朝鮮に最大限の圧力をかけることで一致した。 日本政府は「準 同盟国」と位置づける英国との安全保障協力を強化したい考えである。
 共同声明には、陸上自衛隊と英陸軍が2018年に日本国内で初めて共同訓練を実施することや、AAMの共同開発を明記した。 (讀賣 12/15)

「自由で開かれたインド太平洋戦略」の共同推進

 日英両政府が12月14日にロンドンで外務防衛閣僚会合(2+2)を開催し、中国の海洋進出を念頭に、東/南シナ海における状況を引き続き懸念と盛り込み、日本政府が 推進する「自由で開かれたインド太平洋戦略」を踏まえ、インド太平洋地域への英国の関与強化も明記した。 (讀賣 12/15)

 外務防衛の閣僚会合(2+2)出席のため訪英中の小野寺防衛相が12月15日にウィリアムソン英国防相と個別に会談し、海洋進出を強める中国を念頭に英空母のアジア太 平洋地域展開に期待を示した。
 これに対しウィリアムソン国防相は、英国はもともと航行の自由について歴史的に役割を果たしてきたという自負があり、今後も世界に対して貢献していきたいと応 じ、今月就役した空母Qeen Elizabethをアジア太平 洋地域に展開させる考えを示した。(NHK 12/15)

(イ) フランスとの防衛協力

日仏物品役務相互提供協定 (ACSA)の締結向けた交渉開始

 日仏両国が1月6日に外務防衛閣僚会合(2-plus-2)をパリで開き、自衛隊と仏軍が燃料や食料などを融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた交渉を開始 することで合意した。
 南シナ海の軍事拠点化を進める中国への懸念でも一致し、秩序維持を目指す共同声明を発表した。(読売 01/07)

防衛装備協力の推進

 安倍首相が9月20日にマクロン仏大統領と国連本部で会談し、防衛協力を強化することで一致した。 北朝鮮による核・ミサイル開発や中国の南シナ海での海洋進出に連 携して対応したい考えで、北朝鮮への圧力強化も申し合わせた。
 自衛隊と仏軍が物資などを円滑に融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の締結交渉開始で合意していることを踏まえ、両首脳は交渉加速と防衛装備協力の推進を確 認した。(東京 09/21)

(ウ) 日英米仏共同訓練

 自衛隊が仏軍、米軍、英軍と5月中旬に北マリアナ諸島の米領テニアン島で共同演習を行う。 演習には仏軍からMistral級強襲揚陸艦、英軍からはヘリ2機、自衛隊 と米軍からは要員が参加する方向で調整している。
 太平洋に影響力を広げる中国を意識した動きで、4ヶ国で上陸訓練を実施する。(ロイタ 03/17)

 フランス海軍の訓練部隊を乗せた強襲揚陸艦Mistralが4月29日に佐世保基地に入港した。 5月上旬にグアム周辺で、日米英と初の4ヶ国共同訓練を行う。
 Mistralは、全長199m、満載時排水量21,500tで、6機のヘリコプタを同時発着させることができる。 (讀賣 04/29)

 日米英仏による水陸両用作戦の演習が来週末までグアム及びテニアン島周辺海域で、関心地域を北朝鮮近くにまで拡大して行われる。
 演習は南シナ海を見据えた航行の自由の維持を目的とし、フランスからは英国兵70名を乗せた強襲揚陸艦Mistralなど2隻、米国からは第8海兵連隊第3大隊 の100名が参加する。
 日本からは揚陸艦艇と海上自衛隊員160名、陸上自衛隊員50名が参加する。(S&S 05/11)

 グアム及びテニアン島周辺海域で日米英仏が行う予定であった水陸両用作戦の演習が、フランス揚陸艦の座礁で無期限延期になった。
 この事故による珊瑚礁の損傷、油の流出、人員の負傷はなかったという。(S&S 05/11)

 グアム、テニアン周辺で行われる多国間合同水陸両用演習は、仏海軍揚陸艦が座礁した翌日の5月13日に予定通り開始されることになった。
 米第3海兵師団の広報官によると、陸上自衛隊がゴムボートによる上陸を行い、14日には米海兵隊がフランス軍と共に実射を行うという。 (S&S 05/12)

オ. オーストラリア

物品役務相互提供協定の締結

 安倍首相が1月14日、オーストラリアのシドニーでターンブル首相と会談し、両首脳は米国のトランプ次期政権と緊密に連携する考えで一致した。
 また、自衛隊と豪州軍が互いに弾薬を融通できるようにする新たな物品役務相互提供協定(ACSA)の署名式に立ち会った。 (読売 01/14)

 オーストラリア国防省が1月14日、日豪両政府が物品役務相互提供協定(ACSA)を締結したと発表した。 両国は防衛協力関係を深めようとしている。 (JDW 01/25)

 稲田防衛相が4月19日に防衛省でペイン豪国防相と、2016年8月以来となる会談を行った。
 会談はで防衛協力の強化などについて話し合い、2018年に日本で初の戦闘機による共同訓練を実施することで一致した。 定例化を視野に入れているという。 (産経 04/19)

訪問部隊地位協定(VFA)の締結

 読売新聞が、1月中旬に予定されているターンブル豪首相の訪日時に、訪問部隊地位協定(VFA)を締結すると報じた。 同様の協定は2018年末までに英国とも締結 すると言う。
 日豪軍事協力では2015年に陸上自衛隊が米豪共同訓練に参加しており、 2018年には航空自衛隊が豪空軍と初の共同訓練を計画している。
 一方、日英では12月14日に開かれた2-plus-2で、定期的な共同訓練の実施に合意している。(S&S 12/25)

Talisman Saber 演習への参加

 オーストラリアのクイーンズランド州東部で米豪加やニュージーランドが行う"Talisman Saber"演習に陸上自衛隊の精鋭部隊が初参加した。
 演習ではShoalwater湾演習場のWiliamson飛行場近くで第1空挺団第3普通科大隊の隊員がニュージーランド空軍のヘリから降下し、アラスカ州から参加した米陸軍 第25歩兵師団第4BCT(airborne)、豪陸軍、加陸軍と合流した。(S&S 07/18)

カ. インド

海洋安全保障の協力強化で合意

 河野外相が9月18日にティラーソン米国務長官、インドのスワラジ外相とニューヨークで 会談し、アジア太平洋やインド洋地域で影響力を拡大する中国をにらみ、 海洋安全保障分野での協力を強化する考えで一致した。 日米印外相会談は2015年9月にニューヨークで開催して以来2回目である。
 三外相は、インド太平洋地域に航行の自由、法の支配の普及と定着を図る方針を確認したうえで、14日の安倍首相とモディ・インド首相による共同声明が掲げた 「自由で開かれ繁栄したインド太平洋」の実現に向け、米国を含む3ヵ国による緊密連携を申し合わせた。 (東京 09/19)

 訪米中の河野外相が9月18日にティラーソン米国務長官、スワラジ印外相と会談し、インド洋でのプレゼンスを強化する中国軍を念頭に自衛隊と米印両軍による地 域国への戦略的寄港を増やすことで一致した。 自衛隊が7月に初めて正式参加した日米印海上共同訓練など安全保障協力を強化することも確認した。
 日米印外相会談は2015年9月以来2回目で、「航行の自由」や「法の支配」の重要性を確認し、南シナ海で一方的な軍事施設建設を進める中国を牽制した。 (産経 09/19)

防衛装備の取引等に関する協定に調印

 日本とインドが東京で防衛相会談を行い、5月8日に防衛装備の取引等に関する協定に調印した。
 両国は数年にわたりU-2iの輸出商談を行っており、初期分は12機で2機を新明和で製造し、残りをインド国内で生産すると言う。 (JDW 05/17)

Malabar 演習への参加

 稲田防衛相が5月8日、インドのジャイトリー国防相兼財務相と防衛省で会談し、日米印三ヶ国海軍の共同演習Malabarを7月にインド洋で行うことで合意した。 (讀賣 05/08)

 海上自衛隊と米国、インドの両海軍が参加する合同海上演習Malabarが、インド東部チェンナイ港で7月10日に始まった。 10~13日はチェンナイ港内、13~17日に はインド東方沖で訓練を実施し、実弾射撃を含む対空戦、対水上戦、対潜水艦戦の訓練を行う。
 海自は護衛艦いずもを初めて派遣し、護衛艦さざなみと合わせて隊員約700名が参加し、米空母Nimitzのほか印海軍の空母Vikramaditya も初めて加わる。(時事 07/10)

日米印豪の連携への動き

 訪米中の河野外相が9月18日にティラーソン米国務長官、スワラジ印外相と会談し、インド洋でのプレゼンスを強化する中国軍を念頭に自衛隊と米印両軍による地 域国への戦略的寄港を増やすことで一 致した。 自衛隊が7月に初めて正式参加した日米印海上共同訓練など安全保障協力を強化することも確認した。
 日米印外相会談は一昨年9月以来2回目で、「航行の自由」「法の支配」の重要性を確認し、南シナ海で一方的な軍事施設建設を進める中国を牽制した。 (産経 09/19)

 ティラーソン米国務長官が10月18日、ワシントンで米国の対インド政策に関する講演を行い、海洋進出を強める中国を牽制するため日印との協力を重視する姿勢 を鮮明にし、日本を含む3ヵ国間の連携推進を強調した。
 また、日米印による合同海上演習"Malabar"への参加国を数年以内に増やしたい意向を示した。 オーストラリアなどを念頭に置いているとみられる。 (時事 10/19)

日米印海軍の合同演習

 北朝鮮に対する警戒活動に当たっている米海軍の空母Ronald Reaganと海上自衛隊の護衛艦が11月3~6日に日本海でインド海軍の艦艇と共同訓練を行った。  関係者によると、訓練では3ヵ国の艦艇が航行しながら、通信したり陣形を変えたりする手順を確認した。
 インドの艦艇は10月下旬にウラジオストクでロシア軍との合同演習を実施した帰路であった。 (讀賣 11/07)

陸、空共同演習の検討

 海上自衛隊が印海軍と2国間共同訓練を行ってきたことに加え、米印の海上共同訓練Malabarへの定期的参加が始まっているほか、海上保安庁と印沿岸警備隊の間で も、相互訪問と連携訓練が実施されているが、日印外交筋が4月22日、陸上と航空自衛隊がインドの陸空軍と共同訓練実施の検討に入ったことを明らかにした。
 同筋によれば、4月11~15日にインドを訪問した岡部陸幕長がインドのラワット陸軍参謀長と会談し、陸自と印陸軍の共同訓練を実施することで合意し、空自と印空 軍の共同訓練についても、すでに協議が開始されているという。
 実施時期や場所は、今後両国間で詰める。(産経 04/23)

