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2. 係争地域の情勢

2・1 中  東

2・1・1 イ ラ ン

2・1・1・1 核開発再開

2・1・1・1・1 トランプ政権の合意離脱

 コーツ米国家情報長官が1月29日に上院情報特別委員会の公聴会で、イランによる地域不安定化やミサイル開発に懸念を示す一方で「イランが現時点で、核兵器製造に必要と判断される活動を進めているとは思わない」と証言した。
 これに対しトランプ大統領は30日のツイッターで、「とんでもなく消極的で甘い」と糾弾した上で「情報当局者はもう一度、学校に戻った方がいいかもしれない」と非難した。
 2018年にイラン核合意から一方的に離脱したトランプ大統領はコーツ長官の証言について、合意離脱の正当性を弱めかねないと考えたようである。 (1902-013101)
2・1・1・1・2 イランの核合意一部履行停止

 国営イラン通信 (IRNA) が5月7日、トランプ米政権が2018年5月8日にイラン核合意から一方的に離脱したことへの対抗措置として、イランも合意の一部履行を停止する方針だと報じた。
 アラグチ外務次官が8日に核合意参加5ヵ国(英独仏ロ中)の大使と会談し、その意向を伝えるという。
 IRNAによれば、ロウハニ大統領も5ヵ国の首脳に書簡を送る予定で、さらにザリフ外相がEUのモゲリーニ外交安全保障上級代表に書簡で詳細を説明する。 (1906-050803)
2・1・1・1・3 イランの核合意一部履行停止に対する追加制裁

 イランのロウハニ大統領が5月8日、イラン核合意から一方的に離脱した米国への対抗措置として、核合意の一部の義務に従わず濃縮ウランなどの国外への搬出を取りやめることを表明したのに対し、トランプ大統領は8日に声明を発表し、イランに対して鉄鋼やアルミニウムなどの分野で新たな制裁を科すと明らかにした。
 この制裁は、大統領令を通じてイランの輸出で10%を占める金属などの取り引きを制限するもので、声明はイランが行動を改めなければさらなる措置をとるとして、追加制裁の可能性も示唆して強く警告している。 (1906-050901)
2・1・1・1・4 イラン、核開発を再開

核開発再開宣言

 イラン原子力庁が5月20日、同国にあるウラン濃縮施設の低濃縮ウランの製造能力を4倍に増強すると発表した。
 イランが8日に核合意の履行を一部停止し、低濃縮ウランの保有上限を順守しないと宣言したことを受けた措置とみられる。 (1906-052101)

 国連安保理が6月26日、イランの核開発に関する会合を開いた。
 欧州各国は2015年の核合意以外に平和的で信頼ある枠組みはないと主張したのに対し、イランは核合意を順守する義務はもはやないと強調した。 (1907-062701>1907-062701)

低濃縮ウランの貯蔵量増加

 イランが一部履行を停止する方針を表明した核合意をめぐり、国際原子力機関 (IAEA) の天野之弥事務局長が6月10日の記者会見で、制限対象である低濃縮ウランについて最近の調査では生産ペースを拡大させていると懸念を表明した。
 IAEAが5月下旬にまとめた最新の報告書では、イランの低濃縮ウランの貯蔵量が174.1kgで2月から10kg増加して、核合意で定められた上限の202.8kgに近づいている。 ロイタ通信によると、イラン当局者は5月下旬に生産ペースを4倍に増やしているとも説明していた。 (1907-061105>1907-061105)

 イランの原子力庁が6月17日、貯蔵量を増やしている低濃縮ウランは、6月27日には核合意で定められた制限を超えるとした。 (1907-061801)

 国際原子力機関 (IAEA) が7月1日、イランの低濃縮ウラン貯蔵量が2015年の核合意で定められた上限を超えたと明らかにした。 イラン側も同日、上限を超えたと発表した。
 ロイタが入手した報告書によると、イランの低濃縮ウラン貯蔵量は合意で定めた上限の202.8kgを超え205kgになった。 (1908-070201)

濃縮度の高レベル化

 イランの原子力庁が6月17日、核合意に参加しているヨーロッパ各国が、制裁からイラン経済を守る措置をとらないかぎり、7月上旬以降にウラン濃縮のレベルを高めると表明した。
 イランでは濃縮度20%程度のウランを必要としていると述べ、これまで3%に制限されてきた濃縮度を大幅に上回ることを示唆していて、本格的な核開発につながるおそれがある。 また、貯蔵量を増やしている低濃縮ウランについても、10日後の27日には核合意で定められた制限を超えるとした。
 イランは米国の経済制裁により核合意で約束された経済的な利益が失われているとして反発を強めていて、今回の発表でフランスやドイツ、イギリスに対し圧力をかけている。 (1907-061801)

 イランのロウハニ大統領が7月3日、2015年に主要国と結んだ核合意で3.67%以下と定められている備蓄ウランの濃縮率について、7日から順守せず必要なレベルまで引き上げると語った。
 大統領が、さらなる履行停止措置としてウラン濃縮率の拡大に言及するのは初めてである。 (1908-070302>1908-070302)

 イランが7月7日から、2015年の核合意で3.67%以下と定められていた濃縮度の上限を無視したウラン濃縮活動に着手する見通しである。
 最高指導者ハメネイ師のベラヤティ顧問は国営メディアに対し6日、まず濃縮率を5%程度に高め、その後さらに上げる可能性を示した。 (1908-070701>1908-070701)

 イラン原子力庁報道官が9月3日、イランは2日以内に濃縮度20%の濃縮ウランの生産を再開することが可能だと述べた。
 ファルス通信によると報道官は、イランが決断すれば1~2日以内に濃縮度20%の濃縮ウランを保有することが可能だと語った。 (1910-090401>1910-090401)

 イランが第3弾の核合意履行停止措置として9月6日、ウラン濃縮用遠心分離機に関する研究開発の制限を撤廃したことで、ウラン濃縮度のさらなる上昇よりも抑制的な内容と受け止められている。
 イラン原子力庁報道官は7日の記者会見で濃縮度引き上げの可能性をちらつかせたことで、イランに合意存続を求める欧州当事国をけん制し、原油取引再開などの経済的利益を速やかに提供するよう促す狙いとみられる。 (1910-090704>1910-090704)

高性能遠心分離機の稼働開始

 イラン原子力庁報道官か9月7日、2015年核合意で定められた義務の履行を停止する「第3弾」の措置として、高性能遠心分離機IR-6とIR-4の稼働を開始したと発表した。 濃縮度を20%以上に高めることが可能という。
 報道官は、現時点で濃縮度を20%超に引き上げる必要はないとしながらも、核合意に参加する欧州諸国はあまり時間が残されていないことを認識すべきだと述べた。 (1910-090803>1910-090803)

 イランのロウハニ大統領が11月5日、中部のフォルドゥにある核関連施設で6日からウラン濃縮活動を再開することを明らかにした。
 イラン原子力庁は4日、新型の高性能遠心分離機増設による濃縮ウランの生産能力増強を発表しており、さらなるウラン濃縮活動の拡大に欧米など各国の反発は必至と見られる。 (1912-110505>1912-110505)

2・1・1・2 米国との対立

2・1・1・2・1 米国とイラン革命防衛軍の対立

イラン革命防衛軍をテロ組織に指定

 トランプ米大統領が4月8日、外国政府の軍事組織としては初めてイラン革命防衛軍を外国テロ組織に指定を発表した。 これにより革命防衛軍への物資提供などが禁じられる。
 トランプ大統領は声明で、イランの国際的なテロ活動の指令と実行を主導していると革命防衛軍を非難した。
 革命防衛軍は米国がBM開発などに関わる一方、関連企業を通じて経済活動を活発に行っていて、イラン経済の20%を占めるとの分析もあり、テロ組織指定でイラン経済に打撃を与える狙いがある。 (1905-040803>1905-040803)

米国防次官「イランに侵略的な行動の兆候」

 米国防総省のルード次官が12月4日、イランが将来、侵略的な行動を取る可能性を示す兆候があると述べた。
 同次官は記者団に理由で詳細は説明しないと発言したが、米当局者2人は匿名を条件に、イランが域内で部隊と武器を移動させていることを示す情報が過去1ヵ月で得られたことを明らかにした。
 部隊移動の目的は不明というが、米当局者によると反政府デモが起きているイラク国内でのイランの活動が一つの懸念要因となっている。
 ロイタは2018年、イランがイラク国内のシーア派組織にBMを渡していると報じている。 (2001-120505>2001-120505)

2・1・1・2・2 米国との対話拒否

 イランのファルス通信が、最高指導者ハメネイ師が訪問中の安倍首相に対し6月13日に、イランは米国と交渉するという「苦い経験」を繰り返さないと述べたと報じた。
 安倍首相はトランプ米大統領からのメッセージを預かっていたが、ハメネイ師は「トランプ大統領とメッセージを交換する価値はない。 今も今後も返答することは何もない」と述べた。
 一方、安倍首相は、会談したハメネイ師から核兵器は製造も保有も使用もせず、その意図もないとの発言があったことを明らかにした。 (1907-061308>1907-061308)
2・1・1・2・3 米軍の増派

空母打撃群などを派遣

 シャナハン米国防長官代行が5月6日、イラン政府による軍事的脅威の兆しがあるとして、中東への空母打撃群と爆撃機部隊の派遣を承認したことを明らかにした。
 これに先立ち、ボルトン米大統領補佐官は5日、Abraham Lincoln CSGと爆撃機部隊を中東に配備すると述べていた。 (1906-050701>1906-050701)

 ポンペオ米国務長官が5月7日にバグダッドを事前公表なしに訪問し、イランからの増大する脅威に連携して対処する方針を確認した。
 CNN TVは、イランがSRBMをペルシャ湾上の艦船に移動させた可能性が高いと報道しており、米政府は中東に駐留する米軍が標的になる恐れがあるとみて警戒を強めている。 (1906-050802>1906-050802)

 米中央軍などが5月9日までに、B-52の部隊と空母Abraham Lincoln CSGが中東地域に到着したことを明らかにした。
 VOAが中央軍の報道担当者の話として伝えたところによると、B-52は現地時間の8日に2機、9日に2機がカタールの基地に到着した。
 一方、米海軍は9日、空母CSGが同日スエズ運河を通過して紅海に入ったことを明らかにした。 (1906-051002>1906-051002)

 米国防総省が5月10日、Patriotとドック型揚陸艦1隻を中東地域に派遣すると発表した。 イランによる米軍への攻撃準備の兆候への対応としている。
 一方、米連邦海事局は9日、紅海やペルシャ湾などで、原油タンカなどの商船や米軍艦船がイランや代理勢力による攻撃を受ける可能性があるとして注意を喚起した。 (1906-051103>1906-051103)

 米国防総省が5月10日、イランが米軍を攻撃する事態に備えて強襲揚陸艦ArlingtonとPatriot 1個中隊及び爆撃機部隊を中東に派遣すると発表した。
 強襲揚陸艦Arlingtonは5月7日にペルシャ湾を離れて地中海に向かったKearsarge強襲揚陸群 (AAG) の一部であった。
 Patriotは2018年にクウェートから2個、バーレーンから1個、ヨルダンから1個中隊を撤退させるとした計画の変更で、バーレーンとヨルダンの各1個中隊が撤退したのは衛星写真で確認されているが、クウェート駐留の3個中隊全ては4月時点では残っていた。
 爆撃機ではカタールに複数のB-52Hが到着したが、米空軍は6機からなるB-52HとB-1Bを交互にカタールに派遣しており、3月にはB-1Bがカタールを離れていた。 (1907-052201>1907-052201)
【註】要するに、「中東へ増派」と言うものの実態は伴っていないと言うことである。

 国防総省が5月24日、イラン情勢に対応するため中東地域にPatriot部隊など1,500名を増派すると発表した。 警戒監視用の航空機や戦闘機も追加配備するもので、防衛目的の派遣になると説明している。
 トランプ大統領は増派に否定的だったが、米軍の防衛上、一定の増強が必要とする国防総省や軍幹部らの説得を受け入れた。 (1906-052501>1906-052501)

 ボルトン米大統領補佐官がイランに対する明確な意思表示として、空母Abraham Lincoln空母打撃群 (CSG) とB-52を米中央軍 (CENTCOM) の隷下に入れると述べた。
 米海軍は5月9日、Abraham Lincoln CSGがスエズ運河を通過してCENTCOMの管轄域に入ったと発表した。 また中央軍空軍も5月8日に、複数のB-52Hが場所を明らかにしない中東地域に飛来したと発表したが、飛来場所はカタールのAl-Udeid航空基地とみられる。 (1907-051502>1907-051502)

 中東でのイランの脅威に備え派遣された米海軍空母Abraham Lincolnは、6月3日現在ホルムズ海峡を通過してペルシャ湾に入ることなくオマーンの沖合200哩に留まっている。
 その理由について米海軍は再三明らかにしていないが、Abraham Lincoln艦長のブラウン大佐は、これ以上緊張が拡大することを望まないと述べた。 (1907-060405>1907-060405)

追加増派

 米政府当局者2人が5月22日、米国防総省がイランとの緊張が高まるなか中東地域に5,000名を増派するよう米軍から要請され、検討を進めているとロイタに語った。
 当局者らによると、要請は米中央軍から受けたという。 (1906-052303>1906-052303)

 米国防総省が6月19日、中東に追加派遣される米軍1,000名の内訳について、Patriot 1個大隊と、有/無人ISR関連装備、戦闘機と任務支援航空機などが含まれると発表した。 (1907-062001>1907-062001)

 トランプ米政権が数百名規模の軍要員をサウジアラビアに派遣する準備を進めていることが7月18日までに分かった。 米国とサウジとの関係強化を図る動きとみられる。
 2人米国防当局者によると、派遣先は首都リヤド東方の砂漠地帯にあるPrince Sultan空軍基地とみられており、既に少数の兵員やサポート人員が現場入りしてPatriotの配備や、滑走路と飛行場の改善に向けた準備を行っているという。 (1908-071802>1908-071802)

 2人米国防当局者が7月17日にCNNに対して、Patriot 1個中隊と500名がPrince Sultan空軍基地に派遣されたことを明らかにした。
 サウジに米軍が派遣されるのは2003年に若干の訓練支援要員を除き撤退して以来初めてである。 (1908-071905>1908-071905)

 米陸軍のPatriot 1個中隊がサウジアラビア中部のPrince Sultan空軍基地に展開した。 CBS Newsが7月21日、PAC-3弾とPAC-3 MSE弾を混載した発射機2基を報じた。
 CBSはまた、F-22 Raptor 1個飛行隊も展開するだろうと報じている。 (1908-072505>1908-072505)

 CNNが米当局者2名の話として7月17日、Patriot 1個中隊と兵員500名がサウジアラビアAl-Kharj近郊のPrince Sultan空軍基地に展開すると報じた。 既に小規模の先遣隊が受け入れのため現地入りしているという。
 Prince Sultan空軍基地は最も近いイランのBM基地Jamから630kmの位置にある。
 サウジの米軍は2003年に全員撤退していた。 (1909-072413>1909-072413)

 CBS Newsが7月21日に米中央軍司令官マッケンジー大将がサウジアラビアのPrince Sultan Air Base (PSAB) を訪問した報道で、PAC-3及びPAC-3 MSE弾を混載したと見られるPatriotの発射機2基が写っており、PatriotがPSABに展開したことが確認された。
 CBSはまたF-22 1個飛行隊がPSABに展開すると報じたが、この飛行隊がカタールのAl-Udeid航空基地から飛来するのか否かは明らかでない。 (1909-073109>1909-073109)

Boxer 強襲揚陸群が第5艦隊海域に

 米海軍と海兵隊の数千名を載せた強襲揚陸艦 (LHD) Boxerを中心とした強襲揚陸群が、6月24日に第5艦隊海域に入った。
 この艦隊には揚陸輸送艦 (LPD) John P. Muthaとドック型揚陸艦 (LSD) Harpers Ferryが第11海兵遠征隊と共に加わっており、4月以来第5艦隊の隷下にあるLHD Kearsarge群と交代する。 (1907-062407>1907-062407)

Abraham Lincoln CSG がペルシャ湾入り

 米海軍が11月19日、空母Abraham Lincoln CSGがホルムズ海峡を通過しペルシャ湾に入ったと発表した。
 208年12月にJohn C. Stennis CSGが同海峡を通過した際はイラン革命防衛隊の艦船が追尾するなどしたが、今回はイラン側の挑発的な行為は伝えられていない。 (1912-112001>1912-112001)

米軍の臨戦態勢

 米国はペルシャ湾海域でのイラン小型艇による攻撃を警戒して、12月にCyclon級哨戒艇HurricaneによるGriffinを用いた演習を実施している。
 Raytheon社が開発したSSM/ASMのGriffinは海兵隊がKC-130 Harvest Hawkに搭載しているほかもMk-60 Patrol Coastal Griffin Missile SystemとしてCyclon級哨戒艇に装備されている。
 米国は過去6ヶ月間に14,000名を中東に増派し各種装備を展開させている。
 2019年には第22、第11海兵遠征隊がjammerを搭載したPolaris社製MRZRを展開したほか、Bushmaster 25mm砲を装備した海兵隊のLAVやWasp級強襲揚陸艦Boxerの甲板にはLMADISが据え付けられて、7月にはイランのUAVを撃墜している。 (2001-122902>2001-122902)

米軍がイラクとシリアのヒズボラ拠点を空爆

 米国防総省が12月29日、イラクとシリアで、イランを後ろ盾とするシーア派組織Kata'ib Hezbollahの拠点5ヵ所を爆撃したと発表した。 国防総省によると、目標となったのは武器庫や司令部で、イラクの3ヵ所とシリアの2ヵ所部あった。 ロイタ通信によれば爆撃にはUAVが使用されたとみられる。
 27日にイラク北部のキルクークで、米軍が駐留する基地がロケット砲攻撃を受けたことに対する報復という。 (2001-123001>2001-123001)

2・1・1・2・4 サウジアラビア石油施設攻撃への対応

 エスパー米国防長官が9月20日、サウジアラビア石油施設への攻撃を受け、同国に米軍部隊を増派すると表明した。 派遣されるのは主にAMDを任務とした部隊で、Patriotなどを検討しているとみられる。
 詳細は9月下旬にも公表される見通しだが、ダンフォード統合参謀本部議長は数千人規模にはならないと述べ、大規模増派ではないことを強調した。 (1910-092101>1910-092101)

 米国防総省が9月26日、サウジアラビアで石油関連施設2ヵ所が攻撃されたのを受けPatriot 1個中隊と200名の将兵をサウジに派遣すると発表した。 またエスパー国防長官はPatriot 2個中隊に対し出動準備命令を発したこととTHAAD派遣の可能性も示唆した。
 発射機6基を装備するPatriot中隊は約100名であるが、近距離の目標を捕捉するSentinelレーダも派遣されている。
 60,000~80,000名とされる米中央軍は、14,000名をアフガン、5,200名をイラク、1,000名をシリアに展開している。 (1910-092605>1910-092605)

 米国防総省が9月26日、サウジアラビアにPatriot 1個中隊とSentinelレーダ4基及び支援要員200名を派遣すると発表した。 更にPatriot 2個中隊とTHAAD 1個中隊に派遣が可能な準備態勢を維持するよう命じたという。
 米国は既にPatriot 1個中隊をAl-KharjのPrince Sultan航空基地に配置している。 (1912-100201>1912-100201)

2・1・1・2・5 イラク駐留米軍等への差し迫った脅威

 米軍が5月14日、イランの支援を受ける勢力によるイラク駐留部隊への差し迫った脅威の可能性にあらためて懸念を示し、イラク駐留米軍は警戒態勢を強めていると明らかにした。
 これより先、イラクとシリアでISISの掃討に当たる米主導有志国連合の英指揮官は、イラン傘下の武装勢力による脅威は高まっていないと発言していた。 (1906-051503>1906-051503)

 米国務省が5月15日、イラクに駐在する政府職員の一部に退避命令を出した。 特定の脅威があるかどうかは不明だが、イラン政府が支援する勢力からの脅威を念頭とした措置と見られる。
 バグダッドの大使館とクルド人自治区の首都アルビルの領事館で緊急任務に就いていない職員に出国するよう命じたもので、何人の職員が出国するかは不明である。 国務省は大使館と領事館での通常のビザ業務は一時停止するとしている。 (1906-051505>1906-051505)

 イラク軍によると、首都バグダッド中心部で政府庁舎や米国大使館など在外公館が集まる制限区域グリーンゾーン内に5月19日、何者かがロケット砲を撃ち込んだ。
 米大使館への被害や死傷者はなかった。 (1906-052002>1906-052002)

 イラクの首都バグダッドにある米大使館付近にロケット砲が撃ち込まれた5月19日、一報が報じられた直後にトランプ米大統領はツイートでイランに不吉な最後通牒を突き付けた。
 米国と戦う気なら、イランは正式に終わりだ」と、トランプはツイートし、二度と米国を脅迫するな!と激昂した。 (1906-052005>1906-052005)

 AP通信が6月8日、米中央軍司令官マッケンジー海兵隊大将が7日に空母Abraham Lincoln艦上で同行記者らに、5月に行われたAbraham Lincolnの中東派遣発表はイランがイラク駐留米軍や船舶の攻撃を計画していたからとの見方を示したと報じた。 (1907-060901>1907-060901)

2・1・1・2・6 大規模米軍派遣

本格介入時の米軍派遣規模

 New York Times紙が5月13日、シャナハン国防長官代行が安全保障関連の会合で、イランが米軍を攻撃したり核開発を加速させたりした場合には、最大12万名の米軍を中東に派遣する計画を提示したと報じた。
 9日に開かれた会合にはシャナハン長官代行、ボルトン補佐官のほか、ダンフォード統参本部議長、ハスペルCIA長官、コーツ国家情報長官が出席し、対イラン政策について協議した。 (1906-051406>1906-051406)

大規模増派計画遣

 Wall Street Journalが米当局者の話として12月4日、トランプ政権が中東に14,000名の増派を検討していると報じた。 艦艇数十隻や軍用装備品なども含まれる。
 月内にも正式決定するとみられるが、具体的な派遣国などは不明である。
 トランプ大統領は中東からの米軍撤退を目指しているが、イランの脅威に対抗する必要があるとして増派に納得したという。 (2001-120502>2001-120502)

 ルード米国防次官が12月5日に上院の公聴会で証言し、イランの脅威に対抗するため米軍14,000名の中東への増派を米軍が検討中とのWall Street Journal紙報道について「誤った記事だ」と語り、増派の規模に関する報道内容を否定した。 (2001-120602>2001-120602)

2・1・1・3 イランの軍備強化

2・1・1・3・1 諸外国からの反発

EU の懸念表明

 EUが2月4日、イランのBM発射試験を深く懸念しているとし、地域の一段の不安定化につながるこうした行動をやめるよう呼び掛ける共同声明を発表した。
 イランは米国の反対や欧州諸国の懸念表明にもかかわらず、同国は純粋に防衛のためとしてミサイル開発計画を拡大している。 (1903-020501>1903-020501)

2・1・1・3・2 海外進出

海外派兵

 イスラエル軍参謀長のアイゼンコット中将は1月12日にNew York Times紙のインタビューで、イランが10万名のシーア派兵士をパキスタン、アフガニスタン、イラクからシリアへ送り込もうとしていると述べた。 (1903-012312>1903-012312)

イラクに橋頭堡

 イランがイラクのAl QiamとシリアのAl Bukamalの間の国境に民間の通路を建設しているが、衛星画像からAl Bulamal近くのイラン拠点Imam Aliの要塞化を進めていることが明らかになっている。
 イランはImam Aliを橋頭堡にイラク経由でシリアのシーア派やレバノンと結ぶ武器、弾薬、ミサイルなどの補給路を構築しようとしてると見られることから、Imam Aliに対してはここ数ヶ月空爆が繰り返され、9月だけでも9日と16日に空爆が行われている。 (1910-092407>1910-092407)

2・1・1・3・3 BM 開発

安保理が規制した BM の発射

 イスラエルの国連大使が11月27日に安保委員会で、イランが2019年3月から6月にかけて安保理が規制した射程300km、弾頭重量500kgを越えるBM 3発を発射したと発表した。
 3月には弾種を特定できないBMをJalnabadから、5月にはFateh-110をKuh Gitchenからと別のBMをZolfagharから発射したという。 (2001-120419>2001-120419)

Khorramshahr MRBM
 ポンペイオ米国務長官が2018年12月1日にツイッターで、イランが最近、国連安保理決議第2231に反して多弾頭搭載MRBM Khorramshahrの発射試験を実施したと述べた。
 イランは射程が1,000~3,000kmの3種類のMRBM、Scudを元にした液体燃料のShahab-3/Ghadr、固体燃料のSejjil、ロシアのR-27 Srbを元にした北朝鮮のMUsudan/Hwasong-1のイラン型Khorramshahrを保有しているが、Khorramshahrは2016年7月と2017年1月30日に発射試験に失敗したが、2017年9月下旬に公表していた。 (1903-012313>1903-012313)