インド北東部の開発や道路整備支援

 インドにとって戦略上重要な北東部の開発について、日印政府関係者ら40人が出席した会合が8月3日にニューデリーで開かれ、日本が支援して道路などの整備を 重点的に進めることで一致した。
 モディ政権は、ミャンマーと国境を接する北東部をインドと東南アジアを結ぶ戦略的に重要な地域と位置づけ、この地域の開発を最優先の課題に掲げており、日 本の支援を受けることで、北東部の開発に弾みをつけて、成長が続く東南アジアとの結びつきを強めたいと考えている。 (NHK 08/03)
【註】 :  インド東北部は、1914年にチベット政府とイギリス領インド帝国の間で取り決められた国境線「マクマホンライン」の有効性を巡って中印が国境紛争を繰り返し ている軍事的要衝で、中国がチベット側で道路、鉄道、空港などの整備を進めているのに対し、インド側では地域のインフラ整備の遅れが問題になっている。
 この意味で日本政府がこの地域での道路網整備の支援に乗り出すのは、日本が中印国境紛争でインド側の支援に乗り出すことを意味する。

キ. その他諸国

(ア) 台 湾

 来週フロリダで行われるトランプ大統領と習主席の会談を前に、日米両政府が台湾との接触を強めている。
 先週だけでも、台湾は米国務長官の特使を受け入れているほか、日本からもこの半世紀で最高の高官である副大臣の訪問を受けている。 (S&S 03/29)

 自民党の鈴木馨祐衆院議員が台北市内で開かれた「台米日三者安全保障対話シンポジウム」で12月13日、党内の有志議員で策定を目指している日本版「台湾関係法」 について今後2~3年以内に進展の可能性があると明らかにした。
 台湾関係法は米国が1979年の中華民国との断交後に双方の実務関係のあり方について定めたもので、米国の台湾に対する武器供与の法的根拠にもなっているが、日本 とは日台関係の基礎となる法律を定めておらず、同党の岸信夫議員らが制定に向けた取り組みを進めている。 (台湾 12/14)

 日台海洋協力対話の第2回会合が12月20日に台北で2日間の日程を終えて閉幕し、日台の窓口機関が海難捜索救助協力の覚書を締結した。
 海難事故時の迅速な救助のため、海上保安当局間で連絡先を交換するほか、年1回程度の実務 者会合開催や技術情報の交換を定めた。
 日本は類似の協定を韓国とは結んでいるが、中国とは未締結である。(産経 12/20)

(イ) インド洋周辺国

ジブチ

 防衛省が1月6日、自衛隊が2009年から続けているソマリア沖で護衛艦やP-3Cによる海賊対処活動の拠点であるジブチで、ジブチ軍工兵隊への能力構築支援を1月8日 ~3月8日の日程で実施すると発表した。 ジブチ軍との信頼を深める狙いがある。
 陸上自衛隊の隊員11人を派遣し、重機の操作方法などを教える。(日経 01/06)

モザンビーク

 安倍首相が3月15日にモザンビークのニュシ大統領と首相官邸で会談し、海洋安全保障などで協力していくことで一致した。
 首相は会談後、両国間のパートナーシップは自由で開かれたインド太平洋(地域)を共に実現していくために重要だと述べ、関係強化に意欲を示した。 (時事 03/15)

(ウ) 欧州諸国

ウクライナ

 日本とウクライナが防衛技術での協力関係を構築しようとしている。 このための二国間協議 を進めることは、8月上旬にウクライナを訪問した真部防衛審議官 とRusnak第一国防次官の間で合意している。
 8月10日には防衛装備庁当局者が、現在可能性につついて検討中であることを認めている。(360 08/14)

(エ) カナダ

 海上自衛隊が12月20日、本州南方の海域でカナダ海軍の潜水艦1隻と19日に共同訓練をしたと明らかにした。 海上自衛隊からは護衛艦いずもや哨戒機が海 上から潜水艦を探知する実戦的な訓練を行った。
 カナダ海軍の潜水艦が日本を訪れるのは極めて異例で、11月の海自の演習にも参加した。
 日本とカナダは 9月の外相会談で北朝鮮に対する圧力を最大化するために連携していく方針で一致しており、自衛隊はカナダ軍との連携強化を進めている。 (産経 12/20)
(オ) トルコ

 中東を歴訪中の河野外相が12月28日にエルドアン大統領と会談し、貿易や経済など両国の戦略的パートナーシップの重要性を確認した。
 また、緊迫する国際情勢を踏まえ、東アジアと中東の安全保障を協議する「日トルコ安全保障協議」を新設し、2018年1月下旬に局長級の初会合を開くことで合意 した。(産経 12/28)
(カ) 中央アジア諸国

カザフスタン

 日本、カザフスタン両政府が、防衛交流に関する覚書に署名することで大筋合意に達し、7月中旬にも防衛省政務官をカザフに派遣し、覚書に署名する。
 覚書は防衛相の相互訪問や、制服組同士の交流による信頼醸成措置を活発化させることを盛り込むほか、日本政府によるカザフ軍の能力構築支援強化も明記 する。
 2016年10月にはカザフ国防省職員5人を日本に招き防衛医療分野での能力構築支援を行っており、今後はカザフ国内での支援も含めて拡充する。
 日本が旧ソ連中央アジア5ヵ国との間で覚書に署名するのは初めてで、カザフとの安全保障協力を強化することで中国の影響力に一定のくさびを打ち込みたい 考えである。(産経 07/02)

ク. 各国沿岸警備隊への協力

アジアの海上保安機関若手幹部育成

 海上保安庁がアジアの海上保安機関の若手幹部らに海上法執行などを教育する海上保安政策課程の募集国を海外7ヵ国に拡大した。
 中国の海洋進出が活発化するなか、南シナ海周辺諸国では海洋権益意識が高まっており、法の支配を実現するために周辺諸国と連携する効果も期待されている。
 海上保安政策課程は、海保が政策研究大学院大学などと連携して2015年10月に開設した1年間で修士号を取得できる大学院で、海洋法などを学ぶとともに各国の 海上法執行機関の幹部候補たちが交流を深めるのも目的としている。(産経 01/23)

巡視船外交

 安倍政権による「巡視船外交」が本格化している。
 海洋進出を強める中国を念頭に警備能力が低い沿岸国を後押しする戦略で、3月4日にはマレーシアに供与した大型巡視船が広島県の造船所を出港した。
 Malaysia Coast Guardと船体に書かれた全長90mの白い船が、4日午前に尾道市のJapan Marine United因島工場を離れた。 この船は元は釧路海上保安部の所属だ った巡視船えりもで、境海保のおきとともに1月に引退し、マレーシア海上法令執行庁(MMEA)の船になる。 (朝日 03/05)

 河野外相が8月17日に行われた日米安全保障協議委員会(2-plus-2)後の共同記者会見で、インド太平洋地域の沿岸国を対象に巡視船の供与などを通じて海洋安 全保障能力の構築を支援するため、2019年までに総額$500Mの援助を実施すると発表した。(時事 08/18)

インド洋での共同訓練

 安倍首相が4月12日に訪日中のスリランカのウィクラマシンハ首相と会談し、海上保安庁とインド沿岸警備隊が実施している共同訓練にスリランカ沿岸警備隊が加 わることで大筋合意した。
 安倍首相は会談で、スリランカがシーレーンの要衝に位置することを踏まえ海洋協力を一層拡大したいと要請したのに対し、ウィクラマシンハ首相は海上保安当 局 、防衛当局間の協力を具体化させたいと応じ、法の支配に基づく海洋秩序維持の重要性を両首脳で確認した。 (毎日 04/12)

(7) B M D

ア. 脅威の増大

(ア) 脅威増大の認識

 稲田防衛相が3月7日、北朝鮮のBM発射が在日米軍への攻撃を想定した訓練だったとの朝鮮中央通信の報道について、新たな脅威の段階に入っていることが明確にな ったと語った。
 また、北朝鮮は2016年同時期の米韓合同軍事演習の期間中、7発の弾道ミサイルを発射していることから、今後さらなる挑発行為に出る可能性も否定できないと述べ た。(ロイタ 03/07)

 北朝鮮が3月6日に発射したBM 4発のうち1発が能登半島の北北西200kmの海域に落下したと推定されることが政府の分析で明らかになった。
 これまでで最も日本の本土に近いうえに、4発は南北に80km程度の等間隔で着弾したと見られることから、政府内からは複数の場所を同時に攻撃する能力の向上が著 しいと懸念する声が相次いでいて、政府は今後BMD迎撃体制のさらなる強化とともに、国民により迅速に情報を提供する方策の検討を進める方針である。 (NHK 03/09)

 北朝鮮によるBM発射を受けて自民党の二階幹事長が7月29日、物騒なものが飛んでくることを想定したとき、普通の予算、普通の年次計画ではなく、頭をフル回転 させてしっかりとした対応をしなければならないと述べ、ミサイル対処能力の向上など関連予算の大幅な拡充を求めていく考えを示した。 (時事 07/29)

 北朝鮮によるBM発射を受けて自民党の二階幹事長が7月29日、地方、地域で大きな防空壕を造ることができるかできないかと述べ、日本に着弾する事態を想定した 地下シェルター整備の必要性を訴えた。
 自民党は6月に「新設も含めシェルターのあり方を検討する」との提言を公表しており、二階氏の発言は新設に向けた意欲を改めて示したものである。
 新設なら巨額の予算が必要となるが、財政がどうだこうだと言っている時ではなく、普通の予算や普通の年次計画などではなく、頭をフル回転して対応しなければ いけないと、国民にも党の関係者にも呼びかけていこうと思うと語った。(朝日 07/29)

(イ) 対米 BM 攻撃への対応

 小野寺防衛相が8月10日の衆院安全保障委員会で、北朝鮮がグアムに向けミサイル発射を検討していることについて、グアムが攻撃された場合には日本が集団的自 衛権を行使できる「存立危機事態」に当たれば迎撃できるとの認識を示した。
 小野寺防衛相は答弁で、米国の抑止力、打撃力の欠如は、日本の存立危機に当たる可能性がないとはいえないと述べた。 (毎日 08/10)
(ウ) 我が国 BMD 体制の盲点

 我が国のBMDは米国に依存している運用されており、自衛隊関係者の間では見直しを求める声がある。
 BMDでは早期警戒衛星が発射兆候を探知し、この情報を基にAegis艦と地上のレーダがミサイルを追尾しており、Aegis艦は日米で瞬時に情報共有するデータリンク を搭載しているが、日本は早期警戒衛星を持っておらず、兆候の探知は米軍に依存しているのが実情なため、元政府高官は早期警戒衛星の情報はどうしてもタイムラ グが生じてしまうと明かす。
 米本土から早期警戒衛星の情報は数十秒で防衛省に届くとされるが、米国の協力なくして成り立たないことに変わりはない。
 政府・自民党の一部で独自衛星の必要論があるが、独自衛星の保有は多額の財政負担を強いられるため政府内にも慎重論が根強い。 (産経 09/16)
イ. BMD 体制の見直し