Dezful MRBM

 イランのFars通信が、革命防衛軍が射程1,000kmのBM Dezfulを装備したと報じた。
 就役式典はイスラム革命40周年合わせて、地下都市と呼ばれている地下工場で行われた。
 Dezfulは射程が700kmで450kgの弾頭を搭載するZolfzgharの発展型と報じている。 (1903-020705>1903-020705)

 イラン革命防衛軍が2月9日までに新型のBM Dezfulと地下製造工場の映像を初めて公開した。
 Dezfulは射程が1,000kmの現有BM Zolfzgharの改良型で、イラン国営TVは革命防衛隊の幹部らが製造工場を訪れ視察する様子や、組み立て作業の映像を報じた。
 イスラム革命から40年の節目を迎えるのを前に、内外に軍事力を誇示するねらいがあるものと見られる。 (1903-020901>1903-020901)

 イラン革命防衛軍 (IRGC) が2月8日、Dezful BMの射程が1,000kmであることを明らかにした。
 DezfulはFateh-110シリーズ固体燃料BMの最新型で、2001年に公表された最初のFateh-110の射程は200kmであった。 その後2015年8月に公表されたFateh-313は500km、2016年9月に公表されたZolfagharは700kmと射程を伸ばしてきた。 (1904-022008>1904-022008)

Shahab 3 MRBM

 CNN TVが7月25日、イランが24日にMRBM Shahab 3の発射試験を行い成功したと報じた。 イラン側は発表していない。
 Shahab 3はイラン南部のペルシャ湾沿岸部から発射され、1,100km飛翔してテヘラン東郊に着弾した。
 New York Timesは、英タンカー拿捕や核合意をめぐり溝が深まる欧州への政治的な意思表明のようだとしている。 (1908-072603>1908-072603)

射程1,000kmを超える BM の発射試験

 米国が国連安保理に、イランが安保理決議2231に反して、7月25日と8月9日に射程1,000kmを超えるBMの発射試験を行ったとする報告書を提出した。
 これらのBMは500kgの弾頭を搭載して300kmの射程を有し、核弾頭運搬用に作られたと主張している。 (1911-091813>1911-091813)

射程延伸型 Khorramshahr

 テヘランで9月21日に行われた毎年恒例のパレードに、明らかにRVを小型化して射程を延伸したとみられるKhorramshahr BMが参加した。
 20187年9月に出現した際にKhorramshahrは北朝鮮のBM-25を元にした射程2,000km、弾頭重量1,800kgのBMと見られていたが、今回登場した小型弾頭型の射程は3,000kmと見られている。 (1912-100213>1912-100213)

ロケット砲弾を誘導武器化した Labeik

 イラン陸軍が10月3日、既存のロケット砲弾を誘導武器化したLabeikを公開した。
 Labeikの胴径は610mmとZelzalロケット砲弾と同じで、誘導装置はFateh-110と同じものとみられる。 (1912-100908>1912-100908)

2・1・1・3・4 CM 開発

Hoveizeh GLCM

 イランが2月2日にテヘランでHoveizeh長距離GLCMを初めて公式に公開した。
 ハタミ国防相によるとHoveizehは2015年3月に公開されたSoumarの改良型であるという。 Soumarは見るからにソ連製Kh-55のコピーであった。
 Hoveizehの射程は1,350km以上で、ハタミ国防相によると発射試験では1,200kmを飛翔している。 (1904-021304>1904-021304)

Mobin CM/UAV

 イランのIAIO社が、8月27日から9月1日までモスクワ近郊で開かれたMAKS 2019展に初公開のUAV Mobinを出品した。 パンフレットにはMobinをCMと記載していたが、同社の代表はこれは誤りでMobinは多用途UAVでパラシュートで回収されると訂正した。
 Mobinは翼端長3m、重量670kgであるがRCS≦0.1㎡のステルス性を持ち、120kgの搭載能力がある。
 イラン製のToloo-4ターボジェットで推進し、最高速度は900km/h、上昇限度45,000ft、高度10mを飛行した場合の滞空能力45分の性能を持つ。 誘導はTERCOMとDSMACの複合で行う。 (1910-090409>1910-090409)
【註】翼端長が3mとUAVにしては極端に短いことから、滞空性能を犠牲にしても高い運動性能を追求しているようで、TERCOM/DSMAC誘導であることや滞空能力45分を高度10mで飛行した場合としていることなどから、Mobinはパンフレットにあったとおり、超低空進入が可能なCMと見るべきと思われる。

2・1・1・3・5 UAV 開発

Saegheh / Kaman / Shahed

 イランが2011年12月に鹵獲したRQ-170 UAVを元に、単にコピーしたSimorgh UAVと武装型にしたSaegheh UAVを作ったが、1月30日に行われたEqtedar 40防衛博でSaegheh-2とKaman-12及びShahed-129を公開した。 (1903-020612>1903-020612)

Saegheh-2

 誘導爆弾4発を搭載でき、シリアのスンニ派系過激派に対する爆撃を行った。

Kaman-12

 最高速力200km/h、滞空能力10時間、航続距離1,000kmで100kgの搭載能力を持つ。

Shahed-129

 在来の武装型UAVであるが、機首上部に衛星通信用の膨らみがついた。

Mohajer-6

 イラン革命防衛軍が7月17日、Mohajer-6 UAVを3機装備したと発表した。
 ただアフガニスタン国境から170kmにあるGonabad近郊の飛行場で撮影された画像ではシリアル番号がP071A-030となっていたことから、既に30機以上が納入されていると見られる。
 Mohajer-6は全長5.7m、航続距離2,000km、滞空能力24時間、実用上昇限度18,000ft、最大速度200km/hで、弾頭重量1.7kgのGhaem誘導爆弾を2発搭載できる。 イランは国境地帯の警戒に使用するという。 (1909-072414>1909-072414)

Mobin UAV/CM

 イランのIAIO社が8月27日から9月1日までモスクワ近郊で開かれている2019 MAKS航空展でMobin UAVを初公開した。 資料ではMobinをCMとしているがIOIA社代表はこの表現を間違いとし、多用途UAVと訂正した。
 Mobinは翼端長3m、重量670kgで120kgの搭載能力を持ち、最大巡航速度900km/h、上昇限度45,000ft、高度10mを飛行した滞空能力45分の性能を持つ。 (1909-082906>1909-082906)
【註】多用途UAVとしては重量670kgに比し翼端長が3mと極端に短く、上昇限度が45,000ftなのに滞空能力45分と、極めてアンバランスな設計であるのが注目される。
 最大巡航速度900km/hからダーボジェット推進と見られる。

2・1・1・3・6 艦船の建造

Fateh級潜水艦

 イラン海軍が2月17日、国産のFateh級潜水艦一番艦を就役させた。
 この潜水艦は排水量600tで潜行深度200m、潜航期間5週間の性能を持ち、533mm魚雷発射管4本を装備している。 (1903-021908>1903-021908)

 イラン革命防衛海軍が2月17日、国内で建造された初の潜水艦Fateh級が就役したと発表した。
 Fateh級は600tで533mm魚雷発射管4本を装備し、最大深度200mで5週間潜航できる能力を有するという。 (1904-022712>1904-022712)

Ghadir級小型潜水艇

 イラン海軍が2月24日、Ghadir級小型潜水艇が対艦ミサイルを発射する映像を公表した。 対艦ミサイルの発射はVelayet 97演習の一環として行われた。
 発射されたのは中国のC-704をイラン仕様にしたNasrで、水上発射で38kmの射程を有する。 ジェットエンジン推進のNasirは2017年4月に確認されている。
 CMの発射は新型潜水艦Fatehでも可能という。 (1905-030609>1905-030609)
【註】Ghadir級小型潜水艇は全長29m、排水量120tで、速力11ktの性能を持ち、533mm魚雷発射管2本を装備している。

2・1・1・3・7 戦闘機の開発

 (特記すべき記事なし)
2・1・1・3・8 防空力の強化

S-300PMU 中隊をペルシャ湾中央部が射程内に入るよう陣地変換

 衛星画像から、イランが保有するS-300PMU 3個中隊のうちの1個中隊をペルシャ湾中央部が射程内に入るよう陣地変換させていることが分かる。
 この中隊は30N6E2射統レーダ1基、96L6E捕捉レーダ1基、5P85TE2 TEL 4基で構成されている。 (1907-060517>1907-060517)

15 Khordad

 イランが6月9日に新たなSAMシステム15 Khordadを公表した。 15 Khordadは目標捕捉距離150km、追随可能距離120kmで、射程は75km、射高は27kmの性能を持ち、ステルス目標に対しても75kmで発見し、45kmで交戦できるという。
 公表された画像では車載レーダとキャニスタを4発ずつ搭載した発射機が2両写っており、その前方には明らかにSayyad-2及びSayyad-3と見られる2種類のミサイルが置かれていた。 (1907-061206>1907-061206)

 イランが6月9日に15 Khordadと命名されたSAMシステムを公表した。 システムは150kmで目標を発見し、120kmで追随、最大射程75km、射高27kmで交戦するという。 同時交戦可能目標数は6目標という。 またステルス目標に対しても85kmで補足し、45kmで交戦可能という。
 ただ、公開された画像に写っていたミサイルはすでに公表されているSayyad-2とSayyad-3で、Sayyad-3は最大射程が120km、射高が27kmとされ、Sayyad-2はそれより短射程とされている。 いずれのミサイルもBuk-M2とよく似た3 Khordadでも使用されている。 (1908-061917>1908-061917)

3 Khordad

 イラン革命防衛隊が、6月20日にイランの領空を侵犯した米国の大型UAVを撃墜したと発表した。
 イラン政権に近いタスニム通信によれば、UAVはイランのKhordad-3 MSAMにより撃墜された。 (1907-062104>1907-062104)

 米海軍のRQ-4A Global Hawkが6月20日にイランに撃墜された。 撃墜したのはイランが国内開発した自走式の3 Khordad SAMであるという。 (1907-062108>1907-062108)

Bavar-373

 イランが8月22日に、国内開発したBavar-373長距離SAMを公式に公表した。
 Bavar-373の主要構成品は2016年に8月にローハニ大統領が初めて写真で公開しており、システムは発射機と射撃統制レーダ、及びMiraj-4と思われる少し大きなレーダで構成されている。
 今回公表されたレーダの形状は2016年に公表されたものと同じではないことから、システムはまだ開発途中と見られる。 (1910-082802>1910-082802)

Kharg島と Asaluyeh に SAM を配置

 イランのTVが10月8日、最も重要な石油積み出し基地のあるKharg島とAsaluyehにSAMを配置した画像を報じた。
 配置されているのはTor-M1、Mersad、Tabasで、ステルス機に対するMatla-ul-fajr低周波レーダも含まれている。
 また射程75kmと120kmのSayyed-2とSayed-3も配備されている可能性がある。 Sayyed-2は6月20日にオマーン湾で米海軍のGlobal Hawkを撃墜している。 (1912-101609>1912-101609)

イランの姿勢に変化か?

 緊張の拡大を望まないとするイランの意思表示か、衛星画像からイランが5月にAsaluyehに配備したS-300を撤収したことが判明した。
 Asaluyehに配置されていたのは2016年にロシアから購入したS-300PMU-2 4個中隊のうちの完全編成1個中隊であったが、7月11日~22日に撮影された衛星画像から撤退が確認された。 (1910-082803>1910-082803)

Mersad

 イランのメディアが11月22日、上旬に行われたGuardians of the Velayer Sky 98演習で発射したMersad新型SAMの画像を報じた。
 この演習で発射されたのはSayyad-2弾のようである。
 Mersadは車載発射機にキャニスタ入りミサイル3発を搭載していたが、9月21日に行われたパレードでキャニスタに入れないミサイルを同じ発射機に搭載したMarsad-16が公表されていた。
 Mersadは1979年の革命以前に米国から購入したMIM-32 HAWKのイラン型で、システムはHAWKと似たレーダを使用している。 (2001-120418>2001-120418)

2・1・1・4 スンニ派諸国との対立

2・1・1・4・1 シーア派諸国との結束

イラクへの接近

 イランのロウハニ大統領が3月11日、2013年の就任後初めてイラクを訪れサレハ大統領と会談した。 トランプ米政権の制裁再発動でイランが苦境に陥る中、会談では対米連携に向けた関係強化で一致した。
 イランとイラクは1980年代に戦火を交えたが、イラクのフセイン政権崩壊後は関係が緊密化し、イランはISIS掃討作戦でイラクにイスラム教シーア派民兵を派遣するなど、イラクからシリア、レバノンに至るシーア派の弧での影響力を拡大しつつあり、米国が警戒している。 (1904-031104>1904-031104)

シリアとの結束

 イスラエルのダノン国連大使が、1月20日にゴラン高原に撃ち込まれたMRBMは、2016年1月以降にイランからシリアへ渡ったもので、安保理決議2231号付属文書Bに違反していると述べた。
 大使はミサイルの種類は特定しなかったが、精密誘導弾頭を搭載して60km以上飛翔したと述べた。 (1905-041108>1905-041108)

イエメンへの介入

 (特記すべき記事なし)

2・1・1・4・2 イラン国内でのスンニ派の抵抗

革命防衛隊の隊員に対するテロ事件

 イランのメディアによると、2月11日にイスラム革命40周年を迎えたばかりのイラン南東部シスタン・バルチスタン州で13日に革命防衛隊の隊員らを乗せたバスの近くで爆弾を積んだ車が爆発し、隊員27名が死亡し13名が負傷した。 政府打倒などを求める武装組織Jaish al-Adlが犯行を認めた。
 イラン外務省報道官は「殉教者の流血に対して報復する」と警告した。 (1903-021401>1903-021401)

2・1・1・5 反イラン諸国の体制強化

2・1・1・5・1 イランに対抗する国際会議にイスラエルとアラブ諸国が同席

 米政府が主催する中東地域の安定を話し合う国際会議が、2月13日から2日間の日程でワルシャワで始まった。
 米政府によると会議には50ヵ国以上の外相や政府の代表が出席し、テロやミサイル開発などの問題が話し合われる。 米国からはペンス副大統領やポンペイオ国務長官も出席し、イランへの圧力を強化するための新たな枠組みの設置を目指す考えである。
 13日の夕食会後の記念撮影ではイスラエルのネタニヤフ首相がサウジアラビアなど12ヵ国のアラブ諸国の代表などと写真に収まった。
 イスラエルとアラブ諸国がこうした会議で同席して協力関係を打ち出すのは極めて異例のことで、中東の対立構図の歴史的な転換が進んでいることを印象づけた。 (1903-021402>1903-021402)
2・1・1・5・2 BMDS の装備

クウェートとサウジアラビア

 米国防総省が2018年12月21日、Lockheed Martin社がクウェートとサウジアラビア向けのPAC-3弾を$3.37Bで受注したと発表した。
 サウジはいままでにPAC-3 MSE弾と標準型であるCRI弾を購入したことがあるがクウェートにとっては初のPAC-3弾の可能性がある。 (1902-010918>1902-010918)

 サウジアラビアがTHAADを配置する9ヶ所の基地が明らかにされた。
 これらの基地では米陸軍工兵隊が$90Mと推測される額で工事を請け負っている模様である。 (1908-061918>1908-061918)

バーレーン

 米国務省が5月3日、バーレーンへPatriotを$2.5BのFMSで売却することを承認した。 売却されるのはAN/MPQ-65レーダ2基、M903発射機9基、MIM-104E GEM-T弾36発、PAC-3 MSE弾60発である。 これによりバーレーンは中東で、サウジ、UAE、カタールに次ぐPatriot保有国になる。 (1906-050403>1906-050403)

 米国防安全保障協力局 (DSCA) が5月3日、国務省がバーレーンへのPatriot売却を承認したと発表した。
 売却されるのはAN/MPQ-65レーダ2基、AN/MSQ-13射撃管制装置2基、PAC-3 MSE弾60発、GEM-T弾36発で、総額$2.478Bにのぼる。 バーレーンは今までPatriotを装備していなかったが、首都の近くには米陸軍のPatriot 1個中隊が展開していた。
 バーレーンはまたF-16C/D Block 40 16機をF-16Vに改良するほか、AIM-120C-7 AMRAAM 32発、AIM-9X Sidewinder 20発、AGM-84 Block Ⅱ Harpoon 20発、AGM-154 JSOW 40発、AGM-88B HARM 50発、GBU-39 SDB 100発と、更にGBU-10/-12/-31/-49/-50/-54/-56などのGBなど合わせて$750Mの売却承認も得た。 (1907-051511>1907-051511)

UAE

 米国務省が5月3日、国務省はUAE向けPAC-3 MSE弾452発合わせて$2.7MのFMS契約を承認した。 (1906-050403>1906-050403)

 DSCAが5月3日、UAEにPAC-3 MSE弾452発を$2.728Bで売却する件を国務省が承認したと発表した。 (1907-051511>1907-051511)

2・1・1・5・3 サウジアラビアの軍備強化

 Washington Postが衛星写真を複数の専門家が分析した結果として1月24日、サウジアラビアがBM製造工場を建設した疑いが強いと報じた。
 首都リヤドの南西に建設された工場の衛星写真を分析した専門家らは、個体燃料を使ったロケットエンジンの製造と試験を行う施設との見方を示し、施設の形状から中国が技術面で協力している可能性があるという。
 事実であれば、対立するイランの反発は必至で、中東の軍拡競争につながるとの懸念が強まりそうである。 (1902-012503>1902-012503)
【註】サウジアラビアは2018年3月に中国のCASC社とUAVの製造に関する合意文書に署名しており、中国の協力が事実であるとすれば、イランと北朝鮮、サウジと中国の構図が見えてくる。
2・1・1・6 中露などのイラン支援

ホルムズ海峡周辺でロシアがイランと合同海上演習

 軍事的緊張が高まるホルムズ海峡周辺で、ロシアとイランが合同で海上軍事演習を行う方針を打ち出した。
 イランのメディアなどによると、同国海軍の司令官が7月29日、ホルムズ海峡やペルシャ湾、パキスタン沿岸などの海上で演習を行うことでロシア軍と合意したと述べた。 ロシア軍は艦隊を派遣する計画もあるという。
 シリア内戦を通じてイランやトルコと関係を強化したロシアは、両国が抱える個別の問題でも結びつきを深め、中東における親露の橋頭堡を固める構えとみられるとともに、トランプ米政権が進める同海峡周辺などでのタンカー護衛のための有志連合構想に対抗する狙いもうかがえる。 (1908-073104>1908-073104)

中露から武器購入の動き

 米国防総省傘下の国防情報局 (DIA) が11月19日にイランの軍事力に関する報告書を公表した。
 報告書は、来年10月に期限切れを迎える国連安全保障理事会によるイランに対する武器禁輸制裁が解除されれば、イランがロシアや中国から戦車や戦闘機を導入し、軍拡を進めることになると警告している。
 またイランが既に中露と武器購入に向けた協議を進めているとの分析も明らかにした。 (1912-112007>1912-112007)

インド洋北部で中露海軍と合同演習

 イランが米国の制裁に対抗して中露との軍事的連携を強めており、12月21日から4日間にわたりオマーン湾を含むインド洋北部で、3ヵ国海軍による合同演習を行った。 (2001-122502>2001-122502)

2・1・2 ホルムズ海峡の緊張

2・1・2・1 タンカーへの攻撃

5月12日:サウジアラビア船2隻

 サウジアラビアのエネルギー産業鉱物資源相が5月13日、ホルムズ海峡に向かっていたタンカー2隻が、12日午前に何らかの妨害行為をうけて、船体に損傷を受けたと明らかにした。
 現場は、ホルムズ海峡の外側にあるUAEのフジャイラ沖で、けが人はなく原油の流出はないとしているが、船舶の構造に大きな損害をもたらしたという。
 またタンカーのうち1隻は、米国向けの原油が積まれる予定だったという。 (1906-051304>1906-051304)

 複数の米メディアが5月13日、UAEのFuǧaira沖合でサウジアラビアなどの原油タンカーが破壊行為を受けた事件について、イランが関与した可能性があると米政府当局が分析していることが明らかになったと報じた。
 初期段階の分析で結論は変わる可能性があるとするが、同盟国に対する破壊行為に米国が反発し中東情勢の緊張に拍車がかかるリスクがある。 (1906-051402>1906-051402)

 ボルトン米大統領補佐官が5月29日にアブダビで、UAEのAl-Fujairahに停泊中のタンカ4隻が攻撃された際に使用された機雷はイラン製であることが明らかであると述べた。 (1907-060507>1907-060507)

6月13日:日本、ノルウェー船

 ホルムズ海峡近くのオマーン湾で6月13日、タンカー2隻が攻撃を受けた。 報道などによると砲弾で攻撃されたもようで、船体が大きく損傷した。
 国土交通省は、このうち1隻は日本の海運会社「国華産業」が運航するケミカルタンカーKOKUKA Courageous(パナマ船籍、19,349総トン)で、複数回の攻撃を受けたと発表した。
 国交省や国華産業によると、同船はサウジアラビアからメタノール25,000tをシンガポールとタイに運ぶ途中だった。 乗組員はいずれもフィリピン国籍で全員避難したが、船を管理するシンガポールの会社の担当者は「1人は軽傷を負った」と話した。
 被害を受けたもう1隻はノルウェーの海運会社が運航するタンカーで、エタノールを積んで台湾に向かっていた。 (1907-061302>1907-061302)

 イラン革命防衛隊元司令官のホセイン氏が6月13日にテヘランで産経新聞の取材に応じ、日本のタンカが攻撃された事件について、テロ組織が関与したとの見方を示した。
 ホセイン氏は、米・イランの軍事的緊張を高める目的で、分離主義を掲げるイラン南東部の反政府組織「ジェイシ・アドリ」などが行った可能性を指摘し、同組織は特定の国の支援を受けていることが分かっており、軍事技術も高いと話した。
 ほかに、イランと敵対関係にあるISISやアルカーイダ系などが関与した可能性もあるとしたうえで、安倍首相の訪問を反イラン宣伝に利用する狙いで行われたものとの見方を示した。 (1907-061305>1907-061305)

 ポンペオ米国務長官が6月13日、ホルムズ海峡付近で日本の海運会社が運航するタンカーなど船舶2隻が攻撃を受けた事件についてイランに責任があると述べ、米政府としてイランが事件に関与したと判断したことを明らかにした。 また米軍は同日、イラン関与を示すものとする映像を公開した。
 一方ロイタ通信などが、イエメン内戦に軍事介入しているサウジアラビア主導のアラブ諸国連合軍は13日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が今回の攻撃に関与しているとの見方を示したと報じた。
 軍報道官は、フーシの過去の攻撃と通じるものがあるとし、昨年7月に紅海航行中のサウジの石油タンカーがフーシの攻撃を受けた事件に言及した。 (1907-061403>1907-061403)

 オマーン湾でタンカー2隻が攻撃を受けた事件で、米当局者4人がCNNに対し、イラン海軍艇が日本のケミカルタンカーの船体から不発の水雷を取り外す映像と写真を入手していることを明らかにした。
 当局者の1人によると、映像は米軍機が上空から撮影したもので、イラン艇が攻撃を受けたタンカと並んで航行し、船体からLimpet Mineと呼ばれる水雷を取り除く様子を捉えていた。 映像には、この舟艇に乗った人物が水雷をつかむ場面も映っているという。
 事件をめぐってはポンペオ米国務長官が6月13日に諜報に基づく評価だとして、イランに責任があるとが、主張を裏付ける証拠は示していなかった。 (1907-061404>1907-061404)
【註】Limpet Mineとは船底などに磁石で取り付ける小型の爆破装置で水雷には属さない。 遠隔操作または時限装置で爆破するが、通常はダイバーなどが引きはがそうとすると自爆する機能を持っている。
 今回イラン艇が接近して手で取り外したということは、イラン側がこの装置を不活性化できるか、外しても爆発しないという確証を持っていたことになる。

 日本の海運会社のタンカーがホルムズ海峡近くで受けた攻撃に関しハント英外相が6月14日、独自の分析に基づいて「ほぼ確実に責任はイランにある」と結論付けた。
 ハント外相は、攻撃に関与したのはイラン革命防衛隊だと指摘し、他のいかなる国家、勢力も関与していないとの見方を示した。 (1907-061501>1907-061501)

 6月13日早くオマーン湾で、Front AltairKokuka Courageousの2隻のタンカが攻撃を受けた。 両船とも死傷者はなかったがFront Altairは大きな損傷を受け火災が発生した。 トランプ政権は攻撃はイランによるものと強く非難した。
 米中央軍によるとFront Altairの乗組員は貨物船に救助されたのちイランの高速艇 (FIAC) に収容された。 Kokuka Courageousには米駆逐艦Bainbridgeより先にイランのHendijan級哨戒艇が到着したが、乗組員は米駆逐艦への収容を希望した。 (1908-061901>1908-061901)

7月10日:英国タンカー

 複数の米当局者によると、イランの革命防衛隊のものとみられる小型船5隻が7月10日、ホルムズ海峡付近で英国の石油タンカーに接近し、イラン領海付近で停船するよう指示したが、英海軍が警告を発すると撤退したという。
 複数の米当局者が匿名を条件に語ったところによると、事件は英石油タンカーBritish Heritageがホルムズ海峡入り口の北側付近にいた時に起きた。 当局者の1人は、付近にいた英海軍フリゲート艦Montroseがこれらの小型船に銃を向け、無線機で警告を発したら、撤退したという。
 また別の当局者は、嫌がらせでホルムズ海峡通過を妨げようとする行為だったとコメントした。 (1908-071101>1908-071101)

 イラン国営ファルス通信が、革命防衛隊が7月11日にホルムズ海峡付近で英国の石油タンカーの停船を試みたという米当局者の発言内容を否定したと報じた。
 革命防衛隊の海軍は声明で、巡視船は通常の任務を遂行しているが、過去24時間に英国を含む海外の船舶との遭遇はないとしているという。 (1908-071102>1908-071102)

 ペルシャ湾を航行中の英国商船British Heritageが7月11日にイラン艦艇3隻に進路を妨害された。
 このためBahrainに派遣されている英海軍Type 23フリゲート艦のMontroseBritish Heritageとイラン艦艇の間に入り音声で警告したところ、イラン艦艇は立ち去ったという。 (1908-071713>1908-071713)

7月13日:UAE タンカー

 UAEが運行しているパナマ船籍のオイルタンカーRiahが7月13日遅くからホルムズ海峡で行方不明になっている。 RiahはデータからUAEのSharjahに向かっていると見られるが、イラン海域で消息を絶ち、トランスポンダも切られている。
 バーレーンを拠点とする米第7艦隊はこの事実を承知しているとしながらも、詳細についてのコメントを避けている。 (1908-071604>1908-071604)

 米各メディアが7月16日、ホルムズ海峡を航行していたUAEの石油タンカーが現地時間の13日深夜に消息を絶ったと報じた。
 タンカーは全長60mのRiahで、タンカーがイラン領海内に入った後に位置情報の送信が途絶えたとされるが詳細は不明である。 Washington Posr紙によれば米海軍第5艦隊の報道官は「報道は把握している」とだけ述べた。
 報道によるとタンカーはUAEのシャルジャに向かっていたが、急遽航路を変更してイラン南部ケシム島沖合で確認されたのを最後に位置が不明になった。 (1908-071701>1908-071701)

 米英メディアが7月16日、ホルムズ海峡を通過していたパナマ船籍で全長58mの小型石油タンカーRiahがイラン領海に入り、13日夜から行方不明になっていると報じた。
 Riahはドバイを出港しUAE東部フジャイラに向かう途中だった。 米政府はイランが拿捕した可能性があるとして警戒を強めている。
 これを受けて国営イラン放送は16日、ペルシャ湾で外国のタンカーが故障して救助を要請したためタグボートで領海に牽引したとイラン外務省が発表したと報じた。 (1908-071702>1908-071702)

 イランの国営TVが、イランの革命防衛隊が7月14日にペルシャ湾で密輸に関わっていたとして外国のタンカーを拿捕したと報じた。 タンカーは100万立の燃料を積んでおり、ホルムズ海峡にあるララック島付近で拿捕されたという。
 ペルシャ湾ではUAEを出航したパナマ船籍のタンカーRiahが13日夜から消息を絶っているが、イラン外務省は16日に船の名前には触れずに、救難信号を出した外国の船を救助したと述べている。
 革命防衛隊は、救助された船と今回拿捕されたタンカーが同一だとしている。 (1908-071901>1908-071901)

7月:英船籍タンカー

 イラン革命防衛軍が7月19日、英船籍の石油タンカーStena Imperoを拿捕したと発表した。 英国が7月にEUの制裁に違反したとみられるイランの大型石油タンカーを英領ジブラルタル沖で拿捕したことへの報復措置の可能性がある。
 また英政府は、これとは別にリベリア船籍で英企業が運営するタンカーも拿捕されたという見方を示したが、イランのタスニム通信は同船が安全面での警告を受けた後、通常航路に戻り航行を続けていると拿捕されていないと報じている。 (1908-072001>1908-072001)

 イランのメディアによると、革命防衛隊軍が7月19日にホルムズ海峡で英国のタンカーStena Imperoを拿捕したと明らかにした。 イラン側は、サウジアラビアの港に向かっていた英タンカーは船舶の位置を知らせる識別装置を作動させず、革命防衛軍の警告を無視したため拿捕したと主張している。
 AFP通信によると、同タンカーの所有者は「ホルムズ海峡の国際海域を航行中に、小型船数隻やヘリコプターに攻撃を受けた」と説明した。 (1908-072002>1908-072002)

 インド外務省は7月20日、ホルムズ海峡で英船籍タンカーがイランに拿捕された問題で、乗組員23人のうち18人がインド人だと確認した上で、早期解放と本国送還に向けてイラン政府と接触していると述べた。
 また、フィリピン外務省も20日に声明を出し、乗組員にはフィリピン人が1人含まれていたと発表し、駐イラン大使がイラン当局と連絡を取り、安全の確保と早期解放を求めていくと説明した。
 同省によれば、残りの乗組員はロシア人が3人、ラトビア人が1人だという。 (1908-072003>1908-072003)

8月4日:船籍不明タンカー

 国営イラン通信(IRNA)は8月4日、ペルシャ湾でイラン革命防衛隊(IRGC)の海上部隊がFarsi島周辺海域で密輸燃料70万立を輸送していた外国の船舶を拿捕し、外国人乗組員7人を拘束しているとする革命防衛隊の声明を報じた。
 イランによる外国船拿捕はこの1か月で3度目になる。
 拿捕された外国船はイラン南部沿岸のBushehrへ移送され、革命防衛隊が司法当局と連携して密輸燃料をイラン当局に引き渡したという。 (1909-080402>1909-080402)

 イラン革命防衛隊が8月4日、ペルシャ湾で外国船1隻を拿捕したと発表した。
 発表などによるとこの船は7月31日21:30頃にBushehrの南西約130kmのペルシャ湾内Farsi島近くで、革命防衛隊海軍に拿捕された。 船籍は不明であるが、外国籍の船員7人が逮捕されイラン国内で拘束されている模様である。
 密輸した燃料70万立を湾岸アラブ諸国に運ぼうとしていた疑いがあるとしている。 船は瀬取りによって燃料を密輸しようとしていたとみられる。 (1909-080403>1909-080403)

 ロイタ通信がイラン国営メディアの報道として、イラン革命防衛隊が8月4日に燃料を密輸しようとしていた疑いで7月31日にペルシャ湾で拿捕したタンカーはイラク船籍と主張したと報じた。 (1909-080501>1909-080501)

9月7日:密輸船をホルムズ海峡の付近で拿捕

 イラン国営通信が9月7日、イランの海上保安当局はイラン産燃料を国外に密輸しようとしたとして、ホルムズ海峡の付近で1隻の船を拿捕し、乗っていたフィリピン人の船員12人を拘束したと報じた。 船には、約28万立のディーゼル燃料が積まれていたという。
 イラン産のディーゼル燃料などの価格は米国による経済制裁の影響で下落しているため近隣国との密輸が横行しており、イラン当局はたびたび船を拿捕している。 (1910-090706>1910-090706)

イランも攻撃を受けたと発表

 国営イラン通信が10月11日にイラン国営石油会社の話として、サウジアラビア沖の紅海を航行していた同社の石油タンカーに同日朝、ミサイル2発が撃ち込まれ、爆発が起きたと報じた。 船体が破損したが船は安定していて沈没の恐れはないとみられ、乗組員にけがは無いという。
 攻撃を受けたのは同社のタンカーSabitiで、サウジ西部ジッダ沖約100kmの海域を航行中にミサイルが飛来し、二つの船倉を破損したという。 少量の石油が海上に流出したが、火事は発生しなかった。
 専門家による調査が行われているが、実際にミサイルによる攻撃だったかや、詳しい事故原因は特定されていない。 (1911-101103>1911-101103)

 サウジアラビア沖の紅海で10月11日にイランの石油タンカーが爆発を起こした事件で、関係筋が16日にイラン政府がイスラエルの関与を疑う見方を強めていると話した。
 関係筋は、イランは最近になってサウジに融和的な姿勢を示しているため、両国の接近を嫌うイスラエルがこれを妨害する目的でサウジ沖で攻撃を仕掛けたとの見方を示した。
 ロウハニ大統領は14日の記者会見で、駆逐艦かボートが複数のロケット弾を発射し、うち2発がタンカーに命中したと主張している。 (1911-101602>1911-101602)

2・1・2・2 UAV に対する相互の攻撃

イランが米 MQ-9 に対し SAM を発射

 CNN TVが14日に米当局者の話として、日本などのタンカー2隻がホルムズ海峡近くで攻撃された問題で、攻撃の数時間前にタンカー周辺を飛行してイランの艇が2隻のタンカーに接近するのを監視していた米国のMQ-9に対しSAMを発射したがミサイルは命中せず海に落下したと報じた。
 当局者は、この艇が実際にタンカーを攻撃したかどうかには言及しなかったという。 (1907-061502>1907-061502)

MQ-4C BAMS 撃墜事件

 イランが6月20日に同国の領空を侵犯したとして米国製UAVを撃墜したと発表したことを受けて、米国防総省は同日、UAVが撃墜された事実は認めたものの、飛行していたのはイランの領空内ではなく国際空域だったと反論した。
 米中央軍報道官が、海軍のBAMS-Dがグリニッジ標準時(GMT)の19日23:35にイランのSAMによって撃墜されたと発表し、イラン上空に同機がいたとする同国の報道は間違いだとして、これは国際空域における米監視機へのいわれのない攻撃だと述べた。 (1907-062003>1907-062003)
【註】BAMSとは主として陸上の偵察を任務とするRQ-4A Global Hawkの洋上監視型MQ-4C Tritonのことで、洋上での水上艦や潜水艦の動きを監視する装備を搭載しP-8A Poseidonの補完する哨戒任務を行っている。
 撃墜されたBAMSはホルムズ海峡でイラン舟艇の動きを監視していた可能性がある。

 イランに撃墜された米軍のUAVについて、米当局者はロイタに対し、UAVの残骸はホルムズ海峡の国際水域にあり、米海軍の船舶がこの海域に派遣されていることを明らかにした。
 撃墜されたのは米海軍のMQ-4C Tritonで、米軍は残骸が浮遊している具体的な海域について現時点では明らかにしていない。
 イラン革命防衛隊は、米軍のUAVが南部ホルモズガン州でイラン領空に入った際に撃墜したとしており、残骸が公海上にあるとすれば矛盾することになる。 (1907-062101>1907-062101)

 トランプ米大統領が6月20日、イランが米軍のUAVを撃墜したことについて容認できないとする一方、誤射によるものとの見方を示した上で、有人機が撃墜されていたら状況は大きく違っていたと発言した。 (1907-062102>1907-062102)

 イラン革命防衛隊が、6月20日にイランの領空を侵犯した米国の大型UAVを撃墜したと発表した。 それによると米軍のUAVは同日午前零時過ぎにペルシャ湾南部の米軍基地から発進し、ホルムズ海峡からイラン南東部のチャバハール方面へ飛行のち、ホルムズ海峡西部へ戻る途中でイランの領空を侵犯し、情報収集とスパイ活動を行ったため、04:05にイラン領空で撃墜されたとしている。 (1907-062104>1907-062104)

 米海軍のRQ-4A Global Hawkが6月20日にイランに撃墜された。 イランはUAVがオマーン湾のKuh Mubarak沖合で領空を侵犯したとしている。
 これに対し米中央軍は、撃墜された地点はイラン沖合70km、高度6,769mの公海上であったと主張している。 (1907-062108>1907-062108)

 イラン革命防衛軍が6月20日、オマーン湾のイラン側Kuh Mubarak近くで米海軍のRQ-4A Global Hawkを3 Khordad自走型SAMで撃墜したと発表した。
 これについて米中央軍はRQ-4Aがオマーン湾上空22,209ftで撃墜されたことは認めたものの、撃墜地点はイランの海岸から70km離れていたとしている。 (1908-062601>1908-062601)

 米軍が、6月20日04:05に米海軍のRQ-4A Global HawkがイランのSAMに撃墜された際、その近傍前方を35名を乗せたP-8A Poseidonが飛行していたことを認めた。 (1908-070307>1908-070307)

RQ-4A Global Hawk 撃墜に対する米国の対応

 トランプ米大統領が6月21日早朝のツイートで、イランが米UAVを撃墜した報復として、同国への報復攻撃を一旦は命じたが、150人の犠牲者が出るとの報告を受け、攻撃10分前に中止したことを明らかにした。
 米軍の航空機や艦船が攻撃態勢に入っていた中での中止命令で、攻撃が実施されていれば、戦争に発展した可能性もあり、ギリギリの決断だった。 (1907-062302>1907-062302)

 Washington Post紙が6月22日、イランによる米UAV撃墜を受け、米国がイランのコンピューターシステムにサイバ攻撃を行っていたと報じた。
 イランが20日に米UAVを撃墜した後、トランプ大統領は報復として軍事攻撃の承認を撤回し、代わりにイランに新たな制裁を科すと宣言していたが、同紙は事情に詳しい消息筋の話として、大統領は米サイバ軍に対し、報復としてイランを標的としたサイバ攻撃を秘密裏に承認していたと報じた。
 この攻撃によって、イランのロケットとミサイル制御コンピュータが機能不全に陥ったが、死傷者は出ていないという。 (1907-062303>1907-062303)

強襲揚陸艦Boxerがイランの UAV を撃墜

 トランプ米大統領が7月18日、米海軍の強襲揚陸艦Boxerがホルムズ海峡でイランのUAVを撃墜したと明らかにした。
 再三の警告を無視し、900mにまで接近してきたために自衛措置を取ったと説明した。 (1908-071902>1908-071902)

 トランプ米大統領が6月18日、米強襲揚陸艦Boxerがホルムズ海峡でイランのUAVが1,000ydまで接近したため撃墜したと述べた。
 大統領府の声明によると18日10:00頃、固定翼UAVがBoxerに接近したため撃墜した。
 CNNやNBCはUAVをECMで撃墜したと報じている。 海峡を航行中のBoxerの画像には甲板に置かれたLMADISが写っている。 (1908-071904>1908-071904)

イランの UAV 撃墜について、イラン側との食い違い

 トランプ米大統領が6月18日、この日早くホルムズ海峡で、イランのUAVが米海軍のWasp級LHDのBoxerに1,000ヤードまで接近し、呼びかけに応じなかったため撃墜したと述べた。
 接近したのは固定翼のUAVで、CNNやNBCによるとIAVは艦固有の装備ではなく同乗していた第11海兵遠征隊が装備していた電子戦装置LMADISにより撃墜されたと言うが、これについてイラン革命防衛軍は、UAVは撃墜されずに帰還したと発表している。 (1909-072401>1909-072401)

 米海軍強襲揚陸艦Boxerがホルムズ海峡通過中の7月18日にイランのUAVを撃墜したとしていることで、米国とイランの話が食い違っている。
 米中央軍司令官のマッケンジー大将はCBSに対して7月23日、イランのUAV 2機を撃墜したと述べているが、イランはUAVが撮影した画像を公表して反論している。
 米海軍はイランのUAVを現地時間10:00 (05:30 GMT) に撃墜したとしているが、イランのUAVが撮影した画像の画面には07:16 GMTと表示されており、05:30 GMTに撃墜されてはいなかったことになる。 (1909-073110>1909-073110)

2・1・2・3 英国の対応

イランの大型タンカーをジブラルタル沖で拿捕

 英海兵隊が7月4日、シリアに原油を輸送していた疑いのあるイランの大型石油タンカー、Grace 1を英領ジブラルタル沖で拿捕した。 イランがシリアに原油を輸送していたとすれば、米国の対イラン制裁、EUの対シリア制裁に違反することになる。 タンカーはスエズ運河経由ではなく、アフリカ大陸南端沖を迂回航行していた。
 一方、イラン外務省は同国駐在の英国大使を呼び出し、拿捕は「違法で容認できない」として厳重に抗議した。 (1908-070504>1908-070504)

 英国防省が7月12日、自国のタンカがホルムズ海峡周辺イランの船から進路を妨害されたとして、自国の商業船の自由な航行を維持するため新たな艦艇を派遣することを明らかにした。
 ただ国防省は今回の艦艇の派遣について、すでにこの海域で展開している艦艇が保守点検に入るため、その交代として派遣することになったと説明している。
 一方で英メディアの中には、2隻が同時にこの海域で行動し、警戒監視態勢を強化するとの見方を報じているところもある。 (1908-071301>1908-071301)

 英領ジブラルタルが8月15日、英海兵隊が7月4日にEUの制裁に違反してシリアに原油を輸送していた疑いでブラルタル沖で拿捕していたイランのタンカーGrace 1の解放を決めた。
 ジブラルタルのピカルド自治政府首相は、イラン側がシリアで石油210万バレルを陸揚げしないと書面で公式に伝えてきたことを受け、拿捕命令の解除を決めたが、まだ解放していないという。
 Grace 1について米司法省が押収を申請したが、ピカルド首相は「独立した共助当局の問題であり、別の手続きの要請には同当局が客観的な法的判断を下す」と述べた。 (1909-081601>1909-081601)

ペルシャ湾への艦船派遣

 イランの小型艇が英国の超大型タンカーの通行を脅かしたことでペルシャ湾の緊張が高まるなか、英国は7月12日に同湾に2隻目の軍艦を派遣し、警戒レベルを引き上げたと発表した。
 英政府によると、あらかじめ計画されていた補給整備と乗組員の交代のためペルシャ湾での任務から離れるフリゲート艦Montroseに代わって、新たに駆逐艦Duncanが派遣されるという。
 駆逐艦DuncanはHarpoon ASCMを装備している。 (1908-071302>1908-071302)

 英国防省が7月12日、湾岸地域に派遣されているType 23フリゲート艦Montroseが整備のため現地を離れるより数週間先んじて、交代する予定であったType 45駆逐艦Duncanを派遣すると発表した。
 黒海でNATOの演習に参加していたDuncanは、13日にボスポラス海峡を南下するのが目撃されている。 (1908-071504>1908-071504)

 英国防省が7月16日、ペルシャ湾に新たに戦闘艦1隻と補給艦1隻を派遣すると発表した。 補給艦Wave Knightが8月に、その後にType 23フリゲート艦Kentが展開する。 英Times紙によると、Kentは9月に派遣される見通しである。
 国防省は通常任務の一環で、最近の緊張に絡んだ派遣ではないとしているが、同海域ではフリゲート艦Montroseが展開中で、現在、交代の駆逐艦Duncanが現地に向かっている。
 Kentはこの駆逐艦から任務を引き継ぐが、国防省は交代の過程で展開時期が重なることもまれではないと話し、一時的に3隻が同時展開する可能性も示唆した。 (1908-071703>1908-071703)

 英国防省が7月16日に、2隻目のType 23フリゲート艦をペルシャ湾に派遣すると発表した。
 派遣されるのはKentで整備に入るType 23フリゲート艦Montroseと交代するため7月上旬に派遣されたType 45駆逐艦Duncanから任務を引き継ぐ。 (1909-072403>1909-072403)

有志連合参加問題

 英国のハント外相が7月22日、英国のタンカーがホルムズ海峡でイランに拿捕されたことを受け、同海峡を航行する船舶の安全確保に向け欧州が主導する態勢の構築を目指すことを明らかにした。
 英国はイラン核合意の保全にコミットしているため、米国が掲げるイランに対し最大の圧力を掛ける政策には加担しないと述べた。
 過去2日間で英国は数多くの国とこの件に関して建設的な協議を行い、米国が結成を目指す中東海域を航行する民間船舶を護衛するための有志連合をどのように補完できるか協議する意向も示した。 (1908-072301>1908-072301)

2・1・2・4 その他各国の対応

欧州独自の海上警備部隊

 中東歴訪中のパルリ仏国防相が11月24日、ホルムズ海峡の安全確保を目的に欧州独自で目指している海上警備部隊について、UAEのアブダビにある仏海軍基地に司令部を置くことで合意したと明らかにした。
 米主導の有志連合は11月初旬に中東バーレーンに司令部を発足させ、英国やオーストラリア、サウジアラビアなど7ヵ国で既に活動を始めている。 日本は有志連合参加を見送り、独自に中東地域への自衛隊派遣を検討している。 (1912-112502>1912-112502)

インド

 インド海軍が、タンカーへの攻撃が続いたオマーン湾情勢を受けインドにとって重要な海路を防衛するとして、6月23日までに戦闘艦2隻を同湾に派遣したとの声明を発表した。
 2隻は駆逐艦Chennaiと哨戒艦Sunaynaで、オマーン湾の他、接続するペルシャ湾でも海洋の安全確保を図る任務に当たる。
 今回の派遣はSankalp作戦の一環で、偵察機も送り込んだ。 (1907-062304>1907-062304)

2・1・2・5 有志連合

トランプ政権の自分で守るべきだとの主張

 トランプ米大統領か6月24日に日本や中国などに対しツイッターで、ホルムズ海峡を通過する自国のタンカーは自分で守るべきだと主張した。
 なぜ米国が代償なしに他国のために輸送路を守っているのかと指摘した上で、米国は最大のエネルギー生産国になっておりホルムズ海峡にとどまる必要さえないとも述べた。 (1907-062404>1907-062404)

有志連合結成

 米統合参謀本部議長のダンフォード海兵隊大将が7月9日、ホルムズ海峡などのシーレーンの安全を確保するため、有志連合の結成に向けて関係国と調整していることを表明した。 米軍は主に指揮統制などを担い、参加国の艦艇が自国の民間船舶の護衛や、海上警備を行う態勢を目指すという。
 ダンフォード大将によると、有志連合が警備や護衛の対象とするのは、ホルムズ海峡と、紅海の入り口にあるイエメン沖のバブルマンデブ海峡で、バブルマンデブ海峡ではイエメンのフーシ派からの攻撃を警戒しているとみられる。 (1908-071002>1908-071002)

 ポンペオ米国務長官が7月25日にFOX Newsのインタビューで、ホルムズ海峡の安全確保に向けた有志連合構想について日本など具体的な国名を挙げ、各国に参加を要請していることを明かした。
 インタビューでポンペオ長官は、日本や韓国、英独仏、オーストラリア、ノルウェーなど各国に参加を求めたと明言し、ホルムズ海峡の航行が確保され、原油や他の製品を輸送することが自国の利益となる全ての国は、有志連合に加わる必要があると訴えた。
 米政府はこの日、同盟国や友好国約60ヵ国を招き、有志連合構想に関する2回目の説明会を開催した。 (1908-072605>1908-072605)

有志連合結成調整が難航

 トランプ米大統領はイランへの制裁を強化し、核開発の制限強化にミサイル開発中止などを加えた「新たな合意」の受け入れを求めるが成果は出ていない。
 多国間の協力が進まない背景には、各国はイランをめぐる危機は2018年核合意から一方的に離脱した米国の自業自得と見ていることもある。
 政治専門紙POLITICOによると、EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表(外相)の補佐官は、現在の緊張激化をもたらした原罪は米国の核合意違反にあると指摘している。 (1908-072801>1908-072801)

 トランプ政権が英、仏、独にホルムズ海峡を通過するタンカー護衛の有志連合を呼びかけるが、手を挙げたのは韓国ぐらいで、多くの同盟国が強引なトランプの味方をしてイランを敵に回すのを恐れている。
 米国は英仏独に対して有志連合に加わるように正式に求めているが、英政府は既に国際的な海上保護派遣団の結成を提案している。
 独仏は今のところ英米どちらの構想にも参加表明はしておらず、ドイツ議会における軍の監察官は「ドイツ海軍は法が許す範囲で活動している」と述べ、英米の構想に参加することは「他の同盟国に対する義務を疎かにすることになる」としている。 (1908-073105>1908-073105)

英国の対応

 英国のハント外相が7月22日、英国のタンカーがホルムズ海峡でイランに拿捕されたことを受け、同海峡を航行する船舶の安全確保に向け欧州が主導する態勢の構築を目指すことを明らかにした。
 英国はイラン核合意の保全にコミットしているため、米国が掲げるイランに対し最大の圧力を掛ける政策には加担しないと述べた。
 過去2日間で英国は数多くの国とこの件に関して建設的な協議を行い、米国が結成を目指す中東海域を航行する民間船舶を護衛するための有志連合をどのように補完できるか協議する意向も示した。 (1908-072301>1908-072301)