(ア) 統合機動防衛力構築委員会

 防衛省がBMD体制を強化するため、常時迎撃態勢などについて検討し、夏をめどに次期防の策定に反映させることを考えている。 このため若宮副大臣をトップとし て今後の防衛力整備の在り方などを検討する「統合機動防衛力構築委員会」で、2月から本格的に検討を始めた。
 具体的には、北朝鮮がTELを使用したり、SLBMを発射したりしていることなどを踏まえ、自衛隊が常時迎撃できる態勢や最新BMDSを導入した場合の費用対効果など を検討することにしている。(NHK 02/14)

 防衛省は新たなBMDSの導入に向けた検討委員会の新設を当面見送る方針を決めた。 トランプ米政権が同盟国に安全保障面での負担拡大を求める姿勢を示している なかで、政府が正式に検討を始めれば導入が既定路線になりかねないという懸念が自民党内などにあることに配慮した。
 同省はAegis AshoreやTHAADなどの導入について、若宮副防衛相をトップとした検討委員会を設置する予定ですでに調査研究は行っており、本格的な検討のための 委員会設置について昨冬から与党と調整してきたが、自民党の防衛関係議員から、政府が先走ればトランプ政権に足元を見られる恐れがありトランプ政権の出方を見 守るべきだなどと慎重な意見が出ていた。(毎日 02/14)

 政府は、北朝鮮が発射の兆候をつかみにくいBMの開発を進めていることを踏まえ、迎撃態勢を強化するため新たな装備品の導入についての検討を加速させ、夏まで に具体策を取りまとめて、次期中期防(2019~23年度)に反映させることを目指している。
 安倍首相は2月14日の衆院予算委員会で、北朝鮮はかなりのスピードで核・ミサイルの能力を高めているため、それに追いつく努力を日々しなければならないと述べ 、対処能力の向上に努める方針を強調した。(時事 02/14)

(イ) 経費の増大

 防衛省が12月12日にAegis Ashoreが1個システムの見積額を1,000億円と明らかにしたことから、平成16年度に導入を始めたBMD整備費の累計額が30年度予算案で2兆 円を突破する見通しとなった。
 12月19日に導入を閣議決定するAegis Ashoreは、29年度補正予算案に調査費など30億円、30年度予算案に7億円を盛り込み、31年度以降に本格的な導入費を計上して 35年度の配備を目指す方針で、開発中の最新式レーダSPY-6 AMDRも導入したい意向である。(毎日 12/13)
(ウ) PAC-3 部隊の展開

PAC-3の機動展開訓練

 防衛省が6月13日、北朝鮮による相次ぐBM発射を踏まえ、PAC-3の機動展開訓練を実施すると発表した。
 訓練期間は15~26日で、第1、第2、第4の3個高射群の部隊が、小牧基地のほか朝霞駐屯地などに移動させ、 組み立てや作動確認を行う。 (時事 06/13)

中国四国への展開

 複数の日本政府関係者が、北朝鮮がグアム島周辺の海域を狙ってミサイルを撃つと警告したことを受け、政府はコースを外れて日本に落下した場合を想定して PAC-3を中国、四国地方の4ヵ所の陸上自衛隊の駐屯地に展開する方針を固め、北朝鮮の動向を見極めて一両日中に最終決定することを明らかにした。
 政府関係者によると、国家安全保障局(NSS)などは、北朝鮮からグアムに向けて発射された際のBM飛翔経路を推定し、PAC-3を海田市、出雲、高知、松山の4箇所の 駐屯地に展開する方針を固めた。
 一方海上自衛隊も、SM-3を搭載したAegis型護衛艦1隻を日本海に展開し、警戒監視にあたっている。 (朝日 08/11)

 防衛省が8月12日、北朝鮮によるグアム周辺へのBM発射予告を受けて上空通過の可能性がある中国、四国地方の陸上自衛隊出雲、海田市、松山、高知の駐屯地4ヵ 所にPAC-3の配備を完了した。(日経 08/12)

函館襟裳への展開

 防衛省は9月18日までに、北朝鮮のBMが相次いで北海道南部上空を通過したことを受けPAC-3を函館駐屯地に配置する方針を固めた。
 地元自治体への説明が完了し次第、19日にも展開を開始するとみられる。(時事 09/18)

 北朝鮮が発射したBMが相次いで北海道南部の上空を通過したことを受け、今後も同様のコースを狙ってBMを発射した場合を想定し、落下物などに備えるため、防衛 省が9月19日にPAC-3を函館駐屯地に展開した。
 空自のPAC-3部隊は同日正午過ぎに函館駐屯地に入り、夕方までに発射機や射撃管制装置などの配備を完了した。 (朝日 09/19)

 航空自衛隊が10月31日、北朝鮮のBM発射に備え襟裳岬にある空自襟裳分屯基地でPAC-3の展開訓練をする。
 襟裳岬の上空は北朝鮮が8月と9月に発射したBMがそれぞれ通過したことから、万が一の落下を想定し素早く迎撃態勢を整えられるようにする。 (日経 10/29)

 北朝鮮が8月29日と9月15日に火星-12 (KN-17) IRBMを北海道上空に飛来させたのを受け、防衛省が9月19日に航空自衛隊八雲分屯基地のPAC-3を、函館駐屯地に移動 展開させたと発表した。(JDW 09/27)

(エ) 米韓との合同 BMD 演習の実施

 海上幕僚監部が2月14日、米海軍第7艦隊と合同でBMに対処するシミュレーション演習を、横須賀基地と佐世保基地で17~24日に実施すると発表した。
 BM発射に対する警戒や迎撃能力を日米で向上させるのが目的で、日米のBMD演習は今回で7回目になる。 (時事 02/14)

 韓国国防省が3月14日、日米韓3ヶ国が14、15日に日韓両国の近海でBMDの合同演習を実施すると発表した。 2016年6、11月、2017年1月に次いで4回目になる。
 同省によれば、日米韓のAegis艦のうち、日本近海に海上自衛隊のきりしまと米海軍のCurtis Wilburが、韓国近海に韓国海軍の世宗大王が それぞれ展開し、コンピュータを使って共同で探知する。
 日韓間の情報は米軍経由で共有するとした。(朝日 03/14)

 小野寺防衛相が10月17日午前、北朝鮮を念頭に日米韓が共同でBMを探知追跡する訓練を行うとの見通しを明らかにした。
 政府関係者によると、訓練は日米韓のAegis艦が参加し、情報共有体制の強化を目指すもので、10月中にも実施する。 (讀賣 10/17)

 日米韓3ヵ国が12月11~12日に日本周辺海域で艦艇によるBM探知の合同訓練を行う。 訓練は通算6回目であるが、北朝鮮が11月に新型ICBMを発射して以降は初めて である。
 小野寺防衛相が10日、訓練には日本からちょうかいが参加し、情報共有の態勢を確認することを明らかにした。 (時事 12/10)

(オ) 住民避難

政府計画の住民避難訓練

 北朝鮮がICBMの発射試験を強行する可能性を示唆するなか、政府が万一の事態に備えた初めての住民避難訓練を、3月に秋田県男鹿市で実施することを決めた。
 訓練は、海外から発射されたBMの一部が国内に落下することを想定して行われ、全国瞬時警報システム(J-Alert)や自治体の防災行政無線を通じて情報を伝達し、 住民らに実際に頑丈な建物に避難してもらうことにしている。(NHK 01/26)

 政府が3月17日、北朝鮮のBMが日本に飛来する事態を想定した初の住民避難訓練を秋田県男鹿市で実施した。
 訓練では、政府が全国瞬時警報システムJ-Alertや緊急情報ネットワークシステム「エムネット」を通じ、秋田県と男鹿市にミサイル発射や落下予測などの情報を伝 達し、同市が防災行政無線などで屋内避難などと住民に周知し、実際に住民110人を小学校と公民館に避難させた。 (時事 03/17)

 政府関係者政府が6月8日、北朝鮮のBMによる武力攻撃事態を想定した初めての住民保護訓練を、7月にも長崎県と共同で実施することを明らかにした。 国民保護 法に基づき政府と地方自治体の役割分担を確認し、有事の際の迅速な対応につなげる。
 政府は3月の秋田県男鹿市を手始めに、ミサイルが発射された際の住民避難訓練を各自治体と実施しているが、これまではミサイルが洋上や山間地に落下するケー スを想定していたのに対し、長崎県はより人的被害が大きい場合を想定して自衛隊にも参加を要請し、避難誘導やけが人の救助に際して警察や消防と自衛隊との連携 を確認する。(時事 06/08)

 政府が、北朝鮮のBM飛来に備えた住民避難訓練を8月26日に津市で実施する。
 訓練では緊急情報ネットワークシステムで自治体にミサイル情報を伝達し、自治体は防災行政無線や携帯電話のメールを使い、屋内や窓から離れた場所に逃げるよ う呼びかける。(日経 07/28)

 総務省消防庁が8月16日、北朝鮮によるグアム周辺にIRBMを発射する計画公表を受け、上空を通過する可能性のある島根、広島、高知各県を含む中国四国地方9県 の全市町村で、18日にJアラート(全国瞬時警報システム)の訓練を行うことを全都道府県に通知した。 (時事 08/16)

自治体計画の住民避難訓練

 山形県が4月18日、北朝鮮のBM着弾を想定した住民避難訓練を行う方針を明らかにした。 近く参加する市町村を募り早期に実施したいとしている。
 訓練では、全国瞬時警報システム(J Alert)を通じて発射情報を受けた県や市町村が、行政防災無線や携帯電話の緊急速報メールなどで、住民に屋内避難を呼び 掛ける手順を確認する。(河北新聞 04/19)

 政府が6月20日、武力攻撃を受けたことを想定した初の住民保護訓練を長崎県雲仙市で7月20日に行うと発表した。
 政府は、北朝鮮がのBMが落下したことを想定した住民避難訓練を2017年3月に秋田県男鹿市などと共同で初めて行ったのに続き、同様の訓練を山口県や山形県など 4ヵ所で実施しているが、こうした訓練とは別に国民保護法に基づいた武力攻撃事態を想定した住民保護訓練を行う。 (NHK 06/20)

都内でもの住民避難訓練

 政府が12月26日、BM発射を想定した住民避難訓練を2018年1月22日に東京都文京区で実施すると発表した。
 同様の訓練はこれまで秋田、新潟、富山各県などで行ってきたが、都内では初めてである。(時事 12/26)

ウ. SM-3 Block ⅡA の共同開発

 米MDAがハワイ時間2月3日に防衛省、米海軍と協同でSM-3 Block ⅡAの初めての迎撃試験SFTM-01に成功した。
 試験ではAegis Baseline 9.C2を装備したDDG 53 John Paul Jonesから発射されたSM-3 Block ⅡAが、Kauai島のPMRFから発射したMRBM標的を撃墜した。 (MDA HP 02/03)

 防衛装備庁が2月4日、SM-3 Block ⅡA初の海上での迎撃試験を実施し成功したと発表した。
 政府は29年度の開発完了を目指し、29年度予算案にミサイルの取得費147億円を計上している。
 SM-3 Block ⅡAは、射程100km+の従来型に比べ、射程が1,000km以上になり防護範囲が飛躍的に拡大する。 (讀賣 02/04)

 米MDAと防衛省がSM-3 BlockⅡAの発射試験を行ったが迎撃に失敗した。 前回2月に行った試験では迎撃に成功している。
 試験ではMRBMを模擬した標的がハワイ時間で21日19:20にKauai島のPMRFから発射され、Aegis Baseline 9.C2を装備したDDG 53 John Paul Ponesが SM-3 BlockⅡAを発射したが迎撃できなかった。(MDA 06/21)

 MDAが7月25日、日本時間6月22日に実施たSM-3 Block ⅡAの迎撃実験失敗の原因について、人為的ミスが原因だった可能性が高いと示唆した。
 Military Times紙が当局者の話として、Aegis駆逐艦の乗組員がデータ入力を間違えたことが原因だと報じた。 (時事 07/26)

エ. Aegis Ashore の導入

高性能 BMDS 導入の検討

 グアム訪問中の稲田防衛相が1月13日にTHAADを視察し、視察後に北朝鮮の弾道ミサイル開発が進展し中国海軍が日本周辺で活動を活発化させるなか、THAAD導入も将 来の選択肢の一つだとの考えを示したものだ。
 防衛省は近く、ミサイル防衛態勢強化のための検討委員会を設置し、夏までに強化策をまとめる。(読売 01/13)

 政府筋が3月25日、政府が4月下旬からの大型連休にも開く外務防衛担当閣僚の日米安全保障協議委員会(2-plus-2)で、北朝鮮に対処するBMDSの増強を図ることを最優先課 題として提示する方向で調整に入ると共に、BM発射前に拠点を破壊する敵基地攻撃能力保有の是非を含め、自衛隊と米軍の役割分担の方向性も話し合う可能性がある ことを明らかにした。
 政府はトランプ政権下で初めての2-plus-2で最重要のテーマとしてBMDを明示し、北朝鮮の脅威は新たな段階に入ったとの認識を重ねて共有したい意向である。 (東京 03/26)

 自民党の安全保障調査会が3月29日に国防部会との合同会議を党本部で開き、北朝鮮による相次ぐBM発射を受けBMDSの強化に向けた緊急提言をまとめた。
 BMD能力の強化では政府に対し、THAADやAegis Ashoreなどの新装備について導入に向けた早期検討を始め、日本全国を守るに足る十分な数の確保に向けた予算措置 を急ぐよう求めた。(産経 03/29)

Aegis Ashore の導入決定

 防衛省が最新のBMDSを導入する場合の試算をまとめた。 それによるとAegis Ashoreは1個システム800億円程度で、日本全域の防護に2個システム程度が必要になる。
 これに対しTHAADは1個システム1,250億円程度で、6個システム必要と言う。(NHK 03/09)
【註】 :  記事のように防衛省が、Aegis Ashoreでは1,600億円で済むのにTHAADであれば7,500億円かかると公表したのであれば、防衛省はAegis Ashore採用に決めたことを意 味する。

 政府関係者が4月28日、政府がより多層的なBMD態勢へ拡充するため加える新装備としてAegis Ashoreを優先して検討する方針を固めたことを明らかにした。
 政府は数年後の配備を目指している。(東京 04/29)

 複数の政府関係者が、政府がBMD態勢強化策として、Aegis Ashoreを導入する方向で最終調整に入ったことを明らかにした。
 能力や費用対効果の面でTHAADよりも適していると判断した。(讀賣 05/13)

 稲田防衛大臣が5月15日、北朝鮮のBM脅威に対抗するためAegis Ashoreを装備する考えを明らかにした。 (JDW 05/24)

 政府関係者が6月25日、米両政府が北朝鮮が実施した5月のミサイル発射を重視し、通常より高い高度へ打ち上げるロフテッド軌道でのBM発射に対処する方向で調整 に入ったことを明らかにした。
 トランプ米大統領就任後初めてとなる日米外務防衛担当閣僚の安全保障協議委員会(2-plus-2)を7月14日にもワシントンで開き、主要議題にするという。 (東京 06/26)

 訪米中の小野寺防衛相が8月17日にマティス国防長官と会談し、Aegis Ashoreを導入する意向を正式に伝え協力を求めた。
 マティス長官は協力に応じる考えを示したという。(朝日 08/18)

 政府関係者によると、政府はAegis Ashoreの導入を決めたが、6月ごろまでは首相官邸は費用対効果が低いとAegis Ashoreのには消極的だった。 ところが8月に 訪米した小野寺防衛相がマティス国防長官に購入の意向を伝えている。
 2ヵ月余りでの方針決定に別の幹部は、最後は首相官邸のトップダウンだったと明かす。
 政府・与党内で費用対効果などの検証が十分にされたとはいえず、Aegis Ashoreの導入が2023年度予定とされる点についても、防衛省関係者は5年も経てば北朝鮮 のミサイル技術がAegis Ashoreより上回っている可能性があると疑問を呈している。(朝日 10/13)

 複数の政府関係者が12月5日、政府が30年度予算案に盛り込む予定だった1億円規模のAegis Ashore導入の調査費を、前倒しして29年度補正予算案に計上する方針で あることを明らかにした。(産経 12/06)

 小野寺防衛相が12月8日、導入を予定しているAegis Ashoreの調査費について、29年度補正予算案で要求する方針を明らかにした。 政府はAegis Ashoreの導入につ いて19日にも閣議決定する。
 30年度予算案への計上を想定していたが、改善の兆しが見えない北朝鮮情勢を踏まえ、要求の前倒しが必要と判断した。 (時事 12/08)

 Aegis Ashoreの導入に向け、防衛省が29年度補正予算案と30年度当初予算案に合わせて37億円程度を要求している。 政府は2個システムを35年度中に配備すること を目指し、12月19日にも導入を閣議決定する。
 防衛省は補正で30億円弱を確保し、29年度内にも調査などに着手したい考で、更に小野寺防衛相は10日に30年度予算案に7億3,000万円を追加要求したことを明らか にした。 30年度分は基本設計や建設予定地の測量などに充てる。(時事 12/10)

 小野寺防衛相が12月10日、Aegis Ashore関連経費7億3,000万円を30年度当初予算案に計上することを明らかにした。  関連経費の内容は、配備先の秋田市と山口県 萩市の陸上自衛隊演習場で地質調査などを実施するというもので、概算要求には金額を明示しない「事項要求」という形で盛り込んでいた。
 一方、防衛省は運用開始予定の35年度をできる限り前倒しするため、今回の30年度当初予算とは別に29年度補正予算案に20億円超規模の関連経費を計上することを 決めている。 これらの経費には米国からの技術支援費用などが含まれている。(朝日 12/10)

 政府が12月19日、Aegis Ashoreを2個システム導入し、陸上自衛隊に装備するとすることを閣議決定した。 秋田、山口両県に配備する方向で調整しており、平成 35年度頃の運用開始を目指す。
 Aegis Ashoreは陸上の固定型施設のため、Aegis艦と比べて少人数で運用でき、迎撃態勢を効率的に敷くことが可能になる。 (讀賣 12/19)

導入の課題

 防衛省は北朝鮮のミサイル発射に備えて導入を決めたAegis Ashoreを陸上自衛隊に装備する方向で調整に入った。
 だが、ミサイル防衛に習熟していない陸自が隊員を育て、専用部隊をつくるには膨大な時間やコストがかかるうえ、交代制で24時間態勢の警戒監視をするには 1個FUあたり100名規模の部隊が必要との声もある。(日経)

 防衛省が12月12日の自民党会合で、Aegis Ashoreの導入費について、1個システム1,000億円弱との見通しを示した。 これまで800億円程度と見積もっていた。
 ただAegis Ashoreに搭載するSM-3 Block ⅡAの能力を生かすには最新鋭のSPY-6 AMDRレーダを備える必要があり、防衛省幹部は更に価格上昇の可能性が十分あると 話している。
 またSM-3 Block ⅡAは1発数十億円と言われており、全体の運用コストがさらにかかるのは避けられない。 (朝日 12/12)

最優先事項としての取り扱い

 自民党の二階幹事長が、防衛省が8月26日に北朝鮮による飛翔体発射を受けて開かれた党の対策本部役員会で、30年度予算案で 関係費を要求するAegis Ashoreに ついて、最速導入に向けた準備をしていると説明した。
 二階氏は、こんなことは予算があるとかないとか言ってもらっては困ると述べ、防衛力強化のための予算確保を支援していく考えも強調した。 (時事 0/26)

配備時期

 日本が導入するAegs Ashoreの配備時期が、5年以上先の2023年度になる見通しであることがわかった。
 北朝鮮の脅威が高まるなか政府は計画の前倒しを急ぐが、最新鋭のレーダを装備できるかどうか米国から確約を得られておらず、射程や速度を向上させた新型迎 撃ミサイルの能力を最大限引き出せない可能性がある。
 メーカはすでに米軍向けの受注を抱えているという事情もある。 (ロイタ 08/30)
【註】 :  ここで言う「最新鋭のレーダ」とは、現在Aegis Ashoreが使用しているAN/SPY-1Dの後継として開発されているAN/SPY-6 AMDRのことを指し、「新型迎撃ミサイル」 は日米で共同開発中のSM-3 Block ⅡAを指すと見られる。

配備場所

 複数の政府関係者が、2023年度に運用を開始する方針のAegis Ashoreについて、主に日本海側の地域に東西1基ずつ 2ヵ所に配備する方向で検討していることを明 らかにした。
 既存の自衛隊施設内での配備を前提に候補地選びを進めており、東日本は加茂分屯基地(男鹿市)と佐渡分屯基地 、西日本は海栗島分屯基地(対馬市)、福江島分 屯基地などが挙がっている。(朝日 09/24)

 複数の政府関係者が政府がAegis Ashoreの配備先について、秋田、山口両県とする方向で最終調整に入ったことを明らかにした。 日本海側の陸上自衛隊施設に 設置し、陸自主体で運用する。
 配備先はレーダによる電波障害を避けるために広い敷地が必要とされ、陸自の演習場などが候補にあがっている。 (讀賣 11/11)

 複数の政府関係者が、秋田、山口両県への配置を検討しているAegis Ashoreを両県内の陸上自衛隊演習場に設置する方向で最終調整に入ったことを明らかにした。
 候補地には、秋田市の新屋演習場と山口県萩市のむつみ演習場が挙がっている。(讀賣 11/15)