 米国が結成を目指しているホルムズ海峡の安全を確保するための有志連合について、英政府は航行の自由を守ることは重要だとして、参加する意向を表明した。
 有志連合への参加を表明したのは英国が初めてとみられる。 (1909-080602>1909-080602)

韓国の参加表明

 韓国の毎日経済新聞が、韓国がホルムズ海峡での航行の安全確保を目指す米国主導の有志連合に加わるため、駆逐艦1隻を含む海軍の部隊を派遣する計画であると報じた。
 報道によると、韓国はソマリア沖で活動する海軍の海賊対策部隊、清海をホルムズ海峡に派遣することを決めた。 (1908-072903>1908-072903)

韓国と日本に対し事実上の派兵要求

 オーストラリアを訪問中のポンペオ米国務長官が8月4日、オーストラリアとの外務防衛閣僚会議後にエスパー国防長官と共に開いた記者会見で、航行の自由を可能にする国際的連合を構築することになるという点を、大いに確信しているとして、韓国や日本のように、物やサービスがホルムズ海峡を通して流れ込んでいる国々が自国の経済的利益を保護する形で参加することは極めて重要と発言し、韓国と日本に対し事実上の派兵を要求した。 (1909-080606>1909-080606)

イスラエルが有志連合に情報支援

 イスラエルのカッツ外相が8月6日、米国が結成を目指しているホルムズ海峡の安全を確保するための有志連合に情報収集で支援していく考えを明らかにした。
 カッツ外相は6日に非公開で開かれた議会の外交防衛委員会で「イスラエルはアメリカの有志連合を情報収集の面で支援していく。 イランの影響力拡大を食い止めるとともにアラブの湾岸諸国との関係強化につなげるという戦略の一環だ」と述べたという。 (1909-080704>1909-080704)

バーレーンが有志連合参加を表明

 米中央軍が8月19日、ホルムズ海峡などで船舶の安全を確保する米国主導有志連合構想の海洋安全保障計画に、バーレーンが参加することが明らかになったとした声明を発表した。
 正式な参加表明は、英国に続いて2ヵ国目になる。 (1909-082002>1909-082002)

オーストラリアが有志連合参加を表明

 オーストラリアのモリソン首相が8月21日、ホルムズ海峡でタンカーを護衛する米国主導の有志連合への参加を表明した。
 豪首相府によると、P-8 1機とフリゲート艦1隻のほか、バーレーンに置かれる司令部に要員を派遣する。
 P-8は2019年の年末前の1ヵ月間、フリゲート艦は2020年1月から半年間それぞれ派遣する。 (1909-082104>1909-082104)

有志連合による Sentinel 作戦、正式始動

 ホルムズ海峡などの安全確保を目的とする米軍主導の有志連合によるSentinel作戦が7日に正式始動し、バーレーンの米海軍第5艦隊司令部で式典が行われた。
 作戦には米国に加え英国、オーストラリア、サウジアラビアなど計7ヵ国が参加を表明している。 (1912-110801>1912-110801)

カタールとクウェートの参加

 ロイタ通信が11月26日までに米軍当局者の話として、ホルムズ海峡などを航行する民間船舶の安全確保を目的とする米軍主導の有志連合に、カタールとクウェートが人員と哨戒艇を派遣して新たに参加する見通しとなったと報じた。
 正式に決まれば、有志連合の参加国は英国やオーストラリア、サウジアラビアなどに続き9ヵ国となる。 (1912-112602>1912-112602)

2・1・3 イエメン内戦

2・1・3・1 フーシ派によるサウジ攻撃

2・1・3・1・1 BM による攻撃

5月20日: サウジ西部へ BM 2発、サウジが撃墜

 中東のTV局アルアラビーヤによると、サウジアラビア軍が5月20日にイエメンのフーシ派がサウジ西部へ発射したとみられるBM 2発を撃墜した。
 ミサイルはサウジ西部の商業都市ジッダとイスラム教聖地メッカへ向かっていたという。 (1906-052006>1906-052006)

2・1・3・1・2 CM/UAV による攻撃

5月14日: 石油パイプラインの2ヵ所に爆発物を積んだ UAV

 サウジアラビア国営通信によると、サウジの東西を結ぶ石油パイプラインの2ヵ所が5月14日朝に爆発物を積んだUAVに攻撃され、施設の一部が損壊した。
 イランが支援するイエメンのフーシ派は、14日にUAV 7機でサウジの重要施設を攻撃したと主張し、サウジがイエメンへの軍事介入を続ければ、さらに激しく攻撃する用意があると警告した。 (1906-051407>1906-051407)

6月12日: アブハ空港を CM 攻撃

 国営サウジ通信が、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が6月12日未明にサウジアラビア南西部のアブハ空港を攻撃し市民26人が負傷したと報じた。
 サウジの発表によるとミサイルが空港の到着ロビーを直撃し、負傷者にはサウジ人のほか外国人や子どもも含まれる。
 フーシ派系メディアは、CMによる攻撃が狙い通りに行われたとのフーシ派側の主張を伝えた。 (1907-061205>1907-061205)

6月23日: 2ヵ所の空港を UAV で攻撃

 イエメンのフーシ派が運営するメディアが6月23日、サウジアラビア南部の2ヵ所の空港をUAVで攻撃したと主張した。
 フーシ派は12日にも同じ空港を攻撃し、外国人を含む26人がけがをするなど、サウジアラビアへの攻撃を激化させている。
 これについてサウジアラビア主導の連合軍は、南部の空港1ヵ所が攻撃を受け、1人が死亡、7人がけがをしたとしている。 (1907-062403>1907-062403)

 サウジが主導する連合軍が6月24日、サウジ南西部のAbha国際空港が6月12日にイラン製のYa Ali CMで攻撃されたと発表した。
 イエメンのフーシ派はその1週間後にAl-Shuqaiqの発電所をCMで攻撃したと発表している。
 2014年5月に公開されているYa Aliは射程が700kmと言われ、チェコPBS社製のTJ-100ターボジェットで推進する。 同社は5月に、2004年以来900基のTJ100を販売しており、その多くは標的機に使用されているとしている。 (1908-070311>1908-070311)

8月17日: UAV 10機で油田に対し大規模攻撃

 イエメンの反政府武装組織フーシ派が8月17日、サウジアラビア東部のシャイバ油田に対してUAV 10機で大規模な攻撃を加えたと発表した。 サウジの重要施設にミサイルやUAVで攻撃を続けるフーシ派の脅威が高まっている。
 同油田は、サウジと共にイエメン内戦に軍事介入しているUAEとの国境に近くで、フーシ派が拠点を置くイエメン北部から直線距離で1,200kmある。 (1909-081703>1909-081703)

9月14日: UAV 18機と CM 7発でで石油施設2ヶ所に大規模攻撃

 サウジアラビア国営通信によると、ペルシャ湾に近い東部アブカイクなどにある国営石油会社サウジアラムコの施設2ヶ所が9月14日未明にUAVの攻撃を受けた。
 施設では火災が起きたが、既に鎮火されたという。 (1910-091403>1910-091403)

 サウジアラビアにある世界最大規模の石油施設2ヶ所が9月14日早朝にUAVによる攻撃を受け火災が発生し、欧米のメディアはサウジアラビアの原油生産量の半分にあたる日量500万バレル程度の生産に影響が出ていると伝えるなど懸念が広がっている。
 火災は鎮圧されたとしているものの、攻撃から半日以上経過した今も被害の詳しい状況は明らかになっていない。
 一方、イエメンの反政府勢力はUAV 10機を使って攻撃を行ったとする声明を発表した。 反政府勢力の支配地域から攻撃を受けた施設までは1,200km離れているが、イエメンの反政府勢力のUAVの性能向上で長距離攻撃が可能になっていると主張している。 (1910-091501>1910-091501)

 サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの施設2ヶ所が9月14日にUAVによる攻撃を受けて炎上した。
 サウジアラムコの声明によると、この攻撃により1日あたり570万バレルの生産削減を余儀なくされ、これは世界の石油生産量の約5%に相当するという。
 同国エネルギー相によると、サウジアラムコは在庫を活用して、供給に影響が出ないようにするとしている。 (1910-091502>1910-091502)

 トランプ米大統領が9月15日、サウジアラビア東部の石油関連施設に対する攻撃に関し、われわれは臨戦態勢を敷いているとツイッターに投稿し、イランを名指しすることを避けつつも、検証結果次第では報復行為も辞さない姿勢を示した。
 大統領は、われわれは犯人を知っていると確信するに足る理由があると強調した上で、対応策を決める前にサウジによる分析結果を聞くのを待っていると述べた。
 一方、米政府高官はロイタ通信などに対し、イランが関与したことに疑いはないと断言した。 (1910-091604>1910-091604)

 サウジアラビアのAbqaiqにある石油関連施設が9月14日にUAV 18機とCM 7発の攻撃を受けたことで、同国防空部隊の欠陥が注目されている。
 AbqaiqにはPatriot 1個FUのほかにSkyguard AAG 1個システムとCrotaleのサウジ仕様であるShahine 2個システムが展開していた。 ただUAVやCMが西北西の方向から飛来(図中黄色矢印)したのに対し、PatriotのAN/MPQ-53/65は120゚の視界を持つものの、イエメンから飛来するBM対処のため西または南西を向いていた。
 この結果、今回UAVやCMの攻撃を許した原因は早期警戒装備が展開していなかったことと、SHORAD部隊が警戒態勢になかったことと見られる。 (1911-092501>1911-092501)

 サウジアラビア東部にある国営石油会社サウジアラムコの石油施設2ヶ所が9月14日に受けた攻撃について、米国はイランが背後にいると非難するなかサウジが主導する有志連合は16日、攻撃にイランの武器が使用されたとの見解を示した。
 イランが攻撃への関与を否定する中、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は16日、アラムコの石油施設は引き続き攻撃対象となっており今すぐにでも攻撃は可能として、外国人に対し同地域から退去するよう警告した。
 フーシ派の報道官は「サウジはイエメンに対する武力侵略と封鎖」をやめるべきだと主張している。 (1910-091701>1910-091701)

 河野防衛相が9月17日、サウジアラビアの石油施設を攻撃したのはイエメンの親イラン武装組織フーシ派の可能性が高いとの認識を示し、米国が示唆するイラン関与説に疑問を呈した。 (1910-091704>1910-091704)

 サウジアラビア東部にある国営石油会社サウジアラムコの石油施設2ヵ所が9月14日に受けた攻撃について、米政府当局者は17日にイラン南西部から攻撃が仕掛けられたという見解を示した。
 米政府当局者3人が匿名を条件に、攻撃にはUAVとCMが使用されたと指摘し、攻撃は当初考えられたより複雑で高度なものだった公算が大きいと述べた。 米国がこうした見方を示したことで中東の緊張が一段と高まる恐れがある。
 この攻撃を巡っては、イエメンの親イラン武装組織フーシ派がUAVで攻撃したと犯行声明を発表し、イランは関与を否定している。 (1910-091802>1910-091802)

 サウジアラビアが9月18日、石油関連施設がUAVとCMの攻撃を受けたと発表した。
 サウジ軍はその残渣を展示すると共に報道官は攻撃はイランの支援で行われたことが明白であると述べた。 攻撃に使われたのはUAV 18機とCM 7発であったが、CMのうち3発は目標に達しなかったという。
 展示されたのはデルタ翼のUAVと、報道官のマルキ大佐によるとCMは射程700kmのYa Aliである。 (1910-091806>1910-091806)

 サウジアラビアの石油施設が攻撃された問題で、同国国防省が9月18日にイランが関与した証拠として、攻撃に使われたとするUAVやCMの残骸などを公開した。
 同省報道官は、攻撃は北から南に向かって行われ、イラン製UAV 18機とCM 7発が用いられたと説明した。 またCMの射程や性能などからイエメンのフーシ派が保有するものではないとして、疑いなくイランに支援された攻撃だとする分析結果を明らかにした。
 一方イランのハタミ国防相は18日にイランの関与を否定し、フーシ派は過去に射程1,200kmのミサイルで空港攻撃に成功していると述べ、攻撃はフーシ派によるものだと主張した。 (1910-091901>1910-091901)

2・1・3・1・3 攻撃に使用している UAV や CM

 イエメンのフーシ派が7月7日、6月12日にサウジアラビアのAbha国際空港を攻撃した地上発射型CM Qudsなどの武器を公開した。
 サウジアラビア軍の広報官はQudsを、イランが2014年に公開したYa Aliであるとしているが、実際にはエンジンの位置が機体上部になっているなど、エンジンが機体内部にあり胴体下に空気取り入れ口を持つYa Aliとは大きく異なっている。 またエンジンをチェコ製のTJ100ターボジェットとしているが、実際にはそのコピーのようである。

 一方Sammad UAVは2018年7月にリヤドの石油精製施設を攻撃したSammad-2と、2018年7~9月にUAEの空港を攻撃した射程の長いSammad-3が公開された。 Sammad-3の翼付け根上部にはコブ状の突起が編める。 (1908-071717>1908-071717)

2・1・3・1・4 過去最大の攻撃

 イエメンの親イラン武装勢力フーシ派が、対立するサウジアラビアへの攻勢を強めている。
 フーシ派軍報道官は9月28日にUAVとミサイルなどによるサウジ南部のナジュラーン州への攻撃により、3個旅団を壊滅させ、多数のサウジ兵士を拘束したと発表した。 各種報道によると、数百人から数千人が拘束されたという。
 サウジ当局はこれを確認していないが、事実ならフーシが過去最大規模のサウジ攻撃をしかけたことになる。 (1910-092902>1910-092902)
2・1・3・2 イランのフーシ派支援

フーシ派が Shahed-123 UAV を使用

 サウジが主導する連合軍が1月11日、フーシ派がイエメン政府を攻撃しようとしたUAVを公表した。
 このUAVは全長が284cm、翼端長453cmで、米国がShahed-123と呼んでいるイラン製UAVと同じに見える。 Shahed-123は武装できるShahed-129より小型で、イランはShahed-123の存在を公式には認めていない。 (1903-013010>1903-013010)

2・1・3・3 戦況の推移

フーシ派が紅海に臨む港湾都市から撤退

 イエメンに派遣されている国連機関が5月14日、フーシ派 (Ansar Allah) が合意に基づき紅海に臨む港町Al-Hudaydah、Al-Salif、Ras Issaから撤退したことを確認した。
 ただ、まだ多くの問題が残っており、Al-Hudaydahはフーシ派が支配する北イエメンへの食料などの補給拠点であったし、周辺の都市はUAEとの最前線になっている。 (1907-052214>1907-052214)

2・1・3・4 米国のサウジ支援

 大統領の拒否権発動を承知の上で米議会上院が、米国のイエメン内戦におけるサウジアラビア支援を停止するとの決議を54:46で可決した。 (1904-031310>1904-031310)

 米国防総省が10月11日、前月のサウジ石油施設への攻撃を受け、同国の防衛能力を強化するため新たな大規模な部隊派遣を発表した。
 戦闘機部隊のほかPAC-3、THAADなどが配備される見通しで、同省報道官は声明で、他の派遣部隊と合わせ3,000名規模になると述べた。 (1911-101202>1911-101202)

2・1・3・5 フーシ派の装備

Fater-1 SAM

 イエメンのフーシ派が8月24日、国産したとする防空システムFater-1を発表した。
 公表されたFater-1のSAMは2K12 Kub/Kvadrat (SA-6) システムの3M9弾と良く似ている。 1960年代に開発されたSA-6は、2015年に内戦が始まる以前にイエメンで軍が装備していた。 (1910-090415>1910-090415)

2・1・4 シリア内戦

2・1・4・1 ロシアの支援

2・1・4・1・1 ロシア軍の駐留

Tartus に新たな施設の建設

 ロシア軍がシリアのTartusに新たな修理整備用の施設を建設したことを明らかにした。
 Maxar衛星の撮影した画像には85m×25mの建造物が写っている。 (1912-100214>1912-100214)

Al Qamishli にヘリ部隊を配置

 InterFax通信が11月14日、ロシア航空宇宙軍がトルコ国境に近いシリア北東部Al Qamishli の空港にヘリ部隊を配置したと報じた。
 Al Qamishli には米軍が撤収まで駐留していた場所で、ヘリ部隊は国境地帯で始まったロシアとトルコによる合同パトロールを支援する。
 Al Qamishli の空港をめぐっては、シリア人権監視団が4日に、ロシアがアサド政権から49年間の使用権を確保し、司令部を置く可能性があるとの情報を得たと報じており、その場合はシリア国内で3番目のロシアの軍事拠点となる。 (1912-111501>1912-111501)

2・1・4・1・2 武器援助

S-300 の移管

 中東訪問を終えたロシア副首相が2018年12月17日、S-300がシリアに展開したことで米国主導多国籍軍のシリア北東部における空爆が減少したと述べた。
 ロシアは2018年9~10月にS-300P 1個システムをシリアに移管している。 (1902-010214>1902-01021)

2・1・4・2 イドリブでの攻勢

アサド政権軍とロシア軍、イドリブで攻撃強化

 シリア北西部イドリブでアサド政権とロシア軍が反体制派への攻撃を強化している。
 2018年9月に停戦のため非武装地帯を設置することでロシアと合意したトルコは、ロシアに対し攻撃を停止してアサド政権軍のイドリブへの進撃を止めるよう求めており、シリア内戦で共同歩調を取ってきたロシアとトルコの思惑の違いが鮮明になっている。 (1906-051404>1906-051404)

 シリア内戦では、Idlib県など北西部の反政府勢力最後拠点にアサド政権が総攻撃をかけるのを回避しようと、2018年9月にロシアと反政府勢力を支援するトルコが協議して非武装地帯を設けたが、その後反政府勢力のうちアルカイダ系の過激なグループが支配地域内で勢力を拡大させたとして、アサド政権とロシアは、テロリストを掃討するためだとして先月末に攻撃強化に踏み切った。
 その結果、シリア人権監視団によると、市民236人が巻き込まれて死亡し、アサド政権の兵士269人と反政府勢力の戦闘員309人も死亡したという。 国際社会は停戦を呼びかけているが、実現のめどは立っていない。 (1906-052801>1906-052801)

 シリア政府軍が北西部で、トルコが支援する反政府勢力が最後の拠点としているIdlibに対し総攻撃を行おうとしていることから、トルコとロシアが衝突する危険が高まってきている。
 トルコは2018年9月にロシアとIdlibでの停戦を斡旋し、15~20kmにわたり重火器や武装勢力を遠ざける非武装地帯を設置することで合意していた。
 Idlibには300万の市民がおり、360万を超えるシリアからの難民を抱えているトルコはシリア、イラン、ロシアからの強い圧力を感じている。 (1907-060104>1907-060104)

 シリアのアサド政権軍が北西部イドリブ県で攻勢を強め、8月23日には政権軍と反体制派の境界に沿ってトルコ軍が設置した停戦監視拠点の一つを包囲していて、トルコ国営アナトリア通信は22日、別の監視拠点が政権軍からの威嚇射撃を受けたとも報じた。
 トルコが支援する反体制派は主要地域からの撤退を始めておりトルコ軍は孤立している。
 シリア人権監視団によると、アサド政権軍は要衝のKhan Shaykhunなどイドリブ県の南部を制圧し、反体制派が撤退しているもようである。 (1909-082703>1909-082703)

 シリア反体制派の最後の牙城である北西部Idlib県で、奪還を目指すアサド政権とロシアによる空爆が再び激しくなり始め、既に数万人規模の市民が避難を余儀なくされている。
 攻撃は12月16日ごろから強まり、政権側は地上からの進軍に加え、容器に爆薬や金属片を詰めた殺傷力の高いたる爆弾を過去5日間ほどで200発近く投下したとされる。 (2001-122203>2001-122203)

シリア政府軍がトルコ軍の監視哨に肉薄

 シリア政府軍が12月22日、反政府勢力最後の拠点である同国北西部で攻勢を強め、トルコ軍の監視哨に肉薄している。
 トルコはシリア内戦が始まって以来9年間、この地域の反政府勢力を支援してきた。
 在英のシリア人権監視団と反政府系のシリア民防団によると、政府軍は22日にIdlib県の反政府勢力が確保している村落に対して砲爆撃を行った。
 Idlib県ではここ数週間で10以上の村落が政府軍の支配下に落ちて数万人が脱出し、そのうち数千人がトルコに脱出しているという。 (2001-122205>2001-122205)

2・1・4・3 情勢を安定に向けたトルコとロシアの連携

 トルコのエルドアン大統領が8月27日にモスクワ近郊でプーチン大統領とシリア北西部イドリブ県の情勢を安定させる対応策を協議した。
 プーチン大統領は会談後の記者会見で、イドリブ県の非武装地帯の状況について憂慮しており、トルコとシリア全体とイドリブ県の情勢を正常化させるための追加的な合同の措置を検討したと語った。
 エルドアン大統領は自国の国境地帯を防衛する権利に言及し、必要に応じて措置を講じていくと述べた。
 両首脳は防衛分野で協力を深めることも確認しており、米国の反発を招きそうである。 (1909-082805>1909-082805)
2・1・4・4 化学兵器使用疑惑

 化学兵器禁止機関 (OPCW) が3月1日、シリアのアサド政権による化学兵器使用が疑われる2018年4月7日のダマスカス近郊の東グータ地区ドゥーマ空爆に関する調査の最終報告書を公表した。
 報告書は「反応性塩素を含む有毒化学物質が兵器として使われた合理的根拠がある」と結論付け、国連安全保障理事会にも報告した。 (1904-030203>1904-030203)

 フランスの外務省が5月22日、シリアのアサド政権が化学兵器を使用している可能性があるとした米国務省発表を受け、調査する必要があるとの考えを示すと共に、化学兵器禁止機関 (OPCW) を信頼していると述べた。
 米国務省は21日に声明で、アサド政権が化学兵器を再び使用している可能性を認識しており、5月19日午前にもシリア北西部で塩素攻撃が実施された疑いがあると表明している。 (1906-052301>1906-052301)

 フランスのルドリアン外相が5月28日、シリア政府軍が同国北西部で行った反政府勢力に対する攻撃で化学兵器を使用した疑いがあるとの見方を示した。 ただ、まだ確定はできていないと述べた。
 同外相は、Idlib県で化学兵器が使用されたとの情報を得ているが、まだ確定はされていないとし、対応策を実施する前に化学兵器の使用を確証する必要があるため、慎重を期していると述べた。
 米英仏3ヵ国は、ダマスカス近郊で2018年4月に化学兵器が使用されたとして、同月に空爆に踏み切っている。 (1906-052901>1906-052901)

 ポンペオ米国務長官が9月26日、シリアのアサド政権が5月19日にIdlibで反政府勢力と戦闘した際に塩素ガスを使用したと最終的に結論付けたと述べた。
 米国は5月にシリア北西部における政府軍の攻撃後に化学物質に晒された際と一致する症状が多数報告されたと発表したが、化学兵器が使用されたかどうかについての最終的な結論は出していなかった。
 米トランプ政権は、シリアが化学兵器を使用した疑いがあるとして、2017年4月と2018年4月にシリアを空爆している。 (1910-092701>1910-092701)

2・1・5 ISIS の掃討

2・1・5・1 最終拠点の奪還作戦

 クルド軍を主力とするシリア民主軍 (SDF) が2月9日、ISISが最後の拠点としているDeir el-Zourから20,000以上の市民が脱出したのを受けて最終攻撃を開始した。 攻撃の焦点はBaghouz村になるという。
 米当局者によるとISISは既に支配地域の99.5%を失い、現在確保しているのは5㎢以下になっている。
 シリア人権監視団によるとSDFは2018年9月10日にこの地域への攻撃を開始し、今までにISIS戦闘員1,279名、SDF兵678名が戦死し、未成年者144名を含む市民401名が死亡している。 (1903-020903>1903-020903)

 シリア東部で米軍の支援を受けてISISの掃討作戦を続けるシリア民主軍 (SDF) が2月16日、数日以内にISIS最後の拠点を制圧するとの見通しを示した。
 ISISの残存勢力をイラクとの国境に近いバグズ村周辺に追い詰めたとしているが、SDFによるとバグズ村周辺に追い詰められたISISの戦闘員は大半が外国人という。
 シリア中部の砂漠やイラクの都市にも戦闘員が潜んでいて新たな攻撃は可能だが、ISISの支配地域はほぼ消滅したとみられる。 (1903-021804>1903-021804)

2・1・5・2 シリアにおける対 ISIS 戦

2・1・5・2・1 ISIS メンバのシリア脱出

 シリア東部では、クルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) などが攻勢を強め、ISISの完全制圧が間近に迫っているが、CNN TVが2月17日に過去6ヵ月の間にISIS戦闘員1,000人以上がシリアからイラクの西部にある山間部や砂漠地帯に逃げた可能性が高いと報じた。
 またISISは最大で$200Mの現金も持ち去ったという。 (1903-021803>1903-021803)
2・1・5・2・2 シリアにおける ISIS が拠点喪失