オ. SM-6、NIFC-CA の導入

 複数の政府関係者が、政府は2023年度をめどに高度1,000km以上でBMを迎撃可能なSM-3 Block ⅡAを発射するAegis Ashoreを国内に2基を配備したい考えだが、こ れにSM-6も搭載してCMにも対処できるようにすることを明らかにした。
 中国の爆撃機が日本周辺での飛行を繰り返すなか、CMによる脅威にも備える必要があると判断した。 (讀賣 10/18)

 政府は2018年末に見直す防衛計画の大綱に、BMだけでなくCMなども迎撃対象とする新構想「統合防空ミサイル防衛 (IAMD)を盛り込む検討に入った。 Aegis Ashore 導入もその一環で、12月19日に閣議決定する。
 IAMDの中核を担うのがSM-6で、SM-3はBMにしか対処できないがSM-6はCMにも広範囲で対応できる。 政府は平成30年度予算案の概算要求にSM-6の試験弾取得として 21億円を盛り込む。
 高度なミサイルに対応するため、米軍のIAMDはAegis艦のほか、陸上設備や航空機をネットワークで統合して瞬時に情報共有するNIFC-CAと呼ばれるシステムを導入し ているため、日本の構想も順次これを導入する。(朝日)
【註】 :  IAMDとは米陸軍SMDCが中心になって進めているPatriotや近距離の防空システムを情報処理装置IBCSで連接する陸軍の防空/BMDシステムで、SM-3、SM-6、NIFC-CAと は別物である。
 SM-6はSM-2にAIM-120 AMRAAMのARHシーカを搭載したもので、ASCMなど観目線外 (NLOS)目標への射撃が可能である。 SM-6搭載艦から見えない目標に対するNLOS射撃 にはAEW機などから 目標情報を受け取る必要があり、この伝送を担うのがNIFC-CAの役割である。

カ. JADGE の更新

 防衛省が平成30年度から、BMの落下地点を予測して必要に応じて迎撃を指示する自動警戒管制システム(JADGE)を刷新して演算能力を引き上げ、探知から迎撃態勢を とるまでの時間を短縮して、ロフテッド軌道のBMなどを撃ち落としやすくする。 このため30年度予算の概算要求に107億円を計上し、34年度の本格運用開始をめざす。
 複数の目標を瞬時に識別する能力も高め、北朝鮮による2017年3月のIRBM 4発の同時発射などにも対処しやすくすると共に、SLBMや固体燃料を使ったBMなど、あらか じめ発射の兆候をつかみにくい状況での迎撃精度も向上させる。(日経 12/04)
キ. BMDS 整備計画の前倒し

 安倍首相が11月22日に参院本会議での代表質問で、BMDに対応するAegis艦を現在の4隻から平成32年度に倍増させる計画に関し可能な限り前倒しすると述べ、BMD 能力向上を急ぐ考えを示した。(産経 11/22)

ク. 将来に向けた研究

DEW の研究

 政府がBM迎撃するシステムの開発を検討している。 開発を目指すのは、ブースト段階のBMに対し航空機や艦船などから高出力レーザを照射し、熱によってミサ イルを変形させる技術で、迎撃ミサイルに比べて安価なうえ多数のBM発射にも対処が可能になる。
 防衛省は30年度概算要求に、迫撃砲弾や小型UAVなどを迎撃対象とする高出力レーザシステムの研究費として87億円を計上した。 (讀賣 09/03)

EMP/対 EMP 兵器の研究

 菅官房長官が9月7日、高高度核爆発で強力な電磁波を発生させ、地表近くの電子機器を破壊することができる電磁パルス(EMP)攻撃に北朝鮮が言及したことを受け、 対策の本格的な検討を開始すると表明した。
 防衛省は30年度予算の概算要求でEMP攻撃の研究費14億円を計上し、32年度までにEMP弾頭を試作して33年度に性能評価試験を実施する。 試験での電子機器 への影響を調べることによって防護策を検討する。(毎日 09/07)

(8) 近代戦様相への対応

ア. 宇宙防衛

スペースデブリや衛星破壊兵器の監視

 防衛省が、スペースデブリや衛星破壊兵器を監視する専用の地上レーダを開発し設置する準備を始めた。 北朝鮮BMの警戒など人工衛星は安全 保障上の重要性が 高まっており、防衛省自衛隊として独自に宇宙監視に取り組むことが不可欠と判断した。
 宇宙監視レーダはシステム設計の最終段階で、防衛省は今月末に締め切られる平成30年度予算案概算要求にレーダの整備費を盛り込み、35年度からの運用を目指 す。(産経 08/17)

宇宙監視レーダの設置

 防衛省が、日本の人工衛星の運用を妨害する中国のASATやスペースデブリを監視する航空自衛隊初の専用レーダを山口県内の既存の自衛隊施設に設置ことが分か った。 11月中にも地元自治体に正式に打診する。
 レーダの情報を基に衛星の軌道変更などの対策を検討する分析部門は都内の空自基地か防衛省本省に配置することを検討している。
 防衛省は平成30年度予算案概算要求に宇宙監視システムの設計費として44億円を計上しており、35年度からの運用を目指している。 (産経 11/04)

 防衛省が中国のASATやスペースデブリを監視する専用レーダを山口県山陽小野田市の海上自衛隊山陽受信所を配備地を決め、同市は11月21日に市内で市民向けの 説明会を開いた。
 防衛省は配備候補地について経度的に静止衛星の周辺を監視することに適している山口県の中から探していたが、周囲に山などの遮蔽物がないためレーダの性能 が十分発揮できる一方、住宅が少なく電波干渉の影響もない場所にある海自山陽受信所を適地と判断した。 (産経 11/21)

宇宙監視部隊の創設

 防衛省が、宇宙監視専門部隊を航空自衛隊に新設することに向け、準備要員の配置も始めた。 (産経 08/17)

シュリーバー多国間机上演習参加

 内閣府の宇宙政策委員会が12月1日にまとめた宇宙基本計画の行程表に、防衛省が平成30年度に人工衛星への攻撃などを想定した米空軍主導の多国間の机上演習に 初めて参加することを盛り込んだ。 防衛省は参加について、宇宙空間での日米協力の強化や、わが国の宇宙システムの機能保証の向上の観点から有意義だと説明 している。
 参加するのは米空軍宇宙司令部が2018年秋に行う「シュリーバー演習」で、この演習は2001年に始まり、米英や豪州、カナダなどが参加して、人工衛星などに対す る軍事攻撃やサイバ攻撃などを想定し、対処法などを机上で訓練している。(毎日 12/01)

イ. 宇宙利用

防衛用通信衛星

 防衛省初のX-band通信衛星を載せたH-2A 32号機が、1月24日午後に鹿児島県の種子島宇宙センタから打ち上げられた。 これまで防衛省は商用衛星を利用してき たが、寿命が近づいていることから、自前の衛星を32年度末までに3基を打ち上げる。 3基すべての運用が始まると通信容量は現在の4倍に増える。
 島嶼防衛をにらみ、陸海空の三自衛隊を機動的に運用する通信基盤を整え、離島などでも安定した通信を確保できるようになり、更に海外に派遣した部隊との通信 も向上が見込まれる。(ロイタ 01/24)

 防衛専用通信衛星きらめき-2 (DSN-2)が1月24日に種子島宇宙センタからH-ⅡA 32号機で打ち上げられた。 DSN-2は太平洋上空で、2018年に打ち上げ予定のDSN-1は インド洋上空、2020年打ち上げるDSN-3は日本上空に位置する。
 X-bandのDSN-2はNECが開発しMELCOが製造したもので、NEC、NTTコミュニケーション、SKY Perfect JSATの合弁であるDSN社が運用する。 (JDW 02/01)

準天頂衛星

 日本版GPS衛星「みちびき」の4号機が10月10日07:01に種子島宇宙センターからH-2A 36号機で打ち上げられ、打ち上げ28分後の7:30頃、高度273km付近で予定の軌 道に投入し、打ち上げは成功した。
 「みちびき」の打ち上げは8月の3号機に続き4基目で、今回の打ち上げにより4基体制が整い、2018年春に本格運用が始まればGPSの位置情報の誤差を現在の最大 10mから数センチにまで小さくできるという。(NHK 10/10)

ウ. サイバ戦

囮利用の計画

 総務省は8月29日、手口が多様化しているサイバ攻撃に迅速に対処するため、囮を使って未知の攻撃パターンを早い段階で把握し、被害防止に役立てる実証実験を 始める計画を明らかにした。 囮となる複数のネットワークはインターネット上に構築される。
 平成30年度に着手する予定で、30年度予算の概算要求に2億円のシステム構築費用を盛り込む。(時事 08/30)

(9) 装備行政

ア. 研究開発体制の見直し

 自民党の安全保障調査会が6月22日、防衛産業や技術政策などに関する提言を稲田防衛相に提出した。
 研究開発では、電磁砲など戦闘のあり方を根底から覆すような最先端技術への投資が重要だとした上で、安保に関わる研究開発の司令塔となる「安全保障・科学技 術戦略会議(仮称)」を内閣直轄で設けるべきだとしている。(産経 06/23)
イ. 装備品取得と新装備

(ア) 航空機

a. ATD-X / F-3

X-2技術検証機の試験

 2016年4月に初飛行したX-2技術検証機は、ステルス性などで目標を上回る成果を挙げ飛行試験を完了した。
 MHI製のX-2にはTVCやfly-by-lightなどの新機能が盛り込まれている。(AW&ST 11/27)

F-3 設計案の状況

 防衛省は2030年代に装備化する次期戦闘機を国産するか否かを2018年4月に決定するが、国産戦闘機F-3の最新案である26DMUはF-22より大型になる可能性がある。
 防衛省は全長3.7mのMeteorや、次期対艦ミサイルASM-3を機内弾庫に収納する必要から、26DMUは全長20m、翼端長16mと、F-22の18.9m、13.6mより大型になり、自重 もF-22の19.7tより重くなるとみられる。
 IHI社が開発しているエンジンは極めて細くなり、1,800゚Cの高温で作動し、3D可動式ノズルが取り付けられる模様である。 (AW&ST 16/12/26)

 防衛省が公表した将来戦闘機の最新形状案26DMUでは、翼形状が今までの案(25DMU)より従来形状の低アスペクト比型に変化している。
 アスペクト比を大きくすると航続距離や滞空時間は延びるが、超音速飛行時の抵抗が大きくなる欠点がある。 (AW&ST 11/27)