 トランプ米大統領が2月28日、米国主導の有志連合がシリアでISISの支配地域をすべて奪還したと発表した。
 ただこれに先立ち、シリア民主軍 (SDF) 司令官は「あと1週間でISISを打倒する」との認識を示しており、トランプ大統領の主張と幾分食い違いがある。 (1904-030101>1904-030101)

 シリア北部で米国主導の有志国軍に支援されたシリア民主軍 (SDF) が3月1日にISISに対する最終攻撃を開始した。 3日まではBaghouzに立てこもるISISが少人数の人間を盾として利用していると見られたため攻撃はゆっくり行われたが、人質の脱出が確認されたことから総攻撃に移った。
 攻撃はユーフラテス河東岸にあるISIS最後の拠点Deir ez Zor県のBaghouzに対し、東からはSDFが、西からはアサド政府軍とロシア軍により行われている。 (1904-030406>1904-030406)

 ホワイトハウスのサンダース報道官が3月22日、ISISがシリア国内の拠点を失ったとの認識を示した。 トランプ大統領は、国防関係者から説明を受けたという。
 過去数週間、イラク国境に近いISIS最後の拠点Baghouzで掃討作戦を続けてきたSDFの報道官によると、残存勢力は洞窟のような場所やユーフラテス川近くの塹壕に潜伏中で、降伏を求めているがなお衝突が続いているという。 (1904-032301>1904-032301)

2・1・5・2・3 ISIS 残党との戦闘

 英国に拠点を置くシリア人権監視団が4月20日、シリアの砂漠地帯でISISの戦闘員らによる攻撃があり、過去2日間でシリア軍兵士や政府派戦闘員27名が死亡したと発表した。
 同監視団によると、死亡した27名の中には政府軍の幹部4名が含まれるという。 (1905-042002>1905-042002)
2・1・5・2・4 トルコのシリア侵攻による影響

対 ISIS 作戦が一時停止

 有志国連合の米軍当局によると、トルコのシリア北部への侵攻により対ISIS作戦は一時的に停止しているが、米軍によるシリアでの空地からの哨戒活動は継続している。 (1911-101205>1911-101205)

ISIS の復活

 トルコのシリア北部への空爆や砲撃は3日目の10月11日も各地で激しさを増し、国連は避難民が10万人に達したと述べた。
 一方ロイタ通信が、シリア北東部の国境の町カミシュリでは自動車に積んだ爆弾が爆発し、ISISが犯行声明を出したと報じた。 トルコの攻撃開始以来ISISがテロ事件で犯行を認めたのは初めてで、地域の情勢は急速に不安定化している。 (1911-101203>1911-101203)

 国防総省の監察官が11月19日、米軍のISIS掃討戦に関する報告書を公表し、ISISがトルコ軍による越境作戦に乗じて、シリアで勢力の再構築を図っていると警鐘を鳴らした。
 また、ISISの最高指導者バグダディ容疑者の死亡が同組織に及ぼす影響は限定的で、依然として脅威は残ると分析している。 (1912-112003>1912-112003)

シリア東部、イラク西部への米軍残留

 米国防総省報道官が10月8日、シリア北部からの米軍の撤収にいて、現時点でシリアでの軍の駐留に変更はないとする声明を発表した。
 米国ではトランプ大統領が7日に、現地に駐留する軍を撤収させる考えを示したことに非難の声があがり、大統領府高官が「少数の兵士がシリアの別の基地に移る」ものだと発言を修正するなど混乱が起きていた。 (1911-100903>1911-100903)

 トランプ大統領は中東の終わりなき戦いから米軍を撤収し帰国させると述べたが、エスパー国防長官はシリアから撤収した米軍はイラク西部に留まり、引き続きISISとの戦いに当たると述べた。 (1911-102002>1911-102002)

 エスパー米国防長官が10月21日、米軍の一部をシリア北東部の油田近くにクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) とともに残留させ、原油がISISの手に渡らないようにすることを検討していると明らかにした。
 一方、トランプ米大統領が表明した米軍によるシリア撤退の一環として、21日には100両以上の車両がシリア北部から国境を越えイラクに移動した。 (1911-102102>1911-102102)

 エスパー米国防長官が10月21日、トルコがシリア北部に緩衝地帯を設定するのに伴い大規模な米軍の撤収を行っているが、この地域の油田地帯をISISから守るため一部の部隊を残置したいと述べた。 ただこのことはまだトランプ大統領には伝えてないという。
 シリアの油田はユーフラテス河渓谷を含むシリア北東部に分布しており、日量60,000バーレル(1バーレル約$100)とみられ、クルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) が支配していた。
 国防総省はここに200名程度の米軍を残置したいとしている。 (1911-102103>1911-102103)

 エスパー米国防長官が10月25日、シリアDeir al-Zour周辺の油田地帯をISISから護るため、米陸軍の機械化部隊を駐留させると述べた。
 Newsweekは米政府高官の話として、国防総省の原案では、駐留するのは陸軍機甲大隊の半分程度の勢力で、30両程度のAbrams MBTを装備するという。 (1911-102506>1911-102506)

 エスパー米国防長官が10月25日、シリアの油田地帯を警護するため戦車や装甲車両から成る米軍の機械化部隊を、シリアの油田地帯の警護に当たらせる方針を明らかにした。 (1911-102603>1911-102603)

 シリア東部の油田をISISから防護する任務で、南北カロライナ州の州兵が10月31日に装甲車両でのシリア進駐を開始した。
 シリアに向かったのは北カロライナ州兵の第118歩兵連隊第4大隊と、南カロライナ州兵の第218機械化旅団の部隊で、C-17でM2A2 Bradley IFVと共に輸送され、Deir al-Zourに展開した。 (1911-103110>1911-103110)

 エスパー米国防長官が10月28日、ISISと戦うSDFを支援するため、Bradley IFVを装備した部隊をシリアに残留させると述べた。
 また統合参謀本部議長のミリー大将は、シリア、イラク、ヨルダンの国境に近いAl-Tanfの米軍部隊も残留すると述べた。 (1912-110607>1912-110607)

2・1・6 クルド問題

2・1・6・1 トルコ国内でのクルド問題

 トルコ内務省が8月19日、3月末の統一地方選で当選した3市長についてテロとつながりがある疑いで職務を一時停止する措置を取った。
 3市長はいずれもクルド系政党の国民民主主義党 (HDP) のメンバーで、いずれも統一地方選で50%以上の得票で当選を果たしていた。 また、内務省はPKK絡みの容疑により、国内各地で400人以上の身柄を拘束したと発表した。
 エルドアン大統領はかねて、HDPについて反政府武装組織のクルド労働者党 (PKK) と結び付いていると主張している。 (1909-081903>1909-081903)
2・1・6・2 シリア北部でのトルコとクルドの対決

2・1・6・2・1 クルド軍が Manbij から撤退

 シリアのクルド人勢力当局者が、米軍が撤退した後の空白を埋める処置についてシリア政府側との話し合いがまとまったことを明らかにした。 この話し合いはロシアが仲介したもので、クルドの代表団がロシアを訪問していた。
 クルド人勢力は現在、シリア国土の1/3を支配下に入れている。 (1902-010504>1902-010504)

 シリア国営SANA通信が1月2日、クルド軍YPGがシリア政府との合意に基づきManbijから撤退したと報じた。
 それによると約400名のクルド軍は40両以上の車両と共にQarah Qawzaq橋でユーフラテス河を東岸に渡り撤退した。 (1902-010402>1902-010402)

 シリア国営SANA通信が1月2日、Manbjiを確保していたYPGからなる400名のクルド軍が、シリア政府との合意に従い車両30両以上でManbijを撤退したと報じた。
 SANAが報じたビデオにはYPGの旗をなびかせた数十両がQarah Qawzaq橋を渡りユーフラテス河を東岸に向かうのが撮されていた。 (1902-010904>1902-010904)

 シリア北部のManbijで1月16日に、ISISのテロで米兵3名が殺害されたが、2016年にISISが撤退したのちにクルド軍を主力としたシリア民主軍 (SDF) が確保していた。
 Manbijは、ユーフラテス河西岸に位置しトルコとの国境から僅か20哩の距離にありシリアに派遣されている2,000名の米軍にとって緊要な地点で、数百名が駐留しているが、トランプ米大統領は2018年12月に米軍のシリアからの撤退を宣言している。 (1902-011606>1902-011606)

2・1・6・2・2 トランプ米大統領がシリアからの撤退を表明

トランプ米大統領の撤退表明

 米国防総省が、トルコが2018年12月12日にシリア北東部で軍事行動を起こすとしたことに強い懸念を示している。 (1902-121901>1902-121901)

 シリア北部のAleppo、Idlib、Afrinなどで、アルカイダ系武装勢力のレバント解放委員会 (LLC) とトルコが支援する反政府武装勢力である自由シリア軍 (FSA) の2日間の戦闘で数十名が死亡した。
 LLCとFSAの戦闘は今まで3ヶ月間にわたり行われているが、この戦闘激化は12月中旬にトランプ米大統領がシリアからの米軍撤退を表明したことにより、ISISと戦うクルド軍にとってトルコが脅威になったことによる。 (1902-010203>1902-010203)

 トランプ米大統領が2018年12月19日にシリアからの米軍の撤退を表明したため、トルコがシリア北部のクルド軍を攻撃することが可能になった。 トルコ国防相は翌日、トルコとの国境に配置されているクルド軍を撃破すると述べている。
 クルド軍に特殊部隊を派遣しているフランスはシリアに留まるとしているが、トルコの侵攻を阻止するため米国が設置している哨所を引き継ぐとはしていない。 (1902-010206>1902-010206)

米議会上院が性急な撤退に反対する法案を可決

 米議会上院が2月4日、共和党のマコネル上院院内総務が作成したシリアとアフガニスタンに駐留する米軍の性急な撤退に反対する内容の法案を70対26の賛成多数で可決した。
 法案に実質的な効果はないが、共和党が多数派を占める上院が米軍の撤退を目指すトランプ大統領の方針に反発した格好となった。 (1903-020503>1903-020503)

米中央軍司令官が撤退に警鐘

 ボーテル米中央軍司令官が2月5日、シリアに駐留する米軍の撤収後にISISが勢力を盛り返す恐れがあると述べ、トランプ大統領の米軍撤退に関する決定に警鐘を鳴らした。
 トランプ大統領が2018年12月に突如発表した米軍のシリア撤退の決定については、事前に相談はなかったことを明らかにした。 (1903-020601>1903-020601)

2・1・6・2・3 米軍部隊の撤退

資材、装備の撤収

 米国主導の有志連合軍報道官が1月11日、米軍の兵員は未だシリアから撤退していないが資材等の後送は既に開始されていると述べた。
 在英のシリア人権監視団は、1月10日夜に装甲車両と施設機材からなる10両の車両縦隊がシリア北部のRmeilanからイラクに入ったのが確認されたと述べた。 (1902-011104>1902-011104)

有志連合が撤退を開始

 シリアでISISの掃討作戦を続けてきた米国主導の有志連合が撤収を開始したと、報道官が1月11日に明らかにした。
 有志連合は、シリアからの慎重な撤退プロセスを開始したが、作戦の安全を考慮して明確なスケジュールや場所、部隊の移動については触れないと説明した。 (1902-011201>1902-011201)

撤退クルド保護見通し立たず

 Wall Street Journal紙が2月7日、米軍が4月末までのシリア完全撤収に向けて準備を進めていると報じた。 ただISIS掃討戦で共闘したクルド人勢力の保護については見通しが立っておらず、撤収の時期が変わる可能性もある。
 複数の米政府関係者によると、ISIS支配地域の制圧が近く完了する見通しとなった中、米軍はシリア撤収に向けた準備を開始し、3月中旬までに大部分を撤収させて4月末までに完全撤収する計画という。 (1903-020802>1903-020802)

米軍が一部部隊の残置に方針転換

 ロイタ通信によると、サンダース米大統領報道官が2月21日、シリア駐留米軍の撤収に関し「しばらくの間、200名程度の小規模な平和維持部隊がシリアに残る」と述べた。
 シリアに駐留する2,000名の米部隊について、Wall Street Journal紙が4月末までの完全撤収に向けて準備が進んでいると報じていた。 (1903-022204>1903-022204)

 トランプ米大統領が2月22日、米軍の少数部隊をシリアに残留させることを決めた上で、この判断は自身が12月に命じたシリア駐留米軍の撤退を覆すものではないとの見解を示した。
 トランプ大統領は、シリア北東部のトルコ国境沿いにある安全地域およびイラクやヨルダン国境に近いTanfの米軍基地に400名の米軍を駐留させると決定した。 (1903-022303>1903-022303)

 Wall Srewwt Journal紙が3月17日、トランプ政権がシリアに1,000名の米軍を残留させる計画を検討していると報じた。 シリア北部に安全地帯を設置する構想がまとまらないことが理由の一つという。
 トランプ大統領は2018年12月に2,000名のシリア駐留米軍を完全撤収させる方針を突如発表したが半分近くが残る可能性が出てきた。 (1904-031803>1904-031803)

訂正発言とトルコが反発

 ロイタ通信が、イスラエル訪問中のボルトン米大統領補佐官が1月6日、トランプ大統領が先に表明した米軍のシリア撤収について、クルド人を守ることについてのトルコの保証が条件になると述べたと報じた。 (1902-010604>1902-010604)

 トルコのエルドアン大統領が1月8日、シリアのクルド人勢力を巡るボルトン米大統領補佐官の発言を非難し、予定されていた同氏との会談を拒否した。
 ボルトン補佐官は1月6日、シリアからの米軍撤収にはシリアのクルド人勢力を攻撃しないとトルコが確約することが条件との考えを表明している。
 エルドアン大統領は、クルド人民防衛部隊 (YPG) がテロリストであるなら必要な措置を講じるとし、過ISISと同等に対処していくと言明した。 (1902-010901>1902-010901)

 トランプ米大統領が1月13日、シリアでISIS掃討作戦を展開していた米軍部隊が撤収を始めたことに関連し、トルコがISIS掃討で米軍と共闘していたクルド人勢力を攻撃した場合はトルコを経済的に破滅させるとツイッターで警告し、トルコの対応次第では経済制裁も辞さない立場を表明した。 (1902-011404>1902-011404)

 トルコのチャブシオール外相が1月14日、トランプ米大統領が13日にツイッターで、トルコが米国と共闘してきたシリアのクルド人勢力を攻撃すればトルコ経済に大打撃を加えると警告したことに対し、われわれは脅迫を恐れていないと反発した。 (1902-011405>1902-011405)

 トランプ米大統領が1月13日に、もしトルコがクルドを攻撃すればトルコ経済に打撃を与えるとツイッターで述べたことに対し、ポンペイオ国務長官が14日、未だトルコ当局やトランプ大統領とは話していないとした上で、大統領の発言を肯定した。 (1902-011409>1902-011409)

 トルコ大統領府が、エルドアン大統領が1月14日にトランプ米大統領とシリア北部での安全地帯設置を巡り協議したと発表した。 両国は緊張緩和を探ったもようだが溝は埋まっていない。
 トランプ大統領は13日に米軍のシリア撤収に絡み、トルコがクルド人勢力に対し攻撃に踏み切った場合には「トルコに経済面で打撃を与える」と警告したためトルコは強く反発していた。 (1902-011501>1902-011501)

 トルコがシリア北部の国境沿いに幅32kmの安全地帯を設置するとの提案に対し関係国は反対している。
 トランプ米大統領も1月13日にツイッターで、トルコがクルドを攻撃すれば経済制裁を行うと警告している。 (1903-012301>1903-012301)

欧州諸国々との溝

 マクロン仏大統領が1月17日の年頭演説で、トランプ米大統領のシリア撤退宣言にかかわらず、フランスはISISを根こそぎするまでシリアに留まると述べた。
 その上で、過早な撤退の判断は間違いであるとも述べた。 (1902-011705>1902-011705)

 トランプ米大統領がISISを打倒したとしてシリアから米軍を撤退させる方針を示し、近くすべての支配地域の制圧を発表するとしているが、メルケル独首相は「ミュンヘン安全保障会議」で行った演説で、米国が性急にシリアから撤退するのはイランやロシアが影響力を強めることにつながらないかと述べて懸念を示した。
 これに対し出席したペンス米副大統領は、軍を撤退させたとしても中東でのテロとの戦いには引き続き関与するという考えを示した。
 米国はイラン核合意でもドイツやフランスと意見が対立していて、中東政策をめぐる米国と欧州諸国々の溝が浮き彫りになっている。 (1903-021701>1903-021701)

2・1・6・2・4 米国がトルコとシリアのクルドの仲介

 ワシントンを訪問している米国が支援するクルド人組織であるシリア民主協議会 (SDC) 副議長が1月28日、米軍の撤退を前提に米国がトルコとシリアのクルド勢力の仲介交渉を行っていることを明らかにした。
 クルド勢力はシリア国土の30%にあたる石油や地下資源の豊富な地域を支配下に入れている。 (1902-012907>1902-012907)
2・1・6・2・5 シリア北部に設定する安全地帯

トルコが安全地帯の管理を主張

 エスパー米国防長官が8月6日、トルコのシリア北部への侵攻を認めないと発言した。
 トルコのエルドアン大統領は、米国と同盟関係にあるシリア北東部のクルド軍 (SKF) に対する攻撃をほのめかしている。 (1909-080612>1909-080612)

クルド軍が安全地帯から撤退

 米軍に支援されたシリアのクルド部隊が、米国とトルコが合意した安全地帯設定のため、トルコとの国境にあるシリアの都市Ras al-Ayn及びTal Abyadからの撤退を開始した。
 安全地帯はユーフラテス東岸からイラクまで、トルコとの国境に沿うシリア北部に30~40kmの幅で設けられる。 (1909-082706>1909-082706)

米国とクルド軍が安全地帯で共同巡察

 シリアのクルド系通信社ANHAと在英のシリア人権監視団が、米軍とシリアで米国が支援している武装勢力がトルコに近いシリア北部で9月4日に合同巡察を行ったと報じた。
 米国旗を掲げた米軍の装甲車にピックアップトラックに乗車したクルド兵が随行したという。
 この合同巡察はクルド軍主力の民主シリア軍 (SDF) が安全地帯に設定された都市Ras al-Ayn及びTal Abyadからの撤退を宣言した1週間後に行われた。
 米軍と合同巡察を行ったのはSDFとは別のRas al-Ayn軍事評議会であるがトルコは軍事評議会をSDFの影響下にあるとしている。 Ras al-Aynはクルド人のほかアラブ人やアッシリア人などの複合民族で構成されている。 (1910-090404>1910-090404)

トルコと米国が「共同作戦センター」を設置

 アナトリア通信が、トルコ国防省が8月7日に懸案となっていたシリア北部での安全地帯構想の実現に向け、米国との間で「共同作戦センター」を設置することで合意したと明らかにしたと報じた。
 内戦が続くシリア北部でクルド人勢力が支配圏を拡大していることから、トルコは同勢力を排除するため、新たな越境軍事作戦も辞さない構えを見せる一方、米国はシリアでの過激派対策で共闘してきたクルド人勢力を保護する立場を取っており、国境地帯で大規模衝突に発展する事態を避けるためトルコと協議を進めてきた。
 今後、見解が対立する安全地帯の範囲などをめぐり、同センターで詰めの調整を行うとみられる。 (1909-080803>1909-080803)

トルコが安全地帯の管理をトルコが行うと強硬姿勢

 トルコのエルドアン大統領が8月31日、シリア北部でトルコとの国境沿いに安全地帯をトルコの要求通り構築できなければ、トルコは一方的にシリア北部に侵攻すると警告した。
 トルコは安全地帯の縦深を19~25哩 (30~40km) を要求しているのに対し米国は20哩 (32km) 以内としている。 またトルコは安全地帯の管理をトルコが行うとしている。 (1910-090102>1910-090102)

米国とトルコが安全地帯で合同パトロールを開始

 米国とトルコが9月8日、シリア北東部に設置が予定されている安全地帯で合同パトロール活動を開始した。 トルコの装甲車両6両はシリアに駐留している米軍と合流するためシリア国境に設置されたコンクリート壁の間を抜けて国境を通過し、その上空をヘリコプター2機が飛行した。
 合同パトロールの実施は、8月7日に安全地帯を設置することで米トルコ両政府が合意してから初めてで、クルド人民防衛部隊 (YPG) とトルコとの緊張関係を緩和させるのが狙いである。 (1910-090802>1910-090802)

 New York Timesが、米軍がシリア北部でのトルコと共同巡察を行うため150名を増派すると報じた。 まだ最終決定には至っておらず、シリアからの逐次撤退を求めているトランプ大統領が12月に最終決定を行うと見られる。
 現在シリアには1,000名弱の米軍が残留している。 (1910-091303>1910-091303)

2・1・6・3 トルコのシリア北部への侵攻

2・1・6・3・1 トルコの侵攻予告

 シリアのムアレム外務移民相が9月28日に国連総会の一般討論で演説し、わが国で承認を得ずに活動している外国軍部隊は占領軍であり直ちに撤退しなければならないと述べ、米国とトルコに軍部隊の即時撤収を要求した。
 また、断れば国際法で認められたあらゆる対抗措置を取ると警告した。 (1910-092901>1910-092901)

 トルコ国防省が9月29日、トルコのF-16 2機が28日にシリアとの国境地帯のKilis郡付近を飛行する国籍不明のUAV 1機を撃墜したと発表した。
 UAVは6回にわたりトルコ領空を侵犯したという。 (1910-092903>1910-092903)

 トルコのエルドアン大統領が10月5日、トルコ軍が今日か明日にもシリア北東部に侵攻すると、今までにない強い調子で警告した。 トルコ軍部隊と装備は9月にSanliurfa郡南東部に派遣されている。
 ただ、シリア北東部にはクルド軍と行動を共にしている米軍が1,000名以上駐留していることから、トルコ軍の行動は限定的なものになるとみられる。 (1911-100502>1911-100502)

2・1・6・3・2 米軍部隊シリア北東部から撤収開始

 米軍部隊が10月7日にシリア北東部から撤収を開始した。 米軍撤収を受けトルコはシリア北部での安全地帯設置に向けてクルド人勢力を同地域から排除する軍事作戦に動く。
 米政府はこれまでシリア北部で過ISISと戦うクルド人勢力を支援してきており、大規模な政策転換となる。
 トランプ大統領はツイッターへの投稿で、クルド人勢力の支援には多大なコストがかかるとし、米国はばかげた終わりなき戦いから脱する時だと言明して、今後はトルコ、欧州、シリア、イラン、イラク、ロシア、クルド人勢力が問題に対処すべきだと述べた。 (1911-100801>1911-100801)

 米メディアが10月7日、シリアに駐留している米軍がトルコと国境を接する北部地域で撤収を始めたと報じた。
 トランプ米大統領は同日、移動させる米軍部隊が小規模であると主張し、米政権高官はシリア国内での移動だとして、シリアからの公式な撤収の始まりではないと強調した。
 この地域はクルド人勢力が支配している。
 政権高官は7日の電話会見で、トルコの軍事作戦で米兵を危険にさらさないため、国境近くの50~100名の部隊を安全な地域へ数日中に移動させるものだと説明したうえで、移動はトルコによる作戦を容認するものではないとも述べた。 (1911-100803>1911-100803)

 トルコ側の求めに応じる形でシリア北東部に駐留する米兵の撤退を決めたトランプ米大統領は、この地域で長年ISIS掃討でともに戦ってきたクルド人部隊を見捨てる行為だと批判されている。
 クルド人部隊は撤退について「背後から刺された」と非難しているが、これに対しトランプ大統領は、米兵の帰還は自らの選挙公約であり、特定の国や組織に肩入れしたものではないと反論した。
 また10月7日には、もしトルコがシリアで行き過ぎた軍事行動を行えば、制裁を受けるだろうとも警告した。 (1911-100804>1911-100804)

 エスパー米国防長官が10月13日に複数の米メディアに出演し、トルコ軍によるクルド人勢力攻撃の範囲が拡大していることを受け、トランプ大統領がシリア北部に駐留する米軍の撤収開始を命じたことを明らかにした。 規模は1,000名程度とみられる。 国外に撤収させるかどうかには言及しなかった。
 米軍はシリア南部でも駐留を続けている。 (1911-101302>1911-101302)

2・1・6・3・3 トルコ軍侵攻開始

 トルコ当局者2人が、トルコ軍が10月8日未明にかけて、クルド人部隊によるシリア北東部での補給を阻止するため、シリアとイラクの国境地帯で攻撃を行ったことを明らかにした。
 トルコは同日、シリア北部での作戦準備を完了したと明らかにした。
 米軍は同地域からの撤収を開始しており、ISIS掃討作戦で米軍に協力してきたクルド人勢力に対する作戦がいつ始まってもおかしくない状況にある。 (1911-100901>1911-100901)