F-3:国内開発の見通し

 防衛省が次期戦闘機F-3開発決定の先送りを検討している。
 2018年夏までに国産、国際共同開発、輸入のいずれかから選ぶ方針だったが、将来にわたって日本の航空戦力が優位を保つための戦闘機の姿を明確に描けていな いためで、次期中期防に具 体的な事業として盛り込まない公算が大きいという。
 防衛省は31年度から始まる中期防で事業化することを目指し、2016年から2度にわたりRfIを発簡して情報提供を求めたが、書類に目を通した企業関係者は「どん な戦闘機を作りたいのか、まったく分からない」と話している。(ロイタ 11/13)

 航空自衛隊は2030年代に退役するF-2の後継を新規開発するか、海外の機体を改修するか、あるいは完全輸入するかの決定を2019年3月までに行うが、国内開発す るとしてもMHI社にはF-2を開発した1992年に340名いた設計技術者が20%程度しか残っていない。
 当時はこのほかに、GD社から70~80名の技術社が参画したほか、KHI、FHIの各社からも270名が設計に参加していた。 (AW&ST 11/13)

 防衛装備庁の報道官が11月15日、ロイタ通信が13日に報じた「次期戦闘機F-3の決定延期」との報道を認めた上、まだ何も決まっていないことを明らかにした。 (JDW 11/22)

 2030年代中頃に退役するF-2 92機の後継となる将来戦闘機は、2019年4月からの次期防に盛り込むためには国内開発するか否かの決定を2018年6~8月に行う必要 があるが、ロイタ通信は4名の消息筋の話を元に決定が延期される見通しであると報じている。
 これに対して与党の有力議員である宇都隆史氏は、これら情報筋は全て国内開発反対派であるとして記事の内容を否定している。
 ただ、有力な海外連携先とみられる英国はTyphoonの退役を2040年と見ているうえ、2年後に開発を開始するには資金がない。 (AW&ST 11/27)

F-3 計画の優先順位低下

 政府が12月22日に決定した平成30年度の防衛予算案に、将来戦闘機F-3の国産開発に必要なエンジン試験装置の取得費を計上することを見送った。
 BMDの強化など足元の脅威の対応に追われるなか、先の長いF-3計画の優先順位が下がっていることが背景にある。
 防衛省は千歳市に航空エンジンの試験施設を保有しており、P-1のエンジンもここで試験したが、最大出力で行う最終試験はこの試験場の性能では難しく、米空軍 の施設を借りざるを得なかった。
 防衛省はP-1用エンジンの今後の改良に備え、30年度に大型エンジンの試験装置の取得を計画し、2017年夏の概算要求で74億円を盛り込んだが、関係者によるとF-3 を国産開発する場合を想定し、推力15t級の戦闘機用エンジンの試験に利用することも視野に入れていた。 (ロイタ 12/22)

b. F-35A

 国内で組み立てられたF-35の1号機が6月5日に三菱重工業小牧南工場でロールアウトした。  Lockheed Martin社製の機体はすでに4機が引き渡されており、航空自 衛隊のパイロットがアリゾナ州の空軍基地で訓練を行っている。
 防衛省は36年度までに42機を取得する計画で、残りの38機は国内で組み立てられ、29年度中に2機がに納入される。 (産経 06/05)

 日本で組み立てられたF-35Aの一号機AX-5が、6月5日にMHI社に設置された最終組立点検施設(FACO)で披露された。
 F-35のFACOは最初Fort Worthに建設され、次いでイタリアに建設されているだけで、日本が三番目になる。
 米国防総省は2014年に、アジア太平洋北部の機体とエンジンの高度整備施設として、MHI社のFACOを指定している。 (DN 06/06)

 日本で組み立てられたF-35Aの1号機AX-5が6月5日にロールアウトした。 42機調達されるF-35Aは38機が名古屋に建設された最終組立点検施設(FACO)で組み立てら れる。
 AX-5の組み立ては2015年12月にFACOで開始されていた。(JDW 06/14)

 米国防安全保障協力局(DSCA)が10月3日に議会に、国務省がAIM-120C-7 AMRAAM 56発を日本に$113Mで売却することを承認したと報告した。 (DN 10/04)
【註】 :  F-35は機内弾庫の広さから国産のAAM-4が搭載できず、AIM-120C-7 AMRAAMを装備することになっている。

 政府関係者が、防衛省がF-15の後継としてF-35を数十機追加調達する検討に入ったことを明らかにした。
 防衛省は既にF-4の後継として42機のF-35導入を決めているが、トランプ米大統領が2017年11月に来日した際にF-35の購入を促した経緯があり、追加調達には貿易 赤字解消を求める米国の圧力をかわす側面もある。(毎日 12/31)

c. E-2D

 日本が発注したE-2D 2機の一番機が11月13日に初飛行した。 2機は 2018年中に納入される。(360 11/16)

 日本向けのE-2Dが11月13日にフロリダで初飛行した。 引き渡しは2018年末までとなっている。
 引き渡し後E-2Dは、既に就役しているE-767 4機及びE-2C 13機と共に任務に就く。(JDW 11/22)

(イ) 艦 艇

a. 新型護衛艦

 防衛省が島嶼防衛強化のため計画している海上自衛隊の新型護衛艦について、2018年度から4年間で8隻建造する方針を固めた。 数に優る中国軍が東シナ海で動き を活発化させるなか、日本も建造ペースを年2隻に倍増する。
 主契約者に選ばれた1社が8隻すべての元請けに、受注を逃したメーカも下請けとして参画することで設計を統一してコストを抑制する一方、仕事を振り分けて国 内における護衛艦の造船基盤が弱体化するのを防ぐ。(ロイタ 02/17)

 ロイタ通信が2月17日に関係者3名の話として、防衛省が今まで5,000t級駆逐艦を毎年1隻建造していたのを、FY18から毎年3,000t級フリゲート艦2隻を建造し、東シ ナ海に掃海対潜能力を有する小型安価艦8隻を投入すると報じた。(JDW 03/01)

 防衛省は平成30年度に従来より船体を小さくした新型護衛艦2隻の建造に着手する。 基本装備を維持し速力は通常の30ktとしながら排水量は2割少なくし、建造 コストも従来の700億円から500億円程度に減らす。 建造期間は4年とする。
 また防衛省で基本設計するのではなく、設計を含めた企画提案を民間に委託することにし、4月にジャパンマリンユナイテッド、三井造船、三菱重工業の3社と提 案契約を結んだ。
 26~30年度の中期防衛力整備計画で5隻の護衛艦建造するが、29年度までの実績は3隻で、残り2隻を小型艦とする。 (日経 06/05)

 防衛装備庁が8月9日、30年度以降に建造する新護衛艦について、三菱重工業を主事業者に、下請けに三井造船を選定したと発表した。
 新護衛艦は対空対処能力に加え掃海艇が担ってきた機雷処理能力も備える。
 同省は30年度以降に導入する護衛艦について、周辺海域の防衛などを機動的に行うよう、多様な任務への対応能力と船体のコンパクト化を両立させる方針を示して いる。(時事 08/09)  防衛装備庁が次期護衛艦について8月9日、主契約社を三菱重工に指名し、三井造船がその下請けになると発表した。
 次期護衛艦は全長130m、排水量3,900tで、CODAG推進で速力30ktの性能を持つ。
 主装備はMk 45 Mod 4 5吋62口径砲とセル数が明らかにされていないVLSとキャニスタ発射型対艦ミサイル、RIM-116 RAMを発射するSeaRAMで戦術データリンクや 衛星通信、可変深度ソナー(VLS)も装備する。
 MHI社はオーストラリアのSEA 5000 Future Frigateも視野に入れている。(DN 08/18)

 防衛装備庁が次期護衛艦30DDの主契約社としてMHIを指名した。
 30DDは全長130m、排水量 3,900t、単価は500億円で、当初分は8隻であるが、最終的には20隻が建造されると見られる。
 主機はRolls-Royce社製MT30ガスタービン1基と、MAN社製12V28/33 STCディーゼルエンジン2基になる。 (JDW 08/30)

b. 新型潜水艦

 海上自衛隊が8隻保有し、4隻を建造中のそうりゅう型潜水艦のうちSS511とSS512の2隻に、世界で初めてリチウムイオン電池を搭載する。
 リチウムイオン電池はGS Yuasa社製で、2隻はそれぞれ2020年と2021年に就役する。(JDW 03/08)
【註】 :  リチウムイオン電池を搭載する2隻のうち26年度艦のSS511は2,950tのそうりゅう型であるが、27年度艦のSS512は3,000tの新型である。
c. 新造艦の就役

せきりゅう

 KHI社が3月13日、そうりゅう型潜水艦の8番艦せきりゅうを納入した。
 排水量4,100tのそうりゅう型潜水艦は水上12kt、水中20ktの性能を持ち、89式重魚雷又はUGM-84C Harpoonを6門ある533mm魚雷発射管から発射する。 (JDW 03/22)

DDH かが

 JMU横浜工場で建造していたDDH 184 かがが3月22日に就役した。 かがはいずも型の2番艦で全備排水量24,000t、速力30kt、SH-60K Seahawk対潜 ヘリとMCH-101掃海ヘリを搭載する。(JDW 03/29)

あわじ

 JMU横浜工場で建造した掃海艦(MCMV)あわじが3月16日に就役した。 あわじは同型の一番艦で排水量は690t、14ktの速力を持つ。 (JDW 03/29)

(ウ) Global Hawk の導入

 防衛省が現中期でGlobal Hawk 3機を導入する計画であるが、当初の見積もりで510億円だった導入コストがレーダ機器整備などに追加費用がかかるとして、23% 増の630億円に膨らむことが判明したという。
 同省の規則は、導入コスト15%増で事業の見直し、25%増で中止の検討をそれぞれ義務付けているため、同省は中止も含めて見直しを検討している。 (時事 08/21)
(エ) その他の新装備開発

C-2 輸送機

 航空自衛隊が3月30日に美保基地で、C-2配備開始の記念式典を行った。 同基地は28日に3機を配備し、2018年9月まで運用試験を行う。
 12月からは一部任務も開始して2020年度までに10機体制とし、順次C-1と入れ替える。(産経 03/30)

 航空自衛隊美保基地で3月30日に、C-2輸送機3機が配備された式典が行われた。 同基地には2021年3月末までに10機が配備されることになっている。
 全長44mで30tの搭載能力と5,600kmの航続距離を持つC-2は、C-1及びC-130の後継機として60機の装備が計画されている。 (JDW 04/12)

新輪装甲車

 防衛省が、96式装輪装甲車の後継となる装輪装甲車(改)を公表した。
 新型装輪装甲車は1月10日に小松製作所から引き渡されたもので、全長8.4m、幅2.5m、全高2.9m、重量20tで、最高速度100km/hの性能を持つ。 乗車定員は乗組員3名 を含む11名になっている。
 96式に比べてエンジンがパワーアップされ、抗湛性が高められている。(DN 01/13)

 防衛省が96式APCの後継となる8x8装輪APCの試作車を公表した。 小松が製作したもので、2016年10月10日に防衛省に納入された。
 試作車は全長8.4m、全幅2.5m、全高2.9mで、乗員を含め11名が搭乗できる。
 陸上自衛隊は現在389両の96式APCを装備している。(JDW 01/25)

(オ) その他の装備導入

AIM-120C-7

 米国防安全保障協力局(DSCA)が10月4日、航空自衛隊へのAIM-120C-7 56発を$113Mで売却することを承認したと発表した。 空自は既に2014年に購入した AIM-120C-5 17発を装備している。
 今回購入するAIM-120C-7はAMRAAMの最新型で、アクティブレーダシーカはAIM-120Aと同じであるがロケットモータはAIM-120C-5より大型になっている。 (JDW 10/11)

ウ. Mast Asia 2017 展示装備品

(ア) 艦 艇

防衛装備庁の三胴型多目的艦案

 6月12~14日に東京で開かれたMAST Asia 2017展で、防衛装備庁が三胴型多目的艦案の詳細を公表した。
 この艦は全長92m、全幅21m、喫水4m、排水量1,500tで、速力35kt以上、15ktでの航続距離3,500nmの性能を持つ。
 主砲は76mm砲で、艦尾にはCIWSを搭載する。 重量14t以内のヘリを搭載できる。(JDW 06/21)

三井造船提案の LPD
 6月12~14日に東京で開かれたMAST Asia 2017展で三井造船が、おおすみ型の後継となるLDPの案を公表した。
 提案LPDは全長210m、全幅30m、喫水7m、排水量16,000tで200名の兵員とV-22 Osprey 2機を収納する格納庫を持つ。
 武装としては主砲の搭載砲台と、CIWSの搭載砲台2ヵ所を持つ。(JDW 06/21)

Caimen-90高速揚陸艇

 英国のBMT社が三井造船と共同で海上自衛隊向けに、6月12~14日に東京で開かれたMAST Asia 2017展にCaimen-90高速揚陸艇を公開した。
 Caimen-90は全長30m、排水量203tで90tの積載能力がある。
 速力は空荷時40kt、満載時22ktという。(JDW 06/21)

三井造船の戦車揚陸艇4種類

 6月12~14日に東京で開かれたMAST Asia 2017展で三井造船が海上自衛隊の要求に応じた戦車揚陸艇(LCT)4種類を公開した。
 そのうち3種類は英国のBMT社との共同で、残りの1種類は三井造船独自の設計である。
 4種類は排水量が70t、116t、750t、1,000tで、全長は25m 、30m、76m、80mになっている。(JDW 06/21)

(イ) 水陸両用戦闘車両

MHI-AV

 6月12~14日に東京で開かれたMAST Asia 2017展でMHI社が、陸上自衛隊に提案している水陸両用戦闘車の詳細を公表した。
 MHI-AVは乗員15名で、水上航行間は車輪及び履帯を引き上げて水の抵抗を軽減するという。 (JDW 06/21)

(ウ) その他の装備

水中接敵警報装置

 6月12~14日に東京で開かれたMAST Asia 2017展でNECが、水中接敵警報装置(UIWS)を展示した。  展示したUIWSは従来システムを小型化したもので、1km以内で360゚の捕捉ができる。 (JDW 06/21)

エ. 武器輸出推進

(ア) インドへの輸出商談

US-2 の輸出商談が難航

 政府が進めてきた救難飛行艇US-2のインドへの輸出交渉が暗礁に乗り上げている。 インド政府との交渉開始から5年たつが、機体価格の高さなどを理由にイン ド側の熱意が冷めつつあり、頓挫する恐れが出てきた。
 US-2の輸出交渉が難航している最大の理由は1機百数十億円に上る価格で、インドはロシアとカナダの飛行艇の導入を比較検討しており、価格は30億~40億円と 安い。(産経 05/31)

潜水艦の輸出商談

 インドの主要メディアが7月25日までに、政府が高性能のディーゼル潜水艦6隻を建造する計画を始動させたと報じた。
 INR700B(1兆2,000億円)を投じ、連続1ヵ月水中活動が可能な2,500t級のステルス潜水艦6隻をインドで建造する計画で、日本を含む6ヵ国の企業が関心を寄せてい るという。
 インド洋への進出を進める中国や対立が続くパキスタンを念頭に置いているとみられる。 (時事 07/25)

 インド海軍がProject 751としてAIP推進の潜水艦6隻の建造について世界の6社にRfIを発簡した。 印海軍は各社からの回答を待ってRfPを発簡することになる。
 RfIを受領した6社には、露仏独瑞西の他に三菱重工業も入っているが、印国防省当局者によると日本製潜水艦は高価と思われることからMHIが候補に挙がったのは 意外であるという。 Project 751は戦略的パートナーとしての国内企業により国内で建造される。
 この潜水艦は最先端技術の長魚雷や対地ミサイルのほか、ヘリを撃墜するための潜水艦発射SAMの装備も求められると見られている。 (DN 07/26)

 インド海軍が6隻の建造を計画しているAIP推進潜水艦 の建造で、MHIを含む海外6社にRfIを発簡した。 回答期限は9月中旬になっている。
 インドは国内の戦略パートナでのライセンス国産を希望しており、全契約額の30%を国産したい言う。 (JDW 07/26)

 インドのメディアによると、日本とスペインは、インドの潜水艦計画の入札に参加しないことを決めたという。
 この計画は、海外の建艦企業がインド国内企業と共同で、先鋭ステルス潜水艦6隻をINR700B(1兆2,000億円)で建造するというもので、フランス、ドイツ、ロ シア 、スウェーデンの4社がインドからの情報照会に対して返答したが、日本の三菱重工と川崎重工とスペインのナバンティア社からの回答はなかったという。 (RC 10/31)

 総額INR500B ($7.81B)にのぼるインド海軍のディーゼル推進潜水艦(SSK)計画Project-75(I)から、関心を示していた6社のうちの2社、MHI/KHIグループとスペイ ンのNavantia社が撤退した。(JDW 11/01)

(イ) 東南アジア諸国への働きかけ

各国国防当局者を集めた会議を開催

 防衛省が東南アジア諸国への装備輸出を進めるため、各国の国防当局者を集めた会議を6月15日に開く。 会議は12日から幕張で始まる海洋安全保障の装備展示会 MAST 2017の機会を利用して行われ、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアの当局者が出席を予定している。
 会議で各国から具体的な要望を聞き、需要を掘り起こしたい考えである。
 日本は装備輸出を通じ、中国が影響力を強める南シナ海沿岸国の能力強化を目指しているが、これまでに実現したのは、フィリピンに中古の練習用航空機を貸与 した程度である。(ロイタ 06/12)

タイとの技術協力

 タイと日本の装備品の輸出や技術移転に関する合意が、締結に近づいている。
 Jane'sは、防衛生産協力には対空レーダ、通信システムのほか、P-1やC-2も対象になると見ている。 (JDW 03/01)

 防衛省が航空自衛隊の地上防空レーダFPS-3のタイへの輸出に向け、9月下旬に予定される入札に参加する。
 防衛装備移転三原則の閣議決定で防衛装備輸出に道を開いて以降、東南アジア向けの大型輸出計画は初めてで、東南アジアに自衛隊の基幹装備を輸出できれば中 国に対する強い牽制となるが、タイが対中配慮から導入に二の足を踏むとの懸念もある。(産経 08/27)

東南アジア諸国への防衛装備の輸出準備

 防衛装備庁の幹部がバンコックで開かれたD&S 2017展の会場で11月8日、日本政府が東南アジア諸国への防衛や安全保障装備の輸出のに向け下準備を進めている ことを明らかにした。(JDW 11/15)

(ウ) 中東地域への武器輸出推進努力

C-2 輸送機の UAE への輸出商談

 政府がC-2輸送機のUAEへの輸出する検討をしている。 防衛省幹部によると、UAE側からC-2複数機を購入したいとの意向が届いているため、防衛省や経済産業省 が技術情報を提供しており、今後は価格や購入機数を含めた交渉を本格化させており、輸出に必要な「防衛装備品技術移転協定」の交渉も近く始める。
 日本が海外に完成品の防衛装備品を輸出したことはなく、実現すれば初のケースになるが、防衛装備移転三原則は装備品を紛争当事国に輸出することを禁じてお り、UAEはサウジアラビアが主導する イエメンへの武力侵攻に参加している。
 防衛省幹部の一人は、UAEは紛争を主導する立場ではないと、三原則に抵触しないとの認識を示している。 (日経 08/27)

 航空自衛隊が10月6日、新型輸送機C-2の運航訓練を初めて国外で実施すると発表した。  途中、11月8日~17日までジブチとUAE、25日~12月1日までニュージー ランドに派遣し、UAEではドバイで航空展に地上展示の形で参加する。
 小野寺五典防衛相は6日、このような機会を通じて日本の技術の高さを各国に関係者に知ってもらうことも重要と考えると述べた。 (ロイタ 10/06)

 UAEのドバイで11月12日、中東最大の航空展示会「ドバイ航空展」が始まり、日本からはC-2の実機を海外で初めて展示した。 UAEなどが輸入に興味を示してい るとされ、各国の防衛関係者に売り込みを図る。
 現地で取材に応じた大野防衛政務官は、我々の技術を世界にアピールする絶好の機会と述べ、輸出については「売ることが主目的ではなく、世界や日本の安全 保障環境を良くしていくことだ」と強調し、一定の条件を満たせば武器輸出を認める「防衛装備移転三原則」を踏まえて判断するとした。
 3月に配備が始まったばかりのC-2は積載上限の36tを積んでも4,500kmの飛行が可能で、防衛装備庁はAirbus社のA400Mより航続距離や飛行速度などの面で優れて いると説明している。(日経 11/12)

 11月12~16日に開かれたドバイ航空展でC-2が展示された。 C-2の速力はMach 0.82で、積載上限の36tを積んでも4,500kmの飛行が可能で、価格は200億円と言 われる。
 航空自衛隊に20機が装備される計画で既に11機が発注されており、3月に3機、11月にはもう1機が納入される。
 UAEやニュージーランドなどへの輸出も見込まれている。(DN 11/12)

 防衛省がドバイ航空展にC-2を派遣し、湾岸諸国への売り込みに力を入れている。
 会場では開発責任者のCOL Omineが、GCC諸国への売り込みに特に力を入れていることを明らかにした。 (JDW 11/22)

 2015年に英国へのP-1輸出に失敗した日本は、3月に航空自衛隊で正式に就役したC-2の輸出に力を入れており、2017年のドバイ航空展に実機を出展した。
 多くのGCC諸国は既にC-17の様な大型輸送機を導入しているが、ヨルダン、サウジアラビア、UAEなどでは依然として旧式のC-130を保有している。
 C-2はC-1の3倍、C-130の2倍の搭載能力があるという。(AW&ST 11/27)