 トルコ軍が10月9日、シリア北部でクルド人勢力に対する作戦を開始した。
 シリア内戦が始まった2011年以降、トルコがシリアで本格的な軍事作戦を行うのは3回目で、現地からの情報では、トルコ軍はシリア北部の町テルアビヤドなどに空爆や砲撃を加えている。 作戦は「平和の春」と命名され、シリア側に「安全地帯」を設けてクルド人勢力の影響力をそぐ一方、トルコ国内で社会問題として深刻化するシリア難民の帰還先にしようとしている。  シリア情勢をめぐっては、トランプ米大統領が7日、シリア北部の駐留米軍を撤収してトルコ軍の越境作戦を事実上黙認する方針を示していた。 (1911-100904>1911-100904)

 トルコ軍が10月9日夜に声明を出し、シリア北部で地上作戦を開始したと発表し、この日に空爆や砲撃で始まったクルド人勢力に対する作戦を本格化させた。
 在英のシリア人権監視団によると、トルコ側からの攻撃により、北東部カミシュリなどで民間人を含む少なくとも15人が死亡した。 (1911-101001>1911-101001)

 トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が10月9日に電話でシリア情勢を協議した。
 ロシア大統領府によると、プーチン大統領はトルコによるシリア北東部での作戦について、シリア和平の進展を妨げないために入念に状況を考慮するように求めた。
 ただ軍事行動に明確に反対する発言は明らかになっておらず、事実上黙認する立場を示したとみられる。 (1911-101002>1911-101002)

 トルコのエルドアン大統領が10月10日にアンカラで演説し、シリア北部で9日夜に始まった地上作戦で、敵対するクルド人勢力の109人を殺害したと主張した。
 現地メディアなどによると、トルコ軍は10日までに181の地点を攻撃し、シリア北部の要衝テルアビヤド近郊の村々を制圧して侵攻範囲を広げた。 (1911-101006>1911-101006)

 2日目を迎えたトルコ軍のシリア北東部での戦闘についてトルコ国防省は10月10日、敵側の174人を殺害したと明らかにした。
 トルコ側によると、空爆や砲撃による攻撃対象は181地点でこれまでに11ヵ村を占領したとしている。 人権団体によると、6万人が避難を余儀なくされている。
 攻撃を受けているシリア民主軍 (SDF) 側は死者の数を明らかにしていないが、人権監視団体は少なくとも23人が死亡し、民間人8人も犠牲になったと見ている。  一方、攻撃を受けているクルド人勢力側も国境のトルコ側を砲撃し死者や負傷者が出ている。
 トルコの自治体によると、国境のトルコ側でも3つの町が砲撃を受け、乳児を含む計6人が死亡、70人がけがをした。 (1911-101101>1911-101101)

 シリア北部のユーフラテス川以東一帯でクルド人勢力に対する作戦を続けるトルコ軍は10月10日未明までに180ヵ所以上に攻撃を加えた。
 クルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) は、トルコの攻撃が国境線に沿って長さ600km、幅40kmの範囲で行われていると主張している。
 トルコは広範な地域から同勢力を排除し、トルコが抱える大量のシリア人難民の帰還先となる「安全地帯」にしたい考えとみられるが、SDFなどは住民に対トルコ戦での決起を呼び掛け、総力戦で抵抗する構えを崩していない。 (1911-101102>1911-101102)

 米国防総省が10月11日に声明を発表し、シリア北部アインアルアラブ(クルド名コバニ)付近で同日、シリア駐留米軍がトルコ側から砲撃にさらされたと発表した。 米軍に負傷者はいなかったが、米国はトルコに対し即時の防衛措置につながる行動を避けるよう求めると警告した。
 米部隊はシリア北部のトルコ軍作戦地域から撤収したが、周辺地域で駐留を続けている。 国防総省当局者は「米軍はコバニから撤収しない」と強調した。 (1911-101204>1911-101204)

 トルコ軍とトルコに支援された武装勢力が10月9日に、クルド軍を駆逐して安全地帯を設定し、シリアからの難民を送り込むPeace Spring作戦を開始した。 安全地帯は国境から30kmの幅としているがトルコ外相は、当初120kmまで侵攻しクルド軍を一掃すると述べている。
 またClaw作戦の名の下にPKKに対する空爆も行っている。 空爆はDiyarbakiの第8主ジェット基地所属のF16C/Dにより、ユーフラテス河の東30kmを目標に行われている。
 一方トルコが支援するシリア国軍 (SNA) と名を変えた武装勢力FSAは国境を越えて、2~3日前に米軍が撤収したシリアの都市Ras al-Ayn及びTal Abyadに入った。 SNAは武装したピックアップトラックのほか、M60 MBT、ACV-15 APC、Kirpi耐地雷装甲車などで侵攻した。 (1912-101601>1912-101601)

 トルコ軍のPeace Spring作戦に従事するトルコAselsan社製Pulat APSを装備したトルコ軍のM60TM MBTが10月11~12日に、シリアとの国境に位置するトルコのアクチャカレからシリア側の都市タル・アブヤドに向け侵攻した。 (1912-102301>1912-102301)

2・1・6・3・4 トルコ軍侵攻後の動き

アサド政権軍がトルコ軍に対抗

 シリア国営通信が10月13日、アサド政権軍がクルド人勢力に対する作戦を展開するトルコ軍に対抗するためシリア北部に進軍したと報じた。
 戦闘が政権軍を巻き込んで拡大する恐れが出てきた。 (1911-101401>1911-101401)

 シリア北部に侵攻して軍事作戦を続けるトルコ軍に対し、クルド人勢力はこれまで距離を置いていたアサド政権と協力することで合意した。 これを受けアサド政権は北部に軍を進めていて、シリア国営通信は一部の部隊がクルド人勢力の支配地域に入ったと報じた。
 アサド政権軍の一部部隊は10月14日に国境から35kmほど南にあるクルド人勢力が実効支配するタルタマルに入ったという。
 一方、クルド人勢力と協力してきたトランプ米大統領はシリア北部から1,000名規模の米軍部隊の撤退を始めるよう指示していて、シリア北部の構図が大きく変わってきている。 (1911-101402>1911-101402)

 ロシアが後ろ盾となるシリアのアサド政権軍が10月14日、米国が13日にシリア北部からの米軍撤収を発表したこと受けクルド人勢力が実効支配するトルコ国境南部に進出した。 24時間も経たないうちにシリア軍が展開したことになる。
 これについてISIS掃討作戦で米国と協力してきたクルド人勢力は、シリア政権軍との協力はトルコの攻撃に対抗するための緊急措置だと説明した。
 シリア政権軍は北部への進軍により、掌握できていなかった地域に足掛かりを得ることから、アサド大統領や同国の内戦でアサド政権を支えるロシアにとって勝利と言える。 (1911-101504>1911-101504)

 在英のシリア人権監視団が、シリア北東部で10月29日にシリア政府軍とトルコ軍の間で戦闘が発生したことを明らかにした。
 この発表によると、両国軍は国境沿いに位置する町ラスアルアインの南方の村で砲撃や銃撃が交わされ、シリア側の兵士少なくとも6名が負傷したという。
 トルコ側が3週間前にシリアで軍事作戦に乗り出して以来、両国の部隊が戦闘を交えるのはこれが初めてである。 (1911-102904>1911-102904)

5日間の停戦

 ペンス米副大統領がトルコのエルドアン大統領と、今後5日間の停戦に合意したと明らかにした。
 この間にクルド人勢力を撤退させ、それが完了すれば停戦が実施されるということで、事態の収束につながるか、注目される。 (1911-101801>1911-101801)

 シリア北部のRas al-Ayn当局がAP通信に、米国が斡旋した停戦が10月17日に開始されたのを受け、クルド軍と市民がRas al-Aynからの撤退を開始したことを明らかにした。 撤収は20日には完了するとみられる。
 停戦協定では戦闘員の撤退だけを決めているが、トルコが支援するシリア武装勢力の暴行を恐れるクルド市民も一緒に市内から撤収している。 (1911-102001>1911-102001)

ロシアの影響力拡大

 トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が10月22日にロシア南部ソチで会談し、ロシア軍とシリア軍がシリア北東部でクルド人民兵組織の人民防衛隊 (YPG) をトルコ国境から30km離れた地点まで撤退させ、退去後の安全地帯をトルコとロシアが共同で警備することで合意した。
 トルコとロシアの合意によると、23日GMT 09:00にロシア軍警察とシリアの国境警備隊がシリア北部に入りYPGの退去を始める。 YPGの人員と武器などの移動に6日間かかるという。 (1911-102301>1911-102301)

 米軍が撤収するシリア北部でのロシアとトルコの協力が動き出し、ロシアとトルコは、10月29日からトルコ国境10km以内の地帯で共同警備を開始する。 トルコはクルド人勢力への攻撃は終了したと発表。
 ロシア憲兵隊は23日にクルド人民兵組織である人民防衛部隊 (YPG) の要衝の一つであるコバニに到着してYPG勢力退去の監視を始めた。
 ロシアは米国に代わって同地域での影響力を一気に拡大し、8年に及ぶシリア内戦のパワーバランスはわずか2週間で大きく変化した。
 これを受け、トランプ米大統領は23日にトルコがシリア北部での停戦を恒久化する方針を示したとして同国に対する制裁を全て解除すると表明した。 (1911-102402>1911-102402)

 ロシア国防省が10月25日、シリア北部での米軍撤退に伴いトルコと共同巡察を実施するため、新たに300名規模の憲兵隊を派遣したと発表した。
 露国防相によるとロシア憲兵隊は25日に、Kamishi市とMatala入植地の間の124哩を往復したという。 (1911-102604>1911-102604)

トルコとロシアの共同巡察

 トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が10月22日、シリアのユーフラテス河東岸Tal AbyadとRas al-Aynの間で縦深32kmにわたりクルド軍YPGを排除することで合意した。 (1912-103001>1912-103001)

 トルコ軍が12月1日、シリア北部の対トルコ国境地帯でロシアとの合同パトロールを開始した。
 トルコのメディアによると、1日のパトロールはシリア北東部カミシュリの西方などで地上部隊に加えてUAVによる監視活動も行い5、6時間にわたり実施した。 (1912-110103>1912-110103)

トルコ、安全地帯に12監視拠点を設置

 トルコとシリア国境では停戦合意翌日の10月18日にも砲撃などが散発しており、当面は緊迫した状況が続くとみられる。 現地の安定の要だった米軍の撤収方針に変わりはなく、停戦が継続するかは見通しづらい。
 シリア北部への軍事攻撃を5日間停止することで米国と合意したトルコのエルドアン大統領は18日、シリア側国境沿いに設置する「安全地帯」に12ヶ所の監視拠点を設けると表明し、クルド人勢力を封じ込めようと着々と布石を打っている。 (1911-101903>1911-101903)

クルド軍がシリア北部での撤退受け入れ

 シリア北部のクルド人民兵組織の人民防衛部隊(YPG) が主力のシリア民主軍 (SDF) が10月27日に声明を出し、シリア北部の対トルコ国境地帯からの撤退をYPGに求めたトルコとロシアの合意について、受け入れる方針を示した。
 声明によると、これまでSDFが展開していた国境付近には代わりにシリアのアサド政権の部隊が展開し、SDFは「トルコの攻撃から地域の住民を守るため」離れた場所で配置に就くという。 (1911-102702>1911-102702)

 トルコによる越境軍事作戦で情勢が流動化したシリア北部で、トルコとロシアが10月22日に合意したクルド軍の撤退期間がトルコ時間の29日18:00に終了した。
 撤退が実現しなければ、トルコが現在停止中のクルド軍に対する越境軍事作戦を再開する可能性もあり、今後の推移は予断を許さない状況である。 (1911-103001>1911-103001)

2・1・6・3・5 トルコ軍侵攻に対する米国の反応

米議会でトルコへの武器の売却を禁止する法案を準備

 米議会上下両院で、米軍がISIS掃討戦で協力しているクルド軍を排除するためシリア北部に侵攻したトルコに対し、武器の売却を禁止する法案を準備している。 (1911-101407>1911-101407)

米議会下院が米軍撤収に反対する超党派決議

 米軍をシリアから撤退させクルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) を裏切ったトランプ大統領の決定に対し、米議会では共和、民主両党から反発が出ている。
 共和党のグラハム上院議員と、民主党のホーレン上院議員はトルコに対する制裁法案を公表することで反対の意思を示している。 (1912-101602>1912-101602)

 米議会下院(定数435)が10月16日、トランプ大統領によるシリア北部からの米軍撤収決定に反対する超党派の決議案を354対60の賛成多数で可決した。
 撤収決定に対しては共和、民主両党を通じて懸念が強く、上院での採決でも共和党議員が賛成に回れば可決される可能性も出てくる。 (1911-101701>1911-101701)

米、シリア北部に地上軍を投入しない方針

 エスパー米国防長官が10月18日、トルコがシリア難民帰還に向けシリア北部に設定する安全地帯について、米国は地上軍を投入しないと述べた。
 ただ、米国はトルコ、およびシリア民主軍 (SDF) の双方と連携し続けるとも述べた。 (1911-101901>1911-101901)

トランプ米大統領の自画自賛

 トランプ米大統領が10月23日演説し、トルコがシリアでの戦闘停止に同意したことを受け、米政府は対トルコ制裁を解除すると述べ、トルコがシリアに対する「恒久的な」軍事作戦に応じたとして、自らの外交成果を強調した。
 その一方、米議会で証言した米政府のシリア問題担当特使は、トルコのシリア侵攻について、われわれは明らかに失敗したと述べた。 (1911-102403>1911-102403)

シリア北東部に500名の部隊を残留

 Wall Street Journal紙が10月24日、米政府がシリア北東部に500名の部隊を残留させ、新たに戦車などを配備して油田地帯の防衛任務に当たらせる案を検討していると報じた。
 トランプ大統領が今月初めに打ち出したシリア北部から1,000名を完全撤収する方針を転換することになる。
 当局者によると、シリアにおける部隊再編案は米軍幹部が提案し、ホワイトハウスが検討している。
 エスパー国防長官は当初、北東部の油田地帯がISISによって掌握されることを防ぐため、200名程度を残留させる可能性を示唆し、トランプ大統領も24日にツイッターで「絶対にISISに油田を支配させない」と強調していた。 (1911-102501>1911-102501)

米軍車列がシリア側へ越境

 クルド軍主力のシリア民主軍 (SDF) などが10月27日までに、米軍車両18両が26日朝にイラク北部からシリアの町ルメイランに入ったことを確認した。 イラクのクルディスタン地域政府 (KRG) も米軍車両の越境を認めた。
 車列は今後、シリアのカミシリを通過し、同国内陸部を進むとみられる。 CNNはルメイラン近くの路上にいる複数の米軍装甲車両やトラックの映像を撮影した。
 米国防総省は安全保障上の配慮を理由に部隊の移動についての公式コメントは拒んだが、米政府当局者はCNNの取材に、十数両の米軍装甲車両がカミシリから南方へ移動し、油田地帯として知られるシリア東部のデリゾールへ向かうと述べた。 (1911-102701>1911-102701)

ペンス米副大統領がクルド人自治区の中心都市エルビルを訪問

 ペンス米副大統領が11月23日にイラクを訪問し、反政府デモが広がる同国の情勢を巡ってマハディ首相と電話会談を行った後、クルド人自治区の中心都市エルビルに移動し、自治政府のバルザニ議長に米国への協力に対する感謝と、今後も米国がクルド人を支援するというメッセージを伝えた。
 トランプ大統領が10月、シリア北東部からの米軍引き揚げを突然発表した結果トルコによるクルド人攻撃を誘発したため、米国とともにイスラム国と戦ったクルド人への裏切り行為だとの批判が米議会の与野党双方から出ていた。 (1912-112503>1912-112503)

米軍のシリアからの撤退完了

 エスパー米国防長官が12月4日、シリア北東部に展開していた米軍部隊の撤収が完了したことを明らかにした。
 シリア国内の他の地域に600名が残留しており、トランプ大統領が10月に部隊撤収を表明した時点の1,000名から4割程度が引き揚げたことになる。
 エスパー長官は駐留米軍の規模について、状況に応じ多少増減させる用意はあるものの、当面は600名前後になるとした上で、何か起きれば若干増やすことになると語った。 (2001-120506>2001-120506)

2・1・6・3・6 トルコ軍侵攻に対する欧州諸国の反応

 EU欧州議会が10月24日、トルコ軍によるシリア北部への越境作戦を国際法を深刻に侵害しており、地域の安全と安定を損ねるものだと非難し、EUによるトルコ高官や同国経済への制裁措置を求める決議を採択した。
 決議では、農産物への貿易上の優遇措置の停止や、最終手段としてEUとトルコの関税同盟停止も検討すべきだと訴えている。 (1911-102404>1911-102404)

 10月24日に開かれたNATO国防相理事会で、ドイツがシリア北部に国際部隊を派遣する計画を提案した。 トルコによるシリア侵攻の混乱でISIS戦闘員100人以上が逃走しておりISIS対策の立て直しを図る。
 欧州が治安維持に関与し、協力関係にあるシリア北部のクルド人勢力がISISの掃討作戦に専念できる環境をつくる狙いとみられる。 (1911-102502>1911-102502)

2・1・6・4 イラクでのクルド問題

2・1・6・4・1 イラク軍とクルド軍の戦い

 イラク陸軍第15師団が3月17日にシリアとの国境近くのSinjarで、クルド人のヤジディ教徒武装勢力YBS及びクルド独立運動武装勢力PKKと銃撃戦を行い、イラク軍に2名、武装勢力側に5名の死者を出した。
 YBSによるとシリア側からイラク側に国境を越えてパトロールをしていたところイラク軍に待ち伏せ攻撃されたという。 (1904-032204>1904-032204)
2・1・6・4・2 トルコ軍がイラクへの越境攻撃

 トルコの国防省が5月28日、前日の夜からイラク北部の国境に近い山岳地域に軍の地上部隊を送り込み、クルド人武装組織PKKへの攻撃を開始したことを明らかにした。
 トルコはイラク北部に対しこれまでも断続的に空爆などを続けてきたが、地上部隊の本格的な投入は約1年ぶりである。 (1906-052903>1906-052903)
2・1・7 カタール情勢

2・1・7・1 サウドアラビアとの対立

 カタールのムハンマド外相が6月2日、カタールも参加したアラブ連盟緊急首脳会議がイランを念頭に湾岸地域でのテロ行為が世界のエネルギー供給を危うくすると警告したことに対し、いくつかの文言はカタールの外交政策に反するとして態度を留保したいと述べた。
 外相は、パレスチナやリビア、イエメンといった重要な問題がメッカでは無視されていたと会議を主導したサウジを暗に非難した。 (1907-060301>1907-060301)
2・1・7・2 米国との関係

Patriot の取得、THAAD の売却要求

 カタールに新設された防空軍の司令官が2018年11月27日、少なくとも1個システムのPatriotがoperationalであると述べた。 システムは当初米要員の支援を受けるが徐々にカタール防空軍が肩代わりするという。
 米DSCAが2012年11月に、カタールがPAC-2 GEMとPAC-3 11個FUの売却を要求していることを明らかにしており、2014年12月にはRaytheon社が10個FUを$2.4Bで受注したが、その後契約が変更されてPAC-3がMSEになっている。
 カタールはこの他にTHAADの売却を求めており、更に低域防空システムも機種選定を進めている。 (1902-120510>1902-120510)

特殊部隊の合同演習

 米特殊部隊200名とカタール軍特殊部隊400名による対テロを想定した合同演習が行われた。
 カタールには米中央軍の前方指揮所や統合航空センタなどが置かれている。 (1904-032906>1904-032906)
【註】サウジアラビアを始めとする湾岸4ヵ国が2017年6月5日にカタールと断交し、それ以降カタールは緊張状態にあるが、この演習の実施は米国がカタールの安全を保障する姿勢を示した物と解釈できる。

2・1・7・3 トルコとの関係

トルコ軍の基地開設

 トルコのHurriyet紙が8月14日、カタールに建設したトルコ軍のTariq bin Zayid大隊基地の開所式が今秋行われると報じた。
 トルコはサウジアラビアなどがカタールと断交した2017年6月に部隊をカタールに送っており、Tariq bin Zayid大隊基地にはACV-15 APCと200名の部隊を駐留させている。 (1910-082108>1910-082108)

2・1・7・4 軍備の増強

2・1・7・4・1 BMDS の整備

 Maxar衛星の画像から、カタール初のPatriot FUが2018年初期から建設されてきたAl-Udeid航空基地に、10月19~21日の間に展開したことが確認された。
 ここにはAN/MPQ-65レーダと発射機4基が展開し、イランからのBM攻撃に備えていると共に、ここに新設された防空軍司令部の防護にあたるとみられる。 AMD指揮所はRaytheon社が$250Mで受注していた。
 他の4個FUはAl-Udeidの北方15kmでドーハ防衛にあたる1個FUと、Ras Laffan石油基地、ドーハ南方のMesaieed港、Al-Shamal陸軍駐屯地に配備されている。 (1911-102406>1911-102406)
2・1・7・4・2 装備の導入

トルコから武装 UAV を導入

 カタールがトルコErdirneのBaykar Makina社にBayraktar TB2武装UAVを6機発注したと2月1日に同社か発表した。
 同社はまたカタール兵55名の教育も完了したことを明らかにした。 (904-021305>904-021305)

2・1・7・4・3 防衛産業の育成

2・1・8 その他の中東情勢

2・1・8・1 イラク国内情勢

イランが支援する武装勢力が迫撃砲攻撃

 Wall Street Journalが1月13日、イラクでイランが支援する武装勢力がバグダードの米大使館など外国公館が集中する地区に迫撃砲弾3発を撃ち込んだのを受け、米国家安全保障会議 (NSC) がイランを攻撃する軍事的な選択肢を諮問した。
 これを受けて国防総省は計画を立案したが、これを大統領が承知しているかは不明という。 (1902-011306>1902-011306)

2・1・8・2 中東版 NATO 構想:中東戦略同盟 (MESA)

 米国が進めるアラブ版NATO構想の中東戦略同盟 (MESA) からエジプトが離脱したことを事情に詳しい関係者4人が明らかにした。 イラン封じ込めを狙ってMESAを進めるトランプ政権にとって痛手となる。
 アラブの関係筋によると、エジプトが離脱を決めたのは構想の現実味が疑わしく、まだ計画の正式な青写真が出ていない上に、イランとの関係が緊迫する恐れがあるためという。 (1905-041201>1905-041201)
2・2 イスラエル

2・2・1 イスラエルの地位

2・2・1・1 米国の態度

エルサレム総領事館を駐イスラエル大使館に吸収

 米国務省が3月3日、パレスチナ代表部として機能しているエルサレム総領事館を4日付で新しい駐イスラエル大使館に吸収すると発表した。
 統合方針は昨年10月にポンペオ米国務長官が明らかにしており、3月初めに実行されるとの見方が広がっていた。 (1904-030402>1904-030402)

ゴラン高原のイスラエル主権を認める

 トランプ米大統領が3月21日、イスラエルが1967年にシリアから占領したゴラン高原について、イスラエルの主権を認める時が来たと表明した。
 トランプ大統領はツイッターへの投稿で「52年の時間を経て、ゴラン高原におけるイスラエルの主権を米国が全面的に認める時に至ったとして、ゴラン高原はイスラエルの戦略と安全保障、さらに地域の安定にとって極めて重要だと述べた。 (1904-032201>1904-032201)

 トランプ米大統領が3月25日、ゴラン高原についてイスラエルの主権を正式に認める宣言に署名した。
 ゴラン高原は、イスラエルが1967年にシリアから奪い1981年に併合している。 (1904-032602>1904-032602)

 英国、フランス、ドイツ、ベルギー、ポーランドのEU 5ヵ国の国連大使が3月26日、ゴラン高原を含むイスラエル占領地でのイスラエルの主権を認めないとする共同声明を発表した。
 声明は、力による領土の併合は国際法で禁じられていると表明している。 (1904-032701>1904-032701)

ユダヤ人入植地の国際法判断を変更

 ポンペオ米国務長官が11月18日、イスラエルが占領しているヨルダン川西岸のユダヤ人入植地は国際法に違反していないとの見解を示し、改めてイスラエル寄りの姿勢を示した。
 これにより米国は事実上すべての国および国連安保理の決議と異なる立場を取ることになる。
 米国はこれまで、1978年に国務省の出した法律上の見解に基づいて、イスラエルが占領したパレスチナ占領地での入植地の設立は国際法に違反するとしていた。 (1912-111902>1912-111902)

 EUの外相であるモゲリーニ外交安全保障上級代表が11月18日、イスラエルが占領するパレスチナへのユダヤ人入植に関して声明を出し、EUの立場は明快で変わっておらず、全ての入植活動は国際法上違法だと強調した。 (1912-111903>1912-111903)

2・2・1・2 西欧諸国との関係

米、英、仏、希海軍との合同演習

 イスラエルHaifa沖で8月に、イスラエル、フランス、ギリシャ、米国の海軍による合同演習Mighty Wavesが4日間にわたり実施された。 イスラエル北部で巨大地震が発生して多数が死亡し、インフラが壊滅状態となったという想定で、負傷者の搬送、溺れた人の救助、人道支援物資の搬入のシミュレーションを行った。
 演習には他の7か国海軍もオブザーバー参加した。 イスラエル海軍当局者によると、同国がこれほど大規模な合同演習を主催運営したのは今回が初めてだという。 (1909-081001>1909-081001)

2・2・2 B M D

米陸軍 THAAD 1個中隊の訓練展開

 米陸軍のTHAAD 1個中隊が3月4日、初めてイスラエルに一時的に配置された。
 これはTHAADシステムのイスラエル展開能力を確認するとともに、何時いかなる場所にも展開できる能力を誇示したものである。 (1904-030404>1904-030404)

 在欧米軍とイスラエル空軍が3月4日、米陸軍のTHAADが初めてイスラエルに展開したと発表した。
 展開したのはテキサス州駐屯第11防空旅団に属する第2防空砲兵連隊B中隊で、3月1日にC-17で搬入された。 (1905-031312>1905-031312)

 THAAD中隊のイスラエルへの急速展開演習が3月に行われ、イスラエルに展開した米陸軍のTHAAD中隊はイスラエルの多層BMD組織に組み込まれ共同BMD演習を行った。
 イスラエル空軍によるとTHAADは3月末に撤退した。 (1906-041007>1906-041007)

2・2・3 防空システムの見直し

防空システムの見直し

 イスラエルのネタニヤフ首相が10月6日に開かれた最後の閣議で、9月14日にサウジの石油施設がCMとUAVで攻撃されたのはイランによるものと断定した。
 この結果を受けイスラエルはDavid's SlingとPAC-2に頼っている防空組織の見直しに迫られている。
 次期政権は国防費のINS12B ($141M) 追加を検討している。 (1912-101608>1912-101608)

2・2・4 シリア空爆

2018年12月25日の空爆

 ロシアがシリアにS-300を譲渡してから初めて、2018年12月25日にイスラエルがシリアを空爆した。 シリア国営SANA通信はイスラエルはレバノン上空からミサイルを発射したがシリアがその大部分を撃墜したが、弾薬庫が破壊され兵士3名が死亡したと報じた。
 これについてロシア国防省は、25日の夕方遅くにイスラエルのF-16 6機がレバノン空域から誘導爆弾16発を投下したがそのうち14発はシリア防空部隊が撃墜したと発表した。
 イスラエルのHaaretz紙は翌日、イラン軍の補給倉庫とイスラエル機に対して射撃してきたシリア軍の防空部隊を爆撃したと報じた。 イスラエルの衛星画像分析会社iSi社はダマスカス西方で第4機甲師団が使用している基地が2ヵ所が破壊されていると判定した。
 またDigitalGlobe衛星の画像から、12月19~27日の間に4ヵ所でクレータが作られ、数量の車両と地下施設が破壊されたと見ている。 この場所はレバノンとの国境から16km、イスラエルが支配しているコラン高原から40kmで、イスラエルはシリア領空に入らないで空爆ができることを示している。 (1902-010917>1902-010917)

1月13日:イランの武器庫を空爆

 イスラエルのネタニヤフ首相が1月13日、シリア領内にあるイランの武器庫を空爆したことを認めた。 イスラエルはシリア領内を狙ってたびたび攻撃を繰り返しているとされるが、首相自ら公式に確認するのは異例であるだ。
 ネタニヤフ首相は、過去36時間で首都ダマスカスの空港にあるイランの武器を格納する武器庫を攻撃したと明言し、最近の攻撃強化は、シリアにいるイランに対して行動を取るというこれまで以上の決意の表れだと強調した。 (1902-011305>1902-011305)

 イスラエルのネタニアフ首相が1月13日に、ダマスカスにあるイラク軍の貯蔵施設を36時間にわたり攻撃したと発表した。 シリアのSANA通信はイスラエル機がダマスカス近くの目標に対し数発のミサイルを発射したが、殆どがシリア軍防空部隊に撃墜されたと報じた。 (1903-012312>1903-012312)

1月20~21日:イランの複数拠点を空爆

 イスラエル軍が1月21日、シリア国内にあるイランの複数拠点を攻撃したと発表し、シリアに対してイスラエルの領土や部隊を攻撃しないよう警告した。
 これに対しシリア国営SANA通信は、同国空軍が「敵対的目標物」に対する妨害を行い、そのうち複数を撃墜したと報道した。 (1902-012101>1902-012101)

 イスラエル軍が20日夜から1月21日未明にかけ、ダマスカス一帯のイラン関連施設に対して空爆を行った。
 イスラエル軍の声明によると、空爆ではダマスカスの空港などにあるイラン革命防衛隊の精鋭部隊コッズ部隊の武器庫や訓練施設を攻撃した。
 シリア軍がSAMを発射してきたため、同軍の防空部隊も標的にしたという。 (1902-012102>1902-012102)

 イスラエル軍が1月21日にダマスカス近郊のイラン軍施設を空爆しているが、これはゴラン高原でイラン軍から発射されたミサイルを迎撃した数時間後に行われ、20日の白昼にはダマスカス空港も爆撃している。 (1902-012206>1902-012206)

 イスラエルが1月20~21日に、2018年5月9~10日にロケット弾攻撃を受けた時以来の大規模攻撃を、シリアに進出したイランのQods部隊とシリアの防空部隊に対して行った。
 シリア国営SANA通信はイスラエルのF-16 4機がダマスカス国際空港をミサイルで攻撃してきたがシリアの防空部隊がPantsyとBukで撃墜したため空港に損害はなかったと報じた。
 イスラエル軍広報官によるとダマスカス近郊のイラン軍が後日、ゴラン高原のイスラエル軍をロケット弾攻撃したが、Iron Domeにより撃墜されたと言う。 (1903-013002>1903-013002)

2月11日:ゴラン高原に隣接するクネイトラ県でイラン軍用施設などを空爆

 シリア国営SANA通信が2月11日、イスラエル軍が国境近くのシリア南西部クネイトラ県を攻撃したと報じた。 廃虚となっていた病院や警備施設が被害を受けたが、死傷者は確認されていない。
 クネイトラ県はイスラエルが占領するゴラン高原に隣接ており、シリアで影響力を強めるイランを警戒するイスラエルはシリアのイラン軍用施設などを狙った攻撃を繰り返している。 (1903-021206>1903-021206)

3月27日:シリア領内のイラン武器弾薬庫を空爆

 シリア国営メディアによると、イスラエル軍が3月27日深夜にシリア北部アレッポ北東にある工業地帯を空爆した。 シリア側はSAM数発を撃ち落としたとしている。
 在英のシリア人権監視団は28日にイスラエルとイランがシリア領内に設けた武器弾薬庫が空爆され7人が死亡したと発表した。 (1904-032808>1904-032808)

4月13日:Hama県にある軍の拠点をミサイル攻撃

 国営シリア・アラブ通信(SANA)が、ダマスカス北方のHama県で4月13日未明にイスラエル軍による攻撃があり、戦闘部隊の隊員3人が負傷したと報じた。
 SANAが軍関係筋の話として伝えたところによると、イスラエル空軍が02:30頃、Hama県にある軍の拠点に対する攻撃を実施した。
 一方、シリアの防空部隊がイスラエル軍のミサイルの一部を迎撃したものの、戦闘部隊の隊員3人が負傷し軍施設が破壊されたという。 (1905-041304>1905-041304)

5月27日:クネイトラ県の SAM 陣地を空爆

 イスラエル軍が5月27日、占領地ゴラン高原に隣接するシリア南西部クネイトラ県のSAM陣地を空爆した。
 イスラエル軍戦闘機に向けSAMが発射され、命中しなかったがこれに対する報復措置であるという。 (1906-052805>1906-052805)

6月2日:ゴラン高原にロケット弾が着弾した報復

 国営シリア・アラブ通信が、イスラエル軍が6月2日未明にシリア南西部にミサイルを撃ち込み、シリア軍の兵士3人が死亡、7人が負傷したと報じた。 イスラエル軍はシリア軍関連施設を空爆し、シリア側も対空防衛システムで応戦したという。
 在英のシリア人権監視団によれば、このほか外国人戦闘員7人が死亡した。
 イスラエル軍によると、攻撃は1日夜にシリアからロケット弾2発が発射され、このうち1発がゴラン高原のイスラエル支配地域に着弾したことへの報復だという。 (1907-060204>1907-060204)

6月30日と7月1日:ダマスカス近郊と中部ホムス県を空爆

 国営シリア・アラブ通信が6月30日、ダマスカス近郊にイスラエル軍機がミサイルによる空爆を行い、子供を含む民間人4人が死亡、21人が負傷したと報じた。 空爆は中部ホムスに対しても行われたという。
 イスラエル軍報道官はコメントを拒否した。 (1908-070101>1908-070101)

 シリアのダマスカス郊外と中部ホムス県で7月1日未明に空爆があり、国営シリア・アラブ通信はイスラエル軍機によるミサイル攻撃に対して防空システムで応戦したと報じた。
 一方、同じ時間帯にキプロス島の北キプロス・トルコ共和国タシケント地方で爆発があったが、北キプロス政府によれば、シリア軍のSAMが飛来し爆発した可能性があるという。 (1908-070102>1908-070102)

 シリアがイスラエル機に向けて発射したS-200 (SA-5) と見られるミサイルが、ダマスカスから240km離れた北キプロス・トルコ共和国に着弾した。
 ロシアは2016年に再生したS-200VEをシリアへ供与している。 (1908-070104>1908-070104)

 トルコが占領しているキプロス共和国内の地域で、トルコだけが承認している北キプロストルコ共和国に、7月1日01:00頃にシリアが発射したS-200 (SA-5) の流れ弾が落下した。
 この事故による死傷者は報告されていない。 (1908-071013>1908-071013)

8月24日:Qods 部隊やシーア派民兵の拠点を空爆

 イスラエル軍が8月24日深夜にダマスカス近郊で、イラン革命防衛隊で対外工作を担う精鋭組織Qods部隊やシーア派民兵の拠点とされる複数の場所を空爆した。
 イスラエル側は、イランがシリア国内の拠点からUAVを飛行させ、イスラエル領内への攻撃を計画していたと主張している。 (1909-082505>1909-082505)

 イスラエルが8月に24日に、イスラエル北部に対するUAV攻撃を準備しているとして、シリアにあるイラン革命防衛軍Qads部隊の施設に対し空爆を行った。。
 イスラエル軍報道官によると、数週間前にQads部隊がイランからダマスカス国際空港にイスラエルを攻撃するためのUAVを携えて到着したという。 このチームは8月22日にゴラン高原の非武装地帯に近いシリアの村Arnahで初めてUAVを飛行させていた。 (1910-090408>1910-090408)

11月20日:イランの軍事拠点とシリア軍の施設を空爆

 イスラエルが20日、シリア国内にあるイランの軍事拠点とシリア軍の施設を空爆したと発表した。 前日イスラエルにロケット弾が打ち込まれたことの報復としている。
 シリア国営メディアは、この空爆で2人が死亡し、ほかに数人が負傷したが、首都ダマスカスに向けてイスラエル機が発射したミサイルのほとんどを手前で破壊したと報じた。
 一方、シリア人権監視団によると、死者11人のうち7人はシリア以外の国籍とみられる。
 イスラエル軍のある幹部は、10~20名の軍人が死亡し、その2/3はイラン人、1/3がシリア人だと説明した。 (1912-112102>1912-112102)

2・2・5 対ヒズボラの戦闘

8月25日:レバノンのヒズボラ施設を UAV 攻撃

 イスラエルがイランへの強硬姿勢に拍車をかけている。 AFP通信などによるとベイルート南部で25日にUAV 2機がイランが支援しているヒズボラの施設に飛来し、1機が撃墜され別の1機が爆発して数人のヒズボラ関係者が負傷した。
 イランと関係が深いヒズボラは米国と同盟関係にある隣国イスラエルをたびたび挑発してきた。 (1909-082602>1909-082602)

 レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラは、8月25日未明にベイルート周辺にイスラエルのUAV 2機が飛来し、うち1機はヒズボラの拠点に落ちて爆発したと述べた。
 更にレバノン国営メディアは26日、ベカー平原のヒズボラと連携するパレスチナ人拠点をイスラエルのUAV 3機が攻撃したと報じた。
 攻撃について沈黙を守るイスラエルは、24日にシリアを空爆したことは認めた。 (1909-082702>1909-082702)

 ヒズボラが、8月にイスラエルによる空爆で戦闘員2人が死亡したことへの報復として9月1日、レバノン南部の国境地帯から隣接するイスラエル側の町にあるイスラエル軍の施設や軍用車両に向けて多数の対戦車ミサイルを発射した。
 これに対し、イスラエル軍もミサイルが発射された地点に向けて戦車などによる砲撃を100回以上行ったということで緊張が高まっている。 (1910-090101>1910-090101)

9月1日:ヒズボラ関連の目標を砲撃

 イスラエル軍が9月1日、レバノン南部ヒズボラ関連の目標に対し砲撃を実施した。
 軍は声明で、レバノンからイスラエル領内の軍の基地などに向けて多数の対戦車ミサイルが発射されたため反撃したと発表した。 (1910-090201>1910-090201)

 イスラエルが9月3日に、レバノンのベッカー渓谷にあるイランとヒズボラのミサイル工場とする衛星画像を公表した。
 この施設はヒズボラの訓練場南端にあるという。 (1911-091113>1911-091113)

2・2・6 ガザでの戦闘

2・2・6・1 ガザからのロケット弾攻撃とイスラエルの反撃

3月14日:初めてテルアビブをロケット弾で攻撃

 イスラエル軍によると3月14日遅くにガザからロケット弾2発がテルアビブに撃ち込まれた。
 これによる損害はなかったが、ガザ北端から50kmも離れたテルアビブがロケット弾攻撃を受けたのは初めてで、軍は報復攻撃を行うと見られる。 (1904-031411>1904-031411)

 イスラエル軍が3月15日、パレスチナ自治区ガザの100ヵ所程度を空爆を加えたと発表した。 ガザの保健省によると、空爆で複数の負傷者が出た。 イスラエル側に死傷者は出ていない。
 イスラエル軍は、14日夜にガザからテルアビブに向けて2発のロケット弾が撃ち込まれたことへの報復措置としてる。 (1904-031502>1904-031502)

3月25日:テルアビブをロケット弾で攻撃

 イスラエルのテルアビブ近郊で3月25日早朝にロケット弾攻撃があり7名が負傷した。 イスラエル外務省によると、ロケット弾はガザから発射された。
 米国訪問中のネタニヤフ首相は許しがたい攻撃と非難し、断固とした対応をとると表明し日程を切り上げて帰国する方針を示した。 (1904-032504>1904-032504)

 イスラエル軍が3月25日にガザを実効支配するイスラム組織ハマスのガザ領内の複数拠点を空爆した。
 ガザから同日発射されたロケット弾がイスラエル中部の住宅地に着弾し、7人が負傷したことへの報復で、イスラエルはロケット弾はハマスが発射したと断定しており、ハマス最高指導者ハニヤ氏の事務所や、ハマスの治安機関施設などが空爆の目標とされた。 (1904-032603>1904-032603)

5月4日:大量ロケット弾による攻撃と反撃

 ガザ地区の武装勢力が5月4日、イスラエル南部に対し250発以上のロケット弾を撃ち込んだ。 数十発はIron Domeが撃墜したが80台の女性1人が重傷を負い、50台の男性も負傷し手当を受けた。
 これを受けてイスラエル軍は空爆と砲撃で報復し、パレスチナ側の発表によると女性と子供を含む少なくとも4名が死亡した。 (1906-050402>1906-050402)

 トルコのアナトリア通信が5月4日、同日にイスラエル軍の戦闘機がガザで同通信の事務所が入った建物を空爆し、少なくともロケット弾5発が撃ち込まれたと報じた。 死傷者は報告されていないというが、トルコのエルドアン大統領はツイッターでイスラエルの攻撃を強く非難した。
 エルドアン政権はイスラム色が濃く、パレスチナ問題でイスラエルをたびたび非難しており、イスラエルのネタニヤフ首相もエルドアン大統領への反発を何度も示している。 (1906-050502>1906-050502)

 イスラエルのネタニヤフ首相が5月5日、ガザへの大規模攻撃を続けるよう軍に指示したと述べた。
 ハマスなどは5日までにイスラエル領に450発以上のロケット弾を発射し、イスラエル軍はこれに対し220ヵ所を超える目標に攻撃を行っている。
 衝突は3日にハマスとは別組織イスラム聖戦の狙撃手がイスラエル兵に発砲して2名が負傷したのが発端で、イスラエル軍が空爆などで報復に乗り出したもので、イスラエル側で1人、パレスチナ側で8人が死亡した。
 エジプトが停戦に向け調停を行っているがテルアビブでは14日から欧州最大級の音楽の祭典「ユーロビジョン」が開かれる予定で、報復の応酬による情勢の不安定化を懸念する声が強まっている。 (1906-050506>1906-050506)

5月4日:大量ロケット弾による攻撃と反撃

 イスラエル軍が5月6日、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスと停戦で合意した。
 ガザ情勢をめぐっては4日以降、双方による攻撃の応酬が激化し、ガザで少なくとも25人が死亡しイスラエル側でも4人が犠牲になった。 (1906-050603>1906-050603)

8月22日:ガザ市南の数ヶ所に対し空爆

 イスラエル軍によると、イスラエル南部へのロケット弾攻撃の報復としてガザ市南の数ヶ所に対し空爆を実施した。 それらの中にはハマス海軍の基地も含まれているという。 (1909-082208>1909-082208)

9月6日、7日:ハマスの軍事施設などに対し空爆

 イスラエル軍が9月7日、ガザを実効支配するハマスの軍事施設などを空爆した。
 ガザからイスラエル南部に7日に飛来したUAVが爆発物を発射して軍車両が損傷したことへの報復としている。
 イスラエルとガザの間で攻撃の応酬が発生するのは2日連続になる。 (1910-090801>1910-090801)

10月31日、11月1日:ガザからロケット弾

 イスラエル軍によると11月1日夜、ガザからイスラエルに向けて10発のロケット弾が発射された。
 大半をIron Domeで撃墜し死傷者は確認されていない。 軍はハマスの関連施設を報復攻撃した。
 ガザからは10月31日にもイスラエルに向けてロケット弾1発が発射され、軍がハマスの関連施設を攻撃したが、双方の間ではここ約1ヵ月攻撃の応酬が発生せず、比較的落ち着いた状態だった。 (1912-110201>1912-110201)

11月12日:ガザとダマスカスを同時空爆

 イスラエル軍が11月12日にガザを攻撃し、イランが支援するパレスチナ過激派組織イスラム聖戦のバハ・アブアタ司令官を殺害した。 これを受け過激派組織はテルアビブなどに向けてロケット弾を発射してイスラエルに報復し、過去数ヵ月で最も深刻な事態となっている。
 シリア国営メディアによると、イスラエル軍はダマスカスにあるイスラム聖戦政治部門指導者自宅も攻撃しその息子など2人が殺害した。 (1912-111202>1912-111202)

 イスラエル軍が11月13日、ガザで武装組織イスラム聖戦を目標とした攻撃を継続し、AFP通信によると過去2日間でガザの死者は22人に達した。
 軍は13日の声明でロケット弾発射を試みるイスラム聖戦の戦闘員らを目標に空爆などを続けていると表明した。
 一方、ガザからイスラエルに向けて発射されたロケット弾は約220発に上っている。 飛来するロケット弾についてはIron Domeで90%以上迎撃しているという。 (1912-111304>1912-111304)

11月16日:ガザのハマス施設をに空爆

 イスラエル軍が11月16日、ガザ地区にあるハマスの施設を目標に空爆を実施したと発表した。
 ハマスが実効支配するガザ地区では、イスラエル軍とイスラム聖戦の間で14日朝に停戦が発効したばかりであったが、イスラエル軍はガザ地区からイスラエル領に向けてロケット弾2発が発射されたことを受けたものと説明している。
 ロケット弾は防空システムによって迎撃されたという。 (1912-111701>1912-111701)

2・2・6・2 ガザへの地上侵攻

 (特記すべき記事なし)
2・2・7 隣接国以外への攻撃

8月22日:イラクの親イラン民兵組織の武器庫を空爆

 New York Timesが8月22日、イスラエルが7月にイラク国内で親イラン民兵組織の武器庫を空爆していたと報じた。
 報道が事実なら、イスラエルがイラク国内を空爆するのは1981年に核兵器開発を阻止するためとして建設中のオシラク原子炉を破壊して以来とみられる。 (1909-082401>1909-082401)

 イラクでは8月25日、シリア国境近くのシーア派民兵組織「人民動員隊」(PMF) の拠点がUAVによる攻撃を受け、2人が死傷した。
 イラクでは最近、PMFの貯蔵庫などで原因不明の爆発が続いており、New York Times紙はトランプ米政権の高官が、少なくとも一部にイスラエルが関与したとの見方を示したと報じた。
 これに対しイラク国会では26日に親イランの政党連合が、イスラエルの攻撃は「宣戦布告」であり、同盟国の米国に責任があるとして駐留米軍の撤退を要求した。
(1909-082702>1909-082702)

2・3 インド対パキスタン

2・3・1 両国の外交関係

インド、パキスタンの最恵国待遇を取り消し

 インド財務相が2月15日、14日に印北部ジャム・カシミール州でインドの中央予備警察隊が乗ったバスを狙った自爆テロがあり、パキスタンを拠点とするイスラム過激派が攻撃を認めたことに対する措置として、パキスタンに付与していた最恵国待遇 (MFN) を取り消したことを明らかにした。
 インドは1996年にパキスタンにMFNを付与したが、パキスタンは2011年にインドにMFNを付与すると決めたが今に至るまで実行していない。 (1903-021504>1903-021504)

捜査中インド治安部隊員を銃撃

 インドPTI通信が、北部ジャム・カシミール州で2月18日、治安部隊要員ら40名が死亡した14日のテロに絡んだ捜査中に武装勢力との間で銃撃戦が発生、治安部隊要員4名を含む7名が死亡したと報じた。 銃撃戦はテロ現場から10kmほどの場所で起きた。
 治安部隊要員以外で死亡したのは市民1人と14日のテロで犯行声明を出したイスラム過激派ジェイシモハメドのメンバー2人で、この過激派はパキスタンを拠点としており、2人のうち1人はパキスタン人という。 (1903-021805>1903-021805)

両国の対立激化

 カシミール地方のインド側が実効支配しているジャム・カシミール州で2月14日にインドの治安部隊がパキスタンの過激派組織に襲撃され40名が死亡したが、この事件についてインド軍司令官が2月19日、事件はパキスタンの軍と情報機関によって計画されたもので、過激派組織は彼らに操られていると述べ、パキスタンの軍などが背後で関わっていると厳しく非難した。
 これに対してパキスタンのカーン首相は19日、根拠もなくパキスタンに疑いをかけているもので、何らかの攻撃を考えているのならばわれわれも報復すると述べ、インド側が報復攻撃を行った場合には断固とした対応をとる姿勢を強調した。 (1903-021906>1903-021906)

2・3・2 武力衝突

2月14日事件

 インド北部ジャム・カシミール州プルワマで2月14日に治安部隊を狙った爆発が起き、Times of India紙によると治安要員少なくとも36名が死亡した。 複数の地元メディアは、パキスタンに拠点を持つとされるイスラム過激派ジェイシモハメドが犯行を認めたと報じた。
 インドのモディ首相は「卑劣な攻撃を強く非難するとツイッタに投稿した。 今春に総選挙を控えるモディ首相が、支持固めのためにパキスタンへの非難を強めれば、両国関係の一層の悪化が懸念される。 (1903-021403>1903-021403)

インド軍の報復攻撃

 パキスタン軍報道官が2月26日、インドの軍機がカシミール地方のパキスタン実効支配地域に侵入し、パキスタン軍機の緊急発進後に爆弾を投下して逃げたと発表した。 負傷者や被害は出ていないという。
 同報道官によると、爆弾は実効支配線から50mkの町バラコット付近に落ちたがけが人や被害は出ていないと語った。 (1903-022605>1903-022605)

 インド政府が2月26日、印空軍機が同日にパキスタン国内のイスラム過激派ジェイシモハメドの拠点を狙った空爆を実施し、武装勢力構成員の多数が死亡したと発表した。
 政府高官筋によると、武装勢力の構成員とみられる300人が死亡した。 (1903-022606>1903-022606)

 民間衛星が2月27日に撮影した画像から、26日にインド空軍機が空爆したと発表したパキスタンBalakotにあるJaish-Mohammed (JeM) 戦闘員の訓練施設は損傷を受けていない模様である。 (1905-031302>1905-031302)