中東諸国との防衛協力を検討

 防衛省が8月29日、装備品の輸出を念頭にUAEとの防衛協力を検討していることを認めた。 UAEへの輸出が協議されているのはC-2輸送機で、日本政府は既に技術 資料を提供しているという。
 日本政府は2016年末にサウジアラビアと同様のMoUを結んでいる。(JDW 09/06)

(エ) その他の武器輸出推進努力

ニュージーランドとの商談

 政府はニュージーランドにP-1哨戒機とC-2輸送機の輸出交渉に入った。 欧米の機種も候補に挙がり、夏にも機種決定が行われる。
 政府は防衛装備品の輸出条件を大幅に緩和したが実績は乏しく、2016年は4月にオーストラリアの潜水艦受注競争でフランスに敗北し、2015年11月には英国向けP-1 商戦でも米国に敗れていたことから、NZへの輸出が実現すれば初の大型案件になる。(日経 01/03)
【註】 :  政府は2016年11月にに多国間共同訓練に参加するため、P-1をニュージーランドに派遣したが、派遣されたP-1は14日未明にNZで起きた地震に際し、孤立した世帯 の確認などの国際緊急援助活動を行った実績がある。

 KHI社が防衛省と連携して、ニュージーランドに対し1960年代中頃から装備しているP-3K2及びC-130の後継としてP-1とC-2を売り込んでいる。
 ニュージーランドは2018年中頃に、これら後継機の業者選定に入る。(JDW 01/11)

 防衛装備庁がP-1哨戒機をニュージーランド(NZ)に輸出する計画は、NZがP-8の導入を内定したと見られることから敗色濃厚となったことが7月8日に分かった。
 平成26年の防衛装備移転三原則の閣議決定で輸出に道を開いたが、そうりゅう型潜水艦の輸出などに失敗し、NZへのP-1輸出に失敗すれば3回連続で受注を逃すこと になる。(産経 07/09)

US-2 後継機 (US-3) の検討

 防衛省が、救難飛行艇US-2の後継機の検討に本格着手した。 後継機はUS-2の性能を維持しながら機体の価格を引き下げる方針で、名称はUS-3が考えられる。
 防衛省関係者などによると、防衛装備庁や海上幕僚監部は、新明和工業との間で後継機の基本構想に関する検討を開始している。
 後継機開発は政府の財政負担を減らすと同時に、インドや東南アジア諸国への輸出促進や安全保障面での協力強化にもつなげる狙いがある。 (産経 02/03)

オ. 技術協力、共同開発

「富士山会合」と日米防衛技術協力

 安全保障や国際関係について日米の元政府高官らが話し合う日本経済研究センタと日本国際問題研究所共催の国際会議「富士山会合」が10月29日に東京都内で開か れ、「サード・オフセット戦略と日米協力」のパネル討論では、防衛技術での日米協力の進展を期待する声が目立った。
 28日に東京都内で始まり、29日午後に閉幕した今回が4回目の富士山会合では、核やミサイル開発問題で緊迫する北朝鮮問題などが主な議題となった。 (日経 10/29)

英国との戦闘機搭載次世代ミサイルの共同研究

 政府が、英国と進める戦闘機搭載次世代ミサイルJNAAMの共同研究を平成29年度に完了させる方針を固めた。
 JNAAMは、欧州6ヵ国が共同開発したAAM Meteorに搭航空自衛隊のAAM-4の技術を組み合わせる。
 政府は武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則に基づき、2014年7月に国家安全保障会議(NSC)で共同研究を承認し、同年11月に共同研究に入った。 (産経 01/16)

 日本が英国とのミサイル技術協力を望んでいる。
 JNAAMと呼ばれる計画はMeteor BVRAAMにMELCO社製のシーカを搭載するもので、2014年に開始され2018年3月に完了することになっている。 (JDW 03/22)

 日英両政府が12月14日にロンドンで開く外務防衛担当閣僚級協議(2+2)で、F-35などへの搭載を見込んだAAMの共同開発に向けた連携を確認し共同文書に明記する。
 これまでの共同研究から共同開発に格上げするもので、量産に至ればドイツやフランスへの輸出も検討する。
 2014年に決めた防衛装備移転三原則に基づくもので、準同盟国に位置付ける英国とのAAM共同開発は日本の防衛装備政策の大きな転換点になる。 (日経 11/24)

 小野寺防衛相が11月24日、AAMの日英共同研究を29年度で終了し、30年度は共同開発に格上げして試作と試験を実施すると述べ、共同開発に踏み出す意向を示した。
 日本のシーカ技術と英国のエンジン技術を組み合わせ、射程が長く命中精度も高い新型ミサイルの開発をめざすもので、日英は2014年11月にAAMの共同研究を始め シミュレーションを重ねてきた。(日経 11/24)

 小野寺防衛相が11月24日、現在日英で進めているAAMの共同研究を2018年に共同開発に移行させるため、73億円を計上したことを明らかにした。
 量産配備の決定は2020年代初期に行われるという。(JDW 12/06)

英国との次世代ステルス機を共同研究

 日英政府は、次世代ステルス戦闘機を巡る技術で共同研究を検討 する覚書を交わす。 次世代ステルス戦闘機に求める性能や両国がもつ関連技術の情報を交換し、 2017年秋までに実際に共同研究を始めるか判断する。 日本がステルス戦闘機を巡る共同研究をするのは米国以外では初めてである。
 日本は2018年度中に次期主力戦闘機を国産するか国際共同開発するかを判断するが、日本はステルス関連技術を生かし、既に国産実証機X-2を開発し、実証試験を進 めている。 英国は日本の技術力に注目し日本と共同開発の可能性を探ると見られる。 (日経 03/16)

 日本と英国が3月16日、次世代ステルス機を共同研究することについての覚書を締結した。 2017年秋までに共同開発に進めるかどうかを判断する。
 この出来事は中国にも大きな影響を与えそうで、中国メディアの今日頭条は23日、日本が英国と次世代ステルス機の共同開発に乗り出す可能性を紹介しつつ、J-20 は将来かなり手強い相手と対戦しなければならなくなると論じる記事を掲載した。(SC 03/25)

 将来戦闘機の日英共同開発が不発に終わっても、BAE Systems社がMHIに協力する可能性がある。 その場合でも日本側は技術提供だけでなく開発費の分担も要求す ると思われる。 この点がフランスとの間でもネックになっている。(AW&ST 04/03)

 防衛省が3月中旬に声明で、日英が次世代戦闘機の共同開発で合意したことを明らかにした。(JDW 04/05)

機雷探知技術の日仏共同研究

 フランスを訪問中の稲田防衛相が1月5日にパリでルドリアン仏国防相と会談し、水中に設置された機雷の探知技術について日仏両国で共同研究を開始することで合 意した。
 共同研究では両国が強みを持つ技術を持ち寄り、機雷探知能力を備えた遠隔操作が可能なUUVの開発を目指すもので、2016年12月に防衛装備 品共同開発に関する政 府間協定が発効して以降、初の具体的な協力案件となる。(時事 01/06)

イタリアとの防衛装備品技術移転協定締結

 岸田外相とピノッティ伊国防相が5月22日に外務省で会談し、防衛装備品の共同開発や生産を可能とする防衛装備品の技術移転協定に署名した。
 日本政府が同様の協定に署名したのは米国や英国などに続き7ヵ国目になる。(讀賣 05/22)

ドイツとの防衛装備品技術移転協定締結

 複数の政府関係者が、日独政府が7月17日に防衛装備品技術移転協定を結んだことを明らかにした。 協定はベルリンで駐独大使と独国防次官が署名した。
 防衛省関係者によると、陸自の離島防衛強化に備え、戦車と装甲車の機能を持つ機動戦闘車の開発などに力を入れるのに必要と判断した。 この関係者は、戦車 技術力の高いドイツと武器開発することは今後のプラスになると話した。
 防衛装備品技術移転協定を締結したのは米英仏などに続き8ヵ国目だが、今回はドイツ側の希望で発表を見送った。 (朝日 07/19)

ウクライナとの防衛技術協力

 日本とウクライナが防衛技術の協力を進めようとしている。
 両国の協議は8月10日に真部防衛審議官がキエフを訪問して行われた。(JDW 08/23)

カ. 防衛技術基盤の強化

政府の検討

 政府の科学政策の方針を決める安倍首相を議長にした総合科学技術・イノベーション会議が、宇宙やサイバなどの分野を中心に民生分野の科学研究を軍事技術の推 進につなげる具体策の検討をを2月中にも開くかを含め、議論の進め方を調整している。
 日本の科学研究は戦後、軍事と一線を画してきたが、近年は軍事研究との距離が近づいている分野があり、その傾向が強まる可能性がある。 (朝日 02/03)

安全保障技術研究推進制度を国際的な制度へ拡張?

 防衛装備庁が、防衛装備品に応用できる先端研究を大学などから公募して研究委託費を出す「安全保障技術研究推進制度」を国際的な制度へ拡張する検討を始めた。
 同制度には「研究代表者は日本国籍が必要」などの公募規定があり、対象は日本の大学や研究機関や企業に限られているが、同庁は安全保障に関わる技術の優位性 を維持向上するために幅広く先端的な基礎研究を募る必要があると判断した。(毎日 06/14)

 防衛装備庁が、防衛装備品に応用できる先端研究を大学などから公募して研究委託費を出す「安全保障技術研究推進 制度」を国際的な制度へ拡張する検討を始め たとの報道について、防衛省がこれを否定した。(JDW 06/28)

学術会議の反応

 日本学術会議が3月24日に幹事会を開き、軍事目的のための科学研究をしないことを掲げた従来方針を継承する新声明を決定した。
 研究の方向性や秘密保持を巡って、政府による研究活動への介入が強まる懸念があることなどを盛り込んだ。 (日経 03/24)

中小企業(SME)からの装備品調達を検討

 防衛装備庁が中小企業(SME)からの防衛装備品の調達を検討している。(JDW 08/30)

キ. 業界再編の影響

 三菱、川崎、三井など日本の造船各社は、民間船舶の受注減による損失を抑えるため造船部門の大幅削減を検討している。
 川崎重工は4月1日に造船部門を30%に縮小して一部を中国に移すことを明らかにした。
 しかしながら同社はJane'sに対し4月3日、防衛部門への影響はないことを確認した。(JDW 04/12)

 三菱重工業(MHI)が12月1日、造船及び艦船修理部門を再編し業務の効率化を図る計画を発表した。
 計画では今まで3社あった関連子会社を2018年1月1日に三菱造船とMHIマリン社の2社に再編する。(360 12/04)

ク. 金属材料品質に疑問の影響

 経済産業省が10月10日、品質に疑問がある神戸製鋼所製の銅やアルミニウムなどの金属材料が複数の防衛企業で使用されていたことを明らかにした。 (JDW 10/18)