パキスタン軍の反撃

 パキスタンが2月27日、パキスタン軍機がインドと領有権を争うカシミール地方の実効支配線を超えてインド側で空爆を行ったと発表した。 その後緊急発進したインド軍機と空中戦となり2機を撃墜し、パイロット1名を拘束したことも発表した。
 これに対してインド側はパイロット1名が行方不明となったことを認めたが、反撃で1機を撃墜したとしている。 (1903-022705>1903-022705)

 パキスタン軍報道官が2月27日、同国がカシミール地方のインド支配地域を空爆した後、インド空軍機がパキスタン領空に侵入したたため空中戦となり、パキスタン領空でインド機2機を撃墜したことを明らかにした。
 2機のうち1機は、カシミール地方のインド支配地域に墜落し、もう1機はパキスタン支配地域に墜落し、パイロットを拘束したという。
 インド政府のコメントは得られていないが、同国の警察当局はカシミール地方でインド空軍機が墜落し、パイロット2人と民間人1人が死亡したことを明らかにしていた。 (1903-022706>1903-022706)

パキスタン軍が F-16 を使用した可能性

 米国が3月3日、カシミール地方でパキスタンがインドの空軍機を撃墜した際にF-16を使用したかどうかについて調査していることを明らかにした。
 武器売却契約の違反にあたる可能性があるという。 パキスタン軍は27日、同国がF-16を使用したとのインドの主張を否定している。 (1904-030401>1904-030401)

本格衝突の懸念

 インドとパキスタンの緊張が高まる中、エミレーツ航空やカタール航空など航空各社は2月27日、両国行きの運航を停止した。
 エティハド航空やスリランカ航空、エア・カナダが運航を休止したほか、運航状況追跡サービスによると、シンガポール航空やブリティッシュ・エアウェイズなどが経路変更を余儀なくされたもようである。 (1903-022801>1903-022801)

砲撃の応酬:3月

 インド、パキスタン両国がカシミール地方の実効支配線周辺で軍事衝突を続けている問題で、パキスタンは3月1日に撃墜したインド軍機のパイロットをインド側に引き渡したが、両国は2日も砲撃の応酬を続け、緊張の緩和にはつながっていない。
 インドメディアによると、2日にパキスタン軍が発射した迫撃砲弾が複数の集落に着弾し3人が死亡した。 1日も別の集落で銃撃戦に巻き込まれた住民や警官ら8人が死亡している。 (1904-030204>1904-030204)

砲撃の応酬:10月

 インド軍とパキスタン軍が10月21日、両国がカシミール地方の実効支配線を挟んで相手側から砲撃を受け反撃したと発表した。
 両国メディアによると、砲撃の応酬は現地時間の19日深夜から20日未明に起きた。
 パキスタン側は、市民5人と兵士1人が死亡し、インド兵9人を殺害したと主張しているのに対し、PTI通信によるとインド側は兵士2人と市民1人が死亡し、パキスタン兵6~10人と複数のテロリストを殺害したとしている。 (1911-102101>1911-102101)

砲撃の応酬:12月

 パキスタン当局者が12月22日、インド軍がここ数日間にカシミールのパキスタン支配地域に迫撃砲攻撃を行い、3名が死亡し10軒以上の家屋が破壊されたと抗議した。
 これに対しインド軍は、砲撃はパキスタンが最初に開始したと応じ、停戦違反だと非難した。 (2001-122206>2001-122206)

2・3・3 ジャム・カシミール州自治権

2・3・3・1 インド、ジャム・カシミール州の剥奪

 インドのコビンド大統領が8月5日、インド側カシミールのジャム・カシミール州に対し自治権を剥奪する大統領令に署名した。
 モディ首相率いる与党インド人民党はヒンズー至上主義を掲げており、全国で唯一イスラム教徒が多数派のジャム・カシミール州の自治権の剥奪を主張し続けてきた。
 パキスタンの反発は必至で、核保有国同士の印パの緊張が高まる恐れがあり、インド国内でも武力衝突やテロによる治安悪化が懸念される。 (1909-080506>1909-080506)

 インド北部のパキスタンとの係争地、ジャム・カシミール州が10月31日に州からインド政府の直轄領となる。
 ヒンズー至上主義を掲げるモディ政権が8月、国内で唯一イスラム教徒が多数派の同州の自治権剥奪を決定したことに伴う措置で、住民の抵抗運動激化や、分離独立を狙う過激派の活発化が予想され、全国的な治安悪化につながる恐れがある。 (1911-103006>1911-103006)

2・3・3・2 パキスタンの反発

パキスタン、インドの駐パ大使を追放

 パキスタン政府は8月7日、インドがジャム・カシミール州の自治権を剥奪したことを受け、インドの駐パキスタン大使を国外追放すると発表した。
 またパキスタン政府は、新たに任命した駐インド大使の着任を控えると明らかにした。 (1909-080801>1909-080801)

2・4 中国対インド

2・4・1 中印国境

2・4・1・1 紛争、武力衝突

 (特記すべき記事なし)
2・4・1・2 中国軍の増強

 (特記すべき記事なし)
2・4・1・3 インドの対応

2・4・1・3・1 国境近くのインフラ整備

戦略的道路の整備

 インドPTI通信などが、インドが中国との国境沿いで大規模な道路整備を計画していると報じた。
 インドが実効支配し中国も領有権を主張する北東部アルナチャルプラデシュ (AP) 州でも計画されており、中国が反発する可能性がある。
 インド当局の報告書によると、道路建設が予定されているのは中国と国境を接する北部ジャム・カシミール州、ヒマチャルプラデシュ州、ウッタラカンド州、北東部シッキム州、AP州の5州の44ヵ所で、インドは戦略的道路と位置づけて大規模な道路整備に乗り出す。 (1902-011406>1902-011406)

2・4・1・3・2 地上軍

 (特記すべき記事なし)
2・4・1・3・3 ミサイル部隊

 (特記すべき記事なし)
2・4・1・3・4 航空兵力

航空基地の強化

 インド空軍当局者が1月7日、間もなく中国との国境に近いインド北部の基地に次世代型耐爆格納庫108棟を建設する工事を開始することを明らかにした。
 鋼鉄製の扉に守られたこの格納庫はSu-30MKIやRafale戦闘機を収納するもので2,000-lb爆弾の直撃にも耐えることができ、総工費はINR55B ($788M) に上るという。 (1902-010702>1902-010702)

 ほか【4・4・1・2・6 航空機及び搭載装備】で記述

2・4・2 インド洋

2・4・2・1 中国の進出

 (特記すべき記事なし)
2・4・2・2 インドの対抗策

2・4・2・2・1 アンダマンニコバル諸島に新基地開設

 インド海軍広報官が1月8日、インド領アンダマンニコバル諸島の首都Port Blairの北方300kmのKohasaに1月24日に1,000mの滑走路を持つ基地を開所すると発表した。
 同基地は当初ヘリやDornier 228洋上哨戒機が使用するが、今後滑走路を戦闘機や他の航空機も使用できる3,000mに延長する計画であるという。 (1902-010807>1902-010807)

 インド政府が2020年代にINR56.50B ($793.6M) をかけてアンダマン・ニコバル諸島の軍事力を強化する。 計画には部隊、戦闘艦、偵察戦闘用航空機、UAV、ミサイル中隊などの増派が含まれる。 (1902-012806>1902-012806)

2・4・2・2・2 海軍の増強

 【4・4・1・2・5 艦 船】で記述
2・5 ウクライナ

2・5・1 ロシアとの抗争

2・5・1・1 ロシアの動き

2・5・1・1・1 クリミア半島

 ロシア通信 (RIA) がロシア議会上院防衛安全保障委員長の話として3月18日、米国がルーマニアにAegis Ashoreを配備したのに対抗してTu-22M3をクリミア半島に配備すると報じた。
 ロシア通信によると、ボンダレフ委員長は、Tu-22M3はクリミア半島のグワルデイスコエ空軍基地に配備されると述べた。 (1904-031901>1904-031901)

 ロシアがウクライナ南部クリミアを編入した当時にウクライナ海軍司令官であったガイドゥク氏が、ロシアは2014年からクリミアの戦力を3倍に増強させていると言明した。 またそれに対するウクライナ海軍再建の見通しは今もたっていないという。
 ガイドゥク氏は、ロシア軍がクリミアの軍基地に軍用機100機以上、潜水艦7隻、潜水艦搭載型の巡航ミサイル、大型艦船などを配備しており、将来はクリミアに戦術核配備も検討しているとの情報があることも明かした。
 ロシアがクリミアで兵力増強する背景について、黒海西部への軍事作戦を実施する可能性があるとし、セバストポリを拠点としてオデッサなどウクライナ西南部の封じ込めを図る恐れもあるという。 (1904-032904>1904-032904)

 ロシアが2014年に奪取したクリミア半島とロシア本土間のケルチ海峡に長さ19kmの鉄道橋が完成し、プーチン大統領が12月23日にクリミア側からロシア側に渡る列車に試乗した。
 2018年5月に開通した自動車橋に並行する鉄道橋の完成で、ロシアはクリミアとの交通アクセスを拡充させ実効支配を強化した。 (2001-122306>2001-122306)

2・5・1・1・2 アゾフ海とケルチ海峡

ロシア軍が陸空兵力を増強

 ケルチ海峡事件を受けロシアとウクライナの緊張が高まっている。
 ロシア軍はクリミアに射程120kmのBal地上発射ASCMを配備したほか、T-62 MBT 250両を東部軍管区からロストフに移動させた。 また作戦機500機とヘリ340機も待機させている。
 更にアゾフ海に臨むマリウポリ沖合5kmにはロシア艦を配置している。 (1902-120502>1902-120502)

 2018年11月25日に起きたアゾフ海事件以来緊張が高まっているクリミアに、ロシア軍が陸空で兵力の増強を続けている。
 陸では少なくとも9両のBMD-2 IFVがケルチ海峡橋をトレーラ輸送されたのが確認されたほか、S-400や96K6 Pantsir S1 SPG/SAMの追加大隊が派遣され、空ではSakiとDzhznkoy、Grardeyskoyeの航空基地にA-50 AEW&C機、海軍のSu-30SM、Tu-154やIl-76輸送機、Mi-26重ヘリが飛来している。 (1902-121902>1902-121902)

国際海洋法裁判所が乗員即時解放と3隻の返還を命令

 ロシアが2018年11月に黒海周辺海域でウクライナ艦船3隻を拿捕した事件で、国際海洋法裁判所は5月25日、乗員24人の即時解放と3隻の返還を命じた。
 ロシア外務省は25日、同裁判所はロシアとウクライナの係争事案を裁定できないと主張する声明を発表し、反発した。 (1906-052506>1906-052506)

ロシアがウクライナ艇を返還

 ロシア外務省が11月18日、2018年11月に領海侵犯を理由にケルチ海峡で拿捕していたウクライナ海軍艇をウクライナに返還したと発表した。
 ロシアは拿捕した3隻の移動を17日に開始し、返還は黒海の中立海域で行われたとみられる。
 これに先立ちウクライナ政府などは、ゼレンスキー大統領とプーチン露大統領による初の直接会談が12月9日にパリで実施されると発表しており、艦艇返還は会談に向けた地ならしとみられる。 会談ではウクライナ東部で続く同国軍と親露派武装勢力の紛争終結に向けた進展が見られるかが最大の焦点となる。 (1912-111802>1912-111802)

2・5・1・1・3 ウクライナ東部州

ウクライナ東部のウクライナ人にロシアの市民権

 プーチン露大統領が4月24日、ロシアを背景にウクライナからの分離を求めるウクライナ人にロシアの市民権を付与する大統領令に署名した。
 対象となるのはドネツク州とルハンスク州に住むウクライナ人の希望者で、ロシアの市民権を得ることでロシアへの忠誠を誓うことになる。 (1905-042406>1905-042406)

 ロシアのプーチン政権は分離独立を求めるウクライナ東部の住民に初めてロシアのパスポートを発給している。
 プーチン大統領は4月に分離派の支配地域の住民に対してロシアのパスポートを発給する大統領令に署名し、14日にロシア南部のロストフ州で、ウクライナ東部から訪れた住民64人に初めて、 ロシア内務省によると、これまでに12,000人から申請があり、順次発給していくという。
 パスポートは所有者の国籍を示す公式の証明書となるため、受け取った住民は今後、外国に渡航した際、ロシア国民として扱われることになる。 (1907-061503>1907-061503)

 プーチン露大統領が7月17日、ウクライナ東部の親露派武装勢力が実効支配する地域住民を対象にしたロシア国籍の付与を簡略化する措置をウクライナ東部2州の住民に拡大する大統領令に署名した。
 ウクライナで21日に最高会議(議会)選挙の投票が実施されるのを前に同国に揺さぶりをかける狙いとみられる。 (1908-071707>1908-071707)

2・5・1・2 ウクライナの対応

2・5・1・2・1 ケルチ海峡

 ケルチ海峡事件を受けロシアとウクライナの緊張が高まっている。
 ウクライナ軍はドネツクの第1軍団とルハンシクの第2軍団が全軍臨戦態勢に入った。 (1902-120502>1902-120502)
2・5・1・2・2 ロシアタンカーの拿捕

 ウクライナが7月25日、ロシアが2018年にケルチ海峡でウクライナ艇と乗組員を拿捕したことへの報復として、黒海で投錨中のロシアのタンカーNika Spiritを拿捕した。
 現在Nika SpiritはIzmailに係留されているが、全員ロシア人の乗組員10名は解放され、空路帰国するためバスでモルドバに向かっている。
 ロシアとの対話を開始したゼレンスキー新大統領の動きが注目される。 (1908-072506>1908-072506)
2・5・1・3 ウクライナへの支援

2・5・1・3・1 米国と NATO の対応

ケルチ海峡事件への対応

 ロシアが2018年11月25日にアゾフ海に入ろうとしたウクライナ艇3隻を拿捕した事件を受けNATOは、NATO海軍がケルチ海峡の橋を通過してアゾフ海に入るのは不可能なため、軍事的な対応を取るのは不可能としている。
 その上でNATOは黒海に入れる艦船を増やすとしている。 (1902-120501>1902-120501)

 米海軍の駆逐艦Donald Cookが、1月20日にダーダネルス海峡を通過して黒海に入り21日にジョージアのバツーミに入港した。
 2018年11月にウクライナ艇3隻と乗員24名がケルチ海峡で拿捕されたのを受けたもので、1月上旬には第22海兵遠征隊を載せた揚陸艦Fort McHenryも黒海に入っている。 米駆逐艦が黒海に入るのは2018年8月のCarney以来である。 (1902-012207>1902-012207)

 米国、カナダ、EUが3月15日、2018年のウクライナ艇3隻の砲撃拿捕などでロシアに対して新たな制裁を科したと発表した。 米財務省は、ケルチ海峡での攻撃に関与したとしてロシア連邦保安庁の当局者4人を制裁対象とした。
 また2014年のクリミア半島併合時にロシア軍にサービスを提供するためウクライナの国有資産を不正流用した疑いでクリミア半島で事業を行うロシアの防衛企業6社と、分離主義者がウクライナ東部で行ったる違法な選挙を指示したウクライナ人2人にも制裁を科した。 (1904-031601>1904-031601)

 NATO、EU及び黒海周辺諸国は恒久化しつつあるロシアのアゾフ海封鎖を打開する努力を続けているが、事態は殆ど進展していない。
 ロシアが2017年5月にアゾフ海の入り口であるケルチ海峡を封鎖したため、ウクライナ東部の港湾は外部と遮断された状態になっている。 (1905-031304>1905-031304)

軍事援助

 NATOが4月4日に、設立から70年となるのを記念してワシントンで外相会議を開き、ロシアが併合したクリミア周辺で軍事力を増強し、脅威がさらに高まっているとして、非加盟国のウクライナや黒海沿岸のジョージアとの間で、海軍の訓練や合同軍事演習などの軍事協力を強化することを決めた。 (1905-040503>1905-040503)

 米国防総省が6月18日、ウクライナに$250Mにのぼる軍事援助を行うと発表した。 これにより2014年以来の援助額は$1.5Bに達した。
 援助の内容は訓練支援、助言活動、装備供与などで、供与装備には狙撃銃、RPG、対砲レーダ、指揮統制装置、電子戦装置、通信装置、暗視装置、医療器具などが含まれている。 (1908-062610>1908-062610)

 米大統領府が9月12日、保留していたウクライナ向け軍事援助$250Mを上院歳出委員会の超党派議員の圧力で執行することにした。 (1910-091203>1910-091203)

 米国務省が9月12日、国防総省から要求のあったウクライナに対する$250Mの援助を承認したと発表した。
 このパッケージは2018年5月2日にウクライナに対してFGM-148 Javelin肩撃ち式ATGM 210発とJavelin発射機37基を供与して以来1年以上経過して行われる。 (1911-091808>1911-091808)

 米国がウクライナに、米沿岸警備隊で退役したIsland級警備艇2隻を供与する式典が11月13日にオデッサ港で行われた。 米国は更に3隻を供与することになっている。
 全長34m、排水量168tのIsland級警備艇はMk 38 Mod 0 Bushmaster 25mm機関砲1門と、12.7mm機銃2丁、レーダ1基を装備している。 (1912-111402>1912-111402)

 米国防総省の政策担当次官補が12月4日、トランプ政権がウクライナに対しATGMのような殺傷兵器を含む少なくとも$250Mの軍事援助をFY20予算に追加することを議会に要求することを検討していることを明らかにした。
 今まで2月か3月に行われている議会に対する予算要求以前に、こうした内容を公式に公表するのは極めて異例である。 (2001-120406>2001-120406)

Rapid Trident演習

 米国が支援したウクライナ軍の近代化が、9月末に終了するNATO軍との最大規模の年次演習Rapid Tridentで検証された。 Rapid Tridentはポーランドの国境に近いウクライナ西端の町Yavoriv近郊で行われた。
 9月13日に開始されたこの演習には14ヵ国から3,700名以上が参加し、米軍からは第101空挺師団の部隊とカリフォルニア州兵第115地域支援群も参加した。 (1910-092604>1910-092604)

2・5・1・3・2 EU の対応

 EUが2月18日にブリュッセルで開いた加盟28ヵ国による外相理事会で、ロシアに対する追加制裁で大筋合意した。
 2018年11月にロシアがウクライナ艇を拿捕し乗組員を拘束した問題を受けた措置で、月内にも正式に制裁発動を決める。 追加制裁は米国とウクライナがEUに強く求めていた。
 EUは具体的な制裁内容は明らかにしなかったが、EU筋によると8人を資産凍結や渡航禁止の対象とする制裁リストに追加する方向だという。 (1903-021901>1903-021901)

 EUが12月12日の首脳会議で、ウクライナ問題を巡る対ロシア経済制裁を半年延長し、2020年7月末まで継続することで合意した。
 制裁は2014年にロシアがウクライナからクリミア半島を編入した直後に発動され、現在は2020年1月末が期限となっている。 (2001-121302>2001-121302)

2・5・1・3・3 黒海沿岸諸国の対応

 ウクライナのオデッサで3月1~2日に同国外相が主催し、NATO諸国や黒海周辺国の代表を集めた安全保障会議が開かれた。
 この会議でマンザNATO事務次長補が、現状ではロシアが黒海で起こす動きに対応したわれわれの対応を模索している段階であると述べた。 (1905-031303>1905-031303)
2・5・1・4 マレーシア航空機撃墜事件の5ヵ国合同捜査

 ウクライナ東部で2014年7月に発生したマレーシア航空機の撃墜事件で、オランダやウクライナなど5ヵ国の合同捜査チームが6月19日、撃墜に使われたミサイルの輸送にかかわったとして、ロシア、ウクライナ国籍の4人を殺人容疑で訴追したと発表した。
 公判は20年3月にオランダで始まる見通しという。
 捜査チームは19日の記者会見で、ウクライナ親露派武装勢力の「国防相」だったロシア国籍のギルキン容疑者ら4人を国際手配し、ロシア政府に引き渡しを求める方針を明らかにした。
 通信記録などから4人を特定したという。 (1907-061902>1907-061902)
2・5・2 EU, NATO 加盟問題

加盟を目指した憲法改正

 ウクライナで憲法改正が行われ、欧州への統合路線を目指す国の方針を憲法に明記した。
 ウクライナでは、ロシアが欧米との対立を深めるきっかけとなった政変から5年が経つのに合わせて、EUやNATOへの加盟を目指す国の方針を憲法に明記する法案が3月に議会の2/3以上の賛成で可決され、ポロシェンコ大統領が議場で憲法改正法案に署名し成立した。 (1903-022002>1903-022002)

新大統領も加盟願望

 ウクライナのゼレンスキー新大統領がブリュッセルでストルテンベルグNATO事務総長と会見し、ウクライナがNATOやEUに正式加盟したいとした従来の方針に変わりはないと言明した。
 その一方でロシアとの和平協議も開始するとした。 (1907-060404>1907-060404)

2・5・3 大統領の交代

2・5・3・1 大統領選挙結果

 ウクライナで4月21日に大統領選挙の決選投票が実施され、新人のタレント候補ゼレンスキー氏が約7割を得票してポロシェンコ現大統領に大差を付け、当選を確実にした。
 既存政治に失望した有権者の支持を集めたものだがゼレンスキー氏はロシアとの協議にも前向きで、悪化していた両国関係に影響を与えそうである。 (1905-042201>1905-042201)
2・5・3・2 ロシアの対応

 ロシア上院のコサチョフ国際問題委員長がウクライナ大統領選の結果について4月21日、ロシアがこの選挙を承認しない理由はないと語り、ゼレンスキー次期大統領との対話に前向きな姿勢を示した。
 プーチン大統領はウクライナ大統領選の結果について、コメントは出していないが、21日の決選投票を前にいつも対話の扉を開いているとして、ロシアが介入したウクライナ東部の紛争を巡ってゼレンスキー氏と話し合う可能性を示唆していた。 (1905-042202>1905-042202)
2・5・3・3 西側への期待

 ウクライナのゼレンスキー大統領が11月31日に、キエフを訪れたストルテンベルグNATO事務総長と会談し、会談後に行われた共同記者会見で大統領は、NATOのこれまでの支援に謝意を示したうえで、われわれは新たな協力のレベルに移行する準備があると述べた。
 大統領はロシアの脅威を念頭に、共同演習の実施や海軍の能力向上、サイバ攻撃への対応などをめぐって、一層の連携を求めた。
 これに対し事務総長は、2018年にロシアが黒海周辺でウクライナ海軍の艦船を銃撃、拿捕する事件などが起きたことを念頭に、黒海での安全保障に向けた支援などを約束した。 (1912-110102>1912-110102)
2・5・4 東部での兵力引き離し

 タス通信が、ウクライナ東部の紛争で停戦監視に当たる欧州安保協力機構 (OSCE) が11月12日、政府軍と親露派の双方が10月に合意したドネツク州での兵力引き離しを完了したと確認したと報じた。
 10月に兵力の引き離しで合意したのは、親露派と政府軍が対峙する東部のルハンスク州とドネツク州で、すでに撤収作業を終えたルハンスク州に続いて、ドネツク州の地区でも12日までに兵力の引き離しを完了した。
 親露派を支援するロシアは、2地区での兵力の引き離しを4ヵ国首脳会議開催の条件としていた。 (1912-111302>1912-111302)
2・5・5 ウクライナの新装備開発

沿岸防衛用陸上発射型 ASCM の開発

 ウクライナが開発しているNeptune沿岸防衛用陸上発射型ASCMの発射試験が完了した。 ポロシェンコ大統領は4月にNeptuneが間もなく陸海軍に配備されると述べている。
 Neptuneは発射重量670kg、弾頭重量145kgで、排水量5,000t以下の艦船を沈めることができ、射程は280kmという。 (1908-060008>1908-060008)

Bliskavka 超音速 ASM

 ウクライナのYuzhnoye設計局が、10月8~11日にキエフで開かれる防衛博で、長距離、超音速ASMのBliskavkaについて詳細を公表した。
 BliskavkaはロシアのKh-31と同級のASMであるが、速度はKh-31のMach 3.5より僅かに早く、射程も長いという。 Kh-31同様に3種類のシーカを搭載し、対艦艇ではARH及びEOシーカ、SEADではPRHシーカを使用する。 (1911-101008>1911-101008)

 ウクライナのYuzhnoye設計局が10月8~11日にキエフで開かれる防衛博で、かねてから発表していた長距離、超音速ASMのBliskavkaの開発が次の段階に進んだことを明らかにした。
 BliskavkaはMach 3.5で飛翔するロシアのKh-31と同級のASMで、Kh-31同様に3種類のシーカを搭載し、対艦艇ではARH及びEOシーカ、SEADではPRHシーカを使用する。
 ただ、Kh-31や中国のYJ-12が4ヵ所の空気取り入れ口を持つのに対し、Bliskavkaはラムジェット用の空気取り入れ口が2ヵ所になっている。 (1912-101603>1912-101603)

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